アウトソーシングのメリット・デメリット

小さな会社が勝ち残るには

■質・高度化を追究

 「小よく大を制するには、小の力を結集して的を絞り、大の弱点をつけ」と、どの戦略本にも
 書かれています。

 1560年、今川義元の率いる2万5000の大軍団を、織田信長がわずか3000の兵で奇襲して破った
 桶狭間の戦いは、それこそ「小よく大を制す」でした。

 「中」では切れ味のある戦略は展開できないが、「小」ならば、思い切って鋭いとがった戦略を
 展開できます。

 「小」なるが故に勝てる戦もあるのです。

 何でもかんでも抱え込む会社は、当然、スピードが遅くなる。

 内部調整に縛られていては、原価率は全然下がりません。

 それどころか、内部調達、内製化のエネルギーが増えれば増えるほど、人件費の上昇からくる
 高コストのサイクルにはまってしまいます。

 身軽な企業、小さなフットワークのある企業に変身するために、アウトソーシングは不可欠ですが、
 では、アウトソーシングをいかに戦略的に展開すればいいのでしょうか。

 具体的には、次のとおりです。

  ①変化に対応できる

  ②変化を創造できる

  ③生産性を飛躍的に上げる

  ④ビジネスの質を高度化する

  ⑤既存市場への深耕をはかる

  ⑥新規市場の開拓をする

  ⑦自分で考え、自立できる人材を輩出する

  ⑧組織自体が目的志向の考える組織にする

  ⑨「独創する企業」になる

 どういう方向に導くかが、会社トップ、ミドルに求められるミッションです。

 アウトソーシングは、そのスケールの大きさは別にして、将来の自社をとりまく環境を考えれば
 不可欠です。

 子会社、関連会社をつくって、人材の出向先などの受け皿をつくるのとは、意味が異なります。

 外部、専門性、生産性向上の3つのことがなければ、たんなる外注やOEM供給でしかない。

 外部に業務を委託することで、内部の組織の高度化が実現されなければならないのです。

 テーマである「小さな会社の成功法則」は、規模や効率を追うのではなく、質や高度化が重要に
 なります。

 いかに質・高度化を追究するか、です。

 戦略なき企業経営は滅びるしかない。

 その戦略経営を展開するツールとして、アウトソーシング、アライアンス、IT(情報技術)経営、
 バーチャル・コーポレーションがあります。

 これらのツールの活用による戦略化が、小さな会社の成功法則です。

□活性化のカギを握るアウトソーシング

 アウトソーシングとは、戦略経営をめざす「知業生産」の主体者を意識した企業の武器です。

 知的資源、専門的資源を外部に求め、自社は、それらのコントロールやプロデュースをめざす
 仕組みがアウトソーシングです。

 時代の流れを感じ、組織の方向をその流れに合わせ、方向転換させる。

 そんな身軽な企業が利益を伸ばしているのです。

 小さな本社、小さな組織の集合体、プロの外部活用、リスクの分散。

 これらが、アウトソーシングを戦略手段といわしめる背景です。

 小さな会社、身軽な組織の会社が、新しい価値を創出するのです。

 日本国内では、アウトソーシングについてあまり知られていません。

 じつは、「エッ、これがアウトソーシングなの?」というものも多い。

 身近なところでは、飛行機に乗るときのチケットの予約と搭乗手続きです。

 各航空会社の制服を着て、「こちらは○○会社です」と対応して手続きするが、対応する9割強の
 人間が委託先の社員です。

 こうした委託がコスト削減に大きく寄与するのは明白ですが、入れ替わりの激しいアルバイト
 的な社員が多いだけに、年々、トラブルが頻発して、サービスの質が低下してきているのでは、
 競争力の低下を招いてしまいます。

 「戦略のない外部委託は、優位性の放棄である」わが国のアウトソーシングは、現状では未成熟
 の感は否めない。

 単純な業務代行の域を出ないものも多い。

 アウトソーシング・マーケットの成長過程では、製造業の就業者をサービス業にゆるやかにシフト
 させ、大量の失業回避と、就業構造の転換がスムーズにはかられることにもなります。

 しかもアウトソーシングが定着すれば、労働力の流動化が促進され、人的資源の有効活用に貢献
 することにもなる。

 マーケット形成のためにも、規制緩和や融資制度等の政策課題の検討も産官学で検討する必要が
 あります。

 アウトソーシングは、「21世紀の産業の新たなインフラストラクチャー(下支えするもの)」
 として、今後の日本経済活性化のカギを握っているとさえいえるのです。

 1990年以降の新規店頭公開のサービス業を見ると、その7割以上が、システム開発、情報処理、
 各種コンサルティング、人材ビジネスなど事業所向けのアウトソーシング関連サービス企業で
 占めています。

 近年では、給与計算、伝票作成などを含む、企業の総務的な業務を一括して代行する企業や、福利
 厚生部門の支援を行う企業が登場するなど、アウトソーシングのニーズの増大にともなって、
 事業所向けサービスの供給分野格段に広がっています。

 日本においても、新しいアウトソーシングの概念が拡がりつつあるといえます。

 身軽で戦略的経営のためのアウトソーシングの方向です。

□アウトソーシングを成功させる法則

 今日、アウトソーシングは、たんなる業務委託ではない、経営のパフォーマンスに対して顧客と
 リスクを共有することが狙いとなる。

 そのためには、顧客のビジネス・ゴールを理解する、ビジネス・ヒエラルキーの全体像を押さえる
 ことが絶対条件になります。 

 これがアウトソーシングにおける最重要の成功法則です。

 クライアント企業がどのようなビジネス事業の仕組みで収益をあげているかの根本の理解がなく
 ては、経営のパフォーマンスに寄与することはできない。

 また、アウトソーシングがビジネスの問題としてではなく、技術的な問題として焦点があてられる
 ことになってはなりません。

 ビジネスに関わる目的論が第一義、技術論、方法論はその次であることを忘れてはいけない。

 最重要成功法則を大前提として、3つの成功法則が導かれます。

  <アウトソーシングにおける成功法則> 

   ◎成功法則1

    ビジネス・ゴールを達成するための戦略の本質をアウトソーサーと共有すること 

   ◎成功法則2

    どのような関係をアウトソーサーと築くかを早い段階に決定すること 

   ◎成功法則3

    成果の評価基準、報酬の算定方法を明確にすること

□変化への素早い対応をめざすアライアンス

 「戦略的提携を積極的に進めたことが今日のマイクロソフトの成長を可能にした」「戦略的提携は、
 市場や顧客に差別化製品を提供する最良の経営手段であり、市場での企業競争力を高める」

