職場のメンタルヘルス対策

職場のメンタルヘルス対策 


  近年、「メンタルヘルスの不調は仕事が原因だ」と考える労働者の増加に伴い、
  労災の請求だけでなく、民事訴訟に発展するケースも増えています。

  厚生労働省は、平成21年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補
  償状況について発表しましたが、精神障害等に係る労災請求件数は前年比2割
  超の増加
となりました。

  今では職場のメンタルヘルス不調者の発生は他人事ではなく、その原因が業務上
  の理由となれば企業の安全配慮義務が問われ、損害賠償請求まで及ぶこともあり
  ます。

  平成19年の調査ですが、対策に取り組めていない事業所が約2/3あり42.2%の
  事業場が、その理由として取り組み方がわからないと回答していました。
  (労働者健康状況調査)


  そこで、メンタルヘルス対策の具体的推進事項として、厚生労働省が通達におい
  て示しているポイントを整理してみました。

  まずは、セルフチェックしてみましょう。

   ①衛生委員会等での調査審議の徹底

     ・メンタルヘルス対策を審議する場が
      あるか

     ・その議事内容を労働者に周知徹底
      しているか

   ②職場における実態の把握

     ・メンタルヘルス上の理由による休業者が
      いるか

     ・休業者がいる場合は人数を把握しているか

   ③心の健康づくり計画の策定

     ・「心の健康づくり計画」という言葉を知っているか

     ・事業者がメンタルヘルス対策を積極的に推進する旨を表明しているか

   ④職場内の体制の整備

     ・産業医がいるか(50人以上の事業場)

     ・職場にメンタルヘルスの推進担当者がいるか

   ⑤教育研修の実施

     ・メンタルヘルスに関する研修会を開催したことがあるか

     ・管理監督者(上司その他の労働者を指揮命令する者)への教育研修
      を実施しているか

   ⑥職場環境等の把握と改善

     ・職場環境に関するアンケートを実施しているか (作業内容、労働時
      間、仕事量、人間関係等)

   ⑦不調者の早期発見と適切な対応の実施

     ・メンタルヘルス不調者の相談体制があるか

     ・メンタルヘルス不調者に対し、医療機関等につなぐ体制があるか

     ・長時間労働者に対し、面接指導を行う仕組みがあるか

   ⑧職場復帰支援

     ・メンタルヘルス不調で休業した人の職場復帰支援プログラムがあるか

  メンタルヘルス対策は、企業の労務リスク対策であると同時に、企業の生産性の
  向上対策
でもあります。

  厚生労働省が設置した「メンタルヘルス対策支援センター」の次のような無料相談
  も活用して、対策の具体的な進め方を検討してみてはどうでしょう。

   ・職場のメンタルヘルス対策の取り組み方法

   ・不調な労働者の対応方法   

 
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職場のメンタルヘルス対策

メンタル面の不調による休業者の職場復帰支援

メンタル面の不調による休業者の職場復帰支援


  ■企業に求められる「心の健康対策」

   変化の激しい現代はストレス社会とも呼ばれています。

   厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調査」によると、職業生活などにおいて強い不安や
   ストレスなどを感じている労働者は、全体の58.3%に上っています。

   また、過去1年間にメンタル面の不調により連続1カ月以上休業または退職した従業員が
   いる事業所は全体の7.6%となっています。

   同調査によると、なんらかの心の健康対策に取り組んでいる事業所の割合は、全体では
   58.4%で、その取り組みのひとつに、職場復帰支援があります。

   ストレス社会において、メンタル面の不調は誰もがなる可能性があり、一定期間休業した
   としても、円滑に職場復帰してもらうことが大切です。

   そのため、会社は積極的に従業員の心の健康対策に取り組むことが求められています。

   このようななかで、「メンタル面の不調で休業していた従業員からの職場復帰の申し出を
   認めたところ、再び不調になり、再休業してしまった」といった例も多くみられます。

   会社は従業員に対して安全配慮義務を負っており、このような事態は避けなければなりません。

   そこで、職場復帰支援のルールを整備し、会社が責任をもって職場復帰できるかを見極める
   ことが必要になります。

   次項からは、メンタル面の不調による休業者の職場復帰支援について解説します。

   ここでは、中小業企業で専属の産業保健スタッフがいないケースを想定しています。

  □織場復帰支援の流れ

   メンタル面の不調により休業している従業員が円滑に職場復帰できるよう、職場復帰支援の
   手順や規定を整備し、復帰までの流れをあらかじめ定めておきましょう。

   1.職場復帰支援の流れ

    メンタル面の不調により休業している従業員の職場復帰支援の流れの例は図のとおり
    です。

   2.主治医による判断

    休業中の従業員に職場復帰の意思がある場合には、職場復帰希望日より一定期間前
    (1カ月前など)に申し出てもらうようにします。

    その場合に、会社は従業員に「職場復帰が可能である」旨が記載された主治医の診断書を
    提出するように求めます。

    ここで留意すべき点は、主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって
    職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力
    の回復程度を判断しているとは限らないということです。

