業務の見える化は経営課題を解決

自社の課題を解決

■経営環境の変化と課題解決

 日本の社会を取り巻く環境は、かつて経験したことのない構造変革の波に晒されています。

 各種の規制緩和を背景とした企業間競争の激化、深まるばかりの政治の混迷、出口の見えない景気の
 低迷など、かつての常識では考えられなかった出来事が、かつてないスピードで起こっているのです。

 これを企業内の問題に置き換えてみると、

  自社の成長を促していた強みが、環境の変化に伴い通用しなくなった

 状態を意味するということもできます。

 たとえば、モノ不足の時代においては、大量生産を可能とする生産能力が企業の成長を促す強み
 でした。

 ところが、現代のように消費者のニーズが多様化している時代においては、生産能力という強みが
 必ずしも自社の成長を約束してくれる要因といえなくなりました。

 現代の企業には、会社の方向性の決定から業務上のトラブルまで解決すべき課題が山積みされて
 います。

 しかし個別の企業の現状を見てみると、自社が解決すべき課題は何かということさえ明確に捉えら
 れていないことが多いようです。

 また、解決すべき課題が明確であるにもかかわらず、過去の経験や常識にとらわれて、「有効な
 施策を打ち出せない」あるいは「結論に至るまで時間がかかる」というケースも見受けられます。

 これらは全て課題解決の基本的な考え方が欠如していることが原因です。

 無論、課題解決の切り口は様々ですが、絶対に外してはならない要素も存在します。

 以降、絶対に外してはならない要素を解説の中心に据え、課題解決の基本をご紹介していきます。

□課題解決に向けた基本的な考え方

 課題を解決するための具体的な手法を学ぶ前に、まずは基本的な考え方を理解する必要があります。

 といっても、これは単なる「心構え」的なものではありません。

 むしろ、この基本的な考え方を身に付けること自体が、課題解決そのものであるといっても過言では
 ありません。

 ◎課題解決に向けた基本的な考え方

  1.危機感を抱く

  2.ゼロべ-スで考える

  3.仮説を立ててみる

  4.モレ・ダブリをなくす

  1.危機感を抱く

   「危機感ならいつも感じている」と思われる方も多いことでしょう。

   しかし、それは果たして真の危機感といえるのでしょうか。

   まずは「課題」の意味を検証します。

   「課題」と「問題」は同義ではありません。

   課題とは「問題を課すること」を意味します。

   つまり、ある問題について

    「解決しなければならない」という意識が芽生えてはじめて「課題」である

   といえるのです。

   多くの経営者から「景気が悪く売上が減少している」という悩みをよく耳にしますが、当事者が
   解決の意思を持たないなら、この悩みは「問題」でしかありません。

   つまり、景気が悪いことを理由に(売上が減少していることに対する)解決の意思を放棄して
   しまっているわけです。

   この場合において、課題とは「売上の減少を防ぐことはできないか?」ということです。

   そして、「売上を増加させるにはどうすればよいか?」という前向きな気持ちを引き出すもの
   こそ真の危機感であるといえます。

     「景気が悪くて売上が減少している」  ……(問 題)
              ↓(危機感)
     「売上の減少を防ぐことは出来ないか?」……(課 題)

  2.ゼロベースで考える

   前項でも述べたように、企業を取り巻く経営環境は日々刻々と変化しており、過去の強み
   (成功要因)は現在の強み(成功要因)として通用しないことが多くなっています。

   野球にたとえるなら、前の打席では豪速球で三振に仕留めても、次の打席ではその豪速球は
   打たれる可能性があるということです。

   ところが、経営環境が大きく変化したにもかかわらず、相変わらず豪速球で押し通している
   企業が多く見受けられます。

   過去の経験に縛られ有効な解決策を見落としていたり、あるいはライバル企業が成功している
   からというだけの理由で、安易に会社の方向性を決定する横並び行動も日常茶飯事です。

   これでは、有効な解決策を導くことは不可能です。

   また、解決が難しいと考えていた課題でも、考えの枠を拡げることで新たなアイデアが生まれて
   くるかもしれません。

   このように、

    「ゼロベースで考える」とは、既成概念にとらわれず幅広い視野で物事に取り組むこと

   であり、課題解決のためには欠かすことのできない重要な考え方です。

   また、ゼロベースで考えることは新たな可能性に挑戦することをも意味するため、(課題解決
   への)取り組み意欲を高める効果が期待できます。

  3.仮説を立ててみる

   課題を解決するとなると(課題の程度にもよりますが)、様々な調査や会議が行われ、かつ
   詳細な分析、検討がなされることでしょう。

   しかし、経営環境は驚くほどのスピードで変化しており、解決策が提示される頃にはすでに
   時代遅れとなっている(陳腐化している)ことも十分に考えられます。

   そのため、最初から精度の高い解決策を要求せずに

    「当てずっぽう」でもいいから、まずは仮説を立ててみる

   ことが重要となります。

   つまり、「その仮説が正しいかどうか」を検証することのみが目的となるため、余分な情報
   収集や分析の時間を大幅に短縮することが可能となります。

   そして、検証を繰り返すことにより、解決策の精度も徐々に高まっていきます。

   そもそもビジネスの場においては、「絶対的な解決策」は存在しません。

   少しでも早く(課題解決に向けた)具体的な行動に結びつくように、

    ベストでlまなくベターな解決策を目標とする

   ことが重要です。

  4.モレ・ダブリをなくす

   解決策を模索する上で非常に重要となるのが、モレとダブリをなくすことです。

   たとえば、「新たな資金調達先を確保できないか?」という課題を例として考えてみましょう。

   A案はB案の民間金融機関のみしかカバーしておらず、モレが存在することは明らかです。

   一方B案は一見完壁のように思えますが、実はダブリが存在するのです。

   なぜなら、公的融資の種類によっては、民間金融機関が窓口となるケースもあるからです。

   A案のようにモレが存在することは、解決策として有効に機能するかもしれない重要な要素を
   見落としてしまっていることを意味します。

   一方、B案のようにダブリが存在する場合、それぞれ解決策の代替案を評価する手間が増えて
   しまい、課題解決の効率性を阻害することになります。

   このように、課題解決のプロセスにおいては、

    ・モレによる見落としはないか?

    ・ダブリによる無駄はないか?

   を十分にチェックする必要があります。

□課題解決の実際

 前項で述べた基本的な考え方を念頭に置きながら、事例をもとに課題解決の具体的ステップ・手法
 について解説していきます。

 <事例>
  玩具製造会社Q社の業務は、ここ数年で大きく悪化し、
  営業利益率は前期比で5%も悪化している。

  1.P LAN(計画)

   課題の解決に向けた計画段階であり、さらに5つのステップに細分化されます。

   課題解決プロセスにおける最大の山場であるといえます。

   <ステップ1:総合課題の設定>
    まずはQ社の課題を設定します。
    最終的に解決したい課題(総合課題)として「営業利益率を好転させることは可能か?」を
    設定することにします。   

   <ステップ2:因果関係の究明=個別課題の設定>
    Q社の営業利益率が悪化している原因を探ります。
    前項で述べたように、既成概念にとらわれずに、かつモレ・ダブリがないよう根気強く
    因果関係を究明していきます。

    営業業利益率悪化の因果関係を究明していくと、10個の問題(a~j)に細分化することが
    できました。

    さらに、これら10個の問題を「個別課題」として再設定します。

    ここでは細分化のレベルを10個に抑えましたが、たとえば「営業力が低下」という問題を
    「営業パーソンの人手が不足」「営業パーソンの能力が不足」「営業パーソンのやる気が
    不足」等々、さらに細分化することが可能です。

    もっとも、細分化はある意味際限がありません。

    そのため、個別課題の仮説が提示できるレベルまでが細分化の目安となります。

   <STEP3:仮説の設定>
    個別課題それぞれについて、仮説を提示していきます(後掲の表を参照)。

    実際には、1つの個別課題に対して複数の仮説が提示されることになりますが、ここでは
    仮説を1つに省略しています。

   <STEP4:仮説の評価
    STEP3で提示した個別課題に対する仮説をそれぞれ評価していきます。

    評価のポイント(評価項目)として、以下のようなものが考えられます。

     ・どれだけの効果が期待できるのか?                                     …A

     ・その仮説を実行するだけの余力(経営資源)はあるか?      …B

     ・その仮説を実行した場合のリスクはどの程度か?                 …C

     ・その仮説は素早く(スピーディー)実行に移せるか?          …D

    ここでは、評価項目として上述のA~Dを用います。

    評価項目は解決すべき課題の性質によりそれぞれ異なります。

    評価の基準は、あくまで「個別課題を解決できるか?」という点であることに注意します。

    評価の際にも、既成概念にとらわれない客観的な判断が必要となります。

   <STEP5:実行策の選択>

    実行策を選択する際の評価基準は、総合課題を解決できるかという点です。

    また、会社の方向性に関わるような仮説については、市場・競合・社内の3つの軸からも再度
    評価します。

   <Q社が選択した実行策および実行者・責任者

  2.DO(実行)
   <STEP6:仮説の実行>

   ここでは省略していますが、実行にあたっては具体的な展開計画を立てておく必要があります。

   また、仮説を堅実に遂行していくためには、リーダーシップをとれる人材が必要不可欠です。

  3.CHECK(調整)
   
<STEP7:効果測定・フィードバック>

   あらかじめ一定の時期を定めておき、実行期間中に、

    ・課題解決の効果はあったか?

    ・新たな問題は生じなかったか?

    ・今後も継続することは妥当か?

    ・より良いアイデアは生まれたか?

   等をチェックし、仮説や実行計画へのフィードバックを行います。

   このように「PLAN」-「DO」-「CHECK」-「PLAN」 …を繰り返すことで、仮説の精度が
   高まっていくことになります。

   そして、

    課題解決の効果が明確に顕れて、はじめて仮説が解決策へと昇華する

   ことになります。

  以上ご紹介した課題解決における基本的な考え方は、企業の方向性の決定(経営的意思決定)、
  社内の管理体制の問題解決(管理的意思決定)、日々の業務上の問題解決(業務的意思決定)
  など、ビジネス上のあらゆる場面に活用することができます。

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高齢社員のスキル移転

■定年を迎える高齢社員

 日本では、少子高齢化が急速に進んでいます。

 少子高齢化は、労働力人口の減少という形で労働市場にも影響を及ぼします。

 労働力人口が減少すれば、企業は従業員の生産性を高める必要に迫られるでしょう。

 また、問題となったのが、「高齢社員の定年による大量退職」でした。

 2007年問題といわれた当時、第一次のベビーブームを巻き起こした1947年~1949年に誕生した人たち
 のことで、この3年間に800万人以上の赤ちゃんが誕生し、この団塊の世代の筆頭として1947年生まれ
 の人たちが定年退職となるため、さまざまな問題が想定されて「2007年問題」として取り上げられた。

 自社を長らく支えてきた高齢者員のスキルをムダにはできません。。

 少子化が進み若年労働力が減少していく中、彼らが長年磨いてきたスキルをより若い社員へ伝えて
 いくことは急務といえるでしょう。

 ここでは、高齢社員がもつスキルをうまく移転する方法について考えます。

□スキル移転の仲介役

 1.高齢社員の性質

  高度成長期のころは、特に労働力不足でしっかりした教育体制など整っていない企業がほとんど
  でした。

  当時はいい意味でも悪い意味でも、先輩・後輩や上司・部下といった関係がはっきりと分かれて
  おり、スキルは「見て学びとるもの」といった風潮が強かった時代でした。

  現在においても、団塊世代の部下であった社員が高齢者員となり、中には、自分の持っている
  スキルを教えるもしくは伝えることを不得意としているという人が珍しくないでしょう。

  また、若手社員を教育する際は「ここまで教えているのに」といった気持ちを抱き、イライラする
  ことも少なくないでしょう。

  もちろん、教育が得意で自分のスキルを落とし込むことなど造作もない、といった高齢社員もいる
  でしょう。

  しかし、企業が高齢社員の持つスキルをうまく移転する方法を整備するとき、高齢社員は教育する
  ことが不得意な場合がほとんどであるとした上で体制づくりをしないと、スキルはうまく移転しない
  でしょう。

  この際、最も重要な役割を担うのが、スキルの移転を助ける仲介役です。

 2.スキル移転の仲介役

  仲介役のイメージは図の通りです。

  仲介役は、高齢社員とスキルの移転先となる社員の間に立って、

   ・高齢社員のスキルに関する情報をヒアリングする

   ・ヒアリングした内容を整理する

   ・移転先社員に必要な部分を教育する

  といった役割を担います。

  その後は、仲介役が整理した内容に沿って、高齢社員が移転先社員に直接教育を行い、スキルを
  移転していきます。

  こうすることで、

   ・高齢社員が、移転先社員に移転すべき内容を自覚できる

   ・移転先社員が、学ぶべき内容とその概要を知り、習得のスピードが上がる

   ・内容が整理されたことで、高齢社員も移転先社員もスキルの移転・習得を
    仕事としてより深く認識するようになり、責任感が強まる

   ・高齢社員と移転先社員の適度な距離を保つことで、両者が良好な関係を
    維持しやすくなる

   ・上司が、高齢社員と仲介役からの情報を総合することで、スキル移転の進ちょく
    を把握しやすくなる

  などの効果が期待できます。

  実際にこうした効果が得られるかどうかは、仲介役の力量にかかっています。

  そのため、仲介役の人選は極めて重要です。

  仲介役は、高齢社員と良好な関係を築いてより多くの情報を引き出せるか、得た情報をうまく整理
  できるかがポイントになります。

  従って、一般に以下のような社員が仲介役としては望ましいでしょう。

   ・高齢社員と同じ立場か上の立場、もしくは高齢社員が認めている社員

   ・コミュニケーション能力が高い社員

   ・仕事を分類し、整理する能力が高い社員

  高齢社員より下の立場の社員を仲介役にすると、高齢社員に軽くみられたり、仲介役が遠慮がちに
  なり、欲しい情報を得にくくなる可能性があるため、直属の上司が仲介役になるのもよいでしょう。

