服務規律と制裁規定


  服務規律と制裁規定は、企業秩序の維持を図るために社員が遵守すべき義務や
  ルールを定めたもの
です。 

 ■服務規律

  会社で働く限り、従業員は職場のルールを
  守る義務があります。

  会社の業務内容と従業員に遵守してもらいたい事項を照らし合わせ、就業規則
  にこの義務(服務規律)を明文化することです。

  もちろん、従業員が就業規則に規定された服務規律に違反した場合には、何か
  しらの制裁(戒告や訓告、減給、出勤停止、あるいは解雇)を行うことになります。

  よって、服務規律は、会社の業務内容などを勘案して、より具体化しておくことが
  必要です。 

 就業規則への服務規律記載(例)

  第○条(服務規律)

  社員は職務の遂行にあたって、次の事項を守らなければならない。

   (1) 常に健康に留意し、積極的な態度で就業しなければならない。

   (2) 就業時間中は業務に専念し、みだりに職場を離れてはならない。 

   (3) 職場の整理整頓に気を配り、常に清潔にすること。

   (4) 勤務時間中は、定められた業務に専念し、上司の許可なく職場を離れ、ま
      たは他の者の業務を妨げるなど、職場の風紀、秩序を乱してはならない。

   (5) 職務の権限を超えた専断的行為を行ってはならない。

   (6) セクシャルハラスメント、パワーハラスメントまたはこれらに相当する行為に
      より、他者の人格と尊敬を侵害したり、職場の環境を悪化させてはならない。

   (7) 社内で賭博、暴行、脅迫などを行ってはならない。

   (8) 会社の名誉を傷つけたり、会社の不利益になるような言動は一切慎まなけ
      ればならない。

      業務上の失敗、ミス、クレームは、事実を速やかに上司に報告すること。

   (9) 酒気を帯びるなど就業に適さない状態で勤務(車の運転)をしてはならない。

   (10) 取引先より金品の授与を受け、または金品を要求することをしてはならない。

    (11) 許可なく会社の設備、車両、機械器具、備品その他を無断で使用し、私事に
          使用するための持ち出しをしてはならない。

    (12) 在職中又は退職後においても業務上知りえた機密を第三者に漏らしては
      ならない。

    (13) 会社の車両、機械、器具、備品その他を大切に扱い、消耗品や水道光熱
      の節約に努めること。

    (14) 社員が自己の行為により、会社の設備、車両、機械器具、資材、商品等を
          破損し、もしくは第三者に損害を与えたときは速やかに使用者に届け出ること。

    (15) 会社施設内において政治活動、宗教活動を行ってはならない。

    (16) 会社の許可なく会社施設内において、業務に関係のない集会、演説、文
          書の配布、掲示等私的な販売活動などを行ってはならない。

    (17) 会社の許可なく他の者に雇用され、または自営をしてはならない。

    (18) 事業場に日常携帯品以外の私品を持ち込んではならない。

  ■制裁規定とは

   通常、企業は職場の秩序を守るために一定の制裁規定を定めています。

   備品を持ち逃げした社員などに一定の制裁を課すことは、「職場秩序を乱した
   社員に対して、企業は厳しく対処する」という姿勢を示すためにも重要です。

   しかし、企業が制裁規定を自由に作成できるとなると、制裁規定は企業の一方的
   ・独断的なものとなる危険性があり、社員に必要以上の負担を強いることにも
   なりかねません。

   これでは、「職場秩序の維持」という本来の意義にはそぐわないものとなってしまい
   ます。

   そこで労働基準法(以下「労基法」)では、企業が定める制裁規定について一定
   の制約を設けています。

   まず、企業は作成した制裁規定を「就業規則」に定めなければなりません。

   就業規則とは、仕事をするうえで労使が守らなければならない約束事を定めた
   書面による定めです。

   常時10人以上の社員を雇用する企業は、必ず就業規則を作成し、それを行政
   官庁(企業の所在地を管轄する労働基準監督署)に届け出なければなりません。

   また、就業規則には単に制裁規定があることを記すだけでは足りず、その種類
   と程度(厳しさ)についても記す必要があります。

   制裁規定を企業本位に作成するのは問題であることから、「制裁規定にはどん
   な種類があるか」「それはどの程度の厳しさなのか」についても規定することが
   求められているのです。

  □制裁の制限
   制裁の内容はさまざまですが、一般的には、減給、出勤停止命令、懲戒解雇
   などがあります。

   これらの制裁規定の中で、労基法第91条では特に「減給」についてその限度を
   定めています。

  □減給
   就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給
   は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における
   賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

   と、なっています。

  □出勤停止
   出勤停止とは、一定期間の出勤停止を命じる処分です。

   前述した減給とは異なり、労基法で出勤停止日数の上限などを定めてはいま
   せんが、従業員が犯した行為に対する制裁の内容が妥当で、合理的であること
   が必要です。

   また、通常、出勤停止中は従業員に賃金を支給しません。これは「ノーワーク・
   ノーペイ」の原則によるもので、労働力を提供していないのであれば、賃金を
   支払う必要もないという解釈です。

  □懲戒解雇
   従業員との雇用関係を解除する最も厳しい処分で、多くの場合は退職金も支給
   されません。

   また、通常、企業が従業員を解雇する際は解雇予告期間の設定や解雇予告
   手当の支給が必要ですが、懲戒解雇の場合、労働基準監督署の認定を受けれ
   ば、解雇予告期間の設定などをせずに即時解雇することができます(産前産後
   休業の期間中など解雇制限期間中を除く)。