    また、従業員が職場復帰を急ぐあまり、本人の希望が反映されている場合もあります。

    そこで、あらかじめ主治医に対して「必要とされる業務遂行能力」や「社内勤務制度」などの
    情報を提供し、従業員が就業可能な回復程度にまで達しているかどうかを、主治医の意見
    として提出してもらうようにするとよいでしょう。

    この場合には、事前に「情報提供依頼書」などの書式を作成し、従業員の同意を得たうえで、
    本人から主治医に渡してもらうようにします。

    また、主治医だけではなく、産業医など会社に関与する医師にも主治医の診断書について
    意見をもらうことが大切です。

    そのうえで、従業員の状況を確認するために、本人との面談を実施します。

   3.職場復帰の可否の判断

    主治医の診断書、情報提依頼供書の内容、産業医の意見、本人との面談結果など、
    収集した情報を勘案したうえで、職場復帰の可否を判断します。

    職場復帰できるかどうかについては、次のような観点から総合的に判断します。

     ・従業員の職場復帰に対する意思の確認

     ・治療状況および病状の回復状況

     ・業務遂行能力

     ・今後の就業に関する従業員の考え

     ・家族からの情報

     ・職場環境

   4.職場復帰支援プランの作成

    次に、下記の項目について検討し、職場復帰を支援するための具体的プランを作成します。

     ・職場復帰予定日

     ・職場の上司による就業上の配慮
      ……業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な
         就業上の配慮、治療上必要な配慮など

     ・人事労務管理上の対応など
      ……配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否および必要性

     ・産業医などによる医学的見地からの意見
      ……安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見

     ・支援体制
      ……上司や同僚などによる支援の方法、就業制限などの見直しを行う
         タイミング、すべての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期
         についての見通し

     ・その他
      ……従業員が自ら責任をもって行うべき事項、試し出勤制度(職場環境に
         慣れることを優先した出勤制度)の利用、事業場外資源(職場復帰
         支援サービス)の利用

   5.職場復帰の決定

    ここまでの流れを踏まえ、会社は従業員の状態の最終確認をしたうえで、最終的な職場
    復帰の決定を行います。

    その際に、可能であれば産業医に「職場復帰に関する意見書」を作成してもらい、それに
    基づいて確認しながら進めるとよいでしょう。

    決定の内容は、就業上の配慮の内容と併せて従業員に通知します。

    なお、復帰後の具体的な就業上の配慮の例は次のとおりです。

     ・短時間勤務

     ・軽作業や定型業務への従事

     ・残業や深夜業務の禁止

     ・出張制限

     ・交代勤務の制限

     ・危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務などの制限

     ・変形労働時間制度の制限または適用

     ・異動や転勤についての配慮

   6.職場復帰後の支援

    職場復帰後は、上司が状況を観察しながら支援を行い、下記の事項を定期的に確認し、
    必要であれば職場復帰支援プランの見直しを行います。

    復帰後は元の職場に戻すことが原則ですが、従業員の負荷を考慮し、段階的に元の
    職場に戻すなどの配慮が必要です。

     ・疾患の再発、新しい問題の発生などの有無の確認

     ・勤務状況および業務遂行能力の評価
      ……本人および上司の意見などを聞く

     ・職場復帰支援プランの実施状況の確認

     ・治療状況の確認
      ……通院状況、病状や今後の見通し等

     ・職場復帰支援プランの評価と見直し

     ・職場環境の改善など
      ……作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境などの
         評価と改善

     ・上司・同僚などの負担への配慮

  職場復帰規定例

  □職場復帰支援のための面談記録票例

   休業している従業員が職場復帰できるかどうかの情報収集、評価・判断するための資料
   として、次の「職場復帰支援のための面談記録票」のような書式があると便利です。
 

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職場のメンタルヘルス対策

職場におけるメンタルヘルス対策

職場におけるメンタルヘルス対策


  ■職場におけるメンタルヘルスの現状

   1.メンタルヘルス問題の原因と現状

    経済状況が厳しさを増すなか、労働者一人ひとりにかかる負担も増大しています。

    同時に、成果主義による人事評価制度や、社内IT化、英語の社内公用語化な
    ど、職場環境も人きく様変わりし、新たなストレスを生み出しています。

    こうした状況のなか、職場には余裕のない労働者が増え、他者との協調も生ま
    れにくくなり、孤立を深めてしまうといった問題が生じています。

    厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調奄」によると、労働者の6割近く
    が「仕事でのストレスがある」と回答しています。

    その原因のトップ3は「職場の人間関係」、「仕事の質」、「仕事の量」となってお
    り、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上の休業または退職に至った労働
    者がいる事業所は全体の7.6%にのぼっています。

    近年、「メンタルヘルスの不調は仕事が原因だ」と考える労働者が増え、精神障
    害等による労災の請求件数も年々増えています。

    仕事上の過度な負担やストレスによる病気も労災の対象として認められるよう
    になったことによるものですが、年代別にみてみると30歳代がトップで、もっとも
    ストレスを感じている世代だといえます。

    メンタルヘルスの問題は、もはや労働者個人だけではなく、会社全体の問題で
    あり、メンタルヘルス不調者を出さない職場づくりがいま求められています。

   2.メンタルヘルスの問題が会社に与える損失

    メンタルヘルスの問題は、労災の請求だけでなく、民事訴訟に発展するケースも
    増えています。

    業務との因果関係を厳格に審査したうえで認定の可否を決める労災認定に対
    し、民事訴訟は労働者の過失なども考慮したうえで損害額を算定するため、結
    論が異なることも珍しくありません。

