企業リスクと危機管理マニュアル

ヒューマンエラー対策の基本

■ヒューマンエラーの脅威

 十分な対策を講じていても、事故発生のリスクは常にあります。

 その原因はさまざまで、「ヒューマンエラー(人間の誤認識や誤動作によって引き起こされるミス)」
 もその1つです。

 「個人情報の漏洩」など、ヒューマンエラーによる事故はさまざまな分野で起こり得ます。

 これらの事故は、「信頼の失墜」「多額の賠償責任の発生」「顧客の安全性の損失」など、取り返しの
 つかない大きな損害を顧客や企業に与える恐れがあります。

 IT化の進展でヒューマンエラーは起こりやすくなり、また想定される被害も大きなものになっています。

 企業は、日ごろからヒューマンエラーに対する適切な対応をしなければなりません。

□ヒューマンエラーの類型と対策

 1.情報処理のプロセスは3つ

  人間による情報処理のプロセスは、

   (1)入力のプロセス(情報を自身の中に取り込むプロセス)

   (2)媒介のプロセス(取り込んだ情報を判断するプロセス)

   (3)出力のプロセス(判断に基づいて行動を決定、実行するプロセス)

  の3つのです。

  ヒューマンエラーは、この全てのプロセスで発生する可能性があります。

  また、各プロセスで生じた個々のエラーは軽微でも、-連の情報処理のプロセスの中でそれらが
  連鎖することにより、より大きな事故を発生させる恐れがあります。

 2.入力エラーの特色と防止策

  情報を入力するプロセスで発生するエラーです。

  集中力の欠如、見落とし、見間違い、聞き間違いなどにより、情報を正しく知覚・認知できない
  ことをいいます。

  例としては、「数字の入力ミス」などがあります。

  入力エラーを防止するために、指さし確認を行う、複数の担当者が読み合わせを行うなどの対策が
  効果的です。

  また、休憩時間を設けたり、集中力の高い朝に間違いやすい業務を行うなどします。

 3.媒介エラー

  情報を媒介するプロセスで発生するエラーです。

  油断、誤った知識、経験への依存などにより、情報を正しく判断・決定できないことをいいます。

  例としては、「正しいはずだという思い込みにより、誤った数字のまま次工程に進める」こと
  などがあります。

  媒介エラーを防止するために、上司が定期的にチェックして油断が起こらないようにしたり、
  勉強会を行って正しい知識を習得できる機会を設けます。

  また、マニュアルを作成し、業務や確認事項の統一化を図るなどします。

 4.出力エラー

  行動を出力するプロセスで発生するエラーです。

  やり忘れ、やり間違い、勘違いなどにより、計画通りに正しく実行できないことをいいます。

  例としては、「数字の最終チェックを忘れてしまう」ことなどがあります。

  出力エラーを防止するには、「To Doリスト」(やるべき事柄をまとめたリスト)を作成する、
  余裕のあるスケジュールを組んで抜け漏れをなくすなどします。

  また、1つの業務を複数の社員が担当できるようにして、互いに確認し合うのもよいでしょう。

 5.ヒューマンエラーの検知

  以上のような対策を講じてもヒューマンエラーは発生します。

  そうしたヒューマンエラーがどのような状況で起こったのか、対策に間者がなかったのかを確課し、
  改善していくことが大切です。

  また、ヒューマンエラーが発生した場合を想定し、損害の拡大を防ぐための対応も検討しなければ
  なりません。

  具体的には、報告経路を定めて周知したり、クレーム対応の訓練をしたりします。

  マニュアル化するのもよいでしょう。

□防止対策の運用上の留意点

 過去に発生したヒューマンエラーによる事故を検証してみると、「決められた通りに防止対策を実行
 しなかったためヒューマンエラーが発生し、しかもその検知が遅れたために損害が拡大してしまった」
 というケースが多く見られます。

 決められた通りに防止対策が実行されないのは、次のような担当者の主観的な判断や、油断によります。

 「エラーが出ていたが、経験から間題ないと判断した」「自分が確認したので大丈夫と油断し、ダブル
 チェックをしなかった」。

 この他、防止対策が実行されているものの形骸化していて、動作としての指さし確認はしているが、
 無意識に指を指しているだけで全く確認をしていないということもあります。

 こうした間題を改善するために、社内にチェック機関を設け、定期的に内部監査をすることが効果的
 です。

 加えて、ヒューマンエラーが起きたときの被害をイメージが湧きやすいように数字などを交えて共有
 するとよいでしょう。

                        メルマガ登録(無料)はこちら


                        お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

緊急時における社長のリーダーシップ

■当たり前が通用しない状況を想定する

 社長の決断が特に重要なのは緊急時です。

 競合他社の進出、人材の大量離職、製品事故、訴訟問題、そして大きな自然災害などが起こると、
 会社の存続が危ぶまれることもあります。

 こうしたときこそ、社長は的確な決断で組織を導かなければなりません。

 会社という組織は異なる考えを持つ社員(構成員)の集合体です。

 会社には経営理念のように明文化されたルールの他、風土や雰囲気といった目に見えないルールが
 あり、それによってある程度の統制が保たれています。

 こうしたルールは、「組織の常識」といえます。

 社長の決断も、基本的に組織の常識に基づいて下されます。

 ところが、緊急時になると、こうした組織の常識が通じなくなることがあります。

 このようなときに社長が発揮すべきリーダーシップはどのようなものなのか。

 これは、社長が真剣に考えたいテーマです。

 また、緊急時は経営者が指揮を執れないこともあるでしょうから、ナンバー2の社員にも一緒に
 考えてもらいたいテーマです。

□平時と緊急時の違い

 冒頭で紹介した通り、平時と緊急時の最大の違いは、緊急時は、社員の判断や行動のよりどころ
 となる「組織の常識」(経営理念など)が通用しなくなる場合があることです。

 社員は、不安やストレスによって冷静な判断ができなくなることがあります。

 例えるなら、社員は「森の中で、進むべき方向を記した地図(常識)をなくしてしまった」状況
 に直面します。

 今、自分や組織が何をすべきかの確信が持てず、何も行動できないか、あるいは焦りから誤った
 行動を取ってしまうことがあります。

 また、緊急時は平時には問題のない情報伝達の仕組みが機能しなくなりがちです。

 社長は十分な情報を集めることができなくなり、限られた情報で重要な決断を下さなければなり
 ません。

 情報が集まらない状況だと、社長は現場に権限委譲せざるを得ません。

 「どこまでなら失敗してもカバーできるか」をイメージし、2次災害が起こらないレベルを基準に
 しつつも、スピーディーかつ大胆な権限委譲が必要です。

□緊急時のよりどころ

 緊急時、社長は前例のない状況での決断に迷います。

 このようなときは、経営理念に立ち返り、それに従うしかありません。

 緊急時、社員は経営理念のことなど忘れてしまうかもしれません。

 しかし社長は、緊急時こそ経営理念を大切にすべきです。

 社長が経営理念をよりどころし、緊急時に素早く英断を下した例として有名なのが、ジョンソン
 ・エンド・ジョンソンの「タイレノール事件」です。

 1982年、同社商品タイレノール(鎮痛剤)に毒物が入れられるという事件が発生しました。

 当時の社長、ジェームズ・E・バーク氏は、「全米の全商品を回収し廃棄する」「直ちにマスコミ
 に情報公開し、消費者に飲まないよう呼び掛ける」「毒物が混入されないパッケージに変える」
 という決断を下し、すぐに実行したのです。

 巨額の損失を出すにもかかわらず下した社長の英断と、それに応じて奮闘した社員の姿は全米中
 の信頼を集めました。

 同社の社長がよりどころとしたのは、「顧客・社員・地域社会・株主に対する責任」をうたって
 いる同社の経営理念「我が信条」でした。

 同社の社員は、企業が巨額の損失を被ること、社員も大変な労力を求められることが分かってい
 たはずです。

 それでも、社長の決断に従い、社員が1店1店薬局を回り、専用コールセンターで対応するなど

 奮闘したのは、社員の多くが「我が信条」を理解し、その経営理念に基づいた社長の決断に納得し、
 同じ思いを共有できていたからかもしれません。

 緊急時は、社員の気持ちが落ち込んだり不安になったりします。

 納得感のある決断を社長が示すことで、社員は、「それなら自分も協力しよう」と前向きに協力
 してくれるようになります。

 そうした意味では、経営理念は社員の「納得感」を得やすいよりどころといえるでしょう。

 経営理念に合わせて、社長は「社員とその家族の生活を守れる行為か」「企業が社員、社会、顧客、
 取引先からの信頼を得られる(失わない)行為か」「私利私欲ではない、保身ではないと言い切
 れる行為か」「1年後、5年後、10年後を考えても正しいと思える行為か」などの点も、十分に考慮
 しなければなりません。

社長の言葉と行動

 緊急時、社員が何よりも求めているのは社長の言葉と行動です。

 社員にとって社長は企業を象徴する存在です。

 不安を感じている社員に安心感を与え、心を1つにして進むために、社長の言葉と行動は大きな
 力を持ちます。

 まず「この難局を何としても乗り越える」という、社長としての熱い思いや確固たる信念を社員
 に伝えましょう。

 重要なのは、“うまさ”ではなく、自身の熱い思いや確固たる信念を率直に伝える“ひたむきな姿”です。

 また、今後の方針も示します。

 「今の困難な状況は、この方法で乗り越えられる」という納得性の高い方針が必要です。

 努力の先に明るい将来が待っていると信じることができれば、力が湧いてくるものです。

 言葉だけではなく、行動でも示しましょう。

 緊急時に限ったことではありませんが、どれほど正しいことを言っていたとしても、言葉だけで
​ 行動が伴わない社長のことを本気で信頼する社員はいないでしょう。

□人に動いてもらうには

 人に動いてもらうということは、人の「心」を動かすことともいえます。

 心を動かされる要因は人によって違うものですが、「真実」と「感謝」の2つは欠かせないのでは
 ないでしょうか。

 1980年代後半、リコーが急激な円高で大打撃を受けた後、当時の社長である浜田広氏は、全員参加
 で乗り切らなければならないと考え、厳しい業績を社員に包み隠さず公表し、「経営陣の減俸」
 「人員整理のないリストラ」などを行ったといいます。

 真実を示し、全員参加で乗り越えるという経営者の姿勢が社員の心を動かした結果、社員の合意
 と協力を得ることができ、短期間で収益回復を実現することができたとされています。

 社長のリーダーシップは、現場で動く社員のフォロワーシップなしには機能しません。

 社長は、日ごろ伝えることを忘れがちな感謝の気持ちを、緊急時にこそ一番に伝えることで、社員を
 1つにまとめ動かすことができるでしょう。


                        メルマガ登録(無料)はこちら


                        お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

私有スマートデバイスを業務に利用(BYOD)


■私有スマートデバイスを業務に利用「BYOD」

 近年、スマートフォンやタブレット端末のような携行可能な情報通信機器(以下「スマートデバイス」)
 が急速に普及しています。

 それに伴い、従業員が私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」(Bring Your Own Device)
 という考え方が広まっています。

 従業員にとってBYODは、使い慣れたスマートデバイスで、自ら導入したアプリケーション(アプリ)や
 クラウドサービスを利用し、いつでもどこでも業務を行えるという面で大きなメリットがあります。

 例えば、次のような行為を日常的にしているビジネスパーソンは少なくありません。

  ・私有のスマートフォンで顧客に連絡し、訪問のアポイントメントを取る

  ・私有のスマートフォンにインストールした名刺管理アプリで顧客情報を管理する

  ・私有のタブレット端末で会社のサーバーにアクセスし、メールを確認する

  ・自宅で私有のタブレット端末を使い、見積書を作成する

  ・出張先のホテルで私有のタブレット端末を使い、翌日の会議の資料を作る

 会社にとってBYODは、従業員の業務効率化や組織の生産性向上、機器の導入や使い方の教育にかかる
 コスト抑制などが期待できる半面、ルールを定めなければ、重要な情報の紛失・漏洩にもつながる危険性
 をはらむ悩ましい課題といえます。

 BYODを有効活用するためには、私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する際の取り扱いと
 情報管理について定めた規程の策定や、業務に利用する場合の注意点についての教育を受ける機会を設定
 する必要があります。

 ソフトウェア協会が公表している

   「私有スマートデバイス取扱規程サンプル第2版

   「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【新規】」 

   「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【機器追加】

   「私有スマートデバイス利用解除申請書サンプル

   「私有スマートデバイス利用許可決定通知書サンプル

   「スマートデバイス・セキュリティ・ポリシーサンプル

   ソフトウェア協会「『BYOD』導入検討企業向け情報提供ページ」


                        メルマガ登録(無料)はこちら

                     お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

業務上利用の携帯電話(スマホ)管理


■携帯電話(スマートフォン)のルール

 1.携帯電話(スマートフォン)のルールを定めていますか?

  現在、携帯電話は多くの人々の生活にとって不可欠なものとなっており、ビジネスシー
  においても営業活動などに役立てられています。

  従業員が業務上で利用する携帯電話の形態は「1.会社が所有する携帯電話を従業員に貸与する」
  「2.従業員個人が所有する携帯電話を業務用として利用し、業務に関する通話料を会社が負担する」
  の2つに大別されます。

   (1)会社が所有する携帯電話を従業員に貸与する」場合、会社名義で契約するため、電話会社や
    契約プランによっては、基本利用料や、従業員間の通話料が割引される法人向けの特典などが
    受けられるメリットがあります。

   (2)従業員個人が所有する携帯電話を業務用として利用し、業務に関する通話料を会社が負担する」
    場合、会社で携帯電話を用意する必要がなく、従業員は使い慣れた携帯電話を業務でも利用する
    ことができるといったメリットがあります。

  いずれの形態にせよ、業務で利用する携帯電話について、利用・管理などのルールを定めておく必要が
  あります。

  その根拠となるのが、携帯電話の利用管理規程です。

  また、2008年の「iPhone」を契機にスマートフォンが次々に発売され、利用が広がっていますが、
  スマートフォンは従来型の携帯電話に比べて、ウイルス感染などのリスクが高いなどの点に留意が
  必要です。

    スマートフォンのセキュリティー対策を講じる場合は、

     日本スマートフォンセキュリティ協会発行のガイドラインが参考になります。

 2.携帯電話の利用管理規程のひな型

                        メルマガ登録(無料)はこちら

                        お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

会社経営におけるリスク

会社経営におけるリスク

■経営における不祥事
 これほど経営に大きな悪影響を及ぼすことがわかっているにもかかわらず、不祥事は
 なぜ次々に起こるのでしょうか?
 不祥事発生の責任のすべては社長にあります。
 社長が社内の環境整備を怠った結果であり、不祥事を起こした人の責任もありますが、
 不祥事が起こりやすい環境であると肝に銘じるべきです。

 まずは社長が確固たる姿勢を示すことです。
 不祥事を防止するためには管理体制の構築が不可欠ですが、いくら厳格な管理体制を
 つくったところで、それをきちんと運用しようという意識が低ければ事態は改善しません。

 むしろその管理体制を逆手にとって巧妙な手口で不正が行われることも考えられます。
 自社の状況を振り返ってみて、少しでもこのような兆候がみられたら、早急に改善して
 不祥事のもとを排除していくことが大切です。
 会社経営におけるリスクは、日々いたるところに転がっ ていると言っても過言ではない。

 不幸にも落とし穴にはまり、不祥事として公になった場合、会社に与えるダメージは小さく
 ありません。
 そこで近年では、事前の防止策として、「コンプライアンス(法令遵守)」をいかに確保
 するかが企業のテーマとなっています。

 しかし、確かにコンプライアンスなどルールを守ることも大切ですが、それ以上に不祥事を
 起こさせない環境づくりが大切です。
  小さな会社では、権限や仕事が経営幹部や一人の担当者に長年にわたって集中します。
 そのため、常に透明感のある経営の見える化を心がけ、社員みんながチェックできる
 仕組みが必要です。

 では、どのようなものが会社経営の落とし穴であるか、また、落とし穴に落ちないための
 注意点は何かを見ていくことにしましょう。

□手形商売の注意点
 手形で決済している会社が多いのはあなたもご承知の通りです。
 売り手は買い手の信用状態が良ければ、支払手形で 決済してくれますが、信用不安が
 あれば当然、現金払いや振出人の確かな 廻り手形を要求します。
 支払手形での決済は手形サイトにより、 30 日後や 90 日後、長いものになると、120 日後、
 180 日後に決済されることになります。

 支払手形を落とすことができず不渡りになると、二回で銀行取引停止となり、倒産します。
 したがって振り出す支払手形の管理を十分にやらないとリスクが大きくなります。
 例えば、売上が伸びているとき、90 日サイトの支払手形を振り出したとすると、90 日
 後に決済しなければなりません。

 売上が伸びていれば売上に対する支払手形の金額割合が振り出し時より低くなっています。
 ですから決済は割と楽にできます。ところが逆に売上がダウン状態だと、売上に対する
 支払手形の金額割合が高くなりますから決済が苦しくなります。
 月商に対して当月に落ちる支手決済が50%以下になるよう押さえ込むという考え方で
 コントロールしてほしいものです。

 サイトが長いほど売上変動の予測が難しくなるため、リスクは高まります。
 資金繰りで一番注意しなければならないのは、各月毎に決済すべき支払手形の状況です。
 言い換えれば、各月に振り出す支払手形の金額管理ということです。
 売上予測に対して適切な金額の支払手形を振り出す資金繰りができるか否かですが、
 努力してその方向に持っていくことが大切です。

 次に逆の立場、決済を手形で受ける場合、即ち受取手形をもらう場合、相手の与信チェック
 が大変重要になります 。
 決済日に手形が落ちるまで安心できません。

 与信に問題がある場合は、振出人の確かな廻り手形を要求する、現金を2分の1もらう、
 サイトを縮める、リース契約にする等、いろいろ手を考えてリスクを回避する努力が
 必要です。
 今まできちんと払ってくれていた取引がスタートして間もない得意先が、大量の注文を
 出してきて手形決済を要求してきたときなど要注意です。

 品物を半値くらいで叩き売ってドロンしたなどというケースも少なくありません。
 営業担当者に、商品を売って、現金を回収してはじめて仕事のワンサイクルが終了、という
 基本をしっかり認識させなければなりません。
 支払手形を乱発して倒産とか、不渡り手形を握らされて倒産とかという落とし穴にはまら
 ないよう、十分注意が必要です。

□辞めた社員が会社をつくってライバルに
 よくあるケースに社員が集団退職して新会社をつくり、ライバルになったということが
 あります。
 支店や営業所な ど、割と本社から目の届き難い場所で起こりがちです。
 これには必ず首謀者がいて、なかなかのヤリ手でもあります。

 会社に対する不満(たいていは処遇と報酬ですが)を持っていて、何かをきっかけに
 自分の部下を誘って飛び出すということです。
 したがって、上司と部下の個人的癒着が生じないように定期的なローテーションが必ず
 必要ですし、トップとのコミュニケーションも必要です。

 トップとの関係がギクシャクすると、有能な者ほど「飛び出してやってみるか」となります。
 しかもお客さんとの人脈もあるとなれば、客先を攻められることになります。
 そんなことになると有形、無形の損失はきわめて大きくなります。
 社員たちも動揺して、その収拾にもエネルギーが必要です。

 某社で支社長を中心に30数名がいっせいに辞職をして新会社をつくって活動を始めました。
 その会社では、支社長が営業を一手に引き受け、支社のほとんどの仕事を取っていました
 から大変です。
 支社長は大変優秀な営業担当者でもあった訳です。

 ところが経費の使い方に不明朗な点があると本社の監査で指摘され、執行役員を解かれ、
 新しい支社長が本社から 赴任しました。
 前の支社長は営業で必要な経費であり、何も自分の懐に入れた訳でもないのにと頭に
 きたのでした。

 50名弱の支店社員のうち30数名を引き連れ、会社を去ったのです。
 その日から支店業務はストップし、売上はほとんどゼロに近くなってしまいました。
 詳しい事情を知らない本社のミスジャッジが大きなマイナスに繋がったのでした。

 常に社員同士のコミュニケーションを密にし、各拠点が独自で勝手な行動をしないよう
 コントロールすると共に、 意欲を引き出すような施策を実施しなければなりません。
 一番危険なのは 、各拠点が本社から見放されていると感じていることです。
 この思いが強くなるといろいろな問題が出てきます。
 また、事情を知らない本社の杓子定規なマネジメントにも問題ありということでしょう。

□黒字倒産に気をつける
 黒字なのに倒産するケースがあります。
 会社の経営はいくら赤字でも資金繰りさえつけば倒産することはありませ ん。
 黒字でも資金繰りがつかなければ倒産してしまいます。
 ですから経営には資金繰りが一番大切です。
 とくに前述のごとく、手形商売の会社は資金繰りを第一に経営をする必要があります。
 手形の決済は待ったなしですから、緊張して管理しなければなりません。

