〒422-8067 静岡県静岡市駿河区南町2-26-501
■なぜミスをするのか?
今日ヒューマンエラーに対する関心は高まる一方です。
その理由には、テクノロジーの進歩により、一人の人間がコントロールする情報や力の量が大きく
なったことがあげられます。
自動車や電車、飛行機などの輸送機では操作ミスが人命を奪うこともあり得ます。
プラントなどの事故では近隣にも多大な被害を及ぼします。
世界中をつなぐコンピュータネットワークは瞬時に情報を提供していますが、間違った情報も素早く
広大な範囲に拡散してしまいます。
数字のちょっとした入力ミスで株式市場が大混乱した事件は、まだ記憶に残っている人も多いでしょう。
テクノロジーが高度化すればするほど、一人の人間のミスの影響力も増大していきます。
また、電子制御された自動車や機械は、ほとんど故障しなくなり機器そのもののトラブルが減った
ため、人間のミスがより目立つようにもなりました。
そのため、産業界において、今後ますますヒューマンエラー対策が重要な課題になっていくことが
予想されます。
そこで、ここでは、ミスを軽減するための方法を検討し、個人でできる改善方法を提案します。
そもそも、なぜミスは起こるのでしょうか?
ミスが生じる場合には表面的な原因の裏にいくつかの要因が隠れていることがほとんどです。
一人の一つだけのミスでトラブルが生じるのではなく、機械の安全装置の問題、社員教育の問題、
職場環境の問題などが背景にあり、それらが重なり、トラブルのカードがそろったときに大きな
事故が発生してしまいます。
そのため、ヒューマンエラーを考える際には、原因の結合も視野に入れておかねばなりません。
このことを念頭に置きながら、ここでは、最後の引き金を引いてしまいかねない人間のミスすなわち
ヒューマンエラーの部分に焦点をあてて見ていきましょう。
一般的なヒューマンエラーの分類は、
①認知ミス ②判断ミス ③動作ミス
の3つに分けられます。
①認知ミスは、知覚や認識の失敗によるものです。
文字を読み間違えたり、情報を聞き間違えたり、見落としたりするなど、錯覚したり、失念したり
するといつた、いわゆる、うっかりミスとも言えるものです。
②判断ミスは、論理の誤りや判断のタイミングの悪さによるものです。
非論理的、短絡的な判断だったり、判断は正しくても、そのタイミングが遅すぎたりといった
場合です。
③動作ミスは、不適切な動作や、動作のタイミングの悪さによるものです。
器用に操作できないといった動作上の問題や、シートベルトをする、サイドブレーキを引くという
ような、特に考えたり、意識しなくても身体が自然に連続する動作をこなしていく「行為スキーマ」
と言われる手順が確立されていないことによるし忘れや、反対に習慣やクセなどで、ついうっかり
やってしまったりするものなどがあります。
このような人間の認知、判断、動作といった情報のインプットから行動のアウトプットまでのプロセス
において、なんらかの誤作動が生じ、そのまま修正されずに実行された場合にヒューマンエラーが
生じるのです。
これらの誤作動を引き起こす原因は、外部環境によるものと、内部要因によるものと、その中間に
分けることができます。
例えば、外部環境は、騒音や雑音、照明の明暗などの作業環境の悪さや、装置や機器の操作手順が
確立されていないことなどがあげられます。
一方、内部要因は、その人自身の身体面、心理面が影響するもので、健康を害していることによる
パフォーマンスの低下をはじめ、心理的な面では、慣れに慢心して手を抜いたり、緊張が足りずに
不注意になったり、緊張過剰により短絡的な行動をしたり、自己顕示欲により過剰なパフォーマンス
をしたり、不安や悩みごとで集中力不足になっていたり、といったことがあげられます。
そして、その中間は、作業に対する技能不足や、覚えることに対する記憶力不足といった、外部環境
ある業務の難易度と内部要因である個人の能力の相対的な差によるものがあげられます。
□ミスを減らす「メタ認知」とは
ミスを減らすにあたって必要なことは、まず社員一人ひとりが自分自身のミスを減らそうと心がける
ことです。
外部環境については企業が対策する必要がありますが、内部要因については、自分自身が自己管理する
ことでミスを減らすことが可能です。
この自己管理方法には、認知心理学の概念である「メタ認知」の力を使う方法があります。
「メタ認知」とは、簡単に言えば自分自身を客観的に知ることです。
自分の認知パターンや思考、感情の動き、行動などを客観的に把握し認識することができる能力を
「メタ認知能力」といいます。
このメタ認知能力には、自分の心の動きなどをよく知る「自己モニタリング」と、自分の心と行動を
適切に制御する「自己コントロール」の2つがあるとされています。
メタ認知能力が高く、十分に機能していれば、自分自身の行動をモニタリングし、コントロールする
ことができるのでエラーやミスは起こしませんし、起きてもすぐに修正することができます。
では、どうすればメタ認知能力を身につけたり、高めたりすることができるのでしょうか?
メタ認知能力は知識の量に比例します。
経験が浅い人は経験者よりもメタ認知能力は低くなります。
例えば、ヒューマンエラーに関する知識が多い人と少ない人とではミスする可能性も異なります。
そのため、医療分野などでは、しばしばヒューマンエラー対策として「ヒヤリハット」を含めた事例
研究会が開かれています。
これはヒューマンエラーに関する知識を増やし、メタ認知能力を高め、ミスを軽減しようとする一つ
の方法です。
ただし、メタ認知能力が十分に備わっていても、一時的に働かなくなる場合もあります。
情報が大量過ぎたり、逆に判断に必要な情報が不足したりする場合には、情報処理に忙しく、メタ
認知が働かなくなることがあります。
また、心理的にパニックになってしまった場合も同様で、このようなときには自分を客観視することが
十分にできなくなってしまいます。
メタ認知能力を高めるための基本的な方法としては、
①自分を客観視する習慣をつける
②ミスを話し合う
という方法があります。
①の方法ですぐに使えるのは業務日誌です。
業務日誌には業務の記録や報告、連絡、相談など多くの目的がありますが、自分の一日の行動を
客観視し見直す目的も含めるとよいでしょう。
電話応対などで目の前に鏡を置いたり、プレゼンの練習をビデオに撮ったりするのをよく見かけ
ます。
鏡やビデオなどを使って自分の動作を確認することも客観視する力を強化します。
②の方法では、ヒヤリハットの体験やヒューマンエラーに関する勉強会などで体験を発表したり、
文書化したり、相互に意見を述べ合うなどし、モノの見方を広げたり、知識を増やしたり、思考を
客観視したりすることでメタ認知能力を向上させます。
これらの方法はすでに実践されている企業も多く、ヒューマンエラーを軽減するのに効果をあげて
います。
比較的簡単に実行できるので、まだ行っていない場合は、このような段階から始めるとよいでしょう。
□ミスを軽減するパターン分析の方法
さらに、しっかりミスを軽減したいという場合には、表面的な態度や行動だけでなく、その根源
である心の内部で起きている認知パターンや思考パターンを理解しておく必要があります。
人が物事を認識したり、判断したりするときには、認知のパターンや感情、欲求などが影響を及ぼ
します。
心理学用語では、物事を認識するための認知の枠組みを「認知スキーマ」、認知に対する影響を
「認知バイアス」と呼んでいます。
例えば、好きな芸能人に対しては、良い噂は信じるけれど、悪い噂は信じないとか、自分の好みの
服装をしている人には肯定的な印象を持つなど、人は各自の認知スキーマによって物事を認識し、
認知バイアスがかかった状態で判断を下しています。
そのため、自分自身の認知や思考のパターンを理解し、物事をどう捉え、どのようなときにバイアス
がかかるのか、メタ認知が働かなくなるのはどのようなときなのかといったパターンを知っておくこと
で、ミスを起こしそうな状態を事前に把握したり、判断ミスを回避したり、ミスに気づいたりする
ことが可能になります。
認知療法で使われる方法を応用すると、効率的にパターンを把握することができます。
認知療法は心理療法の一つで、人間の認知の状態を把握し、物事の捉え方が極端に否定的であったり
楽観的であるなどの歪みを正したり、現実検討力を身につけたりするためのものです。
何らかの出来事が起きたときに、どのような気分になり、どのようなことが頭に浮かんだかを検証
していくことで、自身の認知パターンや自動化思考と呼ばれる思考パターンに気づくことができます。
ここでは、それを少し変えて、ミスをする直前に、どのような気分で、何を考えていたかということを
さかのぼって見直し、チェックしていく方法を使いたいと思います。
例えば、予定していた会議の時間に遅刻してしまった場合、そのときの状況、気分、思考はどのような
ものであったかを見直してみます。
すると、状況は、昔からの知人から電話があり、気分は楽しく、もう少し話していたい気持ちになり、
思考は「あまり気が進まない会議だし、少しぐらい遅刻しても大丈夫だろう、ちょっと電話が入って
しまったという言い訳もあるし……」という考えが浮かんでおり、少しでも長く楽しい気分の状況に
いようとして自分の欲求をコントロールできていないことが明らかになります。
このようなパターンがある人は、他の場面でも快楽的なことを優先しがちで、欲求のコントロール
不全が起こりがちです。
また、メールアドレスを間違えて送信してしまった場合はどうでしょう。
そのときの状況は、いつもより忙しいうえ、上司から書類の書き直しを命じられ、気分はイライラし、
早くその場を離れたい気持ちになり、思考は「あの上司はいつもそうだ。私のことなんて認めていない
のだ。いったいいつになったら、この状態から解放されるのだろう‥…・」という考えが浮かんでおり、
普段であれば間違うはずのないアドレスなのだが、早くその場を離れたい気持ちから不注意になって
いたことがわかります。
この場合は感情的になったときに注意力のコントロール不全になる傾向があるといえます。
自分自身が、どのような状況、気分、思考のときにミスを起こしたのかを検証しミスの発生パターンを
自覚することで、再び同じような状況になったときに自己モニタリングをし、ミスを回避する行動に
切り替えることができます。
□ミスの分類と心の状態
ミスをする場合の心の状態は、個人的な内面の動きによるため、一人ひとりが自分の心の動きを把握
してパターンを知っておく必要があります。
ここでは、内部要因が原因のミスの場合、どのような心の状態のときにミスが生じやすいかを見ていき
ましょう。
どこの職場でも、よく起こるミスには「思い込み」によるミス、「うっかり」ミス、「確認不全」
ミスがあります。
「思い込み」ミスは、先に紹介した、①認知ミスと②判断ミスと関連するもので、先入観で決めつけ
たり、憶測を事実と思い込んだり、物事を自分勝手に解釈したりすることによって起こるミスです。
このようなミスが生じやすい心の状態には、日ごろから「自分は正しい」と思いがちであったり、
反対に「怒られたらどうしよう」「人にどう見られるだろう」といった思考パターンがあり、人の
意見を聞いたり、事実を確認したりすることを面倒に思い、自分の思い込みで処理してしまいます。
この場合、「たぶん、○○だろう」というレベルならマシですが、「○○に違いない」、もっと強化
されて「○○だ」というレベルになると、間違っていることに気づくのが難しくなります。
日ごろから思い込みで処理するクセがないかどうかをチェックし、「○○だ」と思っても、再度、
確認し、他の人にも点検してもらうなどしましょう。
「うっかり」ミスは、やるべきことを忘れてしまったり、やらなくてよいことをしたりして起こる
ミスです。
心の状態としては、焦りや不安、パニック、怒り、失望など強い感情に支配されていたり、他事へ
注意が向いていたり、「慣れ」による怠慢や慢心があり、メタ認知能力がうまく機能せず、注意が
コントロールできなくなっている状態です。
このようなときには、見間違えたり、聞き間違えたりします。
ぼんやりと他事に気を取られていて、新しい操作手順を古い機械の操作手順の「行為スキーマ」で
進めてしまったりするなどし、特に、①認知ミス、③動作ミスに影響します。
強い感情にとらわれているときには、一旦、作業の手を止めて気持ちを整えましょう。
また、他に気になっていることがあるときは、誰かに話をしたり、ノートに書き出したりして一時的に
保留にするなどし、早々に解決しましょう。
「確認不全」ミスは、確認し忘れたり、最終チェックをしなかったりすることで起こるミスです。
心の状態は、感情的になっていたり、「細かいことは苦手だ」とか「こんなことは自分がやる仕事では
ない」とか一手聞かけることを面倒がっていたりするときに起こりがちです。
自分自身が「確認」することに対して、どう感じ、考えているのかを見てみましょう。
大切だと頭で理解していても、気持ちは面倒に思っていたりする場合もあります。
そのようなときは、やっていても、ふと見落としていたりします。
確認に対する意識を点検し、意識を高め、習慣づけすることでミスを大幅に削減することができるで
しょう。
心の作用は、とてもかすかで一瞬のものですが、人の認知を曇らせたり、行動を変化させたりするには
十分な力を持っています。
ミスをする直前の心の状態を検証し、自分のパターンを知っておくことで、再び同じような状況に
なったときにミスを繰り返さないよう対策することができます。
メタ認知能力を向上させ、自己モニタリング、自己コントロールを強化してミスを軽減していきま
しょう。
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6.過重労働の健康障害防止対策
厚生労働省は平成18年3月1丁日付で「過重労働による健康障育防止総合対策」の改正を行いました。
事業主が誇ずべき措置として主要なものを見てみると
①時間外、休日労働の削減
労蝕時間の延長の上限を遵守し、時間外労働を月45時間以下とするよう努めること。
実際の休日労働を出来る限り最小限にとどめる。
②年次有給休暇の取得促進
③労助者の健康管理の徹底
・産業医、衛生管理者を選任し、職場における適切な指導をおこなわせる。
・健康診断の実施
・長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等を行う。
平成20年4月、労働安全衛生法が改正され、全事業所で時間外、休日労働時間が1か月当たり100時間
を超え、かつ疲労の蓄積力覇艶められる者からの申し出があった場合は、医師による面接指導を
行わなければならないとされました。
この医師による面接指導を実施した場合、その結果に基づき、労幼者の健康を保持するために必要な
措置について、事業主は遅滞なく医師から意見聴取するものとする。
また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など
適切な事後措置を講ずるものとする、としています。
・労働者自身の取り組み
過重労為による健東障害防止のためにtま、事業者が適切な据置を蕎じることが不可欠ですが、
労働者自身も健康的な生活習慣を身につけるなど自らの健康管理に対して自覚と自助努力が
必要です。
就業規則にも、労働者の義務として明記しておくのがよいでしょう。
・メンタルヘルス対策
どの会社でもいつでも起こり得るメンタルヘルスについては、面接指導等により労働者のメンタル
ヘルス不調が把握された場合には、面接指導を行った医師、産業医等の助言を得ながら必要に応じ
精神科医等と連携を図りつつ対応するものとする、としています。
・管理監督者に対する教育
職場において日常的に労働者の指揮・管理を行うのは管理監督者であり、労働者のメンタルヘルス
ケアについて、管理監督者の役割は非常に重要です。
管理監督者は、労働者の状況を日常的に把握し、個々の労働者の能力、適性等に合わせ、適切に
業務の管理を進めるとともに、労働者の自主的な相談への対応、適切な情報の提供や必要に応じて
事業場内外の相談窓口等に繋ぐなどの配慮が求められます。
このため、管理監督者に教育、情報提供等によりメンタルヘルスについての知識を付与することは、
早期の対応に不可欠です。
7.名ばかり管理職
「課長・部長であるから残業代を支払わなくても良い」という取り扱いは、間違いです。
過去には、ある大手飲食店の店長が管理職ではない、とされた判例のように管理職か否かは、
すべて実態で判断されます。
労働基準法では管理・監督者について定義はなされていません。
行政通達では、次のような基準により管理・監督者性を判断するとしています。
①従業員の労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある者
(名称にとらわれず、実態に押して判断)
②職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する
③基本給、役付手当などにおいて、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、
ボーナスなどの一時金の支給率、算定基礎貸金などについても一般労働者に比べて
優遇措置が講じられているか否か。
こうした実態が伴わないと、職位だけでは管理職とは言えません。
判例を見ると、以下のような場合は管理職と認められませんでした。
①出・退勤時刻についてタイムカードによる管理を受けていたこと
②他の従業員に関する労肯条件の決定や労務管理に参画していなかったこと
③部長手当の支給がなされていなかったこと
自社の管理職が果たして上記のような待遇であれば、それは名ばかり管理職=管理職の実態なしと
判断される可能性があります。
管理職の見直しは対岸の出来事ではありません。
8.解雇の際の留意点
解雇の種類についてまずは、整理してみましょう。
①普通解雇(やむを得ない事由で事業主側から雇用契約の解除を申し出るもの)
②懲戒解雇(懲戒処分としての雇用契約の解除)
③諭旨解雇(懲戒処分の一種で懲戒としての退職処分)
④整理解雇(やむを得ない人員整理の必要性があって、労働契約を解除)
◎解雇についての重要な法律
・労働契約法16条(解雇)
会社の経営不振等を理由とする労働者の「整理解雇」についても、よく知られているように
判例において、いわゆる整理解雇の4要件が示されています。
4要件はすべてを満たす必要があります。
会社の永続性を第一に考えると、最終的には解雇という手段を取らざるを得ない状況も多々あり
ますが、段階を踏んだ手続きをしないと思わぬ形で訴訟等になってしまいます。
労務コスト削減になるどころか裁判コストがかかったというようなことにならないよう、解雇
手続きは慎重に進める必要があります。
◎労働基準法19条(解雇制限)
◎労働基準法20条(解雇の予告)
解雇予告の適用除外としては
・日々雇い入れられる者 例外-1か月を超えて引き続き使用
・2か月以内の期周を定めて使用される者
・季飾的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
・試みの使用期間中の者 例外-14日を超えて引き競き使用
解雇が有効とされるための手順
「客観的に合理的な理由」は、
・真実性
・客観性
・解雇規範妥当性
から判断されます。
「社会通念上の相当」は、
・解雇理由
・解雇処分が妥当かどうか
・バランスが取れているか
で判断されます。
解雇が妥当であると判断されるために、解雇事由が実際存在したことの証明としてのメモで
あったり、就業規則の解雇事由のどれに該当するかの検討、かつ解雇事由の事実について、
どれだけ注意、指導、改善の努力をしたかどうかが重要です。
9.労働時間管理と時間外手当
未払割増賃金の遡及支払いとなれば、会社にとっては大きな労務リスクです。
労働基準監督署の調査では、労働時間管理ができていない会社は、残業代の支払いを逃れるため
だと思われても仕方がないケースもありますので、出来ていない会社は早急な対応をはかる必要が
あります。
では、労働時間管理とはどういうことを指すのでしょうか。
そもそも、一週40時間、1日8時間という法定労働時間を超える時間外労働については、労働基準法
37条で割増賃金の支払いを使用者に義務として課しているので、たとえ労働者が自由意思で残業
手当を放棄したとしても、労働基準法違反にはかわりありません。
◎使用者の労働時間把握、算定義務
労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業務について規定を設けていることから、使用者は
労働時間を適正に把握する等、労働時間を適切に管理する責任を有しています。
労働時間の把握があいまいな状況の打開と、未払い貸金の発生を未然に防ぐ意図から、労幼時間管理
についての基本的な考え方(行政指導方法)を示したものが以下の通達です。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(厚生労働省)
時間外労働の管理や労働時間の把握については、どのような方法によって行うかについては労働
基準法に定めはありません。
事業主の自由にまかされています。
しかしながら、「うちは時間外の残業は一切認めていないので労働時間管理の必要はありません」
というのは通用しません。
本当に残業が一切ないのであれば、その根拠を示す資料が必要になります。
その資料がなければ、やはり労働時間管理ができていないということになります。
労働時問管理とは、単に始業・終業の時間をつけておくことではありません。
「残業許可申請」「残業時間の自主記録制度」などを用いて所定外労働時間の削減にも取り組む
必要が求められます。
単に制度を導入するだけではなく、恒常的に残業が多い場合には改善の指導、上限の設定、などの
措置を講じることが、労働時間管理です。
なお、管理職については、労働時間管理の適用除外とされていますが、深夜労働時間については、
割増貸金の適用除外とはされてはいませんので、時間管理は必要になります。
2023年4月から60時間を超える時間外労働を行った場合には割増賃金率が50%に引き上げられ
ました。
時間外手当を国定で支給している会社も多いと思いますが、労働時間の抜本的な削減を遂行して
いく必要があり、そのためにも労働時間管理の徹底が急務です。
10.有期労働契約の雇止め
有期労助契約(期間を定めて締結されている労助勢約をいう。)については、締結、吏新・雇止め
の際の説明やその手続などの実態が、労働者の保護に欠ける考えられる閉居点が多いことから、
有期労助契約の適正な運用の確保が必要とされています。
厚生労働省は「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」により行政指導を開始して
います。
実態として正社員と同様の業務に有期労働契約者を充てている会社も多くみられることから、
契約の締結、更新及び雇止めには、正社員同様、守るべきことがあることを知っておく必要が
あります。
「有期労湯薬約の締結及び更新・雇止めに関する基準」より
(1)契約締結時の明示事項等
使用者は、期間の定めのある労烏契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、
労働者に対して、当夜契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しな
ければなりません。
(2)雇止めの予告
使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を
超えて継続勤務している者について、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されている
ものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の
満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
(3)雇止めの理由の明示
使用者は、雇止めの予告後、契約を更新しないこととする理由について証明書を請求した
ときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
(4)契約期間についての配慮
使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を
超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該
契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなけれ
ばなりません。
平成27年4月にパートタイム労働法が改正されています。(出典:厚生労働省)
□終わりに
労務管理のポイントを10項目挙げて説明しました。
勿論、以上の項目だけ対応できていれば十分、というものではありませんが、この10項目について
対応していなければ、確実に労務リスクは高まります。
会社の防衛策としては、この10項目への対応は当然として、【自社の状況に対応した運用できる就業
規則】+【会社を活性化させる人事制度・解雇問題を避けて人事制度の運用で対応できるように整備】
で人事・労務管理を万全なものにしましょう。
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■会社を守るための労務管理
近年、ますます労務トラブルの件数が増加しています。
その背景には労働者の権利意識の高まりやインターネットによって簡単に情報が入手できることも
あり、トラブルから会社を守るという視点で適正に人事労務管理を行うことが強く求められています。
人を一人雇用すれば、「まだまだうちには関係ない」ではすまされません。
さっそく、労働トラブルを防止するために押さえておきたいポイントを解説していきます。
さて、あなたの会社はいくつ出来ていますか。
1.入社のときに労働条件を書面で明示する
労働者を採用するときは、貸金・労助時間等の労働条件を明示しなければなりません。
ではどんなことを明示しなければならないのでしょうか。
<明示しなければならない事項>
①労働契約の期間に関する事項
②就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
③始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに
労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
④貸金(⑥⑦に定める貸金を除く)の決定、計算及び支払方法、締切及び支払の時期、
昇給に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)
⑥退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法
並びに退職手当の支払の時期に関する事項
⑦臨時の貸金、賞与、1か月を超える期間を要件とする手当並びに最低賃金額
⑧労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
⑨安全及び衛生に関する事項
⑩職業訓練に関する事項
⑪災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑫表彰及び制裁に関する事項
⑬休職に関する事項
①~⑤までの事項については、書面の交付が必要です(昇給に関する事項を除く)。
この明示しなければならない内容を網集したのが厚生労働省からダウンロードすることもできる
「労働条件通知書」です。
パートタイマーには上記の事項に加えて、次の3つについても文書等による明示が必要です。
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
では労働条件を明示していなければ、どういう不都合があるのでしょうか。
現実には、労働契約は書面を交わしたところから始まるというものではありません。
働きたいと申し出る人がいて、会社が承諾するだけで契約は成立です。
つまり口頭だけの約束で労働契約は成立します。
ただ、口頭だけでは、行き違い、思い違いがあったりと、トラブルの元になる可能性があります。
年々増加する個別労働紛争(個々の労働者と事業主との紛争)のなかにも、募集、採用時のトラ
ブルがあげられています。
労働契約は何も労働者の権利を守るためばかりではありません。
労働契約の締結により、労嶺者には会社の命令にしたがって労務を提供する義務が生じます。
たとえば、始業時間に遅れれば、それは「労働契約で約束した始業時間に働かない」という債務
不履行にあたります。
何が労働者の義務なのかを明確にするためにも、入社のときに労働条件を書面で明示する必要が
あります。
2.法定3帳簿の備え付け
法定3帳簿とは、出勤薄、貸金台帳、労働者名簿を言います。
これらは、会社を興したらまず最初に用意すべき帳簿です。
あなたの会社には備え付けてありますか。
労肯基準監督署の調査でも必ずチェック対象となりますので必ず備え付けてください。
備え付けている会社も帳薄の記載内容に不足がないか、この機会に確認してください。
記載内容は法律で定められています。
記載すべき内容は図のとおりです。
※部門長など管理監督者の貸金台帳については、時間外労働や休日労働の時間数は記載不要ですが、
深夜労働の時間数は記載しなければなりません。
これは、管理監督者であっても、深夜労助の割増賃金は支払う必要が有るからです。
これらの書類の保存期間にも気をつけましょう。
法定軽薄や労働者の入退社に関する労務管理書類は3年間保存することが労働法令で義務付けら
れています。
3年間の起算日は次のようになります。
・労働者名簿については労働者の死亡・退職または解雇の日
・入退社関連書類はその労働者の退職または死亡の日
・賃金台帳は最後の記入日
3.試用期間の設定と保険加入日
一般に労働者を採用するにあたり、はじめから正式の本採用とはせずに、当初の3か月とか6か月
という期間を定めて試みに使用する期間を試用期間といいます。
ただし、胡周を定めて試みに使用する胡周とはいえ、雇用奥釣そのものは期間の定めのない契約に
なりますから、社会保険の加入要件に該当すれば、試用期間中とはいえ、社会保険に加入する
ことになります。
ここでいう社会保険は、広義でいう社会保険で、狭義でいう場合は労働保険、社会保険という
区分になります。
試用期間と正式の本採用を区別したいのであれば、本採用前の別個の有期雇用契約として分けて
契約することが好ましいです。
この場合でも雇用保険は6か月以継続して雇用する見込みがあって、週労働時間が20時間以上あれば、
入社の日から保険加入の必要があります。
社会保険については、有期雇用契約が2か月間であれば、この期間を超えて契約する場合には、
超えた時点から社会保険に加入する必要があります。
上場を目指しているような企業でも、保険加入の要件を満たしているにも関わらず、入社してから
間をおいて保険加入しており、入社日と保険加入日が一致していない場合も見受けられます。
最近では、退職してから、保険加入日の修正を労働者から求められ、離職票の訂正をするケースも
増えています。
非正規労働者を多く雇用している会社は、本人がたとえ保険加入を望まない場合でも、後から
労働基準監督署や社会保険事務所の調査で是正勧告を受けて遡って加入するリスクを回避する
ために、実態に合わせて、保険加入に漏れがないかどうかを、常にチェックする必要があります。
加入が漏れていた場合でも、遡って加入できるのは2年間です。
試用期間について、「どの毎度の期間が適当ですか」という質問を受けます。
「1年はだめでしょうか」というご質問もあります。
判例では、1年の試用期間が諌められたケースもありますので、出来ないことではありません。
ただし、試用期間があまり長いと、労働者としても不安な状態が長く続くことになりますので、
3か月あるいは6か月程度を試用期間として、あらかじめ本人に通知したうえで、期間を限った
試用期間の延長をする場合があるという規定の方法もあります。
4.年次有給休暇の月別管理
年次有給休暇でよく社長から相談いただくのが、退職時に残日数を一度に請求され、最終出勤日
から退職日まで1か月程度も出勤しないで年次有給休暇を取得して退撤するというケースがあります。
社長としては、どうにも承服できないということで、心情的には理解できる点もありますが、年次
有給休暇が労働者の権利であり、会社の承認を必要としない以上、退散前に残日数をすべて消化
した後に退職日を設定したとしても、会社はそれを拒むことはできません。
毎年計画的に年次有給休暇を取得することで、年次有給休暇の取得の促進を図る「年次有給休暇の
計画的付与」があります。
これは、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ない場合は
労働者の過半数代表者との書面による協定で、年次有給休暇を与える時季に関する定めをする
ことにより、年次有給休暇日数のうち5日を超える部分に限り、年次有給休暇の計画的付与を行う
ことができるというものです。
年次有給休暇の取待については、労働者が退聴時に一度に取得をすることを避けるということの
前に、健康障害防止、ワーク・ライフ・バランスの推進という背景のもと、行政主導で年次有給
休暇の取得促進が求められています。
平成22年4月から施行される改正労働基準法では、年次有給休暇を取得しやすくするように、時間
単位での取得を可能としました。
そもそも、労働者各人の年次有給休暇を管理していないということは、労働者への健康への配慮が
されていないと判断される可能性もあります。
当然、計画的付与を行う場合にも、何日間を時季指定するかを決定するうえで、各人の年次有給
休暇残日数を把握しておく必要があります。
労働基準監督署の調査が入れば、年次有給休暇の管理簿をチェックされます。
取得率が低ければ、今後どのように取得を促進するのかという是正報告を求められる場合もあり
ます。
管理できていない会社は、残日数を聞かれてから確認するのではなく、個別管理を早急に始め
ましょう。
5.休職に関する規定の整傭
休職とは、労働者を職務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、労働契約
を維持したままで、会社がその労働者に対して一定期間労働義務を免除し、あるいは労働を禁止
する制度です。
もともとは、就業規則に必ず記載しなければならない事項ではなく、休職制度自体は任意のもの。
勿論、制度を設けるのであれば、就業規則で定める必要があります。
労働者の私傷病等による欠勤は、労働者の労務提供義務の不履行であり、欠勤が長期化すれば
重大な債務不履行として、普通解雇理由に巌当するところを、傷病が回復し復職の可能性があれば、
休職制度により普通解雇を一定期間猶予するという性質のものです。
休職制度は、他社の規定をまる写しするのではなく、自社の状況に合わせて以下の必要事項を
あらかじめ定めておくことが重要です。
①休職の種類、事由
②休職期間、回数
③休職中の取り扱い
④復職時の取り扱い
⑤復職しないまま休職期間満了となったときの取り扱い
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■休職制度の運用と見直し
休職とは、労働者を就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ、労働義務を
一時免除または禁止することをいいます。
この制度は会社の裁量により設けるもので、会社の方針を反映させやすい仕組みとなっています。
ここでは、休職の開始から終了の経過に沿って、基本的な観点から解説します。
□休職の種類
休職は主に次の通り分類されます。
※他にも詳細に区分する場合がありますが、代表的な内容のみ掲載しています。
ここでは代表例として私傷病休職について取り上げます。
□休職の発令と休職期間
休職制度を実施する場合は、就業規則に「休職」に関する条項を設けることが必要です。
上記の表を参考に休職の種類を列挙し、加えて包括条項(その他、休職をさせることが適当で
あると会社が認めたとき)を盛り込むことが一般的です。
要件に該当した場合には、会社から労働者へ休職の発令をします。
休職期間は、会社の方針や世間相場、労働者の勤続年数などを考慮して決定することができます。
資料(P36)は、休職制度のある企業(常用労働者 50 人以上を雇用する企業)を対象とした、休職
期間に関する調査結果です。(出典:(独)労働政策研究・研修機構)
割合が多い順に、「6 ヵ月超から 1 年まで」、「1 年超から 1 年 6ヵ月まで」となっており、
各社様々です。
□有給か無給か
休職期間中の賃金支給状況について、同調査によれば、「支給されない」が 74.8%、
「支給される」が 18.1%となっています。
これについては、企業規模が大きくなるにつれて、「支給される」割合が高まります。
更に、支給される場合は、休職期間が長期化するにつれて、「無給」の割合が高まる傾向に
あります。
私傷病休職の場合は、加入する健康保険制度を利用して、傷病手当金(付加金)を受給できるため、
これを踏まえて決定する会社が多いようです。
□休職中のフォロー
休職発令を受けた労働者は、療養に専念する義務があります。
しかし特に、うつ病に代表されるメンタルヘルス不調者については、再発することが懸念されます
ので、会社としては、一度の休職で復職できるよう定期的に休職者の近況を確認する必要があります。
確認者は、直属の上司ではなく、人事・総務部長または相応の担当者が望ましいでしょう。
これは、監督的立場にある者からの、暗に生ずるプレッシャーを避けるためです。
また、電話やメールの場合は、担当者の負担軽減の他、労務管理の一環で行っていることを示す
ため、所定勤務時間中に、会社の電話やアカウントから連絡をするようにします。
□休職期間の満了
休職期間満了時(または満了前)に休職者が復職を希望した場合、復職の可否は会社が判断する
ことになります。
そのため、判断材料として医師の診断書の提出を要請することができます。
就業規則には、「会社の指定医」とすること、更に診断書作成料を休職者の負担とする旨を規定
すると良いでしょう。
また、休職期間満了時に休職事由が消滅していない場合は、延長または退職とする必要があり
ますが、退職とする場合は、離職理由を「解雇」とせずに、「当然退職」(自動的に退職とする
取扱い)と就業規則に規定することをお勧めします。
その他の留意点として、勤続年数への算入方法、社会保険料の負担と徴収の方法などが挙げられ
ます。
休職中の社会保険料を労働者負担とする場合は、毎月徴収または復職時に一括徴収するなど取り
決めが必要です。
休職制度は、ストレスチェック制度と相まって、労務管理の際に一層重要なポイントとなります。
運用面も考慮しながら、定期的に見直しを行うと良いでしょう。
□休職制度の見直し
メンタルヘルス対策はできていますか。
近年、企業社会では、「体の病」のみならず「心の病」から何らかの不調を抱える従業員が増えて
います。
また、過労死自殺を契機にしてリスク・マネジメントの面から労働者の心の健康管理を含めた安全
配慮義務が企業に問われています。
企業は、以前にもまして従業員の健康管理に注意を払わなくてはなりません。
また、心身に何らかの不調を抱えた従業員に対し、労務管理に関して十分な対応が求められています。
ここでは、心身に何らかの不調を抱えた従業員に対する労務管理に関して休職制度を通して検討
します。
1.休職の意義と種類
「休職」とは、最大公約数的にいえば、ある従業員について労務に従事させることが不能または
不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら
労務への従事を免除することまたは禁止すること、と定義することができる。
休職は労働協約や就業規則の定めに基づく使用者の一方的意思表示によってなされるのが普通で
あるが、労働者との合意によってなされることもある。
◎休業の種類
①労働者の都合によるもの
・私傷病休職
・事故欠勤休職
・公務休職
・組合専従休職
・起訴休職
・懲戒休職
・依願休職 等
②使用者都合のよるもの
・出向休職
・海外留学等の業務休職 等
③労使いずれの都合にもよらないもの
・公傷休職
・天変地異または伝染病休職 等
2.休職制度の法的性格
休業制度は、就業規則においては相対的記載事項(労働基準法施行規則第5条1項)ですが、
使用者がその定めを置く場合は「明示すべき労働 条件」となります。
休職の種類に見るように、休職原因は様々ですが、大きく分けて二つに分類することができます。
一つは、労務提供不能となった場合(傷病休職等)で、休職期間中に傷病が治癒し就労可能と
なれば復職となります。
一方、傷病が回復せず休業期間満了となれば、自然退職または解雇となります。
もう一つは、労務提供は可能だが不相応である場合(起訴休職、懲戒休職等)で、企業の社会的
信用や職場秩序の維持、懲戒や解雇などの処分を保留または猶予するなどの趣旨が混在していると
言われています。
3.休職制度改定による不利益変更の問題
既存の不明確な点を改める場合は、不利益変更に該当しませんが、休職発令要件の改定や休職
期間の変更等は、不利益変更となります。
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■経営者と従業員のパワーバランスの変化
「人は大事」と言ってはみても、実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、どちらかと
いえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。
もちろん、社長(もしくは上司)が持っている「感覚」はとても大事なもので、多くの問題が、
社長の今までの経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実です。
このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「お互い様」「家族」「仲間」
といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。
ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス・雇用契約」といった意識が強くなり、それに
ついていけない社長が問題を処理しきれない、ということが多くなっているように感じます。
例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、従業員が権利
としての主張を始めたり、「あ・うん」の呼吸でできていた休日出勤や残業に対して、従業員が
割増賃金を請求してきたり、といったことが起こっています。
「そのような要求を聞いていたら経営が成り立たない」と社長は主張します。
ところが、コンプライアンス・雇用契約の観点からみると、従業員側に主張する「根拠」がある
ケースが多いのです。
つまり、社長の「そのくらいは我慢してよ、その代り雇って給料を支払っているんだから」という
意識と、従業員の「法律上の権利を主張して何が悪いの?」という意識とのぶつかり合いに変わって
きているのです。
□人を雇うルールと責任を知っておこう
従業員を雇うと生じる責任とは何でしょうか? 順番に確認していきましょう。
1.給料(賃金)をきちんと払う責任
当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。
給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。
ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。
この決まりを「労働基準法 賃金支払い5原則」といい、次のものをいいます。
①通貨払いの原則(円建てで)
②直接払いの原則(本人以外への支払いは認められない。例外:妻・子等)
③全額払いの原則(残業代の不払いは違反)
④毎月1回以上払いの原則(日払い、過払いは該当しない)
⑤一定期日払いの原則(例外:臨時支払の賃金、賞与その他これに準ずるもの)
2.安全で健康に働いてもらう責任 安全・安心な職場環境の整備
ヘルメットや安全靴をはかせることだけが責任ではありません。
会社の施設、備品などを整備することや、温度、湿度、照明といった職場環境の整備、健康
診断の実施なども責任です。
近年では、体だけでなく心の健康を守ることも重要になってきています。
長時間労働や、特定個人に過重な負荷がかかるような仕事の与え方も、問題になるケースが
あるので注意が必要です。
3.働き続けてもらう責任
一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。
実は、法律上は「解雇権の濫用」といって、解雇をするには誰もが納得するような理由が必要です。
しかし、現実には難しい問題です。
最低でも、従業員が納得できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。
4.書類を作成する責任
労働基準法では、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、最後に記入
してから3年間保管することが義務付けられています。
このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があった場合に渡す
「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就業規則」などが必要です。
5.公的保険に加入する責任
公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の社長がたまにいますが、
公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」は加入が義務となって
います。
最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される「ねんきん定期便」
によって、加入意識を持つようになっています。
さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけにはいかない
流れになっています。
□採用前に決めておくべきこと
働いてもらう時に守ってもらいたいルールと、会社が守るルールを「労働条件」といいます。
労働条件を貸金、労働時間、休日休暇、勤務場所、契約期間、退職、公的保険の加入だけと考える
人もいますが、実はそれだけではありません。
例えば、「喫煙ルール、服装、整理整頓、タイムカードの打刻方法、休暇の申請方法、出張旅費の
精算方法」なども労働条件になるのです。
多くの会社では、このあたりのルールがあいまいなために、転職してきた従業員が前職でのルールで
行動してしまい、小さなトラブルが多発するということも少なくありません。
これらを明確にするのが「就業規則」です。
労働基準監督署に提出しなければいけないから作成するのではなく、会社としてどのようなルールで
働いてもらいたいかを明確にするために作成することがとても大事なのです。
社長の多くの不満は、「どうしてあいつは○○なんだ。うちでは△△なのに」ということの積み
重ねだと思います。
そういった不満の解消のためにも、従業員に堂々と見せて話ができる就業規則で「労働条件」を
お互いに確認することが大切になるのです。
ところで、知りたくなるのが「うちは、最低の条件でしか人は雇えないが、どの条件が最低になる
のか?」ということだと思います。
そこで法律で決まっている最低限の条件をサンプルで作ると、次のようになります。
①勤務時間 1日8時間の場合
②休憩時間 45分
③休日 週1日
④給料 時給1072円(東京都の最低賃金:2022年10月1日より)、昇給なし、手当なし、
通勤手当なし、賞与なし、退職金なし
⑤残業代 法定通り
⑥有給休暇 法定通り
⑦定年 60歳 ただし65歳までの再雇用あり
⑧給料支払い 月末〆 翌月15日払い
今まで常識だと思っていた1時間休憩や通勤手当、賞与、慶弔休暇もありません。
この条件で雇っても法律違反にはならないのです。
もちろん、この条件で人が採用できるのか、という問題は残ります。
要するに、この最低条件をスタートとして、会社としての条件を肉付けしていけばよいのです。
ここで注意しなければいけないのは、条件として書いてしまったら、実施しなければならない
ということです。
「書いてあるけどまあそこは‥…・」というわけにはいかないので、よく検討していただきたいと
思います。
また、次のような肉付けは問題があります。
例)給料50万円 有給休暇なし
いくら給料がよくても有給休暇なしは法律の最低条件に満たないことになるので認められません。
□有給休暇の考え方のツボ
有給休暇の話をしていきたいと思います。
有給休暇を与えると会社が成り立たないという話を聞きます。
「うちには有給休暇はない。取るやつはクビだ!」という管理をしている会社がまだまだ見受け
られます。
しかし、有給休暇は本人が権利として持っているものですし、取得したことを理由にクビにすれば、
会社に勝ち目はありません。
そこで、有給休暇の特性をよく理解したうえで従業員との関係を築きあげていかなければならない
のです。
◎有給休暇の原則
①取得の理由は何でもよい
②許可制にはできない
③買い取れない
④取得したことで不利に扱ってはいけない
⑤2年間有効
⑥本人が有給休暇を使うといわないと使えない
では、会社でできることは何でしょうか?
