労務リスクと労務管理

成果主義導入の落とし穴

■目的は「社員の意欲向上」、業績だけでの評価は禁物

 「賃金制度を変えたのは、失敗だった」 。ある広告代理店の社長は、最近、こんな思いを強くして
 いました。

 この会社では3年前、営業部門について、年功序列型の賃金制度をあらため、売り上げなどの実績に
 給与と賞与が連動する成果主義の賃金制度を導入しました。

 不況の影響で売り上げが毎年落ち込む中、 「いまの賃金制度では人件費が年々膨らみ、そのうち
 経営が立ちゆかなくなる」とこの社長は頭を悩ませていた。

 そこで、業績が悪化すればその分、賞与や給与を減らすことができる成果主義の賃金制度に目を付け
 たのでした。

 しかし、賃金制度を変えた後も、売り上げの減少に歯止めがかからず、年収が大幅に減る社員が続出。

 中には100万円ダウンする社員もいた。

 また、給与や賞与に格差をつけたことで営業マン同士が互いに牽制しあうようになり、職場の雰囲気
 は次第に険悪になった。

 優秀な幹部社員が続々と退社し、経営は一段と苦しくなってしまったといいます。

 成果主義の賃金制度は、中小企業にも導入が始まっています。

 東京商工会議所が実施した調査では、約7割の企業が今後の基本給のあり方について、 「成果・業績
 的要素を強める」と回答しています。

 しかし、その一方で成果主義を導入したものの、失敗に終わるケースが続発している。

 失敗の典型的なパターンの一つが、 「人件費の削減を目的に成果主義を導入するケース」 と、人事
 制度に詳しいある所長は指摘する。

 導入の最大の目的は、 「社員の意欲向上」にある。

 その大前提として、社員が「頑張れば給料が上がる制度」だと実感できなければ、目的の実現はおぼ
 つかない。

 つまり、成果主義の賃金制度を導入して人件費の削減を狙うことは、社員の意欲を向上させるという
 目的から見ると論理矛盾を起こしているわけです。

 また、成果主義にうまく移行するためには、一定の猶予期間を設け、導入後に給料が下がる社員に
 ついては、調整給などで下げ幅を小さくする配慮が欠かせない。

 いきなり年収が下がってしまうと、「社長は賃下げの口実に成果主義を利用している」と多くの
 社員が感じ、このケースのように士気が大幅に低下してしまう可能性が高いのです。

 「給与原資が膨らむ可能性があるが、それでも成果主義を取り入れたいか」 。

 この問いに対し、はっきり「イエス」 と答える自信がなければ、導入をあきらめたほうがいいといえ
 るかもしれません。

□偏った評価基準が原因で赤字に

 成果主義の賃金制度の導入を検討する際に、大きな課題となるのが、評価基準をどう設定するかと
 いう点です。

 その巧拙によって、思わぬ損失を被ってしまうこともある。

 ある関東地区のスーパーでは、3年前、店長を対象に成果主義の賃金制度を導入しました。

 従来は、店長の年収は500万円前後で、賃金格差はほとんどなかった。

 しかし、新しい制度では、年収の格差が200万円程度になるように変えた。

 「実績を出せば給料が上がる」と聞き、店長は大いに奮起しました。

 それまで減収が続いていたが、制度を導入した年、売上高は前年度比で10%程度アップし、新制度の
 導入は成功したかに見えた。

 ところが、肝心の利益が著しく減少し、赤字に陥ってしまった。

 実は、新たな賃金制度では、各店舗の売り上げ目標に対する達成率と対前年比伸び率の二つを主な
 評価基準としていました。

 このため店長は、例年以上に宣伝費を使ってチラシを配布したり、値引きセールを頻繁に開催する
 など、利益を二の次にして“暴走”してしまったのでした。

 一面的な実績だけを評価基準にしてしまうと、思わぬ弊害を引き起こすことになりかねない。

 このケースの場合、 「店長が果たすべき役割について突き詰めて考えず、目先の売り上げを確保する
 ため、安易に評価基準を決めたことが失敗の原因」 と人事制度に詳しい専門家は分析する。

 こうした評価にまつわる失敗事例は、後を絶ちません。

 ある化学製品の開発会社でも、評価基準の設定が実態にそぐわず社員の反発を招いてしまった。

 この会社では、開発陣を対象に3年前に成果主義の賃金制度を導入。

 開発を担当した商品の売上高総利益額にある係数を掛けて算出した金額をベースに、開発部員の
 年俸を決めるようにした。

 しかし、開発案件ごとに難易度や製品化に要する時間などが異なることを一切考慮に入れなかった
 ため、社員の間で不満が高まり、その後、開発部員が次々と辞めてしまった。

 成果主義では、単に売り上げなどの結果だけでなく、仕事の難易度などを考慮し、任務を達成する
 ためどんな努力をしたかといったプロセスについても評価する必要があります。

 「結果だけを取り出して評価した場合、職場の雰囲気は間違いなく悪化する。チームとして教え
 あったり支えあったりといったハイタッチな部分をいかに組み入れていけるかがポイントになる」と、
 中小企業の賃金制度に詳しい専門家は話す。

 社員への評価に関して、もう一つ注意すべき重要なポイントがあります。

 それは、給与に格差をつける根拠となる会社側の評価をいかに社員に納得してもらうかという点。

□フィードバックで不満を解消 

 あるアパレル会社では、数年ほど前、中堅社員4人が次々と退社するという“事件”が起きた。

 驚いた社長は、職場で同僚だった社員に、彼らが辞めた理由をそれとなく聞いて回った。

 すると、「入社3年目のある社員より、なぜ自分たちのボーナスが低いのか」 と不満を漏らしていた
 ことが判明しました。

 この会社では、企画提案力や顧客への訪問回数など、6項目の評価基準に従って社員を100点満点で
 評価し、在社年数などに関係なく賞与や昇給の金額を決めていた。

 「こうした不満は、いま働いている社員も持っているはずだ」 と危機感を募らせた市川社長は、
 制度を次のように見直した。

 社員に評価シートを配布し、各評価項目について自己採点させてから、直属の上司が評価を書き込む。

 その後、上司が社員と面接し、お互いの評価が食い違う点について話し合うようにしました。

 さらに、社長と役員がその結果をチェックし、最終的な評価を社員に通知した。

 評価結果をフィードバックするようにしたことで、 「自分に何が欠けているのか明確にわかるように
 なった」と社員の間で好評を博しました。

 「それ以来、人事評価が原因で辞める社員はいなくなり、士気は高まった」 と社長は胸を張る。

 これまで横並びの賃金制度に慣らされてきた多くの中小企業の社員にとって、成果主義は"劇薬"だ。

 社長の思い込みや誤解があるまま導入すると、士気低下などの副作用だけが現れてしまいかねない
 点を社長は肝に銘じておくべきです。

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労務リスクと労務管理

人事考課についての基礎知識

■人事考課の意味・目的

 人事考課とは、個々の従業員の勤務態度・職務能力・勤務実績を、直接に経営者が査定する制度です。

 考課を行う際は、合理的に制定された一定の考課項目・スキームを予め定めておく必要があります。

 従業員は誰でも、自身の働き・成果・能力に対し公正に評価されたいと思っている訳ですが、そうで
 はなく社長の好き嫌いや、性格の一致・不一致などで評価されたのでは、従業員の能力開発はおろか、
 定着率は低迷し、専門性のある優秀なスタッフをかかえたプロフエッショナルな体制を築くのは困難
 と思われます。

 そのような人事考課における社長の恣意性をなくすために、公平かつ客観的で、従業員にオープンに
 できるような人事考課制度を持つことは、経営を安定化していく上で必要です。

 人事考課の目的は次の通りです。

 1.従業員の指導・育成の指針とする。
   従業員に必要としている職務や課題と本人の能力や実績を比較・分析し、指導・教育、または
   自己啓発のための指針とする。

 2.公正・公平な昇給・昇格の査定を行う。
   従業員の能力や実績を一貫した方法で評価し、公正で公平な昇給・昇格に結びつけ、処遇に
   対する納得感を持たせる。

 3.安心して働けるルール作り
   就業規則もそうですが、給与体系や人事考課制度作成し、従業員にオープンにすることにより
   安心感や公平感、納得感が得られ、従業員の定着化が図れます。

 上記のように、人事考課の目的は単に昇給・昇格を決めるだけでなく、従業員の能力開発と育成を
 基本として、処遇に納得感がありやる気のある生き生きとした組織作りと、安心して働ける即ち
 従業員の定着化を目指す制度であり、その観点に立った運用が求められます。

□人事考課を行う際注意すべきこと

 人事考課を行う際には、当然のことながら公平・公正を期す必要がありますが、そのためのポイント
 は次の通りです。

 1.考課の評定基準や評価方法を客観的・明確に定めておく。

 2.社長以外に管理職がいる場合、第一次考課者をその管理職とし、経営者自身は第二次考課者に
 なるなど、 複数名で考課する体制にする。

 3.考課に当たり生じやすい心理的偏向をできるだけ是正するよう努める。
   公正にしようとしても考課者が自然におかし てしまう心理的偏向には、主に次のようなものが
   あります。

   (1)中央化傾向
    評価が平均並みになり、優劣の差が生じない傾向(考課結果が中央に集中)。
    考課者に自信がない場合、考課基準が不明確な場合などに生じます。

   (2)寛大化傾向
    特定の特性について、評価が実際以上に甘くなってしまう傾向。
    (考課結果が上位に集中)考課者の観察不足、部下に対し必要以上に人情が働いている
    場合に発生します。

   (3)ハロー考課
    部下の評価要素の中に、一部特に優れたものや劣悪なものがあると、他の要素も良く
    思えたり、悪く思えたりするという傾向。
    部下についての印象ができあがってしまっている場合に生じます。

□職能等級制度とは

 職務遂行能力の程度によっていくつかの等級を設け、従業員を該当等級に格付けするものです。

 この等級は、職務能力の困難度や責任度などをベースに職能等級を設定し、各等級区分に該当する
 職務遂行能力の種類や程度を明確にした基準を設け、この基準にもとづいて人事考課を行う制度です。

 等級のアップが「昇格」ということになります。

 このような職能等級制度を、給与システムと結びつけ、職能給制度として、給与モデルプランを作成
 します。

□目標チャレンジ(自己申告)制度とは

 人事考課の限界として一般に言われているのは、あくまでも他人評価であるということです。

 誰しも主観的な傾向から完全には脱し切れるものではなく、勤務成績や業績のような顕在的なもの
 でしか見ることができません。

 そこで人事考課に加えて、従業員自身による自己申告制度などの自己評価の要素も入れて調整を図る
 のが一般的です。

 その際、本人の潜在的能力および顕在的能力の把握を多角的に行い、総合的に勘案して決めるのが
 望ましいと言えます。

 自己申告の具体的な内容としては、担当職務(職務の遂行状況、目標及び達成状況、新たな職務
 希望等)、自己の能力開発(能力の活用状況、今後伸ばしたい能力等)、その他(職場に対する要望、
 健康状態・家族の状況等)などです。

□人事考課の進め方

 1.人事考課のステップ

  人事考課には次の2つの要素があります。

  (1)単年度評価
   考課対象期間である1年間の、能力の発揮度及び成果について評価します。

   従って当然のことながら、毎年必ず行われることになります。

  (2)等級評定
   上記の単年度評価の結果など、一定条件を満たした者に対し、職務遂行能力に基づき等級評定を
   行います。

   単年度評価が1年間の能力の発揮度の評価であるのに対し、等級評定は入社以来蓄積された能力
   の保有度を評価するものです。

   等級が上がれば昇格、下がれば降格であり、それに連動して給与の職能給が上下することに
   なります。

 2.単年度評価の仕方(評価給対応部分)

  (1)評価の大項目
   営業職・事務職どちらも基本的には職務能力と取組姿勢と成果の3つを評価項目としていますが、
   それぞれの求められる役割から、ウエイト配分します。

  (2)評価の小項目
   上記3つの側面(大項目)について正しく評価できるように、次表の通り職務能力と取組姿勢に
   ついては、4項目に、成果については2項目に細区分(小項目)しております。

  (3)評価の仕方
   職能等級表に基づき、小項目評価→大項目評価→評価ランク決定の手順となります。

   (a)小項目評価
    小項目それぞれに評価のポイントとして次の例のような着眼点を説明しております。

      例) 職務知識…担当業務を自ら行うのに必要な知識を身につけているか

    これに基づき、小項目それぞれにa~eまでの5段階評価をします。
    その際の、a~eの評価区分は次の通りです。

         a:特に優れている

         b:優れている

         c:普通

         d:努力を要する

         e:特に努力を要する

   (b)大項目評価
    次に、小項目の評価を勘案して、大項目の評価を決めますが、小項目の評価結果と大項目
    評価の間には、点数化するなどのルールは特に設けておりません。

    これは小項目の中でも重点とする評価項目の 評価を優先する、長所主義でプラス評価する
    など経営者の考えで柔軟に対応できるようにするためです。

    大項目の評価区分も小項目と同じですが、評価区分別に点数が決まっていますので該当点数に
    マークをします。

   (c)評価ランク決定
    「評価」欄を用い、大項目の評点を加算して合計点を出し、評価ランクを決定します。

    これは大項目の合計点により、次のように区分しています。

         A:91~100 特に優れている

         B:81~90 優れている

         C:71~80 普通

         D:61~70 努力を要する

         E:50~60 特に努力を要する

    この評価ランクにより、給与テーブルの評価給が決まります。

 3 .等級評定の仕方(職能給対応部分)

  (1)実施条件
   等級評定は毎年行うものではなく、次の条件を満たす場合に実施します。

   (a)上位等級への等級評定(昇格)の場合
    ・等級別の最短在留年数*を満たしている。
    ・等級評定実施時の単年度評価における評価ランクがAである。

    ※「最短在留年数」とは、ある程度の期間一定の等級に在留させ、教育訓練、自己啓発
     により、各人の職務能力をじっくり養ってもらう事が望ましいことから、一定期間は
     上位等級に昇格できないルールです。

   (b)下位等級への等級評定(降格)の場合
    ・等級評定実施時の単年度評価における評価ランクがEである。

  (2)評価の仕方
   職能等級表および下記の職能等級概要記述に基づき、どの等級に格付けするのが適当かを判断
   します。

    1等級・・・自らの業務について、上司の指示を仰ぎながらも、ほぼ自立して行うことができる。

    2等級・・・自らの業務について、ほぼ自立して行うことができる。

    3等級・・・自らの業務は自立して対応し、下位者の指導も行うことができる。

    4等級・・・自らの業務は申し分なく対応し、下位者の指導・管理も行える。

    5等級・・・組織全体に目が行き届き、下位者に対し適切な指導・管理ができる。

    6等級・・・社長的な視点から、問題点の把握・分析、対応策を立案し、実行することができる。

   等級評定における評価区分は次の通りです。

    優:上位等級の業務に十分対応できる (上位等級へ昇格)

    良:上位等級の業務に対応できる ( 〃 )

    可:現等級維持が相応しい (現等級のまま)

   不可:現等級の業務に対応できていない (下位等級へ降格)

   従って、上位等級へ昇格する場合の評価は、優・良のいずれかに、下位等級へ降格の場合には、
   不可が評価結果となります。

  (3)単年度評価ランクの調整
   等級変更があった場合には、単年度評価のランクについて、次の通り調整します。

   これは、給与の大幅な上下を防ぐために評価給で調整をするのと、同じ昇格でも優と良の評価で
   差を設ける意味があります。

 4.人事考課結果のフィードバック

  人事考課制度は単に処遇の決定のみを目的としたものではなく、従業員の育成に資するものにする
  という観点から、考果のフイードバック(考課結果の口頭での伝達)は大変重要です。

  この際には、考課結果(等級・ランク)のみを伝えて終えるのではなく、優れていた点や劣って
  いた点、および今後の課題等について十分な対話を行うことにより従業員に認識させ、具体的な
  能力開発につながるよう努めて下さい。

 5.目標チャレンジ(自己申告)制度

  (1)目的
   目標チャレンジ(自己申告)制度には、既に記述の通り、他人評価である人事考課の限界に
   対する補足策として、次の通りいくつかの目的があります。

    ①従業員に 1年間の「課題・目標」を正しく認識させ、その取組状況を年間を通して上司が
     フオローすることにより、計画的・具体的に本人の能力開発を推進する。

    ②人事政策上把握しておくべき従業員の身上情報(退職希望・担当職務希望、本人及び家族の
     健康状況)等の情報を確実に収集できる機会とする。

  (2)実施方法
   次の通り年間3回実施します。

    ①年度初め(年度が4~3月の場合、4月実施)
     課題・目標の設定欄を用いて、事前に従業員に記入させ、それが適切かどうか話し合いを
     します。
     ポイントは、社長自身が取り組んでもらいたいことと本人が取り組みたいと思っている
     ことのすりあわせを、年度のスタート時点で行うということです。

    ②中間面接(10月実施)
     年度初めに設定した課題・目標の達成状況の振り返りと、課題・目標の追加・修正の検討を
     行います。

    ③振り返り面接(翌4月実施)
     実施時期は、翌年の年度初めの面接と一緒になります。
     本人が記入した成果ならびに評価を踏まえ、過去1年間の課題・目標の達成状況について
     評価し合います。
     特に本人評価と経営者の見解が食い違う点については、十分に話し合い事実認識を共有化
     しておく必要があります。

 

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労務リスクと労務管理

ミスを改善する

■なぜミスをするのか?

 今日ヒューマンエラーに対する関心は高まる一方です。

 その理由には、テクノロジーの進歩により、一人の人間がコントロールする情報や力の量が大きく
 なったことがあげられます。

 自動車や電車、飛行機などの輸送機では操作ミスが人命を奪うこともあり得ます。

 プラントなどの事故では近隣にも多大な被害を及ぼします。

 世界中をつなぐコンピュータネットワークは瞬時に情報を提供していますが、間違った情報も素早く
 広大な範囲に拡散してしまいます。

 数字のちょっとした入力ミスで株式市場が大混乱した事件は、まだ記憶に残っている人も多いでしょう。

 テクノロジーが高度化すればするほど、一人の人間のミスの影響力も増大していきます。

 また、電子制御された自動車や機械は、ほとんど故障しなくなり機器そのもののトラブルが減った
 ため、人間のミスがより目立つようにもなりました。

 そのため、産業界において、今後ますますヒューマンエラー対策が重要な課題になっていくことが
 予想されます。

 そこで、ここでは、ミスを軽減するための方法を検討し、個人でできる改善方法を提案します。

 そもそも、なぜミスは起こるのでしょうか? 

 ミスが生じる場合には表面的な原因の裏にいくつかの要因が隠れていることがほとんどです。

 一人の一つだけのミスでトラブルが生じるのではなく、機械の安全装置の問題、社員教育の問題、
 職場環境の問題などが背景にあり、それらが重なり、トラブルのカードがそろったときに大きな
 事故が発生してしまいます。

 そのため、ヒューマンエラーを考える際には、原因の結合も視野に入れておかねばなりません。

 このことを念頭に置きながら、ここでは、最後の引き金を引いてしまいかねない人間のミスすなわち
 ヒューマンエラーの部分に焦点をあてて見ていきましょう。

 一般的なヒューマンエラーの分類は、

  ①認知ミス ②判断ミス ③動作ミス

 の3つに分けられます。

 ①認知ミスは、知覚や認識の失敗によるものです。
  文字を読み間違えたり、情報を聞き間違えたり、見落としたりするなど、錯覚したり、失念したり
  するといつた、いわゆる、うっかりミスとも言えるものです。

 ②判断ミスは、論理の誤りや判断のタイミングの悪さによるものです。
  非論理的、短絡的な判断だったり、判断は正しくても、そのタイミングが遅すぎたりといった
  場合です。

 ③動作ミスは、不適切な動作や、動作のタイミングの悪さによるものです。
  器用に操作できないといった動作上の問題や、シートベルトをする、サイドブレーキを引くという
  ような、特に考えたり、意識しなくても身体が自然に連続する動作をこなしていく「行為スキーマ」
  と言われる手順が確立されていないことによるし忘れや、反対に習慣やクセなどで、ついうっかり
  やってしまったりするものなどがあります。

 このような人間の認知、判断、動作といった情報のインプットから行動のアウトプットまでのプロセス
 において、なんらかの誤作動が生じ、そのまま修正されずに実行された場合にヒューマンエラーが
 生じるのです。

 これらの誤作動を引き起こす原因は、外部環境によるものと、内部要因によるものと、その中間に
 分けることができます。

 例えば、外部環境は、騒音や雑音、照明の明暗などの作業環境の悪さや、装置や機器の操作手順が
 確立されていないことなどがあげられます。

 一方、内部要因は、その人自身の身体面、心理面が影響するもので、健康を害していることによる
 パフォーマンスの低下をはじめ、心理的な面では、慣れに慢心して手を抜いたり、緊張が足りずに
 不注意になったり、緊張過剰により短絡的な行動をしたり、自己顕示欲により過剰なパフォーマンス
 をしたり、不安や悩みごとで集中力不足になっていたり、といったことがあげられます。

 そして、その中間は、作業に対する技能不足や、覚えることに対する記憶力不足といった、外部環境
 ある業務の難易度と内部要因である個人の能力の相対的な差によるものがあげられます。

□ミスを減らす「メタ認知」とは

 ミスを減らすにあたって必要なことは、まず社員一人ひとりが自分自身のミスを減らそうと心がける
 ことです。

 外部環境については企業が対策する必要がありますが、内部要因については、自分自身が自己管理する
 ことでミスを減らすことが可能です。

 この自己管理方法には、認知心理学の概念である「メタ認知」の力を使う方法があります。

 「メタ認知」とは、簡単に言えば自分自身を客観的に知ることです。

 自分の認知パターンや思考、感情の動き、行動などを客観的に把握し認識することができる能力を
 「メタ認知能力」といいます。

 このメタ認知能力には、自分の心の動きなどをよく知る「自己モニタリング」と、自分の心と行動を
 適切に制御する「自己コントロール」の2つがあるとされています。

 メタ認知能力が高く、十分に機能していれば、自分自身の行動をモニタリングし、コントロールする
 ことができるのでエラーやミスは起こしませんし、起きてもすぐに修正することができます。

 では、どうすればメタ認知能力を身につけたり、高めたりすることができるのでしょうか? 

 メタ認知能力は知識の量に比例します。

 経験が浅い人は経験者よりもメタ認知能力は低くなります。

 例えば、ヒューマンエラーに関する知識が多い人と少ない人とではミスする可能性も異なります。

 そのため、医療分野などでは、しばしばヒューマンエラー対策として「ヒヤリハット」を含めた事例
 研究会が開かれています。

 これはヒューマンエラーに関する知識を増やし、メタ認知能力を高め、ミスを軽減しようとする一つ
 の方法です。

 ただし、メタ認知能力が十分に備わっていても、一時的に働かなくなる場合もあります。

 情報が大量過ぎたり、逆に判断に必要な情報が不足したりする場合には、情報処理に忙しく、メタ
 認知が働かなくなることがあります。

 また、心理的にパニックになってしまった場合も同様で、このようなときには自分を客観視することが
 十分にできなくなってしまいます。

 メタ認知能力を高めるための基本的な方法としては、

  ①自分を客観視する習慣をつける 

  ②ミスを話し合う

 という方法があります。

 ①の方法ですぐに使えるのは業務日誌です。
  業務日誌には業務の記録や報告、連絡、相談など多くの目的がありますが、自分の一日の行動を
  客観視し見直す目的も含めるとよいでしょう。
  電話応対などで目の前に鏡を置いたり、プレゼンの練習をビデオに撮ったりするのをよく見かけ
  ます。
  鏡やビデオなどを使って自分の動作を確認することも客観視する力を強化します。

 ②の方法では、ヒヤリハットの体験やヒューマンエラーに関する勉強会などで体験を発表したり、
  文書化したり、相互に意見を述べ合うなどし、モノの見方を広げたり、知識を増やしたり、思考を
  客観視したりすることでメタ認知能力を向上させます。

 これらの方法はすでに実践されている企業も多く、ヒューマンエラーを軽減するのに効果をあげて
 います。

 比較的簡単に実行できるので、まだ行っていない場合は、このような段階から始めるとよいでしょう。

□ミスを軽減するパターン分析の方法

 さらに、しっかりミスを軽減したいという場合には、表面的な態度や行動だけでなく、その根源
 である心の内部で起きている認知パターンや思考パターンを理解しておく必要があります。

 人が物事を認識したり、判断したりするときには、認知のパターンや感情、欲求などが影響を及ぼ
 します。

 心理学用語では、物事を認識するための認知の枠組みを「認知スキーマ」、認知に対する影響を
 「認知バイアス」と呼んでいます。

 例えば、好きな芸能人に対しては、良い噂は信じるけれど、悪い噂は信じないとか、自分の好みの
 服装をしている人には肯定的な印象を持つなど、人は各自の認知スキーマによって物事を認識し、
 認知バイアスがかかった状態で判断を下しています。

 そのため、自分自身の認知や思考のパターンを理解し、物事をどう捉え、どのようなときにバイアス
 がかかるのか、メタ認知が働かなくなるのはどのようなときなのかといったパターンを知っておくこと
 で、ミスを起こしそうな状態を事前に把握したり、判断ミスを回避したり、ミスに気づいたりする
 ことが可能になります。

 認知療法で使われる方法を応用すると、効率的にパターンを把握することができます。

 認知療法は心理療法の一つで、人間の認知の状態を把握し、物事の捉え方が極端に否定的であったり
 楽観的であるなどの歪みを正したり、現実検討力を身につけたりするためのものです。

 何らかの出来事が起きたときに、どのような気分になり、どのようなことが頭に浮かんだかを検証
 していくことで、自身の認知パターンや自動化思考と呼ばれる思考パターンに気づくことができます。

 ここでは、それを少し変えて、ミスをする直前に、どのような気分で、何を考えていたかということを
 さかのぼって見直し、チェックしていく方法を使いたいと思います。

 例えば、予定していた会議の時間に遅刻してしまった場合、そのときの状況、気分、思考はどのような
 ものであったかを見直してみます。

 すると、状況は、昔からの知人から電話があり、気分は楽しく、もう少し話していたい気持ちになり、
 思考は「あまり気が進まない会議だし、少しぐらい遅刻しても大丈夫だろう、ちょっと電話が入って
 しまったという言い訳もあるし……」という考えが浮かんでおり、少しでも長く楽しい気分の状況に
 いようとして自分の欲求をコントロールできていないことが明らかになります。

 このようなパターンがある人は、他の場面でも快楽的なことを優先しがちで、欲求のコントロール
 不全が起こりがちです。

 また、メールアドレスを間違えて送信してしまった場合はどうでしょう。

 そのときの状況は、いつもより忙しいうえ、上司から書類の書き直しを命じられ、気分はイライラし、
 早くその場を離れたい気持ちになり、思考は「あの上司はいつもそうだ。私のことなんて認めていない
 のだ。いったいいつになったら、この状態から解放されるのだろう‥…・」という考えが浮かんでおり、
 普段であれば間違うはずのないアドレスなのだが、早くその場を離れたい気持ちから不注意になって
 いたことがわかります。

 この場合は感情的になったときに注意力のコントロール不全になる傾向があるといえます。

 自分自身が、どのような状況、気分、思考のときにミスを起こしたのかを検証しミスの発生パターンを
 自覚することで、再び同じような状況になったときに自己モニタリングをし、ミスを回避する行動に
 切り替えることができます。

□ミスの分類と心の状態

 ミスをする場合の心の状態は、個人的な内面の動きによるため、一人ひとりが自分の心の動きを把握
 してパターンを知っておく必要があります。

 ここでは、内部要因が原因のミスの場合、どのような心の状態のときにミスが生じやすいかを見ていき
 ましょう。

 どこの職場でも、よく起こるミスには「思い込み」によるミス、「うっかり」ミス、「確認不全」
 ミスがあります。

 「思い込み」ミスは、先に紹介した、①認知ミスと②判断ミスと関連するもので、先入観で決めつけ
 たり、憶測を事実と思い込んだり、物事を自分勝手に解釈したりすることによって起こるミスです。

 このようなミスが生じやすい心の状態には、日ごろから「自分は正しい」と思いがちであったり、
 反対に「怒られたらどうしよう」「人にどう見られるだろう」といった思考パターンがあり、人の
 意見を聞いたり、事実を確認したりすることを面倒に思い、自分の思い込みで処理してしまいます。

 この場合、「たぶん、○○だろう」というレベルならマシですが、「○○に違いない」、もっと強化
 されて「○○だ」というレベルになると、間違っていることに気づくのが難しくなります。

 日ごろから思い込みで処理するクセがないかどうかをチェックし、「○○だ」と思っても、再度、
 確認し、他の人にも点検してもらうなどしましょう。

 「うっかり」ミスは、やるべきことを忘れてしまったり、やらなくてよいことをしたりして起こる
 ミスです。 

 心の状態としては、焦りや不安、パニック、怒り、失望など強い感情に支配されていたり、他事へ
 注意が向いていたり、「慣れ」による怠慢や慢心があり、メタ認知能力がうまく機能せず、注意が
 コントロールできなくなっている状態です。

 このようなときには、見間違えたり、聞き間違えたりします。

 ぼんやりと他事に気を取られていて、新しい操作手順を古い機械の操作手順の「行為スキーマ」で
 進めてしまったりするなどし、特に、①認知ミス、③動作ミスに影響します。

 強い感情にとらわれているときには、一旦、作業の手を止めて気持ちを整えましょう。

 また、他に気になっていることがあるときは、誰かに話をしたり、ノートに書き出したりして一時的に
 保留にするなどし、早々に解決しましょう。

 「確認不全」ミスは、確認し忘れたり、最終チェックをしなかったりすることで起こるミスです。

 心の状態は、感情的になっていたり、「細かいことは苦手だ」とか「こんなことは自分がやる仕事では
 ない」とか一手聞かけることを面倒がっていたりするときに起こりがちです。

 自分自身が「確認」することに対して、どう感じ、考えているのかを見てみましょう。

 大切だと頭で理解していても、気持ちは面倒に思っていたりする場合もあります。

 そのようなときは、やっていても、ふと見落としていたりします。

 確認に対する意識を点検し、意識を高め、習慣づけすることでミスを大幅に削減することができるで
 しょう。

 心の作用は、とてもかすかで一瞬のものですが、人の認知を曇らせたり、行動を変化させたりするには
 十分な力を持っています。

 ミスをする直前の心の状態を検証し、自分のパターンを知っておくことで、再び同じような状況に
 なったときにミスを繰り返さないよう対策することができます。

 メタ認知能力を向上させ、自己モニタリング、自己コントロールを強化してミスを軽減していきま
 しょう。

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労務リスクと労務管理

労務管理のポイントⅡ

 6.過重労働の健康障害防止対策

  厚生労働省は平成18年3月1丁日付で「過重労働による健康障育防止総合対策」の改正を行いました。

  事業主が誇ずべき措置として主要なものを見てみると

   ①時間外、休日労働の削減
 
   労蝕時間の延長の上限を遵守し、時間外労働を月45時間以下とするよう努めること。
    
実際の休日労働を出来る限り最小限にとどめる。

   ②年次有給休暇の取得促進

   ③労助者の健康管理の徹底
    
・産業医、衛生管理者を選任し、職場における適切な指導をおこなわせる。
    
・健康診断の実施
    
・長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等を行う。

  平成20年4月、労働安全衛生法が改正され、全事業所で時間外、休日労働時間が1か月当たり100時間
  を超え、
かつ疲労の蓄積力覇艶められる者からの申し出があった場合は、医師による面接指導を
  行わなければならない
とされました。

  この医師による面接指導を実施した場合、その結果に基づき、労幼者の健康を保持するために必要な
  措置について、
事業主は遅滞なく医師から意見聴取するものとする。

  また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など
  適切な
事後措置を講ずるものとする、としています。

  ・労働者自身の取り組み
 
  過重労為による健東障害防止のためにtま、事業者が適切な据置を蕎じることが不可欠ですが、
   労働者自身も健康的な生活習慣を身につけるなど自らの健康
管理に対して自覚と自助努力が
   必要です。
 
  就業規則にも、労働者の義務として明記しておくのがよいでしょう。

  ・メンタルヘルス対策
 
  どの会社でもいつでも起こり得るメンタルヘルスについては、面接指導等により労働者のメンタル
   ヘルス不調が把握された場合には、面接指導を行った医師、
産業医等の助言を得ながら必要に応じ
   精神科医等と連携を図りつつ対応する
ものとする、としています。

  ・管理監督者に対する教育
 
  職場において日常的に労働者の指揮・管理を行うのは管理監督者であり、労働者のメンタルヘルス
   ケアについて、管理監督者の役割は非常に重要です。
 
  管理監督者は、労働者の状況を日常的に把握し、個々の労働者の能力、適性等に合わせ、適切に
   業務の管理を進めるとともに、労働者の自主的な相談への対応、適
切な情報の提供や必要に応じて
   事業場内外の相談窓口等に繋ぐなどの配慮
が求められます。
   このため、管理監督者に教育、情報提供等によりメンタルヘ
ルスについての知識を付与することは、
   早期の対応に不可欠です。

 
7.名ばかり管理職

  「課長・部長であるから残業代を支払わなくても良い」という取り扱いは、間違いです。

  過去には、ある大手飲食店の店長が管理職ではない、とされた判例のように管理職か否かは、
  すべて実態で判断されます。

  労働基準法では管理・監督者について定義はなされていません。

  行政通達では、次のような基準により管理・監督者性を判断するとしています。

   ①従業員の労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある
    (名称にとらわれず、実態に押して判断)

   ②職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する

   ③基本給、役付手当などにおいて、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、
    ボーナスなどの一時金の支給率、算定基礎貸金などについても一般労
働者に比べて
    優遇措置が講じられているか否か。

  こうした実態が伴わないと、職位だけでは管理職とは言えません。

  判例を見ると、以下のような場合は管理職と認められませんでした。

   ①出・退勤時刻についてタイムカードによる管理を受けていたこと

   ②他の従業員に関する労肯条件の決定や労務管理に参画していなかったこと

   ③部長手当の支給がなされていなかったこと

  自社の管理職が果たして上記のような待遇であれば、それは名ばかり管理職=管理職の実態なしと
  判断される可能性があります。

  管理職の見直しは対岸の出来事ではありません。

 
8.解雇の際の留意点

  解雇の種類についてまずは、整理してみましょう。

   ①普通解雇(やむを得ない事由で事業主側から雇用契約の解除を申し出るもの)

   ②懲戒解雇(懲戒処分としての雇用契約の解除)

   ③諭旨解雇(懲戒処分の一種で懲戒としての退職処分)

   ④整理解雇(やむを得ない人員整理の必要性があって、労働契約を解除)

  ◎解雇についての重要な法律

   ・労働契約法16(解雇)
    会社の経営不振等を理由とする労働者の「整理解雇」についても、よく知られているように
    判例において、いわゆる整理解雇の4要件が示されています。
    
4要件はすべてを満たす必要があります。

  会社の永続性を第一に考えると、最終的には解雇という手段を取らざるを得ない状況も多々あり
  ますが、段階を踏んだ手続きをしないと思わぬ形で訴訟等にな
ってしまいます。

  労務コスト削減になるどころか裁判コストがかかったというようなことにならないよう、解雇
  手続きは慎重に進める必要があります。

  ◎労働基準法19条(解雇制限)

  ◎労働基準法20条(解雇の予告)

   解雇予告の適用除外としては
    ・日々雇い入れられる者 例外-1か月を超えて引き続き使用
    ・2か月以内の期周を定めて使用される者
    ・季飾的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
    ・試みの使用期間中の者 例外-14日を超えて引き競き使用

   解雇が有効とされるための手順

   「客観的に合理的な理由」は、
    ・真実性
    ・客観性
    ・解雇規範妥当性

   から判断されます。

   「社会通念上の相当」は、
    
・解雇理由
    ・解雇処分が妥当かどうか
    ・バランスが
取れているか

   で判断されます。

   解雇が妥当であると判断されるために、解雇事由が実際存在したことの証明としてのメモで
   あったり、就業規則の解雇事由のどれに該当するかの検討、かつ解
雇事由の事実について、
   どれだけ注意、指導、改善の努力をしたかどうかが重要
です。

 9.労働時間管理と時間外手当

  未払割増賃金の遡及支払いとなれば、会社にとっては大きな労務リスクです。

  労働基準監督署の調査では、労働時間管理ができていない会社は、残業代の支払いを逃れるため
  だと思われても仕方がないケースもありますので、出来ていな
い会社は早急な対応をはかる必要が
  あります。

  では、労働時間管理とはどういうことを指すのでしょうか。

  そもそも、一週40時間、1日8時間という法定労働時間を超える時間外労働については、労働基準法
  37条で割増賃金の支払いを使用者に義務として課して
いるので、たとえ労働者が自由意思で残業
  手当を放棄したとしても、労働基準法
違反にはかわりありません。

  ◎
使用者の労働時間把握、算定義務

   労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業務について規定を設けていることから、使用者は
   労働時間を適正に把握する等、労働時間を適切に管理する責
任を有しています。

   労働時間の把握があいまいな状況の打開と、未払い貸金の発生を未然に防ぐ意図から、労幼時間管理
   についての基本的な考え方(行政指導方法)を示したものが
以下の通達です。

   「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(厚生労働省

   時間外労働の管理や労働時間の把握については、どのような方法によって行うかについては労働
   基準法に定めはありません。

   事業主の自由にまかされています。

   しかしながら、「うちは時間外の残業は一切認めていないので労働時間管理の必要はありません」
   というのは通用しません。

   本当に残業が一切ないのであれば、その根拠を示す資料が必要になります。

   その資料がなければ、やはり労働時間管理ができていないということになります。

   労働時問管理とは、単に始業・終業の時間をつけておくことではありません。

   「残業許可申請」「残業時間の自主記録制度」などを用いて所定外労働時間の削減にも取り組む
   必要が求められます。

   単に制度を導入するだけではなく、恒常的に残業が多い場合には改善の指導、上限の設定、などの
   措置を講じることが、
労働時間管理です。

   なお、管理職については、労働時間管理の適用除外とされていますが、深夜労働時間については、
   割増貸金の適用除外とはされてはいませんので、時間管理は
必要になります。

   2023年4月から60時間を超える時間外労働を行った場合には割増賃金率が50%に引き上げられ
   ました。

   時間外手当を国定で支給している会社も多いと思いますが、労働時間の抜本的な削減を遂行して
   いく必要があり、そのためにも労働
時間管理の徹底が急務です。

 
10.有期労働契約の雇止め

  有期労助契約(期間を定めて締結されている労助勢約をいう。)については、結、吏新・雇止め
  の際の説明やその手続などの実態が、労働者の保護に欠ける
考えられる閉居点が多いことから、
  有期労助契約の適正な運用の確保が必要とさ
れています。

  厚生労働省は「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」により行政指導を開始し
  います。

  実態として正社員と同様の業務に有期労働契約者を充てている会社も多くみられることから、
  契約の締結、更新及び雇止めには、正社員同様、守るべきこと
があることを知っておく必要が
  あります。

  「有期労湯薬約の締結及び更新・雇止めに関する基準」より

   (1)契約締結時の明示事項等
   
 使用者は、期間の定めのある労烏契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、
    労働者に対して、当夜契約の期間の満了後における当該契約に係る更新
の有無を明示しな
    ければなりません。

   (2)雇止めの予告
   
 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を
    超えて継続勤務している者について、あらかじめ当該契約を更新し
ない旨明示されている
    ものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、
少なくとも当該契約の期間の
    満了する日の30日前までに、その予告をしなけれ
ばなりません。

   (3)雇止めの理由の明示
   
 使用者は、雇止めの予告後、契約を更新しないこととする理由について証明書を請求した
    ときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

   (4)契約期間についての配慮
   
 使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を
    超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようと
する場合においては、当該
    契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間
をできる限り長くするよう努めなけれ
    ばなりません。

  平成27年4月にパートタイム労働法が改正されています。(出典:厚生労働省)

□終わりに

 労務管理のポイントを10項目挙げて説明しました。

 勿論、以上の項目だけ対応できていれば十分、というものではありませんが、この10項目について
 対応していなければ、確実に労務リスクは高まります。

 会社の防衛策としては、この10項目への対応は当然として、【自社の状況に対応した運用できる就業
 規則】+【会社を活性化させる人事制度・解雇問題を避
けて人事制度の運用で対応できるように整備】
 で人事・労務管理を万全なものに
しましょう。

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労務リスクと労務管理

労務管理のポイント Ⅰ

■会社を守るための労務管理

 近年、ますます労務トラブルの件数が増加しています。

 その背景には労働者の権利意識の高まりやインターネットによって簡単に情報が入手できることも
 あり、トラブルから会社を守るという視点で適正に
人事労務管理を行うことが強く求められています。

 人を一人雇用すれば、「まだまだうちには関係ない」ではすまされません。

 さっそく、労働トラブルを防止するために押さえておきたいポイントを解説していきます。

 さて、あなたの会社はいくつ出来ていますか。

 
1.入社のときに労働条件を書面で明示する

  労働者を採用するときは、貸金・労助時間等の労働条件を明示しなければなりません。

  ではどんなことを明示しなければならないのでしょうか。

  <明示しなければならない事項>

   ①労働契約の期間に関する事項

   ②就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

   ③始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに
    労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に
関する事項

   ④貸金(⑥⑦に定める貸金を除く)の決定、計算及び支払方法、締切及び支払の時期、
    昇給に関する事項

   ⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)

   ⑥退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法
    並びに退職手当の支払の時期に関する事項

   ⑦臨時の貸金、賞与、1か月を超える期間を要件とする手当並びに最低賃金額

   ⑧労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

   ⑨安全及び衛生に関する事項

   ⑩職業訓練に関する事項

   ⑪災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

   ⑫表彰及び制裁に関する事項

   ⑬休職に関する事項

  ①~⑤までの事項については、書面の交付が必要です(昇給に関する事項を除く)。

  この明示しなければならない内容を網集したのが厚生労働省からダウンロードすることもできる
  「労働条件通知書」です。

  パートタイマーには上記の事項に加えて、次の3つについても文書等による明示が必要です。

   ①昇給の有無

   ②退職手当の有無

   ③賞与の有無

  では労働条件を明示していなければ、どういう不都合があるのでしょうか。

  現実には、労働契約は書面を交わしたところから始まるというものではありません。

  働きたいと申し出る人がいて、会社が承諾するだけで契約は成立です。

  つまり口頭だけの約束で労働契約は成立します。

  ただ、口頭だけでは、行き違い、思い違いがあったりと、トラブルの元になる可能性があります。

  年々増加する個別労働紛争(個々の労働者と事業主との紛争)のなかにも、募集、採用時のトラ
  
ブルがあげられています。

  労働契約は何も労働者の権利を守るためばかりではありません。

  労働契約の締結により、労嶺者には会社の命令にしたがって労務を提供する義務が生じます。

  たとえば、始業時間に遅れれば、それは「労働契約で約束した始業時間に働かない」という債務
  不履行にあたります。

  何が労働者の義務なのかを明確にするためにも、入社のときに労働条件を書面で明示する必要が
  あります。

 
2.法定3帳簿の備え付け

  法定3帳簿とは、出勤薄、貸金台帳、労働者名簿を言います。

  これらは、会社を興したらまず最初に用意すべき帳簿です。

  あなたの会社には備え付けてありますか。

  労肯基準監督署の調査でも必ずチェック対象となりますので必ず備え付けてください。

  備え付けている会社も帳薄の記載内容に不足がないか、この機会に確認してください。

  記載内容は法律で定められています。

  記載すべき内容は図のとおりです。
   ※部門長など管理監督者の貸金台帳については、時間外労働や休日労働の時間数は記載不要ですが、
   深夜労働の時間数は記載しなければなりません。

  これは、管理監督者であっても、深夜労助の割増賃金は支払う必要が有るからです。

  これらの書類の保存期間にも気をつけましょう。

  法定軽薄や労働者の入退社に関する労務管理書類は3年間保存することが労働法令で義務付けら
  れています。

  3年間の起算日は次のようになります。
   ・労働者名簿については労働者の死亡・退職または解雇の日
   ・入退社関連書類はその労働者の退職または死亡の日
   ・賃金台帳は最後の記入日

 3.試用期間の設定と保険加入日

  一般に労働者を採用するにあたり、はじめから正式の本採用とはせずに、当初の3か月とか6か月
  という期間を定めて試みに使用する期間を試用期間といいます。

  ただし、胡周を定めて試みに使用する胡周とはいえ、雇用奥釣そのものは期間の定めのない契約に
  なりますから、社会保険の加入要件に該当すれば、試用期間中とはいえ、社会保険に加入する
  ことになります。

  ここでいう社会保険は、広義でいう社会保険で、狭義でいう場合は労働保険、社会保険という
  区分になります。

  試用期間と正式の本採用を区別したいのであれば、本採用前の別個の有期雇用契約として分けて
  契約することが好ましいです。

  この場合でも雇用保険は6か月以継続して雇用する見込みがあって、週労働時間が20時間以上あれば、
  入社の日から保険加入の必要があります。

  社会保険については、有期雇用契約が2か月間であれば、この期間を超えて契約する場合には、
  超えた時点から社会保険に加入する必要があります。

  上場を目指しているような企業でも、保険加入の要件を満たしているにも関わらず、入社してから
  間をおいて保険加入しており、入社日と保険加入日が一致していない場合も見受けられます。

  最近では、退職してから、保険加入日の修正を労働者から求められ、離職票の訂正をするケースも
  増えています。

  非正規労働者を多く雇用している会社は、本人がたとえ保険加入を望まない場合でも、後から
  労働基準監督署や社会保険事務所の調査で是正勧告を受けて遡って加入するリスクを回避する
  ために、実態に合わせて、保険加入に漏れがないかどうかを、常にチェックする必要があります。

  加入が漏れていた場合でも、遡って加入できるのは2年間です。

  試用期間について、「どの毎度の期間が適当ですか」という質問を受けます。

  「1年はだめでしょうか」というご質問もあります。

  判例では、1年の試用期間が諌められたケースもありますので、出来ないことではありません。

  ただし、試用期間があまり長いと、労働者としても不安な状態が長く続くことになりますので、
  3か月あるいは6か月程度を試用期間として、あらかじめ本人に通知したうえで、期間を限った
  試用期間の延長をする場合があるという規定の方法もあります。

 4.年次有給休暇の月別管理

  年次有給休暇でよく社長から相談いただくのが、退職時に残日数を一度に請求され、最終出勤日
  から退職日まで1か月程度も出勤しないで年次有給休暇を取得して退撤するというケースがあります。

  社長としては、どうにも承服できないということで、心情的には理解できる点もありますが、年次
  有給休暇が労働者の権利であり、会社の承認を必要としない以上、退散前に残日数をすべて消化
  した後に退職日を設定したとしても、会社はそれを拒むことはできません。

  毎年計画的に年次有給休暇を取得することで、年次有給休暇の取得の促進を図る「年次有給休暇の
  計画的付与」があります。

  これは、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ない場合は
  労働者の過半数代表者との書面による協定で、年次有給休暇を与える時季に関する定めをする
  ことにより、年次有給休暇日数のうち5日を超える部分に限り、年次有給休暇の計画的付与を行う
  ことができるというものです。

  年次有給休暇の取待については、労働者が退聴時に一度に取得をすることを避けるということの
  前に、健康障害防止、ワーク・ライフ・バランスの推進という背景のもと、行政主導で年次有給
  休暇の取得促進が求められています。

  平成22年4月から施行される改正労働基準法では、年次有給休暇を取得しやすくするように、時間
  単位での取得を可能としました。

  そもそも、労働者各人の年次有給休暇を管理していないということは、労働者への健康への配慮が
  されていないと判断される可能性もあります。

  当然、計画的付与を行う場合にも、何日間を時季指定するかを決定するうえで、各人の年次有給
  休暇残日数を把握しておく必要があります。

  労働基準監督署の調査が入れば、年次有給休暇の管理簿をチェックされます。

  取得率が低ければ、今後どのように取得を促進するのかという是正報告を求められる場合もあり
  ます。

  管理できていない会社は、残日数を聞かれてから確認するのではなく、個別管理を早急に始め
  ましょう。

 5.休職に関する規定の整傭

  休職とは、労働者を職務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、労働契約
  を維持したままで、会社がその労働者に対して一定期間労働義務を免除し、あるいは労働を禁止
  する制度です。

  もともとは、就業規則に必ず記載しなければならない事項ではなく、休職制度自体は任意のもの。

  勿論、制度を設けるのであれば、就業規則で定める必要があります。

  労働者の私傷病等による欠勤は、労働者の労務提供義務の不履行であり、欠勤が長期化すれば
  重大な債務不履行として、普通解雇理由に巌当するところを、傷病が回復し復職の可能性があれば、
  休職制度により普通解雇を一定期間猶予するという性質のものです。

  休職制度は、他社の規定をまる写しするのではなく、自社の状況に合わせて以下の必要事項を
  あらかじめ定めておくことが重要です。

   ①休職の種類、事由

   ②休職期間、回数

   ③休職中の取り扱い

   ④復職時の取り扱い

   ⑤復職しないまま休職期間満了となったときの取り扱い


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労務リスクと労務管理

休職制度の運用と見直し

■休職制度の運用と見直し

 休職とは、労働者を就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ、労働義務を
 一時免除または禁止することをいいます。

 この制度は会社の裁量により設けるもので、会社の方針を反映させやすい仕組みとなっています。

 ここでは、休職の開始から終了の経過に沿って、基本的な観点から解説します。

□休職の種類 

 休職は主に次の通り分類されます。
  ※他にも詳細に区分する場合がありますが、代表的な内容のみ掲載しています。

 ここでは代表例として私傷病休職について取り上げます。

□休職の発令と休職期間

 休職制度を実施する場合は、就業規則に「休職」に関する条項を設けることが必要です。

 上記の表を参考に休職の種類を列挙し、加えて包括条項(その他、休職をさせることが適当で
 あると会社が認めたとき)を盛り込むことが一般的です。

 要件に該当した場合には、会社から労働者へ休職の発令をします。

 休職期間は、会社の方針や世間相場、労働者の勤続年数などを考慮して決定することができます。

 資料(P36)は、休職制度のある企業(常用労働者 50 人以上を雇用する企業)を対象とした、休職
 期間に関する調査結果です。(出典:(独)労働政策研究・研修機構)

 割合が多い順に、「6 ヵ月超から 1 年まで」、「1 年超から 1 年 6ヵ月まで」となっており、
 各社様々です。

□有給か無給か

 休職期間中の賃金支給状況について、同調査によれば、「支給されない」が 74.8%、
 「支給される」が 18.1%となっています。

 これについては、企業規模が大きくなるにつれて、「支給される」割合が高まります。

 更に、支給される場合は、休職期間が長期化するにつれて、「無給」の割合が高まる傾向に
 あります。

 私傷病休職の場合は、加入する健康保険制度を利用して、傷病手当金(付加金)を受給できるため、
 これを踏まえて決定する会社が多いようです。

□休職中のフォロー

 休職発令を受けた労働者は、療養に専念する義務があります。

 しかし特に、うつ病に代表されるメンタルヘルス不調者については、再発することが懸念されます
 ので、会社としては、一度の休職で復職できるよう定期的に休職者の近況を確認する必要があります。

 確認者は、直属の上司ではなく、人事・総務部長または相応の担当者が望ましいでしょう。

 これは、監督的立場にある者からの、暗に生ずるプレッシャーを避けるためです。

 また、電話やメールの場合は、担当者の負担軽減の他、労務管理の一環で行っていることを示す
 ため、所定勤務時間中に、会社の電話やアカウントから連絡をするようにします。

□休職期間の満了

 休職期間満了時(または満了前)に休職者が復職を希望した場合、復職の可否は会社が判断する
 ことになります。

 そのため、判断材料として医師の診断書の提出を要請することができます。

 就業規則には、「会社の指定医」とすること、更に診断書作成料を休職者の負担とする旨を規定
 すると良いでしょう。

 また、休職期間満了時に休職事由が消滅していない場合は、延長または退職とする必要があり
 ますが、退職とする場合は、離職理由を「解雇」とせずに、「当然退職」(自動的に退職とする
 取扱い)と就業規則に規定することをお勧めします。

 その他の留意点として、勤続年数への算入方法、社会保険料の負担と徴収の方法などが挙げられ
 ます。

 休職中の社会保険料を労働者負担とする場合は、毎月徴収または復職時に一括徴収するなど取り
 決めが必要です。

 休職制度は、ストレスチェック制度と相まって、労務管理の際に一層重要なポイントとなります。

 運用面も考慮しながら、定期的に見直しを行うと良いでしょう。

□休職制度の見直し

 メンタルヘルス対策はできていますか。

 近年、企業社会では、「体の病」のみならず「心の病」から何らかの不調を抱える従業員が増えて
 います。

 また、過労死自殺を契機にしてリスク・マネジメントの面から労働者の心の健康管理を含めた安全
 配慮義務が企業に問われています。

 企業は、以前にもまして従業員の健康管理に注意を払わなくてはなりません。

 また、心身に何らかの不調を抱えた従業員に対し、労務管理に関して十分な対応が求められています。

 ここでは、心身に何らかの不調を抱えた従業員に対する労務管理に関して休職制度を通して検討
 します。

 1.休職の意義と種類

  「休職」とは、最大公約数的にいえば、ある従業員について労務に従事させることが不能または
  不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら
  労務への従事を免除することまたは禁止すること、と定義することができる。

  休職は労働協約や就業規則の定めに基づく使用者の一方的意思表示によってなされるのが普通で
  あるが、労働者との合意によってなされることもある。

  ◎休業の種類

   ①労働者の都合によるもの

    ・私傷病休職

    ・事故欠勤休職

    ・公務休職

    ・組合専従休職

    ・起訴休職

    ・懲戒休職

    ・依願休職  等

   ②使用者都合のよるもの

    ・出向休職

    ・海外留学等の業務休職  等

   ③労使いずれの都合にもよらないもの

    ・公傷休職

    ・天変地異または伝染病休職  等

 2.休職制度の法的性格

  休業制度は、就業規則においては相対的記載事項(労働基準法施行規則第5条1項)ですが、
  使用者がその定めを置く場合は「明示すべき労働 条件」となります。

  休職の種類に見るように、休職原因は様々ですが、大きく分けて二つに分類することができます。

  一つは、労務提供不能となった場合(傷病休職等)で、休職期間中に傷病が治癒し就労可能と
  なれば復職となります。

  一方、傷病が回復せず休業期間満了となれば、自然退職または解雇となります。

  もう一つは、労務提供は可能だが不相応である場合(起訴休職、懲戒休職等)で、企業の社会的
  信用や職場秩序の維持、懲戒や解雇などの処分を保留または猶予するなどの趣旨が混在していると
  言われています。

 3.休職制度改定による不利益変更の問題

  既存の不明確な点を改める場合は、不利益変更に該当しませんが、休職発令要件の改定や休職
  期間の変更等は、不利益変更となります。


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労務リスクと労務管理

小さな会社の労務管理

■経営者と従業員のパワーバランスの変化

 「人は大事」と言ってはみても、実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、どちらかと
 いえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。

 もちろん、社長(もしくは上司)が持っている「感覚」はとても大事なもので、多くの問題が、
 社長の今までの経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実です。

 このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「お互い様」「家族」「仲間」
 といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。

 ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス・雇用契約」といった意識が強くなり、それに
 ついていけない社長が問題を処理しきれない、ということが多くなっているように感じます。

 例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、従業員が権利
 としての主張を始めたり、「あ・うん」の呼吸でできていた休日出勤や残業に対して、従業員が
 割増賃金を請求してきたり、といったことが起こっています。

 「そのような要求を聞いていたら経営が成り立たない」と社長は主張します。

 ところが、コンプライアンス・雇用契約の観点からみると、従業員側に主張する「根拠」がある
 ケースが多いのです。

 つまり、社長の「そのくらいは我慢してよ、その代り雇って給料を支払っているんだから」という
 意識と、従業員の「法律上の権利を主張して何が悪いの?」という意識とのぶつかり合いに変わって
 きているのです。

□人を雇うルールと責任を知っておこう

 従業員を雇うと生じる責任とは何でしょうか? 順番に確認していきましょう。

 1.給料(賃金)をきちんと払う責任

  当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。

  給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。

  ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。

  この決まりを「労働基準法 賃金支払い5原則」といい、次のものをいいます。

   ①通貨払いの原則(円建てで)

   ②直接払いの原則(本人以外への支払いは認められない。例外:妻・子等)

   ③全額払いの原則(残業代の不払いは違反)

   ④毎月1回以上払いの原則(日払い、過払いは該当しない)

   ⑤一定期日払いの原則(例外:臨時支払の賃金、賞与その他これに準ずるもの)

 2.安全で健康に働いてもらう責任 安全・安心な職場環境の整備

  ヘルメットや安全靴をはかせることだけが責任ではありません。

  会社の施設、備品などを整備することや、温度、湿度、照明といった職場環境の整備、健康
  診断の実施なども責任です。

  近年では、体だけでなく心の健康を守ることも重要になってきています。

  長時間労働や、特定個人に過重な負荷がかかるような仕事の与え方も、問題になるケースが
  あるので注意が必要です。

 3.働き続けてもらう責任

  一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。

  実は、法律上は「解雇権の濫用」といって、解雇をするには誰もが納得するような理由が必要です。

  しかし、現実には難しい問題です。

  最低でも、従業員が納得できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。

 4.書類を作成する責任

  労働基準法では、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、最後に記入
  してから3年間保管することが義務付けられています。

  このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があった場合に渡す
  「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就業規則」などが必要です。

 5.公的保険に加入する責任

  公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の社長がたまにいますが、
  公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」は加入が義務となって
  います。

  最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される「ねんきん定期便」
  によって、加入意識を持つようになっています。

  さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけにはいかない
  流れになっています。

□採用前に決めておくべきこと

 働いてもらう時に守ってもらいたいルールと、会社が守るルールを「労働条件」といいます。

 労働条件を貸金、労働時間、休日休暇、勤務場所、契約期間、退職、公的保険の加入だけと考える
 人もいますが、実はそれだけではありません。

 例えば、「喫煙ルール、服装、整理整頓、タイムカードの打刻方法、休暇の申請方法、出張旅費の
 精算方法」なども労働条件になるのです。

 多くの会社では、このあたりのルールがあいまいなために、転職してきた従業員が前職でのルールで
 行動してしまい、小さなトラブルが多発するということも少なくありません。

 これらを明確にするのが「就業規則」です。

 労働基準監督署に提出しなければいけないから作成するのではなく、会社としてどのようなルールで
 働いてもらいたいかを明確にするために作成することがとても大事なのです。

 社長の多くの不満は、「どうしてあいつは○○なんだ。うちでは△△なのに」ということの積み
 重ねだと思います。

 そういった不満の解消のためにも、従業員に堂々と見せて話ができる就業規則で「労働条件」を
 お互いに確認することが大切になるのです。

 ところで、知りたくなるのが「うちは、最低の条件でしか人は雇えないが、どの条件が最低になる
 のか?」ということだと思います。

 そこで法律で決まっている最低限の条件をサンプルで作ると、次のようになります。

  ①勤務時間 1日8時間の場合

  ②休憩時間 45分

  ③休日 週1日

  ④給料 時給1072円(東京都の最低賃金:2022年10月1日より)、昇給なし、手当なし、
   通勤手当なし、賞与なし、退職金なし

  ⑤残業代 法定通り

  ⑥有給休暇 法定通り

  ⑦定年 60歳 ただし65歳までの再雇用あり

  ⑧給料支払い 月末〆 翌月15日払い

 今まで常識だと思っていた1時間休憩や通勤手当、賞与、慶弔休暇もありません。

 この条件で雇っても法律違反にはならないのです。

 もちろん、この条件で人が採用できるのか、という問題は残ります。

 要するに、この最低条件をスタートとして、会社としての条件を肉付けしていけばよいのです。

 ここで注意しなければいけないのは、条件として書いてしまったら、実施しなければならない
 ということです。

 「書いてあるけどまあそこは‥…・」というわけにはいかないので、よく検討していただきたいと
 思います。

 また、次のような肉付けは問題があります。

  例)給料50万円 有給休暇なし

 いくら給料がよくても有給休暇なしは法律の最低条件に満たないことになるので認められません。

□有給休暇の考え方のツボ

 有給休暇の話をしていきたいと思います。

 有給休暇を与えると会社が成り立たないという話を聞きます。

 「うちには有給休暇はない。取るやつはクビだ!」という管理をしている会社がまだまだ見受け
 られます。

 しかし、有給休暇は本人が権利として持っているものですし、取得したことを理由にクビにすれば、
 会社に勝ち目はありません。

 そこで、有給休暇の特性をよく理解したうえで従業員との関係を築きあげていかなければならない
 のです。

 ◎有給休暇の原則

  ①取得の理由は何でもよい

  ②許可制にはできない

  ③買い取れない

  ④取得したことで不利に扱ってはいけない

  ⑤2年間有効

  ⑥本人が有給休暇を使うといわないと使えない

  では、会社でできることは何でしょうか?

