中小企業のBCP策定と活用

中小企業におけるBCPの策定と活用


  ■中小企業におけるBCP   

   内閣府の調査によると、2013年度、BCPを策定済みである大企業は53.6%である
   のに対して、中堅企業は25.3%、中小企業は21.2%にとどまっています。

   もちろん、BCPの効果的な運用のためには、従業員向けの教育訓練を定期的に実施
   する必要があるなど、その取り組みは決して容易ではありません。

   しかし、BCP自体は、中小企業庁がウェブサイトで公開している「中小企業BCP策定
   運用指針」を利用し、様式に従って項目を記入していくことで完成させることができ
   ます。

   災害時の備えとしてだけでなく、BCPの策定にはさまざまなメリットがあります。

   例えば、BCPの策定過程は、中核事業をはじめとした自社の事業内容や業務フロー
   など会社全般について見直すよい機会となるでしょう。

   また、BCPを策定している企業は、政府系金融機関等による貸付金利優遇制度や
   損害保険会社による契約保険料への優遇制度を利用できる可能性があります。

   災害はいつ起こるか分からないものです。

   BCPの策定は難しいと考え、策定していない企業が多いのかもしれませんが、「難
   しいから取り組まない」ではなく、「小さなことであっても、すぐにできることから始め
   よう」という姿勢が大切です。

   そして、こうした姿勢こそが、災害発生後の企業の存続を左右する大きな要因になる
   といえるでしょう。

  ■BCP(Business Continuity PIan=事業継続計画)

   企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業
   資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能
   とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、
   手段などを取り決めておく計画のこと。

   BCPは、人命保護や建物の倒壊防止といった従来からの「防災対第」を一歩進め、
   「企業が事業を継続する」ために必要な対策をあらかじめ決めておくことを重視して
   います。

   「事業の継続」という視点で見れば、大企業のように事業拠点が分散しておらず、特定
   の事業領域への依存度が高い中小企業こそ、BCPを策定する必要性が高いといえる
   でしょう。

   中小企業庁は、BCPを策定する際の一助として「中小企業BCP策定運用指針」を
   公開しています。

   「中小企業BCP策定運用指針」を利用すれば、専門的な知識を有していなくても、
   様式に従って基本方針、責任者、緊急連絡先などを記入するだけで基本的なBCP
   を策定することができます。

   万一の際に事業を継続するために、企業として打つべき手をあらかじめ検討しておく
   ことは、企業の重要な責務といえるでしょう。
    
  事業継続ガイドライン(内閣府)

   平成23年3月に発生した東日本大震災によって、我が国の企業・組織は、巨大な
   津波や強い地震動による深刻な被害を受け、電力、燃料等の不足に直面した。

   また、経済活動への影響は、サプライチェーンを介して、国内のみならず、海外の
   企業にまで及んだ。

   我々は、この甚大な災害の教訓も踏まえ、今後発生が懸念されている大災害に立ち
   向かわなければならない。

   有効な備えが無ければ、災害発生時に我が国の経済・社会が危機に陥ることにな
   り、さらに平常時にも、日本経済の信頼性が低下し、海外からの購買や直接投資の
   減少、生産の海外移転などの問題も生じる可能性がある。

   そこで、我が国の企業・組織は、国内外における大災害のあらゆる可能性を直視し、
   より厳しい事態を想定すべきであり、それらを踏まえ、不断の努力により、甚大な災害
   による被害にも有効な事業継続の戦略を見いだし、対策を実施し、取組の改善を
   続けていくべきである。

   これまでの災害では、自社の事業継続計画や他社との連携が有効に働き、いち早く
   事業を回復できた事例もあり、それらを事業継続能力の強化に活かすことが重要で
   ある。  

   また、企業・組織の事業構造や活動環境が極めて多様化・複雑化している今日、災害
   に限らず、様々な種類の危機的事象の発生が生産活動や流通の停止につながる
   ことが懸念されており、これらの活動が一度途絶すれば、国内外にわたる大きな負の
   インパクトを生む。

   そこで、災害のみならず、どのような不測の事態に直面しても、強くしなやかに回復
   できる経済・社会を構築する必要があり、企業・組織の事業継続能力の一層の向上
   が求められる。

   既に我が国における事業継続の取組は一定の進捗が見られ、その有効性が発揮
   された例もあり、国際的にも先進性を発信できる部分がある。

   これらを踏まえ、今後さらに一層の拡充に取り組む必要がある。

   本ガイドラインは、我が国の企業・組織における、このような事業継続の取組の必要
   性を明示し、実施が必要な事項、望ましい事項等を記述することで、事業継続計画の
   策定・改善につながる事業継続マネジメントの普及促進を目指すものである。

   また、企業・組織は、原因が何であれ重要な事業を継続できない場合に備え、常に
   必要な対応を求められるとともに、その対応の是非がその後の事業活動の成否に
   重大な影響を及ぼす。

   そこで、経営者自らが責任を持ち、平常時から事業継続能力の強化に取り組む必要
   性とメリットを理解し、相応の時間と労力、資金を投入して、何が起こっても事業を
   継続させる意志を持ち、その実現に努力する必要がある。

   そして、その取組を内外にアピールすることも求められる。

   さらに、不測の事態の対応においても、経営者の的確な判断とリーダーシップが不可
   欠である。

   このように、事業継続の取組は経営者が率先して取り組むべき重要な経営課題で
   あり、担当者のみの対応では効果が得られず、社会的責任も果たすことができない。

   本ガイドラインでは、1.4章に経営者に求められる事項、Ⅷ章に経営者及び経済社会
   への提言を記載している。

   経営者においては、これらを先に重点を置いて読まれることを勧める。

   事業継続ガイドライン第三版(平成25年8月)(内閣府)

  □「中小企業BCP策定運用指針」

   中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」 

  □企業におけるBCPの策定状況と期待効果

   1.BCPの策定状況

     内閣府が2014年7月に発表した「平成25年度企業の事業継続及び防災の 
     取組に関する実態調査」(以下「実態調査」)より、企業におけるBCPの策定状
     況などを紹介します。

     実態調査によると、BCPの策定状況(2013年度)は次の通りです。
     (出所:内閣府「平成25年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態
     調査」)

     BCPについて、大企業では「策定済みである」という回答(53.6%)と、「策定  
     中である」という回答(19,9%)を合わせて73.5%となり、多くの企業がBCP
     の策定に取り組んでいることが分かります。

     一方、中堅企業では「策定済みである」「策定中である」という回答を合わせて
     37.3%、その他企業では同じく33.2%にとどまっており、大企業ほどはBCP
     の策定が進んでいないことが分かります。

