企業コンセプトを確立する

商品の短命化とビジネスチャンス

商品の短命化とビジネスチャンス

■ビジネスチャンスの重要性 
 デジタル化に伴う商品の高速化は短命化にも拍車がかかっています。
 近年、ビジネスのスピードは増す一方です。
 多くの企業が消費者のさまざまなニーズを掘り起こし、多様な商品を次々と世に送り出す
 半面、その寿命はどんどん短くなっています。

 2000年代に入り商品のライフサイクルが急速に短くなっている現状がよく分かります。
 中小企業経営者へのアンケートにおいても、商品ライフサイクルの短命化に75%もの
 社長が23年未満(12年未満、1年未満含む)と答えています。

 商品の短命化が進む中、主力事業や商品を転換する企業が相当数あります。
 日本政策金融公庫の調査では、過去10年の間に約半数の中小企業がこうした転換を一度
 以上経験しています。

 主力事業や商品の転換には相応の経営資源の投入が必要であり、大きなリスクをともない
 ます。
 しかし、商品の短命化が進行している現状をみると、既存の事業や商品に安住し続ける
 ことも、大きなリスクといえるでしょう。 

 このような時代に、企業が経営を安定させ、さらに発展していくためには、ビジネスチャンス
 をいち早くつかむことが重要となります。 
 ここでは、ビジネスチャンスをとらえる際の基本的な考え方と、ビジネスチャンスを発見
 するための具体的な視点について紹介していきます。

□ビジネスチャンスを理解する
 1.ビジネスチャンスとは 
  ここでは、ビジネスチャンスについて考えてみましょう。
  そもそも、見いだすべきビジネスチャンスとはどのようなものなのでしょうか。
  この点を理解するには、「商品」とそれを購入する「消費者ニーズ」の関係からビジネ
  スチャンスを考えると分かりやすいかもしれません。

  消費者が商品を購入するのは、自身の持つさまざまなニーズを充足するためです。
  従って、商品が消費者の持つニーズを完全に充足している姿が理想的な関係となります。 
  しかし、商品と消費者ニーズの現実の関係をみると、特定の商品が消費者ニーズを
  完全に充足しているケースはわずかです。

  むしろ、消費者は「若干の不満はあるものの、自身のニーズに一番近い商品なので
  購入する」といったケースが一般的です。
  例えば、「『購入した商品をすぐに使いたいのに、手元に届くのは3日後になる』
  『価格が高い』といったように『時間』や『価格』については不満があるが、ほかの
  商品よりはよいので、これを購入しよう」というように購入を決定している消費者が
  多いのです。 

  近年の消費者ニーズは、非常に多様化・複雑化しています。
  このため、商品の持つ機能や特性などは複雑化・高度化する消費者ニーズに追いつかず、
  商品と消費者ニーズの間に多くのギャップが存在しているのが実情といえるでしょう。 
  しかし、この商品と消費者ニーズの間にあるギャップにこそビジネスチャンスがある
  のです。

  すなわち、このギャップを発見し、ギャップを解消する(消費者ニーズをより充足させる)
  ような商品を提供することができれば、消費者からの支持を集めることが可能です
  (商品を販売し、売り上げを上げることができます)。
  簡単な例で考えてみましょう。

  「のどが渇いたので、今すぐ冷えたオレンジジュースをコップ1杯飲みたい」と考えて
  いる消費者に対して、その場でコップ1杯の冷えたオレンジジュースを販売している
  企業が存在していれば、商品と消費者ニーズの間にギャップはありません。

  しかし、アップルジュースを販売している企業しか存在しなければ、商品と消費者ニーズ
  の間にギャップ(ビジネスチャンス)が生じます。
  そこで、自社がオレンジジュースという商品を販売することで、消費者ニーズとの間の
  ギャップを解消することができます。

  また、ほかの企業がオレンジジュースを販売していても、1リットルのボトルサイズで
  販売している企業しか存在しなければ、コップ1杯分のオレンジジュースを販売する
  ことで、自社商品を購入してもらうことができます。 
  これは、ビジネスチャンスを単純化して考えた例です。

  実際には、「自社が収益を獲得することができるだけの市場性があるのか(ビジネス
  として成立し得るのか)」「競合他社の動向はどうであるのか」など、さまざまな
  側面から発見したビジネスチャンスについて検討することが必要です。

  しかし、商品と消費者ニーズの間にあるギャップこそがビジネスチャンスであり、
  そのギャップを埋めるような商品を消費者に販売することで売り上げを上げていく
  という視点が、企業のビジネスチャンスを生かす取り組みの基本となるのです。

 2.ビジネスチャンスの発生要因 
  ビジネスチャンスである商品と消費者ニーズの間にギャップが発生する理由を考えて
  みましょう。
  その理由はさまざまですが、大きく分類すると「消費者ニーズの把握の困難性」と
  「商品に関する制約要因の存在」に分けることができます。

  ◎消費者ニーズの把握の困難性 
   消費者ニーズを的確に把握することができず、結果として消費者ニーズを充足する
   ような商品を開発・販売できないケースがあります。 
   消費者ニーズは常に変化し続けています。

   こうした状況では、消費者ニーズに関する情報収集を十分に行っていない場合は
   もちろん、独自の市場調査を実施している企業でさえ、消費者ニーズを的確に把握
   することは非常に困難です。 

   例えば、マーケティングの専門部署を設け積極的に情報を収集している大企業でさえ、
   「消費者ニーズの読み違え」といった理由から事業に失敗するケースがあることを
   考えれば、消費者ニーズを把握することの困難性は容易に理解できるでしょう。 

   当然のことながら、消費者ニーズを的確に把握できなければ、消費者ニーズを完全に
   充足するような理想的な商品を開発・販売することはできません。
   つまり、消費者ニーズの把握の困難性という要因が、商品と消費者ニーズの間に
   ギャップを発生させているのです。

  ◎商品に関する制約要因の存在 
   消費者ニーズには気づいていても、そのニーズを充足するような商品を何らかの
   理由によって開発・販売できないケースがあります。
   そうした場合も商品と消費者ニーズの間にギャップが生じることになります。 
   制約要因にはさまざまなものがありますが、代表的なものとしては、技術面の制約
   要因があります。

   例えば、新規開発された機器などに多くみられる例ですが、その機器に必要となる
   技術を確立し、実際に商品(プロトタイプなど)の開発には成功しているものの、
   その商品を量産する技術が確立されていないため、商品として販売できないケースも
   あります。 

   また、コスト面の制約要因がある場合もあります。
   商品として販売することは可能であるものの、それには膨大なコストがかかり、
   商品の販売価格が高くなるため、仮に商品として販売したとしても、ほとんどの
   消費者がそれを購入しないようなケースです。 

   これらのケースにおいては、企業が商品と消費者ニーズの間にギャップがあることに
   気が付いていても、商品などが持つ制約要因の存在が、ビジネスチャンスをものにする
   ことを妨げているのです。

□事例に学ぶビジネスチャンスの見つけ方
 1.商品と消費者ニーズのギャップを知る 
  ここまで紹介したように、ビジネスチャンスを発見するためには、市場調査などを
  通じて得た消費者や競合他社などの外部環境に関する情報や、自社の商品や商品の
  製造プロセスなど内部要因に関する情報などを総合的に勘案しながら、商品と消費者
  ニーズの間に潜むギャップを発見することが必要となります。

  しかし、こうしたプロセスを経てもなお、ビジネスチャンスを発見するのは容易では
  ありません。
  従って以下では、事例を交えながら、商品と消費者ニーズの間に潜むギャップ(ビジネス
  チャンス)を発見する際に参考となる視点について紹介します。

 2.「ビジネスチャンスの発生要因」に注目する 
  ビジネスチャンスを発見する基本は、前述した「ビジネスチャンスの発生要因」で
  挙げた「消費者ニーズの把握」と「商品の制約要因」の2点に注目することにあります。
  以下では、それら2つの視点からビジネスチャンスを検討する際のポイントを紹介します。

  ◎消費者ニーズの影響要因に注目する 
   消費者ニーズに変化をもたらす影響要因が分かれば、消費者ニーズの動向を的確に
   把握できる可能性が高まります。
   しかし、実際には、消費者ニーズに影響を与える要因はさまざまであり、それら
   すべてを明確にすることは困難です。

   また、仮に把握できたとしても、影響要因は複雑に絡み合っていることから、個々の
   要因が消費者ニーズをどのように変化させるのかといった因果関係を明らかにする
   ことはほぼ不可能です。

   しかし、中には影響要因やそれが及ぼす影響を、比較的容易にとらえることができる
   ものもあります。
   代表的なものは、法律の改正といったさまざまな制度変更などです。

   制度変更には強制力をともなう法改正や、業界団体などが策定する「ガイドライン」な
   どのように法的拘束力はないものの、対象となる企業や個人の行動を事実上規定して
   しまうものもあります。

   こうした制度変更があれば、関連する企業や個人は変更された制度に従わなければ
   ならないわけですから、消費者ニーズの動向を容易に予測できる場合があるのです。
   古い例ですが、2003年に施行された「指定管理者制度による公的施設の管理業務の
   民間委託」は、公的施設の管理業務という新たな市場(ニーズ)を生み出しました。

   また、 2006年6月から施行された改正道路交通法による違法駐車取り締まりの
   民間委託は、「違法駐車の取り締まり業務」という新たな市場(ニーズ)を生み
   出しました。

   また、違法駐車取り締まり強化は、駐車場に対するニーズの拡大という変化を
   もたらしました。 
   消費者ニーズの動向を容易に予測できるこうした動きを早期にとらえることで、
   ビジネスチャンスとすることができます。

  ◎商品に関する制約要因の動向に注目する
   商品に関する制約要因を把握する際のキーワードは、ボトルネックにあります。
   ボトルネックとは、生産現場や、コンピューター業界などではよく使われる概念で、
   生産プロセスなどにおいて、全体の円滑な進行・発展の妨げとなるような制約要因
   のことをいいます。 

