従業員持ち株会 〜未上場会社

          

従業員持ち株会 〜未上場会社

  ■従業員持ち株制度の概要

   従業員持ち株制度とは株式の発行会社が従業員に対する自社株式の取得・
   保有を奨励することで、従業員に自社株式を活用した財産形成手段を提供すると共に、
   会社にとっては安定株主の確保や資本政策の円滑化といった目的をもって運営
   されるものです。

   民法上の組合である「従業員持ち株会」 を作り、会社及び従業員が相互にメリット
   のある制度として未上場会社においても幅広く普及しています。

   ただし、従業員持ち株制度に関する直接的な法体系は整備されていませんので、
   証券取引法及び商法並びに各種税法等関係法令に抵触することがないように留意
   することが必要です。

   従業員持ち株会の円滑な運営の為に日本証券業協会では、 「持ち株制度に関する
   ガイドライン」 を作成し、持ち株制度運営についての指針を示しています。

   従業員持ち株会を設立する場合には同ガイドラインに規定された内容を遵守する
   ことが最も好ましいと考えられます。

   また、同ガイドラインの内容については、日本証券業協会から指導が行われている
   証券会社が熟知しているので、従業員持ち株会の設立及び運営については証券会社
   に相談することをお勧めします。

  □従業員持ち株会の意義

   従業員持ち株会を実施することは実施会社及びその従業員にとって次のような
   メリットがあります。

   従業員持ち株会を設立する場合には、会社及び従業員にとってより多くのメリット
   が生ずるように制度作りを行うべきであり、従業員持ち株会設立の意義を明確に
   認識できることが重要です。

 

   ●会社にとってのメリット     ●従業員にとってのメリット

    1.資金調達の円滑化が図れる    1.無理のない積立で自社株購入可能

    2.株式事務の簡素化が可能     2.自社株による計画的な財産形成

    3.株式売却の受皿としても有効   3.奨励金が支給されれば更に有効

    4.従業員のモラールアップに有効  4.株主として経営参加が可能

    5.円満で安定した雇用関係の確立  5.退職時には円滑に株式売却可能

    6.人材確保に有効         6.税務処理も万全

 

  □従業員持ち株会を設立すべき未上場会社

   未上場会社が従業員持ち株会の設立を検討する場合、その多くが次の幾つかのケースに
   大別されます。

   つまり、次のケースに該当する会社は従業員持ち株会を設立すべき会社であると言える
   でしょう。

   1.株式の上場を目指す会社

    株式上場を指向する会社は、株式上場基準を満たす会社となることが必要であり、
    その為には資本政策に基づく増資を行うことになります。

    未上場段階での増資時には従業員に対してもその割当てを行い、株式上場時における
    創業者利潤の一部を従業員が享受できるようにします。

    ただし、従業員個人に対して割当てを行うと増資の手続きが煩雑になると共に、
    従業員の退職等に伴う株券の社外流出の危険性もある為、従業員持ち株会を設立し、
    これらの問題が生じない対策を構築したうえで、従業員に株式の供給を行うことが
    必要です。

   2.社員株主の存在する会社

    これまでに数多くの未上場会社において社員株主の株式買取りをめぐりその価格の
    問題で訴訟が起こされています。

    社員株主であっても退職すれば社員の立場ではなく株主としての立場で行動し、
    経済合理性に基づいた株価での株式買取りを求めるケースが数多く見受けられ、
    訴訟という形で表面化したものに限らず、水面下ではかなりのトラブルが生じている
    ものと考えられます。

    従業員持ち株会を設立し社員株主の株式を全て持ち株会に組み入れれば、その後の
    株式の取扱いは従業員持ち株会の規約の定めに従うこととなり、株券の社外流出が
    完全に防止できると共に持ち株会退会時(主に退職) における株式の買取方法及び
    その価格についても明確に定められるのでトラブル防止に大きな効果があります。

   3.株主数の多い会社

    株主が多数存在する場合、会社にとっては株式事務の負担が大きく、株主数を減少
    させることが業務の効率化の観点からも必要となります。

    また取引先やOB社員等の社外株主については、取引関係の変化やOB社員の死亡等の
    状況の変化によって会社に対する株式買取りの要求や会社として好ましくない者との
    株式譲渡承認請求が行われることも想定されます。

    したがって、未上場会社においてはできる限り株主数を少なくすることが株主対策上
    重要になります。

    しかし株主数の削減を進めるには株式買取りの受け皿を作る必要があると共に、
    既存の株主が株式を売却することに協力しようと思う株式買取先を作ることが
    必要です。

    従業員持ち株会を設立し従業員持ち株会が株式の買取先となれば、従業員に対する
    福利厚生の増強という大義名分もあり、OB株主の理解が得易く、取引先等社外株主
    にも協力要請を行い易い状況となります。

    更に従業員持ち株会は給与天引で毎月積立を行う為、株式の買取りを常に行える
    状態にあり、売却要請に応じた株主の株式を順次買取ることが可能です。

    また、オーナー等が株式を買取る場合に比べ税務上も安い株価で買取ることができる
    ので株主数の集約を目指す場合、特に効果を発揮します。

   4.事業承継対策を実施する会社

    事業承継対策を考える場合、オーナー経営者の持ち株比率を引き下げることが
    ポイントとなりますが、オーナー保有株式の譲渡先としては従業員持ち株会が
    後継者に次いで好ましい譲渡先と言えます。

    従業員持ち株会に株式を譲渡すれば、株式の社外流出を防げると共に、会社に雇用
    されている者が株式の持分を共有するものであり、経営権に影響を与えるような
    状況は生じないと考えられる為です。

 

  □未上場会社における従業員持ち株会の効果

   1.株主管理上の効果

    (1)株式発行事務の軽減

      会社の資本充実を図る段階で、初期の時点であれば従業員持ち株会を
      活用し従業員に対して幅広く株式を供給することが可能です。

      ・株式の名義が持ち株会理事長となっていること。

      ・株式の議決権は持ち株会の代表者である理事長が代表して行使すること。
       (議決権の不統一行使を妨げない)

      ・配当金を再投資すること。

     以上3つの要件を満たす従業員持ち株会であれば1人株主として取扱われる為、
     会員数(従業員数) に係らず株主数1名としてカウントされますので、増資の
     手続等が簡素化できます。

 

    (2)株主管理の簡素化

      従業員持ち株会を設立した場合、株主名簿上の株主は持ち株会の代表者
      である理事長1名となりますので、株式の名義人を従業員個人名義とする
      よりも株主管理が大幅に簡素化されます。

      特に配当金の支払事務や株主割当増資時の事務管理面でメリットがあります。

 

    (3)株券の社外流出防止に有効

      従業員持ち株会は民法上の組合であり、従業員は入会に際して持ち株会
      規約を承認して入会することになる為、規約に株式の処分の禁止に関する
      規定を盛り込んでおけば原則として株式の引出等を行うことが認められない
      こととなり、従業員の退職等に伴う株券の社外流出防止策として万全です。

 

    (4)株主からの株式買取り組織として有効

      従業員持ち株会を組織し毎月積立を行っていれば株主から株式の売却希望が
      出た場合にも、従業員持ち株会の積立金により円滑に株式の買取りを行えます。

      また、従業員持ち株会の積立金残高がまとまった金額に達した時には、
      株主に従業員持ち株会に対する株式売却依頼を行い株主数の集約を進める
      ことも可能です。

 

   2.事業承継策としての有効性

    オーナー経営者にとって円滑な事業承継を行うことは大変重要なテーマです。

    事業承継のポイントを簡単に言えば、実質的な経営権への影響を与えずにオーナーの
    持ち株比率を低下させることと考えれば良いでしょう。

    従業員持ち株会は株式の議決権不統一行使を行えることが定められた民法上の
    組合組織であり、実質上の株主と言える従業員個人に対しては大量な株式が交付
    されているものではありません。

    したがってオーナー経営者の株式の一部を従業員持ち株会に譲渡しても圧力団体化
    する心配はありません。

    そこでオーナー経営者の持ち株比率を下げる方法としてオーナー所有の株式を
    従業員持ち株会に一部譲渡することが効果的な対策になりますが、従業員持ち株会
    への株式譲渡に際してはオーナー経営者及び後継者にとってのメリットのみを追及
    せずに従業員持ち株会の本質は従業員に対する福利厚生の充実にあることを考慮
    した対応が求められます。

    また、従業員持ち株会は圧力団体化する心配のない団体ですが、経営権を左右する
    ことのない範囲で株式の譲渡を行うことが必要です。

   3.資本政策上の効果

   (1)資本政策と従業員持ち株会

     会社の資本充実を図るには資本政策を確立し、会社の成長に応じて適正な資本
     構成を行うことが必要です。

     一般的な資本参加の順序は会社経営の中枢から会社内部の者、更に社外の関係先
     の順になります。

     具体的には、まずオーナー経営者(親族を含む) が出資額を増大させ、次いで
     他の役員が出資を行い、その後に従業員、更に取引先等の順で出資することに
     なるでしょう。

     未上場会社が資本政策に基き従業員に株式を供給できる機会は限定的であり、
     比較的大量の資金の払込みが必要になります。

     このような状況を想定し幅広い従業員に株式を供給するには、従業員持ち株会を
     設立し計画的に給与天引で積立てを行うことが必要です。

     給与所得者である従業員の収入は限られており、突然多額の株式購入代金の
     払込みを知らされても対応できない者が多数生じる可能性があり、そのような
     事態を回避し従業員が円滑に自社株式を取得できるようにする為にも従業員
     持ち株会の設立は不可欠です。

 

   (2)増資手続の簡素化効果

     資本政策に応じた増資手続を簡素化する為にも従業員持ち株会は大きな役割を
     果たします。

     増資に際しては下表に示した手続きが必要になりますが、1人株主として認め
     られる従業員持ち株会であれば実質的に手続が大幅に簡素化されます。

 

     ●有価証券の募集(売出) に要する提出書類 (関東財務局)

      なお、50名を超える従業員に対して株式の割当てを行っても、要件を
      満たす従業員持ち株会であれば、1億円未満の増資について有価証券通
      知書の提出が不要となります。

 

  □従業員持ち株会発足手続

   従業員持ち株会は民法第667条第1項に定める組合として設立・運営することになるので、
   従業員持ち株会を設立するには以下の手続きが必要となります。

   ◎従業員持ち株会設立手続

    1.発足準備事項

     ・発起人の人選:会社の幹部社員の中から持ち株会に加入し、運営
      主体となる者を発起人として選定します。

     ・規約案の作成:従業員持ち株会の運営ルールとなる持ち株会規約の
      原案を作成します。

     ・理事長印作成:株主名簿への名義届出・銀行口座開設・証券会社等
      持ち株会事務委託先との契約等に使用する印鑑として持ち株会の
      理事長印を
作成します。

 

    2.持ち株会設立手続

     ・発起人会開催:発起人が集り持ち株会の役員となる理事・監事の
      選任を行い、規約案を承認し正式な規約を制定します。      
      これらの手続完了をもって正式に持ち株会が発足することに
なります。

     ・理事会開催:発起人会終了後に理事会を開催し、理事の互選により理事長・
      副理事長を選任します。

     ・銀行口座開設等:理事長が決定したら銀行口座開設を行います。
      また証券会社等に持ち株会の計算事務を委託する場合には事務
      委託会社との契約を交わします。
     

 

    3.会員募集・資金の積立等

     ・会員の募集:従業員持ち株会の規約で定めた会員の範囲に含まれる
      従業員に対して、持ち株会設立の案内を行い、一定の期間を定めて
      会員の募集を行います。
      従業員に対して持ち株会の意義や設立の背影及び持ち株会の内容を
      理解していただくことが必要ですから、説明会開催やパンフレット
      を作成し充分なPRを行うことが必要です。

     ・給与天引:従業員持ち株会への加入申込を行った従業員は給与天引
      で積立てを行うことになりますので、会社は天引の便宜を図る必要が
      あります。
      また、会社が従業員への福利厚生として奨励金を支給することが
      一般的ですが、この場合には、会社が支給する奨励金は福利厚生費
      として損金処理し、従業員に対しては給与所得として処理すること
      になります。

     ・資金の管理:従業員持ち株会に株式が供給されるまでの間については
      会員が積立てた資金を管理することになります。
      積立金の管理は原則として流動性の貯蓄で行うこととされています
      ので、一般的に証券会社の中期国債ファンド等で管理しています。

   以上の内容を確認すれば、未上場会社が従業員持ち株会を実施することの
   必要性と発足手続きに関して理解できるでしょう。


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社内ベンチャー制度

             

社内ベンチャー制度

  ■社内ベンチャー制度の現状

   1.80年代後半の新規事業への進出

    1980年代後半、大手企業の多くが新規事業へ進出しました。

    進出する際の事業形態は、社内プロジェクトであったり、新会社を設立するなど
    さまざまでした。

    事業内容は本業の延長上の事業、もしくは不動産やレジャー関連事業が主でした。

    本業が好調な時に、次代の中核事業となると見込んだ分野に進出することは、事業
    としては正しい方向といえます。

    しかし、結果は惨たんたるものに終わったのです。

    これは新会社に

     →優秀な人材を登用しなかったこと
     →権限委譲を行わなかったこと

    に大きな原因があります。

    新会社の事業が軌道に乗らず、事業の方向転換を図ろうとしても、その決定は親会社
    の役員会で決定していました。

    これでは市場の変化に経営の舵取りが追い付かなかったのも止むをません。

    一方、新規事業に携わる社員側にも、是が非でも事業を成功させるという意識が欠如
    していたといえます。

    ポイントは、市場環境の変化や事業の将来性を見通せなかったではなく、軌道に
    のらない事業から早期に撤退できなかったことと、新規事業に携わる社員の起業家
    意識を喚起できなかったことです。

   2.90年代後半から導入された社内ベンチャー制度

    社内ベンチャー制度とは、社内で眠っている独創的な技術・サービス・製品・ビジネス
    モデル・起業家精神に富む人材を発掘するために、

     社内から事業提案を募り、事業性や採算性が高い案件について
     会社が支援し事業化するもの

    です。

    現在の社内ベンチャー制度は、バブル期の新規事業進出の失敗から「起業家
    (アントレプレナー)精神を持つ優秀な人材に権限を委譲し、事業を任せることが事業
    を成功させるためには必要」であることを学びました。

    また、これと同時に、「事業化に失敗した際の撤退のルールを定める」ことができた
    のです。

   3.導入状況

    社内ベンチャー制度の導入動向を企業規模別にみてみると、中堅中小企業よりも
    大企業が進んでいます。

    これは社内ベンチャー制度が「ヒト・モノ・カネ・情報が豊富な大企業向きの
    制度である」ことの現われといえるでしょう。 

   4.社内ベンチャー制度の仕組み

    現在、多くの企業で採用されている社内ベンチャー制度の仕組みは以下の通りです。

  □社内ベンチャー制度の要点

   1.成長分野に進出

    社内ベンチャー制度での事業化は成熟市場を避け、成長市場での事業化を検討
    している会社が多いようです。

    これは成長市場であれば事業化が比較的容易なうえ、市場の成長とともに早期に
    事業基盤を確立する可能性も高いからです。

    しかし成長市場であるゆえに参入企業も多く、競争が激しいことは明らかで、優位性
    を保てる商品やサービスを開発し続け、追随してくる他社との競争に勝てるような
    組織を作らなければなりません。

   2.スピード重視の経営手法

    事業案の社内公募から事業化までの期間は半年〜1年と短く、事業開始から3〜5年
    で黒字化できなければ、即座にその事業から撤退するという企業が多いようです。

    事業の計画段階から事業化までに相当の時間を要し、一旦事業を開始すれば赤字
    決算が続き黒字への転換が見込めない事業であってもズルズルと継続していた
    80年代後半とは様相は一変しています。