   2.BCPの策定理由

     BCP策定状況において「策定済みである」「策定中である」「策定を予定してい
     る」と回答した企業を対象にした設問によると、BCPを策定するに至った理由
     は次の通りです。
     出所:内閣府「平成25年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調
         査」)

     全体を見ると「過去の災害、事故の経験等からの必要性」という回答の割合が
     最も高くなっています。

     これは2011年の東日本大震災の影響と考えられます。

     次いで、「親会社・グループ会社の要請」「株主の要請、企業の社会的責任の
     観点、企業イメージ向上等」「トップの指示」「国内の取引先や顧客からの要
     請」という回答が続いています。

   3.「中小企業BCP策定運用指針」に学ぶBCPの策定ポイント

     (1)「中小企業BCP策定運用指針」の特徴

       中小企業では、人材やコスト不足の問題からBCPの策定が大企業と比べて
       進んでいないといわれます。

       中小企業では、BCPの知識がある人材が不足しているばかりか、新たに教 
       育する時間も取りにくい状況です。

       また、「いつ発生するか分からない(目に見えない)災害のために、多額の費
       用を投じることは難しい」と考える経営者も少なくありません。

       しかし、災害がいつ発生するか分からないからこそ、万一に備えて、自社の 
       事業継続のためにBCPの第定を進めたいものです。

       さらに、BCPの策定は平常時の「取引の維持・拡大」につながる取り組みとも
       いえます。

       BCPの第定を検討する際、手助けの一つとなるのが中小企業庁「中小企業
       BCP策定運用指針」です。

       「中小企業BCP策定運用指針」では、様式に従って基本方針、責任者、緊急 
       連絡先などを記入していくことで基本的なBCPが策定できます。

       「中小企業BCP策定連用指針」では、BCPの第定に投入できる人材・時間な
       どに応じた入門・基本・中級・上級の4通りのコースが用意されています。

      (2)自社の中核事業を理解・把握する

       自社の中核事業を理解・把握した上で、「経営上最優先で復旧すべき事業は 
       何か」「いつまでに復旧することを目指すべきか」を特定します。

       そして、自社の重要業務を継続するために必要な資源(ヒト・モノ・カネ・場
       所・情報)には何があるのかを明らかにしていきます。

       BCPの策定と活用は中核事業の継続に不可欠な経営資源ということです。

       また、中核事業を復旧させるまでの期限の目安となる目標復旧時間も決め
       ておきます。

       目標復旧時間を決める際には、次のような方法があります。
        ・中核事業に関わる取引先と事前に調整して決める
        ・中核事業の停止による収入途絶などの損害に、自社が耐えられる期間に
       基づいて決める

     (3)中核事業が受ける被害を評価する

       地震などの災害が発生した際、自社の中核事業がどの程度の影響を受ける
       のかを評価します。

       そのためには、地震などの災害によって「ボトルネック資源」がどの程度の影
       響を受け、それが中核事業の継続にどの程度の支障を来すのかについて、 
       可能な限り詳細に把握することが望まれます。

       また、「ボトルネック資源」を次のように区別しておくことが重要です。

        ・目標復旧時間内に機能回復しないもの(させられないもの)
         →代替資源の確保を検討する

        ・目標復旧時間内に機能回復するもの(させられるもの)
         →機能回復の方法、機能回復までの間の対応を検討する

     (4)財務状況を分析する

       建物が倒壊したり、設備が故障したりした場合の復旧費用や事業中断によ
       る損失を把握します。

       「中小企業BCP策定運用指針」の「財務診断モデル」を利用すると作業がス
       ムーズに進みます。

       中小企業は、その結果に応じて事前対策を講じます。

       具体的な対策には次のようなものがあります。

        ・1カ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保

        ・適切な損害保険への加入

        ・事前の対策実施

     (5)事前対策を検討する

       「中小企業BCP策定運用指針」には、平常時に実施しておく対策メニューの
       一覧と対策コストが整理されています。

       中小企業は、自社にとって必要な対策や投入可能なコストを考慮して検討す
       ることが重要です。

       また、ここには「事前対策を講じたいが資金がない」という中小企業のため
       に、災害復旧貸付などの緊急時の支援制度などの情報も紹介されていま
       す。

     (6)BCPを策定する

       ①BCP発動基準を明確にする

         中核事業に甚大な影響を与える可能性のある災害とその規模に基づい
         て、BCP発動基準を定めることがポイントです。

       ②BCP発動時の体制を明確にする

         BCP発動後から事業復旧を完遂するまでの間、次の機能を果たす組織
         が必要です。

         機能ごとにリーダーを配置し、そのリーダーに対しては経営者が指揮命
         令をすることで混乱を防ぎます。

         復旧対応機能:施設や設備の復旧など、社内における復旧対応
         外部対応機能:取引先や協力会社、組合や商工会との連絡や各種調整
         財務管理機能:事業復旧のための資金調達や各種決済
         後方支援機能:従業員の参集管理や食料手配、負傷した従業員の対応
                   など

       ③事業継続に関連する情報の整理と文書化をする

         「BCPの発動フロー」「事業継続に必要な各種情報の帳票類」を文書化
         します。
         これがBCPとなります。 

         「事業継続に必要な各種情報の帳票類」については、「中小企業BCP策
         定運用指針」のひな型を利用するとよいでしょう。

     (7)文化を定着させる

       BCPは、策定していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを
       従業員が有効に活用できなければ意味がありません。

       BCPを実効性の高いものにするために、万一の際に、BCPを利用して実際
       に復旧活動に当たる従業員が、BCPの運用に対して前向きに取り組むこと
       が重要になります。

       そのためには、BCPに関する訓練や教育を積極的に行うとともに、BCPの運
       用に対する経営者の前向きな姿勢が、会社の文化として定着することが重   
       要になってくるのです。

       こうした文化を「BCP文化」といいます。

       BCPの運用は自社が存続する限り継続されるべき活動であり、維持・更新
       と、教育・研修を継続的に実施しながら、BCPを自社業に定着させることがポ
       イントです。

       ①従業員へのBCP教育を実施する

        従業員に対して行うBCP教育の目的は「従業員にBCPの運用を浸透させ
        ること」「従業員に防災や災害時対応に関する知識や技能を身に付けさ
        せること」です。

        具体的には、次のような教育を実施するとよいでしょう。

         ・BCPや防災に関する社内ディスカッション

         ・BCPや防災に関する勉強会

         ・心肺蘇生(そせい)法などの応急救護の受講支援

         ・BCPや防災対策関連のセミナーヘの参加支援

       ②BCP訓練を実施する

        BCP訓練にはさまざまなレベルや種類がありますが、次のようなBCP発 
        動手順の一部を取り上げた訓練を繰り返し、従業員にBCP発動手順を着
        実に習得させていくことがポイントです。