   例えば、「金型製作工程(A工程)→プレス工程(B工程)→溶接工程(C工程)→
   組立工程(D工程)→表面処理工程(E工程)」という金属プレス加工のプロセスが
   あるとします(各工程は流れ作業で進んでいきます)。

   この場合、B工程を除く各工程の処理速度が「1時間当たり5つ」で、B工程のみが
   「1時間当たり2つ」であれば、最終的にE工程を経た完成品は「1時間当たり2つ」
   しかできません。
   この場合、全体の処理速度を落としているB工程を、この金属プレス加工のプロセス
   における「ボトルネック」といいます。

   ボトルネックは大きな問題ですが、逆の見方をすると、ボトルネックさえ解消する
   ことができれば、生産性を劇的に改善することができます。 
   ここでは、生産プロセスを例に説明しましたが、ボトルネックという考え方は商品の
   開発などにおいても同様です。

   技術の進展などによりボトルネックが解消されることで、商品の質や性能などが
   飛躍的に向上し、従来の商品では充足できなかった消費者ニーズを充足できるように
   なる可能性があるのです。
   従って、ビジネスチャンスを検討する際には、「ボトルネック」というキーワードを
   常に念頭に置くことが必要といえるでしょう。

 3.「時間・場所・量」に注目する 
  企業の「消費者ニーズをとらえた商品づくり」といった取り組みをみると、商品の
  持つ機能や特性といった「商品面」や、消費動向に大きな影響を与える「価格面」に
  のみ注力しているケースが散見されます。

  その結果、商品面や価格面以外のさまざまな消費者ニーズが見落とされている場合が
  少なくありません。
  例えば「『必要なときに、必要な場所で、必要な量』の商品が欲しい」といった消費者
  ニーズです。 

  一見、当たり前の要素とも考えられがちですが、「時間・場所・量」といった要因に
  注目することで、ビジネスチャンスを発見できるケースも少なくありません。
  「時間」でいえば、宅配便業者が行っている荷物の配送時間帯を指定できる「時間指定
  配送」というサービスが代表的な例です。

  また、「量」という観点でいえば、近年増加している単身者や夫婦2人暮らしの高齢者層
  の需要に対応した小分けの総菜や、1食分ごとにパッキングした豆腐などがあります。 
  このように、「時間・場所・量」に注目することで、新たなビジネスチャンスを発見
  できる可能性があります。

 4.「業界の常識」に注目する 
  「業界の常識を打破しろ」とは、新たなビジネスチャンスをつかんだ企業の経営者などが
  よく口にする言葉です。
  確かに、業界内だけで通用するような商慣行や暗黙のルールといった「業界の常識」を
  打ち破ることでビジネスチャンスが広がる場合があります。

  例えば、近年、葬祭業界では料金体系とそこに含まれるサービスを事前に明確にした
  「葬儀パック」などを提供して人気を集めている企業がみられます。
  「消費者に対して料金を明確に伝える」ことは、普通に考えれば「商売のいろはの
  『い』」に相当する基本的な条件です。

  しかし、葬儀には、棺・祭壇・霊柩車や送迎用のバスなどさまざまな費用が別々に
  なっている上、それぞれにグレードがあり、そのグレードに応じて料金が異なるなど、
  料金体系が非常に複雑になっています。
  こうした料金体系は長い間「業界の常識」とされてきました。 

  一方、消費者(利用者)側からみると、葬儀会社を利用する機会はめったにないため、
  料金体系や費用相場に詳しくないこと、突然の出来事の中でゆっくりと費用などを確認
  している時間がないことなどの理由から、「料金が分かりにくい」「当初の説明よりも
  費用が多くかかっている気がする」というように料金面に不満を持つ消費者は少なく
  なかったのです。

  こうした中、業界の常識を打ち破り、料金を明確にしている企業が消費者からの人気を
  集めているのです。 
  こうした視点からビジネスチャンスを発見する際に問題となるのが、業界の常識に
  気づきにくい場合が多いことです。

  一つの業界内に長く属していればいるほど、業界の常識に慣れてしまい、それを当たり前
  のことと考え、見落としてしまうのです。 
  そんなときに有効なのが、ほかの業界と自らの業界を比較してみることです。

  そうすることによって、「業界の常識」が持つ盲点に気づくきっかけとなることが
  あります。
  葬祭業界の例も、ほかの業界と比較してみると、不明確な料金体系という「業界の常識」
  に容易に気づくことができるでしょう。

 5.トレンドの「深掘り」を行ってみる 
  消費者は、ある商品によって自身の持つニーズが満たされるといったんはそれで満足
  します。
  しかし、そうした商品を使用するなどして「経験」してしまうと、消費者ニーズはより
  高度なものへとシフトする傾向があります。

  先に紹介したオレンジジュースの例でいえば、最初は、「オレンジ味のする飲み物が
  欲しい」と考え、果汁10%のオレンジジュースで満足していたものが、今度は「より
  健康的なものがよい」と考え、果汁100%のオレンジジュースへとニーズがシフトする。
  最終的には「果物本来の持つ、新鮮さが味わえるものがよい」と考え、絞りたての
  フレッシュジュースへとニーズが変化するようなケースです。

  また、消費者ニーズは、高度化する過程で多様化が進むことも少なくありません。
  例えば、フレッシュジュースへのニーズが高まる一方で、「コップ1杯じゃ物足りない
  ので、もう少し量の多いジュースが欲しい」というニーズや「○○産のオレンジを使った
  ジュースが欲しい」といったニーズが出てくることが考えられます。

  こうした高度化・多様化する消費者ニーズをとらえ、ビジネスチャンスにつなげていく
  ためには、消費者ニーズのトレンドを「深掘り」した商品を販売することが有効です。

  例えば、コピー機の分野においては、近年、従来の商品と比較して「コピーのスピードが
  速い」「カラーコピーがきれい」「コピーにかかるコストが安い」といったさまざまな
  特徴を「深掘り」した商品が、多様化する消費者ニーズをとらえています。

 6.「逆バリ」を行ってみる 
  先の例とは逆に、市場で主流とみられる消費者ニーズに逆らうような商品を開発する
  ことによって、ビジネスチャンスを見いだすケースもあります。
  「逆バリ」で成功を収めたケースとしては、NTTドコモが1999年10月に発売を開始
  した携帯電話端末「らくらくホン」シリーズがあります。

  当時、NTTドコモは「iモード」を99年2月にスタートさせるなど、サービスの多様化を
  急速に進めていた時期であり、それにともなって携帯電話端末も多機能化が急速に
  進んでいました。

  こうした中で、NTTドコモは、iモード機能を付けないなど機能の単純化を進めた「逆バリ」
  の携帯電話端末「らくらくホン」シリーズを販売しました。
  この「らくらくホン」シリーズは、機器類の操作が苦手な高齢者層を中心に人気を集め、
  2007年4月には累計販売台数1000万台を突破するほどのヒット商品となりました。 

  また、発泡酒やエンドウ豆などを使用した第3のビールが登場するなど、価格の低下が
  著しいビール業界において、最近では通常のビールに付加価値を付けた高額なプレミアム
  ビールが人気を集めているのもこうした例の一つといえるでしょう。
  「逆バリ」商品が人気を集める背景には、消費者ニーズの多様化があります。

  一つのカテゴリーの商品群の中で、質の高い商品を好んで購入する消費者もいれば、
  安価な商品を好む消費者もいます。
  また、同じ消費者でもその商品を購入・利用する状況によって選択する商品は異なります。

  例えば、前述したビール系飲料でみると、平日は安価な発泡酒で済ませるが、週末は
  ゆっくりと食事を楽しみながらプレミアムビールを飲む人がいます。
  「逆バリ」の商品は当該市場におけるメーン商品となることは少ないものの、一定の
  市場を確実にキャッチすることができるのです。

  ここで紹介したものは、商品と消費者ニーズの間に潜むギャップを発見する際に参考となる
  視点であり、こうした視点から検討をするだけで、簡単にビジネスチャンスを発見できる
  わけではありません。

  あくまで、前項で紹介した「基本」に沿って、消費者ニーズや市場動向などの情報を
  収集した上で、こうした視点を参考にしながら新たなビジネスチャンスについて検討
  してみるとよいでしょう。

□ビジネスチャンスを逸しないための経営 
 ここでは、ビジネスチャンスの発見方法についていくつかの視点を紹介してきました。
 しかし、実際には、自社の経営資源に見合った実現可能なビジネスチャンスの獲得と
 いうものは、そうそう都合よくつかめるものではありません。

 ビジネスチャンスをつかむ上でまず重要なことは、ビジネスチャンスをビジネスチャンス
 として認識できずにビジネスチャンスを見落としてしまわないように、
  ・経営者が前述のような方法で積極的かつ敏感にビジネスチャンスを模索し続ける
  ・経営者の下に自社や業界の情報が集まってくる体制をつくりあげる
 ことです。 

 また、そうして見いだしたビジネスチャンスを事業化したとしても、収益を生むビジネス
 に育て上げることは決して容易ではありません。
 従って、ビジネスチャンスを見いだしたときにいち早く事業化できるよう、また、失敗
 しても経営が傾くことのないよう、本業で安定した収益を確保しておくことが求められます。


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企業コンセプトを確立する

製品・サービス戦略

製品・サービス戦略

  ■製品・サービスの独自性(差別化要因)を作る 
   日本で作れるものは、今では中国などのアジアの国々で簡単に作れるようになった。
   日本の加工技術が世界に輸出されたからですが、そのことが裏目に出ている現実
   があります。
   日本の技術の要、ノウハウまでもが真似されてしまっていることが実態です。
   例えば、日本の大手電機メーカーが、アジア地域を拠点とするある工場に生産
   委託してテレビを造っていた。
   しかし、その製造方法を習得した現地会社は、同じ製造ラインで造ったテレビを
   別のブランド名で、それもなんと日本に輸出しているという。
   もともと日本から渡った技術が真似され、日本にフィードバックされ、市場を
   乱す原因となってしまったのです。 