◎有給休暇で会社ができること
①日程変更をいえる(正常な運営ができない場合)
②取得ルールを作れる(10日前に申請など)
③2年間経って無効になった分を買い取れる
④労使協定で一定日は日程を指定して取得させられる(夏休みなどにつけて長期休暇など)
結局のところ、従業員が「有給を使う」と宣言するかどうかがポイントです。
会社としては事情を説明して理解を得る、逆に本当に休みたいときには気持ちよく休ませてやる
などして、よい人間関係を作り上げていくことが重要なのです。
□賃金の上手な決め方
採用の際に一番先に頭に浮かぶのが「給料をいくら支払えばよいか」ということだと思います。
これはとても難しいことですが、基本的な決め方は「相場」「支払能力」を参考に決めていきます。
◎相場
ほとんどの場合には、賃金は相場で決まってきます。
従業員もよくわからないので、前職の金額をそのまま希望しているなんてことも多くあります。
相場は折込チラシ、ハローワークの求人情報などを参考にすればよいでしょう。
金額が高いからよい人が来るというわけではありませんが、低すぎると、応募者の検討にも
入らないことになるので、ある程度の賃金水準は必要です。
◎支払能力
支払能力を検討する場合に注意が必要なのが、給与額そのものだけで検討しないということです。
実際の人件費には次のような費用が隠されています。
①残業代
②採用費用
③社会保険料
④教育費用
⑤有給休暇の貸金
⑥賞与
⑦退職金
これらを考えていくと実際の会社負担額は、給与の1.5倍から2倍ほどになるはずです。
ここをよく試算しておかないと、予算不足になり、残業代未払いとなるケースが多く見受け
られるのです。
また、中小企業の場合中途採用が多くなります。
そのため、賃金表の作成はあまりお勧めしません。
もちろん、役職や職種ごとの貸金療目安は必要かと思いますが、多くの場合には、人員不足
のために緊急で採用するしかない状況で金額を決めたり、縁故採用のため他の従業員とバランス
の取れない金額での採用を余儀なくされるケースが多いからです。
この場合には長期的に他の従業業とのバランスをとる必要がありますが、とりあえずは、賞与で
調整していくことになります。
場合によっては、給与は少し低めにして賞与を多くし、年間給与額で採用するというやり方が
実態に合っている場合もあるので、柔軟に対応していくことをお勧めします。
もう一つ考えていただきたいのは、時給換算による労働価値の再確認です。
近年では、非正規労働者の増加ということでパートなどの時給労働者が増えています。
そこで、月給の従業員は時給に換算するといったいいくらになるのかを計算するのです。
パートの3倍の給与を支払っているとしてその金額に見合った仕事を与えているか、また、
与えることができるのかを検証するのです。
冷静に分析すると、今回の採用が正社員の必要があるのかと疑問に感じることや、現在の
従業員の給与水準が適正かどうかを見直すきっかけになることもあります。
□上手な採用の手順とコツ
従業員を募集しても、応募者が少ない、よい人が来ないなど、なかなかうまくいかないことが
多くあります。
応募自体が少ない理由には次のようなものがあげられます。
①応募しようにも何の会社だかわからない
②給料が安い
③保険がない、または加入できるかわからない
④時間が厳しい、合わない
⑤応募条件が厳しい(年齢、経験、資格)
⑥時期が悪い(大手と重なった、お盆、G甘、年末年始)
⑦募集の方法を間違えた(主婦を狙ったのにハローワークで募集など)
給料や時間などは調整のしようがないでしょうが、少なくとも①の何の会社だかわからないという
ことは無いようにしなければなりません。
募集要項や、自社HPなどを工夫して応募者にわかってもらう努力は必要でしょう。
一番簡単なやり方は、他社のマネをしてしまうことです。
短い文章の中に上手に入れている募集広告やHPとうまくリンクしたものなど、自分たちででき
そうなものを作ることが大事です。
近年は募集用のHPを作って成果を上げている会社も出てきています。
応募者に対してどのような選考をするかということが次の間題になります。
間違った人を採用しないようにするにはまず、
社長がしっかりとした準備をすることが大事です。
それは次の通りです。
①何の仕事をさせるのかを決める
②そのために最低必要な能力レベルを決める(最低がポイント)
③絶対に採用しない要件を決める
④前職に惑わされないように、具体的な質問を用意する
⑤入社後にやってもらう仕事の具体的手順をやらせてみる
中小企業にとって必要なのは、社長の指示通りに一所懸命働く、まじめな従業員ではないかと
思います。
なぜならば、社長以上に仕事をわかっている人はいないからです。
技術や能力は入社後に教育でカバーするのが本来の形ではないでしようか。
即戦力で入った中途採用者は確かに短期間で稼ぎ始めるのですが、あくまでも他社のやり方であり、
長期的に自社のやり方にしてくれるケースはまれです。
それを理解して採用するのならば問題ありませんが、会社の基幹となるケースは少ないようです。
□トラブルを防止するために
中小企業の従業員とのトラブルの原因は大きく分けて二つあります。
1.会社のコンプライアンス意識の欠如
これは社長がしっかりと勉強する必要があります。
問題があることを知って、将来的に改善する方向で動かないと、従業員とトラブルになるたびに
法律的に攻められるリスクを持ち続けることになります。
2.契約内容があいまい
社内ルールが整備されていないことにより、契約内容があいまいなまま採用してしまい、お互いの
認識の違いがトラブルに発展するケースです。
例えば、給与30万円と決めた場合、30万円は支給総額なのか、手取りなのか、残業代を含むのか、
基本給だけなのかというところなどは明確にする必要があるでしょう。
特に残業代を含んでの契約の場合、給与のうちいくらが残業代なのか、何時間分なのかを明確に
する必要があります。
もう一つの例としては成果です。
どういう成果を会社が求めるのか、その成果をどのように検証するのか、その結果どういう賞与や
昇給になるのかはとても大事です。
社長は「あいつは働かない」といい、従業員は「自分はすごい成果を出している」という、そんな
話はよくあります。
ほとんどの場合、「何を」が抜けているケースが多いようです。社長は部下指導でチームとしての
成果を求めていたのに、本人は自分の成果だけを考えていたなどというケースです。
トラブルは会社も従業員も望むものではありません。トラブルを未然に防ぐには、会社の努力が
重要です。
厳しい時期だからこそ、コンプライアンスと雇用契約をしっかりする意識が重要なのです。
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■はじめに
労務トラブルが増えていますが、そのほとんどが、「残業」に関することと、「解雇」や「退職の
強要」といった退職に関する案件で発生しています。
今回は、特に退職時のトラブルを防ぐために、必要な書類とその記入ポイントを解説します。
□3つの退職事由と退職を証明する書式
労働基準法では、社員を雇い入れる際は、使用者側(つまり会社)が、書面でいわゆる「労働条件通知
書」などの書面を発行し、労働条件などを明示しなければいけないという定めがあります。
しかし、退職時には、労働者が退職証明書などを求めない限り、退職する労働者と会社が書面のやりとり
をしなければいけないという定めは特にありません。
退職する際に「退職届」を労働者が会社に提出することは、一般的ではありますが、退職届の提出などが
なくても、退職は正当に成立してしまうのです。
しかし、労働者が退職する際は、会社側は当然「いつ」「誰が」「どのような事由で」退職するのかと
いうことを証明する書類を発行するか、提出してもらうようにすべきでしょう。
後々、退職事由や退職日などをめぐってトラブルとなることは少なくありません。
期間に定めのない社員(いわゆる正社員)の退職事由は、定年を除くと大きくわけて3つ考えられます。
1つめは「自己都合退職」、2つめは「解雇」、そして3つめが「会社都合の同意退職(退職勧奨の受け
入れ)」です。
1つめと2つめはよく知られていますが、3つめの「会社都合の同意退職(退職勧奨の受け入れ)」は
意外に知られていません。
しかし、社員の退職についてはこの3つの違いをよく理解した上で、正確な手続きをしておくことが
重要なのです。
□自己都合退職の場合
自己都合退職とは、その名のとおり社員自らの意思によって退職することです。
自己都合退職の場合は大きなトラブルになることは少ないと考えられますが、それでも退職日や退職理由
について、会社と社員は共通の落款を持っておかなければならないでしょう。
特に、会社としては次の点を確認し、本人にその申し出が受理されたことを伝えておくことが重要です。
・退職理由が「自己都合退職」であること
・退職日および実際の最終出勤日
・重要な引き継ぎ事項
しばしば見られるトラブルとして、退職を申し出た社員がそれを撤回するというケースがあります。
社員の退職が成立するのは、本人が会社に退職の意思を伝え、それを会社が認めた時です。
「会社が認めた時」とは、一定の権限者に退職の意思が届き、了承した時のことを意味します。
つまり、会社の代表者もしくは人事担当取締役や人事部長など、退職を了承する権限をもっている人物
が退職を認めた場合にはじめて正式に退職が決定されるのです。
例えば、直属の先輩に退職の意思を伝えたとしても、それが正式に会社の人事権限者まで伝わっていない
ケースでは、その退職は正式に決定したものではなく、本人が退職の意図を撤回したいと考えた場合は
撤回することができるのです。
一方で、書面がなくても退職の意思が明確に人事権限者に伝われば、退城は有効に成立します。
ただ、「言った、言わない」となってしまうことも少なくないため、やはり書面で退職願を提出してもら
うようにするべきでしょう。
□解雇の場合
自己都合退職に対して、解雇は非常に大きなトラブルになることがあり、会社としてはリスク回避の
ために、決定したことはしっかりと書面にしておく必要があります。
解雇とは会社からの一方的な契約解除をいい、労働者の同意を得ないものです。
そのため解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利
を濫用したものとして、無効(労働契約法第16条)」となってしまいます。
よって、会社は解雇となる事由は就業規則にできるだけ具体的に明記し、それを周知するとともに、入社
時には労働条件通知書などで明示しておかなければなりません。
この解雇事由は、想定される事由はできるだけ多く列挙し、また、その後も事例が発生するたびに随時
追加しておくべきでしょう。
その上で、実際に解雇を行う場合は、その解雇事由と解雇日、そして解雇通知日を明確にした解雇予告
通知書を交付して30日前に解雇予告を行うか、即時解雇の場合は解雇通知書を交付し、平均賃金の30日分
の解雇予告手当を支払う必要があるのです(懲戒解雇では、労働基準監督署長による解雇予告除外定を受
けることができる場合がある)。
□会社都合の同意退職(退職勧奨の受け入れ)
会社都合退職といえば解雇と思いがちですが、実は退職勧奨という方法もあります。
退職勧奨とは、会社が社員に「退職をして欲しい」とお願いし、それを社員が受け入れ、会社都合の
「同意退職」として処理するものです。
「同意退職」であることが、会社からの一方的な労働契約解除である解雇とは大きく違う点です。
実は、これは、会社にとって非常に大きなリスクを回避することになるのです。
解雇の場合に(元)社員が解雇理由に納得しなければ、裁判所などに「解雇無効」を訴えられることも
あります。
会社はその解雇が「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」ことをプロセスも含めて証明
しなければなりません。
しかし、現在の労働裁判の判例を見る限り、その認定は非常に巌しいものであり、「解雇権の濫用」に
より解雇無効となるケースは決して少なくないのです。
万が一、解雇した社員が解雇無効で会社を訴え、それを裁判所が認めた場合(不当解雇であったと裁判所
が認定した場合)は、会社は解雇した日から職場復帰の日にいたるまで、その社員の給料を支払い、元の
職場に復帰させなければなりません。
このようなリスクのある解雇を行う前に、会社が社員との話し合いにより「同意」を得る退職勧奨を行う
べきケースは、実は多く存在するのです。
解雇はあくまでも最後の手段と考えるべきです。
なお、退職勧奨は会社都合の退職になるので、退職した労働者は「解雇」の場合と同じくハローワーク
では「特定受給資格者」として扱われます。
よって原則として3カ月問を待つことなく、すぐに雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受給する
ことができます。
また、勤続年数にもよりますが、基本手当が受給される期間も自己都合退聴の場合より長くなることが
多いのです。
どうしても社員に退職してもらわなければいけない場合は、これらのこともしっかりと本人に伝えた
上で、退職勧奨に同意してもらう努力を会社は行うべきでしょう。
退職勧奨で同意退職となった場合は、後々トラブルとならないように必ず「退職勧奨同意書」に本人の
署名、捺印をしてもらい、本人が退職勧奨を受け入れての同意退職であることを明確にしておく必要が
あります。
なお、退職証明書とは、上記退職書類とは別に、退職者が会社に請求することができる書類です。
この請求に対して、雇用していた会社は、できるだけ早く退職証明書を発行する義務があります。
□退職時の覚書
退職時には、上記で紹介した書類の他に「覚書」や「誓約書」といった形式で、退職後の約束についても
書面で残しておくことが一般的です。
これについても「義務」ではありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも会社としては準備をして
おいたほうがいいでしょう。
退職に関する覚書……退職後も会社に迷惑をかけるような行為をしないという約束を交わす書類です。
退職時の誓約書として書いてもらうこともあります。
主な内容としては、次のようなことが考えられます。
・秘密情報の保持
退職後も、仕事上知り得た秘密情報を保持し、開示しないという誓約
・成果物などの帰属
仕事上取り扱った事項の著作権、その他の権利が会社にあるという確認
・競業避止義務
退職後、同業他社への就職などを一定の範囲で制限するという確認
・紛争の有無
退職者と本人との間に、お金の貸し借りなどの紛争が一切ないことの確認
・退職後の名誉毀損行動・発言
退職後も、会社の名誉を傷つけるようなインターネットへの投稿や発言などをしないことの確認
なお、これらの書式については、原則的に自筆の署名があれば法律的には真正なものとみなされますが、
捺印があればよりその意思がはっきりしたものであると認められます。
よって重要な書面には、本人の自筆の署名と捺印を求めるべきです。
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■退職金制度の見直し
厚生労働省や各種機関などの調査をみると、規模の大小を問わず企業の間で退職金制度は普及して
います。
もはや退職金制度の問題は制度構築の有無ではなく、魅力的な制度をいかに導入していくかに移って
いるといえるでしょう。
その一方で、従業員の高齢化という問題が顕在化しています。
企業によっては、一定年次に従業員が集中しており、将来短期に多額の退職金支払いが集中するという
問題を抱えているのです。
退職金は支払い金額が大きいだけに、企業は早急に本格的な退職金制度の見直しを検討しておいたほうが
よいと言えます。
ここでは、上記のような問題意識に立ち、比較的小規模の会社が、退職金制度を新たに導入する際、何を
考えなければならないかについてまとめたものです。
特に、
→退職金についての基本的考え方
→特に独立制度との組み合わせの工夫
→標準的な退職金制度の作り方
を整理しています。
□退職金は何のために支払うか
日本で最初に退職金制度が導入されたのは明治時代のころです。
つまり退職金制度は100年を超える歴史を持つのですが、なぜ退職金を支払うのかという問題に関しては、
必ずしも定説があるわけではありません。
そこで、まず、退職金の性質から整理していくこととします。
退職金の支払い理由については、
1.勤続報償説
2.在籍中の功労報償説
3.退職後の生活保障説
などがあるようです。
1.勤続報償
勤続報償は、文字通り長年の勤労に対する報償であり、こうした意味の一時金制度を持つことに
より、従業員の定着、長期勤続を促進することが可能となります。
2.功労報償
功労報償は、退職金を在職中に支払われるべき賃金の不足分を後払いする制度であるとの立場に
立った考えです。
ただし、本当に従業員に給与の一部を強制的に積み立てさせて、退職時に会社が割増払いをする
ということは、労働基準法上の禁止行為です。
この考え方が意味するところは、年功序列によって若いうちは低く抑えられていた給与を退職金
として支給するといったことです。
3.生活保障
生活保障に関しては、本来、公的機関が行うべき保障を、企業が代わって実施するところに退職金
支払いの意味があると考える説です。
この説では、国の年金などが充実していれば企業負担は軽くなり、年金制度では生活保障が不十分な
場合は、企業がどこまで面倒を見なければいけないかがはっきりしないという欠点があることも事実
でしょう。
現に、生活保障のため定年延長が実施され、年金の原資不足を企業負担で補う方向に政策が向いて
いることも事実です。
ただ、規模の小さい企業が、国に代わって従業員の退職後の生活を全面的に保障しなければならない
かどうかに関しては、一考の余地があるでしょう。
そもそも中小企業が取り組む事業は、在職中に事業ノウハウを取得して独立しやすい性質のものが
多いからです。
例えば、レストラン・チェーン店の店長やシェフ、コンピューターソフト会社のエンジニア、企画
会社やコンサルティング会社の従業員などを想像してみるとよいと思います。
また、手についた技術で勝負する理美容業や特殊な製造業にも同じことがいえるでしょう。
そこで、早期退職を勧めることを前提に、従来ののれん分け制度の延長、すなわち独立の支援を行う
形で、退職金を低めに抑えることが、小さい規模の企業でも浸透しているようです。
□独立制度とは
独立制度とは簡単にいうと、
社員が会社から独立して事業を行うことを
企業側が資金教育人材援助などの立場から支援する制度
です。
主に外食産業を中心としてその動きが活発化していますが、内容は、
新しく出店する店舗を一定条件の下で社員に譲渡し、
社員はオーナーとして新店舗を運営する
といった、現代版のれん分け制度とでも呼ぶべきものから、
社員が提案する事業企画書の中から成功の可能性が高いと判断したものに対して、
出資や必要資金の融資を行い、社員は、退職して会社を設立する
などの、本業とはあまり関連のない事業計画に対しても援助を行うというものまでさまざまです。
企業にとっては、
→やる気のある優秀な人材を確保・育成する
→社内の起業家精神を高めて、社員の活性化を図る
といったメリットがあるほか、
社員の独立が自社のネットワーク拡大につながり、出資した場合、
事業として成功すれば配当金やキャピタルゲインも望める
という利点があるようです。
独立制度による、社員への支援の具体的内容には、例えば、
→店長や経営者としての必要な能力を養うための教育研修の実施
のような準備段階における支援と、
→社員への低利融資や出資
→事務所・店舗探しや、備品などの貸与
などの開業時における支援があります。
しかし、独立制度を本当に魅力あるものにするためには、これを単なる制度に終わらせることなく、
これらの支援内容が、社員にとっても企業にとっても本当にそのメリットを感じるものにしなければ
なりません。
そこで今回、上記の支援のうち特に大きなウエートを占める開業資金の援助方法について、退職金制度を
独立制度にからめた方式を紹介します。
それは、
勤続年数、役職経験年数などの一定の条件をクリアして独立を認められた社員に
対して、特別に優遇された退職金を支給することにより、資金援助の一部とする
というものです。
例えば、
勤続年数10年以上の社員で課長以上の役職を経験しており、その事業計画を会社が
認めたものに対しては、所定の退職金に加えて500万円の特別支給金を支払う
などの方法が考えられます。
この方式によって、
勤続年数に最低条件を設けていることにより、早すぎる退職を防ぎ、なおかつ、
「定年まで働いて退職するよりも独立した方が得だ」という感覚を社員に与える
ことにより早期退職を勧め、若いうちに独立できる可能性を提示して、社内全体の
士気を高める
ことを狙うわけです。
さらに会社にとっては、独立する場合の特別金を設けることで、それ以外の場合の退職金を低く抑える
ことを従業員に納得させる材料ともなります。
□退職金制度を作ろう
ここでは実際に退職金制度を作成する手順を整理します。
なお、ここで扱う退職金は、退職一時金のことです。
ここでは、退職金制度作成の手順を、
1.退職金のベースを決定する
2.退職事由によって格差をつける
3.勤続年数の計算方法
4.退職金の支払い方法
という順に、ポイントを絞ってできるだけ簡潔に整理しました。
より具体的な退職金の定め方に関しても記載しました。
1.退職金のベースを決定する
現在、企業において最も普及しているのは、基本給と勤続年数の2つの要素を用いて、
退職時の基本給×勤続年数別支給率
という算式から、退職金のベースを算定する方式です。
退職金の基本的な考え方を、
入社時から退職時までに企業に対して果たした業績を反映するもの
とすれば、基本給と勤続年数は、この考え方をある程度満たす条件ということができます。
また、この方式を用いた場合、勤続年数別支給率だけなので、制度の運用が大変シンプルです。
勤続年数別支給率に関しては、
勤続年数が上がるほど、支給率もアップする
形態をとることが必要ですが、
→ある期間(例えば勤続年数15~25年)だけ支給率が急激に上がり、
その後緩やかになる
→一定の勤続年数(例えば30年)に達した時点で支給率を固定させる
などの工夫をすることによって、退職金の伸び率を操作することができます。
2.退職事由や退職時の役職などによって格差をつける
退職金の算出方法を決定したら、これから算出される退職金のベースに対して、退職事由や役職など
によって増減を付けます。
例えば、
→自己都合退職の場合は、基礎額に0.8を乗じる
→定年退職、かつ勤続満20年以上の場合、基礎額に100万円を加算する
などのようにして行います。
どのような事由に対して、どの程度の格差をつけるかは会社の考え方次第ですから、ここで最も自社
の特色を出せることになります。
前述の、独立制度の一環として退職金制度を考える場合なら、
勤続10年以上の社員が独立を事由として退職し、
また会社がこれを認めた場合は、基礎額に500万円を加算する
というように規定すればよいのです。
参考までに、格差付けのためによく用いられる事項を記します。
・会社都合による退職、解雇
・自己都合による退職(傷病、非傷病による場合を別扱いする例もあります)
・定年退職
・死亡(死亡については業務上か業務外かで区分する例もあります)
・結婚または出産退職
・従業員の責による解雇、または懲戒解雇
・早期退職の優遇制度
3.勤続年数の計算方法
勤続年数の計算で問題となるのは、
→休職期間や再雇用などで勤続年数が中断されている場合
→年数に端数が生じた場合
の2つです。
勤続年数の中断については、起こる可能性のあることをすべて規定に入れることが必要です。
勤続年数に通算されないことの多いものは、
既にある時点において退職手続きがとられ、退職金が支給されている場合
(会社合併、組織変更、定年後の再雇用、嘱託など)
です。
また、
退職金の適用範囲になっていない期間(臨時雇用、私傷病による休職期間、懲戒に
よる出勤停止期間など)
についても通算されないのが普通です。
もちろん、何を勤続年数に加算するか、またはしないか、ということは企業の事情に応じて決定
すればよいでしょう。
次に端数の取り扱いについては
端数月数は6捨7入(1~6月は切り捨て、7~12月は切り上げ)などを行い、
1年単位で金額を算出する
場合と、
前年度までの勤続年数を基に計算した退職金に、
月割り計算を行って算出した額を加算する
方式の2通りがあります。
計算の正確さという意味では後者が望ましいのですが、実際は計算の煩雑さから、前者を採用して
いる企業が多いようです。
なお、端数日数については、いずれの方式にしても15捨16入をすることが多いようです。
4.退職金の適用範囲
退職金の適用範囲は、通常正規の手続きを経て雇い入れられた正社員にのみ支給されるのが普通
です。
従って、
役員、臨時雇、顧問、嘱託
などには、退職金は適用されないことが多いようです。
また、受給資格として最低必要勤続年数を定めることも多く、
会社都合の場合は勤続1年以上
自己都合の場合は勤続3年以上
というように、支給事由に関連させて設定することもあります。
退職金の適用範囲については、払うか払わないかという大きな問題だけに、その記述には特別な注意
が必要です。
支給事由受給資格などは、できるだけ詳細に挙げておいて、疑問のないようにしておくことが必要
でしょう。
◎退職金額を決定する諸係数の決定方法
退職金制度作成の流れが分かったところで、退職金の額を決定する諸係数をどのようにして決め
ればよいかを考えてみましょう。
この場合は、
勤続年数別支給率
退職事由別支給率、または支給額
の2つの要素を決定します。
まず最初に行わなければならないことは、定年退職や自己都合退職などの場合を除いた、普通退職
の場合の退職金を設定することです(これを退職金のベースとします)。
業界相場と自社の事情を加味しながら、5年刻みぐらいで、勤続年数別に退職金を設定して
いきます。
このようにして決定した退職金を該当勤続年数別の基本給で割ったものが、勤続年数別支給率
です。
次に行わなければならないことは、事由別勤続年数別の特別支給金を設定することです。
つまり、企業として誰にどれだけの退職金を支給するかということです。
まず退職事由を設定することから始めます。
例えば、
→独立による退職
→独立以外の自己都合による退職
→定年退職
のようにして設定します。
退職事由を決めたら、それぞれについて勤続年数別の特別支給金を設定します(勤続年数は
5年刻みぐらいとします)。
例えば、独立自己都合定年の3つの場合を考えている場合だと
→15年勤務で独立する社員には700万円ぐらい支給したい
→35年勤務で定年退職する社員には1200万円は支給したい
→自己都合による退職は、勤続30年以上は普通退職扱にしたい
というような具体的なパターンを先に考えて、先に決定したベースとの差額を
特別支給金
にしていくとスムーズにいきます。
このようにして、勤続年数別支給率と特別支給金を決定します。
一度の試算で決定してしまうことを考えず、いろいろなケースを想定しながら、何度も試算を
繰り返して自社に最適な数値を出していけばよいでしょう。
ベースとして基本給と勤続年数を使用する退職金制度の作り方について述べました。
この方式は、最も基本的かつ広く普及している方式であり、新たに退職金制度導入を考える際の
ベースとして適しています。
しかし、この方式で退職金は基本給の上昇に比例して退職金の支給額も上昇するため、長い
目で見て
→企業の支払い能力がこれに耐え得るかどうか
という問題が出てきます。
同時に
→退職金支払い準備をどうするか
は、退職金制度を導入する場合に避けて通れない重要なことです。
また、定年延長の動きを受けて、
→放っておけば増える一方の退職金をどう処理するか
→退職年金の問題を、退職一時金との兼ね合いでどう扱うか
という問題も出てきました。
そこで、中小企業の退職金の支払い準備を国家が援助する制度である
については、単独で充実した退職金制度を構築することが難しい中小企業が、共済方式によって
互いに助け合いながら制度を構築するイメージの制度です。
企業の外部支払い準備として特に需要が高くなっています。
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会社が退職金の規定を設けるか否かは、任意であり、法律によって義務付けられてはいません。
ただし、退職金規定を設けた場合には、賃金と同じ扱いとなり、支払い義務が生じます。
また、一度定めた退職金の水準を下げたり、制度を廃止したりすることは、不利益変更となるので、
難しいことが多く、初めて退職金規定を設けるときは、内容を十分に検対する必要があります。
たとえば、退職金規定で、退職金の支払時期を定めておかないと、退職した労働者から請求された場合に
は、退職日から7日以内に退職金を支払わなければなりません。
また、退職金規定に、「懲戒解雇された者については、退職金を支給しない」旨を定めておかないと、
たとえ、懲戒解雇といえども退職金を支払わなければなりません。
以下に退職金規程のひな型を掲載しておきますので、自社用に加工してご利用ください。
退職金規程(ひな型)
第1条(総則)
この規定は、就業規則第○条にもとづき、社員の退職金について定めたものであり、退職後の福祉と生活の安定を図ることを目的とする。
第2条(退職金の支給範囲)
この規定は、次の各号の一に該当する者を除く社員に適用する。
(1) 試用期間中の者
(2) 臨時に期間を定めて雇い入れられた者
(3) 日々に雇い入れられた者(パートタイマー・アルバイト)
(4) 季節的な仕事のために雇われた者
(5) 嘱託として再雇用された者
第3条(退職金の支給事由 其の一)
社員が次の事由により退職する場合は、別表(4)に定められた支給率により退職金を支給する。
(1) 死亡
(2) 業務上の事由による傷病
(3) やむをえない業務上の都合による解雇
(4) 役員への就任
(5) 定年
第4条(退職金の支給事由 其の2)
社員が次の事由により退職する場合は、別表(5)に定めた支給率により退職金を支給する。
(1) 自己都合
(2) 私傷病
(3) 結婚
第5条(受給権者・法定近親者順位)
1.社員が死亡した場合の退職金は死亡当時の本人の収入により生計を維持していた遺族に支給する。
2.前項の遺族の範囲及び支給順位については、労働基準法施工規則第42条から第45条の定めるところに
よる。
第6条(退職金支給の計算)
退職金は別表(1)及び別表(2)より得られた在籍中の勤続ポイント及び資格等級ポイントの合計に、
別表(3)の単価を乗じた金額とする。
第7条(勤続年数の計算)
1.この規定における勤続年数の計算は、次の各号により計算する。
(1) 給与規定第○条の年齢の更新日により年数を加算する。
(2) 勤続年数は入社日より退職日までとする。
① 入社日は各年の(1)の更新日とする(中途者は翌年同日とする)。
② 退職日は退職した日とし、(1)の更新日を基準に一年未満の端数は切り捨てる(死亡の場合は
死亡日)
2.就業規則第○条の試用期間は、勤続年数に加算する。
3.就業規則第○条の休暇期間は、第3号を除き原則として勤続年数に加算しない。
第8条(端数の処理)
退職金額の算出に際して、100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げる。
第9条(退職金支給の除外)
次の各号の一に該当する者については退職金を支給しない。
(1) 懲戒解雇された者
(2) 勤続満一年未満の者(別表(4))
第10条(退職金支給の制限)
次の各号の一に該当する者については、退職金の全部または一部を支給しない。
(1) 在職中、故意又は重大な過失により会社に大きな損害を与えて退職した者
(2) 諭旨解雇された者
(3) 就業規則にもとづく所定の手続きを経ずして退職した者
(4) その他就業規則に違反して円満退職しなかった者
第11条(支払時期)
退職金は原則として退職日から一ヶ月以内に全額を支払う。
但し、本人在職中の行為で懲戒解雇に相当するものが発見された場合は、退職金は支給しない。
第12条(退職金の支給方法)
退職金の支給方法は一時金として支給する。
第13条(債務との相殺)
退職金を受ける者が会社に対し債務を負うときは、退職金の支給を債務弁済後に行なうか又は退職金と相殺して支給する。
第14条(受給権利の譲渡質入の禁止)
退職金を受領する権利は第三者に譲渡、又は担保に供することは出来ない。
第15条(特別退職金の加算)
社員で在職中特に功労があった退職者に対しては、別に特別功労金を退職金に付加することがある。
尚、支給の有無及び支給額は役員会に一任する。
第16条(規定の改廃)
著しい変化がある場合には、本規定を変更又は廃止することが出来る。
附則
1. 退職金規定第6条の別表(3)に定める単価の改訂については、別表(6)の覚書により行なう。
2. この規定は、令和 年 年 月 日より実施する。
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■コスト削減の重要性
多くの会社が残業削減による人件費の軽減に取り組んでいます(人件費をコストと考えるのは問題
ですが)。
企業が採用している方法は、ノー残業デーの導入など比較的簡単に実施できるものから、変形労働時間制
の導入など緻密な計画のもとで段階的に導入すべきものまでさまざまです。
しかし、多くの企業トップの実感は「残業削減は難しい」というところでしょう。
なぜなら、各企業で残業が発生する要因が異なるばかりか、残業が集中する時期などそのパターンも
さまざまだからです。
企業が残業削減に取り組む際に重要なことは、第一に自社の残業の状況を細かく把握し、それを考慮して
具体的な残業削減策を打ち出すことです。
残業削減に取り組むうえで、現在の状況を正確に把握することは非常に重要な取り組みなのです。
ここでは、具体的な残業削減策を打ち出す前の段階で実施すべき現状把握の方法について、その考え方を
まとめてみました。
□残業削減に取り組む前の現状把握
1.3つの労働時間の関係を把握
残業削減に取り組む前に、
・法定労働時間:労働基準法(以下「労基法」)で定められている労働時間の上限
・所定労働時間:法定労働時間の範囲内で各企業が定める労働時間
・実際の労働時間:残業を含め、実際に社員が働いた時間
の3つの労働時間の関係を把握します。
法定労働時間は、労基法第32条により1日当たり8時間、1週間当たり40時間と定められています(小規
模な接客娯楽業など一部の例外を除く)。
所定労働時間は、各企業が定める労働時間で「午前○○時から午後○○時まで」と就業規則などに
定められています。
この2つの労働時間は比較的簡単に把握できます。
少しやっかいなのが実際の労働時間です。
タイムカードが導入されている場合は問題ありません。
しかし、労働時間を把握する仕組みがなく、自己申告に頼る場合には
・遅刻が慢性化しているが、それが労働時間から除かれていない
・実際は残業しているが、周囲に気兼ねして申告することができない
などの問題が起り得ます。
残業削減という明確な目的をもって労働時間を把握するには、正確な労働時間を把握するよう心掛ける
ことが大切です。
上記、3つの労働時間(法定労働時間、所定労働時間、実際の労働時間)の関係を整理すると以下のよう
になります。
(1)理想型
法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められており、残業も発生していない理想的な状況です。
法定労働時間 = 所定労働時間 = 実際の労働時間
(2)法律違反型
所定労働時間が法定労働時間の範囲を超えているため、労基法違反となります。
早急な見直しが必要です。
法定労働時間 < 所定労働時間
(3)業務過剰型
法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められているが、その範囲内で業務が終了せずに残業が
発生している状況です。
残業削減に取り組む必要があります。
法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間
(4)人員過剰型
法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められており、実際の労働時間はそれよりも短い状況で
す。
業務量に比較して労働力が過剰の状態であり、リストラが必要になるケースもあります。
法定労働時間 = 所定労働時間 > 実際の労働時間
2.問題は業務過剰型だが…
3つの労働時間の関係を把握した結果から、残業削減の必要なのは「3.業務過剰型」であることがわかり
ます(「2.法律違反型」は問題外なので早急に見直しましょう)。
ただし、「法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間」の関係が、即座に所定労働時間に
対する業務量が多いということにはなりません。
「法定労働時間 < 所定労働時間」の状態となる要因として、業務進行の効率が悪いことなども考え
られるからです。
そのため、さらに一歩踏み込んで業務過剰型となっている要因は何であるのかまでを把握しなければ、
実情にそった残業削減策が打ち出せなくなります。
業務過剰になる主な要因として以下が考えられます。
(1)業務遂行の効率が悪い所定
労働時間に対する業務量が必ずしも多いとはいえないのに、残業が発生していることがあります。
ここで疑うべきことは「業務の非効率」であり、これを見直す必要があります。
問題は、何を「業務の効率性の基準」とするかです。
一般的には、各業務でモデルとなる社員を選び、その社員の業務の進め方や遂行時間を基準としま
す。
(2)社員の意識に問題がある
特に業務量が多いわけでもなく、また業務に非効率な点も見当たらないケースでは、社員の意識の
問題によって残業が発生していることが考えられます。
具体的には、「所定労働時間内に業務が終わらなくても、休憩しながらゆっくり終わらせよう。残業
すれば手当ももらえるし…」などといった社員の意識から生まれる残業です。
残業することに苦痛を感じず、それが当たり前となってしまっていると、時間内で終わる業務も終わ
らなくなってしまうのです。
社員の残業に対する意識を知るための方法には、部課長に各社員の勤務姿勢を報告してもらう、
各社員と直接面談するなどがあります。
(3)業務が過剰である
業務の遂行上で特に非効率な点は見当たらず、また社員も所定労働時間を意欲的に働いているのに
「法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間」の状況になるのは、明らかに業務量が多
いためと考えられます。
このような場合、人員補充も視野に入れて対策を検討しなければなりません。
□具体的な現状把握の方法
1.業務過剰型の要因を知る
業務過剰型になっている要因を知るために、さまざまな視点からチェックします。
この際、チェックシートを作成し、それに基づいてチェックを進めるとよいでしょう。
チェックシートによって明らかにしたいのは、業務過剰型となっている原因であり、想定されるのは
「業務遂行の効率が悪い」「社員の意識に問題がある」「業務が過剰である」などです。
チェックシートには、これらが判明するような項目を盛り込まなければなりません。
なお、収集する情報をわかりやすく整理するために、チェックシートは
・各業務ごとの労働時間を把握するための「業務明細書」
・曜日、月、季節的な労働時間の変動を把握するための「労働時間変動グラフ」
・各部課、社員の状況を詳しく把握するための「インタビューシート」
に分けて作成します。
(1)業務明細書
部課ごとに必要な業務を細かく分類し、各業務に要する時間をモデル社員とそれ以外の社員で把握
します。
そのために、人事部、部課長が中心となって細かな業務内容とそれに要する労働時間を
・モデル社員の場合
・モデル社員以外の場合
・全社員の平均の
それぞれの場合で把握します。
より現実を反映したデータとするために、モデルとするのは平均的な社員とします。
モデル社員が所定労働時間をオーバーしているようであれば、所定労働時間に対する業務量が多いと
認識しなければなりません。
業務明細書の一例として、配送部署に属する社員の業務明細書を紹介します(実際は、各業務ごとに
業務明細書を作成する必要があります)。
業務明細書から確認したいのは、
→モデル社員の労働時間に比べて、他の社員の平均労働時間はどの程度か
→モデル社員の労働時間、他の社員の平均の労働時間に比べて労働時間が
著しく異なる社員はいるかです。
2.労働時間変動グラフ
曜日や季節による労働時間の偏りをチェックします。
そのためには、部課全体と各社員別の労働時間の変動が一目で分かるようにグラフ化します。
同じパターンで労働時間が変動していれば、変形労働時間制の導入が有効となります。
また、グラフ化による労働時間の把握は、各社員ごとに行うとより効果的に現状を反映します。
忙しい時期ではないのに、突然残業をするようになった社員がいれば、その理由をインタビューシート
で明らかにして対策を講じます。
3.インタビューシート
インタビューシートでは、各部課、社員ごとの状況を細かく探ります。