 資金繰りは少なくとも3ヶ月先くらいまでを読んで、早め早めに対応しなければなりません。
 中小企業や零細企業の場合、資金調達は銀行からの借り入れがほとんどです。
 銀行は天気の良いときに傘を貸し、雨が降ったら傘を取り上げるといわれています。

 ですから業績の良い会社には、資金が必要なくなっても借り入れをしてもらおうと攻勢を
 かけます。
 業績が悪く、資金も逼迫している会社には、いくら頼んでも融資はしません。
 黒字の会社が倒産するということは、管理体制に不備があったからです。

 支手決済に注意して早め早めに資金調達に努力していたら、そんなことは生じないはず
 です。
 しかし、今の世の中、いつ何が起きるかわかりませ んから、特に資金繰りを担当する部署や
 責任者は大いに緊張して業務を行ってほしいものです。

 融通手形などを振り出していたり、金利の高い金融業者から借金をしていると、いつ倒産
 してもおかしくないといえます。
 苦しくとも、資金調達はきちんとした形でやるべきです。

□後継者で次の繁栄が決まる
 会社は一代で終わりではなく、駅伝競走のバトンタッチのごとく、一番の適任者が次々と
 受け継いでいくものです 。
 ところが中小企業の場合、オーナー会社ですから社長の子どもが後を継ぐということが
 ほとんどです。

 この父と子の関係がスムーズにいけばいいのですが、親子でいがみ合うケースが非常に
 多いようです。
 弊社への相談の多くが後継者についての悩みです。
 社長は一から叩き上げて今日の会社を築いたという自負心があります。

 子どもは大学を出て、生カジリの経営学を実践しようと今までのやり方を否定します。
 「オヤジのやり方は古い。 今の時代は新しいことをやらなければ」と、地に足のつかない
 施策をやろうとします。
 そこに対立が生じ、社内が割れてトータルなエネルギーが低下します。

 将来に対する不安も加わり、社員たちはこんな状態では先行きは危ないと思うようにな
 ります。
 こうなると、経営状態が急速に悪化してしまいます。
 後継者とのバトンタッチをいかにスムー ズにやるかが会社の命運を決めるのです。

 某社の常務は二年前に一流商社から戻ってきた社長の息子さんです。
 番頭役の専務が、「毎日、朝から親子喧嘩の怒鳴り合いですよ。もういい加減にして
 もらいたいですね。
 周囲の皆もヤル 気をなくしています。

 私ももう歳ですからいつ辞めてもいいと思っている んです」と打つ手なしのあきらめ
 状態です。
 息子さんに聞いてみると、「帰ってこい、 帰ってこいとオヤジがうるさいものですから、
 課長になり立てでこれからというときでしたが、商社を辞めて戻ってきたんです。

 それなのに権限は社長であるオヤジがすべて握っていて、一万円のお金さえ自由に
 使えないんです。
 それに商売のやり方も古臭く、このままではジリ貧だというのに昔ながらのやり方を
 変えないんです。

 もうバカバカしくて、やってられないですよ」ということでした。
 社長に聞くと、「何をえらそうなことを言っているのか、会社の時価は30 億円くらい
 しますよ。

 それをソックリ引き継ぐんですよ。商売のやり方も大手商社とうちのような中小企業では
 全然違う訳で、あいつのやり方では売上はダウンします。
 まだまだ業界や商売のことがわかっていないのです」とのことでした。
 お互いにスレ違いで交わることのない考え方で、これではどうにもなりません。

 息子さんを後継者にするためには、子どもの頃から後を継ぐのだという考えを教え込んで
 育てなければなりません 。
 父親は社長としても素晴らしい人であることを理解させ、母親も協力して育てることが
 大切です。

 自分のやりたいことをやってもいいと言いなが ら、歳を取ると息子に戻ってきて会社を
 継げというのは親の身勝手です。
 ですから、生まれたときから後継者にするか否かを決め、後継者にするな ら、それに
 ふさわしい育て方を家族を挙げて協力する体制が重要です。

□その他の注意点
 1.在庫の横流しに注意
  在庫管理がずさんだと社員が多少の商品を持ち出してもわかりません。
  一度、味を覚えるとだんだん大胆になり、一度に持ち出す量が増えます。
  積もり積もって気がついたときは大きな金額になっています。
  在庫はきちんと管理し、不正のつけ入るスキがないようにしなければなりません。

 2.使い込みや横領防止策を整備
  過去には、ある食品会社の健保組合の経理担当者が、15年間で19億円を横領し、
  17人の愛人をつくっていたというニュースもありました。
  横領をするほうもするほうですが、15年間も横領を発見できなかった管理システムの
  ほうが問題です。

  使い込みや横領は管理システムにスキがあるからです。
  スキのあるシステムが罪人をつくる訳ですから、会社側も大きな責任があります。

 3.印鑑の盗用に万全の策を
  社印、実印の管理は十分でしょうか。
  もし盗用されると、下手をすれば会社の存亡にもかかわります。
  実印と手形用紙が一緒に置いてあり、知らぬ間に支払手形を乱発されて倒産したという
  会社もあります。
  社内抗争が生じている会社で時々こんなケースがあります。
  社内抗争は百害あって一利なしです。

 4.密告や垂れ込み
  密告やたれ込みによって税務署や労働基準監督署の査察が入ったりします。
  法律を犯す不正をしていなければおそれるに足りませんが、その間、余分なエネルギー
  を使わなければなりませ ん。
  査察を受けた場合、指摘がゼロということはまずありません。
  見解の相違で言いがかりに近いような指摘をされることもあり、不愉快な思いをする
  ことが多い訳です。
  ですから恨みややっかみを受けないように注意すべきです。

 5.機密漏洩の防止
  会社の機密事項が漏洩し、ライバルに伝わったりすると大変です。
  機密が漏れないように防止策を十分に考えて対策を立てなければなりません。
  また、2005年4月に個人情報保護法が全面施行されました。
  施行前には、ノートパソコン等の盗難や置き忘れ、紛失による個人情報の漏洩が顕著
  でした。

  そして、あまりマスコミに取り上げられることはありませんでしたが、誤操作による
  情報漏洩も少なからずありました。
  情報漏洩の原因を調べたところ、80%が内部からという結果ですが、い ずれにせよ、
  注意すればかなり防ぐことができる事件・事故が多くありました。

 企業の不祥事が続発したバブルの頃には、その防止策として、独自の企業マニュアルを
 作成するなどの対策が多くの会社で採用されました。
 しかし、マニュアルは組織の規範で、個人をそれに従わせるものでした。
 高度成長期の追いつけ追い越せで全社一丸になって会社が動いた時代には組織全体を
 縛る規範は通用しました。

 しかし、 近年では社員に一定の権限を持たせて、 情報共有によって個が全体を考える
 組織運営が求められています。
 従来のマニュアル重視の管理手法は、社員を面従腹背にさせるおそれがあることも注意
 しなければなりません。

                        メルマガ登録(無料)はこちら

                        お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

不正競争防止と営業秘密保護

不正競争防止法 営業秘密保護対策


  ■不正競争防止法

   企業の営業秘密に関するトラブルが後を絶たない。

   不正競争防止法は、その名の通り、 「不正な競争」 を防止するための法律です。

   不正(アンフェア) な競争を禁止するとともに、不正な競争によって不利益を被った
   場合には訴えれば救済します、というものです。

  

  □不正競争の類型

   経済産業省によると、不正競争の類型の概要は、

    1.混同惹起(じゃっき)行為
      他人の商品・荷票の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されて 
      いるもの(周知)を使用し、または使用した商品を譲渡などし、そのほか人の 
      商品・営業と混同を生じさせる行為

    2.著名表示冒用行為
      他人の商品・営業の表示として著名なものを、自己の商品・営業の表示とし
      て使用する行為

    3.形態模倣行為
      他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡などする行為

    4.営業秘密関係
      窃取などの不正な手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、もしくは第
      三者に開示する行為

    5.技術的制限手段
      技術的制限手段により制限されている影像・音・プログラムの視聴・実行・記
      録を可能にする(迂回する)機器またはプログラムを譲渡などする行為

    6.ドメインネームの不正取得など
      図利(とり)加害目的(注)で、他人の商品・役務の表示と同一・類似のドメイ  
      ン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメイン名を使用する行為をい
      う。
       (注)行為者が自己もしくは第三者の利益を図ったか、本人に損害を加える目的

    7.誤認惹起行為
      商品、役務やその広告などに、その原産地、内容などについて誤認させるよ
      うな表示をする行為

    8.信用毀損行為
      競争関係にある他人の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する
      行為

    9.代理人などの商標冒用行為
      パリ条約の同盟国などにおいて商標権を有する者の代理人が、正当な理由
      なく、その商標を使用などする行為

   そして、不正競争のうち、一定の行為を行った者に対して、処罰が規定されています。

   また、民事的救済的措置として、「差止請求権」「損害賠償権」「損害額の推定など」
   「書類提出命令」「信用回復」などの措置が規定されています。 

  □不正競争防止法における営業秘密の保護

   1.営業秘密の保護

     ここでは、不正競争の類型から「営業秘密関係」についてみていきます。

     企業の営業秘密は、文字通り企業の秘密事項にかかわる情報です。

     そのため、企業が営業秘密をどのように管理・防衛し、営業秘密が侵害された 
     時にどのように対応するかは、企業の命運にかかわる重要な問題です。

     今まで裁判上で問題となった営業秘密には、

      ・人材派遣会社の登録スタッフ名簿
      ・会計事務所の顧問先名簿
      ・ドラッグストアの薬の仕入価格
      ・かつら会社の顧客名簿、顧客住所録

     などがあります。

     これらの情報は、製造や販売活動のための有益な情報であり、企業にとって
     極めて重要な財産といえます。

     こうした財産が従業員や外部の人間に盗まれ、ライバル社に渡るようなことが
     あれば、企業にとっては大きな損害です。

     なお、保護される営業秘密は、「秘密として管理されている生産方法、販売方
     法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の秘密であって、公然と
     知られていないものをいいます。

     また、営業秘密として保護されるためには、次の3つの要件を満たす必要があ
     ります。

      (1)秘密として管理されていること(秘密管理性)
        たとえ他社にない重要な情報であっても、秘密として管理されていること
        が外部から認識できなければ保護には値しません。

        従って、情報にアクセスした者に営業秘密であることを認識できるようにし
        ていること、情報にアクセスできる者が制限されていることなどが必要とさ
        れます。

      (2)事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)

        企業が極秘に管理する製造技術・設計図・実験データなど技術に関する
        営業秘密、販売会社などが極秘に管理する顧客名簿や顧客管理のノウ
        ハウ、仕入先リストなどの営業に関する営業秘密がこれに当たります。

      (3)公然と知られていないこと(非公知性)

        「非公知性」とは、刊行物に記載されていないなど、保有者の管理下以外 
        では一般に入手できない状態にあることを意味します。

        具体的には、書物や学会発表などから容易に入手できることが証明され
        る情報は「非公知」とはいえません。

        営業秘密を保護する管理のあり方 

   2.大事な情報を大切に保護する営業秘密管理 (経済産業省)

  不正競争防止法の改正 (2018年)

   不正競争防止法はこれまで以下のように改正されてきました。

    2005年改正:模倣品・海賊版対策の強化、営業秘密の保護強化
    2006年改正:刑事罰の強化

    2009年改正:企業の経験や知恵の結晶である技術やノウハウなどの営業秘密を保護する
          ことを目的に、営業秘密侵害罪にかかわる刑事罰の強化
          すなわち、原則として「使用・開示」行為を処罰の対象としている営業秘密
          侵害罪の行為態様を改め、営業秘密の管理にかかわる任務を負う者がその
          任務に背いて営業秘密を記録した媒体などを横領する行為、無断で複製する
          行為などについて、処罰の対象としました。

          つまり、企業秘密が書かれたコピー禁止の資料を無断でコピーしたり、持ち
          出し禁止文書を外部に持ち出す行為が新たに刑事罰の対象とされた。

          また、営業秘密侵害罪における従来の目的要件である「不正の競争の目的」を
          改め、「不正の利益を得る目的」または「保有者に損害を与える目的」とされ
          ました。

   2009年改正法は2009年4月30日に公布され、1年6カ月を超えない範囲において政令で定める
   日から施行されました。

   この改正による営業秘密侵害罪の対象範囲の拡大によって、営業秘密の流出リスクが減ることが  
   待されました。

   例えば、他社との共同研究開発のケースでは、従業員が共同研究開発の相手方企業の営業秘密に
   れることがあります。

   自社の従業員がこの営業秘密を共同研究開発の目的ではなく、自社独自の研究開発活動など
   ほかの目的に使用すると、従来は民事責任のみを追及されることが多かったのですが、改正法
   施行後は刑事責任も追及しやすくなった。

   刑事罰は企業にとって大きなリスクであり、今後は営業秘密を含む情報管理のルールを
   従業員へ周知し、社内における厳重な秘密情報管理体制の構築が必要になります。

   ◎2016年の不正競争防止法の改正ポイント

    2016年1月1日に「不正競争防止法の一部を改正する法律」が施行されました。

    この年の改正ポイントは次の通りです。
     ・営業秘密の転得者(最初の不正開示書から開示を受けた者(2次取得者)
      以降の書から不正開示を受けた者(3次取得者以降の者))の処罰範囲が拡大

     ・営業秘密侵害晶の譲渡・輪出入等の規制

     ・国外犯処罰の範囲拡大

     ・未遂行為の処罰

     ・罰金刑の上限引き上げ等

     ・任意的没収規定(営業秘密侵害罪により生じた犯罪収益を、裁判所の判断
      により没収することができる規定)の導入

     ・親書賠償請求等の容易化(立証負担の軽減)

     ・営業秘密の不正使用に対する差止請求の期間制限(除斥期間)を延長

   過去の改正内容も含めた不正競争防止法全般についての詳細については、以下の
   不正競争防止法説明資料が参考になります。
   (担当課:経済産業政策局知的財産政策室)

   また、2019年1月には「営業秘密管理指針」が改訂・公表されました。

   企業が営業秘密の保護強化を、戦略的に進める際の参考となるガイドライン

  □企業に求められる対応策
   1.企業に求められること
     不正競争防止法によって保護される秘密情報は「営業秘密」に限られます。

     そこで、企業としては、保護したい秘密情報が営業秘密に該当しているための
     措置をとることが必要です。

     前述のように、営業秘密というためには、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」
     が必要です。

     具体的には、
      ・社内文書やパソコンのデータ、データを保存した媒体に「秘」であると明記
       すること
      ・秘密情報へのアクセス権者を限定すること
      ・秘密情報を保管する場所を設置すること
      ・秘密情報の中でも、保護に値する情報・保護に値しない情報を、ある程度ラ
       ンク分けして、保護に値する情報のみに限定して、秘密管理すること
      ・リスク管理部門と専任の責任者を設置すること
      ・刊行物や論文などで秘密情報が発表されていないと確認や調査すること

     などの対策が必要です。

     また、企業が営業秘密を使用する場合、「不正競争の目的に基づく使用では
     ない」と立証できるように記録をとっておくことが必要です。

     そこで営業秘密を使用する場合には、使用日時・使用目的・使用者を帳簿な
     どに記録しておくことが必要です。

     そして、使用後には営業秘密の使用が終わったこと、使用状況について報告
     書を提出することも必要です。

     さらに、営業秘密を第三者に開示する場合には、開示することについて事前に
     企業に承諾をとっておくことが必要です。

     第三者から営業秘密を開示される場合には、第三者から「営業秘密ではない
     こと」の証明書などを得ることが必要であり、それには契約書への明記が一般
     的です。

   以下では、経済産業省「営業秘密管理指針」より、営業秘密の「望ましい管理水準」
   を紹介します。

   2.物的・技術的管理
     (1)秘密管理情報の区分
       ・秘密情報をそのほかの情報から区別する
       ・秘密性のレベルを区別する(「極秘」か「厳秘」か「秘」かなど)

     (2)アクセス制限
       ・アクセス権者の限定(情報ごとの秘密レベルに応じてアクセス権者を限
        定)
       ・アクセス権者の使用、開示の範囲の限定(特定の場所からの持ち出し禁
        止など)

     (3)アクセスの履歴の記録
       ・電磁的記録へのアクセス記録のモニターなど

     (4)客観的認識可能性
       ・営業秘密の表示(秘密であることを示す平易な記号などを記載)
       ・秘密区分の表示(秘密性のレベル表示を電子情報の中に組み込むなど)

     (5)情報の形態ごとの管理
       ・記録媒体の管理
        *保管時(特定の管理者が施錠などをして保管)
        *廃棄時(焼却、シュレッダーによる処理、溶解、破壊)
       ・情報自体の管理
        *保管時(パスワード管理の徹底など)
        *廃棄時(コンピューター廃棄時に電磁的記録を消去)

     (6)施設などの管理
       ・建物、事務所、研究所のセキュリティー(警備員の配置、ICカードや指紋
        による本人確認など)
       ・部門の設置など(社内に独立した営業秘密管理専門部署を設置)

   3.人的・法的管理
     (1)自己情報の管理
       ・従業員(入社時の秘密保持誓約書)
        (就業規則や誓約書および社内の営業秘密管理規則によって管理。

        入社時のみならず、営業秘密を知りうる立場になるたび新たに誓約書を
        提出させるなどが望ましい)

       ・派遣社員(派遣労働者に提出きせる秘密保持誓約書)
        (派遣契約の中で、秘密保持義務を順守する旨を規定)

       ・退職者(退職時の秘密保持に関する誓約書)
        (退職後の秘密保持契約の締結、個人所有の情報の返還・破棄)

       ・取引先(業務委託契約における秘密保持誓約条項)
        (業務委託など取引開始時に、対象範囲を明確にした秘密保持
         約書を締結)

     (2)他社情報の管理
       ・情報取得時には、営業秘密として管理すべき範囲を特定
       ・情報使用時には、信義則に反する目的で使用・開示しないよう、使用目
        的や開示先を管理
       ・転入者については
        *採用時(元の企業との間の守秘義務などを確認)
        *採用後(転入者の業務内容を定期的に確認)
       ・取引先については
        *情報取得時には、秘密の使用目的や開示の範囲を明確にした契約を
          締結
        *情報使用時には、信義則に反する目的で使用・開示しないよう、使用
          目的や開示先を管理

   4.組織的管理
     組織全体のマネジメントとして、

     (1)管理策の策定(Plan) → (2)管理策の実施(Do) → (3)管理状況の監
     査(Check) → (4)管理策の見直し(Act)

     という一連の流れが求められます。 

      (1)管理策の策定(PIan)
        ・秘密管理基本方針を社内で策定し周知
        ・明確な管理目標を定め、その実施計画を策定

      (2)管理策の実施(Do)
        ・管理責任の体系を明確化し、最高責任者を定め、情報セキュリティー委
         員会を設置するとともに、社内教育を実施

      (3)管理状況の監査((Check)
        ・定期的な監査を行い、問題がある部署などに対しては是正措置や予防 
         措置を実施

      (4)管理策の見直し(Act)
        ・監査結果などに基づき、管理策そのものの見直しを実施

        多くの企業が実施している主な秘密情報漏えい防止策には、
        ・「情報セキュリティー規定」の策定
        ・「秘密管理マニュアル」を刷新し、新入社員数育や中堅社員教育に活用
        ・秘密情報管理責任者を置き、資料を台帳に記録
        ・資料をカギ付きロッカーで施錠管理
        ・デジタル情報はパスワード、暗号化で関係者以外はアクセスできない
        ・本社と研究開発部門はパソコンの持ち出しが許可制
        ・ネットを使った社外とのデジタルデータのやり取りを記録
        ・秘密情報の保持は協力会社や取引先、競合他社との関係など詳細に
         規定
        ・全社員と入社時に守秘義務契約を交わす
        ・研究開発部門の社員の退職時に当人と退職後も保持すべき秘密情報
         について確認

   5.秘密情報漏えい防止のための手順
     従業員に秘密情報漏えい防止を徹底していくためには、次のような手順が望
     まれます。
      (1)経営者が企業の秘密情報保護の方針(必ず文書化します)を打ち出し、
        全従業員に対して周知を行います。

      (2)全従業員に秘密保持に関する誓約書に署名または捺印させます。

        入社時に取得している企業では、誓約書の文言のチェックが必要です。

        また、退職時に改めて署名またはなつ印させることも有効です。

      (3)秘密情報の管理ルールを作り、実施します。

        形式的に実施するのではなく、経営者自らが率先して企業のノウハウを
        守る姿勢を従業員に示すことが重要です。

      (4)実施状況をチェックします。

        内部監査の仕組みを持っている企業であれば、秘密情報の管理に関して
        も、監査のチェック項目に加えます。

        実施状況の完璧を期する場合には、財団法人日本情報処理開発協会
        実施しているISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)適合性評
        価制度による外部審査を利用する方法があります。