    可能性のある事業に早く乗り出し、結果がでなければ即座に撤退する、スピードを
    重視した経営が浸透してきています。

   3.事業化の形態と会社の取り組み姿勢

    事業化の形態は、社内型と社外型の以下の2つに大別できます。

    <社内型>

     ・社内で仮想企業を設立する。

     ・その事業だけの特別プロジェクトチームを作る。

    <社外型>

     ・新たに事業会社を設立する。

    社内型・社外型は、ともに事業はあくまで自己完結型であり、利益を上げることが
    目的です。

    会社の事業支援はあくまで補助的なものにとどまります。

    特に社外型のケースにおいては会社がベンチャーキャピタルの役割に徹するところも
    あるようです。

    社内ベンチャーで事業化される案件は、本業に関連するものが主流ですが、近年では
    情報通信分野の事業が多くみられます。

    これはIT革命といわれるほど情報通信分野の技術革新が目覚ましく、新しい技術
    ・サービス・製品・ビジネスモデルが次々と誕生していることが要因といえる
    でしょう。

    さらに、情報通信分野において先んじて事業化し、すでに成功を収めているケース
    の存在が、情報通信分野への特化に拍車をかけているのです。

    前述の社内ベンチャー制度の流れでは事業案を社内公募するのが前提ですが、
    事業案を社外から公募したり、逆に社内で事業化できなかったものの有望と思われる
    事業については他の会社と共同で事業化するといった企業も出てきています。

   4.社員の処遇

    社員の処遇についてはさまざまです。

    社内型では社員としての身分は保証され、社外型でも出向の場合は事業に失敗
    しても会社に戻れるので身分は保証されています。

    しかし、一旦会社を退職し新会社に転籍した者については再雇用しないとし、社員の
    身分を保証しないケースもあります。

    身分が保証されない社外型では、事業が成功して新会社が株式公開すれば巨額の
    キャピタルゲインを得ることが可能となっている半面、身分が保証される社内型では
    成功報酬は大きくないことが一般的です。

    保守的な会社で「身分保証をしない」となると、独創的な事業案そのものが起案
    されないケースがある一方、進歩的な会社で「成功報酬があまり望めない」となると
    アントプレナー精神を持つ優秀な人材が社外流出してしまうことも考えられます。

    社員の処遇については、自社の社風に合わせたものを模索する必要があるでしょう。

   5.事業黒字化後の方向性

    社内型・社外型とも一定期間内に黒字化の目処が立たなければ、その事業から
    撤退することになるでしょう。 

    <社内型の場合>
     社内型で黒字化した場合、その事業が本体のコア事業になるような領域や規模の
     ものであれば、そこから育てていくことが重要となります。

     もちろん、たとえ黒字化してもコア事業にならないようなものであれば、事業
     そのものからの撤退を考える必要が出てきます。

     いたずらに社内の優秀な人材と資金を意味が薄い事業に注ぐことは、経営資源の
     浪費につながります。

    <社外型の場合>
     社外型が黒字化した場合には、株式配当による収入や売却によるキャピタルゲイン
     が見込めます。

     前述の通り、株式公開によるキャピタルゲインを目的に会社がベンチャーキャピタル
     の役割に徹するケースもあるようです。

     社外型の事業であっても、本体のコア事業となる可能性の高いものであれば 
     本体に取り込むという選択肢があります。

     グループ企業とはいえ、別の事業体のままでは経営資源の集中や投資にスムーズ
     さを欠くきます。

     しかし、本体に取り込むことで成長性の高い事業に集中投資ができるからです。

   6.人材育成という役割

    社内ベンチャー制度の目的はキャピタルゲインやコア事業の強化だけではあり
    ません。

    社内の優秀な人材に事業立案から経営の実務までの経験を積ませることは、人材
    を育成する方法として重要といえます。

    この意味においては、人材育成は事業の成否にかかわりなく社内ベンチャー制度の
    役割の一つといえます。

  □成功のポイントと留意点

   1.向き不向きがある

    経営資源の集中と経営のスピード化が本体で行えない企業では社内ベン
    チャー制度を導入する意義は十分にあるでしょう。

    一方、経営資源の集中と経営のスピード化が容易な中堅・中小企業ではあえて社内
    ベンチャー制度を導入する意義は大きくはないでしょう。社内ベンチャー制度は企業
    によって向き不向きのある制度なのです。

   2.成功の特徴 

    社内ベンチャーで成功している事業の特徴をみてみると

     1.社内ベンチャーのトップが決定権を持ち主導権を握っていること
     2.成長が期待できる市場の事業である
     3.本社またはグループ会社からの十分な支援を受けることができる
     4.経営戦略やビジネスモデルが優れている
     5.自社に必要な経営資源を有する企業(同業他社や外部機関)との提携や
      連携をする柔軟性がある
     6.事業にあった独立運用体制を確立している
     7.本社のコア事業にかかわりのある事業を行っている企業が多い

    といった点が挙げられます。

    これらのなかでも特に重要なのがトップ主導と支援体制です。

    例えば、日本の企業では、まだ女性が決定権を握れる立場にいないケースが多い
    のが現状です。

    管理職でなくとも決定権を握り能力を発揮できる社内ベンチャーは、特に若手社員や
    女性社員にとって大きな魅力といえるでしょう。

    また、親会社の支援体制も大きなポイントです。社内ベンチャーのメリットは、会社
    設立時の資金よりも、むしろ親会社の持つ「信用」にあるといいます。

    具体的には、親会社自身が顧客になったり、顧客を紹介したりといった支援が効果
    を発揮します。

    社内ベンチャーは、

     人材、技術、資金、ブランド、信用といった既存企業のメリットと、
     スピード、機動力などベンチャー企業の良さを併せ持っていることが
     最大の特徴

    といえます。

    社内ベンチャーは、現在のような変化が激しい時代にその活躍の場を見出しやすい
    でしょう。

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高齢社員のスキル移転

                     

高齢社員のスキルを移転

  ■高齢社員のスキル移転

   日本では少子高齢化が急速に進み、続々と高齢社員が定年を迎えている。

   少子高齢化は、労働力人口の減少という形で労働市場にも影響を及ぼしています。

   2006年4月から、定年の延長や継続雇用制度の導入などが法的に義務付けられて
   いるとはいえ、今では高齢社員が一度に大量に退職していっています。

   労働力人口が減少すれば、企業は従業員の生産性を高める必要に迫られます。

   また、問題となっているのが、「高齢社員の定年による大量退職」です。

   この年齢層の人々は、いわゆる団塊の世代として知られ、日本の経済成長を長らく
   支えてきました。

   少子化が進み若年労働力が減少していく中、彼らが長年磨いてきたスキルをより若い
   社員へ伝えていくことは急務といえます。

   高齢社員がもつスキルをうまく移転する方法について考えます。

  □スキル移転のパイプ役

   1.高齢社員の性質

     高度成長期のころは、特に労働力不足でしっかりした教育体制など整っていな
     い企業がほとんどでした。

     当時はいい意味でも悪い意味でも、先輩・後輩や上司・部下といった関係が
     はっきりと分かれており、スキルは「見て学びとるもの」といった風潮が強かっ
     た時代です。

     従って、この時代に育った現在の高齢社員の中には、自分の持っているスキ
     ルを教えるもしくは伝えることを不得意としているという人が珍しくありません。

     また、若手社員を教育する際は「ここまで教えているのに」といった気持ちを抱
     き、イライラすることも少なくないでしょう。

     もちろん、教育が得意で自分のスキルを落とし込むことなど造作もない、といっ
     た高齢社員もいるでしょう。

     しかし、自社が高齢社員の持つスキルをうまく移転する方法を整備するとき、
     高齢社員は教育することが不得意な場合がほとんどであるとした上で、体制
     づくりをしないと、スキルはうまく移転しないでしょう。

     この際、最も重要な役割を担うのが、スキルの移転を助けるパイプ役です。

  □パイプ役のイメージ

   パイプ役のイメージは以下の通りです。

   パイプ役は、高齢社員とスキルの移転先となる社員の間に立って、

    ・高齢社員のスキルに関する情報をヒアリングする

    ・ヒアリングした内容を整理する

    ・移転先社員に必要な部分を教育する

   といった役割を担います。

   その後は、パイプ役が整理した内容に沿って、高齢社員が移転先社員に直接教育を
   行い、スキルを移転していきます。

   こうすることで、

    ・高齢社員が、移転先社員に移転すべき内容を自覚できる

    ・移転先社員が、学ぶべき内容とその概要を知り、習得のスピードが上がる

    ・内容が整理されたことで、高齢社員も移転先社員もスキルの移転・習得を
     仕事としてより深く認識するようになり、責任感が強まる

    ・高齢社員と移転先社員の適度な距離を保つことで、両者が良好な関係を維持
     しやすくなる

    ・上司が、高齢社員とパイプ役からの情報を総合することで、スキル移転の進
     ちょくを把握しやすくなる

   などの効果が期待できます。

   実際にこうした効果が得られるかどうかは、パイプ役の力量にかかっています。

   そのため、パイプ役の人選は極めて重要です。

   パイプ役は、高齢社員と良好な関係を築いてより多くの情報を引き出せるか、得
   た情報をうまく整理できるかがポイントになります。

   従って、一般に以下のような社員がパイプ役としては望ましいでしょう。

    ・高齢社員と同じ立場か上の立場、もしくは高齢社員が認めている社員

    ・コミュニケーション能力が高い社員

    ・仕事を分類し、整理する能力が高い社員

   高齢社員より下の立場の社員をパイプ役にすると、高齢社員に軽くみられたり、
   パイプ役が遠慮がちになり、欲しい情報を得にくくなる可能性があるため、直属の
   上司がパイプ役になるのもよいでしょう。

  □パイプ役の仕事

   1.ヒアリングのアウトプットイメージ

     パイプ役は、ヒアリングによって、高齢社員が持つスキルに関する情報を引き
     出し、それを整理します。

     整理は、

      ・高齢社員の仕事を分類して体系化する

      ・体系化した仕事の項目ごとに注意している点や重要な事例をまとめる

     といった形式で行います。 

   2.スキル情報のヒアリング

     パイプ役は、ただ漫然とヒアリングを行っているだけでは、「必要なことをなか
     なか聞き出せない」「得た情報を整理できない」といった事態に陥ります。

     ヒアリングは、以下の点に注意して実施します。

     (1)高齢社員への意識付け

       まずヒアリングに入る前に、高齢社員へ

         スキルの移転=優先順位の高い仕事

       という意識付けを与えましょう。

       高齢社員はいくら定年が近づいているといっても、ほとんどの場合、自分の
       仕事を持っています。

       さらに高齢社員が、前述のような「スキルは見て学びとるもの」という意識を
       持っていれば、スキルの移転は後回しにされがちです。

       まず、スキルの移転を優先順位の高い仕事として意識付け、きちんと時間
       を作ってヒアリングを行います。

       また、パイプ役が意識付けをしたことで、高齢社員とパイプ役の関係が悪
       化することを避けるためにも、意識付けはパイプ役を選定した上司が行い
       ましょう。

     (2)パイプ役がヒアリングに臨む姿勢

       パイプ役は、とにかく高齢社員に自由に気軽に話してもらうことを心がけま
       しょう。

       雑談なども交え、堅苦しい雰囲気を取り除くことです。

       また、パイプ役は、否定的な意見を口にしないようにしましょう。

       目的はあくまで情報収集です。

       長時間にわたって話が脱線する場合は仕方ありませんが、基本的に話の
       腰は折らず、できるだけ多くの話を聞いて、パイプ役がそれを取捨選択して
       まとめる姿勢で臨みましょう。

       また、パイプ役は高齢社員に対して、常に敬意を払うようにします。

       立場はパイプ役のほうが上かもしれませんが、気持ちよく話してもらうこと
       が大切です。

     (3)ヒアリングの進め方

       まず、高齢社員の仕事の内容をヒアリングします。

       パイプ役は、ヒアリングの前に、高齢社員が業務フローやマニュアルなどを
       持っているかどうかを確認し、あれば事前に目を通しておきます。

       ただ、それらの資料を基に話を進めるのではなく、仕事の内容を整理する
       ための予備知識と考えましょう。

       実際は、パイプ役が高齢社員に1日・1週・1カ月・1年などの期間を区切っ
       て、その間に行っている仕事の内容を聞きます。

       最初から漠然と「どんな仕事をしていますか」と聞くより、高齢社員が自分
       の仕事をイメージしやすくなります。

       パイプ役は、高齢社員から聞いた情報をホワイトボードに書くなどして、本
       人に確認しながら進めることです。

       業務資料がある場合は、聞いた情報と資料の各項目を対比させて確認し
       ていくのもよいでしょう。

       ここで注意したいのは、

        高齢社員の仕事の内容の整理は、あくまでパイプ役が行う

       ということです。

       高齢社員が整理することに集中すると、逆に考えが狭まってしまい、発言
       が滞ってしまいがちです。

       ヒアリングの後、パイプ役は、得た情報を整理して業務体系表にまとめま
       しょう。

       一度にまとめる必要はなく、適宜高齢社員に確認してもらい、何度かヒアリ
       ングを重ねて仕事の内容が網羅できた段階で確定します。

       また、パイプ役は高齢社員が長期間携わっていた仕事、自信があった仕事
       などを中心に、過去の仕事についても内容をヒアリングしてみます。

       高齢社員の過去の仕事の中で、パイプ役がスキルポイント表を作成する価
       値があると判断した場合は、業務体系表を作成します。

       なお、この段階では、関連資料欄は空欄で構いません。

       業務体系表が完成したら、次はスキルポイント表です。

       業務概要は、これまでのヒアリングの内容からパイプ役が作成して、高齢
       社員に確認を取ります。

       スキルポイント表のポイント欄に書く内容は、業務体系表の詳細項目ごと
       に、高齢社員に以下の点を確認して決めます。

        ・失敗したこと

        ・注意していたこと

        ・苦労したこと

        ・うまくいったこと

        ・やってみたかったこと

       重要なのは、高齢社員に話してもらうことです。

       ポイント欄に記載するかどうかは、後にパイプ役が決めればよいことです。

       「複数の業務項目にまたがる」「この業務項目に当てはまるかどうか分から
       ない」と高齢社員が思っている内容も、とにかく話してもらいましょう。

       高齢社員が話しにくいようなら、より大きな業務項目ごとにヒアリングし、後
       に、パイプ役がポイント欄に書くべき内容を選択して、詳細項目ごとに当て
       はめていくのもよいでしょう。 

       また、高齢社員が自身の管理用に作成しているメモや資料など、関連資料
       があればどんどん提出してもらい、必要に応じて業務体系表の関連資料欄
       に記載しましょう。

   3.スキル情報の移転

     業務体系表とスキルポイント表が完成したら、この2つの表を基にして、移転
     先社員を教育していきます。

     教育の主眼は、

      ・高齢社員が行っている仕事の流れと概要を理解させる

      ・高齢社員が多くのスキルを保持していることを理解させる

     ことにあります。

     高齢社員も同席し、業務体系表とスキルポイント表の業務概要の部分を中心
     に、移転先社員に説明しましょう。

     そして、移転先社員が高齢社員と実際に仕事をしながら教育を受けるに当
     たって、常に業務体系表に立ち戻り、いま習っている内容の位置を確認するよ
     う指導します。

     そうすれば、移転先社員の頭の中が整理されて、体系的に効率よくスキルを
     身に付けていくことができるでしょう。

     スキルポイント表のポイントについては、特に移転先社員が感銘を受けそうな
     ものをいくつかピックアップして紹介します。

     そうすることで、移転先社員が、

      ・スキルを身に付けようとする意欲を高める

      ・高齢社員を尊敬する

     ようになることを狙います。

     そして、スキルポイント表に記したポイントや事例は一部であり、今後、高齢社
     員から教わることをどんどん付け加えていくように、移転先社員に伝えましょう。

     これから高齢社員と移転先社員が直接教育に入るに当たって、いつでも気軽
     に相談を受ける旨と「ぜひ頑張ってください」という言葉を添えて、パイプ役の
     仕事はいったん終了です。