 この2つのコメントは、ともに時代を代表する戦略経営の実践者のコメントです。

 前のコメントはビル・ゲイツ氏、あとのはGEのジャック・ウェルチ氏です。

 彼らのコメントを借りて、アライアンスの重要性を指摘したのは、中小企業にとってのアライ
 アンスと、大企業にとってのアライアンスは各々別々の意義があるが、戦略的なアライアンスは、
 企業の規模を超えて、国内企業であれ国際企業であれ、基本的に共通することを強調するためです。

 ビル・ゲイツ氏は、マイクロソフトを立ち上げてまだ間もないころ、巨人のIBMに対して、臆する
 ことなく、「うまく(IBMを)使える」と考えていました。

 アライアンスは、小さな企業にとっては、他社の力を利用して「より大きな規模にする」ことを
 可能にし、大企業にとっては、自社開発によらずに他社の技術やチャネルなどを活用することで、
 「効率的な経営資源配分」を可能にしようとします。

 アライアンスとは、そういう意味で戦略的思考そのものに関わります。

 イギリスの代表的な経済誌『ザ・エコノミスト』によれば、アライアンスは、「大半の大企業の
 戦略にとって少なくとも買収と同程度の重要性を持っている」のです。

 また、アメリカの中小企業向けの代表的な雑誌『インク』によれば、「アメリカで急速な成長を
 享受している小企業は、3社に1社の割合で、大企業とのあいだの戦略的なアライアンスを展開
 している」のです。

 戦略的なアライアンスは、国内市場を対象にしている企業にとっては、次のような多くの機会を
 提供しています。 

  ①利益の増大

  ②製品およびサービスの追加

  ③コストの低下 

 また、すべての国家が単一のグローバル市場に統合されつつあるので、戦略的なアライアンスは、
 次の2つの目的に対する膨大な機会を提供しています。

  ①国内市場における自社の事業を強化するために、外国企業とのあいだで共同作業を行うこと

  ②海外市場における事業を構築すること

 戦略的なアライアンスとは、「自社に足りないものを他社に求めること」を目的とします。

 これまでの経営は、基本的に内部拡張主義に根づいた企業規模の拡大が主流でしたが、経営環境
 がめまぐるしく変化する今日では、互いの強みを持ちよって、変化への素早い対応をめざす戦略的
 提携が不可欠になっています。

 日本の過去には、M&Aは、乗っ取りや業績不振企業の吸収合併といったネガティブなイメージが
 強かったが、本来の意義は、強みを活かせる分野に特化し、足りない分野はM&Aを含めパートナー
 企業にお願いするとし、中小であることの経営資源上の制約をうまく克服することにあります。

 M&Aは企業戦略としてのエッジをうまく効かせる必要があります。

 ◎アライアンスの基本要件

  ①目的が一致するか(双方に得るものがあるか)  

  ②利害が相反しないか

  ③アライアンスを行う事業領域を明確にできるか

  ④企業文化が相入れるものか、あるいは、違いを理解した上で協力できるか

  ⑤相互のトップ・マネジメントに主体性が見られるか

□分業ネットワークを活用して空洞化に対応

 ここで、中小企業におけるアライアンスの実例を見ておきましょう。

 東京都大田区での実例です。

 大田区の中小企業は、近隣の同業他社と仕事を分け合う分業ネットワークを活用して、親企業の
 地方移転や海外進出にともなう空洞化に対応しています。

 区がまとめた「大田区企業の広域展開の実態調査」によれば、製品メーカーの場合、都内の企業
 からの受注は1985年度は30.9%を占めていたが、翌年には、16.8%まで 低下し、今日まで
 この低下傾向は続いています。

 これは、親企業の地方移転や海外進出の増加を受け、移転先へ出向いて仕事を確保することが
 増えているのが背景です。

 一方、受注した仕事について、さらに外注している企業の所在地を見ると1985年度には区内
 33.7%だったのが、10年後には、35.5%に上昇していました。

 同区には「仲間まわし」と呼ばれ、得意分野に応じて仕事を外注に出し合う下請け企業同士の
 独特のネットワークが存在するが、この連携がさらに強まっている様子です。

 企業一社一社は小さくても、得意分野を持ち合うことで、ネットワークスタイルでは、大きな
 アライアンスが実現することになるのです。

 水平分業による連携の促進が起業活性化のカギを握るのです。

 このような地域の分業ネットワークが今後、増えてくるでしょう。

 あえて課題を提起すると、分業ネットワークそのものの強み(コア・コンビタンス)をどこに設定
 するのか、何が他の分業ネットワークとの差別性、優位性なのかが明確でなければ、ネットワーク
 間競争に打ち勝っていけない。

