経営理念と経営戦略は経営の羅針盤

         

経営理念と経営戦略は経営の羅針盤


  多くの企業では、売上計画や利益計画等の経営計画を立てています。

  しかし、今日の激変する時代にあっては、経営計画を立てても、なかなかそのとおりには
  進みません。

  経営計画どおりに進まない外部の変動要因が大きすぎるからです。

  そこで、まず、「3年から5年後のわが社の展望」を「ビジョン」として描くことが大切
  です。

  その場合、「ビジョン」策定の前提となるのが「経営理念」です。

  なぜなら、「経営理念」は、企業経営の羅針盤となるものだからです。

  いいかえれば、「経営理念」を明確にした企業だけが、どんなに環境変化が激しくとも、
  確固とした経営方針を堅持し、確実に企業経営を維持、発展させることができるのです。

  そこで、今日の経営環境下で活力ある企業に不可欠となっている「経営理念」、
  「ビジョン」、そして「経営戦略」の策定手順について考えてみましょう。
   
  ■経営理念と経営戦略

   経営理念は企業の心棒であり、社会・顧客・従業員との関わりを通じた企業の存在意義
   を内外に示すものです。

   経営理念には経営者の強い思いが込められていて、通常は普遍的な内容としてまとめ  
   られます。

   一方、経営戦略とは、経営理念で示した自社の理想的な姿と、現状のギャップを埋める
   ために必要な取り組みを行うものです。

   つまり、経営理念がしっかりとしていなければ企業の理想と現実のギャップを正しく認識
   できないため、効果的な経営戦略も策定できないことになってしまいます。
   
  ■経営理念

   経営理念は、各社各様にさまざまな形で策定されており、定型的なものが存在するわけ
   ではありませんが、経営理念(自社の存在意義、経営姿勢、自社に課された社会的責任
   等を内外に示すもの)は、企業活動を展開するためには不可欠なものです。

   継続的に事業活動を行い存在し続ける企業体(ゴーイング・コンサーン)であることを
   前提として、自社の存在意義と目的すなわち社会的責任(社会的使命)を社内外に示
   すためのものです。

   つまり、「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会になく
   てはならないのか」を文章で表したものです。

   経営理念は、自社の存在意義や社会的責任
   と経営姿勢などを示したものであり、企業活動羅針盤経営1.jpg
   の羅針盤となるものですが、これをより具体化
   して、未来の夢や願望を青写真化することが
   大切です。
   
  □経営計画書作成に欠かせない理念

   経営者は、何らかの目的や信条をもって企業を
   経営しています。

   何代も続く老舗には、先代の時代から脈々と受
   け継がれる家訓があります。

   一般的に、このようなものを経営理念と呼びます。

   つまり、経営理念とは企業活動の精神的な基盤となるものです。

   企業は、利益を追求するために経営目標を立て、それを達成するための経営方針
   計画を策定します。

   それらのベースとなるのが経営理念なのです。

   しかし中小企業の場合、経営理念が文章となって従業員に示されていることはあまり
   ない。

   これではいかに優れた経営理念を持っていても、それを従業員と共有することができ
   ていません。

   中小企業にとって厳しい経営環境が続く中、経営者と従業員が共通の理解の下で団結
   することの重要性がますます高まっています。


   そうすることで、経営者の掲げる経営理念が企業の隅々にまで浸透し、独自の企業文化
   が形成されていきます。

   また、従業員が何らかのトラブルに直面した際も、経営理念が周知されていれば、
   それに基づいた対処ができます。

   経営理念を文章化して社内外へ公表する際には、従業員や取引先、顧客が理解しや
   すいように、分かりやすく表現します。

    ・自社の存在意義・使命は何か

    ・社会に提供する商品・サービスは何か


   経営計画作りの最初にくるものが経営理念です。

   (参考)経営計画の策定手順 

        ビジョン 

    理念 → ビジョン → 行動指針 
      ↓
    方針・目標
      ↓
    機会・脅威と強み弱み(SWOT)の分析(サンプル事例
      ↓
    目標とギャップ分析
      ↓
    経営戦略の構築
      ↓
    中期(3年)・年度経営計画の策定


   理念は経営の羅針盤となるもので、継続的に事業活動を行い存在し続ける企業体
   (ゴーイング・コンサーン)であることを前提に、自社の存在意義と目的(社会的責任)
   を社内外に示すためのものです。

   「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会になくてはなら
   ないのか」を文章で表したものが理念です。

   中小企業経営者の中には「理念で飯が食えるか」といった声も聞こえてきます。

   組織を単なる個人の集合体と考え、ジンザイを人材と捉え、「儲ければいい」だけの考
   えであれば理念もビジョンも必要ないでしょう。

   会社を我が子のように育ててきた社長にとって、会社が単なる儲けのためだけの場で
   はないはずです。

   「事業は人なり」の言葉にあるように、人材を人財に育てることが社長・管理職に
   課せられた責務です。

   会社経営をしていく中で、全社員が発生する様々な困難に一体となって立ち向かうため
   にも理念、ビジョンは欠かすことのできない「錦の御旗」なのです。
   
  □経営理念の策定

   1.基本理念の策定手順

     基本理念とは、自社(経営)理念の核となるもので、継続的に事業活動を行い存在
     し続ける自社体(ゴーイング・コンサーン)であることを前提として、自社の存在意
     義と目的すなわち社会的責任(社会的使命)を社内外に示すためのものです。