 ◎有給休暇で会社ができること

  ①日程変更をいえる(正常な運営ができない場合)

  ②取得ルールを作れる(10日前に申請など)

  ③2年間経って無効になった分を買い取れる

  ④労使協定で一定日は日程を指定して取得させられる(夏休みなどにつけて長期休暇など)

 結局のところ、従業員が「有給を使う」と宣言するかどうかがポイントです。

 会社としては事情を説明して理解を得る、逆に本当に休みたいときには気持ちよく休ませてやる
 などして、よい人間関係を作り上げていくことが重要なのです。

□賃金の上手な決め方

 採用の際に一番先に頭に浮かぶのが「給料をいくら支払えばよいか」ということだと思います。

 これはとても難しいことですが、基本的な決め方は「相場」「支払能力」を参考に決めていきます。

  ◎相場

   ほとんどの場合には、賃金は相場で決まってきます。

   従業員もよくわからないので、前職の金額をそのまま希望しているなんてことも多くあります。

   相場は折込チラシ、ハローワークの求人情報などを参考にすればよいでしょう。

   金額が高いからよい人が来るというわけではありませんが、低すぎると、応募者の検討にも
   入らないことになるので、ある程度の賃金水準は必要です。

  ◎支払能力

   支払能力を検討する場合に注意が必要なのが、給与額そのものだけで検討しないということです。

   実際の人件費には次のような費用が隠されています。

    ①残業代

    ②採用費用

    ③社会保険料

    ④教育費用

    ⑤有給休暇の貸金

    ⑥賞与

    ⑦退職金

   これらを考えていくと実際の会社負担額は、給与の1.5倍から2倍ほどになるはずです。

   ここをよく試算しておかないと、予算不足になり、残業代未払いとなるケースが多く見受け
   られるのです。

   また、中小企業の場合中途採用が多くなります。

   そのため、賃金表の作成はあまりお勧めしません。

   もちろん、役職や職種ごとの貸金療目安は必要かと思いますが、多くの場合には、人員不足
   のために緊急で採用するしかない状況で金額を決めたり、縁故採用のため他の従業員とバランス
   の取れない金額での採用を余儀なくされるケースが多いからです。

   この場合には長期的に他の従業業とのバランスをとる必要がありますが、とりあえずは、賞与で
   調整していくことになります。

   場合によっては、給与は少し低めにして賞与を多くし、年間給与額で採用するというやり方が
   実態に合っている場合もあるので、柔軟に対応していくことをお勧めします。

   もう一つ考えていただきたいのは、時給換算による労働価値の再確認です。

   近年では、非正規労働者の増加ということでパートなどの時給労働者が増えています。

   そこで、月給の従業員は時給に換算するといったいいくらになるのかを計算するのです。

   パートの3倍の給与を支払っているとしてその金額に見合った仕事を与えているか、また、
   与えることができるのかを検証するのです。

   冷静に分析すると、今回の採用が正社員の必要があるのかと疑問に感じることや、現在の
   従業員の給与水準が適正かどうかを見直すきっかけになることもあります。

□上手な採用の手順とコツ

 従業員を募集しても、応募者が少ない、よい人が来ないなど、なかなかうまくいかないことが
 多くあります。

 応募自体が少ない理由には次のようなものがあげられます。

  ①応募しようにも何の会社だかわからない

  ②給料が安い

  ③保険がない、または加入できるかわからない

  ④時間が厳しい、合わない

  ⑤応募条件が厳しい(年齢、経験、資格)

  ⑥時期が悪い(大手と重なった、お盆、G甘、年末年始)

  ⑦募集の方法を間違えた(主婦を狙ったのにハローワークで募集など)

 給料や時間などは調整のしようがないでしょうが、少なくとも①の何の会社だかわからないという
 ことは無いようにしなければなりません。

 募集要項や、自社HPなどを工夫して応募者にわかってもらう努力は必要でしょう。

 一番簡単なやり方は、他社のマネをしてしまうことです。

 短い文章の中に上手に入れている募集広告やHPとうまくリンクしたものなど、自分たちででき
 そうなものを作ることが大事です。

 近年は募集用のHPを作って成果を上げている会社も出てきています。

 応募者に対してどのような選考をするかということが次の間題になります。

 間違った人を採用しないようにするにはまず、

 社長がしっかりとした準備をすることが大事です。

 それは次の通りです。

  ①何の仕事をさせるのかを決める

  ②そのために最低必要な能力レベルを決める(最低がポイント)

  ③絶対に採用しない要件を決める

  ④前職に惑わされないように、具体的な質問を用意する

  ⑤入社後にやってもらう仕事の具体的手順をやらせてみる

 中小企業にとって必要なのは、社長の指示通りに一所懸命働く、まじめな従業員ではないかと
 思います。

 なぜならば、社長以上に仕事をわかっている人はいないからです。

 技術や能力は入社後に教育でカバーするのが本来の形ではないでしようか。

 即戦力で入った中途採用者は確かに短期間で稼ぎ始めるのですが、あくまでも他社のやり方であり、
 長期的に自社のやり方にしてくれるケースはまれです。

 それを理解して採用するのならば問題ありませんが、会社の基幹となるケースは少ないようです。

□トラブルを防止するために

 中小企業の従業員とのトラブルの原因は大きく分けて二つあります。

 1.会社のコンプライアンス意識の欠如

  これは社長がしっかりと勉強する必要があります。

  問題があることを知って、将来的に改善する方向で動かないと、従業員とトラブルになるたびに
  法律的に攻められるリスクを持ち続けることになります。

 2.契約内容があいまい

  社内ルールが整備されていないことにより、契約内容があいまいなまま採用してしまい、お互いの
  認識の違いがトラブルに発展するケースです。

  例えば、給与30万円と決めた場合、30万円は支給総額なのか、手取りなのか、残業代を含むのか、
  基本給だけなのかというところなどは明確にする必要があるでしょう。

  特に残業代を含んでの契約の場合、給与のうちいくらが残業代なのか、何時間分なのかを明確に
  する必要があります。

  もう一つの例としては成果です。

  どういう成果を会社が求めるのか、その成果をどのように検証するのか、その結果どういう賞与や
  昇給になるのかはとても大事です。

  社長は「あいつは働かない」といい、従業員は「自分はすごい成果を出している」という、そんな
  話はよくあります。

  ほとんどの場合、「何を」が抜けているケースが多いようです。社長は部下指導でチームとしての
  成果を求めていたのに、本人は自分の成果だけを考えていたなどというケースです。

  トラブルは会社も従業員も望むものではありません。トラブルを未然に防ぐには、会社の努力が
  重要です。

  厳しい時期だからこそ、コンプライアンスと雇用契約をしっかりする意識が重要なのです。


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労務リスクと労務管理

退職時に必要な書類

■はじめに

 労務トラブルが増えていますが、そのほとんどが、「残業」に関することと、「解雇」や「退職の
 強要」といった退職に関する案件で発生しています。

 今回は、特に退職時のトラブルを防ぐために、必要な書類とその記入ポイントを解説します。

□3つの退職事由と退職を証明する書式

 労働基準法では、社員を雇い入れる際は、使用者側(つまり会社)が、書面でいわゆる「労働条件通知
 書」などの書面を発行し、労働条件などを明示しなければいけないという定めがあります。

 しかし、退職時には、労働者が退職証明書などを求めない限り、退職する労働者と会社が書面のやりとり
 をしなければいけないという定めは特にありません。

 退職する際に「退職届」を労働者が会社に提出することは、一般的ではありますが、退職届の提出などが
 なくても、退職は正当に成立してしまうのです。

 しかし、労働者が退職する際は、会社側は当然「いつ」「誰が」「どのような事由で」退職するのかと
 いうことを証明する書類を発行するか、提出してもらうようにすべきでしょう。

 後々、退職事由や退職日などをめぐってトラブルとなることは少なくありません。

 期間に定めのない社員(いわゆる正社員)の退職事由は、定年を除くと大きくわけて3つ考えられます。

 1つめは「自己都合退職」、2つめは「解雇」、そして3つめが「会社都合の同意退職(退職勧奨の受け
 入れ)」です。

 1つめと2つめはよく知られていますが、3つめの「会社都合の同意退職(退職勧奨の受け入れ)」は
 意外に知られていません。

 しかし、社員の退職についてはこの3つの違いをよく理解した上で、正確な手続きをしておくことが
 重要なのです。

□自己都合退職の場合

 自己都合退職とは、その名のとおり社員自らの意思によって退職することです。

 自己都合退職の場合は大きなトラブルになることは少ないと考えられますが、それでも退職日や退職理由
 について、会社と社員は共通の落款を持っておかなければならないでしょう。

 特に、会社としては次の点を確認し、本人にその申し出が受理されたことを伝えておくことが重要です。

  ・退職理由が「自己都合退職」であること

  ・退職日および実際の最終出勤日

  ・重要な引き継ぎ事項

 しばしば見られるトラブルとして、退職を申し出た社員がそれを撤回するというケースがあります。

 社員の退職が成立するのは、本人が会社に退職の意思を伝え、それを会社が認めた時です。

 「会社が認めた時」とは、一定の権限者に退職の意思が届き、了承した時のことを意味します。

 つまり、会社の代表者もしくは人事担当取締役や人事部長など、退職を了承する権限をもっている人物
 が退職を認めた場合にはじめて正式に退職が決定されるのです。

 例えば、直属の先輩に退職の意思を伝えたとしても、それが正式に会社の人事権限者まで伝わっていない 
 ケースでは、その退職は正式に決定したものではなく、本人が退職の意図を撤回したいと考えた場合は
 撤回することができるのです。

 一方で、書面がなくても退職の意思が明確に人事権限者に伝われば、退城は有効に成立します。

 ただ、「言った、言わない」となってしまうことも少なくないため、やはり書面で退職願を提出してもら
 うようにするべきでしょう。

□解雇の場合

 自己都合退職に対して、解雇は非常に大きなトラブルになることがあり、会社としてはリスク回避の
 ために、決定したことはしっかりと書面にしておく必要があります。

 解雇とは会社からの一方的な契約解除をいい、労働者の同意を得ないものです。

 そのため解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利
 を濫用したものとして、無効(労働契約法第16条)」となってしまいます。

 よって、会社は解雇となる事由は就業規則にできるだけ具体的に明記し、それを周知するとともに、入社
 時には労働条件通知書などで明示しておかなければなりません。

 この解雇事由は、想定される事由はできるだけ多く列挙し、また、その後も事例が発生するたびに随時
 追加しておくべきでしょう。

 その上で、実際に解雇を行う場合は、その解雇事由と解雇日、そして解雇通知日を明確にした解雇予告
 通知書
を交付して30日前に解雇予告を行うか、即時解雇の場合は解雇通知書を交付し、平均賃金の30日分
 の解雇予告手当を支払う必要があるのです(懲戒解雇では、労働基準監督署長による解雇予告除外定を受
 けることができる場合がある)。

□会社都合の同意退職(退職勧奨の受け入れ)

 会社都合退職といえば解雇と思いがちですが、実は退職勧奨という方法もあります。

 退職勧奨とは、会社が社員に「退職をして欲しい」とお願いし、それを社員が受け入れ、会社都合の
 「同意退職」として処理するものです。

 「同意退職」であることが、会社からの一方的な労働契約解除である解雇とは大きく違う点です。

 実は、これは、会社にとって非常に大きなリスクを回避することになるのです。

 解雇の場合に(元)社員が解雇理由に納得しなければ、裁判所などに「解雇無効」を訴えられることも
 あります。

 会社はその解雇が「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」ことをプロセスも含めて証明
 しなければなりません。

 しかし、現在の労働裁判の判例を見る限り、その認定は非常に巌しいものであり、「解雇権の濫用」に
 より解雇無効となるケースは決して少なくないのです。

 万が一、解雇した社員が解雇無効で会社を訴え、それを裁判所が認めた場合(不当解雇であったと裁判所
 が認定した場合)は、会社は解雇した日から職場復帰の日にいたるまで、その社員の給料を支払い、元の
 職場に復帰させなければなりません。

 このようなリスクのある解雇を行う前に、会社が社員との話し合いにより「同意」を得る退職勧奨を行う 
 べきケースは、実は多く存在するのです。

 解雇はあくまでも最後の手段と考えるべきです。

 なお、退職勧奨は会社都合の退職になるので、退職した労働者は「解雇」の場合と同じくハローワーク
 では「特定受給資格者」として扱われます。

 よって原則として3カ月問を待つことなく、すぐに雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受給する
 ことができます。

 また、勤続年数にもよりますが、基本手当が受給される期間も自己都合退聴の場合より長くなることが
 多いのです。

 どうしても社員に退職してもらわなければいけない場合は、これらのこともしっかりと本人に伝えた
 上で、退職勧奨に同意してもらう努力を会社は行うべきでしょう。

 退職勧奨で同意退職となった場合は、後々トラブルとならないように必ず「退職勧奨同意書」に本人の
 署名、捺印をしてもらい、本人が退職勧奨を受け入れての同意退職であることを明確にしておく必要が
 あります。

 なお、退職証明書とは、上記退職書類とは別に、退職者が会社に請求することができる書類です。

 この請求に対して、雇用していた会社は、できるだけ早く退職証明書を発行する義務があります。

□退職時の覚書

 退職時には、上記で紹介した書類の他に「覚書」や「誓約書」といった形式で、退職後の約束についても
 書面で残しておくことが一般的です。

 これについても「義務」ではありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも会社としては準備をして
 おいたほうがいいでしょう。

 退職に関する覚書……退職後も会社に迷惑をかけるような行為をしないという約束を交わす書類です。

 退職時の誓約書として書いてもらうこともあります。

 主な内容としては、次のようなことが考えられます。

  ・秘密情報の保持

   退職後も、仕事上知り得た秘密情報を保持し、開示しないという誓約

  ・成果物などの帰属

   仕事上取り扱った事項の著作権、その他の権利が会社にあるという確認

  ・競業避止義務

   退職後、同業他社への就職などを一定の範囲で制限するという確認

  ・紛争の有無

   退職者と本人との間に、お金の貸し借りなどの紛争が一切ないことの確認

  ・退職後の名誉毀損行動・発言

   退職後も、会社の名誉を傷つけるようなインターネットへの投稿や発言などをしないことの確認

 なお、これらの書式については、原則的に自筆の署名があれば法律的には真正なものとみなされますが、
 捺印があればよりその意思がはっきりしたものであると認められます。

 よって重要な書面には、本人の自筆の署名と捺印を求めるべきです。


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労務リスクと労務管理

小規模企業の退職金制度

■退職金制度の見直し

 厚生労働省や各種機関などの調査をみると、規模の大小を問わず企業の間で退職金制度は普及して
 います。

 もはや退職金制度の問題は制度構築の有無ではなく、魅力的な制度をいかに導入していくかに移って
 いるといえるでしょう。

 その一方で、従業員の高齢化という問題が顕在化しています。

 企業によっては、一定年次に従業員が集中しており、将来短期に多額の退職金支払いが集中するという
 問題を抱えているのです。

 退職金は支払い金額が大きいだけに、企業は早急に本格的な退職金制度の見直しを検討しておいたほうが
 よいと言えます。

 ここでは、上記のような問題意識に立ち、比較的小規模の会社が、退職金制度を新たに導入する際、何を
 考えなければならないかについてまとめたものです。

 特に、

  →退職金についての基本的考え方

  →特に独立制度との組み合わせの工夫

  →標準的な退職金制度の作り方

 を整理しています。

□退職金は何のために支払うか

 日本で最初に退職金制度が導入されたのは明治時代のころです。

 つまり退職金制度は100年を超える歴史を持つのですが、なぜ退職金を支払うのかという問題に関しては、
 必ずしも定説があるわけではありません。

 そこで、まず、退職金の性質から整理していくこととします。

 退職金の支払い理由については、

  1.勤続報償説  

  2.在籍中の功労報償説

  3.退職後の生活保障説

 などがあるようです。

  1.勤続報償

   勤続報償は、文字通り長年の勤労に対する報償であり、こうした意味の一時金制度を持つことに
   より、従業員の定着、長期勤続を促進することが可能となります。

  2.功労報償

   功労報償は、退職金を在職中に支払われるべき賃金の不足分を後払いする制度であるとの立場に
   立った考えです。

   ただし、本当に従業員に給与の一部を強制的に積み立てさせて、退職時に会社が割増払いをする
   ということは、労働基準法上の禁止行為です。

   この考え方が意味するところは、年功序列によって若いうちは低く抑えられていた給与を退職金
   として支給するといったことです。

  3.生活保障

   生活保障に関しては、本来、公的機関が行うべき保障を、企業が代わって実施するところに退職金
   支払いの意味があると考える説です。

   この説では、国の年金などが充実していれば企業負担は軽くなり、年金制度では生活保障が不十分な
   場合は、企業がどこまで面倒を見なければいけないかがはっきりしないという欠点があることも事実
   でしょう。

   現に、生活保障のため定年延長が実施され、年金の原資不足を企業負担で補う方向に政策が向いて
   いることも事実です。

   ただ、規模の小さい企業が、国に代わって従業員の退職後の生活を全面的に保障しなければならない
   かどうかに関しては、一考の余地があるでしょう。

   そもそも中小企業が取り組む事業は、在職中に事業ノウハウを取得して独立しやすい性質のものが
   多いからです。

   例えば、レストラン・チェーン店の店長やシェフ、コンピューターソフト会社のエンジニア、企画
   会社やコンサルティング会社の従業員などを想像してみるとよいと思います。

   また、手についた技術で勝負する理美容業や特殊な製造業にも同じことがいえるでしょう。

   そこで、早期退職を勧めることを前提に、従来ののれん分け制度の延長、すなわち独立の支援を行う
   形で、退職金を低めに抑えることが、小さい規模の企業でも浸透しているようです。

□独立制度とは

 独立制度とは簡単にいうと、

  社員が会社から独立して事業を行うことを
  企業側が資金教育人材援助などの立場から支援する制度

 です。

 主に外食産業を中心としてその動きが活発化していますが、内容は、

  ​新しく出店する店舗を一定条件の下で社員に譲渡し、
  社員はオーナーとして新店舗を運営する

 といった、現代版のれん分け制度とでも呼ぶべきものから、

  社員が提案する事業企画書の中から成功の可能性が高いと判断したものに対して、
  出資や必要資金の融資を行い、社員は、退職して会社を設立する

 などの、本業とはあまり関連のない事業計画に対しても援助を行うというものまでさまざまです。

 企業にとっては、

  →やる気のある優秀な人材を確保・育成する

  →社内の起業家精神を高めて、社員の活性化を図る

 といったメリットがあるほか、

  社員の独立が自社のネットワーク拡大につながり、出資した場合、
  事業として成功すれば配当金やキャピタルゲインも望める

 という利点があるようです。

 独立制度による、社員への支援の具体的内容には、例えば、

  →店長や経営者としての必要な能力を養うための教育研修の実施

 のような準備段階における支援と、

  →社員への低利融資や出資

  →事務所・店舗探しや、備品などの貸与

 などの開業時における支援があります。

 しかし、独立制度を本当に魅力あるものにするためには、これを単なる制度に終わらせることなく、
 これらの支援内容が、社員にとっても企業にとっても本当にそのメリットを感じるものにしなければ
 なりません。

 そこで今回、上記の支援のうち特に大きなウエートを占める開業資金の援助方法について、退職金制度を
 独立制度にからめた方式を紹介します。

 それは、

  勤続年数、役職経験年数などの一定の条件をクリアして独立を認められた社員に
  対して、特別に優遇された退職金を支給することにより、資金援助の一部とする

 というものです。

 例えば、

  勤続年数10年以上の社員で課長以上の役職を経験しており、その事業計画を会社が
  認めたものに対しては、所定の退職金に加えて500万円の特別支給金を支払う

 などの方法が考えられます。

 この方式によって、

  勤続年数に最低条件を設けていることにより、早すぎる退職を防ぎ、なおかつ、
  「定年まで働いて退職するよりも独立した方が得だ」という感覚を社員に与える
  ことにより早期退職を勧め、若いうちに独立できる可能性を提示して、社内全体の
  士気を高める

 ことを狙うわけです。

 さらに会社にとっては、独立する場合の特別金を設けることで、それ以外の場合の退職金を低く抑える
 ことを従業員に納得させる材料ともなります。

□退職金制度を作ろう

 ここでは実際に退職金制度を作成する手順を整理します。

 なお、ここで扱う退職金は、退職一時金のことです。

 ここでは、退職金制度作成の手順を、

  1.退職金のベースを決定する

  2.退職事由によって格差をつける

  3.勤続年数の計算方法

  4.退職金の支払い方法

 という順に、ポイントを絞ってできるだけ簡潔に整理しました。

 より具体的な退職金の定め方に関しても記載しました。

  1.退職金のベースを決定する

   現在、企業において最も普及しているのは、基本給と勤続年数の2つの要素を用いて、

    退職時の基本給×勤続年数別支給率

   という算式から、退職金のベースを算定する方式です。

   退職金の基本的な考え方を、

    入社時から退職時までに企業に対して果たした業績を反映するもの

   とすれば、基本給と勤続年数は、この考え方をある程度満たす条件ということができます。

   また、この方式を用いた場合、勤続年数別支給率だけなので、制度の運用が大変シンプルです。

   勤続年数別支給率に関しては、

    勤続年数が上がるほど、支給率もアップする

   形態をとることが必要ですが、

    →ある期間(例えば勤続年数15~25年)だけ支給率が急激に上がり、
    その後緩やかになる

    →一定の勤続年数(例えば30年)に達した時点で支給率を固定させる

   などの工夫をすることによって、退職金の伸び率を操作することができます。

  2.退職事由や退職時の役職などによって格差をつける

   退職金の算出方法を決定したら、これから算出される退職金のベースに対して、退職事由や役職など
   によって増減を付けます。

   例えば、

    →自己都合退職の場合は、基礎額に0.8を乗じる

    →定年退職、かつ勤続満20年以上の場合、基礎額に100万円を加算する

   などのようにして行います。

   どのような事由に対して、どの程度の格差をつけるかは会社の考え方次第ですから、ここで最も自社 
   の特色を出せることになります。

   前述の、独立制度の一環として退職金制度を考える場合なら、

    勤続10年以上の社員が独立を事由として退職し、
    また会社がこれを認めた場合は、基礎額に500万円を加算する

   というように規定すればよいのです。

   参考までに、格差付けのためによく用いられる事項を記します。

    ・会社都合による退職、解雇

    ・自己都合による退職(傷病、非傷病による場合を別扱いする例もあります)

    ・定年退職

    ・死亡(死亡については業務上か業務外かで区分する例もあります)

    ・結婚または出産退職

    ・従業員の責による解雇、または懲戒解雇

    ・早期退職の優遇制度

  3.勤続年数の計算方法

   勤続年数の計算で問題となるのは、

    →休職期間や再雇用などで勤続年数が中断されている場合

    →年数に端数が生じた場合

   の2つです。

   勤続年数の中断については、起こる可能性のあることをすべて規定に入れることが必要です。

   勤続年数に通算されないことの多いものは、

    既にある時点において退職手続きがとられ、退職金が支給されている場合
    (会社合併、組織変更、定年後の再雇用、嘱託など)

   です。

   また、

    退職金の適用範囲になっていない期間(臨時雇用、私傷病による休職期間、懲戒に
    よる出勤停止期間など)

   についても通算されないのが普通です。

   もちろん、何を勤続年数に加算するか、またはしないか、ということは企業の事情に応じて決定
   すればよいでしょう。

   次に端数の取り扱いについては

    端数月数は6捨7入(1~6月は切り捨て、7~12月は切り上げ)などを行い、
    1年単位で金額を算出する

   場合と、

    前年度までの勤続年数を基に計算した退職金に、
    月割り計算を行って算出した額を加算する

   方式の2通りがあります。

   計算の正確さという意味では後者が望ましいのですが、実際は計算の煩雑さから、前者を採用して
   いる企業が多いようです。

   なお、端数日数については、いずれの方式にしても15捨16入をすることが多いようです。

  4.退職金の適用範囲

   退職金の適用範囲は、通常正規の手続きを経て雇い入れられた正社員にのみ支給されるのが普通
   です。

   従って、

    役員、臨時雇、顧問、嘱託

   などには、退職金は適用されないことが多いようです。

   また、受給資格として最低必要勤続年数を定めることも多く、

    会社都合の場合は勤続1年以上
    自己都合の場合は勤続3年以上

   というように、支給事由に関連させて設定することもあります。

   退職金の適用範囲については、払うか払わないかという大きな問題だけに、その記述には特別な注意
   が必要です。

   支給事由受給資格などは、できるだけ詳細に挙げておいて、疑問のないようにしておくことが必要
   でしょう。

   ◎退職金額を決定する諸係数の決定方法

    退職金制度作成の流れが分かったところで、退職金の額を決定する諸係数をどのようにして決め
    ればよいかを考えてみましょう。

    この場合は、

     勤続年数別支給率
     退職事由別支給率、または支給額

    の2つの要素を決定します。

    まず最初に行わなければならないことは、定年退職や自己都合退職などの場合を除いた、普通退職
    の場合の退職金を設定することです(これを退職金のベースとします)。

    業界相場と自社の事情を加味しながら、5年刻みぐらいで、勤続年数別に退職金を設定して
    いきます。

    このようにして決定した退職金を該当勤続年数別の基本給で割ったものが、勤続年数別支給率
    です。

    次に行わなければならないことは、事由別勤続年数別の特別支給金を設定することです。

    つまり、企業として誰にどれだけの退職金を支給するかということです。

    まず退職事由を設定することから始めます。

    例えば、

     →独立による退職

     →独立以外の自己都合による退職

     →定年退職

    のようにして設定します。

    退職事由を決めたら、それぞれについて勤続年数別の特別支給金を設定します(勤続年数は
    5年刻みぐらいとします)。

    例えば、独立自己都合定年の3つの場合を考えている場合だと

     →15年勤務で独立する社員には700万円ぐらい支給したい

     →35年勤務で定年退職する社員には1200万円は支給したい

     →自己都合による退職は、勤続30年以上は普通退職扱にしたい

    というような具体的なパターンを先に考えて、先に決定したベースとの差額を 

     特別支給金

    にしていくとスムーズにいきます。

    このようにして、勤続年数別支給率と特別支給金を決定します。

    一度の試算で決定してしまうことを考えず、いろいろなケースを想定しながら、何度も試算を
    繰り返して自社に最適な数値を出していけばよいでしょう。

    ベースとして基本給と勤続年数を使用する退職金制度の作り方について述べました。

    この方式は、最も基本的かつ広く普及している方式であり、新たに退職金制度導入を考える際の
    ベースとして適しています。

    しかし、この方式で退職金は基本給の上昇に比例して退職金の支給額も上昇するため、長い
    目で見て

     →企業の支払い能力がこれに耐え得るかどうか

    という問題が出てきます。

    同時に

     →退職金支払い準備をどうするか

    は、退職金制度を導入する場合に避けて通れない重要なことです。

    また、定年延長の動きを受けて、

     →放っておけば増える一方の退職金をどう処理するか

     →退職年金の問題を、退職一時金との兼ね合いでどう扱うか

    という問題も出てきました。

    そこで、中小企業の退職金の支払い準備を国家が援助する制度である

     中小企業退職金共済制度

    については、単独で充実した退職金制度を構築することが難しい中小企業が、共済方式によって
    互いに助け合いながら制度を構築するイメージの制度です。

    ​企業の外部支払い準備として特に需要が高くなっています。
 


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労務リスクと労務管理

退職金規程

会社が退職金の規定を設けるか否かは、任意であり、法律によって義務付けられてはいません。

ただし、退職金規定を設けた場合には、賃金と同じ扱いとなり、支払い義務が生じます。

また、一度定めた退職金の水準を下げたり、制度を廃止したりすることは、不利益変更となるので、
難しいことが多く、初めて退職金規定を設けるときは、内容を十分に検対する必要があります。

たとえば、退職金規定で、退職金の支払時期を定めておかないと、退職した労働者から請求された場合に
は、退職日から7日以内に退職金を支払わなければなりません。

また、退職金規定に、「懲戒解雇された者については、退職金を支給しない」旨を定めておかないと、
たとえ、懲戒解雇といえども退職金を支払わなければなりません。

以下に退職金規程のひな型を掲載しておきますので、自社用に加工してご利用ください。

                    退職金規程(ひな型)

第1条(総則)

この規定は、就業規則第○条にもとづき、社員の退職金について定めたものであり、退職後の福祉と生活の安定を図ることを目的とする。

第2条(退職金の支給範囲)

この規定は、次の各号の一に該当する者を除く社員に適用する。

 (1) 試用期間中の者

 (2) 臨時に期間を定めて雇い入れられた者

 (3) 日々に雇い入れられた者(パートタイマー・アルバイト)

 (4) 季節的な仕事のために雇われた者

 (5) 嘱託として再雇用された者

第3条(退職金の支給事由 其の一)

社員が次の事由により退職する場合は、別表(4)に定められた支給率により退職金を支給する。

 (1) 死亡

 (2) 業務上の事由による傷病

 (3) やむをえない業務上の都合による解雇

 (4) 役員への就任

 (5) 定年

第4条(退職金の支給事由 其の2)

社員が次の事由により退職する場合は、別表(5)に定めた支給率により退職金を支給する。

 (1) 自己都合

 (2) 私傷病

 (3) 結婚

第5条(受給権者・法定近親者順位)

1.社員が死亡した場合の退職金は死亡当時の本人の収入により生計を維持していた遺族に支給する。

2.前項の遺族の範囲及び支給順位については、労働基準法施工規則第42条から第45条の定めるところに
 よる。

第6条(退職金支給の計算)

退職金は別表(1)及び別表(2)より得られた在籍中の勤続ポイント及び資格等級ポイントの合計に、
別表(3)の単価を乗じた金額とする。

第7条(勤続年数の計算)

1.この規定における勤続年数の計算は、次の各号により計算する。

 (1) 給与規定第○条の年齢の更新日により年数を加算する。

 (2) 勤続年数は入社日より退職日までとする。

  ① 入社日は各年の(1)の更新日とする(中途者は翌年同日とする)。

  ② 退職日は退職した日とし、(1)の更新日を基準に一年未満の端数は切り捨てる(死亡の場合は
   死亡日)

2.就業規則第○条の試用期間は、勤続年数に加算する。

3.就業規則第○条の休暇期間は、第3号を除き原則として勤続年数に加算しない。

第8条(端数の処理)

退職金額の算出に際して、100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げる。

第9条(退職金支給の除外)

次の各号の一に該当する者については退職金を支給しない。

 (1) 懲戒解雇された者

 (2) 勤続満一年未満の者(別表(4))

第10条(退職金支給の制限)

次の各号の一に該当する者については、退職金の全部または一部を支給しない。

 (1) 在職中、故意又は重大な過失により会社に大きな損害を与えて退職した者

 (2) 諭旨解雇された者

 (3) 就業規則にもとづく所定の手続きを経ずして退職した者

 (4) その他就業規則に違反して円満退職しなかった者

第11条(支払時期)

退職金は原則として退職日から一ヶ月以内に全額を支払う。

但し、本人在職中の行為で懲戒解雇に相当するものが発見された場合は、退職金は支給しない。

第12条(退職金の支給方法)

退職金の支給方法は一時金として支給する。

第13条(債務との相殺)

退職金を受ける者が会社に対し債務を負うときは、退職金の支給を債務弁済後に行なうか又は退職金と相殺して支給する。

第14条(受給権利の譲渡質入の禁止)

退職金を受領する権利は第三者に譲渡、又は担保に供することは出来ない。

第15条(特別退職金の加算)

社員で在職中特に功労があった退職者に対しては、別に特別功労金を退職金に付加することがある。

尚、支給の有無及び支給額は役員会に一任する。

第16条(規定の改廃)

著しい変化がある場合には、本規定を変更又は廃止することが出来る。

附則

1. 退職金規定第6条の別表(3)に定める単価の改訂については、別表(6)の覚書により行なう。

2. この規定は、令和  年  年  月  日より実施する。


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労務リスクと労務管理

残業削減を行う前の確認事項


■コスト削減の重要性

 多くの会社が残業削減による人件費の軽減に取り組んでいます(人件費をコストと考えるのは問題
 ですが)。

 企業が採用している方法は、ノー残業デーの導入など比較的簡単に実施できるものから、変形労働時間制
 の導入など緻密な計画のもとで段階的に導入すべきものまでさまざまです。 

 しかし、多くの企業トップの実感は「残業削減は難しい」というところでしょう。

 なぜなら、各企業で残業が発生する要因が異なるばかりか、残業が集中する時期などそのパターンも
 さまざまだからです。 

 企業が残業削減に取り組む際に重要なことは、第一に自社の残業の状況を細かく把握し、それを考慮して
 具体的な残業削減策を打ち出すことです。

 残業削減に取り組むうえで、現在の状況を正確に把握することは非常に重要な取り組みなのです。 

 ここでは、具体的な残業削減策を打ち出す前の段階で実施すべき現状把握の方法について、その考え方を
 まとめてみました。

□残業削減に取り組む前の現状把握

 1.3つの労働時間の関係を把握 

  残業削減に取り組む前に、

   ・法定労働時間:労働基準法(以下「労基法」)で定められている労働時間の上限

   ・所定労働時間:法定労働時間の範囲内で各企業が定める労働時間

   ・実際の労働時間:残業を含め、実際に社員が働いた時間

  の3つの労働時間の関係を把握します。 

  法定労働時間は、労基法第32条により1日当たり8時間、1週間当たり40時間と定められています(小規
  模な接客娯楽業など一部の例外を除く)。

  所定労働時間は、各企業が定める労働時間で「午前○○時から午後○○時まで」と就業規則などに
  定められています。

  この2つの労働時間は比較的簡単に把握できます。 

  少しやっかいなのが実際の労働時間です。

  タイムカードが導入されている場合は問題ありません。

  しかし、労働時間を把握する仕組みがなく、自己申告に頼る場合には

   ・遅刻が慢性化しているが、それが労働時間から除かれていない

   ・実際は残業しているが、周囲に気兼ねして申告することができない

  などの問題が起り得ます。

  残業削減という明確な目的をもって労働時間を把握するには、正確な労働時間を把握するよう心掛ける
  ことが大切です。

  上記、3つの労働時間(法定労働時間、所定労働時間、実際の労働時間)の関係を整理すると以下のよう
  になります。

  (1)理想型 

   法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められており、残業も発生していない理想的な状況です。

    法定労働時間 = 所定労働時間 = 実際の労働時間

  (2)法律違反型 

   所定労働時間が法定労働時間の範囲を超えているため、労基法違反となります。

   早急な見直しが必要です。

    法定労働時間 < 所定労働時間

  (3)業務過剰型 

   法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められているが、その範囲内で業務が終了せずに残業が
   発生している状況です。

   残業削減に取り組む必要があります。

    法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間

  (4)人員過剰型 

   法定労働時間の範囲内で所定労働時間が定められており、実際の労働時間はそれよりも短い状況で
   す。

   業務量に比較して労働力が過剰の状態であり、リストラが必要になるケースもあります。

    法定労働時間 = 所定労働時間 > 実際の労働時間

 2.問題は業務過剰型だが… 

  3つの労働時間の関係を把握した結果から、残業削減の必要なのは「3.業務過剰型」であることがわかり
  ます(「2.法律違反型」は問題外なので早急に見直しましょう)。

  ただし、「法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間」の関係が、即座に所定労働時間に
  対する業務量が多いということにはなりません。

  「法定労働時間 < 所定労働時間」の状態となる要因として、業務進行の効率が悪いことなども考え
  られるからです。

  そのため、さらに一歩踏み込んで業務過剰型となっている要因は何であるのかまでを把握しなければ、
  実情にそった残業削減策が打ち出せなくなります。 

  業務過剰になる主な要因として以下が考えられます。

  (1)業務遂行の効率が悪い所定

   労働時間に対する業務量が必ずしも多いとはいえないのに、残業が発生していることがあります。

   ここで疑うべきことは「業務の非効率」であり、これを見直す必要があります。 

   問題は、何を「業務の効率性の基準」とするかです。

   一般的には、各業務でモデルとなる社員を選び、その社員の業務の進め方や遂行時間を基準としま
   す。

  (2)社員の意識に問題がある 

   特に業務量が多いわけでもなく、また業務に非効率な点も見当たらないケースでは、社員の意識の
   問題によって残業が発生していることが考えられます。

   具体的には、「所定労働時間内に業務が終わらなくても、休憩しながらゆっくり終わらせよう。残業
   すれば手当ももらえるし…」などといった社員の意識から生まれる残業です。

   残業することに苦痛を感じず、それが当たり前となってしまっていると、時間内で終わる業務も終わ
   らなくなってしまうのです。 

   社員の残業に対する意識を知るための方法には、部課長に各社員の勤務姿勢を報告してもらう、
   各社員と直接面談するなどがあります。

  (3)業務が過剰である 

   業務の遂行上で特に非効率な点は見当たらず、また社員も所定労働時間を意欲的に働いているのに
   「法定労働時間 = 所定労働時間 < 実際の労働時間」の状況になるのは、明らかに業務量が多
   いためと考えられます。

   このような場合、人員補充も視野に入れて対策を検討しなければなりません。

□具体的な現状把握の方法

 1.業務過剰型の要因を知る 

  業務過剰型になっている要因を知るために、さまざまな視点からチェックします。

  この際、チェックシートを作成し、それに基づいてチェックを進めるとよいでしょう。 

  チェックシートによって明らかにしたいのは、業務過剰型となっている原因であり、想定されるのは
  「業務遂行の効率が悪い」「社員の意識に問題がある」「業務が過剰である」などです。

  チェックシートには、これらが判明するような項目を盛り込まなければなりません。 

  なお、収集する情報をわかりやすく整理するために、チェックシートは

   ・各業務ごとの労働時間を把握するための「業務明細書」

   ・曜日、月、季節的な労働時間の変動を把握するための「労働時間変動グラフ」

   ・各部課、社員の状況を詳しく把握するための「インタビューシート」

  に分けて作成します。

   (1)業務明細書 

    部課ごとに必要な業務を細かく分類し、各業務に要する時間をモデル社員とそれ以外の社員で把握
    します。

    そのために、人事部、部課長が中心となって細かな業務内容とそれに要する労働時間を

     ・モデル社員の場合

     ・モデル社員以外の場合

     ・全社員の平均の

    それぞれの場合で把握します。

   より現実を反映したデータとするために、モデルとするのは平均的な社員とします。

   モデル社員が所定労働時間をオーバーしているようであれば、所定労働時間に対する業務量が多いと
   認識しなければなりません。 

   業務明細書の一例として、配送部署に属する社員の業務明細書を紹介します(実際は、各業務ごとに
   業務明細書を作成する必要があります)。

   業務明細書から確認したいのは、

    →モデル社員の労働時間に比べて、他の社員の平均労働時間はどの程度か

    →モデル社員の労働時間、他の社員の平均の労働時間に比べて労働時間が

     著しく異なる社員はいるかです。  

 2.労働時間変動グラフ 

  曜日や季節による労働時間の偏りをチェックします。

  そのためには、部課全体と各社員別の労働時間の変動が一目で分かるようにグラフ化します。  

  同じパターンで労働時間が変動していれば、変形労働時間制の導入が有効となります。 

  また、グラフ化による労働時間の把握は、各社員ごとに行うとより効果的に現状を反映します。

  忙しい時期ではないのに、突然残業をするようになった社員がいれば、その理由をインタビューシート
  で明らかにして対策を講じます。

 3.インタビューシート 

  インタビューシートでは、各部課、社員ごとの状況を細かく探ります。

  具体的には、人事部などが中心となって各部課長と社員に対するインタビューを実施します。

  インタビューする質問事項は、あらかじめインタビューシートとしてフォーマット化しておくと
  よいでしょう。 

  この際の留意点は、これまでの取り組みで把握できた内容をインタビューに生かしていくことです。

  例えば、

   ・部課長は、月による労働時間の変動の解決策を考えているか

   ・業務明細書で業務遂行が遅いとされた社員は、担当している業務の量を多いと 

    感じているか

  といった具合です。

  また、社員に対するインタビューは、インタビューシート以外に人事考課表なども参考にし、ざっくば
  らんに行います。

  これまで残業することの少なかった社員が突然残業をし始めたケースでは、「車のローン返済のために
  手当が欲しい」などの理由も考えられます。

  あるいは、「無理をしてでも業績を上げ、昇進したい」と考えているのかもしれません。

  ここでは、社員の本音を聞き出すことが重要となります。

   <部課長に対するインタビューシート>

    (1)所定労働時間に対する業務量について

      □現在の労働力で十分だ

      □月によっては対応できないことがある

      □労働力は十分だが、当部課の業務に不適性な社員がいる

      □現在の労働力では対応できない

    (2)残業の発生状況

      □通常は、残業が発生しない

      □残業の発生が慢性化している

      □毎年、残業が集中する月がある

      □ある出来事をきっかけに残業が発生するようになった

    (3)残業が発生するようになった出来事について

      □新規取引先の獲得による

      □ベテラン社員の退職による

      □新入社員の教育に手間取っている

      □その他

    (4)業務の効率性について

      □効率性は高い

      □従来の方法を踏襲しており、特に問題はない

      □見直すべき点が多い

    (5)業務の割り振りについて

      □平均的に業務を割り振っている

      □特定の社員に頼ることが多い

    (6)業務に対する社員の姿勢について

      □全社員とも意欲的に業務に取り組んでいる

      □特定の社員だけが意欲的に取り組んでいる

      □部課全体として、モチベーションの上下が激しい

    (7)残業削減策として好ましいものは

      □ノー残業デイの実施

      □変形労働時間制の導入

      □社員の意識転換を図るための教育訓練の実施

      □配送ルートなどの見直し

      □残業削減は無理だ

      □その他

   <各社員に対するインタビューシート>

    (1)所定労働時間に対する業務量について

      □少ない

      □適当だ

      □多い

    (2)残業の発生について

      □通常は残業していない

      □残業が慢性化している

      □毎年、残業が集中する月がある

    (3)担当している業務について

      □適性にあっている

      □普通にこなすことはできる

      □適性にあっていない

    (4)業務の効率性について

      □効率性は高い

      □特に問題はない

      □見直すべき点が多い

    (5)残業に対する意識について

      □残業をすることは仕方ない

      □できれば残業をしたくない

    (6)なぜ、残業をするのか

      □所定労働時間内に業務が終わらないため

      □業務への積極的な姿勢をアピールしたいため

      □月給の不足分の補填として

      □周囲の目が気になって帰宅しづらい

 2.残業削減策の選定 

  以上、残業削減に向けた現状把握の方法を紹介してきました。

  実際に現状把握を行う際は、各企業の実情に即したチェック項目を加えることなどが必要です。

  残業削減のための現状把握をしてみると、これまで明確にされることがなかった各社員の働きぶりや
  業務量の変動が数値によって明らかにされます。

  残業削減策は、これらの情報を反映した実効性の高いものでなければ大きな効果は望めません。

  3つの労働時間の関係、業務過剰型の要因、それぞれに対応する残業削減策をまとめた一例が

  <現状把握から残業削減策決定までのフロー>のチャート

  です。  



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労務リスクと労務管理

賞与を業績に反映させる

■賞与と業績 
 賞与支給が一般化した今日においては、社員も賞与が支冷されることを前提に生活設計を
 行なうため、たとえ業績がマイナスであっても賞与を支給しないというのは難しいといえ
 ます。

 しかし、賞与は本来は業績に応じて支給されるものであり、就業規則にその旨の定めをして
 いる企業も多いのではないでしょうか。 

 賞与が生活保障給的な役割を果たしている以上、業績によって支給額があまりにも上下
 するのは好ましくありませんが、業績反映部分を設けることにより社員の士気を高める
 ことができます。 

 以下、賞与に業績を反映させる方法として、
  ・生活保障部分と業績反映部分の割合をどうするか
  ・個人をどのように評価するか
 というポイントについて解説していきます。

□生活保障部分と業績反映部分の割合 
 賞与の支給額は、基本給の◯カ月分というかたちで一律的に決めている企業が多いでしょう。
 しかし、賞与に業績を反映させる場合は、一律支給する生活保障部分と、業績により変動
 する業績反映部分を分けて考える必要があります。

 <例>
  ・生活保障部分=夏に基本給の1.5カ月分、冬に2カ月分
  ・業績反映部分=個人業績分=夏・冬に基本給の0.5カ月分の80~120%
          会社業績分=期末に基本給の0.5カ月分の50~130%

  支給月数や反映部分の幅などは、同地域の企業や同業他社の実態・慣例および自社の
  支払余力(支給原資)などにより決定しますが、その際、次の点に注意します。

  ・生活保障部分は、年収ベースで考えて一定の生活レベルを維持できる額を確保する
  ・業績反映部分は、個人業績と会社業績の割合を合理性のあるものにする 

  いずれにしても、業績を賞与に反映させる際には、「誰に」「どの程度の金額を」
  「どのような方法で」分配するかを明確にしておくことが重要です。

 <例>
  ・管理者以上の賞与考課の項目の中に、会社の業績に対する貢献度に関する項目を設ける。
   その項目と賞与への反映度は、職能等級によって変化させる
  ・通常の賞与とは別に、前期の業績によって特別賞与を与える制度を設ける
  ・特別賞与は期の経営目標を達成した次の期に行なう
  ・特別賞与は全社員を対象とし、その金額は一律〇〇万円とする

□個人をどのように評価するか 
 会社の業者は、売上や利益などですぐにわかりますが、個人の業績をはかるのは難しい
 ものです。

 通常の人事考課は「業績」「能力」「執務態度」で勤務成績を評価しますが、賞与効果は、
 査定期間中の「業績」と「執務態度」により、評価を行なうのが一般的です。
 次に評価項目例を示します。

 <例>
 (1)業績
    a)営業職 ・売上目標達成率       ・粗利益目標達成率
           ・新規売上目標達成率     ・返品率

             ・集金実績

    b)製造職  ・生産目標達成率       ・納期遅れ発生率
          ・仕掛回転率

 (2)執務態度     
   ・規律性     ・協調性     ・コミュニケーション     
     ・責任感   ・積極性   ・マナー

 例では職種別に分類しましたが、職能等級や役職別に分類する必要が出てくる場合も
 あります。 
 なお、評価項目は社員各人の行動に大きな影響を及ぼします。

 たとえば、管理職に対し「もっと部下の育成に力を入れて欲しい」と考える場合は、
 それを評価項目に加え、大きな比重で評価することにより、彼らを動かすことができる
 のです。
 <例>賞与考課のための評価表

