経営者育成計画

                                       

経営者育成計画

■後がない後継者問題 
 中小企業、特にオーナー企業にとって、後継者育成など事業承継に関する諸問題は、常に
 念頭に置かなければならない重要な経営課題です。

□経営者候補が育たない中小企業
 1.中小企業で経営者候補が育たない理由
  「後継者不足」に企業が対応するためには、不足している経営者を多く育てる経営
  システムや育成プログラムが必須となります。
  まず、この時代認識が第一です。

  しかし、これらのプログラムを導入している会社は少ない。
  正しい危機感が不足しているからです。
  経営者を育てることと、幹部社員を育てることは違います。

  専門人材を育てるスペシャリストプログラムとも違います。
  経営者はゼネラリストでなければならない。
  経営や戦略全般に精通し、意思決定のできる人でなければならないという意味です。

  それと同時に、戦略を理解し、組織設計や運営のできる人材でなければならない。
  社長に必要なこれらの能力は、短期的な幹部研修会や専門職研修会では身につかない、
  体得が非常に難しいスキルなのです。

  松下幸之助氏は「経営学は教えることができても経営は教えることができない」と言った。
  これより「経営者を多く育てるシステム」と題し、実例を交えながら、このテーマに
  ついて詳しく述べていきます。

  ・理由1
   機能別ワンマン組織である中小企業の組織形態は機能別ワンマン組織であることが、
   第一の理由です。
   機能別組織は、言い換えれば「縦割り組織」。

   縦割り組織では専門人材しか育ちません。
   会社に何十年勤めていようと、同じ機能だけしか経験していない人は経営全体を
   理解できない。

   例えば、販売を理解していても、生産が分からない。
   生産を分かっていても、財務が理解できない。
   逆もしかりです。

   「縦割り組織」の運営で、 経営や戦略課題の多くは解決できません。
   つまり、現在選択している組織そのものが、経営者の育ちにくい形態なのです。
   その上、育成プログラムも採用していなければ、経営者が育つはずもありません。

   たとえ、分権形態の事業部制組織を選択していても、複数事業のポジショニングを
   理解、分析して戦略判断までできる人材は少ないのです。
   あなたの会社に「どの事業に集中して、どの事業から撤退するのか」を判断できる
   経営者人材が何人いるでしょうか。

  ・理由2
   ジョブローテーションが機能しない
   理由1で挙げた問題を解決する人事制度が「ジョブローテーション」です。
   計画的かつ体系的な配置転換。

   この人事制度を運営する過程で、人材は組織や機能、事業全体を理解できるように
   なる。
   しかし、この制度をうまく運用している中小企業は少ない。

   なぜなら、理屈通りに運用すれば「業績が落ちる」からです。
   中小企業は人材不足の中、何年、何十年もかけて専門人材や幹部人材を育てる。
   それを人事異動で一気に変更するというのは、確かに現実的ではない。
   販売責任者は部下を手放したがりません。

   製造責任者も同様です。
   もちろん、その状態をよしとしてはならないが、ジョブローテーションとは
   「言うは易し、行うは難(かた)し」の人事制度なのです。
   その結果、中堅・中小企業の弱点である「縦割り組織体質」が強化されてしまう。

  ・理由3
   経営陣の高齢化中小企業の課題の一つに、「経営陣の高齢化」がある。
   社長の年齢と社員の平均年齢は比例するようです。
   「戦略やビジョンを議論しようにも、10年後に誰が残っているのか」という組織も
   珍しくない。

   ある特定の役員陣が組織を牛耳っているため、役員ですら会社全体から発想できない、
   発言もできない。
   そのうちに、経営陣の高齢化が組織の硬直化という「負の資産」を積み上げていく
   のです。

   老舗でよく見られる「番頭制」だが、今の時代にはそぐわない気もします。
   老舗の会社で、番頭自身が高齢化した経営陣の代表選手である場合をよく見かける
   からです。
   番頭制組織の経営陣の多くは高齢です。

  ・理由4
   組織経営ができない事業承継期の90%近くが組織経営への移行期です。
   組織経営を実践している会社であっても、それらをさらに進化させなければならない。
   しかし現実は、1〜3の理由によって経営者人材が育っていないし、育ててもいない。

   それにもかかわらず、ベテラン(創業)社長であった先代と同じ組織形態を引き
   継ぐのだから、組織パワーが落ちるのは当たり前なのです。
   後継経営者を支える組織とは、理由3でも述べたように番頭を配置することでは
   ありません。

   内閣づくり、右腕づくりと番頭制とは違います。
   「経営者候補レベルの人材を何人、社長の周りに置けるか」 、さらに「その下位層
   にも同等能力の経営幹部候補を育成できるか」なのです。

  ・理由5
   目先優先の経営に陥る理由1〜4を踏まえると、事業承継とは「会社存続の仕組み
   をつくる仕事」であり、長期的視点や戦略要素が優先されます。
   しかし、中小企業は業績基盤が弱い。どうしても目先の業績と事業承継を直結させて
   しまい、会社が迷走する。

   後継経営者の育成は、時間をかけて取り組む仕事です。
   承継は戦略そのものなのです。
   戦略の失敗は戦術ではカバーできない。

   人材基盤さえしっかりとできれば、承継後の短期的な業績悪化は必ず回復、成長
   します。
   すべては人材基盤によるのです。

   「社長が70歳を超えているのに後継者不在」という会社を多く見てきました。
   その大半が目先を優先し過ぎた結果でした。

 2.経営者育成のコンセプトとは何か
  前項では、「中小企業で経営者候補が育たない五つの理由」を述べました。
  これらを乗り越えるためには、どのような経営者育成プログラムが必要か。
  運営プログラム「育成メソッド」について説明します。

  このプログラムには、5つの共通コンセプトがあります。
  5つを満たすメソッドの一つ目が「ジュニアボードシステム(JBS)」です。

  (1)一過性にしない
   経営システムで育てる「経営者は短期間では育たない」。
   経営者育成プログラムを単発で実施しても成果は出ない。
   半年や1年で経営者が育成できるなら誰も苦労はしない。

   一過性の取り組みは、かえって逆効果です。
   大切なことは「経営システム」にまで昇華させ、継続・徹底すること。
   ある中堅企業でこの育成プログラムを15年間続けています。

   その取り組みがカルチャー(企業文化)となり、正しいカルチャーが経営者候補
   を育てているのです。

  (2)教育だけで終わらせない
   実行プロセスを組み込む「経営学は教えられても、経営は教えられない」。
   座学で経営学だけを学んでも効果は薄い。
   経営の本質は経験でしか体得できません。

   もし経営学を学ぶなら「他流試合」、すなわち派遣型スクールを体験することです。
   つまり、プログラムの中に「実行プロセス」を組み込む必要があるということです。
   実務的、実践的に育成テーマを設定し、運営方法を設計すべきです。

  (3)権限を委譲して決断を促す
   「三ゲン」の委譲「組織は『三ゲン主義』で設計せよ」。
   実行プロセスに組み込むためには、「三ゲン主義」が不可欠となります。
   三ゲンとは、「権限(ケンゲン)」「人間(ニンゲン)」「財源(ザイゲン)」の
   三つである。

   「権限」は、戦略・戦術・戦闘を遂行するための権限。
   「人間」は人材配置と人事権。
   人事権が不明確な戦略は、手足を縛られて動いているのと同様です。
   「財源」は投資判断。

   新しいことを行うときには「資金」が必要となります。
   三ゲン主義とは、これらの「ゲン」を委譲することで決断力の強化を促すものだ。
   育成プロセスにある経営者候補に「三ゲン」を与えることで、経営者としての
   自律性が育つ。

  (4)成果を求める
   経営数値への展開力「経営成果、戦略成果をイメージさせる」。
   すなわち、経営数値に関する力を身につけさせることである。
   経営数値とは、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」。

   これらの基礎知識がないまま討議を行い、アイデアを出しても評論に終わることが多い。
   経営を学ぶとは、経営行動や戦略実行を成果に結びつける力を身につけることなのだ。
   権限を委譲して決断を促し、成果を求めるのである。

  (5)長く、大きく、広くとらえる視点を鍛える
   全体最適の実行力「長く」とはビジョンを描くこと。
   「大きく」とは部門ではなく全社を見わたすこと。

   「広く」とは経営を機能ではなく、「理念・事業・収益・組織・経営システム」
   という五つの視点から全体をつかむことです。

   経営資源を正しく掌握せずに戦略は構築できない。
   経営や戦略は資源配分であり、トレードオフであり、優先順位づけであることを
   学びます。

 3.ジュニアボードシステム(JBS)の本質
  「ジュニアボード(Junior Board)」とは、事業経営における次世代役員会を意味する。
  次世代の役員・経営幹部の候補をつくる機関です。

  それと同時に、単なる座学や経営シミュレーションにとどまらず、「シャドーキャビネット
  (影の内閣)」として、会社の将来や経営戦略について現役員陣に提言するプロジェク
  トチーム(PT)でもあるのです。
  組織の規模にもよりますが、通常は5〜15名程度で編成・運営します。

  (1)現状の役員に刺激を与える
   新しい発想、若々しい発想、現場からの発想などの提言を現状の役員会に投げ
   かけることで、経営判断に新しい視点を与える。
   そして、実際によい提案であれば取り入れます。
   どうしても短期的な業績に縛られやすい現役員に対して、中長期的な課題を現場
   からの視点で提言してもらうことに価値がある。
   現役員会のビジョンやテーマに対する諮問機関の役割を発揮できるまで高めます。

  (2)次世代の役員・経営幹部登用の登竜門とする
   ジュニアボード活動を通じて、次代役員候補メンバーの経営者感覚や発言内容、
   思考力、実行力、リーダーシップなどを評価できる。
   また、役員・経営幹部の登竜門として、その資質や能力を検証することもできる。
   そのため、このシステム(PT)の名称を工夫して付けている会社も多い。

  (3)次の世代の経営イメージを構築する
   ビジョンづくりは、ビジョンを実現するときにリタイアしている人材ではなく、
   前線に立っている人材で描くほうが、「自分たちが主役となって会社をつくり上げる」
   という自律性を促す。
   短期的な成果だけではなく、長期的な成果としてその活動が実を結ぶのです。
   プロジェクト活動においては、理念・収益・事業・組織・経営システムの中から
   テーマを選択すると、経営イメージを描きやすい。

  (4)擬似的な人事ローテーション機能を果たす
   自社の戦略・ビジョンという一つの方向にベクトルを合わせて他機能や他部門の
   幹部社員とディスカッションすることは、他部門を理解することになります。
   その結果、部分最適思考ではなく、全体最適思考を育てることができるため、
   擬似的に「人事ローテーション」の役割を果たすこととなります。

  (5)内規・任期・手当てなどで経営システム化する
   ジュニアボードをシステムにするには、社内で運用ルールをつくる必要があります。
   また、活動期間に期限を設けることも重要です。
   任期は通常1〜2年です。
   プロジェクト型で基本業務プラスアルファとなる活動が多いため、手当てを支給
   するなどして成果への責任感を持たせます。
   そして、ジュニアボードを継続的(10年5期以上)に運用すること。
   結果、経営者候補が多く育つ。
   その際、PTテーマによっては同じ人材を繰り返し登用することもある。

 4.ビジョン実行プログラム
  JBSの本質は、中期経営計画の策定とその推進エンジンとして機能させることにある。
  【表】のモデル事例のように、「実行プログラム」と「階層別の推進体制」を中長期的、
  有機的、システム的に組み合わせ、中期経営計画(ビジョン)や組織変革を実現する。
  実行スケジュールについて説明します。
  まずは、ビジョンを立案する第1期(3年)を基本スケジュールとする。
  第2期も基本は3年だが、モデル事例ではそれに加え、準備期間として半年を確保
  している。
  最低でも第1期までの3年間、可能ならば2期以上は継続する。
  事例として前項で紹介したように、3期、10年以上継続している中堅優良企業もある。
  言うまでもなく、この会社では強い企業体質や風土が確立されています。

 5.階層別の推進体制
  次に、階層別の推進体制について説明します。

  (1)取締役会JBSを導入した際の取締役会としての機能は、
   a.戦略実行プロジェクトチームへの方向性の明示
   b.戦略実行プロジェクトチームからの答申を検討
   c.承認したビジョンの全社発表
   d.経営方針への展開
   e.ビジョン実行レベルの監査

  です。

  このサイクルを取締役会で最低でも2期、6年は運用する。
  結果、組織で中期経営計画を策定・運用・実行する経営システムが完成します。

  (2)戦略実行プロジェクトチーム
   このチームは取締役会の諮問機関としての役割(機能)を果たします。
   経営および戦略上の課題の大半は縦割り組織(機能)では解決しません。
   組織横断的な取り組みによってのみ解決するのです。
   しかし、経営現場では足もとの議題も避けて通るわけにはいかないため、取締役会
   ですら短期的な課題に取り組む時間が多くなってしまう。
   そこでこのチームが、自らの目線でビジョンを立案して取締役会へ答申し、検討
   材料を提供する。
   「ビジョンテーマの推進」段階では、新規事業開発やトータルコストリダクション、
   ブランディング戦略など、ビジョン実現に全社的なテーマを検討する。

  (3)実行支援チーム
   戦略実行プロジェクトチームを後方支援する形で、細部課題は実行支援チームが
   解決します。
   役割は、横断的なテーマから機能的なテーマへ落とし込んだ際の具体的な改善。
   営業活動や製造コストダウン、評価制度づくりなどだ。
   サブプロジェクト的な位置づけのチーム です。
   ビジョン推進の協力者を増やす狙いもあり、実行段階における組織の壁や障害を
   取り除くための手段にもなります。

  (4)社外セミナー
   社外セミナーは二つの意味で有用です。
   一つは、戦略実行プロジェクトチームのメンバー自身のレベルアップ。
   ビジョン策定には、マネジメントや事業戦略、ビジネス計数(損益、貸借、
   キャッシュフロー、中期数値の策定)などに関する基礎知識が不可欠です。
   もう一つは、個別指導ができること。
   メンバー全員を同時に重点指導するのは難しいが、プロジェクトリーダーや次期
   メンバー候補へのピンポイント育成ができる。
   結果、プロジェクトの実行スピードも加速する。

  (5)社内教育組織
   全体の実行スピードを加速するためには、全社教育が不可欠となる。
   ただし、その際に知識詰め込み型の階層別研修を広く浅くやっても効果は低い。
   モデル事例のように、戦略実行プロジェクトチーム以外のメンバーにビジョンや
   方針を周知徹底することを目的とした教育を実施します。
   組織全体の理解レベルを向上させることで、プロジェクトの成功率を高める。
   いずれにしても、教育の徹底はビジョン実現に不可欠です。
   逆に、社外セミナーや社内教育が不要なビジョンは、ビジョン設定そのものが
   間違っていると考えるべきである。

息子への事業承継

                 

息子への事業承継

 息子への事業承継を検討している社長を対象に、社長として、早い段階から息子を育てる
 際のポイントをご招介します。

■初期段階における後継者育成

 1.後継者育成のポイント 
  多くの社長は「自分の子供を後継者にしたい」と考えているでしょう。
  しかしながら現実には「まだ先のこと」として、具体的な後継者育成について対策を
  たてていない方も多いでしょう。 

  後継社長は一朝一夕に育つものではありません。
  また、黙っていても自然に育つというものでもありません。
  そこで、後継者にしたい息子がいるならば、本格的な後継者育成を検討する必要が
  あります。

  後継者育成のポイントは、
   ・早期からの計画的取り組み
   ・適切な育成方法の選択
   ・継続的で粘り強い取り組み
  という3点です。
  この認識にもとづき、後継者育成について考えていきます。

 2.後継者育成の流れ 
  まず、後継者育成の流れを確認します。
  自分の息子を経営者に育てるには、一般的には段階ごとに、経営に関する知識・能力の
  獲得を目標とした各種教育や、実務の引き継ぎが必要になります。

  <初期段階:20代の経営基礎習得段階>
   (1)企業実務の習得
    ・業界知識、取引慣行、業務知識(経理、販売など)
    ・ビジネスマナー、対外折衝能力、文書作成能力
    ・マネジメントの基本(経営戦略、マーケティング、情報管理など)
   (2)経営者としてのリーダーシップ教育
    ・社内外での人間関係の構築
    ・幅広い教養、時代感覚、判断力、行動力、忍耐力などの習得・鍛錬

  <中期段階:30代前半を目安とした幹部としての経営参画段階>
   (3)経営幹部としての教育
    ・自社事業に対する新しい経営ピジョンの醸成
    ・取締役など経営陣としての実践・経験による教育
    ・社内外での信頼・人望の確保

  <仕上げ段階:後継者として正式決定段階>
   (4)経営実務の引き継ぎ
    ・取引先、金融機関などの引き継ぎ
    ・自社株移転などによる経営権の引き継ぎ
    ・会社トップの実務の引き継ぎ、教育
    ・新しい組織の体制づくり

  経営者として経営の基礎を習得するにあたり、上記の初期段階はとくに大事なステップ
  となります。
  この時期に幅広い基礎能力を身につけ、中期段階以降で次期社長として実務経験を
  積んでいく必要があります。

  それでは、初期段階においては後継者をどのような方法で育成すべきなのでしょうか。
  次項において代表的な5つの方法をとり上げていきます。

□後継者を育てる5つの方法 
 初期段階において、後継者を育てる方法はいくつかあります。
 代表的かつ効果的なものとしては、次の5つの方法があげられます。

  1.手もとにおき、手塩にかけて教育を行なう 
  2.社内で教育をする 
  3.他社で修業を積ませる 
  4.海外ビジネススクールで学ばせる 
  5.異業種交流会に参加させる

 それぞれの方法について概要を解説し、そのメリット・デメリットをご紹介します。

 1.手もとにおき、手塩にかけて教育を行なう 
  第一に考えられるのが、社長自らが手もとに後継者をおいて、手塩にかけて教育する
  方法です。
  社長の経営哲学や信条などを後継者に直接教えることができます。

  時には厳しく、またある時には優しく、手取り足取り実践の場を通して教え込むことに
  より、社長学を肌で伝えます。 
  こうして社長の後ろ姿を毎日見せて教育するのは、非常に実践的かつ効果的な方法で
  あるといえます。

  <メリット>
   ・社長の考えを直接、日々の業務や家庭生活のなかで教え込む機会が多くあるため
    経営者としての心構えや考えをじっくり伝授することができる。
   ・自社の組織や人の動き方、業界や取引先の動向を早くからマスターし、会社
    経営を実践的に学ぶことができる。
   ・自社内でのローテーション教育が可能になり、各ポジションを短時間に体験
    することで、社長としてのさまざまな経営ノウハウをマスターすることが容易
    となる。

  <デメリット>
   ・親子であるがゆえ、双方に甘えが生じやすくなる。
    また、お互いを過剰に意識してしまい、過度に厳しくあるいは甘くなる傾向がある。
   ・社長がすべてを教えることは不可能であり、社内で適当な教育係をつけることが
    必要になる。

 2.社内で教育をする 
  第二に、社内で教育をする方法があります。
  この方法は、社内で教育係にあたるスタッフを設けて、計画的に教育していくものです。 
  この方法には、長期的視野に立って各部門をローテーションどおりに経験する方法と、
  入社後年次にしたがって段階的に教育する方法とがあります。

  成否の鍵は、教育担当者に誰をあてるかにかかっています。
  次期社長と確定している人物に対してはっきりと物をいい、教育していくためには、
  明確な人生観をもち、実務経験も豊かな人でなければなりません。

  <メリット>
   ・親子としての甘えやなれ合いを排除し、第三者が客観的に厳しく教育できる。
   ・社内のひととおりの業務を経験し身につけることができ、早くから従業員と
    接することで社内人脈を構築できる。

  <デメリット>
   ・受け入れ側が社長の息子だからと自分の保身を考えて手心を加えてしまうと、
    教育の効果が半減してしまう。
   ・「社長の息子だから多少のわがままは許される」という考え方や行動が息子に
    出る場合もある。

