労務リスクと労務管理

        

労務リスクと労務管理 


  会社にとってヒトはリスクではあるが、絶対必要な存在でもあるのです。

  この矛盾と付き合っていくためには各種規定の周知徹底と運用がベースとなります。

  企業リスクの80%以上が人に関わるものです。

  会社の規模に関わらず、一人でも従業員がいる限り労務問題は存在します。

  労務リスクが顕在化した場合、それが企業経営に与える影響は甚大なものとなります。

  そのため企業は、これらの労務リスクを可能な限り低減していくことが必要であり、その
    ための取り組みが「労務管理(リスク対策)」です。

  しかし、いざ労務管理に取り組もうとしても、なかなか組織に定着していかないのが実情
  です。

  人が人を管理する労務管理では、管理者や部下の性格や就業意識などといった属人的
  な要素が、その運用に多大な影響を及ぼす面があるからです。

  企業の労務管理方針とは異なるイレギュラーな運用
  管理者の独断で行われ、そこから労務リスクが発生す
  ることがあります。  労務管理.gif

  例えば、「仕事なのだから、多少の残業は当然のこ 
  とである」と考える管理者は、「自分の部下に多少の
  残業をさせても問題ない」として、企業が定める基準
  よりも長時間の残業を命じることがあります。

  こうした残業命令を労働契約に関する権利意識が
  強い部下が受けたなら、労働契約の際に示された
  よりも長時間に及ぶ残業命令に不満を感じること
  でしょう。

  また、そうした残業命令が繰り返されることで部下の
  不満は限界に達し、最終的には「不当な残業命令を
  繰り返し受けた」として、都道府県労働局などに相談
  するかもしれません。

  このように、属人的な要素の影響を受ける点が労務管理の根本的な問題です。


  ■リスクコントロールの前に

   様々な会社規程は、制定当初は自社の企業防衛や円滑な業務遂行などの目的のため
   に作られます。

   しかし、それらは時に法令順守を体裁的に取り繕った、場あたり的な規定の可能性も
   あるのです。

   建前(規定)と本音(現実の運用)のギャップに、あまりにも乖離があると、その規定は
   無い方が良い場合もあります。

   なぜなら、現実的には建前と本音がイコールになるケースは極めて稀であることから、
   殆どの規定にはあらゆるリスクが潜んでいると言わざるを得ないのです。

   従って、どのような規定であれ、制定する際には、そのギャップをどこまで理解して
   いるか、言い換えれば、例えば“法令は白”であるが、“自社の運用はグレー”である
   ことをきちんと理解しているかが重要となります。

   特に労務においては規定の対象者はヒトであり、運用するのもヒトであることです。   

   規定を絶対的なものとして『完璧』にリスクコントロールすることは、不可能な分野なの
   です。

   労務リスク対策には規程の整備を含め、業務改善による正しい業務のあり方、そ
   れを実践していくための業務の標準化か欠かせない。

     業務改善のための強化策(コンサル・セミナー・研修・講演)のご案内

  労務リスクとは

   労務リスクを洗い出す過程の作業の一つに、就業規則の分析が挙げられます。

   就業規則も書籍や他社の規定を会社名だけ書き換えコピーしたものから、オーダー
   メイドのものまで多種多様です。

   ご承知のとおり、どのような規定でも運用次第では逆に自社の首を絞めることになりかね
   ません。

   例えば、残業代の計算方法から支給基準まで事細かに記載してもサービス残業が慣例化
   していれば、いつか必ず痛い目を見ることになってしまいます。

   過去には、大手消費者金融会社が2年分の未払残業代を数十億円かけて清算した
   事件や、福利厚生の一環で有給休暇を1 時間単位で分割して取得できる制度を導入
   したら遅刻早退が増え、勤勉な人間までモチベーションが低下したなどという本末転倒
   な事例などもあるのです。 

   会社は労務管理の中で、様々なアメとムチを使い分ける必要があります。

   このバランスが非常に難しく、まさに従業員の教育の基本であり、企業利益に直結する
   部分でもあるのです。   

   多くの会社がこの分野をおろそかにしています。

   適度なバランスが保たれて組織がうまく機能している会社は団結力(モチベーション)
   が増し、競争力が高まるのです。

   この労力を最優先課題のひとつと考え、真剣に取り組むかどうかが企業繁栄の分岐点
   となります。

  ■労務管理の基本

   中小企業における実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、どちらかと
   いえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。

   もちろん、経営者・リーダーが持っている「感覚」はとても大事であり、多くの問題が、
   経営者の経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実です。

   このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「阿吽の呼吸」「家
   族」「仲間」といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。

   ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス、雇用契約」といった意識が強くなり、
   経営者の勉強不足や、ついていけないといった理由で、問題を処理しきれないことが
   多くなっています。

   例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、
   従業員が権利としての主張を始めたり、「暗黙の了解」による休日出勤や残業に対して、
   従業員が割増賃金を請求してきたり、といったことが起こっています。

  □従業員を雇うルールと責任   

   1.給料(賃金)の支払い

    当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。

    給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。

    ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。

    この決まりを「労働基準法 賃金支払い5原則」といい、次のものをいいます。

     @通貨払いの原則(円建てで)

     A直接払いの原則(本人以外への支払いは認められない。例外:妻・子等)

     B全額払いの原則(残業代の不払いは違反)

     C毎月1回以上払いの原則(日払い、過払いは該当しない)

     D一定期日払いの原則(例外:臨時支払の賃金、賞与その他これに準ずるもの)

   2.安全・安心な職場環境の整備

    作業事故の防止に限らず、長時間労働、特定個人に過重な負荷がかかるような
    仕事の与え方、メンタルヘルスなど、体だけでなく心の健康を守ることも重要になっ
    てきています。

   3.就業

    一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。

    最低でも、従業員が納待できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。

   4.書類の整備

    労働基準法では、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、
    最後に記入してから3年間保管することが義務付けられています。

    このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があっ
    た場合に渡す「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就
    業規則」などが必要です。

   5.公的保険の加入

    公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の経営者がたま
    にいますが、公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」
    は加入が義務となっています。

    最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される
    「ねんきん定期便」によって、加入意識を持ったりするようになってきています。

    さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけ
    にはいかない流れになっています。

   
  ■労務管理のポイント

   労務管理を取り巻く法令は非常に多く数十種類存在します。

   会社はそれら法令の網にがんじがらめにされており、賢い労働者は会社を訴えようと
   思ったらどんな角度からでも間違いなく要所を突く事ができるのです。

   訴訟にならない会社と言うのは必ずしも労務管理が適正なのではなく、単に運が良い
   だけと言ったほうがよいでしょう。

   では労務管理はどうすればいいのか。

   本来圧倒的なカリスマ経営者が存在すれば規定などいらないのですが、人事異動を
   伴う組織では、やはり運用者が誰になっても決してプレない規定が必要とされます。

   その規定はアメとムチのバランスを適度に保ち、ヒトも会社もお互いが成長していける
   ものでなければならないのです。

   当然のことながら法令の改正や同業他社・世間一般の情勢にも連動し、随時メンテナンス
   を要します。

   特に現代の就業形態は、正社員、パート社員、期間契約社員、嘱託社員、派遣社員、
   日雇社員、と細分化され、また、契約方法も、雇用契約、業務委託契約、請負契約など
   に分けられています。

   この多種多様な集団を会社が統括管理するためには、服務規律・労働時間・休日など
   の基本事項から、人事評価・考課制度・賃金の昇降給・賞与査定・退職金の積立方法
   などを必ず公正なものとして確立し、その公正な規準をオープンにして周知徹底させる
   ことが絶対必要なのです。 

   当然のことながら、悪意的な基準など排除しなければなりません。

   規程類は企業の労務管理のルールを示す客観的な文書であり、何らかの労使トラブ
   ルが発生した際の企業の対応の根拠ともなるため、確実に整備しなければなりません。

   中小企業が労務管理に取り組む際は、属人的な要素から生じるイレギュラーな運用を
   できるだけ排除していかなければなりません。

   そのために必要となる取り組みが「規程類の整備」「適切な運用」「保険の活用」の
   3つです。

    
  □規程類の整備

   労務管理を推進する際に車の両輪となるのは
   「規程類の整備」と「適切な運用」です。

   企業が定める労務管理のルールを就業規則
   などの規程類として(1)文書化するとともに、
   そのルールに従った労務管理が(2)周知徹
   底されるよう管理者研修なども実施します。

   また、そうした労務管理を行っていても完全
   に防ぐことができない労働災害などへの備え
   として、労働保険などに加入します。

   こうすることで、文書化された明確なルールに
   基づいて適切に労務管理が行われ、労働災
   害など万一の際にも、保険によって被災した
   従業員やその家族をフォローできるといった
   理想的な労務管理が実現します。

   (1)文書化

     中堅・中小企業が労務管理に取り組む際の第一歩といえるのが、就業規則など
     規程類の整備です。

     中小企業では就業規則などが整備されておらず、事案が発生するたびに個別に対
     応していることがあります。

     こうした状態では、時として公平性・合理性に欠ける対応が行われるばかりか、
     それが原因となって労使トラブルが発生する恐れもあります。

     規程類は企業の労務管理のルールを示す客観的な文書であり、何らかの労使
     トラブルが発生した際の企業の対応の根拠ともなるため、確実に整備しなければ
     なりません。

