中小企業の経営改革

会社を育てる

■会社を育てる

 あなたの既にご承知のように、最初に売り込むべきものは自分自身です。

 必要なことは、粘り抜くこと。絶対に粘り抜くと決心すれば、それで一つ突き抜けたことになります。

 ただし、粘りが大切だからといって、単に同じことを繰り返すだけではなく、何かうまくいかない
 ことがあったら、立ち止まって別のアプローチを試してみることが必要です。

 成功するために粘りは大切だが、視野を広く持って、柔軟に目標の実現に向かうことが不可欠です。

 うまくいかなかったら、なぜ失敗したのかがわかるまでは、二度目のトライをしないことです。

 「知識・情報」「マーケティング」「システム」「人」を育てましょう。

 1.知識・情報

  何をするにせよ、あなただけが持っている知識や情報こそが、あらゆるものの基礎になるのです。

  現在持っている知識、これから得る情報が、あなたを他の競合他社(店)から差別化してくれます。

  こうした知識や情報は大きな価値を生むのです。

  知識や情報は、それを持っている者にとっては強力な武器になります。

  利益をあげている人はこのことを知っているし、常に学び続ける必要があることにも気づいている
  のです。

  学び続けることで、できる限り多くの情報を得て、チャンスを最大限に生かし、リスクを最小限に
  抑えることができるのです。

 2.マーケティング

  マーケティングが優れていれば、顧客の方からあなたの会社のドアをノックしてくれます。

  喜んでお金を払い、あなたの扱う商品やサービスを買いたいと言ってくるでしょう。

  あなた(会社)の発展も衰退も、マーケティングが鍵となるのです。

  だからこそマーケティングは、軽く考えたり人任せにしたりせず、あなたがしっかりと理解して
  おく必要があるのです。

  マーケティングは競合他社(店)が簡単に真似のできない分野だからです。

  このことをぜひ理解すべきです。

 3.システム(仕組み)

  経営には実にさまざまスキルが必要です。

  そうしたスキルを生かすためには限られた時間を有効活用しなくてはなりません。

  仕組みがあれば、そのスキルを、さまざまなプロセスを通じて従業員に伝えることができます。

  そうなれば、従業員は価値が高く収益率の良い仕事をすることができ、コストも低く抑えることが
  できるのです。

  結果としてあなたは自由に使える時間が増え、一層優れた仕組みを構築し、事業をより収益率の
  高いものにすることができるのです。

  仕組みによって、あなたは身体を使って給料をもらう立場から、仕組みによってお金を稼ぐ
  ことができ、事業の拡張も楽になります。

 4.人

  言葉では「企業は人なり」と言われているが、本当の意味で人を大切にできている企業は千に
  一つもないのではないでしょうか。

  商品やサービスがどれほどすばらしくても、企業のすべては、そうした商品やサービスを作り
  出し、顧客に届けてくれる人にかかっているのです。

  この段階でさまざまな間違いが生まれるのです。

  会社の競争力は、従業員のスキルと気遣いにかかっています。

  競争相手が何をしようと、社員が仕事を喜びとし、顧客に接するのを楽しいと思い、心から顧客の
  ことを思って働いてくれていれば、その影響力は絶対に真似のできないものになります。

  競合他社がどんなことをしても、この雰囲気だけは、おいそれと作り出せるものではないからです。

  優れた人材を得、育て、その人を逃がさないようにするのは、事業をする上で最も難しいこと
  だが、同時に、最も価値あることでもあるのです。

  人(人財)を得ることは競争相手をぐっと引き離し、その立場を保つことができるようになります。 

  人を雇うのは簡単だが、正しく人を選んで雇うのは、そう簡単なことではありません。

  あなたの雇った人があなたの会社を作るのです。

  企業風土やサービスや品質や評価、そして究極的には利益も、彼らが生み出すのです。

  優れた人を雇えばあなたも成長し、優れた人になり、仕事が楽になるのです。

  逆に人の選び方を間違えれば、あなたの仕事も企業の値打ちも、すべて台無しになってしまいます。

  自分よりも優れた技術を持ち、大きなビジョンを描ける人を雇えば、すばらしい会社ができる
  のです。 

  しかし、正しく人を雇うには、どのようにして人を選び、その人の特長をチェックして、人材と
  して最大限に活用するのかを学ばなければならない。

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中小企業の経営改革

自社を変革しよう Ⅱ

□多様化する従業員に対応する組織づくり

 1.多様化する従業員

  「最近は『以前と同様の方法では、業務をスムーズに進めにくくなってきた』など組織上の問題を
  感じることが多い」という社長は少なくないようです。

  この背景には、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用者の増加、あるいは若年者を中心
  とした勤労意識の変化など、組織内の従業員の多様化が進んでいることなどがあります。

  こうした従業員の多様化に対応しながら、組織運営をスムーズに行っていくためには、さまざまな
  対策を講じることが求められます。

  以降では「組織のライフサイクル」という考え方を基に、多様化する従業員に対応するための
  問題を考えてみます。

 2.組織のライフサイクル

  組織の変遷は、人と同様に「誕生・成長・衰退」といったライフサイクルで表すことができます。

  ライフサイクルの段階区分は論者などによってさまざまですが、ここでは「1.起業段階 →
  2.共同化段階 → 3.公式化段階 → 4.精巧化段階」として話を進めていきます。

  また、段階ごとに、戦略・マネジメントスタイル・リーダーシップの在り方など、さまざまな
  特徴が見られますが、組織という視点から簡単にその特徴を紹介します。

  (1)起業段階

   組織が誕生したばかりであり、規模が小さいことから、組織の柔軟性は高く、組織的な活動と
   いうよりはむしろ、個々の従業員、特に社長(この時点では創業者である場合が多い)の
   個人的な資質や魅力に強く依存しながら事業が展開されます。

   また、創業時の理念や夢(それを形にした企業理念など)に対する熱い思いが従業員の間で
   自然に共有されており、従業員はそうした要因に強く動機付けられながら業務に携わります。

  (2)共同化段階

   組織の規模が大きくなってくるため、次第に社長の個人的な資質や魅力に依存した組織運営が
   難しくなってきます。

   また、人材も多様化してくるため、創業時の理念や夢を自然と共有することも難しくなって
   きます。

   そのため、社長に求められる能力としては、組織を運営していく上で不可欠なマネジメント
   能力の重要性が増してきます。

  (3)公式化段階

   組織規模が拡大していくとともに組織内での活動が幅広くなり、社長がマネジメントできる
   範囲を超えるようになってきます。

   組織内において社長からの権限委譲が進み、それに伴って、組織は部門ごとに分割されるなど
   して組織区分の明確化や組織の階層化が進み、官僚的組織が形成されていきます。

   また、社長の役割はマネジメント業務から戦略の策定など、組織活動の方向付けを行う役割が
   中心になってきます。

  (4)精巧化段階

   官僚的組織が定着するに従って、セクショナリズムや責任回避といった官僚的組織のデメリット
   が顕在化し、組織の硬直化が進みます。

   こうした問題を解決するためには、プロジェクトチームやタスクフォースなどの横断的な組織
   制度を導入するなど、組織の柔軟化・活性化が重要な課題となります。

 3.組織のライフサイクルから問題を考える

  本来、組織のライフサイクルは、組織の成長の基準を従業員数の増加において語られることが
  一般的です。

  しかし、これは単に従業員数の増加という視点だけではなく、従業員数が増加することによって
  進む「従業員の多様化」という問題を考える際にも参考にすることができます。

  例えば、規模は決して大きくない中小企業においても従業員の多様化などを原因に組織のライフ
  サイクルと同様の特徴(問題点)が見られるケースは少なくありません。

  組織のライフサイクルに準じて考えると、中小企業が特に注意しなければならないのは、起業
  段階から共同化段階に至る過程かもしれません。

  中小企業の中には、企業経営の大部分を社長の個人的な資質や魅力に依存しているといった起業
  段階の未熟な組織のままで、とどまってしまっている場合が少なくないからです。

  しかし、起業段階の未成熟な組織が成り立つのは、従業員の多くが創業当時のメンバーであり、
  創業者の理念や夢に対する熱い思いを共有できているといった要素に負うところが大きいのです。

  創業当時から苦楽を共にしている従業員の間には親密なコミュニケーションが図られています。

  そのため、例えば「自身の担当業務ではなくとも、他の従業員が困っていたら協力を惜しまない」
  というように、指示がなくても相互補完的に業務を遂行するなどしているため、未成熟な組織で
  あっても組織として成立し得るのです。

  創業者の理念や夢を共有できているからこそ、従業員は、「それを実現したい」という思いから、
  未成熟な組織の中でも高い貢献意欲を持って進んで業務に取り組むことができます。

  規模自体はそれほど大きくなくとも、従業員の多様化が進めば、その中で創業者の理念や夢を
  自然と共有することは難しくなってきます。

  従って、組織運営をスムーズに行っていくためには、何らかの施策を講じる必要が出てきます。

  例えば、「創業時の理念や夢を共有できるように、従業員に熱意を持って説き続ける」といった
  組織を再強化する対策も有効かもしれません。

  その一方で、自社の状況を勘案しながら組織のライフサイクルを参考に、新たな組織づくりに取り
  組むことも有効な対策の1つとして検討することができるでしょう。

□組織の永遠の課題である組織変革を実現する

 1.組織が変わることの必要性

  組織変革は、企業が永続していくためには常に直面する問題です。

  前述した組織のライフサイクルを見ても分かるように、自社を取り巻く外部環境の変化や自社の
  内部環境の変化、あるいは新規事業進出・既存事業撤退などさまざまな要因により、企業は常に
  新しい組織像を求められます。

  しかし、既存事業を行うために完成された組織を変えることは非常に困難を伴う取り組みです。

  そこで、以降では、組織に常につきまとう課題ともいえる組織変革について考えます。

 2.組織が変わることの難しさ

  組織変革が難しい理由は、「組織には変わることを拒むという性質がある」ためです。

  組織変革について考える際には、まずこの性質について理解する必要があります。

  ここでは、変わることを拒む性質を生み出す問題を「組織全体のレベル」と「個人のレベル」の
  2つに分類して、その概要を紹介します。

  (1)組織全体のレベルでの問題

   組織変革を強く意識せずに、特段の取り組みを行わない場合、組織は既存事業の強化など
   「現在の組織構造を強化する」傾向があります。

   例えば、設備投資は、その事業をより効率的に行うことのできる設備などを対象に行われます。

   人事面では、その事業に対する高い能力を有する人材を採用し、そうした能力を少しでも高める
   ことができるように教育・訓練を実施するはずです。

   また、指揮・命令系統や部課などの組織構造も既存の事業などに最適な形に形成されていきます。

   さらに、従業員の行動様式に影響を与える組織文化も事業遂行に適したように形成されていきます。

   このような「現在の組織構造を強化する」という流れは、現在の組織構造を変化させる組織
   変革にとっての大きな障害となります。

  (2)個人のレベルでの問題

   組織全体のレベルとは別に、実際に組織を動かす従業員などの中にも変わることを拒む性質が
   あります。

   これは、組織にいる従業員の特徴というよりは、むしろ人が本質的に持つ特性といったほうが
   いいかもしれません。

   人が変化を好まない理由はさまざまですが、その大きな原因は「先が分からないという不安感」
   にあります。

   例えば「変革に伴って業務内容が変わるが、私にできるだろうか?」「今までの業務では高い
   評価を得られたが、新しい業務でも同様に高い評価を得ることができるのか?」「業務量が
   増えるのではないか?」など、新しいことに対してはさまざまな不安がつきまとうものです。

   その結果「先の分からない『変化』よりも、現状のままがいい」という気持ちが強くなって
   しまうのです。

   組織変革の難しさは、組織全体のレベルでの変革と個人レベルでの変革をバランスよく行わな
   ければならない点にあります。

   しかし、実際の組織変革への取り組みを見ると、制度面の変更など比較的容易に取り組むことが
   できる組織全体のレベルでの変革には注意が払われているものの、個人レベルでの変革について
   は十分な注意が払われていないことが多いようです。

 3.個人レベルでの変革を行う際の基本的な考え方

  個人レベルでの変革を行う際の基本的なポイントは次の通りです。

   (1)組織変革の必要性(現状のままでいることは許されない理由など)を理解させる

   (2)組織変革を通じて実現する新たな組織像や、そのためにどのように変わる必要が
     あるかという具体的な方向性を示す

   (3)組織変革の成果を実感させる

   (4)1~3の取り組みを継続する

  (1)で「現状のままがいい」という甘えを絶ち、真剣に組織変革に取り組まなければならないと
  いう事実をしっかりと認識させます。

  (2)で「先がどうなるか分からない」という不安感を払拭するとともに、自身が組織変革のために
  すべきことを具体的に示すことで、組織変革に取り組みやすい状況をつくります。

  (3)で具体的な成果を通じて組織変革の正しさなどを実感させ、組織変革に取り組もうという
  モチベーションを高揚・維持させます。

  そして、(4)で従業員の心の中に時折頭をもたげてくる「以前の状況に戻りたい」という気持ちを
  抑え、継続的に組織変革に取り組んでもらうようにします。

  個人レベルでの変革において、社長が注意しなければならないのは「分かっている『はずだ』」
  という思い込みです。

  個人レベルでの変革に限ったことではありませんが、規模が小さな企業では日常のコミュニケー
​  ションを図りやすいこともあり、社長は「何度も言わなくても、従業員は分かってくれている
  はずだ」と思いがちです。

  しかし、こうした考えでは個人レベルでの変革はできません。

  人が変革を拒む姿勢は、組織変革によって自身が悪影響を受けることが明らかな場合や、どの
  ような影響を被るのか不透明な場合だけではなく、しばしば自身にとってメリットの大きい
  結果が予想される場合においても見られます。

  従って、個人レベルでの変革を行う場合には「分かっている『はずだ』」という思い込みは捨てて、
  「常に、組織変革の必要性や、新たな組織像を熱意を持って語り続ける」といった姿勢が必要
  なのです。

  実際に組織が直面する問題は非常に多岐にわたり、その状況も複雑です。

  そのため、問題の表面だけを捉えて施策を講じても、十分な効果を得ることが難しい場合が少なく
  ありません。

  そこで、問題を解決するための施策を検討・実施する際には、最初にこうした組織上の問題の
  特徴をしっかりと念頭に置いた上で、慎重に問題の原因を整理・分析するように心掛けることが
  重要といえるでしょう。
 

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中小企業の経営改革

自社を変革しよう Ⅰ

■企業における組織

 企業の中には、部や課、チームなどさまざまな組織がありますが、企業経営において組織を考えた
 場合、「企業」がこの中で最も大きい組織単位となります。

 多くの経営者は、組織の構成や規模にかかわらず、組織というものについてさまざまな問題を感じて
 います。

 また、組織が内包する問題を解決するためにさまざまな具体的施策を講じている企業も多いでしょう。

 しかし、その一方で、組織上の問題というと、「従業員のモチベーションの問題」や「コミュニケー
 ション不足」といった比較的身近な要素にその原因を求め、対策を講じようとする僚向が強いよう
 です。

 もちろん、こうした要素も組織上の問題に関連する重要な要因ですが、より効果的な対策を講じる
 ためには、もう一歩踏み込んで「組織」について考える必要があるといえるでしょう。

 ここでは、組織上の問題を検討する上で参考となる経営組織論の視点から、多くの企業、特に中小
 企業が直面しがちな問題について考えていきます。

□組織が起こす誤った意思決定の構造的要因

 1.集団における意思決定の落とし穴

  経営の最終的な意思決定は経営者(経営層)によってなされるものですが、意思決定を広く
  捉えると、経営者(経営層)によるものだけではありません。

  各部門の長が出席する会議、部や課で行われる販売会議や営業会議、チームなどによるプロ
  ジェクトの施策の立案など、企業では多くの場面で組織による意思決定がなされます。

  一見、組織という一定の集団での意思決定は、意見交換を通じて個人で行う場合よりも合理的で
  より成果の上がる決定がなされるものと考えられがちです。

  しかし、実際には、組職という集団における意思決定で、常に正しい判断や質の高い意思決定が
  行われるわけではありません。

  組織内で行われる集団での意思決定においては、個人であれば恐らく行わないような誤った判断を
  してしまうことも往々にしてあります。

  経営者が組織についての問題を考え、その対策を検討する際は、組織に内在する意思決定の
  構造的な要因についても十分考慮することが大切です。

 2.組織という集団の持つ特性

  個人の場合における意思決定と組織における意思決定が大きく異なる要因の1つに「集団圧力」と
  呼ばれるものがあります。

  集団圧力とは、「意見を統一しなければならない」という圧力のことです。

  集団圧力が組織内に見られる場合、たとえ正しい意見であったとしても「他の出席者の意見と
  異なっている」というだけで自己の意見の正当性を否定し、他の出席者の意見に従ってしまう
  ことがあります。

  もう1つ、集団での意思決定において注意しなければならない要因として、「集団思考(グループ
  シンク)」と呼ばれるものがあります。

  集団思考とは、集団での意思決定を行う場合、集団としての合意を優先するあまり、「集団構成員
  への批判抑制」「自集団の過大評価」「外部集団の過小評価」など誤った情報処理を行ってしまい、
  結果として不適切な決定が下されることをいいます。

  集団思考が発生する要因はさまざまですが、「意思決定を行う集団の結びつきが強い場合」「外部
  から隔離されるなどして情報を収集することが困難な状況である場合」「優秀で強いリーダー
  シップを発揮するリーダーが存在する場合」に発生しやすいといわれています。

  こうした集団内では、意見の多様性が失われてしまうとともに、絶対的なリーダーの意見に従う
  傾向が強まります。

  その上、情報の収集ができないために、意見の妥当性を慎重に検討することなく意思決定が行われ
  てしまうこととなります。

  これが結果として不適切な意思決定を生んでしまうのです。

 3.集団における誤った意思決定を避けるには

  (1)誰かが集団とは異なる意見を述べる

   集団圧力の発生は心理学的観点から見ると、「他の出席者と違う意見を述べることで集団内での
   自己の評価が下がるのではないか」という恐怖感が影響しているといわれます。

   この集団圧力を緩和するには、集団とは異なる意見を述べることのできる(述べやすい)状況を
   作り出すことが最も基本的な対策となります。

   集団と異なる意見を述べる出席者が集団内にいれば、他の出席者も「自分だけが違う意見を
   持っているわけではない」と考え、集団内であっても自分の意見を述べやすくなるからです。

   実際に、集団圧力についての実験では、他の出席者全員が誤った答えを選択した場合と、正しい
   答えを選択した人が1人でもいる場合とでは、後者のほうが正しい選択を行う割合が高くなった
   ようです。

   従って、現在の自社の組織において集団圧力の兆候が見られる場合には、次のような対策をとり、
   経営者自身が集団の特性を意識し、集団とは異なる意見が出る工夫をすることが非常に大切と
   なります。

    ・会議の議題に関して反対意見を持つ人を出席させる

    ・議題について反対意見(問題点)を述べる人を作為的に作る

  (2)意思決定の場に参加する出席者を変化させる

   いつも同じ集団で意思決定を行っていると、集団の凝集性が高まり、集団思考が発生しやすく
   なります。

   組織における集団思考を回避するためには、意思決定を行う集団を変えることですが、集団の
   全員を毎回変えることはできません。

   そこで経営者の目から見て、意思決定やアイデアが硬直化しているなど集団思考の兆候がみら
   れる場合は、次のように、経営者が集団のメンバーにアクセントをつけることで、意思決定の
   過程に多様性をもたせることも重要なポイントです。

    ・経験にとらわれず若手従業員なども出席させる

    ・他部署の者も出席させるなど、部署横断的組織とする

 4.発言と退出

  不祥事を起こした企業の中には、強力なリーダーシップを発揮しながら企業の発展をけん引して
  きたオーナー経営者がいる企業が少なくありません。

  こうした企業の多くはオーナー経営者の発言力が強く、従業員などの声が経営に反映されないと
  いうこともあるようです。

  人は組織に対して不満や問題を感じたときにはさまざまな行動をとりますが、大きく

  「その組織を変えようとして意見を述べるなど、何らかの行動を起こす」と「その組織を変える
  ことをあきらめて、やめてしまう」といった2つの行動に分類することができます。

  それぞれの行動は、一般的に前者は「発言」、後者は「退出」と呼ばれます。

  当然、この他にも「何もしない」、すなわち発言も退出もしないという選択肢もありますが、
  組織が起こす誤った意思決定の修正機会をつくるためには、人(従業員)に発言しやすい環境を
  つくることが何より大切になります。

  退出せずに発言をするか否かということは、その組織に対する忠誠心・愛着度などさまざまな
  要因が影響しています。

  しかし、発言しやすい環境づくりという視点から見た場合「自身が発言することによって誤った
  意思決定を覆すことができる」ことを分かってもらうことが重要となります。

  また、仮に発言した意見が組織活動に反映されなくても、その意見を真剣に検討するといった
  姿勢が必要です。

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中小企業の経営改革

社内一体改革 Ⅲ

□ビジョン、教育体系と連携した人事制度

 ここではビジョンと「人事制度」の連携について述べます。

 これまで見てきたビジョン、教育(育成体系)と人事制度を、どのような考え方で連携させれば
 組織活力が上がるかというポイントで見ていきます。

 1.経営者と従業員の認識格差

  「人件費の変動費化」は経営者からすると有効な考え方です 。

  固定給与となる月給ベースを上げずに、賞与は目標を達成した場合の成果への 対価であるという
  考えで、利益目標を達成したときには多く支払い、未達成の場合は調整する。

  中小企業においては、支給できない場合もあり得ます。

  しかし耳にするのは経営者と従業員の認識格差です。

  従業員は、「安定しない賞与よりも月給を上げ てほしい」という意識が強いようです。

  生活費やローンの返済など、生活水準に直結する 部分が数年も据え置きされ、一時的に賞与が
  上がっても生活の見通しが立たない。

  利益が出なければ賞与も出ないのでは 、という心配もある。

  また、経営者は賞与を多く支給できた時の印象が強く残り、逆に従業員は支給が少ない時
  「減ったな」という印象が強く残る。

  「利益が出た年にたくさん賞与を出したじゃないか!」と経営者が考えても、従業員の認識は薄い。

 2.モチベーションの上がる人事制度

  では、固定給を上げれば従業員のモチベ ーションが上がるのか 。

  必ずしもそうではなくなっているというのが 、モチベーション研究の結果として報告されている。

  米国の作家、ダニエル・ピンクが 著した『モチベーション3.0』(講談社)では「モチベー
  ション2.0」(報酬を求め、罰を避ける行動:アメと ムチによる管理)から「モチベーション
  3.0」(持続するヤル気:楽しさ、創造性の 発揮)の時代になっているという。

  この研究では「給与を上げること」イコ ール「モチベーション アップ(活力向上)」ではない。

  モチベーショ ンを上げる人事制度とはどういうものだろうか。

  それは、自分の5年後、10年後がイ メージできる人事制度。

  どのような仕事をすれば、何年後にどれくらい仕事ができる ようになるのか、収入はどのくらい
  得ているのか。

  その姿は自分が5年後、10年後に なりたい自分の姿なのか。

  就職活動を行う学生の企業選定基準を、種々の調査結果から見てみると、上位に「入社後の
  キャリアプラン」 がよく挙げられている。

  学生も給料の額だけでなく、自己実現できるキャリアプランに 注目しているのです。

  このような人事制度の設計には人事制度の体系が必要です。

  職種や能力レベル(等級など)を軸に、職能要件や基準を明確にしながら、身に 付けるべき
  仕事のレベルを示す。職種間の移動などに ついても基準を示しておけば、基準をクリアする
  ことで、権利を得ることができる。

  こ の制度に賃金制度も連携すること により、年収計画や生活レベルもイメージできるようになる。

  このように、人事制度の体系があれば、 従業員は何を目指すの かについて自分で目標を明確化
  でき、自らの成長も意識できる。

  それがモチベー ションの維持、向上につながるのです。

 3.人事制度の設計と運用

  人事制度がうまく機能しない場合は、「人事制度そのものがな い、もしくは実態に合っていない」
  という設計段階の問題と、「人事制度はあるが、う まく機能していない」という運用段階の問題の
   二つが考えられる。

  設計の考え方は既述したので、ここでは運用の考え方をみる。

  運用については、「考課者が適切な考課ができてい ない場合」と、特に中小企業においては
  「支給原資の関係から、昇給が行われない場合」が 挙げられる。

  考課において重要なポイントは、考課者と被考課者との信頼関係と被考課者の納得度です。

  中小企業にありがちなのは、制度をつくっても、実際は社長が1人で評価しているケースです。

  企業規模にもよるが、30 名を超えるようであれば、社長が すべてを適正に評価することは
  難しくなる。

  「俺は現場に行って仕事ぶりを見ている 」と言う社長もいるが 、四六時中見ているわけではない。

  評価される側の納得度を考えれば、一番近くで見ている上司よりも、たまに来る社長の評価が
  優先される のでは、納得がいかない面も強い。

  もちろん社長は過去の経験で現場の空気、雰囲気などから真実を見抜く力はあると思います。

  しかし、上司の評価も参考にすべきです。

  それだけに評価を行う上司は、考課者訓練などを受けて、評価とは 部下の給料、ひいては生活に
  関わ る仕事であることを意識すべきです。

  長く昇給など が行われていない会社の中には、 利益との兼ね合いにより、人件費を上げない
  ことで利益を調整しようと考えているところもある。

  せっかくビジョンに基づく育成体系、育成の成果として得られるべきポジションや給与が設計
  されているのに 、それを運用しないのでは意味がない。

  運用せずに組織活力を落とすよりも、従業員1 人ひとりのモチベーションを上げ 、組織活力を
  上げることを意識して運用を行っていただきたい。

□モチベーションの高い組織風土づくり

 ビジョン、教育(育成体系)と人事制度を一体改革し、強い企業体質をつくり出している企業は、
 社員1人ひとり が自発的に高いモチベーションを 持って働いている。

 その背景について述べていきます。

 1.社員が自発性を持ったモチベーションの高い組織風土

  企業の強みをつく り出す根底にあるのは、「社風」であり「企業体質」です。

  植物でも、よい土壌であれば、苗の良し悪し に関わらずに育ち、逆に土壌が悪ければ、よい苗
  であったとしても枯れてしまうためです。

  「よい土壌」の例として挙げられるのは 、会社の経営理念や経営目標遂行のために、前向きに
  努力する社風が体質化している会社です。

  一方、「悪い土壌」とは、経営理念に向かって一丸となり 切れない、目標未達が常態化して いる、
  クレームが減らない、社員の嘘や隠蔽が体質化しているなどの社風になっている会社のことです。

  よい会社は、社員1人ひとりのモチベーションが高く、強い組織風土ができている。

  人を育てていくためには 、企業としていかに強い組織風土をつくり上げるかが重要となる。

  よい会社も、最初から強い組織風土が出来上がっていたわけではない。

  個人が前向きに働く仕組みについ て、事例を紹介します。

 2.社員に自発性を持たせる

  C社では、ジュニアボード(若い中堅幹部や社員を青年取締役として任命し、事業戦略や経営
  戦略を討議させ、取締役会に具申させる経営革新プロジェクト)研修実施後、実行具体策の
  推進を任せたプロジェクトメンバーが見違えるほど前向きに仕事に取り組むようになり、成果を
  上げている。

  プロジェクトリーダー を中心に毎週1回集まり、進捗確認を行うとともに、 現場改善やマニュアル
  づくりなどを着実に行っているのです。

  自発的に取り組めるポイントとして

  (1)ビジョン(目的)の共有

  (2)社長からの権限委譲

  (3)手法(やり方)への裁量

  ――が挙げられる。

  社員にやる 気が感じられず、意識が低い場合は、「仕事の目的や理由が理解できているか」
  「自分の権限や裁量がない状況で 、指示待ち状況になっていないか」を確認する必要があります。

  部下、社員に原因を求める前に、上司の 取り組み、会社の仕組みを検証してみることです。

 3.コーチングによる人材育成

  上司が部下をうまく育成するための手法として、「コーチング」がある。

  コーチングとは、人のやる気や能力を引き出すためのコミュニケーシ ョン技術で、主に会話に
  よって、相手(部下)のモチベーション を高め、行動を変化させるもの。

  スポーツやビジネスの世界の優れたコー チや優秀なマネジャーの発言や行動を分析し、共通点を
  体系化すること でつくられている。

  前提となる考え方(コ ーチング・マインド)は、

  (1)人は皆、無限の可能性を持っている

  (2)「課題」と「答え」はす べて本人が持っている

  (3)もともと人間は、 自ら成長・向上しようとする拡大的・自立的・主体的な存在

  ――の三つです。

  D社の幹部は、仕事に忙殺され部下を褒めることもままならな い状態で、一方的に仕事を指示
  するだけであっ た。

  部下とのコミュニケーション は、ほとんど意識されておらず、若くして入った社員は成長が遅く、
  定着もしなかった。

  B社社長は、これを問題視して部下育成研修を実施しました。

  具体的には、毎月1回、半年の間、コーチングの研修を実施したのです。

  その結果、幹部はこれまで見えていなかった部下の能力を見付け出し、それを引き出すことで、
  日常の会話を増やすことができました。

  こうしてコミュニ ケーションが出来上がり、互いを 尊重する風土が生まれたのです。

 4.永続発展に向けた一体改革

  ここでは、中長期的な展望のない場当たり的な教育派遣や 、人事制度との連携の欠如などにより、
  経営者の「会社をよくしよう!」「人を育てよう!」という思いが効率よく成果につながって
  いない実態を想定している。

  これに 対し、人を生かす点に着目し、人を取り巻く仕組み である「ビジョン」「教育」「人事
  制度」を一体として考え、改革する内容をまとめてきました。

  「永続発展企業」とは、文字通り倒産す ることなく企業経営を 続けることであり、その実現の
  成否を決するのは企業DNAです。

  社員1人ひとりが自ら考え、自ら行動す る強い組織となり、業績が安定すること。

  永続発展企業に向けて一つひとつの制度を一体として考え、 運用していただきたい。

□永続発展企業に向けての一体改革

 前項では、モチベーションの高い組織風土づくりを中心に確認しました。

 社員1人ひとりのモチベーションが高い会社は、組織風土がさらに強くなり、人を育てる循環が
 できていました。

 また、自発性を持たせる取り組みやコーチングなど 、個人が前向きに働く仕組みについて取り
 上げました。

 創業5年以内に35%がなくなり、50 周年を迎える会社は5%しかないという統計データから
 見れば、永続発展する企業になることがいかに 困難かが分かる。

 しかし、経営者(経営幹部)にとっ て倒産や廃業は、社員やその家族、取引先にとって不幸なこと
 であり、あってはならないことです。

 永続発展企業となるためには、それを成し遂げるだけの「人」が常に会社にいること。

 つまり、人を育て 、人が育つことが必要です。

 1.ビジョン・理念の明確化

  例えば、車でドライブしようと考えたら 、まず行き先を決め、それに合わせて計画を立て、
  情報を集め、出発時間を決める。

  無計画では渋滞に巻き込まれたり、目的地までたどり着けなかったりする。

  経営においても同様です。

  会社がどこに向かうのか、それをいつまでに達成する のかを明確にすることが大事です。

  こうした計画のもと、会社が存続するために必要な利益は、自社の商品・サービス提供に対し、
  顧客が満足を感じてくれている対価である。

  十分な利益が確保できていないということは、満足度が低いと言える。

  その指標として「利益額」と「利益率」が挙げられる。

  利益額が低いということは売れていないということで あり、顧客は自社よりもライバル などから
  購入するほうが多い状況です。

  また、利益率が 低いということは、自社から購入してくれているものの、値引きを要求されている
  ということです。

  自社の商品・サービスの存在価値は何か 。

  市場の中で、どこまで必要とされているのか。

  もし必要とされていなければ、顧客に見放され、ライ バルに淘汰されてしまう。

  常に自社の存在価値を見つめ直すことが必要です。

  「顧客から何が評価されているか」「本当に付き合うべ きお客さまは誰か」「創業の原点は何か」、
  そして「それをどこまで向上させていくのか」。

  こうした視点をもとに5年、1 0年、20年後の自社の姿を描くことが、ビジョンづ くり。

  そこには社会動向の変化、業界動向、顧客嗜好の変化、ライバル動向なども検討し、自社の数値
  計画を組み立てることが必要です。

 2.中長期的視点で人を育てる

  目指すべき姿(ビジョン)、立ち返るべき原点(理念)が明確になった上で、ビジョン遂行の
  ための「人」づくりが必要となる。

  「やりたいことはあるが、人がいない」というのは、どの企業にも共通する悩みです。

  経営者と話をしても、よい人材を常に求めている会社は多い。

  就職希望者(再就職も含む)の数をニュ ースで聞くたびに、マッチングがうまくいっていないと
  感じる。

  人を育てるのに、場当たり的な育成では効果が薄い。

  E社では 、1月から始まる新年度の数値計画を、前年の 10月末に検討し、数値計画が固まった
  後で、12月に人事異動を行った。

  しかし、新年度から10名で組んだ数値計画を遂行しようとしたものの、実際には人事異動が間に
  合わず9名でのスタートという状況だった。

  スタートから人が足りない状態を打開するため、教育を行い、即戦力として育てようという考えも
  あった。

  しかし、こうしたその場しのぎ の方針で、現場は混乱してしまった。

  そうならないためには、3~5年先を見て、人材育成計画を立て、抜擢していく必要がある。

  これによって社員も、「次は自分が課長だろう」など、自覚と準備ができる。

  また、入社後のジョブロー テーションや育成のための社内キ ャリアアップのスタンダードを
  つくり、自分がどのように会社でキャリアアップしていけるか、何歳でいくらくらいの収入が
  得られるのかなど、人生設計ができる制度を整備することです。

 3.人が育つ組織風土づくり

  人を育てる中長期的視点から教育制度を組み、教育を実施しながら、能力やモチベーションを維持
  していく仕組みが必要となる。

  その最大のものが人事制度です。

  B社では、「会社の目指すべき方向」(ビジョン)と「業務内容や実績の評価」(人事制度)が
  連動していなかった。

  社員は、評価ポイントを見て業務に取り組むため、会社の方針と行動との乖離が広がっていった。

  人事制度は、一度つくれば完全というも のではない。

  環境変化や社内体制の変化により、定期的に見直すことが必要となる。

  常に人が育つ組織は、社風がよい。

  ビジ ョンが明確で適切であれば、前向きな姿勢で一丸となり、そこでマネ ジメントが機能すれば
  結果はついてくる。

  社風づくりは日々の積み重ねであり、時間をかけてつくり上げていくものです。

  理念、ビジョンをもとに、永続発展企業に向けて一つひとつの仕事へ前向きに取り組むことにより、
  社員が自ら考え、自ら行動し、強い組織となることができるのです。

  企業のビジョン、社内の人材育成制度、人事評価制度について 一体改革を行い、永続発展企業に
  向けてま い進していただきたい。

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オーナー社長のための経営改革

社内一体改革 Ⅱ

□人材育成体系を構築する

 ビジョンは会社の目指すべき方向を示すものであり、目指すべき姿は常に「時間軸」と「レベル軸」
 で考えな ければならない。

 つまり、「いつまでに、どのレベルまで」を明確にすることです。

 次に「人材育成体系」を取り上げます。

 ビジョン実現のためには人材が必要。

 理想は、必要なときに必要な人材の量と質があればよい。

 しかし、なかなかそうはうまくいきません。

 理由は、人材育成には時間がかかるためです。

 したがってビジ ョン実現のために計画的に人材を育てる人材育成体系が必要となります。

 1.目指すべき人材像を数値化する

  「教育熱心だが、場当たり的な教育で、その効果を十分に生か し切れていない」という問題に
  ついて取り上げます。

  人材育成はビジョン実現に向けたものでなければならない。

  まず、ビジョ ンです。

  ビジョンのポイントと して、会社を取り巻く環境変化、会社の目指すべき姿、5年後の数値計画を
  設定するこ とです。

  その数値計画を実行するために、組織の要となる必要人材の人数(量)を明確にしなければならない。

  ここでの必要人材は、求められる能力と生産性基準で考えます。

  階層別で考えると分かりやすいでしょう。

  ただし 、企業の規模が大きくなれば、部門別や拠点別といった分類も必要となります。

  役員、部長、課長など階層別に、どのような能力を求めるかといった職能要件を明確化します。

  また 、職能要件だけでは育成すべき能力が見えないので、もう少し詳細につくる必要があります。

  また生産性基準で能力を数値化する。

  効率指標として「時間当たり利益○○万円/時」や「営業の利益貢献目標○○万円以上/年」
  などを設定します。

  目指すべき姿が数値化されることによって、社員が何を目指せばよいのかが明確になる。

  育成する際にも、どこまでレベルアップさせればよいのかも明確になる。

  このように職能要件と生産性基準で 必要人材が明確になれば、そのレベルをクリアする人材を
  育成することです。

  育成に際しては、少なくとも倍の人材を候補として育成する。

  3年後に部長が3名必要であれば、6名以上を候補者とし、求められるレベルを クリアできる
  ように外部教育やOJTを行う。

 2.「退職者コスト」のムダ

  例えば、学生が就職活動で注目する点は 、入社後のキャリアプランが明確かどうかです。

  明確でなければ入社後、時間と費用をかけて育成し た人材が10年で辞める。

  現場は「これからなのにもったいないな。また次の人をゼロ から教えるのか…」とため息をつく。

  入社10年の場合、かけたコストは分かりやすい。

  しかし、盲点は 1年未満の場合です。

  新しく入ってきた人が辞めるときに 「最初からどうかと思ったんだよ」「うちと合わなかった
  のかな」と言っても後の祭りである。

  ここで言う「退職者コスト」とは退職金のことではなく、育成する 人の「給与+時間」を指します。

  優秀な人材は、給与の5倍の利益を稼ぐ。

  給与3 0万円の人が150万円の利益を稼ぐとすると、1カ 月に23日稼働として1日当たり
  6万5000円以上、8時間で割れば1時間当た り8000円以上である。

  彼が同行なども含めて毎日1時間程度の教育を行えば、1カ月18万4000円、半年で110
  万円の出費です 。

  半年育成しては辞め、また次の人材をゼロから教える場合の退職者コスト、こういった目に
  見えない形の経費も会社にとっては大きなムダとなる。

  あるいは、場当たり人事で人を生かせず 、結局“辞める”という同様の結果をもたらすケースも
  あります。

  人事は 、会社の意思であり、戦略推進のための重要なポイントです。

  しかし、その部署を拝命する側にも準備は必要です。

  人が空いたポストに、職務をこなせそうな人材をあてがっても、その当人にとっては経験が少なく、
  プレッシャーのかかるポストでは、音を上げたり、うつ病になりかねない。

  つまり、会社としては先を見越した育成計画を持ち、入社後から本人にも認識させる必要がある。

  このように明確な育成体系が求められる。

  人材は、一朝一夕で育成できるものではない。

  また、採用して も途中で辞める人もおり、思うようにはならないことが多い。

  しかし、「企業は人なり」。

  人がいなければ成り立たないのも事実です。

  社長、幹部は会社のビジョン実現に向けた人材育成体系を数値化し、計画的な人材育成を行って
  いただきたい。

□日常活動の中で人材を教育する

 1.日常活動で行える教育を

  「ビジョンに基づく人材育成体系を、5年先まで見据えてつくること」「人材育成には時間が
  かかるため、目先だけでなく、常に将来を考えて 取り組むこと」の二つを挙げ、人材育成体系
  づくりの重要性について確認したい。

  次に、「教育」について取り上げます。

  たとえ 、5年先を見据えたビジョンに合わせて人材育成体系を組み上げたとしても、その通りに
  育成が進まなくては意味がない。

  それではまさに、絵に描いた餅です。

  日常活動の中で、人材育成体系に沿って 、いかに教育を行い、 人材を育成していくかが重要
  なのです。

 2.育成イメージを明確に示す

  人材育成体系をつくる第一歩として、会社組織として階層別に必要な能力を明確にする。

  職能要件は、階層別に求められる能力を示し、生産性基準では目指すべきレベルを数値化する。

  しかし、個人を教育していくためには、もう少し詳しく「育成イメージ」をつくる必要があります。

  この目指すべきレベルについて、より細かい育成イメージを作成する際には、スキルマップが
  有効です。

  スキルマップとは、育成項目ごとにレベ ルを3、4段階で示すものです。

  このことにより、求める能力とそ のレベルについて、育成する側、 される側の両方で共有する
  ことができます。

  例えば、スキルマップを用いて、「安定的に目標達成する部門を率いることができる課長を、
  2名育成したい」と考えたとする。

  その場合には、「会社がその課長に求める条件」を明確に提示しなければならない。

  具体的には、マネジメント面において、「部門損益が分かる」「利益を上げるポイントを理解し、
  対応できる」といった条件です。

  また、部下育成については「部下の長所、短所を把握し、適切に動機づけを行うことができる」
  とい ったレベルなど。

  また、生産性基準としては「 部門利益貢献○○○万円以上/年」「個人としての利益貢献○○○
  万円以上/年」などが挙げられる。

  さらに細かい内容については、スキルマップにより事業計画への達成意欲や関係先との信頼関係
  構築力、クレームへの対応力など身に付けるべき能力と、レベルを提示します。

  レベル設定は、高いレベルから「教えることができる」「ある程度できる」「できない、経験が
  ない」などに分けて設定する。

  2名育成したいと考えている場合には、こうした条件を設定し 、できれば4~6名ぐらいの
  候補者に対し、同様の条件提示の上、動機づけを行う。

 3.育成イメージを個人別に作成する

  上司は、この育成イメージを自分の部下(対象者)に対して、 個人別に提示する。

  ポイントは「会社が求める能力」を、「本人に求められる能力」として正しく共有することです。

  教育の基本はOJTです。

  上司が常に育成目標を意識して、 アドバイスを行う。

  そして、最低でも1カ月に1度くらいのペースで、進捗状況を本人と共有する。

  そのときに有する時間は、長くなくても構わない。

  しかし、多忙な 仕事の中で、自分がやるべきこと、身に付けるべき能力を再確認することと、
  上司が適切にアドバイスを行うことが重要です。

  求めるべき能力について、「いつまでに」「どのレベルまで」が明確になっていて、本人と共有
  できていれば 、その能力を身に付ける手法とし て、テーマを合わせて外部の教育やセミナーに
  派遣してもよいでしょう。

 4.成長度合いを確認する

  このような教育を行う中で、部下が予定通りに成長しているか 、その度合いを確認する。

  生産性基準など、数値化できる定量的なものは分かりやすいが、職能要件やスキルマップなどは
  定性的な表現であるために、判断が難しい場合もあります。

  部下育成の場面について考えてみましょう。

  例えば、個別面談を行い、そのことで動機づけができているものの、感情的に部下を怒鳴りつけて
  しまう。

  こうした場合、「部下育成についてはまだまだだ」と否定してしまうことは容易であるが、個別
  面談や動機づけについてトライし ていることに着目したい。

  よい取り組みについて評価し、改善が必要なところを指摘し ていることに注目するのです。

  また、このような個別の確認ができない ケースとして、上司自身がプレイング・マネジャーで
  あり、日々の業務に忙殺されて部下をよく見るこ とができない場合が考えられます。

  だが、一緒に活動していなくとも、日報や会議などで仕事ぶりを確認する機会はいくらでもある。

  もし、営業所が離れていたとしても電話やメール、パソコンによる実績管理など、社内のツールで
  状況を把握する手段も多く存在するはずです。

  何より大事なのは、上司が普段の業務の中で、部下育成を意識することです。

  「業績が悪化した」「人が辞める」など事態が変化したときだけ、思い出したように教育を施す
  だけでは十分な成果につながらない。

  上司が、 部下の育成イメージを常に明確にし、成長度合いを意識し、確認し、アドバイスしていく
  ことが重要です。

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中小企業の経営改革

社内一体改革 Ⅰ

■会社の存在価値

 1.「ビジョン」「教育」「人事制度」は連携しているか

  A社のB社長から、次のような相談があった。「毎年、幹部をはじめ社員教育を行っているが、
  思ったよ うな成果に結び付かない」とのこと。

  取り組み内容を聞くと、幹部や営業、技術者をセミナーに参加させているものの、教育内容に
  統一性がないことが問題だった。

  B社長は教育の重要性を十分に認識して いましたが、教育を必要とする人材が出たとき、その
  時期に開催されているセミナ-へ参加させていました 。

  つまり、その時々に開催しているセミナーに参加させる「その都度参加型」でした 。

  これでは学ぶ内容やレベルが幹部や社員によってバラバラで、参加したセミナーによ って成果に
  差が出てくる。

  こうした会社は意外と多いようです。

  コンサルティング現場で、教育やセミナーについて 疑問を感じることが多い。

  その疑問とは、「“ビジョン”と“教育”と“人事制度”が一体となって機能しているか?」という
  ものです。

  ほとんどの企業が教育の重要性を認識し ていますが、組織は戦略に従うものであり、すなわち
  会社が目指している「あるべき姿」に向かって組織体制を整えていかなければならない。

  つまり、 戦略に応じて人材を育成していくのです。

  経営の舵(かじ)を取るのは社長であり、自らのビジョンを共に実現する幹部や社員をより多く
  育成することが必要です。

  そしてもう一つ、社員のやる気を高めるには人事制度が必要です 。

  ここでは、「ビジョン」「教育」「人事制度」を連携させることにより、人をつくり、業績を
  変えるビジョンと制度の社内一体改革について整理していきます。

 2.自社の存在価値は何か

  まずはビジョンを描く前提となる「会社の存在価値」について触れてみます。

  2011年に発生した東日本大震災は、皮肉にも多くの企業に「自社の存在価値は何か?」との
  問いを投げかけた。

  震災の影響で自社が操業不能になった時、世の中の誰が、どのぐらい不便を感じたか?

  得意先が他社の商品・サービスで代用でき、特に問題がないとしたら 、自社の存在価値はない。

  極論を言えば、他社でも同じニーズを満たすことができるのです。

  「高くても買いたい物」「遠くても行きたい場所」「並んでも食べたい料理」が存在する。なぜか?

