社長のための価格戦略

■価格戦略を検討する前に

 1.価格戦略の重要性

  企業の収益を大きく左右する「価格」を決定することは、マーケティングを構成する要素である
  「4P」の
中でも経営者にとっては特に難しい問題かもしれません(*)。

  また、価格に敏感な消費者が増加した現在、決定した価格の善しあしが、製品やサービス(以下
  「製品」)の
販売動向に大きな影響を与えることも、経営者の価格に関する意思決定を困難な
  ものとしていると
いえるでしょう。

  ここでは、重要性を増す価格戦略について、中小企業が検討すべきポイントおよびその概要を
  
紹介します。

  なお、実際に価格戦略を検討する場合は独占禁止法などの関連法規に留意したうえで進めていく
  必要が
ありますが、ここでは価格戦略の基本的な考え方を紹介することを目的とするため、これらの
  点に
ついては省略します。

  (*)4Pとは、「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」
    「チャネル
(Place)」の4つの要素を指します。

 2.価格戦略の目的と価格を検討するための3つの基本的視点

  価格戦略の目的は、ほかのマーケティングミックスの要素などとの関連性を考慮しながら、自社の
  売上高や利益を最大化できる
価格を設定することにあります。

  そして、こうした最適な価格を検討する際に考慮すべき3つの基本的視点は、

   ・企業の視点(コスト構造、適正利潤など)

   ・顧客の視点(顧客の購買力など)

   ・競合他社の視点(価格水準など)

  となります。

  価格戦略について考える際には、これら3つの基本的視点から検討することが不可欠です。

  決定された価格が3つの基本的視点について考慮されていない価格であれば、例えば「企業の視点」
  が欠如していると「製品は売れたが、利益を確保できない」
といったように、価格戦略の目的を
  達成することはできないのです。

  ただし、3つの基本的視点の中で重視すべき要因は業種などによって異なります。

  例えば、公共事業などのように受注に際して入札に参加する必要がある建設業者にとっては、競合
  他社よりも安い価格を提示することが不可欠であるため、「競合他社の視点」が最
も重要となる
  でしょう。

  また、競合他社が存在しない独自性の高い製品を提供している企業にとっては「競合他社の視点」
  の重要度は相対的に低くなります。


 3.外部情報の収集方法

  最適な価格を検討する際には、3つの基本的視点に関連する情報が不可欠ですが、企業にとって
  情報収集が困難なのは、自社の外部情報となる「顧客の視点」と「競合他社の
視点」でしょう。

  こうした、外部情報を収集するためには、目的に応じた市場調査などを独自に行うことが理想的
  です。

  目的に応じた市場調査を通じてより適切な情報を収集できれば、それに基づく意思決定もより
  適切なものとなります。

  少し古い話ですが、デフレの象徴的出来事といわれた吉野家による牛丼の値下げを記憶している
  人は多いでしょう。

  日本経済がデフレの真っただ中にあった2001年、同社は1杯400円の牛丼(並盛)の価格を280円
  へと大幅に引き下げて大成功を収めました。

  同社は「280円」という価格を決定する際に、期間限定キャンペーンや一部の店舗での試験販
  などを通じて、300円や290円などさまざまな価格でのテストマーケティングを行って
います。

  同社成功の陰には、こうした独自調査などから得た有益な情報があったのです。

  一方、多くの費用や時間を費やすことが難しい中小企業にとっては、独自で市場調査などを行う
  ことは現実的ではありません。

  しかし、中小企業でも比較的簡単に行うことができる情報収集方法は数多くあります。

  例えば、公共団体や業界団体が行っている調査報告書や、新聞などで報道された内容を調べたり、
  コンサルタントなどの専門家や同
業他社の担当者の話を聞くだけでも有益な情報を収集することが
  できます。

  価格戦略を検討する際には、こうした取り組みを通じて、できるだけ正確かつ多くの情報を収集
  するようにしましょう。


 4.需要の価格弾力性

  価格戦略を検討する際の基本的な考え方に「需要の価格弾力性」があります。

  企業が製品から得られる売上高は

   売上高=価格(製品単価)×販売量

  です。

  一般的に、製品の価格を安く設定すると販売量は増加し、価格を高く設定すると販売量は減少
  します。

  しかし、価格の変化によって販売量が変化する割合は製品によって異なります。

  この割合を「需要の価格弾力性」といいます。

  需要の価格弾力性は

   需要の価格弾力性=需要の変化率÷価格の変化率

  で表すことができます。

  需要の価格弾力性の絶対値が1よりも大きい場合「需要の価格弾力性が大きい」といい、
  絶対値が1よりも小さい場合は「需要の価格弾力性が小さい」と
いいます。

  需要の価格弾力性が大きい場合は、価格を下げるとそれ以上の割合で販売量が増加するため、
  値下げすることで売り上げ増加を実現できる可能性があります。

  一方、需要の価格弾力性が小さい場合は、価格を上げても、それ以上の割合で販売量が減少
  しないことから、値上げすることで売り上げ増加を実現できる可能性があります。

  このように需要の価格弾力性は、現在の価格の妥当性など、価格戦略について検討する際に
  重要な視点を与えてくれます。

価格戦略の基本方針

 1.価格戦略の基本方針を知る

  価格の決定に際しては、個々の製品について最適価格を検討・決定することが基本となりますが、
  「複数の製品の関連性をどのように価格に反映させるか」といった点など
さまざまな視点から検討
  することも必要です。

  以下では、こうした視点から価格戦略を検討する際の基本方針を紹介します。

 2.複数の製品の関係性を考慮した価格戦略

  一つの製品だけを販売している企業はまれであり、ほとんどの企業は数多くの製品を販売して
  います。

  企業にとっては、複数の製品の関連性を考慮して価格を決定することで、よりよい業績を上げる
  ことができるのであれば、そうした視点から検討すべきでしょ
う。

  以下では、複数の製品の関連性を考慮した価格戦略の考え方を紹介します。

  ◎
バンドリング

   バンドリングとは、複数の製品をセットにして、それらの製品の個々の価格の合計金額と異なる
   価格で販売する方法をいいます。

   例えば、パソコン用のソフトでは、文書作成ソフトや表計算ソフトなど、複数のソフトを
   パッケージ化して、製品の個々の価格の
合計金額よりも安く販売します。

   また、産業用機械を購入すると、本来は有料で行っている保守点検を無料で行ってくれる場合が
   ありますが、これも製品に保守点検という関連サービスをバンドリングして
販売しているのです。

   バンドリングをする場合は、関連性の高い製品をセットにすることが基本です。

   仮に製品Aと全く関連のない製品Cをバンドリングした場合、消費者は製品Aを単体で購入して
   
しまうためです。

   例えば、パソコンの文書作成ソフトと家庭用ミシンをバンドリングしても、文書作成ソフトを
   購入したい消費者は、バンドリングされた製品ではなく、文書
作成ソフトを単品で購入する
   はずです。

   これは極端な例ですが、バンドリングを検討する際には、相乗効果が期待できる関連性の高い
   製品をセットにする必要があります。

   なお、バンドリングされた製品の価格は、個別に製品を購入した場合の合計金額よりも安価に
   設定されるのが一般的ですが、その逆の場合もあります。

   例えば、中古書店などでは、希少価値の高いシリーズ物の書籍を全巻セットで割高な価格で
   販売している場
合もあります。

  ◎ロスリーダー

   一部の製品の価格を非常に低く設定して、集客力を高めるための目玉商品とする場合があり
   ます。

   こうした目玉商品をロスリーダーといい、この手法は小売業で頻繁に用いられています。

   例えば、スーパーマーケットで、「本日の特売品」として牛乳や卵などを非常に安い価格で
   販売しているケースがこれに該当します。

   ロスリーダーとなる製品単体だけをみると、その収益率は非常に低く、時には赤字となる
   場合も少なくありません。

   しかし、ロスリーダーの購入を目的に来店した消費者のうち、実際にロスリーダーだけしか
   購入しない消費者は少数です。

   多くの消費者はロスリーダー以外の製品も併せて購入するので、全体としては企業の収益が
   向上するのです。

   そのため、ロスリーダーを収益に結びつけるには、ロスリーダー以外の製品の購入をいかに
   して促進するかが重要なポイントとなります。


 3.時間軸を考慮した価格戦略

  時間的要因が、製品に対する需要を変動させる場合があります。

  こうした製品については、変動する需要動向に合わせて価格を変えることが重要となります。

  以下では、時間軸を基準とした価格戦略の考え方を紹介します。

  ◎繁忙期・閑散期を考慮した価格戦略

   消費者の需要が特定の時間・曜日・月などによって変化する製品があります。

   例えば、観光地に立地するホテルに対する需要は、週末や夏休み・冬休みの時期に集中します。

   また、有名レストランの場合は、クリスマスなどのイベント時期に需要が集中する場合
   あります。

   しかし、ホテルやレストランの場合は部屋数やテーブル数という制約があるため、繁忙期
   でもそれらの数を超えた需要に対応することはできません。

   つまり、需要の増減に対して柔軟に対応できないのです。

   このようなケースでは、繁忙期には価格を高く、閑散期には価格を低く設定して「繁忙期の
   収益を拡大させるとともに、繁忙期の需要を閑散期に誘導する(需要の平準化)」
ことで
   収益の拡大を図ることができる場合があります。

   ただし、製造業などの場合は、在庫を持つことによって需要の変動に柔軟に対応できるため、
   こうした価格設定の有効性はそれほど高くありません。


  ◎製品ライフサイクルを考慮した価格戦略

   生物などと同様に、製品には新規に開発されて市場に登場する「導入期」から「成長期」
   「成熟期」を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていくという、製品ライフサイ
クル
   (Product Life Cycle: PLC)という考え方があります。

   一般的に、業界内における価格水準は、PLCの各段階によって推移します。

   競合他社の少ない導入期は比較的高い水準の価格設定が可能です。

   「成長期」に入ると参入企業が増加してくるため、競争が激しくなり価格水準は低下傾向を
   示します。

   「成熟期」には、市場の成長が鈍化してくるため、競争環境は一層厳しさを増し、その結果、
   
価格は最も低い水準となります。

   「衰退期」に入ると生産量の減少などによるコスト上昇や競合他社の撤退などもあり、成熟期
   に比べて価格水準はやや高くなります。

   この考え方は一般論であり、実際の価格水準の推移は個々の製品や業界動向などによっ
   異なります。

   しかし、業界内における価格水準の推移を予測するうえで、PLCは有益な示唆を与えてくれます。

 4.購入量などを考慮した価格戦略

  製品の購入量や利用回数などに応じて価格を変化させる方法です。

  企業間取引などで多くみられる大量購買による数量割引が代表的な例です。

  また、顧客を購入金額や来店頻度などに応じて区分し、優良顧客に対して特別な割引価格で製品を
  販売するといった
優遇措置を講じるフリークエントショッパーズプログラム(FSP)もこうした
  考え方に基
づく価格設定の一つと考えることができます。

  こうした価格戦略が適しているのは

   ・まとまった量を販売することで、原料・輸送などにかかるコストを削減できる

   ・購入量・利用回数などに応じて価格を割引くことで、顧客に対して自社製品を
   
 継続的に購入させるインセンティブを提供できる(優良顧客を囲い込むことができる)

  場合です。

  前者の場合は、コスト削減という要因があるため、価格を割引いても、企業は収益を確保する
  ことができます。

  後者の場合は、仮に短期的には企業の収益を最大化できなくても、優良顧客を囲い込むことが
  できれば中長期的には企業の収益の増加に大きく寄与
します。

□消費者からみた価格戦略

 1.消費者の心理面を考慮した価格戦略の考え方

  すべての消費者が、購買に際して合理的な意思決定を行うのであれば、価格と販売量の関係は
  「価格が下がるに従って、販売量は増加する(価格が上がるに従って、販売量
は減少する)」
  ことになります。

  しかし、実際には消費者は非合理的な意思決定に基づいた購買行動をみせる場合があります。

  以下では、消費者の合理的な意思決定を妨げる心理的要因に注目した価格戦略について考えて
  みます。


  ◎端数価格

   「Tシャツ1枚1980円」など、小売・サービス業などの店頭には「8」や「9」の付いた価格の
   製品が多く並んでいます。

   こうした価格を端数価格といいます。

   金額的には20円しか違わないTシャツでも、 1980円と2000円では消費者の抱く印象は全く
   異なります。

   多くの消費者は、 1980円のTシャツに対して「1000円台の安い価格である」という印象を
   持
つのです。

   また、「1」や「2」といった数字ではなく、「8」や「9」という点も重要なポイントです。

   これらの数字の付けられた価格に対して、消費者は「最大限に値引きされたお買い得な製品」
   という印象を抱く傾向があるといわれています。

   このため、端数価格に当たる金額では、価格弾力性が大きくなる傾向があります。

   端数価格は幅広い製品分野で用いられていますが、特に食品、日用雑貨など消費者が価格を
   重視する傾向の強い最寄り品に有効とされてます。


  ◎威光価格(名声価格)

   購入頻度の低い宝飾品などの場合、消費者は製品自体を見てもその品質を適切に判断できない
   場合があります。

   また、「形のない製品」であるサービスも、初回利用時などは事前にその品質を判断することが
   できません。

   こうした場合、消費者は「高価格=高品質」「低価格=低品質」として、価格を重要な品質の
   判断基準として用います。

   一般的な製品の場合は、価格が下がるほど需要量は増加しますが、こうした傾向がみられる
   製品については「低価格=低品質」と消費者は判断するため、価格を下げると逆
に需要量が
   減少してしまう場合があります。

   このような傾向をかんがみ、「高品質」を訴求するために、あえて高い価格を設定するような
   場合があります。

   こうした価格を威光価格(名声価格)といいます。

  ◎慣習価格

   業界内の価格が統一的であったり、一つの製品を長期間にわたって同一価格で販売していると、
   消費者の心の中に「この製品の価格は○○円である」というように固定観念
が形成される場合が
   あります。

   こうした価格を慣習価格といいます。

   少し以前の話になりますが、ジュースやコーヒーなどの清涼飲料水が慣習価格がみられる
   典型的な例でした。

   近年では、機能性飲料水など高付加価値製品が増加したり、ペットボトルをはじめとして
   さまざまな容量の容器が増加したため、清涼飲料水の価格は多
様になっていますが、以前は
   製造業者や清涼飲料水の種類にかかわらず「(缶入り)清
涼飲料水=120円」という価格が
   一般的でした。

   こうした製品については、慣習価格よりもわずかでも高い価格を設定すると消費者は「この
   製品は高い」と感じるため、需要量は激減してしまいます。

   また、慣習価格よりも低い価格を設定してもそれほど需要量は増加しないという傾向があります。

 2.価格戦略と慣習価格

  価格戦略を検討する際に、特に注意が必要な消費者の心理的要因は慣習価格です。

  慣習価格は

   ・消費者が心の中に慣習価格を形成すると、その価格が購入の意思決定を行う際の
   
 基準価格となる

   ・慣習価格よりも高い金額を設定すると需要量が大幅に減少するため、企業として
    値上げを行いにくい

  という特徴があります。

  一方、「□価格戦略の基本方針」の項で紹介したように、企業の価格戦略の基本方針は、恒常的な
  価格を設定する場合、短期的な価格を設定する場合などさまざまですが、
「値下げを行う」
  あるいは「低価格で販売する」という手法を講じることが多くなりま
す。

  一般的に、製品は価格を下げるに従って需要量が増加するため、値下げなどによって需要を刺激し、
  売り上げの拡大を図るということは当然のことです。

  しかし、企業の取り組みによって引き下げられた価格を消費者が慣習価格として認識してしまうと、
  価格を元の水準に戻す(値上げする)ことが困難になります。

  例えば、野菜の価格が高騰している時に、キャベツのお代わり無料のとんかつ屋の主人が
  「キャベツが高騰しても、価格に転嫁することも、お代わり無料のサービスもやめ
ることは
  できません」といった苦しい胸の内を語るインタビューをTVで目にしたことが
ありました。

  これは、店に対する消費者の信頼が失われてしまわないかを心配していると同時に、慣習価格の
  影響による需要の大幅な減少を懸念していることを表すコメントと
もいえるでしょう。

  また、慣習価格は、その影響が特定の製品だけではなく、企業や店舗全体の製品の価格や、今後の
  製品の価格水準にも影響を及ぼすという、より深刻な問題をもたらす場合
があります。

  例えば、季節が過ぎた製品を売り切るためのバーゲンセールが常態化しているアパレル業界では、
  バーゲンセールになるまで購入を控えるという消費者は少なくありません。

  また、値崩れの早いパソコンなどのIT機器類は、希望小売価格で製品を購入する消費者はほとんど
  いないでしょう。

  これは、消費者の心の中に「洋服はバーゲンセールの際に安く購入するもの」といった一種の慣習
  価格に近いイメージが形成されているためとい
えます。

  従って、価格戦略を検討する場合には、こうした慣習価格の影響に注意する必要があります。

  また、仮に、慣習価格の影響で値上げを行いにくい場合、あるいは慣習価格の影響で、値上げに
  よる販売量の大幅な落ち込みが懸念される場合には、
消費者が納得できる理由を示したうえで、
  値上げを行うこと
が大切です。

  先に挙げたとんかつ屋の例でいえば「キャベツの価格高騰のため、当分の間、無料でのお替りは
  お断りさせていただきます(お代わりをする際には有料とさせて
いただきます)。

  キャベツの価格が安定したら、お代わりは無料に戻させていただきます」と説明することで、
  消費者は値上げの理由に納得し、新たな価格を受け入れる可能
性が高くなります。

  なお、最近では、価格自体は据え置くものの、原材料を変更してコスト削減したり、サイズや
  容量を削減して事実上の値上げを行っているケースがみられます。

  こうした企業の中には「できればそうした事実を消費者に知られたくない」という思いから、
  原料
などを変更した事実を消費者に公表しない企業もみられるようです。

  しかし、万が一、消費者にその事実を知られてしまうと信頼を大きく損なうことになるので、
  十分に注意
する必要があるでしょう。

□過度な価格競争の回避方法

 多くの競合他社が存在する市場では、価格競争が発生することは珍しいことではありません。

 しかし、しばしば価格競争が過熱し、どちらの企業も「あとに引くことができない状況」に陥って
 しまうことがあります。

 ある企業が値下げすると、それに対抗するために他社がさらに値下げを行う、市場を奪われるのを
 恐れた企業がまた値下げを行う、
といったことが続く状況です。

 こうした過度の価格競争は、勝った企業ですら疲弊してしまう「勝者なき戦い」に至ることがあり
 ます。

 過度の価格競争を避けるためには、価格以外の面で差異化を図り、競争の軸足をほかの視点に移す
 ことが基本となります。

 その方策はさまざまですが、

  ・製品の機能やデザインなどによる差異化

  ・付随サービスなどによる差異化

  ・製品や企業のブランド力向上による差異化

 などがあります。

 ただし、差異化の実現は時間のかかる取り組みであるため、すぐに効果を期待することができません。

 過度の価格競争を回避するための即効性のある方法の一つとして、「過度の価格競争を行わない」
 というシグナルを市場に発信することが有効です。

 収益を確保できないような価格競争を望む企業はないはずです。

 従って、こうしたシグナルをうまく市場に送ることができれば、過度の価格競争を避けることが
 できる場合があります。

 例えば、相手が値下げを行っても、対抗的な価格設定を行わないということも一つの方策となる
 でしょう。

 また、大手家電チェーンなどが行っている「自店の価格が、他店の価格より高ければ他店の価格
 より安くします」といったメッセージも有効です。

 一見するとこうした広告は「値引きには、さらなる値引きで応じる」という徹底抗戦のシグナルを
 発しているようにも見えます。

 しかし、一方でこうした広告は「価格で競争しても無意味ですから、お互い過度な価格競争はやめ
 ましょう(できれば、同じ価格で販売
しましょう)」という意味も含んでいるのです。

 こうしたメッセージは、顧客に対しては「常に最安値で製品を提供します」という自社の姿勢を
 明確にする一方で、競合他社との過度の価格競争を抑制する役割を果たすと
いう点で効果的な方法の
 一つといえるでしょう。

 

事業戦略の再構築

事業戦略の再構築

■経営戦略
 “変化の時代”といわれる今日、企業を取り巻く環境は急速な勢いで変化しています。
 企業は変化する事業環境に適応していかなければ生き残っていくことができません。
 そのためには、長期的な視点で環境へ適応していく「経営戦略」が重要となります。 

 経営戦略というと、綿密に練られた事業計画書などを想像するかもしれませんが、大げさに
 考える必要はありません。
 企業経営者であれば、自社の将来像を考え、競合会社の動きなどを見た上で、さまざまな
 事業展開の方向性を考えているのではないでしょうか。

 まさに、その事業展開の方向性こそが経営戦略なのです。
 業績不振を営業力の強化で乗り切ろうとする企業は少なくありません。
 しかし、いくら営業に力を入れても、従来と同じ商品、同じ売り方では、業績は回復
 しません。

 難局を乗り切るには、経営戦略を再構築する必要があります。
 今回は、戦略再構築のポイントを、実際の成功事例を交えて解説します。
 ご存知のように、昨今はほとんどの事業分野が成熟市場となっています。

 このため、どの顧客を訪問しても、ライバル企業とのし烈な競争が待っています。
 このような状況の中で、新規に顧客を開拓するために営業力を強化しても、従来と同じ
 商品、同じ売り方では成功しません。

 戦略なき営業力の強化では、いくらエネルギーを投入しても成果があがりません。
 「どんなに頑張っても結果は同じ」という無力感が社内に蔓延し、社員の活力も低下
 します。
 そしてますます業績は下降するという悪循環に陥ってしまいます。

 こうした状況の中で企業が厳しい生存競争を勝ち抜くには、新たに戦略を再構築しなけ
 ればなりません。
 ここでは、中小企業の事例をもとに戦略再構築のポイントを解説します。
 「戦略構築から実施までの流れ」 を図に示しました。
 まず、経営環境を分析し、企業の進むべき道ともいえる基本戦略(経営戦略)を策定
 します。
 これを部門ごとの戦略に落とし込み、設備投資、組織づくり、人員配置など具体策を
 盛り込んだ経営計画を作成。
 そして、これを実行に移すというのが、大まかなステップです。

内部環境と外部環境を分析 
 ここでは、企業活動の根幹をなす基本戦略の策定手順を説明します。 
 基本戦略を策定するには、自社の現状を正確に把握しなければなりません。
 そのために自社の抱える人材や技術力など内部環境の分析と市場動向など外部環境の分析
 を行います。

 この作業を通して、内部環境からは自社の「強み」 と「弱み」 を明らかにし、外部環境
 からは「伸びる機会」 と「脅威」 を明らかにします。
 表に「戦略を構築する際の具体的な要因」 をあげました。

 少し解説しておきましょう。 
 まず、「強み」では、その源泉となるのは、企業の持つ「スピード」「行動力」「社内の活力」
 などです。

 「弱み」 はその裏返しで、企業活力の低下をもたらすものです。
 「伸びる機会」 は市場環境の変化です。
 これをチャンスととらえ、環境変化に積極的に順応していくことが重要となります。

 「脅威」となっている要因は、資金繰り難から社会・経済環境の変化まで多岐にわたって
 おり、いずれも企業の存立を危うくする恐れのあるものです。
 そして、いよいよ分析結果をもとに基本戦略を策定します。

 ポイントは、まず自社の「強み」 を生かして「伸びる機会」がある分野に進出すること
 です。
 さらに、その際予想される「脅威」 に備え、「弱み」を取り除き、限られた経営資源を
 一点に集中できる状態をつくりだします。 

 少々抽象的な説明になりましたが、実際の事例を見ていただくと理解が早いと思います。
 次に紹介するのは、経営戦略を再構築して事業を立て直した企業のケースです。

 食肉卸業A社は、これまで輸入食肉をスーパーや飲食店に卸していました。
 商品自体に特徴がないため価格競争に巻き込まれ、ここ数年は粗利益率が10%台に低下、
 苦しい経営が続いていました。

 創業者の長男(30代) が、修業先の大手商社を辞めて社長に就任、事業の再建に乗り
 出そうとしていたのです。 
 A社の分析結果は次のようなものでした。

 まず「強み」 はトップの若さと行動力、販売企画力。
 「弱み」は輸入肉を主体とした商品構成から生じる粗利益率の低さ。
 「伸びる機会」 は世の中の自然・健康志向で、「脅威」は大手商社に吸収されてしまう
 恐れがあることでした。 

 A社は、食材を調達する際に大手商社を通していたのですが、その大手商社は最近、
 財務基盤が弱い中小卸を次々と買収し、傘下に収めていたのです。
 以上の結果からあなたはどのような戦略を構築しますか。

 A社は「餌と水にこだわる国内の生産者から仕入れるルートを開拓し、自然・健康を
 コンセプトとした自社ブランド商品を販売する」という基本戦略を打ち立てました。
 若くて行動力がある社長は全国を飛び回り、餌と水にこだわった飼育をしている生産者を
 開拓しました。

 そして、自然・健康をコンセプトとした新商品を市場に投入。
 その際、新聞やラジオなどマスコミを上手に活用し、ブランド商品に仕立てあげたのです。
 その結果、A社は粗利益率を3ポイントもアップさせ、業績は急速に回復しました。

□経営指導をセットに機械販売 
 もう一つは、技術力に定評のある業歴20年の機械製造業B社です。
 地元で製麺業が盛んなため、B社は5年前に製麺機を製造しはじめました。
 この製麺機は腰の強いおいしいうどんを製造できると好評を得ましたが、製麺機市場は
 成熟しており、売り上げはいま一つでした。 

 B社の分析結果は、次のようなものでした。
 「強み」は技術力と経営者の計数能力。
 「弱み」は営業力の弱さ。

 「伸びる機会」は、景気低迷で業績不振に陥り事業転換を考える企業が増加している
 ことで、「脅威」は成熟市場であるため新規顧客開拓が難しいことでした。 
 以上から、B社が採用した基本戦略は、「事業転換を考えている業績不振企業をターゲット
 に、経営指導をセットにした製麺機の販売を行う。

 それと平行して、麺の通信販売に乗り出し、マーケットの情報を蓄積する」でした。 
 長引く不況で業種転換を考えている企業は少なくありません。
 B社は販売ターゲットをこうした企業に絞り、製麺機を売り込みました。

 その際、顧客に製麺業の経営ノウハウをアドバイスするというセールス手法を採用した
 のです。 
 さらにB社は、苦手な販売を克服するため、データベースマーケティングの手法を取り
 入れた通信販売を研究。

 自社でも麺を製造し、通信販売に乗り出しました。
 実際に麺を販売することで情報を蓄積し、製麺機のユーザーに対する経営指導に生かし
 ます。
 こうした努力の結果、B社の業績は向上したのです。 

 以上が戦略再構築の事例ですが、成功のポイントをまとめると、
  ①経営者の決断と行動の速さ、
  ②従業員の意識を統一させる指導力、
  ③事業に対する情熱と執念、
  ④顧客ニーズの十分な把握、
  ⑤その顧客ニーズに合った製品・サービスの提供
 などになります。

 こうした要因が相互に結び付いて、初めて事業の建て直しが成功するのです。
 

製品戦略

製品戦略

■製品戦略
 マーケテイング戦略には4Pと呼ばれているものがあります。
  ・「何を」(Product:製品)   
  ・「いくらで」(Price:価格)    
  ・「どこで」(Place:販売チャネル)    
  ・「どのように」(Promotion:販売促進)
 この4Pの一つが製品戦略です。

 1.製品戦略の重要性 
  企業が存続していくためには、製品やサービス(以下「製品」)を販売し、収益を
  獲得し続けることは不可欠です。
  いいかえると、獲得すべき収益を生み出す源泉となる製品が存在しなければ企業経営は
  成り立たないのです。 
  こうした意味では、自社の扱う製品についてさまざまな角度から検討・計画立案を行い、
  それらを実行していくことは、企業において根幹をなす重要な取り組みといえるでしょう。 
  ここでは、経営において不可欠な「製品戦略」について中小企業が検討すべきポイント
  およびその概要を紹介します。

 2.「製品」とは 
  製品戦略として検討すべき内容を紹介する前に、検討対象となる「製品とは何か」という
  点について確認します。
  マーケティング論の第一人者P.コトラーはG.アームストロングとの共著において、
  製品を「製品の核」「製品の形態」「製品の付随的機能」の3つの階層に分けています。
  以下では、自動車を例にこれら3つの階層について説明します。

  (1)製品の核(中核的製品) 
   製品を購入する際に消費者が求めるベネフィット(便益)などをいいます。
   例えば、自動車の場合、消費者が求めるベネフィットは、「快適な移動手段」といった
   ものが挙げられます。

  (2)製品の形態(実際的製品) 
   「製品の核」を具体化した実際の製品のことをいいます。
   前者の例でいえば「自動車」という製品がこれに該当します。

  (3)製品の付随的機能(拡大的製品) 
   「製品の形態」に付随して提供されるものをいいます。
   自動車の例でいえば、「購入から半年後の無料点検」といったアフターサービス
   などがこれに該当します。
   この製品の3つの階層という考え方は、やや概念的な説明のため、一般的に想像
   される「製品」というイメージとは異なる印象を受ける人も少なくないでしょう。
   しかし、解説の後半でも紹介するように、この考え方は、製品戦略を考える際に
   非常に有効な視点を与えてくれます。

□製品戦略で検討すべき基本的なポイント
 1.製品戦略を検討する際の3つの視点 
  企業が製品戦略を検討する際には、個々の製品について検討することが基本となります。
  ただし、企業が扱う製品は一つではないため、製品戦略を検討する際は、複数の
  製品間の相互関係性なども考慮する必要があります。  
  一般的に、企業が製品戦略を検討する際に必要となる視点は
   ・製品アイテム:個々の製品
   ・製品ライン:特定のカテゴリーの製品アイテム群
   ・製品ミックス:企業が扱う複数の製品ライン群
  の3つになります。

  例えば、インスタント食品などを製造している加工食品製造業者の場合、カップラーメンの
  「しょうゆ味」が製品アイテムになります。
  また、カップラーメンには「しょうゆ味」以外に「みそ味」「塩味」「とんこつ味」が
  ある場合、これらが「カップラーメン」という一つの製品ラインとなります。
  さらに、カップラーメンに加えて、インスタントスープや、冷凍食品という製品ライン
  があれば、これらが製品ミックスになります。
  企業が製品戦略について検討する際には、製品ミックスのレベルから、その「幅」と
  「深さ」を検討することになります。
  「幅」とは、保有する製品ラインの数をいい、「深さ」とは各製品ラインに含まれる
  製品アイテム数をいいます。 
  企業の検討すべき製品戦略の基本は、有望な製品ラインや製品アイテムを見つけ、
  それらを自社に追加するとともに、不要となる製品ラインや製品アイテムを廃棄する
  ことになります。

 2.3つの視点から意思決定を行う際の基本的な基準 
  3つの視点から製品戦略を検討する際の基準は「収益性」「将来性」「補完性」の
  3つになります。

  (1)「収益性」 
   対象製品の現在の収益性であり、企業が製品に関する意思決定を行う際の基本的な
   基準となります。 
  (2)「将来性」 
   対象製品が、将来、どの程度、収益を上げることができるかということです。
   仮に、現在の「収益性」に問題があっても、将来的に大きく企業の収益に貢献する
   ことが予測されるのであれば、企業にとっては重要な製品アイテム・ラインと
   なります。
  (3)「補完性」 
   ほかの製品アイテム・ラインとのシナジー効果や相互依存性などです。
   例えば、前出の加工食品製造業者の場合、収益性や将来性に問題があったとしても、
   最もベーシックな製品である「カップラーメン しょうゆ味」を製品アイテムから
   削除することは困難でしょう。
   また、同様の理由から化粧品メーカーが製品ラインから口紅を削除することは
   困難でしょう。

  製品戦略の基本は、「収益性」「将来性」「補完性」という基準に基づいて、前述した
  「製品ミックス」「製品ライン」「製品アイテム」について検討することになります。

□新製品開発
 1.新製品の種類 
  移り変わりの激しい市場に対応するためには、自社の製品ライン・アイテムに、より
  市場動向をとらえた新製品を加えていくことは不可欠です。
  ここでは、新製品開発について紹介します。 
  新製品には、
   ・市場にとっての新製品
   ・企業にとっての新製品
  の2種類があります。 
  「市場にとっての新製品」とは、ほかのどの企業も製品化していない画期的な新製品
  をいいます。
  一方、「企業にとっての新製品」とは、市場には類似した製品はあるものの、こうした
  製品に新たな機能を追加するなどして改良した製品などをいいます。
  また、より広義には、他社が既に同じ製品を扱っているものの、自社では新規に
  取り扱いを開始する製品も含みます。 
  これら2つの新製品を比較すると、社会的には「市場にとっての新製品」のほうが
  重要性は高くなります。
  また、新規性の高い「市場にとっての新製品」は、市場参入に際して失敗するリスクは
  高いものの、企業にとっては高い収益性も期待できる有望な製品であるといえます。
  しかし、新技術やざん新なコンセプトなどに基づく「市場にとっての新製品」を、
  企業が次々と開発することはほとんど不可能といってよいでしょう。
  従って、継続して収益を獲得し、存続し続けなければならない企業にとっては、
  「企業にとっての新製品」は「市場にとっての新製品」に劣らず、非常に重要なもの
  となります。