   (2)周知徹底

     作成した規程類は必ず全従業員に周知徹底し、企業内の見やすい場所に掲示
     するなどします。

     周知徹底することでルール順守に対する従業員の意識が高まります。

     また、労働契約法では、「合理的な内容が定められている就業規則を従業員に
     周知させていた場合、労働契約の内容は、その就業規則で定められている労働
     条件になる」と定められています。

     従業員に就業規則を周知徹底しておけば、原則としてそれが労働契約の内容にな
     ります。

     労働契約とは、就業規則と本人への辞令のことで、会社と従業員との合意に基
     づくものです。

     労働条件をめぐるトラブルが発生した場合、企業は自ら主導して作成した就業規則
     を、1つの判断基準とすることができます。

   (3)適時の変更

     規程類は、労働法の法令改正に合わせて適時、変更しなければなりません。

     労働法は頻繁に改正されるので、定期的に厚生労働省や都道府県労働局のWeb
     サイトをチェックしたり、専門家(弁護士、社会保険労務士)に確認することをお勧
     めします。 
   
  □適切な運用

   1.管理者の意識改革

     属人的な要素の影響を排除し、規程類に定めたルール通りに労務管理が行われ
     るよう、管理者に労務管理の高い意識を持たせることが重要です。

   2.業務管理

     管理者が中心となって、現場の業務管理を適切に進めます。

     業務管理の意味は広範ですが、労務リスクの原因となりやすい「労働時間管理」
     と「業務配分管理」がポイントとなります。

     労働時間管理と業務配分管理ができていないと長時間労働や業務量の過多につ
     ながり、そこから労働基準監督官の臨検などの労務リスクが発生します。

     長時間労働で従業員がイライラして言動が乱暴になり、パワーハラスメントにつな
     がることもあります。

   3.健康管理    

     企業は安全配慮義務を負っており、それを履行しなければなりません。

     安全配慮義務とは、企業の指揮命令下で従業員が労働する過程において、従業
     員の生命および身体を危険から保護するよう配慮する企業の義務のことです。

     企業が安全配慮義務を履行するための具体的な取り組みの一部は、前述の業務
     管理ですが、このほかにも定期健康診断などを実施する必要があります。

     定期健康診断は福利厚生の一環として行われるものではありません。

     従業員は労働契約に基づいて労務を提供するよう自らの健康状態を良好に保つ
     義務を負い、企業は「従業員が労務の提供に堪え得る心身の状態であるのか」
     を確認する義務を負っています。

     この互いの義務を履行するための手段の1つが定期健康診断であり、「労働安全
     衛生法」によりその実施が企業に義務付けられています。

     そのため、企業は必ず定期健康診断を行い、従業員の健康管理をしなければな
     りません。

  □保険の活用

   「規程類の整備」と「適切な運用」管理を行っていても発生してしまうのが労働災害
   です。

   労働災害はちょっとした気の緩みなどから発生するもので、完全になくすことは不可能
   です。

   万一の備えとして労災保険などの法定・法定外の労災保険などに加入することが重要
   です。

   近年、過労死やパワーハラスメントに関する事案が労働災害として認定されるなど、
   労災保険がカバーする範囲は広がってきており、万一の際は従業員やその家族に
   とって重要な補償となります。
   
  ■安全配慮義務と損害賠償責任

   労災事故と企業責任について万一不幸にして、労災事故が発生すると、次のよう
   な企業責任が生じる可能性があります。

   (1)刑事責任

     労働災害が発生すると、労働安全衛生法違反がなかったかについて、労働基
     準監督署から調査が入り、違反があれば刑事責任を問われることがあります。

     その場合労働安全衛生法違反の他、刑法211条の業務上過失致死傷の罪に
     問われる場合があります。

     業務上過失致死傷は、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者
     は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

     重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」としています。

      @労働安全衛生法の罰則規程の適用

      A業務上過失傷害などの刑事責任

   (2)民事責任

     労災事故が発生した場合、事業主は、過失の有無にかかわらず労基法により
     補償責任を負わねばなりません。

     しかし、労災保険に加入している場合には、事業主にその事故について労災
     保険による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます
     (労災によって労働者が休業するときの1〜3 日目の休業補償は、労災保険
     から給付されないため、労基法で定める平均賃金の60%を事業主は被災労
     働者に支払う必要があります)。

     しかし、仮に事業主が故意または重大な過失より、労災保険に加入していな
     かったり、労災保険料を滞納していた期間に事故が発生した場合、またその
     事故が事業主の故意または重大な過失より生じた場合は、国から給付される
     額の30%〜40%の額が徴収されます。

     また、労働基準法上の補償責任とは別に、労災について安全配慮義務違反な
     どの事由により被災者側から使用者に対して民法上の損害賠償請求がなさ 
     れる場合があり、その請求額も大変巨額なものとなってきています。

     なお、労基法に基づく補償が行われたときは、その価額部分は民法による損
     害賠償の責を免れることが労基法に規定されています。

      @労働基準法等 災害補償責任

      A民法 損害賠償責任

   (3)行政処分 

     労働安全衛生法に基づき、作業停止命令や設備等の使用停止命令などの 
     行政処分が行われるときがあります。

     また、例えば建設業の場合は一定期間の指名入札禁止などの処分が行わ
     れます。

     刑事事件に相当しない程度の事故災害でも、労基署から「厳重注意」「是正勧
     告」がなされ、改善されなければ刑事責任が問われる場合もあります。

   (4)社会的責任 マスコミ等の報道による世間的信用の失墜、等

     重大な労災事故が発生した場合や、たびたび労災事故を発生させた場合、公
     共事業では指名停止や顧客からの取引停止などの社会的制裁を受けるケー
     スが多くなっています。

     また、マスコミ等の追求も厳しいものがあり企業の社会的信用も失墜してしま
     うことになります。

  □企業の従業員に対する安全配慮義務

   労働安全衛生法の第3条では使用者の責務として、「事業者は、単にこの法律で
   定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の
   実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するよう
   にしなければならない。

   また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するように
   しなければならない。」としています。

   法違反がある場合、労災事故発生の有無にかかわらず労働安全衛生法等により
   刑事責任が問われる場合があります。

   また、労働者は、その事業場で労働安全衛生法等の違反があるときは、労働基準
   監督署長等にその事実を申告し、事業者に対して必要な措置を取るように求め
   ることができます。(労働安全衛生法第97 条)

   近年の判例では、使用者が従業員の生命や健康を職場における危険から保護
   すべき義務を負うこと、この違反について民事賠償と同様の責任を生じるべきこと
   が認められるようになってきました。

   さらに、平成20年3月に施行された労働契約法の第5 条で、「使用者の労働者
   の安全への配慮」が明記されました。

  □安全配慮義務と従業員に対する賠償責任について

   労働者は労働災害を被った場合、被災者あるいはその遺族が、労災保険に補償
   を請求することができます。

   しかし、補償給付額は必ずしも被災者側の満足する額まで届かない場合が多く、
   例えば、休業補償給付で平均賃金の8割(休業補償給付6割+労働福祉事業に
   よる特別支給金2割)の給付で、慰謝料等は考慮されていません。

   そこで会社に対して損害賠償という形で請求することが多くなってきました。

   使用者に損害賠償を請求するには、従来のケースでは、被災者側は使用者の不法
   行為に基づく損害賠償の請求をしていました。

   しかし、現在では、判例上確立しさらに明文化された「安全配慮義務」という根拠
   に基づく債務不履行責任の追及が主流となりました。

   また、新聞報道によれば、政府内部でこの労働福祉事業の撤廃も検討されている

   ようなので、それが現実になるとすると損害賠償請求の流れは一層強まり、請求
   額もさらに巨額になると予想されます。

   さらに、民事上の損害賠償請求にかかる時効は不法行為に基づくものの場合、
   消滅時効は3年ですが、債務不履行による請求権の消滅時効は10年ですので、
   この点でも企業リスクは増していると言えます。

  □企業の防衛策

   労災事故が起こった場合の損害賠償請求は近年巨額になっていく傾向にあります。

   そのためにも、

    @労働安全衛生法の遵守

    A労務管理マニュアルの整備・作成・安全管理教育の徹底

   は、事業主にとっての必須事項です。

   加えて使用者賠償責任保険等の労災上乗せ保険の活用なども考えるべきかと
   思われます。

   企業防衛(会社と社員を守る)、収益確保には業務や労務の管理が欠かせません。

   オーナー社長にとって会社は我が子同然。

   会社と社員を守るのが社長の役割であり責任です。


                           お問合せ・ご質問こちら
 

                            メルマガ登録(無料)はこちらから    

 

社内規定の整備は最低限の会社防衛策

 

社内規定の整備は会社を守る基本 


  社内規定の不備は社内にさまざまな問題を発生させさせる原因となります。

  社内規定集(ひな形)を掲載しておきますので自社用に加工して使用してください。

  ネットの普及により争いは団体から個人へと移行しています。

  ネット上には情報があふれ、中には、よからぬ入れ知恵をするやからもいます。

  一昔前と比べ、従業員個々の権利意識の高まり、情報収集による理論武装により、
  会社に権利を主張してくるのです。 

  社内規定は従業員と会社相互を守るためのものです。

  未整備の規定があるようでしたら、自社用に加工してご使用ください。
   
  ■社内規定の整備に投資

    「規定を作る」というなんとなく堅苦しく感じますが、これは大きな誤解です。

   社内規定は会社を守るためのルールブックと言ってもいいでしょう。

   例えば「就業規則」という規定があります。

   これは給料体系、賞与、残業手当や有給休暇など会社で働くために必要な事柄を定
   めたものです。
  
   一見会社が縛られる事柄ばかりのような感じがするかもしれませんが、実は就業規
   則がないと「解雇」が出来ないのです。

   「このようなときは解雇しますよ」という内容をあらかじめ就業規則に決めておか
   ずに解雇すると「不当解雇」として従業員から訴えられる可能性があります。

   また「懲戒処分」のときも同じで、従業員に不始末があったときに減給や懲戒解雇
   などをしなければならないことがあるかもしれませんが、こういった処分も就業規則
   がないとできません。