  そこにお客さ まが価値を認めているからです。

  自社の商品・サービスについて、お客さ まから「高いね」と言われた時、自信と誇りを持って、
  「費用以上の満足度を提供いたします!」と提案できているでしょうか?

  それができていないならば 、お客さまがまだ自社の商品やサ ービスの存在価値を本当に理解して
  いないか、そもそも商品・サービスに存在価値がないかのどちらかです。

 3.自社の強みにこだわる

  企業の存在価値とは、すなわち「会社の強み」が社会に提供する価値です。

  ライバルと差別化し、厳しい経営環境の中でもお客さまから選ばれ続ける強み。勝ち組企業はその
  強みを進化させながら維持している。

  その強みを維持するためには、強みを生み出し続ける仕組みが必要です。

  ある企業研修の討議の場で、「自社の強みは小回りが利くこと。顧客対応力が高いことである。
  それをお客さまが評価してくれている」という意見があった。

  それに対して「お客さまのニーズを把握した上で商品・サービスを提供できていますか?」と
  確認すると、「営業日報や顧客データベースに入力し、管理している」との回答でした。

  「ではそのデータからお客さまが何に困っているか分かりますか?」と聞くと、「そこまでは分か
  りません」という答えが返ってきた。

  お客さまが顧客対応力や小回り対応を評価して取引しているのであれば、それが会社の存在価値
  です。

  ライバルにそれ以上の対応をされないためにも、その強みにこだわらなければならない。

  そのためには顧客対応力、つまり、「ニーズ把握力」や「適切な判断力」により効率的に 対応
  できる人材が必要となる。

  そのような人材を育成するために教育計画を組み、人事制度においてもニーズ把握力や判断力を
  考課項目に組み入れて、体系的に人をつくり、組織をつくることが必要となります。

  このように、ビジョ ンと教育と人事制度をうまく連携させることを目的に、事例を紹介しながら、
  うまくいかない理由やポイントについて述べていきます。

  ビジョンの前提となる自社の存在価値( 強み)について触れました 。

  自社の存在価値は何か、お客さまに対してど んな商品を提供しているのか、提供する商品・
  サービスの真の価値は何かを考えてほしい。

  また、自社の真のお客さまは誰なのか、創業の原点は何かなど、ブレない軸を持っていただきたい。

□ビジョンの明確化

 1.目指すべき姿を明確化する

  会社の存在価値とは、会社が持つ強みであり、ビジョンを描く前提となるものです。

  ビジョンを明確にするには 、会社の目指すべき姿を社員に示し、共有化する必要があります。

  目指すべき姿は、常に「時間軸」と「レベル軸」で考える。

  時間軸とは3年後、5年後、10年後のこと。

  レベル軸とは「売上高○億円」「経常利益△万円」「シェア□%」など。

  例えば、現状で売上高30億円、経常利益3000万円の建設会社が5年後、売上高40億円、
  経常利益1億円を目指すべき姿とすれば、現状と目標とのギャップは、売上高10億円、経常
  利益7 000万円(利益率で1.5ポイ ント差)となります。

  単純な計算ですが、まず、この目指すべき姿を明確に描くことです。

 2.ビジョンは5年以上先まで描く

  ビジョンの重要性は言うまでもないでしょう。

  しかし、企業によ ってその描き方、精度にはバラツキがある。

  理由は、変化の激しい時代、先のことまで分からないからです。

  確かに変化のスピードは 、過去にないほど速い時代環境です。

  しかし、その環境下においても勝ち組企業は存在する。

  勝ち組企業は先見力を持ち、先行経営でライバルに先んじて利益を確保してい る。

  つまり先が分からないという段階で、ライバルに後れを取っているということです。

  ビジョンは目指すべき姿であり、数字です。

  ビジョンをつくる際のポイントの一つ目は「期間」。

  できれば、5年先まで描いていただきた い。

  短期間しか描けない会社は、人材が育たない。

  な ぜなら短期間で目先の数字を追うことに尽力するため、数字の悪い部門に実力ある人材を配置
  して改善を図ることが多い 。

  結果として、目先のことのみにとらわれ、中長期的な人員配置や人材育成ができないのです。

  二つ目のポイントは「具体化」。

  売上げ、利益、シェアとい ったビジョンの軸を細分化する。

  エリア別、顧客別、商品別、担当者別などで組んでみる。

  この際に「ここまでやりたい!」という希望的観測だけでなく、マーケット動向、ライバル動向、
  顧客ニーズ動向といった客観的データや情報を収集して、現実的な数値計画を組むことです。

  自社の業界マーケットは、成長マーケッ トに属しているだろうか、あるいは縮小マーケットに
  属しているだろうか。

  シルバービジネスや環境ビ ジネスなど一般的に成長マーケットとされる業界にお いても、ライバル
  参入が過剰になれば、競争激化から価格競争となり、闘うマーケットが実質的には、厳しい
  マーケットということもあり得る。

  逆に業界的に縮小マーケットであっても 、ライバルが撤退し、 実質的に競争相手が減少している、

  もしくは自社の競争力がライバルを上回っている状況であれば、そのマーケットでの事業は安定
  します。

  い わゆる「残り福マーケット」です。

  ここでのポイントは、自社がマーケットの中でどのようにライ バルと闘い、顧客満足を確保して
  いくかについ て、先ほどのエリア別、顧客別、 商品別、担当者別といった軸で構築することです。

  ここまで意識すれば、現状の延長線上の数字を並べただけの中期経営計画にはならない。

  三つ目のポイントは「ビジョンの継続性」です。

  例えば、5年という期間で、具体的にビジョンを作成しながらストーリーとしての継続性を 持た
  せることです。

  親会社から社長が天下りで来る会社の場合、社長が代わった途端にビジョンの方向性が180度
  変わることもあり得る。

  これでは 現場はたまったものではない。

  ただ例外もあります。

  それは業績や風土が悪い会社の場合です。

  社長が変われば会社が変わる。

  これまでのマンネリ体質から一新するために、舵を切ることが可能となるのです。

 3.人材育成には「意思」が必要

  ビジョンを推進していくには組織、体制づくりが重要となる。

  ビジョン実現のために最適な人材で推進できる 体制をつくることが理想です。

  そこで、必要な人材を、必要な時期に、必要な数だけそろえられること。

  つまり、ビジ ョンに応じてどのような人材が必要になるかを想定し 、人材育成を行うことが
  必要となります。たまたま開催しているセミナーに派遣するような 無計画な育成でなく、人材育成は   「意思」を持って計画的・体系的に行わなければならない。

  意思とは、「会社のビジョン」「ビジョン推進のための必要人材」「必要人材の育成計画」が一気
  通貫でつながっていることです。

  人材育成には時間がかかる。

  だからこそ ビジョンから逆算して人材育成計画を組み、育成していかなければならないのです。

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中小企業の経営改革

自社のビジネスを考える

■新商品を使うお客様ってどんな人?

 Aさんが勤務するキッチン用品メーカーでは、ここ2年ほど売り上げが減少しています。

 この事態を打開するためにチームが組成され、Aさんはそのメンバーに選ばれました。

 Aさんは売り上げの減少要因を探るべく、手始めに競合他社の商品を細かくリサーチしました。

 その結果、自社はリニューアル商品の投入に終始している一方、競合他社はマスコミに度々取り
 上げられるような、ユニークな商品を発売していることが分かりました。

 そこで、「ユニークな新商品の投入が必要だ」と考えたAさんは、新商品の企画案を考えて、課長に
 意見を求めることにしました。

 企画案に目を通していた課長の顔は次第に曇っていき、Aさんに次のように問いかけました。

 「う-ん、悪くないんだけどさ……。

 Aさんはこの商品をどういうお客様が、どういうシーンで使うことをイメージしてる?」

 Aさんはその言葉に対して、「これまでウチの商品を使ってくれていたお客様に、これまでにない
 商品を使ってもらいたくて……」と口ごもってしまいました。

□自社の顧客を定義できていますか?

 冒頭のAさんはお客様のことを考えていなかったわけではありません。

 しかし、主眼にあったのは自社や競合他社が、これまでに出していない商品=“目新しさ”でした。

 自社の顧客を定義することはビジネスの基本です。

 多くの人は、自社の顧客が誰なのか、そしてどのようなニーズを持っているのかを意識しながら
 ビジネスに取り組んでいます。

 しかし、自社が考えている顧客やそのニーズと実情に、ズレが生じていることは少なくありません。

□顧客を定義することの重要性

 1.イメージと実情にはズレがある

  新潟県三条市のアーネストが販売する「シュレッダーハサミ」をご存じでしょうか。

  当初このハサミは、きざみのりを作る用途で販売されていました。

  そんな折、とある顧客から、このハサミで書類がきざめるので、シュレッダー代わりに使っている
  という話が寄せられました。

  そこで、本体の色やパッケージなどを変更し、シュレッダー用途として売り出してみたところ注目
  を集め、ヒットにつながったのです。

  このように、顧客が誰なのか、そしてそのニーズは何かという問題は、思っているよりも簡単に
  答えを導きだせるわけではありません。

  ビジネスでは、自社が想定している顧客やそのニーズと実情にズレはないかを、常に考えることが
  重要です。

 2.自社の状況を明らかにする

  マーケティングに関する書籍では、自社の事業戦略を決定する際の第一段階として、市場分析を
  紹介していることが多いです。

  しかし、素朴な疑問として「どこまでが自社のビジネスに関係のある市場なのか?」と悩んだ
  経験はないでしょうか。

  例えば、牛丼店にとっての業界とは、牛丼店だけで構成される業界を指すのか、持ち帰り弁当店
  などを含む中食業界なのか、それとも外食業界全体を指すのか……。

  こうして考えると多岐にわたる業種・業態の企業が、自社と同じ業界に含まれてしまいます。

  そこで重要になるのが、常に意識すべき業界を、どの範囲までに絞り込むべきかという点です。

  その基準として、顧客を中心に考えてみましょう。

  例えば、顧客が自社の商品Bを購入しようと思ったとき、どの範囲の商品までなら比較対象になり、
  どこから選択を迷うのかというふうに考えて整理します。

□顧客はモノではなく、機能を求めている

 顧客を明らかにした上で、競合他社に比べて価値ある商品なのか、競合他社がまねのできない商品
 なのかを踏まえると、どのような商品を扱うべきなのかが明確になります。

 忘れてはいけないのが、顧客が求めているのはモノではなく、機能だという点です。

 キッチン用品メーカーのAさんにとって商品を販売するとは、包丁や食器洗い用のスポンジを売る
 ことかもしれません。

 しかし、顧客にとっては、食材を切る機能や、食器の汚れを落とす機能のある商品を購入するという
 ことです。

 ですから、包丁や食器洗い用のスポンジを販売しているという意識ではなく、顧客はそれらの商品を
 どのように使っているのかを考え、実情を確認してみなければなりません。

□顧客が商品を使用するシーンを調査する

 実情を確認するため、顧客が商品を使用するシーンを調査してみましょう。

 ハガキやウェブを使ったアンケート調査は一策ですが、その場合、商品に対して思い入れのある
 顧客が、偏った意見を送ってきているかもしれません。

 そこで、アンケート調査だけでなく、売り場で商品を手に取る人を観察したり、対面でじっくりと
 ヒアリング調査をしたり、実際に使っているシーンを観察させてもらうなど、複数の調査方法で確認
 してみるのがよいでしょう。

□商品の再定義によって、売り上げは伸びる

 自社が想定していた用途で顧客が商品を使用していない場合、その商品を再定義します。

 そして、どの店舗、どの売り場に陳列するか、またはキャッチコピーやパッケージなどを少し変える
 だけで、売り上げは大きく違ってくる可能性があります。

 想定と実情のズレを修正することで、新商品の投入のような大掛かりな施策を必要とせず、売り上げ
 を伸ばすこともできます。

□ビジネスを捉える視点は顧客・競合他社・自社の3つである

 事業戦略を決定するような場合、自社の置かれている環境を詳細に把握したり、分析しようとする
 あまり、細部に注意が向き、ビジネスを俯瞰(ふかん)して捉えられていないことがあります。

 しかし、ビジネスを捉える視点とは、常に顧客・競合他社・自社の3つです。

 顧客を明らかにすることは、自社の位置付けや競合他社についても明らかにすることでもあります。

 ビジネスを考える上での出発点となるのは、顧客とそのニーズであるという基本を常に意識しま
 しょう。

 <ワンポイント>

  ・顧客とは誰なのかを常に考えて、確認する

  ・ビジネスを捉える視点は、基本的に顧客・競合地社・自社の3つである

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中小企業の経営改革

中小企業社長のものさし

■企業は社会的公器

 企業、特に中小企業の社長で、「自分が全財産を投下し、企業を興し、命と生活をかけてやっている
 のだから、内部からも外部からもとやかく言われたくはない」、「自分が興した企業なのだから、
 親族が後推するのは当然」といった態度で経営している人が実に多いようです。

 しかし、その考え方は根本的に間違っています。

 企業は生まれた瞬間から、生産や雇用、さらには販売などを通じ、地域と関わるものであり、また、
 かけがえのない地域資源を活用しなければ生存できないように成り立っているからです。

 雇用面において、親族以外の第三者を採用したり、下請企業を活用したり、国や県の政策資金を活用
 するようになると、その社会性はより一段と強まります。

 どのような企業も、社会的公器なのです。

 だから社長は、常にそのことを理解、認識し、決して企業を私物化してはなりません。

□経営者の最大の仕事は三つだけ

 社長の仕事は、企業の売上高を高めることでも、コストを下げることでも、さらにはその結果としての
 利益率を向上させるといった、いわゆる業績を高めるための仕事をすることでもありません。

 もちろん、顧客や仲間との関係性を強めるためと称し、ゴルフ三昧、接待三昧をすることでもあり
 ません。

 社長の最大の仕事は三つであり、そのためにこそ存在意義があるのです。

 一つは、社員を中心として、企業に関わりのあるすべての人々を幸せにするため、進むべき方向を
 全社員に明示すること。

 二つは、全社員が目標に向かって主体的努力を行えるような、よい職場環境を整備、充実すること。

 三つは、後継者を発掘し、育てることです。

 あえていえばこの三つ以外は、社員を信頼し、任せればよいのです。

□企業の目的は業績・成長ではない

 企業はもちろんのこと、行政であれ、教育機関であれ、リーダーが経営を行う際にまず心しなければ
 ならないことは、「経営とは何か」という問いかけであり、その正しい理解と認識です。

 正しい経営についての理解と認識は、右に行くか・左に行くか、何を創るべきか、どう販売すべきか、
 などの経営戦略の策定よりはるかに重要なことなのです。

 目的が間違っていれば、いかによい経営戦略を策定・実施したとしても、市場、希客の評価を得る
 ことは決してできません。

 経営とは本来、その組織に関わりのあるすべての人々に対する使命と責任を果たすための活動の
 ことです。

 そして使命と責任とは、永遠の幸福の追求・実現です。

 つまり、経営とは、業績を高めるための活動でも、成長発展するための活動でも、業界で一番になる
 ための活動でも、ましてや、ライバル企業を打ち負かすための活動でもないのです。

 それらのことはみな、その組織が関係する人々への使命と責任を果たしたかどうかの結果現象といっ
 ても過言ではありません。

 社長をはじめとした組織のリーダーは、特に重要な“関係者五人の、永遠の幸福を追求・実現しな
 ければならないのです。

 五人 とは、以下の通りです。

  第一に「社員とその家族」

  第二に「社外社員とその家族」

  第三に「現在顧客と未来顧客」

  第四に「地域住民・地域社会」

  第五に「株主・関係者」

 社長や管理者は、一般的に業績を高めることに関心が高いものです。そして、「業寮を高めるため
 には、手段を問わない」と言わんばかりに、社員や下請企業、さらには顧客に圧力をかけます。

 こうした社長や管理者の関心は、とかく流行や景気に向きます。

 しかし、このような業績重視型、業績ありき型の経営の考え方、進め方は間違っているのです。

 景気や流行は必ず変化するし、業績を重視するあまり、より大切な人々を犠牲にしてしまうことにも
 なりかねないからです。

 企業経営の最大・最高の使命は“五人の幸せであり、だからこそ重視すべきは業績ではなく、「継続」
 なのです。

□顧客満足は社員満足から生まれる

 そして、この五人のなかでとりわけ重要なのが、「社員とその家族」や「社外社員とその家族」の
 幸福の追求・実現です。

 なぜならこの二人が、顧客や地域住民、さらには株主・関係者らに提供する感動的価値の創造的担い
 手だからです。

 この二人が存在しなければ、顧客が感動する新商品や新サービスを顧客に提案することなどできない
 からです。

 企業にとって顧客満足度は、組織の盛衰を決定づける重要なものです。

 その顧客満足度を高めない限り、その企業の未来はありません。

 ではその顧客満足度は、誰が高めるのか?

 答えは簡単、社員です。

 つまり、ES(社員満足度)を高めなければCS(顧客満足度)は高まらないのです。

 CSを高めるためには、ESをそれ以上に高める必要性があるのです。

 所属している企業への満足度や愛社心があまり高くない、もっとはっきりいえば、企業や上司に
 日頃から不平・不満・不信感をもった社員が、企業や上司の業績と評価を高めるような努力をする
 ことなど、とても考えられません。

 だから企業はまず、社員の満足度を高める努力を払わなければならないのです。

□リストラは企業を内部から崩壊させる

 しかし現実は、あらゆる組織、あらゆる分野で、五人の幸福、とりわけ社員とその家族にとって、
 どう考えても正しくない、不自然な言動を繰り返す組織のリーダーが少なからず存在しています。

 不況で業績が悪化したからと、正規・非正規を問わず希望退職・人員整理などのリストラを行う
 企業があります。

 また、自社の業績を維持し高めるために、下請企業・仕入先企業の大半が赤字経営を余儀なくされて
 いるというのに、一方的でしかも大幅なコストダウンを要請したり、選別・再編などを行うケースも
 あります。

 そうした場合でも、人員整理や下請企業に対するコストダウン強要をした企業の社長や役員の大半は、
 そのまま平然と居座り、指揮を執っています。

 犠牲になるのは決まって、正規の一般社員やパート非正規社員、そして何ら罪のない下請企業・仕入
 先企業の社員なのです。

 しかし、考えてもみてください。

 リストラされたり、一方的で大幅なコストダウンを強要されたりして、幸福と感じる社員や家族、
 下請企業・仕入先企業の社員がいるものでしょうか。

 幸せを感じるどころか、その企業や組織に対する憎しみすら抱くでしょう。

 どんな事情があろうと、組織の同志・家族を引き裂くようなリストラは正しいことではないし、自然な
 こととはいえません。

 そうしたことを繰り返す企業にも、そのときは運よく残った社員がいるはずです。

 しかし、残った社員たちの不安感や不信感は次第に増幅して、モチべ-ションを低下させていくで
 しょう。

 その結果、いずれその企業をリードしていくはずの有能な社員までが離職し始め、やがて細は内部
 から崩壊していくことになるのです。

 発注者と受注者の関係も同じで、強引なコストダウンの要求を換り返すような企業からは、下請企業・
 仕入先企業の廃業が増え、有力な下請企業・仕入先企業の親離れ・自立化が進んでいきます。

 発注者の生産や改善活動を支える下請企業が離反していくことで、社会的分業システムは崩壊して
 いくのです。

□景気に左右されない強い経営をつくる

 こうした正しくない、不自然なことを決断・実行する社長をはじめ組織のリーダーたちに、あえて
 こう言いたい。

 「もし、あなたが逆の立場だったら、そのことをどう思いますか。認めますか。そんなことをされて、
 やる気が出ますか」

 「あなたはそうしたいい加減な会社や社長が嫌だったからこそ、その会社を辞め、理想に燃えて独立
 開業をしたのではなかったのですか」と。

 こう言うと、企業の社長やリーダーたちは、「人員整理もコストダウン要請も、企業の存続のための、
 やむをえない苦渋の選択なのだ」「予期せぬ環境変化で業績が急激に悪化したり、景気の影響を受け
 たりするのは企業にとって日常的なことだ。リストラもコストダウンの要求もしない経営は理想だろ
 うが、そんな美しい経営が成り立つわけがない」などと反発し、言い訳します。

 しかし、それは誤解です。

 繰り返し述べるように、企業経営者が最も重視しなければならないのは、業績などではなく、社員と
 その家族の幸福、つまりその命と生活を守ることだからです。

 だからこそ社長は、不況などの不測の事態に備えて資金の内部留保に努めるとともに、特定の市場や
 取引先に過度に依存しないよう、市場や取引先の分散をしておかなければなりません。

 そして、好不況に関わらず、人材の確保・育成はもちろんのこと、研究開発や新市場開拓に力を注ぎ、
 景気に左右されない景気超越型商品やサービスの創造に努め続けなければならないのです。

 社員とその家族、下請企業を泣かさない、盤石な経営をつくる知恵と工夫と力が、社長には必要なの
 です。

□正しい軽営、偽りのない軽営は漉びない

 毎年、一万社以上の会社が倒産しています。

 その倒産理由は、不況のせいではありません。

 なぜなら、倒産企業は好不況に関わらず、毎年変わらず、一万社以上は発生しているのです。

 売上高の減少をはじめ、業績の低下が倒産理由という会社もありますが、これらは決して本質的な
 理由ではありません。

 では、企業はなぜ倒産し、滅びてしまうのでしょうか?

 答えは簡単です。

 偽りの経営、欺瞞に満ちた経営をやっていたからです。

 一方、長期にわたり、好業績を続けている企業を調べると、正しい経営、偽りのない経営が一貫して
 行われています。

 企業経営とは、企業に関わりのあるすべての人々の永遠の幸せを実現するための活動です。

 したがって経営者・リーダーは、このことを肝に銘じ、リーダーシップを発揮すべきなのです。

 しかし現実は、社員や下請企業、顧客や地域住民の犠牲の上に成り立っているような企業が数多く
 あります。

 偽物の社長やリーダーが多すぎるのです。

 一般社員や契約社員への冷たいリストラ、縁の下の力持ち的存在でもある下請企業への理不尽な大幅
 コストダウン要求などがその表れです。

 こうした、正しくない経営が長続きするはずはありません。

□社員は経営の姿勢・あり方に反発する

 もちろん残念ながら、どんな準備をしていても、大幅な経費の削減が必要な場合があるでしょう。

 そんな場合でも、社員の人件費に手をつけるのは最後の最後でなければなりません。

 そして、多くの社長は、その人件費の削減方法を勘違いしています。

 「総人件費=社員数×平均賃金」ですから、社員数と平均貸金の双方に目を向けるべきなのに、
 社員数の削減にこだわるのです。

 こうしたこだわりが、間違いのもとなのです。

 総人件費の削減は、社員数ではなく、平均貸金にこそメスを入れるべきなのです。

 「不況によるリストラは、ある意味ではダメな社員を整理するチャンスでもある。

 それなのにそんな横並びのことをしたら、できる社員がヤル気をなくして、辞めていってしまう。

 会社の再生は一段と困難になってしまうだろうJと心配する人もいるかもしれませんが、これもまた
 全くの誤解、錯覚です。

 喜びも悲しみも苦しみも、共に分かち合う経営、誰も犠牲にしない経営こそが、正しい経営・自然な
 経営だからです。

 もし仮に、そうした正しい選択に異議を唱える社員がいるようなら、そのことこそが、自社の不況の
 最大要因といってもよいでしょう。

 同志・同僚・仲間への愛や利他の心がまるで感じられない、単にお金で会社とつながっているような
 社員が、これからの時代、企業の盛衰の決め手となる「感動価値」や「企業の社会価値」をもたらし、
 高めてくれるとはとても思えないからです。

 全社員の人件費の削減という苦渋の選択に、「どうして自分まで……」と言う社員がもしいるよう
 なら、その社員こそ、辞めてもらったほうがよいでしょう。

 そこには仲間意識や愛社心が微塵も感じられないからです。

 そうした人物は「偽物の強者」です。

 すべての社員の人件費を削減する場合は、その割合を考えることも重要です。

 当然ながら、削減幅は最高責任者である社長を最大とし、以下段階的にカット率を下げて、一般
 社員や非正規社員のカット率を最も小さくすることです。

 これを前提に、社長は状況と対処の方法を全社員に直接説明し、理解と協力を仰がなければなりません。

 社員や下請企業・仕入先企業は決して、貸金カットや大幅なコストダウンそのものに不平・不満・
 不信感を募らせるわけではありません。

 社長をはじめとした組織のリーダーの、自己保身的でいい加減な姿勢、対処法に反発するのです。

 社員がやる気を喪失する理由は、不況などによる業績の悪化などではありません。

 最大の要因は、社長や上司に対する 「不平、不満、不信感」です。

 ある会社社長は、業績が前年比80%ダウンした際、全社員を食堂に集め、業者低下をわびるとともに、  
 「どんなことがあっても誰一人辞めさせない。その代わり、軌道に乗るまで部課長は25%、役員は
 50%、自分は90%、給料をカットする。

 何かとお金の必要な一般社員は一円もカットしない。

 二度とこんないやな思いをしないよう頑張ろう」と言いました。

 1年後、この会社を訪問すると、業界全体の業績が依然低迷しているなか、この会社の業績だけは過去
 最高でした。

□決してやってはいけない三つの競争

 元気のない中小企業は、中小企業がやってはいけない三つの競争をやっています。

 第一は価格競争、第二は品ぞろえ競争、そして第三は内部の社員間の過当競争です。

 第一の価格競争は、結果として誰かを苦しめてしまうばかりか、近年の経済社会のボーダレス化・
 グローバル化のなかではどう考えても成立しません。

 中小企業は、価格ではなく、商品力、人材力、マーケテイング、社会、情報力、技術力といった、
 非価格競争力こそを重視すべきなのです。

 第二の品ぞろえ競争は、資本力、生産力、調達力のある大企業が有利に決まっています。

 中小企業は幅を狭め、専門特化戦略をとるべきでしょう。

 第三の内部の社員間の競争とは、近年の行きすぎた成果主義型人事制度や賃金制度などのことです。

 社員間の過度な競争は、同一組織に勝ち組と負け組を発生させ、職場がギスギスするばかりです。

 中小企業の最大の強み、財産は、大家族的経営です。

 過度な成果主義は決してそれにふさわしい制度とはいえません。

 そして、中小企業の経営は、オンリーワン経営を目指すべきです。

 差異化の徹底こそ、時代が強く求める経営スタイルなのです。


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中小企業の経営改革

管理職育成のための社長の役割

■管理職にはなりたくない?!

 出世が何より優先された時代、従業員は管理職になることを目指して頑張り、実際にそうなれたので
 あればとても名誉なことでした。

 しかし、現在は働くことに対する考え方が多様化しており、仕事一辺倒ではなくプライべ-トの充実を
 重視する従業員も多くいます。

 こうした従業員は、出世にあまり興味がないようです。

 また、管理職が社長と部下の間で板挟みとなり、苦悩している様子を見て「管理職は大変そうだから、
 なりたくない……」と考える従業員も少なくありません。

 一方、企業にとって管理職の存在は不可欠です。

 また、管理職自身にとっても、苦労は多いものの、部下一人ひとりの成長を確認できる喜びがあります。

 社長は、期待する従業員が管理職になって組織をまとめてくれることを期待しています。

 管理職になりたくない従業員が増えている現在、社長はどのように彼らの不安を解消していくべき
 なのでしょうか。

 ここではこの点を考えていきます。

□管理職の基本的役割を整理する

 1.管理職が担う5つの役割

  管理職の基本的役割は次の通りです。

  (1)計画提案

   社長の意向や企業目標に従って、自らの部門や部署の短期(半年~1年)、中長期(3~5年)の
   計画を捷案する

  (2)実行・アラーム

   1の計画提案を鋭意実行するとともに、うまくいかない状況に直面したときには、直ちに社長や
   関係各所などに伝え、調整する

  (3)部分決裁

   一定の範囲内で、業務遂行に必要な決裁を行う

  (4)部分代表

   一定の範囲内で、対外的に企業を代表する行動を取る

  (5)指導

   部下を指導・育成する

  「(3)部分決裁」と「(4)部分代表」ついては、明確なルール(役割の範囲)を決めておけば
  難しいものではありません。

  この他の「(1)計画提案」「(2)実行・アラーム」「(5)指導」については、センスが求め
  られる部分なので人によって大きな差がつきます。

 2.「計画提案」の役割を強化するためのポイント

  管理職は、企業の目標を達成するために、投下できる経営資源を考慮して計画を作成します。

  しかし、新任の管理職は、特に部下の能力などを十分に把握できていないため、計画を作成するのに
  戸惑ってしまいます。

  社長は、管理職の 「計画堤案」を強化するために、次のことに注意しましょう。

   (1)計画は、短期と中期のものを作成させる

   (2)その計画を社長が修正する場合は、その理由を伝えるとともに、修正案を実現するための
     方策を教える

   (3)最終目標について、「いつJ「誰が」「誰に対して」「何を」「どのように」するのかの
     実現プランとスケジュールを作成させる

  計画については、実現可能性、緻密さ、分かりやすさが重要です。

  この点についても、管理職に意識させるようにしましょう。

 3.「実行・アラ-ム」の役割を強化するためのポイント

  社長の多くは、「うちの管理職は計画を立案しても実行しようとしないし、進捗の報告もして
  こない」という不満を持っています。

  しかし、こうした状況を作り出しているのは、日ごろの社長の管理職に対する態度かもしれません。

  当然ながら、社長は管理職のことをある程度信頼しています。

  そのためか、普段、あまり管理職に関心を払っていないようです。

  しかし、管理職も人間です。

  自分に関心を示していないように見える社長とは、あまりコミュニケーションを取りたいとは思わ
  ないかもしれません。

  そこで、社長は次の点に注意し、計画の進捗やアラーム情報を確認しましょう。

   (1)人数を絞ったグループ別の小規模な報告会を開催する

   (2)週に1回、あるいは月に1回など定期的に計画対比実績を文書で報告させる

 4.「指導」の役割を強化するためのポイント

  従業員指導は、自社の将来像実現に向けて、人材を確保するための一つの手段です。

  社長は自らの言葉で自社の将来像を皆に示し、それを実現するには「どのような人材が必要か」
  「従業員に対して、どのような指導を行うべきか」を明確にする必要があります。

  指導は一般の従業員に限ったものではなく、管理職にも行います。

  管理職指導は、社長の思いを管理職に伝えるよい機会となります。

  そのため、社長は次の点を確認しながら、管理職との面談や階層別研修などを行って、管理職の
  能力向上に取り組むことが必要です。

   ・管理職はどのような指導方針を持っているか

   ・管理職がどのような能力を持っているか

   ・管理職の能力を生かすために何をさせればよいか

  また、「360度評価制度」を導入して、部下の立場から管理職を評価した結果を本人にフィード
  バックすることも一案です。

  部下の評価は厳しいものもあるでしょうが、それと真摯に向き合うことで、管理職は自分に不足
  している部分に気付き、改善することができるでしょう。 

  最後に、管理職が部下を指導しやすい環境を整えることが不可欠です。

  管理職は日常業務や毎月の目標に追われており、部下指導の十分な時間が確保できないことが
  あります。

  これは好ましくないので、社長は管理職が部下への指導を実践するための時間的余裕を確保して
  あげましょう。

  例えば、週に1時間、管理職と部下が定期的に面談することを社内ルールとして定めて徹底する
  のです。

  社内ルールになると「やらなければならない!」という意識が広がり、週に1時間程度の時間で
  あれば、皆確保するものです。

□社長が管理職を育成する際のポイント

 1.「部下に考えさせる」ことを指導する

  管理職が部下を指導する際に特に難しいと感じるのは、「どこまで教えて、どこを考えさせたら
  よいのか」ということです。

  社長はこうした点に配慮して、管理職に部下の指導方法をアドバイスするとよいでしょう。

  例えば、「どのように対処すればよいでしょうか」と安易に解決策を聞いてくる部下に対しては、
  「部下の質問にすぐ答えるのではなく、部下に自分で深く考える癖をつけさせてください」と
  いった具合です。

  また、管理職は、仕事の進め方や取引先との交渉などのやり取りを部下に教える際、実際に見本を
  示して指導することが多いはずです。

  場合によっては、管理職のやり方をそっくりまねる部下が出てくるかもしれません。

  そのため、社長は管理職に自分の仕事の進め方を振り返るように伝え、「部下がまねをしても問題
  ないレベル」を維持するように伝えなければなりません。

 2.時間感覚を持たせる

  期限が設定されていない業務はありません。

  社長は管理職に時間感覚を徹底的に教えましょう。

  具体的には、前日または当日の始業前に、管理職と部下が必ず完了させなければならない業務を
  選ばせ、それぞれの遂行時間を明らかにさせた上で実際に取り組んでもらいます。

  終業時、どこまで完了したかを確認しますが、最初のうちはほとんど完了していないはずです。

  理由は2つあります。

  1つ目は、これまで時間の目安を持ち、それを守ることを意識しながら業務をしてこなかったから
  です。

  そのため、計画時間は甘すぎて、実際はこれを大きくオーバーする時間がかかっています。

  2つ目は、「時間に追われている」という感覚に襲われ、焦ってしまって着手がバラバラになる
  ことです。

  時間管理の基本は、自分と部下の仕事のスピードを知り、それを念頭に置きつつ着手の優先順位を
  決めることです。

  管理職は「管理がきつい……」と嫌がるかもしれませんが、そこを超えれば無駄な着手がなくなり、
  時間効率が上がるはずです。

  この点を管理職に説明した上で、実践してもらいましょう。

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中小企業の経営改革

若手社員が育つ環境づくり

■素晴らしい職場

 素晴らしいと思う職場は、その雰囲気の違いが、 入ったと同時に分かります。

 それは若手社員がイキイキしているからです。

 若手社員の一人が上手く育っていくと、その先輩を目標に、後輩がまた育っていく 「善循環」が
 生まれ、どんどん育っていきます。

 それが、確実に社風として定着している会社は、その空気までが違ってきます。

□「志」は、先輩が身をもって示す

 「志」を持っているかどうかが、仕事においても人生においても、非常に重要な第一歩であると感じ
 ます。

 逆に、「仕事を辞めたい」「仕事が面白くない」と言っている人の話を聞くと、その職場がゆるみ
 きっていることが多いように思います。

 若手社員が「志」を持ち、仕事に励める環境は、そこに働いている上司・先輩自身が、「志」に燃え、
 働いている姿によって生まれます。

 余談ですが、小さな商店や、職人といわれる業務形態が少なくなり、サラリーマン化が進んだ結果、
 父親の働く姿を見る機会が少なく、また、手伝うということもほとんどないまま育った人が多い
 ように思います。

 だからこそ、その勤め先で働くということを、一から教えていかねばならないのです。

 世の中にはいろいろな考え方があってよいと思いますが、「時間から時間まで、労働力を提供する
 こと」以外にも、働くことの意味があるということを、知らずにいるとしたら、不幸なことです。

□存在価値、求められることの喜び

 今、仕事が充実し、「会社を辞めよう 」 という気持ちが起きない最大の理由として「私を必要と
 する人」 が存在することが挙げられます。

 営業をしていたとき、初めてお会いしたお客様から「近くへ来る ときには、ぜひ立ち寄って下さい」
 と言って頂けたときに、大きな喜びを感じ、また、そういう出会いを得られたお客様のほとんどが、
 仕事につながりました。

 例えば、新入社員時代には、 たまたまパソコンが得意だったために重宝がられ、誉められるたびに、
 まだ何もできない新入社員でありながら、何か一つでも会社のために役立っ ているということが安心
 感となり、励みになったりします。

 「人は誉めて育てる」という言葉を聞きますが、そのポイントの一つとして「その人の存在価値を
 高める誉め方」が大切だと思います。

 会社を辞めていく人のほとんどは、自分の居場所がなくなったため辞めるのではないでしょうか。

 組織にとって、なくてはならない人になるための本人の努力も大切ですが、若い人に対し、存在価値
 が発揮できる仕事を見つけ、与え、そしてしっかりと誉めることが若い人を育てるために必要なこと
 です。

□職場が明るいこと

 個々人においても、まず明るい性格であることが大切であるように、職場においても「明るいムード」
 がとても大切です。

 コピーをとりに行くにも小走りになるような活気のある職場では、そこの幹部自らが、明るい前向き
 の考え方であることに気付きます。

□自慢話からは、明日の夢は出てこない

 特に酒の席で聞かされることが多いのが、この「自慢話」です。

 聞く側にとっては、それを誉めるように相づちを打つしかなく、心の中では「それがどうした」と
 思うような程度の自慢話でも、我慢して聞くしかないのです。

 その自慢話が、たとえどれだけ素晴らしい内容であっても、大切なことは「今のこと」であり、
 「これからどうするのか」ではないかでしょう 。

 自慢話をするというのは、今の自分に対して自信が持てないのだろうか?と思ってみたりもします。

 それより、志を持って仕事をしている人からは、自慢などは一切出てこないことの方が、素晴らしい
 ことのように思えます。

 志のある人というのは、明日からどう生きるかに全神経が集中している為に、過去のことなどは、
 全く眼中にないのでしょう。

 こうした幹部陣のいる職場では、当然のように活気があり、明日の夢がある話が飛び交うムードが
 出来ていきます。

□建て前と本音の混在はあってはならない

 建て前というのは、本心は別でありながら、公の場では皆に迎合している状況のことです。

 本音を話せない、話さないことも悪いことですが、それ以上に、陰で本音を関係ない人にぶつける
 ことが、職場環境の悪化を招きます。

 最も身近なケースとしては、酒の席で上司の悪口をネタに酒を飲むという場合が考えられますが、
 これは仕方ないことかとも思えます。

 しかし、これからの若い社員に対してはグチを言ってはならない。

 若い人の多くが、会社の上司と一緒に酒を飲みたがらない理由は、こういう所にあるのです。

 グチは聞いていて決して気持ちよいものではありませんし、そうしたグチを言う人は「堂々と正面を
 切って文句を言えぬ人」として目に映る方が多いのです。

 また、こうしたことが上司への不信感へとつながるケースが往々にしてあるのです。

 また、本音と建て前が出てくる例としては、会社の方針に対して合わないというケースがあり ます。

 この場合でも「決まったことは責任を持ってやる 」という姿勢を示すことが大切であり、決して若い
 人の前で、不平不満を漏らしてはならないことです。

□経営理念の徹底

 本音と建て前が生じる根本的な問題として、勤める会社の経営理念を正しく理解していないという
 点が挙げられます。

 会社の経営理念が建て前となっている職場では、若い人は育たないでしょう 。

 企業における経営理念は、その会社の存在価値を認識すべきものであるはずだからです。

 経営理念の事例として、よく見かける「世の中に広く貢献し…… 」 という言葉に対し、その会社の
 幹部が、それは単なるお題目であると感じているならば、職場が明るくなることは、決してありません。

 自由競争の社会では、社会に必要とされぬ企業は存在できないと考えていま す。

 単に社会利益に反するというだけでなく、効率という競争に負けた企業も、社会にとって利益をもた
 らさないと考えられます。

 それだけに、今、存在している企業には必要とするお客様がいるのであり、必ず本業を通じて世の
 中に貢献しています。

 このような経営理念に基づいて、自分の仕事の役割を認識しているのであれば、決して、後ろ向きの
 考え方は出て来ないでしょう 。

 若手社員が育つ環境づくりの為に、企業としての志を明確にし、明日の夢に向かって、幹部自身が
 まず態度で示してくことが大切です。

□給与より夢を

 1.中堅社員は「将来の生活」 を考える

  中堅社員から の相談の中で、最も多いのが「給与に対する不安感」 です。

  皆、「与えられた範囲で生活すること 」と「どれだけ貰っても、満足は別の問題であること」は
  理解しています。

  しかし、金額の絶対額ではなく「将来、どうなる のか」について不安になるのでしょう。

  子供の成長などによる生活費の増大と、自分の年齢的あせりにより、「今の会社でこのまま働く
  ことが一番良いのか」の判断について、多少なりとも、悩みを抱えているように思われます。

 2.若手社員は「生活感」が薄い

  若手社員は、まだまだ生活に対する責任感が弱いだけに、中堅社員のような悩みは少なく、人生
  設計などの生々しさは感じられません。

  給与は多い方が良いに決ま っていますが、仕事を選ぶのは、それだけではありません。

  「少年よ 大志を抱け」ではありませんが、若手社員にとっては、「自分の将来に対する可能性が、
  どれだけ得られるか」が、 一つの大きな基準になっているはずです。

  今の職場で、どこまで自分の可能性が発揮できるかが、給与の問題より大きく、「働きがい」「向上
  心」の源であると考えられます。

 3.夢のふくらむ職場

  今の仕事が辛くても、いつかは越えられることが分かっていれば、いくらでも頑張れると思います。

  逆に、

   A.今の仕事の状態が延々と続き、変えるチャンスがない

   B.社内で評価されず、万年補欠状態

  であるならば、当然、行き詰まると思います。

  若手社員には、常に夢と希望を与えつづけることが、育成の重点です。

□幹部が範を示し続ける

 部下は、上司の行動に非常に敏感です。

 言葉遣い・態度の一つひとつに神経をとがらせています。

 そうした中、仕事に対して熱意が感じられぬ幹部は、若手社員に大きな害をもたらします。

 「口ではいつもカッコイイことばかり言っているくせに、自分の行動は、いい加減じゃないか!」と
 思われるようでは、若手社員は反発するばかりです。

 セールスパーソンでも同じで、昼間に事務所にいることが、周囲に害を与えます。

 セールスパーソンは、お客様に会うことが仕事ゆえに、一生懸命走り回っている姿を内部のメンバー
 に見せねばならないでしょう 。

 内部での仕事の担当者が、セールスパーソンの一生懸命な仕事を見ていれば、「内部の仕事は手伝っ
 てあげよう」という気持ちになるはずです。

 これが逆になれば大変だと思います。

 幹部が示す姿勢・態度も全く同じはずです。

「幹部社員は常に謙虚で、真剣かつ情熱的な姿勢・態度を、部下に望む以上に、実践すること」が、
 若手社員育成に求められます。

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中小企業の経営改革

イノベーションを起こす Ⅱ

□現代社会を生き抜く「習慣」を身に付けよう(2)

 1.PC操作の今昔

  職場に1人1台のパソコン(PC )が普及したころを思い出してみよう。

  「K君。ちょっとこれを頼む!」。

  50代後半のY部長が、手書きのメモ用紙をヒラヒラとさせている。

  「PCの文書作成ソフトで書類を作成してくれ!」という指示である。

  「はい。承知致しました」。

  若手社員のK君は、素直に返事をするが、これがなかなか難しい。

  お世辞にも読みやすい字とは言えないからだ。

  タイプライターやワープロ専用機が主流だった過去には、タイピストという職種があり、彼女たちが
  役割を担っていた。

  その後、PCの普及とともに多くの若手社員や事務社員がブラインドタッチを覚えていった。

  それに引きずられて中堅社員もキーボード操作を覚えたのである。 

  最初、人差し指で入力していた幹部社員も、何とか5本の指を使おうとトレーニングしたものだ。

 2.ブラインドタッチはビジネス パーソンに必要なOSの一つ

  どうしたらブラインドタッチを早くマス ターできるのだろうか ?