   日本でもアジアでも、どの企業もある一定の技術レベルやサービスレベルは持って
   います。
   持っていなければ、持っている会社とコラボレーションすれば良いわけです。
   だから、世の中は似たような製品・サービスだらけになってしまったのです。 
   こうした状況の中での問題は、このように増えた供給元(メーカーやサービス提供者)
   がすべて経済的に成り立つかということです。
   つまり、供給過剰の問題です。
   だから今では、大手メーカーといえども企業合併を繰り返して、資本力や技術の
   相乗効果を利用して競争力をつけようとしているのです。 

   企業が大きいことは確かに良い点もありますが、大きさだけでは生き残っていけ
   ません。
   なぜならば、さらに市場シェアの大きな会社が登場すればそれで終わりだからです。
   そこで、重要とるのが、会社の独自性や差別化となる要因です。
   製品やサービスを開発する場合には、その会社しかできない独自性を持つことが
   重要なのです。
   そうでなければ、資本力のある会社が、同じ製品をすぐに作り出して市場を制して
   しまいます。

   食品メーカーの競争などはその良い例でしょう。 
   その会社しかできない差別化要因をもつことで、競争力がつくのです。
   また、差別化要因が会社の位置づけとして決定し、顧客への浸透が進みます。
   つまりブランド化です。
   ですからあなたの会社では、何を差別化要因とするのかを徹底的に考えてもらいたい
   のです。
   マーケティングとは、差別化要因を見つけ、それを具現化する作業と言い換える
   こともできるのです。

  コンセプトをつくる
   製品、サービスを独自化するには、コンセプトづくりが大事です。 
   コンセプトとは、直訳すると「概念」と言えます。
   ひと言で言えば、“ものごとを生みだすワンメッセージ”です。
   「分かりやすいユニークな特徴をワンメッセージで表した、新たな気づきを
   起こさせるもの」。 
   すべてがこれに集約できます。
   なぜなら、分かりやすくなければ伝わらず、さらにユニークでなければ多くの人は
   気づくことはありません。
   評判にならないし、多くの社員を動かすこともできません。
   この定義を内包したワンメッセージがコンセプトといえます。 
   例えば、今や工業製品や電化製品の分野などでは、どの会社でも技術力があり、
   製造能力もあり、品質が高いものを生産することは可能だと言えます。

   自動車業界も見れば分かる通り、1社がある新車で大ヒットをとばせば、
   半年も経たないうちに他社が同じ仕様の自動車を投入してきます。 
   すると、もはや自動車メーカーの競争力の源泉は、技術力ではなく、デザイン
   であったり、ブランド力であったり、その自動車のフィーリングが大きな部分を
   占めることになります。
   このような他社には真似が難しいソフト(アイデア) 部分ならば、独自の差別化
   をすることが可能です。

  □コンセプトづくりの3つのポイント 
   コンセプトづくりのポイントは、3つのポイントを押さえて検討することにあります。 
   ひとつは、ターゲット。
   これは、購入するべき顧客層は誰かということです。
   誰が購入すると最も高い価値を感じるかを考えてみましょう。 
   2つめは、利便性です。
   マーケティングではベネフィットといっています。
   これは、商品、サービスを得ることで、一番の利便性はどこにあるかを考える
   ことです。

   購入する目的は、何らかの利便性を得るための消費活動であるので、それを追求
   するのです。 
   しかし、ここで注意しなければならないのは、実用的な利便性よりも、その背後にある
   購入の心理を読むということです。
   これは、アンケート調査結果なども参考にして、未来の種をつかみましょう。 
   最後の3つめは、気づきのキーワードです。
   これは、コンセプトは意外性が高くないと一般には浸透しません。
   だから、多くの消費者が共感する、意外性のあるキーワードを導き出してみるのです。 
   このワードは、最終的にプロモーション展開をする時に参考となります。

   このように3つのポイント、ターゲット、ベネフィット、気づきのキーワードを考える
   ことで1つのコンセプトの柱が整理されます。
   それをワンワードで置きかえてみれば、コンセプトになってきます。
   少し古い例ですが、任天堂 Wiiの開発コンセプトを考えてみます。 

   1.ターゲット:幼児〜小中学生層から大人まで包括する 
   2.ベネフィット:家族のみんなが楽しめる面白いゲーム 
   3.キーワード:お母さん 
   4.コンセプト:“お母さんに嫌われないゲーム”

  □コンセプトを理解しよう 
   コンセプトづくりは、製品開発やサービス開発の要であす。
   このコンセプトが明確になることで、マーケティングプロモーションやチャネル
   開発が分かりやすくなります。 
   例えば、広告コピーの考えの背景となるのが、このコンセプトになるのです。
   また、重点的に強化するチャネルなども、このコンセプトが柱になっています。
   だから、多くの人が携わるマーケティングでは、最初のコンセプトづくりが重要な
   ポイントとなるのです。 
   地面に深い根をおろすことで、大木となるように、コンセプトは、深い根の柱であり、
   これができれば、あとは大きくなるのを待つだけなのです。

  □パッケージ力を高める 
   パッケージとは、もともと梱包や包装することを言いますが、もう少し大きな意味で
   捉えてみましょう。
   ここでは、様々な技術、要素を1つのまとまり、固まりとして見せていくことができる
   という意味で考えるといいでしょう。 
   例えば、同じ技術であるならば、顧客は当然魅力的に映るほうの商品を選びます。
   そこで様々な技術、サービスを集めて、このようにすれば活用できるということを
   世の中に問わなければなりません。
   これがライフスタイルの提案です。 

   例えば、アップル社の「iPod」について考えてみましょう。 
   アップルのデジタル機器が入っている箱は、黒をベースに、製品写真、ロゴが
   シンプルに配置され、非常におしゃれです。
   彼らは、箱まで含めて商品であると考えており、そこには当然友達にプレゼント
   するとか、子供の記念日にあげるといった需要も含まれています。
   商品を貰ったときに、思わず喜んでしまうという、サプライズまでを予想している
   のです。 
   また、 iPodそのものが非常におしゃれです。

   品質ももちろん大事だが、それ以上にデザイン性が問われる時代なのです。
   黒と白を基調としたカラーリングは、他人に見せてもかっこいいと思わせる、
   感性に訴えかけるフォルムをしています。 
   さらに、ライフスタイルの提案は、iPodだけの提案だけにとどまりません。
   iPodに音楽データを転送するためのパソコン上で動くソフトウェア「i-Tunes
   (音楽管理ソフト:アイチューンズ) 」を用意したり、音楽をネット上から購入
   するための「iTunesミュージックストア」の立ち上げなど、トータルなライフスタイル
   の提案をしている点も重要です。 
   これら iPod、iTunes、iTunesミュージックストアは、アップル社が2001年に
   “デジタルハブ”というグランドデザインを描いており、この構想がベースになった
   ようです。 

   デジタルハブ構想とは、 “パソコンは画面サイズ、処理能力、扱いやすさなど、 
   どれをとっても優位であり、将来的にはパソコンをコアに周辺機器が連携されて
   いくと予想した将来像”です。
   この構想を元に新規のビジネスモデルを次々と打ち出してきたのが、iPodと
   その周辺サービスなのです。 

   アップルは、このパッケージという概念をよく理解しており、消費者のニーズを
   満たす便利な商品とサービスをワンパッケージで提案しているのです。 
   このパッケージとは、これからさらに重要なキーワードになると思われるので、
   次にもう少し詳しく説明します。
   商品、サービスをどういう形で提供するか 企業が顧客に商品やサービスを提供する
   形には、分類のしかたにより様々な分け方があるが、顧客ニーズから考えた切り口は
   3つあると考えています。
   1つは、部品や素材で提供するパーツ型。
   そして、2つめは、ソリューションで提供するやり方。
   最後の3つめは、パッケージで提供するやり方。

    パーツ型:最終商品、製品ではないが、その商品、製品の元となる
         部品や材料を提供するパターン。          
         ゴム素材や食品の原材料、電子機器のパーツなどがこの
         部類に入るでしょう。

    ソリューション型:1つの商品、製品、サービスだけでは完結せず、
             得意な部分を持ち寄って複数の組み合わせで
             提供するパターン。
             これをソリューション型と定義します。
             課題解決型とも言え、パッケージ型と違うのは、
             あくまでも解決、改善に向けてのそれぞれの
             立場での提供という従来の枠組みを出ない
             ところにあります。これは、IT系メーカーが
             機器を持ち寄ってソリューション提供する
             パターンなど代表的なものですが、顧客サー
             ビス、アフターフォローは、それぞれの会社が
             個別に請け負うことになります。

    パッケージ型:モノだけの提供ではなく、その製品の活用方法など
           のアフターサービスも含めたものをワンストップで
           提供するパターン。
           これをパッケージ型と定義します。
           アップルは、まさにこのパッケージ型であり、機器の
           提供からアフターフォロー、活用の方法の提案まで
           を、1企業だけで実現しているのです。

   このようにモノを提供する場合、3つの型のどれか、あるいは複合して提供する
   ことになります。
   近年では、パッケージ型の優位性が年々高まってきています。
   なぜなら、私たちの生活を彩るためには、1つの製品、1つの商品だけでは不十分
   であり、すべてがグループとして機能する必要があるからです。 
   例えば、あなたが映画館のように自宅でホームエンターテインメントを楽しみたい
   とすれば、映画を映すプロジェクター、音や映像を再生する機器としてアンプや
   スピーカー、また、映像を映すスクリーン、さらには肝心の映画ソフトなど
   あらゆる要素の機器、機材が必要になります。 
   これをユーザーがすべて自分で調達し、自分でセッティングしてやっと映画が
   見られる環境を作り出せるのです。