 3.他社で修業を積ませる 
  第三に、他社で修業を積ませる方法があります。
  第三者による社内教育でも、親子の甘えを完全に拭い去ることは難しいものです。
  そこで思い切って他社に預け、一社員としての苦労や業務の遂行能力を広く学ばせる
  ことも有効です。 

  とくに息子が新卒としてはじめて会社勤めをする場合には、他社で経験を積ませる
  ことが多いようです。勤め先の企業を選定する際には、積ませたい経験に応じて、
  同業他社・異業種他社・大企業などそれぞれの特徴を考慮しながら選定します。

  <メリット>
   ・「他人のメシを食う」という下積みの苦労を体験できる。
    この苦労は、後に大勢の人間の上に立って人を動かす際、生きた経験として
    かけがえのないものとなる。
   ・他社で修業することにより、自社ではなかなか築けない幅広い人脈を形成する
    ことができる。
   ・入社する会社が関連する業種であれば、仕事の仕組みや業界の慣行などを
    マスターできる。
   ・入社する会社が大企業であれば、幅広い視野、国際的な立場で仕事を行なう
    機会が増える。 
    場合によっては、海外勤務や先進企業との交流も可能である。

  <デメリット>
   ・勤務しはじめた会社の魅力にひかれて、後継者としての道を選択しなくなる
    可能性がある。
   ・自社に呼び戻すタイミングが難しい。 
    他社での実務経験がある程度長い期間にわたらないと修業にならず、一方、
    仕事のおもしろみを感じたり責任が重くなったりするところまで進むと呼び
    戻すのが困難になることもある。

 4.海外ビジネススクールで学ばせる 
  第四に、海外ビジネススクールで学ばせる方法があります。 
  大企業のみならず中小企業においても海外進出は目覚ましいものがあり、企業のトップ
  として国際的視野をもつことがますます重要になっています。 

  こうしたことを背景に、後継者となる息子を海外のビジネススクールに入学させる 
  企業も増えています。
  海外ビジネススクールの多くは米国を中心とする経営専門の大学院で、MBA
  (Masterof Business Administration:経営学修士)の称号を授与してくれるもの
  です。

  ただし、英語が堪能であることが入学条件になるなど、誰もが簡単に入学できるわけ
  ではありません。
  また、入学費用も高額なため、経済的ゆとりのない企業では長期にわたって留学させる
  ことは困難であると考えられます。

  <メリット>
   ・専門的な経営学や経済学を集中して学ぶことができる。 
    とくに、ケーススタディーに重点をおいて教育されるので、実践に役立つ知識
    が身につく。
   ・各国からのエリートが集まってきており、卒業後各界で活躍する人も多く、
    有益なMBA人脈が形成できる。
   ・海外という慣れない環境、厳しい教育カリキュラムなど、経営者に必要な精神的
    強さを身につけることができる。

  <デメリット>
   ・費用と時間がかなりかかる。
   ・修了して帰国後、MBAに対する過剰なエリート意識をもってしまう場合もある。

 5.異業種交流会に参加させる 
  第五に、異業種交涜会に参加させる方法があります。 
  異業種交流会には経営者を対象としたものも多く、地方公共団体、商工会議所・商工会、
  法人会の指導で行なわれるものや民間の企業やコンサルタント団体によって主催される 
  ものがあります。

  <メリット>
   ・本音の情報、価値ある情報を通じて、技術提携、共同開発を進め、経営感覚を
    養うことができる。
   ・多彩な外部ブレーン、人脈ネットワークを構築することができる。
   ・多種多様な人物・世代の集まりであれば、自分の父親から学べない価値観や
    人生観をも学ぶことができる。

  <デメリット>
   ・時間と費用が必要である。 
    とくにこれら交流会は定期的に開催されることが多く、時間の制約を余儀なく
    される。
   ・交流会参加の目的を明確にしておかないと、期待される効果を生み出すのが
    難しい。

□自社に適した育成方法を見つける 
 ここまでは代表的な5つの後継者育成方法についてご紹介しましたが、実際にどのような
 パターンを採用するかは、その企業の置かれている経営環境や後継者の資質などによって
 判断すべきでしょう。 
 その際には次のことを明確にします。

 1.息子に事業承継の意思の確認をする 
  親が自分の会社を継がせたいと思っていても、息子に継ぐ意思があるとは限りません。 
  早いうちにその意向を伝え、息子に継ぐ意思がない、あるいは迷いがあるときは十分な
  説得や徹底的な議論が必要になります。

 2.自分の経営哲学、経営ビジョンを明確にする 
  自分の意思を継いで会社をさらに成長させてもらうには、現在の社長としての経営哲学、
  経営ビジョンを明確にし、息子に語ることが大切です。

 3.後継経営者として必要な能力を洗い出す 
  引き継ぐものとして自分の持っている能力を洗い出すばかりでなく、自社の将来を
  見通してこれから求められる新経営者としての能力を明らかにします。

 4.現在の息子の能力を明確にする 
  息子が経営者としての資質を備えているか、足りない能力は何かを明らかにします。 
  できれば、本人に自覚を促し動機づけするかたちで進めていきます。

 5.後継者育成の教育プランを策定する 
  実際の経営権委譲の時期を設定し、経営者として必要な能力や積ませたい経験を
  タイムスケジュールに落とし込みます。 
  後継者育成は、自社の置かれている状況や息子の資質によってそのとるべき方法が
  違ってきます。

  上記のことを明確にすることで、はじめて自社に合った最適な教育方法を選択する
  ことができるのではないでしょうか。 
  また、息子を経営者に育て上げるには、  
   ・自分が引退しても自分の会社を永続的に維持、成長させたい  
   ・血を分けた息子に自分を上回る任官者として立派に成長してもらいたい 
  という強い信念や愛情をもって育成方法を検討することが大切でしょう。

生命保険を活用した事業承継対策

         

生命保険を活用した事業承継対策


 経営者向け保険(経営者保険)の契約形態は、「契約者:法人」「被契約者:
 経営者(役員)」「受
取人:法人」となっています。

 経営者保険は「定期保険」「長期平準定期保険」「逓増定期保険」「終身保険」「養老保険」
 などの保険を利用するのが一般的です。

 経営者保険を上手く活用することで、

  1.事業承継・相続税対策 2.死亡退職金・弔慰金対策 3.事業保証資金対策

  4.節税対策(課税繰り延べ) 5.利益調整
 が可能になります。


 ■事業承継に伴う主な資金需要

  事業承継において発生する資金需要は、企業の状況、経営者の財産の所有状況、相続
  の数、経営者と後継者の関係(親族・相続人、もしくはそれ以外の人など)など、
  さ
まざまな条件によって異なります。

  一般的に想定される資金需要を「企業からみた主な資金需要」「経営者および相続人
  などの親族からみた主な資金需要(相続対策)」に分けて考えると次の通り整理する
  ことができます。

  なお、ここでは、後継者は、中小企業に多くみられる経営者の親族(子供など)が事業を

  承継するケースを想定しています。

  1.企業からみた主な資金需要

   (1)社長の役員退職慰労金などの資金

    経営者が退職した場合には役員退職慰労金、在職中に死亡した場合には弔慰金を
    支払わなければなりません。

    社長の役員退職慰労金や弔慰金は従業員などと比較すると高額になるので資金を
    準備しておく必要があります。

   (2)事業承継時のリスク対応資金

    世代交代などにより社長が経営の第一線から退くことによって、さまざまなリスク
    が顕在化する可能性があります。

    例えば、後継者が新体制下で事業を軌道に乗せるまでの間に、一時的に業績が
    低迷してしまうことがあります。

    こうした場合、運転資金や借入金の返済などの資金繰りに困難が生じる可能性が

    あります。

    また、後継者への代替わりを機に、企業を去る従業員が出てくる(退職金支払い

    の必要性)こともあります。

    こうした事業継続上のさまざまなリスクに対応するためには、相応の資金を準備

    する必要があります。

   (3)借入金返済のための資金

    中小企業の場合、会社の借入金に対して社長が連帯保証を行っているケースが
    少なくありません。

    この場合、経営者の引退に伴って、後継者が連帯保証を引き継がなければならない
    場合があります。

    連帯保証の重さは、後継者(後継者候補)が会社を継ぐことに二の足を踏む原因

    となることもあります。

    特に、親族以外から後継者を選ぶ際には、障害になることが少なくありません。

    こうした問題に対応するためには、借入金の一部または全部を返済するなどして
    後継者の負担の軽減や解消を図る必要があります。

   (4)自社株式や事業用資産買い取りのための資金

    事業承継においては、「後継者に自社株式や事業用資産を集中させて、経営の
    安定を図る」ことが大切になります。

    一方、社長の中には、所有する財産の多くが自社株式や不動産などで占められ、
    金融資産(現金・預貯金、市場性のある有価証券など)が少ないケースがあります。

    この場合、相続に伴って「後継者以外の相続人に自社株式を分与しなければならない」
    「相続税納税のための資金がなく、事業用資産の一部を売却しなければならない」
    といった理由から、自社株式や事業用資産が分散してしまう可能性があります。

    こうした事態を防ぐためには、企業は自社株式や事業用資産の買い取りを検討する
    必要があり、そのための資金を準備しておかなければなりません。

 

  2.社長および相続人などの親族からみた主な資金需要

   (1)納税資金

    相続税は、物納も可能ですが、原則として現金で納税する必要があります。

    しかし、社長の財産のほとんどが自社株式や事業用資産で占められていると、
    納税資金が不足する場合があります。

    また、仮に物納を選択しようとしても、自社株式や事業用資産では、それも難しい
    ことがあります。

    このような場合のために、納税資金を準備しておく必要があります。

   (2)相続財産の分割資金

    相続人が複数おり、かつ財産の多くが自社株式や事業用資産などで占められ、
    金融資産が少ないと、各相続人に遺産を分割することが難しい場合があります。

    また、前述したように、自社株式や事業用資産などは後継者が集中的に相続する
    ことが望ましいものの、後継者以外の相続人にこれらの財産を相続させなければ
    ならなくなることになります。

    こうした事態を防ぐためには、代償分割を行う必要があります。

    代償分割とは、特定の相続人が財産を相続する一方で、当該相続人が他の相続人
    に対して自身の現金などの財産を渡すなどして、相続人間で相続財産の調整を
    図ることです。

    この場合、当該相続人は、他の相続人に支払う現金を準備しなければなりません。

    このように事業承継の際にはさまざまな資金需要が発生する可能性がありますが、
    これらの資金需要への対策として、生命保険が活用されています。

    なお、ここでは資金需要の主体を企業と、社長および相続人などの親族に分けて
    整理しましたが、事業承継対策を検討する際には、両者を一体的に考えなければ
    なりません。

    例えば、経営者の役員退職慰労金は、最終的には相続人の相続税の納税資金として
    考えなければならない場合があります。

    また、前述したように、企業が自社株式や事業用資産を買い取らなければならない
    場合もあります。

    事業承継対策を検討する際には、企業と社長を一体的に捉えなければならないのです。

    ここでは、企業の視点を中心に、事業承継に伴う資金需要への対策として生命保険の
    活用を検討する際のポイントなどを紹介します。

 □資金需要の特徴と生命保険活用のメリット

  1.事業承継における主な資金需要の特徴と生命保険活用のメリット

   事業承継に伴う資金需要には、次のような特徴があります。

   (1)確実性が求められる

    事業承継は、いずれ必ず訪れるものです。

    従って、円滑な事業承継を実現するためには、しっかりとした計画を立てて、
    必要となる資金額を把握すると同時に、必要となる資金を確保できる方法を
    検討しなければなりません。

   (2)資金需要が発生する時期が分からない

    いずれは必ず訪れる事業承継ですが、それを、いつ、どのような状況で迎える
    ことになるかは分かりません。

    事業承継は、社長の死亡とその後の相続をもって完了することが少なくありませんが、
    社長が亡くなる時期は誰にも分かりません。

    また、病気・事故など不測の事態によって経営者が第一線を退かなければならなく
    なる場合もあります。

    従って、こうした発生時期が分からない資金需要に対応できる方法を検討しなければ
    なりません。

   (3)換金性の高い資産で準備する必要がある

    退職慰労金、リスク対応資金、借入金返済資金、自社株式や事業用資産の買い取り
    など、さまざまな場面において現金が必要となります。

    そのため、資金需要に対する備えは現金や換金性の高い金融資産で保有することが
    望ましいといえます。

    生命保険は「被保険者(契約者)の死亡などの保険事故の発生に際して、契約で
    定められた保険金(現金)を確実に受け取ることができる」ことから、事業承継に
    伴う資金需要に対する準備として効果があります。

  2.生命保険活用のその他のメリット

   生命保険には、前述したようなメリット以外にも、節税効果(課税の繰り延べ)など、
   企業にとってのメリットがあります。

   生命保険活用のその他のメリットは次の通りです。

   (1)節税(課税の繰り延べ)が可能(注)

    保険の契約形態によっても異なりますが、例えば「契約者:法人」「被保険者:
    経営者」「保険金受取人:法人」で保険に加入した場合、支払い保険料の全部
    または一部(保険種類や期間によって異なります。詳細は後述)を損金算入できる
    ことから、法人税・事業税・住民税が軽減されます。

    ただし、解約返戻金や死亡保険金が法人に入った場合は、これらが法人の益金と
    なるため、将来においては税を納めることとなり、課税の繰り延べにすぎないと
    いう点には注意する必要があります。

    なお、実際には、解約返戻金(益金)は役員退職慰労金(損金)とし、死亡
    保険金(益金)は死亡退職金や弔慰金(損金)とするなど、課税を避ける対策と
    セットで検討されることが一般的です。

    (注)一部の定期保険は解約払戻金が無いため、課税繰り延べの効果が
      ありません。

   (2)資金繰り対策

    生命保険を解約することによって解約返戻金を受け取ったり、契約者貸付を
    受けることで、保障を維持したまま、一定額の現金を受け取ることができます(注)。

    こうした資金は、経営状態が急激に悪化した場合など、急な資金需要が発生した
    場合の資金調達手段の一つとして活用することができます。

    (注)解約払戻金や契約者貸付が無い保険もあります。また、加入直後は
    解約払戻金が無い場合や契約者貸付を受けられない場合などもあります。

 □事業承継対策に活用される生命保険商品

  1.事業承継で活用される主な保険種類

   事業承継における資金需要は個々の企業によって異なるため、事業承継対策に
   適している生命保険の種類は一概にはいえませんが、事業承継対策を含む
   「経営者向け保険」としては、「終身保険」「逓増定期保険」「長期平準定期保険」
   が活用されるケースが多いようです(名称は生命保険会社によって異なる場合が
   あります)。

   これらの中でも、事業承継対策としては逓増定期保険・長期平準定期保険が広く

   活用されているようです。

   逓増定期保険とは、保障額が当初保障額に対して一定の割合で最高5倍まで増額する
   定期保険です。

   保障は最高5倍にまでなるにもかかわらず、払込保険料が一定であるところが

   ポイントです。

   これは、将来最高5倍にまで増える保障に対する保険料を前払いしていることになり、

   この前払い分の保険料が解約返戻金の原資となります。

   ただし、保険の基本設計が定期保険であるため満期保険金がありません。

   保険を現金化するためには、被保険者が死亡しない限り、契約満了前に解約する
   ことになります。

   つまり逓増定期保険は解約することを前提に入る保険なのです。

   保険期間は、15年・20年・30年と長期にわたります。

   長期平準定期保険とは、保険期間満了のときにおける被保険者の年齢が70歳を超え、

   かつ当該保険に加入したときにおける被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する
   数を加えた数が105を超えるものをいいます。

   逓増定期保険よりも解約返戻率の高い期間が比較的長いのが特徴です。

   いずれの生命保険も、「払込保険料の一部が損金算入できる」(詳細後述)、

   「掛け捨てである定期保険と異なり、解約返戻金がある」「終身保険よりも保険料が
   割安になる傾向がある」ことから、死亡時の保障に加えて、解約返戻金を役員退職
   慰労金の原資としたり、契約者貸付を受けることで、一時的な事業用資金とする
   ことが可能などの理由から、事業承継対策として求められる資金需要に幅広く対応
   できるという特徴があります。

   なお、いずれの生命保険についても、解約返戻金は、契約当初から一定期間は増加

   していくものの、途中から減少に転じて最終的には無くなる(満期保険金が無い)
   という山形のカーブを描くため、資金需要の発生時期と、解約返戻金がピークを迎える
   時期との整合性を取る必要があるなど、活用の際には注意を要します。

  2.税務上の取り扱いの概要

   節税(課税の繰り延べ)効果など、税務に関する点は事業承継対策に生命保険を活用
   する上で、検討しなければならない重要なポイントとなります。

   ここでは、「契約者:法人」「被保険者:経営者」「保険金受取人:法人」の場合の
   主な生命保険の保険料および保険金の税務上の取り扱いを紹介します。

   なお、ここで紹介するのは概要のため、詳細は税理士などの専門家に確認するように
   してください。

   (1)終身保険

    税務上の終身保険に該当する保険料は資産計上しなければなりません。

   (2)長期平準定期保険

    税務上の長期平準定期保険に核当する保険料の取り扱いは以下の通りです。

    a.保険期間の開始のときから当故保険期間の60%に相当する期間

     支払保険料の1/2を損金算入、1/2を資産計上します。

    b.保険期間の残り40%に相当する期間に達したとき

     毎年の支払保険料については、全額損金算入することができます。

     また、a.で資産計上していた保険料については、残り40%に相当する
     期間で均等に取り崩し、損金算入することができます(法人税関係個別
     通達「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」)。

   (3)逓増定期保険

    税務上の逓増定期保険で2008年2月28日以降の契約日の保険料の取り扱いは
    次の通りです。

    a.保険期阿満了のときにおける被保険者の年齢が45才を超える保険の場合
     (以下の、b.またはc.に該当するものを除く)

     ・保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間

      支払保険料の1/2を損金算入、1/2を資産計上します。

     ・保険期間の残り40%に相当する期間に達したとき

    毎年の支払保険料については、全額損金算入することができます。

    また、「保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間」で
    資産計上していた保険料については、残り40%に相当する期間で均等に取り
    崩し、損金算入することができます。

    b.保険期間満了のときにおける被保険者の年齢が70歳を超え、かつ当該
     保険に加入したときにおける被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する
     数を加えた数が95を超える保険の場合(以下の、c.に該当するものを除く)

     ・保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間

    支払
      保険料の1/3を損金算入、2/3を資産計上します。

     ・保険期間の残り40%に相当する期間に達したとき

      毎年の支払保険料については、全額損金算入することができます。

      また、「保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間」
      で資産計上していた保険料については、残り40%に相当する期間で均等に
      取り崩し、損金算入することができます。

    c.保険期間満了のときにおける被保険者の年齢が80歳超え、かつ、当該
     保険に加入したときにおける被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する
     数を加えた数が120を超える保険の場合

     ・保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間

      支払保険料の1/4を損金算入、3/4を資産計上します。

     ・保険期間の残り40%に相当する期間に達したとき

      毎年の支払保険料については、全額損金算入することができます。

      また、「保険期間の開始のときから当該保険期間の60%に相当する期間」
      で資産計上していた保険料については、残り40%に相当する期間で均等に
      取り崩し、損金算入することができます。

    d.a〜cに故当しない保険の場合

     保険料の全額を損金算入することができます(法人税関係個別通達「法人が
     支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」)。

   (4)保険金の取り扱い

    保険金を受け取った場合、原則として全額益金となります。

    ただし、一部資産計上しているものについては、資産計上分を取り崩し、差額が
    益金となります。

 □生命保険を活用する際の基本的な留意点

  1.生命保険活用の目的を明確にする

   法人における生命保険活用のメリットという節税対策(課税繰り延べ)が強調
   されることがあります。

   また、企業側も、目先の効果が期待できる節税対策(課税繰り延べ)に対して
   強いニーズを感じている場合が少なくありません。

   しかし、事業承継対策で最も大切なのは「円滑な事業承継を実現すること」であり、
   生命保険はそれを実現するための重要な対策の一つです。

   従って、事業承継対策に生命保険を活用する際には、個々の企業の状況、社長の
   財産の所有状況、相続人の数、社長と後継者の関係などを勘案しつつ、事業承継に
   関する計画を立て、想定される資金需要を明確にした上で、最適な生命保険を選ぶ
   必要があります。