  日常業務で使用していれば、何とかなると考える人も多いだろう。

  しかし最も効率的に体得するには、タイピングソフトを使用し 、ゲーム感覚で正しい指の配置を
   覚えるトレーニングをすることです。

  キーボードの 位置を目で確認しなくてもよいように、指の感覚でマスターしていく。

  初めは、まともに入力できないかもしれない 。

  しかし、2、3日集中的にトレーニングすればケタ違いに成長できる。

  10分間で1 000文字以上打てるほどのパフォーマンスが発揮で きるようになる。

  こうした練習をせず300文字程度の処理速度で業務をこなしていたら――と考えると、文字
  入力の生産性格差は計り知れない。

  このようにビジネスパーソンがPCを操作する際のブラインドタッ チというスキルは、PCで
  言えばOS(オペ レーション・システム)のような ものです。

  日常業務というアプリケーションを稼働させるためには、ブラインドタッ チのようなOSを
  インストールしていなければ、 とても間に合わない。

 3.業務効率を上げるためのOSをインストールしよう

  現代社会を生き抜く「習慣」の土台は、 ビジネスパーソンに必要なOSをインストールし、常に
  発揮できるよ うにすることである。

  前回のⅠでは、 インプットする習慣とアウトプットする習慣を書き出してもらった。

  このバランスが崩れている場合は、OSそのものに問題がある場合が多い。

  ともかく、ルーティン業務を 効率的に行うOSをインストールすることから始めてみよう。

  これが、創造するための時間を確保する仕組みになる。

  生産管理の観点で例えるなら、どこにど んな工場を建てるのか 、十分に吟味した上で建設した
  工場そのものがOSと言える。

  半導体工場が、地震が少なく水や空気がきれいな場所を選定しているように、自社の強みを発揮
  できる工業立地・工場立地を考える。

  そして受注生産や見込み生産といった生産形態に応じた工場が建設され、生産活動が行われる。

  もちろん投資が必要ではあるが、新たに工場を建てるのであればOSのインストールはやりやすい。

  だが、古くなった既存の工場の業務効率を根本的に上げるには限界があるように、OSの再イン
  ストールは容易ではない。

  一方、 ビジネスパーソンのOS再インストールは、決断さえしてしまえば不可能なことではない。

  個人においてはあなた自身が、組織においては組織のリーダーが覚悟を決めればよい。

 4.現代社会を生き抜く「仕組み化という習慣」

  ビジネスパーソンに必要なOSは、業務量そのものを減らすた めのOSと、スピードを上げ単位
  時間当たりの処理量を増やすOSに分けて考えるとよいでしょう。

  この二つの共通項は「仕組み化という習慣」である。

  業務量そのものを減らすため、業務の2S(整理・整頓)を仕組み化していく。

  業務の整理とは、あるべき姿=使命から判断し、いらない業務をやらないと決めること。

  一定期間、不要な業務を行わず支障がないことを確認してから正式に廃止していく。

  そして業務の整頓とは、必要な業務をすぐ実施できるように必要資料の配置や手順を明確にして
  いく。

  2Sをベー スに、ルーティン業務を効率よく処理する仕組みをつくり、創造のための時間を確保
  するのです。

  このように、現代社会を生き抜くために は、日常業務の習慣を見直す必要がある。

  適切なOSをインストール し、ルーティン業務を仕組み化する習慣をつくるのです。

  そして、ストレス社会で健康に過ごす心のタフネスさを身に付ける プロセスで、基礎体力を鍛え
  ていく。

  極論を言えばルーティン業務は、完全自動化できる。

  異常時以外は人の手を介さなくても滞りなく業務を流す ことができる。

  この思想で仕組み づくりを進めよう。

  ただ、仕組みづくりの重要性を説明すると「日常業務で精一杯。朝から晩までやっても追いつか
  ないぐらいなのに、仕組みをつくる暇なんてない」との声が聞こえてくる。

  しかし「非効率な業務を毎回手作業のようにやっているから、仕事が 自動化・効率化できない
  状況になっているだけだ」という事実に気付いてほしい。

  仕組み化に時間を投資して中長期的なリターンを手に入れる習慣を身に付けてほしい。

  体力をムダに消耗するのではなく、回復させられるようにするのです。

  できない理由を挙げる人々は、自分自身=今の習慣と同一化し てとらえている場合が多い。

  こうなると、変えることはとても難しく感じる。

  習慣は、あなたの思考や行動であって、あなた自身ではない。

  だか ら変えることができると気付きましょう。

 5.「仕組み化」の進め方

  アウトプットの8割以上を占めるルーテ ィン業務を仕組み化す るには、業務の手順を明確にする
  ことから始める。

  価値観が複雑化した現代に、「あうん」の呼吸で理解しろというのでは、あまりに も非効率。

  異なる人々が集まっ ても、適切にルーティン業務が行えるように手順を体系化するだけでかなり
  効率化できる。

  基本的な応対ができるようになり、将来的にはそこに個々のノウハウを乗せて平均よりも上の
  仕事ができるようになる。

  このように、ルーティン業務は自動化で きるという視点で仕組み化を進めれば、驚くほど効率が
  よくなるでしょう。

 6.習慣を見直すために

  仕組み化を習慣にするためには、汎用性の高いOSをインスト ールする。

  そして何をどうやって仕組み化していくのかというアウトプットを明確にする。

  盲目的に日常業務をこなしていても明るい 未来は来ない。

  井の中の蛙(かわ ず)にならぬよう、読書会や公開セミナー、趣味の世界など、外の世界から
  情報をイン プットしていく。

  古い習慣が持つ因習から抜け出し、新しい習慣に移行するために心の スパイス(それを実現して
  いる人と会話をするなど)を繰り返し取り入れることを心が けよう。

  自分自身のモチベーションも仕組みで育てていくのです。

  この「仕組み化」を決断するのは、あなた自身であり、組織のリーダーです。

  覚悟を決めなければ始められない。

  今、覚悟を決めれば、組織やあなた自身が確実に進化していくでしょう。

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中小企業の経営改革

イノベーションを起こす Ⅰ

 ■イノベーションが求められる時代

 1.“イノベーション”を始めよう

  イノベーションを起こしたいのであれば、豊かな発想を持ち、柔軟に行動できる人を育てなければ
  ならない。 

  ここでは、このイノベーシ ョンを起こす人の働き方を提案していきます。

  従来の商習慣や仕事の進め方にとらわれず、未来を見据えて柔軟に新たな発想ができる人、実践
  で きる人のことです。

  会社の成長に欠かせない、重要な人材です。

 2.進むコモディティー化で消耗戦を続ける企業

  激変する環境の中、あなたの会社が提供し ている製品やサービス は、どのような状況に陥っている
  のだろうか。

  多くの場合、コモディティー化( カテゴリー内での商品の差や違いがなくなること)が進んでいる。

  例えば、液晶テレビ は販売価格の下落が抑えられず、多くのメーカーが赤字を出している。

  コモディティー 化が進展すると、販売価格は上げられない。

  コスト削減にも限界がある。

  人件費の削減で何とかするしかない。

  そこで、コモディティー化の波が労働市場にも押し寄せている。

  本来であれば、根本的に効率化を図るた めの工夫が必要だが、多くの会社では「気合と根性で
  やり切ろう」という判断が下される。

  働いている社員は考える余裕がなくなり、さらに疲弊してしまう。

  人員削減対象となっ た社員も簡単には新しい職場が見つからない。

  コモデ ィティー化したレッドオーシャン (激しい競争が展開されるマーケット)の世界で、従来
  通りの戦い方を続けていても未来はない。

 3.精神的に負担が重たくなっている

  精神的な病になる人が増えている。

  厚生労働省の調査によると 、うつ病・躁うつ病の総患者数は1999年の 43万人から2023年
  には258万人へと大幅な増加になっている。

  特に、若い働き盛りの世代で増加率が高くなっているようです 。

  精神的負担が重く、苦しんでいる予備軍も多いと思われる。

 4.改善よりもイノベーション

  自社の現状を真摯(しんし)に見つめよう。

  これだけ社会環境が変化し、戦い方も変化している中で、社内の仕組みはどう進化している
  でしょうか。

  中期経営計画や年度方針の立案や推進、決裁や会議の仕方、現場業務の進め方など 、やり方を
  進化させているものは何だろうか。

  従来と同じ場合、革新する必要はないだろうか。

  社内にイノベーションを起こしたいと考える社長や経営幹部は多い。

  しかし 、新たな取り組みを浸透させ、変革による効果を発揮している企業は、その中の一握り
  だけです。

  日本人は、小さな改善が得意です。

  コ ツコツと改善を積み重ね、魅力ある製品を安く提供できるように努力している。

  かつてはそれが日本の強さでした。

  しかし、コモディティー化した社会で は、改善の積み重ねでは太刀打ち できない場合が多い。

  人件費が10分の1の国で製造したモノとは、とても互角に戦え ない。

  だから、根本的にルールを変える必要があるのです。

  日本が経済的に成り立つためだけでなく、そこで働く一人ひとりが幸せになるためにもイ ノベー
  ションが求められている。

 5.これから求められる人材

  イノベーションで有名な企業は、スティ ーブ・ジョブズが率いたアップル社である。

  パソコンというツールで 世界を変え、iPodやiPho ne、iPadなどで私たちの新しい
  ライフスタイル を広げてくれた。

  ジョブズ自身、 破天荒な部分もある。

  しかし、これから求められる人材は、彼のようにイノベーションを 起こせる人材である。

  変化する環境に困惑しながら、ただ指示に従い疲弊していく人材ではなく、柔軟に立ち向かい、
  道を切り開く ことができる人。

  既存の枠にとらわれず、創造的に豊かな発想を持ち、人やアイデアを結びつけて形にできる人。

  利他心を持って新しい価値を生み出している人――。

  そんな人材である。

  柔軟に発想し、イノベーションを起こす人材は、ルールそのものを変えて いく。

  野球のルールにとらわれず 、サッカーやゴルフ、将棋など異なった分野のよい部分を取り入れ、
  全く異なった価値を生み出していくのです。

  これまで、成功や失敗などの経験を通じて徐々に成長すれば十分だった。

  しかし、これからは環境変化のスピ ードに合わせて成長することが必須条件となる。

  効率よく学び、本来の自分自身の能力を引き出し、直感で成果を発揮できる能力を育成せねば
  ならない。

  基礎体力をつけ創造力を高めよう。

  イノベーション人材の基本を習得し、学びを、そしてあなた自身の成長を加速させよう。

 6.イノベーションを起こす人のつくり方

  イノベーションを起こす人の育て方は、現代社会を生き抜く力を身に付ける(基礎体力の育成)
  ステップ を経て、創造力を育て発揮する( 直観力の育成)ステップに上らせていく。

  今すぐ変わ れるウルトラCは存在しないが、 確実に進化するためのプロセスである。

  現在をス タート地点として、

   ◎ステップⅠ 現代社会を生き抜く力を身に付ける(基礎体力の育成)

    日常生活の習慣を見直し、ストレス社会で健康に過ごす対応力を育てるトレーニング

   ◎ステップⅡ 創造力を育て発揮する(直観力の育成)

    固定概念にとらわれることなく、柔軟に 物事を発想する力を育てるトレーニング

   ――といったステップで 成長の階段を上っていきます。

  二つのステップを踏まえた結果、あなた の「イノベーションを 起こす能力」は確実に進化し、
  成果を出せるようになるでしょう。

  あなたは取り換えがきく部品のように、交換可能な社員ではない。

  会社にとって必要不可欠な要の人材である。

  あなたの会社も、取り換えがきく製品やサー ビスのように、交換可能な会社ではない。

  社会にとって必要不可欠な要の会社である。

  「あなただから」「御社だから」と言わ れるように眠っている才能を引き出そうではないか。

□現代社会を生き抜く「習慣」を身に付けよう(1)

 ここでは、前述し た二つのステップのうち、現代社会を生き抜くための「習慣」(基礎体力の育成、
 ステップ1) についてお伝えしていきたい。

 1.習慣がすべてを決める

  あなたの周りには、ど んな人がいるだろうか。

  「こうやったらうまくいくかもしれない。挑戦してみよう…」 と、柔軟に新しいことを取り入れ
  ながら成長を続ける人がいる。

  その一方で「この景気だから業績低迷はどうしようもない よ…」と外部環境のせいにしてグチを
  こぼすだけの人や、「とにかくやるしかありませ ん。日々努力をしていますが、なかなかラクには
  なりません…」と、激増する業務に真面目に取り組み、従来のやり方で何とかやり切ろうと精一杯
  の人もいる。

  さまざまなタイ プがいることでしょう。

  では、こういった思考パターンや行動パ ターンの違いはどこから生まれるのだろうか。

  じっくりと一人ひとりを 観察してほしい。

  単純ではあるが 、それは「習慣」の違いに起因しているのです。

  成果を出す人は、成果を出す習慣を 持っている。

  成果を出せない人は、出せない習慣を持っているだけです。

  つまり「習慣」 がすべてを決めている。

  あなたの「習慣」があなたの思考や行動を生み出し、人生を決めているのです。

  習慣の大切さはよく耳にすることでしょう 。

  だが当然すぎるがゆ えに、重要性を正しく認識し活用している人は少ない。

  答えは足元にある。

  自分自身の習慣を見直すことが要です。

  イノベーションを起こす人になれるか否かは 、あなた自身の習慣が決めるのです。

 2.習慣を棚卸ししよう

  あなたは、どのような習慣を持っているだろうか。

  今すぐ棚卸しをしてみよう。

  何気なく過ごしている日常を 振り返り、じっくりと見つめてほしい。

  とは言え、習慣と一概に言っても思い描きにくいでしょう。

  思考や行動といった視点で個条書きに書き出してみるとやりやすい。

  そして 、インプットとアウトプットとい うフレームワークで分類し、関連する習慣を線で結んで
  みるのです。

 3.大切なのはインプットとアウトプットのバランス

  実際、どのような結果になっただろうか 。

  大切なのはインプッ トとアウトプットのバランスです。

  たくさん ビジネス書を読んで情報を得ても 、現場で活用するというアウトプットがなければ意味
  がない。

  朝礼でいくら叱咤激励しても、適切なインプットが少なく中味が薄ければ、ただの遠吠えである。

  無論、量だけでなく質のバランスも確認してほしい。

  このバランスは、生産管理の観点に例えると分かりやすい。

  ま ず社長は、顧客のニーズを把握し、どのような製品をつくるのかというアウトプットを決める。

  そして製品が設計通りの品質・原価・納期を満たすように、生産の3 要素を確保する。

  具体的には、人(Man)・機械(Machine)・材料(Materia l)といったイン
  プットを選定し投入する。

  「よいものをより安く、ベストなタイミングで」という顧客ニーズを満たすため、絶え間ない
  努力を続けている。

  アウトプ ットに応じてインプットの量や質を決めるだけでなく、歩留まり 率を上げようとしている
  のです。

  この生産現場では当たり前の視点が、各自の習慣という観点で はあまり考慮されていない。

  これは見方を変えればチャンスである。

  アウトプットを決めて、インプットをバランスよく選択する。

  そ れを習慣にする。

  それだけで成果は異なってくるから。

  例えば「健康な思考や行動ができる身体を手に入れるために、どのような食事や睡眠、運動をする
  のか」という ことも同様の視点である。

 4.アウトプットの実態(クリエ ーティブ業務とルーティン業務)

  次に、日常業務というアウトプットに焦点を当てて、習慣(行動)を書き出してほしい。

  今度は、ルーティン 業務とクリエーティブな業務というフレームワークで分類する。

  そして業務負荷の割合と付加価値の割合を自分なりに記入して見てみよう。

  どのような結果になったでしょうか。

  多くの場合、ルーティン業務のウエートが高くなっていることでしょう。

  そ して、ウエートの低いクリエーテ ィブな業務で、付加価値の大部分を生み出してい る点に気が
  付くはずです。

  一般的に8:2の法則になると言われるが、現在はさらにルー ティン業務のウエートが高くなって
  いる。

  一人当たりのルーテ ィン業務の量は増え続けている。

  9:1、10:0となっている人も多い。

  こうなると不幸なスパイラルから逃れられなくなる。

  ますますルーティン業務に追われ、まともなインプットもできなくなり、イノベーションを起こす
  ためのクリエーティブさは枯渇してしま う。

  現代社会における根深い問題です。

 5.イノベーションを起こす人になる時間を確保しよう

  立命館大学教授・陰山英男氏『ビジネスと生活を100%楽しめる! 陰山手帳2012』
  (ダイヤモンド社)に、「ダイエットの成功の秘訣は、実はどんな方法をとったのかはあまり
  関係ない」とあった。

  「秘訣は…そのための時間を確保できるか否かにかかっている。(中略)実はこれはすべてに
  共通する。  

  目標達成の時間を用意できるかどうか、それが成功と失敗を分ける」とのことであった。

  イノベーションを起こす人においても、同じことが言える。

  「創造するための時間」を確保する必要がある。

  これがステップⅠ「現代社会を生き抜く力を身に 付ける(基礎体力の育成)」ための第一歩である。

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中小企業の経営改革

人を動かす

■自ら動きたくなるような環境づくり

 人の心を動かすために欠かせないものとは、いったい何でしょうか。

 この間いに対して、「情熱や誠意があれば、どんな人でも動いてくれる」と答えるビジネスパーソン
 は、残念ながら、
100点満点中、50点しかあげられません。

 通常の人間関係ならば、情熱や諌意だけで相手を動かすことは十分に可能でしょう。

 しかし、ビジネスの世界は、それだけですべてが解決するほど甘くはありません。

 情熱や社意はコミュニケーションの大前提であり、本当に人を動かしたければ、プラスアルファの
 工夫が必要です。

 ある関与先企業では、社員がやる気を失い、業績が低下している赤字会社でした。

 赤字体質が染みついて、毎日ダラダラと仕事をこなしている社員に対して、「会社の未来は君たちに
 かかっている。
ぜひ頑張ってくれ!」と熱っぽく語りかけても、返ってくるのは次のような返事
 ばかりです。

 「やるだけやってみますが、たぶん無理です」「前例がないからできません」「いままでのやり方
 でいいじやないですか」

 なぜ相手は自分の患いに応えてくれないのか。

 それは、ただストレートに情熱をぶつけるだけでは、相手の心を無視して、自分の気持ちばかりを
 押しつけることに
なってしまうからです。

 人に動いてもらいたければ、同じ情熱をぶつけるにしても、相手の心理状態をよく理解して、相手が
 自ら動きたくなる
ような伝え方や仕組みづくりをすることが大切なのです。

 最初にやることは、すべての社員ではなく、全体の5%の社員の心に火をつけることです。

 5%の社員の心をやる気にさせ、その心に火をつけることができれば、その火はすぐに全件に広がり、
 組織はガラリと変わり始めます。

 それまで定時になれば逃げるようにして帰っていた社員たちですら、自ら進んで責任感をもって働く
 ようになり、
頭の固かった幹部たちも、非効率な仕事のやり方を捨てて新しい仕事にどんどんチャ
 レンジするようになりました。

 その結果、赤字体質からの脱出。

 営業利益の黒字転換を達成。

 さらに、最終利益も黒字転換。

 ついには無借金経営というⅤ字回復を成し遂げることができました。

 では、どうしてわずか5%の社員を変えただけで、働く意欲を失っていた社員たちは戦うビジネス
 パーソンの
集団へと変貌していったのでしょうか。

 実はそれには、次のような人間の心理が働いています。

 昨日まで自分と似たような仕事ぶりだった同僚が、メキメキと力をつけて結果を残していく。

 その姿を間近に見ていれば、「置いていかれたくないJという焦りと、「自分にもできるかもしれ
 ない」という可能性を信じる気持ちが湧いてき
ます。

 その心理を刺激すれば、人は自ら心の火を燃やして働くようになります。

 このような心理法則を知っていれば、大きな組織を動かすことも決して難しくないのです。

□人を動かせる人が出世していく

 上手に人を動かせる人は、かなりの確率で出世の階段を駆け上がっていきます。

 まわりを動かすと、仕事の効率が高まって結果を残せるようになるということも理由のひとつですが、
 じつはもっとシンプルな理由があります。

 人を動かす力は、管理職にもっとも求められる能力のひとつだからです。

 あなたもご存知の通り、昇進して組織の上層のポジションになればなるほど、プレーヤーとしての
 能力よりも、マネジメント能力が求められるようになります。

 ひとくちにマネジメント能力といっても、人を管理する力、お金を管理する力、物の流れを管理
 する力、プロジェクトの進行を管理する力というように、さまざ
まな能力があります。

 どれも管理職には必要とされる能力ですが、このなかでも、とくに重視すべきなのが人を管理する
 能力ではないでしょうか。

 もちろんお金もプロジェクトも、マネジメントするのは簡単ではありません。

 ただ、人のマネジメントに求められるレベルは、お金や物、プロジェクトの比ではありません。

 こちらは本当に血の通った生身の人間が相手です。

 本人のやる気や人間関係、環境によって、その人の持つ能力が日々変化します。

 長いスパンで見たとしても、急に成長する人がいるかと思えば、戦力として計算に入れていた人が
 突然、辞めてしまうことだってあります。

 人の動きを正確に予測するのは、お金や物、プロジェクトの動きを予測するよりはるかに難しいもの。

 その前提に立って組織やチームの働きを最大化しなくてはいけないのですから、人をマネジメント
 する力は、さまざまなマネジメント能力のなかでも、もっとも高い次元に
位置しているといっていい
 でしょう。

 お金や物、プロジェクトを動かせるビジネスパーソンはそれなりにいても、人を動かせるビジネス
 パーソンは希少です。

 それゆえ人をマネジメントできる社員は、会社としても手放したくない人材になります。

 人を動かせる人が出世していくのも必然なのです。

□自分の能力以上の仕事を動かす

 仕事の能力が高くて、難しいことにも意欲的に挑戦するビジネスパーソンと、能力はそれなりに
 あるが、自分の限界を知り、一人では決して無理をしないビジ
ネスパーソン。

 成果をあげられるのは、いったいどちらのタイプだと思いますか。

 意欲的に挑戦する人のほうが結果を残すと考える人が多いかもしれませんが、実際は違います。

 数々のビジネスパーソンを見てきた経験からいえば、むしろ自分の能力の限界をよく把握している
 人のほうが大きな結
果を残します。

 意欲的に挑戦する人のほうが結果を残せないのは、いったいどうしてか。

 それは、能力が中途半端に高いせいか、仕事を一人で抱え込んで自滅してしまうからです。

 たとえば普通の人なら二日がかりで片づける仕事を、上司から「何とか今日中にやってくれ」と
 頼まれたとします。

 責任感が強く、頑張って一人で片づけようと考える人は、その仕事を徹夜してでも処理するでしよう。

 ところがその能力の高さとやる気が、かえって仇になる危険性があるのです。

 上司は生産性を高めるために、優秀な人材にできるだけ多くの仕事を集めます。

 二日分の仕事を一日で片づけてしまった人には、さらに多くの仕事が割り当てられるようになる
 でしょう。

 ただ、どんなに頑張ってもー日は24時間。

 残業の時間をさらに1時間、2時間と延ばしていくことはできても、寝ずに働き続けることは不可能
 です。

 また、大量の仕事をこなすことで仕事の処理能力が伸びるかもしれませんが、それにも限界があり
 ます。

 たとえやる気があっても、仕事が際限なく増え続ければ、いずれは努力では解決できない世界に
 突入して、壁にぶち当たることになります。

 一方、自分の能力の限界を知っている人は、自分一人では大きな成果はあげられないこともよく
 理解しています。

 そのためキャパシティを超える仕事を割り当てられたら、一人で仕事を抱え込まずに、まわりの
 人の協力を得て解決しようと
します。

 坂本龍馬のように、大事を成すためには自分一人で頑張るのではなく、まずは信頼と信用を集め、
 多くの人から協力を得ることで、自分の能力以上の仕
事を動かしていくことも可能です。

□自分の“分身”を作る

 人を動かして仕事を進めるというと、「まわりの人間を自分の使い走りのように扱えばいいのか」と
 勘違いする人がいます。

 部下を自分の手足のように見なす人は、能力が足りない部下に対して、「使えないやつだ」といって
 切り捨ててしまう傾向があります。

 それでは、いつまでたっても人を上手に動かせるようにはなりません。

 人を動かして大きな成果をあげるには、部下を育てるという視点も必要なのです。

 そこで重要になるのが、相手に自分の手足だけではなく、自分の分身になってもらうという発想です。

 たとえば報告書の作成を頼むときは、ただ依頼するだけではなく、自分ならどうやって作るのかと
 いうノウハウを一緒に伝えます。

 ノウハウはあなたの頭脳の一部ですから、相手もあなたの思考に沿って報告書が作成できます。

 また、部下に営業の案件を任せたいときは、ノルマを課すだけでなく、一緒についていって自分の
 交渉術を見せて覚えさせます。

 交渉術をマスターすれば、部下はもうあなたの分身です。

 そこまでやってしまったら、自分ですべてをやるのと労力が変わらないという意見もあるのでしょう。

 たしかに最初はそうです。

 むしろ相手の理解力や吸収力の度合いによっては、自分でやるより労力がかかってしまう場合がある
 かもしれ
ません。

 しかし、違いがでるのは、分身を作った後です。

 もし自分と同じノウハウや知織を持った人がいれば、能力のギャップから生じる遅延やミスも発生
 しづらくな
り、その尻拭いに悩む必要もなくなります。

 長い目で見れば、自分にかかる負担はグッと減るはずです。

以心伝心の状態を作り出す

 自分の分身を作って活躍してもらうためには、相手にノウハウや知識を伝えるだけでは不十分です。

 相手の能力を引き上げると同時に、ビジョンを共有するというステップが必要になります。

 ただ、いくら自分と同じノウハクや知識を持つ人が増えたとしても、彼らに引き続き指示を出さな
 くてはいけないのであれば、自分にかかる負担はそれほど変
わりません。

 指示を出すためには、情報収集して状況を把握し、正しい判断を下す作業が必要になりますが、
 それを自分がすべて続けていたら、きっといつかパ
ンクしていたでしょう。

 では、いったいどうすれば指示を出さなくても、現場で判断して動いてもらえるようになるのか。

 そこで欠かせないのがビジョンの共有です。

 たとえばIT企業の営業職員が、ある取引先から短期で大きな利益があがる案件を持ちかけられたと
 します。

 ただ、それを受注すると、定期的に発注してくれていた別の取引先の案件を後回しにしなくては
 いけなくなります。

 もし長期的な視点に立つなら、目の前の大きな案件を断ってでも、安定して発注してくれる取引先を
 優先したほうがいいのかもしれません。

 どちらを選んでもメリット・デメリットがあり、非常に悩ましいところ。

 おそらく、ほとんどの営業職員は、上司に判断を仰ぐでしょう。

 ただ、会社でビジョンを共有できているなら、指示を仰ぐ必要はなくなります。

 もし「今期は赤字解消が最優先」というビジョンがあるなら短期の案件を選べばいいし、逆に
 「5年後に上場できる体制を作る」というビジョンならば安定した
受注を優先すべき。

 上司に判断を仰いだところで、同じ答えが返ってくるはずです。

 このように以心伝心の状態を作り出せば、経営陣は現場のことをすべて現場に任せられます。

 もちろんまったくの放任というわけにはいきませんが、少なくとも「それくらいは現場で判断して
 くれ」という問題に煩わされるケースはなくな
ります。

 ビジョンというと大げさに感じるかもしれませんが、これは個人レベルでも同じです。

 上司と部下、同僚同士でも、お互いに共通のビジョンを持っていれば、こちらが何も言わなくても
 同じ方向に向かって歩いていってくれます。

 ノウハウだけでなく、目指すべきところも共有する。

 そうすれば、まさにあなたの分身が自律的に、かつ積極的に物事を判断して動いてくれるように
 なります。

 それでこそ人を動かすメリットを得られるのです。

□従業員100人の会社なら5人の意識を変える

 赤字が続いている企業は、わざわざ財務諸表を読まなくてもすぐわかります。

 社内の空気が緩んでいて、緊張感がみじんも感じられないのです。

 赤字企業の社員は、自分の会社の業績がよくないことを肌でわかっています。

 決算書を読まないような社員でも、普通に業務をこなしていれば、会社の売上がいいのか悪いのか
 くらい想像はつくものです。

 ならば社員がかなり深刻な表情をしているのかというと、決してそうではありません。

 同僚同士で楽しく談笑もするし、どちらかといえば牧歌的な雰囲気さえ漂っています。

 会社が傾いているのに、どうして呑気にしていられるのか。

 その根底には、「経営を考えるのは役員の仕事、自分たちは目の前の仕事を適当に片づけていれば 
 い
い」という他人任せの考え方があるようです。

 たしかに役員と現場の社員では担っている役割が違います。

 しかし、会社として利益をあげて、自分たちを豊かにするという目標は共有しているはずです。

 目標を実現するために任せられている職務が違うからといって、共通の目標に対して無責任でいて
 いいことにはなりません。

 企業の再生には、トップの意識改革が絶対必要条件です。

 ただ、それだけでは不十分。

 末端の社員一人ひとりが危機感を持って仕事に取り組まなければ、黒字転換はあり得ません。

 では、緩みきってしまった社内の空気を変えて、社員に意欲を持って仕事に取り組んでもらう
 ためには、どうすればいいのか。

 これには二つの方法があります。

 システムで全点に意識改革を促す方法と、一部の社員の意識を変えて全体を引っ張ってもらう方法
 です。

 システムで全体を変えていく方法はいくつかあります。

 たとえば財務諸表をすべてオープンにして危機感を持ってもらったり、業績に連動した給与体系で
 モチ
べ-ションを高めたりする方法は、マネジメントを学ばれたあなたならよくご存知でしょう。

 ただ、システムで全体を変える手法は、やり方を一歩間違えると機能不全を起こすリスクがあります。

 すでにやる気を失っている社員の中には、システムの変更を上からの一方的な押しつけだと受けとめ
 てしまう人もいます。

 トップダウンで変革を促す仕組みは大切ですが、それと同時に、社員の中から自発的に危機を乗り
 越える気運を高める施策を実施しないと、システム改革が空振りに終わって
しまう可能性がある
 のです。

 そこで重要になってくるのが、一部の社員の意識改革を行ない、全体を引っ張ってもらう方法です。

 みかん箱に腐ったみかん1個を入れると全体が腐ってしまいますが、人間の場合はその逆が可能です。

 無気力な人ばかりの集団でも、そのうちの数名の意欲を高めたり、そこに意欲の高い人を投入したり
 することで、や
る気を全体に波及させることができるのです。

 一部の社員が変われば、無気力社員には次の二つの心理が働きます。

 まず社員間の格差が広がることによる焦りが生じてきます。

 実際に昇格・昇進で差がつき始めると、その思いはますます強くなり、自ら変わることを選ぶ
 でしょう。

 これはネガティブな要因を打ち消そうとする心理ですが、じつは同時にポジティブな心理も働きます。

 無気力に絶っている社員は、「どうせ自分一人が頑張っても何も変わらない」と思い込んでいます。

 ところが、昨日まで自分と同じような能力だった社員が結果を残していく姿を目の当たりにすると、
 「自分もやれば
できるかもしれな」という意識が芽生えて、前向きな気持ちで仕事に取り組むように
 なります。

 自分だけ置いてきぼりにされたくないという心理と、自分の可能性に気づき、それに賭けてみたい
 と思う心理。

 一部の社員を変えることで、意欲のなかった社員にこの二つの心理が働き、全体に意籠改革を促す
 ことができるのです。

 私の経験でいえば、全体の5%の社員が変われば、雪崩が起きたかのように全体が一気に変わって
 いきます。

 従業員100人の会社なら5人の意鼓を変えるだけで、ほぼ全社員の意識が変わっていくでしょう。

 トップダウンでシステムを変えることだけが組織を生き返らせる方法ではありません。

 内部から火をつけて、社員自らが変革を求める状況が生まれてこそ、組織はドラスティックに
 変わっていくのです。


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中小企業の経営改革

強い会社を作る『存在価値』

 御社の事業に、存在意義や存在価値(以下、「存在価値」といいます)がありますか? 

 あるならば、その「存在価値」を明確に文書化していますか?

■『経営理念』とは異なるもの

 たとえば、「地域社会に貢献する」などの経営理念をよく見かけますが、存在価値とは、こうした
 経営理念とは異なります。

 「経営理念」は、経営者の心の中の叫びといえます。

 心の叫びが実を結ぶためには、行っている事業が、理念に合致した存在価値を持たなければいけ
 ません。

 また、心の叫びが、経営目標、たとえば「売上の○%を地域の△△に寄付する」といった具合に
 具体化されていなければ、地域社会に貢献するという言葉はウソになります。

 事業に存在価値のない会社が、一種、見栄のため、このような目標を立てた場合、一定期間は続く
 かもしれませんが、確実に短命に終わります。

 「うちの創業は江戸時代です」を存在価値としていた和菓子店があります。

 しかし、周知のとおり、暖簾(のれん)だけで商売ができる時代ではなくなりました。

 暖簾はもはや過去の信用になってきたからです。

 大切なのはこれからの新しい信用の構築です。

 これこそが必要となる存在価値です。

 そして、その存在価値は、たとえば和菓子店であれば、和菓子という製品に表れてきます。

 そして製品の製造販売に携わっている人の行動に表れてきます。

 だから、存在価値が明確な会社は、みな元気がいいのです。

 ちなみにこの和菓子店は、ちょうど世代交代の時期も重なり、1年半をかけて事業の承継を行うと
 共に、これからの信用を生みだす製品を企画開発しました。

 仮に、存在価値が明確にならない場合でもあきらめる必要はありません。

 考え抜くことです。

 その際、嘘偽りの存在価値だけは掲げてはなりません。

 存在価値は、会社にとって重要な資産だからです。

 「空き缶はごみ箱に」とアピールするよりも週に1度でも、街に出て空き缶を拾う。

 そんな具体的な行動こそ、存在価値として一番実益があると考えます。

 今からでも遅くはありません。

 今日から、もう一度、御社の存在価値を再検討してみてください。

 必ず新たな希望と行動が生まれてくるはずです。

□嘘の多い『存在価値』

 文化活動や環境活動を行う会社をよく見かけますが、中には世間の流れのため仕方なく実施している
 ところもあるようです。

 このような会社は、業績が悪くなれば、すぐに活動規模を縮小・廃止するか、嘘偽りの行動に出ます。

 「この紙は100%リサイクル加工です」と印字されている名刺がありますが、普通の紙を使っている
 会社も多いのです。

 もちろん、真摯に環境活動を行っている会社もあります。

 海外ですが、こんな事例がありました。

 スウェーデンにあるスカンディックホテル・チェーンの話ですが、このホテルは、1990年代、経営
 危機に陥っていました。

 1992年、ローランド・ニルソン氏が社長に就任したとき、過去2年分の累積赤字は60億円に達して
 いました。

 当時、イラク戦争のため、各国の観光産業は打撃を受けていたのです。

 環境問題への取り組みは、経営に余裕があるときに宣伝や人脈作りのために行うものだ、と考える
 経営者が多い中、ニルソンは、会社建て直しの主軸に環境問題をおくことにしたのです。

 環境をキーワードに会社の経営を改革し、利益に結びつけることに成功したのです。

 とても勇気のいることですが、苦しいときほど存在価値が大切だ、といういい例だと思います。

□日本の事業承継が危ない

 話は変わりますが、日本の中小企業の事業承継事情はとても深刻です。

 あるデータによれば、親族への承継が4割を切っているらしいのです。

 親が子供に事業を継がせたくないのか、子供が親の姿を見て、親のような苦労をしたくないのかは
 定かではありませんが、これは異常な低さです。

 後継者が家業から逃げるために他で就職し、海外へ飛び出したものの、何年かで行き詰まり、しか
 たなく家業を継いだということもあるようです。

 親が子供を甘やかしすぎているのでしょうか。

 このような場合でも、親は子供が継いでくれることを喜んでいます。

 たしかに、形式だけは事業の承継はできるでしょう。

 しかし、長くは続きませんし、理念などの肝心な部分の承継はできないままになっています。

 これでは事業承継が成功したとはいえません。

 事業承継をうまくいかせるための秘訣を一言で言うと、それは承継する事業に存在価値があること。

 これにつきます。

 事業承継を財産の承継という税金の問題として考えがちですが、その前に、事業に価値があるか
 どうかを明確にすることが先決なのです。

 それから支配権の承継を考えます。

 そして、財産の承継は最後になります。

 この様な順番で事業承継を進めますと、うまく行きます。

 支配権の承継で問題となる自社株式の承継ですが、裁決権と財産権の両方が付いている普通株式の
 ままにしているため、うまくいかないことが多いのです。

 そこで、株主総会の特別決議を開催し、すべての普通株式を無議決権株式に変更する定款変更を
 決裁し、自社を種類株式発行会社にします。

 そして、同決議で、社長または後継者だけが、普通株式を新規に保有するように新株発行の決議を
 行えば、経営に関心がない人が議決権を持つことはなくなります。

□3行までの文書にする

 話を存在価値に戻します。

 積極的に子供が親の仕事を継ぎたい。

 また、親も自信を持って子供に継がせたい。

 このような意思が事業承継には必要となってきます。

 このために必要なものが、事業の存在価値なのです。

 さあ、社長のあなた。

 A4判の白紙を1枚用意してください。

 そして、御社の存在価値を文書化してみましょう。

 頭では分かっているかもしれませんが、文書として表現しようとするとなかなか書けないものです。

 文書は長くて3行までです。

 長くなると人に伝えられないためです。

 その文書を後継者だけでなく家族に、そして従業員に読んでもらいます。

 その際、読んだ人の表情に注目してください。

 その事業に対して、使命感や目標、そして誇りを見出すことができれば、表情が変わってくる
 ものです。

 逆に何も変化がなければ、存在価値はないと判断されたことになります。

 厳しいかもしれませんが、それだけ存在価値は大切なのです。

□どんな事業として記憶されたいか

 「決算書は、税務署用、銀行用、取引先用の3つ用筆しましょう」と書いている本がありました。

 当然ですが、決算書は1つです。

 書いた人もそうですが、そのような内容の本を出す出版社の存在価値を疑ってしまいます。

 確かに、出版業界は苦しく、売れる本であれば何でもいいと考えることは仕方がないとは思いますが、
 本は財産といわれていますので、その場限りの本より、何年たっても価値ある本が必要なのではない
 でしょうか。

 ある書店で存在価値を考えることになりました。

 社長に話を聞きますと、「自分は本が大好きで、本に囲まれた仕事がしたい」ということが書店
 経営の始まりといいます。

 これは存在価値にはなりえません。

 そこで参考になればと、私自身の思う書店の価値について話をしてみました。

 それは「書店がない街は成長しない」というものです。

 しかし残念ですが、昨年2022年9月時点で、全国の「書店ゼロ」の市町村は26.2%に悪化。

 背景には、人口減や書籍の電子化にとどまらない複合的な要因があります。

 書店は10年間で約3割減少。

 私たち人間は、あらゆることで悩み苦しみます。

 そして、なんとかして解決しようとします。

 しかし、なかなかできません。

 なぜなのでしょうか。

 一つには、解決するための言葉が浮かんでこないことが原因なのです。

 そこで、書店に足を運んでみます。

 そこにはいろいろなジャンルの本が所狭しと並んでいます。

 本の題名や帯の文章からさまざまな言葉を発見できます。

 何気なく手に取った本をベラベラめくっていると、「あっ!」というフレーズに出会うことが
 あります。

 これが問題解決の糸口となるフレーズなのです。

 何かを考えるときは、何気なく、以前、読んだ本を取り出してみます。 

 存在価値は他人からの真似ではいけませんが、参考にすることはいいと思います。

 先ほどの書店の経営者の場合、今では、街の発展のため、本のジャンルや書店内のレイアウトも
 変更しています。

 ところで、存在価値は、ドラッカーのいう「目の前の人にどんな人間として記憶されたいか」を
 明確にしたものと考えることもできます。

 つまりどんな事業として記憶されたいかということです。

 ですから存在価値は、相手によって3つ必要になってきます。

  (1)すでに事業承継の箇所で述べたが、社長のため、後継者のため、社員のため内部用に作成
   します。

   自社の事業に対して誇りや使命感を持ってもらうことが目的となります。

   この存在価値は毎日見る必要があるため、2行から3行程度にとどめておくことが大切です。

  (2)次に、取引銀行にとっての御社の存在価値を考えます。

   金融機関の事情も考え、銀行にリスケなど、何らかの交渉に出向く場合、手ぶらで行くわけには
   いきません。

   銀行にとって御社はどんな存在価値があるかをA4判の用紙に2行から3行で書き、銀行に交渉に
   行く際、その用紙を持参し、担当者に提示します。

   このとき大切なことは、担当者の方に声を出して読んでもらうことです。

   それも1回ではなく3回程度です。

   そこで銀行の担当者が、御社が今後もお付き合いしたい相手である、という表情をしてもらえる
   かが勝負になります。

   次に、このA4判の用紙の行方が大切になってきます。

   担当者が読んだ後に、返却する場合もあるからです。

   すでに銀行からの借り入れがある場合は、御社に関するファイルがあるはずです。

   これから新規に取引する場合でも御社に関するファイルは作成されます。

   このA4判の用紙は、御社用のファイルの最初に綴ってもらうことが重要ですが、さすがに
   そこまでは強制できません。

   たとえ最初のページでなくてもファイルしてもらえるのであれば、担当者の立場からも、御社と
   今後もいい取引を続けたい、と思ってもらえたと判断していいと思います。

   ただ、現実問題として、お金を借りている側、またはこれから借りようとしている側は貸す側
   よりどうしても立場が弱いものです。

   この場合、第三者を一緒に連れていくことをお勧めします。

   私はクライアントと一緒に銀行に行くこともあります。

   私自身、別に何を話すわけではありませんが、借り手だけで行くよりも、効はあるようです。

  (3)3番目は、取引先用(お客様用)の存在価値です。

   取引先にとって、御社と競合する会社もあると思います。

   その競合先をけなすことではなく、競合相手を尊重しつつ、御社の取引先にとっての価値を
   考えます。

   「手形での支払いを現金に変更してもらいたい」等支払い条件の変更をお願いする場合にも、
   交渉前に存在価値をお話しすることが必要になります。

   取引先の場合は、金融機関と違い、先方に読んでもらうことは避けなければなりません。

   態度如何で、取引停止や縮小もあるからです。

   以上、3つの存在価値は、結果として同じ文書になってもいいですし、異なってもそれは構い
   ません。

   大切なことは、相手によって価値が異なるということです。

□『存在価値』と売上の関係

 売上は、社会への影響度合いを表します。

 ですから、たとえ利益重視時代といわれても、社長であれば、少しでも売上を増加させたいと思う
 ことは当然です。

 この売上というものは存在価値がなくても上がるから困ったものです。

 いわゆる詐欺的な商売がそれです。

 逆に、存在価値があるといっても売上が上がる保証はありません。

 なぜならば、売上というものは、売上が上がる仕組み、つまり儲かる仕組みの有無と良し悪しで
 決まり、価値で決まるものではないからです。

 日本のいいものが廃れていく原因もここにあると思います。

 ちなみに詐欺的商売を行う人は、必ず儲かる仕組みを作ります。

 そこに存在価値をつけていきます。

 いかにも、世の中のためになることをしているかのように。

 しかし、長続きはしません。

 そんなものです。

□『存在価値』と儲かる仕組み

 今後も厳しい環境を生き抜かなければなりません。

 そこで、長年経営をしてきた社長も「いままで、どのような形で儲けてきたのか」という自社の
 儲けのパターンすなわち儲かる仕組みをきちんと明確にしなければなりません。

 儲かる仕組みは収益構造と言い換えても構いません。

 存在価値がある事業でも、収益構造が明確でなければ事業として成り立ちません。

 「自分の分身を作れ」も、儲かる仕組みの話になります。 

 儲かる仕組みは、社長自身の行動パターンに大きく影響してきます。

 通常、人の行動パターンと言うものは多くはありません。

 ですから、同じ人が複数の行動パターンを持ってしまうと必ずストレスがたまってきます。

 儲かるからと言って他人の儲かる仕組みをまねてもうまくいかない原因がここにあります。

 と言うことは、同じ儲かる仕組みの事業であれば複数持っていても継続は可能となります。

 ここから次のことが言えます。

 『事業の選択と集中』以上に、存在価値にあった『儲けの仕組みの選択と集中』をすべきなのです。

□売上が増加する『12+4の法則』

 売上を上げるには、リピートが大切になることはいうまでもありません。

 最高の商品やサービスを提供しても、代金の支払いが後日になる場合は、お客様は支払いを躊躇
 してしまうことが多いようです。

 仮に代金の支払いを拒めば、このお客様はリピーターにはなりません。

 お客様に対して、商品やサービスだけでなくプラスアルファの満足感がなければリピートしない
 ものです。

 売上を増加させるために欠かせない法則があるようです。

 それは『12+4の法則』です。

 この法則は、存在価値のヒントにもなるだけでなく、顧客を創造し、リピーターにするため必要に
 なりますし、また、新規事業を行う場合や社内活性化の手助けをしてくれます。

 まず『12の法則』ですが、「食」「健康」「男女」「非日常」「闘争心」「差異化」「所有」「一攫
 千金」「帰属意識」「心と感性」「好奇心」「知識」のうち一つでも多く満足すると、人は幸せを
 感じるというものです。

 お客様にこの『12の法則』で満足させることでリピーターとなる可能性は高くなります。

 食や健康にかかわる事業が廃れることはないのは当然といえるし、クレジットカードやポイント
 カードの普及も帰属意識を満足させるものです。

 御社の事業を何らかの形で『12の法則』に絡ませることが必要になってきますし、お客様に対しても
 この法則を外す対応をすることはできません。

 また、社員に対して、『12の法則』を満足させることで社内が活性化してきます。

 営業部門の部屋の壁に貼っている営業職員別売上表は『闘争心』のために必要なことなのです。

 研修は「知識」の習得のために欠かすことはできません。

 このように『12の法則』は売上増加には不可欠な要素なのです。

 そして、『4の法則』とは、「水」「緑」「光」「見」が融合している場所には、人が集まり、滞在し、
 再びリピーターとして戻ってくることをいいます。

 お金は人が運んできます。

 これは不変です。

 ですから、『4の法則』を無視した場所には人は来ないということを集営方針に入れるべきです。

 以上、『存在価値』の明確化+『儲かる仕組み』の構築+『12+4の法則』の実践こそが、会社が
 これから生き残るために、絶対に欠かしてはならないことになります。

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中小企業の経営改革

事業部制の導入

■事業部制の組織

 1.事業部組織

  企業が新規事業を展開していこうとする時、早い段階から事業部として独立させ、企業間
  あるいは事業部間が厳しく競争することにより、新事業を完成させていくことがあります。

  そういった意味で、事業部制は企業の多角化成功の鍵となり得ます。

  事業部の上に戦略単位としての「本部」または「部門」が置かれることも多く、本部・部門は
  事業部の枠を超える中長期戦略の検討や推進を担当し、事業運営や利益管理責任・製品管理責任・
  市場管理責任はあくまでも各事業部長が直接負うことで、事業部制の活力が発揮できるよう配慮
  された組織が望ましいと考えられます。

 2.経理組織

  事業部制は、「利益責任の追及」という事業部制の基本理念を通して、企業の多角化戦略の
  成功や事業拡大の原動力となります。

  経理組織もこの事業部制の長所を生かすべく各事業部に配置されています。

  利益責任を有する単位には、経理要員を配置する組織理念が必要で、同様の趣旨で、事業部長に
  コスト責任を負っている工場長にも経理要員をつけます。

  形式的には本部や支社の単位に集合された組織になっているケースもありますが、実態としては
  集合単位の中で担当が分かれ、意思決定者を補佐する体制となっています。

  事業部・工場の経理要員は、事業部決算や原価計算を分担する一方で、事業部や工場としての
  ポリシー・メーキングを計数面から支えています。

  そして、経営計画の作成、実績の把握・分析を通して事業運営の問題点や改善すべき方向を
  絶えず検討し、意見具申する役割を担います。

  もちろん、このような経理計数要員の配置方針は、事業部制の欠点のひとつとされる間接部門
  要員の肥大化の原因となり、経理計数組織の統合化がたびたび議論にのぼります。

□事業部管理の概要

 1.管理会計と財務会計のすみ分け

  事業部損益は大きく2つに分かれます。

  すなわち

   →管理会計損益(事業部管理損益)

   →財務会計損益

  であり、

   前者は「事業部の評価の尺度」となり、後者は「外部報告用」

  です。

  損益に限らず、管理会計の計数や指標は財務会計のそれと異なるものが使用されます。

  「管理会計損益」の主な特徴点は

   (1)ダイレクト・コスティングベース(DC)

   (2)連結ベース(事業部の一部の機能を別会社化している場合)