                           メルマガ登録(無料)はこちら


                           お問合せ・ご質問はこちら

企業リスクと危機管理マニュアル

営業秘密の管理

営業秘密の管理


  ■営業秘密

   企業の営業秘密は、文字通り企業の秘密事項にかかわる情報です。

   そのため、企業が営業秘密をどのように管理・防衛し、営業秘密が侵害された時に
   どのように対応するかは、企業の命運にかかわる重要な問題です。

   今まで裁判上で問題となった営業秘密には、
    ・人材派遣会社の登録スタッフ名簿 

    ・会計事務所の顧問先名簿 

    ・ドラッグストアの薬の仕入価格 

    ・かつら会社の顧客名簿、顧客住所録

   などがあります。

   これらの情報は、製造や販売活動のための有益な情報であり、企業にとって極めて

   重要な財産といえます。

   こうした財産が従業員や外部の人間に盗まれ、ライバル社に渡るようなことがあれば、
   企業にとっては大きな損害です。

   なお、保護される営業秘密は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法

   その他の事業活動に有用な技術上または営業上の秘密であって、公然と知られて
   いないものをいいます。

  「発明」「顧客名簿」といった知的財産や営業情報など、多くの企業では自社の事業
   に有用なさまざまな技術や情報を保有しています。

   企業には、「従業員が自社から資料を無断で持ち出して退職した上、競合他社に

   転職した」「従業員が自宅で仕事をするために顧客情報の入った社用パソコンを
   自宅に持ち帰ったところ、帰宅途中で紛失してしまった」など、自社の強みの源泉

   となる技術や情報の流出、他者の不正利用を防ぐための対策を講じることが求め
   られます。

   対策の一つとして、特許権などを取得する方法がありますが、特許権を取得する
   場合は発明の内容などが一般に公開されてしまいます。

   そのため、保護期間が満了してしまうと、競合他社がその発明を利用した商品を
   販売するといったことが起こり得ます。

   そこで、発明の内容を知られたくないものや、長期にわたって保護したいもの、特許

   権などを取得することができない営業情報などについては、営業秘密として管理する
   ことが適しています。 

   事業者間の公正な競争などについて定めた不正競争防止法第2条第6項によると、
   営業秘密の定義は、秘密として管理きれている生産方法、販売方法その他の事業
   活動に有用な技術上、または営業上の情報であって、公然と知られていないもの
   経済産業省「不正競争防止法の概要(平成25年度版)」では、この定義を「営業
   秘密の定義を満たす要件」として、以下のように具体的に説明しています。

  □営業秘密管理指針
   
改正『不正競争防止法』に沿って、『営業秘密管理指針』が2005年10月12日に改訂
   されました

   『営業秘密管理指針』 とは、企業が営業秘密の保護強化を、戦略的に進める際の
   参考となるガイドラインです。

   ・海外進出企業の情報漏洩リスク
    営業秘密を海外で漏洩した場合の罰則規定を設ける

   ・競合企業からの情報漏洩リスク
    従業員の不正アクセスや転職者による他社情報利用に対し、法人にも刑事罰
    が科される退職者からの情報漏洩リスク

    在職中に入手した営業秘密を退職後不正使用することへの処罰導入

  □企業が取り組むべき具体的POINT
   1.「社内体制」を整備

     「営業秘密」対象となる情報+情報にアクセスできる人を特定する
     (1)情報管理責任者の配置など社内組織の整備
     (2)営業秘密に関する規定の整備と運用
     (3)管理体制の評価と改善                 
     (4)漏えいした場合の対処体制の整備

   2.契約書・就業規則」を整備
     
従業員・退職者と秘密保持契約を締結する
     (1)対象情報の範囲  
     (2)秘密保持義務と付随義務
     (3)例外規定  
     (4)秘密保持期間 
     (5)義務違反時の措置

    特に退職者に対しては、競業避止契約とは別に、この秘密保持契約が必要です。


   3.営業秘密の「物理的管理体制」を整備
     ●情報収録媒体や保管場所の管理
     ●情報を収めたコンピュータの管理(アクセス権者の特定)
     ●アクセス権を持つ者に課す義務の明確化

  □営業秘密の定義を満たす要件

   1.秘密として管理されていること(秘密管理性)
     ・情報にアクセスできる者を制限すること(アクセス制限)

     ・情報にアクセスした者にそれが秘密であると
      認識できること(客観的認識可能性)。

   2.有用な営業上または技術上の情報であること(有用性)
     ・当該情報自体が客観的に事業活動に利用きれていたり、利用され
      ることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つ可のであるこ
      と。 
      現実に利用されていなくてもよい。
       例:設計図、製法、製造ノウハウ、顧客名簿、
         仕入先リスト、販売マニュアル

   3.公然と知られていないこと(非公知性)
     ・保有者の管理下以外では一般に入手できないこと。
      第三者が偶然同じ情報を開発して保有していた場合でも、当該第三者も
      当該情報を秘密として管理していれば、非公知といえる。

   不正競争防止法の保護を受けるためには、上記の要件に沿った管理のルールを
   定め、従業員などに秘密保持を義務付け、営業秘密として認定される必要があり
   ます。

   その根拠となるのが、自社で定める営業秘密管理規程(ひな形)です。

 

 

                      お問合せ・ご質問はこちら


                      メルマガ登録(無料)はこちらから

 

 

企業リスクと危機管理マニュアル

就業規則を見直していますか? 


  ■就業規則の重要性

   会社を取り巻く経営環境や雇用環境がめまぐるしく変化する昨今、労働条件や就業ルール
   をまとめた就業規則も変化に合わせて定期的に見直す必要があります。

   しかし、長い間、就業規則の見直しを行っていない会社も少なくないのではないで
   しょうか。

   近年、法律の知識や権利意識を強くもつ労働者が増えており、全国の労働基準監督署に
   寄せられる相談件数も年間110万件を越えています。

   その多くは、就業規則を作成していなかったり、就業規則どおりに運用されていなかった
   り、就業規則の見直しをまったく行っていないことで起こります。

   自社の実態に合わせて就業規則を整備し、労働条件や就業ルールを明確にすれば、会
   社にとっても従業員にとってもリスクや不安を軽減することができます。

   従業員との労務トラブルを未然に防ぐためにも、定期的に就業規則を見直しましょう。

   1.就業規則は会社のルールブック

    就業規則とは、貸金や労働時間、休日、休暇、服務規律や懲戒などについて、従業員
    の入社から退職までの労働条件や就業上のルールを定めた会社の憲法です。

    就業規則がしっかりと整備され、その内容が正しく従業員に伝わっていれば、労使間の

    トラブルや従業員の不祥事も起きづらくなります。

    また、従業員が訴えを起こしたとしても、責任の所在が明確となるため、会社側の責任を
    限定的にすることができます。

    それだけでなく、経営理念セクハラ対策・メンタルヘルス対策などへの取り組みを示す

    ことで、会社に対する信頼度も増し、モチベーションのアップにもつながります。

    一人ひとり違うライフスタイルや価値観をもった従業員が、会社という組織で共に働く

    わけですから、一定の秩序や明確なルールづくりは必要不可欠です。

    就業規則は、会社にとっても従業員にとっても、なくてはならない社内のルールブック
    です。

   2.法律による約束事

    就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場のみ作成・届出が義務づけられ
    ています。

    しかし、常時10人未満の事業場であっても、労使間のトラブルを防止するためには

    作成しておくのが望ましいでしょう。

    なぜなら、従業員が問題を起こした場合、あらかじめ処分内容を定義しておかなければ
    懲戒処分を下すことができないからです。
 
    なお、就業規則には、必ず定めなくてはならない取り決め(絶対的必要記載事項)と、
    会社のルールとして存在している場合に記載しなくてはならない事項(相対的必要記載事項
    とがあり、それぞれ法律に違反しないよう定める必要があります。

    会社と労働者との関係は、労働契約という契約関係で成り立っています。

    労働者である従業員は労働を提供し、使用者(会社)はこれに対して賃金を支払う
    関係です。 

    労働契約の内容(1日何時間働くか、休憩・休日は、
    など)をそれぞれの労働者と個別に契約することは、
    事務作業が膨大となり困難であることから、労働者
    が就業上遵守すべき規則、労働条件に関する具体
    細目 を定めることとしているのが通常です。

    これが就業規則であり、法律上は、常時10人以上の
    労働者を使用する会社には、就業規則の作成と届出が
    義務づけられています。

    ただ、義務だから就業規則を作成するといった考えは
    今は通用しません。

    さまざまな角度から戦略的に就業規則の作成や改定を行う必要があります。

    社会環境が激変した今、今までの内容そままだったらどうなるかは経営者、担当責任者で
    あるあなたが一番よくわかっているはずです。

    そして、「このままではまずい」と思っているはずです。

    就業規則を作成および変更する場合には、従業員の過半数を代表する者または従業員の
    過半数で組織する労働組合(以下、従業員代表)の意見書を添付したうえで、所轄の
    労働基準監督署に届出なくてはなりません。

   3.従業員への周知

    就業規則を作成および変更したら、それを従業員に周知する必要があります。

    従業員に周知していない就業規則には効力がありません。

    従業員がいつでも自由に就業規則を見ることができるよう、次の方法で周知します。

     ・常時、各事業囁の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける

     ・書面を交付する

     ・磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、その内容を各事業場の従業員が
      常時確認できる機器を設置する

    各事業場には最低限、就業規則を一部常備しておくか、パソコンのある環境に就業規則が
    収録された記録媒体(CD−ROMなど)を用意するようにしましょう。

   4.非正規社員用の就業規則

    パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託社員など、正社員以外にも従業員 がいる
    場合、非正規社員用の就業規則も必ず準備しましょう。

    正社員と非正規社員では労働条件や待遇なども異なりますが、非正規社員用の就業
    規則がない場合には、非正規社員にも正社員用の就業規則が適用されてしまいます。

  □次はあなたの会社!?

   インターネットを含めた情報媒体の多様化により、従業員個々の権利意識の高まり、情報
   収集による理論武装により、会社に権利を主張してくるのです。

   さらに、近年マスコミは、不祥事を起こした企業を取り上げ、その企業を丸裸状態にし、
   過去にさかのぼって徹底的に追求するといったありさまです。

   各監督官庁も厳格に法を適用せざるを得ない状況になってきています。

   しかし、これだけ多くの事件事故がマスコミをにぎわしているにもかかわらず、多くの経営
   者がこれらのことを「対岸の火事」と見過ごしているといった危険な状況にあります。

   しかし、中小企業経営者が「これら事件・事故は大企業の話で、うちみたいな中小企業に
   は関係ないよ」と、真剣に思っているのです。

   今までの制度をこれからも使用し続けることは、企業防衛上リスクの拡大につながるだけ
   です。

   最悪の事態に見舞われかねません。

   次の7つの質問に答えてみてください。

    ・ 各種規則・規定は本当に会社防衛も含めた内容になっていますか?

    ・ 各種規則・規定(賃金・退職金)が昔のままになっていませんか?

    ・ 管理マニュアル(苦情対応・危機・個人情報)は整備されていますか?

    ・ 各種規則・規定と会社を守るべき企業保険が連動していますか?

    ・ 規則・規定の作成が目的となり、作成物が机の引き出しに入ったまま
     ではないですか?

    ・ 作成物がきちんと機能していますか?

    ・ 作成物を機能させるため、外部専門家から定期の情報提供・アドバイスは
     ありますか?

   これらの質問は事業を運営していく上で欠かすことのできない事柄です。

   企業の抱えるリスクはますます複雑多様化し、管理しなくてはならないリスク対策も増す
   ばかりです。

   『転ばぬ先の杖』として、就業規則の作成・変更を早急に実施することは経営者である
   あなたのやるべき最優先課題です。

   就業規則を作る場合に必要な手続きは、

    (1)従業員の代表から意見を聞き、意見書を提出してもらい、この意見書を添 
      付して、会社が作成した就業規則を労働基準監督署に届け出るのです。   
       (代表社員の署名または記名と押印が必要)

      この意見書が「反対意見」や「批判的な意見」があっても労働基準監督署は「法的
      に」受け取る義務があるので、受け付けます。

      いずれにせよ意見書などがないと受付をしてくれません。

    (2)就業規則の周知については作っても、「保管場所が社長の机の中」では意
      味がありません。

      作成した就業規則は事務所に備え付け、閲覧可能な状態にします。社員に知ら
      せないとその効果が無いのです。

      したがって、就業規則が有効となるのは「労働基準監督署の受付印が押印され
      た時から」ではなく、「就業規則を社員に周知させた時から」となります。

      労働基準法では

       ○事業所に紙媒体で備え付け、誰でも閲覧できる状況にする

       ○社内のイントラネット等で誰でも閲覧できる環境にする
        (PDFなどをサーバーに保存も可)

      などが「法的に」求められています。

   中小企業では、単に義務だからといった考えで就業規則を作る経営者も多数見受けられ
   ますが、企業防衛も含めた戦略的就業規則の策定・変更が急務です。

   そして、就業規則が従業員の体系ごと(正社員、パートタイマー別)に条件が整理されてい
   ることです。


  □就業規則(社内の規定と労務問題)

   1.社員が10人以上の場合に作成

    10人という人数の基準は正社員、パートの合計(正社員4名+パート6名の場合、
    作成義務あり)。
        ※パートの場合、一定の労働時間を満たした人

    しかし、常時10人未満の事業場であっても、労使間のトラブルを防止するためには作成
    しておくのが望ましいでしょう。

    なぜなら、従業員が問題を起こした場合、あらかじめ処分内容を定義しておかなければ
    懲戒処分を下すことができないからです。

   2.員数は事業所(支店、支社、工場)単位でみる

    事業所ごとに所轄の労働基準監督署に就業規則を届け出る。

   3.変更した就業規則の効力について

    常時働く従業員が10人以上の場合、作成が義務となり、これを労働基準監督署に
    提出しなければなりません。 

  □就業規則見直し

   1.就業規則見直しの時期

    就業規則のメンテナンスは、定期的に行うの
    が理想的ですが、特に見直しが必要となるの
    が、労働関連法令の改正や新設時、新たな
    人事制度や健康管理体制の導入時、経営状
    況の変化に伴い労働条件を変更せざるをえ
    ないときなどです。

    その際に注意しなくてはならないのが、労働
    条件の不利益変更です。

    就業規則に書かれている労働条件は従業員
    に対する約束事なので、従業員にとって労働
    条件が悪くなる場合(貸金引き下げ、退職金
    制度の廃止など)には不利益変更となり、一方的に
    変更することができません。

    ただし、従業員の同意がある場合、合理的な理由がある場合には変更が可能です。

    合理的な理由かどうかは、

     (1)労働者の受ける不利益の程度

     (2)労働条件変更の必要性

     (3)変更後の内容自体の相当性

     (4)労働組合などとの交渉の状況

     (5)その他の事情を総合的に考慮したうえで判断されます。

    合理性が認められるか否かはケース・バイ・ケースなので、会社としては、いかにして
    従業員の同意を得るかに注力しましょう。

    特に貸金・退職金に関する不利益変更は、従業員の理解を得るのが難しいため、
    不利益を緩和する代替措置などを準備したうえで、会社の事情を真撃に説明し納得
    してもらうことが、後でトラブルを生じさせないポイントとなります。

   2.労働関連法令の改正・新設に注意

    近年、増加する労務トラブルや経済構造の変化、雇用の多様化や新しい働き方の登場
    などを受け、労働関連法令の改正や新設が頻繁に行われています。

    会社が守らなくてはならない労働関連法令は労働基準法を始め多岐にわたりますが、
    会社は労働関連法令の動きをしっかり押さえ、法令に違反することのないよう、就業
    規則を定期的に見直す必要があります。

   3.就業規則見直し手順

    (1)就業規則の見直し案を作成

    (2)従業員代表の意見を聴取(意見書への記入、記名押印)

    (3)就業規則変更届、変更した就業規則、意見暮を添付し、所轄の労働基準監督署
      に提出

    (4)従業員に周知

      就業規則の見直し案をみてもらい、それに対する意見を聴く従業員代表の選任は、

       ・労働基準法第41条2号に規定する管理監督者でないこと

       ・投票、挙手などの方法によって選出された者であること

      なお、従業員代表の意見を尊重する姿勢は大事ですが、その意見を取り入れるか
      どうかは会社の自由です。(同意を得たり協議を行ったりすることまでは求められて
      いません)

      貸金規定や退職金規定など、就業規則の一部を別規定にしている会社も多くみら
      れますが(その場合、就業規則において「貸金については、別に作成する貸金規定
      によって支給する」などと記載している)、就業規則に付随する規定を変更する場合
      にも、就業規則の変更と同じ手続きが必要になります。

      また、複数の事業場で共通の就業規則を使用している場合、次の要件を満たして
      いれば、本社で一括して就業規則の変更手続きを行うことができます。その場合で
      あっても、従業員代表の意見は事業場ごとに聴かなくてはなりません。

       ・事業場の数と同じ部数の就業規則を提出すること

       ・各事業場の就業規則の内容(変更前・変更後)が同一であり、その旨明記されて
       いること

       ・各事業場の従業員代表の意見書が添付されていること

       ・各事業場の名称、所在地、所轄労働基準監督署の一覧を提出すること

   就業規則の見直しに当たっては、社会保険労務士などの専門家にも目を通してもらい、
   問題がないことを確認するのも重要です。

   就業規則のほかにも、企業と従業員の間には労働協約などのルールがあり、企業と
   従業員はこれらを誠実に順守しなければなりません。

    1.労働契約:企業と個々の従業員が交わす個別の契約

    2.就業規則:常時10人以上の従業員を雇用する企業が定める規則

    3.労働協約:企業(経営側)と労働組合が交わす契約
 
   それぞれの効力は、基本的に、

    労働契約 < 就業規則 < 労働協約 < 法令

   といった順に強くなります。

   法令の規定が最も優先されます。

   ただし、こうした効力の関係は、従業員が不利益をこうむらないよう、労働条件の最低基準
   を労基法などの法令で担保するためのものです。

   就業規則の見直しに当たっては、社会保険労務士などの専門家にも目を通してもらい、
   問題がないことを確認するのも重要です。

   □就業規則を作成、変更する場合

    (1)従業員代表や労働組合の意見を聴き、意見書を提出してもらう

    (2)労働基準監督署長への届出(就業規則(変更)届) 、改定箇所

    (3)従業員への周知(閲覧可能な状態にする)

   の3つの手続きが必要です。

   就業規則の効力は従業員に十分に伝えた日以降で、施行日として記載された日に有効
   となります。

   変更した旨を従業員に伝えるまでは効力は発生しません。

   よって、労働基準監督署に未提出(提出前)でも、従業員に周知していれば、有効であ
   るということです。

   法律で決められている就業規則の掲示方法は、(4)〜(6)のいずれかです。

    (4)常時、作業場の見やすい場所へ掲示し、または、備え付ける

    (5)書面を従業員に交付する

    (6)社内サーバー等に保存し、かつ、従業員がいつでも確認できる

   □就業規則の備え付け場所

    全ての建物(支店、作業場)に備え付けます。

    就業規則はあなたの会社を守り、従業員を守るものです。

    労働基準監督署の調査も、従業員とのトラブルの解決も就業規則が判断基準となり
    ます。

    就業規則が会社にとって不利な状況にならないようにしましょう。

    最近多発する労働問題の中でも、 以下の点に注意しましょう。

    セクハラ>  <解雇 残業

 

                         お問合せ・ご質問こちら


                         メルマガ登録(無料)はこちらから 

 

就業規則1.jpg

企業リスクと危機管理マニュアル

会社を守るマニュアル


  ここでは会社を守る管理マニュアルの一部を紹介します。

  個人情報安全管理マニュアル

  2005年4月より個人情報の適切な取り扱いが法的に義務付けられたが、今
  もって、事件・事故は後を絶たず企業の対応策は後手に回っているといって
  いいでしょう。

  その証拠に、企業による個人情報漏洩問題は後を絶たず、連日のようにマ
  スコミで取り上げられています。

  個人情報の漏洩は貴社にとって多大な経営リスクをもたらすことは
    確実であり、それは、「信用の低下」、「社会的責任発生」、「経済
  的損失」
となってあなたを直撃します。                             

  そのためには、再度社内の個人情報の取り扱い管理の
  体制見直しが急務となっております。

  保護法が施行して以来、漏洩問題は後を経ちません。

  『個人情報安全管理マニュアル』はこの問題発生を防止
  するために以下の手順で作成されています。  

   1.個人情報の取得、利用

   2.個人情報の受渡し

   3.照会時の対応(本人確認)

   4.個人情報の保管・・・

   5.個人情報の廃棄・・・

   6.情報機器の管理・・・

   7.社屋セキュリティ管理

   8.管理者の役割

  

  苦情対応マニュアル(作成プログラム)

  企業にとって、お客様からの声である「苦情」に対し、
  苦情の内容を正確に「理解」「把握」「記録」「伝達」し、
  迅速・誠実・正確な処理を行ない、円満な解決を図ることが重要となります。

  さらに、再発の防止を図るための対策を講じることで、お客様満足度を高めていき
  ます。

  多くの企業では、苦情対応マニュアルの作成を担当者に一任し、作成後は特に改訂
  することもなく、実際に対応する場面になると、適切な対応ができないという問題が
  発生しています。