具体的には、人事部などが中心となって各部課長と社員に対するインタビューを実施します。
インタビューする質問事項は、あらかじめインタビューシートとしてフォーマット化しておくと
よいでしょう。
この際の留意点は、これまでの取り組みで把握できた内容をインタビューに生かしていくことです。
例えば、
・部課長は、月による労働時間の変動の解決策を考えているか
・業務明細書で業務遂行が遅いとされた社員は、担当している業務の量を多いと
感じているか
といった具合です。
また、社員に対するインタビューは、インタビューシート以外に人事考課表なども参考にし、ざっくば
らんに行います。
これまで残業することの少なかった社員が突然残業をし始めたケースでは、「車のローン返済のために
手当が欲しい」などの理由も考えられます。
あるいは、「無理をしてでも業績を上げ、昇進したい」と考えているのかもしれません。
ここでは、社員の本音を聞き出すことが重要となります。
<部課長に対するインタビューシート>
(1)所定労働時間に対する業務量について
□現在の労働力で十分だ
□月によっては対応できないことがある
□労働力は十分だが、当部課の業務に不適性な社員がいる
□現在の労働力では対応できない
(2)残業の発生状況
□通常は、残業が発生しない
□残業の発生が慢性化している
□毎年、残業が集中する月がある
□ある出来事をきっかけに残業が発生するようになった
(3)残業が発生するようになった出来事について
□新規取引先の獲得による
□ベテラン社員の退職による
□新入社員の教育に手間取っている
□その他
(4)業務の効率性について
□効率性は高い
□従来の方法を踏襲しており、特に問題はない
□見直すべき点が多い
(5)業務の割り振りについて
□平均的に業務を割り振っている
□特定の社員に頼ることが多い
(6)業務に対する社員の姿勢について
□全社員とも意欲的に業務に取り組んでいる
□特定の社員だけが意欲的に取り組んでいる
□部課全体として、モチベーションの上下が激しい
(7)残業削減策として好ましいものは
□ノー残業デイの実施
□変形労働時間制の導入
□社員の意識転換を図るための教育訓練の実施
□配送ルートなどの見直し
□残業削減は無理だ
□その他
<各社員に対するインタビューシート>
(1)所定労働時間に対する業務量について
□少ない
□適当だ
□多い
(2)残業の発生について
□通常は残業していない
□残業が慢性化している
□毎年、残業が集中する月がある
(3)担当している業務について
□適性にあっている
□普通にこなすことはできる
□適性にあっていない
(4)業務の効率性について
□効率性は高い
□特に問題はない
□見直すべき点が多い
(5)残業に対する意識について
□残業をすることは仕方ない
□できれば残業をしたくない
(6)なぜ、残業をするのか
□所定労働時間内に業務が終わらないため
□業務への積極的な姿勢をアピールしたいため
□月給の不足分の補填として
□周囲の目が気になって帰宅しづらい
2.残業削減策の選定
以上、残業削減に向けた現状把握の方法を紹介してきました。
実際に現状把握を行う際は、各企業の実情に即したチェック項目を加えることなどが必要です。
残業削減のための現状把握をしてみると、これまで明確にされることがなかった各社員の働きぶりや
業務量の変動が数値によって明らかにされます。
残業削減策は、これらの情報を反映した実効性の高いものでなければ大きな効果は望めません。
3つの労働時間の関係、業務過剰型の要因、それぞれに対応する残業削減策をまとめた一例が
<現状把握から残業削減策決定までのフロー>のチャート
です。
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■賞与と業績
賞与支給が一般化した今日においては、社員も賞与が支冷されることを前提に生活設計を
行なうため、たとえ業績がマイナスであっても賞与を支給しないというのは難しいといえ
ます。
しかし、賞与は本来は業績に応じて支給されるものであり、就業規則にその旨の定めをして
いる企業も多いのではないでしょうか。
賞与が生活保障給的な役割を果たしている以上、業績によって支給額があまりにも上下
するのは好ましくありませんが、業績反映部分を設けることにより社員の士気を高める
ことができます。
以下、賞与に業績を反映させる方法として、
・生活保障部分と業績反映部分の割合をどうするか
・個人をどのように評価するか
というポイントについて解説していきます。
□生活保障部分と業績反映部分の割合
賞与の支給額は、基本給の◯カ月分というかたちで一律的に決めている企業が多いでしょう。
しかし、賞与に業績を反映させる場合は、一律支給する生活保障部分と、業績により変動
する業績反映部分を分けて考える必要があります。
<例>
・生活保障部分=夏に基本給の1.5カ月分、冬に2カ月分
・業績反映部分=個人業績分=夏・冬に基本給の0.5カ月分の80~120%
会社業績分=期末に基本給の0.5カ月分の50~130%
支給月数や反映部分の幅などは、同地域の企業や同業他社の実態・慣例および自社の
支払余力(支給原資)などにより決定しますが、その際、次の点に注意します。
・生活保障部分は、年収ベースで考えて一定の生活レベルを維持できる額を確保する
・業績反映部分は、個人業績と会社業績の割合を合理性のあるものにする
いずれにしても、業績を賞与に反映させる際には、「誰に」「どの程度の金額を」
「どのような方法で」分配するかを明確にしておくことが重要です。
<例>
・管理者以上の賞与考課の項目の中に、会社の業績に対する貢献度に関する項目を設ける。
その項目と賞与への反映度は、職能等級によって変化させる
・通常の賞与とは別に、前期の業績によって特別賞与を与える制度を設ける
・特別賞与は期の経営目標を達成した次の期に行なう
・特別賞与は全社員を対象とし、その金額は一律〇〇万円とする
□個人をどのように評価するか
会社の業者は、売上や利益などですぐにわかりますが、個人の業績をはかるのは難しい
ものです。
通常の人事考課は「業績」「能力」「執務態度」で勤務成績を評価しますが、賞与効果は、
査定期間中の「業績」と「執務態度」により、評価を行なうのが一般的です。
次に評価項目例を示します。
<例>
(1)業績
a)営業職 ・売上目標達成率 ・粗利益目標達成率
・新規売上目標達成率 ・返品率
・集金実績
b)製造職 ・生産目標達成率 ・納期遅れ発生率
・仕掛回転率
(2)執務態度
・規律性 ・協調性 ・コミュニケーション
・責任感 ・積極性 ・マナー
例では職種別に分類しましたが、職能等級や役職別に分類する必要が出てくる場合も
あります。
なお、評価項目は社員各人の行動に大きな影響を及ぼします。
たとえば、管理職に対し「もっと部下の育成に力を入れて欲しい」と考える場合は、
それを評価項目に加え、大きな比重で評価することにより、彼らを動かすことができる
のです。
<例>賞与考課のための評価表
評価項目を決定したらまず評価を行ないます。
この際に「自社で重視する項目」については2倍とか3倍というように他の評価項目に比べて
比重を重くして換算します。
それから個々の評価項目の点数を累計し、各人の「評点」を算出します。
なお、評価者により評価に偏りがある場合には調整が必要です。
こうして全員の最終的な評点が決定したらいよいよ支給額を決定します。
前項の「生活保障部分と業績反映部分の割合」の例でいえば、基本給の0.5カ月分の「何%」
を各人に支給するかという配分を、評点により決めていくということです。
たとえば、評点によって各人をA~Eの5段階評価に分類し、評価A=120%、
評価B=110%支給…と決めていく方法があります。
□賞与支給規定例
第1条(目的)
この規定は、給与規定第◯条に定める賞与の支給について定めたものである。
第2条(支給の原則)
賞与は、原則として年2回支給する。ただし状況により支給しないこともある。
第3条(支給時期)
賞与の支給時期およびその算定にかかる支給対象期間は、原則として次の通りとする。
ただし支給時期は状況により変更することがある。
第4条(受給資格者)
賞与の受給資格者は、支給対象期間の末日に在籍しかつ支給当日在籍する者で、
支給対象期間における勤務日数が支給対象期間の所定勤務日数の3分の1以上ある者と
する。
第5条(中途入社者の取扱い)
支給対象期間に在籍しかつ支給日当日に在籍する者で、支給対象期間における勤務
日数が支給対象期間の所定勤務日数の3分の1に満たない者に対しては金一封を支給する。
その金額はその都度定めるものとする。
第6条(賞与の支給算定)
賞与は基本賞与と業績賞与に分け、各人に対する支給算式は次の通りとする。
・基本賞与 (基本給+役付手当)の1カ月分
・業績賞与 (基本給+役付手当)×考課係数×業績係数×出勤率
第7条(考課係数)
考課係数は、支給対象期間における各人の人事考課の結果により次の通りとする。
ただし、考課係数は変更することがある。
第8条(業績係数)
業績係数は、会社の業績に応じその都度定める。
第9条(出勤率)
出勤率の算定方法は、次の通りとする。ただし、年次有給休暇、慶弔休暇、特別
休暇は出勤したものとみなす。
第10条(賞与の減額)
算定期間中に就業規則第◯条に定める懲戒処分を受けた者または勤務態度が著しく
不良な者に対しては、賞与を減額して支給または支給しないことがある。
(付則)この規定は、平成〇〇年◯月◯日より施行する。
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■職務分掌とは
職務分掌とは、以下のように各部門や従業員の役割と責任を決めることです。
1.企業で行われている職務の内容、遂行方法、難易度、重複
(一つの職務を複数の従業員が担当しているなど)を把握する
2.職務の担当部門を決定する
3.職務を遂行するための職位ごとの権限を決定する
4.決定した内容を文書化し、それに従って活動する
部門とは経営企画部、総務部、経理・財務部などを指し、職位とは役員、部長、課長などを指します。
職務分掌では、部門が担当する職務、部門の構成員の職位に応じた権限を決めていきます。
各部門の予算に関する職務分掌のイメージ図では予算に関する職位ごとの権限を同じにしており、
どの部門も課長が予算案を立案し、部長と担当役員の審査を経て社長が承認することにしています。
予算は各部門で共通する職務ですが、人事部の「人材採用」のように部門特有の職務についても、イメー
ジ図のように担当部門と職位ごとの権限を決めていきます。
中小企業では、各部門の職務や職位の権限の境界が曖昧なことが少なくありませんが、職務分掌を進めて
いくことで規律が生まれ、部門間のけん制機能も働くようになります。
・組織規程:企業という組織の機構を明らかにする規程
・職務分掌規程:各部門が担当する職務を明らかにした規程
・職務権限規程:職務を遂行する際の権限を明らかにした規程
□職務分掌規程のひな型
第4条(組織図):別表(1)「組織図」
第13条(職務権限事項):別表(2)「職務権限表」
小規模会社の労務管理 |
■社長と従業員のパワーバランスの変化 「人は大事」と言ってはみても、実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、 どちらかといえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。 もちろん、社長(もしくは上司)が持っている「感覚」はとても大事なもので、多くの 問題が、社長のいままでの経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実 です。 このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「お互い様」「家族」 「仲間」といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。 ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス・雇用契約」といった意識が強くなり、 それについていけない経営者が問題を処理しきれない、ということが多くなっている ように感じます。 例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、従業員 が権利としての主張を始めたり、「あ・うん」の呼吸でできていた休日出勤や残業に 対して、従業員が割増貸金を請求してきたり、といったことが起こっています。 「そのような要求を開いていたら経営が成り立たない」と経営者は主張します。 ところが、コンプライアンス・雇用契約の観点からみると、従業員側に主張する「根拠」 があるケースが多いのです。 つまり、社長の「そのくらいは我慢してよ、その代り雇って給料を支払っているんだから」 という意識と、従業員の「法律上の権利を主張して何が悪いの?」という意識とのぶつかり 合いに変わってきているのです。 □人を雇うルールと責任 従業員を雇うと生じる責任とは何でしょうか? 順番に確認していきましょう。 1.拾料(賃金)をきちんと払う責任 当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。 給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。 ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。 この決まりを「貸金支払い5原則」といい、次のものをいいます。 ①通貨で払う(ドルはダメです) ②直接払う(本人以外に支払ってはダメです) ③全額払う(残業代を支払わないのはこれに反します) ④毎月1回以上払う(日払い、週払いは問題ありません) ⑤一定期日に払う(支払日は土払ず一定日にしなければなりません) 2.安全で健康に働いてもらう責任 ヘルメットや安全靴をはかせることだけが責任ではありません。 会社の施設、備品などを整備することや、温度、湿度、照明といった職場環境の整備、 健康診断の実施なども責任です。 近年では、体だけでなく心の健康を守ることも重要になっています。 長時間労働や、特定個人に過重な負荷がかかるような仕事の与え方も、間題になる ケースがありますので注意が必要です。 3.働き続けてもらう責任 一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。 実は、法律上は「解雇権の濫用」といって、解雇をするには誰もが納得するような 理由が必要です。 しかし、現実には難しい問題です。 最低でも、従業員が納得できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。 4.書類を作成する暮任 労働基準法では、「労働者名簿」「貸金台軽」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、 最後に記入してから3年間保管することが義務付けられています。 このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があった 場合に渡す「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就業規則」 などが必要です。 5.公的保険に加入する責任 公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の社長がたまに いますが、公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金 保険」は加入が 義務となっています。 最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される「ねんきん 定期便」によって、加入意識を持ったりするようになってきています。 さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけ にはいかない流れになっています。 □採用前に決めておくべきこと 働いてもらう時に守ってもらいたいルールと、会社が守るルールを「労働条件」といいます。 労働条件を貸金、労働時間、休日休暇、勤務場所、契約期間、退職、公的保険の加入だけと 考える人もいますが、実はそれだけではありません。 例えば、「喫煙ルール、服装、整理整頓、タイムカードの打刻方法、休暇の申請方法、 出張旅費の精算方法」なども労働条件になるのです。 多くの会社では、このあたりのルールがあいまいなために、転職してきた従業員が 前職でのルールで行動してしまい、小さなトラブルが多発するということも少なく ありません。 これらを明確にするのが「就業規則」です。 労助基準監督署に堤出しなければいけないから作成するのではなく、会社としてどの ようなルールで働いてもらいたいかを明確にするために作成することがとても大事 なのです。 社長の多くの不満は、「どうしてあいつは◯◯なんだ。うちでは△△なのに」という ことの積み重ねだと思います。 そういった不満の解消のためにも、従業員に堂々と見せて話ができる就業規則で 「労働条件」をお互いに確認することが大切になるのです。 ところで、知りたくなるのが「うちは、最低の条件でしか人は雇えないが、どの条件が 最低になるのか?」ということだと思います。 そこで法律で決まっている最低限の条件をサンプルで作ると、次のようになります。 ①勤務時間 1日8時間 ②休憩時間 45分 ③休日 週1日 ④給料 時給1041円(東京都の最低賃金:2021年)、昇給なし、手当なし、通勤 手当なし、賞与なし、退職金なし ⑤残業代 法定通り ⑥有給休暇 法定通り ⑦定年 60歳 ただし65歳までの再雇用あり(2025年4月から、定年制を採用 しているすべての企業において65歳定年制が義務化) ⑧給料支払い 月末〆 翌月15日払い 今まで常識だと思っていた1時間休憩や通勤手当、賞与、慶弔休暇もありません。 この条件で雇っても法律違反にはならないのです。 もちろん、この条件で人が採用できるのか、という問題は残ります。 要するに、この最低条件をスタートとして、会社としての条件を肉付けしていけば よいのです。 ここで注意しなければいけないのは、条件として書いてしまったら、実施しなければ ならないということです。 「書いてあるけどまあそこは……」というわけにはいかないので、よく検討して いただきたいと思います。 また、次のような肉付けは問題があります。 例)給料50万円 有給休暇なし いくら給料がよくても有給休暇なしは法律の最低条件に満たないことになるので認め られません。 □有給休暇の考え方のツボ ここで少し、有給休暇の話をしていきたいと思います。 有給休暇を与えると会社が成り立たないという話をよく開きます。 「うちには有給休暇はない。取るやつはクビだ!」という管理をしている会社がまだまだ 見受けられます。 しかし、有給休暇は本人が権利として持っているものですし、取得したことを理由に クビにすれば、会社に勝ち目はありません。 そこで、有給休暇の特性をよく理解したうえで従業員との関係を築きあげていかなければ ならないのです。 <有拾休暇の原則> ①取得の理由は何でもよい ②許可制にはできない ③買い取れない ④取得したことで不利に扱ってはいけない ⑤2年間有効 ⑥本人が有給休暇を使うといわないと使えない では、会社でできることは何でしょうか? <有給休暇で会社ができること> ①日程変更をいえる(正常な運営ができない場合) ②取得ルールを作れる(10日前に申請など) ③2年間経って無効になった分を買い取れる ④労使協定で一定日は日程を指定して取得させられる(夏休みなどにつけて 長期休暇など) 結局のところ、従業員が「有給を使う」と宣言するかどうかがポイントです。 会社としては事情を説明して理解を得る、逆に本当に休みたいときには気持ちよく 休ませてやるなどして、よい人間関係を作り上げていくことが重要なのです。 □賃金の上手な決め方 採用の際に一番先に頭に浮かぶのが「給料をいくら支払えばよいか」ということだと 思います。 これはとても難しいことですが、基本的な決め方は「相場」「支払能力」を参考に決めて いきます。 ◎相場 ほとんどの場合には、貸金は相場で決まってきます。 従業員もよくわからないので、前職の金額をそのまま希望しているなんてことも多く あります。 相場は折込チラシ、ハローワークの求人情報などを参考にすればよいでしょう。 金額が高いからよい人が来るというわけではありませんが、低すぎると、応募者の検討 にも入らないことになるので、ある毎度の賃金水準は必要です。 ◎支払能力 支払能力を検討する場合に注意が必要なのが、給与額そのものだけで検討しないという ことです。 実際の人件費には次のような費用が隠されています。 ①残業代 ②採用費用 ③社会保険料 ④教育費用 ⑤有給休暇の貸金 ⑥賞与 ⑦退職金 これらを考えていくと実際の会社負担額は、給与の1.5倍から2倍ほどになるはずです。 ここをよく試算しておかないと、予算不足になり、残業代未払いとなるケースが多く 見受けられるのです。 また、中小企業の場合中途採用が多くなります。 そのため、賃金表の作成はあまりお勧めしません。 もちろん、役職や職種ごとの賃金額目安は必要かと思いますが、多くの場合には、人員 不足のために緊急で採用するしかない状況で金額を決めたり、縁故採用のため他の 従業員とバランスの取れない金額での採用を余儀なくされるケースが多いからです。 この場合には長期的に他の従業員とのバランスをとる必要がありますが、とりあえずは、 賞与で調整していくことになります。 場合によっては、給与は少し低めにして賞与を多くし、年間給与額で採用するという やり方が実態に合っている場合もあるので、柔軟に対応していくことをお勧めします。 もう一つ考えていただきたいのは、時給換算による労働価値の再確認です。 近年は、非正規労働者の増加ということでパートなどの時給労働者が増えています。 そこで、月給の従業員は時給に換算すると、いったいいくらになるのかを計算する のです。 パートの3倍の給与を支払っているとしてその金額に見合った仕事を与えているか、 また、与えることができるのかを検証するのです。 冷静に分析すると、今回の採用が正社員の必要があるのかと疑問に感じることや、 現在の従業員の給与水準が適正かどうかを見直すきっかけになることもあります。 □上手な採用の手順とコツ 従業員を募集しても、応募者が少ない、よい人が来ないなど、なかなかうまくいかない ことが多くあります。 応募自体が少ない理由には次のようなものがあげられます。 ①応募しようにも何の会社だかわからない ②給料が安い ③保険がない、または加入できるかわからない ④時間が厳しい、合わない ⑤応募条件が厳しい(年齢、経験、資格) ⑥時期が悪い(大手と重なった、お盆、GW、年末年始) ⑦募集の方法を間違えた(主婦を狙ったのにハローワークで募集など) 給料や時間などは調整のしようがないでしょうが、少なくとも①の何の会社だか わからないということは無いようにしなければなりません。 募集要項や、自社HPなどを工夫して応募者にわかってもらう努力は必要でしょう。 一番簡単なやり方は、他社のマネをしてしまうことです。 短い文章の中に上手に入れている募集広告やHPとうまくリンクしたものなど、自分たち でできそうなものを作ることが大事です。 近年は募集用のHPを作って成果を上げている会社も出てきています。 応募者に対してどのような選考をするかということが次の問題になります。 間違った人を採用しないようにするにはまず、社長がしっかりとした準備をすることが 大事です。 それは次の通りです。 ①何の仕事をさせるのかを決める ②そのために最低必要な能力レベルを決める(最低がポイント) ③絶対に採用しない要件を決める ④前職に惑わされないように、具体的な質問を用意する ⑤入社後にやってもらう仕事の具体的手順をやらせてみる 中小企業にとって必要なのは、社長の指示通りに一所懸命働く、まじめな従業員では ないかと思います。 なぜならば、社長以上に仕事をわかっている人はいないからです。 技術や能力は入社後に教育でカバーするのが本来の形ではないでしょうか。 即戦力で入った中途採用者は確かに短期間で稼ぎ始めるのですが、あくまでも他社の やり方であり、長期的に自社のやり方にしてくれるケースはまれです。 それを理解して採用するのならば問題ありませんが、会社の基幹となるケースは少ない ようです。 □トラブルを防止するために 中小企業の従業員とのトラブルの原因は大きく分けて二つあります。 1.会社のコンプライアンス意識の欠如 これは社長がしっかりと勉強する必要があります。 問題があることを知って、将来的に改善する方向で動かないと、従業員とトラブルに なるたびに法律的に攻められるリスクを持ち続けることになります。 2.契約内容があいまい 社内ルールが整備されていないことにより、契約内容があいまいなまま採用してしまい、 お互いの認識の違いがトラブルに発展するケースです。 例えば、給与30万円と決めた場合、30万円は支給総額なのか、手取りなのか、残業代 を含むのか、基本給だけなのかというところなどは明確にする必要があるでしょう。 特に残業代を含んでの契約の場合、給与のうちいくらが残業代なのか、何時間分なのかを 明確にする必要があります。 もう一つの例としては成果です。 どういう成果を会社が求めるのか、その成果をどのように検証するのか、その結果 どういう賞与や昇給になるのかはとても大事です。 社長は「あいつは働かない」といい、従業員は「自分はすごい成果を出している」と いう、そんな話はよくあります。 ほとんどの場合、「何を」が抜けているケースが多いようです。 社長は部下指導でチームとしての成果を求めていたのに、本人は自分の成果だけを 考えていたなどというケースです。 トラブルは会社も従業員も望むものではありません。 トラブルを未然に防ぐには、会社の努力が重要です。 厳しい時期だからこそ、コンプライアンスと雇用契約をしっかりする意識が重要なのです。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
中高年社員の雇用管理の改善 |
■中高年社員の流動化 少子高齢化が進む一方で、大企業のリストラ(退職勧奨) や選択定年制、早期退職優遇制度 の普及などによって、専門的な知識や豊富な経験を持った中高年齢者の流動化が進んで います。 こうした動きは、一方で、中小企業の経営幹部や中間管理職をはじめとする確かな人材の 補給源が生まれていることを示しています。 いわば、中小企業にもすぐれた人材確保のためのチャンスが到来しているわけです。 しかし、こうした動きがあるからといって、どの中小企業でも容易に優秀な中高年齢者を 確保できるわけではなく、中高年齢者の確保のためのしくみを構築し、適正な雇用管理を 実現することが不可欠です。 そこで、ここでは、こうしたチャンスをものにするために、中高年齢者の確保と有効活用に 必要な雇用管理の改善モデルについて見ることにしましょう。 □中高年齢者の雇用管理の適正化と受け入れ体制の整備 中高年齢者を新しい人材として新しく雇用し、有効活用するためには、キャリア、就業目的、 体力等の個人差が大きい中高年齢者一人ひとりの特性を正確に把握し、ミスマッチを最小限 に抑えることが大切です。 また大企業など、他社での勤務経験者を中途採用したときは、一刻も早く新しい職場(職務) に馴染めるように、中高年齢者自身の意識改革を図るとともに、職場の受け入れ体制を充実 させることが大切です。 では、常用労働者と臨時・パート労働者に分けて、中高年齢者を採用する際の留意点について 見てみましょう。 1.常用従業員の雇用管理の改善 (1)経営幹部や中間管理職 中高年齢者を経営幹部や中間管理職として雇用し、戦力化するためには、会社の 沿革や当面の経営方針、業績などの現状と問題点などをよく説明し、全体像をよく つかんでもらうようにするとともに、過去の経験にこだわらないように注意をして おくことが大切です。 (2)専門スタッフや一般事務職、営業職など 専門スタッフや一般事務職、営業などのいわゆるホワイトカラーを雇用する場合には、 能力や過去の経験、特性などを見極めて適切な対応をするようにします。 そして、ホワイトカラーから転職する中高年齢者に対しては、特に過去の栄光や プライドにこだわらないよう意識改革を図り、同僚との和が保てるようにすることが 大切です。 (3)技能労働者 現業の技能労働者を雇用する場合には、健康や体力の状態が職務に耐えられるか よく確かめるとともに、賃金や労働条件について相談して決めることが大切です。 もちろん、最低限の技能教育も欠かせません。 2.臨時・パート等で雇用する補助作業者等の雇用管理の改善 中高年齢者を現業の補助作業者として雇用する際には、健康や体力についてよく確認 するとともに、家庭環境などの情報も掌握しておくことが大切です。 またパートタイマーや嘱託などの変則的な雇用形態をとる場合には、雇用形態に応じて 就業規則を整備しておくこと、採用時には「労働条件通知書」を交付して、契約期間や 労働条件を個別に明確にしておくことが大切です。 また、はじめて転職する中高年齢者を迎える場合には、既存の従業員との間に円滑な 人間関係をつくり、一日も早く新しい職場に適応できるようにするために、職場の 受け入れ体制を確立することも大切です。 具体的には、職場歓迎会や職場生活のサポート体制をつくるほか、職場懇談会や ミーティングで経歴等を紹介するなど、新人を温かく迎え入れる職場風土づくりを 心掛けたいものです。 3.雇用契約の期間に工夫 労働基準法改正によって、期間を定めて雇用する場合には、 (1)原則的な契約期間は従前どおり最長1年 (2)高度専門職等の者については最初の契約期間のみ3年、更新後は1年 (3)60歳以上の者については3年(更新後も同様) というように、契約期間の 最長年数が改正されました。 そこで、幹部・管理職として中高年齢者を中途採用する場合は、期間の定めの ない契約とし、高度専門職の者や技能者、一般事務職については、適切な契約 期間を定めて雇用契約を締結するなど、雇用期間の設定にも工夫をすることが 大切です。 □中高年齢者の意識改革と活性化モデル 中高年齢者は、一般に多様な職業経験や人生経験を持つことから、キャリア、能力、 考え方などに個人差が大きく、ときには、「過去の実績にすがる」とか「プライドが高い」、 「頑固である」などとマイナス特性が指摘されることもあります。 そこで、中高年齢者を新規雇用したときは、意識改革のための教育を繰り返し行うことが 大切です。 その際、活性化研修を行うとよいでしょう。 □適職開拓(職務開発)と職務再設計モデル 企業によっては、経営幹部や中間管理職以外にも、中高年齢者向けの職務や職域があって、 すでに多数の中高年齢者が働いている場合があります。 こうしたところでは、中高年齢者をより戦力化するための取り組みに心掛ければよいわけ ですが、多くの企業では、若年・中堅層向けの雇用管理システムをとっているため、 中高年齢者の働く職域が非常に狭くなっていることが少なくありません。 そこで、こうした企業では、中高年齢者の雇用を促進するため、適職開拓(職務開発)や 職務再設計を行って、新しく中高年齢者向けの職務・職域を開発することが大切となって います。 中高年齢者活用のために職務開発や職務再設計を行う際には、図②に見るように、「個人」 の諸条件と「職務」の要件の両方を分析・評価し、上手に適合させることが大切です。 職務開発や職務再設計を具体的に行う場合の手順は次のとおりです。 ①中高年齢者一人ひとりのキャリアや諸条件を明らかにする。 ②仕事の内容や進め方を分析して中高年齢者に適した職務を取り出し、中高年齢者 向けに改善する。 ③中高年齢者と若年・中堅層との間の仕事の分量を見直して再振り分けをし、世代間 のワークシェアリングを進める。 ④中高年齢者の再教育を行い、職務適応能力を高める。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
職場の規律向上策 |
■規律の守れない会社 会社のレベルを評価する1つの方法として、 その会社の規律の状態を見て判断することが 出来ます。 ・ 朝礼(服装、態度、整列の仕方) ・ 会議のはじまりの時間 ・ 職場の5S と、ほんの数項目みただけで大体の判断がつきます。 棚卸1つ例にとってみても、整理整頓が悪いから時間がかかって不正確な結果しか出て 来ません。 規律の守れない会社は基本的なことを軽視する風土があります。 整理整頓というと“そんなもの出来てなくても成績を上げればよいじゃないか”という 雰囲気が上から下まで浸透しています。 前述した棚卸が不正確ならば月次決算は誤差を生じて来ます。 朝早くから夜遅くまで一生懸命働いて業績は上らず、業績が上らないのは環境のせいと 思っているから社員はマンネリ症状を呈しています。 今一度原点に戻って見直してみる必要があります。 □ケーススタディー(A社の事例) 1.決めた事を守れない、やり切れない 規律徹底の第一歩であり、かつ最もむずかしいことが、「決めた事を、必ずやり切る」 ことです。 A社は、社員60名程の中堅商社です。 ここ数年間、会社全体のレベルアップを 掛け声に、いろいろな事に取り組んできました。 しかし一向に、変化の徴しが見えない。 むしろ、わが社は何をやってもダメだ、というあきらめムードが見え始めていました。 幹部・社員からの声は、「何を決めても、いつのまにかうやむやになり、元に戻って しまう」といったものでした。 そんなやさき、中堅社員のM係長がある外部のセミナーに参加、その報告の中で、 (1)「決めた事は確実に守る」社風づくりが大変大事な事であるにもかかわらず、 わが社は立ち消えのケースが多い。 (2)「決め事を守る」体質づくりのためには、 足元の細かい事からの徹底に取り組む ことの方がよい。 (3)自分としては、「電話を受ける際に、自分の名前を名のる」ことの、再度 徹底に取り組みたい。 その理由は、電話応対に対するトラブル・クレームが多く、一向に減って いない。 自分の名前を名のることにより、それぞれの責任意識が高まり、かつお客様 からも安心していただけると思われる。 と提案してきました。 これを読んだ社長は、早速幹部会議で発表、再度の取り組みを指示するとともに、 M係長を実行委員長に任命しました。 2年程前に取り組んだものの、ほとんど実行されずに終ってしまったものを、再度 取り上げようとしたものです。 社長としても、今回のM係長の提案をキッカケに、新しい動きが起こることを期待し、 今度こその思いもあり、熱の入れ方も今までとちょっと違っていました。 幹部会議の雰囲気としても、現状打破のために皆でM係長を盛り立てよう、という 方向が確認できました。 翌日から各部門より委員を選び、スローガンをつくったり、ポスターを貼ったり、 朝終礼等で呼びかけるなど、実行委員は精力的に活動を始めました。 □ケーススタディー(N社の事例) 1.先ず、基本動作の徹底から取り組んだY営業所 N社は、営業所を5ヵ所程に持つ、地場の商社。 T所長は本社からY営業所へ所長として就任したばかり。 Y営業所は規模は全社最大の営業所ですが、業績は平均的で、可もなく不可もなくと いった状態でした。 T所長が所員一人ひとりの動きを観察してみると、ムダが実に多い。 皆忙しそうに動いてはいるが、成果を生む動きになっていない。 さらに注意して見ていると、モノを探していたり、決め事が守られぬために、また 余計な新しい仕事が生まれていたりで、実に効率も悪い。 T所長は、まず体質を変えること、そのためには、いきなり業績向上策に取り組む前に、 所員の日常の「基本動作」の徹底から取り組む必要性を強く感じました。 そうなれば、今度はお客様からの反応が変わります。 基本動作を徹底するには、ポイントが2つあります。 ひとつは所長自身のリーダーシップ。 指示や命令として出したことは、絶対に実行させること。 これはウラ返せば、できそうにない事は言わぬことでもあります。 したがって、もうひとつのポイントは、まず皆がその気になれば実行できる簡単な 事から取り組み、それをやり切ることです。 Y営業所の現状を見た場合、取り組むべきテーマは「整理整頓」というのが、T所長の 結論でした。 ただし一口に整理整頓といっても幅が広い。 具体的なテーマに絞り込んで取り組むことにしないと、体質改善のキッカケになりません。 そこで、T所長がまず最初に取り組んだことは、「帰る時は、机の上に一切物を置かぬ こと」の1点に絞りました。 他に、物の見方・考え方等は折りに触れて話すことはあっても、具体的な指示としては、 これだけでした。 しかもT所長は、このことが全員実行できるまでの3ヵ月間は、毎日のように言い つづけ、とうとう完全に実行されるまでになりました。 この過程を通じ、所員に「今度の所長は、言った事は必ず実行させる人だ」との 感を強く印象づけることにも成功しました。 □服務規律 服務規律とは、企業秩序を維持するために従業員が守るべき義務やルールのことです。 服務規律をおろそかにしてしまうと、社内秩序が乱れて、企業は成り立たなくなって しまいます。 服務規律は大きく次のように分類することができます。 (1)勤務に関する規律 (2)会社施設及び会社財産に関する規律 (3)秘密及び信用の保持に関する規律 服務規律は、できるだけ会社の実態に沿った内容にする必要があります。 一般的な雛形の服務規律では実際に運用する際に、上手く運用できないことがあります。 業種やその時代環境によって、必要な服務規律のかたちは異なるので、定期的に服務規律 をメンテナンスする必要があります。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
卸売・小売業の安全衛生管理 |