   オーディオマニアならともかく、一般の、オーディオにあまり興味のない人達が
   すぐに映画館と同じ環境をつくり出すことは不可能です。 
   最終目的は1つだけ、映画を鑑賞して喜びたい、満足したいだけでなのです。
   それなのに、そこに至る過程は困難なのです。
   だから、最終的にユーザーは、簡易的に映画館の環境がつくり出せるパッケージ商品
   や個々の機器をパッケージにして提案している大型家電量販店などにますます
   魅力を感じるようになったのです。 

   これは、製品の話に限ったことではありません。
   ショッピングセンター“ららぽーと”ににある食堂はビュッフェ形式で、あらゆる
   食のニーズを満たす食堂の店舗が入っています。(しかし今はコロナウィルス
   により中止となっています。

   ここでは、食べたいものを各店舗の調理場窓口に行って注文する。
   食べる席は自由であり、好きな食べものを好きなところで食べることができるのです。 
   これなども、食べるという行為をパッケージにして、1カ所で好きなものを注文
   できることを売りにしたサービスといえるでしょう。
   例えば、ラーメンを食べた後に、少し甘いものを食べたいこともあるでしょう。
   そういう時、席を移さずに、1カ所でそのまま食べることができるのだから便利
   になったものです。
   しかも、入っている店舗は、全国から選ばれた名だたるお店なのです。 
   よくあるスーパーマーケットのフードコートとはまったく違うコンセプトで運営
   されている。 

   今後の製品開発やサービスは、パッケージで提案できる企業が優勢になります。
   また、パッケージで提案できないならば、複数の企業が自社製品を持ち寄って
   パッケージにして提案すればよいのです。
   「ワンパッケージ」 や「ワンストップ」 はこれからの消費で重要なキーワード
   になっていくでしょう。

  □付加価値を高めた企業が有利 
   商品やサービスの提供方法に3つの型があることを提示しましたが、結局デジタル
   ミュージック市場でアップルが有利になったのは、他社にまさる付加価値感を提供
   したからです。
   付加価値とは、希少性であったり、差異性であり、期待性のことです。
   この人しかできない、この会社しかできないという希少性。
   そして、この製品はほかと違うという差異性。
   また、この製品を触るとワクワクするとか、成長していることが分かるなどの期待性。
   この3つの価値観が付加価値となって伝わったからヒットしたのです。 
   あなたの会社でも、 「パッケージ」 を念頭に置きながら、付加価値を高めた製品、
   サービスを開発できないか考えてもらいたい。

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企業コンセプトを確立する

自社の価値と商品の価値

「いいものを安く」をやめよう
 

  ■価値を高める
   1.伝えなければビジネスは始まらない

     (1)売るための説明責任
       よく言われる言葉に、「日本の技術は一流だけれども、営業は三流だ」があります。

       実際、日本よりも技術力の低い国に競り負けているケースは枚挙にいとまがない。

       つまり、今までは営業力がなくても技術力で売れていたのです。

       しかし、今では海外では売り負けています。

       外国人は、自分の疑問や主張をどんどん前面に出す。

       はっきりと言いたいことを言い、聞きたいことを聞いてくる。

       売り手側も顧客に対して、自社の優位性を猛アピールしているのです。

       日本人は、この点が弱い。

       顧客に価値を提供する際にも同じ弱さがある。

       伝える情報に工夫がなく、顧客が判断するために必要な自社の優位性を伝える
       情報を伝え切れず、競合他社に負けているケースが多いのです。

       たとえば、ある飲食店の経営者が、次のような実験を行った。

        顧客に同じ料理を提供する。
        その際に、提供の方法を変えて出した。
        一つは、何も言わないでスッと料理と提供したのに対し、もう一つは、「この
        野菜は北海道の○○産で、バターも北海道の△△を使ってソテーしたものです」
        など素材や調理方法を説明して料理を提供した。

       果たして顧客は、どちらの料理を「おいしい」と判断したのだろうか?

       答えは明白で、説明をされて提供された料理のほうである。

       それはなぜでしょう?

       顧客は「説明を受けた料理」が「スッと出された料理」と違うものだと判断した
       からです。

       なぜ顧客は、同じ料理を違うものとして判断したのか?

       それは、顧客に価値ある情報を与えたからです。

       顧客は「どちらがおいしいか」という選択を迫られたとき、「説明された情報」
       を受け取り、「味」ではなく「情報」によって選択を行ったのだ。

       差別化は、常に「顧客の頭の中」で行われる。

       売る側には、提供する価値の「説明責任」がある。

       この説明責任を果たさなければ、差別化はできない。

       価値ある情報を提供するからこそ、差別化につながるのです。

     (2)商品・サービスの値段は「価値」で決まる
       米アップル社のように、「企画・開発・デザイン」「ソリューション」を行って
       いる企業は、高付加価値の商品・サービスが提供できる。

       高付加価値を提供できるからこそ、高価格が維持できているのです。

       国内を見てみると、こんなに高付加価値とおもわれる商品があるのに、価格に転嫁
       できていない。

       過去の「いいものを安く」というスローガンが、今でも当たり前のようにいわれて
       いる。

       商品・サービスの値段について、考え方をいくつか取り上げてみましょう。
        ①「モノ」としての商品の値段=製造原価+利益
          基本は、製造原価に利益を乗せたものになる。
          顧客と直接取り引きが可能であるものの、下請け・孫請けなど、顧客と
          の距離が遠くなると利益額は低下する。

        ②企画・開発・デザインの値段=ブランド力
          ブランド力を培うことができれば、高価格を維持できます。               
          ルイ・ヴィトンやポルシェなどは付加価値が高く、企業としての利益率
          も高い。

        ③販売の値段=需給のバランス
          マーケットの需給バランスが大きく影響します。
          不足マーケットでは価格が上がり、供給過剰マーケットでは下がる。
          ある機械メーカーの商品は、日本では競合メーカーがあり300万円で
          しか売れなかった。
          しかし、アメリカでは供給するメーカーがなく、900万円で売れたと
          いう事例もある。

        ④「コト(ソリューション)の値段=問題解決力
          顧客に対する問題解決の大きさで、価格が決まる。
          顧客が支払う価格が1億円でも、提供する価値が100億円であれば、
          1億円でも高くない。

       ①〜④のように、商品・サービスの値段は「価値」で決まります。

       自社の商品・サービスの付加価値を高めていくために、自社はどのような
       戦略をとって価値を生み出していくか、

     (3)戦略的に「売れる仕組み」をつくる
       中小企業の中には、非常に高い技術力を保有している。

       しかし、持っている技術を売る力(営業力)が弱い上、国内では競合他社が
       おり、値段も叩き合いになっていいます。

       そこで、ある会社は自社の強み(技術力)を生かせるマーケットを、国内で
       はなく海外に見いだした。

       そして、その会社は技術を提供する代わりに、弱みである営業力を補うた
       めに現地企業と提携し、不足機能を強化した。

       海外にこの会社と同様の製品をつくることができる企業が少なく、高付加価
       値の製品を少量生産し、利益を出す仕組みを構築したのです。

     (4)「モノ」の視点から「コト」の視点への転換
       従来の企業の価値提供と言えば、顧客に商品やサービス・技術そのものを
       提供するだけでした。

       現在もまだまだモノづくりに集中して、それによって顧客を満足させようとす
       る発想から抜け出せていないケースが少なくありません。

       しかし、これからの価値提供は、「生産したモノを通じて、どのようなコト(お
       客様にとってのメリット)を提供できるのかを創造すること」が重要視されて 
       います。

       行動や思考、思い出(体験)などのソフト面に価値を求めるように変化して
       きているのです。

       この、「価値をつくり出すための商品提供」という視点が必要である。

       商品やサービスを単なる“モノ”として売るのではなく、“コト(価値)”を売る
       ことに視点を転換させることが急務となっています。

  □顧客が求める価値を提供
   1.顧客を置き去りにした競争からの脱皮
     日本製のテレビは間違いなく高品質・多機能・高性能です。

     しかし、儲かっていないのが実情だ。

     これは家電に限ったことではなく、多くの業界で「高性能、多機能だけど低収
     益」、あるいは「高品質なのに低収益」という日本の商品・サービスをよく見か
     けます。

     高い性能や品質が「高収益」につながっていないのです。

     ここで言えることは、企業が提供している高性能・多機能・高品質に対して、顧
     客が価値を感じていないということです。

     「多くのお客さまの要望に応えよう」「ライバルにあって自社にない機能だから 
     追加しよう」などの考えで、開発や機能の追加が行われていると考えられる。

     ここで起こる最悪のシナリオは同質化だ。

     “違っていること”をしているようで、じつは同じコトを提供してしまうのです。

     顧客が望まない強みは、どれほどさまざまなスペックを付け加えても差別化に
     なり得ないのです。

     したがって、自社にはなく、ライバルが提供している価値であっても、顧客が望
     まないものは捨てることが大事である。

     やるべきことは、顧客が自社を選んでくれる理由を明確にし、それを磨くことで
     す。

   2.顧客は課題をつかんでいない
     自社が顧客に提案を行った際のことを振り返ってみてほしい。

     顧客は「自社に何が必要なのか」、つまり、「自らの課題」に気付いていたで
     しょうか?

