仕組みで動かす経営

会社成長のための仕組みを使った経営 Ⅲ

□間接部門も大事な仕組み

 一般に中小企業では経理、人事、労務といった間接部門はあまり重視されず、営業部門のように
 直接収益を生み出す部門にほとんどの人材が投入されます。

 会社が小さいうちは仕方のないことですが、ある程度会社が成長し「仕組み」で経営する必要が
 出てくるとこれらの部門の機能を強化することも大切になります。

 1.社長の「情報源」としての間接部門

  本来、間接部門とは雑務処理部門ではなく、営業メンバーなどが最大限のパワーを発揮するのを
  サポートする部門のはずです。

  そして、そのサポートは雑務にとどまらず、経理であれば個人別や部門別の受注数字の進捗管理、
  人事であれば個々の社員の能力開発といったレベルのものが要求されます。

  そのためには業績に関するデータはもちろん、営業マンのA君は最近伸び悩んでいるといった
  情報も把握しておく必要があります。

  間接部門が本来的に機能し始めると、会社全体や個々の社員に、何が起こっているかについての
  情報が集中するようになります。

  つまり、社長にとっての貴重な「情報源」となるわけです。

  社長は現場部門からの直接的な報告だけでなく、間接部門に集められた中立的なデータも加味した
  うえで、最適な指示を出すことができるようになります。

 2.社長の「参謀」としての間接部門

  間接部門にいつでも会社の最新情報が集まるようになったら、今度はさらにそれらの情報を分析
  させるようにします。

  日々上がってくる情報について、事業部門ごとあるいは時系列などによる比較分析をさせてみる
  とよいでしょう。

  その際には社長から分析のポイントをあらかじめ指示しておきます。

  たとえば、特定部門の業績低迷が気になっているのであれば、その部門についてはより詳細な
  売上や利益の分析をさせるといった具合です。

  長く続けていれば「おそらく低迷の原因はこうで、対策案はこうだ」というような分析ができる
  ようになります。

  そうなれば社長は間接部門という「参謀」を得たことになります。

  社長自身がなかなか気づかない客観的な視点での助言も得られるでしょう。

 3.社長の「分身」としての間接部門

  間接部門の「参謀」としての経験値が上がっていけば、情報分析から問題点を発見した際には、
  一定範囲内の事項については間接部門自身が現場に指摘し、改善を求めたりすることができる
  ようになります。

  たとえば、特定部門の経費が急に増えてきたとか、特定社員の長時間残業がずっと続いている
  といった場合は、社長を通さずに間接部門から当該部門長に直接指摘させます。

  その際には「社長ならこう考えるだろう」という判断ができるように、間接部門の社員に
  自分の「分身」としての考え方を繰り返し伝えておくことが必要になります。

  そこまでできれば大抵の問題は「分身」が対応してくれて、社長は報告を受けるだけですみ、
  自分自身は本来の仕事に集中できるようになります。

 4.間接部門は社長が育てる

  ここまでみてきたように、間接部門は社長とともに、あるいは社長に代わって全社的な問題点を
  改善したり、全社の将来像を探っていく部門です。

  しかし、非常に大切な役割を担っている間接部門にもかかわらず、業績が悪くなってくると
  真っ先に人員削減の対象になるのも間接部門のようです。

  ほとんどの会社ではもともと最低限の人員しかおいておらず、さらに人員削減などが行われると、
  残った人員は雑務に忙殺されるばかりで、とても全社的な問題点の解決などには頭が回らなく
  なります。

  その結果、問題解決のために必要な情報が社長に十分に集まらない、さらに業績が悪化する
  という悪循環に陥ることもあります。

  会社を仕組みで経営するためには、社長には間接部門を自らの「情報源」として、「参謀」と
  して、そして「分身」として育てていく姿勢が求められます。

□社長本来の仕事とは

 1.「社長にしかできない仕事」が社長本来の仕事

  会社経営のための仕組みがいったんできあがれば、社長は多くの雑務から解放され、社長本来の
  仕事に集中できるようになるはずです。

  では、社長本来の仕事とはどんな仕事なのでしょうか。

  それは一言でいえば、

   社長自身にしかできない仕事

  ということです。

  ひどく抽象的な言い回しですが、これはすべての会社に当てはまります。

  会社を成長させるために、社長が現場の仕事に関与しすぎるのはよくないということにはすでに
  触れました。

  社長が現場でもっと頑張ることによって売上は2~3倍になることはありますが、「仕組み」を
  使わない限り50倍、100倍の成長はあり得ません。

  社長の仕事は「今日」の現場仕事ではなく、「将来」の仕事をいかにつくるかということです。

  これは社長は外回りをして仕事をとってくるべき、ということではありません。

  構築した経営の仕組みを使って、大きな視点、長期的な視点で、今やっている事業を今後どの
  ように展開すべきか、あるいは新規事業としてどんなことに取り組むべきかといったこの先の
  会社の屋台骨を考えることこそが社長の本来の仕事といえます。

  会社を本当に成長させるためには、3年後、5年後のあるべき姿を措かなくてはなりません。

  そして、そこへ到達するまでの道筋もつける必要があります。

  自社が現在取り組んでいる市場がこの先衰退が見込まれる場合などは、まったく新しい事業への
  シフトなども考慮しなければなりません。

  大きな先行投資も必要になるかもしれません。

  そして、このような困難かつ大胆な決断ができるのは、社長自身です。

  「会社成長のための戦略を練り、重要な決断をすること」、これこそが社長自身が取り組むべき
  もっとも重要な仕事です。

  また、構築した経営の仕組みを進化させていくことや、人材の育成、とりわけ前述した
  ナンバー2の育成などについても社長自身が取り組むべき重要な仕事といえます。

 2.「緊急度 “低”」、「重要度 “高”」の仕事に着目する

  仕事の優先順位のつけ方として「緊急度」と「重要度」に分けて考える手法があります。

  緊急度の高い仕事とは、今すぐ対応しないと問題が生じる仕事、あるいは今すぐ対応することに
  よって成果を生む仕事のことです。

  逆に重要度の高い仕事とは対応しないと大きな問題が生じる仕事、あるいは対応することによって
  大きな成果につながる仕事のことです。

  つまり「すぐ取り組むべきかどうか」と「どの程度の成果(あるいは問題)を生むか」という
  2つの軸でそれぞれの仕事を評価し、優先順位をつけていく考え方です。

  当然ながら緊急度も重要度も高い仕事が最優先ということになります。

  たとえば大口の取引先からの重大クレーム対応などは社長自身が最優先で関与すべき非常事態と
  いうことになります。

  一方、業界の集まりに参加することなどはほとんどの場合、緊急度も重要度も低い仕事に分類
  され優先順位は低くなります。

  残るは「緊急度高”、重要度“低”」の仕事、「緊急度“低”、重要度“高”」の仕事です。

  一見すると緊急度が高い前者のほうが優先されるように思えますが、ここまで述べてきた
  「社長本来の仕事」の大部分は後者の領域にあります。

  前者については重要度はさほど高くないので、社長自身ではなく、幹部社員に対応させることで
  すませられるケースも多いからです。

  一方、後者の「緊急度“低”、重要度“高”」の領域に入る仕事としては、経営戦略策定、長期的な
  人材育成計画策定、投資計画の策定などがあげられます。

  いずれも今日明日それを放置しておいたからといって、すぐに会社が傾くという仕事ではあり
  ません。

  また、考えるのが非常に難しい仕事ばかりでもあります。

  したがって、どうしてもほかの領域の仕事に逃げてしまいがちになります。

  しかし、いつまでもそれを放置しておくと、緊急度がどんどん高くなっていくことは明らかです。

  やがて、緊急度も重要度も高い「本当の非常事態」を招いてしまいます。

  ここでいう本当の非常事態とは、前述の大口顧客のクレームのレベルではなく、自社のビジネスの
  仕組みそのものが崩壊の危機に瀕するという正真正銘の非常事態です。

  そして、このような事態になってからでは打てる手は限られています。

  つまり「緊急度“低”、重要度“高”」の仕事を優先するということは、将来の非常事態を招かない
  ために、今からじっくりと手を打っておくということです。

  早期に着手すればするほど長期的な視野で考えられるので、打てる手の数も多くなります。

  ここに分類される仕事こそ、社長が優先して取り組むべき本来の仕事といえるのです。

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仕組みで動かす経営

会社成長のための仕組みを使った経営 Ⅱ

□成長するための組織づくり

 ほとんどの経営者の方は、その強力なリーダーシップでこれまで会社を引っ張り、そして、今後も
 自らが中心になって会社を成長させていきたいと考えていることでしょう。

 しかしながら、たとえば、創業間もなく従業員が10人程度の時期と、50人程度にまで規模が拡大して
 いる時期とでは、社長が果たすべき役割は変わっていきます。

 1.「20人の壁」をどう超えるか

  「会社を成長させるために社長が果たすべき役割は何か」、この答えは会社の規模・業種などに
  よってさまざまでしょう。

  たとえば、会社の規模が小さいうちはほとんどの場合、社長自身の考え方や裁量で会社のすべてが
  決まり、実際に動いていると思います。

  また、積極的に現場に関与して、「社長自身が率先して営業の現場に立つ」といったことも行われ
  ているでしょう。

  これらは会社の規模が小さいうちはよいのですが、会社の規模が一定のレベルに達してくると
  状況は変わってきます。

  経験上、その分岐点は従業員20人程度の頃にやってきます。

  それまでは従業員一人ひとりの様子や、会社で起こっていることはすべて社長が把握でき、適切な
  指示が出せていたものが、この規模を超えると、社長ひとりで何もかも対応することはほとんど
  不可能になります。

  また、ひとつの現場に社長が集中して関与しすぎると、ほかの現場の状況がわからなくなり、
  結果として会社全体に大きな損失をもたらす可能性もあります。

  このような状況を克服するためには、これまでの「社長ひとりが会社を引っ張る」という発想
  から「仕組みを使って会社を引っ張る」という発想に切り替えなければなりません。

  この場合の「仕組み」とは日々の業務、会社のルール、日常的な決裁、指示・命令など、会社を
  運営していくための決まり事や方法などのすべてを指します。

  つまり、これまで社長が「直接的に」行っていた業務を、仕組みを使って「間接的に」行っていく
  わけです。

 2.合理的な組織構築とは

  そして、この仕組みづくりの中核をなすのが「合理的な組織づくり」と「権限委譲」です。

  多くの中小企業では創業当初は社長の「一人親方」からスタートしています。

  そして、従業員も増え一人ひとりの得手不得手や、感覚としての序列関係が何となくわかって
  きた段階で、部門分けや部門長を任命する、おおよそこのような経緯で最初の組織が編成される
  のではないでしょうか。

  このような経緯を経て誕生した組織は、「現状の仕事を現状のまま」こなすという意味では、
  おそらく最適です。

  序列関係も各自が納得しているので、無用な軋轢も生じません。

  しかし、会社を大きく成長させるという視点からは、このような組織編成は好ましくありません。

  いうまでもないことですが、組織編成はそれ自体が目的ではなく、会社の目標を達成するための
  「手段」にすぎません。

  目標の変化に合わせて組織も最適化していく必要があります。

  「会社の現状維持」が目的であれば旧来型の組織で十分かもしれませんが、「会社の成長」を
  目的とする以上、その手段である組織編成のあり方も変わっていくのです。

  しかしながら、なかには明らかに組織の目標が変化しているのに、従前の組織形態を維持する
  ことを優先しているケースも見受けられます。

  その理由のなかで多いのが「古参の幹部社員のポストをつくらなくてはいけない」とか、「長年
  一緒にやってきた社員に序列をつけたくない」といったいわゆる「情」に関するものです。

  残念ながら、会社成長のための組織編成を考えるとき、そこに「情」が入り込む余地はありません。

  一人ひとりの社員に愛情を注ぐことと、どのような組織編成をして誰をどのポストに置くかという
  ことはまったくの別物です。

  このことがあいまいになってくると「情」が優先された組織編成になってしまい、もはや目標達成
  のための手段とはいえなくなります。

  そして、いったん不合理な組織編成をしてしまうと、既得権益のようなものが発生し、元に戻す
  のがどんどん困難になっていきます。

  会社の成長を強く決意するのであれば、自社がこのような問題を抱えているかどうかを確認する
  必要があります。

  そして、もし問題があるとしたら、困難であってもできるだけ早くゼロベースで組織を見直す
  必要があります。

 3.一歩先を見据えた組織編成が必要

  成長するための組織編成を考えるときに、実際に将来必要とされる想定組織図を描いてみると、
  よりイメージがつかみやすくなります。時期は3年後あたりが適切です。

  3年後に自社がどのような事業をどれくらいの規模で行っているかを想定して、それを実現する
  ために最適な組織図を措いていきます。

  当然現在の社員の人数や能力だけでは足りなくなるはずですが、それは社内の人間を育てたり、
  新規に採用することを前提に作成します。これにより、どんな人間がどれだけ不足しているかが
  具体的にわかるので、教育計画や採用計画につなげることができます。

