全員参加型経営

ワンマン経営から組織経営へ

■組織経営推進の7つのポイント

 創業来続けてきた経営スタイルを変えることはむずかしいことではあるが、規模の拡大に伴ない組織
 経営へ移行せざるを得ません。

 組織経営の本質は、トップが“部下を通じて業績をあげる”ことにあります。

 スタートから製造、販売、資金繰りと一人でやって来た社長にとって自分がやって来たことを人に
 やらせることは不安に違いない。

 組織経営に移行するために、次の7つのことを実行します。

  ①組織運営
   (指示命令系統、ライン、スタッフ)

  ②意思決定システムの確立

  ③権限の委譲

  ④オープンマネジメント(決算内容の公開)

  ⑤部門別業績管理システムの導入

  ⑥計画経営の指導(年度計画の作成)

  ⑦幹部人材の育成

 以下に 各項目について詳述します。

□組織運営

 組織運営とは次のことをいいます。

 1.指示命令系統を明確にする

  社長が直接、第1線で指示、命令することなく組織図に従って幹部を通じて行なう。

  一人の人間が指示を受けるのは唯一人、即ちワンマンワンボスの原則です。

 2.会議体系の確立

  会議が社長のワンマンショーであったり、単なる連絡会でなく出席者全員が自由に意見を述べ、
  全員の総意を反映した上で、最後に社長が決断を下す。

 3.規則、規定、マニュアルの重視

  社長自身がルールブックであってはならない。

  あらゆる判断や行動を律する成文化された規則が必要です。

  社長に必要なのは高度な経営戦略上の判断である。

□意思決定システムの確立

 一つ間違えば会社の命取りになる様なこと、例えば、

  ・資本取引(土地の取得や売却、借入など)

  ・経営上の重要事項

  ・外部との契約

 などは社長が決断するが、日常の運営上のことは機関決定をする。

 ワンマン社長によくあるのが、社長が現場に来てひとこと言ったことが決定であり、 幹部はあとで
 部下から聞くというスタイルです。

 これでは幹部の自主性は育ちません。

□権限の委譲

 人間が完全掌握できるのは、5人までだと言われる。

 例えば、100人の会社だと5人の部長と25名の管理・監督者が必要になる。

 社長から順次下へ権限を委譲することによって、社長は間接的に100人の社員を統轄することが
 できる。

 権限委譲で大切なことは、

  ・事前の相談

  ・事後の報告

 が不可欠です。

 したがって報告ぐせのない人に仕事を任せることは出来ない。

 社長は事前に相談を受けるから、自分の意見も言うことが出来る。

 幹部の価値観と社長の価値観が全く一致したとき、完全に任せるということもあり得ます。

□オープンマネジメント

 組織の中で、役職の上下の差は情報量の差である。

 役職の上位の者ほど部下より多くの情報を持ってなくてはならない。

 部下と同じ情報量しか持たない幹部は一般社員と同等であり、役職も名前だけとなる。

 最もオープンにすべきことは業績です。

 いきなり決算を公開するのではなく段階を経て、幹部から社員へと順次公開していく。

 注意すべきことは、決算書が読めるだけのレベルに達していない者に公開すべきではない。

 経営会議等を通じて教育を施していきます。

□部門制業績管理システムの導入

 ガソリンスタンドや外食産業のように店舗が分かれている場合は各店の業績が明確になり活性化
 し易い。

 企業特性に応じて業績単位が出来るだけ小さいほうが各人の仕事の成果がわかり易い。

 分ける単位としては、

  ・地域別、工場別

  ・得意先別、製品別

  ・ライン別、工程別

 があるが、チームで仕事をする製造業では部門別に分けるのがむずかしいが、最初何年間かは数字上
 にとどめ、納得性が得られた時点で成果配分に結びつけるのがベターです。

□計画経営の推進

 まず年度計画書の作成からスタートします。

 年度計画に慣れた時点で、自部門の目標と実践具体策を各人に立てさせる。

 各部門の目標数値の合計は会社の計画とイコールか、それを上回わるものでなければならないから、
 何回かのキャッチボールが必要となります。
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全員参加型経営

全員参加型経営

社長であれば「社員が一丸となった全員参加型経営を実現したい」と望むでしょう。

 少数精鋭で勝負している中小企業にとって、社員の一人ひとりの能力を最大限に引き出し、目標
 達成に向けて組織力を強化し、結束することは最重要課題といえます。

 しかし、「全員参加型経営」を実現させるには具体的に何から始めればよいのでしょう。

 全員参加ということは、全社員のベクトルが同方向に向かっていなければなりません。

 そのために欠かせないのが基本動作です。

 基本動作は組織人(プロ)として身に付けなくてはならない必須項目です。

 基本動作の習得と人材育成は企業としての優先課題となります。

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■全員参加型経営とは

 経営理念、ビジョン経営計画の策定、計画の実行、社内ルールの遵守など社内のすべての
 業務プロセスについて、全社員が知恵を出し、能力・努力を結集していく経営スタイルをいいます。

 社員は経営方針や部門方針などを十分に理解・納得し、自分にできることは何かを自発的に考えて
 行動します。

 また、日々の業務のなかで自分が経験したことや収集した情報を積極的に会社にフィードバックし、
 必要に応じて方針変更の提言なども行うことが可能となります。

 これと対極にある経営スタイルが「ワンマン経営」です。

 社員同士の関係では、自分の担当業務の成果のみを考え、ほかの人のことを考えない「我関せず
 スタイル」を完全に否定するものです。

 全員参加型経営を実現するには、社員からの提言などについて広く門戸を開いているという
 「受動的」な姿勢ではなく、社員が参加せざるを得ない仕組みや社員が自主的に参加したくなる
 雰囲気をつくるための「能動的」な働きかけが必要になります。
   
□全員参加型の基本は少数精鋭

 人材に限りのある中小企業にとっては、社員全員が戦闘要員です。

 仮にデキのわるい社員が一人いるとか、一人辞めたりすると、業務はギクシャクして上手くまわり
 ません。

 人員に余裕がほとんどないのが普通ですから、即損益に響くことになってしまいます。

 しかし、実態は各人がムダのない効率的な仕事をしているかと言えば、必ずしもそうでないことが
 多いことです。

 従って、規模の小さな会社では、各人のやっている業務が本当にムダのないものか否かを徹底的に
 チェックし、業務の標準化が必要となります。

 社員が少数だと各人が色々な仕事を兼務しなければなりません。

 その結果、どうしてもやらなければならない仕事を少人数で分担することになります。

 ムダな仕事は全て排除し、効率・効果を上げて少数の人員で業務をまわすことは、総人件費は低く、
 一人当りの賃金は高くということにもなります。
  
 例えば、通常5人で分担している仕事を精鋭社員が3人でこなすと、総人件費は2人分浮きます。

 浮いた人件費の1人分を3人に分配したなら、総人件費は1人分浮き、1人当り人件費は1/3
 人分増えることになります。

 これによって、会社にも社員にもプラスとなります。

 従って、徹底的な合理化対策を断行して、最小限の人員で運営することを考えていかねばならない。

 しかし、この体制は数年も続けると必ず次の年代に引き継ぐという場面に遭遇します。

 特に小さな会社の場合、今現在の社員パワーを最大にする努力が必要で、そのためには徹底した
 少数精鋭主義を貫くことが大切です。

 しかし、長期的には社員を採用して将来に備えることも併せて考慮することが重要です。

 現有勢力をよりレベルアップするには、徹底した合理化、標準化を実施し、仕事の効率を上げる
 努力が必要です。

 社員、特にリーダーの教育は社長が先頭に立って実施すべきです。

 社長の情熱や人格が社員に影響を与えるなら成功と言えます。

 仕事は厳しく、人には優しくが大原則です。

 もちろん、利益が出たら、社員に公平な成果配分をしなければダメです。

 頑張って成果を上げれば必ず見返りがあるというシステムがきちんと整備されていないと、社員の
 ヤル気が高まりません。

 従って、人事考課をオープンにし、社員各人に自分はどのような評価をされたのかが解るシステムに
 すべきです。

 評価に不満があれば上司に申し出て、いつでも説明してもらえる透明性が必要となります。

 全社員が力を合わせて稼ぐんだという雰囲気を社内に徹底させれば、利益は自ずから上がります。

 いずれにしろ、トップが会社は俺のものという考えを捨て、全てをオープンにして社員と一緒に
 仕事をして稼ぐという気持ちになることです。

 それを実践すれば、ヤル気に溢れた高収益会社に脱皮できるでしょう。

 中小企業だからこそ少数精鋭の環境を構築し、全員参加型経営が実践できるのです。

 そして、会社は社長の考え方、経営手腕次第で成長発展もし、衰退もするのです。

□中小企業だから「全員参加型経営」

 大手企業のなかにも全員参加型経営を志向する会社はたくさんあります。

 しかし、それが十分に浸透し機能している例は少ないようです。

 多数の社員をひとつにまとめるためには、複雑で大掛かりな仕組みの構築と、その仕組みを長期的に
 維持するための多大な労力とコストが掛かります。

 その点、社員数が限定され、社長と社員、また、社員同士の距離が物理的・心理的にも近い中小
 企業だからこそ、成果を生みやすい経営スタイルといえます。

□「全員参加型経営」実現のための条件

 社員からの提言などについて広く門戸を開いているといった「受動的」な姿勢ではなく、以下の
 5つの条件が欠かせません。

  1.社長が全員参加型経営を宣言している

   社長自らが全員参加型経営実現をめざしていることを宣言し、社員がその必要性を理解した
   うえで、十分な動機づけがなされている状態が必要です。

   厳しさを増す経営環境のなかで、中小企業が存続・成長していくためには、それぞれの社員が
   与えられた仕事を黙々とこなすだけではなく、全社員が一丸となって、より高い価値を創出
   していくことが求められます。

   社長は自社の現状を踏まえたうえで、全員参加型経営の必要性、実現のためには全社員の協力が
   不可欠であることを説明します。

   また、実現に向けて社長自身がどのように変わっていくのかについてもその決意と覚悟を表明
   します。

  2.全員参加型経営の基本的なルールが理解されている

   全員参加型経営とは、社員が無秩序に「言いたいことを主張し合う」経営ではありません。

   組織として会社を運営していくためには、当然ながらルールが必要です。

   これらのルールを十分に踏まえたうえで、会社全体の力を合理的・目的的に最大化していく
   のが全員参加型経営の本質です。

   社員にはこのことを十分に理解させる必要があります。

  3.十分な信頼関係ができている

   社員が会社全体のことを考えた改善案をもっていたとしても、「こんなことを言ったら
   叱られる、生意気だと思われる」という意識が強ければ、その社員は口を閉ざしたままで
   しょう。

   社内に十分な信頼関係があれば、社員はそのような心配をすることなく、自由に発言する
   ことができます。

   特に社長と社員の間には大きな壁があります。

   社長自身は部下を信頼し「最終的な責任は自分が取るので、社員は自由にやってほしい」と
   考えていても、その気持ちはなかなか社員には伝わりません。

   そのためにも会議の場などを活用し、コミュニケーションの活性化を図ります。

  4.会社のめざすべき姿について共通認識がある

   全員参加型経営の本当の目的は社員が結束することそのものではなく、それによって会社の
   めざすべき姿をより早期に、より合理的に実現していくことにあります。

   したがって、会社がどこへ向かおうとしているのか、そのために何をしようとしているのか
   といった経営方針経営理念、行動指針、中期経営計画、単年度経営計画)について、
   全社員が十分に理解し、納得していることが必要です。

  5.全社員が自分の役割を全社的立場から理解している

   社員一人ひとりが、自分の日々の業務が全社的にどのような意味をもち、どのような役割を
   担っているかを理解しておくことも重要です。

   たとえば、営業マンが自分の役割認識を「受注額のノルマ達成」だけに限定している場合と、
   「自社の営業力強化への貢献」と広く捉えている場合とでは、問題意識のもち方は大きく
   異なってきます。

   後者の認識であれば、自分の成功体験のフィードバック、営業部門全体の仕事の進め方に対する
   改善提案なども積極的に行ってくれるはずです。

   社長や部門責任者は一人ひとりの社員に対して全社的な見地からの役割と期待を繰り返し説明
   することが大切です。    

□全員参加型経営を推進・定着させるために

 全員参加型経営を推進して定着させるためには、基本的なマネジメントサイクルである、計画(plan)
 ⇒ 実行(do) ⇒ 評価(check) ⇒ 改善(act)に沿った取り組みが必要になります。

 PDCAサイクルは、まず目標を設定して、それを実現するため計画を設計する、計画を実施し、その
 達成状況を確認・分析する、そして、分析結果を次回の計画策定や実行プロセスの改善に活かして
 いこうという一連のステップのことをいいます。

