業務マニュアルの作成準備と作成手順

業務マニュアルの作成方法 Ⅱ

□マニュアル作成の前提 Ⅰの続き
 7.フォローアップ

  改善実施後には、定着度チェック、改善による効果の評価、新たなる問題発生の確認を行います。

  (1)確認および評価

   業務改善は、案を示し実施を促しただけではなかなか前に進みませんので、改善案の実施中は
   進行状況の確認や定着度合い、実施後には改善による効果の評価報告などを行います。

   結果は会議や掲示板で発表するなどし、業務改善を促進し、改善の機運を高めてゆく必要が
   あります。

   実施後の評価報告は、改善を実施した人を認める意味もありますし、導入による新たな問題点を
   早期に発見し、さらなる改善を図るためにも必要となります。

   もし、マニュアルとズレが生じている場合は、一方的にルールの厳守を求めるのではなく、原因を
   突き止めます。

   単にルールが守られていないだけの場合は、その徹底を促します。

   経営環境や事業形態等の変化による不具合の場合には、現環境にあった新たな改善提案を行う
   などの柔軟な考えが必要です。

  (2)PDCAサイクル

   業務改善活動は、計画を立て、それに基づき実際に改善を実施し、その実施結果の評価・チェック
   を行い、問題点や不具合箇所が見つかったら修正などの対策を講じます。

   つまり、Plan(計画)→Do(実施)→Check(評価)→Action(処置)のPDCAサイクルを回す
   のです。

   このサイクルを継続運用していくことが、日常業務をより効率的・効果的にし、そして定着化に
   つながります。

□マニュアル作成の準備

 1.マニュアルの目的・目標の明確化

  まず、マニュアル作成の「目的(目指す方向、どのようにする)・目標(何を、どこまで・どの
  くらい)」を設定します。

  何を(What)・なぜ(Why)・どこまでの範囲で(Where)・どのような方法で(Howto)・
  誰が(Who)・いつまでに(When)・コストは(How much)―などを明確にしてい
きます。

 
2.マニュアル作成の体制を整える

  (1)マニュアル作成の儒先順位

    ①緊急度、重要度がいちばん大きいものを最優先に作成(ここにいう重要度とは、使用頻度の
     こと)

    ②対象業務(部門)の決定

  (2)体制(プロジェクトチーム)

    ①部門ごとに責任者・推進担当・作成担当を決める

    ②メンバーの作業分担の決定
 
  (3)マニュアル様式の検討と管理

    ①統一(構成、フォーマット、用字・用語の使い方)

    ②進捗状況の管理

  (4)マニュアル作成基本研修

    プロジェクトに集まる人たちは、第一線の業務担当者ではあるものの、マニュアル作成
    (文書化)については不慣れや、マニュアルの必要性を理解していない場合もあります。

    そのため、研修などを開催し、共通の理解を持ってもらう必要があります。

    内容としては、下記のような基本項目の理解で十分です。

  (5)研修項目例

    ①マニュアルの必要性

    ②目標・目的・期待

    ③業務改善の基本

    ④現状・問題点を把握する目

    ⑤大まかなスケジュール など

  (6)構想項目例

    ①マニュアル作成の範囲(特定の業務・部署)

    ②種類・目的(教育・指導手順・ノウハウの集積・内部統制システムの構築)

    ③誰を対象とするか(新人・指導者・各担当者)

    ④作業日数・必要人員・構成メンバー

    ⑤完成予定時期

    ⑥完成マニュアルのイメージ

□マニュアル作成の流れ

 マニュアル作成の流れは、図の通りです。

 実際に使用する人たちにとって、「使いやすく・わかりやすい」を心がけながら作成することが 
 重要です。 

 1.マニュアル作成のポイント

  マニュアルを作成する上で第一に考えなければならないのは、「活用されるには」どうしたら
  よいかです。

  いくら内容が優れていても、利用されなければ意味がありません。

  一方的な押し付けにならないよう、利用者の立場になって作成する必要があります。

  (1)スケジュールの作成

   作成するマニュアルや各担当者が決まったならば、次にマニュアル作成のスケジュールを確定
   していきます。

   まず、いつまでに完成するかを決め、そこから逆算して、作業日程を決めていきます。

   また、定期的な打ち合わせの曜日または日時、さらには進捗度のチェック方法なども、あらかじめ
   決めておきます。

  (2)フォーマットの統-

    ①見た目にわかりやすい

    ②どこに何が書いてあるかが、ひと目でわかるマニュアルになる

   見出しの大きさ、空白の取り方、イラスト挿入方法、参照項目方法や罫線の使い方など、実際の
   作成には細かい課題が出てきます。

   必要に応じて、再度の打ち合わせによる修正も行います。

    ①書式・記述の統一

     マニュアルでは一般的に、文章の結びは「です・ます」調が多く使われています。

     語りかけるような口調で、やさしい感じになります。

    ②用字(用語・言葉)の統一

     古い表現や専門用語はなるべく避けるか、説明を加えるようにします。

     普段使用している用語や言葉を用いることはかまいませんが、担当者によって使用する
     用語や、意味合いが異なる場合があります。   

     そのときは、統一するか、もしくは注記をするようにします。

    ③基本レイアウトの設定

     統一感があり、読みやすく、活用されるマニュアルを作成するには、レイアウトを工夫し、
     統一することが求められます。

     ◎項目寺号

      Ⅰ→1→(1)→①→ア―のように、項目階層ごとに、使う数字等の形式を統一する

     ◎フォントサイズ       く

      大項目、中項目、小項目、最小項目、リード(冒頭のまとめ)、通常文などの構成要素
      ごとに、フォントとサイズを決めて統一する

     ◎構成

      ・見出し、担当部署、担当者、施行日、改訂日の記載位置

      ・行間の幅、図表やイラストの利用方法……など

  (3)マニュアルの全体構成

   構想を具体化するために、まずマニュアルの全体像を休系化する必要があります。

  (4)箇条書きの利用

   箇条書きにすることで、圧迫感をなくし、全体が見やすくなります。

   また、箇条書きにすると改行や空白が増えるので、同じスペースに収めるには文字数を少なく
   する必要が出てきます。

   そのため、文章が、単刀直入でポイントを押さえたものとなる効果もあります。

  (5)文章の代わりにチェックシートやイラストを使う(図⑤)

   確実に守ってもらいたい項目については、単に文章を並べるだけでなく、チェックシートの
   形にすることも有効です。

   イラストは、欄外にデザインやイメージとして使用されるものですが、文章をイラスト化して
   使用することも、より理解を得るための方法として有効なことがあります。

  (6)グラフや表を用いる

   数値の羅列はなるべく避け、できるだけグラフ(棒・円・帯グラフなど)や表を用いると、
   直感的把握がしやすくなります。

 2.価先順位・役割分担

  マニュアルの体系化ができたら、作成する必要の有無、作成する優先順位を決めます。

  限られた人員と期間で、すべてのマニュアルを作成することは困難なので、重要度の高いものを
  優先的に作成します。

  ここでいう重要度とは使用頻度のことです。

  作成するマニュアルが確定したら、次に誰が担当するかの役割分担を決めていきます。

 3.難易度の設定(等級・基準値の決定)