  2.社内規定などを確認・整備する

   生命保険の活用を検討する際には、社内規程なども確認・整備する必要があります。

   例えば、役員退職慰労金は、株主総会において「取締役会に一任する」旨の決議が
   なされることが一般的ですが、何の基準もなく取締役会へ一任してしまうと
   「お手盛り的」に役員退職慰労金が支給されかねないため、会社法上は無効となる
   ことも考えられます。

   また、税務上も債務の確定という観点から退職給与の損金性について問われる
   可能性があります。

   そのため、取締役会に一任できるのは内規または慣行があるなど、明示的、黙示的
   な基準があることが前提となります。

   従って、準備した保険金を役員退職慰労金として、適切に社長に支払うためには、
   役員退職慰労金規程といった基準の有無を確課する必要があります。

   また、原則として、規程などで定められている金額以上は、役員退職慰労金として
   支払うことはできませんので、生命保険の保険金額を検討する際にはこうした点に
   ついても注意しなければなりません。

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事業承継を成功させる

         

事業承継を成功させる

 ■会社の存続が第一
  不況の深刻化で、事業承継をめぐるトラブルが増加しています。
  骨肉の争いが原因で会社の屋台骨が揺らぐケースも少なくありません。
  経営者が入念に準備することで、こうした事態は未然に防げるのです。
  従来のような相続税対策一辺倒の事業承継のやり方を見直し、 「企業を存続させること」
  を第一に考えた対策が必要です。


 □タイミングとバランスの承継プラン
  1.バトンタッチのタイミング
   人には、何かをするに相応しい時期というものがあります。
   45〜60歳はトップとして活躍するのに最も相応しい時期です。
   活躍すべき時期に活躍する舞台を与えてやらないと、もっているはずの能力の芽
   が伸びない。
    (1)後継者が社長として相応しい能力と信用を備えたとき
     年齢としては心・技・体の最も充実した40代前半が、バトンを渡す時期
     として理想的です。
     その頃であれば、実務経験だけでなく、人間的にも成長し、社会的にも
     信用が備わっている。
     経験豊富な先代からみれば、後継者の能力が「完全に申し分ない」と思える
     ようになるのは容易なことではありません。
     7割程度、備わったと思ったら、やらせてみるのがよいでしょう。
     逆に30歳前後の若さでは、先代社長が亡くなった場合等を除き、肩書きが
     社長になっても周りから認められないことが多い。

    (2)先代社長が余力ある時期に
     バトンタッチはリレーと同じで助走区間が必要です。
     少なくとも 3年間は社長業見習いとして並走してやるべきです。
     一挙にすべては任せられないので一部は任せず、荷の軽い状態でスタート
     させます。
     例えば、役員人事、投資等は会長の担当とする。
     先代社長は、身心ともに健康な状態で会長職として新社長を後見できること
     が求められます。
     代表権ある会長として後見し、適切な指導、支援ができる状態をつくる。

    (3)業績が順調で安定しているときに
     波風が強く、海が荒れている時、新米の船長に任せると船を難破させる
     危険性がある。
     そういう時期は、ベテランの船長がブリッジに立ち、後継者を横に置いて
     陣頭指揮すべきです。
     こういう時こそ実践指導する絶好の機会です。
     当面の問題を解決してバトンタッチすることが望ましい。
     また、業績の好調期でなければ会社にとって負担が大きく、先代は満足
     できる退職金をもらえない。
     政権交替には税金問題も絡むので、収入の多い時期のほうがよいのです。

    (4)節目の時を選べ
     タイミングの建前からいえば、創業40周年とか、年商100億円突破という
     ような、企業としての節目をねらって決めることも多い。
     こうした節目の時期を「経営者の花道として後継者に譲る絶好の時」と
     とらえることも賢明です。
     こういう絶好の時期を逃すと、譲位はますます難しくなるものです。

  2.成功する承継プランの立て方
   事業承継は「時間との闘い」である。
   譲る側の残されているであろう時間内に譲られる側が育ち、また、うまくやって
   いける状態をつくることがカギとなります。

    (1)バトンタッチの時を先ず決める
     「進む時には人任せ、退く時には自ら決せよ」といわれるように、退く
     時期は権力者自身が決めなければ、誰にも決められないものです。
     どんな名社長といえども、これを間違えると、容赦なく経営者失格となる。
     仕事が趣味というタイプの社長は、仕事と地位を失うのを恐れるために、
     引退の時期を誤りがちです。
     つまり、後継者の発掘と育成を怠りがちなのです。
     創業社長の引退の時期は、65〜70歳が最も多く、次いで70〜75 歳、
     60〜65歳の順です。
     人間は個人差があるが、高齢になると、気力、体力、頭脳と、いろいろな
     面が衰えてくる。
     まだ先のことだと放ったらかしにせず、バトンタッチの準備を着実に進める
     ために、自社の事情を考慮の上、交替の時期を前もって決めておくのです。

    (2)逆算の「承継力レンダー」をつくる
     交替の時期を基準として、現在の状態からやっていかなければならない
     ことを逆算で承継プランに落とし込む。
     それを「承継カレンダー」として作成し、具体的な承継スケジュールを書き
     込んでいく。

     ◎後継者候補の処遇
      交替の時期までに、何を経験・習得させるべきか。
      いつ、どう昇進させるべきか、全般経営者として社長との並走時期・
      役割の分担などを計画する(ワンポイントリリーフの場合も同様)。

     ◎現役員・幹部の処遇
      承継プランを立てるには、次代の組閣人事を考えることも不可欠です。
      現役員・幹部の中で後継者を全面的に支援・補佐してくれる者と
      そうでない者とあらかじめ見当をつける。
      引退してもらう者、功労者として相談役に残ってもらう者など、年齢を
      考慮して、いつ、どう処遇するかを計画する。
      また、後継者候補の苦手分野や組閣候補役員・幹部の性格(情緒派・
      知性派・行動派)などのバランスを見て、社内からの抜擢・外部からの 
      補強を計画する。

     ◎株式の移動
      株式の移動も継承プランに落とし込む。
      これをしっかり押さえておかないと、社外に出てしまっている株式を
      どうするのか、株主側も企業側においてもなぜ株を持ってもらったのか
      という経緯も分からなくなるし、交渉する人脈もなくなっていく。 
      また、総合的な社外流出が少なくなるように、後継者の支配権(もしくは
      資本と経営の分離)を考慮の上、計画する。

     ◎社内外の総点検とタガの締め直し
      その他、企業全体で取り組んでおかねばならない重点事項を承継
      カレンダーに記載する。

      <経営体質の悪さからくるマイナス症状の改善>
       小さなクレームの軽視、取引先とのトラブル・事故、役員・幹部社員
       の不和・スキャンダル、外部漏洩(同業者・元社員、内部告発)など。

      <変化対応力の欠如からくる事業の存在価値低下の回避>
       市場と取扱分野・商品のミスマッチ、事業戦略と人材力のギャップ、
       不足する技術・ノウハウの取り入れなど。やりくりなど、背伸び
       経営で水ぶくれした部分は、後継者の力量の範囲まで

     ◎背伸び経営の抑止
      多画化しすぎている事業や借金、手形のやりくりなど、背伸び経営で
      水ぶくれした部分は、後継者の力量の範囲まで
圧縮しておく。

     ◎経営責任上の後始末
      交替期を迎えつつある社長は、経営にウソがないように責任をもって
      処理しておかなければならない。

      <経理面の是正>
       経理面は経営者の人格のあらわれでもあるから、税務当局や金融機関
       からアレコレ指摘されたり、不必要な不信を抱かれないように計数面を
       キチンとしておく。

      <約束事の履行>
       従業員や利害関係者に対する約束事は履行しておきます。
       また、履行できなければ、後継者と実行担当者に引き継ぐ。

 □承継組織体制を整備せよ
  1.同族問題を放置するな
   (1)後継者が自らの組織を自ら構築できる環境を整える
    事業の承継には、信用・財産・組織の承継が発生する。
    中でも組織の承継がうまくできるかどうかが、極めて重要なポイントとなる。
    しかし、先代社長のつくった組織は、先代社長のつくった「手足」であり、
    お互いの信頼関係と相性で出来上がっているのです。
    それを引き継ぎ、後継者の手足にすることは基本的には諦めるべきです。
    先代は、後継者が自ら信頼関係をつくり、新たに構築できる環境を整えて
    バトンを渡すのが鉄則です。

    ◎経営とは、経営者の思いを社員の協力を得て実現するもの
     組織の承継は、「思いの承継」が前提となります。
     組織はトッの思いに従うことで成り立つのです。
     トップが替わったということは、その先代の思いも同時に承継されることが
     組織の承継の土台となります。
     先代の思いを受け継いだ後継者は、それを自らの思いとして昇華し、
     社員の協力を得て具現化していかねばなりません。

    ◎トップの思いを具現化するのが幹部である
     先代の思いに信頼してこれまでついて来た幹部にとって、トップが替わった
     ということは、大いなる不安です。
     後継者の思いがどこにあるのか、信頼できるのか、お互いに一からの構築
     となります。
     先代は、今までついて来てくれた幹部が、後継者の思いと相性が成立するか
     どうかを見極めなくてはならない。

    ◎後継者の思いを具現化できる組織づくりの環境を整えよ
     バトンを渡す前に先代がやるべきこと は、後継者の思いを具現化する上で
     阻害要因となるものを取り除くことである。

    ◎同族幹部の見極めと処遇に対処せよ
     阻害要因を排除し、後継者の思いを具現化できる組織づくりを準備する
     には、同族幹部を活かせるかどうかという見極めとその処遇が、先代の
     最も大事な仕事となる。
     特に同族幹部の中でも後継者よりも年上の同族幹部については、注意を
     要します。
     例えば後継者の叔父に当たる同族者は、後継者の思いよりも、自分も参画
     していた先代の思いを優先させる傾向になる。
     後継者にとっては、自分の思いを全社に浸透させる上で阻害要因になり
     やすい。
     後継者を子供のころから知っているこうした同族幹部の待遇を、後継者が
     決めることは極めて困難である。
     先代にしかできないことだ。
     後継者が自分の組織を自分で構築する上でやりやすい環境を整えることが
     必要です。

     具体的な方法としては、
      ・承継と同時に先代と共に退任させる
      ・副会長、相談役、顧問などとして、執行ラインから外す
      ・別会社に移ってもらう
     等の処遇が考えられる。


   (2)先代が元気なうちに承継体制を決めよ
    同族問題が絡んだ承継体制の環境づくりは、先代にしかできない。
    元気で生きているうちに承継体制を固めておくことが鉄則です。

    先代は病気になった時点で、専務に社長を任せて自分は会長に退き、その後の
    体制についても専務と確認をしておくことが賢明であった。
    二人の息子のうち、誰を次期社長にするかを検討し、どちらも能力・適性が
    ないとなればどうするのかまでも決めておく必要がある。
    承継体制を決めるのは、相手が人だけに思うようにいかないのが当たり前。
    事業承継は10年先を見て二の手、三の手を準備しておくことである。

  2.古参幹部の処遇をいかに行なうか
   スムーズな承継のための体制を築くには、同族幹部と同様に、古参幹部の処遇も
   整理しておく必要があります。
   先代のつくった手足である組織をそのままバトンタッチすることは極めて難しく、
   また、それは弊害を起こす元凶ともなる。
   先代の責務は後継者が自分の組織をつくりやすい環境を整備してやることであり、
   後継者は新たな組織を自分でつくることです。

   二代目社長の通弊として、先代の番頭たち(経営陣)に頭が上がらないことが
   多い。
   そのために後継者は彼等を極度に嫌ったり、敬遠しがちとなり、その結果、
   後継者が経営陣の中で孤立したり、真っ向から対立する場合がある。
   こうした中、先代の思いを受けて育った古参幹部の処遇をどのようにするか。
   古参幹部は味方につければ頼もしいが、抵抗者にすればこれほど厄介なものはない。

   (1)古参幹部を色分けし、事前に対処せよ
    幹部の中で先代に代わって後継者を全面的に支援し、補佐してくれそうな者と
    そうでない者、つまり自分と共に引退してもらうべき者とを前もって見当を
    つけて区分し、その処遇を決めておく。

   (2)バトンタッチへの助走期に次期組閣人事にも取り組め
    先にも述べたように、バトンタッチには助走期間が必要です。
    少なくとも2〜3年くらいは社長見習としての助走期間を設け、その間に
    後継者の意見を聞きながら、次期内閣の組閣人事にも着手しておく必要がある。

   (3)バランスを考え、役員間の序列を明確に
    古参幹部の処遇を考えるときは、社内から若手を抜擢し、あるいは外部から
    補強するなどして、ベテラ ンと若手子飼い、そして外部からスカウトした
    人達とのバランスの良い組み合わせを念頭に置くことだ。
    その上で、役員間の序列づけを明確に行なっておくことである。

  3.後継者のバックアップ体制づくり
   (1)後継者を支える人材を育てよ
    企業存続のために、社長は誰を育てておかねばならないか?
    企業経営は「ゴールのないマラソン」です。
    社長の代が替わっても企業を維持継続させなければならない。
    そのために社長に課せられた仕事は、後継者自身を育てると同時に、後継者を
    支える人材をも育てることだといえる。
    部長は、次期部長になる人材を見つけ、それを支える人材を育てるのが仕事。

   (2)後継者を支える人材の選定法
    ◎タイプ別人選
     後継者に必要な補佐人材として、

      ●補佐役タイプ・・・欲はないが、トップの細かな取りこぼしをフォロー
                する地味なタイプ
      ●参謀タイプ・・・欲があり頭が良く、後継者に戦略を授けるタイプ
      ●No2タイプ・・・欲があり行動力に優れ、組織をガンガン引っ張って
               いくタイプ
     の3つのタイプがあげられます。
     これらのすべてのタイプが揃えば万全であるが、なかなか揃わないのが現実。
     そこで後継者自身のタイプを見極めて、後継者と違う2つのタイプを
     このうちから揃えることがポイントとなる。

    ◎相性別人選
     後継者を支える人材の選定には、後継者との相性が大事になる。
     この相性を決めるポイントは、後継者と長所が違い短所が似ている人材と、
     長所が違い短所も違う人材を選択するのがよい。
     長所が違えばお互い認め合い、短所が同じであれば許し合えるからうまくいく。
     ただし、短所を牽制する人材もいないと、短所が経営の短所になることが
     あるので、もう一人は長所が違って短所も違う人材を選ぶことである。

   (3)先ずは「女房役」の人選を
    社長は孤独なもの。
    先ずは後継者の女房役を誰にするかが肝心である。
    その適性は、以下のとおり。
     ◎徹底した報・連・相(報告・連絡・相談)のできる人材
     ◎自我を押さえ、相手を立てることができる(無私の姿勢)
     ◎深い洞察力を身に付けていること
    そしてその必要条件は、「誠実さと忠誠心に溢れ、誰にも増して信頼できる
    人材」となる。

    ◆女房役の7つの条件◆
     ・忠誠心が強く、野心家でないこと
     ・社長の弱点を補完する能力を有すること
     ・言うべきことを、言うべきときに毅然と言えること
      (苦言を呈することができる)
     ・私心が無いこと(常に会社の利益を中心に考える)
     ・管理に強いこと(特に数字に明るい)
     ・特定部門に片寄らず会社全般を把握していること
     ・社長と相反する性格が望ましい

   (4)後継者を支える人材が社内にいないときは
    ◎外部からのスカウト
     社内に適任者がいない場合の1つの方法は、外部から有能な人材をスカウト
     することです。
     創業以来No2に恵まれないことは稀である。
     もし社内にNo.2が不在であれば、それは元々社長自身が、自分のする事に
     少しでも口をはさむ人間を排斥して来たからです。
     これを解決するには、社長自身の意識改革はもちろんのこと、スカウトする
     人材にも以下の課題をクリアさせることが必要です。

      ・企業文化と社員になじむこと
      ・企業の実態を充分に把握すること(現状認識)
      ・社内で認められる実績をつくること
     従って、スカウトした人材が直ぐに力を発揮してくれるものと過大に
     期待せず、社員の信頼を得られる段階までは、辛抱強くフォローすること。

    ◎外部ブレーンをもつ
     弁護士、公認会計士、税理士、経営コンサルタント、主治医等、自らの
     判断に迷うときに相談できる人を定めておく。
     第三者の冷静にして客観的な判断を大いに参考にすべきです。

    ◎先達に学ぶ
     経営の多くの先輩が、成功例も失敗例も反省録として活字や音声に残して
     います。
     できるだけ多くの先輩の歩んできた軌跡を間接体験し、現在の経営に
     生かすことです。

    ◎後継者に直言する仕組みをつくる
     トップの側近はイエスマンになりがち。
     社長の言うことには何でも賛成では、社長自身が正しい判断ができない。
     トップの過ちを勇気をもって正す人物が必要であるが、現実問題として
     経営者である自分に苦言を呈する社員の言葉を素直に聞き入れることは
     難しい。
     社員のほうも社長の性格をよく知っているから、本音を出さない。
     そこで次の方法が考えられる。

     <ジュニアボードの活用>
      後継者育成の基本対策のひとつとしてジュニアボードを、後継者を支える
      将来の重役の登竜門として機能させる。
      このジュニアボードメンバーに会社の将来はどうあるべきかを討議
      させるのである。
      当然のことながら、現状の問題点を明確にしないと将来の施策は出て
      こないので、そのような形で諸々の問題点が客観的に語られる場が
      つくられる。
      聞いている側、すなわち後継者も自分の批判と感じることなく率直に
      受け取れる。

     <モラールサーベイの実施>
      社長が暴走しないように社員の日頃思っていることを定期的に調査する。
      無記名式で実施するので、問題意識をもっている者はこの時ばかりと、
      意見を出してくれる。

   (5)バトンタッチの助走期に後継者がすべきこと
    社長としての見習い期間に後継者がすべきことは、先代が残してくれた組織を
    最低1年間はいじらず、そのまま引き継ぐ。
    そして1年間自分が経営する上で組織を思うように運営できない部分を確認し、
    適材適所を見極めることです。
    その上で、先代社長に相談し、適切なアドバイスを受け、思い切った組織再編
    を新社長の手で断行する。
    自分の組織は自分でつくらなければならない。
    その時に引き継いだ古参幹部の処遇も同時に行なう。
    こうすることで、新社長の求心力に勢いをつけることができる。

 権限委譲の正しいやり方
  1.スムーズな権限委譲を行なうためには
   (1)組織の承継とは意思決定を譲ること
    会社の業績は、「的確な意思決定」で決まる。
    様々な問題に対して誰が、何を、どこまで意思決定するか。
    それらをはっきりと定めたものが権限であり、これが不明瞭であれば、
    組織経営は成り立たず、業績も上がらない。
    意思決定の最高責任者は社長です。
    会社組織を成果獲得に向け、統制し動かしていくための意思決定は、先代社長
    から後継者へと、支障なく引き継がれていかねばならない。

   (2)役割分担を明確に、正しい手順を踏んでいく
    先代社長は、意思決定の権限を後継者に、どう譲り、いかに任せていくか。
    スムーズな権限委譲を行なうためには、正しい手順を踏みながら、役割分担を
    明確にして、それぞれの役割を互いに理解しながら遂行していくことです。
    そうすれば、組織は円滑に機能します。
    一般的に、後継者が新社長に就任したと同時に、先代社長の多くは会長職に
    就く。
    しかし、会長職といっても新社長と明確に役割分担しているとは限らない。
    前述したように、社長は会社の中で意思決定をする最高責任者です。
    このことが会長と社長の間で認識されていれば問題はありません。
    だが、ややもすると会社にとって極めて重大なことでも新社長が会長に相談
    もなく、意思決定していたり、逆に会長の独断による決定がまかり通っている
    ことが多々あります。
    正しく権限が委譲されてこそ、事業は安泰する。
    あせらず、一歩ずつ権限委譲の成功ステップを踏んでいくことです。