  また、作成した想定組織図を社員に公開することも有効です。

  会社の今後の方向性を口で伝えるだけでなく、その結果このような組織が必要になると示すことで、
  格段にイメージがつきやすくなります。

  さらに組織図に示されたそれぞれのポストに就くためには、具体的にどのような能力や実績が
  必要かを示しておけば、社員の意欲の向上にもつながります。

□避けては通れない権限委譲

 1.実力以上のポストを与える

  合理的な組織編成によって部門長などのポストが決まったら、彼らに一定の権限を与えていきます。

  日常的な決裁業務などはあらかじめルールを決めておき、「この範囲以内であれば部長クラスの
  決裁で可」といった形にして、社長自身がささいな決裁業務に煩わされないようにしていきます。

  多くの中小企業の経営者が「権限委譲の大切さは理解しているが任せられる人材が育っていない」
  と悩みを口にします。

  しかしながら、実際に権限委譲を進めている会社でも「十分に育ってから権限委譲する」という
  ケースはほとんどありません。

  「実力は課長クラスだが、あえて部長のポストを与えて、実践のなかで能力をポストに追いつか
  せる」というケースが大半なのです。

  もちろんこのような人事は前述のような「情」ではなく、正当な能力評価による「期待」を根拠に
  行う必要があります。

  また、日常業務レベルでの人材育成を考えるうえでも、権限委譲は大変重要です。

  たとえば、社長自身が現場で逐一指示を出しているうちは、現場責任者は本来であれば自分自身で
  判断すべきレベルの決断でも、ちょっと迷ったら社長に指示を仰いでしまいます。

  このような状況が続くと、現場責任者は目の前の「作業」は習熟するかもしれませんが、自分で
  考えるという習慣、つまり本当の意味での能力開発が進みません。

  社員の能力を高めるためには多少の失敗には目をつぶっても、責任者に自分で考えさせることが
  大切です。

  彼らに一定の権限を与えて、多少イレギュラーなことが起こっても自分で対処することによって、
  管理者としての意識も能力も高まっていくのです。

 2.NO2を早期に育てる

  社長にとって究極の権限委譲とは、引退して後継者にすべての経営を任せることです。

  それは遠い先のことかもしれませんが、現在多くの高度成長期の創業者が引退時期を迎えている
  にもかかわらず、後継者難で苦しんでいるという現実もあります。

  当然ですが、後継者は一朝一夕で育つものではありません。

  できるだけ早い時期に後継者候補を選定し、じっくりと育てていかなくてはなりません。

  多くの中小企業の場合、後継者には社長の息子などの親族が選ばれます。

  しかし、息子がまだ幼かったり、適任ではないと考えられる場合はそれ以外の社員を選抜し育てて
  いくしかありません。

  具体的には、現時点で後継者候補として最適と思われる「ナンバー2」を選抜して、育成して
  いきます。

  そして、そのナンバー2が社長の代わりを務めるための環境を整備します。

  たとえば、ナンバー2の裁量の範囲を本人にも周囲にも周知徹底させることや、ほかの社員から
  ナンバー2にきちんと業務報告がなされるような仕組みづくりなどは必須となります。

  育成期間中に「不適切」という判断をせざるを得ない場合もありますが、その際には再度人選を
  すればよいだけです。

  重要なのはどの時点においてもナンバー2を育成しており、その能力向上に応じて少しずつでも
  権限委譲を進めることです。

  また、ナンバー2には仕事の仕方だけではなく、経営理念や社長の哲学なども教えていく必要が
  あります。

  そして十分に信頼できる後継者が育成できたら、引退時期を待たずとも既存事業はすべて後継者に
  任せて、自分は新たなビジネスに挑戦するといったことも可能になります。

 3.仕組みで経営するということの本質

  ここまでみてきたように会社が一定の規模を超えてきたら、組織や権限委譲を活用して仕組みに
  よる経営に移行していく必要があります。

  社長が直接ではなく仕組みを使って間接的に会社を引っ張ることによって、社長は会社全体の
  状況を把握することができ、また、仕事を任されることで社員も成長することができます。

  言い方を変えれば、会社を大きくしていくということの本質は「社長の直接関与は極力抑えた、
  仕組みと自治による共和的国家」をつくることにあります。

  会社成長を決意した社長の最初の役割は、この自治国家ができるだけ早く機能するようにすること
  なのです。

  現場の一線で頑張ってきた社長としては一見寂しいようにも思えますが、会社はそうしたプロセス
  を踏んでのみ大きくなっていくのです。

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会社成長のための仕組みを使った経営 Ⅰ

■「仕組み」をつくれば誰もが成果を出せる

 「仕組み」とは、「誰が、いつ、何度やっても、同じ成果が出せるシステム」のことを言います。

 この「仕組み」には、才能や意志の強さはまったく関係ありません。

 あなたの部下の学歴や性別も関係ありません。

 面倒くさがり屋でも、集中力が無くても関係ありません。

 そして、お金も必要ありません。

 仕組みづくりとは、一定のルールに従うだけで、誰がやっても成果の出せるノウハウなのです。

 自分や会社、業務を「仕組み化」するメリットとして、誰もが安定した成果を出せるようになり、
 それによって会社が安定し、スタッフも安心して仕事に取り組めるということです。

 仕組みもなく、社長や上司が営業や資金繰りで日々飛び回っている会社は、社員も安心して仕事が
 できません。

 次の職場を探したり、仕事以外のことに頭を使ったりして、会社が発展しなくなってしまうという
 事態に陥ってしまうのです。

□「仕組み化」が必要な仕事

 あなたに提案したいのは、仕事に「仕組み」をつくることです。

 ただし、あらゆる仕事が「仕組み化」できるかというと、そうではありません。

 仕組み化が必要な仕事と、そうでない仕事があります。

 日々、あなたが行っている仕事は、大きく2つに分けることができます。

 この2つをそれぞれ、「作業系」「考える系」と名づけてみましょう。

  ○「作業系」の仕事……頭を使わないで処理できる仕事。手や身体を動かすなど
   行動をともなう実務作業。ルーチンワークであることが多い。

   【例】書類作成、帳簿作成、会議の準備・議事進行、机の片づけ、等。

  ○「考える系」の仕事‥‥‥頭を使って考える必要がある仕事。知的作業。

   【例】新規事業のプランニング、企画立案、原稿執筆、人事考課、等。

 このような視点で、あなたの一日の仕事を見直してみましょう。

 業種や職種、ポジションによって多少の差はありますが、たいていのビジネスパーソンは、仕事を
 している時間の7~8割を作業系の仕事に費やしている、というのが実態でしょう。

 そして、作業系の仕事にこそ仕組みづくりが有効です。

 それによって、時間と労力の徹底的な効率化をはかるのです。

 一方で「考える系」の仕事には、時間と労力を費やすべきです。

 なぜなら、その考える系の仕事から生まれた新規事業等が、将来の成果になっていくからです。

 作業系の仕事だけでは、あなたも会社も成長していきません。

 そのためにも、作業系の仕事を仕組み化することで捻出した時間を、「考える系」の仕事に充てる
 のです。

□仕事を「仕組み化」する3つのポイント

 最小限の時間と労力で最大の効果をえるために、「作業系」の仕事にどのように「仕組み」をつくる
 べきなのでしょうか。

 仕事を「仕組み化」するということは、つまり仕事のすすめ方にフォーマットをつくり、それを
 「才能」「意志の力」「記憶力」に関わらず、誰でも再現できるようなルーチンをつくることです。

 作業系の仕事を仕組み化することで、仕事に対するストレスは明らかに軽減します。

 「ああ、面倒くさい」「やりたくない」と感じて腰が重くなることがなくなり、その分仕事の
 スピードも向上します。

 方法をご紹介する前に、仕組みをつくり、それを使いこなしていくために大前提として知っておいて
 いただきたい3つの重要なポイントを押さえておきましょう。

  ○才能に頼らない
   私の知るかぎり、処理能力の高い人ほど「仕組み」づくりが苦手なようです。

   「自分でやったほうが早い」「何も考えなくても感覚的にできてしまうので、いちいち
   明文化できない」などといって、「仕組み化」がなかなか進まないのです。

   しかし、「これは自分にしかできない仕事だから」と、いつまでもその仕事を独占して
   いては、あなたも仲間も成長しません。

   あるいは、あなたが経営者やマネジャーだとして、「そのほうが良い結果が出るから」と
   優秀なスタッフばかりに仕事を振っていては、不公平感は高まりますし、彼らが辞めでも
   したら困ってしまいます。

   たとえばアルバイトの学生でも、その通りにやれば、ある程度の結果を出せること。

   それが、仕組みづくりに欠かせないポイントの1つです。

  ○意志力に頼らない
   人間は、基本的に怠け者です。

   小学生が家で宿題をやろうとしても、好きなテレビ番組が始まったら、つい勉強が
   なおざりになるのと同じで、大人でも、「この仕事は大変だから、なかなか手が
   つかないな……、と思っていたら、飲み会に誘われた。

   よし、今日は切り上げてしまおう!」なんてことになりがちです(あなたにも覚えが
   あるはずです)。

   普通の人は、そこで「強い意志を持って誘惑を断ち切るのだ!」と考えるでしょう。

   それはもちろん間違っていませんし、実際、意志の力は何においても必要です。

   しかし、その一方で、「意志を強く持つ」というのは、意外と不確かなものでも
   あるのです。

   というのも、意志はそのときの体調や気分にも左右されますし、ストイックで意志の
   強い人もいれば、気分にムラがある人だっています。

   意志の力にはどうしてもぶれがあるのです。

   仕事に仕組みをつくろうと思ったら、意志の力を前提に考えないこと。

   意志の力ではなく、「仕組みの力」で自分を動かすのです。

  ○記憶力に頼らない
   「先週の会議ではどんな意見が出て、どんなふうに話が決まったのか教えてよ」。

   会議に出られなかった上司からそう聞かれて、あわてて一生懸命思い出そうとしたり、
   他の参加者に聞いてまわったり、そんな経験、あなたにはありませんか。

   私の会社では、会議のときは書記が必ずパソコンで議事録をとり、会議が終わったら、
   それを関係者全員が参加するメーリングリストに流します。

   こうすれば、欠席者や途中退席した人にも会議の内容が共有できますし、数カ月前に
   議論したことも、さかのぼればすべて履歴が残っていて、「こうだった」というのが
   わかります。

   不確かな記憶を無理に引っ張り出したり、いちいちそのたびに誰かに確認したりする
   必要がないのです。

   人は一日の間に話した内容について、翌日になると9割忘れていると言われます。

   頭の中には、1割しか残っていないというわけです。

   記憶に頼らずに、パソコンや手帳などを活用して、外部記憶の仕組みをつくることを
   お勧めします。

   「記憶」より「記録」というわけです。

   人の記憶力は、どう頑張ってもコンピュータには勝てないのです。だったら自分の頭は、
   「覚えること」に使うよりも、「考えること」に使ったほうがいいと思います。

□「チェックシート」と「一元管理」で劇的な改善

 あなたのワークスタイルを劇的に改善するためには、2つの「仕組み」を仕事に取り入れる
 ことが重要です。

 1つは、「『作業系』の仕事を徹底的に効率化すること」。

 そしてもう1つが、「あらゆるタスクを一元管理すること」です。

 ○チェックシート
  仕事を効率的に進めるために、チェックシートはきわめてシンプルでかつ優秀なツールです。

  「やるべきこと」を具体的に細かく書き出してシート作成し、いつでも、誰でも使えるように
  「仕組み化」しておけば、次からその仕事をスムーズに、手が止まってしまうことなく進め
  られるようになります。

  毎月、毎週、毎日といった単位で必ず行う仕事、つまりルーチンワークにおいて、チェック
  シートは最大の効果を発揮します。

  たとえば提出書類の確認、経費精算、オフィスの掃除、システムのメンテナンス‥…・等、
  チェックシートを使うことで、こうした仕事の効率は驚くほど上がります。

  ルーチンワークにおいては、最初の1回目にチェックシートをつくるのが基本です。

  たとえば毎月第1火曜日に社内の定例ミーティングをすると決めたら、その第1回目を準備
  する時点で、リーダーと担当者で議題をリストアップします。

  売上げ数字の確認、新製品プロジェクトの進捗報告、成績優秀者の表彰、人事の発表など、
  ミーティングでやることはだいたい決まっていますから、それをもとにリストをつくって
  しまいます。