         ・机上訓練

         ・電話連絡網および緊急時通報の演習

         ・代替施設への移動訓練

         ・バックアップしているデータを取り出す訓練

        また、各自治体が主催する防災訓練などに従業員を参加させることで防
        災能力が高まります。

        同時に、自治体と自社、近隣の企業同士の連携を深めることもできます。

       ③BCP文化を醸成する

        BCP文化を醸成するためには、長期的な視点で経営者と従業員の意識
        を高めていくことが必要です。

        また、BCPの運用に対する従業員の認識を促進させるために、BCPや防
        災に関する情報を積極的に提供し、平常時であっても事業継続の意識を
        持たせることが重要です。

        経営者が平常時から意識しておくべき点として次が挙げられます。

         ・従業員との平常時からのコミュニケーション

         ・従業員のための安全対策の実施

         ・取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践

         ・その他、BCPや防災に関する各種活動の支援

     (8)BCPの診断、維持・更新を行う

       時間の経過とともに企業を取り巻く環境は変化します。

       また、会社自身も変化を続けることから、組織体制をはじめとしてさまざま 
       な状況は変化します。

       そのため、常に実効性のあるBCPであるためには、定期的にBCPの有効
       性のチェックや内容の見直しなどを行う必要があります。

       訓練などを通じて不備な点などが明らかになれば、BCPの内容を見直し
       ます。

       また、「中小企業BCP策定運用指針」には、自己診断チェックリストが用意
       されています。

       このプロセスでBCPに問題点や不十分な点などがあれば、再び「自社中
       核事業を理解・把握する」に戻るなどして、PDCAサイクルを継続して運営
       していくこととなります。

       その際、「中小企業BCP策定運用指針」の中にある、「BCP策定・運用況
       の自己診断(基本コース)」などを利用するとよいでしょう。

       チェックリストの設問ごとに、「はい」か「いいえ」で答えていくと判定結果が
       出ます。

   4.BCPに取り組む中小企業の視点

    BCPの取り組みは非常に多岐にわたります。

    とはいえ、企業活動に大きな影響を及ぼすリスクはさまざまであるため、どのよ
    うなリスクにも対応できる万能なBCPを策定・運用することはできません。

    また、より効果的なBCPを策定しようとするほど、多くの人材やコストが必要と
    なります。

    中小企業が、BCPの取り組みを始める際に大切なのは、完壁を求めず、できる
    ところから始めることです。

    例えば、想定する緊急事態を絞り込むというのも一案です。

    内閣府防災担当の事業継続計画策定促進方策に関する検討会「事業継続ガ
    イドライン〜わが国企業の減災と災害対応向上のために〜」では、BCPの取り
    組みに際し、初めに想定する災害として重大な災害リスクで海外からも懸念の
    強い「地震」を推奨しています。

    そして、その後、段階的に想定する災害の種類を増やしていくという方法を示し
    ています。

    BCPへ取り組む際には、まず自社ができる範囲からスタートし、BCPサイクル
    の継続運用を図り、定期的にBCPを見直しながら、少しずつ充実したBCPに改
    善していけばよいでしょう。

    また、「中小企業BCP策定運用指針」は、原則として中小企業が独力でもBCP
    の策定・運用を行うことができるように設計されています。

    そのため「BCPの策定・運用は個々の企業の努力で行うもの」と感じた人もいた
    かもしれません。

    しかし、必ずしもBCPの策定を全て自社で行う必要はありません。

    最近では、企業のBCPへの取り組みをサポートするサービスや専門家が多く見
    られます。

    例えば、BCPについて理解を深めたいという人であれば、セミナーなどに参加し
    てみるとよいでしょう。

    また、最近では、コンサルティング会社などもBCPの策定支援などを行っていま
    す。

    より効果的なBCPを策定・運用していくためには、こうした専門家の活用も検討
    してみることが大切です。
    
  □「基本コース」のBCP策定手順 

   1.BCPの策定

     ここでは、前述した「基本コース」によって、BCPを策定するための手順を紹介
     していきます。

     基本コースでは、主に経営者自身の主観を基に、指針で用意されている
     「BCPの様式類」(ダウンロードページから、ダウンロードできるようになってい
     ます。

     このファイルに入力すれば、シートの記入が容易に行えます)に記入すること
     で、BCPの策定までを行います。

     記入したシートの内容は、全従業員と共有し、緊急事態に備えることが望まれ
     ます。

     まず自社において、指針に従ってBCPを策定し、日常的な運用を推進する社
     内の体制を決めます。

     次の点を考慮して、策定する体制と運用推進する体制を決めます。

     検討した策定・運用推進体制を「BCPの様式類」に記入します。 

      ・経営者自らが率先して策定し、運用推進にあたる 

      ・企業の規模や業務の役割分担に応じて人選する

      ・取引先企業や協力企業との意見交換や擦り合わせを行う 

      ・BCPの策定および運用推進に取り組んでいることをすべての従業員に周
       知させる


   2.自社の中核事業を理解・把握する

     自社の中核事業(会社の存続にかかわる最も重要性・緊急性の高い事業)を
     理解・把握することから始めます。

     緊急時において、

      ・経営上最優先で復旧すべき事業は何か 

      ・いつまでに復旧することを目指すべきか

     を特定します。

     そして、自社の重要業務を継続するために必要な資源(ヒト・モノ・カネ・場所・
     情報)には何があるかについて、思いつく限り挙げていきます。

     指針では、これらの資源を「ボトルネック資源」と呼んでいます。

     ボトルネックの本来の意味は、瓶(ボトル)のくびれ(ネック)で、事業の継続や
     業務復旧の際に、その部分に問題が発生すると全体の円滑な進行の妨げと
     なるような要素をいいます。

     また、中核事業を復旧させるまでの期限の目安となる目標復旧時間も決めて
     おきます。

     目標復旧時間を決める際は、「中核事業にかかわる取引先と事前に調整して
     決める」「中核事業の停止による収入途絶などの損害に、自社が耐えられる
     期間に基づいて決める」の2つを考慮して決定するのがよいでしょう。

   3.中核事業が受ける被害を評価する

     自社の中核事業が、地震・風水害・火災などの災害により、どの程度の影響
     を受けるのかを評価します。

     そのためには、前のステップで理解・把握した中核事業の継続に必要な資源
     (ボトルネック資源)が、どのような災害によって、どの程度の影響を受け、中
     核事業の継続にどの程度の支障を来たすのかを、可能な限り漏れなく把握す
     ることが望まれます。