   逆に「有給休暇」などは就業規則がなくても法律で決まっていますので与えなけ
   ればいけません。

   本屋で販売しているものをそのまま使うのはお勧めはできません。

   販売されているものは上場企業でも適用できそうなくらいの「従業員有利」な内容
   になっていますので、そのまま使うと中小規模企業では水準が高すぎたりします。

   就業規則以外にも「三六協定」なども必要ですし、税務上は「慶弔規定」も整備
   しておきたいところです。

   *36協定(三六協定)

     この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36(サ
     ブロク)協定」といいます。

   労働時間は1日8時間、1週間40時間を超えて労働させることは禁止されており、
   この36協定が無いと、残業や休日出勤をさせること自体ができないのです。

   残業手当を払っても違法であり、36協定は「会社の規模を問わず」、必要な手続き
   です。

   確かに社内規定を整備するには社会保険労務士などに支払う経費が発生します。

   しかしこの費用も経費になりますし、また節税という枠を離れて考えても多くのメリ
   ットがあります。

   社員に働きやすい職場を提供するとともに、いざというときには会社も守るために社
   内規定はあるのです。
   
  ■BYODとは?

   「Bring Your Own Device」の略で、従業員が個人保有の携帯用機器 
   (スマートフォン、パソコン、タブレット等)を職場に持ち込み、それを業務に使用
   することを示します。

  □BYOD導入のメリット、デメリット

   ○メリット

    ・時間、場所を選ばず手軽に利用できる

    ・移動時間を有効に使え労働時間が削減できる

    ・どこにいても通信できる

    ・メールの返信など迅速な対応ができ顧客の満足度が上がる

    ・豊富なアプリでスケジュールやデータ管理がしやすい

    ・顧客へのプレゼンテーションなどの向上

   ○デメリット

    ・紛失、盗難

    ・盗み見

    ・通信の漏洩

    ・ウイルスの感染

    ・悪意のアプリによる情報の漏洩

  □BYODを導入する上での注意

   BYODをする際、プライベート・データと業務データの切り分けにも注意をしなけ
   ればなりません。

   同一のアドレス帳を用いている場合、客先に送るはずの業務メールを誤って友人等
   に送ってしまうという事故が起こる可能性もあります。

   また、退職時には、BYODで使っていたスマートフォンやタブレットから業務データ
   がすべて消去されたことを確認する必要があります。

  □BYOD導入をするためにすべきこと

   (1)社内規程をきちんと整備しておく

     @セキュリティポリシーなどのセキュリティ規程

     A適切な労務管理などの就労規程

     B費用負担の取り決めなどの経費規程

     C就業規則に明記

   (2)端末利用に関するマニュアル作成

     @使用するアプリケーションの特定

     Aリモートワイプ(遠隔からのデータ消去機能)の設定ができる

     Bファイルのデータ暗号化ができる

     C端末のセキュリティロックを設定する

     以上の事項は、必ずマニュアルに記載してください。

   (3)誓約書の取得

     @利用目的

     A管理、届け出について

     B禁止事項

     C利用終了時の取り扱い

     D誓約への違反などの分類

   BYODは導入しないと考えている場合でも、大半の従業員のスマートフォンやタブレ
   ット等の中に何かしらの会社の情報が入っているはずです。

   取引先の電話番号、住所、担当者の名前もその情報の一つです。

   顧客の情報、会社の情報が漏えいしてしまうと会社の信用もなくなり、最悪の事態を
   招きかねません。

   「自社は、BYODを導入しないから対策など必要ない!」と考えるのではなく、あら
   かじめきちんとしたルールを作成し対策をとっておく事が必要です。 


  ■各種規定ひな形

   <役員用規程>

     役員退職慰労金規程

     役員退職慰労金規程に関する取締役会議事録  

     有限会社の取締役申し合わせ事項 

     有限会社の役員退職慰労金・弔慰金規程

   <従業員用規程>

     フレックスタイム規定 社内規定.gif

     災害補償規程

     給与規定

     制裁規定

   <兼用>

     福利厚生規程 

    <その他>

     採用への備え

     身元保証書

 

                       お問合せ・ご質問こちら

 

                       メルマガ登録(無料)はこちらから  

 

労働時間管理の不備は企業リスクを拡大させる

        

労働時間の管理不足は企業リスクを拡大させる


  近年、成果主義の浸透や非正規従業員(パート労働者など)の増加などを背景に業務
  遂行方法が複雑化し、従業員数が少ない中小企業でも労働時間管理が難しくなって
  きています。

  適切な労働時間管理が行われないと残業は慢性化し、企業、従業員とその家族にとって
  大きなリスクとなることから、労働時間の適正化は緊急課題です。

  ■法定労働時間の管理

   労働基準法(以下、労基法)では、休憩時間を除き労働時間について次のように定め
   ています。

    ・1日の法定労働時間は8時間

    ・1週間の法定労働時間は40時間

   この法定労働時間を基本として、企業は労働者の労働時間を管理していきます。

   (1)1日の法定労働時間

     労基法では、1日の法定労働時間について8時間と定めています。

     ◎労働時間にかかわる範囲
      1日8時間(休憩1時間含む)、週5日勤務の企業の場合

      ○拘束時間
       ・出勤から退勤までの全時間をいい、休憩時間も含まれる

      ○法定労働時間

       ・拘束時聞から休憩時間を除いた時間をいう

       ・この労働時間は使用者の指揮監督のもとにある時間をいう

       ・所定労働時間は法定労働時間の範囲内で定める

      ○所定労働時間

       ・就業規則などで定める所定始業時刻から所定終業時刻までの
        時間のうち休憩時間を除いた時間をいう

      ○休憩時間

       ・拘束時間中ではあるが、勤務からは解放され労働しないことが
        保障されている時間をいう

      ○法定内残業時間

       ・所定労働時間を超えるが法定労働時間内の労働時間(割増貸
        金の支払いは任意)

      ○法定外労働時間

       ・法定労働時間を超える労働時間(割増貸金の支払いが義務づ
        けられる)

   (2)1週間の法定労働時間

     1週間の所定労働時間が40時間以内となるように、各勤務日の所定労働時間
     および勤務日数を定めます。

     一部の業種については、法定労働時間の特例措置が講じられています。

     ◎法定労働時間の特例
      商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のうち労働者数10人未満の
      一定の事業場については、労働時間の特例措置として、1週44時間、1日8
      時間まで労働させることができることになっています。


  ■休憩時間の管理

   適当な時間で労働を中断するなどし、労働者の心身の疲労を回復させる必要があり
   ます。

   このため、労基法は休憩時間について次のように定めています。

    労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は
    少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない。

   労基法の規定は、あくまで最低の基準で、疲労回復に必要な休憩を労働時間の長さ
   に応じ適宜与えるようにしましょう。

   しかし、長過ぎる休憩時間は拘束時間をいたずらに長くする結果となり好ましくありま
   せん。

   また、休憩時間は労働から離れることが保障されているものである以上、これを労働者
   に自由に利用させなければなりません(休憩時間の自由利用)。


  ■休日の管理

   休日は、労働者にゆとりある生活を与え、労働による心身の疲労を回復させる役割を
   もっています。

   労基法は、
   休日は原則として毎週少なくとも1回は与えなければならないと定めています(週休
   制の原則)。

   これによると、毎週1回の休日を与えていれば、それ以外に国民の祝日を休日にする
   ことや、週休2日制にするといったことは強制されていません。

   また、休日について特定することを要求していません。

   しかしながら、休日の目的からすると、適切な休日数とその特定が望ましく、できるだけ
   就業規則において記すなど、労働者に示すことが必要です。   

   所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合の対応の仕方として、おもに次の
   2つがあげられます。

   (1)休日の振替

     所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合、原則として同一週内で振替日
     を事前に指定することで、労働させることができます(その場合、就業規則に「業務
     上の必要がある場合には休日を振り替えることがある」といった規定を設けておく
     必要があります)。

     こうすることで休日が所定の勤務日に変更され、休日労働させたことにはならなく
     なります。

     したがって、

     休日の振替の場合は割増賃金は発生しません。

   (2)代休

     休日の振替に似たものとして、一般に「代休」と呼ばれる制度があります。

     これは休日労働を行わせた場合に、その代償措置として、事後にある日の労働
     義務を免除するものです。

     ただし、休日労働の事実は消えないので、

     代休の場合は休日労働に対する割増賃金の支払いが必要です。

     なお、代休日を有給とするか無給とするかは就業規則などの定めによります。


  ■時間外労働・休日労働

   労基法では、法定労働時間と週休制の確保を労働条件の最低基準として規定し、
   原則として時間外労働や休日労働を認めていません。

   しかし、

    ・災害の発生その他通常予見されない緊急の場合

    ・業務上の必要から労使協定を締結した場合

   には、一定の条件のもとに、時間外または休日に労働させることが認められています。

   (1)非常災害の場合

     労基法では、災害、緊急、不可抗力など、避けることのできない事由によって、臨時
     に時間外または休日に労働させることが必要となった場合には、その必要限度
     まで労働させることができます。