 そして、PDCAサイクルを廻していくためにも全員が組織人としての基本動作の習得が欠かせません。
   
□アメーバ経営

 今、小さな組織が見直されている。

 パナソニックは本社部門の約7千人を大幅に減らした新本社体制を2012年10月1日に敷いた。

 「内向きの仕事」(津賀社長:2012年)が増えた反省から、機能を絞り込んだ「小さな本社」を
 実現し、意思決定のスピードを速める。

 「お客さま向けの価値の提供を最優先とし、本社機能の無駄を徹底的に省く」と語った。

 これは昭和34年に稲盛和夫(現 京セラ名誉会長)が実践した京セラ独自の経営管理手法
 「アメーバ経営」に共通するものがある。

 大きな発展を遂げた京セラ(グループ)は、「心の経営」を貫く稲盛経営哲学に基づいたアメーバ
 経営の企業内小集団による部門別採算制度の徹底により支えられてきました。

  <稲森談>

   複雑である会社組織を、どのように切り分けていくのかという問題である。

   組織の分け方というのは、事業の実態をよく把握し、その実態に沿ったものでなけ
   ればならない。

   そのために、私は三つの条件があると考えている。

   第一の条件は、切り分けるアメーバが独立採算組織として成り立つために、「明確な収入が
   存在し、かつその収入を得るために要した費用を算出できること」である。

   第二の条件は、「最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」
   である。

   第三の条件は、「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」である。

   この三つの条件を満たしたときに、はじめてひとつのアメーバを独立させることができる。
 
   「アメーバ組織をどのようにつくっていくのかということは、アメーバ経営の始まりであり、
   終わりである」といっても過言ではない。

   アメーバの組織づくりは、アメーバ経営の要諦である。
       
                                     −以上−

□アメーバ経営の目的

 アメーバ経営の目的は小さな会社化です。

  ○第一の目的

   市場に直結した部門別採算制度の確立。

   会社経営の原理原則は、売上を最大にして、経費を最小にしていくことである。

   この原則を全社にわたって実践していくため、組織を小さなユニット(6〜7名)に
    分けて、市場の動きに即座に対応できるような部門別採算管理をおこなう。

  ○第二の目的

   経営者意識を持つ人材の育成。

   組織を必要に応じて小さなユニットに分割し、中小企業の連合体として会社を再構成する。

   そのユニットの経営を、アメーバリーダーに任せることによって、経営者意識を持った人材を
   育成していく。

  ○第三の目的

   全員参加経営の実現。

   全従業員が、会社の発展のために力を合わせて経営に参加し、生きがいや達成感を持って
   働くことができる「全員参加経営」を実現する。

    この小集団の適正人員が6〜7名については、効果的な会議開催の適正人員と同じである。

   アメーバ経営は「チームカンパニー制」とも言われ、少数、独立採算チーム性で生産性を
   向上させる。

   チームのリーダーは、「社長」として、他チームの社長達と業績を競わせる。

   単に与えられた仕事をこなすという意識から、いろいろな業務ができ仕事のが面白さ、責任感、
   やりがいがも増す。

   時代に即したやり方に変えていく勇気が必要です。


 全員参加型経営の実現には、トップが社員にビジョンや問題点を問いかける仕組みを作り、社内の
 議論を盛り上げて、変革を実践することが肝要です。 

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全員参加型経営

PDCAを回すには組織の「見る目」を向上

■PDCAを回す上で一番大切なのは「見る目」

 PDCAという言葉は一般的なものとなりました。

 プランを立て、やってみて、チェックをし、改善策を立てていくという一連の流れは、今さら説明
 する必要もないほどです。

 この流れをより効率的に行うために一番大切なのは「見る目」 です。

 自分の、または組織の姿を意識化することによって、向上していくスピードをより上げることが
 できます。

 自分で自分を客観視できれば、自分を変化させていくことが、さらに、お互いがお互いを客観視
 できれば、組織全体を向上させていくことができます。

 そういうことが可能な能力を、組織全体で練り上げていくことが大切です。

 この努力により、組織の成長を偶然に頼るものではなく、成功からも失敗からも学べる恒常的な
 ものとすることができます。

□客観的に見る目を、評価をすることで育てる

 では「見る目」 とは、どうしたら育てることができるのでしょうか。

 大切なのは、本物をきちんと見る環境にあること。

 そして、客観的な評価をされる環境に置かれていることの2つです。

 本物は、先達が見せていくしかありません。

 したがって、ここでは後者の「客観的な評価をされる環境」を、組織内に作り上げるためのノウハウ
 をご紹介しておきます。

 多くの会社組織において評価を行うのは上司ですから、上司の評価の仕方のノウハウということに
 なります。

 まず、評価をする際に大切なのは、すぐにコメントをすることです。

 できるだけ早く行動に対しての評価を下すことを心がけてください。

 主とするのは、叱る評価ではなく、ほめる評価です。

 良いところをその場で指摘し、「今のは良かった」「これが良いね」 などと言うことです。

 こうして良いことをコメントしていく利点は2つあります。

 1つ目は、偶然に発生した「良い行動」 が意識化されることで、その後は意図的にできるように
 なること。

 2つ目は、評価される側の中に評価基準が伝達されること、つまり「良いこと」 が何かを、自分で
 判断できるようになることです。

 どうしても叱りたいときもあると思います。

 この時は叱るのと同時に、次のイメージを伝えることが大切です。 

 「あれがダメ」「これがダメ」で終わるのではなく、「ああして欲しい」「こうして欲しい」
 「こうなって欲しい」 という形で評価の伝達をします。

 過去の反省をすることに留まるのではなく、未来に繋げる視線で考えてもらうことが大切です。

□客観的に見る目を、教育で育てる

 上司がこういう態度でいることにより、部下の「見る目」 は育っていきます。

 また、こうした流れを業務プロセスの中に組み込めば、組織の中でお互いがお互いに評価をし合う
 態度も醸成させることができるでしょう。

 「見る目」 をさらに急速に育てたい場合は、第三者の行動を一緒に見て、評価していくという手が
 あります。

 例えば、他社のプレゼンを見た時に、どこがすごいのかを、そのときに同席していた人間全員に
 考えさせます。

 良い点・悪い点を切り分けて全員に考えさせた上で話し合うことで、第三者の行動をいろいろな
 視点からとらえることができ、広い視野の「見る目」 が育っていきます。

 この時、評価対象となる「第三者」 を社内の人間にすることも、もちろん可能です。

 その際に注意しなければならない2つのことがあります。

 1つ目は、悪い点の指摘はできるだけ少なくすること。

 良い点:悪い点=9:1くらいで良いでしょう。

 2つ目は、その「第三者」 も同席し、その行動をとった時の思考のプロセスを出してもらうことです。

 プレゼンの例で言えば、何を考えてその言い回しを使ったのか、なぜあの瞬間に聞いている人へと
 話を振ったのか、その時の考えを共有します。

 その上で、その考えの目的は達成されていただろうか、さらに良い手はあっただろうかと一緒に
 考えていくことで、「見る目」 の成長のスピードはさらに速くなります。

□成功体験を積み上げ、伸びている人を積極的に使う

 こうして「見る目」が少しずつ育ってきたら、業務そのものに反映させている必要があります。

 手始めは定型業務の改善に、チームで取り組むのが良いでしょう。

 定型業務は数値での評価がしやすく、伸びている感じをつかみやすいからです。

 そのあとに、少しずつ非定型業務を渡していきましょう。

 非定型業務はその大小を問わずクリエイティブなものですから、的確な「見る目」 に基づいた
 PDCAサイクルを細かく回していく必要があり、「見る目」を実践的に鍛えていくことができます。

 この時のポイントは、仕事の全体設計にわざと少しの隙を作っておくこと。

 こうすることで、 「見る目」 の育ちはじめた人に、意見を求めたり、作業を振ったりできます。

 これは、レベルの多少下がるメンバーの参加感を上げ、チームに入り込めるようにするための重要な
 施策です。

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全員参加型経営

組織全体で時間を作り出す Ⅱ

■「その人だけが『できる』状態にしない」と「時間管理はみんなで行う」の繋がり

 今回の話をする前に、前回(Ⅰ)の復習をしましょう。

 時間は有限の資源であり、個人においても、組織においても、できるだけ有効に使いたいと皆が
 考えています。

 しかし、多くの場合、「せっかくあるんだから使わなきゃ」(パーキンソンの法則)が働きます。

 さらに「そろそろ本気出さなきゃ」(スチューデント・シンドローム) という心理特性により、
 ぎりぎりになって作業を始めることになります。

 あせって作業を行っているところに「なんでこんなタイミングで。ついてない」(マーフィーの
 法則)という事柄が発生します。

 こうした事態に対抗するための組織の時間術は「その人だけが『できる』状態にしない」、すな
 わち、何かの作業を「Aさんがいないと進まない」という形にしないで、「時間管理はみんなで
 行う」こと。

 マネジメント側でAさんの仕事を分担したあと、スケジュール管理をみんなで決めれば、時間を
 有効に使えることになります。

□時間管理はみんなで行う

 仕事の効率は段取りで、ほとんどが決まります。

 したがって、多くの仕事では作業の見積もりを立て、段取りを組んでから、実作業に取りかかり
 ます。

 いわゆるブルーカラーの仕事でも、ホワイトカラーの仕事でも同様です。

 作業の見積もりは、作業担当者が行うか、その上司が「これくらいの時間でやってくれよ」 と
 一方的に行うかのどちらかです。

 ここでの目的は「企業活動の成果の実質的なカギとなるのは、部下の仕事へ取り組む姿勢や能力
 である」 という点から考えると、見積もりをするのは作業担当者が行ったほうが望ましいことに
 なります。

 しかし、次のような問題があります。

 作業担当者は、3日でできると見積もったとしても、「あー、難しいですねえ。7日くらいかかると
 思いますよ」 と余裕を見て答えるということ。

 なぜなら、ギリギリを見積もって失敗してしまったら、自分の過失となるからです。

 この思考を全員が行ったら、全体のスケジュールは間延びしたものになりつつ、 「せっかくあるん
 だから使わなきゃ」「そろそろ本気出さなきゃ」「なんでこんなタイミングで。ついてない」 の
 3点セットによって、さらに間延びします。

 これを防ぐ上で大切なのは2点です。

 まず、正確な工期をみんなで見積もるのと同時に、納期遅れを前提として、余裕時間をみんなで
 見積もるということ。

 次に、各自がいつ・どこに行くべきかを前もって決め、その情報を全員で共有することです。

 まず、みんなで作業を見積もることによって、個々の担当者が読む「サバ」 を削ることができます。

 また、それぞれがいつ・どこに行くかを皆が知っていますから、「自分が遅れることによって、
 数人の動きが遅れると、全体に影響する」 という意識を全員に醸成することもできます。

□個々の作業の遅れを責めない

 この方法を行っていく上で大切なのは、個々の作業が遅れたとしても、そのこと自体を責めないと
 いうことです。

 なぜなら、お互いに余裕時間を削り、ギリギリの工期を見積もることで、「せっかくあるんだから
 使わなきゃ」「そろそろ本気出さなきゃ」という考え方を防ぐわけですが、「なんでこんなタイ
 ミングで。

 ついてない」 は、いつでも起こりうるからです。

 こうした問題による作業の遅れを吸収するために、全体として余裕時間を見積もっておくことが
 重要になります。

 このあたりの具体的な手法は、CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)
 というプロジェクトマネジメント技法に詳しいです。

 日本でもかなりの数の参考文献が出てきていますので、ご興味のある方は、ぜひ勉強してみてください。

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全員参加型経営

組織全体で時間を作り出す Ⅰ

■その人だけが「できる」状態にしない

 ◎時間に関するビジネス格言

  古今東西、時間は基本的に守られないようで、時間に関するビジネス格言にもいろいろな言葉が
  あります。

  代表的な3つを挙げてみましょう。

   ○パーキンソンの法則:『せっかくあるんだから使わなきゃ』

    仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張するのが「第一法則」
    とすると、「仕事は締め切りギリギリに上がる」ということになります。

   ○スチューデント・シンドローム:『そろそろ本気出さなきゃ』

    締め切りのある一定の仕事のまとまりに対して、作業を開始する時期を、自分の見積もる
    作業時間ぎりぎりまで遅らせてしまう心理的行動特性のこと。

   ○マーフィーの法則:『なんでこんなタイミングで。ついてない』

    一番タイミングの悪い瞬間に、予期せぬ問題が起こること。

 
 こういった言葉が面白がって流布されるということは、時間を守れないのが「人間」の特質
  なのかもしれません。 

  「人間」が集まった組織において、こういう現象が大量に起こると、チームの納期は守られず、
  後へ後へとずれていくことに
なります。

 ◎個人の時間術はたくさんある。組織の時間術は2つだけ

  時間術でよく言われるのが「早起きしましょう」「整理整頓しましょう」「物事はすぐにやって
  しまいましょう」
「意味のない会議はやめましょう」といったことです。

  これらは、個人のとるべき行動としては素晴らしいものです。

  文化として、上司が率先して行っていくべきことでしょう。

  しかし、これらは個人が行うべき努力目標であって、組織全体に上司が行わせるということは
  根性論でしかありません。

  組織がシステム的に行うべき時間術とは、根本までたどれば次の2つだけです。

   ①その人だけが「できる」 状態にしない

   ②時間管理はみんなで行う

  ここでは①についてお話します。

  なぜなら、①がどのくらいできているかによって、効果が大きく異なるからです。

 ◎その人だけが「できる」状態にしない

  簡単に言えば、何かの作業を「Aさんがいないと進まない」 という形にしないことです。

  こういう状態では、Aさんが他の仕事にかかっている時には「Aさん待ち」が発生し、そのまま
  組織が大きくなると、
Aさんには大きな負担がかかります。

  あちこちのチームから、「これはどうなっているんですか?」「この件はどう処理すれば
  よいですか?」「どう作業を段取りすればよいですか?」「先方への連絡は
どうしましょう?」
  「実は、大きな問題が発生してしまいました」 などと、Aさん
にお呼びがかかります。