     その後は、適宜両者に話しかけて、両者の関係が悪化していないかを確認す
     るとともに、力になれそうなことがあれば手助けするようにします。

  □まとめ

   紹介した手順は、パイプ役の性質や能力によって成果が大きく左右されます。

   パイプ役を選ぶ立場にある上司は、よく資質を見極めて選択しましょう。

   適当な社員がいない場合は、上司自身がパイプ役になることも検討します。

   パイプ役の仕事は、高齢社員の業務経験やスキルによって異なりますが、かなりの
   量になります。

   従って、パイプ役が仕事の内容をヒアリングし、整理するだけでも相当の時間を要す
   るでしょう。

   しかし、高齢社員が退職してしまえば、その長年培ってきたスキルは完全に失われて
   しまいます。

   スキル移転は大変ですが、いま時間をかけることでそのスキルが社内にとどまり、
   新たに活用される可能性が残ります。 

   ただし漫然と行うのではなく、明確な期限を設けましょう。

   これは、パイプ役の仕事だけではなく、高齢社員による移転先社員の直接教育につい
   ても同様です。

   今回紹介したように文字でまとめることができても、特に製造部門の技術やベテラン
   営業マンが自分の経験のなかで独自に身につけてきた感覚など暗黙知と呼ばれる
   「身体で覚える」スキルは、習得するまでにかなりの時間を要します。

   高齢社員が持っているスキル・知識・情報を、会社の財産として共有し、有効活用
   するナレッジマネジメントの導入は必要不可欠です。

   業務体系表を基に、スキル移転に必要な期間を推測するとともに、できるだけ早く
   着手することが肝要です。

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メーカーによるサプライチェーンマネジメント

         

サプライチェーンマネジメント

  ■サプライチェーンマネジメント
   メーカーにおける仕入れの効率化は、通常サプライチェーンマネジメント(SCM)
   の一環として行われます。
   そのため、仕入先業者選定の際には物流業者や発注システムの見直し、データ
   による生産数量管理など、総合的な生産工程の効率化の中での対応が必要に
   なります。 
   逆にいえば、総合的なSCMの一環として仕入先にSCMへの対応を求める過程で、
   要求に応じられなかった仕入先をリストから外していくことになるでしょう。
   ここでは、そうした視点から、調達を中心としたSCMの手順を紹介します。

  □SCM導入の流れ
   まず、サプライチェーンマネジメント導入には、基本として以下のような手順が
   必要になります。

   1.目標の明確化 
    まずは、自社のビジネス環境や顧客のニーズを十分に把握したうえで、
    会社としての戦略と目標(調達コスト○%削減・納期○日減など)を明確にし、
    それらを達成するために各部門が具体的なプランを立てることが必要になります。 
    この段階で立てられた基本的なプランがSCM活動の方向付けを決定することに
    なるため、この目標は具体的な数字として設定します。
    例えば、部品メーカーと原材料のサプライヤー間で進められるSCMの場合は
    「原材料や仕掛かり品などの在庫を40%削減する」や、「商品は必ず3日以内
    にメーカーの手元に届ける」といったように定めます。
    また、SCMを進めていく中で、作業の単純化・標準化や部門間の協力、
    組織の変更も必要になるかもしれません。 
    原材料を誰がどのタイミングで発注するのか、倉庫にある在庫の引き当ては
    誰の担当か、といったように責任の所在を明確にすることもこの段階で必要に
    なるでしょう。 
    また、この段階で原材料の在庫量や商品の出荷量や季節需要などのデータを
    正確に把握する仕組みを確立することも重要です。
    それらのデータに基づき生産計画や物流計画を立てる以上、誤ったデータに
    基づいたSCM実施は逆にロスにつながってしまいます。

   2.情報共有できるパートナーを探す 
    自社内の仕組みを確立するだけではSCMの目的である全体の最適化には
    つながりません。
    次のステップとして、情報共有を行ったうえでパートナーシップを組める
    企業の選定が必要になってきます。 
    SCMを導入する場合、インターネットも含めたネットワークによる情報共有が
    不可欠といえます。
    つまり、パートナーシップを組むということは企業内の情報や社内システムを
    標準化し共有することになるため、自社が進めようとしているSCMの枠組み
    に対応できる企業である必要があります。
    また、信頼し合える企業関係であることも重要です。
    単純に自社の調達や物流を効率化しコストダウンを図るためのSCM導入なのか、
    それとも仕入先をパートナーとみなして全体を効率化するためのSCM導入なのか
    によっても異なりますが、一般的に考えられるSCMパートナー選定の基準には
    以下のようなものが考えられます。
     →サプライチェーンを組むにあたり、必要な情報インフラが共有できる
     →互いに利益がでる関係が維持できる
     →これまでの取引実績がある
     →経営戦略の方向性が近い
     →信頼関係が築ける(トップ・マネジメント同士の関係)
     →将来性がある 
    上記の基準を満たさない取引先や、自社が導入しようとしているSCMに対応
    できない取引先は、選定から外れることになるでしょう。 
    まったく異なった企業が、互いの経営情報を共有しながらサプライチェーン
    最適化のために活動するわけですから、そこから得られる成果も共有する
    とともに、それにともなうリスクも分かち合うことになります。
    そのリスクを負えない企業は、選別・絞り込みの対象から外れることになる
    のもやむを得ないでしょう。

   3.SCMの実施 
    目標とパートナーが決定したら、効果が求められやすいところからパイロット
    ・プロジェクトをスタートさせます。 
    プロジェクトの対象を決定したら、次にプロジェクトに携わるメンバーを
    選定します。
    メーカー側からは、製造部門、販売部門などの業務に関連するすべての部門
    からの参画が求められ、サプライヤーからも販売部門や調達部門など
    プロジェクトの対象となる関連部門からの参画が必須となります。
    経営体制の変革をともなう大きなプロジェクトですので、必ず経営者格の
    人がリーダーないしはオブザーバーとして参画することも必要です。
    その際には、1で決定した要領でプロジェクトの目標を設定し各企業の役割
    と責任も明確化します。 
    活動を開始すると、今まで発生していた無駄なコストが削減され、多くの業務
    が効率化されてきます。
    例えば、データの共有により今まで行っていた伝票の送付が不要になったり、
    検品作業を省くことが可能になるでしょう。

   4.プロジェクトの評価 
    プロジェクトが終了する時点で、当初設定した目標に対する達成度を評価して
    いきます。
    それらの目標が達成されていない場合は、その原因の見直しが必要です。
    原因を洗い出したら、必要に応じて計画を見直すことも必要になります。 
    このように、ひとつひとつプロジェクトを評価し、改善を繰り返すことに
    よって仕組みを徐々に作り上げ、最終的にSCMによる全体の最適化を目指して
    いくことになります。

   5.SCMを成功させるための基本ポイント
    以下では、SCMを導入する際に押さえておくべき基本的なポイントをまとめ
    ます。

    (1)物流拠点間のモノの流れを管理する 
     モノの流れを管理するのは、部品・商品供給までの時間短縮、コスト削減
     を目的としています。
     製造業ににおけるJIT(ジャスト・イン・タイム)やコンビニエンスストア
     への多頻度納品に象徴されるように、効率的なモノの流れを実現するため
     には、各拠点における物流体制の整備や即納体制の確立なども含めた、
     拠点間の緊密な連携が必要です。

    (2)情報の適切な管理を行う 
     SCMにおいては情報の管理も重要です。
     製品やサービスのに対する正確な需要予測に基づいて生産計画や販売計画
     を立てられれば、在庫量や物流経費などを大きく削減されることに
     なります。

    (3)全体最適化を目指す 
     SCMのチェーンに参加する企業は、常に全体最適化を目指す必要が
     あります。
     たとえば特定の物流拠点がその拠点のみの最適化を追求しても、それは
     部分最適に過ぎず全体最適は実現できません。
     また、チェーンのどこかにボトルネックが生ずればそれがチェーン全体に
     影響を与え、最適化水準は低下することになります。
     すべてのSCM参加企業は全体最適を意識し、全体の流れを最適化するための
     努力が必要です。


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情報セキュリティ対策とサプライ・チェーン・マネジメント SCM

           

情報セキュリティ対策とサプライ・チェーン・マネジメント SCM


  情報セキュリティ対策

   「ヒト」「モノ」「カネ」に加え、「情報」は経営にとって不可欠の要素です。

   また、情報の適切な管理体制は、企業の信用力を判断する上での重要な要素と
   なってきています。

   サプライチェーン攻撃など巧妙化が加速するサイバー攻撃の脅威から会社を守る
   ためには、情報セキュリティ対策は喫緊の課題です。

   そのため、企業の情報漏えいは重大な経営上のリスクとして認識されてきて
   おり、中小企業にも情報セキュリティに取り組むことが求められてきています。

   企業の持つ情報を狙った攻撃者に対して、情報セキュリティ対策を講じる場合、攻撃
   の糸口を与えないことが大切です。

   糸口となるのは、ソフトウェアの脆弱性、ウイルス感染、パスワード窃取、設定不備、
   わなへの誘導といった点に集約されます。

   こうした点について、ソフトウェアの更新、ウイルス対策ソフトの導入、パスワードの
   適切な管理、定期的な設定の見直し、脅威や手口についての周知などといった対策
   が必要です。

   情報セキュリティに掛けられるコストが限られる中小企業においては、例えば、見
   知らぬ相手から添付ファイル付きのメールが送られてきた場合、不用意に添付 
   ファイルを開かないといったことや、具体的な標的型攻撃の手口について社内教育を
   行うなど、人的な対策を講じることから始めるとよいでしょう。

  □サプライ・チェーン・マネジメントとは

   1.サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)とは

    注目される経営手法に

    「サプライ・チェーン・マネジメント(以下SCM)」があります。

    このSCMは、顧客満足の向上と経営効率の向上を同時に狙う画期的な経営管理
    手法として90年代に米国で広がりました。

    日本でも90年代以降、多くの企業がその導入に取り組んできました。

    SCMの「SC(サプライ・チェーン)」とは、

     顧客〜小売業〜卸売業〜製造業〜部品・資材納入業者
     などの供給活動の連鎖全体

    を指します。

    そこにM(マネジメント)を加えSCMとなった場合は、

     サプライチェーンの全体最適を実現するために統合管理する経営手法

    ということになります。

    従来の経営手法は、部門ごとの最適化や企業ごとの効率化といった部分最適を
    志向するものが主流でした。

    しかし、SCMでは部門ごと企業ごとの枠を超えて、

     サプライチェーン全体の視点からの全体最適

    を目指します。

    具体的には、情報、物流、キャッシュにかかわる業務の流れを見直し、サプライ
    チェーン全体で情報の共有化と業務プロセスの抜本的な変革を行います。

    それにより、キャッシュフローの効率を向上させる経営を実現するのです。

    ここで注意しなければならないのは、

     SCM構築の基点となるのはあくまでも“顧客”

    である点です。

    つまり、SCMは最終消費者である顧客に価値のあるものを提供し、顧客満足を高める
    ビジネス・プロセスを構築しようという経営手法なのです。

   2.SCM出現の背景

    市場(顧客)のニーズは変化が激しく、消費者自身も明確なニーズを持っていない
    時代に企業に求められるものは、市場に投入した製品の中で、売れ筋商品を発見し、
    早く、欠品なく、無駄なく供給することです。

    この実現は一企業内での行動では限界があり、

     サプライチェーンを構成する企業同士が互いに提携しあい、
     市場の情報を共有しながら行動すること

    が必要になってきます。

    また、かつての日本企業は売上高や市場シェアの拡大を志向してきましたが、低成長
    時代に入った今日、企業には顧客満足の向上を志向し、それによって収益性を高める
    ことが求められています。

    SCMを現実の経営手法として可能にしたのは、情報技術の発展です。

    サプライチェーンを構成する企業間において、情報を速く正確に伝達し、共有化する
    ためには、インフラとしての情報技術が必要です。

    インターネットやパソコンをはじめとした情報機器の普及は、企業におけるSCMの
    導入環境を整えてきました。

  □デルコンピュータにみるSCMの成功事例

   米国でSCMにより成功を収めた企業として有名なのが、84年に当時わずか19歳の
   学生マイケル・デルが創業して誕生したパソコンメーカーの「デルコンピュータ」です。

   同社は業界の中で後発の企業ながら、IBM、ヒューレット・パッカードといった大企業
    を抑え、コンピューター販売でトップにまで成長しました。

    これまで同社は、

    「顧客の要望に合った仕様のパソコンを受注生産で組み立て直送する」

    という経営方式で急成長を遂げてきました。

    顧客の注文を電話やインターネットで受け取り、ニーズに合わせた商品を自社で
    組み立て、その後わずか4日で顧客の元に届ける仕組みをつくりました。

    具体的には、部品の調達先である部品メーカーを絞り込み、将来の需要予測を共有
    することによって、部品調達のリードタイムを大幅に短縮するとともに、顧客への商品
    の配送業務全体をフェデラル・エキスプレスにアウトソーシングしたのです。

    このように、同社はSCMの構築を経営戦略として位置付けて、顧客から部品・資材
    納入業者に至るサプライチェーン全体の最適化を図ることによって、顧客満足度の  
    向上と高い収益性を実現しています。

    同社の成功は

     「デルモデル(デル・ダイレクト・モデル)」

    といわれ、SCMの成功事例として広く知られています。

    【「デル・ダイレクト・モデル」の主な特徴と顧客メリット】

    ●高い価格性能比

     販売店やディーラーなどの既存の流通を介さず直接販売することによって
     流通コストをカット。また、調達から製造、物流に至るすべてのプロセスで
     高い効率を追求したサプライチェーン・マネジメントを展開することにより、
     デルコンピュータは他社より高い品質・機能・仕様を備えた製品を提供する
     ことが可能です。

    ●注文生産(BTO

     デルコンピュータはすべての製品を顧客の希望にあわせてカスタマイズ
     します。1台の購入でも、大量購入でも、顧客は必要とする機能や仕様
     だけを装備した製品を購入でき、不要なものにコストを支払う必要は
     ありません。

    ●サービス・サポート

     1台1台仕様が異なるデルコンピュータの製品情報は、受注と同時に
     社内のデータベースに蓄積されます。その製品・顧客データベースに
     もとづいて、デルコンピュータのテクニカル・サポートスタッフがきめ細かい
     サポートを提供します。常に顧客の生の声を聞く事により、日々新しい、
     よりカスタマイズされたサポートプログラムを開発しています。

    ●最新の技術をいち早く提供

     完成品の在庫を持たず、また徹底して効率を追求したサプライチェーン・
     マネジメントを実践するデルコンピュータは、業界屈指の低在庫水準
     (2003年当時1月期末:在庫日数3日)を維持しています。これにより、
     間接販売を行う競合他社に先駆けて、常に最新技術をいち早く製品化・
     量産し、かつ低価格で提供することができます。

    ●傑出した財務内容

     デル・モデルが実現する効率の高いビジネスプロセスと、信頼性の高い
     製品・サービスにより、デルコンピュータは継続して利益をともなう高成長
     を達成しており、その傑出した業績は株価にも顕著に表れています。成長
     性・収益性・流動性(キャッシュフロー)の3つのバランスを重視したデル
     コンピュータの健全な財務内容が、将来にわたる顧客への製品・サービス
     ・サポートの継続した提供を約束します。

                          (出所:デルコンピュータ)

  □サプライ・チェーン・マネジメント導入に必要なこと(ジャストインタイム)

   日本でも大手企業を中心として、SCMの導入に積極的に取り組んでいます。

   例えば、国内エレクトロニクス産業では、在庫や運転資金を極力削減し、収益力を
   高めるためにSCMの導入に積極的です。

   また、アパレル業界でも売れる商品をタイミングよく開発・生産するとともに、過剰在庫
   を削減し収益構造を改善するためにSCMを導入し始めています。

   そのほかにも、自動車業界、小売業界、建設業界など幅広い業界でSCMに取り組む
   ケースがみられます。

   前述したように、SCMは企業内の一部門内における部分最適を目指すものではなく、
   部門間、企業間における全体最適を目指すものであるため、

    企業のトップマネジメントレベルからの取り組み

   が欠かせません。

   いかに企業トップがSCMを理解し、積極的にその導入に取り組むかが成功の鍵を
   握っています。

   また、SCMの実現には先端的な情報システムの構築も必要で、自社の情報システム
   に先進的なSCMソフトを組み合わせる必要があります。

   こうした情報システムの構築には社外専門家の協力も必要になります。

   外部コンサルタントをうまく活用していくことも必要になるでしょう。

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非生産(管理・ホワイトカラー)部門の生産性の向上

           