□仲介役の仕事

 1.ヒアリングのアウトプットイメージ

  仲介役は、ヒアリングによって、高齢社員が持つスキルに関する情報を引き出し、それを整理
  します。整理は、

   ・高齢社員の仕事を分類して体系化する

   ・体系化した仕事の項目ごとに注意している点や重要な事例をまとめる

  といった形式で行います。

  最終的に、以下のような表の作成を目指しましょう。

   <ヒアリング結果のアウトプットイメージ

  以降では、上の左図を「業務体系表」、右図を「スキルポイント表」と呼びます。

  業務体系表には、高齢社員の仕事を段階別に分類し、マニュアルなどの関連資料があれば右側に
  記載します。

  スキルポイント表には、詳細項目(上の例では小項目)単位で、業務の概要、高齢社員が注意して
  いること、知っておいたほうがいい過去の事例についてまとめましょう。

  このように、高齢社員が持っているスキル情報を書きおこすことで、移転すべきスキルの内容と
  業務上の位置をはっきりさせることができます。

 2.スキル情報のヒアリング

  仲介役は、ただ漫然とヒアリングを行っているだけでは、「必要なことをなかなか聞き出せない」
  「得た情報を整理できない」といった事態に陥ります。

  ヒアリングは、以下の点に注意して実施しましょう。

  <高齢社員への意識付け>
   まずヒアリングに入る前に、高齢社員へ

     スキルの移転=優先順位の高い仕事

   という意識付けを与えましょう。

   高齢社員はいくら定年が近づいているといっても、ほとんどの場合、自分の仕事を持っています。

   さらに高齢社員が、前述のような「スキルは見て学びとるもの」という意識を持っていれば、
   スキルの移転はついつい後回しにされがちです。

   まず、スキルの移転を優先順位の高い仕事として意識付け、きちんと時間を作ってヒアリングを
   行いましょう。

   また、仲介役が意識付けをしたことで、高齢社員と仲介役の関係が悪化することを避けるため
   にも、意識付けは仲介役を選定した上司が行いましょう。

  <仲介役がヒアリングに臨む姿勢>
   仲介役は、とにかく高齢社員に自由に気軽に話してもらうことを心がけましょう。

   堅苦しい雰囲気は禁物です。

   必要に応じて関係のない話を交えるのもよいでしょう。

   また、仲介役は、

    否定的な意見を口にしない

   ようにしましょう。

   目的はあくまで情報収集です。

   長時間にわたって話が脱線する場合は仕方ありませんが、基本的に話の腰は折らず、

    できるだけ多くの話を聞いて、仲介役がそれを取捨選択してまとめる

   姿勢で臨みましょう。

   また、仲介役は高齢社員に対して、

    常に敬意を払う

   ようにしましょう。

   立場は仲介役のほうが上かもしれませんが、気持ちよく話してもらうことが大切です。

  <ヒアリングの進め方>
   まず、高齢社員の仕事の内容をヒアリングします。

   仲介役は、ヒアリングの前に、

    高齢社員が業務フローやマニュアルなどを持っているかどうか

   を確認し、あれば事前に目を通しておきましょう。

   ただ、それらの資料を基に話を進めるのではなく、仕事の内容を整理するための予備知識と考え
   ましょう。

   実際は、仲介役が高齢社員に

    1日・1週・1カ月・1年などの期間

   を区切って、その間に行っている仕事の内容を聞きましょう。

   最初から漠然と「どんな仕事をしていますか」と聞くより高齢社員が自分の仕事をイメージしや
   すくなります。

   仲介役は、高齢社員から聞いた情報をホワイトボードに書くなどして、本人に確認しながら進め
   るとよいでしょう。

   業務資料がある場合は、聞いた情報と資料の各項目を対比させて確認していくのもよいでしょう。

   ここで注意したいのは、

    高齢社員の仕事の内容の整理は、あくまで仲介役が行う

   ということです。

   高齢社員が整理することに集中すると、逆に考えが狭まってしまい、発言が滞ってしまいがち
   です。

   ヒアリングの後、仲介役は、得た情報を整理して業務体系表にまとめましょう。

   一度にまとめる必要はなく、適宜高齢社員に確認してもらい、何度かヒアリングを重ねて仕事の
   内容が網羅できた段階で確定しましょう。

   また、仲介役は高齢社員が長期間携わっていた仕事、自信があった仕事などを中心に、

    過去の仕事についても内容をヒアリング

   してみましょう。

   高齢社員の過去の仕事の中で、仲介役がスキルポイント表を作成する価値があると判断した
   場合は、業務体系表を作成しましょう。

   なお、この段階では、関連資料欄は空欄で構いません。

   業務体系表が完成したら、次はスキルポイント表です。

   業務概要は、これまでのヒアリングの内容から仲介役が作成して、高齢社員に確認を取りま
   しょう。

   スキルポイント表のポイント欄に書く内容は、業務体系表の詳細項目ごとに、高齢社員に以下の
   点を確認して決めます。

    ・失敗したこと

    ・注意していたこと

    ・苦労したこと

    ・うまくいったこと

    ・やってみたかったこと

   重要なのは、高齢社員に話してもらうことです。

   ポイント欄に記載するかどうかは、後に仲介役が決めればよいことです。

   「複数の業務項目にまたがる」「この業務項目に当てはまるかどうか分からない」と高齢社員が
   思っている内容も、とにかく話してもらいましょう。

   高齢社員が話しにくいようなら、より大きな業務項目ごとにヒアリングし、後に、仲介役が
   ポイント欄に書くべき内容を選択して、詳細項目ごとに当てはめていくのもよいでしょう。 

   また、高齢社員が自身の管理用に作成しているメモや資料など、関連資料があればどんどん提出
   してもらい、必要に応じて業務体系表の関連資料欄に記載しましょう。

 3.スキル情報の移転

  業務体系表とスキルポイント表が完成したら、この2つの表を基にして、移転先社員を教育していき
  ます。

  教育の主眼は、

   ・高齢社員が行っている仕事の流れと概要を理解させる
   ・高齢社員が多くのスキルを保持していることを理解させる

  ことにあります。

  高齢社員も同席し、業務体系表とスキルポイント表の業務概要の部分を中心に、移転先社員に説明
  しましょう。

  そして、移転先社員が高齢社員と実際に仕事をしながら教育を受けるに当たって、

   常に業務体系表に立ち戻り、いま習っている内容の位置を確認する

  よう指導しましょう。

  そうすれば、移転先社員の頭の中が整理されて、体系的に効率よくスキルを身に付けていくことが
  できるでしょう。

  スキルポイント表のポイントについては、特に移転先社員が感銘を受けそうなものをいくつか
  ピックアップして紹介しましょう。

  そうすることで、移転先社員が

   ・スキルを身に付けようとする意欲を高める
   ・高齢社員を尊敬する

  ようになることを狙います。

  そして、スキルポイント表に記したポイントや事例は一部であり、今後、高齢社員から教わる
  ことをどんどん付け加えていくように、移転先社員に伝えましょう。

  最後に、これから高齢社員と移転先社員が直接教育に入るに当たって、いつでも気軽に相談を
  受ける旨と「ぜひ頑張ってください」という言葉を添えて、仲介役の仕事はいったん終了です。

  その後は、適宜両者に話しかけて、両者の関係が悪化していないかを確認するとともに、力に
  なれそうなことがあれば手助けするようにしましょう。

□まとめ

 今回紹介した手順は、仲介役の性質や能力によって成果が大きく左右されます。

 仲介役を選ぶ立場にある上司は、よく資質を見極めて選択しましょう。

 適当な社員がいない場合は、上司自身が仲介役になることも検討しましょう。

 仲介役の仕事は、高齢社員の業務経験やスキルによって異なりますが、かなりの量になります。

 従って、仲介役が仕事の内容をヒアリングし、整理するだけでも相当の時間を要するでしょう。

 しかし、高齢社員が退職してしまえば、その長年培ってきたスキルは完全に失われてしまいます。

 スキル移転は大変ですが、いま時間をかけることでそのスキルが社内にとどまり、新たに活用される
 可能性が残ります。

 ただし漫然と行うのではなく、明確な期限を設けましょう。

 これは、仲介役の仕事だけではなく、高齢社員による移転先社員の直接教育についても同様です。

 今回紹介したように文字でまとめることができても、特に製造技術など「身体で覚える」スキルは、
 習得するまでにかなりの時間を要します。

 業務体系表を基に、スキル移転に必要な期間を推測するとともに、できるだけ早く着手することが
 肝要です。

 

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業務の見える化は経営課題を解決

業務監査の役割 Ⅱ

□監査実施通知書の例

 以下で、監査実施通知書の例を紹介します。

□業務監査の事例

 以下では、業務監査の事例をいくつか紹介します。

 1.(例)設備メーカー

  (1)監査の目的

   ・営業情報の収集および管理の状況

   ・原価管理業務の見直し

   ・代金回収の的確性と与信管理

   ・工場、倉庫、社宅などの管理状況と活用状況

   ・協力会社の管理状況

  (2)実施した監査手続き

   ・決算報告書、勘定元帳、原価管理関係書類、会計伝票の閲覧、検証

   ・各種報告書の閲覧と検証

   ・主な協力会社(下請け会社)の訪問と、その社長との面談、要望事項の聴取

   ・管理者および各スタッフへのインタビュー

  (3)指摘した問題点

   ・売りの決算条件が不明瞭

   ・実施工事の予算書の作成が遅れている

   ・売上計上時期がずれている

   ・契約の明細が未確定のまま取引が実行されている

   ・借上社宅が未利用のまま放置されている

   ・決裁基準見直しの必要が言われているにもかかわらず着手されていない

  上記内容を見てみると、監査の目的として掲げたなかで最も重要と思われる「営業情報の収集
  および管理の状況」に関しては、実施した監査手続きと指摘した問題点に記載がありません。

  これは監査の目標として掲げたものの監査人の手に負えなくなり、着手できなかったためです。

  これでは監査人の能力が疑われるだけでなく、社内における内部監査の重要性も薄れてしまいます。

  重要だと判断した場合は、たとえ難しい問題であっても専門家の手を借りるなどして積極的かつ
  最後まで取り組むことが求められます。

 2.(例)メーカーの輸送部門

  (1)監査の重点項目

   ・輸送費の管理状況

   ・運賃支払い手続きの妥当性

   ・輸送費節減対策

  (2)監査ポイント

   ・運賃決定のプロセスがマニュアル通りになっているか

   ・運送会社の選定基準が厳守されているか

   ・所定の運送会社以外に料金の安い優良会社がないか

   ・運賃計算結果を検証するため月間X万件強に対して契約通りになっているか

  (3)指摘した問題点

   ・支払運賃の額と計上額とに差がある

   ・運賃表に訂正漏れがある

   ・季節料金の存在を管理者は知らず、運送会社と解釈の相違がある

   ・運送会社との契約内容が把握されていない

   ・出荷データの入力ミスと修正ミスにより二重払いが発生している

   ・路線便で入力したが、実際には宅配便であった例がある

  この業務監査では、業務ミスを中心とした問題点は指摘されているものの、運輸部門で最も重要な
  「早く、安く、安全に」という観点が問題点に上がっていません。

  例えば次のようなことを実施すればさらに業務監査としての役割が増すでしょう。

  (早さ)各運送会社の納期厳守実績を調査する

  (安さ)各運送会社の料金表を取り寄せて対比する

  (安全)過去の破損クレームや事故の発生率を調査する

 3.(例)情報システム監査

  (1)監査対象選定の理由

   ・全部門が利用するシステムであり、多くの販売員が利用する予定があった

   ・稼動後では改善に多大の工数と費用が必要となるので、開発時での監査が有効と考えた

  (2)監査テーマ

   ・販売支援システム(見積り、製品選択、ソフト評価、受注技術など)

   ・詳細設計の段階での評価(企画・基本設計・詳細設計の3段階のうち、詳細設計の段階が
    最も有意義と判断)

  (3)指摘した問題点

   ・企画書の目標を達成していない

   ・利用部門での業務評価基準が不明瞭

   ・データの整合性に関する保証がない

   ・障害対策、安全対策の具体案が固まっていない

   ・事業部間の新情報技術導入の評価情報交換がない

   ・ディスクの二重書き防止機器を採用する必要がある

   ・無停電電源装置を導入する必要がある

  この例では、新しい情報システムの監査をシステム完成前に行っており、システム稼動後の
  リスクを最大限に減らすことを目的に実施されています。

  監査人のうち1名はコンピューターシステムに深い知識を持つ専門家であり、専門家ならではの
  チェックを行うことで問題点を正しく指摘しています。

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業務の見える化は経営課題を解決

業務監査の役割 Ⅰ

■業務監査の重要性

 1.あらためて見直されている業務監査の活用

  過去から今日に至るまで企業の不祥事は跡を絶ちません。

  大手企業の間で品質管理のずさんさやリコール隠しなどの不祥事が相次ぎ、消費者の信頼を著しく
  損ねています。

  過去には、2000年三菱ふそうのトラックリコール隠しから発生した惨劇。

  企業はこれまでにも、危機管理や不祥事防止のためのマニュアルを作成していました。

  しかし、いくらマニュアルなどを作成しても、それらを完璧に遂行することは不可能です。

  予測不能な事故は常々、起こり得るものだからです。

  加えて、顧客ニーズを重視しようという経営陣の意向とは裏腹に、現場レベルでは日常業務の
  多忙さに追われ、さまざまな問題点や課題が生じているにもかかわらず、それらを改善できない
  ケースも少なくありません。

  こうした中、あらためて見直されているのが業務監査制度の活用です。

  業務監査制度は、社内に「監査部」「業務監査人」「業務監査役」などの部署・役職を設け、
  第三者の立場で業務の見直しを推進するといったものです。

  場合によっては経営陣に客観的な意見を進言することにより、いままで現場レベルで問題となって
  いた課題がいち早く解決することも期待できます。

  社長にとっては頼りがいのあるアドバイザーと呼べる存在といえるのです。

  以下では、社内業務の業務監査に焦点を当てて、業務監査制度の考え方と実施に当たってのポイ
  ントをまとめます。

 2.業務監査人の役割

  監査部(業務監査人)は、組織の活動を検証し、評価するため、組織内の中に設置された独立した
  評価機関です。

  業務監査の目的は、組織の各スタッフが効果的に業務を遂行できるように支援することです。

  そのため、業務監査人は業務内容に精通(または業務内容を研究)し、それに対する分析、評価、
  勧告、助言、情報を組織の各スタッフに提供することが求められます。

  従って、業務監査人は、社長が考えていることをそのまま実行する「業務推進」とは役割が多少
  異なり、あくまで独立した機関として、場合によっては社長に対して進言する権限を持つことが
  求められます。

  ◎業務監査のあり方
   (目的)経営者の支援を行うため社内業務の見直しを図り、改善をもたらすこと

   (任務)企業の社内業務をチェックして、妥当かどうか評価すること
       また評価だけでなく、コンサルティング活動をすること

   (組織体制)企業のなかで、どの部門からも支配・指揮されることのない独立性を保持
         すること

   (実行責任)第三者として経営者、役員、スタッフを支援することであり、業務監査役
         自ら実務の執行責任を負うことがないようにすること

 3.業務監査人の活動

  業務監査人が行う主な活動は次の4つにまとめられます。

   <支援活動>
    企業の各スタッフが効果的に業務を推進し、業績向上を支援することが業務監査の一つの
    役割です。

    問題や課題をいち早く把握し、その原因を分析して改善方法を立案、進言することによって
    支援を行います。

   <コンサルティング活動>
    業務を改善させるための助言を行うだけでなく、常時各部門やスタッフからの相談に応じ、
    組織の隅々まで法令順守の意識、業務効率化の意識を浸透させます。

   <情報提供活動>
    業務監査人は第三者的な立場で意見を述べることができるため、「社長はこう考えている」
    「現場ではこう考えている」など、経営側とスタッフ側の意識調整を図ることが期待されます。

    また上下の伝達だけでなく、横の連携や紛争の調停を図ること、そのための情報収集を行う
    ことも大切な活動といえます。

   <幅広い範囲の監査活動>
    外部監査や監査役監査(会社役員)は法律に定められた領域を主として監査を行いますが、
    業務監査は法律とは無関係の業務です。

    これは個々の企業の事情に合わせて自由に監査範囲を設定することができるということであり、
    各スタッフへの支援活動やコンサルティング活動はさまざまな範囲にわたって行うことができ
    ます。