■商業と安全管理 スーパーマーケットやホームセンターなどが属する商業卸売業・小売業各種商品卸・小売業 (以下商業)における労災事故(休業4日以上の死傷災害)は年間に1万5000件以上も 起きています。 その4分の1を占めているのが通路などでの「転倒」によるもので、以下、階段や高所からの 「墜落・転落」、「動作の反動・無理な動作」によって起こる腰痛などの故障、スピードの 出し過ぎや、わき見などによる「交通事故」と続き、この4種の事故だけで全体の約7割を 占めています。 なかでも死亡災害など重大な結果につながりやすいのが「墜落・転落」ハシゴ、踏み台、 階段、倉庫2階の作業床の端などからの墜落や転落事故が多く、また、出張先での倉庫作業や 脚立やいすを使っての照明器具の清掃、植木の手入れなど、不慣れな作業を行ったことに よる事故も報告されています。 商業の場合、危険を伴う作業はそれほど多くありませんが、たくさんの種類の作業があり、 また、労働者の入れ替わりが多いために、わずかな不注意や不慣れが大きな災害へとつながり ます。 業種別の死傷者数(死亡および休業4日以上) 出典:安全衛生情報センター □安全衛生管理体制の整備 安全管理は、労働者一人ひとりが自主的に行動しなければ効果がありません。 それと同時に、監督者(経営者)はつねに安全に気を配る必要があります。 そこで重要となるのが「安全衛生管理体制」です。 これは労働安全衛生法に定められているもので、業種や規模によって管理者などの選任が 義務づけられており、それを守らずに重大な労災事故が起きてしまった場合には、安全 配慮義務違反として損害賠償責任を問われることになります。 事業場における安全衛生管理体制を確立し、それぞれの担当者が労災防止のための職務を きちんと運営していくことが重要です。 商業の場合、規模(労働者数)に応じて次表にある担当者を選任しなくてはなりません。 それぞれに実務経験等の資格要件が設けられており、担当者を選任したら労働基準監督署 に届け出ることになっています(安全衛生推進者、衛生推進者については労働者への 周知のみ)。 ※卸売業等とは、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種 商品小売業、家具・建具・什器等小売業、燃料小売業です。 なお、労災事故防止についてさまざまな対策を行うために、労働者の意見を反映させる 必要があることから、労働者が50人以上いる事業場には衛生委員会の設置が義務づけられて います(100人以上の卸売業等は安全衛生委員会を設置)。 (安全)衛生委員会とは、労働者の危険防止、健康障害防止のための基本対策や労災の 原因調査、再発防止対策などを調査審議して、事業者に対して意見を述べる機関です。 □現場における安全管理 労災事故を発生させないためには、それぞれの作業場において、災害の要因を見つけだし、 優先順位をつけて対策を講じることが重要です。 具体的には次のような流れで取り組んでいきます。 1.リスクアセスメントの実施 リスクアセスメントとは、作業における危険性や有害性を特定し、それによる災害の 程度とその可能性からリスクの高さを見積もる作業のことです。 設備や職場環境、作業方法などを一つひとつ丁寧にみていき、作業場内で起こり得る 災害リスクを発見したら、優先順位の高いものから対策を施し、リスクの除去・低減 措置を行って労災事故防止につなげます。 作業場では多種多様な作業が行われ、また、新たな作業方法の採用や変更、機械化 などが進んでおり、それらの実態や特性に合った安全衛生対策を行っていく必要性が 高まっています。 2.安全な作業方法の確立 (1)転倒災害の防止対策 □階段、通路などを滑りにくい材質のものにする。 □通路や床面のくぼみや段差をできる限りなくす。改善が難しい場合には段差の 表示をつける。 □整理整頓を徹底し、通路、階段には物を置かないようにする。 □作業をするのに必要な明るさを確保する。 □通路の水濡れはすぐに拭き取る。 □作業靴は滑りにくく安定したものを履くよう徹底する。 □荷物の運搬についてのルールを定める。(台車への積載の仕方、立ち位置、 置き場所など) □店舗内に立ち入るすべての作業者にルールを周知する。 (自社の労働者以外に、テナントの業者、運送業者などにも連絡をして調整を図る) □油脂で滑りやすい食品売り場などには、吸湿性のあるマットを敷くなどの措置 を講じる。 □商品の陳列作業をする際、空の段ボールを床に置かないようにする。 (空の段ボールは足元には置かず、整理しながら作業をし、決められた場所に 集積する) (2)墜落・転落災害の防止対策 □高所の床の端には墜落防止のための手すりなどを設置する。 □階段には手すりや滑り止めを設置する。 □踏み台や脚立は平らな場所で安定して使用するよう徹底する。 □いすを踏み台代わりにしないよう徹底する。 □トラックの荷台などでは無理な姿勢で作業したり、飛び降りたりしないよう 指導を徹底する。 (3)動作の反動・無理な動作による腰痛などの予防対策 □中腰、前屈など無理な姿勢で長時間の作業をしないよう指導を徹底する。 □作業開始前には腰痛予防体操をするよう指導する。 □重量物は1人で運ばせず、できるだけ複数人で運ぶようにする。 □荷物はできるだけ体に近づけてゆっくり持ち上げるよう指導する。 □腰部に著しい負担がかかる作業に従事する労働者には、腰痛予防についての 安全衛生教育を行う。 (4)交通事故の防止対策 □交通労災防止担当管理者を選任し、安全運転の励行と過労運転をさせない ようにする。 □道路状況、所要時間、制限速度などを考慮し、無理のない運転を心掛けるよう 徹底する。 □自動車運転者には定期健康診断を確実に実施し、適切な健康管理を行う。 □災害事例、ヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、ヒヤリとし、 ハッとした事例)などを集めて注意喚起をする。 □交通ルールを守り、自分とその周辺の人の安全を最優先する気風を育てる。 □運転中の携帯電話使用の禁止を徹底する。 (5)切れ・こすれ、はさまれ・巻き込まれ事故の防止対策 □スライサーなどの食品加工機械に食材を直接手で押し込んだり、引き出したり しないよう教育・訓練および監視を徹底する。 □スライサーなどの食品加工機械の清掃は、機械を止めてから行うことを徹底 する。 □食品加工機械については安全防護措置を講じ、正しい作業手順の遵守を徹底する。 □包丁は、よく研ぎ、十分に教育・訓練を受けてから取り扱わせるようにする。 □刃物類は、使用後すぐに所定の場所に保管するようにする。 3.安全衛生教育・安全活動の実施 労災事故の多くは、採用後、間もなくだったり作業経験の浅い労働者に多くみられます。 労働者を新たに雇い入れた場合や、作業内容を変更した場合には、適切に安全衛生 教育を実施し、作業手順の遵守を徹底しましょう。 作業に不慣れな新人はもちろんのこと、すべての労働者に対して、安全に作業する ことの大切さを教育することはとても重要なことです。 また、職場の安全衛生に対する意識や責任感を高めるためにも、社内の安全衛生管理 体制を機能させることも大事です。 たとえば、安全管理者が定期的に職場を巡回し、安全作業を呼びかけながら状況を確認 することや、安全朝礼や安全ミーティングを行い、一人ひとりの意識を高めることなどが 労災防止につながります。 4.健康診断の実施 常時使用する労働者に対しては、雇い入れ時および1年以内ごとに1回の定期健康診断を 実施します。 なお、深夜業などに従事する労働者に対しては6カ月以内ごとに1回行います。 最近の傾向として、百貨店、総合スーパにおける営業時間の拡大、店舗の休業日の減少 による長時間労働などが原因で健康面に支障を来す労働者が増えています。 長時間労働者(時間外労働が月100時間)に対しては、医師による面接指導も行う ようにしましょう。 安全管理においてもっとも重要なのは、基本的なことをいかに忠実に、手を抜くことなく 遂行するかです。 前記の対策を組み合わせながら、労働者の安全に対する意識を高めて、労災事故の危険性 を低減していくことが大切です。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
労災保険の基本 |
■労災保険の目的 労災保険は、業務上の災害(以下「業務災害」 という) と通勤途上の災害(以下 したがって、その傷病等が業務上の事由で起きたものか、あるいは通勤途上に起きた 「労災」という言葉を知らないビジネスパーソンはおそらくいないでしょう。 しかし、労災保険制度の内容は、意外と知られていません。 「会社が労災を認めてくれない」という話を聞きますが、これもその現れとい えるでしょう。 どうかは関係ないのです。 労災保険は労働者を保護するために、国が直接、被災労働者やその遺族に対して、 制度でもあるのです。 事業主には、労働者の業務上のけがや病気に対して、一定の補償義務が課されています。 られており、これを守らなければ罰則の適用対象となります。 労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。 小さな負担で大きな補償を得られる制度と言えるでしょう。 労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。 そこで、それぞれの認定基準について、見ていきましょう。 業務災害とは、業務上の負傷、疾痛、障害、死亡をいいます。 業務災害の認定は、「業務起因性」と「業務遂行性」という2つの要素から判断されます。 【業務災害の認定】 ●業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること ●業務起因性:傷病等とその業務との問に因果関係があること 業務上の負傷については、次の3つのパターンに分けることができます。 所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない限り、 なお、次の場合には、業務災害とは認められません。 ●労働者が故意に負傷した場合 ●労働者が個人的なうらみなどにより暴行を受けて負傷をした場合 昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるものの、働いていない場合はどう 仕事が原因で負傷をしたわけではありませんので、基本的には、業務災害とは認められ しかし、施設や設備の欠陥などにより負傷をした場合には、業務災害と認められます。 出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情が ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や恣意的行為があった 通勤災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。 そもそも通勤中は、労働時間ではありませんので、何をするのも労働者の自由です。 帰りに映画を見たり、食事をしたり、その行動パターンはさまざまでしょう。 にはいきません。 そこで労災保険では、保護対象とする「通勤」の範囲を定めています。 「通勤」とは、就業に閲し、次の移動を、合理的な経路および方法により行うことを 業務の性質を有するものを除くものとされています。 ①住居と就業の場所との間の往復 ②就業の場所から他の就業の場所への移動 ③単身赴任先住居と帰省先住居の移動など なお、業務の性質を有する場合には、一見、通勤のような場合でも、業務災害と 例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合などは、 労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の間と ただし、労働者が通常、通勤途中で行うような「ささいな行為」は、逸脱・中断とは ・経路上の近くにある公衆便所の使用 ・経路の近くにある公園での短休息 ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購入 ・駅構内でのジュースの立ち飲み また、「日常生活上必要な一定の行為」については、逸脱・中断の間は通勤とは ・日用品の購入その他これに準ずる行為 ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業 ・学校数育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育 ・選挙権の行使その他それに準ずる行為 ・病床又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為 ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、 通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的に 通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」 られます。 用いられる交通方法であれば、いつも利用しているかどうかにかかわらず 「合理的な それでは、もし、労働者が仕事中あるいは通勤途上でけがをした場合、どんな補償を 労災保険には、次のとおり、さまざまな保険給付があります。 そのため、各保険給付の名称には、「補償」という言葉は使われません。 葬祭給付を除いて、業務災害に関する保険給付の名称から「補償」の文字を取り除くと、 1.療養補償給付/療養給付 労働者が労災に遭って療養が必要なときには、治療費などが全額補償されます。 労働者が療養のために会社を欠勤して給与がもらえないときに、生活費として支給 労働者が療養を開始してから1年6カ月経過しても病気やけがが治らず、その症状が 病気やけがが治ゆ(症状固定)したあと、一定の障害が残ったときには、年金または 労働者が亡くなったときには、残された遺族に対して、年金または一時金が支給され 労働者が亡くなったときに、葬儀を行った人に対して、一時金が支給されます。 一定の障害により「傷害補償年金/傷害年金」または「障害補償年金/障害年金」を す。 8.2次健康診断等給付 定期健康診断などの結果、肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目すべてに異常の所見が そのほか、社会復帰促進等事業として、一定額の特別支給金、特別年金、特別一時金 前述の保険給付の中でも、特に請求の多い「療養補償給付/療養給付」と「休業補償 1.療養補償給付/療養給付 労働者が労災に遭ったときには、病気やけがが「治ゆ」するまで、治療費などが 労災保険における「治ゆ」とは、これ以上治療を続けても、医療効果が期待できず、 療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の給付」の2つの種類が られる現物給付です。 医療機関がないなど、労災指定医療機関以外の病院などで治療した場合に、その治療費 できない場合に限られています。 療養の給付の具体的な給付内容は次のとおりです。 ②薬剤または治療材料の支給 ③処置、手術その他の治療 ④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑥移送 療養の給付請求書(様式第5号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の 「療養の費用の給付」の手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養の 「休業補償給付/休業給付」は、休業の4日目から支給されることになります。 業務災害の場合、休業した最初の3日間については、労働基準法上の休業補償として、 として特別支給金が上乗せ支給されます。 それぞれの支給額は次のとおりです。 ●休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数 算出方法は、労災事故が発生した日や医師の診断によって疾病の発生が確定した 直前の締切日から3カ月問に支払われた貸金総額で計算します。 休業補償給付の請求手続きは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を 様式は同一ですので、改めて請求しなおす必要はありません。 もし、休業が長期にわたる場合には、1か月ごとなど、数回にわたって請求すると 労災保険は、本来、労働者を対象とした保険制度です。 しかし、多くの中小企業の経営者は、労働者と同様に仕事をしていることでしょう。 また、労働者であっても、海外派遣者については労災保険の適用がありません。 設けています。 特別加入制度は、全部で4種類ありますが、ここでは「中小事業主及びその家族従事者」 特別加入での中小事業主とは、以下に定める数以下の労働者を常時使用している事業主 ●金融業、保険業、不動産業、小売業……50人 ●卸売業、サービス業……100人 ●上記以外……300人 ②労働保険事務組合に労働保険事務を委託していること 場合には、その人たち全員を包括して加入させなければなりません。 ただし、役員と名のつく人は全員というわけではありません。 労働者と同様に賃金を得ているという人は、労災保険が適用されますので、わざわざ ことができます。 しかし、「2次健康診断等給付」、「ボーナス特別支給金」は受けることができ 行われない可能性があります。 さらに、事故発生日まで遡って特別加入をすることはできませんので、注意が
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労災保険の特別加入 |
■中小企業の社長も入れる労災保険 1.労災保険の特別加入制度とは 労働者を1人でも雇っている事業主は、法人・個人を問わず、労働保険への加入が 義務づけられています。 労働保険とは、仕事中や通勤途中の災害を補償する「労災保険」と失業時に給付を行う 「雇用保険」の総称ですが、いずれも労働者のための保険なので、原則として、社長や 役員などは加入することができません。 労働者であれば仕事中のケガも労災保険で治療することができますが(自己負担ゼロ)、 社長や役員などが仕事中にケガをした場合、労災保険は適用されず、治療費は全額負担 になります。 会社として健康保険にも加入していると思いますが、仕事中のケガは対象外なので 健康保険を使うことができません(例外として、被保険者5人未満の適用事業所で あれば健康保険を使うことができます)。 中小企業においては、社長やその家族が労働者と一緒になって同内容の仕事をしている ケースも多く、仕事中にケガをする危険性が高いといえます。 そのため、中小企業の社長などに対しては、任意で労災保険に加入できる制度が設け られています。 それが労災保険の特別加入制度です。 社長などが仕事中にケガをした場合、労災保険が利用できれば、無料で治療を受け られるほか、休業期間中の補償を受けられるなどのメリットもあります。 2.特別加入できる事業主とは 中小事業主が特別加入する場合(「第1種特別加入」といいます)、加入要件として 業種ごとに常用労働者数が決められており、それ以下であれば加入することができます。 なお、特別加入する場合、社長だけでなく家族従事者、役員も一括で加入することに なります。 なお、第1種特別加入以外にも、建設業の一人親方や特定農作業従事者、家内労働者 などが加入できる第2種特別加入、海外に派遣される労働者を対象とした第3種特別 加入があり、加入要件はそれぞれ異なります。 3.特別加入をするには 特別加入をするには、厚生労働省が認可した「労働保険事務組合」に委託して、特別 加入の手続きをする必要があります。 労働保険事務組合とは、事業主の委託を受けて労働保険の事務処理を行う団体で、 おもに事業協同組合、商工会議所、商工会などがその運営をしています。 中小企業の事業主などが特別加入する場合、次の要件を満たしている必要があります。 ・雇用する労働者について、労働保険の保険関係が成立していること ・労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託していること なお、特別加入する者が次の特定業務に従事する場合には、「特別加入申請書」に業務 歴を記入しますが、特定業務に従事した期間が一定期間を超える場合には、健康診断 結果も提出する必要があります(平成23年度から、健康診断については、労働局長が 委託した医療機関であれば、都合のよいときにどこで受診をしてもよくなりました) 加入時の健康診断結果が次のような場合には、特別加入が制限されます。 ・すでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が一般的に就労する ことが難しく、療養に専念しなければならないと認められる場合には、特別 加入は認められません。 ・すでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が特定の業務からの転換 を必要とすると認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入 が認められます。 また、特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる 場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがあります。 特別加入の承認日は、申請日の翌日から起算して14日以内の加入希望日となります。 なお、加入後に、加入者の氏名や作業内容などに変更があった場合には、その都度 「特別加入に関する変更届」を提出することになります。 【労働保険事務租合の探し方】 すでに何らかの事業主団体(事業協同組合、商工会議所、商工会など)に加入して いる場合には、その団体が厚生労働省の認可を受けた労働保険事務組合であるか どうかを確認し、認可を受けている場合にはその団体に委託するのがよいでしょう。 事業主団体に加入していない場合には、公共職業安定所や労働基準監督署にある 掲示板、インターネットやタウンページなどから地域の労働保険事務組合をリスト アップし、連絡をしてみるとよいでしょう。 □労災保険料 労災保険料は、労働者に支払った賃金の総額に労災保険料率(1000分の3〜1000分の103、 業種によって異なります)を掛けて算出します。 社長の場合には、賃金ではなく役員報酬であるため、賃金に代わるものとして給付基礎 日額(3500円〜25000円:16段階)というものが定められています。 この給付基礎日額は、労災保険の給付額を計算するときにベースとなるものですが、 加入手続きをする際には、所得水準に見合った適正な額を申請し、労働局長の承認を 受けます。 なお、給付基礎日額は、3月18日から3月31日までの期間中または年度更新の期間中に 変更することが可能です。 特別加入の労災保険料は、給付基礎日額に労災保険料率を掛けて算出します。 たとえば、給付基礎日額が2万円の場合、保険料は、 2万円×365日×3/1000(その他の各種事業の労災保険料率)=2万1900円/年 となります。 年度の途中で新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、その 年度内の特別加入月数(1カ月未満の端数があるときは、これを1カ月とします)に応じて 算定します。 年度の途中で新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、その 年度内の特別加入月数(1カ月未満の端数があるときは、これを1カ月とします)に応じて 算定します。 労働保険は、当年度分の概算保険料が40万円以上でないと分割して納付ができないことに なっていますが、特別加入をすれば、金額にかかわらず分割納付することができます。 なお、労働保険事務組合に加入する場合、保険料とは別に、入会金と月額会費が必要に なります。 □補償の対象 業務上または通勤途上に災害を被った場合に、労災保険から給付が行われます。 なお、会社を2つ以上経営し、ともに特別加入の要件を満たしている場合には、 それぞれの事業ごとに特別加入の手続きをする必要があります(特別加入の手続きを していない事業での災害については、保険給付を受けることができません)。 1.業務災害 特別加入者については、次の①〜⑦に該当する就業中の災害について保険給付を受ける ことができます。 ①申請書の「業務の内容」欄に記載した業務およびこれに直接付帯した行為 (事業主の立場で行われる業務を除く)を所定労働時間(休憩時間を含む) 内に行う場合 ②労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合 ③①または②に前後して行われる業務(準備・後始末行為を含む)を中小事業主 などのみで行う場合 ④①、②、③の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で 行動中の場合 ⑤事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除く)のために 出張する場合 ⑥通勤途上で次に掲げる場合 ア)労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中 イ)突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上 ⑦事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者を伴って出席 する場合 2.通勤災害 通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。 通勤とは、就業に関し、 ①住居と就業の場所との間の往復 ②就業の場所から他の就業の場所への移動 ③赴任先住居と帰省先住居との間の移動 を合理的な経路および方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除く ものとしています。 これらの移動の経路を逸脱・中断した場合は、その逸脱・中断の問およびその後の 移動は通勤となりません。 ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって日用品の購入などやむを 得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は 通勤となります。 3.保険給付の種類 特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合、所定の保険給付に加えて 特別支給金が支給されます。 ◎労災保険で受けられる補償内容 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
政府労災加入と周辺知識 |
労働災害はちょっとした気の緩みなどから発生するもので、完全になくすこと そこで、万一の備えとして労災保険などの法定の労働保険などに加入することが 最近は、過労死やパワーハラスメントに関する事案が労働災害として認定されるなど、 また、製造業など労働災害の発生率が高い業種の場合は、民間保険会社のいわゆる「法 こうした企業の姿勢は、従業員の企業に対する信頼につながると考えられます。
労災保険制度の内容は、意外と知られていません。 労災かどうかを認定するのは、国であり 政府労災保険は労働者保護のために、 また、労災保険は労働者のためだけの 事業主には、労働者の業務上のけがや けがや病気に対する治療費、休業中の 政府労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。 もちろん、労災保険はすべての損害をカバーする「万能な保険」ではありませんが、 政府労災でカバーできない部分を補うのが民間保険会社の任意労災(労災上乗せ) 労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。 なお、私傷病で労務不能となり、給与の支給がなくなってしまった場合には、 業務災害とは、業務上の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。業務災害の認定は、 ○業務遂行:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること ○業務起因:傷病等とその業務との間に因果関係があること 所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない なお、次の場合には、業務災害とは認められない。 □労働者が故意に負傷した場合 □労働者が個人的なけんかなどにより暴行を受けて負傷をした場合 昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるが、働いていない場合に負傷 出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情 ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や恣意的行為があっ 通勤災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。 帰りに食事をしたり、一杯飲んだりその行動パターンはさまざまです。 しかし、こうした私的行為によって発生した災害すべてに、労災保険を適用させる そこで労災保険では、適用対象とする「通勤」の範囲を定めています。 「通勤」とは、社員が仕事をするために 〇自宅と仕事をする場所(会社、訪問先、現場など)の往復 〇合理的な経路、方法(一般的に使われる経路、方法)で移動することをいい ・住居と就業の場所との間の往復 ・就業の場所から他の就業の場所への移動 ・単身赴任先住居と帰省先住居の移動など 例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合 労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の 帰宅途中に「飲み屋で一杯」となった場合は、通常の通勤経路を外れた時点で ・社員が自宅の玄関先の石段を上がるときに、石段が凍っていたため、足を ・アパートの共用階段でつまずき、転落して負傷した場合、アパートの部屋 ・仕事終了後、会社の労働組合の会合に出席し、会合後の帰宅途中でケガを ・仕事の終了後、社内サークル活動をした後、帰宅途中で暴漢に襲われて死 ・経路上の近くにある公衆トイレの使用 ・経路の近にある公園での短休息 ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購入 ・駅構内での飲料水の立ち飲み
・日用品の購入その他これに準ずる行為 ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行わ ・学校教育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ず ・選挙権の行使その他それに準ずる行為 ・病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ず ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している
通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的 通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」 また、道路工事などにより、やむを得ず迂回する場合にも、「合理的な経路」と 鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車、徒歩など、
労災保険の適用を受けるのは、「適用事業所」に使用される労働者です。 適用事業所とは、労働者を一人でも使用する事業所 のことです。 原則として、労働者ではない事業主や一人親方などは労災保険に加入する 一人親方とは、労働者を使用せずに一人で働く状態にある職人などを指します。 中小企業の事業主や一人親方は、一般の労働者と同じように現場に出て働くため、 そこで、労災保険には特別加入制度が儲けられており、中小企業の事業主や一人 特別加入は3種に分かれています。 1.第1種:中小事業主とその家族従事者が対象 2.第2種:一人親方と特定作業従事者が対象 従業員の方が私傷病で労務不能となり、給与の支給がなくなってしまった場合、傷病 傷病手当金は、一定の条件を満たした場合に会社でご加入の全国健康保険協会(協 1)傷病手当金とは 傷病手当金は、健康保険に入っている従業員の方の病気休業中の生活保 なお、任意継続被保険者の方は、原則として傷病手当金は支給されません。 業務または通勤を原因とする病気やけがについては、労災保険が適用され 1.業務及び通勤途上以外の病気やけがのため労務不能であり、療養のた 2.連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと 3.報酬の全部または、一部が支払われていないこと(※) 支給される金額 = 病気やけがで休んだ期間、一日につき、 ・標準報酬日額 =18万円 ÷ 30日 = 6千円 ・支給日額= 6千円 × 2/3 = 4千円 ・支給額= 4千円 ×10日間= 4万円 3日間の待期(※)を除き、4日目から支給されます。 協会けんぽに申請するには、医師の証明が必要になります。 また、上記以外にも細かい条件等があるので、手続きをする際には、支給要
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労働契約書の作成と雛形 |
また、パートタイム労働法では、次のことが定められています。 労働契約を結ぶ際に労働者に以下の労働条件について明示しなければならない。
上記表の「必ず明示」に示された事項については、書面を作成し、労働者に渡す 「会社に定めがある場合に明示」に示された事項については、口頭で説明すること ただし、従業員ごとに異なる労働条件については、就業規則には記載されていない また、特に確認したい事項については、注意を促す意味からも書面を交付するのが なお、労働契約の締結においては、法律 たとえば、労働基準法では週所定労働時 このように、労働基準法やその他の諸法規に違反する労働条件を定めた契約を結 また、法律で定められた労働契約書の保存期間は3年間ですが、後々トラブルが 厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)でも最新情報を提供して
労働契約書の雛形(一般) 労働契約書の雛形(有期労働者向け)
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服務規律と制裁規定 |
会社で働く限り、従業員は職場のルールを 会社の業務内容と従業員に遵守してもらいたい事項を照らし合わせ、就業規則 もちろん、従業員が就業規則に規定された服務規律に違反した場合には、何か よって、服務規律は、会社の業務内容などを勘案して、より具体化しておくことが 第○条(服務規律) 社員は職務の遂行にあたって、次の事項を守らなければならない。 (1) 常に健康に留意し、積極的な態度で就業しなければならない。 (2) 就業時間中は業務に専念し、みだりに職場を離れてはならない。 (3) 職場の整理整頓に気を配り、常に清潔にすること。 (4) 勤務時間中は、定められた業務に専念し、上司の許可なく職場を離れ、ま (5) 職務の権限を超えた専断的行為を行ってはならない。 (6) セクシャルハラスメント、パワーハラスメントまたはこれらに相当する行為に (7) 社内で賭博、暴行、脅迫などを行ってはならない。 (8) 会社の名誉を傷つけたり、会社の不利益になるような言動は一切慎まなけ 業務上の失敗、ミス、クレームは、事実を速やかに上司に報告すること。 (9) 酒気を帯びるなど就業に適さない状態で勤務(車の運転)をしてはならない。 (10) 取引先より金品の授与を受け、または金品を要求することをしてはならない。 (11) 許可なく会社の設備、車両、機械器具、備品その他を無断で使用し、私事に (12) 在職中又は退職後においても業務上知りえた機密を第三者に漏らしては (13) 会社の車両、機械、器具、備品その他を大切に扱い、消耗品や水道光熱 (14) 社員が自己の行為により、会社の設備、車両、機械器具、資材、商品等を (15) 会社施設内において政治活動、宗教活動を行ってはならない。 (16) 会社の許可なく会社施設内において、業務に関係のない集会、演説、文 (17) 会社の許可なく他の者に雇用され、または自営をしてはならない。 (18) 事業場に日常携帯品以外の私品を持ち込んではならない。 通常、企業は職場の秩序を守るために一定の制裁規定を定めています。 備品を持ち逃げした社員などに一定の制裁を課すことは、「職場秩序を乱した しかし、企業が制裁規定を自由に作成できるとなると、制裁規定は企業の一方的 これでは、「職場秩序の維持」という本来の意義にはそぐわないものとなってしまい そこで労働基準法(以下「労基法」)では、企業が定める制裁規定について一定 まず、企業は作成した制裁規定を「就業規則」に定めなければなりません。 就業規則とは、仕事をするうえで労使が守らなければならない約束事を定めた 常時10人以上の社員を雇用する企業は、必ず就業規則を作成し、それを行政 また、就業規則には単に制裁規定があることを記すだけでは足りず、その種類 制裁規定を企業本位に作成するのは問題であることから、「制裁規定にはどん これらの制裁規定の中で、労基法第91条では特に「減給」についてその限度を と、なっています。 前述した減給とは異なり、労基法で出勤停止日数の上限などを定めてはいま また、通常、出勤停止中は従業員に賃金を支給しません。これは「ノーワーク・ また、通常、企業が従業員を解雇する際は解雇予告期間の設定や解雇予告 なお、懲戒解雇に該当する事由(労働者の責に帰すべき事由)としては、次の ・企業内における窃盗、横領、傷害など刑法犯に該当する行為をした場合 例えば、労基法第91条を超える減給の定めをすることはできません。 また、制裁規定があまりに厳しい場合、従業員が企業は従業員のことを信用 制裁規定を作成する際は、このようなことに留意し、従業員に良い緊張感を与え 懲戒とは、職場の秩序維持、正常な業務運営の確保、企業財産の保全、信頼 そして、就業規則に懲戒に関する定めを設けることによって、従業員に業務命令 従業員の懲戒処分は就業規則の制裁規定に沿って行われますので、原則として 制裁規定を作成する際、あまりに厳しいと職場全体の士気低下を招く恐れが 1.けん責、戒告、訓戒:始末書を徴して、 2.減給:始末書を徴して減給する。 出勤停止:始末書を提出させるほか、7日間を限度として出勤を停止し、 3.昇給停止:次回の昇給を停止する処分で、将来に向けた賃金の減額と 4.停職:始末書を徴して停職を命ずる。 5.降格:始末書を徴して降格する。 6.論旨解雇:論旨のうえ解雇する。情状に応じて退職金の全部または一部 7.懲戒解雇:即時に解雇する。懲戒解雇の事由ならびに退職金の取り扱い 従業員が次の各号のいずれかに該当した場合には、その程度に応じ、けん責、減 ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、訓戒にとどめることがある。 1.就業規則、社内規定、通達に違反した時。 2.正当な理由なく、無断で欠勤、遅刻、早退を繰り返した時。 3.正当な理由なく、無断でしばしば職場を離れた時。 4.職務、勤務に関する諸手続きを怠り、または不正に偽った時。 5.素行不良で著しく会社内の秩序または風紀を乱した時。 6.会社を中傷誹謗し、または虚偽の風説を流布宣伝した時。 7.会社に所属する個人の名誉・信用を傷つけた時。 8.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。
第○条(懲戒解雇)例 この場合において、労働基準監督署長の認定を受けた時は、本規則第○条の予 ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、論旨解雇または減給もしくは 1.重要な経歴を詐称して雇用された時。 2.正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかった時。 3.正当な理由なく無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返し、再三にわたって注意 4.正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかった時。 5.故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えた時。 6.会社内において刑法そのほか刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、そ 7.素行不良で会社内の秩序または風紀を著しく乱した時。 8.数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度などに関し改善の 9.相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げたり、職場の環 10.許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品などを使用した時。 11.会社における職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先などより不 12.私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷などによって会社の名誉信用を 13.会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務 14.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。
「懲戒処分通知文書」の書き方
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配置転換 |