     その際、災害別に中核事業の継続に必要な資源を、目標復旧時間内に機能
     回復しないもの(させられないもの)目標復旧時間内に機能回復するもの(さ
     せられるもの)のどちらかに区別しておくことが望ましいでしょう。

     なぜなら、「目標復旧時間内に機能回復しないもの(させられないもの)」であ
     れば、その資源については、代替となる資源をどのように確保するかを検討
     することになり、「目標復旧時間内に機能回復するもの(させられるもの)」に
     ついては、その資源をどのように機能回復させるか、または、その資源の機
     能が回復するまでの時間をどのように対応したらよいかに関する検討につな
     げるためです。

   4.財務状況を分析する

     自社が地震などにより被災した場合、建物・設備の復旧費用や事業中断によ
     る損失を具体的に概算しておきます。

     その状況によっては、被害を軽減するための以下のような事前対策を取るべ
     きかどうかの判断をしておきます。

      ・1カ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保 

      ・適切な損害保険への加入 

      ・事前の対策実施

     指針では、「財務診断モデル」が掲載されており、財務診断を進めるための手
     順を示していますが、同様の手順に従った計算作業をエクセルで行えるよう
     になっています。

     ダウンロードページから「財務診断モデル基本コース」をダウンロードし、指示
     に従って作業を進めると、帳票が簡単に作成できます。

     また、災害発生後、多くの中小企業で復旧資金の借り入れが必要になるもの
     と考えられます。

     このBCPを実行することによって、災害発生後に政府系中小企業金融機関・
     保証協会などの災害復旧貸付・保証制度をより有効に活用できます(被災中
     小企業に対する公的支援制度については、「指針」の資料編が参考になりま
     す)。


   5.事前対策を検討する

     指針には、平常時に事前に実施しておく対策メニューの一覧が示されており、
     対策費用ごとに対策対象が付記して整理してあります。

     自社において投入可能な資金額や弱点と思われる個所を踏まえて、対策を
     選択して検討します。

     事前対策を講じたいが手持ち資金がないという企業のために、災害復旧貸付
     などの緊急時の支援制度などの情報も紹介されています。事業を継続するに
     は、さまざまな代替策を持っておくことが有効です。

     中核事業を継続するうえで欠かせない各種資源(ヒト・モノ・カネ・場所・情報)
     を挙げて、特に重要なものから、できる範囲で代替策を確保します。


   6.BCPを策定する

     このプロセスでは、基本的なBCPの策定と、それを、いつ、どのような体制で
     利用するかについて事前に整理することを目的とします。

     (1)BCP発動基準を明確にする

       BCPの発動基準を設定する際のポイントは、自社の中核事業が何らかの
       影響を受け、かつ、それに対して早期の対応をしなければ、目標復旧時間
       内に中核事業を復旧させることができないことを正しく把握することです。

       そのため、中核事業に甚大な影響を与える可能性のある災害とその規模
       に基づいて、BCP発動基準を定めることが望ましいでしょう。

     (2)BCP発動時の体制を明確にする

       BCP発動後から事業復旧を完遂するまでの間には、主として以下の機能
       を持った組織体制が望まれます。

       各機能にチームを構成してリーダーを立て、チームリーダーへの指揮命令
       をリーダー(社長など)が行うという体制が求められます。 

        ・復旧対応機能  
         施設や設備の復旧など、社内における復旧対応 

        ・外部対応機能  
         取引先や協力会社、組合や商工会との連絡や各種調整 

        ・財務管理機能  
         事業復旧のための資金調達や各種決済 

        ・後方支援機能  
         従業員の参集管理や食料手配、負傷した従業員の対応など

     (3)事業継続に関連する情報の整理と文書化をする

       ここで策定するBCPは、大きく分けて次の2つの要素からなります。

        ・BCP(事業継続計画)の発動フロー

        ・事業継続に必要な各種情報の帳票類

       指針には、情報を整理する帳票のひな型となる様式集が「PDF形式」と
       「Word形式」で添付されているので、この様式を利用して情報を整理して
       もよいでしょう。 

       これにより、基本的なBCPが策定できます。

   7.BCP文化を定着させる 

     BCPは、策定していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従
     業員が有効に活用できなければ意味がありません。 

     BCPを実効性の高いものにするならば、緊急事態発生時にBCPを利用して実
     際に復旧活動に当たる従業員が、BCP運用に対して前向きに取り組む必要 
     があります。

     そのためには、BCPに関する訓練や教育を積極的に行うとともに、BCP運用
     に対する経営者の前向きな姿勢が、会社の文化として定着することが重要に
     なってくるのです。

     指針では、こうした文化のことを「BCP文化」と表現しています。 

     BCPの運用は企業が存続する限り継続されるべき活動であり、維持・更新と、
     教育・研修を継続的に実施しながら、BCPを企業に定着させることが重要とな
     ってきます。

     (1)従業員へのBCP教育を実施する

       従業員に対して行うBCP教育の主な内容は次の通りです。  

        ・BCPや防災に関する社内ディスカッション  

        ・BCPや防災に関する勉強会  

        ・心肺蘇生法などの応急救護の受講支援  

        ・BCPや防災対策関連のセミナーへの参加支援

     (2)BCP訓練を実施する 

       BCP訓練にはさまざまなレベルや種類がありますが、以下のような、BCP
       発動手順の一部分を取り上げた訓練(要素訓練) を実施することにより、
       従業員に着実に習得させていくことが望ましいでしょう。  

        ・机上訓練  

        ・電話連絡網および緊急時通報の演習  

        ・代替施設への移動訓練  

        ・バックアップしているデータを取り出す訓練 

       また、各自治体が主催する防災訓練も行われています。 

       こうした訓練に参加することは、社内の防災能力を高めるだけでなく、自治
       体と企業間、または、近隣の企業同士の 連携や協力を高めることにもつ
       ながります。 

       なお、BCPに関する教育や訓練については、指針のBCP関連資料中の「教
       育・訓練」が参考になります。

     (3)BCP文化を醸成する 

       「BCP文化の醸成」の実現には、長期的な視点で経営者と従業員の意識を
       高めていくことが望まれます。

       また、BCP運用に対する従業員の認識を促進させるためには、BCPや防災
       に関する情報を社内へ発信するなど、平時より継続的に実施する必要があ
       ります。 