    民事訴訟における損害賠償額は、企業規模や支払能力に関係なく決定し、高
    額化の傾向もみられることから、場合によっては会社の存続にも影響を及ぼし
    かねません。

    不幸にも労働者が過労死や過労自殺をしてしまった場合、非常に重い賠償責
    任を問われる可能性があることを想定しておかなくてはなりません。

    職場内でメンタルヘルスの不調を訴える労働者が増加すれば、業務の生産性
    が低下するだけでなく、さまざまなリスクが生じてきます。

    おもなリスクは次のとおりですが、メンタルヘルスの不調を訴える労働者が減れ
    ば、これらのリスクが減るだけでなく、労働者も安心して生産性を上げることがで
    きます。

    メンタルヘルス対策を放置することは、会社の損失を甚大にすることにもつなが
    ります。

   3.メンタルヘルス対策への取り組み

    厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調査」で、実際にメンタルヘルス対
    策に取り組んでいる事業所の割合をみてみると、労働者1000人以上の事業所
    では9割を超えているものの、全体では58.4%にとどまっており、50〜99人規
    模で83%、30〜49人規模で67.0%、10〜29人規模で50.2%となっています。

    その具体的な取り組み内容としては、「労働者のストレスの状況などについて調
    査票を用いて調査(ストレスチェック)」(64.3%)、「メンタルヘルス対策に関す
    る労働者への教育研修・情報提供」(40.6%)、「メンタルヘルス対策に関する
    事業所内での相談体制の整備」  (39.4%)の順になっています。

    なお、メンタルヘルス対策に取り組んでいない事業所は、「専門のスタッフがい
    ない」(44.3%)、「取り組み方がわからない」(42.2%)といった問題点をあげ
    ています。

    調査の結果から、いかにして労働者からの相談に対応するか(専門スタッフとの
    連携など)がメンタルヘルス対策のカギといえますが、社内での対応が難しい場
    合には外部の専門機関による支援も視野に入れて体制を整備していくことが重
    要です。

   4.まずは法令遵守の体制整備から

    訴訟リスクを低くするには、法令を遵守した社内ルールづくりが大切です。

     ・就業規則に書かれている内容は最新の労働基準法に対応できているか

     ・労働基準監督署に「時間外・休日労働に関する協定書」を届け出ているか

     ・労働安全衛生法で義務づけられている産業医や衛生管理者、衛生委員会
      や安全委員会を設置しているか

    などを確認してみましょう。

    訴訟に発展した場合、会社側がメンタルヘルス対策を講じていたかが争点とな
    るわけですが、法令違反が指摘されれば状況は不利になってしまいます。

    まずは、法令を遵守した体制を整備することが重要です。

  □メンタルヘルス対策の4つのケア

   メンタルヘルス対策には、国の指針で示されている「4つのケア」と呼ばれる考え
   方があります。

    1.セルフケア

    2.管理監督者によるケア

    3.社内の産業保健スタッフ等によるケア

    4.社外の専門機関によるケア

   1.セルフケア

    セルフケアとは、労働者自らがストレス状態に気づき、適切に対処するための
    知識と方法を身につけて自分自身でケアすることをいいます。

    セルフケアで重要になるのが「気づき」です。

    ストレス状態に置かれていることに労働者自らが気づき、不調に陥らないよう早
    期に対処することがポイントになってきます。

    そのために会社が取り組むべきことは、

     ・労働者に対してメンタルヘルスに関する正しい知識の教育研修と情報提供

     ・労働者が利用できる相談窓口の整備や周知、専門機関に関する情報提供

     ・労働者が自分でストレスチェックできる機会の提供

    などです。

    また、2006年、労働安全衛生法が改正され、過重労働(働きすぎ)の労働者に
    対して医師による面接指導を一部義務化するなど、職場におけるメンタルヘル
    ス対策が−段と強化されました。

    残業の多い労働者に対しては、疲労蓄積度をチェックしてもらい、医師による面
    接指導が必要かどうかを見極めるようにしましょう。

    <参考> セルフチェックに使えるウェブサイト

      ・職業性ストレス簡易評価ページ(中央労働災害防止協会

      ・こころの病気のセルフチェック(UTU−NET

      ・労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(安全衛生情報センター

   2.管理監督者によるケア

    管理監督者は、部下と身近に接しているため、不調にも気づきやすい立場にあ
    ります。

    一方、パワハラやセクハラなど、管理監督者の言動に問題があって不調をもた
    らしているケースもあります。

    こうしたことから、管理監督者に対するメンタルヘルス教育が重要になってきます。

    「4つのケア」のなかでも要となるのが管理監督者によるケアともいえます。

    会社として取り組むべきことは、

     ・管理監督者に対してメンタルヘルスに関する正しい知識の教育研修と
      情報提供 (管理監督者の役割、いつもと違う部下の把握と対応、相談
       への対応など)