 評価項目を決定したらまず評価を行ないます。
 この際に「自社で重視する項目」については2倍とか3倍というように他の評価項目に比べて
 比重を重くして換算します。

 それから個々の評価項目の点数を累計し、各人の「評点」を算出します。
 なお、評価者により評価に偏りがある場合には調整が必要です。 
 こうして全員の最終的な評点が決定したらいよいよ支給額を決定します。

 前項の「生活保障部分と業績反映部分の割合」の例でいえば、基本給の0.5カ月分の「何%」
 を各人に支給するかという配分を、評点により決めていくということです。
 たとえば、評点によって各人をA~Eの5段階評価に分類し、評価A=120%、
 評価B=110%支給…と決めていく方法があります。

□賞与支給規定例
 第1条(目的) 
  この規定は、給与規定第◯条に定める賞与の支給について定めたものである。

 第2条(支給の原則) 
  賞与は、原則として年2回支給する。ただし状況により支給しないこともある。

 第3条(支給時期) 
  賞与の支給時期およびその算定にかかる支給対象期間は、原則として次の通りとする。
  ただし支給時期は状況により変更することがある。

 第4条(受給資格者) 
  賞与の受給資格者は、支給対象期間の末日に在籍しかつ支給当日在籍する者で、
  支給対象期間における勤務日数が支給対象期間の所定勤務日数の3分の1以上ある者と
  する。

 第5条(中途入社者の取扱い) 
  支給対象期間に在籍しかつ支給日当日に在籍する者で、支給対象期間における勤務
  日数が支給対象期間の所定勤務日数の3分の1に満たない者に対しては金一封を支給する。
  その金額はその都度定めるものとする。

 第6条(賞与の支給算定) 
  賞与は基本賞与と業績賞与に分け、各人に対する支給算式は次の通りとする。 
   ・基本賞与 (基本給+役付手当)の1カ月分 
   ・業績賞与 (基本給+役付手当)×考課係数×業績係数×出勤率

 第7条(考課係数) 
  考課係数は、支給対象期間における各人の人事考課の結果により次の通りとする。
  ただし、考課係数は変更することがある。

 第8条(業績係数) 
  業績係数は、会社の業績に応じその都度定める。

 第9条(出勤率) 
  出勤率の算定方法は、次の通りとする。ただし、年次有給休暇、慶弔休暇、特別
  休暇は出勤したものとみなす。

 第10条(賞与の減額) 
  算定期間中に就業規則第◯条に定める懲戒処分を受けた者または勤務態度が著しく
 不良な者に対しては、賞与を減額して支給または支給しないことがある。

 (付則)この規定は、平成〇〇年◯月◯日より施行する。


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労務リスクと労務管理

職務分掌規程

■職務分掌とは

 職務分掌とは、以下のように各部門や従業員の役割と責任を決めることです。

  1.企業で行われている職務の内容、遂行方法、難易度、重複
   (一つの職務を複数の従業員が担当しているなど)を把握する

  2.職務の担当部門を決定する

  3.職務を遂行するための職位ごとの権限を決定する

  4.決定した内容を文書化し、それに従って活動する

 部門とは経営企画部、総務部、経理・財務部などを指し、職位とは役員、部長、課長などを指します。

 職務分掌では、部門が担当する職務、部門の構成員の職位に応じた権限を決めていきます。

 

 各部門の予算に関する職務分掌のイメージ図では予算に関する職位ごとの権限を同じにしており、
 どの部門も課長が予算案を立案し、部長と担当役員の審査を経て社長が承認することにしています。

 予算は各部門で共通する職務ですが、人事部の「人材採用」のように部門特有の職務についても、イメー
 ジ図のように担当部門と職位ごとの権限を決めていきます。

 中小企業では、各部門の職務や職位の権限の境界が曖昧なことが少なくありませんが、職務分掌を進めて
 いくことで規律が生まれ、部門間のけん制機能も働くようになります。

  ・組織規程:企業という組織の機構を明らかにする規程

  ・職務分掌規程:各部門が担当する職務を明らかにした規程

  ・職務権限規程:職務を遂行する際の権限を明らかにした規程

職務分掌規程のひな型

  第4条(組織図):別表(1)「組織図」

  第13条(職務権限事項):別表(2)「職務権限表」

 

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労務リスクと労務管理

小規模会社の労務管理

小規模会社の労務管理

■社長と従業員のパワーバランスの変化 
 「人は大事」と言ってはみても、実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、
 どちらかといえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。

 もちろん、社長(もしくは上司)が持っている「感覚」はとても大事なもので、多くの
 問題が、社長のいままでの経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実
 です。

 このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「お互い様」「家族」
 「仲間」といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。 

 ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス・雇用契約」といった意識が強くなり、
 それについていけない経営者が問題を処理しきれない、ということが多くなっている
 ように感じます。

 例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、従業員
 が権利としての主張を始めたり、「あ・うん」の呼吸でできていた休日出勤や残業に
 対して、従業員が割増貸金を請求してきたり、といったことが起こっています。 

 「そのような要求を開いていたら経営が成り立たない」と経営者は主張します。
 ところが、コンプライアンス・雇用契約の観点からみると、従業員側に主張する「根拠」
 があるケースが多いのです。

 つまり、社長の「そのくらいは我慢してよ、その代り雇って給料を支払っているんだから」
 という意識と、従業員の「法律上の権利を主張して何が悪いの?」という意識とのぶつかり
 合いに変わってきているのです。

□人を雇うルールと責任 
 従業員を雇うと生じる責任とは何でしょうか? 
 順番に確認していきましょう。

 1.拾料(賃金)をきちんと払う責任 
  当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。 
  給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。
  ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。
  この決まりを「貸金支払い5原則」といい、次のものをいいます。

  ①通貨で払う(ドルはダメです)
  ②直接払う(本人以外に支払ってはダメです)
  ③全額払う(残業代を支払わないのはこれに反します)
  ④毎月1回以上払う(日払い、週払いは問題ありません)
  ⑤一定期日に払う(支払日は土払ず一定日にしなければなりません)

 2.安全で健康に働いてもらう責任 
  ヘルメットや安全靴をはかせることだけが責任ではありません。
  会社の施設、備品などを整備することや、温度、湿度、照明といった職場環境の整備、
  健康診断の実施なども責任です。

  近年では、体だけでなく心の健康を守ることも重要になっています。
  長時間労働や、特定個人に過重な負荷がかかるような仕事の与え方も、間題になる
  ケースがありますので注意が必要です。

 3.働き続けてもらう責任 
  一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。
  実は、法律上は「解雇権の濫用」といって、解雇をするには誰もが納得するような
  理由が必要です。

  しかし、現実には難しい問題です。
  最低でも、従業員が納得できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。

 4.書類を作成する暮任 
  労働基準法では、「労働者名簿」「貸金台軽」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、
  最後に記入してから3年間保管することが義務付けられています。

  このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があった
  場合に渡す「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就業規則」
  などが必要です。

 5.公的保険に加入する責任 
  公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の社長がたまに
  いますが、公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金 保険」は加入が
  義務となっています。

  最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される「ねんきん
  定期便」によって、加入意識を持ったりするようになってきています。
  さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけ
  にはいかない流れになっています。

□採用前に決めておくべきこと 
 働いてもらう時に守ってもらいたいルールと、会社が守るルールを「労働条件」といいます。
 労働条件を貸金、労働時間、休日休暇、勤務場所、契約期間、退職、公的保険の加入だけと
  考える人もいますが、実はそれだけではありません。

  例えば、「喫煙ルール、服装、整理整頓、タイムカードの打刻方法、休暇の申請方法、
  出張旅費の精算方法」なども労働条件になるのです。

  多くの会社では、このあたりのルールがあいまいなために、転職してきた従業員が
  前職でのルールで行動してしまい、小さなトラブルが多発するということも少なく
  ありません。

  これらを明確にするのが「就業規則」です。
  労助基準監督署に堤出しなければいけないから作成するのではなく、会社としてどの
  ようなルールで働いてもらいたいかを明確にするために作成することがとても大事
  なのです。

  社長の多くの不満は、「どうしてあいつは◯◯なんだ。うちでは△△なのに」という
  ことの積み重ねだと思います。
  そういった不満の解消のためにも、従業員に堂々と見せて話ができる就業規則で
  「労働条件」をお互いに確認することが大切になるのです。

  ところで、知りたくなるのが「うちは、最低の条件でしか人は雇えないが、どの条件が
  最低になるのか?」ということだと思います。
  そこで法律で決まっている最低限の条件をサンプルで作ると、次のようになります。

   ①勤務時間 1日8時間
   ②休憩時間 45分
   ③休日 週1日
   ④給料 時給1041円(東京都の最低賃金:2021年)、昇給なし、手当なし、通勤
    手当なし、賞与なし、退職金なし
   ⑤残業代 法定通り
   ⑥有給休暇 法定通り
   ⑦定年 60歳 ただし65歳までの再雇用あり(2025年4月から、定年制を採用
    しているすべての企業において65歳定年制が義務化)

   ⑧給料支払い 月末〆 翌月15日払い 

  今まで常識だと思っていた1時間休憩や通勤手当、賞与、慶弔休暇もありません。
  この条件で雇っても法律違反にはならないのです。
  もちろん、この条件で人が採用できるのか、という問題は残ります。

  要するに、この最低条件をスタートとして、会社としての条件を肉付けしていけば
  よいのです。
  ここで注意しなければいけないのは、条件として書いてしまったら、実施しなければ
  ならないということです。

  「書いてあるけどまあそこは……」というわけにはいかないので、よく検討して
  いただきたいと思います。
  また、次のような肉付けは問題があります。 
   例)給料50万円 有給休暇なし

  いくら給料がよくても有給休暇なしは法律の最低条件に満たないことになるので認め
  られません。

□有給休暇の考え方のツボ 
 ここで少し、有給休暇の話をしていきたいと思います。
 有給休暇を与えると会社が成り立たないという話をよく開きます。
 「うちには有給休暇はない。取るやつはクビだ!」という管理をしている会社がまだまだ
  見受けられます。

  しかし、有給休暇は本人が権利として持っているものですし、取得したことを理由に
  クビにすれば、会社に勝ち目はありません。
  そこで、有給休暇の特性をよく理解したうえで従業員との関係を築きあげていかなければ
  ならないのです。

   <有拾休暇の原則>
    ①取得の理由は何でもよい
    ②許可制にはできない
    ③買い取れない
    ④取得したことで不利に扱ってはいけない
    ⑤2年間有効
    ⑥本人が有給休暇を使うといわないと使えない
    では、会社でできることは何でしょうか?

   <有給休暇で会社ができること>
    ①日程変更をいえる(正常な運営ができない場合)
    ②取得ルールを作れる(10日前に申請など)
    ③2年間経って無効になった分を買い取れる
    ④労使協定で一定日は日程を指定して取得させられる(夏休みなどにつけて
     長期休暇など) 

  結局のところ、従業員が「有給を使う」と宣言するかどうかがポイントです。
  会社としては事情を説明して理解を得る、逆に本当に休みたいときには気持ちよく
  休ませてやるなどして、よい人間関係を作り上げていくことが重要なのです。

□賃金の上手な決め方 
 採用の際に一番先に頭に浮かぶのが「給料をいくら支払えばよいか」ということだと
 思います。
 これはとても難しいことですが、基本的な決め方は「相場」「支払能力」を参考に決めて
 いきます。

 ◎相場 
  ほとんどの場合には、貸金は相場で決まってきます。
  従業員もよくわからないので、前職の金額をそのまま希望しているなんてことも多く
  あります。

  相場は折込チラシ、ハローワークの求人情報などを参考にすればよいでしょう。
  金額が高いからよい人が来るというわけではありませんが、低すぎると、応募者の検討
  にも入らないことになるので、ある毎度の賃金水準は必要です。

 ◎支払能力
  支払能力を検討する場合に注意が必要なのが、給与額そのものだけで検討しないという
  ことです。
  実際の人件費には次のような費用が隠されています。  

   ①残業代
   ②採用費用
   ③社会保険料
   ④教育費用
   ⑤有給休暇の貸金
   ⑥賞与
   ⑦退職金 

  これらを考えていくと実際の会社負担額は、給与の1.5倍から2倍ほどになるはずです。
  ここをよく試算しておかないと、予算不足になり、残業代未払いとなるケースが多く
  見受けられるのです。 

  また、中小企業の場合中途採用が多くなります。
  そのため、賃金表の作成はあまりお勧めしません。

  もちろん、役職や職種ごとの賃金額目安は必要かと思いますが、多くの場合には、人員
  不足のために緊急で採用するしかない状況で金額を決めたり、縁故採用のため他の
  従業員とバランスの取れない金額での採用を余儀なくされるケースが多いからです。

  この場合には長期的に他の従業員とのバランスをとる必要がありますが、とりあえずは、
  賞与で調整していくことになります。
  場合によっては、給与は少し低めにして賞与を多くし、年間給与額で採用するという
  やり方が実態に合っている場合もあるので、柔軟に対応していくことをお勧めします。 

  もう一つ考えていただきたいのは、時給換算による労働価値の再確認です。
  近年は、非正規労働者の増加ということでパートなどの時給労働者が増えています。
  そこで、月給の従業員は時給に換算すると、いったいいくらになるのかを計算する
  のです。

  パートの3倍の給与を支払っているとしてその金額に見合った仕事を与えているか、
  また、与えることができるのかを検証するのです。
  冷静に分析すると、今回の採用が正社員の必要があるのかと疑問に感じることや、
  現在の従業員の給与水準が適正かどうかを見直すきっかけになることもあります。

□上手な採用の手順とコツ 
 従業員を募集しても、応募者が少ない、よい人が来ないなど、なかなかうまくいかない
  ことが多くあります。
  応募自体が少ない理由には次のようなものがあげられます。

   ①応募しようにも何の会社だかわからない
   ②給料が安い
   ③保険がない、または加入できるかわからない
   ④時間が厳しい、合わない
   ⑤応募条件が厳しい(年齢、経験、資格)
   ⑥時期が悪い(大手と重なった、お盆、GW、年末年始)
   ⑦募集の方法を間違えた(主婦を狙ったのにハローワークで募集など) 

  給料や時間などは調整のしようがないでしょうが、少なくとも①の何の会社だか
  わからないということは無いようにしなければなりません。
  募集要項や、自社HPなどを工夫して応募者にわかってもらう努力は必要でしょう。

  一番簡単なやり方は、他社のマネをしてしまうことです。
  短い文章の中に上手に入れている募集広告やHPとうまくリンクしたものなど、自分たち
  でできそうなものを作ることが大事です。

  近年は募集用のHPを作って成果を上げている会社も出てきています。 
  応募者に対してどのような選考をするかということが次の問題になります。

  間違った人を採用しないようにするにはまず、社長がしっかりとした準備をすることが
  大事です。
  それは次の通りです。

   ①何の仕事をさせるのかを決める
   ②そのために最低必要な能力レベルを決める(最低がポイント)
   ③絶対に採用しない要件を決める
   ④前職に惑わされないように、具体的な質問を用意する
   ⑤入社後にやってもらう仕事の具体的手順をやらせてみる 

  中小企業にとって必要なのは、社長の指示通りに一所懸命働く、まじめな従業員では
  ないかと思います。
  なぜならば、社長以上に仕事をわかっている人はいないからです。

  技術や能力は入社後に教育でカバーするのが本来の形ではないでしょうか。
  即戦力で入った中途採用者は確かに短期間で稼ぎ始めるのですが、あくまでも他社の
  やり方であり、長期的に自社のやり方にしてくれるケースはまれです。

  それを理解して採用するのならば問題ありませんが、会社の基幹となるケースは少ない
  ようです。

□トラブルを防止するために
 中小企業の従業員とのトラブルの原因は大きく分けて二つあります。

 1.会社のコンプライアンス意識の欠如 
  これは社長がしっかりと勉強する必要があります。
  問題があることを知って、将来的に改善する方向で動かないと、従業員とトラブルに
  なるたびに法律的に攻められるリスクを持ち続けることになります。

 2.契約内容があいまい 
  社内ルールが整備されていないことにより、契約内容があいまいなまま採用してしまい、
  お互いの認識の違いがトラブルに発展するケースです。

  例えば、給与30万円と決めた場合、30万円は支給総額なのか、手取りなのか、残業代
  を含むのか、基本給だけなのかというところなどは明確にする必要があるでしょう。
  特に残業代を含んでの契約の場合、給与のうちいくらが残業代なのか、何時間分なのかを
  明確にする必要があります。

  もう一つの例としては成果です。
  どういう成果を会社が求めるのか、その成果をどのように検証するのか、その結果
  どういう賞与や昇給になるのかはとても大事です。

  社長は「あいつは働かない」といい、従業員は「自分はすごい成果を出している」と
  いう、そんな話はよくあります。 
  ほとんどの場合、「何を」が抜けているケースが多いようです。

  社長は部下指導でチームとしての成果を求めていたのに、本人は自分の成果だけを
  考えていたなどというケースです。 
  トラブルは会社も従業員も望むものではありません。

  トラブルを未然に防ぐには、会社の努力が重要です。
  厳しい時期だからこそ、コンプライアンスと雇用契約をしっかりする意識が重要なのです。


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労務リスクと労務管理

中高年社員の雇用管理の改善

中高年社員の雇用管理の改善

■中高年社員の流動化
 少子高齢化が進む一方で、大企業のリストラ(退職勧奨) や選択定年制、早期退職優遇制度
 の普及などによって、専門的な知識や豊富な経験を持った中高年齢者の流動化が進んで
 います。

 こうした動きは、一方で、中小企業の経営幹部や中間管理職をはじめとする確かな人材の
 補給源が生まれていることを示しています。
 いわば、中小企業にもすぐれた人材確保のためのチャンスが到来しているわけです。

 しかし、こうした動きがあるからといって、どの中小企業でも容易に優秀な中高年齢者を
 確保できるわけではなく、中高年齢者の確保のためのしくみを構築し、適正な雇用管理を
 実現することが不可欠です。 

 そこで、ここでは、こうしたチャンスをものにするために、中高年齢者の確保と有効活用に
 必要な雇用管理の改善モデルについて見ることにしましょう。

□中高年齢者の雇用管理の適正化と受け入れ体制の整備 
 中高年齢者を新しい人材として新しく雇用し、有効活用するためには、キャリア、就業目的、
 体力等の個人差が大きい中高年齢者一人ひとりの特性を正確に把握し、ミスマッチを最小限
 に抑えることが大切です。

 また大企業など、他社での勤務経験者を中途採用したときは、一刻も早く新しい職場(職務)
 に馴染めるように、中高年齢者自身の意識改革を図るとともに、職場の受け入れ体制を充実
 させることが大切です。

 では、常用労働者と臨時・パート労働者に分けて、中高年齢者を採用する際の留意点について
 見てみましょう。

 1.常用従業員の雇用管理の改善
  (1)経営幹部や中間管理職 
   中高年齢者を経営幹部や中間管理職として雇用し、戦力化するためには、会社の
   沿革や当面の経営方針、業績などの現状と問題点などをよく説明し、全体像をよく
   つかんでもらうようにするとともに、過去の経験にこだわらないように注意をして
   おくことが大切です。

  (2)専門スタッフや一般事務職、営業職など 
   専門スタッフや一般事務職、営業などのいわゆるホワイトカラーを雇用する場合には、
   能力や過去の経験、特性などを見極めて適切な対応をするようにします。
   そして、ホワイトカラーから転職する中高年齢者に対しては、特に過去の栄光や
   プライドにこだわらないよう意識改革を図り、同僚との和が保てるようにすることが
   大切です。

  (3)技能労働者 
   現業の技能労働者を雇用する場合には、健康や体力の状態が職務に耐えられるか
   よく確かめるとともに、賃金や労働条件について相談して決めることが大切です。
   もちろん、最低限の技能教育も欠かせません。

 2.臨時・パート等で雇用する補助作業者等の雇用管理の改善 
  中高年齢者を現業の補助作業者として雇用する際には、健康や体力についてよく確認
  するとともに、家庭環境などの情報も掌握しておくことが大切です。

   またパートタイマーや嘱託などの変則的な雇用形態をとる場合には、雇用形態に応じて
  就業規則を整備しておくこと、採用時には「労働条件通知書」を交付して、契約期間や
  労働条件を個別に明確にしておくことが大切です。 

  また、はじめて転職する中高年齢者を迎える場合には、既存の従業員との間に円滑な
  人間関係をつくり、一日も早く新しい職場に適応できるようにするために、職場の
  受け入れ体制を確立することも大切です。 

  具体的には、職場歓迎会や職場生活のサポート体制をつくるほか、職場懇談会や
  ミーティングで経歴等を紹介するなど、新人を温かく迎え入れる職場風土づくりを
  心掛けたいものです。

 3.雇用契約の期間に工夫 
  労働基準法改正によって、期間を定めて雇用する場合には、
   (1)原則的な契約期間は従前どおり最長1年
   (2)高度専門職等の者については最初の契約期間のみ3年、更新後は1年
   (3)60歳以上の者については3年(更新後も同様) というように、契約期間の
   最長年数が改正されました。

   そこで、幹部・管理職として中高年齢者を中途採用する場合は、期間の定めの
   ない契約とし、高度専門職の者や技能者、一般事務職については、適切な契約
   期間を定めて雇用契約を締結するなど、雇用期間の設定にも工夫をすることが
   大切です。

□中高年齢者の意識改革と活性化モデル 
 中高年齢者は、一般に多様な職業経験や人生経験を持つことから、キャリア、能力、
 考え方などに個人差が大きく、ときには、「過去の実績にすがる」とか「プライドが高い」、
 「頑固である」などとマイナス特性が指摘されることもあります。
 そこで、中高年齢者を新規雇用したときは、意識改革のための教育を繰り返し行うことが
 大切です。
 その際、活性化研修を行うとよいでしょう。

□適職開拓(職務開発)と職務再設計モデル 
 企業によっては、経営幹部や中間管理職以外にも、中高年齢者向けの職務や職域があって、
 すでに多数の中高年齢者が働いている場合があります。

 こうしたところでは、中高年齢者をより戦力化するための取り組みに心掛ければよいわけ
 ですが、多くの企業では、若年・中堅層向けの雇用管理システムをとっているため、
 中高年齢者の働く職域が非常に狭くなっていることが少なくありません。

 そこで、こうした企業では、中高年齢者の雇用を促進するため、適職開拓(職務開発)や
 職務再設計を行って、新しく中高年齢者向けの職務・職域を開発することが大切となって
 います。 

 中高年齢者活用のために職務開発や職務再設計を行う際には、図②に見るように、「個人」
 の諸条件と「職務」の要件の両方を分析・評価し、上手に適合させることが大切です。
 職務開発や職務再設計を具体的に行う場合の手順は次のとおりです。

  ①中高年齢者一人ひとりのキャリアや諸条件を明らかにする。 
  ②仕事の内容や進め方を分析して中高年齢者に適した職務を取り出し、中高年齢者
   向けに改善する。 
  ③中高年齢者と若年・中堅層との間の仕事の分量を見直して再振り分けをし、世代間
   のワークシェアリングを進める。
  ④中高年齢者の再教育を行い、職務適応能力を高める。


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労務リスクと労務管理

職場の規律向上策

職場の規律向上策

■規律の守れない会社
 会社のレベルを評価する1つの方法として、 その会社の規律の状態を見て判断することが
 出来ます。

  ・ 朝礼(服装、態度、整列の仕方)
  ・ 会議のはじまりの時間
  ・ 職場の5S

 と、ほんの数項目みただけで大体の判断がつきます。
 棚卸1つ例にとってみても、整理整頓が悪いから時間がかかって不正確な結果しか出て
 来ません。

 規律の守れない会社は基本的なことを軽視する風土があります。
 整理整頓というと“そんなもの出来てなくても成績を上げればよいじゃないか”という
 雰囲気が上から下まで浸透しています。

 前述した棚卸が不正確ならば月次決算は誤差を生じて来ます。
 朝早くから夜遅くまで一生懸命働いて業績は上らず、業績が上らないのは環境のせいと
 思っているから社員はマンネリ症状を呈しています。
 今一度原点に戻って見直してみる必要があります。

□ケーススタディー(A社の事例)
 1.決めた事を守れない、やり切れない
  規律徹底の第一歩であり、かつ最もむずかしいことが、「決めた事を、必ずやり切る」
  ことです。
  A社は、社員60名程の中堅商社です。

  ここ数年間、会社全体のレベルアップを 掛け声に、いろいろな事に取り組んできました。
  しかし一向に、変化の徴しが見えない。
  むしろ、わが社は何をやってもダメだ、というあきらめムードが見え始めていました。

  幹部・社員からの声は、「何を決めても、いつのまにかうやむやになり、元に戻って
  しまう」といったものでした。
  そんなやさき、中堅社員のM係長がある外部のセミナーに参加、その報告の中で、

  (1)「決めた事は確実に守る」社風づくりが大変大事な事であるにもかかわらず、
     わが社は立ち消えのケースが多い。
  (2)「決め事を守る」体質づくりのためには、 足元の細かい事からの徹底に取り組む
     ことの方がよい。
  (3)自分としては、「電話を受ける際に、自分の名前を名のる」ことの、再度
     徹底に取り組みたい。
     その理由は、電話応対に対するトラブル・クレームが多く、一向に減って
     いない。
     自分の名前を名のることにより、それぞれの責任意識が高まり、かつお客様
     からも安心していただけると思われる。
     と提案してきました。

  これを読んだ社長は、早速幹部会議で発表、再度の取り組みを指示するとともに、
  M係長を実行委員長に任命しました。
  2年程前に取り組んだものの、ほとんど実行されずに終ってしまったものを、再度
  取り上げようとしたものです。

  社長としても、今回のM係長の提案をキッカケに、新しい動きが起こることを期待し、
  今度こその思いもあり、熱の入れ方も今までとちょっと違っていました。
  幹部会議の雰囲気としても、現状打破のために皆でM係長を盛り立てよう、という
  方向が確認できました。

  翌日から各部門より委員を選び、スローガンをつくったり、ポスターを貼ったり、
  朝終礼等で呼びかけるなど、実行委員は精力的に活動を始めました。

□ケーススタディー(N社の事例)
 1.先ず、基本動作の徹底から取り組んだY営業所
  N社は、営業所を5ヵ所程に持つ、地場の商社。
  T所長は本社からY営業所へ所長として就任したばかり。
  Y営業所は規模は全社最大の営業所ですが、業績は平均的で、可もなく不可もなくと
  いった状態でした。

  T所長が所員一人ひとりの動きを観察してみると、ムダが実に多い。
  皆忙しそうに動いてはいるが、成果を生む動きになっていない。
  さらに注意して見ていると、モノを探していたり、決め事が守られぬために、また
  余計な新しい仕事が生まれていたりで、実に効率も悪い。

  T所長は、まず体質を変えること、そのためには、いきなり業績向上策に取り組む前に、
  所員の日常の「基本動作」の徹底から取り組む必要性を強く感じました。
  そうなれば、今度はお客様からの反応が変わります。

  基本動作を徹底するには、ポイントが2つあります。
  ひとつは所長自身のリーダーシップ。
  指示や命令として出したことは、絶対に実行させること。

  これはウラ返せば、できそうにない事は言わぬことでもあります。
  したがって、もうひとつのポイントは、まず皆がその気になれば実行できる簡単な
  事から取り組み、それをやり切ることです。

  Y営業所の現状を見た場合、取り組むべきテーマは「整理整頓」というのが、T所長の
  結論でした。
  ただし一口に整理整頓といっても幅が広い。

  具体的なテーマに絞り込んで取り組むことにしないと、体質改善のキッカケになりません。
  そこで、T所長がまず最初に取り組んだことは、「帰る時は、机の上に一切物を置かぬ
  こと」の1点に絞りました。

  他に、物の見方・考え方等は折りに触れて話すことはあっても、具体的な指示としては、
  これだけでした。
  しかもT所長は、このことが全員実行できるまでの3ヵ月間は、毎日のように言い
  つづけ、とうとう完全に実行されるまでになりました。

  この過程を通じ、所員に「今度の所長は、言った事は必ず実行させる人だ」との
  感を強く印象づけることにも成功しました。

服務規律
 服務規律とは、企業秩序を維持するために従業員が守るべき義務やルールのことです。
 服務規律をおろそかにしてしまうと、社内秩序が乱れて、企業は成り立たなくなって
 しまいます。
 服務規律は大きく次のように分類することができます。

  (1)勤務に関する規律
  (2)会社施設及び会社財産に関する規律
  (3)秘密及び信用の保持に関する規律

 服務規律は、できるだけ会社の実態に沿った内容にする必要があります。
 一般的な雛形の服務規律では実際に運用する際に、上手く運用できないことがあります。
 業種やその時代環境によって、必要な服務規律のかたちは異なるので、定期的に服務規律
 をメンテナンスする必要があります。


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労務リスクと労務管理

卸売・小売業の安全衛生管理

卸売・小売業の安全衛生管理

■商業と安全管理 
 スーパーマーケットやホームセンターなどが属する商業卸売業・小売業各種商品卸・小売業
 (以下商業)における労災事故(休業4日以上の死傷災害)は年間に1万5000件以上も
 起きています。

 その4分の1を占めているのが通路などでの「転倒」によるもので、以下、階段や高所からの
 「墜落・転落」、「動作の反動・無理な動作」によって起こる腰痛などの故障、スピードの
 出し過ぎや、わき見などによる「交通事故」と続き、この4種の事故だけで全体の約7割を
 占めています。 

 なかでも死亡災害など重大な結果につながりやすいのが「墜落・転落」ハシゴ、踏み台、
 階段、倉庫2階の作業床の端などからの墜落や転落事故が多く、また、出張先での倉庫作業や
 脚立やいすを使っての照明器具の清掃、植木の手入れなど、不慣れな作業を行ったことに
 よる事故も報告されています。 

 商業の場合、危険を伴う作業はそれほど多くありませんが、たくさんの種類の作業があり、
 また、労働者の入れ替わりが多いために、わずかな不注意や不慣れが大きな災害へとつながり
 ます。
  業種別の死傷者数(死亡および休業4日以上)
   出典:安全衛生情報センター

□安全衛生管理体制の整備 
 安全管理は、労働者一人ひとりが自主的に行動しなければ効果がありません。
 それと同時に、監督者(経営者)はつねに安全に気を配る必要があります。
 そこで重要となるのが「安全衛生管理体制」です。

 これは労働安全衛生法に定められているもので、業種や規模によって管理者などの選任が
 義務づけられており、それを守らずに重大な労災事故が起きてしまった場合には、安全
 配慮義務違反として損害賠償責任を問われることになります。

 事業場における安全衛生管理体制を確立し、それぞれの担当者が労災防止のための職務を
 きちんと運営していくことが重要です。 
 商業の場合、規模(労働者数)に応じて次表にある担当者を選任しなくてはなりません。

 それぞれに実務経験等の資格要件が設けられており、担当者を選任したら労働基準監督署
 に届け出ることになっています(安全衛生推進者、衛生推進者については労働者への
 周知のみ)。
  ※卸売業等とは、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種
   商品小売業、家具・建具・什器等小売業、燃料小売業です。

 なお、労災事故防止についてさまざまな対策を行うために、労働者の意見を反映させる
 必要があることから、労働者が50人以上いる事業場には衛生委員会の設置が義務づけられて
 います(100人以上の卸売業等は安全衛生委員会を設置)。 
 (安全)衛生委員会とは、労働者の危険防止、健康障害防止のための基本対策や労災の
 原因調査、再発防止対策などを調査審議して、事業者に対して意見を述べる機関です。

□現場における安全管理 
 労災事故を発生させないためには、それぞれの作業場において、災害の要因を見つけだし、
 優先順位をつけて対策を講じることが重要です。
 具体的には次のような流れで取り組んでいきます。

 1.リスクアセスメントの実施
  リスクアセスメントとは、作業における危険性や有害性を特定し、それによる災害の
  程度とその可能性からリスクの高さを見積もる作業のことです。
  設備や職場環境、作業方法などを一つひとつ丁寧にみていき、作業場内で起こり得る
  災害リスクを発見したら、優先順位の高いものから対策を施し、リスクの除去・低減
  措置を行って労災事故防止につなげます。 

  作業場では多種多様な作業が行われ、また、新たな作業方法の採用や変更、機械化
  などが進んでおり、それらの実態や特性に合った安全衛生対策を行っていく必要性が
  高まっています。

 2.安全な作業方法の確立 
  (1)転倒災害の防止対策  
   □階段、通路などを滑りにくい材質のものにする。
   □通路や床面のくぼみや段差をできる限りなくす。改善が難しい場合には段差の
    表示をつける。
   □整理整頓を徹底し、通路、階段には物を置かないようにする。
   □作業をするのに必要な明るさを確保する。
   □通路の水濡れはすぐに拭き取る。
   □作業靴は滑りにくく安定したものを履くよう徹底する。
   □荷物の運搬についてのルールを定める。(台車への積載の仕方、立ち位置、
    置き場所など)
   □店舗内に立ち入るすべての作業者にルールを周知する。
    (自社の労働者以外に、テナントの業者、運送業者などにも連絡をして調整を図る)
   □油脂で滑りやすい食品売り場などには、吸湿性のあるマットを敷くなどの措置
    を講じる。
   □商品の陳列作業をする際、空の段ボールを床に置かないようにする。
    (空の段ボールは足元には置かず、整理しながら作業をし、決められた場所に
    集積する)

  (2)墜落・転落災害の防止対策
   □高所の床の端には墜落防止のための手すりなどを設置する。
   □階段には手すりや滑り止めを設置する。
   □踏み台や脚立は平らな場所で安定して使用するよう徹底する。
   □いすを踏み台代わりにしないよう徹底する。
   □トラックの荷台などでは無理な姿勢で作業したり、飛び降りたりしないよう
    指導を徹底する。

  (3)動作の反動・無理な動作による腰痛などの予防対策
   □中腰、前屈など無理な姿勢で長時間の作業をしないよう指導を徹底する。
   □作業開始前には腰痛予防体操をするよう指導する。
   □重量物は1人で運ばせず、できるだけ複数人で運ぶようにする。
   □荷物はできるだけ体に近づけてゆっくり持ち上げるよう指導する。
   □腰部に著しい負担がかかる作業に従事する労働者には、腰痛予防についての
    安全衛生教育を行う。 

  (4)交通事故の防止対策
   □交通労災防止担当管理者を選任し、安全運転の励行と過労運転をさせない
    ようにする。
   □道路状況、所要時間、制限速度などを考慮し、無理のない運転を心掛けるよう
    徹底する。
   □自動車運転者には定期健康診断を確実に実施し、適切な健康管理を行う。
   □災害事例、ヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの、ヒヤリとし、
    ハッとした事例)などを集めて注意喚起をする。
   □交通ルールを守り、自分とその周辺の人の安全を最優先する気風を育てる。
   □運転中の携帯電話使用の禁止を徹底する。

  (5)切れ・こすれ、はさまれ・巻き込まれ事故の防止対策
   □スライサーなどの食品加工機械に食材を直接手で押し込んだり、引き出したり
    しないよう教育・訓練および監視を徹底する。
   □スライサーなどの食品加工機械の清掃は、機械を止めてから行うことを徹底
    する。
   □食品加工機械については安全防護措置を講じ、正しい作業手順の遵守を徹底する。
   □包丁は、よく研ぎ、十分に教育・訓練を受けてから取り扱わせるようにする。
   □刃物類は、使用後すぐに所定の場所に保管するようにする。

 3.安全衛生教育・安全活動の実施 
  労災事故の多くは、採用後、間もなくだったり作業経験の浅い労働者に多くみられます。
  労働者を新たに雇い入れた場合や、作業内容を変更した場合には、適切に安全衛生
  教育を実施し、作業手順の遵守を徹底しましょう。

  作業に不慣れな新人はもちろんのこと、すべての労働者に対して、安全に作業する
  ことの大切さを教育することはとても重要なことです。 
  また、職場の安全衛生に対する意識や責任感を高めるためにも、社内の安全衛生管理
  体制を機能させることも大事です。

  たとえば、安全管理者が定期的に職場を巡回し、安全作業を呼びかけながら状況を確認
  することや、安全朝礼や安全ミーティングを行い、一人ひとりの意識を高めることなどが
  労災防止につながります。

 4.健康診断の実施 
  常時使用する労働者に対しては、雇い入れ時および1年以内ごとに1回の定期健康診断を
  実施します。
  なお、深夜業などに従事する労働者に対しては6カ月以内ごとに1回行います。 

  最近の傾向として、百貨店、総合スーパにおける営業時間の拡大、店舗の休業日の減少
  による長時間労働などが原因で健康面に支障を来す労働者が増えています。
  長時間労働者(時間外労働が月100時間)に対しては、医師による面接指導も行う
  ようにしましょう。 

  安全管理においてもっとも重要なのは、基本的なことをいかに忠実に、手を抜くことなく
  遂行するかです。
  前記の対策を組み合わせながら、労働者の安全に対する意識を高めて、労災事故の危険性
  を低減していくことが大切です。


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労務リスクと労務管理

労災保険の基本

労災保険の基本
 

労災保険の目的

 労災保険は、業務上の災害(以下「業務災害」 という) と通勤途上の災害(以下
 「通勤災害」 という) によ
る傷病等を対象として必要な給付を行うこととしています。

 したがって、その傷病等が業務上の事由で起きたものか、あるいは通勤途上に起きた
 ものかどうかが
まず問題となります。

□意外と知らない「労災保険」

 「労災」という言葉を知らないビジネスパーソンはおそらくいないでしょう。

 しかし、労災保険制度の内容は、意外と知られていません。

  「会社が労災を認めてくれない」という話を聞きますが、これもその現れとい

 えるでしょう。

 労災かどうかを認定するのは、国であり労働基準監督署であって、会社が認めるか

 どうかは関係ないのです。

 労災保険は労働者を保護するために、国が直接、被災労働者やその遺族に対して、
 災害補償を行う制度なの
です。

 また、労災保険は労働者のためだけの制度のように思われていますが、実は事業主のための

 制度でもあるのです。

 事業主には、労働者の業務上のけがや病気に対して、一定の補償義務が課されています。

 けがや病気に対する治療費、休業中の所得補償など、その補償内容は労働基準法に定め

 られており、これを守らなければ罰則の適用対象となります。

 労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。

 もちろん、労災保険はすべての損害をカバーする「万能な保険」ではありませんが、

 小さな負担で大きな補償を得られる制度と言えるでしょう。

 労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。

 そこで、それぞれの認定基準について、見ていきましょう。

□業務災害の認定が下りる場合

 業務災害とは、業務上の負傷、疾痛、障害、死亡をいいます。

 業務災害の認定は、「業務起因性」と「業務遂行性」という2つの要素から判断されます。

 【業務災害の認定

  ●業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること

  ●業務起因性:傷病等とその業務との問に因果関係があること

   業務上の負傷については、次の3つのパターンに分けることができます。

 1.事業主の支配・管理下で仕事をしている場合

  所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない限り、
  業務災害と認められます。

  なお、次の場合には、業務災害とは認められません。

  ●労働者が故意に負傷した場合

  ●労働者が個人的なうらみなどにより暴行を受けて負傷をした場合

 2.事業主の支配・管理下にあるが仕事をしていない場合

  昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるものの、働いていない場合はどう
  なるのでしょうか。

  仕事が原因で負傷をしたわけではありませんので、基本的には、業務災害とは認められ
  ません。

  しかし、施設や設備の欠陥などにより負傷をした場合には、業務災害と認められます。

 3.事業主の支配下にあるが、管理下を離れて仕事をしている場合

  出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情が
  ない限り、業務災害と認められます。

  ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や恣意的行為があった
  場合には、認められません。

□「通勤」の条件

 通勤災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。

 そもそも通勤中は、労働時間ではありませんので、何をするのも労働者の自由です。

 帰りに映画を見たり、食事をしたり、その行動パターンはさまざまでしょう。

 しかし、こうした私的行為によって発生した災害すべてに、労災保険を適用させるわけ

 にはいきません。

 そこで労災保険では、保護対象とする「通勤」の範囲を定めています。

 1.通勤

  「通勤」とは、就業に閲し、次の移動を、合理的な経路および方法により行うことを
  いいます。

  業務の性質を有するものを除くものとされています。

   ①住居と就業の場所との間の往復

   ②就業の場所から他の就業の場所への移動

   ③単身赴任先住居と帰省先住居の移動など

  なお、業務の性質を有する場合には、一見、通勤のような場合でも、業務災害と
  なります。

  例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合などは、
  業務災害扱いとなります。

 2.逸脱・中断

  労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の間と
  その後の移動は「通勤」とはなりません。

  ただし、労働者が通常、通勤途中で行うような「ささいな行為」は、逸脱・中断とは
  なりません。

   【ささいな行為の具体例】

    ・経路上の近くにある公衆便所の使用

    ・経路の近くにある公園での短休息

    ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購入

    ・駅構内でのジュースの立ち飲み

    また、「日常生活上必要な一定の行為」については、逸脱・中断の間は通勤とは
    なりませんが、その後の移動は通勤として取り扱われます。

   【日常生活上必要な一定の行為】

    ・日用品の購入その他これに準ずる行為

    ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業
     訓練(職業能力開発総合大学校において行われるものを含む)

    ・学校数育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育
     訓練であって、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

    ・選挙権の行使その他それに準ずる行為

    ・病床又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

    ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、
     祖父母及び兄弟姉妹の介護(推続的に又は反復して行われるものに限る)

 3.合理的な経路および方法

  通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的に
  労働者が用いると認められる経路と方法をいいます。

  通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」
  となります。

  また、道路工事などにより、やむを得ず迂回する場合にも、「合理的な経路」と認め

  られます。

  鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車、徒歩など、一般的に

  用いられる交通方法であれば、いつも利用しているかどうかにかかわらず 「合理的な
  方法」となります。

□労災保険の保険給付について

 それでは、もし、労働者が仕事中あるいは通勤途上でけがをした場合、どんな補償を
 受けられるのでしょうか。

 労災保険には、次のとおり、さまざまな保険給付があります。

 なお、通勤災害については、事業主に労働基準法上の災害補償責任はありません。

 そのため、各保険給付の名称には、「補償」という言葉は使われません。

 葬祭給付を除いて、業務災害に関する保険給付の名称から「補償」の文字を取り除くと、
 通勤災害での保険給付名となります。

 1.療養補償給付/療養給付

  労働者が労災に遭って療養が必要なときには、治療費などが全額補償されます。

 2.休業補償給付/体業給付

  労働者が療養のために会社を欠勤して給与がもらえないときに、生活費として支給
  されます。


 3.傷病補償年金/傷病年金

  労働者が療養を開始してから1年6カ月経過しても病気やけがが治らず、その症状が
  重い場合には、年金が支給されます。


 4.障害補償給付/障害給付

  病気やけがが治ゆ(症状固定)したあと、一定の障害が残ったときには、年金または
  一時金が支給されます。

 5.遺族補償給付/遺族給付

  労働者が亡くなったときには、残された遺族に対して、年金または一時金が支給され
  ます。


 6.葬祭料/通勤災害は葬祭給付

  労働者が亡くなったときに、葬儀を行った人に対して、一時金が支給されます。

 7.介護補償給付/介護給付

  一定の障害により「傷害補償年金/傷害年金」または「障害補償年金/障害年金」を
  受けている人が、現に介護を受けている場合に、月単位で給付が行われま

 す。

 8.2次健康診断等給付

  定期健康診断などの結果、肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目すべてに異常の所見が
  認められたときに、必要な健康診断と保健指導を受けることができます。

  そのほか、社会復帰促進等事業として、一定額の特別支給金、特別年金、特別一時金
  が支給されます。

□「療養補償給付」と「休業補償給付」

 前述の保険給付の中でも、特に請求の多い「療養補償給付/療養給付」と「休業補償
 給付/休業給付」については、もう少し詳しく説明をしていきましょう。

 1.療養補償給付/療養給付

  労働者が労災に遭ったときには、病気やけがが「治ゆ」するまで、治療費などが
  全額補償されます。

  労災保険における「治ゆ」とは、これ以上治療を続けても、医療効果が期待できず、
  症状が固定した状態をいいます。 

  したがって、必ずしも完治を意味しているわけではありません。

  療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の給付」の2つの種類が
  あります。

  「療養の給付」は、労災病院や労災指定医療機関で、無料で診察や手術などが受け

  られる現物給付です。

  一方、「療養の費用の給付」は、緊急に診察を受ける必要があり、近くに労災指定

  医療機関がないなど、労災指定医療機関以外の病院などで治療した場合に、その治療費
  にかかった費用を現金で支給するというものです。

  「療養の費用の給付」を受けることができるのは、「療養の給付」を受けることが

  できない場合に限られています。

  療養の給付の具体的な給付内容は次のとおりです。

   ①診察

   ②薬剤または治療材料の支給

   ③処置、手術その他の治療

   ④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護

   ⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

   ⑥移送

   「療養の給付」を受けるための手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる

   療養の給付請求書(様式第5号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の
   給付請求書(様式第16号の3)」に必要事項を記載し、事業主の証明を受け、
   病院経由で所轄労働基準監督署へ提出することになります。


   実務的には、労災指定病院などに提出すると考えてよいでしょう。

   「療養の費用の給付」の手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養の
   費用請求書(様式第7号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の費用
   請求書(様式第16号の5)」に必要事項を記入して、事業主の証明を受け、所轄
   労働基準監督署へ直接提出します。

 2.休業補償給付/休業給付

  「休業補償給付/休業給付」は、休業の4日目から支給されることになります。

  業務災害の場合、休業した最初の3日間については、労働基準法上の休業補償として、
  事業主が平均賃金の60%以上を支給しなければなりません。

  労災で休業した場合、「休業補償給付/休業給付」のほかに、社会復帰促進等事業

  として特別支給金が上乗せ支給されます。

  それぞれの支給額は次のとおりです。

  ●休業補償/休業給付金=給付基礎日額の60%×休業日数

  ●休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数

  給付基礎日額とは、労働基準法の「平均貸金」に相当するものです。

  算出方法は、労災事故が発生した日や医師の診断によって疾病の発生が確定した
  日の前日から遡って3カ月間に支払われた貸金総額をその期間の総日数で割った
  ものです。


  ただし、給与計算の締切日が定められている時には、事故発生日や疾病発生確定日の

  直前の締切日から3カ月問に支払われた貸金総額で計算します。

  休業補償給付の請求手続きは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を
  所轄労働基準監督署に提出することになります。

  このとき、休業特別支給金の支給申請も同時に行うことになっていますが、請求

  様式は同一ですので、改めて請求しなおす必要はありません。

  もし、休業が長期にわたる場合には、1か月ごとなど、数回にわたって請求すると
  よいでしょう。

□経営者のための「特別加入制度

 労災保険は、本来、労働者を対象とした保険制度です。

 しかし、多くの中小企業の経営者は、労働者と同様に仕事をしていることでしょう。

 また、労働者であっても、海外派遣者については労災保険の適用がありません。

 そのため、こうした人たちを保護することを目的に、労災保険では、特別加入制度を

 設けています。

 特別加入制度は、全部で4種類ありますが、ここでは「中小事業主及びその家族従事者」
 を対象とした特別加入制度をご紹介します。

 ○中小事業主及びその家族従事者の特別加入

  特別加入での中小事業主とは、以下に定める数以下の労働者を常時使用している事業主
  のことをいいます。

   ●金融業、保険業、不動産業、小売業……50人

   ●卸売業、サービス業……100人

   ●上記以外……300人

    中小事業主が特別加入するためには、次の条件を満たす必要があります。

    ①雇用している社員の保険関係が成立していること

    ②労働保険事務組合に労働保険事務を委託していること

   また、中小事業主等の特別加入制度では、社長のほかに、家族従事者や役員がいる

   場合には、その人たち全員を包括して加入させなければなりません。

   ただし、役員と名のつく人は全員というわけではありません。

   例えば、兼務役員などで、社長をはじめ他の役員から仕事に関する指揮命令を受け、

   労働者と同様に賃金を得ているという人は、労災保険が適用されますので、わざわざ
   特別加入の手続きをする必要はありません。

   なお、特別加入をした場合、基本的には、一般の労働者と同様の保険給付を受ける

   ことができます。

   しかし、「2次健康診断等給付」、「ボーナス特別支給金」は受けることができ
   ません。

   また、保険料を滞納した場合、その期間中に起こった事故については、保険給付が

   行われない可能性があります。

   さらに、事故発生日まで遡って特別加入をすることはできませんので、注意が
   必要です。


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労務リスクと労務管理

労災保険の特別加入

労災保険の特別加入

■中小企業の社長も入れる労災保険
 1.労災保険の特別加入制度とは 
  労働者を1人でも雇っている事業主は、法人・個人を問わず、労働保険への加入が
  義務づけられています。
  労働保険とは、仕事中や通勤途中の災害を補償する「労災保険」と失業時に給付を行う
  「雇用保険」の総称ですが、いずれも労働者のための保険なので、原則として、社長や
  役員などは加入することができません。

  労働者であれば仕事中のケガも労災保険で治療することができますが(自己負担ゼロ)、
  社長や役員などが仕事中にケガをした場合、労災保険は適用されず、治療費は全額負担
  になります。

  会社として健康保険にも加入していると思いますが、仕事中のケガは対象外なので
  健康保険を使うことができません(例外として、被保険者5人未満の適用事業所で
  あれば健康保険を使うことができます)。 

  中小企業においては、社長やその家族が労働者と一緒になって同内容の仕事をしている
  ケースも多く、仕事中にケガをする危険性が高いといえます。
  そのため、中小企業の社長などに対しては、任意で労災保険に加入できる制度が設け
  られています。

  それが労災保険の特別加入制度です。 
  社長などが仕事中にケガをした場合、労災保険が利用できれば、無料で治療を受け
  られるほか、休業期間中の補償を受けられるなどのメリットもあります。

 2.特別加入できる事業主とは 
  中小事業主が特別加入する場合(「第1種特別加入」といいます)、加入要件として
  業種ごとに常用労働者数が決められており、それ以下であれば加入することができます。
  なお、特別加入する場合、社長だけでなく家族従事者、役員も一括で加入することに
  なります。

  なお、第1種特別加入以外にも、建設業の一人親方や特定農作業従事者、家内労働者
  などが加入できる第2種特別加入、海外に派遣される労働者を対象とした第3種特別
  加入があり、加入要件はそれぞれ異なります。

 3.特別加入をするには 
  特別加入をするには、厚生労働省が認可した「労働保険事務組合」に委託して、特別
  加入の手続きをする必要があります。
  労働保険事務組合とは、事業主の委託を受けて労働保険の事務処理を行う団体で、
  おもに事業協同組合、商工会議所、商工会などがその運営をしています。

  中小企業の事業主などが特別加入する場合、次の要件を満たしている必要があります。
   ・雇用する労働者について、労働保険の保険関係が成立していること
   ・労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託していること 

  なお、特別加入する者が次の特定業務に従事する場合には、「特別加入申請書」に業務
  歴を記入しますが、特定業務に従事した期間が一定期間を超える場合には、健康診断
  結果も提出する必要があります(平成23年度から、健康診断については、労働局長が
  委託した医療機関であれば、都合のよいときにどこで受診をしてもよくなりました)

  加入時の健康診断結果が次のような場合には、特別加入が制限されます。
   ・すでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が一般的に就労する
    ことが難しく、療養に専念しなければならないと認められる場合には、特別
    加入は認められません。
   ・すでに疾病にかかっており、その症状または障害の程度が特定の業務からの転換
    を必要とすると認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入
    が認められます。

  また、特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる
  場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがあります。 
  特別加入の承認日は、申請日の翌日から起算して14日以内の加入希望日となります。

  なお、加入後に、加入者の氏名や作業内容などに変更があった場合には、その都度
  「特別加入に関する変更届」を提出することになります。

  【労働保険事務租合の探し方】
   すでに何らかの事業主団体(事業協同組合、商工会議所、商工会など)に加入して
   いる場合には、その団体が厚生労働省の認可を受けた労働保険事務組合であるか
   どうかを確認し、認可を受けている場合にはその団体に委託するのがよいでしょう。
   事業主団体に加入していない場合には、公共職業安定所や労働基準監督署にある
   掲示板、インターネットやタウンページなどから地域の労働保険事務組合をリスト
   アップし、連絡をしてみるとよいでしょう。


労災保険料
 労災保険料は、労働者に支払った賃金の総額に労災保険料率(1000分の3〜1000分の103、
 業種によって異なります)を掛けて算出します。 
 社長の場合には、賃金ではなく役員報酬であるため、賃金に代わるものとして給付基礎
 日額(3500円〜25000円:16段階)というものが定められています。

 この給付基礎日額は、労災保険の給付額を計算するときにベースとなるものですが、
 加入手続きをする際には、所得水準に見合った適正な額を申請し、労働局長の承認を
 受けます。

 なお、給付基礎日額は、3月18日から3月31日までの期間中または年度更新の期間中に
 変更することが可能です。 
 特別加入の労災保険料は、給付基礎日額に労災保険料率を掛けて算出します。

 たとえば、給付基礎日額が2万円の場合、保険料は、
 2万円×365日×3/1000(その他の各種事業の労災保険料率)=2万1900円/年
 となります。 

 年度の途中で新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、その
 年度内の特別加入月数(1カ月未満の端数があるときは、これを1カ月とします)に応じて
 算定します。

 年度の途中で新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、その
 年度内の特別加入月数(1カ月未満の端数があるときは、これを1カ月とします)に応じて
 算定します。 

 労働保険は、当年度分の概算保険料が40万円以上でないと分割して納付ができないことに
 なっていますが、特別加入をすれば、金額にかかわらず分割納付することができます。 
 なお、労働保険事務組合に加入する場合、保険料とは別に、入会金と月額会費が必要に
 なります。