 2.新製品開発の基本プロセス 
  本来、新製品開発は非常に複雑なプロセスになります。
  しかし、ここでは、その概要について新製品開発の基本プロセスとして紹介します。
  一般的に、新製品開発は「アイデアの創出」「スクリーニング」「製品開発」「テスト」
  「市場導入」という各ステップが基本的なプロセスとなります。

  (1)アイデアの創出 
   新製品のもととなるアイデアを創出します。
   アイデアの源泉は大きく社内に由来するものと社外に由来するものに分けることが
   できます。
   社内に由来するものは、従業員のアイデアに加え、開発された新技術が新製品開発
   のきっかけとなる場合もあります。
   一方、社外に由来するものには、消費者や取引先からの意見、競合他社の動向、
   雑誌・新聞・書籍などがあります。

  (2)スクリーニング 
   創出されたアイデアが実際に市場へ導入する新製品としてふさわしいものかを
   検討します。
   スクリーニングは、最初に経営戦略との整合性といった基本的基準に基づいて
   不適切なアイデアを排除した後に、綿密な調査やシミュレーションなどに基づいた
   事業性分析を行い、有望なアイデアを見いだすという2つのステップに分けて
   行われるのが一般的です。

  (3)製品開発 
   スクリーニングを通じて見つけられた有望なアイデアを、実際に製品(試作品)
   として開発します。

  (4)テスト 
   開発された製品についてさまざまなテストを行います。
   テストの内容は、機能や品質といった製品本体に関するテストだけではありません。
   実際に完成した製品が予測通り消費者に受け入れられるかといったテストマーケ
   ティングなども必要となります。
   こうしたさまざまなテストの結果によっては、製品の改良などを行うことになります。 
   また、量産品であれば、試作品の開発とは異なる量産品向けの製造工程の構築に
   ついても十分に検討しておくことが必要です。

  (5)市場導入 
   テストを経て実際に製造された製品を「新製品」として市場に導入します。
   市場導入に際しては、そのタイミングに注意する必要があります。
   市場動向といった外部要因や、事前のプロモーションの進ちょく状況などの企業の
   内部要因などを見極めたうえで最適なタイミングで市場に導入することが必要と
   なります。 
   これが新製品開発の基本プロセスとなりますが、実際には「『テスト』の段階で
   行った消費者への調査が芳しくないため、製品開発を初めからやり直す」といった
   ように、このプロセスはさまざまな形で進行します。

□製品差異化の視点
 1.他社製品との差異化 

  成熟化した市場においては、ただ新製品を開発するだけでは不十分です。
  他社が扱う同じカテゴリー内の製品に打ち勝つような製品とする必要があります。
  この際に重要となるのが、他社製品との差異化を図ることです。

  差異化は、製品の品質・デザイン・機能などだけではなく、価格・チャネル・プロ
  モーションといったマーケティングの各構成要素、あるいは企業ブランドなどさまざま
  な要因の組み合わせによって実現されますが、ここでは、製品に限定してその差異化策
  の考え方を紹介します。

 2.製品差異化の基本的視点 
  製品差異化を検討する際には、先に紹介した「製品の3つの階層」の視点から考える
  とよいでしょう。
  すなわち、消費者が求めるベネフィットである「製品の核」を見直し、その「製品の核」
  を実現するために必要となる「製品の形態」「製品の付随的機能」を検討することが
  基本となります。

  例えば、自動車の例であれば「移動手段」という「製品の核」に「快適性」という
  ベネフィットを設定することによって「『革張りのシート』や『カーオーディオ』を
  標準装備にする」といったように、それに基づいて新製品が形づくられます。
  また、「製品の核」に「安全性・安心さ」というベネフィットを設定すると「エアバック」
  「ABS(Anti-lock Brake System:アンチロックブレーキシステム)」などの
  「製品の形態」とともに、「1年ごとの定期無料点検」といった「製品の付随的機能」
  が付加された新製品が生み出されます。 

  製品差異化というと、とにかく既存製品にはない新たな機能(「製品の形態」や
  「製品の付随的機能」)を付加して差異化を図ろうとしがちです。
  その結果、消費者が求めるベネフィットとは無関係の機能が付加されるケースは少なく
  ありません。

  例えば、数多くの機能が付加されているAV製品をみると「製品を購入したとしても、
  実際に使用するのだろうか」と思うような機能を目にすることがあります。
  こうした製品は、確かにほかの製品と差異化されているかもしれませんが、消費者
  からの支持を集めることは難しいでしょう。

  「製品の核」から見直して製品差異化に取り組むことは、こうした問題を防ぎ、
  消費者が本当に求めるベネフィットを提供し、消費者からの支持を集めることのできる
  差異化製品を生み出すうえで効果的です。 
  また、消費者が本当に求めるベネフィットを提供するために「製品の核」から見直
  された差異化製品は、必ずしも新たな機能が付加されたものになるとは限りません。

  逆に、「製品の核」を見直すことによって、製品自体をシンプルにして成功している
  企業もあります。
  「製品の核」に「時間」というベネフィットを設定することで、「所要時間10分、
  1000円、カットのみ」のサービスで理髪店業界に革命を起こした「QBハウス」を
  展開するキュービーネットはこうした例の代表でしょう。

  このように、製品差異化のポイントは、「新たな機能の付加」することが先にある
  のではなく、最初に「製品の核」を見直し、それを実現するために必要となる
  「製品の形態」や「製品の付随的機能」をゼロベースで検討することにあるのです。

 3.差異化のヒント 
  製品差異化の第一歩は、消費者に新たなベネフィットを提供できるように「製品の核」
  を見直すことにある点は、前述した通りです。
  前項では、概念的な説明が多く、やや分かりにくい点もありましたので、以下では、
  事例は古くなりますが、製品例を挙げながら「製品の核」となるベネフィットを
  具体的にみてみましょう。

  (1)快適性の向上 
   製品の核に「快適性の向上」というベネフィットを加えて成功している例としては、
   トイレがあります。
   当時のINAXや東陶機器(TOTO)が販売しているトイレは、シャワー、便座用暖房
   などに加えて、リラックスできる音楽を奏でる製品など、利用者の快適性を高める
   さまざまな機能がつけられていました。 

  (2)操作性の向上 
   製品の核に「操作性の向上」というベネフィットを加えて成功している例としては、
   アップルコンピュータが発売した携帯型音楽プレーヤー「iPod」がありました。
   iPodが人気を集めたのは、高い機能やスタイリッシュなデザインとともに、同社
   独自のクリックホイールが実現する高い操作性も大きな要因となっていました。 
   当時の携帯型音楽プレーヤーは、小型のため、ボタンなどが小さく利用者にとって
   操作しにくいという問題点がありました。
   iPodシリーズに採用されているクリックホイールは、本体表面の大型の円形の部分に
   軽く触れたり、クリックすることによってほとんどの操作を行うことができたのです。

  (3)娯楽性の提供 
   製品の核に「娯楽性の提供」というベネフィットを加えて成功している例としては、
   ソースネクストが販売しているパソコンのキーボード操作の練習用ソフト「特打
   シリーズ」がありました。
   「特打シリーズ」は、人気アニメーションなどを取り入れて、ゲーム感覚でキー
   ボードを操作させることによって、練習を進めていくことができます。 
   また、スポーツカーは、移動手段である自動車に娯楽性(運転する楽しさ)という
   ベネフィットを追加したものといえるでしょう。

  (4)生産性・効率性の向上 
   製品の核に「生産性・効率性の向上」というベネフィットを加えている製品は、
   法人向けに販売されている製品に多くみられます。
   企業活動においては、生産性・効率性向上は非常に重要な課題となります。

   このため、「他社製品よりも短時間で多く印刷できる印刷機」や「他社製品よりも
   高い歩留まりを実現できるプレス機器」といった生産性や効率性の高い製品は
   大きな差異化要因となるでしょう。

   また、個人向け製品でも「他社よりも短時間できれいに洗うことのできる洗濯機」
   といったように、生産性・効率性を差異化要因としている製品は多くみられます。

  (5)トータルソリューションの提供 
   製品の核に「トータルソリューションの提供」というベネフィットを加えている
   製品は、大手企業が多く取り組んでいます。
   例えば、日本IBMは、関連会社などとともに、各種システムの販売だけではなく、
   企業に導入されたシステムの保守・点検などのサポートサービス、あるいはこれらの
   システムを効果的に活用できるようにするための経営コンサルティングなど、
   システムを核にしたトータルソリューションを企業に提供しています。

□ライフサイクルと陳腐化政策
 1.製品ライフサイクルとは 
  製品ライフサイクル(PLC:Product Life Cycle、以下「PLC」)とは、生物などと
  同様に、製品には新規に開発されて市場に登場する「導入期」から「成長期」「成熟期」
  を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていくというライフサイクルがあるという
  考え方です。
  以下では、この4つの段階に関する概要を紹介します。

  (1)導入期 
   新製品が市場に投入された段階です。
   企業は、さまざまなプロモーションなどを通じて投入した新製品の認知度向上と、
   市場拡大を図ります。

  (2)成長期 
   導入期のさまざまな企業努力が実を結び、市場が急速に拡大していく段階です。
   市場の成長性などをみた競合他社の参入が増加してきます。

  (3)成熟期 
   市場の成長が鈍化して、頭打ちになる段階です。
   既に多くの競合他社が参入している段階であり市場内での企業間競争が激化します。

  (4)衰退期 
   市場が急速に縮小する段階です。
   その原因は、消費者ニーズの変化、技術の発展などによる代替製品の登場など
   さまざまです。
   市場に投入されたすべての製品がPLCのような軌跡をたどるわけではありません。
   例えば、新製品として市場に投入したものの、消費者からの支持を得ることなく
   市場から消えていく製品も多くみられます。
   こうした製品の場合は、「成長期」「成熟期」を迎えることなく「衰退期」に至って
   しまうことになります。
   その一方で、PLCに準拠した過程をたどる製品も少なくないことから、PLCは製品
   戦略を検討する際の重要な視点を与えてくれる考え方といえます。 
   なお、近年の動向をみると、消費者ニーズの急速な変化、急速な技術の進展などの
   影響もあり、PLCの時間軸(横軸)は短縮化する傾向にあります。

 2.製品ライフサイクルの留意点 
  PLCは、製品戦略に関して最も広く普及している考え方の一つです。
  しかし、この考え方を実際の製品戦略に生かすためにはさまざまな問題があります。
  その中で最も大きな問題は、実際に販売されている製品がPLCのどの段階に位置して
  いるかを明確にすることができないという点です。

  既に市場から淘汰された製品を振り返ってみると、おおむねPLCに近い軌跡を描く
  ケースは少なくありません。
  しかし、PLCには「売上高が○カ月間、横ばいで推移したら『成熟期』である」といった
  ような明確な基準がないこと、個々の製品によってPLCの時間軸が異なることなども
  あり、現在、販売している製品がPLCのどの段階にあるのかを明確に把握することが
  困難なのです。

  また、基本的には、PLCは消費者ニーズや技術動向の変化などによる「製品の寿命」
  という企業の外的要因が及ぼす影響を重視した考え方です。
  しかし、実際の製品の売上高は、こうした外的要因のみの影響によって決定するわけ
  ではありません。

  例えば、マーケティング戦略の優劣といった企業の内的要因によっても売上高は変化
  します。
  従って、売上高が低下傾向にあるからといって「この製品は衰退期(あるいは成熟期後期)
  である」と安易に判断してしまうと、自社の取り組み方法を見直すことによって
  再成長の可能性のある製品の寿命を、縮めてしまう可能性があるのです。 
  有益性の高いPLCですが、実際に製品戦略を検討する際にPLCを活用する際には、
  こうした点にも留意することを忘れてはいけません。

 3.製品の計画的陳腐化 
  製品戦略に時間軸を取り入れた考え方に「計画的陳腐化」があります。
  製品戦略では、「一度発売した製品の寿命をできるだけ長く保ち、多くの売り上げを
  上げる」というのが一般的な考え方です。

  しかし、製品の計画的陳腐化では、その逆に「既存製品の寿命を意図的(計画的)に
  短くするとともに、新製品を市場に投入することによって消費者の買い替え需要を
  刺激して、売り上げを上げる」というものです。 

  代表的な例としては、毎年異なる流行色やデザインの製品を販売しているアパレル業界
  でしょう。
  女性用の服を例に考えてみると、「寒さをしのぐ」「肌を隠す」といったような、
  服本来の目的を果たすうえでは、前シーズンに購入した服でも十分にその役割を果たす
  ことはできます。

  しかし、前シーズンと異なる流行色やデザインを取り入れた服を販売して前シーズンの
  服を計画的に「流行遅れ」とすることによって、新たな需要を喚起しているのです。
  また、4カ月〜半年程度のスパンで次々と新製品を発売するパソコンなどの情報機器類も、
  計画的陳腐化を行っている例といえるでしょう。

 4.計画的陳腐化の留意点 
  計画的陳腐化は、製品が持つ機能自体の寿命が長い製品・消費者の買い替えサイクルが
  長い製品に関しては、買い替え需要を促進する有効な手法の一つです。 
  しかし、計画的陳腐化を実施する際には注意も必要です。

  例えば、計画的陳腐化を実施できるのは、「買い替え需要は、自社が販売する代替製品
  に集まる」ことがある程度予想されている場合に限られます。
  当然ですが、計画的に陳腐化した製品の売り上げは減少するうえに、代替製品も
  売れなければ企業として収益を確保する道が絶たれてしまいます。

  こうした予想が立てにくいのであれば、逆に、既存製品をてこ入れしたほうが、より
  高い売り上げを上げることができるかもしれません。 
  また、消費者の目にも注意が必要です。

  機能的には十分に使用できる製品を意図的に使用できない(あるいは消費者が使用
  したくない)ようにする計画的陳腐化は、視点を変えると社会的なムダを意図的に発生
  させるものです。

  例えば、買い替えにともなって、機能的に使用できる製品でも廃棄される可能性が
  あります。 
  環境保護をはじめとして消費者の企業の社会的責任に対する視線が厳しさを増す現在、
  安易に計画的陳腐化を実施すると、企業自身が社会的な批判にさらされる可能性が
  あります。
 

社是・社訓の重要性

社是・社訓の重要性

■社是・社訓
 社是は会社の経営上の基本的な考え方を示すもので、企業として良しとする価値基準を
 簡潔明瞭に表現しています。
 社訓は社員に対してかくあるべしといった心構えや行動の指標を示すもので、何項目かで
 構成された短文形式で分かりやすく表現しています。

 企業がその活動をしていくうえでの基本的な価値観でそれを分かりやすく明文化したものが
 、社是や社訓です。 
 一般には総括して社是・社訓といいますが、企業によっては「経営理念」「経営姿勢」
 「企業目的」「企業目標」「経営哲学」「経営指針」「企業方針」「経営方針」という
 ところもあるようです。

 また、組織やその社員の在り方を示すものとして「行動規範」「行動基準」「社則行動指針」
 として示している企業もあります。

□社内の活性化
 「社是・社訓」 の重要性が見直されています。
 多様な価値観を持った社員を一つにまとめる手段として、有効に活用する企業の実例が
 増えてきています。
 いまや「古くさい」という固定観念自体が時代遅れになっています。

 「社是で業績を伸ばす」。
 海外ツアー専門の中堅旅行会社A社(東京都千代田区)は、企業経営に
 対する基本
 姿勢をこう語っています。
 「企業は、そこで働く社員が豊かになるためにある」 。

 A旅行社が掲げるこの社是は、社長が同社を創業した動機そのものに通じています。
 「独立前に勤めていた旅行会社の給料はあまりにも安かった。
 そこで、もっと給料が出せる会社を自分の手でつくってやろうと思った」 多くの旅行
 会社が社員に安い給料しか払えないのは、顧客開拓のために立派な店を構え、膨大な
 広告宣伝費を投じて同じような旅行商品を売っていることが原因。

 そこに目をつけた社長は、商品の差別化を図り、ニッチ市場で特定の顧客を効率よく
 集める独自のビジネスモデルを創業当初から打ち出しました。
 A旅行社が販売する商品は同じ観光ツアーでも、一つの地域の歴史、文化
 などを徹底的
 に深掘りするものだけに限られています。

 そうした旅行が好きな人を週一回の新聞広告で集め、その後も固定客として囲い込む
 戦略で業績を伸ばしてきました。
 実際、同社の顧客満足度の高さは業界内でも定評があり、リピート率は70%にも達して
 いるといいます。

 顧客満足度を上げて固定客を増やし、利益率の高い経営を実現すれば、社員も高給を手に
 できる。
 A社社長は「企業は、そこで働く社員が豊かになるためにある」という社是に、実は
 これだけの意味が込められていることを社員に説き続け、目的意識の共有化を図っています。

 その具体的な手法の一つが、営業、添乗、総務・人事など、部門別に策定した業務
 マニュアル。
 それぞれのマニュアルでは、仕事の進め方を細かく指示する一方で、「なぜそうしなければ
 ならないのか」を社是に照らして懇切丁寧に説明しています。
 A社社長はそうした考え方を自社のホームページでも紹介し、入社希望者の採用面接では、
 その内容の理解度を最も重要な選考基準にします。

 「社員全員が経営者と同じ意識で働いてくれるようになることが最終目標。
 社是にここまでこだわるのはそのためだ」 と社長。
 A旅行社の2000年9月期の売上高は47億円、経常利益は9億円。
 住友家の「浮利に走らず」 、安田財閥の「虚言をいはす(言わず) 」 などに代表される
 ように、日本企業は古くから独自の社是・社訓を掲げてきました。

 高度成長期以降、そうした社是・社訓の多くは急速に形骸化していきましたが、企業経営者
 の間では、その重要性を再評価する動きが広がっています。
 昔の社是・社訓はどちらかというと、経営者の自戒という意味合いが強かったが、最近は
 社員を一つの方向にまとめ、活性化する手段として使われるようになってきました。

 こうした活用法で成果をあげている例は大企業より中小企業に多いようです 。
 社是・社訓を研究するB総研(東京都渋谷区)の代表はこう話します。

□「社長失格」の悩みを克服 
 京都府に本社を置く運送会社も社是を経営の根幹に据える企業の一つです。
 同社社長は「社是を掲げることで、やっと社員に長く定着してもらえる会社をつくることが
 できた」 と話します。 

 義父が経営する運送会社から部下7人を引き連れて独立し、C社を設立したのは95年。
 だが、それから2年の間に5人が社長の下を離れていきました。
 「自分の会社を興したという気負いから社員に多くのことを要求しすぎた。
 仕事の進め方だけでなく、服装や言葉遣いにまで口を出し、せっかくのやる気をそいで
 しまった」 と社長は振り返ります。

 自分は社長失格ではないか―。
 社是の制定を思い立ったのはこう思い悩んでいた時に付き合いのある税理士から、
 「社員に注意する前にまずどんな会社にしたいのかを社員にはっきり示すべきだ」と
 アドバイスされたことがきっかけでした。

 それ以降、社長は自分なりの理想を具体的な言葉にすることに取り組んできました。
 「楽しくて、おもしろくて、やり甲斐があって、1円でも多く分配できる会社」 。
 98年春に制定した社是は、社長が会社を創業した時に思っていたことを素直に文章に
 したものです。

 以来、社長は年4回、休日に全社員を集め、様々な経営課題を討議する会合を開いて
 います。
 「楽しくて、おもしろくて、やり甲斐のある会社」 を実現するには何が必要か、全員で
 徹底的に話し合うのです。

 「当初は休みが減ることに反発する社員も少なくなかったが、最近は私の意図を理解して
 くれるようになり、より深い議論ができるようになった」と社長は言います。
 「トラックに乗って社員が仕事に出かけてしまうと、その後の働きぶりまで監視する
 ことはできない。

 だからこそ運送会社では一人ひとりのやる気や自主性が業績アップの重要なカギになる」
 (社長) 。 
 創業から6年目の2000年、売上高は2億円を超え、病院向けのリネン製品の配送業務を
 柱に事業を拡大していくメドがようやく立ちました。

 社長は「今後は社是にある『1円でも多く分配できる会社』づくりに真剣に取り組み、
 社員の努力に報いていきたい」と話します。 
 経営者の中には、自らがつくった社是をさらに“過激”な形で、社員に覚え込ませている
 例もあります。

 「野心楽勝。やりがいをもって、生きがいとし、信頼を結んで信用を得る。仕事に楽しみ
 をもって、将来の夢を実現する―」 
 害虫駆除サービスの大手企業D社の一日は全社員が大声で社是を唱和する朝礼で始まり
 ます。 

 約1700人の社員を抱える同社が、こうした時代錯誤的とも思える朝礼を毎日続けて
 いるのは、「社是の浸透こそが強い営業の原点だ」 と言う社長の信念からです。 
 害虫駆除の営業は、住宅やオフィスを一軒一軒訪問する飛び込みセールスが中心。

 精神的な負担が大きい仕事だけに、「営業担当者には、なぜ自分がこの仕事をするのか、
 どう世の中の役に立っているのか、といった点で強い自覚が必要になる」と社長は話します。
 「いまどきの若者にこそ有効だ」「野心楽勝」の社是は、仕事のやりがいや顧客との信頼
 関係の大切さ、社員一人ひとりが自分の夢を追求することの尊さを短いフレーズにまとめた
 もの。

 社長はこれを毎日唱えることで、「初めは意味がわからない者も自然に考え方を共有できる
 ようになる」と言います。
 「社是の押し付けなど、いまの若者には通用しない」と思われがちですが、D社の社員は
 むしろ積極的に社長の打ち出した企業理念の体得に取り組んでいます。

  「十代、二十代の若者は人に何かを教わることが嫌いなわけではなく、単にその経験が
 乏しいだけ。
 だから一度刺激を与えれば、上の世代の人間以上に一生懸命、何かを学ぼうとしてくれる」
 (社長) 。

 社長はこうした考え方をベースに、社是と訪問販売の注意事項を徹底的に教え込み、
 強力な営業部隊をつくりあげました。
 それが4期連続の増収増益という好業績につながっているのです。 
 
 日本の中小企業で社是・社訓を定めている会社は、全体の2割にも満たないといわれて
 います。
 しかし、今後は「社是で成功した企業」 を見習い、新たに導入を検討する動きが相次いで
 出てきそうです。

業績アップの価格戦略

業績アップの価格戦略

 価格は一般には、その商品・サービスの価値を表わすもので、消費者にとっては価格が
 商品の価値や品質を「判断するモノサシ」となり、購入する際の意思決定の決め手となる
 ものです。
 すなわち、消費者は価格が妥当かどうかを、商品の必要度や値頃感によってそのつど
 決めています。
 したがって、消費者がその商品に感じる価値が価格より低い場合は、その商品は売れません
 し、逆に感じる価値が価格より高ければその商品はヒットすることになります。
 しかしながら、売るために、商品にかかるコストや自社の利益を無視した価格設定を行うと、
 会社経営に深刻なダメージを与える可能性もあります。

■価格設定の範囲を認識する

 会社が業績を上げること、すなわち損益計算書で計算される利益を増やすことの基本的な
 手段は「価格を上げる」「コストを下げる」「売上量を増やす」の3つです。

 このうち、価格を上げることは最も直接的に利益を上げる効果がある反面、価格を下げる
 ことは直接的に利益を減らします。

 したがって、「価格をいくらに設定するか」が会社の業績にとって非常に大切であることは

 いうまでもありません。

 ある商品またはサービス(以下は商品とサービスをまとめて「商品」と表現します)の

 価格の設定に当たって、まず基本的に認織するべきことは「この商品は、いくらまで高く
 ても売れるか(商品の価格の上限値)」と「この商品は、いくらより安いと赤字になるか
 (商品の価格の下限値)」の2つの価格水準を見極めることです。

 つまり、その商品に設定すべき「価格の範囲」を認識することです。

 価格の範囲が決まるのは、次の3つの要素です。

  ①その商品のコスト

  ②その商品の絶対的な価値

  ③競争相手の商品の価格

 まず、『その商品のコスト』が、その商品の下限値であることは、いうまでもありません。

 後述するような特殊な価格戦略の場合は例外として、商品の価格は、そのコスト以下に
 設定すべきでないことが、価格設定の基本です。

 次に、その商品の上限値が決まる要素の1つが、『その商品の絶対的価値』です。

 お客様が「こんなに美しい菊なら、1鉢1000円払っても買いたい」とか「こんなに便利な

 機械なら1台100万円払っても買いたい」と判断する、その1000円、100万円が、それぞれ、
 菊の鉢とその機械の絶対的な価値です。

 つまり、その商品がお客様に与える満足度をお客様が評価した値です。

 商品の上限値を決定するもう1つの要素は、『競争相手の商品の価格』です。

 これも当たり前のことですが、もし隣の商店で、ある商品を1個100円で売っていたら、

 自分の店でそれと同じ商品に1個100円以上の価格をつけたのではなかなか売れません。

 以下、この3つの要素を頭に置きながら、具体的な価格戦略を考えていきましょう。

□競争に勝てる価格を探る

 はじめに、前述の順番とは逆になりますが、価格決定の第3の要素である「競争相手の
 商品の価格」について考えてみましょう。

 競争に勝てる価格を設定して、利益を上げるための要件は2つあります。

 第1の要件は、その価格で利益を上げることができること。

 第2の要件は、その価格で競争に勝てること。

 第1の要件を満たす手段は、いうまでもなく低いコストを確保することです。

 メーカーや工事業なら、製造原価、工事原価を引き下げること、販売業なら仕入原価を
 引き下げること。

 これが競争価格で利益を上げる基本ですが、コスト削減は価格戦略のテーマではありません
 から、ここでは論じないことにします。

 価格戦略のテーマは、第2の要件である競争に勝てる価格を設定することです。

 絶対に必要なことは、競争相手の商品の価格を知ることです。

 店頭で販売している商品の場合は、他の店の価格を知ることは難しくありません。

 ここで重要なことは、競争他社を認識して、抜け漏れなく調査することです。

 小売りの店舗販売の場合は、まず競争相手との地域的な関係がポイントでしょう。

 つまり、どこまで遠くの店までを競争相手と考えるかです。

 もう1つのポイントは、競争商品の対象範囲です。

 たとえば、自分の店が高級ブティックであれば、同じ品種の洋服でも、洋服量販店の価格は、
 あまり気にする必要はないでしょう。

 一方、商品が異なっていても、たとえば持ち帰り弁当店でしたら、近隣のハンバーガー

 ショップの価格水準を気にする必要があります。

 すなわち、商品の性質および対象顧客から見て、自分の店の商品の競合商品の対象を認識
 することが重要です。

 一方、店頭で販売されない商品、たとえば工業用の原材料や機械などの場合は、競争相手の

 価格を知ることは一般に困難です。

 それらの商品を扱う商社や販売仲介業などに広くアンテナを張って情報を集める努力が
 必要です。

 顧客から競争相手の価格を教えてもらうという方法もありますが、その場合は情報の

 信憑性を判断しなければなりません。

 したたかな購買担当者は、納入業者を手玉にとって安値競争をさせることができます。

 原材料のような場合は、顧客の財務資料を入手して製造原価の内訳から推定するという
 方法もあります。

 競争に勝つ価格を設定するために、競争相手の価格を知ることが重要であることの裏返し

 として、競争相手に自社の価格を知られない注意が重要です。

 店頭販売の場合は、価格を表示せざるを得ませんが、最近の量販店の戦術として、「現金の
 お客様には、さらに値引きいたします」ということだけ表示し、具体的な価格はお客様と
 1対1で交渉をするという方法がみられます。

 工業材料や機械などの場合、公表用の定価表を印刷物にし、実際の取り引きでは、定価表の

 何%引きで契約するといった方法が多く見られます。

 これは、お客様に割安感を与えるというメリットと、自社の価格を秘密にするという二重の
 効果があります。

 このテーマについて、補足したいことがあります。

 価格の設定に当たって、競争商品より安い価格をつけることは販売量を確保するために
 基本的に必要なことですが、過度の安値競争は利益の減少をもたらします。

 業績を上げるためには、価格競争はできるだけ避けて「非価格競争」で自社が勝てる道が
 ないかどうかを極力模索することが大切です。


 販売方法、サービス、顧客の選択、品揃え、商品陳列の方法など、非価格競争のテーマは

 幅広く、優れたアイディアが生かせる分野です。

□目玉商品の載略

 「目玉商品」とは自社の商品系列の中で顧客にとって特段に魅力のある商品のことです。

 必ずしも安値商品とは限りませんが、価格戦略としては安値を魅力とする目玉商品戦略が
 よく利用されます。

 電器量販店の「薄型テレビ10台に限り7万9000円」とか、スーパーの「先着50名様に限り、
 国産数の子200gパック500円」といったチラシをよく見かけます。

 いうまでもなく、目玉商品によって客を集め、店全体の売り上げを増やす戦略です。

 目玉商品を設定するポイントは次のような点です。

  ①お客様にとって魅力のある商品、話題性の高い商品を選ぶこと

  ②通常の価格水準がよく知られており、超安値であることが明らかなこと

  ③数量を限定すること(特に赤字になるまで値引きした場合)

  ④他の商品の価格の連鎖的な値下がりを防ぐこと

 上記のうちの④についての1つの方法は、戦略的な「格下げ」です。

 工業原料などの場合、故意に1級品を2級品に格下げしたり、合格品を不合格品などとして
 実質的な値引きをしたりする方法です。

 このことで値下げの影響が他の1級品や合格品に及ぶのを防ぎます。

 近年話題を呼んでいる「アウトレット」も(流行遅れ在庫の整理の目的以外に)この意味合い

 があるのかもしれません。

 目玉商品戦略は、消費財の小売店だけでなく、企業を顧客とした生産財の販売にもよく
 利用されます。

 たとえば自社の製造原価や仕入原価が、競争相手よりも低い商品があった場合、その商品を

 魅力のある安値で販売して、他の商品と組み合わせて販売量全体を増やすといった戦略です。

 レストランなどでも、この作戦は利用できます。

 簡単な方法としては、特に安い目玉メニューを準備することですが、やや手のこんだ戦略
 としては、小売価格が明らかなビールなどの価格を、ほとんど酒販店の小売価格に近い
 価格に設定すると、お客様にそのレストランの料理も割安であろうとの印象を与えます。

□商品の価値を見極めよう

 次に価格設定の要素の1つ、商品の絶対的価値の面から、価格戦略を考えてみましょう。

 顧客の側で1万円の価値があると考えている商品に9000円の価格をつけてしまっては
 もったいない話です。

 そこで、売り手に最も有利な、すなわち商品の絶対的価値とできるだけ同額の価格をつける
 ためには、商品の価値を適切に評価することが肝要です。

 しかし、それは難しい判断であり、生産財と消費財ではアプローチが異なります。

 生産財の価格設定の場合は、ある程度、計数的に把握することができます。

 まず、既存商品は、現状の取引価格が、顧客が評価した絶対的価値を反映していると
 いえるでしょう。

 次に、従来の商品より優れた新商品なら、同じ目的に使用されている既存商品と比較して、

 顧客(使用者側)で経済的に有利な品質や機能の点を評価して既存商品の価格に上乗せする
 ことができます。

 たとえば、原材料で考えると、加工性が優れた新商品なら顧客で節約される作業費相当分、
 歩留まりが高い新商品なら節約される材料費相当分を上乗せすることができます。

 既存商品の取引価格が把握できない場合は、その商品を使用して製造される最終製品の

 価格から、原材料の絶対的価値をある程度推定することもできます。

 特に加工度が低い商品の原料については、この方法が有効です。

 消費財の価格設定の場合でも、その価値が機能によって評価される商品(自動車、電器、
 事務機など)は、生産財と同様のアプローチが可能です。

 しかし消費財の中で、食品、装飾品その他の噂好晶の場合は、顧客の好みや趣味で価値が

 評価されますから、積算による評価は困難です。

 店頭調査によって、同様の商品の価格から推定するとか、潜在的顧客に対するヒアリングや
 アンケートを行います。

 ところで、商品の絶対価値は、その商品の使用目的や、使用者によって異なります。

 したがって、顧客や使用条件をグループ分けして、グループごとに価格を設定することが
 有効です。

 グループ分けとは、たとえば、顧客の取得水準による区分、商品の使用目的(日常用途か、
 贈答品用か、噂好品かなど)による区分などです。

 商品の絶対的価値に基づいて高い価格を設定したい場合、価格戦略以前の商品開発戦略が

 重要です。

 第1は顧客のニーズを先取りして、絶対的価値の高い新製品を製造する、あるいは仕入れる
 ことです。

 第2には既存商品に付加価値をつけて商品の絶対的価値を高めることです。

 商品開発の戦略の詳論はここでは省きますが、付加価値をつけるためには、商品の品質や
 機能を高めるだけでなく、デザイン、サービスなどによる方法もあります。

 近年は、環境にやさしい商品や地球温暖化防止に貢献する商品の開発が、商品の絶対的
 価値をあげる新しい分野です。

□価格設定のためのコストを分析しよう

 次に、価格設定の要素の1つである「商品のコスト」について検討します。

 利益を確保するためには、できれば価格は「コスト+適正利潤」で設定するのが理想です。

 すくなくとも価格がコストを下回ってはいけません。

 これが価格設定の基本的な原則です。

 でも実際の商売では、価格は上限値が決まる他の2つの要素、「競争商品の価格」や

 「商品の絶対的価値」によって設定せざるを得ない場合が多いでしょう。

 というのは、ほとんどの商売で、強力な競争相手が存在し、また「お客様は神様」である
 からです。

 しかし、業績を上げるための価格戦略では、もう1つの要素、商品のコストを決して

 忘れてはなりません。

 まず「コスト」の定義を確認しましょう。

 コストすなわち「原価」には、いろいろな定義がありますが、価格設定の基本とするのは
 「全部原価」です。

 原価のベースは、メーカーなら工場での製造原価、販売業なら商品の仕入原価ですが、

 全部原価はこれに、その他のすべての経費(運送費、宣伝費、本社管理費、金利など)を
 加えたものです。

 さて、会社は一般に多数の商品を扱っています。

 商品の種類ごとに、商品1個当たりの全部原価を合理的に計算します。

 「合理的に」とは、原価、費用の発生の実態の通りに原価を計算することです。

 たとえば運送費の場合、商品1個当たりの運送費の平均値を計算するのではなく、商品の
 種類ごとに計算します。

 仕入れ価格が同じ商品でも、仕入れ地域や、配達先が異なれば運送費は異なります。

 前述の通り、商品の価格は競争商品の価格や、商品の絶対的価値によって決まる場合が

 多いのですが、原価を商品の種類ごとに計算しておけば、商品の種類ごとの利益が把握
 できます。

 そのことによって、たとえば次のような商品戦略を実行することができます。

  ①利益の大きい商品に販売体制や販売努力を集中する

  ②仕入れ総額に資金上の限界がある場合、利益の大きい商品の仕入れ比率を増やす

  ③赤字商品の販売は中止する

 価格戦略に反映するべき商品1個当たりの原価の計算に当たって、注意すべき点は、

 価格と原価と販売数量の関係です。

 2つのポイントがあります。

 第1の点は、販売数量が増えると一般に商品1個当たりの原価が低くなります。

 第2の点は、価格を下げれば、一般に販売量を増やすことができます。

 第1の点から説明します。

 周知の通り、原価には変動費と固定費があります。

 変動費は仕入原価、原材料費、運送費のように販売量に比例して増減する費用、固定費は、

 減価償却費、正社員の給料のように販売量に関係なく一定の期間には一定の費用が発生
 するものです。

 販売量が増えれば、商品1個当たりの固定費が低くなりますから、商品1個当たりの原価が
 低くなります。

 第2の点ですが、多くの商品で価格を下げれば販売量を増やすことができます。

 この効果が大きい商品のことを「価格弾力性(の絶対値)が大きい商品」といいます。

 この2つのことから、固定費が大きく、価格弾力性の大きい商品の場合は、価格を下げて
 販売量を増やすという戦略が、業績向上に大きな効果を上げます。

 価格と販売数量の関係を、ある程度正確に予測することができれば(たとえば曲線グラフで

 表すことができれば)、利益を最大にするような価格を計算することもできます。

 固定費と変動費を把握しておくと、他にも利用法があります。

 事業環境が悪く販売量が落ち込むと、特に固定費の大きい商品は赤字に転落します。

 その対策として価格を下げて販売量を増やすという戦略がよく用いられます。

 その場合、価格を全部原価より下げても、販売量を増やした方が赤字を縮小できる場合が
 あります。

 では、どこまで下げて良いでしょうか? 