   (3)事業部間取引による売り上げ、損益、債権債務を含む

  の3点です。

  (1)は在庫の増減が損益に与える影響の排除という理由以外にも、計画編成の簡便性や
  固定費管理の簡潔性を狙いとしたものです。

  (2)は一貫事業としての評価を考慮したものです。事業部の機能の一部が別会社化される
  場合(例えば、販売機能や加工段階を独立させるなど)はよく行われます。

  このようなケースでは、本体に残った一部分のみを事業評価の対象としても意味をなさない
  ため、連結(一貫)ベースで管理するのです。

  ここでいう「連結」は財務会計の連結決算とは異なり、単純に連結間取引や未実現利益を排除
  するだけでなく、始めから一体の事業部であったとしての計算を行います。

  また、連結の範囲も財務会計のそれと異なり、管理上意味のある範囲に限っています。

  さらに事業部によっては、管理会計損益には、本来の事業管理損益とは別に、販売管理損益
  という特殊な損益が設けられることがあります。

  「販売管理損益」は営業部門に対してある種のインセンティブを与えようとするもので、販売
  促進を図る場合などに使われます。

  管理会計損益と財務会計損益とはまったく独立した概念ではなく、前者に費用調整と連結排除
  調整を加え、最終的に税引前利益で一致させるようにします。

 2.事業部の独立採算

  事業部は独立採算の単位として定義づけられ、次のようなルールが採用されます。

  (1)事業部間の売買は「市価」を基準とした売値で行われる

  (2)所要資金は内部金利率により負担する

  (3)全社共通費は事業規模により一定率で負担する

  なお、事業部間の売買価格は事業部業績に直接関係する重要なポイントとなるもので、よく
  問題にもなります。

  一般市価を公正に判断しながら、経営計画部などが調整役を果たすことになりますが、関係する
  事業部も含めた真剣な議論が必要です。

  そして、川下・川上の両事業部は、

   決定された事業部間の売買価格をベースに収益を上げる努力を強いられる

  ことになります。

 3.決算作業の分担

  決算作業は、大きく

   財務会計決算と事業部業績の実績把握(管理会計)

  に分かれ、各々担当部署に集約されて、トップに報告されます。

  決算作業分担の特徴としては

  (1)事業部では内部売り上げ・利益を含んだ事業部単独の決算までを担当し、内部売り上げ、
    未実現利益の排除は本社勘定で行われる

  (2)本社費(金利、一般管理費)の配賦額は本社の通知を待つことなく計算され、全社発生額
    との差は本社勘定で処理される

  などが考えられます。

  事業部制を採用しながら、決算業務は経理部など集中化された部門で実施され、事業部はその
  結果の報告を受ける体制をとっている企業もあります。

  このようなやり方は、要員効率化や決算作業の早期化という面からは優れているともいえます。

  一方、決算に関して事業部の決算作業が先行し、事業部決算の確定後、本社決算が始まる企業も
  あります。

  しかし、このように事業部決算を事業部自身が行うシステムには財務決算に事業部のエゴが入り
  込む可能性があるので、経営管理部でも最も神経を使ってチェックする必要があります。

  従って、重要な会計処理については、経営管理部との事前協議を義務付けたり、定期的な経理
  指導や経理規定の徹底を行うなどの運営が大切です。

□事業部制組織の性格と利害得失

 1.事業部制組織の性格

  事業部制組織の必要最小限の要件は、生産と販売に関する権限をつないで事業部に分権化する
  ことで、この結果、事業部の利益管理が可能になります。

  言い換えれば、利益管理尺度が導入されることで、安心して事業部に分権化することができる
  のです。

  これが、事業部制組織が分権的組織の代表と考えられる理由です。

  事業部編成基準には、製品別、工程別、地域別、市場別、得意先別などの基準が利用されますが、
  最も多いのが「製品別」であり、メーカーを中心に用いられています。

  また、事業部制組織はバラバラの事業体の集合体であるという認識を持つことが必要であり、特に
  組織の調整問題が困難になることもあります。

  経営規模、製品・事業の多角化などに伴って、次のような問題が表面化します。

  (1)トップ・マネジメントと事業部長との権限関係の不整合

  (2)事業部長と本社職能関係の不整合

  (3)製品と地域との不整合

  (4)事業部間の不整合

  (5)仕事の一過性との不整合

 2.事業部制組織の利害得失

  事業部制組織の利害得失を列記すると以下の通りです。

  【利点】

   (1)事業部長の責任権限が明確化できる

   (2)利益管理が容易になる

   (3)経営者育成が容易になる

   (4)社長の仕事の負担を軽減できる

   (5)戦略的志向が強くなる

   (6)製品・事業の多角化度が高いときに有効である

   (7)市場志向の経営が徹底できる

   (8)経営の機動性を確保しやすい

   (9)組織の動態化とモラールの向上を図りやすい

  【欠点】

   (1)企業の総合力発揮が困難である

   (2)統一性の確保が難しくなる

   (3)セクショナリズムが強くなる

   (4)事業部長に短期的視野が強くなり、長期的視野に欠ける

   (5)事業部の成長にアンバランスが生じる

   (6)事業部における重複のムダがある

   (7)事業部間における調整問題の困難性を生じる

   (8)事業部間における技術やノウハウ、情報の偏在を生じる

   (9)システム商品の開発、販売の困難性を生じる

 3.共通費の配賦

  事業部利益の測定は「会計的な操作の産物」ではなく、実態を客観的に正しく反映するもの
  でなくてはなりません。

  従って、その測定は極力、財務会計の基準によって行われることが望ましいとともに、共通費の
  配賦に当たっては、合理的な基準によることが前提です。

  事業部に対して用役を提供する本社部門に代表される共通部門は、通常、原価責任単位であり、
  そこで発生する本社費あるいは共通費は、受益者負担の原則に従い、一定の合理的な基準に
  基づいて事業部に配賦しなければなりません。

  配賦方法としては、一般的に

  (1)共通費を各事業部が受けた用役の程度に応じて配賦する方法

  (2)共通費を各事業部の規模の程度に応じて配賦する方法

  があります。

  共通費の配賦は、個別にかつ用役あるいは規模に応じてきめ細かく厳密に配賦することが大切
  ですが、そこには自ずと限界があり、そのためのコストも増大します。

  従って、共通費配賦の方法や基準は、

  意思決定や評価をゆがめない程度に合理的であれば十分であって、あまりに重箱の隅をつつく
  ような議論は避けるべきです。

  また、資金調達に伴うコストも共通費の一部ですが、一般には社内金利制度として独立して
  取り扱われることが多いようです。

  この場合には、すべての資金源泉を対象とした資金コストを用い、事業部の使用資金量を基準に
  賦課することが望ましいでしょう。

  共通費や資金コストの配賦あるいは賦課を、実績値の確定を待って行う場合も見受けられますが、
  大きな変動がない限り、一定期間固定した予定配賦率あるいは予定金利率によって行うのがよい
  でしょう。

□事業部制導入に当たって配慮すべき事項

 事業部制組織の導入に当たっては、以下の事項に配慮する必要があります。

 1.編成基準の選択

  企業としてどのような編成基準を採用した方が企業目的達成のために組織化が容易で、しかも
  所期の成果を発揮できるかどうかを検討します。

  選択されるべき編成基準は必ずしも単一のものでなくても、各種のものを併用することも可能です。

 2.事業部の編成

  事業部の編成に当たっては、次のような条件を満足させることが望ましいでしょう。

  (1)生産的条件

   事業部は独立した事業単位として活動するので、その担当する製品またはサービスは当該
   事業部で専門的に分担します。

  (2)市場的条件

   事業部の担当と決定された製品またはサービスは、独自の市場や独自の市場価格が安定的に
   形成され、市場競争原理が導入されることが必要です。

  (3)経理制度的条件

   事業部に独立採算制が導入されることによって、事業部ごとに損益計算が明確となり、事業
   部長の利益管理責任を果たすことができます。

  (4)経営的条件

   事業部の経営が、現在のみならず、将来的にも成り立つかどうか、その可能性を検討する
   必要があります。

   また、事業部長への分権化に応じた事業部制スタッフの経費負担、本社費・共通費の配賦に
   耐えうるかどうかも加味する必要があります。

 3.事業部制組織に対する経営幹部の理解

  職能別組織の運用に慣れたトップマネジメントをはじめとする経営幹部は、事業部制を導入
  するにあたっては、まず事業部制組織に関する知識や運営方法を十二分に研究してから実施する
  ことが重要です。

  事業部制導入に失敗したケースの大部分は、トップマネジメントをはじめとする経営幹部の
  無理解や誤解に基づいた運営の結果によるものが多いようです。

 4.事業部長に分権化すべき権限の程度

  事業部長には、担当製品またはサービス分野におけるライン活動に関する権限が包括的に委譲
  されますが、その態度は次の2つに分けられます。

  (1)ポジティブ・リスト的態度

   事業部長に委譲される権限を明示する方法です。

   最小限生産と販売(または仕入れと販売)権限を一元的に委譲することが必要不可欠の要件に
   なります。

  (2)ネガティブ・リスト的態度

   事業部制組織の運営が習熟されるに伴い、事業部長に対する分権化がさらに強化され、
   事業部の自主性が強められます。

   最終的には、本社に留保される権限のみが明示され、他はすべて事業部長権限とされる方法
   です。

   通常、事業部長への分権化は、「事業部長に委任された事業部の企業構造をいかに運営し、
   最大限の成果を上げうるか」という企業構造運営上の観点から、ライン活動に関する権限が
   包括的に委譲されます。

   他方、事業部の「企業構造の変革に関する権限」は原則的に本社に留保されます。

   しかし、会社運営上支障のない限り、本社に保留された「企業構造の変革に関する権限」の
   一部は事業部長に委譲されることもあります。

 5.事業部制組織の徹底

  事業部制をいったん導入したからには、迷わずその徹底を図り、定着を進めることが必要です。

  事業部制組織にも欠陥が多いからといって、欠陥の露呈を恐れて事業部制組織の徹底を欠くと、
  事業部制組織自体の成果を損なうことになります。

  むしろ、事業部制組織の運営を徹底することで、予期される事業部制組織の欠陥をあらかじめ
  表面化させ、その上で改めて次の組織対策に入ることが望ましいといえます。

  以上、事業部制を導入する時に考えることについてまとめてみました。

  いまだに新しい組織原理が確立していない現在、職能別組織か事業部制組織かのいずれかを
  せざるを得ない状況となっています。

  そして、職能別組織、事業部制組織のいずれを採用しても、それぞれ利害得失を持っています。

  要は、組織の持つ性格をよく理解して運営することが必要であるとともに、各種の経験の中から
  新しい組織原理を見つけ出していく努力が重要であるといえるでしょう。

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中小企業の経営改革

小さな会社の経営性格診断

片腕には、自分と正反対の性格の人間を選ぶこと

 会社を経営していると、トップの人間性そのものが表面に出るものです。

 とくに小さな会社の社長の場合は、その人の性格がストレートに経営のやり方や会社の雰囲気に
 あらわれてくる。

 もちろん、性格が悪いからといって、経営が悪くなり、儲からなくなるものでもない。

 問題は、自分の短所を短所として理解し、それをどう処理していくかが重要なのです。

 長所と短所は通常ウラオモテの関係にあるから、トップは、自分と正反対の性格をもった片腕を
 おいたほうがうまくいくケースが多い。

 その場合の条件は、絶対に人前で口論しないことです。

 性格が正反対だとやり方も違うから、意見の食い違いがしょっちゅう生じるだろうが、社員や
 取引先の前でそれをストレートに出してはいけない。

 なぜなら、お互いに立場があるから、引っ込みがつかず、どちらかが止めざるを得ないハメに
 なってしまう。

 そうした場合は、つまり会社のナンバー1とナンバー2の意見が食い違った時は、二人だけで、
 それも「ゆったりとした時間」をもてる時に、じっくりと話し合うことです。

 二人とも、「儲けよう」「会社を成長させよう」という大前提となる目標は同じであり、ただ
 やり方が違うだけだから、話せば必ず理解し合えるはずなのです。

 基本的には会社経営は、一本調子では運営できないものです。

 お互いに違う性格の者が、両輪のごとく、同じ目的に向かって企業経営をすることによって、
 会社は儲かる方向へと進んでいくのです。

 では、自分の性格をチェックしてみよう。

 ここで、小さな会社のトップのための「経営性格チェック」掲載しておきます。

 「経営性格チェック表1」は、会社経営をする際に、社長自身をよく知るためのチェックです。

 性格についてのチェックだから、よい、悪いという問題ではありません。

 あくまでも自分自身を知るためのチェックであることを忘れないでほしい。

 この表で、それまで漠然ととらえていた自分自身の性格や傾向をつかみ、それに応じた経営の
 考え方をするのです。 

 「経営性格チェック表2」は、実務の面から会社経営をとらえて、自分自身がどんな行動を
 とっているか、あるいはとる傾向にあるかを把握するためのものです。

 「経営性格チェック表NO1」と同じように、よいとか悪いとかを調べるためのものではないので、
 正直に自分自身をチェックしなければならない。

 「よいと思うほう」に○印をするのではなく、あくまでも実際自分の性格はどうか、また自分の
 考えは本当はこうなんだ、と思うほうに○をつけなければ意味がない。

 その結果をみて、自分の性格や考え方を改めて確認し、まずいと感じる点があれば、それなりに
 するなり、他人に補完してもらうなりの努力を払うことです。

 それさえできれば、小さな会社の内容がぐんとよくなること請け合いです。

□「自分と相性の合う人間」を使う

 1.「イヤイヤ、ナイナイづくし」の社員

  小さな会社の社長には、いろいろな悩みがあります。

  「売上げが上がらない」「人材がいない」「中間管理者がいない」などというものだが、大きな
  会社の社長にはわからないのが、「思ったように従業員が動かない」という悩みです。

  中には人使いに疲れて、そのために意欲を失っているような社長もいます。

  それも、よくわかります。

  小さな会社には、次のような「イヤ、イヤ、ナイ、ナイづくし」の社員がかなりいるからです。

  (1)忙しくてそんなことはできナイ。

  (2)自分はそんな仕事をするために、この会社に入ったのではナイ。

  (3)その仕事は自分の性格に合わないからイヤだ。

  (4)急に変われといわれても、変われるわけがナイ。

  (5)それはわたしの担当ではナイ。

  (6)その営業はコース外だからイヤだ。

  (7)自分は雑用係ではナイ。

  すべて否定的で、できない理由をいくらでもみつける。

  こういう人がいると、指示がスムーズに実行されないのは当然で、会社が少数精鋭化する
  どころか、お荷物的人間ばかりになり、儲かる会社になるわけがない。

  それこそ「人罪」の集まりです。

  一般的にいって、その従業員がその会社で「禄を食んでいる」限り、仕事に全力をつくすのは
  当然なのです。

  最終責任はトップが負い、社員は目の前にある仕事に懸命に取り組むべきです。

  それがイヤなら、降りるべきなのです。

  ところがそういう人の場合、全力をつくすどころか、何をやるにも不満げな表情をみせる。

  それはなぜか?

  本人の性格が悪いのか?

  彼なり彼女なりは、これまでの人生、ずっとイヤ、イヤできたのか?

  そんなことはない。

  要するに彼、あるいは彼女は会社と、もっといえば社長との相性が悪いのです。

  いったん入った人間をそう簡単にやめさせることはできないし、本人もよほどのことがなければ
  やめるとはいわない。

  だから社長はよくよく心して、自分と相性のいい人間を採用しなければならないのです。

 2.相性の悪い社員は、社長の意欲もなくしてしまう

  小さな会社の社長は、毎日一定数の社員としか付き合わない。

  その限られた人数の従業員との相性が悪ければ、楽しい日常業務などできるものではありません。

  毎日それこそイヤな、神経をさかなでされるような気持ちで仕事をしなければならなくなります。

  小さな会社の場合は、社長の「やる気」と「意欲」で多くのことが改善されていく。

  その社長の意欲をそぐような相性の悪い社員を採用すること自体、社長の大きな失敗です。

  いろいろな意見があり、いろいろな考え方があるのは当然です。

  しかし一つのチームとしての会社で仕事をするからには、心底、心から信頼できる人間同士の
  集まりにしたい。

  10人の会社でも、20人の会社でも、そういうチームは強力なのです。

  相性の合った人間同士の絆が強ければ強いほど、会社は強くなっていく。

  多くのビジネス書には、「いろいろな性格の人間を使いこなしていくのが、社長の仕事だ」と
  書いてあります。

  「いろんなタイプの人間がいたほうが、会社は伸びる」とも書いてある。

  正論である。

  人事異動が頻繁に行われる大企業であれば、その通りでしょう。

  しかし、固定したメンバーで永続的にやっていかなければならない小さな会社では、「その逆も
  また真なり」なのです。

  相性が合う人間は、ツーと言えばカーという返事が返ってくる。長が忙しくて大事なことを
  失念している時には、それをフォローしてくれる。

  それが小さな会社の強みであり、よいところでもあるのです。

  だから社長は、「みんなにちゃんとボーナスを出したい」と思って頑張るのです。

  極言すれば、小さな会社の社長は、自分の性格をよくみて、相性が合わない「イヤ、イヤ」型の
  社員にはやめてもらったほうがいい。

  蛮勇だが、そういう勇気も必要です。

  それがお互いのためです。

  もともと社長は、相性が合わない人間を使って気苦労するために会社を始めたわけではない
  はずです。

  そして、相性と能力の点からみて、一番ふさわしい人間を片腕にする。

  片腕となった人間は、トップを一生懸命に補佐してくれるでしょう。

  小さな会社の社長は、人の面でも、自分の性格に合った経営をしなければならないのです。

 3.「相性が合う」と「イエスマン」は違う

  相性が合うか、性格が合うかを見分けるポイントは、次の3点

   (1)返事がよいかどうか?

   (2)明るい性格かどうか?

   (3)素直に指示通り動くか? 逆に、指示すると必ず一口多いかどうか?

  以上の3つのことは、初対面ではなかなかつかみづらい。

  しかし、「返事がよいか」「明るい性格か」などといったことは第一印象が大切なので、採用の
  際にはこれらの点に注意して面接することを提案します。

  もっとも、「相性の合う人間の集団にせよ」というと、「それではイエスマンやゴマスリ人間を
  集めることになるのではないか」と非難する人がいるかもしれない。

  しかしそれは、ちょっと違う。

  「自分と相性の合う人間」と「イエスマン、ゴマスリ人間」を区分するくらいの力量がない
  人間は、トップになるべきではないのです。

  小さな会社の場合は、よきにつけ悪しきにつけ、トップの考え方や性格で運営されます。

  だからトップは、結果にすべての責任を負うことになる。

  方針や指示がよくても、その理解の仕方ややり方が悪ければ、それもまたトップの責任なのです。

  だから小さな会社の社長は、自分の方針をよく理解して動く人を集めない限り、チームとしての
  会社組織はスムーズに稼働しなくなり、結局は儲からなくなってしまう。

  トップの指示をちゃんと理解して、心から活動してくれる実行部隊がいないと、その会社は
  バラバラで不平不満だらけの組織になり、やがて「死に体」の会社になってしまうのです。

  しかし、次のように、反論する人がいるでしょう。

  「それでも結局は、社長の意に添ったことしか言わないイエスマンばかりを集めることになる
  のではないか。

  茶坊主ばかりをはべらせていたのでは、戦略を練るにもかたよった意見しか聞く耳をもたなく
  なり、ついには会社をダメにしてしまう」と・・・・・・。

  確かにこうした失敗例は、古今東西拾い上げればキリがない。

  しかし、これも社長の選球眼の狂いから生じた結果なのです。

  本当に相性の良い人間は、社長の指示を素直に受け、社長の真意を理解し誠心誠意、実行する。

  そして社長の意に添った意見ではなく、社長の意を汲んだ自分の意見を述べるものです。

  こうした人間が集まった会社は、ダメになるはずがない。

  ところが、指示するといつも返事だけは威勢がよいのだが、実際は指示した上司や社長が見て
  いないところではサボリ上手で実行せず、報告するときはできなかった理由をとうとうと述べる
  社員がいます。

  こんな社員は口先上手、言いわけ上手だから、社長の喜びそうなことを言ってみせたりしますが、
  心底そう感じているわけではないから行動が伴わない。

  こんな人間が社長の周りに集まれば会社はたちまちダメになる。

  だから正確に言えば、イエスマンが悪いのではなくて、イエスマンにも口先だけの「悪い
  イエスマン」と、社長と本当に相性の合う「良いイエスマン」の二通りがあるということです。

  小さな会社の社長は、良いイエスマンと悪いイエスマンの区別をしっかりとつけて、自分の
  意を汲んでくれる社員を集めなければならないのです。

  入社面接時、このアンケートをることで、その人の考え方が多少なりともわかります。

□小さな会社社長の教訓

 1.小さな会社の経営戦略は、社長自身の「性格」が大いに影響することを知る。

 2.だから「敵は己にあり」である。社長自身の性格をよく知らなければならない。

 3.「経験は最良の教師である」が、カネと時間がかかると思うべし。

 4.よいことを聞いたら、「ムリだ」「できない」のマイナス要因をほじくりださないこと。

 5.「イヤイヤ、ナイナイづくし」の、一言多い、相性の合わない社員はカットせよ。
  そして「良いイエスマン」を採用する。

 6.経営者には「つくりタイプ」と「売りタイプ」があり、自分はどちらのタイプか判別せよ。

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中小企業の経営改革

少子高齢化時代の生き残り策

■進行する人口減少

 1.人口減少と少子高齢化が同時進行進行

  人口減少がマスコミなどで多く取り上げられています。

  実際、すでに日本は人口減少社会に突入しており、さまざまな分野でその影響が出ています。

  総人口は2004年をピークに減少に転じており、2021年(令和3年)の総人口は1億2550万2千人で、64万
  4千人の減少、減少幅は比較可能な1950年以降過去最大となりました。

  2025年頃には1億2000万人を切ることが予湘されています。

  また特に注目したいのが、年齢別人口の構成比の変化です。

  就業が期待できる生産年齢人口(15~64歳)および子どもの割合が急故に低下し、代わりに65歳以上
  人口が急増しています。

  今、日本では人口減少と同時に世界でもまれにみるほどのスピードで少子高齢化が進行しています。

  生産年齢人口については、総人口よりも早く1996年から減少に転じています。

  ピークであった1995年の生産年齢人口は8716万人でしたが、2022年現在では7496万人にまで減少して
  おり、約27年間で人数にして1220万人の減少となっています。

  これは現在の広島県の全人口に匹敵する規模です。

 2.地方で加速する人口減少出典:総務省統計局 2021年)

□人口減少が企業経営に与える影響

 1.市場の縮小

  人口が減少するということは、顧客の絶対数が減ることを意味します。

  つまり現在の市場、それだけ小さくなるということです。

  後述するように業種によって影響の度合いは異なりますが、基本は同じです。

  感覚としては「不況が永続的に続く」ということに近いものだと思われます。

  顧客一人ひとりは活発な経済活動をしていたとしても、絶対数は減るわけですから1人当たりのニーズが
  急速に増えない限り市場は大きくなりません。

  結果として多くの企業ではこれまでの収益を確保することが困難になります。

  人口減少下で1人当たりのニーズが減少するようなことが起これば、市場は加速度的に収縮することに
  なります。

 2.労働力の縮小

  人口減少は、顧客の減少と同時に労働力の減少も意味します。

  前述のようにほとんどの都道府県ですでに生産年齢人口は減少しており、これまでのように従業員を
  雇うことが困難になっています。

  市場環境にうまく対応して業鼓拡大に成功した企業では増員が必要になるため、こうした成功企業間
  での優秀な人材確保に向けた競争は激化するでしょう。

  また特に都市部においては飲食店など労働集約型の業種において若年アルバイは確保することが一層
  困難になってきます。

  現在でも都内のアルバイトの時給は1000円超が当たり前の状態であり、労働力確保のためにはさらなる
  時給アップが求められ、収益面を大きく圧迫するようになることは避けられないでしょう。

 3.業種によって異なる影響度の違い

  人口減少が各業種に与える影響を「顧客の縮小」と「労働力の縮小」の2つの軸で考えてみると、最も
  影響を受けるのは、図の第Ⅰ象限にあたるおもに国内市場を対象にした労働集約的産業です。

  この象限にある業種は、市場縮小と労働力縮小の2つの影響をまともに受けることになります。

  市場環境が悪化するなか、企業努力で事業拡大の機会を得たとしても、それらを実現するだけの労働力
  も同時に拡大しなければなりません。

  第Ⅱ象限にある業種は主要顧客が海外ですから、国内人口が減少しても海外特出分を増やすことで事業
  拡大が可能です。

  海外では人口は増加しており、特にBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と呼ばれる新興国での
  経済成長などによって、量だけではなく、より付加価値の高い市場も形成されつつあります。
  (但し、今ではロシアのウクライナ侵攻や米中の政治的摩擦が経済にも暗い影を落としています)

  労働力確保にさえ道筋がつけば、事業拡大は十分に期待できます。

  第Ⅱ象限にある業種は市場縮小の影響を大きく受けますが、知識集約型であり、労働力不足の影響は
  少なくてすみます。

  高度なノウハウ構築によって縮小する市場のなかでシェアを拡大していくことも可能です。

  第Ⅳ象限にある業種は、市場縮小と労働力縮小の両方の影響をあまり受けません。

  主要市場は海外であり、知識集約型であるため労働力不足の影響は少なくてすむからです。

  また、ソフトウエア業などは通信技術の発達により、外国人社員を雇って現地で仕事をしてもらっても
  ほとんど支障がないといったメリットもあります。

□中小企業が生き残るための要件

 1.まずは意識改革から

  日本の中小企業の多くは、図の第Ⅰ象限に属しています。

  前述のように、この象限にある会社は人口減少の影響をもっとも強く受けます。

  右肩上がりの人口増加を前提に作られた会社経営の常識の多くが、今後は通用しなくなるのです。

  これまでと同じやり方では、成長どころか会社の存続すら危ういという危機感をもつ必要があります。

  これから先は、市場縮小という文字通りの「構造不況」のなかで戦っていかなくてはならないのです。

  人口減少はすでに始まっており、さまざまな分野でその影挙が出始めています。

  問題を先送りせずに、今すぐ対策を考えることが大切です。

  また、トップだけでなく社員全員の危棟感を高めることも不可欠です。

 2.自社が受ける影響を分析する

  第Ⅰ象限に属している企業のなかでも、人口減少によって受ける影響はさまざまです。

  たとえば首都圏などの都市部では短期的には人口はまだ増え続けますが、そのほかの多くの地方では
  すでに大幅な人口減少が始まっています。

  特に大半の中小企業は、地域密着の事業を行っていることが多く、自社周辺地域の人口や年齢構造が
  どのように変化していくかを把握することが大変重要です。

  市場縮小と労働力縮小によって自社がどのような影響を、どの程度受けるのかを以下のような視点で
  検討します。

   ・自社が活動している地域での市場はどの程度縮小するか

   ・周辺地域では市場はどの程度縮小するか

   ・自社が活動している地域で労働力不足はどの程度発生するか

   ・周辺地域では労働力不足はどの程度発生するか

   ・自社には市場縮小のなかで同業他社に勝てるだけの商品力や舌営業力はあるか

 3.事業の方向性を検討する

  自社が受ける影響を分析したら、それを踏まえて今後の事業展開の方向性を検討します。

  たとえば、以下のような方向性が考えられます。

   ・既存市場が縮小するなかで商品力を上げるなどしてシェアを拡大する

   ・既存商品に高付加価値をつけることによって客単価を上げる

   ・分野を限定して専門性を高め、同業他社への競争優位性を高める

   ・超高齢社会に向けた高齢者向けの新たなビジネスを立ち上げる

   ・人口減少が深刻化していない地域に販路を広げる

   ・成長が見込まれる海外市場に輸出する

   ・自社のビジネスモデルを知識集約型に切り替える

   ・労働力不足を補うために高齢者の雇用環境を整える

  自社に適したいくつかの方向性を検討し、実現の可能性も踏まえながら絞り込んでいくことが大切
  です。

 4.経営体質の強化

  人口減少社会という先のみえにくい経営環境のなかで競合企業と戦い、生き残っていくためには、経営
  体質を強化することが不可欠です。

  そのためには、

   ・社長の意思決定の精度とスピードアップによるトップマネジメント力の向上

   ・社員のレベルアップ・モラールアップや組織の最適化といった人材・組織面の向上

   ・仕事の仕方の改革、機械化、自動化、ノウハウの高度化・共有などによる生産性の向上

   ・ムダな経費削減や固定費の変動費化などによる収益構造の改善

   ・他社との商品開発、資本提携など外部資源をフレキシブルに活用する力の向上

  など、さまざまな面で会社としての基礎体力を高めておくことが大切です。

  人口減少という環境のなかで会社を経営した人はまだ誰もいません。

  だからこそどのような事態が発生しても危機的な状況を招かないために、経営体質をできるだけ強化
  していくことが非常に重要なのです。

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中小企業の経営改革

中小企業のM&A

■増加する中小企業のM&A

 日本企業によるM&A(合併・買収)が活発化しています。

 「中小企業白書(2018年版)」によると、 2017年のM&A件数が3,000件(レコフデータ調べ)を
 上回り過去最高となったほか、中小企業の成約件数も 2012年に比べて3倍超という。

 経営者の高齢化や後継者不在による事業承継問題に対し、国のさまざまな支援策が打ち出されている
 ことがその背景にあります。

 中小企業によるM&Aが増えている中、実際のところその成功率はどの程度なのでしょうか。

 上場企業での成功率はほぼ5割だそうです。

 そこから類推すると、中小企業の場合は3~4割といったところでしょう。

 いずれにせよ、M&Aは半数以上が失敗に終わっていることになります。

 慎重に事を進めたはずのM&Aが、なぜ失敗するのか。結論から言うと、買収側において、自社の
 ビジョンとM&Aの目的が不明確だったことが考えられます。

 現在、好業績の中堅・中小企業のもとには、地域金融機関やM&A仲介会社から企業譲渡の案件が
 よく持ち込まれるそうです。

 だが、自社の中長期ビジョンと買収目的が不明確なまま、候補リストから興味のある先を選ぶだけ
 という成約自体が目的化したケースも多い。

 そうした失敗事例と同じ轍を踏まないようにするため、企業買収を企図する中小企業には「成長戦略
 のためのM&A」 がおすすめです。

□「成長戦略M&A」とは

 ここでのM&Aとは、自社の中長期ビジョンを実現するために、企業買収の目的と具体的な候補企業を
 明確化し、積極的に仕掛け(提案)を行うM&Aです。

 ここでは、成長戦略のためのM&Aのポイントとなる「事前検討段階」を中心に述べていきます。
 (M&Aの流れ

 1.M&Aの成長戦略を策定

  自社の現状の経営資源を前提に戦略を組み立てようとすると、現事業の延長線上で何ができるか
  という思考になりがちである。

  だが、M&Aでは「現状の経営資源という制約条件を外し、中長期的に自社はどういう姿になりたい
  か」という思考で戦略を立てるべきである。

  中長期ビジョンを明確化すれば、ビジョンの実現のためにどのような経営資源が必要で、そのうち
  外部から「何を調達するか」(M&Aの目的)が、M&A戦略策定で重要な検討事項となります。

  ここがはっきりしないと、M&Aが成功したかどうかさえ分からなくなるのです。

 2.M&A候補企業の選定

  自社の中長期ビジョンとM&Aの目的(どの不足を補うか)を明確にした後、買収候補先の企業を
  具体化する。

  まず、候補先の大まかな基準を設定したロングリスト(絞り込む前段階の買収候補先)を作成する。

  “大まかな基準”とは、事業(取扱商材・サービス)、地域、売り上げ規模などで、この時点では買収の
  実現可能性を考慮せず、対象範囲内に入る企業を広く列挙していきます。

  作成したロングリストから、事業内容、販売チャネル、地域シェア、製品ブランド力、技術力、株主
  構成、財務状況などを基準にスクリーニング(ふるい分け)し、候補先を絞り込んでいく(ショート
  リストの作成)。

 3.M&Aの仕掛け(提案)

  具体的な候補先を選出した後、買収を仕掛けていきます。

  “仕掛け”と書くと物騒に思われるかもしれませんが、敵対的買収というニュアンスではなく、自社と
  相手先の成長発展を戦略的に提案するという意味合いです。

  では、どのように買収を提案するのか。

  これは、相手先の状況によって接触、提案の仕方が異なります。

  例えば、後継者が不在で、事業存続と従業員の雇用維持などオーナーが安心して引退できることが
  求められる「後継者不在型」、財務状況が芳しくない企業が経営の安定化を図る「企業再生型」、
  また地域・業界で生き残るための「再編型」や、 経営統合や合併によってトップシェアを握れるなど
  明確なメリットがある「合理的M&A」が挙げられます。

  こうした買収候補先の状況に応じて、自社との提携シナジーと相手先のメリットを的確に伝え、提案を
  行います。

  提案方法は、自社による直接的な提案も本気度を示す意味で有効だが、自社の素性を知られずに相手先
  にアプローチをしたい場合もあるでしょう。

  その際は、相手先の取引金融機関やM&A仲介会社、コンサルティング会社など外部の専門家を活用
  し、ノンネーム(匿名かつ大まかな企業概要)での打診から行うとよいでしょう。

  成長戦略M&Aは、自社のビジョンを高い確率で実現させるための戦略となります。

  現在のM&Aマーケットは売却側に有利な“売り手市場”となっており、買収側は少ないチャンスを
  うかがう形となります。

  しかし、外部の「持ち込み案件待ち」だけでは、自社のビジョン実現の確度は高まりません。

  しっかりとした中長期戦略を立て、買収候補企業をアウトプットすることで、持ち込み案件への適切な 
  検討が可能となります。

  持続的な成長発展を目指す中小企業は、ぜひとも成長戦略のためにM&Aを取り入れ、自社の中長期ビ 
  ジョンを実現していただきたいと思います。

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中小企業の経営改革

営業所を支店に格上げ

営業所を支店に格上げする

■支店と営業所の位置付け 
 企業の営業拠点には、本社、本店、支社、支店、営業所、出張所などがあり、その
 名称は企業によって異なります。
 一般に、事業所規模の大きいほうが支店となり、支店規模に達しない事業所を営業所と
 して位置付けています。

 営業所の支店への格上げは組織変更であり、○○営業所を単に○○支店に名称を変更する
 だけでなく、営業所の規模の拡大、人員の増強、経営戦略上の位置付けなども併せて考慮
 する必要があります。 

 以下では、営業所を支店に格上げする際のメリット・デメリット・留意点についてまとめて
 みます。

□メリット・デメリットの考え方と留意点

 1.明確な位置付けが不可欠 
  営業所を支店に格上げする際のメリット・デメリットは各々の企業で異なります。 
  例えば、「○○営業所の業績が一定の基準値を超えたため支店に格上げする」のと
  「○○営業所は中長期の営業展開上、重要な位置を占めており、売り上げを伸ばすため
  支店に格上げする」場合では、同じ格上げであっても、その位置付けは大きく異なり
  ます。 

  例えば、これまで単なる支店の出先機関にすぎなかった営業所を、営業・販売拠点と
  しての支店に格上げする場合、名称を営業所から支店に変更したほうが、会社の内外に
  対して、その地域における営業・販売拠点の強化を印象付けることができます。 

  新たに支店として営業拠点となるため、従来にも増した大きな売り上げ目標が定められ、
  日々、売り上げ目標達成に努力することになり、自然に従業員の意識向上が図られます。 

  しかし、従来の営業所と従業員、そして営業エリアも従来通りの場合、そのまま単に
  営業所の名称を支店や支社に変更するだけの場合、特に大きなメリットは期待できません。

  支店に格上げされることは、従業員の意識向上につながるでしょうが、経営戦略上の
  位置付けが曖昧では、「やる気が増すであろう」という希望的観測のもと、単なる
  名称変更にとどまるでしょう。 

  営業所を支店に格上げするに当たって、
   ・支店の決済権が増す
   ・顧客ニーズへの対応がスピードアップが図れる
  など顧客メリットを明確にすべきでしょう。 

  営業上、これまで以上にサービス向上を図ることなど顧客のメリットを大きく宣伝する
  必要があります。
  こうした宣伝を通して、支店の従業員の意識が向上し、さらには業績アップにつながる
  ことが期待できます。

 2.組織の活性化と業績の向上 
  営業所を支店に格上げするのは、単なる名称の変更ではなく、組織を活性化し業績を
  向上させる好機としてとらえるべきです。

  ◎営業所の統廃合をともなうケース 
   従来1つのエリアに3つの営業所があったとして、そのうちの1つの営業所を支店に
   格上げし、残りの2つの営業所を閉鎖するような場合、社内では効率経営の一環
   としてメリットが生じます。

   しかし、顧客サイドではサービスや利便性の低下と映るかもしれません。
   社内にとってのメリットが必ずしも顧客メリットと一致するわけではないのです。
   営業所の統廃合は、場合によっては顧客離れにつながり、予想以上の収益低下を
   招く可能性があるため、慎重に検討すべきでしょう。

  ◎組織の簡略化 
   本社の下に支店、支店の下に営業所が位置付けられていた場合、営業所が支店に
   格上げされることで、本社と直接やりとりすることになります。
   これで指揮命令系統が簡素化し、その分、スピード経営につながります。

   ピラミッド型の企業組織は多くの中間管理部門を生み出し、経営の効率化を阻む
   一因にもなっていました。 
   例えば、本社−支店−営業所という組織階層よりも、本社支店の組織階層のほうが
   本社の意向をダイレクトに支店に伝えることができます。

   また、併せて権限の委譲が行われれば、意思決定が迅速に行われ、スピード経営を
   実践することができます。 
   従って、営業所を支店に格上げをする際に留意すべき点は、組織の活性化や業績の
   向上につなげる好機として位置付け、入念に計画することです。 

   以上の点を考慮すれば、営業店を支店に格上げすることによって、
    ・従業員の意識の向上
    ・顧客ニーズへの迅速な対応
    ・営業力の強化
    ・組織の活性化
    ・スピード経営の実現
   などのメリットを享受することができます。 

   しかし、単に営業所の名称を支店に変更しただけの場合、メリットを享受することは
   難しく、
    ・事務手続きにかかる労力
    ・名称変更に付随するコストの発生
   などのマイナスの効果(デメリット)ばかりが目立つことになります。

□各種変更届けなどの諸手続きの確認 
 商業登記法における支店の商業登記は、支店・営業所といった名称にかかわらず、営業
 実体のある支店(営業所含む)は登記しなければならないことになっています。
 従って、出張所などのような単なる出先機関でない限り、営業所の「支店登記」は済んで
 いるケースが多いでしょう。 

 もし、「支店登記」がされていない場合、「支店登記」を行う必要があります。
 また、支店登記済みの営業所が移転をともなう場合、「支店移転登記」が必要になります。 
 営業所の支店への格上げは、会社にとって非常に重要な事項です。
 商法260条の2項では以下の事項については取締役会の決議が必要とされています。

  1.重要な財産の処分および譲受
  2.多額の借財
  3.支配人その他の重要な使用人の選任および解任
  4.支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止 

 「支店登記」「支店移転登記」の確認のほか、次のような提出・届出書類の必要性の
 有無を確認する必要があります。

  <提出・届出書類> 
   【税務署】   
    ・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(移転をともなう場合) 
   【都道府県税事務所】   
    ・異動届出書(移転をともなう場合) 
   【市町村役場】   
    ・異動届出書(移転をともなう場合) 
   【社会保険事務所】   
    ・適用事業所所在地名称変更届   
    ・健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届(新規採用の際) 
   【労働基準監督署】   
    ・名称所在地等変更届 
   【公共職業安定所】   
    ・雇用保険事業主事業所各種変更届   
    ・雇用保険被保険者資格取得届(新規採用の際) 

  税務、社会保険、労務関係の変更(異動)届けが必要になる場合があります。
  各種変更(異動)届けの必要性は、それぞれのケースにより異なります。
  税理士、社会保険労務士に確認してください。

 4.そのほかの確認事項 
  ○○営業所を○○支店に格上げする場合、名称が一部変更(営業所→支店)になります。
  そこで、各種書類などの名称変更作業が必要になります。
  名称変更作業は次のような手順でチェックしましょう。

  ◎建物周り 
   建物や建物周りの看板、建物内のポップなどをチェックします。
   その他、駅構内や駅前、道路沿いの看板もすべてチェックします。

  ◎事務用品・広告 比較的チェックしやすいのは身近なもので、名刺、印鑑(ゴム印)、
   封筒など主に日常使用する事務用品が挙げられます。 
   最も大勢の人の目に触れるのがパンフレット、カタログ、販促品、DM、広告
   チラシ、webサイト、電話帳などです。 
   印刷会社、電話会社、広告会社などに手配しなければなりません。

  ◎各種データ 
   ペーパーレスの時代では、コンピューターのファイルこそ重点的にチェックしな
   ければならないでしょう。 
   たとえ、名刺、パンフレット、封筒、ゴム印などの名称を変更しても、データが
   残っていると、旧営業所名の書類が忘れたころに出てきたりします。
   そのようなことのないようにファイルすべてをチェックし名称を変換する必要が
   あります。
   パソコンは1人に1台の時代です。
   もれのないように実施するのは容易ではないかもしれません。
   また、この店名変換作業はコンピューターのハードディスクだけではなく、記憶
   媒体もチェックしなければなりません。

  ◎顧客、取引先への案内 
   必要であれば、顧客や取引先に案内を出します。
   営業所を支店に変更すること、これは単に社内的に営業所を支店に格上げしたと
   いうのではなく、地域の皆様の利便性の向上につながり、これまで以上に手厚い
   サービスを提供をさせていただく旨の広告宣伝をすべきでしょう。 

   例えば、販売店が店舗を改装する場合、改装前の閉店セール、改装後のオープン
   セールなど、店舗改装は売り上げに大きく貢献するイベントとなります。
   営業所を支店に格上げする機会というのは、店舗改装と同様に貴重なチャンスと
   いえます。

   地域の顧客向けイベントを考えて、知名度アップ、ひいては収益の向上に結び付け
   てはいかがでしょうか。 
   店名の変更を1つのイベントとして位置付ければ、顧客との新たな接点ができ
   営業機会が増えます。

   そこで営業所から支店への名称変更のご案内と「ご愛顧キャンペーン」のような
   イベントを通じ、営業所の支店への格上げを営業活動に結び付けてみるのも一考
   です。

   営業所の支店への格上げは、組織の活性化や業績を向上させる好機として位置付ける
   べきであり、既存顧客に対しては取り引きの拡大を図るとともに新規顧客開拓を
   するうえでも、案内状の送付や顧客訪問は重要です。

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中小企業の経営改革

人材が育つ社内環境

人材が育つ社内環境

 どんな会社にも2種類の職場が存在します。 
  (1)部下たちが自発的に動いてくれて、高い業績を残せる職場 
  (2)部下たちと意思の疎通ができず、思うように機能しない職場  
 あなたは、もちろん前者を望んでいるはずです。

 でも、なかなかうまくいかず苦しんでいるところかもしれません。 
 「一生懸命やっているのに、空回りしている感じがして……」  
 もっとチーム一丸となって仕事に取り組めて、業績を伸ばしていくことができたら
 どんなによいだろうと。

■社内の雰囲気
 素晴らしいと思う職場は、その雰囲気の違いが、入ったと同時に分かります。
 それは若手社員がイキイキしているからです。
 若手社員の一人が上手く育っていくと、その先輩を目標に、後輩がまた育っていく「善循環」
 が生まれ、どんどん育っていきます。
 それが、確実に社風として定着している会社は、その空気までが違ってきます。


□人材が育つ仕組み
 1.人材が育つ良い社風
  自社における人材育成の重要ポイントは、人材が育つ土壌(社風)をつくり上げること
  であり、社長の究極の仕事は「 良い社風」をつくり上げることです。

  これが、組織全体が常に一段高いレベルを目指すべ く、社員にほどよい負荷がかかって
  おり、その結果、人材が成長して企業も発展を続ける「永続発展企業」をつくる要諦で
  あると言えます。

  では、社員に甘い社風ではなく、「厳しいがやりがいのある社風」をつくり上げるには、
  具体的にどのような手を打てばよいのか?
  そのヒントとして、事例をいくつか挙げながら解説していきます。

 2.人材が育つ会社の前提条件
  前提条件として、基本的な経営システムとは
  (1)理念の追求と社員への浸透
  (2)中期ビジョンの構築と推進
  (3)目標・方針徹底の ためのマネジメントの確立
  (4)(1)〜(3)の理解を深めるための社員教育
  (5)貢献度の高い社員への評価と分配の仕組み

  が機能していることが挙げられます。
  重要なポイントとして、経営システムとしての、計画(Plan)⇒実行(Do)⇒
  チェック(Check)⇒対策・処置(Act)が確立していること。

  そして、マネジメントを社員に教育する仕組み(研修制度など)があること。
  最後に、部門や個人の評価基準が明確で、評価制度が確立していることが挙げられます。
  ノーマネジメントで人材がすくすくと育っている会社は存在しない。

  したがって、マネジメントの確立は、人材を育成する上でも前提条件となる。
  もっとも、昨今の環境変化の激しさを鑑みると、ノーマネジメントの会社は、この変化に
  翻弄(ほんろう)されて人材育成どころではないでしょう。

  そこで人材育成がうまくいっているさまざまな企業事例から見て、人材が育つ社風を
  つくり上げていくためのヒントを探ってみたい。

 3.人材が育つ社風をつくるヒント
  (1)仕事は速くて当たり前
   まず、業績が良く、人材も比較的育っている会社は、社風として「何でも速い(早い)」
   という特長を持っていることが多い。
   そこで、一つ目の要素として「スピード」を挙げたい。

   これは、仕事を進める速さと、レスポンスの早さの両面です。
   逆に、業績の悪い会社は大抵、全ての仕事が遅く、レ スポンスも最悪であることが
   多い。

   したがって、風土として「何でも速い(早い)社風」をつくっていくことが、社員に
   対してほどよい負荷が常にかかることになり、人材育成上のベースとなるわけです。
   こう書くと、「そうか。では、何でも速く(早く)させるようにすればよいのだな」
   と簡単に思う方もいるかもしれない。

   だが、実はこれに取り組むことは簡単ではない。
   例えば、自社の月次決算を考えてみてほしい。
   毎月、何日に上がってくるだろうか。
   毎月10日に月次決算が出来上がるとします。

   それを5日短縮し、締め後の月初5日には月次決算を上げ、10日より前に経営
   会議を開催するとなると、どうだろうか? 
   このたった5日の短縮に、約1年の改善期間を要することはざらです。

   また、自社では全ての仕事に期限があるだろうか? 
   加えて、期限の中間時点で進捗(しんちょく)を報告することが社員の基本動作に
   なっており、期限前に終了の報告が上がってくることは多いだろうか?

