製造業の品質管理と生産性向上

製造業の外注管理

■外注のコスト、納期を圧縮

 製造業では、生産の全工程を社内で行っている企業は少なく、程度の差はあるものの多くは社外の
 企業に
発注しています。

 このいわゆる外注は、自社の第二の製造部門ともいえるもので、その活用次第で、企業の生産能力
 や収益を
増大させることが可能です。

 しかし、自社の製造部門に比べると、社外であるだけに十分に目が届かなかったり、意思の疎通に
 欠け、
コストや納期の管理が甘くなりがちです。

 きちんとした外注管理をしていないと、外注単価が高くなったり、納期遅れや品質トラブルが発生
 します。

 こうしたことをなくすために、外注管理の基本を十分に押さえ、それを実行していく必要があります。

 1.外注管理を行う際のポイント

  外注管理は、次のステップを踏んで進めていきます。

  第1ステップは、内作と外作の基準を作成することです。

  現行の内外作区分が、自社の実情から見て適切かどうかを検討します。

  社内製作の基準としては、

   ・自社に生産能力がある

   ・技術を自社で保有したい

   ・企業秘密上外注できない

   ・自社生産のほうがコスト上有利

  等があげられます。

  一方、外作(外注) の決定基準としては、

   ・社内の生産能力を超える受注がある

   ・外注のほうがコストが安い

   ・技術的に社内では無理

   ・必要設備がない

  等があります。

  ご覧いただいて分かるように、単純な生産効率の問題だけでなく、高度な経営判断も必要です。

  例えば、「外注しない」 という判断は購買部門だけではできないからです。

  検討に当たっては、トップ自らかそれに代わるクラスの役員も参加すべきです。

  第2ステップは、外注先の選定です。

  従来からのつながりで外注先を固定化している場合が多くみられますが、その経営内容や能力は
  常に変わりうるものであり、外注先を“選定する”という意識を持つ必要があります。

  そのためには、今の外注先でよいのかどうか常にチェックする仕組みづくりが不可欠です。

  そこで外注先管理カードの作成をおすすめします。

  記載する項目は、経営内容、主要業務、社員数等です。

  さらに、外注先の強みと弱みを知る上から、得意分野や生産能力を元にした外注先格付け表も
  作成していきましょう。

  なお、外注先管理カードや外注先格付け表は、最低でも年1回は更新、評価替えが必要です。

  外注先の経営内容が悪化すると、商品の品質悪化を招きます。

  先手を打つためにも、資材など担当部門だけでなく全社的に情報を収集する仕組みを作るべきです。

 2.外注価格の決め方

  第3ステップは、外注価格の決定です。

  外注内容に応じて選定した数社から見積りを取り、内容を検討します。

  見積りは通常、材料費、労務費、その他経費、さらに利益などを集計する積み上げ方式で作成
  されたものが
提出されます。

  これを見て、その内容の正確性、妥当性を評価していきます。

  ここで重要なことは、自社のモノサシ(価格見積技術)を持つことです。

  このモノサシがなければ、見積金額が安いのか高いのか評価できません。

  高いのは論外ですが、価格が安すぎるのも問題です。

  無理な計画では納期、品質に不安が残るからです。

  見積もり通りに価格が決まることはまずありません。

  自社と外注先の間で単価交渉が必要ですが、当然この席でもモノサシは不可欠です。

  自社の予算価格を主張しても、そもそも適正価格がわからなければ説得力に乏しく、結局は
  相手の言いなりに
なってしまうことになるからです。

  モノサシを作るには自社で実際に製品を作ってみることです。

  単価交渉では、自社の立場だけに固執せず、外注先の立場もよく理解した上で、話を進めていく
  ことも忘れてはならないでしょう。

  モノサシがない会社に限って、無理な要求をするものです。

  そのため良質な外注先とは話がまとまらず、能力のない外注先ばかりが残ってしまいます。

 
3.決まった外注先の管理方法

  最初から優秀な外注先など、そうたくさんはありません。

  そこで以下のステップが重要になるのです。

  第4ステップは、納期管理の徹底です。

  先に述べたように外注先は第2の製造部門でありながら、自社工場より見えにくいものです。

  その生産プロセス管理にあたっては、自社工場で行うのと同様あるいはそれ以上の管理を徹底
  していく必
要があります。

  例えば、納期遅れの原因として、外注先における作業手順の誤りや設備上のトラブル発生などが
  考えられます。

  こうしたことを防止するために、次のような納期管理の基本を徹底してください。

   ・実績を正しく把握する

   ・実績と計画との対比を行い、進捗度合いをチェックする

   ・実績と計画に差異が生じた場合には、原因を必ず報告させる

  外注先から上がってきた報告書を元に、計画通りに進めるにはどうしたらよいか再検討し、その
  対策を講じます。

  第5ステップは、品質の管理です。外注先の製品は自社製品の品質に直結します。

  外注製品で不良品が発生すると、自社が信頼を失います。

  品質トラブルは、仕様書を受けとった外注先が要求品質の内容を十分理解できない場合や、外注
  先の管理体制に不備があった場合に多くみられます。

  こうしたことを防止するには、外注先との定例工程会議を設けて、工程ごとに仕様の確認を行っ
  たり、品質管理のチェックシート等を作成し活用します。

  外注先の品質管理体制に問題がある場合には、外注先に対して品質管理教育を実施していきます。

  万一、不良品が発生した場合には、納期管理と同様、不良品が発生しないためにはどうしたら
  よいか外注先に考えさせ、その対策を講じます。

  自社と外注先の双方が解決策を考えることで、全体としてのスキルが向上し、以後のトラブルが
  
減少するからです。

  納期、品質の管理のためには、自社の製造部門で実施しているのと同水準のQCやVA(価値
  分析)を外注先に要求して構いません。

  そういった育成と並行して、外注先の新規開拓も常に必要です。

  外注先同士の競争は、自社だけでなく、結果として既存の外注先の能力を向上させることにも
  
なります。

 多くの日本の製造業で、自社の内部の生産性を今以上に上げるのは容易なことではありません。

 徹底した外注の管理こそ生産性向上の決め手であることを肝に銘じたいものです。

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製造業の品質管理と生産性向上

PDCAサイクルを継続的に回す

■問題点・原因究明を正しく行う 

 1.差異原因を明らかにする 

  「計画」とは、目標を達成するための方法と順序です。

  したがって、目的を達成するには、計画通りに進捗しているか、そうでないかを随時、確認する
  必要があります。

  3カ月や半年に1度、思いつきで行う程度では、目標の達成などおぼつかない。

  ここでは、計画の進捗を妨げる問題点と原因究明、つまりPDCAの「C(チェック)」に
  ついて取り上げます。

  進捗を正確かつタイムリーに把握できれば、マネジメントの質とスピードは上がり、計画の
  実行性は
格段に向上していく。

  チェックにおいては、計画と実績にマイナスの差異が生じている場合、その原因を明らかに
  しなければならない。

  その際、重要なポイントが2点あります。

  1点目は、「現実を厳しく受け止める」ことである。当たり前のように思われるかもしれ
  ないが、
実は“甘く”受け止める企業が非常に多い。

  前月目標が未達に終わったにもかかわらず、「まあいいか、よく頑張った」と満足して、
  差異原因の分析をしないケ
ースです。

  目標の達成率に“許容範囲”はない。

  目指すべきは、常に「100%以上」です。

  たとえ達成率が99.9%であっても、未達は「未達」である。

  目標とは「絶対に達成すべきもの」ととらえなければならない。それ以外の目標は、単なる
  「予定」でしかない。

  目標に到達していない事実を正しく、厳しく認識しなければ、「未達原因」の追及などできない。

  達成率100%でないことに対し、危機感を持つことが大切になる。

  2点目は、目標未達という事実を、早く知ることです。

  現状で、「目標に対して○%足りない」ことが早い段階で分かれば、対策や修正計画を設定
  できます。

  そのためにも、チェックのタイミングがポイントであり、月・週・日など、タイムリーな
  「管理サイク
ル」の設定するが大切になる。

  目標達成率が高いリーダーは、何となく仕事をして、いつの間にか月末に目標を達成している
  わけではありません。

  目標まで、あといくら足りないかを常に把握し、すぐに対策と修正計画を考える。

  仕掛けが早いから、目標を達成できるのです。

  製造業の生産進捗管理も同様です。

  例えば、取引先の必要に応じて注文が入る受注生産型の会社の場合、チェックを月ごとに行っても
  意味がない。

  なぜなら、日々修正される計画に対して問題点が明確にならず、修正が成り行きのものになり、
  不良率が下がらな
いなど、問題の解決につながらないからです。

  この場合は、日々チェックする管理体制を整えることで、1日の生産計画に対する生産の進捗
  状況をリアルタイムに把握していく。

  計画と実績との差異を常に確認し、遅れが発生した場合はその場で原因を究明し、応急の対策を
  実施する。

  これだけでも遅れを挽回できる。

  再発防止策(恒久対策)が必要な場合は、1日の仕事が終了した時点で改善計画を作成すれば、
  翌日から改善できる。

  チェックをするまでの期間が長いために、対策が後手に回る企業は多い。

  チェックをするタイミングを短くすることが必要です。

 2.KPI重要業績評価指標)を正しく設定し、真因をつかむ

  計画の達成度や進捗状況の追跡も重要だが、そもそも計画自体が正しく策定されているかどうかを
  チェックする必要がある。

  見る人によって受け取り方が異なるような漠然とした計画では、現状を正確に把握することなど
  できない。

  計画は具体的、かつ定量的でなければならない。

  近年、「計画は順調か」「目指す結果が出ているか」を判断するための指標である、KPI
  (key Performance Indicator:重要業績評価指標)を活用する企業が増えている。

  KPIとは、企業が目標実現に必要な業務プロセスをモニタリングする指標のうち、特に重要な
  ものを指す。

  また、プロセスの実施状況を計測するために、実行度合い(パフォーマンス)を定量的に示す
  ものです。

  これを月、週、日など、一定期間ごとに数値を計測して進捗を管理していく。

  目標を達成するため、こだわるべきツボをKPIとして押さえる。

  KPIが達成されれば、目標や成果も達成できる指標を選ぶことがポイントです。

  例えば、営業利益率の目標に対しては、「営業活動における訪問回数○回以上」「引き合い
  件数○件以上」などがKPIになる。

  自動車ディーラーであれば試乗数、結婚式場であれば仮予約数など、契約に至る確率が高くなる
  指標を選ぶ。

  自社が目標を達成するために最も注目しなくてはならないプロセスがKPIに当たります。

  成果につながるKPIを正しく設定できれば、的確な振り返りができる。

  目標との差異についても、問題点や原因究明までたどり着ける正しいルートをスピーディーに
  絞り
込むことができるわけです。

  逆に、目標達成に直結しないKPIは、有効な対策の設定にたどり着けないだけでなく、社員に
  負荷をかけ、モチベーションが低下した状態へと陥ってしまう。

  成果につながるプロセスを考え抜いたKPIを設定することで、問題を顕在化させて原因究明を
  行
っていただきたい。

  具体例を示すと、小売業・サービス業であれば、売上目標に対するKPIとして、客数や客単価を
  設定することが多い。

  「売上高」が「客数」と「客単価」に分解できるからです。

  ここで大切なのは、KPIを見れば進捗状況を正しく把握できることです。

  その上で、問題点の把握と、対策が実施されているかチェックする。

  この場合、KPIのうち「客数」が減少しているのならば、どの層(新規・リピート、年齢、
  男女、職
業、グループの形態など)の顧客が減っているのかを分析する。

  さらに、ライバルの動き、地域の情勢、自社の販売施策をつかむことで、なぜ客数が減少して
  いるのかが見え
るようにする。

  ここで客数の減少要因が「接客応対」と分かれば、顧客が満足できない原因を細かく分析して、
  対策を打つ。

  「販売促進策」が要因であれば、プロモーションの改善計画を立て、それに基づいた展開を図る。

  成果に直結するKPIの設定とスピーディーなチェックによって、PDCAの回転を上げていく
  ことが、マネジメント向上のポイントです。


□適時に適切な処置・対策を行う 

 1.改善を妨げるしがらみから脱却する

  立てた計画を確実に実行すること、さらに計画との差異をタイムリーにチェックすることで、
  問題の原因と改善の方向性が見えてくる。

  しかし、その改善策を確実に実施しなければ、PDCAサイクルを継続的に回すことはできず、
  業績向上は難しくなる。

  ここでは、PDCAの「A(アクション)」である「処置・対策」を確実に行うポイントを
  述べていきます。

  ◎
製造業M社の事例

   M社の工場の生産進捗管理板(以降、管理板)の仕組みと管理方法には、二つの問題点があった。

   一つ目は、管理板の元となる「作業予定表」を工程管理課ではなく製造現場が作成しており、
   現場の仕事が滞っていたこと。

   二つ目は、管理板には当日の業務と担当割だけしか記されておらず、タイムリーな状況が
   つかめないことです。

   そもそも、作業予定表を作成するのは、工程管理を担う部門の仕事。

   製造現場の使命は、「限られた時間内で、決められた数量をつくること」にある。

   したがってM社では、工程管理課が生産計画に基づいて現場に指示を行い、製造現場は
   与えられた数を必ずつ
くるという本来の姿に戻す必要があった。

   最大のポイントは、「作業予定表は製造現場で作成する」という慣習をやめさせること。

   そうしなければ、製造現場が本来の仕事に注力できず、全体最適につながらないため。

   しかし、M社は過去の慣習やしがらみに縛られ、改善できないままでいた。

   この問題を解決するには、部門の壁を超えてコミュニケーションを取り、問題を共有する
   ことが必要でした。

   工程管理課と製造現場で話し合った結果、月度の生産計画を達成するための作業予定表を
   工程管理課で作成することになった。

   また、慣習という意味では、業務マニュアルなども、実態に合わせて見直さねばならない。

   なぜなら、経営状況や周囲の環境の変化によって、マニュアルが効率化の妨げとなっている
   ことがあるからです。

   「現在のマニュアルがベストか」「本来どうあるべきか」について考える姿勢を持たなければ、
   しがらみから脱却できず、表面的な改善しかできなくなる。

   これでは、最善に向けた処置・対策は進まない。

 2.勝負のポイントを細かく設定し、処置・対策を行う

  続いて、二つ目の問題点である、製造現場の管理板について述べます。

  M社の管理板には、当日の業務と担当が記されているのみであることは述べました。

  これでは、順調に進んでいるのか、遅れているのかを把握できず、遅延などの問題への対策を
  打つことができ
ない。

  そこで、定期的に状況を管理版に記入することにした。

  これによって、遅延などの異常をタイムリーに把握し、処置・対策が打てるようになった。

  さらに、1日の作業終了時には当日の問題点への再発防止策を検討する仕組みにし、管理板で
  状況を見えるよう
にしたのです。

  目標に対する差異を見える化すれば、適切に作業が行われているかが分かる。

  また、人・材料・設備・方法に変化があった場合でも、対応を考えて、常にタイムリーな処置・
  
対策を講じることができる。

  さらに、問題点対策管理表を用いて再発を防止する根本的な対策を打つことで、全体最適が
  図られるのです。

  また、状況が細かく見えるため、現場で問題点などが共有され、それに対するコミュニケー
  ションも活発になる。

  これによって、改善への動きが止まりにくい仕組みがつくられ、続けることで処置・対策を
  確実に実行できる組織になっていく。

  業務に応じて、1カ月、1週間、1日、時間ごとなど、定期的に成果をつかむ仕組みをつくり、
  組織として共有することがPDCAサイクルの改善においては重要なのです。


 3.改善が改善を生む風土つくる

  PDCAサイクルを正しく回し、継続的な向上を図るには、当たり前のことを当たり前に実施できる
  組織力を高めなければならない。

  処置・対策といった改善の実践力は、組織力の高さで決まるのです。

  例えば、製造業などで実施されている5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)。

  これを徹底できないチームと体質化できているチームでは、改善活動に大きな差が生まれる
  ことは想像に難くない。

  5Sの基本が共有化されており、その実践によって組織力が高くなっていることが、よりレベルの
  高い改善に取り組む下地となっている。

  また、スピード感を持って改善を重ねることで活動が進化していく経験をしているので、取り
  組む姿勢が企業の体質にな
っている。

  適切な処置・対策をタイムリーに行い継続的な改善を図っていくには、企業の「当たり前の
  レベル」を高めていくことが前提となる。

  それができなければ、改善案を自発的に立案し、スピーディーに実施していくことは困難です。

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製造業の品質管理と生産性向上

製造業における幹部の仕事

■改善の仕方

 1.改善こそ自社の生き残る道

  改善には作業改善、機械の改善、製品の改善、管理方法の改善……等々、さまざまな分野での
  改善があり、自社の維持発展には欠かせないものです。

  企業環境は日々めまぐるしく変化し、かつライバルとの戦いは一段と激しさを増してきました。

  品質に、コストに、また納期について顧客の要望も厳しい。

  過去のあり方の延長線上に、自社の存在はないといっても過言ではありません。

  より良く、より安く、より早く、より確実に、より楽に・・・を求めての改善努力こそが、自社の
  生き残る道を知ることです。

 2.改善の仕方の原則

  TWI(Training Within Industry)の手引きにも示されているように、改善とは現存の労力、
  機械、材料を最も有効に使うことにより、短期間に、良い品質のものを多量に生産するのに
  役立つ実際方法と定義づけられています。

  その原則(手順)として、

   第1段階 - 作業の選択と分解

   第2段階 - 現在方法の検討
          (作業細目の検討)

   第3段階 - 新方法の案出

   第4段階 - 新方法の実施

 3.作業の選択・分解

  (1)作業分解シートにより、現在方法をそのままに作業の全細目を記録する

   なぜ徹底的に分解するかといえば、現在方法は、作業員の熟練した技能と習慣による惰性で
   行われていて、不便を感じていないことが多く、改善の必要なしとの盲点に陥ってしまう
   からです。

   しかし、1つひとつの作業を徹底的に分解して表にすると、それぞれの動作を容易にチェック
   でき、数多くのムダな動作を発見することも可能となります。

   また動作を結合したり組み替えることにより、作業を簡単にすることもできるのです。

  (2)作業の細目とは

   ①操作(記号○)

    作業員が手足、工具機械等により原料・資材に働きかけている状態

   ②運搬(記号●)

    作業員が原料・資材を移動している状態

   ③検査(記号□)

    作業員が五感のうち、いくつかを使って調べること

   ④停滞(記号△)

    作業員が手持ちするとか、何もしないこと

 4.現在方法の検討

  (1)7つの言葉で作業の細目について検討する

   ①なぜそれは必要か(Why)、また何の目的のためにこのような動作をしている
    のか(What)。

    摘出された作業の各項目について「なぜ」「なに」の2つの自問により作業の必要性を
    チェックし、不要なら改善の着想欄にその旨を記入する。

   ②第1チェックにより必要と認められる動作なら、次の自問によりさらに掘り下げを行う。

    a.どこでやるのが最も良いか<Where>
     もっと広い場所で、もっと便利なところで、他の工程で……等々。
     場所、工程を変えることでさらにやりやすくできないか。

    b.いつするのが1番良いか<When>
     順序を変えることでもっと良くならないか

    c.誰にやってもらうのが良いか<Who>
     男子を女子に変えたら、社員からパートに変えられないか、他の工程に任せた方が
     良いか、外注にした方が安くつかないか……等々

    d.どんな方法が最も良いか<How>もっと簡単な方法はないか、機械・工具は
     使えないか……等々

    e.この作業を実施する場合の費用や量は妥当か<How much>

   以上のチェックにより、現在の作業方法に問題のある場合には、作業員の力を借りて良い
   考え方があれば着想欄に記入する。

  (2)作業の各細目をチェックすると同時に、材料・機械・設備・工具等についても全般的な
    検討を加える。

   ①材料

    a.もっと良い、安い、得やすい材料は使えないか

    b.この作業で生ずる廃品は他に活用できないか

    c.廃品、不良品を最小限に減少できないか

   ②機械

    a.この機械でなくてはならないか、遊んでいる機械ではできないか

    b.この機械をこのように改良すればもっと効率が上がる

    c.機械は正しく使われているか、保全に問題はないか

   ③設備

    この設備は必要か、場所は良いか

   ④工具

    a.2つの道具を1つにまとめた道具はないか、もっと軽く小さくできないか

    b.置き場所は良いか

   ⑤設計

    設計や仕様の変更により、品質、コスト、作業時間の節約はできないか

   ⑥配置

    機械や設備の配置変更により、効率良く安全にできないか

   ⑦動作

    身体を曲げたり伸ばす動作が多すぎないか、動作を省略するための道具、設備は
    導入できないか

   ⑧安全

    人身の安全と同時に、製品の安全も考える

   ⑨整理整頓

    作業場をもっと広く、便利に使えるよう整理整頓はできているか

   等々、気づいた点を着想欄に記入する。

□新たな改善方法

 1.新たな改善方法の案出

  (1)新たな改善方法案出のための処置

   作業の各細目チェックを終えたなら、次の手順に従って新方法案出のための処置をとる。

   ①不要な細目を取り去る。

    「なぜ」「なに」の自問により、不要と決まった細目(作業)は、着想欄にその旨を
    記入する。

   ②細目を結合する。

    別々にやっている作業を1つにまとめることが可能なら、作業ナンバーを付記して
    「結合」と着想欄に明記する。

   ③細目を良い順序に組み替える。

    細目の順序を1つ前に持ってきた方が良いとか、または最後にした方が良いとかの
    場合には、作業ナンバー何番と何番を「組み替え」と記入する。

   ④必要な細目を簡単にする。

    必要な細目の中で、2度やっているが1度で十分なことがあれば「ここは研磨不要」
    とか、「ここは塗装不要」と明記する。

    また作業が一層簡単にできるなら、その方法を注記しておく。

   ⑤新たな改善方法の細目を記録する。

    以上、すべての処置を終えたら、新しい作業分解シートに新方法の細目を記録する。

  (2)動作についての改善ヒント

   作業をより楽に、安全にするためのヒントとして「動作経済の原則」がある。

  いくつかの要点を述べてみます。

   ①できるだけ身体を動かさない。

   ②材料、道具及び設備を、適当な動作範囲の最も良い位置に置く(身体の動きをできるだけ
    小さくする)。

   ③動作の数をできるだけ少なくする(ムダのない、楽な仕事は動作が少ない仕事である)。

   ④両手を有効に用いること(片手といえども遊ばせない)。

   ⑤足を有効に使う。

   ⑥手で支える代わりに、治具や取り付け具を用いる。

   ⑦細かな調節を必要とする動作は、道具を考えて簡単な動作とする。

   ⑧工具や機械の“にぎり”は、握りやすい形にする。

   ⑨重い加工品や道具の取り扱いは、重力利用の補給装置や落下送り出し装置を
    用いる(運搬方法の工夫)。

   ⑩目をできるだけ動かさない(使用する工具やハンマー等、見やすい色に塗っておけば
    探す・見つけるの動作が省ける)。

   ⑪作業のやりやすい照明とする。

   ⑫不自然な姿勢を避け、できるだけ楽な姿勢で仕事をする。

   ⑬単調な繰り返し動作を機械に置き換える。

   ⑭安全であること、整理整頓されていること、良い服装、良い環境であること。

   ⑮不安定作業(作業の戸惑い、手待ち)があったらその原因を調べる。

   等々である。

 2.新たな改善方法の実施

  いくら良い改善方法を案出しても、これが実施されなければ、何ら成果にはつながらない。

  実行に移していくには、

   ①新たな改善方法を上司に納得させる。

   ②新たな改善方法を部下に納得させる。

   ③安全、品質、生産、原価、その他関係者に最後の承認を得る。

   ④新たな改善方法を仕事に移す。

  の手順を踏むことです。

  改善を円滑に進めていくための留意点を次項より述べてみます。

  (1)数字による説得

   上司が改善に深い理解を示さない場合は、往々にして「前に自分も考えたことがあったが
   駄目だった」「今のままで不便はない!!」等と言って拒否したり、あるときは「みんなが
   どう言うかね」「恐らく駄目と思うがね」とためらったりします。

   そして、挙句の果ては「よく考えてみよう」と逃げてしまうことがある。

   部下の場合でも、現在の方法に慣れきっているだけに、新しい方法にはたとえ頭で良いと
   分かっていても、まず抵抗を示すことが多い。

   これを打破していくには「数字化」して説得することが最も効果的です。

   単に「作業方法の改善で時間短縮が10%できる」というだけでなく、「1日100個、
   月間2,500個、年間30,000個の増産が可能。

   粗利で(1個当たり500円とすると)1,500万円増える」というように、可能な限り
   具体的に説明していくと分かりやすいし、納得も得られやすい。

  (2)オープン主義の土壌づくり

   もう一つの重要点は、社内の雰囲気が何でも言い合える、垣根のないオープン主義であること
   です。

   お互いの情報や知恵が共有されてこそ、チームワークも高まり業績も向上していくのです。

   そのポイントは、

    ①上司としての自分自身が、まずオープンになりきること。
     自分の成果、ノウハウはすべて他人に公開する。
     また、部下に影響ある情報は遅滞なく伝える等々、日頃から心得ておくことです。

    ②部下からの改善提案を快く受け入れる。
     決して「駄目だ」「難しい」等の否定語を使わない。

    ③他人の功績は素直に認める。認め合うほどに意見が出てくる。

    ④他人の協力を積極的に得る。殊に現場の人たちの力を借りることで、実用的な新方法の
     展開ができることが多い。

□問題解決能力の涵養(かんよう:無理をしないでゆっくりと養い育てる)

 「経営は人なり」の言葉どおり、企業の業績は人のレベルで決まります。

 すなわち人々が仕事に意欲を持ち、より困難な問題をいかに解決していくか、その能力いかんが
 業績を決定づけるということです。

 すでに問題解決について、その基本である問題意識の持ち方、問題発見とその掘り下げ方・解決の
 技法等を述べてきました。

 ここでは、特に問題解決の能力アップについて、心構えと具体的方法を述べます。

 1.問題解決の主役となる

  いかなる問題でも、これを解決していくにはまず自分自身が問題解決の主役となることです。

  そのうち誰かがやってくれるだろうとか、そのうち何とかなるだろうと他人任せ、時任せでは
  駄目。

  殊に幹部の意識と姿勢に、他力本願がミエミエになると、自分自身の能力開発の障害になる
  ことはもちろんのこと、チーム全体を依存体質に向けてしまうものです。

  人は、はじめは小さな問題しか解決できないかも知れない。

  あるいはまた、大きな問題のほんの一部しか担当できないかも知れません。

  しかし、その場にあたって常に自らが主役として問題に挑戦し、解決に情熱を示すなら確実に
  能力が広がり、やがてはより大きい問題を解決することができるのです。

  そしてこの経験を通して、部下の主役意識の高揚を指導することもできるのです。

 2.実際を通じて自信を育てる

  次に大切なことは自信を得ることです。

  裏付のない理屈だけのカラいばりではメッキがはげます。

  体験を通じて自信をつけていくことが肝心です。

  具体的実践方法として、

  (1)得意なこと、好きなことをやることで成功体験を得て自信をつける。

  (2)簡単なことから始める。

   自分の得意なことを発揮する余地がないときには、ごく簡単なことから始めると良い。

   セミナーや教育研修に参加しても、ちっとも変わらない人がいる。

   これはごく簡単なことから実践して、成功体験を得ようという意欲を欠いているからです。

   知識先行型の陥る盲点です。

  (3)1つのことを徹底する。

   バカの1つ覚えということがあります。

   同じことを繰り返し、継続することで能力の幅が広がり、自信を持つことができます。

  (4)部下の得意を知って動かす。

   人それぞれに何かの特技があるものです。

   その点をつかみ、うまくキッカケを与えることで部下を動かし、チームとしての問題解決
   能力を高めていく。

  (5)成功事例を反省することで、勝ちぐせをつけ自信をつける。

   失敗したことを反省することも大切だが、それ以上にうまくいった仕事の成功要因を
   明確にし、勝ちのコツを整理して形に残すことです。

   これがまた次の仕事にも大きいヒントになり、意欲の原動力ともなるのです。

 3.能力の積極的涵養

  企業を取り巻く環境が大きく変化し、仕事で要求される能力レベルが一段と高くなってきて
  います。

  それだけに、人の能力アップが図られないと問題が山積し、業績低下の要因ともなります。

  この場合、問題解決のやり方として2つの方法が考えられる。

  (1)能力レベルの高い人を連れてきて問題解決を行う。

  (2)効率は少し悪くなるが、現在の能力レベルでは解決できるかどうか分からない問題に
    取り組ませ、解決させます。

  最も効率が良いのは前者の方法ですが、無いないづくしの中から最大の成果を上げるのがまた
  経営でもあるのです。

  後者の選択で地道な努力をすることも肝心です。

  困難な問題に挑戦するから能力が高くなり、能力が高くなるからより高度な問題解決ができる
  ような善循環が生じてくるはずです。

  (1)能力のカベを打ち破る

   「自分の能力に限界がある」と自ら絶望する必要はない。

   カベを打ち破ることで自己の能力はいくらでも広げられるものです。

   その方法として

    ①教えてくれる人があるうちは、そのレベルまで指導してもらう。

    ②レベルが上がって教えてくれる人がいなくなったときは、自ら物の見方・考え方を
     変え、行動に変革を起こしてカベを打ち破る

   の2点があります。

   前者は通常「勉強」といわれることであり、後者は自らの「変革」そのものです。

   環境そのものが大きく変化しそれに対応していくには、何事にもとらわれない素直な心で
   物を見て、考えられるようにしなければならない。

   先入観を持って物を見る癖のある人は、その癖を直さない限り問題を正しく認識し、適切な
   解決をする能力も身につけられないのです。

  (2)具体的な能力拡大の方法

   ①頭と身体をつなげる勉強

    a.知識を吸収する。広い分野の人の意見を聞き本を読む。
     これがまずスタートだ。

    b.得た知識を実際に繰り返して身体で覚える。
     やってみれば、本で読むように簡単でないことが分かる。
     しかし訓練を重ねることで種々の技法が確実に身につく。

   ②新しい仕事に挑戦する
    自分の今までの仕事だけにとどまることなく、積極的に仕事の範囲を広げる努力をする。
    責任者の立場に立ったり、他の分野の仕事をしてみれば、その立場の苦労もよく理解でき
    視野を広げることにもなる。

   ③自分の限界を広げる訓練をする
    一度自分の体力・能力のギリギリの限界に挑んでみる。
    そしてその限界を知っておく。
    自分は何日徹夜ができるかの限界を体験してみれば、自信にもつながる。

   ④マイナス発想を決してしない
    困難な問題に直面しても決して弱音を吐かない。
    「必ず解決できる」「絶対うまくいく」のプラス意識に置き替えて対処することです。
    人事を尽くして天祐を信じる。
    必勝の信念をベースに、プラスの人生観を築くことです。

   ⑤まず一歩を踏み出す情熱を持つ
    自らが問題解決の主人公となるには、たとえ小さくてもまず一歩足を踏み出すこと。
    多くの知識・技法を身につけても、実行が伴わなければ成果は生まれない。
    最後の決め手は、全情熱を燃焼させての「実行」そのものと知ることです。

□問題解決

 1.小集団による問題解決

  元来、人間は環境の影響を受けることが大きい。

  行動の愚鈍な集団に入ると、いつの間にか行動が鈍くなり、逆に反応の速いチームに身をおくと、
  素早い行動ができるようになるものです。

  したがって「長」たる幹部は、常にチームを活力ある状態にしておかなくてはならない。

  ひとたびマンネリ化し、環境が悪くなると、誰かがそれに気づいて直そうとしても、それを改革
  していくには大きいエネルギーが必要となります。

  少々のエネルギーでは駄目です。

  結局は押しつぶされてしまうのがオチです。

  それゆえにあなたは、このような強い力を持つ環境の良い方を利用することが肝心です。

  この一つの利用の仕方が「小集団」による問題解決です。

  今は大抵の会社でTQC活動が推進されているが、活性化され活動の成果が大きいところと、
  形だけを追いマンネリ症状から脱皮できないところといろいろあります。

  小集団活動が問題解決の場として有効に活用され、チームの活力アップにつなげるには、従来の
  クセ(体質)をいかに変えるかが最大のポイントとなります。

  逃避のクセ、責任転嫁のクセ、本音を語らないクセ、要領のクセ…等々、チームとしてさまざまな
  クセを持っている。

  それだけに「長」として粘り強さと徹底さと工夫をこらすことが肝心となります。

  時として、変更のきわめて困難なクセに直面した場合には、合宿をする等の徹底さと工夫が
  必要なこともある。

 2.活気ある小集団活動を目指して

  (1)本音の出る土壌づくり

   ①上司やリーダーの姿勢・態度
    よくあることですが、問題未解決や目標未達を環境や他人のせいにして、自己を
    正当化し、責任の転嫁をする例がある。
    身を守ろうとするのは人間の本能だから仕方ない、と諦めてしまってはチームの
    前進はない。
    だからといって、これをあまり厳しく打ち出し過ぎると、本音を言わなくなる。
    ウソがまかり通ったり、うわべのみを飾るようになれば、これまた形式の活動に
    終わってしまう。
    要は、言い訳や責任転嫁は認めないけれど「本音を出し合って真の問題解決をしよう。
    皆でより良い職場をつくり出そうよ」という姿勢・態度をはっきり打ち出すことです。
    予定どおりコトが運ばなかった場合でも、ありのままの報告をすること。
    しかし、それは人を責めるためにすることではなく、現状を正確に認識し、どうすべき
    かの衆知を集めるためにするのだと、繰り返し知らしめることです。
    活動に参加した上司が、悪い発表を聞いて怒鳴ったため、二度と本音の出なくなった
    事例もある。
    「本当の話をして、悪い発表しても決して怒らない。ウソをついて悪さを隠したり、
    やるべきことを怠けたり、手抜きしたときこそ厳しく指導する」ことを幹部心得と
    したいものです。

   ②意識の垣根を取り払う努力
    一般的に日常の仕事の中で発生する問題は、どこに原因があり、またどうすれば解決
    できるかは、当事者には大体の見当がついていることが多い。
    しかし本当のことを言わないという身内意識、仲間意識が働くのです。
    日本人の特性かも知れないが、身内と外部の者との間に意識の一線を引き、内部の
    事情を外部に漏らさないよう結束する習性があるのです。
    この集団心理がプラスに働けば大きい力が発揮できるが、逆にマイナスに作用すると
    問題解決をこの上なく困難なものにしてしまう。
    往々にして上司は、部下からシャットアウトされ部外者として扱われやすいものです。
    それだけに、メンバーの中に溶け込む努力が必要となる。
    しかし当人がどんなに努力をかけても、立場上おのずから限界はある。
    また溶けこむといっても、完全に仲間レベルにまで成り下がってしまえばリーダーシップ
    の発揮は不可能となる。
    要は、現場の空気を肌で感じ取れる努力を続けることです。
    現地・現場・現品主義を実践することで、「事実を知っている。事実を知ろうとしている」
    姿勢・態度が通じ、当事者の意識の垣根を取り払うことに大きい助けとなるはずです。

  (2)推進力の強化──実行の仕組みづくり

   問題のとらえ方も良い、原因も明確だ、そしてどのように解決したら良いかも分かっている。

   しかし、なかなか思いどおりに実行できない、実行したが続かないという例が多い。

   人間はもともと実行力薄弱者なのだ。良いと頭では分かっていても、つい楽をしたい気持ちに
   なったり、目先の忙しさを理由に逃避しがちなものです。

   したがって実行の仕組みをつくることで、一方では怠け心に歯止めをかけ、他方では意欲を
   喚起する刺激を与えることです。

   ①やらざるを得ない実行の仕組み

    a.有言実行の環境づくり
     実行項目の宣言、また実行度のチェック。
     殊に実行項目を「約束手形」として各人別に一覧表とし、会議の中で全員が、○(良い)、
     ×(悪い)、△(普通)の相互チェック・評価を行う。
     評価を素直に受け、明るい雰囲気で行うことがコツ。

    b.個人の実行について
     自分の弱い心との闘いだけに、その点を補充していくには、

      ・誰かとペアを組んで相互にフォローし合う。

      ・誰かにチェックを依頼し厳しい指摘を受ける。

    等の方法を工夫してみることです。

   ②やる気喚起の仕組みづくり
    問題解決をチーム力で軌道に乗せ前進させるためには、「取り組みやすく」「自分に
    とってプラスになる」「自らやってみよう」という気持ちを抱かせることです。
    そのためにはゲームの要素を取り入れ、多少の演出も必要です。
    ある会社の実例ですが、提案制度活性化を目指して提案コンテストを行った際、目標
    設定~スローガン募集(商品つき)~ポスター・予実績グラフの職場内掲示~朝礼での
    実績発表~表彰等やり方の工夫で、提案件数が大幅に上がった例もあります。