 その限界は変動費の金額です。

 たとえば顧客から超安値の追加注文があった場合に、その価格が全部原価より低くても

 変動費よりも高ければ、断るより受注した方が赤字を縮小することができます。

 しかし、全部原価を割るような安値受注は緊急避難の対策であって、これを続けていては、
 赤字体質が固定してしまいます。

 以上述べてきた通り、価格戦略においては、社外の情報、社内のデータを最大限に集め、

 それを合理的に価格設定に反映することが肝要です。


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企業戦略とM&A

企業戦略とM&A

 ■経営戦略
  企業は、それぞれの企業理念や目標を達成するための事業として、ヒト・カネ・モノ・情報
  を投下し、製品やサービスなどを提供して利益を得ます。
  また、企業経営は継続性が求められますので、そのためには適正な利益を上げることが
  必要です。

  企業が、企業を取り巻くさまざまな環境と適合関係を図って存続・成長するためには、
  環境の変化に対応して行かなければなりません。
  企業を取り巻く環境には、経済環境、政治環境、技術環境、労働環境、文化環境、自然環境
  などが考えられますが、その中でも、経済環境が最も大きな影響を与えることに
  なります。


 ■企業のライフサイクル
  企業が経営環境の変化に対応しつつ、存続していくためには、既存事業の強化だけで
  なく、事業多角化も視野に入れなければなりません。
  複数の収益源を確保しておけば、仮にひとつの事業部門を取り巻く環境が悪化して
  収益が落ち込んでも、他の事業部門の収益で補うことができ、収益の安定化につながり
  ます。
  併せてシナジー(相乗効果) も期待でるでしょう。


  人間にライフサイクルがあり人生にライフプランがあるように、企業にもライフサイクル
  があります。
  企業がそのライフプランにあった戦略を策定し、その展開の手段としてM&Aを使うなら、
  M&Aは企業の存続・拡大・発展のための最強の手段となります。


 □企業のライフサイクルとM&A戦略
  成功するM&Aのパターンには一つの傾向をみることができます。
  その一つが、企業をライフサイクルからみたときに表れる傾向です。
  長期間で企業のライフサイクルをみたときに、いくつかの期に分けることができます。
  これらの期をもう少しまとめて、創業期・成長期から安定期にかけてを
〈拡大フェーズ〉
  安定期から事業承継期にかけてを
〈事業承継フェーズ〉、事業承継をしてから第2
  創業期終了までを
〈第2創業フェーズ〉とし、各フェーズで企業に求められる戦略と
  M&Aの関係を整理してみましょう。


 □企業拡大フェーズにおけるM&A
  まず第一に、 規模の拡大による効率化とシェアの拡大による競争力の強化です。
  これに極めて有効なのが、同一地区や新規地区におけるM&Aによる同業者の買収です。
  スーパーマーケットやレストランチェーン、タクシー事業や運送業等、マーケットを
  「面」でカバーしていく必要があったり、拠点が必要な業種にとっては特に有効な
  手段です。

  第二は、
本業を本当の意味で強い体質の企業に育て、安定期へのスムーズな移行をする
  ことです。
  この戦略に対しては、川上産業や川下産業をM&Aで買収したり、業際関係業種の企業を
  買収する方法が有効です。

  アパレルメーカーがブティックのチェーン店を買収したり、材木メーカーが建売業者を
  買収したりするケースです。
  このようなM&Aは製品開発や商品販売、事業ノウハウの蓄積等の面で本業に対し極めて
  シナジー効果(相乗効果)が高く、M&AらしいM&Aということができます。
  このフェーズでのM&Aはまず第一に、
本業の拡大・強化に主眼をおいたものである
  ことが必要です。


 □事業承継フェーズ
  事業承継フェーズで企業が取れる戦略シナリオは、
   ①後継者への承継
   ②第三者へのM&A
   ③店頭公開
   ④廃業

  しかありません。

  1.後継者への承継
   この場合、 後継者づくりが最大のテーマになります。
   そのために長期間かけて二世教育を行い、創業者が作り上げてきた企業をより
   良い形で引き継げるだけの経営者としての力量、器に育て上げなければなりません。
   また、特に
相続対策に無策だった企業が増えています。 

   A社は、業界でトップクラスの優良法人です。
   先代が亡くなられて後継者として長男のB氏(仮名) が社長に昇格しました。
   ところが、先代存命中に相続対策をしていなかったA社の自社株を相続した一人息子の
   B氏には多額の相続税が課せられてしまいました。

   B氏は相続税を延納分割で支払うこととしましたが、それでも毎年3億円近い税金を
   支払わなければならないことになります。
   B氏は役員報酬を数倍に引き上げましたが、所得税率も上がり、とても3億円の納税は
   不可能です。

   したがって、A社は毎年B氏に多額の役員報酬を支払うだけでなく、そのうえに
   3億円弱の貸し付けを行っています。
   トータルで毎年3億円以上の資金が社外流出することになったA社の財務体質は急激に
   悪化し始めており、またB氏個人の負債もほとんど減少しない状態です。

   経営者としての重い責任をまっとうして一生懸命仕事をしても納税のために最低限の
   生活費しか残りません。
   会社の財務状況を悪化させながらこのような状態が一生続くのであれば自分に
   とっても企業にとってもビジョンが持てません。

   それならば、いっそのことA社をM&Aで手放して、残った手取り財産で新しい事業を
   創業したい。
   このような相談が最近特に増加しています。
   もちろんバブルがはじけて相続税評価額より現在の手持ち資産時価が下落している
   ことにも原因はありますが、根本原因は相続税対策の不備(怠慢) によるところが
   大きい。
   以上の通り、①の後継者への承継の場合は、
〈二世教育〉と〈相続対策〉が戦略の
   2本柱になります。


  2.第三者へのM&A
   後を任せる後継者が不在で店頭公開できる可能性のない場合は、②の第三者への
   M&Aか、④の廃業という選択肢しか残りません。
   しかし、②と④を比べた場合、②のメリットとして、次の点が挙げられます。

    ・オーナーの税引き後手取額が数倍。
    ・従業員が失業せず、生活が向上安定する。
    ・会社が存続し、取引先や銀行に迷惑をかけない。


   (イ)簡単そうに見えるが、実は多くの困難が
    その第一は自分が何十年もかけて育ててきた会社を「もう少し自分でやってい
    ける」 と思える
健全な企業体の時期に譲渡を決断できるかどうかです。
    M&Aの大前提は秘密保持です。
    中小企業の場合、従業員や取引先に情報が漏れた時点で業績が悪化したり様々な
    反対にあうことを覚悟しなければなりません。

    身内や社員に親身に相談することもできない中で、会社を譲渡するという決断を
    することは並大抵のことではありません。
    第二に優良なM&Aコンサルタントに出会えるかどうかです。
    多くの金融機関
はその性格上、どうしても買い手企業の立場に立った物の見方を
    する傾向があります。

    また、M&A仲介業者の中にはブローカーまがいのことをしていたり、成功率が
    低いので着手金のみ多額に取り、親身になって仲介してくれないところもあると
    聞きます。
    M&Aによるハッピーリタイアはオーナーにとってもいいことづくめでありますが、
    中小企業の友効的M&Aを推進する専門仲介会社がまだまだ定着していない日本では、
    本当にいい仲介会社を探すことは難しいといえます。

    第三に、今まで培ってきた企業ノウハウや取引先等が営業権(のれん代)として
    評価され歓迎されるような、本当に
シナジー効果の高い相手先企業が見つかるか
    どうか
です。
    このような相手先企業が見つかった場合、譲渡企業オーナー、その従業員、
    譲渡企業の三者ともがハッピーなものとなります。
    しかし、これも第二の優良なM&A仲介会社が見つかるかどうかによります。


   (ロ)優良なM&A仲介会社とは
    ①企業評価を明確に

     企業を譲渡する場合、やはりできるだけ高く売却できるにこしたことは
     ありません。
     しかし、譲受側から見れば適正な価格でないと株主に損失をあたえ、
     銀行や監査法人の協力も得られないことになります。
     従って、中立的立場で企業評価をしたうえで、譲渡シナリオを作ってくれる
     仲介会社が望ましいことになります。


    ②経営計画も指導
     M&Aの場合、譲受企業は譲渡企業の将来を買うのです。
     しかし、企業の将来ビジョンを数字でキチンと表現するのはなかなか難しい
     ものです。
     そこで、経営計画を作成し、将来的なビジョンとその根拠を数字で示せる
     ようにしておくことは買い手側の意志決定と売り手側の企業評価(特に営業権)
     の観点から極めて重要です。


    ③譲受希望企業を組織化
     今回のテーマであるように譲受希望企業はその時の思いつきで買収する
     のではなく、企業のライフプラン上の大きな戦略に乗ってM&Aを実行
     するのです。
     これらの企業を組織化し、日ごろから戦略会議等に参画し、どのような
     企業をM&Aすればよいかを常に議論しているような仲介会社であれば、
     本当にシナジー効果の高い相手先を見つけることができます。


    ④その他
     その他として、今までの実績を事例をベースに説明してくれたり(秘密
     保持を守りながら) 、案件化のための必要書類をキチンと示してくれる
     ことも大切です。
     秘密保持契約や受託契約、報酬規定を示してくれるのは最低限のことです。
     このような点に気を付けて、M&Aコンサルタントを見つければ、失敗のない
     M&Aによるハッピーリタイアが期待できます。
     以上のように事業承継フェーズは企業の存続のために乗り切らなければ
     ならないたくさんの困難を伴うことが多いのです。
     創業社長が元気で企業が健全なうちに早期に企業存続のためのシナリオを
     優良な第三者と相談して作成し実行すべきです。


 □第2創業フェーズ
  先代より事業を承継し、相続税の納税や古い体質を改善するための人事面での再編成等、
  企業を相続したことによる「負の遺産」 の清算が終わるころから
〈第2創業フェーズ〉
  の始まりです。
  譲受希望企業を組織化している〈企業情報研究会〉の中にも、このフェーズにあって、
  積極的にM&Aを展開していきたいという企業がかなりの割合で存在します。

  事業承継した企業が抱えている問題点は何でしょうか。
  第一の問題点は、この企業のコアビジネスは先代が数十年前に創業した業種であり、
  かなり歴史のある産業であるために
構造不況や時代遅れになっていることが多い点です。
  2代目がこの業種だけにしがみついて、今後数十年間自分が引退するまで夢をかけて
  経営していけるかどうかは疑問です。

  時代にマッチした変革や展開が必要になっている企業は実に多いものです。
  第二に、新しい展開を行うとき、それを
実行できる人材が社内にいるかどうかです。
  創業者はカリスマ的経営者が多く、創業者の周りにいた番頭の方々は考え方が古かったり、
  イエスマンであることが多い。

  新規事業を考えて展開するだけのパワーを持っている人材を先代から引き継げるケースは
  少ない。
  このようなフェーズの企業戦略はどうあるべきなのでしょうか。
  まず第一に、先代より
引き継いだ事業を核とした多角化が考えられます。

  人材的にはまだ無理があるので、コアビジネスが製造業であれば製造業、小売業なら
  小売業のビジネスを買収していきます。
  そうすると、企業風土は近いのでスムーズな事業拡大ができます。
  コアビジネスの川上・川下産業や業際産業について
は、前述の通りシナジー効果が高く、
  本業のパワーアップと近代化に極めて有効です。

  さらに一歩考え方を進めて、同じ技術的バックボーンで、
まったくの異業種への進出
  考えられます。
  製菓業でキャンディーを作っていた会社が製薬会社を買収してトローチなどを開発、
  製造していくようなケースです。

  同一マーケットに対してまったく今までと異なった商品を提供していくビジネスも
  これと同じ考え方です。
  自社の持っている
〈技術〉〈マーケット〉〈営業構造〉〈製造インフラ〉等で
  最も強いものを探し、それが使える異業種を戦略的にM&Aにより取り込んでいけば、
  企業グループとしての近代化や多角化がスムーズに行えます。

  第二は、
まったくの異業種の新規事業を戦略的に展開するケースです。現在のコア
  ビジネスが好不況の波が激しかったり、本当に古い産業で将来ビジョンが描けず、
  いずれ縮小して収束させねばならない業種ではこのような戦略が正解です。
  例えば以前に、造船関連業からの相談が数件ありましたが、いずれの企業も好不況の
  波が大きく、造船とはまったく異なる業種の企業を買収して経営基盤を安定させたい
  との希望でした。

  考え方は、現在不況である、あるいは将来の不況が見込まれる業種の企業にとっては
  当然の選択です。
  自動車メーカーの100%下請けをやっていたある企業は現在の操業率では数年後に
  債務超過になることが予想されるため、工場の一部を売却することを決断しました。

  まったくの新規産業に参入したいのですが、製造業一筋でやってきたため人材がおらず、
  工場売却資金で新規分野の企業を買収して、数年後には収益構造の2〜3割を占める
  事業分野に育てたいと考えています。
  このように企業がライフサイクルのどの時点にいるかによって、企業戦略としての
  M&Aの考え方は大きく変わってきます。

  ただ、相談の中には自社のライフサイクルを見定められず、あと1〜2年早く相談に
  来られたら、好ましいM&Aが展開できたのに、というケースが多く見受けられます。
  経営者やその参謀の方は、早め早めに自社のスタンスを確認し、企業存続のための
  戦略と実行シナリオを策定していただきたいものです。


 □M&Aは企業の将来を買うもの
  譲渡企業のオーナーは、創業してから何十年も自分の会社と社員のために家財一式
  担保にいれて、休みもなく死に物狂いで働いてきた人です。
  自分の会社に対する思い入れは想像を絶するものがあります。
  また、中小企業の場合、社員もそのような社長の姿や人柄にほれ込んでついてきた人が
  多いようです。

  譲受企業がM&Aを実行する場合、
一番大切なのは自社の企業戦略にあった相手なのか
  どうかであり、また会計・法務両面からの適切な詰めです

  しかし、時によってはこれを重視するあまり、譲渡企業の創業者の尊厳や社員の心情を
  踏みにじってしまうことがあります。

  この場合、せっかく将来に向けて何億円もかけてM&Aを実行しても前経営者や社員が
  思うように動かず、失敗に終わるケースが見受けられます。
  反対に、創業者の尊厳や苦労を十分に理解し同時に社員に対してもその立場や心情を
  考慮することができれば、旧経営陣や社員は一丸となり新しいオーナーの下での再出発に
  取り組み、想像以上によい企業に変身することも少なくありません。

  M&Aの大原則は
〈企業の将来を買うこと〉です。
  M&Aを実行する際には細心の注意で会計・法務面を詰めると共に、大所高所から
  人間の心情や立場を考慮して、実の多いM&Aを実行したいものです。
  そうすることによりM&Aは企業戦略にとって最も有効な手段になると確信しています。


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M&Aを活用した経営戦略

M&Aを活用した経営戦略

「合併」と「買収」の違い
 「M:合併」と「A:買収」について整理してみましょう、
 M&Aという言葉は「M:合併」と「A:買収」を一括りにしていますが、その内容は全く
 異なります。
 合併の場合、合併される会社(被合併会社)は消滅してしまいますが、買収の場合、
 買収される会社(被買収会社)の株式の所有者(株主)が変わるだけで、会社そのものは
 存続します。

 また、合併では株主総会の特別決議といった厳格な商法上の手続きが要求されますが、
 一般的な買収(買収にかかる対価を金銭とする株式の取得)は、被買収会社株主との
 事前交渉・合意、契約、対価の支払といったものが基本的な流れとなり、合併ほど厳格な
 商法上の手続きは要求されません。

 さらに買収の場合、その買収目的に応じて買収する持ち分を100%、3分の2、過半数などと
 決めることができます。
 そのため、合併のように常に100%を自社に取り込むことに比べれば、さまざまな面で
 自由度は高まります。

 例えば、買収したものの当初想定した目的が達成できないと分かった時点で、買収の
 場合、買い手企業は被買収会社の株式を第三者に一部売却し自社の持ち分を引き下げたり、
 全部を手放すことが容易にできます。
 一方、合併では、買い手企業と被合併会社とは既に一つの企業になっているため、容易に
 切り離すことはできません。
 従って、将来的には合併する意向があっても、その前段階として、買収により子会社化
 ないしは兄弟会社化を行います。


□経営戦略の実現にM&Aを活用
 独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、M&A(合併・買収)を経営戦略上、
 有効な手段と考える中小企業の割合は5割以上に上っています。
 ここではM&Aのメリットについて解説します。
 適当な後継者が見当たらず、廃業・清算を検討するオーナー社長は少なくありません。

 しかし、会社を廃業・清算するよりもM&Aのひとつである第三者への株式譲渡を行う
 ほうが、メリットはずっと大きいのです。
 株式の売却で経営者が十分な創業者利益を確保できるからです。
 また、会社が存続するため、従業員の雇用が確保でき、取引先にも迷惑をかけずに
 済みます。

 会社清算と株式譲渡とでは、税制の違いなどにより、社長の最終的な手取額は2倍から3倍
 という大きな差が生じます。
 会社精算の場合、土地や機械・設備といった資産から借入金などの債務を差し引いた
 残余財産には、清算所得に対する法人税・事業税や配当所得に対する所得税など、高率の
 税が課せられます。

 株式譲渡の場合、株式譲渡益にはキャピタルゲイン課税がかかるだけです。
 しかもデフレ経済の下、会社清算に際し、資産の売却額はまず間違いなく簿価を下回って
 しまう。
 従業員に対する退職金の引き当て金も会社都合の解雇となるため必要となり、資産は
 大きく目減りします。

 これに対し、株式譲渡では、業績が好調だったり、あるいは収益への貢献度が高い営業上の
 許認可・免許を持っていたりすれば、時価総資産額に相応の営業権が上乗せされます。
 一方、買い手企業にとってM&Aを活用する最大のメリットは、新規事業への進出にかかる
 時間を短縮できること。

 経営資源が乏しい中小企業の場合、自力で一から新規事業を起こすことはなかなか難しい。
 売り手企業の既存の事業資産をそのまま引き継げるM&Aをうまく活用したいところです。
 企業が経営環境の変化に対応しつつ、存続していくためには、既存事業の強化だけでなく、
 事業多角化も視野に入れなければなりません。

 複数の収益源を確保しておけば、仮にひとつの事業部門を取り巻く環境が悪化して収益が
 落ち込んでも、他の事業部門の収益で補うことができ、収益の安定化につながります。
 併せてシナジー(相乗効果) も期待できるでしょう。
 M&Aは既存事業の拡大・強化にも有効です。

 買い手企業が自社の既存事業と同一の事業を買い受ける水平型M&Aの場合、売り手企業の
 生産・販売拠点や技術・ノウハウ、人材などを獲得できるからです。
 また、事業規模が大きくなる分、規模の経済性も見込めます。
 買い手企業がM&Aを実行するに当たっては、期待通りのメリットが得られるよう、企業文化
 の違いに留意し、人材流出の防止や取引先との関係維持に努める姿勢が大切です。 


□M&Aの主なメリット

 ◎売り手企業の場合
  ・事業承継対策に使える
   後継者が不在の場合でもM&Aを行うことで第三者に事業承継すれば、廃業、
   清算をせずにゴーイングコンサーン(継続企業) として会社が残る

  ・創業者利益を十分に確保できる
   第三者への事業譲渡において株式譲渡の手法を用いれば、会社を清算した
   場合に比べると、株主としての手取額が多くなり、オーナー経営者がハッピー
   リタイアメントできる

  ・従業員の雇用確保など経営者としての責任が果たせる
   会社を売却しても事業は存続するため、従業員の雇用が確保でき、また既存の
   取引先にも迷惑をかけずに済む

  ・経営体質の強化が図れる
   自社より企業規模が大きい買い手企業の傘下に入る、あるいは資本参加を
   受け入れることで財務基盤が安定する

 ◎買い手企業の場合
  ・新規事業の立ち上げが素早くできる
   売り手企業の既存事業を買い受けるため、一から新しい事業を起こす場合に
   比べると、立ち上げにかかる時間が短縮でき、事業リスクも小さく済む

  ・事業多角化によるリスクの分散が図れる
   異業種参入など非関連事業への多角化(混合型M&A) 、あるいは既存事業と
   関連した事業への多角化(垂直型M&A) を行う場合、複数の収益源を確保でき、
   経営環境の変化に伴う事業リスクの分散ひいては収益の安定化につながる

  ・シナジー(相乗効果) が望める
   混合型M&Aや垂直型M&Aといった事業多角化を行う場合、事業間の相互補完
   による収益増に加え、経営資源の共有に伴い、売り上げ単位当たり共通費の
   削減(範囲の経済性) が見込める

  ・既存事業の拡大・強化を容易に実現できる
   水平型M&Aすなわち買い手企業が自社の既存事業と同一の事業を買い受ける
   場合、売り手企業の生産・販売拠点や技術・ノウハウ、人材などを獲得する
   ことで、既存事業の収益増が図れる。
   また、生産量の増大に伴い、売り上げ単位当たりの固定費を削減できる
   (規模の経済性)


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流通チャネル戦略Ⅱ

流通チャネル戦略Ⅱ

 ■売れ筋が瞬間的に分かるダイレクト販売 
  ダイレクト販売にすることで、消費者にモノを届けるまでの時間とコストが圧倒的に
  減少します。
  これは、経路をみれば明らかで、多くの人が介在する経路と、直接消費者に渡すのとでは
  コストが違うことは分かるでしょう。 
  さらに、受注量が正確になるので、在庫量のコントロールがしやすくなります。

  従来の流通チャネルであれば、いつ、どれくらい、誰が購入するのか見えない不確定な
  要素が多い。
  さらに、小売店からメーカー側には、正確な情報が伝わらない可能性もあり、
  在庫=管理コストが高くなってしまう危険性がありました。
  店舗、メーカーとも見えない要素が多く、実績ベースでしか計画が立てられないことが
  多いのです。 

  複雑な経路がなぜ不便かと言うと、流通チャネルでは、モノを届ける物流の機能と、
  モノが移動した瞬間に発生する伝達情報(商い情報) がセットになっているからです。 
  例えば、あなたがあるサイズの靴が欲しいと思ったとしましょう。
  店員に聞いてみると、店員は、バックヤードの倉庫にあるか、本社の物流センターに
  あるか、それともメーカー側からいつそのサイズの靴が入荷されるかを確認しなければ
  ならない。

  このように、商品には必ず情報が付いてまわっているのです。 
  だから、いくらモノを作っても、それがいつ、どのように売れるのか、また、いつ、
  どのように在庫として残り、売れないのかが分からなければ、小売店もメーカーも、
  さらにそれを中間でコントロールする卸業も成立しなくなってしまうのです。 

  一方、ダイレクト販売方式をとる企業は、モノの売れ筋が瞬間に分かり、それをベースに
  在庫としての品揃えもできます。
  さらに中間業者が入らないので、その分商品の低価格化を実現でき、また発送コストに
  関しても消費者の買い上げ高に応じて、割引サービスを導入するといったことも可能です。 

  これは、全体のオペレーションコストが、従来の流通方法に比べて圧倒的に少なくて
  済むことを意味しています。
  ワン・トゥ・ワンチャネルの優位性 最近大手パソコンメーカーなども、特別な限定
  機種を用意し、ある特定のユーザーにダイレクト販売で届けようとしているのです。 

  一般的にパソコンは、この機種の、このスペックで、この価格というパターン化された
  商品が提供されています。
  しかも、買う場所も家電量販店であったり、ネット販売店であったりします。
  これは言うなれば、複数の決まったチャネルしか用意されていないということと
  同じです。

  顧客の立場から見ればそう映るのです。
  なぜならば、パソコンであれば、自分仕様のスペックがあり、自分だけのカラーデザイン
  があり、自分だけのテイストを表現できれば本当はうれしい。
  しかし、現在のパソコンメーカーではそのような個別対応、カスタマイズされた製品を
  通常の流通チャネルで供給できるメーカーはありません。

  自分だけの仕様ができれば、それは、その人だけに用意できるワン・トゥ・ワンチャネル
  なのです。 
  しかし、ご存知のように近年急激に成長しているデル・コンピュータ社は、
  インタラクティブなホームページを作り、消費者が自分だけの仕様のパソコンをつくれる
  機能を提供している。

  企業と顧客の関係性を築くことで、ワン・トゥ・ワンチャネルを作ったのです。 
  デル・コンピュータ社は、この流通チャネルに下記のようなメリットがあるとしている。

  【ワン・トウ・ワン チャネルのメリット】
   ○消費者情報が直接入手できる。
   ○中間コストがなく、顧客獲得コストが低下する。
   ○顧客ロイヤリティーの向上につながる。
   ○ディーラーのマージンがないため、商品価格が下がり、消費者に
    メリットがでる。
   ○受注後に完成品を作ることで、部品などの在庫コストが下がる。
   ○配送のリードタイムを短縮できる。
   ○マーケティング情報が整備されることで、他市場への展開が可能。

 □流通チャネルはカスタマイズに向かう 
  ダイレクト販売で有名なネットショップにアマゾンドットコムがある。
  これは、従来の店頭売りと違い、アマゾンのホームページを通じて注文を受け、それを
  消費者にダイレクトに届ける仕組み。 
  アマゾンのホームページには、「マイストア」というおすすめページがあります。

  ユーザーが購入した履歴を残しておき、その履歴情報に基づいて、現在のおすすめ商品を
  掲載するページ。
  一人ひとり異なる、顧客が購入したいと考えるカスタマイズストアです。
  これなども、ワン・トゥ・ワンチャネルです。 
  商品そのものはほかと変わらない。

  届けるまでの過程は、宅配などになるが、特に商品の中身をその方法に応じて変える
  ようなことはない。 
  つまりは、ターゲットを絞って、そのターゲットが選択するであろう選択のメニューを
  追加しているだけなのです。 

  インターネット技術の発達により、ある程度のコストで、カスタマイズしているかように
  見せることができるのです。
  サービス形態を変化させることで、顧客にとって自分だけの仕様に見せ、顧客が最も
  望む高い利便性を提供しているのです。

  また、アマゾンは、商品を即座に届ける仕組みを作っているため、売れ筋の商品は
  ある程度の在庫を抱え、自前の物流センター網を構築しています。
  全世界に対して、迅速に出荷する仕組みが整っているのです。
  この物流の仕組みがアマゾンを支えているのです。

  最終的な書籍のビジネスモデルの予測によれば、今では完全なデジタルデータの販売に
  なっている。
  書籍というデータは、1ページ単位で分解され、それぞれ値段を付けることが可能。
  さらにそれに付加された関連情報の動画や写真、図なども同時購入することができる
  ようになるかもしれない。

  このような世界が実現すると、いままで流通チャネルというある介在者を通してモノが
  流通していた世界が180度転換してしまう。
  この世界になるまでには、著作権の問題や版権の問題、二次利用の問題など課題が
  山積みであるが、一度それが確立した時代が到来した暁には、ある産業が壊滅する
  ような激震が走るでしょう。

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流通チャネル戦略Ⅰ

流通チャネル戦略 Ⅰ

 インターネットが流通を変える
  インターネットを利用した電子商取引では、メーカーから消費者へ直接販売される
  など、商品の流れがこれまでとは変わります。
  そのため、これまで商品を取り扱ってきた卸売業や小売業などの流通業界全体に大きな
  影響を与えることになります。

  以下では、インターネットやインターネットを利用した電子商取引の普及が流通業界に
  与える影響をいくつか挙げてみます。

  インターネットを利用した電子商取引では、メーカーから消費者へ直接販売される
  など、商品の流れがこれまでとは変わります。そのため、これまで商品を取り扱って
  きた卸売業や小売業などの流通業界全体に大きな影響を与えることになります。
  以下では、インターネットやインターネットを利用した電子商取引の普及が流通業界に
  与える影響をいくつか挙げてみます。


  (1)顧客の購買行動が変わる
   インターネットの普及によって、顧客一人ひとりが入手可能な情報量は飛躍的に
   増えます。
   顧客が商品を購入する際にも、インターネットから得た情報をもとに、より合理的な
   購買行動を起こしています。
   例えば顧客が自動車を購入する際に、インターネットで各メーカーの自動車の性能や
   デザイン、価格を比較検討したうえで、最も安い販売価格を提示する自動車販売店を
   選んで購入するといった行動、そして今では自動車のネット販売が始まっています。


  (2)流通経路の短絡化につながる
   インターネットを利用した電子商取引では、消費者が直接メーカーから商品を購入
   することも可能になっています。
   商品の流通経路も従来のようにメーカーから卸売業者、小売業者を経て消費者へ
   といった多段階ではなく、短絡化する可能性があります。
   卸売業や小売業を飛ばして直接消費者と取り引きするいわゆる「中抜き」が
   起これば、既存の流通業者にとって脅威となります。


  (3)取り引きの効率化が図れる
   商品取り引きの効率化も図られます。
   例えば、アパレル販売業者がインターネットを活用すれば、商品仕入れに際して、
   自店の在庫状況に応じた適正仕入れが可能になります。
   また、取り引きに要するコストも従来より抑えることができます。


  (4)販売エリアが広がる
   これまで小売業では店舗を中心としてその周辺の顧客に販売するのが常でしたが、
   インターネットを利用すれば日本中さらには世界中の顧客との取り引きが可能と
   なるため、販売エリアは飛躍的に広がります。
   また、インターネットによる商品取引では店舗を必要としないため、小売業における
   店舗の重要性は今までよりも低くなるでしょう。


  (5)マーケティングが変わる
   インターネットを利用した電子商取引では、企業は商品を顧客に販売した段階で
   その関係が終わるのではなく、ホームページやメールを通して商品のアフター
   メンテナンスや、新商品の紹介を行うことが可能になっています。
   これによって、企業と顧客は長期的な関係を築くことができます。
   マーケティング手法も、従来からある不特定多数の顧客を相手にする「マス・
   マーケティング」ではなく、顧客ひとりひとりとの長期的な関係を重視する
   「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」へと変わってきています。


 □顧客に届ける方法 
  顧客のニーズを探り、ターゲットを設定し、そして製品を開発して、いよいよ売り
  出そうと考えていたが、開発だけで終わってしまい、日の目を見ない製品が世の中には
  数多くあります。
  開発だけで満足してしまい、肝心のどのような方法で売るかという売り方を考えて
  いなかったのです。 