     ・部下とのコミュニケーションについての研修(部下への声かけ、傾聴
      訓練など)

     ・職場環境の評価、ストレス要因の把握、職場環境の改善

    などです。

    <参考>

     管理監督者向けの研修として活用できるウェブサイト

      ・メンタルヘルス対策(こころの耳

   3.社内の産業保健スタッフ等によるケア

    社内の産業保健スタッフ等とは、産業医、衛生管理者、保健師、人事・労務担当
    者を指します。

    産業医や保健師等はおもに医学的な見地からの助言や指導を行い、衛生管理
    者や人事・労務担当者はおもに管理監督者によるケアのフォローをします。

    ストレスの原因が職場にある場合、上司や同僚に相談することができずにストレ
    スを抱え込み、症状が悪化してしまうこともあります。

    そういった場合、社内に専門スタッフがいることで、労働者も安心して相談をす
    ることができ、より適切な対応が可能となります。

    社内の産業保健スタッフ等によるケアを行うに当たり取り組むべきことは、

     ・産業医による毎月1回の社内巡視、教育研修、面接その他の助言・指導
      の実施

     ・相談窓口の設置(プライバシー保護に重点をおき、場合によっては電子
      メールでの相談も)

     ・保健師によるメンタルヘルス不調者への面接や相談、保健指導の実施

     ・産業保健スタッフ等による職場環境の改善・指導

    などです。

   4.社外の専門機関によるケア

    メンタルヘルス問題が悪化した場合、社外の専門機関の支援を受けることも必
    要です。

    具体的には、メンタルクリニックや精神科、心療内科など専門の医療機関の情
    報を把握しておき、状況に応じて協力を求める体制を構築しておきます。

    メンタルヘルス対策は、専門スタッフの確保や費用の問題などもあり、すべてを
    社内で取り組もうとすると大変です。

    そこで、まずは無料で利用できる専門機関を活用できないか検討してみましょう。

    また、メンタルヘルスの分野には「EAP(従業員支援プログラム)」というメンタル
    ヘルスケアの対策手法を専門に提供する企業もあり、メンタルヘルス対策につ
    いてのコンサルティングや研修などの提供も行っています。

    そういった専門サービスを利用してみるのも方法のひとつです。

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職場のメンタルヘルス対策

治療休暇制度
 

  ■治療休暇制度とは

   会社員が長期の治療を要する病気にかかってしまった場合、通院しながら仕事を
   継続するのは容易なことではありません。

   治療に伴う身体的・精神的・経済的負掛まもちろんですが、職場の理解や協力が
   十分に得られなければ、仕事と治療の両立が難しくなり、厳しい状況へと追い込
   まれてしまいます。

   たとえば、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人がかかる可能性があるとい
   われている「がん」では、化学療法やホルモン療法を行なう場合、長期にわたって
   定期的に通院する必要があります。

   また、夫婦の10組に1組が悩んでいるともいわれる不妊の治療についても同様
   です。

   これらの治療に対して会社のサポートがなければ、従業員は年次有給休暇を利
   用したり欠勤をしたりして通院せざるを得ません。

   そこで、仕事と治療の両立を支援する制度、つまり、従業員が安心して通院治療
   を受けられる制度づくりが会社に求められています。

   ここでは、治療休暇制度について紹介します。

   1.治療休暇制度とは 

     治療休暇制度とは、長期的かつ定期的に治療しなければならない疾患をもっ
     た従業員が、通院のために休暇を取得することができる制度です。

     多くの会社では就業規則に休職制度を定めていますが、休職制度は、連続し
     た一定期間の欠勤を想定しているため、通院などの断続的な欠勤については
     原則認めていません。

     そのため、通院には年次有給休暇を利用するのが一般的ですが、通院の頻
     度によっては有給休暇をすべて消化してしまい、欠勤が生じてしまうことも起こ
     り得ます。

     そうした不利益を解消し、通院治療が必要な従業員のニーズに合った柔軟な
     対処法が治療休暇制度です。

   2.安全配慮義務とプライバシー保護

     治療休暇制度を導入するに当たっては、適用対象となる疾患を具体的に特定
     することが望ましいといえますが、長期にわたって定期的に通院しなければな
     らない疾患となると、がんを始め、人工透析が必要な腎臓病や心臓病といった
     循環器系の病気など、おのずと高度な治療を要する病気が中心となります。

     また、不妊治療に取り組む従業員も想定する必要があるかもしれません。

     これらの治療を受ける従業員の立場になってみると、まず「上司や同僚に病気
     のことを知られたくない」と考えるのではないでしょうか。

     非常にプライベートかつデリケートな間潜であるため、十分な配慮がなされぬ
     まま必要以上に知れわたってしまうと、噂になったり誤解や偏見を招いてしま
     い、従業員のプライバシーを侵害してしまう恐れがあります。

     また、会社には、従業員が健康を害することなく安全に働けるよう配慮する義
     務(安全配慮義務)があります。

     そのため、会社は、従業員の健康に関する情報を把握しておく必要があり、従
     業員は、会社から求められたら健康に関する情報を提供する義務があります。

     会社は、その情報を基に仕事と治療の両立をサポートするわけですが、第一
     に優先すべきは、従業員のプライバシー保護に重点をおいた情報管理の徹底
     です。