  各業務の難易度・習得期間・基準となる標準的な処理件数等を決定します。

  (1)等級・基準値を決める

   マニュアルの内容には、「求めるレベル・基準値」が数値などを使って明確に書かれていなければ
   なりません。

   これらが曖昧だと、その結果も自ずと曖昧になってしまいます。

   また、各業務の習得期間も併せて決める必要があります。

  (2)習得評価管理表

   マニュアルの目的として「人材の育成・教育」も考慮しなければなりません。

   そこでマニュアル本体の作成と同時に、習得度の管理とその評価を行う体制を整える必要が
   あります。

   「習得評価管理表」は、新人教育における習得度の確認、業務改善ポイントの洗い出しや内部
   監査でのチェックポイント、さらには人事評価としても役立ちます。

 4.構成要素(盛り込む項目・内容)の確定

  マニュアルに何を盛り込み、どのような構成にするかを確定します。

  マニュアルの骨格(構成要素)は、例えば事務業務、接客、営業など、対象の違いにより目的も
  異なるので、それに応じて異なるものになりますが、基本的には次のような構成要素となります。

  (1)手順書

   業務の流れに沿ってまとめます。

   流れを図にするとイメージがつかめ、理解度が増します。

   フローチャートなどを利用し、該当作業の横にコツやポイントを書き加えるなどします。
 
  (2)帳票書類一式

   「手順書」で流れを確認する一際に、実際に使用する「帳票」内容と見比べながら行うことで、
   その関連性を明確に理解することができます。

   使用する帳票をまとめてファイル、目次や番号付けを行うなどし、すぐに探し出せるようにして
   おきます。

   帳票は、記載前と記載後、さらに記入方法や注意点等を添え書きしたものがあると、便利です。

  (3)教育・評価

   マニュアルが人材教育を目的にするならば、特に習得期間や業務基準値を明確にすることが
   重要で、その評価も必要となります。

   「何を・いつまでに・どの程度」を明確にし、その評価を適切に行わなければ、結果はついて
   きません。

   「用語集」には、専門用語の解説、用語の定義、用語の統一などについて、まとめて記載する
   ようにします。

 5.マニュアルの総仕上げ

  マニュアルは数人の担当者で作成されますので、完成されたものが実際の現場とかけ離れている
  場合や、現場の意向と違うものとなっている場合も多々発生します。

  これを精度の高いマニュアルにするには、「自己チェック・現場での試験運用・関連部門との調整」
  を繰り返し、その都度、問題点や矛盾点などの修正を行う必要があります。

  この作業を行わず、いきなり実用化した場合、現場では使えないことになりかねませんので、
  最後の総仕上げとして重要な作業です。

  また、マニュアルの精度を保つために、このサイクルは、マニュアルの運用開始後も続けなければ
  いけない作業でもあります。

 6.チェック(リスト)・調整

  作成したマニュアルは、「自己チェック・現場での試験運用・関連部門との調整」を繰り返し、
  精度の高いものにしていきます。

  マニュアルで求められている基準などに対し、その通りにできているか(評価)を確認する際に
  便利なのが「チェックリスト」です。

  チェックリストは、手際よく重要ポイントを教え、その実行確認ができ、他人からの評価だけ
  でなく、自ら日々の業務での実行確認・評価を行う際にも利用することができます。

  マニュアルを根付かせるにも効果的です。

 7.印刷・製本

  (1)形態

   修正しやすいバインダー方式を採用します。

  (2)レベルごとにファイルを別にする

   レベル(難易度)別に製本したほうが教育段階で使いやすいものとなります。

  (3)業務ごとに目次を付ける

  (4)索引、作成年月日、社外秘(持ち出し禁止)等を入れる

  (5)マニュアル管理台帳の作成と配布

   完成したマニュアルは自社のノウハウであり知的財産ですから、しっかり管理することが重要です。

   マニュアルを配布する場合、「何を」、「どこ(誰)に」、「いつ」配布されたかがわかるように
   記録しておかなければなりません。

   マニュアル管理台帳をもとに、マニュアルー冊ごとに管理番号を付けて配布します。


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業務マニュアルの作成準備と作成手順

業務マニュアルの作成方法 Ⅰ

■業務マニュアル作成手順

 1.マニュアルについて

  人は、何かを完全に言うことはできないものです。

  それを繰り返し、正確に再現するのは、さらに難しくなります。

  ですから、正しい業務のあり方は、口頭では十分に伝えられません。

  文書で表現すべきものです。

  部下がより確実に、より楽な気分で仕事が進められるように工夫された業務の手順を指示する文書が、
  マニュアルです。

  マニュアルは、一定の段階までの絶対的な条件・方法を示します。

  部下は、この基礎を身につけることで、さらなるスキルアップができます。

  スキルアップは、マニュアルの範囲内で基本を守りつつ行われるものです。

 2.マニュアル人間

  マニュアルは、柔軟性や創造性に欠けた機械のような人間をつくり出すといった誤った考えから、
  「マニュアル人間」などの言葉が椰捻として使われたりもします。

  しかし、マニュアルは、果たすべき職務を具体的に明示したものです。

  そこに書かれたことを完全に遂行できるかどうかが、本人の職務遂行能力を推し量る基準となります。

  正当なマニュアルがあれば、毎日が勉強になります。

  マニュアルを報酬体系と連動させ、習得度で報酬が上がっていく仕組みがあれば、やりがいも生まれ
  ます。


 3.もしマニュアルがなかったら

  ・教育に時間がかかり、効果が上がらない

  ・教える人によって、バラツキが出る

  ・組織は烏合の衆となり、統一感・一体感が生まれない

  ・指示命令が不正確で徹底されない

  ・評価は主観的感情的になり、報酬も教育効果も上がらない

 4.業務マニュアル作成にあたって

  業務マニュアルの作成に欠かせないのが準備です。

  この準備体制はすべての業務マニュアル作成の基本となります。

  業務マニュアルの作成のためには業務の棚卸しを行い、現状の業務を改善しなくてはなりません。

  ここでは業務改善とマニュアル作成について個別に書いてありますが、業務改善ができていない
  ようであれば、改善とマニュアル作成を並行して行うのがベストです。

  どんなに素晴らしいマニュアルであっても、正しい業務の進め方が実行されていなければ、
  マニュアル作成は意味をなしません。

□マニュアル作成の前提

 1.現在の業務を見直す(業務改善)