  初めのうちは、Aさんのがんばりでなんとかなるかもしれませんが、体力や気力の限界があります。

  疲弊が進むと効率を大きく下げ、組織の効率も大きく下がることになります。

  多くの中小企業において、Aさんは社長であることが多いのです。

  そうなっている組織で効率を上げるには、Aさんの作業を分割し、できるだけ多くの人に割り
  振ること。(組織の役割分担

  社長などマネジメント側で、チームの効率がよくなるように、Aさんの仕事を割り振っていくのです。

  作業の掛け持ちをしなくて良いように全体のスケジュールを組んでいくことで、組織の時間は
  スムーズに流れる
ことになります。

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全員参加型経営

チームで課題解決していく

意思決定は、具体的な行動ラインに落とす必要があります。

行動レベルに落とした上で、さらに実際の活動を行わなくてはなりません。

これが課題解決活動です。

昔から「言うは易し、行うは難し」と言われるように、意思決定から課題解決活動の間には深い
溝があります。

この溝を埋めていく効率的な方法を考えていく必要があります。

■課題解決を行うための意思決定を行う

 意思決定は行動を伴わなければ意味がありません。

 実際に活動することで、状況は変化していきます。

 大切なことは、意思決定の中に、取り組み手順、実行責任者、成功基準をざっくりと織り込んで
 おくことです。

 その上で、現場での判断を踏まえた実行計画を作ります。

 このときに参考になるのが、プロジェクトの運営方法です。

□目的・成果物・基準という観点を考える

 意思決定を行動レベルに落としていくときに、プロジェクトマネジメントで重視されるのが、
 目的・成果物・基準という3点セットです。

 1.目 的…この行動は、何をするためのものなのか。

       この行動によって何を達成したいと考えているのか。

 2.成果物…この行動を通じて、何を作るのか。

       目的を達成するために、何を作り上げていけばよいのか。

 3.基 準…何をもってすれば、この目的は達成されたと判断できるのか。

       その基準をどこに設定するのか。

 これらに加えて、時間や資源投入の量も大切なポイントです。

 現場では、こうした観点を利用しながら、意思決定を行動レベルの計画にまで落としていきます。

□チームの全員で、目的からスタート地点まで遡る

 目的・成果物・基準の3点セットを決めることができたら「そのために必要なものは何だろう?」
  と、さかのぼって一連の活動を考えていきます。

 例えば、会議のための資料を作る過程では、最後に資料をステープラー(ホチキス)で留めなく
 てはならない。

 その前にはプリントしなくてはならない。

 その前にはパソコンで資料を作らなくてはならない…。

 こう考えていくと、決めた目的・成果物・基準に対し、必要な活動がすべて洗い出されることに
 なります。

 この過程を個人の活動に対して行うことは簡単です。

 日常で行っている「段取り」 と同じことです。

 しかし、これをチーム活動の中で行おうと考えたとたん、事態は複雑になります。

 なぜなら、自分が担当する作業以外は、誰もお互いの作業を正確には分からないからです。

 そのため、この“さかのぼり”の過程をチームで行う際には「全員で行うこと」が大切です。

 司会進行役が「そのために必要なものは何ですか?」「本当にそれだけですか?」 と質問を繰り
 返しながら、さかのぼっていきます。

 さかのぼりきって余裕があったら、今度は時系列で考えていくと良いでしょう。

 時系列順を追っていって、すべての成果物が本当に滞りなくできるかどうかを確かめていきます。

 抜けがあったら、その成果物の作成をどこに段取りしていくか考え、再度さかのぼりを繰り返し
 ます。

□未来に生まれる問題を予測する

 “さかのぼり”が完成したら、本当に大丈夫かを確かめましょう。

 そのときには、「この目的達成までの過程の中に問題が起こるとしたら、何があるでしょうか?」
 という質問が効果的です。

 未来の姿をいったん想像させることで、そこに起こりうる状況を考えてもらいます。

 行動のときに起こる問題の多くは段取りのミスです。

 ちょっとした確認や対処の手間でほとんどは未然に防げるものです。

□小規模なチームでスピード感を高めていく

 小規模チームでは、こうした過程が遅く感じられることもあります。

 特にベンチャー企業が多く生まれているような成長産業では、こうして行動計画を立てている
 間に環境が大きく変わってしまうこともあるかもしれません。

 そういったときにも使える簡易バージョンをご紹介しておきましょう。

  1:目的達成のために必要なタスクを割る。

  2:そのタスクを書いた紙をチームの全員で眺める。

  3:誰がどのタスクをやるかを自己申告制で決める。

  4:自分のタスク達成のために、誰に何をやってもらう必要があるのか、
    相互にリクエストを出し合う。

 この過程のポイントは、相互にリクエストを行うこと。

 将来に生まれる問題を個々に考えさせ、気づいたらすぐにリクエストを出すことで、大幅な
 スピードアップを図ります。

 目的と成果物とが一致するような小さいチームに向いています。

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全員参加型経営

企業理念にのっとった意思決定か

企業活動は、様々な意思決定を重ねていくことで進んでいきます。

意思決定は企業の活動の根幹、経営そのものといって良いかもしれません。

そのため、意思決定は企業理念などにのっとっているかどうかが大切になります。

■意思決定は人材を育てることに使うべき

 現代の経営の主流は、ワンマン経営からチーム経営に変わっています。

 中小企業でも長く、安定した活動を続けていくためには、チーム経営を続けていく体制を作り
 上げなくてはなりません。

 チームでの意思決定は、人材育成過程として大切な活動でもあります。

 理念に沿って、できるだけリスクは少なく、利益を上げていくために、採用すべきかすべきでは
 ないか。

 そのために必要な情報を取捨選択し、自ら仮説を立て、検証していきます。

 この一連の活動の流れを行えるチームを作り上げていくためには、

  1:事業を再検討し、方向性を明確にして、メンバー間の合意を形成しておく

  2:メンバーの強み、得意分野をはっきりさせる

  3:メンバーごとに最適な担当分野を任せる

 ことが大切です。

□意思決定は特別なことではない

 チームでの意思決定のポイントを考えていく前に、原則を大切にすべきか、例外的に個々の
 事情を重視すべきかを考えなくてはなりません。

 原則を大切にすべきであれば、企業の理念などから考えていくことが大切ですし、例外的な
 問題ならば、状況に応じて考えていくことが大切です。

 ただ、例外的な問題が頻発するような状況とは、企業の危機が訪れているような状態だと考え
 られます。

 そのため、一般的な意思決定は原則に従って粛々と行われるべきものです。

□全員一致した事柄は意思決定すべきではない

 前述したことを踏まえて、チームで意思決定を行うときのポイントを書いておきます。

 それは初めから全員一致の意見になったことは意思決定してはいけないということです。

 なぜなら、議論が十分に深まってない恐れがあるからです。

 全員一致になっているということは、その他の選択候補が存在しないということです。

 「これしかない」と考えた時点で、人間は思考をストップさせます。

 迷う状態があって、初めて頭を働かせるのです。

 遊びに行くところを決める程度のことなら構いませんが、会社の意思決定では深いところまで
 思考を進めなくてはなりません。

 また、どれだけ考えても全員一致になるような事柄は、そもそも意思決定を行うべきレベルの
 話ではなく、すぐにでも行動すべきレベルだと考えられます。

□意思決定を行うための話し合いは極端に始める

 また、意思決定を行う話し合いでは、できるだけ極端な話から始めることもコツの1つです。

 例えば「日本市場で24%のシェアを取るため」 の会議を行うときには、これを頭の片隅において、
  「世界でナンバー1シェアを取るためには」 くらいのところから話し合いをし、原則に沿って
 決定します。

 こうした過程を経るには理由が2つあります。

 1つ目の理由は、それくらいが最終的にちょうど良い結果に落ち着くことが多いからです。

 日本人は意見を戦わせるのを好まない傾向があり、「まあ、これくらいで」と思うあたりで
 会議の意見を出します。

 そのため、これくらい大きな話で考えていくと、ちょうど良い結論にまとまっていきます。

 2つ目の理由は、創造的な会議の場を作るためです。

 意思決定とは、その意見に決めた際のリスクと利益、そして代替案に決めた際のリスクと利益
 との2つを比べることです。

 こういう考えをしていくと、自由な発想は失われることが多くなります。

 そこで、限定条件をゆるくすることで、できるだけ発想豊かな場を作ることが大切になってくる
 のです。

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全員参加型経営

フォロワーのモチベーション

■フォロワーのモチベーション

 「効率測定」 という当たり前の企業行動が、生産性アップにつながるか、ダウンにつながるかは、
 会社の価値観(ビジョン)と、それに基づく会社の選択とがフォロワーに受け入れられるかに
 よって決まります。

 会社の価値観と会社のシステム、組織構造、戦略とが一致した状態をフォロワーに提示するのは、
 とても大切なことです。

□効率とはインプットとアウトプットとの比

 効率とは、そもそも何でしょうか? 

 効率というのは、エンジニアリングの考え方で、アウトプットとインプットとの比のことを言い
 ます。

 シンプルに表現してしまえば、効率=アウトプット/インプット。

 当たり前ですが、数値が高いほうが良いということになります。

 例えば、10分の間(時間のインプット) で10個の製品が作れる状態(製品のアウトプット) と、
 20個の製品が作れる状態とを比べてみます。

 それぞれの効率は、上の数式に準拠すれば「10/10=1」 と「20/10=2」 。

 ここから、 「後者は、前者に比べて効率が2倍で、より良い」 と判断することができます。

 これが、効率です。

 つまり、「効率測定」 とは、「切り分けていく」 考え方です。

 全体の活動を細かく切り分けて、それぞれの部分のインプットとアウトプットとを正確に測った
 ものを計算し、簡単に比較できるようにして、「この部分、もうちょっとどうにかならない?」
 と考えられるようにすることです。

□モチベーションを上げたり、下げたりするもの

 効率測定は、フォロワーのモチベーションを下げる方向にも、上げる方向にも働きます。

 まず能率測定がモチベーションを下げる方向に働く場合から説明しましょう。

 効率測定をする時は、先ほども説明したとおり、全体を「切り分け」 していくことになり
 ます。

 そのため、部下であるフォロワーを、会社活動のためのシステムの一部分として見ることが不可避
 となります。

 フォロワーが、「部品のように扱われて、管理されている」ととらえれば、モチベーションを
 下げる方向に働いていくのは想像に難くありません。

 ここしばらく、工場労働者を1つの仕事のみをさせる単能工から、いろいろな仕事を任せる多能工
 へと変化させる試みが盛んです。

 有名な取り組みでは、セル式生産方式などが挙げられます。

 これは、効率測定による業務管理を追求することで低下した工場労働者のモチベーションを回復
 させようとする流れです。

 反対に、能率測定がモチベーションを上げる方向に働く場合もあります。

 効率測定を行うと、仕事ぶりが明確な数値となって表現されます。

 このことを「自分のチャレンジする方向性、到達すべき点が見える」 という風にフォロワーがとら
 えれば、モチベーションの向上につながる可能性は高いでしょう。

 成果を数値的に測りにくいタイプの職務を行うホワイトカラーの人たちの一部で、仕事の能率測定
 と能率向上の工夫とを自ら進んで行う「ライフハック」 という技法を試みている人たちがいます。

 この人たちは、能率測定をさまざまな形で、ゲーム的な感覚で行うことによって、成果の分かり
 にくい自分の仕事に対し、自分でモチベーションを保っていこうとしているわけです。

 この「ライフハック※」の試みを、会社全体で取り組んでいるITベンチャー企業もあります。
  ※仕事の質や効率、高い生産性を上げるための工夫や取り組み。

□会社の価値観と合致しているか

 ざっくり言えば、効率測定をフォロワーが受け入れなかった場合には、モチベーションが下がり
 ます。

 受け入れた場合は、モチベーションが上がります。

 当たり前の話です。

 では、どういう場合に受け入れられるのでしょうか。

 職場や職種にもよるので一概には言えませんが、能率測定の実施やそのデータの利用法が、会社の
 価値観
と合致している場合は、合致していない場合に比べ、ずっと受け入れられやすいとは言える
 でしょう。

 例えば「従業員のライフワークバランスを向上させる」 という価値観を明言している会社があると
 
します。

 能率測定を実施した結果、 「他社とのやりとりの少ない時間では、作業能率が2倍以上にもなって
 いる」 と結論が出たとします。

 この時に「仕事が多くなる時期は、午前中を『集中作業タイム』にしましょう。

 その時は電話を受ける専用のパートタイムの人を雇いましょう」 とするのであれば、会社の価値観
 と合致していると考えられます。

 しかし「仕事が多くなる時期は、他社から連絡の来ない朝早くに出社し、夜遅くに残業しましょう」
 とするの
であれば、会社の価値観とは合致しないと考えられるわけです。