  2.権限委譲の成功ステップ
   (1)助走期に「軽いもの」から順次任せていく
    後継体制を磐石なものにするには、先代社長は会長職などとして、新社長を
    後見できる立場にあることが望ましい。
    適切な指導、支援ができる状態をつくっておくことです。
    そして一挙にすべてを任すのではなく、委譲すべきものと完全に任せては
    ならないものとを区分しておき、責任、負担の軽いものからスタートさせる。

     ●委譲権限・・・失敗しても被害の少ないもの、失敗しないと成長しない
             ものを思い切って任せる。
     ●保留権限・・・失敗すると取り返しのつかないことは、一緒になって考える。
             (借入金、投資、契約等々)


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子息を後継者にする

        

子息を後継者にする

  ■子息に後継者教育をする前に 
   そろそろ引退・相続を考えており、子息のいずれかに任せたいのだが、子息が
   後継者として自社に入ることをどう思っているのか分からない、またははっきりと
   拒否の意志を告げられて困っている、というケースも多いことでしょう。
   ただ子息らも、もう親のいいなりになっているばかりの「子供」 ではありません。
   子息が一人なのか、複数なのか、という点でも悩みは異なるでしょうが、いずれに
   せよお互いの気持ちを思いやった、すれ違いのない承継をするにはポイントが
   あるのです。

   1.第三者を通じて子供たちのホンネを確認 
    後継者を子供にと考えるとき、
     自分の考え方について子供がどのように感じているのか、
    ファイナンシャル・プランナーなどの第三者を通じて確認してみるのも一方です。 
    なぜなら親子だと肉親の情感からか、理解の仕方が微妙に違っていることがある
    ためです。
    必要ならばその後、直接話し合うこともできるし、第三者からの情報がその話し
    合いに役に立つのです。 
    また、子供が複数の場合、「後継者に」と考えている子供の気持ちを聞くのは
    当然として、忘れてはならないのが事業継承者以外の子供が何を考えているかを
    知っておくことです。
    これはトラブルに直面したときにその重要性がよくわかるので、そこまでやる
    必要性を感じなくとも、やっておくべきポイントです。 
    子供が複数の場合、子供たちにとっては「後継者が誰になるのか」 というのも
    気にはなるでしょうが、一番関心があるのは、「資産がどのように分配されるのか」
    ということではないでしょうか。
    当然、承継を考えるときには 資産(遺産) の家族への遺し方を検討しておく
    必要があります。
    その際
     後継者にウェイトを置くのは当然だが、  
     ほかの子供たちに対する配慮は欠かせないこ
    とを頭に置いたうえで検討することが大切です。
    子供たちの家庭状況・経済状況が違っている場合がほとんどですから、一番
    苦労するところではあります。
    公平な感覚で検討し、自分の考え方を第三者の中立的な意見とも照らし合わせて
    みることをお勧めします。 
    最後の仕上げは「遺言」にして遺すことです。
    遺言はトラブルの回避に重要な役割を果たすにもかかわらず、周りからは勧め
    づらいものなのです。
    承継者がこの点でやきもきしているケースが多いのが実情でしょう。  
    状況が変わったら書き直しができるのですから、気楽におこなってほしい
    ものです。

   2.社会人5年目が、子息をもどす適齢期 
    後継者にしようと考えていた子息が「家業を継ぎたくない」といって、他社に
    就職を決めてしまった場合、気持ちを変えさせようと強引に説得するのは逆効果
    です。
    そんなときは前向きに考えましょう。
    「他社に派遣する」「修行にだす」といったおおらかな気持ちで見守り、
    引き戻しには「長期戦」を覚悟したうえで作戦を練った方がよいのです。
    引き戻しのタイミングとしては  
     4〜5年後の30歳前が呼び戻す適齢期 
    と考えられます。

    ◎後継者の社外修行にどれくらいの期間が必要と思うか
      3年以内  4〜5年以内  6年以上  その他 
       30%    37.9%     13%   18.8%

    その時点で引き戻しが成功するかどうかは、それまでの接し方で決まります。
    接し方のポイントを挙げてみると、  
     @頻繁に会って日頃からのコミュニケーションを欠かさない  
     A何をするにも「説得するんだ」 と意気込んではいけない  
     B自然体で接しあくまでも社会人の先輩として仕事の悩みを聞いてあげる
     C家業の将来性、自営業の魅力などについて自信をもって話す。  
     (当然グチをもらすことは禁物) 
    要は、家業に魅力を知ってもらうように積極的に働きかけ、興味を持たせる
    ことが肝心なのです。

  □業績不振時こそ後継者教育を積極的に 
   子息に会社を継がせたいのだけれど、不況時には業績が悪くバトンタッチの先送り
   を考えることもあり得るでしょう。 
   けれども、業績が上がるのを待ってから後継者教育をしたのでは「遅かった」
   という結果を招きかねません。
   業績不振時だからこそできる後継者教育の方法があります。
   みすみすチャンスを逃す手はありません。 
   業績不振時は事業承継のタイミングとしてよくないことは確かです。
   市場環境が大きく変動している時代に交代しては経験不足の後継者には荷が重すぎる
   からです。 
   実は困難な時期は後継者に対する実践教育の絶好の機会ととらえることができます。
   特に経営者に必要不可欠な危機管理能力を高めるには、またとない機会なのです。

   1.社員との一体感作りに最適 
    危機を乗り切るためには会社一丸とならざるを得ません。
    そこに後継者を参加させることで得るメリットは大きく2点挙げられます。  
     @自然に社員との一体感を育むことができる  
     A後継者に机上の教育では得ることのできない大きな
      自信と実績を与えることもできる 

    ◎具体的な教育方法
     @不採算事業撤退の指揮
      「いざ」 という時の危機管理能力を身につけさせ、社長の
      経営姿勢を学びとらせる
     A新規事業の開発
      会社の明日を展望させる
      社員との協力関係を築く
     B新体制構築
      取引先や銀行からの信用を作る
      会社幹部、社員からの信頼の獲得
      そのほか幅広い人脈形成

    ◎不況時の事業承継準備の方法
     @取引先、銀行からの信用を蓄積
      外折衝を一任する利益管理に対する
      責任を持たせる
     A社内からの信頼獲得
      徐々に権限委譲を行い,次期社長を組織活性化の責任者にする
     B幅広い人脈形成
      社長の人脈を継承させる社外研修に出す
      異業種交流会などに出席させる
     C補佐体制の構築
      暫定的な集団指導体制の構築後継社長の補佐役の選任
     D経営権の確保
      自社株取得用の金融資産を形成させる

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後継者を育てるための方法

         

後継者を育てるための方法

  ■後継者の選定 

   1.後継者問題を考える視点


    経営環境が激変する時代にあって、中堅・中小企業が抱える大きな悩みのひとつに
    後継者問題があります。 
    「経営=社長の個性・体力」ともいわれる中小企業にあって、できれば後継者に
    自分の血を分けた身内を据えたいと考えるのはごく自然な流れです。
    ここでは
     →どのような後継者であることが望ましいのか
     →どのようにすれば理想的な後継者に育成できるのか
    について考えます。

   2.後継者選定の条件 
    後継者の選定は晩年を迎えた経営者にとって、大きな仕事といえますが、
    後継者選定の条件としては以下のものが挙げられます。
    (1)経営に対する情熱、旺盛な事業欲があること
    (2)内外のストレスに耐えられるだけの体力、精神力があること
    (3)年上の幹部や部下など周囲とうまく調和がとれること
    (4)自社の行く先を見通す先見力があること 

    後継者として考えている身内が、これらの条件を満たすような人材であれば、
    社長は安心なのですが、はじめからこうしたことを望むのは難しいのが現実です。
    そこで、後継者にふさわしい人物になるべく、“後継者教育”をする必要が出て
    きます。

   3.後継者の育成 
    後継者の育成法については、自社内での育成のほか、
     →他社預け型
     →実践教育型
     →学習受講型
    など、いろいろなパターンが考えられますが、結論からいえば、後継者教育
    に王道はないということになります。 
    なぜなら、企業自身の体質や環境によっても育成方法は異なるからです。 
    一般的に行われている後継者の育成方法はいくつかにパターン化できます。
    以降、そのパターンとそれぞれの要点について紹介します。


  □後継者教育のパターンとポイント

   1.自社内教育 
    学校卒業と同時に入社させ、文字通り“手塩にかけて”実践教育する方法です。
    親と子という甘えのなかでうまくいかないことがある一方、しかるべき教育係
    を任命することで、自社内であっても後継者の育成を図ることは可能です。
    育成に際しては、最前線の現場を経験させるようにします。
    そうすることで、初期にしか経験できない利益を生むための苦労を実感でき、
    社員の気持ちを理解できるようになります。
    また、適性のある仕事で、特にチーム・組織として何らかの成果を残させる
    ことも重要です。
    他社での実績がない分、自社でみせる姿や実績が他の社員が抱くすべての評価
    につながるので、後継者が直接経営に携わる前に実績を上げさせることで
    ほかの社員の理解を得ることが必要です。 
    自社内で教育すれば、初期の段階から経営者である親と後継者である子の間で
    多くの情報を共有できます。
    親と子の関係を利用し、プライベートの時間を活用して経営者として必要な
    情報や考え方をそれとなく伝えることで、徐々に経営者としての感覚を養わせ
    ましょう

   2.他社預け型 
    これは従来から行われている方法で、後継者として育成するために“他人のメシ
    を食べさせる”というものです。
    最も一般的で、かつ即効力があるのは、同業か関連業種の同一規模の企業で
    修行させることでしょう。
    身に付けた業務知識が自社にそのまま転用でき、また組織の構成や規模にも
    類似性があるため、マネジメントの面でも役に立ちやすいでしょう。 
    一方で、自社と似通った知識やノウハウしか身に付かない可能性も否定できません。
    同業を経験させる前に、
     →大企業に入社させ、中小企業とは異なる組織運営や販売戦略などを学ばせる
     →異業種に入社させ、自社の業界の長所・短所を気づかせる
    ことにも十分な意味があるでしょう。 
    しかし、自社教育ではなく他社に預けると、当然どのような経験を積んで
    いるかみえにくくなります。
    親と子の関係を利用し、プライベートの時間を活用して他社での経験に関する
    情報の収集に努め、経営者としての能力向上に意味がないと判断したなら、
    自社での教育に切り替えることも重要でしょう。。

   3.経営塾での実践教育 
    若手経営者、後継者向けに異業種交流のセミナーを開催している民間や商工関連
    団体による“経営塾”が全国各地にあります。
    こうした経営塾は、経営実務面に関する知識の習得や問題解決能力の養成の
    ほかに、異業種の集まりという性格から、ビジネスチャンスの拡大につながる
    ことがあり、また、後継者同士がお互いに触発しあうこともできます。

   4.ビジネススクールに通う 
    各大学が開設しているビジネススクールのほかに、中小企業の支援機関・
    商工会議所・商工会・都道府県などが開設している後継者育成・支援コース
    があります。 
    その例として、(独)中小企業基盤整備機構の中小企業大学校が実施している
    「経営後継者研修」があります。
    このほか、中小企業大学校では、ネットを利用した研修「ウェビーキャンパス
    を実施しています。技術系・生産系・経営系の3コースがあり、経営系コース
    では、利益計画や経営計画の立て方、決算書の見方・活用の仕方、経営戦略
    などを学ぶことができます。 

   5.後継者としての自己成長 
    会社の成長と同様、後継者自身の成長過程にも節目が大切です。
     →20代前半で「ボンボン」からの脱皮(考え方や行動の甘さをなくします)
     →30代で「サラリーマン」意識・感覚からの脱皮
     →40代前半で「市民感覚」「中流意識」からの脱皮
     →50代で「力」に「徳」を兼備 
    特に、20代、30代のふたつの節目が重要で、これができていれば、社長の座に
    つく資格があるといってよいでしょう。

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社長にとって後継者問題は経営における最大の課題であり、リスク

         

オーナー社長の後継者問題


  オーナー社長にとって後継者問題は会社経営における最大の課題であり、リスクでもあ
  ります。

  事業を維持し発展させる中で「相続対策(納税資金・自社株・不動産・もめない対策)」な
  ども含め、後継者問題が最大のテーマではないでしょうか。

  「事業の再編成、後継者教育、財産の移転・評価引下げ」などの事業承継対策は早期に、
  また、長期間にわたって計画的に対策を講じることで効果が発揮されます。

  ある調査によると、「後継者に事業承継したい」と回答した企業のうち、50%強の企業が
  「後継者を決定していない」と回答しており、後継者の選任あるいは育成から着手しなけれ
  ばならない企業も数多く存在します。 

  参考に事業承継ガイドライン(事業承継協議会)を掲載しておきます。

  ここでは後継者問題に焦点を当ててみます。

  ■後継者育成のための環境整備悩み.jpg

   1. 社内体制の整備

   2. 段階的な権限の委譲

   3. 現経営者による経営者としての心構えを
     レクチャー

   4. 自社内で広範囲な業務経験

   5. 業界団体の会合・経営者向けセミナー
     への参加

   6. 自社株のを取得

   7. 金融機関や取引先への根回し 

   8. 取引先や同業他社での修行

   9.人材育成の基本となる基本動作の習得

  ■「後継者」のための組織づくりのポイント

   「後継者」は、現社長の「人」「モノ」「金」「情報」という経営資源を引き継ぐのでは
   なく、それらの経営資源を使って新しい企業を始めると考えるべきです。

   まずは、後継経営者に求められる「資質」について考えなければなりません。

   そして、後継者が働きやすい環境を作るために組織再編や人材整理を敢行するという
   具体的支援も必要になります。

   既に成功した先駆者と同じ土俵にあがったのでは、後継者が高く評価されることはなく、
   後継者が高く評価されなければ、優秀な人はついていかないからです。

   後継者が、活躍して強力な組織づくりを行うためには、決して「残してはいけない」人材
   がいます。

  ■「残してはいけない」人材

   (1)後継者より優秀な人材

     これからの組織にトップの「目の上のたんこぶ」を作るのは、禍根を残す結果になる
     ケースが多いでしょう。

   (2)ご意見番タイプの長老

     新しい組織を作る際には、このタイプの人材が最もネックになると考えて差しつかえ
     ありません。

   (3)「太鼓もち」的タイプの人材

     社長の権威を利用して仕事をしていた人材は、新体制に入れるべきではありません。

   現経営者は、言葉ではなく、後継者が働きやすい人材や組織を残す心構えが必要です。

   後継者問題に関しては、相続対策を除けば、後継者の「資質養成」と人材整理も含めた
   「環境整備」が重要です。

   後継者の「資質」に関して考えてみると、「実務力」「提案力」「人気」などが必要と
   いえます。

  ■後継者選定の条件

   (1)経営に対する情熱やおう盛な事業欲があること

   (2)内外のストレスに耐えられるだけの体力や精神力があること

   (3)年上の幹部や部下など周囲とうまく調和がとれること

   (4)自社の行く先を見通す先見力があること
   
  ■後継者育成
   自分が社長として会社を成長させていく部分を経営人生の前半部分とすれば、経営人生
   の後半部分とは、安心して企業経営を任せることができる優秀な後継者を育成すること
   です。

   後継経営者の育成は経営課題と同様に、できるだけ早い時期から緻密かつ適切な計画
   性をもって成し遂げなければならない重要な責務である、という強い認識をもつことが大
   切です。

   しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の体制整備は不可能です。

  □後継経営者育成は早いほどよい

   後継者育成にあたっては、可能な限り早いうちに後継者を決定し、育成を始めることが
   大切です。

   早いうちに後継者を決めておくと、

    ・後継者として指名された人物に自覚が生まれ、行動の変革をもたらすこと
      ができる

    ・従業員に、後継者に対する統一した見解をもたせることができる

    ・実際の後継者教育を早くから始めることができる

    ・相続対策を早くから始めることができる

   などのメリットが生じます。

   一方、後継者を決めるのが退陣直前になった場合、後継者に経営者としての十分な心
   構えができていない、経営に必要とされる知識が身についていない、古参社員からの賛
   同を得られない、という状況が生じかねません。

   また、後継者不在のままで、経営者に不測の事態が発生した場合には、重要な意思決
   定が滞り、会社存続の危機に直面する可能性もあります。

  □後継経営者に必要な資質

   経営者の役割は、「会社の将来的なビジョンを描き、適切な戦略を策定し、戦略実行の
   ために組織を効率的に動かすこと」にあります。

   そのために備えていなければならない能力として

   1.洞察力・先見性

     洞察力・先見性は、自社の現状や経済動
     向、市場動向などを正確に把握し、自社が
     将来に向かって成長・存続していくための
     ビジョンや戦略を導き出す能力を指します。

     洞察力や先見性を身につけるためには、
     「経営全般に関する広範な知識」と「豊富な
     実務経験」が必要になります。

   2.統率力

     自社の将来ビジョンを実現するには、社長の
     努力だけでは困難です。

     そのため社長は、将来ビジョン実現に向け従業員の力を結集し、経営の方向
     性を示し、統率していく能力が必要になります。

     従業員が社長と心をひとつにして、将来ビジョン実現のためにモチべ−ション
     を高めるためには、給料アップや労働条件の改善などの物理的な条件だけで
     は不十分です。

     従業員との一体感を築くための「ビジョン実現への情熱」が必要になります。

     後継者がその役割を果たすための「洞察力・先見性」、「統率力」を高めていく
     ためには、

      ・経営全般に関する広範な知識

      ・豊富な実務経験

      ・ビジョン実現への情熱

     の3つの要素の習得が必要不可欠になるのです。

  □後継者育成のポイント

   1.経営全般に関する広範な知識を習得させる

     熱意と努力だけで会社経営を成功に導くことはできません。

     経営者として経営全般に関する広範な知識が必要になってきます。

     特に顧客ニーズが細分化し、かつ変化のスピードが増す現在では、マーケティング
     関する知識を習得することは不可欠となっています。

     また、経営全般に関する知識に加え、自社の属する業界に関する知識(市場
     動向、業界の仕組み、取引慣行、業界全体が抱えている問題点など)も必要
     になります。

     業界紙や専門書籍を読ませるなど後継者に勉強を促すほか、経営者が自分
     の感覚も含めて丁寧に説明することが求められるでしょう。

     上記のような経営知識、経営理論を体系立てて身につけようとする場合には、
     社内でのOJTなどの育成方法だけでは十分でないことがあります。

     その際に効率的に学ばせる手段として、外部機関の研修や勉強会を利用する
     ことが考えられます。

     外部研修では、経営についての体系的な知識を身につけることができます。

     但し研修の受講期間中、定期的に社長や直属の上司を交えて、

       学んだ知識を自社ではどういかせるのかを考えさせる場を設ける

     といった工夫が必要です。

     つまり、今どのようなことを学び、その知識は経営の現場でどのように応用で
     きるのかを後継者に報告させるのです。   

     そうすることで、現在の経営陣は後継者に実践的なアドバイスを行うきっかけ
     が得られます。

     また、後継者も、理論を実践にいかす方法について真剣に考えるようになり、
     その結果として生きた知識を習得することができます。

     さらに、外部研修のメリットとして、同じような立場の人と知り合えることもあげ
     られます。

     特に、「後継経営者養成講座」などの研修会では、受講者同士が切磋琢磨し
     あう雰囲気がつくられるので、強力な人脈を築くことができるでしょう。

   2.豊富な実務経験を積ませる

     後継者に実務経験を積ませるためには、自社で採用して行う方法と、一定期
     間他社に勤めさせる方法があります。

     (1)自社で経験を積ませる

       後継者を自社で育てる場合のおもな狙いは、

        ・早くから自社の経営全般にかかわらせ、その勘所を学ばせる

        ・従業員に次期経営者として認知させる

       点にあります。

       なかには我が子が中学生、高校生の頃から、アルバイトなどの形で自社の事業に
       触れさせ、徐々に後継者としての自覚をもたせたり、従業員の間に馴染ませよう
       としたりする経営者もいるようです。  

       後継者は否が応にも社内の注目を集めます。

       そこで、

        次期経営者としての能力を社内に認めさせるために、
        後継者が実力を発揮し、実績を上げられるようなポストに就ける
        思慮も必要

       となります。

       特に、実子が後継者である場合、現社長との間に親子の甘えを生じさせな
        いようにすることが大切です。

       多少の失敗には目をつぶる覚悟で、あえて困難な職務を与えたり、子会社
       の社長や独立採算部門の長などに就けるなど、ひとつの独立した組織を
       任せたりすることも有効でしょう。