     顧客は多くの要望を口にするが、それが本当のニーズかと言えば、そうではな
     いのです。

     時には、その要望自体が間違っていることもある。

     「要望=ニーズ」ではない。

     だから、売る側としては、客観的に顧客を見つめ、「顧客が気付いていない問 
     題(潜在的ニーズ)にいち早く気付くこと」が必要です。

     それが、「差別化」と「高収益」につながってきます。

     このことに気付けない企業は永遠に「低収益」体質が続くことになります。

     ただ顧客の要望に応えるだけでは、満足も不満もないゼロの状態である。

     顧客の要望に100パーセント応えるだけでは、差別化にならない。

     「顧客の言う通りにした」、ただそれだけの話である。

     これでは、ライバルと同じ(同質化)だ。

     顧客から見ると、どの企業も同じように要望に応えてくれているので、違いが
     分からず、「取引する(付き合う)のはどこでもよい」となってしまう。

     もちろん、顧客の要望にすら応えられない企業に商機はない。

     大事なことは、顧客の要望(期待値)を超えていくことです。

     それによって、初めて差別化が始まる。

     期待値を超えるために必要なことは、「顧客の課題をつかむ」ことである。

     しかし、単に「御社(あなた)の課題は何ですか?」と聞いても、的確に課題を
     つかみ、明確に答えてくれる人は非常に少ないでしょう。

     また、誰もが顧客の話を聞いて、問題点に気付けるわけでもありません。

     問題点に気付くためには、顧客が持っている「判断基準」を知っておかなけれ
     ばならない。

     そうでなければ、問題点を見出すことができないからです。

     さらに、顧客が問題だと思っている“部分”だけではなく、それを取り巻く全体を
     見る目が必要となります。

     そして、要望に応えた後の「全体に及ぼす効果」を見せることがポイントだ。

     これができれば、顧客は「価格は高いけれど、あなたから買う」と言うでしょう。

     なぜなら、自社の「提供した価値」がライバルの提供した価値を上回るからです。

     つまり、目先のメリットより将来のメリットが大きいと示すことが、最も効果的な
     のです。

     顧客は、現在取引していない企業から自社の課題に気付かされて初めて、現 
     在の取引先よりも優れた企業の存在に気付くのです。

     顧客の言いなりになるのではなく、顧客の課題を徹底的に考え抜き、「自社な 
     らではの価値(強み)」を提供することは、売る側の責任である。

     また、こうした顧客の問題点に気付くことのできる社員を育成することが、企業
     体質を強化していくのです。

   3.戦うポジションを価格から価値へ変える
     顧客は、目的ごとに付き合う先を決めている。

     安く買いたいときはあの会社、難易度の高いものはこの会社などと使い分け
     ています。

     顧客への価値提供の第一ポイントは、顧客における、自社のポジションをどう
     つくるかということになる。

     このポジションづくりが将来、大きな差別化につながるのです。

     もちろんここでは「この企業(人)は、高付加価値を提供してくれる」と認識して
     もらわなければならない。

     つまり「顧客が望み、競合相手が提供できない、自社が提供できる強み」を示
     すことです。

     そのためには、ファーストコンタクトで提供する情報が大事だ。

     顧客のマインドの中に、自社をどう位置づけるかを考えて、ファーストコンタクト
     の情報提供に工夫を凝らすことが必要となるのです。

     このひと手間が、将来の高収益を生むのです。

     “楽な道”に成果は落ちていない。
    
  □戦略的にメッセージを発信する
   1.強みをメッセージ化
     初めに、「伝えなければビジネスは始まらない」と述べたが、顧客に伝えなけ
     ればならないメッセージの本質は「自社の強み」です。

     メッセージは顧客に伝わって初めて顧客の行動につながる。

     差別化は、顧客の頭の中で行われており、メッセージで大切なことは「情報が
     顧客に伝わり、価値が上がること」です。

     発信するメッセージで、集まる顧客が変わります。

     安さを訴求するメッセージを発信すれば、安さを求める顧客が集まってくる。

     そのため付き合いたい顧客を選定し、メッセージを発信しなければ戦略と実行
     が乖離してしまう。

   2.同質化から脱却せよ
     多くの企業がメッセージを発信しているが、現状では同質化が起こっている。

     どの会社もライバル会社を研究し、取り組んでいないことがあれば、すぐに取
     り入れているためです。

     こうした「いたちごっこ」により、同質化が加速しているのです。

     例えば量販店では、チラシ合戦が行われ、ライバルよりも安く商品を提供しよ  
     うと頻繁に値下げを繰り返し、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)、すなわち
     毎日安いという発信を行っている。

     ドラッグストアやホームセンターでもEDLPをウリにしはじめている。

     差別化を行っているつもりが、同質化を加速させているのです。

     これでは顧客は店や商品の違いが分からず、安ければどこでもよいという状
     態になってしまっているのです。

     顧客はこのような状態に慣れてしまい、顧客の判断基準が「安さ」になってい
     るのが現状だ。

   3.独自性のあるメッセージを出す
     顧客に情報を発信しなければ、情報は伝わらない。

     一方で、顧客は企業が発信する情報をいち早くキャッチし、自分の考えを発信
     している。

     FacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のクチコミに 
     より、情報は放射線状に拡散する。

     1人の顧客が発信する情報の影響力は大きく、見ず知らずの人が発信した情
     報であっても参考にされてしまう。

     したがって、企業が顧客に対して提供する情報やベネフィット(顧客の利便性)
     を間違って発信してしまうと、誤った形で拡散してしまう。

     SNSを駆使する顧客は、自社とライバルを比較し、最適な店(会社)はどこか
     を判断しているのです。

     特徴的なメッセージを発信しているのは、西友の『KY TIMES』で、同社はこ
     れを「チラシを超えた情報誌」と位置づけており、単なる価格訴求型のチラシで
     はなく、新聞のように読み物化(ニュースレター)している。

     季節に合った話題を取り上げ、特集記事が中心となっている。

     業界で月2〜3回発行するところを月1回(700万部)としたことで、チラシのコ
     ストが45%減となった。

     読み物としての情報提供により、顧客の興味を引くことで他社と差別化できて
     おり、まさに「捨てられないチラシ」と言える。

     こうした事例のように、時代に合った情報提供が必要である。

     「顧客が受け入れるものは何か」「反応率が上がるメッセージは何か」を、ライ
     バルとの同質化競争でなく、顧客中心で考えていかねばならない。

   4.提供する価値で勝負する
     発信するメッセージで行うべきは非価格競争であり、「提供する価値」で勝負す
     ることです。

     ある中小企業では、安さを軸にした情報発信を行っていた。

     しかし年々、反応率が減少し、何千件とFAXを送っても、反応は数件にも満た
     ない状況が続いていた。

     すでに記載した通り、顧客が安さに慣れてしまっていたためだ。

     そこでこの会社は、「自社がどのような会社なのか」「商品・サービスに対する
     思い・考え方」を前面に打ち出す方法に転換した。

     転換のきっかけは、顧客から電話がかかってきたことだ。

     この会社の営業担当者は、安さのアピールだけでなく、自社の商品・サービス
     の考え方を独自に加えて情報発信していた。

     それを見た、一度も訪問したことのない顧客から、「いつも丁寧なご連絡あり
     がとうございます。担当者が変わりましたので、今後は○○にお願いします。       
     今後ともよろしくお願いします」という電話がかかってきたのだ。

     安さだけをアピールしていたFAXに対しては、「もうFAXを送らないでくださ
     い」という電話しかかかってこなかった。

     だが、この担当者が送ったFAXは、顧客に「ほかの会社とは違う。とても丁寧
     な会社だ」と好意的に評価されたのである。

     その後、この方法を全社で導入すると、顧客からの反応率は10倍以上に増
     加した。

     想像以上の成果だった。

     顧客は、「会社の顧客に対する姿勢」「商品・サービスに対する考え方」に反応
     する。

    5.メッセージは戦略的に発信
     会社は、顧客に対するメッセージを戦略的に発信しなければならない。

     世の中の変化や顧客の変化をつかみ、「今、顧客は何を求めているのか」とい
     うことを常に考えなければならない。

     過去の成功体験にしがみついていては、未来の成功は保証されない。

     過去の成功を現在の顧客が求めていないのであれば、捨てる決断が必要で
     ある。

     また、情報発信が広告宣伝だったなら、テレビや新聞にも取り上げられない。

     「企業の存在価値」「提供する価値」を発信する必要がある。

     マスメディアからの取材は、無料の広告(パブリシティ)として絶大なパワーを
     持っています。

     戦略的なメッセージの発信が、自社の明暗を分けると言っても過言ではない。

     今すぐ同質化競争から脱却し、非価格競争を展開するべきだ。

     ポイントは
      (1)自社の強みを理解してくれる顧客の選定
      (2)顧客に認められた「自社の強み」を軸にする
      (3)非価格を軸にした独自性のあるメッセージ
      (4)企業の存在価値、提供する価値を中心に据える
      (5)雑誌・新聞・テレビが取り上げたくなるメッセージ

     顧客にメッセージを発信しない会社は、顧客から選ばれることは決してない。


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企業コンセプトを確立する

新商品開発と商品コンセプト

   
  ■新商品の開発

   市場の変化と競争の激化の中、一般消費者向けの商品を開発している会社は、社会構
   造の変化や消費者の趣味・嗜好の変化にともなって、その変化に対応した商品を提供す
   ることが特に必要になります。

   具体的には、環境問題や規制緩和によって商品の仕様変更を余儀なくされ、商品の
   品質のみならず、その製造方法やアフターフォローの方法に至るまで修正するこ
   とがあります。

   さらに自社の市場占有率を高めるためには、新商品の開発なども必要となります。

  □商品のライフサイクル

   商品にはライフサイクル(導入期→成長期→成熟期→衰退期)があります。

   導入期は新商品を市場に投入した時期です。

   販売が開始されたばかりのため競合商品は少なく価格も高めです。

   成長期は競合商品も増え、市場でのシェア獲得のための販売戦略が重要となります。

   そして成熟期に入ると値引きが行われ、価格競争が始まります。

   衰退期では販売量は減少し、商品によっては大幅な値下げや在庫処分が行われます。
 
   ライフサイクルは商品の種類によって異なりますが、自社の商品が成熟期や衰退期にあ
   る場合、将来的に成長を続けることは難しくなります。

   そこで新商品を開発して、新たな主力商品を確保する必要があります。

  □新商品開発のプロセス

   (1)アイディア 

     新商品の開発方法はさまざまですが、新商品のアイディアは、新商品の開発を目
     的に創出されるケースと、偶然のアイディアをもとに新商品を開発するケースがあ
     ります。