■配置転換について 配置転換とは、企業内の異動で、従来業務を変更して、従来の業務とは別の業務に従事 するものです。 労働契約の成立により、使用者は労働者に対して就業の場所、従事する業務に従い一定の 場所、一定の仕事を命じることになります。 また使用者は、労働力の適正配置、業務の能率的な推進、能力開発、勤労意欲の高揚、 その他企業の合理的な運営のために、労働者の就業場所や職務内容を変更する必要性から、 配置転換を命じることがあります。 しかし、使用者は労働者に対し、配置転換を一方的にかつ無制限に命じることができる ものではありません。 判例では、労働契約の締結時の事情、従来の慣行、これまでの職務との内容の違い、 業務上の必要性、変更することにより労働者がこうむる不利益などを総合的に判断し、 当初の労働契約が予想する合理的範囲において配置転換が許されるとしています。 ただし、配置転換を行うか否かについては、一定の合理的な制限はあるものの使用者の 裁量に委ねられているということになります。 □配置転換の目的と効果について 労働力人口の減少に伴い人材確保が困難となっていますが、人材の多能化がより重要視 される時代となりました。 適切な配置転換はそのためにも有効な方法であると考えられます。 配置転換は、全企業の約4割で行われており、すべての大企業で実施されています。 配置転換には次のような目的と効果があります。 ①種々の仕事を経験することにより、それぞれに必要な知識・技術・技能を習得する とともに総合的な調整力や判断力を形成させるなど社員の能力開発、人材育成を 図ることができる。 ②同じ仕事に永年携わることにより生ずるマンネリ化の防止ができる。 ③同じメンバーで仕事をすることにより生ずる職場の雰囲気の停滞を変えることが できる。 ④同じ部門に所属していることにより発生する部門間のセクショナリズムを排除 しやすくなる。 ⑤配置転換により、景気変動等会社を取り巻く環境変化に適切に対応できる。 □配置転換の留意点 ①労働協約や就業規則に、「業務上の都合により転勤を命じることがある」との 定めをしていること。 会社が従業員に配置転換を命じる場合には、就業規則に「会社は業務上必要がある 場合には従業員に転勤を命じあるいは職場又は職種の変更を命じることがある」 旨の規定を設ける。 これにより一般的には配置転換を行うことができると解されています。 配置転換を行うための基本として、まず就業規則に規定を設けておくことです。 労働組合がある場合は、配置転換に関する協約を締結することで、円滑な配点が 促進されるといえます。 配転の規定を定めていない場合でも、労働者の合意が得られれば配置転換は可能です。 また、合意が得られない場合であっても、その配置転換が法令や労働協約、就業 規則に抵触せず、会社側の権利の濫用や信義則違反、不当労働行為に該当するなどの 特別な事情がない限り配置転換を行うことは可能とされる場合もあります。 しかし、就業規則に配転の規定を定めておくことが、円滑に配置転換を行うことの 必須条件といえます。 ②現に配置転換、転勤を行っていること。 就業規則への記載、労働協約等を基本に、現実に配置転換を行っているという事実が あることが決め手です。 一定の実績が積まれた後においては、問題となる配置転換と同程度の配置転換の 実績の有無が、比較考慮され、適法か否かの判断基準のひとつとなることがある ことから、配置転換を考えるときの考慮が必要です。 ③労働契約の締結の際、配置転換をしない等の特約をしていないこと。 入社時の労働契約において、職種を特定した場合には、配転規定を定めたからと いって、この配転規定を根拠に会社の都合だけで、一方的に配置転換が可能には なりません。 職種を変更しようとするときには改めて労働者の同意を得なければならなくなります。 また、採用条件が一定の資格あるいは技術保有者に限定されていた場合には、労働 契約において職種の特定をしなくても採用に際し、職種が特定されたものとして、 以後の職種の変更には労働者の同意が必要になるものと考えられます。 しかし、この場合でも労働者の合意が得られなければ、絶対に配置転換が行えない ということではなく、就業規則における原則的な配置転換の規定を適用し、限定的な 条件により配置転換が可能であるとする考え方もあります。 一般的に有資格者や技術者等の専門職種に携わる人たちは、その資格や技術が生かせる 場所で就労して始めてその専門的な能力を発揮できるものと考えられます。 専門職種従事者についても、あえて配置転換により多能化しようとするのであれば、 就業規則に規定するかあるいは労働契約の際に、一定の範囲内で配置転換があることを 明記しておく必要があります。 職種限定をしないで採用された一般社員の場合は、将来どこの職場でどのような職種に 就くかは、会社に一任するという合意がなされているものと解され、会社は就業規則の 配転規定に基づき、合理的な範囲内での配置転換を命じることができます。 また、入社時の労働契約において、勤務場所を一定の事業場に特定した場合には、 これを一方的に変更することはできません。 勤務場所を変更しようとするときには改めて労働者の同意を得なければならなくなります。 会社が円滑な配置転換を行おうとするのであれば、勤務地を限定する労働契約を 結ばないことです。 ④業務上の必要性に基づくものであること 業務上の必要性に基づくものであるかどうかは、労働力の一般的な必要性が認め られれば足りると考えられます。 配置転換の対象となった者でなければ余人をもって変えがたしというものでないに しても、労働力の適正配置・業務の能率増進・労働者の能力開発・勤労意欲の高揚等 企業の合理的な運営に寄与することが認められれば、業務上の必要性があるものと 考えられます。 円滑な配置転換を行うには、その配置転換にどのような目的・効果を期待して行う のかその位置づけを明確にしておくことが必要です。 また、従業員に対しては、会社が期待する配置転換の目的と効果をあらかじめ 知らしめておくことも重要です。 ⑤不当な目的・動機等がないこと 業務上の必要性の有無に拘わらず、その配置転換が法令に反するなど不当な目的や 動機に基づくものである場合には、その配置転換命令の効力がなくなるだけでなく、 労務管理上にも問題を残すことになります。 □配転に関する入社時の誓約について 労働基準法では採用時に、「就業の場所・従事する業務」については、書面交付による 明示事項とされています。 これは、「雇入れ直後のもので足りる」とされていますが、「将来の就業場所や従事 業務を併せ網羅的に明示することは差し支えないこと」とされています。 将来の転勤や配転に関して最初から書面交付により明示することが望ましいといえます。 採用に際し、従業員が誓約書や念書に「配転を命じられた場合に正当な理由がない限り 拒否しません」との記載をした場合には、特別な効力があるかという問題が生じます。 この点は、就業規則において「会社は業務上必要があれば従業員に対し、配転、転勤を 命ずることがある。 従業員は正当な理由がない限りこれを拒んではならない。」旨の規定をしてあれば、 会社が包括的な人事異動権限を有することを明白に定めたことになります。 それに加えて、その趣旨をさらに確認する意味で、誓約書や念書に定めて明示しておけば、 より強く会社とその従業員間において配転・転勤義務があてはまることになります。 □配転や転勤を拒否できる場合について 配転や転勤は会社に包括的にゆだねられた権限の行使ですが、無制限に会社の転勤や 配転命令が許されるわけではありません。 その命令が合理性がなく権利の濫用に当たるときは無効になります。 次のような場合には従業員の配転・転勤拒否が認められることになります。 ①業務上の必要性のないもの 業務上の必要性によらない配転等は労働契約上の法的根拠を欠くため無効となり ます。 社員の単なる私生活上の問題や会社と社員との労働関係外の問題などを理由とする 転勤命令がこれにあたります。 ②労働条件が著しく低下するもの 労働者の日常生活に影響を及ぼす賃金の相当な減収となるものは配転命令権の 濫用となります。 ③職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しくこえるもの ④不当労働行為に該当するもの 労働組合の組合員や組合活動家、役員であることを理由とする不利益取り扱い、 組合活動に打撃を与え弱体化を意図するものなど組合の運営への支配・介入に 該当するものは無効です。(労働組合法第7条1・3号) ⑤思想・信条その他差別待遇にあたるもの 労働基準法第3条では、使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由と して、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしては ならない。 と定められています。 したがって、これに該当するよ うな配転等も違法であり無効となります。 ⑥技術・技能等の著しい低下となるもの 特に技術系の社員については、技術、技能等は人格財産を形成するので、その 能力の維持ないし発展を著しく阻害するような職種の変更等は配転権の濫用と なります。 ⑦私生活に著しい不利益を生ずるもの 一般労働者が通常予想されるような損害、苦痛を超えて、きわめて著しい場合には 労働者の正当な拒否理由となります。 □勤務地限定で採用された者について 一般的に、労働契約で勤務地・勤務場所が特定されている場合、会社は原則として 労働者の同意を得ることなく、その勤務場所を変更することはできません。 ただし、労働契約で勤務場所等が特定されているのであれば、労働者の同意を得ることに よって転勤を命じることが可能になります。 労働契約の内容として必ずしも明確に示されていない場合には、労働契約締結の経緯・ 過程等について総合的にみて、当事者の合理的意思がどの程度であったかが判断される ことになります。 勤務場所を特定する合意が認められる場合には、合意の範囲をこえて勤務場所を変更する 配転は行えないことになります。 労働者が合意した場合は、当初の労働契約が勤務場所を特定していても、同意を得ることに よって勤務場所を変更することは可能になります。 □育児・介護を理由とする転勤拒否 男女雇用機会均等法により女性労働者も男性労働者と同様に転勤の問題があります。 基本的には女性も配転に応ずることが要求されていますが、平成14年4月1日施行の 育児・介護休業法の改正で「労働者の配置に関する配慮」として「事業主は、その雇用 する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、 その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難と なる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければ ならない。」 第26条 との規定が新設されました。 この規定については次の通達があります。「子の養育や家族の介護を行っている労働者に とって、住居の移転等を伴う就業の場所の変更が、雇用の継続を困難にしたり、職業生活 と家庭生活との両立に関する負担を著しく大きくする場合があることから、労働者の配置の 変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更 により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となる労働者がいるときは、 当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況について配慮することを事業主に義務づける こととしたものであること。」 (平14.3.18雇児発0318003号) メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
従業員の安全と健康を守る安全衛生管理 |
企業には、安全配慮義務という信義則上負うべき義務が課せられています。 安全配慮義務は最高裁判所の判例で定立された概念であり、労働契約法第5条に 会社は従業員の安全と健康について配慮しなければなりません。 そのためには、長時間労働の抑制や危険有害業務の制限、安全衛生管理体制の これらについて規定されている法令はさまざまですが、中心となるのは労働安全衛生 企業は安衛法に基づいて安全衛生管理体制を構築しなければなりません。 選任が義務付けられている管理者(出典:厚生労働省HP)等について 安全衛生管理規程は、企業と従業員が安全で衛生的に働くためのより所となる規程 紹介する安全衛生管理規程ひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の
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書面による労働条件の明示 |
■書面による労働条件の明示 (1)明示すべき時期 明示すべき時期は、労働契約の締結の際です。 期間の定めのある契約において、契約期間満了後、契約を更新する場合も含 また、労働者が出向する場合については、在籍型でも移籍型でも、出向先労 なお、この労働条件の明示は、出向元が出向先のために代わって行うことも ①労働契約期間 なお、書面で明示すべき労働条件については、当該労働者に適用する部分を 例えば、「更新の有無」としては次のように記載します。 また、「契約更新の判断基準」として、次のような内容を明示することが考えら また、更新の基準についても、他の労働条件と同様、労働契約の内容となって (4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休 なお、明示すべき事項が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性 具体的には、基本賃金の額(出来高払制による貸金にあたっては、仕事の量 また、就業規則の規定と併せ、賃金に関する事項が当該労働者について確定 この場合、その就業規則等を労働者に周知させる措置は必要です。 これについても明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、 明示された労働条件は、労働契約の内容となっていますので、もし事実と相違 その要求に応じない場合には、債務不履行を理由に損害賠償請求を請求す この場合の解除とは、将来に向かって消波させることをいいます。 例えば、労働契約の締結にあたり、社宅を供与するべき旨の契約をしたにも 雇入れ後に労働協約又は就業規則が変更され、これに伴って現実に適用さ ①帰郷旅費を負担しなければならない場合 14日以内に帰郷の予定で請求した場合は、使用者の都合によって帰郷旅 また、14日以内に帰郷するとは、14日以内に目的地に向かって現住所を ②帰郷に必要な旅費 「必要な旅費」とは、帰郷するまでに通常必要とする一一切の費用をいい、 また、本人とともに労働者により生計を維持されている同居の親族(事実婚 使用者が帰郷旅費を負担しない場合も同様に罰せられます。
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労災保険(政府労災)の基礎 |
■労災保険 労災保険制度の内容は、意外と知られていません。 「会社が労災を認めてくれない」という話を聞きますが、これもその現れといえるでしょう。 そもそも労災かどうかを認定するのは、国であり労働基準監督署であって、会社が認めるか どうかは関係ないのです。 労災保険は労働者を保護するために、国が直接、被災労働者やその遺族に対して、災害 補償を行う制度なのです。 また、労災保険は労働者のためだけの制度のように思われていますが、実は事業主の ための制度でもあるのです。 事業主には、労働者の業務上のけがや病気に対して、一定の補償義務が課されています。 けがや病気に対する治療費、休業中の所得補償など、その補償内容は労働基準法に定め られており、これを守らなければ罰則の適用対象となります。 労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。 もちろん、労災保険はすべての損害をカバーする「万能な保険」ではありませんが、 小さな負担で大きな補償を得られる制度と言えるでしょう。 労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。 そこで、それぞれの認定基準について、見ていきましょう。 □業務災書の認定が下りる場合 業務災害とは、業務上の負傷、疾痛、障害、死亡をいいます。業務災害の認定は、 「業務起因性」と「業務遂行性」という2つの要素から判断されます。 <業務災害の認定> ●業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること ●業務起因性:傷病等とその業務との問に因果関係があること 業務上の負傷については、次の3つのパターンに分けることができます。 1.事業主の支配・管理下で仕事をしている場合 所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない限り、 業務災害と認められます。 なお、次の場合には、業務災害とは認められません。 ・労働者が故意に負傷した場合 ・労働者が個人的なうらみなどにより暴行を受けて負傷をした場合 2.事業主の支配・管理下にあるが仕事をしていない場合 昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるものの、働いていない場合はどうなる のでしょうか。 仕事が原因で負傷をしたわけではありませんので、基本的には、業務災害とは認められ ません。 しかし、施設や設備の欠陥などにより負傷をした場合には、業務災害と認められます。 3.事業主の支配下にあるが、管理下を離れて仕事をしている場合 出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情がない 限り、業務災害と認められます。 ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や窓意的行為があった場合 には、認められません。 □「通勤」の条件を知る 災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。 そもそも通勤中は、労働時間ではありませんので、何をするのも労働者の自由です。 帰りに映画を見たり、食事をしたり、その行動パターンはさまざまでしょう。 しかし、こうした私的行為によって発生した災害すべてに、労災保険を適用させるわけ にはいきません。 そこで労災保険では、保護対象とする「通勤」の範囲を定めています。 1.通勤 「通勤」とは、就業に閲し、次の移動を、合理的な経路および方法により行うことを いいます。 業務の性質を有するものを除くものとされています。 ①住居と就薫の場所との間の往復 ②就業の場所から他の就業の場所への移動 ③単身赴任先住居と帰省先住居の移動など なお、業務の性質を有する場合には、一見、通勤のような場合でも、業務災害となります。 例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合などは、 業務災害扱いとなります。 2.逸脱・中断 労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の間と その後の移動は「通勤」とはなりません。 ただし、労働者が通常、通勤途中で行うような「ささいな行為」は、逸脱・中断とは なりません。 <ささいな行為の具体例> ・経路上の近くにある公衆便所の使用 ・経路の近くにある公園での短休息 ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購入 ・駅構内でのジュースの立ち飲み また、「日常生活上必要な一定の行為」については、逸脱・中断の間は通勤とは なりませんが、その後の移動は通勤として取り扱われます。 <日常生活上必要な一定の行為> ・日用品の購入その他これに準ずる行為 ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練 (職業能力開発絵合大学校において行われるものを含む) ・学校数育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練 であって、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 ・選挙権の行使その他それに準ずる行為 ・病床又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為 ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、 祖父母及び兄弟姉妹の介護(推続的に又は反復して行われるものに限る) 3.合理的な経路および方法 通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的に 労働者が用いると認められる経路と方法をいいます。 通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」と なります。 また、道路工事などにより、やむを得ず迂回する場合にも、「合理的な経路」と 認められます。 鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車、徒歩など、一般的に 用いられる交通方法であれば、いつも利用しているかどうかにかかわらず「合理的な方法」 となります。 □労災保険の保険給付について もし、労働者が仕事中あるいは通勤途上でけがをした場合、どんな補償を受けられる のでしょうか。 労災保険には、次のとおり、さまざまな保険給付があります。 なお、通勤災害については、事業主に労働基準法上の災害補償責任はありません。 そのため、各保険給付の名称には、「補償」という言葉は使われません。 葬祭給付を除いて、業務災害に関する保険給付の名称から「補償」の文字を取り除くと、 通勤災害での保険給付名となります。 1.療養補償給付/療養給付 労働者が労災に遭って療養が必要なときには、治療費などが全額補償されます。 2.休業補償給付/体集給付 労働者が療養のために会社を欠勤して給与がもらえないときに、生活費として支給 されます。 3.傷病補償年金/傷病年金 労働者が療養を開始してから1年6カ月経過しても病気やけがが治らず、その症状が 重い場合には、年金が支給されます。 4.障害補償給付/障害給付 病気やけがが治ゆ(症状固定)したあと、一定の障害が残ったときには、年金または 一時金が支給されます。 5.遺族補償給付/遺族給付 労働者が亡くなったときには、残された遺族に対して、年金または一時金が支給 されます。 6.葬祭料/通勤災害は葬祭給付 労働者が亡くなったときに、葬儀を行った人に対して、一時金が支給されます。 7.介護補償給付/介護給付 一定の障害により「傷害補償年金/傷害年金」または「障害補償年金/障害年金」を 受けている人が、現に介護を受けている場合に、月単位で給付が行われま す。 8.2次健康診断等給付 定期健康診断などの結果、肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目すべてに異常の所見 が認められたときに、必要な健康診断と保健指導を受けることができます。 そのほか、社会復帰促進等事業として、一定額の特別支給金、特別年金、特別一時金 が支給されます。 □「療養補償給付」と「休業補償給付」 前述の保険給付の中でも、特に請求の多い「療養補償給付/療養給付」と「休業補償 給付/休業給付」については、もう少し詳しく説明をしていきましょう。 1.療養補償給付/療養給付 労働者が労災に遭ったときには、病気やけがが「治ゆ」するまで、治療費などが全額 補償されます。 労災保険における「治ゆ」とは、これ以上治療を続けても、 医療効果が期待できず、 症状が固定した状態をいいます。 したがって、必ずしも完治を意味しているわけではありません。 療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の給付」の2つの種類があります。 「療養の給付」は、労災病院や労災指定医療機関で、無料で診察や手術などが受け られる現物給付です。 一方、「療養の費用の給付」は、緊急に診察を受ける必要があり、近くに労災指定 医療機関がないなど、労災指定医療機関以外の病院などで治療した場合に、その 治療費にかかった費用を現金で支給するというものです。 「療養の費用の給付」を受けることができるのは、「療養の給付」を受けることが できない場合に限られています。 療養の給付の具体的な給付内容は次のとおりです。 ①診察 ②薬剤または治療材料の支給 ③処置、手術その他の治療 ④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑥移送 「療養の給付」を受けるための手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養 の給付請求書(様式第5号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の給付請求書 (様式第16号の3)」に必要事項を記載し、事業主の証明を受け、病院経由で所轄 労働基準監督署へ提出することになります。 実務的には、労災指定病院などに提出すると考えてよいでしょう。 「療養の費用の給付」の手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養の費用 請求書(様式第7号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の費用請求書 (様式第16号の5)」に必要事項を記入して、事業主の証明を受け、所轄労働基準 監督署へ直接提出します。 2.休業補償給付/休業給付 「休業補償給付/休業給付」は、休業の4日目から支給されることになります。 業務災害の場合、休業した最初の3日間については、労働基準法上の休業補償として、 事業主が平均賃金の60%以上を支給しなければなりません。 労災で休業した場合、「休業補償給付/休業給付」のほかに、社会復帰促進等事業 として特別支給金が上乗せ支給されます。 それぞれの支給額は次のとおりです。 ●休業補償/休業給付金=給付基礎日額の60%×休業日数 ●休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数 給付基礎日額とは、労働基準法の「平均貸金」に相当するものです。 算出方法は、労災事故が発生した日や医師の診断によって疾病の発生が確定した日の 前日から遡って3カ月間に支払われた貸金総額をその期間の総日数で割ったものです。 ただし、給与計算の締切日が定められている時には、事故発生日や疾病発生確定日の 直前の締切日から3カ月問に支払われた貸金総額で計算します。 休業補償給付の請求手続きは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を 所轄労働基準監督署に提出することになります。 このとき、休業特別支給金の支給申請も同時に行うことになっていますが、請求 様式は同一ですので、改めて請求しなおす必要はありません。 もし、休業が長期にわたる場合には、1か月ごとなど、数回にわたって請求すると よいでしょう。 □経営者のための「特別加入制度」 労災保険は、本来、労働者を対象とした保険制度です。 しかし、多くの中小企業の経営者は、労働者と同様に仕事をしていることでしょう。 また、労働者であっても、海外派遣者については労災保険の適用がありません。 そのため、こうした人たちを保護することを目的に、労災保険では、特別加入制度を 設けています。 特別加入制度は、全部で4種類ありますが、ここでは「中小事業主及びその家族従事者」 を対象とした特別加入制度をご紹介します。 ◎中小事業主及びその家族従事者の特別加入 特別加入での中小事業主とは、以下に定める数以下の労働者を常時使用している 事業主のことをいいます。 ●金融業、保険業、不動産業、小売業……50人 ●卸売業、サービス業……100人 ●上記以外……300人 中小事業主が特別加入するためには、次の条件を満たす必要があります。 ①雇用している社員の保険関係が成立していること ②労働保険事務組合に労働保険事務を委託していること また、中小事業主等の特別加入制度では、社長のほかに、家族従事者や役員がいる 場合には、その人たち全員を包括して加入させなければなりません。 ただし、役員と名のつく人は全員というわけではありません。 例えば、兼務役員などで、社長をはじめ他の役員から仕事に関する指揮命令を受け、 労働者と同様に貸金を得ているという人は、労災保険が適用されますので、わざわざ 特別加入の手続きをする必要はありません。 なお、特別加入をした場合、基本的には、一般の労働者と同様の保険給付を受ける ことができます。 しかし、「2次健康診断等給付」、「ボーナス特別支給金」は受けることができません。 また、保険料を滞納した場合、その期間中に起こった事故については、保険給付が 行われない可能性があります。 さらに、事故発生日まで遡って特別加入をすることはできませんので、注意が必要です。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
メンタルヘルスのリスク |
■メンタルヘルスのリスク 職場での複雑な人間関係、思うように進まない仕事、育児や介護の問題など、現代社会 「社会の荒波」と比喩される現代の諸問題に対して、人は運動や趣味などでストレスを 不満に心が耐えられなくなって心に変調をきたしてしまう人も少なくありません。 ビジネスの世界は、このような状況がより顕著に表れる傾向にあります。 ほとんどが、会社で何らかのストレスを感じていると言ってもいいでしょう。 中でも、体力・気力ともに充実し、これから大きく飛躍していくであろう20代後半 の若手という3つの世代のギャップ)による軋轢を感じながら、同時に現在の会社の このことからも最も心のケアが必要な世代であることが分かるかと思います。 企業も多いのではないでしょうか。 一方で、中小企業で社員がいったんメンタルヘルス不全を起こしてしまうと、復職する 目標を達成できないためにスランプに陥り、メンタルヘルス不全を起こして退職して かねない大きなリスク要因である。 「自社にはあまり関係がない問題」と感じる企業も少なくないが、まずはメンタルヘルス のリスクと実態を確認し、自社の対策につなげていただきたい。 ◎企業におけるメンタルヘルスのリスク 1.法的責任 2.リスクマネジメント (2)事故・ミスの発生による安全・健康の損害、社会的信用の低下。 3.パフォーマンスの低下 44.4%となっており、規模が300〜99名と1000名以上の企業で半数が増加し 『企業におけるメンタルヘルスの実態と対策』内の「過去3年間におけるメンタル 中小企業ではメンタルヘルス対応が遅れており、その実態がつかみ切れていない 自社におけるこの年代の役割・立場を想像していただきたい。 その多くは「初級管理職者となって部下指導・育成責任を担う立場」「チームの中心 メンタルヘルス不調を起こしている状況がうかがえます。 2012年に厚生労働省が発表した『労働者健康状況調査(仕事や職業生活に関する 原因で最多は「職場の人間関係の問題」(41.3%)で、次に「仕事の質の問題」 など、個人の責任が重くなっていることへのストレスと考えられる。 仕事の量の問題とは、能力以上の業務量を任されることに対するストレスであるかと 仕事と能力のギャップが大きすぎると、メンタル不全を起こしてしまうということだ。 こうした状況において、企業はどういった対策を打たねばならないのか。 当然、各社によって風土や状況の違いがあり、実態に沿った対策が必要だが、まずは
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退職金の受け取り方 |
■退職金の受け取り方 退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかについて悩む人も少なくありません。 受け取り方法が一時金と年金の両方の制度を持つ会社であれば、どう受け取るかを選択 しなければなりません。 退職一時金を受け取ると、「退職所得」として課税の対象になります。 所得税の速算表 上記速算表より 課税される所得金額=課税所得金額(a)×税率(b)−控除額(c) 住民税は一律10%の税率で課税されますが、税額を10%軽減する措置が 講じられています。 <退職所得の計算> 退職所得=(退職一時金の額−退職所得控除額)×1/2 「退職所得控除額」は、勤続20年までは1年につき40万円(ただし80万円に 満たない 場合は80万円)、勤続年数が20年を超える部分は1年につき70万円を差し引くことが できます。 勤続年数で1年未満の端数が生じた場合は1年に切り上げます。 源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和3年4月以降分) 現行制度では、「退職所得控除」を差し引くことができることです。 勤続年数が長いほど差し引ける金額が多くなり、結果的に課税の対象を少なくする ことができ、その結果所得税・住民税が小さくなります。 退職一時金の額が退職所得控除額以下であれば、実質的に課税されません。 超えた場合でもその1/2が課税の所得金額となる点です。 ただし、この措置を受けるためには、退職一時金を支払う会社に「退職所得の受給 に関する申告書」を提出しなければなりません。 退職金に対する課税は他の所得と合算しない「分離課税」となっています。 その年に受け取った給与や公的年金など他の所得と合算しないので、税率が高く なることはありません。 ●退職金を年金で受け取ると 退職年金は雑所得となり、公的年金に準じるという考え方で、次の算式で計算します。 公的年金等に係る雑所得の速算表より 雑所得=(a)×(b)−(c) 実質的に課税されない場合も 「公的年金等の収入金額」には、厚生年金・国民年金等の公的年金が合算される ことです。 ○65歳未満の場合:公的年金と退職年金の合計額が70万円以下 ○65歳以上の場合:公的年金と退職年金の合計額が120万円以下 算出した雑所得からの控除 □基礎控除(38万円) □社会保険料を負担していればその全額が社会保険料控除 □要件を満たせば⇒ ・配偶者控除(38万円) ・配偶者特別控除(3万円〜38万円) ・生命保険料控除(最高5万円) ・個人年金保険料控除(最高5万円) ・地震保険料控除(最高5万円)等 (カッコ内の金額はいずれも所得税ベースで現在のもの。) したがって、状況によっては、退職年金と公的年金の収入合計額がもっと大きくても、 実質的に課税されない分岐点となる額は大きくなります。 受取総額を考えるなら、一時金よりも年金として受け取ったほうが多くなりますが、 経営環境が悪化したときのリスクを考える必要があります。 (退職後も、在職していた会社の経営状況をチェックしなくてはならない) 多くの企業年金では、企業が年金資産の運用を外部の金融機関に委託しています。 したがって、その企業が経営破たんした場合でも、年金資産自体が消滅するわけでは ありません。 しかしその場合、一般的には、その企業が経営破たんした時点の年金資産の「時価」を 加入者ごとに分配することになります。 運用成果が予定利率を上回っていれば年金資産が増えたことになりますが、逆の 場合はその時点で想定している年金資産を受け取れないことになります。 さらに企業が経営破たんした場合には、その企業から「年金」として受け取ることは できません。 ただし、要件を満たせば「企業年金基金連合会」に年金資産を移換でき、そこから 年金として受け取ることになります。 先ほどの「逆ザヤ」となった事例で言えば、年金資産を減額された上に、連合会の 通算企業年金の予定利率が適用されます。 これより高い予定利率で運用しながら年金が支払われる予定だった場合は、年金額が 減額されることになります。 経営破たんに至らない場合でも、経営危機となった場合、 加入者の3分の2の同意を取り付けたうえで、厚生労働大臣の認可を受ければ、年金 額が減額されることがあります。 年金で受け取る場合には、退職した後も、在職していた会社の経営状況をチェックして おく必要があるのです。 過去に報道されていた某航空会社の事例がその代表的なものです。 退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかの選択肢は、税金等を差し引いた後の 実質の手取り額や、受取総額の相違などの「損得の問題」は重要ですが、退職後の 長期的ライフプランを立て、上手に受け取ることも視野に入れて考えるべきでしょう。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
安全衛生委員会の設置と規程 |
労働災害防止の取り組みは労使が一体となって行う必要があります。 そのためには、安全委員会や衛生委員会において、労働者の危険又は健康障害を □安全衛生委員会 企業には、安全配慮義務という信義則上負うべき義務が課せられています。 安全配慮義務は最高裁判所の判例で定立された概念であり、労働契約法第5条に 企業は従業員の安全と健康について配慮しなければなりません。 そのためには、長時間労働の抑制や危険有害業務の制限、安全衛生管理体制の これらについて規定されている法令はさまざまですが、中心となるのは労働安全衛生 そして、企業の現場において安全面や衛生面について検証や対策の実施の中心的 これら委員会の設置要件は安衛法で定められています。なお、安全委員会と衛生 ここで、安全衛生委員会のメンバーを見てみましょう。 メンバーは、次の役職がそれぞれ1名です。 1.委員長(総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者の選任を必要とし 委員長となる総括安全衛生管理者は、企業の安全管理者および衛生管理者を指揮 委員長を除き、メンバーを増やすことは企業の自由です。 また、委員長を除く委員(安全管理者のうち企業が指名した者など)の半数は、従業員 そのため、安全衛生委員会の委員には、現場作業の経験が豊富なべテランや総務部 安全衛生委員会は、企業と従業員が職場の安全衛生について調査審議し、労働災害
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就職・退職時の諸手続き |
■就職の際の手続き 1.入社誓約書の提出 新卒採用や転職などによって新たに就職する場合、本採用が決まった段階、または 入社時に提出するのが「入社誓約書」です。 これは、本人の入社の意思を確かめるとともに、履歴書や身上書の記載内容が正しい ことを再確認するという意味ももっています。 多くの会社ではあらかじめ決まった書式の誓約書が用意されていますので、通常は 記名・なつ印して会社が指定する部署に提出すれば手続きは終了します。 2.労働契約書への調印 労時間や就業規則について会社と従業員が交わす契約書が「労働契約書」です。 働労契約書に必ず記載しなければならない事項は以下の通りとなっています。 労働契約に際しては、労働条件によく目を通しておきましょう。 (1)労働契約の期間(期間の定めのない労働契約の場合は不要) (2)就業の場所、従事すべき業務に関する事項 (3)始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換に 関する事項 (4)賃金の決定・計算・支払の方法・締め切り・支払の時期 (5)退職に関する事項 2.身元保証書の提出 入社誓約書と同様、本採用が決まった段階または入社時に提出するのが「身元保証書」 です。 身元保証人は最長で5年間(期間の定めのない労働契約の場合は3年間)、社員の行跡に 責任を負うことになり、場合によっては本人と連帯して損害賠償を行う場合もあります。 ですから、知人などに身元保証書への署名・なつ印を依頼する際には、丁寧な態度で お願いすることが望ましいでしょう。 通常、保証人は両親のうちどちらか1名と、親戚や知人などから1名の計2名が 一般的です。 □会社を辞めるとき 何らかの理由で会社をやめるときは、退職願を出して退職の意思を伝えることになります。 会社所定の書式がある場合にはそれを使用しますが、ない場合には自分で書く必要が あります。 退職願には特に決められた記載事項はありませんが、少なくとも「退職理由」「届出 年月日」「退職希望日」「署名・なつ印」は忘れないようにしましょう。 退職願のあて名は通常、会社の代表者または会社あてとなります。 1.失業保険の受給方法 次の仕事や就職先が決まっている場合は問題ありませんが、次の就職先を決めない まま会社を退職した場合には、次の仕事が見つかるまでの間は収入が断たれる こることで当座の生活費を賄うことになります。 ただし、失業保険の給付は退職前の1年間で6カ月以上雇用保険の被保険者として 保険料を支払っていることが条件となります。 失業保険の受給に必要な手続きは以下の通りです。 2.失業保険の受給手続き ・届出先………住所地を管轄する公共職業安定所 ・届出人………本人 ・必要書類……雇用保険給付申請書、離職票、雇用保険被保険者証、住民票または 運転免許証、写真(タテ3センチ×ヨコ2.5センチ)、印鑑(認印可) なお、給付額および給付日数は在職中の賃金額や在職期間によって異なります。 また、退職理由によっても給付条件は変わり、自己都合による退職の場合には退職後 3カ月間は待機期間となり失業保険を受給することはできません。 支給期間についても自己都合退職は会社都合退職に比べて期間が短くなっています。 □再就職手当を受ける 所定の失業保険給付期間を過ぎる前に再就職できた場合には、再就職手当を受け取る ことができます。 ただし、再就職手当を受けるには幾つかの条件を満たす必要があります (以下主要なものを抜粋)。 1.就職日の前日における基本手当の支給残日数が45日以上で、かつ所定給付日数の 3分の1以上であること 2.1年を超えて雇用されることが確実であると認められる就業につくこと 3.離職前の事業主による再雇用でないこと 4.自己都合退職による待機期間が終了していること 5.過去3年以内に再就職手当を受けていないこと ●再就職手当の支給申請手続き ・届出先………住所地を管轄する公共職業安定所 ・届出人………本人 ・必要書類……再就職手当支給申請書、受給資格者証、印鑑(認印可) □退職後の健康保険は 会社に勤務している間は、会社で加給している健康保険組合の被保険者となっています。 しかし、退職した場合にはその後どの健康保険に加入するのかを自分で決めなくては なりません。 その選択肢は以下の5種類です。 1.国民健康保険に加入 2.在職中に加入していた健康保険を任意継続(最長2年間まで) 3.家族の被扶養者となる 4.退職者医療制度を利用する 5.在職中に特定健康保険組合に加入していた場合は、特定退職被保険者になる 上記のうち任意継続の場合は、会社による保険料負担がなくなるため保険料は在職中の 原則2倍となりますが(上限あり)、自己負担は2割のまま変わりません。 国民健康保険に加入した場合は、自己負担は3割となります。 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |
