社長にとって後継者問題は経営における最大の課題であり、リスク

         

オーナー社長の後継者問題


  オーナー社長にとって後継者問題は会社経営における最大の課題であり、リスクでもあ
  ります。

  事業を維持し発展させる中で「相続対策(納税資金・自社株・不動産・もめない対策)」な
  ども含め、後継者問題が最大のテーマではないでしょうか。

  「事業の再編成、後継者教育、財産の移転・評価引下げ」などの事業承継対策は早期に、
  また、長期間にわたって計画的に対策を講じることで効果が発揮されます。

  ある調査によると、「後継者に事業承継したい」と回答した企業のうち、50%強の企業が
  「後継者を決定していない」と回答しており、後継者の選任あるいは育成から着手しなけれ
  ばならない企業も数多く存在します。 

  参考に事業承継ガイドライン(事業承継協議会)を掲載しておきます。

  ここでは後継者問題に焦点を当ててみます。

  ■後継者育成のための環境整備悩み.jpg

   1. 社内体制の整備

   2. 段階的な権限の委譲

   3. 現経営者による経営者としての心構えを
     レクチャー

   4. 自社内で広範囲な業務経験

   5. 業界団体の会合・経営者向けセミナー
     への参加

   6. 自社株のを取得

   7. 金融機関や取引先への根回し 

   8. 取引先や同業他社での修行

   9.人材育成の基本となる基本動作の習得

  ■「後継者」のための組織づくりのポイント

   「後継者」は、現社長の「人」「モノ」「金」「情報」という経営資源を引き継ぐのでは
   なく、それらの経営資源を使って新しい企業を始めると考えるべきです。

   まずは、後継経営者に求められる「資質」について考えなければなりません。

   そして、後継者が働きやすい環境を作るために組織再編や人材整理を敢行するという
   具体的支援も必要になります。

   既に成功した先駆者と同じ土俵にあがったのでは、後継者が高く評価されることはなく、
   後継者が高く評価されなければ、優秀な人はついていかないからです。

   後継者が、活躍して強力な組織づくりを行うためには、決して「残してはいけない」人材
   がいます。

  ■「残してはいけない」人材

   (1)後継者より優秀な人材

     これからの組織にトップの「目の上のたんこぶ」を作るのは、禍根を残す結果になる
     ケースが多いでしょう。

   (2)ご意見番タイプの長老

     新しい組織を作る際には、このタイプの人材が最もネックになると考えて差しつかえ
     ありません。

   (3)「太鼓もち」的タイプの人材

     社長の権威を利用して仕事をしていた人材は、新体制に入れるべきではありません。

   現経営者は、言葉ではなく、後継者が働きやすい人材や組織を残す心構えが必要です。

   後継者問題に関しては、相続対策を除けば、後継者の「資質養成」と人材整理も含めた
   「環境整備」が重要です。

   後継者の「資質」に関して考えてみると、「実務力」「提案力」「人気」などが必要と
   いえます。

  ■後継者選定の条件

   (1)経営に対する情熱やおう盛な事業欲があること

   (2)内外のストレスに耐えられるだけの体力や精神力があること

   (3)年上の幹部や部下など周囲とうまく調和がとれること

   (4)自社の行く先を見通す先見力があること
   
  ■後継者育成
   自分が社長として会社を成長させていく部分を経営人生の前半部分とすれば、経営人生
   の後半部分とは、安心して企業経営を任せることができる優秀な後継者を育成すること
   です。

   後継経営者の育成は経営課題と同様に、できるだけ早い時期から緻密かつ適切な計画
   性をもって成し遂げなければならない重要な責務である、という強い認識をもつことが大
   切です。

   しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の体制整備は不可能です。

  □後継経営者育成は早いほどよい

   後継者育成にあたっては、可能な限り早いうちに後継者を決定し、育成を始めることが
   大切です。

   早いうちに後継者を決めておくと、

    ・後継者として指名された人物に自覚が生まれ、行動の変革をもたらすこと
      ができる

    ・従業員に、後継者に対する統一した見解をもたせることができる

    ・実際の後継者教育を早くから始めることができる

    ・相続対策を早くから始めることができる

   などのメリットが生じます。

   一方、後継者を決めるのが退陣直前になった場合、後継者に経営者としての十分な心
   構えができていない、経営に必要とされる知識が身についていない、古参社員からの賛
   同を得られない、という状況が生じかねません。

   また、後継者不在のままで、経営者に不測の事態が発生した場合には、重要な意思決
   定が滞り、会社存続の危機に直面する可能性もあります。

  □後継経営者に必要な資質

   経営者の役割は、「会社の将来的なビジョンを描き、適切な戦略を策定し、戦略実行の
   ために組織を効率的に動かすこと」にあります。

   そのために備えていなければならない能力として

   1.洞察力・先見性

     洞察力・先見性は、自社の現状や経済動
     向、市場動向などを正確に把握し、自社が
     将来に向かって成長・存続していくための
     ビジョンや戦略を導き出す能力を指します。

     洞察力や先見性を身につけるためには、
     「経営全般に関する広範な知識」と「豊富な
     実務経験」が必要になります。

   2.統率力

     自社の将来ビジョンを実現するには、社長の
     努力だけでは困難です。

     そのため社長は、将来ビジョン実現に向け従業員の力を結集し、経営の方向
     性を示し、統率していく能力が必要になります。

     従業員が社長と心をひとつにして、将来ビジョン実現のためにモチべ−ション
     を高めるためには、給料アップや労働条件の改善などの物理的な条件だけで
     は不十分です。

     従業員との一体感を築くための「ビジョン実現への情熱」が必要になります。

     後継者がその役割を果たすための「洞察力・先見性」、「統率力」を高めていく
     ためには、

      ・経営全般に関する広範な知識

      ・豊富な実務経験

      ・ビジョン実現への情熱

     の3つの要素の習得が必要不可欠になるのです。

  □後継者育成のポイント

   1.経営全般に関する広範な知識を習得させる

     熱意と努力だけで会社経営を成功に導くことはできません。

     経営者として経営全般に関する広範な知識が必要になってきます。

     特に顧客ニーズが細分化し、かつ変化のスピードが増す現在では、マーケティング
     関する知識を習得することは不可欠となっています。

     また、経営全般に関する知識に加え、自社の属する業界に関する知識(市場
     動向、業界の仕組み、取引慣行、業界全体が抱えている問題点など)も必要
     になります。

     業界紙や専門書籍を読ませるなど後継者に勉強を促すほか、経営者が自分
     の感覚も含めて丁寧に説明することが求められるでしょう。

     上記のような経営知識、経営理論を体系立てて身につけようとする場合には、
     社内でのOJTなどの育成方法だけでは十分でないことがあります。

     その際に効率的に学ばせる手段として、外部機関の研修や勉強会を利用する
     ことが考えられます。

     外部研修では、経営についての体系的な知識を身につけることができます。

     但し研修の受講期間中、定期的に社長や直属の上司を交えて、

       学んだ知識を自社ではどういかせるのかを考えさせる場を設ける

     といった工夫が必要です。

     つまり、今どのようなことを学び、その知識は経営の現場でどのように応用で
     きるのかを後継者に報告させるのです。   

     そうすることで、現在の経営陣は後継者に実践的なアドバイスを行うきっかけ
     が得られます。

     また、後継者も、理論を実践にいかす方法について真剣に考えるようになり、
     その結果として生きた知識を習得することができます。

     さらに、外部研修のメリットとして、同じような立場の人と知り合えることもあげ
     られます。

     特に、「後継経営者養成講座」などの研修会では、受講者同士が切磋琢磨し
     あう雰囲気がつくられるので、強力な人脈を築くことができるでしょう。

   2.豊富な実務経験を積ませる

     後継者に実務経験を積ませるためには、自社で採用して行う方法と、一定期
     間他社に勤めさせる方法があります。

     (1)自社で経験を積ませる

       後継者を自社で育てる場合のおもな狙いは、

        ・早くから自社の経営全般にかかわらせ、その勘所を学ばせる

        ・従業員に次期経営者として認知させる

       点にあります。

       なかには我が子が中学生、高校生の頃から、アルバイトなどの形で自社の事業に
       触れさせ、徐々に後継者としての自覚をもたせたり、従業員の間に馴染ませよう
       としたりする経営者もいるようです。  