  あとはミーティングの回数を重ねる中で、不要なTODO(やるべきこと)はやめるなど、
  より実際的で効率的なチェックシートにアップしていきます。

  弊社では、個々の業務から会社全体の動きに関わるものまで、あらゆる仕事にチェック
  シートをつくり、かつ、活用しています。

  下記にご紹介するのも、そのごく一部です。

   □苦情対応 

   □OJTの基本(ルール、マナー、5S、基本動作)

   □社内会議・ミーティング

   □面接を行うとき

   □月末に行う業務

   □PCをデータ移行するとき

   □掃除

   口朝出社したとき

   □最後にオフィスを出る人

   □会計士に送る書類

   □出張準備 等

  大げさに聞こえるかもしれませんが、仕組み化をせずにただひたすら作業に取り組んだ場合、
  その作業に費やされる時間の9割は、手順が複雑なことから生じる無駄な時間です。

  逆に言えば、仕組み化を導入すれば、作業は驚くほどスピードアップするということです。

 ○一元管理
  一元管理とは、ひとことで言えば「同じものを2つ持たない」ということです。

  たとえば、先月の営業資料を見て検討しようというときに、その資料が、会社のパソコンに
  入っているのか、自分のノートパソコンにも入っているのかわからなくなっていたり、
  あるいはそのどちらにも入っているけれど、どちらかが更新前の古いバージョンだったり
  しては困ってしまいます。

  このように一元化されていないと、それらを探したり確かめたりする時間も手間も、すべて
  無駄になります。

  時間や手間は、すなわちコストであり、お金です。

  仕事を一元管理することによってそういったロスをなくしていくわけです。 
 

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人を活かす環境づくり

■人をとりまく経営環境

 1.ジョブレスリカバリー

  企業の7割強が赤字という業績格差環境が続いています。

  残り3割が黒字といっても赤字スレスレ企業もあることを考えれば、勝ち組1割、負け組9割が
  実態です。

  勝ち組、大手企業の業績回復も設備、借金、人員人件費の3つ の過剰のうちのヒト・リストラに
  よるものが大方の要因となっており、本格的な需要回復によるものではない。

  高止まりの失業率というジョブレス環境であり、将来不安から今ひとつ、個人消費の回復につな
  がらない。

 2.定期昇給とい う概念は今や昔の話となった

  赤字企業は労働分配率(付加価値にしめる人件費の割合)が70%を越え、出血を止める為には
  人件費の総額コントロール、すなわち人員カットや 賃下げをやらざるを得ません。

  今や就業規則から定期昇給の文言は削除され、昇給もあるが当然降給もある時代となった。

 3.成果主義賃金が主流となったが 目標管理のあり方が問われている

  年俸制の導入、業績連動型賃金体系の移行など成果主義賃金体系が主流となっているが、制度は
  あくまで企業理念、方針、目標を達成するための手段です。

  すなわち、それら賃金制度が社員一人ひとりのやる気につながり、持てる個性、実力が十分発揮
  されなければ、手段としての効果が問われることになる。

  さらには 結果として、労働生産性が向上したか、一人あたりの 付加価値、一人当りの経常利益が
   向上したか、人件費の伸びを上回る、売上、粗利益、 経常利益、自己資本が伸びたかがチェック
  されねばならない。

  一部の大手企業では、成果目標設定を達成可能なレベルにとどめるようになり、チャレンジング
  風土が薄れてきたなどの目標設定段階での問題が出始めています。

  ホンダ技研の故、本田宗一郎氏が「機械はスパナと油で動くが人間を動かすには金と哲学が必要」
  と言いました。

  制度だけでは人は動かない。 

 4.会社、仕事に対する価値観の変化

  「寄らば大樹の陰」という価値観は、大企業の倒産、リ ストラなどの過酷な社会環境を目の
  当たりにする現在の学生にとって、企業選びの重要ポイントであるとは言い切れないようです。

  会社選びに際して、就社というより、文字通り「就職」であり、どんな仕事をするのか、そして
  スキルをしっかりと身に付けられる制度をその会社が持っているのかなどが主な関心事となって
  います。

  採用側も新卒の定期採用のみならず、通年採用で即戦力人材を求める傾向が一般的となっています。

 5.変化対応力が問われるグローバルデフレ時代

  進化論を待つまでもなく、企業が生き延びるには環境変化をチ ャンスと心得、果敢にチャレンジ
  する社風でないと茹でガエル現象に陥り、淘汰されてしまう。

  企業も創業、40年、50年となってくると、当然のこととして同じ商品、得意先、同じやり方
  では業績は低迷してくる。

  チェックリストで、貴社の人材、組織の活力点検をしていただきたい。

  トータル点数が100点に近いほど、組織活力が低く、人が活かされる環境になっていないと
  いえます。

 

□人に対する考え方を明確にせよ

 1.業績は突飛なところからは出ない

  利益とか信用という業績は社員の日常の 実践から出る。

  その働きが活き活きとして、トップの想いを体現してくれるなら、その仕事は顧客を満足させ、
  業績につながってきます。

  活き活きとした仕事をするためには、社員の仕事観、人生観が勤める企業の理念、価値観と一致
  すれば日々の仕事が楽しいものとなるのです。

  従って、時間から時間だけの「牛馬の労働」でなく、使命をもって、楽しく行なう「朗働」に
  するためには、トップの想い、理念を明確にし、あるべき行動基準を設定し、社員の価値観と
  一致させるトップの現場行動が重要となります。

 2.集団心理の1本化

  サラブレッドも駄馬の集団に入れると駄馬になってしまう。

  名競走馬は血統とサラブレッド集団と明伯楽(調教師)がそろって初めて育つ。

  人にも同様のことが言えます。

  何かを成し遂げるためには 、一人ひとりの想いをつなぎ、切磋琢磨する競争環境をつくり上げ、
  トップがそれをまとめて組織を1本化することにある。

 3.人材は3つの力で育ち、活かされる

  (1)育つ力:基本は本人の自己啓発。

   自ら学ぼう 、力をつけようとする意欲。

   明確な目標、テーマを持たせることが前提

  (2)育てる力:雛が卵の中から生まれ出ようとする時に、外から殻を破るのを手伝ってやる
   親鳥の役割。幹部の指導力と仕組み(人材の発見、教育、訓練)

  (3)育む力:孵卵器の役割。人が育つ風土、制度、方針など

 4.「人事労務憲章」として、トップの 「わが社の人に対する考え方」を明示する

  経営理念を背景にした人事労務憲章を明示し、期待される社員、幹部、役員像を明確にする。

 5.各人の目標及びスキ ルアップテーマを明確にさせる

  (1)比べて、競って、追い抜く コンピテンシーモデルを設定
   コンピテンシーとは、ある特定の仕事環境で優れた業績を生み 出す知識、スキル、動機、
   価値観、性格を言い 、これらは行動パターンとなって 表面化し、啓発テーマに置き換えうる。
   別の表現をす れば社内の優績者の知識、技術、 正確、行動をオープンにし他の社員が学び、
   体得し、レベル アップを図ろうということである。

  (2)自己を知る

   ①性格(態度) 能力判定テストを受ける
    静かなタイプ、安全志向型、環境対応型、積極的、自己主張がある……態度能力は環境、
    人間関係、経験で変わる

   ②キャリアアッププ ランをベースに自己目標を持つ

   ③体得すべきスキルを明確にしチャレンジ目標に落とし込む

□企業は人なり 『人を活かし、育てることを最高の価値判断にする風土づくり』

 企業に未来はあるか、短期未来は決算書。中期未来は開発力と実績。長期未来は人材育成。

 トップのなすべきテーマ は、理念方針の即日徹底、予算即決算での目標追求、金利、償却の励行、
 人材育成である 。

 幹部に対しては、部門業績責任とともに部下育成責任を明確に位置付け、評価基準にす ることが
 肝要。

 単純に成果主義賃金やリストラという手段に走るのではなく、人を活かしきるとい う発想で取り
 組むことが重要です。

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タイムマネジメント

タイムマネジメント
 

  ■タイムマネジメント

   時間活用技法をまとめて列記しますので、やれそうなものから1つずつクリアして
   いくことをお勧めします。

   1.朝早くアポイントをとる

    ある調査によると、8割のセールスマンが午前11時以降にアポイントの電話を
    入れています。

    これでは実際に行動するのは昼からになってしまいます。

    1日の半分を無駄に過ごすので、活動時間はそれだけ短くなります。

    アポイントは朝早く入れることです。

    早ければ早いほど1日は充実していきます。

   2.今すぐ実行する

    今日できることは明日には延ばさない、今やれることは、今やることです。

    毎朝、「今すぐ実行」、これを50回口に出して自己暗示をかけましょう。

    脳にインプットされて、内的に動機づけられ、今すぐやらないと気持ちが悪くなり
    ます。

   3.毎朝30分間、1日の行動計画を組み立てるための時間をとる

    忙しく働くから生産性が上がっているわけではありません。

    働いているように見せかけて自分をだましていることもあります。

    忙しくしていないと働いている気がしないのです。

    生産性を上げるにはよく考え、綿密な計画を立て、効果的に働かなければなり
    ません。

   4.パワーパートナー(仕事の協力者)を持つ

    常に協力を得られる人脈のネットワークをつくることです。

    自分にできないことでも、できる能力の協力を得られる能力を持っていれば、不
    可能を可能に変えることができます。

   5.よい道具を使う

    アイデア商品、新商品には常に目を光らせて、仕事の役に立ちそうな新しい道
    具はどんどん使ってみることです。

   6.プレゼンテーションの準備は怠らない

    お客様の欲求を満たすことを第一に考えて、材料を用意し、シナリオを描き、頭
    の中でイメージを思い描けるようになるまで準備して出かけます。 

   7.推薦文を活用する

    お客様はセールスマンの熱弁には耳を傾けないが、事実を示すデータには目を
    向けるという言葉があります。

    推薦文、第三者の証言には効果があります。

    お客様は自分で納得して、自分の都合で商品を求めるのです。

   8.セールス活動の70%の時間を見込み客の開拓に使う

    いくらプレゼンテーションの能力があっても、見込み客がいなければ成果は上げ
    られません。

    いかに新規のお客様を開拓できるかかにかかっているのです。

   9.毎日の活動を振り返る時間を持つ

    仕事の流れは、計画、実行、反省、目標の順で、これを繰り返すのが仕事です。

    1日の終わりに、「今日はうまくいっただろうか」「もっと上手くいく方法は他にな
    かっただろうか」と問いかけてみます。

    こうやって仕事を向上させるのです。


  □営業パーソンの生産性を向上させるコツ

   まず、当然ですが事務処理能力の向上です。

   営業パーソンはお客様のところに訪問すること以外にお金を生み出す方法はあり
   ません。

   ですからオフィスワークの時間をできるだけ削減しましょう。

   次に、無計画の訪問をしないということです。

   例えば地理的に、無計画な訪問をするセールスマンがいます。

   横浜のアポの後、埼玉に行くなど、これではJRに寄付しているようなものです。

   また、出張は1日時間を無駄にする可能性があります。

   自分の1日あたりのコストに見合わない仕事は引き受けないことも必要です。

   次に、完璧な商品知識を身につけること。

   非常に厳しい言葉ですが、無知はコストです。

   お客さんに聞かれて何も答えられないような事態は最悪です。

   自社の商品に関してはどんな角度からも答えられるようにしましょう。

   「確認して、また改めて連絡します」では再度アポを取り直さなくてはならないの
   で、倍の時間がかかるのみならずお客様からの信頼を失う結果になってしまいます。

   また、今の時代は単なる商品情報だけを提供するだけでは「インターネットで注文
   するよ」と言われて終わりです。

   ただ熱心に、ただ汗をかいて、ただ訪問すれば売れる。

   それは、セールスマン側の売り手の論理です。

   お客様のニーズに合った情報提供をしなければならないのです。

  時間管理

   何事も「即実行」を心掛けることです。

   「即実行、今すぐ実行」と1日20回は最低声に出していってください。

   優秀なセールスパーソンに何かを頼むとすぐその場で電話します。

   彼らは1日置いたり3日置いたりしないのです。

   「即実行」を心がけ、アクションを早くすることが時間を削減します。

   一つひとつの細かい意識が、時間を削減します。

   そのためには以下のポイントが欠かせません。

    1.業務時間を正しく見積もる

     そのためには、次の3点を把握し、イメージできていなければなりません。

     (1)決めるべき事項や作成すべき成果物など、その業務の最終的な目標

     (2)業務を行うための具体的な方法や手順

     (3)当該業務に関する経験や使用するツールの習熟度など、業務や作業を進
       めることのできる自分の能力

    2.「自分の期限」を決める

     自分の時間管理を行うためには、他の業務との兼ね合い、その業務を遂行す 
     るために確保できる時間やその日時、予備日などを勘案して、「○○日の△時ま
     でに完了させる」といったように、自分の期限を決めなければなりません。