     前者の場合、ある一定期間を設けてアイディアをスタッフから募ったり、ブレーンス
     トーミングなどの手法でアイディアを集めるのが一般的です。

     後者の場合は、アイディアを出そうと思って考えたわけでなく、「こんな商品があっ
     たら売れるのでは?」という偶然のアイディアから商品開発するものです。

     しかし、いざアイディアを捻出しようと思ってもなかなか、よいアイディアは浮か
     ばないものです。

     偶然のアイディアを吸収する意味でも、社内で「提案制度」などを設けて定期的に
     アイデアを募集する体制が求められます。
 
     また、アイディアの創出という意味では、顧客からのクレームなどをデータベース化
     しておき、商品開発のアイディアとして利用したり、消費者調査などを通じて、「消
     費者の生の声」を集めるようにするのもよいアイディアを創出する仕組みとして役
     立つでしょう。

   (2)マーケット分析

     新商品のアイディアが出そろい、どのアイディアを採用するのかという段階では、
     それぞれのアイディアのマーケット分析を行います。

     「市場規模」「競合商品」「将来性」などの市場分析を行い、一番よいアイディアを
     選定します。

     その際、「消費者へのアンケート調査」などを実施して好評だったアイディアを選ぶ
     のも一つの方法です。 

     なお、自社に市場分析を行うノウハウがない場合は、外部へのアウトソーシングを
     検討するとよいでしょう。

   (3)企画 

     この段階では、各種スケジュールや予算、製造方法などを企画します。

     具体的には「試作品」「消費者モニター」「販売代理店募集」「製造」「営業」
     「販売日」などのスケジュールとともに、「開発費」「材料費」「人件費」などの
     コスト算出や、「外注先の選定」などの製造方法を検討します。

     同時にそれぞれの項目ごとに、スケジュール、予算、品質などの管理責任者を決
     めます。
 
     また、できれば企画の段階で、「販売数の見込み」とともに、開発費、材料費、人
     件費などを考慮に入れた「利益の見込み」も立てておきたいものです。

     その結果、利益の確保が望めないような企画であれば商品化は見送るようにします。

   (4)開発

     開発の段階では、まず仕様書を作成し、それを基に試作品を完成させます。

     試作品はなるべく完成品に近いものが望ましいのですが、ここで問題となるのは製
     造コストです。

     いくらよいものでも製造コストが多大にかかるのであれば大量生産ができません。

     大量生産を念頭において材料・素材の選定を行い、場合によっては外注を検討し
     ます。

     自社の技術レベルや機材の有無によっては外注の方が結果的に安く上がる
     ことも少なくありません。
 
     いかに製造コストを下げることができるのかという点を踏まえながら開発すること
     が重要です。

   (5)テストマーケティング

     試作品が出来上がったら、その商品が本当に計画通りに売れるのかどうかを検
     証します。

     消費者モニターのほか、限られた地域での市場テストや営業テストなどを行い、予
     想通りの販売が見込めるのかを調べます。

     その際、期待通りまたは期待以上の販売結果が得られれば、すぐにでも商品化し、 
     全国に向けて販売することができます。

     逆に期待通りの結果を得られなかったときは、たとえ企画の段階で売れるという
     結果が出ても「実際は売れない」と割り切り、商品化は見送るべきでしょう。

     ここまでの開発費は無駄になりますが、売れない商品を市場に導入する意味はあ
     りません。

     再度アイデアまたは企画の段階からやり直します。  

   (6)商品化

     テストマーケティングが終了したら、いよいよ商品化となります。

     大量生産を踏 まえた製造方法の確立、パッケージの選定、広告戦略の推進
     などを行い、販売を開始します。

     その際、商品の種類にもよりますが、流通ルートの開拓も重要となります。企
     画の段階で定めていた営業方法のほかに、代理店の選定や特殊なルートで
     の販売方法など、さまざまな拡販方法を推進します。

     また、顧客へのアフターフォローの仕方や、クレーム処理の対処方法などもこ
     の段階で明確にしておきます。

   (7)販売後のフォロー

     販売を開始した後は、ただ売ればよいというわけではありません。顧客からの
     クレームや意見を集め、商品の仕様やパッケージの見直しを図ります。

  □マーケティング分析と販路の確保

   新商品の開発に当たっては、ただ開発し販売するだけでは、売れるものも売れません。

   正確なマーケット分析とともに、販路の確保が重要となります。

   通常、新商品というと、

    1.今までにない全く新しい商品

      今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、その市場規模は未知
      数となります。

      商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「噂好」のほか、「デザイン」「販
      路」「年間販売室」「将来性」などを考慮し、確実に売れることが見込めた段
      階で参入することが求められます。

      これらのノウハウを自社が持っている場合は問題ありませんが、そうでない
      場合は自社のノウハウだけに頼らず、次のような業種と協力することによっ
      て商品を企画していくことが近道といえます。

       ・商品企画会社(売れる商品の企画)

       ・リサーチ会社(消費者へのアンケート調査やマーケット分析)

      これらの中で最も頼りにすべきは、商品企画会社(企画デザインプロダクショ
      ン)です。

      リサーチ会社の場合、それぞれの商品に対して調査や分析を行うのが仕事
      であり、売れるかどうかの見込みはあくまで予想となります。

      参考とはなるものの、実際の販路の開拓は期待できません。

      一方、商品企画会社の中には強力な販路を持ち、その販路で販売すること
      が期待できる商品を企画している会社もあります。

      そのような商品企画会社と提携し、将来的には自社で企画開発ができるよう
      にノウハウを吸収することが大切です。

      なお、優れた商品企画会社を見つけるためには、今までの実績のほか、「具
      体的な販路を提示できるか」が重要なポイントとなります。

      商品企画が決定した後は、販路を探すこととなります。

      販路はできれば企画の段階で見込みを立てておくことが望ましく、「このよう
      な商品があったら取り扱ってくれますか」といった問い合わせをするとともに、 
      「○○円以下であれば△△個発注してもよい」というレベルの販路をいくつか 
      開拓し、確実に採算が合うと判断できた段階で商品化することが求められます。

      なお、今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、当初は、価格 
      競争に巻き込まれることはなく、価格も強気に設定できます。

      しかし、競合商品が現れたときにはさらなる高付加価値化や生産コストの見
      直しによる低価格化が必要となります。

      競合商品の動向を見据え、常に売れる商品開発を行うことが大切です。

    2.他では販売しているが自社では初めて生産する商品

      他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品の場合、既存
      市場への参入となるため、市場の把握はもとより、消費者へのアンケート調
      査が重要となります。  

      「他社商品と比べてどう思うか」「いくらなら購入するのか」などという商品そ
      のもののアンケートのほか、「パッケージのデザイン」「購買意欲をそそる
      キャッチコピー」など、十分な調査を重ねた上で商品化することとなります。

      できれば消費者アンケートの専門企業(リサーチ会社など)に依頼し、正確で
      客観的な情報を入手するとよいでしょう。

      既存市場への新規参入は、通常「既存品よりも安くていいもの」、「既存品よ
      りも高いが付加価値が付いているもの」のいずれかを販売することになります。

      前者の場合は、商品1個当たりの利益は少なくなるので、大量に販売しなけ
      れば利益の確保が難しくなります。

      後者の場合は逆に高付加価値を前面に押し出し、なるべく商品1個当たりの
      利益が大きくなるようにすることが求められます。

      販路に関しては、大手の販売店や問屋への営業のほか、通信販売やイン
      ターネット上での販売など、独自の販売ルートも検討したいものです。

      営業先の選定は、それぞれの業態や商品のカテゴリごとに業界団体を調
      べ、その業界団体から名簿を入手するのが早道となります。

      名簿を公表していない業界団体に関しては、大手企業を数社紹介してもらう
      など、効率的な営業を心がけます。

    3.既存商品に何らかの改良を加えた商品

      既存商品に何らかの改良を加えたものを新商品として販売する場合は、従 
      来のデザインやパッケージをそのまま踏襲するのではなく、何らかのリ
      ニューアルを加えたほうがよいでしょう。

      もっとも、現在の売れ行き状況や、競合の度合いによってデザインやパッ
      ケージのリニューアル方法は異なってきます。

      例えば、「市場でのシェアはナンバーワンだが、競合商品によって販売数が
      減少している」という商品の場合、何らかの改良を加えて商品の高付加価値
      化を図ることは非常に有効です。

      その際、商品が成長期にあるときは、機能強化や容量の増加、新材料の採
      用など、高付加価値化をアピールするにとどめ、大幅なリニューアルはしな
      いほうが得策です。

      せっかく構築した認知度を下げてしまうことを避けるためです。

      一方、商品が成熟期にあり、「買い換え需要を狙う」という状況の場合は、デ
      ザインやパッケージの大幅なリニューアルが効果的でしょう。

      商品の種類にもよりますが、新商品としての販売は、競合商品よりも新鮮な
      商品として販売することができるからです。

    など、上記のように分類できます。
 
   それぞれの分類ごとにマーケット分析や販路の確保の手法は異なってきます。

   また、商品のライフサイクルによっても商品の仕様やコンセプトを変更する必要が
   あります。 

   ただし、自社(店)の今ある商品の売り上げが落ちてきたからといって、安易に上記1
   の新商品開発に飛びつかないいことです。

   1の「今までにない全く新しい商品」は売れると思いがちですが、今までにない全く新し
   い商品を開発し販売する場合、その市場規模は未知数となります。

   商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「嗜好(しこう)」のほか、「デザイン」
   「販路」「年間販売量」「将来性」など、多くのデータ(情報)が必要となります。