 ネットワークとしての構想を誰が持って、リーダーシップをどう発揮するのかがカギになるのです。

 公的機関を活用することは必要だが、頼ってはならない。

 大きな期待は抱かないほうがいいでしょう。

 自らの足と目で主体的に動かなければ、アライアンスは成功しません。

 きっかけは公的機関でも銀行でも証券会社でもいいが、あとは自分でやるべきです。

□IT経営でイノベーションを起こせ

 インターネットによる電子商取引きの決済手段や取引確認、制度などが整備されるにしたがって、
 新ビジネスとして台頭してきました。

 そして、これを上手く導入した企業と出遅れた企業は、「勝ち組」と「負け組」に分かれてきました。

 インターネットの普及を背景に、商品やサービスを広く広告する手段として、インターネット
 広告市場が急速に拡大しています。

 しかも、新しいマーケティング・システムとして発展してきています。

 インターネット広告は、横長の帯状で画面に表示される「バナー(看板)広告」と呼ばれる形態が
 一般的です。

 ユーザーがこの広告をクリックすると、製品情報や懸賞キャンペーンを紹介している企業(広告主)
 のホームページにつながる仕組みになっています。

 従来の広告と異なる点は、以下の通りです。

  ①どれだけの人が広告を見たかが容易にわかるため、既存のメディアより効果を測定しやすい。

  ②見たいときにいつでも見ることができ、時間の制約を受けない。

  ③広告を見たユーザーからアンケートをとり、マーケティングや販促イベントの基礎資料に
   活用できるなど、双方向性を活かせる。

 米国では、インターネットを「ワン・トウ・ワン・マーケティング」として使おうという考え方が
 主流になっているといいます。

 今では、マスプロダクションを前提とした画一的なマーケティングには限界があります。

 セグメント・マーケティングターゲット・マーケティングへと重心を移しています。

 マスマーケティングでは、「いかに多くの客に商品を売るか」を主眼としています。

 尺度は「市場シェア」です。

 これに対してワン・トウ・ワン・マーケティングでは、「一人の顧客にいかに多くの商品を売るか」
 であり、顧客シェアが尺度になるのです。

 企業のリソースを個々の顧客に集中し、顧客と長期的に協働していくことで、顧客にぴったり
 合った商品やサービスを提供していきます。

 顧客を生涯にわたって囲い込むのが狙いです。

 また、新規の顧客を獲得するためのコストは、既存の顧客から追加取引きで受注した際のコストの
 5倍はかかるといわれています。

 既存の顧客との関係を深めていくことのメリットは非常に大きいのです。

 しかしインターネットの場合、ホームページを立ち上げても、誰もアクセスしてくれなければ、
 「ワン・トゥ・ワン」どころか、「ワン・トゥ・ナッシング」になってしまう。

 インターネット・ユーザーにいかにアクセスしてもらうかが工夫のしどころといえます。

□成長するための方法論「持たざる経営」

 規模の大小に関わらずに、成長するための方法論として「持たざる経営」の方向性を見定めて
 きました。

 アライアンス、アウトソーシング、IT経営などです。

 もう一つの方向性は、究極の「小さな」組織を実現することです。

 たいていの組織は、大きくなることで問題が生じているのです。

 組織階層とコミュニケーション構造の問題、意思決定と責任・権限のずれ、企業が生み出す
 付加価値と個人が上げる付加価値の誤解、コスト意識、ヤル気など。

 ビジネスとしてより、組織として存続を優先させ、「会社は永遠だ」という発想を許すかぎり、
 健全なパラノイア(偏執症)など生まれない。

 安楽死を望むのであればそれもかまわないが、事業単位は大きくなりすぎると扱いにくくなります。

 上手な会社は、規模の不経済が始まる前に、事業単位を分割する方法を見出している。

 そのひとつに、事業体を戦略的に細分化する戦略事業単位(SBU)という方法があります。

 たとえば、商品およびサービスに対する外部市場を持ち、それに対して経営陣が他の事業分野とは
 独立に目的を決定し、戦略を実行できるひとつの事業分野です。

 極端にいうと、一人ひとりの社員がそれぞれ一つのビジネスとしての可能性を持っているのです。

 組織よりビジネスの論理を優先させ、組織をビジネスに変換するということは、常に企業の
 パフォーマンスを高めます。

 各人が一つの事業体で損益計算をしながら仕事をするというシステムは、すべての社員が自分の
 やり方でお金を稼がなければならないし、ほかの従業員のサービスが必要なら、それに対価を
 払うことにもなる。

 対価に見合わないと評価されれば、アウトソーシングの対象となります。

 こうなると、会社トータルでのサービス・レベルも飛躍的に向上します。

 新時代の組織体のイメージは、一人ひとりの従業員が別のビジネスとして成立する「一人でも
 事業体」組織です。

 「一人でも事業体」にはワクワクするような健全なパラノイアがあります。

 実現させるのが楽しくてしょうがないようなゴールがあります。

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アウトソーシングのメリット・デメリット

営業部門をアウトソーシング

営業部門をアウトソーシング

 ■アウトソーシングの現状
  1.戦略的アウトソーシングの進展 
   アウトソーシングとは「自社内の業務の全部または一部を外部に委託する」ことです。
   現在のアウトソーシングはかつての「外注・下請け」から「コスト削減」
   「外部専門機関の活用」「経営資源の特化・集中」へと変化し、企業にとって
   より戦略的な経営手法となっています。 
   従来アウトソーシングは大企業の経営手法とされていましたが、最近では中堅・
   中小企業にまで広がっています。
   何らかの業務をアウトソーシングしている企業は現在では80%にも上るといわれて
   います。

  2.アウトソーシングを導入する理由 
   企業がアウトソーシングを導入する理由は
    →自社にない専門的な技術・ノウハウの活用
    →人件費およびその他のコストの削減
    →業務の効率化・スピード化
    →人手不足への対応
    →設備投資の削減
    →コア業務(得意な分野)への経営資源の集中
   などさまざまです。

   また企業がアウトソーシングしている業務は、施設管理、物流、経理・財務、福利厚生、
   製造、情報システム、総務、人事・研修、営業、経営企画などさまざまです。 
   もともとアウトソーシングは施設管理、経理・財務、物流などの業務で利用が
   高かったのだが、最近では情報システム、製造などの業務でもアウトソーシングの
   利用が進んでいます。 

   施設管理、経理・財務、物流などの業務をアウトソーシングすることで、
   この業務にかかる人件費などのコストを削減できます。
   これらの業務は企業活動に必要なものですが、人件費の高い正社員に任せる必要は
   ないのです。
   情報システム、製造などの業務も、社外の専門機関を活用したほうが業務の効率化
   が図れるうえ、その業務にかかる人件費や設備投資を削減できます。

  3.製造部門をアウトソーシングするファブレス企業 
   製造業でありながら生産設備を持たないファブレス企業が注目を集めています。
   ファブレス企業は、自社で開発・設計した製品の製造を生産設備を持つ企業に
   アウトソーシングしています。
   ファブレス企業は「生産設備を持たないので固定負債が少ない」「企業形態が身軽で
   市場の変化に対応しやすい」「製品の開発・設計に特化できる」「製造する製品
   によって製造先を変更できる」などのメリットがあります。ファブレス企業一覧

   ファブレス型の事業モデルはパソコンや電子部品の分野に浸透し、企業設立から
   わずかな期間で急成長を遂げた企業も数多く出現しています。
   ファブレス企業は製造部門を持たない代わりに、「マーケティング」「開発・設計」
   「営業・販売」など、マーケットとの関連性の高い業務に注力しています。

   ファブレス企業は、もともと過大な生産設備を持たない企業であったため、
   生産部門をアウトソーシングせざるを得ない面があったことは事実ですが、
   先に触れたアウトソーシングの導入目的のほとんどを実現しており、まさに戦略的
   アウトソーシングを駆使した事業モデルといえるでしょう。

   ファブレス企業がアウトソーサーとするべき企業の条件は、生産設備を持っている
   ことの他に、「自社と経営理念を共有化できる」「情報を共有化できる」
   「自社が望むレベルで工程管理、品質管理などを達成できる」ことなどが挙げられ
   ます。 