  業務マニュアルの作成に、業務改善は欠かせません。

  (1)準備計画

   業務改善の「目的・目標」の設定、ヒアリングや関連資料の収集、現場サイドとのスケジュール
   調整などの十分な事前準備計画を作成します。

  (2)改善の「目的・目標」設定

   業務改善とは、仕事の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくことです。

   業務改善を始めるに当たって、まず改善の「目的・目標」を決める必要があります。

   「何を・どこまでの範囲で・どのような方法で・誰が・いつまでに・コストは」などを文字や
   図などにより明確にし、共通化させます。

  (3)事前準備項目

   ①経営層・調査対象部門長等とのヒアリング等による聞き取り・資料収集(関連規程・組織図・
    人員構成・帳票等)

   ②必要に応じフローチャートの作成・課題点や改善方法の想定(改善の目標・範囲の設定)

   ③調査スケジュールの作成(調整・通達)

 2.現状分析

  現状業務がどのように行われているかを的確に把握します。

  その際、調査の事前準備において想定した課題点や改善方法の検証、同業他社の基準値
  などとの比較検討を行います。

  (1)その業務は本当に必要か

   ①業務の目的を説明できるか

   ②管理者に説明できないものは止める

   ③やらないでよいことをやっていないか

  (2)もっと他に必要なものはないか

   ①必要をものでやられていないものはないか

   ②将来のために今やるべきことはないか

  (3)どの業務に一番時間をかけているか

   ①時間は最大の原価(人件費)である

   ②それほど時間をかける必要があるか

   ③半分の時間でできないか

  (4)業務を細かく分けすぎていないか

   ①みんなで同じことをやっていないか

   ②集約化・専門化できないか

   ③分担業務の連携はうまくいっているか

  (5)仕事は平均に割り当てられているか

   ①特定の人に偏っていないか

   ②忙しい時と暇な時とが極端でないか

  (6)能力を有効に活用しているか

   ①業務を処理するだけの技術を持っているか

   ②能力以上、以下の業務をやらせていないか

   ③もっと他に能力を生かせる業務はないか

 3.問題点・課題の洗い出し

  調査担当者、実際に業務を行う担当者、現場責任者など関係者が集まって、あらゆる角度から、
  現状業務における問題点や課題を洗い出します。

  (1)問題点の具体化

   問題点は、具体的なものにしなければ解決はできません。

   「◯◯が多いまたは少ない」、「△△が遅い」、「口□が弱い」―このような指摘は、問題
   意識のレベルでしかありません。

   もっと掘り下げ、問題をより具体化しなければ、なかなか改善へと発展していかず、問題は
   解決できません。

   例えば、「帳票書類の提出が遅い」では何を改善すべきなのか分かりません。

   「仮払精算書が特に遅い(What)」、「◯◯部門に遅れる人が多い(Who)」、「Aさんが
   課長になった半年前から増えた(When)」、「A課長が居らず決裁がもらえない(Why)」、
   「出張が連続し会社に戻れない(Why)」など、5W1Hを問いかけながら、問題を具体化します。

   そうすれば、例えば「A課長が出張の時は、B課長代理を決裁者とする」という解決策を立てる
   ことができます。

   問題を具体化すれば、原因がはっきり見えてくるようになり、改善策も立てやすくなるのです。

   問題点が抽象的だと、その改善策も「早くするように努力する」、「早期提出の徹底」など
   抽象的になり、根本的な解決には近づくことができません。

  (2)問題点や改善策を見つける

   自分の業務を改善するため、業務の問題点を洗い出して改善策のアイデアを考えても、すぐに
   出てこないこともあります。

   ましてや普段あまり関与していない部署の業務改善となると、なおさら良いアイデアなどは、
   なかなか浮かんでこないものです。

   これらの課題を解決する手法として、代表的なものに、ブレーンストーミング(BS法)やKJ法が
   あります。

 4.業務の棚卸しと一覧表の作成

  業務の問題点・リスクを洗い出したら、それを一覧表にまとめます。

  その際、マニュアル作成範囲内のすべての業務・作業を洗い出す“棚卸し”とともに行うことが大切
  です。

  棚卸しされた業務や作業を一覧表にまとめると、ムダな業務、不足している業務・二重業務、、改善
  課題などが浮かびやすくなります。

  棚卸しをしたならば、現状の業務を単に一覧にするのではなく、不足・問題箇所やリスク要因を改善
  しながら作成します。

  (1)作成上の注意点

   ・業務や作業を大きく、または細かくとらえすぎない

   ・分類の正確性にこだわりすぎない

   ・1マス、1項目

   ・業務や作業を文章化しない

   ・各担当者がさまざまな目線から作成する

   ・業務個々で考えるのではなく、業務全体で考える

   ムダや非効率な業務をそのままマニュアルにしてしまうことほど、愚かなことはありませんので、
   絶対に避けなければなりません。

   ここで重要な業務を強化し、ムダな業務を削除しておくことは、マニュアル作成において重要と
   なります。

  (2)業務(役割)分担表の作成

   企業の多くが「人に仕事を担わせる」形で役割分担を行っています。

   これを「仕事に人を担わせる」と考えてみたらどうでしょう。

   正社員には、より程度・質の高い、より生産性が高いと思われる仕事を担当させます。

   一方、誰かに代わってもできる仕事には、契約社員・パート社員等を活用することができます。

   同じ仕事に複数の人が関わる、中堅社員が新入社員の指導にかかりっきりになる、誰にでもできる
   仕事に正社員が関わる ― といったムダを省くことができるようになります。

   役割分担は、業務自体をルーチンワーク化し、誰に代わってもできることを目指し、組織を収益に
   直結した業務に集中させることを目的とします。

   また、業務の統一・分業・削減・技量とのバランス等を検討し業務分担の異動を行うことで、
   業務はより効果的で効率的になります。

  (3)情報の収集と選別

   対象部門・業務でヒアリング等を行い、対象の担当者から直接、課題やニーズの情報を得ます。

   そこから課題を洗い出します。

    ①対象部門の日常業務

    ②サービスや製品の品質

    ③納期に関連して発生する問題点

    ④お客様の声(クレーム、ニーズ)

    ⑤従業員の声

 5.改善計画書の作成

  最良の改善案を選択して改善策をまとめ、その実施に向けて計画書を作成します。

  (1)改善策の立案

   業務の問題点やその原因が判明すれば、それに対する改善案も、いくつか出ます。

   改善目的や目標の達成度、経営全体から見たバランスなども考慮して、最良のものを選びます。

   改善案には、数人で行う小規模なものから、会社全体で行う大規模なもの、導入の難易度が低い
   ものや高いものなど、さまざまな案があるでしょう。

   どのような案にせよ、自分ひとりで行う改善案でない限り、改善に関わる人に、その内容を理解
   してもらい協力してもらうことが不可欠となります。

  (2)改善案の優先順位

   業務改善のため、多くのルールや規定を新たに決め、それを運用する人に大きな負担を強いるよう
   では良い改善策とはいえません。

   いちばん良い改善策は、改善目的を達成し、なおかつ運用者の負担を軽減する方法です。

   そのような改善案を選択するには、次のような観点から整理するとよいでしょう。

   ①廃止・排除

    ムダなもの・いらないものは廃止または排除します。

   ②簡素化・集約

    全体を廃止するわけにはいかないものは、部分的に見直し、簡略化または集約します。

   ③変換・取替

    廃止も簡素化も難しいものは、今までのやり方に替えて新しいやり方を全面的もしくは部分的
    に採用します。

    この新しいやり方を最小限にとどめることが重要です。

  (3)改善計画書の件成

   改善案が決まったならば、さらにスケジュールやコストなどを決め、より具体化させ、「改善
   計画書」にまとめます。

  (4)作成のポイント

   ①数値化できるものは数値化し、後に評価・確認ができるようにする

   ②誰でも理解しやすいものにする(表や図なども必要に応じて用いる)