 仮に、この会社が残業を増やす方向をとると、 「看板に偽りあり」 になります。

 フォロワーは「言っていることと、やっていることが違うじゃないか」 と感じ、気持ちが離れていく
 でしょう。

 何かのきっかけがあれば、本当に離れていくに違いありません。

 能率測定に限らず、会社の価値観と、会社のシステム、組織構造、戦略との方向性が一致している
 ことは、とても大切です。

 ビジネスでは、技法だけが注目されがちです。

 しかし、実際には技法や施策は単体で動いているわけではなく、そのバックグラウンドとなる価値観
 や文化と繋がって、初めて大きな意味を持ってくるのです。


□価値観の合ったフォロワーを集める

 フォロワー、ひいては全体の生産性を上げていくために、会社は、会社と価値観が合うフォロワーを
 集める人事施策をとる必要があります。

 それが、お互いの幸せにもつながります。

□従業員が辞めない会社にする

 最初に、どの会社でもできる、会社の生産力を上げるための大変効果的な方法を記しておきます。

 それは、従業員が辞めたくない会社にすることです。

 従業員一人を新たに雇う際にかかるコストは、一般的には「雇いたい従業員の年収×1~2」 と
 言われています。

 つまり、年収500万円の従業員を雇用したいと考えた場合、かかるコストは500万~1000万円。

 仮に毎年50人辞める会社があるとしたら、その従業員分の人材補充をしていくのに、毎年2億5000万
 ~5億円のコストを
かけていることになるわけです。

 「そんなに? かかりすぎなのではないのか?」 と思われたでしょうか。

 コストとは、単純金銭だけではありません。

 引き継ぎ作業をする間の生産力低下、技術の流出、人事管理にかける手間の増大なども含まれます。

 そのコストを本来の事業活動に集中させられれば、どれだけ生産力の向上に寄与できるでしょうか。

□快適さの根本は価値観が合うかどうか

 会社の生産力を上げるためにも、フォロワーに「ずっとこの会社にいたい」と思ってもらえる快適
 さを作り上げることは、とても大切です。

 それでは、快適さとは何でしょうか? 

  人間関係が良いこと。

  給料が高いこと。

  人を使い捨てにしないこと。

  環境が良いこと。

  機会をくれること。

  チャレンジングな職場であること。

  自分の能力を役立たせるために会社がいろいろな手立てを講じてくれること

 など。

 人間は多様ですから、快適さの要因はいろいろとあるでしょう。

 何を選ぶかは、個人によって異なるはずです。

 しかし、あえて言い切ってしまえば、快適さを生み出す一番根本の要因は「会社の持つ価値観が、
 自分と合うかどうか」 です。


□価値観が合えば人は辞めない

 フォロワーの立場から見てみると、自分の価値観と近い価値観を持つ会社であれば、会社の行動
 には納得がいきます。

 納得がいくなら、自分からは強いて辞める理由がありません。

 納得がいかなければ、機会があれば辞めてしまうでしょう。

 「うちは価値観なんて特に決めてないし、従業員に伝えてもないよ」 と考える社長もいるかもしれ
 ません。

 でも、これは会社に明文化された価値観があるかないか、価値観そのものを従業員にアピールして
 いるかいないかとは、別の次元の
問題です。

 会社がとった行動に、フォロワーが納得できるか、できないか、という話です。

 例えば、「先端の技術研究を追求する」という価値観を持つ会社が、その価値観に沿って、大幅に
 増えた前年度利益の4割を研究費に、3割を環境の整備につぎ込
んで、世界最高の研究環境を作り上げ、
 その代わりに給料は据え置いたとしま
す。

 この会社の行動に対し、 「世界最先端の研究がしたい」 と思う価値観を持つフォロワーは、それで
 いいと考えるでしょう。

 反対に「できるだけラクしてお金が儲かれば」 というフォロワーは、このお金の使い方に反発する
 はずです。

 よりお金が儲かる会社を目指し、辞めていくかもしれません。

 もちろん、そうなっても、このフォロワーが悪いというわけではありません。

 ここにあるのは、ただの価値観の相違です。

□初めから価値観が合う人材を集める

 価値観の相違自体は悪くはありません。

 しかし、価値観の相違は、会社運営という視点から見れば、大きな意味を持ちます。

 会社の価値観とあまりにも合わないフォロワーを大量に集めてしまった場合、会社のとる行動に
 納得できず、辞め
ていく人が多くなる可能性が高いからです。

 ひいては、冒頭に述べたように人探しのコストが大量にかかることにつながり、それだけ本業に
 集中しにくくなりま
す。

 つまり、人材を選ぶとき、会社の持つ価値観となじむかどうかを見ることは、とても大切だという
 ことです。

 会社の価値観になじめそうにない人は、たとえ優秀でも、採用しない方がお互いの幸せにつながる
 でしょう。

 採用に至らない人でも、その人の価値観により近い会社は、きっとどこかにあるはずです。


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全員参加型経営

フォロワーシップ

組織を作る連携

□仕事の成果のカギを握るのは?

 仕事の成果はどこから生まれるのでしょうか。突き詰めれば、行動からです。

 理念や計画をいくら考えても、行動を起こさなければ、結果には結びつきません。

 したがって、理念や計画を立てた時点すなわち行動を起こす前の時点では、その結果を完全に
 見通すのは、本質的に不可能だということになります。

 企業において、実際に行動を起こす人間とは誰でしょうか。

 部下です。

 部下は、上司の立てた全体計画に従って、巧拙はあるものの、自らの行動計画を立て、計画を
 実行に移していきます。

 すなわち、仕事の成果を生み出す「行動」 の大部分を握っているのは、部下だと考えて差し支え
 ないと言えます。

 つまり、企業においては、部下と呼ばれる人間が動かなければ、十分な成果は得られないわけで、
 企業活動の成果の実質的なカギとなるのは、部下の持つ仕事へ取り組む姿勢や能力などだと考え
 られます。

 このような視点から組織のパフォーマンスを捉えていこうとする「フォロワーシップ」 という
 考え方について、これから解説していきます。

 まずはリーダーシップと比較しながら理解していきましょう。

□上からのリーダーシップ、下からのフォロワーシップ

 リーダーシップは上から下の視点、リーダーが部下を引っ張っていくという視点です。

 リーダーの力で、組織の仕事の効率を上げようとする考え方といえます。

 フォロワーシップはその逆。

 下から上の視点、部下がリーダーに協力する力で、組織の仕事の効率を上げようとする考え方の
 ことをいいます。

 フォロワーシップの考え方では、部下のことを、リーダーという言葉に対応させて「フォロワー」
 と呼びます。

 フォロワーを簡単に定義すれば、 「従って行動する人」 のこと。

 リーダーが理念や計画を決め、フォロワーがその理念や計画に従って行動するという関係となります。

 企業が立てるような、ある程度の大きさを持つ計画ともなると、リーダー1人で遂行することは
 できません。

 リーダーが「やりたい」 と考えることを、代理として行動してくれるフォロワーの存在が不可欠です。

 そして、上記したように、成果は行動から生まれます。

 「フォロワーの、リーダーへ協力する行動のパフォーマンスを上げることで、企業の成果を向上
 させよう」という考え方がでてくるのは、当たり前だとも言えます。

□フォロワーシップの2つの要素:「批判的思考能力」と「貢献意欲」

 研究者の世界では部下の持つ「フォロワーシップ」 のことを、次の2つの要素から成り立つと
 考えています。

 「批判的思考能力※」 と「貢献意欲」 。

  ※批判的思考能力(クリティカル・シンキング)とは、「物事や情報を無批判に受け入れるのではなく、多様な
    角度から検討し、論理的・客観的に理解すること」 出典:Wikipedia

 この両者のバランスによって、フォロワーシップの質が決まるというのです。

 一番良いとされるのが、高い「批判的思考能力」 と「貢献意欲」 とを持ったフォロワーで、理想
 タイプと呼びます。

 現状に甘んじることなく前進し、リーダーの理念や計画に貢献しようとする人。

 しかも、ただ貢献するだけでなく、リーダーや所属組織に問題がある場合はそれを適切に進言・
 フォローすることができる。

 そんなタイプです。

 理想的な態度の部下のように思えます。

 それぞれの要素の高低について、計5つのフォロワータイプがあると、フォロワーシップの研究者
 たちは考えています(下表をご覧ください) 。

 ここでは、メンバーのフォロワーシップを育てて、理想タイプのフォロワーをできるだけ増やし、
 企業活動の成果につなげるための方法について、数回にわたり考えていきます。

 フォロワーシップの考え方を用いる場合、ひとつ注意すべきことがあります。

 リーダーだけで企業が動かないのと同様、フォロワーだけでも企業は動かないということです。

 理想的なフォロワーシップを発揮するフォロワーがそろっていたとしても、その意見や行動を
 十二分に理解し、尊重するリーダーがいなければ、せっかくのフォロワーたちの能力を活かし
 きることはできません。

 つまり、フォロワーを育てていこうとするリーダーには、フォロワーの批判的思考による意見を
 素直に受け入れるだけの度量を持つことが求められるのです。

「取り入れる」リーダーシップ

□企業が成果を挙げるためには「実務能力」も必要

 ここで、もういちど根本に立ち返って考えてみましょう。

 フォロワーシップがなぜ必要なのか。企業活動の成果を挙げたいからです。

 しかし企業が十分な成果を上げるためには、研究者の考えるフォロワーシップの二つの要素、
  「批判的思考」 「貢献意欲」 だけでは足りません。

 フォロワーの「実務能力」 の高さも必要になってきます。

 その例として適当なのが、トヨタ自動車です。

 世界屈指の実務能力の高さを誇る企業といえます。

□「実務能力」は「批判的思考能力」「貢献意欲」に影響を受ける

 トヨタ自動車が自動車メーカーとしてGMを抜き、世界一になっています。

 年々、着実にステップアップを重ねていくトヨタの強さの原動力の一つになっているのが、
 フォロワーのレベルの高さです。

 トヨタの現場にはJIT(Just In Time) のような考え方や、それを実現するカンバン方式という
 技法があります。

 「なぜなぜ5回」 という発想法のように、現場の問題発見・解決を習慣として行う文化が浸透
 しています。

 階層のあらゆるレベルで、不断の「カイゼン」 活動が組織的に行われ、ただでさえ高い実務
 能力が、フォロワー自身の手によって絶えず高くなり続けています。

 フォロワーが自ら行っている組織力向上のための行動が、そのまま組織の高い成果となって
 表れている。

 これがトヨタ自動車という組織の強さだと言えるでしょう。

 ここでポイントとなってくるのは、トヨタの行っている事柄そのものには、さほど意味はないと
 いうことです。

 たとえば、トヨタ生産方式を工場に導入する会社はたくさんありますが、それがトヨタ以上に
 うまくいったことはないと言われています。

 それどころか、導入後の少しの間はうまくいったものの、しばらく経つと業界他社に比べても
 実務能力が落ち込んだという例さえしばしばあるのです。

 コンサルタントが仕事の方式を指導し、フォロワーはそれらに従うだけという状態。

 現場の意見が取り入れられることはありません。

 「批判的思考能力」 も、「貢献意欲」 も非常に低い状態です。

 「批判的思考能力」 と「貢献意欲」 の低さに引っ張られて、 「実務能力」 まで低くなってしまった
 のです。

□「取り入れる」ことで、「批判的思考能力」 「貢献意欲」 「実務能力」を伸ばす

 かつての日本社会はフォロワーシップを重視した活動が盛んでした。

 たとえば、日本中の会社で行われているQCサークルは、自分たちの現場の行動と、その行動で達成
 すべきクオリティを絶えず自分たちで自省するという活動です。

 自分たちの現場の行動に対し、自分たちの批判的思考能力を用い、自分たちの仕事のクオリティを
 向上させようという貢献意欲をもって、自分たちの批判的思考能力を用い、自分たちでカイゼンの
 プランニングを行う。

 経営側も、QCサークルでの成果・意見を積極的に取り入れ、現場の形を変えるなどの対応を図り
 ます。

 ここには、まさしく理想的なフォロワーシップとリーダーシップとの関係が実現されています。

 「批判的思考」「貢献意欲」 をもったフォロワーの意見を、リーダーが敬意を持って取り入れる
 ことで、 「批判的思考」 「貢献意欲」 をさらに伸ばすきっかけを与えています。