       自分で全責任を負って判断しなければならない、という立場を経験させ、社
       長としての能力を磨かせるのです。

       本人にとって貴重な経験になるだけではなく、実際の業績を積み上げるこ
       とで、周囲からの信頼向上にもつながります。

       ◎社内で経験させるべき業務例

         ・子会社の社長業務

         ・現業部門の部門長業務(複数部門を経験させる)

         ・経理部門の部門長業務、決算書作成などの陣頭指揮

         ・新規事業の立ち上げと推進(不幸にして失敗した場合は撤退処理
          までやらせる)

         ・外部からのクレーム対応 

         ・従業員からの相談対応

         ・各種経営計画策定の陣頭指揮

         ・社内会議体系の整備と運営

         ・主要取引先との交渉

     (2)他社に勤務させる

       特に社会人経験のない実子を将来的に後継者として指名する場合には、現経営
       者の威光がまったく利かない他社で一定期間修行を積ませることで、精神的な
       タフさを鍛えることも有効でしょう。

       最初から自社に入社させて教育する場合に比べて、目が届きにくいというデ
       メリットもありますが、社会人のスタート段階であえて「他人の飯を食わせる」
       ことは本人にとって貴重な経験になるはずです。

       また、他社に一定期間勤務することで、

        ・自社ではつくれないような外部の人脈がつくれる

        ・異なった分野の体験を通じて見識が広まる

       といったメリットもあります。

       他社に勤務させる場合の留意点は、後継者がそこで何を学び、どのような
       人間になりたいのかをはっきりと認識させることです。

       他社で勤務する以上、その会社の業績に貢献することは絶対条件です。

       そのうえで、他社での経験を通じて自分が後継者としてふさわしい人間に
       成長しているかどうかをつ叫こ自問し、不足点があれば自分から苦労を
       買って出るという姿勢が求められるでしょう。

  □ビジョン実現への情熱を喚起する

   (1)経営にかける情熱を現経営者自身が語る(伝える)

     後継者に現在の事業に対する使命感を身につけさせるためには、現経営者自身が、
     その事業にかける思い入れや使命感、あるいは将来の夢を直接語りかける方法がも
     っとも効果的です。

     その際、伝えるべき内容としては、

      ・自社を将来どのような企業に成長させたいかという明確なビジョン

      ・後継者に対する信頼感

      ・事業の面白さや自社を大切にしてほしいという思い入れ

     などがあげられます。

     従業員や得意先、株主に対して、ひいては社会全体に対して、確固たる使命
     感や情熱をもって経営に取り組める人物で
     なければ、トップとして自社を存続・発展させる
     重責に耐えることはできません。

   (2)経営理念を十分に理解させる

     後継者には自社の経営理念を確実に理
     解させる必要があります。

     経営理念は「自分たちはこうありたい」、
     「社会に対してこのような貢献をしたい」と
     いった会社の存続意義を示すものであ
     り、この認識に現経営者と後継者の間に
     少しでもズレがあると、事業承継後に会社
     が現経営者の意図しない方向に進んでし
     まう可能性が高くなります。

     経営理念にはそれを策定した現社長の信条、
     人生観などが色濃く反映されている。

     特に「創業の経緯、当時の時代背景」、「事業や従業員に対する社長の思い」、
     「これまで直面した危機とそれを乗り越えられた理由」、「理念実現のために自分が
     日頃から気をつけていたこと」などについては詳しく説明すべきでしょう。

     さらに経営理念はひとつの考え方として理解してもらうだけではなく、後継者にそれ
     を事業運営における唯一無二の価値基準として実践してもらう必要があります。

     育成期間中には後継者に経営理念に基づく判断をさせる機会を多く設けるこ
     とが重要です。

     後継者が経営理念を十分に理解し、現経営者の使命感や情熱を共有するよう
     になると、後継者のものの見方は大きく変わってきます。

     具体的には、それまで管理者の視点で捉えていた事象を、経営者と同じ視点
     で捉えることができるようになります。

     そして、経営者の価値観や理念を繰り返し後継者に伝えることで、後継者が
     育っていくでしょう。

   後継者の経営能力の向上や幹部の刷新には、中期(5年)的な年数がかかる   
   といっていいでしょう。

   現経営者は、自身の健康、気力の良好なうちに、後継者の育成と体制づくりに着
   手すべきです。

   そして、現経営者は後継者の育成にめどが立ったら、後継者と事業承継の時期をいち
   早く社内に告知しましょう。

   告知後、退職する幹部社員が出てくる可能性なども考慮し、告知の時期は事業承継の
   2年ほど前に行ったほうがよいと考えられます。

   その後、現経営者は引き続き社内体制の整備を行うとともに、基本的に後継者に任せる
   姿勢で、後継者の経営者としての自覚を十分に養いましょう。

   そして、可能な限り業績が順調な時期に事業承継を行うことです。
      
  □遺言書を書く

   相続が「争続」と言われるように、昨今の相続にトラブルの多発があり、それは今後も一
   層増加が予想されます。

   法律も社会の実情を考慮して手直しされ、例えば生命保険の受取人を遺言書で変更
   することが出来るようになったりもしています。

   遺言は必ずしも資産家だけの問題ではありません。

     しかし、「自分が死んだときの話なんて縁起でもない!」という人はまだまだ多いよう
   です。

   遺言書の内容は原則、民法で定められた法定相続よりも優先されるのです。

   法定相続分と異なる相続を行いたい場合、その旨を記した遺言書を残しておく必要が
   あります。

   ただし、遺留分(法律上、相続人に保証されている最低限度の持ち分)への配慮は
   欠かさないよう、遺留分を念頭に作成するのが基本となります。

   遺言書は、自分で書いてどこかへしまっておくというのでもかまいません。

   ただし、すべて自筆で書いてあること(ワープロ、パソコン、代筆は不可)、日付と署
   名・捺印があること、などの条件を満たさないと、法律上有効な遺言にはなりません。

   また、法的に有効でも、誰かが隠したり、改ざんしたりする可能性は残ります。

   遺言の作成方法には、

    ・自筆証書遺言

    ・秘密証書遺言

    ・公正証書遺言

   の、3種類があります。

   自筆証書遺言は作成が簡単で、作成そのものを秘密にできますが 紛失・改ざんの恐れ
   があります。

   秘密証書遺言は遺言の内容秘密にでき、改ざんの恐れはありませんが、家裁の検認が
   必要で無効になる恐れがあります。

   公正証書遺言は紛失・改ざんの恐れがなく、家裁の検認が不要、遺言内容を争われ
   たり無効とされたりすることが少ないですが、費用がかかり、手続きが面倒で、内容を
   秘密にできません。

   それぞれ、メリット、デメリットがありますが、中でも公正証書遺言にするのがおすすめ
   です。
 
   公正証書遺言は法律的に効力があり、これを作成するには証人2人とともに公証役場へ
   行って、公証人の前で遺言の内容を口述し、それを書き取ってもらいます。

   遺言の原本は公証役場に保管され、本人はその控えを受け取ります。

   3〜5万円の手数料がかかりますが、作成した公正証書遺言はあとで取り消したり、
   内容を変更することも可能です。

   個人に限らず、国内の9割以上を占める中小企業のオーナー経営者にとって、相続問
   題だけではなく、事業承継問題も発生してきます。

   これら数々の問題が起因し、「相続」が「争続」にならないようにするためにも、元気
   (会社が健全)なときに対策を講じるべきです。

   人生で逃れられないことに「死」と「税金」があるといわれていますが、逃れられない
   死が訪れてからでは相続対策は講じられません。

   しかし、「人はコトが起きないと行動しない」ことも事実のようです。

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MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継

          

MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継

  ■事業承継問題の深刻化

   高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社長も今では高齢に達しています。

   帝国データバンクの「全国社長分析」によると、社長の平均年齢は上昇を続けて
   おり、2001年には57歳9カ月でしたが、2019年には59歳7カ月となっています。

   また、2016年の社長交代率は3.97%となり、4年連続で前年を上回った。

   しかし事業承継の時期を迎えている企業が増加しているにもかかわらず、交代が
   なかなか進んでいない状況がうかがえます。

   事業承継を検討する際には、後継者が決定しているかどうかにより、進め方は大
   きく異なります。

   従業員が安心して働ける環境を残し、会社をさらに発墟させるためには、早期に
   最適な後継者を選択し、事業を引き継ぐ準備を始めたいものです。

  □マネジメントバイアウト

   近年、MBOとかマネジメントバイアウト、という言葉をよく聞きます。

   マネジメントバイアウト(Management Buy−Out:以下、MBO)とは、少数株主
   である経営陣が株主から自社の株式を買い取り、企業の経営支配権を得ること
   で、文字通りオーナー経営者として独立することです。

   一般的には、次の3つの目的から発生するものと考えられます。

   1.グループ企業からの離脱

    具体的には、グループ企業において、ある周辺事業の内容がグループ全体の
    事業戦略に適合しなくなったときに、当該事業(子会社や部門など)を経営陣に
    売却し、独立して経営させる際などに用いられます。

    少し古い例ですが、有名な事例として、日産の元社長兼最高経営責任者である
    カルロス・ゴーン氏が日産の再建に着手した当時、本業に経営資源を集中させ
    るため、「1400のグループ会社は4社を除きすべて売却」という方針を出し、複
    数の会社のMBOを実行しました。

    当時財務体質が弱っていた日産にとっては、経営資源を注入するべき対象でな
    いノンコア子会社株式を現金化し、それを本業に投入することができるというメ
    リットがあり、当該子会社の経営陣にとっては、日産という大企業の傘から外れ
    てオーナー経営者になることができるというメリットがありました。

   2.事業承継問題の解決

    最近では後継者難を訴えるオーナー会社の社長が増えており、事業存続手段
    としてもMBOは注目を集めています。

    親族ではないが経営陣のなかに後継者の候補がいる場合などにMBOを使って
    後継者に経営権を移すのです。

    前述のとおり、MBOには、株式取得費用として多額の資金が必要になります。

    通常は個人ではそのような多額の資金を準備できませんが、銀行やバイアウト
    ファンドなどの協力を得ることで可能になります。

    MBOを活用することにより、

     会社の存続と従業員の生活が保証されるうえ、オーナーの利益が確保される

    ことになり、オーナーも安心して事業から退くことができるのです。

   3.上場会社の非上場化

    最近増えているのが、上場企業の企業経営陣がMBOによりいったん株式を買
    収し、非上場化して株主を気にせずに大胆な事業再建を行うケースです。

    業績が改善した後には、再び上場をめざすことができます。

    なかには、上場維持コストの負担やディスクロージャー規制の強化を嫌って、非
    上場化するケースもあります。

    上場会社の非上場化のおもな例としては、すかいらーく、ワールド、キューサ イ、
    ポッカ、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、幻冬舎などがあります。

  □事業承継にMBOを活用するメリット

   日本は高度経済成長の時代から、多くの中堅・中小企業によって支えられてきた
   中小企業大国です。

   起業当初は町の小さな工場であった企業が世界に名だたるホンダやソニーといっ
   た企業に成長しました。

   これらの企業の陰には、優れた技術や特異な市場で活躍する多くの中堅・中小
   企業の存在があり、こうした企業が業界や地域経済を支えています。

   しかし、長引く景気低迷や技術力の高い団塊世代の大量退職などにより、中堅・
   中小企業の経営の舵取りは容易ではなく、そうした時代に立ち向かう優れた後継
   者を見つけるのは、大変困難な状況となっています。

   中堅・中小企業の場合、かつては息子を中心とする親族が事業を引き継ぐのが
   一般的でした。

   しかし、現在では、後継者の能力や意思などの理由で親族に承継できないケース
   も増えています。

   幹部社員や外部から後継者を探す方法もありますが、このケースでは、過去の業
   績が好調で企業価値が高い場合、後継者が株式を買い取るだけの資金力がな
   いことが問題となります。

   つまり、厳しい経常環境を乗り切るような事業の舵取りを任せられる人物を見つ
   け出し、かつ相続に伴う資金的な問題を解決しなければ、事業承継はできないのです。

   そのようななか、注目を集めている事業承継のための手法がMBOなのです。

   1.MBO活用のメリット

    (1)新経営陣の手持ち資金が少なくても事業承継できる

      通常、新経営陣にはオーナーから株式を買うだけの資金力がありません
      が、MBOでは銀行やバイアウトファンドなどの協力を得ることで買取資金を
      確保することができます。

    (2)未公開株式の現金化(相続税納税財源の確保)

      オーナー自身に万一のことがあった場合、オーナー保有の自社未公開株式
      には、多額の相続税が課税されます。

      未公開株式は換金性が極めて低いにもかかわらず、相続人は原則として相
      続税を現金で納めなければなりません。

      オーナーがあらかじめ未公開株式を現金化しておくことにより、相続人は相
      続した現金によって相続税を納税することができます。

      なお、一定の要件下では、相続税を株式で物納することもできますが、その
      株式が好ましくない相手に売却された場合は、経営に悪影響を及ぼすことに
      なります。

      このような株式分散リスクを回避するためにも納税資金を確保しておくことが
      重要です。

    (3)会社の信用の維持

      MBOは、これまでの経営方針や事業内容について知り尽くしている経営陣
      に会社を引き継ぐ方法です。

      したがって、今までの取引先や取引金融機関にとって、会社や経営陣に対
      する信用が何ら変わることなく今後も安心して取引を継続することができます。

      つまり、会社の信用そのものを新経営陣に引き継ぐことができるのです。

    (4)雇用の安定

      ほかのM&Aの手法と違い、外部から新しい経営陣が入ってくるわけではな
      いので、これまでどおり経営陣と従業員が継続して働ける場を提供しやすく
      なります。

      したがって、オーナーが退いたことに対する従業員の動揺を最小限に抑える
      ことができます。

    (5)インセンティブの提供

      これまで育ててきた幹部社員たちに経営権を渡すことは、昔ながらののれん
      分け同様、会社に対する貢献への報酬の役割も果たします。

      また、抹式公開を果たすことができれば、新経営陣はキャピタルゲインを獲
      得し、資産を形成することも可能になります。

    (6)独立意識の醸成

      オーナーが第一線で活躍している間は、経営陣や従業員はオーナーへの依
      存心を払拭することができないものです。

      経営陣が自立して経営を行うことで、経営陣や従業員の独立意識を醸成し、
      組織的経営を強化することができます。

   2.MBO活用の注意点

    (1)債務の圧縮

      日本では、未上場企業が借り入れを行う場合は、オーナーの経営力を評価
      して融資を行うため、オーナーに個人保証を求めるのが一般的です。

      しかし、経営陣にとっては個人保証の負担は大きなハードルになります。

      引き継ぎを行う際には、これまでの資産の整理を行うなど、債務の圧縮によ
      る財務体質の改善が課題になります。

    (2)株式買い取り資金の確保

      資金力のない経営陣がオーナーから株式を買い取るため、資金の調達が課
      題になります。

      資金は銀行融資やベンチャーキャピタル、バイアウトファンドからの出資で賄
      うことが一般的ですが、地域によっては事業承継のための制度融資が準備
      されていることがあります。

      詳しくは都道府県の経営相談窓口にお問い合わせください。

    (3)株価の算定

      株式の売却価格については、最終的には話し合いにより決定します。

      ただし、話し合いの基準となる株価については、事前に算定しておくことに
      なります。

      株価算定の方法については、帳簿上の資産を基に時価を評価する時価純  
      資産価額方式や事業内容が類似している業種の上場企業の株価を基に算
      定する類似業種比準価額方式、将来の企業価値を基に算定するDCF法
      (ディスカウント・キャッシュフロー法)などがあります。

      税理士や公認会計士など専門家に相談しながら自社の価値を確認しましょう。

    (4)個人と会社との取引の解消

      中堅・中小企業の場合、経営上のさまざまな理由からオーナー個人と会社と
      の間で取引が行われていたケースが多くあります。

      事業を引き継ぐまでにすべての不明瞭な取引を整理しておくことが大切です。

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事業承継は今から始まる

             

事業承継は今から始まる

  経済産業省によると、この20年で中小企業の経営者の年齢分布は47歳から66
  歳へ高齢化。

  2020年ごろには数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となる。「中小企
  業の競争力の源泉は『社長』自身であることが多く、創業者はなおさら。

  引き継ぐのは簡単ではない」(大手銀行幹部)。

  少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多い。

  経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の3分の1
  にあたる127万社に達する。

  事業が続けられず廃業する企業の半分は黒字とされ、25年ごろまでに650万人
  分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある。

                               出典:朝日新聞デジタル

  ■事業承継の準備不足

   企業は、経営環境の急激な変化に対応しきれず業績が悪化した場合、倒産や清
   算という事態に直面することもあります。

   しかし、現在、業績の良い会社であったとしても、後継者がいなかったり、選定さ
   れた後継者がその役割を果たせなかったりすれば、会社は倒産の危機に瀕する
   可能性が高くなります。

   このように事業承継問題への取り組みは、ゴーイング・コンサーン(継続事業体)
   として会社の存続を考える場合、最大の経営課題の1つといえます。

   戦後72年を経過し、一代で会社を興し築いてきた創業者もすでに世代交代の時
   期を迎えています。

   そして、どのように後継者へ事業をバトンタッチするかを多くの会社が考えはじめ
   ています。

   日本の会社の大半は中小企業であり、しかもその大部分が「経営=社長の個性・
   体力」のオーナー型企業であることからも、社長交代の時期とその内容は、その
   まま自社の命運を左右することになります。

   このように、社長の交代つまり事業承継の問題は、これらの会社にとって自社が
   永続的に繁栄を続けていくうえで最大の経営課題であるともいえます。

   現社長がこの間題について甘く考え、十分な準備なしに事業承継を行うと、たとえ
   現在業績が好調であるとしても、一気に企業存亡の危機へと発展しかねません。

   たとえば、事業承継への準備不足は、次のような危機を引き起こす可能性があり
   ます。

    ・後継者が確定していないことから、廃業に追い込まれてしまう

    ・後継者育成を怠り、二代目で会社を沸すことになってしまう

    ・後半者をめぐる争いが起こり、結果的に会社が衰退してしまう

    ・後継者と古参幹部との軌轢により、新体制での事業運営が
     スムーズにいかなくなってしまう

    ・相続時に自社株が分散し、新社長の経営支配権が事体化してしまう

    ・不適切な相続税対策で、企業そのものの財務体算が弱体化してしまう

   自社の現状を点検してみたとき、こうした問題が生じる懸念はないでしょうか。

   もし、事業承継対策が十分でないとしたら、自社にとって大きな脅威を抱えている
   ことになります。

   しかし、懸念されるこれらの問題に早くから手を打ち、事業承継対策に取り組むこ
   とにより、未来にわたる会社の存続を確かなものとすることができます。

   さらに、事業承継に成功することで会社は新たな革新を遂げ、先代社長の興した
   事業が二代目で花開き、大きく成長することも十分可能となります。

  □事業承継とは(対策の2本柱)

   事業承継とは、企業のヒト・モノ・カネという経営資源を三位一体で受け継ぎ、事
   業の継続性を維持していく活動であると定義できます。

   事業承継というと相続と混同してしまいがちですが、以下の表に示すとおり、その  
   内容は本質的に大きく異なります。

   この違いを理解することが、事業承継対策の第一歩となります。

   こうした事業承継と相続との相違点をまとめると、

    事業承継の本質は、

    生前に現社長の意思により中長期的な経営計画のなかで
    次期社長としてふさわしい人物を選出して教育し、
    債権者、従業員、取引先などにも認知させて、
    事業(経営権)を上手にバトンタッチすることである

   といえます。

   それでは、事業承継は具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。

   大別すると

    ・後継者対策:事業の後継者をいかに選び、育成していくか

    ・自社株対策:承継後、後継者の経営権をバランスよく確保していく
     ために、いかに後継者に自社株をロスなくスムーズに承継していくか

   の2つの柱に分けることができます。

   そして、

    事業承継の2本柱(後継者対策、自社株対策)を、中長期的観点で
    早いうちから計画し、それぞれの対策を同時に講じていく

   ことが重要です。

  □事業を引き継ぐ(後継者対策)