  
  <苦情対応マニュアル作成のポイント>

  ○マニュアルは方向性を示す

   顧客から寄せられる苦情は多種多様であり、企業側は苦情の内容に応じて柔軟に
   対応を行わなければなりません。

   しかし、マニュアルをあまりに詳細に作成してしまうと、従業員はマニュアルから
   外れた行動をとることができず、画一的な対応になってしまいます。

   こうした画一的な対応は、顧客の気分をさらに害する可能性もあります。

   そこで、マニュアルを作成する際には、基本的な方針を示すものとし、あまり詳細に
   作りこまないようにしておきます。

  ○定期的に見直しを行う

   マニュアルは、一度作成すればそれで終わりというものではありません。

   企業を取り巻く環境が刻々と変化し続ける中、一度作成したマニュアルをそのまま使
   用し続けていては、顧客の要求に応えきれなくなる可能性があります。

   苦情対応の質を常に高いものに保つため、マニュアルも随時見直していかなければ
   なりません。(実際の苦情情報を反映させ、見直しは1年ごとに行う)

   企業の信用・イメージは苦情対応を適切に行うかどうかで決まるのです。


  基本動作(挨拶、身だしなみ、報連相、… 等12項目)マニュアル

  基本動作の目的を一言集約すれば、『企業体質強化、業績向上の最大具体策=
  必須条件』である。即ち、組織人としてやらなければならない行動が基本動作であり、
  基本動作の訓練は、CSの向上、コンプライアンス・CSR(企業の社会的責任)の意
  識強化策であり、業績向上策でもある。

                       組織力強化マニュアルについてはこちら

 
                      お問合せ・ご質問こちら

 
                      メルマガ登録(無料)はこちらから 

マニュアル1.jpg

企業リスクと危機管理マニュアル

企業の安全配慮義務と損害賠償責任

企業の安全配慮義務と損害賠償責任


  □労災事故と企業責任について

   1.刑事責任

    労働災害が発生すると、労働安全衛生法違反がなかったかについて、労働基準
    監督署から調査が入り、違反があれば刑事責任を問われることがあります。

    その場合労働安全衛生法違反の他、刑法211 条の業務上過失致死傷の罪に
    問われる場合があります。

    業務上過失致死傷は、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、
    5年以下の懲役若しくは禁錮又は100 万円以下の罰金に処する。

    重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」としています。

   2.民事責任

    労災事故が発生した場合、事業主は、過失の有無にかかわらず労基法により補償
    責任を負わねばなりません。

    しかし、労災保険に加入している場合には、事業主にその事故について労災保険
    による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます(労災によって
    労働者が休業するときの1〜3 日目の休業補償は、労災保険から給付されない
    ため、労基法で定める平均賃金の60%を事業主は被災労働者に支払う必要が
    あります)。

    しかし、仮に事業主が故意または重大な過失より、労災保険に加入していな
    かったり、労災保険料を滞納していた期間に事故が発生した場合、またその事故が
    事業主の故意または重大な過失より生じた場合は、国から給付される額の
    30%〜40%の額が徴収されます。

    また、労働基準法上の補償責任とは別に、労災について安全配慮義務違反などの
    事由により被災者側から使用者に対して民法上の損害賠償請求がなされる場合
    があり、その請求額も大変巨額なものとなってきています。

    なお、労基法に基づく補償が行われたときは、その価額部分は民法による損害賠償
    の責を免れることが労基法に規定されています。

   3.行政処分

    労働災害が発生した場合、労働安全衛生法により、作業停止命令等の処分が
    行われることがあります。

    また、刑事事件に相当しない程度の事故災害でも、労基署から「厳重注意」「是正
    勧告」がなされ、改善されなければ刑事責任が問われる場合もあります。

   4.社会的責任

    重大な労災事故が発生した場合や、たびたび労災事故を発生させた場合、公共
    事業では指名停止や顧客からの取引停止などの社会的制裁を受けるケースが多く
    なっています。

    また、マスコミ等の追求も厳しいものがあり企業の社会的信用も失墜してしまう
    ことになります。

  □長時間労働に対する安全配慮義務

   我国ではあたかも、残業することがサラリーマンとしての美徳というような風潮が
   ありました。

   その結果、無理な残業により心身の健康を害するというような事例が多々見受け
   られます。

   そのような事例の一つに電通事件があります。

   これは、入社後約1 年5 ヵ月後に自殺した労働者の遺族らが、当該労働者の自殺は、
   常軌を逸した長時間労働を強いられたために、心身ともに疲弊してうつ病になった
   ことにより生じたものであるとして使用者に対して約2 億2 千万円の損害賠償を請求
   した事件で、遺族側が勝訴しました。

   この事件について、第一審で、裁判所は、使用者は労働者がそのような長時間労働
   及び健康状態の悪化を知りながら、労働時間を軽減するなどの具体的措置を採
   らなかったことにつき安全配慮義務不履行があるとして、遺族らの主張をほぼ全面的
   に認め、使用者に約1 億2,600 万円の賠償を命じました。

   使用者は控訴し、遺族側も賠償額を不当として附帯控訴※し、最高裁まで争われ
   ましたが、結果は最高裁で高裁に差し戻しされ、最終的には、謝罪文とともに1 億
   6 千8 百万円余を使用者が遺族に支払うことによって和解が成立しました。

   しかし、いずれにせよ裁判所は使用者の安全配慮義務違反を認めています。

    ※民事訴訟で、控訴人の控訴に対して、被控訴人が第一審判決のうち自己に
    不利益な部分の変更を求めてする控訴。

   このような事件を受け、国は平成17 年11 月に労働安全衛生法を改正し、長時間
   労働者への医師による面接指導の実施を使用者に義務付けました。

   このようにして、長時間労働に対しても労働者に対する安全配慮義務があることが
   法律に明記されました。

  □使用者が安全配慮義務違反を追及されないようにとるべき措置

   一般に安全配慮義務の内容とは、次の4つに分類できると言われています。

    1.物的・環境的危険防止義務

    2.作業内容上の危険防止義務

    3.作業行動上の危険防止義務

    4.宿泊施設・寮における危険防止義務

   しかし、安全配慮義務の具体的内容は、「労働者の職種、労務内容、労務提供場所等、
   安全配慮義務が問題となる具体的状況により、異なる。」としたように個々の事案に
   ついては、ケースバイケースです。

   結局、どのような措置を講ずれば事業主は、安全配慮義務を尽くしたと言えるか は、
   個々の事件によることになります。

   因みに厚生労働省では、事業主は以下の措置を行うことが必要だとしています。

   1.労働者の安全・衛生に関する事業主の責務

    事業主は、労働安全衛生法で定める労働災害防止のための措置を講ずるとと
    もに、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者
    の安全と健康を保持すること。

   2.労働安全衛生法に基づく措置

    (1)安全衛生管理体制を確立するため、事業場の規模、種類等に応じ、総括安
      全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、
      産業医、作業主任者等を配置する。

    (2)事業主や発注者等は、労働者の危険または健康障害を防止するための措
      置を講じること

    (3)機械、危険物や有害物等の製造や取扱に当たっては、危険防止のための
      基準を守ること

    (4)労働者の就業に当たっては、安全衛生教育の実施や必要な資格の取得が
      必要であること

    (5)事業主は、作業環境測定、健康診断等を行い、労働者の健康の保持増進
      を行うこと

    (6)事業主は、快適な職場環境の形成に努めること

    具体的に言うと、次のようになります。

     1.安全衛生管理計画の作成

     2.具体的な安全衛生管理活動
      (1)安全衛生委員会等の定期的な開催
      (2)安全衛生委員会等による職場パトロール
      (3)従業員の健康状態のチェック、体操の実施等の朝礼
      (4)機械、設備の点検
      (5)整理・整頓・清掃・清潔
      (6)指差し呼称
      (7)作業マニュアルの作成
      (8)危険予知活動
      (9)労働安全衛生マネジメントシステム等の取組み

     3.専門カウンセラーによる従業員に対するメンタルヘルスチェック
      これらのことは、労災事故を防止するために大変重要な事項であって、これ
      らの措置は事業主にとって絶対に必要であると思われます。

      しかしながら、これらの事項は労働安全衛生法違反に問われないようにす
      る、ということであって、被災者本人あるいは遺族からの損害償請求がこれ
      によって免れるとは残念ながらいえません。

  □万が一の事態に備えて

   どのような策を事前に講じていても100%これで大丈夫ということはあり得ませんし、
   また、絶対に安全配慮義務違反に問われないとは言えません。

   結果的に労災事故が起きても従業員およびその遺族に対する補償を極力問題化
   させないための措置を講じておく事は必要です。

   使用者賠償責任保険等の労災上乗せ保険の活用も視野にいれるべきでしょう。

                          お問合せ・ご質問こちら  

                          メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

裁判外紛争解決手続き ADR

裁判外紛争解決手続き ADR
 

  ■訴訟を起こさずに解決する方法

  □裁判外紛争解決手続き(ADR)とは

   1.費用も時間もかかる訴訟

    誰でも、どんな会社でも、社会生活を営んでいるかぎりは、さまざまなトラブルに 
    直面したり、あるいは重大な事放にあうことと無縁ではありません。

    もし、紛争や事故の当事者になったら、どうしたらよいのでしょうか?

    もちろん、いちばんよいのはお互いに話し合って解決することですが、話し合いが
    こじれれば、最終的には裁判、すなわち訴訟によって解決を図るしかありません。

    訴訟となると、法律知識も法廷でのテクニックも必要ですから、素人がこなすことは
    困難で、弁護士に頼むしかありません。

    そのためには、弁護士探しからはじめなければなりません。

    弁護士に事件を引き受けてもらったら、着手金と実際にかかる費用(訴状に貼る
    印紙代、通信費、交通費など)を払わなければなりません(訴訟に勝った場合には別に
    報酬金を払います)。

    どこの裁判所で訴訟が行われるかも問題です。

    離れたところにある裁判所へ出向くのも大変です。

    また、訴訟になると判決までに場合によっては1年以上もかかります。

    その間、弁護士との打ち合わせに出向かなければなりませんし、不安な気持ちで
    過ごさなければなりません。

    このように、訴訟になると、時間もお金もかかります。

    また、事件の種類によっては、秘密裏に解決したい、高度に専門的な分野であるため
    裁判官に理解してもらうのが困難、時間とお金をかけるほどの金額ではない争い
    など、必ずしも訴訟によって解決するのがベターではないものもあります。

    訴訟以外に紛争解決の方法はないのでしょうか。

   2.訴訟を起こさずに紛争を解決するために

    前述のように、訴訟にはお金も時間もかかります。

    また紛争の性質、規模、当事者の関係によっては、訴訟による解決が適さないものが
    あります。

    そこで活用を検討したいのが、

     裁判外紛争解決手続き(ADR:Alternative Dispute Resolution)

    です。

    具体的には本レポート末に紹介しているような、「裁判外紛争解決事業者」に依頼
    して、紛争解決に向けたさまざまな支援を受けるのです。

    ADRは、法律で細かく規定された訴訟手続きとは別の視点から紛争に向き合うことで、
    当事者に納得のいく柔軟な紛争解決をめざします。

    両当事者が満足できる条件をさまざまな角度から探ることで、和解により紛争が解決
    することは多数あります。

    裁判所は法律にしたがって判断しますが、法律の厳格な適用は、ときには当事者の
    誰もが望まない手続き・結果を招くことがあります。

    裁判ではなく、ADRを選択することによってお金も時間も節約し、かつ両当事者に
    とって納得のいく解決策がみつかることも多いのです。

  □ADR法の概要

   1.ADR法施行

    前項ではADRの有効性について説明しましたが、残念ながら裁判所の調停などは
    大いに利用きれている反面、民間の事業者が行うADRは、国民への定着が遅れ、
    十分には機能していないという状況にあります。

    その結果、本来であればADRで解決できる紛争についても、裁判を行って多くの
    時間や費用を使ったり、逆に裁判の煩雑さを嫌って、紛争解決を最初からあきらめて
    しまっているケースが多数あると推測できます。

    ADRが定着していない原因として、

     ・ADRという考え方自体が浸透していない
     ・紛争解決事業者の存在があまり知られていない
     ・どの紛争解決事業者に頼むべきかの判断基準がない
     ・紛争解決事業者に頼んでいる間に権利の時効消滅等の不利益の
      可能性がある

    といったことが指摘されてきました。

    そこで上記のような問題点を解決し、紛争を抱えている人が、ADRも含めたさまざまな
    紛争解決手段のなかから、自らにふさわしいものを容易に選択することができる
    ようにするため、平成16年に、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
    (ADR法)」が公布され、平成19年4月1日から施行されました。

    なお、ADR法の詳細については、以下のサイトでご確認いただけます。

    ◎裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)について(法務省)

  2.認証制度の導入

   ADR法のもっとも大きなポイントは、法務大臣による紛争解決事業者の認証制度を
   導入したことです。

   現在、すでに紛争解決業務を行っている事業者は、法務大臣に申請して、一定の要件
   を満たしていると認められれば、「認証紛争解決事業者」になることができます。

   認証紛争解決事業者は、認証を受けている旨を表示することができます。

   また認証紛争解決事業者の名称や所在地、業務内容などについてインターネット等で
   公表されます。

   これらの情報は紛争解決事業者を選択する側からみると、「認証を受けているか
   どうか」、「どのような分野の紛争解決に強そうか」といった貴重な判断材料に
   なります。

   また紛争解決事業者は、制度導入後も認証を受けずに業務を続けることはでき
   ますが、当然ながら認証を受けている旨を表示することはできませんし、以下で
   説明する法律上の効果も得ることができません。

  3.認証紛争解決事業者の法律上の効果

   認証紛争解決事業者になることで、以下のような法律上の効果を得ることができます。

   (1)時効の中断

     第1の法律の効果として「時効の中断」があげられます。

     ADRが定着しない理由のひとつとして、前項で「紛争解決事業者に頼んでい
     る間に権利の時効消滅等の不利益の可能性がある」ことについて触れました。

     通常の裁判では訴えを提起した時点で時効が中断します。

     ADRにおいてもこの効果を導入しています。

     つまり、時効中断に関しては、認証紛争解決手続きにおける請求のときに訴えの
     提起があったものとみなされるというものです。

     これにより、認証紛争解決手続きについても、その請求のときが時効期間の満了前
     であれば、目的となった請求に係る権利についての時効の進行は中断することと
     なるわけです。

     なお、認証紛争解決手続きによる時効の中断には以下の要件を満たすことが必要
     です。

      ・認証紛争解決手続きによって紛争解決についての和解が成立する
       見込みがないことを理由に手続実施者が当該認証紛争解決手続きを
       終了したこと

      ・認証紛争解決手続きの実施の依頼をした紛争の当事者が手続きの
       終了の通知を受けた日から1カ月以内に、認証紛争解決手続きの
       目的となった請求について訴えを提起したこと

   (2)訴訟手続きの中止

    第2の法律の効果として、「訴訟手続きの中止」があげられます。

    すでに訴訟に入っている場合に、いったん訴訟の進行を中止し、その間に紛争の
    当事者は認証紛争解決手続きにおいて紛争解決を試みることに専念することも
    できます。

    なお、認証紛争解決手続きによる訴訟手続きの中止には、以下の要件を満たす
    ことが必要です。

     ・紛争の当事者の共同の申立てがあること   

     ・訴訟の対象となっている紛争について、その当事者間に認証紛争解決
      手続きが実施されているか、認証紛争解決手続きによってその解決を
      図る旨の合意があること

      ただし、実際に訴訟手続きを中止するかどうかは裁判所が判断します。 

      そして裁判所は、訴訟手続きを中止する場合には、4カ月以内の期間を定めて
      その旨を決定します。

   (3)調停前置に関する特別

    第3の法律の効果として「調停前置に関する特別」があげられます。

    いわゆる調停前置事件(訴えを提起しようとする場合に、まず調停の申立てをし
    なければならないとされている種類の事件、具体的には継続的契約関係である地代
    借賃増減額請求事件および家庭関係事件)について、認証紛争解決手続きを利用
    した場合には、あらためて裁判所に調停の申立てをすることなく訴えを提起することが
    できます。

    これらの事件は、まず調停での話し合いを試み、簡易迅速な紛争の解決を期する
    とともに、利害関係や人間関係の調整を行いつつ円満な解決を図る必要があるため、
    訴えの提起の前に調停を行うこととされています。

    当事者が認証紛争解決手続きにおいて解決を試みたものの、それがうまくいかず、
    訴訟で最終的な解決を図ろうとする場合に、あらためて裁判所の民事調停・家事
    調停を申立てなければならないとすると、円満解決のための二重の労力および費用
    を費やすことになります。

    そこで、公正かつ適正なものと認められる認証紛争解決手続きを利用したことを
    要件として、調停前置の特別を認めることとしたのです。

    対象となるのは調停前置事件のうち次のものです。

     ① 地代借賃増減額請求事件(民事調停法第24条の2)

     ②家事審判法第18条第1項の事件
       ア.離婚及び離縁の事件
        イ.その他一般の家庭に関する事件(ただし乙類審判事件を除く)

    なお、調停前置に関する特別が適用されるには、以下の要件を満たすことが必要です。

     ・対象となる調停前置事件について訴えが提起されたこと
     ・訴えを提起した当事者がその提起前にその事件について認証紛争解決
      手続きの依頼をしたこと
     ・認証紛争解決手続きによっては当事者間に合意が成立する見込みがない
      ことを理由に当該認証紛争解決手続きが終了したこと

    ただし、受訴裁判所は、適当であると認めるときは、職権で事件を調停に付することが
    できます。

  4.認証紛争解決事業者の登場は平成19年の7月頃から

   ADR法は平成19年4月1日に施行され、認証紛争解決事業者の申請受付も同時に
   はじまりました。

   法務省によれば「特段の事由が存在しない限り,申請受付から認証までにおおむね
   3カ月間」ということです。

   なお、案件の内容によっては,処分をするまでに要する期間がこの期間を超えることも
   十分予想されます。

   自分が抱えている問題に応じて最適な認証紛争解決事業者を選び、できれば訴訟を
   起こすことなく紛争を解決したいものです。

  □紛争解決事業者の具体例

   最後にADR法施行前から存在する紛争解決事業者の具体例について、ご紹介します。

   ◎日弁連紛争解決センター

    弁護士会が運営している紛争解決センター。
    2017年10月現在、全国で37センター〔34弁護士会〕)に設置。「仲裁セン
    ター」、「あっせん・仲裁センター」、「示談あっせんセンター」、「紛争解決セン
    ター」、「民事紛争処理センター」、「法律相談センター」、「ADRセンター」など
    と呼ばれている。
     
   ◎財団法人交通事故紛争処理センター

    事故当事者の面接相談をとおして、弁護士や法律の専門家による交通事故の
    相談・和解のあっせん、審査を行っている。
    当事者間において、損害賠償などの問題について解決が図れないときに、公
    正・中立の立場で、無償で紛争解決するための支援をする公益法人。

   ◎家電製品P Lセンター

    製造物責任法(P L法)成立にともない、家電製品の事故に関する紛争解決の
    手段として、また総合製品安全対策の一助に資することを目的として設立され
    た。
    公正・申立な  機関として、家電製品の事故にかかわる相談を消費者から受
    け、消費者と事業者の話し合いを円滑にすすめるためアドバイス等を行っている。

                         お問合せ・ご質問こちら  

                         メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

企業リスクと危機管理マニュアルの作成


  2011年に発生した東日本大震災は我々に大きな教訓を与えました。

  危機管理マニュアルが存在しているにもかかわらず、政府の危機管理体制が機能
  しなかったことは既に承知のことです。

  地震対策マニュアル、原発における各種マニュアル(緊急時対応、原子力防災、事故
  対応)があるにもかかわらず、「災害・事故が想定外であった」という言葉で済ませて
  しまっています。

  特に自然災害の発生は人知のレベルを越えるのが当然です。

  このことを認識した上で、企業の危機管理マニュアルの作成と活用があるのです。

  既にご承知の通り、近年、企業を取り巻くリスクが様々な形で表面化してきています。

  社会リスク(政治、経済、社会)、事故・災害リスク(自然災害、事故)、経営リスク
  (製品、環境、人事、雇用、法務、財務)など、事業運営の中でこれだけのリスクにさら
  されているのです。

  これらのリスクの表面化は一昔前と違い企業規模の大小にかかわらず発生しており、
  リスクの複雑・多様化を物語っています。

  中でも、災害リスク(地震)では、東日本大震災関連の倒産は、震災からちょうど1年間
  で656件で、阪神大震災時の197件の3.3倍となり、負債総額は9210億8800万円、
  倒産企業の従業員数も1万0757人と1万人を超えた。(出展:帝国データバンク)