 そして、人間は意見を聞いてもらえる、自分の力が有効に働いていると感じられるときに自己効力感
 が高くなり、行動する意欲を増します。

 意欲は「実務能力」にも響いていくことになります。

 これが、リーダーがフォロワーの意見を取り入れるべきである、大きな理由の一つです。

□フォロワーの成長過程は、リーダー・組織の成長過程に重なる

 上記のトップにある「仕事の成果のカギを握るのは誰か?」と今回の「取り入れる」リーダーシップ
 の内容をまとめてみましょう。

 企業の成果を向上させるためには、実務がこなせ、批判的思考と貢献意欲とが高いフォロワーの
 能力を十分に活かす必要があります。

 そのためには、フォロワーの意見を積極的に受け入れることでフォロワーの意欲を高めつつ、全体の
 理念や計画を考えていく力量を持ったリーダーが必要となるでしょう。

 このことが成り立っている状態を平たく表現すれば、 「リーダーとフォロワーとが、全体が向上
 するようにお互い影響を及ぼしあえる組織」 と言うことができます。

 「企業の理念やミッションに向かった努力を皆が重ねつつ、リーダーとフォロワーとが対話ができる
 組織」 とも言えます。

 部下のフォロワーシップを育て、企業活動の成果につなげていく方法を考える過程とは、同時に
 リーダー、フォロワー、そして組織そのものを育てていく方法を考えていく過程でもあるのです。

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全員参加型経営

コンピテンシーマネジメント

コンピテンシーマネジメント

■人材マネジメント
 1.はじめに 
  今日のように企業を取り巻く環境が厳しく、なおかつ変化のスピードが激しい時代に
  おいては、過去の経験の蓄積だけでは変化に対応しきれるものでなく、また管理者
  個人の判断だけでは適切な決定を下しにくくなっています。
  押し付けのコントロールではなく、参加、参画させることによって部下にも関与させ、
  関心を持たせねばならないのです。

  企業は、法改正、規制緩和、同業他社の進出などの変化に適切かつ迅速に対応しなければ
  なりません。
  企業は“変化対応業”といわれます。

  現在のように環境変化のスピードが増している時代には、企業の変化対応力が強く問われる
  ことになります。
  急速な環境変化に対応するには、時には専門家のサポートを受けながら、組織全体が
  一丸になって取り組まなければなりません。 

  例えば顧客と直に接する営業部門では、かつてのような個々の担当者任せの体制では
  複雑・多様化する顧客ニーズに応えきれなくなってきています。
  中にはコンスタントに成果を上げる優秀な営業担当者もいるでしょう。
  しかし、ごく一部の営業担当者の力には限界があります。

  もし、その営業担当者が退職、転職してしまったとしたら、企業はその穴埋めに苦慮
  します。 
  そこで多くの企業では、営業担当者のほかに製造担当者などを加えた営業チームを組織
  して営業に臨むようになっています。

  また、従業員の営業活動支援も徹底されています。
  例えばカゴメでは、「カゴメディア」と呼ばれる営業活動支援のデータベースを構築して
  います。

  「カゴメディア」には、同社の商品情報(基本情報、料理レシピ)はもとより、生活者
  情報(消費動向など)などが蓄積されていて、関係者はいつでもそれを閲覧、活用する
  ことができます。
  また、「カゴメディア」は絶えず更新されるため、蓄積される情報は常に新鮮です。

 2.顧客志向で共有する 
  企業が急速な環境変化に対応するためには、組織力強化とともに“顧客志向”を徹底する
  ことが欠かせません。
  顧客志向とは、顧客の立場にたって商品製造、サービス提供をする姿勢です。
  顧客(消費者)は、できるだけ安くて良い品を探すことに余念がありません。

  また、価格や品質が同じ商品であっても、自分のことを本当に考えてくれる企業から購入
  したいと強く望んでいます。 
  こうした顧客のニーズに応えるために多くの企業が実践し始めているのが、いわゆる
  ソリューション営業(提案型営業)です。

  ソリューション営業とは、徹底した顧客情報の収集とその分析を通じて顧客が抱える
  課題を把握し、その課題を解決に導くべく自社製品を提案する顧客志向の営業手法です。
  家電メーカーの営業担当者や開発担当者は、顧客が求める冷蔵庫をイメージするために、
  デパートの食材売り場、調理器具売り場などを回って情報収集するといいます。

  そのうえで、人気の食材が収納しやすい冷蔵庫、新しい冷凍機能が付いた冷蔵庫を顧客に
  提案しているのです。 
  顧客志向のソリューション営業を実践するためには多大な時間と労力が必要です。

  しかし、顧客志向を徹底することができなければ、一層シビアになってきている顧客の
  支持を得ることはできません。
  今の企業には全社的にノウハウを共有し、顧客志向に徹した強固な組織力が求められて
  いるのです。

□コンピテンシーとは行動特性
 1.ナレッジ(知識)とコンピテンシー(行動特性) 
  組織力を強化するためには、個々の従業員が有する優れた知識やノウハウ、行動特性を
  共有することが早道です。
  これを実現できる共有型人材マネジメントの代表例が「ナレッジマネジメント」や
  「コンピテンシーマネジメント」です。 

  ナレッジマネジメントは、個々の従業員が有する知識(個人知)を分かりやすく整理し、
  組織全体が共有する知識(組織知)として活用していくモデルです。
  ナレッジマネジメントはITの普及とともに大企業で盛んに採用されるようになりました。
  前述の「カゴメディア」もその一例です。 

  ナレッジマネジメントと同様に、“共有すること”をキーワードとする人材マネジメントに
  コンピテンシーマネジメントがあります。
  コンピテンシーとは、コンスタントに高業績を上げる人材(ハイパフォーマー)の行動
  特性を示します。

  例えば、優秀な営業担当者とそれ以外では、対人関係構築力、顧客志向の強さなどが
  異なります。
  当然、優秀な営業担当者は対人関係がスムーズで、顧客志向で物事を判断することが
  できます。

  コンピテンシーマネジメントとは、高業績者の行動特性をコンピテンシーモデルとして
  分かりやすくまとめ、それを人材評価の指標にするとともに、企業全体で共有、活用する
  仕組みなのです。 

  ナレッジマネジメントとコンピテンシーマネジメントは別々の考え方ですが、ナレッジ
  マネジメントにおいて、ぜひとも共有したい要素の一つがコンピテンシーといえる
  でしょう。

 2.成果主義と結果主義の混同から始まった 
  コンピテンシーマネジメントは、「年功主義から成果主義へ」といった日本企業の人事
  制度改革とともに大きな注目を集めるようになりました。
  年功序列の人事制度改革が進んでいる細かな背景は省略しますが、分かりやすい例では
   ・従業員高齢化により、年功序列型賃金が増加している
   ・企業は、能力や成果によって企業への貢献度を図り、賃金を決定したいと考え
    ている
  といった問題があります。

  企業は業績と従業員の成果を反映した賃金処遇を可能とする人事制度を求めるようになり、
  その結果、成果主義が注目されるようになりました。 
  ところが、成果主義の人事制度を導入した企業で幾つかの問題が表面化しています。
  それは「成果と結果の混同」です。

  本来、成果主義の人事制度は、従業員の成果のみならずそれに至るまでのプロセスも
  評価対象とする仕組みであるべきです。
  にもかかわらず、ここ数年で成果主義の人事制度を導入した企業の中には、最終的な
  結果だけを評価の対象とする仕組みを作り上げてしまったところがあります。

  このような企業に、
   ・普段は高業績を上げるが、たまたま運が悪くて平均的な成績に終わったA氏
   ・普段は平均的だが、たまたま運が良くて高業績を上げたB氏
  がいた場合、B氏のほうが高い評価を受けてしまうこともあります。
  おそらくA氏はその評価結果に納得できないでしょう。

  また、「結果のみを評価する企業の姿勢」を従業員が怖がり始めると、従業員は簡単に
  達成できる目標を掲げるようになります。

 3.コンピテンシーが取り入れられた成果主義 
  成果主義の人事制度は今後も多くの企業で導入されていくでしょう。
  しかし、成果と結果を混同した不完全な成果主義では導入の意味がありません。
  これを避けるためには、最終的な結果だけでなく、成果に至る一連の流れを総合的に
  評価できる仕組みが欠かせません。

  それを実現できるのは、成果に達するまでの行動特性に注目したコンピテンシー
  マネジメントです。
  コンピテンシーマネジメントが有効に機能すると、これまでの成果主義の問題である
  「結果のみの評価体制」を改善することができます。

□コンピテンシーマネジメント導入前の確認
 1.コンピテンシーとは 
  コンピテンシーマネジメントでは、コンスタントに高業績を上げる人材の行動特性
  (以下「コンピテンシー」)を分析します。
  そして、コンピテンシーを体系的にまとめたものを「コンピテンシーモデル」と呼びます。 

  コンピテンシーは、コンピテンシーマネジメントを導入する企業の考え方や対象となる
  職種で大きく異なってきます。
  ここでは、多くの場合に当てはまるような中心的なコンピテンシーを紹介します。

 2.高業績者(ハイパフォーマー)は必ず存在する 
  中小企業の経営者の中には、「自社にはコンピテンシーマネジメントの対象となるような
  高業績者は存在しない」と考える人がいるかもしれません。
  しかし、これは大きな誤解かもしれません。

  社長自身や専門家と比較した時に見劣りすることはあっても、コンスタントに成績を
  残す従業員は存在するはずです。
  そうした人材こそが、その企業における高業績者といえるのです。

  もし、そうした人材すら見当たらないようであれば、社長自身のコンピテンシーを共有
  すればよいでしょう。
  これが本来のコンピテンシーマネジメントの在り方であるかは別の話ですが、社長の行動
  特性を従業員に理解させるきっかけとなることは確かです。

  これにより、自社は共通した価値観(バリュー)を持つようになり、それに基づく行動
  ・思考ができるようになります。

 3.コンピテンシーモデルの設計単位 
  コンピテンシーモデルの設計単位には次のようなものがあります。
  企業は、自社の職務内容、組織編成、業務分担を考慮したうえでコンピテンシーモデルの
  設計単位を決定します。

  ケースによって異なりますが、中小企業の場合には「職種単位」あるいは「人材単位」が
  適しているでしょう。
  「職務単位」で設計するほどの明確な役割分担がされているケースは少ないと考えられる
  からです。 

  一般的には、初めてコンピテンシーマネジメントを導入する企業は「職種単位」で
  コンピテンシーモデルを設計しています。
  内容が分かりやすく、メンテナンスも比較的容易といえるからです。

□ゼロベースから始めるコンピテンシーマネジメント導入
 1.企業が考える成果の明確化 
  コンピテンシーマネジメントのベースとなる高業績者のコンピテンシーを知るためには、
  「企業は何を成果と考えるのか」を明確に定義しなければなりません。
  成果が明確でなければ、それを達成するために必要なコンピテンシーも明らかにならない
  からです。

  また、ここでいう成果とは数字のみで表される成績ではなく、
   ・事業の社会的な意義(ミッション)
   ・企業が尊重する価値基準(バリュー)
   ・企業が望む将来像(ビジョン)
  といった考え方が加味されていなければなりません。

  例えば、高業績を上げたA氏とB氏の2人の営業担当者がいたとします。
  A氏は企業が持つ価値を常に意識しながら高業績を上げ、B氏は企業が持つ価値を全く
  無視して高業績を上げました。

  「高業績こそが成果」としてしまうと、企業(社会人)として正しくない行動をとって
  高業績を上げたかもしれないB氏のコンピテンシーをモデルにまとめかねません。
  企業として好ましくないB氏のコンピテンシーを全体で共有してしまったとしたら、
  企業が尊重する価値観は損なわれ、その存在意義すら危ぶまれることになります。

  コンピテンシーマネジメントの導入において、成果の定義は困難ではあるものの、
  非常に重要な作業なのです。
  この作業は企業経営者や個々の職種のリーダーが慎重に取り組むことが大切です。 
  その後は次のような手順でコンピテンシーマネジメントを導入していきます。

 2.高業績者の選出 
  成果が明確に定義された後には、その成果をコンスタントに達成している高業績者を
  選出します。
  そして、高業績者に対してインタビューを実施してコンピテンシーを探り、それを
  基にコンピテンシーモデルを設計します。

  高業績者は、一つの職種につき2〜3名選出されるのが通常です(職種単位でコンピ
  テンシーモデルを作成する場合)。
  選出のポイントは以下の通りです。

   ・属性(ポスト、勤続年数など)判断:年齢などに偏りのない選出が可能
   ・実績判断:過去の成果を基に選出が可能・経営者の意見:企業の価値基準に
    見合った選出が可能
   ・上司の意見:現場の声を反映した選出が可能

  また、高業績者1人のみを選出することは、個人的な生活背景などが過度に反映されて
  しまう恐れがあるため避けましょう。

 3.インタビューの実施 
  選出された高業績者のコンピテンシーを探るためのインタビューを実施します。
  インタビューは個人単位、グループ単位で行うことができますが、60〜90分程度を
  目安に個人単位で行うとよいでしょう。 

  また、インタビュアーは必ず2人以上とします。
  1人では、高業績者の話を客観的に判断できないからです。
  万全を期すために、インタビュー内容を録音することも効果的です。

  この場合、インタビュアーのうち1人が質問をし、もう1人は録音テープを補足できる
  ようなメモをとります。
  インタビューの際に使用するシートイメージの一例は次の通りです。