   事業承継対策で最も重要かつ難しい問題が、後継者を誰にし、いつ、どのように 
   事業を承継していくかということです。

   ここでは、後継者選定から育成、承継時における社内体制の確立など、一般的に
   必要と思われる後継者対策の一連のプロセスを段階的に記述していきます。

   1.誰を後継者に選ぶか

     世代交代期にある中小企業の経営者の多くは、後継者を選定するにあたって
     対象を自分の息子あるいは娘婿と考えているようです。

     しかし、企業経営が高度化している現在、これら候補者が経営者としてふさわ
     しいかどうかをよく見極めていくことが必要です。

     基本的には、自社の置かれている現状を考慮しながら、
      (1)自社にとって、後継者に必要な資質を明確にし、

      (2)長男などの身内に近いものから検討して選定する

     ことが目安になります。

     (1)後継者に求められる資質

       後継者にはどのような資質が求められるのでしょうか。

       一般的なものとしては、次の4つをあげることができます。
        ・経営に対する情熱、事業意欲があること
        ・トップとしてプレッシャーやストレスに屈しない肉体と、
         バランスのとれた心理状態を保てること
        ・周囲との調和がとれ、かつリーダーシップを発揮できること
        ・将来への経営ビジョンを持ち、しかも当面の路線承継ができること

     (2)後継者の選定

       では、後継者として具体的に誰を選べばよいのでしょうか。

       やはり、まず第一に優秀な息子に目をつけることです。

       現社長が自分の息子に後を継がせたいと思うのは自然な心理であり、関
       係者にも十分納得してもらえるはずです。

       したがって、息子に後を継がせたいという想いが強いならば、早い時期から
       の育成を考え実行することです。

       しかし、なんらかの事情で息子以外の後継者を選ぶ場合には、
        ・娘婿や自分の兄弟といった身内から後継者を選ぶ

        ・実力ある生え抜き従業員を後継者にする

        ・ヘッドハンティングなどで外部から後継者を擁立する

       といった方法も考えていかなければなりません。

       いずれにせよ、後継者としての資質を十分に見極めることが最も重要です。

   2.後継者をいかに育てるか
     後継者選びが済んだら、それで終わりというわけではありません。

     実際に会社のトップに座り、社長として十分に力を発揮できるようになるため 
     の教育が必要です。

     その方法として、次のようなことが考えられます。

     (1)自分の会社でじっくり育成する

     (2)他の会社で修業させる

       ・同業他社へ就職させ業界内での経験・知識を修得させる

       ・関連異業種で視野を広げるような経験・知識を修得させる

     (3)教育機関や勉強会を利用する

       ・海外ビジネススクールに留学させ国際感覚と経営学を修得させる

       ・国内経営塾に参加させ経営の理論と実践を修得させる

       ・異業種交流会などの勉強会で人脈と見識を養わせる

     いずれの方法にも、メリット・デメリットがあります。

     これから後継者に身につけてもらいたい能力を明確にしたうえで、その方法を
     検討していくことが望まれます。

     そして、期限を切って、1つずつ経営者としての資質を醸成させていきましょう。

   3.承継直前に社長が行うこと

     後継者の選定および育成と進んでいくと、最後の段階でいかにスムーズに経
     営を引き継いでいくかが大切になってきます。

     そのために社長が事業承継間近に行うことは、(1)新体制での運営を意識し
     た組織づくりと整備に着手することと、(2)順次、社長自身による実務の引き
     継ぎを行っていくことです。

     (1)社内体制の整備をする

       社内体制の整備は、事業承継を円滑に行うために重要なことです。

       たとえば、以下の項目などが検討対象となってくると考えられます。

       <社内体制の整備項目>              <実施項目>

        後継者の補佐(右腕)の選定      →社内スタッフの育成

        古参幹部、役員の処遇検討       →新取締役の就任、退職

        ワンマン経営から組織経営への脱皮 →新しい組織づくり

        経理面での健全化          →資産資金の公私混同のない整理
  
     (2)社長交代を実質的に進めていく(実務の引き継ぎ)

       事業承継の最終ステップとして社長自ら、

        ・社長交代の時期を設定する

        ・社内に根回しをしていく(社内の雰囲気づくり)

        ・金融機関をはじめ取引先へ信用を伝授していく

       といったことに取り組み、後継者へとバトンタッチします。

   4.承継直前に後継者自身が行うこと

     後継者自身が来るべき日のために、社長としての実践向きの知識と実務を修
     得していく必要があることは、いうまでもありません。

     それ以外に、この修業時期に行っておくべき大切なことがあります。

     それは、

      ・学ぶ姿勢で接することで生え抜き幹部との協調ある人間関係を築いておく

      ・部下の前で社長の威を借りず、率先して仕事に取り組み成果を示す

     といったことを実行し、社内での信頼感を勝ち得ていくことです。

     この時期に「ナンバー2」としての仕事を着実に行うことは、将来事業を継いだ
     際、協調体制のなかで新社長としての手腕を発揮するために不可欠です。

   5.後継者がみつからない場合(M&Aの活用)

     しっかりとした後継者を立てて、事業承継をスムーズに行うことが理想であるこ
     とはいうまでもありません。

     しかし、「息子がいない」あるいは「息子はいるが後を継ぐ気がない」という場合
     には、M&A(企業の買収・合併)の活用も有効な事業承継対策のひとつとして
     考えられます。

     M&Aは大別すると、会社が吸収されて消滅する合併と、各々の経営資産や
     営業権等を売却する営業譲渡、そして株式譲渡に分けられます。

     確かに、様々な困難を乗り越え長い年月をかけて育てあげた会社を手放すこ 
     とは、社長にとって非常につらいことです。

     しかし、ゴーイング・コンサーンとしての社会的責任を果たし、従業員の雇用や
     地域経済の発展を担うためにも、M&Aの活用は有効に機能することになります。

     また、自分のつくった会社がたとえ社名が変わったとしても、世に残ることにか
     わりはありません。

     そのほか、将来における相続税発生時のために、納税資金を確保しておくと
     いった一面を担う手段としても活用することができます。

     いずれにせよ、M&Aは非常に複雑な制度のため、弁護士や経営コンサルタ
     ント、公認会計士など専門家とよく相談して進めることが肝要です。

  □上手に経営権を移行する(自社株対策)

   事業承継のもう1つのポイントは、いかに資産ロスを少なく承継するかということで
   あり、その主なものが自社株対策です。

   自社株対策では、社長が現有する自社株を後継者に無駄なく有利に譲ることで、
   承継後も後継者による経営支配権を確保しようとします。

   これを怠ると、突然相続が発生したときに前社長が保有していた自社株が複数の
   人に分割され、承継後における新社長の経営舵取りが困難になる恐れが生じます。

   自社株をスムーズに引き継ぐ方策としては、

    (1)生前贈与により株式を後継者に移しておく

    (2)遺言状で、自社株を後継者にすべて相続させるように指定しておく

   といったことがあげられます。

   (2)の遺言状については、自社株の多くが非公開であることを考えると、相続税
   対策の観点から不利になることが予想されます。

   その理由として、

    ・非公開株式の評価は一般的にいって、考えていた評価額より高くなる
     傾向がある

    ・原則、換金性に乏しいため、相続税の納付に支障が生じる恐れがある

    ・非公開株式による物納が原則的に認められにくい

   こうしたことから、自社株対策では上記(1)による自社株の生前贈与を優先し、検
   討していくべきかと思われます。

   これには次に示す2つのアプローチ方法があります。

   1.長期的視点でのゆとりある生前贈与

     自社株対策は、長期的な視野で余裕をもって臨むことが肝要です。

     その場合、
      自社株を毎年少しずつ生前贈与の形で移行していく
     ことが最も基本的で、かつ安全なやり方です。

     後継者に贈与をすれば、もちろん贈与税がかります。

     相続税と贈与税の損得比較を考えてみると、両者ともに累進税率をとってお
     り、譲り受ける金額が高額になるほど税率が高くなります。

     そのため、長期にわたって計画的に生前贈与を行うことで1回の贈与額を減ら
     し、適用される税率を引き下げることで、バトンタッチ全体でみた場合の税率を
     低くすることができます。

   2.短期的視点で株式の評価額を下げる

     株式を贈与する直前においては、
      自社株の評価額を意図的に引き下げ、税金上、有利に株式を移行していく
     ことが基本になります。

     これは、自社株の評価額が低ければ低いほど、当然、そのときに移行する評
     価額が小さいものになるからです。

     実際の評価方法は、

      (1)類似業種比準備額方式 ……原則として大企業で通用

      (2)純資産価額方式    ……原則として中小企業で適用

      (3)(1)と(2)の併用方式 ……原則として中堅企業で適用

     があります。

     それぞれの評価概要と評価引き下げの具体策は次の通りです。

     (1)類似業種比準価額方式

       <方式概要> :評価会社に事業内容が類似する複数の上場会社
                  からなる類似業種の平均株価、配当金額、純資産
                  価額に比準して評価する方法です。

       <引き下げ策>:退職金支払いの増額、配当金の引き下げ、役員
                  報酬の額、会社分割による利益の分散が考えられ
                  ます。

     (2)純資産価額方式

       <方式概要> :仮に会社を解散したときの手取金がいくらになるかと
                  いう発想に基づき評価を行う方式です。
                  課税時期における各資産の合計価額から、各負債の
                  合計価額等を控除した金額を、発行済株式数で除して
                  求めた金額により評価します。

       <引き下げ策>:評価通達の各資産・負債の評価方法に着目した資産
                  の最小化・負債の最大化を検討します。
                  たとえば、不動産の購入、配当金の増額、役員賞与の
                  高額支給などが考えられます。

     以上のように、自社株対策は、これら2つの対策を上手に組み合わせていくこ
     とが大切です。

     つまり、

      長期的スパンのなかで、生前贈与により株式を少しずつ後継者に
      移行きせ、多くの株式を譲渡するときには短期的に自社株の評価
      額を引き下げ、有利に株式移行を行う

     ことを検討します。

  □中小企業の廃業が急増している  

   赤字による廃業もあるが、近年の廃業理由の5割が経常黒字なのに廃業。

   その理由として、人口減による後継者難で休廃業に追い込まれる会社が増え
   ていることです。

   後継者が不在のために、廃業を選択するしかない中小企業が増加しています。

   政府は今後10年に限定した対策を発表しました。

   承継する非上場株式のすべてについて相続税を猶予し、事業を継続する限り
   支払わなくてよい。

   それ以外にも、事業承継を円滑に進めるため今後10年間を集中対応期間とし
   た、緊急対応策を打ち出しました。

   たとえば、
    税制の適用入り口要件を緩和

     【現行制度】

      ・納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限があり、相続税の
       猶予割合は80%。
       後継者は事業承継時に多額の贈与税・相続税を納付することがある。

     【改正案】

      ・対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。
       また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担を
       ゼロに。

    詳細は

    平成30年度 事業承継税制の改正(中小企業庁)

  □事業承継を上手に進めるために

   これまで、事業承継に必要な内容や手順を概観してきました。

   それでは、事業承継対策は実際にどのように進めていけばよいのでしょうか。

   基本的には、自社における現状の問題点を明確にし、全社的経営戦略のなかに
   事業承継計画を盛り込んでいく必要があります。

   1.現状を把握する

     まず、社長が自社の事業承継(事業と財産)に関する現在の全体像を把握し
     ます。

     たとえば、次にあげるようなチェックポイントで現状を分析してみるのも一案です。

     <事業承継のチェックポイント>

      ・経営者としての資質を備えた後継者が決まっているか

      ・後継者の育成を計画的に進めているか

      ・経営の引き継ぎ時期や方法は具体化されているか

      ・節税対策は検討しているか

      ・株式の後継者への移行は考えているか

      ・株式の分散と支配権の確保は検討しているか

      ・遺言状による後継者への株式移行は考えているか

      ・相続税における納税資金の確保は万全か

   2.現状における問題点を明確にする

     現状を分析したら、いくつかあがった問題点から解決すべき問題の優先順位
     やそれぞれの因果関係を明らかにします。

     こうして、特に注力すべき問題の本質を明確にします。

   3.事業承継計画をつくる

     解決すべき問題の本質が明らかになったら、それを自社の経営戦略のなかに
     事業承継計画として盛り込んでいく必要があります。

     社長のビジョンや事業におけるあるべき姿を示し、中長期的計画のなかで具
     現化していきます。

     その計画には、次のことを盛り込むとよいでしょう。

      ・後継者および企業人材の育成計画

      ・事業における将来像と成長計画

      ・自社株の所有配分による経営支配権のバランス計画
 
   4.計画を実行し随時見直しを行う

     中長期計画をさらに短期計画に落とし込み、随時軌道修正を行いながら実行
     していきます。

     今後、税制改正なども予想されることから、その都度柔軟な見直しも求められ
     ます。

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病医院における事業承継

           

病医院における事業承継

  ■後継者問題

   1.後継者育成

    厚生労働省の調べによると、最近の開業医の平均年齢は60歳を超えており、
    世代交代の時期を迎えてきています。

    しかし、親の病医院を継いで資金繰りや人材難を抱えながら忙しく働くより、最
    新設備の中で研究しながら働く勤務医でいることを希望する医師も数多くいます。

    親の病医院を承継する医師は勤務医全体の20%程度にすぎません。

    そこでまず、若い医師が承継したいと感じるような魅力ある環境づくりを行なうこ
    とが電要です。

    開業医院の存在価値とは、

     ・地域密着型のケアができる

     ・診療時間などフレキシブルな対応ができ、患者さんと深くおつき合いできる

     ・「○○病院」というのではなく、「○○先生」という信頼関係のもと、指名を
      受けることができる

    などがあげられます。

    高齢化社会が進むなかで、今後はさらに医療ニーズが増加するとともに、地域
    医療の大切さが求められていることも考える必要があります。

   2.事業承継の時期と引き継ぎ

    (1)時期

      病医院を承継する時期は、後継者の管理能力や育成期日などを考えて決定
      することになります。

      後継者の見習い期間として、一般的には3〜5年は必要といわれています。

      また、事前に後継者と院内職員との間で意思の疎通を図っておくことが望ま
      れます。

    (2)引継ぎ

      承継の成功ポイントは院長についている患者を自然に後継者へと移行させ
      ることです。

      そのために、院長見習い期間は院長と後継者が一緒に診療を行なうようにします。

      後継者のために別の診察室を設けるのではなく、従来からある診察室を2つ
      に区切るなどの工夫をし、並行して診療することが大切です。

      診療時間帯や曜日が極端に異なることもないようにします。

      院長と後継者が一緒に診療することで、院長の診療の仕方や患者との上手
      なコミュニケーションの取り方、薬剤の投与(院長の処方)の仕方などを後継
      者が引き継ぐことが可能になります。

      このような方法で承継を進めれば、患者にとっても抵抗が少なく、自然な形
      で承継を行なうことができます。

      後継者へ事業を譲る時期が決定したら、後継者が中心となって病挺院経営
      の改善を行ないます。

      その際のポイントとして以下の4つが挙げられます。

       ・後継者をメインに病医院の事業の見直しを図る

       ・病医院の特性づくりと差別化対策を検討する

       ・病医院の管理体制の確立と組織の活性化を推進する

       ・上記の項目を実現するための経営計画を策定する

  □相続税対策

   1.相続税対策の必要性

    事業の承継にあたっては、高額な相続税を納税する義務が生じる可能性があります。

    さらに、留意しなければならないのは、2次相続が発生して、再度高い相続税を
    支払う可能性があるということです。

    納税は、原則として現金で行ないます。

    一般に不動産が遺産の70%程度を占めることが多く、納税資金をつくるために
    は不動産を売却しなければならないこともあります。

    ところが、不動産の売却については、譲渡益に税金がかかります。

    納税したら何も残らなかった、ということにもなりかねないのです。

    このため、事前の相続税対策が必要となってきます。

   2.相続税対策とは

    (1)相続税対策とは、次の2つのことを指します。

    (2)相続税の節税

      相続税は、事前に対策を打っておく必要があります。

    (3)納税資金の確保

      相続税は、原則現金で納めますので、金融資産がない場合は、不動産を
      売って相続税の納税資金にあてざるをえなくなります。

      不動産を売るとさらに譲渡所得税が課されます。

      したがって、その分も考慮して納税資金の確保をしなければなりません。

   3.相続税対策の方法

    (1)金銭贈与

      これは、非課税あるいは軽い税負担で相続人や相続人以外にも贈与してい
      くというものです。

    (2)生前贈与

      生前贈与を有効に行なうためのポイントをご紹介します。

       @より低い税率が適用されるよう贈与を行なう

         節税の基本は、税率の低い税法の適用を受けることです。

         生前贈与で節税を行なうためには、まず、相続財産の総額と法定
         相続人の数、あるいは配偶者の有無などから、具体的に納付
         すべき相続税を算定し、総遺産にかかる相続税の割合を算定し、
         この割合よりも低い税率が適用される範囲内で贈与を行なう必要が
         あります。

       A贈与税の基礎控除を十分に活用する

         贈与税の基礎控除となる金額(110万円)を十分に考慮し、
         できれば、数年かけて分割して贈与する形をとるほうが良策と
         なります。

       B現金で贈与せずに物で贈与する

         時価1千万円の建物を贈与しても一般的には、現金l千万円を贈与
         したときほどの贈与税はかかりません。

         なぜならば、固定資産については、相続税の評価額が時価よりも
         低くなる場合が多いからです。

       C価格の下がらない物を贈与する

         相続税対策として、生前贈与を行なう場合は、長期的にみて値上がり
         の可能性の高い物を贈与するのが得策です。

       D贈与税の配偶者控除を活用する

         婚姻期間が20年以上の配偶者に対する、居住用の不動産もしくは
         その購入資金は、一定の条件のもとで、特別控除(2千万円まで)が
         認められています。

       E贈与の証拠を残す

         贈与をした証拠を残すためには、基礎控除を超える贈与を行なって、
         贈与税の申告をし、贈与税を納めることが有効となります。

       F相続時精算課税制度を利用する

         平成15年1月1日以後、65歳以上の親から20歳以上の子に対する
         贈与については、相続時精算課税制度が選択できます。

         これを選択した場合、複数年にわたり通算2500万円までの贈引こ
         ついて、贈与税はゼロになります。

         よって、次世代への資産の移動が加速されることが期待されます。

         しかし、この相続時精算課税制度は相続時まで継続して適用され、
         一度選択をした場合変更することができませんので、細心の注意が
         必要です。

         この制度は、相続時に、生前に贈与した資産も相続財産に含め相続
         税額を計算し、すでに支払った贈与税額を控除することによって、
         生前の贈与税と没後の相続税を一体化させることになります。

         そもそも保有資産額が相続税計算の基礎控除額の範囲内である
         場合には、この制度を活用するべきです。

         なお、相続時には、贈与時の価額で相続財産に含めることになります。

         つまり、贈与対象財産が次のような場合には、相続時精算課税制度
         の利用を検討する余地があります。
 
          @将来価額の上昇が期待できる場合

          A収益を生み出す資産、たとえば、賃貸用マンションや配当が
            期待できる株式等である場合

   4.生命保険の利用

    生命保険を利用した相続税対策としては、「生命保険金を納税資金に充当す
    る」という方法が考えられます。

    これは、「相続財産が家と土地しかなく、相続税が払えない」というような事態に
    備えて、相続発生時の相続額を予想し、それ以上の保険金となる契約に加入し
    ておき、保険金を納税資金にする方法です。

 

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M&Aを活用した事業承継

         

M&Aを活用した事業承継

  ■多様化する事業承継のかたち

   1.多くの企業で後継者が決まっていない

     高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社長が高齢に達している一方
     で、承継候補者は不足しています。

     現社長が引退する時期までに適切な後継者がみつからなければ、やむを得
     ず廃業や清算も検討せざるを得なくなります。

     これは現社長だけの問題ではなく、従業員にとっても職を失うことを意味し、さ
     らには取引先や地域社会などに対して悪影響を与えることになります。

     最近では、親族間での承継以外の道として、社内の役員や従業員を後継者に
     選定したり、社外から後継者人材を招き入れて事業を継続する親族外承継が
     増加しています。