   ③改善による期待効果を示す

   ④改善作業が長期に渡る場合は、期間を区切り(月毎など)進捗度を明記する

  (5)実施推進担当の選出

   改善案の実施には、ただ案を実施部署に渡しただけでは、なかなか進みませんので、それを引っ
   張ってゆく推進担当(部門)が必要となります。

   推進担当があまり前面に出すぎると、「指示する側」と「やらされる側」という意識が生まれて
   しまい、失敗する原因となり得ますので注意が必要です。

 6.改善案の実施

  計画書に則って、実施対象部署と実施推進担当者とが協力し、業務改善を実施します。 

  (1)施行期間

   いくら考え尽くされた改善案であっても、実際に導入してみると、予想もしなかった事態が起きる
   ことは多々あります。

   新たな制度を導入する場合は、いきなり多額のコストをかけたり、広範囲(全社)で一斉運用したり
   しないほうが賢明です。

   また、導入後に修正が相次ぐと、修正情報や新旧帳票の錯綜により、導入した部署の人たちを混乱
   させてしまいます。

   本格運用の前に2~3カ月程度の試行期間を設け、その期間になるべく不具合を見つけ出し、修正を
   行うようにします。

  (2)確実に実施

   改善案は実施されなければ意味がありません。

   どんなに素晴らしいアイデアでも実施されなければ「絵に書いた餅」です。

   改善案がなかなか実施されない、もしくは進まない場合は、まずできるところから取り掛かる
   ことを考えましょう。

   改善は、必ずしも根本的な解決を求めるものではありません。

   確実に一歩一歩進み、小さな成果を積み重ねていくことが改善です。

   大きな成果を出すことは、「改革・革新」の領域です。

   改善では、「大きな前進より確実な一歩」という考えが重要です。

  (3)改善案の改善

   業務改善は、「実際にやってみないとわからない」部分も多いものです。

   改善案を実施すると、思わぬ問題が発生し、より優れた案が実施者から提案される場合があり
   ます。

   そのとき、当初の改善案に固執しすぎると、現場から反対に遭い頓挫してしまうこともあります。

   進行状況をこまめに確認し、問題が発生した場合は素早く状況に応じた対策を講じ、改善案に
   対する改善が提案された場合には、相手の意見をよく聞き、優れている案ならば、積極的に取り
   入れる姿勢が必要です。

  (4)改善実施報告書

   改善案の実施後は、その成果や経験をまとめた「改善実施報告書」を件成します。

   このような事例集には、改善を成功へと導くノウハウや定石が含まれているので、後の改善活動・
   マニュアル作成に大いに役に立ちます。

   過去の改善事例を多く見ることは、成功への近道となります。

                                         次回に続く

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業務マニュアルの作成準備と作成手順

中小企業のITシステム

ITシステム導入による生産性の向上

 ITシステムで何をしたいのか
  コロナ禍にあって、急速にIT化の波が押し寄せてきています。
  リモートの波は、社内会議、商談、日報管理など様々な分野に及んできています。
  しかし、注意すべき点はITによるシステム化の広告・宣伝に踊らされず、自社に必要な
  機能は何かをきちんと把握しておくことです。
  導入効果を高めるには問題や課題を明確にすることです。

  中小企業白書(2018年度)によると、中小企業においてITを導入するときの課題として
   1.コストが負担できない
   2.導入の効果が分からない、評価できない
   3.従業員がITを使いこなせない
  などとなっています。
  ITを導入する前に「どのような問題点や課題があるか」さらにこの問題点や課題を
  解決して「最終的にどのような目標を達成したいか」を把握することです。

  中小企業に必要なシステムとは「小さく産んで大きく育てる」ことです。
  「あれもこれも」と欲張らず、初めは必要最低限の機能から始めましょう。
  システムに機能を詰め込みすぎないことです。
  以下の点を導入前に必ず決めておきましょう。

   ・何故システム化しなくてはいけないのか
   ・ITシステムで何をしたいのか
   ・既存ソフトとの連携が可能か
   ・IT化の導入が全ての抱える問題を解決してくれると勘違いしない
   ・システムを導入する前に、社内の体制を整備する
   ・PCはデータ入力しなければタダの箱

  などの目的をはっきりさせることです。
  紙ベースによる業務の標準化もITによるシステム化も基本は同じです。

   中小企業の身の丈に応じたITツールの普及促進(中小企業庁2019年))   
  
 □小さく産んで大きく育てる
  IT導入にあたって、「社内にIT専門家がいないので、何をどうしたらよいのかわからない」
  というのは、多くの中小企業が抱える悩みです。
  自社に必要なIT化は何かを優先順位(ランク付け)をつけて行うことです。

  ・業務改善(管理:文書、時間、コスト、etc) 
  ・各種マニュアル(苦情対応、危機管理、基本動作、etc)   
  ・人材育成(5S、モチベーション、etc )  
  ・各種社内規程(製品安全管理、安全衛生委員会、防災管理、安全衛生
   管理、車両管理、営業秘密管理、文書管理、etc)   
  ・各種業務チェックシート(報連相、日報・週報・月報、電話対応、etc)   
  ・HP(制作会社に任せっきりにせず、自社で更新・加工できること)

 □業務を標準化する目的
  1.一人に負担のかかる仕事のやり方から平均した分担になるため
  2.誰に代わってもできるようにするため
  3.業務自体をシンプルで、目に見えるようにするため
  4.ムリ・ムダ・ムラを無くすため
  5.業務遂行における品質の均一化と向上を図るため
  6.可視化
    業務の内容を明らかにする
  7.基準をつくる
    業務を基準通りにやるためには、うまくいく手順と方法を
    示す必要がある。      
    業務を標準化、規則・規定などのルール、理念の理解などを
    組織で共有化する。
  8.基準を守れるようにする      
    そのためには、規則・規程、業務品質を守れているかどうかを
    評価する仕組みを作る。