 4.日常業務の観察 
  先のインタビュー結果だけでコンピテンシーモデルを設計することは好ましくありません。
  例えば、インタビューを受ける高業績者は、現実とは異なる理想的な回答をするかも
  しれません。
  また、日常的に行っている業務について、その際の行動や思考を言葉で表現することは
  意外と難しいもので、インタビュー結果と現実には大きなギャップが存在することが
  少なくありません。 
  そこで、コンピテンシーマネジメントの導入担当者は、日常の業務風景を観察して
  インタビュー結果と現実のギャップを埋めていかなければなりません。
  また、業務観察の終了後に2〜3人のサンプル従業員を決定し、「その1日、何を考えて
  業務に励んでいたのか」「自分の業務遂行スタンスの中で特に工夫している点、人と
  違う点は何か」などをインタビューしてまとめます。

 5.暫定コンピテンシーモデルの設計 
  インタビューや日常業務の観察から収集した情報を分析してコンピテンシーモデルを
  設計します。
  この際、職種や人材によって必要となるコンピテンシーが異なる点に留意しましょう。
  例えば、営業担当者に適用されるコンピテンシーモデルには、「顧客志向」「他者理解」
  などが盛り込まれているべきです。
  一方、顧客とあまり接することのない経理担当者には「細部への注意力」「コンピューター
  スキル」などが求められます。 
  また、コンピテンシーモデルを設計する際は、長い表現や固有名詞は使用せず、適度に
  抽象化された一般的で分かりやすい語句を用いることが重要です。
  例えば、「A氏は、●●という事案について部下B氏の話を聞いた。B氏は、すべてを詳細に
  報告したわけではないがA氏は即座に本質を理解した」では長すぎます。
  このような場合は、「他者理解」のように簡潔に表現します。

 6.コンピテンシーモデルの修正と完成 
  暫定的なコンピテンシーモデルを設計した後は、企業経営者などがその内容を確認します。
  確認する内容は、「コンピテンシーモデルが、企業が定義した成果に対応したものである
  のか」「内容に矛盾が生じていないか」などです。 
  インタビューの対象となった高業績者にも暫定的なコンピテンシーモデルを確認して
  もらうとよいでしょう。
  優れたコンピテンシーであっても、それは特定の個人しか実践できないものである場合も
  あります。
  全体で共有するコンピテンシーとして不適切なものは排除します。 
  以上のようなステップを経て、コンピテンシーモデルを完成させます。
  その後は、完成したコンピテンシーモデルを人材評価の基準に組み込むとともに、
  なかなか成果が上がらない従業員にコンピテンシーモデルに沿って行動することを推奨
  します。

□コンピテンシー活用で何が実現するのか
 1.コンピテンシーを基軸とした人事戦略の展開 
  コンピテンシーマネジメントの導入によって、採用、配置、教育などの各場面でより
  整合性のとれた人事制度を展開することが可能となります。

  ◎採用 
   人材採用の最重要テーマは、「企業にとって必要な人材をいかに獲得するか」に
   つきます。
   面接の場でコンピテンシーモデルを活用すれば、応募者がその時点でどのような
   コンピテンシーを持っているのか、そのレベルはどの程度なのかなどを明確に
   することができます。
   営業担当者を採用するのであれば、「他者理解」や「顧客志向」の高い人材を
   選抜することができます。

  ◎配置 
   人材配置の基本は適材適所です。これまでは、企業は従業員に複数の職種を担当
   させるジョブローテーションで適所を発見していました。
   コンピテンシーモデルの活用で人材の行動特性を把握できていれば、おのずと
   最適な職種が発見できます。
   例えば、「細部への注意」に優れた人材であれば、経理が適しているかもしれ
   ません。

  ◎教育 
   中堅・中小企業における人材教育はOJTが基本です。OJTは臨場感の高い、より
   実践的な教育方法ですが、教育者となる先輩従業員が教育目標のすべてとなりがち
   です。
   コンピテンシーモデルを意識したOJTであれば、先輩従業員は自分以外にも
   高業績者のコンピテンシーを基準に教育することができます。

  ◎評価 
   日本企業の人事制度は年功主義から成果主義へと向かっています。
   しかし、成果主義の人事制度を導入する企業では、短期の成果のみを評価対象
   としたために発生した弊害に悩んでいます。
   コンピテンシーマネジメントでは、最終的な成果のみならず、それに至るまでの
   プロセスも評価します。
   より多角的な視点から人材評価を行うことが可能となるのです。

  ◎共有 
   高業績者の優れたコンピテンシーは、コンピテンシーモデルとして明確になって
   います。
   それを可能な限り全体で共有することで、従業員は成果を生み出すための正しい
   行動をとれるようになります。
   つまり、ナレッジマネジメントの一環として、コンピテンシーを共有するという
   ことです。

 2.共有に呪縛されるな 
  年功主義に基づく人事制度では、企業は数十年という長い期間をかけて従業員を育て
  上げてきました。
  しかし現在、企業にそのような余裕はありません。

  そこで、成果を評価対象とすることで従業員に刺激を与え、より高いモチベーションで
  業務に励む活性化された企業体質を目指すための取り組みが行われました。
  しかし、短絡的な成果主義は結果として失敗に陥ることになりました。

  年功主義から成果主義への過度な移行に労使が消化不良を起こし、成果と結果を混同
  してしまったのです。 
  そこで新たに注目されたのがコンピテンシーマネジメントです。

  高業績者の行動特性を分析、活用することで短期の業績向上を目指すとともに、それを
  評価対象に加えることで成果主義に関する過去の失敗を克服しようとしているのです。 
  コンピテンシーマネジメントは、年功主義から成果主義への移行を始めた日本企業に
  適した人材マネジメントのモデルといえます。

  実際、ソニー、ユニ・チャーム、アサヒビールなどで導入されています。 
  ただし、誤解してならないのは、コンピテンシーマネジメントも万能ではないことです。
  例えば、コンピテンシーモデルとなるのは、過去において実現された高業績者の行動
  ・思考特性です。

  現在のように企業を取り巻く環境変化が急速な状況下では、半年後にそれが通用する
  とは限りません。
  また、ナレッジマネジメントについても同様ですが、すべてをデータベース化して
  共有する必要はありません。

  大企業では何百、何千という情報をデータベースに構築し、そのメンテナンス専属の
  従業員を配置しています。
  中小企業がそこまで行う必要はないでしょう。 

  大切なのは、本当に必要なものだけを選択して共有することです。
  精緻なネットワークシステムは必ずしも必要ではありません。
  たとえ紙ベースでも、あるいは口頭であっても、価値あるものを分かち合うことを
  徹底すればよいのです。

□顧客志向が貫かれた組織を目指す 
 大企業では、顧客と日常的に接するのは営業担当者やクレーム処理部門など一部の従業員
 です。
 一方、営業、製造、人事、総務といった縦割り的な組織が明確でない中小企業では、
 どんな従業員も顧客と接する機会に恵まれています。

 中小企業の従業員の顧客志向は必然的に高いものとなるでしょう。
 とかく顧客志向は大企業で盛んにいわれていますが、実は顧客志向を全社徹底すべきは
 中小企業のほうであるともいえるのです。 

 それを実現するためには、企業経営者の意向を組織の隅々まで行きわたらせるとともに、
 顧客志向の高い従業員の行動・思考特性を全社的に共有することが大切です。
 そして、企業経営者の方針や顧客志向の高い従業員のコンピテンシーを全社的に徹底する
 手法のヒントがコンピテンシーマネジメントであるわけです。 

 コンピテンシーマネジメントは、成果主義の人事制度における新しい評価方法の一つ、
 あるいは企業(従業員)の強みを認識するためのモデルとしていわれることが多くあります。
 しかし、コンピテンシーマネジメントの可能性はそこにとどまりません。

 中小企業において重要なコンピテンシーが顧客志向であれば、顧客志向の強い従業員を
 高く評価すると同時に、その行動・思考特性を共有すればよいのです。 
 何も教科書通りにコンピテンシーマネジメントを導入する必要はありません。

 今一度社内を見回し、顧客志向の高い従業員の行動・思考特性を改めて全従業員が認識
 してみましょう。
 それが顧客志向の組織に成長していくための確実な第一歩となるのです。

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全員参加型経営

経営の見える化

経営の見える化
 

  ■経営の見える化とは

   近年「経営の見える化」という言葉をよく耳にするようになりました。

   中小企業においても、この考え方を取り入れて全社一丸となった取り組みが推進されて
   いますが、十分な成果につながっていないケースも多いようです。

   ここでは、「経営の見える化」を自社経営にいかすためのポイントについて紹介します。

   1.単純な情報公開は逆効果になる

    見える化とは、その言葉通りに解釈すれば、それまで見えなかった、あるいは見え
    にくかった情報を誰が見ても分かるようにすることです。

    中小企業では、経営陣と社員、あるいは社員間の関係が密接であり、つねに誰が何を
    しているか様子をうかがうことができるため、すでに相互理解ができている、つまり
    見える化ができていると考えがちです。

    しかし実際には、経営者から社員に対してビジョンや方針が十分に伝わっていないこと
    は多いものです。

    ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースも
    あるでしょう。

    また、社員同士も自分の目先の業務遂行に注力するあまり、全社の動向やぼかの
    メンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

    このような状況を解決するために、情報システムを使って積極的に情報を公開している
    会社もあります。

    しかし、単純にシステムを導入するだけでは、「見ようと思えばいつでも見られる」との
    安心感がアダになり、逆に以前よりも状況の認識や問題の発見が遅れることもあり得る
    のです。

   2.見える化と可視化

    見える化の本当の意味を考えるために、見える化と、いわゆる「経営の可視化」との
    比較をしてみましょう。

    経営の可視化とは会社にとって都合のよいこと悪いことの区別なく、すべての情報を
    オープンにして誰もが目にすることができる状態にしておくことです。

    そのおもな目的は情報を公開することそのものにあると認識されていることが多い
    ようです。

    一方、見える化の目的はあくまで「経営上の問題を解決する」ことにあります。

    見える化された指標は、経営者と全社員が一丸となって問題解決していくための共通の
    指針やモノサシにならなければなりません。

    また、可視化はできるだけ多くの情報を公開することに主眼が置かれているため、「手の内
    は全部明かすから見たい人は勝手に見てね」というのが基本的なスタンスです。

    これに対し見える化では、情報を相手に確実に理解してもらうために、公開すべき情報の
    吟味、分かりやすい見せ方の工夫などがなされていなければなりません。

    つまり、ガラス張り化が会社から社員に対する一方的な働きかけの側面が強いのに
    対して、見える化では問題解決という共通の目的に向かった相互理解が要求される
    のです。

    また、見える化では、可視化だけでは見えにくい情報についても、問題解決に必要と
    思われれば、何とか工夫して見えるようにすることが求められます。

    このように見える化の本当の意義は、

     システムなどで情報を羅列的に見えるようにするだけではなく、
     共有すべき情報が体系的に整理されており、社員がその情報を
     自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用すること

    にあるのです。

   3.社長にとっての見える化

    社長にとっての見える化の最大の目的は、自らの意思決定の精度を上げることに
    あります。

    たとえば、パイロットが飛行機を操縦する際には、飛行に必要なさまざまな情報が計器に
    よって正確に表示されていなければなりません。

    いかにベテランパイロットといえども、経験や勘だけに頼ることなく計器によって自機の
    状態をつねに把握しておくことが求められます。

    社長が会社を導いていくこともこれに似ています。

    見える化された指標は飛行機に設置された計器と同じです。

    最終的な意思決定は社長自身が行うことには変わりありませんが、見える化された指標
    を活用することで飛行の安全性・効率性を高めることができます。

    社長はこれらの経営上の重要指標を見極めて、つねに把握しておかなければなりません。

    ところで会社のなかでもっとも見える化が進んでいない人は誰でしょうか。

    それは残念ながら社長自身であることが多いのです。

    社員たちは程度の差こそあれ「うちの社長は何を考えているのかよく分からない」と
    感じているものです。

    これは社長と社員の立場の違い、仕事の幅の違い、知識や経験の違いなどからくる
    もので、ある意味仕方のないことです。

    しかし、だからこそ社長は全社の見える化推進にあたって、まずは自分自身の考えや
    想いを社員たちにできるだけ理解してもらう必要があるのです。

    社長が社員に対して見える化すべきもっとも重要なことは、「会社はどこへ向かっている
    のか」(経営理念など)、「そのために何をすべきか」(中期経営計画など)について、
    社長自身がどのように考え、どのような「想い」をもっているのかということです。

    社員にとって肝心のこの部分がよく分からないと、どのように見える化を行っていけば
    よいのかが分かりませんし、見える化実現のためのやる気もわいてきません。

  □見える化実現によるメリット

   経営の見える化は社長だけではなく、一般社員も含めた会社全体に大きなメリットを
   もたらします。

   おもなメリットを整理すると次のようになります。

   1.ビジョンや経営戦略に対する社員の理解が深まる

    会社全体のビジョンや経営戦略について明確化し、それを社員にきちんと提示できて
    いる会社は多くありません。

    また、仮にそれができていたとしても、社員がそれを自分のものとして積極的に理解
    しようとする動機付けができておらず、結果として浸透していないといったこともある
    でしょう。