     この場合には、あらかじめ、所轄労働基準監督署長の許可を受ける必要がありま
     すが、事態急迫の場合は事後に届出を行います。

    (2)労使の協定による場合
      使用者が労働者代表と書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署
      に届け出た場合には、法定労働時間の規制枠を超えて労働者に時間外労働を
      行わせたり、休日に労働させることができます。

      この書面協定を労基法の条文にちなんで「36協定」と呼んでいます。

      ただし、18歳未満の年少者または妊産婦で請求のあった者については、この
      協定により時間外労働、休日労働とも行わせることはできません。

      季節的な要因などによる「業務量の繁閑の波」を時間外労働で吸収している企業
      もいまだ多いようですが、これは限りある労働時間を効率的に管理していくうえで
      決して望ましいことではないため、時短の促進や労働時間の弾力化(変形労働時
      間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制の導入)などにより、時間外労働を
      削減する方向が望まれています。


  ■有給休暇

   本来の休日以外に取得することができる有給の休暇で、社員等に与えられる権利
   です。

   しかし、業務が忙しい日に有給休暇の申請があった場合、会社には休暇日をずらして
   もらう権利があります。 

     病気と嘘をついて有給休暇を取得しても欠勤扱いにすることはできなません。

     これを防ぐためにも、就業規則等に「住所、家庭関係、経歴その他の会社に 申告すべ
   き事項及び各種届出事項について虚偽の申告を行わないこと」を記載しましょう。

     そして、「所定の手続きを怠ったときには懲戒の対象となる」と明記する。

   (1)有給休暇の日数

     6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、有給休暇
     を与えなくてはなりません。

     有給休暇の最低付与日数は、勤続年数に応じて以下のとおりと定められています。

     有給休暇の最低付与日数
   有給休暇.jpg


     パートなど所定労働日数が少ない者に対する有給休暇の付与日数は、以下の
     とおり定められています。 


     所定労働日数が少ない労働者に対する有給休暇の最低付与日数      
   有給休暇2.jpg


  ■労働時間管理に関する労基法の改正点

   多くの中小企業は36協定を締結せずに、就業規則の定めだけを根拠に従業員に
   時間外労働などを命じています。

   これは、所轄労働基準監督署の許可を得ずに従業員に時間外労働などを命じている
   危険な状態です。

   仮に従業員がそうした状況を労働基準監督官に申告すれば、その臨検によって是正
   指導が出されるでしょう。

   こうした事態を避けるために、中小企業は早急に36協定を締結しなければなりません。

   また、その際は就業規則も確認し、新たに締結する36協定と矛盾がないようにします。

   36協定と就業規則の整備によって従業員に時間外労働を命じる根拠が整うため、
   少なくとも「所轄労働基準監督署の許可を得ずに従業員に時間外労働を命じている」
   状態を脱することができます。

  □36協定で締結する内容

    1.時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由

    2.業務の種類

    3.労働者の数

    4.1日および1日を超える一定期間について延長することができる
     時間または労働させることができる休日

    5.有効期間の定め

    6.1日を超える一定の期間の起算日

   中小企業は上の内容について締結した36協定を「時間外労働・休日労働に関する
   協定届(様式第9号)」とともに所轄労働基準監督署に届け出ます。

   長時間労働を抑制し、労働者の健康を保持しながら、仕事と生活の調和を図ることを
   目的に労基法が改正され、平成22年4月1日から次のとおり施行されました。

  □時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ

   時間外労働を労働者に行わせるには「36協定」が必要ですが、時間外労働ができる
   限度時間が定められています。

   この限度時間を超えて時間外労働を行わせるには「特別条項付き36協定」が必要
   です。

   「特別条項付き36協定」を結ぶ際には、

    (1)限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)
      ごとに、割増賃金率を定めること

    (2)(1)の割増賃金率について25%を超える率とするよう努めること

    (3)そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること

   が必要になります。

  □月60時間を超える時間外労働の割増率

   月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50%
   に引き上げられます(深夜労働や休日労働の割増賃金率は変わりません)。

   ただし、中小企業については、法定割増賃金率の引き上げは猶予され、施行より3年
   経過後に改めて検討されます。

  □代替休暇制度の導入

   月60時間を超える時間外労働について、労使協定を締結すれば、引き上げ分の割増
   賃金の代わりに代替休暇(有給休暇)の付与をすることができます。

   ただし、労働者が代替休暇を取得した場合でも、従来の25%分の割増賃金の支払い
   は必要です。

  □有給休暇の時間単位付与

   労使協定を締結した場合、1年に5日分を限度として有給休暇を時間単位で与える
   ことができるようになります(分単位など時間未満の単位は認められません)。

  ■労働時間管理に対する経営者と従業員の意識改革

   中小企業が労働時間管理を徹底する際は、タイムカードの設置などによって実際の労働
   時間を正確に把握する一方で、36協定などの規定の整備と労災保険など保険への加入
   によって企業のリスクを軽減します。

   これらを実践した上で具体的な労働時間の適正化策を講じます。

   季節的な業務量の偏りによって定期的に時間外労働が発生しているような場合は変形
   労働時間制の導入が効果的です。

   ただし、現実的にはこのような単純な取り組みで問題が解決できるケースは少なく、
   もっと根深い問題があります。

   時間外労働や休日労働が慢性化している職場では、従業員がはじめから時間外労働や
   休日労働を考慮した労働時間で業務の割り振りを行っていることが少なくありません。

   これは、従業員の希薄な時間管理の意識が時間外労働などの原因になっているケース
   が少なくないということであり、中小企業が労働時間管理を徹底する際はこうした従業員
   の意識改革をしなければなりません。

   その役割を担うのは管理者です。

   経営者は、時間外労働の事前許可制を実施して管理者にそれを徹底させるなど、
   日ごろから厳格に労働時間管理をしなければなりません。

   意識改革が必要なのは従業員だけではなく経営者も同様です。

   時間外労働などを削減すると、全体の労働時間が減る分、企業の生産力や販売力が
   低下します。

   これまで従業員に時間外労働など負担をかけることで実現してきた生産力などが失わ
   れるのです。

   経営者はこの点を想定した上で、前述した従業員の意識改革を推進し、業務効率の
   向上などによって生産力などの低下を最小限に食い止めなければなりません。

   労働時間管理の徹底は会社と従業員に大きな影響を与え、一時、混乱を招くこともあり
   ます。

   それでも労働時間管理の徹底が求められるのは、それが企業が労基法など関係法令を
   順守するためだけでなく、会社が従業員とその家族に果たすべき重要な責任の一つ
   であり、結果として企業と従業員の幸福につながるものだからです。

                         お問合せ・ご質問こちら 

                        メルマガ登録(無料)は こちらから

 

                                 

中小企業にとっての福利厚生

         

中小企業に求められる福利厚生


  ■福利厚生の定義

   福利厚生とは、賃金など基本的な労働条件とは別に、企業が従業員やその家族の
   福祉の向上を図るために設ける諸制度のことをいいます。

  福利厚生の内容

   福利厚生は、「法定福利」と企業が独自に行う「法定外福利」とに分けられます。

   法定福利は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険の保険料
   などの事業主負担分がその具体的内容になります。

   これら社会・労働保険は、強制加入を原則としており、企業の福利厚生として基本中
   の基本です。

   法定外福利は、原則的には事業主の裁量によって決められるものです。

   その範囲は、住宅取得などの生活援助的なものから、健康や文化・体育など多岐に
   わたります。

   法定外福利はあくまでも事業者側の任意によるものですが、人材の確保・定着や労働
   意欲の醸成など、労務管理のうえで欠くことのできない施策になっています。

   また、従業員が求める福利厚生への要求レベルも多様化・高度化している現在、この
   法定外福利厚生の役割はますます大きくなってきています。

  □今後の福利厚生のあり方

   社会と経済の急速な変化により福利厚生へのニーズが変わってきたことから、その
   あり方を再考する必要が出てきました。

   ここでは最近の福利厚生を取り巻く経営上の環境変化を整理し、今後の福利厚生の
   あり方を探っていきます。

   1.経営環境の変化

     平均寿命の伸びと少子化現象により、わが国は急激な高齢社会に直面してい
     ます。

     一方、経済が成熟化し売上の急拡大が難しくなるなかで、会社の総人件費の
     負担増などが懸念されています。

     さらに、高齢者・女性・パートタイム労働者などの増加による従業員構成の変
     化や、職種、雇用形態の多様化も会社に大きな影響を与えつつあります。

     このようなことを背景に、次に示すように会社側、従業員側の福利厚生への考
     え方も変化しつつあります。

     (1)会社側の変化

       @これまでの量的拡大一辺倒の経営から、会社の創造性や独創性、社会
         的貢献や文化的活動を重視するなど、価値観に変化が生じている。

       A人事異動はグループ企業内へと拡大し、また国際化の進展にともない 
         外国への転勤者が増加し、福利厚生の扱い範囲に問題が生じている。

       B会社の人件費総額(賃金、退職金、社会保険料、福利厚生費)が増加し
         ており、とくに社会保険料の伸びが大きくなっている。

     (2)従業員側の変化

       @高齢化が急速に進展し、退職後の生活への関心が高まっている。

       A人々の生活は豊かになり、意識も「モノからココロ」へ移行し、生活のゆと 
         りを強く志向するようになっている。

         その結果、とくに労働時間短縮や余暇への要求が強くなっている。

       B個人の欲求も多様化し、仕事での自己実現を求める者、家庭・社会での
         生活を重視する者などと分化が進んでいる。

         とくに生涯全体を通じた生活の安定、生きがいの獲得への関心が強く
         なってきている。

   2.福利厚生の基本的な方向性

     このような変化にともない、福利厚生施策についても従来のような画一的なも
     のではなく、それぞれの事情に応じたきめ細かな対応が求められています。

     福利厚生のどこに重点をおくかは、各会社の考え方によっても異なってきます
     が、前述した環境変化を踏まえると次の点を考慮した施策の展開が考えられ
     ます。