   ファブレス企業の成功のポイントは、信頼できるアウトソーサーと提携することです。
   これが実現すれば製造業の要である生産部門をアウトソーシングしても事業は
   成立します。

  4.これからのアウトソーシング 
   最近では営業、経営企画などの業務についてもアウトソーシングを利用する企業が
   出てきています。
   特に営業・販売をアウトソーシングしたいとする企業は多いようです。 
   しかし、営業、経営企画などはアウトソーシングしたい企業の業種がまちまちなため、
   これらの業務を引き受ける有力なアウトソーサーが少ないのが現状です。

 □営業業務をアウトソーシングする
  1.アウトソーシング導入時のポイント
   ここで、アウトソーシングを導入する場合のポイントを考えてみます。

   (1)既存業務の洗い出し コア業務以外の業務についてすべて洗い出します。
    「専門性」「効率性」などの観点から、アウトソーシングするかどうかに
    かかわらず業務の見直しを行います。

   (2)委託範囲の決定 
    導入を決めた業務を一度にすべてアウトソーシングすることはリスクを伴う
    ため、優先順位を決めて段階的に進めていきます。

   (3)効果の算出 
    業務に関する直接コストとしての人件費を算出し、アウトソーシング費用と
    比較します。
    また、固定費の変動費化というメリットも考慮する必要があります。

   (4)アウトソーサーの選定 
    専門性、信頼性、事業規模、実績などを選定のポイントとして、自社のニーズ
    により近いアウトソーサーを選定します。

   (5)アウトソーサーの管理と定期的見直し 
    導入時には試験期間を設けて、一定期間の実績を評価して正式に契約を行う
    方法もあります。
    正式導入後も社内に担当者をおいて、アウトソーサーとのコミュニケーション
    を継続していくことも大切です。
    また、期待した効果が得られているかを定期的にチェックし、必要に応じて
    見直します。
    場合によっては、アウトソーサーの変更も行います。
    営業業務を専門分野としてとらえた場合、高度な販売力を持った営業社員を
    自社で育成する代わりに業務ごとにアウトソーシングすれば「人件費の削減」
    「業務の効率化」「経営資源のコア業務(得意な分野)への集中」などが可能
    となります。 

   上記のポイントはあくまでアウトソーシングする際の一般的な手順を示したものです。
   仮にアウトソーシングしたい業務が「営業」に決定しているのであれば(3)からの
   手順を行えばよいでしょう。

  2.営業をアウトソーシングする
   ◎営業を切り離す理由を検証する 
    ここで考えるべきことは、企業にとってはコア業務である営業を切り離して、
    アウトソーシングすべきか否かです。 
    営業をアウトソーシングし、製品の製造・開発に注力したいという企業は、
    「営業・販売力が弱いものの、技術には自信を持つ技術開発型の企業に多い」
    ようです。 

    技術に自信があるがゆえに「販売が軌道に乗らないのは営業・販売に原因がある」
    と考えてしまうのです。
    確かに技術的に優れているかもしれませんが、それだけでは自社の製品が市場で
    競争力を持っているとはいえないのです。

    「市場ニーズに合致した製品なのか」「価格競争力はあるのか」「サポート体制
    は十分なのか」などさまざまな条件を満たさなければ、市場で勝ち残り顧客に
    選択される製品とはなりえないのです。 
    上記の場合、アウトソーシングすべき業務は営業ではなく、市場ニーズを的確に
    察知するマーケティングかもしれません。

   ◎営業業務のアウトソーサーは少ない 
    とはいうものの、高度なノウハウを持ち実績を確実に上げる営業専門機関が
    社内で人材を育成するよりはるかに効率的であることはいうまでもありません。
    戦略的アウトソーシングを実現したい企業の中には、営業業務をアウトソーシング
    したいところがあるはずです。 

    既に住宅販売は製造販売が分離し、営業業務をすべて販売会社にアウトソーシング
    している企業があります。
    また、通販の一業務であるテレコールなどによる物品販売に関しても営業業務
    のアウトソーサーがいます。
    ただし、このように営業業務のアウトソーサーの存在する分野は現状では限
    られています。

   ◎営業業務のアウトソーサーの事例 
    前述したように営業業務のアウトソーサーはあまり多くないのです。
    しかし、改正労働者派遣法などの施行により、営業・販売職などの派遣が原則
    自由となったことから、営業業務のアウトソーサーが次第に出てきています。
    (営業職・販売職派遣の現状 - 厚生労働省) 
    営業業務のアウトソーサーの多くは人材派遣会社です。
    人材派遣会社は営業職を採用または登録し、企業からの依頼があれば、
    当該ノウハウを有する人材を派遣するのです。 

    住宅販売やテレコールによる物販のように営業業務の全部をアウトソース
    できるわけではありませんが、「営業機能が確立していないベンチャー企業」
    「営業部門の業績が思うに任せない企業」「季節的要因・新製品発売など
    一定期間だけで営業力を必要とする企業」などに人材を派遣するようになって
    います。

   ◎営業業務のアウトソーシングの留意点 
    営業業務のアウトソーシングの導入に当たっては、いくつかの留意点があります。
    施設管理、物流、経理・財務など従来からアウトソーシングが活用されてきた
    分野ではアウトソーサーのノウハウやシステムが確立していますが、営業業務
    のような新しい分野においては、未成熟なところもあります。

    このため、委託先の選定においては実績を十分に考慮する必要があります。 
    また、単に営業職を派遣してくれるといったようなアウトソーサーではなく、
    営業戦略の立案などのノウハウを持つアウトソーサーでなければ高い成果が
    期待できません。 

    アウトソーシングは委託企業と受託企業の共同作業の側面も多く、良好な
    コミュニケーションを持ちつつ委託分野を拡大していくことも必要です。
    積極的なアウトソーシング活用は大いに検討すべきですが、具体的な導入に
    当たっては、慎重に判断することも重要です。

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アウトソーシングのメリット・デメリット

アウトソーシングの考え方

   
  ■アウトソーシングは現有資産を効率的活用するため

   多くの市場で競争状態が厳しさを増しており、企業は自社の経営資源をより効率的に
   活用していくことがこれまで以上に重要となっています。

   また、目まぐるしく変化する企業の内部や外部の環境にいち早く対応していくことも、
   生き残りのために必要となっています。

   こうした経営の効率化や環境変化に対応するための手法の一つが「アウトソーシング
   (自社の業務を外部へ委託するもの)」です。

   現在では、大企業から中小企業まで、企業規模を問わず積極的にアウトソーシングを
   活用しています。

   アウトソーシングは、さまざまな業務分野で活用されていますが、一般的にアウトソー
   シングを活用しやすい業務分野としては、

    1.物流業務(配送・在庫管理など)