   結果として、経営効率の向上、顧客満足の向上達成がより確実になります。
  業務改善ができていない状態でITによるシステム化は避けましょう。

 □労働生産性の向上
  IT導入は労働生産性を向上させ、収益アップを可能にします。
  中小企業の限られた予算では手の届かなかったITシステムが安価に、かつ手軽に利用
  できるようになっています。
  IT導入時だけでなく導入後の段階においても、ベンダーを賢く使いこなせば、コスト削減、
  省力化による人手不足対応などの課題の克服による生産性の向上につながるのです。

  既存ソフトとの連携が可能かクラウドサービスやシステム連携が可能なツールで
  あるかを事前に知っておくことも大切です。
  システムを導入する前に社内の環境整備を整えておくこと。
  そうでなければITシステムは機能せず、宝の持ち腐れとなってしまいます。
  ITシステムの導入は目的ではなく手段なのです。

 □業務の標準化から ITを活用したシステム化へ
  コンサルティング業務の中で実感したことは、関与先の中小企業に必要なデータと
  本来整備されているべき各種規程やマニュアルの整備不足が目に付きました。
  弊社HPにも掲載しているように、中小企業の悩み・課題は属人的な業務の進め方を
  今でも続けていることです。
 
  中小企業では、「財務・会計」、「人事・給与管理」の業務領域で、IT を導入している
  企業が多いのですが、「生産」、「物流」等の業務領域では、大企業と比べて、IT を導入
  している企業の割合の差は大きくなっています。

   <中小企業の重視する経営課題>
    ・コストの削減、業務効率化
    ・営業力・販売力の維持・強化
    ・新規顧客の獲得・商品・サービスの高付加価値化
    ・技術力の維持・強化
    ・人材の確保・育成

   <IT の導入の効果が得られた理由>
    ・ITの導入の目的・目標が明確だった
    ・経営層が陣頭指揮を執った
    ・システムの仕様を十分検討した
    ・業務プロセスの見直しを行った
    ・現場が積極的にシステムの検討に参加した
    ・ITの導入を段階的に行った
    ・外部のコンサルタントを活用した

 □事前の準備を怠らない
  業務IT化に取り組む場合、社員への導入教育など事前の準備が、成否のカギを握る。
  システム構築を請け負った会社(ベンダー)が作成したマニュアルは、パソコンが
  苦手な社員が読んでも理解できないことが多い。
  「専門用語がちりばめられたマニュアルをパソコン初心者でもわかるように“翻訳”
  してつくり変えるといった地道な作業が欠かせません。

  社員の理解が不十分のままに本番を迎えることになりかねない。
  また、システムを稼働させる時期についても、「どんなシステムでも、最初は何らかの
  トラブルが起きる可能性が高いのです。
  仕事量が比較的少ない時期にシステムを稼働させ、少なくとも2カ月程度は試験的に
  運用し、その間に問題点などを洗い出し解決しておく必要があります。

  こうした導入前の教育のほか、業務IT化の際、意外に盲点になりやすいのが、IT化
  によって社員の日常業務に負荷がかかる点です。 
  ある情報機器の販売会社で、営業日報の電子化に取り組みました。
  もともと手書きの業務日報があったが、その日に誰と会ったかといった簡単な内容を
  書くだけで、商談の詳細な内容は必要に応じて口頭で上司に報告していただけでした。 

  新たに導入した電子日報では、初回訪問、商品の提案、引き合い、見積もり書提出
  など営業活動の進展状況や、競合する企業の有無、成約の可能性などを営業パーソンが
  パソコンに入力していました。
  そして上司がその内容をチェックし、アドバイスを書き込んで返信するとともに、
  同行営業のタイミングを把握するというものでした。 

  営業所で顔を合わせなくても、部下の行動を管理できるこのシステムを上手に活用すれば、
  効率的な営業活動が展開できるはずだったのですが、社長の思惑通りにコトは運ばなかった
  のです。
  上司は一人で何人もの部下の報告を見て返事を書かなければならなくなり、日常業務の
  忙しさに追われていたこともあって、次第に部下に返事を書く回数が減っていきました。

  すると部下も、電子日報に対してメリットを感じなくなり、利用しなくなったのです。
  こうした悪循環に陥った結果、導入1年後にシステムは無用の長物となってしまった
  ということです。

 □活用を促す仕組み
  「社員が業務IT化のメリットを感じ取れるようにいかに工夫するかが、IT化を成功に
  導く大きなポイントにななります。
  このケースの場合、上司が部下に対して返事を書いた回数や内容を人事評価に反映
  させるなど、ITを浸透させるための社員への動機づけが足りなかった」 と見ることが
  できます。 

  これまで、導入教育や社員への動機づけなどでの失敗事例を見てきましたが、こうした
  問題点をうまく克服し、ITを業務に活用している企業もあります。
  たとえば製品化につながるような有力な情報を提供した社員には、最大2万円の報奨金
  を出し、人事評価にも反映させた点です。

  「情報を提供した社員を評価するという会社としての方針を明確に打ち出すことで、
  社員の関心を引きつけた」 業務IT化は、社員に大きな負荷をかけることになりかねません。
  だからこそ、前向きにIT化に取り組む社員をいかに評価するかという点が、成功の
  大きなポイントになるといえるでしょう。
 

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業務マニュアルの作成準備と作成手順

業務マニュアルの作成準備


  人は言うべきことを完全に言うことができないものであり、さらにそれを繰り返し、正確に再現
  することはもっとむずかしくなっていく。  

  業務マニュアルは社員の場当たり的行動を無くし、より確実に、より楽な気持ちで仕事が進め
  られるように工夫した、業務(作業)の手順方法である。

  マニュアルを通して業務を標準化することにより、経験の少ない社員であっても十分な仕事が
  できるようになります。

  マニュアルは、業務(作業)の手順を指示する書類である。

  スタッフは指示されたとおりに労働することが仕事。

  本来、限られた現有資産の中で、事業を運営しなければならない中小企業こそマニュアル化を
  推進していかなければなりません。

  現状の営業スタイルを見てみても、まだ
   1)「売る」 2)「儲ける」 3)「肉体的・精神的疲労」 4)「もっと努力する」

   5)「がんばる」 

  で、ムダ・ムラ・ムリの同じ失敗を繰り返しています。

  本来業務の標準化は、

   1)「売れる」 2)「儲かる」 3)「精神的喜び」 4)方法・やり方を変える
   5)知らベ・考え直す  

  の仕組みに則った営業活動なのです。

  今日行動する内容を、今日決めている。

  決めるならまだいいほうだが、収益に直結した業務が後回しになり、作業に専念し、「忙し
  い、忙しい」とぼやいている。

  誰でもできる解説・手順書を作ってしまえば、組織が柔軟に拡大でき、急速な成長にも対
  応できることになる。

  仕事を覚えないのは、社員当人の能力が原因ではなく、覚えさせる環境を与えていない
  からなのです。

  『売れる仕組み』をつくる

  今までの体力とストレスのかかる営業プロセスを標準化させることで、継続した増収を図
  っていくことができます。

  『売れる仕組み』をつくれば、

  1)売れる 2)儲かる 3)精神的喜び 4)方法・やり方が変わる  5)知らベ・考え直す
   
  ■業務のマニュアル化

   業務の標準化とは業務のプロセスを手順書として文書化することです。

   業務手順書(マニュアル)は自社にとってのノウハウとなります。

   業務マニュアルは社員教育・人事評価のために欠かせません。
  
   社員教育(新人を即戦力として活用)においては

    業務を説明し、目的を理解させる
         
    中堅社員が手順・ポイントを説明しながらやってみせる
         
    できるまで反復練習を実践させる
         
    できた点は褒め、できない点は指摘し、評価する

   これを継続実践していくことがあなたの会社の教育システムとなるのです。

   しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   厚生労働省「平成26年度能力開発基本調査」においても、全体の75.9%の事業所が
   「人材育成に問題がある」と回答しています。