     つまり、「わが社は社会的にどんな役割を果たしているのか、どんな点で社会にな
     くてはならないのか」を文章で表したものが基本理念です。

      (1)シートへの書き出し

        自社の存在意義や目的、また社会的な責任について書き出してみましょう。

        これは、あくまでも下準備ですので、メモ書きで構いません。

        思いつくまま、どんどん書き出してみて下さい。

      (2)キーワードのピックアップ

        次に、シートに書き出したものの中からキーワードをピックアップします。

        例えば、「自然環境」、「喜び」、「安心と安全」など、自社の社会的な使命
        (ミッション)とはこれだというキーワードを選び出します。

        この段階では、数にこだわる必要はありません。「これこそがわが社を表現す
        る絶対唯一のキーワード」と思われるものがあれば一つだけでも構いません
        し、5個でも10個でもOKです。

        一般的には3〜5個に絞り込んでおくと、次の作業(基本理念の成文化)の
        際に便利でしょう。

      (3)基本理念の成文化とCPSの原則

        「自然環境に優しく、人々に喜びを与える企業を目指します」などのよう
        に、ピックアップしたキーワードのうち特に重要なものを選択・整理し、文
        章化します。

        最初はなんとなく照れ臭いような、恥ずかしいような気持ちになるかもしれま
        せんが、ここでは、思い切って大胆な文章にしてみましょう。

        また、できれば2〜3案作成し、幹部の人たちの意見を出してもらうようにして
        もよいでしょう。

        基本理念成文化の際のポイントは、

         C(Creative=独創的)

         P(Powerful=力強さ)

         S(Simple=簡潔)

        な表現、つまり、CPS三原則を心がけることです。

   2.行動理念の策定手順

     行動理念とは、企業の経営姿勢、企業としての行動基準、すなわち、事業活動に
     あたっての価値基準のことをいいます。

     具体的には、「経営革新への取り組み姿勢」のほか、事業、顧客、商品(サー
     ビス)、さらには社員に対する取り組み姿勢などを表したものです。

     それぞれの項目について経営者の“思い”を書き出してみます。

      基本理念策定シート

       ・わが社の存在意義、存在目的

       ・わが社の社会的責任

      行動理念策定シート

       ・経営革新への取組み姿勢

       ・事業への取組み姿勢

       ・顧客(取引先)への取組み姿勢

       ・商品(サービス)への取組み姿勢

       ・社員への取組み姿勢
   
  ■経営戦略

   戦略または企業戦略という言葉はさまざまな場面で使われている。

   これらの戦略という言葉は、明確な定義がないまま使用されていることが多いよう
   です。

   元来戦略とは軍事用語で、相手をどうやったら打ち負かすことができるかという、
   総合的・全体的な、大所高所からの策を指しています。

   こうして考えると、企業における経営戦略とは、全体的・大局的立場から企業が所
   属する経営環境の方向性を見定め、他企業と競争し、勝ち抜いていくための方法
   を指すことになります。

   ここでは経営戦略を次のように定義ています。

   経営戦略の定義

    (1)基本的意義:経営理念に基づき経営活動の基本的な方向づけを行なうこと

    (2)具体的内容:・経営環境(外部環境)の変化に対応する

               ・自社が成長するための基盤となる事業分野を選択する

               ・その事業分野における競争上の健位性を確立する

               ・経営資源の有効配分を行なう

   日本の経済が成熟して企業間競争はますます激しくなり、さらに顧客のニーズも
   多様化・高度化しています。

   こうした経営環境の変化に対応し他社との競争優位を確保するには、優れた経
   営戦略が必要です。

   また、中小企業に目を向けると、従来日本の産業構造の特徴であった大企業を
   頂点とする下請け分業構造が崩れています。

   大企業が取引企業を選別する一方で、中小企業は海外進出や新たな取引先の
   開拓などをしています。

   このようなとき、自社が成長するための基盤となる事業分野の選択や経営資源の
   有効配分を進めるうえで、新しい経営戦略の策定が必要になってくる。

   そこで、中小企業に求められる経営戦略の方向性を探り、具体的な策定ステップ
   をご紹介します。

  □中小企業の経営戦略の方向性

   経営戦略とは、ビジョンとそれを具体化した営計画を実現するための方策、
   取り
、手立てのことです。

   経営戦略というともっぱら大企業のものと考える人もいるようです。

   しかし、経営環境がますます厳しくなるなか、中小企業も生き残りを賭けた対応が
   迫られている。 

   ここでは、中小企業の現状を明らかにし、具体的な戦略の方向性を示していきま
   す。

    1.中小企業を取り巻く経営環境

      戦略を検討するには、自社のおかれている現状を分析する必要があります。

      中小企業を中心とした経営環境の変化と中小企業の特徴を、SWOT分析 
      (強み・弱み/機会・脅威の分析)によって整理すると次のようになります。

       (1)中小企業を取り巻く環境に「機会・脅威」

         <機 会>

          ・顧客ニーズの多様化が進み、市場ではさまざまなミニマーケットが
           できている。

          ・規制緩和や情報化の進展で新しい市場が芽生えている。

          ・従来の企業系列が崩れ、中小企業の間でも新しい企業提携の
           可能性が生まれている。

          ・ベンチャー企業の成長が期待されるなか、公的機関や民間から
           の資金調達や経営情報の提供など各種支援体制が整備されて
           いる。

         <脅 威>

          ・世界的レベルでの大競争時代を迎え、企業間競争が激化している。

          ・日本経済が成熟期を迎え、鉄鋼、自動車、家電など、かつての
           リーディング産業の大きな成長が見込めなくなっている。

          ・大企業を頂点にした下請け分業構造が崩れ、取引の減少や中止
           を迫られる下請け企業が増加している。

       (2)中小企業の「強み・弱み」

         <強 み>

          ・既成概念にとらわれずに、大企業に真似のできない独創性・個性
           を発揮しやすい。

          ・トップの強力なリーダーシップや迅速な意思決定により、経営の
           スピードが速い。

          ・組織が小さいことから環境変化に対する柔軟性・機動性が高い。

         <弱 み>

          ・中小企業の場合、創業経営者などによる個人的色彩が強く、
           経営が過去の経験や独断に基づいて行なわれることがある。

          ・大企業に比べ信用度が小さいことから、資金調達や取引において
           不利な面がある。

          ・人材や財務面など経営資源が乏しく、経営基盤が弱い場合が多い。

    2.求められる中小企業の経営戦略

      経営環境の変化でとくに注目されるところは、市場の成熟による顧客ニーズ
      の多様化・高度化に伴い、ミニマーケットあるいはニッチ(すき間)マーケット
      が顕在化していることです。