       後継者は否が応にも社内の注目を集めます。

       そこで、

        次期経営者としての能力を社内に認めさせるために、
        後継者が実力を発揮し、実績を上げられるようなポストに就ける
        思慮も必要

       となります。

       特に、実子が後継者である場合、現社長との間に親子の甘えを生じさせな
        いようにすることが大切です。

       多少の失敗には目をつぶる覚悟で、あえて困難な職務を与えたり、子会社
       の社長や独立採算部門の長などに就けるなど、ひとつの独立した組織を
       任せたりすることも有効でしょう。

       自分で全責任を負って判断しなければならない、という立場を経験させ、社
       長としての能力を磨かせるのです。

       本人にとって貴重な経験になるだけではなく、実際の業績を積み上げるこ
       とで、周囲からの信頼向上にもつながります。

       ◎社内で経験させるべき業務例

         ・子会社の社長業務

         ・現業部門の部門長業務(複数部門を経験させる)

         ・経理部門の部門長業務、決算書作成などの陣頭指揮

         ・新規事業の立ち上げと推進(不幸にして失敗した場合は撤退処理
          までやらせる)

         ・外部からのクレーム対応 

         ・従業員からの相談対応

         ・各種経営計画策定の陣頭指揮

         ・社内会議体系の整備と運営

         ・主要取引先との交渉

     (2)他社に勤務させる

       特に社会人経験のない実子を将来的に後継者として指名する場合には、現経営
       者の威光がまったく利かない他社で一定期間修行を積ませることで、精神的な
       タフさを鍛えることも有効でしょう。

       最初から自社に入社させて教育する場合に比べて、目が届きにくいというデ
       メリットもありますが、社会人のスタート段階であえて「他人の飯を食わせる」
       ことは本人にとって貴重な経験になるはずです。

       また、他社に一定期間勤務することで、

        ・自社ではつくれないような外部の人脈がつくれる

        ・異なった分野の体験を通じて見識が広まる

       といったメリットもあります。

       他社に勤務させる場合の留意点は、後継者がそこで何を学び、どのような
       人間になりたいのかをはっきりと認識させることです。

       他社で勤務する以上、その会社の業績に貢献することは絶対条件です。

       そのうえで、他社での経験を通じて自分が後継者としてふさわしい人間に
       成長しているかどうかをつ叫こ自問し、不足点があれば自分から苦労を
       買って出るという姿勢が求められるでしょう。

  □ビジョン実現への情熱を喚起する

   (1)経営にかける情熱を現経営者自身が語る(伝える)

     後継者に現在の事業に対する使命感を身につけさせるためには、現経営者自身が、
     その事業にかける思い入れや使命感、あるいは将来の夢を直接語りかける方法がも
     っとも効果的です。

     その際、伝えるべき内容としては、

      ・自社を将来どのような企業に成長させたいかという明確なビジョン

      ・後継者に対する信頼感

      ・事業の面白さや自社を大切にしてほしいという思い入れ

     などがあげられます。

     従業員や得意先、株主に対して、ひいては社会全体に対して、確固たる使命
     感や情熱をもって経営に取り組める人物で
     なければ、トップとして自社を存続・発展させる
     重責に耐えることはできません。

   (2)経営理念を十分に理解させる

     後継者には自社の経営理念を確実に理
     解させる必要があります。

     経営理念は「自分たちはこうありたい」、
     「社会に対してこのような貢献をしたい」と
     いった会社の存続意義を示すものであ
     り、この認識に現経営者と後継者の間に
     少しでもズレがあると、事業承継後に会社
     が現経営者の意図しない方向に進んでし
     まう可能性が高くなります。

     経営理念にはそれを策定した現社長の信条、
     人生観などが色濃く反映されている。

     特に「創業の経緯、当時の時代背景」、「事業や従業員に対する社長の思い」、
     「これまで直面した危機とそれを乗り越えられた理由」、「理念実現のために自分が
     日頃から気をつけていたこと」などについては詳しく説明すべきでしょう。

     さらに経営理念はひとつの考え方として理解してもらうだけではなく、後継者にそれ
     を事業運営における唯一無二の価値基準として実践してもらう必要があります。

     育成期間中には後継者に経営理念に基づく判断をさせる機会を多く設けるこ
     とが重要です。

     後継者が経営理念を十分に理解し、現経営者の使命感や情熱を共有するよう
     になると、後継者のものの見方は大きく変わってきます。

     具体的には、それまで管理者の視点で捉えていた事象を、経営者と同じ視点
     で捉えることができるようになります。

     そして、経営者の価値観や理念を繰り返し後継者に伝えることで、後継者が
     育っていくでしょう。

   後継者の経営能力の向上や幹部の刷新には、中期(5年)的な年数がかかる   
   といっていいでしょう。

   現経営者は、自身の健康、気力の良好なうちに、後継者の育成と体制づくりに着
   手すべきです。

   そして、現経営者は後継者の育成にめどが立ったら、後継者と事業承継の時期をいち
   早く社内に告知しましょう。

   告知後、退職する幹部社員が出てくる可能性なども考慮し、告知の時期は事業承継の
   2年ほど前に行ったほうがよいと考えられます。

   その後、現経営者は引き続き社内体制の整備を行うとともに、基本的に後継者に任せる
   姿勢で、後継者の経営者としての自覚を十分に養いましょう。

   そして、可能な限り業績が順調な時期に事業承継を行うことです。
      
  □遺言書を書く

   相続が「争続」と言われるように、昨今の相続にトラブルの多発があり、それは今後も一
   層増加が予想されます。

   法律も社会の実情を考慮して手直しされ、例えば生命保険の受取人を遺言書で変更
   することが出来るようになったりもしています。

   遺言は必ずしも資産家だけの問題ではありません。

     しかし、「自分が死んだときの話なんて縁起でもない!」という人はまだまだ多いよう
   です。

   遺言書の内容は原則、民法で定められた法定相続よりも優先されるのです。

   法定相続分と異なる相続を行いたい場合、その旨を記した遺言書を残しておく必要が
   あります。

   ただし、遺留分(法律上、相続人に保証されている最低限度の持ち分)への配慮は
   欠かさないよう、遺留分を念頭に作成するのが基本となります。

   遺言書は、自分で書いてどこかへしまっておくというのでもかまいません。

   ただし、すべて自筆で書いてあること(ワープロ、パソコン、代筆は不可)、日付と署
   名・捺印があること、などの条件を満たさないと、法律上有効な遺言にはなりません。

   また、法的に有効でも、誰かが隠したり、改ざんしたりする可能性は残ります。

   遺言の作成方法には、

    ・自筆証書遺言

    ・秘密証書遺言

    ・公正証書遺言

   の、3種類があります。

   自筆証書遺言は作成が簡単で、作成そのものを秘密にできますが 紛失・改ざんの恐れ
   があります。

   秘密証書遺言は遺言の内容秘密にでき、改ざんの恐れはありませんが、家裁の検認が
   必要で無効になる恐れがあります。

   公正証書遺言は紛失・改ざんの恐れがなく、家裁の検認が不要、遺言内容を争われ
   たり無効とされたりすることが少ないですが、費用がかかり、手続きが面倒で、内容を
   秘密にできません。