  製品には、必ず顧客に届くまでに通過していく経路があります。
  それが流通チャネルです。
  流通チャネルには次の5つがあり、それぞれのチャネルには特徴があります。

 □5つのチャネルの違い 
  下記に5つのチャネルの特徴を紹介します。
   1.卸主導型 
    従来からある商いであり、メーカーから出荷された商品は、元卸、中卸と間に
    何社も入り、やっと小売店に届いて、そこから消費者にわたるタイプです。
    日用雑貨などの消費財に多いタイプ。

   2.メーカー主導型 
    メーカーから出荷された商品がメーカーの販売会社を経由し、小売店舗の在庫状況、
    売れ筋を見ながら、メーカーが主導権を持って適切に卸していくタイプ。
    家電や化粧品などの、メーカーに力のある製品がこのタイプです。

   3.小売り主導型
    小売店鋪は、従来卸しを経由していたが、消費者のニーズが多品種少量になり、
    かつスピードやコストパフォーマンスを要求されているため、一部でメーカー
    から小売りが直接に仕入れるタイプに変わった。
    近年では、大手食品スーパーや米ウォルマート社などがこのタイプになる。

   4.専門店型(製販一体型) 
    小売店鋪の専門店を持つが、扱う商品が自社の製造する商品であり、製造から
    販売まで一気通貫で実現できるタイプ。
    これは、近年多い傾向にあり、 「ユニクロ」 を展開するファーストリテイ
    リングや家具チェーンのニトリなどは、このタイプといえます。

   5.ダイレクト販売型 
    これは、ネット通販やテレビショッピングなど直接消費者とコミュニケーション
    をとりながら、中間に他社の介在をなくし、ダイレクトに販売する方法です。
    米アマゾンドットコムやパソコンで成長している米デル・コンピュータ社などが
    このタイプです。

 □商品特性、会社の規模からチャネルを考える 
  流通チャネルは、商品の特性にあったものを設定しなければならない。
  例えば、商品差別化がなく、店頭で選ばれる機会が多い商品などは、卸主導、メーカー
  主導、小売主導のチャネルが合っている。 
  卸はバイイングパワーがあり、全国を網羅する営業力、販売力を有するので、一気に
  全国のチャネルに投入できる機会が高いからです。 

  また、メーカー主導や小売主導のチャネルは、比較的大手メーカーに限られてくる
  でしょう。
  なぜなら、直接小売りを管理するため、小売業に売り場ノウハウやマーチャンダイジング
  できる能力が求められるからです。

  それには、当然、全国規模に対応する専門家の育成も必要となるため、現実問題として、
  できる企業とできない企業に分かれるのです。 
  特に、小売り主導型は、卸が間に入る場合も多いが、小売りが直接メーカーとやりとり
  しながら納入数を決めていくやり方となるため、この場合、小売り側に規模の論理が
  働くので、規模が小さいメーカーでは、小売りの要求に対応できない案件が出てくる
  ことも多い。 

  ちなみに、そのような商品を専門店型チャネルで展開する場合には条件が限られて
  きます。
  それは、自分で製造できる能力があり、店舗も構えられる能力のある一部の限定された
  メーカーになるでしょう。

  そうした条件を満たすメーカーが専門店型で展開すれば、一気通貫の売り方となるため、
  コスト管理ができ、自前でチャネル調整できるメリットがあります。 
  最後に、ダイレクト販売の場合ですが、中間の介在を無くしたことで、消費者に直接
  届けることができるが、商品が比較的低価格の場合、手間がかかり、顧客との接点も
  限定されるので向かないでしょう。 

  しかしながら、自前でチャネル構築できない小規模店や単価の高いもので特定ニーズに
  対応する商品であれば、一番効率が良い販売方法かも知れません。 
  このように、それぞれの流通チャネルには特徴があります。 
  しかし、ここで一番考えなければならないのは、いつ、どこで、どのように商品が
  顧客に届けられるかの過程を考えることです。

 □商品寿命の短命化がチャネルの再構築を促す 
  近年、流通チャネル戦略が重要になってきている。
  それは、各メーカーが製品の差別化を実施しているのは当然ですが、必ずしもそれが
  競争優位を生み出すことにつながっていないからです。 
  例えば、シャンプーや石けんなどは、開発に10年かけた製品でも、2〜3年でほかの
  メーカーも同じタイプの製品を投入してきます。

  そうなると、先行投資の利益はわずかなものであり、商品自体の短命化も進みます。
  そして、このような状況になってきた場合、流通チャネルを整備し、それに対する
  マネジメント力で商品に付加サービスを提供できる企業が優位になってくるのです。

 □チャネル強化のためのリサーチ方法 
  それでは、競合商品の台頭、先行者利益の喪失という状況を打開するために、企業は
  どのような行動をとればよいのでしょうか。 
  それには、流通チャネルの選択と集中、そして強化が必要となります。
  そして、そのためには、顧客の購買行動を通じて、顧客の好み、行動を理解する
  必要があるのです。

  そのための最も有効な方法の1つが、現場からの情報のフィードバックを通じて顧客の
  声を聞く方法です。 
  以下に顧客の声を聞く方法を列挙します。 

   ○消費者から手紙、アンケートなどをもらう。 
   ○全従業員を通じて、日常的な会話から消費者情報を拾う。 
   ○パネル調査を実施し、製品、サービスについて話し合う。 
   ○消費者を対象に、製品、サービスの選択の理由を聞いてみる。
    また、消費のための優先順位を聞いてみる。 
   ○専門家との意見交換会を実施し、今後のトレンドを聞いてみる。 
   ○モニタリングを行い、ブランド価値や使用状況を分析してみる。 
   ○情報システムを通じてデータを分析し、仮説をたててみる。

 □情報のフィードバックが売れる仕組みを支える 
  流通チャネルが必要とされる理由は、次の3点に集約できる。

   1.自社の商品の機会を拡大するということと同時に取引コストを下げるという
     役割を持っている
   2.市場にスピーディーに商品を供給する
   3.市場の情報を収集し、顧客ニーズに合う商品を供給していく

    (1)販売機会の拡大と取引コストの低下 
    (2)販売提供のスピード化(納期の短縮) 
    (3)情報のフィードバックによる関係性の維持 

  ここで大事になってきている点があります。
  それが情報のフィードバックによる関係性の維持です。 
  マーケティングでは、市場の情報が重視されているように、販売時の情報も今後の
  製品開発や製造を計画するうえで、無くてはならない情報になっています。

  30年前からPOS(販売時点情報管理)システムが小売店に導入され、単品管理による
  流通情報システムを整備している企業が多いと思いますが、ここで大事な視点があります。
  それが、情報のスピード。 

  従来の販売システムは、単品管理の数値だけ見て満足していましたが、実際には、
  モノが移動すると共に情報も移動するので、常にタイムリーな情報が求められるのです。
  つまり、時間を軸とした情報の精度です。 
  例えば、小売店舗において、棚で在庫切れを起こしていたとしましょう。
  すると、せっかく購入しにきた顧客は、購入機会を失い、販売機会ロスとなって
  しまいます。 

  これが例えば、全国に多店舗展開している企業を考えてみると、1店舗で1日あたり
  機会ロスが何店かあれば、それが全国規模なので、売り上げ数値に換算すると、年間では
  決して小さくない数字になるでしょう。 
  だから、小売りの現場では最新の情報を取得して、常に製造現場、物流業者(卸、物流
  部門)に対して情報のフィードバックをスピーディーにすることが求められている
  のです。

  情報の流れが早くなることで、モノの流れも早くなり、例えば販売機会ロスを起こさず、
  マーケティング活動を長期で支える仕組みができるのです。 
  情報感度が悪いと、今後ますます商売もうまくいかなくなる可能性は大です。
  流通チャネルと同時に、スピーディーなフィードバックができる情報システムを構築
  することも、成功の大事な要素の1つなのです。

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中小企業の戦略策定

中小企業の戦略策定

 ■戦略とは 
  企業が生き残って行くにはどうしたらよいのか、その方針・方策のことを戦略・戦術と
  いいます。 
  「企業の戦略とは環境に適応して生き続けていくため、企業が辿り着くべき将来目標
  を定め、そこに到達するための方針・方策を設定したもの」 といってよいでしょう。

  日本の産業の近年の現状、隣国中国の目覚しい台頭を思えば肯けるでしょう。 
  戦略が持つべき要素を以下に整理して示します。

  ①製品・市場の領域と業務範囲、業態
   どんな製品・サービスを、どんな地域のどんな客層を相手に提供するのかです。 
   業務範囲とは、製造、販売、開発などの機能を自社でどこまでやるのか、
   ということ。
   親会社から独立した企業などの場合、販売(営業) は親会社に任せる、という
   企業もあれば、逆に、生産は他社に委託する企業もあります。 
   業態とは、小売業なら百貨店、スーパー、コンビニ、専門店などの違いを指し
   ます。 
   いずれも組織の能力、得意分野を考えて決めます。

  ②競争優位の方策 
   競争して勝てる方策あるいは競争者が参入してこれない手段を講じます。
   簡単には真似のできないノウハウであるとか特許出願はその一例です。

  ③資源配分
   人、設備、資金をどのように配分するかです。
   成熟した製品には資源を投入せず、これから成長する製品に資源を投入する、
   というようなことです。

  ④機能別の方策 
   組織は営業、企画、開発、設計、製造(施工、サービス) 、物流、情報、
   品質管理、安全管理、経理、人材養成などさまざまな機能から成り立っています。
   それぞれどのような方策で臨むか、どれに今は資源を重点投入すべきか、
   という問題です。

  ⑤リスクへの対応 
   将来起こる可能性の高いリスクはなにか、その対処法を考えておきます。

 □戦略の策定手順
  中小企業の戦略の立案手順は大企業の場合と何が違うかといえば、ポートフォリオ
  分析を省略していることです。
  多種類の事業を抱えている場合、すでに成熟した事業とこれから成長する事業があり、
  資源配分のメリハリをつける必要があります。
  大企業は、いま稼いでいてくれる事業と将来稼いでくれるであろう事業を抱える
  ようにしますが、中小企業はそうはいかないからです。 

 □組織の経営理念の確認、見直し 
  基本前提は「自分はなんのために存在するのか」 を確認することです。
  社員の雇用を確保することなのか、組織の事業を維持発展させることなのか、
  男の夢を実現することなのか、です。
  組織の存在意義を明確にすることです。 
  その際、とかく忘れがちなのは、顧客や消費者の立場です。

  日本の行政が20世紀に指導してきた原理は生産者の側に立って生産者を育てること
  でした。
  1980年くらいまでは「日本モデル」として功を奏したことは認められるでしょう。
  それが世紀末には生産者を守ることに腐心し、 “行政指導”で生産者の自立を妨げた
  ために、競争力のない業界を輩出したことはご存知の通りです。 

  生産力が不足していて、消費者が求めるものが何かが分かっていた時代は「計画経済」的
  な政策が有効だったのですが、衣食住が足り、飽食の時代になってくると、
  消費者の嗜好が当然多様になってきました。
  企業がそれぞれに試行錯誤して消費者のニーズを察知する必要があったときに、
  “親方日の丸”のような行政指導が居座ったことが、国内産業の競争力を弱めた原因
  でしょう。 

  自社の製品(サービス)を、お金を出して購入してくれるのは顧客・消費者しか
  ありません。
  消費者に存在を許されてこその自立です。
  いずれの会社の経営理念にも顧客重視の思想が盛られていますが、埃をかぶった神棚
  に奉らないことです。

 □外部環境の分析 
  外部環境といっても広いですから、分析作業を自社の事業に取って関係があること
  だけに絞ります。

  調査の切り口は以下の4つです。 
   ①市場
   ②業界
   ③顧客
   ④一般社会 
  以上の順序で調査項目を分析します。

  (1)市場分析 

   市場分析の調査項目
    市場の規模:どのくらいの売上規模かということ。      
          日本だけでなく世界を対象にする必要がある。
    成長率、成長予測:携帯電話のように爆発的な成長をしたものも
    あれば、介護サービスのように緩やかなものもある。
    長寿製品もあれば短命製品もある。
    価格動向:価格を下げれば需要が急増するものとそうでないものがある。
    市場のセグメントの多さ:セグメントとは製品の品種のようなもの。
    セグメントが多ければいろいろな棲み分けが可能になる。
    化粧品を一社が超高級品から廉価品まで手がけることはできない。
    デファクトスタンダードの有無:規格ではないが、事実上規格と同じ
    ような支配力を持つ仕様をいう。
    すでにデファクトスタンダードが存在するのなら後から参入するのは困難。
    顧客の満足度:顧客満足度が低ければ潜在的な需要があるということ。       
    顧客満足度の要素には価格、品質、迅速さ、安全性がある。


  (2)業界分析 

   業界分析の調査項目
   コスト構造:原材料費、人件費、設備費などの詳細。
   人件費の割合が高ければ中国に太刀打ちできないのは当然。
   利益マージン:売値とコストとの差(粗利益)。
   規模の経済性:産量が増えるとコストがどれだけ下がるかという特性。
   競争の激しさ:業者の数、指導的な業者の有無。
   参入障壁、撤退障壁:参入するのに必要な投資や技術や人材。
   撤退したくても供給責任から撤退できない状況。
   購入者や供給者の交渉力:原材料の供給者が強いとこちらが顧客でも価
   格を自分で設定できない。
   業界のルールや価値観:特殊な価値観を持っている業界もある。
   海外なら宗教や習慣の違いもある。 
   技術の成熟度:技術開発の余地がまだあるのかないのか。
   製品の差別化の程度:差別化が進んでいないようであれば参入しやすい。

  (3)顧客分析 

   顧客分析の調査項目
   顧客の識別:購入者、使用者、最終使用者はそれぞれ異なることが多い。
   使用者が誰かが分かれば打つ手はおのずと知れる。
   購入する目的:何に使っているのか分からなければ製品改良はできない。
   調べると意外な使い方をしているときがある。
   期待されている機能:他の製品で代替される可能性はないか。
   顧客の満たされていないニーズ:顧客は意外と自身の本当のニーズに気
   がついていない。
   だから顧客に聞けばニーズが分かるとは限らない。

  (4)社会動向の分析 
   一般社会の動向は、毎日の新聞報道やテレビニュースで知ることができます。
   ただ、漠然とではなく、項目ごとにについて整理したほうがよいでしょう。
   経済動向:経済成長率、失業率、為替、金融機関の融資の動向、産業構
   造の変化、個人消費性向、主要原材料の価格動向。
   社会動向:法律、行政の規制(規制緩和の動き)、優遇制度、環境保全
   の高まり、国際規格、住民運動。
   人口動態:高齢化の進行、少子化。
   政治状況:特殊法人の撤廃、財政引締めか消費刺激策か。
   文化・風俗:携帯電話・インターネット普及の影響など。

   以上の分析から、自社の製品・サービスにとってどんな機会(O)があり、
   一方でどんな脅威(T)があるのかを抽出します。

 □内部能力分析(競合分析) 
  内部能力分析とは、自社の能力を評価することです。
  その際、我田引水のような評価にならないように、同じ業界の強力な企業と比較
  することによって行います。
  ですから競合分析ともいいます。 
  内部能力分析の切り口を以下の3つに設定しました。 

  (1)マーケット力
   顧客の信頼度:自社の評判やブランド力。
   販売力:販売拠点・販売網、販売促進力。
   物流の条件:消費地までの距離、物流拠点、輸送手段。
   マーケットニーズ把握力:顧客もしくは市場との密着度、顧客をよく知
   っているかどうか、市場セグメントをこまかく把握しているかどうか。
   市場シェア:市場シェアは以上の要因の結果であるが、上記項目の調査
   が難しいときに、マーケット力の総合力を示す客観的尺度として用いる。
   ただし新規参入を図るときには当然ゼロである。

  (2)製品を作る能力
   技術力:技術水準、新技術開発力、技術の結集力、技能者。
   企画力:製品コンセプトを立案する能力、情報収集力。
   製品開発力:試作装置の所有とその能力、所有特許、開発組織。
   生産力:生産設備の能力、コスト競争力、品質の均質性。
   品質:機能・性能、デザイン、安定性、操作性、サービスの質、品揃え(品種の数)。
   原材料入手力:原料メーカーとの信頼関係、特殊な原材料の入手源。

  (3)マネジメント力
   マネジメント力:意思決定の適切さとスピード、中間管理者の管理力指導力、
   組織間コミュニケーション、従業員のモラール。
   組織力:標準化のレベル(文書化の程度)、従業員の知識レベル。
   財務力:資金調達力、資金調達コスト、資本流動性。

  以上の分析から、自社が競争会社と比較して優れていれば強み(S)、劣って
  いれば弱み(W)とします。
  影響力の強いものだけに絞ります。
  できるだけ客観的資料に基づいて判断しますが、無理なものは主観的に判断します。


 □戦略的課題の設定 
  戦略的課題の候補は、機会をとらえること、脅威を避けること、強みを生かすこと、
  弱みを補強することです。
  たとえば、介護ビジネスなら、  
   機会「過疎地には介護サービスを請負う企業がない」  
   脅威「ヘルパーの移動に時間がかかる」  
   強み「ヘルパーを派遣する仕組み(情報システム)が整っている」  
   弱み「過疎地に在住するヘルパーがいない」
  という分析結果になった場合、課題は「過疎地に在住するヘルパーを養成する」
  となるでしょう。 
  課題はS、W、O、Tの関係で決まるので、課題の候補とS、W、O、Tをマトリクス
  表にして表せば比較しやすいでしょう。
  表8にモデル図を示します(表8の中の記号◎と○は関係の強さを示している) 。
  SWOT分析の結果から、課題が明確であって、何を補強しなくてはならないのかも
  明白ならば、表8のような作表をしなくても構いません。

 □方策(戦略的代替案)の列挙と評価
  1.戦略的代替案の定石
   企業戦略の選択肢はいろいろあると思うでしょうが、基本的パターンは定石化
   されています。
   以下の3つです。

   ①コストリーダー戦略 
    企業間競争における最大の戦力はコストです。
    ですから人件費の安い中国やアジアに生産基地がどんどんシフトして
    いるわけです。
    一方、もし、人件費や設備費が同じ条件であれば、コストは生産量が
    増えるほど一定割合で低減するという経験則がありますので、シェア
    を最大にすることが有利になります。
    結果大量生産される製品は大企業の独壇場になります。

   ②差別化戦略 
    単純なコストでは歯が立ちませんが、顧客満足にはいろいろな要素が
    ありますから、そのどれか一つを強調することによって事業が成り立
    ちます。
    それを差別化と言います。
    差別化の要素としては、品質(機能、性能、デザイン、安定性、安全
    性、頑丈さ、操作性)、品揃え(多様性) 、付帯サービス、柔軟性
    (多様な注文に対する対応力) 、迅速性があります。
    サービスのよさを徹底することで顧客の支持を広く得ている米国のデ
    パートもあります。

   ③集中戦略 
    織田信長が圧倒的に優勢な今川義元に勝利を得たのは、細長い戦隊の
    一部に集中的に戦力を投入できたからです。
    兵力を分散させないことです。
    市場の中のマイナーな部分に集中するニッチ戦略はよくみるところです。
    小さな組織の強みは機動力です。
    「いざ鎌倉」のときになんでもできるように、社員が単能ではなく多
    能になっていることが必要でしょう。

  2.機能別の戦略課題 
   事業(製品)戦略に対し、生産、物流、品質管理、安全環境保全、情報、
   人材配置育成などの機能別の戦略も必要です。
   その課題は下図のフローチャ−トのようにして決めたらよいでしょう。
   機能別の部門課題は、全社的にみれば事業戦略課題を遂行するための方策に
   なります。

 □リスクの評価と予防策 
  戦略代替案が失敗したときの対処の方法を予め考えておきます。
  とくにこれまでやったことのない事業に進出するときには必要です。 
  事業に固有なリスク(競争会社の値引きなど)のほかに以下のようなことを考えて
  おきましょう。 
   ● 政治的なもの(海外進出の場合の政変、政策の大幅変更) 
   ● 経済的なもの(為替の大きな変動、原油騰貴など) 
   ● 技術的なもの(革新的な技術の出現) 
   ● モラルハザード(品質保証の手抜きによるクレーム続発) 
   ● 災害(地震、爆発、テロ) 
  リスク予防の考え方はほぼ決まっています。
  可能性のあるリスクを列挙したあとで、その一つ一つについて次の判断基準で評価
  することです。  
   ①起こる確率の高さ、  
   ②影響力の大きさ、  
   ③対策の容易さ(費用の小ささ)
  起こる確率が高く、影響力が大きいのなら、保険をかけるなど、多少の費用が
  かかっても何らかの対策を講じておくべきでしょう。

 □実施計画、進捗管理 
  戦略の実施について以下に述べますが、参考にするのはTQCでいうところの「方針管理」
  です。
  コントロールに対してマネジメントが重要であること、標準化されていない仕事で
  あること、計画も大事であるが、臨機な変更がより大事なことなどが中心です。 
  戦略的な課題は結果的に組織を変革する(構成員の意識を変える)ことにつながり
  ます。
  また、そうでなければ成功しません。

  経営者はまず、今までの路線の踏襲では組織が生き残って行けないことを全員に強く
  訴える必要があります。 
  管理といえばふつうは維持管理のことを指します。
  つまり日常的に繰り返されてきたやり方を踏襲することです。

  もちろん、そのやり方は標準化され、洗練されてきたやり方です(もし、繰り返す
  業務なのに標準化されてもいないし、洗練もされていないのならISO9001を導入
  して標準化を図ることが最優先すべき戦略でしょう)。 
  ところが戦略的課題のマネジメントは、決められたことをその通り遂行することでは
  ありません。

  したがって計画自体も旅行計画のようには詳細には決定できません。
  戦略課題の達成計画では下記のようにまとめるのがよいと思います。
  課題、目標、方策、管理項目(管理目標) 、スケジュール一例を表9に示します。
  ここで管理項目という言葉が一つのポイントになります。
  表9を見ればお分かりのように、方策に対応して管理項目が設定されます。
  いわば方策が所期の目的を達成したらこのような状態になるはず、という目標を
  示しています。

  本来の目標(この場合物流費25%削減)に対して、管理項目の目標はその一部分を
  成しているのです。
  これは方策が一つではなく複数あるからです。 
  スケジュールの中身も、より細かい方策で成っています。
  それら方策の実施状況を把握する管理項目も立てようとすれば立てられます。

  これは監視に近い項目になりますので点検項目という言い方をします。
  維持管理における監視項目と同じです。 
  しかし、繰り返す業務の監視項目と違って、戦略的課題における点検項目が予定通り
  に実行されても、管理項目の目標が目論見通り達成できるとは限りません。
  管理項目の目標が達成されなければ課題、目標は未達成に終わります。

  ですから、大事なのは管理項目なのであって、点検項目ではありません。 
  管理項目の目標が達成できそうにない場合には、時間があるのならば追加の方策も
  考えなくてはなりません。
  方策は絶対ではなく、試行的な要素も含んでいるのです。
  「A案でだめならB案を」です。

  目標をどうしても達成しなくてはならないという根性がなければできない取り組み
  です。 
  ここでお分かりのように、管理項目は、期の途中で計画の追加や変更をできるように、
  という仕掛けでもあるのです。
  もし、目標が課題達成の最終目標の一つしかない場合は、期の終わり近くになって
  それが判明するので、未達成に終わりそうだと分かっても手の打ちようがありません。 

  新製品の販売強化、というような課題では、最終目標は年間売上高ですが、
  管理項目としては、4月からの毎月の売上高(月ごとに増える)に設定します。
  そうすると早めに手を打つことができるからです。 
  このようなマネジメントは現実にどの中小企業でも実施しているでしょう。
  しかし、計画表だとか、ましてや管理項目だとかがありません。
  「方針管理」はこれまで目に見えなかったマネジメントを目に見えるように、
  言葉を換えれば、マネジメントを少しでも見える化透明化しようという仕組みなのです。

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小さな会社の経営戦略

小さな会社の経営戦略

 ■小さな会社の経営
  1.儲からない小さな会社
   (1)「労多くして、益少なし」の小企業経営
    小さな会社の経営は、思ったより儲からないものです。
    石川啄木の歌に「はたらけど、はたらけど なお わが生活 楽にならざり ぢっと
    手を見る」があるが小さな会社の社長も「働けど、働けど(働くほどに)、
    もち出し多く、ついに破産か」となるのです。

    もっともこうなる前は「働けど、働けど(働くほどに)、資金繰り苦しく
    なりて、日夜銀行通い」という状態が続く。
    こんな状態が続く毎日では、何のために会社を経営しているのかわからなく
    なるのが、小さな会社の社長の現状なのです。
    しかし、それでも小さな企業の会社設立が後を絶たないのは、なぜだろうか?

    ひとことで言えば、「鶏口となるも、牛後となるなかれ」のことわざの通り、
    一国一城の主になりたい一心からです。
    つまり、やったらやっただけ身入りがよくなるだろうと思うからです。
    しかし、そうは思うようにいかないのがこの世の中。
    おおかたの小さな会社の経営は、儲かるどころか、上記替え歌のように四苦
    八苦で、もち出しが多く、毎年、毎期赤字の会社が多いのです。

    それでもまだ、もち出しができて、経営が成り立っているうちはいいのですが、
    ひとたびこれができなくなった時には倒産で、小さな会社の場合は、これに
    一家離散が加わる。
    こうした現実を踏まえたうえで、小さいながらも会社の中に男のロマンを
    見いだし、やりがいを感じる人は、存分に企業経営をされたらいいでしょう。
    しかし、冒頭で述べた通り、「労多くして、益少なし」をしっかり覚悟した
    うえで経営をされるように重ねておすすめします。

   (2)独自の「経営の手法」をもつ
    その覚悟をもったうえで経営に挑戦するのであれば 、あるいはすでに小さな
    会社を経営しているのであれば 、何とかして自分なりの経営手法をもたな
    ければなりません 。
    「経験は最良の教師である」という格言があります 。 
    ただし、経営は、一つひとつ自分で経験していては 、スピードも遅いし 、
    カネや時間がかかりすぎます 。 

    そのうえ失敗でもしたら 、そのカネと時間がまるでムダとなってしまいます 。
    「愚者は自分の経験から学び 、賢者は他人の経験から学ぶ 」という格言も
    あります 。 
    この二つを念頭に置いたうえで話をすすめます 。
    自分なりの経営の手法を身につけるためには 、とくに次の二つの点に注意
    したほうがいいと思います 。

     提案:他人から学ぶ
        ややもすると、一国一城の主たらんとするほどの人は、他人の
        意見を聞かないものです。
        部下がせっかくいい意見をもっていても、あるいは他人からの
        いい意見があっても、得てしてつぶしてしまうことが多く、人の
        意見に耳を貸すことができないものです。
        これが大きな「時間とカネ」のムダ遣いとなり、儲からないパターン
        となり、あげくの果ては最悪の事態に陥ってしまいます。
        こういう意味からも、他人が経験してきた経営上の諸問題を謙虚に
        学んで、会社の経営に活かすことを提案します。
        他企業が経験したことがらから経営のやり方を学び、自分にマッチ
        した独自の「経営の手法」をつくり出すことです。

     提案:前向きに学ぶ
        とはいえ、自分で会社を興そうとする人は、たいていは「下調べ」
        と称して学者やコンサルタントの話を聞いたり、成功経営者の本を
        読んだり、身の周りの脱サラ組の友人の話を聞いたりしている
        ものです。
        そうした時、「すごい!よし俺もやってみよう!」と思うか「これは
        チョット…」と思うか、その「学ぶ姿勢」が問題なのです。 
        ただ、調べたり聞いたりした情報がよいと感じた場合でも、「後ろ向き」
        の考えが出てくるため、ほとんどの人は結局実行できないままになって
        しまうケースが多いのです。
        だから、次の後ろ向きの三つの考えを、頭から追い払わなければ
        なりません。
         第一の後ろ向きの考え:「環境」が違うからムリだ。
         第二の後ろ向きの考え:そんな「時間」がない。
         第三の後ろ向きの考え:実行する「ヒト」がいない。
        この「ムリだ」「できない」「いない」の三つの後ろ向きの心を
        クリアしないかぎり、いくらよいことを聞いても「馬の耳に念仏」、
        何の役にも立たないことを知ってほしいのです。

  2.自分の性格を考えて戦略を立案する
   (1)性格に合わない戦略を立てても途中でトン座する自分が「経営力」をどのように
    つけるかは、会社経営をしているトップまたは、それに関係する人にとっては
    永遠のテーマです。
    市販されているたいていのハウツー書には、まず自社の経営戦略の基本的
    考えを打ち出すべきだと書いてある。

    確かにトップ自身がこれからどんな会社にしたいか、そのためにどんな戦略を
    立てるかは重要だが、その机上の戦略は、長くて半年位で「尻切れトンボ」に
    なるケースが多いのも確かです。
    これはナゼだろうか?
    理由は簡単です。
    立案した考え方が、実行する本人の性格にマッチしていないからです。

    小さな会社、とくに小企業では、トップ自身が自分のやりたいことを机上論
    的に記述して「戦略」なるものをつくり上げます。
    しかし実際にやり始めると、自分自身の性格に合っていないのでムリが生じ、
    かなり変わってしまうのです。

    その経営戦略は他人の受け売りだったり、また、他人が成功した例をそっくり
    マネただけのものだから、自分の性格とはマッチしていないので、中途で、
    なしくずし的に、しかも、知らないうちに、うやむやになってしまうのです。
    これを防止するには、戦略を立案する段階でトップの、または実行者の性格を、
    よく知っておかなければなりません。

    自分の性格を見抜いたうえで戦略と計画を立てなければならないのです。
    富士山へ登るのに富士吉田口もあれば御殿場口、その他多くの登山ルートが
    あるように、「儲け方」にも、いろいろなやり方があるのです。

    例えば、
     ①大口顧客層をねらうか、または小口顧客層をねらうか?
     ②薄利多売方法か、またはその逆の方法か?
     ③直売方法か卸売方法か?
     ④規模拡大戦略か、または内容充実戦略か?
     ⑤メーカーサイド(つくり手)になるのか、または商社サイド(売り手)
      になるのか?
    等々である。

   (2)トップ自身の性格から戦略を決める考え方
    もちろんどの方法でも成功している人もいるし、どの方法をとっても不成功に
    終わる人もいる。
    成功しなかった人はたいてい、「経営手腕がなかった」と一口で片づけられて
    しまいがちですが、この言葉だけで簡単に判断してしまうのは間違いだと
    思います。

    だいたい「経営手腕がない」という言葉自体、余りにも抽象的な言い回し
    なのです。
    だから本当は、「経営手腕がない」とか「経営力が未熟だ」という前に、
    その人の「器」や「性格」を徹底的に知るべきなのです。
    とくに、20人以下の小さな会社の場合は、戦略とトップの性格のミスマッチ
    のために失敗することが多い。

    立案した戦略とトップの性格とがマッチしてはじめて、経営は継続的に稼働
    でき、成果が出るということを認識しなければならないのです。
    「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」「敵は己にアリ」この二つの格言
    を理解して、経営戦略の立案をします。
    次にトップ自身の性格からどのように戦略を決めるのかを考えてみましょう。

   (3)大口顧客志向か、小口顧客志向か
    例えば会社を経営していると、「大口顧客」がよいのか、「小口顧客」の
    ほうがよいのか、判断に苦しむ時がしばしばあります。
    「大口顧客」と「小口顧客」のプラス・マイナスを比較すると、「粗利率」は
    小口顧客有利で、「数量」は、「大口顧客」が有利であり、一勝一敗で、
    五分と五分です。
    問題は「継続性」です。

    大体において大口は、単発的な受注が多く、不安定要素が高いが、一件決まれば
    大きい売上げになります。
    この逆が小口顧客です。
    つまり、小口顧客から一回の交渉で大きな売上げを上げることはできないが、
    回数を重ねれば大口顧客と変わらない売上げを見込むことができます。

    一つひとつは小さいが、その小さい取引も数が多くなれば、安定した売上げに
    つながるのです。
    だから安定売上げを維持できるようにするためには、小口顧客のほうがよい
    ことになります。
    この典型が、現在多くのチェーン店をもつコンビニ経営です。

    一つひとつのコンビニエンスストアは昔、町にあった古びたパパママストアー
    でしたが、今では全く新しい小売り形態に変身してしまった。
    だから本当は、小さな会社は、小口顧客のグループ化を優先するような経営
    戦略をたてるべきなのです。
    こういう営業活動ができるようになれば、もう大丈夫といっていいでしょう。

    しかしこの場合のポイントは、細かな人間関係をつくることにあります。
    この戦略が難しいのです。
    トップの性格が、大口顧客をねらうタイプの場合は、「小口を優先したほうが
    いい」と頭では思っていても、ついつい大口顧客狙いで小口をおろそかにして
    しまうため、せっかく計画を立てても計画倒れに終わることが多いので、
    性格と戦略を慎重に考え合わせて結論を出したほうがよいでしょう。

    しかも小口顧客のほうが粗利率が高いといっても、そうした顧客をグループ化
    するのには、かなりの時間がかかります。
    中にはそうした手間暇をムダと感じるトップもいます。
    そうしたトップの場合は、大口顧客への攻勢を思い切ってかけることで、粗利は
    少なくても数量の大きな商売を展開したほうがうまくいく、という場合も
    あります。