    3.“時間と業務のやりくり”をする

     日々のスケジュールは、顧客とのアポイント、社内会議など、時間の調整が難
     しいものもあって、まとまった時間を確保できないというのが実情でしょう。

     長い時間を要する業務は、1つの業務を区切りのよい単位に分解して、時間を
     確保しやすくすることも大切です。

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「仕組みで」動かす経営
   
  ■成長のための組織づくり

   ほとんどの経営者の方は、その強力なリーダーシップでこれまで会社を引っ張り、そし
   て、今後も自らが中心になって会社を成長させていきたいと考えていることでしょう。

   しかしながら、たとえば、創業間もなく従業員が10人程度の時期と、50人程度にまで
   規模が拡大している時期とでは、社長が果たすべき役割は変わっていきます。

  □20人の壁

   「会社を成長させるために社長が果たすべき役割は何か」、この答えは会社の規模・
   業種などによってさまざまだと思います。

   たとえば、会社の規模が小さいうちはほとんどの場合、社長自身の考え方や裁量で
   会社のすべてが決まり、実際に動いているこでしょう。

   また、積極的に現場に関与して、「社長自身が率先して営業の現場に立つ」といった
   ことも行われているでしょう。

   これらは会社の規模が小さいうちはよいのですが、会社の規模が一定のレベルに
   達してくると状況は変わってきます。

   その分岐点は従業員20人程度の頃にやってきます。

   それまでは従業員一人ひとりの様子や、会社で起こっていることはすべて社長が把握
   でき、適切な指示が出せていたものが、この規模を超えると、社長ひとりで何もかも
   対応することはほとんど不可能になります。
 
   また、ひとつの現場に社長が集中して関与しすぎると、ほかの現場の状況がわからなく
   なり、結果として会社全体に大きな損失をもたらす可能性もあります。 
 
   このような状況を克服するためには、これまでの「社長ひとりが会社を引っ張る」という
   発想から「仕組みを使って会社を引っ張る」という発想に切り替えなければなりません。

   この場合の「仕組み」とは日々の業務、会社のルール、日常的な決裁、指示・命令
   など、会社を運営していくための決まり事や方法などのすべてを指します。

   つまり、これまで社長が「直接的に」行っていた業務を、仕組みを使って「間接的に」
   行っていきます。

   中小企業の経営者の多くが、強力なリーダーシップでこれまで会社を引っ張り、そし
   て、今後も自らが中心になって会社を成長させていきたいと考えていることでしょう。

   しかしながら、規模の拡大に伴って社長が果たすべき役割は変わっていきます。

   会社の規模が小さいうちはほとんどの場合、社長自身の考え方や裁量で会社のすべて
   が決まり、実際に動いていると思います。

   また、積極的に現場に関与して、「社長自身が率先して営業の現場に立つ」といったこと
   も行われているでしょう。

   このような状況を克服するためには、これまでの「社長ひとりが会社を引っ張る」という
   発想から「仕組みを使って会社を引っ張る」という発想に切り替えなければなりません。

   限られた現有資産で事業を運営していかなければならない環境だからこそ、人材を
   人財に育て有効活用していく「仕組み」づくりが最重要課題となります。

   「仕組み」づくりが重要であることは理解しても、その仕組みを動かす人材を育成しな
   ければ機能しません。

   しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられる。

   この問題を解決しなければ、教育制度の内製化は不可能です。

   あなたは「毎日仕事に追われている」、「重要な仕事になかなか手をつけられない」、

   「部下が、決めたルール通りに動かない」、「自分の時間をつくることができない」
   など、日々の仕事を振り返って、このように感じることはないでしょうか?

   「どうすれば効率よく、収益に直結した業務に集中できるか?」

   今日に至るまで、多くが勘と経験そして精神論を武器に仕事をやってきました。

   しかし、社会・経済の流れは今までにないほどのスピードで変化しています。

   今日の環境下で仕事をしていくには変化に対応していくことが求められています。

   10、20年前のやり方では事業運営は成り立っていきません。

   PC、FAXそして電話という武器を十分活用していかなければ、いつまでたっても労働
   集約型経営から抜け出せないのです。
   
  ■「仕組み」とは

   「仕組み」とは、「誰が、いつ、何度やっても、同じ
   成果が出せるシステム」のことを言います。

   あらゆる仕事が「仕組み化」できるわけではあり
   ません。

   仕組みが必要な仕事と、そうでない仕事があ
   ります。

   日常的に行なっている仕事は、大きく2つに分け
   ることができるでしょう。

   私は「作業」と「業務」に分けて考えています。

   あなたの一日の仕事を見直してみましょう。

   業種や職種、ポジションによって多少の差は
   ありますが、たいていは、仕事をしている時間の
   7〜8割を作業の仕事に費やしているのが実態ではないだろうか。

   この「作業」の仕事こそ仕組みづくりが有効なのです。

   それによって、時間と労力の徹底的な効率化をはかります。

   一方、「業務」の仕事には、時間と労力を費やすべきです。

   なぜなら、「業務」は収益に直結している仕事と位置づけているからです。

   ですから、できる限り仕事をシンプルに作業化することで、業務にかける時間を増やす
   ことです。

    「作業」の仕事……頭を使わないで処理できる仕事。
                手や身体を動かすなど、行動をともなう仕事、
                ルーチンワーク(きまりきった、繰り返しの、機械
                的な日常の仕事)。

                【例】書類・帳簿作成、会議の準備・議事進行、朝礼
                   PCへのデータ入力、机の片づけ、等。

    「業務」の仕事……頭を使って考える必要がある仕事。知的作業。
                【例】新規事業のプランニング、マーケティング、
                   計画書の作成 等

   この「仕組み」は日々の業務、会社のルール、報連相人材育成、日常的な決
   裁、指示・命など、会社を運営していくための決まり事や方法などを標準化・マ
   ニュアル化することで、これまで社長が「直接的に」行っていた業務を、「間接的
   に」行っていくことを言います。

   「仕組み」の構築は、仕事の手順をフォーマット化し、それをスタッフの「能力」「精
   神力」「経験・記憶力」といったマンパワーに頼らない、誰に代わっても再現できる
   ようなルーティンをつくることです。

   「仕組み」づくりのスタートは、仕事の洗い出しを行い、役割分担表の作成からです。

   役割分担表を作成したら、そこに埋め込んだ仕事の一つひとつについて「チェックシ
   ート」を作ることをお勧めします。

   それらをまとめたものが、あなたの会社のノウハウ(業務マニュアル)となるのです。

   仕事の流れをシンプルにすることです。

   あなたが今まで「業務」と思っていた仕事も「作業」である可能性は大いにあります。

   労働時間における仕事をなるべく作業(標準)化させ、入社の浅い社員には標準化させ
   た作業で基本を習得させ、中堅社員にはより生産性のある仕事に就かせるせること
   です。

   中小企業にとって人材に限りがあるにもかかわらず、大企業と同じマンパワーに
   頼った経営を行っていることに心当たりはないだろうか。

    ・営業力が弱い

    ・苦情対応が場当たり

    ・役割分担ができておらず、業務が特定の人に負担がかかっている

    ・見込み客、顧客のデータが整備されていない

    ・組織人としてのビジネスマナーができていない

    ・組織が単なる個人の集まり

    ・無計画、計画はあっても目標達成は画餅に帰している

   これらはマンパワーに依存している結果です。

   上記の弱点を克服していくことは一朝一夕にはいきません。

   しかし、いつまでもこの問題点を抱えているわけにはいかないことは言うまでもありま
   せん。

   日常業務の多くがルーチンワークならば、誰に代わってもできるように業務を標準化
   することです。

   また、特定の人が関わっている業務がルーチンワーク化できないのか?

   営業力を強化していくにも営業マンに個人に頼るのではなく、組織(チーム)営業を行
   うことです。

   収益が上がらないのは誰のせいでもなく、自社の体制整備ができていないことと理解
   すべきです。

  □「仕組み」づくり3つのポイント

   最小限の時間と労力で最大の効果をえるために、「作業」の仕事をどのように「仕組み
   化」するかです。

   仕事を「仕組み化」するということは、仕事のすすめ方にフォーマットをつくり、それを
   「才能、能力」「意志の力、熱意」「記憶力、経験」に関わらず、誰でも再現できるよう
   なルーチンをつくることです。

   仕事にたいして仕組みをつくるなら、この3点を前提に考えないことです。

   そして、「仕組み化」した各仕事ごとにチェックシートを作成します。

   ルーチンワークにおいて、チェックシートは最大の効果を発揮します。

   会社の成長を強く決意するのであれば、自社がこのような問題を抱えているかどうかを
   確認する必要があります。

   そして、もし問題があるとしたら、困難であってもできるだけ早くゼロベースで組織を
   見直す必要があります。

  組織の最適化

   多くの中小企業では創業当初は社長の「一人親方」からスタートしています。

   そして従業員も増え、一人ひとりの得手不得手や、感覚としての序列関係が何となく
   わかってきた段階で、部門分けや部門長を任命する。

   おおよそこのような経緯で最初の組織が編成されるのではないでしょうか。

   このような経緯を経て誕生した組織は、「現状の仕事を現状のまま」こなすという意味
   では、最適でしょう。

   序列関係も各自が納得しているので、無用な軋轢も生じません。

   しかし、会社を大きく成長させていくためには、このような組織編成は好ましくあり
   ません。

   いうまでもなく、組織編成はそれ自体が目的ではなく、会社の目標を達成するための
   「手段」にすぎません。

   目標の変化に合わせて組織も最適化していく必要があります。

   「会社の現状維持」が目的であれば旧来型の組織で十分かもしれないが、「会社の
   成長」を目的とする以上、組織編成のあり方も変わっていかなければなりません。

   しかし、なかには組織の目標が変化しているのに、従来の組織形態を維持することを
   優先しているケースも少なくありません。

   このような困難かつ大胆な決断ができるのは、社長自身です。

   「会社成長のための戦略を練り、重要な決断をすること」、これこそが社長自身が取り
   組むべきもっとも重要な仕事です。

  □想定組織図

   組織を成長させるための編成を考えるときに、実際に将来(3〜5年後)必要とされる
   想定組織図を描いてみるとよいでしょう。

   3年後に自社がどのような事業をどれくらいの規模で行っているかを想定して、それを
   実現するために最適な組織図を描いていきます。

   当然現在の社員の人数や能力だけでは足りなくなるはずですが、それは社内の人間を
   育てたり、新規に採用することを前提に作成します。

   これにより、どんな人間がどれだけ不足しているかが具体的にわかるので、教育計画
   や採用計画につなげることができます。

   また、作成した想定組織図を社員に公開することも有効です。

   会社の今後の方向性を口で伝えるだけでなく、その結果このような組織が必要になると
   示すことで、格段にイメージがつきやすくなります。

   さらに組織図に示されたそれぞれのポストに就くためには、具体的にどのような能力や
   実績が必要かを示しておけば、社員の意欲の向上にもつながります。

   会社が一定の規模を超えてきたら、組織や権限委譲を活用して仕組みによる経営に
   移行していく必要があります。

   社長が直接ではなく仕組みを使って間接的に会社を引っ張ることによって、社長は
   会社全体の状況を把握することができ、また、仕事を任されることで社員も成長する
   ことができます。

   現場の一線で頑張ってきた社長としては一見寂しいようにも思えますが、会社はそう
   したプロセスを踏んでのみ大きくなっていくのです。
  
  ■権限委譲

   合理的な組織編成によって部門長などのポストが決まったら、彼らに一定の権限を
   与えていきます。

   日常的な決裁業務などはあらかじめルールを
   決めておき、「この範囲以内であれば部長クラ
   スの決裁で可」といった形にして、社長自身
   がささいな決裁業務に煩わされないようにし
   ていきます。

   多くの中小企業の経営者が「権限委譲の大
   切さは理解しているが任せられる人材が育っ
   ていない」と悩みを口にします。

   しかしながら、実際に権限委譲を進めている
   会社でも「十分に育ってから権限委譲する」と
   いうケースはほとんどありません。

   「実力は課長クラスだが、あえて部長のポストを
   与えて、実践のなかで能力をポストに追いつかせる」
   というケースが大半なのです。

   また、日常業務レベルでの人材育成を考えるうえでも、権限委譲は大変重要です。

   たとえば、社長自身が現場で逐一指示を出しているうちは、現場責任者は本来であれば
   自分自身で判断すべきレベルの決断でも、ちょっと迷ったら社長に指示を仰いでしまい
   ます。