   それぞれ、メリット、デメリットがありますが、中でも公正証書遺言にするのがおすすめ
   です。
 
   公正証書遺言は法律的に効力があり、これを作成するには証人2人とともに公証役場へ
   行って、公証人の前で遺言の内容を口述し、それを書き取ってもらいます。

   遺言の原本は公証役場に保管され、本人はその控えを受け取ります。

   3〜5万円の手数料がかかりますが、作成した公正証書遺言はあとで取り消したり、
   内容を変更することも可能です。

   個人に限らず、国内の9割以上を占める中小企業のオーナー経営者にとって、相続問
   題だけではなく、事業承継問題も発生してきます。

   これら数々の問題が起因し、「相続」が「争続」にならないようにするためにも、元気
   (会社が健全)なときに対策を講じるべきです。

   人生で逃れられないことに「死」と「税金」があるといわれていますが、逃れられない
   死が訪れてからでは相続対策は講じられません。

   しかし、「人はコトが起きないと行動しない」ことも事実のようです。

                           組織力強化マニュアルについてはこちら
   
                           お問合せ・ご質問はこちら 
                                    

                           メルマガ登録(無料)はこちらから 
   

 

MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継

          

MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継

  ■事業承継問題の深刻化

   高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社長も今では高齢に達しています。

   帝国データバンクの「全国社長分析」によると、社長の平均年齢は上昇を続けて
   おり、2001年には57歳9カ月でしたが、2019年には59歳7カ月となっています。

   また、2016年の社長交代率は3.97%となり、4年連続で前年を上回った。

   しかし事業承継の時期を迎えている企業が増加しているにもかかわらず、交代が
   なかなか進んでいない状況がうかがえます。

   事業承継を検討する際には、後継者が決定しているかどうかにより、進め方は大
   きく異なります。

   従業員が安心して働ける環境を残し、会社をさらに発墟させるためには、早期に
   最適な後継者を選択し、事業を引き継ぐ準備を始めたいものです。

  □マネジメントバイアウト

   近年、MBOとかマネジメントバイアウト、という言葉をよく聞きます。

   マネジメントバイアウト(Management Buy−Out:以下、MBO)とは、少数株主
   である経営陣が株主から自社の株式を買い取り、企業の経営支配権を得ること
   で、文字通りオーナー経営者として独立することです。

   一般的には、次の3つの目的から発生するものと考えられます。

   1.グループ企業からの離脱

    具体的には、グループ企業において、ある周辺事業の内容がグループ全体の
    事業戦略に適合しなくなったときに、当該事業(子会社や部門など)を経営陣に
    売却し、独立して経営させる際などに用いられます。

    少し古い例ですが、有名な事例として、日産の元社長兼最高経営責任者である
    カルロス・ゴーン氏が日産の再建に着手した当時、本業に経営資源を集中させ
    るため、「1400のグループ会社は4社を除きすべて売却」という方針を出し、複
    数の会社のMBOを実行しました。

    当時財務体質が弱っていた日産にとっては、経営資源を注入するべき対象でな
    いノンコア子会社株式を現金化し、それを本業に投入することができるというメ
    リットがあり、当該子会社の経営陣にとっては、日産という大企業の傘から外れ
    てオーナー経営者になることができるというメリットがありました。

   2.事業承継問題の解決

    最近では後継者難を訴えるオーナー会社の社長が増えており、事業存続手段
    としてもMBOは注目を集めています。

    親族ではないが経営陣のなかに後継者の候補がいる場合などにMBOを使って
    後継者に経営権を移すのです。

    前述のとおり、MBOには、株式取得費用として多額の資金が必要になります。

    通常は個人ではそのような多額の資金を準備できませんが、銀行やバイアウト
    ファンドなどの協力を得ることで可能になります。

    MBOを活用することにより、

     会社の存続と従業員の生活が保証されるうえ、オーナーの利益が確保される

    ことになり、オーナーも安心して事業から退くことができるのです。

   3.上場会社の非上場化

    最近増えているのが、上場企業の企業経営陣がMBOによりいったん株式を買
    収し、非上場化して株主を気にせずに大胆な事業再建を行うケースです。

    業績が改善した後には、再び上場をめざすことができます。

    なかには、上場維持コストの負担やディスクロージャー規制の強化を嫌って、非
    上場化するケースもあります。

    上場会社の非上場化のおもな例としては、すかいらーく、ワールド、キューサ イ、
    ポッカ、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、幻冬舎などがあります。

  □事業承継にMBOを活用するメリット

   日本は高度経済成長の時代から、多くの中堅・中小企業によって支えられてきた
   中小企業大国です。

   起業当初は町の小さな工場であった企業が世界に名だたるホンダやソニーといっ
   た企業に成長しました。

   これらの企業の陰には、優れた技術や特異な市場で活躍する多くの中堅・中小
   企業の存在があり、こうした企業が業界や地域経済を支えています。

   しかし、長引く景気低迷や技術力の高い団塊世代の大量退職などにより、中堅・
   中小企業の経営の舵取りは容易ではなく、そうした時代に立ち向かう優れた後継
   者を見つけるのは、大変困難な状況となっています。

   中堅・中小企業の場合、かつては息子を中心とする親族が事業を引き継ぐのが
   一般的でした。

   しかし、現在では、後継者の能力や意思などの理由で親族に承継できないケース
   も増えています。

   幹部社員や外部から後継者を探す方法もありますが、このケースでは、過去の業
   績が好調で企業価値が高い場合、後継者が株式を買い取るだけの資金力がな
   いことが問題となります。

   つまり、厳しい経常環境を乗り切るような事業の舵取りを任せられる人物を見つ
   け出し、かつ相続に伴う資金的な問題を解決しなければ、事業承継はできないのです。

   そのようななか、注目を集めている事業承継のための手法がMBOなのです。

   1.MBO活用のメリット

    (1)新経営陣の手持ち資金が少なくても事業承継できる

      通常、新経営陣にはオーナーから株式を買うだけの資金力がありません
      が、MBOでは銀行やバイアウトファンドなどの協力を得ることで買取資金を
      確保することができます。

    (2)未公開株式の現金化(相続税納税財源の確保)

      オーナー自身に万一のことがあった場合、オーナー保有の自社未公開株式
      には、多額の相続税が課税されます。

      未公開株式は換金性が極めて低いにもかかわらず、相続人は原則として相
      続税を現金で納めなければなりません。

      オーナーがあらかじめ未公開株式を現金化しておくことにより、相続人は相
      続した現金によって相続税を納税することができます。

      なお、一定の要件下では、相続税を株式で物納することもできますが、その
      株式が好ましくない相手に売却された場合は、経営に悪影響を及ぼすことに
      なります。

      このような株式分散リスクを回避するためにも納税資金を確保しておくことが
      重要です。

    (3)会社の信用の維持

      MBOは、これまでの経営方針や事業内容について知り尽くしている経営陣
      に会社を引き継ぐ方法です。

      したがって、今までの取引先や取引金融機関にとって、会社や経営陣に対
      する信用が何ら変わることなく今後も安心して取引を継続することができます。

      つまり、会社の信用そのものを新経営陣に引き継ぐことができるのです。

    (4)雇用の安定

      ほかのM&Aの手法と違い、外部から新しい経営陣が入ってくるわけではな
      いので、これまでどおり経営陣と従業員が継続して働ける場を提供しやすく
      なります。

      したがって、オーナーが退いたことに対する従業員の動揺を最小限に抑える
      ことができます。

    (5)インセンティブの提供

      これまで育ててきた幹部社員たちに経営権を渡すことは、昔ながらののれん
      分け同様、会社に対する貢献への報酬の役割も果たします。

      また、抹式公開を果たすことができれば、新経営陣はキャピタルゲインを獲
      得し、資産を形成することも可能になります。

    (6)独立意識の醸成

      オーナーが第一線で活躍している間は、経営陣や従業員はオーナーへの依
      存心を払拭することができないものです。

      経営陣が自立して経営を行うことで、経営陣や従業員の独立意識を醸成し、
      組織的経営を強化することができます。

   2.MBO活用の注意点

    (1)債務の圧縮

      日本では、未上場企業が借り入れを行う場合は、オーナーの経営力を評価
      して融資を行うため、オーナーに個人保証を求めるのが一般的です。

      しかし、経営陣にとっては個人保証の負担は大きなハードルになります。

      引き継ぎを行う際には、これまでの資産の整理を行うなど、債務の圧縮によ
      る財務体質の改善が課題になります。

    (2)株式買い取り資金の確保

      資金力のない経営陣がオーナーから株式を買い取るため、資金の調達が課
      題になります。

      資金は銀行融資やベンチャーキャピタル、バイアウトファンドからの出資で賄
      うことが一般的ですが、地域によっては事業承継のための制度融資が準備
      されていることがあります。