    トップの性格に合わない戦略は、結局欲求不満を残しただけの失敗に終わって
    しまいます。
    だから「経営戦略は、トップの性格を考慮して立案」しなければならないのです。

  3.社長は、「敵は己にアリ」を熟知する
   (1)まず自分の長所と欠点を自覚する
    小さな会社では、トップの性格をベースにして経営戦略を立案しないと、
    計画そのものが途中でなしくずし的にたち消えになってしまうケースが多い
    ということを、前項で述べました。
    これは言い方を換えれば、トップ自身が、「自分の性格が会社の盛衰を左右
    するのだ」ということを強く認識しさえすれば、会社は儲かる方向に一歩前進
    したことを意味しているのです。

    そこで、自分の性格の欠点をカバーすることを考えれば、三歩も五歩も前進
    ということになります。
    人間は万能ではありません。
    長所もあれば、短所もあります。
    長所を伸ばし、短所を補完する。
    これができれば、会社は伸びるのです。

    足りない点を補完するためにも、まず小さな会社のトップは、短所を自ら
    はっきり自覚することです。
    その短所を自分でセーブしても構わないし、他の人に補完してもらっても
    構いません。
    要は、「敵は己にアリ」なのです。

   (2)社員の不満から、経営の失敗まで
    例えば、次のようなケースです。
    <ケース1>
     自分は少人数の社員しか使えないタイプなのに、チョッと売上げが増加
     すると社員を採用し、「うちも○○人の会社になりましてね」とカッコを
     つけるトップ。
     行き着く先は給料遅延のあげくの人件費倒産だ。

    <ケース2>
     自分が酒が飲めない場合は、部下に飲ませるくらいの度量が必要です。
     自分が飲まないからといって、会席などすぐお開きにするトップがいる。
     そんな場合は、部下たちから「ビールの2〜3本出してもよいのに」と、
     わずかなことで、非難されることがある。
     もちろん酒好きのトップの場合はこれと全く逆の非難を浴びたりするから、
     トップは自分の性格をよく知って、酒席の場合は、人を上手に使う必要が
     あります。

    <ケース3>
     社内で問題点が発生した時など、自分で直接言うとイヤがられるから、
     つい部下に言わせるようなトップがいる。
     そういう人に限って、あとでその言い方が悪いといって、その部下のことを
     グチるものです。
     嫌われようと嫌われまいと、自分が最終責任を負うトップであることを
     しっかり自覚して、最初から自分でストレートに本人に言うべきなのです。

    <ケース4>
     自分は本来は、商品苦情に関してはうるさい「売るタイプ」の人間なのに、
     商品をつくる側に回った途端に細かな点が面倒くさくなり、ついには粗悪品
     をつくってしまうケースがあるので要注意です。
     もちろんこれとは逆のケースもあります。
     社長には、「つくるタイプ」と「売るタイプ」の、二つのタイプの人間が
     いるから、自分がどちらのタイプかをつかんでおかなければならない。
     その補完がうまくいっている企業が伸びるのです。

    <ケース5>
     朝、早く出社したほうがよいことはわかっているため、社員にはそのことを
     厳命するが、自分はいつも社員より遅く出社するトップがいます。
     そうしたトップには、人はついてこないことを知るべきです。
     これは、もっとも多い実例だから、どうしても社員より遅くしか出社できない
     状況がある場合には、何らかの対策を講じておかなくてはならない。
     このように、会社の中の不平不満から経営上の失敗まで、トップの性格が
     原因となっているケースがかなり多い。
     だから小さな会社の社長は、自分自身の性格をよく知っておかないとまずい
     のです。

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プロモーション戦略

プロモーション戦略

 ■プロモーションとは
  「自社製品の販売を促進するための企業によるさまざまな取り組みのこと」を
  いいます。
  プロモーション戦略の優劣は売上高に大きな影響を与えるため、企業としては効果の
  高いプロモーションを実施したいところです。

  しかし、実際には、消費者のニーズをはじめとした市場動向が大きく変化している
  のにもかかわらず、自社のプロモーション戦略を見直すことなく、ただ従来通りの
  施策を「ルーティンワーク的」に行っている企業が少なくないようです。
  そうした企業においては、いま一度、現在の市場動向を把握したうえで、自社の
  プロモーション戦略を見直してみることが必要でしょう。 

  一般的に、プロモーション戦略の策定・実行は
   1.市場分析
   2.標的市場とプロモーション戦略の目的の決定
   3.プロモーションミックスの策定
   4.プロモーションミックスの実施
   5.プロモーションの効果測定
  という流れで行われます。

  そして効果測定を行った結果などを基にして、より効果的なプロモーション戦略を
  実施していくことになります。 
  プロモーション戦略の策定・実行に際して企業が行うべきことは多岐にわたります。
  ここでは、それらの中から自社のプロモーション戦略を見直すうえで、必ず押さえて
  おきたい「標的市場とプロモーション戦略の目的の決定」「プロモーションミックス
  の策定」の2点を中心にそれらのポイントについて紹介します。

  そして、その後に、改めてその影響力の大きさが注目されている「口コミ」による
  プロモーションについて紹介します。

 □標的市場とプロモーション戦略の目的の決定 
  プロモーションを実施する対象を決定する「標的市場」の設定に関しては、
  事業ドメイン(企業が事業を展開する領域)を検討したり、新製品開発などに際して
  行う「ターゲット顧客の設定」と同様の考え方で取り組むことができるため、
  プロモーション戦略を見直す際に、それほど大きな問題とはならないでしょう。 
  このステップで注意が必要なのは、「プロモーション戦略の目的の決定」です。

  プロモーションの最終的な目的は、消費者に自社製品を購入してもらい、売り上げを
  拡大させることにあります。
  このため、プロモーション戦略の目的というと、とにかく「売り上げ増加」と
  考えてしまう傾向がみられます。 

  しかし、実際に製品を購入する側の消費者は「製品に対するニーズを感じたら、
  すぐに製品を購入する」といったように、単純に製品の購入を決定しているわけでは
  ありません。
  例えば、自動車などの高額製品や、消費者の関与度(こだわり度)の高い製品に
  ついては、

   ・認知段階:製品に関する情報収集などを通じて「製品について知る段階」
   ・情動(感情)段階:収集した情報などを基に「製品を評価する段階」
   ・行動段階:評価した結果を基に「実際に製品を購入する段階」

  というプロセスを経て製品の購入に至るといわれています。
  そして、これらの各段階によって消費者に対して効果的なプロモーション手法は
  異なります。
  例えば、「値引き」や「クーポン」といったセールスプロモーションは「行動段階」
  においては効果的とされるものの、「認知段階」での効果は薄いといわれています。  

  仮に、自社の新商品に対する情報が不足している段階(認知段階)にある消費者が
  多いにもかかわらず、「値引き」を行っても大きな効果は見込むことができない
  のです。 
  従って、上記の例でいえば

   ・認知段階:製品の名称や特徴などを消費者に知ってもらう
   ・情動段階:「自社製品が消費者のニーズを十分満たす製品である」 
    「他社製品よりも優れている」といった点をアピールし、自社製品に
    対して好意を抱いてもらい、よい製品であると認識してもらう
   ・行動段階:自社製品に対して好意を抱いている消費者の購買行動を
    促す

  というように、異なるプロモーション戦略の目的を設定する必要があるのです。 
  なお、消費者の購買プロセスは、製品の特性によって異なります。
  例えば、関与度(こだわり度)の高い製品は、上記のようなプロセスを経て購入に
  至る場合が多くみられます。
  一方、日用品などの関与度(こだわり度)が低い製品については「取りあえず
  知っている製品を購入し、実際の使用経験から評価を下す」という「認知段階→
  行動段階→情動段階」というプロセスを経ることが一般的です。 
  このため、プロモーション戦略の目的を設定する際には、その製品カテゴリーにおける
  消費者の購買プロセスの特徴や、自社製品に対する消費者の認知度などを勘案した
 うえで検討を進めることがポイントとなります(詳細は後述を参照)。

 □プロモーションミックスの策定Ⅰ
  1.プロモーション手法を確認する


   (1)4つのプロモーション手法 
    プロモーションの手法は
     ・広告
     ・パブリシティー
     ・人的販売
     ・セールスプロモーション

    の4つに大別することができます。
    以下では、これらの概要と、プロモーション戦略を検討する際に知っておきたい
    ポイントを紹介します。

   (2)広告 
    広告とは、広告主が明らかにされているもので、テレビやラジオといった
    電波媒体や、新聞・雑誌やチラシなどの印刷媒体を利用したものをいいます。
    広告は広告主が費用を支払うことによって行われます。

    ●訴求内容に基づく広告の分類 
     広告は、そこに盛りこまれたメッセージなどの訴求内容に応じていくつかの
     パターンに分類することができます。

    <製品広告と制度(企業)広告> 
     製品広告は特定の製品について行われる広告であり、私たちが多く目にする
     ものです。
     一方、制度(企業)広告とは、個別の製品ではなく、企業自身を訴求する
     広告をいいます。
     「ゼロエミッションを実現した○○工場」といった広告を目にすることが
     ありますが、こうした広告は制度広告に該当します。
     制度広告は、自社のイメージ向上などを目的に行われるケースが一般的
     です。

    <情報提供型広告と説得型広告> 
     革新的な製品については、まず最初にその製品が消費者にもたらすメリット
     や製品の使用方法などを消費者に理解してもらう必要があります。
     こうした内容を中心に訴求している広告を情報提供型広告といいます。
     一方、説得型広告とは、私たちが多く目にするタイプの広告で、自社製品
     などの特長などを訴求し、多くの競合する製品の中から自社製品を選択
     してもらうために行うものをいいます。

    <そのほかの広告> 
     そのほかの広告としては、比較広告とリマインダー広告があります。
     比較広告は、競合他社の製品と自社製品を比較したり、自社の旧式の
     製品と新製品を比較するなどして、自社製品あるいは新製品が優れている
     ことを訴求するタイプの広告です。
     また、リマインダー広告とは、既に構築されているブランドや消費者の
     間に浸透している認知度を維持することを目的としたものです。

    ●広告媒体とその特徴 
     広告に使用される媒体はさまざまであり、それぞれに異なった特徴が
     あります。
     利用する媒体を検討する際には、これらの特徴を知っておくことが
     必要です(次ページ表参照)。

     (注)「回覧読者」とは、新聞や雑誌などに関して、自身が費用を
       支払うことなく、それらに掲載されている情報を目にする読者
       のことです。例えば、「友人が購入した雑誌を『回し読み』す
       る読者」などは、回覧読者に該当します。

   (3)パブリシティー 
    パブリシティーとは、広報活動のことをいい、新聞・雑誌の記事やテレビの
    特集コーナーなどを通じて自社の情報をマスメディアに取り上げてもらうように
    働きかける取り組みのことをいいます。 
    第三者による客観的な視点から評価された情報であるパブリシティーは、信頼性
    の高い情報として消費者に認識されます。

    そのため、企業としてはパブリシティーを通じて自社の情報を積極的に発信
    したいところですが、取り上げる情報を決定する権限はあくまでマスメディア側
    にあります。 
    従って、パブリシティーを活用するためには、情報の発信者であるマスメディア
    に注目してもらう必要があります。

    そのために企業が取り組むべきことはマスメディアが注目しそうな情報を積極的
    に発信することとなります。 
    発信する情報の内容としては、新製品情報などの本業に関する情報、ボランティア
    活動などの社会貢献活動、経営者など社内人材に関する情報(執筆した出版物
    など)などがあります。 

    また、時には、展示会や期間限定の大型プロモーションなどのイベントなどを
    行ってマスメディアが注目するような話題づくりに取り組むことも有効です。 
    これらの情報を発信する方法としては、プレスリリースや自社のホームページ
    などを活用するとよいでしょう。

   (4)人的販売 
    人的販売とは、販売員が消費者と直接コミュニケーションを図りながら製品を
    販売する方法をいいます。
    人的販売については、「営業部門」の問題として人事・労務の視点など
    さまざまな形で取り上げられているため、ここでは、プロモーションの視点
    から人的販売が果たすべき役割について簡単に確認します。

    人的販売を行う販売員の役割は「オーダーゲッター」「オーダーテイカー」
    「ミッショナリー」の3つに大別することができます。
    オーダーゲッターは、新規顧客の開拓が役割、オーダーテイカーは、既存取引先
    との関係性の維持が役割、ミッショナリーは、受注の獲得ではなく、消費者
    との良好な関係構築や、消費者が必要としている情報の提供などが主な役割
    となります。 

    営業部門における人事・労務面の施策などをこうした視点から見直すと、
    取り組みが不十分な点や今まで見落としていた点などを見つけることができる
    場合があります。

    例えば、「新規顧客の獲得1件に付き、○円支給」といったように「オーダー
    ゲッター」の役割に対してはさまざまなインセンティブ制度を設けている企業
    は少なくありませんが、そのほかの役割に関しては、こうした施策の必要性
    についてすら検討していない企業は少なくないでしょう。
    このように、人的販売が担う3つの役割は、自社の体制をチェックするための
    視点として覚えておくとよいでしょう。

   (5)セールスプロモーション 
    セールスプロモーションとは、広告、パブリシティー、人的販売以外の手法で、
    消費者や流通業者などの需要を刺激するすべての取り組みのことをいい、その
    手法はさまざまです。
    そのため、セールスプロモーションを上手に活用するための第一歩は、
    その手法を整理し、理解することにあります。 

    セールスプロモーションには、消費者に直接働きかける「消費者プロモーション」
    と製造業者などが小売店などの取引先企業に対して働きかける「企業間プロ
    モーション」に分けることができます。
    また、消費者プロモーションには、製造業者が消費者に対して働きかける手法と、
    小売業者が消費者に対して働きかける手法があります。 
    これらの視点から具体的なセールスプロモーションの分類です。

 □プロモーションミックスの策定Ⅱ
  ◎プロモーション手法を検討する際の基本的な考え方 
   ここまで紹介したように、プロモーションの手法は非常に多岐にわたり、
   個々の手法の効果も異なります。
   一般的に企業がプロモーションを行う場合は、これらの手法の中から自社の目的に
   合ったプロモーション手法を選択し、複数の手法を組み合わせて(プロモーション
   ミックス)取り組みを進めていくことになります。 
   自社の目的にに合ったプロモーション手法を検討する際には、「製品のタイプ」
   「プロモーション戦略の基本方針」「消費者の購買プロセス」「製品ライフサイクル
   の段階」の4つの視点から考えることが基本となります。
   以下では、これらの4つの視点を基に、プロモーション手法を検討する際の
   基本的な考え方を紹介します。

   ●製品のタイプ 
    製品はその販売対象者によって生産財と消費財に分けることができます。
    この製品のタイプによって効果的なプロモーションは異なります。
    生産財の場合は「人的販売」「セールスプロモーション」「広告」「パブリシティー」
    の順に効果が高いといわれています。
    一方、消費財の場合は「広告」「セールスプロモーション」「人的販売」
    「パブリシティー」の順に効果が高いといわれています。

   ●プロモーション戦略の基本方針(「プッシュ戦略」と「プル戦略」) 
    プロモーション戦略の基本方針は、プッシュ戦略とプル戦略に大別できます。
    プッシュ戦略とは、製造業者が小売業者などに対して、自社製品を積極的に
    販売してもらうようにする戦略をいいます。
    プル戦略とは、消費者に自社製品の魅力を直接訴求することで、購買意欲を
    喚起して、「自社製品の指名買い」を促す戦略をいいます。
    このプロモーション戦略の基本方針によって、重視すべきプロモーションは
    異なります。
    プッシュ戦略では、人的販売や企業間プロモーションが重要となります。
    一方、プル戦略の場合は、広告や消費者プロモーションが重要となります。

   ●消費者の購買プロセス 
    前述した通り、消費者は、「認知段階」「情動(感情)段階」「行動段階」
    などのプロセスを経て製品を購入しています。
    これらの各段階に応じて、効果の高いプロモーション手法は異なります。 
    「認知段階」においては、当初は多くの情報を提供することのできる広告や、
    「第三者の信頼できる情報」としてパブリシティーの効果が高いといわれて
    います。
    そして、消費者の商品に対する認知が深まってくると、広告やパブリシティー
    よりも詳細な情報を求める傾向があることから、対話を通じて自身が必要とする
    さまざまな情報を得ることができる人的販売の効果が高くなります。 
    また、製品の評価を行う「情動(感情)段階」においても、人的販売の効果が
    高くなります。 
    実際に製品を購入する段階である「行動段階」においては、値引きなど実際に
    製品の購入を促す効果の高いセールスプロモーションが有効になります。
    また、購入するか否か迷っている消費者に「最後の一押し」を行う存在として
    人的販売も有効といわれています。

   ●製品ライフサイクルの段階 
    製品ライフサイクル(PLC:Product Life Cycle。以下「PLC」)とは、
    生物などと同様に、製品には新規に開発されて市場に登場する「導入期」から
    「成長期」「成熟期」を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていくという
    ライフサイクルがあるという考え方です。
    PLCの各段階とプロモーションの関係をみると以下の通りとなります。 
    製品に対する十分な知識がない消費者の多い導入期においては、製品のもたらす
    メリットや製品の使用方法などさまざな情報を伝えたり、製品自体の認知度を
    向上させることのできる広告やパブリシティーの効果が高くなります。
    また、製品を使用したことがない消費者に実際に製品を使用してもらい、
    その製品のメリットを体験してもらうためにサンプル配布などのセールス
    プロモーションの効果も高くなります。 
    企業間競争が比較的穏やかな成長期においては、製品の認知度が高まっている
    こともあり、プロモーションの規模を縮小することができます。 
    企業間競争の激しさが増す成熟期では、消費者の購買行動を促す効果の高い
    セールスプロモーションの効果が高くなります。
    また、多くの競合製品の中から自社製品を購入してもらう必要があることから、
    消費者に自社製品を強く印象付けたり、他社製品にはないメリットを知って
    もらうための広告も重要となります。 
    市場が縮小している衰退期では、消費者からみると機能面など製品自体の持つ
    魅力(メリット)などは非常に小さくなっています。
    このため、値引きなどのセールスプロモーションの効果が大きくなります。
    逆に、そのほかのプロモーションでは、消費者の購入意欲を刺激することは
    困難なため、セールスプロモーション以外のプロモーションは縮小する必要が
    あります。

 □「口コミ」の威力 
  企業はさまざまな手法を活用しながらプロモーションを実施しています。
  こうした状況を消費者の視点からみると「はんらんする情報の中で、信頼できる
  情報がどれか分からない」といった問題をしばしば引き起こします。 
  こうした中、注目を集めているのは「口コミ」です。
  知り合いや該当製品に精通しているほかの消費者が発信する情報である口コミは、
  「信頼性の高い情報」として消費者の購買行動に影響を及ぼすことは以前から
  知られてきました。
  現在、改めて口コミが注目される背景には、インターネットの普及があります。
  従来、口コミは、フェイストゥフェイスの限られた関係の中で広がることが主流
  であり、市場に与える影響も限定的なものでした。
  しかし、インターネットの普及によって口コミはバーチャルな世界を経由して
  広範囲に広がり、その影響が市場全体に及ぶようになったのです。
  また、誰もが手軽に情報を発信できるブログの普及は、こうした傾向に拍車を
  かけました。 
  例えば、口コミがヒットの一因となった当時の製品に、東ハトが2003年11月に
  発売したスナック菓子「暴君ハバネロ」があります。
  世界一辛いといわれる唐辛子ハバネロを使用したこのスナック菓子は、企画段階
  より消費者間の口コミ効果を狙った製品づくりが行われました。
  ハバネロをモチーフにした「暴君ハバネロ」というキャラクターをつくるとともに、
  自社のホームページで物語風の動画を配信しました。
  また、駅のポスターや街の大型看板などを使った大規模なキャンペーンを行うなど
  して、消費者の注目を集める話題づくりにも取り組みました。
  こうした結果、暴君ハバネロを食べた感想、キャンペーンや物語などに関する意見
  などが記載されたホームページやブログが多数出現するなどし、バーチャル世界
  での口コミが活発に行われました。
  こうした口コミ効果は暴君ハバネロの大ヒットを支える要因となったといわれて
  います。 
  こうした口コミの威力には多くの企業が注目し、実際にプロモーション戦略の一環
  などとして取り組んでいるケースもみられます。
  現在のところ、企業による取り組みは
   ・口コミとして取り上げられるような話題を積極的に提供する
   ・「ホームページ」「ブログ」「SNS」などを活用して消費者が自由な意見を
    述べ、口コミが流通する“場”を設ける
  といった「口コミの活性化」を目指したものが主流です。 
  しかし、企業がプロモーションの一環として積極的に口コミを活用する試みは歴史が
  浅く、まだ試行錯誤の段階にあるというのが現状であり、多くの問題も抱えて
  います。
  例えば、活性化された口コミの中で、自社にとって都合の悪い情報が流通するという
  リスクにどのように対処するのかといった問題があります。
  また、口コミの威力の源泉である「信頼性の高い第三者の意見」という点を喪失
  させることなく、当事者である企業はどこまでかかわることができるのかという
  根源的な問題もあります。 
  しかし、消費者の購買行動に大きな影響を与える口コミの企業による活用は、
  今後も活発になっていくことが予想されることから、企業としてはその動向に注目
  しておく必要があるでしょう。

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マーケテイングと価格戦略

マーケテイングと価格戦略

 ■マーケテイングと価格戦略 
  製品やサービスの消費が成熟し、かつ全体の市場成長が伸び悩むなかで、企業にとって
  マーケテイング活動がますます重要になっています。
  売上拡大のためだけでなく、適正な利潤を獲得していくためにも、十分に練り上げ
  られたマーケテイング活動が必要になっているといえます。 
  マーケテイング活動とは、 
   ・日常の生活において、何かが「ほしい」と感じている顧客に対して、 
   ・ニーズに応える商品やサービスを、 
   ・効果的に伝え、提供していく
  活動全体を指しています。
  具体的には、
   ・「何を」(Product:製品) 
   ・「いくらで」(Price:価格) 
   ・「どこで」(Place:販売チャネル) 
   ・「どのように」(Promotion:販売促進)
  というように消費者に提供する4つの戦略(製品戦略、価格戦略、販売チャネル戦略、
  販売促進戦略)からなります。
  それぞれの頭文字をとって、マーケテイング戦略の4Pと呼ばれているものです。 
  ここでは、マーケテイング戦略の4Pのうち、価格戦略をテーマに、中小企業のとるべき
  戦略を紹介します。

 □価格の設定方法
  1.コスト積み上げ型の価格設定
   製品やサービスの価格はどのように設定されるべきでしょうか。
   一般的な方法としては、コスト積み上げ型や需要志向型などの設定方法が考え
   られます。
   コスト積み上げ型の価格設定とは、製品やサービスのコストに利益を加えて
   価格を設定する方法です。 

   たとえば、製品の製造にかかった費用、商品の仕入にかかった費用、あるいは
   サービスの提供にかかった費用に、目標とする利益を上乗せして価格を決定する
   方法です。
   もっとも単純でわかりやすく、また、こうして設定された価格は、販売数量が
   伸びれば安定した利益が見込める価格ということになります。

   しかし、コスト積み上げ型の価格は、競合企業に対して価格競争力があるとは
   限りません。
   また、顧客が特定の製品やサービスを購入するのは、それによって得られる満足が、
   その価格に見合うと判断した場合です。
   したがって、コスト積み上げ型の価格で販売するには、少なくとも、顧客に
   認められる製品やサービスの機能・品質の差別化が求められます。

   たとえば、次の事例では、製品の特性上、製造に必要なユニットコストが高く
   高価格にならざるを得ないものの、顧客がその製品に十分満足しているため、
   その価格が受け入れられています。

   【事例1】受注生産による個別対応、サービスで価格に見合う顧客満足
    を実現寿司店や焼き鳥店、ケーキ店などの冷蔵ショーケースを製造す
    るT社は、大手厨房機器メーカーよりも高い価格設定で十分に対抗して
    いる。
    原則として値引きにも応じていない。
    ネタケースは店舗の設計に合わせて寸法やガラスの角度を変えなけれ
    ばならない。
    同社は9割以上が受注生産で、注文後5日以内の納入を日掛こしている。
    職人技に支えられた手作りのエ程に強みがあり、品質面やアフターサ
    ービスの充実も顆客に評価されている。

   しかし実際には、すべての製品やサービスが(価格が度外視されるような)
   明確な差別化を図れるわけではなく、むしろ価格が、顧客の購入決定を左右する
   重要な要因のひとつである場合が増えているといえるでしょう。
   顧客に受け入れられない価格は「希望価格」に過ぎません。
   そうなれば、安定した利益を目指した価格設定が、かえって実現利益を少なく
   することになりかねないでしょう。

   当たり前のことですが、顧客ニーズや、競合企業の価格を考慮に入れなければ、
   本当に売れる価格にはならないのです。 
   また、コスト積み上げ方式の価格設定では、価格引き下げのためだけでなく、
   従業員のモラールの維持(そのための給与水準の向上)や長期的利潤の拡大
   のためにも重要であるコストダウンの意識が働きにくいという欠点もあります。

  2.需要志向型の価格設定 
   一方、
    需要志向型の価格設定の方法とは、
    「顧客に受け入れてもらえる価格」を想定して価格を設定する方法です。
    たとえば消費財の価格設定の例として、
    PSM(PriceSensitivity Measurement)分析に基づいた方法が挙げられます。
    PSM分析とは、消費者への質問結果に基づいて適正な価格帯を発見する方法です。 
    具体的には、その製品やサービスの価格について消費者に次の4つの質問を
    行ないます。
     ・どの程度の価格から「高い」と感じ始めますか?
     ・どの程度の価格から「安い」と感じ始めますか?
     ・どの程度の価格から「高すぎて買えない」と感じ始めますか?
     ・どの程度の価格から「安すぎて品質に不安」を感じ始めますか? 
    以上の質問結果について、横軸に価格、縦軸に回答数(度数)をとってグラフを
    作成することで、消費者の視点に立ったいくつかの価格水準を表わすことが
    できます。

 □価格戦略の意義と方向性
  1.価格戦略の意義
   価格は売上や利益の大小に直接影響する大きな要素です。
   それだけに、
    単純なコストの積み上げや需要志向型の理想価格の検討
    だけではなく、戦略的な視点で「売れる価格」を設定し、
    その価格で一定の利益が得られるようにコストをコント
    ロールしていく
   という戦略が求められます。 
   「売れる価格」とは、多数の外的・内的要因から影響を受けます。
   外的要因としては、需要や競合の状況、顧客の事情など、内的要因としては
   コストのほか、価格戦略以外のマーケティングミックス(4P)との整合性(たとえば、
   製品コンセプトや利益計画との整合性をとる必要がある)などが挙げられます。
   また、「売れる価格」は、製品やサービスのライフサイクルに応じて変化します。
   こうした要因を検討して、適切な価格帯や価格変更の時期、割引額などについて
   基本路線を設定するのです。
   そして、一時的な価格の設定・変更(競合対策や顧客吸引を狙った一時的な
   値下げなど)は、この価格戦略に基づいて実践するという基本姿勢が重要です。

  2.価格戦略の方向性
   具体的な価格戦略の方向性としては、製品やサービスの差別化に基づく非価格競争と、
   低価格設定による価格競争に大別できるでしょう。
   以下では、それぞれの方向性について事例を挙げて述べていきます。

   (1)非価格競争 
    中小企業は、一般に製造や仕入で規模の利益を得ることが難しいため、
    価格の優位性を追求するよりも、製品やサービスの差別化を実現することで
    価格競争を避けることが、より求められます。 
    前出の事例1のように、

     製品やサービスの差別化により、比較的高価格で十分な
     競争力を実現している中小企業も少なくありません。
     また、従来にない新しい製品やサービスであれば、
     価格戦略として、いわゆる上澄み吸収価格戦略
     (Skimming Price Policy)をとることも可能です。

    上澄み吸収価格戦略とは、新製品の投入時に先発利潤を狙った高価格を設定し、
    短期間に大きな利益をあげて開発コストを迅速に回収することを目的とする
    戦略です。

   【事例2】従来にない新製品で、高価格での販売を実現
    S社は、皮膚にレンズ部を当てて拡大して見ることができるビデオ顕
    微鏡を開発、1988年に発売した。
    それまでにない商品であり、他社への販売も含めて数十台は売れると
    考え、120万円程度の高価格を設定した。
    美容分野だけでなく、エ業の検査用でも重宝され、販売代理店は180
    万円の価格で瞬く間に数百台を売り切った。

    また、高価格設定は、それ自体がプロモーション手段にもなりえます。
    たとえば、高価格によって顧客に品質や性能が優れているであろうと判断される、
    高価格ゆえに製品差別化が強調されるといった場合があり、中小企業でも
    こうした事例を見ることができます。

   【事例3】思い切った高価格設定で品質や価値を訴求こいのぼりを製造
    するM社は、「高級品」という位置づけの思い切った高価格を設定し
    て成功した。
    同社は全国の専門店や百貨店を頻繁に訪問して情報を収集している 
    が、そのなかで、「こいのぼりは高齢の方がお孫さんに買うことが多
    く、不況下でも高級品などがかえってよく売れる」という情報があっ
    た。
    この情報から、絹の素材や桐箱入りなどの豪華さで思い切った差別化
    を行ない、高級品という位置づけで価格を競合品の約3倍に設定した
    製品を発売したところ、狙いが当たり好調な売上をあげた。

   (2)価格競争 
    製品やサービスの付加価値によっては、価格競争を打ち出さなければ競合に
    勝てず、顧客に受け入れられない場合も少なくないでしょう。
    消費者の低価格志向、あるいは廉価な輸入品の増加などの外的要因に迫られ、
    恒常的な低価格が必要な場合です。 
    また、価格戦略は製品やサービスのライフサイクルが進むにつれて変化します。
    前出の事例2のS社は、当初は何もせずに売れたものの、後発企業の参入に対して
    価格戦略の変更や明確なマーケティング戦略がなかったために、工業分野での
    シェアを奪われることになりました。 
    価格戦略として、

     価格の引き下げで需要を刺激するために価格競争を重視する
     戦略や、新しい製品やサービスの導入では市場浸透価格政策 
     (Penetration Price Policy)をとることも考えられます。 

    市場浸透価格政策とは、価格を低めに抑え、短期間で市場シェアを獲得する
    ことを目的とする戦略で、典型的な例としては「ユニクロ」の価格設定などが
    挙げられます。 
    価格競争を重視する場合の価格設定の方法として、とくに競合商品の価格と
    比較して商品の価格を設定する方法が挙げられます。
    一般的な価格設定の手法であり、たとえば大手家電量販店の「安値保証」も
    その一例です。

     価格競争を重視する場合、競争上、設定した価格で安定した
     利益の維持ができるよう、原価と軽費の抜本的なコストダウン
     をいかに実現していくかがポイントになります。

   コスト引き下げの対策としては、一般的に次のようなものが挙げられます。
   (※)とくに、製造コストに占める原材料の割合が大きい場合など、設
      備の増強や生産管理の工夫により、生産性を大幅に向上できる可
      能性もある

   上記のようなコストの引き下げ対策により、戦略的な低価格の設定を実現している
   事例をご紹介しましょう。

   【事例4】設計や製造工程の見直しにより低コスト・低価格を実現V社は
    1966年に天体望遠鏡市場に新規参入した。
    当時、消費者の最大の不満は価格の高さであった。
    コスト高であった架台をダイカスト成型で打ち抜く手法を導入、製造
    コストを大幅に削減し、価格を引き下げて販売台数を一気に伸ばし
    た。
    また、同期性能の高いパルスモーターを使った架台駆動(自動追尾)
    装置を開発するとともに、特定機種に標準装備することで生産数量を
    増やし、大幅に製造コストを引き下げた。
    他社製品で4万〜5万円であった同装置を1万数千円程度で貫えるまで
    に価格を引き下げ、最新機能の製品で低価格というブランドイメージ
    で業界トップの座を確立した。

   【事例5】販売チャネルの見直しにより低コスト・低価格を実現K社はパ
    ーティー用クラッカーのメーカーだが、1970年代後半、台湾製品の価
    格攻勢で撤退する同業者が相次いだ。
    韓国や台湾企業との提携の話もあったが、安易に技術を移転すれば、
    模倣されて輸入品との競争がさらに激しくなると考え、価格引き下げ
    の方法を根本から見直すことにした。
    そして、販路改革に乗り出し、全国に独自の販売網を設けて玩具店へ
    の直接販売を始めた。
    玩具業界では当時、平均3段階の卸売業を通しており、画期的な発想
    だった。
    初期投資負担は大きかったが、台湾製品に対抗できる価格まで引き下
    げることに成功した。

   【事例6】自主企画によるPB(Private Brand)の開発により低コス
    ト・低価格を実現G社は、熱帯魚や鳥の餌を専門に扱う専業の卸売業
    だったが、水槽なども取り扱う総合ペット用品卸への脱皮を図るとと
    もに、1990年に自社製品の製造に乗り出した。
    みずから製造することでコストを大幅に圧縮し、ペットショップやホ
    ームセンターで陳列用に使う大型の水槽は、1000万円程度する大手メ
    ーカー品の3割程度の価格で卸している。
    ポンプやフィルターなどの付属品もほぼ半分の卸値を実現し、売上を
    伸ばすことに成功した。