    2.事務業務や受付業務(経理・総務など)

    3.店舗運営に関する業務(店頭販売・販売促進など)

    4.高度な専門的知識を要する業務
     (法務・会計、システム開発・Webサイト構築など)

   などが挙げられます。

   また、アウトソーシングのサービス形態はさまざまです。

   例えば、「商品を販売する営業部門のみをアウトソーシングしたい」など、ある部門の
   業務すべてを自社から切り離し、外部企業へ委託することはアウトソーシングの典型
   的な事例としてとらえられますが、こうした全面的な委託だけでなく、「プログラマー
   など特定分野に専門的な人材を取り入れたい」として、人材派遣企業などから人材を
   確保することも広い意味でのアウトソーシングといえます。

  □アウトソーシングの活用ポイント

   1.経営の効率性を高める

   2.経営の有効性を高める
 
   1の観点から活用するアウトソーシングは、「経費削減」「人材の効率的な活用」など
   を目的としています。

   具体的には、当該業務に従事する従業員の雇用形態を正社員からパートに変更する
   ことで人件費を削減したり、アウトソーシングによって余裕が生じた従業員の業務遂行
   能力をほかの業務に振り分けるといった「人材の効率的な活用」を目指しています
   (正社員と同一の業務に従事するパートなどの賃金を不当に低くすると、パートタイム
   労働法に抵触する恐れがあるので注意が必要です)。

   一方、2.の観点から活用するアウトソーシングは、「戦略的アウトソーシング」とも呼
   ばれ、主に「経営資源の集中などによる企業の競争力を高めていくこと」を目的として
   います。

   この場合は、主に、自社の経営資源・人材を投入して、ノウハウが少ないままその
   業務に取り組むよりも、外部の専門的な知識・ノウハウに基づく企画設計・運営を取り
   入れたほうが費用対効果が高いと判断できるような場合に取り入れます。

   このような戦略的アウトソーシングは、自社のコア部門(本業)に経営資源を集中させる
   ことができ、競争力の向上につながります。

   また、この場合のアウトソーシングでは、「外部資源の活用」だけにとどまらず、「自社
   資源の外部化」という手法を取り入れることがあります。

   アウトソーシングといえば、アウトソーサーと呼ばれる外部企業の資源を活用するという
   イメージが一般的ですが、自社の競争力が高い部門を分社化(自社資源の外部化)
   して、さらに競争力を高めるということもアウトソーシングの一つです。

   2つの観点に共通していえるのは、アウトソーシングという手法を取り入れることで、
   自社の競争力の強化を目指しているということです。

   「コストダウンにつながるアウトソーシング」は、単なる「経費削減」だけに着目してア
   ウトソーシングを活用するのではなく、コストダウンにつながるアウトソーシングの活用
   によって生産性を高め、自社の競争力を高めるという観点に立脚しています。

   事業環境がめまぐるしく変化する今日、これまで以上に会社にとって“スピード”が重要に
   なっています。

   自社が戦略的アウトソーシングに取り組む意義は大きいといえます。


  ■アウトソーシングと外注

   アウトソーシングとは、特定の経営資源を外部に依存することを意味します。

   各企業がアウトソーシングに着手しはじめた頃は、コンピューター関連業務を中心に
   外部委託し、コストの削減を図ることが主な目的でした。

   しかしアウトソーシングが定着した近年では、対象業務が給与計算などの人事、経理、
   営業、販売促進などあらゆる業務分野に広がっており、たんにコストを削減する目的
   から社外の高度な専門スキルを活用することで、自社の中核事業を拡充するなど目的
   に広がりが出てきています。

   こうして、従来のたんなる外注化とアウトソーシングとの違いが明確になってきていると
   思われます。

   このように外注化は、コストの大きい周辺業務をたんに外部委託することでコストを削減
   しようとするものです。

   一方、アウトソーシングは、周辺業務、とくに中核業務をサポートするような専門性の
   高い業務も含めて外部委託し、経営体質を強固にすることをめざします。

   これまで企業がアウトソーシングを行う狙いは、主に自社内部で行うよりも「外部に委託
   したほうがコストが抑えられる」といった、コストダウンにありました。

   人件費をはじめとしたコストを出来る限り抑えたい企業にとって、アウトソーシングは有
   効な手段となってきたのです。 

   しかし近年では、コストダウンに加えて、「外部の高い専門性を活用する」「自社の得
   意分野(コア・コンピタンス)に経営資源を集中する」といった、「企業の競争力を高め
   ていく」ことを目的とした、戦略的なアウトソーシングの活用が広がっています。

  コア・コンピタンスの強化

   戦略的アウトソーシングを行ううえで欠かせないのが“コア・コンピタンス”の強化です。

   コア・コンピタンスとは「他社がまねできない自社ならではの中核的(コア)な能力」の
   ことで、いわば自社にとっての得意分野のことです。

   激しい競争環境の中で企業が生き残っていくためには、「他社には絶対負けない」
   というコア・コンピタンスのさらなる強化が重要になります。

   そのためには企業の持つヒト、モノ、カネ、ジョウホウといった経営資源をコア・コンピ
   タンスに集中的に投入しなければならなりません。

   その代わり、ほかの分野はできる限り他の企業にアウトソーシングします。

   このように、コア・コンピタンスを強化するためのアウトソーシングこそが“戦略的アウト
   ソーシング”なのです。
   
  □アウトソーシングの導入とメリット・デメリット

   1.導入手順とポイント

     中小企業にとって、ヒト・モノ・カネ・情報と
     いう各種経営資源に限りがあります。

     しかし、高度なアウトソーシング・サービス
     を採り入れることにより、経営資源を補強
     し、規模が小さいながらも大企業に負けな
     い事業基盤をつくることも可能になります。

     (1)コア・コンピタンスの明確化

        アウトソーシングを活用する前に、
        あらためて自社を客観的にみつめ直
        す必要があります。

        自社がどのような市場に存在しており、
        自社の存在意義は何なのかを明らかにしてみます。

        そのうえで、自社の強み・弱みをしっかりと分析し、自社にとってのコア・コ
        ンピタンスを明確にします。

        会社は、経営の効率性・有効性を高め自社の競争力を強化するためにアウ
        トソーシングを活用します。

        一般的なアウトソーシングは、自社の経営資源をコア部門(本業)に集中さ
        せ、本来の業務とは離れた業務(付随業務)を外部に委託することで経営の
        効率性・有効性を高める手法です。