管理(非生産)部門の生産性向上

  ■管理部門の生産性

   激しい技術革新の中で、労働態様は大きく変化し、非生産部門(管理部門)と生  
   産(造部・ブルーカラー)部門の境界線はますますボーダーレス化してきています。

   工場でロボットやME機器を操作している技能労働者とオフィスでキー・オペレーション
   に従事する事務系労働者との差異を、労働形態だけで区別することは難しくなって
   います。

   しかし、それでもなお、非生産部門と生産部門という区別に意味があるとすれば、
   生産=付加価値の創造に直接タッチするかどうかという“付加価値”をめぐって区別する
   場合です。

   非生産部門と生産部門の区別が、労働形態によって鮮明に区分された時代には、
   「何を作るか」、「どのように作るか」という問題は、「どれだけ作るか」、「どのよう
   に売るか」の問題と一体として追求されていました。

   それらの大部分は生産現場を通じて行われ、そのために少数の非生産部門とい
   われる知的労働に携わる人々が、「何を、どのように」という問題について考えて
   いました。

   しかし、今日、様相は一変しました。

   商品企画(研究開発)と販売・営業、さらに事務、管理などの特別の任務を帯びた 
   非生産部門の職務が独立し、その数が生産(技能)労働者と数的にも拮抗するまでに
   至ったのです。

   こうして、非生産部門の分業が進むなかで、付加価値の創造に直接関係する専門・
   技術職や販売・営業職と、直接付加価値の生産にかかわることの少ない事務・管理職
   とに非生産部門が大きく分化しました。

   ここでは、前者をライン型の非生産部門、後者をスタッフ型の非生産部門と呼ぶことに
   しますが、一口に非生産部門の生産性という場合にも、直接付加価値に関与する 
   かどうかによって、ライン型とスタッフ型に分けられ、それに伴って生産性を考える視点も
   異なるのです。

   そこで、非生産部門をこのように分類したのち、各職種ごとの生産性をどのような尺度
   で計るのかについて考えてみることにしましょう。

  □非生産部門(ホワイトカラー)の生産性の指標

   生産性とは、「投入(Input)」と「産出(Output)」との関係を示す指標です。

   そこで、非生産部門の生産性を考える場合に問題となるのは、「投入」と「産出」に ついて
   それぞれどんな指標を用いるかどうかです。

   まず、「投入」については、非生産部門の生産性を論ずる場合、「付加価値」と「人時」
   すなわち「人数×時間」を指標とすることに問題はありません。

   つまり、「投入」に関しては、何人のホワイトカラーを何時間投入したかという指標で
   考えます。

   しかし、「産出」については、このように単純ではありません。

   非生産部門の「産出」の指標は必ずしも明確ではなく、また、職種によっても異なる
   からです。

   例えば、専門・技術職は、一般に最も高度の知的労働とされ、付加価値そのものを
   大きくする(例えば、新商品の開発や新しい技術の開発によって)役割を果たすが、
   専門・技術職の場合には、必ずしも「投入」量に比例して「産出」が大きくなるわけでは
   ありません。

   しかも、「産出」もかなり長いスパンで見なければその大きさを計ることができないし、
   産出は「量」よりも「質」で計らなければならないという特徴をもっています。

   事務職(ホワイトカラー)は、付加価値の創造には直接かかわりませんが、その業
   務が停滞すると、生産性をダウンさせる働きをします。

   したがって、事務職における「産出」は、ラインの生産性向上に必要な範囲で確実 に
   行われる必要がありますが、ラインが求める以上の「産出」を得る必要はなく、「産出」は
   できるだけ小さいほうがよいわけです。

   つまり、“「産出」は必要最小限の範囲で、最も適切な質と量を得る”というのが事務職
   の生産性に関する指標のポイントです。

   管理職は、ラインにもスタッフにも属しますが、いずれの場合にも、ラインまたはスタッフ
   の「産出」を最も効率的、効果的に確実に得るための潤滑油の役割を担っています。
   したがって、管理職の場合にも「産出」は量を問うよりも、組織の「産出」を増大する
   ためのプロセスの「質」で計ることになります(プレイングマネジャーの場合はライン的
   要素が加わるので、自らの「産出」量も指標とされる)。

   これに対して、販売・営業職の場合には、付加価値を直接生みだす(注)役割を果 たし、
   しかも、「投入」にある程度比例して「産出」が大きくなります。

   したがって、産出の「量」が問題とされます。

   この点では、生産労働に共通した面を持っています。

   (注)労働価値学説では、販売活動は、生産労働によって生みだされた価値を
   実現する役割を担うとされる。

   次に職種別ごとの生産性向上対策についてみることにしましょう。

  □職種別に見る非生産部門の生産性向上策

   (1)専門・技術職

    専門・技術職には、新商品、新技術の研究・開発、設計、デザイン、経営企画、経営
    管理などの職種が含まれますが、これらの職種では専門知識はもちろん、独創性、
    先見性などのセンスを必要とする最も高い知的労働とされています。

    したがって、この職種では、単なる長時間労働は、成果の産出すなわち知的労働を
    妨げることすらあります。

    これらの職種で創造性を発揮し生産性を向上するためには“ゆとり”が不可欠であって、
    極論すれば労働時の長さと成果は反比例することさえあります。

    これらの職種では、成果は、むしろ人材そのものの資質と労働環境の整備如何に
    大きく左右されることから、いかに優秀な人材(単に優等生という意味ではなく、個性
    豊かな天才型人材も含む)を確保するか、また、いかに自主性を尊重し、創造性を
    発揮させるための環境、条件を整備するかにかかっています。

    多くの企業では、こうした観点から専門・技術職のためにフレックスタイム制を導入
    していますが、先進的な企業では、コアタイムのないフレックスタイム制や裁量労働制
    を導入し、業務遂行と労働時間に大きな裁量制をもたせており、評価制度も成果
    志向を強めています。

    中堅・中小企業では、専門・技術職に対するこうした取り組みはまだほとんど行われて
    いませんが、この分野の職種の人々がその能力を発揮し、成果をあげることが、
    企業全体の生産性向上に大きな働きをすることに着目し、改善のために努める必要
    があるでしょう。

   (2)事務職

    いわゆる事務職は、経理、庶務、文書管理、営業事務(伝票処理等)などに代表
    されるように、定型的業務が中心です。

    人員や労働時間(「人時」)を多く投入すれば「産出」もほぼ比例して増大します。

    その意味では、生産ラインに近い業務形態が見られます。

    したがって、この職種での生産性向上のためには、機械化、OA化が一見有効に
    見えます。

    しかし、前項で見たように、近年、一般事務職における機械化、OA化が急激に進んだ
    にもかかわらず、事務職の就業者数は大きく増加しており、また労働時間の短縮も
    必ずしも進んでいません。

    それはバブル期を通じて経済活動の拡大の幅が大きかったことにもよりますが、
    もともと事務分野の業務はアウトプットに限りがない分野であり、放置すれば、業務量
    は無限に拡大していくという特徴によるものと思われます。

    しかもその結果は、付加価値の生産に直接貢献することのない「産出」が増えるだけで、
    「販管費率」を押し上げ、この職種の「投入」と「産出」の拡大は、結果として企業の
    生産性のダウンにつながります。

    そこで、オフィスにおける機械化、OA化を進める際にも、機械化以前の事務処 理
    システムを見直し、それが合理的かつ目的別に設計されているか、不要不急の会議や
    資料作成、漫然とした事務処理が行われていないかどうかなど、オフィスのワーク・
    エンジニアリング的な視点からの再点検が必要です。

    その意味で、事務職での生産性向上のキーワードは、「不要な業務の整理=最少限
    のアウトプット」に徹することであるといえます。

    以上の視点から、具体的には、

     @業務全般の進め方を見直してアウトプットを必要最少限のものに削減
      するとともに、

     A会議の効率化・短縮化などの直接的な時短策を実行するほか、

     B担当者のスキルズ・アップなどを図ることが大切です。

    さらに、業務改善、分担の見直しなどを図りながら、時期によって業務の繁閑の格差
    の大きい経理・物流部門などで変形労働時間制を採用し、必要な「産出量」をコント
    ロールするなどの取り組みも効果的といえるでしょう。

    中堅・中小企業の事務部門でも、最少「産出量」の確保という基準で事務部門の
    業務量の縮小に努めたいものです。

   (3)管理職

    いわゆる管理職は企業の中枢に位置し、その役割には、組織統治機能や戦略的
    意思決定機能などがあります。

    また、必要能力としては、全人格的統治能力、 先見性、判断力、組織力(リーダー
    シップ)、問題解決力などがあります。

    企業の生産性向上のためには、管理職の果たす役割は非常に大きなものとなって
    います。

    しかし、多くの企業では管理職が期待される役割を十分果たし切れておらず、むしろ
    企業全体の生産性向上の足をひっぱる役割をすることも少なくありません。

    これは、管理職の役割と職責が必ずしも明確でないことに伴って、管理職層が雑務
    に追われたり、必要な職務能力を持たない管理者が増大していることに大きな要因
    があると思われます。

    そこで、いわゆる管理職層の生産性向上のために、まず組織の統治責任者である
    という管理職本来の役割を明確にし、組織と管理職の関係を見直すなかで、マネジ
    メント能力の向上を図るとともに、組織を持たない管理職層の一掃に努めなければ
    なりません。

    組織をシンプル化し、組織管理職を除く管理職層の専門職化を図ることが必要です。

    また、処遇を管理職ポストで行うという年功型人事制度を見直し、能力と成果で評価
    する能力主義人事制度への移行なしには、管理職の活性化は図れません。

    最近、多くの企業で賃金・人事制度の改革が進められていますが、中堅・中小企業
    では、この点では大企業より改革を進めやすい土壌があるので、思い切った人事
    制度、評価制度の改革を急いで断行したいものです。

   (4)販売・営業職

    販売・営業職は、前述のように直接企業に付加価値をもたらす職種です。

    しかし、バブル時代のように、経済の活況期には、「人海戦術」的に人と時間を投入
    すれば、それなりに売り上げ(粗利益)を伸ばすこともできましたが、昨今のように
    市場がダウンサイジング化し、限られたパイを奪い合う時期には、単なる人海戦術で
    期待する成果をあげることは困難となっています。

    そこで、販売・営業職の生産性向上を実現するためには、その活動の質と時間効率
    を高めることが必要となります。

    この会社の営業リーダーたちは、全社売り上げのうち、約25%の売り上げを上げて
    いるが、営業リーダーの1日の労働時間中、実際に営業活動(商談)を行っているのは、
    電話による商談も含めても27%にすぎません。

    一方、いわゆる社内業務であるデスクワークにとられる時間が半分近くを占めて
    います。

    そこで、この会社では、“デスクワークに時間をとられる”問題を解決するために
    リーダー会議で原因分析を行いました。

    その結果明らかになったことは、全社的な問題、部の問題、課の問題、リーダー自身の
    問題というように、デスクワークが非常に多くの発生源を持つということでした(注)。

    (注)図Aは、まず、リーダーによってブレーンストーミング方式で問題を
    出し合い、KJ法で分類したあと特性要因図に整理した。
 
    この会社では、これらのデスクワーク発生要因を克服するため、プロジェクトチーム
    を編して改善に取り組み、生産性を大きく向上させました。

    販売・営業職の生産性向上対策は、生産現場におけるそれと同様に、1人ひとりの
    能力向上と併せて、間接作業(デスクワーク)時間をいかに減らし、「直接作業(商談)
    時間」をいかに増やすか、という問題に尽きます。

    これまでほとんどの企業でこうした取り組みが行われてこなかったことを考えれば、
    販売・営業職における生産性向上の可能性は、無限に近いほど多くの可能性を持って
    いるといえるでしょう。

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生産性を考える

           

生産性を考える

  ■自社の生産性を考える

    企業が資本、人材等の経営資源をどのように活用し、その結果としてどれだけの成果が
   得られたかを把握することで、生産性の良否を判断することができます。

   生産性は基本的に以下のような算式で表わすことができます。

生産性.bmp


   生産性は、経営資源の投入高と成果としての産出高との比で測定され、投入高に対する
   産出高の割合が高くなればなるほど生産性が高いということになります。

   投入される経営資源には、多種多様なものがありますが、代表的なくくりとして、労働と資本が
   用いられます。

   どちらが重要かは時と場合によって違ってきますが、多くの企業では、1人の労働力を投入した
   ことによってどの程度の成果を得ることができたかという「労働生産性」を重視する傾向に
   あります。

   その理由としては、以下のような点があげられます。

    ・労働力はどんな経営活動にも必ず共通するものであること

    ・賃金、従裳員数、労働時間等、投入量の測定が容易であること

   一方、分子の成果に用いられる要素には、企業の生み出す付加価値が入ります。
    
  □付加価値とは何か

   付加価値とは、企業が一定期間、経常活動をすることによって得た成果のうち、当該企業が
   新たに生み出した価値のことをいいます。

   企業は、外部から仕入れた原材料、仕入商品等を元に、自社の技術力、営業力、ノウハウ等を
   駆使して新たな商品・サービスを作り上げます。

   この新たに付け加えた価値のことを付加価値といいます。

   付加価値を求めるには、さまざまな考え方がありますが、基本的な考え方としては、売上高から
   新たに付け加えられた価値以外の金額を除くことで求める方法があります。

   つまり、売上高から原材料、仕入商品等、外部から購入した価値を引くことで、付加価
   値額(*)を算出します。

   この付加価値が売上高に占める割合を「付加価値率」といいます。

   付加価値率の求め方は以下のとおりです。

付加価値率.bmp

   (*)付加価値額は、「経常利益+人件費+金融資産+賃借料+租税公課+減
      価償却費」または「純売上高−当期製品仕入原価」「生産高−(直接材料費
      +買入部品費+外注加工費+間接材料費)」で求められます。

  □1人当たり付加価値を計算する

   1人当たり付加価値は、従業員各人がどれだけの付加価値を獲得し、自社の利益獲得に
   どの程度貢献しているかをみるものです。

   1人当たり付加価値は以下の算式で表わすことができます。

一人当たり付加価値(円).bmp


   1人当たり付加価値は効率的な経営が行なわれているかどうかを測る重要な指標であると
   同時に、現在の財務状況からみた従業員数の妥当性を判断するために用いることもできます。

   また、部門間での比較や時系列による比較を行なうことで、より詳細な生産性の分析が可能
   となります。

   1人当たり付加価値(生産性)は、上の式を以下のように分解することでより詳細に分析する
   ことができます。

1人当たり付加価値(円)2.bmp


   上の式のように、1人当たり付加価値は、「1人当たり売上高」と「付加価値率」に分解する
   ことができます。

   このことにより、生産性の問題に関しては、その原因を

    ・売上高が低下しているのか
    ・人員が多すぎるのか
    ・売上原価が高すぎるのか
    ・利益率が低すぎるのか

   といった視点から検討することが可能となります。

  □資本の生産性を検討する

   1人当たり付加価値は以下の算式でも表わすことができます。

1人当たり付加価値(円)3.bmp


   1人当たり付加価値は「労働装備率」と「設備投資効率」に分解されます。

   労働装備率は企業の設備投資の充実度を表わしており、設備投資効率はこの投下された
   資本設備の有効利用度を表わしています。

   たとえば、減価償却をほとんど終えて老朽化した設備をフル稼動させている場合は、労働
   装備率が低く、設備投資効率が高くなりやすくなります。

   逆に、新型の設備を新たに購入している場合は、労働装備率が高く、設備投資効率が低く
   なりやすいといえます。


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コロナ後の事業の多角化

             