     (1)高齢化や業務遂行からくるストレスを考慮した予防重視の「健康づくり」
       高齢化や業務の複雑・高度化にともない、働く人の健康管理が大きな問題
       になっています。

       健康であることが職場生活や個人生活を活性化させることにつながってい
       くため、治療中心の対応ではなく、メンタルヘルスも含めた予防重視の健
       康管理が求められています。

     (2)ゆとり・豊かさ実現のための「土地、住宅関連施策」
       サラリーマンにとって持ち家の取得は(地域差もありますが)大きな関心事
       です。

       国の施策もかかわってくるため、国、企業、個人の調和のとれた、会社とし 
       てどのような支援をどの程度すべきかを検討していきます。

       支援策充実のための具体例として、貸付枠の拡大、利子補給、不動産物
       件の斡旋などがあげられます。

     (3)生涯敦育の視点に立った「自己啓発の支援策」
       人生80年時代を迎え、退職前後の生活の仕方がたいへん重要になってき
       ています。

       会社にも生涯教育の視点に立った自己啓発の支援が求められています。

     (4)少子化、高齢化を背景にした「育児、介護の関連施策」
       少子化と高齢化は表裏の関係にありますが、いずれもわが国の将来にとっ
       て大きな問題になっています。

       育児問題と介護問題については、育児・介護休業法によって制度が整備さ
       れていますが、企業にはこれを補完する形で将来を見据えた対応が求めら
       れています。

     (5)文化、体育、レクリエーション活動、保養所など「余暇活動への援助」
       従業員からは、心身のリフレッシュをするための余暇活動への援助を希望
       する声が大きくなっています。

       これら社会の動き、従業員のニーズを的確にとらえ、自社にとってどのよう 
       な福利厚生が可能であるかを検討し、効率的な施策を実施する必要があり
       ます。

  □中小企業にとっての福利厚生

   中小企業にとっての福利厚生は、どのようにしたらよいのでしょう。

   一般的に中小企業において、賃金などの労働条件を大企業並みに充実させることは
   難しいでしょう。

   このことは福利厚生施策の実施についてもいえることで、大企業との格差が以前から
   指摘されていました。

   しかし、企業の行う福利厚生施策は、従業員に働きがいをもたせ、労働力を有効的に
   活用することを目的としており、ひいてはその企業における労働者の募集、採用、定着
   など、人材の確保にも役立っていきます。

   それだけに、福利厚生施策の拡充は、魅力ある企業をめざす中小企業にとって避け
   ては通れない課題といえます。

   そして、中小企業における福利厚生のあり方として、大企業以上に次のようなことを
   考慮することが大切です。

    ・会社の費用負担を考え、最小のコストで最適の効果を生む施策を考える

    ・多様化する従業員ニーズに対し、優先順位を付けるなど、従業員の最大の満
     足を得られる施策を展開する

    ・大企業にないユニークな施策で従業員や募集対象者にアピールする

    ・利用者が一部に偏らないように、全社員が享受できる施策を考える

   こうした課題に取り組み、中小企業の福利厚生を充実していくには、財務上の限界に
   どう対応するか、従業員がどんな施策を望んでいるかなどを、大企業にもまして考慮
   に入れていかなければなりません。

   そのためには、何を狙って福利厚生施策を実施するかを明確にし、目的をもって取り
   組む必要が出てきます。

   こうしたことを踏まえて中小企業が福利厚生施策の充実をめざすとき、次のような方向
   性が考えられます。

   1.企業福利計画の作成

     福利厚生の改善を進めるためには、場当たり的な施策ではなく、中・長期的な
     視野で計画を立てていくことが重要です。

     その際、計画が企業の経営計画のなかに組み込まれている必要があります。

     とくに、中小企業においては、計画段階で従業員の参画を促し、労使双方の
     相互理解のもとで、少しでも従業員のニーズに応えていく努力が大切だといえ
     ます。

   2.重点化策の推進

     福利厚生には当然コストがかかり、中小企業にとってはかなりの負担になる可
     能性があります。

     これからの福利厚生は限られた原資のなかでいかに従業員のニーズを盛り込
     むかということが大きなポイントになってきます。

     自社における福利厚生の目的を明確にし、それをもっとも充足できる施策への
     重点化を図っていくことが重要です。

     そして、費用対効果の視点からつねに施策を見直していくことが大切です。

   3.自社型の福利厚生

     中小企業は、大企業と比較してより自社の特徴をいかした経営が求められる
     ものです。

     福利厚生の面でも独自性を出した自社型の施策を講じていくことは、人材確
     保面でのアピールや従業員の活性化などにつながります。

     たとえば、斬新なユニフォームを採用したり、自社の敷地にテニスコートなどを
     併設して地域住民にも開放する企業も見受けられます。

   4.外部との共同化・提携、助成

     企業の福利厚生施策は、企業自らの財源負担で実施される場合がほとんど
     ですが、その費用負担を抑える方法として次のようなことが考えられます。

      ・国・地方公共団体、政府機関などから補助金、助成金などを受けて実施

      ・同じ業種や同じ地域の企業が共同で実施

      ・公的福利厚生施設などの利用

      ・会員組織であるリゾート、体育、住宅などの団体の法人会具に加入

  □注目される具体的な福利厚生施策

   中小企業において福利厚生の重要性は増していくばかりです。

   中小企業で福利厚生施策を進める際のポイントは、すでに説明したように「最小の
   費用で従業員ニーズを最大限に満足させる」ことです。

   ここでは、自社に適した福利厚生を検討するうえでの参考となる具体的施策を紹介
   します。

   1.生涯総合福祉ビジョンの作成

     生涯総合福祉ビジョンとは、従業員の個々人の考え方に視点をおき、国や企
     業、従業員自身の自助努力を総合的にとらえたうえで、「福利厚生のあるべき
     姿」を体系的に示したものです(詳しくは次図参照)。

     ビジョンは、国や企業への要求を羅列するものではなく、従業員の自立と参画
     をベースとした施策に重点をおき、従業員自身にライフプランを立てさせ、それ
     を援助していくという形を志向するものにします。

     生涯総合福祉ビジョンのめざすものは、従業員の生涯の安定・安心であり、働
     きがい、生きがいです。

     したがって、ビジョン策定に際しては従業員主体のもと労使相互の理解によっ
     て進めていく必要があります。

     これにより会社側では、従業員のライフステージごとに重点施策の明確化と実   
     施、制度のリストラ、費用の計画的・重点的配分、費用分担の明確化、社会保
     障制度との役割分担・調整などを総合的に考えることができます。

   2.カフェテリアプランの導入

     カフェテリアプランとは、住宅補助、介護、育児、健康づくり、年金への支援な
     ど、複数の福利厚生メニューから、従業員の一定の持ち点の範囲内(ポイント
     制)で必要なものを選択する仕組みの福利厚生施策です。

     米国ではかなり普及しており、日本でも厚生労働省の指導のもと、大手企業を
     中心に制度を導入する企業が登場しています。

     この制度の特徴・メリットとして、次のようなことがあげられます。

     (1)企業側

        @福利厚生費の総枠を管理しやすい。

              A画一給付による費用のムダを回避することができる。

        B制度の実施の際、企業の実情に応じて適切なものから順次メニュー化
                 していくことにより、無理のない導入が可能である。

     (2)従業員側

        @自分の要求する福利厚生メニューを選ぶことが可能である。

        Aポイント制により公平感のある福利厚生が受けられる。

     カフェテリアプランの「従業員が施策メニューを選択できる」という考え方は、中
     小企業においては経費の削減と、従業員においてはニーズの充足を満たすこ
     とが可能です。 

                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから
 

ワークライフバランス(WLB)

          

ワークライフバランス(WLB)


  ■ワークライフバランス(WLB)型経営

   ワーク・ライフ・バランスとは、一般的には従業員それぞれの希望に応じて、「仕事」
   と、子育てや親の介護、地域活動などの「仕事以外の生活」の調和が図れる状態で
   あるといわれています。

   このため、ワーク・ライフ・バランスというと「時短」や「介護休暇」などの「従業員
   にとっての都合優先」というイメージが強く、社長のなかには「この不況期にそんな
   ゆとりはない」と感じてしまう方も少なくないと思います。

   しかし、上手に導入すれば、会社業績向上に貢献し、長期的な経営体質強化にもつな
   がります。

   日本でWLBが大きく注目されるようになったのは2000年以降のことで、当時は少子
   化対策としての印象が強かった。

   しかし、その後は「名ばかり管理者」などの問題を背景に、適正な労働条件の確保の
   面からもWLBが重視されるようになっています。

  □業績向上と満足度向上の好循環を目指す

   ワーク・ライフ・バランスの導入は従業員にいきいきと働ける環境をもたらします。

   社長であれば誰でもそれを望むところでしょう。

   しかし、逆に「ワークライフバランス経営は業績を圧迫し、結果として社員を不幸に
   する」という思いから導入をためらっている社長も多いでしょう。

   たしかに現状の業務はまったくそのままで、「一律に就業時間を1時間削減する」と
   いったやり方をすればその危険性は高くなります。

   従業員は一時的には時間的な自由度を増しますが、それが長期的な生活向上には
   つながりにくいでしょう。

   ワークライフバランス経営を考える際にまず重要なのは、「社員のワークライフバラ
   ンス」と「会社業績」を二者択一的な関係で捉えるのではなく、「両者をいかに同時に
   実現していくか」という発想に切り替えることにあります。