   それよりも、今ある自社商品を分析し、まず上記3「既存商品に何らかの改良を加え
   た商品」を推進することです。  

  ■新商品コンセプト

   商品のアイデア、イベントや広告のアイデア、新規事業のアイデアなど、どれだけ新しい
   アイデアを発想することができるかが、いい企画を立てられるかどうかを決めるといって
   も過言ではありません。

   しかし、当然のことですが、アイデアを出すだけでは何も実現しません。

   そこで、アイデアを具体的な企画に落とし込んでいくプロセスが重要になります。

   つまり、企画力は、アイデアを発想する力、それを実行可能な計画に変える力が必要
   となります。

   そう考えると、ビジネスパーソンは、新しいアイデアを生み出す発想力を鍛えるだけ
   でなく、アイデアを実現可能な形に変える力も同時に鍛えなければならないのです。 

   アイデアを具体的な企画に落とし込むために、一定のフォーマットを使って、企画立案
   のために必要な要素を整理する方法があります。

   新商品のアイデアを整理し、具体的な商品コンセプトをつくりあげていくためのツール
   に「新商品コンセプトテンプレート」があります。

   商品の形はどんなものか? ネーミングはどうするか? 仕様はどうするか? といった
   要素を、テンプレートに書き込むことで具体化していくことができます。

   企画と一口にいっても、事業計画、プロジェクト企画、販売促進企画、広告企画などいろ
   いろなものがあります。

   その中でも、アイデアが最も重要な意味を持つもののひとつが商品企画です。

  新商品コンセプトシートの作り方と使い方

   1.ネーミング

     新商品のネーミングを考えます。

     アイデア段階だからと、いい加減に考えるのではなく、「ここでいいネーミングが浮
     かばなかったら、このアイデアは実現しない」と考えて、お客の購買意欲をそそる
     ようなネーミングを考えてください。

     それだけ商品にとってネーミングは重要な意味を持っています。

   2.商品イメージ

     商品のイメージを絵にしてみましょう。

     絵にすることで、漠然としていたイメージがはっきりとした形になるはずです。

     また、絵にすることで発想が刺激されて、新しいアイデアが連鎖的に生まれてくる
     効果も期待できます。

   3.体裁・スペック

     ここでは商品の仕様をまとめます。

     色、大きさ、素材などをできるだけ具体的にまとめていきます。

   4.商品コンセプト

     何のための、何を実現する、どんな商品なのか、具体的にまとめていきます。

     きれいな文章にまとめようとすると、かえって混乱してしまう場合が多いので、箇条
     書きで書いていくのもひとつの方法です。

   5.ターゲット 

     誰に向けた商品なのか、ターゲットを明確にします。

     例えばビジネスマン向けの商品であれば、単純に「ビジネスマン」と書くのでは 
     なく、年代や職種、どんなニーズを持っているのか、といったことまで明確にし
     ておくとよいでしょう。

     そうすることで、商品のコンセプトがよりはっきりと固まるはずです。

   6.売りのポイント

     これまでにないまったく新しい商品であれば、商品そのものが「売り」になりま
     すが、なかなかそういった商品はありません。

     そこで、他の競合となるであろう商品とどこが違うのか、セールスポイントを考
     えます。

     ここで行き詰まってしまうと、競争力の強い商品を生み出すことはできません。

   7.自社内での位置づけ

     自社の持つ商品ラインナップの中で、どういった位置付に置くべき商品なのか考え
     ましょう。

     価格だけでなく、流通戦略、販売促進戦略なども併せて考えておきましょう。

   8.市場性・将来性

     当然のことですが、市場性・将来性がないものを商品化する企業はありません。

     そういう意味では商品企画の基本中の基本です。

     しっかりと情報を集め、分析し、市場性・将来性を見極めましょう。

   多くのアイデアから付加価値の高い新商品を生み出すために新商品コンセプト
   シートを作成し活用してください。

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企業コンセプトを確立する

自社のコンセプトを確立
 

  ■自社のコンセプト

   会社経営においてコンセプトを確立することは非常に重要です。

   コンセプトが不明確であると、経営における様々な場面でブレが生じる要因となり、
   営業においても、見込み客、新規顧客の心をつかむことが困難となり、リピート客へも
   不満や不安を与えることになります。

   企業コンセプトの構築に重要なことは、自社の経営理念の本質を理解することです。

   そしてコンセプトの確立は自社ブランドの構築において重要となります。

    1.コンセプトの重要性

      コンセプトとは自社の特徴を簡潔な言葉で表現したものです。

      「自社は○○業です」というだけでは、たんに自社の業種・業態を「名刺」のよう
      に示したに過ぎません。

      コンセプトとは、その事業を通して「自社は何をやろうとしているのか」が、お
      客様に対しても十分に伝わるものでなくてはなりません。

      また、コンセプトを明確化するということは、競合他社との違いを理解してもらう
      ことでもあります。

      「その他大勢」に埋没することなく、お客様に関心をもってもらうためには、コ
      ンセプトによって「自社ならでは」の特徴を鮮明にする必要があります。

      関連性のある言葉として、「USP」、「売り」、「付加価値」「ポジショニング
      などがあります。
      
    2.自社コンセプトに必要な3要素

      たとえば、ある飲食店が「豊かな食生活でお客さまを幸せにする」という方針を掲
      げていたとしても、それ自体ではコンセプトに
      は成り得ません。

      コンセプトは具体的でわかりやすく、お客様に
      とって魅力的でなければならないのです。

      そのためには、
      「誰に対して」、「何を」、「どうやって」提供す
      るかという3つの要素(事業コンセプト)を備
      えておく必要があります。

       ・誰に対して(ターゲット

        自社はどのような特性をもった顧客層(ター
        ゲット)に向けて事業を行いたいのか、どの
        ようなニーズをもっている人をターゲットにし
        たいのか。

        市場を同質のニーズを持ついくつかの集団に細分化し、個々の市場にあっ
        た売り方が必要になってきたことで、企業は、売り込む先を自社の製品・サ
        ービスを最も欲するであろう特定の顧客に絞り込むことができます。
 
        つまり、「標的市場(ターゲット市場)」が選定できるのです。

        これにより、企業は自社のヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を使って
        集中的に標的(ターゲット)とする顧客に売り込むことで、効率的により大き
        な成果が挙げられるようになります。

       ・何を(ベネフィット)

        ターゲットのニーズを自社の商品のもつどのようなべネフィット(便益)で
        満たすのか、商品にどのような価値を感じてもらうのか。

        自社の事業全体に関する「事業コンセプト」とともに、自社で扱っている
        個々の商品についての「商品コンセプト」も必要です。

        商品コンセプトとは、「この商品はどのようなものか」、「今までの商品とど
        こが違うのか」、「誰がいつどこでどう使うのか」、「メリットは何か」等を
        ひとことで言い表したものです。

        「A」、「B」、「C」の3つの商品があれば、それぞれの商品を通じて顧客に
        届けたいベネフィットは異なるはずです。

        コンセプトがまったく同じならば、そのようなラインナップにする必要はあり
        ません。

        似通ったコンセプトの新商品を投入すると、カニバリゼーション(自社の商
        品・サービスが自社の他の商品・サービスとシェア争いをする「共食い」現
        象のこと)を起こす可能性が高くなります。

       ・どうやって(根拠)

        ベネフィットを可能にする自社独自の技術・ノウハウは何か、競合他社に比べ
        てどの部分に優位性があるのか。

    上記の3つの要素を踏まえて、前述の「豊かな食生活でお客さまを幸せにする」という
    方針を具体化すると、

    たとえば、

     ・食の安全に関心が高いファミリー顧客に対して(ターゲット)

     ・厳選素材を使ったオリジナル料理でおいしさとヘルシーさを(ベネフィット)

     ・自社独自の調理ノウハウ、オリジナルソース、高い接客技術で(根拠)

    で、提供するというコンセプトとして定義することができます。

    コンセプトを明確化することによって、顧客はこの飲食店が自分に対して何をしてく
    れるのかを鮮明にイメージすることができるのです。

  ポジショニング 

   コンセプトを明確にする際には、その商品・サービスを、どのような相手に、どのように
   販売するか、を設定することです。

   自社の考え方を相手に伝える際にもよりわかりやすく表現することができます。

   顧客ニーズが多様化・複雑化している現在、販売の土俵を決めて戦力を集中しなければ
   なりません。

   万人を対象に、あなたの扱う商品・サービスを販売すべきではありません。

   市場のどこで勝負をかけるか、「販売する土俵」(他社と違う土俵)を設定することが
   ポジショニングです。

  SWOT分析と事業領域(ドメイン)の決定

   自社の外部環境分析と内部資源分析を行い、強みと弱みを把握します。

   そして自社の事業領域(戦うべき市場)を設定するためには「どのような顧客集団
   (who)の」「どのようなニーズ(what)に対して」「どのような方法・技術(how to)
   で」が必要不可欠です。