   この問題を解決しなければ、教育制度の内製化は不可能です。

   
  □価値観の共有

   業務マニュアルの作成が目的化(作るだけで終わってしまう)する要因のひとつに価値
   観の共有が上げられます。

   戦力となる社員の育成には時間・手間がかかります。

   ここで注意しなければならない点は、マニュアルといった箱物づくりに専念するあまり、
   ソフトの部分である社員とトップの価値観を同じくする(共有)ことが欠けてしまい
   ます。

   会社の方向性、トップの思い、社員のやりがいといった理念・ビジョンを共有していく
   ことです。

   マニュアルを作成していくにも自社・トップの判断だけではなく、他社のよいところを
   徹底して真似ることです。

   「学ぶ」は「真似る」から始まります。

   そして、最終的には自社独自のオリジナリティーあるものに変化していきます。
  
  業務を標準化する目的

    1.一人に負担のかかる仕事のやり方から平均した分担になるため

    2.誰に代わってもできるようにするため

    3.業務自体をシンプルで、目に見えるようにするため

    4.ムリ・ムダ・ムラを無くすため

    5.業務遂行における品質の均一化と向上を図るため

    6.可視化
      業務の内容を明らかにする

    7.基準をつくる
      業務を基準通りにやるためには、うまくいく手順と方法を示す必要がある。

      業務を標準化、規則・規定などのルール、理念の理解などを組織で共有化
      する。

    8.基準を守れるようにする
      そのためには、規則・規程、業務品質を守れているかどうかを評価する仕組
      みを作る。

   結果として、経営効率の向上、顧客満足の向上達成がより確実になります。

  □業務マニュアル作成のポイント  

   ・利用目的を明確にする

   ・構成、フォーマット、用語の統一、ビジュアル

   ・目次や索引により、知りたいことが探しやすい

   ・更新しやすく、更新履歴が管理されている

   ・頭の中だけに留められている業務のコツ(暗黙知)を形式知(文書化したもの)
    にする

   業務の品質向上については、中小企業の多くが施策を講じているが、本当の手順書
   (マニュアル)は数少ないのが実態です。

   中には、注意書きのようであったりするものも見受けられます。

   手順書は業務(作業)の手順を指示する文書類です。

   あの分厚いパソコンの取扱説明書のように、その業務に精通した人にしか理解できない
   言葉で書かれた内容では、決して手順書とはいえません。

   手順書は小学生でも理解できる内容・書き方でなくてはなりません。

   業務をシンプルに誰に代わってもできるようにしていくことが、手順書には求められ
   ます。

   本来マニュアルとは、作業の手順指示書であり、果たすべき職務の具体的内容を、
   完全な形で明示(成文化)したものです。

   言い換えれば、従業員の職務遂行能力の種類や段階を示すバロメーターでもある
   のです。

   それは教育(訓練)の基礎ともなり、上司による能力評価や、自己育成のプログラムにも
   使えるものです。

   当然、だれにもわかる、他にやりようがない表現でなければなりません。

   マニュアルとは、完全な業務(作業)命令を成文(文書)化したものです。

   マニュアルがなければ、次のように組織にマイナスが生じます。

    (1)組織は烏合の衆となる(従業員のチーム力が発揮されず、役割分担による
      分業化ができなくなる)

    (2)指示・命令が常に不正確(主観的で朝令暮改になってしまう)となる。

    (3)皆が勝手に行動するだけとなり、人事考課が計れず、報酬は通勤と存在給
      になってしまう。

    (4)部下の評価が主観的となる。

    (5)教育効果測定ができず、教育効果が上がらない。

    (6)マンパワーに頼ることで特定の人に負担がかかる

    (7)組織にいつまで経っても仕組み(ノウハウ)ができず、場当たりな行動が続く。

   正しいマニュアルは個人がムダな努力や配慮や注意をしなくても、いつの間にかある
   べき結果が出るような慣習やしきたりのことです。

   それは言い換えるなら、適切で有効な業務の標準化があるということなのです。

   事業経営の立場から言えば、いかによりよい方法に変えていくかが改善であり、改革
   です。

   そのためにしなければいけないことは、方法を調べ直し、考え直すこと。

   個人の異常なほどの努力が行なわれることがよいのではなく、慣習に従っていれば
   ひとりでによい結果が出ていくような制度をつくることです。

    「売る努力をするな。売れていく仕組みをつくれ」

   多くの中小企業が職場に8、9時間居ることで月給(存在給、通勤給)を払うという考え
   方になってしまっています。

   どのような内容の労働であっても、動いてさえすれば給与を払うという考え方はない
   はずです。

   本来、仕事の内容は指定(指示)されるべきものであって、従業員はその指定された
   労働内容を、指定されたとおりに果たした労働行為に対して報酬が支払われるはず
   なのです。

   このために、労働内容は明確にされなければなりません。

   トップ、上司が指定する行為を指示・命令と呼び、命令によって実行された仕事の具体的
   な内容を、職務と表現します。

   このために従業員は、指定された職務を命令どおりに果たしたことの承認を受けなけ
   ればならず、この承認を得るための行為を報告といいます。

   したがって、仕事を果たすという言葉のなかには報告が存在するのです。

   業務手順を分かりやすくシンプルにすれば、マンパワーに頼らなくても、仕事の質が
   落ちません。

   つまり、マニュアルができれば、個人のスキルに頼らず、場当たりな行動を無くすことが
   でき、正しく組織が機能するようになり、継続して収益を生むようになります。

   マニュアルは

    (1)スペシャリゼーション(差別化)

    (2)シンプリフィケーション(単純化)

    (3)スタンダーディゼーション(標準化)

   の3点が条件となります。

   決めたことを決められた通り、継続実行していくには無理があってはなりません。

   継続した売上アップには、収益を確保するための体制である業務マニュアルを作成する
   ことです。

   誰がやっても、同じ結果がでてくるというシステムは、本人やスタッフがストレスを感じ
   ることなく、効率的・効果的に仕事を行える労働環境を整備することでもあるのです。