      しかも、これらの市場は流動的に変化し、さらに、そのスピードも速いものに
      なっています。

      したがって、これからの企業には、つねに変化する顧客ニーズに迅速に対応
      できる能力と自社独自の商品・サービスを提供できる能力とが求められてい
      ます。

      これらの動きは中小企業の強みとする機動性と独創性に合致しています
      が、一方で中小企業の弱みである乏しい経営資源を補完していかねばなり
      ません。

      そこで、中小企業の経営戦略の方向性のひとつとして、

       ・独創的事業を創出できる自社固有の技術やスキルを醸成する

       ・外部との連携を通じて自社の中核部分以外の経営資源を補完する

      ということが考えられます。

      こうしたことから、中小企業のとるべき基本的戦略は、専門化戦略と外部連
      携化戦略の2つに絞り込むことができます。

              
      (1)専門化戦略:コアコンピタンスの確立

        中小企業の基本戦略のひとつ目は専門化です。

        専門化とは、顧客に提供する製品やサービスの独自性を強めること。

        ミニ(ニッチ)マーケットが乱立する市場は、専門家、すなわち多くの「オン
        リーワン企業」を容認するものであって、企業の棲み分けを可能にしてい
        ます。

        そして、この市場を狙った戦略が専門化戦略です。

        ニッチ市場でオンリーワンの地位を築けば、必然的に競争は回避され他
        企業に対し優位性を確保できます。

        この実現は、自社特有の製品・サービスを創出する力が必要です。

        ところで、企業に蓄積できる能力には限界があるため、どの領域で専門
        化していくのかを明らかにする必要がある。

        これはコア・コンピタンス(中核的な能力・知識の塊)の確立を意味してい
        ます。

        コア・コンピタンスは「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならで
        はの価値を提供する企業の中核的な力」であり、個別のスキルや技術で
        はなくそれらを束ねた全体であり、組織における集団的な学習能力であ
        るといえる。

        中小企業においては、自社におけるコア・コンピタンスを確立し、専門化
        戦略をとることが大企業以上に求められています。

      (2)外部との連携化戦略:アウトソーシングによる外部資源の有効活用

        市場の変化や技術の革新が著しいと、中小企業の経営資渡だけで戦略
        的な対応をするには限界がある。

        専門化を進めながら、外部との連携化戦略を展開することこそ中小企業
        の取るべき戦略のひとつであるといえます。

        これは、自社の中核となる機能に経営資源を集中させる一方で、それ以
        外の部分はアウトソーシング(外部化)を行ない、経営資源の補完性を高
        めることを意味する。

        具体的には、

         ・他社との事業提携を行なう

         ・情報技術を利用したネットワークにより企業の情報化を推進する

         ・大学、研究機関と連携する

         ・民間の各種サービスに外部委託する

        などが考えられます。

        こうしたことは、従来の日本企業の系列に見られたような長期的・安定的
        な取引関係ではなく、「最適なタイミング」「最適な場所」「最適なコスト」
        による自由な取引関係です。

        あるいは、情報ネットワークなどを利用して企業との緩やかな結びつき、
        すなわち戦略的提携を進めていこうとするものです。

        以上をまとめると、

         外部連携化戦略は、中小企業の経営資源を補完すると同時に、企業
         連携(ネットワーク)を有機的に組み合わせ、環境変化に適応できる
         組織の機動性をより一層高めることを目指すものである

        といえます。

  □経営戦略策定のステップ

   ここまでは、中小企業に求められる経営戦略の方向性を探ってきました。

   その基本は、専門化戦略と外部との連携化戦略でした。

   しかし、これらは自社の現状に適合した経営戦略の策定ステップを踏んで、具体
   的な個別戦略に落とし込んでいかねばなりません。

   では、具体的にどのようなステップで、経営戦略を策定していけばよいのか。

   ここでは一般的な経営戦略策定ステップに沿って基本手順を明らかにします。

    1.経営理念の確立

      経営戦略の前提として、企業の文化・風土を見定めるとともに長期的な企業
      の方向性を決定します。

      経営戦略が手段的、機能的なものであるのに対して、経営理念は「企業が
      事業を通じて社会に対して何をしたいのか」「どういう価値観や規範に基づい
      て事業を行なおうとしているのか」を示すものです。

      中小企業経営者の中には「理念で飯が食えるか」といった声もあるようだ。

      組織を単なる個人の集合体と考え、ジンザイを人材と捉え、「儲ければいい」
      だけの考えであれば理念もビジョンも必要ないでしょう。

      会社を我が子のように育ててきた社長にとって、会社が単なる儲けのためだ
      けの場ではないはずです。

      会社経営をしていく中で、発生する様々な困難に全社員が一体となって立ち
      向かうためにも理念、ビジョンは欠かすことのできない「錦の御旗」なのです。

    2.経営環境の把握と分析

      (1)外部環境と内部環境

        経営活動に影響を及ぼす要素を洗い出し、自社のおかれている現状や
        今後の経営の方向性を分析します。

        経営環境は、おもに次の2つに分類できます。

         外部環境:企業の外から影響を受ける環境要素で、政治・経済環境、
                技術動向、市場動向、競争相手の動向などがある

         内部環境:企業の内に存在している環境要素で、生産力、財務力、
                人材、マーケティング力、組織風土などがある
       
      (2)SWOT分析SWOT1.jpg

         内外の環境と自社経営に及ぼすで
         あろう事項から強み、弱み、機会、
         脅威を明確化します。

         この分析から、自社の強みを
         活かし、事業機会を捉える
         ような戦略を抽出します。

    3.経営者の意思・社員の夢と現状との
      ギャップ分析

      経営理念が自社の将来のあるべき姿を
      象徴しているとしたら、自社の現状との
      間にギャップがあって当然であり、その
      ギャップを埋める作業が具体的な戦略の策定となります。