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製造業の品質管理と生産性向上

中高年社員の活性化

高齢化社会の進展に伴って、多くの中小企業では従業員の高齢化が進んでおり、それに伴う様々な矛盾や
問題が生じています。

そこで、これらの矛盾や問題に適正に対応し、中高年社員の活性化を実現することが今日の人材問題の大きな課題となっています。

■従業員高齢化のもたらす諸問題

 従業員高齢化によって生じる矛盾や諸問題、マイナス面には、一般的には、次のようなものがあります。

  ①高齢化に伴う人件費コストの増大。

  ②人事の停滞(ポスト不足や昇進の遅れなどによる中堅層のモラールの低下) 。

  ③経験主義やマンネリズムの発生。

  ④中高年齢者自身の就業意欲(モラール) の低下。

  ⑤新しい技術やノウハウに対する適応難。

  ⑥加齢に伴って進む能力、体力の減退による生産性の低下。

 これらの諸問題に対応するためには、賃金・人事制度の改革などの組織面、人事制度面からのアプローチ
 と、意識改革や能力、体力の向上などの面で中高年齢者自身を活性化するための人事管理面からの対応が
 必要となります。

 そして、その際大切なことは、これらの対策が中高年齢社員だけを対象としたものでなく、社員全体への
 対策として行われなければならないことです。

□人事制度面からの活性化策

 多くの企業では、年功序列型(以下「年功型」 という) の賃金・人事制度が採用されています。

 そのため、従業員の高齢化が進めば、人件費コストの増大によって経営が圧迫されます。

 また、管理職ポストの不足などの人事の停滞が生じ、中堅層のモラール低下が起こる恐れもあります。

 そこで、年功型の賃金・人事制度に代わる新しい人事制度を導入し、こうした従業員高齢化による
 マイナスを除去することが大切です。

 新しい賃金・人事制度は、年齢・勤続年数によって昇給・昇進する年功型の人事制度ではなく、期待する
 職務レベルごとに、その職務に期待される成果、実績によって賃金などの処遇を決める制度でなければ
 なりません。

 こうした制度では、意欲と能力のある中高年齢者は社内格付けの面でも評価され、高い賃金や処遇を受け
 ることになりますが、中高齢期に働く意欲をなくしたり能力面で頭打ちになった人の処遇は頭打ちになり
 ます。

 このように、会社に貢献度の高い人は、当然高い処遇を受けることになりますが、その際、管理職(ライ
 ンマネジマント) につく人の貢献度だけが高く評価され、高い処遇を受けるのではなく、専門的な能力
 (技能) を持つ人やベテランとして高い業績を上げる人の場合にも、それに応じた評価と処遇が受けられ
 るような人事制度を構築する必要があります。

 また、目標管理や面談制度などの他の人事諸制度と連動させ、トータルな人事制度の中で中高年齢者の
 活性化を図ることが重要です。

 一方、高齢化に伴う人件費コストの増大を回避するためには、必要によってモデル(標準的な) 賃金
 カーブを是正する(一定年齢からダウンさせる) などの措置も講じなければなりません 。

 中高年齢層の活性化のためには、以上のように、中高年齢者を一律に処遇するのではなく、一人ひとりの
 意欲や能力に応じて処遇すべく、人事制度や賃金制度を改革することが必要となっています。

□人事管理面からの活性化策

 中高年齢者を活性化するためには、経営幹部や中間管理職、専門スタッフ職や一般事務職、営業職や技術・
 技能職、補助作業職などのように、階層や仕事の役割によって活性化の方策が異なります。

 そこで例えば、経営幹部や中間管理職の活性化のためには、その役割と職責を明確にし、自覚させる
 こと、また専門スタッフや一般事務職については、経験主義やマンネリズムを克服するため外部研修等を
 活用する、さらに営業職や技術・技能職の中高年齢者の活性化のためには、目標管理による動機づけや
 自己啓発の奨励によるブラッシュアップなどというように階層別、職種別の対策が必要となるわけです。

 以上のことから、従業員高齢化による障害克服策と中高年齢者の活性化のポイントは図のようにまとめる
 ことができます。

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製造業の品質管理と生産性向上

HACCPシステムの導入

HACCPシステムの導入

■HACCPシステムの概要
 1.HACCP 
  HACCPシステムのHACCPはハセップ or ハサップと呼ばれますが、
  正式にはHazard Analysis and Critical Control Point :危害分析・重要管理点のこと
  で、米国生まれの食品衛生管理手法です。 

  日本では食品の製造・加工段階を担う事業者の衛生管理の新しい方式として、95年の
  食品衛生法改正に基づき推進されています。 

  厚生労働省によると、このHACCPシステムによる衛生管理は、食品の安全性についての
  危害を予測し、危害を管理することができる工程を重要管理点として特定し、重点的に
  管理することにより、工程全般を通じて危害の発生を防止し製品の安全確保を図ると
  されています。 

  従来の検査方法のように最終製品を抜き取り検査するのではなく、各工程から危害の
  発生を極力防止できるものにすることで、製品の安全性を確保しようというものです。

 2.HACCP導入の手順 
  HACCPシステムを導入しようとする場合は、 HACCPシステムの7原則と呼ばれる
  考え方に基づくHACCPプランを作成しなくてはなりません。 
  以下に、その7原則を簡単に説明します。

  (1)危害分析 
   HACCPシステムを導入しようとする各工程ごとに、食品衛生上起こりうる危害や
   過去に発生した危害を特定しリスト化します。
   そして、発生原因を検討し防止策を考えます。

  (2)重要管理点の特定 
   危害分析によってリスト化した危害のうち、どれが重要管理点に当たるのかを特定
   します。

  (3)管理基準の設定 
   特定した重要管理点について危害を予防、または、許容範囲内に抑えるための基準を
   設定します。
   この基準は温度・湿度・時間などを用いて、製造基準や科学的データに基づいて
   設定します。

  (4)モニタリング方法の設定 
   設定した管理基準内に重要管理点がおさまっているかどうかを連続して監視する
   ための観察・測定方法を設定します。
   モニタリングが連続してできない場合でも、重要管理点の管理状態が適切だと保証
   できるような頻度の方法にする必要があります。

  (5)改善措置の設定 
   設定した方法によって観察・測定した重要管理点で、管理基準に当てはまらない結果
   が出た場合に取るべき改善措置をあらかじめ設定します。

  (6)検証方法の設定 
   HACCPシステムが正しく効果的に機能しているかどうかを、定期的に検証するための
   方法を設定します。

  (7)記録の維持・管理 
   HACCPシステムでは、HACCPプラン実施中は継続的に記録をして、その記録を
   維持管理することが求められます。
   そのための、記録方法・様式・担当者を定め、その方法に従って記録の維持管理を
   行います。
   この記録にはモニタリングや検証の結果、改善措置の実施結果などが保存されます。
   また、これらの記録はHACCPプランの見直しに使用できなくてはなりません。

□総合衛生管理製造過程承認制度について 
 日本でのHACCPシステムの承認は、正式には総合衛生管理製造過程について承認を受ける
 ことになります。

 この承認制度は厚生労働省の管轄で、対象となっている製品は乳(牛乳、山羊乳、脱脂乳、
 加工乳)・乳製品・食肉製品・レトルトパウチ食品・魚肉ねり製品・清涼飲料水となって
 います。 

 この総合衛生管理製造過程承認制度は96年5月から施行されていますが、内容は欧米の
 ように営業者にHACCPシステムを義務付けるものではなく、営業者の自主性に任せるもの
 となっています。

 ただし、総合衛生管理製造過程はHACCPシステムを導入したものでなくてはならないため、
 実質的にはHACCPシステムの承認を受けるといってもよいでしょう。 
 この総合衛生管理製造過程の承認を受けるには、以下の12の手順に従って行うことが
 求められます。

  1.専門家チームの編成
  2.製品の記述
  3.意図される使用方法の確認
  4.製造工程一覧図および施設の図面の作成
  5.現場確認
  6.危害分析
  7.重要管理点の特定
  8.管理基準の設定
  9.モニタリング方法の設定
  10.改善措置の設定
  11.検証方法の設定
  12.記録保存および文書作成規定の設定

  なお、6〜12の7つの手順は、先に説明したHACCPシステム7原則のことです。
  以下、1〜5までの5つの手順について概要を説明します。

  1.専門家チームの編成 
   HACCPシステムを導入するに当たり、製品について専門的な知識や技術を持つ人を
   メンバーとする専門家チーム、例えば工場長や品質管理の責任者などを中心に、
   HACCPシステムについて相当程度の知識を持つと認められる人を含めてチームを
   作らなくてはなりません。

   ただし、このチームには社外の専門家を参加させることも可能です。
   そして、このチームが自社のHACCPシステムを作る存在になります。

  2.製品の記述 
   製品の原材料・添加物・包装資材などについて名前・種類・産地・流通経路など
   必要な事項を記述します。
   また、最終製品についても名前・種類・特性・原材料の名前や配合割合などを記述
   します。
   製品の記述の目的は危害分析の基礎資料として必要なものとなります。

  3.意図される使用方法の確認 
   製品がどのような形でどんな人に使用されるのかを確認し、考えられる危害の要因を
   想定することで危害分析の基礎となる情報を整理します。

  4.製造工程一覧図および施設の図面の作成 
   原材料の受け入れから出荷までの一連の製造、加工の工程についての流れ、作業
   内容を列挙して工程のつながりが分かるような一覧図を作成します。
   さらに施設内での平面的・立体的な配置が分かるような図を作成します。

  5.現場確認 
   現場確認は製造工程一覧図や施設の図面が実際の現場と間違っていないかどうかを
   確認するものです。これらの図面が正確であることは、危害分析を実施する際に
   不可欠な資料となります。 

   以上の5つの手順がHACCPシステムのプランをつくる前提条件になります。
   そして、7原則と合わせてこの12の手順にのっとったHACCPプランを作成することが
   総合衛生管理製造過程の承認を受ける前提条件になります。

   最終的には、HACCPの中心ともいえる7原則12手順にたどり着くわけですが、これは
   厚生労働省が出している本などを参考にしながら、専任の人が企業の現状にあわせて
   書き込んでいけばできるものです。

   しかし、一番大切なのは科学的データに基づいたリスク分析といえるでしょう。 
   具体的には、各工程で製品の微生物検査を行って、どの工程が一番汚染されているか
   を調べる必要があります。

   また、製品に食中毒の菌を添加して、例えば25度で熟成中にその菌が増殖しないと
   いうことなどもデータで示す必要があります。 
   従って、 HACCPの導入に際しては、そうした微生物に対する深い認識を持った
   専門家がいないと難しいといえます。

□HACCP関連事例 
 2000年にはHACCPシステムの承認を取得している大手乳業メーカーによる集団食中毒
 事件が発生し、 HACCPの信頼性への不安が広がりました。
 そのため、関係省庁では従来よりも承認のための審査会の回数を増やしたり、承認後の
 施設の監視を行うなど制度の見直しを行っています。 

 その後も、 HACCPの対象となっている製品メーカーはもちろん、対象となっていない
 製品のメーカーも製品の安全性を消費者にアピールするという目的から、 HACCPに
 取り組む企業は少なくありません。

 なお、国際標準化機構(ISO)は畜産国デンマークの提案を受け、食品の安全管理として
 新しいISO認証規格に関する審議を進行しており、 2005年9月に正式な国際規格として
 発行されました。

 

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製造業の品質管理と生産性向上

TPMの基本

TPM(Total Productive Maintenance)

■TPMの基本
 1.TPMの意味 
  TPMとは「Total Productive Maintenance(全員参加の生産保全)」の略称です。
  TPMは設備管理の手法の1つです。

  簡単に言うと、「生産活動において発生するあらゆるロスを排除し、または未然に防止
  することのできる仕組みをつくり上げ、ラインなど設備そのものから工場全体、ひいては
  会社全体の生産システムの効率化を図って、継続的な利益向上を実現できる企業体質を
  構築していこう」という取り組みです。

  TPMは、自動車部品製造業、電子部品製造業、食料品製造業などの製造業を中心として
  導入されていますが、最近では製造現場の効率化だけに留まらず、「企業の継続的繁栄
  の基礎条件を確立する」を期待されており、TPMそのものが「新しい経営モデルを構築
  する手段」として進化しています。

  詳細は後述しますが、TPMの特徴は「全員参加で行う取り組み」であることと、単なる
  現場改善の仕組み・体制づくりに終始するのではなく、根本的には「従業員の意識改革
  や動機づけといった『人の改善・育成・成長』を重要視している」ことにあります。 

  自社で実際にTPMを導入する際には、企業規模・製造品・風土などによってその具体的
  な方法が異なります。
  また、TPMの導入効果の検証などについては、専門的な知識が必要です。

  そのため、TPMの導入に当たっては、専門的な知識を保有したコンサルタントなどに
  相談し、自社の実態を把握してもらうところから始める必要があります。 

  ただし、具体的な方法は個々の企業によって異なっても、「全員参加で行う」など
  TPMの基本的な考え方は同じです。
  ここでは、TPMの基本的な考え方や特徴、実践する際のポイントなどを紹介します。

 2.TPMの定義 
  TPMは、1957年に米国GE社によって提唱されたPM(Productive Maintenance
  「生産保全」)の考え方をベースにしており、71年、社)日本プラントメンテナンス協会
  が初めて提唱したものです(当時の日本電装株式会社:現在の株式会社デンソーが
  全社的に取り組んだPM活動が大きく評価されたことがきっかけといわれています)。 

  日本プラントメンテナンス協会では、TPMを以下のように定義付けています(詳細は
  後述)。

  「生産システム効率化の極限追求(総合的効率化)をする企業体質づくりを目標にして
  生産システムのライフサイクル全体を対象とした“災害ゼロ・不良ゼロ・ 故障ゼロ”など
  あらゆるロスを未然防止する仕組みを現場現物で構築し、生産部門をはじめ、開発・
  営業・管理などのあらゆる部門にわたってトップから第一線従業員にいたるまで全員が
  参加し、重複小集団活動により、ロス・ゼロを達成すること」

 3.生産保全という考え方 
  TPMは「全員参加の生産保全」です。
  ここでは、TPMの基本的な考え方を把握するために、まず「生産保全」という考え方
  についてみていきます。 

  生産保全とは、設備管理の考え方の1つで、「生産性の高い保全」を意味しています。
  この「生産性の高い保全」とは、設備の導入費用や運用・維持のための費用、あるいは
  設備の劣化による損失などを最小限度に抑えることのできる、経済性に優れた保全を
  指しています。

  この生産性の高い保全、つまり生産保全の手段として、「予防保全」や「改良保全」
  といった方法があります。
  生産保全の手段となる方法は表の通りです。
   出所:社団法人日本プラントメンテナンス協会

  理想的な設備の保全活動のサイクルとしては、表の順が考えられます。 
  MP(保全予防)によって新設備の設計・計画時にそもそも故障しにくい、あるいは
  保全不要な設備を開発します。

  設備を導入したら、PM(予防保全)によって日常的に清掃・点検などを行い、設備の
  故障などの予防に努めます。
  清掃・点検などによって万が一改良したほうがよい点が見つかれば、CM(改良保全)
  によって設備の改良を行うというサイクルです。 

  なお、BM(事後保全)は、「設備の故障が発生してから修理する」ことであるため、
  「予防」という観点からみると後手に回った方法に思えますが、生産保全の観点から
  考えると、そうとは限りません。

  故障のレベル、故障の発生頻度、修理費用、修理に要する時間などを考慮し、「故障して
  から修理したほうが経済的である」と判断されれば、計画的に事後保全したほうがよい
  場合があります。 

  こうしたMP・PM・CM・BMといった方法を使い、生産性の高い保全を実現するのが
  生産保全です。

 4.米国におけるPM→日本における生産部門でのTPM→全社的TPM 
  TPMは、米国で提唱されたPM(Productive  Maintenance)をベースにして日本で
  「Total」が追加されてTPMとなりました。

  日本におけるこのTPMは、はじめ「生産部門におけるTPM」でしたが、89年には定義が
  改訂され「全社的TPM」と位置付けられました。 
  ここでは、米国で提唱されたPMから89年に定義が改訂された日本のTPMまでの流れを
  簡単に紹介します。 

  先に、TPMは米国で提唱されたPMをベースにしていると紹介しましたが、米国において
  提唱されたPMは、設備管理部門といった特定部門を中心にして行われる取り組みで、
  主に設備の故障によるロスを防止することなどを目的としており、設備の運用上の
  効率化まではカバーしていませんでした。

  また、米国におけるPMは、「分業」が考え方のメーンとなっており、「設備保全に
  ついては設備管理部門だけが行い、実際に設備を使用している生産部門は設備保全に
  ついて関知しない」というものでした。 

  これに対して、日本で提唱されたTPMは、「自分の設備は自分で守る」という理念に
  基づき、「実際に設備を使用している生産部門のオペレーターなどの作業担当者
  (以下「オペレーター」)が、設備の自主保全に努め、効率化を図っていく」という
  考え方となっています。 

  こうした自主保全という考え方に基づく日本独自のTPMは、初めは「生産部門における
  TPM」として提唱されていました。

  その後、TPMは、実際に設備を使用する生産部門が中心となるのは変わらないものの、
  そのほかの商品開発・営業・管理といったあらゆる部門が参加する形へと発展し、
  89年にはTPMの定義が改訂されました。 

  全社的な取り組みに拡大されたTPMは、参加する従業員も生産部門をはじめ「あらゆる
  部門」にわたっており、「重複小集団」で活動することとされています(重複小集団
  の詳細は後述します)。 

  また、「災害ゼロ・不良ゼロ・故障ゼロ」などあらゆるロスを未然防止する仕組みを
  現場現物で構築すること、ロス・ゼロを達成することなどがTPMの定義とされており、
  生産システム効率化の極限追求をするために具体的に何をしなければならないかという
  ことが、旧TPMの定義に比べて明確になっています。 

  なお、現在では、TPMとは「全社的TPM」を意味しており、全社的な全員参加の生産保全、
  つまり、全社的に全員参加で生産性の高い保全を実現していく取り組みを示しています。
  そこで、本リポート中でも、特別な断りのない限り「TPM」という表記は全社的な
  全員参加のTPMを指すものとします。

□TPMの考え方の特徴とTPM展開の8本柱
 1.TPMの考え方の特徴 
  ここでは、前項で紹介したTPMの基本的な考え方に基づいて、TPMの考え方の特徴を
  紹介します。
  考え方の特徴として紹介するキーワードは以下の通りです。

   ・全員参加
   ・自主保全
   ・重複小集団
   ・人の改善、育成、成長

  ◎全員参加 
   これまで紹介してきた通り、TPMは、生産部門など特定部門だけが取り組むもの
   ではなく、あらゆる部門が経営者から現場の一従業員に至るまで全員参加で取り
   組むものです。

   もちろん、TPMを展開していく上では実際に設備を使用している生産部門が中心と
   なりますが、商品開発部門や営業部門、事務部門なども、主に「自部門における
   業務効率化を図って生産部門における効率化を支援する」という形でTPMに参加
   します。

   こうして全員参加でTPMを実践することで、従業員一人ひとりがあらゆるロスの
   未然防止や生産システム効率化を考える体制をつくり上げることができます。

  ◎自主保全
   設備保全については、設備管理部門などに任せるのではなく生産部門で実際に設備を
   使用しているオペレーターが自分の使用している設備について自分で清掃・点検
   などを行い、保全に努めます。

   「自分の設備は自分で守る」、これが自主保全の考え方であり、TPMの大きな特徴の
   1つです。
   TPMでは、故障ロスなど生産活動におけるあらゆるロスの排除、または未然防止を
   目指しています。

   こうしたロスの排除・未然防止は、実際に設備を使用しているオペレーター自身が
   行うのが一番効果があるはずです。

   設備が故障し、停止してしまってオペレーターでは対処できない状況になってから
   設備保全部門に連絡したのでは、復旧に時間がかかり、その分のロスが多大なもの
   となります。 

   日ごろから設備を使用しているオペレーター自身が設備をしっかりと見て、触れる
   ことで設備の劣化にいち早く気付き、故障して停止という事態になる前に設備の劣化
   を防ぐあるいは改良する対策を講じることができます。

   ロスの未然防止、「災害ゼロ・不良ゼロ・故障ゼロ」につながる考え方といえる
   でしょう。 
   また、自主保全の効果は、ロスの未然防止などが実現できるというだけではありま
   せん。

   オペレーター自身の設備保全に対する、ひいては自身が行っている業務全体に対する
   責任感を向上させるというもう1つの大きな効果を得ることができます。

  ◎重複小集団 
   重複小集団で活動を行うことも、TPMの特徴の1つです。
   重複小集団とは、ある小集団のメンバーが次の階層の小集団のリーダーである、
   というように、階層ごとの各小集団がリーダーを介して重複してつながっていく
   小集団を指します。
   
   重複小集団でTPMを実践することによって、メンバー同士だけではなく小集団同士
   でもコミュニケーション・情報共有を図ることができ、全員参加というTPMの
   大きな特徴を実現することにつながります。

  ◎人の改善、育成、成長 
   TPMの最大かつ企業にとって最も意義のある特徴は、「人の改善、育成、成長を
   重要視している」ことにあります。 
   例えば、自主保全を行うオペレーターを例に挙げて考えてみます。

   自主保全という取り組みは、オペレーター自身がやる気になって、しっかりと取り
   組まなければ意味がありません。

   あらゆるロスの未然防止を実現するためには、自主保全を実践するオペレーター
   自身が清掃・点検などに真剣に取り組まなければ、設備の劣化や改良点を発見したり、
   故障を未然に防ぐことが困難です。

   そこで、TPMを実践する際には、オペレーター自身の業務に対する取り組み方・
   考え方・姿勢といった根本的なものを改善するところから始める必要があります。 
   人の考え方や姿勢などの改善は、一朝一夕でできるものではなく、時間と手間がかかる
   ものです。

   しかし、こうした人の改善こそ、最終的に「継続的な利益向上を実現する企業体質」
   の根幹を成すものであり、この根幹から改善していくことがTPMの大きな、意義の
   ある特徴といえるでしょう。 

   また、TPMの実践は、人の改善だけではなく、結果として育成、成長といった効果を
   得ることにつながります。

   自主保全を行うオペレーターは、設備の自主保全を行うだけの知識や能力を身に付け
   なければならないため、そうした能力を磨く訓練をし、結果として能力を向上させる
   ことができます。

   これはオペレーター自身のモチベーションを高めることにつながるでしょう。 
   そのほか、生産部門以外の従業員であっても、生産部門における設備の故障などの
   ロスを未然防止する活動を支援するために、自部門で協力できることはないか、
   自部門の業務を振り返り効率化を図ることになるはずです。

   それには、自分自身の業務の進め方を見直すところから始める必要があるでしょう。 
   このように、TPMの根本には、「人の改善、育成、成長」といった企業の体質改善に
   不可欠な要素があることが大きな特徴です。

 2.TPM展開の8本柱 
  これまで紹介したTPMの考え方の特徴を踏まえ、実際に企業がTPMを導入して自社で
  展開していく際には、8つの活動を実践していくことになります。
  これは「TPM展開の8本柱」と呼ばれるものです。
  日本プラントメンテナンス協会編「設備・人・企業を変革するTPM入門」によると、
  TPM展開の8本柱は表の通りです。

  ◎個別改善
   前ページ表のうち、一般的には、TPMの取り組みはまず個別改善から始めることに
   なります。
   個別改善とは、生産活動におけるロスを排除するために行う取り組みです。
   本来、TPMはロスの未然防止の仕組みづくりの実現を目指しています。
   しかし、現実的には生産活動において何らかのロスが発生しているはずです。
   そこで、「現実に今あるロスの排除」から取り組む必要があります。

  ◎個別改善以外の体制づくり 
   前ページ表をみると、個別改善以外の柱は、すべて「体制づくり」となっています。
   これらは、生産性の高い保全を実現するために、そして、「生産システム効率化の
  極限追求をする企業体質づくり」を行うために必要な体制づくりです。
  以下では、それぞれの体制づくりについて、簡単に紹介します。

  <オペレーターの自主保全体制づくり> 
   TPMの特徴の1つでもある自主保全では、オペレーターは5S(整理・整頓・清掃
   ・清潔・しつけ)などの取り組みを実践することになりますが、前述した通り、
   オペレーター自身がやる気になって真剣に取り組むようにならなければ、あまり
   効果が期待できないでしょう。
   このため、「オペレーターの自主保全体制づくり」は、ある程度時間がかかっても、
   ステップ方式で段階を踏むなどして、しっかりと浸透させたほうがよいでしょう。

  <保全部門の計画保全体制づくり> 
   設備保全を行う部門において生産保全を実現するための体制づくりです。

  <製品・設備開発管理体制づくり> 
   生産保全を実現するという観点から、ロスが発生しないような設備の開発、さらには
   製造しやすい製品を開発する体制づくりです。

  <品質保全体制づくり> 
   不良品をゼロにするための体制づくりで、個別改善や自主保全などによって不良品
   を生み出さないための仕組みが整っている必要があります。

  <教育・訓練の体制づくり> 
   オペレーターの自主保全の能力を高める体制や、設備保全を行う技術者などの
   保全に関する専門的な技術を向上させるといった体制づくりです。

  <管理・間接部門の効率化体制づくり> 
   商品開発・営業・管理といったほかの部門で行う、全員参加を実現し生産部門に
   おける効率化を支援するための体制づくりです。

  <安全・衛生と環境の管理体制づくり> 
   TPMの定義として上げられている「災害ゼロ」を実現するための安全活動の体制
   づくりです。
   安全活動は、従業員の心身を守るための、非常に重要な活動となります。

□TPMを実践する際のポイント
 1.TPMを実践する際に大切な考え方 
  これまで紹介してきたTPMの基本的な考え方に基づいて、TPMを導入し実践する際に
  重要となるポイントを説明します。

  ◎経営者によるTPM導入の宣言 
   TPMは生産システム効率化の極限追求を実現することのできる企業体質づくりを
   目指すものです。
   これを目指すために、また「全員参加」を実現するためには、経営者などのトップが
   先頭に立って力強くTPM活動を推進していく必要があります。

   そこで、TPMを進めていく上で重要となるのが「経営者によるTPM導入の宣言」です。
   TPMを実践するに当たっては、経営者は自社でTPMを導入し、推進していくことを
   全従業員に対して宣言し周知徹底を図ることが大切です。

  ◎ステップ方式での実践 
   個別改善や自主保全といったTPMの活動を実践する際には、ステップ方式を取り
   入れることがポイントです。
   実際の活動において、スタートとゴールまでを段階的に分け、ステップ方式で
   進めていくようにします。 

   ステップ方式で実践すると、従業員は自分自身が(あるいは小集団、部門が)今、
   どの段階にいるのかが一目で分かり、進ちょく状況をしっかりと認識することが
   できます。 

   また、TPMの特徴として「オペレーターの自主保全」がありますが、この自主保全は、
   オペレーター自身がやる気を持って真剣に取り組み、5Sなどの一つひとつの活動を
   しっかりと習得していくことが必要です。

   そのためには、一つひとつの活動をステップ方式で段階を踏みながら着実に進めて
   いったほうが効果的です。 

   次の「継続することのできる仕組みづくり」にも関係してきますが、一人ひとりの
   従業員が目的意識を持って継続的にTPMの活動を実践していくことができるよう、
   一つひとつの段階が分かるステップが明確化されていたほうがよいでしょう。

  ◎継続することのできる仕組みづくり 
   TPMは、企業活動において継続して進めていくことが最も大切で、かつ最も困難です。 
   例えば、何か故障やロスが発生した場合、そのときには「ちゃんと注意しよう」と
   思い、細心の注意を払い慎重に業務を進めたり、清掃・点検を行ったりするかも
   しれません。

   しかし、時間が経つにつれ、忙しさに追われる・危機感が薄れるなどから、活動が
   形骸化してしまう恐れがあります。 
   TPMでは、「災害ゼロ・不良ゼロ・故障ゼロ」を実現し、その状態を維持していく
   ことこそが大切なのです。

   「定期的にTPMの考え方や姿勢を従業員に教育指導する」「従業員1人1人の能力を
   向上させる体制をつくる」といった取り組みのほか、「業務の一環として、従業員
   一人ひとりから企業全体にまで浸透し継続して実践することのできる仕組みづくり」
   を構築することが、TPMを実践する上での最大のポイントといえるかもしれません。

 2.TPMの活動を行うこと自体が最終的な目的ではない 
  これまで、TPMの基本的な考え方や特徴、実践する際のポイントなどを紹介してきました。
  最後に、TPMを実践する際に、忘れてならないのは、TPMの活動を行うこと自体が
  最終的な目的ではないということです。

  TPMの活動を行うこと自体が目的になってしまうと、それはTPM活動の形骸化につなが
  ります。

  TPMの本質は、「人の改善・育成・成長などをベースとした継続的に利益向上を実現
  できる企業体質の実現」であって、TPMの活動を行うこと自体が最終的な目的ではない
  ことを認識しておく必要があります。 

  例えば、オペレーターが自主保全の取り組みとして5Sを行うとしても、5Sを行う
  こと自体が目的となるわけではありません。
  5Sによって故障やロスを未然防止し、それによって生産システム効率化を図り、ひいては
  企業の利益につなげていかなければならないのです。 

  生産性の高い保全を実現し、継続的な利益向上を実現できる企業体質をつくり上げる
  ことがTPMの目標であり、最終的には生産保全を行うことで企業の利益を向上させて
  いくことがゴールです。

  しかも、そのゴールを一度決めたとしても試合は永遠に続きます。 
  永遠に続く試合に出場し、ゴールを決め続けるためには、従業員一人ひとりがTPMの
  意義を認識し、真剣に取り組み続けることが大切です。


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製造業の品質管理と生産性向上

製造業の安全衛生チェックリスト

製造業の安全衛生チェックリスト

  安全で健康な職場づくりのためには、まず職場の安全衛生に関する状況について、把握する
 ことが大切です。
 チェックリストを活用して、職場や個々の労働者の状況をチェックし、安全衛生活動を
 強化しましょう。

   金属製品製造業 
   (出所:青森労働局)

   食料品製造業
 

製造業の品質管理と生産性向上

マネジメントにおけるムダ

マネジメントにおけるムダ

■マネジメントにおけるムダ
 ムダとは、時間・労力・経費などを、本来必要のないものに対して利用している状態を
 指します。
 潜在化しているムダは、なかなか見つかるものではありません。
 潜在化しやすい業務には
  ・慣例化している業務
  ・担当者が頻繁に変わる業務
  ・特定の人しか理解していない業務
 などがあります。

 1.マネジメント・ロス 
  「ムダ取り」「効率化」を考える場合、整理整頓や施設内のレイアウトなど、まず
  目に見えるモノに意識が向かいがちですが、実はモノとモノをつないでいるのは、
  マネジメントやコミュニケーションなのです。 

  仕事が「スムーズに動いていない」と感じられたのなら、マネジメント上のムダが
  ないかを再確認してみる必要があります。
  そこで、マネジメント上のムダを「マネジメントロス」と呼び、その原因について
  「組織構造」「役割分担」「コミュニケーション」の三つに分け、事例をもとに述べます。

 2.組織構造上の問題によるマネジメント・ロス 
  物流会社A社は、部門間の連携がうまくいかず、仕事の受け渡しがスムーズに行われない
  ことに悩んでいた。
  同社の場合、原因は組織構造にありました。
  会社の成長に伴って、さまざまな部門を後づけで増やしてきました。

  抜本的に組織のあり方を見直すことなく、“屋上屋を架す’’組織構造となっていたのです。 
  各部門は、それぞれで営業活動や事務処理を行っており、かなりの部分で業務が重複
  していました。
  全社に横車を通すような機能も、中堅規模に成長したA社には欠けていました。 

  そこで、同じエリアにある事業所をまとめて一つの事業部とするエリア事業部制を
  導入しました。
  これにより、重複業務が事業部に集約化され、効率化されたのです。
  加えて、「経営企画室」を設置。
  全社的な調整機能を持たせたことで、全社ベースの経営課題に横串を通して取り組む
  体制ができたのです。

 3.「役割分担の不明確さ」によるマネジメント・ロス  
  中堅の印刷会社B社では、工場の稼働率が高まらないことが問題でした。
  営業や編集、生産などの各機能単位で、部門採算制を採用していたこともあり、
  各部門が協力して稼働率向上に取り組む雰囲気はあまりなかったのです。
  印刷業界に限らず、工場の稼働率は生産部門だけで決まるものではない。

  営業部門が受けてくる仕事量はもちろんのこと、受注のタイミングや上流工程からの
  仕事の流れも大きく影響します。 
  そこでB社は、工場の稼働率の問題を「工場操業率」と「設備稼働率」の二つに
  分けて考えたのです。

  設備稼働率は、工場長が責任を持って管理する指標とし、工場操業率は営業部長・
  編集部長・工場長の3名による分担責任としたのです。 
  だれが何を管理すべきなのか、役割分担・責任範囲を明確にすることが、マネジメント・
  ロスをなくすことにつながった事例です。

 4.「コミュニケーションの悪さ」によるマネジメント・ロス 
  機械メーカーのC社は、生産計画こそ生産性向上の要であるとし、それまで1週間単位
  だった生産計画を、4週間先行で策定するようにしました。
  その結果、工場全体が4週間先までを考えながら仕事をするようになり、工程間の流れは
  かなりスムーズになりました。 

  先行生産計画を作成しているのは各現場の課長であり、彼らが互いにやり取りしながら、
  工程間の計画のすり合わせを行っていました。  
  ところが、その手法が定着しつつあると思った矢先にトラブルが発生しました。
  前工程からのワークが計画通りに流されず、次工程が手待ち状態となり、結果として
  出荷が遅れる事態へと発展したのです。 

  調べてみると、原因は些細な事でした。
  課長間のコミュニケーションが悪く、ワークの加工完了時間をしっかりと確認して
  いなかっただけでした。
  しかしながら、それが原因でお客さまに迷惑をかけ、工場内に作業停滞のムダが生じた
  のです。 

  そこでC社では毎日、工場長と課長が集まって、簡単なミーティングを行うことに
  決めました。
  互いに調整する習慣がついてからは、このような問題は起こらなくなっりました。
  このように、コミュニケーションの悪さを背景としたマネジメント・ロスは、あちこちで
  生じているはずです。

 5.マネジメント・ロスをなくす 
  事例のように、マネジメント・ロスにもさまざまな要因があることが分かります。 
  目に見えないだけにやっかいだが、実は目に見えるムダよりも重大な可能性もあるのです。
  こうしたムダは、現場末端の社員には見えにくい。
  仮に見えていたとしても、解決しにくい問題なのです。

  経営トップやマネジャーは、自らのマネジメントスタイルやコミュニケーションの
  取り方などに問題はないか、あらためて振り返ってみる必要があるでしょう。

□改善の定着化
 1.改善定着のカギは習慣化  
  日々の経営活動の中で、さまざまな改善を実施している企業は多い。
  毎日、いろいろな問題が発生し、その対処に追われています。
  しかしながら、「どこまでやってもキリがない…」「毎日、同じことの繰り返し」と
  感じている人も多いのではないでしょうか。 

  改善とは、「悪いところを良い方向に改めること」です。
  すなわち、昨日までの仕事のやり方を変えることです。
  しかし、改善を決心していったんやり方を変えたものの、「継続しない」「定着しない」
  という悩みを抱える会社は多いように感じます。 

  なぜ、改善が定着しないのだろうか? 
  それは、実施される改善の多くが、当面の問題解決のみに視点が置かれているからです。
  改善策が長期にわたって実施され、それが習慣となり、職場に定着するように考えられて
  いないため、定着しないのです。

 2.習慣化のための標準化  
  改善したことを「習慣」として定着させるためには、だれもがすぐに理解して実行できる
  ようなものでなければならないのです。
  考えた人だけが理解しているような難解な改善案では、職場全体で実行できないし、
  すぐに形骸化してしまいます。 

  このように「だれもが」「分かりやすく」「簡単に実行できる」形にするのが「標準化」
  なのです。
  その具体的な手法が、「5S」であり、「見える化」です。 
  標準化と言うと、型にはめられて融通が利かなくなるような印象を持つ人がいるよう
  ですが、その反対です。

  標準化とは、変化に柔軟に対応するために行い、改善によってどんどん変化する業務を
  迅速に職場に定着させるために行うものです。
  よい方向に変化させた業務を素早くパターン化、ルール化して、職場全体の習慣として
  落とし込むことが、標準化の本質なのです。

 3.5Sによるモノの標準化 
  「モノの置き場所や置き方を変える」「レイアウトを変える」「使用する道具を変える」
  などの改善に対しては、5Sによるアプローチが有効です。
  5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」のことであり、職場の効率化を行うための
  マネジメント手法です。

  5Sの手法により、すべてのモノの存在意義、置き場所、置き方を明確にすることが、
  すなわち標準化であり、それによって、モノ自体やモノをどう使うのかといった
  先が見えるようなるのです。

  このように、すべてを5Sの考え方に沿って標準化していければ、簡単に職場全体に
  その改善を定着化させることができます。  
  5S活動のよいところは、だれでも簡単に取り組める活動でありながら、効果が絶大な
  ところです。

  いまだに5S活動を単なる掃除のようにとらえている人もいますが、目に見えるモノの
  整理や整頓を超えて、取り組む人の意識を大きく変えていく力がある活動なのです。 
  「社員の意識を変えたい」「気づき力を高めたい」という悩みを抱える社長は多い。

  そのような悩みに最も効果的で、かつ具体的な処方箋となり得るのが5S活動なのです。
  直接的なムダ取りの効果だけでなく、目に見えないマネジメント効果が得られます。
  目に見えないマネジメント上の効果は、実施した者だけにしか分かりません。

 4.見える化によるマネジメントの標準化  
  5Sによる標準化は、「目に見えるモノ」「実際に触れられるモノ」を対象とします。
  一方、見える化による標準化は、「目に見えないコト」を対象とします。
  見える化とは、「相手の意思にかかわらず、目に飛び込んでくる状態にすること」であり、
  何を見えるようにするかは、企業の考え方次第です。 

  機械メーカーA社では、最終の組立工程において、いつ必要な部品がそろうのかが
  分からないような状況でした。
  知りたければ、組立担当者が工場内を歩き回り、「どこに部品があるのか」「今どんな
  状態なのか」を自分でチェックして回る必要がありました。

  これでは組立作業の段取りが組めるはずもなく、計画的な作業ができていませんでした。
  結果として、生産性も上がらなかったのです。 
  そこで、同社は「部品集結・欠品管理板」を設置しました。

  必要な部品の集結状況や欠品状況を見えるようにしたことで、組立作業に入る前に
  部品がそろっていなければ「異常」であると判断できるようになり、アラームを鳴らす
  ことが可能になったのです。 

  事例のように、問題の本質が目に見えない“コト”である場合、それを見える化する
  ことで仕事のパターンを修正でき、標準化が可能となります。
  A社の場合、必要な部品の状態を見える化したことで、作業の流れがスムーズになり、
  しかも、その方法は、部品集結・欠品管理板を設置して記入するだけ。

  作業が簡単なため取り組みやすく、新しい仕事の習慣としてしっかりと定着しました。 
  このように、改善を形骸化させずに定着化を図るには、変更した仕事を標準化する
  必要があります。

  その標準化の具体的手法として、5Sや見える化が有効なのです。
  ムダを省いて効率化を図り、これまで手からこぼれ落ちていた利益をしっかり回収
  したいという企業は、ぜひこうした取り組みを実施していただきたい。


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製造業の品質管理と生産性向上

業務の効率化

業務の効率化

■マネジメントによる業務の効率化
 1.モノとモノの距離を近づける
  (1)今を当たり前と思って仕事をしていないだろうか? 
   人が仕事をしている姿をよく観察してみると、現場や事務所に関係なく、その場に
   ある設備や器具などのモノに大きく影響されていることに気づくでしょう。
   例えば、棚が作業場から遠い場所に置いてあり、わざわざそこまで部品や書類を
   取りに行く。

   しかし、よく考えてみると、その棚の場所は必ずしもそこでなければならない理由は
   なく、なぜそこにあるのか、だれにも分からないといったケースも多いのです。 
   あなたの職場でも、こんな経験はないだろうか?知らず知らずのうちに、昔から
   変わっていない職場のレイアウトに合わせて、仕事の流れを組み立てていない
   でしょうか?