□補償の対象 
 業務上または通勤途上に災害を被った場合に、労災保険から給付が行われます。
 なお、会社を2つ以上経営し、ともに特別加入の要件を満たしている場合には、
 それぞれの事業ごとに特別加入の手続きをする必要があります(特別加入の手続きを
 していない事業での災害については、保険給付を受けることができません)。
 1.業務災害 
  特別加入者については、次の①〜⑦に該当する就業中の災害について保険給付を受ける
  ことができます。

   ①申請書の「業務の内容」欄に記載した業務およびこれに直接付帯した行為
    (事業主の立場で行われる業務を除く)を所定労働時間(休憩時間を含む)
    内に行う場合
   ②労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
   ③①または②に前後して行われる業務(準備・後始末行為を含む)を中小事業主
    などのみで行う場合
   ④①、②、③の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で
    行動中の場合
   ⑤事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除く)のために
    出張する場合
   ⑥通勤途上で次に掲げる場合 
    ア)労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中 
    イ)突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上
   ⑦事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者を伴って出席
    する場合

 2.通勤災害
  通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。
  通勤とは、就業に関し、
   ①住居と就業の場所との間の往復
   ②就業の場所から他の就業の場所への移動
   ③赴任先住居と帰省先住居との間の移動
  を合理的な経路および方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除く
  ものとしています。

  これらの移動の経路を逸脱・中断した場合は、その逸脱・中断の問およびその後の
  移動は通勤となりません。
  ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって日用品の購入などやむを
  得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は
  通勤となります。

 3.保険給付の種類
  特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合、所定の保険給付に加えて
  特別支給金が支給されます。

  労災保険で受けられる補償内容


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労務リスクと労務管理

政府労災加入と周辺知識


  中小企業が労務管理を推進する際に車の両輪となるのが「規程類の整備」と「適切な運
  用」ですが、労務管理を行っていても発生してしまうのが労働災害です。

  労働災害はちょっとした気の緩みなどから発生するもので、完全になくすこと
  は不可能です。

  そこで、万一の備えとして労災保険などの法定の労働保険などに加入することが
  重要です。

  最近は、過労死やパワーハラスメントに関する事案が労働災害として認定されるなど、
  労災保険がカバーする範囲は広がってきており、万一の際は従業員やその家族に
  とって重要な補償となります。

  また、製造業など労働災害の発生率が高い業種の場合は、民間保険会社のいわゆる「法
  定外補償」を活用し、手厚い補償ができるようにするとよいでしょう。

  こうした企業の姿勢は、従業員の企業に対する信頼につながると考えられます。


  ■労災保険

   労災保険制度の内容は、意外と知られていません。

   労災かどうかを認定するのは、国であり
   労働基準監督署であって、会社が認定
   するかどうかではありません。

   政府労災保険は労働者保護のために、
   国が直接、被災労働者やその遺族に対
   して災害補償を行う制度です。

   また、労災保険は労働者のためだけの
   制度ではなく、事業主のための制度でも
   あります。

   事業主には、労働者の業務上のけがや
   病気に対して、一定の補償義務が課され
   ています。

   けがや病気に対する治療費、休業中の
   所得補償など、その補償内容は労働基準法
   に定められており、これを守らなければ罰則
   の適用対象となる。

   政府労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。

   もちろん、労災保険はすべての損害をカバーする「万能な保険」ではありませんが、
   小さな負担で大きな補償を得られる制度と言えます。

   政府労災でカバーできない部分を補うのが民間保険会社の任意労災(労災上乗せ)
   保険です。

   労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。

   なお、私傷病で労務不能となり、給与の支給がなくなってしまった場合には、
   傷病手当金という給付があります。(下記参照)

 □業務災害の認定が下りる場合

   業務災害とは、業務上の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。業務災害の認定は、
   「業務起因」と「業務遂行」という2つの要素から判断されます。

    ○業務遂行:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること

    ○業務起因:傷病等とその業務との間に因果関係があること

   業務上の負傷については、次の3つに分けることができます。

   1.事業主の支配・管理下で仕事をしている場合

      所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない
    限り、業務災害と認められない。

      なお、次の場合には、業務災害とは認められない。

       □労働者が故意に負傷した場合

       □労働者が個人的なけんかなどにより暴行を受けて負傷をした場合

   2.事業主の支配・管理下にあるが仕事をしていない場合

      昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるが、働いていない場合に負傷
    した時、基本的には、業務災害とは認められないが、施設や設備の欠陥などによ
    り負傷をした場合には、業務災害と認められる。

   3.事業主の支配下にあるが、管理下を離れて仕事をしている場合

      出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情
    がない限り、業務災害と認められる。

      ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や恣意的行為があっ
    た場合には、認められない。

  通勤」の適用条件  

   通勤災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。

     帰りに食事をしたり、一杯飲んだりその行動パターンはさまざまです。

   しかし、こうした私的行為によって発生した災害すべてに、労災保険を適用させる
   わけにはいきません。

   そこで労災保険では、適用対象とする「通勤」の範囲を定めています。

      1) 通勤

     「通勤」とは、社員が仕事をするために

      〇自宅と仕事をする場所(会社、訪問先、現場など)の往復

      〇合理的な経路、方法(一般的に使われる経路、方法)で移動することをいい
       ます。

            ・住居と就業の場所との間の往復

            ・就業の場所から他の就業の場所への移動

            ・単身赴任先住居と帰省先住居の移動など

          なお、業務の性質を有する場合には、一見、通勤のような場合でも、業務災害
       となります。

          例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合
       などは、業務災害扱いとなります。

    2) 逸脱・中断

        労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の
        間とその後の移動は「通勤」とはならない。

        帰宅途中に「飲み屋で一杯」となった場合は、通常の通勤経路を外れた時点で
        「通勤」とはならなくなる。

      【通勤災害になるか、ならないかの微妙な場合】

        ・社員が自宅の玄関先の石段を上がるときに、石段が凍っていたため、足を
         すべらせて転倒し、負傷した場合は、自宅敷地内のため通勤災害にならない。

        ・アパートの共用階段でつまずき、転落して負傷した場合、アパートの部屋
         から外に出たら、通勤経路になるため通勤災害になる。

        ・仕事終了後、会社の労働組合の会合に出席し、会合後の帰宅途中でケガを
         した場合は通勤災害となる。(組合活動は仕事と関係している)

        ・仕事の終了後、社内サークル活動をした後、帰宅途中で暴漢に襲われて死
         亡したなどの場合は通勤災害とならない。

          * 組合やサークル活動として残っていた時間が長時間(2時間が目安)
              にならなければ、通勤災害の適用対象になる。

        ただし、労働者が通常、通勤途中で行うような「ちょっとした行為」は、逸脱・
        中断とはならない。

      【ちょっとした行為の具体例】

    ・経路上の近くにある公衆トイレの使用

    ・経路の近にある公園での短休息

    ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購

    ・駅構内での飲料水の立ち飲み


   また、「日常生活上必要な一定の行為」
   については、逸脱・中断の間は通勤とは
   なりませんが、その後の移動は通勤として
   取り扱われる。

      【日常生活上必要な一定の行為】

    ・日用品の購入その他これに準ずる行為

    ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行わ
     れる職業訓練(職業能力開発総合大学校において行われるものを含
     む)

    ・学校教育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ず
     る教育訓練であって、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

    ・選挙権の行使その他それに準ずる行為

    ・病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ず
     る行為

    ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している
     孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるもの
     に限る)


   3) 合理的な経路および方法

       通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的
       に労働者が用いると認められる経路と方法をいう。

       通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」
       となる。

    また、道路工事などにより、やむを得ず迂回する場合にも、「合理的な経路」と
    認められる。

      鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車、徒歩など、
    一般的に用いられる交通方法であれば、いつも利用しているかどうかにかか
    わらず「合理的な方法」となる。


  □特別加入制度(一人親方)

   労災保険の適用を受けるのは、「適用事業所」に使用される労働者です。

   適用事業所とは、労働者を一人でも使用する事業所 のことです。

   原則として、労働者ではない事業主や一人親方などは労災保険に加入する
   ことはできません。

   一人親方とは、労働者を使用せずに一人で働く状態にある職人などを指します。

   中小企業の事業主や一人親方は、一般の労働者と同じように現場に出て働くため、
   業務災害など危険性が高いのが現状です。

   そこで、労災保険には特別加入制度が儲けられており、中小企業の事業主や一人
   親方も労災保険に加入できるようになっています。

   特別加入は3種に分かれています。

    1.第1種:中小事業主とその家族従事者が対象

    2.第2種:一人親方と特定作業従事者が対象

    3.第3種:海外派遣者が対象
   
  ■傷病手当金

   従業員の方が私傷病で労務不能となり、給与の支給がなくなってしまった場合、傷病
   手当金という給付があります。

   傷病手当金は、一定の条件を満たした場合に会社でご加入の全国健康保険協会(協
   会けんぽ)や、健康保険組合等から給付されるものですが、今回は協会けんぽで手
   続きをする際の内容でご案内します。

   1)傷病手当金とは

     傷病手当金は、健康保険に入っている従業員の方の病気休業中の生活保
     障を目的として設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、会社か
     ら十分な貸金が受けられない場合に支給されます。

     なお、任意継続被保険者の方は、原則として傷病手当金は支給されません。
     (任意継続被保険者:退職しても元の勤務先の健康保険に、最長で2年間そ
     のまま加入できる制度)

   2)労災が適用される場合

     業務または通勤を原因とする病気やけがについては、労災保険が適用され
     ます。

   3)傷病手当金の支給条件

     1.業務及び通勤途上以外の病気やけがのため労務不能であり、療養のた
       めに休んでいること

     2.連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと

     3.報酬の全部または、一部が支払われていないこと(※)
       (※)一部支払いがある場合は、傷病手当金より少ないときは、その差額を支給

   4)支給される金額

     支給される金額 = 病気やけがで休んだ期間、一日につき、
     標準報酬日額の3分の2に相当する金額

     計算例 …(条件)標準報酬月額18万円、支給日数10日間の場合

      ・標準報酬日額 =18万円 ÷ 30日 = 6千円

      ・支給日額= 6千円 × 2/3 = 4千円

      ・支給額= 4千円 ×10日間= 4万円

   5)支給期間 

     3日間の待期(※)を除き、4日目から支給されます。
     その支給期間は、支給を開始した日から数えて1年6か月(18ヶ月)です。
       (※)病気やけがで休んだ期間のうち、最初の連続した3日間

   6)その他

     協会けんぽに申請するには、医師の証明が必要になります。

     また、上記以外にも細かい条件等があるので、手続きをする際には、支給要
     件、添付書類等をご確認ください。


    一人親方についての詳細はこちら


  労災補償と示談

  災害補償規程 

  労災保険周辺知識 

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労務リスクと労務管理

         労働契約書の作成と雛形 


   労働基準法では、労働者保護の点から以下のことを定めています。

  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他
  の労働条件を明示しなければならない(労働基準法第15条)


   そして、賃金、労働時間等の主要な労働条件については、労働契約書や就業規則等
  の書面の交付によって明示することを使用者に義務づけています。

  また、パートタイム労働法では、次のことが定められています。

   事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、
   当該短時間労働者に対して、労働時間その他の労働条件に
   関する事項を明らかにした文書の交付等により明示しな
   ければならない(パートタイム労働法第6条) 


  パート・アルバイト等の短時間労働者を雇用する企業では、短時間労働者向けの労
  働契約書あるいは雇入通知書を整備しておくと、労働条件をめぐるトラブルの防止
  になります。

 ◆労働契約書作成のポイント

   労働契約を結ぶ際に労働者に以下の労働条件について明示しなければならない。 
 
   

 

  上記表の「必ず明示」に示された事項については、書面を作成し、労働者に渡す
  
方法で明示しなければなりません。

  「会社に定めがある場合に明示」に示された事項については、口頭で説明すること
  でも足りますが、書面交付という方法をとったほうがトラブルの未然防止には有
  効
です。

  これらの事項が就業規則に記載されている場合、就業規則を交付することで書面
  による明示義務を果たしたことになります。

  ただし、従業員ごとに異なる労働条件については、就業規則には記載されていない
  ので、労働条件通知書や労働契約書などの書面を交付する必要があります。

  また、特に確認したい事項については、注意を促す意味からも書面を交付するのが
  よいでしょう。

  労働法令上は、書面を交付すればよいと
  されていますが、労働者と雇用契約を締結
  する以上、後々の労使トラブルを防止す
  る意味からも、労働契約書には労働者に
  も署名または記名・押印してもらい2通作
  成して、労使双方で一通ずつ保管するよ
  うにしましょう。

  なお、労働契約の締結においては、法律
  的規制についての注意が必要です。

  たとえば、労働基準法では週所定労働時
  間は最長40時間と定められているため、
  「週所定労働時間を50時間とする」という
  契約は法律違反になります。

  このように、労働基準法やその他の諸法規に違反する労働条件を定めた契約を結
  んだ場合は、違反する部分については無効となります。

  法律に違反する労働条件で労働者を使用した場合には、使用者に刑事罰が科せら
  れることもあるため、注意しなくてはなりません。

  また、法律で定められた労働契約書の保存期間は3年間ですが、後々トラブルが
  発生することを想定し、できるだけ長期間保存するのが望ましいといえます。

  厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)でも最新情報を提供して
  います。


  <労働契約書の雛形>

    労働契約書の雛形(一般)    労働契約書の雛形(有期労働者向け)

    労働契約書の雛形(短時間労働者向け   



    身元保証書  

 

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労働契約.jpg

労務リスクと労務管理

           服務規律と制裁規定


  服務規律と制裁規定は、企業秩序の維持を図るために社員が遵守すべき義務や
  ルールを定めたもの
です。 

 ■服務規律

  会社で働く限り、従業員は職場のルールを
  守る義務があります。

  会社の業務内容と従業員に遵守してもらいたい事項を照らし合わせ、就業規則
  にこの義務(服務規律)を明文化することです。

  もちろん、従業員が就業規則に規定された服務規律に違反した場合には、何か
  しらの制裁(戒告や訓告、減給、出勤停止、あるいは解雇)を行うことになります。

  よって、服務規律は、会社の業務内容などを勘案して、より具体化しておくことが
  必要です。 

 就業規則への服務規律記載(例)

  第○条(服務規律)

  社員は職務の遂行にあたって、次の事項を守らなければならない。

   (1) 常に健康に留意し、積極的な態度で就業しなければならない。

   (2) 就業時間中は業務に専念し、みだりに職場を離れてはならない。 

   (3) 職場の整理整頓に気を配り、常に清潔にすること。

   (4) 勤務時間中は、定められた業務に専念し、上司の許可なく職場を離れ、ま
      たは他の者の業務を妨げるなど、職場の風紀、秩序を乱してはならない。

   (5) 職務の権限を超えた専断的行為を行ってはならない。

   (6) セクシャルハラスメント、パワーハラスメントまたはこれらに相当する行為に
      より、他者の人格と尊敬を侵害したり、職場の環境を悪化させてはならない。

   (7) 社内で賭博、暴行、脅迫などを行ってはならない。

   (8) 会社の名誉を傷つけたり、会社の不利益になるような言動は一切慎まなけ
      ればならない。

      業務上の失敗、ミス、クレームは、事実を速やかに上司に報告すること。

   (9) 酒気を帯びるなど就業に適さない状態で勤務(車の運転)をしてはならない。

   (10) 取引先より金品の授与を受け、または金品を要求することをしてはならない。

    (11) 許可なく会社の設備、車両、機械器具、備品その他を無断で使用し、私事に
          使用するための持ち出しをしてはならない。

    (12) 在職中又は退職後においても業務上知りえた機密を第三者に漏らしては
      ならない。

    (13) 会社の車両、機械、器具、備品その他を大切に扱い、消耗品や水道光熱
      の節約に努めること。

    (14) 社員が自己の行為により、会社の設備、車両、機械器具、資材、商品等を
          破損し、もしくは第三者に損害を与えたときは速やかに使用者に届け出ること。

    (15) 会社施設内において政治活動、宗教活動を行ってはならない。

    (16) 会社の許可なく会社施設内において、業務に関係のない集会、演説、文
          書の配布、掲示等私的な販売活動などを行ってはならない。

    (17) 会社の許可なく他の者に雇用され、または自営をしてはならない。

    (18) 事業場に日常携帯品以外の私品を持ち込んではならない。

  ■制裁規定とは

   通常、企業は職場の秩序を守るために一定の制裁規定を定めています。

   備品を持ち逃げした社員などに一定の制裁を課すことは、「職場秩序を乱した
   社員に対して、企業は厳しく対処する」という姿勢を示すためにも重要です。

   しかし、企業が制裁規定を自由に作成できるとなると、制裁規定は企業の一方的
   ・独断的なものとなる危険性があり、社員に必要以上の負担を強いることにも
   なりかねません。

   これでは、「職場秩序の維持」という本来の意義にはそぐわないものとなってしまい
   ます。

   そこで労働基準法(以下「労基法」)では、企業が定める制裁規定について一定
   の制約を設けています。

   まず、企業は作成した制裁規定を「就業規則」に定めなければなりません。

   就業規則とは、仕事をするうえで労使が守らなければならない約束事を定めた
   書面による定めです。

   常時10人以上の社員を雇用する企業は、必ず就業規則を作成し、それを行政
   官庁(企業の所在地を管轄する労働基準監督署)に届け出なければなりません。

   また、就業規則には単に制裁規定があることを記すだけでは足りず、その種類
   と程度(厳しさ)についても記す必要があります。

   制裁規定を企業本位に作成するのは問題であることから、「制裁規定にはどん
   な種類があるか」「それはどの程度の厳しさなのか」についても規定することが
   求められているのです。

  □制裁の制限
   制裁の内容はさまざまですが、一般的には、減給、出勤停止命令、懲戒解雇
   などがあります。

   これらの制裁規定の中で、労基法第91条では特に「減給」についてその限度を
   定めています。

  □減給
   就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給
   は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における
   賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

   と、なっています。

  □出勤停止
   出勤停止とは、一定期間の出勤停止を命じる処分です。

   前述した減給とは異なり、労基法で出勤停止日数の上限などを定めてはいま
   せんが、従業員が犯した行為に対する制裁の内容が妥当で、合理的であること
   が必要です。

   また、通常、出勤停止中は従業員に賃金を支給しません。これは「ノーワーク・
   ノーペイ」の原則によるもので、労働力を提供していないのであれば、賃金を
   支払う必要もないという解釈です。

  □懲戒解雇
   従業員との雇用関係を解除する最も厳しい処分で、多くの場合は退職金も支給
   されません。

   また、通常、企業が従業員を解雇する際は解雇予告期間の設定や解雇予告
   手当の支給が必要ですが、懲戒解雇の場合、労働基準監督署の認定を受けれ
   ば、解雇予告期間の設定などをせずに即時解雇することができます(産前産後
   休業の期間中など解雇制限期間中を除く)。

   なお、懲戒解雇に該当する事由(労働者の責に帰すべき事由)としては、次の
   ようなケースがあります。

    ・企業内における窃盗、横領、傷害など刑法犯に該当する行為をした場合
    ・賭博など職場規律を乱し、ほかの労働者に悪影響を及ぼす行為をした場
     合
    ・ほかの企業に転職した場合
    ・採用の際、経歴を詐称した場合
    ・14日以上正当な理由なくして無断欠勤し、出勤の督促にも応じない場合
    ・出勤不良で数回にわたり注意をしても改めない場合  

  □制裁規定作成の留意点ひな型
   制裁規定を作成する際、労基法の基準を満たしているかを確認しなければなり
   ません。

   例えば、労基法第91条を超える減給の定めをすることはできません。

   また、制裁規定があまりに厳しい場合、従業員が企業は従業員のことを信用
   していないと感じ、職場全体の士気が下がってしまう危険性があります。

   制裁規定を作成する際は、このようなことに留意し、従業員に良い緊張感を与え
   るが、モチベーションを下げるほどではないといった程度の厳しさにすることが
   ポイントといえます。

   ■懲戒処分

   懲戒とは、職場の秩序維持、正常な業務運営の確保、企業財産の保全、信頼
   関係の保持等を目的として、企業が独自の基準で定める不利益処分(制裁)
   のことです。

   そして、就業規則に懲戒に関する定めを設けることによって、従業員に業務命令
   や職場規律の実行を間接的に強制するものです。

   従業員の懲戒処分は就業規則の制裁規定に沿って行われますので、原則として
   就業規則の制裁規定に定めていない行為や態度について懲戒処分を課すことは
   できません。

   制裁規定を作成する際、あまりに厳しいと職場全体の士気低下を招く恐れが
   あるので、モチベーションを下げないことに留意する必要があります。 

  第○条(懲戒の種類)
   会社は、従業員が次項各号のいずれかに
   該当する場合は、その程度に応じて次の区
   分により懲戒を行う。

   1.けん責、戒告、訓戒:始末書を徴して、
     将来を戒める。

   2.減給:始末書を徴して減給する。        
     減給は1回の額が労働基準法の規定に
     より算出した平均賃金の1日分の5割を
     超えることなく、また総額が本規則第○条
     に定める一つの賃金計算期間における賃金の1割を超えることはない。

     出勤停止:始末書を提出させるほか、7日間を限度として出勤を停止し、
            その間の賃金は支給しない。

   3.昇給停止:次回の昇給を停止する処分で、将来に向けた賃金の減額と
            なる。

   4.停職:始末書を徴して停職を命ずる。
         停職は、1年以内を限度とし、その間は無給とする。

   5.降格:始末書を徴して降格する。

   6.論旨解雇:論旨のうえ解雇する。情状に応じて退職金の全部または一部
            を支給しないことがある。

   7.懲戒解雇:即時に解雇する。懲戒解雇の事由ならびに退職金の取り扱い
            は本規則第○条および第○条に定める通りとする。

  第○条(懲戒の事由)

   従業員が次の各号のいずれかに該当した場合には、その程度に応じ、けん責、減
   給、停職、降格、論旨解雇に処する。

   ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、訓戒にとどめることがある。

    1.就業規則、社内規定、通達に違反した時。

    2.正当な理由なく、無断で欠勤、遅刻、早退を繰り返した時。

    3.正当な理由なく、無断でしばしば職場を離れた時。

    4.職務、勤務に関する諸手続きを怠り、または不正に偽った時。

    5.素行不良で著しく会社内の秩序または風紀を乱した時。

    6.会社を中傷誹謗し、または虚偽の風説を流布宣伝した時。

    7.会社に所属する個人の名誉・信用を傷つけた時。

    8.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。

 

  第○条(懲戒解雇)例
   会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当した場合に懲戒解雇することがで
   きる。

   この場合において、労働基準監督署長の認定を受けた時は、本規則第○条の予
   告手当は支給しない。

   ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、論旨解雇または減給もしくは
   出勤停止にとどめることがある。

   1.重要な経歴を詐称して雇用された時。

   2.正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかった時。

   3.正当な理由なく無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返し、再三にわたって注意
     を受けても改めなかった時。

   4.正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかった時。

   5.故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えた時。

   6.会社内において刑法そのほか刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、そ
     の犯罪事実が明らかとなった時(当該行為が軽微な違反である場合を除く)。

   7.素行不良で会社内の秩序または風紀を著しく乱した時。

   8.数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度などに関し改善の
     見込みがないと認められた時。

   9.相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げたり、職場の環
     境を悪化させ、またはその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の
     不利益を与えるような行為を行った時。

   10.許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品などを使用した時。

   11.会社における職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先などより不
     当な金品を受け、もしくは求め、または供応を受けた時。

   12.私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷などによって会社の名誉信用を
     傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があった時。

   13.会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務
     の正常な運営を阻害した時。

   14.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。

 

  「懲戒処分通知文書」の書き方

   当人への通知文書  当人の上司への通知文書

 

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労務リスクと労務管理

配置転換

配置転換

■配置転換について
 配置転換とは、企業内の異動で、従来業務を変更して、従来の業務とは別の業務に従事
 するものです。
 労働契約の成立により、使用者は労働者に対して就業の場所、従事する業務に従い一定の
 場所、一定の仕事を命じることになります。

 また使用者は、労働力の適正配置、業務の能率的な推進、能力開発、勤労意欲の高揚、
 その他企業の合理的な運営のために、労働者の就業場所や職務内容を変更する必要性から、
 配置転換を命じることがあります。

 しかし、使用者は労働者に対し、配置転換を一方的にかつ無制限に命じることができる
 ものではありません。
 判例では、労働契約の締結時の事情、従来の慣行、これまでの職務との内容の違い、
 業務上の必要性、変更することにより労働者がこうむる不利益などを総合的に判断し、
 当初の労働契約が予想する合理的範囲において配置転換が許されるとしています。

 ただし、配置転換を行うか否かについては、一定の合理的な制限はあるものの使用者の
 裁量に委ねられているということになります。

□配置転換の目的と効果について 
 労働力人口の減少に伴い人材確保が困難となっていますが、人材の多能化がより重要視
 される時代となりました。
 適切な配置転換はそのためにも有効な方法であると考えられます。

 配置転換は、全企業の約4割で行われており、すべての大企業で実施されています。
 配置転換には次のような目的と効果があります。

  ①種々の仕事を経験することにより、それぞれに必要な知識・技術・技能を習得する
   とともに総合的な調整力や判断力を形成させるなど社員の能力開発、人材育成を
   図ることができる。
  ②同じ仕事に永年携わることにより生ずるマンネリ化の防止ができる。
  ③同じメンバーで仕事をすることにより生ずる職場の雰囲気の停滞を変えることが
   できる。
  ④同じ部門に所属していることにより発生する部門間のセクショナリズムを排除
   しやすくなる。
  ⑤配置転換により、景気変動等会社を取り巻く環境変化に適切に対応できる。

□配置転換の留意点
 ①労働協約や就業規則に、「業務上の都合により転勤を命じることがある」との
  定めをしていること。    
  会社が従業員に配置転換を命じる場合には、就業規則に「会社は業務上必要がある
  場合には従業員に転勤を命じあるいは職場又は職種の変更を命じることがある」
  旨の規定を設ける。

  これにより一般的には配置転換を行うことができると解されています。
  配置転換を行うための基本として、まず就業規則に規定を設けておくことです。    
  労働組合がある場合は、配置転換に関する協約を締結することで、円滑な配点が
  促進されるといえます。

  配転の規定を定めていない場合でも、労働者の合意が得られれば配置転換は可能です。
  また、合意が得られない場合であっても、その配置転換が法令や労働協約、就業
  規則に抵触せず、会社側の権利の濫用や信義則違反、不当労働行為に該当するなどの
  特別な事情がない限り配置転換を行うことは可能とされる場合もあります。

  しかし、就業規則に配転の規定を定めておくことが、円滑に配置転換を行うことの
  必須条件といえます。

 ②現に配置転換、転勤を行っていること。  
  就業規則への記載、労働協約等を基本に、現実に配置転換を行っているという事実が
  あることが決め手です。
  一定の実績が積まれた後においては、問題となる配置転換と同程度の配置転換の
  実績の有無が、比較考慮され、適法か否かの判断基準のひとつとなることがある
  ことから、配置転換を考えるときの考慮が必要です。

 ③労働契約の締結の際、配置転換をしない等の特約をしていないこと。
  入社時の労働契約において、職種を特定した場合には、配転規定を定めたからと
  いって、この配転規定を根拠に会社の都合だけで、一方的に配置転換が可能には
  なりません。

  職種を変更しようとするときには改めて労働者の同意を得なければならなくなります。   
  また、採用条件が一定の資格あるいは技術保有者に限定されていた場合には、労働
  契約において職種の特定をしなくても採用に際し、職種が特定されたものとして、
  以後の職種の変更には労働者の同意が必要になるものと考えられます。

  しかし、この場合でも労働者の合意が得られなければ、絶対に配置転換が行えない
  ということではなく、就業規則における原則的な配置転換の規定を適用し、限定的な
  条件により配置転換が可能であるとする考え方もあります。 

  一般的に有資格者や技術者等の専門職種に携わる人たちは、その資格や技術が生かせる
  場所で就労して始めてその専門的な能力を発揮できるものと考えられます。
  専門職種従事者についても、あえて配置転換により多能化しようとするのであれば、
  就業規則に規定するかあるいは労働契約の際に、一定の範囲内で配置転換があることを
  明記しておく必要があります。

  職種限定をしないで採用された一般社員の場合は、将来どこの職場でどのような職種に
  就くかは、会社に一任するという合意がなされているものと解され、会社は就業規則の
  配転規定に基づき、合理的な範囲内での配置転換を命じることができます。   

  また、入社時の労働契約において、勤務場所を一定の事業場に特定した場合には、
  これを一方的に変更することはできません。
  勤務場所を変更しようとするときには改めて労働者の同意を得なければならなくなります。
  会社が円滑な配置転換を行おうとするのであれば、勤務地を限定する労働契約を
  結ばないことです。 

 ④業務上の必要性に基づくものであること   
  業務上の必要性に基づくものであるかどうかは、労働力の一般的な必要性が認め
  られれば足りると考えられます。
  配置転換の対象となった者でなければ余人をもって変えがたしというものでないに
  しても、労働力の適正配置・業務の能率増進・労働者の能力開発・勤労意欲の高揚等
  企業の合理的な運営に寄与することが認められれば、業務上の必要性があるものと
  考えられます。

  円滑な配置転換を行うには、その配置転換にどのような目的・効果を期待して行う
  のかその位置づけを明確にしておくことが必要です。   
  また、従業員に対しては、会社が期待する配置転換の目的と効果をあらかじめ
  知らしめておくことも重要です。 

 ⑤不当な目的・動機等がないこと   
  業務上の必要性の有無に拘わらず、その配置転換が法令に反するなど不当な目的や
  動機に基づくものである場合には、その配置転換命令の効力がなくなるだけでなく、
  労務管理上にも問題を残すことになります。

□配転に関する入社時の誓約について  
 労働基準法では採用時に、「就業の場所・従事する業務」については、書面交付による
 明示事項とされています。
 これは、「雇入れ直後のもので足りる」とされていますが、「将来の就業場所や従事
 業務を併せ網羅的に明示することは差し支えないこと」とされています。

 将来の転勤や配転に関して最初から書面交付により明示することが望ましいといえます。  
 採用に際し、従業員が誓約書や念書に「配転を命じられた場合に正当な理由がない限り
 拒否しません」との記載をした場合には、特別な効力があるかという問題が生じます。  

 この点は、就業規則において「会社は業務上必要があれば従業員に対し、配転、転勤を
 命ずることがある。
 従業員は正当な理由がない限りこれを拒んではならない。」旨の規定をしてあれば、
 会社が包括的な人事異動権限を有することを明白に定めたことになります。

 それに加えて、その趣旨をさらに確認する意味で、誓約書や念書に定めて明示しておけば、
 より強く会社とその従業員間において配転・転勤義務があてはまることになります。  

□配転や転勤を拒否できる場合について  
 配転や転勤は会社に包括的にゆだねられた権限の行使ですが、無制限に会社の転勤や
 配転命令が許されるわけではありません。
 その命令が合理性がなく権利の濫用に当たるときは無効になります。

 次のような場合には従業員の配転・転勤拒否が認められることになります。
  ①業務上の必要性のないもの  
   業務上の必要性によらない配転等は労働契約上の法的根拠を欠くため無効となり
   ます。
   社員の単なる私生活上の問題や会社と社員との労働関係外の問題などを理由とする
   転勤命令がこれにあたります。

  ②労働条件が著しく低下するもの 
   労働者の日常生活に影響を及ぼす賃金の相当な減収となるものは配転命令権の
   濫用となります。

  ③職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しくこえるもの

  ④不当労働行為に該当するもの 
   労働組合の組合員や組合活動家、役員であることを理由とする不利益取り扱い、
   組合活動に打撃を与え弱体化を意図するものなど組合の運営への支配・介入に
   該当するものは無効です。(労働組合法第7条1・3号)

  ⑤思想・信条その他差別待遇にあたるもの 
   労働基準法第3条では、使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由と
   して、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしては
   ならない。
   と定められています。
   したがって、これに該当するよ  うな配転等も違法であり無効となります。

  ⑥技術・技能等の著しい低下となるもの 
   特に技術系の社員については、技術、技能等は人格財産を形成するので、その
   能力の維持ないし発展を著しく阻害するような職種の変更等は配転権の濫用と
   なります。

  ⑦私生活に著しい不利益を生ずるもの 
   一般労働者が通常予想されるような損害、苦痛を超えて、きわめて著しい場合には
   労働者の正当な拒否理由となります。  

□勤務地限定で採用された者について
 一般的に、労働契約で勤務地・勤務場所が特定されている場合、会社は原則として
 労働者の同意を得ることなく、その勤務場所を変更することはできません。
 ただし、労働契約で勤務場所等が特定されているのであれば、労働者の同意を得ることに
 よって転勤を命じることが可能になります。

 労働契約の内容として必ずしも明確に示されていない場合には、労働契約締結の経緯・
 過程等について総合的にみて、当事者の合理的意思がどの程度であったかが判断される
 ことになります。

 勤務場所を特定する合意が認められる場合には、合意の範囲をこえて勤務場所を変更する
 配転は行えないことになります。  
 労働者が合意した場合は、当初の労働契約が勤務場所を特定していても、同意を得ることに
 よって勤務場所を変更することは可能になります。

□育児・介護を理由とする転勤拒否
 男女雇用機会均等法により女性労働者も男性労働者と同様に転勤の問題があります。
 基本的には女性も配転に応ずることが要求されていますが、平成14年4月1日施行の
 育児・介護休業法の改正で「労働者の配置に関する配慮」として「事業主は、その雇用
 する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、
 その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難と
 なる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければ
 ならない。」 第26条 との規定が新設されました。

 この規定については次の通達があります。「子の養育や家族の介護を行っている労働者に
 とって、住居の移転等を伴う就業の場所の変更が、雇用の継続を困難にしたり、職業生活
 と家庭生活との両立に関する負担を著しく大きくする場合があることから、労働者の配置の
 変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更
 により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となる労働者がいるときは、
 当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況について配慮することを事業主に義務づける
 こととしたものであること。」 (平14.3.18雇児発0318003号)


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労務リスクと労務管理

安全衛生管理規程

従業員の安全と健康を守る安全衛生管理


  ■安全衛生管理とは

   企業には、安全配慮義務という信義則上負うべき義務が課せられています。

   安全配慮義務は最高裁判所の判例で定立された概念であり、労働契約法第5条に
   よって「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ
   労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明文化されました。

   会社は従業員の安全と健康について配慮しなければなりません。

   そのためには、長時間労働の抑制や危険有害業務の制限、安全衛生管理体制の
   構築、健康診断の実施、安全衛生知識の啓蒙などを普段から意識する必要があり
   ます。

   これらについて規定されている法令はさまざまですが、中心となるのは労働安全衛生
   法(以下「安衛法」)や、その下部規程である労働安全衛生規則です。

   企業は安衛法に基づいて安全衛生管理体制を構築しなければなりません。

    選任が義務付けられている管理者(出典:厚生労働省HP)等について

  安全衛生管理規程
   企業が安全衛生管理体制を構築し、職場の巡視など必要な取り組みを実行するため
   に定めたルールが安全衛生管理規程です。

   安全衛生管理規程は、企業と従業員が安全で衛生的に働くためのより所となる規程
   といえるでしょう。

   紹介する安全衛生管理規程ひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の
   企業によって定めるべき内容が異なってきます。


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労務リスクと労務管理

書面による労働条件の明示

書面による労働条件の明示
 

  ■書面による労働条件の明示

   (1)明示すべき時期

     明示すべき時期は、労働契約の締結の際です。

     期間の定めのある契約において、契約期間満了後、契約を更新する場合も含
     まれます。

     また、労働者が出向する場合については、在籍型でも移籍型でも、出向先労
     働者との間で新たに労働契約関係が成立するものなので、出向に際して出向 
     先はその事業場における労働条件を明示する必要があります。

     なお、この労働条件の明示は、出向元が出向先のために代わって行うことも
     差し支えません。

   (2)労働条件の明示がない場合の契約の効力
     労働条件の明示は、労働者が就職するにあたって労働条件の内容を了知し
     得る状態におくため、使用者にその内容の明示を義務付けたものです。した
     がって、労働契約の締結にあたって労働条件が明示されなかったとしても、そ
     の労働契約自体は有効に成立します。

  □労働条件の明示方法
   (1)書面による交付
     下記の労働条件については書面による交付が必要となります。

      ①労働契約期間
      ②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(平成25年4月1日施行)
      ③就業の場所・従事すべき業務
      ④始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、
        休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合におけ 
        る就業時転換に関する事項
      ⑤賃金の決定、計算・支払方法、貸金の締切り・支払の時期
      ⑥退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)

     なお、書面で明示すべき労働条件については、当該労働者に適用する部分を
     明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支え
     ないことになっています。

  □書面で交付すべき労働条件
   (1)労働契約期間
     期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めのない労働契約
     の場合はその旨を記載する必要があります。

   (2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(平成25年4月1日施行)
     書面の交付により明示しなければならないこととされる更新の基準の内容は、
     有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可
     能性について−定程度予見することが可能となるものであることが必要です。

     例えば、「更新の有無」としては次のように記載します。
      ①自動的に更新する
      ②更新する場合があり得る
      ③契約の更新はしない

     また、「契約更新の判断基準」として、次のような内容を明示することが考えら
     れます。
      a 契約期間満了時の業務量により判断する
      b 労働者の勤務成績、態度により判断する
      c 労働者の能力により判断する
      d 会社の経営状況により判断する
      e 従事している業務の進捗状況により判断する

     また、更新の基準についても、他の労働条件と同様、労働契約の内容となって 
     いる労働条件を使用者が変更する場合には、労働者との合意その他の方法 
     により、適法に変更される必要があります。

   (3)就業の場所・従事すべき業務
     雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りますが、将
     来の就業場所や従事させる業務を併せて網羅的に明示することは差し支えあ
     りません。

   (4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休
     日、
休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時
     転換
に関する事項
     当該労働者に適用される労働時間等に関する具体的な条件を明示しなけれ
     ばなりません。

     なお、明示すべき事項が膨大なものとなる場合においては、労働者の利便性
     も考慮し、所定労働時間を超える労働者の有無以外の事項については、勤務
     の種類ごとの始業及び終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上で、当
     該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足ります。

   (5)書面により明示すべき貸金に関する事項
     書面によって明示すべき事項は、賃金に関する事項のうち、労働契約締結後
     初めて支払われる賃金の決定、計算及び支払方法並びに賃金の締切り及び
     支払の時期です。

     具体的には、基本賃金の額(出来高払制による貸金にあたっては、仕事の量
     (出来高)に対する基本単価の額及び労働時間に応じた保障給の額)、諸手
     当の額又は支給条件、時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増
     貸金について、特別の割増率を定めている場合にはその率並びに賃金の締
     切日及び支払日となります。

     また、就業規則の規定と併せ、賃金に関する事項が当該労働者について確定
     し得るものであればよく、例えば、労働者の採用時に交付される辞令等であっ
     て、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えあ
     りません。

     この場合、その就業規則等を労働者に周知させる措置は必要です。

   (6)退職に関する事項(解雇の事由を含む)
     退職の事由及び手続き、解雇の事由等を明示しなければなりません。

     これについても明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、 
     労働者の利便性も考慮し、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項
     名を網羅的に示すことで足りるとされています。

  □明示された労働条件が事実と相違する場合
   (1)即時に契約解除
     明示された労働条件と事実が相違する場合には、労働者は労働契約を即時 
     に解除することができます。

     明示された労働条件は、労働契約の内容となっていますので、もし事実と相違
     する場合には、労働者は明示されたとおりの労働条件の履行を使用者に要求
     することができます。

     その要求に応じない場合には、債務不履行を理由に損害賠償請求を請求す
     ることもできることになります。

     この場合の解除とは、将来に向かって消波させることをいいます。

   (2)明示された労働条件の事実との相違
     労働条件の解除が認められる場合は、明示された労働条件の全てを指すも
     のではなく、明示された労働条件中、労働基準法第15条第1項で明示しなけ
     ればならないと定められた事項に限られます。

     例えば、労働契約の締結にあたり、社宅を供与するべき旨の契約をしたにも
     かかわらず、これを供与しなかった場合、その社宅を利用する利益が賃金に
     あたる場合は、社宅を供与すべき条件は即時解除が適用されますが、社宅が
     単なる福利厚生施設とみなされる場合は、社宅を供与すべき旨の条件は、明  
     示すべき労働条件に含まれないので、即時解除は適用しないことになります。

     雇入れ後に労働協約又は就業規則が変更され、これに伴って現実に適用さ
     れる労働条件が変更された場合は、労働契約自体が変更されると解されるの
     で、事実との相違には該当しません。

   (3)必要な旅費の負担
     就業のために住居を変更した労働者が、明示された労働条件と事実が相違す
     ることを理由に労働契約を解除して、その日から14日以内に帰郷する場合に
     は、使用者は、労働者の帰郷のために必要な旅費を負担しなければなりません。

     ①帰郷旅費を負担しなければならない場合
       住所を変更した場合だけでなく、居所を変更した場合も含まれます。

       14日以内に帰郷の予定で請求した場合は、使用者の都合によって帰郷旅
       費が支給されないために、契約解除の日から14日経過後に帰郷すること
       になっても帰郷旅費を請求する権利は失われません。

       また、14日以内に帰郷するとは、14日以内に目的地に向かって現住所を
       離れればよく、目的に到達することは必要ありません。

     ②帰郷に必要な旅費
       「帰郷」とは、通常、就業する直前に労働者の居住していた場所まで帰るこ
       とを言いますが、必ずしもこれのみに限定されることなく、父母その他親族 
       の保護を受ける場合にはその者の住所に帰る場合も含まれます。

       「必要な旅費」とは、帰郷するまでに通常必要とする一一切の費用をいい、 
       交通費はもちろん、食事、宿泊を要する場合の宿泊費も含むと解されてい
       ます。

       また、本人とともに労働者により生計を維持されている同居の親族(事実婚
       も含む)も転居した場合には、その者の旅費も含みます。

  □罰則
   使用者が、労働基準法第15条に違反して明示すべき範囲の労働条件を明示しない
   場合や書面交付によって明示しなければならない事項について書面交付によって
   明示しなかった場合には、30万円以下の罰金に処せられます。

   使用者が帰郷旅費を負担しない場合も同様に罰せられます。


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労務リスクと労務管理

労災保険(政府労災)の基礎

労災保険(政府労災)の基礎

■労災保険 
 労災保険制度の内容は、意外と知られていません。  
 「会社が労災を認めてくれない」という話を聞きますが、これもその現れといえるでしょう。
 そもそも労災かどうかを認定するのは、国であり労働基準監督署であって、会社が認めるか
 どうかは関係ないのです。

 労災保険は労働者を保護するために、国が直接、被災労働者やその遺族に対して、災害
 補償を行う制度なのです。  
 また、労災保険は労働者のためだけの制度のように思われていますが、実は事業主の
 ための制度でもあるのです。

 事業主には、労働者の業務上のけがや病気に対して、一定の補償義務が課されています。
 けがや病気に対する治療費、休業中の所得補償など、その補償内容は労働基準法に定め
 られており、これを守らなければ罰則の適用対象となります。

 労災保険がこうした補償を肩代わりするしくみとなっているのです。
 もちろん、労災保険はすべての損害をカバーする「万能な保険」ではありませんが、
 小さな負担で大きな補償を得られる制度と言えるでしょう。  
 労災保険の保険事故には、「業務災害」と「通勤災害」があります。
 そこで、それぞれの認定基準について、見ていきましょう。

□業務災書の認定が下りる場合  
 業務災害とは、業務上の負傷、疾痛、障害、死亡をいいます。業務災害の認定は、
 「業務起因性」と「業務遂行性」という2つの要素から判断されます。

  <業務災害の認定
   ●業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること
   ●業務起因性:傷病等とその業務との問に因果関係があること

 業務上の負傷については、次の3つのパターンに分けることができます。
 1.事業主の支配・管理下で仕事をしている場合 
  所定労働時間内や残業時間中に社内で働いている場合には、特別な事情がない限り、
  業務災害と認められます。 
  なお、次の場合には、業務災害とは認められません。
   ・労働者が故意に負傷した場合
   ・労働者が個人的なうらみなどにより暴行を受けて負傷をした場合

 2.事業主の支配・管理下にあるが仕事をしていない場合
  昼休みや就業時間前後などに会社施設内にはいるものの、働いていない場合はどうなる
  のでしょうか。
  仕事が原因で負傷をしたわけではありませんので、基本的には、業務災害とは認められ
  ません。
  しかし、施設や設備の欠陥などにより負傷をした場合には、業務災害と認められます。

 3.事業主の支配下にあるが、管理下を離れて仕事をしている場合 
  出張や社用での外出など、会社の施設外で仕事をしている場合には、特別な事情がない
  限り、業務災害と認められます。 
  ただし、酒に酔って交通事故に遭ったなど積極的な私的行為や窓意的行為があった場合
  には、認められません。

□「通勤」の条件を知る 
 災害とは、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。 
 そもそも通勤中は、労働時間ではありませんので、何をするのも労働者の自由です。
 帰りに映画を見たり、食事をしたり、その行動パターンはさまざまでしょう。
 しかし、こうした私的行為によって発生した災害すべてに、労災保険を適用させるわけ
 にはいきません。
 そこで労災保険では、保護対象とする「通勤」の範囲を定めています。
 1.通勤 
  「通勤」とは、就業に閲し、次の移動を、合理的な経路および方法により行うことを
  いいます。
  業務の性質を有するものを除くものとされています。

   ①住居と就薫の場所との間の往復
   ②就業の場所から他の就業の場所への移動
   ③単身赴任先住居と帰省先住居の移動など 
  なお、業務の性質を有する場合には、一見、通勤のような場合でも、業務災害となります。
  例えば、休暇中に緊急呼び出しを受け、会社へ行く途中にけがをした場合などは、
  業務災害扱いとなります。

 2.逸脱・中断 
  労働者が、上述の移動経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱・中断の間と
  その後の移動は「通勤」とはなりません。 
  ただし、労働者が通常、通勤途中で行うような「ささいな行為」は、逸脱・中断とは
  なりません。

  <ささいな行為の具体例>
   ・経路上の近くにある公衆便所の使用
   ・経路の近くにある公園での短休息
   ・経路上の店でのたばこ・雑誌等の購入
   ・駅構内でのジュースの立ち飲み 
  また、「日常生活上必要な一定の行為」については、逸脱・中断の間は通勤とは
  なりませんが、その後の移動は通勤として取り扱われます。

  <日常生活上必要な一定の行為>
   ・日用品の購入その他これに準ずる行為
   ・職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練
    (職業能力開発絵合大学校において行われるものを含む)
   ・学校数育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練
    であって、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
   ・選挙権の行使その他それに準ずる行為
   ・病床又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
   ・要介護状態にある配偶者、子、父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、
    祖父母及び兄弟姉妹の介護(推続的に又は反復して行われるものに限る)

 3.合理的な経路および方法  
  通勤の定義にある「合理的な経路および方法」とは、移動を行う場合に、一般的に
  労働者が用いると認められる経路と方法をいいます。
  通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしても「合理的な経路」と
  なります。
  また、道路工事などにより、やむを得ず迂回する場合にも、「合理的な経路」と
  認められます。 
  鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車、徒歩など、一般的に
  用いられる交通方法であれば、いつも利用しているかどうかにかかわらず「合理的な方法」
  となります。

□労災保険の保険給付について 
 もし、労働者が仕事中あるいは通勤途上でけがをした場合、どんな補償を受けられる
 のでしょうか。
 労災保険には、次のとおり、さまざまな保険給付があります。
 なお、通勤災害については、事業主に労働基準法上の災害補償責任はありません。
 そのため、各保険給付の名称には、「補償」という言葉は使われません。
 葬祭給付を除いて、業務災害に関する保険給付の名称から「補償」の文字を取り除くと、
 通勤災害での保険給付名となります。
 1.療養補償給付/療養給付 
  労働者が労災に遭って療養が必要なときには、治療費などが全額補償されます。

 2.休業補償給付/体集給付 
  労働者が療養のために会社を欠勤して給与がもらえないときに、生活費として支給
  されます。

 3.傷病補償年金/傷病年金 
  労働者が療養を開始してから1年6カ月経過しても病気やけがが治らず、その症状が
  重い場合には、年金が支給されます。

 4.障害補償給付/障害給付 
  病気やけがが治ゆ(症状固定)したあと、一定の障害が残ったときには、年金または
  一時金が支給されます。

 5.遺族補償給付/遺族給付 
  労働者が亡くなったときには、残された遺族に対して、年金または一時金が支給
  されます。

 6.葬祭料/通勤災害は葬祭給付 
  労働者が亡くなったときに、葬儀を行った人に対して、一時金が支給されます。

 7.介護補償給付/介護給付 
  一定の障害により「傷害補償年金/傷害年金」または「障害補償年金/障害年金」を
  受けている人が、現に介護を受けている場合に、月単位で給付が行われま す。

 8.2次健康診断等給付 
  定期健康診断などの結果、肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目すべてに異常の所見
  が認められたときに、必要な健康診断と保健指導を受けることができます。 
  そのほか、社会復帰促進等事業として、一定額の特別支給金、特別年金、特別一時金
  が支給されます。

□「療養補償給付」と「休業補償給付」 
 前述の保険給付の中でも、特に請求の多い「療養補償給付/療養給付」と「休業補償
 給付/休業給付」については、もう少し詳しく説明をしていきましょう。
 1.療養補償給付/療養給付 
  労働者が労災に遭ったときには、病気やけがが「治ゆ」するまで、治療費などが全額
  補償されます。
  労災保険における「治ゆ」とは、これ以上治療を続けても、 医療効果が期待できず、
  症状が固定した状態をいいます。

  したがって、必ずしも完治を意味しているわけではありません。
  療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の給付」の2つの種類があります。
  「療養の給付」は、労災病院や労災指定医療機関で、無料で診察や手術などが受け
  られる現物給付です。 

  一方、「療養の費用の給付」は、緊急に診察を受ける必要があり、近くに労災指定
  医療機関がないなど、労災指定医療機関以外の病院などで治療した場合に、その
  治療費にかかった費用を現金で支給するというものです。 
  「療養の費用の給付」を受けることができるのは、「療養の給付」を受けることが
  できない場合に限られています。 
  療養の給付の具体的な給付内容は次のとおりです。

   ①診察
   ②薬剤または治療材料の支給
   ③処置、手術その他の治療
   ④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
   ⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
   ⑥移送  

  「療養の給付」を受けるための手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養
  の給付請求書(様式第5号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の給付請求書
  (様式第16号の3)」に必要事項を記載し、事業主の証明を受け、病院経由で所轄
  労働基準監督署へ提出することになります。
  実務的には、労災指定病院などに提出すると考えてよいでしょう。 
  「療養の費用の給付」の手続きは、業務災害であれば「療養補償給付たる療養の費用
  請求書(様式第7号)」、通勤災害であれば「療養給付たる療養の費用請求書
  (様式第16号の5)」に必要事項を記入して、事業主の証明を受け、所轄労働基準
  監督署へ直接提出します。

 2.休業補償給付/休業給付 
  「休業補償給付/休業給付」は、休業の4日目から支給されることになります。 
  業務災害の場合、休業した最初の3日間については、労働基準法上の休業補償として、
  事業主が平均賃金の60%以上を支給しなければなりません。 
  労災で休業した場合、「休業補償給付/休業給付」のほかに、社会復帰促進等事業
  として特別支給金が上乗せ支給されます。  
  それぞれの支給額は次のとおりです。

   ●休業補償/休業給付金=給付基礎日額の60%×休業日数
   ●休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数 

  給付基礎日額とは、労働基準法の「平均貸金」に相当するものです。
  算出方法は、労災事故が発生した日や医師の診断によって疾病の発生が確定した日の
  前日から遡って3カ月間に支払われた貸金総額をその期間の総日数で割ったものです。

  ただし、給与計算の締切日が定められている時には、事故発生日や疾病発生確定日の
  直前の締切日から3カ月問に支払われた貸金総額で計算します。 
  休業補償給付の請求手続きは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を
  所轄労働基準監督署に提出することになります。

  このとき、休業特別支給金の支給申請も同時に行うことになっていますが、請求
  様式は同一ですので、改めて請求しなおす必要はありません。
  もし、休業が長期にわたる場合には、1か月ごとなど、数回にわたって請求すると
  よいでしょう。

□経営者のための「特別加入制度」 
 労災保険は、本来、労働者を対象とした保険制度です。
 しかし、多くの中小企業の経営者は、労働者と同様に仕事をしていることでしょう。
 また、労働者であっても、海外派遣者については労災保険の適用がありません。

 そのため、こうした人たちを保護することを目的に、労災保険では、特別加入制度を
 設けています。 
 特別加入制度は、全部で4種類ありますが、ここでは「中小事業主及びその家族従事者」
 を対象とした特別加入制度をご紹介します。

 ◎中小事業主及びその家族従事者の特別加入 
  特別加入での中小事業主とは、以下に定める数以下の労働者を常時使用している
  事業主のことをいいます。
   ●金融業、保険業、不動産業、小売業……50人
   ●卸売業、サービス業……100人
   ●上記以外……300人

  中小事業主が特別加入するためには、次の条件を満たす必要があります。
   ①雇用している社員の保険関係が成立していること
   ②労働保険事務組合に労働保険事務を委託していること 
  また、中小事業主等の特別加入制度では、社長のほかに、家族従事者や役員がいる
  場合には、その人たち全員を包括して加入させなければなりません。

  ただし、役員と名のつく人は全員というわけではありません。
  例えば、兼務役員などで、社長をはじめ他の役員から仕事に関する指揮命令を受け、
  労働者と同様に貸金を得ているという人は、労災保険が適用されますので、わざわざ
  特別加入の手続きをする必要はありません。 

  なお、特別加入をした場合、基本的には、一般の労働者と同様の保険給付を受ける
  ことができます。
  しかし、「2次健康診断等給付」、「ボーナス特別支給金」は受けることができません。