   3.社内規定に盛り込むポイント

     治療休暇制度の具体的な内容については、後からトラブルにならないよう、就
     業規則内もしくは別規定に明文化しておくことが重要です(次項に規定例を紹介)。

     規定に盛り込むおもな項目は次のとおりです。

      ・適用対象者(勤続年数などの要件)

      ・適用対象となる疾患(がん、精神疾患、難病、不妊症など)

      ・適用となる治療の内容(通院治療、検査、短期入院、経過観察など)

      ・取得できる休暇の単位(1日単位、半日単位、時間単位など)

      ・年間の取得日数の上限と繰越の可否

      ・休暇取得中の給与の有無

      ・休暇を取得する際の届出方法、提出書類の有無・種類(診断書、届出書など)

      ・休暇取得者に対する配慮(個人情報の管理、業務量の調整など)

   4.運用のポイント

     運用のポイントは大きく分けて3つあります。

     (1)従業員に対する十分な説明

       仕事と治療の両立について、一番悩んでいるのは従業員自身です。

       「職場に迷惑をかけたくない」、「悪いことをしているわけではないが、後ろ
       めたさを感じてしまう」といった不安を解消すべく、治療休暇制度について
       の説明を十分に行い、利用に向けてサポートすることが重要です。

     (2)人事担当者および上司との情報の共有

       仕事と治療を両立させるために、人事担当者および上司が中心となり、従
       業員から疾患に関する情報(今後の治療計画や配慮事項など)を収集します。

       場合によっては、主治医や産業医からも意見を聞くなど、疾患についての
       正しい知識をもち、理解することが重要です。

       病状や考えられる副作用について、出来ること・出来ないこと、業務中や業
       務内容における注意点など、安全配慮義務の観点からも情報を共有します。

       正確で具体的な情報が多いほど、今後予想されることに対して会社側も対
       応しやすくなります。

       場合によっては、業務の軽減や配置転換、短時間勤務への切り替え、残業
       のセーブなど、本人および医師の意見なども十分に聞いたうえで、柔軟に
       対応することも検討します。

     (3)職場内の調整

       通院や体調管理のために働き方が変わることに対して周囲の理解と支援
       を得るためには、ある程度の情報を伝える必要が生じるでしょう。

       個人情報保護法では、第三者への個人情報の提供には本人の同意がなく
       てはなりません。

       社内の誰に対してどこまで伝えるのか、本人とも十分に相談したうえで職
       場内の調整を図ることが大切です。

       その際、誤解や偏見をなくすことを目的とした教育の実施なども効果的で
       しょう。

       そのうえで、上司はほかの従業員への配慮(業務量の調整、情報の共有な
       ど)とともに、治療中の従業員への声かけなどによって、相談しやすい体制
       づくりを心掛けるようにします。

       これらの点に留意して、通院治療を必要とする従業員が柔軟に働ける職場
       環境づくりに取り組んでいきましょう。

  治療休暇制度規定例(別紙)

 

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職場のメンタルヘルス対策

事業場における治療と職業生活の両立支援


  近年の医療技術の進歩で、かつては「不治の病」とされていたものが治療により生
  存率が向上し、「長く付き合う病気」に変化しています。

  たとえば労働者が「がん」や「脳卒中」などにかかった場合、通院をはじめとする治
  療と仕事の両立が可能であったとしても、会社の就業体制が整備されていなけれ 
  ば、仕事の継続はおろか、休職をしたところで復職は困難となってしまいます。

  この課題に対し厚生労働省は、会社において適切な就業上の措置を行いつつ、治
  療に対する配慮が行われるようにするための、ガイドラインを公表しました。

   1.留意点

     対象となる病気は、「がん、脳卒中、心疾患、肝炎、その他難病」で、反復・継
     続して治療することが必要なものです。

     仕事の繁忙等を理由に必要な就業上の措置や配慮を行わないことがあって
     はならず、労働者から支援を求める申し出があれば、会社は、仕事によって病
     気の悪化、再発、労働災害が生じないよう、治療に対する配慮を行うことが必
     要です。

   2.環境整備

     治療と仕事の両立支援に取り組むに当たり、会社は、まず基本方針や具体的
     な対応方法、社内ルールを作成することになります。

     その上で当事者やその同僚となりうるすべての労働者に意識啓発をすること
     で、両立支援がより円滑に実施できるようなります。

     両立支援のための社内制度の例としては、傷病・病気休暇、短時間勤務、在
     宅勤務(テレワーク)、長期休業後の試し(慣らし)出勤などが考えられます。

      環境整備のための検討・実施事項(例)

       ① 労働者や管理職に対する研修などによる意識啓発

       ② 労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口を明確化

       ③ 時間単位の休暇制度、時差出勤制度などを検討・導入

       ④ 主治医に対して業務内容などを提供するための様式や、主治医から
          就業上の措置などに関する意見を求めるための様式を整備

       ⑤ 事業場ごとの衛生委員会等における調査審議

   3.治療と仕事の両立支援を行うに当たっての進め方

     厚生労働省のガイドラインでは、両立支援の進め方について次のような手順
     を示している。

     主治医からの情報をもとに、関係者間で情報共有や連携を図っていくことが重
     要となりますが、関係者には、主治医のほか、産業医、保健師等スタッフ、人
     事労務担当者、上司・同僚、労働組合、社会保険労務士などが挙げられま
     す。