   そして、そのレイアウトが最適かどうかを疑うことなく、ひたすら一生懸命に仕事を
   していないだろうか? 
   言うまでもなく、仕事の目的は「一生懸命にする」ことではなく、「効率的に成果を
   上げる」ことにある。

  (2)レイアウト変更は仕事のやり方を変える 
   職場のレイアウト変更は、仕事そのものを大きく変化させる効果があります。
   例えば、トヨタ生産方式を語る際に必ず出てくる言葉として、次の”七つのムダ”がある。 

    ①つくり過ぎのムダ 
    ②手待ちのムダ 
    ③運搬のムダ 
    ④加工のムダ 
    ⑤在庫のムダ 
    ⑥動作のムダ 
    ⑦不良をつくるムダ 

   この中で、生産工場に限らず、どんな職場にも必ずあるのが「運搬のムダ」と
   「動作のムダ」です。
   モノを運んだり、探したりするムダであり、付加価値を生まない必要のない動作です。 
   A鋳物工場では、さまざまなモノの運搬に全体の時間の21.8%も費やしていた。

   また、B食品スーパーでは全体の38.6%が「歩く、探す、積み替える、戻す」
   といった業務に費やされていました。
   具体的なデータはないが、恐らく事務所の中においても、同様のムダはかなり
   生じていると思われます。

   職場のレイアウトの見直しは、運搬のムダや動作のムダを劇的に減少させる効果が
   あります。
   「ムダをなくせ!」「効率的に仕事をしろ!」と叫ぶだけでは、効果はほとんど
   得られません。

   こうした経験をお持ちの方は多いでしょう。
   しかし、物理的にレイアウトを変更することで、簡単に職場のメンバーの行動を
   変化させることができるのです。
   さらには、その後に働く意識も変わっていくのです。 

   「意識の変化⇒行動の変化」というステップで、さまざまな社内改革に取り組もう
   とする場合は多いが、効率化を考えると「職場環境の物理的変化⇒行動の変化⇒
   意識の変化」というステップの方が成果は得られやすいのです。
   まず、形から入るのです。

  (3)レイアウトの原則 
   仕事をしやすい効率的なレイアウトには、次のような共通原則が挙げられます。  
    ①総合の原則………設備、作業者、材料、情報、その他すべての条件を総合して
             最適化を図る  
    ②最短距離の原則………モノや人の移動距離が最短となるようにする  
    ③流れの原則………レイアウトの基本形式として、Ⅰ型、L型、U型、0型、
             E型、S型、Ⅹ型などがある  
    ④立体の原則………平面的にだけではなく、3次元的に空間の有効利用を考える
    ⑤安全・満足の原則………他の条件が同一であれば、より安全性や満足感の高い
                レイアウトを考える 
    ⑥融通性の原則………もし再度レイアウト変更する場合でも、最少のコスト、
              最小のデメリットで再配列、拡張および調整ができる
              ようにしておく 

   生産工場などは特にそうであるが、いったん職場のレイアウトを決めてしまうと、
   しばらくはそのまま固定されてしまう。
   もし、それが非効率なレイアウトであれば、長期間にわたってムダを垂れ流し
   続けることになるのです。
   原則に従って職場を見直して、レイアウト変更の余地がないか、あらためて考えて
   いただきたい。

  (4)プロセス間結合  
   現在の職場のレイアウトにムダがあれば、すぐ変更に着手していただきたい。 
   その際、業務プロセスや工程を近づける、もしくは直接結合させることを考える。 
   強制的にモノとモノを近づけるような配置にするのです。  
   業務プロセスや工程間に距離があるということは、間をつなぐために仕掛品や
   机の上で処理を待つ書類など、何らかのムダが生じることになりやすい。

   そしてムダは、リードタイムの長さとなって現れるのです。 
   ある食品メーカーでは、生産ラインにおける歩行距離が合計164メートルでした。
   工場の中をあちこち歩き回り、やっと製品が完成するという状態でした。

   しかし、小ロット化と同時に、各設備を可能な限り近づけ、すべてを同じ室内に
   納めるように工夫したところ、歩行距離は15メートルまで短縮され、それとともに
   リードタイムは48時間から6時間まで短縮されたのです。 
   レイアウトの大幅な変更に伴って、作業者の行動パターンも大きく変わったのは
   言うまでもありません。


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製造業の品質管理と生産性向上

ムダな時間をなくす

ムダな時間をなくす

■ムダな時間をなくす
 1.何に時間を費やしているのかを知る 
  私たちは日々の仕事の中で、何に時間を費やしているだろうか? 
  人間に与えられた時間は、等しく24時間である。
  しかしながら、「タイムイズ マネー」とも言われる時間は貴重な経営資源である
  にもかかわらず、その認識に欠けており、時間を浪費している職場が非常に多いように
  感じます。

  時間の浪費は工数の浪費であり、「人件費の浪費」となるのです。 
  的を射た問題解決のためには、的確な現状認識が不可欠であることは言うまでも
  ありません。
  ムダ取り、業務改善においても、“取りあえずやってみようけでは、成果という目的地に
  到着できる確率は低くなります。

  日常業務の時間分析を行い、どんなムダにどれくらいの時間を費やしているかを、
  まずは知らなければなりません。

 2.ワークサンプリングによる時間分析 
  IE(Industrial Engineering;インダストリアル・エンジニアリング)という考え方
  があります。
  人・設備・モノおよび情報を総合して、最も経済的に働く仕組みを設計、確立しよう
  というものです。

  このIEの一つとして、「ワークサンプリング法」という時間分析の手法があります。  
  ワークサンプリング法は、人や設備などを時間を決めて定期的に観察することにより、
  ムダな業務の比率を目に見える形にするものです。
  連続して観察する必要はなく、短時間の観察を繰り返し行えばいいのです。 

  まず、観察する範囲と対象を決めます。
  範囲とは、○○職場や△△工程など、観察するエリアのことであり、対象とは人や設備
  です。
  人を観察の対象とすれば、その人の作業の内訳が把握できるし、設備を対象とすれば
  稼働状況が分かります。

  観察して分類する作業項目を決めた後、30分から1時間に1回程度、定期的に観察
  を行います。 
  これを繰り返すことで、各作業項目にどれくらいの時間を要しているのか、その
  比率を出すことができます。

  観察のサンプル数が多いほど、実際の比率に近い値が得られるのです。
  特別な装置は必要なく、簡単に職場の時間分析ができる手法です。
  もちろん、工場ばかりでなく、事務所でも活用できます。 
  機械加工メーカーA社における調査事例では、機械加工担当者10名を対象にした事例です。

  「組立・加工」といった付加価値業務は全体の54.6%を占めており、それ以外の
  「段取り」や「運搬」、そのほか「手待ち」「歩行」などに残る半分の時間を要して
  いました。 

  一方、同じ職場や同じ時間帯において、設備を観察したところ、設備の稼働率は46.4%
  でした。
  つまり、人と設備の双方から見て、この工場は十分に能力を引き出しているとは言えない
  状態であったということになります。

  ◎時間分折から導かれる改善の着眼  
   A社の場合、作業者の仕事分担を見直し、「ミズスマシ担当者」を新たに設置しました。
   ミズスマシとは、ライン間を縫うように走り回って部品供給をするなど、ほかの
   メンバーの生産性向上を補助する役割の作業者です。

   ミズスマシ担当者が、各作業者に分散していた段取りや運搬などの非付加価値業務を
   一手に引き受けることによって、設備稼働率は64.5%まで向上しました。
   また、作業者の観察から、付加価値業務に従事する割合が54.6%から80.2%へと
   大幅に増えました。

   これはミズスマシ担当者の導入が外段取り化を推進し、各作業者が付加価値作業に
  集中できる環境が整えられたことを示しています。
  具体的には、「手待ち」「監視」「歩行」、これらに付随する「会話」の割合が減少
  しました。

  このように、時間分析の結果から、どうすれば付加価値業務の割合を増やせるかを
  考えることができるのです。 
  ムダ取りと言うと、いきなりストップウオッチで作業時間を計ろうと考える人がいるが、
  それでは成果は上がりません。

  個々の作業を見直す前に、業務プロセス全体を眺めなければならないのです。
  ムダにも大中小があります。
  大きなムダは業務プロセス上のムダであり、中程度のムダは、現場設備のレイアウトや
  段取り作業などです。
  小さなムダは、各作業者の動作レベルのムダです。 

  まずは、大局着眼で業務プロセス上の大きなムダをなくすことを考えねばならない。
  そのためには、現場をよく観察することが必要となります。
  いきなり現場に行って観察しても、ムダはなかなか見えないが、ワークサンプリング法
  というツールがあれば、だれでも大きなムダを発見して、改善の方向性をつかむことが
  できるのです。

  「労働生産性の国際比較2021」(日本生産性本部)によると、
  日本の製造業の労働生産性水準(就業者一人当たり付加価値)は、OECDに加盟する
  主要31カ国の中でみると18位となっています。
  日本のサービス業は米国を100とするとは49.9%、製造業の生産性は米国の69.7%と
  半分の水準で、サービス業に比べると差は小さい。

  これら見てみるとサービス業が製造業に学ぶべき点は多数あります。


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製造業の品質管理と生産性向上

仕事におけるムダ

仕事におけるムダ 

コストダウン
 コストダウンは会社経営における重要なテーマの一つといっても過言ではなく、実際、
 多くの企業が取り組んでいます。
 しかし、コストダウンには少なからぬ痛みがともなうため、いざ取り組もうというときに
 「できるだけ、これまでの体制を維持したい」との弱気な発想をしてしまうことがあります。 

 ここで改めて考えたいのは、正しい考え方や手法で取り組まれたコストダウンは必ず
 生産性を高め、利益に結びつくということです。
 「何から着手してよいか分からない」と立ち止まっていては先に進みません。
 企業経営を取り巻く環境が厳しさを増している今だからこそ、正しいコストダウンに
 取り組むべきなのです。

□仕事におけるムダ
 出口の見えない経済停滞の中、規模の大小を問わず、売上げの急減が世界中の企業を
 襲っています。
 こうした状況において、企業人がまず考えなければならないことは、徹底的にムダを排除し、
 コストを低減させることでしょう。
 モノがなかなか売れない時代にあっては、利益を外部にのみ求めるのではなく、会社
 内部をあらためて見直すことが必要です。

 1.コストダウン利益の追求
  企業の利益はどこから生まれるのか? 
  利益の源泉は、次の四つしかありません。
   ①販売数量を増やす(売上げアップ)
   ②販売単価をより高くする(粗利益率アップ)
   ③少ない資産で、より大きい効果を出す(遊休資産の活用・縮小・回収のスピード
    アップ・在庫の削減による資産回転率アップ)
   ④より少ない人員で、ムダな経費を抑える(コストダウン) 

  現在の経済環境下では、価格や数量を伸ばす(売上げを伸ばす)ことは簡単ではない。
  なぜなら、どんなに優れたマーケッターをもってしても、自社ではコントロールの
  しようがない外部環境を相手にしなければならないからです。
  自社の努力だけではどうにもならない部分があるのです。 

  これに対して、経費を減らす、資産の回転率を上げるなどのコストダウンは、自らの
  決断で成果を上げることができます。
  内部の努力だけで確実に獲得できる利益なのです。
  つまり、やるか、やらないかだけです。 

  現在の経済環境において、この「コストダウン利益」を志向しないのは愚かなことと
  言ってもよいだろう。
  トヨタの思想も「コストダウンは無限」です。
  自らの決意と努力だけで獲得できるコストダウン利益は、どこまでも追求できるのです。

 2.仕事におけるムダ 
  「仕事におけるムダとは何か?」を考えたことがあるでしょうか?
  ムダが見えなければ、業務の効率化もコストダウンも始まらない。
  企業における日常の仕事は、「付加価値業務」「非付加価値業務」「ムダ」の三つに
  区分することができる。

  ◎仕事の分類
   ①付加価値業務 
    正味の仕事であり、やればやるほど直接的な利益を生み出す。
    製造現場であれば、部品や製品を作るために材料などに手を加えて加工度を
    高めることであり、営業であれば顧客との商談、店舗販売であれば接客や店頭
    での実演などがこれにあたる。
   ②非付加価値業務 
    正味の仕事に付帯した仕事であり、やらなければならない仕事ではあるものの、
    それ自体は何ら利益を生まない。
    モノの運搬や準備作業、検査、書類の作成、会議などがここに含まれる。
   ③ムダ 
    必要性のない全くのムダな仕事です。
    次の仕事を待っている手待ち、ただ見ているだけの監視、モノを探す、
    積み替える、ただ歩く、ムダ話などがこれに当てはまる。

 3.狭義のムダと広義のムダ 
  狭義のムダと言えば、前述した「ムダ」だけになるが、広義で言えばこれに「非付加
  価値業務」も含まれます。
  ムダがたくさんあるのは、雑巾がびしょ濡れの状態であり、絞れば簡単にムダをなくせる。
  ここからさらに非付加価値業務を見直し、改善していくことが乾いた雑巾を紋る努力
  と言える。

  多くの企業の雑巾は、まだ簡単に絞れるびしょ濡れ状態ではないでしょうか。 
  業種・業態、取り扱い製品やサービスによって一概には言えないが、一応の目安と
  しての付加価値業務内容、およびその比率を示した(【表】参照)。
  社内で普段行われている仕事は、本当に付加価値を生んでいるでしょうか。
  自社の利益に貢献しているだろうか。

  そうした視点であらためて身の回りの業務を見ていただきたい。
  そして聖域を設けず、業務の見直しや改善に取り組まなければならない。
  また、目の前の業務だけでなく、組織の構成自体にムダはないかと考える視点も必要
  です。
  例えば、付加価値業務と非付加価値業務という観点で組織を見れば、いわゆる管理
  部門は、その全体が非付加価値部門と言えるのです。

  管理部門で行われる業務の良し悪しを議論する以前に、基本的にその業務全体が
  付加価値を生まないものであると認識しなければならない。 
  パーキンソンの法則では、「官僚は互いに仕事をつくりあって、その遂行のために
  利用できる時間をすべて埋めるように仕事量を拡大する」と言います。
  管理を行うということは、それを行う人と時間が必要であるということです。

  その視点がないままに、管理項目を増やすのは避けなければならない。
  ましてや管理のための組織を設置することが、大きな固定費の増大となることを
  認識しなければならない。
  大きなムダをなくすためには、組織の効率性を見直すところから考えねばならない
  場合もあるでしょう。

  ムダの排除も大きなところから考えなければならないのです。
  組織のムダ、マネジメントのムダ、そして日常業務のムダがある。 
  いかにムダと非付加価値業務を減らして、付加価値業務の比率を高めるか。
  このことを組織、マネジメント、日常業務の各段階で追求することが経営改善であり、
  ムダの排除なのです。
  その先に生産性向上とコストダウンがあり、利益の獲得がります。


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製造業の品質管理と生産性向上

原価に関する基礎知識

原価に関する基礎知識

■原価計算の目的
 製造業では原価計算がコスト管理や利益管理のための重要な位置を占めています。
 製造業に関係している方は、経費の削減が利益の元であることは痛感しているでしょう。
 しかし、実務は経理担当者に任せているため、そのコストを計算する仕組みである原価計算
 の中身を幹部社員が理解していない場合も少なくありません。

 たとえば、売上原価と製造原価、製造費用の違いや、仕掛品や在庫がどのように原価計算に
 影響するかを説明できるでしょうか。
 コストダウンや経費削減を行なう目的は、利益の増加にあります。
 その利益を計算するための原価計算の仕親みを知ることは経営者として必要な知識といえる
 でしょう。

 とはいっても、何となく原価計算はわかりにくいのも事実です。
 その理由のひとつには、原価計算の方法が、製造する製品の内容によって数種類あるため
 といえるでしょう。
 製品別で計算方法が違うため、経理の知識がないとどのように原価が組み立てられている
 のかがわからなくなってしまいます。

 たとえば、ビルや造船など個別に製造する生産形態や、同じ商品をまとめてロット単位で
 生産するロット別生産では、製造する種類や規格ごとに製造指図書を作成していると考え、
 それに基づいて製品ごとに製品原価を計募する「個別原価計算」という原価計算の方法が
 採用されます。

 一方、同じ製品を連続してある期間製造する場合や、同じ工程で数種類の製品を同時に生産
 する、たとえば、化学工業や食品業などの連続生産品では、ある期間に発生した原価を
 生産数量で割り返して製品の単位原価を計算する「総合原価計算」が利用されます。
 さらに、目的によっても原価計算の方法はいくつかの種類があります。

 たとえば、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成するためには「実際原価計算」
 に基づく原価計算がなされますし、原価の管理を意識的に行なうためには「標準原価計算」
 による原価管理を意識した原価計算が行なわれ、さらに利益管理のためには「直接原価計算」
 という方法による管理を行ないます。

 したがって
  原価計算を考える際には 
  何の目的のために原価計算を行なっているのかを意鼓しておく
 ことが第一歩です。

 原価計算の目的をここでは大きく4つに分けてみていきましょう。 
 第1の目的は、損益計算書や貸借対照表などの「財務諸表を作成する」ための原価計算
 です。 
 いわば、株主や利害関係者に会社法に基づいた財務報告をするための原価計算です。

 一般に、「財務会計」と呼ばれる会計の範囲です。
 財務会計の計算は、個別原価計算や総合原価計算(この内訳としてさらに単純総合原価計算、
 工程別総合原価計算、加工費別工程別総合原価計算、等級別総合原価計算などがある)の
 規則に従って計算されます。

 4つの目的の2番目以降は、経営者や管理者が会社の管理運営のために利用する原価計算で、
 いわば経営管理のためのツールです。 
 第2の目的は「原価管理」のための原価計算です。
 あらかじめ基準となる物差しとしての原価(標準原価)を設定し、その標準原価と実際に
 発生した原価(実際原価)との差額を分析して製造効率の向上を図り、無駄を減少させる
 ための原価計算です。

 標準原価計算は、
 標準原価の設定→標準原価の計算→実際原価の計算→標準原価と実際原価を比較して
 差異を計算→差異の分析→対策検討という流れで原価の管理を実施します。
 これにより管理者がどのように効率をあげていくか改善策を検討・実施していきます。

 第3の目的は「利益管理」のための原価計算です。 
 損益分岐点分析といわれるのがこの「利益管理」の代表です。
 財務諸表を作成する規則とは別の基準による原価計算で、会社の利益を管理しやすくする
 方法(たとえば、全部原価計算という方法)による経営管理のための原価計算です。

 現在製造している製品のうちどれを増産すれば増益になるのか、外注と内製とどちらが
 利益があがるのかなどの意思決定に利用するための原価計算です。 
 第4の目的はその他の目的のための原価計算です。 
 たとえば販売価格を「原価」プラス利益として決めるための販売価格決定目的、毎年の
 予算編成や予算統制のための予算管理日的などがあります。

 原価計算といってもその日的によっていろいろな方法があることがポイントです。
どのような目的のための原価計算かを意識することが原価を分析する第一歩となります。
原価計算をする際に混乱がおきるのは数ある目的を明確にしないことから発生する場合が
 多いものです。

 まずは「財務上の利益を計算するための原価計算」なのか、「意思決定のための原価計算」
 なのかなど、目的を明確にしましょう。

□原価計算の基礎知識 
 財務諸表を作成するための製造原価の計算方法が、原価計算の基本になります。
 ここでは財務諸表作成のために、製造原価計算の構造を基礎知識として理解していきます。 
 キーワードは2つあります。

 1つは「製造原価の中身」で、もう1つは 「製造原価のプロセス」です。
 まず製造原価の中身からみていきます。 
 商社や小売業などの原価は外部から仕入れた金額が一般に仕入れ原価となりますが、製造業
 の場合はそう簡単ではありません。

 製造業では仕入れた材料を加工して生産するため、生産に必要な費用が原価に加算されます。
 たとえば、そば屋さんのケースを考えてみると、仕入れた材料費のほかに、そばを製造
 する職人さんの労務費や水道光熱費、製麺機の償却費などの経費が発生します。
 この3つの要素=材料費・労務費・経費が製造原価の中身となります。

 製造原価を考えるときには、材料費・労務費・経費の3つの視点から費用を分析する
 ことになります。
 さらに、この3つの要素を製品別にとらえるために、直接費と間接費に区分します。
 たとえば、そば屋さんがきつねそばと天ぷらそばを製造していたとすると、この材料は
 きつねそばに使われている」と把握できる材料費がきつねそばの直接材料費となります。

 きつねそばと天ぷらそばのどちらか判断が難しい材料費が、間接材料費です。
 人件費について、たとえばAさんが専門に天ぷらを揚げているのであればその人件費は
 天ぷらそばだと判断できるので直接人件費となりますが、経理担当者の人件費はきつね
 そばにも天ぷらそばにも関係しており、どちらかに区別できないため、間接人件費と
 なります。

 このように分けていくと、製造原価の中身は形態別に材料費・労務費・経費に分類され、
 さらに、製品別に直接費と間接費に分けられ、なお細かく分けると、直接材料費・間接
 材料費、直接労務費・間接労務費、直接経費・間接経費の6つに区分されます。
 一般には材料費、労務費は直接費の割合が多く、経費はほとんどが間接費となっています。 

 キーワードの2つ目が製造原価のプロセスです。 
 製造業で1種類の製品しか製造しない場合は、材料費と労務費と経費を合計して製造
 数量で割れば1個あたりの原価が計算できますが、一般には多種多様な製品を製造して
 いることが普通で、原価要素を単純に足しこむだけでは計算できない場合がほとんどです。

 そのため原価計算には原価を算出するプロセスが決められています。
 このプロセスは 1.費目別原価計算 2.部門別原価計算 3.製品別原価計算の3つで
 構成されています。 
 第1の費目別原価計算は、製造にかかった原価を集計・計算するために、材料費・労務費
 ・経費の3つの要素に分けて分類・集計し、さらに製品別の直接費と間接費に区分する
 プロセスです。 

 第2の部門別原価計算のプロセスは、製造部門別に費用を集計して製造部門ごとに、
 直接費はその製造部門に賦課し、間接費は何らかの基準で配賦し、さらに補助部門の
 費用を製造部門に割り振ります。
 間接費を製造部門ごとに把握して部門ごとに配賦する点がポイントです。

 間接費を直接製品に配賦するのでなく、いったん部門に配賦することで間接費の配賦が
 より正確になります。
 たとえば、合成樹脂製造部門と樹脂製品組立加工部門で発生する間接費は合成樹脂製造
 部門では製造装置の減価償却費が多く発生し、樹脂製品組立加工部門では消耗品の発生が
 多いと推定され、これを製造全体で配賦すると原価がゆがんでしまうため、部門別に
 発生を抑えて配賦する工夫がなされるのです。

 最後のプロセスは製品別原価計算です。
 製造部門別に集計した費用を製品に割り振るプロセスです。
 その部門で発生した直接費を製品単位で分け、部門ごとの間接費をある基準で各製品に
 配賦します。
 この製品別製造原価を製造個数で割れば1個あたりの原価が算出されます。

 ただし、製品別原価計算は生産形態によって異なった方法が採用されます。
 先に「製造する製品の内容によって採用する原価計算の方法が数種類ある」としたように、
 造船やビル建築などのような個別生産形態では「個別原価計算」が採用され、化学
 工業などのように同じ製品を連続的に製造する場合は r総合原価計算」が採用されます。

 どの計算方法が優れているということではなく、生産の形態にあって適切な原価を計算
 できる方法を採用します。

□製造費用、製造原価、仕掛品、在庫
 原価計算の基礎となるキーワードは製造原価の中身とプロセスでしたが、原価計算を
 理解しにくくしているものが「仕掛品」や「在庫」との関係です。
 たとえば製造費用と製造原価の違いを説明できるでしょうか。
 また製造費用と売上原価はどのような関係にあるか理解していますか。

 製造費用、仕掛品、製造原価、在庫、売上原価の関係がわかっていないとコスト削減の
 効果がどのように利益に影響してくるのかが明確に把握できません。
 これらの関係を把握してみましょう。 
 化学工業などのように同じ製品を連続的に製造する場合の原価計算である「総合原価計算」
 では、製造原価は以下の公式で計算されます。

  製造原価=期首仕掛品棚卸高+製造兼用−期末仕掛品棚卸高

 製造費用は直接費と間接費の合計額ですが、仕掛品という聞きなれない言葉が現れて
 います。
 連続生産が前提の総合原価計算では1カ月なら1カ月という期間を区切って原価を計算します。

 連続して生産している状態を計算のために期間を区切るのですから、期間を区切った期末
 (月末)にはまだ製品になっていない生産途中の製造物が存在しているはずです。
 これを「仕掛品」と呼びます。
 製造ラインでまだドアやガラスが取り付けられていない自動車を想像してください。

 この仕掛品の調整をすることが製造原価の計算に必要です。
 たとえば、1カ月の材料費が500万円、労務費が300万円、産着が200万円であった
 ときの製造費用はこの合計額1000万円となるのですが、前月末に仕掛品として工程に
 残っていたもの(=期首仕掛品在庫)が300万円あって今月末にまだ完成していない
 仕掛品が400万円あるとすると、今月の製造原価300万円+1000万円−400万円=900万円
 となります。

 実際の原価計算ではこの仕掛品の調整があるため製造原価=製造費用とならない場合が
 普通です。
 まずはこの仕組みを理解することが大切です。
 製造費用を削減しても前月の仕掛品が通常より多かったり、当月末の仕掛品が通常より
 少ないと、製造原価は高くなります。

 さらにここで計算された製造原価は損益計算書の売上原価に関係していきますが、今度は
 製品在庫に注意する必要があります。
 製造原価と売上原価の関係は以下の公式であらわされます。

  売上原価=期首製品棚卸高+製造原価−期未製品棚卸高

 製造原価の公式で仕掛品と同じような調整が製品棚卸高(=在庫)に関してなされて
 います。

 上記の例で当月の期首製品棚卸高が200万円で期末製品棚卸高が150万円であるとすると
 売上原価=200万円+900万円−150万円=950万円と計算されます。
 製造費用から売上原価につながる流れを理解することで仕掛品や在庫の管理と原価管理の
 関連性が理解できます。

 実務上は仕掛品の進捗度合いの計算や評価の仕方などの複雑な計算が原価計算ではなされて
 いきますが、社長としては製造原価の大きな流れをつかむことが大切です。


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製造業の品質管理と生産性向上

納期管理の実践が生産性を向上

納期管理の実践が生産性を向上


■納期管理
 1.納期管理の意義 
  今では、製造業においては在庫を減らすため、必要なものを、必要なときに、必要な
  だけ生産し供給するジャストインタイムやMRP(Material Requirements Planning)
  が当たり前になっています。
  これらを実践するために、納期管理は不可欠な要素です。

  品質や価格の競争は当然のことながら、「納期を守る」あるいは「納期を短縮する」
  ことも競争力を維持または向上させることにつながります。
  逆説的にいえば、「納期遅延が頻繁に発生する」ような状態では取引先の信頼を失い、
  また「競合他社より納期が長い」ようでは、競争力に欠けることになります。

  ここでは、まず、納期管理がしっかりできていないといかなる事態を引き起こすのか
  考えてみましょう。
  製造業の場合、ジャストインタイムで生産する仕組みができている今日、  自社の都合で
  納期が遅れると取引先の生産計画をも狂わせることになり、経済的損失を与えることに
  なります。

  さらには、予定納期に製品が出荷できないとなると、当月の売り上げ予定が狂い、
  資金繰りにまで影響する可能性もあります。
  流通業やサービス業などでも、納期に間に合わないとなると、取引先に迷惑をかける
  ばかりではありません。

  特に一般消費者が相手先である場合、納期が守れず、その対応を誤るといきなり顧客を
  失うことになりかねません。
  納期が不明瞭というケースは対外的にはそう多くないはずです。
  しかし、社内における納期(部門ごとに設定している納期)が不明瞭なケースが
  みられます。

  これは生産の長期化や在庫増加の一因ともなります。
  また、「社内納期なのでl〜2日のずれ込みは何とかなる」との考えがまん延するなど、
  企業内での納期意識が低下します。
  このような状態が続けば、最終的には間違いなく生産部門や営業部門など部門間で
  あつれきが発生し、納期遅れにつながります。

  従って、取引先に対して納期を明確にし、遵守するためには、きめ細かい納期管理が
  必要となるのはいうまでもありません。
  また、材料入荷の遅れ、生産設備の故障、流通過程におけるトラブルなどで起きる
  納期遅延をいかに回避するか、さらには納期遅延が発生した場合、取引先および社内の
  他部門に対して、事後処理策を事前に考えておく必要があります。

 2.サプライチェーン・マネジメントにみる納期管理
  資材調達→生産→物流→販売といった−連の企業活動の中で、部品や製品の滞留を
  最小限に抑え、納期を短縮するサプライチェーン・マネジメント(SCM)が求められて
  います。
  サプライチェーン・マネジメントを行うことによって、在庫コストを圧縮し、資金回収
  期間の短縮が図れます。

  さらに、製品納期が短縮されることで、少量多品種生産に適応し、売れ筋商品を素早く
  市場に提供できるのです。
  ここではサプライチェーン・マネジメントを納期管理の視点からみてみましょう。
  サプライチェーン・マネジメントでは、部門や企業を超え、製品サプライヤー全体での
  納期管理の徹底が図られています。

  製造メーカー、下請けメーカー、物流会社、販売会社といった製品サプライヤーすべてが
  一体となり、受発注管理・顧客管理・資材管理・需要予測・生産管理・物流管理など、
  製品の受注生産から販売に至る情報のすべてを統合管理し、製品製造に必要な受発注
  情報、生産情報(生産計画、製品在庫、製品製造の進ちょく状況、部品の在庫・納期
  ・価格など)、物流情報は、個々の段階で分断されることがないようにネットワーク化
  されています。

  納期管理に必要な情報は関連するすべての各部門・企業で把握でき、それに沿って、
  納期管理が徹底して実践されています。
  サプライチェーン・マネジメントにおいて、納期管理が全体として行えないサプライヤー
  (システム)などは考えられません。

□納期遅延の原因とその予防策
 1.納期遅延の原因 
  通常であれば適正な納期で受注し、生産計画通りに生産できれば、納期遅延など
  起こらないはずですが、実際にはさまざまなことが原因で納期遅延が起こります。
  ここでは製造業を例に、一般にいわれる納期遅延の原因をみてみましょう。

  納期遅延の原因としては、以下が挙げられます。
   ・工程管理に不備がある
    生産計画、進度管理などの工程管理ができていない場合。
    あるいは、基準日程や日程計画の決め方に無理があるなど、
    ずさんな生産計画をしている場合

   ・生産能力以上の無理な受注をする 
    営業担当者が生産部門の状況を把握しないで、売り上げ欲しさ
    に受注してしまったり、生産部門も安易にその受注がこなせる
    と判断し、受ける場合 

   ・短期納入注文の受注
    いわゆる特急注文で、取引先からの強い要請により受注せざるを
    得ない場合

   ・質的能力を上回る受注
    自社の技術水準を上回る製品や不慣れな新製品を受注する場合

   ・設計の不備や変更 
    設計図の不備や設計ミスによる場合。
    製造開始後に設計ミスが発見された場合 

   ・生産工程中に事故などが発生する
    生産設備の不良、機械故障や人的事故が発生し、生産工程が中断
    される場合

   ・調達資材の納入遅れ
    自己調達品の納入遅れや調達部品に不良があった場合

   ・労務管理に不備がある
    作業者の不意の欠勤、作業能率の低下などによる場合

   ・納期管理の不備
    外注担当者や工程管理者に納期管理の意識が低く、作業の遅れを
    見逃したり、事前の納期督促の方法が確立していないことから、
    納期遅延が発生してから気がつく場合

 2.遅延予防策
  ここでは納期遅延に関する対策を個別にみてみましょう。
   ・工程管理に不備がある
    基準日程、日程計画、進度管理などの精度を上げるとともに、
    これらの管理体制を強化します。

   ・生産能力以上の無理な受注をする
    営業部門は生産部門と連絡を密にし、互いに正確な情報を交換
    した上で、受注します。
    両部門が生産状況について正確な情報を共有していれば、正しい
    納期を設定できます。
    また、営業部門が橋渡しとなり発注企業と生産部門が情報交換
    できるような体制をつくります。
    発注企業と受注企業との間で詳細な情報交換が可能であれば、
    納期だけでなく、仕様や材料などの細かな点についても正確に
    伝わり、さらには発注企業のニーズも事前に察知することが
    可能になるでしょう。

   ・短期納入注文の受注
    このような受注は、納期がずれ込む可能性の高いものです。
    営業部門と生産部門で十分に情報を交換し、納期を設定しましょう。
    取引先には、納期が遅延する可能性のあることを通知しておきましょう。
    また、生産状況を逐一報告しておけば取引先も安心するはずです。

   ・設計の不備や変更
    設計納期を十分にとる一方で設計業務の標準化を図ります。
    ただし、設計に関しては個人の能力に負うところが大きいため、
    設計者が一人で悩み業務が進まないことがないように管理者は
    進ちょく状況を注視するとともに、行き詰まる前に相談できる
    仕組みをつくりましょう。

   ・生産工程中に事故などが発生する
    品質管理システムや設備保全体制を確立します。
    また、生産工程において一時的 にラインが休止した場合は、
    人的労力で部分的にカバーできるように訓練しておきましょう。
       生産現場における人的事故は無理な生産体制や不注意から起きる
    ことが多いので、無理な生産体制を組まないことはもちろん、
    安全マニュアルを作成し、頃守するようにします。