   このような状況が続くと、現場責任者は目の前の「作業」は習熟するかもしれませんが、
   自分で考えるという習慣、つまり本当の意味での能力開発が進みません。

   社員の能力を高めるためには多少の失敗には目をつぶっても、責任者に自分で考え
   させることが大切です。

   彼らに一定の権限を与えて、多少イレギュラーなことが起こっても自分で対処すること
   によって、管理者としての意識も能力も高まっていくのです。

  □NO2(後継者)を早期に育てる

   社長にとって究極の権限委譲とは、引退して後継者にすべての経営を任せることです。

   現在、高度成長期の創業者の多くが引退時期を迎えているにもかかわらず、後継者難
   で苦しんでいるという現実もあります。

   当然ですが、後継者は一朝一夕で育つものではありません。

   できるだけ早い時期に後継者候補を選定し、じっくりと育てていかなくてはなりません。

   多くの中小企業の場合、後継者には社長の息子などの親族が選ばれます。

   しかし、息子がまだ幼かったり、適任ではないと考えられる場合はそれ以外の社員を
   選抜し育てていくしかありません。

   ナンバー2には仕事の仕方だけではなく、経営理念や社長の哲学なども教えていく必要
   があります。

   そして十分に信頼できる後継者が育成できたら、引退時期を待たずとも既存事業は
   すべて後継者に任せて、自分は新たなビジネスに挑戦するといったことも可能になり
   ます。

  □『仕組み』で経営する

   会社が一定の規模を超えてきたら、組織や権限委譲を活用して仕組みによる経営に
   移行していく必要があります。

   社長が直接ではなく『仕組み』を使って間接的に会社を引っ張ることによって、社長は
   会社全体の状況を把握することができ、また、仕事を任されることで社員も成長する
   ことができます。

   会社を大きくしていくということは「社長の直接関与は極力抑えた仕組みをつくる」こと
   にあります。

   会社経営の仕組みづくりを決意した社長の最初の役割は、この仕組みができるだけ
   早く機能するようにすることです。

   そのためにも人材育成とその基である基本動作の習得が欠かせません。

  間接部門の仕組み

   一般に中小企業では経理、人事、労務といった間接部門はあまり重視されず、営業部門
   のように直接収益を生み出す部門にほとんどの人材が投入されます。

   会社が小さいうちは仕方のないことですが、ある程度会社が成長し「仕組み」で経営
   する必要が出てくると、これらの部門の機能を強化(目標管理)することも大切になり
   ます。

   間接部門とは雑務処理部門ではなく、営業メンバーなどが最大限のパワーを発揮する
   のをサポートする部門のはずです。

   間接部門が本来的に機能し始めると、会社全や個々の社員に、何が起こっているか
   についての情報が集中するようになります。

   つまり、社長にとっての貴重な「情報源」となるわけです。

   社長は現場部門からの直接的な報告だけでなく、間接部門に集められた中立的な
   データも加味したうえで、最適な指示を出すことができるようになります。

   たとえば、特定部門の経費が急に増えてきたとか、特定社員の長時間残業がずっと
   続いているといった場合は、社長を通さずに間接部門から当該部門長に直接指摘させ
   ます。

  □社長の情報源として育てる

   間接部門は全社的な問題点を改善したり、全社
   の将来像を探っていくうえで非常に大切な役
   割を担っている部門のはずですが、業績が 
   悪くなってくると真っ先に人員削減の対象に
   なるのも間接部門のようです。

   ほとんどの会社ではもともと最低限の人員し
   かおいておらず、さらに人員削減などが行わ
   れると、残った人員は雑務に忙殺されるばか
   りで、とても全社的な問題点の解決などには
   頭が回らなくなります。

   その結果、問題解決のために必要な情報が
   社長に十分に集まらない、さらに業績が悪化
   するという悪循環に陥ることもあります。

   会社を仕組みで経営するためには、社長には
   間接部門を自らの「情報源」として、育てていく
   姿勢が求められます。

  ■社長本来の仕事

   会社経営のための仕組みがいったんできあがれば、社長は多くの雑務から解放され、
   社長本来の仕事に集中できるようになるはずです。

   では、社長本来の仕事とはどんな仕事なのでしょうか。

   それは一言でいえば、「社長自身にしかできない仕事」です。

   社長の仕事は「今日」の現場仕事ではなく、「将来」の仕事をいかにつくるかということ
   です。

   構築した経営の仕組みを使って、大きな視点、長期的な視点で、今やっている事業を
   今後どのように展開すべきか、あるいは新規事業としてどんなことに取り組むべきかと
   いったこの先の会社の屋台骨を考えることこそが社長の本来の仕事といえます。

   会社を本当に成長させるためには、3年後、5年後のあるべき姿を描かなくてはなりま
   せん。

   そして、そこへ到達するまでの道筋もつける必要があります。

   自社が現在取り組んでいる市場がこの先衰退が見込まれる場合などは、まったく新しい
   事業へのシフトなども考慮しなければなりません。

   大きな先行投資も必要になるかもしれません。

   そして、このような困難かつ大胆な決断ができるのは、社長自身です。

   「会社成長のための戦略を練り、重要な決断をすること」、これこそが社長自身が取り
   組むべきもっとも重要な仕事です。

   また、構築した経営の仕組みを進化させていくことや、人材の育成、とりわけ前述
   したナンバー2の育成などについても社長自身が取り組むべき重要な仕事とい
   えます。

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中小企業における内部統制

中小企業における内部統制
 

  ■内部統制の意義

   企業における内部統制とは、適切なルールを定め、それに従って企業を運営して
   いくことです。

   上場企業では法律によって所定の「内部統制報告書」を提出することが義務づけ
   られています。

   未上場企業はその対象外ですが、すべての企業において内部統制が重要である
   ことはいうまでもありません。

   ここでは、中小企業にとっての内部統制の考え方について解説します。

   1.社長による監視から仕組みによる監視へ

    多くの「中小企業ではトップダウン型の経営が行われており、内部統制について
    も社長自身が目を光らせているのが通常でしょう。

    社長が自社の内部統制に関心をもつのは非常に重要なことです。

    しかし、そのような高い意識をもっていても、社内で起こっていることすべてを社
    長が完全に把擬するのは困難です。

    末端の従業員レベルでは悪意のあるなしに関わらず、自社の従業員として不適
    切な行動を取ることもあるでしょう。

    また、これを防ごうとして社長が些細な事項の監視に没入すると、経営戦略の
    策定などの重要業務が疎かになる可能性もあります。

    社長自身による直接的な監視の負担を減らし、内部統制整備による仕組みによ
    る監視に移行していくことで、よりきめ細かい統制が実現し、社長自身も本来的
    な業務に集中することができます。

   2.取引先へのアピール

    前述のように上場企業では「内部統制報告書」の提出が義務づけらている 
    (2008年4月1日より)など、内部統制に関する社会的関心は高まっています。

    提出義務のない未上場企業においても、取引先である上場企業から内部統制
    強化を求められるのは当然の流れといえます。

    つまり、大企業は取引先選定に当たって、「品質」、「価格」、「納期」といった基
    本的な要件に加え、「この企業は内部統制が十分にできているか」という点を重
    視するようになっています。

    中小企業においても自社の内部統制の仕組みを設計し、仕組みに従ってきちん
    とした管理ができていることを示す必要があります。

   3.「攻め」の内部統制へ

    さらに、内部統制は「取引先に求められるから」という「守り」ではなく、「自社の
    企業運営の方法を見直し、企業価値を高めていく」ための「攻め」の取り組みと
    捉えることができます。

    内部統制によって経営活動をより効果的かつ効率的なものに高め、経営理念
    実現、持続的成長、競合他社への優位性確保などを推進していくのです。

    たとえば、「不正な経理処理をさせない」ことは当然大切ですが、一歩進んで「不
    要な経理処理を排して生産性を向上させる」ということも内部統制の目的のひと
    つです。

    内部統制によって業務のやり方を革新し、企業価値をいかに高めていくかという
    視点をもつことが重要です。

   4.内部統制の目的と要件

    金融庁が示している「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施
    基準」によれば、内部統制は以下のように定義されています。

     「内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事
     業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されてい
     るとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者に
     よって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、
     情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本
     的要素から構成される」

    これを整理すると内部統制の目的は、

     1)業務の有効性及び効率性

     2)財務報告の信頼性

     3)事業活動に関わる法令等の遵守

     4)資産の保全

    の4つであり、

    その実現のためには、

     1)統制環境  

     2)リスクの評価と対応  

     3)統制活動  

     4)情報と伝達 

     5)モニタリング(監視活動) 

     6)IT(情報技術)への対応

    の6つが要件ということになります。

    中小企業が上場企業と同レベルの詳細かつ網羅的な「実施基準」を備える必要
    はありませんが、その考え方を自社の状況に応じて取り入れることで、内部統
    制を強化することができます。

    次項以降ではこれらの目的と要件について、中小企業における取り組みのポイ
    ントを解説していきます。

  □内部続制の4つの目的

   1.業務の有効性及び効率性

    ここでいう業務とは企業が事業目的を達成するために継続的に行うすべての活
    動を指します。

    社長や経営幹部から一般社員、パート・アルバイトに至るまで、すべての従業員
    がその対象になります。

    また、一人ひとりの従業員が行う個別の業務だけではなく、組織として行ってい
    る業務もその対象になります。

    有効性とは業務によって事業目的がどの程度達成されるかという尺度です。

    たとえば、明らかにターゲット選定を間違った営業活動などは有効とはいえません。

    そのような活動が野放しで行われていれば内部統制が取れていることにはなり
    ません。

    効率性とは事業目的達成に向けて、人、モノ、カネ、時間などの経営資源がど
    の程度合理的に配分されているかという尺度です。

    たとえば、必要のない人が出席していたり、進行の不手際で時間ばかりを浪費
    する会議などは効率的とはいえません。

    業務の有効性及び効率性に関する内部統制は、業務の達成度及び経営資源
    の合理的な利用度を測定・評価し、適切な対応を図る体制を設けることによっ
    て、有効性及び効率性に係る目標の達成を実現することが目的です。

    自社のさまざまな業務を大分類から小分類まで棚卸しして、その有効性・効率
    性を確認することから始める必要があります。

   2.財務報告の信頼性

    財務報告は、企業の内外の者が当該企業の活動を確認するうえで、極めて重
    要な情報です。

    未上場企業であっても貸借対照表や損益計算書等の財務諸表の作成は適切
    に行わなければなりません。

    社長は自社の財務内容について正確に理解していないと、正しい経営判断を下
    すことができません。

    また、従業員や取引先、銀行などに対して自社の状況をきちんと伝えることもで
    きません。

    社長は業績が良くても悪くてもその状況を正確に把握し、その情報を経営にい
    かすとともに、適切に社内外に開示することが求められます。

   3.事業活動に関わる法令等の遵守

    すべての事業活動においては、個々の従業員や組織は法令を遵守しなければ
    なりません。

    これを怠ると、社会に対して多大な迷惑をかけることになり、経営において致命
    的なダメージを受けることは避けられません。

    逆に法令遵守の姿勢を積極的に打ち出し、その努力を継続していけば社会的
    信用は高まり、結果として業績向上につながることも期待できます。

    企業活動に関わる法令は多様です。

    すべての企業に関わる法令としては「民法」、「商法」、「会社法」、「個人情報保
    護法」、「労働基準法」、「著作権法」などがあり、さらに業界ごとにもさまざまな
    法令があります。

    社長は自社の事業活動に関わる法令を自らが理解し、すべての従業員に対し
    て法令遵守を指導しなければなりません。

    日々の行動に定着させるためには、法令の文言を示すだけではなく、法令を踏
    まえた自社独自の行動規範を作成することも必要でしょう。

   4.資産の保全

    企業にはさまざまな資産があります。

    建物や機械などの有形資産のほか、特許などの知的財産や顧客に関する情報
    などの無形資産もあります。

    これらの資産が適切に保全されなければ事業活動に大きな支障を来し、企業価
    値そのものを損なうこともあります。

    また、外部からの出資を受けている場合には、社長は資産の保全に大きな責任
    を負っています。

    資産の適切な保全のためには、資産の取得・活用・管理・処分などについて、正
    当な手続きや承認の仕組みを整備し、運用することが求められます。

  □適切な内部統制実現のための6つの要件

   1.統制環境

    統制環境とは、企業が保有する価値基準及び組織の基本的な人事、職務の制
    度等を総称する概念です。

    統制環境は企業文化や個々の従業員の内部統制への取り組みに大きな影響
    を与えます。

    代表的な要件を整理すると次のようになりますが、まずは経営理念を明確にし 
    て、それをブレイクダウンして従業員に浸透させることが基本となります。

     ・社長の意向及び姿勢が経営理念や行動指針等によって明確に
      なっていること

     ・経営理念や行動指針等によって企業としての誠実性及び倫理観が
      明確になっていること

     ・経営方針や経営戦略等が事業計画として具体的に示されていること

     ・社長や経営幹部が「独断専行」に陥らない牽制機能があること

     ・目的に沿った組織編成がなされ、適切に運用されていること

     ・権限及び職責が明確になっており、適任者がそれを担っていること

     ・教育や昇進などの人事管理が適切になされ、人的資源を有効活用
      していること

   2.リスクの評価と対応

    リスクとは事業目標を阻害する要因のことです。

    リスクには天災や為替相場などの外的要因や情報漏洩、会計処理の不正など
    の内的要因があります。

    リスクの評価と対応とは、自社の抱えているリスクを把握して特性を評価し、そ
    れぞれのリスクに対する対応策を打ち出すことです。

    (1)リスクの把握

      リスクは、全社的なレベルから業務プロセスのレベルまでさまざまな段階で
      存在することから、各段階において適切にリスクを認識することが大切です。

    (2)リスクの評価

      それぞれのリスクの発生確率やその被害の程度などを考慮し、対応の必要
      性の有無の判断や、優先順位づけを行います。

    (3)リスクへの対応

      リスクへの対応には、リスクの回避・低減・移転・受容またはその組み合わせ
      などがあります。

       回避:リスクの原因となる活動をやめてしまうこと

       低減:リスクの発生確率や被害を低くするため、新たな内部統制を
        設けるなどの対応を取ること

       移転:保険加入などによって、リスクの全部または一部を組織の
        外部に転嫁すること

       受容:被害が小さく発生確率も低いリスクなどについて何もせずに
        受け入れること

   3.統制活動

    統制活動とは、社長の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために
    定める方針及び手続きのことです。