  企業の存続・成長を図るためには、リスク回避、発生被害を最小化するための迅速
  な意思決定と適切に対応していく(危機管理)体制の整備が必要不可欠となります。 
   
  ■危機管理

   近年、頻繁にマスコミを通して危機管理における話題が多い。

   平成17年4月1日より施行された「個人情報保護法」を含め、企業のリスクマネジ
   メントが重要性を帯びていることだけは確かです。

   あなたは、顧客及び顧客開拓に、これら旬なテーマを武器に提案すべきです。

   ある意味、リスクマネジメントの必要性が中小零細企業にも浸透してきているのです。

   「世の中では色々な企業の不祥事が起きているようだけど、ウチのような小さな
   会社には関係ないね」。

   今まで、こんな言葉を口にする中小企業経営者は少なくない。

   しかし、今の時代、そうした「油断」は極めて危険であることを訴えるべきだ。

   続発する大企業の不祥事の陰で、中小企業を舞台にした社内犯罪や顧客トラブル
   は着実に増えている。

   ほんの小さなトラブルなのに、対応の不手際などで重大な結果を招いてしまう。

   こうした“危機に弱い”中小企業経営者には共通点があります。

   不測の事態が起きた途端にパニックになり、記者会見で失言したり、現場に誤った
   指示を出し、事態を悪い方向へ導いてしまう。

   2000年夏に起きた○○乳業の食中毒事件から、2004年3月に発生した△△農産
   の鳥インフルエンザ事件など、企業不祥事の際にはよく見られる現象の一つだ。
 
   前述の○○乳業事件では、当時の経営者が詰め寄るマスコミに対して、「私は寝て
   いない」と質問を打ち切ろうとして、庶民感情を大幅に悪化させた。

   当局への報告を怠り、会長夫婦の自殺、社長の逮捕まで招いてしまった△△農産
   事件は記憶に新しいところだ。

   こうした“危機に弱い”経営者は、企業のリスクについて様々な誤解をしている場合
   がほとんど。
 
   会社の危機管理マニュアルをみても、マニュアルになっていない、あいまい、抽象的
   なフレーズが使われている。

   「実際に危機が起きた時、何が適切かを考える余裕などない。

   『こういう場合は、ここと、ここの部署に30分以内に連絡する』というように、数字を
   織り交ぜた具体的なものでなければ役立たない」
 
   マニュアルとは、作業の手順を指示する書類である。果たすべき役割について、
   その具体的内容を明示したものです。

   「危機管理対策にはコストがかかる増える」「不祥事による悪影響はイメージダウン」
   といった誤解がある。

   「危機管理対策費は、不測の事態が起きた際に会社の利益を守るための保険。

   それをコストと位置付けるから、なかなか対策が進まない。

   また、不祥事を起こした際の最大のダメージは、イメージダウンといった抽象的な
   ものではなく、最終的には金銭的な損失につながります。

   経営者がこの点を深く理解していない会社は当然、危機管理も後手に回る。

   危機管理に積極的な経営者の中にも、勘違いをしている人はいる。

   例えば、情報の漏洩事故を防ごうと、社内では機密文書やデジタルデータの管理を
   徹底させているにもかかわらず、社員と飲みに行った先や帰りに、重要な取引情報
   をあっさり口にする経営者がいる。

   こうした社長は「言葉もまた、情報の一つである」という認識が薄いと言える。

   中小企業において、危機管理の専門部署を設置するのは、少なくとも中小企業
   では効果的とは言えません。

   「危機管理対策を進めようとすると、必ず社内で“反対勢力”が発生するものです。

   営業部門にとっては、情報セキュリティの強化が仕事の効率を悪化させるかもしれ
   ません。

   こうした状況で危機管理を強化していくには、必ず経営者が陣頭指揮を執る必要
   がある。

   せっかく危機管理の重要性を認識しても、セオリーを正しく理解していなければ、
   リスクを引き下げることは難しいでしょう。

   組織における危機管理強化(コンサルティング・セミナー・研修・講演)のご案内

  ■危機管理マニュアル作成の意義   

   (1)社内すべての役職員に自社の危機管理について理解させる

   (2)危機管理対策の基本方針・目的・目標・事前準備・緊急対応体制・緊急対応
     措置などを明確にする

   (3)危機管理対策における責任者、責任部署、担当者などの役割を事前に明示
     する

   (4)緊急時の行動について、自社の姿勢や考え方を示すことにより、損害が最小
     限になるように臨機応変な対処ができるようにする

   (5)緊急時の対応に漏れがないように対応内容がチェックできる体制を構築する

  ■危機管理マニュアル作成に当たっての留意点

   企業においては、危機管理の体制を継続的に維持・向上させるための実践的な
   危機管理マニュアルの作成が必要となります。

  □実践的な危機管理マニュアルに必要な要素

   (1)読む対象者が明確で、内容が体系化されて
     いて分かりやすい

   (2)文章が読みやすく、分かりやすい

   (3)対策方針や対応方針などが明確化され
     ている

   (4)継続的改善の支障となる形骸化を防止す
     るための工夫がある

   (5)拡張性および汎用性がある

   また、マニュアルは
    自社に合った現実的なものを目指し、あまりに膨大なものを作成しない
    ことが大切であり、その作成過程こそが企業においては重要です。

    すなわち、関係者間での活発な議論や検討が危機管理に対する認識や意識を高める
    ことになるのです。

    危機は予期せず起こり、危機的状況は千差万別です。

    また、危機時には事態が刻一刻と変化していくため、常に臨機応変に対応する
    ことが必要になります。

    危機管理マニュアルは、危機時に企業が組織的・統一的に対応するための企業
    としての原則的な姿勢や流れを指し示すことが大切になるのです。


  ■危機管理マニュアル

   危機管理マニュアルの作成に際しては、特定の
   担当部署を設け、1〜2年をかけて議論・検討を
   重ねて自社独自のものを作り上げていくのが
   一般的です。

   危機管理マニュアルはいきなり作成できるわけではありません。

   まず、どのような危機に対応するマニュアルを作るのか、危機に対してどのような
   備えが必要か、危機が発生した場合にどのような組織で対応するのかなど検討
   すべき項目が多数あります。

   それらを全社的に検討し、決定された内容をまとめて記述したものがマニュアル
   になります。

   具体的には、次のような手順でマニュアルが作られていきます。

  □危機管理マニュアル作成までの手順と作成

   (1)危機管理基本方針の策定

     ●管理する危機を明確にする

      どの危機を管理するのかを明確にするには、次のような方法があります。

       ①自社における危機の洗い出し

        自社において“危機”を引き起こすと考えられる災害・事故・事件を洗 
        い出す。

         “危機”とは、経営を深刻な事態に至らしめる問題であり、あまり細
        かい災害・事故・事件を洗い出す必要はありません。

        自社におけるこれまでの経験を踏まえ、チームメンバーが予測できる 
        ものを洗い出す。

       ②危機洗い出しの方法

        日常の業務を通し、今までに発生した問題、事故等、加えて、新聞な 
        どのニュース、財務諸表、製造フロー等も参考のうえ、追加の危機を 
        洗い出す。

       ③洗い出した危機の現状分析

        それぞれの危機について、自社ではどのように取り組んでいるのか、 
        あるいは取り組んでいないのかという現状を把握します。

       ④対応する危機の決定

        当初は、洗い出された危機について、すべて管理していくことは、ノウ
        ハウ的にもコスト的にも困難なものがあります。

        洗い出されたものについて、現状分析を踏まえた取り組みの優先順位 
        を決定し、管理すべき危機(マニュアルの作成)を明確にする。


   (2)危機管理室(チーム)の編成

     効果的に危機管理を行なっていくために、
     危機管理チームを編成します。

      ①チームの役割

       危機の種類により異なりますが、危機管
       理チームは次の各段階でそれぞれ重要
       な役割を果たします。

        ○平  時

         ・危機管理体制・手順などの仕組み
          づくり、マニュアルの作成・改訂など

         ・予防対策の実施、緊急時の準備
          (機器・資材の調達、人員の確保、
          教育訓練、備蓄品の確保)など

        ○緊急時

         ・緊急対策本部の立ち上げ、マニュアルに基づく速やかな行動

        ○復旧時……計画に基づく復旧作業

      ②チームメンバーの構成

       チームは、月1回の打合わせを行ない、他のチームメンバーとの   
       コミュニケーションを図る。


   (3)危機管理計画の決定

     危機管理基本方針に基づき、管理すべき危機について、どのような方法・
     対策で取り組んでいくのかの概要を計画します。

     また、そのスケジュール、費用、資源なども併せて明らかにし、決定します。

     取り組みの項目数や組織の規模などによりスケジュールは異なってきます
     が、3ヶ月〜6ヶ月程度を目安に取り組んでください。

     最初から完璧なものを目指すのではなく、不都合な点は、シミュレーション・
     訓練後の検討などを通じて徐々に改善していく方法が望まれます。


   (4)危機管理取り組み内容の決定

     危機管理体制の構築のために以下のような項目を決定して下さい。

     ①想定される被害額の算出

      危機発生時の正確な損害額を算出することは、不可能です。

      しかし、考える手がかりが全く無いわけではなく、地震の場合なら、強い地
      震の発生により、建物や設備の損壊状況、人の被害、ガス・水道・電気の 
      ライフライン、道路・鉄道などの交通網の状況などについてシナリオを考
      え、それに基づき大まかな被害額を算出してください。

      シナリオでその状況や被害額が明示されれば、関係者全員が危機管理
      の重要性について認識でき、平時・緊急時・復旧時に何をすべきなのかよ
      り具体的になるので、危機に対する備えの把握も容易となります。 


     ②「平時の取り組み」を決定

      ●初期の準備事項

       自社で、初めて危機管理体制の構築が行われるときの準備項目は次
       の通りです。

      ○緊急対策室(チーム)設置基準の作成

       その中で組織メンバーおよびその権限を明確にしておいて下さい。

       事故・事件が発生した場合、それが緊急事態に該当するのか、緊急事
       態であっても、どのレベルの緊急対策本部を設置するのかなどの判断
       を誰がするか等、運用についても分かりやすく規定しておくことが大切で
       す。

       要員の確保については、本人が不在の場合もありますので、対策室長 
       をはじめ、それぞれの分野の代替要員、長期化する場合の代替要員な
       ども視野に入れて検討し、決定してください。

      ○行動手順

       危機が起きた場合にどのように動いたら良いのか、行動手順をできる 
       だけ分かりやすく規定します。

       また、その時に使用する各種の帳票・リストも決定しておきます。

       <帳票・リスト例>

        ◇行動手順チェックリスト

        ◇各種の情報や外部とのやりとりを記録するためのコミュニケーション
          記録票

        ◇危機管理チーム連絡網

        ◇社員安否確認用連絡先

        ◇行政および関係機関連絡先

        ◇各種修理業者等の連絡先

        ◇宿泊ホテル手配のための連絡先リスト

      ○緊急時の通信手段の確保

       緊急対策本部は情報の入手に始まり発信に終わるといって良いくら
       い情報が大切です。

       そのための通信機器・通信回線の確保
       が欠かせません。

      ○設備・備品の確保

      ○資金の確保 

      ○備蓄品の確保(食料・医療品など)


      ●各年度の取り組み

       各年度では当該年度単独の取り組み
       計画を立案し、中・長期にわたって継
       続性のある予算を獲得のうえ実行します。

       具体的には、次のような取り組みが必要
       となります。

      ○予防・被害最小化対策の取り組み

       予防対策・セキュリティシステムの構築など、危機にはテロのようにある 
       程度予防できる(入退館管理などの対策)ものと、地震などのように予 
       防はできず
       に、被害最小化対策のみのものがあります。

       なお、防火活動のように、予防対策であり、被害最小化対策となるよう 
       な活動もあります。

       いずれにしろ優先順位をつけ取り組んで行くことになります。

      ○緊急時資源の整備

       緊急時に必要な機器類・道具・資材・物資などのハード、連絡網などの
       ソフトについて既存資源の点検および今年度に関する準備を行ないま
       す。

       特に、通信手段の確保は最優先事項です。

      ○教育・訓練・シミュレーションの実施

       教育・訓練なども重要な予防・被害最小化対策です。

       教育内容は、

        ・一般的な防災対策の知識

        ・自社における安全防災体制

        ・緊急時対応の知識等
   
       なお、シミュレーションは、緊急時に欠かせない項目(速やかな社内連 
       絡、緊急対策本部の早期立ち上げ、公的機関との連絡の取り方、メディ
       ア対応、提携外部専門機関との協力など)を盛り込んだシナリオに基づ
       くシミュレーションにおいて、想定したレベルに早く達することができるよ
       うに、計画を立て、定期的な取り組みを行うなど継続的な取り組みが必
       要です。

       その経験を踏まえた情報は、マニュアルの見直しを行なう際の情報とし 
       ても大変貴重なものです。

       実施に際しては、データを豊富に収集することが必要です。

      ○計画・マニュアルの見直し・変更

       社会情勢・社内体制などの変更、緊急時に必要なハード・ソフトの改良 
       など変化が激しいので、それに応じてマニュアルも見直しが必要です。

       定期的に年1回程度の見直しを実施し、必要があればマニュアルを改 
       訂します。


     ③「緊急時の取り組み」を決定

      危機発生時に必要な事項は次の通りです。準備は、平時にできているは 
      ずですか
      ら、そのことが確認できれば、意思決定のうえ、実行あるのみです。

      ●現状把握

       危機発生の情報をキャッチし、状況をある程度把握できたら責任者に 
       報告し、緊急対策本部の設置の有無について組織決定を行います。

       なお、引き続き情報収集を行ない情報の精度を上げていくことになりま 
       すが、情報の受発信窓口は一本化し、情報が錯綜したり、誤った情報
       が配信されないようにすることが大切です。

      ●状況の分析及び緊急時の行動計画の作成

       情報の集積に応じ、状況分析の精度も上げていきます。

       状況の分析に基づいて、事前に準備できている資源を確認し、現実の 
       問題に柔軟に対応できる行動計画を立案します。

       平時には立案できないため、緊急時には即刻作成することが求められ 
       ます。

      ○項 目

       ・必要な人的資源の確保(外部専門家も含め、特に専門能力が欠ける
        ことのないように注意)

       ・必要な物的資源の確保・点検(緊急時は情報が生命線。特に情報機
        器類および回線の確保が重要です。)

       ・情報入手ルートの確立・確認

       ・行政・関係各機関・提携企業との連携

       ・被害者およびその家族の支援

       ・マスコミなどへの対応

       ・各種対応・情報の記録化

      ●対応の決定・指示

       被害を最小限にするためには、速やかに決定を行い、明確に指示する 
       ことが望まれます。

       ただし、決定や情報の開示に当たっては、次の点に留意してください。
     
      ○項 目

       ・企業の論理ではなく、一般社会の常識を尊重することが大切です。

       ・情報開示が少ないと世間の信用を一層無くすことになるケースが多く 
        みられます。

        ただし、情報開示する範囲は慎重に検討する必要があり、人権や企 
        業秘密などの問題も絡むので専門家と検討することが必要です。

       ・事実隠し、ウソは最悪です。違法行為を隠していたことが発見される
        と、その反動は大変大きく、信用は著しく損なわれます。

     上記(1)〜(4)までの項目を基にマニュアルを作成していきます。


   (5)危機管理マニュアルの作成

     ここでは地震対策マニュアルを例に解説してみます。

     ●目次

      1.はじめに

      2.基本方針

      3.想定される被害

      4.平時の取り組み

       (1)事務所建物その他諸設備の耐震強化

       (2)非常用備品の充実と保管整備

       (3)災害に強い通信手段の構築

       (4)緊急時の協力業者の確保

       (5)建物の構造把握と消火・水槽設備の確認

       (6)平時の対策(ソフト面)

       (7)職場地域ごとの防災体制の確立と災害対策の推進

       (8)社員への防災対策教育とマニュアルの周知

       (9)実践的防災訓練の実施(シミュレーション・データの収集)

      (10)緊急連絡網の整備

        5.緊急時の取り組み

       (1)初動活動

       (2)現状把握

       (3)緊急指令(緊急手配事項)

       (4)災害対策本部の立上げと運営要領

       (5)災害対策本部の設置

       (6)対策本部の各役職者の権限

       (7)設置場所の確立と必要備品類の調達

       (8)情報管理の方法

       (9)災害対策室内会議の議事録作成と受付情報取りまとめ 

      (10)災害時の広報業務

      (11)緊急時における社内通達の原則

      (12)情報連絡ルートの確立と災害情報照会ルールの徹底

      (13)行動記録

      6.復旧への取り組み

       (1)事務所機能の回復と業務復旧に向けて

       (2)建物・事務所内の応急処置

       (3)エレベータの復旧

       (4)電気・ガス・給排水・空調設備等の復旧

       (5)仮設トイレの設置

       (6)通信手段の復旧

       (7)救援備品の調達と輸送

       (8)出勤者の把握と勤務管理

       (9)業務回復に必要な人数の把握と補給体制の確立

      (10)応援者等の宿泊施設確保

      (11)被災者の居宅確保(被災者対応)

      (12)資金手当て

      (13)相当額の運転資金の確保

      (14)応急入出金ルールの確立

      (15)現金管理担当責任者の設置


  危機管理マニュアルは、危機に備えるために、危機管理体制構築の一環として作成
  されます。

  当然のことながら、マニュアルには、万一、危機が発生した場合、迅速に行動する
  ために必要な指揮・命令系統、対応する組織とその使命等が定められていますが、
  同時に、平時からの取り組みにより、危機が発生しないように予防する、あるいは
  危機の際の被害を少なくすることも重要な事項として記載されます。

  危機管理マニュアルは、自社に合った現実的なものを目指し、あまりに膨大なもの
  を作成しないことが大切です。

  企業において重要なのは、危機管理マニュアルの作成過程です。

  なぜなら、関係者間での活発な議論や検討が危機管理に対する認識や意識を高め
  ることになるからです。

                        組織力強化マニュアルについてはこちら 

                        
お問合せ・ご質問こちら  

                        メルマガ登録(無料)はこちらから 

 

危機管理.gif

企業リスクと危機管理マニュアル

安全な職場づくり
 

  ■安全安心な職場づくり

   「きちんと片付けなさい!」「使った物はもとの所に戻しなさい!」「整理・整頓しま
   しょう!」いずれも小さい頃、家庭や学校で言われ続けてきたことです。

   当時はその意味を深く考えることもなく、なかなか身につかない躾(しつけ)の一つ
   くらいにしか捉えていなかったのではないでしょうか。

   そして大人になった今、また同じことを言われるわけです。

   でも、その意味や目的は単なる躾の域にとどまらず、ケガをしない(させない)、職
   業病にかからない、仕事のムリ・ムダ・ムラを省いて高い生産性を維持する、と
   いった安全衛生管理の基本として位置づけられます。

   これは、厚生労働省が平成23年度より取り組んでいる第三次産業における労働
   災害防止対策において、4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)の普及促進を取り上
   げていることからも分かります。

   一般に言われることですが、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の徹底度は業種
   を問わず、その作業現場を一目見ればある程度判断できるものです。

   すなわち、5S活動は実行すればその成果が表れ、目ですぐに確認でき、不十分
   であればすぐに改善でき、またその結果がすぐに確認できるという、実に管理し
   やすい活動であると言えます。

   現場の管理監督者が安全衛生管理に取り組む場合、まず5Sの徹底からはじ
   め、その効果を目で確かめながら活動をすすめていくうちに、「安全で快適な職場
   環境の確保」「品質の向上」「作業能率の向上」「コストの削減」「モラールの向上」
   「良好なチームワークの構築」などの果実を得ることができます。

   5S活動の最大の特徴は、成果が目に見える活動であり、安全衛生活動の基本と
   して最初に取り組むべきものであるといえます。

  災害発生の三要因

   5S活動は事故や災害(ケガ)を防止するための基本であるといいましたが、ここ
   で、その理由について考えてみましょう。

   事故や災害が発生する背景には三つの要因があるといわれている。

   図に示すように、直接原因としての“不安全状態の放置”“人の不安全な行
   動”と、根本原因としての“不十分な安全衛生管理/不活発な安全衛生活動”で
   す。

   この中の一つである不安全状態の代表的な例が、いわゆる5S不良による乱雑な
   現場なのです。

   原材料、半製品、廃棄物などが雑然と置かれていたり、掃除されることもなく床面
   が油で汚れていたりする作業場では、ケガにつながる危険の芽も覆い隠されて、
   結果として転倒、踏み抜き、激突、切創(切れ)などさまざまな災害につながる。

  □現場における5S

   ここで、5Sのそれぞれの意味をもう一度確認してみましょう。

    ・整理…要るものと要らないものを区別し、要らないものは処分する。

    ・整頓…るものを所定の場所にきちんと置く。

    ・清掃…業場所や周辺を掃除して、ゴミ、汚れのないきれいな状態にする。

    ・清潔…整理・整頓・清掃を徹底して実行し、汚れのないきれいな現場を
         維持する。

    ・ 躾 …マナー・ルールを守る、守らせる。

   もう少し掘り下げて考えてみると次のようになります。

    1.「整理」:整理の2要素

      (1)必要なものと不要なモノを分けること

      (2)不要なモノを捨てること

     この2つを実行することが「整理」です。

   管理監督者は何が不要かの基準を明確に伝えることが重要です。

    2.「整頓」:整頓の3要素

       (1)必要な材料や工具などを見つけやすくする

      (2)材料や工具などを間違いなく利用・活用しやすいようにする

      (3)利用後、正しく戻しやすいようにする

     この3つが揃って生産性が向上するのです。

     そしてこれらの要素を満たす知識・知恵の活用が求められます。

     特に(1)と(3)は対になっています。

    3.「清掃」:「清」=清める(ほこりをふき取る)・「掃」=チリを掃く

    4.「清潔」

      「整理」、「整頓」、「清掃」が徹底し、維持されている状態を「清潔」という。

      図で示すと、「清潔」は「整理」、「整頓」、「清掃」の上に成り立つ形となる。

    5.「躾」

      図で一番上位に示されているように、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」の
      4つが身について、実行できる状態、これを躾ができた状態という。

      【事例】「5S不良で営業努力が水泡に‥‥」
           中堅会社のA社の社長は、大手企業B社の協力会社になるべく、3
           年前から営業努力を重ねてきた。

           そして営業努力が実り、B社の首脳がA社の工場を見に来てくれるこ
           とになった。

           視察の日、社長は緊張した面持ちで、B社の首脳を出迎えた。

           B社の首脳は、工場内をじっくり視察して回り、視察が終わった後 
           で、その口から出た言葉は‥‥。

           「なんて汚い工場だ。5S活動が全然できていない。こんな工場では
           品質を維持できない。仕事を出せるわけがない。」

           3年間の営業努力は結局水泡に帰した。

  □5Sは何のため?