      この段階では、ギャップを自社における経営上の問題点として明確にしてお
      きます。
         
    4.事業ドメインの確立

      事業ドメインは自社が本業として行なう事業分野のことで、経営理念に基づ
      き自社の強みを発揮しうる事業領域を意味します。

      経営環境の変化が激しいときは、これに応じ事業分野も変化し、事業ドメイ
      ンである本業の再構築も不可欠となる。

      上記で取り上げたコア・コンピタンスは、この事業ドメインを創出する企業の
      源泉となるものです。

    5.戦略代替案の作成と選択

      明らかになった経営上の問題点をクリアする経営戦略の具体案(代替案)を
      複数作成します。

      この中から一定の評価のもとで合理性のある最適な経営戦略を選択する。

    6.経営資源の配分

      一般的に企業の経営資源は、ヒト・モノ・カネ・情報といわれます。

      あらゆる企業にとってこれら経営資源は限られたものであり、経営戦略に基
      づいてこれを最適に配分し最大の効果を得ることが重要です。

      具体的には、事業組織の組み替え、事業の資金配分などがあげられる。

  □中小企業の戦略技法と戦略策定視点

   経常戦略を策定するとき、有効な戦略技法を活用していくことがポイントです。

   ここでは、代表的な戦略技法の概要を説明するとともに、それぞれにおいて、中
   小企業にとっての経営戦略策定上の視点を記述します。

    1.成長戦略

      企業の事業額域を拡大していくためには成長戦略が基本になります。

      そのとき「市場−製品」の組み合わせで、自社の成長の方向性を決定してい
      くことかできます。

       (1)市場浸透戦略

         現在の「市場−製品」に対して、販売戦略などで市場占有率の増大を
         目指し、成長の方向性を見出す戦略です。

       (2)市場開発戦略

         現在ある製品を、新しい使い方などを探ることによって、新しい市場
         に 投入する戦略です。

       (3)製品開発戦略

         既存の市場に対して新製品を開発し、新たな需要を喚起する戦略。

       (4)多角化戦略

         市場−製品の両面でまったく異なった分野に進出する戦略です。

      企業の成長は、この4つのいずれかの基本的枠組みの戦略によって実現し
      ます。

      成長の方向性を考えるとき、既存の経営資源(販売、生産、技術、経営管理
      など)のシナジー(相乗)効果測定を行ないます。

      たとえば、多角化戦略において、市場と製品が新しくても、流通や技術の共
      通性がある場合は戦略としては有効性が高いものになります。

      とくに中小企業が成長戦略で事業拡大していくには、シナジー効果を最大限
      に考えた戦略策定が望まれます。

    2.競争戦略(ポーター 3つの競争戦略)

      経営戦略の大きな目的のひとつとして、競合他社との競争優位を確保するこ
      とがあげられます。

      競争優位の源泉となる競争戦略は、次の3つに類型できます。

       (1)コスト・リーダーシップ戦略

         業界全体の広い市場をターゲットに他社のどこよりも低いコストで
         評判を取り、競争に勝つ戦略です。

       (2)差別化戦略

         製品品質、品揃え、流通チャネル、メンテナンスサービスなどの
         違いを業界内の多くの顧客に認めてもらい、競争相手より優位に
         立つ戦略です。

       (3)集中化戦略

         特定市場に的を絞り、ヒト・モノ・カネの資源を集中的に投入して
         競争に勝つ戦略です。

         これは、さらに2つの戦略に分類できます。

          @コスト集中で、特定の市場でコスト優位性に立つことで競争に
           勝つ戦略。

          A差別化集中で、特定の市場で差別化することで優位に立ち、
           競争に勝つ戦略。

   中小企業の場合、競争戦略の柱は専門化を志向した集中化戦略になりますが、
   業界・業種によっては、集中化戦略を取りにくい特性を有する分野もあるでしょう。

   経営者は自社の経営資源と業界特性を考慮し、競争戦略を策定していく必要が
   あります。 

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なぜ経営理念(自社のあるべき姿)が必要か

           

中小企業だから必要な経営理念

  ■なぜ経営理念が必要か

   1.中小企業だから必要な経営理念

     経営理念とは、
      「自分たちはこうありたい」「社会に対してこのような貢献をしたい」と
      いった自社が存在する意義を明文化したもの
     と言われている。

     自分たちの行動を規定する価値観といってもよいでしょう。

     優良な企業には多くの場合何らかの経営理念が作られており、その理念を浸
     透させる取り組みを通じ、社員一人ひとりが組織の一員としての自覚を持ち、
     やりがいを感じながら日々の業務を遂行する状態を実現しています。

     また新たに入社してくる社員や取引先企業の立場からも、その企業の持つ経
     営理念に共感して入社を希望したり、取引を継続するということもごく自然に見
     られる現象です。

     しかし、社長の立場から見て「社員が期待通りの行動を取ってくれない」「社員
     によって顧客対応にばらつきがある」と悩む中小企業の多くでは、まだこうした
     「経営理念」そのものが定まっていない、あるいは経営理念はあってもそれを
     浸透させる取り組みが不十分であるケースが見られます。

     少数精鋭体制で事業活動に臨まなければならない中小企業だからこそ、社員
     一人ひとりに経営者と同じ気持ちで業務を遂行し、顧客と対応してもらうため
     の「経営理念」の重要性は高いと言える。