    ある意味では業務監査人の能力次第では無限の利益が期待できるのです。

    社長から与えられた監査範囲以上の業務監査が行えるよう、業務監査人は日々自己のレベル
    アップを図るための努力が求められます。

 4.内部監査は段階的に実施する

  はじめて業務監査人を設ける場合、いきなりコンサルティングまで行うのは難しいでしょう。

  まずは内部監査にレベルを設け、段階を踏んで実施していくことが望まれます。

  例えば、次のような順序です。

  ◎段階的内部監査事例(商社の場合)
   (第一段階:会計監査主体)
    勘定科目のチェック、取引限度額の未設定やオーバー、決裁権限への違反
    在庫の検査、売掛金のチェック

   (第二段階:業務監査の導入)
    立替経費の漏れをチェック(延滞金利、立替諸掛、早出料)
    契約報告の誤りと漏れ

   (第三段階:業務監査の推進)
    採算のチェック(報告、予算、実績チェック)
    採算分析と採算向上策(品種別、顧客別、市場別)
    事務の合理化、経費の節減

   (第四段階:経営監査の導入)
    関係会社の経営方針、営業計画/合理化計画への取り組み状況
    先物契約残の経営漏れや誤り、リスク管理、相談事の引き受け

  以上の内容をすべて行うには、業務監査人としての経験の積み重ねと、専門家の協力、後任者への
  的確な引き継ぎなど、長期的な内部監査機能のレベルアップが要求されます。

□業務監査の流れ

 以下では、実際に業務監査を行う際の流れの一例を紹介します。

 1.業務監査人(業務監査役)の任命

  業務監査人は、社内のスタッフから任命しますが、はじめから「監査部」などを創設して監査を
  専任で行えるようにすることが難しい場合は、監査期間を設け、その間だけは通常業務から離れて
  監査業務に専念するという方法も考えられます。

  その際に留意する点は、業務監査人としてどの程度の知識を要求するかです。

  例えば各部門を一通り経験したことがあるベテランを業務監査人として任命した場合は、現在の
  問題点や改善点をある程度洗い出すことが期待できます。

  しかし長年の経験を大切にするあまり、業務改革には向かない面も生じます。

  一方、他社から移籍してきたやり手の若手スタッフなどを業務監査人に任命した場合、斬新な業務
  改革案は十分に期待できますが、各部門との調整能力不足や業務改革を推進した際の効果が不透明
  といった問題が残ります。

  これらの問題を解決する方法としては、各部門とのコミュニケーションを密に行うことが考えられ
  ます。

  各部門の管理者や実務スタッフが何を考え、どのようなことを要望しているのかをきちんとヒア
  リングし、その結果をもとに業務監査を行っていくことが求められます。

 2.基本方針の決定

  業務監査実施にともなう基本方針を業務監査役と社長が打ち合わせして決定します。

  基本方針が決定したら、業務監査委員会の会合において説明します。

  この際のポイントは、業務監査の実行が各部門にもたらすメリットを明らかにすることです。

  せっかく監査を実施するのですから経費削減や業務改善、クレームの軽減など企業の利益(部門の
  利益)に結びつくよう取り組んでいきましょう。

  また長時間の負担をさせてしまっては通常業務に影響が出るので事前準備をしっかりと行い、
  なるべく短期間で業務監査ができるように心掛けることも大切です。

 3.年度計画の立案

  年間の業務監査スケジュールを明確にします。

  記載する事項は、基本方針に加え、「監査対象とする部・店・関係会社の数」「監査テーマの内容・
  件数」「重点項目とするテーマ」などであり、これらを明確にしておきます。

  なお、監査テーマの内容や重点項目とするテーマに関しては、社長と現場との意識の違いが生じ
  やすいため、事前にアンケートを実施するなどして、慎重に決めていくことがポイントです。

  ◎アンケートの例

   Q1:要望事項
      (上司に対する要望、会社に対する要望、関連部門に対する要望、業務内容に
      関する要望など)

   Q2:課題
      (所属部門の課題、個別業務の課題、製品・サービスに対する課題など)

  業務監査の時期については、出張やイベント、多忙期などが重ならないよう、事前に関係各所に
  確認を取りながら決定します。

 4.監査実施通知書の発送

  スケジュールを確認し、実施内容を連絡するために、「監査実施通知書」を対象となった部門の
  責任者に発送します。 

 5.チェックリストの作成

  監査実施通知書に合わせたチェックリストを作成します。

  チェックリストは、まず汎用チェックリストを作成し、それぞれの部門の専用チェックリストを
  加えるようにするとよいでしょう。

 6.業務監査の実施

  業務監査の期間は、一部門につき長くても1週間、できれば2~3日程度で済ませたいものです。

  監査実施通知書に詳細なスケジュールを明記し、なるべく効率的に業務監査を実施することが求め
  られます。

 7.報告書の作成

  報告書は、主に現在の問題点を洗い出すことが主体となります。

  それぞれの問題点は早期に解決することが望ましいですが、各部門によって事情が異なるため、
  「早期に解決すべき問題」「今年度中には解決すべき問題」「来年度以降に解決する問題」など
  ランク付けをしておくとよいでしょう。

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業務の見える化は経営課題を解決

業務の効率化とスピード

業務の効率化とスピード Ⅰ

■業務効率化のポイント
 ①その業務は本当に必要か
  ・業務の目的を説明出来るか
  ・管理者に説明出来ないものは止める
  ・やらないでよいことをやっていないか

 ②もっと他に必要なものはないか
  ・必要なものでやられていないものはないか 
  ・将来のために今やるべきことはないか

 ③どの業務に一番時間をかけているか
  ・時間は最大の原価(人件費)である
  ・それほど時間をかける必要があるか

 ④業務を細かく分けすぎていないか
  ・みんなで同じことをやっていないか
  ・集約化・専門化出来ないか

 ⑤仕事は平均に割り当てられているか
  ・特定の人に片寄っていないか
  ・忙しい時と暇な時とが極端でないか

 ⑥能力を有効に活用しているか
  ・業務を処理するだけの技術を持っているか
  ・能力以上、以下の業務をやらせていないか

 ⑦業務は標準化されているか
  ・自己流でやっていないか
  ・誰がやっても同じ結果が出せるか

□業務の効率化を行い、仕事量自体を減らす 

 1.スピードは企業価値の1つ 

  すでに情報化時代に入って久しいが、それに伴ってすべての物事のスピードが日を追う
  ごとに速まっています。

  いまやスピードが企業の命運を左右するといっても過言ではないでしょう。 

  オフィス用品の通販会社「アスクル」にも代表されるように、スピードそのものを
  コアコンビタンスとして成長している企業が多いのもそのためです。 

  このようにスピードは、企業価値の1つとなっています。 

  いくらスキルが高くとも、実行スピードが鈍ければ結果は生まれないということです。

  スピードを高めるには「業務の効率化を行い、仕事量自体を少なくする」「業務を早く

  進め、時間を短縮する」という2つの切り口があるが、まずはじめに、前者について
  述べてみます。

 2.捨てることが早さを生む

  コンサルティングを受ける企業では、まず「社員活動分析」が行われる。

  具体的には、2週間から1カ月くらいの期間内で、対象者の業務活動の内容を分析します。 

  販売不振に陥っているB社の営業マンの活動分析を行ったが、その内容は意外なもの
  でした。 

  B社の社長は、自社の営業マンの商談工数は全業務時間の30〜40%を占めていると思い
  込んでいたが、実態調査の結果を見るとなんと8.2%しかなかった。 

  毎日、早朝から夜遅くまで働いているにもかかわらず、実際に付加価値を生む業務は、
  全体のわずか8.2%。 

  これで業績など上がるわけがない。 

  B社の場合、事務処理時間と移動時間にムダとムラが多かった。 

  この2つについて業務削減の指導を行った。 

  また、同一目的の資料(書類)が数種類ある会社も見受けられます。 

  二重の業務や時間を費やすというムダに気付いていないのです。 

  このケースでは、次に挙げる二つのパターンが多い。 

  1つは優秀な社員が新しくフォームを改良したのに、旧フォームの廃止の徹底不足に
  より、新旧版が併用されているというパターン。 

  2つ目は、フォームの改廃が通達されたにもかかわらず、あえて慣れている旧フォーム
  を使っているというパターンです。 

  企業は生きている。 

  日々の業務の中で次々と新しいものが生まれるだけに、並行して不必要なものは捨てて
  いかねばならない。

  いかに「捨てるか」が効率化の最も重要な基本動作である。

 3.今の仕事の2分の1は無駄な仕事と考えるところからスタートする 

  図は業務の分類を表しています。

  ご覧の通り、真に付加価値を生む仕事は業務全体の25%しかなく、あとの25%は非付加
  価値
業務です。 

  そして残りの50%が、いわゆる「ムダ」な仕事と考えるのです。 

  このように大胆な発想で業務を見直すと、捨てるべきものが明確になってきます。 

  見直しの着眼点は次の通りです。 

  (1)その仕事の目的は? 

   仕事には必ず目的がある。

   ところが、昔からやっているから何となく続けている、または手段が目的化して
   いるということが必ずあります。

   時々、“資料作り魔”とでも命名したいくらいの幹部を拝見する。 

   資料作成が好きで、次々に新たなフォームを作成することが管理レベルを上げて
   いくことと勘違いし、かえって社内を混乱させている。

   「手段の目的化」の典型です。 

  (2)どうしても必要か? 

   仕事の目的がはっきりしたならば、次はその仕事が「どうしても必要か」を考える。 

   ゼロべースで自らの業務を見直していただきたい。 

   ITを導入したのに、仕事のやり方は以前のままということはないか。 

   不必要な仕事や不必要なチェック、あるいは不必要な書類をはっきりさせ、過去の
   慣習を断ち切り、思い切って「ステル」ことが大事です。

  (3)捨てるところはないか? 

   どうしても必要な場合、全部はムリだが一部でも捨てられるところはないかを考える。 

   これだけでも、大きな効率化につながるのです。 

  (4)代わるべきものはないか? 

   ほかのもので代替できないかという視点です。 

   製造管理で言うVE(バリューエンジニアリング)、VA(バリューアナライシス)です。 

   今使っているモノより、早くて安くあがるツールはないか、他の人にもできないか
   (自分より人件費の低い人など)、他にやり方はないかという発想です。

  (5)一気に(一括して)できないか? 

   「まとめられないか」という着眼です。 

   関連のある仕事を別々の人が行うよりも、1人に任せてしまった方が効率は上がる。 

   また1人の人でも、一つの仕事を途中で切り上げ、別の仕事をし、また前の仕事に
   戻るというやり方をするよりも、一気に集中してやった方が作業効率は上がります。

   さらに拠点展開している企業では、務処理などの業務は一個所にまとめた方が効率的
   です。 

   ITの発達した現在、間接部門のコストリダクションとしては、ぜひ見直すべきポイント
   です。 


 4.仕事のリストラ(再構築)の進め方 

  仕事を重要度と緊急度とで区分すると図の通りとなります。   

  最も優先度の高い仕事は当然、重要度・緊急度ともに大きな仕事です。 

  次に優先すべき仕事はどれか。 

  業績の悪い会社の職務分析を行うと、明らかに「重要度:小、緊急度:大」の仕事の
  比率が高い。 

  この手の会社は大変忙しそうにドタバタと走り回ってはいるが、その中身は成果に
  つながらないムダな仕事やクレーム・ミスの処理といった、本来ならやらなくても良い

  仕事が多い。

  先行で業務の管理がなされていないため、つい後追いで追いこまれてやるような仕事
  です。

  これらの仕事は、精神的にも肉体的にも非常に疲れる。 

  では、この「重要度:小、緊急度:大」をなくすには、いかにすれば良いか。 

  それは「重要度:大、緊急度:小」の仕事を行うことです。 

  すなわちこの仕事とは、仕組みづくりやシステムづくりである。 

  日々のドタバタ仕事に振り回されていると、なかなか仕組みづくりに着手できないが、
  思い切って仕組みづくりを行わない限り、ドタバタ仕事は永遠になくならない。

  それには「重要度:小、緊急度:小Jの仕事を見つけ出し、捨てることである。 

  前述した着眼点における仕事の見直しです。 

  そして空いた時間で仕組みづくりを行う。 

  結果として「重要度:小、緊急度:大」のドタバタ仕事は減り、「重要度:大、緊急度
  :大」「重要度:大、緊急度:小」の仕事が日々の中心となります。

  「仕事の2分の1はムダな仕事」と述べたが、これを実現すれば可能となる。 

  忙しいとは「心を亡くす」と書くが、仕事に追われていては質の高い仕事はできない。 

  仕事の棚卸しと組み替えを行い、先行で“仕事を追う”スタンスを身に付けていただきたい。 

□仕事を早く進め、時間を短縮する 

 1.仕事を早く進めるポイント 

  前項では、「業務の効率化を行い、仕事量自体を少なくする」との着眼から述べた。

  ここでは「業務を早く進め、時間を短縮する」という切り口から述べます。

  過去に、『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(ケリー・グリーソン著)という
  本が流行した。

  同書のポイントは、「すぐに考える」「すぐに判断する」「すぐに行動する」「すぐに
  見直す」−など、“すぐに”というキーワードが非常に大事ということである。

  確かに、仕事の段取りが悪い人、ドタバタ仕事になりがちな人、期限を守れない人などは、
  いずれもこの“すぐに”が弱い。

  いわゆる「後憂先楽」型人間である。

  「業務を早く進め、時間を短縮」し、スピードを生むには、「先憂後楽」型人間への
  転換が必要です。

 

 2.仕事の重要度・緊急度のモノサシを持つ

  要領の良い人は、仕事が発生すると、まず次の判断をします。

  その仕事の重要度・緊急度はどうか。

  現在取り組んでいる仕事を後回しにしてでも、やらねばならない仕事かどうかの判断です。

  会社の信用に関するクレーム処理などは、何をおいても最優先でしょう。

  その仕事の重要度・緊急度に基づく優先順位づけである。

  こうした判断能力を高めるツールとして、「インバスケットゲーム」というものがある。

  インバスケットゲームとは、1952年にアメリカのプリンストン大学が、空軍の人事
  ・教育研究所から依頼を受けて開発したものです。

  ゲームの名称「インバスケット」とは“未決箱”(未決裁箱)のことです。

  ゲームを通じて複数の課題(未処理事項)に対する意思決定・アクションを考えさせ、
  それを通じて受講者の価値判断能力(判断の正しさとスピード)の向上を図るもの。

  一般的に、企業において何らかの価値判断を行うとき、そのモノサシとなるのは、

    ①企業の経営哲学、経営理食、方針

    ②業績

    ③一般常識、社会通念、良識

    ④経験、過去のやり方・考え方

    ⑤その人の信念,思想

  などが挙げられます。

  これらを総合的に勘案した上で判断が行われるはずですが、人によって何を重視すべき
  かは違ってくる。

  しかし、これらを統一することが、企業としてのレベルを上げ、仕事のスピードを上げる
  ことにつながります。

  昨今「クレド(credo)」に基づく経営が注目されてきました。

  企業哲学や信条に基づく経営のことである。

  国内では以前から言われていることであるが、リッツ・カールトンやディズニーの
  成功で逆輸入された形となっています。

  環境が目まぐるしく変わる現在、すべてにおいて「スピード」が求められる。

  意思決定のスピードを上げるには「こんな時はどうする」という、クレドのような規範
  を確立していただきたい。 

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業務の見える化は経営課題を解決

業務の効率化とスピード

業務の効率化とスピード Ⅱ
 

 3.その仕事の完了までの難易度、時間工数の判断

  続いて、その仕事の完了までの難易度や、時間工数についての判断である。

  時間工数の判断では、仕事を三つに分類する。

  一つは15分以内でできる仕事、二つ目は1時間程度でできる仕事、三つ目はそれ以上
  かかる仕事です。 

  (1)15分以内でできる仕事〜組織に関する仕事は先にする〜

   15分以内でできる仕事とは、組織に所属することによって発生する仕事が多い。

   例えば、稟議事項の決裁、簡単な報告書作成、回覧版の閲覧などコミュニケーション
   を図るための仕事や、世間で言うところの雑務的(「雑務」という仕事はないと
   思うが)な仕事である。