     会社の就業規則を見てみると、治療が定期的に繰り返される疾病に対応でき
     るような、休職制度や休暇制度などが規定されていないものが見受けられま
     す。

     就業規則の傾向として、労務リスクに対応するために作成してきたものが多い
     ことと思われますが、労働者が安心して働けるように職場環境を整備し、離職
     率の低下などを実現させるためにも、「就労支援」という違った視点を取り入
     れ、今ある就業規則を見直してみることをお勧めします。


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職場のメンタルヘルス対策

衛生委員会の設置が義務付け
 

  ■衛生委員会の設置

   昨今、労働局や労働基準監督署は労働者の健康障害防止に力を入れています。

   労働者の長時間労働による過労やメンタルヘルスといった健康上の問題に対して、
   事業場としてどのように取り組んでいくかが重要な課題となっています。

   これらの課題についての議論を行う場として、一定規模以上の事業場には衛生委員
   会の設置が労働安全衛生法により義務付けられています。

  □衛生委員会の設置が必要な事業場

   業種に関わらず、常時使用する労働者が50人以上の事業場では、衛生委員会の
   設置が義務付けられています。

    ※常時使用する労働者には、正社員以外にも、派遣矧動者、パートタイマーや
      アルバイトも含まれます。

    ※事業場ごとに設置する必要があります。

    ※労働者が50人未満で衛生委員会の設置義務が無い事業場でも、衛生に関
      する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けていなけれ
      ばなりません。

  □衛生委員会の開催頻度

   衛生委員会は、毎月1回以上開催するようにしなければなりません。

  □衛生委員会の構成メンバー

   労働安全衛生法第18条2項では、衛生委員会の構成メンバーを次のとおり定めて
   います。

    ①総括安全衛生管理者又は当該事業場において、その事業の実施を統括管理
     する者若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者(議長として1名)

    ②衛生管理者のうらから事業者が指名した者(1名以上)

    ③産業医のうちから事業者が指名した者(1名以上)

    ④当該事業場の矧動者で、衛生に閲し経験を有する者のうらから事業者が指
     名した者(1名以上)

    ※上記①以外のメンバーの半数については、当該事業場の過半数労働組合   
      (労働組合が無い場合は、労働者の過半数代表者)の推薦に基づいて指名し
      なければなりません。

  □衛生委員会で調査審議する事項

   衛生委員会で調査審議すべき主な事項は次のとおりとなっています。

    ①労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること

    ②労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること

    ③労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること

    ④衛生に関する規程の作成に関すること

    ⑤定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること

    ⑥長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹

      立に関すること

    ⑦労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること

  □その他衛生委員会に関すること

   【議事概要の周知義務】

    事業者は、衛生委員会の開催の都度、委員会における議事内容を労働者に周知
    しなければなりません。

   【記録の保存】

    事業者は衛生委員会における議事で重要なものに係る記録を作成し、これを3
    年間保存しなければなりません。

   労働局や労働基準監督署は労働者の健康障害防止に力を入れて取り組んでいます。

   2014年の5月に厚生労働省が策定した「平成25年度地方労働行政運営方針」の
   中の重点施策として、「労働者の安全と健康確保対策の推進」が盛り込まれています。

   この点からも衛生委員会が非常に重要であるということが言えます。

  □労働安全衛生法改正のポイント

   1.化学物質管理のあり方の見直し

     特別規則の対象とされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等に
     ついて、事業者に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務付
     け。

   2.ストレスチェック制度の義務化

    (1)平成26年6月に労働安全衛生法の改正が可決し、平成27年12月から、5
      0名以上の企業において、従業員全員へのストレスチェックが義務となりま
      す。

      労働者の心理的な負担の程度を把握するため、医師、保健師等によるスト
      レスチェックの実施を事業者に義務付け。

      従業員50人未満の事業者については、当分の間努力義務。

    (2)ストレスチェックを実施した場合には、事業者は、検査結果を通知された労 

      働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見
      を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適
      切な就業上の措置を講じなければならないこととする。

   3.受動喫煙防止対策の推進

     受動喫煙防止のため、事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずる
     ことを努力義務とする規定を設ける。

   4.重大な労働災害を繰り返す企業への対応

     厚生労働大臣が企業単位での改善計画を作成させ、改善を図らせる仕組み
     を創設。(計画作成指示等に従わない企業に対しては大臣が勧告する。それ
     にも従わない企業については、名称を公表する。)

   5.外国に立地する検査機関等への対応

     国際的な動向を踏まえ、ボイラー等特に危険性が高い機械を製造等する際に
     受けなければならないこととされている検査等を行う機関のうち、外国に立地
     するものについても登録を受けられることとする。