   ワーク・ライフ・バランス型経営においては、社員は、「仕事に集中できる時期」、「子
   育てに専念したい時期」、「介護と両立させたい時期」など自分のライフステージに
   応じた働き方ができます。

   また、長時間残業がなくなることで、健康増進や自己啓発などの時間を確保できる
   というメリットもあります。

   一方で会社は安定した労働力確保や従業員活用の多様化が図れるとともに、業務
   効率を見直すことで生産性向上につなげることができます。

   また、ワークライフバランス経営導入企業として、ブランドイメージ向上も期待できる
   でしょう。

   そして、このような両者のメリットを兼ね備えた企業にはさらに優秀な人材が集まり、
   生産性や業績をあげていくという好循環が生まれます。

   このようにワークライフバランス型経営の本質は、従業員満足度と会社業績が高まり
   あう好循環のなかで、より高い次元での経営を実現していくことにあるのです。

   最終的には、WLBは1人1人が就業環境や家庭環境に応じて決めていくべきものと
   いえるが、少なくとも、「慢性的な長時間労働がない」「パワーハラスメントや社内いじ
   めがない」など、心身ともに健康で働くことができる職場環境が求められていることは
   間違いないでしょう。

  □中小企業だからこそ導入しやすい

   ワークライフバランス型経営は余裕のある大企業だからこそ可能であると考えられ
   がちです。

   しかし、実際には企業規模は関係なく、むしろ導入にあたってのハードルは中小企業
   のほうが低いと考えられます。

   大企業では多くの従業員が抱えるさまざまな事情に対応するために、制度導入は
   どうしても「大掛かり」になってしまいます。

   また、役職や給与体系なども細かく設定されているため、複雑な制度設計も求められ
   ます。

   中小企業では従業員数も限られており、一般に組織もフラットであることが多いため、
   個々の従業員の状況に応じたきめ細かくかつシンプルな制度設計が行いやすくなり
   ます。

   また、大企業に比べて経営者と従業員の距離、従業員同士の距離が「精神的」にも
   「物理的」にも近いため、より一体感・スピード感のある取り組みが可能であるという
   メリットもあります。

  □導入の進め方

   1.推進体制の検討

     ワーク・ライフ・バランス型経営導入にあたっては、制度構築・運用のための推
     進体制を固める必要があります。

     通常は「人事総務部が兼務で主導」、「プロジェクトチームを発足して主導」な
     どの進め方が考えられます。

     また、部署ごとに「推進委員」を設置し、日々の進捗状況を管理していくことも
     必要でしょう。

     企業規模や人事総務部のキャパシティー、事業所の地理的な分散状況などに
     応じて最適な推進体制を構築します。

     なお、いずれの体制を構築するにしても、経営者自身がワークライフバランス
     経営導入の重要性を示し、自らのリーダーシップのもとに進めていくことが必
     要です。

   2.現状把握

     自社でワークライフバランス経営を推進する際のポイントを整理するために現
     状を把握します。

     その際には経営者の認識だけではなく、アンケートなどによって従業員全員の
     考えも吸い上げて、そのギャップも把握するようにします。

     たとえば、経営者が「必要以上の残業を行わない全社的風土がある」と考えて
     いても、従業員全員がそのように感じているとは限りません。

     経営者の「考え」と現場での「感じ方」のギャップを埋めていくことも必要です。

     現状把握に必要な視点は会社によっても異なりますが、ここでは網羅的な視
     点として、「中小企業ワーク・ライフ・バランス対応経営マニュアル」(中小企業
     )のなかから、経営者、従業員それぞれの立場からの評価の視点を紹介し
     ます。

     それぞれについて「重要性」と「改善の必要性」を評価します。

     双方のポイントが高い項目が優先して取り組むべき項目になります。

   3.優先順位付け(マニュアル頁7〜17)

     現状認識での「重要性」と「改善の必要性」の評価をもとに優先して取り組むべ
     き項目を決定します。

     原則としては活用可能な経営資源なども考慮しながら双方のポイントが高い
     項目を優先することになります。

     ただし、「業務の効率化」については、ワークライフバランス経営導入の前提条
     件ともいえるものですので、特に入念にチェックし、優先度をあげる必要がある
     ので、ここに項目ごとの具体的な対応策を記載します。

     また社長と従業員の認識のギャップが大きい事項についても留意します。     

   4.計画策定(Plan)

     優先順位づけができたら、項目ごとに具体的な計画策定を行います。

     ワークライフバランス経営導入による効果は、多くの場合、発揮するまでにあ
     る程度の時間がかかります。

     また、売上や利益などの数値計画と比べると達成度合いが把握しにくいという
     側面もあります。

     そのため、「導入は決意したが取り組みがいつのまにか消滅した」、「取り組ん
     ではいるがうまくいっているのかどうかわからない」といった事態を招きやすい
     のです。

     そのため、計画策定にあたっては

      ・計画達成なしには会社の安定成長はないという危機意識を、社長・従業員
       の双方がもつこと

      ・進捗管理可能なできるだけ具体的な数値目標を設定すること

     などが重要になります。

   5.実践(Do)

     計画の実践にあたっては経営者がリーダーシップを発揮し、前述の推進体制
     を使って組織的に行っていきます。

     また、ワークライフバランス経営ではさまざまな制度を導入することになります
     が、その制度が実際に利用できる環境・雰囲気作りを行うことが重要です。

     たとえば、「長期休暇取得促進制度」という制度を作ったとしても、部門によっ
     ては業務対応上実際には不可能であり、かつ「そのようなことを言い出せる雰
     囲気ではない」ということであれば、意味がありません。

     このように実践のためには「制度策定」、「環境整備」、「雰囲気作り」の3つの
     柱が必要になります。

      ○制度策定

       ・長期休暇取得促進制度

      ○環境整備

       ・業務の生産性向上

       ・人員配置の見直し 等

      ○雰囲気作り

       ・上司が率先して取得

       ・期首に全員が取得時期を申請 など


   6.進捗評価(Check)・見直し(Control)

     取り組みを開始したら、その進捗状況を定期的にチェックします。

     制度を導入したかどうかだけではなく、「それが実際に利用されているか」、
     「従業員の満足度は上がっているのか」についても確認することが大切です。

     部門ごとに設置した推進委員、推進事務局、経営者が定期的な会合を開くな
     どして、進捗状況を共有しましょう。

     そして、未達成の場合はどこに問題があるのかを特定し、改善策を講じること
     が大切です。

     この際、個々の現場レベルで改善可能であるのか、全社的な取り組み方針変
     更の必要があるのかなどについても確認する必要があります。

     また、ワークライフバランス経営の本質である「従業員満足度と会社業績が高
     まりあう好循環」が創出されているかについても確認し、より効果的な次期計
     画策定につなげていくことも大切です。
  
                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから
 

 

休職制度

          

休職制度の意義と会社のリスク


  ■休職制度の意義と会社のリスク

   休職制度とは、社員が労務に従事することが不能または不適当な場合に、その社員
   との労働契約関係を維持しながら、一定期間労働を免除または禁止する措置・制度を
   いいます。

   休職制度は労働基準法等で義務付けされたものでなく、あくまで会社が任意に定める
   ものですが、多くの会社は休職制度を導入し、長期雇用を前提とした人材の有効活用
   を進めています。

   加えて、解雇猶予措置として休職制度を利用することにより、労働契約の終了に円滑
   に移行するための手段としても重要になると考えられてきました。

   そのため、休職期間が終了しても職場復帰できない場合は、自然退職または解雇
   になるのが一般的な考えとなっています。

   このように、休職制度は、会社にとってメリットのある制度ではあるものの、一度導入
   すると、不利益変更は簡単には行えなくなるので、その内容については慎重に検討
   する必要があります。

  □休職制度の種類

   1.私傷病休職

     社員が業務外での傷病(いわゆる私傷病)により、休職期間中に復職のめど
     が立たない場合などに、労務への従事を一定期間免除するという制度です。

     私傷病休職期間中に復職ができない場合、通常は自然退職または解雇に移
     行します。

     なお、私傷病休職を行っても治癒することが困難な社員については、私傷病
     休職を行わずに解雇に移行するケースもあります。

   2.自己都合休職

     社員が個人的な理由により一定期間休職する場合の制度です。

     休職の理由としては、海外留学やボランティア活動などが挙げられます。

   3.公職就任による休職

     社員が国会議員や地方議員等の公職に就くことにより、労務への従事ができ
     なくなった場合に、その期間を休職させる制度です。

   4.出向休職

     社員が出向により出向元の労務への従事ができなくなったとき、その出向期
     間につき出向元での労務を免除する制度です。

   5.起訴休職

     社員が刑事事件で起訴された場合で、その事件が裁判所に係属する間は休
     職させる制度です。

     なお、起訴休職を導入するということは、通常裁判が確定するまでは解雇はな
     いといった決め事にもなるので、導入には注意が必要になります。

   6.組合専従休職

     労働組合への便宜供与の一つとして、社員が労働組合の専従職員となる場
     合に、社員としての立場を維持させたまま労務への従事を免除し休職とする
     制度です。