   この仕事をすぐに片付けるか否かで、大きく効率は変わる。

   5分でできる仕事でも、10個もたまれば所要時間は50分である。

   50分というまとまった時間は、多忙な人にはなかなか捻出が難しい。

   そこで、緊急度・重要度ともに低い仕事だからと後回しにする。

   これが換り返されることで、後は雪だるま式になる。

   また、1人の仕事が遅れたために組織の意思決定が遅れたり、集計を担当している
   人の仕事を止めたりと、組織全体の生産性を落とすことにもつながるのがこの種の
   仕事です。

 

  (2)1時間程度でできる仕事〜付加価値を生む仕事の工数を最大限取る〜

   担当する業種・職種にもよるが、一つの仕事のスパンは1時間程度というものが多く、
   付加価値を生む仕事とその仕事の準備業務という性格のものが多い。

   限られた持ち時間の中で、どれだけこの付加価値を生む仕事を入れられるかどうかで
   生産性は大きく変わる。

   時間は有限だ。

   引き算方式で付加価値を生む仕事に最大限の時間を取り、残りでそれ以外の仕事を
   する組み立てが重要となります。

  (3)1時間以上かかる仕事〜1カ月単位で先行計画・先行管理する〜

   三つめは1時間以上かかる仕事。

   まとまった時間は忙しい人ほど取れない。

   したがって、それらの仕事は1カ月や2週間というスパンで先行計画、先行管理して
   おくことがコツとなります。

 4.仕事のパターン化と整理整頓

  (1)仕事のパターン化〜やり方・手順を決める〜

   要領の悪い人の仕事を見ていると、いつも同じ仕事を一からやっている。

   共通化・標準化すべき仕事は、どんな職種にもあります。

   そこをパターン化することです。

   しかし、標準化するのにわざわざ時間を取るのは非効率である。

   目前の仕事を片付けながら、標準化していく。

   “一石二鳥精神”と“健全な手抜き精神”が効率化の母です。

   商品構成でも1/3は「新規」、1/3は「改善」、1/3は「既存」が理想と言われ
   るが、仕事のやり方にも通用する。

   一つの仕事で一つのニューメソッドを開発すれば、1年で10の仕事をすれば10の
   ニューメソッドを構築することができる。

  (2)整理・整頓

   整理とは、必要なものと捨てるものとを分類することで、整頓とはいつでも必要な
   ものを取り出せる状態にしておくこと。

   事務所、工場、倉庫、机、引き出し、パソコン、手帳、頭の中など、すべてにおいて
   です。

   せっかくのノウハウも、どこにあるのか分からず、取り出すのに時間がかかって
   いては本末転倒です。

   整理のノウハウについては、書店にさまざまな書籍が並んでいる。

   自分に合うやり方を一つ決め、実行していただきたい。

 5.集中力を高め、「正確に」「早く」「丁寧に」

  仕事は人間がやる以上、最後は意識の問題が出てくる。

  一流の人ほど集中力が高いと言われるが、われわれ凡人も常に集中する習慣は持ち
  たいものです。

  集中するには、「同じ仕事は一度で済ませよう」と思うことです。

  スキマ時間だが、事前に乗車時間を把握し、それに適した仕事の資料を持って仕事に
  出る。

  スキマ時間の活用も大きく生産性に影響する。

  また「早く」を意識するがために「正確さ」をないがしろにするのも本末転倒。

  結局は二度手間となり、同じ仕事を複数回することになる。

  「正確に」「早く」「丁寧に」を常に意識し、あとは集中すること。

  常に改善を意識しておくことも大切です。

  例えば会議の議事録を作成するのに、手書きで作成した後でパソコン入力をするやり方
  をたまに見かける。

  同じ仕事をするのに、2倍の工数がかかっている。

  「今の仕事のやり方でよい」と思った段階で、改善は止まる。

  現状を否定し、「さらに良いやり方はないか」を常々考える姿勢が「作業」を
  「仕事」に変え、そのプロセスが仕事の質と自分自身のスキルを高めることにつながる
  のです。

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業務の見える化は経営課題を解決

日常業務の効率化 ワークフロー管理

ワークフロー管理  日常業務の効率化 

  ■ワークフロー管理の概念

   1.ワークフロー管理とは 
    「ワークフロー」とは、複数の担当者がネットワークを経由して業務を行う際に、
    それを円滑に進めるために担当者間で受け渡す文書や情報の流れを指します。
    文字通り「Work(仕事)」と「Flow(流れ)」を組み合わせた造語です。 
    ただし、「ワークフロー管理」という考え方におけるワークフローという言葉
    には「業務の流れ」という意味だけではなく、その自動化という意味も含まれ
    ています。 
    企業では、休暇願・稟議書の提出、経費の精算といったさまざまな業務手続き
    が日常的に行われています。
    これらの業務手続きの多くは頻繁に行われ、かつ煩雑です。
    そのような頻繁に行われる煩雑な業務手続きを定型化し、電子的に行えるように
    して、業務の流れを管理できるようにすることで、効率的に業務を進めようと
    いうのがワークフロー管理の基本的な考え方です。 
    ワークフロー管理は、単純な書類の受け渡しの効率化にとどまらず、それを
    さらに推し進めて、業務運営における各担当者間の仕事の流れを整理し、効率化
    するための業務改善ツールに発展させることで、生産性を向上させるための
    ツールとしての効果にも期待できるのです。

   2.ワークフロー管理導入のメリット 
    ワークフロー管理は、以下のようなことを実現する仕組みを作り上げることが
    基本となります。
     ・各種申請手続きや稟議などの一連の作業をシステム化し、紙を可能な
      限りなくす
     ・タイムラグを生じさせることなく、必要な情報を担当者間で受け渡す
     ・処理の停滞状況を把握する 
    上記を実現するための仕組みを作り、書類の受け渡しをともなう業務に導入した
    場合のメリットとしては、主に以下のようなものがあります。

    (1)紙を受け渡す時間の短縮 申請者と承認者が別の地域や建物にいる場合、
     書類による申請・承認作業では、申請者と承認者間のやり取りに長い時間
     がかかることがあります。
     しかし、ワークフロー管理では次の承認者や担当者に申請が瞬時に届くため、
     書類の受け渡しに要する時間を短縮できます。

    (2)申請書などの滞留時間の短縮 
     担当者の段階で未承認の申請書が滞留している場合、ワークフロー管理を
     導入することで、納期や下流担当者の業務進ちょく状況に応じて、適切な
     タイミングで作業を催促することができます。
     これによって書類の滞留時間が短縮され、担当者の処理が遅延することに
     よる業務の停滞が少なくなります。

    (3)作業のやり直し時間の短縮 
     紙の書類による申請・承認作業では、記入ミスや回覧中の申請書の紛失など
     により作業のやり直しが発生することがあります。
     これに対して、ワークフロー管理では、記入(入力)ミスの検出が容易で、
     かつ担当者間の受け渡しが確実に行われるために書類の紛失が発生しません。
     そのため、書類の記入ミスや紛失による作業のやり直しをなくし、時間的な
     ロスを短縮できます。

    (4)個々の担当者における処理時間の短縮 
     ワークフロー管理では、書類作成を定型化・電子化することによって、
     担当者名など何度も記入・入力しなくてはならない情報を、必要な個所に
     一括して入力するといったことが可能となります。
     これにより、入力の手間を削減でき、無駄な記入・入力時間を短縮できます。

    (5)社内の不正防止 
     ワークフロー管理では、決裁や書類の閲覧といった業務上必要な権限を、
     担当者ごとに分けて設定することが可能です。
     また、個々の担当者が操作した履歴の記録もできます。
     そのため、承認の権限がない従業員による決裁書類の偽造、といった不正
     を防止する効果が見込めます。

    (6)業務の管理工数削減 
     ワークフロー管理で業務を定型化することによって、業務が標準化されます。
     これにより、決められた業務手順に従って業務が進行し、業務手順を徹底
     させるのに必要な時間や手間を削減できます。

    (7)業務の無駄を排除 
     業務手順を定型化することで、重複した作業手順といった業務の無駄をなくし、
     誤った作業手順を修正することができるようになります。
     さらに、業務量や処理時間を正確に記録することで、各業務ごとの必要時間
     など業務を定量的に分析し、把握することが可能になります。

    (8)文書管理効果 
     ISO9001などのマネジメント認証規格を取得する際は、開発および生産手順
     の文書化、品質管理の記録および保管が必要になります。
     ワークフロー管理は、このような文書および記録の管理などにも役立ちます。

   3.ワークフロー管理の適用業務 
    ワークフロー管理の導入に適した業務の代表的な例としては、休暇願の申請
    といった総務・人事関連の各種申請業務、勤務時間や給与データの受け渡し
    といった勤怠管理業務、出張旅費や経費といった経理関連の各種申請業務、
    上司の承認が必要な稟議書の回覧業務などが挙げられます。
    このほかにも、定型的な書類の提出や回覧が必要な業務は、いずれもワーク
    フロー管理の対象となります。
    例えば、営業支援システムと組み合わせた商談管理システムを導入することで、
    営業報告書の提出が定型化・自動化できます。 
    このように業務を定型化・自動化するワークフロー管理は、工場における生産
    ラインに似ています。
    工場の作業ではコンベア上を流れる半製品に担当者が部品を組み込んで
    いきますが、ワークフロー管理では半製品が各種申請書、組み込む部品が
    申請書への記入や承認印の押印に相当します。
    そして、申請書を運ぶコンベアに相当するものがワークフロー管理といえます。
    つまり、反復性が高く流れ作業的な要素の大きい書類などの受け渡し業務
    であれば、特にワークフロー管理に適しています。
    さらに、そのほかの業務についても、ワークフロー管理の対象として、
    効率化を検討することが可能です。

  □ワークフロー管理導入のポイント

   1.ワークフロー管理は総合的な業務効率化ツール 
    業務の定型化・自動化というワークフロー管理の特性から、日本では一般的に
    ワークフロー管理は、稟議書などの閲覧に利用する電子回覧板、または電子
    文書承認システムというイメージが定着しています。
    これは、ワークフロー管理の初期に登場したシステムに、こうした文書管理
    ソフトとしての要素が色濃かったことも影響しているようです。
    また、いわゆるグループウエアの導入増加にともなって、グループウエアソフト
    の掲示板やメール機能を利用した簡易的なワークフロー管理を行う企業が増えた
    ことも、ワークフロー管理にこうしたイメージを与えたといえます。
    しかし、ワークフロー製品のユーザーインタフェースを統一するための国際
    標準化団体であるWorkflow Management Coalition (WfMC)ではワーク
    フローを以下のように定義しています。
     ビジネスプロセス全体またはその一部の自動化であり、これに
     よって文書・情報・タスクが、手続き規則に従って担当者から
     他の担当者へ引き継がれること 
    つまり、ワークフロー管理とは本来、企業における日常業務や部門間連携
    といった業務過程(ビジネスプロセス)を効率化するツールとして定義付け
    られるべきものなのです。
    ◎Workflow Management Coalition (WfMC)      

     日本ビジネスプロセス・マネジメント協会

   2.さまざまな業務に適用が可能 
    従来のワークフロー管理が導入された業務のほとんどは、旅費精算、勤怠管理、
    稟議回覧の3つの業務でした。
    これらの業務は、承認を必要とする社員が申請書を入力し、職階に沿って承認
    が行われるという回覧板のような流れとなります。
    流れを切り出してシステム化することが容易であり、ワークフロー管理の導入
    効果が比較的明確なため、ワークフロー管理が普及し始めた当初には多くの企業
    で用いられました。
    しかし、最近のワークフロー管理は、こうした回覧板システムから、ワークフロー
    管理の本来の定義付けに近い、業務全体を管理するためのシステム構築ツール
    となっています。
    現在、多くの企業が導入を検討しているワークフロー管理は、生産管理や
    販売管理をはじめ、人事、経理、財務など、いわゆる基幹業務システムの流れ
    を管理し、担当者間や部署間でスムーズにデータをやり取りするための仕組み
    です。 
    営業部門であれば、ワークフロー管理はSFA(営業支援システム)の一部として
    機能することが望ましいでしょう。
    営業スケジュールとして入力されたデータを、勤怠管理システムと連動させる
    ことで、営業社員などの管理がワークフロー管理で一括して行えます。
    開発部門であれば、プロジェクトの進捗状況を管理するツールなどと連動する
    ことが望ましいでしょう。 
    また、顧客訪問の際に近隣に他の顧客が存在するか否かが管理(確認)
    できれば、より効率的に顧客訪問のスケジュールを設定することができます。
    これによって、顧客管理と連動したワークフロー管理が実現でき、旅費の削減
    も可能になります。 
    このように、理想的なワークフロー管理はさまざまな業務やツールを連動して
    管理することによって、業務全体の効率化を可能にします。
    最終的には、それらを集約することによって全社における知の共有、すなわち
    ナレッジマネジメントとしての情報活用も可能になるでしょう。

   3.ワークフロー管理導入のポイント 
    ワークフロー管理はビジネスプロセス全体を最適化し、業務の流れを効率化
    することを目的に導入されるべき性質のものです。
    そのためには、ワークフロー管理はさまざまな業務や既存システムと連携して
    動いていくことが望ましいといえます。
    しかし、ただ闇雲にワークフロー管理を導入しては、期待する効果は望めません。
    以下では、ワークフロー管理導入に当たっての検討の視点をみていきます。

    (1)日常業務の自動化推進 
     ワークフロー管理の導入によって、業務をスムーズかつ効率的に行
     うだけでなく、業務の処理に要した時間など蓄積されたデータを基
     に、業務フローを継続的に改善することが重要です。 
     例えば、「課長職以上は総額1万円以下の経費の申請については、決裁
     権限が与えられているから必ず承認される」といった条件のデータが
     あれば、その条件に当てはまる申請は自動的に承認および決裁することで、
     該当する申請を承認する手間をなくして決裁者の負担を減らす仕組みを
     作ることができます。
     このように、業務の自動化によって負担を軽減することができるかという
     点は、ワークフロー管理の導入に際しての重要なポイントとなります。

    (2)ノウハウの共有 
     会社のノウハウではなく、個人のノウハウとして蓄積された業務手順がある
     場合、ワークフロー管理を導入することで、個人に蓄積されたノウハウを
     共有化することができます。
     共有化する際、業務の流れを定義することによって、以後は誰でもこうした
     業務に対応できるようになります。
     このように、ワークフロー管理は、社内のあらゆる業務の手順を可視化し、
     一般化する方策としても機能します。