       経営者が平時から意識しておくべき点は以下の通りです。  

        ・従業員との平時からのコミュニケーション  

        ・従業員のための安全対策の実施  

        ・取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践  

        ・そのほか、BCPや防災に関する各種活動の支援

   8.BCPの診断、維持・更新を行う 

     BCPを発動してみたものの、「整理されている情報が古くなっており、役に立た
     なかった」ということでは、せっかくBCPを構築しても意味がありません。 

     こうした事態に陥らないためには、BCPが企業の中核事業の復旧継続に本当
     に有効かどうかをチェックするとともに、企業に関する情報を最新の状態に維
     持しておく必要があります。

     また、必要に応じてBCPの運用体制の見直しや運用資金(事前対策費用な 
     ど)の確保を行います。 

     BCP運用は継続的な活動であり、企業が存続する限り、BCPに関するこれら
     の活動は、定期的かつ確実に実施することが望まれます。

     指針のWeb上では、BCPの策定および運用の検討が一通り終了した後に、
     「自己診断が実施できるようになっています。 

     チェックリストの設問ごとに、「はい」か「いいえ」で答えていくと、判定結果が出
     ます。

     かなり詳細なチェックリストであるため、経営者は毎年自己診断を行い、点数
     が上がっていくことが望まれます。


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中小企業のBCP策定と活用

天災は忘れた頃に… 事業継続計画策定を

天災は忘れた頃に… 事業継続計画(BCP)策定を
 

  ■事業継続計画(BCP)

   1000年に一度の規模ともいわれる東北地方太平洋沖地震は、東北地方を中心
   に壊滅的な被害を与えました。

   多くの方が命を落とされ、ライフラインも各地で寸断されました。

   私たちはこのような想定外の災害に対して、万全な準備をしておくことは非常に困
   難です。

   しかし、だからこそ想定し得る範囲については、日頃からできるだけの対策を講じ
   ておくことが大切であるといえるでしょう。

   2011年3月11日、あれから8年の歳月がたち、「天災は忘れた頃にやってくる」
   の言葉にあるように、記憶が薄らいでくる前に対策を講じることをお勧めする。

   BCPの策定状況は、従業員規模が小さくなるほど進んでいない。

   ここでは、企業が緊急事態のなかでもその披害を最小限に抑え、早期復旧を図っ
   ていくための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan。以下、BCP)に
   ついておさらいの意味も含め解説します。

   1.BCPとは

    BCPとは、企業が自然災害、大火災、感染症などの緊急事態に遭遇した場合に
    おいて、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるい
    は早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業
    継続のための方法・手段などを取り決めておく計画のことです。

    BCPがあらかじめ策定されていないと、緊急時に「何から着手してよいかわから
    ない」、「指示・命令系統が途絶え、社内が大混乱する」という事態に陥りかねま
    せん。

    災害の発生直後には操業が完全にストップすることもあります。

    また、その後の回復のスピードが遅ければ、競合他社に顧客を奪われ、最悪廃
    業に追い込まれる可能性もあります。

    <BCPの概略>

     ・災害後に活用できる資源に制限があると認識し、継続すべき重要業務を
      絞り込む

     ・重要業務のそれぞれについて目標復汀1時間を設定する

     ・重要業務の継続に不可欠で、再調達や復旧に時間や手間がかかり、
      復旧の制約となりかねない
      重要な要素・資源(ボトルネック)を洗い出し、それらに重点的に対処する

     ・つねに最新の企業の情報を反映するようにするため、定期的な更新、
      経営層による見直しなどを行う

   2.BCPと防災計画

    BCPと似たような意味合いで使われる言葉に「防災計画」があります。

    防災計画では災害そのものを起こさないこと、被害を最小限に抑えることに力
    点が置かれているのに対して、BCPではそれに加えて、事業を早期に復旧し、
    企業を存続させることを目的としています。

    被災時には人・物・金などの経営資源が大幅に減少します。

    そのような状況のなかでも限られた経営資源を活用して、自社の重要業務を遂
    行する必要があります。

    BCPは被害最小化への事前対策であるとともに、被災時の危機的な状況のな
    かで、まず何をどうやって始めるかを示す手引き書ともいえます。

   3.BCP策定が取引条件に

    BCPは自社のみで完結するものではありません。

    大災害が発生した場合は、自社だけではなく仕入れ先・販売先などの取引先企
    業も大きな被害を受けます。

    たとえば、自社がBCPによって早期に操業体制を回復したとしても、重要部品の
    仕入れ先企業の操業が停止したままであれば、自社の製造ラインを動かすこと
    はできません。

    同様に自社の製品の販売先企業が営業していなければ、納品不可能となり、在
    庫の山を築いてしまうことにもなりかねません。

    つまりBCPは自社だけではなく、川上・川下企業においても策定されている必要
    があります。

    このような理由から、特に大手企業においては取引先企業にBCPの策定・充実
    を求める傾向が強まっています。

    これは素材調達から最終製品販売に至るサプライチェーン全体を通じて、BCP
    をより高いレベルで準備しておこうという狙いによるものです。

    今後は取引先との関係の維持・強化のためにBCP策定の重要度がますます高
    まっていくことだけは確かです。

   4.CSR上の意義

    大規模災害時にはインフラがストップするなど国民生活にも大きな支障が生じ
    ます。

    BCP策定によって会社機能を維持できていれば、地域住民への支援拠点として
    活用することができます。

    これは企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を果た
    すうえでも、大変重要です。

    日頃からこのような姿勢を打ち出しておくことで、企業イメージが向上し、結果と
    して企業存続の基盤が強化されると考えられます。

  □BCP策定・運用の手順

   以下にBCP策定・運用の大まかな流れを解説します。

    1.BCP策定宣言と事業継続方針の決定

    2.重大災害とその被害の想定

    3.自社の存続にかかわる重要業務の確認

    4.重要業務の精査

    5.事前対策の検討・実施

    6.目標復旧時間の設定

    7.緊急対応マニュアルの策定と共有

    8.訓練・計画の見直し

   1.BCP策定宣言と事業継続方針の決定

    社長自らが自社でBCP策定に取り組むこと、策定の意義などを全社員に対して
    説明します。

    BCP策定には全社員の協力が不可欠であり、社長自らが宣言することで、社員
    の理解を深めることが大切です。

    宣言後は幹部社員と話し合いながら、BCPの根幹となる事業継続方針を定めます。

    事業継続方針とは、緊急時に企業が取るべき行動の優先順位を示すものです。

    企業の業種や理念などによって異なりますが、一般的には次のような事業継続
    方針が定められます。

    <事業額続方針の例>

     ・従業員とその家族の安全を守る

     ・顧客への供給責任を果たす

     ・地域や顧客の復興を支援する

     ・業務を正常レベルに戻す

    この例では緊急時の限られた経営資源について、まずは従業員とその家族の
    安全のために使い、その次に顧客への供給責任の全うに取り組むということに
    なります。