    全社にわたって標準的・統一的に定めることが適切なもの、組織内の各部門ま
    たは活動単位ごとに定めることが適切なものなどに整理します。

    各担当者の権限及び職責を明確にし、各担当者がその範囲において適切に業 
    務を遂行していく体制を整備していくことが必要です。

    具体的には次のような点が重要になるでしょう。

     ・職務分掌規定、撮務権限規定、取締役規定などの整備

     ・業務マニュアルの整備

     ・記録すべき事項の明確化、確実な記録・保管

     ・正確な資産の把握

     ・決裁権者(経理責任者、発注責任者など)の定期的なローテーション
      (不正防止と属人性排除)

   4.情報と伝達

    情報と伝達とは、必要な情報が組織内外の関係者に正しくタイムリーに伝えら
    れる仕組みのことです。

    また、たんに情報が伝達されるだけでなく、それが受け手に正しく理解され、そ
    の情報を必要とするすべての者に共有されることが重要です。

    たとえば、社長の方針はすべての従業員にタイムリーに伝達される必要があります。

    また、不正発生に関する情報などは、社長及び部門の管理者に迅速に伝達さ
    れる仕組みを整備することが必要です。

    さらに、社内から社外(取引先・顧客など)へ、社外から社内に必要な情報が伝
    わる仕組みも必要です。

    具体的には次のような点が重要になるでしょう。

     ・「報連相(報告・連絡・相談)」の仕組みの整備

     ・「悪い報告こそ迅速に」という習慣の定着化

     ・全社及び部門ごとの会議体系の整備

     ・データベース、社内メールなどIT環境の整備

     ・クレームやトラブル情報の集約、対応マニュアルの整備

     ・内部通報制度など通常の経路から独立した伝達ルートの確立

   5.モニタリング(監視活動)

    モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に確認することです。

    内部統制は仕組みをつくるだけではなく、実践されてこそ意味があります。

    また、内部統制は徐々にレベルアップしていくべきであり、その質を維持・向上さ
    せていくためにもモニタリングは不可欠です。

    内部統制におけるモニタリングには「日常的モニタリング」と「独立的評価」があ
    ります。

     (1)日常的モニタリング

       日常的モニタリングとは、通常の業務に組み込まれた一連の手続きを実施
       することで、内部統制の有効性を継続的に検討・評価することです。

       たとえば、マニュアル通りに業務が進められているかどうかの振り返り、自
       ら定めた目標と実績の差異確認、数値計算結果のダブルチェックなどがこ
       れに該当します。

       モニタリングを業務プロセスのなかに組み入れて、日々の習慣として確実
       に行っていくことが大切です。

     (2)独立的評価

       日常的モニタリングでは発見できないような経営上の問題がないかを、別
       の視点から評価するために定期的または随時に行われるものが独立的評
       価です。

       日常的モニタリングによる自己チェックだけでは評価が甘くなったり、あいま
       いになったりすることがあります。

       独立的評価は、「全社的な視点」、「当該部門とは利害関係がない視点」か
       らの評価でこれを補うものです。

       独立的評価は監査役など事業部門とは独立した地位にある人が行うのが
       好ましいですが、監査役などを設置していない企業においては、社長自ら
       あるいは社長が命じた人が中心になって評価を行う必要があります。

   6.IT(情報技術)への対応

    IT活用には業務の標準化や効率化、情報共有などのメリットがありますが、適
    切に導入・利用されていなければ不正やミスを助長するなど内部統制にとって
    マイナスに作用する可能性もあります。

    ITを活用する際には、自社の事業目的達成のために必要なITに関する方針を
    定めて、それに基づいて業務のなかにITを組み込むことが必要です。

    具体的には次のような点が重要になるでしょう。

     ・社会全体や自社業界におけるITの浸透度の把握

     ・事業全体の戦略に連動したIT戦略の策定

     ・ITに関する社内技術の蓄積状況の把握、計画的教育の実施

     ・ITに関する職務分掌、職務権限、セキュリティー方針の明確化

     ・システムダウン時のバックアップ、業務継続の確保

     ・利用ソフトウエアのライセンス管理

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  ■会社の存続と成長に重要なもの

   ほとんどの経営者の最重要関心事は、今期の利益目標でしょう。

   したがって、今期の利益獲得のために今何をしなければならないかについては日

   頃から考えており、鮮明な意識をもっています。

   しかし、「我が社の長期的な存続と成長を保証してくれるモノは何か」というような
   問いかけを自分に発し、そういう目で物事をみて考えるという習慣はもっていない
   方が多いようです。

   では「毎年の利益目標を達成するのに必要なもの」と「会社の長期的な存続と成
   長を保証してくれるもの」の違いとは何なのでしょうか。

   たとえばある会社が、さらなる成長のためには商品力、営業力強化のための投資
   が不可欠であると感じたとします。

   その会社は毎年利益を計上していますが、投資を行うことにより、今期の利益は
   ほとんど出なくなります。

   この会社の社長の選択肢は「今期の利益優先、投資中止」、「今期の利益は諦め
   投資実行」のいずれかです。

   どちらが社長として正しい判断といえるのでしょうか。

   企業にとってより重要なのは、毎期の利益よりも長期的な成長・存続です。

   短期的な視野からすれば、利益獲得を目的とした行動と、会社の存続・成長を目
   的とした行動とは多くの場合、相反します。

   いいかえれば毎年利益を計上するという延長線だけでは会社は必ずしも成長し
   ないというということです。

   つまり、

    毎期黒字を計上して会社を「維持」することと、
    会社を「成長」させるということはまったくの別物

   なのです。

   会社の成長ステージを一段あげるためには相応の投資が必要です。

   現状のやり方では限界に近づいていると感じたならば、短期的な利益は犠牲に
   することも考えねばなりません。

   このように経営者にはつねに長短両方の視点で、バランスよく経営戦略の舵を
   切っていくことが求められます。

  □資産、技術、人材があれば、将来は安泰か?

   一般に経営の三要素は、人・物・金などといわれます。

   そのような視点からすれば企業の存続を保証してくれるのは、「豊富な資産」「高
   い技術」「優れた人材」といったところでしょう。

   ところが、資産・技術・人材のすべてにおいて、十分に優れたモノを有していた企
   業が存続の危機に瀕し、倒産していった例は、枚挙にいとまがありません。

   たとえば、戦後のアメリカの映画会社を例に考えてみましょう。

   かつて黄金時代を築いたハリウッドの映画会社が、軒並み赤字を出し、没落して
   いった理由は、一般にはテレビが出現し、普及したことによって映画の魅力が失
   われたからであると考えられています。

   ところが、アメリカでは、映画会社が没落したのは、映画会社自身の経営政策上
   の失敗によるものであるとする論もあるのです。

   映画会社は、テレビの出現に対して、2つの柱となる政策をとりました。

   その第一は、大作主義と呼ばれるものです。

   「テレビのようなちっぽけな画像に映画の魅力が負けるはずがない。

   我々が、本当によい映画(=テレビには作れないようなよい映画)を作りさえすれ
   ば、お客は必ず映画をみにきてくれるに違いない」と映画人たちは考えました。

   そこで本当によい映画、すなわち内容が重厚で、制作費を十分にかけ、一流の監
   督、俳優を使った映画(大作)を作ったのです。

   ところが、大金を投じて作った大作映画が、それに見合うだけの観客を動員でき
   ず、十分な興行収入を上げられずに赤字を出し、映画会社の足を引っ張ったのです。

   映画人たちが考えた本当によい映画とは、玄人の目からみたものであって、観客
   がみたがる映画ではなかったのです。

   これは、多くの業界で見受ける現象です。

   専門家が本当によい商品を作ればと考えて、苦労をして作った商品は、玄人受け
   はするが一般大衆には売れないのです。

   なぜなら、

    その商品は、顧客の求めるモノを作ろうとしたのではなく、
    ただよいモノを作ろうとしたにすぎないからです。

   映画会社がとったもうひとつの政策は、テレビを敵視し、テレビの成長を妨害する
   というものでした。

   具体的には、送信すべき映画を制作するということについて、まったく未熟であっ
   たテレビ会社に対して、映画製作のための一切のノウハウ、人材、技術を、貸さな
   い、使わせないように妨害工作をしたのです。

   どんな映画、テレビ番組でも、人気俳優が出てこそ観客はみたがるものです。

   しかし、テレビ会社は、映画会杜の妨害のために、当時のスターたちを使えなく
   なってしまったのです。

   それにもかかわらず、テレビはどんどん普及し、テレビ会社は成長発展をしていき
   ました。

   この現象を、革新的な技術進歩が新しい産業(テレビ産業)を生み出し、その発展
   段階において古い産業(映画産業)を駆逐していった過程であると解説するのは
   簡単です。

   しかし、そのことが、古い産業に属していた企業(映画会社)の没落原因であると
   考えるのは早計です。

    斜陽化していく産業のなかにあって、新しい事業機会を見出し、
    現事業分野からの脱皮を取ってこそ、企業活動と呼ぶに値する

   からです。

   もし仮に、映画会社の経営者が、テレビの出現に際して、テレビを敵視するので
   はなく、絶好の提携先が出現したと捉えることができたとしたら、事態はどう変化
   したでしょうか。

   テレビの映画製作を妨害する代わりに援助し、指導し、請け負うという姿勢をとっ
   ていたとしたら事態は決定的に変化したのではないでしょうか。

   当時の映画会社が、もしその気になって努力すればテレビ放映の制作フィルム
   は、ほとんど映画会社が提供するという状況を作り出すことも不可能ではなかっ
   たかもしれません。

   映画会社が没落していった例は、大変重要な事実を、私たちに示唆してくれます。

   当時の映画会社は、黄金時代を経て、極めて豊富な資産を有し、当代随一の映
   画制作技術と、優れた監督や一流のスターたちを抱えていました。

   すなわち「豊富な資産」「高い技術」「優れた人材」のすべてを保有していたのです。

   しかし、企業の成長どころか存続さえ図ることができない映画会社が続出したの
   はなぜでしょうか。

    これらの企業に正しい経営職略が存在しなかったから

   なのです。

   この事例からわかるように自社の存続と成長を保証してくれるのは、正しい経営
   戦略以外にはないのです。

    あなたの会社には、存挨と成長を保証してくれるに足るだけの
    確固たる経営戦略が存在するでしょうか?