   そうではないのです。

   仕事を覚えないのは、スタッフの能力が原因なのではなく、覚えさせる機
   会(環境)を与えていなかっただけです。

   そのためには、業務(作業)の手順を指示する書類(マニュアル)がなくてはなりま
   せん。

   人は、言うべきことを完全に言うことができないものであり、さらにそれを繰り返し正確
   に再現することは、もっとむずかしくなっていきます。

   それに感情の起伏、たとえばその日の朝自宅を出てくるときの気分や、スタッフへの
   個人的な好き嫌いもそれぞれに違うから、完全な命令を口頭で出すことが不可能に近い
   のです。

   よって、業務を標準化するために、マニュアルという文書がわざわざ作られたのです。

   スタッフがより確実に、より楽な気分で仕事が進められるように工夫の限りを尽くした業
   務(作業)の標準化の方法が、マニュアルです。

    だから、このマニュアルを重視する経営を、「従業員をマニュアルでしばる非人間的
   経営システムだ」と批評することは、大きな間違いである。

   正しい業務(作業)のあり方は、口頭ではなく、文書のみでしか表現できないものなの
   です。

   マニュアルは、一定の段階までの絶対的な条件・方法を示すもので、そのあとはマニュ
   アルの範囲内でいくらでも能力は向上させていけます。

   また、マニュアルは、果たすべき役割を具体的に明示するもで、そこに書かれたことを完
   全に遂行できるかどうかは、本人の業務を遂行する能力の程度を示すバロメータにもな
   るのです。

   限られた人材を効率的・効果的に活用していく仕組みづくりを早急につくることが急務
   です。


  業務マニュアル作成準備

  業務マニュアルの作成の前に欠かせないのが準備です。

  この準備体制はすべての業務マニュアル作成の基本となります。

  ■マニュアル作成の事前準備

   1.マニュアルの目的・目標の明確化

     『目的(目指す方向、どのようにする)・目標(「何を」「どこまで・どの
     くらい」)』の設定

    (1)何を(What)・なぜ(Why)・どこまでの範囲で(Where)・どのような方法で
      (How to)・誰が(Who)・いつまでに(When)・コストは(How match)など
      を明確にする。

   2.マニュアル作成の体制を整える

     (1)マニュアル作成の優先順位

       ①緊急度、重要度がいちばん大きいものを最優先に作成します。

       ②対象業務(部門)の決定

       
     (2)体制(プロジェクトチーム)

       ①部門ごとに責任者・推進担当・作成担当を決める

       ②メンバーの作業分担の決定

     (3)マニュアル様式の検討と管理

       ①統一(構成、フォーマット、用字・用語の使い方)

       ②進捗状況の管理

   3.現状分析
     現在の業務がどのように行われているかを『業務の棚卸し』により的確に把握し、
      調査の事前準備において想定した課題点や改善方法を検証。

    (1)業務の棚卸しと一覧表の作成 

      業務問題点・リスクのを洗い出し(業務棚卸し)一覧表にまとめる

   4.現在の業務を見直す

     業務マニュアルの作成は業務改善(の手順)につながります。

     (1)その業務は本当に必要か

       ①業務の目的を説明出来るか

       ②管理者に説明出来ないものは止める

       ③やらないでよいことをやっていないか

     (2)もっと他に必要なものはないか

       ①必要なものでやられていないものは
        ないか

       ②将来のために今やるべきことはないか

     (3)どの業務に一番時間をかけているか

       ①時間は最大の原価(人件費)である

       ②それほど時間をかける必要があるか

       ③半分の時間で出来ないか

     (4)業務を細かく分けすぎていないか

       ①みんなで同じことをやっていないか

       ②集約化・専門化出来ないか

       ③分担業務の連携はうまく行われているか

     (5)仕事は平均に割り当てられているか

       ①特定の人に片寄っていないか

       ②忙しい時と暇な時とが極端でないか

     (6)能力を有効に活用しているか

       ①業務を処理するだけの技術を持っ
        ているか。

       ②能力以上、以下の業務をやらせて
        いないか

       ③もっと他に能力を生かせる業務はな
        いか

   5.情報の収集と選別

    対象部門・業務でのヒアリング等により、対象
    の担当者から課題点やニーズの情報を得る
    ことで、課題を洗い出す。

    (1)対象部門の日常業務

    (2)サービスや製品の品質

    (3)納期に関連して発生する問題点

    (4)お客様の声(クレーム、ニーズ)

    (5)従業員の声

   業務を標準化してマニュアルとして活用するまでには時間がかかります。

   しかし、中小企業にとってヒト・モノ・カネに限界がある状況の中で自社の成長を目指す
   ためには、業務をマニュアル化することです。

   そうでないと、いつまでたっても感と経験に依存した体質から抜け出すことができま
   せん。

   また、社員個人が保有しているせっかくのノウハウ・情報が会社のものにならないと
   いうことを危惧すべきです。 

   準備体制が整ったなら、業務マニュアルの作成に入ります。

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業務マニュアルの作成準備と作成手順

業務マニュアルの作成


  □業務マニュアルの作成手順

  1.マニュアルに記載する内容

    実際の職場では業務がただ単に「できる」レベルでは困ります。

    業務の効率や品質、個人情報流出防止など、最もよい方法で業務が遂行されなければ
    なりません。

    また、さまざまな製品を扱ったり、顧客からの要求ににも対応する必要がある
    でしょう。

    このように実務ではさまざまな事態が発生し、その全てに対応できる環境整備が求めら
    れます。

    マニュアルに記載すべき内容は業務手順の
    解説以外にも以下のことも必要となります。

   (1)帳票などの標準サンプル

     業務で使用する帳票、作成する帳票、取
     り扱う製品などの標準的なものをサンプ
     ルとして示しておく。

     ①実務で扱う主要なものをサンプルとして示
       し、実務を全く知らない新人でも、どのよう
       なものかをイメージできるようにする。

     ②帳票、製品、設備、道具など実物または

       写真で示す。

   (2)業務要領(コツ)