  また、保険料を滞納した場合、その期間中に起こった事故については、保険給付が
  行われない可能性があります。
  さらに、事故発生日まで遡って特別加入をすることはできませんので、注意が必要です。


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労務リスクと労務管理

メンタルヘルスのリスク

メンタルヘルスのリスク
 

  ■メンタルヘルスのリスク

   職場での複雑な人間関係、思うように進まない仕事、育児や介護の問題など、現代社会
   で生きるうえでストレスは切っても切れないものです。

   「社会の荒波」と比喩される現代の諸問題に対して、人は運動や趣味などでストレスを
   発散したり、ストレスを生み出す原因そのものを解消したり、強い精神力を培う
   ことでストレスに耐えるといった方法でその波を乗り越えています。

   しかし、それらの努力の甲斐もなくストレスが解消されないまま、増大する不安や

   不満に心が耐えられなくなって心に変調をきたしてしまう人も少なくありません。

   ビジネスの世界は、このような状況がより顕著に表れる傾向にあります。

   コロナ禍の今、不況による業績不振や不透明な業界展望など、社長を含めた社員の

   ほとんどが、会社で何らかのストレスを感じていると言ってもいいでしょう。

   中でも、体力・気力ともに充実し、これから大きく飛躍していくであろう20代後半
   から30代という世代が、特に強いストレスに悩まされていると言われています。

   この世代は、会社の三層化(50代以上のベテラン、20代後半〜40代の中堅、20代前半

   の若手という3つの世代のギャップ)による軋轢を感じながら、同時に現在の会社の
   中核として、そして会社の将来を担う存在として、大きな期待を一身に浴びています。

   このことからも最も心のケアが必要な世代であることが分かるかと思います。

   実際に社員がうつ病や自律神経失調症などメンタルヘルス不全になった経験を持つ

   企業も多いのではないでしょうか。

   一方で、中小企業で社員がいったんメンタルヘルス不全を起こしてしまうと、復職する
   ケースはまだまだ少数で、ほとんどが退職しているのが実態である。

   また近年では、企業経営を取り巻く環境が厳しく、今まで好業績を上げてきた社員が

   目標を達成できないためにスランプに陥り、メンタルヘルス不全を起こして退職して
   しまうというケースも増えています。

   こうした優秀な人材の流出は会社にとっても「パフォーマンスの低下」につながり

   かねない大きなリスク要因である。

   「自社にはあまり関係がない問題」と感じる企業も少なくないが、まずはメンタルヘルス

   のリスクと実態を確認し、自社の対策につなげていただきたい。

    ◎企業におけるメンタルヘルスのリスク

     1.法的責任
       職場環境の整備に関する労働安全衛生法の遵守に加え、企業としての安
       全配慮・健康配慮義務を怠ると、民事上の賠償責任が問われる。

     2.リスクマネジメント
       (1)従業員の過労死や過労自殺に対する賠償責任。
         *長時間労働(1カ月問100日時間以上の時間外労働、3カ月連続で80
          時間以上の時間外労働など)の実態を認識していながら、企業として
          適切な対応をしなければ企業側の安全・健康配慮責任が問われる。

       (2)事故・ミスの発生による安全・健康の損害、社会的信用の低下。
         *メンタルヘルス不全の状態で仕事をしていると、事故・ミスが生じる確 
          率が高まる。
          事故・ミスは、職場における健康を阻害するだけではなく、社会的信用
          の低下を招くのはもちろん、品質低下により取引先からの信用を失う
          リスクも高まる。

     3.パフォーマンスの低下
       職務遂行能力の低下と労働力の損失。
         *「今まで半日で終わっていた仕事が1日かかってもできなくなった」「優
          秀な人材の損失により戦力がタウンした」は、企業の生産性を低下さ 
          せる要因となる。

  □メンタルヘルスの実態
   では、実際の企業におけるメンタルヘルスの現状はどうだろうか?
   2010年に労務行政研究所が発表した『企業におけるメンタルヘルスの実態と対策
   を見てみる。

   表では、過去3年間でメンタルヘルス不調者が「増加している」と回答した企業が

   44.4%となっており、規模が300〜99名と1000名以上の企業で半数が増加し
   ていると回答。

   数の論理で社員数が増えると、不調者の人数が増える確率も上がると考えられる。

   『企業におけるメンタルヘルスの実態と対策』内の「過去3年間におけるメンタル
   ヘルス不調者の増減傾向」を参照。

   一方、300人未満の企業では「分からない」という回答が24.1%となっているように、

   中小企業ではメンタルヘルス対応が遅れており、その実態がつかみ切れていない
   (場合によっては「メンタルヘルス不調者=意欲の低下」と見なしている)のが実情と
   思われる。

   また年代別に見ると、特に増加傾向が目立つのは20、30代である。

   自社におけるこの年代の役割・立場を想像していただきたい。

   その多くは「初級管理職者となって部下指導・育成責任を担う立場」「チームの中心
   として業績達成・業務の遂行の重要な役割を担いつつある立場」でしょう。

   今までより仕事の責任が重くなり、また人間関係も複雑になる状況に対応できずに、

   メンタルヘルス不調を起こしている状況がうかがえます。

  □メンタルヘルス不全者が増加している原因は
   
一般的には成果主義人事制度による職場の人間関係の変化や、燃え尽き症候群の
   増加などと言われます。

   2012年に厚生労働省が発表した『労働者健康状況調査(仕事や職業生活に関する
   強い不安、悩み、ストレスの有無および内容別労働者の割合)』を参考に検討してみま
   しょう。

   仕事において「不安・迷い・ストレスがある」という労働者は60.9%に上る。

   原因で最多は「職場の人間関係の問題」(41.3%)で、次に「仕事の質の問題」
   (33.1%)、「仕事の量の問題」(30.3%)、「会社の将来性の問題」(22.8%)と
   続きます。

   仕事の質の問題とは、自分の能力をはるかに超えた困難な業務を任されている

   など、個人の責任が重くなっていることへのストレスと考えられる。

   仕事の量の問題とは、能力以上の業務量を任されることに対するストレスであるかと
   思われます。

   確かに、企業の生産性意識が高まり、組織も少数精鋭化が進んだことは確かです。

   仕事と能力のギャップが大きすぎると、メンタル不全を起こしてしまうということだ。

   こうした状況において、企業はどういった対策を打たねばならないのか。

   メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の代表的な実施項目を記載した。

   当然、各社によって風土や状況の違いがあり、実態に沿った対策が必要だが、まずは
   メンタルヘルス対策チェックリストとして活用していただき、自社の対応度を認識する
   ことから始めていただきたい。


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労務リスクと労務管理

退職金の受け取り方

退職金の受け取り方

■退職金の受け取り方
 退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかについて悩む人も少なくありません。
 受け取り方法が一時金と年金の両方の制度を持つ会社であれば、どう受け取るかを選択
 しなければなりません。
 退職一時金を受け取ると、「退職所得」として課税の対象になります。

 所得税の速算表 
  上記速算表より 
  課税される所得金額=課税所得金額(a)×税率(b)−控除額(c)
  住民税は一律10%の税率で課税されますが、税額を10%軽減する措置が
  講じられています。

  <退職所得の計算>
   退職所得=(退職一時金の額−退職所得控除額)×1/2
   「退職所得控除額」は、勤続20年までは1年につき40万円(ただし80万円に  満たない
   場合は80万円)、勤続年数が20年を超える部分は1年につき70万円を差し引くことが
   できます。
   勤続年数で1年未満の端数が生じた場合は1年に切り上げます。
   源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和3年4月以降分)    
   現行制度では、「退職所得控除」を差し引くことができることです。
     勤続年数が長いほど差し引ける金額が多くなり、結果的に課税の対象を少なくする
   ことができ、その結果所得税・住民税が小さくなります。
   退職一時金の額が退職所得控除額以下であれば、実質的に課税されません。
   超えた場合でもその1/2が課税の所得金額となる点です。
     ただし、この措置を受けるためには、退職一時金を支払う会社に「退職所得の受給
   に関する申告書」を提出しなければなりません。
   退職金に対する課税は他の所得と合算しない「分離課税」となっています。
   その年に受け取った給与や公的年金など他の所得と合算しないので、税率が高く
   なることはありません。

 ●退職金を年金で受け取ると   
  退職年金は雑所得となり、公的年金に準じるという考え方で、次の算式で計算します。
  公的年金等に係る雑所得の速算表より   
   雑所得=(a)×(b)−(c) 
   実質的に課税されない場合も
   「公的年金等の収入金額」には、厚生年金・国民年金等の公的年金が合算される
   ことです。
   ○65歳未満の場合:公的年金と退職年金の合計額が70万円以下
   ○65歳以上の場合:公的年金と退職年金の合計額が120万円以下

  算出した雑所得からの控除
   □基礎控除(38万円)  
   □社会保険料を負担していればその全額が社会保険料控除
   □要件を満たせば⇒  ・配偶者控除(38万円)
    ・配偶者特別控除(3万円〜38万円) 
    ・生命保険料控除(最高5万円)
    ・個人年金保険料控除(最高5万円)
    ・地震保険料控除(最高5万円)等
               (カッコ内の金額はいずれも所得税ベースで現在のもの。)

  したがって、状況によっては、退職年金と公的年金の収入合計額がもっと大きくても、
  実質的に課税されない分岐点となる額は大きくなります。
  受取総額を考えるなら、一時金よりも年金として受け取ったほうが多くなりますが、
  経営環境が悪化したときのリスクを考える必要があります。
  (退職後も、在職していた会社の経営状況をチェックしなくてはならない)

  多くの企業年金では、企業が年金資産の運用を外部の金融機関に委託しています。
  したがって、その企業が経営破たんした場合でも、年金資産自体が消滅するわけでは
  ありません。 
  しかしその場合、一般的には、その企業が経営破たんした時点の年金資産の「時価」を
  加入者ごとに分配することになります。

  運用成果が予定利率を上回っていれば年金資産が増えたことになりますが、逆の
  場合はその時点で想定している年金資産を受け取れないことになります。
  さらに企業が経営破たんした場合には、その企業から「年金」として受け取ることは
  できません。

  ただし、要件を満たせば「企業年金基金連合会」に年金資産を移換でき、そこから
  年金として受け取ることになります。
  先ほどの「逆ザヤ」となった事例で言えば、年金資産を減額された上に、連合会の
  通算企業年金の予定利率が適用されます。

  これより高い予定利率で運用しながら年金が支払われる予定だった場合は、年金額が
  減額されることになります。
  経営破たんに至らない場合でも、経営危機となった場合、
  加入者の3分の2の同意を取り付けたうえで、厚生労働大臣の認可を受ければ、年金
  額が減額されることがあります。


  年金で受け取る場合には、退職した後も、在職していた会社の経営状況をチェックして
  おく必要があるのです。
  過去に報道されていた某航空会社の事例がその代表的なものです。

  退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかの選択肢は、税金等を差し引いた後の
  実質の手取り額や、受取総額の相違などの「損得の問題」は重要ですが、退職後の
  長期的ライフプランを立て、上手に受け取ることも視野に入れて考えるべきでしょう。


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労務リスクと労務管理

安全衛生委員会の設置と規程

安全衛生委員会の設置と規程


  委員会設置の目的

   労働災害防止の取り組みは労使が一体となって行う必要があります。

   そのためには、安全委員会や衛生委員会において、労働者の危険又は健康障害を
   防止するための基本となるべき対策(労働災害の原因及び再発防止対策等)などの
   重要事項について十分な調査審議を行う必要があります。

  □安全衛生委員会

   企業には、安全配慮義務という信義則上負うべき義務が課せられています。

   安全配慮義務は最高裁判所の判例で定立された概念であり、労働契約法第5条に
   よって「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ
   労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明文化されました。

   企業は従業員の安全と健康について配慮しなければなりません。

   そのためには、長時間労働の抑制や危険有害業務の制限、安全衛生管理体制の
   構築、健康診断の実施、安全衛生知識の啓蒙などを普段から意識する必要があり
   ます。

   これらについて規定されている法令はさまざまですが、中心となるのは労働安全衛生
   法(以下「安衛法」)や、その下部規程である労働安全衛生規則です。

   そして、企業の現場において安全面や衛生面について検証や対策の実施の中心的
   役割を果たす機関として「安全委員会」「衛生委員会」があります。 

   これら委員会の設置要件は安衛法で定められています。なお、安全委員会と衛生
   委員会の両方を設置する必要のある企業は、これらをまとめて「安全衛生委員会」
   とすることも可能です。

    <委員の構成、調査審議事項等

   ここで、安全衛生委員会のメンバーを見てみましょう。

   メンバーは、次の役職がそれぞれ1名です。

    1.委員長(総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者の選任を必要とし
      ない事業場においては事業の実施を統括管理する者、もしくは、これに準ず
      る者から企業が指名。総括安全衛生管理者は事業場の安全衛生を統括管
      理する者で、衛生管理者であるなどの特段求められる資格要件は無し)
    2.安全管理者のうち企業が指名した者
    3.衛生管理者のうち企業が指名した者
    4.産業医のうち企業が指名した者
    5.従業員のうち安全に関する経験を有する者から企業が指名した者
    6.従業員のうち衛生に関する経験を有する者から企業が指名した者

   委員長となる総括安全衛生管理者は、企業の安全管理者および衛生管理者を指揮
   する責任者です。

   委員長を除き、メンバーを増やすことは企業の自由です。

   また、委員長を除く委員(安全管理者のうち企業が指名した者など)の半数は、従業員
   の過半数を代表する労働組合または、従業員の過半数を代表する者の推薦によっ
   て指名された者でなければなりません。

   そのため、安全衛生委員会の委員には、現場作業の経験が豊富なべテランや総務部
   の課長などが選任されるケースが多くあります。

   安全衛生委員会は、企業と従業員が職場の安全衛生について調査審議し、労働災害
   の防止を目指す重要な組織であり、その構成や調査審議事項、決議の方法などの
   ルールは安全衛生委員会規程で定められます。

  安全衛生委員会規程ひな型
   紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定める
   べき内容が異なってきます。


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就職・退職時の諸手続き

就職・退職時の諸手続き

■就職の際の手続き
 1.入社誓約書の提出
  新卒採用や転職などによって新たに就職する場合、本採用が決まった段階、または
  入社時に提出するのが「入社誓約書」です。
  これは、本人の入社の意思を確かめるとともに、履歴書や身上書の記載内容が正しい
  ことを再確認するという意味ももっています。
  多くの会社ではあらかじめ決まった書式の誓約書が用意されていますので、通常は
  記名・なつ印して会社が指定する部署に提出すれば手続きは終了します。


 2.労働契約書への調印
  労時間や就業規則について会社と従業員が交わす契約書が「労働契約書」です。
  働労契約書に必ず記載しなければならない事項は以下の通りとなっています。
  労働契約に際しては、労働条件によく目を通しておきましょう。

   (1)労働契約の期間(期間の定めのない労働契約の場合は不要)
   (2)就業の場所、従事すべき業務に関する事項
   (3)始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換に
    関する事項
   (4)賃金の決定・計算・支払の方法・締め切り・支払の時期
   (5)退職に関する事項

 2.身元保証書の提出

  入社誓約書と同様、本採用が決まった段階または入社時に提出するのが「身元保証書」
  です。
  身元保証人は最長で5年間(期間の定めのない労働契約の場合は3年間)、社員の行跡に
  責任を負うことになり、場合によっては本人と連帯して損害賠償を行う場合もあります。
  ですから、知人などに身元保証書への署名・なつ印を依頼する際には、丁寧な態度で
  お願いすることが望ましいでしょう。
  通常、保証人は両親のうちどちらか1名と、親戚や知人などから1名の計2名が
  一般的です。


□会社を辞めるとき
 何らかの理由で会社をやめるときは、退職願を出して退職の意思を伝えることになります。
 会社所定の書式がある場合にはそれを使用しますが、ない場合には自分で書く必要が
  あります。
  退職願には特に決められた記載事項はありませんが、少なくとも「退職理由」「届出
  年月日」「退職希望日」「署名・なつ印」は忘れないようにしましょう。
  退職願のあて名は通常、会社の代表者または会社あてとなります。


 1.失業保険の受給方法
  次の仕事や就職先が決まっている場合は問題ありませんが、次の就職先を決めない
  まま会社を退職した場合には、次の仕事が見つかるまでの間は収入が断たれる
  こることで当座の生活費を賄うことになります。
  ただし、失業保険の給付は退職前の1年間で6カ月以上雇用保険の被保険者として
  保険料を支払っていることが条件となります。
  失業保険の受給に必要な手続きは以下の通りです。


 2.失業保険の受給手続き
  ・届出先………住所地を管轄する公共職業安定所
  ・届出人………本人
  ・必要書類……雇用保険給付申請書、離職票、雇用保険被保険者証、住民票または
         運転免許証、写真(タテ3センチ×ヨコ2.5センチ)、印鑑(認印可)


  なお、給付額および給付日数は在職中の賃金額や在職期間によって異なります。
  また、退職理由によっても給付条件は変わり、自己都合による退職の場合には退職後
  3カ月間は待機期間となり失業保険を受給することはできません。
  支給期間についても自己都合退職は会社都合退職に比べて期間が短くなっています。


□再就職手当を受ける
 所定の失業保険給付期間を過ぎる前に再就職できた場合には、再就職手当を受け取る
  ことができます。
  ただし、再就職手当を受けるには幾つかの条件を満たす必要があります
  (以下主要なものを抜粋)。

   1.就職日の前日における基本手当の支給残日数が45日以上で、かつ所定給付日数の
    3分の1以上であること
   2.1年を超えて雇用されることが確実であると認められる就業につくこと
   3.離職前の事業主による再雇用でないこと
   4.自己都合退職による待機期間が終了していること
   5.過去3年以内に再就職手当を受けていないこと

 ●再就職手当の支給申請手続き
  ・届出先………住所地を管轄する公共職業安定所
  ・届出人………本人
  ・必要書類……再就職手当支給申請書、受給資格者証、印鑑(認印可)


□退職後の健康保険は
 会社に勤務している間は、会社で加給している健康保険組合の被保険者となっています。
 しかし、退職した場合にはその後どの健康保険に加入するのかを自分で決めなくては
 なりません。
 その選択肢は以下の5種類です。

  1.国民健康保険に加入
  2.在職中に加入していた健康保険を任意継続(最長2年間まで)
  3.家族の被扶養者となる
  4.退職者医療制度を利用する
  5.在職中に特定健康保険組合に加入していた場合は、特定退職被保険者になる


 上記のうち任意継続の場合は、会社による保険料負担がなくなるため保険料は在職中の
 原則2倍となりますが(上限あり)、自己負担は2割のまま変わりません。
 国民健康保険に加入した場合は、自己負担は3割となります。


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労務リスクと労務管理

社内表彰制度

社内表彰制度

 ■社内表彰制度とは
  社内表彰制度とは、永年勤続表彰を初めとして、業績表彰、皆勤表彰、改善提案表彰
  などの各種制度を総称したものです。 

  どの表彰制度も根本的な考え方としては
   →従業員の士気鼓舞
   →仕事に対して意欲的に取り組むための動機付け
   →会社への帰属意識向上
  といったことを目的とする、いわゆるインセンティブ制度のバリエーションである
  といえます。 
  しかしながら、制度の設定方法によってはその効果や社員からの印象も異なってくる
  ものです。
  そこで、各種表彰制度を例にとってその効果と役割を考えてみたいと思います。

 □表彰の目的と種類
  社内表彰制度をその目的別に簡単に分類すると、大きく分けて5種類に分類できそう
  です。
  具体的な表彰を例にとりながら、それらを以下に紹介します。

  1.業績達成のための表彰
    →営業コンテスト →営業目標達成表彰 →顧客紹介キャンペーン

  2.社員モラル向上のための表彰
    →皆勤表彰 →無事故表彰 →永年勤続表彰 →善行表彰

  3.会社の節目を祝う表彰
    →創業記念

  4.社員の節目を祝う表彰
    →定年退職 →成人記念 →誕生日記念

  5.直接売り上げには結び付かないものの、間接的に社業に貢献するための表彰
    →改善提案 →アイデアコンテスト 

  前記の分類は、例えば「皆勤賞」などは社員が毎日きちんと出社することによって
  生産性が上がり、業績向上に結び付くなど、分類上は2.の「社員モラル向上のための
  表彰」ではあるものの、間接的には2.の「業績達成のための表彰」に繋がるものも
  ありますが、そういった副次的な効果は別と考え、それぞれ、根本の考え方に基づいた
  分類としました。

 □目的に応じた表彰の効果と運用方法
  次に、前項で5種類に分類した表彰制度それぞれの具体的な効果と、上手な運用方法
  について考えてみましょう。

  1.業績達成のための表彰 
   これは、そのものずばりの表彰といえ、会社の取扱商品の売り上げを伸ばすために
   社員を競わせるということになります。
   「コンテスト」という形でゲーム性を取り入れることによって社員の抵抗感を
   和らげる効果もあるため、この制度を取り入れている企業は多いようです。 

   運用方法としては、営業コンテストの場合、
    →通常の業績評価と同様に売上高や売り上げ個数で順位をつける
    →商品ごとにポイントを設定して累計ポイントで順位をつける
   といった方法をとっているようです。 
   このようなキャンペーンを行う場合には、たとえコンテスト形式にしたとしても
   「余計な仕事が増えた」など、社員から不満が出ることも考えられます。
   そうした不満を少なくするためにも、ビジネスの生々しさを極力排したポイント制
   などによって評価を決定したほうがよいでしょう。 
   また、営業職以外の社員をコンテストに参加させる際に特に気をつけるべきことと
   しては、ノルマを設定しないということでしょう。

   普段営業をすることのない総務、経理といった部署の社員に対してノルマを設定
   すると、専門外の仕事をさせられているという不満を社員から抱かれる可能性も
   あります。
   売り上げ増強月間などのキャンペーンであるならばいざ知らず、「コンテスト」などと
   銘打ったゲーム性を取り入れたキャンペーンならば、社員の内心から湧き出る
   意欲を大切にすべきであって、社員はあくまでノルマのためではなくコンテスト
   上位の報酬のために頑張るというスタイルにしていかないと制度が長続きしない
   ことも考えられます。 

   間接部門の社員をコンテストに参加させるもう一つの方法としては、直接の売り上げ
   をポイントに換算するのではなく顧客紹介キャンペーンなどの名目で、知人に
   自社の商品を紹介してもらうなどのやり方で表彰を行うのもよいでしょう。 
   あくまでも、仕事を楽しんで業績を上げて行こうとするのが考え方としては最も
   不満を受けにくいのです。
   業績達成のための表彰を行う際には、そういった趣旨を社員に十分理解してもらう
   必要があります。 

   報酬についてですが、こういった社業と直結したキャンペーンの際には、
   表彰の際の商品には報奨金を支給するというケースが多くなっています。
   金額は会社によってさまざまで、多いところでは50万円少ないところでは2000円
   といった会社もあります。
   一般的にはおよそ2万円程度が多くなっています。
   また、営業コンテストの上位者には海外旅行などの商品を出すところもあるようです。 
   要は、従業員がやる気を出してくれるだけの魅力ある報奨を用意することが、
   こうした本業に関連する表彰制度には必要なのです。

  2.社員モラル向上のための表彰 
   社員モラル向上のための表彰は、職場の雰囲気を良くし、社員の会社に対する
   帰属意識を高めることによって、間接的に業績を向上させ得る効果を持ちます。
   無事故表彰によって事故を減らし、車の修繕費を節減するなどのメリットがそれに
   当たるわけです。 
   しかし、これらの業績向上はあくまで副次的な効用であって、経営者がそれに期待
   するのは当然であるものの、従業員にまでその認識を押し付けるのは得策とは
   いえません。 

   従業員に対してはあくまで「真面目にやっていれば良いことがある」という本来の
   表彰目的を理解してもらうのが大切です。 
   そのため、社員モラル向上のための表彰は、皆勤賞や永年勤続表彰など、仕事の
   能力自体よりもむしろコツコツ続ける毎日の努力に対して表彰を行うべきと
   いえます。 
   すべての社員に平等にチャンスを与え、真面目にやれば報われるという希望を
   すべての社員に持ってもらうことこそ、この報奨制度の最大の目的であり効果である
   といえるのです。

   無事故表彰の場合では、◯年以上無事故皆勤であればその年度1年間といった具合に、
   継続こそ力であるという趣旨で制度を定めるのが良いでしょう。 
   社員のモラル向上のためのキャンペーンを行う際にはこれらの点に配慮が必要です。
   この種の表彰制度の報奨は、
    →国内旅行 →小額の現金
   などであることが多いようです。
   それに次いで多いのは、
    →時計などの記念品 →商品券 →文具
   などでしょう。 
   記念品および報奨金の相場は、
    →永年勤続(30年)で10万円 →皆勤(1年)で1万円
    →無事故無違反(5年)で3万円
   といったところです。

  3.会社の節目を祝う表彰 
   創立記念日や創業◯周年事業など、会社の節目を祝うための表彰は、社員に対して
   というよりもむしろ会社のここまで成し遂げてきた業績を回顧するための、表彰と
   いうよりはむしろ行事であると考えられます。 
   社員に自社の創立記念日を知ってもらったり、会社の歴史を知ってもらうことに
   よって、社員一人ひとりが会社の一員であることを自覚できれば、この種の表彰
   (行事)としては大成功といえるのではないでしょうか。 

   創立記念日の報奨は通常「創立記念休日」の制定となります。
   また、周年記念では、大企業などでは盛大な行事を開くところもあるようですが、
   一般的な中小企業ではそこまでするところは少なく、お菓子や赤飯などの簡単な
   記念品や、社員旅行などの社員全員で楽しめる企画を実施しています。 
   表彰としての効果に多くを望めないこれらの表彰ではありますが、社員同士の、
   あるいは会社と社員の連帯感を高めるためには、あってもよいかも知れません。

  4.社員の節目を祝う表彰 
   成人式を迎える若い社員や、定年となるベテラン社員の人生の節目を祝うのが
   この表彰です。 
   記念日を迎えた社員に会社からもちょっとした贈り物をするのがこの表彰の趣旨
   ですから、社員に対する細かな心配りができるかがこの表彰制度の正否を左右する
   といえます。
   これらに類する表彰は
    →結婚記念日 →誕生日
   など非常にさまざまな局面で制定できますので、時短対策としての休日増加策
   としても利用できます。 
   報奨は、時短対策としてなら休日を、そうでない場合は
    →ケーキ(誕生日) →筆記用具(成人式) →旅行(定年)
    →書籍 →アルバム
   など、お金をかけなくとも気配りの通じるものを工夫して送るのがよいでしょう。

  5.直接売り上げには結び付かないものの間接的に社業に貢献するための表彰 
   書類の整理方法の工夫、日常業務の効率化など、主に間接部門の業務改善提案や、
   あるいは、まったく仕事と関係ないアイデアコンテストなどの表彰がこれに
   当たります。 
   自動車メーカーのトヨタが行っている「アイデア・オリンピック」などは、車体が
   伸縮する車や水陸両用車など、奇想天外な機械が多数出品され、一見意味のない
   行事の典型的な例といえますが、入賞したアイデアが実用化された例もあり、
   一概に無駄とはいえないところもあるのです。

   社員の創造力を刺激し、遊び心を発揮させるためにはこうしたイベント的な表彰も
   意外と効果的なのかもしれません。 
   実用面で見ると、「改善提案コンテスト」などは、どうしても日常の業務として
   ルーチン化され、業務効率の検討を見過ごされがちな事務処理などに新しいアイデア
   を取り入れることができます。 

   改善提案の判定方法には
    →年に何件提案したかという回数
    →提案の優秀性
   という2種類の判定方法が考えられます。
   これに加えて
    →QCサークルなどによるグループ提案
    →個人による提案
   の2種類の提案方法があるため、これらのうちどの方式を取り入れるかは、
   それぞれの企業の組織や社内の実情に沿って検討するのが良いと思います。 
   改善提案、アイデアコンテストの報奨は
    →提案の質に応じて300円程度から10万円程度の報奨金
    →規定の提案件数を満たした上で一定の水準以上の提案を行った人に
     一律5000円といった、報奨金制度を取り入れる企業が多いようです。

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労務リスクと労務管理

労使協定について

労使協定について


  ■労使協定とは

   「労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数
   で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者と使用者との書面に
   よる協定」を言います。

   中でも時間外労働や休日労働等に関する「36協定」は有名なところです。

   ここでは、労使協定を締結する上で注意すべきことについて概要を、ご紹介します。

   1. 労使協定の前に

    あなたがよく耳にする就業規則とは、「労働者が就業上遵守すべき規律及び労 働
    条件などを定めた規則」を言い、労働者の過半数で組織される労働組合があるときは
    その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数
    を代表する者の意見を聴き、その結果を書面にして、所轄の労働基準監督署長に
    届け出る必要があります。

    労働協約とは、「労働組合と使用者との間の労働条件等に関する協定」を言い、
    書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによって効力が生じます。

   2. 労働者の過半数代表者とは

    (1)労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと
      ⇒ 管理監督者に該当する可能性のある人は避けた方がよいです。

    (2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、
      挙手等の方法による手続きにより選出された者であること
      ⇒ 会社の代表者が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向によって
      過半数代表者が選出された場合、その協定は無効になります。

    (3)使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうと
      したこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な
      取り扱いをしてはいけません。

  ■協定の種類

   1.貯蓄金の管理に関する協定

    使用者は、労働者の委託を受けて貯蓄金を管理しようとする場合は、労使協定を
    結び労働基準監督署(以下労基署)に届け出なければなりませんが、その貯蓄金が
    労働者の預金を直接受け入れて管理する社内預金の場合は、労使協定に次の事項
    を定めなくてはなりません。

     (1) 預金者の範囲

     (2) 預金者1 人あたりの預金額の限度

     (3) 預金の利率及び利子の計算方法

     (4) 預金の受入および払戻しの手続

     (5) 預金の保全の方法

   2.賃金支払い一部控除に関する協定

    労働基準法(以下 労基法)では、使用者は賃金を労働者にその全額を支払うことを
    定めていますが、2 つの例外を認めています。

    (1) 法令に別段の定めがある場合

     所得税法による所得税等の源泉徴収、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険
     徴収法による保険料の控除

    (2) 労使協定がある場合

     但し、労使協定を結べば無制限に控除してよいものではありません。

     購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費、財形
     貯蓄、会社加入の生命保険などが認められています。

   3.1 ヶ月単位の変形労働時間制

    1 ヶ月単位の変形労働時間制とは、1 ヶ月以内の一定期間を平均し、1 週間
    あたりの平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で、特定の日又は週に
    法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

    また、この場合労使協定のみではなく、就業規則その他これに準ずるものにおいて
    次の事項を定めればこの制度を利用することができます。

     (1) 変形期間を1 ヶ月以内とし、

     (2) 変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、

     (3) 各日、各週の労働時間を特定する。
    
   4.フレックスタイム制に関する協定

    フレックスタイム制とは、1 ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めて、労働者が
    その範囲内で各日の始業および終業の時刻を選択できる制度です。

    この制度も労使協定のみではなく、就業規則その他これに準ずるものにおいて次の
    事項を定めれば、この制度を利用することができます。

    すべての労働者が労働しなければならない時間帯をコアタイムといい、自身が開始
    および終了の時刻を決定することができる時間帯をフレキシシブルタイムといいます。

    労使協定を結ぶ場合は、次の事項を定めることが必要です。

     (1) 対象となる労働者の範囲

     (2) 清算期間

     (3) 清算期間における総労働時間

     (4) 標準となる1 日の労働時間

     (5) コアタイムを設ける場合は、その時間帯の開始および終了の時刻

     (6) フレキシシブルタイムを設ける場合は、その時間帯の開始および終了の時刻

    ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える
    ことができます。

   5.1 年単位の変形労働時間制

    1 ヶ月を越え1 年以内の一定の期間を平均し、1 週間当たりの労働時間が40 時間
    以下の範囲内において、特定の日又は週に1日8 時間又は1 週40 時間を超え、
    一定の限度で労働させることができる制度です。

    この労使協定には次の事項を定めることが必要です。

     (1)対象期間を1 ヶ月を超え1 年以内とし、

     (2)対象期間を平均し、1 週間当たりの労働時間が40 時間を越えない範囲内で、

     (3)1日10 時間、1 週52 時間以内(対象期間が3 ヶ月を超える場合、1 週
      48 時間を超える週の数について制限があります)、連続して労働させる日数の
      限度が6 日(特定期間については1 週に1 日の休日が確保できる日数)

     (4) 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を特定

     (5) 労使協定の有効期間を定める

   6.1 週間単位の非定型変形労働時間制

    日ごとの業務に著しい繁閑の差があり、かつ、その繁閑が定期的に定まっていない
    場合に、1 週間を単位として、所定労働時間を10 時間以内と定めた上で、1 日の
    労働時間を10 時間まで延長して労働させることができる制度です。

    ただし、この制度を採用できるのは、小売業、旅館、料理店および飲食店のうち、
    常時使用する労働者が30 人未満の事業場に限られています。

   ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える
   ことができます。

   7.一斉休憩の適用除外に関する協定

    休憩時間は一斉に与えることが原則ですが、労使協定を結ぶことにより時間差で
    与えることができます。

    この労使協定において次の事項を定めます。

     (1) 労働者の範囲

     (2) その労働者に対する休憩の与え方

    ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える
    ことができます。

   8.時間外・休日労働に関する協定(36 協定)

    労働者に時間外労働あるいは休日労働をさせようとするときに結ぶ協定です。

    時間外労働と休日労働を両方させる場合は、様式9 号用紙に一緒に記載する
    ことができます。

    この労使協定は、労働者の過半数で組織された労働組合、それがない場合は
    労働者の過半数を代表する者と書面により締結します。

    労基法第36 条に規定されていることから、一般的に36 協定といわれています。

    協定には次の事項を定めます。(時間外労働届と休日労働届を一緒に提出する
    場合を想定しています)

     (1) 時間外(休日)の労働をさせる必要のある具体的事由

     (2) 業務の種類

     (3) 労働者の数

     (4) 1 日について延長させることができる時間

     (5) 1 日を超える一定の期間について延長することができる時間

     (6) 1 日を超える一定の期間について労働させることのできる休日

    休日労使協定が必要な休日は、法定の週1回の休日を指し、法定を上回って与えて
    いる国民の祝日は含まれません。

    これらの休日に労働させるときは、それにより1 週間の労働時間が40 時間を
    超えることとなる場合を除き、協定の締結、届出は不要です。

   ※労使委員会の決議および労働時間等設定改善委員会の決議をこれに代える
   ことができます。

   9.割増賃金の支払に代わる代替休暇付与に関する協定

    2020年年4 月より施行される改正労基法により、「所定外労働時間が1 ヶ月45 時間
    ・年360時間」であることは変わりません。

    これを超えた場合の割増賃金率は、5 割以上(中小事業主は当分の間、適用が猶予
    されます)となりました。

    「代替休暇」とは、60 時間を超えた時間外労働について法定割増賃金率のうち、
    新たに引き上げられた部分の支払に代えて有給休暇を付与することができる制度
    です。

    労使協定では次の事項を定めます。

     (1) 代替休暇として付与することができる時間の時間数の算定方法

     (2) 代替休暇の単位
       ・単位は「1 日」か「半日」のいずれかです。

     (3) 代替休暇を付与することができる期間
       ・時間外労働が60 時間を超えた月の末日の翌日から2 ヶ月以内の範囲
        で決めます。

     (4) 代替休暇の取得日および割増賃金の支払日

   10.事業場外労働のみなし労働時間に関する協定

    事業場外労働とは、労働時間の全部または一部について事業場外で労働した場合、
    使用者の具体的な指揮命令が及ばず労働時間を算定することが困難な業務に
    ついての労働を言い、みなし労働時間制の対象になります。

    外回りの営業の業務などがこれにあたります。

    また、みなし労働時間制とは、労働時間の算定の困難な業務に従事する労働者の
    労働時間について、実際に労働した時間ではなく、あらかじめ労使協定等に定めた
    時間労働したものとみなすという制度です。

    労使協定で定める事項は、

     (1) 対象とする業務

     (2) みなし労働時間

     (3) 有効期間

     (4) 時間外労働

     (5) 休日労働

     (6) 深夜労働

    ですが、(4)(5)(6)については就業規則で定めることで足りますが、他の
    労働者と異なる扱いをする場合には労使協定で定めることができます。

   11.専門業務型裁量労働制

    業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、
    遂行の手段および時間配分の決定などに関し使用者が具体的な指示をすることが
    困難なものとして厚生労働省令で定める業務について、みなし労働時間制とする
    ものです。

    労使協定で定める事項は次ぎの通りです。

     (1) 対象となる業務

     (2) 労働時間として算定される1 日の労働時間

     (3) 業務遂行の手段および時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指
        示をしないこと

     (4) 労働時間の状況に応じた対象労働者の健康および福祉を確保するため
        に講じる措置

     (5) 対象労働者からの苦情の処理に関して講じる措置

     (6) 有効期間(労働協約による場合を除く)

     (7) 使用者は、上記(4)(5)で講じた措置に関する労働者ごとの記録を、
    (6)の有効期間中およびその有効期間の満了後3 年間保存すること

   12.年次有給休暇を時間単位で付与する場合

    平成22 年4 月に改正された労基法により、年次有給休暇を時間単位で付与する
    ことができるようになりました。

    時間単位で付与できる年次有給休暇は1 年間で5 日分までです。

    使協定には次の事項を定めます。

     (1) 対象労働者の範囲

     (2) 時間単位年休の日数
        5 日以内の範囲で定めます。

     (3) 時間単位年休1 日の時間数
        1 日の所定労働時間を下回らないものとしなければなりません。

     (4) 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
        2 時間単位、3 時間単位、4 時間単位とすることもでき、労使協定に
        定めることにより、当該時間単位年休の付与の最小単位となります。

   13.計画年休に対する協定(年次有給休暇の5 日を超える日数)

    年次有給休暇の5 日を超える日数を対象として、労使協定により、使用者は年次
    有給休暇を与える時季について具体的に定めることができます。

    事業場全体を休業させる一斉付与方式、グループ別の交替付与方式、個人別付与
    方式などがあります。

    5 日を超える年次有給休暇の権利がない労働者に対しては計画的付与はできず、
    一斉休業の場合はその者に休業手当を支払わなくてはなりません。

    労働組合の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と締結
    された労使協定の効力は、組合員以外の労働者や計画的付与に反対する労働組合
    の労働者を含め、事業場の全労働者におよびます。

   14.年休の賃金支払いに関する協定(有給休暇中の賃金)

    年次有給休暇を取得した日の賃金は、次のいずれかを選択し、必ずその選択した
    方法により支払わなければなりません。

     (1) 平均賃金

     (2) 所定労働時間労働した場合の通常の賃金

     (3) 健康保険法の標準報酬日額に相当する額

    (1)(2)(3)いずれを選択した場合でも、就業規則その他これに準ずるものに
    定める必要がありますが、(3)を選択した場合は、労使による協定が
    必要になります。

   15.高年齢者の継続雇用に関する基準

    改正高年齢雇用安定法第9 条により、平成18 年4 月1 日以降は65 歳未満の
    定年の定めをしている事業主は、65 歳までの安定した雇用を確保するため、

     (1)定年の引上げ

     (2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止、

    のいずれかの定めを講じなければなりませんが、(2)の継続雇用制度は、原則
    としては希望者全員を対象とする制度の導入が求められています。

    しかし、労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、
    当該基準に基づく制度を導入したときは、(2)の継続雇用制度を導入したものと
    みなされます。

    この年齢は平成18 年の法改正以降、62 歳、63 歳というように年を追って段階的
    に対象になる年齢を引き上げてきましたが、平成25 年4 月以降は65 歳になりました。

    その労使協定による基準とは、望ましいものとして、次のものが厚生労働省により
    設けられています。

     (1) 意欲、能力等を具体的に測るものであること(具体性)

     (2) 必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見
        できるもの(客観性)

   16.育児・介護休業者適用除外

    育児・介護休業・子の看護休業の請求を一定の労働者に対して労使協定により制限
    することが出来ます。

    一定の労働者とは、次の通りです。

     (1) 入社1 年未満の従業員

     (2) 申出の日から1 年(介護休業の場合は93 日)以内に雇用関係が終了
        することが明らかな従業員

     (3) 1 週間の所定労働日数が2 日以下の従業員

   17.子の看護休暇・介護休暇適用除外

    (1) 入社6 ヶ月未満の従業員

    (2) 1 週間の所定労働日数が2 日以下の従業員

     ◆ 労使委員会と労働時間等設定改善委員会

      1.労使委員会
       労使委員会とは、労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対して
       意見を述べることを目的として事業場内に設置するもので、委員の半数 
       は、管理・監督の地位にある者以外の者から、労働者の過半数で組織
       する労働組合または労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名
       されなければなりません。

      2.労働時間等設定改善委員会
       労働時間等設定改善委員会とは、企業内の労働時間など設定改善の
       ための施策に関して労使協議を行うための委員会で、次に掲げる要件に
       合致する委員会が設置されている事業場では、労使協定に代えて、その 
       委員会の5 分の4 以上の多数決による議決により変形労働時間制や時
       間外および休日の労働時間などについて決議を行い実施できます。

       (1)委員会の委員の半数について、その事業場の労働者の過半数で組織
         する労働組合、または労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指
         名されていること。過半数を代表する者とは、監督または管理の地位に 
         ある者ではなく、投票、挙手等の法に規定する方法により選出された者
         であること。

       (2) 委員会の議事について厚生労働省令で定めるところにより、議事録が
         作成され、かつ保存されていること。

       (3)委員会の任期、委員会の招集、定足数、議事その他委員会の運営
         必要な厚生労働省令で定める要件に適合していること。

   36協定を締結せず労働者に法定労働時間を超えて働かせた場合には、労働基準法
   第32条違反となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられるので
   注意が必要です。

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労務リスクと労務管理

安全衛生体制の整備

安全衛生体制の整備


  ■労働安全衛生の問題

   業務に起因して発生する災害を労働災害(以下「労災」)などと呼びます。

   国内では、労災を防止するために安全衛生法によって企業に安全管理体制の徹底を
   義務付けています。

   また、労災が発生してしまった場合には、労災保険法から保険給付がされることに

   なっています。

   このように、日本では一通りの労災防止対策が講じられているのが現状です。 

   しかし、それでも発生してしまうのが労災です。

   企業も労働者もまさか、自社で労働災害が発生する(自分が労災の被害者になる)
   とは考えません。

   そのため、企業が労働安全衛生の取り組みを疎かにしてしまうこともあります。

   一方で、安全衛生法では労働安全衛生の多くの部分を企業と労働者の自主性に委ねて
   います。

   ずさんな労働安全衛生の取り組みに対して行政庁が指導することもありますが、

   企業と労働者の労働災害防止への意識を喚起するには不十分であることは否めません。 

   労働災害の防止は各企業において徹底されなければ実現できないものであるにも
   かかわらずこうした状況は問題です。


  ■産業医の選任
   ひとつの事業場に従業員が50名以上になった場合には、産業医の選任のほか、安全
   管理者の選任、衛生管理者の選任、安全委員会の設置、衛生委員会の設置が必要
   になります。

   まず、労働安全衛生法、通称「安衛法」では、企業単位ではなく、「事業場」を単位と
   して、その業種規模などに応じて、安全衛生管理体制の整備を義務付けています。

   「事業場」とは、工場、事務所、店舗などのように一定の場所で関連する組織のもとに
   継続的に行われる作業の一体をいうものとされています。

   したがって、ひとつの事業場であるか否かは、場所的観念によって決定されるので、
   基本的に同じ場所にあるものは、「一個の事業場」として扱われ、場所的に離れて
   いるものは「別個の事業場」として扱われます。

   例えば、同じ会社であっても、東京に本社、静岡に工場がある場合には、それぞれ
   「別個の事業場」として取り扱われることになります。

   ただし、例外として、場所が離れていても、規模が著しく小さく、一個の事業場として
   独立性がないものについては、直近上位の事業場と一括して「一個の事業場」として
   扱われます。

   また、場所が同じであっても、自動車販売会社に付設された自動車整備工場などの
   ように、それぞれ違う事業が行われている場合には、「別個の事業場」として扱われる
   ことになります。

   ひとつの事業場に労働者が50名以上になった場合には、次のような安全衛生管理
   体制をとらなければなりません。

    ①安全管理者の選任
    ②衛生管理者の選任
    ③産業医の選任
    ④安全委員会の設置
    ⑤衛生委員会の設置

   これらの選任、設置を怠ると、罰則の適用もあるので、注意が必要です。

  □安全管理者
   安全管理者は、安全教育などの安全衛生業務のうち、作業場の巡視、機械設備の
   危険防止など、安全に関する具体的な事項を管理する者をいいます。

   上記の表のように、安全に関する問題を比較的多く抱えている業種の事業場で、その
   使用する労働者が50人以上いる場合には、選任しなければなりません。

   安全管理者は、作業場を巡視し、設備、作業方法等に危険の恐れがあるときは、直ち
   に、その危険を防止するため必要な措置を講じなければならないとされています。

   そのため、事業者は、安全管理者に対し、職務を遂行するために必要な権限を与え
   なければなりません。

   安全管理者の業務を的確に行うためには、現場での実務経験と安全に関する一定の
   知識が必要とされます。

   そこで、安全管理者となるためには、安衛法において一定の資格要件が定められて
   います。

  □衛生管理者
   衛生管理者は、安全衛生業務のうち、従業員の健康管理、衛生面の作業環境調査、
   衛生教育など、衛生に関する具体的な事項を管理する者をいいます。

   業種に関係なく、労働者が50人以上いる事業場では、選任しなければなりません。

   衛生管理者は、次のような業務を行う必要があります。

    ①健康に異常のある者の発見および処置
    ②作業環境の衛生上の調査
    ③作業条件、施設等の衛生上の改善
    ④労働衛生保護具、救急用具等の点検および整備
    ⑤衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
    ⑥労働者の負傷および疾病、それによる死亡、欠勤および移動に関する統計
     の作成
    ⑦その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等

   衛生管理者は、以上の業務のほか、少なくとも毎週1回は作業場等を巡視し、設備、
   作業方法、衛生状態に有害の恐れがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止
   するために必要な措置を講じなければならないとされています。

   また、衛生管理者になるためには、安衛法において心一定の資格要件が定められて
   います。

  □産業医
   業種に関係なく、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、産業医の選任が義務
   付けられています。

   産業医は、健康診断および面接指導の実施など労働者の健康管理、労働者の健康
   障害の原因調査や再発防止の医学的な措置などを行います。

   このほか産業医は、少なくとも毎月1回は作業場等を巡視し、作業方法、衛生状態に
   有害の恐れがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するために必要な措置
   を講じなければならないとされています。

   事業者は、産業医に対して、職務遂行のために必要な権限を与えなければなりま
   せん。

  □安全委員会
   安全委員会は、事業場の業種区分と規模に応じて(P.5 表2参照)、設置が義務
   付けられています。

   安全委員会で審議する内容は、安全に関する規程の作成、安全教育の実施計画の
   作成、新規採用機械等の危険防止対策などです。

   安全委員会は、毎月1回以上開催しなければなりません。

  □衛生委員会
   衛生委員会は業種に関係なく、常時50人以上の労働者を使用する事業場において
   設置義務があります。

   衛生委員会で審議する内容は、衛生に関する規程の作成、衛生教育の実施計画の
   作成、健康診断の結果に対する対策の樹立、労働者の健康障害防止に関する事項
   などです。

   委員会の開催は、安全委員会と同様に毎月1回以上です。

  □安全衛生委員会
   安全委員会の設置義務のある事業場は、同時に衛生委員会も設置しなければなり
   ません。

   このような事業場では、2つの委員会を一体化した「安全衛生委員会」を設置することが
   できます。

   安全衛生委員会の開催等については、それぞれの委員会に準じたものとなります。  

  □安全衛生推進者等の選任
   安全管理者や衛生管理者の選任義務のない事業場では、安全衛生推進者等が安全
   衛生管理組織の中心となり、安全衛生業務を担当します。

   質問者のように、安全管理者の選任を要する業種であって常時10人以上50人未満
   の従業員を使用する事業場では「安全衛生推進者」を、それ以外の業種については、
   「衛生推進者」を選任しなければなりません。

   (1)安全衛生推進者等の選任・周知
     安全衛生推進者等は、選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任しな
     ければなりませんが、届出義務はありません。

     また、事業者は、安全衛生推進者等を選任したときには、その安全衛生推進 
     者等の氏名を作業場の見やすい個所に掲示する等、関係労働者に周知しな
     ければなりません。

   (2)安全衛生推進者等の資格
     安全衛生推進者等には、一定の実務経験や講習修了者などの資格要件があ
     ります。

     なお、安全衛生推進者等は、原則として、その事業場に専属の者を選任しな
     ければなりませんが、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、その
     他厚生労働大臣が定める者を選任するときは、事業場の専属の者である必
     要はありません。

     ここで、「専属」とは、その会社のみに所属することを意味しています。

   (3)安全衛生推進者等の職務
     事業者は、安全衛生推進者等に次の業務(衛生管理者については、衛生に関 
     するものに限ります。)を担当させなければなりません。

     ①施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む。)の点検及
       び使用状況の確認並びに、これらの結果に基づく必要な措置に関すること
     ②作業環境の点検(作業環境測定を含む。)及び作業方法の点検並びに、こ
       れらの結果に基づく必要な措置に関すること
     ③健康診断及び健康の保持増進のための措置に関すること
     ④安全衛生教育に関すること
     ⑤異常な事態における応急措置に関すること
     ⑥労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
     ⑦安全衛生情報の収集及び労働災害、疾病・休業等の統計の作成に関する
       こと
     ⑧関係行政機関に関する安全衛生に係る各種報告、届出等に関すること

     前述の「安全管理者」「衛生管理者」は、安全衛生業務の技術的事項を管理す
     る者とされていますので、その業務の管理に権限と責任を有する者として、位
     置づけられています。

     一方、安全衛生推進等については、安全衛生業務について権限と責任を有す
     る者の指揮を受けてその業務を担当する者として位置付けられています。

  □労働者の健康管理等
   常時50人未満の労働者を使用する事業者は、労働者の健康管理等を行うのに必要
   な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省で定める者に、労働者の健康
   管理等の全部または一部を行わせるように努めなければなりません。

   厚生労働省で定める者とは、地域産業保健センター事業の名簿に記載されている
   保健師のことをいいます。

   (1)地域産業保健センターの活用
     産業医の選任義務のない事業場では、産業保健サービスを提供することが十
     分でないところも少なくありません。

     地域産業保健センターでは、こうした事業場の事業者や労働者を対象に、健
     康相談、健康指導などの産業保健サービスを充実させるために、都道府県労
     働局が地区医師会に委託して開設したものです。

     なお、地域産業保健センターにおける各種産業保健サービスは、無料で提供
     されています。

     ①健康相談窓口の開設
       健康診断結果に基づいた健康管理、作業関連疾患の予防方法、メンタルヘ
       ルスに関すること、日常生活における健康保持増進の方法などに関して、
       医師や保健師に相談することができます。
     ②個別訪問による産業保健指導の実施
       医師等が、訪問指導を希望する事業場を個別に訪問し、健康診断結果に基
      づいた健康管理等に関して、指導や助言を行います。
     ③産業保健情報の提供
       産業医の要件を満たす医師、労働コンサルタント、医療機関、労働衛生機
       関等の名簿を作成し、希望する事業場に情報を提供しています。

   (2)長時間労働者への医師による面接指導
     労働安全衛生法では、長時間労働による健康障害防止対策として、一定の要
     件に該当する労働者に対し、医師による面接指導の実施を事業者に義務付
     けています。

     面接指導は、労働者数50人未満の小規模事業場においても、平成20年4月
     より適用されています。

     ①対象者
      事業者は、次に該当する労働者から申し出があった場合には、医師による
      面接指導を実施しなければなりません。

      ア)週40時間を超える労働(時間外・休日労働)が1月当たり100時間を超え
        ていること
      イ)疲労の蓄積が認められること

      なお、期日前1月以内に面接指導を受けた労働者などで、面接指導を受ける
      必要がないと医師が認めた労働者は除かれます。

     ②面接指導実施後の措置
      事業者は、医師による面接指導を行った後、その結果に応じた措置を実施し
      なければなりません。
      具体的には、
      ア)面接指導結果の記録の作成・保存
        面接指導の結果に基づき、面接指導結果の記録を作成して、その記録を
        5年間保存しなければなりません。

      イ)必要な措置についての医師の意見聴取
        事業者は、面接指導を受けた労働者の健康を保持するための必要な措
        置について、遅くとも1か月以内に、医師から意見を聞かなければなりま
        せん。

        なお、労働者の健康状態から緊急に事後措置を講ずべき必要がある場
        合には、可能な限り速やかに行われる必要があります。

      ウ)適切な措置の実施
        事業者は、面接指導の結果に基づく医師からの意見をもとに、適切な措
        置を実施しなければなりません。この「適切な措置」とは、就業場所の変
        更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などです。

       なお、地域産業保健センターでは、こうした面接指導の相談窓口を各地に
       開設しています。


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労務リスクと労務管理

労務リスクと労務管理 


  会社にとってヒトはリスクではあるが、絶対必要な存在でもあるのです。

  この矛盾と付き合っていくためには各種規定の周知徹底と運用がベースとなります。

  企業リスクの80%以上が人に関わるものです。

  会社の規模に関わらず、一人でも従業員がいる限り労務問題は存在します。

  労務リスクが顕在化した場合、それが企業経営に与える影響は甚大なものとなります。

  そのため企業は、これらの労務リスクを可能な限り低減していくことが必要であり、その
    ための取り組みが「労務管理(リスク対策)」です。

  しかし、いざ労務管理に取り組もうとしても、なかなか組織に定着していかないのが実情
  です。

  人が人を管理する労務管理では、管理者や部下の性格や就業意識などといった属人的
  な要素が、その運用に多大な影響を及ぼす面があるからです。

  企業の労務管理方針とは異なるイレギュラーな運用
  管理者の独断で行われ、そこから労務リスクが発生す
  ることがあります。 

  例えば、「仕事なのだから、多少の残業は当然のこ 
  とである」と考える管理者は、「自分の部下に多少の
  残業をさせても問題ない」として、企業が定める基準
  よりも長時間の残業を命じることがあります。