   ・調達資材の納入遅れ
    カムアップシステム(事前納期督促システム)の導入を図ります。
    また検査基準の明確化や不良品処理のマニュアルを作成し、順守
    します。

   ・労務管理に不備がある
    労務管理のレベルアップを図ります。
    また、職場環境の改善を行い従業員のモラールの向上を図ります。
    上からの一方的な命令や管理ではモラールの向上は望めません。
    できれば、お仕着せではない現場従業員からの改善提案や意見を
    管理者は重視し、多少不備があろうとも、現場からの提案を採用
    するようにします。
    現場からの意見が重視されると分かれば、現場従業員からの改善
    提案は継続して出てくるはずです。

   ・納期管理の不備
    担当者の意識改善や責任体制の明確化を図るとともに、カムアップ
    システムの導入を図ります。

□納期に対する意識を改革する
 納期短縮の流れから、多くの企業で納期管理に関心がいくようになりましたが、品質管理や
 原価管理と比べればまだまだ十分とはいえません。
 納期に対する意識の低さはどのあたりに原因があるのかを探る前に、まず、納期の考え方
 についてみてみましょう。

 『工程管理ハンドブック』(日刊工業新聞社)では、納期を以下のように分類しています。

  (A)営業部門で用いる納期 
   (1)取引先に約束する納期(契約書に記載) 
   (2)社内で希望する納期(受注通知書)
  (B)製造部門で用いる納期  
   (3)営薫に約束する納期(製造命令書、生産予定表)
   (4)部門で目標とする納期(作業伝票、作業予定表)
  (C)調達部門で用いる納期 
   (5)製造部門から要求される納期(購買依頼書)
   (6)発注先に指示する納期(注文書) 

  これらの納期は、(1)が最も長く、番号が大きくなるほど短くなっています。
  (1)と(2)に全く余裕がないのでは、万が一トラブルが発生した場合、期日に取引先
  に納入できない事態に陥ることが容易に考えられるため、多くの企業で相応の余裕を
  設けてあるはずです。

  従って、問題がないようにみえたとしても、各部門における担当者の納期意識が低いと
  問題が起きるのです。
  (1)と(2)に必要以上に時間的余裕がある場合を考えてみましょう。
  (1)と(2)に余裕があるため、製造部門の担当者は(2)の納期に少しばかり遅れても
  よいと安易に考えてしまいます。

  このよう一な考えは(3)(4)(5)(6)の担当者にも起きるのです。
  例えば、「製造部門で日程計画自体に時間的余裕をみてある」と現場従業員が漠然と
  考えていると、多少の遅れを当然と思うようになります。
  一方で、多少の遅れは、急げば取り返せるといった考えもまん延してしまいがちです。

  このような状態では納期が意味をもたなくなるばかりか、事故や不良品の多発といった
  状況に陥る危険性があります。
  複数の部門や部署をまたぐため、それぞれの納期に多少の余裕は必要ですが、必要以上
  の余裕は、納期意識を低下させるだけでなく、生産性や部門間の信頼関係をも低下
  させてしまいます。

  各部門担当者が信頼でき、責任をもって守れる納期を設定しましょう。
  具体的には、「納期連絡ミーティングを週1回開く」など各部門の担当者は連絡を
  密にし、適正納期を設定し、それを必ず順守する姿勢を確立しましょう。 
  各担当者が多忙、または製造部門や営業部門が遠隔地にあるなど一同が集合して
  ミーティングを開けない場合には、ネットワークで情報を共有し、確認し合えばよい
  でしょう。

□納期遅延対策の具体的方法

 1.納期遅延対策の実施手順
  納期遅延が発生した場合は、下のような手筋で納期遅延対策を練ります。

 2.納期遅延対策のポイント 
  ・「緊急対策」と「抜本的対策」
   納期遅延が発生した場合はまず「緊急対策」と「抜本的対策」とに
   分けて考える必要があります。

  ・発生源から改善する
   納期遅延の原因はさまざまですが、基本的には1つか2つのことが
   原因となっているはずです。
   納期遅延が発生した場合は、まず、最も発生源に近いところで処置
   する必要があります。
   「単に突発的な出来事によって発生した」のであればさして重要視
   する必要はありませんが、「企業全体のシステムとして発生した」
   のであれば、抜本的対策を講じなければなりません。
   これを契機にシステム全体を見直さなければ、再度、納期遅延を
   引き起こすことになるでしょう。

  ・最悪のケースを想定する
   社内納期の遅延が発生し、どのような対策を講じても取引先と約束
   した納期に間に合わないといった場合には、早急に営業部門を通じて
   取引先に報告しましょう。
   最終納期が迫ってから取引先に報告したのでは手遅れになりかね
   ません。
   取引先に現状を報告し、次善策や代替策を提案しましょう。

□納期管理のための実践方法

 1.納期管理 
  納期管理を正確に行うためには 
  (1)日程管理(生産の着手、完了時期をいつにするか決める)
  (2)現品管理(ものがどこに、いくつあるのかを把握する)
  (3)進度管理(エ程における仕掛量を把握し、進み具合を把握する)
  (4)基準日程の策定(納期に対して各工程作業の着手を決めるための
    ぺース件り)
  の4つが重要とされています。
  以下でこれらについてみてみます。

 2.日程管理 
  従来、日程管理にはガンチャートが多く利用されていました。
  しかしガンチャートでは日程計画が一目で分かる利点がある一方で、部門や部署との
  関係が不明瞭でした。
  製品の工程が比較的少ないものについてはガンチャートでよいのですが、複雑なもの
  については、部門や部署との関係が不明瞭なままでは、納期遅延の原因ともなります。
  このような場合には、相互関係を明確化したパートを使った日程管理をしてみましょう。 

 3.現品管理
  現品管理は進度管理に直接結びつく基本要素で、「工程間の現品受け渡しを容易にする」
  「運搬や保管が分かりやすいように整理・整頓する」「現品の紛失や劣化によるロスを
  防止する」ためのものです。
  実務上のポイントは下表の通りです。

 4.進度管理
  毎日の生産状況を把握するためには「生産進度管理図」や「流動数曲線による進度表」を
  用いて管理します。
  「流動数曲線による進度表」は継続生産を行うような現場には適していますが、個別
  生産には適しません。
  また、作業の遅れを段階的に早期発見する仕組みとして「カムアップシステム」を
  導入することも一案です。
  「カムアップシステム」は納期前に、担当者に納期を確認することをすべての納期
  段階で行うので、納期遅延対策としては非常に有効です。

 5.基準日程の策定
  基準日程は「工程待ち→加工→検査→運搬」の一連のすべての作業日数をそれぞれ
  決めるものです。
  基準日程は継続生産、ロット生産、少量多品種生産を行う場合でその設定方法が
  変わること、また、合理的に基準日挺を決めることは困難なため、ある程度経験と
  勘にたよる場合があることは仕方のないことです。
  ただし、基準日程が適切でないと納期遅延の原因となります。

 6.現場での試み
  前述した以外にも、納期遅延対策として行われているのが生産現場での「差し立て板」
  「工程管理板」による確認です。
  これらを利用すれば、工程管理者や作業者が一目で作業の進ちょく状況を把握する
  ことができます。
  また、工程管理に正確を期すためにバーコード付き作業票を取り入れているところも
  あります。

  バーコードの導入は、作業者の作業票記入を省くだけでなく、各工程での進ちょく
  状況を把握できるというメリットがあります。
  また、工程ごとの実績や停滞時間なども明らかにできることから、データを分析
  しやすくなり、問題点の把握も容易となることから、さらなる改善につながります。

 7.企業としての取り組み
  納期管理を各部門ごとに徹底して行うのは当然ですが、一歩先を考えれば、企業
  全体で、あるいは下請けメーカー、物流会社、販売会社など関連するところ全体で
  一貫した納期管理を行う必要があるでしょう。
  製品製造にかかわる関連部門を巻き込んで情報化を図ることが第一歩となります。

  正しい情報の伝達なしに、納期管理は実践できませんし、納期遅延などの対応にも
  苦慮することになります。
  正しい情報が即座に伝達できるシステムの構築こそ、納期管理には必要といえます。


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製造業の品質管理と生産性向上

新製品開発

新製品開発

■企業を革新へと導く新製品とは
 製造業が経営革新を実現し、成長を果たす上で一般的かつ効果の高い戦略として挙げられる
 のが、「市場において、競合他社と明確な差異化が実現できているなど圧倒的な優位性を
 有する自社製品の開発」です。
 産業構造的に下請企業が圧倒的に多数である日本の製造業界において、市場競争力を有する
 自社製品を保有することは下請からの脱却を図る上でも非常に有効な手段であるといえます。
 企業が新製品開発と位置づけるものは、次の6種類に大別できます。


 1.全く新しい製品
  自社にとっても市場にとっても従来存在しなかった製品カテゴリーを生み出す革新的な
  製品。
  新しい市場を創造するような製品。


 2.新製品ラインとして位置づけられる製品
  自社にとっては従来取り扱わなかったような新規の製品ではあるが、市場にとっては
  既存の製品として位置づけられるもの。


 3.既存ラインへの追加製品
  自社もしくは市場にとって、既存の製品ラインを拡張させるようなタイプの製品。

 4.既存製品の改良製品
  既存の製品の性能や提供価値を向上させた改良品。

 5.リポジショニングをターゲットとする製品
  従来とは異なる新しい顧客セグメントをターゲットとして開発される、既存製品に
  類似した製品。


 6.コスト削減による低価格化製品
  従来の製品と同様の性能や価値を有するが、より低いコストで提供するような製品。

 企業が新製品として市場に投入するものの大多数は上記の「2.新製品ラインとして位置
 づけられる製品」「3.既存ラインへの追加製品」「4.既存製品の改良製品」です。
 これらは既存市場への後発製品であり、市場投入効果も限定的です。
 一方、「5.リポジショニングをターゲットとする製品」はニッチ市場を創造する可能性が
 ありますが、既存製品を基盤としているため競合企業が模倣品を使って参入してくる
 ことが比較的容易となります。

 また、「6.コスト削減による低価格化製品」に関しては、圧倒的な低コスト化を実現
 できれば市場のシェアホルダーになることも可能です。
 しかし、通常、中堅・中小企業が大手企業との価格競争に陥った場合、競争地位の安定を
 図りにくいのが現実です。
 以上から、中小企業において企業を真の経営革新へと導いていく効果が期待できるのは、
 「1.全く新しい製品」に分類されるものであると考えられます。


□顧客ニーズの意味を取り違えないことが重要
 製造業を営む中小企業が製品開発を検討する際に、よく陥るのが「顧客ニーズへの対応」
 という言葉の意味を取り違えることです。
 例えば、親密な取引関係にある顧客から「この機械のこの部分が使いにくいので直して
 欲しい」「この製品の処理能力をもう少し上げてもらいたい」などの要望がある場合、
 これらのニーズに対応できるように既存の機械を見直すこと(開発し直すこと)が先決
 だと考えがちです。

 しかし、これは開発ではなく単なる個別対応です。
 また、少数の顧客の要望に対応した製品を自社の製品ラインナップに追加していく企業が
 多く見受けられますが、結果として売れない製品を時間をかけて開発することになって
 しまいがちです。

 製品とは、セグメントされたある特定の顧客層に対し、共通して広く採用されるもの、
 つまり市場性のある標準仕様のものを指します。
 個別の顧客ごとに要求仕様が異なるようなものは製品としては不完全です。
 なぜなら、一品ごとに使用する部材や生産工程が異なり、ひいては製造原価も違ってくる
 ようなものでは戦略的な製品開発を行うことが困難になってしまうからです。

 新製品開発における「顧客ニーズへの対応」とは、特定顧客の要望のすべてに応える
 ことではありません。
 そうではなく、
競合他社が解決策を提示できていない顧客の潜在的なニーズを、自社が
 有する技術力や生産管理能力を使って生み出したシーズで解決すること
こそが、顧客ニーズ
 への対応となります。
 特定顧客の要望にすべて応える業態とは下請企業という在り方にほかなりません。
 それでは新製品開発において、どのような着眼点を持てばよいのでしょうか。


□新製品開発のための着眼点
 1.法人向け:顧客のプロセス・ニーズを発見する
  法人の生産財を開発する場合、顧客が既に認識している個別ニーズ(例えば、加工速度の
  向上、操作性の向上など)に焦点を当てても既存製品の改良にしかなりません。
  着目すべきは、多くの顧客において業務遂行上のボトルネックになっている問題や
  製造工程上どうしても解決しなければならない問題でありながら、根本的な解決策が
  見つからないまま場当たり的な対応をしている、あるいは放置しているというような、
  「業務プロセス上の潜在ニーズ(問題があることは分かっているが具体的にどう解決
  すべきかが分かっていないもの)」です。

  このようなプロセス・ニーズに対応した新しい製品であれば、その提供価値が顧客の
  業界で認識され、継続的かつ広範に採用が進んでいきます。
  ただし、既にそのニーズを不完全ながらも解決可能な競合他社の先行製品が存在し、
  処理能力が若干向上した程度の後発製品でしかない場合は、よほど低価格の製品で
  なければ顧客から採用される可能性は低いといえるでしょう。


 2.消費者向け:製品が生み出す提供価値と知覚価値で差異化する
  消費者向けの製品の場合、「本当に享受しようとしているメリットは何か」という
  顧客への提供価値を重視して製品企画を行う必要があります。
  消費者が購買活動を行うのは、あくまでもその製品によって得られる生活上の価値や
  ライフスタイル上の価値などに納得した場合です。

  これを携帯電話で考えてみましょう。
  携帯電話が有している機能としては、電話としての音声通信機能、メールなどによる
  通信機能、インターネットへの接続機能、デジタル画像の撮影・再生機能、料金支払いの
  決済機能などが挙げられます。

  このような個別機能は、技術開発速度の高速化の影響もあり数カ月で陳腐化していきます。
  このような陳腐化が激しい個別機能は本質的な提供価値とはいえません。
  「相手と、あらゆる状況、あらゆる媒体で情報の交換を行うことができる」という
  ことが携帯電話の本質的な価値であると仮定すると、「携帯電話という製品カテゴリー
  以外で同様な価値を提供できる製品は考えられないか、交換する情報の内容を新たに
  規定できるような製品は考えられないか」というような切り口で製品開発を検討
  しなければなりません。

  本質的な部分に着目しなければ「全く新しい製品」を生み出すことはできず、製品の
  細かなスペックの改良に終わってしまいます。
  それでは、陳腐化の速さから投資した経営資源の回収を図れないうちに製品寿命が
  終了します。
  中小企業が製品開発を考えるときには、このような技術革新やモデルチェンジが激しい
  タイプの製品を対象とした製品改良は避けるべきでしょう。

  消費者向けの新製品を企画する際に注意したいもう一つの観点が、その製品が消費者の
  五感に訴えるものであるかどうかです。
  実際にその製品を見て、聞いて、触って、あるいは実際に使ってみて、驚きや感動を
  与えられるものでなければカタログ上のスペックがいくらよくとも従来品や競合品から
  乗り換えてくれることはありません。

  使いやすい、見やすい、あるいは手に持って好ましい重さであるなど、人間の知覚を
  刺激する価値を持つものがヒット商品になる傾向があります。
  このような消費者の購買行動基準に着目したマーケティングを「感性マーケティング」
  などと呼びます。


□新しいカテゴリーの製品を生み出す
 新製品開発を検討する際、顧客ニーズを掘り起こすためにアンケート調査を実施する
 ことがありますが、注意しなければならないのは、顧客は既に存在している製品に関しての
 相対的な評価しかできないという点です。
 例えば古い例になりますが、「富士フィルムの使い捨てカメラ」「日清のカップヌードル」
 など、そのカテゴリーの代名詞のような製品は、顧客側からの視点では製品アイデアとして
 思いつかないでしょう。

 事実、いずれの製品も顧客の業務プロセスや日常の行動パターン、ライフスタイルなどを
 メーカー側の視点で観察・分析して生まれたものです。
 つまり、本当の顧客ニーズは(それを解決する製品がまだ存在しないが故に)、実は
 顧客自身が明確に分かっているわけではないということです。


 顧客の業務や生活を実際に観察・検討し、自社の技術やアイデアによって顧客自身が
 明らかにすることができない顧客の潜在的なニーズを発見し、これを解決する手段を自社の
 技術力や開発力によって製品という形で提供する「正しいプロダクト・アウト」が真の
 製品開発であるといえるでしょう。


□標準的な新製品開発プロセス
 新製品開発は、マーケティング計画と連動しながら次のような4つのステージで推進して
 いきます。
 新製品開発プロセスは図の通りです。


  1.第1ステージ:製品コンセプト開発
   この段階では可能な限り多くの製品化アイデアを集めることが重要です。
   集められたアイデアの中から有望なものを抽出し、それらを基にして製品コンセプトを
   まとめていきます。
   この際に特に重視すべきポイントは、

    ・どのような顧客にどのような価値を提供するのか
    ・内容にあいまいなところがなく、明快であるか

   という点です。

   そして、まとめられた製品コンセプトを図で紹介している観点から検討し、有望な
   製品コンセプトに絞り込んでいきます。
   新製品コンセプトの検討ポイントは図の通りです。


  2.第2ステージ:戦略検討 
   製品コンセプトを基に、マーケティング戦略を検討していきます。
   
マーケティング戦略は、自社の生産能力などを勘案しながら、年度別の目標販売
   数量を3段階で検討します。

   特に、販売チャネルの構築、プロモーション戦略などは詳細化し、具体的なアクション
   プランとプラン実行に要する人員・費用を検討していきます。
   次にマーケティング戦略を参考にしながら、収益性、投資回収率(ROI)、
   自社既存製品の販売への影響度など、事業性の分析を行います。

   この段階で事業性が低いと判断したら、第1ステージの製品コンセプトまで戻り、
   再度魅力ある新製品コンセプトを探索していくこととなります。
   マーケティング戦略、事業性分析が完了した後は、製品開発並びにマーケティング
   活動に関する実行計画(ロードマップ)の検討を進めます。

   ロードマップの策定においては必ずマイルストーン(中間的な目安)を設定し、
   計画の進ちょくチェックが行えるようにしておく必要があります。
   また、開発計画はマーケティング計画と必ず連動している必要があります。
   マーケティング戦略が不十分では、どれほど先進的な製品が開発できたとしても
   事業としては失敗する可能性が高いからです。


  3.第3ステージ:製品化
   製品開発を実施するステージです。
   新製品の場合、市場の反応がどうかを検討する必要があるので、最初にテスト・
   マーケティング用の製品を開発し、限定された顧客グループや地域に試験的に市場
   投入します。

   そしてその結果を製品仕様に反映させ、本格投入用の製品へとブラッシュアップして
   いきます。

   テスト・マーケティングの際に活用可能なマーケティング・リサーチ手法は表の
   通りです。


  4.第4ステージ:市場投入
   テスト・マーケティングの結果を受けて修正したマーケティング戦略に基づいて、
   新製品を市場に投入していく新製品開発プロセスの最終段階といえます。
   ここまでの各ステージを確実にクリアした新製品であるため、その時点では、顧客に
   対して新たな価値を提供できる(顧客のニーズに応えることができる)ものである
   はずです。

   しかし、実際に市場に投入した新製品に対する顧客の反応が当初の予想と異なり、
   販売数量などが計画を下回るようであれば、再度のテスト・マーケティングが必要と
   なります。


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製造業の品質管理と生産性向上

BTO生産方式

受注生産方式 BTO

  ■BTO 受注生産方式の特徴 
   製造コストを考えると大量生産方式にしたいが、作りすぎれば過剰在庫となって
   しまい、経営を圧迫する。
   かといって、欠品すれば販売機会の損失になってしまう――。
   こうした悩みを抱える企業は少なくありません。
   一方、市場のニーズは多様化し、メガヒットが生まれにくく、多品種少量生産
   を強いられる状況にあります。 
   こうした状況を逆風ととらえず、大量生産方式と受注生産方式の両方のメリット
   を追求しようとして編み出された生産方式がBTO(ビルド・ツー・オーダー=
   注文生産方式) と呼ばれる生産方式です。
   その大きな特徴は、受注生産によるカスタマイズ化と、大量生産による標準化を
   ミックスしたことにあります。

  □待ち時間を減らす工夫 
   原材料状態からの受注生産ではコストも高くつき、納期も長くなります。
   そこでBTO方式をとる場合は、標準化部分とカスタマイズ部分を組み合わせて
   モノを作るような工程にします。
   以下の図をご覧ください。
   標準化部分をあらかじめ作っておき、注文を受けてから組み立てを行うわけです。 
   0(ゼロ) から作り始めて完成させるまでのトータルの製造時間を100とする場合、
   そのトータルの時間が変わらなくても、受注してから完成させるまでの時間を
   短くすることができれば、お客さまから見た「所要時間」 は短くなるわけです。
   お好みで選べるのは「組み合わせ方」 であり、構成するパーツそのものについて
   ゼロから指定できるわけではありません。
   個々のお客さまへの選択性を高めつつ、工程を標準化するという点では、
   現代の外食産業に通じる部分もあります。
   わかりやすいたとえでいえば、宅配ピザ店のように、あらかじめピザクラスト(台)
   を用意しておき、電話があると具をトッピングしてピザを作ったり、寿司店で
   あらかじめ用意した寿司飯に下ごしらえ済みのネタを合わせて握ったりといった
   ように、あくまでも提供可能な範囲でお客さまの好みに対応しているのです。
   「お客さまのいうことなら何でも聞く」 というわけではありません。

  □「しくみ」を構築すれば、真似されにくい 
   現代は、製品そのものでヒットを飛ばしても、すぐに他社に真似をされて
   しまいます。
   しかし、個々のニーズに応えるというビジネスのしくみによる差別化となると、
   容易には真似できません。
   重要なことは、物流と情報のやりとりをスピードアップさせることです。
   いままで以上に納期の短縮を図るには、専門的な強みを生かしたビジネス
   パートナーとの協力体制が不可欠です。
   物流を専門会社にアウトソーシングするのもその一例です。 
   また、部品生産段階の効率化や合理化を進めるには、受注情報を即時に伝達し
   相互に状況を把握できる双方向ネットワークや、資材調達に関連して需要予測を
   正確に行うためのソフトなどIT面の充実も必要です。

  □従来の生産方式との「意識」の違い 
   BTOでは、作ったモノをどう売るかにコストを費やすのではなく、売れるモノを
   すばやく作る体制を構築することに主眼をおいています。
   これは、企業が「売りたいモノを計画するという発想ではなく、顧客からの
   要望に応じて作る」と考えることにほかなりません。 
   そのためには、自社内での発想の転換が必要です。
   それだけではありません。
   他社との「協業」という、大きな発想の転換が求められます。 
   部品製造、組み立てのほか、物流、情報システムなど、それぞれの業務において、
   より高品質であることが求められています。
   そうなると、すべてを自前でまかなうのではなく、さまざまな企業の得意な
   ところを生かし合ってビジネスをしていくことが求められるようになります。 
   そうなると、顧客に対して最良の品質(製品) を提供するために協力し合う
   パートナー選びも大切ですし、自社がどのような製品やサービスにおいて強みを
   発揮して相手にパートナーとして選んでもらえるかという逆の発想もまた必要
   になってくるものと思われます。 
   また、消費者に多くの情報が提供されるようになると、それぞれがより望ましい
   選択肢を求めるため、購入に対しての意識がシビアになります。
   しかも、相互に強みを生かす形で複数の企業が協力し連携していくため、
   強い企業、強い連携組織だけが勝ち残ることになります。
   企業はいままで以上に、自社の強みを強化することが一層求められるでしょう。

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製造業の品質管理と生産性向上

製造業の生産性向上

製造業の生産性向上

  製造業の生産性向上対策には、①設備・機械の更新、②人的生産性の向上、
  ③製品価格、加工単価のアップと製造コストの低減、などがあります。
  このうち、設備化・機械化による生産性の向上対策としては、イ)新鋭機械の
  導入とロ)機械稼働率の向上があります。
  また、人的生産性向上対策として重要なものには、イ)アイドルタイムの削減、
  ロ)作業改善と標準化、ハ)要員管理の強化と多能化・熟練化の推進、などが
  あります。
  さらに、付加価値率の向上対策には、イ)製品単価・加工単価の引き上げ、
  ロ)原材料、部品コストの低減、ハ)製造コストの低減、などが代表的なものと
  いえます。

  □設備・機械の更新と技術革新 
   製造業での生産性向上のためには、設備機械の更新と機械の稼働率向上は
   非常に重要な意義をもちます。
   新鋭機械を導入することによって、機械の回転数を高めたり、機械の稼働率を
   向上させれば、時間当たりの生産量は確実に増大し、生産性が向上するからです。

   1.新鋭機械の導入時の留意点 
    新鋭機械の導入等の設備更新は、一般に多額の資金を要するため、失敗のない
    ように更新後の対策も十分講じておく必要があります。
    投資効果(経済性) 計算や投資回収計算を行うとともに、あらかじめ借入金
    返済計画を明確にし、設備投資が経営への過剰な負担とならないように
    します。 
    また、ラインバランスの調整も重要なポイントといえます。
    ラインバランスの検討に当たっては、次の諸点に留意が必要です。

     イ)新しい機械の能力をできる限り発揮できるよう、他工程との
       リードタイムの調整に心掛ける。
       工程(ライン) の中に手作業が含まれている場合には、とり
       わけこのことが重要となる。
       せっかく機械の回転速度を早めても、手作業のところでライン
       の流れが途切れては、生産性の向上に結びつかないからである。 
     ロ)工程ごとの作業負荷の偏り(ムラ) の排除を検討する。
       特にライン型生産形態を採用している場合は、各工程(機械)
       間のピッチ・タイムを一致させなければ、新鋭機械導入の効果
       が減殺されてしまう。 

     ハ)ラインバランスを適正化するには、設備機械の配置を検討し、
       工場レイアウトを再設計することも重要である。
       その際、必要によっては、工程の統配合の検討を行う。
       このほか、新鋭機械の導入によって実現した生産量の増加に見
       合った販売計画を立て、過剰生産にならないようにすることや、
       設備機械の陳腐化に備えて、新しい設備機械の償却を早めるため、
       機械の稼働率を高める工夫をすることも大切です。

   2.機械の稼働率の向上 
    前述のように、製造業で生産性を向上させるためには、新鋭設備機械を導入
    するとともに、設備機械の稼働率の向上も重要です。
    稼働率向上のためには、次のような対策を講じます。

    イ)段取り時間の短縮  
      多品種少量生産を行う場合、段取り時間の占める割合がどうしても
      高くなる。
      そこで、外段取りの実施、従業員の技能アップを図るほか、標準化・
      作業改善などを実施して、段取り時間の短縮を実現する。

    ロ)多能工化、専門工化の推進  
      従業員の多能化を進め、多台機械持ち・多工程持ち型のマルチタイプ
      の従業員を養成する。
      一方、高度な技術・技能を持つ専門工の養成も重要である。

    ハ)間接作業、付随作業の削減  
      材料切れによる手待ちや作業中断の排除、資材・製品の置き場所や
      運搬方法の改善によって、間接作業や付随作業、さらに無作業時間を
      削減する。 

    ニ)機械のトラブル時間の低減  
      毎日の清掃、給油、点検を励行することによって、機械の標準条件を
      維持するとともに、トラブル対策の徹底(担当者が修理できるように
      する)も重要である。 

    ホ)品質管理の徹底不良品のためのやり直しも稼働率を落す原因になる。
      そこで、検品を強化するとともに、機械を改良して自動不良検知機能
      を付けたり、QC活動を行うなど、品質管理を徹底することが大切
      である。   以上を図で示すと、 図①のように表わすことができます。

  □人的生産性の向上対策

   1.アイドルタイムの削減 
    製造業での生産性向上のためには、実働時間のうちアイドルタイムを少なく
    して、有効作業時間の割合をいかに多くするかが第一の課題となります。
    つまり、稼働率をいかに向上させるかということです。 
    アイドルタイムが発生するのは、図②のa〜dの間です。
    そこで、①運搬や工具の手入れなどの間接作業時間で手待ち(無作業)
    時間をなくす(a)、②ロット数を適正化して材料や治工具の準備にかかる
    準備作業時間を少なくする(b)、③材料や治工具の配置や容器を改善して、
    それらの取り置きに要する付随作業時間を削減する(c) 、などによって
    アイドルタイムの削減を図ります。 
    以上のように、製造業の生産性向上のために、アイドルタイム、すなわち
    ムダな時間を減らすために様々な角度からの対策を行ってみると、中小
    製造業では、意外にこのアイドルタイムが多いことがわかります。

   2.作業改善と標準化 
    アイドルタイム削減のために有効な方策の一つとして、作業改善があります。
    作業改善のためには、実際に行われている各作業を、時間的側面と動作的側面
    から分析し、ムダな時間とムダな動作を排除し、作業方法と手順、作業内容の
    改善を図ります。 
    そして、作業改善(作業方法と手順、作業内容の改善) を行ったあと、
    新しい作業方法を標準作業方法として標準化し、「作業指導票」などによって
    徹底します。 
    また、作業速度の標準である標準時間(注) を設定し、従業員が作業する際に
    常に標準時間を意識させるようにします。
    (注)標準時間とは、普通の作業者が標準的な方法によって作業をす
     るときに要する時間のことです。 
    以上の手順を図示すると、 図③のように表すことができます。

    なお、以上のようにして短縮される標準時間は作業改善ばかりでなく、
    技術改善や設備改善によっても短縮されることはいうまでもありません(図④参照) 。
    作業改善のためには、QC活動(QCサークル) などの小集団活動や提案制度
    などを活用するとともに、IE(Industrial Engineering) などの科学的
    手法を導入することが有効です。

   3.要員管理の強化と多能化・熟練化の促進 
    要員管理の強化と多能化の推進は、製造業における、直接的な省力化、
    省人化に効果的といえます。 
    作業改善や標準化を進めれば、それまでの人員が必ず余るはずです。
    そこで、各作業部署ごとに定員(必要人員) の見直しを行い、ムダのない
    ように余った人員を他に配置替えします。
    この場合、余裕となる人員は、1人とか2人というように整数となるとは
    限りませんので、端数となった人員(作業) については、多能工(複数の
    作業のできる従業員)を養成し、適切に作業を按分します。
    一方、従業員1人ひとりへのOJTを強めて熟練化を進め、少数精鋭の要員配置
    を実現します。
    図⑤は、多能工、熟練工を職場から自主的に養成するために工夫されたツール
    です。
    例えば、これらのマップを工場の壁に貼り出すと、一人ひとりに新しい仕事
    をマスターする意欲をかき立て、動機づけとして効果があります。

  □製品価格、加工単価のアップと製造コストの低減 
   製造業の付加価値率向上対策としては、①製品価格、加工単価の引き上げ、
   ②原材料、部品コストの低減、③製造コストの低減が代表的なものです。

   1.製品単価、加工単価の適正化 
    生産量・販売量が増加しても、製品単価や加工単価が下がれば、付加価値率
    は向上しません。
    反対に、生産量・販売量に変化がなくても、製品単価や加工単価が上がれば、
    生産高・売上高は増大し、それに伴って付加価値額が増えて生産性は向上
    します。 
    そこで、製品価格、加工単価を引き上げるために、次のような対策を講じます。 
    イ)技術革新を積極的に進め、R&D(リサーチ・アンド・ディベロッ
      プメント=研究開発) 部門を強めて、新しい高付加価値製品を開
      発する。 
    ロ)不採算部門や不採算製品を思い切って切り捨て、高付加価値製品に
      重点を移していく(スクラップ・アンド・ビルド) 。 
    ハ)下請企業などでは、原価計算を行い、また中期経営計画をつくる
      など説得力をつけて、親企業に下請単価の引き上げを要請していく。
    今日のような不況期に、製品単価、加工単価の引き上げを実現することは
    非常に困難ではありますが、不況期だからこそ高付加価値製品の開発や
    スクラップ・アンド・ビルドのために大きなエネルギーを注ぐことが重要
    なのです。 
    また、中小下請製造業で広範に見られる下請単価切下げに対しては、上記
    ハ)をベースに、『下請振興基準』や『下請代金支払遅延等防止法』などに
    ついてよく学習し、理論武装を行って親企業と話し合うことが大切です。

   2.原材料、部品コストの低減 
    製造業では、製造原価の中の材料費の占める割合が高いので、これを低減
    することで製造原価を引き下げ、その分だけ付加価値を増大させることが
    できる。
    そのためには、材料計画の策定、調達・保管の管理の徹底などが必要です。 
    材料計画には、基本計画、所要量計画、在庫計画の三つの計画がありますが、
    それぞれの計画を徹底して、部品コストの低減に努めなければなりません。
    部品コストの低減のためには、外注管理の徹底も大切です。
    そのため、外注先の品質、単価、納期などを定期的に見直し、適切な外注先
    を選択することが重要です。 
    基本計画を立てる際、良質安価な代替材料への変更、材料取りの効率化
    (歩留まり率の向上)などのため、VA(バリュー・アナリシス=価値分析)
    を行い、VE(バリュー・エンジニアリング=価値工学)やIE(インダ
    ストリアル・エンジニアリング=産業工学)などの手法などを用いると
    効果的です(注) 。
    (注) VAとは価値分析のことで、 図⑥のように表わすことができる。
    VEやIEはこのVA(価値分析) に基づいて、必要な機能(F) をより少ない
    コスト(C) で実現することによってコストダウンを追求する手法である。

   3.製造コストの低減 
    製造コストの低減のためには、品質管理や原価管理を徹底することが重要です。
    品質管理はいわゆるオシャカをつくらないための管理ですが、統計的品質
    管理(SQC)の技法を学び、製造現場に徹底することが重要です。
    原価管理のための対策には、原価要素(材料費、労務費、製造経費) の
    引き下げが必要ですが、そのために、前述のVEやIE手法などを活用した
    原価低減活動と、QCなどの品質管理活動を採り入れるべきです。
    製造業におけるVE、IE、QCの役割と効果を示しますと、図⑦のように
    表わすことができます。
    原価低減のためには、このほかに、経済ロットの導入などもありますが、
    これらの技法を状況に応じて活用することが大切です。

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製造業の品質管理と生産性向上

製造業のフールプルーフ(ポカヨケ)対策


  ■製造業のフールプルーフ(ポカヨケ:うっかりミスを避ける)

   製造業では常に小さな事故(ポカミス)があいついで起きています。

   いずれもウッカリ事故と呼べるもので、機械も止まらず、怪我もなくすんでいます。

   どんなに慣れた工程でもなめないで、真剣に取り組むこと。

   作業をなめると、大きな事故を招きます。

   そして安全作業は、言うまでもなく従業員自身のためにこそ守らなくてはならない
   のです。
   
   では、安全な作業遂行のために、何をどうすればよいか。

   それは基本的なことですが、合い言葉を交わし合うことです。

   ご存じの赤穂浪士の討ち入りでは「山」と「川」の合い言葉が交わされます。

   あれは、味方同士の相打ちを避けるための大切な戦術です。

   そして見事に成功した例です。

   逆の例は、プロ野球を見ていると、フライをめぐって二人の選手がぶつかったりし
   ます。

   あれほど鍛えたはずのプロの選手同士が、ごく基本的なマナーである声を掛け 合う
   ことを忘れたばかりにとんでもないミスをするわけです。

   二人ともが、目の前のボールに集中するあまりにウッカリミスをやらかすのです。

   合い言葉は大切です。  

   とくに、口に出すことです。

   電車の運転手や車掌さんの仕事は、小さなミスが直接人命にかかわるから、安全の
   ためのチェックは二重三重に慎重にしています。

   運転席を覗くと、運転手さんは計器類をいちいち指で差し、なおそのうえに「発車オー
   ライ」とか「信号よーし」とか声に出して確認しています。

   あの慎重さが事故を防ぐのです。
 
   現場でいえば、お互いに作業の確認をし合うことが合い言葉に当たります。

   目で見て、音を聞いて、手で触って、よくよく確認したうえで「OK」「合格」でもいい
   でしょう。

   「了解」「完成」でもいいのです。

   実際に口に出して、お互いの作業を確認し合うこと。

   お互いに確認し、連絡し、報告をする。

   この基本を忘れないことです。

   ほとんどのポカミスはこれで防ぐことができます。
 
   大きなミスを防いで、安全作業を確保する近道は結局、基本を守ることに尽きる
   のです。

   その基本の一つが合い言葉を交わし合うことです。

   基本だからこそ、必ず励行してほしいことです。

   事故の多くは、どこか気持ちのたるみから発生します。

   御社では安全管理対策としてそのようなことを実施しておりますか。

   「安全管理対策」一つをとっても、定期に開催し、従業員が習慣化するまで繰り
   返し続けることが重要です。

  □フールプルーフ(ポカヨケ)対策の必要性とその目的

   人間が作業をする場合、つねに完壁に行うことができるわけではありません。

   作業標準や基準はあっても、ついうっかりミスをすることがあります。

   その場合、人間の判断をできるだけ機械的、あるいは電気的な機構などに置き換えて
   そのミスの発生を極力防ぐことが必要になります。

   ヒューマンエラーによる

    ・人間のちょっとした気の緩みから犯してしまう過失(ポカミス)の防止策

    ・それによって引き起こされる不具合を低減するための工夫

   を「フールプルーフ」(fool proof)、日本語では、「ポカ(うっかり)ミスを避け(ヨ
   ケ)る」で「ポカヨケ」といいます。

   これに対し、機器の一部が損傷、故障、停止などしても危険が生じないような構造や
   仕組みを導入する設計思想のことは「フェイルセーフ」(fail safe)といいます。