    1.当たり前のことが当たり前にできているか?

     今、製造業、建設業、物流業、メンテナンス・サービス業、病院、ホテルなど業
     種を問わず「5S」に再注目する企業が増えています。

     整理、整頓など、どんな会社でも当たり前のこと、清掃をし、清潔な状態を保つ
     ことなど、できていて当然のことと思われるかも知れません。

     でも、その当たり前のことを当たり前にやることが今日では簡単ではなくなって
     きていることも確かです。

     その背景と潜在するリスクを図に示すと次のようになります。

     『あなたの職場では、当たり前のことが当たり前にできていますか?』

    2.競争の基盤づくりのために

     昨今の厳しい企業間競争を勝ち抜くためには、業種を問わず常に新たな経営
     手法や新しい製造手法の導入が求められています。

     ところが、新しい取り組みがうまくいかない(定着しない、時間がかかる)会社
     があります。

     「新しい取り組みがうまくいかない会社」に共通していることの一つに、職場(現
     場)が「きたない」ことがあります。

     5Sができていない会社は、決め事が守られなかったり、方針が徹底しなかっ
     たりと、ルーズさが目立つ職場の風土となりがちです。

     つまり、5Sすらできない職場(現場)では、新しい手法の取り組みが素早く、正
     確に行われ、高品質の製品(商品)の提供ができるわけはない、ということで
     す。

     これらのことから、図(不良の背景とリスク)に示すように、5Sは安全管理だけ
     でなく、品質管理、工程管理の基盤といえるし、そのことが企業の競争力強化
     にもつながるといえる訳です。

  □5S活動の実践と評価

   1.5Sの評価基準

     すべての活動に共通することですが、まず行うべきことは職場の5Sの現状が
     どのレベルにあるかを知ること(現状把握)です。

     その上で、改善を重ねレベルアップを図ることが確実な成果に結びつくことに
     なります。

   2.5S実施のポイント

     前述のように、まずは現在の5Sレベルを把握し、問題点を見出し、実情に応
     じたレベルアップを図ることです。

     また、実施はされているもののマンネリ化に陥っている場合にはその改善が
     必要となります。

     (1)5Sレベルの把握

       5S組織運営状況なども含め、5Sレベルを全社、部門別に把握します。

       5Sレベルの低い場合の要因としては次のようなものが考えられます。

        ・トップの方針が不明確で5Sの認識が低い

        ・5S推進組織や運営方法が不備(5Sの教育不足を含む)

        ・5S手法活用に不慣れで5S実践の重点が不明確

        ・継続して5S維持ができてない

        ・設備の清掃、点検知識・技能が不足

     (2)マンネリ化傾向の調査

       5S活動が長く続くとマンネリ化し、油断や惰性に陥り、実行が伴わなくなる
       ことがあります。

       その背景には次のような要因が考えられます。

        ・5S委員会や職場活動の停滞・不活発(やらされ感の蔓延)

        ・役割・責任体制が不明確

        ・点検チェックシートの結果を上司が確認しない

        ・5Sに起因する災害が多発

        ・5S関連マニュアルや管理水準が長い間未改訂

   3.5S活動改善方法

     (1)レベルアップ対策

       把握した会社や職場の5S水準により、目標を定め段階的に整備し定着さ
       せる進め方が効果的です。

        〔例〕整理・整頓・清掃(3S)を重点的に整備し、ついでに清潔・
           躾(5S)を定着させます。

       実行する際の改善の要点を次に例示します。

        全般:トップの方針の明確化と組織運営の見直し

        整理:整理基準の明示、赤札などによる大幅整理の実行

        整頓:物の置き場所、置き方、保管方法の明示/目で見る5Sの
            管理方式の採用

        清潔:5Sマニュアル(手順、基準)類の整備

        躾  :現場規律の見直し、明るい職場づくり

     (2)マンネリ化対策

       制度:トップの5S方針宣言、特別点検の実施

       運営:5S点検方法及びチェックリストの見直し、5S起因災害の再発
           防止、 小集団活動での5S活発化

       啓発:5S特別キャンペーン、全員による5Sスローガンのワッペン着用、
           従業員の家族に対する5Sポスター募集による家庭協力の推進

   4.効果の評価

     5S活動の診断及び効果の測定・評価項目とそのポイントについて、全社レベ 
     ルでの評価だけではなく、部門に特有な要素を盛り込んだ具体的な評価項目
     表を作成して運用することがより効果的です。

     いずれにしても、それぞれの項目について定量的に評価し、好ましい改善策
     があれば他部門への水平展開につなげ、改善の余地があればそれによる効
     果を教育するとともに、具体的な改善策を考えていくようにします。

                         お問合せ・ご質問こちら 

                         メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

中小企業の防災対策
 

  ■中小企業における防災対策

   日本は地震・台風・豪雨といった自然災害が発生しやすいうえに、ライフラインや建築
   物が高密度な都市部では、火災や地震などの災害が起きると、大きな被害を受ける
   恐れがあります。

   例えば、95年に発生した阪神・淡路大震災では、多くの企業が甚大な被害を受け
   ました。

   被害は人的損失から、社屋や工場といった物的損失、事業の中断による操業損失
   などさまざまです。

   また、事業復旧が遅れた企業などは、「十分な防災対策を講じていなかった」として
   信用を失いました。

   そのため、地震などの大災害へ備えるために企業が果たす役割が重要になってい
   ます。

   企業の社会的責任(CSR)が盛んに議論されている現在、環境問題などとともに、
   防災への取り組みもCSRとしてとらえられており、企業経営に大きな影響を与える
   防災への取り組みは、今後、企業価値向上には不可欠と考えられます。

   このような中、多くの企業が
    ・被災した際にいかに早く事業を復旧させるかをあらかじめ準備しておく
     事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の策定

    ・防災に対する取り組みを社会的に適切に評価する仕組みの構築などの検討
     の重要性を強く認識するようになりました。

  □遅れる中小企業の防災対策
   企業規模別の防災・安全対策の実施状況は、ほぼすべての項目において、中小企業
   は大企業よりも対応が大幅に遅れていることが分かります。

                防災・安全対策の実施状況(出所:名古屋商工会議所)  

対応 大企業 中小企業
食糧・水・物資の備蓄をしている 65.8% 26.5%
情報システムの耐震対策を実施済み 57.5% 21.9%
帰宅困難者対策について決めている 51.0% 27.2%
防災訓練を実施している 77.4% 40.7%

  □企業における防災対策

   「防災ハンドブック(事業所用)」(名古屋市)を参考に、企業における防災(地震)対
   策を3段階に分けて考えてみます。

    1.事前対策
      事前対策は、以下の2つに大別されます。
       ・予防対策:建物などの構造上の危険性、什器・備品などの危険性の軽減
        に関すること

       ・防災計画:効果的な緊急時対応と復旧・復興の手順に関することに分け
        られます。

    2.災害発生時の「緊急時対応」
      緊急時対応は場当たり的に行うのではなく、どのような対応を取るかについ
      て事前に計画します。

      具体的には
        ・災害対策組織の編成方法
       ・災害対策組織の任務
       ・任務遂行に必要な資機材や装備
      などを検討します。

      災害発生時の「緊急時対応」については、下表のような計画の立案が望ま
      れます。(出所:名古屋市「防災ハンドブック(事業所用)」

    3.業務の回復に向けた「復旧・事業継続対策」
      業務の回復に向けた「復旧・事業継続対策」については、一般に以下のよう
      な計画立
案が望まれます。

      【復旧・事業継続対策】

       (1)復旧体制の整備
         復旧計画を事前に立案するのは困難ですが、想定されるリスクを把握
         し、対策を検討しておきます。

         具体的な内容は、業種などによって異なりますが、一般的検討事項は
         次の通りです。
          ・設備の緊急点検、施設の被害状況調査、安全確認
          ・後片付け
          ・復旧対策班(対策本部)の設置
          ・コンピューターシステムの復旧計画
          ・応急金融(銀行、信用金庫など金融機関とは日ごろから信頼関係を
           築いておくことは、地震対策としても重要です)
          ・相互援助協定
          ・復旧要員、資材の確保(業者手配)
          ・ライフラインの確保(電気・ガスなどの供給事業者との連絡調整)
          ・輸送交通手段、ルートの検討および確保
          ・復旧状況調査
          ・復旧見込みの発表

       (2)協力会社との連携
         地震対策は本支店間の応援だけでなく、協力会社の応援も視野に入
         れる必要があります。

         協力会社との連携を図り、早期復旧するために次のことを検討します。
          ・協力会社から得られる応援の把握
          ・協力会社の地震対策策定の支援

       (3)事業継続
         事業継続に関する事前対策を検討しておきます。

         業種などにより内容が大きく異なりますが、一般的に検討する事項は
         次の通りです。

          ・地震後の設備点検表の整備
          ・相互援助協定の締結
          ・本支店間の相互応援計画の策定
          ・顧客リストおよび取引先リストの整備
          ・取引先の分散化
          ・データべースのバックアップ保管
          ・重要記録類の保全

       (4)得意先対応
           サービス提供の中断などによる取引先のリスクにも対応することが大
         切です。

         例えば、次の事項を検討することをお勧めします。
          ・顧客や取引先への情報提供(被災情報、復旧見込み、仮店舗の案
           内など)

          ・顧客や取引先への支援部隊派遣
          ・顧客へ生産出荷計画の変更連絡と調整
          ・顧客や取引先へのお見舞い

     【参考サイト】
      ・「事業継続ガイドライン第1版」チェックリスト
      ・企業の地震対策の手引き

      ・地震対策をはじめとする危機管理の社内マニュアル(危機管理計画書)
       のサンプル
      ・復旧計画策定上のポイント(製造業向け) 

      ・地震対策ポケットメモ(サンプル)

      ・危機管理計画書作成チェックリスト25

      ・「防災・危機管理 e-カレッジ」のサイト

                      組織力強化マニュアルについてはこちら

                      お問合せ・ご質問こちら 

                      メルマガ登録(無料)はこちらから

企業リスクと危機管理マニュアル

知的財産権の侵害から自社を守る

知的財産権の侵害から自社を守る
 

  ■海外展開の際に苦労する知的財産権の侵害

  “Made in Japan”は、高品質の代名詞として多くの国々で高い人気を誇り、多くの
   日本企業が新たなビジネスチャンスを求めて海外展開に注力している。

   一方、日本のブランド力に便乗し、知的財産権を侵害する模倣被害も散見されます。

   特許庁の調査によると、2017年度の模倣被害率は7.0%となっています。

     2018年度模倣被害実態調査報告書(調査結果)

     模倣被害社数及び模倣被害率の推移  (2018年度 経済産業省
     

   また、最も模倣被害に遭っている商品カテゴリーは最終消費財(完成品)であり、
   その被害率は51.2%に上っている。

   近年では進出先の現地企業から日本企業が知的財産権を侵害しているとして、訴訟に
   巻き込まれるケースも増えている。


  ○中小企業をサポートする国の制度

   中小企業が海外で知的財産権の侵害に遭ったり、第三者の知的財産権を侵害したとして
   訴えられたりした場合、現地の法制度や言語への対応などを考慮すると、その負担は
   決して軽くはない。

   こうした中小企業をサポートするために国ではさまざまな制度を設けている。

  □中小企業を知財侵害から守る制度の例

    ・模倣品対策支援(特許庁)     

     海外で模倣品被害を受けている中小企業に対し、海外侵害調査・警告状
          作成・行政摘発の実施等に関する費用の3分の2を助成する制度

    ・海外知財訴訟保険(特許庁)

     中小企業が海外知財訴訟費用保険に加入する際の掛金の2分の1を補助し、
     中小企業の掛金負担を軽減する制度

     高額となる係争費用に備える保険で、2016年6月から募集が開始されている。
     海外展開の際は、各種制度を活用しながら、自社のビジネスチャンスを広げて
     いくことが求められているといえる。

    ・海外知的財産プロデューサー(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

     海外ビジネス展開に応じた知財リスクやその具体的対策、知財の管理・活用に
     関するアドバイス・支援を無料・秘密厳守で行う制度


   海外展開の際は、各種制度を活用しながら、自社のビジネスチャンスを広げていくことが
   求められているといえる。

 

                         お問合せ・ご質問はこちら

 

                         メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

個人情報の流出漏洩を防ぐ安全管理

  ■個人情報の流出漏洩

   個人情報保護法の義務規定施行(2005年4月)により、個人情報の適切な取扱いが
   法的に義務付けられるようになりました。

   これに違反した場合は行政処分や刑事罰が科せられ、賠償請求の発生につながるよう
   になったのです。

   しかし、施行から今日に至るまで流出漏洩は後を絶ちません。

   ネット社会が進むにつれ、この問題はますます深刻化してくるでしょう。

    自社における個人情報安全管理のマニュアル整備は必須です。

  ヒューマンエラー

   ヒューマンエラーには、認知ミス、誤判断、動作ミス、忘却、気の緩みなどの要因が
   あります。

   しかし、ヒューマンエラーだけでは済まされないもうひとつの問題があります。

   ある一般社会人へのアンケートによると、業務に関係した機密情報や個人情報を持ち出
   したいという回答者は58.0%、持ち出そうとは思わない回答者は42.0%。

   持ち出したい情報は、「自分が作成した仕様書や設計書、提案書など」が38.5%、
   「取引先や顧客の名刺情報」が28.8%、「上司、同僚などの連絡先情報」が22.7%、
   「自分が送受信した電子メールのバックアップデータ」が22.5%など。

   このように、従業員が会社を辞めた後の「守秘義務」についても対策を講じておかなけれ
   ばなりません。

   世の中が便利になるにつれ、リスクも拡大することを認識すべきでしょう。

   ここでは、個人情報の取得、活用について考えてみましょう。


  □個人情報の取得、利用

   ●個人情報の不正な取得、目的外利用が発生する場面

    ○個人情報の取得

     ・利用目的を明示せずに取得

     ・本人の同意を得ず取引先から取得

     ・出所不明な個人情報を取得

     ・人種、国籍、信教等の情報を取得

    ○目的外利用

     ・利用目的が商品の発送のみであったが、商品カタログと商品購入申込書を送付

     ・利用目的を変更したが、変更後の利用目的を本人に通知せず利用


    ○第三者提供

     ・顧客の利便性を考え、本人の同意を得ずに提携先に提供

     ・システムの欠陥により、ホームページから、第三者が自社の顧客データを直接利用


   ●個人情報取得時の留意点

    ○適正な取得

     ・利用目的を具体的に明示し、本人がはっきり理解したうえで同意を得ます。

     ・利用目的は、「商品の発送、関連するアフターサービスに関するお知らせ
      のために利用します。」等具体的に明示します。

     ・判断力が十分でない子供から家族の個人情報を取得してはいけません。

     ・お客様と面談時は、口頭又はパンフレットを渡し利用目的を伝えます。

     ・電話での勧誘の場合、口頭で利用目的を伝える。

     ・あらかじめ個人情報の利用目的を公表しておきます。

     ・店頭へのポスター掲示やホームページへの掲載。

     ・契約を締結する場合は、契約書に利用目的を明示するか、利用目的を
      明示した書面を手渡すか送付します。

     ・出所不明な顧客情報を外部から購入してはいけません。

     ・以下の情報は収集してはいけません。

     ・思想、信条、及び宗教に関する事項

     ・人種、民族、門地、本籍地(都道府県のみは可)、身体等社会的差別の
      原因となる事項

     ・団体行動、政治的権利の行使、保健医療・性生活に関する事項


   ●個人情報利用時の留意点

    ○利用目的の範囲内で使用

     ・個人情報を特定された利用目的の範囲を超えて利用してはなりません。

     ・止むを得ず特定した利用目的の範囲を超えて取り扱う場合は、管理者の
      承認を得た後、改めて本人の同意を得ます。

       *利用目的が商品の発送のみである顧客に商品案内を送付する
       *懸賞応募者に商品案内を送付する
       *製品サポート提供者に、商品案内を送付する

     ・提携先から取得した個人情報を利用してはなりません。

   ●第三者へ提供時の留意点

    ○第三者提供の留意点

     ・予め本人の同意を得た場合を除き、第三者へ個人情報データを提供
      してはなりません。

     ・同業者間で特定の個人データの交換をしてはなりません。

  □個人情報漏洩

   個人情報の漏洩はどのようにして発生するのでしょう。

   ここに掲載してある事柄は決して特別な内容のものではありません。

   しかし、特別ではない当たり前のことができていないことに問題があるのです。


   ●個人情報書類の受領時、事務所への持帰り時の留意点

    ○取引先・お客様訪問時の留意点

     ・受領した書類等は散乱しないように整理してカバンに入れます。

     ・営業活動中、書類等の入ったカバンは、常に目の届く範囲の管理下に
      置きます。

     ・電車などで移動する場合は、個人情報書類を入れたカバンを網棚に
      載せることは避けます。

    ○車上荒らしの防止措置

     ・書類等の入ったカバンを営業車に放置することは禁止です。

     ・短時間カバンを車内に置く場合は、トランクに入れ施錠します。

    ○取引先・お客様からの受領、郵送による受領

     ・取引先・お客様からの書類等の受領は従業員が直接行います。

     ・郵便や宅配便で送付された書類等は従業員が直接受取り、速やかに
      開封し、従業員の管理下にある所定の収納場所に保管します。

    ○個人情報書類などの委託会社への持参、郵送、交付時の留意点

     ・委託会社に持参、郵送する際は、上記所定の保管場所から持出して
      行います。

     ・委託会社社員が来社した場合の交付は、従業員が手交して行います。

   ●FAX、電子メール、電子メディアでの受渡し時の留意点

    ○基本ルール

      ・業務上必要な場合に限って慎重に行います。

      ・FD等の電子メディアで顧客情報データの受け渡しをする場合は従業員
       が直接行います。
       (郵送する場合は、書留郵便を利用するなど安全に十分配慮します)。

    ○FAX番号の短縮登録

     ・日常的にFAX送信する相手先の番号は社内・外を問わず短縮登録を
      行います。

     ・以下の相手先は短縮番号登録が必要です。
       社内の他部門、主要な取引先、業務委託先

    ○FAXダイヤル時の遵守事項 

     ・短縮登録先以外のFAX番号を電話帳などから転記する際は、指差し確認します。

     ・短縮登録先以外のFAX番号を相手方から聞く場合は、復唱確認します。

     ・短縮登録先以外にFAX送信する際は、番号を複数名で確認するか指差し確認
       します。

     ・特に重要な書類の場合は、FAX時に電話連絡し、FAX送信した顧客情報書類 
      の送達を確認します。

    ○帳票放置の防止

     ・書類を放置しないよう、FAX送信完了するまでその場を離れないようにします。

     ・FAXで受信した書類がFAX機などに放置されないよう留意します。


   ●個人情報書類の受渡しルール

    ○委託会社への個人情報書類の送付

     ・委託会社への書類の送付は、所定の封筒(専用封筒等)および所定のメール
       便用バッグ・ビニール袋を使用して行います。

    ○個人情報書類の送付

     ・書類を社内の他部門、取引先へ送付する場合は、紛失することがないよう以下  
      の処置をします。

       *原則として従業員が直接行う。やむを得ず郵送する場合は、書留郵便を利
          用するなど安全に十分配慮する。
       *書類は密閉した封筒を使用する。
       *宛名欄の余白に「重要」と朱書きするなど、受取り手の注意喚起を図る