        そのため、アウトソーシングを活用する際は、まず最初に自社の強み・弱みを
        しっかりと分析し、コア部門(本業)を明確にしておく必要があります。

        例えば、自社の強みや弱みを分析せずに、ある部門の正社員比率を下げる
        アウトソーシングで「人件費の削減」を図ったとしても、そこから競争力の強
        化につながることは期待できません。

        確かに、人件費の削減はアウトソーシングによるさまざまな効果の一つです
        が、単に「人件費の削減」を行っただけでは、効果的なアウトソーシング(自
        社の生産性・競争力の向上)につなげていくことは難しいでしょう。

        自社の強み・弱みを見極めることによって、経営資源を投入すべきコア部門
        (本業)と外部に委託して効率化を図ったほうがよい部門とが明確に分かり
        ます。

        自社の強み・弱みを見極める際には、自社を取り巻く経営環境を、内部の強
        み(Strength)と弱み(Weakness)、外部の機会(Opportunity)と脅威
        (Threat)に分類する「SWOT分析」の手法などを用いてしっかりと分析
        しましょう。

     (2)既存業務の洗い出しと見直し

        自社の強み・弱みを見極めた後は、既存業務の洗い出しと見直しを行います。

        これは、重複して行っている業務や作業のムダ・ムラ・ムリを把握すること
        で、委託する部門や業務の範囲をより明確にするために行います。

        現在自社で行っている業務や作業のムダ・ムラ・ムリを把握し、それらを削減
        していきます。

        それは結果として、「効果的なアウトソーシング」が実現できるだけではな
        く、「業務の効率化」ひいては「経営資源の有効活用」につながります。

        例えば、これまで10人で行っていた業務を、重複作業を洗い出して見直しを
        行った結果、7人で遂行できることが分かったとすれば、アウトソーシングの
        必要性がなくなるばかりか、残りの3人がほかの業務に時間を割くことができ
        るようになります。

        ただし、既存業務の見直しで余裕ができたからといって、すべての業務を自
        社内でまかなおうとすると、従業員1人当たりの負担が以前と変わらないこと
        もあり得ます。

        また、中には、総務部門の福利厚生にかかわる業務や社員食堂の運営など、
        一括して外部に委託したほうが費用対効果が高い(総務部門の従業員がそ
        のほかの本来の業務に専念できる)業務もあります。

        そのため、既存業務を見直した後は、どのような選択が自社にとって最も有
        益なものとなるかという点を、費用や効果の面から十分検討し見極めていく
        ことが大切です。

     (3)人材・業務遂行力の適正配置

        「効果的なアウトソーシング」を実現するために必要となる施策が「人材の適
        正配置」です。

        例えば、ある部門で行っている入力やチェック作業などの単純作業の一部を
        アウトソーシングし、正社員以外のパートなどを割り当てたとします。

        正社員は単純作業から解放されることで、他の業務に集中して取り組むこと
        ができるようになります。

        こうして人材の適正配置の結果、その部門の人員に余剰人員が生まれたと
        すれば、その余剰人員を自社のコア部門(本業)である設計・製造部門に回
        し、自社の商品開発力を強化することも可能となるでしょう。

        このように効果的なアウトソーシングを実現するためには、「アウトソーシン
        グを活用することによって生まれた余剰人員、余った業務遂行力を適正に
        配置する」という取り組みが重要です。

     (4)アウトソーシング活用分野の検討

        自社の業務分野の中で、どの分野でアウトソーシングを活用すべきか検討し
        ます。

        アウトソーシングする業務を決定した後は、その業務のすべてを一度に外部
        に丸投げしてしまうのではなく、「アウトソーシングする業務範囲の確認」
        「アウトソーシングによる効果の算出」「アウトソーシングの是正ポイントの
        確認」などを行いながら、段階的にアウトソーシングしていきます。
 
        段階的に進めていくことで、その業務が本当にアウトソーシングに向いている
        業務であるか、求めている効果が本当に得られているかなど、常にチェック
        することが可能となります。 

        チェックの結果、是正するポイントが見つかったら、すぐに改善できる仕組み
        を整えておくことも必要です。 

        例えば、PDCAサイクルなどの考え方を、アウトソーシングにおいても構築し
        ておくことが重要です。

         Plan:アウトソーシングの計画(部門・委託範囲・規模など)

         Do:計画に基づいたアウトソーシングの実施

         Check:実施中のアウトソーシングの効果や範囲などの確認

         Action:効果などの確認から発見された是正ポイントを反映させる

        この際、自社が今後どのような分野に経営資源を集中させていくのかという
        観点が重要になります。

        また、ある業務分野をアウトソーシングした場合、自社で行った場合と比較し
        て、時間、コストなどでどの程度の効果が見込まれるのかを検討すべきです。

        また、アウトソーシングする業務が決まったら、関連する企業情報の管理方針
        についても検討すべきです。

        アウトソーサーは、業務を行ううえで顧客情報などさまざまな企業情報を扱う
        場合が少なくありません。

        情報の不正流失を防ぐためには、当然守秘義務を課すなどの契約上対策を
        とることになりますが、それだけではなく、企業情報にアクセスできる人を制
        限するなど実効性のある管理方法も合わせて検討しておくことが望ましいでし
        ょう。

     (5)アウトソーシング先の決定

        アウトソーシングの委託先企業のことをアウトソーサーといいます。

       アウトソーシングで効果を上げるためには、優れたアウトソーサーに業務を委
       託する必要があります。

       このためには、アウトソーサーは慎重に選ばなければなりません。

       一社のみから選ぶのではなく、複数のアウトソーサーから見積もりをとり、具
       体的な話を聞いたうえで決めるべきです。

       また、既にアウトソーサーを活用している同業他社に意見を聞くことも判断に役
       立ちます。

     (6)アウトソーシングの実施

        アウトソーシングを実施するには、アウトソーサーに自社の業務内容をきちん
       と把握してもらい、自社がアウトソーサーに求めるニーズを理解してもらわなけ
       ればなりません。