   近年、製造現場は、

    ・中小製造業を取り巻く経営環境の低迷

    ・消費者ニーズの多様化に伴う短納期・多品種少量生産への移行による工程や
     作業の頻繁な変化

   により、非常に不安定な状況にあります。

   しかし、そのような現場の現状にもかかわらず、厳しい企業間の競争に勝ち残り生き
   残るためには、均一で高品質の製品を低コストで提供することが要求されています。

   したがって、各企業では、誰もが、どのような環境においてもちょっとした気の緩みに
   よる末加工や操作ミスなど、安全に低いコストで100%の品質の商品が作れるような、

    ・ポカミスを完全に防止する仕組み

    ・ポカミスを注意する仕組み

   を構築し、それをいかしていくことが重要です。

  ポカヨケの仕組み

   「ポカヨケ対策」とは、

   部品忘れや未加エなどの人為的ミスをなくすことにより、品質の向上、コストダウン、
   安全面においての成果を図ることを目的としています。

   そして、それらの目的を最大に達成するためには、

    ・不良品を作らない仕組み、不良品を次の工程に送らない仕組みなどの
     「ポカミスを完全に防止する仕組み」

    ・人的要素が多すぎて、完全に機械的・電気的な機構でうっかりミスができない
     場合の「ポカミスを注意する仕組み」

   という2つの視点で「ポカヨケ」を捉え、その対策を講じていく必要があります。

  □ポカヨケ対策の手順と留意点

   1.改善対象と推進組織

     ポカミスは、

      ・製品設計

      ・設備治工具

      ・環境レイアウト

      ・作業動作

      ・人間配置

     などの改善により防ぐことができます。

     そして、ポカミス防止のための活動は、

      ・職制主導型(職場グループ)

      ・プロジェクトチーム型

      ・QCサークル主導型

     などの組織により推進されます。

   2.ポカヨケ対策における留意点

     製造現場における部品間違い、部品忘れ、不良品混入、異部品混入、未加
     工、操作ミスなどのうっかりミスは、一般的に、

      ・無意識

      ・ほかへの意識集中

      ・体調の不良、疲労

      ・経験不足、教育不足

      ・規律不遵守

      ・外部からの刺激(外乱)

     などの要因により起こると考えられています。

     そして、各要因をみてみると、個人的な理由が大部分を占めているということ
     がわかります。

     よって、ポカミス防止対策を考える際は、

      ・専門的知識を不要にする

      ・高レベルの技能を不要にする

      ・未経験の者にもできるようにする

      ・特殊な技能、資格不要の作業にする

      ・勘、コツに頼らなくてもよいようにする

      ・無駄な気を使わないような体制にする

     という原則に留意し、個々の作業に集中できる仕組みや環境をつくることが重
     要です。 

   3.ポカヨケの改善手順と方法

     ポカヨケ対策は、次の手順と方法によりすすめられます。

     (1)手順

       ①現状の整理把握

         ・過去のポカミスを分析する
             ↓
       ②方針(目標・施策)の確立、対策の組織をつくる

         ・おおまかな実施計画の立案
             ↓
       ③要因の解析

         ・他社の事例と比較することも重要
             ↓
       ④改善案の評価および実施
         ・改善案は、あらゆる角度からできるだけ多く出す

         ・実施の段階では、実際に取り組むことにより不都合があれば改善前に
          戻すというように柔軟な対応で臨む
             ↓
       ⑤徹底・維持・管理

         ・作業標準のなかにポカヨケ対策を織り込み、正しく機能しているかを確
          認する

     (2)方法 

  ポカヨケの事例

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製造業の品質管理と生産性向上

製造業の品質管理と生産性向上

製造業における機械の安全対策
 

  ■機械の安全対策

   労働災害の発生件数は長期的には減少傾向にあるものの、平成24年における
   休業4日以上の死傷者数は11万人を超えており、依然として多くの労働災害が
   発生している。

   そのうち、機械による労働災害の発生割合が約4分の1を占めており、その災害
   防止対策が重要な課題となっています。

   機械による災害の特徴は、“はさまれ・巻き込まれ”などによって、手足あるいは
   全身が押しつぶされ大きな後遺症を残す、最悪の場合、死亡に至るような重篤な
   災害となる場合が多いということである。

   厚生労働省から公表された「第12次労働災害防止計画」(12次防:平成25年度
   〜29年度)では、機械による労働災害を防止するために、製造段階、使用段階そ
   れぞれの対策を進めているものの、依然として機械による災害が多発しているこ
   とから、さらなる取り組みの促進が必要であるとしている。

   ここでは、機械による災害防止の基本原則、機械の安全化の必要性、平成19年
   に改正された「機械の包括的な安全基準に関する指針」の内容などを中心に“機
   械の安全対策”について紹介します。

  □機械による災害防止の基本原則

   機械による災害は、機械とそれを操作している作業者等が関連して発生する。

   機械の可動範囲と作業者の動作範囲が重なりあった部分が危険領域であり、両
   者が接触した場合に災害という形で顕在化する。

   したがって、機械による災害を防止するためには、このような状況が成立しないよ
   うにする必要があり、そのためには次の2つの基本原則(隔離の原則、停止の原
   則)に従うことが重要である。

  □機械の安全化の必要性

   労働災害原因要素分析(平成22年厚生労働省)によれば、製造業全体における
    休業4日以上の死傷災害の9割以上は人間の不安全な行動が関係して発生して
   いる。

   つまり、人間側の行動に問題や誤りがあり、ほとんどの労働災害が発生している
   ことになる。

   したがって、人間はミスをする、勘違いをする、忘れるという前提に立ち、万一そ
   のような行動を人間が取った場合においても、事故や災害に至らないような機能
   を機械設備に持たせることが望ましい。

   機械設備に関する労働災害を防止するためには、機械そのものの安全を確保す
   ることを第一に考える必要がある。

   そのためには、設計段階でまず本質安全化を図ることが求められる
   機械の質安全化の方法としては、3点が挙げられる。

  □機械の包括的な安全基準に関する指針

   機械そのものを安全にすることの重要性を前項で示したが、そのためにまずは製
   造者側で危険源の除去や安全機能を組み込んだ設計や製造等をする必要があ
   り、使用者側は設計段階で本質安全化が図られた機械を採用していくことが重要
   となる。

   上記の取り組みを進めるために、厚生労働省は平成13年6月にすべての機械に 
   適用できる「機械の包括的な安全基準に関する指針」を公表した。

   当該指針は、その後、

    ①労働安全衛生法が改正され、危険性又は有害性等の調査およびその
     結果に基づく措置の実施(リスクアセスメント*)が努力義務化されたこと

    ②機械類の安全性に関する国際規格等が制定されたことなどを踏まえ、
     平成19年7月に改正され、機械の設計、製造、改造、輸入等(以下、
     製造等)の実施事項、機械を労働者に使用させる事業者の実施事項が
     新たに定められた。

       *リスクアセスメント
         事業場のあらゆる危険性、有害性を特定し、それらに起因するリスクの
         大きさについて、発生可能性と重篤度の度合いから見積る。

         明らかとなったリスクに対して、リスクを低減させるための措置を検討・
         実施することにより事業場の安全衛生水準を向上させていく
先取りの
         安全管理手法。(リスクアセスメントの基本手順

  □
機械の安全化の実施事項および手順

   「機械の包括的な安全基準に関する指針」に示されている
   “機械の製造等を行う者の実施事項”および“機械を労働者に使用させる事業者の実施事項”
   は図のとおりであり、該指針に基づく機械の安全化の手順を示しておきます。


  □まとめ

   「機械の包括的な安全基準に関する指針」は、新規に機械を導入する場合などを
   想定しているが、機械設備に関係する労働災害を防止していくためには、既に設
   置されている機械についても、使用者側で計画的にリスクアセスメントを実施し、
   その結果に基づく適切なリスク低減対策を実施することが重要である。

   また、当該指針においては、機械の設計・製造、機械の使用などに際して実施す
   べき具体的な保護方策を例示しているが、保護方策はそれらに限定されるもので
   はなく、機械の製造等を行う者や機械を労働者に使用させる事業者は、個々の機
   械における危険有害要因や各事業場の状況等に応じて、有効と考えられる保護
   方策を実施していくことが望まれる。

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製造業の品質管理と生産性向上

下請製造業の品質管理とクレーム処理

下請製造業の品質管理とクレーム処理
 

  ■下請製造業にとってクレームは致命傷

   我が国の製造業は大手メーカーが設計と最終的な組み立てなどに特化し、部品の製造や
   組み立てを下請企業が担うという、分業制を基盤に発展してきました。

   製造業の発展に大きく貢献した下請製造業ですが、バブル経済の崩壊により生産高が
   落ち込み始めると、大手メーカーが海外に生産拠点を移したり部品点数を絞り込むなど、
   本格的なコスト削減に力を入れるようになり、多くの下請企業は取引の解除や、発注価格
   の削減を強いられる状況におかれてきました。

   もともと下請製造業にとってクレームを発生させてしまうことは、その後の請負業務の取引
   状況に大きな影響をおよぼすため、絶対に避けなければならないことです。

   そのうえ、前述のような取引の縮小といった厳しい状況が加わったいま、クレームが出て
   しまったら元請企業から契約を解消される可能性はさらに高まってきます。

   さらに大手メーカーなどを中心とした元請企業のほとんどが、品質管理の徹底・向上および
   それらのアピールのため、すでにPL法対策やISO90001の認証取得が整備されています。

   こうした動きはすでに下請企業にも求められ、従来以上に生産管理体制について厳しく言及
   しています。

   これは、いくら元請企業が製品の品質向上や品質管理体制の構築に気を配っていても、
   下請企業がクレームをひとつ出すだけでそれまでの努力が水の泡になってしまう可能性が
   あるからです。

   取り扱い製品の増加や営業力の強化といった施策も重要ですが、クレームを出さないための
   生産体制の整備は、まさに不可欠な経営課題なのです。

   次項以降では、クレームを出さないための品質管理や、出してしまったときの対処方法に
   ついてご紹介します。

  □クレームを出さないための品質管理

   下請企業にとってクレームは自社の命取りともなります。

   またクレームにいたらなくても、製品が不具合を起こすことで元請企業の心証にマイナス影響
   をおよぼし、次回の受注への影響が懸念されます。

   そうした事態を防ぐためには、徹底した品質管理しかありません。

   では、クレームや不具合を出さないための品質管理とは、具体的にどのような施策なの
   でしょうか。

   次にケーススタディとしてプラスチック製品製造業を例にとり、元請企業Y社と取引を行う
   下請企業A社・B社の管理方法について比較していきます。

   <品質管理のケーススタディ(1/2)

   <品質管理のケーススタディ(2/2)

   今回のトラブルの原因はY社による設計上の強度不足であったといえます。

   しかし、B社、A杜それぞれの対応は元請企業による評価に大きく差が付く結果となりました。

   B社は受注時に成形に関する注意点をヒアリングしており、余計な手を加えたりしなかった
   ため、このトラブルに対して責任を負わずにすみました。

   それどころか初期段階から寸法の問題を上げ、成形条件の指示を仰いでいたため、Y社の
   技術者も状況を的確に把握することができ、結果として形状の問題を早期に発見することに
   つながりました。

   一方、A社は成形条件を守らなかったため、問題点の絞り込みが遅れ不安定な製品を作り
   続ける結果となりました(それが原因でさらに大きなトラブルになるようなことはありません
   でしたが、そのような危険をはらんでいたのは事実です)。

   さらに、今回は設計上の問題もありペナルティ(Y社従業員の余計な労働分の請求など)は
   課せられませんでしたが、成形条件を守らずに勝手に成形していたことが発覚し、Y社からの
   信頼を失う結果となりました。

   以上をまとめると、

   下請取引における品質管理に必要なこととして

    ・つねにトラブルが発生することを想定して行動する

    ・元請企業との連絡を絶やさない

    ・製品チェックを怠らない

    ・自社のとった対応を明確にし、トラブル発生時には間違いなく報告できる
     ようにする

   などが考えられます。

   B社では上記の必要事項を守るために「製品カルテ」という手法を利用しています。

   製品カルテとは、その製品に起こったトラブルと解決策を継続して記録するもので、トラブル
   の再発防止に非常に役に立っています。 

   製品力ルテを使うことによって、個々の製品に対して

    ・一度起きたトラブルを再発させない

    ・再発したトラブルを即座に解決する

    ・製品の状況を記録することで、新たなトラブルに対し的確な対策がとれる

   といった効果を発揮します。

   さらに製品力ルテを利用することで、

    ・状況を明示することで責任の所在が明確になる(新たに発生したトラブル
     に対して、不当に自社が責任を負うことがなくなる)

    ・対策を元請企業、下請企業双方から提案することができ、管理と現場の
     ミスマッチが解消できる

    ・元請企業が下請企業の提案に耳を傾けるようになる

    ・元請企業との共同作業によって問題意識が統一でき、連帯感が生まれる

    ・元請企業が類似製品を開発する際の参考資料となる

    ・類似製品の今後の受注が期待できる

   など、企業間関係にも好影響をおよぼしています。

   <製品カルテの例

  □クレームを出してしまったら

   B社のように積極的かつ綿密に品質管理を行っている場合でも、作業員の単純なミスなどから
   クレームに発展してしまうことがあります。

   クレームが発生した場合即座に対処するのは当たり前のことですが、企業間関係の悪化を
   最小限にくい止めるためにはその後の対応が重要になってきます。

   対応といってもただ謝るだけでは、たとえその場は収まったとしても根本的な解決には
   なりません。

   再発防止に向けてしかるべき対策を立てることで元請企業に納得してもらう必要があります。

   クレームを発生させてしまった下請企業は、元請企業に

    ・管理能力が欠如している

    ・生産体制が整っていない

    ・能力が低い

   などの印象をもたれ、今後の取引に悪影響をおよぼす可能性が大きくなります。

   こうした状況を挽回するには、

    元請企業が納得するような
    今後クレームを起こさないための防止策を立てることが重要

   となります。

   クレームが起こった原因をつきとめ、それを起こさないための対策をきちんと提示でき
   なければ、今後の取引はないものと思ったほうがよいでしょう。

   それでは、実際に防止策の立て方としてはどのような方法があるでしょうか。

   前項で述べたケーススタディの製品の不具合を例にご紹介します。

   <不具合対策のステップ>

     ステップ1:該当製品に対する再発防止策を立てる

     ステップ2:類似形状や同材料の製品に対して同じミスをしないようにする

     ステップ3:管理体制などの根本的な間題をつぶし込む

   次に記載したY社とB社の間で取り交わされた対策書をみると、製品寸法不良によるクレームを
   出してしまったB社は次のような手順で3ステップの対策を立てたことが分かります。

   <3ステップを明示した対策書の例


   <B杜の対策手順

   しかし、いくら万全な対策を立てたからといっても信用を回復するにはそれなりの時間を
   要します。

   また信用を回復したからといって、管理体制を元に戻してしまっては意味がありません。

   クレームという重荷を糧に、自社の管理レベルを1段階引き上げる必要があるのです。

   また、できもしない対策を立てても、

    ・無理に実行しようとすれば社内体制に歪みが生じる

    ・実行できなかったときに元請企業との関係が一層悪化する

   といった弊害が生じてしまいます。

   ですから、

   対策立案にあたっては、日頃から管理体制の社内評価を行い、

    ・早急に改善すべき間題点

    ・現状で改善できるであろう問題点

    ・段階を踏んで長期的に改善すべき問題点

   というように分類しておき、これらを不具合対策書にフィードバックさせていくことも必要
   でしょう。

   また長期的に改善すべき問題は「品質管理体制改善のための長期計画」として、不具合対策書
   とは別に元請企業へ提出することもひとつの方法といえます。

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製造業の品質管理と生産性向上

TQC導入の留意点

TQC活動


  ■TQC活動とは

   まずTQC(トータル・クォリティ・コントロール=全社的品質管理)活動とは、いったい
   どういうものなのかといった点を整理します。

   1.TQCの理念

    QC(クォリティ・コントロール=品質管理)サークル活動についての認識は、コスト
    ダウンや生産性向上のための運動と捉えるのが一般的です。

    まず、TQCの理念を述べる前提として、QC活動の発展過程について振り返ってみます。

    初期段階のQC活動におけるテーマは、「不良品は(工場から)出さない」でした。

    したがって、QC活動の対象は品質検査過程であり、

     不良品の識別をいかに確実に効率的に行うかという点が重要視されました。

    やがて不良品を識別するための品質管理から

     不良品を作らないための品質管理へと進化し、

    さらに一歩前進して

     顧客に喜ばれる品質の商品作りのための品質管理へと発展しました。

    こうなると、もう製造部門のみの問題ではなくなります。

    まず、営業部門が「顧客に喜ばれる品質」とはなにかをキャッチし、それを設計・開発
    部門に伝え、そして「顧客ニーズに適した商品」を開発してこれを製造部門ができる
    限り忠実に製造品質として実現するという「全社的」な流れとなる訳です。

     こうした一連の品質管理活動がTQCであり、
     QC活動をただ全社的に広めたものではなく
      「QC活動の目的や理念をさらに進化させたもの」なのです。

    このように見ていくと、

     TQCの理念が顧客第一主義にあるということが明らかになると思います。

    したがって、

     コストダウンや生産性向上は「顧客に喜ばれる品質作り」の一手段にすぎない
     ということを記載する必要があります。

    このように発展してきたQC活動において、「よりよい品質」を生み出すために管理
    すべき対象は、結局従業員の仕事の内容、すなわち「仕事の質」ということにな
    ります。

    そしてこの「仕事の質」を従業員一人ひとりが高めていくことが、商品やサービスの
    品質を高めることにつながるのです。

   2.TQCの効果

    QCサークル活動の場合、グループで共通の改善目標に向かって作業を分担し、従業員
    一人ひとりが自分の仕事の品質改善に取り組むという習慣づけがなされます。

    これはいいかえれば、従業員一人ひとりが自己の能力を高め続ける人生を歩むことに
    なるということです。

    しかもQCサークル活動のなかには、問題発見能力を高めるものの見方や、QC手法と
    呼ばれる平易な手法を用いた問題解決能力を強化する考え方が組み込まれています。

    こうした点から

     TQCは自己の能力を高め続ける生き方を教える最高の教育訓練制度
     といっても過言ではないでしょう。

    次に、企業の存続・発展という視点からTQCを考えてみます。

    TQC活動は半永久的に継続し得る活動で、定着すると一層高度な改善活動となって
    いきます。

    さらにTQCの目的が「顧客に喜ばれる品質」作りである以上、その結果は企業全体が
    顧客の要望に沿って革新し続ける体質ができあがるということです。

    こうした顧客の要望に沿った品質の商品・サービスを作り続けることができれば、
    それはつねに利益を獲得し続けられるということを意味し、

     TQCは企業の存続と発展を保証してくれる可能性をもっているといえるのです。

  □TQC活動の導入手順と推進組織

   1.導入手順とポイント

    STEP1:方針と体制作り

    (1)TQC推進委員会の設置

      社長・役員直轄で、QCの準備・推進について責任をもち、QCの推進母体となる
      TQC推進委員会を設置します。

      ◎委員会の役割

       ・QC活動方針・目標作成

       ・QC活動の全社的スケジュールの作成

       ・QC関係の会合の統括

       ・QCサークル発表会の企画・運営

       ・QC活動活発化への環境作り

    (2)QC推進方針の明示

      「何をめざし、何を目的として行うのか」を、社長・役員名またはTQC推進委
      員長名で明示します。

      ◎明示方法

       ・社内報

       ・ポスター

        ・QCテキスト

    (3)QC事務局の設置

      実際にQCを展開していくために、未経験の社員を強力にリードし、後押ししていく
      ための事務局を設置します。

      ◎設置のポイント

       ・役割の明確化…QC推進へのPR広報活動、QC教育の企画・推進、
                  サークル・テーマの登録と受理、サークル活動の
                  援助・アドバイス、QC発表会の準備 など

       ・設置の仕方 …事務局を専任体制にするか、兼任体制をとるか など

       ・担当者の適性…QCへの情熱と深い理解のあること、職場全体の事情
                  に精通していること、社員からの信頼が大きいこと、
                  計画力と説得力のあること など

       ・担当者の姿勢…QCサークル推進に当たって、指示・命令式の強制的
                  姿勢になってはならない

    (4)自社に合ったTQC推進体制作り

      QCサークル活動は原則として同じ職場の社員で組織された小集団で行われるため、
      現在の会社の組織が基礎になって、サークルが組織されます。

      1サークル3〜8名で編成し、TQC推進委員会、管理職のQC援助機能、QCサークルの
      リーダー会議などを組み込むことによって、社内の推進体制ができあがります。

    STEP2:動機付け

    (5)QC導入研修会の実施

      幹部、中間管理職およびリーダー候補者を対象とし、「QCの理解と導入への
      意思続一を図る」ため、QC導入研修会を開催します。

    (6)QCキックオフ会合の実施

      リーダー候補者への導入研修後、一般メンバーへの「QCサークル活動の導入提案と
      動機づけを行う」ことを目的として、キックオフ会合を実施します。

      ◎キックオフ会合実施のポイント

       ・抽象的説明は少なくして、できるだけ身近な例に結び付けて説明する

       ・「顧客サービスの向上」と同時に「自分達のやりがい作り」の活動である
        ことを納得させる

       ・各職場が力を合わせ、QCという統一手法で歩調を合わせると大きな
        成果が生まれることを説明する

       ・メンバーの年代層、職種が多様であるので、各々のグループを考慮しつ 
        つ動機づけをする

    STEP3:QCサークル活動の着手

    (7)特定部門からの導入

      QCサークル活動のはじめ方としては、全部門一斉にスタートするのが望ましいと
      思われますが、現実には各部門の体質の違い、バックアップ体制の未整備もあり、
      特定部門からスタートするのが適当です。

    (8)モデルサークル作り

      導入時には、特定部門から導入し、そのなかからモデルサークルを育成することが
      普及定着のポイントです。

      ◎モデルサークル作りのポイント

       ・QC活動方針・目標にしたがって行う

       ・メンバーに対し、1ステップずつ十分な教育をしつつ進める

       ・推進委員会、事務局等が重点的にバックアップする

      ◎モデルサークル作りの効果

       ・QCは「私たちの会社でも十分実行可能だ」という見本を、一般社員に
        提示できる

       ・QCは便利で役立つ手法であるということも一般社員に理解させる

       ・モデルサークルメンバーがQCの必要性をPRしてくれる

    STEP4:標準化

    QCサークル活動を進めて、改善のまとめまでに至ったモデルサークルの例などを
    基本にして、QC活動の進め方の標準化=マニュアル化(テキストの作成など)を行う
    必要があります。

      ◎マニュアル化に必要な資料

       ・テキスト…QCとは何か、私たちの会社のQC推進方針、QCサークル活動
               の進め方、問題点とは何か、QC改善の進め方 など

       ・帳票類 …QCサークル登録表、QC改善テーマ計画書、QC改善まとめ
               報告書 など

    STEP5:QC教育の推進

    (10)QC教育は計画的に推進

       QCサークル活動を進めていくに当たっては、QCサークル活動とは何かを考え、
       やる気を喚起することからはじめ、次に実践できる能力をつける訓練をし、
       自主的に活動できるよう育成していきますが、こうしたQC活動を進めていく
       には、最終目標として図のような総合教育プログラムが必要となってきます。

   2.推進組織図

    ここではTQC推進組織の標準的な例を示しています。

    推進委員が担当するサークルの数は7〜8個以下で、推進委員は3名以上いるほうが
    よいと思われます。

  □TQC活動導入に当たっての留意点

   1.トップ自身が積極的な推進役となる

    QCサークル活動は、

    導入期である1〜2年は社長自身が情熱的な推進役となり、
    強力なトップダウン方式でQCの思想・手法を従業員に理解きせるとよいでしょう。

    ただし、できる限り自主的な活動になるような指導を行うべきです。

   2.強力な推進組織を作る

    推進組織のメンバー選定に際しては充分な配慮が必要です。

     ●推進委員長 … 社長またはそれに代わりえる人

     ●推進委員 … 職制にかかわりなくQC活動の趣旨をもっともよく理解
               している人で、強いリーダーシップを発揮できる人

     ●サークルリーダー … 職場の信望の厚い人で、メンバーをまとめられる人

     ●事務局メンバー … 半ば専業でQC活動推進の世話役となるので、QCの
                   社内専門家としての見識を備えている人

    QCサークル活動の初期には、従業員は仕方なく参加しているというケースが多いと
    考えられます。

    そんなときに使命感をもった推進委員やサークルリーダーが献身的に努力すること
    によって、従業員をサークル活動に向かわせることができます。

   3.徹底したQC教育を行う

    まずトップを含む経営陣がTQC活動について学び、見識をもち、次にTQC推進委員に
    対してしっかりとした教育を行います。

    その後はQCサークルを結成し、サークルリーダーに対して推進委員が徹底した教育を
    行うことによって「全社的なTQC思想の浸透」を図ります。

    教育はスタート時に集中して行われますが、引き続き定期的に勉強会などを実行する
    ことが重要です。

    すなわち、

     TQC活動がうまくいくかどうかは、メンバーに対する教育にかかっている

    といえるでしょう。

    それでは、TQC教育とはどんなものかを以下にまとめます。

    (1)使命感を与え、自己変革を決意させる教育

      第一段階 … TQCが定着している職場の実態を知らせることによって、自分
               達にもできることを認識させる。

      第二段階 … TQCの導入・定着のために献身的な仕事ぶりをしている管理
               者を紹介し、自分達の仕事ぶりと比較させる。

      第三段階 … 自分達の仕事・生き方のどこに問題があり、問題解決の努力を    
               どのようにしていくかについて明らかにさせる。

      第四段階…TQC活動が職場をどのように変化させるか、夢と希望をもたせる。

    (2)QCの考え方と手法をマスターさせる教育

      ◎QCの考え方とは

        ・問題意識をもつ

        ・問題の実態を調べ、データをとる(クレーム発生などが最大のチャンス)

        ・データを解析して、重点課題を明らかにする

        ・重点課題を解決するためにはどうすればいいかを考え、改善案を
         立案する

        ・改善案を実施し、その効果を調べ、データをとる

        ・改善の効果がデータに表れていれば、その改善案が今後とも確実に
         実行されるような施策を打つ

      ◎QC手法とは(7つ道具)

        ・層別       ・ヒストグラム(度数表)

        ・パレート図    ・散布図

        ・特性要因図   ・管理図

        ・チェッタシート

    (3)QCサークル活動を指導するノウハウの教育

      これには、QC活動を運営する主体、すなわち事務局の教育と各サークルの教育の
      2つが重要ポイントとなります。

      特に事務局の人材については教育のみならず、人選も重要となってきます。

    (4)活動テーマの選定

      QC活動は決して目先の利益を追うものではありませんが、

       活動の初期段階では、比較的簡単なテーマ設定を行い、
       早期に効果が上がるようにしたほうがよいと思われます。

      なぜならば、行動がすぐに効果に結びつくので、すぐに達成感を味わうことが
      でき、活動が定着しやすいからです。

      具体的には、他の部門との協調をあまり必要としない、自分達の努力だけで成果の
      出るようなテーマ選定がより適しているでしょう。

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製造業の品質管理と生産性向上

間接(事務)部門の生産性を向上

間接部門の生産性向上
 

  ■間接部門の生産性向上

   非生産部門と生産部門という区別に意味があるとすれば、生産=付加価値の創造に
   直接タッチするかどうかという“付加価値”をめぐって区別する場合です。

   しかし、今日、様相は一変しました。商品企画(研究開発)と販売・営業、さらに
   事務、管理などの特別の任務を帯びた非生産部門の職務が独立し、その数が生産(技能)
   労働者と数的にも拮抗するまでに至ったのです。

   こうして、非生産部門の分業が進むなかで、付加価値の創造に直接関係する専門・
   技術職や販売・営業職と、直接付加価値の生産にかかわることの少ない事務・管理職
   とに非生産部門が大きく分化しました。

   会社経営において、経営全般にわたる効率化やコストダウンの推進は、恒久的
   な経営課題の一つです。

   経営の効率化やコストダウン、あるいは生産性の向上といえば、従来はもっぱら

   生産現場(生産部門)が重視されてきました。

   一方、人事・経理・総務などの事務管理部門では、生産部門に比べて効率化は
   遅れがちです。

   言い換えれば、「生産部門は乾いた雑巾を絞り切った状態であるのに、事務管理

   部門は絞り切る前の雑巾のままである」ということも少なくありません。

   経営全体の効率化・コストダウンを図るには、事務管理部門の業務の効率化
   ポイントであることは、経営者の多くが認識済みでしょう。

   ここに事務部門における業務についての診断チェックリストを掲載しておきます。

   日本の賃金水準は、世界でもトップレベルです。

   この高コストで競争していくには一層の効率化が求められます。

   一般的に、事務管理部門で働いている人材は、生産部門の人材よりも賃金が高く
   なっています。

   生産部門よりも賃金の高い事務管理部門の生産性が向上しなければ、企業力の
   低下は避けられません。

   賃金は下方硬直性があり、カットすることは困難です。

   会社は高賃金水準を前提にして、人材を有効活用して事務管理部門の効率化
   を図っていかなければなりません。

   これには、事務管理部門の業務内容や遂行方法などを見直し、生産性を向上させ
   ることが必要です。

  役割分担の明確化
   どんなに素晴らしい業務遂行計画であっても、業務の進行が場当たり的であっては
   生産性の向上は不可能でしょう。

   効率化を図るのに欠かせないのが役割分担です。

  □業務遂行状況のチェックを徹底
   事務管理部門の業務は、一般的に、次のような特徴があります。
    1.業務の内容が非定型であり、その都度内容が異なる
    2.判断や意思決定を行う業務が多い
    3.業務の分担や担当分野が個人ごとに決まっており、業務の進め方や時間
      配分の決定についても、個人の決定に任されている
    4.社内他部門や社外と連絡を取り合ったり、情報交換をしながら進めていく
      業務が多い

   事務管理部門の業務の効率化を一言集約すると、時間を上手に使って業務をする
   ことです。

   そのためには、あらかじめ業務にかけるべき時間を合理的に決め、その時間内
   に集中的に業務を完結させる必要があります。

   そのためには業務の基本である「PDCAサイクル」を回すことです。

   Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)です。

   業務遂行状況のチェックは、「担当の主な業務について、その業務に取り掛かる
   前に予定時間を決める」

   「業務が終わったら、実際に要した時間をチェックする」「予定時間と実際の所要
   時間との間に超過、または不足が生じたときには、その原因を検討する」ことです。

   このチェックを行う方法には、「1日を単位」、「1週間を単位」、「1カ月を単位」と
   して行うなどがあります。

   いずれの方法も生産性向上策のスタート時に取り組むべきものです。

   業務の遂行チェックシートは各社の実情に合わせて作ります。

  業務計画を実践
   朝出社してから、今日しなければならない業務を決めていたのでは、時間のムダ
   が生じます。

   1日のムダは少なくても、1カ月間、1年間になると大きなムダになります。

   従って、業務の計画化が必要になります。

   1日、1週間、1カ月についてあらかじめ業務のスケジュールが決まっていれば、
   業務の開始前に時間のムダが生じる可能性が少なくなります。

   事務管理部門の業務を効率的に進めるためには、「今日、何をするか」「今週、
   何をするか」「何曜日にはどういう業務をするか」といったスケジュールを明確に
   しておくことが必要です。

   スケジュールは期間を単位として1日、1週間、1カ月、半期、1年間などで作成し
   ます。

   スケジュールの目的は「作成すること」ではなく、「実行すること」です。

   そのため各スケジュールが終了したら、次の点を社員一人ひとりがチェックする
   体制を確立することが必要です。

    1.時間を有効に活用して業務をしたか
    2.業務に積極的に取り組んだか
    3.業務の進ちょく状況を上司に報告したか

   業務遂行チェックシートや業務スケジュール・シートを導入することで、自らの時間
   管理が効率的に行える上、上司による部下の業務管理が容易になります。

   こうした業務遂行チェックシートや業務スケジュール・シートを文書で管理するのが
   大変な場合は、グループウエアの導入やASP(アプリケーション・サービス・プロ
   バイダー)を利用して管理する方法もあります。

  □業務集中時間を設定
   上司に呼ばれたり、電話やコピー取りなどのちょっとした仕事などで業務が中断
   されてしまうと、どうしても業務の効率が上がらず、業務への集中力もそがれます。

   それを避けるために、「社員が業務に集中するべき時間帯、社員が業務に集中
   できる時間帯を設ける」必要があります。

   この時間帯は、原則として会議やミーティングは開かないものとします。

   また、急用がある場合などを除いて、お互いに話しかけるのを控えるようにする
   など、できるだけ業務に集中できるように配慮します。

  会議の効率化を図る
   社内会議は頻繁に開かれています。

   会議は社員の人数に比例して増えるといわれています。

   会議は、出席者の知恵の結集、相互の情報交換、相互の意見交換による意思
   決定、決定事項の伝達など大きな効果を期待できます。

   しかし、現実の会議は往々にして、次のような問題があります。

    1.開催の目的が必ずしも明確でない「会議のための会議」がある
    2.会議の時間がダラダラと必要以上に長くなる
    3.会議に遅れたり中座する社員が多いために、会議に時間がかかる
    4.会議の進行、運営がよくないためになかなか結論が出ない
    5.会議の資料が多いために、その資料作成と説明に長い時間が費やきれる

   会議の効率化を図ることは、事務管理部門の生産性を上げる重要な条件です。

   そのためには、次のようなステップで効率化を図ります。
    1.社内で開かれているすべての会議をリストアップする
    2.定期的に開かれている主要な会議について、会議運営の面で問題点は
      ないか出席者および主催者双方が検討する
    3.問題点がある会議については、主催者が改善策を策定する
    4.改善策を実行する

   また、基本的ルールとして、次のような点を守る必要があります。
    1.開催の日時・場所を早めに出席者に連絡する
    2.資料は前もって送付しておく
    3.開始時刻、終了時刻を厳守する
    4.1回当たりの時間は2時間以内とする
    5.会議での中座は原則として認めない
    6.終了する前に、その会議での決定事項と次のアクションを出席者全員で
      確認する

  □報告書の見直し

   企業では、多くの報告書が作成されています。

   それらは定期的なものもあれば、不定期なものもあります。

   定期的なものは、日報、週報、月報、四季報、年報などです。

   報告書は情報収集や意思決定など会社経営上、必要不可欠なものですが、とも
   すれば、次のような問題が生じる可能性があります。
    1.あまり活用きれていない報告書に多くの手間と時間をかけている
    2.報告書の作成のタイミングが悪く、せっかくの情報が生かし切れていない
    3.情報の整理方法が悪く、使い勝手がよくない
    4.極めて簡単な報告書を給料の高い社員が作成している

   必要な報告書を簡潔に作成し、情報収集や意思決定に役立たせるのが理想です。

   会議と同様、事務管理部門の効率化のために報告書の見直しを行います。

   見直し手順は、
    1.社内で作成きれている報告書をすべてリストアップする
    2.報告書を受け取っている部課を対象として、報告書の活用度合いや重要
      度と使いやすきをアンケート調査する
    3.アンケートの結果を報告書の作成部課に伝える
    4.作成部課が改善策を策定する
    5.改善策を美行する

  □残業時間の上限規制

   残業は、業務の必要性に基づいて会社が社員に対して命令するものです。

   受注量が極めて多かったり、納期の短い業務が急に入ったりして所定時間内の
   作業で間に合わないときに、やむを得ず残業を行います。

   生産部門ではこの原則が守られていますが、事務管理部門では、往々にして守ら
   れていません。

   この部門では業務の進め方や業務の分担が個人に任されており、残業するかしな
   いかも個人の判断によります。

   従って、時間管理についても甘くなり、残業恒常化にもなりがちです。

   所定の時間内に業務を効率的・集中的に処理するため、また、時間管理意識を
   醸成するために、1カ月の残業時間の上限を決めて時間管理の徹底を図ることが
   必要です。

   上限時間の設定には、次の方法があります。
    1.全社員一律に決める
    2.部門ごとに決める
    3.月別に決める

   そして、この制度の実効性を高めるため、以下の方法をとります。
    1.すべての残業について事前届け出制とする
    2.すべての残業について許可制とする
    3.一定時刻以降の残業についてのみ、事前届け出制または許可制とする
    4.一定時間数を超える残業についてのみ、事前届け出制とする