    ○大量の個人情報書類を送付する際の留意点

     ・むやみに大量の個人情報書類を送付しないようにします。

     ・業務上やむを得ない場合でも封筒を二重にするなど、より厳重な取扱いを行い
       ます。


   情報漏えいは大企業だけの話ではありません。

   あなたのところで今までなかったのは、たまたまだっただけのことです。

   これを機会に、早急に社内の環境を整備してみてください。

   あなたは「100万円の利益を出すことと、100万円の損失を未然に防ぐことは同じ価値
   を持っている」ことを肝に銘じ、リスクマネジメントの本質をもう一度問い直す必要が
   あるのではないでしょうか。

  □照会対応

   ●照会対応時の本人確認

    ○電話照会対応時

     ◆「ご客者様の確認をさせていただきます」と断り、以下の本人確認を行う。

      ◇郵便番号、住所(番地、丁目まで)を言っていただく

      ◇生年月日(書類などで確認できる場合)を言っていただく

      ◇氏名の漢字を言っていただく

      ◇電話番号を言っていただく

     ・上記項目が書類等の記載内容と合致した場合に限り回答する。

     ・適宜、お客者の電話番号にかけ直すなど、より安全に配慮した取扱いを
      行う。

    ○来店による照会対応時

     ・運転免許証、健康保険証、写真入証明書などの提示を受ける。

     ・公的資料による本人確認は従業員が目視で行い、コピーはしない。

    ○文書による照会対応時

     ・回答先住所とお客様本人の住所とを照合する。

     ・お客様本人あてに電話し、本人確認を行うとともに、郵便で回答する旨を
      伝える。

    ○代理人による照会対応時 

     ・委任状があること、お客様本人の印鑑証明(3ヶ月以内に発行)がある
      こと、委任状にお客様本人の実印が押印されていることを確認する。

     ・運転免許証、健康保険証などの提示により、代理人の本人確認を行う。

    ○行政機関等への個人情報の提供

     法令等によって回答が強制される場合(以下)は、担当部門に連絡し、
     必要な処置を行う。
     (弁護士会からの照会など法的強制力のないものには回答してはいけません。)

     ・税法上の質問検査権に基づく税務署等からの照会

     ・労働基準監督署からの照会

     ・警察や検察による令状のよる捜査や必要な取調べに基づく照会

     ・裁判所の行う文書提出命令や必要な報告の請求

     ・テロ資金隠し、マネーロンダリング等、本人確認法に基づく犯罪疑義
      取引に関する届出

     ・お客様が疾病または傷害などにより行為能力を欠くに至った場合に
      おける契約内容等の法定代理人への提供

   個人情報の管理は業務のシステム化とも連動しています。

   個人情報の管理と業務のシステム化はそれぞれを単独で構築するのではなく、すべて
   の業務プロセスの過程で、必ず個人情報の安全をチェックする機能を設けます。

   業務プロセスの過程で、個人情報管理のチェックを通過しなければ業務の完了ができな
   いようにすることです。

   個人情報に限らず業務過程でのチェック(シート)の整備、例えば、営業活動においては
   挨拶・身だしなみ・セールストークなどの事前チェック、社内業務であれば電話対応・
   品質確認・各種保険業務など。

  □業務中の注意点

   ●帳票類

    ・書類を机上に置いて業務を行うときは、書類ケース、事案ファイルに入れる
     など、行方知れずにならないようにする。

   ●作表類

    ・作表類は、使用後必ず元の保管場所に戻し、机上に放置しない。

   ●電子メディア

    ・FD、CD、MOなどは、机上に放置しない。

   ●昼休み、離席時

    ・書類ケースや事案ファイル、作表類、電子メディアは、キャビネッ等に
     収納し、机上に放置しない。

   ●書類のコピー、画面コピー

    ・コピーや印刷は必要以上に行わない。

  □最終退社時の注意点

   ●施錠保管

    ・個人情報書類や個人情報を記録した電子メディアを収納したロッカー、
     キャビネット等は施錠管理する。

    ・苦情処理や個人情報の開示、訂正、削除要求等の事案ファイルは所定の
     保管庫に収納する。

    ・個人情報を保管している倉庫は施錠する。


  □帳票類の処理

   ●管理者責任

    ・個人情報書類、作表類の判断・分別・廃棄処理は、管理者の責任において
     確実に実施する。

   ●社員各自の責任

    ・不要になった個人情報記載書類・作表・文書等は、原則としてその都度、
     各自がシュレッダー処理を行う。

    ・誤って一般廃棄物や裏紙利用などにまわさないよう、取扱いには十分
     注意する。


   ●保存年限超過作表類の廃棄

    ・保存年限を超過した書類・作表類は、定期的に整理実施日を決めて(月1回
     以上)廃棄する。

    ・全社的に「環境整備・美化運動」等が実施され、職場フロアの整理整頓、
     美化を行う場合も、あわせて保存年限の超過した作表類の廃棄を行う。


  □フロッピーディスクなど電子メディアの廃棄     

   ・フロッピーディスク、CD、MOなど電子メディアは、大量の個人情報の漏洩
    につながる危険性が大きいため、廃棄は特に厳重に行う。

   ●廃棄方法

    ・電子メディアを廃棄する場合は、必ず通常レベルでの初期化を行い、さらに
     ハサミ等で物理的に破壊する。

   ●業者の選定基準

    ・業者への廃棄処理の外注には、予期しない不法投棄や不完全・ずさんな
     処理による情報流出のリスクがあるので、極力、社内でシュレッダー処理を
     行うようにする。

    ・やむを得ず現地責任にて利用する場合は、必ず、地域で従来から利用
     実績があり、信頼に足る業者に委託する。

    ・書面での契約や証明書の発行を渋る業者、地域の相場より大幅に安い
     業者には委託しない。

    ・信頼に足る業者が不明の場合は、保険会社の主管部門に事前相談する。

   ●委託内容の確認

    ・業務委託契約書を取り交し、処理内容を確認する。

    ・業務委託契約書に、お互いの責任範囲が明記されていることを確認する。

    ・「焼却証明書」「溶解証明書」「シュレッダー処理証明書」を徴求、次年度より
     起算し5年間(年度ベース)保管する。

    ・処理場・工場に入るまで、確認のため出来るだけ社員が同行する。
     (輸送途中や積替え時に残置・放置されるリスクあり、同行が望ましい。)


   個人情報の安易な取り扱いは、最悪の事態を招きかねません。

   安全管理は、日々の業務手順の中に組み入れることをお勧めします。

  □パスワードの管理

   ●ユーザーID/パスワード

    ・「ユーザーID」はパソコン上での名前で、身分証明書の役割を果たします。

    ・「パスワード」は「本人だけの合言葉」で、「印鑑」のような役割を果たし、ユー
     ザーIDと一緒に使って自分が誰であるかを証明します。

    ・他人であってもパスワードを知っていれば「本人」とみなされてしまうため、パス
     ワードは厳重に管理する。

   ●パスワードの設定

    ・以下のものはパスワードとして使用しない。
     *名前、社員番号、電話番号、生年月日など、他人から類推しやすい情報
     *辞書に載っているような一般的な英単語
     *“abc”、“123”、“aaaaa”など、簡単な英数字や同じ文字の繰り返し
     *ユーザーIDと同じ文字列

   ●パスワードの保管

    ・パスワードは、同僚や上司に教えないこと。

    ・パスワードは電子メールでやりとりしない。

    ・パスワードのメモを作ったり、ディスプレイにそのメモを貼ったりしない。

    ・パスワードをWeb ブラウザなどのソフトウェアに記憶させない。

   ●パスワードの変更

    ・パスワードは定期的に(月に1回程度)変更する。

  □パソコンの管理

   ●社用パソコンの持出し禁止

    ・パソコンの社外持ち出しは原則として禁止。

    ・業務上の理由による短時間の持出しで、管理者の許可を得た場合は例外
     的に持出しが可能。

    ・ただし、その場合でも、従業員は情報漏洩について細心の注意を払う義務
     を負い、管理者はそれを監督する義務を負う。

   ●個人パソコンの社内持込み禁止

    ・個人パソコン等の社内持ちこみは原則として禁止。

    ・従業員・委託会社などによる一時的な持込みで、管理者の許可を得た場合は例外
     的に持込みが可能となる。

    ・ただし、その場合でも、管理者は情報漏洩の防止について細心の注意を払う義務
     を負う。

   ●端末使用者の制限

    ・端末等パソコンは管理者が指示した者以外の操作は禁止。


  □フロッピーディスクなどの管理

   ●留意点

    ・電子メディアは、紛失や盗難による大量の情報漏洩につながるリスクが大きいの
     で取扱いには細心の注意をはらう。

    ・個人情報や会社機密情報を無断で外部に持ち出すことは犯罪行為になる。

   ●日常管理

    ・FD、CD、MOなどは、引き出しやロッカーに保管する(机上に放置しない)。

    ・長時間離席時および退社時は施錠保管するします。

    ・廃棄する場合は、データを完全に消去し、ハサミ等で物理的に破壊する。

   ●社外持出し時の留意点

    ・FD、CD、MOなどの社外持ち出しは、業務上必要な場合に限る。

    ・保存する顧客情報などの個人データは必要最小限のものとする。


   個人情報の安全管理については、すでにマスコミを通して耳にたこができるほど見聞きし
   ていますが、受身の立場で聞いている限り、自社(店)に安全管理の仕組み構築はできな
   いでしょう。

 

                          お問合せ・ご質問はこちら

                          メルマガ登録(無料)はこちらから

企業リスクと危機管理マニュアル

会社の健康状態をチェック
  

  あなたは、年に1〜2 回、健康診断を行なっていると思います。

  社員の健康診断も法律で義務付けられています。

  また、自動車も車検を受けて合格しないと運転できませんし、コピー機なども業者が
  定期的に点検をしているように、会社経営における重要な部分は定期的に「健康診断」
  を行なっています。

  では、「会社」に関しても健康状態を再確認するための診断を行なっているでしょうか。

  たとえば、医師の診断を受けるように、毎年外部の目から会社の健康状態を見るため
  の診断を受ける、あるいは自主的に会社の状況を診断しているでしょうか。

  大企業であれば監査役や会計士によるチェックがなされていますが、中小企業の場合、
  外部の視点から診断を受けているケースは少ないといえるでしょう。

  会社の健康をチェックし、健康状態をつかむのは社長や経営幹部の重要な業務です。

  ぜひ、自社の健康診断、現状の再認識を次のような視点から行なってみてください。

 

  経営者・経営幹部のマネジメント能力チェック 

   企業が未来にわたり存続・発展していけるかどうかは、経営者や経営幹部が自社を
   どのようにマネジメントしていくかによるといっても過言ではありません。

   自社トップ層のマネジメント能力の点検をお勧めします。

  業務管理チェック 

   業務を合理的・効率的に運営していく経営管理が求められています。

   そのためにはコスト管理、業務改善、社内ルールの整備、情報管理など、適切な 
   マネジメントを進めていくことが欠かせません。

  経営計画のチェック 

   企業は『将来のあるべき姿』であるビジョンを描くことは大切です。

   これを基に中期経営計画や年度計画を策定され、企業の経営目標や行動指針が
   明示されます。

   経営は、マネジメントサイクルである「PLAN−DO−CHECK−ACTION」を回して
   いくことです。

   その基本は「PLAN」= 計画

   年度計画を策定することがマネジメントサイクルを回していくための第一歩となるので、
   年度計画が作成されているかどうかは会社の経営力をみる大きな診断要素です。

   経営計画の策定、現状の経営計画を見直す際に活用ください。
   
  市場環境のチェック 

   時代の変化とともに自社の事業のドメイン(分野、範囲など)は変化していきます。

   自社の事業のお客さまは誰であるか、どのような商品・サービスをそのお客さまに
   提供するのか、競合他社との差別化の内容はどのようなものであるか、以上の3つの
   視点から事業をとらえていくことが事業ドメインの策定につながります。

   経営環境の変化に対応し、同業他社に対して競争優位を確保するためには、現在の
   事業環境を分析し、新たな経営戦略の策定や経営資源の再構築が求められています。

  □組織と人材をチェック 

   どんなに立派な経営戦略・経営計画を策定しても、それを実行する組織が効率的に
   機能せず、活力ある人材も存在していないとなれば、会社経営は危ういものとな
   ります。

   自社の貴重な経営資源であり、経営戦略の実行部隊である「組織と人材」について
   再点検をお勧めします。

  販売戦略をチェック 

   自社の商品・サービスの力を冷静にチェックしてみたことがあるでしょうか。

   自社の商品・サービスの他社にない特徴をつかみ、他社と継続的に差別化する
   仕組みがあるでしょうか。

   また、従来の商品・サービスだけに依存することなく、新たな商品・サービスを開拓
   していく仕組みができているでしょうか。

   どんなに優れた商品(製品)・サービスであってもお客様ニーズを満たし販売につ
   なげていく力がなければ収益にはなりません。

   商品だけでなく、たとえば梱包の状況、ネーミング、さらにはアフターサービスやメンテ
   ナンス、サービスであれば電話の応対や受付の印象も大切な要素です。   

   
  リスク管理チェック 

   企業の多くは目先の収益には関心を払いますが、災害・事故、労務問題などの
   「いざという時」の対策には関心が薄いものです。

   そのときになって取り返しのつかない事態に陥るケースも少なくありません。

   企業の規模を問わず、自社の業務上起こりうるリスクの洗い出しを行い、それに
   対する適切な対応策を事前に準備する必要があるのです。

   そうすれば、万一リスクが現実なものとなった場合でも、損失を最小限に食い止
   めることができるのです。

     危機管理の要諦は、最も悲観的に準備して、最も楽観的に対応すること。

     最悪なのは、楽観的に準備して、悲観的に対応すること。

           佐々淳行氏(元内閣総理大臣官房・内閣安全保障室長 
                   没年2018年)

   自社の「万が一」の場合における危機管理体制について再点検してみてください。

 

                         お問合せ・ご質問はこちら

 
                         メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

情報漏えいを防止する秘密(機密)保持契約書


  ■従業員の秘密(機密)保持義務と契約書の必要性

  □従業員の秘密(機密)保持義務
   ここ数年、企業の情報漏洩に関するニュースが後を絶ちません。

   顧客情報、技術情報、経営情報、個人情報など従業員の故意にせよ紛失や盗難と
   いった過失にせよ、それらの秘密情報が外部に漏れて悪用された場合の損失は計り
   知れません。 

   情報漏洩に対する一層の対策が求められるなか、多くの会社では就業規則に秘密
   (機密)保持義務を定めていると思いますが、それだけでは十分とはいえません。

   なぜなら、「従業員は会社の秘密を漏らしてはならない」という条文だけでは、どの
   情報が秘密(機密)情報であるのかが特定できず、また、秘密情報の管理・使用方法
   などがルール化されていないと、日常業務における情報の取り扱いもずさんになり、
   情報漏洩を招きやすくなってしまうためです。 

   まずは、どんな情報が「秘密情報」に該当するのかを明確にしたうえで、従業員への
   周知を徹底し、それらの情報を「秘密扱い」として取り扱うことが重要です。

   そのようにして情報管理を徹底し、従業員の意識を高めるために有効なのが「秘密
   保持契約書」です。

   この契約書は、基本的には入社時に取り交わしますが、それ以外にも昇進、転勤、
   配置転換、重要プロジェクト参加時、そして退職時などのタイミングでも取り交わして
   おくべきです。

   なお、いずれの時点で取り交わすにせよ、在職中のみならず退職後の守秘義務に
   ついても明記しておくことは必須です。

  □退職者の秘密(機密)保持義務 
   転職やヘッドハンティングなど、雇用の流動化が活発になっている現在、退職者に
   よる情報漏洩の可能性も念頭におかなくてはなりません。 

   秘密書類などをすべて返還させるとともに、ほかに一切秘密書類などを保持していな
   いかを確認するのはもちろん、在職中に知り得た秘密情報を退職後も決して漏らさな
   いよう誓約させるために、改めて秘密保持契約書を取り交わしておくべきです。

   万が一、違反があったときの責任追及のみならず、労働契約終了後の守秘義務に
   関する明確な根拠となります。

   なお、いかなる情報が「秘密情報」であるのかを明確に記しておくことが不可欠です。

  □不正競争防止法による保護 
   会社が費用と時間をかけて蓄積した営業秘密を保護するのが不正競争防止法です。

   これは、会社の財産ともいえる営業秘密が競争相手に漏れて大きな損失を受けぬ
   よう、不正な方法で営業秘密を取得し第三者に開示したり自ら使用したりする行為を
   禁止する法律で、従業員や退職者による営業秘密の侵害があった場合には損害賠償
   などを請求することができます。 

   ただし、保護される営業秘密は、一般に入手が困難で、事業活動に有用かつ秘密
   扱いとして管理されているものに限られるため、情報セキュリティ対策を万全にして
   おく必要があります。

  秘密(機密)保持規定作成のポイント 
   社内における情報管理の徹底および守秘義務に対する意識を高めるためにも、従業
   員との間に秘密保持契約を結ぶことはとても重要です。

   しかし、秘密保持契約書のなかにすべてのルールを記そうとすると、文章量が膨大と
   なるだけでなく、その時々で変化する状況にも対応しづらくなりがちです。 

   そこで、秘密保持契約書の元となる秘密保持規定を作成し一元的に管理をすれば、
   改定などがあった際にも柔軟に対応することが可能です。 

   秘密保持規定に規定しておくポイントは次のとおりです。
    ・規定の目的・秘密情報の定義、対象となる情報、従業員の範囲
    ・秘密情報の管理方法(漏洩の禁止、アクセスの制限、パスワード管理、廃棄等)
    ・秘密情報の使用方法(使用者の制限、第三者に秘密情報を提出する際の措置等)
    規定に違反した場合の措置、損害賠償に関する規定

  秘密(機密)保持契約書
   ・入社時の秘密保持契約書 

   ・退職時の秘密保持契約書

                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから

企業リスクと危機管理マニュアル

リコールへの対応


  ■製品事故の発生は完全にはなくせない

   2014年末に、自動車用エアバッグ、即席麺など、製品のリコールが大きく報じられた
   ことなどを受け、自社の製品安全管理について、社内外からの情報に迅速かつ的確
   に対応できる組織体制の整備や継続的な改善の必要性を改めて認識した企業も少な
   くないでしょう。

   消費者に安全な製品を供給することは企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくすことは
   難しいと言わざるを得ません。

   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備
   をし、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコール
   を自主的に実施しなければなりません。

  リコールの流れ  (経済産業省 消費生活用製品のリコールハンドブックより抜粋)
   即席麺のケースでは、メーカーは、製品に異物(虫)が混入していたという消費者から
   の苦情に対し、外部機関へ分析を依頼し、その報告を基に検証を行った結果、製造
   過程での異物混入の可能性が否定できないため、当面の間、全工場での生産を自粛
   するとともに全ての製品の販売を休止し、自主回収を行っています。

   なお、本事案に関連する健康被害については2014年12月11日時点で確認されて
   いないとのことです。

   健康被害拡大の恐れがない限り、個別対応で済ますこともできたかもしれませんが、
   消費者がTwitterで苦情を発信し、その情報が拡散した点がこの事案の特徴といえ
   ます。

   SNSなどを通じて情報が拡散するのが当然のこととなった現在、企業には、製品  
   事故による社会的信用の失墜・ブランドイメージの低下を最小限に抑えるための対応
   が必要となります。

   それには、苦情の当事者の被害回復のみならず、消費者全体の立場で考えた上で、
   リコール実施の判断を下すことが求められるといえます。

  □リコールへの備え 
   国民の生命・身体に関わる重大な製品事放の回避に向けて、必要な情報を消費者に
   対して適宜提供するため、消費生活用製品安全法(以下「消安法」)では、消費生活
   用製品(主として一般消費者の生活の用に供される製品をいい、市場で一般消費者
   に販売されている製品のほとんどが該当します)に係る製品事故などについて、製造
   事業者・輸入車業者だけに限らず、販売事業者や修理・設置工事事業者に対しても
   「情報の収集及び提供の責務」「重大製品事故の報告等」「危害の発生及び拡大を
   防止するための措置」に関する規定を設けています。 

   なお、消安法で除外されている食品・食品添加物・洗浄剤、医薬品・医薬部外品・化粧
   品・医療機器、道路運送車両、船舶などについてほ、食品衛生法、薬事法、道路運送
   車両法、船舶安全法など個別の法律によって、安全に関する規制が図られてい
   ます。 

   消費者に安全な製品を供給することば企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくすことは
   難しいと言わざるを得ません。

   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備
   をし、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコール
   を自主的に実施しなければなりません。

   経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック2016」によると、リコールの
   開始およびその後のモニタリングの流れのイメージは次の通りです。

   リコール対応のための準備を怠ると、対応に長い時間がかかる上、結果的に消費者
   から「製品事故の発生を隠そうとした」と受けとめられかねません。

   また、消費者への人的危害が発生・拡大する可能性があることに気付きながらリコー
   ルなどの対応を行わず、そのために死亡事放や火災など重大な被害を引き起こして
   しまった場合、行政処分の対象となるばかりか、損害賠償責任や刑事責任を問われ
   ることとなります。  