コロナ後の事業の多角化

  多角化する意義

   企業活動を将来にわたって発展、存続させていくための手段として、経営の多角化が
   あげられます。

   特にコロナ後の経営環境の変化は大親模、かつ急速に進展していくでしょう。

   こうした変化に適応するために自社の事業構造、能力を変革していくことは、企業にとって
   非常に重要です。

   その手段として、多角化経営は有効な経営手法です。

   経営の多角化を行なう意義、目的はおもに次の3点にあります。

    a.事業構造の変革

    b.リスクの分散

    c.未利用資源の活用

   以下、順説明します。

    a.事業構造の変革

     事業は時の流れとともに、衰退、陳腐化していきます。

     そのため次代の基幹事業を模索していくことが求められます。

     事業の方向性を分析する手法としてH・T・アンゾフの事業拡大マトリクスがあります。

     このマトリックスでは新製品を新市場に投入することを多角化と定義しています。

    b.リスクの分散

     現在利益を生み出している成長企業もいつかは衰退する可能性があります。

     つまり、単一の事業のみを営み続けることは非常に大きなリスクになります。

     多角化経営は、全体収益の柱となる事業を複数もつことで、事業の衰退リスクを小さく
     することを可能にします。

     しかしその一方で、多角化による新しい事業分野への進出は、事業失敗のリスクも
     発生させることになります。

     ここで大切なのは、各リスクを適切に評価しながら多角化の必要性を探っていくことです。

    c.未利用資源の活用

     長年の経営活動の結果として、企業には技術やノウハウ、生産設備などさまざまな
     経営資源が蓄積しています。

     蓄積された経営資源で利用されていないものがある場合、経営の多角化によりこれを
     有効活用します。

     また

     現在利用している経営費源を経営の多角化に併用することで、
     シナジー効果(相乗効果)を得ることも可能になります。

     シナジー効果を得る具体的手段としては、次の方法が考えられます。

      ・生産シナジー……新親事業と既存事業の生産ラインを共有化すること
                   で、相乗効果を導く方法

      ・販売シナジー……新規事業の製品・サービスの販売を、既存の営業
                   部隊で行なうことにより相乗効果を導く方法

      ・流通シナジー……新規事業の製品・サービスの流通を、既存事業の
                                   流通経路を利用することにより相乗効果を導く方法

      ・管理シナジー……新撰事業の管理業務を、既存の管理部門で執り行
                   なうことにより相乗効果を導く方法

     多角化経営を考える場合、可能な限りシナジー効果を利用することが大切です。

     逆にシナジー効果を発揮しない多角化は、自社が将来にわたって成長・存続していく
     ための長期的戦略とは適合しないことが多く、再検討の余地が十分にあるといえます。

  □多角化の類型

   新製品を新市場に投入することが多角化戦略であり、その行為には通常大きなリスクが
   伴うことば前項で解説しました。

   しかし、多角化を対象顧客と技術の面でさらに細分化すると、4つの類型が存在することが
   わかります。

   次にその類型の特徴を掲げます。

   a.水平的多角化

    蓄積された生産技術を活用し、既存と同様の顧客を対象にして新製品を投入
    する多角化です。

     例) ・オートバイのメーカーが乗用車分野に進出

        ・大手スーパーがコンビニエンスストア事業に進出

   b.垂直的多角化

    エンドユーザーは変えずに、流通チャネルの川上から川下、または川下から
    川上へと多角化するものです。

     例) ・繊維メーカーがアパレル業に進出(川上から川下への多角化)

        ・ファミリーレストランが食品加工業に進出(川下から川上への多角化)

   c.集中的多角化

    技術、対象顧客のどちらか、もしくは両面で関連性を有する多角化です。

     例) ・酒造メーカーがバイオ関連事業に進出(技術面の関連)

        ・文具メーカーがOA機器分野に進出(対象顧客の関連)

   d.集成的多角化

    技術、対象顧客の両面でまったく関連性をもたない分野に進出する多角化です。

     例) ・銑鋼会社が半導体事業に進出

        ・機械メーカーがレジャー産業に進出

   それぞれの類型により、多角化展開に伴うリスクは大きく変化します。

   一般的には、aからdに進むにつれてハイリスク・ハイリターンとなります。

   できる限り、既存事業の技術力や販売力などを有効活用できる分野で多角化を進める
   ことが理想です。

   しかし企業が成長していく過程においては、リスクを覚悟で思い切った多角化を推し進め
   なければならないときもあります。

   その際に、リスクを最小限に抑える展開方法を考える必要があります。

  □多角化の展開方法

   多角化経営を展開する際には、その類型にかかわらず大きなリスクが伴います。

   そうしたリスクを最小限に抑えるためには効果的な展開方法を策定し、その展開方法が
   合理的に機能するための組織を編成する必要があります。

   次にその展開方法と、望ましい組織の形態をご紹介します。

   (1)自社の経営資源のみを活用する展開方法

     a.プロジェクトチームの編成

      社内の各部門から適任者を横断的に選出し、新規事業を対象とした
      プロジェクトチームを編成します。

      このプロジェクトチームでは、独自にチームリーダーを選任し、既存の
      部門や業務とは権限・責任の面で完全に独立していることが前提と
      なります。

     b.社内ベンチャー

      自社内に仮想のあるいは実際の会社を作り、多角化に取り組む形態です。

      プロジェクトチームと異なるのは、利益責任が生じることです。

      また、これを子会社として独立ざせて事業の展開を行なうことをスピンアウト
      といいます。

     c.事業部制

      各事業部門別に独立した組織を形成し、各々に利益責任をもたせる方法です。

      一般的な方法ですが、過度のセクショナリズムが間接部門や投資資金の
      重複を引き起こし、「逆シナジー効果」が機能することも考えられ、多角化
      にはあまり向いていない組織であるといえます。

   (2)社外の経営資源を活用する展開方法

     a.アウトソーシング、OEM

      事業の一過程を、他社に委託する(外注する)展開方法です。

      この場合、他社とは「契約」の関係にとどまるので、販売力や技術力、資金
      力などを十分に調査する必要があります。

       例) ・ある事業の製造過程を他社に委託する

          ・ある事業の販売過程を他社に委託する

      こうした外部資源の活用による多角化の展開は、非常に効率的です。

      しかしその半面、「自社内には事業のノウハウが蓄積しにくい」という欠点
      も存在します。

     b.事業提携

      新たな事業を展開するとき、その事業について実績のあるほかの企業と
      事業提携をする展開方法です。

      これにより、多角化に伴う投資のリスクを軽減することが可能となります。

     c.M&A
      進出しようとしている事業分野において、すでに実績のある企業を吸収
      合併する方法です。

      効率的で事業ノウハウも蓄捺されますが、膨大な資金需要が生じるため、
      多角化のリスクが高まる側面もあります。

      ある調査によると、

       多角化に成功した企業が成功要因の第一位にあげるのはタイミングである

      としています。

      自社の経営資源を正確に把握し、可能ならば他社の力を利用することも必要です。

      また、自社の技術を活用することはできても、新たな市場によっては既存組織では
      うまく適応できない場合があります。

      たとえば、既存の事業において官公市場を主体にしていた会社が、一般市場を
      相手にする場合などです。

      こうしたケースでは、社内ベンチャーや子会社形態をとり、いままでの組織とは別に
      活動したほうがスムーズにいきます。

  □多角化経営のコントロール

   多角化経営を展開することにより、経営全体のバランスの舵取りが非常に難しくなります。

   各事業の成長性や収益性、健全性、さらには他事業とのバランスをつねに管理し、
   適切なコントロール(統制活動)を行なう必要があります。

   また、時にはその事業からの撤退を決断しなければなりません。

   前述したように、各事業は時の流れとともに衰退、陳腐化していきます。

   こうした変遷のサイクルをPLC(Product Life Cycle)といいます。

   このPLC図における、A製品事業とB製品事業を例として多角化経営のコントロールについて
   ご紹介します。

   a.経営資源の効率的配分

    PLC図によると、A製品事業はまさに成長期にあり、この分野に集中的に
    経営資源を投資していく戦略をとります。

    逆にB製品事業は衰退期にあるため、この事業への経営資源の配分は
    最小限にとどめます。

    企業が活用できる経営資源は限られています。

    その限られた経営資源は、成長性のある事業に対して効率的に配分する
    必要があります。

   b.既存事業の活性化

    PLC図によるとB製品事業は衰退期にありますが、それはたんに時の流れに
    よるものでしょうか。

    たとえば、標的市場(対象顧客)を変えてみることで、収益力が回復するかも
    しれません。

    このように既存の事業において成長力や収益力が低下している場合、その
    原因を分析し新たな活性化策を施すことも必要です。

   c.シナジーの測定

    A製品事業とB製品事業との間で、どれだけのシナジーが発揮されているか
    を測定します。

    シナジー効果が十分でない場合は、製造ラインで共有化できる部分はないか、
    同様の流通経路を利用できないか、などシナジーを発揮できる方法を模索します。

   d.撤退戦略

    B製品事業の採算性に限界が生じ、どんな活性化策もシナジー効果もなくなっ
    た場合、思い切って撤退の決断をします。

    撤退戦略の決断が遅れると会社の経営全体に大きな影響を及ぼしかねません。

    とくに日本の企業は、この撤退戦略の意思決定が遅い傾向にあります。

    コロナ後の環境変化のスピードは非常に速いため、事業の成長性を正確に見抜き、
    迅速かつ的確な意思決定をする必要があります。             

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緊急時に求められる社長の役割

             

緊急時に求められる社長の役割

  ■事態発生直後に行うべきこと

   企業経営にはさまざまな困難がつきものですが、ときには会社の存続が危ぶま
   れるような緊急事態が発生することがあります。

   特に自然災害などは、何の前触れもなく突然襲ってきます。

   そして、危機的な状況のなかで、どのような対応を取るかによって、社長はその真
   価を問われることになります。

   ここでは、緊急事態のなかで社長が果たすべき役割について説明します。

   1.情報の収集

     大地震などの緊急事態が起こった際に、社長にまず求められるのは現状をで
     きるだけ正確に把握することです。

     特に自社の周辺が直接的な被災地になった場合などは、社員とその家族、取
     引先などの安否確認が優先されます。

     また、周辺地域全般の状況、自社設備の破損状況、自社設備が原因で起こる
     二次災害の可能性、インフラの被害状況なども把握しなければなりません。

     緊急自体発生直後の混乱のなかでは、これらの情報が十分に得られないこと
     もあります。

     特に携帯竜話などは非常につながりにくくなります。

     日頃から、緊急時の社員連絡網の整備や地方自治体などの情報鯨の確認を
     行い、緊急時に向けた訓練を行っておくことが大切です。

   2.情報の発信

     情報を収集するだけではなく社長自らが情報を発信することも大切です。

     まずは社員に対して社長自らの安否、居場所、これから自分が陣頭指揮を
     執っていくこと、指揮の方法などについて発信します。

     また、その時点ですでにわかっている情報があれば併せて伝えます。

     社員たちは緊急事態発生によって大きな不安をもっています。

     社長はこの不安を少しでも和らげるために力強いメッセージと知り得ている情
     報を伝える必要があります。

     特に重要な事項を伝える際には、誰かを介するのではなく、社長自身が自分
     の言葉で直接伝える必要があります。

     また、取引先についても自社の被害状況を伝え、相手の状況を確認します。

     今後の取引に支障が生じそうな事態が起こっているのであれば併せて相談します。

     特に遠方の取引先では事情がわからずに「あの会社はどうなっているのか、
     今後の取引は大丈夫なのか」という不安と疑念を抱いています。

     取引先に対してもできるだけ早い段階で自社の状況を伝えることが大切です。

     さらに周辺地域への二次災害などの恐れがある場合は、速やかに地域住民
     や消防などの防災機関に説明する必要があります。

     危険性を認識しておきながら、説明を怠ると、仮に二次災害が起こらなかった
     場合でも、会社の信頼を大きく損なうことになります。

   3.目前の問題への対応

     緊急事態発生直後には、社長は限られた情報のなかで、次々と起こる目前の
     問題に対応していかなければなりません。

     なかには会社の将来を左右するような重要な意思決定を迫られることもある
     でしょう。

     困難な決断が続きますが、間題を先延ばしすることはさらなる状況悪化につな
     がります。 

     このような状況のなかで正しい決定を行っていくためには、日頃から「何を優
     先するか」という判断基準をもっておくことが大切です。

     たとえば、「従業員の安全を最優先する」という基準はすべての社長に共通し
     ているはずです。

     しかし、「自社事業のなかで最優先して復旧すべき事業は何か」、「自社顧客
     のなかで最優先して対応すべき顧客は誰か」といった基準については、あいま
     いなことが多いものです。

     災害などで大幅に毀損された経営資源のなかではやれることに限りがあります。

     あらかじめ「緊急時には何をどんな順番で行うべきか」という基準をもっていれ
     ば、さまざまな問題に対して、迅速かつ正確な判断が可能になります。

   4.社長の存在感を打ち出す

     また、緊急時でも社長がその役割を十分に果たしていることを、社内外に積極
     的に示すことも必要です。

     社長が自分自身で考えて決断している姿は、従業員や取引先に大きな安心
     感を与えます。

     平常時には自分はあまり前面に出ない経営スタイルを取っている社長であっ
     ても、緊急時には自らが会社を率いている力強さを打ち出すことが大切です。

     逆に緊急対応時に社長の顔が見えない会社は、その対応の巧拙以前に、周
     囲に対して不信感や脆弱な印象を与えてしまいます。

  □復興プロセスで行うべきこと

   1.社長の役割のシフト

     緊急事態発生直後の混乱を乗り切り、さまざまな情報も集まってきたら、社長
     はその役割を「目前の問題への対応」から「会社全体の復興」へと切り替えて
     いきます。

     そのためには社長がそのような業務にシフトできるように環境を整える必要が
     あります。

     具体的には日々発生するさまざまな問題に対して、社長が判断すべき事項と
     それぞれの責任者に任せてもよい事項に切り分けます。

     通常であれば、営業部門、製造部門などの責任者に緊急事態発生前の権限
     と責任を戻すことになります。

     ただし、部門横断的な問題が起こっている場合は、新たにプロジェクトを組成
     し、役員クラスの幹部をリーダーに任命することも必要です。

     社長はこれらのリーダーから密接に報告を受けて、会社の全体像を総合的に
     判断できる状況を整えます。

   2.ビジョンの策定と提示

     目前の重要な問題が沈静化し、問題対応をある程度部下たちに任せられるよ
     うになったら、社長は直ちにビジョン策定に取りかかる必要があります。

     社長自身が今後の自社のあり方を整理するとともに、社員の不安感を払拭す
     るためにも、できるだけ早期にビジョン策定に着手することが大切です。

     ビジョン策定はできるだけ緻密に行う必要がありますが、最初は多少粗いもの
     であっても仕方ありません。

     完成度はともかく、「早期に」何らかのビジョンを示すこと自体に大きな意味が
     あるのです。

     すでに策定済みであれば、再度ビジョンの見直しをすることもいいでしょう。

     早期にビジョンを示して、その後のさまざまな状況変化を踏まえてビジョンをブ
     ラッシュアップしていくというスタンスが求められます。

     ビジョンには、緊急事態発生前の状態に戻すことをゴールとした「復旧ビジョ
     ン」や、復旧にはこだわらずに新たなビジネスモデルを描く「再構築ビジョン」な
     どがあります。

     「復旧型ビジョン」:すでに行ってきたビジネスモデルに戻すことが主眼であり、 
      リスクは比較的小さい

     「再構築型ビジョン」:復旧にこだわらずに新たなビジネスモデルを生み出すこ 
      とが目的。ゼロベースで考えることができる半面、リスクは大きい。

     自社のビジョンを描くうえで、重要になるのが、自社のビジネスモデルの再点
     検です。

     ビジネスモデルとは企業が新たな価値を創出するための連鎖的なプロセスと
     いうことができます。

     一般消費者向け製造業A社を例にして価値連鎖をイメージしたのが次の図です。

     緊急事態発生前にはこのような価値連鎖が上手く機能して、収益を生み出し
     ていました。

     なかでもA社にとってもっとも強みとなっているプロセスは、「C販売・マーケ
     ティング」だとします。

     しかし、A社では災害によっていくつかのプロセスで価値創出の源泉が失われ
     ました。

     その毀損度合いが比較的どれも軽微であれば、まずは「復旧型ビジョン」をつ
     くることが現実的でしょう。

     どの部分をどのような方法で回復していくかという具体的な道筋を示します。

     復旧型ビジョンでは不可能な程ダメージが大きい場合や、これを機に得意分
     野に集中する場合などは、「再構築型ビジョン」も併せて検討します。

     新しいビジネスモデルが軌道に乗るまでには、一時的に売上の大幅減少や資
     金繰りの急速な悪化も懸念されるため、資金面の確保を万全に行うことが必
     要です。