      詳しくは都道府県の経営相談窓口にお問い合わせください。

    (3)株価の算定

      株式の売却価格については、最終的には話し合いにより決定します。

      ただし、話し合いの基準となる株価については、事前に算定しておくことになります。

      株価算定の方法については、帳簿上の資産を基に時価を評価する時価純  
      資産価額方式や事業内容が類似している業種の上場企業の株価を基に算
      定する類似業種比準価額方式、将来の企業価値を基に算定するDCF法
      (ディスカウント・キャッシュフロー法)などがあります。

      税理士や公認会計士など専門家に相談しながら自社の価値を確認しましょう。

    (4)個人と会社との取引の解消

      中堅・中小企業の場合、経営上のさまざまな理由からオーナー個人と会社と
      の間で取引が行われていたケースが多くあります。

      事業を引き継ぐまでにすべての不明瞭な取引を整理しておくことが大切です。

                                     お問合せ・ご質問はこちら  

                                 メルマガ登録(無料)はこちらから

 

事業承継は今から始まる

             

事業承継は今から始まる

  経済産業省によると、この20年で中小企業の経営者の年齢分布は47歳から66
  歳へ高齢化。

  2020年ごろには数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となる。「中小企
  業の競争力の源泉は『社長』自身であることが多く、創業者はなおさら。

  引き継ぐのは簡単ではない」(大手銀行幹部)。

  少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多い。

  経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の3分の1
  にあたる127万社に達する。

  事業が続けられず廃業する企業の半分は黒字とされ、25年ごろまでに650万人
  分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある。

                               出典:朝日新聞デジタル

  ■事業承継の準備不足

   企業は、経営環境の急激な変化に対応しきれず業績が悪化した場合、倒産や清
   算という事態に直面することもあります。

   しかし、現在、業績の良い会社であったとしても、後継者がいなかったり、選定さ
   れた後継者がその役割を果たせなかったりすれば、会社は倒産の危機に瀕する
   可能性が高くなります。

   このように事業承継問題への取り組みは、ゴーイング・コンサーン(継続事業体)
   として会社の存続を考える場合、最大の経営課題の1つといえます。

   戦後72年を経過し、一代で会社を興し築いてきた創業者もすでに世代交代の時
   期を迎えています。

   そして、どのように後継者へ事業をバトンタッチするかを多くの会社が考えはじめ
   ています。

   日本の会社の大半は中小企業であり、しかもその大部分が「経営=社長の個性・
   体力」のオーナー型企業であることからも、社長交代の時期とその内容は、その
   まま自社の命運を左右することになります。

   このように、社長の交代つまり事業承継の問題は、これらの会社にとって自社が
   永続的に繁栄を続けていくうえで最大の経営課題であるともいえます。

   現社長がこの間題について甘く考え、十分な準備なしに事業承継を行うと、たとえ
   現在業績が好調であるとしても、一気に企業存亡の危機へと発展しかねません。

   たとえば、事業承継への準備不足は、次のような危機を引き起こす可能性があり
   ます。

    ・後継者が確定していないことから、廃業に追い込まれてしまう

    ・後継者育成を怠り、二代目で会社を沸すことになってしまう

    ・後半者をめぐる争いが起こり、結果的に会社が衰退してしまう

    ・後継者と古参幹部との軌轢により、新体制での事業運営が
     スムーズにいかなくなってしまう

    ・相続時に自社株が分散し、新社長の経営支配権が事体化してしまう

    ・不適切な相続税対策で、企業そのものの財務体算が弱体化してしまう

   自社の現状を点検してみたとき、こうした問題が生じる懸念はないでしょうか。

   もし、事業承継対策が十分でないとしたら、自社にとって大きな脅威を抱えている
   ことになります。

   しかし、懸念されるこれらの問題に早くから手を打ち、事業承継対策に取り組むこ
   とにより、未来にわたる会社の存続を確かなものとすることができます。

   さらに、事業承継に成功することで会社は新たな革新を遂げ、先代社長の興した
   事業が二代目で花開き、大きく成長することも十分可能となります。

  □事業承継とは(対策の2本柱)

   事業承継とは、企業のヒト・モノ・カネという経営資源を三位一体で受け継ぎ、事
   業の継続性を維持していく活動であると定義できます。

   事業承継というと相続と混同してしまいがちですが、以下の表に示すとおり、その  
   内容は本質的に大きく異なります。

   この違いを理解することが、事業承継対策の第一歩となります。

   こうした事業承継と相続との相違点をまとめると、

    事業承継の本質は、

    生前に現社長の意思により中長期的な経営計画のなかで
    次期社長としてふさわしい人物を選出して教育し、
    債権者、従業員、取引先などにも認知させて、
    事業(経営権)を上手にバトンタッチすることである

   といえます。

   それでは、事業承継は具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。

   大別すると

    ・後継者対策:事業の後継者をいかに選び、育成していくか

    ・自社株対策:承継後、後継者の経営権をバランスよく確保していく
     ために、いかに後継者に自社株をロスなくスムーズに承継していくか

   の2つの柱に分けることができます。

   そして、

    事業承継の2本柱(後継者対策、自社株対策)を、中長期的観点で
    早いうちから計画し、それぞれの対策を同時に講じていく

   ことが重要です。

  □事業を引き継ぐ(後継者対策)

   事業承継対策で最も重要かつ難しい問題が、後継者を誰にし、いつ、どのように 
   事業を承継していくかということです。

   ここでは、後継者選定から育成、承継時における社内体制の確立など、一般的に
   必要と思われる後継者対策の一連のプロセスを段階的に記述していきます。

   1.誰を後継者に選ぶか

     世代交代期にある中小企業の経営者の多くは、後継者を選定するにあたって
     対象を自分の息子あるいは娘婿と考えているようです。

     しかし、企業経営が高度化している現在、これら候補者が経営者としてふさわ
     しいかどうかをよく見極めていくことが必要です。

     基本的には、自社の置かれている現状を考慮しながら、
      (1)自社にとって、後継者に必要な資質を明確にし、

      (2)長男などの身内に近いものから検討して選定する

     ことが目安になります。

     (1)後継者に求められる資質

       後継者にはどのような資質が求められるのでしょうか。

       一般的なものとしては、次の4つをあげることができます。
        ・経営に対する情熱、事業意欲があること
        ・トップとしてプレッシャーやストレスに屈しない肉体と、
         バランスのとれた心理状態を保てること
        ・周囲との調和がとれ、かつリーダーシップを発揮できること
        ・将来への経営ビジョンを持ち、しかも当面の路線承継ができること