     業務効率、品質、CS、ES、個人情報管理等の
     面を実務担当者が業務を行う際に注意すべきことを解説する。

     ①「暗黙知」を「形式知」化する

     ②業務要領は自社のノウハウ

   (3)例外処理の方法

     マニュアルに記載された業務手順は、標準となる業務のやり方です。

     しかし、場合によってはイレギュラーな事態が発生し、標準の手順とは異なる取り
     扱いをしなければならないこともあるはずです。

     そうした場合については、あらかじめそれがわかっているのであれば、方法につい
     てもマニュアルに解説書とあえて記載しておきます。

     ①例外処理はミスにつながりやすい

     ②例外処理の対応は企業の競争力となる

     ③解説書にまとめることで、習得期間を短縮できる

   (4)対応事例

     接客、営業などお客様に応じた対応が求められる業務は、過去に発生したパター
     ンの具体的事例を示しておく。

     ①形式的な処理がしにくい接客、開発などの業務

     ②事例集を活用することで習得(教育)期間を短縮できる

     ③実務での成功・失敗事例をまとめる

   (5)チェックリスト

     業務を確実に行えるように、業務を行う本人またはリーダー(管理者が業務の状
     態をチェックするためのリストを準備しておく。

     ①マニュアルで定めた業務が標準どおり行われているかどうかを徹底

     ②確認すべき事項をリストアップできる様式であること

     ③仕事のモレ防止とともに業務の評価にも活用


  2.マニュアルの記述ポイント

    記述に際しては、「わかりやすい」「読みやすい」「活用しやすい」をを基準に進 
    めます。

    (1)重要な点、結論を初めに、次に各論・説明をを記述するするのが原則。

    (2)利用者の知識レベル、業務経験の度合いなど読み手のレベルに合わせた
       記述。

    (3)用字・用語は統一し、難しい用語には解説を付ける。

    (4)利用者が理解できるように、曖昧な表現は避ける。


  3.維持管理

   マニュアルには常に標準化された正しいことが記載されていることが基本であること
   から、常に適切な見直し(更新)を行います。

   (1)見直しのタイミング

     ①業務の変更時

      ・製品・サービスの変更が生じたとき

      ・組織や体制の変更時

      ・法令の制定や改正時

     ②定期、随時見直し

      ・毎年○月に見直す

      ・内容の間違い、追加事項に気づいた時

      ・新しい業務のやり方が提案された時

   (2)見直しの体制とルール

     ①部門ごとに体制とルールをつくる

     ②業務計画とマニュアル管理を連動させる

     ③更新履歴管理表に登録する

   (3)人事制度に組み込む

     ①評価制度のなかで活用

     ②昇格の判断基準にする


  成功は、「決めたことを決められた通り継続実行していくことだけ」計画(実行プラン)が
  ないから、やるべき優先順位が逆だったり、やらなくていいことを優先してやっている。

  継続して増収するには、収益を確保できる体制を構築しなければならない。

  また、あなたや社員がストレスを感じることなく、仕事を行える労働環境を整えることが必
  要です。

  だから業務のシステム化が必要なのです。

  誰がやっても、同じ結果がでてくるというシス
  テムをつくる。

  業務の標準化はマクドナルドやディズニーラン
  ドに見ることができます。

  業務システム化の代表であるマクドナルドは、
  どの店にいっても対応も味も変わらない。

  しかもその均一なサービスを提供している担い
  手は、アルバイトの社員。

  ディズニーの社員(キャスト)も9割がアルバイトで、
  マニュアルは300以上もある職種別にできている。

  つまりマニュアル化により、業務を標準化することで、経験の少ない社員でも十分仕事がで
  きるようにしている。

  中小企業の多くが日々の業務に追われ、マニュアルを作ったり、研修をする時間をとるこ
  とができません。

  結果、「仕事は自分で覚えるものだ」といって、新人をほったらかしにしてしまいます。

  自分で覚えないような人間は「だめなのだ」と考えがちになるのです。

  あなたなら、どのように業務の流れを指導するのか?

  あなたが直接掛かりきりで指導するのか?

  それとも、時間がたてば自然に仕事を覚えて、自分の代わりになってもらえるだろうと期
  待するのか。

  だが現実には、いつになっても仕事を覚えない。

  挙句に、説明するよりは、自分でやった方が早いので、自分でやってしまう。

  よって社員は、いつまでも仕事を覚えないという悪循環にはまる。

  このように、社員が育たないことを、当人の能力のせいであると決め付けてしまっているの
  です。

  仕事を覚えないのは、社員の能力が原因なのではなく、覚えさせる機会(環境)を与えてい
  なかっただけです。

  多くの会社では、毎週1 回、業務の改革・改善ミーティングと称し、現在の業務の問題点と
  解決策を、全員で議論しています。

  すると「日々の営業成績を璧にはろう!」「営業レポートの作成を自動化しよう!」「日報
  の記載を紙から、コンピュータで見られるようにしよう」と様々な改善策が社員から出さ
  れます。

  しかし、決して実行できないでいます。

  その理由を考えると、まず忙しいということである。関係する社員のスケジュールを
  合わせ、打ち合わせをするだけでも難しい状況です。

  さらに中長期にわたる業務改善は計画が必要になるので、計画を作成するのに時
  間がかかる。

  計画はできたが、計画を進めるためには常にチェック・コントロールするコーチが必要にな
  ってきます。

  「業務を改善しよう!」と声をあげるまではいいのだが、ほぽ100%実行できない。

  結局、効果が上がらないので、業務改革ミーティング自体、尻すぽみになり中止になってし
  まうのです。

  正しい業務(作業)のあり方は、口頭ではなく、文書のみでしか表現できないものなのです。

  簡単なものでいいから、仕事のやり方を明確に伝えていくマニュアルがあれば、短期間で仕
  事を覚えるようにできます。

  簡易マニュアルを作ることによって、考えもしなかったメリットを得ることができます。

    1.研修時間が短くても、効率的に商品を覚える。

    2.「仕事の品質」が「人の品質」によってあまり左右されなくなる。

    3.現状が明確化されるので、問題点を改善させることがスムーズである。

    4.「役割分担」* ができることで、トップ・幹部はより生産性の高い仕事に集中でき
      るようになる。

    5.役割分担の確立により無理なく増員ができる。

  完璧を目指したマニュアルづくりはムダです。

  マニュアルは完璧である必要はありません。

  要するに、仕事の内容を明確化して、第三者でも仕事の流れを短時間に把握できるように
  することが目的です。

  業務のシステム化に終着点はありません。

  事業を営む限り、常に改善し続けていくものです。

  マニュアルは、一定の段階までの絶対的な条件・方法を示すもので、そのあとはマニュアル
  の範囲内でいくらでも能力は向上させていけます。

  正しいマニュアルがあれば、毎日がトレーニング(教育)ということになり、しかも、そのマ
  ニュアルを実行することで収益(増収)が上がっていくのだから、やりがいがある。

  「決めたことを決められた通り、継続実行していく」には無理があってはなりません。

  マニュアルは誰でもわかるようにシンプルでなければならない。

  どうしたら途中で断念せず続けられ、どうしたら効果があがるのか。

  この答えを出すには、

  1)苦労して作り  2)何度も試してみて 3)修正を続ける である。

  あなたは事業を運営していく上で、誰に変わっても同品質に保てる業務の手順書(マニュ
  アル)がありますか?

  電話応対の仕方、業務事項の電話対応、セールストーク等、まず、身近なことからつく
  ってみましょう。

 

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静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

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2024年4月26日
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2024年4月25日
記事:「メルマガ709号更新しました。
2024年4月25日
記事:「社内体制の強化なしに会社の存続なし」 更新しました。
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