     国や地方自治体などの公的な復興資金の情報も収集し、それらを積極的に活
     用することも検討しましょう。

     上記は、自社の強みである「C販売・マーケティング」に特化し、それ以外のプ
     ロセスからは撤退するというイメージです。

     たとえば、製造業からは撤退し、「他のメーカーからの販売・マーケティングを
     代行する事業」に転身することがあげられます。

     また、自社製品のブランド力が強い場合には、自社が製造元というスタンスは
     崩さずに、C販売・マーケティング以外の一切のプロセスを外注することも考
     えられます。

     ブランド名はそのまま使用し、「ファブレス・物流レス」のメーカーとしての再生
     を図るのです。

     ここまでみてきたように復興期においては、社長自身が緊急事態発生前と発
     生後の自社のビジネスモデルの状況を的確に分析して、今後の自社のビジョ
     ンを描くことが大切です。

     社員に対してはたんに「全社一丸となって頑張ろう」と鼓舞するだけではなく、
     ビジョンに基づいて自社復興の可能性を論理的に説明することが求められます。

     また、復興のために社員にかける負担などについても、きちんと説明しましょう。

     さらに、取引先や銀行などについても説明をし、必要に応じて協力を求めます。

   3.マイルストーンの設定と提示

     復興のためのビジョン実現には長い期間がかかります。

     そこで、ビジョン実現までの大まかなマイルストーンも明らかにする必要があります。

     たとえば、次のように、ビジョン実現までのステップを3段階に分けて、それぞ
     れのステップの主要テーマとゴールイメージを設定することなどが考えられます。

     マイルストーンについてはその進捗状況を確認して、状況に応じてゴールや期
     間の修正などを行うことが必要です。

     また、社員に対しても進捗状況をきちんと伝えることで、復興に向けた勇気と
     自信を与えることができます。

  □緊急時のリーダーシップ・マネジメント

   1.リーダーシップとマネジメント

     会社におけるリーダーシップとは、目標を明確に示し、「今なすべきこと」を部
     下たちに示すことです。

     また、マネジメントとは、今なすべきことを「もっとも効率よく遂行する」ために、
     部下たちに指示を出したりさまざまな調整を行うことです。

     通常の状態であれば、社長はおもにリーダーシップに注力して、マネジメントに
     ついては経営幹部に任せておくことができます。

     社長は解決すべき問題を提示し、それを実際に解決するのは経営幹部たちと
     いう役割分担も可能です。

     しかし、緊急時には時間的余裕はありません。

     指示したことが確実にかつ効率的に遂行されるかどうかもつねに社長自身が
     確認する必要があります。

     緊急時には、社長はリーダーシップとマネジメントの両方を同時に行っていか
     なければなりません。

   2.緊急時のポイント

     緊急時のリーダーシップ・マネジメントの最大の目的は、今すぐ行うべきことを
     できるだけ迅速に部下たちに示し、確実に遂行させることです。

     平時とは違って、決断を先延ばししたり、幹部からの報告をただ待っていると
     いう余裕はありません。

     そのような状況下で適切な対応を行うためには次のような点が必要になるでしょう。

     (1)覚悟を決める

       社長は会社で起こるすべての問題に対する最終的な責任者です。

       たとえそれが災害などの不可抗力でもたらされた問題であっても同じことです。

       まずは問題収束に向けて、すべて社長自身が責任をもって取り組むという
       覚悟を決める必要があります。

       そして、自分が覚悟を決めていることを「胸に秘める」のではなく、部下たち
       にもはっきりと示すことも大切です。

     (2)合理性・冷静さを保つ

       次々と発生する問題に対しても、社長はつねに合理的でなければなりません。

       希望的観測は捨てて、最悪の事態も想定しながら、粛々と意思決定を行っ
       ていく必要があります。

       迅速かつ正確な意思決定のためには専門家の意見を参考にすることも必要です。

       可能であれば社外からも専門家を招へいします。

       社長自身には意味がわからない情報でも、専門家の見識を以ってすれば、
       解決策の大きなヒントが得られることもあります。

       また、どのような困難な状況であっても、つねに冷静さを保つことも大切です。

       周囲に苛立ちの感情をぶつけたり、気弱さから目を潤ませるといったことは
       避けなければなりません。

     (3)公を意識する

       意思決定に当たってできるだけ「公」を意識することも大切です。

       ここでいう公とは「社員」、「取引先」、「地域社会」、「社会全体」などさまざま
       なレベルがあります。

       社長はすべての意思決定を適切に行うことがベストですが、実際には判断
       を誤ることもあり得ます。

       その際にも意思決定があくまで「公」の利益を意識した結果であれば、ミス
       は仕方ないという以外にありません。

       逆にいえば、不透明な状況のなかで判断を下す最後のよりどころは、「公
       であるかどうか」ということになるでしょう。

     (4)指示の遂行状況を自ら確認する

       平時とは違い、部下に対して「報連相(報告・連絡・相談)」のまずさを指導
       している余裕はありません。

       自分が指示した事項については、「部下が確実に遂行したか」、「遂行した
       結果、状況がどうなったのか」について、社長自ら動いて確認する必要が
       あります。

       自分が指示したすべての事項について、指示リストを作って進捗状況を確
       認することも大切です。

     (5)人心を掌握する

       緊急時には社員たちは動揺しています。

       社長が日頃から信頼している経営幹部たちもそれは同じです。

       社長は自らの言動で、社員たちを勇気づけ、モチべ−ションを維持すること
       が必要です。

       危機を乗り切るためには社長自らが動くだけではなく、会社全体の機動
       力、組織力が不可欠です。

       ミスを犯した部下に対しても、厳しく叱責するだけではなく、動機づけのため
       のフォローを必ず行うことが大切です。

       これらのことを踏まえ、自社における緊急課題としてBCP(事業継続計画)
       策定をお勧めします

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在宅勤務制度導入の留意点

             

在宅勤務制度の導入

  ■在宅勤務制度とは

   在宅勤務制度とは、会社に毎日は出勤せず自宅で勤務する制度で、週1回在宅
   勤務など部分的なものを含め、近年、導入を検討する企業が増えています。

   その背景には、

    働き方改革における政府支援、パソコン(インターネット)や携帯電話の
    普及により、会社にいなくても仕事ができるようになったこと

   があげられます。

   そのほかに、仕事と生活の調和を意識した多様な働き方(WLB:ワーク・ライフ・
   バランス)への関心が高まるなかで、時間や場所にとらわれることなく能力を発揮
   できる働き方のひとつとして、また、重大な災害時においても事業を継続するため
   の対策のひとつとしても注目されています。

   在宅勤務はテレワークとも呼ばれ、「情報通信技術:ICT(Information and
   Communication Technology)を駆使し、遠く離れた勤務先と連絡を取りなが
   ら働く」ことを意味し、政府も「働き方改革」を提唱する中で、在宅勤務の浸透を支
   援しています。

   テレワークには在宅勤務のほか、サテライトオフィス勤務や営業などで移動しな
   がらの勤務も含まれます。

   政府は平成19年にテレワークの円滑な導入を促進するため「テレワーク人口倍
   増アクションプラン」を策定したほか、「仕事と生活の調和推進のための行動指
   針」にテレワーク人口増加の数値目標を掲げるなどの取り組みを実施してきました。

   「テレワーク人口倍増アクションプラン」のなかでは、テレワークを導入するメリット
   としておもに次の点をあげています。

    ・小子高齢化への対応

    ・ワーク・ライフ・バランスの充実

    ・地域活性化の推進

    ・環境負荷の軽減

    ・有能・多様な人材の確保による生産性の向上

    ・営業効率の向上

    ・コスト削減・災害などに対する危境管理

    ◎参照URL

      「テレワーク人口倍増アクションプラン

      「仕事と生活の調和推進のための行動指針

   国土交通省の「平成30年度 テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者
   のうち、テレワーカーの割合は前年度の14.8%から16.6%に、また、自営型就
   業者のうち、テレワーカーの割合は前年度の22.2%から24.0%となり、テレワー
   クを活用して働く人の割合はいずれも上昇傾向にあるが、課題あるようです。   

   課題として、

    「会社のルールが整備されていない」、「テレワークの環境が社会的に
    整備されていない」といった、ルールの整備に関する課題

   を挙げている

   企業側においても、

    労働時間の把握や本人の評価をどうするかなど、制度を
    導入するに当たっての課題が多い

   ことが考えられます。

   在宅勤務制度を上手に導入することで、優秀な人材の確保や経営の効率化を図
   ることを検討してみましょう。

  □在宅勤務制度導入のプロセス

   在宅勤務制度の導入プロセスは複数考えられますが、次のような手順を踏んで、
   内容の検討を進めていくとよいでしょう。

  □在宅勤務制度導入の留意点

   1.導入に当たっての留意点

    (1)会社と従業員の認識のすり合わせ

      在宅勤務制度導入に当たっては、会社と従業員の認識が一致していること
      が重要です。

      あらかじめ、

       ・導入の目的

       ・対象となる兼務

       ・対象となる従業員の範囲

       ・在宅勤務の方法

      などについて十分に納得のいくまで話し合うことがポイントです。

      そして、協議した内容については、文書で保存しておくとよいでしょう。

    (2)業務内容および遂行方法の明確化

      在宅勤務制度の対象となる従業員(以下、在宅勤務者)が業務を円滑かつ
      効率的に遂行するためには、業務内容や遂行方法などをマニュアルや在宅
      勤務規定などの文書によって明確にすることが重要です。

      また、あらかじめ通常または緊急時の業務連絡方法について、会社と従業
      員の話し合いにより取り決めておくとよいでしょう。

   2.労働時間についての留意点

    (1)労働時間管理の方法

      労働時間の全部または一部について在宅勤務を実施する場合の労働時間
      の考え方は次のとおりです。

      @原則

       会社が在宅勤務者の労働時間を適正に把握できる場合は、通常の
       労働時間制が適用されます。

      A例外

       会社が在宅勤務者の労働時間を算定することが困難な場合には
       「事業場外みなし労働時間制」を適用することが可能となります。

       「事業場外みなし労働時間制」とは、「所定労働時間」働いたもの
       とみなす制度ですが、次の要件をいずれも満たす場合は在宅勤務
       にこれを適用することができます。

        ・業務が、起臥寝食など私生活を営む自宅で行われること

        ・会社の指示で、情報通信機器などを常時通信可能にして
         おかなければならない状況ではないこと

       「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合は、就業規則などで定めら
       れた「所定労働時間」労働したものとみなします。

       ただし、通常は「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合に
       は、「通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。

       また、書面による労使協定があるときには、その協定で定める時間が「通
       常必要とされる時間」とされます。

       なお、労使協定は労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。

    (2)割増賃金の算定について

      在宅勤務制度において、「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合で、
      割増賃金の支払いが必要なケースは、次のとおりです。

       ・「事業場外みなし労働時間制」で「通常必要とされる時間」が法定
        労働時間を超える場合

       ・深夜・休日に労働した場合

    (3)「事業場外みなし労働時間制」が適用され場合の深夜・休日労働について

      「事業場外みなし労働時間制」が適用されている従業員が、深夜または休日
      に業務を行った場合であっても、次の要件などを満たせば、割増貸金の支払
      いは必要ありません。

      就業規則などに「深夜または休日に業務を行う場合には事前に申告し、会
      社の許可を得なければならない、かつ、深夜または休日に業務を行った実
      績について事後に会社に報告しなければならない」と規定されている状態に
      おいて、深夜若しくは休日の業務について従業員からの事前申告がなかっ
      た、または、事前に申告されたが許可を与えなかった場合で、従業員から事
      後報告もなかったという状況があり、そのうえで、次の1)〜3)のすべてに該
      当する場合は、労働基準法上の労働時間に該当せず、時間外労働となりません。 

      1)深夜または休日に労働することについて、会社から強制されたり、
        義務づけられたりしていないこと

      2)従業員の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切で
        ある場合など、深夜または休日に労働せざるを得ないような会社
        からの圧力がないこと

      3)深夜または休日に従業員からメールが送信されていたり、深夜または
        休日に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出されたり
        しているなど、深夜または休日労働を行ったことが客観的に推測
        できるような事実がなく、会社が深夜・休日の労働を知り得なかったこと

    【注意ポイント】

    上記の時間外労働や深夜労働の事前許可制および事後報告制については、
    次のいずれも満たす必要があります。

     ・従業員からの事前の申告に上限時間が設けられ、実態どおりに申告
      しないよう会社から働きかけや圧力があったなど、事前許可制が実態を  
      反映していないといった事情がないこと

     ・深夜または休日に業務を行った実績について、従業員からの事後の
      報告に上限が設けられ、実績どおりに報告しないよう会社から働き
      かけや圧力があったなど、事後報告制が事実を反映していないといった
      事情がないこと
 
   3.その他の留意点

    (1)制度適用に当たっての留意点

      従業員に在宅勤務制度を適用する際には、制度にのっとって当然に適用す
      るだけでなく、できる限り本人の意思を確認してから適用することが望ましい
      とされています。

    (2)安全衛生に関する留意点

      在宅勤務者に対し、雇い入れ時および定期の健康診断を行うとともに、必要
      な安全衛生教育を行う必要があります。

      また、会社は在宅勤務者に対し、パソコンなどの作業をさせる際は、定めら
      れた作業のガイドライン(VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラ
      イン)などに留意するとともにその内容を周知し、適切な作業ができるよう必
      要なアドバイスを行うようにしましょう。

      ◎参照URL

       厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
 

    (3) 業績評価などの留意点

      在宅勤務者が職場に出勤しないことなどから、業績評価などについて疑問を
      もつことのない適正な評価制度、賃金制度を構築することが大切です。

      また、業績評価や人事管理に関して、在宅勤務者について通常の従業員と
      異なる取り扱いを行う場合には、あらかじめ在宅勤務を選択しようとする従
      業員に対して、取り扱いの内容を説明し、理解を得ることが必要です。

      なお、在宅勤務者について、通常の従業員と異なる賃金制度などを定める
      場合には、その部分の就業規則を作成・変更し、届け出なければなりません。

    (4)情報セキュリティに関する留意点

      会社が在宅勤務者に情報通信機器を貸与する場合には、パソコンはシンク 
      ライアント型(画面表示および画面操作はできるが印刷や保存ができないも
      の)とし、社内システムへのアクセスは、VPN(バーチャル・プライベート・ネッ
      トワーク)(※)を構築することなどが必要となります。

      また、情報取り扱い規定を設けて、個人情報や会社情報の保護のルールを
      取り決めておくことがポイントです。

       ※ 公衆回線などを用いて、公共に提供されているネットワークをあたかも
          自社内で構築した専用線であるかのように扱うネットワーク構築手法
          のこと

    (5)費用負担の留意点

      在宅勤務における通信費や情報通信機器などの費用負担については、会
      社と在宅勤務者のどちらが行うか、また、会社が負担する場合における限度
      額、さらに従業員が請求する場合の請求方法などについては、あらかじめ十
      分に話し合い、就業規則などにおいて定めておくようにしましょう。

    (6)業務遂行上の留意点

      在宅勤務時の業務について、「在宅勤務計画書」や「在宅勤務実施報告書」
      といった報告様式を準備し、提出させることで、在宅勤務者の業務の遂行状
      況を適切に把握できるようにしておくことがポイントです。

       「在宅勤務計画書兼実施報告書」ひな型

    (7)社内教育の留意点

      在宅勤務者については、OJTによる教育の機会が少ないことで、能力開発な
      どにおいて不安を感じることのないよう、出社しての社内教育やインターネッ
      トを通じた教育など、その充実を図るとよいでしょう。

 

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M&Aの基本的な考え方

             

M&Aの基本的な考え方

  ■M&Aとは

   M&A(Merger and Acquisitions)は、企業の合併および買収を意味します。

   最近では、合併・買収より「M&A」という言葉のほうが一般的に利用されているよう
   です。

   「合併」とは、2つ以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。

   その方法は、以下の2つです。

    ・吸収合併…存続会社が消滅会社の財産・負債等を引き継ぐ形で存在する形態

    ・新設合併…両会社とも解散し、新たに1つの会社を設立して、
            その会社に両会社の財産、負債等を一切引き継ぐ形態

   実務上一般的に行われるものの大半が吸収合併で、新設合併はほとんど行われ
   ません。

   なぜなら、

    ・新設合併において解散した両社と新設会社とは法人格が別のため、
     営業上の許認可は両社の解散とともに消滅し、再取得しなければならない
     等、新たに会社を設立するための手続きが必要である