   2.社員の行動に一貫性を持たせる

     経営理念を定める最も大きな目的は、「社員の行動(言動)に一貫性を持たせ
     る」ことにある。

     直接顧客と接する役割の社員だけでなく、社内の事務や工場での作業の役割
     を担う社員であっても、「我が社は○○を提供している会社です」と胸を張って言
     えることが組織としての第一歩になります。

     そして、様々な価値観を持っている社員が、同じように様々な考え方をするお 
     客様や周囲の人達とやり取りをしながら進めるのが事業活動であり、放置して
     いては、社員がその都度思いついた対応やそれぞれが正しいと思う行動を 
     取ってしまい、会社としての一貫性がない状態に陥ってしまいます。

     これでは取引先企業に「あの会社は何を考えているのかわからない」といった
     印象を与えかねない。

   3.社員の画一化を図るものではない

     前述のように経営理念は会社としての価値基準であり、社員はその基準に
     沿った行動をとることになります。

     このことをマイナスにとらえて、社員の自由闊達な動きがそがれることを危慎さ
     れる社長もいるかもしれません。

     しかしながら、経営理念は同一規格のように、全社員にまったく同じ行動を強
     いるものではない。

     たとえば「自社の商品を通じてお客様を健康にする」という経営理念をもつ食
     品メーカーでは、この理念を実現するために自分にできることは何かを、それ
     ぞれの社員が考え、行動することになります。

     つまり経営理念は社員の行動の一挙手一投足を縛り付けるものではなく、社
     員一人ひとりに業務を創意工夫するためのヒントを与えるものと捉えることが
     できるのです。

  □どのように作るか

   1.夢を考えることから始める

     ある飲食店チェーンの社長は「自分たちは日本一の飲食店チェーンになる」と
     いう夢を描いていました。

     また「社員が高いプライドを持てる会社にする」ことを自分の夢として語る社長
     もいます。

     経営理念作りの最初はこんな夢を考えることから始めることが多いようです。

     社長を中心に、幹部社員が抱いた夢(こうありたいという姿)を話し合い、徐々
     に社員共通の夢が固まってきます。

     次に「日本一の飲食店チェーンとは具体的にどのような姿だろう」、「社員にど
     んなプライドを持ってもらいたいだろうか」という具合に、夢を具体的な姿にして
     いきます。

     喜んでいるお客様の顔、店舗の雰囲気、あるいはプライドを持って嬉々と働い
     ている社員の姿を思い描いて、イメージを膨らませていきます。

   2.理念作成の三原則

     経営理念は業種業態あるいは社長の価値観によって、まったく変わったもの
     になります。

     正解というものは存在しません。

     ただし、後々のことを考えて「このように作ったほうがよい」という原則がある。

     それは以下のとおりです。

      (1)社長自身の価値観で社長自身がしっかりと考えて作る
        幹部社員と意見交換を行うにしても、とにかくトップである社長自身がじっ
        くりと考えて、自分の言葉で表現することが大切です。

      (2)社会全体・顧客・社員に対しての3つの想い
        経営理念は社員だけではなく、顧客、取引先、銀行などの関係者や社会
        全体に対してのメッセージでもある。

        それらの人々に対してどのような想いを持っているかを示すことが大切で
        す。

      (3)分かりやすく簡潔な言葉・文章を心がける
        経営理念は新入社員や外部の人にも理解しやすいものでなければなり
        ません。

        また理念策定後は朝礼等でそれを繰り返して唱和していくことになる。

        分かりやすく簡潔な表現を心がけよう。

  □浸透させるには

   1.社長自らが行動に移す

     ある飲食店チェーンの社長は「最高のホスピタリティー(心のこもったもてなし)
     でお客様を幸せにする」といった経営理念を持っています。

     しかし、朝礼などでいくらそのようなことを話しても、なかなか社員に浸透しな
     かったそうだ。  

     ところが社長が行動で示すうちに次第に社員も変わってきたとのこと。

     その会社の事務所(店舗ではない)には、雨の日にはビニール傘が用意され
     ていて、傘を持って来なかった来訪者に、自由に持ち帰ってもらっているとい
     います。

     事務所への来訪者の多くは仕入れ先などのいわゆる「取引先」です。

     その取引先に対しても、社長は「わざわざ雨の日に来てもらつてありがとう」と
     いう気持ちを伝えたい思いだというのです。

     また、この社長は社員とその家族に対して、誕生日に社長直筆のカードとプレ
     ゼントを贈っています。

     社長はその理由を「自分の会社で働いてくれているすべての社員とその家族
     に、感謝の気持ちを伝えたいから」と話している。

     そしてこのような活動を続けているうちに、社員に徐々に社長のいう「ホスピタ
     リティー」の意味が伝わり、社員の接客態度が見違えるようになったということ
     です。

     経営理念は言葉で繰り返し伝えることも大事だが、それだけではなかなか浸
     透しないことも多いものです。

     しかし、社長自らが経営理念に沿った行動を続けることで、社員の行動が変
     わっていくこともあるのです。

   2.基本方針や行動指針も作成する

     経営理念を策定するときには、理念実現のためにどのような考え方で業務に
     望むのかといった「基本方針」や、より具体的なレベルの「行動指針」といった
     ものを同時に作成することが望ましい。 

     たとえば、

      ・線営理念

       「最高のホスピタリティー(心のこもったもてなし)でお客様を幸せにする」

      ・基本方針

       (1)つねにお客様の気持ちを理解するように努める

       (2)・・・・・・

       (3)・・・・・・

      ・行動指針
       (1)お出迎えとお見送りは心をこめて挨拶する

       (2)・・・・・・

       (3)・・・・・・

     という具合に、最終的には社員が日々の業務のなかで実践できる行動レベル
     まで、経営理念を落とし込んでいきます。

     このように、できるだけ具体的にすることで、社員は理念唱和という「頭での理
     解」だけではなく、日々の業務のなかで「行動の習慣づけ」が進んでいくので
     す。     