   一方、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコー
   ルを自主的に実施すれば、「消費者や取引先からの不信感の増大」「社会的な信用の
   失墜による業績の悪化」「従業員などの士気の低下」といったリスクを最小限にとどめ
   ることができるでしょう。 

   リコールに備えるためには、あらかじめルールを定め、「消費者の安全確保」を重視
   する企業としての姿勢を従業員などが全員で共有することが不可欠です。

   その根拠となるのがリコール対応に関する規程です。 

   以降では、経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック2010」を基に、リコ
   ール対応に関する規程のひな型について紹介します。

                 経済産業省「事故情報報告・リコール報告フォーム」 

   なお、死亡や火災などにつながる重大製品事故の発生を知った製造・輸入車業者
   は、消安法に基づき消費者庁消費者安全課へ事故の情報を報告することが義務付け
   られています。 

   重大製品事故以外の製品事故については、製品評価技術基盤機構(NITE)への
   報告が求められます。

   製品評価技術基盤機構は、消費生活用製品などに関する事故情報の収集を行い、
   その事故原因を調査・究明し、さらにその結果を公表することによって、事故の未
   然・再発防止を図っています。

   また、リコール実施に際し、社告を作成する場合、JIS S OlO4「消費生活用製品の
   リコール社告の記載項目及び作成方法」(2008年6月20日制定)を参考とすることが
   できます。

   JIS規格については下記サイトで検索・閲覧することができます。

                                日本工業標準調査会

                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

自社の危機管理

  危機管理体制確立のために

   企業を取り巻く環境にはさまざまなリスクがあり、発生する可能性も変化し続けて
   います。

   さらに、リスクは予期せぬときに突然危機に発展する可能性があり、予期せぬ
   危機は企業に大きなダメージを与えます。

   危機が発生する時期をあらかじめ予期することは非常に困難ですが、起こりうる
   可能性のあるリスクをあらかじめ予測し、それらの事態に即座に対応できる体制
   を整えることは可能です。


  危機に直面しての問題点 

    実際に危機に直面して困ったことについて、 圧倒的に多いのが「事実をつかむまで
   時間がかかった」という答えで、規模を問わず多くの企業がこう回答しています。

   危機管理において、未然の防止と並んで重要なのは起こってしまった危機に対する
   迅速で的確な対応ですが、正確な事実を把握することはそのための第一歩です。

   それにもかかわらず、事実の把握はなかなかスムーズに進んでいないのが現状のよう
   です。

   一方で、「特に困ったことはなかった」とする企業は3分の1以下にとどまっています。

   危機に直面した際には何らかの問題が生ずる覚悟をしておく必要があるでしょう。 

  □社内リスク

   一般的に社内で発生したリスクとしては、「労災」が最も高く、次に「盗難」や「社員の

   不正」が多く発生しています。

   また、今後多発する可能性が高いリスクをみると、「労災」や「盗難」が大きく低下する
   一方で、「社員の不正」は依然として高く、さらに「ネットワークの障害」、「雇用問
   題」が大きく上昇しています。

   こうした背景には、近年のインターネット環境における攻撃の多様化、景気回復に
   ともなう残業の増加や社員の帰属意識の低下などがあると考えられます。

  □危機管理体制の確立

   1.危機管理の基本
     冒頭で紹介したように、企業を取り巻く環境にはさまざまなリスクがあり、発生
     する可能性も変化し続けています。

     さらに、リスクは予期せぬときに突然危機に発展する可能性があり、予期せぬ
     危機は企業に大きなダメージを与えます。

     危機が発生する時期をあらかじめ予期することは非常に困難ですが、起こりう
     る可能性のあるリスクをあらかじめ予測し、それらの事態に即座に対応できる
     体制を整えることは可能です。

     こうした、危機を生み出すリスクの予測と対応体制の確立は危機管理の基本
     といえます。

     以下に企業を取り巻くさまざまなリスクと危機管理体制づくりのポイントをまと
     めてみます。

  2.企業を取り巻くリスク
    1.経済的リスク
       ・金利 ・為替相場 ・株式相場 

      近年の日本銀行の利上げが続けば、企業の資金調達コストは増加します。

      また、近年の円安は輸入原材料の価格を上昇させています。

    2.法的リスク
       ・知的財産権訴訟 ・環境保護関連法制度の強化 ・独占禁止法の強化

      米国では、特許をめぐる権利侵害訴訟が多発しています。

      日本でも、味の素や日亜化学工業が、元社員から発明の特許権と報酬をめ
      ぐる訴訟を受け、高額の和解金が支払われました。

      また、環境・リサイクル関連の法制度は、今後さらなる強化が見込まれ、対
      策費用の増加などのリスクが予想されます。

    3.人的損失リスク
       ・経営者や社員の死傷、重度疾病 ・ヘッドハンティング

      経営者の死去は、経営者の影響力が強い中小企業では特に、経営を揺る
      がす大事態に発展しかねません。

      また、近年は、社員の精神的な疾病による休職や突然の出社不能も大きな
      問題になっています。

    4.業界リスク
       ・競合企業の変化 ・業界全体の衰退

      日本でも盛んに行われだしたM&Aは、業界の勢力図を変え、過当競争を招
      くリスクを生みます。

      また、中国などからの安価な製品に押され、国内の業界全体が衰退していく
      リスクもあります。

    5.自然環境リスク
       ・大地震や風水害 ・長雨、冷夏などの天候不順 ・流行病の蔓延

      2004年の新潟中越地震、やスマトラの巨大津波、2011年の東日本大震災
      を例に引くまでもなく、自然災害はあがらうことのできない大きなリスクと
      なります。

      近年は、地球規模で天候の変化が激しくなっており、こうした自然環境リスク
      は増大しています。

    6.インフラ事故リスク
       ・電力や通信施設の事故 ・航空機、自動車事故の発生 

      2005年に起きたJR福知山線の脱線事故は、史上まれにみる大惨事となり
      ました。

      また、米国同時多発テロは特殊なケースですが、テロが起きた周辺地区に
      壊滅的な被害を与えました。

    7.社内的リスク
       ・工場、事務所の火災や事故 ・設備機械の故障 ・取引先企業の倒産
       ・機密漏洩 ・社員犯罪 ・商品製造工程の不備 ・個人情報の漏洩

      2005年の個人情報保護法の施行以降も、個人情報の漏洩・紛失が後を絶
      ちません。

      また、2007年1月に報道された不二家の期限切れ原料使用問題は、約2カ
      月間にわたる不二家洋菓子店舗の休業に発展し、2014年のまるか食品の
      ペヤングソースやきそばのゴキブリ混入問題では半年間の生産・販売を休
      止しました。

      危機につながる要因となるさまざまなリスクをいくつか挙げてみましたが、こ
      れだけの項目でも、それに該当するさまざまな事件や事故が発生しています。

      もちろん、今後新たなリスク要因も発生してくるでしょう。

      企業を取り巻く危機はありとあらゆるところに潜んでいると考えられます。

      企業には、いち早い危機管理体制の確立が求められているといえます。

  □危機管理体制づくりのポイント

   1.不測の事態を予測して行動計画をまとめる
     危機管理とは、自社の実態に即して考えうる限りの不測の事態を予測するこ
     とから始まります。

     そして、発生した場合に被害の大きいもの、発生する確率が高そうなものから
     対策を練ります。

     例えば、「もし重要なデータが入力されているコンピューターが壊れてしまった
     ら」と考えた場合、復旧のためには多大な費用や時間、労力がかかります。

     それを防ぐには、データのバックアップをとることや、複数のコンピューターに
     同じデータを保存させておくことが対策として考えられるでしょう。

     このように、まず予測される事態をピックアップし、その後にそれぞれの事態に
     対しての行動計画をまとめ、全社的に徹底していくことが大切です。

     なお、自然災害など、事業の存続が危ぶまれるようなリスク(BCP)に対する 
     行動計画のまとめ方についてはBCP(事業継続計画)の策定運用指針(中小
     企業庁)が公開が参考になります。

   2.保険の導入を検討
     危機の到来を想定した損害保険への加入も検討の対象になります。

     必要以上に保険を利用することは負担の増加につながりますが、発生した場
     合、重大な危機となるものに対しては、保険をかけることで万が一の事態に備
     えることができます。

   3.相談先を確保する
     法律的な問題や税務の問題など、社内では解決しにくい事態を想定しておくこ
     とも必要です。

     弁護士・税理士・司法書士など、訴訟などの事態が起こった場合にすぐに相談
     できる機関や団体を社外に確保しておくことが重要といえます。

   4.トップに直結した情報伝達経路をつくる
     不測の事態が発生してしまった場合、まずは情報を集めることが最重要事項
     です。

     正確な情報が入らないまま行動を起こすことは、その後の体制に悪影響を及
     ぼす恐れがあります。

     加えて、仮に危機管理専任の部署があったとしても、不測の事態が発生したと
     きに即座に判断を下せるのはやはり経営者です。

     トップに直結した情報伝達経路は素早い危機対応には欠かせないものとなり
     ます。

   5.導入にはトップダウンが有効
     特に中小企業の場合、人的な問題から専任の危機管理担当者をつくることは
     難しい面もあります。

     その場合は社内の既存部署などが危機管理担当を兼務することになります
     が、そうした際の社員への意味付けや全社的な危機管理意識の浸透のため
     には、経営者自身が意識を高めて自ら行動することが最も効果的な手法とな
     ります。

     危機管理は、実際に不測の事態が起こらない限り「事前対策が適切だったの
     かどうか」を判断しにくいものです。

     そうした結果のみえにくい業務は、負担の増加だけが目立って社内の理解も
     得られにくいため、経営者が率先して取り組む必要があります。

   6.とにかく始める
     危機管理とは、システムではなく意識の在りかたにこそ、その本質があります。

     つまり、完璧なマニュアルを作ることが危機管理なのではなく、完璧なマニュア
     ルで危機に対応しようという意識の高まりを行動に移すことこそが危機管理な
     のです。

     危機管理には、最初に始めなくてはいけないというものはなく、必ずやらなけ
     ればならないものがあるわけでもありません。

     まずは、自社にとって重要だと思われることのうち、できることから一つずつ始
     めていくことが大切といえるでしょう。

     小さなことからでもとにかく取り組みを始め、日常の業務としての危機管理を
     定着させることが、危機管理体制確立への第一歩なのです。
    
  □「予防」・「防護」とリスクコスト 
   日米間の「安全」へのアプローチの違いを例に考えてみよう。

   「日本の安全は予防(Prevention)で支えられている」といわれ、「米国の安全は防護
   (Protection)で支えられている」といわれる。

   「予防」とは、事故や災害を未然に防ぐ活動全般を指し、従業員の教育や事前の点検
   、整備など日常の活動が中心に据えられる。

   一方、米国式の「防護」とは、事故や災害が発生した場合の悪影響の拡大を防ぐ手段
   と定義できる。

   例えば、スプリンクラーや消火器、消防隊の消火訓練などには、火災の発生を抑える
   効果は全くない。

   全て火災が発生した後に活躍するもの。

   火災を例に取ると、火災報知設備、防火区画、建物の非常階段、消防署が設置され
   ていることも、消防車が近づけるように建物の周囲に道路が確保されていることも
   「防護」に当たる。

   比較してみると、日本では平常時は、これらの目的は安全から離れ、「企業活動を
   円滑に」とか「操業を止めないために」などという言葉に置き換えられ、理解されて
   います。

   言い換えれば、これらにかかるコストは、リスクコストと認識されていない(目に見え
   ない)ということになる。

   米国の「防護」のほとんどが物理的な設備の充実を前提としており、即、コストに反映
   される対策であることもわかる。

   日本のリスクコストが相対的に低いわけではなく、目に見えにくいということがいえる。

  □企業リスクマネジメントの対象リスク
   事故・災害リスク:火災・爆発・洪水・地震・落雷・交通事故・航空機事故・労働災
               害・通信途絶・コンピュータダウンなど

   法務(訴訟)リスク:製造物責任訴訟・知的財産権訴訟・環境汚染責任の発生・そ
               の他利益侵害による訴訟提起および規制違反等による罰則
               の適用など

   財務リスク:投機失敗・不良債権の発生およびその処理・企業買収・株価の急変・
           資産の陳腐化など

   経済リスク:金利変動・為替変動・税制改正・金融不安全般など経済関連の外部
           要因など

   労務リスク:雇用差別問題の発生・セクハラ・役職員の不正・スキャンダルの発
           生・求人難・リストラ・労働争議など

   政治リスク:戦争・革命・動乱・制度改正・貿易制限・非関税障壁・外圧など

   社会リスク:企業脅迫・誘拐・テロ・機密漏洩など

  □リスク対策
   対策は大きく「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」に分けられる。

   リスクコントロールは、損害予防または拡大防止などの技術操作であり、リスクファ
   イナンシングは損害発生を予想した、損害発生後の資金操作をいいます。

   リスク対策は、第一に「予防」、次に「防護(防御)」、最後に「保険などへの移転」と
   進むが、それでも企業には「保有損失=リスクコスト」が残る。

   リスクマネジメントでは、この「保有損失」を最小化することを目標とします。

                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから

 

企業リスクと危機管理マニュアル

自社を守る診断チェック

  不測の事態は一瞬で大打撃をもたらす!
    自社の規定は本当に法令遵守が出来ているのだろうか?

  ● 労使紛争(訴訟)は自社には関係無いと思っていないか・・・
  ● もし事故・訴訟になったら経済的損失は・・・
  ● 人件費が収益を圧迫してるが・・・
  ● サービス残業を黙認してしまっているが・・・
  ● 社内で人事評価制度への不満がないか・・・
  ● 会社の信用にキズが付くような問題はないか・・・
  ● 会社は社会的責任(CSR)を意識しているか・・・

  これらのことは決して大企業だけの話ではありません。
  あなたの身近で起きているのです。

  会社は生きものです。いつ何時体調を崩したり、事件・事故に
  巻き込まれかねません。

  会社を守るためには管理を怠たらず、定期の自己診断をしてください。

                       『会社を守る自己診断チェックシート』はこちら  
 


                        メルマガ登録(無料)はこちら

                        お問合せ・ご質問はこちら
j0405208聴診器.jpg

企業リスクと危機管理マニュアル

リコールは迅速かつ的確に


  ■製品事故の発生を完全になくすことは難しい

   2014年末に、自動車用エアバッグや即席麺など、製品のリコールが大きく報じられた
   ことなどを受け、自社の製品安全管理について、社内外からの情報に迅速かつ的確
   に対応できる組織体制の整備や継続的な改善の必要性を改めて認識した企業も少な
   くないでしょう。

   消費者に安全な製品を供給することは企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくすことは
   難しいと言わざるを得ません。

   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備
   をし、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施しなければなりません。

  □消費者全体の立場で考える必要性の高まり

   即席麺のケースでは、メーカーは、製品に異物(虫)が混入していたという消費者から
   の苦情に対し、外部機関へ分析を依頼し、その報告を基に検証を行った結果、製造
   過程での異物混入の可能性が否定できないため、当面の間、全工場での生産を自粛
   するとともに全ての製品の販売を休止し、自主回収を行っていました。

   なお当時、本事案に関連する健康被害については2014年12月11日時点で確認されて
   いないとのことでした。

   健康被害拡大の恐れがない限り、個別対応で済ますこともできたかもしれませんが、
   消費者がTwitterで苦情を発信し、その情報が拡散した点がこの事案の特徴といえ
   ます。

   SNSなどを通じて情報が拡散するのが当然のこととなった現在、企業には、製品事故
   による社会的信用の失墜・ブランドイメージの低下を最小限に抑えるための対応が
   必要となります。

   それには、苦情の当事者の被害回復のみならず、消費者全体の立場で考えた上で、
   リコール実施の判断を下すことが求められるといえるでしょう。

   リコールへの備え

   PL 法を使って製造業者の責任追及ができるかというと、製品を市場に出してから
   10年を経過した時は、損害賠償請求権は時効で消滅するという規定(PL 法5条)が
   あり、被害救済には役立ちません。

   人的危害を生じる製品を製品使用者に供給することは、製造物責任法上の責任を
   問われるだけでなく、刑事上の業務上過失致死罪等の法的な責任が問われる場合
   があります。

   加えて、製品使用者への人的危害が拡大する可能性がある場合、拡大防止のための
   迅速かつ的確なリコール等の対応を実施しないと、行政処分の対象となるだけ

   でなく、損害賠償責任や、刑事責任を問われる場合があります。

   事業者が日頃から製品安全管理の徹底に努め、事故等の発生ゼロを目指すことは
   極めて重要であるが、実際に事故等が発生した場合に、迅速かつ的確なリコールを
   実施することが、適切な製品安全管理と同様に極めて重要です。

   さらに、事業者が迅速かつ的確なリコールを実施し、製品使用者へ、より安全な
   製品を提供することこそが、リコールについての消費者、行政機関等の正しい理解

   および報道機関の適正かつ公正な評価・報道につながるのです。

   事業者にとって、製品使用者に安全な製品を提供することは基本的な責務です。

   しかしながら、 現実には周到な製品安全管理を行ったとしても、あるいは近年の
   技術進歩をもってしても、製品に起因する事故等の発生を完全にゼロにすることは
   極めて困難であります。

   このため、事業者は事故の発生または事故の発生を予見させる欠陥等の兆候を発見
   した段階で、事故の発生や拡大の可能性を最小限にする対応を取る必要があるのです。

   例えば事業者が自主的に迅速かつ的確なリコールを実施することは、製品使用者の
   安全確保の観点および事業者のコンプライアンス(法令遵守)経営の観点から

   当然の責務と考えられます。

   国民の生命・身体に関わる重大な製品事放の回避に向けて、必要な情報を消費者に
   対して適宜提供するため、消費生活用製品安全法(以下「消安法」)では、

   消費生活用製品(主として一般消費者の生活の用に供される製品をいい、
   市場で一般消費者に販売されている製品のほとんどが該当します)に係る製品事故
   などについて、製造事業者・輸入車業者だけに限らず、販売事業者や修理・設置工事
   事業者に対しても「情報の収集及び提供の責務」「重大製品事故の報告等」
   「危害の発生及び拡大を防止するための措置」に関する規定を設けています。

   なお、消安法で除外されている食品・食品添加物・洗浄剤、医薬品・医薬部外品・
   化粧品・医療機器、道路運送車両、船舶などについては、食品衛生法、薬事法、

   道路運送車両法、船舶安全法など個別の法律によって、安全に関する規制が図られて
   います。

   消費者に安全な製品を供給することば企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくす
   ことは難しいと言わざるを得ません。


   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備をし、
   製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施しなければなりません。
 

   「消費生活用製品のリコールハンドブック 2019  ( 出典:経済産業省)によると、
   リコールの開始およびその後のモニタリングの流れのイメージは次の通り(P27)です。


   リコール対応のための準備を怠ると、対応に長い時間がかかる上、結果的に消費者から
   「製品事故の発生を隠そうとした」と受けとめられかねません。

   また、消費者への人的危害が発生・拡大する可能性があることに気付きながら
   リコールなどの対応を行わず、そのために死亡事放や火災など重大な被害を
   引き起こしてしまった場合、行政処分の対象となるばかりか、損害賠償責任や
   刑事責任を問われることとなる 。

   一方、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施すれば、「消費者や取引先からの不信感の増大」「社会的な信用の
   失墜による業績の悪化」「従業員などの士気の低下」といったリスクを最小限に
   とどめることができるでしょう。

   リコールに備えるためには、あらかじめルール(リコール対応に関する規程を定め、
   「消費者の安全確保」を重視する企業としての姿勢を従業員などが全員で共有する
   ことが不可欠です。
 


   以下は、経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック 2019」からの
   
事故情報報告・リコール報告フォーム」です。 

   なお、死亡や火災などにつながる重大製品事故の発生を知った製造・輸入車業者は、
   消安法に基づき消費者庁消費者安全課へ事故の情報を報告することが義務付けられて
   います。


   重大製品事故以外の製品事故については、製品評価技術基盤機構(NITE)への
   報告が求められます。

   製品評価技術基盤機構は、消費生活用製品などに関する事故情報の収集を行い、
   その事故原因を調査・究明し、さらにその結果を公表することによって、事故の
   未然・再発防止を図っています。
 

    消費者庁:消費者安全課

    製品評価技術基盤機構:製品安全分野 

   また、リコール実施に際し、社告を作成する場合、 JIS S OlO4「消費生活用製品の
   リコール社告の記載項目及び作成方法」(
2008 6 20 日制定)を参考とする
   ことができます。

   JIS 規格については次のウェブサイトで検索・閲覧することができます。

    日本工業標準調査会「JIS 検索」
 
                          お問合せ・ご質問こちら 


                          メルマガ登録(無料)はこちらから

 

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月26日
記事:「保険代理店のプレゼンスキルアップ Ⅰ」 更新しました。
2024年4月25日
記事:「メルマガ709号更新しました。
2024年4月25日
記事:「社内体制の強化なしに会社の存続なし」 更新しました。
2024年4月24日
記事:コストダウンの最終目標」更新しました。 
2024年4月23日
記事:保険代理店業の環境整備 Ⅱ」更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501