    見える化が実現すれば会社全体の姿がつねに共有され、かつ社員の経営参画意識も
    高まるため、ビジョンや経営戦略への理解が深まります。

    また、採用時に会社が必要とする人材を伝えやすくなるため、それに共感できる人材を
    獲得しやすいというメリットもあります。

   2.ビジョン、戦略、戦術、運営に一貫性をもたせることができる

    見える化によって全社員が共通の判断基準・行動基準をもつことで、ビジョンを戦略、
    戦術、運営のレベルまで正しくブレイクダウンすることが可能になります。

    経営幹部から一般社員までそれぞれの立場に応じて「自分は何を目標とすべきか」、
    「そのために何をすべきか」が明らかにになり一貫性をもった取り組みが可能になる
    のです。

   3.一枚岩の組織をつくることができる

    見える化によってビジョンや戦略を社員が共有することで、全員の力で何とかしてそれを
    達成したいという一体感が生まれます。

    自分自身の目標達成はもちろんのこと、ほかの部門やメンバーの目標も共有することで、
    未達部門や未達メンバーのフォローも積極的に行おうとする姿勢も期待できるでしょう。

    私たちは人の頭の中をのぞくことはできません。

    したがって相手が何を考えているのかは、その人の言動から推測する以外ありません。

    しかし、同じ職場で働く人間として、少なくとも仕事に関して相手がどのように感じている
    かはできるだけ深く知っておきたいところです。

    相互理解が進んでいない集団では全社一丸となった取り組みなど期待できません。

   4.現場の変化に即応したスピーディーな意思決定をおこなうことができる

    社長は定期的な会議や報告書などによって会社の状況を把握していることが普通です。

    しかし、そこで入手しているのは「売上・利益」などのすでに結果として現れている業績
    情報が中心であり、たとえば、「取引先の満足度低下」などの経営悪化の予兆ともいえる
    情報は見過ごされがちです。

    見える化によって各部門の業務内容や課題に応じた指標をあらかじめ設定し、それが
    社長のもとに集約されていれば、社長はその変化に応じて問題が深刻化する前に
    スピーディーな意思決定を行うことができます。

   5.個人のノウハウが組織のノウハウとして蓄積される

    社員は日々の業務を通じてさまざまなノウハウを獲得していきます。

    そして、通常そのノウハウは個人に蓄積されていくだけで、部門全体には十分にフィード
    バックされません。

    ごく基本的な業務の段取りやよくあるクレーム対応などについてはマニュアル化されて
    いることもありますが、マニュアル化は大変手間がかかる業務です。

    また、現場は日々変化していますから、1年前のマニュアルはもう使えないということも
    あります。

    見える化によって全社員の日々の活動内容を共有することによって、日報などの報告書
    自体を組織のノウハウとしてマニュアル化し、さらに日々更新していくことが可能になり
    ます。
  
   6.より多面的な視点でのトラブル回避が可能になる

    業務のなかで問題が生じた場合、部下は上司にそのことを報告します。

    しかし、部下自身は「この程度は問題ない」と認識していても、上司の感覚では「これは
    まずい」と感じることはよくあります。

    また、部下はできるだけ悪い報告はしたくないと考えていることもあるので、このギャップ
    は起こって当然なのです。

    見える化によって活動内容のポイントが確実に上司に伝わるようになれば、上司は
    トラブルの予兆を感じ取って未然に手を打つことができます。

    さらに部門を超えた情報共有を行うことで、たとえば、営業マンの日報を読んだ経理部長
    が、「この会社の信用状況は大丈夫か」といった視点での指摘を行うことも可能に
    なります。

   7.内部統制・コンプライアンスが強化される

    見える化とは「やるべきこと」、「今やっていること」を明らかにすると同時に、「やっ
    てはいけないこと」を明らかにすることでもあります。

    明らかに法令に反することをやってはいけないのは当然ですが、白か黒か個々の社員
    レベルでは判断しにくいグレーゾーンもあります。

    また、それぞれの会社の経営方針によって、「法令違反ではないが、自社ではこのような
    ことはやってはいけない」ということもたくさんあるでしょう。

    会社としてはこの部分に関するスタンスをはっきりさせておくことも重要でしょう。

    たとえば、自社の経営理念に反するような行動は許されるはずがありません。

    見える化によって「自社としてやってはいけないこと」と、社員が実際に「今やっている
    こと」を明らかにすることによって内部統制・コンプライアンスの強化につながります。

   8.公正・公平な評価につながる

    多くの会社では成果主義の人事考課制度が導入されており、評価項目として受注額や
    売上高など最終的な成果指標が取り入れられています。

    これらの指標は客観的であり合理的なように思えますが、成果指標による評価だけでは、
    社員の地道な努力や他者への貢献など見えにくい部分は考慮されません。

    営業部門などにおいては顧客に恵まれたかどうかの「運」に左右される部分も大きい
    でしょう。

    また、そもそも間接部門などでは客観的な成果指標を設定しにくい場合もあります。

    その結果、成果主義の導入を進めれば進めるほど社員の不満が高まることもあります。

    見える化によって、あらかじめ「何をもって成果とするか」を明らかにしておき、最終的
    な成果指標だけではなく、見えにくい部分も積極的に評価することで、評価に対する
    公正感・公平感が高まります。

   9.取引先などの外部からの信頼を得られる

    見える化の範囲は社内だけにとどまりません。

    機密事項などの一部の情報を除いて、会社に今何が起こっているかをできるだけ包み
    隠さず分かりやすく公開することで、外部からの信頼を得やすくなります。

    また、自社の見える化を進めて外部からの信頼を得ることによって、逆に外部からの
    情報も入手が容易になり相互理解が深まるという効果も期待できます。

  □見える化への3つのステップ

   では、見える化実現のためには何から始めればよいのでしょうか。

   すでに述べたように見える化の本当の意義は「共有すべき情報が体系的に整理されて
   おり、社員がその情報を自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用すること」
   にあります。

   このように見える化とは大変広い意味であるため、見える化への取り組みや定義は企業
   によってさまざまです。

   ここでは、見える化を3つのステップに分けて、それぞれのポイントとおもな要件を紹介して
   いきます。

   1.第一ステップ

    「ビジョン」・「戦略」・「ルール」の見える化

    社長が社員に対して「ことあるごとに目標や組織のあり方を伝えている」つもりでいても、
    社員によって受け止め方が違っていたり、それが会社のビジョンに基づくものであると
    理解されていないようでは、見える化されているとはいえません。

    見える化において、重要なのは「めざすべきビジョンが示され、ビジョン実現のための
    戦略・ルールが共有できていること」にあります。

    スポーツ同様、経営においても同じルールがあってこそ、めざすべき目標に向かって
    何をすべきかが伝わるようになるのです。

    <「ビジョンやルールの見える化」のためのおもな要件>

     ・会社のあるべき姿、経営ビジョンなどが明文化されている

     ・社員の行動指針があり、会社として「やるべきこと」、「やってはいけないこと」
      が示されている

     ・ビジョンに基づいた中期計画、年度計画が策定され、かつ公開されている

     ・3年先の自社の中期目標について、その骨子部分は全社員が深く理解して
      いる

     ・社長は少なくとも月に1回は自分の言葉で社員にビジョンや戦略について
      語っている

     ・経営幹部陣はビジョンや戦略について社長とほぼ同レベルで理解している

   2.第二ステップ

    「問題」と「課題」の見える化

    見える化の次のステップは、現在自社に起こっている「問題」を把握したうえで、
    「では何をすべきか」という「課題」が明らかになっている段階です。

    活力ある企業体であるためには、「問題」(あるべき姿と現実のギャップ)の把握と 
    「課題」(ギャップ解消のための施策)の設定を全社員が自立的に行っていく必要が
    あります。

    たとえば、自社商品の既存顧客からの注文が減少している場合、「既存顧客への営業
    強化」、「新規顧客の開拓」、「新商品の開発」などのさまざまな課題が考えられます。

    また、問題をさらに掘り下げると「社員のモチベーション向上」などにも力を入れる必要が
    あるかもしれません。

    これらに優先順位をつけ、特定の課題に絞り込んだり、複数の課題を組み合わせたり
    して、「今何をするべきか」を明らかにするのが、見える化の第二ステップです。

    なお、問題には「誰の目にも見えやすい情報」だけではなく、「注意しなければ見えにくい
    情報」、さらには「見えないように隠されている情報」などもあります。

    解決すべき問題を漏れなく取り上げることが必要です。

    <「問題と課題の見える化」のためのおもな要件>

     ・社長は全社の状態把握のために必要なさまざまな経営指標を入手し、経営
      判断に活用している

     ・全社や各部門にとって何が問題かについての定義が明らかになっている

     ・問題が起こったときには要因分析などで再発防止策を徹底している

     ・社長、経営幹部、部門長など役職に応じた裁量範囲が明文化されている

     ・部門目標、チーム目標、個人目標が明確になっており、全メンバーが共有
      している

     ・部門長は他部門の業績状況を把握し、必要に応じて提言を行っている

   3.第三ステップ

    「進捗管理」の見える化

    見える化の第三ステップは第二ステップで設定した「今すべきこと」について、実際に
    どの程度取り組みが進んでいるかを把握し、必要に応じて新たな手が打てるようにする
    こと、つまり進捗管理ができている状態です。

    たとえば、「既存顧客への営業強化」というテーマに対しては、実際にどのような取り組み
    を行っていくのか、また、どのような状態になったら目標を達成したことになるのかに
    ついて明確にします。

    具体的に営業マンの訪問回数や最終的な注文額などの管理指標を設定し進捗を管理
    していくのです。

    <「進捗状況の見える化」のためのおもな要件>

     ・ビジョン・戦略に基づく重点分野について具体的な管理指標があり進捗
      管理されている

     ・数値計画の進捗状況は少なくとも週次単位で集計され、幹部陣で共有
      されている

     ・経営会議、部門会議など会議体系が整理されており、適切に運用されている

     ・報告・連絡・相談の基準が明確になっており適切に運用されている

     ・部門長はメンバーの定期報告から行動結果だけではなくプロセスを読み
      取っている

     ・メンバー全員のスケジュールが共有されている

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全員参加型経営

全員参加型経営のためのPDCAサイクル
 

  ■全員参加型経営はPDCAサイクルで進める

   全員参加型経営を定着させるためには、会社の基本的なマネジメントサイクルで
   ある、「計画(plan)」⇒「実行(do)」⇒「評価(check)」⇒「改善(action)」に
   沿った取り組みが必要になります。

   DCAサイクルとは、まず目標を設定して、それを実現するため計画を設計する、
   計画を実施し、その達成状況を確認・分析する、そして、分析結果を次回の計画
   策定や実行プロセスの改善にいかしていこうという一連のステップのことです。

   1.計画(Plan)

     全員参加型経営はめざすべき姿を全社員でつくり上げていくことから始まる。

     社長や上司が一方的に計画を提示するのではなく、計画策定プロセスから全
     社員を参加させることが大切です。

     社員は自分自身でつくった計画だからこそ、「やらされ感」ではなく、「ワクワク
     感」をもってその実現に向けて自発的な努力を行うのです。

     中期経営計画事業計画を策定する場合には、社長や幹部陣で骨子の素案
     を検討した後、それをできるだけ早い段階で社員に公表します。

     その際には「意見がある人はどうぞ」という一方的な投げ掛けではなく、希望
     者が全員参加できる骨子検討会を開催するなど、社員が骨子の理解を深め、
     意見を述べやすい環境をつくることが必要です。

     骨子検討会では、「自社のめざすべき姿」、「現状分析」、「現状とめざすべき
     姿のギャップ」、「ギャップ解消策」などを徹底的に議論し、より深いレベルでの
     認識共有を図ります。

     可能であれば合宿形式で行うことで心理的結束も一層強めることができます。

     骨子検討会は小規模の会社であれば、一般社員も含めて一堂に会して行う
     のが望ましいですが、それが不可能な場合でも、少なくとも部門長クラスは参
     加必須とすべきでしょう。

     個々の社員レベルの計画を策定する場合にも、部門長がノルマを押しつける
     ような目標数字の割り振りではなく、一人ひとりが自らの目標を設定し、それに
     よって全社にどのような貢献をしていくのかを考えさせることが大切です。

   2.実行(Do)

     計画を実行していく段階では、「自己責任の全う」、「他者への積極的関与」、
     「適切な権限委譲」について特に留意します。

     (1)自己責任の全う

       会社全体を強くしていくためには、一人ひとりの社員が自分に与えられた
       役割を正しく認識し、それぞれが「自己責任を全う」することが前提となる。

       まずは自分のやるべきことをやったうえで、会社全体のことも考えていこう
       というスタンスです。

       能力不足などで自己責任を十分に果たせていない場合には、自己研鑽に
       努めなければなりません。

       それができない社員は全員参加型経営のメンバーとしての資格はない。

     (2)他者への積極的関与

       自己責任を果たすだけではなく、ほかの社員の業務内容や立場を理解し
       て、自らが積極的に関与する姿勢も大切です。

       困っているメンバーを助けられないか」、「部門全体の業務改善のために自
       分ができることはないか」などつねに周囲への関心をもち続けなければなり
       ません。