  こうした残業命令を労働契約に関する権利意識が
  強い部下が受けたなら、労働契約の際に示された
  よりも長時間に及ぶ残業命令に不満を感じること
  でしょう。

  また、そうした残業命令が繰り返されることで部下の
  不満は限界に達し、最終的には「不当な残業命令を
  繰り返し受けた」として、都道府県労働局などに相談
  するかもしれません。

  このように、属人的な要素の影響を受ける点が労務管理の根本的な問題です。


  ■リスクコントロールの前に

   様々な会社規程は、制定当初は自社の企業防衛や円滑な業務遂行などの目的のため
   に作られます。

   しかし、それらは時に法令順守を体裁的に取り繕った、場あたり的な規定の可能性も
   あるのです。

   建前(規定)と本音(現実の運用)のギャップに、あまりにも乖離があると、その規定は
   無い方が良い場合もあります。

   なぜなら、現実的には建前と本音がイコールになるケースは極めて稀であることから、
   殆どの規定にはあらゆるリスクが潜んでいると言わざるを得ないのです。

   従って、どのような規定であれ、制定する際には、そのギャップをどこまで理解して
   いるか、言い換えれば、例えば“法令は白”であるが、“自社の運用はグレー”である
   ことをきちんと理解しているかが重要となります。

   特に労務においては規定の対象者はヒトであり、運用するのもヒトであることです。   

   規定を絶対的なものとして『完璧』にリスクコントロールすることは、不可能な分野なの
   です。

   労務リスク対策には規程の整備を含め、業務改善による正しい業務のあり方、そ
   れを実践していくための業務の標準化か欠かせない。

     業務改善のための強化策(コンサル・セミナー・研修・講演)のご案内

  労務リスクとは

   労務リスクを洗い出す過程の作業の一つに、就業規則の分析が挙げられます。

   就業規則も書籍や他社の規定を会社名だけ書き換えコピーしたものから、オーダー
   メイドのものまで多種多様です。

   ご承知のとおり、どのような規定でも運用次第では逆に自社の首を絞めることになりかね
   ません。

   例えば、残業代の計算方法から支給基準まで事細かに記載してもサービス残業が慣例化
   していれば、いつか必ず痛い目を見ることになってしまいます。

   過去には、大手消費者金融会社が2年分の未払残業代を数十億円かけて清算した
   事件や、福利厚生の一環で有給休暇を1 時間単位で分割して取得できる制度を導入
   したら遅刻早退が増え、勤勉な人間までモチベーションが低下したなどという本末転倒
   な事例などもあるのです。 

   会社は労務管理の中で、様々なアメとムチを使い分ける必要があります。

   このバランスが非常に難しく、まさに従業員の教育の基本であり、企業利益に直結する
   部分でもあるのです。   

   多くの会社がこの分野をおろそかにしています。

   適度なバランスが保たれて組織がうまく機能している会社は団結力(モチベーション)
   が増し、競争力が高まるのです。

   この労力を最優先課題のひとつと考え、真剣に取り組むかどうかが企業繁栄の分岐点
   となります。

  ■労務管理の基本

   中小企業における実際の労務管理は、人間関係の延長線上でしかなく、どちらかと
   いえば「感覚」に頼っていたケースが多く見受けられます。

   もちろん、経営者・リーダーが持っている「感覚」はとても大事であり、多くの問題が、
   経営者の経験や日頃の良好な人間関係によって解決されているのも事実です。

   このような「感覚」による労務管理が、経営者側と従業員との間に「阿吽の呼吸」「家
   族」「仲間」といった関係を作り上げ、事業発展に向かうー体感が生まれていたのです。

   ところが、最近は従業員側に「コンプライアンス、雇用契約」といった意識が強くなり、
   経営者の勉強不足や、ついていけないといった理由で、問題を処理しきれないことが
   多くなっています。

   例えば、かつては従業員のためによかれと思って臨時に行っていた昇給に対して、
   従業員が権利としての主張を始めたり、「暗黙の了解」による休日出勤や残業に対して、
   従業員が割増賃金を請求してきたり、といったことが起こっています。

  □従業員を雇うルールと責任   

   1.給料(賃金)の支払い

    当たり前のことのようですが、実は意外とできていない会社が多くあります。

    給料の額そのものには特に決まりはありません(最低賃金の決まりはありますが)。

    ところが、給料の払い方、計算方法は法律できちんと決まっているのです。

    この決まりを「労働基準法 賃金支払い5原則」といい、次のものをいいます。

     ①通貨払いの原則(円建てで)

     ②直接払いの原則(本人以外への支払いは認められない。例外:妻・子等)

     ③全額払いの原則(残業代の不払いは違反)

     ④毎月1回以上払いの原則(日払い、過払いは該当しない)

     ⑤一定期日払いの原則(例外:臨時支払の賃金、賞与その他これに準ずるもの)

   2.安全・安心な職場環境の整備

    作業事故の防止に限らず、長時間労働、特定個人に過重な負荷がかかるような
    仕事の与え方、メンタルヘルスなど、体だけでなく心の健康を守ることも重要になっ
    てきています。

   3.就業

    一度従業員を雇うと、簡単に辞めてもらうことはできません。

    最低でも、従業員が納待できるような理由がなければ解雇できないと考えてください。

   4.書類の整備

    労働基準法では、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類を作成し、
    最後に記入してから3年間保管することが義務付けられています。

    このほかにも、入社時に渡す「労働条件通知書」、退職時に従業員から請求があっ
    た場合に渡す「退職事由証明書」、従業員が10人以上になった場合に作成する「就
    業規則」などが必要です。

   5.公的保険の加入

    公的保険に関しては、福利厚生の一環で「入ってやっている」感覚の経営者がたま
    にいますが、公的保険である、「労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険」
    は加入が義務となっています。

    最近は従業員が退職後に雇用保険加入を請求したり、毎年本人に送付される
    「ねんきん定期便」によって、加入意識を持ったりするようになってきています。

    さらに、社会保険料の強制徴収に関しては国税庁が行うなど、今まで通りというわけ
    にはいかない流れになっています。

   
  ■労務管理のポイント

   労務管理を取り巻く法令は非常に多く数十種類存在します。

   会社はそれら法令の網にがんじがらめにされており、賢い労働者は会社を訴えようと
   思ったらどんな角度からでも間違いなく要所を突く事ができるのです。

   訴訟にならない会社と言うのは必ずしも労務管理が適正なのではなく、単に運が良い
   だけと言ったほうがよいでしょう。

   では労務管理はどうすればいいのか。

   本来圧倒的なカリスマ経営者が存在すれば規定などいらないのですが、人事異動を
   伴う組織では、やはり運用者が誰になっても決してプレない規定が必要とされます。

   その規定はアメとムチのバランスを適度に保ち、ヒトも会社もお互いが成長していける
   ものでなければならないのです。

   当然のことながら法令の改正や同業他社・世間一般の情勢にも連動し、随時メンテナンス
   を要します。

   特に現代の就業形態は、正社員、パート社員、期間契約社員、嘱託社員、派遣社員、
   日雇社員、と細分化され、また、契約方法も、雇用契約、業務委託契約、請負契約など
   に分けられています。

   この多種多様な集団を会社が統括管理するためには、服務規律・労働時間・休日など
   の基本事項から、人事評価・考課制度・賃金の昇降給・賞与査定・退職金の積立方法
   などを必ず公正なものとして確立し、その公正な規準をオープンにして周知徹底させる
   ことが絶対必要なのです。 

   当然のことながら、悪意的な基準など排除しなければなりません。

   規程類は企業の労務管理のルールを示す客観的な文書であり、何らかの労使トラブ
   ルが発生した際の企業の対応の根拠ともなるため、確実に整備しなければなりません。

   中小企業が労務管理に取り組む際は、属人的な要素から生じるイレギュラーな運用を
   できるだけ排除していかなければなりません。

   そのために必要となる取り組みが「規程類の整備」「適切な運用」「保険の活用」の
   3つです。

    
  規程類の整備

   労務管理を推進する際に車の両輪となるのは「規程類の整備」と「適切な運用」です。

   企業が定める労務管理のルールを就業規則などの規程類として(1)文書化するとともに、
   そのルールに従った労務管理が(2)周知徹底されるよう管理者研修なども実施します。

   また、そうした労務管理を行っていても完全に防ぐことができない労働災害などへの備え
   として、労働保険などに加入します。

   こうすることで、文書化された明確なルールに基づいて適切に労務管理が行われ、労働災
   害など万一の際にも、保険によって被災した従業員やその家族をフォローできるといった
   理想的な労務管理が実現します。

   (1)文書化

     中堅・中小企業が労務管理に取り組む際の第一歩といえるのが、就業規則など
     規程類の整備です。

     中小企業では就業規則などが整備されておらず、事案が発生するたびに個別に対
     応していることがあります。

     こうした状態では、時として公平性・合理性に欠ける対応が行われるばかりか、
     それが原因となって労使トラブルが発生する恐れもあります。

     規程類は企業の労務管理のルールを示す客観的な文書であり、何らかの労使
     トラブルが発生した際の企業の対応の根拠ともなるため、確実に整備しなければ
     なりません。

   (2)周知徹底

     作成した規程類は必ず全従業員に周知徹底し、企業内の見やすい場所に掲示
     するなどします。

     周知徹底することでルール順守に対する従業員の意識が高まります。

     また、労働契約法では、「合理的な内容が定められている就業規則を従業員に
     周知させていた場合、労働契約の内容は、その就業規則で定められている労働
     条件になる」と定められています。

     従業員に就業規則を周知徹底しておけば、原則としてそれが労働契約の内容にな
     ります。

     労働契約とは、就業規則と本人への辞令のことで、会社と従業員との合意に基
     づくものです。

     労働条件をめぐるトラブルが発生した場合、企業は自ら主導して作成した就業規則
     を、1つの判断基準とすることができます。

   (3)適時の変更

     規程類は、労働法の法令改正に合わせて適時、変更しなければなりません。

     労働法は頻繁に改正されるので、定期的に厚生労働省や都道府県労働局のWeb
     サイトをチェックしたり、専門家(弁護士、社会保険労務士)に確認することをお勧
     めします。 
   
  □適切な運用

   1.管理者の意識改革

     属人的な要素の影響を排除し、規程類に定めたルール通りに労務管理が行われ
     るよう、管理者に労務管理の高い意識を持たせることが重要です。

   2.業務管理

     管理者が中心となって、現場の業務管理を適切に進めます。

     業務管理の意味は広範ですが、労務リスクの原因となりやすい「労働時間管理」
     と「業務配分管理」がポイントとなります。

     労働時間管理と業務配分管理ができていないと長時間労働や業務量の過多につ
     ながり、そこから労働基準監督官の臨検などの労務リスクが発生します。

     長時間労働で従業員がイライラして言動が乱暴になり、パワーハラスメントにつな
     がることもあります。

   3.健康管理    

     企業は安全配慮義務を負っており、それを履行しなければなりません。

     安全配慮義務とは、企業の指揮命令下で従業員が労働する過程において、従業
     員の生命および身体を危険から保護するよう配慮する企業の義務のことです。

     企業が安全配慮義務を履行するための具体的な取り組みの一部は、前述の業務
     管理ですが、このほかにも定期健康診断などを実施する必要があります。

     定期健康診断は福利厚生の一環として行われるものではありません。

     従業員は労働契約に基づいて労務を提供するよう自らの健康状態を良好に保つ
     義務を負い、企業は「従業員が労務の提供に堪え得る心身の状態であるのか」
     を確認する義務を負っています。

     この互いの義務を履行するための手段の1つが定期健康診断であり、「労働安全
     衛生法」によりその実施が企業に義務付けられています。

     そのため、企業は必ず定期健康診断を行い、従業員の健康管理をしなければな
     りません。

  □保険の活用

   「規程類の整備」と「適切な運用」管理を行っていても発生してしまうのが労働災害
   です。

   労働災害はちょっとした気の緩みなどから発生するもので、完全になくすことは不可能
   です。

   万一の備えとして労災保険などの法定・法定外の労災保険などに加入することが重要
   です。

   近年、過労死やパワーハラスメントに関する事案が労働災害として認定されるなど、
   労災保険がカバーする範囲は広がってきており、万一の際は従業員やその家族に
   とって重要な補償となります。
   
  ■安全配慮義務と損害賠償責任

   労災事故と企業責任について万一不幸にして、労災事故が発生すると、次のよう
   な企業責任が生じる可能性があります。

   (1)刑事責任

     労働災害が発生すると、労働安全衛生法違反がなかったかについて、労働基
     準監督署から調査が入り、違反があれば刑事責任を問われることがあります。

     その場合労働安全衛生法違反の他、刑法211条の業務上過失致死傷の罪に
     問われる場合があります。

     業務上過失致死傷は、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者
     は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

     重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」としています。

      ①労働安全衛生法の罰則規程の適用

      ②業務上過失傷害などの刑事責任

   (2)民事責任

     労災事故が発生した場合、事業主は、過失の有無にかかわらず労基法により
     補償責任を負わねばなりません。

     しかし、労災保険に加入している場合には、事業主にその事故について労災
     保険による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます
     (労災によって労働者が休業するときの1〜3 日目の休業補償は、労災保険
     から給付されないため、労基法で定める平均賃金の60%を事業主は被災労
     働者に支払う必要があります)。

     しかし、仮に事業主が故意または重大な過失より、労災保険に加入していな
     かったり、労災保険料を滞納していた期間に事故が発生した場合、またその
     事故が事業主の故意または重大な過失より生じた場合は、国から給付される
     額の30%〜40%の額が徴収されます。

     また、労働基準法上の補償責任とは別に、労災について安全配慮義務違反な
     どの事由により被災者側から使用者に対して民法上の損害賠償請求がなさ 
     れる場合があり、その請求額も大変巨額なものとなってきています。

     なお、労基法に基づく補償が行われたときは、その価額部分は民法による損
     害賠償の責を免れることが労基法に規定されています。

      ①労働基準法等 災害補償責任

      ②民法 損害賠償責任

   (3)行政処分 

     労働安全衛生法に基づき、作業停止命令や設備等の使用停止命令などの 
     行政処分が行われるときがあります。

     また、例えば建設業の場合は一定期間の指名入札禁止などの処分が行わ
     れます。

     刑事事件に相当しない程度の事故災害でも、労基署から「厳重注意」「是正勧
     告」がなされ、改善されなければ刑事責任が問われる場合もあります。

   (4)社会的責任 マスコミ等の報道による世間的信用の失墜、等

     重大な労災事故が発生した場合や、たびたび労災事故を発生させた場合、公
     共事業では指名停止や顧客からの取引停止などの社会的制裁を受けるケー
     スが多くなっています。

     また、マスコミ等の追求も厳しいものがあり企業の社会的信用も失墜してしま
     うことになります。

  □企業の従業員に対する安全配慮義務

   労働安全衛生法の第3条では使用者の責務として、「事業者は、単にこの法律で
   定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の
   実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するよう
   にしなければならない。

   また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するように
   しなければならない。」としています。

   法違反がある場合、労災事故発生の有無にかかわらず労働安全衛生法等により
   刑事責任が問われる場合があります。

   また、労働者は、その事業場で労働安全衛生法等の違反があるときは、労働基準
   監督署長等にその事実を申告し、事業者に対して必要な措置を取るように求め
   ることができます。(労働安全衛生法第97 条)

   近年の判例では、使用者が従業員の生命や健康を職場における危険から保護
   すべき義務を負うこと、この違反について民事賠償と同様の責任を生じるべきこと
   が認められるようになってきました。

   さらに、平成20年3月に施行された労働契約法の第5 条で、「使用者の労働者
   の安全への配慮」が明記されました。

  □安全配慮義務と従業員に対する賠償責任について

   労働者は労働災害を被った場合、被災者あるいはその遺族が、労災保険に補償
   を請求することができます。

   しかし、補償給付額は必ずしも被災者側の満足する額まで届かない場合が多く、
   例えば、休業補償給付で平均賃金の8割(休業補償給付6割+労働福祉事業に
   よる特別支給金2割)の給付で、慰謝料等は考慮されていません。

   そこで会社に対して損害賠償という形で請求することが多くなってきました。

   使用者に損害賠償を請求するには、従来のケースでは、被災者側は使用者の不法
   行為に基づく損害賠償の請求をしていました。

   しかし、現在では、判例上確立しさらに明文化された「安全配慮義務」という根拠
   に基づく債務不履行責任の追及が主流となりました。

   また、新聞報道によれば、政府内部でこの労働福祉事業の撤廃も検討されている

   ようなので、それが現実になるとすると損害賠償請求の流れは一層強まり、請求
   額もさらに巨額になると予想されます。

   さらに、民事上の損害賠償請求にかかる時効は不法行為に基づくものの場合、
   消滅時効は3年ですが、債務不履行による請求権の消滅時効は10年ですので、
   この点でも企業リスクは増していると言えます。

  □企業の防衛策

   労災事故が起こった場合の損害賠償請求は近年巨額になっていく傾向にあります。

   そのためにも、

    ①労働安全衛生法の遵守

    ②労務管理マニュアルの整備・作成・安全管理教育の徹底

   は、事業主にとっての必須事項です。

   加えて使用者賠償責任保険等の労災上乗せ保険の活用なども考えるべきかと
   思われます。

   企業防衛(会社と社員を守る)、収益確保には業務や労務の管理が欠かせません。

   オーナー社長にとって会社は我が子同然。

   会社と社員を守るのが社長の役割であり責任です。

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労務リスクと労務管理

過労死等の労災補償と認定基準
 

  厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強い 
  ストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、業務
  上疾病と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1 回、取りまとめ
  ています。

  今回は平成28 年6 月に取りまとめられた、「平成27 年度過労死等の労災補償状 
  況(脳・心臓疾患に関する労災補償状況を抜粋)」と、別に厚生労働省が定めてい
  る「脳・心臓疾患の労災認定の基準」についてご紹介します。

  今回の厚生労働省の報告によると、労災補償の請求件数は795 件で、そのうち、
  労災補償の支給決定件数は251 件(内、死亡件数96 件)となっています。

  請求件数については、前年度と比して増加傾向、支給決定件数は減少傾向にあり
  ます。

  ここ5 年間の動向において、総数としては減少傾向にあります。

  年齢別に見てみると、労災補償の支給決定件数は「50〜59 歳」が91 件、「40〜
  49 歳」が80件、「60 歳以上」が38 件の順であり、40 歳〜59 歳のミドルエイジ
  層の労働者の支給決定件数が特に多い結果となりました。

  また、時間外労働時間数別でも、以下のとおり支給決定件数の内訳が発表されて
  います。

   脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1 ヵ月平均)別支給決定件数

    ※その他の件数は、認定要件のうち、「異常な出来事への遭遇」または「短期間
      の過重業務」により支給決定された事案の件数。

  このように、労働者に発症した脳・心臓疾患を、日常生活による諸要因や遺伝等要
  因と判別し、労働が主要因であるとして労災認定するための対象となる疾病や基
  準が、厚生労働省より以下のとおり示されています。

 1.対象となる疾病  2.認定要件

  なお、上記に掲げる認定要件のうち、特に業務と疾病の発症との
  関連性が強いと評価される長時間労働は下記の時間外労働が目安とされています。

  脳・心臓疾患の労災補償の支給決定件数や認定基準をご紹介しましたが、共に長
  時間労働を問題の一要素として捉えています。

  2016年4 月から厚生労働省では、全国の労働基準監督署による重点監督の対
  象を「月80 時間超の残業が疑われるすべての事業場」に拡大するなど、過重労働
  の防止に向けた法規制の執行強化を図っています。

  そのような流れからも、企業は使用者賠償責任のリスクを考慮しつつ、社会的な要
  請といった点も認識しながら、労働時間削減に対する取り組みを考えていく必要が
  あるといえます。


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労務リスクと労務管理

適正な業務請負

適正な業務請負
 

  ■適正な業務請負

   業務請負という業務形態は世間に広く浸透しており、「請負契約」などの言葉もよ
   く耳にします。

   しかし実際には、業務請負を行うにあたり押さえておくべきポイントについて、詳し
   い知識が無いケースが少なからずあります。

   きちんとした知識を持たないままに業務請負を行うと、「偽装請負」という事態に発
   展してしまう恐れもあります。

   ここでは適正に業務請負を行うためのポイント等について説明をします。

  □業務請負とは

   業務請負とは注文された業務の完成を目的とするものであり、単に労働力を提供
   するだけのものではありません。

   請負事業者は注文者から発注された業務を、自己の労働者を使用し、自らの業
   務として、その裁量と責任で完成させる必要があります。

   自らの裁量と責任で業務を完成させるという点が業務請負では重要となります。

   注文主の裁量がはたらいてしまうと、業務請負ではなく、労働者派遣に該当する
   可能性があります。

   形式的には業務請負ですが、実態は労働者派遣、いわゆる「偽装請負」とみなさ
   れる可能性があります。

   兼務誅負と労働者派遣の違いについて見ていきましょう。

  業務請負と労働者派遣の違い

   上記で注文主の裁量がはたらいてしまうと、業務請負ではなく、労働者派遣に該
   当する可能性があると述べましたが、ここで言う注文主の裁量とは、主に業務に
   対する指揮命令のことを指します。

   請負事業者が自ら雇用する労働者を指揮命令して、請け負った業務を完成させ
   ることが業務請負ですが、その指揮命令が業務の注文主から行われてしまうと、
   請負事業者が注文主に対して単に労働力を提供するだけの労働者派遣とみなさ
   れてしまいます。

  □適正な業務請負を行うためのポイント

   業務請負に関する正しい知識が無いと、労働者派遣との境界線があいまいに
   なってしまうなど、業務請負が適正になされません。

   適正な業務請負を行うために、請負事業者がどのようなポイントに注意したら良
   いのかを見ていきます。

   1.業務管理上の独立性

     (1)請負業務を行う労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の
       管理を自ら行うこと。

        ・注文主が請負事業者の労働者に対して直接業務上の指示を行う
         ことはできません。

        ・注文主が請負事業者の労働者に技術指導を行うことはできません。

     (2)請負業務を行う労働者の労働時間等(始業・終業時間、休憩時間、休日)
       に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

        ・注文主の就業規則を請負事業者の労働者に適用することは
         できません。

        ・出勤簿やタイムカードによる労働時間の管理や休暇の管理は
         請負事業者が行うこと。

     (3)企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行う
       こと。

        ・請負業務に必要な制服やヘルメットは請負事業者が準備し、
         労働者に着用させること。

        ・請負業務について労働者の人数・配置・人選その他の変更は
         注文主の指示・承諾を受けることなく請負事業者が決定していること。

   2.事業運営上の独立性

     (1)業務の処理に必要な資金を自らの責任において調達し、支弁していること。

     (2)業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主とし
       ての全ての責任を負うこと。

     (3)単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。(次のいずれかに該当す
       ること)

        ・請負業務に就いて必要な機械、設備若しくは器材または材料
         若しくは資材は、請負事業者の責任と負担で準備、調達すること。

        ・請負事業者自らが企画しまたは請負事業者の持つ専門的な技術
         若しくは経験を用いることで、請負業務が処理されること。

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労務リスクと労務管理

震災対応と労務管理

震災対応と労務管理
 

  ■地震対応と労務管理の留意点

   2011年(平成23年) 3月11日(金)に発生した東北地方太平洋沖地震やそれに伴う
   大津波、原子力発電所での事故、計画停電の実施など、未曾有の事態が発生しました。

   被害は過去最大規模となり、事業の継続が困難になったり、制限されたりするなど
   事業活動にも多大な影響を与えました。

   このようななか、企業では、休業・解雇・内定取り消しといった対応を行わざるを得ない
   状況に追い込まれました。

   経営者は雇用維持に最大限努力し、採用内定者が可能な限り予定していた期日に
   入社できるよう努力することが求められますが、次項からは、この大災害を事例に
   やむを得ず、休業・解雇・内定取り消しといった措置を行わざるを得ないときの労務
   管理の留意点を解説します。

  □休業時の賃金について

   1.地震により休業させた場合の賃金

    労働基準法では、企業側に責任がある事由による休業の場合には、休業期間中の
    休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとしています。

    ただし、天災事変等の不可抗力である場合は、企業側に責任がある事由には該当
    せず、休業手当の支払い義務は生じません。

    不可抗力であるとするためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

     ①休業の原因が事業の外部より発生した事故であること

     ②経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

    上記に照らし、被害の状況別に休業手当の支払い義務をまとめると次のように
    なります。

    地震により事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合の休業で
    あっても、前ページにあげた、①②の要件を満たす場合には、例外的に企業側に
    責任がある事由による休業には該当しないと考えられます。

    具体的には、取引先企業への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、
    災害発生からの期間、企業としての休業回避のための具体的努力等を総合的に
    勘案し、判断する必要があります。

   2.計画停電時の休業について

    今回の地震に伴い、電力会社において実施された地域ごとの計画停電に関する休業
    
については次のような取り扱いとなります。

    ただし、計画停電の時間帯以外の時間帯については、ほかの手段の可能性、企業
    としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯
    のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、計画
    停電の時間帯以外の時間帯を含めて、原則として企業側に責任がある事由による
    休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反とはならないと
    考えられます。

    ただし、かなり厳格に判断される可能性もありますので、慎重に検討したほうがよい
    でしょう。

  □解雇の留意点

   1.解雇制限と予告手当

    労働基準法では、企業は、次の期間について労働者を解雇してはならないと定めて
    います。

     ①労働者が業務上の負傷または疾病のため休業する期間およびその後30日間

     ②女性が産前産後の休秦をする期間およびその後30日間

    ただし、地震などの天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能
    となった場合等で労働基準監督署長の認定を受けたときはその限りではありません。

    また、労働基準法では、企業が労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか
    30日分の平均貸金(解雇予告手当)を支払わなければならないと定めています。

    ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった
    場合等で労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告や解雇予告手当の
    支払は不要となります。

    「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変のほか、天災事変に準ずる
    程度の不可抗力によるもので、かつ、突発的な事由を意味し、経営者として必要な
    措置を取っても通常どのようにもならない状況にある場合を意味します。

    また、「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部または大部分の継続が不可能
    になった場合を意味しています。

    被害の状況別に解雇予告手当の支払い義務を次にまとめます。

    ただし、事業場の施設・設備が直接的な披害を受けていない場合で、取引先企業
    への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、災害発生からの期間等を
    総合的に勘案し、事業の継続が不可能となったとする事由が真にやむを得ない
    ものであると判断される場合には、例外的に「天災事変その他やむを得ない事由
    のために事業の継続が不可能となった場合」に該当すると考えられます。

   2.解雇の有効性について

    地震により被害を受けたことによる解雇や雇い止めであれば、無条件に認められる
    というわけではありません。

    通常の場合と同様に、裁判事例や労働契約法などの規定に照らし、個別に判断
    していくことになります。

    期間の定めのない労働契約の場合、労働契約法では、解雇は「客観的に合理的な
    理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用した
    ものとして、無効とする」とされています。

    また、経営上の理由から余剰人員削減のためになされる整理解雇では、裁判例
    から解雇の有効性の判断として、次の4つの事項があげられており、これに基づいて
    判断する必要があります。

     ①人員整理の必要性

     ②解雇回避努力義務の履践

     ③被解雇者選定基準の合理性

     ④解雇手続の妥当性

    期間の定めのある労働契約の場合、労働契約法では「やむを得ない事由がある
    場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇する
    ことができない」とされています。

    期間の定めのある労働契約での途中の解雇は、期間の定めのない労働契約の
    場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断される点に留意が必要です。

    また、期間の定めのある労働契約であっても、期間の定めのない契約と実態としては
    異ならない場合などは、期間の定めのない労働者と同様に扱われます。

    個別の解雇の有効性は、最終的には裁判所における判断となりますが、労働
    契約法や裁判事例を踏まえて慎重に検討することが必要です。

  □内定取り消しについて

   採用内定では、企業からの正式な採用内定通知が届いた時点で、原則として労働
   契約が成立します。

   この労働契約は一般の労働契約と若干異なり、「解約権留保付就労始期付労働契約」
   と呼ばれています。

   これが成立すると、内定取り消しは会社都合の解雇にあたり、正当な理由のない企業
   からの一方的な取り消しは解雇権の濫用として無効とされます。

   正当な理由であると認められるのは、「採用内定当時、知ることが出来ず、または、
   知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消す
   ことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められることができ
   る事由」に限られます。

   具体的な事由としては、過去の裁判例などから、次のような場合があげられます。

    ①あらかじめ採用内定を取り消す場合の事由を約束しており、その事由が発生
     した場合(たとえば、病気やケガなどにより通常の勤務ができなくなった場合)

    ②内定を出した当時には予測できなかった経済状況の悪化等で企業の人員計
     画を大幅に変更せざるを得ない場合

    ③本人が内定時に申告していた経歴・学歴の重要部分に虚偽が判明した場合

    ④卒業や資格の取得等の条件が満たされなかった場合

   また、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合に、やむを得ず、内定
   取り消しを行おうとする場合には、次の点に留意する必要があります。

    ①解雇予告や解雇予告手当の支払いなど労働基準法に基づく解雇手続きを適  
     正に行う必要があります(地震の被害による場合は『解雇の留意点 1.解雇
     制限と予告手当』を参照)

    ②採用内定者が内定取り消しの理由について証明書を請求した場合には、遅
     滞なくこれを交付する必要があります

    ③新規学校卒業者の内定取り消しを行おうとする場合は、所定の様式により、 
     必ずハローワークおよび学校に通知することが必要となります

   なお、採用内定の際に予定されていた入社日に入社させたうえで、実際には就業を
   させず自宅待機を命じた場合、この期間は平均賃金の100分の60以上の休業手当
   を支払う必要があります(地震被害による場合は『休業時の賃金について 1.地震に
   より休業させた場合の賃金』を参照)。

  □特例措置の活用

   1.災害時における雇用保険の特例処置について

    次の場合には、労働者は失業給付を受給することができます。

    ただし、雇用保険に6カ月以上加入しているなどの要件を満たすことが必要です。

     ①事業所が災害により直接被害を受けたことにより、事業の休止や廃止をし
      たために、労働者を休業させ、賃金を受けることができない場合

      *実際に退職していなくても受給できます

     ②災害救助法の指定地域にある事業所が災害により直接被害を受けたこと 
      により、事業の休止や廃止をしたために、一時的に離職したとき

      *事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても対象になります

    ◎必要な手続き

     上記①に該当する場合は、事業所がハローワークに「休業証明書」を、②の場合は、
     事業所がハローワークに「離職証明書」を提出していることが必要です。

     なお、この特例措置制度を利用した場合は、休業や一時的離職の前の雇用保険
     の被保険者であった期間は被保険者期間に通算されなくなりますので、その点は
     労働者に説明する必要があります。

   2.労働保険料等の納期限の延長

    今回の地震によって、被害を受けた地域においては、表のとおり労働保険料等の
    納期限の延長ができます。

    ※1 労働保険料、特別保険料、一般拠出金並びに障害者雇用納付金のことです。

    ※2 「相当な損失」とは、経営者の全財産の価額に占める災害による損失の額の
    割合がおおむね20%以上の場合をいいます。

   3.雇用調整助成金、中小企業緊急雇用安定助成金の特例

    雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた経営
    者が、労働者の雇用を維持するために、休業計画を立てたうえで、休業等を実施し、
    休業手当を労働者に支払った場合、その一部を助成する制度です。

    具体的には、「最近3カ月の生産量、売上高等がその直前の3カ月または前年同期
    と比べ5%以上減少している雇用保険の適用事業所」が対象となります。

    また、中小企業緊急雇用安定助成金は、中小企業向けに雇用調整助成金の助成
    内容を拡充したもので、直近の決算等が赤字の場合、生産量等の減少が5%未満
    であっても対象となります。

    雇用調整助成金は、通常は、震災による事業所の損壊が事業活動縮小の直接的な
    理由である場合は利用できません。

    ただし、特例措置により東北地方太平洋沖地震に伴う「経済上の理由」で事業活動
    が縮小した場合については利用することができます。

     ①交通手段が途絶えたことにより、労働者が出勤できない、原材料の入手や 
      製品の搬出ができない、来客がない等のため事業活動が縮小した場合

     ②事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早
      期の修復が不可能であり生産量が減少した場合

     ③避難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観
      光客が減少したり、農産物の売上が減少したりした場合

     ④計画停電の実施を受け、事業活動が縮小した場合

    雇用調整助成金の助成率は次のとおりです。

    なお、事業主が解雇等を行っていないなど、一定の要件を満たした場合は、助成率
    が割り増しされます。

    ◎災害に伴う特例

     ①青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野
      県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合

     ②①に該当しない事業所であっても、上記の災害救助法適用地域に所在する 
      事業所と一定規模以上(総事業量などに占める割合が3分の1以上)の経済
      的関係を有する事業所の場合

     ③計画停電の実施地域に所在し、計画停電により事業活動が縮小した事業
      所の場合

    以上の場合は、最近3カ月ではなく最近1カ月の生産量、売上高等がその直前の
    1カ月または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象となります(平成23年
    6月16日までの間は、震災後1カ月の生産量などが減少する見込みでも対象と
    なります)。

    また、①の場合は、本来は事前に届け出る必要のある計画届の事後提出が認
    められます(平成23年6月16日まで)。
 

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配置転換を行う際の留意点

配置転換を行う際の留意点


  ■配置転換とは

   配置転換とは、会社内における職務内容や勤務場所の長期にわたる変更(人事異動)のことを
   いいます。

   勤務場所の変更に際してよく使われる転勤も、配置転換のひとつです。

   配置転換は、次のような目的で行われ、上手に活用すればメリットのある方法です。

    ・社員に多くの職場・仕事を経験させることによって人材育成ができる

    ・会社のなかで人員配置を調整することで、解雇することなく雇用を維持できる

    ・人材を適材適所に配置することで事業を効率的に運営できる

   一般的に、会社は就業規則に「社員を配置転換させることができる」旨を定め、それを根拠
   として配置転換命令を行います。

   この場合、会社の正当な人事権の行使である限り、社員はこれに従う義務が生じます。

   ただし、配置転換は、社員にとって著しい不利益を伴う可能性があり、むやみに行使すれば、
   権利の濫用として訴えられるなど、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。

   このため、会社が社員に配置転換を命じる際は、さまざまな点に留意して慎重に行う必要が
   あります。

   次項からは、配置転換(転勤を含む)を行う際の留意点について解説します。

  □配置転換を行う際の留意点

   1.就業規則に規定されているか

    就業規則や労働協約に「配置転換を命じることがある」といった旨の定めがある場合に、
    一般的に会社には配置転換を命令する権利が認められます。

    この定めがない場合は、配置転換させる命令権がないと考えられますので、まずは、
    就業規則に規定があるかどうか確認しましょう。

   2.勤務地や職種が限定されているか

    就業規則などで配置転換をする旨が規定されていたとしても、その社員との雇用契約に
    おいて、勤務地や職種を限定する合意がある場合には、定められた範囲でしか変更は
    認められません。

    このため、雇用契約において、勤務地や職種が限定されているかどうかを確認する必要が
    あります。

    雇用契約の際に、勤務地や職種を限定することが約束されている場合には、会社の一方的な
    命令によって配置転換を命じることはできず、社員の合意が必要となります。

    ただし、勤務地や職種が限定されているかどうかについては、あいまいなままになっている
    ケースも多く、会社は「限定した」つもりはなくても、配置転換を命じた社員から「限定
    されていた」との主張がなされることがあります。

    採用時には、一般的に働いてほしい勤務地で、働いてほしい職種について募集し、面接する
    ことが多いため、「将来的には配置転換の可能性がある」ことを特に説明しないままに採用
    してしまうところに原因があると考えられます。

    「限定されていた」との主張がなされた場合に、過去の判例では、次のような点から総合的に
    判断されています。

    ・採用までの経緯
     ……本社採用か現地採用か、募集時に示された条件、採用試験の内容、採用
        後に従事する職種の内容およびそれに関する説明など

    ・社内規定の内容や運用
     ……処遇についての規定や運用方法、過去において配置転換されたことがあ
       るか否かなど

   3.業務上の必要性があるか

    会社が社員を配置転換させるには、業務上の必要性が求められます。

    業務上の必要性のない配置転換命令は、権利の濫用とされます。

    (1)配置転換を行う業務上の必要性

      過去の判例では次のような事由で検討され、会社の合理的な運営に役立つ事由が
      認められる限りは業務上の必要性があると判断されています。

       ・人員の適正配置・業務の能率向上・勤務意欲の高揚

       ・能力開発や向上・業務運営の円滑化

    (2)人選の合理性 

      人選の合理性については、判例において、会社の裁量が広く認められる傾向があり、
      その配置転換がその人以外にないといった高度の必要性までは求められないと
      されています。

   4.不当な動機や目的がないか

    会社が行った配置転換命令に不当な動機や目的がある場合は、権利の濫用と考えられます。

    不当な目的や動機がある場合とは、次のような事由があげられます。

     ・社員を退職させるために行われる配置転換命令

     ・会社に対して批判的な考えをもっている社員に対する配置転換命令

    なお、過去の判例では、不当な目的や動機があるかどうかは、具体的な配置転換の内容や
    配置転換に至るまでの経過など客観的な事情から判断されます。

   5.社員に著しい不利益を負わせるものでないか

    配置転換によって社員に通常甘受すべき程度を著しく超えるような不利益を負わせるもので
    ある場合は、権利の濫用になると考えられます。

    不利益として問題とされることが多い事由としては、次のものがあげられます。

     ・家族の介護を行っている社員や転居が困難な病気を家族が患っている場合

     ・転勤に伴い単身赴任を余儀なくされる場合

     ・通勤に長時間を要する場合

    なお、配置転換による不利益が争われた過去の裁判では、次のように判断される傾向が
    あります。

    
 

   6.法律に違反していないか

    会社が行った配置転換命令が、強制的に適用される法律に違反している場合は無効と
    なります。

    たとえば、その配置転換が労働組合活動の妨害を目的とするような不当労働行為に該当する
    場合(労働組合法7条に抵触)や、思想信条による差別にあたる場合(労働基準法3条に
    抵触)は無効とされます。

    また、育児・介護休業法では、次の条文で、配置転換を行おうとする会社に配慮を求めて
    います。

    

    配慮にあたる内容として、次の例示がされています。

     ・その社員の子の養育または家族の介護の状況を把握すること

     ・社員本人の意向を配慮すること 

     ・就業場所の変更を行う場合は、子の養育または家族の介護の代替手段の
      有無の確認を行うこと

    これは、社員が配置転換を拒んでいる場合に、育児や介護の負担がどの程度なのか、
    これを回避するためにはどうしたらよいかを、会社が誠実に検討して対応することを
    求めているものです。

    すでに配置転換を決まったものとして強行に行使しようとする場合は、法律の趣旨に反し、
    その配置転換命令が権利の濫用として無効とされることがありますので留意が必要です。

  □トラブル防止のポイント

   1.就業規則の点検を行う

    会社の就業規則に「配置転換を行うことがある」旨がきちんと規定されているかどうかを
    確認しましょう。

    記載されていない場合は、社員と話し合ったうえで、その旨を盛り込んでおいたほうが
    よいでしょう。

   2.社員の意向を確認し、十分な配慮を行う

    配置転換は、就業規則の定めがあれば、会社が命令することができますが、社員にとっては、
    大きな負担や不利益となる可能性があることを念頭におく必要があります。

    そこで、一方的に命令するだけでなく、事前に社員に意向確認をすることが大切です。

    併せて特に転居を伴う配置転換を行う場合は、転居費用の支援など、負担を軽減する措置を
    行う配慮も有効です。

   3.配置転換を行う必要性および人選の理由を明確にする

    社員に対して配置転換を命じる必要性と社員の被る不利益を比較し、必要性が不利益を
    上回る高度のものであると認められる場合には、権利濫用とされる可能性は低くなると
    考えられます。

    このため配置転換を行う必要性を明確にし、できる限り具体的に整理しておくことが
    ポイントです。

    また、配置転換を命じる社員に対して、その必要性を丁寧に説明することも有効です。

    また、労働契約法においても次のように定めています。

    この点からも配置転換など労働条件が大きく変わる場合は十分な説明は必要といえる
    でしょう。

     

   4.雇用契約書を見直す

    雇用契約において、勤務地や職種が限定されている場合には、配置転換を一方的に
    命じることはできません。

    会社の意図とは違って、「自分は勤務地限定(職種限定)で採用された」と社員が勘違い
    しないように、雇用契約書や労働条件通知書に「将来的には配置転換の可能性がある」
    ことを明記しておくことは大切です。

    労働基準法では、会社は社員を雇用する際に、労働条件の重要部分について書面で明示
    することを義務づけていますが、この場合に採用時の内容を記載すればよいとされている
    ため、社員に誤解を与えてしまう可能性があります。

    採用面接や採用をする際に「配置転換の可能性があること」についても説明しておくことが
    重要です。

  □書式例

   1.就業規則規定例

    配置転換を就業規則に定める際の規定例を示します。

   2.雇用契約書例(一部抜粋)

    配置転換を行う可能性がある場合の雇用契約書(一部抜粋)への記載例を示します。


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労務リスクと労務管理

副業・兼業

副業・兼業について
 

  副業をしている就業者数は270万人(就業者数全体に占める割合は4%)。

  一方で、収入補てんや新たなスキル・人脈獲得等の目的から副業を希望する就業者数は
  2,200万人程度と試算している。(出典:みずほ総研2018年)


  政府は2018年を「副業元年」と位置づけ、「働き方改革」の一環として副業・兼業を推進
  している。

  最大の狙いは経済の活性化である。

  2018年の独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、

  「副業・兼業の許可する予定はない」が75.8%ともっとも割合が高く、「副業・兼業を許可
  している」は11.2%、「副業・兼業の許可を検討している」が8.4%である。

  副業・兼業を許可している理由(複数回答)は、「従業員の収入増加につながるため」が
  53.6%ともっとも多い。

  一方、「副業・兼業の許可する予定はない」とする企業の副業・兼業を許可しない理由
  (複数回答)は、「過重労働となり、本業に支障をきたすため」が82.7%ともっとも多く、
  次いで、「労働時間の管理・把握が困難になる」(45.3%)、「職場の他の従業員の業務
  負担が増大する懸念があるため」(35.2%)などとなっている。

    出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構

  ■副業を認める企業の増加

   多くの会社では、従業員が「副業をすること」を就業規則等で禁止し、これに違反した
   ときには懲戒等の罰則規定を設けています。

   独立行政法人労働政策研究・研修機構の「雇用者の副業に関する調査研究」によれば、
   「正社員の副業を禁止している」と回答した企業は全体の50.4%となっています。

   同調査で副業を禁止している会社があげた理由は、

    ・本業に専念してもらいたいから

    ・業務へ悪影響を及ぼすから

    ・企業秩序を乱すから

    ・業務上の秘密を保持したいから

   といったものです。

   副業・兼業を許可する理由

    ・従業員の収入増加につながるため

    ・従業員が活躍できる場を広げるため

    ・従業員のモチベーションの維持・向上につながるため

    ・従業員の視野の拡大や能力開発につながるため

    ・組織外の知識や技術を積極的に取り込むため

   従業員のなかには、住宅ローンやその他の借入金を抱えている者や、子どもの養育費が
   相当額必要な者もおり、給与減少が生活に影響を及ぼしかねない状況です。

   ような背景から、従業員の給料の減少を補填するという意味合いで、従来禁止していた
   「副業」を認める企業が増加しています。

   全国20〜59歳の民間企業で働く正社員1000人を対象(出典:マクロミル調査)

   副業を希望する理由は「生活費の足し」(62.7%)や「本業の給与が安い」 
   (56.3%)など収入目的の回答が目立つ。

   次項からは、会社が副業を認める場合には、どのような問題点があり、どのようなことに
   留意しなければならないか、どのような準備をすればよいのか、具体的に解説します。

  □副業を認めるときの問題点

   1.従業員の安全の問題

    従業員の副業を認めた場合に、本業と副業の労働時間を合計すると従来よりも労働時間
    が大幅に増加し、精神的にも肉体的にも疲労を蓄積してしまうことが考えられます。

    その結果、次のような身体上の問題に発展するリスクが考えられます。

     ・疲れから集中力や注意力が低下し、思わぬ事故によるケガの発生

     ・過重労働による脳疾患や心臓疾患の発症

     ・心理的な負担によるうつ病など精神疾患の発症

    1日の所定労働時間は8時間という会社が多いですが、その勤務の後、副業先で5時間
    働けば、同じ日に13時間という長時間勤務になります。

    たとえば、副業を土曜日や日曜日にも行い、本業と副業を通算した月間の所定外労働
    時間が、100時間以上に及んだ場合、かなりの肉体的・精神的負担を招く可能性が
    あります。  

    このような過重労働のなか、脳・心臓疾患や精神疾患を発症した場合に、過労死認定
    基準を上回る過重労働だとして、業務起因性が認められ、労災として認定される可能性
    が極めて高くなります。

    万が一、死亡や自殺などにつながれば、損害賠償責任も生じてくるおそれがあります。

   2.組織の活力の問題

    業績不振を原因とした休業やワークシェアリングによる勤務時間短縮は、給与減少に
    つながり、従業員が本業だけでは生活を維持できなくなります。

    従業員としては、「会社には頼れない」という意識をもつことで、会社に対するロ
    イヤルティが薄れることも考えられます。

    そのようななか、副業が認められれば、慣れている本業は効率良く終わらせて、副業を
    行う時間をより多く捻出しようとするかもしれません。

    そして、二重就業によって、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積し、本業での遅刻や
    欠勤、居眠り、ミスの発生といったことも起こりがちです。

    本業に対する情熱や、やる気が失われたり、コミュニケーション不足を引き起こしたり
    した結果、組織の活力が低下するリスクがあります。

   3.企業の信用の問題

    従業員の副業先が、風俗や公序良俗に反するものであったり、会社のイメージと
    相容れない先であったりした場合に、取引先からの評判を落とすなど、会社の信用
    問題にまで影響を及ぼすことが考えられます。

    また、副業先が同業他社である場合には、本業で知り得た情報を副業先で漏らして
    しまうなど、営業秘密保持の観点からも問題があります。

    副業をしたことがきっかけとなって競合する会社に転職してしまう可能性もあります。

   4.その他の問題

    労働基準法では、1日に2カ所上の事業所に勤務する場合に両方の労働時間を通算
    することになっています。

    法定労働時間は、1日8時間、週40時間なので、それを超えた場合は、残業時間と
    みなされます。

    また、従業員が、給与を2カ所以上から受け、年末調整をされなかった給与の収入
    金額と、給与以外の所得金額との合計額が20万円を超える場合は、従業員自身が
    確定申告をする必要があります。

  □副業を認めるときの留意点

   1.副業を認める方法

    企業が禁止していた副業を認める場合には、次の方法が考えられます。

     ①就業規則の副業禁止規定を削除し、副業を自由に認める

     ②副業をするときは内容を届け出ることにする

     ③副業は会社の許可を受けた場合に限り認める

    ①は、就業規則に定めていた副業禁止規定を、全面的に削除し、自由に認めるもの
    です。

    これに対し、②は一定のルールを設け、副業を会社に届け出ることとするものです。

    ③は②同様に一定のルールを設けたうえで、会社が許可した場合に限り認めるという
    ものです。

    ①の場合、副業の内容などは社員の判断に委ねられることになり、会社としては従業員
    の副業の実態を把握できないことになります。

    前述したように副業を認める場合には、さまざまなリスクが考えられますので、届出制
    や許可制にし、会社として従業員の副業の実態を把握しておくのがよいでしょう。

    また、原則禁止であるが、不況で業績が低迷している時期に限定して認めるなど、
    期限を区切って副業を認めることも考えられます。

   2.副業の実態を把握する

    会社としては、従業員が副業をする場合に、その実態を把握しておきたいところです。

    そして、本業に著しい影響をもたらすことのないように、ある程度基準を設け、その
    内容を限定しておくことはリスク防止策として有効です。

    具体的には、副業を行う際の手続、地域・期間・職種などの基準を定め、就業規則や
    社内書式を整備しておくことよいでしょう。

     (1)副業を届出制とする場合の就業規則の規定例

     (2)副業を許可制とする場合の就業規則の規定例

     (3)期間限定で副業を認める場合の就業規則の規定例

     (4)「副業の許可願」の社内組織の例

   3.従業員の理解を求める

    会社としてはリスク防止の観点から、秘密保持の誓約書や競業禁止義務の誓約書など
    を書いてもらうことも、副業の内容によっては必要となります。

    そのためには、副業を認めるにあたって、従業員の理解と協力が欠かせません。

    会社の対応を決めたうえで、会社が副業を認める主旨や、副業をするときの留意点など
    について、事前に説明会を開いたり、研修を行ったりすることで、きちんと説明し、
    従業員の正しい理解と前向きな協力を引き出すことが何より重要となります。
 

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労務リスクと労務管理

雇用調整の進め方

雇用調整の進め方

  ■雇用調整の進め方

   業績悪化などに伴い「雇用調整」を進めざるを得ない企業が増えています。

   しかし、一言で「雇用調整」といっても、採用計画の見直しから整理解雇までその
   態様はさまざまで、従業員やその生活に大きく影響するものもあれば影響の少な
   いものもあります。

   たとえば、残業規制や休日・休暇の増加、中途採用やパートの採用中止などは、
   従業員の立場からすると現在の雇用条件には変化がありませんので、「それほど
   深刻ではない雇用調整」といえます。

   これに対し、希望退職募集、転籍、退職勧奨、整理解雇などは、従業員を企業の
   外に放出する「深刻な雇用調整」です。

   また、配置転換や一時休業は、従業員としての雇用関係は確保されるものの、仕
   事の内容や量が変化したり、貸金が低下したりする「中間的な雇用調整」であると
   考えられます。

    雇用調整は、従業員に対し「影響の小さいもの」からスタートし、
    徐々に「中間的なもの」へと移行し、
    それでも効果がみとめられない場合には「影響の大きいもの」へ、

   というステップを踏む配慮が必要です。

   雇用調整は、どのような方法で行うにしても、人事権や解雇権の濫用、それに対
   する従業員の反発などによってトラブルが発生することが考えられます。

   こうしたことを避けるためにも、きちんとした手順を踏み、慎重に進めていくことが
   不可欠です。

  □雇用調整の流れと方法

   それでは、雇用調整の方法をその流れに合わせて説明していきましょう。

   1.採用内定の取り消し

    採用内定の取り消しは、厳密には雇用調整の手段には含まれません。

    しかし、対象者はもとより、その家族などに対して計り知れない打撃と失望を与
    えるという点においては同様の配慮が必要です。

    内定後の経営の悪化など、やむを得ない場合の内定取り消しは、社会通念上
    認められていますが、やはり慎重に行うべきものです。

    厚生労働省の「新規学校卒業者の採用に関する指針」の「事業主が考慮すべき
    事項」では、「事業主は、やむを得ない事情により、どうしても採用内定取り消し
    または入職時期繰り下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共
    職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。

    (中略)なお、事業主は、採用内定取り消しの対象となった学生・生徒の就職先
    の確保について最大限の努力を行うとともに、採用内定取り消しまたは入職時
    期繰り下げを受けた学生・生徒からの補償などの要求には誠意をもって対応す
    るものとする」と述べられています。

   2.残業規制

    雇用調整の初期の手段として、もっとも広くとられているのが残業規制です。

    日本企業では、「生活残業」という言葉さえあるように、業務の繁閑に関わらず
    従業員が自らの判断で残業を行い、残業手当を得ようとする傾向がありました。

    しかし、残業は業務命令により行うのが本来あるべき姿です。

    従業員にしてみれば、残業手当がなくなることにより月収は減ることになります
    が、厚生労働省は従業員の健康上の配慮にもつながる好ましい手段とみています。

   3.中途採用の削減・停止

    中途採用は、即戦力となる本当に必要な人材を十分に絞り込んだうえで行われ
    ていますが、近年では、雇用調整の一環として中途採用の削減や停止に踏み
    切るケースも多くみられます。

   4.休日の振替、休日、休暇の増加

    休日を振り替えたり夏期休暇などの休日・休暇を増やしたりする措置は、厚生
    労働省が推進する労働時間短縮や労働条件改善の効果を期待することもでき
    るため、一石二鳥の手段といえます。

    しかし、この措置を実施する際には、時短推進や労働条件の整備を目的とした
    継続的なものであるのか、不況対策の臨時的措置であるのかを明確にし、周知
    徹底しておくことが望ましいでしょう。

   5.臨時従業員やパート・アルバイトなど短時間労働者の雇用停止

    臨時従業員やパート・アルバイトなど短時間労働者の雇用の際には雇用期間を
    定めるのが通例であるため、その期間満アとともに雇用関係を停止することに
    問題はありません。

    ただし、労働契約期間を反復更新して雇用してきた臨時従業員やパート・アル
    バイトの雇用を停止(雇い止めの意思表示)する場合、それまで何度も更新を重
    ね、実質的には期間の定めのない契約と異ならない状態であったわけですか
    ら、従業員側の強い反発が予想されます。

    地位保全の申し立てにより裁判となった例もあるため、慎重に行いましょう。

    <ワンポイント知識>

     厚生労働省による「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」
     において次の点があげられています。