     吉田松陰の言葉にあるように、
      「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、
      実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」である。

     「理念で飯が食えるか!」という中小企業の社長もいるようだが、「理念がなけ
     れば飯は食えない!」、そんな社長になっていただきたい。

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中小企業が勝ち残る競争戦略

           

中小企業が勝ち残る競争戦略

  ■農耕民族型の経営

   1.防犯用ミラーで8割のシェアを占める成功企業

     コンビニエンスストアなどでは、万引き防止、防犯用に円形の鏡が設置されて
     います。

     天井の隅に設置されているこの防犯用ミラーで約8割というシェアを占めてい
     るのが、コミーという中小企業の製品です。

     同社は、もともとは店舗の看板やディスプレー製品を扱う看板業でした。

     防犯ミラーの原型は、実は、看板の素材に使用されるアクリル樹脂製の凸面
     鏡にモーターを取り付けて集客用のディスプレーとして製造した「回転ミラック
     ス」でした。

     この集客用のディスプレーを30個も注文したスーパーマーケットがあり、その
     用途を聞いてみると、製造側が意図していた「集客」でなく「万引き防止」に役
     立つというものでした。

     これをヒントに、同社は防犯ミラーに本格的に取り組むことになったのです。

     その後、回転型だけでなく、固定式のミラーや卓上型、さらに形も丸型や角型
     とさまざまな防犯ミラーを製造していきました。

     同社の小宮山社長は、防犯ミラーという狭い市場でいかに生き延びるかを考
     え、独自の考え方を身につけました。

     それは農耕民族型経営という考え方です。

     たとえば、大企業のように、一部のエリートが生き残りをかけて域烈な争いをし
     ながら会社を動かすやり方もあります。

     そこでエリートになれなかった多くの社員は、いわば大企業の歯車的な役割を
     こなしながら、厳しい競争社会を生き延びていきます。

     これが大企業の一般的な狩猟民族型の実態で、動物でいえば弱肉強食の
     「肉食動物」の世界です。

     これに対して、小宮山社長がいう農耕民族型企業とは、競争して相手を食うか
     相手に食われるか、すべてを食い尽くすかという経営とは異なり、いわば自分
     の成長に必要なだけ自然にある草木を育て摂取していく、というような経営です。

     目立った急成長や莫大な利益を手にすることに血眼になるのではなく、自社
     の存在価値をわきまえた、永続性を重視した経営といえます。

     その経営を行なうためのポイントが、競争よりオリジナリティーという考え方です。

   2.競争よりオリジナリティーを重視する考え方

     コミーが防犯ミラーに進出するきっかけとなった「回転ミラックス」の展開におい
     ても、狭い市場で、自社の製品がどのように使用されているのかをしっかりと
     把握していきたいという、地道にオリジナルな市場を守る視点が感じられます。

     同社のホームページには、小宮山社長の次のようなメッセージが掲載されて
     います。

     「日本企業の9割は毎日『競争』で明け暮れていますが、コミーはそのエネル
     ギーを『創造』に使っています。

     コミーのもっている土壌に合った種を蒔き、じっくりと育てます。

     そして『特許』や『販売・製造のノウハウ』というバリアをつくり、外敵を防ぎま
     す」「商品はすべてオリジナル。真似もしないし、真似もされません」。

     そして、自社のことを、「世界のどこにもない商品を創る農耕民族的企業」と称
     しています。

     いたずらに競争に勝つことを目的にするのではなく、自社の強みをしっかりと
     見つめ、その強みを生かす経営を志向している決意がうかがえます。

     農耕民族的な経営とは、競争よりもオリジナリティーの創出を優先し、限られ
     た市場分野でつねに製品の改善や改良を行ないながら、ほかの企業に模倣
     されないオリジナルな製品を創り出し、大企業にとっては参入の魅力が少ない
     分野・市場で強みをしっかりと育てている企業、といえるでしょう。

     また、こうした内容は、コミーの掲げる「私たちは売上の拡大よりも、『出会いの
     喜び』『創る喜び』『信頼の喜び』を味わえる仕事を大切にしています」という言
     葉に表わされています。

     社員の募集に際しても、

      「日本企業の多くは、絶えざる競争の中で生きています。戦いはそれだけでく
      たびれる。そのエネルギーはもっと創造に向けられるはず。これが会社員生
      活で自分を活かせなかった私が選んだ道です。限定された市場で、売上の
      拡大よりもお客様の意見を聞きながら、製品の改良を続けたり、新しい商品
      を生み出す。そのために、各人の個性が十分に発揮でき、じっくり仕事がで
      きる環境を整えてきました。当社では一人ひとりが個性を活かしながら活躍
      してくれています。各人が創造し続ける限り、ビジネスは拡大する。それが私
      の哲学です」(出典:コミ一株式会社)

     というメッセージが、どのような社員を期待しているのか、どのような会社にし
     ていきたいのかを明瞭に示しています。

  □自社の市場を創造する

   1.競争よりも創造を大切にする製品開発

     競争よりも創造を大切にするコミーが、実際にどのような製品を創造してきた
     かをみていきましょう。

     (1)「死角を生かす気配りミラー」

       「回転ミラックス」を防犯用に展開してから、同社は防犯ミラーだけでなく、
       自分以外の人や物の動きをとらえる鏡を開発、死を生に変える願いを込め
       て「死角を生かす気配りミラー」とネーミングして、同製品でも市場を創造し
       ています。