   期限が守られることは少ない、または、そもそも期限が切られていないという会社も
   あるでしょう。
   このようなことを「社風の違い」と表現しているのです。

   では、仕事のスピードを上げるために、具体的にどうすればよいか。
   まず、実践していただきたいのは、「速くやる!」という掛け声をかけることです。
   ここから始めることをお勧めする。

   もちろん、処理フローの改善や機械化によるスピードアップなど、仕組みとしての
   抜本改善策を考えることは、スピ ードアップの基本です。
   特に、事務処理的なスピードは「速くやる!」と掛け声を常に掛けることによって、
   ある程度は改善するケースが多い。

   人時生産性が悪く、慢性的に残業の多い会社は、そもそも仕事のやり方が悪く、
   スピードが遅い(のんびりしている)ことがほとんどだからです。

   精神論的に思われるかもしれないが、社員に「仕事は速くて当然である」という
   教育をするところからスタートする意味でも、「速くやる!」という掛け声をかける
   ことから始めていただきたい。

  (2)レスポンスナンバーワンを目指す
   このようなスピードの速さに増して、レスポンスの早さは風土としてとても大切です。
   「あの会社に問い合わせると、すぐに応えてくれるから信頼できる」と評価される
   のか、「あそこに問い合わせても、いつになるか分からない」と評価されるかの
   違いです。

   これも、社内事情を優先させることが当たり前になっていて、顧客へのレスポンスが
   悪くなるケースが多いように思う。
   ある卸売業では、顧客からの問い合わせに対して「回答レスポンス業界ナンバーワン」
   を目指している。

   これは、「顧客満足度ナンバーワンを目指す!」という目標よりも具体的で、社員に
   とって分かりやすい取り組みです。
   しかし、回答を早くするためには、社員が常に最新の商品知識を習得している必要が
   ある。

   また、メーカーからの技術情報や問い合わせ窓口などは誰でも分かるように情報共有
   すること、在庫管理を徹底することなども求められ、常に創意工夫が必要です。
   この取り組みにより、社員が成長することは説明不要でしょう。

   また、顧客から「すぐに応えてくれて助かった、ありがとう」などのお褒めの言葉を
   もらうと、社員のモチベーションが上がり、さらなる創意工夫に結び付く。

□社風を変える取り組み
 ある大企業出身の社長が、「あの会社(社長が以前に勤務していた会社)は常にバタバタ
 していて、いつも皆、『大変だ、大変だ!』と口にしてい る」と言っていた。

 実はその会社、日本が誇る世界的な大企業なのだが、 グローバルな優良企業が、いつも
 「大変だ!」といってバタバタとしている様子はにわかには想像できないでしょう。
 しかし、「多くの優良企業、しかも現在進行形で成長している企業は、全体的にいつも
 バタバタしているところが多い」という事例は多い。

 それぞれ社風のタイプは違うものの、共通していることは、何事も進め方が早く(速く)、
 社員の問題意識が非常に高いという点です。

 バタバタしている会社全てが優良企業であるわけではないが、ここでのテーマである
 「人材が育つメカニズム」という点では、バタバタしている優良企業に学ぶべきことは
 数多くある。

 1.社風が社員を鍛える
  この「バタバタしている」という社風は、冷静に捉えると社員にとってあまり居心地の
  よい環境ではないと思われる。
  例えば、誰かが小さな改善点を見つけると、すぐに上申(提案)する。

  改善のための投資額など、難易度のレベルにもよるが、多くは権限を委譲されている
  部門トップによって、その改善の実行が即決される。
  そして、すぐに改善内容の通達が回り、翌日には対策が打たれ、月内には成果報告書
  を上げなければならない。

  日々このようなことが繰り返されるのです。
  さてあなたは、どう思われるでしょうか?
  「素晴らしい社風!」。

  確かに第三者から見ればその通りだが、当事者たる社員にとってはどうでしょう。
  おそらく、この会社は「社員も上司も大変な会社」ではないでしょうか。
  そこで、人材が育つ環境というテーマに戻るが、この「大変さ」こそが、「人材を鍛える
  環境」であるとは言えないでしょうか。

  つまり、社員には常に一定レベル以上の 負荷が掛かっている状態なのである。
  もちろん、大変なだけでは続けていくことができない。

  そのため、こうした会社は、社員が問題点を挙げやすくするさまざまな仕組み改善提案
  による成果への見返り(報奨)や、やった者が報われる評価制度、そして何より、
  「問題を問題だと言える風土」を醸成する仕組みづくりに、常に取り組んでいるので
  しょう。

  よく事例として、このような改善への取り組みがメディアで紹介されている。
  しかし、人材育成という視点で考えると、改善によって起こるコストダウンなどよりも、
  社員が進んで「自らへの負荷」に取り組み続けることによる社員の成長にこそ、価値が
  あるとは言えないでしょうか。

  コストダウンや新たな取り組みは、確かに一時的な成果をもたらす。
  だがそれよりも、人材が成長し続ける仕組みは、企業の永続発展にとって不可欠なのです。

 2.社風を変える取り組みとは
  社風を変えることは難しい。
  テレビ番組などの企業再建物語の中でよく描かれる、疲弊し切った社風を思い出して
  ほしい。

  慢性的な赤字で借金体質、資金繰りは待ったなし、社員は新入社員から役員まで、皆、
  原因他人論でやる気なし、悪いのは世の中と社長だと信じ切っている。
  そのような会社へ再建のプロが送り込まれるのだが、社員は非協力的で悪戦苦闘の毎日、
  といったストーリーです。

  あなたの会社は、そのような物語に描かれているほど疲弊した社風ではないと思うが、
  いずれにせよ、長年にわたって醸成されてきた社風は、そ う簡単には変わらない。
  しかし、一つはっきりと言えることがある。

  それは、本当に社風を変えられるのはトップだけということです。
  どんなに優秀な人材がそろっていようと、その組織のトップが変わらなければ、風土は
  変わらない。

  卑近な例かもしれないが、トップが禁煙すると、喫煙している社員は皆、一度は禁煙を
  考える。
  トップが早く出社するようになると、社員は少しずつ早く出社するようになる。

  経営トップのあなたが思っているよりも、トップの社員に対する影響力は大きいのです。
  したがって、社風を変えようと思えば、まず経営者として自身がどう変わればよいのか
  を考える必要があります。

  また、 これは絶対条件でもある。
  前述し た改善提案の仕組みや評価制度の見直しは必要条件であり、絶対条件が整わない
  中で実施しても効果は薄い。

  「そんなことは分かっている。でも、できなくて悩んでいる」という声も聞こえて
  きそうだが、人材が育つ社風をつくり、自社を成長軌道へ乗せるための社風改善という
  意味でも、あらためて考えていただきたい。

 3.フォロワーをつくる、そして次のステップへ
  社風改善を善循環に持っていく初期には、膨大なエネルギーが必要です。
  皆、ここで挫折してしまい、「会社はなかなか変わらな い」となってしまう。
  そこで、ぜひ取り組ん でいただきたいのが、「フォロワー」をつくることです。

  トップが変われば組織も変わると述べたが、トップ1人ではパワーが足りない場合が多い。
  そこでフォロワーが必要なのだが、単なる協力者ではなく、改革現象を推進する人を
  つくるのです。

  冒頭で紹介した優良企業の社風に例えると、トップが「大変だ!」と言い出し、バタバタ
  し始めると、「それは大変だー!」とトップよりもバタバタ動く人をつくるのです。
  もちろん、ただ騒ぐだけではいけない。

  「フォロワーたるは、この人しかいない!」という人材を選び、よく話をして、その
  意を酌んで行動を変えてくれる、まさに「フォロワーのリーダー」をつくるのです。
  実はこれが、改革を進めるときのコツ。

  あまりよい例ではないかもしれないが、数十万人に及ぶようなデモ活動や、社会現象
  と言われるような流行も、実はたった1人の「言いだしっぺ」がいなければ決して起きない 。
  最初の1人がトップであり、そして2人目がフォロワーのリーダーである。

  そして、フォロワーが3〜4人になり、ある限界点を超えると、そこから社風は加速度的
  に変わっていくでしょう。
  繰り返すが、トッ プ1人、特に後継経営者1人では、挫折することが多いのです。

□業績の成長が先か社員の成長が先か

 1.人材育成は「矛盾」の実践
  ここでのまとめとして、企業における人材育成が「矛盾」の実践であることに触れて
  みたい。
  経営には不思議に感じる矛盾がある。
  人材というテーマに絞ると、
  (1)経営に生産性の追求は必要だが、最も生産性が悪いように思われる人材育成が
    重要である

  (2)業績が良くなれば人材育成の予算を十分に取るというが、人材不足で業績が
    上がらない(それではいつまでた っても同じではないか?)

  (3)企業経営は成果主義が基本で、業績結果に対する評価が中心となるが、人材を
    成長させるためにはプロセス評価が重要である(時には業績結果よりも「頑張り」
    への評価が重要になる)

  という3点です。
  まだまだあるが、これが代表的な三点です。
  費用対効果では人材育成の効果が測れない(中長期的には測れるはずだが)。

  また、人材は欲しいものの、採用強化予算も育成強化予算も取れない状態からどの
  ように脱却するのか。
  そして、成果主義を追求すると、業績結果が悪いときは、どんなに頑張った人も評価
  できないことになる。

  社員は、自分の頑張りに対する評価でモチベーションを高め、それがさらなる努力に
  結び付いたときに成長するものですが、一番頑張らなくてはならない業績低迷時に社員の
  モチベーションをどのように上げるのか。

  このような矛盾は経営全体においても多く存在する。
  例えば、「身の丈経営が基本」ということと、「事業には赤字覚悟の先行投資も必要」
  という経営の原理・原則がある。

  どちらも間違いではないが矛盾している。
  ここで言えることは、この矛盾を実践していくことが経営であり、特に人材育成に関する
  分野は「シロ」「クロ」がはっきりしない「グレーゾ ーン」をつくることが一つの
  ポイントになるということです。

 2.人事処遇制度のグレーゾーンとは
  人事評価は、定量評価(結果評価)と定性評価(プロセス評価)を行うのが一般的です。
  能力評価(スキル評価)も入れて、3段階で評価する企業もある。
  いずれも職能要件などを設定し、職種・階層(等級)において、自社が求める要件を
  満たしているかで評価する。

  問題は、同じ等級(同じ能力)で、業績結果を出したが定性的にはマイナス評価の人と、
  業績は良くないが定性的には社員のかがみである人のどちらを高く評価すべきかです。
  成果主義で考えると当然、業績を出したほうが評価は上であるものの、定性評価として
  「この社員の頑張りには報いてあげたい」という場合もある。

  この場合、業績で結果を出した人には通常の評価を行い、プロセスを評価したい人には
  表彰・褒章を行う企業が多い。

  また、定性評価は、結果ではなくプロセスが要件を満たしているかを評価しなければ
  ならないのだが、測る基準が人の感覚であるため、どうしてもあいまいになる。
  このように、人事評価には常にグレーゾーンがある。
  そのため、先述したような矛盾する評価を行うことも多い。

 3.相反することを同時に行う
  ある会社が、社員の成長に重点を置いて人事評価制度を再設計した。
  個人の目標管理を重視し、その人が頑張れば達成可能な目標を立てさせて、それを
  評価して(個人面談で褒めて)いけばモチベーションが上がり、成長へと結び付くと
  考えました。

  この考えは、もちろん間違ってはいない。
  ところが、個人の能力差と所属部署の環境の差が大きいため、目標レベルにも大きな
  差が表れてしまい、実際は達成時に同じ評価ができなかった。

  そこで、次の別基準を設け、個人目標を評価した後に、 幹部社員で全社員の相対評価を
  行う対策をとることになった。

  (1)本年の基本方針・目標への貢献度
  (2)部門方針・目標への貢献度
  (3)自社の将来性への貢献度

  最初からこの別基準で評価を行えば、後で相対評価をする必要はない。
  しかし、同社は個人の頑張りをどうしても評価(個人面談し、褒めて次の段階を設定)
  したいということで、あえて二重構造、しかも相反するような評価を同時に行うことに
  なったのです。

  定量と定性評価については、「定量がマイナスなのに定性プラスでは、相殺されて
  結果的に“鉛筆をなめている”ことと同じなので、業績のみで評価すべきだ」と思う
  人も多いでしょう。
  しかし、業績の評価だけでは人材は育たないのです。

 4.経営はバランス感覚
  これは絶対原則ではないが、相反することを同時に行っていくことも経営であり、
  「業績を伸ばすのが先か、人材を伸ばす(成長させる)のが先か」と聞かれれば、
  「もちろん、どちらも先だ」と答えるしかない。

  特に中小企業の場合、この「タマゴが先か、ニワトリが先か」のような問題に突き当たる
  ことは多い。
  しかし、そこに落とし穴がある。

  目先の問題のみにとらわれて、どちらか片方の考え方に偏ると悪循環に陥ってしまう
  のです。
  「経営はバランス感覚」ということが、ここでも言える。

  視点を高くし、全体をよく観察し、また、環境変化と将来も見越して、今、本当に
  自社に大切なことを考えると、この矛盾の実践こそが大切であることに気付くはずです。
  人材育成というテーマは、簡単に答えが出るものではなく、試行錯誤を繰り返さねば
  ならない。

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中小企業の経営改革

会社の老化

会社の老化

■老化
 人が老いるのと同じように、すべての会社に老化は忍び寄る。 
 旧態依然とした年功序列や硬直的な人事、社内のコミュニケーション不足。
 こうした要素を放置すれば、気付かないうちに会社は、過去にこだわり、現実の変化に
 無関心になっていくのです。

 そのまま手をこまねいていると、会社は最悪の場合、倒産という「死」を迎える。 
 それを避けるには、会社の老化を経営者が自覚し、その対策を打たなければならない。

 では、老化の兆候は、具体的にどこに、どういう形で出てくるのでしょう。
 そしてどんな対策を打てばいいのか。 
 あなたの会社を蝕んでいるかもしれない病理を徹底的に解明し、その処方箋を紹介します。

□執着と無関心 
 消えていく企業と勝ち残る企業の差は、いったいどこにあるのでしょうか。
 長引く不況、産業構造の転換といった厳しい事業環境はどこも同じはずだが、企業の
 明暗は大きく分かれています。

 朽ちていく会社の特徴を分析したところ、二つの負の力が作用していることが分かって
 きました。
 それは、社長を含めた全社にまん延する「過去への執着」と「無関心」です。 

 社長の暴走、過度の設備投資、商品開発の失敗、…。
 倒産の原因はさまざまだが、実はその裏には常にこの二つの病巣が隠されていたのです。
 倒産にまで至る組織の衰退、いわば「会社の老化」の、最も顕著な症状が「執着」と
 「無関心」なのです。

 「執着」とは、成功体験に固執して、自ら視野を狭めてしまうこと。
 かつてヒット商品を生み出した経験が忘れられず、二匹目のドジョウばかりを追う。
 過去の経営判断や既に動き出した計画、従来の仕事のやり方にこだわるあまり、軌道修正
 や撤退が遅れる。

 「手段」が、いつの間にか「目的」になってしまう。 
 こうした考え方は、やがて経営トップから従業員まで広がっていき、企業戦略全体が、
 過去の模倣に近いワンパターンなものになってしまうのです。

 ワンパターン思考に陥ると、新しい挑戦に臆病になり、ジリ貧になっていく。 
 そして、もう一つが「無関心」。
 倒産企業の多くは、経営環境や社内体制の問題点を正しく把握する能力が著しく低下
 しています。

 顧客ニーズに鈍感になる。
 社内の風通しが悪く、他部署との情報交換ができない。
 自己中心的な社員が増え、給料さえ貰えればあとは知らないといった、ぶらさがり意識も
 強くなっていきます。 

 こうした組織では、社員の思考はタコツボ化していく。
 トップに正しい情報が集まらず、結局、意思決定を誤ってしまうのです。

□会社の老化は人と同じ 
 一般的に、人は老化すると、新しいことに挑戦する意欲が薄れるといいます。
 また、過去の話を繰り返しするようにもなる。
 さらに、周囲で起きていることへの関心が薄れていくのです。

 過去に執着し、新しいことに無関心になるという点で、会社の老化は、人間のそれと
 非常に良く似ていると言えそうです。 
 2002年7月に特別清算の開始決定を受けたワールドフーズ(負債総額149億円)は、
 旧社名を日清製菓という1923年創業の老舗企業でした。

 同社は年間30億円の売り上げを誇るロングセラー商品「バターココナツ」(1966年発売)
 のメーカーとして知られていたが、その倒産劇の中にはやはり、「過去への執着」が
 見え隠れする。 

 ワールドフーズは85年から90年にかけて、クッキー、ケーキ、健康スナックなどに
 一気に事業を拡大するが、すべて失敗に終わった。
 その理由を永井社長は、「バターココナツの実績があったので、新商品を開発すると、
 最初は問屋や小売店が強気で仕入れてくれた。

 それを実需と勘違いして、過大な設備投資を繰り返してしまった」と説明する。 
 だが、意思決定を幾度も誤った背景には、ロングセラー商品を開発できた自社の実力なら、
 新商品でも同じように成功するだろうという過信があったはずです。

 過去の成功体験を引きずっていなかったと言えばウソになる。
 その結果、不採算事業からの撤退が遅れた。
 また、工場の移転やラインの増設を繰り返し、借入金を膨らませた。

 一方、 「無関心」もまた、多くの倒産企業に共通した老化現象である。
 「ニュービジネスの旗手」と言われたベンチャー企業も、お客に対する関心を急速に失い、
 破綻した。 

 2002年7月に民事再生法の適用を申請した味よし(負債総額約9億円、大西勇社長)だ。
 同社は90年代半ば、一般の寿司店の半値という圧倒的な低価格路線で宅配寿司ブームを
 起こす。

 95年にはFC展開を始め、加盟店は最盛期に150店を超えるまでになった。
 ところが90年代末になると、同業他社が乱立したことと、回転寿司の人気が高まった
 ことで窮地に陥った。

 味よしは、東京・渋谷で全国的にも珍しい食べ放題の回転寿司店を出店し、その宣伝効果
 で、一気にFC加盟店の売り上げ回復を狙った。 
 そのアイデア自体は、悪くなかったかもしれない。

 だが、回転寿司店の店内には、いたる所に『(コンベアで)流れている品以外のオーダー
 は受け付けません』といった注意書きが張られていたという。 
 消費者のニーズを無視したビジネスモデルが成功するはずがない。

 宅配寿司の成功で、消費者の視点に立つことの大切さを学びながら、わずか数年でそれに
 無関心となったのは、慢心と言うしかない。
 同時期に、同業他社は新メニューの開発などに取り組んでいた。

 その動きと対比すると、味よしが消費者のニーズに関心を失い、自己中心的になっていた
 ことがよく分かる。 
 お客様が何を望んでいるのかそれに関心を払わなくなると、組織全体がおかしくなっていく。
 現場の声は無視され、ちぐはぐな戦略に組織全体が疲弊する。

□人は過去の体験に無意識にこだわる 
 会社の老化の二大要素、「過去への執着」 と「無関心」 は、あなたの会社にも見られる
 かもしれない。 
 過去へ執着することの怖さは、自分達ではそのことがなかなか分からないところにある。
 自覚症状が無いことが最大の特徴だ。 

 企業再生ファンドの運営会社、MKSコンサルティングの川島隆明代表取締役は「過去の
 成功体験に無意識にこだわり、それが邪魔になって問題点に気付かない会社は多い」と
 指摘する。

 例えば、川島氏が自ら社長として乗り込んだベネックス(東京都大田区)。
 同社は、2001年9月に破綻した大手配管部品メーカー、ベンカンの主要事業を営業譲渡
 で引き継いだ会社だ。 

 ベンカンの問題点は、売り上げ至上主義で市場占有率にこだわったことだ。
 そのため、生産部門で欠品を出さないように多額の在庫や仕掛品を抱えた。
 いつ頃からか、「ベンカンの顧客第一主義は、欠品を出さないこと」だと従業員は誰もが
 考えていた。

 本来、欠品を防ぐことは顧客満足を上げるための一手段でしかない。
 ところが、それがいつの間にか最優先の目的となり、そのことに疑いすら持たなくなって
 いたのだ。

 川島氏はその誤りを伝え、リードタイムを七割、在庫を五割、経費を三割減らす「七五三」
 を提唱し、新たな目標とした。
 その結果、ベネックスは短期間で高収益企業に生まれ変わった。

 外部からベネックスに乗り込んだのは、川島氏を含めてほんの数人。
 旧ベンカンの従業員達は、新たな目標の設定を除けば、自分達の力で会社の体質を変えた
 ことになる。
 逆に言えば、間違った「目標」に執着していたことに気付かない恐さが、そこにある。

□会社蝕む無関心が、経営者を裸の王様に 
 もう一つの老化現象、 「無関心」 の怖さは、増殖を始めると止まらなくなることだ。 
 「社員の中には、不満やアイデアがあっても、どうせ言ってもムダという心境に陥って
 いる人達がいる。

 放っておけば、その社員達は、自分で考えることをしなくなる」と話す。
 こうした環境が次第に広がり、社長は“裸の王様”になってしまう。 
 社員がモノを考えなくなる理由を、「社長が、腰巾着のような人や同族で会社幹部層を
 固めている弊害だ」と指摘する。

 その上、不振企業は収益管理など基本的な体制が整っていない場合が多い。
 会社の情報が公開されないから、従業員達はそもそも何が問題なのかさえ分からない。
 「従業員は、自分の会社という意識が持てないから、モチベーションが上がらない。

 業績改善の提案をして、吊るし上げられてはたまらないと思っている」(真部代表理事)。 
 会社の老化の兆候は、具体的にどこに、どういう形で出てくるのか。
 チェックリストにまとめたので参考にしていただきたい。 

 では、老化を防ぎ、会社を若返らせるにはどうすればいいのか。
 「まず社長が、社員と5〜6人ずつディスカッションして、会社を変えたいと考えている
 キーマンを探すことだ」。

 人間の世界では、若年老化が問題化しているが、会社の老化も、手をこまねいていると
 猛スピードで進むことを社長が自覚し、自浄する仕組みを社内に持つことでしか、企業の
 活力を維持できない。 

 そのためには、社長は何をすべきか。
 従業員のためにはどんな仕組みが必要なのか。
 独自の取り組みで会社の老化防止に取り組んでいただきたい。

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中小企業の経営改革

同族企業

同族企業

■同族企業の能力 
 近年、中小企業白書には同族企業からの脱却を促す内容が多く見られます。
 その主な論旨は、同族企業は非同族企業に比べ、能力のある人材を幅広く登用できず、
 その結果、同族企業の売上高や雇用人数の伸びは、非同族企業に比べて劣 っているという
 ものです。

 そのため、社内社外からの親族以外の人材の登用、MBOやM&Aなどによる企業の存続を
 促す内容になっています。 
 中小企業白書に限らず、同族企業という言葉には否定的なイメージがっきまとうものです。

 親族内の紛争、無能な後継者による従業員の意欲喪失、過剰な節税対策など、マスコミ
 で問題点の指摘ばかりされていることもその原因にあり、同族企要は前時代的な甘い経営、
 という印象が強いのも事実です。

 一方で、日本の中小企業のほとんどは同族企業です。 
 中小企業庁の調べでは、世代交代した企業の後継者の63%は前代表者の同族である、
 とされています。

 創業後、世代交代を行う前の企業はほとんどが同族企業ですから、実際には日本の会社は
 そのほとんどが同族企業だと言っても差し支えないと思います。
 また、税法上の同族企業で見ると、日本の企業の95%は同族企業であるとされています。

 ここでは、
  ①前代表者と現代表者が同族である(世襲)
  ②取締役会で同族役員の割合が高い
  ③代表者及びその同族の持ち株比率が高い

 これら会社を同族企業としてお話します。 
 このような同族企業が、本当に非同族企業に比べてその能力において劣るのでしょうか? 
 ここでは、マスコミに作られたイメージに流されて、見落としがちな同族企業の強みに
 ついてお話します。

□同族、世襲が最も現実的な選択肢 
 事業を承継するときに、二つの観点での承継が必要になります。
 ひとつは経営の継承、もうひとつはオーナーシップ(所有権)の継承です。
 社内社外の信頼が厚く、経営能力の高い非同族社員に代表を渡したいと思っても、所有権
 を渡すことは簡単にはいきません。

 社員で株を引き受けるだけの資金がある人は少ないものです。
 まして、金融機関からの借入れに対する個人保証まで引き継ぐ覚悟のある人はなかなか
 いないものです(中小企業代表者の78%が金融機関の借入れに対する個人保証を提供
 :三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査)。 

 このようなリスクを背負わせることができる相手となると、同族の中から選ぶ、という
 ことは現実的な選択です。
 自分が苦労して育てた会社という財産を、親族の者に引き継いで欲しいと願う気持ちは
 自然なものですが、それ以上に、実際には同族に承継することはきわめて現実的な選択の
 結果でもあるのです。

□同族企業に問われる問題点 
 中小企業白書の指摘する、有能な人材の登用機会が少ないという問題以外にも、同族企業
 には以下のような問題がつきまといます。
  ・相続に関する親族間の権力争い、いわゆる跡目争い
  ・親子間の意見の不一致 
  ・退任後も経営に口出しする前社長 
  ・公私混同、家族、親族の問題と産営上の問題が混同する 
  ・温情主義による経営の甘さ 

 これらの問題は、特に事業承継のタイミングで表面化するものが多いのですが、同族企業
 の性格上、常に内在する問題でもあるのです。

□家業の3つの輪モデル 
 ここでハーバード大学のデイヴィス、ガーシック、ランズバーグ、ワードらの提唱する、
 「家業の3つの輪」モデルをご紹介します。
 同族企業の問題を整理するうえで、大変役に立っモデルです。

 一見複雑に見える同族企業の問題も、このモデルで整理してみると、わかりやすくなる
 ことが多いものです。 

 3つの輪はそれぞれ、  
  ①株式、事業に提供する土地、建物などの所有者の立場  
  ②家族、親族など、ファミリーメンバーとしての立場  
  ③会社に所属し、働いて報酬を得る立場 
 を表しています。 

 円が重なるそれぞれの部分は、関係する人の立場を表しています。
 どの立場にいるかによって、問題の見え方、利害のポイントが異なります。
 例えば、株を持つが従業員ではない親族は、利益はできるだけ配当にまわしてほしいと
 考えますが、株を持たない役員は、配当よりは賞与や社内留保にまわしたいと考える
 でしょう。 

 同族企業に特徴的なことは、会社の大部分を所有する者がビジネスの責任者を兼ねており、
 ファミリーの長としての役割を持っているという、3つの円が重なる部分にいることです。
 オーナー社長の役割は、この3つの輪がそれぞれに長期にわたって満足がいくよう、
 成長と調和を保つこと、ともいえるのです。

□欧米の同族企業  
 これらの問題を克服し、成長した同族企業には、キッコーマン、コクヨ、バンダイ、エース、
 西濃運輸、村田製作所など、上場、未上場を問わず、数多く優秀な企業があり、海外でも
 たくさんの同族企業が活躍しています。

 ウォルマート、イケア、リーバイ・ストラウス、L・L・ピーン、ミシュランなど、業界で
 長期にわたってトップクラスを維持している同族企業も数多くあります。
 ここで、世界の優秀な同族企業の統計を見てみましょう。

 資料は古くなりますが、2003年のS&P500社のうち、35%の企業で創業家のメンバーが
 取締役会に加わっている。
 1992年、フォーチュン500社のうち、37%の経営トップが創業家のメンバーか、創業者
 の子孫である。
  「世界の同族企業500社」ランキング (出典:フォーブス)

 1996年の米国株式公開企業5万4千社のうち、60%が創業家の強い支配下にある。
 1990年代、各国の株式公開企業トップ20社のうち、米国で20%、カナダで25%、イタリア
 で55%、香港で70%の企業で、創業家が株式の20%以上を保有する筆頭株主で、2位の
 株主との差が2倍以上。 

 これらの数字から、同族企業は非同族企業に劣るものではないことがおわかりいただける
 と思います。

□アリとキリギリス(同族と非同族)  
 同族経営企業を研究するカナダ・HECモントリオール教授、ダニー・ミラー は、卓越した
 業績を上げる欧米の同族企業を調査する中で、これらの企業の経営者に共通するものと
 して、以下の特質に気づきました。

  ・説明責任を果たすより、秘密主義を貫く
  ・四半期ごとの財務報告には無関心、四半期目標を立てない
  ・市場のトレンドを無視し、業界と大きくかけ離れた方針を採る
  ・変えてはならない伝統や創業家の理念に固執する
  ・ダウンサイジングに取り組まず、従業員を厚遇する
  ・外部のパートナーと身内同然の関係を築き、多くを与えすぎ、取引契約は競争
   原理よりも人間関係で決まる 

 これらは近代的経営手法のほとんどを無視したような経営スタイルであり、いままでの
 経営戦略論には当てはまらないものです。
 ところが、実際にはこれらの特徴が優秀な同族企業の強みであったのです。
 ミラーはこれらの優秀な同族企業の調査から、著書『同族経営はなぜ強いのか?』で、
 4つのC(4つの情熱)としてまとめました。

  ・Command(コマンド、指揮権)
   決断とスピードと革新の自由を求める強い指揮権、株主の下僕ではなく、独立
   した行動
  ・Continuty(継続性)
   夢を追い続ける情熱、長期的視点、スチュワードシップ(天からの授かり物の
   番人としての責務)、心で感じるミッション
  ・Community(コミュニティ)
   社族を結束させ、全員をミッションに向けて団結させる情熱
  ・Connection(コネクション)
   金銭的な動機付けではなく、血族的な結束の文化、たゆまぬ強化、全レベルの
   従業員に対するいたわり、外部との強い絆、永続的な「ウィン=ウィン」の関係 

 さらに、同族企業を「アリ型」、一般的な企業のもつ価値観を「キリギリス型」として、
 勤勉な社会生活を営み、明日に備えて今日を我慢するアリと、その日暮らしで自分勝手な
 キリギリスの寓話になぞらえて、次のようにまとめています。

  1.オーナーシップ哲学 
   アリ型:
    スチュワード(授かり物の番人)としてのオーナー。長期的な視 点から会社に
    関与する。 
   キリギリス型:
    トレーダーとしてのオーナー。
    短期的な利益を求め、会社や従業員への忠誠心はほとんど持っていない。

  2.トップの事業哲学 
   アリ型:
    戦略的。
    本質的ミッション指導型で、長期的な結果を志向する。 
   キリギリス型:
    戦術的。
    利益主導で早急な結果を志向する。
    ダウンサイジング、企業買収などで四半期ごとの数字を管理。

  3.人材観と対外関係 
   アリ型:
    集団主義的。
    価値観の共有、一族的意識による統制。
    内因的な動機付け。外部との永続的な関係。
    その結果、従業員は組織の利益のために行動し、モチべ−ションと協力者識
    が強く、離職率は低い。
    暗黙知が組織内に保たれる。
    外部との関係は「ウィン=ウィン」。 
   キリギリス型:
    個人主義的、官僚主義、市場主義的な統制。
    外因的な動機付け。
    社外のパートナーやクライアントとは場当たり的な関係。
    その結果、従業員は狭い利己意識で行動。
    不信が芽生えやすく、協力は生まれにくい。 
    離職率が高く、情報が外に漏れやすい。
    外部との関係は競争関係。

□同族企業の強み 
 中小企業白書によると、先代の子どもの後継者に、家業を引き継いだ理由 を尋ねた
 統計があります。 
 その結果は以下のとおりです。
  ①家業だから(69.6%)
  ②従業員・取引先への責任を果たすため(44.7%)
  ③会社経営に魅力を感じたから(29.7%)
  ④免代経営者に説得されたから(15%)
  ⑤将来性のある会社だから(10.9%)
  ⑥自分で新しく事業を始めるよりも効率的だから(9.6%)
  ⑦その他(4.2%)
  ⑧今までの会社や仕事に不満があったから(1.9%) 

 後継者の決意と使命感が感じられる統計です。
 そこには家業という形で創業の使命感を尊重し、子どもの頃から両親の姿を見て学んだ
 価値観を、経営に実践する後継者の姿が見えてきます。
 会社独自のカラーを打ち出し、創業のミッションを軸に、強い絆を持つ組織を作ろうと
 する後継者の決意が感じられます。 
 同族企業にはこのように、創業者のミッションに基づく、強い絆を持った組織を作る
 土壌があるのです。
 これこそまさに同族企業の強みと言えるものでしょう。 
 同族企業にかかわるあなたには、いかに同族企業から脱却するかではなく、いかに同族
 企業の強みを発揮していくかを追及していただきたいと思います。

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中小企業の経営改革

経営目標の設定と実行

経営目標の設定と実行

■経営目標
 会社の経営目標が明確に定められている会社は意外と少ないことに驚きます。
 日々の業務に追われていて将来の会社の姿を考える余裕がないというのが実情でしょう。
 また、目標を設定していても形だけで、その 後の達成状況の検証や処遇への反映がない
 ため、何が何でも目標を達成しよう という雰囲気がない会社も多いようです。

 そのような状況では、今までどおりの流れで 仕事をしているだけで、運任せの経営と
 言っても過言ではないでしょう。
 今までのように右肩上がりの経済状況や規制に守られていた時代はそれでもよかったので
 しょうが、現在のような厳しい競争環境の中では、ジリ貧にな っていくだけです。

 しっかりとした目標を立て、それに向かって会社が一丸となって取り組んでいかなければ
 会社の発展はありません。
 今回は、会社の目標の立て方とその目標が達成されるポイントについて、事例を交えながら
 説明します。
 是非、皆様方の会社業績の向上にお役立ていただきたいと思います。

□目標設定について
 ここでは、目標設定の手順と設定のポイントについて説明します。
 自社の状況を思い浮かべ、自社にはどのよう な目標設定が合うのかを考えながら読んで
 ください。

 1.目標設定の期間
  一般的には、長期目標(5 年〜10 年)・中期目標(3 年程度)・短期目標(年度目標)
  に分かれており、長期・中期・短期の順で 作成します。
  長期目標は 5 年〜10 年後のありたい姿を目標とします。
  その目標を達成するためのマイルストーンとして中期計画・短期目標(年度目標)を
  設定するのです。
  この変化の激しい時代に長期の計画を立てて も意味がない、という考えの経営者もいます。
  ただ、将来の会社像を描きそれ を達成するための目標は、詳細な目標でなくてかまいま
  せんが、売上や利益など分かりやすい目標を設定することは重要と考えます。
  ただ、計画に慣れていない会社では、まず、 年度計画を立てることから始めることを
  お勧めします。
  1年の計画だと実際の問題として捉えやすいため、違和感なく取り組むことができる
  でしょう。

 2.目標項目の選定
  目標項目は、分かりやすい目標とします。
  社員に馴染みのない項目を設定してもピンと来ません。
  何をすればよいのかをイ メージできる項目を目標としましょう。
  できれば、率よりも額・数を目標として設定するほうがよいでしょう。
  率だと達成目標としては、どうして もあいまいなイメージになってしまいます。
  絶対額や絶対数であれば、社員も明確にイメージができるのです。
  また、目標項目は「あれもこれも」と多く選定したくなりますが、目標項目が多すぎる
  と焦点がぼやけてしまいますので、 優先順位をつけ2〜3項目に絞って選定して下さい。

   * 経営目標の項目例を以下に示します。
    ・売上高 ・経常利益 ・営業利益 ・取引先数 ・来客数
    ・自己資本比率 ・経常利益率 ・営業利益率 ・リピート率
    ・原価率・流動比率 ・有利子負債残高 ・キャッシュフローなど

 3.目標の設定レベル
  目標をどのようなレベルで設定するかが、社長の重要な仕事となります。
  全社員をやる気にさせる目標を設定しなくては いけません。
  目標によっては社員がやる気を失ったりするのです。
  目標のレベルは、会社の状況によって違って きますが、ポイントは頑張ればできる目標
  の設定をすることです。

  何の根拠もなく前年比○○%アップという目標設定では、絶対に達成されません。
  会社を取巻く環境と自社の能力を勘案して、自社にあった目標を設定しましょう。
  銀行から求められる経営改善計画であっても 、経営陣だけで作成することなく、社員の
  意見を聞いて、どのレベルなら達成可能かを確認して作成してください。
  そして、社員が達成できると思うレベル の計画にしなくてはいけません。

 4.目標のブレークダウン
  目標を達成するためには、個人の目標と会社の目標が連動していなければなりません。
  ただ、目標に対して意識の低い会社は、まず会社と個人の目標が連動していることを
  認識させることから始め なければいけません。
  会社にいれば給与がもらえると考えている社員は、 新入社員だけではありません。
  中堅社員でもそのような考えをもっている人は意外と多いのです。

  頭では自分たちが稼いだ分が給与として自分に返っ てくると理解していても、実感が
  なく稼ぐ行動に結びつかないのです。
  会社目標を部門や個人にブレークダウンすることにより、どれだけ実績を上げなければ
  ならないかが明確になり、「誰かがやってくれるだろう」という当事者意識の欠如を
  防ぐことができるのです。

目標を達成するために
 1.必達意識の浸透
  企業の経営目標を達成するためには、まず、 社長・社員が「目標とは絶対に達成するものだ」
  という認識をしっかりと持たなくてはいけません。
  目標への意識の低い会社では、「必ず達成する」「達成しなければならない」という
  意識の浸透を図ることが必要です。

  社員というのは、会社目標を必ず達成しなければならないという意識は低いものです。
  特にいままで達成するのが当たり前という風土でない会社では、社長が社員に対して
  しつこく言い続けな ければなりません。
  一回言っただけでは、社員には話は通じないものです 。
  うるさいと思われるくらい言い続けてやっと頭の中に入っていくものなのです。

 2.PDCAのサイクルを回せ
  目標を設定したら、必ず達成状況を検証しなくてはいけません。
  PLAN(目標設定)・ DO(実行)・ CHECK(検証)・ ACTION(目標の修正と実行)
  というサイクルを回し続けることにより 、目標は確実に達成されていくのです。
  その時、経営陣や管理職は目標達成の結果だけを見るのではなく、どのようなプロセス
  を踏んだから達成できたのか、できなかった原因は何だったのか、どこのやり方を
  変えれば達成できるのか等を検証し、達成するための最良の方法を発見し、全社員が
  共有して実行できるようにしていくことが重要です。

 3.先を見越した行動計画
  目標を達成するための行動計画は、先を見越して前倒しで計画立てていかなければな
  りません。
  現在の営業や販売のしかけは、半年以上先の業績結果として現れることが多々あります。
  例えば、結婚式の営業であれば、実績は期中挙げた式の数及び金額が会社業績となり
  ますが、実際に結婚式を成約するのは半年以上も前なのです。
  そのような場合は、「今の仕事は半年後のため」という意識をしっかりと持たせ、
  年度内の成約目標と実行目標と2本立ての計画で管理していくことが必要です。

 4.処遇との関連づけ
  個人目標を達成させるためには、賞与や給与または昇進に差をつけるなど処遇と結び
  つけたり、表彰制度を設けたりするこ とが重要です。
  オーナー会社でよく見受けられるのですが、会社業績が良くなってもオーナー一族
  だけが儲かり、社員の待遇は良くならないのではないかと考える社員は意外に多く
  見られます。
  会社が良くなるということは、雇用が安定するというだけでなく、社員個人の生活も
  良くなるということを実感させましょう。

 5.個人の人生目標
  会社の目標を立てる時には、できるだけ個人の人生目標の設定をしてもらうようにして
  います。
  将来どのようなことをしたいのか、どのようになりたいのか、どのような夢を持って
  いるのかなどを書き出してもらうのです。

  そして、そのために今何をしなければいけないのか、どのような行動をとらなければ
  いけないかをしっかりと認識してもらいます。
  人は日々の生活に追われていると、長期的な 目的を忘れて楽な方へ流されやすいものです。

  個人の人生目標を書き出すこと により、自分の夢や目標を改めて認識することにより、
  会社の目標達成への意欲付けとなるのです。
  仕事と個人の生活を別に考えないで、個人の夢や生き方も共有することも必要でしょう。

□最後に
 まずは目標です。目標のない経営などありえません。
 目標を明確にして、その目標達成のために何をすればよいのか、どのような方法で計画を
 達成するのかという行動計画を立て、しっかりと実行するのです。
 個人レベルで解決できない問題は、素早く全社レベルの問題として対処していきます。

 計画達成に向けて何事も素早く対策を打っていきましょう。
 スピード感がとても重要なのです。
 計画を立てたら達成に執着心をもって、絶対に最後まであきらめないことです。
 しつこく・しつこく達成にこだわり、「絶対に達成するんだ」という熱意を最後まで維持
 してください。

 非科学的と思われるかも知れませんが、気持ちの持ち方で人の能力は大きく左右される
 のです。
  やる気が重要です。
 絶対に達成するという熱意が、必ず目標の達成につながります。

 絶対に達成したいという意識が強ければ、四六時中仕事のことや目標が頭から離れない
 のです 。
 そうするとちょっとした情報や体験が目標達成のためのヒントとなり、 仕事に好影響を
 与えてくれるのです。

 気持ちは必ず通じるのです。
 最後に失明の音楽家・大島あきら氏の言葉で締めくくります。
 やればできる。
 絶対できる。必ずできる。
 できないのは、あなたにやる気がないからです。
 今すぐやります。

 今回のポイント
  (1)目標の設定
   ・目標設定は長期から中期・短期へ慣れていない会社は、まず短期目標を
   ・ 目標項目は、絶対額や絶対数字で。項目を2〜3に絞れ
   ・ 目標レベルは、自社の状況に合わせて
   ・ 会社目標を個人目標へ落とし込む

  (2)目標を達成するために
   ・必達意識の浸透
   ・ 処遇に結びつける
   ・ 先を見越した行動計画を
   ・ 個人の夢を書き出せ

  (3)社長の本気が目標達成の原動力
   ・目標のない経営はありえない
   ・ 目標達成へ絶対にあきらめるな
   ・ 強く願えば必ず叶う

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中小企業の経営改革

経営環境の分析

経営環境の分析

■企業を取り巻く環境の変化
 企業経営を取り巻く環境は急速に変化します。
 これらの変化に対し、柔軟な姿勢で迅速かつ的確に対応することは、企業が存続して
 いく上で非常に重要です。
 そのためには、日ごろから継続して情報の収集・分析を行うことが不可欠です。
 例えば、経営環境を正確に把握することで、憶測に惑わされることがなくなり、完成度の
 高い成長戦略の立案と推進を実現することができます。
 また、経営環境の変化をいち早く察知することができれば、他社に先駆けて対応することが
 可能となり、新規事業を展開する際も有利になります。
 企業を取り巻く経営環境には、社会や経済など産業全体を取り囲むマクロ環境と、自社の
 日常的な事業活動に直結するミクロ環境の2種類があります。
 以降では、これらについて紹介していきます。


 □PEST分析:マクロ環境分析
  1.PEST分析とは
   マクロ環境は、
    (1)政治的環境要因(Politics)
    (2)経済的環境要因(Economic)
    (3)社会的環境要因(Social)
    (4)技術的環境要因(Technology)

   といった4つの切り口で分析していきます。
   この分析手法を、各要因の頭文字をとって、
PEST分析と呼びます。

   (1)政治的環境要因(Politics)
    政治的環境要因とは、政策・法律・条令などの政治的な要因によって生じる
    環境の変化です。
    政治的な環境変化の特徴は、その発生が非連続的であることです。
    通常、ほかの3つのマクロ環境変化(経済的環境要因、社会的環境要因、技術的
    環境要因)は、時間の経過につれて少しずつ変化していくものです。
    しかし、政治的環境要因の変化は必ず「200X年Y月から施行」というように変化が
    起きる時期が定められます。
    それ以前の政治的環境に適合していたビジネスが、ある日を境に成り立たなくなる
    という特殊性があります。
    特に多くの規制がある業界などに関しては、その変化に十分注意しなければ
    なりません。
    政治的環境要因の変化は以下の3種類です。
    これらを混同すると、政治的環境要因の変化が自社に与える影響を見誤る恐れが
    あるばかりか、事業活動の方向性を誤る危険性も出てきます。

     ・実施される時期が既に決定しており、改正ポイントなども明確になって
      周知されているもの

       →早急にその対応を実現し、事業活動に反映させなければなりません。
     ・いずれは実施されるものとして周知されているが、その時期などに関しては
      流動的であるもの

       →いつ実施されても対応できるような対応策を検討し、迅速に事業活動に
        反映することができる体制を整えなければなりません。

     ・いずれは実施しなければならないと認知はされているが、具体的にどのように
      なるかについては白紙状態のもの

       →実施に向けた進ちょく度合いを政府系の調査会や法案研究会などの
        議論状況から把握するなど、情報の収集・分析を進めておきます。


   (2)経済的環境要因(Economic)
    経済的環境要因とは、マクロ経済の変化です。
    マクロ経済の変化に関しては、多くの経営者が報道などを通じて十分理解して
    いると思いがちです。
    しかし、そのほとんどは、大まかな傾向を理解する程度の内容でしかありません。
    経済的環境要因は必ず数値で押さえる必要があります。
    変化が誰の目にも明らかになってしまった時点(つまりマスコミなどが大きく
    報道した時点)では、既に他社が変化への取り組みを完了させています。
    変化の最初の兆しは小さなものです。
    この兆しを見落とさないためにも、必ず自社の事業に関連性の高い経済指標類は
    数値で押さえておくべきでしょう。
    経済的環境要因に関しては、地域紛争や突発的な事象が発生しない限り、おおむね
    一定のトレンドを示すものがほとんどです。
    このトレンドを把握した上で、マクロ経済に与える影響を検討していきましょう。

    その際に参考になる代表的な経済指標は以下の通りです。

     月例経済報告
     産業動向
     地域経済動向
     四半期別国民所得統計速報
     景気動向指数
     経済見通し
     金融経済統計月報
     日銀短期経済観測
     貿易統計
     国際収支統計
     設備投資計画調査
     機械受注統計
     消費動向調査
     家計調査
     公共工事着工統計調査
     建設工事受注統計調査
     卸売物価指数
     消費者物価指数
     短期地価動向
     法人企業統計
     法人企業動向調査  