   こうした視点から、会社経営を考えてみることが必要です。

   ぜひ、自社のことを振り返ってみてください。
 

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重要性を増すビジネスモデル

重要性を増すビジネスモデル 

  ■ビジネスモデル
   ビジネスモデル」とは、端的にいえば事業の構造を表す言葉です。
   この言葉は今でこそかなり普及した感がありますが、 実際にはそれほど歴史のある
   古い言葉ではありません。
   1980 年代までは、ほとんど使われることがありませんでした。

   この言葉がビジネス社会に登場するようになったのは 1990 年代、それも半ば以降の
   ことです。
   つまり「ビジネスモデル」という言葉を人々が使うようになってから、まだ四半世紀
   しかたっていません。

   しかし「ビジネスモデル」という 言葉こそなかったとはいえ、 あらゆる住宅に
   構造があるのと同様、あらゆる事業にも構造があります。
   たとえば江戸時代にはすでにあった蕎麦屋ですが、 蕎麦屋と聞けば、「蕎麦粉を
   仕入れ、蕎麦を打ち、ざる蕎麦やかけ蕎麦にして顧客に出し、お金をもらう」という
   事業の構造を、ほとんどの人が想像するはずです。

   では、 なぜ「ビジネスモデル」という言葉が比較的最近までなかったのでしょうか?
   それは、 それまでたいがいの事業の構造が前述の「蕎麦屋」のようにシンプルで
   分かりやすいものだったため、わざわざ説明する必要がなかったからです。
   「蕎麦屋」「スーパーマーケット」「バス会社」といった「一言」 で、ビジネスの
   構造を表現することができたからです。

   ところが近年になり 、テクノロジーの高度化が進むにつれ、複雑な構造の事業が誕生
   するようになりました。
   「○○屋」「○○会社」といった一言だけでは説明できない事業が次々と出現する
   ようになります。

   とくに IT インフラが爆発的に広がった以降(1990 年代半ば以降)、その傾向が
   加速されます。

   自社のビジネスを拡大していくためには、現状を分析し、経営戦略や事業戦略を
   立案し、その戦略を行動に移していくことが求められます。

   しかし、しばしば経営戦略や事業戦略は思ったように実行されません。

   それは、現状分析や戦略立案の担当者と実行者が異なるために、「担当者が、現場の
   実情を理解せずに(実行できない)戦略を立案している」ことがあるからです。

   この他にも、「実行者の戦略に対する理解度が低く、行動に移せない」といったことも
   理由として挙げられます。

   こうした問題を解消するために、ビジネスモデルは役立ちます。

   経営戦略や事業戦略だけでなく、それをどうやって動かしていくのかという仕組みも
   一緒になっているからです。

   ビジネスモデルがあることで、どの部門、どの社員がどう動き、何をしなければな

   らないかを理解したり、迷った場合に参照したりすることができます。

  □ビジネスモデルを構成する要素

   1.顧客セグメント
     自社が対象とする顧客グループについて、検討し明らかにする。     

   2.価値提案(バリュープロポジション)
     顧客セグメントに向けて、価値を生み出す商品・サービスを検討し明らかにす
     る。

   3.価値提供方法(チャネル・顧客との関係)
     自社が顧客セグメントに対して、どのようにコミュニケーションをとり、価値を伝
     えるのかについて、検討し明らかにする。     

   4.顧客との関係
     自社が顧客セグメントに対して、どのような関係(パーソナルな対応をするの
     か、セルフサービスなのかなど)を結ぶのかについて、検討し明らかにする。

   5.収益の流れ
     自社が顧客セグメントから受け取る収益の流れについて、検討し明らかにす
     る。

   6.リソース(資産)
     ビジネスモデルを実行するのに必要な資産について、検討し明らかにする。

   7.主要活動
     ビジネスモデルを実行する上で必要になる重要な活動について、検討し明ら
     かにする。

   8.パートナー
     ビジネスモデルを実行する上で欠かせないサプライヤーなどのパートナーに
     ついて、検討し明らかにする。

   9.コスト構造
     ビジネスモデルを実行していく上で発生する全てのコストについて、検討し明ら
     かにする。

   『ビジネスモデル・ジェネレーション』では、上記の9つの要素を書き込める「ビジネス
   モデルキャンバス」というツールが紹介されています。

   これに書き込むことでアイデアが整理され、ビジネスの流れを可視化することがで
   きる。

  □ビジネスモデルの検討手順

   ◎ビジネスモデルを検討する前段階
     先に紹介した『ビジネスモデル・ジェネレーション』では、9つの要素に分解する
     ことで、具体的にビジネスモデルを構築するために検討すべきことや、やるべ
     きことが明らかになります。

     何の分析、準備もなく、いきなりビジネスモデル構築の検討はできません。

     ビジネスモデル構築には前段階を経ることが欠かせません。

     (1)現状分析
       まずは現状分析によって、自社が現在置かれている状況を知り、経営理念 
       および経営計画に基づいた「あるべき姿」とのギャップを認識します。

       この場合、現状分析はSWOT分析などのフレームワークを利用するとよ
       いでしょう。

     (2)ギャップの解消と経営戦略の策定
       現状分析で認識されたギャップを解消して、あるべき姿を具現化するため
       の経営戦略を策定します。

     (3)成功要因の洗出し
       経営戦略を成功させるためのCSF(Critical Success Factor:重要な成
       功要因)を、可能な限り洗い出します。

     (4)外的要因の分析
       先に挙げた現状分析や、経験や知識および各種の調査結果から、企業の
       外的要因を導き出します。

     (5)内的要因の分析
       CSFおよび外的要因から内的要因を導き出します。

       現状分析などを行う場合には、コンサルタントなどの社外人材に協力しても
       らうことにより、客観的に分析できることもあります。

  □ビジネスモデルを検討する際のポイント

   1.顧客セグメントの検討
     ターゲットとする顧客セグメントの現状を洗い出し、それを的確に把握・分析す
     る仕組みを構築します。

     顧客の環境は常に変化しますが、企業がその変化に気付くのが遅れることも
     あります。

     特に、既に顧客から好評を得ていたり、ヒットしていたりする商品・サービスを
     持つ企業の場合、その成功体験にとらわれて外的要因の変化に対する視野
     が狭くなりがちです。

     それを避けるため、企業は視野を広げたり視点を変えるなどして、外的要因の
     分析を可能な限り客観的に行い、トレンドをつかむことが重要になります。

     例えば、製造業であれば、卸売業や小売業などの直接の顧客ばかりでなく、
     最終消費者の動向についても外的要因の分析対象になります。

     社会・政治・経済の変化、競争状態・競合状態および市場の変化を見落とすこ
     となく、自社との関係を調べ、把握・分析することが求められます。

     こうした外的要因の分析を定期的に行える体制を整備しておきましょう。

   2.価値提案(バリュープロポジション)の検討
     
顧客が何を求めているのか、何に価値を見いだしているのかを確認し、価値を
     生み出すための具体的な仕組みや手段を見直します。

     外的要因の分析を行い、自社が顧客に提供している商品・サービスを再確認
     することから始めます。

     商品・サービスの再確認の切り口は、例えば次のようなものがあります。

      ・顧客の噂好が変化している状況で、自社が提供する商品・サービスが顧客
       ニーズからずれてきていないか
      ・顧客ニーズに対して、商品・サービスの品ぞろえは十分か
      ・競合商品・サービスとの比較で、価格や性能は見劣りしていないか
      ・商品・サービスのライフサイクルの観点から、陳腐化していないか

     そもそも事業の目的は、顧客に自社商品・サービスを購入してもらい、消費・
     利用することで満足を与え、その対価として収益を得ることにあります。

     そのためには単に商品・サービスを販売するだけでは不十分です。

     商品販売に付随するサービスを付加価値として提供するなどして、価値を高
     めることが求められます。

     次に、内的要因の分析として、新たな価値の提案を検討します。

     まずは、顧客が望んでいるもの、つまり真のニーズは何かということを分析し
     ます。

     そして、自社の経営資源を踏まえて、顧客のニーズに対して、どのような価値
     を創造できるかを検討することになります。

     価値提案の検討に当たっては、自社の経営資源を踏まえた上で、他の商品・
     サービスとの相乗効果が期待できるものや、同業他社にはない独自の価値を
     付加するなどの方向性が考えられます。

   3.価値提供方法(チャネル・顧客との関係)の検討
     顧客へ価値を提供する方法としてのチャネルや顧客との関係などを見直し、
     新たな仕組みを検討します。

     具体的には、顧客の利用用途・利用パターン・利用場所を分析するとともに、
     商品の受け取り方法や代金の決済方法を検討します。

     検討内容の観点は、大きく分けて「チャネル」と「デリバリー」があります。

     この2点は、大きく変化しています。

     よくあるのは、商品をインターネットで検索して購入し、コンビニエンスストアや
     時間指定の宅配サービスを利用したりして受け取るケースです。

     また、スーパーマーケットが24時間営業を行うケースも増えており、消費者の
     生活時間帯の変化に対応したチャネルやデリバリーが登場しています。

     決済についても、電子マネーの出現で現金を持たなくても買い物ができる時代
     になっています。

     価値提供の方法を検討する際には、顧客の利便性向上という視点が欠かせ
     ません。

     顧客の利便性向上以外の視点としては、QCT(quality Cost Time)の最適
     化の観点から、自社が採用すべき手段を検討するとよいでしょう。

     例えば、製造業が小売業と情報連携を組み、自社商品の品ぞろえを確実にす
     るSCM(Supply Chain Management)や、企業が顧客情報を蓄積・分析 
     して、優良顧客を囲い込み、商品開発や販売戦略に生かすCRM
     (Customer Relationship Management)の考え方も参考になるでしょう。

   4.収益の流れの検討
     価値提案の対価としての売上高や商品構成の見直しを行い、それを獲得する
     ための費用について検討します。

     収益とは売り上げから費用を引いたものです。

     収益を拡大するには、売り上げを増やす方法と費用を減らす方法があります。

     売り上げとは、製造業や小売業を例にとると−「商品単価×販売数量」となりま
     す。

     つまり売り上げを増やすための施策としては、次に挙げる方法などを検討する
     必要があります。

      ・高付加価値化で商品単価を上げる
      ・新商品を開発して商品数を増やし、販売数量を増やす
      ・既存顧客への販売数量を増やす
      ・新規顧客を開拓し、販売数量を増やす

     一方、費用を減らす方法は、いわゆる「コスト削減」です。

     コスト削減の対象は広範囲に及びますが、特に製造業では企業活動の全て
     の過程がコスト削減の対象になります。

     具体的には、設計コスト、資材調達コスト、製作コスト、物流・在庫コスト、販売
     コストなどです。

   5.経営資源の調達や配分方法(リソース・主要活動・パートナー・コスト構造)
     の
検討
     「顧客の獲得」から「収益獲得」までを実践するために必要となる経営資源を
     見積もり、現有資源との対比から不足している経営資源を洗い出します。そし
     て、保有する資源をどのように配分し、不足している資源をどのように調達す
     るかについて検討します。

     経営資源を再配分するときには、経営資源の見直しと併せて現状の業務の見
     直しが必要になる場合もあります。

     その際には、現在の業務が自社にとって本当に欠かせないものか検討が必
     要です。

     つまり、自社にとってのコアコンピタンスとは何なのかを再度見直し、コアコン
     ピタンスとの関連性が薄い業務については、パートナーなどに思い切ってアウ
     トソーシングすることも検討します。

     特に、IT関連の業務については、かなりの部分をアウトソーシングすることが
     可能になっています。

  □優れたビジネスモデルを“真似る”ことからスタート
   ビジネスモデルを構築する際、基本的には本稿で紹介したようなステップを経ることに
   なります。

   しかし、全てをゼロから構築する必要はありません。

   先に紹介した通り、ビジネスモデルは“儲ける仕組み”などといわれることがあります。

   既にある“儲ける仕組み”を自社に移植したり、転用するといった“真似る”ことで、ゼロ
   から構築するよりも、より洗練されたビジネスモデルを構築できる可能性があります。

   実際に、他社のビジネスモデルをまねることで、優れたビジネスモデルを構築している
   企業は多数あります。

   例えば、ヤマト運輸は宅配便のパイオニアですが、宅配便の生みの親である小倉
   昌男氏は、他社のビジネスモデルから着想を得て、宅配便のビジネスモデルを構築
   しました。

   小倉氏が参考にしたビジネスモデルの1つが、「牛井」だけにメニューを絞り込み、高い
   収益を上げていた吉野家でした。

   ヤマト運輸についても、個人向けの宅配事業に絞り込むことが重要だと考えたそう
   です。

   また、日本航空の個人向けパッケージツアー「JALパック」が支持されていたこと
   から、個人向けの宅配という1つ1つは単価が安く、手間が掛かる事業であっても、
   顧客のニーズにしっかりと応えることができれば、大きな市場に成長すると確信した
   といわれています。

   最近でいえば、タクシー配車アプリで話題のUberなども優れたビジネスモデルの1つ
   といえますが、「タクシー配車」ではなく「自宅に美容師やメーキャップアーティストを
   手配する」など、世界中でUberのビジネスモデルを踏襲した新たなビジネスが生まれ
   ています。

   重要なのは、単にまねるのではなく、自社のビジネス環境に即してビジネスモデルを
   移植したり、転用したりすることです。加えて、小倉氏のように異業種からも学ぶ、柔軟
   な姿勢が求められるといえるでしょう。