       防犯ミラーのような製品を必要とするのは、防犯上これを必要とするコンビ
       ニエンスストアや一般の店舗だけではありません。

       コミーは、工場や倉庫向けには、物流の搬入車両が接触することを防ぐた
       めに死角を認知できるミラー、百貨店などに向けては、エレベーターの外に
       いる顧客をエレベーターの中から認知して、乗り遅れや安全を確認するた
       めのミラーとして製品化を進めています。

       金融機関のATMに後方確認用ミラーとして設置されている事例もあります。

     (2)航空機の手荷物入れに設置

       さらに、積極的に市場を創造した例としては、航空機の手荷物入れに設置
       された製品の例があります。

       客室乗務員が、歩きながら手荷物入れの内部を確認することができる仕組
       みです。

       この市場は、出張帰りの飛行機のなかで発想され、航空関係者へのPRを
       地道に行なうことで開拓されたものです。

       もともとの防犯ミラーに使用されている材料であるアクリル樹脂は、可燃物
       であるため、そのままでは飛行機の中に設置することはできません。

       そこで、素材に自己消化性のある樹脂やアルミニウムを使用することで耐
       火性をもたせました。

       その後も、実際に飛行機の機内で使用されようになるまで、厳しい航空機
       のスペックを満たす改良と創造が行なわれています。

   2.創造に生き残りをかけた戦略

     同社にとっては、オリジナルであること、他社の模倣もしないし、模倣されない
     ことが重要なポイントであるため、競争でなく、創造に生き残りをかけているこ
     とがわかります。

     「土壌にあった種を蒔きじっくりと育て、特許や販売・製造をノウハウというバリ
     アで外敵を防ぐ」という戦略がすべてです。

     自社の勝ち残れる分野を絞り込んで、その「小さな市場を極める」戦略です。

     そのために、商品はすべてオリジナルで、ユーザーの声にしっかりと耳を傾け
     創造に取り組んでいるのです。

     こうした戦略は、小宮山社長のいう農耕民族的企業の生き方といえます。

     「狩猟民族的」が主流の企業社会においては異例と考えられるかもしれません。

     しかし、農耕民族型の生き方は、同社のように限られた企業だけの得意な生
     き方でしょうか。

     この農耕民族型企業の戦略は、「小さな市場を極める」戦略として、中小企業
     の生き残りに適した戦略なのです。

     この戦略を少し理論的に分析して、農耕民族型企業として生き残るヒントを見
     つけ出していきましょう。

  □中小企業が勝ち残る競争戦略の分析

   1.競争戦略を分析

     競争よりも創造、という草食動物的な経営は、競争を避けるという意味でひと
     つの競争戦略です。

      どのような競争をするかという戦い方を考えることも競争戦略ですが、
      競争をいかに避けて生き残るかということを考えることも、
      また競争戦略のひとつなのです。

     (1)競争における自社の地位に注目した分析

       一般に、競争戦略は2つの視点から分析されます。

       まず1つは、

       競争における自社の地位に注目した分析です。

       すなわち、自社が生存している業界、市場において、「リーダー」であるの
       か、「リーダーを追いかけるチャレンジャー」であるのか、「リーダーの後を
       追うフォロワー」であるのか、あるいは、「競争の少ない隙間市場でミニリー
       ダーを目指すニッチャー」であるのか、という4つの類型で自社を位置づけ
       て戦略を分析・検討していく方法です。

     (2)ターゲットとする市場と競争の優位性による分析

       もう1つが、

       ターゲットとする市場について、業界全体の市場をターゲットとしているの
       か、業界のうち特定分野に絞られた市場をターゲットとしているか、という
       「市場の軸」と、競争優位性が他社より安いコストにあるのか、それとも顧
       客から認められる特異性にあるのかという「優位性の軸」を利用して競争戦
       略を分析する方法です。

       ターゲットとする市場は、業界全体と特定分野の2つに、一方、競争優位の
       タイプは、低コスト志向か、顧客から認められる特異性かの2つに区分され
       ます。

       この2×2の4つのマトリクスに競争戦略を位置づけて、分析・検討していく
       方法です。

       4つのマトリクスに位置づけられる戦略は、コストリーダーシップ戦略、差別
       化戦略、および、「コスト集中」と「差別化集中」の2つの集中化戦略です。

       @コストリーダーシップ戦略

        業界全休をターゲットに、低コスト志向(同業他社よりも安いコストを
        実現すること)で勝ち残る戦略です。

        規模の経済や、操業度を上げる手段がとられ、一般には大企業に
        有利な戦略です。

        半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ社や、カシオ計算機が
        デジタル時計に進出した際に電卓で養ったエレクトロニクス技術を
        応用し、技術開発・生産から販売までの一貫したコストダウン体制を
        組み上げ、安価で正確なデジタル時計を大量に生産することで市場
        を創造した事例があげられます。

       A差別化戦略

        業界全体をターゲットとして、顧客から認められる特異性を武器に
        した戦略が「差別化戦略」です。

        顧客から、「あの企業はどこか違う」という価値を認めてもらえる
        企業がとっている戦略です。

        その業界の品質リーダーがこの戦略をとっています。

        ブランドという差別化された価値が注目される戦略でもあり、ソニー
        や本田技研工業の戦略を考えるとわかりやすいでしょう。

       B集中化戦略

        ターゲットを特定分野に絞込む戦略が「集中化戦略」と呼ばれる
        戦略です。

        この戦略は、競争優位の根拠をコストにする「コスト集中」と、顧客
        から認められる価値を意識した「差別化集中」の2つの戦略に分け
        られます。

        コスト集中の戦略としては、たとえば、軽自動車に特化することで、軽自
        動車に関する製造コストを下げて競争に勝ち残っているスズキ自動車、
        差別化集中の戦略としては、顧客を高額所得者に絞り込み、高品質のイ
        メージを顧客から得ているダイナーズカードの例などを考えることができ
        ます。