   2.重大災害とその被害の想定

    企業が直面する重大災害には、その地域全体で懸念される大地震、風水害、
    感染症などの自然災害や、その企業単独で起こり得る火災や事故などがあります。

    このうち地震や洪水などの被害予測については、国土交通省のウェブサイトか
    ら確認することができます。

    また、都道府県や市町村の防災担当部署では、より細かい単位でハザードマッ
    プを策定している場合があります。

    まずは自社所在地について、どのような災害の可能性があり、どの程度の被害
    がありそうなのかを確認します。

    さらに自社の周辺地域や重要な取引先の所在地の状況も確認します。

    <参考URL>

     国土交通省/ハザードマップ(※)ポータルサイト

      ※ ハザードマップとは自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの

   3.自社の存続にかかわる重要業務の確認

    災害によって大きな被害を受けた場合、通常はベストの業務を行うことはできま
    せん。

    そこで、優先して対応すべき重要業務を選定します。

    まず業務を取引先別と製品別に整理します。

    あるメーカーが甲、乙、丙社に対して自社製品A、B、Cを販売しているとすると、
    業務は以下のように①〜⑨に分類されます。

    たとえば、①は「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」ということになります。

    次にそれぞれの業務の自社経営への影響度を以下のような基準で一つひとつ
    評価していきます。

    各基準の評価をした後で、総合的な判定を行います。

     ※1 自社が製品を供給しないことで取引先が操業停止に陥るなど取引先に与える
         影響を評価

     ※2 建設業におけるインフラ普及業務、小売店における食料販売業務などは社会的
               要請が高い

    これにより①〜⑨の業務の優先度を評価し、その結果を分析表に記入します。

    ここでは以下のような結果になったとします。

    表中の高、中、低は前述の評価結果一覧の総合判定結果を示したものです。

    この評価結果では①「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」、②「甲杜
    に対して製品Bを製造し、納品する業務」、⑦「丙社に対して製品Aを製造し、納
    品する業務」の重要度が高くなっています。

    したがってこのメーカーにとっての重要業務は①②⑦となり、災害時にはこの3
    つの業務に経営資源を優先的に投入することになります。

    特に甲社向けの業務が2つあるため、納品のためのトラックなど物流の割り当
    ては甲杜を優先する必要があります。

   4.重要業務の精査

    特定した重要業務のフローを分析し、業務遂行に必要な要素を整理します。

    たとえば、前述の(D「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」について
    は、以下のような要素が必要です。

    <業務①遂行ために必要な要素>

     ・原材料

     ・工場設備

     ・作業者、管理者

     ・電力などのインフラ

     ・情報システム

     ・納品のための物流

    地震などによってそれぞれの要素がどの程度のダメージを受ける可能性がある
    のかを検討します。

    特に工場設備の損壊など、復旧に時間がかかりそうな要素については漏れなく
    チェックします。

   5.事前対策の検討・実施

    重要業務の要素への被害を最小限にするための対策を検討し、実施します。

    対策のなかには工場躯体の耐震性強化など一定の時間と費用のかかるものも
    ありますが、転倒防止器具の取り付けや重要情報のバックアップ、防災用備蓄
    品の設置など比較的簡単にできるものもあります。

    できることはすぐにでも実施することが大切です。

    また、長期的に進める対策については、資金面の手当ても含めて、いつまでに
    完了させるかの計画を定めます。

   6.目標復旧時間の設定

    災害によって停止してしまった業務について、どの程度の期間で通常レベルに
    再開するかについて目標時間を設定します。

    大震災によって工場のすべての生産ラインが停止してしまった場合などは、重
    要業務にかかわるラインを優先して回復していきます。

    前述の例では重要業務のひとつに①②⑦があげられていましたので、まずはこ
    れらの業務回復に努めます。

    その際には自社の目標復旧時間について、取引先から合意を得ておくことが大
    切です。

    たとえば、

    ①「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」については、あらかじめ甲社と
    話し合って「災害から2週間で50%、lカ月後に100%」などの条件を決めておき
    ます。

   7.緊急対応マニュアルの策定と共有

    実際に被災した際にはパニックに陥り、どのように対応すればよいかわからず、
    初動が遅れることもあります。

    そこで、災害発生時に「誰が何をするか」という行動レベルのマニュアルを策定
    し、全社員がその内容を共有しておく必要があります。

    マニュアルのポイントとしては以下のようなものがあげられます。

    <緊急対応マニュアルのポイント>

     ・BCP発動基準と方法

     ・情報拠点の確保(本社や営業所が使えない場合は、社長宅など)

     ・指示・命令系統の確立(社長が執行不能の場合はA専務、A専務も執行
      不能の場合はB部長など)

     ・従業員の安否確認(連絡先リスト、連絡手順など)

     ・取引先の状況把握と支援要請の有無の確認

     ・自社施設(本社、営業所、工場など)の被害状況把握(特に重要業務に
      関連する施設・設備)

     ・自社施設が原因で起こる二次災害予防

     ・自社周辺地域住民・施設・インフラ等の被災状況把握

     ・帰宅困難者への対応

     ・重要業務遂行状況の把握(誰がどのように把握するか)

     ・重要業務復旧のための初動

     ・財務面に与える影響把握、公的な緊急融資制度等の利用検討

   8.訓練・計画の見直し

    上記の緊急対応マニュアルを確実に実践するためには、日頃から訓練を積ん
    でおくことが不可欠です。

    災害の想定を毎回変更するなどして、臨機応変な行動力を高めていくことが大
    切です。

    また、社内外の経営環境の変化によって、BCP策定時に定めた当初の「重要業
    務」が変わることもあります。

    そのため、状況変化に応じてBCPを更新していくことが必要です。

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中小企業のBCP策定と活用

災害時における従業員の安全確保

災害時における従業員の安全確保
 

  ■災害時における従業員の安全確保

   1.防災対策取り組みの体制
     災害などの緊急時には平常時とは異なる判断や行動が求められます。

     そのため、いざというときに従業員が的確な行動を取り、安全を確保できるよう
     に、企業は日ごろから防災対策に取り組むことが大切です。

     防災対策を経常に関わる課題として位置付け、経常トップが統括し、対策を検
     討する担当責任者やプロジェクトチームを組織し、想定される被害の把握、マ
     ニュアルの作成、予算化、自助の取り組みの啓発を行います。