    (3)ボトルネックの解消 
     ワークフロー管理を行うことによって、同時にワークフローそのものを
     整理し、監視することが可能になります。
     これによって、業務上のさまざまな問題点を発見することができるように
     なります。 
     例えば、複数の作業が同時に実行され、そのすべてがそろわなければ次の
     処理に入れないにもかかわらず、特定の業務段階で遅滞が生じやすいワーク
     フローが存在する場合、ワークフロー管理を行うことで業務のボトルネック
     となっている部分を見つけやすくなります。 
     ボトルネックを発見できれば、業務の分割や担当者の増員などの対策を
     講じやすくなります。

    (4)「プッシュ」の仕組みを作る 
     ワークフロー管理は、業務処理をどのようなルートで、誰に回せばよいかを
     自動化します。
     ワークフロー管理によって、決済期日や業務処理の期日を自動的に判断すれば、
     各業務段階の担当者に業務処理状況や期日を自動的に催促(プッシュ)する
     ことが可能になります。 
     例えば、期限が近い業務が優先的に担当者のパソコン画面に表示される仕組み
     があれば、優先して当該業務を進めるように意識できるため、業務進行の遅滞
     を防ぐ効果とスケジュール管理の負担を軽減する効果の両方が実現できます。

   4.システム構築のポイント 
    ワークフロー管理を導入するためには、システムを構築するためのソフトウエア
    の導入が不可欠です。
    また、導入に際しては、ワークフロー管理による業務手順の管理基準を明確に
    決め、きちんと実施できる体制作りや動機付けが欠かせません。
    そこで、以下ではワークフロー管理ソフトの選定ポイントをみていきます。

   (1)導入効果の算定 
    ワークフロー管理ソフトの導入において最も重要なのは、導入によって実際に
    どれだけの効果を見込めるかという点でしょう。
    しかし、ワークフロー管理ソフトの導入効果の算定は非常に難しく、業務速度
    や顧客満足度などさまざまな面で効果が表れても、それを数値や金額に換算
    することは非常に困難です。
    導入効果の算定に当たっては、ワークフロー管理ソフトを販売しているベンダー
    などがコンサルティングサービスも提供しているケースがあるため、それを
    利用するのもよい方法です。
    こうしたサービスでは、導入前に社内の業務手順を調査し、改善案を作成して、
    予想される改善効果を数字としてみることを可能とします。
    また、ツールの販売活動の一環としてコンサルティングを実施しているケース
    が多いため、費用も比較的安価である場合もあります。 
    ただし、こうしたベンダーによるコンサルティングは、ワークフロー管理ソフト
    の販売を目的としています。
    そのため、導入効果を判断する際には提出された結果をある程度割り引いて
    考える必要はあるでしょう。
    そのため、複数のベンダーにコンサルティングを依頼して結果を比較したほうが
    よいでしょう。

   (2)既存システムとの連携は容易か 
    ワークフロー管理ソフトを基幹業務システムと連動させることが理想的です。
    そのため、社内に導入されている既存システムとどの程度連携が可能かが
    重要となります。 
    自社の既存システムとのデータ形式の互換性や、どのような接続の仕方を
    すべきか、どのシステムと連携すべきかを十分に検討して選定を行う必要が
    あるでしょう。
    また既存システムとの連携は、可能な限り少ない労力でできなければなりません。
    少ない労力でデータ連携ができない場合、既存システムとワークフロー管理
    ソフト双方のデータを入力・管理する必要があるため、二重の労力を強いられる
    ことになります。 
    基幹業務システムを提供しているベンダーでは、同時にワークフロー管理ソフト
    の提供も行っています。
    ワークフロー管理ソフトの導入の際に、上記のような既存システムの互換性や
    連携について検討するに当たっては、現在利用している基幹業務システムの
    ベンダーに相談するのも一つの方法でしょう。

   (3)フロー分析機能の充実 
    ワークフロー管理ソフトの導入後は、ワークフローを随時チェックして改善し、
    ビジネス環境の変化に適合させていく必要があります。
    そのために重要なのが分析機能です。 
    分析機能は、例えば、データが蓄積されるだけで、分析自体は人間が行う
    必要がある製品もあれば、本格的な業務分析システムが用意されている製品
    もあります。
    管理者の分析スキルなどに応じて、適切な分析機能を持った製品を選ぶ必要が
    あります。

   (4)システムの使いやすさ 
    システムそのものの使いやすさも、ワークフロー管理ソフトの選定において
    重要なポイントです。
    実際の業務を想定して操作し、どのようなことができるのか、工数はどの程度
    になるのかを必ず検討しましょう。
    また、既存システムとの操作性の差異も踏まえて、自社の事情と適用分野に
    合わせて検討する必要があるでしょう。

   (5)支援体制は整っているか 
    ワークフロー管理は、ある程度各部門の業務に合わせてカスタマイズされた
    形で各部門に導入する必要があります。
    それを、部門ごとの実情に合わせてさらに細かなカスタマイズを行い、
    システムとしての完成度を高めていくことになります。 
    こうした作業にはある程度の労力やノウハウが必要となるため、ベンダーや
    代理店による支援が欠かせません。
    ベンダーや代理店、ワークフロー管理の設計、導入教育、運用支援まで必要に
    応じてサポートしてくれるかどうかを、導入前に確認しておく必要がある
    でしょう。 
    導入に関する支援の費用は、システムのハードウエア・ソフトウエアの導入
    費用より一般的に高価になる傾向があります。
    導入の際には支援費用まで頭に入れて、トータルコストを意識して導入を
    進めたほうがよいでしょう。
 

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業務の見える化は経営課題を解決

決定事項のデシジョンテーブル(ボード)化 


  結果・成果は別として、決められたことが決められたとおりに実行される『基本遵守』が
  マネジメントの核となります。

  仕事は指示・命令でスタートし、アクション(行動)の結果、報告が成され仕事が終了し、
  結果・成果が生み出されるのです。

  よって、決められたことが決められたとおりに実行されていれば、必ず収益はアップし
  ます。

  しかし、このあたり前のことができていないことが収益アップを阻害しているのです。

  この実行前の「決定」「判断」があいまいであったり、成されていないことが継続実行を妨
  げているのです。

  まずは、各部門が目的達成を完遂して行くためには、決定事項をつくることからスター
  トしなければなりません。

  1.決定事項づくりの重要性

    社内では、会議・ミーティング・打合せと様々な公的会合がありますが、それらが成
    果・結果に結びつかない、結びつきづらい原因が
    あります。

     (1) 会合の目的が不明確
        話し合いが総花的となり、結論・決定
        が出なくなる。

     (2) 連絡・確認・決定が不十分。
        理解が浅く、行動のピントがずれた
              り、行動(実行)が遅れる。

     (3) 実施の期間・期限が不明確。
       成果・結果が遅れ、チェックがしずらく
       なる。

     (4) 担当者・責任者が不明確。
       他人依存で責任がなく、なかなかスタートができない。

     (5) チェック・システムが不十分。
       決めっ放し、やらせっ放し現象で、いつのまにか立ち消えてしまう。

    これらを防止し、推進して行くことが各部門の目的をやりぬく最適手段なのです。

   2.会議における決定事項づくり

     1) 基本的に討議されるもの

      (1)一定期間に成し遂げるべき結果はどうであったか。(目標と実績の検討)

      (2)なぜ、このような結果になったのか。(問題点の討議)

      (3)なぜ、このような問題点が出たのか。(問題点発生の原因の討議)

      (4)だから、どう対応して行くのか。(対策の討議)

      (5)その対策は誰が、いつまでに実施するのか。(担当部門・担当者・期日)

      (6)その対策はどう実施されて、どうであるのか、どうであったのか。
                         (対策の進行経過の報告・検討)

     2) 会議議事録の作成

      (1)討議した会議の内容を、各参加者が充分に理解する。

      (2)決定事項の漏れをなくする。

      (3)次回の会議の討議・テーマの重複をなくす。

      (4)主要な記入項目

        a.テーマ   e.不参加者(理由)   i.保留事項の処置
        b.日 時   f.討議された主要点    j.次回会議のテーマ・日時
        c.場 所   g.決定事項         k.その他
        d.参加者   h.保留事項

      (5)議事録は、不参加者を含め閲覧する。

     3) 決定事項一覧表の作成と配布 

      会議・ミーティングをひらき、いくら討議し決定しても、「知らない」、「聞いてい
      ない」、「やっていない」では時間の浪費としかいえない。

      各部門・各社員に周知、実施してもらうために「決定事項一覧表」を作成し、配布
      する。

      この「決定事項一覧表」は、会議・ミーティング・打合せ時に必ず持参しなければ
      ならないようにする。

    人は本来怠け者である。

    決め事は目に見える形で、紙に落とし込み各自に配布すること。

    「決められた事が決められたとおりに実行される」にはトップ自らが率先垂範していくこ
     とです。

  3.決定事項の進度チェック

   会議でいくら問題点についての結論(対策)が出されても、その実施チェックが行なわ
   れなくてはなんにもなりません。

   結論(対策)が出たときに、誰が担当して、いつまでに実施するか定め、又、中間チェ
   ック日(経過報告)を設定して、次回の会議日では、冒頭に前回決定した事項の実施情
   況と結果を確認します。

   このようにすることによって、結果の出るのも早くなり、決めっ放しもなくなり、成果も期
   待できるものとなるのです。

    1) 決定事項進度チェック表の作成

     決定事項一覧表で、次回会議の場で未処理のものは確認されて、厳しくチェック
     されるが、会社全体の「成果」という点から見ると、対策のタイミングを失することな
     く、早く実施することが必要です。

     そのために、この対策の実施情況(経過)を積極的に、毎朝または毎週ごとに報告
     を聞きながら表へ記入して、厳しくチェックして行くのです。

     これが『やるざるを得ないシステム』としてのマネジメントです。

     2) 決定事項進度チェックの流れ
               
    3) デシジョンテーブル(ボード)化

     決定のしっ放しの防止と、きめの細かいチェック、決定事項の推進のために
     「決定事項一覧表」のデシジョンボード化が必要である。

     会議室をデシジョンルームとし、常にやるべき事と現在やっている事を目に見せ、
     朝礼・ミーティング・会議ごとにチェックができ、コントロールが可能となる。

     デシジョンテーブル(ボード)は大きさに制限はなく、テーブル、模造紙・黒板・ホ
     ワイトボード等を使用し、会議時にはいつでも確認、チェックできるものである
     ことです。(ボードは、できればキャスター付きのホワイトボードが良い。)

      (1)デシジョンルームをつくる。

        a.部門、会議の種類ごとにつくるのが望
          ましい。
           (例:営業部用、経営会議
              用、・・・)
        b.但し、規模的に小さく組織が一体化し
          ている場合は一つでよい。
        c.各部門毎に掲示または設置する。

      (2)決定事項は、事の大小に関係なく、決定順
        に記入する。

      (3)決定事項は会議のときだけとは限らない。追加の決定事項は順次記入する。

      (4)結果の出たものは消す。

      (5)保留・中止となったものは、その旨、摘要欄に記入する。 

      (6)随時チェックし、手を付けていない項目、遅れいてるものに対しては厳しく
       チェックする。

      (7)月一度は、デシジョンボードを整理して、新しく記入し直す。

      (8)保留項目、追加項目は、次回の会議テーマ・課題として議事録に転記する。

      (9)追加項目については特に、伝達洩れを起さぬよう、朝礼等で全員へ知らせる。

     (10)情況の変化により、担当・期日・内容などが変更した場合も同様に記入し、
        周知する。

  4.会議結果を現場に直結させる

   マネジメントをとる者として、ここで再認識してほしいことは、会議はあくまでも現場
   の活動実態を間接的にコントロールしているにすぎない、ということです。

   実際に、業績を生み出しているのは、現場の第一線であり、タイミングを失して、機会
   損失を生ずることなく、「適時」、「的確」、「適切」に問題を解決していくポイントは、
   現場の実態を十分に把握することにあるのです。

   営業マン・一般社員が、現場で一人ひとり示された目標達成に向かって、その成果の
   目的・内容・時間を十分理解し納得し、強い関心と高い意欲をもっているかが、ポイン
   トとなります。

   そのための日々管理が、キメ細かく行なわれているかどうか、顧客が真に営業マンに
   求めているものは何か、会社が社員に期待しているものは何か、現場におけるこうし
   た直接管理が目標達成のカギとなるのです。

   間接的にチェックし、コントロールする会議・ミーティングによる検討や対策の結果が、
   第一線の営業マン・一般社員を動機づけた現場で、即日に具体的な行動に移さなけ
   ればその会議は無駄ということになってしまいます。

   会議の原点は、現場にあることを忘れてはなりません。つまり、“真実の姿をよく見よ”
   ということです。

   言い尽くされた言葉ですが、

   計画を実現可能なものにしていくためには

    Plan ⇒ Do ⇒ See ⇒ Check ⇒ Control

   が欠かせません。

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デシジョンボード.gif

業務の見える化は経営課題を解決

販売・仕入の管理業務をチェック
 

  ■販売・仕入管理の意義を明確にする

   1.販売・仕入部門が抱える問題点

     企業には顧客満足の観点から、多頻度小口の注文やサービス時間延長の要
     請への対応など、販売・仕入業務の高度化が求められています。

     また、商品に対する要求も、価格、品質ともに厳しくなっています。

     このようなことを背景に、各企業における販売・仕入部門において、次のような
     問題の発生が懸念されるようになっています。

      ・効率的な業務運営がなされていないことから品切れを生じ、販売機会の
       損失を招く

      ・業務の複雑・煩雑化で手間が増大し、コストが増加する

      ・各業務機能が発揮されていないことによるリスクが顕在化する(売掛金
       の回収不能、過剰在庫、顧客・仕入先とのトラブル増加など)

   2.販売・仕入管理の意義

     顧客のニーズはたえず変化しており、近年その変化のスピードは一層あがっ
     ている。

     ニーズに対応し顧客が満足する商品を提供し続けるためには、販売や仕入業
     務の体制をつねに変革していく必要があります。

     これを怠ると前述したような問題が顕在化し、自社の経営を危ういものにする
     ことになりかねません。

     こうしたことを避けるための出発点は、販売・仕入管理の意義を明確に認識し
     ていくことです。

      販売・仕入管理の意義は、顧客満足を主眼におきつつ、
      自社の適正利益を確保する業務システムを構築し、不断の改善を
      実行していく

     ことにあります。

     したがって、

      ・顧客ニーズの把握とそれに見合った商品の提供

      ・効率的な商品(資本)投下にともなう適正利益の確保

      ・販売機能、在庫機能、仕入機能の連携

     を基本に据え、改善点を見つけていくことが大切です。

  □販売・仕入管理の基本をチェックする

   この項では、販売・仕入管理のチェックのスタートとして、「5つの適正」により商品
   が提供されているか、各業務機能が全体のなかで十分に機能しているかをチェッ
   クします。

   1.販売・仕入管理の基本(5つの適正)

     最適な販売・仕入管理とは、最適な商品を適切な業務運営に基づき顧客に提
     供することです。

     これを行うためには、まず、次の「5つの適正」を実現することが必要です。
 
     A.適正商品

       顧客の求める商品、顧客の欲求に適合した商品のことです。
       商品の種類、デザイン、品質、色、サイズ、ブランドなどに配慮する必要

       があります。
 
     B.適正場所

       店舗の立地条件と売場構成などの販売場所が、もっとも重要な要件に
       なります。
       また、商品をストックする場所や仕入れを行う場所も大切です。