   6.規制・届出の見直し等

    (1)建設物又は機械等の新設等を行う場合の事前の計画の届出の廃止。

    (2)特に粉じん濃度が高くなる作業に従事する際に使用が義務付けられている

      電動ファン付き呼吸用保護具を型式検定、譲渡制限の対象に追加。

  □施行期日

   施行期日は

    1.は2年を超えない範囲内において政令で定める日

    2.は1年6月を超えない範囲内において政令で定める日

    3.、4.、5.は1年を超えない範囲内において政令で定める日

    6.は6月を超えない範囲内において政令で定める日

           (参考:厚生労働省

   安全衛生法は、守らなくても罰則などはありません。

   しかし、「安全配慮義務」を怠っていた場合、何か揉め事が起こったとき、民法などを
   根拠に、社員に訴えられてしまう可能性があるのです。

  □安全配慮義務

   会社が社員の心身の安全を確保しなければいけない義務のことです。

   身体の安全はもちろん、心の健康面まで、企業は確保しなければいけません。  


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職場のメンタルヘルス対策

介護の両立支援制度の見直し
 

  ■介護の両立支援制度の見直し

   高齢化社会が急速に進展する中、介護保険制度における要介護者または要支
   援者は平成25年度末で584万人(平成25年度介護保険事業状況報告(年報))
   となっており、会社などで働きながら介護をしている方は約240万人、介護・看護
   のために離職した方は年間約10万人(共に平成24 年就業構造基本調査)と
   なっています。

   そのような中、平成27年9月に安倍総理が表明した『新・三本の矢』の第三の矢
   「安心につながる社会保障」では、介護離職者ゼロが掲げられており、平成27年
   12月21日には労働政策審議会により育児介護休業法改正に向けた建議が行
   われるなど、介護離職の防止に話題が集まっています。

   ここでは、仕事と介護の両立支援制度の見直しについて概要をご紹介します。

  □介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備

   介護に関する両立支援制度については、いつまで続くか分からないという介護の
   予見性の低さや、個々の事情の多様性などに対応できる内容に見直す必要があ
   ります。

   また、介護が必要な家族を抱える労働者が一人で 介護を支えると、結果として
   離職につながりかねないことから、介護サービス等を十分に活用できるようにす
   る必要があります。

   以上から、介護休業や柔軟な働き方の制度を様々に組み合わせて対応できる制
   度構築の方向性として次の6 つが挙げられています。

      (1)介護休業の分割取得

        現行の介護休業制度は一つの病気やけがなどの症状につき、原則1 回
        のみ(通算93 日以内)しか休みを取る事ができないため、見通しが立ち
        にくい介護において状況の変化に対応できずに、継続就業することが難
        しくなるケースが多くありました。

        そのため、今後は介護開始から終了までの間に要介護者の状態が大きく
        変化した場合や、病院への入退院、介護施設間の移動などの際に、介護
        の体制を構築するための休業として、弾力的に介護休業を活用できるよ
        うに最大3 回まで分割取得できるようにすることが適当であるとしてい
        る。

      (2)介護休暇(年5 日)の取得単位の柔軟化

        介護休暇の取得単位については、介護保険関係の手続きやケアマネー
        ジャーとの打ち合わせ、通院等丸一日休暇を取得する必要がない場面も
        想定されるため、半日単位での取得を可能とすることが適当であるとして
        います。

      (3)介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)

        現行では、何らかの理由で介護休業を取らない労働者に対し、就業しつ
        つ家族の介護を容易にするための措置ですが、今後は、日常的な介護
        のニーズに対応するために、介護休業と合わせて93 日とされている現
        状から独立させ、利用開始から3 年の間で2 回以上の申出を可能とする
        ことが適当であるとしています。

      (4)介護のための所定外労働の免除

        日常的な介護のニーズに対応する目的で、所定外労働の免除と組み合
        わせて利用できる介護サービスを活用するために、介護に係る所定外労
        働の免除を法律上に位置づけると共に、介護終了までの期間について請
        求できる権利とすることが適当であるとしています。

      (5)介護休業等の対象家族の範囲の拡大

        現行では、祖父母、兄弟姉妹及び孫は同居かつ扶養していることが条件
        でしたが、昨今の世帯構造の変化を鑑み、その要件を外すことが適当と
        しています。

      (6)仕事と介護の両立に向けた情報提供

        仕事と介護の両立を円滑に図るためには、労働者が両立支援制度や介
        護保険制度の仕組み等について十分に情報を得ている事が必要である
        ため、行政の情報の周知、相談や支援の充実を図ると共に、企業におけ
        る両立支援制度の利用等に関する周知や相談窓口の設置等の取組を支
        援することが適当であるとしています。

  □介護は社会全体で   

   介護は家族だけでなく社会全体で支えるものであることから、企業は介護が必要
   な家族を抱える労働者に対して、社会保障制度を十分に活用できるように柔軟な
   働き方を選択できる制度による支援を行うことが求められています。

   それにより、家族の介護が必要な時期に離職することなく働き続けることで、労働
   者個々の希望の実現や将来に対する安心につながると共に、企業としても安定
   的な労働力の確保にもつながっていくので、法改正を待たずとも検討されてみて
   はどうでしょうか。