     (3)適切な権限委譲

       社員に責任を求めるためには、それに見合った権限委譲も必要です。

       役職に応じた適切な権限委譲を行うことで、社員の自立心は高まり、より高
       い次元での問題意識をもてるようになります。

       また、裁量の範囲内では自分の判断で臨機応変な対応が可能になり、経
       営のスピードもアップします。

   3.評価(Check)

     社員は自分自身の役割について、十分に遂行できたかどうかを全社的な見地
     から確認します。

     また、自部門全体の計画、他部門の計画、全社計画などの達成状況について
     も自ら情報を入手し、理解する必要があります。

     全員参加でつくった計画ですから、その達成状況の評価も全員で行うのです。

     全社計画が未達成だった場合には、幹部社員から一般社員まで全員がその
     原因を分析します。

     そうすることで、さまざまな立場・経験からの解決策検申が可能になります。

     そのためには、計画の達成状況に関する情報をできるだけわかりやすい形
     で、全社員に公開することが必要です。

     たとえば、「月次単位の売上・利益のデータ(会社全体および部門別)」、「全社
     的な重点取り組み課題に関する進捗状況」、「それらに対する社長や担当部
     門長のコメント」などを公開することなどが考えられます。

     社員はこれらの情報を入手し、分析することで、当事者意識をもって全社の経
     営改善に向けた提言を行うことができます。

     そして、社長や部門長は、たとえ自分にとって「耳が痛い」提言であっても、社
     員の声に積極的に耳を傾ける姿勢が求められます。

   4.改善(Action)

     全社員で行った評価を次回の計画策定や実行プロセスの改善にいかします。

     中期経営計画や事業計画を新たに策定したり修正を加える際には、ステップ1
     の「計画(plan)」と同様の手順で、全社員で再び議論して合意形成を行いな
     がら進めていきます。

     また、個々の業務の実行プロセスについて明らかになった改善点について
     は、できるだけ業務レベルにまで落とし込んだうえで、ルール化・マニュアル化
     して社員にその徹底を求めます。

     さらに、全員参加型経営の仕組みについての改善も必要です。

     社長は、全員参加型経営が狙い通りの成果を生んでいるか」、「社内全体に
     しっかりと定着しているか」、「進め方に関して改善すべき点はないか」などを
     総括して、さらなる社員の意識・行動改革につなげていきます。

     社長自身が「全員参加型経営実現のために自分はこう変わる」と宣言した項
     目についても、真筆な姿勢で振り返りを行い、新たな決意を表明することも必 
     要でしょう。

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全員参加型経営

経営は全社一丸

 経営は全社一丸
 

  ■総力戦の時代

   社長であれば誰もが「社員が一丸となった全社一丸経営を実現したい」と考えている
   でしょう。

   少数精鋭で勝負している中小企業にとって、社員の一人ひとりの能力を最大限に引き
   出し、目標達成に向けて力を結束することは最重要課題といえます。

   現有資産を最大限に活かすことが中小企業の生き残り勝ち残り策なのです。

   経営理念や各種の経営計画策定、計画の遂行、社内ルールの遵守など社内のすべての

   業務プロセスについて、全社員の知恵・能力・努力を結集していこうという経営
   スタイルです。

   全社一丸経営では、社員は全社方針や部門方針などを十分に理解・納得し、自分に

   できることは何かを自発的に考えて行動します。

   営業には三層営業という言葉がある。

   既存客であれ、見込み客であれ営業担当だけに任せておくと情報の量、質が担当
   レベルにとどまり、本来、取れるべき受注がとれなかったり、ライバルにシェアを奪わ
   れたりしてしまう。

   特に上位の顧客、得意先がそうなると業績に与える影響が極めて大きなものになっ

   てしまいます。

   そのためにここぞという時に上司の部課長が訪問し、とどめの一発に社長も訪問して
   受注を確実なものにしてしまうのです。

   これが三層営業で多くの企業でとりいれられていた。

   しかし、最近の厳しい環境下、顧客のニーズが極めてシビアになり、縦の三層でなく、
   横の部門の専門家が揃って顧客ニーズを解決してゆくチーム営業やプロジェクト営業
   の時代となった、総力戦の時代です。

  □全社的対応が必要なコスト競争環境
   このような厳しい経営環境時に、従来のように部門別発想で対策を考えていては顧客
   ニーズに到底応えられない。

   会社がなぜ変われないのか、それは部門意識であり、保身本能が組織の壁を越えて
   対策を考えていこうという、真剣かつ謙虚な行動を起こさせなかったからに過ぎない
   のです。

  □理念、方針を明確にし、組織の一体化(ベクトルの一致)を図る
   大企業であれ、中小企業であれ、ただ人が集まった集団ではまさに「烏合の衆」に
   他ならない。

   全社員のベクトルが一致せず、反対をむいた人間がいるとマイナスになってしまう。

   会社というのはトップの考えを幹部、社員が理解し、実践し実現してゆこうとする運命

   共同体です。

   したがって社長のやるべき仕事は次の通りであり、それを通じて社員のベクトル(力)
   をひとつの方向に集約させることが大事なのです。

   すなわち
    ①方針を明確にし、
    ②社員を迷わせない
    ③組織をつくり
    ④社員を正しく評価し適材配置を行なう
    ⑤計画をつくり
    ⑥タイムリーに軌道修正する仕組みをつくり
    ⑦部門間調整しながら
    ⑧社員を教育する。

   この基本を確実にまわすことである。

   たとえば「わが社はCS(顧客満足)経営を通じて地域ナンバーワンの○○業となる」と

   いうトップ方針を出したとするなら、そのためにどう考え、行動するのかという考え方、
   行動の基準を明確にしないと絵に描いた餅となり成果につながらない。

   顧客クレームは顧客の生の声、最重要処理事項であり、これをないがしろにする社員

   はわが社の社員ではない。

   具体的にはこうするんだと明確にし、徹底しないと一味ちがうオンリーワンの会社には
   なれない。

   しかしどんなにすばらしい仕組みをつくっても、動かすのは社員である人です。

   ⑧の社員教育ができていなければ仕組み自体が画餅に帰してしまう。

   しかし、その社内の教育が問題を抱えています。

   厚生労働省「能力開発基本調査」においても、全体の75.9%の事業所が「人材育成に
   問題がある」と回答しています。

   中小企業の多に見られる場当たりで無計画な教育の横行です。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。 

   
  □方針徹底のためのコミュニケーションパイプ
   トップの考えを末端まで徹底するための手段であるコミュニケーションパイプ。

   たとえば、経営方針発表会、経営会議、営業会議、朝礼、終礼、社内報、親睦会、
   社内旅行、社内研修会、代理店会議などをいう。

   ある中小企業は、全員で方針書をつくりあげ、毎年、社員が項目別にブラッシュアッ

   プし、見事なCSマニュアル、業績向上ツールに仕上げている。

   中途採用社員が入社してきたら、まずはこの方針書を写させ、頭に叩き込ませる。

   そして毎日の朝礼で1項目づつ確認しあい、習慣化するまで反復訓練していく。

   さらには月1回の方針徹底会議であらためて年度方針、部門方針の実施状況を確認
   します。

   この方針の実施度が部門や個人の考課項目になっており、社員の最大価値基準と

   なっているのです。

   ここまでしないと方針は徹底しないものです。

  □部門の壁を取り除き、複合チームで案件に対応
   1.案件対策会議の型決め
     営業対策にしろ、開発、コストダウン対策にしろ、さらには社風刷新対策にしろ
     組織横断的にメンバーを編成した案件対策会議を型決めし、全社的に案件対
     応し、失注とかタイミングロスにつながらないようにする。

   2.見込み情報検討会議
     参加者…社長、営業担当役員、営業メンバー、設計課長、資材課長、製造課
           長、総務課長

     (1)開会宣言
     (2)前回議事録チェック
     (3)トップコメント
     (4)業績先行管理から見た現状目標差額の確認(真の目標は3カ月累計目標
       差額)
     (5)差額対策とランク別見込み情報確認
       担当からの状況報告。それにもとづくチーム営業対策の明確化
     (6)決定事項確認
     (7)閉会宣言

  □第一線担当の情報感度レベルアップとトップの現場掌握によるクイック対応
   1.第一線担当の感度レベルアップ
     チーム営業対策を明確にするためには、顧客と接点を持っている営業担当や
     売り場担当者の顧客ニーズ探知力や、受注のためのキーファクターが何であ
     るかの分析力が問われる。

     第一線担当の感度が鈍いとなぜ受注が取れないのか、売上げが伸びないの

     か、根本問題を押さえない会議の繰り返しになる。

     そこで前述の三層営業で、まずはトップ、幹部の現場掌握が必要となり、会う
     べき相手を変えたり、視点を変えることで、根本問題を明らかにする。

     そうすることにより真の購買決定者は誰であるのかとか真のライバルはどこで

     あるのか、 その上で勝つためのチームを再編して早期にクロージングにもっ
     ていく対策に取り組む。

   2.顧客の声をあるがままに掴み、会議の場に吸上げる
     たとえば小売の店頭において、来店客に聞かれた事や、なにげないつぶやき
     から顧客のニーズを掴み、品揃えやサービス政策に反映させる必要がある
     が、担当者の意識レベルが低かったり、顧客の声を引き出す方針や仕組みが
     ないと、業績アップのための声を聞き逃したり無視・放置等されてしまう。

     従って顧客のあるがままの声を即、手帳などに控えさせる仕組みにし、終礼な

     どで確認するようにし、即、改善指示をトップが出すことによりクイックレスポン
     スで顧客ニーズに対応する組織体質を作り上げることが重要である。

  業績先行管理の仕組みづくり(全社員に目標差額意識を持たせる)
   1.全員経営にもっていくための管理レベルのアップを図る
     管理レベルや社員の業績意識、改善意識のレベルをチェックするには「あなた
     の今月の実績はどうですか」と質問してみることです。

     「だいたい○○です」とか「パソコンのデータを見れば分かりますが‥」と回答す
     るようでは落第。

     さらに事務担当者にも質問してまったく数値を意識していないようでは問題外。

     営業が外で奮闘しているのに社内の事務担当者がいい加減な顧客対応をし
     て、顧客を怒らせ商談がふいになるといったケースはよくある。

     「昨日までの実績は累計粗利でいくらです。対目標何%、昨対何%、何日遅れ

     です。今月の目標を達成するには日割り目標はいくらです。そのための今日
     の行動計画は・・・」と営業担当が即答すれば管理レベル、業績意識レベルは
     合格点である。

   2.業績先行管理の仕組みづくり(全社員に目標差額意識を植え付けさせる)

     今月の業績は3カ月前に打った手の結果であり、今月の行動が3カ月後の実
     績に反映される。

     従って、目標とは今月の当初計画目標ではなく、3カ月先の累計目標から先月
     までの累計実績を差し引き、これから3カ月の当選確実の実績読みを引いた
     もの(3カ月累計目標差額)と捉えることが業績先行管理です。

     その差額目標を個人別に割り振り、今月の差額対策行動に具体化させるのです。

     すなわち3カ月先の累計目標を達成するために今月何をすべきか、種まきは、
     根回しは、刈り取り活動はと行動計画に落とし込ませるのである。

  □朝礼を全社リズム作りの場、人づくりの場として見直す
   朝礼の狙い、本質はやる気作りの場、方針徹底の場、成功情報共有の場、教育
   の場、今日の行動の狙い、やり方を定める場である。

   この狙いに合致していない朝礼はまさに、1日のスタートをだらけさせる場であり、
   即刻改善が必要です。

   朝礼には必ずトップ、幹部が参画し全員経営を推進するリーダーシップを発揮し

   なければならない。

   徹底すべきことは、
    1.今、何が大事か常に明示し、明確な方向性をしめす
      最大かつ最重要な判断基準は経営理念であり、年度経営方針であり、さら
      には具体的な数値目標であり、今月目標差額数値である。

      毎朝、部門別、担当別の差額を確認し、今日の日割り目標を確認徹底する。

    2.決めたことを守り、守らせる社風をつくる

      経営は理論ではなく実行であり、予定ではなく結果である。

      朝、行動予定を発表させ、終礼で実行結果を確認する。

      この段階で妥協がないよう、トップ幹部の徹底指導が必要であり、この反復
      が強い会社体質をつくる。

    3.きめ細かい指導をタイムリーに行う

      社員の計画、実行、検討、修正行動(PDCA)のリズムをトップ幹部の
       チェック(C)→アドバイス(A)→ヘルプ(H)→フォロー(F)で
       行動が成果につながるよう指導してやる。

    4.部下をヘルプし、勝ちリズム作りを行う

      今日の重点客へのヘルプ体制を確立し、勝ちリズムを作ってやる。

      弱いから負けるのではない。

      負けるから弱くなるのである。

      全員経営で勝ちリズムを作っていくことが肝要。

    5.眼で見る管理で全社一体感を作り上げる

      全員が目に付く場所に差額対策管理ボードをつくり、
       (1)今月の目標累計差額
       (2)昨日までの実績
       (3)残目標
       (4)日割り目標
       (5)見込み情報一覧

   全員が差額を意識し、決定案件の担当者は朝礼で発表。

   全員が成功ノウハウを共有化するのです。

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経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
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