   また、残業の上限規制と同時に残業をしない日や週を設けます。

   所定の勤務時間内に効率的・計画的に業務を行い、定時に退社するのが理想
   であり、それにより、社員はメリハリのある一層豊かな生活を送ることが可能に
   なります。

   そのため、ノー残業デーおよびノー残業ウイークを設定します。

   ノー残業デーは一定の日(曜日)を決め、原則としてその日は残業を認めないで
   定時に退社させるという制度です。

   この日は残業ができないため、特に業務の優先順位、重要度を考えて業務を処理
   することになります。

   ノー残業ウイークは1週間にわたって残業を認めず、毎日定時に退社させるという
   制度です。

   これらの制度を導入する場合は、全社員にその趣旨と目的を理解させ協力を求め
   ることが重要です。

  業務進ちょくの見える化

   特定の社員ばかりが残業するケースは少なくありません。

   その主な理由は次の3つに集約されます。
    1.特定の社員が抱える業務の難易度が高い
    2.特定の社員が抱える業務の王が多い
    3.特定の社員の業務処理能力がほかの社員より低い

   上記の1〜3を解決するためには、適切な業務配分がなされることです。

   しかし、処理するのが機械ではなく人間であるため、管理者が適正に業務配分した
   つもりでも、日次や週次でみると誤差が生じます。

   この誤差を平準化することができれば、特定の社員ばかりが残業するケースは
   少なくなります。

   「3.特定の社員の業務処理能力がほかの社員より低い」を例に考えてみます。

   仮に、業務処理能力がほかの社員より低い社員は1時間残業しなくては業務が
   完了しないとします。

   このことが、終業時間の2時間前に分かっていたら、管理者はこの1時間残業分の
   業務を手の空いている社員に振り替えることができます。

   30分ほど手の空いている社員2名に業務を振り替えれば、誰も残業する必要は
   なくなります。

   つまり、各社員の業務進ちょくが管理者やほかの社員に見えていれば、日次で
   適切な業務配分ができるのです。

   例えば、ホワイトボードに各社員の氏名を記入し、氏名の右に赤(1時間以上の
   残業で業務が完了)、黄(定時に業務が完了)、青(定時前に業務が完了するため
   余裕がある)のマグネットを置くようにします。

   社員の誰かが赤になった場合には、管理者は業務内容を確認し、青の社員に当該
   業務の一部を振り替えるという運用をします。

   業務進ちょく状況が分かれば、こうした対応が可能になります。

   社員の業務進ちょくが赤黄育と信号機のように分かることから「業務進ちょく信号
   制度」と命名してもよいでしょう。

  □生産性向上策の推進体制

   事務管理部門の生産性向上策を全社的に推進する方法は、「人事部(総務部)
   主導体制」と「プロジェクトチーム体制」の2通りが考えられます。

    1.人事部(総務部)主導体制
      この方式は人事担当の人事部(総務部)が中心となって事務管理部門の
      効率化を推進するものです。

      どのような方法・手法を採用するかについて企画立案をはじめとし、各職  
      場への指示・命令、効率化の進状態のチェック、効率化の効果の確認、 
      効率化手法の見直しなど効率化推進にかかる一切のことを人事部で行
      います。

      この体制は、「部長が部員を指揮命令することから、比較的スムーズに展
      開できる」というメリットがあります。

      その一方で、「人事部が各部課に指揮命令するため、全社的な運動とし
      て盛り上がりにくい」「社員が業務効率化を上からの命令と受け止め、積
      極的に取り組まない恐れがある」などのデメリットがあります。

    2.プロジェクトチーム体制
      これは事務管理部門の各セクションの代表者から構成されるチーム(委
      員会)をつくり、そのチームが中心となって業務の効率化、生産性の向上
      を推進していくものです。

      この方式は、「多くの社員の知恵、アイデア、経験を共有できる」「全社的
      に業務の効率化、生産性向上についての関心を高めることができる」「各
      部門の理解と協力が得やすい」などのメリットがあります。

      その一方で、「各セクションの代表者が構成員となるので、意見の食い違
      いが生じやすい」「構成員が各自の業務の傍らチームに参加しなければ
      ならず、十分な時間を確保しにくい」などのデメリットがあります。

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製造業の品質管理と生産性向上

QC7つ道具の正しい使い方

QC7つ道具
 

  ■QC7つ道具のねらい

   職場の仕事を進めていくうえでは、データによって事実を正しく知ることが非常に大切です。

   データによる事実の正しい把握が、正しい判断を生み、大きな成果をかち取ることになる
   のです。

   しかしながら、データをとっただけでは事実の正しい把握はできません。

   QC7つ道具とは、たくさんのデータ、たくさんの意見を上手にまとめて、データのもっ
   ている情報を正しく引き出すための手法のことです。

   この手法のおもなねらいとしては、

    ・仕事の結果、できばえにバラツキがないようにする

    ・ムダのない経済的な仕事の仕方を作り出す

    ・ムリのない、安心してできる仕事のしくみを作り出す

    ・お客様に溝足してもらえる物やサービスをつくり出す

   ということがあげられます。

   ですから、よくいわれる「発表会のためのQC活動」のように、すでに結果のでているものに
   対してQC7つ道具を用いても何の意味もないのです。

   QC7つ道具を使って、バラツキ具合や因果関係を調べたり、層別にして客観的に事実を
   浮きぼりにし、解決策を導くことこそ、意義のあるQC活動なのです。

   実りあるQC活動を行うためには、なぜQC7つ道具が必要で、どのような場合に効果を発揮
   するのかを理解しておく必要があります。

   そこで、次項ではQC7つ道貝の目的と内容を、分かりやすく簡潔にまとめています。

   より深く理解するためにも、ぜひ、自社にあるQC7つ道具の各図を参照しながらご覧
   ください。

  □QC7つ道具

   1.層別

    職場で発生する問題、あるいは改善したい点をプレーン・ストーミングなどの方法で列挙
    していくと、思いのほかたくさん出てくるものです。

    層別とは、この山ほど出てくる問題を性質の似たいくつかのグループにまとめていく方法
    です。

    そのうえで、問題A・問題B・問題C…というように個別に問題点を検討していきます。

    層別の目的と内容をまとめると、次のようになります。

    (1)目的

      層別する前の全体の品質のバラツキと、層別後の小さなグループの品質のパラツキを
      比較することによって、品質に影管する原因をつかんだり、その原因の品質に対する
      影響度を推察するために層別が用いられます。

    (2)内容

      層別とは、ひとつの集団を何らかの特徴に基づいていくつかの部分に分け、分けた
      部分ごとに検討し、比較することによって問題解決の手がかりを得る手法です。

      【層別の項目例】

       ①作業者別  ……男女別、年齢別、学歴別、技能別、勤続年数別など

       ②機械・装置別……メーカー別、形式別、能力別など

       ③原料・材料別……メーカー別、銘柄別、ロット別など

       ④時間別   ……午前・午後別、曜日別、昼夜別、週別など

       ⑤作業方法別 ……測定方法別、作業条件別など

       ⑥測定・検査別……試験機別、計測機別、測定者別、検査員別など

       ⑦組織別   ……部門別、工場別、地区別、課別など

   2.特性要因図(フィッシュ・ボーン図)

    QC活動では、層別したもののなかから重要と思われる間遠をひとつ選び出し、その間題に
    対して原因と思われる要因をあげていきます。

    これを原因と結果(特性)という観点で分類し一覧表にまとめたものが特性要因図です。

    その図の形からフィッシュ・ボーン(魚の骨)図とも呼ばれています。

    特性要因図作成の際には、原因をグループごとに分類して図に表すことで、後工程である
    要因分析が行いやすくなります。

    ◎特性要因図例

     特性要因図の目的と内容をまとめると、次のようになります。

     (1)目的

       問題としている製品の品質特性と、これに影響をおよぼすと考えられる要因との
       関係を体系的にまとめ、目で理解できるように図示したもので、これによって不良の
       原因を追求し、その改善に役立てようとするものが特性要因図です。

     (2)内容

       特性(結果)に影啓を与えていると思われる要因をすべて引き出し、ひとつの図で
       関係づけることで、ある工程について品質特性と要因との定性的な関係がはっきり
       して、原因の究明に役立ちます。

   3.パレート図

    パレート図とは、不良項目を件数や金額の大きさの順に並べ、不良項目のうち何が重点
    項目なのか見つけだす手法です。

    たとえば、不良項目を発生件数や損失金額の大きい順に左から順に並べていくことで、
    重点的に改善するべき点が明確になるのです。

    ◎パレート図例

     パレート図の目的と内容をまとめると、次のようになります。

     (1)目的

       不良項目のなかには、件数や金額が大きなものから小さなものまでたくさんの問題が
       あります。

       効率的に問題を解決していくためには、件数や金額の大きなものを重点的に改善して
       いくことが肝要です。 

       パレート図は、この件数や金額の大きなものを明確にするために用いられる手法
       です。

     (2)内容

       パレート図は、「多数の不良現象または原因のなかで重要なものは数項目に
       すぎない」という考え方がもとになっています。

       職場の問題をそれぞれ原因別・現象別に分類し、その件数や金額を大きさの順に
       並べた棒グラフと、累積の折れ線グラフを組み合わせたものです。

       この件数や金額を大きさの順に並べることを、重要順位判断または優先職位判断と
       いいます。

       この判断力をしっかりもち、実行するリーダーのいる職場では、改善の成果は
       いちじるしいものがあります。

   4.ヒストグラム

    ヒストグラムとは、データなどが多数あるとき、その最小と最大の間をいくつかに区分し、
    各区分の発生度数を棒グラフに示したものです。

    これにより、データの全体的な分布の型や、大体の平均値やバラツキの大きさを知る
    ことができます。

    ヒストグラムの目的と内容をまとめると、次のようになります。

    (1)目的

      データ(サンプル)の全体的な分布の型や、大体の平均値やバラツキの大きさを知る
      ことにより、異常が発生している原因を見つけ出し、それを改善します。

    (2)内容

      この手法は、一定量のサンプルをとり出し、そのサンプルがどのようなバラツキ方を
      しているか調べることにより、異常を見つけ出す方法といえます。

   5.散布図

    散布図は「相関図」ともいい、2つの事象が関連しているかどうかを見極めるための
    図です。

    たとえば、電球のワット数とその照度、あるいは鋼材の処理温度と引っ張り強さ、という
    ような相対応する測定値の間の関係をグラフにして調べます。

    具体的には、2種類のデータをそれぞれ横軸と縦軸に目盛り打点したグラフによって、
    相互の関係の強弱を推察します。

    これにより、たとえばXとYの相関関係においてⅩが大きくなるとYも大きくなる「正 
    の相関関係」、Ⅹが大きくなるとYが小さくなる「負の相関関係」などが浮き彫りにさ
    れます。

    散布図の目的と内容をまとめると、次のようになります。

    (1)目的

      品質特性とそれに影響をおよぼしている要因との関係、要因と他の要因との関係、
      あるいは特性と他の特性との関係を知り、品質の維持、改善に役立てるために散布図が
      用いられます。

    (2)内容

      散布図とは、対になった2種類のデータをグラフ用紙にプロットしたもので、対応した
      データの関係をみるための手法です。

      散布図は20以上のデータが必要で、縦軸に結果のデータ、横軸に原因のデータをとり
      点を打っていき、その点が斜めに、直線に近い形で並ぶと相関は大、点が楕円型に
      なると相関は小ということになります。

   6.管理図

    管理図とは、ヒストグラムを横に寝かせて、どこまでもデータの採取分析を続ける時系列
    グラフのことです。

    横軸を時間軸として、毎日の仕事の出来栄えなどを管理していくための手法です。

    管理図の目的と内容をまとめると、次のようになります。

    (1)目的

      管理図は、製造工程が安定した状態にあったかどうかを調べたり、工程を安定した
      状態に保持するために用いられる手法です。

    (2)内容

      寸法、硬さ、キズ、歩留りなど、あらゆる製品特性には必ずパラツキがあるため、
      このバラツキを管理し、それが安定しているか、それとも異常な変化が起こっているか
      どうかを判断するのに用いられる手法が、管理図です。

      管理図の種類は、特性値の種類(計量値と計数値)によって分類されます。

      計量値とは長さ、時間、温度、厚さなどのように数値が連続して表される場合をいい、
      計数値は製品の不良数、欠勤者数、織物のキズなど、不良数や欠点数で表されるもの
      をいいます。

      このうち、いちばんよく使われるのが計量値の管理図です。

      これは、サンプルの平均値とバラツキの範囲を調べる2つの管理図を重ねて一覧表に
      した図です。

   7.チェックシート

    チェックシートとは、作業の結果や製品を基準と照合し、その結果を簡単な記号で記入する
    ことにより、確認漏れを防止すると同時に分析しやすいデータをとる図表のことを
    いいます。

    たとえば、不良発生箇所について、キズ・汚れなどの不良が、製品のどの位置にどれくらい
    発生しているのかを調べる場合に、チェックシートで管理しておけば、その部位が一目
    瞭然となるのです。

    チェッタシートの目的と内容をまとめると、次のようになります。

    (1)目的

      項目別にデータをとったり、確認の抜けをなくすために、チェックをするだけで結果が
      わかるように作られた表や図がチェックシートです。

    (2)内容

      チェックシートには、次のようなものがあります。

      1.計数値用……おもな不良項目を事前に層別しておき、検査結果を
                 該当項目にマークしていくものです。

      2.計量値用……品質特性値のうち計量債に使用するもので、事前に
                 バラツキのクラス分けをしておき、測定したデータを
                 該当するクラスにマークしていくものです。

      3.位置別用……不良発生箇所の位置を示すもので、キズ、汚れなどの
                 不良が製品のどの位置に、どれくらい発生しているかを
                 把握するものです。

      以上の3つのチェックシートが記録用です。

      その他にも点検用チェックシートがあります。

      これは事前に点検項目を点検順に書き並べ、チェックするもので、個別生産に有効
      です。

  □QC7つ道具導入の意義

   品質管理は、概念や理論を理解するだけでなく、いかに企業内に上手に導入するかに
   その成否がかかっています。

   そのためには、品質管理の明確な方針を打ち立て、実践と経験を積み重ねていかなければ
   なりません。

   それが企業の利益確保、企業の体質改善など、あらゆる面の合理化につながります。

   品質管理活動は、なかなか定着しにくいものですが、

    ・作業の標準化

    ・チェック・測定の重視

    ・作業者の訓練

    ・不良品再発防止の対策

   の4点を品質管理の基本として、品質管理活動を活発に進め、定着につなげることが
   必要です。

   つまり、QC7つ道具をうまく活用することにより

    ・現場の実態を知る

    ・結果をよくするための原因の追求を行う

    ・対策の実行を行う

    ・対策前後の確認を行う

    ・歯止め(※)を行う

   といったことが可能になります。

   QC7つ道具を品質管理活動のなかで実際にいろいろな場面で適用して使い方に慣れ、
   問題解決に結びつけていくために定着させるということが大切です。

   ※歯止めとは、効果のあった解決策を継続するために、実施する施策のことを
    いいます。
 

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製造業の品質管理と生産性向上

工場のレイアウト改善

工場のレイアウト改善
 

  ■レイアウト改善の進め方

   工場の生産性を向上させるうえで、「レイアウトの変更」という問題を避けて通るこ
   とはできません。

   ここでは、レイアウトを改善するにあたって押さえるべきポイントについて整理して
   みます。

   1.レイアウト改善とは

    レイアウトの改善は、

     工場内の建物や機械設備を流れ作業的に配置し、作業環境を改善する
     ことによって、運搬距離の短縮と運搬の容易化を図る

    ことです。

    そして、品種や生産量、加工方法などの基礎条件が少しでも変わった場合は、
    それに応じた改善を行うことが必要となります。

    具体的なレイアウト変更は、

     ・なるべく配置を工程順にして流れ作業に近い形にする

     ・通路・仕掛品置場・運搬方法などを改善して運搬を容易にする

    ことに取り組むのですが、そのためには、

     「主要通路の確保・舗装」と「建物の敷居の撤去」を行う

    ことが必要になります。

    次節以降では、

     ・レイアウト改善のための調査方法

     ・レイアウト変更の実施

    について整理しています。

   2.レイアウト改善のための調査方法

    レイアウトを改善するためには、一般に次の3つの調査を行います。

    (1)物の動きの調査………工程分析(「流れ線図」の作成)

      「流れ線図」とは、建物や設備配置の平面図を作り、加工品の移動経路を図
      示するものです。

      これは、職場全体にわたる仕事の流れ、各工程における前後工程との関係
      などを検討するのに適しています。

      この図をもとに各工程の分析を行い不合理に動いているものがないかを考
      えます。

    (2)人の動きの調査………作業分析(「作業者移動図」の作成)

      「作業者移動図」とは、作業中における人の動きを平面図に図示するものです。

      各工程における機械・作業台・材料置場・工具箱・通路関係などを検討する
      のに使用します。

      さらに、必要に応じて、準備や後始末作業の動きも分析し、無駄な動きがな
      いか、作業分担は妥当であるかを考えます。

    (3)相互関連図表の作成(多品種少量生産の場合)

      多品種少量生産の場合は上記2つの分析を行っても、人の流れが交錯した
      り、間接作業を行うスぺースが確保できなくなったりする可能性が高くなります。

      そこで、

       ・直接作業場所(設備)

       ・補助部門(工具庫・材料倉庫・検査場・部品置場)

       ・付帯設備(更衣室・食堂・洗面所)

      を一覧表に書き並べ、物の移動や人の動きの点から、各場所の相互関連性
      の程度(近接の重要度)を記号で表示します。

    3.レイアウト変更の実施

     レイアウト変更を実施するには、50分の1または100分の1の建物平面図上
     に、機械や作業台の型紙(平面図)を並べて、種々の案を比較検討します。

     検討すべき事項は、以下の4点です。

     (1)作業場における諸配置

       機械または作業台を中心として、作業者が能率的に動けるように、材料置
       場・完成品置場・道具箱・部品棚などの配置を行っていきます。

     (2)通路および隣接作業との関係

       工場内・職場内に運搬車を通すための通路を確保します。

       通路については運搬(積み降ろし)の便を考えるとともに、先に検討した諸
       配置が運搬の邪魔にならないかを考えます。

       また、流れ作業のように各工程が隣接して配置されている場合には、相互
       関係を考慮して、諸配置を決めます。

     (3)運搬方法との関係

       運搬はできるだけ機械化するのが好ましいのですが、これについてはレイ
       アウトとの関係を考慮に入れて決定する必要があります。

       特に、クレーンなどの配置には、構造物の建築構造についても検討しなけ
       ればなりません。

     (4)採光照明との関係

       昼間の作業には、なるべく窓からの日光を利用することが望ましいので、
       十分な採光が得られるような位置と方向を選ばなければなりません。

       電灯照明を利用する場合には、照明のとり方(特に直接照明の位置)が配
       置上の条件の1つとなります。

      以上が、レイアウト改善を行う際の留意点となります。

      さらに、次節4にてレイアウト改善の要点をまとめておきます。

    4.レイアウト改善の要点

     一般的に、中小規模の工場などではレイアウトに対する考え方が保守的であ
     り、一度決めた設備配置を積極的に変えていこうとする姿勢はあまり見られません。

     しかし、

      望ましいレイアウトとなっていない場合、
      工場全体を効率的に管理することは難しくなり、
      作業能率も落ちる

     ため、もっと前向きにレイアウト変更に取り組む必要があります。

     以下に、主なレイアウト改善の要点を述べておきます。

     <レイアウト改善の要点>

       ・建築物は将来、増築しやすいような構造形式にしておく。

       ・機械などは、床への固定度合いと移動しやすき(固定解除の容易き)
        を両立させる。

       ・小範囲の工程変更や設備の増設、入れ替えというような場合であっても、
        必要であれば部分的に設備配置を変えるほうが望ましい。

       ・現場の工程管理係の位置は、なるべく職場全体を見渡せる場所に配置
        するほうが良い。

  □その他の効率化の視点

   工場の効率化を検討する視点としては、レイアウトの改善に加え、以下のものが 
   あります。

    1.製品や仕掛品の品質を向上させる

    2.在庫量を適正に保つ(製品・仕掛品・原材料)

    3.人員の適正化を図る

   ここでは、これらについて簡単に取り上げてみます。

   1.製品や仕掛品の品質を向上させる

    生産工程のなかで

     最初に改善を図る必要があるのは、加工過程での「歩留まり」を向上きせる

    ことであると言われています。

     この改善によってもたらされる効果は、

      ・仕掛品の不良による損失を減少させる

      ・作業の「やり直し」の手間をなくす

     という2つのものがあり、生産性を大きく向上させることにつながります。

     その実現には、全社的な品質管理を行うTQC活動が効果的であると言われて
     います。

   2.在庫量を適正に保つ(製品・仕掛品・原材料)

    次に、

     製品や仕掛品、原材料に至るまですべての在庫を最少に抑える

    というものがあります。

    これは、トヨタのかんばん方式(必要なものを必要な時に必要なだけ作るという
    考え方に基づいた、在庫をできるだけ持たない生産の仕組み)に象徴されるも 
    ので、効率化(コストダウン)の有効な手段の1つであろうと考えます。

   3.人員の適正化を図る

    さらに、工場の効率を向上させるための3つ目の視点として、

     マンパワーの適正な活用

    があげられます。

    大量生産時代の到来、機械の高性能化、生産技術の向上などにより生産現場
    は設備が占領するようになりましたが、それを稼働させるのは「人」であることに
    は変わりありません。

    人員適正化の具体的な方策としては、

     工員の配置における「熟練者」と「非熟練者」とのバランスをとる

    ということにつきます。

    工場の生産性の向上に向けてはこれらすべてについての検討を行うことが重要
    になります。

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製造業の品質管理と生産性向上

中小製造業における産学連携の取り組み

中小製造業における産学連携
 

  ■産学連携の現状

   近年、企業と大学が共同研究を行い新製品や新技術の開発を進める産学連携
   に、製造業の期待が高まっています。

   企業を取り巻く環境が変化するなか、競争力を維持していくための施策が必要と
   されており、特に中小企業においては、限られた経営資源で経営革新を行ってい
   くための手段としても産学連携が注目されています。

   また、最近では従来の企業と大学の連携である産学連携に行政が加わり産学官
   連携となるケースも多いようです。

   産学官連携では、行政が大学・研究機関と企業を結びつけたり、共同で技術開発
   を行ったりしています。

   文部科学省「平成16年度民間企業の研究活動に関する報告書」によると、資本
   金10億円以上の企業において産学官の共同研究や委託研究、受託研究などに 
   よって研究成果情報を入手したことがある企業は全体の半数以上にのぼっています。

   平成11年度の調査では約36%であったことから、確実に増加しています。

   中小企業における産学連携が注目されてきているものの、すでに取り組んでいる
   企業は大企業に比べると少なく、中小企業の約2割から4割程度と考えられます。

   東京商工会議所の「中堅・中小製造業における産学連携の取り組み状況に関す
   るアンケート調査結果」によると、産学連携の経験がある企業は18.2%となって
   います。

   また、近畿経済産業局の「近畿地域における中小企業の公設試験研究機関の利
   用実態と技術支援の充実化方策について」によると、近畿地域の中小企業のうち
   公設試験研究機関または大学を利用したことがある企業は32.7%となっています。

   資本金や売り上げ、従業員親模が大きい企業になるほど産学連携に取り組んで
   いる企業の割合が高くなる傾向にあります。

   全体として産学連携が進んでいる背景には、平成10年に制定された「大学等に
   おける技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(通
   称、大学等技術移転促進法)の存在が大きいと考えられます。

   同法は、大学などによる研究成果をT LO(技術移転機関)を介して産業界への移
   転を促進し、産業技術の向上や新規産業の創出を図るとともに大学などにおける
   研究活動の活性化を図ることを目的としています。

   大学発ベンチャーが平成28年に2200社を突破したことを考えると、一定の成果
   をあげているといえるでしょう。

   また、平成16年4月に国立大学が法人化されたり、それ以前に公的研究機関が
   独立行政法人に移行されたことは、産学連携のさらなる発展につながるものとし
   て期待されています。

   実際に、企業からは法人化により

    ・国立大学が産学連携に組織として対応するようになった

    ・民間のニーズに沿った研究が行われるようになった

    ・共同研究や委託研究を行いやすくなった

   という声も聞かれています。

   さらに、文部科学省では独立行政法人科学技術振興機構のホームページ
   「産学官の道しるべ」を開設しています。

   同サイトでは企業が大学などの技術を検索したり、直接研究室や産学連携窓口
   にアクセスすることができるようになっています。

   また、産学官連携に特化した情報のみが抽出されるようになっています。

   このように、産学連携に取り組む企業にとっては、良好な環境が整いつつあります。

  □産学連携の効果

   1.産学連携の効果

    産業連携に取り組むメリットには、

     ・自社単独では困難な技術・製品の開発ができる

     ・高度かつ専門的な技術やノウハウ、知識が導入できる

     ・自社にはない設備が利用できる

     ・人材育成に効果がある

     ・国や自治体などの補助金を利用することができる

    などがあげられます。

    では、実際に、産学連携が企業業績に結びつくのでしょうか。

    産学連携に取り組んだ企業から、実際に事業化に成功し収益があがるように
    なったり、新技術や新製品を開発したなどの成果が報告されています。

    産学連携を開始してから3年未満で具体的な成果をあげる企業も少なくないよう
    ですが、5年以上して成果がでるという場合もあり、今後も産学連携による実績
    は増えていくものと考えられます。

                       産学連携の取り組み効果(東京商工会議所)

    また、企業のイノベーション力をはかる意味で特許出願についてみたところ、産
    学連携の成果を知的財産化したという企業も多くみられます。

    特許出願そのものは、直接的に企業の業績に結び付くものではないものの、企
    業の成長に貢献しているといえるでしょう。

   2.産学連携の取り組み

    産学連携に取り組む中小企業では、実際にどのように大学などの研究機開を
    活用しているのでしょうか。

    以下では、産学連携によって成果をあげた企業の事例をご紹介します。

    【事例1】

     金型製造加工業のA社は、光ファイバー通信用のプラスチック製多芯フェルー
     ル(光軸合わせ用部品)の量産化に成功したものの、歩留まりを向上させるこ
     とが課題となっていた。

     課題を解決するために、プラズマCVM(化学気化加工)を開発したB大学およ
     び同技術を応用展開しているC社と連携することにした。

     産学連携により、A社は非接触で高精度のバリ取りができる装置を開発し、高
     精度で安定した本格的な一貫生産ラインを構築した。

     なお、プラズマCVMは、大気圧高周波プラズマを利用し、化学反応により加工
     する超精密加工法である。

     プラズマCVMにより、光ファイバーを挿入する微小な挿入内面のバリ取り仕上
     げを高精度にかつ安定して生産できるようになる。

    【事例2】

     廃蛍光管処理業およびガラス器製造業のD社は、蛍光管のリサイクルを事業
     化するために、E大学と共同研究を行った。

     ガラス質の安定化や蛍光管をリサイクルするにあたり各種素材を分離させる
     技術などについてE大学より技術供与を得たことで、事業化するまでの時間を
     大幅に短縮させることができた。

    【事例3】

     自動車用品メーカーF社は、従来より付加機能のある自動車シート用クッショ
     ンの製造・販売をしている。

     新商品を開発するにあたり実施したマーケティング調査で、腰痛に悩むドライ
     バーが多いことがわかり、地元のインキュベーション(新規事業・起業家育成
     支援)事業者に相談したところ、G美術大学を紹介され共同開発を行うことと
     なった。

     産学連携により、人間工学や心理学などを取り入れ、腰への負担を軽減した
     自動車シート用クッションを開発した。

     クッションは大ヒットし、某自動車雑誌でグランプリを受賞するなどの評価を得た。

     また、トラックメーカー3社で純正のオプション品として採用された。

  □産学連携の課題と留意点

   1.産学連携の課題

    最近では数々の成果が報告されている産学連携ですが、一方では課題もあり
    ます。

    産学連携を経験した中小企業の経営者からは、特に、

     ・研究開発のスピードに対する意識に違いがある

     ・大学側とテーマにズレがある

     ・研究開発に要するコスト意識に違いがある

    など、基礎研究を重視する大学は市場化への意識が薄い傾向にあり、意識や
    テーマに対する相違があげられています。

    このことから、

     「いかに共同研究のビジネス的な成果をあげるか」という点で
     大学研究者の協力を得られるよう努力することが必要となります。

    また、産学連携に取り組むにあたっては、

     ・産学連携ノウハウについての情報不足

     ・研究シーズについての情報の入手が難しい

     ・大学などの相談窓口がわからない

     ・公的支援・施策の整備が進んでいない

    などの課題があげられています。

   2.企業主導の産学連携

    大学発ベンチャーの多くが大学の研究機関主導でできたものです。

    また、大学内の研究者がもつ特許技術や研究シーズをもとに事業化を図ること
    を目的とした機関がT LOであり、T LOは、大学側の立場から事業化する際に
    パートナーとしてふさわしい企業を選ぶという発想であることは否めません。

    したがって、中小製造業側が自社の技術革新や新製品開発を目的に、協力し
    てくれる大学の研究者を探すという場合、TLOを訪ねても、求めている研究者が
    いるとは限らず、いくつものTLOを訪ね歩くことになります。

    このような状況のなか、中小製造業はどのような点に留意しながら大学研究者
    との共同研究に取り組めばよいのかをみていきます。

    (1)大学・研究者を選ぶ

      研究テーマが決まったら、どの大学が自社のニーズに応えてくれるか、とい
      う視点で大学を探すことになります。

      このとき、知名度を基準にするべきではありません。

      有名ではなくても、優れた知識やノウハウをもち、ユニークな研究を行ってい
      る大学はたくさんあります。

      多くの大学は、研究者とその研究内容、特色や研究成果をインターネットな
      どを使って公開しています。

      地道ですが、公開資料を見て、いくつかの大学に的を絞り、産学連携の窓口
      に相談してみる、ということからスタートしなければなりません。

      さらに何人かの大学研究者に絞り込み、何度か協議をし、人柄や能力を見
      極めながら交渉を進める必要があります。

      これは一般的な企業間連携や社員採用のときに相手を選ぶのと同じです。

      「大学教授は敷居が高い」というイメージもありますが、最近では大学側も産
      学連携の必要性を認識しています。

      人物にもよりますが、こちらの研究目的や趣旨をきちんと説明すれば、「門前
      払い」といったことはおそらくないでしょう。

    (2)経営的視点を理解してもらう

      大学研究者はあくまでも研究の視点しかもっていません。

      しかし、企業主導の産学連携とは、大学研究者に立派な研究論文を書いて
      もらうのが目的ではありません。

      その研究が事業化できるか、自社にとってプラスになるかどうか、といった経
      営的視点で産学連携を進めなければなりません。

      したがって、研究目的と目標、納期や進行管理のあり方などをあいまいにし
      たまま共同研究に着手するのではなく、

       事前協議のうえ、こちらの意図を納得してもらうことが重要になります。 

 

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製造業の品質管理と生産性向上

工場の生産性を向上
 

  ■生産性向上を考える際の視点

   生産性向上を考える場合、検討すべきことは数多くあるが、大きく「能率の向上
   と「稼働率の向上」に分けられます。

   それぞれ次のように休系図で整理しました。

    *1.7大口スとは、

       ・作り過ぎ ・過剰在庫 ・不良品の製作  ・手持ち

       ・運搬ロス ・動作ロス ・加工そのもの

      という7つのムダを指す

    *2.TPMとは、トータル・プロダクティブ・メンテナンスの略で、
        全員参加の設備保全活動のこと

  □生産性向上の具体策

   生産性の向上を検討するための視点については前述したが、ここでは実際に生
   産性向上を実現するための

    1.ムダ取り7手法

    2.VRP(部品半減計画)

    3.標準作業の設定

    4.TPM(設備保全活動)

    5.段取り替えの短縮

    6.レイアウトの改善

   という代表的な6つの手法について、ご紹介します。

   1.ムダ取り7手法

     作り過ぎ、過剰在庫、運搬ロスなど、前述した「7大口ス」に代表される様々な
     ムダをなくす、7つの手法をご紹介します。

     (1)標準化生産

       「販売のブレ」をできるだけ少なくして、生産現場の毎日の仕事量のばらつ
       きを少なく し、製作する製品(数量)をできるだけ均一にする手法。過剰設
       備や過剰人員を防止できる。

     (2)U字型レイアウト

       機械の台数が多くなると、作業者の歩行距離が大きくなりムダな動作にな
       りがち。

       U字型レイアウトは初工程と最終工程が近くなるため、カラ歩きや不必要な
       運搬を防止し、在庫のムダ、運搬のムダ、手持ちのムダ、動作のムダをなく
       すことができる。

     (3)ポカヨケ

       ちょっとしたミスを防止する手法。

       具体的には

        ・作業者がいちいち気を配らなくてもミスを防止できる工夫

        ・作業手順を誤った場合でも不良品がでない工夫

        ・条件が整わないと機械が作動しない工夫

       などがある。

     (4)作業の自動化

       自動化することによって、異常発生時には自動停止装置が作動したり、異
       常の原因を自動検出できるようにすることができる。

     (5)シングル段取り

       10分未満の段取り替えをシングル段取りという。

       シングル段取りを可能にするためには、内段取り(機械を止めて行うもの)
       と外段取り(機械の稼働中に行うもの)の区分、治工具などの取付け・取り
       外し作業の簡素化・標準化、調整作業の廃止などが必要。

     (6)多工程持ち

       加工する順番に機械を配置し1人の作業者が複数の工程を受け持てるよう
       にする。  

     (7)動作経済の原則

       人間の動作のムダを排除するための原則(*)に則る。

       *動作経済の原則について

         ①基本原則

          ・動作の種類と数を減らし、不必要な動作をなくす

          ・最短距離で動く

          ・最も円滑に動けるようにする

          ・最も疲労の少ない動作にする

          ・動作に習慣性を持たせる

          ・作業標準を用いて事前に動作の訓練を行う

          ・動作の改善と適度な速度は製品の品質を向上させる

         ②人体の使用に関する原則

          ・両手の動作は同時に始めて同時に終わるようにする

          ・両手の動作は同時に反対方向に、かつ対称的経路になるようにする

          ・慣性、動力、自然力をできるだけ利用する

          ・手の動作は低級レベルにする(肩から先を全て使うより肘から
           先の動作、肘から先全てを使うより手首から先の動作で済ま
           せるなど、できるだけ動かす部分を少なくする)

          ・急な方向転換は避ける

          ・できるだけ自然な姿勢に近づける

          ・リズムのある動作にする

         ③作業場所に関する原則

          ・作業台や椅子の高さは姿勢に無理のないようにする

          ・工具、材料は作業に合わせて配置する

          ・加工品の送りは重力シュートを活用する

          ・加工品の工員は一目で見え、手の届く範囲内で、定位置に置く

          ・工具、材料は作業者に近い前面に置く

          ・工具、材料、設備はできるだけ作業者が歩く必要がないように
           配置する

         ④工具、設備の設計に関する原則

          ・簡単な作業や力の必要な作業は、足を使う器具を使用する

          ・加工品を長時間持つときは保持具を利用する

          ・工具、材料は定位置に置くようにする

          ・複数の工具はできるだけ組み合わせる

          ・一定の運動経路を規制するには治具、ガイドを利用する

          ・できるだけ動力工具を利用する

          ・工具や器具の握りは、できるだけ広く手のひらに当たるようにする

   2.VRP(部品半減計画)

     VRP(バラエティ・リダクション・プログラム)は、(社)日本能率協会が開発した
     もので、

      「多品種・多部品・多工程」のもとで設計から生産までの総合的なコスト
      ダウンを行うための手法

     です。

     一般的に製品のライフサイクルに従ってその品種数は増加し、それと共に部
     品数や工程数も増加していきます。

     そして、ライフサイクルの末期になって売上げが落ち始めても、コストはそれに
     合わせて落ちていかず、収益を悪化させることになるのです。

      VRPは、市場の成熟化によって品種が増えても、
      部品数や工程数は増加させないような仕組みをつくり、
      それに適した作業の方法を検討する

     という考え方のもとにつくられるプログラムです。

     具体的には

      ・部品や工程の数や種類と、製品設計や生産方法との関連を分析する

      ・多工程、多部品が原因で発生するコストを分析する

      ・製品や生産システムの問題点に対して、「製品群」という視点で考える

      ・製品設計と生産システムの整合性を考える

     といったことから、生産性向上策やコストダウン策を考えていくわけです。

   3.標準作業の設定

     「標準作業」とは、作業条件・作業手順・作業要領などの作業方法を、様式を
     決めてまとめたものであり、作業者が作業を行うときの基準です。

     また、監督者が作業者の教育訓練を行うときの教材、作業管理の際の指標と
     もなります。

     基本的には

      ・作業遂行の目的(何を加工するか)

      ・作業条件(使用設備・治工具・標準時間)