     C.適正時期

       顧客の求めようとする時期にタイミングよく提供することが重要です。
       そのためには、販売と仕入のタイミングを調整する必要があります。

     D.適正数量

       顧客の求める商品の量を確保し、適切な品揃えを実施することです。
       つまり、品切れを防ぎ、かつ過剰在庫にならない適正な数量を管理する
       必要があります。

     E.適正価格

       顧客の求めやすい販売価格の実現を意味します。

       そのためには、業務を合理化して販売までにかかる費用を削減したり、仕
       入価格をできるだけ安くしていくことが大切です。

   2.販売・仕入業務の連携をチェック

     販売・仕入業務はそれぞれ独立したものではなく、概念図のように有機的なつ 
     ながりをもっています。

     各業務間は、伝票やコンピュータ上のデータ、あるいは担当者間の連絡によっ
     て情報伝達されることにより、スムーズな業務運営がなされます。

     図式化して自社における業務の体系を明らかにし、業務全体をみながら、各
     業務が必要な情報伝達手段により有機的に連動しているかどうかをチェックす
     る必要があります。

     各業業務の連携がうまくいっていない場合は、こうしたチェックで「問題のあり
     どころ」の目星をつければ、各業務のどこにどのような問題があるのかを知る
     手がかりとなるでしょう。

     そこで、次のステップとして、次項以降からは、販売・仕入業務を機能ごとに分
     解し、チェック項目を明らかにしていきます。

  □販売管理業務をチェック

   ここでいう販売管理業務は、見積書の提示、商品の受注・出荷から売掛金の回収
   までの一連の業務をその範囲とします。

   以下に、各業務ごとのチェックポイントを説明します。

   1.受注管理業務

     (1)見積り管理

       契約・受注する前に顧客に見積書を提示する場合もあります。

       ここで的確な見積りが提示できないと、販売機会を損なったり、注文を受け
       ても適正利益の確保ができなくなったりします。

       以下に、見積り管理のおもなポイントを紹介します。

        □見積書の書式は全社で統一され、納入期限や取引条件などの必要
         情報が盛り込まれている

        □見積書が適切に管理され、提示後の受注の成否が把握されている

        □見積書を提示する際の決裁権限がルール化されている

        □顧客の属性(親密度、規模など)や取引金額に応じた価格設定・条件
         設定など柔軟な見積り提示がされている

     (2)受注方法

       実際の受注が顧客と自社の状況に応じ適切な方法で実行されているかを
       チェックします。

       具体的な受注方法としては、次のようなものがあげられます。

       <受注方法>

        ・電話、FAX、電子メール、ホームページ、EOSなど専用通信を
         利用した受注

        ・自店での受注

        ・営業マンなどによる顧客訪問の際の受注

        ・卸売市場や展示会での受注

        ・カタログや広告媒体を使用しての受注

        ・代理店や商社など代理業者を通じての受注

     (3)出荷業務

       受注後、すみやかに出荷指示や在庫の引き当てを行い、確実に商品を出
       荷する仕観みができあがっているかを確認します。

       また、分割出荷など、必要に応じてきめ細かい出荷が行われているかを
       チェックします。

   2.売掛金管理

     (1)売り上げ管理

       売上基準が自社内で統一されているかどうかは、自社の財務管理の適正
       化を図るためだけでなく、販売業務の標準化を進めていくうえでも重要なこ
       とです。

       売上基準としては、「受注基準」「納品基準」「検収基準」などがあり、いずれ
       かに統一することが必要です。

     (2)請求管理

       販売業務は、顧客へ代金を請求し、入金を確認できた時点で一連の業務
       が完結します。

       入金がなされなければ、自社にとって多大な損失を招くことになります。

       それを防ぐためには、次の体制がとられていることが必要と考えられます。

        □売上処理に連動した請求書が発行されており、所定の手続きにより
         顧客の手元に送られている

        □未入金状況が適宜把握でき、督促処理が適切な方法で実施されている

        □入金管理が財務管理、とくに資金繰り管理に連動している

  仕入管理業務をチェックする

   自社の利益をもたらす商品を仕入れるためには、仕入計画から仕入実務、仕入
   体制まで、幅広い管理が必要になります。

   1.仕入計画

     (1)商品選定

       顧客ニーズはたえず変化するものであり、商品選定は、次のような過去の
       販売記録をベースとした基準に、顧客ニーズを先取りするものを加味して
       決定しているかをチェッタすることになります。

        (a)売上高基準 :売上高の大きい種類の商品を仕入れる

        (b)商品回転率主義:売れ足の早い商品を仕入れる

        (c)売上利益率主義:利益に貢献している商品を仕入れる

        (d)交差主義:上記“(b)×(c)”の大きいものを仕入れる

     (2)仕入先の選定

       適切な商品を提供していくためには、顧客管理と同様、仕入先の管理も大
       切です。

       この管理が不十分であると、仕入先の数が野放図に増加したり、トラブル
       の原因にもなります。

       仕入先の選定は次の条件などにより、適正な数に絞り込む必要があります。

       <商品面>

        □顧客ニーズにマッチする商品か

        □品質は確かか

        □価格は適正か

        □支払い条件に問題はないか

       <サポート面>

        □商品の情報提供力はあるか

        □プロモーションによる援助はあるか

       <経営的信用面>

        □経営者・担当者は信用できるか

        □物流機能などの業務信頼性はあるか


     (3)仕入方法

       仕入れる商品や仕入先に応じて、仕入方法についても見直すことが大切です。

       仕入方法については、前項の受注方法と同様、適切な商品をタイムリーに
       仕入れられる方法を採用しているかを確認します。

       また、仕入れを合理的に行い、仕入価格を積極的に引き下げるという観点
       から、次の仕入方法が検討されているかもチェックします。

        ・大量仕入

         文字どおり一度に大量に仕入れる方法で、大量取引による割引や仕入
         経費の節減が期待できます。
         しかし、在庫過多により効率の悪化を招くおそれもあります。

        ・随時仕入

         商品の回転が早くなり、在庫の減少が実現できます。
         しかし、手間の増大や品切れ防止策が必要となります。

        ・共同仕入

         他業者と共同仕入体制を設置することで、大量仕入のメリットを享受
         でき、多角的な仕入活動が実現できます。

        ・集中仕入

         本部などに仕入を集中することで、大量仕入を可能にします。
         しかし、各店の特性を生かした仕入ができにくくなります。

   2.仕入実務

     (1)発注業務

       発注業務は、商品の品切れ防止と過剰在庫の回避を念頭におき、実施さ
       れなくてはなりません。

       そのためには、自社において「補充発注システム」を構築する必要があります。

       補充発注システムとは、販売や在庫の状況に応じて、商品発注を「いつ、
       どのくらいの量を、どこへ」発注するかを業務上、標準化・ルール化したも
       のです。

       たとえば、商品の特性により、

        ・定量発注法:在庫がある一定水準に減少してきたら前もって決めて
         ある一定量を自動的に発注

        ・定期発注法:一定の発注周期のもと、必要な量をその都度決めて発注

       のように、発注方法の基準を設定しておきます。

       また、通信回線を利用して店舗や本部と仕入との間で受発注データをオン
       ラインで交換するEOS(Electronic Ordering System:電子補充発注シ
       ステム)を導入し、コンピュータシステムと連動させ、仕入業務の効率化を
       図ることも大切です。

     (2)入庫業務(商品の受領と検品)

       商品の着荷・納品が行われた後、商品の検品を行います。

       検品の意義は、適正な商品を消費者(取引先)に提供することです。

       正確かつ厳重な検品と受入商品の管理を手続きどおりに行うことが大切です。

       このとき、不良品があった場合、正当な返品(正当な理由がなく返品するこ
       とは、不公平な取引方法として禁じられています)として仕入先へ送り返し
       ます。

       また、良品については、適切な商品保管を行います。

     (3)買掛金の管理

       掛けでの取引の場合、商品の入庫が済み検品が終了すると、その商品に
       対し買掛金が発生します。

       財務担当者は、資金繰り管理と連動させ、支払いの管理を滞りなく実施す
       ることが大切です。

       また、期日どおりにきちんと支払うことは、仕入先との良好な関係を継続し
       ていくうえでの大原則となります。

   3.仕入体制

     (1)仕入組織の種類

       自社の仕入業務の特徴に応た仕入組織が編成されているか、その都度
       チェックしていく必要があります。

       たとえば、地域の特殊性が強い場合は「販売地域別の仕入組織」を、商品
       の専門性が高い場合は「商品系列別の仕入組織」を編成することになります。

     (2)仕入担当者(バイヤー)に必要な能力

       これまで述べてきた各種の施策を確実に行っていくためには、仕入担当者
       には、次のような能力が求められます。

        ・顧客の欲求に関する知識とその適応性

        ・品揃えに対する知識とその計画性

        ・商品価値に対する知識とその創造力(価格、品質、デザインの設計力)

        ・商品管理に関する計数の理解力と統制力

  □在庫管理業務をチェックする

   在庫管理は、仕入から販売までのクッション役を果たし、適正な商品管理を行う
   業務として、次のようなチェックが必要です。

   1.在庫管理の方法

     在庫は、少な過ぎると品切れを起こし、販売機会の損失を招きます。

     また、多過ぎると保管費の増大が心配されます。

     このように、在庫管理は二律背反の性格をもっています。

     また、在庫管理は仕入管理と販売管理を繋ぐものであり、商品を中心に見たと
     き、業務運営上の中核をなすものです。

     これらのことから、在庫管理は非常に重要な業務で、一般的には次にあげる2
     つの面からチェックする必要があります。

      ・ユニット(数量)コントロール

       数量単位により個々の商品の動向を管理するものであり、ダラーコント
       ロールと併用して、日々の受注・発注業務に利用する

      ・ダラー(金額)コントロール

       金額により全商品の動向を把握するものであり、在庫の投資効率を
       チェックする

   2.棚卸し

     棚卸しの目的としては、

      ・帳簿棚卸しと現品棚卸しの実数合わせ

      ・過剰商品、死に筋商品などの実態把握

      ・商品減耗などの正確な把握と管理

      ・在庫管理方法に落ち度がないかの確認

      ・期末決算のための在庫資産の評価

     があげられ、これらの目的に応じた棚卸しが実施されているかを確認します。

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業務の見える化は経営課題を解決

業務改善で自社を体質改善

業務改善で自社を体質改善


  ■生産性の向上と効率化

   日本の労働生産性は低いと言われている理由に効率化が挙げられます。 

    ・価格に転嫁されない部分にコストをかけすぎる  

    ・日本だけにしか通用しない商品サービスのガラパゴス化  

    ・形骸化された会議、アリバイのための書類  

    ・人の評価があやふやなので能力も育たない 

   など、生産性の悪化に拍車をかけています。

   日本生産性本部は、OECDデータベース等をもとに『労働生産性の国際比較2018』を
   公表しました。 

   『労働生産性の国際比較2018』によると、1人が1時間にどれくらいのモノやサービス
   を効率的に生み出すかの「労働生産性」で、日本は4,733円。 


   ちなみに米国は7,169円。 OECD加盟36カ国中では前年と変わらずの20位で、

   G7では47年連続の最下位となってしまいました。 

   米国を100としたときの日本のサービス業は49.9%、一方、製造業の生産性は米国の
   69.7%と半分の水準で、サービス業に比べると差は小さくなっています。

   製造業において業務改善は収益に直結した問題です。

   業務の効率化の有無は目に見える形で直接コストとして跳ね返ってきます。

   しかし、非製造業(部門)においては改善効果がなかなか目に見えません。

   「生産部門は雑巾を絞り切った状態であるのに、事務管理部門は絞り切る前の雑巾の
   ままである」ということも少なくないのです。

 

   生産性の低さには業務の標準(マニュアル)化が挙げられ、長時間労働も業務が標準化
   されていないことに起因します。 

   人口減少に拍車がかかる今、中小企業だからこそ限られた現有資産を効率・効果的に
   活用することが求められています。


  □3ステップで改善する

   誰もが一度は「業務改善」に取り組んだ経験があるでしょう。

   業務改善と呼ばれる活動は、非常に範囲が広く担当者1人で取り組む仕事の改善
   から、システム投資などを要する規模の大きなもの(全社的改善)までさまざまです。

   中小企業にとって限られ経営資源(ヒト・モノ・カネ)の中で、いかに効率よく高い
   付加価値を出していくかが、経営を行っていく上で非常に重要となる。

   一つ目は、業務の「見える化」についてのステップ。

   二つ目に、業務の見える化により顕在化された課題に対して、対策への判断基準を
   定め、優先順位付けを行うというステップがある。

   三つ目が、優先度の高い課題から対策を実行するというステップである。

   これらの3ステップを押さえることにより、限られた経営資源の中で成果の上がる仕組
   みを構築していくことができる。

  □ステップ1
   1.業務の「見える化」
     
業務改善の第一歩は、自社の業務の見える化を図ることから始まります。

     見える化とは、「問題点を顕在化して課題解決する仕組み・手法」のこと。

     問題点が見えなければ、誤った改善策を講じることになり、結果としてムダ(余
     計な作業負荷)が増え、本来の改善とは逆の結果・効果に陥ってしまいます。

     見える化のために最初にやることは、仕事」の棚卸をすること。

     「仕事」とは、ヒト・モノ・カネの総和と言えます。

     つまり、洗い出しおよび改善の対象も、ヒト・モノ・カネで大きく区分する
     ことが重要です。

     業務改善の取り組みが失敗もしくは狙い通りの効果が上がらない要因として、
     この点が整理されないまま、枝葉の議論での改善に終始し、全体としての成
     果につながらないケースが挙げられます。

     「木を見て森を見ず」にならぬよう、スタート段階での整理が重要である。

     最もイメージが浮かびやすいのが「モノ(目に見えるものの扱い)」への
     改善です。

     例えば、作業方法や仕事の工程改善など。

     さらに、ナレッジ(知恵)の時代と言われるように、今はモノ以外の仕事も対象
     になってきている。

     例えば、新しい業務課題に対応するためには、社内のルール、体制といった

     「コト」を見直す必要があるでしょう。

     また、既成概念、価値観、社内不文律およびモチベーションなどの考え方や行
     動、つまり「ヒト」の分野についても、改善・見直しの対象に入ってくる。

     コトやヒトは目に見えにくく、抽象的な概念です。

     しかし、成果を上げるためには非常に重要なターゲットであり、洗い出しの段  

     階からしっかりと整理して考えていく必要がある。

     よって業務改善の最終的な「あるべき姿」がヒトの改善、すなわち「企業体質
     改善」となる。

   2.改善力とは実行力
     改善のあるべき姿は、「ヒトの改善(企業体質改善)」にあります。

     なぜなら、いくら作業や仕組み、ルールの改善を行っても、それを全社員
     (一部の者ではないことが重要)が同じ問題意識を持って実行できるかどうかが、
     改善の成果に大きな影響を与えているからである。

     一人ひとりが決めたことを実行する「体質」にならなければ、形だけの改善活

     動になってしまい、結果として業務改善が停滞、もしくは失敗するケースが多い。

     よって、モノ・コトの改善活動を進めていく中で、よい意味での現状否定によ
     り、各人の意識改革を行っていくこと(ヒトの改善)が重要である。

     そのために、次項で紹介する「業務の洗い出しと見える化」の中では、ヒトの
     見
える化、すなわち「スキルの洗い出し(スキルマップの活用)」についても
     重点
的に述べていきます。