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職場のメンタルヘルス対策

職場の健康診断
  

  労働安全衛生法では、労働者の「健康の保持増進のための措置」として健康診断を
  実施することを事業者に義務づけています。

  法第66条による、事業者が実施しなければいけない健康診断の種類と概要を説明
  します。

  また、法第66条に付随する健康診断に関するその他の規定等(第66条の2から
  第66条の8)も見て行きます。

  □健康診断の種類

   1.一般健康診断

     (1)雇入時の健康診断(安衛則第43条)

       常時使用する労働者を雇入れる時に行うもの

     (2)定期健康診断(安衛則第44条)

       1年以内ごとに1回、定期に、行うもの

     (3)特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条)

       特定業務に常時従事する労働者に、配置替え時および6ヶ月ごとに1
       回、定期に、行うもの

     (4)海外派遣労働者の健康診断(安衛則第条45の2)

       労働者を海外に6ヶ月以上派遣する場合、および海外に6ヶ月以上派
       遣した労働者を国内の業務に就かせるときに行うもの

     (5)結核健康診断(安衛則第46条)

       結核の発病のおそれがあると診断された労働者に対して行うもの

     (6)給食従業員の検便(安衛則第47条)

       給食の業務に従事する労働者に対し、雇入れの際または当該業務に
       配置替えの際に行うもの


   2.特殊健康診断

     (7)特別項目の健康診断(安衛法第66条第2項)

       政令や通達で定める有害な業務に従事する労働者及び、過去に有害な  
       業務に従事し現在も使用する労働者に行うもの。

     (8)歯科医師による健康診断(安衛法第66条第3項)

       歯またはその支持組織に有害なガス等を発散する業務に常時従事する
       労働者に行うもの

     (9)臨時の健康診断(安衛法第66条第4項)

       労働者の健康を保持する必要がある認める場合に、都道府県労働局
       長が事業者に対し指示して行わせるもの

   3.その他の健康診断

     (10)労働者指定の健康診断(法第66条第5項但書)

        事業者が行う健康診断の替わりに、労働者が独自に健康診断を行
        い、その健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出するもの

     (11)自発的健康診断(法第66条の2)

        労働者の自主的判断で受診するもの

   4.健康診断実施後の措置

     ○ 健康診断の結果の記録(安衛法第66条の3)

     ○ 健康診断結果の報告(安衛則第52条)

     ○ 医師等からの意見聴取(安衛法第66条の4)

     ○ 就業上の措置(安衛法第66条の5)

     ○ 健康診断の結果の通知(安衛法第66条の6)

     ○ 保健指導等(安衛法第66条の7、8)


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職場のメンタルヘルス対策

ストレスチェック制度
 

  厚生労働省が発表した平成25 年「脳・心臓疾患と精神疾患の労災補償状況」によ
  ると、精神障害による労災請求件数は1,409 件と前年度より152 件増加して過 
  去最高を記録するなど、近年高い水準で推移しています。

  こうした背景を元に心理的な負担の程度を把握するための検査及びその結果に基
  づく面接指導の実施を事業主に義務付ける「ストレスチェック制度」(2015.12.1よ
    り施行)が設けられました。

  施行後は、常時50 人以上の労働者を使用する事業場は、毎年1 回定期的に検 
  査を実施した上で、所轄監督署に実施状況を報告することが義務となります(50
  人未満の事業所に関しては当分の間努力義務)。

  また、ストレスチェック制度の実施についての規程を定め、これをあらかじめ労働者 
  に対して周知しておく必要があります。

  ストレスチェック制度(厚生労働省)の基本的な考え方

   メンタルヘルスケアは取組の段階ごとに以下の予防に分けることができます。

    ・一次予防:ストレスへの気づき・対処・支援・メンタルヘルス不調となることの未
            然防止

    ・二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見、早期対処

    ・三次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援

   今回のストレスチェック制度は一次予防を目的としたものとなっていますが、二次
   予防、三次予防も含めたメンタルヘルスケアの総合的な取組の中にストレス 
   チェック制度を位置づけ、実施していくことが望ましいでしょう。

  □ストレスチェック制度実施前の事前準備流れ

   事業者は事前に制度に関する基本方針を表明した上で、衛生委員会を設置し、
   円滑に制度を進めるために次のような項目を調査審議することとなります。

  □ストレスチェック制度の留意点

   ・ストレスチェックは医師や保健師などが実施し、検査結果は直接労働者に通知
    されます。

    事業者は実施者から各労働者の受検の有無を確認し、本人の同意の上で検査
    結果を取得することとなります。

   ・事業者は実施者に対して結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させ、結果を
    勘案して職場環境の改善をすることが必要です(努力義務)。

   ・取得した検査結果に関しては5 年間保存しなければならず、情報管理体制を整
    えておく必要があります。

   ・ストレスチェック実施後に高ストレスなど一定の結果を受けた労働者が面接の申
    出をしてきた場合、事業者は医師などによる面接指導を実施する必要がありま
    す。

    相談窓口などを設けておくことが望まれます。

   ・面接指導実施後は遅滞なく面接指導者から意見を聴取し、場合によっては就業
    制限・休業など、就業上の必要な措置をとらなければなりません。

    また、本制度と合わせて、日頃から労働者の心のフォローができる職場環境の 
    整備を心がけて、まず一次予防が有効に機能するようにしていきましょう。


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