     (2)後継者の選定

       では、後継者として具体的に誰を選べばよいのでしょうか。

       やはり、まず第一に優秀な息子に目をつけることです。

       現社長が自分の息子に後を継がせたいと思うのは自然な心理であり、関
       係者にも十分納得してもらえるはずです。

       したがって、息子に後を継がせたいという想いが強いならば、早い時期から
       の育成を考え実行することです。

       しかし、なんらかの事情で息子以外の後継者を選ぶ場合には、
        ・娘婿や自分の兄弟といった身内から後継者を選ぶ

        ・実力ある生え抜き従業員を後継者にする

        ・ヘッドハンティングなどで外部から後継者を擁立する

       といった方法も考えていかなければなりません。

       いずれにせよ、後継者としての資質を十分に見極めることが最も重要です。

   2.後継者をいかに育てるか
     後継者選びが済んだら、それで終わりというわけではありません。

     実際に会社のトップに座り、社長として十分に力を発揮できるようになるため 
     の教育が必要です。

     その方法として、次のようなことが考えられます。

     (1)自分の会社でじっくり育成する

     (2)他の会社で修業させる

       ・同業他社へ就職させ業界内での経験・知識を修得させる

       ・関連異業種で視野を広げるような経験・知識を修得させる

     (3)教育機関や勉強会を利用する

       ・海外ビジネススクールに留学させ国際感覚と経営学を修得させる

       ・国内経営塾に参加させ経営の理論と実践を修得させる

       ・異業種交流会などの勉強会で人脈と見識を養わせる

     いずれの方法にも、メリット・デメリットがあります。

     これから後継者に身につけてもらいたい能力を明確にしたうえで、その方法を
     検討していくことが望まれます。

     そして、期限を切って、1つずつ経営者としての資質を醸成させていきましょう。

   3.承継直前に社長が行うこと

     後継者の選定および育成と進んでいくと、最後の段階でいかにスムーズに経
     営を引き継いでいくかが大切になってきます。

     そのために社長が事業承継間近に行うことは、(1)新体制での運営を意識し
     た組織づくりと整備に着手することと、(2)順次、社長自身による実務の引き
     継ぎを行っていくことです。

     (1)社内体制の整備をする

       社内体制の整備は、事業承継を円滑に行うために重要なことです。

       たとえば、以下の項目などが検討対象となってくると考えられます。

       <社内体制の整備項目>              <実施項目>

        後継者の補佐(右腕)の選定      →社内スタッフの育成

        古参幹部、役員の処遇検討       →新取締役の就任、退職

        ワンマン経営から組織経営への脱皮 →新しい組織づくり

        経理面での健全化          →資産資金の公私混同のない整理
  
     (2)社長交代を実質的に進めていく(実務の引き継ぎ)

       事業承継の最終ステップとして社長自ら、

        ・社長交代の時期を設定する

        ・社内に根回しをしていく(社内の雰囲気づくり)

        ・金融機関をはじめ取引先へ信用を伝授していく

       といったことに取り組み、後継者へとバトンタッチします。

   4.承継直前に後継者自身が行うこと

     後継者自身が来るべき日のために、社長としての実践向きの知識と実務を修
     得していく必要があることは、いうまでもありません。

     それ以外に、この修業時期に行っておくべき大切なことがあります。

     それは、

      ・学ぶ姿勢で接することで生え抜き幹部との協調ある人間関係を築いておく

      ・部下の前で社長の威を借りず、率先して仕事に取り組み成果を示す

     といったことを実行し、社内での信頼感を勝ち得ていくことです。

     この時期に「ナンバー2」としての仕事を着実に行うことは、将来事業を継いだ
     際、協調体制のなかで新社長としての手腕を発揮するために不可欠です。

   5.後継者がみつからない場合(M&Aの活用)

     しっかりとした後継者を立てて、事業承継をスムーズに行うことが理想であるこ
     とはいうまでもありません。

     しかし、「息子がいない」あるいは「息子はいるが後を継ぐ気がない」という場合
     には、M&A(企業の買収・合併)の活用も有効な事業承継対策のひとつとして
     考えられます。

     M&Aは大別すると、会社が吸収されて消滅する合併と、各々の経営資産や
     営業権等を売却する営業譲渡、そして株式譲渡に分けられます。

     確かに、様々な困難を乗り越え長い年月をかけて育てあげた会社を手放すこ 
     とは、社長にとって非常につらいことです。

     しかし、ゴーイング・コンサーンとしての社会的責任を果たし、従業員の雇用や
     地域経済の発展を担うためにも、M&Aの活用は有効に機能することになります。

     また、自分のつくった会社がたとえ社名が変わったとしても、世に残ることにか
     わりはありません。

     そのほか、将来における相続税発生時のために、納税資金を確保しておくと
     いった一面を担う手段としても活用することができます。

     いずれにせよ、M&Aは非常に複雑な制度のため、弁護士や経営コンサルタ
     ント、公認会計士など専門家とよく相談して進めることが肝要です。

  □上手に経営権を移行する(自社株対策)

   事業承継のもう1つのポイントは、いかに資産ロスを少なく承継するかということで
   あり、その主なものが自社株対策です。

   自社株対策では、社長が現有する自社株を後継者に無駄なく有利に譲ることで、
   承継後も後継者による経営支配権を確保しようとします。

   これを怠ると、突然相続が発生したときに前社長が保有していた自社株が複数の
   人に分割され、承継後における新社長の経営舵取りが困難になる恐れが生じます。

   自社株をスムーズに引き継ぐ方策としては、

    (1)生前贈与により株式を後継者に移しておく

    (2)遺言状で、自社株を後継者にすべて相続させるように指定しておく

   といったことがあげられます。

   (2)の遺言状については、自社株の多くが非公開であることを考えると、相続税
   対策の観点から不利になることが予想されます。

   その理由として、

    ・非公開株式の評価は一般的にいって、考えていた評価額より高くなる
     傾向がある

    ・原則、換金性に乏しいため、相続税の納付に支障が生じる恐れがある

    ・非公開株式による物納が原則的に認められにくい

   こうしたことから、自社株対策では上記(1)による自社株の生前贈与を優先し、検
   討していくべきかと思われます。

   これには次に示す2つのアプローチ方法があります。

   1.長期的視点でのゆとりある生前贈与

     自社株対策は、長期的な視野で余裕をもって臨むことが肝要です。

     その場合、
      自社株を毎年少しずつ生前贈与の形で移行していく
     ことが最も基本的で、かつ安全なやり方です。

     後継者に贈与をすれば、もちろん贈与税がかります。

     相続税と贈与税の損得比較を考えてみると、両者ともに累進税率をとってお
     り、譲り受ける金額が高額になるほど税率が高くなります。

     そのため、長期にわたって計画的に生前贈与を行うことで1回の贈与額を減ら
     し、適用される税率を引き下げることで、バトンタッチ全体でみた場合の税率を
     低くすることができます。

   2.短期的視点で株式の評価額を下げる

     株式を贈与する直前においては、
      自社株の評価額を意図的に引き下げ、税金上、有利に株式を移行していく
     ことが基本になります。

     これは、自社株の評価額が低ければ低いほど、当然、そのときに移行する評
     価額が小さいものになるからです。

     実際の評価方法は、

      (1)類似業種比準備額方式 ……原則として大企業で通用

      (2)純資産価額方式    ……原則として中小企業で適用

      (3)(1)と(2)の併用方式 ……原則として中堅企業で適用

     があります。

     それぞれの評価概要と評価引き下げの具体策は次の通りです。

     (1)類似業種比準価額方式

       <方式概要> :評価会社に事業内容が類似する複数の上場会社
                  からなる類似業種の平均株価、配当金額、純資産
                  価額に比準して評価する方法です。

       <引き下げ策>:退職金支払いの増額、配当金の引き下げ、役員
                  報酬の額、会社分割による利益の分散が考えられ
                  ます。

     (2)純資産価額方式

       <方式概要> :仮に会社を解散したときの手取金がいくらになるかと
                  いう発想に基づき評価を行う方式です。
                  課税時期における各資産の合計価額から、各負債の
                  合計価額等を控除した金額を、発行済株式数で除して
                  求めた金額により評価します。

       <引き下げ策>:評価通達の各資産・負債の評価方法に着目した資産
                  の最小化・負債の最大化を検討します。
                  たとえば、不動産の購入、配当金の増額、役員賞与の
                  高額支給などが考えられます。

     以上のように、自社株対策は、これら2つの対策を上手に組み合わせていくこ
     とが大切です。

     つまり、

      長期的スパンのなかで、生前贈与により株式を少しずつ後継者に
      移行きせ、多くの株式を譲渡するときには短期的に自社株の評価
      額を引き下げ、有利に株式移行を行う