   繰り返しになりますが、中小企業が価格競争を展開するのは一般的に不利であり、
   とくに設備投資の規模にコストが大きく影響されるメーカーの場合は不利
   といえます。
   しかし、

    中小企業でも、隙間市場でシェアを拡大して規模の利益を実現し、
    コストリーダーシップ戦略に基づく価格の引き下げで参入障壁を
    高め、シェアの維持・拡大に成功している事例も見られます。

   【事例7】競合他社に先駆けた価格の引き下げで参入障壁を高めシェア
    を拡大F社は、1970年代の早い時期に不織布の縫製工程を機械化し、
    手術用の使い捨て不織布製マスクで国内トップシェアを確保している。
    大手メーカーとの競合を避け、おもに生産工程の一部に手作業が残る
    ような市場に参入するとともに、開拓した市場を奪われないように率
    先して価格を引き下げている。
    まず、参入可能性のある競合他社がどの程度の品質、価格なら参入で
    きるかを考え、参入不可能な(それ以下では品質を下げざるを得ない)
    水準まで価格を引き下げることでシェアを高めている。

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マーケテイングと製品戦略

マーケテイングと製品戦略

 ■マーケテイングと製品戦略
  製品やサービスの消費が成熟し、かつ全体の市場成長が伸び悩むなかで、企業にとって
  マーケティング活動がますます重要になっています。
  売上拡大のためだけでなく、適正な利潤を獲得していくためにも、十分に練り上げ
  られたマーケティング活動が必要になっているといえます。

  マーケティング活動とは、
   ・日常の生活において、何かが「ほしい」と感じている顧客に対して 
   ・ニーズに応える商品やサービスを 
   ・効果的に伝え、提供していく
  活動全体を指しています。

  具体的には、
   ・「何を」(Product:製品)
   ・「いくらで」(Price:価格) 
   ・「どこで」(Place:販売チャネル) 
   ・「どのように」(Promotion:販売促進)
  というように消費者に提供する4つの戦略(製品戦略、価格戦略、販売チャネル戦略、
  販売促進戦略)からなります。
  それぞれの頭文字をとって、マーケテイング戦略の4Pと呼ばれているものです。 
  ここでは、マーケティング戦略の4Pのうち、製品戦略をテーマに、中小企業のとるべき
  戦略をご紹介します。

  次項以降、製品戦略を考える視点として、
   ・製品の差別化
   ・市場細分化による製品対応
  について述べていきます。

 □製品の差別化
  1.製品を差別化する重要性
   製品の差別化とは、
    市場での優位性を確立するために、製品やサービスの機能を
    特徴づけ、買い手に強調する
   ことを指します。
   「同種製品に対する需要は同質である」ということを前提に、水平的な市場シェア
   の獲得を目的にする戦略です。 
   中小企業は、規模の経済による低価格を競争手段とすることが比較的困難であり、
   また、単純な価格競争はさらなる価格競争へと悪循環を招きがちです。
   差別化により製品の競争優位を築くことができれば、シェアを維持でき、高価格を
   設定できるため、利益を高水準に維持することも期待されます。
    ローカル市場やニッチ市場で利益を確保しなければならない
    中小企業にとって、とくに重要な戦略
   といえるでしょう。 
   また、ターゲット市場で評価を得られる製品の差別化を、販売促進戦略とともに
   継続して実践することができれば、ブランドカの確立を通じて競争力をさらに
   強化することにつながります。
   中小企業は比較的、販売促進費用が捻出しにくいという側面があり、その点でも、
   顧客志向に基づいた製品の差別化を徹底し、口コミによる販売促進効果を狙うことが
   重要といえます。

  2.製品差別化のポイント
   差別化の対象となるのは製品やサービスの機能であり、具体的には、
    ・機能、素材、品質、デザインなどの中心的な機能
    ・企業イメージ、ブランド、ネーミング、ラベル、広告などの
     イメージ面の機能
    ・アフターサービス、借用供与などのサービス面の機能が
     差別化の対象
   になり得ます。 
   新製品の成長期には性能や機能で差別化を行なうケースが多くみられ、その後、
   イメージやサービス面での差別化を図るようになるのが一般的です。
   しかし、製品が高度に発達した分野では、性能や機能での差別化が困難であるため、
   イメージやサービス面での差別化が多くなっており、技術開発力が相対的に弱い
   中小企業では、とくにそうした差別化が重要になるといえるでしょう。
   また、いったん差別化に成功しても、一時的、流動的なものであり、たえず市場の
   把握に努め、差別化の方策を追求し続けることが必要になるのです。
   製品の市場投入当初から製品の衰退に至るまで、製品を差別化すべき内容は変化する
   ものです。

  3.中小企業の製品差別化の事例
   (1)発想の転換で全国ブランドの隙間商品を開発
    洋菓子・パン製造小売業者のS社は、全国展開できる新商品の開発に取り組み、
    隙間商品であるラスクを全国ブランドに育てた。
    新商品の開発にあたっては、「社内にある日本一レベルの商品」「既存市場
    にない商品」を選定基準にした。 
    毎日半数が売れ残るフランスパンの返品処理で製造していたラスクがつねに
    売り切れるほどであったため、ラスクを選定基準にかなう商品とした。
    ありふれた商品だが、発想を転換し、それまでなかったギフト用の商品に
    目をつけたのである。 
    難点はフランスパンの量産であったが、職人が蓄積してきた技術を文章化
    数値化してノウハウを基準化した。
    数年の経験で誰でも製造できるシステムを作り上げたうえで、特注の機械設備
    を導入して大量生産にこぎつけ、通信販売で全国にも販売したところ、年間
    売上10億円以上の商品に育った。

   (2)業務用で培った技術力を背景に自社ブランドを確立 
    ウェットスーツの製造・販売を行なうM社は、1970年代の初めに、地元の
    漁業関係者向けにウェットスーツの自社開発を始めた。
    漁業関係者の要望を聞き、エ夫を重ねることで蓄積した技術力を背景に、
    1980年代には、自社ブランドによるレジャー分野への進出に成功している。 
    レジャー分野への進出にあたっては、当時、参入が少なかったウィンド
    サーフィン用のスーツで足掛かりをつくった。
    その成功で築いたブランドカを活かしてダイビング用スーツに進出、やはり
    デザイン性に富んだ商品を投入して全国展開を果たした。
    現在ではジェットスキーやサーフィンなどのスーツも手掛けている。
    さらに、海上保安庁や自衛隊、消防・警察のほか、潜水工事業者などで使用
    される業務用のスーツの開発にも力を入れており、自社ブランドの市場を
    開拓している。

   (3)きめ細かい対応とアフターサービスで競争力を維持
    寿司店や焼き鳥店、ケーキ店などに置かれる冷蔵ショーケースを製造・販売
    するK社は、設計のきめ細かな対応とアフターサービスの充実で、大手厨房
    機器メーカーより高価格でありながら十分な競争力を維持している。 
    冷蔵ショーケースの製造は、1970年代後半に、それまでなかったコンプレッサー
    一体型の寿司ネタケースを開発したことに始まる。
    厨房機器の見本市に出展したところ、全国の寿司店からの注文を相次いで
    獲得した。
    大手メーカーが類似商品を発売してきたが、顧客からのさまざまな注文に
    応えることができずK社に勝てなかった。 
    ネタケースは、店舗の設計に合わせて寸法やガラスの角度などを変えなければ
    ならず、同じ商品はほとんどない。
    K社は9割以上が受注生産であり、受注後5日以内に納入することを目標に
    している。
    全国に担当者を配置し、アフターサービスも充実させている。

 □市場細分化による製品対応
  1.市場を細分化することの重要性
   市場細分化とは、特定の指標に基づいて顧客層(市場)を部分市場に分割する
   ことです。
   市場細分化戦略とは、細分化した部分市場ごとに、ニーズに合った製品やサービス
   を投入する戦略
   であり、「同種製品に対する需要は異質である」という異質市場を前提に、特定の
   ターゲット市場への集中、あるいは複数のターゲット市場での市場シェアの獲得を
   目的とするものです。 

   市場を細分化する指標としては、
    ・消貴著の年齢、職業などの人口統計学的基準
    ・ライフスタイルや趣味などの社会心理学的基準
    ・消費者や企業の購入機会や動機、追求利点などの行動科学的基準
    ・地域、都市などの地理的基準
   が一般的です。 
   消費が成熟化するにつれ、消費者のニーズやライフスタイル、価格観までが
   ますます多様化・個性化しています。
   こうした市場環境では、顧客ニーズの多様化・個性化にきめ細かく対応していく
   市場細分化戦略の重要性が増しているといえるでしょう。

  2.市場細分化のポイントと成功事例 
   市場を細分化したうえで、どの部分市場にターゲッティングするかを考える
   ことになりますが、それにはいくつかの視点があります。
   そして、どの部分市場をターゲットにする(ターゲッティングする)かによって、
   市場細分化戦略はいくつかに類型化されています。

   市場細分化戦略は、コスト高を招き企業の利益を圧迫する可能性もあるため、
   まず収益性を考慮したうえで戦略を検討することが重要になります。
   大企業の場合、総合対応型の戦略をとり、各部分市場に対応するという可能性も
   ありますが、
    経営費源が相対的に乏しい中小企業では、ローカルやニッチの
    単一の部分市場に集中してシェアの拡大を図る戦略が適している
   といわれています。
   大企業と競争することは容易ではありませんが、
    大企業が手薄な特定の部分市場をターゲットに設定し、経営資源
    を集中して展開することで、部分市場でシェアを獲得する可能性
    が大きくなる
   と期待されます。
   実際に、中小企業が大企業のシェアを凌駕している成功事例も数多く存在して
   います。 
   また、市場細分化戦略を追求すると、多品目化が進み、高価格政策の必要性が
   高まると考えられます。
 その点で、製品の差別化との連動により力を入れるべきといえます。

  3.小企業の細分化の例
  (1)地域密着型のIT化支援ビジネスに特化
    パソコン、サーバーの製造販売を行なうベンチャー企業P社は、ベンチャー
    ならではのきめ細かなサービスと、ニッチ市場で独占商品をもつことで、
    長期的な視点に立った安定的な成長を目指している。 
    P社の社長は、パソコン販売の先駆として1970年代に起業して成功を収めた。
    しかし、価格競争から経営不振に陥り、1980年代半ばに大手電機メーカーの
    傘下に入った。
    P社の設立による再出発にあたり、大手と競合しないことを重視し、当時まだ
    主流ではなかったAT互換機とサーバーに狙いを絞って製造を開始した。
    販売も通信販売中心とし、顧客の望むスペックに基づいて生産する方式を
    採用した。
    当時この方法は市場の中心となりつつあったため、現在では地元を中心に地域
    密着型のビジネスを展開している。
    中小企業、農業、水産業を対象に、IT(情報技術)導入の支援に力を入れている。

  (2)寒天素材の製造に経営費源を集中
    食品向けの業務用寒天を主力とするⅠ社は、寒天を通じて、モノを固める
    という技術にこだわり、需要の拡大に成功している。 
    粉末の寒天、固さを自由に調整できる寒天、固まらない寒天など、次々に
    業務用寒天の新製品を開発し、従来、寒天が使われていなかった製品の需要
    を開拓した。
    たとえば、同社の寒天は、従来は片栗粉が使われていたみたらし団子のたれ、
    ドリンクゼリー、さらに、寒天の保水性を利用したファンデーションなどに
    利用されている。
    寒天フィルター、DNA鑑定で用いるアガロースという特殊寒天なども手掛ける。
    一方、同社にはゼリーなどの家庭向け製品もあるが、あくまで寒天需要を
    増やすため、新製品の開発につなげるためと位置づけている。
    過去に地元でヒット商品も生まれたが、経営にはバランスが肝要という考え
    からあえて拡大を図らず、寒天素材の開発に経営資源を集中している。

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マーケテイングと販売チャネル戦略

マーケテイングと販売チャネル戦略

 ■マーケテイングと販売チャネル戦略
  製品やサービスの消費が成熟し、かつ全体の市場成長が伸び悩むなかで、企業にとって
  マーケテイング活動がますます重要になっています。
  売上拡大のためだけでなく、適正な利潤を獲得していくためにも、十分に練り上げ
  られたマーケテイング活動が必要になっているといえるのです。 

  マーケテイング活動とは、 
   ・日常の生活において、何かが「ほしい」と感じている顧客に対して 
   ・ニーズに応える商品やサービスを 
   ・効果的に伝え、提供していく
  活動全体を指しています。

  具体的には、
   ・「何を」(Product:製品) 
   ・「いくらで」(Price:価格) 
   ・「どこで」(Place:販売チャネル) 
   ・「どのように」(Promotion:販売促進)
  というように消費者に提供する4つの戦略(製品戦略、価格戦略、販売チャネル戦略、
  販売促進戦略)からなります。

  それぞれの頭文字をとって、マーケテイング戦略の4Pと呼ばれているものです。 
  ここでは、マーケテイング戦略の4Pのうち、販売チャネル戦略をテーマに、
  中小企業のとるべき戦略について解説します。

 □販売チャネルを見直す 
  マーケテイングの4Pでいう「Place」とは、直訳すれば「場所」ということに
  なりますが、マーケテイングにおいては、「どこで売るか」「どのように自社の
  販売チャネルを構築するのか」を意味しています。 
  販売チャネルとは、モノやカネが提供する側から消費者の間へと流れる経路です
  (物的な流通を指す「物流」に対して、「商的流通」と呼ばれる)。

  たとえば、一般の消費者向けの消費財の販売チャネルを考えてみましょう。
  一般的にこの販売チャネルは、メーカーのほか、卸売業および小売業によって構成
  され、類型化することができます。
  一般消費者向けの消費財の流通では、メーカーから卸売業、小売業を通じて消費者に
  販売されるチャネルが一般的です。

  なかでも、低単価な最寄品であれば、流通コストを抑えつつも可能なかぎり取り扱い
  小売店を多くする必要があるため、複数の卸売業を介した販売チャネルが一般的に
  見受けられます。
  しかし、外部環境の変化に伴い、こうした一般的な販売チャネルヘの依存が競争力を
  殺ぐケースも多く見られるようになってきています。 

  たとえば、今では総合スーパーなどの大手小売業が台頭し、価格や品揃えの競争力
  を高めるため、その販売力を背景にメーカーと直接取引を行なうケースも多数
  見受けられます。
  メーカーとしては、こうした小売業界の勢力の変化に対応した販売チャネルの見直し
  を行なわなければ、競合に対する競争力を失うことになります。

  また、通信販売、とくにインターネット通販を利用する消費者が急速に増えたこと
  なども、メーカーや流通業者に販売チャネルの見直しを迫る外部環境の変化の一例
  として挙げられます。
  競争力の維持・強化を図るためには、外部環境の変化に応じて既存の販売チャネルを
  主力、準主力などに色分けし、今後の対応を策定するとともに、新規チャネルの開拓
  などに取り組んでいくことが求められます。

  【事例1】
   パーティー用のクラッカーを生産するK社は、小売店への直販体制を築
   くことで安価な輸入品に負けない価格競争力を実現している。
   同製品の国内メーカーはかつて、台湾製クラケカーの低価格攻勢に、よって
   深刻な危機に見舞われた。
   同社は、価格競争力を強化することを主目的に販売チャネルの見直しに
   取り組み、全国に独自の販売網を敷き小売店への直販を始めた。
   玩具業界では当時、複数段階の卸売業を通すのが一般的で、同社の取り
   組みは画期的なことであった。
   初期投資の負担は大きかったが、輸入品に対抗できる小売価格を実現した。
   また、国内需要の伸び悩みを見越して輸出にも乗り出し、欧米の老舗百貨店
   への納入に成功している。

  【事例2】
   T社は、もともと商社の依頼で輸出向けのスリッパを生産していた。 
   しかし、円高による採算割れが進んだことから、大手旅行会社傘下の旅行用
   品専門店に販売チャネルを転換、さらに大手通販会社のOEM(相手先ブランド
   による生産)で室内シューズの生産も開始した。
   しかし、通販会社と商品の意見が合わず受注が減ったことを契機に高齢者向け
   のケアシューズを開発、自社ブランドの生産に取り組んだ。
   同時に、この製品の販売では独自の販売チャネルを確立する方針を打ち
   出した。
   老人ホームや薬局・薬店など高齢者の身近にある販売チャネルに目をつけ、
   テレマーケティングを活用して千数百カ所の販売先を開拓することに成功
   している。 

   また、販売チャネルは、その開放度合いによって、開放型か選択型かという
   類型化ができます。
   開放型の販売チャネルとは、流通業者を特定せず、幅広い流通業者を通じて
   販売していくものであり、食料品や日用雑貨などに典型的に見られる販売
   チャネルです。
   大量販売には適していますが、製品の価格やイメージを維持することは難しく
   なります。

   一方、選択型の販売チャネルとは、自社に対して協力的な流通業者を特定して
   販売チャネルを構築するものです。 
   たとえば、自動車やブランド製品、高級化粧品などの買回品や専門品の流通に
   典型的に見られるもので、急速・大量に販売することは難しくなりますが、
   製品の価格やイメージ、販売にあたっての顧客サービスの水準の維持には適して
   います。

   中小企業の場合、開放型の販売チャネルで広くマスを対象とするよりも、一般的に
   選択型の販売チャネルが適しているといえ、重点的な販売チャネルをいかに構築
   するかがより重要になると考えられます。

  【事例3】
   補聴器を生産するR社は、長年にわたり販売店教育に力を入れてきたことで
   競争力を維持し、同業界で高いシェアを築いている。
   補聴器は個々の利用者ごとに適切な調整が欠かせないため、販売店の教育が
   とくに重要になる。
   今では、デジタル補聴番の登場などの技野進歩で、販売店に求められる知識は
   ますます深くなっている。

   同社では、全国に200店以上ある販売店を対象に、新技術を開発するごとに
   講習会を実施するなどその教育に力を入れてきた。
   こうした活動は実質的に同社の費用負担である。
   今後も販売店教育にカを入れ、さらに販売網を拡大していく方針である。

 □販売チャネルを戦略的に考える 
  販売チャネルを構成するそれぞれのメンバー(メーカー、卸売業、小売業など)は、
  独立した経営主体であるのが一般的です。
  しかし、そのなかで、販売チャネル全体への支配的な地位にある企業が存在する場合、
  こうした企業を「チャネル・キャプテン」とみなすことができます。

  前項で述べた選択型のチャネルでは、このチャネル・キャプテンが、なんらかの
  方法で他のメンバーをより強く結びつけ、みずからの意志で統一したマーケテイング
  戦略を展開している事例も数多く見られます。 
  メンバーをどのような手段で結びつけるかでは、資本参加(メーカーや卸売業の
  直営小売店、小売業やサービス業の商品企画・生産・販売の主導など)や、
  フランチャイズ・チェーン(FC)あるいはボランタリー・チェーン(VC)などの
  契約や提携が必要になります。

  そのため、こうした統合を図る場合、とくにコスト的には合理的とはいえない面も
  あるでしょう。
  しかし、販売チャネルを構成するメンバーはモノとカネの橋渡しの機能を担うだけ
  ではありません。 

  たとえば、メーカーの側から考えてみましょう。
  卸売業や小売業に自社製品の販売に力を入れさせるとともに、消費者への適切な
  販売活動の徹底(販売員の説明、アフターサービスの実施など)、消費者の意見や
  クレームなどの収集、さらに、流通在庫の適正化、消費者への販売と生産の連動
  などのメリットが期待できます。

  一方、他のチャネル・メンバーには、売れ筋商品の優先的な供給、市場や製品情報、
  販売ノウハウ、共同の販売促進策など各種支援を供与します。 
  こうした点で、マーケティング戦略全体を進めるうえで、自社に協力的なメンバーで
  販売チャネルを構築していくことはきわめて重要といえるのです。 
  また、製品開発や市場のターゲッティング、あるいは価格設定や販売促進策では、
  画期的な戦略を打ち出したとしても、短時間で競合企業に模倣される場合も少なく
  ありません。

  しかし、販売チャネルの構築では、競合企業に対して長期的に優位性を保つことも
  可能になります。
  たとえば自社で販売チャネルのすべてを構築する(メーカーの販売会社、直営小売店
  など)には大きなコストと時間がかかるし、他社を起用する場合でも、長期的な
  拘束性が伴う契約が基本になるためです。

  この点でも、販売チャネルに関わる戦略は重要といえるでしょう。
  チャネル・キャプテンはメーカー(とくに大企業)が典型的ですが、 卸売業や
  小売業がその地位についているケースも数多く見られます。
  直営小売店の運営や大型店へのテナント出店などにより川下に展開している卸売業や、
  直営工場や契約工場で自主企画(PB)製品を生産し川上に展開している小売業の
  事例もあります。

  たとえば、販売チャネルの川上への垂直的な統合が大きな競争力を発揮している
  事例として、製品を低コストで安定的に仕入れるため、そのほとんどを契約工場で
  生産・調達している大創産業(100円ショップの「ダイソー」)やファースト
  リテイリング(カジュアルウエア販売の「ユニタロ」)を挙げることができます。
  こうした垂直的な統合により、流通業者が単なる商業にとどまることなく、競合に
  対して大きな競争優位を発揮しているのです。 

  また、中小企業でもチャネル・キャプテンとなって販売チャネルを構築することで、
  優れた業績を築いている事例は少なくありません。 
  たとえば、中小の流通業看でも、日常的な消費者との接触のなかから製品の改良や
  開発に役立つ情報を得ることが可能です。
  その情報を活かして川上に進出するとともに、直営店ないし有力な小売店を選別して
  強力に販売していくという戦略も考えられるでしょう。

  【事例4】
   M社は熱帯魚や鳥などのペット用の餌を専門とする卸売業だったが、水槽
   なども取り扱うペット用品の総合卸を目指し川上へ進出した。
   従来の小売店との取引を通じて得た「消費者に求められる製品」の情報を
   活かし、取引のあったメーカーのつてで、水槽やポンプ、フィルターなどの
   付属品を自社ブランドで製品化した。
   さらに、小売店に対して熱帯魚の飼育や設備についてアドバイスを行ない、
   売り場を維持・管理するサービスを開始、川下にも進出した。
   自社製晶の販売チャネルを拡大することを狙ったもので、とくに専門的な
   知識に乏しいホームセンターに目をつけたことが当たり、大手ホームセンター
   でも採用されるに至っている。 
   販売チャネル戦略はマーケティング戦略全体のなかでも重要な戦略です。
   ターゲットとする顧客層、製品・サービスの特性、チャネル・メンバーの
   評価、自社の経営資源とマネジメントカ、外部環境変化といった点を考慮
   しながら、自社に最適な販売チャネル戦略を策定することが求められます。

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マーケテイングと販売促進戦略

マーケテイングと販売促進戦略

 ■マーケテイングと販売促進戦略
  製品やサービスの消費が成熟し、かつ全体の市場成長が伸び悩むなかで、企業にとって
  マーケテイング活動がますます重要になっています。
  売上拡大のためだけでなく、適正な利潤を獲得していくためにも、十分に練り
  上げられたマーケテイング活動が必要になっています。

  マーケテイング活動とは、 
   ・日常の生活において、何かが「ほしい」と欲している顧客に対して
   ・ニーズに応える商品やサービスを 
   ・効果的に伝え、提供していく
  という活動全体を指しています。
  具体的には、
   ・「何を」(Product、製品) 
   ・「いくらで」(Price、価格) 
   ・「どこで」(Place:販売チャネル) 
   ・「どのように」(Promotion:販売促進)

  消費者に提供するのかという4つの戦略(製品戦略、価格戦略、販売チャネル戦略、
  販売促進戦略)からなります。
  それぞれの頭文字をとって、マーケテイング戦略の4Pと呼ばれているものです。 
  ここでは、マーケテイング戦略の4Pのうち、販売促進戦略をテーマに、中小企業の
  とるべき戦略をご紹介します。

 □販売促進戦略のあり方 

  1.販売促進戦略を策定するプロセス
   販売促進(プロモーション)とは、ターゲットとする消費者や企業ユーザーに対して、
   製品やサービスの特徴や価格、あるいは自社の情報などを提供したり、または
   販売員などを通じて働きかけたりして、需要を喚起するための一連の活動です。 
   具体的にはさまざまな手法がありますが、より効果的な販売促進活動を実現する
   ためには、「誰に」「どのような情報を」「いつ」「どのように」伝えるか、という
   ことを戦略的(大局的)に検討したうえで、個々の手法を計画・実施していく必要が
   あります。
   販売促進戦略を策定するためのプロセスは、一般的に以下のとおりです。

   (1)ターゲットとポジショニングの明確化 
    まず、販売促進活動のターゲットを明確にします。
    たとえば消費財であれば、消費者をセグメント化(消費者の諸々の特性によって
    細分化)し、重点的なターゲットとするセグメントを選択します。
    そして、自社の製品やサービスを、競合商品とは異なったものとしてどのような
    イメージで印象づけるか、製品やサービスのポジショニングを明確にします。

   (2)販売促進目標の策定
    定売上高や認知度、試用率の向上といった、具体的な成果目標を設定します。
    「いつまでに」「何を」「どうするのか」を明確にすることが重要です。

   (3)メッセージ・デザインの決定 
    消費者や顧客に印象づけたい製品やサービスのイメージなどに基づいて、
    「どのようなメッセージを」「どのように伝えるか」を決定します。

   (4)販売促進手法の検討 
    販売促進の具体的手法には、媒体(メディア)を介したものと人員を介した
    ものがあり、それぞれにさまざまな手法があります。
    前者がマスメディア寄り、後者は一人ひとりの消費者寄りであることをはじめ、
    各手法にはそれぞれ特徴があり、どの手法が適しているかは、ターゲットや
    製品・サービスの特性、あるいは全体のマーケテイング戦略によって異なります。 
    そのため、いくつかの手法を適切に組み合わせて実施することが必要です。
    また、各手法が、相互の機能を補完し合うような組み合わせを検討します
    (販売促進の具体的手法については次節で述べます)。

   (5)販売促進予算の設定
    予算が販売促進手法を選択する際の制約になる場合が多いはずです。
    販売促進全体の予算を決めた後、最大限に効果を発揮するように、各施策への
    適切な予算配分を行なうという順序が必要になります。

   (6)プロモーション・ミックスの決定 
    以上のプロセスから、目標を達成し、最終的な利益に結びつかせるために、
    実際にどのような販売促進手法を組み合わせるべきか、最適な「プロモーション
    ・ミックス」を決定していきます。

  2.販売促進手法の種類と特徴
   販売促進の具体的な手法は、 
    (1)広告宣伝 
    (2)セールス・プロモーション(S P)活動 
    (3)人的販売
   に大別できます。
   以下、各手法の内容について述べていきます。

   (1)広告宣伝 
     テレビ、ラジオ、新聞、雑誌のマス媒体(マスコミ4媒体)をはじめ、
     交通広告、屋外広告、チラシ、ダイレクトメール(DM)などの媒体を通じ、
     おもにマス(大衆)をターゲットに訴える手法です。 
     ターゲットとする消費者やその特徴、自社の資金力などから媒体を選ぶ
     ことになりますが、一般的にマス媒体には大きなコストが伴うため、
     中小企業にはあまり向いていません。

     製品やサービスによってターゲットが絞られることが多いことからも、
      比較的低コストで、ターゲットを自由に設定し、長期・反復実施
      のできるチラシやDM、あるいはインターネットなどを媒体にした
      広告宣伝が中小企業には適しているといえるでしょう。

      ◎事例〜広告宣伝 
       K旅館は50年の歴史をもつ温泉旅館だが、法人需要が激減する
       なかで、温泉を楽しむ個人向けの旅館として転換することを目
       指した。
       個人客は旅館のサービスを煩わしく感じる面もある。
       そう考え、お仕着せのサービスを切り捨てて改装オープンした
       が、常連客の不満もあり客数は落ち込んだ。
       失敗の原因は、従来のサービスを切り捨てながら、従来の顧客
       に販売促進をかけていたためである。 
       そこで、新しい顧客を開拓するために、インターネットと顧客
       データベースの活用を始めた。
       ホームページなどで一見客を集めるとともに、顧客情報のデー
       タベース化を進め、常連客化を図った。
       その結果、約1万人の顧客情報が集まり、顧客の属性に合わせ
       たDMの発送に活用している。
       また、「どの広告で当館を選んだか」という情報をもとに、広
       告出稿の効率化も実現している。

   (2)セールス・プロモーション(SP)活動
     セールスプロモーション(SP)活動には、
      広告量伝と比べて相対的に低コストで実施できるものが多く、中
      小企業に適するものが多いといえます。 
     具体的には、ターゲットとする消費者(あるいは企業などの顧客)向けと、
     流通業者などの中間業者向けの活動に大別できます。

    (イ)消費者向け 
       各種のメリットの提供や、店頭における仕掛けづくりになどに
       よって購入を促すもので、具体的には、販売デモンストレーシ
       ョン、店頭POP、サンプル・景品の提供や値引き販売、ポイン
       トカードによる顧客の組織化、さらに、展示会や消費者コンテ
       ストの実施などが挙げられます。

      ◎事例〜消費者向けセールス・プロモーション活動 
       婦人物衣料品店Aは、顧客に密着した情報を活かした販売促進
       で大型店に対抗している。
       近隣に地元の大手スーパーが出店したさい、価格競争をするの
       ではなく、ターゲットを絞って、いかにスーパーとの差別化を
       図るかを考えた。 

       スーパーとの競合を避けるため、中高年主婦層をターゲットに
       1万円台の品揃えを強化する一方、従来の特売を中止し、その
       代わりに在庫品を顧客に適宜プレゼントすることにした。
       また、自動車が必須の土地柄でもあるため、リピート効果を目
       的に、隣接のガソリンスタンドと提携してガソリンをプレゼン
       トする取り組みを始めた。 

       その他、店頭に椅子を置き、来店者にお茶を出すなどのサービ
       スで集客力を高めることに努めた。
       こうした取り組みが地元の中高年主婦層の支持を得て、売上高
       を伸ばすことに成功している。

       また、そのほか
        パブリシティー(ニュースや編集記事)や、口コミも
       有効な手法です。 
       パブリシティーとは、テレビのニュース、新聞・雑誌記事、イ
       ンターネット上の記事などに、媒体費無料で取り上げてもらう
       というものです。 

       消費者の情報に対する受容度が高いという長所がありますが、
       媒体側の企業と良好な関係を築き、情報にニュース性を加味し
       て提供するなどの取り組みが必要です。 
       口コミでは、口頭のほか、電子メールやホームページの役割が
       増しています。

       口コミの統制は困難ですが、パブリシティー同様、媒体費が無
       料で、情報の受容度が高いという長所があります。
       口コミを活用するには、オピニオン・リーダーへの働きかけな
       どが重要になります。

     (ロ)中間業者向け 
       製品やサービスの取り扱いを促進させることを目的に、流通業
       者などの中間業者に各種のメリットを提供するもので、具体的
       には、売上実績に応じたインセンティブやバックリベートの供
       与、値引きや増量などの優遇、看板や什器、店頭POPなどの提
       供、展示会や親睦会の実施などが挙げられます。
       また、経営や販売指導、従業員教育、マーケティング情報の提
       供なども含まれます。

      ◎事例〜中間業者向けセールス・プロモーション活動 
       菓子卸のS社は、厳しい経営環境から業界の再編が急速に進ん
       でいる同業界にあって、長年にわたり安定した大手の地位を維
       持している。 
       同社は、取引先のおもな小売店がPOS(販売時点情報管理)で
       蓄えた売上情報から、毎月売上ランキングを作成している。

       そのランキングに基づき、本社に再現した菓子売り場の陳列棚
       に、売れ筋商品を並べてディスプレーしている。
       スーパーなど小売店の仕入担当者は、その陳列棚を参考に商談
       ができる。 
       さらに提案力を強化するため、新製品の売れ筋予測を行ない、
       小売店への情報提供に役立てている。

   (3)人的販売 
     人的販売とは、営業パーソンや販売員などの販売担当者による、個々の
     顧客に対する会話や情報提供、接客などのきめ細かな活動をいいます。
     こうした活動には、

      ・製品やサービスの提示や試用により購入の決定を促進
       しやすい
      ・顧客と良好な関係を築くことで固定化を図りやすい
      ・広告宣伝と異なり相手の反対や不満にも対応できる

     などのメリットを期待することができます。
     また、消費者の声、競合企業の動向などに関する情報収集が可能であり、
     これは、マーケテイング活動全体において重要な要素にもなります。
     企業規模の大小にかかわらず重要な活動であるうえ、対象を絞り込める
     活動でもあり、経営資源を節約できるというメリットもあります。
     一方、販売担当者の折衝力とモラール(士気)が重要になるため、その
     能力の向上が重要になるといえるでしょう。

      ◎事例〜人的販売 
       N社は、創業以来の箔の製造技術と設備を応用して、1960年代
       に微細加工用研磨フィルムを開発、高いシェアを築いている。 
       同フィルムは、光ファイバーやハードディスクなどの製造過程
       で使用されるもので、米スリーエムが先行していた。