     ◆雇い止めの予告

       契約締結時に、その契約を更新することを示していた労働契約(1年以上
       継続して雇用している場合に限る)を更新しない場合には、少なくとも契約
       の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。

     ◆雇い止めの理由の明示

       雇い止めの予告後に従業員が雇い止めの理由について証明書を請求した
       場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません(雇い止めの後に請求さ
       れた場合も同じです)。

   6.一時帰休

    一時帰休は従業員を一定期間自宅で待機させる制度で、会社の一部門につい
    て実施しているところも多いようです。

    このような休業は、労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由による
    休業」に該当するため、当然平均貸金の100分の60以上の休業手当を支払わ
    なくてはなりません。

    また、従業員としての身分が保証されているため、退職勧奨などに比べて従業
    員の協力を得やすいといえます。

    <ワンポイント知識>

     経済上の理由で、直近3カ月間の生産量または売上高が5%以上減少するな
     ど事業活動の縮小を余儀なくされ、休業や出向を行った場合に、休業手当、
     貸金等の一部が支給される「雇用調整助成金」、「中小企業緊急雇用安定助
     成金」があります。(問い合わせ先:事業所管轄のハローワーク)
 
   7.配置転換・転勤

    業績の悪い部門の従業員を配置転換し、営業利益の増加を追求するという手
    段は多くの企業でとられています。

    配置転換・転勤は、同一企業内において職種、職務内容、勤務場所のいずれか
    またはすべてを長期にわたって変更するものです。

    いずれも労働契約の変更となるため、トラブルに発展しないよう注意が必要です。

    なかでも転勤は、転居を伴う場合、従業員およびその家族などの生活にも大き
    な影響を及ぼすものです。

    「不当な動機・目的による」あるいは「従業員に著しく不利益をもたらす」転勤命
    令は権利の濫用とみなされます。

    また、育児・介護休業法では、事業主に対して、転勤など就業の場所の変更を
    伴う配置をしようとする場合、育児や介護の状況に配慮しなければならない旨を
    定めています。

    したがって、人選には細心の注意をはらう必要があります。

    新しい配置先で即戦力となってこそ、雇用調整における配置転換が意味あるも
    のになります。

    そこで、仕事内容が変わる場合は十分に教育訓練を行うなど配慮が必要です。

   8.出向

    就業規則において「業務上の理由により従業員に対し出向を命じることがある」
    と規定してあれば、企業側は労働契約の範囲内にあるものとして、従業員に出
    向を命じることができます。

    最近の不況下では親会社が生産部門を縮小し、余剰人員を製品の販売会社や
    系列会社へ出向させる例が多いようです。

    出向命令という権利の行使は信義誠実の原則に従ってなされるべきであり、出
    向理由が著しく不合理で社会通念上是認できないとされる場合、その命令は信
    義則違反ないしは権利の濫用とみなされ、無効となります。

    <ワンポイント知識>

     平成20年3月1日から施行された労働契約法では、権利の濫用と認められる
     出向命令は無効であると明記しています。

     出向を命じるにあたっては、出向先の企業の範囲、出向期間や貸金、退職金
     など出向期間中の労働条件に関して、労働者の不利益にならないよう十分に
     配慮することが重要です。
 
   9.転籍

    転籍は出向に類するものではありますが、転籍元会社を退職し、転籍先会社と
    の間に新たに労働契約を締結するものであるため、たとえ、就業規則に明記さ
    れていたとしても、これについては企業側も本人の承諾なくして一方的に命じる
    ことはできません。

   10.勧奨退職・希望退職の募集

     希望退職への応募は完全に本人の自由な判断に任されるものです。

     これに対し勧奨退職は企業側が対象者を特定して行うもので、希望退職の募
     集よりも従業員に与える影響は大きいといえます。

     なお、事業規模の縮小、事業活動の縮小、事業の転換、事業の廃止などに伴
     い、1カ月に30人以上の離職者が出る場合には、企業は最初の離職者が出
     る1カ月前までに再就職援助計画(※)書を作成し、所轄の公共職業安定所長
     の認定を受けなければなりません(雇用対策法第24条)。

     ※再就職援助計画とは、「事業所の現状」「再就職援助計画作成に至る経緯」
      「計画対象労働者の氏名、生年月日、年齢、雇用保険被保険者番号、離職 
      予定日及び再就職援助希望の有無」「再就職 援助のための措置」「労働組
      合等の意見」等を記載した計画です。

   11.整理解雇

     整理解雇は雇用調整の最後の手段であり、勤続年数の少ない者、勤務成績
     の良くない者などを整理基準に基づいて解雇します。

     解雇を行う場合には、解雇しようとする従業員に対して、

      ・少なくとも30日前に解雇の予告(予告日数は、平均賃金を支払うことで短
       縮可能)

      ・予告を行わない場合には平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い

     をしなければなりません。

     また、雇用対策法の定めにより、事業規模の縮小などにより労働者を1カ月
     30人以上解雇する場合には、所轄の公共職業安定所に大量解雇変動届を
     提出しなければなりません(年齢要件なし)。

     さらに、高年齢者雇用安定法では、45歳以上65歳未満の者を1カ月に5人以
     上解雇する場合には、多数離職届を提出しなければならないとされています。
     (再就職援助計画の認定の申請をした場合は、大量雇用変動届を提出したも
      のとみなされます。)

     解雇が有効に成立するためには、

      ・整理解雇の経営上の必要性が認められる 

      ・解雇を回避するための努力が尽くされた

      ・労働組合、従業員に対して事情を説明し協議を尽くした

      ・解雇対象者の選定基準および選定が合理的である

      ・解雇の手続きが公正に行われた

     といったことが必要です。

  □実施上の留意点

   計画性のない雇用調整は従業員の反感を買いかねません。

   雇用調整をスムーズに進めるためには以下のポイントに留意し、従業員が雇用
   調整を受け入れやすいムードを社内に浸透させることが重要です。

   1.経営情報の提供

    雇用調整を進めるにあたっては、経営幹部のみならず・一般従業員や労働組合
    にも経営の現状を認識させておくことが必要です。

    したがって、

     1)自社の置かれている経営環境

     2)自社製品の売り上げの実態と今後の見通し

     3)人件費を中心とするコスト構造

    などに関する正確な情報を、従業員や労働組合に対してわかりやすく提供し理
    解を得ることが重要です。

   2.経費削減運動の展開

    経営に関する情報を従業員や労働組合に提供することは危機意識を高めるう
    えで必要ですが、それだけではなく厳しい状況を「肌で知ってもらう」ことが肝心です。

    そのためには、たとえば、

     1)休憩時間などはパソコンなどの電源を必ず切る

     2)社内資料のコピーは裏紙を利用する

     3)備品、文房具などは再利用する

     4)出張時の新幹線のグリーン席の利用をやめる

    などの経費削減運動を展開することが考えられます。

    経費削減運動は自分に直接関係している業務に対する運動であるため、この
    運動が全社的に展開されるにつれ、はじめは強く反対していた従業員も「雇用
    調整は仕方がない」と考えるようになり、社内に雇用調整が受け入れられやす
    いムードが広がります。

   3.労働組合との取り決めは守る

    雇用調整の実施について労働組合と、

     1)雇用調整の内容について事前通知

     2)雇用調整の必要性や内容についての協議と合意

    などの取り決めをしている場合は、その取り決めを守らなければなりません。

   4.人選は公平に

    雇用調整において、「現在の生産状況から考えて、生産部門の従業員を5人ほ
    ど営業に回したほうがよい」などの抽象的なレベルから、「AさんとBさんを配置
    転換する」というような具体的なレベルに入ってくると、人選にあたる管理者や経
    営幹部の個人的な感情や利害が入り込む可能性が高くなります。

    つまり、経営者もしくは担当者が、自分や会社にとって都合が悪いと考える従業
    員だけを雇用調整の対象としたいという思惑が働くことがあるのです。

    その結果、

     1)組合活動に熱心な従業員

     2)日頃から会社や管理職に対して批判的な言動の目立つ従業員

     3)人づきあいの悪い従業員

    といった人材だけを雇用調整の対象とする一方的な人選が行われることにもな
    りかねません。

    しかし、こうした人選は人事権の濫用あるいは不当労働行為として問題となり、
    時には訴訟にまで発展することがありますので注意が必要です。

   5.経営責任を明らかにする

    従業員は、経営者が雇用調整の責任をどのように取るかについて大きな関心を
    もっています。

    経営者が役員報酬のカットやその他の形で雇用調整の責任を明確にすれば、
    従業員も雇用調整に協力的態度を示すようになります。

    弱いものから切っていくような態度では従業員の理解を得ることはできません。

    さらには雇用調整の影響を受けない従業員にも悪影響を及ぼすことになりかね
    ません。

   6.人事・労務制度の改正に伴う就業規則の変更

    労働時間の短縮や定年の延長に伴い就業規則を変更する企業も増えています。

    雇用調整を進めるうえでのトラブルを回避するためには人事・労務制度を徹底
    して見直し、そのうえで就業規則や規定などを変更することが必要です。

    これは、企業に有利なように書きかえるというのではなく、厳しい経営環境にお
    いて企業と従業員双方の不利益をできるかぎり排除するためのものでなくては
    なりません。

    なお、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことに留意
    が必要です。

     1)変更が、以下の事情などに照らして合理的であること

      ・労働者の受ける不利益の程度

      ・労働条件の変更の必要性

      ・変更後の就業規則の内容の相当性

      ・労働組合等との交渉の状況

     2)労働者に変更後の就業規則を周知させること
 

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正社員転換制度

正社員転換制度
 

  ■正社員転換制度導入のメリット

   パート社員や契約社員などの非正規労働者は増加の一途をたどっています。

   総務省統計局の「労働力調査(平成31年1〜3月期平均)」によると、2期連続で
   減少がみられるものの、その数は2162万人となっており、労働者全体に対する
   非正規労働者の割合は38.5%を占め、5%と5期連続の上昇となっています。

   非正規労働者のなかには、正社員になりたくてもなれなかったため、現在の就業
   形態を選んだ者が多いとされています。

   当時のこのような環境のなか、平成20年4月1日に施行された改正パトータイム
   労働法では、パート社員から正社員への転換を推進するための措置を設けるよ
   う、企業に義務づけました。

   その方法のひとつに正社員への転換制度の導入があり、制度を新たに導入した
   り、導入を検討したりする企業が増加しました。

   しかし、これまでの企業における非正規労働者から正社員への転換制度の有無
   や、転換の実績の有無を、厚生労働省の「平成19年企業における採用管理等に
   関する実態調査」でみてみると、調査対象企業約7000社のうち、「制度があり、
   実績もある」27.8%、「制度はあるが、実績はない」5.3%、「制度はないが、実績
   はある」37.6%、「制度がなく、実績もない」29.1%となっており、制度と実績がと
   もにあり、有効に活用できている企業はまだまだ少ない状況がうかがえます。

   少子・高齢化により労働人口が減少していく今、非正規労働者を戦略的に活用す
   ることで業績向上につなげていくことは、企業経営にとって不可欠であり、非正規
   労働者の正社員への転換制度はその有効な施策のひとつであるといえます。

   企業が転換制度を導入する場合に、次のようなメリットが考えられます。

    ・非正規労働者を採用する際に有利

    ・意欲や能力の高い人材をじっくり見極めてから、正社員に転換することができる

    ・非正規労働者が転換をめざして努力することによるモチベーションアップ

    ・正社員にも刺激を与えられることにより、組織の活性化が図れる

  □正社員転換制度の導入手順

   非正規労働者から正社員への転換制度にはさまざまなタイプがありますが、一般
   的なものは一定の条件を満たす非正規労働者のなかから、選考を経て正社員と
   して転換するというパターンです。

   一般的な制度についての導入手順について次に説明します。

   1.正社員および非正規労働者の制度の整備

    非正規労働者の正社員への転換制度を導入するときに、まずは、受入側となる
    正社員の制度を整備します。

    つまり、どのような人材が正社員として求められているのか、会社が望む正社
    員としての要件や、転換した人材は、正社員の賃金体系ではどこに位置づける
    のかなどを決めておく必要があります。

    また、同時に非正規労働者の制度を整備しなければなりません。

    非正社員として入社し、正社員に転換するまでの評価制度や教育制度を整えて
    いくことが重要となります。

    このことは、非正規労働者が、実際に転換制度をめざし、応募するかどうかに関
    わらず、全体の戦力化に確実につながります。

   2.応募基準の検討

    次に転換制度の内容を検討します。

    転換制度に応募できるかどうかの基準(人事評価の成績、勤続年数、年齢な
    ど)を設けます。

    人事評価の成績については、過去何年分を考慮するのか、普通以上の成績な
    のか、それを上回ることが必要なのかといったことです。

    勤続年数としては、定着度や適正を見極めるためにも最低でも1年は必要とい
    えます。

    年齢については、正社員に転換してから、長く活躍してもらうためにも、一定年
    齢以下(たとえば40歳以下など)としているケースが多くみられます。

    また、会社が指定した通信教育の講座の修了、資格の取得、上司の推薦、転勤
    が可能かどうかなどを応募基準としている場合もあります。

    いずれにせよ、どのような人に正社員になって欲しいかによって、会社にあった
    基準を検討しましょう。

   3.選抜方法の検討

    選抜方法については、筆記試験と面接を併用して行っているケースが多くみら
    れます。

    筆記試験は、実務に必要な知識を測るための試験や適正試験、性格に関する
    テストなどです。

    また、面接は正社員として活躍していけるかどうかを見極めるために行います
    が、直属の上司によるものではなく、人事部や役員など、その応募者を客観的
    にみることができる者によって行われることがポイントとなります。

   4.転換規定を作成する

    転換制度の内容が固まったら、応募時期や選考時期、応募締切日など詳細な
    点も定め、文書化して規定とし、就業規則の一部として扱います。

    また、転換制度に応募するための社内様式も併せて準備します。

   5.非正規労働者に周知する

    非正規労働者に転換制度について説明し、周知しておくことが必要です。

    そして、非正規労働者がどのような方法で自己研鑽をしていったら、正社員にな
    れるのか、各人が目標や計画を描けるように会社は支援をすることが重要です。

  正社員転換制度の規定例

   転換制度の規定例を記載します。

  □助成金の活用

   転換制度を導入する際には、助成金の活用も検討してみましょう。

   1.キャリアアップ助成金(平成28年度より)

    中小企業が、就業規則や労働協約によって、契約社員やパート社員など有期
    契約労働者を正社員へと転換させる制度を新たに導入し、実際に転換させた場
    合に、助成金が支給されます。
 

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服務規律の策定

服務規律の策定
 

  服務規律は、ほとんどの会社の就業規則に記載されています。

  ただし、記載されている内容が会社の実態に合っておらず、形式的なものになって
  しまっていることも少なくありません。

  就業規則の中に服務規律を策定する際には、会社の実態に合わせるよう注意が
  必要です。

  また、服務規律を懲戒処分と連動させることで、就業規則の中の重要な要素とする
  ことも必要です。

  ■服務規律とは

   服務規律とは、企業秩序を維持するために従業員が守るべき義務やルールのことです。

   服務規律をおろそかにしてしまうと、企業秩序が乱れて、企業は成り立たなくなっ
   てしまいます。

   服務規律は大きく次のように分類することができます。

    (1)勤務に関する規律

    (2)会社施設及び会社財産に関する規律

    (3)秘密及び信用の保持に関する規律

   (1)の「勤務に関する規律」には、出社、退社時のタイムカードの打刻に関するこ
   とや上司への業務報告に関することなどが定められています。

   また、業種によっては勤務時の服装や髪型について規定することもあります。

   (2)の「会社施設及び会社財産に関する規律」には、会社の備品及び社有車を使
   用する際の注意点などに関することが定められています。

   (3)の「秘密及び信用の保持に関する規律」には、会社の機密情報の漏えい防止
   などに関することが定められています。

  □会社の実態に沿った服務規律が必要

   服務規律は、できるだけ会社の実態に沿った内容にする必要があります。

   一般的な雛形の服務規律では実際に運用する際に、上手く運用できないことが
   あります。

   業種やその時代環境によって、必要な服務規律のかたちは異なるので、定期的
   に服務規律をメンテナンスする必要があります。

  □懲戒との連動が重要

   会社の実態に沿った服務規律を策定した後は、譴責(けんせき)や減給などの懲
   戒と連動させる必要があります。

   会社の実態に沿った服務規律を策定しても、懲戒と連動していなければ、服務規
   律は軽視されます。

   服務規律に違反した場合は、懲戒の対象となる旨を就業規則内に定めておくこと
   が大切です。

    <規定例>

     (懲戒)

      第○条

      1.社員が次の各号の一に該当したときは、譴責又は減給に処する。

        ①就業規則第○条(服務規律)に違反したとき

        ②・・・・・・・・・・

        ③・・・・・・・・・・

      2.社員が次の各号の一に該当したときは、懲戒解雇に処する。

        ①就業規則第○条(服務規律)に著しく違反し、なお、改善の見込みが
          無いと認められるとき     

        ②・・・・・・・・・・

        ③・・・・・・・・・・

    上記の規定例のように、服務規律に違反した場合は厳しく対処するということを
    明確にしておくことで、服務規律の重要性を社内に浸透させることができます。

    本来、服務規律は守られて当然のものですが、それが実現しづらくなってきてい
    るのが事実です。

    企業秩序を維持するためにも、服務規律を守らせるための工夫が必要とされて
    います。

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産業医の活用

産業医の活用
 

  ■産業医

   会社にとって、従業員が心身ともに健康で元気に仕事をしてくれることは、何より
   も大事なことです。

   しかし、長時間勤務や過度なストレスが原因でうつ病や生活習慣病にかかる従業
   員の数は増加の一途をたどっています。

   厚生労働省の調査によると、定期健康診断における有所見率は54.1%(平成2
   9年)で、2人に1人以上が何らかの健康上の問題を抱えているという結果となっ
   ています。

   この不況下、収益を上げるために従業員はかなりのストレスにさらされています。

   不眠、うつ病、職場不適応などのメンタル面の不調は、従業員個人の生産性を落
   とすだけでなく、仕事上のミスや労災事故というかたちで職場全体にも大きな影響
   を及ぼします。

   過労死や過労自殺が労災認定されるようになり、会社としての管理責任も厳しく
   問われる時代になりました。

   心身に不調をきたした従業員を早期に発見し、適切に対処するためにも、産業医
   を活用することがますます重要となってきています。

   1.産業医とは

     産業医とは、事業場(※)において従業員が健康で快適な作業環境の下で仕
     事ができるよう、専門的な立場から指導・助言を行う医師のことです。

     メンタルヘルスの領域以外に、労働関係の法律知識や就業規則、就業実態に
     も精通しているのが特徴で、職場で働く人たちの健康を守るために、健康管理
     や職場環境の改善に向けた意見や助言をするアドバイザー的な存在でもあります。

     また、産業医は医師ではありますが、基本的に医療行為は行いません。

     ※事業場とは、工場や事務所、店舗など、一定の場所において関連する組織
      のもとに事業活動を行っているところを指します。

   2.産業医を置くメリット

     産業医を選任することで、大きく分けて2つの効果が期待できます。

     (1)従業員の健康管理

       ・健康に対する従業員の意識が向上し、従業員の心身の健康の保持
        増進を図ることができる

       ・健康診断の受診率が向上する

       ・健康診断後に適切なフォローをすることができる

       ・従業員のメンタルヘルス対策に適切に対応することができる

       ・生活習慣病改善などの指導を受けることができる

       ・長時間労働者への面接指導により健康障害の防止を図ることができる

     (2)職場環境の改善

       ・職場の定期巡視により作業環境の改善が図られ、働きやすい職場になる

       ・高齢化に伴う職場不適応、長期休業療養者の職場復帰などに対応
        することができる

   3.産業医の選任

     労働安全衛生法では、一定規模以上の事業場には産業医を選任することが
     義務づけられています。

     産業医が必要となる規模とは、労働者が常時50人以上いる職場で、同一会
     社の支店などであっても、その支店に50人以上の労働者がいる場合には、本
     社とは別に産業医が必要となります。

     つまり、産業医は、会社ではなく事業場を単位として必要になってきます。

     なお、労働者の数によって必要な産業医の数も変わってきます。

     労働者の数が50〜3,000人までの事業場には産業医を1人以上、3,001人
     以上の事業場には産業医を2人以上選任しなくてはなりません。

     労働者が常時1,000人以上いる事業場、および有害業務に従事する労働者
     が常時500人以上いる事業場においては、専属の産業医を選任する必要が
     あります。

     専属の産業医とは、他の医療機関などで常勤として勤務しておらず、もっぱら
     その事業場での業務に従事する医師のことをいいます。

     産業医を選任した場合には、事業場と医師との間で産業医契約を結ぶだけで
     はなく、「産業医選任報告(様式第3」という所定用紙に、医師免許の写しと
     産業医の資格を証明する書面を添えて、所轄の労働基準監督署長に提出し
     なくてはなりません。

                         産業医を選任している事業所の割合

   4.産業医の職務内容

     産業医の仕事は、従業員の健康を阻害する要因がないかを見回ることや、健
     康診断、健康相談を行うことなどさまざまですが、具体的な職務内容としては、

      ・毎月1回、職場を巡視する(定期巡視)

      ・定期健康診断の結果に基づき、従業員の健康状態をチェックする

      ・必要に応じて、従業員と個別に面談を行い、健康管理指導を行う
       (生活習慣病の改善指導、メンタルケアなど)

      ・過重労働者(月の残業時間が100時間以上の者など)への面接指導を行う

      ・従業員の休職・復職の判断時の面接を行う

      ・健康やメンタルヘルスに関する相談、教育を行う

      ・職場環境の管理・改善のためのアドバイスを行う

      ・従業員の健康障害の原因調査、再発防止のための措置について
       必要な助言をする

      ・衛生委員会に参加する

     などがあげられます。

  □産業医を選任する

   産業医を探すには、次のような方法が一般的です。

   1.産業医の探し方

     (1)地元の医師会に問合わせをする

       地元の医師会に問い合わせをして産業医をお願いする方法です。

       地元の医師会に紹介してもらうため、事業場近くの医師に産業医を依頼で
       きるというメリットがあります。

     (2)定期健康診断の実施機関に依頼する

       定期健康診断や人間ドックで利用している医療機関に依頼する方法です。

       定期健康診断と連動したかたちで保健指導などを受けることができる点が
       メリットです。

     (3)人材紹介業者に依頼する

       人材紹介業者の場合、登録されている医師のなかから条件に合った産業
       医をすぐに紹介してもらえるというメリットがあります。

       人材紹介会社への紹介手数料は、嘱託産業医の場合には報酬月額の2
       〜4カ月分、専属産業医の場合には年俸の10%程度が目安です。

     (4)近隣の病院に当たってみる

       近隣の病院の医師に産業医を依頼する方法です。

       近隣の病院であれば、通院している従業員も多いでしょうし、顔なじみ感も
       あって安心です。

       また、急病人が出たときに頼りになるというメリットもあります。

       上記以外に、健康保険組合や地域産業保健センター(原則、従業員数50
       人未満の事業場を対象とした情報提供機関)に問い合わせてみる方法や、
       親会社や関連会社に産業医がいればその医師に依頼してみる、近隣企業
       の産業医に兼任を依頼してみる、などの方法があります。

       厚生労働省の調査によると、平成28年12月時点の医師の数は約31万
       9000人、平成19年8月時点の産業医の有資格者数は約9万人超(平成
       28年3月)となっており、割合にしておよそ3人に1人の医師が産業医の資
       格をもっている計算になります。      

       産業医の大部分は嘱託で、開業医や勤務医が日常診療の傍らに産業医
       の業務を担っているケースが多くみられます。
         
   2.産業医を選ぶポイント

     産業医を決めるに当たり大事なことは、産業医に対して会社が何を望んでい
     るかを明確にすることです。

      ・おもに職場の定期巡視をお願いしたいのか

      ・従業員のメンタルケアに重点を置きたいのか

      ・安全衛生管理についてのアドバイスがほしいのか

     など、会社が産業医に求めているイメージを明確にしておくことで、契約前の
     面談時により具体的な話をすることが可能となります。

     産業医を選ぶ際のポイントとしては次のようなものがあげられます。

     (1)人柄や雰囲気

       従業員の年齢構成や職場の雰囲気によっても、その事業場に合った産業
       医は変わってきます。

       たとえば、

        ・やる気のある若い医師がよいのか

        ・経験豊富なベテランの医師がよいのか

       など、産業医に対する要望がある場合には、問い合わせの段階で伝えるよ
       うにしましょう。

       なお、よい産業医は従業員が気軽に相談できるような雰囲気づくりを心掛
       けているものです。

       フットワークが軽くて、コミュニケーションの上手な明るい医師が理想です。

     (2)産業医活動に対する考え方

        ・産業医としてどのようなビジョンをもっているのか

        ・安全衛生管理に対する考え方

        ・企業のコストとリスクバランスについての見解

       など、会社の姿勢と産業医のビジョンとがマッチしているかどうかを確認す
       ることが大切です。

       なお、産業医の職務は従業員のプライバシーに大きくかかわるため、守秘
       義務の厳守はいうまでもありません。

     (3)事業場(特に人事担当者や衛生管理者など)との相性

       産業医との直接の窓口となる人事担当者や衛生管理者には、契約前の面
       談時になるべく同席してもらい、顔合わせをしておくのが望ましいでしょう。

       現場からの要望や実際の状況を産業医に伝えることで、どのように協力し
       合えるのかが確認できていれば、契約後に誤解やトラブルが発生するリス
       クを軽減することができます。

     (4)企業の経済活動に対する理解度

       よい産業医は、職場環境の改善策をアドバイスする際、最終的な目標を示
       すとともに、費用対効果なども考慮し、実行可能な提案をしてくれます。

       会社の状況を理解したうえで、最適な見立てができるかどうかも重要な要
       素です。

       従業員の健康や安全に重点をおきつつ、各部署や会社全体のコストとパ
       フォーマンスをも意識した、現実的なアドバイスをしてもらえるのが理想です。

     (5)これまでの産業医としての経歴

       産業医としての経歴を知ることは、(3)(4)の見当をつけるうえでとても重
       要です。

   3.産業医の報酬の目安

     産業医の報酬は、会社の事業内容、事業規模、所在地、依頼する職務の内
     容、訪問回数などによっても変わってきます。

     (社)東京都医師会が公表している、従業員数に応じた1事業場当たりの報酬
     月額の目安は次のとおりですが、地域によっても差があるので、地元の医師
     会に問い合わせてみましょう。

      *有害物質取り扱い事業場は、危険手当として上記報酬の3割を付加する。
      出所:(社)東京都医師会資料(平成17年3月)

    4.契約時の留意点

     労働安全衛生法では、産業医には月1回の職場の巡視が義務づけられてい
     ますが、多くの事業場で守られていないのが現状です。

     こうしたトラブルを防ぐためにも、産業医契約書には巡視の回数を明記するこ
     とが大切です。

     それ以外にも、「担当事業場名」、「業務対象」、「活動内容」などを具体的に明
     記するようにします。

     そのためには、最初の段階でよく話し合い、その内容を契約書に落とし込むこ
     とが重要です。

  □産業医を活用する

   1.職場の定期巡視

     従業員がよりよい仕事をするためには、安全なだけでなく、快適な職場環境を
     つくる必要があります。

     産業医には、

     ・室内の明るさや温度、休憩設備などの環境的な問題

     ・作業手順や作業時間、作業の姿勢や動線など業務そのものに関する問題

     ・上司と部下、同僚との人間関係

     などについて、専門家の立場から多角的にチェックしてもらい、実態を正しく捉
     えたうえで、職場環境の改善につながるアドバイスをしてもらいます。

     労働安全衛生法では、月に1回、産業医による職場の定期巡視を義務づけて
     います。

     定期的に職場を巡視することは、産業医にとって職場環境や職場の雰囲気、
     作業内容を把握するための有益な機会となりますし、従業員にとっても産業医
     の存在を知るきっかけとなり、会社が安全衛生管理に取り組んでいることのア
     ピールにもつながります。

     それ以上に重要なことは、職場における危険要因の早期発見です。

     実際に産業医が職場に出向いてみると、室内の照明が暗かったり、騒音が大
     きかったり、ディスプレイと目の高さが合っていなかったりするほか、工場であ
     れば腰を曲げた無理な姿勢で作業をしていたり、有害な化学物質の保管法が
     誤っていたりするなど、従業員の健康に悪影響を及ぼす恐れのある要素が見
     つかるものです。

     産業医には事業場内のすべての場所を(トイレ、休憩室、食堂なども)巡視し
     てもらい、作業方法や衛生状態が有害であると思われる個所についての指
     摘、および防止策や善後策のアドバイスをしてもらいます。

     巡視は月に1回なので、効率的かつ計画的に実施するためにも、チェックリス
     トを作成してチェック項目ごとに良否の判定と改善ポイントを記録するなどします。

     チェックした項目に対して現場の責任者がきちんと対応したかを確認できるよ
     うにするなど、巡視の機会を有効にいかすよう工夫することが大切です。

   2.定期健康診断の結果に基づき従業員の健康状態をチェック

     労働安全衛生法では、従業員に対して定期健康診断を実施するよう義務づけ
     ていますが、実施すればよいというものではありません。

     事故の防止や生産性の向上といった観点から、有所見者に対して治療を勧告
     したり、就業を制限したりするなど、実施後の対応がより重要だといえます。

     また、定期健康診断の実施後は、産業医に結果をチェックしてもらい、健康診
     断個人票の「医師の意見」欄にコメントを記入してもらうようにします。

     その記入をもって、会社が管理する個人票は法的にも有効となります。

     産業医にとっても、普段なかなか顔を会わせることのない従業員の健康状態
     や事業場全体の傾向を把握するうえで、診断結果のチェックは役に立ちます。

     こうしたチェックをすることで、従業員個別の健康相談、正しい知識を伝えるた
     めの健康教育、職場に応じた安全教育などの実施につながっていくことも期待
     できます。

   3.長時間労働者への面接指導

     会社は、時間外・休日労働時間が月100時間(※)を超え、かつ疲労の蓄積が
     認められる従業員に対しては、脳・心疾患の発症を予防するために、医師によ
     る面接指導を実施しなくてはなりません。

     産業医は、従業員の勤務状況、疲労の蓄積状況、その他心身の状況につい
     て確認をし、従業員本人に必要な指導を行うとともに、面接指導を実施した従
     業員の健康を保持するために必要な措置について会社側に意見を伝えます。

     会社側は、産業医の意見を勘案し、必要が認められる場合には、就業場所の
     変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じる
     ほか、産業医の意見を衛生委員会に報告しなくてはなりません。

       ※月100時間に該当するか否かは基準日を設定して算定します。

   4.従業員の休職・復職の判断時の面接

     メンタル不全や健康障害で休職となった従業員の復職を判断する際には、産
     業医が復職可能かどうかの見極めを行います。

     たとえば、休職中の従業員が、経済的な理由などから早期復職を希望し、病
     気が完治していないにもかかわらず完治したと主治医に申し出て「復職可」の
     診断書を書いてもらい、会社に提出してくることがあります。

     このような場合、主治医の診断書を鵜呑みにしてしまうと、復職してもすぐに休
     職へと逆戻りしてしまったり、かえって病状を悪化させてしまったりするなど、
     従業員にとっても会社にとっても不利益となることが往々にしてあります。

     職場環境に耐え得るレベルまで病状が回復しているかどうかの最終判断は、
     会社の状況を把握しており医学的な判断のできる産業医に委ねましょう。

     なお、産業医は、スムーズな職場復帰をはたすために必要であれば、復職直
     後の業務内容や就業時間の変更、配置転換などについてのアドバイスや調
     整も行います。

   5.衛生委員会への参加

     業種を問わず、労働者が常時50人以上の事業場には衛生委員会の設置が
     義務づけられています。

     月に1度、会議を開くことになっていますが、衛生委員会の活動はついおろそ
     かにされがちです。

     職場における潜在的なリスク要因を見つけだし、それを改善していくために
     は、現場で働く従業員と専門知識をもった産業医がタッグを組むことが大事で
     すが、その有効な場でもある衛生委員会を形骸化させないためにも、産業医
     の訪問日に合わせて衛生委員会を招集するなど、無理のないかたちで運営し
     ていく工夫が必要です。

     なお、議事録などの記録をしっかりと残しておくことで、安全配慮義務違反のリ
     スクを回避することにもつながります。
 

 

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労務リスクと労務管理

従業員の転籍

従業員の転籍
 

  ■転籍とは

   転籍とは、これまで在籍していた会社(以下、転籍元)との労働契約が終了し、異
   なる会社(以下、転籍先)との労働契約を締結して籍を移すことをいいます。

   転籍以外で籍を移す形態としては出向がありますが、出向は出向元に在籍して 
   社員としての地位を維持しながら、出向先にも在籍しその指揮命令の下で働くこ
   とをいいます。

   転籍と出向の違いを図で示すと次のようになります。

   転籍は、出向元と出向先の両方に在籍する出向と異なり、転籍元との労働契約
   が終了し、社員としての身分を失うことが最大の特徴です。

   また、転籍や出向を行うには社員の同意が必要ですが、出向が就業規則による
   過半数組合や労働者代表による包括的な同意でも行えるのに対して、転籍は個
   別の同意が必要となります。

   したがって、会社が一方的に転籍を命令することは認められません。

   具体的に転籍を行う状況としては次のようなケースが考えられます。

    ・企業間の個別の人事異動として行われる転籍

    ・事業の譲渡とともに労働契約が譲渡されることによる転籍

    ・部門を独立させて別会社にするなど企業組織再編に伴う転籍

   いずれのケースでも転籍には、社員の個別の同意が必要となりますが、会社分
   割という方法で行う場合は、分割会社の権利義務が労働契約も含めて承継会社
   に承継されるため、社員の個別の同意は必要ありません(この点については、会
   社分割に伴う転籍についての項で説明します)。

  □転籍における留意点

   1.同意について

     前述のとおり、社員を転籍させるには、本人の同意が必要です。

     口頭による同意でも有効ではありますが、無用なトラブルを避けるためにも、
     書面による同意書を作成しておいたほうが確実です。

     この場合、転籍元への退職届および転籍先の雇用契約書でも構いませんが、
     通常は、転籍元から転籍先に転籍を同意する旨、転籍先の労働条件をひとつ
     の書面に盛り込んで同意書を作成することが多いようです(書式例について
     は、次項を参考にしてください)。

     万が一、同意が得られなかった場合は、転籍をさせることはできません。

     また、そのことを理由に解雇することもできません。

   2.労働条件の変更について

     転籍に際して、転籍元と転籍先で労働条件が変更されることがあります。

     企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職し、転籍先
     との新たな雇用関係が生じるということですので、労働条件は変更されても不
     利益変更にはあたりません。

     ただし、事業譲渡や組織再編の場合は、転籍元の労働条件をそのまま転籍
     先に引き継ぐのが原則なので、転籍によって当然には労働条件を変更するこ
     とはできません。

     しかしながら、労働条件についても社員の同意を得ることで変更が行われるこ
     とが多いようです。

     すなわち、転籍および労働条件の変更の同意をとり、転籍先では新しい労働
     条件の下、雇用されることになります。

     いずれにせよ重要なのは、転籍先での労働条件を明示して十分に説明し、納
     得のうえで同意してもらうことです。

     この点をあいまいにしてしまうと、後日、「こんなはずではなかった」などと社員
     から取り消しを求められるといったトラブルに発展する可能性があります。

   3.退職金の扱いについて

     企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職する時点
     で、転籍元の退職金規定に基づいて退職金を支払うことになります。

     一方、事業譲渡や組織再編に伴う転籍では、転籍先を退職する際に、転籍元
     と転籍先の勤続年数を通算し、転籍先の退職金規定に基づいて、退職金を支
     払うことが多いようです。

     退職金の支払いについて、あいまいなままだと転籍の同意も得にくく、また、
     後日トラブルに発展することもあります。

     同意書や、転籍元と転籍先の間の契約書に記載するなどして明確化しておく
     ことが望まれます。

     なお、転籍への同意を得やすくするため、転籍一時金などの名称で、退職金
     の加算を行うケースが多くみられます。

  □書式例

   1.転籍に関する同意書

     転籍には対象者となる社員の同意が必要です。

     口頭でも有効ですが、後日のトラブルを避けるためにも書面にしておくことが
     重要です。

     次に転籍に関する同意書の書式例を記載します。

   2.転籍に関する契約書

     同意書を交わすだけでなく、転籍元と転籍先の会社間で、転籍に関する契約
     書を交わしておくと誤解やトラブルを防ぐことができます。

     次に契約書の書式例を記載します。

  □会社分割に伴う転籍について

   会社分割とは、株式会社または合同会社(分割会社)が、その事業に関して有す
   る権利義務の全部または一部を、分割後に他の会社(承継会社)または分割によ
   り設立する会社(設立会社)に承継させることをいいます。

   承継する会社が分割により新しく設立される場合を「新設分割」といい、既存の会
   社が承継する会社となる場合を「吸収分割」といいます。

   この会社分割という方法をとる場合には、分割契約書等に定めるところにより、分
   割会社から承継する会社に権利義務関係が包括的に承継されます。

   労働契約についても、そのまま承継されるので、分割される業務に主として従事
   する社員については、個別の同意なしに転籍させることができます。

   ただし、労働契約の承継については、労働者に与える影響が大きいため、労働者
   保護の観点から「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律」(労働契約承継
   法)が定められ、その取り扱いについて規定しています。

   労働契約承継法のおもな内容は次のとおりです。

   詳しくは、厚生労働省のサイト

    「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律(労働契約承継法)の概要

   をご参照ください。
 

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労務リスクと労務管理

社内規定の整備は会社を守る基本 


  社内規定の不備は社内にさまざまな問題を発生させさせる原因となります。

  社内規定集(ひな形)を掲載しておきますので自社用に加工して使用してください。

  ネットの普及により争いは団体から個人へと移行しています。

  ネット上には情報があふれ、中には、よからぬ入れ知恵をするやからもいます。

  一昔前と比べ、従業員個々の権利意識の高まり、情報収集による理論武装により、
  会社に権利を主張してくるのです。 

  社内規定は従業員と会社相互を守るためのものです。

  未整備の規定があるようでしたら、自社用に加工してご使用ください。
   
  ■社内規定の整備に投資

    「規定を作る」というなんとなく堅苦しく感じますが、これは大きな誤解です。

   社内規定は会社を守るためのルールブックと言ってもいいでしょう。

   例えば「就業規則」という規定があります。

   これは給料体系、賞与、残業手当や有給休暇など会社で働くために必要な事柄を定
   めたものです。
  
   一見会社が縛られる事柄ばかりのような感じがするかもしれませんが、実は就業規
   則がないと「解雇」が出来ないのです。

   「このようなときは解雇しますよ」という内容をあらかじめ就業規則に決めておか
   ずに解雇すると「不当解雇」として従業員から訴えられる可能性があります。

   また「懲戒処分」のときも同じで、従業員に不始末があったときに減給や懲戒解雇
   などをしなければならないことがあるかもしれませんが、こういった処分も就業規則
   がないとできません。

   逆に「有給休暇」などは就業規則がなくても法律で決まっていますので与えなけ
   ればいけません。

   本屋で販売しているものをそのまま使うのはお勧めはできません。

   販売されているものは上場企業でも適用できそうなくらいの「従業員有利」な内容
   になっていますので、そのまま使うと中小規模企業では水準が高すぎたりします。

   就業規則以外にも「三六協定」なども必要ですし、税務上は「慶弔規定」も整備
   しておきたいところです。

   *36協定(三六協定)

     この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36(サ
     ブロク)協定」といいます。

   労働時間は1日8時間、1週間40時間を超えて労働させることは禁止されており、
   この36協定が無いと、残業や休日出勤をさせること自体ができないのです。

   残業手当を払っても違法であり、36協定は「会社の規模を問わず」、必要な手続き
   です。

   確かに社内規定を整備するには社会保険労務士などに支払う経費が発生します。

   しかしこの費用も経費になりますし、また節税という枠を離れて考えても多くのメリ
   ットがあります。

   社員に働きやすい職場を提供するとともに、いざというときには会社も守るために社
   内規定はあるのです。
   
  ■BYODとは?

   「Bring Your Own Device」の略で、従業員が個人保有の携帯用機器 
   (スマートフォン、パソコン、タブレット等)を職場に持ち込み、それを業務に使用
   することを示します。

  □BYOD導入のメリット、デメリット

   ○メリット

    ・時間、場所を選ばず手軽に利用できる

    ・移動時間を有効に使え労働時間が削減できる

    ・どこにいても通信できる

    ・メールの返信など迅速な対応ができ顧客の満足度が上がる

    ・豊富なアプリでスケジュールやデータ管理がしやすい

    ・顧客へのプレゼンテーションなどの向上

   ○デメリット

    ・紛失、盗難

    ・盗み見

    ・通信の漏洩

    ・ウイルスの感染

    ・悪意のアプリによる情報の漏洩

  □BYODを導入する上での注意

   BYODをする際、プライベート・データと業務データの切り分けにも注意をしなけ
   ればなりません。

   同一のアドレス帳を用いている場合、客先に送るはずの業務メールを誤って友人等
   に送ってしまうという事故が起こる可能性もあります。

   また、退職時には、BYODで使っていたスマートフォンやタブレットから業務データ
   がすべて消去されたことを確認する必要があります。

  □BYOD導入をするためにすべきこと

   (1)社内規程をきちんと整備しておく

     ①セキュリティポリシーなどのセキュリティ規程

     ②適切な労務管理などの就労規程

     ③費用負担の取り決めなどの経費規程

     ④就業規則に明記

   (2)端末利用に関するマニュアル作成

     ①使用するアプリケーションの特定

     ②リモートワイプ(遠隔からのデータ消去機能)の設定ができる

     ③ファイルのデータ暗号化ができる

     ④端末のセキュリティロックを設定する

     以上の事項は、必ずマニュアルに記載してください。

   (3)誓約書の取得

     ①利用目的

     ②管理、届け出について

     ③禁止事項

     ④利用終了時の取り扱い

     ⑤誓約への違反などの分類

   BYODは導入しないと考えている場合でも、大半の従業員のスマートフォンやタブレ
   ット等の中に何かしらの会社の情報が入っているはずです。

   取引先の電話番号、住所、担当者の名前もその情報の一つです。

   顧客の情報、会社の情報が漏えいしてしまうと会社の信用もなくなり、最悪の事態を
   招きかねません。

   「自社は、BYODを導入しないから対策など必要ない!」と考えるのではなく、あら
   かじめきちんとしたルールを作成し対策をとっておく事が必要です。 


  ■各種規定ひな形

   <役員用規程>

     役員退職慰労金規程

     役員退職慰労金規程に関する取締役会議事録  

     有限会社の取締役申し合わせ事項 

     有限会社の役員退職慰労金・弔慰金規程

   <従業員用規程>      

    災害補償規程

    給与規定

    フレックスタイム規定

    制裁規定

   <兼用>

     福利厚生規程 

    <その他>

     採用への備え

     身元保証書

 

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労務リスクと労務管理

労働時間の管理不足は企業リスクを拡大させる


  近年、成果主義の浸透や非正規従業員(パート労働者など)の増加などを背景に業務
  遂行方法が複雑化し、従業員数が少ない中小企業でも労働時間管理が難しくなって
  きています。

  適切な労働時間管理が行われないと残業は慢性化し、企業、従業員とその家族にとって
  大きなリスクとなることから、労働時間の適正化は緊急課題です。

  ■法定労働時間の管理

   労働基準法(以下、労基法)では、休憩時間を除き労働時間について次のように定め
   ています。

    ・1日の法定労働時間は8時間

    ・1週間の法定労働時間は40時間

   この法定労働時間を基本として、企業は労働者の労働時間を管理していきます。

   (1)1日の法定労働時間

     労基法では、1日の法定労働時間について8時間と定めています。

     ◎労働時間にかかわる範囲
      1日8時間(休憩1時間含む)、週5日勤務の企業の場合

      ○拘束時間
       ・出勤から退勤までの全時間をいい、休憩時間も含まれる

      ○法定労働時間

       ・拘束時聞から休憩時間を除いた時間をいう

       ・この労働時間は使用者の指揮監督のもとにある時間をいう

       ・所定労働時間は法定労働時間の範囲内で定める

      ○所定労働時間

       ・就業規則などで定める所定始業時刻から所定終業時刻までの
        時間のうち休憩時間を除いた時間をいう

      ○休憩時間

       ・拘束時間中ではあるが、勤務からは解放され労働しないことが
        保障されている時間をいう

      ○法定内残業時間

       ・所定労働時間を超えるが法定労働時間内の労働時間(割増貸
        金の支払いは任意)

      ○法定外労働時間

       ・法定労働時間を超える労働時間(割増貸金の支払いが義務づ
        けられる)

   (2)1週間の法定労働時間

     1週間の所定労働時間が40時間以内となるように、各勤務日の所定労働時間
     および勤務日数を定めます。

     一部の業種については、法定労働時間の特例措置が講じられています。

     ◎法定労働時間の特例
      商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のうち労働者数10人未満の
      一定の事業場については、労働時間の特例措置として、1週44時間、1日8
      時間まで労働させることができることになっています。


  ■休憩時間の管理

   適当な時間で労働を中断するなどし、労働者の心身の疲労を回復させる必要があり
   ます。

   このため、労基法は休憩時間について次のように定めています。

    労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は
    少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない。

   労基法の規定は、あくまで最低の基準で、疲労回復に必要な休憩を労働時間の長さ
   に応じ適宜与えるようにしましょう。

   しかし、長過ぎる休憩時間は拘束時間をいたずらに長くする結果となり好ましくありま
   せん。

   また、休憩時間は労働から離れることが保障されているものである以上、これを労働者
   に自由に利用させなければなりません(休憩時間の自由利用)。


  ■休日の管理

   休日は、労働者にゆとりある生活を与え、労働による心身の疲労を回復させる役割を
   もっています。

   労基法は、
   休日は原則として毎週少なくとも1回は与えなければならないと定めています(週休
   制の原則)。

   これによると、毎週1回の休日を与えていれば、それ以外に国民の祝日を休日にする
   ことや、週休2日制にするといったことは強制されていません。

   また、休日について特定することを要求していません。

   しかしながら、休日の目的からすると、適切な休日数とその特定が望ましく、できるだけ
   就業規則において記すなど、労働者に示すことが必要です。   

   所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合の対応の仕方として、おもに次の
   2つがあげられます。

   (1)休日の振替

     所定の休日にどうしても勤務させる必要がある場合、原則として同一週内で振替日
     を事前に指定することで、労働させることができます(その場合、就業規則に「業務
     上の必要がある場合には休日を振り替えることがある」といった規定を設けておく
     必要があります)。

     こうすることで休日が所定の勤務日に変更され、休日労働させたことにはならなく
     なります。

     したがって、

     休日の振替の場合は割増賃金は発生しません。

   (2)代休

     休日の振替に似たものとして、一般に「代休」と呼ばれる制度があります。

     これは休日労働を行わせた場合に、その代償措置として、事後にある日の労働
     義務を免除するものです。

     ただし、休日労働の事実は消えないので、

     代休の場合は休日労働に対する割増賃金の支払いが必要です。

     なお、代休日を有給とするか無給とするかは就業規則などの定めによります。


  ■時間外労働・休日労働

   労基法では、法定労働時間と週休制の確保を労働条件の最低基準として規定し、
   原則として時間外労働や休日労働を認めていません。

   しかし、

    ・災害の発生その他通常予見されない緊急の場合

    ・業務上の必要から労使協定を締結した場合

   には、一定の条件のもとに、時間外または休日に労働させることが認められています。

   (1)非常災害の場合

     労基法では、災害、緊急、不可抗力など、避けることのできない事由によって、臨時
     に時間外または休日に労働させることが必要となった場合には、その必要限度
     まで労働させることができます。

     この場合には、あらかじめ、所轄労働基準監督署長の許可を受ける必要がありま
     すが、事態急迫の場合は事後に届出を行います。

    (2)労使の協定による場合
      使用者が労働者代表と書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署
      に届け出た場合には、法定労働時間の規制枠を超えて労働者に時間外労働を
      行わせたり、休日に労働させることができます。

      この書面協定を労基法の条文にちなんで「36協定」と呼んでいます。

      ただし、18歳未満の年少者または妊産婦で請求のあった者については、この
      協定により時間外労働、休日労働とも行わせることはできません。

      季節的な要因などによる「業務量の繁閑の波」を時間外労働で吸収している企業
      もいまだ多いようですが、これは限りある労働時間を効率的に管理していくうえで
      決して望ましいことではないため、時短の促進や労働時間の弾力化(変形労働時
      間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制の導入)などにより、時間外労働を
      削減する方向が望まれています。


  ■有給休暇

   本来の休日以外に取得することができる有給の休暇で、社員等に与えられる権利
   です。

   しかし、業務が忙しい日に有給休暇の申請があった場合、会社には休暇日をずらして
   もらう権利があります。 

     病気と嘘をついて有給休暇を取得しても欠勤扱いにすることはできなません。

     これを防ぐためにも、就業規則等に「住所、家庭関係、経歴その他の会社に 申告すべ
   き事項及び各種届出事項について虚偽の申告を行わないこと」を記載しましょう。

     そして、「所定の手続きを怠ったときには懲戒の対象となる」と明記する。

   (1)有給休暇の日数

     6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、有給休暇
     を与えなくてはなりません。

     有給休暇の最低付与日数は、勤続年数に応じて以下のとおりと定められています。

     有給休暇の最低付与日数
   


     パートなど所定労働日数が少ない者に対する有給休暇の付与日数は、以下の
     とおり定められています。 


     所定労働日数が少ない労働者に対する有給休暇の最低付与日数      
   


  ■労働時間管理に関する労基法の改正点

   多くの中小企業は36協定を締結せずに、就業規則の定めだけを根拠に従業員に
   時間外労働などを命じています。

   これは、所轄労働基準監督署の許可を得ずに従業員に時間外労働などを命じている
   危険な状態です。

   仮に従業員がそうした状況を労働基準監督官に申告すれば、その臨検によって是正
   指導が出されるでしょう。

   こうした事態を避けるために、中小企業は早急に36協定を締結しなければなりません。

   また、その際は就業規則も確認し、新たに締結する36協定と矛盾がないようにします。

   36協定と就業規則の整備によって従業員に時間外労働を命じる根拠が整うため、
   少なくとも「所轄労働基準監督署の許可を得ずに従業員に時間外労働を命じている」
   状態を脱することができます。

  □36協定で締結する内容

    1.時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由

    2.業務の種類

    3.労働者の数

    4.1日および1日を超える一定期間について延長することができる
     時間または労働させることができる休日

    5.有効期間の定め

    6.1日を超える一定の期間の起算日

   中小企業は上の内容について締結した36協定を「時間外労働・休日労働に関する
   協定届(様式第9号)」とともに所轄労働基準監督署に届け出ます。

   長時間労働を抑制し、労働者の健康を保持しながら、仕事と生活の調和を図ることを
   目的に労基法が改正され、平成22年4月1日から次のとおり施行されました。

  □時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ

   時間外労働を労働者に行わせるには「36協定」が必要ですが、時間外労働ができる
   限度時間が定められています。

   この限度時間を超えて時間外労働を行わせるには「特別条項付き36協定」が必要
   です。

   「特別条項付き36協定」を結ぶ際には、

    (1)限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)
      ごとに、割増賃金率を定めること

    (2)(1)の割増賃金率について25%を超える率とするよう努めること

    (3)そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること

   が必要になります。

  □月60時間を超える時間外労働の割増率

   月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50%
   に引き上げられます(深夜労働や休日労働の割増賃金率は変わりません)。

   ただし、中小企業については、法定割増賃金率の引き上げは猶予され、施行より3年
   経過後に改めて検討されます。

  □代替休暇制度の導入

   月60時間を超える時間外労働について、労使協定を締結すれば、引き上げ分の割増
   賃金の代わりに代替休暇(有給休暇)の付与をすることができます。

   ただし、労働者が代替休暇を取得した場合でも、従来の25%分の割増賃金の支払い
   は必要です。

  □有給休暇の時間単位付与

   労使協定を締結した場合、1年に5日分を限度として有給休暇を時間単位で与える
   ことができるようになります(分単位など時間未満の単位は認められません)。

  ■労働時間管理に対する経営者と従業員の意識改革

   中小企業が労働時間管理を徹底する際は、タイムカードの設置などによって実際の労働
   時間を正確に把握する一方で、36協定などの規定の整備と労災保険など保険への加入
   によって企業のリスクを軽減します。

   これらを実践した上で具体的な労働時間の適正化策を講じます。

   季節的な業務量の偏りによって定期的に時間外労働が発生しているような場合は変形
   労働時間制の導入が効果的です。

   ただし、現実的にはこのような単純な取り組みで問題が解決できるケースは少なく、
   もっと根深い問題があります。

   時間外労働や休日労働が慢性化している職場では、従業員がはじめから時間外労働や
   休日労働を考慮した労働時間で業務の割り振りを行っていることが少なくありません。

   これは、従業員の希薄な時間管理の意識が時間外労働などの原因になっているケース
   が少なくないということであり、中小企業が労働時間管理を徹底する際はこうした従業員
   の意識改革をしなければなりません。

   その役割を担うのは管理者です。

   経営者は、時間外労働の事前許可制を実施して管理者にそれを徹底させるなど、
   日ごろから厳格に労働時間管理をしなければなりません。

   意識改革が必要なのは従業員だけではなく経営者も同様です。

   時間外労働などを削減すると、全体の労働時間が減る分、企業の生産力や販売力が
   低下します。

   これまで従業員に時間外労働など負担をかけることで実現してきた生産力などが失わ
   れるのです。

   経営者はこの点を想定した上で、前述した従業員の意識改革を推進し、業務効率の
   向上などによって生産力などの低下を最小限に食い止めなければなりません。

   労働時間管理の徹底は会社と従業員に大きな影響を与え、一時、混乱を招くこともあり
   ます。

   それでも労働時間管理の徹底が求められるのは、それが企業が労基法など関係法令を
   順守するためだけでなく、会社が従業員とその家族に果たすべき重要な責任の一つ
   であり、結果として企業と従業員の幸福につながるものだからです。