     ことを検討します。

  □中小企業の廃業が急増している  

   赤字による廃業もあるが、近年の廃業理由の5割が経常黒字なのに廃業。

   その理由として、人口減による後継者難で休廃業に追い込まれる会社が増え
   ていることです。

   後継者が不在のために、廃業を選択するしかない中小企業が増加しています。

   政府は今後10年に限定した対策を発表しました。

   承継する非上場株式のすべてについて相続税を猶予し、事業を継続する限り
   支払わなくてよい。

   それ以外にも、事業承継を円滑に進めるため今後10年間を集中対応期間とし
   た、緊急対応策を打ち出しました。

   たとえば、
    税制の適用入り口要件を緩和

     【現行制度】

      ・納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限があり、相続税の
       猶予割合は80%。
       後継者は事業承継時に多額の贈与税・相続税を納付することがある。

     【改正案】

      ・対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。
       また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担を
       ゼロに。

    詳細は

    平成30年度 事業承継税制の改正(中小企業庁)

  □事業承継を上手に進めるために

   これまで、事業承継に必要な内容や手順を概観してきました。

   それでは、事業承継対策は実際にどのように進めていけばよいのでしょうか。

   基本的には、自社における現状の問題点を明確にし、全社的経営戦略のなかに
   事業承継計画を盛り込んでいく必要があります。

   1.現状を把握する

     まず、社長が自社の事業承継(事業と財産)に関する現在の全体像を把握し
     ます。

     たとえば、次にあげるようなチェックポイントで現状を分析してみるのも一案です。

     <事業承継のチェックポイント>

      ・経営者としての資質を備えた後継者が決まっているか

      ・後継者の育成を計画的に進めているか

      ・経営の引き継ぎ時期や方法は具体化されているか

      ・節税対策は検討しているか

      ・株式の後継者への移行は考えているか

      ・株式の分散と支配権の確保は検討しているか

      ・遺言状による後継者への株式移行は考えているか

      ・相続税における納税資金の確保は万全か

   2.現状における問題点を明確にする

     現状を分析したら、いくつかあがった問題点から解決すべき問題の優先順位
     やそれぞれの因果関係を明らかにします。

     こうして、特に注力すべき問題の本質を明確にします。

   3.事業承継計画をつくる

     解決すべき問題の本質が明らかになったら、それを自社の経営戦略のなかに
     事業承継計画として盛り込んでいく必要があります。

     社長のビジョンや事業におけるあるべき姿を示し、中長期的計画のなかで具
     現化していきます。

     その計画には、次のことを盛り込むとよいでしょう。

      ・後継者および企業人材の育成計画

      ・事業における将来像と成長計画

      ・自社株の所有配分による経営支配権のバランス計画
 
   4.計画を実行し随時見直しを行う

     中長期計画をさらに短期計画に落とし込み、随時軌道修正を行いながら実行
     していきます。

     今後、税制改正なども予想されることから、その都度柔軟な見直しも求められ
     ます。

                             お問合せ・ご質問はこちら 
                                    

                             メルマガ登録(無料)はこちらから


 

M&Aを活用した事業承継

         

M&Aを活用した事業承継

  ■多様化する事業承継のかたち

   1.多くの企業で後継者が決まっていない

     高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社長が高齢に達している一方
     で、承継候補者は不足しています。

     現社長が引退する時期までに適切な後継者がみつからなければ、やむを得
     ず廃業や清算も検討せざるを得なくなります。

     これは現社長だけの問題ではなく、従業員にとっても職を失うことを意味し、さ
     らには取引先や地域社会などに対して悪影響を与えることになります。

     最近では、親族間での承継以外の道として、社内の役員や従業員を後継者に
     選定したり、社外から後継者人材を招き入れて事業を継続する親族外承継が
     増加しています。

     また、身近に承継候補者がいない場合であっても、M&A(Merger and  
     Acquisition:企業の合併および買収)を活用して、会社そのものを譲り渡して
     経営を継続する方法を採用するケースが中小企業においても目立つようにな
     りました。

     2007(平成19)年に(独)中小企業基盤整備機構が実施した
     「事業承継に係る親族外承継に関するアンケート調査」の結果によると、約8
     割の中小企業が事業承継を希望しているにもかかわらず、「後継者が決まっ
     ている」のはわずか15.8%でした。

     後継者が決定していない場合で、どのような事業承継を望んでいるかについ
     ては、「従業員・役員に承継するつもり」がもっとも多く5割弱でしたが、次いで
     「できれば会社を譲渡・売却したい」が「まだ承継について考えていない」ととも
     に2割弱と2位になりました。
   
   2.事業承継対策としてのM&A

     M&Aによる事業承継は、後継者がいない場合であっても、事業を継続するこ
     とができるうえ、売却利益を獲得して経営者の引退後の生活を支えることにも
     つながります。

     前述のアンケート調査では、経営者のM&Aに関する考えについても調査を
     行っています。

     その回答によると、7割以上がM&Aを事業承継上の有効な手段だと考えてい
     るものの、手法や手続きの理解や知識が乏しい、信頼できる相談相手や仲介
     機関がない、相手先企業の情報が少ない、分からないなどの問題を感じてい
     る人も多いようです。

     実際に、M&Aを実行した経営者の実態に関する調査では、回答数24社のう
     ち、63%の企業が「順調に業凄を伸ばしている」と回答し、「事業形態が変
     わった」、「業績が低迷している」などのマイナス面は、わずかでした。

     また、会社を譲渡した後、前社長が「従前の会社の会長、社長」として、従来ど
     おりの業務を行っているケースが38%、「従前の会社の非常勤役員、顧問」が
     21%と、M&Aで事業を引き継いだ後も、何らかの形で経営にかかわっている
     社長が約6割という結果でした。

     会社譲渡を決意したきっかけの1位は、「親族内外の後継者を探したがみつか
     らなかった」が67%であり、M&Aは後継候補者がみつからない場合の次の
     手として利用されていることが分かります。

     また、M&Aの候補先がみつかり、最終的にM&Aを決定する要因としてもっと
     も多いのは、「従業員の雇用の確保ができた」が83%でした。

     中小企業の社長が従業員の雇用に対して優先事項と捉え、従業員の雇用を
     確保し、従前の労働条件が維持されることが確信できたときにM&Aを決意し
     ているようです。

     この調査では、71%の経営者が「非常に満足」、「満足している」と回答しています。

     また、M&A後の業績推移について、「順調に伸張している」との回答が63%
     と高くなっています。

     これらの結果から、中小企業にとってもM&Aが効果的な手法であり、今後も
     M&Aが増加する可能性は高いことが予見できます。

  □M&Aを活用して事業を承継する

   1.中小企業にとってのM&Aのメリット

     M&Aの手法とは、第三者へ会社を譲渡する方法のことですが、この方法に
     は、株式譲渡、吸収合併、営業権譲渡など、さまざまな種類があります。

     特に中小企業の事業承継では、株式譲渡がもっとも用いられますが、その理
     由としては、

      ・売り手企業の株主個人に株式売却の対価が直接入るため、創業者
       利益を実現しやすい

      ・売り手企業は子会社として存続するため、社名や従業員雇用の継続
       が可能である

      ・企業文化などが承継されやすい

      ・買い手企業の子会社として十分に機能するまで、前社長が数年間、代表
       権のない取締役や顧問・相談役に就任して橋渡しを行うことができる

      ・売却事務手続きが簡便である

     といった理由があげられます。

     さらに当初から全株を譲渡するのではなく、一定の期間は33%超の株式を保
     有することにより、株主総会での重要な決議事項における拒否権を確保する
     など、経営への影響力を保つというやり方もあります。

     このように、株式譲渡の手法を上手に利用しながら、条件交渉を行うことで、
     自分の会社に対して強い思い入れがある場合でも、友好的に引き継ぐことが
     できます。

   2.M&Aの手続き

     すでに相手先が決まっている場合であっても、M&Aを手掛ける場合、法律や
     税務などの専門知識や条件交渉などのテクニックが必要になるため、M&Aを
     専門とする仲介機関や弁護士を通して交渉を行ったり、税理士、会計士など
     からアドバイスをもらって進めることが一般的です。