     具体策としては以下の通りです。
      ・地震、津波、火災、土砂災書、停電、被災後の風評被害など、自社が
       受ける可能性がある被害を想定する。
       想定外の事態には対応が後手に回ってしまうため、可能な限り幅広く
       被害を想定することが大切。

      ・対策の実施体制について話し合い、対策本部やチームの編成、活動
       内容、担当責任者や責任者不在時に備えた複数の代替者を決め、
       従業員全員に周知する。

      ・対策の目的、基本方針を共有し、各自の役割や取るべき対策を理解
       できるマニュアルを作成し、徹底する。
       マニュアルには安否確認の手順も定めておく。

      ・研修や訓練で繰り返しマニュアルを確認し、実行性のある内容に改訂
       していく。
       災害発生時にはマニュアルを確認する余裕はないものとして、マニュ
       アル を見なくても的確な行動ができるようにするのが理想。

   2.事業所内の人の安全確保
     事業所の物理的な安全対策と、災害発生から数日間を過ごせるような備えを
     して、事業所内の人の安全を確保します。

     具体策は以下の通りです。
      ・建物や設備の耐震化を進める。
       特に、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物は、
       耐震診断を受け、その結果に応じて耐震補強などを行うことが必要。

      ・社内のキャビネットや備品などの転倒対策を進める。

      ・避難路となる廊下や出入り口に物を置かないよう日ごろから注意する。

      ・ガラスなどは割れて飛散する危険性があるため、飛散防止フイルムを
       貼るなどの対策をする。  

      ・非常持ち出し品や救助活動を円滑にするための資材や機材、食料や
       飲料水を備蓄しておき、定期的に点検する。
       運動靴、ヘルメット、軍手、避難時の障害とならない程度の食料や飲料
       水、応急手当て用品、ラジオ、懐中電灯、防寒具、ビニール袋などを
       入れた非常持ち出し品をまとめておく。
       また、のこぎり、バール、ジャッキ、担架などは救助活動に役立つため、
       事業所内に備えておくとよい。

      ・かさばる重要事頬などは持ち出せないものとして、耐火金庫へ保管する、 
       電子化して保管するなどの対策をする。

   3.訓練などによる事業所の災害対応力の確認
     実際に災害が発生した際に混乱なく的確に対応することは大変難しいもので
     す。

     自社の災害対応力を確認し、マニュアルや事業継続計画(BCP)の内容・手
     順などの見直しや改善につなげるために、防災訓練やシミュレーション訓練を
     行います。

     また、被害軽減策として建物・設備の耐震性診断、危険物などの管理上の点
     検・安全対策を実施すると同時に、災害発生後の対応策として被災状況の確
     認や初期消火といった被害の拡大防止の措置、関係機関への通報、周辺住
     民への危険の周知などを徹底することも大切です。

     具体策は以下の通りです。
      ・避難訓練、消火訓練、応急手当て訓練、救助訓練を行い、緊急時の
       避難場所までの経路確認や、消火器の使用法、止血法や骨折の固定
       法などを身に付けます。

      ・火災の初期消火に備えて、消火器などを設置し、正常に作動するか定期
       的に点検します。

      ・危険物などの漏出や出火を発見した場合、直ちに消防、警察など、防災
       関係機関に通報します。

  □災害時における従業員の安否確認方法

   1.安否確認方法の確立
     災害はいつ発生するか分かりません。

     出社した従業員が災害時に全員施設内にいるとは限りませんし、休日や休暇
     で従業員が出社していないケースもあります。

     企業には防災対策と同様、安否確認についても対策の実施体制について話し
     合い、チームの編成、活動内容、担当責任者や責任者の不在時に備えた複
     数の代替者を決め、従業員全員に周知することが求められます。

     その上で、災害時には専任のチームが安否確認対応に当たるようにします。

   2.緊急連絡網を整備する
     災害時に連絡が取れるように緊急連絡網を整備します。

     災害時の緊急連絡先は、複数決めておき、どこかで安否確認が取れるように
     しておきます。

     その上で、緊急連絡網を記入したカードを全従業員に配布し、常時携帯を義
     務付けます。

     カードは財布や定期入れに収まる大きさにするとよいでしょう。

     また、携帯電話の番号やメールアドレスを登録しておけば、すぐに連絡が取れ
     る態勢となります。

     とはいえ、災害時には通信回線が混み合ってしまい、思うように連絡が取れな
     い可能性もあります。

     そうした場合には、NTTの災害用伝言ダイヤルや携帯電話会社の災害用伝
     言板サービスなども活用しましょう(詳しくは後述します)。

     なお、中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」のウェブサイトから、従業員
     連絡先リストや主要顧客情報を記入するための様式をダウンロードできます。

   3.災害用伝言ダイヤルや災害用伝言版サービスなどを活用する
     災害発生時に大量の電話が殺到すると、被災地域内における電話がつながり
     にくくなってしまいます。

     通常の電話がつながらない場合、比較的つながりやすいNTTの災害用伝言
     ダイヤルや災害用伝言板(web171)、携帯電話会社の災害用伝言板サービ
     スを活用しましょう。

     ただし、これらのサービスを一度も使ったことがないといざというときに戸惑っ
     てしまうため、平常時に使い方を覚えるように従業員に指導しておくとよいで
     しょう。

     災害用伝言ダイヤルなどのサービスの使い方は、次のウェブサイトで確認で
     きます。

        災害用伝言ダイヤル171  操作方法) 
        http://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171/
        http:// www.ntt-east.co.jp/ dengon/

        災害用伝言板(web171)
        http:// www.ntt-east.co.jp/ saigai /web171/
        http:// www.ntt-east.co.jp/ dengon/ web171/

        災害用伝言板サービス
        NTTドコモ 
        auケータイ 
        ソフトバンク 
        ワイモバイル 

     また、NTTレゾナントが管理・提供している「j-anpi 安否情報まとめて検索」
     では、パソコンやスマートフォン、携帯電話などからウェブブラウザを起動し、
     「電話番号」または「氏名」を検索条件として入力することで、NTTや携帯電話
     各社の災害用伝言板の情報に加え、日本放送協会(NHK)などが収集した大
     規模災害時における安否に関する情報、グーグルが提供するパーソンファイ
     ンダーの情報を対象に一括で検索し、結果をまとめて確認することができま
     す。
       J-anpi 安否情報まとめて検索

   4.ソーシャルネットワーキングサービスの活用も視野に入れる
     東日本大震災ではソーシャルネットワーキングサービスのTwitterにおけるツ
     イートやFacebookにおけるコメント、mixiにおけるログイン情報なども安否確
     認に一役買いました。