    ・一方が上場会社である場合、費用と時間がかかる複雑な上場手続きも
     再度行わなければならない

   等の問題点があるからです。

   「買収」とは、企業が企業を買い取ることです。

   その方法には、次の3つがあります。

   1.株式譲渡

     発行済株式の譲渡により、経営権を取得する方法です。

     最も一般的なM&Aの方法といえます。

     なお、株式を取得する際に、金銭を支払う代わりに自社株と交換する株式交  
     換という方法もあります。

   2.新株引受

     新株引受とは、既存の株式を譲り受けるのではなく、新株発行の際の株式を
     引き受けることにより経営権を取得する方法です。

     新株引受により株式を取得するには、第三者割当増資を引き受けたり、直ち
     に新株が発行されるわ妙ではありませんが新株予約権付社債を引き受ける
     方法があります。

   3.営業譲渡

     営業用財産だけでなく、得意先、ノウハウ、人材等、営業に必要なすべての財
     産(全部譲渡)、あるいは必要な一部を移転(一部譲渡)することです。

     このほか、M&Aを広義に捉えた場合、業務提携や資本提携等の企業提携も
     含まれてきますが、ここでは省略します。

  □買収サイド(買い手)にとってのM&A(新規事業分野への進出)

   近年、技術革新の進展、消費者ニーズの高度化・多様化、情報化の進展といった
   企業を取り巻く経営環境は目まぐるしく変化しています。

   そのため、

    企業が将来にわたって成長していくためには、常に新たなビジネスの開拓を
    行い、変化に対して柔軟かつ迅速に対応していくことが求められる

   のです。

   そして、このような環境変化に素早く対応する手段としてM&Aは非常に有効であ
   ると考えられます。

   以下に、企業(買収サイド)がM&Aを活用して新規事業分野へ進出する際のメ
   リットおよびデメリットを紹介します。

   1.メリット

    (1)時間の節約

      現在のように、先端技術や売れ筋製品の移り変わりが激しく、製品サイクル
      が短くなっている時代にあっては、企業は目的とする事業分野でできるだけ
      早く優位な地位を築き上げ、変化に対応できる体制を作ることが重要です。

      たとえば、現在操業している会社を買収することによって、工場建設、人員の
      採用・訓練、新規顧客の開拓、生産ラインの確立といった設立時において必
      要不可欠なプロセスを省略することが可能です。

      そのため、「当初目的としていた市場が他社の製品に席巻されてしまう」「導
      入を決めた技術が見込みよりも早く現れた他社の新たな技術のために陳腐
      化してしまう」といったリスクを軽減することができます。

    (2)移転・開発が困難な無形資産の獲得

      企業の活動には、契約関係による移転や自力による開発が困難な無形の
      資産が存在し、競争をする上でしばしば重要な意味を持っています。

      無形の財産としては次のようなものがあげられます。

       @製造や研究・開発(R&D)分野の無形財産

         ・業界に通じた従業員

         ・優秀な技師

         ・明文化できない製法のノウハウ

       A販売面での無形財産

         ・業界での名声

         ・顧客リスト

        「生きている」会社を買収することで、こうした目に見えない財産も同時に
        獲得することが可能になります。

    (3)シナジー効果の実現

      合併・買収は、別々の経営権の支配下にあった複数の企業体が単一の支配
      権下に置かれる状況をもたらします。

      したがって、複数の事業等の経営資源を統合し、まとめて事業を運営するこ
      とによって、今まで得られなかった成果を相互に実現できる可能性があります。

      こうしたシナジー(相乗)効果とは、1プラス1が2を超える結果をもたらすよう
      な現象であるとよくいわれます。

      独自技術を持ち寄っての共同開発といった純粋なプラスの効果の他に、統
      合による管理費、販売費の削減に代表されるコスト削減効果も広義のシナ
      ジー効果に含めることがあります。

      シナジー効果を得られる分野として、次のようなものがあげられます。

       @製造シナジー

         ・生産設備の相互利用による操業度の極大化

         ・生産技術の共有等による原価の低減

       A研究開発シナジー

         ・技術の統合による共同開発

         ・得意分野に特化する分業体制の構築

         ・重複するプロジェクトの削減による人材の有効活用

       B営業シナジー

         ・統一ブランド利用によるイメージ改善

         ・販売網の相互利用による販路拡大

         ・統合によるコスト削減

       C財務シナジー

         ・資金コストや通貨の違いを利用した資金調達

         ・資産運用の効率化

    (4)参入摩擦の回避

      既存の市場に新規参入するにあたっては、

       ・既存の同業他社による防衛的な価格の引き下げ

       ・広告・販売競争といった競争上の風当たり

      を覚悟する必要があります。

      しかし、M&Aを行った場合は、当初より取引先を獲得することができる上、
      業界に通じた従業員を確保することもできるので、こうしたマイナス面を回避
      することができます。

   (5)投資コストの節約

     全く新たに事業を始める場合、土地を購入し、工場を建設し、人員を確保する
     だけでなく、市場への新規参入に対する投資コストも見込まねばならないため
     全体のコストが相当大きくなります。

     これと比較して、買収の場合、既に立ち上がっている事業を譲り受けるので新
     規に起こすよりも安くなる場合が多いようです。

     特に、買収する相手先企業が自社の売却を強く希望している場合は、買収価
     格を安く設定できるので新親に会社を設立して事業を始めるより投資コストを
     抑えられます。

     また、経営権の取得のみを目的として買収するのであればさらに安く抑えるこ
     とができます。

     つまり、経営権を取得するには過半数の株を買えばいいので投資コストが軽
     減できるわけです。

     その他、新規に会社を設立する場合に起こしやすい、採算ベースの読み間違
     い等のリスクを回避することもできます。

   2.デメリット

    (1)割高な価格で買ってしまう危険性

      買収した資産が、思っていたより価値がなかった場合、「高い買い物」になっ
      てしまうという危険性があります。

      たとえば、

       ・技術力が予想外に低く、商品開発が予定していたペースで進まない

       ・業界の成長が突然止まってしまった

       ・大口の顧客や優秀な従業員が抜けてしまった

       ・特許権やライセンスにクレームがつき、それら権利が無効になって
        しまった

      という場合です。

      過大な費用が発生する買収は財務体質の悪化を招き、経営の足かせとなる
      可能性も十分に考えられます。

      したがって、買収・合併の実行に際しては、そうした買収後の自社の財務体
      質の健全性を十分に検討することが必要です。

    (2)簿外債務・偶発債務の可能性

      M&Aを行う前には思いもよらなかった債務を背負わされることがあります。

      たとえば

       ・粉飾決算による簿外債務

       ・不良製品の損害賠償

       ・従業員、少数株主や下請け業者が起こした事故の損害賠償

      といったものが考えられます。

      このような債務は、財務諸表その他の文書には表れてこないので、事前に
      把握することは難しいです。

      したがって、リスクを最小限に抑えるには十分な事前調査を行い、考えられ
      るリスクについては、買収金額の一部を偶発債務の支払いに備える等、買
      収時に債務を売り手側に負担させるような特約を結んでおくことが必要でしょう。

  □被買収サイド(売り手)にとってのM&A(事業承継問題への対応)

   戦後の混乱期に事業を起こし、高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社
   長も今では高齢に達し、次期世代への交代を余儀なくされています。

   多くの経営者は息子を後継者にして経営を任せたいと考えるようですが、実際には、

    ・息子がいない

    ・息子がいても経営能力がない

    ・息子に後継の意思がない

   等の理由で後継者問題に悩んでいます。

   あるいは、その他の方法として

    ・夫人に継いでもらう

    ・社内から適切な後継者を選ぶ

   といったことを考えたものの、やはり能力的に無理がある等の理由により、「一代
   限りで廃業する」といったケースが増えているようです。

   このように創業者が何十年にもわたり苦労して築き上げた企業であっても、経営
   者の高齢化に伴って、いつ廃業へと追い込まれるか分からないのです。

   そのような中、M&Aを導入して、後継者問題を解決する方法が注目されています。

    M&Aを活用することにより、
    会社の存続と従業員の生活が保証される上、社長の利益が確保される

   ことになり、社長も安心して事業から退くことができるのです。

   一方、「創業者の利益の確保」といった観点からも、M&Aは非常に有効です。

   株式を売却した場合と会社を清算した場合ではどちらが有利になるか、実際に試
   算してみましょう。

   事例のA社では、オーナー社長が株式を100%所有しています。

   この計算では考慮していませんが、黒字企業の場合や新親取得が困難な許認可
   を所有している企業の場合には、営業権(のれん代)が評価されるため、一般的
   に上記金額よりも株式譲渡価格が高くなり、手取額も増加することになります。

   清算の場合、清算時点で清算所得に法人税等が課され(f)、さらに、残った残余
   財産を株主に分配する際に個人に対する配当所得税が課される(g)ことになって
   います。

   そのため、実質的に清算所得には68%近くの課税が行われることになります。

   なお、ここでは考慮していませんが、清算の場合、製品・機械設備等の資産を簿
   価で売却することはほとんど不可能です。

   また、社員に対する退職金も会社都合になるため引当金が不足することが多く、
   実質的には上記で計算した額よりも手取額は減少すると考えた方がよいでしょう。

   以上の試算例から、株式売却による手取額は、清算した場合の手取額に比べて
   2倍以上にも及び、非常に有利であることがわかります。

   従来、M&Aは大企業が多角化を実現するための手段として活用するケースが
   ほとんどでした。

   しかし、前述したような企業を取り巻く経営環境の変化により、特に中小企業では
   後継者不足に対応するかたちでM&Aを採用するケースが増えているのです。

   一方、後継者問題以外でも、大企業の傘下に入ることで事業の安定化を図る、現
   在の事業を手離し、新規事業を立ち上げる等、様々な形でM&Aを取り入れる中
   小企業が増えています。

   以上、事業承継の観点から被買収サイドにおけるM&Aの活用法を紹介しました
   が、「企業間の経営資源の効率的な再配分を促進する」といったポジティブな姿
   勢で、自社の非採算部門を売却する、いわば「リストラクチャリング」の観点からM
   &Aを活用することも非常に有効であると考えられます。

  □M&A手法の比較

   どのようなM&A手法を取り入れるかによって、規制を受ける内容は異なってきます。

   したがって、M&Aを検討する際には、関連法制の規制事項についても比較、検

    討する必要があります。

   各手法の特徴を簡単にまとめておきます。



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コアコンピタンス経営

          

コアコンピタンス経営

  ■コア・コンピタンス経営の基本

   1.中核的な能力を高める

     コア・コンピタンス経営とは、企業が中核的な能力を徹底的に磨き上げること
     で新しい市場を創造し、安定的な成長企業の実現につなげる戦略のあり方を
     指します。

     既存の競争ルールにしたがいながら成長を目指すのも、企業のとるべき戦略
     の一方策です。

     しかし挑戦者にとってそうした方法に基づいた経営を継続しながら、業界内の
     リーダー的競合他社に追いつき追い越すのは大変な労力を必要とします。

     そこで挑戦者はやや視点を変え、リーダー企業とは異なった方法で市場に接
     近し、新しい顧客を獲得することを考える必要があります。

     企業の置かれる外部経営環境の厳しさが増している現状にあって、それぞれ
     の企業には緻密な戦略の立案や事業の再構築が重要な経営課題となってい
     ます。

     コア・コンピタンス経営の概念にしたがい、外部環境に左右されない企業力を
     つける努力を続けるのは、大企業のみならず中小企業にとっても重要な経営
     課題であるといえます。

     ここではコア・コンピタンス経営の実践を、大きく3つのステップに分けて考えま
     す。

     ステップ1 

      :企業が追求すべき顧客の便益(benefit)を明らかにする

       顧客ニーズが多様化・高度化するなかで、それらに対応するためのマーケ
       ティング戦略を実践しない企業は、市場からの撤退を余儀なくされる。

       多くの企業は、顧客ニーズへの対応は当然のこととして認識しているかもし
       れないが、顧客ニーズを細分化したうえで、自社の提供すべき便益を明確
       にして迅速な市場対応を実践している企業はかならずしも多くは存在しま
       せん。

       したがって、コア・コンピタンス経営の最初の段階では、まず顧客のプロ 
       フィールを精査していかなければなりません。

       その際には、既存の顧客便益を明らかにすることにとどまらず、便益の芽
       を見出す必要があります。

       そうした努力が、将来の大きな市場を創出するからです。

     ステップ2

      :顧客便益を提供するのに必要な自社の技術・能力を徹底的に高める。

       自社の保有する経営資源には限りがあります。

       豊かな経営資源を確保する企業であっても、広範囲にわたる技術や能力
       を高めるために経営資源を分散して投入するのは得策であるとはいえませ
       ん。

       つまり、「選択と集中」の観点から経営資源の活用を進め、事業領域を焦
       点化していく必要があります。

       自社のコア・コンピタンスをどこに設定するか、そして事業領域をいかにし
       て絞り込んでいくかという戦略的な意思決定を行なうのは、社長のもっとも
       重要な責務です。

       この一連の意思決定をするにあたっては、社内外のスタッフを最大限に活
       用して、可能な限り客観的な判断材料を集めるのがよいでしょう。

       そうした科学的な要素を追求するとともに、社長の価億観や経験などの要 
       素を適宜加えて意思決定を行ないます。

   2.顧客との接点を重視する

     顧客の便益を明らかにし、自社独自の能力に磨きをかけていくと企業の総合
     力は飛躍的に高まります。

     しかし、企業がより高い成長を実現するには、もうひとつ別の取り組みが求め
     られます。

     ステップ3

      :企業と顧客との接点を重視する。

       自社のもつシーズ(技術)は製品化され、顧客ニーズと向き合います。

       十分な市場調査をもとに開発された製品は、消費者の支持を受ける可能
       性が高まります。

       しかし時間の経過とともに、シーズとニーズとの整合性が徐々に失われる
       可能性も否定できません。

       多様な企業との激しい競争環境から生まれる製品に触れる顧客は、より高
       い便益を手にすることを望むようになります。

       そこで、企業はつねに市場との接点を大切にしなければなりません。

       顧客の声を拾い上げデータベース化し、それらを全社員で共有して市場動
       向の微妙な変化を察知するよう努めます。

       具体的にはグループウエアを導入し、社員がいつでも必要とする顧客情報
       を入手できるようにするなどの取り組みが要求されます。

       こうして顧客とのコラボレーション(協業)を図り、企業の成長や競争優位の
       獲得を実現していきます。

   3.差別化戦略の実践につながる

     これまでみてきたように、コア・コンピタンス経営の考え方は非常に簡潔です。

     松下幸之助氏は生前、「力強い経常は、当たり前と思われる事項を確実に実
     践していくところから生まれる」と再三にわたり強調していました。

     松下氏の経営に対する見方はコア・コンピタンス経営と本質的な部分で重なっ
     ているのではないでしょうか。

     また、コア・コンピタンス経営の実践を図のように整理しました。

     コア・コンピタンス経営は市場発見・創出につながる未来の戦略であり、価格
     競争を重視したこれまでの経営とは一線を画するものです。

     さらに考えると、企業が新しい市場を発見し育てていくのは、差別化戦略の実
     践にもつながります。

     中小企業にとって差別化戦略によってすき闇市場を確保するのは、ひとつの
     重要な行動規範であるといえます。

     長期的な成長を考慮した戦略の立案と実行とが、企業には求められてくる。

     経営環境の厳しいなかにあるからこそ、そのような長い目でみた成長をもとに
     企業経営の方向性を探っていく必要があります。

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経営は戦略的思考で

            

経営は戦略的思考で

  ■戦略的思考を利用する

   1.戦略的思考

     会社の社長や経営幹部の仕事は何でしょうか。

     おそらく「会社を経営すること」という答えが返ってくることでしょう。

     では、「経営する」こととはどのようなことでしょうか。

     社長業の本来の中身はどのような業務なのでしょうか。

     自分は営業が得意だからと営業活動に専念している社長や、管理することが
     得意だからと社員の細かい経費管理まで行なうことに時間を費やす社長など
     も見受けられます。