       そのため定期的に打ち合わせを行い、双方のコミュニケーションを深める必要
       があります。

     (7)事後チェック・見直し

       アウトソーシングの実施後には、定期的にアウトソーシングの効果をチェック
       するとともに、アウトソーサーを再評価します。

       自社の期待水準とかけ離れていた場合には、別のアウトソーサーとの契約も
       検討します。

   中小企業が「効果的なアウトソーシング」を実現していくためには、単に「経費削減」
   だけに着目するのではなく、「企業のコア部門(本業)に経営資源を集中させる」「生
   産性を損ねるムダを削減する」といった視点から取り組むことが不可欠です。

   また、アウトソーシングといっても、費用を投入して、生産性・競争力の向上を図ると
   いう目的から考えれば、高額な機械の導入や工場建設などといった設備投資などと
   何ら変わりはなく、事前の綿密な検討が欠かせません。

   大企業に比べて限られた現有資産の中で、事業運営していかなければならない中小
   企業こそ、正しい考え方や十分な検討に基づいてアウトソーシングを活用していくことが
   求められています。

   具体的には、自社の強み・弱みを明確にし、上記記載の

    1.既存業務の洗い出しと見直しを行う

    2.人材・業務遂行力を適正に配置する

    3.効果の把握・問題点の改善などの仕組みを整備しておく

   などのポイントを踏まえた取り組みをしていくことです。

   アウトソーシングの活用は自社ですべて行う場合と比べてスピーディーな事業展開が
   可能になります。

   こうしたポイントを踏まえて「効果的なアウトソーシング」を検討することは、検討の
   結果としてアウトソーシングを活用しなかったとしても、業務改善による経営の効率化
   に寄与し、企業の競争力の強化につながっていくはずです。

   事業環境がめまぐるしく変化する今日、これまで以上に企業にとって“スピード”が重要に
   なっています。

   企業が戦略的なアウトソーシングに取り組む意義は大きいといえます。

   2.アウトソーシング導入のメリット

     (1)コスト削減が実現できる

       ・安い外部委託費用によりコストダウンを実現できる

       ・情報システムなどをアウトソーシング
        する場合は空きスペースが生まれ、ス
        ペースの有効利用が図れる

     (2)製品・サービスの向上が図れる

       ・最新技術の導入による製品・サービ
        スの機能強化が実現できる

       ・外部専門家を活用することで、製品・
        サービスの質の向上が図れる

     (3)技術の高度化・情報収集力強化への
       対応が容易になる

       ・アウトソーシング先の最先端の技術を
        つねに利用できる

       ・豊富なデータベースにアクセスすることで、
        情報収集力が強化される

     (4)変動リスクの回避が可能になる

       ・設備機械の陳腐化リスクを軽減できる

       ・業務量や仕事の内容の変化に対して、迅速な対応が可能となる

     (5)経営管理の単純化・高度化が実現できる

       ・自社の経営資源を中核事業へ重点配分することが可能となる

       ・アウトソーシング先のノウハウを吸収することが可能となる

     (6)人材の有効活用

       ・人材不足を解消できる

       ・自社にいない専門家を活用することで業務の効率化が進められる 

     このように、アウトソーシングには数多くのメリットが存在します。

     しかし、導入の仕方を誤るとその効果が期待できないばかりか、自社事業の存立
     基盤を損なう危険性もあります。

   3.アウトソーシング導入の留意点(デメリット)

     ・自社の中核業務、それに近い業務をアウトソーシングすることで自社の存在意義
      を見失う可能性がある

     ・アウトソーシングした業務は今後、ノウハウが蓄積できなくなる可能性がある

     ・外部へ自社の機密が漏洩してしまう可能性がある

     ・アウトソーシングする業務を担当していた従業員の士気低下につながる可能性が
      ある

     ・外部とのやり取りが増えることで、全体の業務がかえって煩雑化してしまう可能性
      がある

   以上のように、安易にアウトソーシングを導入することは危険であるといえます。

   十分に検討し、適切な手順を踏んで進めていくことが望まれます。

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アウトソーシングのメリット・デメリット

アウトソーシングの進め方
 

  ■アウトソーシングの進め方

   アウトソーシングは単純な業務の外注化とは異なり、企業の戦略的観点から展開
   されなくてはなりません。

   一般的には次のフローで示す各ステップにしたがって進められていきます。

    ステップ1:長期ビジョンの策定と各部門の戦略的な「使命」の確立
      ↓
    ステップ2:各部門業務の整理とアウトソーシング可能業務の整理
      ↓
    ステップ3:アウトソーシング方法のリストアップと最適な方法の選択
      ↓
    ステップ4:アウトソーシング導入による業務プロセスの改善