     また、東日本大震災後にサービス提供が開始されたLINEでは、メッセージが
     開かれると「既読」であることが通知されるため、それによる安否確認も可能と
     なっています。

     従業員の安否確認にどのようなサービスを使うかば、企業ごとの判断によって
     異なりますが、ソーシャルネットワーキングサービスの活用も視野に入れて検
     討することをお勧めします。

  □帰宅困難者対策
   1.一斉帰宅抑制が基本
     内閣府(防災担当)が2015年3月に公表した「大規模地震の発生に伴う帰宅
     困難者対策のガイドライン」によると、2011年3月11日に発生した東日本大
     震災では、首都圏において約515万人(内閣府推計)に及ぶ帰宅困難者が発
     生しました。

     こうした帰宅困難老が徒歩などで一斉に帰宅しようとすると、緊急車両の通行
     の妨げとなり、救命・救助、消火、緊急輸送などに支障を来す恐れがありま
     す。

     帰宅困難者の一斉帰宅に伴う混乱を回避するため、政府や都道府県などから
     一斉帰宅抑制の呼び掛けが行われた場合、企業には、従業員が安全に帰宅
     できるようになるまで施設内に待機させることが求められます。

   2.企業に求められる平常時の対応
     企業は、平常時、以下のような対応が求められます。
      ・施設内待機の計画を策定し、従業員へ周知する

      ・施設内待機のための備蓄をする(水:1人当たり1日3リットル、計
       9リットル。主食:1人当たり1日3食、計9食。毛布:1人当たり1枚。
       その他:物資ごとに必要量を算定)

      ・オフィス家具類の転倒防止や、ガラス飛散の防止などの対策を行う

      ・従業員への安否確認手段、従業員と家族との安否確認手段を確保する

      ・帰宅時間が集中しないような帰宅ルールを設定する

      ・年1回以上の訓練などにより定期的に手順を確認する

   3.企業に求められる災害発生時の対応
     企業は、災害発生時、以下のような対応が求められます。
      ・施設が安全であることを確認の上、従業員(来所者を含む)を施設内に
       待機させるようにする

      ・災害関連情報を入手し、周辺の火災状況などを確認の上、施設内
       または他の安全な場所で従業員を待機させるようにする

      ・建物や周辺が安全でない場合、一時滞在施設・災害時帰宅支援
       ステーション・避難所などへ従業員を案内または誘導する(注)

       (注)一時滞在施設は、集会所・庁舎やオフィスビル・ホテル・学校
          などです。
          災害時帰宅支援ステーションは、行政と協定を結んだコンビニ
          エンスストア・ファミリーレストラン・ガソリンスタンドなどです。
          避難所は、学校・公民館などの公共施設や指定きれた民間施設
          です。 


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中小企業のBCP策定と活用

自社の防災対策と防災管理規程


  ■自社の防災対策

   全国各地で発生している土砂災害の危険度が非常に高く、増水している河川もある。

   日本の国土は地震や台風・豪雨といった自然災害が発生しやすいうえに、ライフ

   ラインや建築物が高度に集積した都市部では、火災や地震などの災害が起きると、
   大きな人的・経済的損害を引き起こす恐れがあります。

   また、近年国内外で頻発した地震や津波・水害の災害は、あらためて防災への備えの
   必要性を訴えています。

   自然災害や事故などが企業活動に与える影響は少なくありません。

   火災・地震・暴風雨・洪水などの自然災害や火災などの各種災害(以下「災害」)に
   対して、企業は、「生命の安全確保」「二次災害の防止」「事業の継続」「地域貢献・
   地域との共生」という4つの役割を果たすことが期待されています。

   こうした社会的要請に応え、発生した災害に伴う被害を最小限にするための取り組み
   が防災対策です。

   防災対策を講じる際、企業は消防法などの関連法令を順守しなければなりません。

   例えば、消防法では、「消防計画の作成などを行う防火管理者(甲種・乙種)の設置」
   などについて定めています

   防火対象物と防火管理者の設置・資格区分(東京消防庁)および

   テナントの防火管理者の設置・資格区分は次の通りです。

   防火管理者の設置基準以外にも、消防法では企業の業種・規模によって順守すべき
   事項が定められています。

   また、消防法以外でも企業の防災対策に関連する法令や地方自治体が独自に定め
   た条例などもあるため、防災管理規程の作成に際してはこうした点にも注意を払う
   必要があります。

  防災管理規程ひな型
   紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定める
   べき内容が異なってきます。

   実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家へ相談することをお勧
   めします。

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中小企業のBCP策定と活用

BCM( Business continuity management:事業継続経営)


  ■BCM
   BCMとはリスクマネジメントの一種で、企業がリスク発生時にいかに事業の継続を 
   図り、取引先に対するサービスの提供の欠落を最小限にするかを目的とする経営
   手段です。

   BCMは、「事業継続経営(管理)」と訳され、「企業経営者が、個々の事業形態・特性
   等を考えた上で、『企業存続の生命線である事業継続』を守る経営手法」を指し、欧米
   で普及し、国内でも導入する企業が急増しています。

   地震やテロといった危機発生時に迅速に事業を継続・復旧させることが企業の大きな
   問題になるだけでなく、取引先からの選別基準や他社との差別化などに活用される
   など、経営戦略に包含されます。

   BCMを取入れ、機能させることができれば企業の信用力向上につながり、競争力、
   企業価値を一段と高めることができます。

   BCMは全ての事業の根幹をなすものであり、今後の企業活動のキーワードになると
   考えられています。

   個々の企業にとって、仮に災害時に事前準備もなく復旧が遅れるようなことになった
   場合には、機会利益を損失するだけではなく、取引先、消費者への信頼を失い長期的
   にマーケットシェアを失うという重大な影響があり、企業の存立基盤にかかわる問題
   となります。

   また、企業が事業を円滑に遂行していく体制を整備することは、昨今多くの企業で
   取組がなされているCSR(企業の社会的責任)の観点からも重要なテーマであり、
   企業経営者が果たすべきお客様、株主等、利害関係者への責任でもあります。

   CSR活動のひとつとして、BCMへの取組がはじまり、取組が活発化していることも
   最近の特徴的な動きです。

   さらには、自然災害大国でありながら経済大国でもある日本で、災害時復旧が遅れた
   場合、経済活動の停滞による世界経済全体への影響も懸念されており、国外からも
   日本でのこの分野への取組への期待が高まっています。

   内閣府での取組も今後国を挙げた取組とする方向で進んでおり、今後10年間で大
   企業では100%、中小企業でも50%の導入をめざすとしています。

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静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

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