社内表彰制度 |
■社内表彰制度とは 社内表彰制度とは、永年勤続表彰を初めとして、業績表彰、皆勤表彰、改善提案表彰 などの各種制度を総称したものです。 どの表彰制度も根本的な考え方としては →従業員の士気鼓舞 →仕事に対して意欲的に取り組むための動機付け →会社への帰属意識向上 といったことを目的とする、いわゆるインセンティブ制度のバリエーションである といえます。 しかしながら、制度の設定方法によってはその効果や社員からの印象も異なってくる ものです。 そこで、各種表彰制度を例にとってその効果と役割を考えてみたいと思います。 □表彰の目的と種類 社内表彰制度をその目的別に簡単に分類すると、大きく分けて5種類に分類できそう です。 具体的な表彰を例にとりながら、それらを以下に紹介します。 1.業績達成のための表彰 →営業コンテスト →営業目標達成表彰 →顧客紹介キャンペーン 2.社員モラル向上のための表彰 →皆勤表彰 →無事故表彰 →永年勤続表彰 →善行表彰 3.会社の節目を祝う表彰 →創業記念 4.社員の節目を祝う表彰 →定年退職 →成人記念 →誕生日記念 5.直接売り上げには結び付かないものの、間接的に社業に貢献するための表彰 →改善提案 →アイデアコンテスト 前記の分類は、例えば「皆勤賞」などは社員が毎日きちんと出社することによって 生産性が上がり、業績向上に結び付くなど、分類上は2.の「社員モラル向上のための 表彰」ではあるものの、間接的には2.の「業績達成のための表彰」に繋がるものも ありますが、そういった副次的な効果は別と考え、それぞれ、根本の考え方に基づいた 分類としました。 □目的に応じた表彰の効果と運用方法 次に、前項で5種類に分類した表彰制度それぞれの具体的な効果と、上手な運用方法 について考えてみましょう。 1.業績達成のための表彰 これは、そのものずばりの表彰といえ、会社の取扱商品の売り上げを伸ばすために 社員を競わせるということになります。 「コンテスト」という形でゲーム性を取り入れることによって社員の抵抗感を 和らげる効果もあるため、この制度を取り入れている企業は多いようです。 運用方法としては、営業コンテストの場合、 →通常の業績評価と同様に売上高や売り上げ個数で順位をつける →商品ごとにポイントを設定して累計ポイントで順位をつける といった方法をとっているようです。 このようなキャンペーンを行う場合には、たとえコンテスト形式にしたとしても 「余計な仕事が増えた」など、社員から不満が出ることも考えられます。 そうした不満を少なくするためにも、ビジネスの生々しさを極力排したポイント制 などによって評価を決定したほうがよいでしょう。 また、営業職以外の社員をコンテストに参加させる際に特に気をつけるべきことと しては、ノルマを設定しないということでしょう。 普段営業をすることのない総務、経理といった部署の社員に対してノルマを設定 すると、専門外の仕事をさせられているという不満を社員から抱かれる可能性も あります。 売り上げ増強月間などのキャンペーンであるならばいざ知らず、「コンテスト」などと 銘打ったゲーム性を取り入れたキャンペーンならば、社員の内心から湧き出る 意欲を大切にすべきであって、社員はあくまでノルマのためではなくコンテスト 上位の報酬のために頑張るというスタイルにしていかないと制度が長続きしない ことも考えられます。 間接部門の社員をコンテストに参加させるもう一つの方法としては、直接の売り上げ をポイントに換算するのではなく顧客紹介キャンペーンなどの名目で、知人に 自社の商品を紹介してもらうなどのやり方で表彰を行うのもよいでしょう。 あくまでも、仕事を楽しんで業績を上げて行こうとするのが考え方としては最も 不満を受けにくいのです。 業績達成のための表彰を行う際には、そういった趣旨を社員に十分理解してもらう 必要があります。 報酬についてですが、こういった社業と直結したキャンペーンの際には、 表彰の際の商品には報奨金を支給するというケースが多くなっています。 金額は会社によってさまざまで、多いところでは50万円少ないところでは2000円 といった会社もあります。 一般的にはおよそ2万円程度が多くなっています。 また、営業コンテストの上位者には海外旅行などの商品を出すところもあるようです。 要は、従業員がやる気を出してくれるだけの魅力ある報奨を用意することが、 こうした本業に関連する表彰制度には必要なのです。 2.社員モラル向上のための表彰 社員モラル向上のための表彰は、職場の雰囲気を良くし、社員の会社に対する 帰属意識を高めることによって、間接的に業績を向上させ得る効果を持ちます。 無事故表彰によって事故を減らし、車の修繕費を節減するなどのメリットがそれに 当たるわけです。 しかし、これらの業績向上はあくまで副次的な効用であって、経営者がそれに期待 するのは当然であるものの、従業員にまでその認識を押し付けるのは得策とは いえません。 従業員に対してはあくまで「真面目にやっていれば良いことがある」という本来の 表彰目的を理解してもらうのが大切です。 そのため、社員モラル向上のための表彰は、皆勤賞や永年勤続表彰など、仕事の 能力自体よりもむしろコツコツ続ける毎日の努力に対して表彰を行うべきと いえます。 すべての社員に平等にチャンスを与え、真面目にやれば報われるという希望を すべての社員に持ってもらうことこそ、この報奨制度の最大の目的であり効果である といえるのです。 無事故表彰の場合では、◯年以上無事故皆勤であればその年度1年間といった具合に、 継続こそ力であるという趣旨で制度を定めるのが良いでしょう。 社員のモラル向上のためのキャンペーンを行う際にはこれらの点に配慮が必要です。 この種の表彰制度の報奨は、 →国内旅行 →小額の現金 などであることが多いようです。 それに次いで多いのは、 →時計などの記念品 →商品券 →文具 などでしょう。 記念品および報奨金の相場は、 →永年勤続(30年)で10万円 →皆勤(1年)で1万円 →無事故無違反(5年)で3万円 といったところです。 3.会社の節目を祝う表彰 創立記念日や創業◯周年事業など、会社の節目を祝うための表彰は、社員に対して というよりもむしろ会社のここまで成し遂げてきた業績を回顧するための、表彰と いうよりはむしろ行事であると考えられます。 社員に自社の創立記念日を知ってもらったり、会社の歴史を知ってもらうことに よって、社員一人ひとりが会社の一員であることを自覚できれば、この種の表彰 (行事)としては大成功といえるのではないでしょうか。 創立記念日の報奨は通常「創立記念休日」の制定となります。 また、周年記念では、大企業などでは盛大な行事を開くところもあるようですが、 一般的な中小企業ではそこまでするところは少なく、お菓子や赤飯などの簡単な 記念品や、社員旅行などの社員全員で楽しめる企画を実施しています。 表彰としての効果に多くを望めないこれらの表彰ではありますが、社員同士の、 あるいは会社と社員の連帯感を高めるためには、あってもよいかも知れません。 4.社員の節目を祝う表彰 成人式を迎える若い社員や、定年となるベテラン社員の人生の節目を祝うのが この表彰です。 記念日を迎えた社員に会社からもちょっとした贈り物をするのがこの表彰の趣旨 ですから、社員に対する細かな心配りができるかがこの表彰制度の正否を左右する といえます。 これらに類する表彰は →結婚記念日 →誕生日 など非常にさまざまな局面で制定できますので、時短対策としての休日増加策 としても利用できます。 報奨は、時短対策としてなら休日を、そうでない場合は →ケーキ(誕生日) →筆記用具(成人式) →旅行(定年) →書籍 →アルバム など、お金をかけなくとも気配りの通じるものを工夫して送るのがよいでしょう。 5.直接売り上げには結び付かないものの間接的に社業に貢献するための表彰 書類の整理方法の工夫、日常業務の効率化など、主に間接部門の業務改善提案や、 あるいは、まったく仕事と関係ないアイデアコンテストなどの表彰がこれに 当たります。 自動車メーカーのトヨタが行っている「アイデア・オリンピック」などは、車体が 伸縮する車や水陸両用車など、奇想天外な機械が多数出品され、一見意味のない 行事の典型的な例といえますが、入賞したアイデアが実用化された例もあり、 一概に無駄とはいえないところもあるのです。 社員の創造力を刺激し、遊び心を発揮させるためにはこうしたイベント的な表彰も 意外と効果的なのかもしれません。 実用面で見ると、「改善提案コンテスト」などは、どうしても日常の業務として ルーチン化され、業務効率の検討を見過ごされがちな事務処理などに新しいアイデア を取り入れることができます。 改善提案の判定方法には →年に何件提案したかという回数 →提案の優秀性 という2種類の判定方法が考えられます。 これに加えて →QCサークルなどによるグループ提案 →個人による提案 の2種類の提案方法があるため、これらのうちどの方式を取り入れるかは、 それぞれの企業の組織や社内の実情に沿って検討するのが良いと思います。 改善提案、アイデアコンテストの報奨は →提案の質に応じて300円程度から10万円程度の報奨金 →規定の提案件数を満たした上で一定の水準以上の提案を行った人に 一律5000円といった、報奨金制度を取り入れる企業が多いようです。 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |
労使協定について |
「労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数 中でも時間外労働や休日労働等に関する「36協定」は有名なところです。 ここでは、労使協定を締結する上で注意すべきことについて概要を、ご紹介します。 あなたがよく耳にする就業規則とは、「労働者が就業上遵守すべき規律及び労 働 労働協約とは、「労働組合と使用者との間の労働条件等に関する協定」を言い、 (1)労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと (2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、 (3)使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうと ■協定の種類 1.貯蓄金の管理に関する協定 使用者は、労働者の委託を受けて貯蓄金を管理しようとする場合は、労使協定を (1) 預金者の範囲 (2) 預金者1 人あたりの預金額の限度 (3) 預金の利率及び利子の計算方法 (4) 預金の受入および払戻しの手続 (5) 預金の保全の方法 労働基準法(以下 労基法)では、使用者は賃金を労働者にその全額を支払うことを (1) 法令に別段の定めがある場合 所得税法による所得税等の源泉徴収、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険 但し、労使協定を結べば無制限に控除してよいものではありません。 購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費、財形 1 ヶ月単位の変形労働時間制とは、1 ヶ月以内の一定期間を平均し、1 週間 また、この場合労使協定のみではなく、就業規則その他これに準ずるものにおいて (1) 変形期間を1 ヶ月以内とし、 (2) 変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、 (3) 各日、各週の労働時間を特定する。 フレックスタイム制とは、1 ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めて、労働者が この制度も労使協定のみではなく、就業規則その他これに準ずるものにおいて次の すべての労働者が労働しなければならない時間帯をコアタイムといい、自身が開始 労使協定を結ぶ場合は、次の事項を定めることが必要です。 (1) 対象となる労働者の範囲 (2) 清算期間 (3) 清算期間における総労働時間 (4) 標準となる1 日の労働時間 (5) コアタイムを設ける場合は、その時間帯の開始および終了の時刻 (6) フレキシシブルタイムを設ける場合は、その時間帯の開始および終了の時刻 ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える 1 ヶ月を越え1 年以内の一定の期間を平均し、1 週間当たりの労働時間が40 時間 この労使協定には次の事項を定めることが必要です。 (1)対象期間を1 ヶ月を超え1 年以内とし、 (2)対象期間を平均し、1 週間当たりの労働時間が40 時間を越えない範囲内で、 (3)1日10 時間、1 週52 時間以内(対象期間が3 ヶ月を超える場合、1 週 (4) 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を特定 (5) 労使協定の有効期間を定める 日ごとの業務に著しい繁閑の差があり、かつ、その繁閑が定期的に定まっていない ただし、この制度を採用できるのは、小売業、旅館、料理店および飲食店のうち、 ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える 休憩時間は一斉に与えることが原則ですが、労使協定を結ぶことにより時間差で この労使協定において次の事項を定めます。 (1) 労働者の範囲 (2) その労働者に対する休憩の与え方 ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える 労働者に時間外労働あるいは休日労働をさせようとするときに結ぶ協定です。 時間外労働と休日労働を両方させる場合は、様式9 号用紙に一緒に記載する この労使協定は、労働者の過半数で組織された労働組合、それがない場合は 労基法第36 条に規定されていることから、一般的に36 協定といわれています。 協定には次の事項を定めます。(時間外労働届と休日労働届を一緒に提出する (1) 時間外(休日)の労働をさせる必要のある具体的事由 (2) 業務の種類 (3) 労働者の数 (4) 1 日について延長させることができる時間 (5) 1 日を超える一定の期間について延長することができる時間 (6) 1 日を超える一定の期間について労働させることのできる休日 休日労使協定が必要な休日は、法定の週1回の休日を指し、法定を上回って与えて これらの休日に労働させるときは、それにより1 週間の労働時間が40 時間を ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える 2020年年4 月より施行される改正労基法により、「所定外労働時間が1 ヶ月45 時間 これを超えた場合の割増賃金率は、5 割以上(中小事業主は当分の間、適用が猶予 「代替休暇」とは、60 時間を超えた時間外労働について法定割増賃金率のうち、 労使協定では次の事項を定めます。 (1) 代替休暇として付与することができる時間の時間数の算定方法 (2) 代替休暇の単位 (3) 代替休暇を付与することができる期間 (4) 代替休暇の取得日および割増賃金の支払日 事業場外労働とは、労働時間の全部または一部について事業場外で労働した場合、 外回りの営業の業務などがこれにあたります。 また、みなし労働時間制とは、労働時間の算定の困難な業務に従事する労働者の 労使協定で定める事項は、 (1) 対象とする業務 (2) みなし労働時間 (3) 有効期間 (4) 時間外労働 (5) 休日労働 (6) 深夜労働 ですが、(4)(5)(6)については就業規則で定めることで足りますが、他の 業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、 労使協定で定める事項は次ぎの通りです。 (1) 対象となる業務 (2) 労働時間として算定される1 日の労働時間 (3) 業務遂行の手段および時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指 (4) 労働時間の状況に応じた対象労働者の健康および福祉を確保するため (5) 対象労働者からの苦情の処理に関して講じる措置 (6) 有効期間(労働協約による場合を除く) (7) 使用者は、上記(4)(5)で講じた措置に関する労働者ごとの記録を、 平成22 年4 月に改正された労基法により、年次有給休暇を時間単位で付与する 時間単位で付与できる年次有給休暇は1 年間で5 日分までです。 使協定には次の事項を定めます。 (1) 対象労働者の範囲 (2) 時間単位年休の日数 (3) 時間単位年休1 日の時間数 (4) 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数 年次有給休暇の5 日を超える日数を対象として、労使協定により、使用者は年次 事業場全体を休業させる一斉付与方式、グループ別の交替付与方式、個人別付与 5 日を超える年次有給休暇の権利がない労働者に対しては計画的付与はできず、 労働組合の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と締結 年次有給休暇を取得した日の賃金は、次のいずれかを選択し、必ずその選択した (1) 平均賃金 (2) 所定労働時間労働した場合の通常の賃金 (3) 健康保険法の標準報酬日額に相当する額 (1)(2)(3)いずれを選択した場合でも、就業規則その他これに準ずるものに 改正高年齢雇用安定法第9 条により、平成18 年4 月1 日以降は65 歳未満の (1)定年の引上げ (2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止、 のいずれかの定めを講じなければなりませんが、(2)の継続雇用制度は、原則 しかし、労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、 この年齢は平成18 年の法改正以降、62 歳、63 歳というように年を追って段階的 その労使協定による基準とは、望ましいものとして、次のものが厚生労働省により (1) 意欲、能力等を具体的に測るものであること(具体性) (2) 必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見 育児・介護休業・子の看護休業の請求を一定の労働者に対して労使協定により制限 一定の労働者とは、次の通りです。 (1) 入社1 年未満の従業員 (2) 申出の日から1 年(介護休業の場合は93 日)以内に雇用関係が終了 (3) 1 週間の所定労働日数が2 日以下の従業員 (1) 入社6 ヶ月未満の従業員 (2) 1 週間の所定労働日数が2 日以下の従業員 1.労使委員会 (1)委員会の委員の半数について、その事業場の労働者の過半数で組織 (2) 委員会の議事について厚生労働省令で定めるところにより、議事録が (3)委員会の任期、委員会の招集、定足数、議事その他委員会の運営
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安全衛生体制の整備 |
業務に起因して発生する災害を労働災害(以下「労災」)などと呼びます。 国内では、労災を防止するために安全衛生法によって企業に安全管理体制の徹底を なっています。 このように、日本では一通りの労災防止対策が講じられているのが現状です。 企業も労働者もまさか、自社で労働災害が発生する(自分が労災の被害者になる) 一方で、安全衛生法では労働安全衛生の多くの部分を企業と労働者の自主性に委ねて 企業と労働者の労働災害防止への意識を喚起するには不十分であることは否めません。 労働災害の防止は各企業において徹底されなければ実現できないものであるにも
まず、労働安全衛生法、通称「安衛法」では、企業単位ではなく、「事業場」を単位と したがって、ひとつの事業場であるか否かは、場所的観念によって決定されるので、 例えば、同じ会社であっても、東京に本社、静岡に工場がある場合には、それぞれ また、場所が同じであっても、自動車販売会社に付設された自動車整備工場などの ①安全管理者の選任 これらの選任、設置を怠ると、罰則の適用もあるので、注意が必要です。 上記の表のように、安全に関する問題を比較的多く抱えている業種の事業場で、その 安全管理者は、作業場を巡視し、設備、作業方法等に危険の恐れがあるときは、直ち 安全管理者の業務を的確に行うためには、現場での実務経験と安全に関する一定の そこで、安全管理者となるためには、安衛法において一定の資格要件が定められて 業種に関係なく、労働者が50人以上いる事業場では、選任しなければなりません。 衛生管理者は、次のような業務を行う必要があります。 ①健康に異常のある者の発見および処置 衛生管理者は、以上の業務のほか、少なくとも毎週1回は作業場等を巡視し、設備、 また、衛生管理者になるためには、安衛法において心一定の資格要件が定められて 産業医は、健康診断および面接指導の実施など労働者の健康管理、労働者の健康 このほか産業医は、少なくとも毎月1回は作業場等を巡視し、作業方法、衛生状態に 事業者は、産業医に対して、職務遂行のために必要な権限を与えなければなりま 安全委員会で審議する内容は、安全に関する規程の作成、安全教育の実施計画の 安全委員会は、毎月1回以上開催しなければなりません。 衛生委員会で審議する内容は、衛生に関する規程の作成、衛生教育の実施計画の 委員会の開催は、安全委員会と同様に毎月1回以上です。 このような事業場では、2つの委員会を一体化した「安全衛生委員会」を設置することが 安全衛生委員会の開催等については、それぞれの委員会に準じたものとなります。 質問者のように、安全管理者の選任を要する業種であって常時10人以上50人未満 (1)安全衛生推進者等の選任・周知 また、事業者は、安全衛生推進者等を選任したときには、その安全衛生推進 (2)安全衛生推進者等の資格 なお、安全衛生推進者等は、原則として、その事業場に専属の者を選任しな ここで、「専属」とは、その会社のみに所属することを意味しています。 (3)安全衛生推進者等の職務 ①施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む。)の点検及 前述の「安全管理者」「衛生管理者」は、安全衛生業務の技術的事項を管理す 一方、安全衛生推進等については、安全衛生業務について権限と責任を有す 厚生労働省で定める者とは、地域産業保健センター事業の名簿に記載されている (1)地域産業保健センターの活用 地域産業保健センターでは、こうした事業場の事業者や労働者を対象に、健 なお、地域産業保健センターにおける各種産業保健サービスは、無料で提供 ①健康相談窓口の開設 (2)長時間労働者への医師による面接指導 面接指導は、労働者数50人未満の小規模事業場においても、平成20年4月 ①対象者 ア)週40時間を超える労働(時間外・休日労働)が1月当たり100時間を超え なお、期日前1月以内に面接指導を受けた労働者などで、面接指導を受ける ②面接指導実施後の措置 イ)必要な措置についての医師の意見聴取 なお、労働者の健康状態から緊急に事後措置を講ずべき必要がある場 ウ)適切な措置の実施 なお、地域産業保健センターでは、こうした面接指導の相談窓口を各地に |
労務リスクと労務管理 |
この矛盾と付き合っていくためには各種規定の周知徹底と運用がベースとなります。 企業リスクの80%以上が人に関わるものです。 会社の規模に関わらず、一人でも従業員がいる限り労務問題は存在します。 労務リスクが顕在化した場合、それが企業経営に与える影響は甚大なものとなります。 しかし、いざ労務管理に取り組もうとしても、なかなか組織に定着していかないのが実情 人が人を管理する労務管理では、管理者や部下の性格や就業意識などといった属人的 企業の労務管理方針とは異なるイレギュラーな運用が こうした残業命令を労働契約に関する権利意識が また、そうした残業命令が繰り返されることで部下の このように、属人的な要素の影響を受ける点が労務管理の根本的な問題です。
様々な会社規程は、制定当初は自社の企業防衛や円滑な業務遂行などの目的のため しかし、それらは時に法令順守を体裁的に取り繕った、場あたり的な規定の可能性も なぜなら、現実的には建前と本音がイコールになるケースは極めて稀であることから、 従って、どのような規定であれ、制定する際には、そのギャップをどこまで理解して 規定を絶対的なものとして『完璧』にリスクコントロールすることは、不可能な分野なの 労務リスク対策には規程の整備を含め、業務改善による正しい業務のあり方、そ 業務改善のための強化策(コンサル・セミナー・研修・講演)のご案内 労務リスクを洗い出す過程の作業の一つに、就業規則の分析が挙げられます。 就業規則も書籍や他社の規定を会社名だけ書き換えコピーしたものから、オーダー ご承知のとおり、どのような規定でも運用次第では逆に自社の首を絞めることになりかね 過去には、大手消費者金融会社が2年分の未払残業代を数十億円かけて清算した このバランスが非常に難しく、まさに従業員の教育の基本であり、企業利益に直結する 多くの会社がこの分野をおろそかにしています。 この労力を最優先課題のひとつと考え、真剣に取り組むかどうかが企業繁栄の分岐点 中小企業における実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、どちらかと もちろん、経営者・リーダーが持っている「感覚」はとても大事であり、多くの問題が、 ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス、雇用契約」といった意識が強くなり、 例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、 1.給料(賃金)の支払い 当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。 給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。 ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。 この決まりを「労働基準法 賃金支払い5原則」といい、次のものをいいます。 ①通貨払いの原則(円建てで) ②直接払いの原則(本人以外への支払いは認められない。例外:妻・子等) ③全額払いの原則(残業代の不払いは違反) ④毎月1回以上払いの原則(日払い、過払いは該当しない) ⑤一定期日払いの原則(例外:臨時支払の賃金、賞与その他これに準ずるもの) 作業事故の防止に限らず、長時間労働、特定個人に過重な負荷がかかるような 一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。 最低でも、従業員が納待できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。 労働基準法では、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、 このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があっ 公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の経営者がたま 最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけ 労務管理を取り巻く法令は非常に多く数十種類存在します。 会社はそれら法令の網にがんじがらめにされており、賢い労働者は会社を訴えようと 訴訟にならない会社と言うのは必ずしも労務管理が適正なのではなく、単に運が良い 本来圧倒的なカリスマ経営者が存在すれば規定などいらないのですが、人事異動を 当然のことながら法令の改正や同業他社・世間一般の情勢にも連動し、随時メンテナンス 特に現代の就業形態は、正社員、パート社員、期間契約社員、嘱託社員、派遣社員、 当然のことながら、悪意的な基準など排除しなければなりません。 中小企業が労務管理に取り組む際は、属人的な要素から生じるイレギュラーな運用を そのために必要となる取り組みが「規程類の整備」「適切な運用」「保険の活用」の 労務管理を推進する際に車の両輪となるのは「規程類の整備」と「適切な運用」です。 企業が定める労務管理のルールを就業規則などの規程類として(1)文書化するとともに、 こうすることで、文書化された明確なルールに基づいて適切に労務管理が行われ、労働災 中堅・中小企業が労務管理に取り組む際の第一歩といえるのが、就業規則など 中小企業では就業規則などが整備されておらず、事案が発生するたびに個別に対 規程類は企業の労務管理のルールを示す客観的な文書であり、何らかの労使 作成した規程類は必ず全従業員に周知徹底し、企業内の見やすい場所に掲示 周知徹底することでルール順守に対する従業員の意識が高まります。 また、労働契約法では、「合理的な内容が定められている就業規則を従業員に 労働契約とは、就業規則と本人への辞令のことで、会社と従業員との合意に基 労働条件をめぐるトラブルが発生した場合、企業は自ら主導して作成した就業規則 規程類は、労働法の法令改正に合わせて適時、変更しなければなりません。 労働法は頻繁に改正されるので、定期的に厚生労働省や都道府県労働局のWeb 1.管理者の意識改革 属人的な要素の影響を排除し、規程類に定めたルール通りに労務管理が行われ 管理者が中心となって、現場の業務管理を適切に進めます。 業務管理の意味は広範ですが、労務リスクの原因となりやすい「労働時間管理」 労働時間管理と業務配分管理ができていないと長時間労働や業務量の過多につ 長時間労働で従業員がイライラして言動が乱暴になり、パワーハラスメントにつな 企業は安全配慮義務を負っており、それを履行しなければなりません。 安全配慮義務とは、企業の指揮命令下で従業員が労働する過程において、従業 企業が安全配慮義務を履行するための具体的な取り組みの一部は、前述の業務 定期健康診断は福利厚生の一環として行われるものではありません。 従業員は労働契約に基づいて労務を提供するよう自らの健康状態を良好に保つ この互いの義務を履行するための手段の1つが定期健康診断であり、「労働安全 そのため、企業は必ず定期健康診断を行い、従業員の健康管理をしなければな 「規程類の整備」と「適切な運用」管理を行っていても発生してしまうのが労働災害 労働災害はちょっとした気の緩みなどから発生するもので、完全になくすことは不可能 万一の備えとして労災保険などの法定・法定外の労災保険などに加入することが重要 近年、過労死やパワーハラスメントに関する事案が労働災害として認定されるなど、 労災事故と企業責任について万一不幸にして、労災事故が発生すると、次のよう 労働災害が発生すると、労働安全衛生法違反がなかったかについて、労働基 その場合労働安全衛生法違反の他、刑法211条の業務上過失致死傷の罪に 業務上過失致死傷は、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者 重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」としています。 ①労働安全衛生法の罰則規程の適用 ②業務上過失傷害などの刑事責任 労災事故が発生した場合、事業主は、過失の有無にかかわらず労基法により しかし、労災保険に加入している場合には、事業主にその事故について労災 しかし、仮に事業主が故意または重大な過失より、労災保険に加入していな また、労働基準法上の補償責任とは別に、労災について安全配慮義務違反な なお、労基法に基づく補償が行われたときは、その価額部分は民法による損 ①労働基準法等 災害補償責任 ②民法 損害賠償責任 労働安全衛生法に基づき、作業停止命令や設備等の使用停止命令などの また、例えば建設業の場合は一定期間の指名入札禁止などの処分が行わ 刑事事件に相当しない程度の事故災害でも、労基署から「厳重注意」「是正勧 重大な労災事故が発生した場合や、たびたび労災事故を発生させた場合、公 また、マスコミ等の追求も厳しいものがあり企業の社会的信用も失墜してしま 労働安全衛生法の第3条では使用者の責務として、「事業者は、単にこの法律で また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するように また、労働者は、その事業場で労働安全衛生法等の違反があるときは、労働基準 さらに、平成20年3月に施行された労働契約法の第5 条で、「使用者の労働者 労働者は労働災害を被った場合、被災者あるいはその遺族が、労災保険に補償 しかし、補償給付額は必ずしも被災者側の満足する額まで届かない場合が多く、 そこで会社に対して損害賠償という形で請求することが多くなってきました。 使用者に損害賠償を請求するには、従来のケースでは、被災者側は使用者の不法 しかし、現在では、判例上確立しさらに明文化された「安全配慮義務」という根拠 また、新聞報道によれば、政府内部でこの労働福祉事業の撤廃も検討されている ようなので、それが現実になるとすると損害賠償請求の流れは一層強まり、請求 さらに、民事上の損害賠償請求にかかる時効は不法行為に基づくものの場合、 労災事故が起こった場合の損害賠償請求は近年巨額になっていく傾向にあります。 そのためにも、 ①労働安全衛生法の遵守 ②労務管理マニュアルの整備・作成・安全管理教育の徹底 は、事業主にとっての必須事項です。 加えて使用者賠償責任保険等の労災上乗せ保険の活用なども考えるべきかと オーナー社長にとって会社は我が子同然。 会社と社員を守るのが社長の役割であり責任です。
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過労死等の労災補償と認定基準 |
厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強い 今回は平成28 年6 月に取りまとめられた、「平成27 年度過労死等の労災補償状 今回の厚生労働省の報告によると、労災補償の請求件数は795 件で、そのうち、 請求件数については、前年度と比して増加傾向、支給決定件数は減少傾向にあり 年齢別に見てみると、労災補償の支給決定件数は「50〜59 歳」が91 件、「40〜 また、時間外労働時間数別でも、以下のとおり支給決定件数の内訳が発表されて 脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1 ヵ月平均)別支給決定件数 ※その他の件数は、認定要件のうち、「異常な出来事への遭遇」または「短期間 なお、上記に掲げる認定要件のうち、特に業務と疾病の発症との関連性が強いと 脳・心臓疾患の労災補償の支給決定件数や認定基準をご紹介しましたが、共に長 2016年4 月から厚生労働省では、全国の労働基準監督署による重点監督の対 そのような流れからも、企業は使用者賠償責任のリスクを考慮しつつ、社会的な要 お問合せ・ご質問はこちら |
適正な業務請負 |
■適正な業務請負 業務請負という業務形態は世間に広く浸透しており、「請負契約」などの言葉もよ しかし実際には、業務請負を行うにあたり押さえておくべきポイントについて、詳し きちんとした知識を持たないままに業務請負を行うと、「偽装請負」という事態に発 ここでは適正に業務請負を行うためのポイント等について説明をします。 業務請負とは注文された業務の完成を目的とするものであり、単に労働力を提供 請負事業者は注文者から発注された業務を、自己の労働者を使用し、自らの業 自らの裁量と責任で業務を完成させるという点が業務請負では重要となります。 注文主の裁量がはたらいてしまうと、業務請負ではなく、労働者派遣に該当する 形式的には業務請負ですが、実態は労働者派遣、いわゆる「偽装請負」とみなさ 兼務誅負と労働者派遣の違いについて見ていきましょう。 上記で注文主の裁量がはたらいてしまうと、業務請負ではなく、労働者派遣に該 請負事業者が自ら雇用する労働者を指揮命令して、請け負った業務を完成させ 業務請負に関する正しい知識が無いと、労働者派遣との境界線があいまいに 適正な業務請負を行うために、請負事業者がどのようなポイントに注意したら良 (1)請負業務を行う労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の ・注文主が請負事業者の労働者に対して直接業務上の指示を行う ・注文主が請負事業者の労働者に技術指導を行うことはできません。 ・注文主の就業規則を請負事業者の労働者に適用することは ・出勤簿やタイムカードによる労働時間の管理や休暇の管理は ・請負業務に必要な制服やヘルメットは請負事業者が準備し、 ・請負業務について労働者の人数・配置・人選その他の変更は (1)業務の処理に必要な資金を自らの責任において調達し、支弁していること。 (2)業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主とし (3)単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。(次のいずれかに該当す ・請負業務に就いて必要な機械、設備若しくは器材または材料 ・請負事業者自らが企画しまたは請負事業者の持つ専門的な技術
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震災対応と労務管理 |