   以下、それぞれのステップごとにその内容について紹介します。

   1.長期ビジョンの策定と各部門の戦略的な使命の確立

     アウトソーシングを行う最大の目的は、自社のもつ経営資源の有効活用を図
     る点にあります。

     それにはまず、自社が10年後どのような企業をめざすのかという長期ビジョン
     を明確にする必要があります。

     長期ビジョンとは、自社は何をもって社会に員献するかという将来のあるべき
     姿を示したものです。

     これが明確でない場合、アウトソーシングしてもよい業務か否かの判断が曖昧
     になり、自社の本来業務を見失いかねません。

     通常、自社の長期ビジョンをもとに長期・中期経営計画を策定します。

     策定された経営計画により各部門の戦略的な「使命(ミッション)」が明らかに
     なり、これを前提として業務のアウトソーシングが進められていきます。

   2.各部門業務の整理とアウトソーシング可能業務の整理

     各部門の業務分掌規定や業務マニュアルおよび各担当者へのヒアリングを通
     じて、各部門の業務機能を洗い出します。

     そして部門の「使命」に基づき、洗い出した業務を分類・整理します。

     この作業は、図のようなマトリックスを作成し、各機能をこの図の各領域上に
     位置づけるものとなります。

     そしてここでは、それぞれの業務領域を次のように定義します。

     (1)中核業務

       戦略的に重要度が高く、かつ自社で判断する必要性が高いと認め
       られる業務。
       または、自社の存立基盤を支える機能を果たす業務

     (2)サポート業務

       中核業務を遂行するための補完的業務

     (3)定型業務

       ルール化され一定の量と内容で繰り返し行われる業務

     (4)裁量業務

       専門的な判断の必要性はあるが短期的には自社の利益に直結
       しない業務。
       しかし、中長 期的には必要と認められているもの

     このように、業務を大きく4つに分類し、このうち(1)の中核業務は自社の本業
     的業務であることからアウトソーシング可能業務から除きます。

     また、(4)の裁量業務は、会社の施策的な諸条件が絡むことが少なくないの
     で、アウトソーシングには原則として不適切です。

     一方、(3)の定型業務に属するものは基本的にアウトソーシング可能業務とし
     ます。

     (2)のサポート業務についても業務機能の特徴などを考慮してアウトソーシン
     グが可能な部分を抽出します。

   3.ウトソーシング方法のリストアップと最適な方法の選択

     抽出したアウトソーシング可能業務に対して、適切なアウトソーシング方法をリ
     ストアップします。

     実際のアウトソーシングの方法は、一般的に次の5つのカテゴリーに分類でき
     ます。

     (1)社内アウトソーシング

       人材派遣サービスや請負サービスを利用したり、他部門へ業務を
       移管したりすること

     (2)社外アウトソーシング

       アウトソーシング・サービス会社へ業務を移管すること

     (3)業務提携

       特定事業などにおいて、他企業と経営資源を対等に相互補完しながら業
       務にあたること

     (4)関連会社の活用

       既存の関連会社に業務を移管すること

     (5)アウトソーシング・サービス会社の設立

       アウトソーシング・サービス会社を設立し、そこに業務を移管すること

     アウトソーシング可能業務に対し、どのアウトソーシング方法を選択するか
     は、一定の基準をもって行います。

     この基準としては、

      ・必要なコスト(初期費用、ランニング費用など)

      ・アウトプットの品質、納期、安定性

      ・その他(例:関連会社を活用したほうがグループ全体として効果が高い)

     などが考えられます。

     このように、諸条件の比較・検討を行い適切なアウトソーシング手法を選択し
     ます。

   4.アウトソーシング導入による業務プロセスの改善

     アウトソーシングの導入方法が確定した業務については、そのプロセスについ
     ても見直しを行う必要があります。

     アウトソーシング先との連絡方法やアウトソーシング先のコントロール方法、必
     要帳票類の変更などを検討し、業務の流れを再設計します。

     また、場合によっては、組織の再編成なども視野に入れた抜本的な業務プロ
     セスの変革(BPR:ビジネスプロセスリエンジニアリング)を行うことも検討します。

     こうした部分は一般的に軽視されがちですが、アウトソーシングが失敗する大
     きな要因のひとつでもあるため、十分な配慮が必要です。

   5.アウトソーシング実行のチェックポイント

     以上のようなステップでアウトソーシングを進めることを前提に、実行の際に
     チェックすべきポイントを次にまとめました。

      ○自社の長期ビジョンは明確になっているか

      ○アウトソーシングすることにより存立基盤を失う危険性はないか

      ○何に経営資源を重点配分するかが明確になっているか

      ○アウトソーシングをした場合の効果は試算されているか

      ○全社的なアウトソーシングを検討・推進するための組織体制が
       整備されているか

      ○適切なアウトソーシング方法およびアウトソーシング先は検討されているか

      ○アウトソーシングを実施するにあたって社内の啓蒙・周知活動をしているか

  □各種アウトソーシング・サービス

   中小企業がアウトソーシングを進めるには、社外アウトソーシングである外部
   サービスの活用がもっとも多くなると思われます。

   そこで、ここではどのようなアウトソーシング・サービスがあるのか、それを利用す
   る際の留意点は何かをまとめていきます。

   1.各種アウトソーシング・サービス

     (1)人事

       人事関連の業務は、もっともアウトソーシングが進んでいる領域のひとつ。
       その理由として、定型化された業務が比較的多い、給与情報などの人事
       情報は社内に置きたくないなどの理由が考えられます。

       【アウトソーシングされる人事関連業務例】
        ・勤怠管理、月次の給与計算、賞与計算

        ・雇用保険、社会保険、労災の手続き業務

        ・就業規則の作成、改訂、届出業務
        ・人材の教育、研修

       大手企業のなかには自社の人事部門自体を分社化し、人事の全業務を請
       け負うアウトソーシング・サービス会社を設立するなどの動きがあります。

     (2)営業

       営業とひとくちにいっても業界や業種によって内容は異なります。
       また営業は会社の利益を直接得る部門であることから、多くの企業で
       聖域とされ、アウトソーシングしにくい分野とされていました。
       しかし、次のような営業にかかわる業務を代行する会社が数多く現れ、
       業務の一部あるいは全部をアウトソーシングする会社も多くなってきた。

       【アウトソーシングされる営業関連業務例】
        ・電話などによる受注業務

        ・電話取次代行、支店や営業所代行

        ・ダイレクトメールの作成を含む販促物作成業務

        ・相手先への実際の訪問による営業活動

        ・顧客名簿の作成や管理

        ・電話での営業や販売促進

     (3)経理・財務

       経理業務は簿記の知識が必要になり、仕訳や記帳作業など多くの
       手間が発生する業務です。
       こうした業務を代行する業者も現在では多数あります。

       おもなサービスの内容としては、

        ・仕訳、記帳サービス

        ・財務諸表作成サービス

        ・財務諸表の見方の指導や財務分析

        ・税金対策や財務戦略に関する指導

       などがあり、経営指導まで行う高度なサービスもあります。

     (4)購買・仕入業務

       購買業務を専門に行う業者も存在します。
       これらの業者には、同業偲社で組織化した共同仕入を専門に行う
       会社なども含まれます。

       メリットとしては、

        ・高品質な製品や部品を大量に安定的に購入できる

        ・購買業者は多くの製品類を扱うことから、安く購入することができる

        ・最新の製品情報などを入手しやすくなる

        ・共同配送を行っているところは物流費も削減できる

       などがあります。

     (5)その他

       上記以外にも、次のようなサービスがあります。

        ・情報システムの構築支援や運用サービス

        ・重要書類やデータを保管、管理するファイリングサービス

        ・郵便物の管理を一括して行うメールルームサービス

        ・インターネットのホームページ作成や企業情報の発信から収集まで
         代行するサービス

   2.アウトソーシング・サービスの活用ポイント

     こうしたアウトソーシング・サービスを選定、活用する際には、とくに次のことに
     配慮をします。

      ・委託したい業務とそれぞれの代行会社の特性(強い分野)を照らし
       合わせる

      ・代行できる業務範囲、納期、依頼側の行う作業を確認する

      ・代行会社の規模や体力を考慮する
       (一定の業務量以上は受付不可となることがあり得る)

      ・依頼することによって軽減される作業コストと委託費との比較を行う

      ・他の業務も併せて依頼できないかを検討する
 

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