   (3)社会的環境要因(Social)
    社会的環境要因とは、人口動態やライフスタイルなどの変化です。
    これらの変化から、自社の事業に関連性の強い社会的動向を分析します。
    人口動態は、経済的環境要因と同様に1年単位では変化が顕在化しにくいため、
    「10年単位」といったように長期的な視点で把握していくことがポイントです。
    また、トレンドなどは定量的に把握しにくいものですが、業界団体の研究資料
    などを確認することで、業界に与える影響を大まかに把握することができます。
    これだけに留まらず、業界団体・シンクタンク・金融機関のリポートなどの
    ような第三者的な意見で作成されている情報も収集・分析するとよいでしょう。
    社内の意見だけで検討を加えると、どうしても自社に都合のよい近視眼的な意見が
    大勢を占め、冷静かつ客観的に変化をとらえることができなくなる傾向が強くなって
    しまうからです。


   (4)技術的環境要因(Technology)
    技術的環境要因とは、文字通り技術革新などの変化です。
    特に製造業においては、技術的環境要因は自社の事業基盤そのものを揺るがす
    ことにもなるので、十分な検討が必要です。
    製品関連の技術動向のみならず、生産技術や代替技術が発生する可能性、技術的
    ブレイクスルーの予想時期なども検討しましょう。
    特に基盤的な技術が海外からもたらされるような業界の場合、海外での技術動向の
    変化などを学会発表や学会誌、あるいは親密な関係にある研究者などから収集する
    ように努めましょう。
    小売業やサービス業においても、店舗オペレーションや物流管理へのITの活用
    (例としてはICタグなど)などには十分注意を払う必要があります。


  2.まとめ
   マクロ環境の分析において必要とされるのは、抽象的な概念や定性的な表現では
   ありません。
   あくまでも事実に基づいた分析、定量的な分析が重要です。
   「低下傾向にあった金利が上向きつつある」とか「いずれ規制緩和がなされる
   可能性がある」というような形でのとらえ方では正確な経営判断はできないものです。
   金利であればメーンバンクのプライムレートがどのように推移し、それに対して
   自社の借入金利はどのように変化しているのかを把握しなければなりません。
   また規制緩和であれば、その緩和の目標達成年度に関して政府あるいは関係省庁の
   公式の発表があったのか、あるいは海外からの緩和要請に目標達成年度は言及されて
   いるかなど、正確に把握することが重要です。
   一方、マクロ環境の分析において最も避けなければならないのは、マスコミなどの
   報道を何となく周知の事実のように考えてしまい、正確な情報の分析を怠ってしまう
   ことです。


 □5Forces(5つの力)分析:ミクロ環境分析の5つの切り口
  1.5Forcesとは
   ミクロ環境は「業界構造」と言い換えることができます。
   業界構造の変化については、
   業界動向に大きな影響を与える、
5つの力(5Forces)から検討することが大切です。

  2.買い手(ユーザー)の力による変化
   ユーザーは常に変化します。
   企業はこの変化に敏感にならなければなりません。
   ユーザーのプロフィール・購買決定要因・価格や品質への反応などに変化が現れた
   場合、従来とは異なる取り組みが求められることがあります。
   顧客情報管理の充実や取引履歴の分析などを継続して行いましょう。


  3.売り手(サプライヤー)の力による変化
   サプライヤーの変化は価格や品質の決定的な変化要因になります。
   原材料や部材の品質・価格・納期などはもちろん、原産地の状況やサプライヤー業界の
   シェアなどは、すべて業界構造に少なからぬ影響を与えます。
   個々の購買担当者に任せきりにせずに、企業として情報の収集・分析に取り組み
   ましょう。


  4.新規参入業者の力による変化
   強力な新規参入業者が現れたときは、業界の構造が大きく変わってしまいます。
   優れた技術や新たなビジネスモデルを持った新規参入業者の参入は、既存業者に
   とっては大きな脅威です。
   特に資本力を持つ大手企業の新規参入の可能性には注意を払いましょう。


  5.代替品の力による変化
   圧倒的な技術的優位や価格的優位を実現した代替品の出現は長期的には最大の脅威と
   なるため、日ごろから情報収集・分析を継続して実施します。
   また、自社が新製品や代替品を市場投入する場合は、既存業者への対応策などに
   ついてもあらかじめ検討しましょう。


  6.業界内の競合他社の力による変化
   業界全体の動きを決定する業界大手企業の動向や自社の営業地域に存在する個別の
   競争業者の動向を検討します。
   特に大手企業の戦略転換は業界そのものに大きな影響を与えます。
   日ごろから情報の収集・分析を進め、他社よりも早く策を講じることのできる体制を
   整えなければなりません。


 市場環境変化を分析する
  1.市場の変化の分析
   マクロ並びにミクロの環境の変化を受けて、市場がどのように変化しているかを
   分析します。
   市場環境の分析に関しては、可能な限り第三者機関の情報を活用して客観性を維持
   します。
   現在は、インターネットの普及により多くの統計関係資料や市場予測に関する論文
   などを簡単に入手することができるので、これらを有効活用するとよいでしょう。
   注意点は、一つの資料だけで判断しないようにすることと、成長率などの定量的要因
   での将来予想に関して、その予想の根拠となる前提条件を把握することです。


  2.市場規模の変化
   市場規模の変化は出荷統計や生産統計などを基に分析します。
   業界団体・シンクタンク・金融機関のリポートなども有効です。
   市場によっては、正確な数値が把握できない場合もありますが、詳細な数値にこだわる
   よりも、市場全体がどのような変化をみせているかを把握するほうが重要です。


  3.市場の成長性
   市場の成長性に関しては市場全体の売上高の変化でとらえます。ただし、市場に
   よっては売上高よりも出荷台数などで判断したほうがトレンドを把握しやすいケースも
   あります。
   特に商品の価格の見直しが頻繁に行われるような市場では、単純に売上高だけでは
   実態を把握し切れないケースがあります。
   そのため、可能な限り金額ベースと出荷台数ベースの両面で検討することがポイント
   です。
   また、サービス業や小売業では出荷台数に代わるものとして、出店件数や従業員数
   などを活用するとよいでしょう。


  4.市場の収益性
   市場の収益性に関しては業界全体での経常利益率の変化だけでなく、業界の主要企業
   の営業利益率や経常利益率の平均値の変化についても把握しておくことが重要です。
   これは成長期にある業界においては新規参入業者が増加し、収益性の低い中小規模
   による企業層が大規模に形成され、業界全体での収益性を実情以上に低下させる
   ケースがあるためです。
   業界全体での収益性の変化に関しては、業界団体・シンクタンク・金融機関のリポート
   などから過去の推移と将来の予想を検討していきます。
   日本経済新聞社の「日経経営指標」、中堅・中小企業に関してはTKC全国会が発表
   している「TKC経営指標」、中小企業庁編、中小企業診断協会発行の「中小企業の
   財務指標」なども使いやすい資料として挙げられます。


  5.販売価格の動向
   技術的なイノベーションや製品モデルチェンジが少ない業界では、特定仕様の製品を
   標準品として規定し、その価格変化を追います。
   一方、技術的なイノベーションやモデルチェンジが頻繁に起こる業界においては、
   売れ筋商品の価格帯を標準価格の推移として把握していきます。
   販売価格の動向を把握することが難しいサービス業においては、業界団体などが
   発表する顧客1人当たりの売上高の推移などから判断してみるのも一つの方法です。


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中小企業の経営改革

小規模企業の経営

規模企業の経営

 ■チーム(組織)力
  従業員規模が20人前後の会社は現有資産を最大限に活用しなければならない。

  「規模が小さいから」、「金がないから」、「社員のモラル・能力が低いから」……。

  もしこのような考えで仕事をしている限り、いつまでたっても収益アップは望めません。

  今日の糧を求める仕事ばかりしている。

  明日(将来)の糧を得ることも実践していかなければ現状から抜け出すことは不可能
  です。

  現状の弱点を解決するためには会社に仕組みを作ることです。

  マンパワーから抜け出すには、従業員数数が多ければいいというわけではありません。

  各人の役割を明確にチームで活動することです。

  そのためには従業員の品質を高める以外ないのです。

  従業員の数が少ないから小さいのではない。

  偏ったマンパワーに依存した体質から、従業員の能力を引き上げることをしないから、
  いつまでたっても儲けられないのです。

  大企業のやり方を小さな会社が実践していること自体が間違いなのです。

  このような組織では一人ひとりが2人前、3人前の役割をこなすことが求められます。

  人の採用、教育、計画に基づいた行動(経営計画、事業計画、行動計画)、業務の
  流れを標準化、社内のルール作り(各種規定)などをフォーマット化しておくことです。

  それによって社内業務の75%が定型化できれば残りの時間を収益に直結した業務に
  専念できるのです。

 □社内環境を阻害するムダ・ムラ・ムリ

  織のムダ・ムラ・ムリは様々なリスクを生み出します。

  忙しさにかまけて優先順位の高い仕事を後回しにしている現状を変えることです。

  多くの会社がこれらに気づかず、当たり前のように続けており、まるで穴の空いた
  バケツに水を注いでいるようです。

  仕事をチームで進めることが、モチベーションやコミュニケーションの活性化を生みます。

  やりがいがなければモチベーションの向上は望めない。

 □社内の環境整備

  身体に汗を流すだけではなく、脳みそにも汗を流そう。

  日々日常業務に追われ、自社の社員を「能力がない」「言われたことしかしない」
  「挨拶もロクにできない」と嘆く社長を見聞きする。

  しかしこれらはすべて社長の責任であり、社長自身のことであることを肝に銘じる
  ことです。

  従業員を雇うと、トップ自らが直接掛かりきりで指導するといった場面が多い。

  または、時間がたてば自然に仕事を覚えて、自分の代わりになってもらえるだろうと
  期待している。

  だが現実には、いつになっても仕事を覚えない。

  少しでも込み入った話になると対応できず、すぐに質問しにくる。

  結果、説明するよりは、自分でやった方が早いので、自分でやってしまう。

  よって従業員は、いつまでも仕事を覚えないという悪循環にはまる。

  従業員が育たないことを、当人の能力のせいであると、決め付けてしまっている。

  そうではないのです。

  仕事を覚えないのは、スタッフの能力が原因なのではなく、覚えさせる機会(環境)を

  与えていなかっただけなのです。

 □隗より始めよ

  多くの会社がコロナ渦において、様々な苦難にさらされています。

  しかしこの状況を苦難と取るか千載一遇のチャンスと取るかはあなた次第なのです。

  オフィスワークからリモートワークへ仕事のやり方は違っても基本は変わりません。

 

 □ロイヤルティからエンゲージメント

  今まで使われ続けていた言葉にロイヤルティがあります。

  ロイヤルティとは、従業員が会社に対して抱く「忠誠心」や「帰属意識」といった
  従属的な言葉に聞こえます。

  しかし今ではエンゲージメントといった言葉に置き換えられてきました。

  「エンゲージメント」とは、従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」をあらわす

  ものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、
  双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。

  エンゲージメントの向上は企業にとって必要不可欠になっています。

  米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への

  熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが
  分かった。

  米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。

  企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、

  「やる気のない社員」は70%に達した。

  94%の社員が使えないということです。

          (出典:日本経済新聞)

  昭和によく使われた言葉にハングリー精神があります。

  昭和の成長はこのハングリー精神があったからです。

  しかし今は違います。

  世の中にはものがあふれ、ひもじい思いをする人は殆どいなくなりました。

  このような社会でハングリー精神をもてと言われても、どだい無理な話です。

 □日本のガラパゴス化

  日本製品がガラパゴス化と言われて久しいですが、経営においても同様の状況のようです。

  昭和の時代の経営のやり方を今も引きずったままの企業を多数見聞きします。

  我々は企業だけでなく、政治家やオリンピックの組織においても同様な状況を
  マスコミを通して見聞きしています。

  世界が変わっているにも拘らず、国内ではこの有様です。

  いつになったら若い人たちが活躍する場ができるのだろうか。

  昭和の時代に現役を過ごした私にとっても「なぜ、今の時代にあったやり方に変えようと
  しないのか?」と、疑問に思うことが数多くあります。

  昭和世代の社長からすると反論もあるでしょう。

  「日本には日本のやり方がある」「俺の若いときは」「仕事は体で覚えるものだ」
  「技術は盗んで覚えろ」等々。

  挙げたらきりがありません。

  しかし、世界の風潮は大きく変わっています。

  昭和の猛烈社員はもういないのです。

  昭和で現役世代を過ごしてきたビジネスパーソンの多くは、激しい競争にもまれてきた。

  しかし彼らの多くは今までのやり方しかやろうとしないか、あるいは出来ないのです。

  身体に刷り込まれているからです。

  自分がやらなければといった、責任感が強くガッツがあった反面、我が強い自己中の

  人間が多かったことも確かです。

  しかしそれは今では通用しない。

  ガラパゴス化とは、日本のビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)
  製品やサービスの最適化が著しく進行すると、外部(外国)の製品との互換性を失い

  孤立して取り残されるだけでなく、適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い
  製品や技術が外部から導入されると、最終的に淘汰
される危険に陥るのです。


 □チームの力

  限られた人員でより多くの仕事をこなさなければならない状況になると、今までの
  ような仕事のやり方では対応し切れなくなってしまう。

  さらに、環境変化は消費者や取引先の価値観も大きく変えた。

  価値観が変われば、求められるものも変わる。

  その結果、今までの連続性の中で身につけた「個人の経験値」に頼った仕事のやり方

  では限界にきているのです。

  これは、既存の延長線上や提供する側の都合を重視した仕事のやり方から大きく
  転換することを意味する。

  チームとは、一つの目的を達成するために結成された集団です。

  規律を守り、互いを信頼し、勝利のために迷うことなく前進し続けるチーム力が
  求められているのです。

 □DX(デジタル トランスフォーメーション)

  最近この言葉がネットやマスコミを賑わしています

  しかし、近年の急激なネット社会の到来により企業が振り回されている感があります。

  コンサルティングの仕事をしてきた中で、痛切に感じることは、環境整備が出来て
  いないまま新しいことを取り入れて失敗に終わった例が数多くあります。

  業務改善を進めようとする前に、社内の環境を整備することから始めなくてはならない

  のです。

  政府はデジタル化と声高に叫んでいるが、掛け声だけで、社会の環境整備は未整備の
  ままです。

  アナログ人間の私でさえお粗末と思わざるを得ないのです。

  弊社のメルマガでも人材育成、事業承継、事業計画などの情報を継続的に流しているが、

  どれだけ感じてくれているのだろうか?

  なぜ変わらないのか? なぜ変わろうとしないのか?

  後継者問題、業務の標準化、人材育成然りである。

  変化に対応しなければ淘汰の道をたどるだけである。

  この難局を乗り切るためにも貴社が変化することです。

  そのためには今から行動を起こすこと。

  動かなければ、何も変わらない、「現状維持是即脱落」である。


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中小企業の経営改革

小規模企業は多機能型人材で

小規模企業は多機能型人材で

 ■小規模企業は社員を多機能型人材が重要
  小さな会社の経営で、一番重要視しなければならないのが、経営の「モノサシ」としての
  「労働生産性」と「労働分配率」です。
  それらが、自社でどれくらいの数値であるかを、まず最初に確認しなければならない。
  ここで問題になるのは、これらの労働生産性や労働分配率の数値が、標準より悪い
  時です。

  この場合は大体、売上規模と比較して、人員過多のケースが多いのです。
  たいていの中小企業は、粗利のうち約50%前後を労働分配率が占めており、
  労働生産性も1名当たり60万円前後のレベルです。
  こうした小さな会社では、社員を多機能型人材化しなければ、経営が成り立たない
  時代なのです。

  小さな会社では、余剰人員がいるように感じても、なかなか人員をカットできない
  のが現実なのです。
  であるなら、自社に在籍している社員をフル活用するしかないのです。
  大企業であれば、リストラと称して人員カットの戦術をとることもできるでしょう。 

  しかし小さな会社は、社員1人ひとりに、現業務(作業)との兼務で他の業務をも
  やってもらうべきなのです。
  これが、ここでいうところの「多機能型人材」です。
  社員に「他の作業」をやってもらう場合、営業に関する仕事に従事させるべきだと
  考えています。

  特に、直接営業に関与していない繰り返し作業的な業務活動をしている社員に、
  営業関連の作業をやらせることで、本人の「多機能型人材化」がいっそう早く進む
  からです。
  ただこの場合でも、彼らが現状を理解できるようしっかりと説明して、心から協力する
  気持ちをもたせなければなりません。

  うわべだけの協力で、トップがいない時には非協力的な作業をするようでは、とても
  今後生き残れる会社にはなりえないことを、全員に教え込んでおく必要があるのです。
  小さな会社のトップは、外に出て営業活動や情報収集をする機会が多く、留守がち
  です。

  だから本気で協力しようとしない、トップがいない時には手を抜くような社員がいる
  場合は、いくらよい戦略をたてても、「絵に描いたモチ」になってしまいます。
  彼らを本気にさせるために、社長はしばしばイヤなことも言わなければならない。
  しかしそれが、小さな会社の社長の仕事なのです。

  小さな会社は、従業員が、従来の作業以外の仕事を素直な気持ちで実行できるかどうかで、
  よくも悪くもなるのです。
  社長が従業員に担当以外の仕事をさせようとすると、「労働強化」と言う社員がいるが、
  そういう人がいては、会社はとても競争の中で生き残っていくことはできないのです。

 □社員の「質」を最重要視
  トップにとっても社員にとっても、「総人件費は低く、給与は高く」という経営が
  一番理想的です。
  しかしこれを実現するには、トップとすべての社員が「総粗利の中に占める自分たちの
  総人件費は約50%」であるということを、ちゃんと知っていなければならないのです。

  社長は、少なくとも主な社員には、なかなか増加しない、いや、むしろ減少気味な
  粗利額の約50%の人件費額を何名で配分しているのかを知らしめる必要があるのです。
  そうした雰囲気ができた会社では、単純作業しかできない「質」の社員はお荷物であり、
  不要な存在であることがはっきりとわかってくるはずです。

  小さな会社は特に、ごく少数の定数で会社業務を遂行せねばならない時代なので、
  どうしても1人2役、3役のマルチ型人間が、必要とされるのです。
  ただ、ここで注意しなければならないのは、社員本人の自主的判断で「多機能型人材」
  に向かわせる工夫です。

  考えて行動せず、不平不満を感じながら1人で2役をこなそうとしても効果は薄く、
  手抜きや注意力の散漫で逆に不効率を発生させることになるからです。
  どうやって、定数の社員が喜んで、自覚して多機能型人材をめざす雰囲気をつくるかも、
  社長のウデなのです。

 □「多機能型人材」とはどんな社員か?
  「やる気のない人間」をやめさせる勇気をもつことです。
  会社には、「彼は、2人前の仕事をする」などとよくいわれる人がいる。
  こういう人物が会社内に多くいれば、当然経営内容はよくなります。
  こういう状況をつくり出すのが「多機能型人材」化を促進するということです。

  しかしこういう軍団をつくるには、この「2人前」とか「3人前」などの言葉の意味を、
  よく知っておく必要があります。
  わたしは「仕事ができる人」というのは、他の人から指示や説明されなくとも、自主的に
  次のような仕事の進め方ができる人のことだと考えています。

   ①どうせやらなくてはならない繰り返し作業なら、言われる前に
    作業をこなしてしまう人。
   ②他の人が忙しく作業をしている時、自分が手が空いたら、支援
    できる人。
   ③トップがいなくても、いる時と変わらず業務活動ができる人。

  むしろ、トップが不在の時ほど、しっかりした作業ができる人がたくさんいればいるほど、
  会社は成長するのです。
  問題は、手早くやれば自分の作業はすぐ片付くのに、さもやっているふりをして、
  時間稼ぎをするようなタイプです。

  しかもそういう人は、遅れれば会社にとって明らかにマイナスとわかっていても、
  「自分の仕事でない」場合には決して他を支援しない。
  そういう人を責めても、「急いでやっているつもりです」などという主観の入った
  反論をするから、言い争いだけで終わってしまうのです。
  こういう例が一番やっかいなケースです。

  その解決方法は、「今一番優先しなければならない作業は何か」を本人にわからせる
  ことだが、いくら言っても理解しないようであれば、リタイアを勧告するしかない。
  小さな会社の場合は特に、いったん「仲間になった」社員をリタイアさせることが
  むずかしい。

  しかし、「やらなければならないこと」がわかっているのにやらない人間、要するに
  「やる気のない人間」は、リタイアさせるしかないのです。
  小さな会社、小さなチームだからこそ、そうした人間が1人いるだけで、全体の雰囲気
  ががらりと変わってしまうからです。
  この判断と勇気が、小さな会社を救うのです。

 □あなたの会社の社員は何人前?
  社員の仕事の仕方について厳しい表現で述べてきたが、もともと会社に集まってきた
  人たちの目的は同じであるはずです。
  「できるだけ多くのパイを食べたい」と誰もが願っているのだから、それに向かって
  一丸となって努力していけるはずなのです。

  ではここで、どんな仕事の仕方ができれば「○人前」であるか、その目安について考えて
  みましょう。

  ・5人前の人:クリエイティブ(創造的)な発想をし、それを実現する
         実行力のある人(社長・専務級)
  ・3人前の人:経営をトータル的にみて、弱点となっている仕事を支援
         することができる人(部長・支店長級)
  ・2人前の人:自分のセクションの作業はトータル的にみたうえで、
           他の部にも渡りをつけられる人(課長級)
  ・1.5人前の人:自分の作業ができたうえで、人の仕事のアドバイスも
          できる人(主任級)
  ・1人前の人:自分の仕事(作業)はどうにかこなせる人
  ・半人前の人:自分の作業もできない人。いちいち人から言われないと
          作業できない人

  さて、あなたの会社は何人前の人が多いでしょうか。
  たいていの会社では「1人前の人」が多いことだろうが、「半人前の人」が会社の中に
  たくさんいるとしたら、それは大変な問題です。
  何といっても、粗利の約50%は人件費なのです。
  人件費はもちろん一定の枠があります。

  だから「半人前の人」の頭数だけ多くいるような会社は、1人当たりの給与が低く
  なることは当然なのです。
  同じ大きさのパイがあるとすれば、食べる人員が少なければ少ないほど、1人ひとりが
  大きなパイを食べられる。

  逆に人数が多ければ多いほど、配分されるパイは少なくなる。
  小さな会社だからこそ、1人ひとりが1.5人前以上の人間になって初めて配分される
  パイも大きくなるのです。
  これが動かしようのない現実であることを、朝礼やミーティングを利用してしつこく
  社員に教えなければならない。

  社員の質のアップは、彼らの心からの理解がないとできないものです。
  社員の質」は業務の技術からでなく、まず「ヤル気」からスタートするのです。
  さらに「ヤル気」とは、言うならば社長との「相性」とも関係しているということを
  頭に入れておきましょう。

 □『適材適所』とは何をすることか?
  1.適材適所を判断する5つのタイプ
   「人を『適材適所』に配置することが重要である」、こんな抽象的な言い方をした
   ビジネス書がたくさんあります。
   しかしこれではあまりにも抽象的すぎて、何をどうしたら適材なる人を適所に配置
   できたといえるのか。

   どこの会社でも、入社時には面接を行って本人に発言してもらい、ある程度性格を
   判断しようとするものです。
   しかしこれはほとんどあてにならない。
   面接の時には、たいていの人は自分で欠点と感じている部分を表面に出さない
   からです。

   とすると、どうすればよいかということになりますが…。
   小さな会社で一番いいのは、社長が1ヵ月間、その人の作業ぶりをジッと観察する
   ことです。
   社長ができなければナンバー2がそれをやります。
   この過程を経てから、その人を然るべき部署に配属するべきなのです。

   この過程をふまえずに入社させて、そのまま永年同じ職種につかせる場合が多い。
   会社が小さい場合は人事異動もなかなか行われません。
   これでは適材適所ではなくなって、結局は不効率な作業活動を発生させ、結局、
   儲からない会社にしてしまうことになるわけです。

   人ほど高い買い物は企業にとってはナイはずです。
   これを最優先して考えなければならないのです。
   新人を入社させて頭数をそろえただけで、「その職場に戦力がついた」と思うこと
   自体がダメなのである。

  2.入社の時に「配置換えは当然」と明言
   プロ野球をみればよくわかります。
   プロ球団では、高い契約金を支払ってドラフト1位でとった選手でも、とりあえず
   2軍に入れてその能力と適性を見極める。
   いきなり1軍に入るのは、何年に1人という特殊な選手だけです。

   その他のほとんどの選手は、ピッチャーとして入団した者であっても打者に切りかえて
   しまうこともあります。
   世界のホームラン王だった王貞治氏も、高校時代はエースピッチャーでした。
   巨人に入団してから打者に転向して大成したのです。
   プロ野球のような専門職でさえ、職種の変更は当たり前なのです。

   それなのに、営業として入社するとずっと営業、運転手として入社するとずっと
   運転手、事務として入社するとずっと事務という会社が多いこと自体が異常なのです。
   だから小さな会社のトップは、入社時に少なくとも、「入社1ヵ月間で新人の仕事ぶり
   を観察して、職種を決定します。

   その後の変更も当然あり得る」ことだけは言っておかなければならない。
   「いったん総務に入ったらずっと総務だ」と社員が思い込んだ後では、配置換えは
   非常にやりづらくなってしまうからです。
   それを言うのは、野球でいえば、監督の役目です。

   小さな会社の場合は、当然社長が最初に行うべきことです。
   「適材適所」なくしては、会社は儲からない。
   見当違いの配置は、野球でいえばストライクもとれない選手をピッチャーにする
   ようなものです。
   これでは、負け試合となるのは、火をみるより明らかなのです。

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中小企業の経営改革

社長の役割

社長の役割 

 理念に基づいた改革
  理想のない企業、使命感をもたない経営は永続しません。
  迷ったら原点に戻り、途方にくれたら初志に立ち返ることです。
  戻るべき原点や返るべき基点をもつ企業は強い。
  「革新」とは、新しいことをすることではありません。
  目的に合った正しい手段を選択し実行することです。

 □経営の「基本と原理原則」を学び体得する
  業績を上げるためにこそ「基本と原理原則」がある。
  一時的な成功ではなく、永続的な成功を目標にするためには正しく現状を認識する
  ことです。
   ・今までのたいていの成功は「たまたま」である
   ・自社(店)が提供している価値は必ず劣化、陳腐化する
   ・ルールは変わる
  そして、
   ・過信しないこと
   ・学び続けること
   ・行動し続けること

 □経営は「三現主義」
  理想を掲げて、現実を直視し、現場に密着し、現品を手にとって革新を進める
  ところから社長の率先垂範は生まれる。

 □「ヒトづくり」は自分づくり
  「ヒト育て」を怠ればそのツケは必ず返ってくる。
  企業の成長は、社員というヒトの成長の総和である。
  「ヒトを育てる」ことは社長の最大任務です。
  その人材育成の基本であり、組織人としてやらなければならない行動が
  基本動作12項目です。
  基本動作の訓練次第で組織の体質強化、売上げアップに大きく左右します。

 □話し上手よりも聞き上手
  社員との触れ合いの場を持ち、社員の声に耳を傾ける。
  社員は意見を聞いてもらうだけで、「大切にされている」と感じるものです。
  「話すよりも聞く」のがコミュニケーションの極意
  「話し上手よりも聞き上手」が社長の心得。
  人間関係は誤解から崩れる。
   「誤解→不平→不満→不信感→トラブル」へと発展し、人間関係は崩壊する
   ものです。

 □健康管理は自己管理
  自己管理ができない人物に企業経営などできる訳がない。

 □記憶よりも記録
  記憶よりも記録によるデータ主義。
  経営判断能力は事実を通して真実を知ることであり、その為には記憶よりも記録
  によるデータ分析
   
 □企業の存在価値
  会社の原基点は「存在価値」にあります。
  会社存在価値とは「社会が求めていることと、その会社の持ち味の接点」である。
  いくら自社が得意とすることであったとしても、それが社会から求められていなければ
  存在価値はありません。
  事業の目的と手段は異なります。
  目的を達成するための手段は時代の変化とともに変わっていくが、本質的な目的は
  短期間ですぐに変わるものではありません。
  その目的の達成が、企業の存在価値につながっていくのです。
   
 □創業の精神
  創業期を忘れず、創業精神を大切にする
  「ヒトなし、モノなし、カネもない、実績がないから信用もない。」ないないづくし
  の創業経営には創業の精神という素晴らしい財産があります。
  残念なことですが、そのことに気づかない社長も少なくありません。。
  熱意、創意、誠意の結晶が創業精神であり、創業精神を大切にする企業は繁栄し、
  粗末にする企業は粗末な末路を辿るのです。

 □社長の存在価値
  社長の存在価値は業績によって評価されます。
  業績には数字で表現できる業績と数字では表現できない業績があります。
  さらに、目先の業績と将来につながる将来業績の2つがあります。
  数字で表現可能な業績は、売上高、利益、生産性。
  数字では表現できない業績は、イメージ、信用力、ブランド力
  利益は企業存続のコストであり、顧客満足、社会貢献のバロメーターだと理解できれば
  最高です。
  利益の概念が変われば経営方式はが変わります。
  固定費+(予想)利益÷限界利益=存続分岐点と変わる。
  さらに、これまでの売上高は満足普及高、生産性は満足貢献度と表現を変えることは
  立派な意識革新、経営革新です。
  意識を変え、経営方式を変える。
  その結果で業績が変わる。
  社長はその牽引車です。

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中小企業の経営改革

会社の繁栄

自社の繁栄には

  企業は、中小零細企業から、大企業まで規模はさまざまです。
  しかし規模の大小にかかわらず、企業繁栄の原則はいろいろな考え方や捉え方がある  
  と思いますが、次の三つが原則といっていいでしょう。

 ■企業繁栄の原則
  1.社内の結束を堅くする
   社内の結束を堅くするということは、全社員が一体となって力を合わせることです。
   一体感の強い会社ほど攻めにも守りにも強さを発揮します。
   どんな困難がふりかかってきても全社員が一枚岩となって当たれば、耐え忍んで
   逆に跳ね返すことも可能です。

  2.変化に敏感で迅速な対応をする
   会社は環境の変化に適応することが生き残る道です。
   進化論で有名なダーウィンが「最後に生き残る者は、最も強い者ではなく、
   最も賢い者でもない。最も変化に対応した者である。」との名言を残していますが、
   これは企業の存続にも当てはまる大原則といえます。

  3.コンプライアンス(法令遵守)経営を推進する
   今の時代、法令を守らない会社は、社会から厳しい糾弾を受け、最悪の事態を
   招きかねません。  
   名門の繊維会社が破綻し、公認会計士が粉飾決算に手を貸していたケースは、
   正にコンプライアンス経営をないがしろにしたケースです。
   したがって、以上述べた三つの原則は、企業繁栄の基本原則です。
   この三点を具体的な施策に転換して会社の中で実践することで、会社は継続的に
   繁栄することができます。     

 □企業繁栄のための5つの施策づくり
  好業績を上げている会社は傍目でも活気が伺えます。
  会社を繁栄させるためには、骨組みが必要になります。
  この骨組みをきちんと築き上げないと、どんな施策も活きません。

  1.未来のビジョンの明示
   心ある社員は、自分が働いている会社の将来に強い関心を持っています。
   将来的な夢を持てない会社だと、若い社員は転職を考え、中高年社員はあきらめ
   ムードで活力が出ません。
   会社は将来こういう方向に進んでこうなるんだというビジョンがあれば、
   それなりの動機づけになります。
   しかし、それだけではダメで、大切なのはビジョンの実現に向かって会社が
   動いているという実感を社員が肌で感じることです。
   中小企業の場合、ビジョンがなくても儲かっている会社はいくらでもあります。
   社長に商才があれば、社長一人の働きで儲けることができますが、残念ながら
   一代で繁栄は終わりということになりがちです。
   次の社長に商才があれば別ですが、そうでなければアッという間に衰退して
   しまいます。
   ビジョンを明示して、みんなでその実現に努力し、業績を上げるほうが、長い目で
   見れば競争力は強いといえます。

  2.待遇改善目標の打出し
   社員の待遇をどうするかは、経営の根幹に関わる問題です。
   コストの中で金額が一番かかるのは人件費です。
   一方、社員にとっても待遇問題は一番の関心事です。
   家族を養い豊かで潤いのある生活を築くには、何といっても先立つものが必要です。
   会社としては、総人件費は低く、一人当たりの人件費は高くという二律背反の命題に
   挑戦してこれを克服しないとコストを下げ、社員のモチベーションを上げることは
   できません。
   待遇改善は、業務の改善や合理化なしでは実現できません。
   一人当たりの人件費を高くすることは、当然のことながら一人当たりの生産性
   高めることでもあり、ムダを徹底的に省くことでもあるのです。
   このように業務の標準化を徹底的に進めなければ待遇改善は難しいという課題が
   見えてきます。
   また、業務の徹底した標準化があってこそ、何がムダで、何がムラで、何がムリか
   ということが見えてきます。
   この“三ムダラリ”を断ち切ることがスタートです。
   ですから待遇改善は、徹底した業務の標準化を推進することに繋がるのです。
   会社は利益を上げなければ何もできません。
   利益がでれば、給与を上げることも、賞与を多く出すことも可能です。
   まずは標準化を進め、ムダを徹底的に除くことが利益を生み出すポイントです。

  3.社長と幹部のリーダーシップ力の向上
   社長や幹部が自らのリーダーシップ力向上のため努力していれば、自然とそれが
   社員に伝わるものです。
   リーダーシップ力とは、複数の人からなる集団を一定の方向に引っ張っていく力
   です。
   リーダーシップ力向上によって全社員のベクトルを合わせ、トータルパワーを
   最大に限りなく近づけることが可能となります。
   リーダーシップ力の中身は何かを考えてみると、社長と幹部のリーダーシップ力に
   強く求められる点は、

    (1) 意思決定のスピードアップ
    (2) 強い信念を持って仕事に取組む
    (3) 部下の働きに対する公平な評価
    (4) 明確な指示や方向性を伝える
    (5) 面倒見がよいこと 
    (6) 部下の意見を聞く耳を持っている
    (7) 率先垂範を自ら実践する

   この7点の実践に努力することで、リーダーシップ力は必ず向上します。
   リーダーシップ力は、上司と部下の信頼関係が堅いほど発揮しやすくなるから
   です。

  4.社内コミュニケーションの徹底
   風通しのいい組織、すなわちコミュニケーションが行き届いている会社ほど一体感が
   強く、意思決定も迅速に行われます。
   そういう企業風土を創り上げることが重要です。
   そのためには次の5点に留意して企業風土を改善していくという強い意思が
   必要になります。

    (1)本音で話し合える雰囲気づくり
    (2)会社の現況を社員にこまめに伝える
    (3)アフター5の活動を活発化する
    (4)懇談会、研修会の計画的開催
    (5)管理職の意識改革

   本音で自由に話し合えるというのが、コミュニケーションを徹底する一番の
   ポイントです。
   トップ自らがそういう雰囲気づくりに努力しないと難しいでしょう。
   会社の現況もこまめにオープンにすることが大切です。
   それによって社員は自分達が働いている会社の情報を共有できる訳です。

   アフター5のコミュニケーションも大変重要です。
   コロナ禍の今では、対面でのコミュニケーションは不可能に近いですが。
   IT技術の進歩とパソコンの普及により、メールやZoom、チャットでのコミュニ
   ケーションが増えています。
   人と人との関係が希薄になっている中、フェイス・トゥー・フェイスのコミュニ
   ケーションが重要になっていますが、今は無理でしょう。

   本当は一杯飲んでの触れ合いがコミュニケーションをより深くするのですが・・・。
   同じ職場の人や他の職場の人の考え・意見に触れて、啓発される機会が増えれば
   参加者の成長を促進します。
   社内コミュニケーションの徹底に最も必要なのは、管理職がその気になって
   気配りをすることです。
   コミュニケーションの悪いのは自分達の責任という意識を持つことが必要です。

  5.改善・改革運動の推進
   人は共通の体験をすることにより、強い連帯感を持ちます。
   共通の体験には遊びや趣味やスポーツ等々いろいろなケースがありますが、仕事に
   関する共通体験が連帯感を強める一番のポイントのようです。
   苦労して一緒に仕事を成功に導いたという喜びが、誇りにも強い連帯感にもなます。
   その一番効果的な手法が、全社員を巻き込んでの改善・改革運動の推進です。

   まず、全社員にこの運動の目的や狙いを徹底する必要があります。
   なぜこんな運動を展開するのか、改善や改革によりコストを下げて効率を上げる
   ことが目的であり、狙いであるということです。
   次に統一テーマを決め、全社員を5〜7人ぐらいの小グループに分け、グループ
   リーダーを決めます。

   そして、事務局を任命し、その役割をきちんと定めることです。
   運動の期間と予算を検討し、各グループに計画を立案させ、発表会を開催します。
   ここまでが実践前の手続きで、これが終了したら実践に入ります。
   通常一年くらいの期間で一つのテーマを追求するケースが多いと思います。
   準備と計画立案に1、2ヵ月はかかるでしょうから、実践の期間は10ヵ月強
   くらいになります。

   期間が終了したら成果の検証と表彰をして1サイクルとなります。
   要は全社員を巻き込んで小さな発見、小さな改善の積み上げをするということです。
   これにより、メンバー間の連帯感を強め、改善努力という成果体験を共有し、
   さらに一体感を高め、業績向上に繋げるというシナリオです。
   動機づけとは常に何らかの刺激を与えることです。
   この運動を通じ全社員に活を入れることができれば成功ということになります。

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中小企業の経営改革

従業員持ち株会 〜未上場会社

従業員持ち株会 〜未上場会社
 

  ■従業員持ち株制度の概要

   従業員持ち株制度とは株式の発行会社が従業員に対する自社株式の取得・
   保有を奨励することで、従業員に自社株式を活用した財産形成手段を提供すると共に、
   会社にとっては安定株主の確保や資本政策の円滑化といった目的をもって運営
   されるものです。

   民法上の組合である「従業員持ち株会」 を作り、会社及び従業員が相互にメリット
   のある制度として未上場会社においても幅広く普及しています。

   ただし、従業員持ち株制度に関する直接的な法体系は整備されていませんので、
   証券取引法及び商法並びに各種税法等関係法令に抵触することがないように留意
   することが必要です。

   従業員持ち株会の円滑な運営の為に日本証券業協会では、 「持ち株制度に関する
   ガイドライン」 を作成し、持ち株制度運営についての指針を示しています。

   従業員持ち株会を設立する場合には同ガイドラインに規定された内容を遵守する
   ことが最も好ましいと考えられます。

   また、同ガイドラインの内容については、日本証券業協会から指導が行われている
   証券会社が熟知しているので、従業員持ち株会の設立及び運営については証券会社
   に相談することをお勧めします。

  □従業員持ち株会の意義

   従業員持ち株会を実施することは実施会社及びその従業員にとって次のような
   メリットがあります。

   従業員持ち株会を設立する場合には、会社及び従業員にとってより多くのメリット
   が生ずるように制度作りを行うべきであり、従業員持ち株会設立の意義を明確に
   認識できることが重要です。

 

   ●会社にとってのメリット     ●従業員にとってのメリット

    1.資金調達の円滑化が図れる    1.無理のない積立で自社株購入可能

    2.株式事務の簡素化が可能     2.自社株による計画的な財産形成

    3.株式売却の受皿としても有効   3.奨励金が支給されれば更に有効

    4.従業員のモラールアップに有効  4.株主として経営参加が可能

    5.円満で安定した雇用関係の確立  5.退職時には円滑に株式売却可能

    6.人材確保に有効         6.税務処理も万全

 

  □従業員持ち株会を設立すべき未上場会社

   未上場会社が従業員持ち株会の設立を検討する場合、その多くが次の幾つかのケースに
   大別されます。

   つまり、次のケースに該当する会社は従業員持ち株会を設立すべき会社であると言える
   でしょう。

   1.株式の上場を目指す会社

    株式上場を指向する会社は、株式上場基準を満たす会社となることが必要であり、
    その為には資本政策に基づく増資を行うことになります。

    未上場段階での増資時には従業員に対してもその割当てを行い、株式上場時における
    創業者利潤の一部を従業員が享受できるようにします。

    ただし、従業員個人に対して割当てを行うと増資の手続きが煩雑になると共に、
    従業員の退職等に伴う株券の社外流出の危険性もある為、従業員持ち株会を設立し、
    これらの問題が生じない対策を構築したうえで、従業員に株式の供給を行うことが
    必要です。

   2.社員株主の存在する会社

    これまでに数多くの未上場会社において社員株主の株式買取りをめぐりその価格の
    問題で訴訟が起こされています。

    社員株主であっても退職すれば社員の立場ではなく株主としての立場で行動し、
    経済合理性に基づいた株価での株式買取りを求めるケースが数多く見受けられ、
    訴訟という形で表面化したものに限らず、水面下ではかなりのトラブルが生じている
    ものと考えられます。

    従業員持ち株会を設立し社員株主の株式を全て持ち株会に組み入れれば、その後の
    株式の取扱いは従業員持ち株会の規約の定めに従うこととなり、株券の社外流出が
    完全に防止できると共に持ち株会退会時(主に退職) における株式の買取方法及び
    その価格についても明確に定められるのでトラブル防止に大きな効果があります。

   3.株主数の多い会社

    株主が多数存在する場合、会社にとっては株式事務の負担が大きく、株主数を減少
    させることが業務の効率化の観点からも必要となります。

    また取引先やOB社員等の社外株主については、取引関係の変化やOB社員の死亡等の
    状況の変化によって会社に対する株式買取りの要求や会社として好ましくない者との
    株式譲渡承認請求が行われることも想定されます。

    したがって、未上場会社においてはできる限り株主数を少なくすることが株主対策上
    重要になります。

    しかし株主数の削減を進めるには株式買取りの受け皿を作る必要があると共に、
    既存の株主が株式を売却することに協力しようと思う株式買取先を作ることが
    必要です。

    従業員持ち株会を設立し従業員持ち株会が株式の買取先となれば、従業員に対する
    福利厚生の増強という大義名分もあり、OB株主の理解が得易く、取引先等社外株主
    にも協力要請を行い易い状況となります。

    更に従業員持ち株会は給与天引で毎月積立を行う為、株式の買取りを常に行える
    状態にあり、売却要請に応じた株主の株式を順次買取ることが可能です。

    また、オーナー等が株式を買取る場合に比べ税務上も安い株価で買取ることができる
    ので株主数の集約を目指す場合、特に効果を発揮します。

   4.事業承継対策を実施する会社

    事業承継対策を考える場合、オーナー経営者の持ち株比率を引き下げることが
    ポイントとなりますが、オーナー保有株式の譲渡先としては従業員持ち株会が
    後継者に次いで好ましい譲渡先と言えます。

    従業員持ち株会に株式を譲渡すれば、株式の社外流出を防げると共に、会社に雇用
    されている者が株式の持分を共有するものであり、経営権に影響を与えるような
    状況は生じないと考えられる為です。

 

  □未上場会社における従業員持ち株会の効果

   1.株主管理上の効果

    (1)株式発行事務の軽減

      会社の資本充実を図る段階で、初期の時点であれば従業員持ち株会を
      活用し従業員に対して幅広く株式を供給することが可能です。

      ・株式の名義が持ち株会理事長となっていること。

      ・株式の議決権は持ち株会の代表者である理事長が代表して行使すること。
       (議決権の不統一行使を妨げない)

      ・配当金を再投資すること。

     以上3つの要件を満たす従業員持ち株会であれば1人株主として取扱われる為、
     会員数(従業員数) に係らず株主数1名としてカウントされますので、増資の
     手続等が簡素化できます。

 

    (2)株主管理の簡素化

      従業員持ち株会を設立した場合、株主名簿上の株主は持ち株会の代表者
      である理事長1名となりますので、株式の名義人を従業員個人名義とする
      よりも株主管理が大幅に簡素化されます。

      特に配当金の支払事務や株主割当増資時の事務管理面でメリットがあります。

 

    (3)株券の社外流出防止に有効

      従業員持ち株会は民法上の組合であり、従業員は入会に際して持ち株会
      規約を承認して入会することになる為、規約に株式の処分の禁止に関する
      規定を盛り込んでおけば原則として株式の引出等を行うことが認められない
      こととなり、従業員の退職等に伴う株券の社外流出防止策として万全です。

 

    (4)株主からの株式買取り組織として有効

      従業員持ち株会を組織し毎月積立を行っていれば株主から株式の売却希望が
      出た場合にも、従業員持ち株会の積立金により円滑に株式の買取りを行えます。

      また、従業員持ち株会の積立金残高がまとまった金額に達した時には、
      株主に従業員持ち株会に対する株式売却依頼を行い株主数の集約を進める
      ことも可能です。

 

   2.事業承継策としての有効性

    オーナー経営者にとって円滑な事業承継を行うことは大変重要なテーマです。

    事業承継のポイントを簡単に言えば、実質的な経営権への影響を与えずにオーナーの
    持ち株比率を低下させることと考えれば良いでしょう。

    従業員持ち株会は株式の議決権不統一行使を行えることが定められた民法上の
    組合組織であり、実質上の株主と言える従業員個人に対しては大量な株式が交付
    されているものではありません。

    したがってオーナー経営者の株式の一部を従業員持ち株会に譲渡しても圧力団体化
    する心配はありません。

    そこでオーナー経営者の持ち株比率を下げる方法としてオーナー所有の株式を
    従業員持ち株会に一部譲渡することが効果的な対策になりますが、従業員持ち株会
    への株式譲渡に際してはオーナー経営者及び後継者にとってのメリットのみを追及
    せずに従業員持ち株会の本質は従業員に対する福利厚生の充実にあることを考慮
    した対応が求められます。