     また、身近に承継候補者がいない場合であっても、M&A(Merger and  
     Acquisition:企業の合併および買収)を活用して、会社そのものを譲り渡して
     経営を継続する方法を採用するケースが中小企業においても目立つようにな
     りました。

     2007(平成19)年に(独)中小企業基盤整備機構が実施した
     「事業承継に係る親族外承継に関するアンケート調査」の結果によると、約8
     割の中小企業が事業承継を希望しているにもかかわらず、「後継者が決まっ
     ている」のはわずか15.8%でした。

     後継者が決定していない場合で、どのような事業承継を望んでいるかについ
     ては、「従業員・役員に承継するつもり」がもっとも多く5割弱でしたが、次いで
     「できれば会社を譲渡・売却したい」が「まだ承継について考えていない」ととも
     に2割弱と2位になりました。
   
   2.事業承継対策としてのM&A

     M&Aによる事業承継は、後継者がいない場合であっても、事業を継続するこ
     とができるうえ、売却利益を獲得して経営者の引退後の生活を支えることにも
     つながります。

     前述のアンケート調査では、経営者のM&Aに関する考えについても調査を
     行っています。

     その回答によると、7割以上がM&Aを事業承継上の有効な手段だと考えてい
     るものの、手法や手続きの理解や知識が乏しい、信頼できる相談相手や仲介
     機関がない、相手先企業の情報が少ない、分からないなどの問題を感じてい
     る人も多いようです。

     実際に、M&Aを実行した経営者の実態に関する調査では、回答数24社のう
     ち、63%の企業が「順調に業凄を伸ばしている」と回答し、「事業形態が変
     わった」、「業績が低迷している」などのマイナス面は、わずかでした。

     また、会社を譲渡した後、前社長が「従前の会社の会長、社長」として、従来ど
     おりの業務を行っているケースが38%、「従前の会社の非常勤役員、顧問」が
     21%と、M&Aで事業を引き継いだ後も、何らかの形で経営にかかわっている
     社長が約6割という結果でした。

     会社譲渡を決意したきっかけの1位は、「親族内外の後継者を探したがみつか
     らなかった」が67%であり、M&Aは後継候補者がみつからない場合の次の
     手として利用されていることが分かります。

     また、M&Aの候補先がみつかり、最終的にM&Aを決定する要因としてもっと
     も多いのは、「従業員の雇用の確保ができた」が83%でした。

     中小企業の社長が従業員の雇用に対して優先事項と捉え、従業員の雇用を
     確保し、従前の労働条件が維持されることが確信できたときにM&Aを決意し
     ているようです。

     この調査では、71%の経営者が「非常に満足」、「満足している」と回答して
     います。

     また、M&A後の業績推移について、「順調に伸張している」との回答が63%
     と高くなっています。

     これらの結果から、中小企業にとってもM&Aが効果的な手法であり、今後も
     M&Aが増加する可能性は高いことが予見できます。

  □M&Aを活用して事業を承継する

   1.中小企業にとってのM&Aのメリット

     M&Aの手法とは、第三者へ会社を譲渡する方法のことですが、この方法に
     は、株式譲渡、吸収合併、営業権譲渡など、さまざまな種類があります。

     特に中小企業の事業承継では、株式譲渡がもっとも用いられますが、その理
     由としては、

      ・売り手企業の株主個人に株式売却の対価が直接入るため、創業者
       利益を実現しやすい

      ・売り手企業は子会社として存続するため、社名や従業員雇用の継続
       が可能である

      ・企業文化などが承継されやすい

      ・買い手企業の子会社として十分に機能するまで、前社長が数年間、代表
       権のない取締役や顧問・相談役に就任して橋渡しを行うことができる

      ・売却事務手続きが簡便である

     といった理由があげられます。

     さらに当初から全株を譲渡するのではなく、一定の期間は33%超の株式を保
     有することにより、株主総会での重要な決議事項における拒否権を確保する
     など、経営への影響力を保つというやり方もあります。

     このように、株式譲渡の手法を上手に利用しながら、条件交渉を行うことで、
     自分の会社に対して強い思い入れがある場合でも、友好的に引き継ぐことが
     できます。

   2.M&Aの手続き

     すでに相手先が決まっている場合であっても、M&Aを手掛ける場合、法律や
     税務などの専門知識や条件交渉などのテクニックが必要になるため、M&Aを
     専門とする仲介機関や弁護士を通して交渉を行ったり、税理士、会計士など
     からアドバイスをもらって進めることが一般的です。

     相手先がみつからない場合にも、M&Aの仲介機関に依頼し、相手先を探して
     もらうことができます。

     最近では、金融機関でも紹介をするところが増えています。

     また、商工会議所や(独)中小企業基盤整備機構などの公的機関でも、アドバ
     イスを受けることができます。

     譲渡を検討する中堅・中小企業がM&A先をみつけようとしても、希望の条件
     に合うような企業をみつけるのは、簡単な作業ではありません。

     従業員の雇用継続や取引先との関係、売却価格など売り主に有利な条件で
     M&Aを進めるためには、十分な期間と準備が必要です。

     期間については、最低でも1年以上をめどに、時間をかけて相手先を探すこと
     を心掛けたほうがよいでしょう。

     たとえ候補先が現れても、交渉が進まず断念する可能性もあります。

     仲介機関も1社に限定せず、情報源を広く活用し、自社の企業価値を高める
     ための方策についても意見を求めるようにしましょう。

     売り手企業の精査(デューデリジェンス)では、財務諸表・事業計画・税務申告
     書などをもとに、売り手企業がもたらす将来収益や現在の資産価値を検討し
     て、買収価格を決定します。

     有利な価格で交渉をするためには、企業価値を向上させるための事前準備も
     大切です。

     万一、適切な会計処理が行われておらず、収益力が判断できないとみなされ
     たとき、買い手企業は、買収価格の減額を要求したり交渉の中断を要請する
     かもしれません。

     会計処理に問題がなくても、回収不能な債権があるとき、債務保証などの簿
     外債務があるとき、許認可などの取得・更新に不備があるとき、取引条件など
     が不明で事業の将来性に不安があるとき、なども同様に判断される可能性が
     あります。

     企業価値が正しく評価されるには、相応の準備が必要なのです。

     <自社の企業価値を高めるための取組>

      (1)業績の改善・伸長

      (2)不採算事業からの撤退

      (3)利益の向上

      (4)無駄な経費支出の削減

      (5)事業に不必要な在庫や固定資産の処分(貸借対照表を実態に
        合わせる)

      (6)債務の圧縮

      (7)事業計画に基づいた経営管理体制の構築

      (8)役職員への業務権限委譲

      (9)就業規則、労働契約、賃金規定など従業員の待遇の明文化

     (10)取引先との不利な取引条件の改善、取引条件の明文化

     (11)経営者の個人資産、経費の切り分け※

     (12)オーナー以外の株主の整理(オーナーへの株式の集約化)

      ※たとえば、経営者が自家用車として使用している車であるにも
       かかわらず、帳簿上は、社有車としている場合、自宅を社宅と
       している場合、個人的な理由で使用した経費、オーナーから
       会社への貸付もしくは借入など。

     上記のほか、企業には目に見えないさまざまな「財産」があります。 

     たとえば、企業のブランド価値やイメージ、優良顧客、優れた商品の供給先、
     金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、営業上のノウハウなどがこれ
     に該当します。

     このような強みを見極めて、育てていくことも事前準備として重要です。

  □MBOの可能性

   後継者として事業を引き継がせたい役員や経営幹部がいるにもかかわらず、資
   金的な問題から引き継ぐことを断念するケースもあります。

   サラリーマンである役員には、相応の規模・業績にある企業の株式を買い取るだ
   けの資力はないのが通常です。

   それを解決する手段として、MBO(Management Buy−Out)が注目を集めて
   います。

   MBOとは、会社の経営陣が、事業の継続を前提として、所有者から株式を取得し
   て経営権を取得し、オーナー経営者として独立するためのM&A手法のひとつ。

   MBOには株式取得費用として多額の資金が必要になります。

   株式の買い取り資金は、経営陣が持ち寄る資金のほか、会社自身の財産や会社
   の将来の収益を担保とした、金融機関からの融資や投資会社からの出資によっ
   て補うことも考えられます。

   優れた経営陣のノウハウと実績ある企業の価値を根拠とするならば、金融機関
   やベンチャーキャピタルなどから協力を得ることもそう難しいことではないのです。

   事業承継は社長に課された最後の責務です。

   親族などに円滑な承継ができればそれに越したことはないのですが、そうでない
   場合は、M&Aの活用も視野に入れたさまざまな施策をできるだけ早めに講じて
   いくことが大切です。

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後継社長の心構えとやるべきこと

          

後継社長の心構えとやるべきこと

  ■先代社長の経営理念を重視

   就任直後の後継社長がもつべき心構えとして、第一にあげられるのは、

    先代社長の経営理念を重視する

   必要があるということです。

   経営理念は経営の現場から生み出された英知であり、そこには経営におけるエッ
   センスが凝縮されています。

   それは、先代社長が長い年月をかけて育て上げてきたものであり、企業を特徴づ

   けるきわめて重要な要素です。

   したかって、後継社長は、先代社長が作り上げた経営理念を踏襲することを基本
   として社内の体制を整え、自社の進むべき方向性、つまり経営戦略を打ち出して
   いかなければなりません。

   多くの後継社長は、先代社長の経営理念を継承しつつ日々の経営活動を実践

   し、成功をおさめています。

   しかしその一方で、先代社長の経営理念をあまり考慮しない経営を行い、その結
   果衰退していく企業もあります。

   経営理念を継承するというのは、先代社長の経営に対する考え方をすべてその

   まま実践する、というものではありません。

   仮にその経営理念のみにとらわれた経営を進めていくのであれば、大きな成功に
   つなげることは難しいかもしれません。

   とくに、現在は企業を取り巻く環境変化のスピードが非常に速い時代です。

   旧態依然たる経営を続けていては、業界における優位な地位を確保することは

   困難です。

   そのようなことを考慮すると、

    先代社長の経営理念を踏襲しながら、
    独自の経営に関する見方を加え、
    より次元の高い経営理念を作り上げていく

   必要があるといえます。

  □堅実経営に撤する

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第二に、

    堅実な経営の実践が企業の確かな成長につながることを
    十分に認証しておかなければならない

   ことがあげられます。

   前項では、先代社長の経営理念を引き継ぐことの重要性を指摘しましたが、堅実

   な経営の実践は、その経営理念が形となって表れたものです。

   ここでいう堅実な経営とは、

    先代社長の考え方を守りながらも独自の戦略を打ち出し、
    本業部分を大切にしつつ、
    さらなる成長を目指して事業経営を進めていく

   ことです。

   後継社長に経営権が委譲されたばかりの頃は、経営が不安定な場合もあるよう

   です。

   そのようなときに、新しい経営指針を社内および社外に示し、新規事業分野に
   次々に参入したり、あるいは、急速に事業を拡大したりするケースも見受けられま
   す。

   しかし、こうした戦略が失敗に終わることも少なくありません。

   多くの企業倒産の事例を掘り下げてみていくと、その倒産要因のひとつに、堅実
   な経営に徹しきれなかった点があげられます。

   このように、堅実経営の実践は大切です。

   しかし、的確な事業拡大や多角化戦略は、会社の成長にとって必要不可欠なも
   のです。

   ですから、基本的な経営戦略を守りながら、それを土台に新たな取り組みを考え

   る姿勢が重要となります。

   それが有効な事業拡大、あるいは多角化戦略になることでしょう。

   「とにかく実力以上のことはせずに、確実に経営をしていくことが肝要である。
   それがわからずに失敗した」。

   これは、ある倒産企業の元社長の言葉ですが、堅実経営の重要性を再認識でき

   ます。

  □人脈の構築とその有効活用を心がける

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第三に、

    人脈の構築とその有効活用を心がける

   ということがあげられます。

   そのためにはまず、先代社長が長年にわたって築き上げてきた人脈ネットワーク
   を、可能な限り積極的に活用することが大切です。

   またそれと同時に、

    積極的に新たな人脈を発掘し、より強固な人脈ネットワークを構築
    するように普段から努力する必要があります。

   社長が日々取り組むべき業務は、かなりの量になります。

   さまざまな問題が発生し、すべてにひとりで対応できるものではありません。

   社内においては部下に仕事を任せ、それと同時に社外の人脈ネットワークも活用

   すれば、的確な意思決定を行ったり、仕事を依頼したりすることも可能となります。

   人脈を広げて有効に活用することは、自社の経営改善に大いに役立つでしょう。

   その具休的な方策のひとつに、異業種交流会への参加があります。

   たとえば、

    東京大田区や墨田区ではいくつもの異業種交流会が組織されており、
    実際にユニークな新商品が開発されるなど大きな成果が報告されています。

   また、中小企業白書でも、異業種交流会や共同受注の重要性を例年指摘してい
   ます。

   長期的な企業の成長を考える際に、人脈ネットワークの構築は必要不可欠な視
   点です。

  □長期展望を持つ

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第四に、

    長期展望をもって企業経営を推進することの重要性を認識する

   ということがあげられます。

   短期的な業績向上の検討も非常に重要ですが、社長は、より長期的な視点から
   自社の経営を考えなければなりません。

   つまり、明確な長期ビジョンを設定したうえで、短期的な計画を立てて実行してい

   く必要があります。

   そこで、事業を引き継いだ段階で現状分析を進め、自社の強みと弱みを十分に把
   握します。

   この段階では自社の内部・外部両面の分析を行い、最適な方向に自社を導いて

   いくための長期的な経営戦略を立案します。

   このような長期的視点に立った経営戦略を検討することは、後継社長の非常に大

   きな役割です。

   しかし、就任直後では経験上の問題もあり、的確な判断を行うのが困難な場合も
   発生します。

   そのようなときには、先代社長のアドバイスを積極的に受けるのがよいでしょう。

  □後継社長が引き継ぐもの

   まず最初に、後継社長が引き継ぐものは何か、という点を考えていきます。

   1.後継社長が引き継ぐもの

     社長の職務をまっとうするには、後継社長は、まず自分が何を継ごうとしてい
     るのかを正確に認識しておく必要があります。

      後継経営者が継ぐものとは、社長という絶対権限、すなわち、
      組織を活用し、自らの裁量で事業を行う権限

     にほかなりません。

     その権限を活用して新たな事業に取り組むことも、従来の経営方針をさらに効
     果的に推し進めていくことも、後継者の意思決定に任されます。

   2.あらゆる可能性を検討する

     表面的に「事業=会社を継ぐ」というとらえ方をしていたのでは、前社長以上の
     ものを築き、育てていくことはできません。

     現在の事業分野や組織の機能にとらわれすぎると、成長のチャンスが訪れた
     ときに、素早くかつ柔軟に対応することができず、事業機会を逃してしまう可能
     性があります。

     また、たとえ結果的に前社長の経営方針を踏襲することになっても、何も考え

     ずに前社長のやり方を続けていく場合と、あらゆる可能性を検討したうえで前
     社長と同じであることを選択した場合とでは、その本質はまったく異なります。

      企業の将来はトップが受け継いだ資産を有効にいかせるか否かで変わる

     ものですから、前社長の経営スタイルのみに固執することなく、さまざまな可能
     性を追求しながら経営を行っていきたいものです。

  □事業承継時の取り組み

   前項の認識に基づき、社長としてまず何に取り組むべきかを考えてみましょう。

   1.社長の仕事

      社長の職務を端的にいえば、引き継いだ裁量権を存分にいかして、
      戦略の策定と人心の掌握を確実に遂行していくことです。

     中小企業においては、社長がさまざまな業務を担当しなければならない場合
     が多いといえますが、ほかの誰にも代わることのできない社長自身の職務と
     は、本来この2つに限られるといっても過言ではありません。

     後継者として事業を承継した後、社長として第一に取り組むべきこともこの2つ 

     であり、

     なかでも、

      正確な現状認識に基づく、的確な経営戦略の策定が最重要課題である

     といえます。

     自社の存続・成長のためには、経営上の問題をあらゆる角度から分析するこ

     とで解決すべき課題を抽出し、その課題解決の方策を検討する必要があります。

   2.戦略的中期経営計画を策定する

     就任直後は多忙のためにデスクワークの時間がなかなかとれない、ということ
     も起こりうるため、できれば事業承継前から前社長らの協力を得て、中・長期
     的な経営戦略の草案を作成しておくとよいでしょう。

     就任後はそれをたたき台に、経営幹部全員が意思決定に関与する形で戦略
     的な経営計画を策定していきます。

     こうすると効率的であるばかりでなく、

      ・各人の知恵と知識がいかされた、より効果的な戦略が立てられる

      ・幹部陣も、自ら策定に参加した戦略であるため、その正しさを認識しやすい

      ・自社の経営理念、経営方針や新社長の考え方を全長が明確に理解する
       ので、組織一丸となった動きが期待できる

     などの効果を得ることができます。

     将来への夢を描き、それを確実に達成できる戦略を打ち立てられれば、おの
     ずと人心を掌握することができるでしょう。

  □社長としての生活指針

   戦略に基づいた施策を社員の一人ひとりに確実に遂行してもらうためには、社員
   が「この新社長となら一緒に努力したい」と考えるような魅力や器が新社長に求め
   られます。

   そして、こうしたものは、カリスマ性というよりは、以下にあげるように、日々の生
   活指針によってつくられていく場合が多いといわれています。

   1.社長自身のレベルアップ

     社長が自らのレベルアップをはかる第一歩は、自分の人生を「自分のため」と
     いうより、「自分とともに生きる人達のため」と位置づけて考えてみることです。

     社員に生きる場を提供することは、会社の重要な役割のひとつです。

     社長の姿勢のなかに、社員を大切に思い、社員のことを考えた経営をしてい
     る、というものが感じられなければ、社員のモラールは停滞してしまいます。

     社員にとって本当に魅力的な職場環境をつくり出すことができてはじめて、社
     員は自らの夢を実現するために、さらには、社長の夢を実現するために努力し
     てくれるのではないでしょうか。

   2.社員の成長の手助け

     社長は、自分自身が研鑽を積むだけでなく、社員の成長にも力を貸せる存在
     でなければなりません。

     仕事を通して、あるいは社長とのコミュニケーションを通して、

      ・よりレベルの高い考え方ができるようになる

      ・よりレベルの高い職務遂行能力を身につけることができる

     という実感を彼らに与えなければなりません。

     そうすれば、社員は社長に尊敬と親しみを覚え、さらに向上したいという意欲  
     をもち続けるでしょうし、そうした人材が増えることで好ましい組織風土が社内
     に醸成されていきます。

     また、それが社員の周囲にいる人たち、家族や友人などにもよい影響を与え
     ます。

   3.社会に対していかなる価値を生み出していくか

     企業は、顧客・株主・取引先・隣人といった社会の存在があってこそのものです。

     したがって、従業員のためにという側面とは別に、社会全体のためにいかなる
     価値を生み出し貢献していくか、ということを考える視点が必要となります。

     つね日頃から、こうしたことを追求していくことが事業のあり方に反映され、そ
     の結果として、社会的に価値ある仕事をしたいと考える認識レベルの高い人
     材が集まります。

   4.継続的な自己革新

     会社は、社長の考え方や人格がレベルアップするにつれて、優秀な人材が集
     まるようになっていきます。

     社長はその地位をおりるまで、つねに自らの社会的役割を見つめ直し、また
     経営手腕を磨いて、魅力あるマネジメントを実行するための努力を継続してい
     かなければなりません。

     そのためには、強固な意志と健康な体が必要です。

     そして、それらを維持していけるような健康的な生活を送っていくことが重要です。

 

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二世経営者の役割

                  

後継社長の役割

  後継社長の心構え
   就任直後の後継社長がもつべき心構えとして、第一にあげられるのは、先代社長の
   経営理念を重視する必要があるということです。
   経営理念は経営の現場から生み出された英知であり、そこには経営におけるエッセンス
   が凝縮されています。