   2.中小企業に求められる差別化集中戦略

     農耕民族型の経営については、市場の地位で考えれば、たんにニッチャーの
     位置づけとなりますが、ターゲットとする市場と競争の優位性の分析を利用し
     て考えてみると、集中化戦略のうち、差別化集中戦略と位置づけることができ
     ます。

     コミーの戦略は、競争戦略的には特定分野に絞り込み、他社が真似できない
     製品を開発することにより、顧客から開発力のある会社として認めてもらうとい
     う差別化集中の戦略といえるでしょう。

     実は、この差別化集中戦略が、中小企業が成長を図るうえでの優れた戦略と
     なりえるのです。

     「死角を生かす」という視点から、特定分野の市場、たとえば工場の安全確認
     ミラーやエレベーターの乗降確認のためのミラー、ATMののぞき見防止のた
     めの後方確認ミラー、さらには、航空機の手荷物入れ用確認ミラーなどのニー
     ズに注目して、「真似もしない、真似もされない」を目指し、全製品オリジナルと
     いう開発の取り組みは、中小企業が競争を避けながら成長していくための、わ
     かりやすい成功事例といえるでしょう。

     こうした成功事例は、自社の基本戦略を考えるうえで大きなヒントになるので
     はないでしょうか。

     小さな市場を極めて、その市場で顧客から認められる価値を創造していくこと
     ができれば、模倣ではない自社の特定市場を創造し、競争を避けて勝ち残る
     という優れた経営戦略が実現できるはずです。

     他社がやっているから、利益をあげているから、ということではなく、自社が本 
     当にこだわる製品や技術、サービスがどこにあるのかを見つめ、自社が狙う
     べき市場はどこにあるのかを発見することが、実はもっとも大切な基本戦略に
     つながるのです。

中小企業の戦略・戦術

            

中小企業の戦略・戦術

  ■経営戦略・戦術決定のステップ

   常にめまぐるしい経営環境の変化の中で、特に中小企業にとっては厳しい経営
   環境が続いています。

   荒天の中を航行する船と同じく、厳しい環境の下では、自社の特徴を活かした戦
   略・戦術を定期的に見直し、自社の経営の舵取りを行うことが必要です。

  □経営理念の確認

   経営理念とは、「自分たちはこうありたい」「社会に対してこのような貢献をしたい」
   といった自社が存在する意義を明文化したものです。

   経営を行ううえでの根本的な方針ともいえるものです。

   たとえば「○○の流通を円滑にすることで、地域小売店の繁栄と消費者の満足度を
   高める」などと設定します。

   経営理念は、作るだけでは意味がありません。

   全社員に理念が浸透し、理念に沿った行動ができてはじめて有効になります。

   そのため、朝礼や会議など機会があるごとに繰り返し社員に説明し、自分たちの
   日頃の行動が経営理念に沿ったものになっているかを問いかけることが大切です。

  □外部環境の分析

   「経営とは環境に適応することだ」という経営者もいます。

   この言葉は外部環境に適応できなければ企業は成長できない、あるいは生き
   残っていけないということを表しています。

   うまく外部環境に適応するためには、とくに自社に影響を与える項目を見極めな
   がら分析することが必要です。

   自社の取扱商品にかかわる規制緩和の動向や競合企業の出現、業界再編の動
   きなど影響の大きい事項については注意しておきましょう。

  □内部環境の分析

   外部環境をふまえ、内部環境としての自社の経営資源を分析します。

   自社のことについては甘くなりがちですので、客観的に分析するために他社と比
   較しながら検討したり、第三者の意見を聞くとよいでしょう。

   なお、外部環境と内部環境の分析にはSWOT分析が有効です。

   SWOT分析とは、経営環境を判断するために、内部的な「強み(STRENGTH)」
   「弱み(WEAKNESS)」と、外部的な「機会(OPPORTUNITY)」「脅威 
   (THREAT)」を分析し、その結果を検討したうえでこれから自社が進んでいく方向
   を定めようとする手法です。

  □戦略の決定

   戦略とは自社のめざすべき将来の姿を描き、その姿を実現するためのシナリオを
   描くことです。

   たとえば「徹底したリテールサポート力で、地域シェアナンバー1をめざす」という
   のが戦略です。

   戦略は、経営理念に基づくものでなくてはなりません。

   たとえば、経営理念では「顧客第一主義」をうたっているのに、顧客を軽視するよ
   うな戦略を取るべきではありません。

   また、戦略は後述する戦術にブレイクダウンされますが、戦略そのものが間違っ
   ていると、いくら緻密な戦術を立てたところで、まったく意味をなさないことになります。

   したがって、戦略策定においては自社の現状の強みや弱み、他社との差別化
   策、市場動向、競合動向などを十分に検討したうえで行う必要があります。

   戦略の決定は、3つの具体的ステップに分かれます。

   まず、自社の事業範囲の決定を行い、次に差別化方針の決定、最後に目標とな
   る姿の設定を行います。

   なお、事業範囲の決定においては、外部環境の変化や内部環境によって転業や
   多角化という方法も考えられます。

   戦略決定の選択肢のひとつとして転業や多角化も想定しておくことが必要です。

  □戦術の決定

   前項で決定した戦略を実践していくための具体的な方法をテーマごとに検討し、
   決定していきます。

   ここで大切なのは、策定する戦術が戦略に沿ったものであるかを十分に確認する
   ことです。

   いくら素晴らしい戦略を策定することができても、それが適切に戦術に反映されな
   ければ意味がありません。

   正しい戦略が策定され、かつそれが適切に戦術に展開された場合のみに戦略は
   成功するということになります。

   また、最初は適切な戦術の展開がなされていても、途中のやむを得ない戦術変
   更などで、それが崩れることもあります。

   そのため、戦略と戦術の整合性については、定期的に確認する必要があります。

                        経営戦略・戦術決定の概要図

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