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労務リスクと労務管理

福利厚生のあり方

福利厚生のあり方
 

  ■福利厚生のあり方を考える

   多くの社長は福利厚生について「世間並みの水準」を確保していれば十分という
   認識であり、さまざまなほかの経営課題と比べると優先順位が低いのです。

   しかしながら、社員の福利厚生への関心は社長が思っているよりもずっと高いの
   が現実です。

   場合によっては自社の福利厚生への不満がきっかけとなって、優秀な社員が転
   職してしまうケースもあるのです。

   ここでは、魅力ある福利厚生制度を「本気で」考えるためのポイントについて解説
   します。

   1.福利厚生の本当の目的

    そもそも福利厚生とは、給与とは別に会社が社員やその家族の生活向上を目
    的として設ける諸制度のことです。

    社員の側からみれば「本来の給与のほかに会社から受ける利益」ということに
    なります。

    福利厚生には、法律によって企業に実施が義務づけられている、社会保険など
    の「法定福利」と、住宅手当など会社の裁量に任されている「法定外福利」の2
    種類があります。

    ここでは、法定外福利厚生制度について考えていきます。

    なぜ、会社は限られた収益のなかから、給与以外に福利厚生という形で社員に
    利益を与えるかといえば、そのおもな目的は、

     ・既存の優秀な社員の流出を抑制する

     ・優秀な社長の採用を促進する

    ことにあるのは明白です。

    もちろん、社員とその家族に「もっと幸せになってほしい」というシンプルな気持
    ちから福利厚生を捉えることも大切ですが、それだけでは「できたらいいな」とい
    う願望でとどまってしまう可能性もあります。

    魅力ある福利厚生制度づくりは、自社の将来を託す人材を確保するための方
    策であり、人材戦略の重要な課題のひとつとして、社長自身が「本気で」考える
    必要があるのです。

    世間並みの制度をつくっておけば十分ということではありません。 

    また、福利厚生制度の運用には当然ながら資金が必要です。

    会社資金の使用に当たっては、そのすべてにおいて目的が明確になっていなけ
    ればなりません。

    「方針なき福利厚生」、「何となくやっている福利厚生」は会社資金の無駄遣いと
    も考えられるのです。

   2.他企業の水準を確認する

    自社の福利厚生制度の充実を考える前に、まず世の中の会社が、「どのくらい
    の金額」を「何に対して」福利厚生費として使っているのかを確認してみましょう。

    (1)金額

      (社)日本経済団体連合会(経団連)の「福利厚生費調査結果報告 2018年
      度」によると、従業員規模別の法定外福利厚生費は次のようになっています。

      同調査結果によると、従業員1人1カ月当たりの法定外福利厚生費は、回答      
      企業全体平均で、2万3452円となっています。

      また、従業員規模別にみると、会社規模が大きくなるにつれて金額が高く
      なっているのがわかります。

      大企業になればなるほど充実した福利厚生を実施できる資金的余裕がある
      ことが読み取れます。

      ただし、もっとも金額が低い500人未満の会社でも、従業員1人1カ月当たり
      1万7880円、年間で約21万円の福利厚生費を掛けています。

      決して少ない金額ではありません。

    (2)内訳

      次に費用の内訳(全回答企業平均)をみると、もっとも金額が高いのは、住
      宅、持家援助などの「住宅関連」であり、全体の約半分を占めています。

      次いで給食、保険、財産形成などの「ライフサポート」、「医療・健康」、「文化・
      体育・レクリエーション」などが多くなっています。

      もっとも金額の高い「住宅関連」では、回答企業全体の平均で1カ月当たり1
      万1436円、年間で約13.7万円の費用を掛けていることがわかります。

      ここまで紹介した各種のデータは、あくまで一般的な会社の福利厚生の状況      
      であり、必ずしもそれをめざす必要はありません。

      ただし、「世の中の会社は、優秀な社員の流出を抑制するため、そして、優
      秀な社員の採用を促進するために、このようなことをしている」という認識は
      もっておくべきでしょう。

  □福利厚生充実のためのステップ

   自社の福利厚生制度の充実を図る際には、次のようなステップで進めるのが効
   果的です。

    1.社長自身が重要度を認識し宣言する(ステップ1)

    2.求めている人材像に適した充実策を検討する(ステップ2)

    3.社員へのアンケート調査を行う(ステップ3)

    4.新しい福利厚生制度を設計する(ステップ4)

   まずは社長自身が福利厚生について「本気で」考えることから始めましょう。

   1.社長自身が重要度を認識し宣言する(ステップ1)

    冒頭で述べたように福利厚生制度の充実は、将来の自社を託す人材を確保す
    るための方策であり、人材戦略の重要な課題のひとつです。

    もちろん社長自身が細かい制度設計などをする必要はありません。

    しかし、少なくとも方針決定や基本的な枠組みづくりは社長主導で進めるべきで
    しょう。

    そして、自分が自社の福利厚生に対して真剣に考えていることを社員に宣言す
    ることが大切です。

    通常、社員は自社の福利厚生に不満をもっていても、なかなかそれを口にする
    ことはできません。

    そんなことを言えば「その前にもっとしっかり働け」と怒られると思っているからです。

    社長自身が重要性を感じていることをきちんと示すことで、社員も福利厚生制度
    の充実に向けた提案をしやすくなります。

   2.求めている人材像に適した充実策を検討する(ステップ2)

    限られた経営資源のなかで魅力ある福利厚生制度を設計するためには、まず
    は「どんな人たち」にとって魅力的にするのかを考える必要があります。

    そして、ここでいう「どんな人たち」というのは、当然ながら「自社が求めている人
    材」(ターゲット層)ということになります。

    優先的に充実すべき、ターゲット別の福利厚生としては、たとえば、以下のよう
    な内容が考えられます。

    また、看護師など女性が多い職場では、「育児支援」に関する福利厚生に特に
    力を入れています。

    多くの看護師は仕事に慣れた頃に出産・育児の時期を迎えます。

    その際に退職せずに働き続けられるように、各病医院は充実した保育環境を提
    供することで看護師の流出防止を図っています。

   3.社員へのアンケート調査を行う(ステップ3)

    魅力ある福利厚生制度を設計するためには、社員向けのアンケートを行い、ど
    のような層の社員が、どのような福利厚生を希望しているのかを把握することも
    有効です。

    また、アンケートを行うこと自体が、会社としての福利厚生制度の充実への積極
    性を示すことになります。

    アンケート項目としては次のような内容が考えられます。

    (1)回答者の属性

      年齢、勤続年数、既婚・未婚、持ち家の有無、子どもの有無(いる場合は数、
      年齢)。

    (2)現状の福利厚生制度の理解度

      現状の福利厚生制度を列挙して、それぞれの制度について存在自体を知っ
      ていたか、実際に利用したことがあるかどうかを質問します。

    (3)現状の福利厚生制度の満足度

      現状の福利厚生制度への満足度を5段階程度で評価してもらいます。

      なぜその点数をつけたかの理由についても記入欄を設けます。

    (4)充実してほしい制度

      今後、どのような福利厚生制度を充実してほしいと思うかを質問します。

      あらかじめ次のような項目を列挙しておき、3つ程度を選択させます。

      ステップ2で想定した「求めている人材像に適した充実策」についても選択妓
      に盛り込むことで、想定が正しかったかどうかも検証します。

       ①家賃補助 ②持ち家支援 ③育児支援 ④家族手当  ⑤特別休暇付与

       ⑥人間ドック  ⑦メンタルヘルス支援  ⑧自己啓発支援  ⑨介護支援

       ⑩結締や出産の祝い金  など

   4.新しい福利厚生制度を設計する(ステップ4)

    アンケート結果も踏まえたうえで、新しい福利厚生制度を設計します。

    まずは限られた経営資源のなかでどの分野に重点をおくかを決めることから始
    めます。

    制度実行に当たって必要となる資金や手間などの現実的な問題も考慮しなが 
    ら、どの程度までなら実施可能なのかを検討します。

    そして、重点分野以外の制度についても、現状のままでよいのか、他社との比
    較上、一定程度は充実させるべきかなどを決めていきます。

  □新制度を運用・アピールする

   制度は策定するだけでは意味がありません。

   新しい制度を社員にきちんと説明して実際に活用しもらうこと、採用活動で自社の
   特徴としてアピールしていくことが大切です。

   1.福利厚生ガイドを作成する   

    新しい制度の概要・狙い・特徴などを社員に説明するためのガイドブックを作成
    します。

    社員の家族にも見てもらえるように冊子(紙べース)として配布するのが好まし
    いでしょう。

    わかりやすくするためには、たんに各制度の内容を羅列するのではなく、社員
    や家族のどんなニーズに応えられるのか、どんなときに使えるのかなどを具体
    的なケースごとにまとめることです。

    たとえば、育児支援に力を入れる場合は、出産から始まり、子どもの成長に応じ
    たどのような段階でどのような支援策があるのかを説明します。

    また、実際に活用するために必要な手続きなども詳しく示します。

    朝礼の場などで、ガイドブックを使った説明を行うことも有効でしょう。

   2.活用を促進する

    実際に制度が活用されるような「環境整備」も大切です。

    たとえば、「上司に休暇申請をしにくい雰囲気がある」部署では、長期休暇制度
    などは定着しづらいかもしれません。

    福利厚生制度は要件を満たす社員すべてを対象にしたものですので、部署に
    よって活用度合いが異なることは大きな問題です。

    部署ごとに福利厚生制度活用促進のための検討会を行うこと、上司が福利厚
    生制度への理解を深めること、社長は定期的に部署ごとの制度活用状況を確
    認することなどが大切です。

   3.採用活動で活用する

    募集広告や応募者への面談などにおいては、自社の福利厚生制度の特徴を十
    分に説明します。

    社内での実際の活用状況などをデータとして示すのもよいでしょう。

    「自社の福利厚生制度に込められた社員への思い」や、「社員が制度を使って
    いきいきと働き、プライベートも充実させている姿」をアピールします。

    応募者に渡す会社案内には、制度の内容を必ず盛り込むようにしましょう。

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労務リスクと労務管理

中小企業に求められる福利厚生


  ■福利厚生の定義

   福利厚生とは、賃金など基本的な労働条件とは別に、企業が従業員やその家族の
   福祉の向上を図るために設ける諸制度のことをいいます。

  福利厚生の内容

   福利厚生は、「法定福利」と企業が独自に行う「法定外福利」とに分けられます。

   法定福利は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険の保険料
   などの事業主負担分がその具体的内容になります。

   これら社会・労働保険は、強制加入を原則としており、企業の福利厚生として基本中
   の基本です。

   法定外福利は、原則的には事業主の裁量によって決められるものです。

   その範囲は、住宅取得などの生活援助的なものから、健康や文化・体育など多岐に
   わたります。

   法定外福利はあくまでも事業者側の任意によるものですが、人材の確保・定着や労働
   意欲の醸成など、労務管理のうえで欠くことのできない施策になっています。

   また、従業員が求める福利厚生への要求レベルも多様化・高度化している現在、この
   法定外福利厚生の役割はますます大きくなってきています。

  □今後の福利厚生のあり方

   社会と経済の急速な変化により福利厚生へのニーズが変わってきたことから、その
   あり方を再考する必要が出てきました。

   ここでは最近の福利厚生を取り巻く経営上の環境変化を整理し、今後の福利厚生の
   あり方を探っていきます。

   1.経営環境の変化

     平均寿命の伸びと少子化現象により、わが国は急激な高齢社会に直面してい
     ます。

     一方、経済が成熟化し売上の急拡大が難しくなるなかで、会社の総人件費の
     負担増などが懸念されています。

     さらに、高齢者・女性・パートタイム労働者などの増加による従業員構成の変
     化や、職種、雇用形態の多様化も会社に大きな影響を与えつつあります。

     このようなことを背景に、次に示すように会社側、従業員側の福利厚生への考
     え方も変化しつつあります。

     (1)会社側の変化

       ①これまでの量的拡大一辺倒の経営から、会社の創造性や独創性、社会
         的貢献や文化的活動を重視するなど、価値観に変化が生じている。

       ②人事異動はグループ企業内へと拡大し、また国際化の進展にともない 
         外国への転勤者が増加し、福利厚生の扱い範囲に問題が生じている。

       ③会社の人件費総額(賃金、退職金、社会保険料、福利厚生費)が増加し
         ており、とくに社会保険料の伸びが大きくなっている。

     (2)従業員側の変化

       ①高齢化が急速に進展し、退職後の生活への関心が高まっている。

       ②人々の生活は豊かになり、意識も「モノからココロ」へ移行し、生活のゆと 
         りを強く志向するようになっている。

         その結果、とくに労働時間短縮や余暇への要求が強くなっている。

       ③個人の欲求も多様化し、仕事での自己実現を求める者、家庭・社会での
         生活を重視する者などと分化が進んでいる。

         とくに生涯全体を通じた生活の安定、生きがいの獲得への関心が強く
         なってきている。

   2.福利厚生の基本的な方向性

     このような変化にともない、福利厚生施策についても従来のような画一的なも
     のではなく、それぞれの事情に応じたきめ細かな対応が求められています。

     福利厚生のどこに重点をおくかは、各会社の考え方によっても異なってきます
     が、前述した環境変化を踏まえると次の点を考慮した施策の展開が考えられ
     ます。

     (1)高齢化や業務遂行からくるストレスを考慮した予防重視の「健康づくり」
       高齢化や業務の複雑・高度化にともない、働く人の健康管理が大きな問題
       になっています。

       健康であることが職場生活や個人生活を活性化させることにつながってい
       くため、治療中心の対応ではなく、メンタルヘルスも含めた予防重視の健
       康管理が求められています。

     (2)ゆとり・豊かさ実現のための「土地、住宅関連施策」
       サラリーマンにとって持ち家の取得は(地域差もありますが)大きな関心事
       です。

       国の施策もかかわってくるため、国、企業、個人の調和のとれた、会社とし 
       てどのような支援をどの程度すべきかを検討していきます。

       支援策充実のための具体例として、貸付枠の拡大、利子補給、不動産物
       件の斡旋などがあげられます。

     (3)生涯敦育の視点に立った「自己啓発の支援策」
       人生80年時代を迎え、退職前後の生活の仕方がたいへん重要になってき
       ています。

       会社にも生涯教育の視点に立った自己啓発の支援が求められています。

     (4)少子化、高齢化を背景にした「育児、介護の関連施策」
       少子化と高齢化は表裏の関係にありますが、いずれもわが国の将来にとっ
       て大きな問題になっています。

       育児問題と介護問題については、育児・介護休業法によって制度が整備さ
       れていますが、企業にはこれを補完する形で将来を見据えた対応が求めら
       れています。

     (5)文化、体育、レクリエーション活動、保養所など「余暇活動への援助」
       従業員からは、心身のリフレッシュをするための余暇活動への援助を希望
       する声が大きくなっています。

       これら社会の動き、従業員のニーズを的確にとらえ、自社にとってどのよう 
       な福利厚生が可能であるかを検討し、効率的な施策を実施する必要があり
       ます。

  □中小企業にとっての福利厚生

   中小企業にとっての福利厚生は、どのようにしたらよいのでしょう。

   一般的に中小企業において、賃金などの労働条件を大企業並みに充実させることは
   難しいでしょう。

   このことは福利厚生施策の実施についてもいえることで、大企業との格差が以前から
   指摘されていました。

   しかし、企業の行う福利厚生施策は、従業員に働きがいをもたせ、労働力を有効的に
   活用することを目的としており、ひいてはその企業における労働者の募集、採用、定着
   など、人材の確保にも役立っていきます。

   それだけに、福利厚生施策の拡充は、魅力ある企業をめざす中小企業にとって避け
   ては通れない課題といえます。

   そして、中小企業における福利厚生のあり方として、大企業以上に次のようなことを
   考慮することが大切です。

    ・会社の費用負担を考え、最小のコストで最適の効果を生む施策を考える

    ・多様化する従業員ニーズに対し、優先順位を付けるなど、従業員の最大の満
     足を得られる施策を展開する

    ・大企業にないユニークな施策で従業員や募集対象者にアピールする

    ・利用者が一部に偏らないように、全社員が享受できる施策を考える

   こうした課題に取り組み、中小企業の福利厚生を充実していくには、財務上の限界に
   どう対応するか、従業員がどんな施策を望んでいるかなどを、大企業にもまして考慮
   に入れていかなければなりません。

   そのためには、何を狙って福利厚生施策を実施するかを明確にし、目的をもって取り
   組む必要が出てきます。

   こうしたことを踏まえて中小企業が福利厚生施策の充実をめざすとき、次のような方向
   性が考えられます。

   1.企業福利計画の作成

     福利厚生の改善を進めるためには、場当たり的な施策ではなく、中・長期的な
     視野で計画を立てていくことが重要です。

     その際、計画が企業の経営計画のなかに組み込まれている必要があります。

     とくに、中小企業においては、計画段階で従業員の参画を促し、労使双方の
     相互理解のもとで、少しでも従業員のニーズに応えていく努力が大切だといえ
     ます。

   2.重点化策の推進

     福利厚生には当然コストがかかり、中小企業にとってはかなりの負担になる可
     能性があります。

     これからの福利厚生は限られた原資のなかでいかに従業員のニーズを盛り込
     むかということが大きなポイントになってきます。

     自社における福利厚生の目的を明確にし、それをもっとも充足できる施策への
     重点化を図っていくことが重要です。

     そして、費用対効果の視点からつねに施策を見直していくことが大切です。

   3.自社型の福利厚生

     中小企業は、大企業と比較してより自社の特徴をいかした経営が求められる
     ものです。

     福利厚生の面でも独自性を出した自社型の施策を講じていくことは、人材確
     保面でのアピールや従業員の活性化などにつながります。

     たとえば、斬新なユニフォームを採用したり、自社の敷地にテニスコートなどを
     併設して地域住民にも開放する企業も見受けられます。

   4.外部との共同化・提携、助成

     企業の福利厚生施策は、企業自らの財源負担で実施される場合がほとんど
     ですが、その費用負担を抑える方法として次のようなことが考えられます。

      ・国・地方公共団体、政府機関などから補助金、助成金などを受けて実施

      ・同じ業種や同じ地域の企業が共同で実施

      ・公的福利厚生施設などの利用

      ・会員組織であるリゾート、体育、住宅などの団体の法人会具に加入

  □注目される具体的な福利厚生施策

   中小企業において福利厚生の重要性は増していくばかりです。

   中小企業で福利厚生施策を進める際のポイントは、すでに説明したように「最小の
   費用で従業員ニーズを最大限に満足させる」ことです。

   ここでは、自社に適した福利厚生を検討するうえでの参考となる具体的施策を紹介
   します。

   1.生涯総合福祉ビジョンの作成

     生涯総合福祉ビジョンとは、従業員の個々人の考え方に視点をおき、国や企
     業、従業員自身の自助努力を総合的にとらえたうえで、「福利厚生のあるべき
     姿」を体系的に示したものです(詳しくは次図参照)。

     ビジョンは、国や企業への要求を羅列するものではなく、従業員の自立と参画
     をベースとした施策に重点をおき、従業員自身にライフプランを立てさせ、それ
     を援助していくという形を志向するものにします。

     生涯総合福祉ビジョンのめざすものは、従業員の生涯の安定・安心であり、働
     きがい、生きがいです。

     したがって、ビジョン策定に際しては従業員主体のもと労使相互の理解によっ
     て進めていく必要があります。

     これにより会社側では、従業員のライフステージごとに重点施策の明確化と実   
     施、制度のリストラ、費用の計画的・重点的配分、費用分担の明確化、社会保
     障制度との役割分担・調整などを総合的に考えることができます。

   2.カフェテリアプランの導入

     カフェテリアプランとは、住宅補助、介護、育児、健康づくり、年金への支援な
     ど、複数の福利厚生メニューから、従業員の一定の持ち点の範囲内(ポイント
     制)で必要なものを選択する仕組みの福利厚生施策です。

     米国ではかなり普及しており、日本でも厚生労働省の指導のもと、大手企業を
     中心に制度を導入する企業が登場しています。

     この制度の特徴・メリットとして、次のようなことがあげられます。

     (1)企業側

        ①福利厚生費の総枠を管理しやすい。

              ②画一給付による費用のムダを回避することができる。

        ③制度の実施の際、企業の実情に応じて適切なものから順次メニュー化
                 していくことにより、無理のない導入が可能である。

     (2)従業員側

        ①自分の要求する福利厚生メニューを選ぶことが可能である。

        ②ポイント制により公平感のある福利厚生が受けられる。

     カフェテリアプランの「従業員が施策メニューを選択できる」という考え方は、中
     小企業においては経費の削減と、従業員においてはニーズの充足を満たすこ
     とが可能です。 

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労務リスクと労務管理

ワークライフバランス(WLB)


  ■ワークライフバランス(WLB)型経営

   ワーク・ライフ・バランスとは、一般的には従業員それぞれの希望に応じて、「仕事」
   と、子育てや親の介護、地域活動などの「仕事以外の生活」の調和が図れる状態で
   あるといわれています。

   このため、ワーク・ライフ・バランスというと「時短」や「介護休暇」などの「従業員
   にとっての都合優先」というイメージが強く、社長のなかには「この不況期にそんな
   ゆとりはない」と感じてしまう方も少なくないと思います。

   しかし、上手に導入すれば、会社業績向上に貢献し、長期的な経営体質強化にもつな
   がります。

   日本でWLBが大きく注目されるようになったのは2000年以降のことで、当時は少子
   化対策としての印象が強かった。

   しかし、その後は「名ばかり管理者」などの問題を背景に、適正な労働条件の確保の
   面からもWLBが重視されるようになっています。

  □業績向上と満足度向上の好循環を目指す

   ワーク・ライフ・バランスの導入は従業員にいきいきと働ける環境をもたらします。

   社長であれば誰でもそれを望むところでしょう。

   しかし、逆に「ワークライフバランス経営は業績を圧迫し、結果として社員を不幸に
   する」という思いから導入をためらっている社長も多いでしょう。

   たしかに現状の業務はまったくそのままで、「一律に就業時間を1時間削減する」と
   いったやり方をすればその危険性は高くなります。

   従業員は一時的には時間的な自由度を増しますが、それが長期的な生活向上には
   つながりにくいでしょう。

   ワークライフバランス経営を考える際にまず重要なのは、「社員のワークライフバラ
   ンス」と「会社業績」を二者択一的な関係で捉えるのではなく、「両者をいかに同時に
   実現していくか」という発想に切り替えることにあります。

   ワーク・ライフ・バランス型経営においては、社員は、「仕事に集中できる時期」、「子
   育てに専念したい時期」、「介護と両立させたい時期」など自分のライフステージに
   応じた働き方ができます。

   また、長時間残業がなくなることで、健康増進や自己啓発などの時間を確保できる
   というメリットもあります。

   一方で会社は安定した労働力確保や従業員活用の多様化が図れるとともに、業務
   効率を見直すことで生産性向上につなげることができます。

   また、ワークライフバランス経営導入企業として、ブランドイメージ向上も期待できる
   でしょう。

   そして、このような両者のメリットを兼ね備えた企業にはさらに優秀な人材が集まり、
   生産性や業績をあげていくという好循環が生まれます。

   このようにワークライフバランス型経営の本質は、

    従業員満足度と会社業績が高まりあう好循環のなかで、
    より高い次元での経営を実現していくことにあるのです。

   最終的には、WLBは1人1人が就業環境や家庭環境に応じて決めていくべきものと
   いえるが、少なくとも、「慢性的な長時間労働がない」「パワーハラスメントや社内いじ
   めがない」など、心身ともに健康で働くことができる職場環境が求められていることは
   間違いないでしょう。

  □中小企業だからこそ導入しやすい

   ワークライフバランス型経営は余裕のある大企業だからこそ可能であると考えられ
   がちです。

   しかし、実際には企業規模は関係なく、むしろ導入にあたってのハードルは中小企業
   のほうが低いと考えられます。

   大企業では多くの従業員が抱えるさまざまな事情に対応するために、制度導入は
   どうしても「大掛かり」になってしまいます。

   また、役職や給与体系なども細かく設定されているため、複雑な制度設計も求められ
   ます。

   中小企業では従業員数も限られており、一般に組織もフラットであることが多いため、
   個々の従業員の状況に応じたきめ細かくかつシンプルな制度設計が行いやすくなり
   ます。

   また、大企業に比べて経営者と従業員の距離、従業員同士の距離が「精神的」にも
   「物理的」にも近いため、より一体感・スピード感のある取り組みが可能であるという
   メリットもあります。

  □導入の進め方

   1.推進体制の検討

     ワーク・ライフ・バランス型経営導入にあたっては、制度構築・運用のための推
     進体制を固める必要があります。

     通常は「人事総務部が兼務で主導」、「プロジェクトチームを発足して主導」な
     どの進め方が考えられます。

     また、部署ごとに「推進委員」を設置し、日々の進捗状況を管理していくことも
     必要でしょう。

     企業規模や人事総務部のキャパシティー、事業所の地理的な分散状況などに
     応じて最適な推進体制を構築します。

     なお、いずれの体制を構築するにしても、経営者自身がワークライフバランス
     経営導入の重要性を示し、自らのリーダーシップのもとに進めていくことが必
     要です。

   2.現状把握

     自社でワークライフバランス経営を推進する際のポイントを整理するために現
     状を把握します。

     その際には経営者の認識だけではなく、アンケートなどによって従業員全員の
     考えも吸い上げて、そのギャップも把握するようにします。

     たとえば、経営者が「必要以上の残業を行わない全社的風土がある」と考えて
     いても、従業員全員がそのように感じているとは限りません。

     経営者の「考え」と現場での「感じ方」のギャップを埋めていくことも必要です。

     現状把握に必要な視点は会社によっても異なりますが、ここでは網羅的な視
     点として、「中小企業ワーク・ライフ・バランス対応経営マニュアル
     (中小企業)のなかから、経営者、従業員それぞれの立場からの評価の視点を
     紹介します。

     それぞれについて「重要性」と「改善の必要性」を評価します。

     双方のポイントが高い項目が優先して取り組むべき項目になります。

   3.優先順位付け(マニュアル頁7〜17)

     現状認識での「重要性」と「改善の必要性」の評価をもとに優先して取り組むべ
     き項目を決定します。

     原則としては活用可能な経営資源なども考慮しながら双方のポイントが高い
     項目を優先することになります。

     ただし、「業務の効率化」については、ワークライフバランス経営導入の前提条
     件ともいえるものですので、特に入念にチェックし、優先度をあげる必要がある
     ので、ここに項目ごとの具体的な対応策を記載します。

     また社長と従業員の認識のギャップが大きい事項についても留意します。     

   4.計画策定(Plan)

     優先順位づけができたら、項目ごとに具体的な計画策定を行います。

     ワークライフバランス経営導入による効果は、多くの場合、発揮するまでにあ
     る程度の時間がかかります。

     また、売上や利益などの数値計画と比べると達成度合いが把握しにくいという
     側面もあります。

     そのため、「導入は決意したが取り組みがいつのまにか消滅した」、「取り組ん
     ではいるがうまくいっているのかどうかわからない」といった事態を招きやすい
     のです。

     そのため、計画策定にあたっては

      ・計画達成なしには会社の安定成長はないという危機意識を、社長・従業員
       の双方がもつこと

      ・進捗管理可能なできるだけ具体的な数値目標を設定すること

     などが重要になります。

   5.実践(Do)

     計画の実践にあたっては経営者がリーダーシップを発揮し、前述の推進体制
     を使って組織的に行っていきます。

     また、ワークライフバランス経営ではさまざまな制度を導入することになります
     が、その制度が実際に利用できる環境・雰囲気作りを行うことが重要です。

     たとえば、「長期休暇取得促進制度」という制度を作ったとしても、部門によっ
     ては業務対応上実際には不可能であり、かつ「そのようなことを言い出せる雰
     囲気ではない」ということであれば、意味がありません。

     このように実践のためには「制度策定」、「環境整備」、「雰囲気作り」の3つの柱
     必要になります。

      ○制度策定

       ・長期休暇取得促進制度

      ○環境整備

       ・業務の生産性向上

       ・人員配置の見直し 等

      ○雰囲気作り

       ・上司が率先して取得

       ・期首に全員が取得時期を申請 など


   6.進捗評価(Check)・見直し(Control)

     取り組みを開始したら、その進捗状況を定期的にチェックします。

     制度を導入したかどうかだけではなく、「それが実際に利用されているか」、
     「従業員の満足度は上がっているのか」についても確認することが大切です。

     部門ごとに設置した推進委員、推進事務局、経営者が定期的な会合を開くな
     どして、進捗状況を共有しましょう。

     そして、未達成の場合はどこに問題があるのかを特定し、改善策を講じること
     が大切です。

     この際、個々の現場レベルで改善可能であるのか、全社的な取り組み方針変
     更の必要があるのかなどについても確認する必要があります。

     また、ワークライフバランス経営の本質である「従業員満足度と会社業績が高
     まりあう好循環」が創出されているかについても確認し、より効果的な次期計
     画策定につなげていくことも大切です。
  
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労務リスクと労務管理

休職制度の意義と会社のリスク


  ■休職制度の意義と会社のリスク

   休職制度とは、社員が労務に従事することが不能または不適当な場合に、その社員
   との労働契約関係を維持しながら、一定期間労働を免除または禁止する措置・制度を
   いいます。

   休職制度は労働基準法等で義務付けされたものでなく、あくまで会社が任意に定める
   ものですが、多くの会社は休職制度を導入し、長期雇用を前提とした人材の有効活用
   を進めています。

   加えて、解雇猶予措置として休職制度を利用することにより、労働契約の終了に円滑
   に移行するための手段としても重要になると考えられてきました。

   そのため、休職期間が終了しても職場復帰できない場合は、自然退職または解雇
   になるのが一般的な考えとなっています。

   このように、休職制度は、会社にとってメリットのある制度ではあるものの、一度導入
   すると、不利益変更は簡単には行えなくなるので、その内容については慎重に検討
   する必要があります。

  □休職制度の種類

   1.私傷病休職

     社員が業務外での傷病(いわゆる私傷病)により、休職期間中に復職のめど
     が立たない場合などに、労務への従事を一定期間免除するという制度です。

     私傷病休職期間中に復職ができない場合、通常は自然退職または解雇に移
     行します。

     なお、私傷病休職を行っても治癒することが困難な社員については、私傷病
     休職を行わずに解雇に移行するケースもあります。

   2.自己都合休職

     社員が個人的な理由により一定期間休職する場合の制度です。

     休職の理由としては、海外留学やボランティア活動などが挙げられます。

   3.公職就任による休職

     社員が国会議員や地方議員等の公職に就くことにより、労務への従事ができ
     なくなった場合に、その期間を休職させる制度です。

   4.出向休職

     社員が出向により出向元の労務への従事ができなくなったとき、その出向期
     間につき出向元での労務を免除する制度です。

   5.起訴休職

     社員が刑事事件で起訴された場合で、その事件が裁判所に係属する間は休
     職させる制度です。

     なお、起訴休職を導入するということは、通常裁判が確定するまでは解雇はな
     いといった決め事にもなるので、導入には注意が必要になります。

   6.組合専従休職

     労働組合への便宜供与の一つとして、社員が労働組合の専従職員となる場
     合に、社員としての立場を維持させたまま労務への従事を免除し休職とする
     制度です。

     なお、当該制度を「在籍専従」といいます。

  □私傷病体職制度を導入する際の注意点

   休職規程を設定するかどうか、また設定する場合、その内容は企業側が自由自
   在に改定できる。

   ●対応策

    「1カ月間私傷病で欠勤した場合は、休職を命じる場合があります」とし、休職の
    実施判断をあくまで会社側の権利とします。

    復帰の可能性がないと会社側が判断した場合は、休職ではなく普通解雇として
    対応する選択肢を持つことは重要です。

    休職規程でトラブルになるのが、休職期間中の社会保険料です。

    休職期間中に賃金を一切支払わなかったとしても社会保険料の負担は生じる。

    休職期間中は賃金の支払いがないため、控除することはできません。

    毎月会社に支払ってもらうか、復職時に一括あるいは分割して支払ってもらうか
    など徴収ルールを明確化すべきです。

    現実的には復職時の一括支払は負担が大きいので、定期的な会社への支払に
    なろうかと思います。

    休職事由が再発した場合のルールを明確化します。

    休職制度を悪用して、何度も休職や復職をする社員を存在させないよう、同一
    傷病や同一に近いと思われる傷病での休職は原則として認めないものとする。


   休職制度を一度定めると、それが会社の一般規則になります。

   ですから、休職制度の内容については、会社の文化や規模、休職の目的をきちんと
   理解した上で慎重に検討しなければなりません。

   以下では、企業が「私傷病休職制度」を定める場合の主なポイントと注意点を解説
   していきます。

   1.私傷病休職制度の対象者

     多くの国内の会社は、長期雇用を前提に休職制度を導入しているケースがほ
     とんどです。

     ですから、対象者を「正社員のみに限定する」というのが一般的です。

     しかし、労働契約法第16条では、次のように定められています。

     【労働契約法第16条(解雇)】
      解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ
      ない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

     こうした環境の中で、現代のように精神疾患の社員が増えている状況に対応
     するためには、正社員だけでなく有期契約社員やパートタイマーといった非正
     規社員にも対象範囲を広げて定義付けを行うことも検討に催するかもしれま
     せん。

   2.私傷病休職制度の期間

     上記、「1 私傷病体職制度の対象者」と同じように、長期雇用を前提としている
     国内の会社においては、解雇の猶予である私傷病休職期間は、勤続年数の
     長ざに応じて休職期間を定めているケースがほとんどです。

     ここで注意したいのは、会社規模に見合った休職期間を設定しているか否か
     です。

     大企業の就業規則のひな型をそのまま使用している中小企業の就業規則
     に、休職期間が3年と記載されていたケースがありました。

     ぎりぎりの人数で業務を行っている中小企業の場合、3年もの間、残りの社員
     で業務を回していくことは非常に困難であり、当然休職者が出た場合は補充
     人員を確保しなければなりません。

     仮にその補充人員が優秀であって、その後に休職者が復職してきた場合で
     も、企業は復職者を簡単に解雇することばできません。

     中小企業の場合に休職期間を設定する際は、人員が欠けたとして、どの程度
     業務を補えるかを中心に考える必要があります。

     派遣社員やパートタイマーを補充人員と考えると、最長でも6カ月程度が限度
     というところではないでしょうか。

   3.私傷病休職期間中の処遇

     休職期間中の賃金については、ノーワークノーペイの原則に従い、原則無給 
     としたほうがよいかもしれません。

     理由としては、有給とした場合に使用者の賃金負担が発生するということに加
     えて、賃金が保障されていると、社員の職場復帰に対する意欲が減退してしま
     うのではないかという懸念があるからです。

     休職期間中については、健康保険から傷病手当金が支給されるため、社員の
     生活の最低限の安定は保たれるのではないでしょうか。

     もちろん、経営者の意向と自社の財務状況によっては、福利厚生の観点で一
     定期間を有給とするのも問題はありません。

   4.私傷病休職期間中の勤続年数の算定

     会社が勤続年数を評価するものとしては、「表彰」「賞与」「退職金」「私傷病休
     職」「年次有給休暇」などが挙げられます。

     では、私傷病休職期間中は勤続年数に含めるべきなのでしょうか。

     そもそも私傷病体職制度とは、企業が社員に対して、長期雇用を前提として一
     定期間治療に専念してもらうことを目的に、恩恵的に与えたものですから、通
     常の大多数の社員との均衡を考えると、「例外に例外はない」という通り、勤続
     年数に算入しないほうがよいと考えます。

     ただし、年次有給休暇については有給付与の対象期間において80%以上の
     出勤率があれば法律上当然に発生する制度であるため、対象期間に80%以
     上の出勤率があるかどうかで判断することになります。

     なお、有給休暇の算定にあたり、勤続年数には休職期間を含みますが、休職
     期間は出勤したことにはなりません。

   5.復職に際しての取り決め

     休職者の復職に際しての手続きの流れをあらかじめ休職規定に取り決めてお
     くことが重要です。

     職場環境における社員の安全配慮義務は使用者側にあるため、復職する社   
     員が本当に問題ないかの確認は慎重に行う必要があります。

     そして、復職の可否を最終的に決定するのは使用者側の人事管理権の行使
     になります。

     具体的には、以下の内容を明記しておく必要があります。

     これにより、休職者との復職にあたっての争いが避けられるわけです。

      ・休職者の主治医による診断書だけでなく、復職の判断には使用者側の
       産業医等の診断書も含めて検討する

      ・最終的な復職可否の判断は会社が決定する

     また、通算規定制度の導入も考えられます。

     これは、休職者が休職期間満了時に復職をしてきて、数カ月以内に再度私傷
     病休職に入るのを防ぐためです。

     そのためには、以下の休職期間通算規定を入れておくことも重要になります。

      休職期間終了後、復職した社鼻が、その後3カ月以内に同様または類似の
      傷病、事由  により再度欠勤をした場合、もしくは、通常の労務提供ができ
      なくなった場合は復職を取り消し直ちに再休職とします。この場合の休職期
      間は復職前の休職期間の残期間とします。

  □私傷病休職に関する具体的な対応

   1.休職発令を行う場合

     最初に休職規定に定められた休職事由に該当するか否かを確認します。

     休職事由に該当しないにもかかわらず休職発令を行った場合、賃金債権を請
     求されるケースがあります。

     こうしたことがないように、休職事由に該当するか否かを確認する時点で社員
     から医師の診断書を提出してもらい、不十分であれば使用者側の産業医等に
     よる診断書も加えて、形式的ではなく実質的に労務が提供できる状態ではな
     いという判断を出した上での休職発令を行います。

   2.休職事由が業務災害であった場合

     私傷病と業務災害とでは法的規制は全く異なるものとなります。

     私傷病の場合は、会社の休職規定に従い処理を行います。

     休職期間中に復職のめどが立たないときは、最終的には自然退職または解
     雇になりますが、業務災害の場合は、業務災害中およびその後30日について
     は解雇ができなくなります。

     そして、業務災害の場合、社員に対して休業補償給付等で賃金の80%が支
     給されます。
     さらに、使用者責任があった場合には、賃金100%までの差額分20%を安全
     配慮義務や注意義務違反により損害賠償請求される可能性も出てきます。

     なお、ここで注意してほしいのは、通勤災害は私傷病災害であるということで
     す。

     通勤災害労災給付の対象にはなりますが、使用者側の損害賠償責任や上
     記解雇制限はなく、就業規則の休職規定の問題となります。

     また、年次有給休暇の出勤率を計算する場合の出勤ともみなぎれません。

     ところで、業務災害については、社員の申請に基づき労働基準監督署が最終
     的に支給決定しますが、労災認定にはとても時間がかかります。

     一方で私傷病の場合は、健康保険から傷病手当金を比較的容易に受給する
     ことができます。

     ですから、業務災害の場合は、とりあえず私傷病扱いにして傷病手当金の申
     請を行い、社員が労災申請を行うというのであれば、使用者側がそれについ
     て把握する事実の証明を正確に行った上で、労働基準監督署に申請を行え
     ばよいでしょう。

     なお、労災認定がされた場合は傷病手当金等の精算が発生するとともに、一
     定期間は解雇制限の規制が適用されますから、休職規定に従い自然退職ま
     たは解雇を行うことができません。

   3.復職における判断

     私傷病が治癒すれば復職可能かどうかの判断を行います。

     これは休職期間中に行うものです。

     「当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという回復ぶ
     りである場合には、企業にはそのような配慮を行う義務がある」という判例もあ
     り、ほどなく業務を行える状態であれば、復職を認める必要があるケースが少
     なくないでしょう。

     ただ実際に医師の診断書や休職社員との面談では、ほどなく業務を行えるか
     の判断は難しいケースが多く、やはり復職の可否を判断するために必要な、
     復職可否判断期間を設ける必要があると思います。

     この場合の注意点としては、休職規定に復職可否判断期間を設ける旨と、そ
     の際の賃金等の詳細を合理的範囲内で定めておくことです。

   4.復職可否の立証責任

     復職する能力があることの立証責任は当初は社員にあります。

     つまり、私傷病休職の原因は社員側にあり、それが治癒したという状態を証明
     しなければならないのは、原則としてそれを主張する社員と考えるからです。

     ただし、社員が立証した治癒状態に対して、使用者が反証を行わず、または
     行えずに自然退職や解雇とした場合には当該措置は無効になる可能性が高
     いと考えます。

     この間題は、社員の生活に直接関係するものですから、トラブルが発生する
     ケースが多いです。

     従って、復職不可とする場合は、使用者側は先の復職可否判断期間も含めて
     十分な反証の準備を行う必要があります。

   5.休職者が提出する診断書への対応

     長い間就労不能であった社員が、休職期間満了間際に就労可能の診断書を
     提出してきた場合はどう対処したらよいでしょうか。

     社員の主治医は会社の業務内容を詳しく知っているわけではないので、特に
     精神疾患の場合は、本当の意味で就労可能かどうかを診断するのは難しいと
     思います。

     このような場合は、休職規定に医師への面談を依頼する旨の内容を設けてお
     いて、実際に社員同席で医師との面談を行います。

     何も問題がなければ医師との面談を断る理由はないはずです。

     そこで注意したいのは、医師が最近出している薬の分量を聞くことです。

     処方箋には医師の本音が出るからです。

     薬の情報を産業医などに確認すると、実際にどの程度の症状なのかが分かり
     ます。

     そして一番重要なのが、最終的な判断を行うのは人事管理権の行使が行える
     使用者側です。

     総合的に見て復職できないと判断した場合は、安全配慮義務がある使用者の
     責任として復職不能の判断をしなければなりません。

   6.リハビリ勤務期間

     エールフランス事件の判例では、ほどなく業務を行えるとは健康状態が80%
     程度に回復している状態をいい、80%程度の回復が認められるなら復職をさ
     せなければならないといった内容でした。

     本来、社員が健康なときと同じように労働を提供できないのであれば、先に述
     べたノーワークノーペイの原則が用いられることになります。

     しかし最近の判例では、復職可否の判断で使用者側がどの程度熟慮していた
     かが問われることが多くなってきています。

     そこで、残りの20%を回復させるための「リハビリ勤務期間」という考え方が重
     要となってくるわけです。

     休職期間が満了したから当然に自然退職や解雇とするのではなく、使用者側
     にある一定のリハビリ期間を設ける等の配慮が求められるということになりま
     す。

     そこで、リハビリ勤務を行う際に、治癒したかどうかの判断と治癒した場合の
     復帰手順を示すことが重要になってきます。

     大まかな手順としては「社員の復職可否の判断」「復職できた場合の復職日や
     リハビリ復職時の賃金等」について、「最終的な本復帰の判断方法」「リハビリ
     勤務後の本復帰手順や本復帰困難な場合の処置」などを定める必要がある
     でしょう。

   7.休職制度の不利益変更

     今現在休職規定があり、その内容について変更を行いたいといった場合の対
     処について考えてみたいと思います。

     不利益変更と考えられるものとしては、休職期間の短縮や休職期間中の賃金
     を有給から無給に変えるといったケースがあります。

     今現在、健康で就労中の社員にとっても潜在的な不利益変更にはなります
     が、不利益変更の度合いは社員が現在休職中かどうかによって解釈が全く異
     なります。

     ここで、就業規則の法的な定義として労働契約法第7条は「社員及び使用者
     が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定めら
     れている就業規則を社員に周知させていた場合には、労働契約の内容は、そ
     の就業規則で定める労働条件によるものとする。

     ただし、労働契約において、社員及び使用者が就業規則の内容と異なる労働 
     条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限
     りでない」となっています。

     つまり、通常労働契約は使用者と社員の合意があって成立するものですが、
     労働契約法は就業規則に合理的な労働条件を定めていれば、社員の個別具
     体的な同意がなくともその内容が雇用契約になるということです。

     従って、不利益変更の内容が合理的である必要が求められます。

     そのため、就業規則の不利益変更については、変更に関する合理性の判断
     要素の一つである「社員の被る不利益の程度」を熟慮する必要があります。

     これについては実際に休職中の社員に対しては当てはまる場合がほとんどな
     ので、休職期間や賃金の有無などは旧規定をそのまま適用するなどの対応
     が必要になってくるでしょう。

     休職とは、「ある従業員に職務に従事させることが不能であるかもしくは適当
     でないような事由が生じた場合にその従業員に対し、従業員の地位は現存の
     まま保有させながら執務のみを禁ずる処分とされています。

     このような休職制度を設けるかどうかは任意ですが、この制度を設ける場合に
     は、就業規則に記載すべき事項すなわち、相対的必要記載事項(労働基準法
     第89条第10号)となります。

     したがって、休職の定めをする場合には、休職事、休職期間、休職期間中の
     給与の支払いの有無、また、休職期間満了あるいは休職事由消滅後の復帰
     の際の取扱いなどについて定めておかなければなりません。

 
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労務リスクと労務管理

長時間労働削減対策の取組状況


  □長時間労働削減対策

   平成28年4月1日に、長時間労働削減推進本部から、これまでの長時間労働削
   減対策についての監督指導結果を含む取組状況と、今後の法規制の執行強化
   について公表されました。

   そのポイントは、

    1.長時間労働削減対策取組状況

     (1)月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底

       ①監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正
         勧告書等を交付し、指導

       ②法違反を是正しない事業場は送検も視野にいれて対応
         (送検した場合、企業名等を公表)

           ※時間外・休日労働協定(36協定)なく時間外労働を行っているもの、36協定で
             定める限度時間を超えて時間外労働を行っているものなど

      (2)監督指導・捜査体制の強化
        過重労働事案であって、複数の支店において労働者に健康被害のおそれ
        があるものや犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対
        する特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が新設され
        (平成27年4月〜)東京労働局・大阪労働局に設置されました。
        これまでに全国展開する3企業について書類送検を実施しています。

        ※東京かとく(過重労働撲滅特別対策班):小売業(27年7月、28年1月)  
          大阪かとく:飲食業(27年8月)

     (3)過重労働解消キャンペーンの重点監督

       平成27年11月の「過重労働解消キャンペーン」では、長時間にわたる過
       重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等に対して重
       点監督を実施しています。

         ※5,031事業場に対し実施、3,718事業場(73.9%)で労働基準関係法令違反が
           認められたため、是正を指導

        その他にもインターネット上の求人情報等を監視・収集し、労働基準監督
       署による監督指導等に活用するなどの取組みを行っています。

    2.法規制の執行強化

      (1)重点監督対象の拡大

        これまで月100時間超残業が疑われる事業場を対象としていましたが、
        今後は、月80時間超の事業場も対象とし、年間1万事業場から2万事業
        場(試算)へと重点監督対象の拡大を行う予定です。

      (2)監督指導・捜査体制の整備

        現状では、東京労働局・大阪労働局のみに「過重労働撲滅特別対策班」
        (通称「かとく」)が設置されていますが、今後は、厚生労働省内に「過重
        労働撲滅特別対策班」(通称「本省かとく」) を新設し、企業本社への監督
        指導の他、労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよ
        う、労働局に対し必要な指導調整を行う予定です。

        また、47局全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に
        担当する「過重労働特別監督監理官」を各1名配置し、以下の対策を実
        施することになりました。

         ① 問題業種に係る重点監督の総括(企画・立案・実施)

         ② 月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括

         ③ 本社監督の総括(問題企業の把握分析・実施・調整・指導)

         ④ 夜間臨検の実施・調整・長時間・過重労働に係る司法処理事案の監
           理等

        この他にもトラック業界、IT業界など長時間労働が疑われる業界には、業
        界団体や関係者、関係省庁と連携した取り組みが行われることとなって
        います。

        以上を見るに、過労死等防止対策推進法をもとに、長時間労働が疑われ   
        る事業場に対する監督指導の強化が、より一層強まっているのが分かり
        ます。

      今では英語の辞書にまで「KAROSHI」のワードが掲載されるほどに、「過労
      死」という言葉は知れ渡りました。

      長時間労働に起因する過重な物理的・心理的負荷による労働災害は、企業
      の安全配慮義務違反による労働者等への賠償金の支払い以上に、社会的
      な責任が問われます。

      長時間労働が恒常的に行われている場合には、適正な労働時間管理を行っ
      ていく必要があるでしょう。

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労務リスクと労務管理

労働条件の不利益変更リスク

 会社が一方的に労働条件を不利益に変更することはできません。

 従業員の同意に基づいて行うことが原則です。

 同意を得ないで行った労働条件の変更は無効となります。

 今までは入社から年数がたつにつれて賃金や退職金を含めた労働条件がよくなってていくのが普通
 でしたが、企業を取り巻く経済環境がめまぐるしく変わる現在においては、従業員と最初に約束した
 労働条件を不利益となる条件に変更しなければならなくなるのが実情ではないでしょうか。

 経済環境の低迷により、労働条件の不利益変更をやむおえず実施しようとする場合、従業員の生活に
 かかわる重大問題であり、一歩間違えばモチベーションの低下や、企業業績の悪化を招く要因となる
 こともあります。

 最悪、従業員による訴訟に発展しかねない状況が出てきます。

 やむを得ず従業員の労働条件を不利益に変更しなければならないときは、従業員との信頼関係を保ち
 ながら、新しい労働条件に納得してもらい、前向きに働いてもらうようにすることが何より重要です。

 そのためには、会社が一方的に通告するなど強引なやり方によって従業員との関係を悪化させないよう
 に、手順を踏みながら変更について理解し、協力してもらえるように会社も努力することが大切です。

 いずれにせよ会社が一方的に労働条件を不利益に変更することはできません。

 従業員の同意に基づいて行うことが原則です。

 同意を得ないで行った労働条件の変更は無効となります。

□個別同意による不利益変更

 1.個別同意による不利益変更の手順

  従業員の労働条件を従来に比べて不利益に変更する場合には、その変更内容について同意をして
  もらう必要があり、十分に理解してもらったうえで、最終的には書面による同意書を取ることが
  目標です。

   手順としては、

   (1)個別面談または、説明会を開催する

     会社として「なぜ変更しなければならないか」を丁寧に説明し、従業員の理解を促す
     ことがポイントとなります。 

   (2)従業員からの質問に答える

     従業員から質問があれば、それに丁寧に答えていくことで十分に理解してもらうように
     します。

     面談や説明会だけでなく、その後一定の期限を定めて質問をあげてもらうことで、理解を
     深める機会を設けることがポイントとなります。

   (3)同意書を提出してもらう

     提出期限を設けて同意書を提出してもらうようにします。

     会社からの説明を受け、納得して同意したことがわかるような内容の同意書を取り付ける
     ことが大切です。

   (4)同意書を提出しない従業員への対応を行う

     提出期限までに同意書を提出しない従業員には、個別に話し合いの場を設け、「なぜ同意を
     したくないのか」をよく聞いて、疑問や不満などに丁寧に答え、変更の必要性を説明しなが 
     ら、ねばり強く説得を行います。

 

 2.同意書の書式例 

  次に同意書の一例を示します。

   ○就業規則による不利益変更

    個別の同意を取ることなく、就業規則に基づいて労働条件を変更することで、従業員の労働
    条件を統一的に不利益変更することが可能です。

    就業規則による不利益変更を行う場合には、クリアすべき項目があります。

    (1)法律上必要な手続きが取られているかどうか

      就業規則を変更するには、以下の3点が必要となります。

         ①従業員の意見聴取が行われていること

         ②労働基準監督署へ届けられていること

         ③従業員に周知されていること

    (2)不利益変更に合理性が認められるか

      会社が従業員の労働条件をこれまでより不利益に変更する場合は、合理性がないと認め
      られません。

            ①従業員の受ける不利益の程度

             ②労働条件の変更の目的および必要性

             ③変更後の就業規則の内容の相当性

             ④労働組合等との交渉の状況

             ⑤その他の事情に照らして合理的かどうか
 

    (3)法令または労働協約に違反していないか

       働基準法を始めとした法令に違反する内容を就業規則に定め ても、その部分は無効と
      なります。

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労務リスクと労務管理

長時間労働と厚生労働省の監督指導の強化


  近年、長時間労働を原因とした「脳・心臓疾患」と「精神障害」などの労働災害につ
  いて目にする機会が増えてきました。

  そのような中で、長時間労働削減推進本部のもと、長時間労働削減の取り組みを
  進める厚生労働省から、2014年11 月の「過重労働解消キャンペーン」における
  重点監督の実施結果が公表されました。

  その結果、実施事業場4,561 事業場の約半数にあたる2,304 事業場で違法な
  時間外労働などが確認されたとのことです。

  「重点監督の結果のポイント」について

  □「過重労働解消キャンペーン」における監督指導事例

   ある旅館業を営む事業場では、最も労働時間の長い労働者で月270 時間を超える
   違法な時間外労働を行わせていました。

   また、労働者が45 時間を超えて残業してもその超えた分の残業代が支払われない、
   休憩時間が取れないなどの問題点が明らかになりました。

   そのため、労働基準監督署は事業場に対して指導を行いました。

   上記のように、長時間労働削減推進本部では、月100 時間超の残業が行われて
   いる事業所等について、労働基準監督署による監督指導(立入調査)を徹底すると
   共に、監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正勧告書等を
   交付し、指導、法違反を是正しない事業場は、送検も視野に入れて対応(送検した
   場合には企業名等を公表)との意向を示しています。

   企業名の公表まで至らなくとも、労働者がインターネット上で自社の労働環境を広める
   可能性もあります。

   雇用管理全般について言えることですが、そのような社会的なリスクの面も考えて
   対策を行っていく必要があります。

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