      ・作業域のレイアウト

      ・作業手順

      ・要求される品質規格

      ・材料・部品の略図

      ・作業上の留意点(安全面、能率面なども含める)

     の7つの項目について作業方法を検討して、標準作業票を作成します。

     「標準作業票」の例を掲載します。

   4.TPM(設備保全活動)

     工場内の機械化・自動化・無人化が進んでいますが、せっかくの設備も専門
     知識をもたない作業員が運転していると、ちょっとした作業ミスや故障で機械
     が止まり、著しく稼働率を下げてしまうことになりかねません。

     TPMは、自分たちの大事な設備を、自分たちの手で保守できる部分は積極的
     に整備・修理していこうという活動です。

     つまり、

     TPMとは

      ・設備効率を最高の状態にすることを目標にして、

      ・設備の一生涯を対象とするPM(プロダクティブ・メンテナンス)の
       トータルシステムを確立し、

      ・その状態を維持保管するための人材を養成する。

      ・また設備の計画部門、使用部門、保管部門などあらゆる部門に
       わたって、経営者から第一線の作業者にいたるまで全員が参加し、

      ・小集団自主活動を中心にPMを推進する活動

     といえます。

   5.段取り替えの短縮

     段取り替えの時間短縮の手順は以下の通りです。

     (1)実態調査を行い現状を把握する

       IEの手法である「ワークサンプリング法」で、就業時間内の人と機械の
       稼働率を調査する。

     (2)改善目標を設定する

     (3)治工具を整理整頓する

     (4)内段取りの外段取り化を行う

       内段取りと外段取りの作業分解を行い、内段取りを外段取りとして行えるよ
       うにする。

     (5)内段取り自体の短縮化を行う

       機能の標準化、共同作業、仲介治具の使用、調整作業の廃止、締め付け
       の簡素化、能率・能力の向上などにより、段取りの時間を短縮する。

     (6)総時間の短縮と効果の確認を行う

   6.レイアウトの改善

     効率的なレイアウトは、ものの流れにそって配置することにあります。

     このためには、「ものの流れ分析」が有効です。

     これは、

      工場内のものの流れを把握し工程間の関連の強さを調べる手法

     です。

     この分析結果にもとづいて、レイアウト改善を検討します。

     レイアウトの改善は、以下のような場合に行うと効果的です。

      ・販売方法の変更時

      ・品種・生産量、流し方などの「生産システム」の変更時

      ・作業の機械化・自動化、材料や加工法などの技術の進歩や変化に応じて

      ・設計変更時

      ・現状のレイアウトの欠陥が見つかったとき

      ・生産量の増減があったとき

      ・工場の移転があったとき

      ・新製品を投入したとき

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製造業の品質管理と生産性向上

ポカミスの原因と対策

  ■ミスが発生しやすい時間帯とその対策 

   現場では、どういうわけか午後2時〜3時に最も「ポカミス」が多く発生する。

   入力作業でも入力の欄を間違えたり、数字の桁を間違えるのです。

   対策は自分自身を叱咤して「集中力」を確保することです。

   「集中力」の持続時間の短い人に「ポカミス」が多いから、このようなタイプの人
   は、「集中!集中!」と常に自分に言い聞かせて、意識付けしながら仕事をするこ
   とです。

   会社として「リフレッシュ・タイム」を設けて体操をしてもらったりコーヒー・ブレイク
   タイムを設けるのも効果的です。

   ミスをさせない空間、環境の設定が効果があるのです。

   特にこの時間帯は「セルフチェック」を入念に行う癖をつけてほしい。

   仕事の区切りごとに「セルフチェック」を必ず励行することで「ポカミス」は自分で発
   見できるのです。

   誰でも最大限「慎重さ」なるコンピテンシーを発揮する時間帯なのです。

  □中断後の仕事再開時のミスと対策

   仕事を一時中断したり、離席後に席に戻って仕事を再開するときに「ポカミス」が
   集中する。

   仕事をやりかけていて、休憩時間になる、昼休みになる、上司に呼ばれる、電話
   に出る、来客に応対する。

   このような場合、仕事を中断したり、離席する。

   そして仕事を再開するときにワナが待っているのです。

   対策は「離席管理」をしっかりやること。

   仕事の中断や席を離れるときは、どこまでやりかけたのかをしっかり分かるように
   記録を残しておくことです。

   その記録を確認して再開するようにすれば、ミスは激減できるのです。

   「離席カード」を作成し、席に戻ったらどこまでやりかけていたかをしっかり確認し
   再開するのも効果的です。

   全社的に「離席カード」を活用することをお勧めします。

  □ワークデザイン拙劣に対する対策

   仕事の中身、仕事のやり方そのものが間違いやすい、あるいは勘違いしやすい
   ように「ワークデザイン(仕事の設計)」されているものが職場には数多くある。

   組立現場には部品を反対に取り付けようと思えば取り付く構造や部品がありま
   す。

   そして必ず取り付けミスがある確率で発生するのです。

   事務の仕事にもミスを誘うソフトや不明朗な手順があります。

   これも「仕事の設計(ワークデザイン)」に欠陥があると考えるべきだ。

   部品の取り付けミスを撲滅するなら、反対に、あるいは逆には絶対に取り付かな
   い構造設計にすることです。

   しかし、設計者はなかなかこれを実行したがらない。

   そして現場の作業ミスだと言い張るのです。

   この場合は、あらかじめ取り付ける部品の「方向性」を決めて作業台に一旦置い
   てから作業させること。

   そうすることで取り付けミスは激減するのです。

   入力ミスしてもアラームを発してくれたり、「これで間違いないですか」と警告を発
   するソフトにすること。

   セルフチェックを促すことは、ミスに気付かせる上で有効です。

   ポカミスが発生しにくいように仕事のやり方、仕組みを盛り込んで「ワークデザイ
   ン」することが大切なのです。

  □4Mの変更管理拙劣に対する対策

   4Mの変更はポカミスの温床になっている。

   4Mとは、Man(人)、Machine(設備)、Material(材料など)、Method(やり方、
   方法)のことです。

   これらが変更になることは製造現場では日常茶飯事です。

   中でも「人が代わる」、「やり方が変わる」の二つは最もポカミスに敏感です。

   つまり不慣れが原因と言うわけです。

   「何かを変えたらミスが起こる」と考えてほしいのです。

   やむを得ずオペレーターが変更になる場合は、対象者にしっかり教育訓練して、
   「これなら大丈夫」というお墨付きを与えて作業をさせることが大事なのです。

   見本を見せて「この通りやってくれ」ではミスの元だ。

   技術的にやり方が変更になる場合も同様です。

  5Sが拙劣に対する対策

   「5S」は誰でも知っている「整理、整頓、清掃、清潔、躾」のこと。

   「言うは易く行なうは難し」で実際できていない現場が多い。

   「5S」と「識別表示管理」は一体と考えてほしい。

   「5S」ができていない現場はミスが多発することになっているのです。

   製造現場なら作業台の上をキッチリ「5S」を実施し、全社運動として定着させるこ
   とをお勧めします。

   事務部門においてもデスクの上や書類、パソコンのファイルやドキュメントを常日
   頃からきっちり整理、整頓し、識別管理をする習慣を身に付けることです。

  ホウレンソウ(報連相)不足に対する対策

   問題が起こると「言った」、「言わない」、「聞いた」、「聞かない」の言葉が飛び交う
   のです。

   明らかに「報連相不足」だ。

   つまりコミュニケーションがなっていない。 

   そして責任のなすり合いが始まる。

   ホウレンソウとは、「報告」、「連絡」、「相談」のこと。

   つまり、密接なコミュニケーションを常に図ることを習慣化することです。

   意思の疎通が図られればチームワークがよくなり、連係プレーが可能になるのです。

  □段取り不足に対する対策

   日常的な定型作業は同じことの繰り返しだが、たまにやる重要かつ特別な仕事や
   初めての仕事に着手すると言うのに「段取り」をキッチリやらない人は多い。

   段取りができていないからやるべきことを忘れたり、もの探しであっちにうろうろな
   どの歩行が多くなる。

   ミスを誘うばかりか効率も悪い。

   「段取り」をキッチリやってから着手すること。

   効率がよく、しかもつまらないミスは激減できるのです。


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製造業の品質管理と生産性向上

ヒューマンエラー
 

  ■ヒューマンエラーに対応する

   1.ヒューマンエラーとは 

    近年、運輸機関における大事故や、金融機関におけるシステム障害や誤発
    注、医療機関における医療過誤などが社会的な問題となっています。

    これらの事故は、さまざまな要因がそれぞれ複雑に影響し合って発生して
    います。

    しかし、その根底には、ヒューマンエラー(人間の誤認識や誤動作によって
    引き起こされるミス)が存在しています。

    ヒューマンエラーによって引き起こされた事故の例です。

    このように、ヒューマンエラーによる事故はさまざまな分野で起こり得ます。

    企業の社会責任が重要視されている昨今、これらの事故は、「信頼の失墜」
    を招くばかりではなく、「顧客の安全性の損失」「多額の賠償責任の発生」な
    ど、取り返しのつかない大きな損害を顧客や企業に与える恐れがあります。

    また、近年、企業における機械化・IT化の進展により、一人の人間の作業
    により生じる影響力は、従来に比べて非常に大きくなりました。

    これにともない、ヒューマンエラーによって引き起こされる事故および損害の
    規模も増大しています。

    こうした背景から、企業にはヒューマンエラーに対する適切な対応が求めら
    れているのです。

   2.ヒューマンエラーのメカニズム

    (1)必ず発生するヒューマンエラー

      ヒューマンエラーへの対応を検討する上で、常に念頭に置かなくてはな
      らないのは、ヒューマンエラーは必ず発生するということです。

      もちろん、「ヒューマンエラーを起こさない」という意識を持ち、また、さま
      ざまな防止対策を講じることにより、ヒューマンエラーの発生をある程
      度防止することは可能です。

      しかし、人間は必ず何らかのミスを犯すため、ヒューマンエラーの発生
      を完全に防ぐことは不可能です。

      問題とされるべきは、ヒューマンエラーそのものではなく、ヒューマンエ
      ラーによって引き起こされる事故および損害への対応です。

      ヒューマンエラーへの対応としては、

       1.ヒューマンエラーの発生の芽をつみとる

       2.ヒューマンエラーが発生した場合、迅速に検知する

       3.ヒューマンエラーによる事故が発生した場合、迅速に対応する

      という、ヒューマンエラーの発生を想定した対策を講じることこそが重要
      なのです。

    (2)ヒューマンエラーの発生 

      人間の情報処理のプロセスは、

       ・入力のプロセス(情報を自身の中に取り込むプロセス)

       ・媒介のプロセス(取り込んだ情報を判断するプロセス)

       ・出力のプロセス(判断に基づいて行動を決定、実行するプロセス)

      の3つに大別することができます。

      ヒューマンエラーは、このいずれのプロセスにおいても発生する可能性
      があります。

      以下では、それぞれのプロセスにおけるヒューマンエラーについて具体
      的に説明します。

      ◎入力エラー

       情報を入力するプロセスで発生するエラーです。
       「見落とし」「見間違い」「聞き間違い」などにより、情報を正しく
       知覚・認知できないことをいいます。

       例としては、
        ・ 操作中の機器が異常発生を知らせる警告を表示していた
         にもかかわらずそれを見落とし、事故を発生させてしまった

        ・ 設計図中の寸法の数字を見間違えたため、欠陥住宅を建築
         してしまった

        ・ 顧客の見積もり依頼に関する仕様を聞き間違えたため、規格
         に沿わない仕様の見積書を作成してしまった

       などが考えられます。

      ◎媒介エラー

       情報を媒介するプロセスで発生するエラーです。
       「誤った知識」「経験への依存」「思い込み」などにより、情報を
       正しく判断・決定できないことをいいます。

       例としては、
        ・ 新入社員が、商品に関する誤った知識のため、不当に低い
         見積価格を顧客に提示してしまった

        ・ 電車のベテラン運転士が、自身の経験を過信するあまり機器
         の危険表示を軽視し、事故を起こしてしまった

        ・ 「あまり重要ではないだろう」という思い込みにより、顧客から
         のクレームを放置し、結果としてさらに大きなクレームを発生
         させてしまった

       などが考えられます。

      ◎出力エラー

       判断によって決定された行動を出力するプロセスで発生する
       エラーです。
       「やり忘れ」「やり間違い」「勘違い」などにより、計画通りに正しく
       実行できないことをいいます。

       例としては、

        ・ 顧客に依頼されていた調査を行うことを忘れてしまった

        ・ 自動車の運転で、ブレーキとアクセルを誤って操作してしまった

        ・ パッケージがいつも使用している薬剤と似ていたので、中身
         を確認せずに別の薬剤を患者に使用してしまった

       などが考えられます。

       なお、各プロセスにおける一つひとつのエラーが軽微なものであって
       も、一連の情報処理のプロセスの中でそれらが連鎖することにより、
       より大きな事故を発生させる恐れがあります。

   3.ヒューマンエラーへの対応

    (1)情報収集と分析

      ヒューマンエラーへの対応を検討するには、ヒューマンエラーに関する
      情報を収集し、詳しく分析する必要があります。

      ヒューマンエラーへの対応の検討プロセスは図の通りです。

      ヒューマンエラーに関する情報を収集します。

      前述の通り、ヒューマンエラーにはさまざまな種類があります。

      また、複数のヒューマンエラーが相互に関係することにより、さらに新た
      なエラーを発生させるケースもあります。

      こうしたことを判別するために、できるだけ多くの情報(事例)を集める
      ことが重要となります。

      加えて、ヒューマンエラーには至らなかったものの、それにつながる可
      能性があった事例についても収集します。

      建設業界や医療業界では、これらを「ヒヤリ・ハット事例(エラーを起こ
      しそうになって「ひやり」「はっと」した事例)」として関係者全員で情報を
      共有しています。

      これらは、ヒューマンエラーを「芽」の段階でつみとるための非常に重要
      な情報となります。

      次に、これらのヒューマンエラーに関する情報を分析します。

      ヒューマンエラーは、発生するプロセスやその要素、要因により大きく
      異なります。

      従って、分析においては、そのヒューマンエラーが、情報処理の「どの
      時点で」「どのような理由により」発生したのかを詳細に検証し、エラー
      を発生させた本質を突きとめることが重要です。

      それぞれのヒューマンエラーを分析によってタイプ別に分類し、各タイ
      プの特性を勘案して対策を決定します。

      以下は、ヒューマンエラーへの対応として「ヒューマンエラー発生の防
      止」「ヒューマンエラーの検知」「ヒューマンエラーによる事故への対応」
      をまとめました。

    (2)ヒューマンエラー発生の防止

      前述の通り、ヒューマンエラーは「必ず発生するもの」です。

      しかし、さまざまな防止対策を講じることによって、ある程度発生を防止
      することが可能です。

      以下では、各プロセスにおけるヒューマンエラー防止対策を説明しま
      す。

      ◎入力エラー

       入力エラーは、情報を正しく知覚、認知できないエラーです。
       従って、入力エラーへの対応では、情報が正しく入力されているかど
       うかの確認が重要となります。

       具体的な防止対策としては、

        ・ 見落としを防ぐために、機器や周辺状況について指差し確認
         などを行う

        ・ 見間違いを防ぐために、細かい数字や大量の数字などに
         ついては、複数の担当者の間で読み合わせを行う

        ・ 聞き間違いを防ぐために、情報は文書化して伝達する
         (やむを得ず口頭により伝達する場合は、必ず復唱を行う)

       などが考えられます。

      ◎媒介エラー

       媒介エラーは、情報が正しく判断されないエラーです。
       誤った判断は、誤った知識および判断基準の不統一によって行われ
       ます。

      従って、媒介エラーへの対応では、正しい判断を行うための正しい知
      識の教育、および判断基準の統一が重要となります。

      具体的な防止対策としては、

       ・ 機器の操作や業務内容についての正しい知識を教育する

       ・ 判断基準を統一し(マニュアル作成など)、この基準に基づいて判
        断を行う

       ・ 上司によるチェックなど、複数のチェックポイントを設定することに
        より、判断の妥当性を多面的に検討する

      などが考えられます。

      ◎出力エラー

       出力エラーは、行動が実行されない、もしくは行動が正しく実行され
       ないエラーです。
       従って、出力エラーへの対応では、行動が正しく実行されているかど
       うかの確認が重要となります。

       具体的な防止対策としては、

        ・ ToDoリスト(やるべき事柄をまとめたリスト)などを作成し、
         動作のもれを防ぐ

        ・ 落ち着いて、一つずつ作業や操作を行う

        ・ 作業、操作に際しては、目視などによる確認を行う

       などが考えられます。

       なお、出力エラーは、無意識の行動において発生しやすい特性をも
       っています。

       このため、無意識の行動に一定の制約を加えたり負担を軽減するこ
       とも効果的です。

       出力エラー防止対策の一例です。

    (3)ヒューマンエラーの検知

      ヒューマンエラー防止対策によってもヒューマンエラーを防ぐことができ
      なかった場合を想定し、それを検知するための対策を検討します。

      ヒューマンエラーの検知では、確認の機会を多く設け、目標と行為のズ
      レを少なくすることが重要となります。

      従って、具体的な対策としては、

       ・ エラーを発見しやすい仕組みをつくる

       ・ チェックリストを作成する

       ・ 複数の担当者によりダブルチェックを行う

      などが考えられます。

    (4)ヒューマンエラーによる事故への対応

      ヒューマンエラーを防ぐことができず、またそれを検知することができず
      に事故が発生した場合を想定し、これに備えるための対策を検討しま
      す。

      ヒューマンエラーによる事故への対応では、事故による損害の拡大を
      防ぐことが重要となります。

      具体的な対策としては、
       ・ 高所からの転落を想定して、安全ネットなどを張る

       ・ 伝票処理ミスや検品漏れによる目減りを想定して、ロス予算を
        計上する

       ・ 自社の製品により食中毒が発生した場合を想定して、迅速に
        被害者に対応するためのマニュアルを作成する

      などが考えられます。

      このように、ヒューマンエラーへの対応では、

      エラー発生の防止 ⇒ 発生したエラーの検知 ⇒ 発生した事故への対応

      という3つが、それぞれ適正に機能することが重要です。

   4.防止対策の運用上の留意点

    過去に発生したヒューマンエラーによる事故を検証してみると、「決められた
    手順通りに防止対策を実行しなかったため、ヒューマンエラーの発生防止
    や検知ができず、事故による損害を拡大させてしまった」という事例が少なく
    ありません。

    これらの多くは、
     ・ 指差し確認が面倒だったので、「安全と思われる」作業の確認を省略し
      た

     ・ システム上、エラーの警告が出たが、「問題ないと判断して」作業を続
      けた

     ・ 自分で「念入りに確認をした」ので、ダブルチェックをしなかった

    といった担当者の主観的な判断により、防止対策がしっかりと実行されなか
    ったことに起因しています。

    防止対策は、さまざまなプロセスに客観的なチェックポイントを設置すること
    でエラーの発生を防ぎ、またそれを検知することを目的としています。

    このため、担当者の主観的な判断によってこれらのチェックポイントを排除
    してしまっては、防止対策としての機能が全く失われてしまうこととなる。

    従って、防止対策を運用する際に最も重要なのは、いかなる場合でも、防
    止対策で定められている原則・ルールを順守し、実行させる
ことだといえま
    す。

    このためには、社内に「ヒューマンエラー防止対策委員会」といったチェック
    機関を設置し、
決定した原則・ルールが順守、実行されているかを定期的に
    確認する
などの施策が有効です。

    ただし、防止対策が実行されていたとしても、それが事実上形骸化してい
    ては意味がありません。

    例えば、ある機器の操作を行う際に指差し確認が義務付けられているとし
    ます。

    このような場合、長い期間を経るにともない防止対策が形骸化してしまい、
    結果として「表面上では指差し確認を実行していても、実質的には、確認者
    はただ無意識に指を差しているだけで確認していない」ということになってし
    まう恐れがあります

    このため、各人に、

     ・ その行動によって、どのようなヒューマンエラーが起き得るか

     ・ そのヒューマンエラーによって、どのような損害が起き得るか

    ということを十分に理解させ、防止対策を実行する重要性を認識させること
    が必要です。

    このためには、社内の各部署で発生した「ヒヤリ・ハット事例」について検証
    する「ヒヤリ・ハット意見交換会」を定期的に開催するなどして、ヒューマンエ
    ラーについての啓発活動を行うなどの施策が有効です。

    ヒューマンエラーは、もちろん発生させないに越したことはありません。

    しかし、その発生を完全に防ぐことができない以上、「ヒューマンエラーにと
    もなうリスクを、いかに少なくするか」という考え方を持つことが重要だといえ
    るでしょう。

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製造業の品質管理と生産性向上

製造業と安全管理


  ■製造業と安全管理

   製造業における労災事故の件数は、全産業の約4分の1を占めています。

   なかでも多いのが「はさまれ・巻き込まれ」による事故で、全体の約3割を占めて
   おり、この傾向は過去20年以上変わっていません。

   「はさまれ・巻き込まれ」事故の原因を検証していくと、危険部分が露出したままの
   環境で作業を行っていたり、操作中に誤って手を入れてしまったりなどの危険行動
   や、機械の運転停止を省略するといった安全作業手順の無視などの実態がうかがえ
   ます。

   また、製造ラインに従事する派遣労働者や施設内で軽作業をする請負作業員など、
   派遣や請負の増加に伴い、社員以外の作業員が労災事故に遭うケースも増えて
   います。

   それにより、受入先会社の安全配慮義務が厳しく問われる(場合によっては損害賠償
   責任が生じる)ようにもなってきました。

   労災事故の多くは、採用後間もない作業員や作業経験の浅い作業員に多くみられ
   ます。

   労災事故は起きてしまってからでは取り返しがつきません。

   作業に不慣れな新人はもちろんのこと、すべての作業員に対して安全に作業をする
   ことの大切さを教育し、現場での安全管理を徹底することはとても重要です。

  □安全管理体制の整備

   1.安全管理体制の構築

     安全管理は、作業員一人ひとりが自主的に行動しなければ効果がありませ
     ん。

     それと同時に、監督者(経営者)はつねに安全に気を配る必要があります。

     そこで重要となるのが「安全衛生管理体制」です。

     これは労働安全衛生法に定められているもので、業種や規模によって管理者 
     などの選任が義務づけられており、それを守らずに重大な労災事故が起きて
     しまった場合には、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われることに
     なります。

     事業場における安全衛生管理体制を確立し、それぞれの担当者が労災防止
     のための職務をきちんと運営していくことが重要です。

     製造業の場合、規模(従業員数)に応じて担当者を選任しなくてはなりませ
     ん。

     それぞれに実務経験等の資格要件が設けられており、担当者を選任したら労
     働基準監督署に届け出ることになっています(安全衛生推進者、作業主任者
     については労働者への周知のみ)。

     なお、労災事故防止についてさまざまな方策を行うために、労働者の意見を
     反映させる必要があることから、安全衛生委員会の設置も義務づけられてい
     ます。

     安全衛生委員会とは、労働者の危険防止、健康障害防止のための基本対策
     や労災の原因調査、再発防止対策などを調査審議して、事業者に対して意見
     を述べる機関です。
      
   2.危険予知(KY)

     重大な事故の背後には、29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300
     件のヒヤリ・ハット(ハインリッヒの法則:事故には至らなかったものの、ヒヤリ
     とし、ハツとした事例)があるといわれています。

     このヒヤリ・ハットは見過ごされてしまうことも多いのですが、重大な事故を未
     然に防ぐには、ヒヤリ・ハットの段階で対処していくことが大事です。

     そこで、個々の作業員が経験したヒヤリ・ハットの情報を共有し、重大な事故
     の発生防止に役立てる活動が有効となってきますが、そのひとつが「危険予
     知(KY)活動」です。

     危険予知(KY)活動とは、ミーティングや職場内研修を通じて、その日の作業
     に潜む危険性などの情報を皆で共有し、事故発生を予測しながら危険回避策
     を話し合うものです。

     この活動が習慣化されることで、日常の作業をただ流れで行うだけでなく、危
     険が潜んでいないかとつねに考えて作業に取りかかる意識を一人ひとりにも
     たせることが期待できます。

     具体的には、その日の作業を始める前に、グループ全体でミーティングを行い
     ながら進めます。

     話し合う内容は、

      ・その日の作業から予測される危険(危険のポイント)

      ・予測される危険に対する対策  (私たちはこうする)

      ・対策に基づいた安全な作業方法 (行動目標)

     といったものです。

     KY活動のミーティングと通常のミーティングとの違いは、雑談の延長に近い感
     覚で行われるところにあります。

     つまり、通常のミーティングでは「まあいいか」と思ってしまいがちな些細なこと
     についても、KY活動のミーティングでは気軽に話し合うことができます。

     このようにKY活動を行うことで、必要な情報を漏らすことなく、また、堅苦しくな
     い雰囲気のなかで危険予知を行うことができます。

     なお、KY活動のミーティングで話題になったことは、その都度シートに記入し
     ていくことが望ましいでしょう。

     また、KY活動の前に「安全ミーティング」と呼ばれるミーティングを行う事業場
     もあります。

     安全ミーティングでは、その日の作業を行う前に関係者全員が集まって、当日
     の作業内容、作業方法・手順、人員配置などの指示・調整を行います。

     作業員の意識や責任感を高めるためにも、ミーティングの際に、作業員が具
     体的に体験した危険を、その場の状況などと併せて報告させることが必要で
     しょう。

     このことで、KY活動の効果をより高めることができます。

  □現場における安全管理

   製造業の現場では、さまざまな機械設備が使用されており、それらによる「はさまれ・
   巻き込まれ」事故が多いことから、そこに重点をおいた対策を講じる必要があります。

   ここではおもに、機械設備による「はさまれ・巻き込まれ」事故の防止ポイントをみて
   いきます。

   安全管理においてもっとも重要なのは、基本的なことをいかに忠実に、手を抜くこと
   なく遂行するかです。

   前記の対策を組み合わせながら、作業員の安全に対する意識を高めて、労災事故の
   危険性を低減していくことが大切です。

  □健康管理

   どんなに現場の安全管理を厳重に行っても、作業員の体調がすぐれなければ事故が
   起こりやすくなるものです。

   作業員の健康管理も安全確保の大きな要素といえます。

   1.基本的な生活態度のチェック項目

     □ 作業員は進んで健康診断を受けているか。

     □ 手洗い、うがいを励行しているか。

     □ 飲み過ぎ、食べ過ぎをしていないか。

     □ 夜更かしばかりしていないか。

   2.安全対策の徹底

     健康保持増進のための具体的指導は、事業場内に専門スタッフを確保するよ 
     うなことが困難な場合には、一定の基準を満たして認定を受けた、次のような
     外部の機関を利用して推進することができます。

      ・労働者健康保持増進サービス機関

      ・労働者健康保持増進指導機関

     上記機関の詳細については「中央労働災害防止協会」のウェブサイトでご確
     認ください。

     参照URL

      中央労働災害防止協会(労働者健康保持増進サービス機関等

   3.会社で行いたい健康保持増進活動

     ・健康測定……生活状況調査、医学的検査、運動機能検査を行う。

     ・運動指導……運動によって健康的な生活習慣を確立するために行う。

     ・メンタルヘルスケア
             ……健康測定の結果、メンタルヘルスケアを受けることが望ましい 
               場合や、本人からの希望があった場合に、援助や指導を行
               う。

     ・栄養指導……食生活の偏りからくる問題の解決のための指導を行う。

     ・保健指導……健康上の問題を予防、コントロールする方法の指導を行う。

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製造業の品質管理と生産性向上

職場改善は生産性を向上させる

職場改善は生産性を向上させる

  ■言われ続ける 「業務改善」
   過去から現在に至るまで「業務改善」が叫ばれていますが、社長に言わせれば、
   経営を始めた瞬間から意識している課題でしょう。
   しかし、これがなかなかうまくいきません。
   業務の見える化や標準化などを進めるといっても抜本的な改革には至らず、局所的に
   改善されれば、別の場所で問題が出てきます。

   また、そもそも“削る”ことが前提の業務改善は、従業員にとっては楽しくないのです。
   とはいえ、最小限の人員で収益を上げなければならないこれからの経営に、業務改善は
   必須です。

   業務改善は効率化による生産性向上を実現する、前向きなものです。

   しかし、現場の従業員にとっては、これまでの進め方を変えなければならない、
   これまで使えた設備が使えなくなるなど、後ろ向きに捉えられがちです。
   こうした背景もあってか、業務改善に取り組んだものの、生産性は変わらない、または
   低下したと評価する企業が一定の割合で存在します。
   それほどまでに、業務改善は難しいということでしょう。


   職場では、「売り上げが思ったほど伸びない」、「部下の仕事にミスが多い」、

   「顧客からのクレームが増え始めた」、といった困ったことが出てきます。

   会社は、常にこのようなさまざまな問題に取り囲まれています。

   経営・管理者の仕事は、日々はもちろん、将来に向けて、さまざまな問題を解決して
   いくことです。

   問題があるというのは、企業が生きている証拠であるともいえます。

   「自社の組織ではすべて順調に推移しているので、何も問題がない」、という人が
   いれば、むしろ問題かもしれません。

  □製造業をとりまく環境

   1.産業の空洞化の進行
     今までは労働立地の観点から工場の海外移転が進行して来たが、これからは、
     消費立地の観点よりアジア地域を中心に進行するものと見られる。

     いずれにしても製造業の場合、日本で生き残れる条件を満たしていない企業は
     存在出来なくなるでしょう。

   2.内外価格差
     住宅を例にとると、同仕様の建築において、日米のコストを比較すれば日本は
     米国の2倍となる。

     これはもはやコストダウンや生産性の向上といった範疇では解決できず、
     1企業で対応できる性格のものではないかも知れないが、建築基準、ユーザーの
     価値観を根底から変えねばならない問題です。

     他業種においても同様の課題が存在する。

     材料、設備、工程のイノベーションが求められます。

   3.多品種多頻度納入
     日本で生き残れる条件の1つでもある、マーケットイン(商品の企画開発や
     生産において消費者のニーズを重視する方法)あるいはスペックイン(建物の
     設備を提案して採用されること)が進めば、計画的に多量につくれないものが
     沢山発生する。

     1つの大手メーカーを頂点とするピラミッドの底辺には、多くの下請会社が
     必要とされています。

     多品種多頻度納入を普通とする体制が出来ていなければ存在は難しい。

   4.高齢化の進行と若年層の減少
     この段階を日本企業はクリアしなければ、国際市場での優位性を失うことに
     なります。

     今でも日本の製造業の現場は、一部の業種を除いて若い男子従業員が働く
     ように出来ている。

     まだまだ大幅な改善が必要であり、特に年金支給年齢が65歳に引き上げら
     れ、大量の高齢者が労働市場へ流入して来る。

  □製造業の抱える戦略課題
   基本的な現場の改善活動も必要ですが、抜本的には戦略的な対策で大幅にもの
   づくりの体質そのものを変えることが必要である。

   そのためにも、次のテーマが挙げられる。

    1.ローコスト経営の推進
      利益天引方式で売価−利益=原価の公式に基づき、与えられた原価の範
      囲でものをつくる考え方を定着させる。

      そのためにはダイナミックな改革が必須条件となります。

      例えば、徹底的なアウトソーシングで人員を半分にするなど、思い切った対
      策が必要です。

    2.コアコンピタンス経営の実践
      自社ならではの原価の提供。

      加工技術の分野では、他にまねの出来ない特殊技術に特化していく。

      例えばミクロン単位の超微細な巾のものを切断する技術は、半導体の工程
      には無くてはならない技術です。

      この様な技術開発には、業界の固定概念にとらわれない発想が必要とな
      る。

    3.多品種に強い体制づくり
      製品・部品の種類がどんどん増えていって、比例してロットが小さくなった場
      合、行き着くところは1個である。

      常にロット数を1として体制を構築すれば、恐れるものは何もない。

      金型メーカーなどは最初から大半のロット数が1であり、量産の出来るもの
      は、どんどん国外へ出るか自動化されます。

  □生産性向上のために整備すべき条件

   1.社員のヤル気につながる明確な生産性測定のモノサシを持つ
     社員のヤル気・・・流した汗、出した知恵の量と成果が比例、成果配分にあず
                かる
     明確な数値目標・・・自由裁量の余地のない数字

   2.的確なデータが早く集約できる
     歩留り率、不良率、返品(予実績の差異分析に大切)

   3.標準化が出来ている(或は標準化の概念がある)
     安易に例外をつくらない

   4.現物と伝票とが必ず一緒に動くシステムと社風

   5.検査体制が確立
     受入検査(規格外のものを中に入れない)、工程検査(不良品を次に流さな
     い)

   6.情報伝達のスピードが早い
     販売、購買、生産の間のコミュニケーション

   7.現場の3Sが徹底している
     ・整理…不要品を捨てる
     ・整頓…置き場所を決める、表示する
     ・清掃…ゴミ、ホコリの除去

   8.改善活動のチェックポイント
     問題点の抽出・生産活動の評価への参考

  □コスト意識を高めるしくみと社員教育

   1.コストが目で見られる形にする
     (1)金券方式

     (2)費目毎に管理担当者を決める
       (例)オイル、ウエス、ヨーセツ棒等

   2.分社化
     (1)小グループで独立した会計
     (2)独自の管理システムの開発

   3.社員教育の実施
     (1)ムダの意識を植えつける
     (2)幹部には全社意識の養成

   


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製造業の品質管理と生産性向上

製造業の経営革新(下請け体制からの脱却)
 

  ■下請体制の変化と経営革新の必要性

   1.下請分業体制の変化

     (1)日本の高度経済成長を支えてきた構造は、製造業における親事業者と下
       請企業とのネットワーク(下請分業体制)でした。

       下請企業は、複数の親事業者をもち、主要な親事業者とは長期にわたって
       取引を行い、所有する資産のうち主要親事業者向けの資産が約半分を占
       め、親事業者の要求によって設備投資や研究活動が行われるなど、親事
       業者による影響を大きく受けてきた。

       下請企業にとっては、仕事量の安定、独自での営業活動が不要、取引に
       関するリスクがない、技術指導が受けられるなどのメリットがありました。

       一方、親事業者側は、生産能力の不足分を外注で補う、外注先の専門的
       な技術や製造設備を活用する、外注先を活用して自社は得意な分野に集
       中するなど、下請企業とのネットワークを上手に利用して自社の強みを特
       化していこうという傾向がみられた。

       このように、長期安定的な取引関係を構築し、ネットワークである下請分業
       体制を、親事業者、下請企業の双方が上手に利用していました。

       しかし、中小製造業を支えてきた下請分業体制に、1980年代以降、大き
       な変化が起こり始めまた。

       「2013年版中小企業白書」によると、中小企業の下請比率は1981年の
       65.5%をピークに減少傾向(製造業で約18.6%、サービス業で
       約9.4%)にあり、この傾向は一部の業種(食料品、化学工業)を除いてほ
       ぼ全業種に共通しています。

       下請比率の低下に関係する大きな要因は、経済のグローバル化や不況が
       長引いたことで、大企業の生産拠点が海外へ移転したことがあげられる。

       また、日本の下請企業は、個々の部品を相互に調整・最適化しながら統合
       し、機能を発揮するように製品づくりを行う技術を得意としているのに対し、
       生産性向上のために、製品を部品ごとに分割、生産し、部品のつなぎ(イン
       ターフェース)の部分を標準規格化することで、単に部品を組み合わせるだ
       けで製品が完成する生産体制が世界的に進んだことも、下請比率の低下
       につながったとみられています。

       部品・半製品メーカーおよび素形材メーカーの状況をみると、10年前と比
       較して、下請取引を行う企業の割合はわずかに増加しているのに対し、各
       企業の売上に占める下請取引の割合は微減している。

       また、近年の傾向として、特定の取引先に売上のほとんどを依存する企業
       の割合が低下し、多数の取引先と薄く広い取引をする企業が増えている。

       これにより、下請企業が取引先より入手できる情報が、より表面的なもの
       や一般的なものとなり、技術開発や成長の方向性をつかみにくくなっている
       と懸念されています。

     (2)必要とされる国内基盤の強化

       大企業を中心に東アジアなどへ生産拠点を移し、生産体制の効率化を
       図ってきたが、近年、並行して国内の生産体制を再び強化する動きがみら
       れるようになった。

       とりわけ、電気・情報通信機械器具の分野では、アジア向けの投資が頭打
       ちとなり、その一方で国内向けの設備投資が持ち直す頼向がみられていま
       す。

       その背景には、最近の国内景気の回復基調により、企業の投資力がつい
       てきているうえに、ものづくりの基盤技術として、国内の中小企業の高い技
       術力が再評価されていることがあるようです。

       安価な海外製品の流入や親事業者の海外進出による受注減少に苦しむ
       中小企業があるなかで、こうした国内での需要に応えていくためには、環境
       の変化に対応し、自立した企業ともて強みを発揮していくことが求められて
       いる。