     これらは、「業務の見える化」を担保する意味でクルマの両輪である。

     モノの改善からコトの改善へ。

     そして、最終的にヒトの改善ができて初めて「企業体質改善」となるのです。

     まずは、自社のあるべき姿を志向するところから始めていただきたい。

  □業務の洗い出し
   ここでは、ステップ1である業務の「見える化」、すなわち、業務の洗い出しについて
   説明します。

   1.業務を「見える化」する
     複雑で全体像や処理方法が分かりにくい業務(システム)も、同種・同様の
     仕事に分類、区分していくことで、その役割や処理方法を容易に理解することが
     できるのです。

     今一度、必要性を理解した上で、業務の「見える化」(業務の洗い出し)を
     進めてみてください。

     (1)手順1:目的別項目設定
       まず初めに行うべきは、「業務項目」を明らかにすること。

       業務項目とは、企業が経営目的を達成していくために必要な「機能」の
       ことであり、「販売」「生産」などで区分されます。

       そして、この機能別項目を洗い出すに当たり、推論的アプローチから、
        どういう経営機能が必要かを洗い出さねばならない。

     (2)手順2:目的・方針の確認

       推論的アプローチにおいては、現在の経営目的と方針について、再確認
       することが第1ポイントとなる。

       つまり、経営者自身が中長期的な視野に立ち、将来、自社をどの方向に
       進めようとしているのか(あるべき姿の設定)、どのような経営体制を
       目指しているのかなどについて、明らかにしていく必要があります。

     (3)手順3:「業務分類表」への落とし込み

       次に、経営の目的と方針を達成するため、どの経営機能が必要かについて
       推論的に洗い出し、見える化を図ります。

       洗い出した結果は「業務分類表」に取りまとめ、最終的に検証を行った
       上で決定する。

       具体的には、業務を大分類(経営管理機能、直接機能、間接機能、管理
       機能)、中項目(生産、販売、購買・外注、品質管理など)、小項目(経営
       方針、経営計画など)などに区分していく。

     (4)手順4:業務全体の体系図を作成

       「木を見て森を見ず」とならぬよう、業務の洗い出しに当たっては、
       「業務全体体系図を作成する必要があります。

       これは経営の基本機能である前述の大分類と、中項目の関連を示したも
       のです。

     (5)手順5:業務の機能別分類

       ここでは、業務を機能別に洗い出す上での着眼点を詳しく説明する。

       ①経営管理機能
        「経営管理機能」とは、環境が変化する中、企業が永続発展していく
        ために必要不可欠な機能です。

        特に、中項目の「経営企画」は、業種・規模にかかわらず計画的に
        経営を推進していく上で必要な機能。
        一方、「研究開発」は、固有の技術力を持つ技術開発型の企業に
        おいては、欠かすことができない強化すべき機能であるが、下請け型の
        中小企業の場合は一般的に弱体化しています。
        だが、独自の技術開発力を強みにしていきたい下請企業や、自社製品
        の開発を目指している下請企業は、この研究開発の機能を強化していく
        ことが重要です。

       ②直接機能
        直接的に付加価値を生む機能であり、業種や経営目的により、企業
        ごとで異なります。
        つまり、業務効率化の推進によって、業務の生産性向上や業務のスピード
        アップを強烈に進めていく必要のある機能です。

       ③間接機能
        効率的に直接機能を果たすためのサービスを提供する機能であり、業種に
        より若干異なる。

        例えば、「品質管理」は製造業において必要不可欠な機能であるが、小売
        ・卸売業やサービス業では必要性の低い機能となる。

       ④管理機能
        全ての企業が保有している機能であり、業種・規模が異なっていても
        共通点は多く、大きな差異がありません。
        業務効率化の推進で、少ない人員(インプット)で高付加価値を提供
        (ウトプット)できる機能にすることが必要です。

        業務の洗い出しは、目的に照らして推論的にアプローチを行うことに
        より、現状に甘んじることのない、また現状とかけ離れることのない
        経営機能別分類を行うことができます。
         目的に照らした区分整理を行うことで、自社の業務自体の過不足や、
        強み・弱みの全体像が把握できたのではないでしょうか。

  □スキルの洗い出しと業務の取捨選択
   ここでは、洗い出した業務を取捨選択するステップについて述べるが、その取捨選択
   作業を高い精度で行うには、もう一つ、「個人のスキルの洗い出し」というステップを
   追加することをお勧めしたい。

   1.個人スキルの洗い出し
     なぜ、業務の取捨選択の前に、個人スキルの洗い出しを行う必要があるの
     か。

     高額のシステムに投資し、業務改善を図ろうとしても、実務担当者のITリテラ
     シーが不足していると、狙い通りに機能を活用できない。

     あるいは現状以上の作業負荷や後戻り仕事が発生してしまうケースがある。

     すなわち、「業務の洗い出し」と「スキルの洗い出し」は、車の両輪であると言え
     る。

     ISO9001(品質マネジメントシステム)などを取得している企業ならご存じの
     「力量評価」の手法で洗い出すとよいでしょう。

     (1)手順1:全業務の抽出(各部門・工程ごと)
       前項で説明した手順により、業務分類表と業務全体体系図で整理する。

       そして部門別、工程別、作業別に内容を整理する。

     (2)手順2:習熟レベルのチェック
       部門別、もしくは工程別にスキルマップを作成し、各作業者の個別習熟度
       をチェックする。

       ポイントは、習熟度判定は必ず上長が行うことである。

       自己判定によるバラつきや恣意性を排除する必要があるためだ。

       また、必ずスキルの基準に基づいて判定を行う。

       例えば、指導できるレベルは「1.2点」、1人でできるレベルは「1.0点」、
       援助があればできるレベルなら「0.5点」、できないのであれば「0点」と判 
       定する。

       このスキルマップに基づく「スキルの洗い出し」により、実作業者の能力面
       から業務の取捨選択を判断することが可能になる。

   2.業務の取捨選択
     いよいよ業務の取捨選択に取り掛かる。

     手元には「業務の洗い出し」の成果物として業務分類表と業務全体体系図、そ
     して「スキルの洗い出し」の成果物としてスキルマップが用意されたことになり
     ます。

     これは、いうなれば“改善作戦図”である。

     この作戦図をもとに、自社に応じたフィルター(価値判断基準)を設定し、取捨
     選択を実施していくことになる。

     (1)価値判断基準の設定①
       判断基準で、まず検討すべきことは「重要度」の基準である。

       具体的には、
        ・自社の業務の重要性に応じて、重要かつ今後も自社においてやるべき
          こと(ランクA)
        ・重要だが、スキルマップに照らして技能伝承なども考慮に入れ、後任へ
         徐々に移管すべきこと(ランクB)
        ・重要度が低く、作業自体の見直しもしくは廃止すべきこと(ランクC)
       に分類する。

       この判断基準が第一ポイントである。

       この判断基準に沿って、個々の業務ごとに、できれば現在の業務担当者だ
       けでなく、部門横断で選抜したメンバーによってディスカッションを行い、業
       務を区分していく。

       得てして実作業者は、慣れ親しんだ現状の業務が正しいという固定観念を
       抱きやすい。

       他部門のメンバーを参画させることで、現状否定の精神から聖域なき見直
       しをしていくことが肝要である。

       例えば、経理業務で言えば、振替伝票を手書きで作成した後に会計システ
       ムへ入力する二度手間に対し、手書き起票をなくすことなどが挙げられる。

       工数が多いこと、そして手書き作業はミスを生む温床となり、業務の妨げと
       なる。

     (2)価値判断基準の設定②
       前述の重要度別ランク分けにより、現在の業務が三つに分類される。

       しかし、これでは業務の改善という意味では不完全である。

       ランクCについては、現状の業務実態に照らして不要(「捨てる」)と判断さ
       れたものなので問題ないが、ランクA(重要かつ今後も自社においてやるべ
       きこと)と、ランクB(重要だが、スキルマップに照らし技能伝承なども考慮に
       入れ、後任へ徐々に移管すべきこと)については、業務自体はそのまま
       残っている。

       このランクAおよびBの業務を次の価値判断基準(「改める」「新しくする」)
       で、さらにふるいにかけていくことが重要です。

       この作業によって、ランクAおよびBのように引き続き残す業務であっても、
       現状より会社の実態(業務内容や各人のスキル)に合ったものが残ること
       になる。

       業務とスキルの棚卸しと価値判断基準に基づいた取捨選択は、当然なが
       ら相当の労力を要することになる。

       多くの企業は、いずれかの段階で挫折してしまうことが多い。

       しかし、得られる改善効果は大きい。決して諦めることなく進めていただき
       たい。

  □業務改善概論
   ここでは、最終ステップの概論について述べる。

   1.改善のフィルター
     洗い出した業務を取捨選択するステップで業務の取捨選択を行った。

     取捨選択後に残った業務は、現状、自社において「必要」な業務ということになる。

     ただし、この業務のやり方や進め方が、従来と同じでよいかどうかは、また別
     の問題である。

     よって、「改める」もしくは「新しくする」という「改善フィルター」を通す必要が
     あります。

     改善の着眼は、作業単位・工程単位のみならず、前工程・後工程、また全社の
     広い視野で問題点を洗い出すことである。

     そのため、業務フロー」の作成をお勧めします。

     ただ、ここで精緻な業務フローをつくる必要は全くない。

     全体を俯瞰(ふかん)し、よりよい業務を行うためにはどうすればよいのかを検
     討する、いわば“作戦図”として使用することが目的である。

     業務改善で失敗するケースは、得てして業務フローを精緻に作成・整備するこ
     とが目的となってしまい、問題点を顕在化して改善するという本来の目的を見
     失っている場合が多い。

     精緻な業務フローは、問題点を顕在化し、対策(改める、新しくする)を打った
     後、重要度を鑑みて徐々に整備すればよい。

   2.業務フローによる問題点の洗い出し
     改善は「前工程を押さえる」ことが鉄則。

     前工程とは、川の流れに例えれば、上流です。

     上流が汚染されていれば、下流で浄化(改善)しても限界がある。

     フローを眺め、「○○部門の△△工程での問題が、以降の業務を遅滞させる、も
     しくは作業負荷をかける原因になっている」という具合に問題点を洗い出します。

     業務フローを作戦図として、問題点を顕在化していく際の着眼については、

      ①場所・時間の特定(問題がどこで、いつ発生しているか、いつもなのか、た
        まになのか)
      ②条件の特定(どういう条件で発生することが多いか)
      ③ほかへの影響度(前・後工程への影響度)
      ④内部牽制の有無(未然に防ぐ機能はあるか)

     という4つのポイントから洗い出す。

     洗い出す過程において注意すべきは、「人」の問題を中心に置かないことです。

     「○○部門の○○が悪い」「いや自分は悪くない」などと、問題の本質から離れてし
     まうことになりやすいから。

     業務は「川の流れ」のごとしである。

     まずは、推論的にどこで目詰まりを起こしているか、汚染されているかを洗い
     出すことに主眼を置きます。

     このように、全体を俯瞰して問題点を洗い出した場合、例えば、製造業では製
     造と販売の連携が取れていないこと(製販不一致)がよく問題に挙がる。

     このような場合、コミュニケーションパイプ(会議体系)に問題はないかなど、情
     報共有や意思決定の過程を洗い出すためレイヤー(階層)を下げて分析して
     いく。

     問題点の顕在化へのアプローチは、業務フローを活用しながら「全体」から捉
     えることです。

     個々のプロセスから問題を顕在化するよりも真因をつかみやすく、かつ改善効
     果が高い(推論的アプローチ)。

   3.要因を考える(対策立案へ向けて)
     業務全体から俯瞰して問題点を顕在化させたなら、次はその問題の発生原因
     を深く掘り下げる必要がある。

     先述の通り、本質的改善のためには、問題の「真の原因」をつかむことが重要
     です。

     では、「真の原因」をつかむにはどうすればよいのでしょう。

     その答えは、「因果関係」が出発点となる。

     つまり、原因と、それによって引き起こされる結果の関係性である。

     原因があるから、結果が存在する。

     ここで、現象と問題に当てはめて考えてみると、「問題が原因」で「現象が結
     果」になる。

     問題を引き起こしているものは何かを考えると、それが原因になる。

     さらに原因には、より深い原因が存在する場合がほとんどである。

     しかも深ければ深いほど見えにくい。

     そして因果関係は連鎖している。

     問題を明確に把握して、きちんと解決するためには、原因をいかに深く掘り下
     げられるかが重要である。

     そのために「なぜ」を5回繰り返すこと。

     そうして原因を掘り下げ、顕在化したものが問題点の真因となる。

     本質的改善のためには、全体を俯瞰し、問題点を顕在化し、その原因を深く掘
     り下げて「真の原因」を見つけることが突破口となる。

 

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業務の見える化は経営課題を解決

業務の「見える化」は業務問題を解決するため 

   
  ■経営の見える化

   見える化とは、その言葉通りに解釈すれば、今まで見えなかった、あるいは見えにく
   かった情報を誰が見ても分かるようにすることです。

   中小規模の会社にとって、規模が小さいからすでに相互理解ができている、つまり
   見える化ができていると考えがちですが、トップから社員に対してビジョンや方針が
   十分に伝わっていないことは多いものです。

   ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースもある
   でしょう。

   また、社員同士も自分の目先の業務遂行に注力することで、社内の動向やほかの
   メンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

   見える化経営とガラス張り経営は異なると理解してください。

   経営のガラス張り化とは会社にとって都合のよいこと悪いことの区別なく、すべての情報
   をオープンにして誰もが目にすることができる状態にしておくことで、受動的なスタンス
   が基本となります。

   一方、経営の見える化は「経営上の問題を解決する」ことにあります。

   見える化された指標は、トップと全社員が一丸となって問題解決していくための共通の
   指針やモノサシにならなければなりません。

   トップにとっての見える化の最大の目的は、自らの意思決定の精度を上げることにあります。

   会社(店)のなかでもっとも見える化が進んでいない人は誰でしょうか。

   それは残念ながらトップ自身であることが多いのです。

   社員たちは程度の差こそあれ「うちの社長は何を考えているのかよく分からない」と感じて
   いるものです。

   だからこそトップは社(店)内の見える化推進にあたって、まずは自分自身の考えや想いを
   社員にできるだけ理解してもらう必要があります。

   トップが社員に対して見える化すべきもっとも重要なことは、「会社はどこへ向かって
   いるのか」(経営理念など)、「そのために何をすべきか」(中期経営計画など)に
   ついて、社長自身がどのように考え、どのような「想い」をもっているのかを伝えること
   です。

   社員にとってこの部分がよく分からないと、どのように見える化を行っていけばよいのか
   が分かりませんし、見える化実現のためのモチベーションもわいてきません。

   見える化実現のためには何から始めればよいのでしょうか。

   見える化の本当の意義は「共有すべき情報が体系的に整理されており、社員がその
   情報を自立的かつタイムリーに入手し、自らの問題解決に活用すること」にあります。

   このように見える化とは大変広い意味であるため、見える化への取り組みや定義は企業
   によってさまざまです。

   見える化のステップでは、 

   ステップ1:「ビジョン」・「戦略」・「ルール」の見える化

   トップが社員に対して「ことあるごとに目標や組織のあり方を伝えている」つもりでいて
   も、社員によって受け止め方が違っていたり、それが会社のビジョンに基づくものであ
   ると理解されていないようでは、見える化されているとはいえません。