    また、従業員持ち株会は圧力団体化する心配のない団体ですが、経営権を左右する
    ことのない範囲で株式の譲渡を行うことが必要です。

   3.資本政策上の効果

   (1)資本政策と従業員持ち株会

     会社の資本充実を図るには資本政策を確立し、会社の成長に応じて適正な資本
     構成を行うことが必要です。

     一般的な資本参加の順序は会社経営の中枢から会社内部の者、更に社外の関係先
     の順になります。

     具体的には、まずオーナー経営者(親族を含む) が出資額を増大させ、次いで
     他の役員が出資を行い、その後に従業員、更に取引先等の順で出資することに
     なるでしょう。

     未上場会社が資本政策に基き従業員に株式を供給できる機会は限定的であり、
     比較的大量の資金の払込みが必要になります。

     このような状況を想定し幅広い従業員に株式を供給するには、従業員持ち株会を
     設立し計画的に給与天引で積立てを行うことが必要です。

     給与所得者である従業員の収入は限られており、突然多額の株式購入代金の
     払込みを知らされても対応できない者が多数生じる可能性があり、そのような
     事態を回避し従業員が円滑に自社株式を取得できるようにする為にも従業員
     持ち株会の設立は不可欠です。

 

   (2)増資手続の簡素化効果

     資本政策に応じた増資手続を簡素化する為にも従業員持ち株会は大きな役割を
     果たします。

     増資に際しては下表に示した手続きが必要になりますが、1人株主として認め
     られる従業員持ち株会であれば実質的に手続が大幅に簡素化されます。

 

     ●有価証券の募集(売出) に要する提出書類 (関東財務局)

      なお、50名を超える従業員に対して株式の割当てを行っても、要件を
      満たす従業員持ち株会であれば、1億円未満の増資について有価証券通
      知書の提出が不要となります。

 

  □従業員持ち株会発足手続

   従業員持ち株会は民法第667条第1項に定める組合として設立・運営することになるので、
   従業員持ち株会を設立するには以下の手続きが必要となります。

   ◎従業員持ち株会設立手続

    1.発足準備事項

     ・発起人の人選:会社の幹部社員の中から持ち株会に加入し、運営
      主体となる者を発起人として選定します。

     ・規約案の作成:従業員持ち株会の運営ルールとなる持ち株会規約の
      原案を作成します。

     ・理事長印作成:株主名簿への名義届出・銀行口座開設・証券会社等
      持ち株会事務委託先との契約等に使用する印鑑として持ち株会の
      理事長印を
作成します。

 

    2.持ち株会設立手続

     ・発起人会開催:発起人が集り持ち株会の役員となる理事・監事の
      選任を行い、規約案を承認し正式な規約を制定します。      
      これらの手続完了をもって正式に持ち株会が発足することに
なります。

     ・理事会開催:発起人会終了後に理事会を開催し、理事の互選により理事長・
      副理事長を選任します。

     ・銀行口座開設等:理事長が決定したら銀行口座開設を行います。
      また証券会社等に持ち株会の計算事務を委託する場合には事務
      委託会社との契約を交わします。
     

 

    3.会員募集・資金の積立等

     ・会員の募集:従業員持ち株会の規約で定めた会員の範囲に含まれる
      従業員に対して、持ち株会設立の案内を行い、一定の期間を定めて
      会員の募集を行います。

      従業員に対して持ち株会の意義や設立の背影及び持ち株会の内容を
      理解していただくことが必要ですから、説明会開催やパンフレット
      を作成し充分なPRを行うことが必要です。

     ・給与天引:従業員持ち株会への加入申込を行った従業員は給与天引
      で積立てを行うことになりますので、会社は天引の便宜を図る必要が
      あります。
      また、会社が従業員への福利厚生として奨励金を支給することが
      一般的ですが、この場合には、会社が支給する奨励金は福利厚生費
      として損金処理し、従業員に対しては給与所得として処理すること
      になります。

     ・資金の管理:従業員持ち株会に株式が供給されるまでの間については
      会員が積立てた資金を管理することになります。
      積立金の管理は原則として流動性の貯蓄で行うこととされています
      ので、一般的に証券会社の中期国債ファンド等で管理しています。

    以上の内容を確認すれば、未上場会社が従業員持ち株会を実施することの
    必要性と発足手続きに関して理解できるでしょう。


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中小企業の経営改革

社内ベンチャー制度

社内ベンチャー制度
 

  ■社内ベンチャー制度の現状

   1.80年代後半の新規事業への進出

    1980年代後半、大手企業の多くが新規事業へ進出しました。

    進出する際の事業形態は、社内プロジェクトであったり、新会社を設立するなど
    さまざまでした。

    事業内容は本業の延長上の事業、もしくは不動産やレジャー関連事業が主でした。

    本業が好調な時に、次代の中核事業となると見込んだ分野に進出することは、事業
    としては正しい方向といえます。

    しかし、結果は惨たんたるものに終わったのです。

    これは新会社に

     →優秀な人材を登用しなかったこと
     →権限委譲を行わなかったこと

    に大きな原因があります。

    新会社の事業が軌道に乗らず、事業の方向転換を図ろうとしても、その決定は親会社
    の役員会で決定していました。

    これでは市場の変化に経営の舵取りが追い付かなかったのも止むをません。

    一方、新規事業に携わる社員側にも、是が非でも事業を成功させるという意識が欠如
    していたといえます。

    ポイントは、市場環境の変化や事業の将来性を見通せなかったではなく、軌道に
    のらない事業から早期に撤退できなかったことと、新規事業に携わる社員の起業家
    意識を喚起できなかったことです。

   2.90年代後半から導入された社内ベンチャー制度

    社内ベンチャー制度とは、社内で眠っている独創的な技術・サービス・製品・ビジネス
    モデル・起業家精神に富む人材を発掘するために、

     社内から事業提案を募り、事業性や採算性が高い案件について
     会社が支援し事業化するもの

    です。

    現在の社内ベンチャー制度は、バブル期の新規事業進出の失敗から「起業家
    (アントレプレナー)精神を持つ優秀な人材に権限を委譲し、事業を任せることが事業
    を成功させるためには必要」であることを学びました。

    また、これと同時に、「事業化に失敗した際の撤退のルールを定める」ことができた
    のです。

   3.導入状況

    社内ベンチャー制度の導入動向を企業規模別にみてみると、中堅中小企業よりも
    大企業が進んでいます。

    これは社内ベンチャー制度が「ヒト・モノ・カネ・情報が豊富な大企業向きの
    制度である」ことの現われといえるでしょう。 

   4.社内ベンチャー制度の仕組み

    現在、多くの企業で採用されている社内ベンチャー制度の仕組みは以下の通りです。

  □社内ベンチャー制度の要点

   1.成長分野に進出

    社内ベンチャー制度での事業化は成熟市場を避け、成長市場での事業化を検討
    している会社が多いようです。

    これは成長市場であれば事業化が比較的容易なうえ、市場の成長とともに早期に
    事業基盤を確立する可能性も高いからです。

    しかし成長市場であるゆえに参入企業も多く、競争が激しいことは明らかで、優位性
    を保てる商品やサービスを開発し続け、追随してくる他社との競争に勝てるような
    組織を作らなければなりません。

   2.スピード重視の経営手法

    事業案の社内公募から事業化までの期間は半年〜1年と短く、事業開始から3〜5年
    で黒字化できなければ、即座にその事業から撤退するという企業が多いようです。

    事業の計画段階から事業化までに相当の時間を要し、一旦事業を開始すれば赤字
    決算が続き黒字への転換が見込めない事業であってもズルズルと継続していた
    80年代後半とは様相は一変しています。

    可能性のある事業に早く乗り出し、結果がでなければ即座に撤退する、スピードを
    重視した経営が浸透してきています。

   3.事業化の形態と会社の取り組み姿勢

    事業化の形態は、社内型と社外型の以下の2つに大別できます。

    <社内型>

     ・社内で仮想企業を設立する。

     ・その事業だけの特別プロジェクトチームを作る。

    <社外型>

     ・新たに事業会社を設立する。

    社内型・社外型は、ともに事業はあくまで自己完結型であり、利益を上げることが
    目的です。

    会社の事業支援はあくまで補助的なものにとどまります。

    特に社外型のケースにおいては会社がベンチャーキャピタルの役割に徹するところも
    あるようです。

    社内ベンチャーで事業化される案件は、本業に関連するものが主流ですが、近年では
    情報通信分野の事業が多くみられます。

    これはIT革命といわれるほど情報通信分野の技術革新が目覚ましく、新しい技術
    ・サービス・製品・ビジネスモデルが次々と誕生していることが要因といえる
    でしょう。

    さらに、情報通信分野において先んじて事業化し、すでに成功を収めているケース
    の存在が、情報通信分野への特化に拍車をかけているのです。

    前述の社内ベンチャー制度の流れでは事業案を社内公募するのが前提ですが、
    事業案を社外から公募したり、逆に社内で事業化できなかったものの有望と思われる
    事業については他の会社と共同で事業化するといった企業も出てきています。

   4.社員の処遇

    社員の処遇についてはさまざまです。

    社内型では社員としての身分は保証され、社外型でも出向の場合は事業に失敗
    しても会社に戻れるので身分は保証されています。

    しかし、一旦会社を退職し新会社に転籍した者については再雇用しないとし、社員の
    身分を保証しないケースもあります。

    身分が保証されない社外型では、事業が成功して新会社が株式公開すれば巨額の
    キャピタルゲインを得ることが可能となっている半面、身分が保証される社内型では
    成功報酬は大きくないことが一般的です。

    保守的な会社で「身分保証をしない」となると、独創的な事業案そのものが起案
    されないケースがある一方、進歩的な会社で「成功報酬があまり望めない」となると
    アントプレナー精神を持つ優秀な人材が社外流出してしまうことも考えられます。

    社員の処遇については、自社の社風に合わせたものを模索する必要があるでしょう。

   5.事業黒字化後の方向性

    社内型・社外型とも一定期間内に黒字化の目処が立たなければ、その事業から
    撤退することになるでしょう。 

    <社内型の場合>
     社内型で黒字化した場合、その事業が本体のコア事業になるような領域や規模の
     ものであれば、そこから育てていくことが重要となります。

     もちろん、たとえ黒字化してもコア事業にならないようなものであれば、事業
     そのものからの撤退を考える必要が出てきます。

     いたずらに社内の優秀な人材と資金を意味が薄い事業に注ぐことは、経営資源の
     浪費につながります。

    <社外型の場合>
     社外型が黒字化した場合には、株式配当による収入や売却によるキャピタルゲイン
     が見込めます。

     前述の通り、株式公開によるキャピタルゲインを目的に会社がベンチャーキャピタル
     の役割に徹するケースもあるようです。

     社外型の事業であっても、本体のコア事業となる可能性の高いものであれば 
     本体に取り込むという選択肢があります。

     グループ企業とはいえ、別の事業体のままでは経営資源の集中や投資にスムーズ
     さを欠くきます。

     しかし、本体に取り込むことで成長性の高い事業に集中投資ができるからです。

   6.人材育成という役割

    社内ベンチャー制度の目的はキャピタルゲインやコア事業の強化だけではあり
    ません。

    社内の優秀な人材に事業立案から経営の実務までの経験を積ませることは、人材
    を育成する方法として重要といえます。

    この意味においては、人材育成は事業の成否にかかわりなく社内ベンチャー制度の
    役割の一つといえます。

  □成功のポイントと留意点

   1.向き不向きがある

    経営資源の集中と経営のスピード化が本体で行えない企業では社内ベン
    チャー制度を導入する意義は十分にあるでしょう。

    一方、経営資源の集中と経営のスピード化が容易な中堅・中小企業ではあえて社内
    ベンチャー制度を導入する意義は大きくはないでしょう。社内ベンチャー制度は企業
    によって向き不向きのある制度なのです。

   2.成功の特徴 

    社内ベンチャーで成功している事業の特徴をみてみると

     1.社内ベンチャーのトップが決定権を持ち主導権を握っていること
     2.成長が期待できる市場の事業である
     3.本社またはグループ会社からの十分な支援を受けることができる
     4.経営戦略やビジネスモデルが優れている
     5.自社に必要な経営資源を有する企業(同業他社や外部機関)との提携や
      連携をする柔軟性がある
     6.事業にあった独立運用体制を確立している
     7.本社のコア事業にかかわりのある事業を行っている企業が多い

    といった点が挙げられます。

    これらのなかでも特に重要なのがトップ主導と支援体制です。

    例えば、日本の企業では、まだ女性が決定権を握れる立場にいないケースが多い
    のが現状です。

    管理職でなくとも決定権を握り能力を発揮できる社内ベンチャーは、特に若手社員や
    女性社員にとって大きな魅力といえるでしょう。

    また、親会社の支援体制も大きなポイントです。社内ベンチャーのメリットは、会社
    設立時の資金よりも、むしろ親会社の持つ「信用」にあるといいます。

    具体的には、親会社自身が顧客になったり、顧客を紹介したりといった支援が効果
    を発揮します。

    社内ベンチャーは、

     人材、技術、資金、ブランド、信用といった既存企業のメリットと、
     スピード、機動力などベンチャー企業の良さを併せ持っていることが
     最大の特徴

    といえます。

    社内ベンチャーは、現在のような変化が激しい時代にその活躍の場を見出しやすい
    でしょう。

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中小企業の経営改革

高齢社員のスキルを移転
 

  ■高齢社員のスキル移転

   日本では少子高齢化が急速に進み、続々と高齢社員が定年を迎えている。

   少子高齢化は、労働力人口の減少という形で労働市場にも影響を及ぼしています。

   2006年4月から、定年の延長や継続雇用制度の導入などが法的に義務付けられて
   いるとはいえ、今では高齢社員が一度に大量に退職していっています。

   労働力人口が減少すれば、企業は従業員の生産性を高める必要に迫られます。

   また、問題となっているのが、「高齢社員の定年による大量退職」です。

   この年齢層の人々は、いわゆる団塊の世代として知られ、日本の経済成長を長らく
   支えてきました。

   少子化が進み若年労働力が減少していく中、彼らが長年磨いてきたスキルをより若い
   社員へ伝えていくことは急務といえます。

   高齢社員がもつスキルをうまく移転する方法について考えます。

  □スキル移転のパイプ役

   1.高齢社員の性質

     高度成長期のころは、特に労働力不足でしっかりした教育体制など整っていな
     い企業がほとんどでした。

     当時はいい意味でも悪い意味でも、先輩・後輩や上司・部下といった関係が
     はっきりと分かれており、スキルは「見て学びとるもの」といった風潮が強かっ
     た時代です。

     従って、この時代に育った現在の高齢社員の中には、自分の持っているスキ
     ルを教えるもしくは伝えることを不得意としているという人が珍しくありません。

     また、若手社員を教育する際は「ここまで教えているのに」といった気持ちを抱
     き、イライラすることも少なくないでしょう。

     もちろん、教育が得意で自分のスキルを落とし込むことなど造作もない、といっ
     た高齢社員もいるでしょう。

     しかし、自社が高齢社員の持つスキルをうまく移転する方法を整備するとき、
     高齢社員は教育することが不得意な場合がほとんどであるとした上で、体制
     づくりをしないと、スキルはうまく移転しないでしょう。

     この際、最も重要な役割を担うのが、スキルの移転を助けるパイプ役です。

  □パイプ役のイメージ

   パイプ役のイメージは以下の通りです。

   パイプ役は、高齢社員とスキルの移転先となる社員の間に立って、

    ・高齢社員のスキルに関する情報をヒアリングする

    ・ヒアリングした内容を整理する

    ・移転先社員に必要な部分を教育する

   といった役割を担います。

   その後は、パイプ役が整理した内容に沿って、高齢社員が移転先社員に直接教育を
   行い、スキルを移転していきます。

   こうすることで、

    ・高齢社員が、移転先社員に移転すべき内容を自覚できる

    ・移転先社員が、学ぶべき内容とその概要を知り、習得のスピードが上がる

    ・内容が整理されたことで、高齢社員も移転先社員もスキルの移転・習得を
     仕事としてより深く認識するようになり、責任感が強まる

    ・高齢社員と移転先社員の適度な距離を保つことで、両者が良好な関係を維持
     しやすくなる

    ・上司が、高齢社員とパイプ役からの情報を総合することで、スキル移転の進
     ちょくを把握しやすくなる

   などの効果が期待できます。

   実際にこうした効果が得られるかどうかは、パイプ役の力量にかかっています。

   そのため、パイプ役の人選は極めて重要です。

   パイプ役は、高齢社員と良好な関係を築いてより多くの情報を引き出せるか、得
   た情報をうまく整理できるかがポイントになります。

   従って、一般に以下のような社員がパイプ役としては望ましいでしょう。

    ・高齢社員と同じ立場か上の立場、もしくは高齢社員が認めている社員

    ・コミュニケーション能力が高い社員

    ・仕事を分類し、整理する能力が高い社員

   高齢社員より下の立場の社員をパイプ役にすると、高齢社員に軽くみられたり、
   パイプ役が遠慮がちになり、欲しい情報を得にくくなる可能性があるため、直属の
   上司がパイプ役になるのもよいでしょう。

  □パイプ役の仕事

   1.ヒアリングのアウトプットイメージ

     パイプ役は、ヒアリングによって、高齢社員が持つスキルに関する情報を引き
     出し、それを整理します。

     整理は、

      ・高齢社員の仕事を分類して体系化する

      ・体系化した仕事の項目ごとに注意している点や重要な事例をまとめる

     といった形式で行います。 

   2.スキル情報のヒアリング

     パイプ役は、ただ漫然とヒアリングを行っているだけでは、「必要なことをなか
     なか聞き出せない」「得た情報を整理できない」といった事態に陥ります。

     ヒアリングは、以下の点に注意して実施します。

     (1)高齢社員への意識付け

       まずヒアリングに入る前に、高齢社員へ

         スキルの移転=優先順位の高い仕事

       という意識付けを与えましょう。

       高齢社員はいくら定年が近づいているといっても、ほとんどの場合、自分の
       仕事を持っています。

       さらに高齢社員が、前述のような「スキルは見て学びとるもの」という意識を
       持っていれば、スキルの移転は後回しにされがちです。

       まず、スキルの移転を優先順位の高い仕事として意識付け、きちんと時間
       を作ってヒアリングを行います。

       また、パイプ役が意識付けをしたことで、高齢社員とパイプ役の関係が悪
       化することを避けるためにも、意識付けはパイプ役を選定した上司が行い
       ましょう。

     (2)パイプ役がヒアリングに臨む姿勢

       パイプ役は、とにかく高齢社員に自由に気軽に話してもらうことを心がけま
       しょう。

       雑談なども交え、堅苦しい雰囲気を取り除くことです。

       また、パイプ役は、否定的な意見を口にしないようにしましょう。

       目的はあくまで情報収集です。

       長時間にわたって話が脱線する場合は仕方ありませんが、基本的に話の
       腰は折らず、できるだけ多くの話を聞いて、パイプ役がそれを取捨選択して
       まとめる姿勢で臨みましょう。

       また、パイプ役は高齢社員に対して、常に敬意を払うようにします。

       立場はパイプ役のほうが上かもしれませんが、気持ちよく話してもらうこと
       が大切です。

     (3)ヒアリングの進め方

       まず、高齢社員の仕事の内容をヒアリングします。

       パイプ役は、ヒアリングの前に、高齢社員が業務フローやマニュアルなどを
       持っているかどうかを確認し、あれば事前に目を通しておきます。

       ただ、それらの資料を基に話を進めるのではなく、仕事の内容を整理する
       ための予備知識と考えましょう。

       実際は、パイプ役が高齢社員に1日・1週・1カ月・1年などの期間を区切っ
       て、その間に行っている仕事の内容を聞きます。

       最初から漠然と「どんな仕事をしていますか」と聞くより、高齢社員が自分
       の仕事をイメージしやすくなります。

       パイプ役は、高齢社員から聞いた情報をホワイトボードに書くなどして、本
       人に確認しながら進めることです。

       業務資料がある場合は、聞いた情報と資料の各項目を対比させて確認し
       ていくのもよいでしょう。

       ここで注意したいのは、

        高齢社員の仕事の内容の整理は、あくまでパイプ役が行う

       ということです。

       高齢社員が整理することに集中すると、逆に考えが狭まってしまい、発言
       が滞ってしまいがちです。

       ヒアリングの後、パイプ役は、得た情報を整理して業務体系表にまとめま
       しょう。

       一度にまとめる必要はなく、適宜高齢社員に確認してもらい、何度かヒアリ
       ングを重ねて仕事の内容が網羅できた段階で確定します。

       また、パイプ役は高齢社員が長期間携わっていた仕事、自信があった仕事
       などを中心に、過去の仕事についても内容をヒアリングしてみます。

       高齢社員の過去の仕事の中で、パイプ役がスキルポイント表を作成する価
       値があると判断した場合は、業務体系表を作成します。

       なお、この段階では、関連資料欄は空欄で構いません。

       業務体系表が完成したら、次はスキルポイント表です。

       業務概要は、これまでのヒアリングの内容からパイプ役が作成して、高齢
       社員に確認を取ります。

       スキルポイント表のポイント欄に書く内容は、業務体系表の詳細項目ごと
       に、高齢社員に以下の点を確認して決めます。

        ・失敗したこと

        ・注意していたこと

        ・苦労したこと

        ・うまくいったこと

        ・やってみたかったこと

       重要なのは、高齢社員に話してもらうことです。

       ポイント欄に記載するかどうかは、後にパイプ役が決めればよいことです。

       「複数の業務項目にまたがる」「この業務項目に当てはまるかどうか分から
       ない」と高齢社員が思っている内容も、とにかく話してもらいましょう。

       高齢社員が話しにくいようなら、より大きな業務項目ごとにヒアリングし、後
       に、パイプ役がポイント欄に書くべき内容を選択して、詳細項目ごとに当て
       はめていくのもよいでしょう。 

       また、高齢社員が自身の管理用に作成しているメモや資料など、関連資料
       があればどんどん提出してもらい、必要に応じて業務体系表の関連資料欄
       に記載しましょう。

   3.スキル情報の移転

     業務体系表とスキルポイント表が完成したら、この2つの表を基にして、移転
     先社員を教育していきます。

     教育の主眼は、

      ・高齢社員が行っている仕事の流れと概要を理解させる

      ・高齢社員が多くのスキルを保持していることを理解させる

     ことにあります。

     高齢社員も同席し、業務体系表とスキルポイント表の業務概要の部分を中心
     に、移転先社員に説明しましょう。

     そして、移転先社員が高齢社員と実際に仕事をしながら教育を受けるに当
     たって、常に業務体系表に立ち戻り、いま習っている内容の位置を確認するよ
     う指導します。

     そうすれば、移転先社員の頭の中が整理されて、体系的に効率よくスキルを
     身に付けていくことができるでしょう。

     スキルポイント表のポイントについては、特に移転先社員が感銘を受けそうな
     ものをいくつかピックアップして紹介します。

     そうすることで、移転先社員が、

      ・スキルを身に付けようとする意欲を高める

      ・高齢社員を尊敬する

     ようになることを狙います。

     そして、スキルポイント表に記したポイントや事例は一部であり、今後、高齢社
     員から教わることをどんどん付け加えていくように、移転先社員に伝えましょう。

     これから高齢社員と移転先社員が直接教育に入るに当たって、いつでも気軽
     に相談を受ける旨と「ぜひ頑張ってください」という言葉を添えて、パイプ役の
     仕事はいったん終了です。

     その後は、適宜両者に話しかけて、両者の関係が悪化していないかを確認す
     るとともに、力になれそうなことがあれば手助けするようにします。

  □まとめ

   紹介した手順は、パイプ役の性質や能力によって成果が大きく左右されます。

   パイプ役を選ぶ立場にある上司は、よく資質を見極めて選択しましょう。

   適当な社員がいない場合は、上司自身がパイプ役になることも検討します。

   パイプ役の仕事は、高齢社員の業務経験やスキルによって異なりますが、かなりの
   量になります。

   従って、パイプ役が仕事の内容をヒアリングし、整理するだけでも相当の時間を要す
   るでしょう。

   しかし、高齢社員が退職してしまえば、その長年培ってきたスキルは完全に失われて
   しまいます。

   スキル移転は大変ですが、いま時間をかけることでそのスキルが社内にとどまり、
   新たに活用される可能性が残ります。 

   ただし漫然と行うのではなく、明確な期限を設けましょう。

   これは、パイプ役の仕事だけではなく、高齢社員による移転先社員の直接教育につい
   ても同様です。

   今回紹介したように文字でまとめることができても、特に製造部門の技術やベテラン
   営業マンが自分の経験のなかで独自に身につけてきた感覚など暗黙知と呼ばれる
   「身体で覚える」スキルは、習得するまでにかなりの時間を要します。

   高齢社員が持っているスキル・知識・情報を、会社の財産として共有し、有効活用
   するナレッジマネジメントの導入は必要不可欠です。

   業務体系表を基に、スキル移転に必要な期間を推測するとともに、できるだけ早く
   着手することが肝要です。

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中小企業の経営改革

メーカーによるサプライチェーンマネジメント

サプライチェーンマネジメント

  ■サプライチェーンマネジメント
   メーカーにおける仕入れの効率化は、通常サプライチェーンマネジメント(SCM)
   の一環として行われます。
   そのため、仕入先業者選定の際には物流業者や発注システムの見直し、データ
   による生産数量管理など、総合的な生産工程の効率化の中での対応が必要に
   なります。 
   逆にいえば、総合的なSCMの一環として仕入先にSCMへの対応を求める過程で、
   要求に応じられなかった仕入先をリストから外していくことになるでしょう。
   ここでは、そうした視点から、調達を中心としたSCMの手順を紹介します。

  □SCM導入の流れ
   まず、サプライチェーンマネジメント導入には、基本として以下のような手順が
   必要になります。

   1.目標の明確化 
    まずは、自社のビジネス環境や顧客のニーズを十分に把握したうえで、
    会社としての戦略と目標(調達コスト○%削減・納期○日減など)を明確にし、
    それらを達成するために各部門が具体的なプランを立てることが必要になります。 
    この段階で立てられた基本的なプランがSCM活動の方向付けを決定することに
    なるため、この目標は具体的な数字として設定します。
    例えば、部品メーカーと原材料のサプライヤー間で進められるSCMの場合は
    「原材料や仕掛かり品などの在庫を40%削減する」や、「商品は必ず3日以内
    にメーカーの手元に届ける」といったように定めます。
    また、SCMを進めていく中で、作業の単純化・標準化や部門間の協力、
    組織の変更も必要になるかもしれません。 
    原材料を誰がどのタイミングで発注するのか、倉庫にある在庫の引き当ては
    誰の担当か、といったように責任の所在を明確にすることもこの段階で必要に
    なるでしょう。 
    また、この段階で原材料の在庫量や商品の出荷量や季節需要などのデータを
    正確に把握する仕組みを確立することも重要です。
    それらのデータに基づき生産計画や物流計画を立てる以上、誤ったデータに
    基づいたSCM実施は逆にロスにつながってしまいます。

   2.情報共有できるパートナーを探す 
    自社内の仕組みを確立するだけではSCMの目的である全体の最適化には
    つながりません。
    次のステップとして、情報共有を行ったうえでパートナーシップを組める
    企業の選定が必要になってきます。 
    SCMを導入する場合、インターネットも含めたネットワークによる情報共有が
    不可欠といえます。
    つまり、パートナーシップを組むということは企業内の情報や社内システムを
    標準化し共有することになるため、自社が進めようとしているSCMの枠組み
    に対応できる企業である必要があります。
    また、信頼し合える企業関係であることも重要です。
    単純に自社の調達や物流を効率化しコストダウンを図るためのSCM導入なのか、
    それとも仕入先をパートナーとみなして全体を効率化するためのSCM導入なのか
    によっても異なりますが、一般的に考えられるSCMパートナー選定の基準には
    以下のようなものが考えられます。
     →サプライチェーンを組むにあたり、必要な情報インフラが共有できる
     →互いに利益がでる関係が維持できる
     →これまでの取引実績がある
     →経営戦略の方向性が近い
     →信頼関係が築ける(トップ・マネジメント同士の関係)
     →将来性がある 
    上記の基準を満たさない取引先や、自社が導入しようとしているSCMに対応
    できない取引先は、選定から外れることになるでしょう。 
    まったく異なった企業が、互いの経営情報を共有しながらサプライチェーン
    最適化のために活動するわけですから、そこから得られる成果も共有する
    とともに、それにともなうリスクも分かち合うことになります。
    そのリスクを負えない企業は、選別・絞り込みの対象から外れることになる
    のもやむを得ないでしょう。

   3.SCMの実施 
    目標とパートナーが決定したら、効果が求められやすいところからパイロット
    ・プロジェクトをスタートさせます。 
    プロジェクトの対象を決定したら、次にプロジェクトに携わるメンバーを
    選定します。
    メーカー側からは、製造部門、販売部門などの業務に関連するすべての部門
    からの参画が求められ、サプライヤーからも販売部門や調達部門など
    プロジェクトの対象となる関連部門からの参画が必須となります。
    経営体制の変革をともなう大きなプロジェクトですので、必ず経営者格の
    人がリーダーないしはオブザーバーとして参画することも必要です。
    その際には、1で決定した要領でプロジェクトの目標を設定し各企業の役割
    と責任も明確化します。 
    活動を開始すると、今まで発生していた無駄なコストが削減され、多くの業務
    が効率化されてきます。
    例えば、データの共有により今まで行っていた伝票の送付が不要になったり、
    検品作業を省くことが可能になるでしょう。

   4.プロジェクトの評価 
    プロジェクトが終了する時点で、当初設定した目標に対する達成度を評価して
    いきます。
    それらの目標が達成されていない場合は、その原因の見直しが必要です。
    原因を洗い出したら、必要に応じて計画を見直すことも必要になります。 
    このように、ひとつひとつプロジェクトを評価し、改善を繰り返すことに
    よって仕組みを徐々に作り上げ、最終的にSCMによる全体の最適化を目指して
    いくことになります。

   5.SCMを成功させるための基本ポイント
    以下では、SCMを導入する際に押さえておくべき基本的なポイントをまとめ
    ます。

    (1)物流拠点間のモノの流れを管理する 
     モノの流れを管理するのは、部品・商品供給までの時間短縮、コスト削減
     を目的としています。
     製造業ににおけるJIT(ジャスト・イン・タイム)やコンビニエンスストア
     への多頻度納品に象徴されるように、効率的なモノの流れを実現するため
     には、各拠点における物流体制の整備や即納体制の確立なども含めた、
     拠点間の緊密な連携が必要です。

    (2)情報の適切な管理を行う 
     SCMにおいては情報の管理も重要です。
     製品やサービスのに対する正確な需要予測に基づいて生産計画や販売計画
     を立てられれば、在庫量や物流経費などを大きく削減されることに
     なります。

    (3)全体最適化を目指す 
     SCMのチェーンに参加する企業は、常に全体最適化を目指す必要が
     あります。
     たとえば特定の物流拠点がその拠点のみの最適化を追求しても、それは
     部分最適に過ぎず全体最適は実現できません。
     また、チェーンのどこかにボトルネックが生ずればそれがチェーン全体に
     影響を与え、最適化水準は低下することになります。
     すべてのSCM参加企業は全体最適を意識し、全体の流れを最適化するための
     努力が必要です。


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中小企業の経営改革

仕事のダンドリ

仕事のダンドリ

■全体像を捉える 
 仕事を効率よく進めていくためには、きちんとダンドリを立てることがまず重要です。
 「ダンドリ」とは、物事を進める上での順序・手順・準備のことです。
 「段取り八分」という言葉があるように、物事が成功するかどうかの鍵は準備にあると
 いっても過言ではありません。

 スピード優先で、とにかく目先のものから仕事をスタートさせてしまう、という人が
 いますが、あなたはどうでしょうか?  
 このような見切り発車型の人は、行き当たりばったりの仕事が多く、すぐに目の前にある
 作業に取り掛かりがちですが、まずは全体の構成をイメージすることが先決です。  

 というのも、全体がイメージできていないのに、目先の仕事をこなしたところで、やり直し
 が必要になったりして、結局はしっかりと計画を立てたほうが早い場合が多いからです。 
 仕事のスタートからゴールまでのイメージがないままに、目先の仕事からスタートすれば、
 最初はスムーズにスタートしたように見えます。 

 ですが、ある瞬間に「次は何するんだっけ?」とか「そもそもの目的は何だっけ?」と
 いうように、迷ってしまうときがくるものです。  
 また、仕事のダンドリを考えていく際に、細かいところばかりに気をとられていると、
 最終ゴールはどこなのか、そもそもの目的は何なのかを見失ってしまい、うまくいかない
 ケースが見受けられます。

 このような考え方をしている人は、行き当たりばったりになってしまっていることが多い
 ものです。
 一方でダンドリができている人は全体像を捉え、将来を見据えて行動していることが多い
 のです。 

 全体が見えていないと計画そのものが立てられませんし、想定外のトラブルに巻き込まれ
 てしまいます。  
 ビジネスシーンにおいても、外資系企業の買収のように、グローバルな視点を持った存在が
 進出してくる例が挙げられます。

 より幅広い視野を持ち、想定の範囲を広げることが重要です。 
 「段取り八分」という言葉があるように、ダンドリをしっかり行っていれば、あとは
 楽に進むものです。

□事前の根回しがタンドリのキモ  
 上司から頼まれていた仕事を締め切りギリギリに提出して、「全部やり直 し!」と
 ダメ出し……そんな経験はないですか? 
 ダンドリの悪い人は、事前に確認したり、途中経過を報告したり、といった根回しが
 下手な場合が多いです。 

 たとえば、会議でのプレゼン資料の作成を上司に頼まれたとしましょう。
 「わかりました!」と勢いに任せて取り掛かると、できあがった頃には本来求められて
 いた主旨から大きく外れてしまっていることも多いのです。 
 ダンドリの上手な人はあらかじめ、自分の描いたストーリーを上司に確認し、方向性を
 確かめてから着手します。

 また、3割程度できた時点で、一度中間チェックを実施します。
 「これで方向性は間違っていませんか? 認識にズレはないですか?」と少しでも不安
 要素があったり、わからないことがあったりした場合には着実にここでチェックしていく
 のです。

 そして、完成した頃にも再度事前のチェックをし、本番に臨むのです。
 何事もそうですが、事前に調整や確認をしておき、周囲にも「そのつもりでいてもらう」
 ことが本番でのトラブルを防ぐ大きなダンドリになるのです。

□役割を分担し、責任所在を明確にする  
 複数のメンバーで取り組む仕事においては、誰が何を担当するのかを明確にしておかないと、
 仕事の責任所在が不明確になり、あとから、「その作業は彼に任せたつもりだったのに」
 とか、「それは企画部ではなく営業部の役割だと思っていました」というようなトラブルを
 招くことになります。 

 複数のメンバーで取り組む仕事はまず、やるべき作業を洗い出し、一覧化したものに対して、
 担当を割り振っていきます。
 そうすることで、誰が何を担当しているのかが明確になり、自分の仕事が次の仕事に
 どのような影響を与えるのかという業務の流れを意識することになり、チームワークの
 醸成にも役立ちます。

 役割分担表を作成する際には、事前に、過去の経験や専門知識や取得している資格など
 得意分野についてまとめておくと、適材適所な役割分担ができます。 
 計画段階で役割分担をするのは第一歩でしかなく、相互に役割分担した作業を次の会議
 までの宿題にして持ち帰り、会議で進捗確認を実施するなどします。

 大切なのは、役割分担表はプロジェクトの実行段階において、より効果を発揮するものに
 なるということです。

□仕事の範囲を設定すること  
 何事もそうですが、どこまでやれば終了なのかが明確になっていないと、延々と終わりの
 ない出口に向けて走り続けることになります。
 仕事においても、「何をどこまでやれば終了なのか」という範囲を不明確にしているために、
 認識のズレやトラブルになってしまうケースが多いのです。

 先日、知人が新しく購入したテレビが家に届くということで、楽しみに待っていたそうです。
 業者にテレビを設置するところまでお願いしていたつもりだったのですが、その業者は
 配達を終えて、納品書を置いて帰ろうとしたそうです。
 顧客と業者の間に何をどこまでするか? という範囲に対する認識のズレが生じたのです。 

 このような「言った・言わない」の議論をなくすためにも、裏づけや証拠を残しておく
 ことが大切です。
 このとき、知人は店頭で「設置希望」と記入した控えを業者に見せて、事なきを得た
 そうです。 

 何をもって自分の責任を果たしたといえるのか、何をもって仕事は終了なのか、範囲に
 ついての認識を持ち、周囲と共有しておくことで、トラブルは軽減できるものです。

□振り返りとナレッジベース化を徹底 
 仕事にスピードが求められ、1つの仕事をこなしたら、休むヒマもなく次から次に仕事を
 振られ、すぐに取り掛からないと間に合わない! と悩む方は多いのではないでしょうか。 
 なぜこのような「負のサイクル」に陥ってしまうのでしょうか。
 これは、部署の人数が少ないからでも、仕事量が多いからでもないのです。

 このような仕事の進め方こそが、一番の原因なのです。 
 1つの仕事を終えたら休みましょう。
 そして、振り返る習慣を作るのです。 

 「さっきのプレゼンはお客さんに商品のよさが伝わったかな?」「さっきの電話応対の
 仕方はあれでよかったかな?」というように、ほんの少しで構いません。 
 とにかく振り返ることです。
 細かい仕事の度にチェックするのもよいですし、帰宅中の電車の中でもよいのです。

 そうすることで、客観的に自分の仕事を見ることができ、改善点が見えてきます。
 またマイナス面のみならず、プラス面、成功点も見えてきます。  
 そういった成功事例や失敗事例を毎回自分なりに整理し、ナレッジべ−スとして蓄積して
 次の仕事に生かしていくことこそが、最もスムーズに仕事を進めるポイントです。

 仕事が終了したら、全体をまとめ「ナレッジ」にすることで「次回」への布石が打てる
 ことになります。

□わかりやすく伝えるのもダンドリ
 ダンドリ力と聞けば、仕事のみならず、引っ越しや冠婚葬祭といった生活から、野球や
 サッカーのようなスポーツでも必要になってくるものだと理解できるでしょう。
 仕事の現場においても、営業、企画、総務、どのような職種であろうとも、事前に仕事の
 全体像を措き、用意周到に仕事を進めるスキルが必要になります。

 また、メーカー、IT、金融、不動産、サービスといった、どのような業界であろうとも
 同じことが言えるでしょう。
 すなわち、社会人が身につけるべき、プラットフォームスキルといえます。

 ダンドリの悪い人は先天的に「鈍臭い」「要領が悪い」といったレッテルを貼られがち
 ですが、訓練し、日々意識して行動に移すことで、成果が上がるものなのです。 
 社内会議や訪問先での商談で「何を言っているのか意味がわからない」「結局どういう
 ことなの?」と言われた経験はないでしょうか? 

 仕事を進めていく中で、物事をわかりやすく相手に伝えることが求められます。 
 結婚式の司会者やアナウンサー、セミナー講師など、話を組み立てて相手に伝える仕事を
 している人は必ず日常でもストーリーを組み立て、ダンドリをしているものです。 
 そもそもどのような目的でそのコミュニケーションが必要なのかを考えます。

 その目的を説明するために必要なデータや情報を取りまとめます。
 データ収集は、適切な取捨選択をしないと、不要な情報やデータまで相手に伝えると
 逆効果になる場合もあります。 
 そして、最終的には伝える手段を考えます。

 プレゼンテーション、提案資料、メール、さまざまなツールや方法があるでしょうが、
 相手に伝えるために最も効果的なやり方があるはずです。 
 このように「相手に伝える」というような細かい仕事であれ、きっちりとダンドリを
 組み立てておけば、何もやらないより、うまくいく可能性はグンと上がるものです。

 <伝えるダンドリ>
  話の全体像をイメージしましょう。
  たとえば、研修やセミナーでの話の流れで言うと、
   ①挨拶と自己溜介をして、受講者との靡離感をつかむ
   ②セミナーの主旨説明をし、より受講者に目的意識を持ってもらう
   ③セミナー進行の全体像を説明し、1日の流れを全員で共有していく
  以上のように、全体の流れをイメージして話の内容を組み立てるのです。
  「何から話し始めようか」とその場で考えていては遅いのです。
  先を読み、イメージをつかんだ上で発信することが肝心です。

□明文化による意思統一を 
 仕事を進めていく中で、もっとも怖いのは認識のズレです。
 ズレが生じることによって、あとから「言った・言わない」とか、180度違う成果が出て
 くるなど、大きなトラブルになることが多いのです。 
 たとえば、ヒト・モノ・カネといった資源の使い方は、認識がズレやすいところです。  

 Aさんが担当していると思っていた作業を、Aさん自身はBさんが担当してい ると思い
 込んでしまい、結局締め切りに間に合わないといった役割分担に関する認識のズレや、
 企画費予算300万円でイベントを受注した担当者が勘違いをし、実はその予算は企画費だけ
 ではなく広報宣伝費も含む額だったと、フタを開けてびっくりという予算に関する認識の
 ズレなど、この手の失故事例はあとを絶ちません。

 いかに仕事の初めの段階で要件やニーズをまとめておき、最終成果に対する認 識合わせ
 をしておくのかがポイントになります。 
 そのためにも、役割分担表や予算管理表、要件定義書といった、最終ゴールの認識合わせ
 をするためのドキュメント作成が重要になってきます。

 <明文化で認識合わせ>
  システム開発の現場では、要件定義書という形でクライアントからの要求事項をまとめ、
  ドキュメント化し、開発を始める前に、相互に認識合わせをします。
  あとから追加要求がたくさん出てきて当初の予定を何度も変更しないためにも、
  ドキュメント化しておき、相互に典通認識を持っておくことが肝心です。

  ある会社では、ドキュメント化の徹底を行つています。
  プロジェクトのキックオフにおいて、メンバー全員で会議を開き、
   ・プロジェクトの目的
   ・期限・期日
   ・資源(ヒト・モノ・カネ)
   ・作業範囲(何をどこまでやるか?)
  をプロジェクトのゴール設定書として明文化し、認識を共有しています。

  ある会社のプロジェクトにおけるスケジュール概要の明文化の例です。
  プロジェクトメンバー全員が見える位置に、このようなドキュメントを貼り付けておき、
  仕事の全体像を把握できるようにしています。
  常に全体像を把握しながら仕事を進めることで、共通認識を作り、目先の仕事に没頭して
  しまうことを回避します。

□認識はその場で合わせる 
 会議で「あの資料は来週までに完成させましょう」とか「例のデータは次回会議に用意
 します」と宿題をまとめ、次の会議に臨むのですが、なかなか前回の会議で議論した
 内容が生かされていなかったり、認識にバラつきがあったりするケースが見られます。

 もちろん、議事録はそういった認識のズレをなくすために作るものですが、会議を実施して、
 議事録をあとでまとめて、それを共有して、という流れで進めていると、あっという間に
 次回の会議の日程が来てしまい、課題ができなかったということにもなります。 

 リアルタイムで全ての議事録をとり、会議の場ではプロジェクターで投影して全員の認識
 合わせを実施することをオススメします。 
 会議のまとめで再度宿題を確認し、会議終了後、参加者にメールを送信して認識を共有
 します。

 そうすれば、会議が終了して即座に、宿題となった仕事に着手することができます。
 過不足があれば即修正し、さらに認識を共有することで事後のトラブルを防止しましょう。 
 あとから、「例の件、どうなっていますか?」とか、「言った・言わない」という認識の
 ズレを起こすことは、仕事を遅延させる大きな原因になります。

□ダンドリ上手は巻き込み上手 
 毎日「忙しい!忙しい!」と口癖のように言っている人がいますが、仕事をしていれば
 みな忙しいのは当然。
 仕事に一生懸命取り組んでいれば、忙しくない日など存在しないのです。
 日々、分単位でスケジュールをこなしているような「本当に忙しい人」ほど、「忙しい」
 なんてことを言っていません。

 そのような人は過密スケジュールの合間に友人との食事を入れたり、趣味の時間を確保
 したり、むしろ、充実していることが多いのです。 
 忙しいことが問題なのであれば、改善すればよいだけの話です。 

 あなたはなぜ忙しいのでしょう? 
 周囲に協力してくれるメンバーがいないから? 
 時間がないから? 
 原因が明確なのであれば解決策を実行すればよいでしょう。
 しかし、「忙しい」が口癖の人は原因を見出すこともしなければ、解決策を実行に移す
 こともしていません。

 「忙しい」という言葉で逃げておけば、周囲に無理な仕事を振られたりせず、楽に
 仕事が進められると勘違いしている人もいますが、「忙しい」と言うことが、ネガティブ
 な習慣を作っていることに早く気づくべきです。

 たしかに1人で仕事を抱え込んでしまって、どうしてよいかわからない……なんてパニック
 状態に陥ってしまう人が多いのですが、「忙しい」と言う前に、周囲を巻き込むことで
 スムーズに進むものです。

 会社の忘年会を例にして考えてみましょう。 
 1人で会場の予約から料理の手配、参加者への告知、余興の内容まで全てを考え進める
 のは大変です。

 急きょトラブルが発生した際にも、自分1人ではスムーズに対応することは困難です。 
 同僚に会場の予約をお願いし、予算の調整は上司にも確認をもらい、当日の料理や備品関連
 については、業者にお任せする、というように、自分は巻き込んだ関係者をコントロール
 する側に立ち、同時進行で仕事が進むように進捗の管理をすればよいのです。 

 どの企業においても、人的資源が限られている中、1人で進める仕事は少なくなって
 きました。
 周囲との調和によって共同で進めるプロジェクト型業務の増加に伴い、巻き込む力は
 今後さらに必要になってくるでしょう。

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中小企業の経営改革

情報セキュリティ対策とサプライ・チェーン・マネジメント SCM

情報セキュリティ対策とサプライ・チェーン・マネジメント SCM


  情報セキュリティ対策

   「ヒト」「モノ」「カネ」に加え、「情報」は経営にとって不可欠の要素です。

   また、情報の適切な管理体制は、企業の信用力を判断する上での重要な要素と
   なってきています。

   サプライチェーン攻撃など巧妙化が加速するサイバー攻撃の脅威から会社を守る
   ためには、情報セキュリティ対策は喫緊の課題です。

   そのため、企業の情報漏えいは重大な経営上のリスクとして認識されてきて
   おり、中小企業にも情報セキュリティに取り組むことが求められてきています。

   企業の持つ情報を狙った攻撃者に対して、情報セキュリティ対策を講じる場合、攻撃
   の糸口を与えないことが大切です。

   糸口となるのは、ソフトウェアの脆弱性、ウイルス感染、パスワード窃取、設定不備、
   わなへの誘導といった点に集約されます。

   こうした点について、ソフトウェアの更新、ウイルス対策ソフトの導入、パスワードの
   適切な管理、定期的な設定の見直し、脅威や手口についての周知などといった対策
   が必要です。