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フレームワークの活用
 

  ■フレームワークの活用

   ビジネスパーソンにとっての共通言語となるフレームワーク。

   ビジネスには、企業規模や業種などが異なっても共通して重要となる事項があります。

   こうした事項は、ある程度の経験を積んだビジネスパーソンであれば相応の知識を
   必ず有しているものです。

   こうしたビジネスパーソンにとっての“共通言語”には、会計や財務諸表に関する知識
   などが挙げられますが、ビジネスに関する基礎的なフレームワークもまたビジネパー
   ソンにとっての不可欠な共通言語の一つです。

   例えば、経営戦略などにはなフレームワークがあります。

   ビジネスパーソンとしては、こうしたフレームワークについて“知っている”というレベル
   にとどまることなく、日々のビジネスシーンの中で効果的に活用するようにしたいもの
   です。

  □フレームワークの活用方法
   フレームワークとは開発・運用・意思決定を行う際に、その基礎となる規則・構造・アイ
   デア・思想などの集合のことをいいます。

   フレームワークは、必要な事項を体系的に検討したり、不可欠な要素を漏れなく整理
   する際には大きな効果を発揮しますが、活用できる場面はそれだけではありません。

   例えば、
    ・自社を取り巻く外部環境について説明する際
    ・会議の場などにおいて、議論をする際
    ・新商品をどのように販売していくのがよいか

   にもにフレームワークは有効です。

   フレームワークを活用することで、聞き手にとって理解しやすく、納得性の高いものに
   なります。

   上記の「新商品をどのように販売していくのがよいか」といったテーマの設定において
   も、各人が独自の視点から意見を述べて、議論が進展しないことも少なくありません。

   そのような時に事前に「4Pに沿って議論する」ということを示せば、論点を共有して、
   よりよい議論ができるようになります。

   このように、フレームワークを、“共通言語”となるように、日々のビジネスの中で活用
   する習慣を付けることをお勧めします。

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ビジネスモデル

ビジネスモデル
 

  ■ビジネスモデルとは

   ビジネスモデルとは、「事業の構造を表す」「事業で収益を上げるための仕組み」などと
   言われています。

   事業として何を行ない、ターゲットは誰で、どのようにして利益を上げるのか、という
   「儲け」を生み出すための具体的なシステム(仕組み)のことをいいます。

  □ビジネスモデルの認識

   1.ビジネスモデルの意義
     自社を取り巻く経営環境が急速に変化し、厳しさを増していく中で、自社が売り
     上げや利益を確保して生き残りを図るためには、明確な経営戦略を策定し、
     それを確実に実行していく必要があります。

     経営戦略を策定する上で重要となるのが、自社のビジネスモデルの認識です。

     ビジネスモデルの定義については様々ありますが、例えば、自社が提供する
     価値とそれを誰に販売するのかを明確にした上で、市場における競争優位性
     を発揮し続けることができるように設計された一連の企業活動です。

     また、その企業活動は硬直的なものではなく、会社経営を取り巻く環境に応じ
     て柔軟に見直されるものであり、価値を収益に変える施策までが含まれたも
     のということがいえます。

     自社のビジネスモデルを明確にすることで、進むべき方向性がみえてきます。

     そして、市場環境に応じた適切なビジネスモデルを策定することが、景気後退
     時にも迷走しない強い組織作りの基礎となります。

  □ビジネスモデルの要件

   単年度経営計画は、中期経営計画を達成するために策定されます。

   単年度経営計画を策定する際には、経営戦略の見直しを行うことがあり、時には
   ビジネスモデル自体の再設計や組織の再構築が必要になる場合もあります。

   そして、半期・四半期、月次レベルでのPDCAサイクルを実施し、単年度経営計
   画達成に向けて機動的な運用を行う必要があります。

   具体的にビジネスモデルを策定、あるいは再設計する際には、以下の6項目につ
   いて企業を取り巻く外的要因と内的要因(SWOT)分析し、企業活動としてのあるべき
   姿を検討していきます。

   (1)市場・顧客の検討
     ・消費者や取引企業など市場および顧客についての検討

   (2)価値創造の検討
     ・企業が提供する製品およびサービスについての付加価値の検討

   (3)価値提供方法の検討
     ・企業が提供する製品およびサービスの提供手段の検討

   (4)収益獲得の検討
     ・収益構造やコストについての検討

   (5)情報流通の検討
     ・外部情報および情報システムを含めた内部情報の検討

   (6)経営資源の調達・配分の検討
     ・企業間連携を含む資源の調達および保有資源の配分の検討

  □ビジネスモデルの策定

   1.ビジネスモデルの策定手順

     ビジネスモデルを策定する手順は、

     (1)現状分析
       まずは現状分析を行い、自社が現在置かれている状況を知り、経営理念
       および経営計画に基づいた「あるべき姿」とのギャップを認識します。

       この場合、現状分析はSWOT分析などのフレームワークを利用します。

     (2)ギャップの解消と経営戦略の策定

       現状分析で認識されたギャップを解消して、あるべき姿を具現化するため
       の経営戦略を策定します。

     (3)成功要因の洗い出し

       経営戦略を成功させるための、CSF(Critical Success Factor:重要な
       成功要因)を可能な限り洗い出します。

     (4)外的要因の分析

       先に挙げた現状分析や、経験や知識および新たな視点を取り込むための
       調査結果から自社の外的要因を導き出します。

     (5)内的要因の分析

       CSFおよび外的要因から内的要因を導き出します。

       現状分析などを行う場合には、コンサルタントなどの社外人材に協力しても
       らうことにより、客観的な分析が行えることもあります。

   2.ビジネスモデルの主要構造

     ビジネスモデルの要件については、

     (1)市場・顧客の検討

       市場・顧客の検討では、まずは外的要因の分析として、標的とする市場・顧
       客の現状を洗い出し、それを的確に把握・分析する仕組みを構築します。

       市場や顧客環境は常に変化していますが、会社がその変化に気付くのが
       遅れることも少なくありません。

       市場や顧客環境の変化に対応できなくなった商品やサービスの売れ行き
       は悪化することになります。

       既に顧客から好評を得ているサービスや、ヒット商品を持っている会社
       (店)の場合、その成功体験にとらわれて外的要因の変化に対する視野が
       狭くなりがちです。  

       こうしたことがないよう、市場や顧客環境の変化により早く気付くために、自
       社は視野を広げたり視点を変えるなどして、外的要因の分析を可能な限り
       客観的に行うことが必要です。

       例えば、製造業であれば、卸売業や小売業などの直接の顧客ばかりでな
       く、最終消費者の動向についても外的要因分析の対象となります。

       市場・顧客に対する外的要因の分析では、自社にとっての真の顧客(標的
       とする顧客は誰か)を明確に認識し、顧客の価値基準の視点で行動を分析
       することが重要です。

       そのためには、社会・政治・経済の変化、競争状態・競合状態および市場
       の変化を見落とすことなく、自社との関係を調べ、把握・分析することが求
       められます。

       また、自社としては、こうした外的要因の分析を定期的に行える体制を整
       備しておくことが必要でしょう。

       内的要因の分析については、市場・顧客に対し的確に対応する仕組みを
       検討することが目標になります。  

       具体的には、マーケティング活動や営業活動の方法を検討することになり
       ます。

       例えば、新規顧客の開拓既存顧客との取引強化には何が必要かを、広
       告宣伝活動や販売促進活動などと併せて検討します。

     (2)価値創造の検討

       価値創造の検討では、市場・顧客が何を求めているのか、何に価値を見い
       だしているのかを確認し、価値を生み出すための具体的な仕組みや手段を
       見直します。

       それにはまず、外的要因の分析を行い、自社が顧客に提供している商品
       およびサービスを再認識することから始めます。

       商品・サービスの再認識の切り口は例えば以下のようなものがあります。
        ・顧客嗜好が変化している状況で、自社が提供する商品やサービスが顧
         客ニーズからずれてきていないか

        ・顧客ニーズに対して、商品の品ぞろえは十分か
         (品質、性能、シーズン性など)

        ・競合商品との比較で、価格や性能は見劣りしていないか

        ・商品のライフサイクルの観点から、陳腐化していないか

       そもそも事業の目的は、顧客に自社商品やサービスを購入してもらい、消
       費・利用することで満足を与え、その対価として収益を得ることにあります。

       しかし、そのためには単に商品を販売するだけでは不十分です。

       商品販売に付随するサービスを付加価値として提供したり、商品そのもの
       の価値を高めることが求められます。

       次に、内的要因の分析として、新たな価値の創造を検討します。

       まずは、顧客が望んでいるもの、つまり真のニーズは何かということを分析
       します。

       そして、自社の経営資源を踏まえて、顧客のニーズに対して、どのような価
       値を創造できるかを検討することになります。

       価値創造の検討に当たっては、自社の経営資源を踏まえた上で、ほかの
       商品やサービスとの相乗効果を期待できるものや、同業他社にはない独
       自の価値を付加するなどの方向性が考えられます。
         
     (3)価値提供方法の検討

       価値提供方法の検討では、市場(新規、既存)や顧客へ価値を提供する方
       法としてのチャネルや物流などの見直しを行い、新たな仕組みを検討しま
       す。

       具体的には、顧客の商品の利用用途・利用パターン・利用場所を分析する
       とともに、商品の受け取り方法や代金の決済方法を検討します。

       検討内容の観点は、大きく分けて「チャネル(販売経路)」と「デリバリー(配
       達・配信・出前)」があります。

       この2点は、ここ数年で大きく変化しました。

       よくあるのは、商品をインターネットで検索して購入し、コンビニエンスストア
       や時間指定の宅配サービスを利用したりして受け取るケースです。

       また、スーパーマーケットが24時間営業を行うケースも増えており、消費者
       の生活時間帯の変化に対応したチャネルやデリバリーが登場しています。

       決済についても、電子マネーの出現で現金を持たなくても買い物ができる
       時代になっています。

       価値提供の方法を検討する際には、消費者の利便性向上という視点が重
       要性を増しているといえます。

       消費者の利便性向上以外の視点としては、QCT(Quality Cost Time)の
       最適化の観点から、自社が採用すべき手段を検討することです。

       例えば、製造業が小売業と情報連携を組み、自社商品の品ぞろえを確実
       にするSCM(Supply Chain Management)や、自社が顧客情報を蓄
       積・分析して、優良顧客を囲い込み、商品開発販売戦略に生かすCRM
       (Customer Relationship Management)の考え方も参考になります。

     (4)収益獲得の検討
       収益獲得の検討では、価値創造および価値提供の対価としての売上高や
       商品構成の見直しを行い、それを獲得するための費用について検討します。

       収益とは収入(売り上げ)から費用を引いたものです。

       収益を拡大するには、収入を増やす方法と費用を減らす方法があります。

       収入を増やすことは、販売数量を増やすことにつきます。

       収入は、製造業や小売業を例にとると「収入=製品単価×販売数量」となり
       ます。

       つまり収入を増やすための施策としては、
        ①高付加価値化で製品単価を上げる
        ②新製品を開発して製品数を増やし、販売数量を増やす
        ③既存顧客への販売数量を増やす
        ④新規顧客を開拓し、販売数量を増やす

       などを検討する必要があります。

       一方、費用を減らす方法は、いわゆる「コスト削減」というものです。

       コスト削減の対象は広範囲に及びますが、特に製造業では企業活動のす
       べての過程がコスト削減の対象になります。

       具体的には、設計コスト、資材調達コスト、製作コスト、物流・在庫コスト、販
       売コストなどです。

     (5)情報流通の検討
       情報流通の検討では、新たなビジネスモデルの実現にとって必要な基本情
       報を洗い出し、見直すことが必要になります。

       ここで、必要な基本情報の洗い出しが、情報流通の検討の対象範囲を決
       定してしまうことに留意します。

       次に、検討しているビジネスモデルのどの部分が、基本情報のどの部分と
       関係してくるか、見落としなくチェックします。

     (6)経営資源の調達・配分の検討

       経営資源の調達・配分の検討では「市場・顧客の検討」から「情報流通の
       検討」までを実践するために必要となる経営資源を見積もり、現有資源と
       の対比から不足している経営資源を洗い出します。

       そして、保有する資源をどのように配分し、不足している資源をどのように
       調達するかについて検討します。

       経営資源を再配分するときには、経営資源の見直しと併せて現状の業務
       の見直しが必要になる場合もあります。

       その際には、現在行っている業務が企業にとって本当に重要なものかどう
       かの検討も必要になります。

       つまり、企業にとってのコアコンピタンス(核となる経営資源)とは何なのか
       を再度見直し、コアコンピタンスとの関連性が薄い業務については、思い
       切ってアウトソーシングすることも視野に入れて検討します。

       特に、IT関連の業務については、かなりの部分をアウトソーシングすること
       が可能になっています。

       また、物流関連業務についても比較的アウトソーシングが容易とされてい
       ます。

       以上を検討した上で、企業が大きく成長していくにはM&Aや他社とのアラ
       イアンスという選択肢も視野に入れておくとよいでしょう。

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