     なお、当該制度を「在籍専従」といいます。

  □私傷病体職制度を導入する際の注意点

   休職規程を設定するかどうか、また設定する場合、その内容は企業側が自由自
   在に改定できる。

   ●対応策

    「1カ月間私傷病で欠勤した場合は、休職を命じる場合があります」とし、休職の
    実施判断をあくまで会社側の権利とします。

    復帰の可能性がないと会社側が判断した場合は、休職ではなく普通解雇として
    対応する選択肢を持つことは重要です。

    休職規程でトラブルになるのが、休職期間中の社会保険料です。

    休職期間中に賃金を一切支払わなかったとしても社会保険料の負担は生じる。

    休職期間中は賃金の支払いがないため、控除することはできません。

    毎月会社に支払ってもらうか、復職時に一括あるいは分割して支払ってもらうか
    など徴収ルールを明確化すべきです。

    現実的には復職時の一括支払は負担が大きいので、定期的な会社への支払に
    なろうかと思います。

    休職事由が再発した場合のルールを明確化します。

    休職制度を悪用して、何度も休職や復職をする社員を存在させないよう、同一
    傷病や同一に近いと思われる傷病での休職は原則として認めないものとする。


   休職制度を一度定めると、それが会社の一般規則になります。

   ですから、休職制度の内容については、会社の文化や規模、休職の目的をきちんと
   理解した上で慎重に検討しなければなりません。

   以下では、企業が「私傷病休職制度」を定める場合の主なポイントと注意点を解説
   していきます。

   1.私傷病休職制度の対象者

     多くの国内の会社は、長期雇用を前提に休職制度を導入しているケースがほ
     とんどです。

     ですから、対象者を「正社員のみに限定する」というのが一般的です。

     しかし、労働契約法第16条では、次のように定められています。

     【労働契約法第16条(解雇)】
      解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ
      ない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

     こうした環境の中で、現代のように精神疾患の社員が増えている状況に対応
     するためには、正社員だけでなく有期契約社員やパートタイマーといった非正
     規社員にも対象範囲を広げて定義付けを行うことも検討に催するかもしれま
     せん。

   2.私傷病休職制度の期間

     上記、「1 私傷病体職制度の対象者」と同じように、長期雇用を前提としている
     国内の会社においては、解雇の猶予である私傷病休職期間は、勤続年数の
     長ざに応じて休職期間を定めているケースがほとんどです。

     ここで注意したいのは、会社規模に見合った休職期間を設定しているか否か
     です。

     大企業の就業規則のひな型をそのまま使用している中小企業の就業規則
     に、休職期間が3年と記載されていたケースがありました。

     ぎりぎりの人数で業務を行っている中小企業の場合、3年もの間、残りの社員
     で業務を回していくことは非常に困難であり、当然休職者が出た場合は補充
     人員を確保しなければなりません。

     仮にその補充人員が優秀であって、その後に休職者が復職してきた場合で
     も、企業は復職者を簡単に解雇することばできません。

     中小企業の場合に休職期間を設定する際は、人員が欠けたとして、どの程度
     業務を補えるかを中心に考える必要があります。

     派遣社員やパートタイマーを補充人員と考えると、最長でも6カ月程度が限度
     というところではないでしょうか。

   3.私傷病休職期間中の処遇

     休職期間中の賃金については、ノーワークノーペイの原則に従い、原則無給 
     としたほうがよいかもしれません。

     理由としては、有給とした場合に使用者の賃金負担が発生するということに加
     えて、賃金が保障されていると、社員の職場復帰に対する意欲が減退してしま
     うのではないかという懸念があるからです。

     休職期間中については、健康保険から傷病手当金が支給されるため、社員の
     生活の最低限の安定は保たれるのではないでしょうか。

     もちろん、経営者の意向と自社の財務状況によっては、福利厚生の観点で一
     定期間を有給とするのも問題はありません。

   4.私傷病休職期間中の勤続年数の算定

     会社が勤続年数を評価するものとしては、「表彰」「賞与」「退職金」「私傷病休
     職」「年次有給休暇」などが挙げられます。

     では、私傷病休職期間中は勤続年数に含めるべきなのでしょうか。

     そもそも私傷病体職制度とは、企業が社員に対して、長期雇用を前提として一
     定期間治療に専念してもらうことを目的に、恩恵的に与えたものですから、通
     常の大多数の社員との均衡を考えると、「例外に例外はない」という通り、勤続
     年数に算入しないほうがよいと考えます。

     ただし、年次有給休暇については有給付与の対象期間において80%以上の
     出勤率があれば法律上当然に発生する制度であるため、対象期間に80%以
     上の出勤率があるかどうかで判断することになります。

     なお、有給休暇の算定にあたり、勤続年数には休職期間を含みますが、休職
     期間は出勤したことにはなりません。

   5.復職に際しての取り決め

     休職者の復職に際しての手続きの流れをあらかじめ休職規定に取り決めてお
     くことが重要です。

     職場環境における社員の安全配慮義務は使用者側にあるため、復職する社   
     員が本当に問題ないかの確認は慎重に行う必要があります。

     そして、復職の可否を最終的に決定するのは使用者側の人事管理権の行使
     になります。

     具体的には、以下の内容を明記しておく必要があります。

     これにより、休職者との復職にあたっての争いが避けられるわけです。

      ・休職者の主治医による診断書だけでなく、復職の判断には使用者側の
       産業医等の診断書も含めて検討する

      ・最終的な復職可否の判断は会社が決定する

     また、通算規定制度の導入も考えられます。

     これは、休職者が休職期間満了時に復職をしてきて、数カ月以内に再度私傷
     病休職に入るのを防ぐためです。

     そのためには、以下の休職期間通算規定を入れておくことも重要になります。

      休職期間終了後、復職した社鼻が、その後3カ月以内に同様または類似の
      傷病、事由  により再度欠勤をした場合、もしくは、通常の労務提供ができ
      なくなった場合は復職を取り消し直ちに再休職とします。この場合の休職期
      間は復職前の休職期間の残期間とします。

  □私傷病休職に関する具体的な対応

   1.休職発令を行う場合

     最初に休職規定に定められた休職事由に該当するか否かを確認します。

     休職事由に該当しないにもかかわらず休職発令を行った場合、賃金債権を請
     求されるケースがあります。

     こうしたことがないように、休職事由に該当するか否かを確認する時点で社員
     から医師の診断書を提出してもらい、不十分であれば使用者側の産業医等に
     よる診断書も加えて、形式的ではなく実質的に労務が提供できる状態ではな
     いという判断を出した上での休職発令を行います。

   2.休職事由が業務災害であった場合

     私傷病と業務災害とでは法的規制は全く異なるものとなります。

     私傷病の場合は、会社の休職規定に従い処理を行います。

     休職期間中に復職のめどが立たないときは、最終的には自然退職または解
     雇になりますが、業務災害の場合は、業務災害中およびその後30日について
     は解雇ができなくなります。

     そして、業務災害の場合、社員に対して休業補償給付等で賃金の80%が支
     給されます。
     さらに、使用者責任があった場合には、賃金100%までの差額分20%を安全
     配慮義務や注意義務違反により損害賠償請求される可能性も出てきます。

     なお、ここで注意してほしいのは、通勤災害は私傷病災害であるということで
     す。

     通勤災害労災給付の対象にはなりますが、使用者側の損害賠償責任や上
     記解雇制限はなく、就業規則の休職規定の問題となります。

     また、年次有給休暇の出勤率を計算する場合の出勤ともみなぎれません。

     ところで、業務災害については、社員の申請に基づき労働基準監督署が最終
     的に支給決定しますが、労災認定にはとても時間がかかります。

     一方で私傷病の場合は、健康保険から傷病手当金を比較的容易に受給する
     ことができます。

     ですから、業務災害の場合は、とりあえず私傷病扱いにして傷病手当金の申
     請を行い、社員が労災申請を行うというのであれば、使用者側がそれについ
     て把握する事実の証明を正確に行った上で、労働基準監督署に申請を行え
     ばよいでしょう。

     なお、労災認定がされた場合は傷病手当金等の精算が発生するとともに、一
     定期間は解雇制限の規制が適用されますから、休職規定に従い自然退職ま
     たは解雇を行うことができません。

   3.復職における判断

     私傷病が治癒すれば復職可能かどうかの判断を行います。

     これは休職期間中に行うものです。

     「当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという回復ぶ
     りである場合には、企業にはそのような配慮を行う義務がある」という判例もあ
     り、ほどなく業務を行える状態であれば、復職を認める必要があるケースが少
     なくないでしょう。

     ただ実際に医師の診断書や休職社員との面談では、ほどなく業務を行えるか
     の判断は難しいケースが多く、やはり復職の可否を判断するために必要な、
     復職可否判断期間を設ける必要があると思います。

     この場合の注意点としては、休職規定に復職可否判断期間を設ける旨と、そ
     の際の賃金等の詳細を合理的範囲内で定めておくことです。

   4.復職可否の立証責任

     復職する能力があることの立証責任は当初は社員にあります。

     つまり、私傷病休職の原因は社員側にあり、それが治癒したという状態を証明
     しなければならないのは、原則としてそれを主張する社員と考えるからです。

     ただし、社員が立証した治癒状態に対して、使用者が反証を行わず、または
     行えずに自然退職や解雇とした場合には当該措置は無効になる可能性が高
     いと考えます。