   中小企業の基本戦略のひとつは専門化です。

   品揃え豊富なデパートを目指すのではなく、専門店を目指します。

   この実現のためにも顧客に提供する製品やサービスの独自性を強めることです。

   ニッチ市場でオンリーワンの地位を築けば、必然的に競争は回避され他企業に対し優位
   性を確保できます。

   限られた現有資産の中で確実に収益をあげるためにも、場当たりな自己流を断ち切るこ
   とが急務です。

   さらに、自社の強みを活かしてた営業展開も重要です。

   送り先であるマスコミに向け、自社の新製品・新サービスについての情報や記事を無料で
   メディアに取り上げてもらうプレスリリースの活用です。

   メディアに取り上げられることで、商品・サービスだけでなく、自社のイメージや信用力
   を向上させることも期待できます。


  □コンセプトを明確にするポジショニングマップ

   コンセプトを明確にする際には「ポジショニングマップ」を活用することで、視覚的・直
   感的に捉えやすくなります。

   また、自社の考え方を相手に伝える際にもよりわかりやすく表現することができます。

   ポジショニングマップとは自社のコンセプトを顧客にどのように理解してほしいのかを
   示したものです。

   ポジショニングマップを作成することで、自社の「立ち位置(ポジション)」や競合企
   業の状況も明らかになります。
    
  □ポジショニングマップの作成手順

   1.Key Buying Factor(購買決定要因:KBF)を設定する

     KBFとは、顧客が数ある選択肢のなかから「この店で買う」、「この商品を買う」
     と最終的に判断する購買決定要因のことです。

     自社にとっての複数のKBFを明確にし、そのなかから重要な2つの要因を縦
     軸・横軸にとってポジショニングマップを作成することが基本になります。

     KBFにはさまざまな種類がありますが、もっともわかりやすいのは「他店に比
     べて安い」、「類似商品に比べて安い」という「価格」でしょう。

     価格に敏感な顧客は多少遠くても安い店に足を運びます。

     自分が必要とするニーズを満たしそうであれば、ほとんど吟味することなくもっ
     とも安い商品を選ぶという顧客も数多くいます。

     また、「品質」も重要なKBFであることはいうまでもありません。

     日頃は価格に敏感な顧客であっても、自分のこだわりがある分野については、
     多少高くても品質重視で店や商品を選びます。

     自分のニーズをよりハイレベルで満たすために割高の支出を容認するのです。

   2.競合状況を探る 

     次に自社だけではなく、競合他社がどのようなポジションにあるのかを書き出して
     いきます。

     「敵を知り、己を知る」ために、それぞれの立ち位置を可視化します。

     その際、事業の捉え方によって、競合とみなすべき相手の幅は変わります。

     たとえば、飲食業の場合、事業を広く捉えれば、同業者のほかに、コンビニ、持ち
     帰り弁当店、宅配専門店、デパ地下やスーパーの総菜売り場なども競合相手にな
     ります。

     しかし、自社が得意ジャンルの専門料理にこだわっているのであれば、同じ飲食業
     であってもまったく違うジャンルの専門店は競合から除外して考えることもできま
     す。

     ここでは「価格×品質」のポジショニングマップが次のようになったとします。

     それぞれの円の大きさは事業規模を表しています。

     この場合、自社は「高価格・高品質」の領域で勝負していますが、同じ領域には数
     多くのライバル企業が存在し、競合状況は非常に厳しくなっていることがわかりま
     す。

     また、「低価格・基本品質」の領域では、F社とG社がしのぎを削っています。

     一方、「低価格・高品質」、「高価格・基本品質」の領域には競合企業が少なく、
     大きな空白ゾーンがあります。

     ポジショニングマップによる分析で、自社の強みをいかせる有望な空白ゾーンを見
     つけることができれば、競争を避けた効率的な事業展開が可能になります。

     つまり、競争が激しくない新たな「種目」にエントリーし、独自の技を磨き差別化し
     ていくことができるのです。

     一般にポジショニングマップ上に空白ゾーンがある場合、
     その理由は次の3つに分けられます。

      (1)そのゾーンにはニーズがまったくないことが明白で
        ある

      (2)そのゾーンのニーズが高いことはわかっている
        が、収益性の低さや技術的な困難さなどの理由で
        未開拓なままになっている

      (3)潜在的なニーズの可能性はあるが、誰も気づか
        ずに手をつけていない

    上記のポジショニングマップで「高価格・基本品質」が空白
    なのは、(1)の理由であることは明らかです。

    品質に比べて価格が高すぎる商品は誰も買いません。

    「低価格・高品質」ゾーンではE社が健闘していますが、まだ
    大きな空白ゾーンが残されています。

    これはおもに(2)の理由によるものでしょう。

    また、極端な「高価格・高品質」ゾーン、極端な「低価格・基本品質」ゾーンについて
    は、ニーズがないのではなく、(3)の理由によって空白ゾーンが放置されていると考
    えることもできます。

    つまり、「より高い品質が得られるならばもっと高価格であっても構わない」、あるい
    は「さらに基本品質を絞り込むことで、もっと低価格にしてほしい」という潜在ニー
    ズが眠っている可能性もあるのです。

    このように分析していくと、自社の今後の戦略として、

     ・未開拓有望ゾーン進出に向けて、コストダウンや技術開発を強化していく

     ・潜在ニーズの可能性を探り、そのニーズに応えられる要件を研究していく

     ・現在のポジションが厳しい競合にあることは承知のうえで、「同じ土俵」でライバ
    ル企業に打ち勝っていくための方策を強化する

    といった選択肢を検討することができます。

   3.さまざまなKBFでポジションを確認する

     ここまでは「価格×品質」をKBFとしたポジショニングマップをみてきましたが、
     これ以外にも「品揃え」、「利便性」、「機能」、「操作性」など多くの業種・業態
     に共通したKBFがあります。

     これらを軸にしたさまざまなポジショニングマップを分析することで競合他社との差
     別化を探ることが可能となります。

     それぞれのマップのどこにポジションを置くかは、業種・業態によって異なります。

     たとえば、高級な専門ブランドショップのような業態に求められるポジションと、
     手軽なアクセサリーショップに求められるポジションは大きく違ってくるでしょう。

     自社のコンセプトに応じて適切なポジションをとること、さらには自社がそのような
     ポジションで事業を行っていると顧客から認識されているかどうかを確認すること
     が大切です。

     また、業種・業態独自のKBFもあります。

     製造業であれば、「技術力」、「開発力」、「設計力」、「製造力」、「納期」な
     ど、サービス業であれば、「居心地のよさ」、「接客技術」、「待ち時間」、「予約
     の取りやすさ」などが重要なKBFとなるでしょう。

     自社のコンセプトを確立することはブランド構築に共通します。

     どんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それを提案する従業員の品質
     レベルが低ければ採用されません。

     それが組織人として、ブランド構築に欠かせない基本動作12項目です。
    
  □商品のポジショニングマップ

   1.事業コンセプトと商品コンセプト

     事業コンセプトとは、自社が「誰に」、「何を」、「どのように」提供するかを決定
     することです。

     事業コンセプトは、いかに先行する競合他社と差別化できるコンセプトを発案し、
     事業規模を拡大していけるのかというシナリオ(筋書き)を明確にします。

     事業コンセプトは、「顧客ニーズの変化方向」と「事業のイノベーション方向を具体
     的に予測することで抽出できます。

     (1)顧客ニーズの変化方向

       現在、3年後、5年後の顧客ニーズの水準がどうなっていくのかを予測します。

       プロジェクトメンバーを中心に徹底的に議論します。

     (2)事業のイノベーション方向

       顧客ニーズの変化方向を予測すると同時に、業界上位の動向から、事業特性
       ・技術革新・取り組むべきノウハウなどが、どのように変化していくのかを予測
        します。

     (3)事業コンセプトの抽出

       顧客ニーズの変化方向と事業のイノベーション方向の両方向から総合的に事
       業の中核的考え方(事業コンセプト)を導き出します。

       原則として、3年後または5年後の中核的考え方を選びます。

       どちらを選ぶかは自社の実現可能性によります。

     自社の事業全体に関する「事業コンセプト」とともに、自社で扱っている個々の商品
     についての「商品コンセプト」も必要です。

     商品コンセプトとは、「この商品はどのようなものか」、「今までの商品とどこが
     違うのか」、「誰がいつどこでどう使うのか」、「メリットは何か」等をひとことで
     言い表したものです。

     「A」、「B」、「C」の3つの商品があれば、それぞれの商品を通じて顧客に届けたい
     ベネフィットは異なるはずです。

     コンセプトがまったく同じならば、そのようなラインアップにする必要はありませ
     ん。

     似通ったコンセプトの新商品を投入すると、カニバリゼーション(自社の商品・サ
     ービスが自社の他の商品・サービスといったシェア争いをする「共食い」現象のこ
     と。)を起こす可能性が高くなります。

     カニバリゼーションは食品などの価格差がなく、重複商品が多い業界で発生率が
     高いといわれています。

     それぞれの商品コンセプトはその共通の土台となる事業コンセプトに合致したも
     のでなければなりません。

     つまり、それぞれの商品コンセプトには「違い」が必要ですが、「矛盾」してはなら
     ない。

     まずは自社の事業全体のコンセプトを確立し、それを踏まえたうえでベネフィットの
     異なる個々の商品コンセプトを固めることが大切です。

  商品のポジショニングマップを作成

   たとえば、ある家電メーカーの商品について、縦軸に
   「機能」、横軸に「操作性」とした商品ポジショニングマップ
   が次のようになったとします。

   この場合、商品A〜Cについては、独自のポジションにな
   っていますが、商品D〜Fのポジションは非常に類似して
   います。

   商品D〜Fについて、それぞれの微妙な違いが顧客の選  
   択肢を広げ、購買行動を促進していればこのようなライン
   アップも有効です。

   しかし、微妙な違いが顧客にとって意味のないものであれ
   ば、顧客はたまたま商品D〜Fのどれかを選んでいるだけ
   かもしれません。

   この場合、商品E、Fの製造を中止し、商品Dに一本化した
   ほうが、製造効率は高まり、顧客に余計な迷いを与えずに
   済みます。

   また、「多彩な機能・簡単操作」、「単機能・マニュアル操作」のゾーンには品揃えが
   ありません。

   前述のようにポジショニングマップ上で空白ゾーンがある場合の理由は、(1)ニーズが
   ない、(2)有望だが未開拓、(3)潜在ニーズに気づいていない、の3種類です。

   (2)、(3)の理由による場合は、ライバル企業がすでに販売している商品もポジショ
   ニングマップに加えて分析してみましょう。

   そして、競合が少ない、あるいは自社商品のほうが優位に立てるという判断ができれば、
   新商品を投入することで、新規顧客層を開拓できる可能性があります。

   企業活動の中心は顧客を創造し維持することだと考え、マーケティングを企業活動の中心
   的な機能に位置付けるマーケティングコンセプトの考え方が重要となります。

 

 

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