     相手先がみつからない場合にも、M&Aの仲介機関に依頼し、相手先を探して
     もらうことができます。

     最近では、金融機関でも紹介をするところが増えています。

     また、商工会議所や(独)中小企業基盤整備機構などの公的機関でも、アドバ
     イスを受けることができます。

     譲渡を検討する中堅・中小企業がM&A先をみつけようとしても、希望の条件
     に合うような企業をみつけるのは、簡単な作業ではありません。

     従業員の雇用継続や取引先との関係、売却価格など売り主に有利な条件で
     M&Aを進めるためには、十分な期間と準備が必要です。

     期間については、最低でも1年以上をめどに、時間をかけて相手先を探すこと
     を心掛けたほうがよいでしょう。

     たとえ候補先が現れても、交渉が進まず断念する可能性もあります。

     仲介機関も1社に限定せず、情報源を広く活用し、自社の企業価値を高める
     ための方策についても意見を求めるようにしましょう。

     売り手企業の精査(デューデリジェンス)では、財務諸表・事業計画・税務申告
     書などをもとに、売り手企業がもたらす将来収益や現在の資産価値を検討し
     て、買収価格を決定します。

     有利な価格で交渉をするためには、企業価値を向上させるための事前準備も
     大切です。

     万一、適切な会計処理が行われておらず、収益力が判断できないとみなされ
     たとき、買い手企業は、買収価格の減額を要求したり交渉の中断を要請する
     かもしれません。

     会計処理に問題がなくても、回収不能な債権があるとき、債務保証などの簿
     外債務があるとき、許認可などの取得・更新に不備があるとき、取引条件など
     が不明で事業の将来性に不安があるとき、なども同様に判断される可能性が
     あります。

     企業価値が正しく評価されるには、相応の準備が必要なのです。

     <自社の企業価値を高めるための取組>

      (1)業績の改善・伸長

      (2)不採算事業からの撤退

      (3)利益の向上

      (4)無駄な経費支出の削減

      (5)事業に不必要な在庫や固定資産の処分(貸借対照表を実態に
        合わせる)

      (6)債務の圧縮

      (7)事業計画に基づいた経営管理体制の構築

      (8)役職員への業務権限委譲

      (9)就業規則、労働契約、賃金規定など従業員の待遇の明文化

     (10)取引先との不利な取引条件の改善、取引条件の明文化

     (11)経営者の個人資産、経費の切り分け※

     (12)オーナー以外の株主の整理(オーナーへの株式の集約化)

      ※たとえば、経営者が自家用車として使用している車であるにも
       かかわらず、帳簿上は、社有車としている場合、自宅を社宅と
       している場合、個人的な理由で使用した経費、オーナーから
       会社への貸付もしくは借入など。

     上記のほか、企業には目に見えないさまざまな「財産」があります。 

     たとえば、企業のブランド価値やイメージ、優良顧客、優れた商品の供給先、
     金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、営業上のノウハウなどがこれ
     に該当します。

     このような強みを見極めて、育てていくことも事前準備として重要です。

  □MBOの可能性

   後継者として事業を引き継がせたい役員や経営幹部がいるにもかかわらず、資
   金的な問題から引き継ぐことを断念するケースもあります。

   サラリーマンである役員には、相応の規模・業績にある企業の株式を買い取るだ
   けの資力はないのが通常です。

   それを解決する手段として、MBO(Management Buy−Out)が注目を集めて
   います。

   MBOとは、会社の経営陣が、事業の継続を前提として、所有者から株式を取得し
   て経営権を取得し、オーナー経営者として独立するためのM&A手法のひとつ。

   MBOには株式取得費用として多額の資金が必要になります。

   株式の買い取り資金は、経営陣が持ち寄る資金のほか、会社自身の財産や会社
   の将来の収益を担保とした、金融機関からの融資や投資会社からの出資によっ
   て補うことも考えられます。

   優れた経営陣のノウハウと実績ある企業の価値を根拠とするならば、金融機関
   やベンチャーキャピタルなどから協力を得ることもそう難しいことではないのです。

   事業承継は社長に課された最後の責務です。

   親族などに円滑な承継ができればそれに越したことはないのですが、そうでない
   場合は、M&Aの活用も視野に入れたさまざまな施策をできるだけ早めに講じて
   いくことが大切です。

                             お問合せ・ご質問はこちら 
                                    

                             メルマガ登録(無料)はこちらから

 

後継社長の心構えとやるべきこと

          

後継社長の心構えとやるべきこと

  ■先代社長の経営理念を重視

   就任直後の後継社長がもつべき心構えとして、第一にあげられるのは、

    先代社長の経営理念を重視する

   必要があるということです。

   経営理念は経営の現場から生み出された英知であり、そこには経営におけるエッ
   センスが凝縮されています。

   それは、先代社長が長い年月をかけて育て上げてきたものであり、企業を特徴づ
   けるきわめて重要な要素です。

   したかって、後継社長は、先代社長が作り上げた経営理念を踏襲することを基本
   として社内の体制を整え、自社の進むべき方向性、つまり経営戦略を打ち出して
   いかなければなりません。

   多くの後継社長は、先代社長の経営理念を継承しつつ日々の経営活動を実践
   し、成功をおさめています。

   しかしその一方で、先代社長の経営理念をあまり考慮しない経営を行い、その結
   果衰退していく企業もあります。

   経営理念を継承するというのは、先代社長の経営に対する考え方をすべてその
   まま実践する、というものではありません。

   仮にその経営理念のみにとらわれた経営を進めていくのであれば、大きな成功に
   つなげることは難しいかもしれません。

   とくに、現在は企業を取り巻く環境変化のスピードが非常に速い時代です。

   旧態依然たる経営を続けていては、業界における優位な地位を確保することは
   困難です。

   そのようなことを考慮すると、

    先代社長の経営理念を踏襲しながら、
    独自の経営に関する見方を加え、
    より次元の高い経営理念を作り上げていく

   必要があるといえます。

  □堅実経営に撤する

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第二に、

    堅実な経営の実践が企業の確かな成長につながることを
    十分に認証しておかなければならない

   ことがあげられます。

   前項では、先代社長の経営理念を引き継ぐことの重要性を指輪しましたが、堅実
   な経営の実践は、その経営理念が形となって表れたものです。

   ここでいう堅実な経営とは、

    先代社長の考え方を守りながらも独自の戦略を打ち出し、
    本業部分を大切にしつつ、
    さらなる成長を目指して事業経営を進めていく

   ことです。

   後継社長に経営権が委譲されたばかりの頃は、経営が不安定な場合もあるよう
   です。

   そのようなときに、新しい経営指針を社内および社外に示し、新規事業分野に
   次々に参入したり、あるいは、急速に事業を拡大したりするケースも見受けられま
   す。