   見える化において、重要なのは「めざすべきビジョンが示され、ビジョン実現のための
   戦略・ルールが共有できていること」にあります。

   経営においてもスポーツ同様にルールがあってこそ、めざすべき目標に向かって何を
   すべきかが伝わるようになるのです。

   ○「ビジョンやルールの見える化」の要件
    ・
会社のあるべき姿、経営ビジョンなどが明文化されている

    ・社員の行動指針があり、会社として「やるべきこと」、「やってはいけないこと」
     が示されている

    ・ビジョンに基づいた中期計画、年度計画が策定され、かつ公開されている

    ・3年先の自社の中期目標について、その骨子部分は全社員が深く理解している

    ・社長は少なくとも月に1回は自分の言葉で社員にビジョンや戦略について語っている

    ・経営幹部陣はビジョンや戦略について社長とほぼ同レベルで理解している

   ステップ2:「問題」と「課題」の見える化

   見える化の次の段階は、現在自社(店)に起こっている「問題」を把握したうえで、「で
   は何をすべきか」という「課題」が明らかになっている段階です。

   活力ある組織であるためには、「問題」(あるべき姿と現実のギャップ)の把握と「課
   題」(ギャップ解消のための施策)の設定を全社員が自立的に行っていく必要があり
   ます。 

   たとえば、既存顧客へのアップセル、クロスセルが進んでいない場合、「既存顧客へ
   の営業強化」、「新規顧客の開拓」、「顧客流出防止対策」などのさまざまな課題が考
   えられます。

   また、問題をさらに掘り下げると「社員のモチべ−ション向上」などにも力を入れる必
   要があるかもしれません。

   これらに優先順位をつけ、特定の課題に練り込んだり、複数の課題を組み合わせた
   りして、「今何をするべきか」を明らかにするのが、見える化の第2ステップです。

   なお、問題には「誰の目にも見えやすい情報」だけではなく、「注意しなければ見えに
   くい情報」、さらには「見えないように隠されている情報」などもあります。

   解決すべき問題を漏れなく取り上げることが必要です。

   ○「問題と課題の見える化」のための要件

    ・社長は全社の状態把握のために必要なさまざまな経営指標を入手し、経営判
     断に活用している

    ・全社や各部門にとって何が問題かについての定義が明らかになっている

    ・問題が起こったときには要因分析などで再発防止策を徹底している

    ・社長、経営幹部、部門長など役職に応じた裁量範囲が明文化されている

    ・部門目標、チーム目標、個人目標が明確になっており、全メンバーが共有している

    ・部門長は他部門の業績状況を把握し、必要に応じて提言を行っている

   ステップ3:「進捗管理」の見える化

   見える化の第三段階は第二段階で設定した「今すべきこと」について、実際にどの程
   度取り組みが進んでいるかを把握し、必要に応じて新たな手が打てるようにすること、
   つまり進捗管理ができている状態です。

   たとえば、「既存顧客への営業強化」というテーマに対しては、実際にどのような取り
   組みを行っていくのか、また、どのような状態になったら目標を達成したことになるの
   かについて明確にします。

   具体的に営業マンの訪問回数や最終的な注文額などの管理指標を設定し進捗を管
   理していきます。

   ○「進捗状況の見える化」のための要件

    ・ビジョン・戦略に基づく重点分野について具体的な管理指標があり進捗管理さ
     れている

    ・数値計画の進捗状況は少なくとも週次単位で集計され、幹部陣で共有されて
     いる

    ・経営会議、部門会議など会議体系が整理されており、適切に運用されている

    ・報告・連絡・相談の基準が明確になっており適切に運用されている

    ・部門長はメンバーの定期報告から行動結果だけではなくプロセスを読み取っ
     ている

    ・メンバー全員のスケジュールが共有されている

   中小企業が限られた資金や人員の中で、着実に業績を上げるためには、効率的に業務
   を遂行することが不可欠です。

   しかし、現実にはさまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生します。 

   共通する原因の1つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を行っているの
   かを、当事者以外が関知していないことが考えられます。

   企業内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていな
   い」状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

   業務の効率化は、それらの問題を見える化し、認識を共有することから始まります。

   見える化は社内に大きなメリットをもたらします。

   組織は全員が同じ考え・方向(目標、目的)に向かって進むことで大きな効果を発揮
   します。

   組織が烏合の衆であってはせっかくの組織が意味を成しません。

   そのためにも組織(経営)の見える化を推進してください。

   事業経営における業務の「見える化」は業務改革に繋がるもので、これまで社員が把握
   できていなかったことを把握できるようにすること。

   あるいは一部の社員のみが把握していたことについて情報の共有を図ることです。

   限られた資金や人員の中で、着実に業績を上げるためには、効率的に業務を遂行する
   全員参加型経営が不可欠となります。

   しかし、現実にはさまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生しているのが実態
   です。

   例えば、業務の非効率を招く要因としては以下のようなものが考えられます。 

  □業務の手順がなく、過去のままになっている

   以前から慣例的に行われてきた業務が、時代とともに技術が進歩し、あるいは環境が
   変化することによって、いつの間にか非効率なものとなっていることがある。
   
  □可視(見える)化のための推進体制

    1.経営者の積極的な関与

      業務フローの可視化を推進するには、まず経営者の意思表示が必要です。

      可視化は複数の部署にまたがる協力が不可欠であり、部署間の調整も必要に
      なります。

      従って、経営者が号令をかけるだけでなく、可視化の実行に積極的に関与する
      ことが重要です。
   
    2.可視化推進チームの整備

      業務フローの可視化は複数の部署がかかわる作業ですので、それぞれの部署
      から担当者を選任して横断的な「推進チーム」(以下「可視化推進チーム」)を
      結成します。

      例えば卸売業であれば、販売部門、出荷部門、経理部門、システム部門から
      全社的な視点でプロジェクトを進めることのできる人材を登用します。

      統括部や管理部といった全体の業務フローを把握している部署が既にある場合
      には、その部署を活用してもよいでしょう。 

      また、税理士や公認会計士など社外の専門家が可視化推進チームに参加する
      ことは有益です。

      業務の可視化の最終目的は業務マニュアルの作成にあります。

      手順は、

      業務の棚卸(洗い出し)業務(役割)分担表の作成⇒問題点や改善策を見つ
       ける⇒業務改善に着手⇒業務ごとのフローチャート作成⇒業務の可視化(標
       準化)⇒業務マニュアルの作成

  他の部署の業務内容や状況を知らない

   各部署が情報を抱え込んで部署間で情報が共有されていないと、二度手間が発生し
   たり、トラブルの発生時に適切な対応ができない、などの問題を引き起こす場合が
   ある。

  □社員によって繁忙度に差がある

   暇を持て余している社員がいる一方で、過剰な業務量を抱えている社員がいると、業務の
   無駄や無理が生じる。

  □勘、経験といった属人的な能力に依存している

   ある業務を特定の社員だけが理解している状態だと、退職や休職などによってその社員が
   欠けた際に業務進行が滞ることがある。

   これらの事柄に共通する原因の1つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を
   行っているのかを、当事者以外が関知していないことが考えられます。

   社内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていない」
   状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

   業務の効率化は、それらの問題を可視化し、認識を共有することから始まります。


  ■業務フロー(流れ)の見える化は緊急課題

  ビジョンや経営戦略に対する社員の理解を深めるため

   見える化を実現することは社員の経営参画意識の向上、ビジョンや経営戦略への理解を深め、
   採用時に会社が必要とする人材を伝えやすくなるため、それに共感できる人材を獲得しや
   すくなる。 

  組織力を強化
するため

   見える化によりビジョンや戦略を社員が共有することで、全員の力で何とかしてそれを
   達成したいという一体感を育むためです。

   自分自身の目標達成、ほかの部門やメンバーの目標も共有することで、未達部門や未達
   メンバーのフォローも積極的に行おうとする組織人としての姿勢を確立することです。

  □他の部署の業務内容を知る

   ほかの部署がどのような業務を行っているかが見えるようになり、その結果、必要
   な情報を持っている部署がどこであるかが分かるようになり、企業内の情報共有を
   促進する効果が期待できます。

  □基幹業務とそうでない業務の区別を知る

   自社にとって基幹となっている業務とそうではない補完的な業務の区別が分かるよ
   うになります。

  □ボトルネック(業務の流れが目詰まりを起こしているところ)を発見する 

   必要以上に処理時間がかかっている業務があった場合、その部署や担当者の業
   務推進方法が非効率な状態になっている可能性があります。

   ボトルネックを発見して、適切な助言や指導を行うことで、効率性を向上させるき
   っかけを得ることができます。

  □不適正な連絡体制を発見するため

   同じ指示あるいは類似した指示が複数の異なる人から届く業務フローになっていたり、
   持っている情報を次にどこに伝えるべきかというルールが確立されていないと、社(店)
   内の連絡に混乱を来します。

   業務フローを可視化することにより、連絡ミスが起こりやすい業務を発見できます。

  □知識、技術、情報の標準化を容易にするため

   これまでベテラン社員などが経験や勘といった属人的な能力に頼って進めていた業務
   が、ほかの社員にも見えるようになり、組織として業務の手順を文書化(マニュアル)
   することができます。

  □現場の変化に即応したスピーディーな意思決定をするため

   トップが入手しているのは「売上・利益」などのすでに結果として現れている業績情
   報が中心となり、「取引先の満足度低下(不満、苦情)」などの経営悪化の予兆と
   もいえる情報の見過ごしを防ぎ、問題が深刻化する前にスピーディーな対応を行う
   ため。

   業務フローを可視化することにより、連絡ミスが起こりやすい業務を発見できるよ
   うになります。

  □社員個々のノウハウを組織のノウハウとして蓄積するため

   社員は日々の業務を通じてさまざまなノウハウを獲得していきますが、そのノウハ
   ウは社員個々に蓄積されていくだけで、組織には十分にフィードバックされません。

   全社員の日々の活動内容(日報)を共有することで、報告書自体を組織のノウハ
   ウとしてマニュアル化(日々更新)していく。

  □公正・公平な評価につながるため

   多くの会社では成果主義の人事考課制度が導入されているが、成果指標による
   評価だけでは、社員の地道な努力や他者への貢献など見えにくい部分は考慮され
   ません。

   営業部門などでは顧客に恵まれたなどの「運」に左右される部分もあったり、間接
   部門などでは客観的な成果指標を設定しにくい場合もあり、成果主義の導入を進
   めれば進めるほど社員の不満が高まる可能性もあります。

   あらかじめ「何をもって成果とするか」を明らかにし、最終的な成果指標だけではな
   く、見えにくい部分も積極的に評価することで、評価に対する公正感・公平感を持た
   せる。
   
  □内部統制・コンプライアンスの強化(業務基準

   「やるべきこと」、「今やっていること」、「やってはいけないこと」を明らかにし、内
   部統制・コンプライアンスの強化を図る。

   中小企業が限られた資金や人員の中で、着実に業績を上げるためには、効率的に業務
   を遂行することが不可欠です。

   組織としてチームとして事業展開していくには、すべての部門が見えなければなりま
   せん。

   見えないことで、ムダ・ムラ・ムリが発生し、さまざまな問題が起こってきます。

   特にコンプライアンスに関する問題が発生する原因は場当たり的な事業運営にあり
   ます。

   問題が発生するたびに、あたふたとするばかりで、その場しのぎの解決に走ってしま
   います。

   しかし、現実にはさまざまな理由で効率的とはいえない業務が発生します。

    ○業務プロセスが時代遅れになっている

     以前から慣例的に行われてきた業務が、時代とともに技術が進歩し、あるいは環
     境が変化することによって、いつの間にか非効率なものとなっていることがある。

    ○ほかの部署の業務内容や状況を知らない

     各部署が情報を抱え込んで部署間で情報が共有されていないと、二度手間が発
     生する、トラブルの発生時に適切な対応ができない、などの問題を引き起こす場合
     がある。

    ○社員によって繁忙度に差がある

     暇を持て余している社員がいる一方で、過剰な業務量を抱えている社員がいると、
     業務の無駄や無理が生じる。

    ○経験や勘といったマンパワーに依存している

     ある業務を特定の社員だけが理解している状態だと、退職や休職などによってそ
     の社員が欠けた際に業務進行が滞ることがある。

   これらに共通する原因の1つとして、「誰が」「何を」「どのようにして」業務を行って
   いるのかを、当事者以外が関知していないことが考えられます。

   社内に非効率な業務が存在していても、ほかの社員にそれらの問題が「見えていない」
   状態では、その非効率性はいつまでも改善できません。

   業務の効率化は、それらの問題を可視化し、認識を共有することから始まります。

   非効率な業務や適正な状態から外れている業務は、あるべき「基準」との乖離(かいり)
   が生じている業務であるといえます。

   従って、「本来、業務がこのようになされるべき」という「基準」を明確に持っていな
   ければ、どのような状況が非効率あるいは異常であるのか、また現状があるべき
   状態と比べてどの程度の乖離があるのかを認識することができません。
 
   業務の可視化は、本来あるべき基準を明確にするという効果を持っており、このことからも、
   組織化に欠かせない改善策となります。

   可視化の基本となるのが、社内の意思疎通を強化することです。

   しかし、この基本ができていない中小企業が少なくありません。

   可視化によって明確になった基準は、「手順書」「ガイドライン」「ルール」などの名称で
   呼ばれます。

   こうした基準を策定することで、業務を基準に沿って進めることができ、業務の標準化や
   それに伴う効率・正確性の向上が図れます。

   しかし、ここで考えていただきたいのはどんなに可視化を図っても組織の根底にあるのは
   「理念」、「ビジョン」であり、ES(従業員満足)」です。

    ・トップと幹部、幹部と社員、トップと社員のミュニケーション不足

    ・社員の組織人としての基本動作の習得不足

    ・顧客満足より従業員満足 


   中小企業では、経営者から社員に対してビジョンや方針が十分に伝わっていないことは
   少なくありません。

   ビジョンや方針は社長の頭の中だけにあり、社員は指示に従うだけ、というケースも
   あり、社員同士も自分の目先の業務遂行に注力するあまり、全社の動向やほかの
   メンバーの様子に関心を寄せる余裕がないという事態もみられます。

   社員たちは程度の差こそあれ「うちの社長は何を考えているのかよく分からない」と感じ
   ているものです。

   社長は社内の見える化推進にあたって、まずは自分自身の考えや想いを社員たちに
   できるだけ理解してもらう必要があります。

   社長が社員に対して見える化すべきもっとも重要なことは、「会社はどこへ向かっている
   のか」(経営理念など)、「そのために何をすべきか」(中期経営計画など)について、
   社長自身がどのように考え、どのような「想い」をもっているのかということを会議や
   朝礼などで日頃から発信し、全員参加型経営を図ることです。

   社員にとってこの部分がよく分からないと、どのように見える化を行っていけばよいの
   かが分かりませんし、見える化実現のためのモチベーションもわいてきません。

   見える化の目的はあくまで「経営上の問題を解決する」ことにあり、会社側の一方的な
   透明性(ガラス張り)を図ることとは異なることを理解すべきです。 

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