   なお、懲戒解雇に該当する事由(労働者の責に帰すべき事由)としては、次の
   ようなケースがあります。

    ・企業内における窃盗、横領、傷害など刑法犯に該当する行為をした場合
    ・賭博など職場規律を乱し、ほかの労働者に悪影響を及ぼす行為をした場
     合
    ・ほかの企業に転職した場合
    ・採用の際、経歴を詐称した場合
    ・14日以上正当な理由なくして無断欠勤し、出勤の督促にも応じない場合
    ・出勤不良で数回にわたり注意をしても改めない場合  

  □制裁規定作成の留意点ひな型
   制裁規定を作成する際、労基法の基準を満たしているかを確認しなければなり
   ません。

   例えば、労基法第91条を超える減給の定めをすることはできません。

   また、制裁規定があまりに厳しい場合、従業員が企業は従業員のことを信用
   していないと感じ、職場全体の士気が下がってしまう危険性があります。

   制裁規定を作成する際は、このようなことに留意し、従業員に良い緊張感を与え
   るが、モチベーションを下げるほどではないといった程度の厳しさにすることが
   ポイントといえます。

   ■懲戒処分

   懲戒とは、職場の秩序維持、正常な業務運営の確保、企業財産の保全、信頼
   関係の保持等を目的として、企業が独自の基準で定める不利益処分(制裁)
   のことです。

   そして、就業規則に懲戒に関する定めを設けることによって、従業員に業務命令
   や職場規律の実行を間接的に強制するものです。

   従業員の懲戒処分は就業規則の制裁規定に沿って行われますので、原則として
   就業規則の制裁規定に定めていない行為や態度について懲戒処分を課すことは
   できません。

   制裁規定を作成する際、あまりに厳しいと職場全体の士気低下を招く恐れが
   あるので、モチベーションを下げないことに留意する必要があります。 

  第○条(懲戒の種類)
   会社は、従業員が次項各号のいずれかに
   該当する場合は、その程度に応じて次の区
   分により懲戒を行う。

   1.けん責、戒告、訓戒:始末書を徴して、
     将来を戒める。

   2.減給:始末書を徴して減給する。        
     減給は1回の額が労働基準法の規定に
     より算出した平均賃金の1日分の5割を
     超えることなく、また総額が本規則第○条
     に定める一つの賃金計算期間における賃金の1割を超えることはない。

     出勤停止:始末書を提出させるほか、7日間を限度として出勤を停止し、
            その間の賃金は支給しない。

   3.昇給停止:次回の昇給を停止する処分で、将来に向けた賃金の減額と
            なる。

   4.停職:始末書を徴して停職を命ずる。
         停職は、1年以内を限度とし、その間は無給とする。

   5.降格:始末書を徴して降格する。

   6.論旨解雇:論旨のうえ解雇する。情状に応じて退職金の全部または一部
            を支給しないことがある。

   7.懲戒解雇:即時に解雇する。懲戒解雇の事由ならびに退職金の取り扱い
            は本規則第○条および第○条に定める通りとする。

  第○条(懲戒の事由)

   従業員が次の各号のいずれかに該当した場合には、その程度に応じ、けん責、減
   給、停職、降格、論旨解雇に処する。

   ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、訓戒にとどめることがある。

    1.就業規則、社内規定、通達に違反した時。

    2.正当な理由なく、無断で欠勤、遅刻、早退を繰り返した時。

    3.正当な理由なく、無断でしばしば職場を離れた時。

    4.職務、勤務に関する諸手続きを怠り、または不正に偽った時。

    5.素行不良で著しく会社内の秩序または風紀を乱した時。

    6.会社を中傷誹謗し、または虚偽の風説を流布宣伝した時。

    7.会社に所属する個人の名誉・信用を傷つけた時。

    8.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。

 

  第○条(懲戒解雇)例
   会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当した場合に懲戒解雇することがで
   きる。

   この場合において、労働基準監督署長の認定を受けた時は、本規則第○条の予
   告手当は支給しない。

   ただし、平素の服務態度そのほか情状によっては、論旨解雇または減給もしくは
   出勤停止にとどめることがある。

   1.重要な経歴を詐称して雇用された時。

   2.正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかった時。

   3.正当な理由なく無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返し、再三にわたって注意
     を受けても改めなかった時。

   4.正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかった時。

   5.故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えた時。

   6.会社内において刑法そのほか刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、そ
     の犯罪事実が明らかとなった時(当該行為が軽微な違反である場合を除く)。

   7.素行不良で会社内の秩序または風紀を著しく乱した時。

   8.数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度などに関し改善の
     見込みがないと認められた時。

   9.相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げたり、職場の環
     境を悪化させ、またはその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の
     不利益を与えるような行為を行った時。

   10.許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品などを使用した時。

   11.会社における職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先などより不
     当な金品を受け、もしくは求め、または供応を受けた時。

   12.私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷などによって会社の名誉信用を
     傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があった時。

   13.会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務
     の正常な運営を阻害した時。

   14.そのほか、前各号に準ずる程度の不都合があったと会社が判断した時。

 

  「懲戒処分通知文書」の書き方

   当人への通知文書  当人の上司への通知文書

 

                      お問合せ・ご質問こちら


                      メルマガ登録(無料)はこちらから 

 

規定.gif
懲戒.gif

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月24日
記事:コストダウンの最終目標」更新しました。 
2024年4月23日
記事:保険代理店業の環境整備 Ⅱ」更新しました。
2024年4月22日
記事:「オンリーワンを目指す」 更新しました。
2024年4月19日
記事:「効率的な仕事の進め方 Ⅱ」更新しました。
2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501