   しかし、こうした戦略が失敗に終わることも少なくありません。

   多くの企業倒産の事例を掘り下げてみていくと、その倒産要因のひとつに、堅実
   な経営に徹しきれなかった点があげられます。

   このように、堅実経営の実践は大切です。

   しかし、的確な事業拡大や多角化戦略は、会社の成長にとって必要不可欠なも
   のです。

   ですから、基本的な経営戦略を守りながら、それを土台に新たな取り組みを考え
   る姿勢が重要となります。

   それが有効な事業拡大、あるいは多角化戦略になることでしょう。

   「とにかく実力以上のことはせずに、確実に経営をしていくことが肝要である。
   それがわからずに失敗した」。

   これは、ある倒産企業の元社長の言葉ですが、堅実経営の重要性を再認識でき
   ます。

  □人脈の構築とその有効活用を心がける

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第三に、

    人脈の構築とその有効活用を心がける

   ということがあげられます。

   そのためにはまず、先代社長が長年にわたって築き上げてきた人脈ネットワーク
   を、可能な限り積極的に活用することが大切です。

   またそれと同時に、

    積極的に新たな人脈を発掘し、より強固な人脈ネットワークを構築
    するように普段から努力する必要があります。

   社長が日々取り組むべき業務は、かなりの量になります。

   さまざまな問題が発生し、すべてにひとりで対応できるものではありません。

   社内においては部下に仕事を任せ、それと同時に社外の人脈ネットワークも活用
   すれば、的確な意思決定を行ったり、仕事を依頼したりすることも可能となります。

   人脈を広げて有効に活用することは、自社の経営改善に大いに役立つでしょう。

   その具休的な方策のひとつに、異業種交流会への参加があります。

   たとえば、

    東京大田区や墨田区ではいくつもの異業種交流会が組織されており、
    実際にユニークな新商品が開発されるなど大きな成果が報告されています。

   また、中小企業白書でも、異業種交流会や共同受注の重要性を例年指摘してい
   ます。

   長期的な企業の成長を考える際に、人脈ネットワークの構築は必要不可欠な視
   点です。

  □長期展望を持つ

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第四に、

    長期展望をもって企業経営を推進することの重要性を認識する

   ということがあげられます。

   短期的な業績向上の検討も非常に重要ですが、社長は、より長期的な視点から
   自社の経営を考えなければなりません。

   つまり、明確な長期ビジョンを設定したうえで、短期的な計画を立てて実行してい
   く必要があります。

   そこで、事業を引き継いだ段階で現状分析を進め、自社の強みと弱みを十分に把
   握します。

   この段階では自社の内部・外部両面の分析を行い、最適な方向に自社を導いて
   いくための長期的な経営戦略を立案します。

   このような長期的視点に立った経営戦略を検討することは、後継社長の非常に大
   きな役割です。

   しかし、就任直後では経験上の問題もあり、的確な判断を行うのが困難な場合も
   発生します。

   そのようなときには、先代社長のアドバイスを積極的に受けるのがよいでしょう。

  □後継社長が引き継ぐもの

   まず最初に、後継社長が引き継ぐものは何か、という点を考えていきます。

   1.後継社長が引き継ぐもの

     社長の職務をまっとうするには、後継社長は、まず自分が何を継ごうとしてい
     るのかを正確に認識しておく必要があります。

      後継経営者が継ぐものとは、社長という絶対権限、すなわち、
      組織を活用し、自らの裁量で事業を行う権限

     にほかなりません。

     その権限を活用して新たな事業に取り組むことも、従来の経営方針をさらに効
     果的に推し進めていくことも、後継者の意思決定に任されます。

   2.あらゆる可能性を検討する

     表面的に「事業=会社を継ぐ」というとらえ方をしていたのでは、前社長以上の
     ものを築き、育てていくことはできません。

     現在の事業分野や組織の機能にとらわれすぎると、成長のチャンスが訪れた
     ときに、素早くかつ柔軟に対応することができず、事業機会を逃してしまう可能
     性があります。

     また、たとえ結果的に前社長の経営方針を踏襲することになっても、何も考え
     ずに前社長のやり方を続けていく場合と、あらゆる可能性を検討したうえで前
     社長と同じであることを選択した場合とでは、その本質はまったく異なります。

      企業の将来はトップが受け継いだ資産を有効にいかせるか否かで変わる

     ものですから、前社長の経営スタイルのみに固執することなく、さまざまな可能
     性を追求しながら経営を行っていきたいものです。

  □事業承継時の取り組み

   前項の認識に基づき、社長としてまず何に取り組むべきかを考えてみましょう。

   1.社長の仕事

      社長の職務を端的にいえば、引き継いだ裁量権を存分にいかして、
      戦略の策定と人心の掌握を確実に遂行していくこと

     です。

     中小企業においては、社長がさまざまな業務を担当しなければならない場合
     が多いといえますが、ほかの誰にも代わることのできない社長自身の職務と
     は、本来この2つに限られるといっても過言ではありません。

     後継者として事業を承継した後、社長として第一に取り組むべきこともこの2つ 
     であり、

     なかでも、

      正確な現状認識に基づく、的確な経営戦略の策定が最重要課題である

     といえます。

     自社の存続・成長のためには、経営上の問題をあらゆる角度から分析するこ
     とで解決すべき課題を抽出し、その課題解決の方策を検討する必要があります。

   2.戦略的中期経営計画を策定する

     就任直後は多忙のためにデスクワークの時間がなかなかとれない、ということ
     も起こりうるため、できれば事業承継前から前社長らの協力を得て、中・長期
     的な経営戦略の草案を作成しておくとよいでしょう。

     就任後はそれをたたき台に、経営幹部全員が意思決定に関与する形で戦略
     的な経営計画を策定していきます。

     こうすると効率的であるばかりでなく、

      ・各人の知恵と知識がいかされた、より効果的な戦略が立てられる

      ・幹部陣も、自ら策定に参加した戦略であるため、その正しさを認識しやすい

      ・自社の経営理念、経営方針や新社長の考え方を全長が明確に理解する
       ので、組織一丸となった動きが期待できる

     などの効果を得ることができます。

     将来への夢を描き、それを確実に達成できる戦略を打ち立てられれば、おの
     ずと人心を掌握することができるでしょう。

  □社長としての生活指針

   戦略に基づいた施策を社員の一人ひとりに確実に遂行してもらうためには、社員
   が「この新社長となら一緒に努力したい」と考えるような魅力や器が新社長に求め
   られます。

   そして、こうしたものは、カリスマ性というよりは、以下にあげるように、日々の生
   活指針によってつくられていく場合が多いといわれています。

   1.社長自身のレベルアップ

     社長が自らのレベルアップをはかる第一歩は、自分の人生を「自分のため」と
     いうより、「自分とともに生きる人達のため」と位置づけて考えてみることです。

     社員に生きる場を提供することは、会社の重要な役割のひとつです。

     社長の姿勢のなかに、社員を大切に思い、社員のことを考えた経営をしてい
     る、というものが感じられなければ、社員のモラールは停滞してしまいます。

     社員にとって本当に魅力的な職場環境をつくり出すことができてはじめて、社
     員は自らの夢を実現するために、さらには、社長の夢を実現するために努力し
     てくれるのではないでしょうか。

   2.社員の成長の手助け

     社長は、自分自身が研鑽を積むだけでなく、社員の成長にも力を貸せる存在
     でなければなりません。

     仕事を通して、あるいは社長とのコミュニケーションを通して、

      ・よりレベルの高い考え方ができるようになる

      ・よりレベルの高い職務遂行能力を身につけることができる

     という実感を彼らに与えなければなりません。

     そうすれば、社員は社長に尊敬と親しみを覚え、さらに向上したいという意欲  
     をもち続けるでしょうし、そうした人材が増えることで好ましい組織風土が社内
     に醸成されていきます。

     また、それが社員の周囲にいる人たち、家族や友人などにもよい影響を与え
     ます。

   3.社会に対していかなる価値を生み出していくか

     企業は、顧客・株主・取引先・隣人といった社会の存在があってこそのものです。

     したがって、従業員のためにという側面とは別に、社会全体のためにいかなる
     価値を生み出し貢献していくか、ということを考える視点が必要となります。

     つね日頃から、こうしたことを追求していくことが事業のあり方に反映され、そ
     の結果として、社会的に価値ある仕事をしたいと考える認識レベルの高い人
     材が集まります。

   4.継続的な自己革新

     会社は、社長の考え方や人格がレベルアップするにつれて、優秀な人材が集
     まるようになっていきます。

     社長はその地位をおりるまで、つねに自らの社会的役割を見つめ直し、また
     経営手腕を磨いて、魅力あるマネジメントを実行するための努力を継続してい
     かなければなりません。

     そのためには、強固な意志と健康な体が必要です。

     そして、それらを維持していけるような健康的な生活を送っていくことが重要です。

 

                             お問合せ・ご質問はこちら  

                          

                             メルマガ登録(無料)はこちらから