   2.基盤強化に求められる経営革新

     このような環境の変化に対応して、下請企業の企業活動も変化してきている。

     「2005年版中小企業白書」では、近年の中小製造業のおもな動きとして、輸
     出・輸入・海外直接投資を行う企業の増加、研究開発部門の従業員の増加、 

     デザイン・商品企画、研究開発関連の外部委託の増加をあげています。

     また、自社で生産設備を持たず生産工程をすべて外注する「ファブレス企
     業」、研究開発・試作品開発に特化する「研究開発型企業」、流通ルートを介さ
     ず自社で製造から小売までを一貫して行う「製造小売」など、業態も多様化し
     てきています。

     中小企業庁の調べによると、2005年11月末時点で、中小企業新事業活動促
     進法(旧法は中小企業経営革新支援法)に基づき、都道府県などより経営革
     新計画の承認を受けた計画件数は2万365件となっています。

     2005年3月末時点で承認を受けた企業の業種別割合をみると、製造業が
     43%ともっとも多くなっています。

     承認された中小製造業者の経営革新活動の割合は「新商品の開発又は生
     産」36%、「商品の新たな生産又は販売方式の導入」30%、「役務の新たな
     提供の方式の導入その他の新たな事業活動」20%、「新役務の開発又は提
     供」14%となっています。

     今後も下請体制の変化が進むことが予測されるなか、中小製造業者が自社
     の強みを強化していこうとする様子がうかがえます。

  □経営革新のヒント

   経営革新といった場合、どのようなものが経営革新といえるのでしょうか。

   もっともわかりやすい定義として、中小企業新事業活動促進法に定義されている
   「経営革新」の内容を確認していきましょう。

   中小企業新事業活動促進法では、経営革新として、

    1.新製品の開発又は生産

    2.新役務の開発又は渥供

    3.商品の新たな生産又は販売方式の導入

    4.役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業法動

   という4つを定義しています。

   それでは、これらの経営革新を行うためにはどのような工夫ができるかを考えて
   みましょう。

    1.製品・市場のマトリクスを利用する

      以下は、実際に中小企業経営革新支援法(現法は中小企業新事業活動促
      進法)の承認を受けた会社の事例です。

      金箔などの箔押し業者であったA社は、結婚式に代表されるお祝い物の金
      箔押しの印刷物が売上の中心でした。

      ところが、昨今では結婚式が多様化し、形式にとらわれない人が増えたこと
      や、パソコン印刷の普及に伴い、売上の激減に直面しました。

      そのため経営革新の必要を感じ、新たな市場開拓を決意した。

      現在の市場がなくなるという火急の事態ですので、新たな市場を緊急に開拓
      することが要求されました。

      その際考えたのは、今からまったく新しい製品や技術を開発していくことは資
      金力、人材力から無理があるため、現在もっている「箔押し」の基本技術をい
      かして市場開拓ができないかというものでした。

      現在は「紙」に箔を押しているが、これを別の素材に応用できるかどうかを検
      討し、たどり着いたのが食品への箔押しでした。

      紙のような形状の食品への箔押しを考え、「海苔」への金箔の箔押しが生み
      出されたのです。

      そして、贈答用の海苔や、すしネタに使用する海苔に、金箔で店舗名や広告
      を箔押しした製品を開発し、中小企業経営革新支援法の承認を受けることに
      成功しています。

      このA社の考え方に、経営革新を考えるひとつのヒントがみつかります。

      それは、以前からよく使われている方法で、
      「製品・技術」と「市場」の2つの軸で考えたマトリクスを利用する方法

      これは、縦軸に市場を、横軸に製品・製品・技術をとり、それぞれ既存と新規
      からなる4つのマトリクスを利用する方法です。

      現在もっている「箔押し」という技術を利用して、それを新しい市場に持ち込
      むという市場開拓の手法がA社の新製品開発にいかされています。

      中小製造業の場合、まったく新しい技術とまったく新しい市場からなるマト 
      リクスを狙うのは無理がありますから、A社のように、自社のもっている技術
      や市場をベースに考えることが一般的です。

      さらに、既存と新親の間に「他社は知っているが自社にとっては新規」という
      区分を入れることも役立つはずです。

      他社ではすでに開発されているが、自社はまだ手をつけていない製品分野
      や市場分野ですから、他社の取り組みを参考にすることによって自社にとっ
      ての経営革新が可能で、すでに先行している他社があるのでリスクも少ない
      分野です。

      このマトリクスを頭の中に入れて経営革新を考えることで、自社の資源を無
      理なく活用した経営革新を検討することが可能となります。

    2.顧客を知る

      もうひとつ、自社の新たな経営革新の対象となる顧客を知ることが、経営革
      新を図るうえで重要なポイントとなります。

      新製品を開発していく際に、製造業ではとかく自社の現在の技術に依存して
      考えがちです。

      そのこと自体は、先のマトリクスの考え方のように正攻法といえますが、問題
      は、自社の技術に縛られすぎて顧客がみえていない場合が少なくないという
      ことです。

      新しい製品や事業を考える瞭には、顆客を明確にイメージすることが重要。

      (1)市場細分化        

         新製品を発売する以前に、顧客を絞り込んで、具体的にイメージしておく

        と経営革新計画が立てやすくなります。

        顧客を絞り込む際に使われる基準が、「市場細分化」の基準です。

        すべての人を顧客に想定することはできませんので、自社の開発する製
        品を使ってもらいたい顧客を絞り込んで考えることがポイントです。

        たとえば歯磨きでも、口臭防止を目的に製品を利用する顧客、歯を白くす
        ることを目的にする顧客、磨いたときの爽快感を大切にする顧客など、顧
        客の要望にあわせた製品開発がなされています。

        この 要望=便益によって顧客を区分し、自社の開発した製品の真の顧
        客を絞ることが市場細分化です。

        市場細分化を考える際には、一般に4つの視点が必要です。

        ①「測定可能性」

         新たに開発した製品が対象としている顧客の購買力を予想できるか
         どうかという視点です。
         たとえば、二輪車向けに新たに開発された二輪車用カーナビは、
         すでに販売されている二輪車用のアクセサリーなどの市場から
         購買力が測定可能となります。

       ②「到達可能性」

        自社の新製品のターゲットを、たとえば「シンプルでナチュラルな生活
        を志向する20歳代の女性」と定義したとしても、そのターゲットに接近
        できる方法がなければ絵に描いた餅となってしまいます。
        たとえば、想定したライフスタイルをもつ消費者をおもな購読層にして
        いる雑誌に広告を出すことでターゲットに到達可能になる、といった
        視点から検討してみます。

       ③「維持可能性」

        そのターゲット市場が採算のとれる規模があるかという視点です。
        たとえば、珍しい古着をリサイクルして和装バッグを製造しても、その
        対象となる市場の人口が数十人では採算がとれません。
        自社の生産能力やコストを考慮に入れながら、採算のとれる規模である
        かを確認することが求められます。

       ④「実行可能性」

        自社の想定しているターゲットに対して、マーケティング・プログラムの実
        行が可能であるかどうかという視点です。
        中小製造業者が世界規模の販売網を必要とするマーケティング・プランを
        考えても容易には実行できないため、自社のマーケティング資源を確認し
        ながら、実行可能であるかどうかを検討することが求められます。

      (2)5W1H法

        このような視点から検討して市場細分化がなされたら、その市場をより具
        体的にイメージするために利用できる方法が「5W1H法」です。

        開発した製品が実際にどのように使用きれるかについて、5W1H=「誰
        が、どこで、何を、いつ、なぜ、どのように」使用するかを自問して、顧客の
        姿を明確にしていきます。

        市場細分化によって、ある程度顧客のイメージは決まっているはずです
        ので、それをさらに製品が使用されるシーンに従って具体的に想像するこ
        とで、開発製品のイメージを精巧度の高いものに近づけていきます。

        たとえば、市場細分化で自社の顧客を「40歳代の主婦」と想定していて
        も、都会の主婦の行動と地方都市の主婦の行動は買い物に行く手段(徒
        歩か車か)から違いますし、ニーズも異なってきます。

        「40歳代の主婦」をターゲットとしているといいながら、じつは「大都市に
        住む、40歳代で、子どもが高校生の主婦」だけに必要な製品を開発・製
        造しているケースなどが考えられる。

        このような誤差をなくすためにも、自社の開発・製造する製品がどのよう
        に使用されるかを5W1H法で確認することが有効です。

        5W1H法は、たとえば以下のように利用していきます。

         自社が新たに開発する製品が小型プリンターである場合、
         誰が:ビジネスマン、大学生、高校生、中学生
         どこで:仕事で、学校で、出張時に、遊びで、旅行で
         何を(プリントするのか):PCの内容、携帯電話で撮った画像
         (景色、友達)
         いつ:仕事中、帰宅後、学校で、電車の申
         なぜ:仕事の資料をつくるため、手帳に貼るため、写真シール
             にするため、自分の楽しみのため、シールをつくるため
         どのように:職場のプリンターを使用して出力する、家庭用
                 プリンターを使用して出力する、携帯用プリンター
                 を使用して出力する

        このような選択肢から、たとえば中学生が小型プリンターを使用するシー
        ンをさらに具体的に想定していきます。

         誰が:友達の多い中学生

         どこで:学校の休み時間、電車の申

         何を:携帯電話で撮影した友達の画像

         いつ:その場で

         なぜ:シールをつくるために

         どのように:携帯用小型プリンターで出力する

        このように具体的に想定していくと、たとえば「携帯電話で撮影した画像を

        その場でプリントできる」というニーズが想定されます。

        このニーズに基づいて、さらなる具体的なニーズ(たとえば、色、デザイ
        ン、サイズ、形、価格、重さなど)を明確にしていくことで、新製品の仕様を
        決定していくのです。

     経営革新を推進することが、下請体制の変化に負けない自立した企業となる
     ポイントです。

     自社の経営資源を製品・市場マトリクスで分析し、具体的な顧客を想定した新
     規開発をめざしていきましょう。

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製造業の品質管理と生産性向上

開発部門の見直し

開発部門の見直し

  ■問題山積の現場
   問題を発見するやり方には、次のようなものがあります。

   1.職場の点検

    経営・管理者自らが現場に出向き、自分自身の目で見て、点検するのが問題発見
    の基本となります。

    現場とは、開発部門に限らず、製造、販売といった、企業に直接付加価値を
    もたらす部門のことを指します。

    企業活動の最前線で起きている、不具合や問題点、担当者が因っていることなど
    から、問題を発見します。

    現場のちょっとした変化を見逃さず、部下の立場になって、その真意を「聴く」
    ことが肝要です。


   2.現状点検

    当初の目標・計画通りに業務が行われているか、基準・標準からの逸脱はないか、
    という観点で、自分が預かる職場の現状点検をするなかから、重要度・緊急性の
    高い問題があぶりだされます。

    経営・管理者自身が、本来あるべき「基準・標準」を頭に入れて、部下と一緒に
    現状を観て、それとのギャップを共有化するところから、問題が明らかになります。


   3.時系列比較、相場値との比較(ベンチマーキング)

    販売・生産に関する実績や管理指標を、時系列的に見ていくと、その傾向から、
    「何とかする必要のあること」が見えてきます。

    一方、業界のライバルである優良企業と比較してみると、自社の職場の相対的な
    位置づけがわかります。

    他社情報を得るためには、アンテナを高くするとともに、多くの社外の人たち
    とのフランクな付き合いを増やしていくとよいでしょう。


  □開発部門の問題

   管理者が、日頃の職場巡視の最中や、顧客や部下との対話のなかで、「おや、なんで
   こうなっているのだろう」とか「あれ、おかしいな」と気付くのが、問題発見の
   きっかけとなります。

   その「おや」、「あれ」をさらに掘り下げていくと、それぞれの立場で考えるべき
   事柄が出てきます。


   ふだんから見慣れた風景であれば、それが当たり前となってしまい、何もおかしく

   感じなくなってしまいます。

   何も感じなければ、そのまま通り過ぎてしまって、問題が形成されることはありません。

   さまざまな業態の会社にお伺いすると、「何でこんな仕事のやり方をしているのか。

   もっ と、早く楽に確実に行えるのに」と疑問に感じることがあります。

   ほとんどの場合、創業開始当時あるいは相当以前に決めた仕事のやり方をそのまま
   踏襲しているケースが多いようです。

   時代とともに、顧客の志向が変化してきているのに気付かず、従来通りのやり方を
   踏襲
しているうちに、「いつの間にかお客の数が少なくなった」という事態に陥る
   かもしれま
せん。

   顧客への提案がことごとく受注失敗となるのは、「ライバルとの大きな価格差」に

   あったことに気付いていなかった、という怖さを私たちはいつも抱えています。

   管理者以上の立場になると、 ふだんの仕事のなかから問題を発見して、素早く手を
   打っていかないと、会社の存続そのものが危うくなります。


   ものづくりにおいては、「品質の90%、コストの80%は設計段階で決まる」と

   古くからいわれています。

   しかし、多くの企業で開発業務の改革・改善が遅れている。

   ムダ取りや5Sなど現場改善に関する書籍はあふれているが、開発業務の改革・改善
   に関する書籍はごくわずかである。

   一般的に、技術者は無口で、コミュニケーションやマネジメントが苦手であり、加えて

   視野が狭く周りが見えない傾向にあります。

   半面、難しい開発テーマにはがぜん燃え、寝食を忘れてしまうほどの取り組み姿勢を
   発揮します。

   また、今ではCADが普及したため、技術者が何をしているのか外から見えなくなって
   しまった。

   ドラフター(製図台)だった時代は、引いている図面が誰でも見えるため、先輩や
   上司がさまざまなアドバイスをしてくれたものだが、今では孤軍奮闘している技術者
   が増えてきた。

   そこで、次に挙げる「開発現場の4大問題」について解説をします。

    1.止まらない品質トラブルの発生
    2.経営習慣病による危機感の欠如
    3.QDを最優先、Cは無関心
    4.慢性的な高負荷状態

    1.止まらない品質トラブルの発生

      多くのメーカーでは、グローバル化に対応するため、高度化・複雑化した新
      製品を次々に開発しています。

      しかも、国際競争力を高めるために、製品のコストダウン傾向がますます強
      まっている。

      このような状況に対応するため、経営者は開発部門に多くのヒト・カネ・モノを
      投入する。

      にもかかわらず、多くの技術者は、残業や休日出勤に明け暮れている。

      なぜなら、やるべきことが多いからです。

      品質問題の未然防止、低コスト化、デザイン検討、使いやすい設計、つくりや
      すい設計など、検討すべき項目が実に多いのです。

      それに加え、さまざまなトラブルへ迅速に対応しなければならない。

      例えば、試験段階で見つけた不具合は販売前に修正しなければならないし、
      顧客からのクレームには早急に対策を取らねばならない。

      後手に回れば、会社の信用が大きく損なわれてしまう。

      数多くの試験を行っていても、品質問題によるリコールは発生する。

      リコールにより特別損失を計上するとなると、経営の屋台骨を揺るがしかね
      ない。

      リコールの原因として、製造スキルの低下やコスト低下圧力による検査、品
      質管理体制の弱体化・省略化などの状況変化に品質保証力が追い付いて
      いないことが挙げられる。

      しかし、「開発業務の悪循環」と「つくって直す開発方式」の影響も大きいと考
      えられる。

      (1)開発業務の悪循環
        開発部門の多くの技術者は仕事に明け暮れていると前述しましたが、こ
        れは開発業務が悪循環に陥っているためだ。

        すなわち、品質不良などのトラブルが発生すると、対策のために時間が
        取られる。

        結果、やるべき試験や検討が十分にできないため、またトラブルが発生
        する。

        トラブルが治まると一安心、喉元過ぎれば熱さを忘れて、十分な再発防
        止策をとらないまま次のテーマに取り掛かる。

        そして、忘れたころに同じトラブルが再発する。

        例えば、設備設計を行う場合は、設備の動きを熟知したメカ設計者が「動
        作線図」を書かなければならない。

        それを見て、ソフトの設計者はプログラムを組むが、メカ設計者は忙しくて
        動作線図を書く時間がない。

        そのため、打ち合わせをもとにソフト設計者の想像でプログラムを書くこと
        になる。

        その結果は想像の通りで、トラブル対策に多くの時間が掛かることになっ
        てしまう。

      (2)つくって直す開発方式
        多くのメーカーでは、まず製品の目標を決めて、その目標値を満たす設
        計を行い、製品を試作する。

        その後、試作機をさまざまな試験にかけ、そこで見付けた不具合を改良
        するといったサイクルを取っている。

        この開発方式の最大の欠陥は、試験で見付けることができない不具合が
        市場に流失してしまうことです。

        製品が高度化・複雑化する一方で、開発期間は短縮しなければならな
        い。

        そうなると、試験の種類も期間も限定される。

        これが慢性化すると、設計者は、「どうせ時間を掛けて検討しても、予測し
        切れない不具合が発生するんだから」と、手を抜くといった行動にでてし
        まう。

        試作の段階で見付けて対策しよう」と考えてしまう。

        このような上流工程の準備不足により、量産段階で膨大な工数を発生さ
        せてしまう。

    2.経営習慣病による危機感の欠如
      このように開発部門では、開発そのものだけでなく、トラブルを処理するため
      に膨大な費用が発生してしまいます。

      しかし、経営者はその状況を異常と思わず、開発部門とはそういうものだと
      考えてしまう。

      これは経営者の「経営習慣病」であり、この危機感の欠如が開発現場の改
      革・改善を妨げているのです。

      まずは、開発業務に起因するトラブルに関わる全てのコストを集計すること
      から始めることをお勧めします。

      恐らく、その大きさに度肝を抜かれるに違いない。

    3.QDを優先、Cは無関心

      QCD(品質・コスト・納期)は「経営の3要素」であり、企業が持続的に発展し
      続けるための必要条件である。

      ところが、多くの中小企業ではQ(品質)とD(納期)は重視するものの、C(コ
      スト)に関しては全く無関心である。

      このような会社の技術者は、自分の財布の中身は気にするが、会社の懐具
      合は全く気にしない。

      湯水のごとく開発費を使う。このような状態では、利益が全く出ないのは当然
      です。

    4.慢性的な高負荷状態

      技術者が仕事に明け暮れることになる原因のもう一つが、「慢性的な高負荷
      状態」である。

      これが品質トラブルを引き起こしたり、人間らしい生活ができないために、う
      つ病などの精神的不調を引き起こしたりします。

      開発業務は思考業務のため、考えが行き詰まってタコツボ状態に陥ることも
      ある。

      しかも、開発業務は外から見えないため、管理者はマネジメントすることがで
      きない。

      そうこうしているうちに仕事がたまり、高負荷状態になってしまう。

  □品質トラブルへの対処方法

   1. つくって直す開発方式の限界

     多くの開発現場では「つくって直す開発方式」が行われている。

     試作品をつくり、試験をして、目標未達であれば原因分析を行い、その対策を
     再度設計に反映する。いわば「モグラたたき」で、コストも膨れ上がる。

     開発期間が十分に確保できるなら、このサイクルを気が済むまで回せばよい
     が、顧客や競合他社がいるため、なかなかそうはいかない。

     となれば、試験の種類も期間も限定される。

     そのため、試験で見付けることができない想定外の品質問題を抱えたまま、製
     品を市場に出してしまい、リコールを引き起こしてしまう。

     過去にはガス湯沸かし器や石油暖房機が事故を引き起こし、人命を奪った
     ケースもある。

     そうなると、開発現場だけではなく、会社全体に関わる大問題となってしまいま
     す。

     品質トラブルが止まらないという問題の本質は、技術者にあります。

     つまり、「何が起きるか分からないと手が打てないこと」です。

     これを解決してくれるのが「品質工学」である。

   2.突破口は品質工学 

     品質工学では、品質は「品物が企業の手を離れてから他人に与える有形・無
     形の損失」と定義される。

     通常、品質というと付加価値などのプラスの概念だが、品質工学では負の要
     素、すなわち「損失」として扱われる。

   3. 品質トラブルの本質はノイズによるバラつき

     品質トラブルには大きく2種類ある。

     1つは、製品全てに品質トラブルが発生する場合である。

     これに関しては、技術者が試験や評価をするため、社内で容易に見付けるこ
     とができる。

     発見できなければ、「手抜き」と言われても仕方がない。

     ところが、試験段階では合格でも、市場に出てから品質トラブルが発生するこ
     とがある。

     原因はノイズ(外乱)である。

     例えば、パソコンは市場に出ると、顧客の使用条件により振動や気温、湿度、
     操作ミスなどのノイズにさらされる。

     こうしたノイズの影響を受け、パソコンが本来の機能を発揮できなくなると、ク
     レームになる。

     品質トラブルのほとんどは「ノイズによるバラつき」なのだ。

     では、どのような対策があるのか。

     最も一般的な手法は品質管理だ。

     これは、バラつきの原因を見付けて除去する方法である。

     見付けてから直すため、どうしてもモグラたたきになってしまう。

     次は、出力調整(フィードバック)で、出力にズレが発生した場合にズレた分の
     入力を調整する。

     これもモグラたたきである。

     最後は、品質工学の手法で「ロバスト(頑強な)設計」と呼ばれるもの。

     ノイズを減衰させるような「ノイズに強い設計」を行うものである。

   4. 品質工学による開発方式

     品質工学による開発方式を次にまとめると、

     (1)試作機をつくらず、品質をつくり込む

       ロバスト設計により、あらかじめノイズの影響を受けにくい設
       計値を知り、図面に反映する。

     (2)バラつきの問題への対策を先に行う

       従来の開発方式では、初期段階でノイズを考慮せずに設計し、
       後から考慮するため、品質トラブルが発生する。
       これに対して、品質工学では初期段階でノイズを考慮し、ノイ
       ズを許容するような設計を行う。

     (3)2段階設計法

       品質工学では、先にバラつきへの対策を行い、その後に目標値
       を満たすためのチューニングを行う。
       従来の開発方式とは全く逆の順序になる。
       品質工学の効果は、開発効率の向上と開発期間の短縮だけでな
       く、市場品質問題の未然防止にもつながる。
       米国の技術者の必須スキルは、この品質工学と「TRIZ(ト
       ゥリーズ)」だと聞いたことがある。
       これは、発明的問題解決の理論で、旧ソ連海軍の特許審査官だ
       ったゲンリッヒ・アルトシュラーが、さまざまな特許を調べる
       うちに発見した一連の発明法則だ。

       日本でも普及してほしいものである。


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製造業の品質管理と生産性向上

ヒューマンエラーの改善

ヒューマンエラーと個人情報漏洩  

 ヒューマンエラーは様々な定義がありますが、日本ヒューマンファクター研究所によると、
 「達成しようとした目標から意図せずに逸脱することとなった、期待に反した人間行動」と定義
 されています。

 例えば、甚大な人的被害や経済的損失などを引き起こす可能性のある、患者の取り違え、バルブの
 閉め忘れ、ボタンの押し間違いなどがよく話題になります。

 特に、医療事故や航空機事故、労災事故など人命に関係する分野では先行して研究が進んでいます。

 一方、個人情報漏洩事故では、人の生命を脅かすことは皆無ですが、情報主体や企業に少なからず
 精神的苦痛や経済的損失を与える可能性がありますし、日常茶飯事で発生しているので、全く無視
 して良いものではなさそうです。

 ここではヒューマンエラーに着目して何か情報漏洩対策はないか検討しました。 

 詳しくは、

   個人情報の流出漏洩を防ぐ安全管理

□なぜミスをするのか?

 近年、ヒューマンエラーに対する関心が高まってきています。

 その理由には、テクノロジーの進歩により、一人の人間がコントロールする情報や力の量が大きく
 なったことがあげられます。

 自動車や電車、飛行機などの輸送機では操作ミスが人命を奪うこともあり得ます。

 プラントなどの事故では近隣にも多大な被害を及ぼします。

 世界中をつなぐコンピュータネットワークは瞬時に情報を提供していますが、間違った情報も素早く
 広大な範囲に拡散してしまいます。

 数字のちょっとした入力ミス(ポカミス)で株式市場が大混乱した事件は、まだ記憶に新しいのでは

 ないでしょうか?

 テクノロジーが高度化すればするほど、一人の人間のミスの影響力も増大していきます。

 また、電子制御された自動車や機械は、ほとんど故障しなくなり機器そのもののトラブルが減った
 ため、人間のミスがより目立つようにもなりました。

 そのため、産業界において、今後ますますヒューマンエラー対策が重要な課題になっていくことが
 予想されます。

 ここでは、ミスを軽減するための方法を検討し、個人でできる改善方法を提案したいと思います。

 そもそも、なぜミスは起こるのでしょうか? 

 ミスが生じる場合には表面的な原因の裏にいくつかの要因が隠れていることがほとんどです。

 一人の一つだけのミスでトラブルが生じるのではなく、機械の安全装置の問題、社員教育の問題、
 職場環境の問題などが背景にあり、それらが重なり、トラブルのカードがそろったときに大きな
 事故が発生してしまいます。

 そのため、ヒューマンエラーを考える際には、原因の結合も視野に入れておかねばなりません。

 このことを念頭に置きながら、ここでは、最後の引き金を引いてしまいかねない人間のミスすなわち
 ヒューマンエラーの部分に焦点をあてて見ていきたいと思います。

 一般的なヒューマンエラーの分類は、

  ①認知ミス 
  ②判断ミス 
  ③動作ミス

 の3つに分けられます。

  ①認知ミスは、知覚や認識の失敗によるものです。
   文字を読み間違えたり、情報を聞き間違えたり、見落としたりするなど、錯覚したり、失念
   したりするといった、いわゆる、うっかりミスとも言えるものです。

  ②判断ミスは、論理の誤りや判断のタイミングの悪さによるものです。
   非論理的、短絡的な判断だったり、判断は正しくても、そのタイミングが遅すぎたりといった
   場合です。

  ③動作ミスは、不適切な動作や、動作のタイミングの悪さによるものです。
   器用に操作できないといった動作上の問題や、シートベルトをする、サイドブレーキを引く
   というような、特に考えたり、意識しなくても身体が自然に連続する動作をこなしていく
   「行為スキーマ」と言われる手順が確立されていないことによるし忘れや、反対に習慣や
   クセなどで、ついうっかりやってしまったりするものなどがあります。

  このような人間の認知、判断、動作といった情報のインプットから行動のアウトプットまでの
  プロセスにおいて、なんらかの誤作動が生じ、そのまま修正されずに実行された場合にヒューマン
  エラーが生じるのです。

  これらの誤作動を引き起こす原因は、外部環境によるものと、内部要因によるものと、その
  中間に分けることができます。

  例えば、外部環境は、騒音や雑音、照明の明暗などの作業環境の悪さや、装置や機器の操作
  手順が確立されていないことなどがあげられます。

  一方、内部要因は、その人自身の身体面、心理面が影響するもので、健康を害していることに
  よるパフォーマンスの低下をはじめ、心理的な面では、慣れに慢心して手を抜いたり、緊張が
  足りずに不注意になったり、緊張過剰により短絡的な行動をしたり、自己顕示欲により過剰な
  パフォーマンスをしたり、不安や悩みごとで集中力不足になっていたり、といったことがあげ
  られます。

  そして、その中間は、作業に対する技能不足や、覚えることに対する記憶力不足といった、外部
  環境である業務の難易度と内部要因である個人の能力の相対的な差によるものがあげられます。

□ミスを減らす「メタ認知」
 ミスを減らすにあたって必要なことは、まず社員一人ひとりが自分自身のミスを減らそうと心がける
 ことです。

 外部環境については自社で対策する必要がありますが、内部要因については、自分自身が自己管理
 することでミスを減らすことが可能です。

 この自己管理方法には、認知心理学の概念である「メタ認知」の力を使う方法があります。

 「メタ認知」とは、簡単に言えば自分自身を客観的に知ることです。

 自分の認知パターンや思考、感情の動き、行動などを客観的に把握し認識することができる能力を
 「メタ認知能力」といいます。

 このメタ認知能力には、自分の心の動きなどをよく知る「自己モニタリング」と、自分の心と行動を
 適切に制御する「自己コントロール」の2つがあるとされています。

 メタ認知能力が高く、十分に機能していれば、自分自身の行動をモニタリングし、コントロール
 することができるのでエラーやミスは起こしませんし、起きてもすぐに修正することができます。

 では、どうすればメタ認知能力を身につけたり、高めたりすることができるのでしょうか? 

 メタ認知能力は知識の量に比例します。

 経験が浅い人は経験者よりもメタ認知能力は低くなります。

 例えば、ヒューマンエラーに関する知識が多い人と少ない人とではミスする可能性も異なります。

 そのため、医療分野などでは、しばしばヒューマンエラー対策として「ヒヤリハット」を含めた
 事例研究会が開かれています。

 これはヒューマンエラーに関する知識を増やし、メタ認知能力を高め、ミスを軽減しようとする
 一つの方法です。

 ただし、メタ認知能力が十分に備わっていても、一時的に働かなくなる場合もあります。

 情報が大量過ぎたり、逆に判断に必要な情報が不足したりする場合には、情報処理に忙しく、
 メタ認知が働かなくなることがあります。

 また、心理的にパニックになってしまった場合も同様で、このようなときには自分を客観視する
 ことが十分にできなくなってしまいます。

 メタ認知能力を高めるための基本的な方法としては、

  ①自分を客観視する習慣をつける 
  ②ミスを話し合う

 という方法があります。

  ①の方法ですぐに使えるのは業務日誌です。

  業務日誌には業務の記録や報告、連絡、相談など多くの目的がありますが、自分の一日の行動を
  客観視し見直す目的も含めるとよいでしょう。

  電話応対などで目の前に鏡を置いたり、プレゼンの練習をビデオに撮ったりするのをよく見かけ
  ます。

  鏡やビデオなどを使って自分の動作を確認することも客観視する力を強化します。

  ②の方法では、ヒヤリハットの体験やヒューマンエラーに関する勉強会などで体験を発表したり、
  文書化したり、相互に意見を述べ合うなどし、モノの見方を広げたり、知識を増やしたり、思考を
  客観視したりすることでメタ認知能力を向上させます。

  これらの方法はすでに実践されている企業も多く、ヒューマンエラーを軽減するのに効果をあげて
  います。

  比較的簡単に実行できるので、まだ行っていない場合は、このような段階から始めるとよい
  でしょう。

□ミスを軽減するパターン分析の方法

 さらに、しっかりミスを軽減したいという場合には、表面的な態度や行動だけでなく、その根源
 である心の内部で起きている認知パターンや思考パターンを理解しておく必要があります。

 人が物事を認識したり、判断したりするときには、認知のパターンや感情、欲求などが影響を
 及ぼします。

 物事を認識するための認知の枠組みを「認知スキーマ」、認知に対する影響を「認知バイアス 」
 と呼んでいます。

 例えば、好きな芸能人や知人に対しては、良い噂は信じるけれど、悪い噂は信じないとか、自分の
 好みの服装をしている人には肯定的な印象を持つなど、人は各自の認知スキーマによって物事を
 認識し、認知バイアスがかかった状態で判断を下しています。

 そのため、自分自身の認知や思考のパターンを理解し、物事をどう捉え、どのようなときに
 バイアスがかかるのか、メタ認知が働かなくなるのはどのようなときなのかといったパターンを
 知っておくことで、ミスを起こしそうな状態を事前に把握したり、判断ミスを回避したり、ミスに
 気づいたりすることが可能になります。

 認知療法で使われる方法を応用すると、効率的にパターンを把握することができます。

 認知療法は心理療法の一つで、人間の認知の状態を把握し、物事の捉え方が極端に否定的であったり
 楽観的であるなどの歪みを正したり、現実検討力を身につけたりするためのものです。

 何らかの出来事が起きたときに、どのような気分になり、どのようなことが頭に浮かんだかを検証
 していくことで、自身の認知パターンや自動化思考と呼ばれる思考パターンに気づくことができます。

 ここでは、それを少し変えて、ミスをする直前に、どのような気分で、何を考えていたかという
 ことをさかのぼって見直し、チェックしていく方法を使いたいと思います。

 例えば、予定していた会議の時間に遅刻してしまった場合、そのときの状況、気分、思考はどの
 ようなものであったかを見直してみます。

 すると、状況は、昔からの知人から電話があり、気分は楽しく、もう少し話していたい気持ちになり、
 思考は「あまり気が進まない会議だし、少しぐらい遅刻しても大丈夫だろう、ちょっと電話が入って
 しまったという言い訳もあるし……」という考えが浮かんでおり、少しでも長く楽しい気分の状況に
 いようとして自分の欲求をコントロールできていないことが明らかになります。

 このようなパターンがある人は、他の場面でも快楽的なことを優先しがちで、欲求のコントロール
 不全が起こりがちです。

 また、ファックスを間違えて送信してしまった場合はどうでしょう。

 そのときの状況は、いつもより忙しいうえ、上司から書類の書き直しを命じられ、気分はイライラし、
 早くその場を離れたい気持ちになり、思考は「あの上司はいつもそうだ。

 私のことなんて認めていないのだ。
 いったいいつになったら、この状態から解放されるのだろう……」という考えが浮かんでおり、普段
 であれば番号を押した後、送信ボタンを押す前に書類の社名と
表示社名を照合するのに、そのときは
 照合せずに即座に送信ボタンを押し、トイレに
行ってしまいました。

 早くその場を離れたい気持ちから不注意になっていたことがわかります。

 この場合は感情的になったときに注意力のコントロール不全になる傾向があるといえます。

 自分自身が、どのような状況、気分、思考のときにミスを起こしたのかを検証しミスの発生パターン
 を自覚することで、再び同じような状況になったときに自己モニタリングをし、ミスを回避する
 行動に切り替えることができます。

ポカミスの分類と心の状態

 ミスをする場合の心の状態は、個人的な内面の動きによるため、一人ひとりが自分の心の動きを
 把握してパターンを知っておく必要があります。

 ここでは、内部要因が原因のミスの場合、どのような心の状態のときにミスが生じやすいかを見て
 いきたいと思います。

 どこの職場でも、よく起こるミスには「思い込み」によるミス、「うっかり」ミス、「確認不全」
 ミスがあります。

 「思い込み(ポカ)」ミスは、先に紹介した、①認知ミスと②判断ミスと関連するもので、先入観
 で決めつけたり、憶測を事実と思い込んだり、物事を自分勝手に解釈したりすることによって起こる
 ミスです。

 このようなミスが生じやすい心の状態には、日ごろから「自分は正しい」と思いがちであったり、
 反対に「怒られたらどうしよう」「人にどう見られるだろう」といった思考パターンがあり、人の
 意見を聞いたり、事実を確認したりすることを面倒に思い、自分の思い込みで処理してしまいます。

 この場合、「たぶん、○○だろう」というレベルならマシですが、「○○に違いない」、もっと
 強化されて「○○だ」というレベルになると、間違っていることに気づくのが難しくなります。

 日ごろから思い込みで処理するクセがないかどうかをチェックし、「○○だ」と思っても、再度、
 確認し、他の人にも点検してもらうなどしましょう。

 ポカ(うっかり)ミスは、やるべきことを忘れてしまったり、やらなくてよいことをしたりして
 起こるミスです。

 心の状態としては、焦りや不安、パニック、怒り、失望など強い感情に支配されていたり、他事へ
 注意が向いていたり、「慣れ」による怠慢や慢心があり、メタ認知能力がうまく機能せず、注意が
 コントロールできなくなっている状態です。

 このようなときには、見間違えたり、聞き間違えたりします。

 ぼんやりと他事に気を取られていて、新しい操作手順を古い機械の操作手順の「行為スキーマ」で
 進めてしまったりするなどし、特に、①認知ミス、③動作ミスに影響します。

 強い感情にとらわれているときには、一旦、作業の手を止めて気持ちを整えましょう。

 また、他に気になっていることがあるときは、誰かに話をしたり、ノートに書き出したりして
 一時的に保留にするなどし、早々に解決しましょう。

 「確認不全」ミスは、確認し忘れたり、最終チェックをしなかったりすることで起こるミスです。

 心の状態は、感情的になっていたり、「細かいことは苦手だ」とか「こんなことは自分がやる
 仕事ではない」とか一手聞かけることを面倒がっていたりするときに起こりがちです。

 自分自身が「確認」することに対して、どう感じ、考えているのかを見てみましょう。

 大切だと頭で理解していても、気持ちは面倒に思っていたりする場合もあります。

 そのようなときは、やっていても、ふと見落としていたりします。

 確認に対する意識を点検し、意識を高め、習慣づけすることでミスを大幅に削減することが
 できるでしょう。

 心の作用は、とてもかすかで一瞬のものですが、人の認知を曇らせたり、行動を変化させたり
 するには十分な力を持っています。

 ミスをする直前の心の状態を検証し、自分のパターンを知っておくことで、再び同じような
 状況になったときにミスを繰り返さないよう対策することができます。

 メタ認知能力を向上させ、自己モニタリング、自己コントロールを強化してミスを軽減していき
 ましょう。


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