■地震対応と労務管理の留意点 2011年(平成23年) 3月11日(金)に発生した東北地方太平洋沖地震やそれに伴う 被害は過去最大規模となり、事業の継続が困難になったり、制限されたりするなど このようななか、企業では、休業・解雇・内定取り消しといった対応を行わざるを得ない 経営者は雇用維持に最大限努力し、採用内定者が可能な限り予定していた期日に 1.地震により休業させた場合の賃金 労働基準法では、企業側に責任がある事由による休業の場合には、休業期間中の ただし、天災事変等の不可抗力である場合は、企業側に責任がある事由には該当 不可抗力であるとするためには、次の2つの要件を満たす必要があります。 ①休業の原因が事業の外部より発生した事故であること ②経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること 上記に照らし、被害の状況別に休業手当の支払い義務をまとめると次のように 地震により事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合の休業で 具体的には、取引先企業への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、 今回の地震に伴い、電力会社において実施された地域ごとの計画停電に関する休業 ただし、計画停電の時間帯以外の時間帯については、ほかの手段の可能性、企業 ただし、かなり厳格に判断される可能性もありますので、慎重に検討したほうがよい 1.解雇制限と予告手当 労働基準法では、企業は、次の期間について労働者を解雇してはならないと定めて ①労働者が業務上の負傷または疾病のため休業する期間およびその後30日間 ②女性が産前産後の休秦をする期間およびその後30日間 ただし、地震などの天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能 また、労働基準法では、企業が労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった 「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変のほか、天災事変に準ずる また、「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部または大部分の継続が不可能 被害の状況別に解雇予告手当の支払い義務を次にまとめます。 ただし、事業場の施設・設備が直接的な披害を受けていない場合で、取引先企業 地震により被害を受けたことによる解雇や雇い止めであれば、無条件に認められる 通常の場合と同様に、裁判事例や労働契約法などの規定に照らし、個別に判断 期間の定めのない労働契約の場合、労働契約法では、解雇は「客観的に合理的な また、経営上の理由から余剰人員削減のためになされる整理解雇では、裁判例 ①人員整理の必要性 ②解雇回避努力義務の履践 ③被解雇者選定基準の合理性 ④解雇手続の妥当性 期間の定めのある労働契約の場合、労働契約法では「やむを得ない事由がある 期間の定めのある労働契約での途中の解雇は、期間の定めのない労働契約の また、期間の定めのある労働契約であっても、期間の定めのない契約と実態としては 個別の解雇の有効性は、最終的には裁判所における判断となりますが、労働 採用内定では、企業からの正式な採用内定通知が届いた時点で、原則として労働 この労働契約は一般の労働契約と若干異なり、「解約権留保付就労始期付労働契約」 これが成立すると、内定取り消しは会社都合の解雇にあたり、正当な理由のない企業 正当な理由であると認められるのは、「採用内定当時、知ることが出来ず、または、 具体的な事由としては、過去の裁判例などから、次のような場合があげられます。 ①あらかじめ採用内定を取り消す場合の事由を約束しており、その事由が発生 ②内定を出した当時には予測できなかった経済状況の悪化等で企業の人員計 ③本人が内定時に申告していた経歴・学歴の重要部分に虚偽が判明した場合 ④卒業や資格の取得等の条件が満たされなかった場合 また、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合に、やむを得ず、内定 ①解雇予告や解雇予告手当の支払いなど労働基準法に基づく解雇手続きを適 ②採用内定者が内定取り消しの理由について証明書を請求した場合には、遅 ③新規学校卒業者の内定取り消しを行おうとする場合は、所定の様式により、 なお、採用内定の際に予定されていた入社日に入社させたうえで、実際には就業を 1.災害時における雇用保険の特例処置について 次の場合には、労働者は失業給付を受給することができます。 ただし、雇用保険に6カ月以上加入しているなどの要件を満たすことが必要です。 ①事業所が災害により直接被害を受けたことにより、事業の休止や廃止をし *実際に退職していなくても受給できます ②災害救助法の指定地域にある事業所が災害により直接被害を受けたこと *事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても対象になります 上記①に該当する場合は、事業所がハローワークに「休業証明書」を、②の場合は、 なお、この特例措置制度を利用した場合は、休業や一時的離職の前の雇用保険 今回の地震によって、被害を受けた地域においては、表のとおり労働保険料等の ※1 労働保険料、特別保険料、一般拠出金並びに障害者雇用納付金のことです。 ※2 「相当な損失」とは、経営者の全財産の価額に占める災害による損失の額の 雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた経営 具体的には、「最近3カ月の生産量、売上高等がその直前の3カ月または前年同期 また、中小企業緊急雇用安定助成金は、中小企業向けに雇用調整助成金の助成 雇用調整助成金は、通常は、震災による事業所の損壊が事業活動縮小の直接的な ただし、特例措置により東北地方太平洋沖地震に伴う「経済上の理由」で事業活動 ①交通手段が途絶えたことにより、労働者が出勤できない、原材料の入手や ②事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早 ③避難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観 ④計画停電の実施を受け、事業活動が縮小した場合 雇用調整助成金の助成率は次のとおりです。 なお、事業主が解雇等を行っていないなど、一定の要件を満たした場合は、助成率 ①青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野 ②①に該当しない事業所であっても、上記の災害救助法適用地域に所在する ③計画停電の実施地域に所在し、計画停電により事業活動が縮小した事業 以上の場合は、最近3カ月ではなく最近1カ月の生産量、売上高等がその直前の また、①の場合は、本来は事前に届け出る必要のある計画届の事後提出が認 メルマガ登録(無料)はこちらから
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配置転換を行う際の留意点 |
配置転換とは、会社内における職務内容や勤務場所の長期にわたる変更(人事異動)のことを 勤務場所の変更に際してよく使われる転勤も、配置転換のひとつです。 配置転換は、次のような目的で行われ、上手に活用すればメリットのある方法です。 ・社員に多くの職場・仕事を経験させることによって人材育成ができる ・会社のなかで人員配置を調整することで、解雇することなく雇用を維持できる ・人材を適材適所に配置することで事業を効率的に運営できる この場合、会社の正当な人事権の行使である限り、社員はこれに従う義務が生じます。 ただし、配置転換は、社員にとって著しい不利益を伴う可能性があり、むやみに行使すれば、 このため、会社が社員に配置転換を命じる際は、さまざまな点に留意して慎重に行う必要が 次項からは、配置転換(転勤を含む)を行う際の留意点について解説します。 1.就業規則に規定されているか 就業規則や労働協約に「配置転換を命じることがある」といった旨の定めがある場合に、 この定めがない場合は、配置転換させる命令権がないと考えられますので、まずは、 就業規則などで配置転換をする旨が規定されていたとしても、その社員との雇用契約に このため、雇用契約において、勤務地や職種が限定されているかどうかを確認する必要が 雇用契約の際に、勤務地や職種を限定することが約束されている場合には、会社の一方的な ただし、勤務地や職種が限定されているかどうかについては、あいまいなままになっている 採用時には、一般的に働いてほしい勤務地で、働いてほしい職種について募集し、面接する 「限定されていた」との主張がなされた場合に、過去の判例では、次のような点から総合的に ・社内規定の内容や運用 会社が社員を配置転換させるには、業務上の必要性が求められます。 業務上の必要性のない配置転換命令は、権利の濫用とされます。 過去の判例では次のような事由で検討され、会社の合理的な運営に役立つ事由が ・人員の適正配置・業務の能率向上・勤務意欲の高揚 ・能力開発や向上・業務運営の円滑化 人選の合理性については、判例において、会社の裁量が広く認められる傾向があり、 会社が行った配置転換命令に不当な動機や目的がある場合は、権利の濫用と考えられます。 不当な目的や動機がある場合とは、次のような事由があげられます。 ・社員を退職させるために行われる配置転換命令 ・会社に対して批判的な考えをもっている社員に対する配置転換命令 配置転換によって社員に通常甘受すべき程度を著しく超えるような不利益を負わせるもので 不利益として問題とされることが多い事由としては、次のものがあげられます。 ・家族の介護を行っている社員や転居が困難な病気を家族が患っている場合 ・転勤に伴い単身赴任を余儀なくされる場合 ・通勤に長時間を要する場合 6.法律に違反していないか 会社が行った配置転換命令が、強制的に適用される法律に違反している場合は無効と たとえば、その配置転換が労働組合活動の妨害を目的とするような不当労働行為に該当する また、育児・介護休業法では、次の条文で、配置転換を行おうとする会社に配慮を求めて 配慮にあたる内容として、次の例示がされています。 ・その社員の子の養育または家族の介護の状況を把握すること ・社員本人の意向を配慮すること ・就業場所の変更を行う場合は、子の養育または家族の介護の代替手段の これは、社員が配置転換を拒んでいる場合に、育児や介護の負担がどの程度なのか、 すでに配置転換を決まったものとして強行に行使しようとする場合は、法律の趣旨に反し、 1.就業規則の点検を行う 会社の就業規則に「配置転換を行うことがある」旨がきちんと規定されているかどうかを 記載されていない場合は、社員と話し合ったうえで、その旨を盛り込んでおいたほうが 配置転換は、就業規則の定めがあれば、会社が命令することができますが、社員にとっては、 そこで、一方的に命令するだけでなく、事前に社員に意向確認をすることが大切です。 併せて特に転居を伴う配置転換を行う場合は、転居費用の支援など、負担を軽減する措置を 社員に対して配置転換を命じる必要性と社員の被る不利益を比較し、必要性が不利益を このため配置転換を行う必要性を明確にし、できる限り具体的に整理しておくことが また、配置転換を命じる社員に対して、その必要性を丁寧に説明することも有効です。 また、労働契約法においても次のように定めています。 この点からも配置転換など労働条件が大きく変わる場合は十分な説明は必要といえる 雇用契約において、勤務地や職種が限定されている場合には、配置転換を一方的に 会社の意図とは違って、「自分は勤務地限定(職種限定)で採用された」と社員が勘違い 労働基準法では、会社は社員を雇用する際に、労働条件の重要部分について書面で明示 採用面接や採用をする際に「配置転換の可能性があること」についても説明しておくことが 1.就業規則規定例 配置転換を就業規則に定める際の規定例を示します。 配置転換を行う可能性がある場合の雇用契約書(一部抜粋)への記載例を示します。 メルマガ登録(無料)はこちらから
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副業・兼業について |
副業をしている就業者数は270万人(就業者数全体に占める割合は4%)。 一方で、収入補てんや新たなスキル・人脈獲得等の目的から副業を希望する就業者数は
最大の狙いは経済の活性化である。 2018年の独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、 「副業・兼業の許可する予定はない」が75.8%ともっとも割合が高く、「副業・兼業を許可 副業・兼業を許可している理由(複数回答)は、「従業員の収入増加につながるため」が 一方、「副業・兼業の許可する予定はない」とする企業の副業・兼業を許可しない理由 出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 多くの会社では、従業員が「副業をすること」を就業規則等で禁止し、これに違反した 独立行政法人労働政策研究・研修機構の「雇用者の副業に関する調査研究」によれば、 同調査で副業を禁止している会社があげた理由は、 ・本業に専念してもらいたいから ・業務へ悪影響を及ぼすから ・企業秩序を乱すから ・業務上の秘密を保持したいから といったものです。 副業・兼業を許可する理由 ・従業員の収入増加につながるため ・従業員が活躍できる場を広げるため ・従業員のモチベーションの維持・向上につながるため ・従業員の視野の拡大や能力開発につながるため ・組織外の知識や技術を積極的に取り込むため 従業員のなかには、住宅ローンやその他の借入金を抱えている者や、子どもの養育費が ような背景から、従業員の給料の減少を補填するという意味合いで、従来禁止していた 全国20〜59歳の民間企業で働く正社員1000人を対象(出典:マクロミル調査) 副業を希望する理由は「生活費の足し」(62.7%)や「本業の給与が安い」 次項からは、会社が副業を認める場合には、どのような問題点があり、どのようなことに 1.従業員の安全の問題 従業員の副業を認めた場合に、本業と副業の労働時間を合計すると従来よりも労働時間 その結果、次のような身体上の問題に発展するリスクが考えられます。 ・疲れから集中力や注意力が低下し、思わぬ事故によるケガの発生 ・過重労働による脳疾患や心臓疾患の発症 ・心理的な負担によるうつ病など精神疾患の発症 1日の所定労働時間は8時間という会社が多いですが、その勤務の後、副業先で5時間 たとえば、副業を土曜日や日曜日にも行い、本業と副業を通算した月間の所定外労働 このような過重労働のなか、脳・心臓疾患や精神疾患を発症した場合に、過労死認定 万が一、死亡や自殺などにつながれば、損害賠償責任も生じてくるおそれがあります。 業績不振を原因とした休業やワークシェアリングによる勤務時間短縮は、給与減少に 従業員としては、「会社には頼れない」という意識をもつことで、会社に対するロ そのようななか、副業が認められれば、慣れている本業は効率良く終わらせて、副業を そして、二重就業によって、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積し、本業での遅刻や 本業に対する情熱や、やる気が失われたり、コミュニケーション不足を引き起こしたり 従業員の副業先が、風俗や公序良俗に反するものであったり、会社のイメージと また、副業先が同業他社である場合には、本業で知り得た情報を副業先で漏らして 副業をしたことがきっかけとなって競合する会社に転職してしまう可能性もあります。 労働基準法では、1日に2カ所上の事業所に勤務する場合に両方の労働時間を通算 法定労働時間は、1日8時間、週40時間なので、それを超えた場合は、残業時間と また、従業員が、給与を2カ所以上から受け、年末調整をされなかった給与の収入 1.副業を認める方法 企業が禁止していた副業を認める場合には、次の方法が考えられます。 ①就業規則の副業禁止規定を削除し、副業を自由に認める ②副業をするときは内容を届け出ることにする ③副業は会社の許可を受けた場合に限り認める これに対し、②は一定のルールを設け、副業を会社に届け出ることとするものです。 ③は②同様に一定のルールを設けたうえで、会社が許可した場合に限り認めるという ①の場合、副業の内容などは社員の判断に委ねられることになり、会社としては従業員 前述したように副業を認める場合には、さまざまなリスクが考えられますので、届出制 また、原則禁止であるが、不況で業績が低迷している時期に限定して認めるなど、 会社としては、従業員が副業をする場合に、その実態を把握しておきたいところです。 そして、本業に著しい影響をもたらすことのないように、ある程度基準を設け、その 具体的には、副業を行う際の手続、地域・期間・職種などの基準を定め、就業規則や (4)「副業の許可願」の社内組織の例 会社としてはリスク防止の観点から、秘密保持の誓約書や競業禁止義務の誓約書など そのためには、副業を認めるにあたって、従業員の理解と協力が欠かせません。 会社の対応を決めたうえで、会社が副業を認める主旨や、副業をするときの留意点など メルマガ登録(無料)はこちらから
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雇用調整の進め方 |
■雇用調整の進め方 業績悪化などに伴い「雇用調整」を進めざるを得ない企業が増えています。 しかし、一言で「雇用調整」といっても、採用計画の見直しから整理解雇までその たとえば、残業規制や休日・休暇の増加、中途採用やパートの採用中止などは、 これに対し、希望退職募集、転籍、退職勧奨、整理解雇などは、従業員を企業の また、配置転換や一時休業は、従業員としての雇用関係は確保されるものの、仕 雇用調整は、従業員に対し「影響の小さいもの」からスタートし、 というステップを踏む配慮が必要です。 雇用調整は、どのような方法で行うにしても、人事権や解雇権の濫用、それに対 こうしたことを避けるためにも、きちんとした手順を踏み、慎重に進めていくことが それでは、雇用調整の方法をその流れに合わせて説明していきましょう。 採用内定の取り消しは、厳密には雇用調整の手段には含まれません。 しかし、対象者はもとより、その家族などに対して計り知れない打撃と失望を与 内定後の経営の悪化など、やむを得ない場合の内定取り消しは、社会通念上 厚生労働省の「新規学校卒業者の採用に関する指針」の「事業主が考慮すべき (中略)なお、事業主は、採用内定取り消しの対象となった学生・生徒の就職先 雇用調整の初期の手段として、もっとも広くとられているのが残業規制です。 日本企業では、「生活残業」という言葉さえあるように、業務の繁閑に関わらず しかし、残業は業務命令により行うのが本来あるべき姿です。 従業員にしてみれば、残業手当がなくなることにより月収は減ることになります 中途採用は、即戦力となる本当に必要な人材を十分に絞り込んだうえで行われ 休日を振り替えたり夏期休暇などの休日・休暇を増やしたりする措置は、厚生 しかし、この措置を実施する際には、時短推進や労働条件の整備を目的とした 臨時従業員やパート・アルバイトなど短時間労働者の雇用の際には雇用期間を ただし、労働契約期間を反復更新して雇用してきた臨時従業員やパート・アル 地位保全の申し立てにより裁判となった例もあるため、慎重に行いましょう。 厚生労働省による「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」 ◆雇い止めの予告 契約締結時に、その契約を更新することを示していた労働契約(1年以上 雇い止めの予告後に従業員が雇い止めの理由について証明書を請求した 一時帰休は従業員を一定期間自宅で待機させる制度で、会社の一部門につい このような休業は、労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由による また、従業員としての身分が保証されているため、退職勧奨などに比べて従業 経済上の理由で、直近3カ月間の生産量または売上高が5%以上減少するな 業績の悪い部門の従業員を配置転換し、営業利益の増加を追求するという手 配置転換・転勤は、同一企業内において職種、職務内容、勤務場所のいずれか いずれも労働契約の変更となるため、トラブルに発展しないよう注意が必要です。 なかでも転勤は、転居を伴う場合、従業員およびその家族などの生活にも大き 「不当な動機・目的による」あるいは「従業員に著しく不利益をもたらす」転勤命 また、育児・介護休業法では、事業主に対して、転勤など就業の場所の変更を したがって、人選には細心の注意をはらう必要があります。 新しい配置先で即戦力となってこそ、雇用調整における配置転換が意味あるも そこで、仕事内容が変わる場合は十分に教育訓練を行うなど配慮が必要です。 就業規則において「業務上の理由により従業員に対し出向を命じることがある」 最近の不況下では親会社が生産部門を縮小し、余剰人員を製品の販売会社や 出向命令という権利の行使は信義誠実の原則に従ってなされるべきであり、出 平成20年3月1日から施行された労働契約法では、権利の濫用と認められる 出向を命じるにあたっては、出向先の企業の範囲、出向期間や貸金、退職金 転籍は出向に類するものではありますが、転籍元会社を退職し、転籍先会社と 希望退職への応募は完全に本人の自由な判断に任されるものです。 これに対し勧奨退職は企業側が対象者を特定して行うもので、希望退職の募 なお、事業規模の縮小、事業活動の縮小、事業の転換、事業の廃止などに伴 ※再就職援助計画とは、「事業所の現状」「再就職援助計画作成に至る経緯」 整理解雇は雇用調整の最後の手段であり、勤続年数の少ない者、勤務成績 解雇を行う場合には、解雇しようとする従業員に対して、 ・少なくとも30日前に解雇の予告(予告日数は、平均賃金を支払うことで短 ・予告を行わない場合には平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い をしなければなりません。 また、雇用対策法の定めにより、事業規模の縮小などにより労働者を1カ月 さらに、高年齢者雇用安定法では、45歳以上65歳未満の者を1カ月に5人以 解雇が有効に成立するためには、 ・整理解雇の経営上の必要性が認められる ・解雇を回避するための努力が尽くされた ・労働組合、従業員に対して事情を説明し協議を尽くした ・解雇対象者の選定基準および選定が合理的である ・解雇の手続きが公正に行われた といったことが必要です。 計画性のない雇用調整は従業員の反感を買いかねません。 雇用調整をスムーズに進めるためには以下のポイントに留意し、従業員が雇用 雇用調整を進めるにあたっては、経営幹部のみならず・一般従業員や労働組合 したがって、 1)自社の置かれている経営環境 2)自社製品の売り上げの実態と今後の見通し 3)人件費を中心とするコスト構造 などに関する正確な情報を、従業員や労働組合に対してわかりやすく提供し理 経営に関する情報を従業員や労働組合に提供することは危機意識を高めるう そのためには、たとえば、 1)休憩時間などはパソコンなどの電源を必ず切る 2)社内資料のコピーは裏紙を利用する 3)備品、文房具などは再利用する 4)出張時の新幹線のグリーン席の利用をやめる などの経費削減運動を展開することが考えられます。 経費削減運動は自分に直接関係している業務に対する運動であるため、この 雇用調整の実施について労働組合と、 1)雇用調整の内容について事前通知 2)雇用調整の必要性や内容についての協議と合意 などの取り決めをしている場合は、その取り決めを守らなければなりません。 雇用調整において、「現在の生産状況から考えて、生産部門の従業員を5人ほ つまり、経営者もしくは担当者が、自分や会社にとって都合が悪いと考える従業 その結果、 1)組合活動に熱心な従業員 2)日頃から会社や管理職に対して批判的な言動の目立つ従業員 3)人づきあいの悪い従業員 といった人材だけを雇用調整の対象とする一方的な人選が行われることにもな しかし、こうした人選は人事権の濫用あるいは不当労働行為として問題となり、 従業員は、経営者が雇用調整の責任をどのように取るかについて大きな関心を 経営者が役員報酬のカットやその他の形で雇用調整の責任を明確にすれば、 弱いものから切っていくような態度では従業員の理解を得ることはできません。 さらには雇用調整の影響を受けない従業員にも悪影響を及ぼすことになりかね 労働時間の短縮や定年の延長に伴い就業規則を変更する企業も増えています。 雇用調整を進めるうえでのトラブルを回避するためには人事・労務制度を徹底 これは、企業に有利なように書きかえるというのではなく、厳しい経営環境にお なお、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことに留意 1)変更が、以下の事情などに照らして合理的であること ・労働者の受ける不利益の程度 ・労働条件の変更の必要性 ・変更後の就業規則の内容の相当性 ・労働組合等との交渉の状況 2)労働者に変更後の就業規則を周知させること メルマガ登録(無料)はこちらから
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正社員転換制度 |
■正社員転換制度導入のメリット パート社員や契約社員などの非正規労働者は増加の一途をたどっています。 総務省統計局の「労働力調査(平成31年1〜3月期平均)」によると、2期連続で 非正規労働者のなかには、正社員になりたくてもなれなかったため、現在の就業 当時のこのような環境のなか、平成20年4月1日に施行された改正パトータイム その方法のひとつに正社員への転換制度の導入があり、制度を新たに導入した しかし、これまでの企業における非正規労働者から正社員への転換制度の有無 少子・高齢化により労働人口が減少していく今、非正規労働者を戦略的に活用す ・非正規労働者を採用する際に有利 ・意欲や能力の高い人材をじっくり見極めてから、正社員に転換することができる ・非正規労働者が転換をめざして努力することによるモチベーションアップ ・正社員にも刺激を与えられることにより、組織の活性化が図れる 非正規労働者から正社員への転換制度にはさまざまなタイプがありますが、一般 一般的な制度についての導入手順について次に説明します。 非正規労働者の正社員への転換制度を導入するときに、まずは、受入側となる つまり、どのような人材が正社員として求められているのか、会社が望む正社 また、同時に非正規労働者の制度を整備しなければなりません。 非正社員として入社し、正社員に転換するまでの評価制度や教育制度を整えて このことは、非正規労働者が、実際に転換制度をめざし、応募するかどうかに関 次に転換制度の内容を検討します。 転換制度に応募できるかどうかの基準(人事評価の成績、勤続年数、年齢な 人事評価の成績については、過去何年分を考慮するのか、普通以上の成績な 勤続年数としては、定着度や適正を見極めるためにも最低でも1年は必要とい 年齢については、正社員に転換してから、長く活躍してもらうためにも、一定年 また、会社が指定した通信教育の講座の修了、資格の取得、上司の推薦、転勤 いずれにせよ、どのような人に正社員になって欲しいかによって、会社にあった 選抜方法については、筆記試験と面接を併用して行っているケースが多くみら 筆記試験は、実務に必要な知識を測るための試験や適正試験、性格に関する また、面接は正社員として活躍していけるかどうかを見極めるために行います 転換制度の内容が固まったら、応募時期や選考時期、応募締切日など詳細な また、転換制度に応募するための社内様式も併せて準備します。 非正規労働者に転換制度について説明し、周知しておくことが必要です。 そして、非正規労働者がどのような方法で自己研鑽をしていったら、正社員にな 転換制度の規定例を記載します。 転換制度を導入する際には、助成金の活用も検討してみましょう。 中小企業が、就業規則や労働協約によって、契約社員やパート社員など有期 メルマガ登録(無料)はこちらから
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服務規律の策定 |
服務規律は、ほとんどの会社の就業規則に記載されています。 ただし、記載されている内容が会社の実態に合っておらず、形式的なものになって 就業規則の中に服務規律を策定する際には、会社の実態に合わせるよう注意が また、服務規律を懲戒処分と連動させることで、就業規則の中の重要な要素とする 服務規律とは、企業秩序を維持するために従業員が守るべき義務やルールのことです。 服務規律をおろそかにしてしまうと、企業秩序が乱れて、企業は成り立たなくなっ 服務規律は大きく次のように分類することができます。 (1)勤務に関する規律 (2)会社施設及び会社財産に関する規律 (3)秘密及び信用の保持に関する規律 また、業種によっては勤務時の服装や髪型について規定することもあります。 (2)の「会社施設及び会社財産に関する規律」には、会社の備品及び社有車を使 (3)の「秘密及び信用の保持に関する規律」には、会社の機密情報の漏えい防止 服務規律は、できるだけ会社の実態に沿った内容にする必要があります。 一般的な雛形の服務規律では実際に運用する際に、上手く運用できないことが 業種やその時代環境によって、必要な服務規律のかたちは異なるので、定期的 会社の実態に沿った服務規律を策定した後は、譴責(けんせき)や減給などの懲 会社の実態に沿った服務規律を策定しても、懲戒と連動していなければ、服務規 服務規律に違反した場合は、懲戒の対象となる旨を就業規則内に定めておくこと <規定例> (懲戒) 第○条 1.社員が次の各号の一に該当したときは、譴責又は減給に処する。 ①就業規則第○条(服務規律)に違反したとき ②・・・・・・・・・・ ③・・・・・・・・・・ 2.社員が次の各号の一に該当したときは、懲戒解雇に処する。 ①就業規則第○条(服務規律)に著しく違反し、なお、改善の見込みが ②・・・・・・・・・・ ③・・・・・・・・・・ 本来、服務規律は守られて当然のものですが、それが実現しづらくなってきてい 企業秩序を維持するためにも、服務規律を守らせるための工夫が必要とされて メルマガ登録(無料)はこちらから
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産業医の活用 |
■産業医 会社にとって、従業員が心身ともに健康で元気に仕事をしてくれることは、何より しかし、長時間勤務や過度なストレスが原因でうつ病や生活習慣病にかかる従業 厚生労働省の調査によると、定期健康診断における有所見率は54.1%(平成2 この不況下、収益を上げるために従業員はかなりのストレスにさらされています。 不眠、うつ病、職場不適応などのメンタル面の不調は、従業員個人の生産性を落 過労死や過労自殺が労災認定されるようになり、会社としての管理責任も厳しく 心身に不調をきたした従業員を早期に発見し、適切に対処するためにも、産業医 産業医とは、事業場(※)において従業員が健康で快適な作業環境の下で仕 メンタルヘルスの領域以外に、労働関係の法律知識や就業規則、就業実態に また、産業医は医師ではありますが、基本的に医療行為は行いません。 ※事業場とは、工場や事務所、店舗など、一定の場所において関連する組織 産業医を選任することで、大きく分けて2つの効果が期待できます。 (1)従業員の健康管理 ・健康に対する従業員の意識が向上し、従業員の心身の健康の保持 ・健康診断の受診率が向上する ・健康診断後に適切なフォローをすることができる ・従業員のメンタルヘルス対策に適切に対応することができる ・生活習慣病改善などの指導を受けることができる ・長時間労働者への面接指導により健康障害の防止を図ることができる ・職場の定期巡視により作業環境の改善が図られ、働きやすい職場になる ・高齢化に伴う職場不適応、長期休業療養者の職場復帰などに対応 労働安全衛生法では、一定規模以上の事業場には産業医を選任することが 産業医が必要となる規模とは、労働者が常時50人以上いる職場で、同一会 つまり、産業医は、会社ではなく事業場を単位として必要になってきます。 なお、労働者の数によって必要な産業医の数も変わってきます。 労働者の数が50〜3,000人までの事業場には産業医を1人以上、3,001人 労働者が常時1,000人以上いる事業場、および有害業務に従事する労働者 専属の産業医とは、他の医療機関などで常勤として勤務しておらず、もっぱら 産業医を選任した場合には、事業場と医師との間で産業医契約を結ぶだけで 産業医を選任している事業所の割合 産業医の仕事は、従業員の健康を阻害する要因がないかを見回ることや、健 ・毎月1回、職場を巡視する(定期巡視) ・定期健康診断の結果に基づき、従業員の健康状態をチェックする ・必要に応じて、従業員と個別に面談を行い、健康管理指導を行う ・過重労働者(月の残業時間が100時間以上の者など)への面接指導を行う ・従業員の休職・復職の判断時の面接を行う ・健康やメンタルヘルスに関する相談、教育を行う ・職場環境の管理・改善のためのアドバイスを行う ・従業員の健康障害の原因調査、再発防止のための措置について ・衛生委員会に参加する などがあげられます。 産業医を探すには、次のような方法が一般的です。 (1)地元の医師会に問合わせをする 地元の医師会に問い合わせをして産業医をお願いする方法です。 地元の医師会に紹介してもらうため、事業場近くの医師に産業医を依頼で 定期健康診断や人間ドックで利用している医療機関に依頼する方法です。 定期健康診断と連動したかたちで保健指導などを受けることができる点が 人材紹介業者の場合、登録されている医師のなかから条件に合った産業 人材紹介会社への紹介手数料は、嘱託産業医の場合には報酬月額の2 近隣の病院の医師に産業医を依頼する方法です。 近隣の病院であれば、通院している従業員も多いでしょうし、顔なじみ感も また、急病人が出たときに頼りになるというメリットもあります。 上記以外に、健康保険組合や地域産業保健センター(原則、従業員数50 厚生労働省の調査によると、平成28年12月時点の医師の数は約31万 産業医の大部分は嘱託で、開業医や勤務医が日常診療の傍らに産業医 産業医を決めるに当たり大事なことは、産業医に対して会社が何を望んでい ・おもに職場の定期巡視をお願いしたいのか ・従業員のメンタルケアに重点を置きたいのか ・安全衛生管理についてのアドバイスがほしいのか など、会社が産業医に求めているイメージを明確にしておくことで、契約前の 産業医を選ぶ際のポイントとしては次のようなものがあげられます。 従業員の年齢構成や職場の雰囲気によっても、その事業場に合った産業 たとえば、 ・やる気のある若い医師がよいのか ・経験豊富なベテランの医師がよいのか など、産業医に対する要望がある場合には、問い合わせの段階で伝えるよ なお、よい産業医は従業員が気軽に相談できるような雰囲気づくりを心掛 フットワークが軽くて、コミュニケーションの上手な明るい医師が理想です。 ・産業医としてどのようなビジョンをもっているのか ・安全衛生管理に対する考え方 ・企業のコストとリスクバランスについての見解 など、会社の姿勢と産業医のビジョンとがマッチしているかどうかを確認す なお、産業医の職務は従業員のプライバシーに大きくかかわるため、守秘 産業医との直接の窓口となる人事担当者や衛生管理者には、契約前の面 現場からの要望や実際の状況を産業医に伝えることで、どのように協力し よい産業医は、職場環境の改善策をアドバイスする際、最終的な目標を示 会社の状況を理解したうえで、最適な見立てができるかどうかも重要な要 従業員の健康や安全に重点をおきつつ、各部署や会社全体のコストとパ 産業医としての経歴を知ることは、(3)(4)の見当をつけるうえでとても重 産業医の報酬は、会社の事業内容、事業規模、所在地、依頼する職務の内 (社)東京都医師会が公表している、従業員数に応じた1事業場当たりの報酬 *有害物質取り扱い事業場は、危険手当として上記報酬の3割を付加する。 労働安全衛生法では、産業医には月1回の職場の巡視が義務づけられてい こうしたトラブルを防ぐためにも、産業医契約書には巡視の回数を明記するこ それ以外にも、「担当事業場名」、「業務対象」、「活動内容」などを具体的に明 そのためには、最初の段階でよく話し合い、その内容を契約書に落とし込むこ 1.職場の定期巡視 従業員がよりよい仕事をするためには、安全なだけでなく、快適な職場環境を 産業医には、 ・室内の明るさや温度、休憩設備などの環境的な問題 ・作業手順や作業時間、作業の姿勢や動線など業務そのものに関する問題 ・上司と部下、同僚との人間関係 などについて、専門家の立場から多角的にチェックしてもらい、実態を正しく捉 労働安全衛生法では、月に1回、産業医による職場の定期巡視を義務づけて 定期的に職場を巡視することは、産業医にとって職場環境や職場の雰囲気、 それ以上に重要なことは、職場における危険要因の早期発見です。 実際に産業医が職場に出向いてみると、室内の照明が暗かったり、騒音が大 産業医には事業場内のすべての場所を(トイレ、休憩室、食堂なども)巡視し 巡視は月に1回なので、効率的かつ計画的に実施するためにも、チェックリス チェックした項目に対して現場の責任者がきちんと対応したかを確認できるよ 労働安全衛生法では、従業員に対して定期健康診断を実施するよう義務づけ 事故の防止や生産性の向上といった観点から、有所見者に対して治療を勧告 また、定期健康診断の実施後は、産業医に結果をチェックしてもらい、健康診 その記入をもって、会社が管理する個人票は法的にも有効となります。 産業医にとっても、普段なかなか顔を会わせることのない従業員の健康状態 こうしたチェックをすることで、従業員個別の健康相談、正しい知識を伝えるた 会社は、時間外・休日労働時間が月100時間(※)を超え、かつ疲労の蓄積が 産業医は、従業員の勤務状況、疲労の蓄積状況、その他心身の状況につい 会社側は、産業医の意見を勘案し、必要が認められる場合には、就業場所の ※月100時間に該当するか否かは基準日を設定して算定します。 メンタル不全や健康障害で休職となった従業員の復職を判断する際には、産 たとえば、休職中の従業員が、経済的な理由などから早期復職を希望し、病 このような場合、主治医の診断書を鵜呑みにしてしまうと、復職してもすぐに休 職場環境に耐え得るレベルまで病状が回復しているかどうかの最終判断は、 なお、産業医は、スムーズな職場復帰をはたすために必要であれば、復職直 業種を問わず、労働者が常時50人以上の事業場には衛生委員会の設置が 月に1度、会議を開くことになっていますが、衛生委員会の活動はついおろそ 職場における潜在的なリスク要因を見つけだし、それを改善していくために なお、議事録などの記録をしっかりと残しておくことで、安全配慮義務違反のリ お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから
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従業員の転籍 |
■転籍とは 転籍とは、これまで在籍していた会社(以下、転籍元)との労働契約が終了し、異 転籍以外で籍を移す形態としては出向がありますが、出向は出向元に在籍して 転籍と出向の違いを図で示すと次のようになります。 転籍は、出向元と出向先の両方に在籍する出向と異なり、転籍元との労働契約 また、転籍や出向を行うには社員の同意が必要ですが、出向が就業規則による したがって、会社が一方的に転籍を命令することは認められません。 具体的に転籍を行う状況としては次のようなケースが考えられます。 ・事業の譲渡とともに労働契約が譲渡されることによる転籍 ・部門を独立させて別会社にするなど企業組織再編に伴う転籍 いずれのケースでも転籍には、社員の個別の同意が必要となりますが、会社分 1.同意について 前述のとおり、社員を転籍させるには、本人の同意が必要です。 口頭による同意でも有効ではありますが、無用なトラブルを避けるためにも、 この場合、転籍元への退職届および転籍先の雇用契約書でも構いませんが、 万が一、同意が得られなかった場合は、転籍をさせることはできません。 また、そのことを理由に解雇することもできません。 転籍に際して、転籍元と転籍先で労働条件が変更されることがあります。 企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職し、転籍先 ただし、事業譲渡や組織再編の場合は、転籍元の労働条件をそのまま転籍 しかしながら、労働条件についても社員の同意を得ることで変更が行われるこ すなわち、転籍および労働条件の変更の同意をとり、転籍先では新しい労働 いずれにせよ重要なのは、転籍先での労働条件を明示して十分に説明し、納 この点をあいまいにしてしまうと、後日、「こんなはずではなかった」などと社員 企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職する時点 一方、事業譲渡や組織再編に伴う転籍では、転籍先を退職する際に、転籍元 退職金の支払いについて、あいまいなままだと転籍の同意も得にくく、また、 同意書や、転籍元と転籍先の間の契約書に記載するなどして明確化しておく なお、転籍への同意を得やすくするため、転籍一時金などの名称で、退職金 1.転籍に関する同意書 転籍には対象者となる社員の同意が必要です。 口頭でも有効ですが、後日のトラブルを避けるためにも書面にしておくことが 次に転籍に関する同意書の書式例を記載します。 同意書を交わすだけでなく、転籍元と転籍先の会社間で、転籍に関する契約 次に契約書の書式例を記載します。 会社分割とは、株式会社または合同会社(分割会社)が、その事業に関して有す 承継する会社が分割により新しく設立される場合を「新設分割」といい、既存の会 この会社分割という方法をとる場合には、分割契約書等に定めるところにより、分 労働契約についても、そのまま承継されるので、分割される業務に主として従事 ただし、労働契約の承継については、労働者に与える影響が大きいため、労働者 労働契約承継法のおもな内容は次のとおりです。 詳しくは、厚生労働省のサイト 「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律(労働契約承継法)の概要」 メルマガ登録(無料)はこちらから
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社内規定の整備は会社を守る基本 |
社内規定集(ひな形)を掲載しておきますので自社用に加工して使用してください。 ネット上には情報があふれ、中には、よからぬ入れ知恵をするやからもいます。 一昔前と比べ、従業員個々の権利意識の高まり、情報収集による理論武装により、 社内規定は従業員と会社相互を守るためのものです。 未整備の規定があるようでしたら、自社用に加工してご使用ください。 「規定を作る」というなんとなく堅苦しく感じますが、これは大きな誤解です。 社内規定は会社を守るためのルールブックと言ってもいいでしょう。 例えば「就業規則」という規定があります。 これは給料体系、賞与、残業手当や有給休暇など会社で働くために必要な事柄を定 「このようなときは解雇しますよ」という内容をあらかじめ就業規則に決めておか 逆に「有給休暇」などは就業規則がなくても法律で決まっていますので与えなけ 販売されているものは上場企業でも適用できそうなくらいの「従業員有利」な内容 就業規則以外にも「三六協定」なども必要ですし、税務上は「慶弔規定」も整備 *36協定(三六協定) この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36(サ 残業手当を払っても違法であり、36協定は「会社の規模を問わず」、必要な手続き しかしこの費用も経費になりますし、また節税という枠を離れて考えても多くのメリ 社員に働きやすい職場を提供するとともに、いざというときには会社も守るために社 「Bring Your Own Device」の略で、従業員が個人保有の携帯用機器 ○メリット ・時間、場所を選ばず手軽に利用できる ・移動時間を有効に使え労働時間が削減できる ・どこにいても通信できる ・メールの返信など迅速な対応ができ顧客の満足度が上がる ・豊富なアプリでスケジュールやデータ管理がしやすい ・顧客へのプレゼンテーションなどの向上 ・紛失、盗難 ・盗み見 ・通信の漏洩 ・ウイルスの感染 ・悪意のアプリによる情報の漏洩 BYODをする際、プライベート・データと業務データの切り分けにも注意をしなけ 同一のアドレス帳を用いている場合、客先に送るはずの業務メールを誤って友人等 また、退職時には、BYODで使っていたスマートフォンやタブレットから業務データ (1)社内規程をきちんと整備しておく ①セキュリティポリシーなどのセキュリティ規程 ②適切な労務管理などの就労規程 ③費用負担の取り決めなどの経費規程 ①使用するアプリケーションの特定 ②リモートワイプ(遠隔からのデータ消去機能)の設定ができる ③ファイルのデータ暗号化ができる ④端末のセキュリティロックを設定する 以上の事項は、必ずマニュアルに記載してください。 ①利用目的 ②管理、届け出について ③禁止事項 ④利用終了時の取り扱い ⑤誓約への違反などの分類 取引先の電話番号、住所、担当者の名前もその情報の一つです。 顧客の情報、会社の情報が漏えいしてしまうと会社の信用もなくなり、最悪の事態を 「自社は、BYODを導入しないから対策など必要ない!」と考えるのではなく、あら