   それは、先代社長が長い年月をかけて育て上げてきたものであり、企業を特徴づける
   きわめて重要な要素です。
   したかって、後継社長は、先代社長が作り上げた経営理念を踏襲することを基本として
   社内の体制を整え、自社の進むべき方向性、つまり経営戦略を打ち出していかなければ
   なりません。

   多くの後継社長は、先代社長の経営理念を継承しつつ日々の経営活動を実践し、
   成功をおさめています。
   しかしその一方で、先代社長の経営理念をあまり考慮しない経営を行い、その結果
   衰退していく企業もあります。

   経営理念を継承するというのは、先代社長の経営に対する考え方をすべてそのまま
   実践する、というものではありません。
   仮にその経営理念のみにとらわれた経営を進めていくのであれば、大きな成功に
   つなげることは難しいかもしれません。
   とくに、現在は企業を取り巻く環境変化のスピードが非常に速い時代です。

   旧態依然たる経営を続けていては、業界における優位な地位を確保することは困難です。
   そのようなことを考慮すると、
   先代社長の経営理念を踏襲しながら、独自の経営に関する見方を加え、より次元の
   高い経営理念を作り上げていく必要があるといえます。

  □堅実経営に撤する
   就任直後の後継社長がもつべき心構えの第二に、
   堅実な経営の実践が企業の確かな成長につながることを十分に認証しておかなければ
   ならないことがあげられます。
   前項では、先代社長の経営理念を引き継ぐことの重要性を指摘しましたが、堅実な
   経営の実践は、その経営理念が形となって表れたものです。

   ここでいう堅実な経営とは、
    先代社長の考え方を守りながらも独自の戦略を打ち出し、本業部分を大切に
    しつつ、さらなる成長を目指して事業経営を進めていくことです。
   後継社長に経営権が委譲されたばかりの頃は、経営が不安定な場合もあるようです。

  □後継経営者が決まる道筋

   二世経営者が自らの指揮権を確立する際に、先代から引き継いだ企業体質がどの
   ようなものであるかは、大変重要な要素である。

   先代が睨みを利かせている間は自らの「分」をわきまえてしっかりと守っていたベ 
   テラン幹部が、先代の前では絶対に見せなかった顔を時折覗かせるようになったり、
   時間とともに求心力が失われていったり、といったことは多々あることです。

   状況は千差万別だろうが、後継社長が社員の信頼を得る道は1つしかない。

   それは私心を捨て、社業にはまり込むことです。

   その一途で一生懸命な姿が、幹部以下の社員の心を動かすことになる。

   後継経営者がその地位に就くまでの経緯には、大きく分けて3つのタイプがあります。

   第1のタイプは、学卒後すぐに現在の会社に入社してほかの会社を知らない者、第2

   のタイプは同業他社で厳しい躾や教育を受け、周囲が認める実績を残してから現在の
   会社へ入ってきた者。

   そして、第3のタイプは先代社長の娘婿の場合である。

   これも二通りあって、先代が見込んで婿入りしてきたケースと、たまたま娘と一緒に

   なって何らかの事情で経営者を継ぐ羽目になったケースがある。

   第1のタイプの場合、先代が元気な時には往々にして親子の間がうまくいっている
   ケースが多い。

   また第2のタイプの場合は、しっかりと引き継いでいるケースが多いように思う。

   ただし、これはあくまで「前職で相当のプレッシャーを跳ね返し、評価に値する実績を
   残した者」という条件が付いてくる。

   そこで、この第2のタイプの二世経営者が企業体質革新と指揮の確立に挑んだ経過
   のなかから、中小企業の体質革新のポイントを解説してみます。

   1.四面楚歌の状態からのスタート

     ある繊維業界のなかで地場開発問屋として商品開発力に特徴を持ち、社員数
     30名の会社で、現会長は創業者で、初期の頃は先頭に立って顧客開拓や商品
     開発を行い、基盤を創ってきた。

     しかし、ある程度基盤ができてからは幹部社員に任せ、それぞれが自由に活
     動することで業績を上げてきた。

     40代に入ったばかりの新社長が就任した当時は、会長を支えてきた幹部が

     次々と定年退職し、部門をまとめる人材がいなくなっていた。

     そのうえ、環境の急速な変化で従来のやり方が通用しなくなり、極端に業績を
     落とす部門も出るような状況になっていた。

     さらに、長い間各部門が自由に活動していたため会長は実質的に引退しており、
     部門長が不在の状態では1人ひとりがバラバラの動きになり、全く統制の

     取れない状態であった。

     まず、社長自身が会社の実情を正しくつかまなければならない。

     そのためには、まず営業担当者からの報告がきちんと社長に上がる仕組みが

     必要だった。

     この会社では、組織として動くことの意味すら分からない者が多いなかで、単
     に報告を上げよという指示だけでは、ほとんど効果がない。

     中堅営業担当者の1人ひとりに対して社長自身が指示を出し、その結果を報

     告させることから始めなくてはならない。

     これを効率的に行うため、ボイスメールや携帯電話などを最大限に活用し、社
     長も気が付いた指示事項があれば、すぐにその場で指示を出していく。

     その結果の報告の期限と方法まで、具体的かつこと細かに行っていく。

     また、併行したのが規律の徹底です。

     部門によっては、出退社時のあいさつすらないところもあったほどである。

     まず、あいさつの徹底を総務、経理の間接部門から始めた。

     それはこの間接部門があらゆる面で社長の意図を解し、社長の雑務面での補
     佐機能を果たしてもらう必要性からです。

     各担当者に朝出社したら一番にボイスメールを開くことを徹底させるだけで1

     カ月かかった。

     さらに確実に返答、報告が社長のもとに返るようになるまで2カ月を要した。

     総務部門に社長の補佐役としての自覚を持たせる際も、部門長であるY部長
     の意識を変えるだけで大変な時間を要した。

     Y部長本人はいたって真面目で仕事も一生懸命、時間も休日もいとわずに頑張る

     のだが、指示が出せないために部下も動かせない。

    だから総務部門の指導も、やがて社長が直接1人ひとりに対して行うことになった
    のです。


   2.批判を沈黙させてしまうほどの社長の仕事ぶり

    それでも結局、Y部長自身は社長の指示を忠実に守ろうとするが、部下の女性
    社員の意識革新は、人が変わるまで待たねばならなかった。

    さらに信じられないことのように思われるだろうが、中途採用者の初任給すら
    社長が知らない間に決まっているような体質だったのである。

    社長としては、1人ひとり辛抱強く指導していく以外になかったわけだ。

    こうして社長のやるべきことは多岐にわたり、時間がいくらあっても足りない

    という日々が続くことになった。

    これだけ大きな体質転換を図るとなると、通常はかなりの批判が表立ってくる
    ものだが、M社の場合に比較的スムーズだったのは、ひとえにこの社長の仕事に
    取り組む姿によるところだと言える。

    朝は一番早く出社し、退社は一番最後、夜の12時前に帰ることはない。

    休日はだれにも邪魔されないからと、ほとんど毎日のように顔を出す。

    出張に行っても時間をギリギリいっぱい使って動くし、商品企画をだれよりも
    出して、それがまた売れる。

    こうした事項については、役員も含めてだれ一人敵う者はいない。多少の批判は

    あっても、それらをすべて沈黙させ、覆い隠してしまうほど猛烈な仕事ぶり
    だった。

    こうした実情を社長とともにきっちりと確認したうえで、まずボイスメールで
    社長と社員との間のコミュニケーションパイプが通るようになったと判断して
    から、いよいよ本格的な体質改善に取り組むことになった。

   3.危機感を感じず改善していないB部門

    M社の場合、とにかく各自がそれぞれの思惑で動き、結果さえ出せばそれで
    良しとする体質が染み付いていた。

    そのため、ベテラン営業マンにとって全社方針云々などということは、
    それまでは全く意識がない状態であった。

    新社長にとって、まずは自らの「力」を、ベテランクラスに納得させることが

    前提となる。

    幸いと言うか、タイミングが良いと言うか、折からの不況が続いたことで、従来の
    方法では売上げが達成できなくなり、債権管理も今までとはケタ違いの厳しさが
    要求されるようになった。

    M社の営業部門は3つあり、それぞれに状況はかなり違っていました。

    A部門はベテラン幹部と力のある中堅社員がいて、大口倒産などもあり売上げは
    減少していたが、トップ方針の浸透度は一番進んでいた。

    社長としては、部門長に任せておける唯一の部門だった。

    これに対して、B部門は一番問題がある部門だった。

    まず、リーダーがいない。
    やむなく一番の年長者を部門長に据えているが、ほとんど用を成していない。
    当然、業績も下がる一方で、しかも改善の兆しが全く見えないのに、危機感も
    感じていません。

    社長の打ち出した体質改善の第一弾は、徹底した新規開拓活動でする。
    具体的には、全営業担当者は1人30件の新規アタック先を持てというものでした。
    ただし事前に興信所で調査し、その結果を社長が承認したところに限るという
    条件付きでした。

    この方針を打ち出した当月、調査申請が上がってきたのはA部門だけでした。
    この結果については、ある程度は予想をしていたので、2カ月目からは経営会議
    における定例報告事項としました。
    申請数のチェック、承認が下りたもののアタック状況など、各部門長から報告
    させるのです。

    これを繰り返すうち、3〜4カ月目にはA部門はさすがに動きが活発化し、成果も
    出るようになってきました。
    自分の担当先の大口得意先が倒産し、ベースだけを見ると昨年比40%程度しか
    見込めない状況だったある営業担当者は、期中は部門長からの厳しい叱責、指導、
    チェックもあり本人もかなり苦労したが、結果は昨年対比80%近くにまで盛り
    返しました。

    目標未達ではありますが、業界状況を鑑みると大変な善戦と言えるし、会社も
    そのような評価をしました。
    C部門は社長が直接指揮を執っている部門であるだけに申請は上がっているが、
    動きが鈍い。
    しかし、この活動を通して若手の中に意識が前向きに変わる者が出てきて、
    社長にも指導のやりがいが出てきました。

   4.3つの決断をし、ついに直接指導へ
    問題は、やはりB部門です。
    申請が少ないだけではなく、承認が下りても訪問しないのです。
    会議でチェックされるため一応は訪問するが、ほとんど成果が出ません。
    A部門が「営業は断られた時からスタート」とばかりにしつこく食い下がって
    いるのに対し、こちらは一度断られると、そこで諦める。

    なかには「電話で断られました」と1件も訪問しない者もいる始末です。

    社長は半期の結果を見て、次のことを決断した。

    (1)従来はあまり差をつけなかった昇給査定について、新年度からは「正直に
     やった者がバカを見ない」制度に切り替え、思い切った昇給・減給を行う。
    (2)C部門メンバーへの個別指導は、挑戦意欲の出てきた若手に対し、重点集中
     して行う。
    (3)B部門については、第1四半期のみ、社長が部門長として直接指揮を執る。
     その結果によっては、部門の存続自体を含めて検討する。

     まず給与制度であるが、M社の場合、トップ方針に対する認識が薄い。
    経営の原理・原則から言えば、企業経営とは「トップの夢を、働く人の協力で
    実現すること」である。
    そこで評価の基本的な考え方を、社長の独断で決めると割り切った。

    具体的な手段として、まず全社の労働分配率と過去の部門別人件費の構成比
    および営業部門については、部門業績を参考に部門別の給与水準枠を決めた。
    次のステップは、給与枠を決めたグループごとに、社員の自社における存在
    価値の高いと思える順に並べてみることにした。

    そして、順位の中位の者がそのグループの総人件費枠を所属人数で割った額
    (=平均値)を算定し、順次、上位下位の者の金額を決めていく。
    最後に全社で並べてみて調整し、さらに現行支給額とを比較して決定する。
    これらの作業は、M社の場合は社長1人で行った。

    本来なら社員が50人程度であれば、役員や部門長クラスの数人で順位付けを
    するのが常道である。

    だがM社の場合、全体を見渡せる幹部がいないことと、トップ方針に対する
    取り組み姿勢の問題から、社長1人で決定したわけです。

    B部門を中心に大幅にダウンした者も何人かいたが、初年度は微調整にとどめ、
    減額分を調整給とした。
    このままなら、来年はその分が減額となりますよという意味です。
    併せてB部門に対する社長の直接指導である。

    真に補佐してくれる幹部がとりあえず不在であるがゆえに、社長の直接指導
    もやむを得ない。
    しかし、ここだけにかかりきりになることは、会社全体の運営上、得策では
    ありません。

    そこで、3カ月という期間を区切ることにしたわけです。

    社長が毎週の最終日に、営業担当者1人ひとりと個別面談を行い、「今週の
    結果の反省と、来週の目標・計画」をチェックし、それぞれに指示を出す。
    その際には、結果報告の日時とやり方まで細かく指示していました。

   5.社長の本気に「やる気」社員が発奮
    結果はどうか。
    動きは多少、変わったかに見えるが、あくまで表面のみで、一向に変化の兆し
    が見えない。
    ついに社長は、商品企画まで自分が出すと言い出した。
    これについては何とか思いとどまってもらった。

    C部門の若手育成もあり、成果の望めない分野に労力を注ぐのは全社的に見て
    得策ではない。
    ただし、そのまま放置もできない。
    そこで、B部門のメンバーに対し、営業実績と社長方針の実行度による個人
    評価と、部門別粗利益額の両面から「今月のあなたの働きに対する妥当な給与
    はいくらです」という評価金額を個々に通達することにしました。

    支給額は、年度初めに決めた額だが、次の査定時にはこの程度に下がりますよ
    という金額を、毎月知らしめるのです。
    あとは本人次第と、突き放すしかありません。
    この制度の実施はB部門だけであるが、他部門への影響が大きかった。

    従来から、B部門については他部門より水面下での批判はあった。
    それに対し、社長が本気でメスを入れたことで、やる気のある者が一層やる気
    を持ち、発奮して仕事をし始めたのである。
    澱んでいた空気の流れのなかに、ようやく一部動き出そうとする気運が見えて
    きたのである。

   6.当面の幹部に実績ある営業の2名を指名
    社長は、気力・体力が充実している年代のため、今はすべての部門で末端
    にまで関与できるが、それがいつまでも続くわけはない。
    そして何より、社内のことにかかわっているよりは、攻め、具体的には顧客
    回りや商品企画などに注力せねば、いずれ業績は下降する。

    そこで、社長の意図を理解しチームをリードしていくことのできる幹部人材を
    確保することが急務であり、差し迫ったテーマとなります。
    M社の場合、給与改定まで手を付けて、ようやく幹部づくりに取り組む下地が
    できたと言える。

    これまでの社長方針の打ち出しに対する反応と動きから、現状で幹部としての
    役割を果たせそうな者は2名でした。
    この2名は、営業としての実績もあり、周囲も一目置く存在です。
    社長とのコミュニケーションを密にすることで、当面の取りまとめはできると
    読んだのです。

    ただし、社長を補佐する真の幹部としての役割発揮については、あまり大きな
    期待をかけないことにしました。
    この2名は、個人の営業としては抜群であり、営業リーダーとしては申し分
    ありません。

    しかし、年齢的な面や今日までのキャリアから見て、さらに上のレベルを目指す
    よりは、現状の位置で100%の力を発揮してもらうのが実際的と判断したわけです。
    そして社長とのコミュニケーションを密にすることにより、この2名を軸にした
    組織的な動きが、徐々に展開されるようになってきた。

 □30代前半の社員を将来の幹部として育成へ

  1.30代前半を選ぶ理由
   さて、当面はこれで良いとして、5年後、10年後を考えた時、どうしても真の
   経営幹部、つまり専務、常務クラスの育成が必要となる。
   M社では、30代前半の者3名を選抜した。
   30代を選んだのには訳があります。
   経営幹部になるためには条件があるのです。

   まず第1に、それぞれの担当分野において、平均以上の実績を残すことが求められる。
   これがないと、周囲がリーダーとして認めない。
   第2に、経営ならびに管理に関する基礎知識を身に付けることが求められる。
   しかも、それらは単に知識として持っているだけではなく、実務で活かせるだけの
   知恵、つまりは現場の体験も必要ということです。

   さらに3番目の条件として、上に立つ者としてふさわしい立ち居振舞いと日頃の
   言動が求められる。
   職場のあらゆる面で、モデルとなることを目指す姿勢が大切です。
   将来の役員を目指す者は、人並み優れた面を持つことはもちろん、他の顰蹙
   (ひんしゅく)を買うような行動をする者では、ふさわしくないのです。

   これらの条件を身に付けようとすれば、体力と吸収力の高いうちにハッキリとした
   目的を持って取り組まねば、とても追い付きません。
   しかし一方、自らこの棘の道に挑もうとする若者は、豊かな時代なだけに極端に
   少ない。

   それゆえ、企業の永続を考えた場合、意識的にこの層を育てていかないと、兵隊は
   大勢いるが指揮官が不在で戦にならない、といったことも起こり得ます。
   そこで体力・吸収力、さらに将来の可能性、社長との年齢差などから、M社では
   30代前半の者を選んだのです。

   彼等が経営や組織・管理等を理解し、行動することで、前述の2名の現幹部も
   ずっとやりやすくなるはずです。
   問題はこの3名をどう育てていくかであるが、まず前提として本人たちがその気に
   なることです。

   M社の場合、この世代ではまだまだ自発性に任せられるレベルではなかったため、
   以下の手順を踏んだのです。

    @会社全体のレベルアップのために若手社員研修を実施する旨を、社長から
     全社員へ通達。
    A社長が選んだ3名だけではなく、40歳前の社員全員(7名)を指名して、
     研修会参加メンバーとする。
    B研修は月1回、終業後に実施することとし、とりあえず6カ月間のカリキュラム
     とする。

   カリキュラムの内容は、初めは経営管理の基本を中心に行い、自分の担当業務
   だけではなく、広く全社的な問題に目を向けさせることを目的としました。
   ただし、問題点を指摘するだけでは評論家の域を出ません。
   問題として指摘する以上、その解決に向けて自分たちはどう行動を起こすのか、
   というところまで考えさせないと、会社に対する批判勢力をつくってしまうことに
   なりかねません。
   そこに注意を要します。

  2.「我々が会社を支える」との自覚とプライドが徐々に
   研修を進めていくうちに、彼等の物の見方に変化が表れ始めました。
   それは、会社全体を良くしようとする意識が高まってきたことに加えて、参加者の
   間に従来は見られなかった連帯感が芽生えてきたことです。
   「我々で会社を支えていこう」という意識を持った層の存在は、活力に大きく
   影響するのです。

   さらに、その半年間にやはり当初社長が目星を付けていた3名が、他を一歩リード
   するようになってきました。
   そこで、半年のカリキュラムが一応終了したところで、本格的な幹部育成に取り
   かかることにしました。

   まず、社長が3名を一室に呼び、今後の若手研修のリード役を務めてほしいこと、
   さらに一段高いレベルを目指してもらうために社長直々の指導機会(=個別面談)
   を研修とは別に月1回定例的に持つことの2つを提起しました。
   この半年の研修で、少なくとも選ばれた者としての自覚とプライドが芽生えつつ
   あったところであり、また社長が自分たちに期待しているということも理解でき、
   「やります」という大変心強い返事が返ってきました。

   その後の研修は、やり方をガラリと変えました。

   社長方針を具現化するため、それぞれ1人ひとりが具体的に何をするかを明確にし、
   それを研修メンバーで相互チェックするのです。

   これにより、方針具現化のため互いに協力し合って行動を起こすだけでなく、
   実行上の障害がケーススタディーとなって、管理職としての判断力も養うのです。

   併せて、リーダー3名と社長との個別面談では、それに踏み込んで個々の啓発テーマ
   の進行度までチェック・アドバイス・フォローを行っています。
   そして、現幹部2名とこの若手メンバーが、従来とは変わった動きをするように
   なったことで、ほかの社員も、前向きに取り組む者と過去の殻から出ようとしない
   者とが、明確に分かれてきました。

   ここにおいて、評価による処遇制度を推し進め、社員それぞれが貢献・提供する
   価値に対する会社の判断を、より明確に示しつつあります。
   ようやくトップ方針が方針として受け入れられるようになり、社長が社長としての
   責任を取れる体制に近付いたと言えます。

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