     この間題は、社員の生活に直接関係するものですから、トラブルが発生する
     ケースが多いです。

     従って、復職不可とする場合は、使用者側は先の復職可否判断期間も含めて
     十分な反証の準備を行う必要があります。

   5.休職者が提出する診断書への対応

     長い間就労不能であった社員が、休職期間満了間際に就労可能の診断書を
     提出してきた場合はどう対処したらよいでしょうか。

     社員の主治医は会社の業務内容を詳しく知っているわけではないので、特に
     精神疾患の場合は、本当の意味で就労可能かどうかを診断するのは難しいと
     思います。

     このような場合は、休職規定に医師への面談を依頼する旨の内容を設けてお
     いて、実際に社員同席で医師との面談を行います。

     何も問題がなければ医師との面談を断る理由はないはずです。

     そこで注意したいのは、医師が最近出している薬の分量を聞くことです。

     処方箋には医師の本音が出るからです。

     薬の情報を産業医などに確認すると、実際にどの程度の症状なのかが分かり
     ます。

     そして一番重要なのが、最終的な判断を行うのは人事管理権の行使が行える
     使用者側です。

     総合的に見て復職できないと判断した場合は、安全配慮義務がある使用者の
     責任として復職不能の判断をしなければなりません。

   6.リハビリ勤務期間

     エールフランス事件の判例では、ほどなく業務を行えるとは健康状態が80%
     程度に回復している状態をいい、80%程度の回復が認められるなら復職をさ
     せなければならないといった内容でした。

     本来、社員が健康なときと同じように労働を提供できないのであれば、先に述
     べたノーワークノーペイの原則が用いられることになります。

     しかし最近の判例では、復職可否の判断で使用者側がどの程度熟慮していた
     かが問われることが多くなってきています。

     そこで、残りの20%を回復させるための「リハビリ勤務期間」という考え方が重
     要となってくるわけです。

     休職期間が満了したから当然に自然退職や解雇とするのではなく、使用者側
     にある一定のリハビリ期間を設ける等の配慮が求められるということになりま
     す。

     そこで、リハビリ勤務を行う際に、治癒したかどうかの判断と治癒した場合の
     復帰手順を示すことが重要になってきます。

     大まかな手順としては「社員の復職可否の判断」「復職できた場合の復職日や
     リハビリ復職時の賃金等」について、「最終的な本復帰の判断方法」「リハビリ
     勤務後の本復帰手順や本復帰困難な場合の処置」などを定める必要がある
     でしょう。

   7.休職制度の不利益変更

     今現在休職規定があり、その内容について変更を行いたいといった場合の対
     処について考えてみたいと思います。

     不利益変更と考えられるものとしては、休職期間の短縮や休職期間中の賃金
     を有給から無給に変えるといったケースがあります。

     今現在、健康で就労中の社員にとっても潜在的な不利益変更にはなります
     が、不利益変更の度合いは社員が現在休職中かどうかによって解釈が全く異
     なります。

     ここで、就業規則の法的な定義として労働契約法第7条は「社員及び使用者
     が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定めら
     れている就業規則を社員に周知させていた場合には、労働契約の内容は、そ
     の就業規則で定める労働条件によるものとする。

     ただし、労働契約において、社員及び使用者が就業規則の内容と異なる労働 
     条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限
     りでない」となっています。

     つまり、通常労働契約は使用者と社員の合意があって成立するものですが、
     労働契約法は就業規則に合理的な労働条件を定めていれば、社員の個別具
     体的な同意がなくともその内容が雇用契約になるということです。

     従って、不利益変更の内容が合理的である必要が求められます。

     そのため、就業規則の不利益変更については、変更に関する合理性の判断
     要素の一つである「社員の被る不利益の程度」を熟慮する必要があります。

     これについては実際に休職中の社員に対しては当てはまる場合がほとんどな
     ので、休職期間や賃金の有無などは旧規定をそのまま適用するなどの対応
     が必要になってくるでしょう。

     休職とは、「ある従業員に職務に従事させることが不能であるかもしくは適当
     でないような事由が生じた場合にその従業員に対し、従業員の地位は現存の
     まま保有させながら執務のみを禁ずる処分とされています。

     このような休職制度を設けるかどうかは任意ですが、この制度を設ける場合に
     は、就業規則に記載すべき事項すなわち、相対的必要記載事項(労働基準法
     第89条第10号)となります。

     したがって、休職の定めをする場合には、休職事、休職期間、休職期間中の
     給与の支払いの有無、また、休職期間満了あるいは休職事由消滅後の復帰
     の際の取扱いなどについて定めておかなければなりません。

 
                                     お問合せ・ご質問こちら

                                  メルマガ登録(無料)はこちらから

 

長時間労働削減対策の取組状況

           

長時間労働削減対策の取組状況


  □長時間労働削減対策

   平成28年4月1日に、長時間労働削減推進本部から、これまでの長時間労働削
   減対策についての監督指導結果を含む取組状況と、今後の法規制の執行強化
   について公表されました。

   そのポイントは、

    1.長時間労働削減対策取組状況

     (1)月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底

       @監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正
         勧告書等を交付し、指導

       A法違反を是正しない事業場は送検も視野にいれて対応
         (送検した場合、企業名等を公表)

           ※時間外・休日労働協定(36協定)なく時間外労働を行っているもの、36協定で
             定める限度時間を超えて時間外労働を行っているものなど

      (2)監督指導・捜査体制の強化
        過重労働事案であって、複数の支店において労働者に健康被害のおそれ
        があるものや犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対
        する特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が新設され
        (平成27年4月〜)東京労働局・大阪労働局に設置されました。
        これまでに全国展開する3企業について書類送検を実施しています。

        ※東京かとく(過重労働撲滅特別対策班):小売業(27年7月、28年1月)  
          大阪かとく:飲食業(27年8月)

     (3)過重労働解消キャンペーンの重点監督

       平成27年11月の「過重労働解消キャンペーン」では、長時間にわたる過
       重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等に対して重
       点監督を実施しています。

         ※5,031事業場に対し実施、3,718事業場(73.9%)で労働基準関係法令違反が
           認められたため、是正を指導

        その他にもインターネット上の求人情報等を監視・収集し、労働基準監督
       署による監督指導等に活用するなどの取組みを行っています。

    2.法規制の執行強化

      (1)重点監督対象の拡大

        これまで月100時間超残業が疑われる事業場を対象としていましたが、
        今後は、月80時間超の事業場も対象とし、年間1万事業場から2万事業
        場(試算)へと重点監督対象の拡大を行う予定です。

      (2)監督指導・捜査体制の整備

        現状では、東京労働局・大阪労働局のみに「過重労働撲滅特別対策班」
        (通称「かとく」)が設置されていますが、今後は、厚生労働省内に「過重
        労働撲滅特別対策班」(通称「本省かとく」) を新設し、企業本社への監督
        指導の他、労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよ
        う、労働局に対し必要な指導調整を行う予定です。

        また、47局全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に
        担当する「過重労働特別監督監理官」を各1名配置し、以下の対策を実
        施することになりました。

         @ 問題業種に係る重点監督の総括(企画・立案・実施)

         A 月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括

         B 本社監督の総括(問題企業の把握分析・実施・調整・指導)

         C 夜間臨検の実施・調整・長時間・過重労働に係る司法処理事案の監
           理等

        この他にもトラック業界、IT業界など長時間労働が疑われる業界には、業
        界団体や関係者、関係省庁と連携した取り組みが行われることとなって
        います。

        以上を見るに、過労死等防止対策推進法をもとに、長時間労働が疑われ   
        る事業場に対する監督指導の強化が、より一層強まっているのが分かり
        ます。

      今では英語の辞書にまで「KAROSHI」のワードが掲載されるほどに、「過労
      死」という言葉は知れ渡りました。

      長時間労働に起因する過重な物理的・心理的負荷による労働災害は、企業
      の安全配慮義務違反による労働者等への賠償金の支払い以上に、社会的
      な責任が問われます。

      長時間労働が恒常的に行われている場合には、適正な労働時間管理を行っ
      ていく必要があるでしょう。

 

長時間労働と厚生労働省の監督指導の強化

             

長時間労働と厚生労働省の監督指導の強化


  近年、長時間労働を原因とした「脳・心臓疾患」と「精神障害」などの労働災害につ
  いて目にする機会が増えてきました。

  そのような中で、長時間労働削減推進本部のもと、長時間労働削減の取り組みを
  進める厚生労働省から、2014年11 月の「過重労働解消キャンペーン」における
  重点監督の実施結果が公表されました。

  その結果、実施事業場4,561 事業場の約半数にあたる2,304 事業場で違法な
  時間外労働などが確認されたとのことです。

  「重点監督の結果のポイント」について

  □「過重労働解消キャンペーン」における監督指導事例

   ある旅館業を営む事業場では、最も労働時間の長い労働者で月270 時間を超える
   違法な時間外労働を行わせていました。

   また、労働者が45 時間を超えて残業してもその超えた分の残業代が支払われない、
   休憩時間が取れないなどの問題点が明らかになりました。

   そのため、労働基準監督署は事業場に対して指導を行いました。

   上記のように、長時間労働削減推進本部では、月100 時間超の残業が行われて
   いる事業所等について、労働基準監督署による監督指導(立入調査)を徹底すると
   共に、監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正勧告書等を
   交付し、指導、法違反を是正しない事業場は、送検も視野に入れて対応(送検した
   場合には企業名等を公表)との意向を示しています。

   企業名の公表まで至らなくとも、労働者がインターネット上で自社の労働環境を広める
   可能性もあります。

   雇用管理全般について言えることですが、そのような社会的なリスクの面も考えて
   対策を行っていく必要があります。