     しかし、本来の社長業は、会社の理念経営方針を決定して、それを全社員
     で実行していく体制を作り上げること、会社の事業展開を検討して、将来に向
     けてどのような会社を作り上げるかを考える業務であるはずです。

     会社の経営上の目的を効率的に達成するために役立つのが、戦略的思考で
     す。

     「考えるヒント」という感覚で戦略的思考を積極的に利用していくことが、社長
     業の遂行に役立ちます。

     戦略的思考とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

     たとえば、次の質問について考えてみてください。

     「現在おかれている会社の環境について考え、その状況を箇条書きで示してく
     ださい」

     この質問にどのように取り組まれるでしょうか。

     周囲の人に意見を聞くという方法もありますし、思いつくままに数えあげるとい
     う方法もあるでしょう。

     もちろん、そのような方法が役に立たないということではありません。

     いろいろな人に意見を聞くことで思わぬ発見があることもあります。

     他人の客観的な分析が、自分では気づかなかった環境について指摘を与えて
     くれることもあるでしょう。

     思いついたままに数えあげることで、無意識に感じていたことが意識に表われ
     てくることもあります。

     しかし、こうした方法は整理された方法ではなく、行き当たりばったりの方法に
     なってしまいがちで、整理された分析は行なわれにくくなります。

     経営環境の分析を行なう場合の戦略的思考のひとつに、自社を取り巻く環境
     を会社の内部環境(人、モノ、カネ、情報など)と外部環境(競合状況、社会状
     況、法律、政治、文化、流行など)に分けて、内部環境の強みと弱み、自社に
     とって有利な外部環境、不利な外部環境を分析する方法が挙げられます。

     この方法を知っているだけでも、先ほどの質問に対して答えを整理することが
     できるでしょう。

     他の例を挙げてみます。

     「お客さまに提供する新しい価値をもった事業を考えてください」という場合、ど
     のように考えるでしょうか。

     これにも戦略的思考方法があります。

     いくつかの方法が提示されていますが、たとえば、「価値を創造する3つの思
     考方法」とでもいうべき方法があります。

     ひとつは、現在ある製品でお客さまが満足していない点に注目する方法です
     (既存の事業をベースに不満足に注目する視点)。

     たとえばソニーの「VAIO」は、パソコンにもデザイン性がほしいという消貴著の
     意見に注目して、デザイン性に重点をおいたパソコンとして開発されました。

     2つ目の視点は、これまで実現できなかった価値を従来の方法と違う手法で実
     現する視点です(新たなビジネスモデルの構築)。

     たとえばパソコンメーカーのデルは、いらないものはほしくない、自分の望むス
     ペックのパソコンがほしいという消費者に、インターネットを通じて顧客の求め
     るスペックのパソコンを直販するという新しいビジネスモデルを構築し、急成長
     を遂げました。

     3つ目の視点は、まったく新しい、価値を創造する方法です(新たな価値蝕造)。

     たとえば宅急便は、国鉄時代には利用者が駅まで荷物を運んでいた荷物輸
     送に、翌日配送で、しかも近くの集配拠点に持ち込めば配達するというまった
     く新しいシステムを作り上げ、新しい価値を創造しました。

     以上の3つの視点が、新しい事業を考える場合の戦略的思考の手段・ヒントと
     なります。

     こうした戦略的思考方法は、今ではさまざまな経営関連の書籍などで紹介さ
     れています。

     自らの解決すべき問題意識を明確にして、それを解決する戦略的思考の方法
     を見つけ出し、それを活用していきます。

   2.戦略的思考を経営戦略に活用

     戦略的思考は、経営戦略のさまざまなステップで活用することができ、社長の
     強い味方となってくれるはずです。

     会社の経営戦略は、環境分析から始まって、自社が力を入れるべき事業を決
     定する成長戦略、成長させる事業に対してどのように限りある経営資源を配
     分していくかを明確にする経営資源配分に関する戦略、各事業で競合他社と
     どのように戦っていくのかを考える競争戦略などの段階があり、それぞれの戦
     略レベルに応じた戦略的思考があります。

     それぞれの段階でどのような戦略的思考が利用できるのかを整理してみま
     しょう。

     最初の段階は、環境分析の段階です。

     この段階の戦略的思考の手段としては、前述した自社を取り巻く環境を内部
     環境と外部環境に分けて分析する方法のほか、顧客、自社、競合の3つの視
     点で分析を行なう「3C分析」(Customer、Company、Competitor分析)な
     どの方法が代表的です。

     環境分析を経て、自社が成長していくために取り組む事業や製品を考える成
     長戦略の段階では、製品と市場の2つを軸にしたマトリクスで分析を行なう「製
     品・市場マトリクス」が代表的な戦略的思考の方法です。

     自社の成長事業・製品が決定された後は、自社のもつ経常資源をいかに有効
     に利用していくかを考える戦略が必要になります。

     これに関しては、大企業が多角化を進めるうえで、自社の経常資源をどのよう
     に投資するかを考えるために、いくつかのフレームワークが提示されている。

     有名なものは、市場成長率と自社の相対的市場占有率という2つの軸を利用
     して、どのポジションにある事業に力を入れるべきか、どの事業を中止するべ
     きかなどを検討するプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の手法があ
     ります。

     そして、選択した事業・製品で、

      いかに競合他社と競争していくかを考える競争戦略においても、
      いくつかの戦略的思考があります。

     次項では、競争戦略における戦略的思考について解説します。

  □中小企業にとっての競争戦略

   競争戦略に関する戦略的思考には古くからいくつかの方法がありますが、よく利
   用される戦略的思考として、「ポーターの3つの競争戦略」や「市場地位別の競争
   戦略」が挙げられます。

   1.ポーターの3つの競争戦略
     競合他社と比べで自社がどのような強みと弱みをもつかを分析し、コスト面と
     差別化面の2点に注目し、どのような特徴を打ち出していくべきかを考えてい
     きます。

     競合他社に対して、競争優位のタイプ(コスト優位を重視するのか、製品や
     サービスの差別化を重視するのか)、競争戦略のターゲットの広さ(競争優位
     を実現するために、広い業界全体をターゲットにするのか、狭い特定分野を
     ターゲットにするのか)という2つの軸で競争戦略を考えます。

     その結果、

      競争戦略は、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中化戦略」
      の3パターン(基本戦略)に整理することができます。

     集中化戦略については、さらに「コスト集中」と「差別化集中」に区分することが
     できます。

     大企業の場合、コスト・リーダーシップ戦略(たとえばマクドナルド)か、差別化
     戦略(たとえばソニー)をとることができますが、これらはいずれも経営資源の
     限られた中小企業のとるべき戦略ではありません。

     中小企業のとるべき戦略は、ターゲットを絞った集中化戦略です。

     競合他社と比べて、いかにターゲットを絞るかを戦略の基本に据えるべきで
     す。

     たとえば、本物志向のシャツ作りにこだわり注目を集めているメーカーズシャ
     ツ鎌倉(「天然物」の生地にこだわり、極細糸の80番以上の双糸を使った密度
     の高いステッチで縫製され、天然の高瀬貝使用のボタンなど、特徴あるシャツ
     を提供している)や、天然素材の手作りハンドバッグにこだわり、1998年に日
     本経営品質賞(中小部門)を受賞したイピザ(旧・吉田オリジナル)などの事例
     が参考になります。

   2.市場地位別の競争戦略

     これはF.コトラーの競争戦略で、自社の市場における地位や、競合他社との
     関係に注目した競争戦略です。

     この考え方では、

      企業はその市場地位によって、
      リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つに類型化きれます。
      その類型に応じて、それぞれのとるべき競争戦略を決定していきます。

      (1)リーダー

        リーダーの競争戦略にはいくつかのパターンがありますが、
        第一には、市場シェアの維持と周辺需要の拡大が挙げられます。

        市場内で最大のシェアをもっているという立場がリーダーの強みですか
        ら、この立場を維持しながら市場全体を拡大することを戦略の目標とす
        る。

        周辺市場の拡大によるパイの広がりは、シェアの大きいリーダーにとって
        は優位な展開をもたらします。

        たとえば、市場が日本だけである製品で中国市場への進出も可能になれ
        ば、周辺市場の拡大という視点から、リーダーにとっても中国市場への進
        出は魅力ある戦略になります。

        また、

         非価格競争もリーダーにとって重要です。

        リーダーが価格競争を行なってしまうと市場全体の価格低下につながる
        ため、リーダーにとって価格競争は避けなければなりません。

        したがって、リーダーは新製品の開発やブランドの確立、積極的な広告宣
        伝など、非価格競争で競合企業と戦っていきます。

        第二に、リーダーのとる戦略に、同質化競争という考え方があります。

        リーダー以外の企業が新たな製品を市場に投入したときに、これを模倣
        して同じような製品を市場に投入します。

        こうなると、差別化された製品が同質化され、市場のリーダーにとって有
        利な状況となります。

        たとえば、コーヒー会社が自動販売機向けの缶コーヒーを発売したのに
        対して、飲料メーカーが同じような缶コーヒーを発売し、自動販売機の数
        や従来の販売ルートの強みを活かして、結局は缶コーヒーのシェアをおさ
        えてしまった例や、発泡酒の発売で後発であったビール市場のリーダー
        が、同質の製品を発売してシェアを拡大した例などが挙げられます。

     (2)チャレンジャー

        チャレンジャーは、市場でリーダーと競争できる力をもっている2位、3位
        の企業であり、トップ企業であるリーダーに戦いを挑んでいる挑戦者。

        チャレンジャーの目的も市場シェアの拡大です。

        リーダーの弱みをついたり、自社よりシェアの小さいフォロワーのシェアを
        奪い取ったりする戦略をとります。

        チャレンジャーの基本戦時は、リーダーが真似できない戦略の構築です。

        たとえば、販売チャネルでリーダーとの差別化に成功した例として挙げら
        れるのが、インターネットを利用した直接取引の充実です。

        一般的に、リーダーである企業は販売店契約や販売会社の設立などで
        確固とした販売チャネルを確立していますが、これらのチャネルを大切に
        維持するためには、インターネット取引のような、従来のチャネル構成員
        から批判を招きかねない方法はとりにくくなります。

        チャレンジャーのインターネット・チャネルの構築は、リーダーが真似しに
        くい革新的な方法となりえたのです。

      (3)フォロワー

        フォロワーは、リーダーと争う経営資源のない立場の企業であり、基本的
        な戦略はリーダーやチャレンジャーの模倣です。

        自らは製品や市場の開発に取り組まず、

         リーダーの開発した製品を模倣し、
         経済性を重視しながら後発ならではのメリットを活用し、
         低コストを武器に生存利益の確保を日額に行動します。

        いわば「コバンザメ戦法」ですが、自社の経常資源の制約から、合理的な
        選択の戦略になり得ます。

      (4)ニッチャー

        ニッチャーは、リーダーやチャレンジャーと競合しない特別な領域で、独
        自の地位を築こうとしている企業です。

        細分化した特定の部分市場(セグメント)に特化し、

         その分野の専門企業として、特定顧客をターゲットに、
         一般よりは高価格を維持しながら利益を確保していく戦略です。
         ニッチャーの競争戦略は、中小企業にとって最も適した戦略といえる。

        たとえば、市場に数%程度しかない国産大豆のみ使用した豆菓子のメー
        カー、各地の日本酒に特化した日本酒専門店、アイルランド産のセーター
        であるアランセーターを中心とした品揃えの洋品店、花別の蜂蜜とその紹
        介パンフレットを作成して健康志向で人気の蜂蜜店など、元気のある中
        小企業のとっている戦略です。

        「ポーターの3つの競争戦略」と「市場地位別の競争戦略」を比べてみる
        と、リーダーの戦略はコスト・リーダーシップ戦略に、チャレンジャーの戦
        略は差別化戦略に、そしてニッチャーの戦略は集中化戦略に近いことが
        わかる。

        いずれの戦略をとるにしても、

         自社の競争する領域を明確に定めて集中化できるかどうかが、
         中小企業にとっては重要といえるでしょう。
         競争戦略の決め手は、
         いかに集中できるか、いかに必要でないものを切り捨てられるか、
         にあるのです。

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外部専門家の有効活用

          

外部専門家の有効活用

  ■専門家の採用はコストか投資か

   税理士をたんなる自社の経理(記帳代行)としてしか活用していない。
   社労士は法令改正時や給与計算時のみに利用。

   中小企業にとって外部専門家、出入りの業者、を自社のビジネスにどのように活
   用できるかを考える必要がある。

   業種・業態のボーダーレス化によりビジネスの垣根が取り払われ、異業種による
   参入が盛んになっている。

   ここで、経営者であるあなたは外部専門家の採用をコストと捉えるか投資と捉え
   るかによって大きく違ってくる。

   彼ら専門家や出入りの異業種業者を自社のビジネスとどのように関連付け、マッ
   チングさせるかを考えることが今まで以上に重要となる。

   あなたの扱い商品やサービスに付加価値を付けることで、たんなるモノとしての
   商品やサービスをどのように競合他社と差別化させるか。

   いかにパッケージ(ブランド)化させるかが重要となります。

   モノがあふれ、単なるコモディティー商品として販売していては、最終的には価格
   競争に陥ってしまう。

   考え・やり方を変えることで同じマーケットであっても違うマーケットとして捉えるこ
   とができます。

   そのためには、単なる「モノ売り」をやめ、「コトを売る」に変えることです。

   「コトを売る」発想は自社のブランド構築に欠かせないキーワードとなります。

   過去の延長線上のやり方でやっていては、頑張れば頑張るほど、ムダなエネル
   ギーを使ってしまいます。

   そして、利益が少なくなって、歯止めのない赤字体質が定着してしまうのです。

   ただ単にモノを売ろうとするだけでは同業他社と同じ。

   製造業であろうと建設業であろうと全てはサービス業なのです。

  □『モノづくり』から『コトづくり』

   我が国はものづくりでは世界NO1と言われています。

   しかし、現実ではそのNO1のものづくりが瀕死の状態です。

   いいものを作れば売れると信じてきました。

   その結果は家電製品を見てみても明白です。

   国内のトップメーカーは韓国に後塵を拝している。

   日本製品はガラパゴス化と言われ、マニアックな製品に力を注いでいるように感
   じる。

   マーケットを絞り込んでの製品づくりであればいいのですが…。

   今日に至るまで、つくったものをそのまま売るという行為を繰り返してきました。

   時代の変化に対応した売り方やお客様の買い方も考えずにです。

   そして、売れない理由を景気や価格のせいにする。

   あなたも自社の商品やサービスが永遠に売れるとは思っていないはずです。

   特にIT化の急激な発展により商品の寿命がどんどん短くなってきていることはい
   まさら言うことでもありません。

   会社にとって重要なことは売上や利益を上げることではありません。

   会社を存続させ、成長させることです。

   そして、会社が存在し続けるためには儲けなければならないのです。

   大企業と違い資金や人材に限りがある中小企業が売上を上げるには、自社だけ
   で戦うことはますます困難になってきます。

   これらの問題を解決するためには、社外の専門家や異業種の協力が必要になっ
   てきます。

   しかし、提携や協業が単にモノとしての商品を増やすためだけの目的であっては
   ならない。

   大切なことは、異業種間の協業目的は付加価値である「コト」を創造するため。

   売れている商品やサービスにはストーリーがあります。

   そのストーリーが、まだ購入していない時点で「よさそうだ」「これを買えば今抱え
   る問題を解決できそうだ」「これを購入すれば私の望んでいる体験ができそうだ」
   といった感情を抱き、購入の引き金を引くのです。

   多くのビジネスマッチングに関するサイトや異業種交流会などが脚光を浴びてい
   ます。

   マスコミ報道では、『モノづくり大国』といった言葉が多数使われているが、モノづく
   りではなく『コトづくり企業』を目指すことです。

   日々の糧を得るために体に汗を流すことも大切ですが、脳ミソに汗を流すことが
   より重要であり、それがトップとしての経営における優先課題の一つなのです。

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