       後発として、より確かなニーズを把握するため需要先の訪問を
       重ね、顧客とともに研究開発に取り組み技術を蓄積したが、そ
       の過程で重要な役割を担うようになったのが、製品の開発に携
       わる一方、顧客と営業の折衝を行なう社員である。
       顧客の情報にもっとも近い営業パーソンが開発すればニーズに
       沿った製品ができる。
       顧客の要望に迅速に応えられるというメリットにもつながった。

 □プル戦略とプッシュ戦略 
  前述したような販売促進戦略は、大きく分けてプル(pull)戦略とプッシュ(push)
  戦略の2つに類型化することができます。

  (1)プル(pull)戦略 
    広告宣伝を中心に消費者の関心を引き(pull)、指名買いを導く戦略です。
    一般的に、消費財のうち最寄品や専門品の販売促進に適しています。
    広く消費者の関心を引きつけることが前提になるため、大量の広告宣伝、
    試供品や景品の提供などの役割が大きくなります。 
    また、この戦略をとる場合、指名買いの消費者が購入しやすいように、
    販路を絞らず開放的販売チャネルで幅広く販売することや、品切れを防止
    することが重要になります。

  (2)プッシュ(Push)戦略 
    営業パーソンや販売員、あるいは流通業者などの中間業者の動機づけによって、
    製品を消費者のほうに押す(push)ことで売上高の拡大を図る戦略です。
    一般的に、生産財や、消費財では買回品に適しています。人的販売に重点を
    置く戦略であり、そのための優秀な人材の確保と教育、動機づけが重要に
    なります。 
    また、中間業者の支援を手厚く行なうため、販路を絞り込む選択的販売
    チャネルの整備なども重要になります。 
    プル戦略とプッシュ戦略のいずれを基本戦略に選択するかは、ターゲット、
    販売促進予算、製品やサービスの特性、販売チャネル、あるいは競合関係
    などによって異なります。
    プル戦略、プッシュ戦略のそれぞれに適する一般的な条件を挙げると表の
    とおりです。
    中小企業の販売促進戦略としては、ターゲットを絞り込み、個々の顧客や
    取引先に対応したきめ細かな販売促進活動を行なうなど、一般的にプッシュ
    戦略が適しています。
    しかし、どちらかの戦略に特化するのではなく、いずれか一方を基本戦略
    としながら、各販売促進手法の最適な組み合わせを検討していくことが必要です。

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経営戦略の考え方

経営戦略の考え方

 ■経営戦略の重要性 
  企業は、それぞれの企業理念や目標を達成するための事業として、ヒト・モノ・カネ・情報
  を投下し、製品やサービスなどを提供して利益を得ます。
  また、企業経営は継続性が求められるので、そのためには適正な利益を上げることが
  必要です。 
  自社が、会社を取り巻くさまざまな環境と適合関係を図って存続・成長するためには、
  環境の変化に対応して行かなければなりません。 
  自社を取り巻く環境には、経済環境、政治環境、技術環境、労働環境、文化環境、
  自然環境などが考えられますが、その中でも、経済環境が最も大きな影響を与える
  ことになります。
  この経済環境の中には、
   製品市場環境   
   資本環境   
   原材料環境   
   労働環境   
   競合企業の関係   
   政府や地方自治体との関係
  などが含まれます。 
  従来の経済環境変化は、人口の増減や売上高の季節的変動、景気の循環などの量的
  変化や時系列的に発生する変化が中心で、比較的予測しやすかったとも言えます。 
  しかし、不確実性の時代ともいえる今は、
   技術開発の動向   
   消費者ニーズの動向   
   法的規制の緩和・強化
  など、めまぐるしい環境変化の中で、競合企業との競争は避けては通れない状況です。
  自社における戦術は日々改めなければならない状況でもあります。
  従来、企業経営の根幹を表す場合「経営方針」という言葉で表していたものから
  経営計画の基をなす存在であった「経営戦略」という言葉にスポットライトが
  あてられています。

 □製品市場のライフサイクルと経営戦略
  企業の最大の関心事は、事業の存続・成長といえます。
  自社が存続・成長するためには製品やサービスを市場投入して適正な利益を得る
  必要があります。 
  ですから、企業の経営戦略としての製品市場戦略は最重要課題といえます。
      
  1.製品市場のライフサイクル 
   例えば、製造業における製品市場は、  
    (1)開発 → (2)導入 → (3)成長 → (4)成熟 → (5)衰退
   という推移をします。

   (1)製品の開発期 
    企業の設立時や新規事業の展開時には同時に製品の開発が行われます。
    この製品の販売が企業収益の根幹を成す場合、製品開発は非常に重要な意味を
    持ちます。
    また、新規事業分野への進出を図る場合、新製品を開発する場合も同様です。

   (2)製品の市場導入期 
    この段階では、今後の需要増加に備え、生産拡大のための設備資金などの捻出が
    必要になります。

   (3)製品市場の成長期 
    この段階では、需要が高まり、市場規模は大きく拡大していきます。
    そのため、競合他社による市場への新規参入が続きます。
    従って、市場占有率の維持・向上が重要になります。

   (4)製品市場の成熟期 
    この段階では、企業収益は市場占有率の高低によって格差が生まれます。
    また、競合製品との差異化を図るのが難しい製品では、価格が売り上げを左右
    することになり、価格競争が激しくなります。

   (5)製品市場の衰退期 
    この段階では、市場からの撤退企業が増えてきます。
    また、残った企業は事業部門の徹底した合理化が必要になってきます。
           
  2.製品市場のライフサイクルへの対応 
   製品市場のライフサイクルの中で、企業は次のような製品市場戦略を採っていく
   ことになります。

   (1)市場浸透戦略 
    現在の製品市場での市場占有率を高めるため、広告宣伝、価格の改定、
    流通経路の再整備など、従来以上の強化策が必要です。

   (2)市場開発戦略 
    今までアプローチをかけていなかった市場をターゲットとして、新規市場の
    開拓を行います。 
    例えば、事務用機器に教育用機器としての利用を見いだし、企業のほかに
    学校などを新たなターゲットとして加え、市場開拓をします。

   (3)製品開発戦略 
    既存の市場に新製品(既存製品+付加価値)を投入して、売り上げの増大を
    図ります。
    例えば、短いライフサイクルで新製品を投入する各種家電製品などがこれに
    当たります。 
    また、定期的なモデルチェンジや新たな付加価値の追加をすることで、
    製品のライフサイクルを戦略的に短くし、買い換え需要を創出する戦略は、
    人為的陳腐化戦略ともいわれています。

   (4)多角化戦略 
    既存の技術を活用して、その周辺分野の技術開発により、新たな製品市場に
    新規参入します。
    単独での新規参入が難しい場合には業務提携をしたり、必要に応じて企業の
    合併や買収なども必要になります。

   (5)撤退戦略 
    企業の拡大・成長とは逆方向の選択ですが、損失の回避や犠牲を最小限に
    とどめるためには必要な戦略と言えます。
    消極的な方法ではありますが、企業の経営資源の有効活用に貢献することに
    なります。

 多角化戦略を考える
  製品市場のライフサイクルからみると、一つの製品だけで企業が長期間にわたり
  存続・成長することは難しいといえます。
  そこで、第2、第3の収益の柱となるような製品や事業を育成する必要があります。
  そこで、
   主力製品の需要停滞の打開   
   企業収益の安定化   
   危険の分散化   
   余剰資源の有効活用
  を図るための方策としては、多角化戦略が考えられます。

   1.水平型多角化 
    現在の製品に対する顧客と類似したタイプの顧客を対象として、既存の製品を
    投入し市場を開拓します。

   2.垂直型多角化 
    バーチカルインテグレーション(垂直統合)による、製品の生産から流通、
    そして販売まで、川上から川下にまで進出する多角化です。
    メーカーが流通部門を設ける、卸売業が店舗販売を行うなどが挙げられます。

   3.集中型多角化
    ・技術関連的多角化 
     既存技術を利用し、新たな製品分野に進出する多角化です。
    ・マーケティング関連の多角化 
     既存の流通経路を利用し、新たな製品を市場投入する多角化です。

   4.集成型多角化 
    まったくの異業種、新規事業分野に進出する多角化です。
    しかし、現在の市場に関連製品を投入する場合は、   
     既存の流通経路を有効活用
    することにもなるので相乗効果が期待できます。 
    また、現在の取扱製品を関連市場に投入する場合も、販路の拡大が、
     売り上げ増・生産増 → コスト引き下げ
    につながり、競争力をより一層高めることになります。
    しかし、現在の市場、現在の取扱商品との
     関連が全くない分野への進出
    は相乗効果のメリットが期待できないうえ、   
     高リスクがともなう
    ことにもなります。

   5.経営戦略の考え方 
    時代と共に消費者ニーズは変わってきます。
    現在の取扱製品やサービスの市場がどのような状況にあり、また、その市場
    の中で、個々の企業がどのような位置関係にあるのかを考慮に入れ、今後の
    自社の戦略を考える必要があります。 
    製品開発・増産のための設備投資、製品の市場開拓、製品の市場浸透など、
    自社の将来像、製品市場のライフサイクルを睨んだうえで、経営計画の策定や
    効果的な組織作り、人員配置、予算管理などの経営戦略の具体化が必要に
    なります。

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経営理念と経営戦略は経営の羅針盤


  多くの企業では、売上計画や利益計画等の経営計画を立てています。

  しかし、今日の激変する時代にあっては、経営計画を立てても、なかなかそのとおりには
  進みません。

  経営計画どおりに進まない外部の変動要因が大きすぎるからです。

  そこで、まず、「3年から5年後のわが社の展望」を「ビジョン」として描くことが大切
  です。

  その場合、「ビジョン」策定の前提となるのが「経営理念」です。

  なぜなら、「経営理念」は、企業経営の羅針盤となるものだからです。

  いいかえれば、「経営理念」を明確にした企業だけが、どんなに環境変化が激しくとも、
  確固とした経営方針を堅持し、確実に企業経営を維持、発展させることができるのです。

  そこで、今日の経営環境下で活力ある企業に不可欠となっている「経営理念」、
  「ビジョン」、そして「経営戦略」の策定手順について考えてみましょう。
   
  ■経営理念と経営戦略

   経営理念は企業の心棒であり、社会・顧客・従業員との関わりを通じた企業の存在意義
   を内外に示すものです。

   経営理念には経営者の強い思いが込められていて、通常は普遍的な内容としてまとめ  
   られます。

   一方、経営戦略とは、経営理念で示した自社の理想的な姿と、現状のギャップを埋める
   ために必要な取り組みを行うものです。

   つまり、経営理念がしっかりとしていなければ企業の理想と現実のギャップを正しく認識
   できないため、効果的な経営戦略も策定できないことになってしまいます。
   
  ■経営理念

   経営理念は、各社各様にさまざまな形で策定されており、定型的なものが存在するわけ
   ではありませんが、経営理念(自社の存在意義、経営姿勢、自社に課された社会的責任
   等を内外に示すもの)は、企業活動を展開するためには不可欠なものです。

   継続的に事業活動を行い存在し続ける企業体(ゴーイング・コンサーン)であることを
   前提として、自社の存在意義と目的すなわち社会的責任(社会的使命)を社内外に示
   すためのものです。

   つまり、「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会になく
   てはならないのか」を文章で表したものです。

   経営理念は、自社の存在意義や社会的責任
   と経営姿勢などを示したものであり、企業活動
   の羅針盤となるものですが、これをより具体化
   して、未来の夢や願望を青写真化することが
   大切です。
   
  □経営計画書作成に欠かせない理念

   経営者は、何らかの目的や信条をもって企業を
   経営しています。

   何代も続く老舗には、先代の時代から脈々と受
   け継がれる家訓があります。

   一般的に、このようなものを経営理念と呼びます。

   つまり、経営理念とは企業活動の精神的な基盤となるものです。

   企業は、利益を追求するために経営目標を立て、それを達成するための経営方針
   計画を策定します。

   それらのベースとなるのが経営理念なのです。

   しかし中小企業の場合、経営理念が文章となって従業員に示されていることはあまり
   ない。

   これではいかに優れた経営理念を持っていても、それを従業員と共有することができ
   ていません。

   中小企業にとって厳しい経営環境が続く中、経営者と従業員が共通の理解の下で団結
   することの重要性がますます高まっています。


   そうすることで、経営者の掲げる経営理念が企業の隅々にまで浸透し、独自の企業文化
   が形成されていきます。

   また、従業員が何らかのトラブルに直面した際も、経営理念が周知されていれば、
   それに基づいた対処ができます。

   経営理念を文章化して社内外へ公表する際には、従業員や取引先、顧客が理解しや
   すいように、分かりやすく表現します。

    ・自社の存在意義・使命は何か

    ・社会に提供する商品・サービスは何か


   経営計画作りの最初にくるものが経営理念です。

   (参考)経営計画の策定手順 

        ビジョン 

    理念 → ビジョン → 行動指針 
      ↓
    方針・目標
      ↓
    機会・脅威と強み弱み(SWOT)の分析(サンプル事例
      ↓
    目標とギャップ分析
      ↓
    経営戦略の構築
      ↓
    中期(3年)・年度経営計画の策定


   理念は経営の羅針盤となるもので、継続的に事業活動を行い存在し続ける企業体
   (ゴーイング・コンサーン)であることを前提に、自社の存在意義と目的(社会的責任)
   を社内外に示すためのものです。

   「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会になくてはなら
   ないのか」を文章で表したものが理念です。

   中小企業経営者の中には「理念で飯が食えるか」といった声も聞こえてきます。

   組織を単なる個人の集合体と考え、ジンザイを人材と捉え、「儲ければいい」だけの考
   えであれば理念もビジョンも必要ないでしょう。

   会社を我が子のように育ててきた社長にとって、会社が単なる儲けのためだけの場で
   はないはずです。

   「事業は人なり」の言葉にあるように、人材を人財に育てることが社長・管理職に
   課せられた責務です。

   会社経営をしていく中で、全社員が発生する様々な困難に一体となって立ち向かうため
   にも理念、ビジョンは欠かすことのできない「錦の御旗」なのです。
   
  □経営理念の策定

   1.基本理念の策定手順

     基本理念とは、自社(経営)理念の核となるもので、継続的に事業活動を行い存在
     し続ける自社体(ゴーイング・コンサーン)であることを前提として、自社の存在意
     義と目的すなわち社会的責任(社会的使命)を社内外に示すためのものです。

     つまり、「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会にな
     くてはならないのか」を文章で表したものが基本理念です。

      (1)シートへの書き出し

        自社の存在意義や目的、また社会的な責任について書き出してみましょう。

        これは、あくまでも下準備ですので、メモ書きで構いません。

        思いつくまま、どんどん書き出してみて下さい。

      (2)キーワードのピックアップ

        次に、シートに書き出したものの中からキーワードをピックアップします。

        例えば、「自然環境」、「喜び」、「安心と安全」など、自社の社会的な使命
        (ミッション)とはこれだというキーワードを選び出します。

        この段階では、数にこだわる必要はありません。「これこそがわが社を表現す
        る絶対唯一のキーワード」と思われるものがあれば一つだけでも構いません
        し、5個でも10個でもOKです。

        一般的には3〜5個に絞り込んでおくと、次の作業(基本理念の成文化)の
        際に便利でしょう。

      (3)基本理念の成文化とCPSの原則

        「自然環境に優しく、人々に喜びを与える企業を目指します」などのよう
        に、ピックアップしたキーワードのうち特に重要なものを選択・整理し、文
        章化します。

        最初はなんとなく照れ臭いような、恥ずかしいような気持ちになるかもしれま
        せんが、ここでは、思い切って大胆な文章にしてみましょう。

        また、できれば2〜3案作成し、幹部の人たちの意見を出してもらうようにして
        もよいでしょう。

        基本理念成文化の際のポイントは、

         C(Creative=独創的)

         P(Powerful=力強さ)

         S(Simple=簡潔)

        な表現、つまり、CPS三原則を心がけることです。

   2.行動理念の策定手順

     行動理念とは、企業の経営姿勢、企業としての行動基準、すなわち、事業活動に
     あたっての価値基準のことをいいます。

     具体的には、「経営革新への取り組み姿勢」のほか、事業、顧客、商品(サー
     ビス)、さらには社員に対する取り組み姿勢などを表したものです。

     それぞれの項目について経営者の“思い”を書き出してみます。

      基本理念策定シート

       ・わが社の存在意義、存在目的

       ・わが社の社会的責任

      行動理念策定シート

       ・経営革新への取組み姿勢

       ・事業への取組み姿勢

       ・顧客(取引先)への取組み姿勢

       ・商品(サービス)への取組み姿勢

       ・社員への取組み姿勢
   
  ■経営戦略

   戦略または企業戦略という言葉はさまざまな場面で使われている。

   これらの戦略という言葉は、明確な定義がないまま使用されていることが多いよう
   です。

   元来戦略とは軍事用語で、相手をどうやったら打ち負かすことができるかという、
   総合的・全体的な、大所高所からの策を指しています。

   こうして考えると、企業における経営戦略とは、全体的・大局的立場から企業が所
   属する経営環境の方向性を見定め、他企業と競争し、勝ち抜いていくための方法
   を指すことになります。

   ここでは経営戦略を次のように定義ています。

   経営戦略の定義

    (1)基本的意義:経営理念に基づき経営活動の基本的な方向づけを行なうこと

    (2)具体的内容:・経営環境(外部環境)の変化に対応する

               ・自社が成長するための基盤となる事業分野を選択する

               ・その事業分野における競争上の健位性を確立する

               ・経営資源の有効配分を行なう

   日本の経済が成熟して企業間競争はますます激しくなり、さらに顧客のニーズも
   多様化・高度化しています。

   こうした経営環境の変化に対応し他社との競争優位を確保するには、優れた経
   営戦略が必要です。

   また、中小企業に目を向けると、従来日本の産業構造の特徴であった大企業を
   頂点とする下請け分業構造が崩れています。

   大企業が取引企業を選別する一方で、中小企業は海外進出や新たな取引先の
   開拓などをしています。

   このようなとき、自社が成長するための基盤となる事業分野の選択や経営資源の
   有効配分を進めるうえで、新しい経営戦略の策定が必要になってくる。

   そこで、中小企業に求められる経営戦略の方向性を探り、具体的な策定ステップ
   をご紹介します。

  □中小企業の経営戦略の方向性

   経営戦略とは、ビジョンとそれを具体化した営計画を実現するための方策、
   取り、手立てのことです。

   経営戦略というともっぱら大企業のものと考える人もいるようです。

   しかし、経営環境がますます厳しくなるなか、中小企業も生き残りを賭けた対応が
   迫られている。 

   ここでは、中小企業の現状を明らかにし、具体的な戦略の方向性を示していきま
   す。

    1.中小企業を取り巻く経営環境

      戦略を検討するには、自社のおかれている現状を分析する必要があります。

      中小企業を中心とした経営環境の変化と中小企業の特徴を、SWOT分析 
      (強み・弱み/機会・脅威の分析)によって整理すると次のようになります。

       (1)中小企業を取り巻く環境に「機会・脅威」

         <機 会>

          ・顧客ニーズの多様化が進み、市場ではさまざまなミニマーケットが
           できている。

          ・規制緩和や情報化の進展で新しい市場が芽生えている。

          ・従来の企業系列が崩れ、中小企業の間でも新しい企業提携の
           可能性が生まれている。

          ・ベンチャー企業の成長が期待されるなか、公的機関や民間から
           の資金調達や経営情報の提供など各種支援体制が整備されて
           いる。

         <脅 威>

          ・世界的レベルでの大競争時代を迎え、企業間競争が激化している。

          ・日本経済が成熟期を迎え、鉄鋼、自動車、家電など、かつての
           リーディング産業の大きな成長が見込めなくなっている。

          ・大企業を頂点にした下請け分業構造が崩れ、取引の減少や中止
           を迫られる下請け企業が増加している。

       (2)中小企業の「強み・弱み」

         <強 み>

          ・既成概念にとらわれずに、大企業に真似のできない独創性・個性
           を発揮しやすい。

          ・トップの強力なリーダーシップや迅速な意思決定により、経営の
           スピードが速い。

          ・組織が小さいことから環境変化に対する柔軟性・機動性が高い。

         <弱 み>

          ・中小企業の場合、創業経営者などによる個人的色彩が強く、
           経営が過去の経験や独断に基づいて行なわれることがある。

          ・大企業に比べ信用度が小さいことから、資金調達や取引において
           不利な面がある。

          ・人材や財務面など経営資源が乏しく、経営基盤が弱い場合が多い。

    2.求められる中小企業の経営戦略

      経営環境の変化でとくに注目されるところは、市場の成熟による顧客ニーズ
      の多様化・高度化に伴い、ミニマーケットあるいはニッチ(すき間)マーケット
      が顕在化していることです。

      しかも、これらの市場は流動的に変化し、さらに、そのスピードも速いものに
      なっています。

      したがって、これからの企業には、つねに変化する顧客ニーズに迅速に対応
      できる能力と自社独自の商品・サービスを提供できる能力とが求められてい
      ます。

      これらの動きは中小企業の強みとする機動性と独創性に合致しています
      が、一方で中小企業の弱みである乏しい経営資源を補完していかねばなり
      ません。

      そこで、中小企業の経営戦略の方向性のひとつとして、

       ・独創的事業を創出できる自社固有の技術やスキルを醸成する

       ・外部との連携を通じて自社の中核部分以外の経営資源を補完する

      ということが考えられます。

      こうしたことから、中小企業のとるべき基本的戦略は、専門化戦略と外部連
      携化戦略の2つに絞り込むことができます。

              
      (1)専門化戦略:コアコンピタンスの確立

        中小企業の基本戦略のひとつ目は専門化です。

        専門化とは、顧客に提供する製品やサービスの独自性を強めること。

        ミニ(ニッチ)マーケットが乱立する市場は、専門家、すなわち多くの「オン
        リーワン企業」を容認するものであって、企業の棲み分けを可能にしてい
        ます。

        そして、この市場を狙った戦略が専門化戦略です。

        ニッチ市場でオンリーワンの地位を築けば、必然的に競争は回避され他
        企業に対し優位性を確保できます。

        この実現は、自社特有の製品・サービスを創出する力が必要です。

        ところで、企業に蓄積できる能力には限界があるため、どの領域で専門
        化していくのかを明らかにする必要がある。

        これはコア・コンピタンス(中核的な能力・知識の塊)の確立を意味してい
        ます。

        コア・コンピタンスは「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならで
        はの価値を提供する企業の中核的な力」であり、個別のスキルや技術で
        はなくそれらを束ねた全体であり、組織における集団的な学習能力であ
        るといえる。

        中小企業においては、自社におけるコア・コンピタンスを確立し、専門化
        戦略をとることが大企業以上に求められています。

      (2)外部との連携化戦略:アウトソーシングによる外部資源の有効活用

        市場の変化や技術の革新が著しいと、中小企業の経営資渡だけで戦略
        的な対応をするには限界がある。

        専門化を進めながら、外部との連携化戦略を展開することこそ中小企業
        の取るべき戦略のひとつであるといえます。

        これは、自社の中核となる機能に経営資源を集中させる一方で、それ以
        外の部分はアウトソーシング(外部化)を行ない、経営資源の補完性を高
        めることを意味する。

        具体的には、

         ・他社との事業提携を行なう

         ・情報技術を利用したネットワークにより企業の情報化を推進する

         ・大学、研究機関と連携する

         ・民間の各種サービスに外部委託する

        などが考えられます。

        こうしたことは、従来の日本企業の系列に見られたような長期的・安定的
        な取引関係ではなく、「最適なタイミング」「最適な場所」「最適なコスト」
        による自由な取引関係です。

        あるいは、情報ネットワークなどを利用して企業との緩やかな結びつき、
        すなわち戦略的提携を進めていこうとするものです。

        以上をまとめると、

         外部連携化戦略は、中小企業の経営資源を補完すると同時に、企業
         連携(ネットワーク)を有機的に組み合わせ、環境変化に適応できる
         組織の機動性をより一層高めることを目指すものである

        といえます。

  □経営戦略策定のステップ

   ここまでは、中小企業に求められる経営戦略の方向性を探ってきました。

   その基本は、専門化戦略と外部との連携化戦略でした。

   しかし、これらは自社の現状に適合した経営戦略の策定ステップを踏んで、具体
   的な個別戦略に落とし込んでいかねばなりません。

   では、具体的にどのようなステップで、経営戦略を策定していけばよいのか。

   ここでは一般的な経営戦略策定ステップに沿って基本手順を明らかにします。

    1.経営理念の確立

      経営戦略の前提として、企業の文化・風土を見定めるとともに長期的な企業
      の方向性を決定します。

      経営戦略が手段的、機能的なものであるのに対して、経営理念は「企業が
      事業を通じて社会に対して何をしたいのか」「どういう価値観や規範に基づい
      て事業を行なおうとしているのか」を示すものです。

      中小企業経営者の中には「理念で飯が食えるか」といった声もあるようだ。

      組織を単なる個人の集合体と考え、ジンザイを人材と捉え、「儲ければいい」
      だけの考えであれば理念もビジョンも必要ないでしょう。

      会社を我が子のように育ててきた社長にとって、会社が単なる儲けのためだ
      けの場ではないはずです。

      会社経営をしていく中で、発生する様々な困難に全社員が一体となって立ち
      向かうためにも理念、ビジョンは欠かすことのできない「錦の御旗」なのです。

    2.経営環境の把握と分析

      (1)外部環境と内部環境

        経営活動に影響を及ぼす要素を洗い出し、自社のおかれている現状や
        今後の経営の方向性を分析します。

        経営環境は、おもに次の2つに分類できます。

         外部環境:企業の外から影響を受ける環境要素で、政治・経済環境、
                技術動向、市場動向、競争相手の動向などがある

         内部環境:企業の内に存在している環境要素で、生産力、財務力、
                人材、マーケティング力、組織風土などがある
       
      (2)SWOT分析

         内外の環境と自社経営に及ぼすで
         あろう事項から強み、弱み、機会、
         脅威を明確化します。

         この分析から、自社の強みを
         活かし、事業機会を捉える
         ような戦略を抽出します。

    3.経営者の意思・社員の夢と現状との
      ギャップ分析

      経営理念が自社の将来のあるべき姿を
      象徴しているとしたら、自社の現状との
      間にギャップがあって当然であり、その
      ギャップを埋める作業が具体的な戦略の策定となります。

      この段階では、ギャップを自社における経営上の問題点として明確にしてお
      きます。
         
    4.事業ドメインの確立

      事業ドメインは自社が本業として行なう事業分野のことで、経営理念に基づ
      き自社の強みを発揮しうる事業領域を意味します。

      経営環境の変化が激しいときは、これに応じ事業分野も変化し、事業ドメイ
      ンである本業の再構築も不可欠となる。

      上記で取り上げたコア・コンピタンスは、この事業ドメインを創出する企業の
      源泉となるものです。

    5.戦略代替案の作成と選択

      明らかになった経営上の問題点をクリアする経営戦略の具体案(代替案)を
      複数作成します。

      この中から一定の評価のもとで合理性のある最適な経営戦略を選択する。

    6.経営資源の配分

      一般的に企業の経営資源は、ヒト・モノ・カネ・情報といわれます。

      あらゆる企業にとってこれら経営資源は限られたものであり、経営戦略に基
      づいてこれを最適に配分し最大の効果を得ることが重要です。

      具体的には、事業組織の組み替え、事業の資金配分などがあげられる。

  □中小企業の戦略技法と戦略策定視点

   経常戦略を策定するとき、有効な戦略技法を活用していくことがポイントです。

   ここでは、代表的な戦略技法の概要を説明するとともに、それぞれにおいて、中
   小企業にとっての経営戦略策定上の視点を記述します。

    1.成長戦略

      企業の事業額域を拡大していくためには成長戦略が基本になります。

      そのとき「市場−製品」の組み合わせで、自社の成長の方向性を決定してい
      くことかできます。

       (1)市場浸透戦略

         現在の「市場−製品」に対して、販売戦略などで市場占有率の増大を
         目指し、成長の方向性を見出す戦略です。

       (2)市場開発戦略

         現在ある製品を、新しい使い方などを探ることによって、新しい市場
         に 投入する戦略です。

       (3)製品開発戦略

         既存の市場に対して新製品を開発し、新たな需要を喚起する戦略。

       (4)多角化戦略

         市場−製品の両面でまったく異なった分野に進出する戦略です。

      企業の成長は、この4つのいずれかの基本的枠組みの戦略によって実現し
      ます。

      成長の方向性を考えるとき、既存の経営資源(販売、生産、技術、経営管理
      など)のシナジー(相乗)効果測定を行ないます。

      たとえば、多角化戦略において、市場と製品が新しくても、流通や技術の共
      通性がある場合は戦略としては有効性が高いものになります。

      とくに中小企業が成長戦略で事業拡大していくには、シナジー効果を最大限
      に考えた戦略策定が望まれます。

    2.競争戦略(ポーター 3つの競争戦略)

      経営戦略の大きな目的のひとつとして、競合他社との競争優位を確保するこ
      とがあげられます。

      競争優位の源泉となる競争戦略は、次の3つに類型できます。

       (1)コスト・リーダーシップ戦略

         業界全体の広い市場をターゲットに他社のどこよりも低いコストで
         評判を取り、競争に勝つ戦略です。

       (2)差別化戦略

         製品品質、品揃え、流通チャネル、メンテナンスサービスなどの
         違いを業界内の多くの顧客に認めてもらい、競争相手より優位に
         立つ戦略です。

       (3)集中化戦略

         特定市場に的を絞り、ヒト・モノ・カネの資源を集中的に投入して
         競争に勝つ戦略です。

         これは、さらに2つの戦略に分類できます。

          ①コスト集中で、特定の市場でコスト優位性に立つことで競争に
           勝つ戦略。

          ②差別化集中で、特定の市場で差別化することで優位に立ち、
           競争に勝つ戦略。

   中小企業の場合、競争戦略の柱は専門化を志向した集中化戦略になりますが、
   業界・業種によっては、集中化戦略を取りにくい特性を有する分野もあるでしょう。

   経営者は自社の経営資源と業界特性を考慮し、競争戦略を策定していく必要が
   あります。 

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中小企業だから必要な経営理念

  ■なぜ経営理念が必要か

   1.中小企業だから必要な経営理念

     経営理念とは、
      「自分たちはこうありたい」「社会に対してこのような貢献をしたい」と
      いった自社が存在する意義を明文化したもの
     と言われている。

     自分たちの行動を規定する価値観といってもよいでしょう。

     優良な企業には多くの場合何らかの経営理念が作られており、その理念を浸
     透させる取り組みを通じ、社員一人ひとりが組織の一員としての自覚を持ち、
     やりがいを感じながら日々の業務を遂行する状態を実現しています。

     また新たに入社してくる社員や取引先企業の立場からも、その企業の持つ経
     営理念に共感して入社を希望したり、取引を継続するということもごく自然に見
     られる現象です。

     しかし、社長の立場から見て「社員が期待通りの行動を取ってくれない」「社員
     によって顧客対応にばらつきがある」と悩む中小企業の多くでは、まだこうした
     「経営理念」そのものが定まっていない、あるいは経営理念はあってもそれを
     浸透させる取り組みが不十分であるケースが見られます。

     少数精鋭体制で事業活動に臨まなければならない中小企業だからこそ、社員
     一人ひとりに経営者と同じ気持ちで業務を遂行し、顧客と対応してもらうため
     の「経営理念」の重要性は高いと言える。

   2.社員の行動に一貫性を持たせる

     経営理念を定める最も大きな目的は、「社員の行動(言動)に一貫性を持たせ
     る」ことにある。

     直接顧客と接する役割の社員だけでなく、社内の事務や工場での作業の役割
     を担う社員であっても、「我が社は○○を提供している会社です」と胸を張って言
     えることが組織としての第一歩になります。

     そして、様々な価値観を持っている社員が、同じように様々な考え方をするお 
     客様や周囲の人達とやり取りをしながら進めるのが事業活動であり、放置して
     いては、社員がその都度思いついた対応やそれぞれが正しいと思う行動を 
     取ってしまい、会社としての一貫性がない状態に陥ってしまいます。

     これでは取引先企業に「あの会社は何を考えているのかわからない」といった
     印象を与えかねない。

   3.社員の画一化を図るものではない

     前述のように経営理念は会社としての価値基準であり、社員はその基準に
     沿った行動をとることになります。

     このことをマイナスにとらえて、社員の自由闊達な動きがそがれることを危慎さ
     れる社長もいるかもしれません。

     しかしながら、経営理念は同一規格のように、全社員にまったく同じ行動を強
     いるものではない。

     たとえば「自社の商品を通じてお客様を健康にする」という経営理念をもつ食
     品メーカーでは、この理念を実現するために自分にできることは何かを、それ
     ぞれの社員が考え、行動することになります。

     つまり経営理念は社員の行動の一挙手一投足を縛り付けるものではなく、社
     員一人ひとりに業務を創意工夫するためのヒントを与えるものと捉えることが
     できるのです。

  □どのように作るか

   1.夢を考えることから始める

     ある飲食店チェーンの社長は「自分たちは日本一の飲食店チェーンになる」と
     いう夢を描いていました。

     また「社員が高いプライドを持てる会社にする」ことを自分の夢として語る社長
     もいます。

     経営理念作りの最初はこんな夢を考えることから始めることが多いようです。

     社長を中心に、幹部社員が抱いた夢(こうありたいという姿)を話し合い、徐々
     に社員共通の夢が固まってきます。

     次に「日本一の飲食店チェーンとは具体的にどのような姿だろう」、「社員にど
     んなプライドを持ってもらいたいだろうか」という具合に、夢を具体的な姿にして
     いきます。