<役員用規程> 有限会社の役員退職慰労金・弔慰金規程 フレックスタイム規定 制裁規定 福利厚生規程 採用への備え 身元保証書
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労働時間の管理不足は企業リスクを拡大させる |
適切な労働時間管理が行われないと残業は慢性化し、企業、従業員とその家族にとって 労働基準法(以下、労基法)では、休憩時間を除き労働時間について次のように定め ・1日の法定労働時間は8時間 ・1週間の法定労働時間は40時間 この法定労働時間を基本として、企業は労働者の労働時間を管理していきます。 労基法では、1日の法定労働時間について8時間と定めています。 ◎労働時間にかかわる範囲 ○拘束時間 ・拘束時聞から休憩時間を除いた時間をいう ・この労働時間は使用者の指揮監督のもとにある時間をいう ・所定労働時間は法定労働時間の範囲内で定める ・就業規則などで定める所定始業時刻から所定終業時刻までの ・拘束時間中ではあるが、勤務からは解放され労働しないことが ・所定労働時間を超えるが法定労働時間内の労働時間(割増貸 ・法定労働時間を超える労働時間(割増貸金の支払いが義務づ 1週間の所定労働時間が40時間以内となるように、各勤務日の所定労働時間 一部の業種については、法定労働時間の特例措置が講じられています。 ◎法定労働時間の特例
適当な時間で労働を中断するなどし、労働者の心身の疲労を回復させる必要があり このため、労基法は休憩時間について次のように定めています。 しかし、長過ぎる休憩時間は拘束時間をいたずらに長くする結果となり好ましくありま また、休憩時間は労働から離れることが保障されているものである以上、これを労働者
休日は、労働者にゆとりある生活を与え、労働による心身の疲労を回復させる役割を 労基法は、 これによると、毎週1回の休日を与えていれば、それ以外に国民の祝日を休日にする また、休日について特定することを要求していません。 所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合の対応の仕方として、おもに次の 所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合、原則として同一週内で振替日 したがって、 休日の振替の場合は割増賃金は発生しません。 休日の振替に似たものとして、一般に「代休」と呼ばれる制度があります。 これは休日労働を行わせた場合に、その代償措置として、事後にある日の労働 ただし、休日労働の事実は消えないので、 代休の場合は休日労働に対する割増賃金の支払いが必要です。 なお、代休日を有給とするか無給とするかは就業規則などの定めによります。
労基法では、法定労働時間と週休制の確保を労働条件の最低基準として規定し、 しかし、 ・災害の発生その他通常予見されない緊急の場合 ・業務上の必要から労使協定を締結した場合 には、一定の条件のもとに、時間外または休日に労働させることが認められています。 (1)非常災害の場合 労基法では、災害、緊急、不可抗力など、避けることのできない事由によって、臨時 この場合には、あらかじめ、所轄労働基準監督署長の許可を受ける必要がありま この書面協定を労基法の条文にちなんで「36協定」と呼んでいます。 ただし、18歳未満の年少者または妊産婦で請求のあった者については、この
本来の休日以外に取得することができる有給の休暇で、社員等に与えられる権利 しかし、業務が忙しい日に有給休暇の申請があった場合、会社には休暇日をずらして 病気と嘘をついて有給休暇を取得しても欠勤扱いにすることはできなません。 これを防ぐためにも、就業規則等に「住所、家庭関係、経歴その他の会社に 申告すべ そして、「所定の手続きを怠ったときには懲戒の対象となる」と明記する。 (1)有給休暇の日数 6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、有給休暇 有給休暇の最低付与日数は、勤続年数に応じて以下のとおりと定められています。
多くの中小企業は36協定を締結せずに、就業規則の定めだけを根拠に従業員に これは、所轄労働基準監督署の許可を得ずに従業員に時間外労働などを命じている 仮に従業員がそうした状況を労働基準監督官に申告すれば、その臨検によって是正 また、その際は就業規則も確認し、新たに締結する36協定と矛盾がないようにします。 36協定と就業規則の整備によって従業員に時間外労働を命じる根拠が整うため、 1.時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由 2.業務の種類 3.労働者の数 4.1日および1日を超える一定期間について延長することができる 5.有効期間の定め 6.1日を超える一定の期間の起算日 長時間労働を抑制し、労働者の健康を保持しながら、仕事と生活の調和を図ることを 時間外労働を労働者に行わせるには「36協定」が必要ですが、時間外労働ができる この限度時間を超えて時間外労働を行わせるには「特別条項付き36協定」が必要 「特別条項付き36協定」を結ぶ際には、 (1)限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間) (2)(1)の割増賃金率について25%を超える率とするよう努めること (3)そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること が必要になります。 月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50% ただし、中小企業については、法定割増賃金率の引き上げは猶予され、施行より3年 月60時間を超える時間外労働について、労使協定を締結すれば、引き上げ分の割増 ただし、労働者が代替休暇を取得した場合でも、従来の25%分の割増賃金の支払い 労使協定を締結した場合、1年に5日分を限度として有給休暇を時間単位で与える 中小企業が労働時間管理を徹底する際は、タイムカードの設置などによって実際の労働 これらを実践した上で具体的な労働時間の適正化策を講じます。 季節的な業務量の偏りによって定期的に時間外労働が発生しているような場合は変形 ただし、現実的にはこのような単純な取り組みで問題が解決できるケースは少なく、 これは、従業員の希薄な時間管理の意識が時間外労働などの原因になっているケース その役割を担うのは管理者です。 意識改革が必要なのは従業員だけではなく経営者も同様です。 時間外労働などを削減すると、全体の労働時間が減る分、企業の生産力や販売力が これまで従業員に時間外労働など負担をかけることで実現してきた生産力などが失わ 労働時間管理の徹底は会社と従業員に大きな影響を与え、一時、混乱を招くこともあり それでも労働時間管理の徹底が求められるのは、それが企業が労基法など関係法令を お問合せ・ご質問はこちら
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福利厚生のあり方 |
■福利厚生のあり方を考える 多くの社長は福利厚生について「世間並みの水準」を確保していれば十分という しかしながら、社員の福利厚生への関心は社長が思っているよりもずっと高いの 場合によっては自社の福利厚生への不満がきっかけとなって、優秀な社員が転 ここでは、魅力ある福利厚生制度を「本気で」考えるためのポイントについて解説 そもそも福利厚生とは、給与とは別に会社が社員やその家族の生活向上を目 社員の側からみれば「本来の給与のほかに会社から受ける利益」ということに 福利厚生には、法律によって企業に実施が義務づけられている、社会保険など ここでは、法定外福利厚生制度について考えていきます。 なぜ、会社は限られた収益のなかから、給与以外に福利厚生という形で社員に ・既存の優秀な社員の流出を抑制する ・優秀な社長の採用を促進する ことにあるのは明白です。 もちろん、社員とその家族に「もっと幸せになってほしい」というシンプルな気持 魅力ある福利厚生制度づくりは、自社の将来を託す人材を確保するための方 世間並みの制度をつくっておけば十分ということではありません。 また、福利厚生制度の運用には当然ながら資金が必要です。 会社資金の使用に当たっては、そのすべてにおいて目的が明確になっていなけ 「方針なき福利厚生」、「何となくやっている福利厚生」は会社資金の無駄遣いと 自社の福利厚生制度の充実を考える前に、まず世の中の会社が、「どのくらい (社)日本経済団体連合会(経団連)の「福利厚生費調査結果報告 2018年 同調査結果によると、従業員1人1カ月当たりの法定外福利厚生費は、回答 また、従業員規模別にみると、会社規模が大きくなるにつれて金額が高く 大企業になればなるほど充実した福利厚生を実施できる資金的余裕がある ただし、もっとも金額が低い500人未満の会社でも、従業員1人1カ月当たり 決して少ない金額ではありません。 次に費用の内訳(全回答企業平均)をみると、もっとも金額が高いのは、住 次いで給食、保険、財産形成などの「ライフサポート」、「医療・健康」、「文化・ もっとも金額の高い「住宅関連」では、回答企業全体の平均で1カ月当たり1 ここまで紹介した各種のデータは、あくまで一般的な会社の福利厚生の状況 ただし、「世の中の会社は、優秀な社員の流出を抑制するため、そして、優 自社の福利厚生制度の充実を図る際には、次のようなステップで進めるのが効 2.求めている人材像に適した充実策を検討する(ステップ2) 3.社員へのアンケート調査を行う(ステップ3) 4.新しい福利厚生制度を設計する(ステップ4) 冒頭で述べたように福利厚生制度の充実は、将来の自社を託す人材を確保す もちろん社長自身が細かい制度設計などをする必要はありません。 しかし、少なくとも方針決定や基本的な枠組みづくりは社長主導で進めるべきで そして、自分が自社の福利厚生に対して真剣に考えていることを社員に宣言す 通常、社員は自社の福利厚生に不満をもっていても、なかなかそれを口にする そんなことを言えば「その前にもっとしっかり働け」と怒られると思っているからです。 社長自身が重要性を感じていることをきちんと示すことで、社員も福利厚生制度 限られた経営資源のなかで魅力ある福利厚生制度を設計するためには、まず そして、ここでいう「どんな人たち」というのは、当然ながら「自社が求めている人 優先的に充実すべき、ターゲット別の福利厚生としては、たとえば、以下のよう また、看護師など女性が多い職場では、「育児支援」に関する福利厚生に特に 多くの看護師は仕事に慣れた頃に出産・育児の時期を迎えます。 その際に退職せずに働き続けられるように、各病医院は充実した保育環境を提 魅力ある福利厚生制度を設計するためには、社員向けのアンケートを行い、ど また、アンケートを行うこと自体が、会社としての福利厚生制度の充実への積極 アンケート項目としては次のような内容が考えられます。 年齢、勤続年数、既婚・未婚、持ち家の有無、子どもの有無(いる場合は数、 現状の福利厚生制度を列挙して、それぞれの制度について存在自体を知っ 現状の福利厚生制度への満足度を5段階程度で評価してもらいます。 なぜその点数をつけたかの理由についても記入欄を設けます。 今後、どのような福利厚生制度を充実してほしいと思うかを質問します。 あらかじめ次のような項目を列挙しておき、3つ程度を選択させます。 ステップ2で想定した「求めている人材像に適した充実策」についても選択妓 ⑥人間ドック ⑦メンタルヘルス支援 ⑧自己啓発支援 ⑨介護支援 ⑩結締や出産の祝い金 など アンケート結果も踏まえたうえで、新しい福利厚生制度を設計します。 まずは限られた経営資源のなかでどの分野に重点をおくかを決めることから始 制度実行に当たって必要となる資金や手間などの現実的な問題も考慮しなが そして、重点分野以外の制度についても、現状のままでよいのか、他社との比 制度は策定するだけでは意味がありません。 新しい制度を社員にきちんと説明して実際に活用しもらうこと、採用活動で自社の 新しい制度の概要・狙い・特徴などを社員に説明するためのガイドブックを作成 社員の家族にも見てもらえるように冊子(紙べース)として配布するのが好まし わかりやすくするためには、たんに各制度の内容を羅列するのではなく、社員 たとえば、育児支援に力を入れる場合は、出産から始まり、子どもの成長に応じ また、実際に活用するために必要な手続きなども詳しく示します。 朝礼の場などで、ガイドブックを使った説明を行うことも有効でしょう。 実際に制度が活用されるような「環境整備」も大切です。 たとえば、「上司に休暇申請をしにくい雰囲気がある」部署では、長期休暇制度 福利厚生制度は要件を満たす社員すべてを対象にしたものですので、部署に 部署ごとに福利厚生制度活用促進のための検討会を行うこと、上司が福利厚 募集広告や応募者への面談などにおいては、自社の福利厚生制度の特徴を十 社内での実際の活用状況などをデータとして示すのもよいでしょう。 「自社の福利厚生制度に込められた社員への思い」や、「社員が制度を使って 応募者に渡す会社案内には、制度の内容を必ず盛り込むようにしましょう。
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中小企業に求められる福利厚生 |
福利厚生とは、賃金など基本的な労働条件とは別に、企業が従業員やその家族の 福利厚生は、「法定福利」と企業が独自に行う「法定外福利」とに分けられます。 法定福利は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険の保険料 これら社会・労働保険は、強制加入を原則としており、企業の福利厚生として基本中 法定外福利は、原則的には事業主の裁量によって決められるものです。 法定外福利はあくまでも事業者側の任意によるものですが、人材の確保・定着や労働 また、従業員が求める福利厚生への要求レベルも多様化・高度化している現在、この 社会と経済の急速な変化により福利厚生へのニーズが変わってきたことから、その ここでは最近の福利厚生を取り巻く経営上の環境変化を整理し、今後の福利厚生の 1.経営環境の変化 平均寿命の伸びと少子化現象により、わが国は急激な高齢社会に直面してい 一方、経済が成熟化し売上の急拡大が難しくなるなかで、会社の総人件費の さらに、高齢者・女性・パートタイム労働者などの増加による従業員構成の変 このようなことを背景に、次に示すように会社側、従業員側の福利厚生への考 ①これまでの量的拡大一辺倒の経営から、会社の創造性や独創性、社会 ②人事異動はグループ企業内へと拡大し、また国際化の進展にともない ③会社の人件費総額(賃金、退職金、社会保険料、福利厚生費)が増加し ①高齢化が急速に進展し、退職後の生活への関心が高まっている。 ②人々の生活は豊かになり、意識も「モノからココロ」へ移行し、生活のゆと その結果、とくに労働時間短縮や余暇への要求が強くなっている。 ③個人の欲求も多様化し、仕事での自己実現を求める者、家庭・社会での とくに生涯全体を通じた生活の安定、生きがいの獲得への関心が強く このような変化にともない、福利厚生施策についても従来のような画一的なも 福利厚生のどこに重点をおくかは、各会社の考え方によっても異なってきます 健康であることが職場生活や個人生活を活性化させることにつながってい 国の施策もかかわってくるため、国、企業、個人の調和のとれた、会社とし 支援策充実のための具体例として、貸付枠の拡大、利子補給、不動産物 会社にも生涯教育の視点に立った自己啓発の支援が求められています。 育児問題と介護問題については、育児・介護休業法によって制度が整備さ これら社会の動き、従業員のニーズを的確にとらえ、自社にとってどのよう 中小企業にとっての福利厚生は、どのようにしたらよいのでしょう。 一般的に中小企業において、賃金などの労働条件を大企業並みに充実させることは このことは福利厚生施策の実施についてもいえることで、大企業との格差が以前から それだけに、福利厚生施策の拡充は、魅力ある企業をめざす中小企業にとって避け そして、中小企業における福利厚生のあり方として、大企業以上に次のようなことを ・会社の費用負担を考え、最小のコストで最適の効果を生む施策を考える ・多様化する従業員ニーズに対し、優先順位を付けるなど、従業員の最大の満 ・大企業にないユニークな施策で従業員や募集対象者にアピールする ・利用者が一部に偏らないように、全社員が享受できる施策を考える そのためには、何を狙って福利厚生施策を実施するかを明確にし、目的をもって取り こうしたことを踏まえて中小企業が福利厚生施策の充実をめざすとき、次のような方向 福利厚生の改善を進めるためには、場当たり的な施策ではなく、中・長期的な その際、計画が企業の経営計画のなかに組み込まれている必要があります。 とくに、中小企業においては、計画段階で従業員の参画を促し、労使双方の 福利厚生には当然コストがかかり、中小企業にとってはかなりの負担になる可 これからの福利厚生は限られた原資のなかでいかに従業員のニーズを盛り込 自社における福利厚生の目的を明確にし、それをもっとも充足できる施策への そして、費用対効果の視点からつねに施策を見直していくことが大切です。 中小企業は、大企業と比較してより自社の特徴をいかした経営が求められる 福利厚生の面でも独自性を出した自社型の施策を講じていくことは、人材確 たとえば、斬新なユニフォームを採用したり、自社の敷地にテニスコートなどを 企業の福利厚生施策は、企業自らの財源負担で実施される場合がほとんど ・国・地方公共団体、政府機関などから補助金、助成金などを受けて実施 ・同じ業種や同じ地域の企業が共同で実施 ・公的福利厚生施設などの利用 ・会員組織であるリゾート、体育、住宅などの団体の法人会具に加入 中小企業において福利厚生の重要性は増していくばかりです。 中小企業で福利厚生施策を進める際のポイントは、すでに説明したように「最小の ここでは、自社に適した福利厚生を検討するうえでの参考となる具体的施策を紹介 生涯総合福祉ビジョンとは、従業員の個々人の考え方に視点をおき、国や企 ビジョンは、国や企業への要求を羅列するものではなく、従業員の自立と参画 したがって、ビジョン策定に際しては従業員主体のもと労使相互の理解によっ これにより会社側では、従業員のライフステージごとに重点施策の明確化と実 カフェテリアプランとは、住宅補助、介護、育児、健康づくり、年金への支援な 米国ではかなり普及しており、日本でも厚生労働省の指導のもと、大手企業を この制度の特徴・メリットとして、次のようなことがあげられます。 (1)企業側 ①福利厚生費の総枠を管理しやすい。 ②画一給付による費用のムダを回避することができる。 ③制度の実施の際、企業の実情に応じて適切なものから順次メニュー化 ①自分の要求する福利厚生メニューを選ぶことが可能である。 ②ポイント制により公平感のある福利厚生が受けられる。 カフェテリアプランの「従業員が施策メニューを選択できる」という考え方は、中 |
ワークライフバランス(WLB) |
ワーク・ライフ・バランスとは、一般的には従業員それぞれの希望に応じて、「仕事」 このため、ワーク・ライフ・バランスというと「時短」や「介護休暇」などの「従業員 しかし、上手に導入すれば、会社業績向上に貢献し、長期的な経営体質強化にもつな 日本でWLBが大きく注目されるようになったのは2000年以降のことで、当時は少子 しかし、その後は「名ばかり管理者」などの問題を背景に、適正な労働条件の確保の ワーク・ライフ・バランスの導入は従業員にいきいきと働ける環境をもたらします。 社長であれば誰でもそれを望むところでしょう。 しかし、逆に「ワークライフバランス経営は業績を圧迫し、結果として社員を不幸に たしかに現状の業務はまったくそのままで、「一律に就業時間を1時間削減する」と 従業員は一時的には時間的な自由度を増しますが、それが長期的な生活向上には ワークライフバランス経営を考える際にまず重要なのは、「社員のワークライフバラ ワーク・ライフ・バランス型経営においては、社員は、「仕事に集中できる時期」、「子 また、長時間残業がなくなることで、健康増進や自己啓発などの時間を確保できる 一方で会社は安定した労働力確保や従業員活用の多様化が図れるとともに、業務 また、ワークライフバランス経営導入企業として、ブランドイメージ向上も期待できる そして、このような両者のメリットを兼ね備えた企業にはさらに優秀な人材が集まり、 このようにワークライフバランス型経営の本質は、 従業員満足度と会社業績が高まりあう好循環のなかで、 最終的には、WLBは1人1人が就業環境や家庭環境に応じて決めていくべきものと ワークライフバランス型経営は余裕のある大企業だからこそ可能であると考えられ しかし、実際には企業規模は関係なく、むしろ導入にあたってのハードルは中小企業 大企業では多くの従業員が抱えるさまざまな事情に対応するために、制度導入は また、役職や給与体系なども細かく設定されているため、複雑な制度設計も求められ 中小企業では従業員数も限られており、一般に組織もフラットであることが多いため、 また、大企業に比べて経営者と従業員の距離、従業員同士の距離が「精神的」にも 1.推進体制の検討 ワーク・ライフ・バランス型経営導入にあたっては、制度構築・運用のための推 通常は「人事総務部が兼務で主導」、「プロジェクトチームを発足して主導」な また、部署ごとに「推進委員」を設置し、日々の進捗状況を管理していくことも 企業規模や人事総務部のキャパシティー、事業所の地理的な分散状況などに なお、いずれの体制を構築するにしても、経営者自身がワークライフバランス 自社でワークライフバランス経営を推進する際のポイントを整理するために現 その際には経営者の認識だけではなく、アンケートなどによって従業員全員の たとえば、経営者が「必要以上の残業を行わない全社的風土がある」と考えて 経営者の「考え」と現場での「感じ方」のギャップを埋めていくことも必要です。 現状把握に必要な視点は会社によっても異なりますが、ここでは網羅的な視 それぞれについて「重要性」と「改善の必要性」を評価します。 双方のポイントが高い項目が優先して取り組むべき項目になります。 現状認識での「重要性」と「改善の必要性」の評価をもとに優先して取り組むべ 原則としては活用可能な経営資源なども考慮しながら双方のポイントが高い ただし、「業務の効率化」については、ワークライフバランス経営導入の前提条 また社長と従業員の認識のギャップが大きい事項についても留意します。 優先順位づけができたら、項目ごとに具体的な計画策定を行います。 ワークライフバランス経営導入による効果は、多くの場合、発揮するまでにあ また、売上や利益などの数値計画と比べると達成度合いが把握しにくいという そのため、「導入は決意したが取り組みがいつのまにか消滅した」、「取り組ん そのため、計画策定にあたっては ・計画達成なしには会社の安定成長はないという危機意識を、社長・従業員 ・進捗管理可能なできるだけ具体的な数値目標を設定すること などが重要になります。 計画の実践にあたっては経営者がリーダーシップを発揮し、前述の推進体制 また、ワークライフバランス経営ではさまざまな制度を導入することになります たとえば、「長期休暇取得促進制度」という制度を作ったとしても、部門によっ このように実践のためには「制度策定」、「環境整備」、「雰囲気作り」の3つの柱が ○制度策定 ・長期休暇取得促進制度 ・業務の生産性向上 ・人員配置の見直し 等 ・上司が率先して取得 ・期首に全員が取得時期を申請 など
取り組みを開始したら、その進捗状況を定期的にチェックします。 制度を導入したかどうかだけではなく、「それが実際に利用されているか」、 部門ごとに設置した推進委員、推進事務局、経営者が定期的な会合を開くな そして、未達成の場合はどこに問題があるのかを特定し、改善策を講じること この際、個々の現場レベルで改善可能であるのか、全社的な取り組み方針変 また、ワークライフバランス経営の本質である「従業員満足度と会社業績が高
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休職制度の意義と会社のリスク |
休職制度とは、社員が労務に従事することが不能または不適当な場合に、その社員 休職制度は労働基準法等で義務付けされたものでなく、あくまで会社が任意に定める そのため、休職期間が終了しても職場復帰できない場合は、自然退職または解雇 このように、休職制度は、会社にとってメリットのある制度ではあるものの、一度導入 1.私傷病休職 社員が業務外での傷病(いわゆる私傷病)により、休職期間中に復職のめど 私傷病休職期間中に復職ができない場合、通常は自然退職または解雇に移 なお、私傷病休職を行っても治癒することが困難な社員については、私傷病 社員が個人的な理由により一定期間休職する場合の制度です。 休職の理由としては、海外留学やボランティア活動などが挙げられます。 社員が国会議員や地方議員等の公職に就くことにより、労務への従事ができ 社員が出向により出向元の労務への従事ができなくなったとき、その出向期 社員が刑事事件で起訴された場合で、その事件が裁判所に係属する間は休 なお、起訴休職を導入するということは、通常裁判が確定するまでは解雇はな 労働組合への便宜供与の一つとして、社員が労働組合の専従職員となる場 なお、当該制度を「在籍専従」といいます。 休職規程を設定するかどうか、また設定する場合、その内容は企業側が自由自 ●対応策 「1カ月間私傷病で欠勤した場合は、休職を命じる場合があります」とし、休職の 復帰の可能性がないと会社側が判断した場合は、休職ではなく普通解雇として 休職規程でトラブルになるのが、休職期間中の社会保険料です。 休職期間中に賃金を一切支払わなかったとしても社会保険料の負担は生じる。 休職期間中は賃金の支払いがないため、控除することはできません。 毎月会社に支払ってもらうか、復職時に一括あるいは分割して支払ってもらうか 現実的には復職時の一括支払は負担が大きいので、定期的な会社への支払に 休職事由が再発した場合のルールを明確化します。 休職制度を悪用して、何度も休職や復職をする社員を存在させないよう、同一
ですから、休職制度の内容については、会社の文化や規模、休職の目的をきちんと 以下では、企業が「私傷病休職制度」を定める場合の主なポイントと注意点を解説 1.私傷病休職制度の対象者 多くの国内の会社は、長期雇用を前提に休職制度を導入しているケースがほ ですから、対象者を「正社員のみに限定する」というのが一般的です。 しかし、労働契約法第16条では、次のように定められています。 【労働契約法第16条(解雇)】 こうした環境の中で、現代のように精神疾患の社員が増えている状況に対応 上記、「1 私傷病体職制度の対象者」と同じように、長期雇用を前提としている ここで注意したいのは、会社規模に見合った休職期間を設定しているか否か 大企業の就業規則のひな型をそのまま使用している中小企業の就業規則 ぎりぎりの人数で業務を行っている中小企業の場合、3年もの間、残りの社員 仮にその補充人員が優秀であって、その後に休職者が復職してきた場合で 中小企業の場合に休職期間を設定する際は、人員が欠けたとして、どの程度 派遣社員やパートタイマーを補充人員と考えると、最長でも6カ月程度が限度 休職期間中の賃金については、ノーワークノーペイの原則に従い、原則無給 理由としては、有給とした場合に使用者の賃金負担が発生するということに加 休職期間中については、健康保険から傷病手当金が支給されるため、社員の もちろん、経営者の意向と自社の財務状況によっては、福利厚生の観点で一 会社が勤続年数を評価するものとしては、「表彰」「賞与」「退職金」「私傷病休 では、私傷病休職期間中は勤続年数に含めるべきなのでしょうか。 そもそも私傷病体職制度とは、企業が社員に対して、長期雇用を前提として一 ただし、年次有給休暇については有給付与の対象期間において80%以上の なお、有給休暇の算定にあたり、勤続年数には休職期間を含みますが、休職 休職者の復職に際しての手続きの流れをあらかじめ休職規定に取り決めてお 職場環境における社員の安全配慮義務は使用者側にあるため、復職する社 そして、復職の可否を最終的に決定するのは使用者側の人事管理権の行使 具体的には、以下の内容を明記しておく必要があります。 これにより、休職者との復職にあたっての争いが避けられるわけです。 ・休職者の主治医による診断書だけでなく、復職の判断には使用者側の ・最終的な復職可否の判断は会社が決定する また、通算規定制度の導入も考えられます。 これは、休職者が休職期間満了時に復職をしてきて、数カ月以内に再度私傷 そのためには、以下の休職期間通算規定を入れておくことも重要になります。 休職期間終了後、復職した社鼻が、その後3カ月以内に同様または類似の 1.休職発令を行う場合 最初に休職規定に定められた休職事由に該当するか否かを確認します。 休職事由に該当しないにもかかわらず休職発令を行った場合、賃金債権を請 こうしたことがないように、休職事由に該当するか否かを確認する時点で社員 私傷病と業務災害とでは法的規制は全く異なるものとなります。 私傷病の場合は、会社の休職規定に従い処理を行います。 休職期間中に復職のめどが立たないときは、最終的には自然退職または解 そして、業務災害の場合、社員に対して休業補償給付等で賃金の80%が支 なお、ここで注意してほしいのは、通勤災害は私傷病災害であるということで 通勤災害は労災給付の対象にはなりますが、使用者側の損害賠償責任や上 また、年次有給休暇の出勤率を計算する場合の出勤ともみなぎれません。 ところで、業務災害については、社員の申請に基づき労働基準監督署が最終 一方で私傷病の場合は、健康保険から傷病手当金を比較的容易に受給する ですから、業務災害の場合は、とりあえず私傷病扱いにして傷病手当金の申 なお、労災認定がされた場合は傷病手当金等の精算が発生するとともに、一 私傷病が治癒すれば復職可能かどうかの判断を行います。 これは休職期間中に行うものです。 「当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという回復ぶ ただ実際に医師の診断書や休職社員との面談では、ほどなく業務を行えるか この場合の注意点としては、休職規定に復職可否判断期間を設ける旨と、そ 復職する能力があることの立証責任は当初は社員にあります。 つまり、私傷病休職の原因は社員側にあり、それが治癒したという状態を証明 ただし、社員が立証した治癒状態に対して、使用者が反証を行わず、または この間題は、社員の生活に直接関係するものですから、トラブルが発生する 従って、復職不可とする場合は、使用者側は先の復職可否判断期間も含めて 長い間就労不能であった社員が、休職期間満了間際に就労可能の診断書を 社員の主治医は会社の業務内容を詳しく知っているわけではないので、特に このような場合は、休職規定に医師への面談を依頼する旨の内容を設けてお 何も問題がなければ医師との面談を断る理由はないはずです。 そこで注意したいのは、医師が最近出している薬の分量を聞くことです。 処方箋には医師の本音が出るからです。 薬の情報を産業医などに確認すると、実際にどの程度の症状なのかが分かり そして一番重要なのが、最終的な判断を行うのは人事管理権の行使が行える 総合的に見て復職できないと判断した場合は、安全配慮義務がある使用者の エールフランス事件の判例では、ほどなく業務を行えるとは健康状態が80% 本来、社員が健康なときと同じように労働を提供できないのであれば、先に述 しかし最近の判例では、復職可否の判断で使用者側がどの程度熟慮していた そこで、残りの20%を回復させるための「リハビリ勤務期間」という考え方が重 休職期間が満了したから当然に自然退職や解雇とするのではなく、使用者側 そこで、リハビリ勤務を行う際に、治癒したかどうかの判断と治癒した場合の 大まかな手順としては「社員の復職可否の判断」「復職できた場合の復職日や 今現在休職規定があり、その内容について変更を行いたいといった場合の対 不利益変更と考えられるものとしては、休職期間の短縮や休職期間中の賃金 今現在、健康で就労中の社員にとっても潜在的な不利益変更にはなります ここで、就業規則の法的な定義として労働契約法第7条は「社員及び使用者 ただし、労働契約において、社員及び使用者が就業規則の内容と異なる労働 つまり、通常労働契約は使用者と社員の合意があって成立するものですが、 従って、不利益変更の内容が合理的である必要が求められます。 そのため、就業規則の不利益変更については、変更に関する合理性の判断 これについては実際に休職中の社員に対しては当てはまる場合がほとんどな 休職とは、「ある従業員に職務に従事させることが不能であるかもしくは適当 このような休職制度を設けるかどうかは任意ですが、この制度を設ける場合に したがって、休職の定めをする場合には、休職事、休職期間、休職期間中の
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長時間労働削減対策の取組状況 |
平成28年4月1日に、長時間労働削減推進本部から、これまでの長時間労働削 そのポイントは、 1.長時間労働削減対策取組状況 (1)月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底 ①監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正 ②法違反を是正しない事業場は送検も視野にいれて対応 ※時間外・休日労働協定(36協定)なく時間外労働を行っているもの、36協定で ※東京かとく(過重労働撲滅特別対策班):小売業(27年7月、28年1月) 平成27年11月の「過重労働解消キャンペーン」では、長時間にわたる過 ※5,031事業場に対し実施、3,718事業場(73.9%)で労働基準関係法令違反が その他にもインターネット上の求人情報等を監視・収集し、労働基準監督 (1)重点監督対象の拡大 これまで月100時間超残業が疑われる事業場を対象としていましたが、 現状では、東京労働局・大阪労働局のみに「過重労働撲滅特別対策班」 また、47局全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に ① 問題業種に係る重点監督の総括(企画・立案・実施) ② 月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括 ③ 本社監督の総括(問題企業の把握分析・実施・調整・指導) ④ 夜間臨検の実施・調整・長時間・過重労働に係る司法処理事案の監 この他にもトラック業界、IT業界など長時間労働が疑われる業界には、業 以上を見るに、過労死等防止対策推進法をもとに、長時間労働が疑われ 今では英語の辞書にまで「KAROSHI」のワードが掲載されるほどに、「過労 長時間労働に起因する過重な物理的・心理的負荷による労働災害は、企業 長時間労働が恒常的に行われている場合には、適正な労働時間管理を行っ
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会社が一方的に労働条件を不利益に変更することはできません。
従業員の同意に基づいて行うことが原則です。
同意を得ないで行った労働条件の変更は無効となります。
今までは入社から年数がたつにつれて賃金や退職金を含めた労働条件がよくなってていくのが普通
でしたが、企業を取り巻く経済環境がめまぐるしく変わる現在においては、従業員と最初に約束した
労働条件を不利益となる条件に変更しなければならなくなるのが実情ではないでしょうか。
経済環境の低迷により、労働条件の不利益変更をやむおえず実施しようとする場合、従業員の生活に
かかわる重大問題であり、一歩間違えばモチベーションの低下や、企業業績の悪化を招く要因となる
こともあります。
最悪、従業員による訴訟に発展しかねない状況が出てきます。
やむを得ず従業員の労働条件を不利益に変更しなければならないときは、従業員との信頼関係を保ち
ながら、新しい労働条件に納得してもらい、前向きに働いてもらうようにすることが何より重要です。
そのためには、会社が一方的に通告するなど強引なやり方によって従業員との関係を悪化させないよう
に、手順を踏みながら変更について理解し、協力してもらえるように会社も努力することが大切です。
いずれにせよ会社が一方的に労働条件を不利益に変更することはできません。
従業員の同意に基づいて行うことが原則です。
同意を得ないで行った労働条件の変更は無効となります。
□個別同意による不利益変更
1.個別同意による不利益変更の手順
従業員の労働条件を従来に比べて不利益に変更する場合には、その変更内容について同意をして
もらう必要があり、十分に理解してもらったうえで、最終的には書面による同意書を取ることが
目標です。
手順としては、
(1)個別面談または、説明会を開催する
会社として「なぜ変更しなければならないか」を丁寧に説明し、従業員の理解を促す
ことがポイントとなります。
(2)従業員からの質問に答える
従業員から質問があれば、それに丁寧に答えていくことで十分に理解してもらうように
します。
面談や説明会だけでなく、その後一定の期限を定めて質問をあげてもらうことで、理解を
深める機会を設けることがポイントとなります。
(3)同意書を提出してもらう
提出期限を設けて同意書を提出してもらうようにします。
会社からの説明を受け、納得して同意したことがわかるような内容の同意書を取り付ける
ことが大切です。
(4)同意書を提出しない従業員への対応を行う
提出期限までに同意書を提出しない従業員には、個別に話し合いの場を設け、「なぜ同意を
したくないのか」をよく聞いて、疑問や不満などに丁寧に答え、変更の必要性を説明しなが
ら、ねばり強く説得を行います。
2.同意書の書式例
次に同意書の一例を示します。
○就業規則による不利益変更
個別の同意を取ることなく、就業規則に基づいて労働条件を変更することで、従業員の労働
条件を統一的に不利益変更することが可能です。
就業規則による不利益変更を行う場合には、クリアすべき項目があります。
(1)法律上必要な手続きが取られているかどうか
就業規則を変更するには、以下の3点が必要となります。
①従業員の意見聴取が行われていること
②労働基準監督署へ届けられていること
③従業員に周知されていること
(2)不利益変更に合理性が認められるか
会社が従業員の労働条件をこれまでより不利益に変更する場合は、合理性がないと認め
られません。
①従業員の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の目的および必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の事情に照らして合理的かどうか
(3)法令または労働協約に違反していないか
働基準法を始めとした法令に違反する内容を就業規則に定め ても、その部分は無効と
なります。
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長時間労働と厚生労働省の監督指導の強化 |
そのような中で、長時間労働削減推進本部のもと、長時間労働削減の取り組みを その結果、実施事業場4,561 事業場の約半数にあたる2,304 事業場で違法な 「重点監督の結果のポイント」について ある旅館業を営む事業場では、最も労働時間の長い労働者で月270 時間を超える また、労働者が45 時間を超えて残業してもその超えた分の残業代が支払われない、 そのため、労働基準監督署は事業場に対して指導を行いました。 企業名の公表まで至らなくとも、労働者がインターネット上で自社の労働環境を広める 雇用管理全般について言えることですが、そのような社会的なリスクの面も考えて
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