     喜んでいるお客様の顔、店舗の雰囲気、あるいはプライドを持って嬉々と働い
     ている社員の姿を思い描いて、イメージを膨らませていきます。

   2.理念作成の三原則

     経営理念は業種業態あるいは社長の価値観によって、まったく変わったもの
     になります。

     正解というものは存在しません。

     ただし、後々のことを考えて「このように作ったほうがよい」という原則がある。

     それは以下のとおりです。

      (1)社長自身の価値観で社長自身がしっかりと考えて作る
        幹部社員と意見交換を行うにしても、とにかくトップである社長自身がじっ
        くりと考えて、自分の言葉で表現することが大切です。

      (2)社会全体・顧客・社員に対しての3つの想い
        経営理念は社員だけではなく、顧客、取引先、銀行などの関係者や社会
        全体に対してのメッセージでもある。

        それらの人々に対してどのような想いを持っているかを示すことが大切で
        す。

      (3)分かりやすく簡潔な言葉・文章を心がける
        経営理念は新入社員や外部の人にも理解しやすいものでなければなり
        ません。

        また理念策定後は朝礼等でそれを繰り返して唱和していくことになる。

        分かりやすく簡潔な表現を心がけよう。

  □浸透させるには

   1.社長自らが行動に移す

     ある飲食店チェーンの社長は「最高のホスピタリティー(心のこもったもてなし)
     でお客様を幸せにする」といった経営理念を持っています。

     しかし、朝礼などでいくらそのようなことを話しても、なかなか社員に浸透しな
     かったそうだ。  

     ところが社長が行動で示すうちに次第に社員も変わってきたとのこと。

     その会社の事務所(店舗ではない)には、雨の日にはビニール傘が用意され
     ていて、傘を持って来なかった来訪者に、自由に持ち帰ってもらっているとい
     います。

     事務所への来訪者の多くは仕入れ先などのいわゆる「取引先」です。

     その取引先に対しても、社長は「わざわざ雨の日に来てもらつてありがとう」と
     いう気持ちを伝えたい思いだというのです。

     また、この社長は社員とその家族に対して、誕生日に社長直筆のカードとプレ
     ゼントを贈っています。

     社長はその理由を「自分の会社で働いてくれているすべての社員とその家族
     に、感謝の気持ちを伝えたいから」と話している。

     そしてこのような活動を続けているうちに、社員に徐々に社長のいう「ホスピタ
     リティー」の意味が伝わり、社員の接客態度が見違えるようになったということ
     です。

     経営理念は言葉で繰り返し伝えることも大事だが、それだけではなかなか浸
     透しないことも多いものです。

     しかし、社長自らが経営理念に沿った行動を続けることで、社員の行動が変
     わっていくこともあるのです。

   2.基本方針や行動指針も作成する

     経営理念を策定するときには、理念実現のためにどのような考え方で業務に
     望むのかといった「基本方針」や、より具体的なレベルの「行動指針」といった
     ものを同時に作成することが望ましい。 

     たとえば、

      ・線営理念

       「最高のホスピタリティー(心のこもったもてなし)でお客様を幸せにする」

      ・基本方針

       (1)つねにお客様の気持ちを理解するように努める

       (2)・・・・・・

       (3)・・・・・・

      ・行動指針
       (1)お出迎えとお見送りは心をこめて挨拶する

       (2)・・・・・・

       (3)・・・・・・

     という具合に、最終的には社員が日々の業務のなかで実践できる行動レベル
     まで、経営理念を落とし込んでいきます。

     このように、できるだけ具体的にすることで、社員は理念唱和という「頭での理
     解」だけではなく、日々の業務のなかで「行動の習慣づけ」が進んでいくので
     す。     

     吉田松陰の言葉にあるように、
      「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、
      実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」である。

     「理念で飯が食えるか!」という中小企業の社長もいるようだが、「理念がなけ
     れば飯は食えない!」、そんな社長になっていただきたい。

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ゼロベース思考による経営戦略の考え方

ゼロベース思考による経営戦略の考え方
 

  ■ゼロベース思考とは

   期末を迎える会社にとって、「来期こそ飛躍の年にしたい」と事業構想を練っている社長も
   多いことでしょう。

   ましてやコロナという未曾有の困難の中、自社における戦略の見直しは喫緊の課題です。

   その際にはこれまでの経験や常識からの「仮説思考」だけではなく、それらをいっ
   たん脇に置いた「ゼロベース思考」も取り入れてみましょう。

   ここでは、ゼロベース思考による経営戦略の考え方について紹介します。

   1.仮説思考とゼロベース思考

     物事を考える際のスタイルには大きく分けて「仮説思考」と「ゼロベース思考」
     があります。

     前者はこれまでの自分の経験や知識、世の中で正しいとされている法則から
     「たぶんこうだろう」と過去の延長線上で考えるスタイルです。

     後者はその名前のとおり、過去のことは考慮せずに何もない状態(ゼロベー
     ス)から思考していくスタイルです。

     私たちは、通常は「仮説思考」をベースとして行動しています。

     何か問題が発生した際にも、また何か新しいことをはじめる際にも、過去の経
     験則から「こうすればうまくいくだろう」という仮説を立てて行動します。

     仮説思考は、問題を構成している要素や枠組みが明確であり、どこにどのよう
     な手を打てば有効であるのかが分かっていることが前提となっています。

     通常の状況においては仮説思考による問題解決のほうが効率的であり、ま
     た、科学的ともいえます。

     しかし、現在のような「100年に一度の不況」、「少子高齢化」、「人口減少」な
     ど、かつて経験したことのないような劇的な環境変化のなかでは、従束の経験
     則に頼った仮説思考による問題解決法だけでは対応できないことも生じます。

     その際には、従来の発想を取り払い、まったくのゼロベースで考えることも必
     要になってくるのです。

        事実分析の基本となる6W2H

   2.ゼロベースで飛躍的な成長を考える

     たとえば、あるスーパーが「来期の売上をあと5%伸ばしたい」というときには、
     通常は仮説思考で過去の成功経験・失敗経験などを参考にして有効そうな販
     促策を立案します。

                            経験・仮説思考による問題解決

     実際に過去からの積み上げでも5%成長は可能なことも多いでしょう。

     これまでのポイント制度の手直しなどが施策候補として考えられます。

     しかしながら、これが「3年後に売上を倍にしたい」と考えるのであれば、経験
     則に基づく仮説思考だけでは不十分です。

     これまでのやり方をがらりと変えて、ゼロベース思考で新たな戦略を見いだす
     必要があるでしょう。

                            ゼロベース思考による問題解決

     同様のことは、

      ・今期の売上が前年対比95%に落ちた → 仮説思考で対応

      ・今期の売上が前年対比50%に落ちた → ゼロベース思考で対応

     といった、経営危機への対処方法に際しても当てはまります。

     前年対比95%の場合の5%の落ち込みは仮説思考でさまざまな「たがを締め
     る」ことで対応可能かもしれませんが、50%の減少はあきらかに市場環境と自
     社経営に構造的なズレが生じてきている結果であり、ゼロベース思考で事業
     そのものを再構築していく必要があるのです。

  □ゼロベース思考に必要な条件

   1.過去をいったん否定する勇気も必要

     ゼロベース思考はこれまで積み上げてきた自社や自分自身の常識・経験・知
     識・労力などをいったん否定することでもあります。

     この「否定する勇気」、「切り捨てる勇気」をもつことがいかに大変であるかは
     いうまでもないでしょう。

     たとえば、長年研究開発を行ってきた会社があり、Aという商品の商品化(実
     売上)までの道筋が見え始めてきているとしましょう。

     これまでに相応の開発費と時間もかかっています。

     しかし、現時点では競合の技術開発や市場ニーズの変化などが進んで開発
     当初に見込んでいたほどの売上は望みにくい状況になっているとします。

     図中の市場の要求水準(二重線)を商品Aの魅力度が上回っている期間が
     「売れる」回収期間です。

     実際に競合が厳しく、かつ開発に長期間かかるような商品ではこのような事態
     はよく起こります。

     現時点で商品Aに対して考えられるスタンスは大きく分けて以下の3つでしょう。

     (1)もう少し開発を続ければ若干でも売上に貢献するのだからこのまま開発を
       続ける

     (2)将来的にも売れ続けるように商品に改良を加えられないか検討する

     (3)即時に開発中止を決定する

     おそらく多くの企業では、まずは(2)が検討されると思います。

     もちろん実際に改良に成功し長寿商品になればそれに越したことはありません。

     しかし、検討の結果、残念ながら改良のめどが立たないときでも、これまで
     使った開発費や時間を惜しむあまり意思決定を先延ばししてしまうこともある
     でしょう。

     また、商品Aの開発責任者への配慮から、開発中止を決定できないかもしれ
     ません。

     結果として(1)の選択に終わってしまうことが多いのです。

     このような場合は、改良の可能性をできるだけ短期間に判断し、改良が難しい
     ときにはゼロベース思考で開発を中止するという勇気をもつことが大切です。

                     商品A開発は中止してゼロから商品Bを開発する

     環境変化が激しい現在では「開発中止」は珍しいことではありません。

     また、開発責任者もしかるべき承認のもと開発を開始しているわけですから、
     開発プロセスに問題があった場合などを除き、その責を問われるべきではあり
     ません。

     改良の見込みがない場合は、勇気をもって、たとえ回収までの期間が長くても収
     益が見込めるまったく新しい商品Bの開発に注力していくことが必要です。

     もっとも避けなければならない事態は、商品Aの改良のめどが立たないまま、
     さまざまなしがらみを払拭できずに、何となく商品Aの開発を続けていくことな
     のです。

     また、新商品の開発段階だけではなく、現在販売している商品についても、将
     来的に市場の要求水準をどのように超えていくかについてつねに検討しておく
     ことが大切です。

   2.ゼロベース思考のコツ

     それでは商品Aの開発を中止して、すぐにゼロベース思考でまったく新しい商
     品Bの開発に着手できるかといえば、当然ながらそう簡単にはいきません。

     何しろこれまでの経験・知識・しがらみなどをすべていったん脇に置いて文字
     通りゼロから考えるわけですから、ゼロベース思考での商品開発は仮説思考
     型のそれに比べて大変なエネルギーが必要になるのです。

     また、ゼロベースで考え始めたつもりが、思案を巡らすうちに「常識のフィル
     ター」を通過して、結局は商品Aと大差ないアイデアになってしまうこともよくあ
     ります。

     では、実際にゼロベース思考を実践するためにはどのような点に気をつけれ
     ばよいのでしょうか。

     (1)顧客志向を徹底する

       一般消費者相手の事業でも、また、法人相手の事業でも、ビジネスには必
       ず「売り手」と「買い手」が存在します。

       まずは「売り手の事情」は完全に忘れて、「買い手(顧客)」にとって何が必
       要かを徹底的に考えてみましょう。

       ゼロベース思考が難しいのは、いったん顧客の立場に立って考え始めてみ
       ても、それを具体的な商品・サービスとして具現化させる段階で、どうしても
       自社や自部門の都合が入り込んでしまうところにあります。

       「自社の事業規模」、「保有技術」、「各部門の力関係」といった事情は完全
       に排除し、「一人の買い手」、「一人の素人」としての視点に徹するのです。

       経営者のなかには異業種から転職して革新的な手法で会社を大成功に導
       いた人がたくさんいます。

       その人達が共通して口にする成功要因は、「自分は業界知識がまったくな
       い素人だった」ことです。

       業界の常識などお構いなしで、ひたすら一消費者として「こんなお店があっ
       たらいいな」、「こんなサービスがあったらいいな」と考え続け、まさにゼロ
       ベース思考で成功しているのです。

       最近では形が不揃いな野菜やちょっとした傷がついた魚などいわゆる「わ
       けあり食材」が人気を集めています。

       値段は2割〜5割引程度と割安で、消費者の「(多少の不具合があっても)
       おいしくて安ければいい」というニーズに見事に応えています。

       また、技術系の会社でも、社長が技術にはまったくの素人で、社長の「こん
       なことができたらいいな」という単純な思いを形にして成功している例がたく
       さんあります。

     (2)他業種の動向に注目する

       同業他社の優れている点を学んで自社経営に取り込むことは多くの会社で
       実施されています。

       たんなるまねではなく自社独自のノウハウに昇華させて活用しているケー
       スも多いでしょう。

       しかし、参考にできるのは同業他社に限ったことではありません。

       むしろこれまであまり注意を払っていなかった異業種の会社にこそ新たな
       発見のチャンスがあるかもしれません。

       たとえば、現在噛みごたえのあまりない小ぶりなガム」が売れています。

       いままでの板ガムにはない「ソフトな感触と口に入れやすいサイズ」などを
       特徴としています。

       これは菓子メーカーにとって直接の商品開発のヒントになるのは当然とし
       て、なぜ消費者がそのようなガムを好むのかを考えることで、自社商品の
       開発につなげることも可能です。

       具体的には、「ソフトな感触と口に入れやすいサイズ」という商品特徴からは、

        ・アゴに負担が少ない柔らかく糞に食べられる食品が好まれるのでは
         ないか

        ・好まれる「一口サイズ」が従来よりも小さくなっているのではないか

        ・小さくて電車内など人前で食べても目立たないので若い女性などに
         好まれるのではないか

       といった食品関連全般に関わる企業のヒントが読み取れるということです。

       また、商品開発以外でも異業種の販促手法や人材育成策などにも、ゼロ
       ベース思考の参考になるような事例はたくさんあるはずです。

     (3)「どうしたらできるか」に発想を切り替える

       斬新なアイデアを発想できても、あまり深く考えずに「そんなことは無理だ」
       という結論を下してしまうことはよくあることです。

       それが四方八方から情報を集めて「どうやっても物理的に無理」という判断
       なら仕方ありませんが、「常識的に無理だろう」という感覚的な判断で終
       わってしまうことがほとんどです。

       問題解決において、やろうとしていることが「絶対に不可能である要因」の
       ことをノックアウトファクターと呼びます。

       アイデア実現が不可能と判断する前に、本当にノックアウトファクターが存
       在するのかどうか、何とかしてそれを解決することはできないかを十分に検
       討することが大切です。

       たとえば、人間は呼吸が必要なため、そのままでは長時間海中にとどまる
       ことはできません。

       しかし、酸素ボンベを使うことで、それを解決することができました。

       また、東京とニューヨークにいる人間が直接顔を合わせて会話をすること
       はできませんが、TV電話を使えば疑似的にそれを行うことができるように
       なりました。

       さらに高度な技術開発を伴わなくても「ノックアウトファクターもどき」を退治
       することは可能です。

       今では当たり前となった「1000円理髪店」も昔の常識では採算的には絶対
       に成り立ちませんでした。

       しかし、サービスを最低限に絞り、さまざまなオペレーション上の工夫をす
       ることで、10分間カットを実現し、大量集客で安定的に利益を確保すること
       に成功しています。

       ゼロベース思考によるアイデア創出はまさにこのような「ノックアウトファク
       ターもどき」との戦いになります。

       「できない理由を探す」のではなく、「どうやったらできるか」に完全に発想を
       切り替えることが大切です。

       逆に「あらゆる検討をしたが、どう考えても解決できないノックアウトファク
       ターが存在する」と判断した場合は、そのアイデアはすでに開発途中であっ
       ても即刻中止し、別のアイデア創出に着手すべきです。

   3.ゼロベース思考による経営戦略

     ここまではおもに新商品開発や新事業開発を中心に話を進めてきましたが、
     ゼロベース思考の範囲はそれにとどまりません。

     自社の経営戦略を考える際には、たとえば以下のような視点についても仮説
     思考だけではなく、ときにはゼロベース思考で考えて、これまで「無理」と考え
     ていたことに、本当にノックアウトファクターは存在するのかどうか、さまざまな
     視点から検討してみましょう。

   4.つねに「そもそも」に立ち返る

     ゼロベース思考とは、現在当たり前のように取り組んでいる施策について、 

       「そもそもこれは何のために行っているのか」

     という原点につねに立ち返り、目的と手段を再確認することでもあります。

     前述の「(1)顧客志向を徹底する」というのも、「すべてはお金を払ってくれる顧
     客ありき」という商売の「そもそも」の原則に立ち返っているだけです。

     このように考えると毎日当たり前のように行っている業務についても、そもそも
     「何のために行っているのか」、「その目的は正しいか」、「目的達成のための
     手段は正しいか」について、定期的に確認してみるのがよいと思います。

     たとえば、

      ・社員の士気を高めるために行っている毎日の朝礼はその目的を
       果たしているか
       →士気を高めるために違うやり方があるのではないか、毎日ではなく
         週一ではだめか

      ・地域貢献の一環として始めた事務所前道路の清掃について社長は
       目的を理解しているか
       →さぼると社長に叱られるから仕方なく手抜きでやっているのではないか

     といった、日常業務についても新たな目的や意義、最適な手段をみつけられる
     かもしれません。
 

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勝ち残る競争戦略
 

  農耕民族型の経営

   1.防犯用ミラーで8割のシェアを占める成功企業

     コンビニエンスストアなどでは、万引き防止、防犯用に円形の鏡が設置されて
     います。

     天井の隅に設置されているこの防犯用ミラーで約8割というシェアを占めてい
     るのが、コミーという中小企業の製品です。

     同社は、もともとは店舗の看板やディスプレー製品を扱う看板業でした。

     防犯ミラーの原型は、実は、看板の素材に使用されるアクリル樹脂製の凸面
     鏡にモーターを取り付けて集客用のディスプレーとして製造した「回転ミラック
     ス」でした。

     この集客用のディスプレーを30個も注文したスーパーマーケットがあり、その
     用途を聞いてみると、製造側が意図していた「集客」でなく「万引き防止」に役
     立つというものでした。

     これをヒントに、同社は防犯ミラーに本格的に取り組むことになったのです。

     その後、回転型だけでなく、固定式のミラーや卓上型、さらに形も丸型や角型
     とさまざまな防犯ミラーを製造していきました。

     同社の小宮山社長は、防犯ミラーという狭い市場でいかに生き延びるかを考
     え、独自の考え方を身につけました。

     それは農耕民族型経営という考え方です。

     たとえば、大企業のように、一部のエリートが生き残りをかけて域烈な争いをし
     ながら会社を動かすやり方もあります。

     そこでエリートになれなかった多くの社員は、いわば大企業の歯車的な役割を
     こなしながら、厳しい競争社会を生き延びていきます。

     これが大企業の一般的な狩猟民族型の実態で、動物でいえば弱肉強食の
     「肉食動物」の世界です。

     これに対して、小宮山社長がいう農耕民族型企業とは、競争して相手を食うか
     相手に食われるか、すべてを食い尽くすかという経営とは異なり、いわば自分
     の成長に必要なだけ自然にある草木を育て摂取していく、というような経営です。

     目立った急成長や莫大な利益を手にすることに血眼になるのではなく、自社
     の存在価値をわきまえた、永続性を重視した経営といえます。

     その経営を行なうためのポイントが、競争よりオリジナリティーという考え方です。

   2.競争よりオリジナリティーを重視する考え方

     コミーが防犯ミラーに進出するきっかけとなった「回転ミラックス」の展開におい
     ても、狭い市場で、自社の製品がどのように使用されているのかをしっかりと
     把握していきたいという、地道にオリジナルな市場を守る視点が感じられます。

     同社のホームページには、小宮山社長の次のようなメッセージが掲載されて
     います。

     「日本企業の9割は毎日『競争』で明け暮れていますが、コミーはそのエネル
     ギーを『創造』に使っています。

     コミーのもっている土壌に合った種を蒔き、じっくりと育てます。

     そして『特許』や『販売・製造のノウハウ』というバリアをつくり、外敵を防ぎま
     す」「商品はすべてオリジナル。真似もしないし、真似もされません」。

     そして、自社のことを、「世界のどこにもない商品を創る農耕民族的企業」と称
     しています。

     いたずらに競争に勝つことを目的にするのではなく、自社の強みをしっかりと
     見つめ、その強みを生かす経営を志向している決意がうかがえます。

     農耕民族的な経営とは、競争よりもオリジナリティーの創出を優先し、限られ
     た市場分野でつねに製品の改善や改良を行ないながら、ほかの企業に模倣
     されないオリジナルな製品を創り出し、大企業にとっては参入の魅力が少ない
     分野・市場で強みをしっかりと育てている企業、といえるでしょう。

     また、こうした内容は、コミーの掲げる「私たちは売上の拡大よりも、『出会いの
     喜び』『創る喜び』『信頼の喜び』を味わえる仕事を大切にしています」という言
     葉に表わされています。

     社員の募集に際しても、

      「日本企業の多くは、絶えざる競争の中で生きています。戦いはそれだけでく
      たびれる。そのエネルギーはもっと創造に向けられるはず。これが会社員生
      活で自分を活かせなかった私が選んだ道です。限定された市場で、売上の
      拡大よりもお客様の意見を聞きながら、製品の改良を続けたり、新しい商品
      を生み出す。そのために、各人の個性が十分に発揮でき、じっくり仕事がで
      きる環境を整えてきました。当社では一人ひとりが個性を活かしながら活躍
      してくれています。各人が創造し続ける限り、ビジネスは拡大する。それが私
      の哲学です」(出典:コミ一株式会社)

     というメッセージが、どのような社員を期待しているのか、どのような会社にし
     ていきたいのかを明瞭に示しています。

  □自社の市場を創造する

   1.競争よりも創造を大切にする製品開発

     競争よりも創造を大切にするコミーが、実際にどのような製品を創造してきた
     かをみていきましょう。

     (1)「死角を生かす気配りミラー」

       「回転ミラックス」を防犯用に展開してから、同社は防犯ミラーだけでなく、
       自分以外の人や物の動きをとらえる鏡を開発、死を生に変える願いを込め
       て「死角を生かす気配りミラー」とネーミングして、同製品でも市場を創造し
       ています。

       防犯ミラーのような製品を必要とするのは、防犯上これを必要とするコンビ
       ニエンスストアや一般の店舗だけではありません。

       コミーは、工場や倉庫向けには、物流の搬入車両が接触することを防ぐた
       めに死角を認知できるミラー、百貨店などに向けては、エレベーターの外に
       いる顧客をエレベーターの中から認知して、乗り遅れや安全を確認するた
       めのミラーとして製品化を進めています。

       金融機関のATMに後方確認用ミラーとして設置されている事例もあります。

     (2)航空機の手荷物入れに設置

       さらに、積極的に市場を創造した例としては、航空機の手荷物入れに設置
       された製品の例があります。

       客室乗務員が、歩きながら手荷物入れの内部を確認することができる仕組
       みです。

       この市場は、出張帰りの飛行機のなかで発想され、航空関係者へのPRを
       地道に行なうことで開拓されたものです。

       もともとの防犯ミラーに使用されている材料であるアクリル樹脂は、可燃物
       であるため、そのままでは飛行機の中に設置することはできません。

       そこで、素材に自己消化性のある樹脂やアルミニウムを使用することで耐
       火性をもたせました。

       その後も、実際に飛行機の機内で使用されようになるまで、厳しい航空機
       のスペックを満たす改良と創造が行なわれています。

   2.創造に生き残りをかけた戦略

     同社にとっては、オリジナルであること、他社の模倣もしないし、模倣されない
     ことが重要なポイントであるため、競争でなく、創造に生き残りをかけているこ
     とがわかります。

     「土壌にあった種を蒔きじっくりと育て、特許や販売・製造をノウハウというバリ
     アで外敵を防ぐ」という戦略がすべてです。

     自社の勝ち残れる分野を絞り込んで、その「小さな市場を極める」戦略です。

     そのために、商品はすべてオリジナルで、ユーザーの声にしっかりと耳を傾け
     創造に取り組んでいるのです。

     こうした戦略は、小宮山社長のいう農耕民族的企業の生き方といえます。

     「狩猟民族的」が主流の企業社会においては異例と考えられるかもしれません。

     しかし、農耕民族型の生き方は、同社のように限られた企業だけの得意な生
     き方でしょうか。

     この農耕民族型企業の戦略は、「小さな市場を極める」戦略として、中小企業
     の生き残りに適した戦略なのです。

     この戦略を少し理論的に分析して、農耕民族型企業として生き残るヒントを見
     つけ出していきましょう。

  □中小企業が勝ち残る競争戦略の分析

   1.競争戦略を分析

     競争よりも創造、という草食動物的な経営は、競争を避けるという意味でひと
     つの競争戦略です。

      どのような競争をするかという戦い方を考えることも競争戦略ですが、
      競争をいかに避けて生き残るかということを考えることも、
      また競争戦略のひとつなのです。

     (1)競争における自社の地位に注目した分析

       一般に、競争戦略は2つの視点から分析されます。

       まず1つは、

       競争における自社の地位に注目した分析です。

       すなわち、自社が生存している業界、市場において、「リーダー」であるの
       か、「リーダーを追いかけるチャレンジャー」であるのか、「リーダーの後を
       追うフォロワー」であるのか、あるいは、「競争の少ない隙間市場でミニリー
       ダーを目指すニッチャー」であるのか、という4つの類型で自社を位置づけ
       て戦略を分析・検討していく方法です。

     (2)ターゲットとする市場競争の優位性による分析

       もう1つが、

       ターゲットとする市場について、業界全体の市場をターゲットとしているの
       か、業界のうち特定分野に絞られた市場をターゲットとしているか、という
       「市場の軸」と、競争優位性が他社より安いコストにあるのか、それとも顧
       客から認められる特異性にあるのかという「優位性の軸」を利用して競争戦
       略を分析する方法です。

       ターゲットとする市場は、業界全体と特定分野の2つに、一方、競争優位の
       タイプは、低コスト志向か、顧客から認められる特異性かの2つに区分され
       ます。

       この2×2の4つのマトリクスに競争戦略を位置づけて、分析・検討していく
       方法です。

       4つのマトリクスに位置づけられる戦略は、コストリーダーシップ戦略、差別
       化戦略、および、「コスト集中」と「差別化集中」の2つの集中化戦略です。

       ①コストリーダーシップ戦略

        業界全休をターゲットに、低コスト志向(同業他社よりも安いコストを
        実現すること)で勝ち残る戦略です。

        規模の経済や、操業度を上げる手段がとられ、一般には大企業に
        有利な戦略です。

        半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ社や、カシオ計算機が
        デジタル時計に進出した際に電卓で養ったエレクトロニクス技術を
        応用し、技術開発・生産から販売までの一貫したコストダウン体制を
        組み上げ、安価で正確なデジタル時計を大量に生産することで市場
        を創造した事例があげられます。

       ②差別化戦略

        業界全体をターゲットとして、顧客から認められる特異性を武器に
        した戦略が「差別化戦略」です。

        顧客から、「あの企業はどこか違う」という価値を認めてもらえる
        企業がとっている戦略です。

        その業界の品質リーダーがこの戦略をとっています。

        ブランドという差別化された価値が注目される戦略でもあり、ソニー
        や本田技研工業の戦略を考えるとわかりやすいでしょう。

       ③集中化戦略

        ターゲットを特定分野に絞込む戦略が「集中化戦略」と呼ばれる
        戦略です。

        この戦略は、競争優位の根拠をコストにする「コスト集中」と、顧客
        から認められる価値を意識した「差別化集中」の2つの戦略に分け
        られます。

        コスト集中の戦略としては、たとえば、軽自動車に特化することで、軽自
        動車に関する製造コストを下げて競争に勝ち残っているスズキ自動車、
        差別化集中の戦略としては、顧客を高額所得者に絞り込み、高品質のイ
        メージを顧客から得ているダイナーズカードの例などを考えることができ
        ます。

   2.中小企業に求められる差別化集中戦略

     農耕民族型の経営については、市場の地位で考えれば、たんにニッチャーの
     位置づけとなりますが、ターゲットとする市場と競争の優位性の分析を利用し
     て考えてみると、集中化戦略のうち、差別化集中戦略と位置づけることができ
     ます。

     コミーの戦略は、競争戦略的には特定分野に絞り込み、他社が真似できない
     製品を開発することにより、顧客から開発力のある会社として認めてもらうとい
     う差別化集中の戦略といえるでしょう。

     実は、この差別化集中戦略が、中小企業が成長を図るうえでの優れた戦略と
     なりえるのです。

     「死角を生かす」という視点から、特定分野の市場、たとえば工場の安全確認
     ミラーやエレベーターの乗降確認のためのミラー、ATMののぞき見防止のた
     めの後方確認ミラー、さらには、航空機の手荷物入れ用確認ミラーなどのニー
     ズに注目して、「真似もしない、真似もされない」を目指し、全製品オリジナルと
     いう開発の取り組みは、中小企業が競争を避けながら成長していくための、わ
     かりやすい成功事例といえるでしょう。

     こうした成功事例は、自社の基本戦略を考えるうえで大きなヒントになるので
     はないでしょうか。

     小さな市場を極めて、その市場で顧客から認められる価値を創造していくこと
     ができれば、模倣ではない自社の特定市場を創造し、競争を避けて勝ち残る
     という優れた経営戦略が実現できるはずです。

     他社がやっているから、利益をあげているから、ということではなく、自社が本 
     当にこだわる製品や技術、サービスがどこにあるのかを見つめ、自社が狙う
     べき市場はどこにあるのかを発見することが、実はもっとも大切な基本戦略に
     つながるのです。
 

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中小企業の戦略・戦術
 

  ■経営戦略・戦術決定のステップ

   常にめまぐるしい経営環境の変化の中で、特に中小企業にとっては厳しい経営
   環境が続いています。

   荒天の中を航行する船と同じく、厳しい環境の下では、自社の特徴を活かした戦
   略・戦術を定期的に見直し、自社の経営の舵取りを行うことが必要です。

  □経営理念の確認

   経営理念とは、「自分たちはこうありたい」「社会に対してこのような貢献をしたい」
   といった自社が存在する意義を明文化したものです。

   経営を行ううえでの根本的な方針ともいえるものです。

   たとえば「○○の流通を円滑にすることで、地域小売店の繁栄と消費者の満足度を
   高める」などと設定します。

   経営理念は、作るだけでは意味がありません。

   全社員に理念が浸透し、理念に沿った行動ができてはじめて有効になります。

   そのため、朝礼や会議など機会があるごとに繰り返し社員に説明し、自分たちの
   日頃の行動が経営理念に沿ったものになっているかを問いかけることが大切です。

  □外部環境の分析

   「経営とは環境に適応することだ」という経営者もいます。

   この言葉は外部環境に適応できなければ企業は成長できない、あるいは生き
   残っていけないということを表しています。

   うまく外部環境に適応するためには、とくに自社に影響を与える項目を見極めな
   がら分析することが必要です。

   自社の取扱商品にかかわる規制緩和の動向や競合企業の出現、業界再編の動
   きなど影響の大きい事項については注意しておきましょう。

  □内部環境の分析

   外部環境をふまえ、内部環境としての自社の経営資源を分析します。

   自社のことについては甘くなりがちですので、客観的に分析するために他社と比
   較しながら検討したり、第三者の意見を聞くとよいでしょう。

   なお、外部環境と内部環境の分析にはSWOT分析が有効です。

   SWOT分析とは、経営環境を判断するために、内部的な「強み(STRENGTH)」
   「弱み(WEAKNESS)」と、外部的な「機会(OPPORTUNITY)」「脅威 
   (THREAT)」を分析し、その結果を検討したうえでこれから自社が進んでいく方向
   を定めようとする手法です。

  □戦略の決定

   戦略とは自社のめざすべき将来の姿を描き、その姿を実現するためのシナリオを
   描くことです。

   たとえば「徹底したリテールサポート力で、地域シェアナンバー1をめざす」という
   のが戦略です。

   戦略は、経営理念に基づくものでなくてはなりません。

   たとえば、経営理念では「顧客第一主義」をうたっているのに、顧客を軽視するよ
   うな戦略を取るべきではありません。

   また、戦略は後述する戦術にブレイクダウンされますが、戦略そのものが間違っ
   ていると、いくら緻密な戦術を立てたところで、まったく意味をなさないことになります。

   したがって、戦略策定においては自社の現状の強みや弱み、他社との差別化
   策、市場動向、競合動向などを十分に検討したうえで行う必要があります。

   戦略の決定は、3つの具体的ステップに分かれます。

   まず、自社の事業範囲の決定を行い、次に差別化方針の決定、最後に目標とな
   る姿の設定を行います。

   なお、事業範囲の決定においては、外部環境の変化や内部環境によって転業や
   多角化という方法も考えられます。

   戦略決定の選択肢のひとつとして転業や多角化も想定しておくことが必要です。

  □戦術の決定

   前項で決定した戦略を実践していくための具体的な方法をテーマごとに検討し、
   決定していきます。

   ここで大切なのは、策定する戦術が戦略に沿ったものであるかを十分に確認する
   ことです。

   いくら素晴らしい戦略を策定することができても、それが適切に戦術に反映されな
   ければ意味がありません。

   正しい戦略が策定され、かつそれが適切に戦術に展開された場合のみに戦略は
   成功するということになります。

   また、最初は適切な戦術の展開がなされていても、途中のやむを得ない戦術変
   更などで、それが崩れることもあります。

   そのため、戦略と戦術の整合性については、定期的に確認する必要があります。

                        経営戦略・戦術決定の概要図

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