   情報セキュリティに掛けられるコストが限られる中小企業においては、例えば、見
   知らぬ相手から添付ファイル付きのメールが送られてきた場合、不用意に添付 
   ファイルを開かないといったことや、具体的な標的型攻撃の手口について社内教育を
   行うなど、人的な対策を講じることから始めるとよいでしょう。
             
  □サプライ・チェーン・マネジメントとは

   1.サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)とは

    注目される経営手法に

    「サプライ・チェーン・マネジメント(以下SCM)」があります。

    このSCMは、顧客満足の向上と経営効率の向上を同時に狙う画期的な経営管理
    手法として90年代に米国で広がりました。

    日本でも90年代以降、多くの企業がその導入に取り組んできました。

    SCMの「SC(サプライ・チェーン)」とは、

     顧客〜小売業〜卸売業〜製造業〜部品・資材納入業者
     などの供給活動の連鎖全体

    を指します。

    そこにM(マネジメント)を加えSCMとなった場合は、

     サプライチェーンの全体最適を実現するために統合管理する経営手法

    ということになります。

    従来の経営手法は、部門ごとの最適化や企業ごとの効率化といった部分最適を
    志向するものが主流でした。

    しかし、SCMでは部門ごと企業ごとの枠を超えて、

     サプライチェーン全体の視点からの全体最適

    を目指します。

    具体的には、情報、物流、キャッシュにかかわる業務の流れを見直し、サプライ
    チェーン全体で情報の共有化と業務プロセスの抜本的な変革を行います。

    それにより、キャッシュフローの効率を向上させる経営を実現するのです。

    ここで注意しなければならないのは、

     SCM構築の基点となるのはあくまでも“顧客”

    である点です。

    つまり、SCMは最終消費者である顧客に価値のあるものを提供し、顧客満足を高める
    ビジネス・プロセスを構築しようという経営手法なのです。

   2.SCM出現の背景

    市場(顧客)のニーズは変化が激しく、消費者自身も明確なニーズを持っていない
    時代に企業に求められるものは、市場に投入した製品の中で、売れ筋商品を発見し、
    早く、欠品なく、無駄なく供給することです。

    この実現は一企業内での行動では限界があり、

     サプライチェーンを構成する企業同士が互いに提携しあい、
     市場の情報を共有しながら行動すること

    が必要になってきます。

    また、かつての日本企業は売上高や市場シェアの拡大を志向してきましたが、低成長
    時代に入った今日、企業には顧客満足の向上を志向し、それによって収益性を高める
    ことが求められています。

    SCMを現実の経営手法として可能にしたのは、情報技術の発展です。

    サプライチェーンを構成する企業間において、情報を速く正確に伝達し、共有化する
    ためには、インフラとしての情報技術が必要です。

    インターネットやパソコンをはじめとした情報機器の普及は、企業におけるSCMの
    導入環境を整えてきました。

  □デルコンピュータにみるSCMの成功事例

   米国でSCMにより成功を収めた企業として有名なのが、84年に当時わずか19歳の
   学生マイケル・デルが創業して誕生したパソコンメーカーの「デルコンピュータ」です。

   同社は業界の中で後発の企業ながら、IBM、ヒューレット・パッカードといった大企業
    を抑え、コンピューター販売でトップにまで成長しました。

    これまで同社は、

    「顧客の要望に合った仕様のパソコンを受注生産で組み立て直送する」

    という経営方式で急成長を遂げてきました。

    顧客の注文を電話やインターネットで受け取り、ニーズに合わせた商品を自社で
    組み立て、その後わずか4日で顧客の元に届ける仕組みをつくりました。

    具体的には、部品の調達先である部品メーカーを絞り込み、将来の需要予測を共有
    することによって、部品調達のリードタイムを大幅に短縮するとともに、顧客への商品
    の配送業務全体をフェデラル・エキスプレスにアウトソーシングしたのです。

    このように、同社はSCMの構築を経営戦略として位置付けて、顧客から部品・資材
    納入業者に至るサプライチェーン全体の最適化を図ることによって、顧客満足度の  
    向上と高い収益性を実現しています。

    同社の成功は

     「デルモデル(デル・ダイレクト・モデル)」

    といわれ、SCMの成功事例として広く知られています。

    【「デル・ダイレクト・モデル」の主な特徴と顧客メリット】

    ●高い価格性能比

     販売店やディーラーなどの既存の流通を介さず直接販売することによって
     流通コストをカット。また、調達から製造、物流に至るすべてのプロセスで
     高い効率を追求したサプライチェーン・マネジメントを展開することにより、
     デルコンピュータは他社より高い品質・機能・仕様を備えた製品を提供する
     ことが可能です。

    ●注文生産(BTO

     デルコンピュータはすべての製品を顧客の希望にあわせてカスタマイズ
     します。1台の購入でも、大量購入でも、顧客は必要とする機能や仕様
     だけを装備した製品を購入でき、不要なものにコストを支払う必要は
     ありません。

    ●サービス・サポート

     1台1台仕様が異なるデルコンピュータの製品情報は、受注と同時に
     社内のデータベースに蓄積されます。その製品・顧客データベースに
     もとづいて、デルコンピュータのテクニカル・サポートスタッフがきめ細かい
     サポートを提供します。常に顧客の生の声を聞く事により、日々新しい、
     よりカスタマイズされたサポートプログラムを開発しています。

    ●最新の技術をいち早く提供

     完成品の在庫を持たず、また徹底して効率を追求したサプライチェーン・
     マネジメントを実践するデルコンピュータは、業界屈指の低在庫水準
     (2003年当時1月期末:在庫日数3日)を維持しています。これにより、
     間接販売を行う競合他社に先駆けて、常に最新技術をいち早く製品化・
     量産し、かつ低価格で提供することができます。

    ●傑出した財務内容

     デル・モデルが実現する効率の高いビジネスプロセスと、信頼性の高い
     製品・サービスにより、デルコンピュータは継続して利益をともなう高成長
     を達成しており、その傑出した業績は株価にも顕著に表れています。成長
     性・収益性・流動性(キャッシュフロー)の3つのバランスを重視したデル
     コンピュータの健全な財務内容が、将来にわたる顧客への製品・サービス
     ・サポートの継続した提供を約束します。

            (出所:デルコンピュータ)

  □サプライ・チェーン・マネジメント導入に必要なこと(ジャストインタイム)

   日本でも大手企業を中心として、SCMの導入に積極的に取り組んでいます。

   例えば、国内エレクトロニクス産業では、在庫や運転資金を極力削減し、収益力を
   高めるためにSCMの導入に積極的です。

   また、アパレル業界でも売れる商品をタイミングよく開発・生産するとともに、過剰在庫
   を削減し収益構造を改善するためにSCMを導入し始めています。

   そのほかにも、自動車業界、小売業界、建設業界など幅広い業界でSCMに取り組む
   ケースがみられます。

   前述したように、SCMは企業内の一部門内における部分最適を目指すものではなく、
   部門間、企業間における全体最適を目指すものであるため、

    企業のトップマネジメントレベルからの取り組み

   が欠かせません。

   いかに企業トップがSCMを理解し、積極的にその導入に取り組むかが成功の鍵を
   握っています。

   また、SCMの実現には先端的な情報システムの構築も必要で、自社の情報システム
   に先進的なSCMソフトを組み合わせる必要があります。

   こうした情報システムの構築には社外専門家の協力も必要になります。

   外部コンサルタントをうまく活用していくことも必要になるでしょう。

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中小企業の経営改革

生産性を考える

生産性を考える
 

  ■自社の生産性を考える

    企業が資本、人材等の経営資源をどのように活用し、その結果としてどれだけの成果が
   得られたかを把握することで、生産性の良否を判断することができます。

   生産性は基本的に以下のような算式で表わすことができます。

   生産性は、経営資源の投入高と成果としての産出高との比で測定され、投入高に対する
   産出高の割合が高くなればなるほど生産性が高いということになります。

   投入される経営資源には、多種多様なものがありますが、代表的なくくりとして、労働と資本が
   用いられます。

   どちらが重要かは時と場合によって違ってきますが、多くの企業では、1人の労働力を投入した
   ことによってどの程度の成果を得ることができたかという「労働生産性」を重視する傾向に
   あります。

   その理由としては、以下のような点があげられます。

    ・労働力はどんな経営活動にも必ず共通するものであること

    ・賃金、従裳員数、労働時間等、投入量の測定が容易であること

   一方、分子の成果に用いられる要素には、企業の生み出す付加価値が入ります。
    
  □付加価値とは何か

   付加価値とは、企業が一定期間、経常活動をすることによって得た成果のうち、当該企業が
   新たに生み出した価値のことをいいます。

   企業は、外部から仕入れた原材料、仕入商品等を元に、自社の技術力、営業力、ノウハウ等を
   駆使して新たな商品・サービスを作り上げます。

   この新たに付け加えた価値のことを付加価値といいます。

   付加価値を求めるには、さまざまな考え方がありますが、基本的な考え方としては、売上高から
   新たに付け加えられた価値以外の金額を除くことで求める方法があります。

   つまり、売上高から原材料、仕入商品等、外部から購入した価値を引くことで、付加価
   値額(*)を算出します。

   この付加価値が売上高に占める割合を「付加価値率」といいます。

   付加価値率の求め方は以下のとおりです。
 

   (*)付加価値額は、「経常利益+人件費+金融資産+賃借料+租税公課+減
      価償却費」または「純売上高−当期製品仕入原価」「生産高−(直接材料費
      +買入部品費+外注加工費+間接材料費)」で求められます。

  □1人当たり付加価値を計算する

   1人当たり付加価値は、従業員各人がどれだけの付加価値を獲得し、自社の利益獲得に
   どの程度貢献しているかをみるものです。

   1人当たり付加価値は以下の算式で表わすことができます。

   1人当たり付加価値は効率的な経営が行なわれているかどうかを測る重要な指標であると
   同時に、現在の財務状況からみた従業員数の妥当性を判断するために用いることもできます。

   また、部門間での比較や時系列による比較を行なうことで、より詳細な生産性の分析が可能
   となります。

   1人当たり付加価値(生産性)は、上の式を以下のように分解することでより詳細に分析する
   ことができます。

   上の式のように、1人当たり付加価値は、「1人当たり売上高」と「付加価値率」に分解する
   ことができます。

   このことにより、生産性の問題に関しては、その原因を

    ・売上高が低下しているのか
    ・人員が多すぎるのか
    ・売上原価が高すぎるのか
    ・利益率が低すぎるのか

   といった視点から検討することが可能となります。

  □資本の生産性を検討する

   1人当たり付加価値は以下の算式でも表わすことができます。

   1人当たり付加価値は「労働装備率」と「設備投資効率」に分解されます。

   労働装備率は企業の設備投資の充実度を表わしており、設備投資効率はこの投下された
   資本設備の有効利用度を表わしています。

   たとえば、減価償却をほとんど終えて老朽化した設備をフル稼動させている場合は、労働
   装備率が低く、設備投資効率が高くなりやすくなります。

   逆に、新型の設備を新たに購入している場合は、労働装備率が高く、設備投資効率が低く
   なりやすいといえます。

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中小企業の経営改革

コロナ後の事業の多角化

コロナ後の事業の多角化
 

  多角化する意義

   企業活動を将来にわたって発展、存続させていくための手段として、経営の多角化が
   あげられます。

   特にコロナ後の経営環境の変化は大親模、かつ急速に進展していくでしょう。

   こうした変化に適応するために自社の事業構造、能力を変革していくことは、企業にとって
   非常に重要です。

   その手段として、多角化経営は有効な経営手法です。

   経営の多角化を行なう意義、目的はおもに次の3点にあります。

    a.事業構造の変革

    b.リスクの分散

    c.未利用資源の活用

   以下、順説明します。

    a.事業構造の変革

     事業は時の流れとともに、衰退、陳腐化していきます。

     そのため次代の基幹事業を模索していくことが求められます。

     事業の方向性を分析する手法としてH・Ⅰ・アンゾフの事業拡大マトリクスがあります。

     このマトリックスでは新製品を新市場に投入することを多角化と定義しています。

    b.リスクの分散

     現在利益を生み出している成長企業もいつかは衰退する可能性があります。

     つまり、単一の事業のみを営み続けることは非常に大きなリスクになります。

     多角化経営は、全体収益の柱となる事業を複数もつことで、事業の衰退リスクを小さく
     することを可能にします。

     しかしその一方で、多角化による新しい事業分野への進出は、事業失敗のリスクも
     発生させることになります。

     ここで大切なのは、各リスクを適切に評価しながら多角化の必要性を探っていくことです。

    c.未利用資源の活用

     長年の経営活動の結果として、企業には技術やノウハウ、生産設備などさまざまな
     経営資源が蓄積しています。

     蓄積された経営資源で利用されていないものがある場合、経営の多角化によりこれを
     有効活用します。

     また

     現在利用している経営費源を経営の多角化に併用することで、
     シナジー効果(相乗効果)を得ることも可能になります。

     シナジー効果を得る具体的手段としては、次の方法が考えられます。

      ・生産シナジー……新親事業と既存事業の生産ラインを共有化すること
                   で、相乗効果を導く方法

      ・販売シナジー……新規事業の製品・サービスの販売を、既存の営業
                   部隊で行なうことにより相乗効果を導く方法

      ・流通シナジー……新規事業の製品・サービスの流通を、既存事業の
                                   流通経路を利用することにより相乗効果を導く方法

      ・管理シナジー……新撰事業の管理業務を、既存の管理部門で執り行
                   なうことにより相乗効果を導く方法

     多角化経営を考える場合、可能な限りシナジー効果を利用することが大切です。

     逆にシナジー効果を発揮しない多角化は、自社が将来にわたって成長・存続していく
     ための長期的戦略とは適合しないことが多く、再検討の余地が十分にあるといえます。

  □多角化の類型

   新製品を新市場に投入することが多角化戦略であり、その行為には通常大きなリスクが
   伴うことば前項で解説しました。

   しかし、多角化を対象顧客と技術の面でさらに細分化すると、4つの類型が存在することが
   わかります。

   次にその類型の特徴を掲げます。

   a.水平的多角化

    蓄積された生産技術を活用し、既存と同様の顧客を対象にして新製品を投入
    する多角化です。

     例) ・オートバイのメーカーが乗用車分野に進出

        ・大手スーパーがコンビニエンスストア事業に進出

   b.垂直的多角化

    エンドユーザーは変えずに、流通チャネルの川上から川下、または川下から
    川上へと多角化するものです。

     例) ・繊維メーカーがアパレル業に進出(川上から川下への多角化)

        ・ファミリーレストランが食品加工業に進出(川下から川上への多角化)

   c.集中的多角化

    技術、対象顧客のどちらか、もしくは両面で関連性を有する多角化です。

     例) ・酒造メーカーがバイオ関連事業に進出(技術面の関連)

        ・文具メーカーがOA機器分野に進出(対象顧客の関連)

   d.集成的多角化

    技術、対象顧客の両面でまったく関連性をもたない分野に進出する多角化です。

     例) ・銑鋼会社が半導体事業に進出

        ・機械メーカーがレジャー産業に進出

   それぞれの類型により、多角化展開に伴うリスクは大きく変化します。

   一般的には、aからdに進むにつれてハイリスク・ハイリターンとなります。

   できる限り、既存事業の技術力や販売力などを有効活用できる分野で多角化を進める
   ことが理想です。

   しかし企業が成長していく過程においては、リスクを覚悟で思い切った多角化を推し進め
   なければならないときもあります。

   その際に、リスクを最小限に抑える展開方法を考える必要があります。

  □多角化の展開方法

   多角化経営を展開する際には、その類型にかかわらず大きなリスクが伴います。

   そうしたリスクを最小限に抑えるためには効果的な展開方法を策定し、その展開方法が
   合理的に機能するための組織を編成する必要があります。

   次にその展開方法と、望ましい組織の形態をご紹介します。

   (1)自社の経営資源のみを活用する展開方法

     a.プロジェクトチームの編成

      社内の各部門から適任者を横断的に選出し、新規事業を対象とした
      プロジェクトチームを編成します。

      このプロジェクトチームでは、独自にチームリーダーを選任し、既存の
      部門や業務とは権限・責任の面で完全に独立していることが前提と
      なります。

     b.社内ベンチャー

      自社内に仮想のあるいは実際の会社を作り、多角化に取り組む形態です。

      プロジェクトチームと異なるのは、利益責任が生じることです。

      また、これを子会社として独立ざせて事業の展開を行なうことをスピンアウト
      といいます。

     c.事業部制

      各事業部門別に独立した組織を形成し、各々に利益責任をもたせる方法です。

      一般的な方法ですが、過度のセクショナリズムが間接部門や投資資金の
      重複を引き起こし、「逆シナジー効果」が機能することも考えられ、多角化
      にはあまり向いていない組織であるといえます。

   (2)社外の経営資源を活用する展開方法

     a.アウトソーシング、OEM

      事業の一過程を、他社に委託する(外注する)展開方法です。

      この場合、他社とは「契約」の関係にとどまるので、販売力や技術力、資金
      力などを十分に調査する必要があります。

       例) ・ある事業の製造過程を他社に委託する

          ・ある事業の販売過程を他社に委託する

      こうした外部資源の活用による多角化の展開は、非常に効率的です。

      しかしその半面、「自社内には事業のノウハウが蓄積しにくい」という欠点
      も存在します。

     b.事業提携

      新たな事業を展開するとき、その事業について実績のあるほかの企業と
      事業提携をする展開方法です。

      これにより、多角化に伴う投資のリスクを軽減することが可能となります。

     c.M&A
      進出しようとしている事業分野において、すでに実績のある企業を吸収
      合併する方法です。

      効率的で事業ノウハウも蓄捺されますが、膨大な資金需要が生じるため、
      多角化のリスクが高まる側面もあります。

      ある調査によると、

       多角化に成功した企業が成功要因の第一位にあげるのはタイミングである

      としています。

      自社の経営資源を正確に把握し、可能ならば他社の力を利用することも必要です。

      また、自社の技術を活用することはできても、新たな市場によっては既存組織では
      うまく適応できない場合があります。

      たとえば、既存の事業において官公市場を主体にしていた会社が、一般市場を
      相手にする場合などです。

      こうしたケースでは、社内ベンチャーや子会社形態をとり、いままでの組織とは別に
      活動したほうがスムーズにいきます。

  □多角化経営のコントロール

   多角化経営を展開することにより、経営全体のバランスの舵取りが非常に難しくなります。

   各事業の成長性や収益性、健全性、さらには他事業とのバランスをつねに管理し、
   適切なコントロール(統制活動)を行なう必要があります。

   また、時にはその事業からの撤退を決断しなければなりません。

   前述したように、各事業は時の流れとともに衰退、陳腐化していきます。

   こうした変遷のサイクルをPLC(Product Life Cycle)といいます。

   このPLC図における、A製品事業とB製品事業を例として多角化経営のコントロールについて
   ご紹介します。

   a.経営資源の効率的配分

    PLC図によると、A製品事業はまさに成長期にあり、この分野に集中的に
    経営資源を投資していく戦略をとります。

    逆にB製品事業は衰退期にあるため、この事業への経営資源の配分は
    最小限にとどめます。

    企業が活用できる経営資源は限られています。

    その限られた経営資源は、成長性のある事業に対して効率的に配分する
    必要があります。

   b.既存事業の活性化

    PLC図によるとB製品事業は衰退期にありますが、それはたんに時の流れに
    よるものでしょうか。

    たとえば、標的市場(対象顧客)を変えてみることで、収益力が回復するかも
    しれません。

    このように既存の事業において成長力や収益力が低下している場合、その
    原因を分析し新たな活性化策を施すことも必要です。

   c.シナジーの測定

    A製品事業とB製品事業との間で、どれだけのシナジーが発揮されているか
    を測定します。

    シナジー効果が十分でない場合は、製造ラインで共有化できる部分はないか、
    同様の流通経路を利用できないか、などシナジーを発揮できる方法を模索します。

   d.撤退戦略

    B製品事業の採算性に限界が生じ、どんな活性化策もシナジー効果もなくなっ
    た場合、思い切って撤退の決断をします。

    撤退戦略の決断が遅れると会社の経営全体に大きな影響を及ぼしかねません。

    とくに日本の企業は、この撤退戦略の意思決定が遅い傾向にあります。

    コロナ後の環境変化のスピードは非常に速いため、事業の成長性を正確に見抜き、
    迅速かつ的確な意思決定をする必要があります。             

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中小企業の経営改革

緊急時に求められる社長の役割

緊急時に求められる社長の役割
 

  ■事態発生直後に行うべきこと

   企業経営にはさまざまな困難がつきものですが、ときには会社の存続が危ぶま
   れるような緊急事態が発生することがあります。

   特に自然災害などは、何の前触れもなく突然襲ってきます。

   そして、危機的な状況のなかで、どのような対応を取るかによって、社長はその真
   価を問われることになります。

   ここでは、緊急事態のなかで社長が果たすべき役割について説明します。

   1.情報の収集

     大地震などの緊急事態が起こった際に、社長にまず求められるのは現状をで
     きるだけ正確に把握することです。

     特に自社の周辺が直接的な被災地になった場合などは、社員とその家族、取
     引先などの安否確認が優先されます。

     また、周辺地域全般の状況、自社設備の破損状況、自社設備が原因で起こる
     二次災害の可能性、インフラの被害状況なども把握しなければなりません。

     緊急自体発生直後の混乱のなかでは、これらの情報が十分に得られないこと
     もあります。

     特に携帯竜話などは非常につながりにくくなります。

     日頃から、緊急時の社員連絡網の整備や地方自治体などの情報鯨の確認を
     行い、緊急時に向けた訓練を行っておくことが大切です。

   2.情報の発信

     情報を収集するだけではなく社長自らが情報を発信することも大切です。

     まずは社員に対して社長自らの安否、居場所、これから自分が陣頭指揮を
     執っていくこと、指揮の方法などについて発信します。

     また、その時点ですでにわかっている情報があれば併せて伝えます。

     社員たちは緊急事態発生によって大きな不安をもっています。

     社長はこの不安を少しでも和らげるために力強いメッセージと知り得ている情
     報を伝える必要があります。

     特に重要な事項を伝える際には、誰かを介するのではなく、社長自身が自分
     の言葉で直接伝える必要があります。

     また、取引先についても自社の被害状況を伝え、相手の状況を確認します。

     今後の取引に支障が生じそうな事態が起こっているのであれば併せて相談します。

     特に遠方の取引先では事情がわからずに「あの会社はどうなっているのか、
     今後の取引は大丈夫なのか」という不安と疑念を抱いています。

     取引先に対してもできるだけ早い段階で自社の状況を伝えることが大切です。

     さらに周辺地域への二次災害などの恐れがある場合は、速やかに地域住民
     や消防などの防災機関に説明する必要があります。

     危険性を認識しておきながら、説明を怠ると、仮に二次災害が起こらなかった
     場合でも、会社の信頼を大きく損なうことになります。

   3.目前の問題への対応

     緊急事態発生直後には、社長は限られた情報のなかで、次々と起こる目前の
     問題に対応していかなければなりません。

     なかには会社の将来を左右するような重要な意思決定を迫られることもある
     でしょう。

     困難な決断が続きますが、間題を先延ばしすることはさらなる状況悪化につな
     がります。 

     このような状況のなかで正しい決定を行っていくためには、日頃から「何を優
     先するか」という判断基準をもっておくことが大切です。

     たとえば、「従業員の安全を最優先する」という基準はすべての社長に共通し
     ているはずです。

     しかし、「自社事業のなかで最優先して復旧すべき事業は何か」、「自社顧客
     のなかで最優先して対応すべき顧客は誰か」といった基準については、あいま
     いなことが多いものです。

     災害などで大幅に毀損された経営資源のなかではやれることに限りがあります。

     あらかじめ「緊急時には何をどんな順番で行うべきか」という基準をもっていれ
     ば、さまざまな問題に対して、迅速かつ正確な判断が可能になります。

   4.社長の存在感を打ち出す

     また、緊急時でも社長がその役割を十分に果たしていることを、社内外に積極
     的に示すことも必要です。

     社長が自分自身で考えて決断している姿は、従業員や取引先に大きな安心
     感を与えます。

     平常時には自分はあまり前面に出ない経営スタイルを取っている社長であっ
     ても、緊急時には自らが会社を率いている力強さを打ち出すことが大切です。

     逆に緊急対応時に社長の顔が見えない会社は、その対応の巧拙以前に、周
     囲に対して不信感や脆弱な印象を与えてしまいます。

  □復興プロセスで行うべきこと

   1.社長の役割のシフト

     緊急事態発生直後の混乱を乗り切り、さまざまな情報も集まってきたら、社長
     はその役割を「目前の問題への対応」から「会社全体の復興」へと切り替えて
     いきます。

     そのためには社長がそのような業務にシフトできるように環境を整える必要が
     あります。

     具体的には日々発生するさまざまな問題に対して、社長が判断すべき事項と
     それぞれの責任者に任せてもよい事項に切り分けます。

     通常であれば、営業部門、製造部門などの責任者に緊急事態発生前の権限
     と責任を戻すことになります。

     ただし、部門横断的な問題が起こっている場合は、新たにプロジェクトを組成
     し、役員クラスの幹部をリーダーに任命することも必要です。

     社長はこれらのリーダーから密接に報告を受けて、会社の全体像を総合的に
     判断できる状況を整えます。

   2.ビジョンの策定と提示

     目前の重要な問題が沈静化し、問題対応をある程度部下たちに任せられるよ
     うになったら、社長は直ちにビジョン策定に取りかかる必要があります。

     社長自身が今後の自社のあり方を整理するとともに、社員の不安感を払拭す
     るためにも、できるだけ早期にビジョン策定に着手することが大切です。

     ビジョン策定はできるだけ緻密に行う必要がありますが、最初は多少粗いもの
     であっても仕方ありません。

     完成度はともかく、「早期に」何らかのビジョンを示すこと自体に大きな意味が
     あるのです。

     すでに策定済みであれば、再度ビジョンの見直しをすることもいいでしょう。

     早期にビジョンを示して、その後のさまざまな状況変化を踏まえてビジョンをブ
     ラッシュアップしていくというスタンスが求められます。

     ビジョンには、緊急事態発生前の状態に戻すことをゴールとした「復旧ビジョ
     ン」や、復旧にはこだわらずに新たなビジネスモデルを描く「再構築ビジョン」な
     どがあります。

     「復旧型ビジョン」:すでに行ってきたビジネスモデルに戻すことが主眼であり、 
      リスクは比較的小さい

     「再構築型ビジョン」:復旧にこだわらずに新たなビジネスモデルを生み出すこ 
      とが目的。ゼロベースで考えることができる半面、リスクは大きい。

     自社のビジョンを描くうえで、重要になるのが、自社のビジネスモデルの再点
     検です。

     ビジネスモデルとは企業が新たな価値を創出するための連鎖的なプロセスと
     いうことができます。

     一般消費者向け製造業A社を例にして価値連鎖をイメージしたのが次の図です。

     緊急事態発生前にはこのような価値連鎖が上手く機能して、収益を生み出し
     ていました。

     なかでもA社にとってもっとも強みとなっているプロセスは、「④販売・マーケ
     ティング」だとします。

     しかし、A社では災害によっていくつかのプロセスで価値創出の源泉が失われ
     ました。

     その毀損度合いが比較的どれも軽微であれば、まずは「復旧型ビジョン」をつ
     くることが現実的でしょう。

     どの部分をどのような方法で回復していくかという具体的な道筋を示します。

     復旧型ビジョンでは不可能な程ダメージが大きい場合や、これを機に得意分
     野に集中する場合などは、「再構築型ビジョン」も併せて検討します。

     新しいビジネスモデルが軌道に乗るまでには、一時的に売上の大幅減少や資
     金繰りの急速な悪化も懸念されるため、資金面の確保を万全に行うことが必
     要です。

     国や地方自治体などの公的な復興資金の情報も収集し、それらを積極的に活
     用することも検討しましょう。

     上記は、自社の強みである「④販売・マーケティング」に特化し、それ以外のプ
     ロセスからは撤退するというイメージです。

     たとえば、製造業からは撤退し、「他のメーカーからの販売・マーケティングを
     代行する事業」に転身することがあげられます。

     また、自社製品のブランド力が強い場合には、自社が製造元というスタンスは
     崩さずに、④販売・マーケティング以外の一切のプロセスを外注することも考
     えられます。

     ブランド名はそのまま使用し、「ファブレス・物流レス」のメーカーとしての再生
     を図るのです。

     ここまでみてきたように復興期においては、社長自身が緊急事態発生前と発
     生後の自社のビジネスモデルの状況を的確に分析して、今後の自社のビジョ
     ンを描くことが大切です。

     社員に対してはたんに「全社一丸となって頑張ろう」と鼓舞するだけではなく、
     ビジョンに基づいて自社復興の可能性を論理的に説明することが求められます。

     また、復興のために社員にかける負担などについても、きちんと説明しましょう。

     さらに、取引先や銀行などについても説明をし、必要に応じて協力を求めます。

   3.マイルストーンの設定と提示

     復興のためのビジョン実現には長い期間がかかります。

     そこで、ビジョン実現までの大まかなマイルストーンも明らかにする必要があります。

     たとえば、次のように、ビジョン実現までのステップを3段階に分けて、それぞ
     れのステップの主要テーマとゴールイメージを設定することなどが考えられます。

     マイルストーンについてはその進捗状況を確認して、状況に応じてゴールや期
     間の修正などを行うことが必要です。

     また、社員に対しても進捗状況をきちんと伝えることで、復興に向けた勇気と
     自信を与えることができます。

  □緊急時のリーダーシップ・マネジメント

   1.リーダーシップとマネジメント

     会社におけるリーダーシップとは、目標を明確に示し、「今なすべきこと」を部
     下たちに示すことです。

     また、マネジメントとは、今なすべきことを「もっとも効率よく遂行する」ために、
     部下たちに指示を出したりさまざまな調整を行うことです。

     通常の状態であれば、社長はおもにリーダーシップに注力して、マネジメントに
     ついては経営幹部に任せておくことができます。

     社長は解決すべき問題を提示し、それを実際に解決するのは経営幹部たちと
     いう役割分担も可能です。

     しかし、緊急時には時間的余裕はありません。

     指示したことが確実にかつ効率的に遂行されるかどうかもつねに社長自身が
     確認する必要があります。

     緊急時には、社長はリーダーシップとマネジメントの両方を同時に行っていか
     なければなりません。

   2.緊急時のポイント

     緊急時のリーダーシップ・マネジメントの最大の目的は、今すぐ行うべきことを
     できるだけ迅速に部下たちに示し、確実に遂行させることです。

     平時とは違って、決断を先延ばししたり、幹部からの報告をただ待っていると
     いう余裕はありません。

     そのような状況下で適切な対応を行うためには次のような点が必要になるでしょう。

     (1)覚悟を決める

       社長は会社で起こるすべての問題に対する最終的な責任者です。

       たとえそれが災害などの不可抗力でもたらされた問題であっても同じことです。

       まずは問題収束に向けて、すべて社長自身が責任をもって取り組むという
       覚悟を決める必要があります。

       そして、自分が覚悟を決めていることを「胸に秘める」のではなく、部下たち
       にもはっきりと示すことも大切です。

     (2)合理性・冷静さを保つ

       次々と発生する問題に対しても、社長はつねに合理的でなければなりません。

       希望的観測は捨てて、最悪の事態も想定しながら、粛々と意思決定を行っ
       ていく必要があります。

       迅速かつ正確な意思決定のためには専門家の意見を参考にすることも必要です。

       可能であれば社外からも専門家を招へいします。

       社長自身には意味がわからない情報でも、専門家の見識を以ってすれば、
       解決策の大きなヒントが得られることもあります。

       また、どのような困難な状況であっても、つねに冷静さを保つことも大切です。

       周囲に苛立ちの感情をぶつけたり、気弱さから目を潤ませるといったことは
       避けなければなりません。

     (3)公を意識する

       意思決定に当たってできるだけ「公」を意識することも大切です。

       ここでいう公とは「社員」、「取引先」、「地域社会」、「社会全体」などさまざま
       なレベルがあります。

       社長はすべての意思決定を適切に行うことがベストですが、実際には判断
       を誤ることもあり得ます。

       その際にも意思決定があくまで「公」の利益を意識した結果であれば、ミス
       は仕方ないという以外にありません。

       逆にいえば、不透明な状況のなかで判断を下す最後のよりどころは、「公
       であるかどうか」ということになるでしょう。

     (4)指示の遂行状況を自ら確認する

       平時とは違い、部下に対して「報連相(報告・連絡・相談)」のまずさを指導
       している余裕はありません。

       自分が指示した事項については、「部下が確実に遂行したか」、「遂行した
       結果、状況がどうなったのか」について、社長自ら動いて確認する必要が
       あります。

       自分が指示したすべての事項について、指示リストを作って進捗状況を確
       認することも大切です。

     (5)人心を掌握する

       緊急時には社員たちは動揺しています。

       社長が日頃から信頼している経営幹部たちもそれは同じです。

       社長は自らの言動で、社員たちを勇気づけ、モチべ−ションを維持すること
       が必要です。

       危機を乗り切るためには社長自らが動くだけではなく、会社全体の機動
       力、組織力が不可欠です。

       ミスを犯した部下に対しても、厳しく叱責するだけではなく、動機づけのため
       のフォローを必ず行うことが大切です。

       これらのことを踏まえ、自社における緊急課題としてBCP(事業継続計画)
       策定をお勧めします

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中小企業の経営改革

在宅勤務制度導入の留意点

在宅勤務制度の導入
 

  ■在宅勤務制度とは

   在宅勤務制度とは、会社に毎日は出勤せず自宅で勤務する制度で、週1回在宅
   勤務など部分的なものを含め、近年、導入を検討する企業が増えています。

   その背景には、

    働き方改革における政府支援、パソコン(インターネット)や携帯電話の
    普及により、会社にいなくても仕事ができるようになったこと

   があげられます。

   そのほかに、仕事と生活の調和を意識した多様な働き方(WLB:ワーク・ライフ・
   バランス)への関心が高まるなかで、時間や場所にとらわれることなく能力を発揮
   できる働き方のひとつとして、また、重大な災害時においても事業を継続するため
   の対策のひとつとしても注目されています。

   在宅勤務はテレワークとも呼ばれ、「情報通信技術:ICT(Information and
   Communication Technology)を駆使し、遠く離れた勤務先と連絡を取りなが
   ら働く」ことを意味し、政府も「働き方改革」を提唱する中で、在宅勤務の浸透を支
   援しています。

   テレワークには在宅勤務のほか、サテライトオフィス勤務や営業などで移動しな
   がらの勤務も含まれます。

   政府は平成19年にテレワークの円滑な導入を促進するため「テレワーク人口倍
   増アクションプラン」を策定したほか、「仕事と生活の調和推進のための行動指
   針」にテレワーク人口増加の数値目標を掲げるなどの取り組みを実施してきました。

   「テレワーク人口倍増アクションプラン」のなかでは、テレワークを導入するメリット
   としておもに次の点をあげています。

    ・小子高齢化への対応

    ・ワーク・ライフ・バランスの充実

    ・地域活性化の推進

    ・環境負荷の軽減

    ・有能・多様な人材の確保による生産性の向上

    ・営業効率の向上

    ・コスト削減・災害などに対する危境管理

    ◎参照URL

    「テレワーク人口倍増アクションプラン

    「仕事と生活の調和推進のための行動指針

   国土交通省の「平成30年度 テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者
   のうち、テレワーカーの割合は前年度の14.8%から16.6%に、また、自営型就
   業者のうち、テレワーカーの割合は前年度の22.2%から24.0%となり、テレワー
   クを活用して働く人の割合はいずれも上昇傾向にあるが、課題あるようです。   

   課題として、

    「会社のルールが整備されていない」、「テレワークの環境が社会的に
    整備されていない」といった、ルールの整備に関する課題

   を挙げている

   企業側においても、

    労働時間の把握や本人の評価をどうするかなど、制度を
    導入するに当たっての課題が多い

   ことが考えられます。

   在宅勤務制度を上手に導入することで、優秀な人材の確保や経営の効率化を図
   ることを検討してみましょう。

  □在宅勤務制度導入のプロセス

   在宅勤務制度の導入プロセスは複数考えられますが、次のような手順を踏んで、
   内容の検討を進めていくとよいでしょう。

  □在宅勤務制度導入の留意点

   1.導入に当たっての留意点

    (1)会社と従業員の認識のすり合わせ

      在宅勤務制度導入に当たっては、会社と従業員の認識が一致していること
      が重要です。

      あらかじめ、

       ・導入の目的

       ・対象となる兼務

       ・対象となる従業員の範囲

       ・在宅勤務の方法

      などについて十分に納得のいくまで話し合うことがポイントです。

      そして、協議した内容については、文書で保存しておくとよいでしょう。

    (2)業務内容および遂行方法の明確化

      在宅勤務制度の対象となる従業員(以下、在宅勤務者)が業務を円滑かつ
      効率的に遂行するためには、業務内容や遂行方法などをマニュアルや在宅
      勤務規定などの文書によって明確にすることが重要です。

      また、あらかじめ通常または緊急時の業務連絡方法について、会社と従業
      員の話し合いにより取り決めておくとよいでしょう。

   2.労働時間についての留意点

    (1)労働時間管理の方法

      労働時間の全部または一部について在宅勤務を実施する場合の労働時間
      の考え方は次のとおりです。

      ①原則

       会社が在宅勤務者の労働時間を適正に把握できる場合は、通常の
       労働時間制が適用されます。

      ②例外

       会社が在宅勤務者の労働時間を算定することが困難な場合には
       「事業場外みなし労働時間制」を適用することが可能となります。

       「事業場外みなし労働時間制」とは、「所定労働時間」働いたもの
       とみなす制度ですが、次の要件をいずれも満たす場合は在宅勤務
       にこれを適用することができます。

        ・業務が、起臥寝食など私生活を営む自宅で行われること

        ・会社の指示で、情報通信機器などを常時通信可能にして
         おかなければならない状況ではないこと

       「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合は、就業規則などで定めら
       れた「所定労働時間」労働したものとみなします。

       ただし、通常は「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合に
       は、「通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。

       また、書面による労使協定があるときには、その協定で定める時間が「通
       常必要とされる時間」とされます。

       なお、労使協定は労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。

    (2)割増賃金の算定について

      在宅勤務制度において、「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合で、
      割増賃金の支払いが必要なケースは、次のとおりです。

       ・「事業場外みなし労働時間制」で「通常必要とされる時間」が法定
        労働時間を超える場合

       ・深夜・休日に労働した場合

    (3)「事業場外みなし労働時間制」が適用され場合の深夜・休日労働について

      「事業場外みなし労働時間制」が適用されている従業員が、深夜または休日
      に業務を行った場合であっても、次の要件などを満たせば、割増貸金の支払
      いは必要ありません。

      就業規則などに「深夜または休日に業務を行う場合には事前に申告し、会
      社の許可を得なければならない、かつ、深夜または休日に業務を行った実
      績について事後に会社に報告しなければならない」と規定されている状態に
      おいて、深夜若しくは休日の業務について従業員からの事前申告がなかっ
      た、または、事前に申告されたが許可を与えなかった場合で、従業員から事
      後報告もなかったという状況があり、そのうえで、次の1)〜3)のすべてに該
      当する場合は、労働基準法上の労働時間に該当せず、時間外労働となりません。 

      1)深夜または休日に労働することについて、会社から強制されたり、
        義務づけられたりしていないこと

      2)従業員の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切で
        ある場合など、深夜または休日に労働せざるを得ないような会社
        からの圧力がないこと

      3)深夜または休日に従業員からメールが送信されていたり、深夜または
        休日に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出されたり
        しているなど、深夜または休日労働を行ったことが客観的に推測
        できるような事実がなく、会社が深夜・休日の労働を知り得なかったこと

    【注意ポイント】

    上記の時間外労働や深夜労働の事前許可制および事後報告制については、
    次のいずれも満たす必要があります。

     ・従業員からの事前の申告に上限時間が設けられ、実態どおりに申告
      しないよう会社から働きかけや圧力があったなど、事前許可制が実態を  
      反映していないといった事情がないこと

     ・深夜または休日に業務を行った実績について、従業員からの事後の
      報告に上限が設けられ、実績どおりに報告しないよう会社から働き
      かけや圧力があったなど、事後報告制が事実を反映していないといった
      事情がないこと
 
   3.その他の留意点

    (1)制度適用に当たっての留意点

      従業員に在宅勤務制度を適用する際には、制度にのっとって当然に適用す
      るだけでなく、できる限り本人の意思を確認してから適用することが望ましい
      とされています。

    (2)安全衛生に関する留意点

      在宅勤務者に対し、雇い入れ時および定期の健康診断を行うとともに、必要
      な安全衛生教育を行う必要があります。

      また、会社は在宅勤務者に対し、パソコンなどの作業をさせる際は、定めら
      れた作業のガイドライン(VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラ
      イン)などに留意するとともにその内容を周知し、適切な作業ができるよう必
      要なアドバイスを行うようにしましょう。

      ◎参照URL

       厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
 

    (3) 業績評価などの留意点

      在宅勤務者が職場に出勤しないことなどから、業績評価などについて疑問を
      もつことのない適正な評価制度、賃金制度を構築することが大切です。

      また、業績評価や人事管理に関して、在宅勤務者について通常の従業員と
      異なる取り扱いを行う場合には、あらかじめ在宅勤務を選択しようとする従
      業員に対して、取り扱いの内容を説明し、理解を得ることが必要です。

      なお、在宅勤務者について、通常の従業員と異なる賃金制度などを定める
      場合には、その部分の就業規則を作成・変更し、届け出なければなりません。

    (4)情報セキュリティに関する留意点

      会社が在宅勤務者に情報通信機器を貸与する場合には、パソコンはシンク 
      ライアント型(画面表示および画面操作はできるが印刷や保存ができないも
      の)とし、社内システムへのアクセスは、VPN(バーチャル・プライベート・ネッ
      トワーク)(※)を構築することなどが必要となります。

      また、情報取り扱い規定を設けて、個人情報や会社情報の保護のルールを
      取り決めておくことがポイントです。

       ※ 公衆回線などを用いて、公共に提供されているネットワークをあたかも
          自社内で構築した専用線であるかのように扱うネットワーク構築手法
          のこと

    (5)費用負担の留意点

      在宅勤務における通信費や情報通信機器などの費用負担については、会
      社と在宅勤務者のどちらが行うか、また、会社が負担する場合における限度
      額、さらに従業員が請求する場合の請求方法などについては、あらかじめ十
      分に話し合い、就業規則などにおいて定めておくようにしましょう。

    (6)業務遂行上の留意点

      在宅勤務時の業務について、「在宅勤務計画書」や「在宅勤務実施報告書」
      といった報告様式を準備し、提出させることで、在宅勤務者の業務の遂行状
      況を適切に把握できるようにしておくことがポイントです。

       「在宅勤務計画書兼実施報告書」ひな型

    (7)社内教育の留意点

      在宅勤務者については、OJTによる教育の機会が少ないことで、能力開発な
      どにおいて不安を感じることのないよう、出社しての社内教育やインターネッ
      トを通じた教育など、その充実を図るとよいでしょう。

 

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中小企業の経営改革

M&Aの基本的な考え方
 

  ■M&Aとは

   M&A(Merger and Acquisitions)は、企業の合併および買収を意味します。

   最近では、合併・買収より「M&A」という言葉のほうが一般的に利用されているよう
   です。

   「合併」とは、2つ以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。

   その方法は、以下の2つです。

    ・吸収合併…存続会社が消滅会社の財産・負債等を引き継ぐ形で存在する形態

    ・新設合併…両会社とも解散し、新たに1つの会社を設立して、
            その会社に両会社の財産、負債等を一切引き継ぐ形態

   実務上一般的に行われるものの大半が吸収合併で、新設合併はほとんど行われ
   ません。

   なぜなら、

    ・新設合併において解散した両社と新設会社とは法人格が別のため、
     営業上の許認可は両社の解散とともに消滅し、再取得しなければならない
     等、新たに会社を設立するための手続きが必要である

    ・一方が上場会社である場合、費用と時間がかかる複雑な上場手続きも
     再度行わなければならない

   等の問題点があるからです。

   「買収」とは、企業が企業を買い取ることです。

   その方法には、次の3つがあります。

   1.株式譲渡

     発行済株式の譲渡により、経営権を取得する方法です。

     最も一般的なM&Aの方法といえます。

     なお、株式を取得する際に、金銭を支払う代わりに自社株と交換する株式交  
     換という方法もあります。

   2.新株引受

     新株引受とは、既存の株式を譲り受けるのではなく、新株発行の際の株式を
     引き受けることにより経営権を取得する方法です。

     新株引受により株式を取得するには、第三者割当増資を引き受けたり、直ち
     に新株が発行されるわ妙ではありませんが新株予約権付社債を引き受ける
     方法があります。

   3.営業譲渡

     営業用財産だけでなく、得意先、ノウハウ、人材等、営業に必要なすべての財
     産(全部譲渡)、あるいは必要な一部を移転(一部譲渡)することです。

     このほか、M&Aを広義に捉えた場合、業務提携や資本提携等の企業提携も
     含まれてきますが、ここでは省略します。

  □買収サイド(買い手)にとってのM&A(新規事業分野への進出)

   近年、技術革新の進展、消費者ニーズの高度化・多様化、情報化の進展といった
   企業を取り巻く経営環境は目まぐるしく変化しています。

   そのため、

    企業が将来にわたって成長していくためには、常に新たなビジネスの開拓を
    行い、変化に対して柔軟かつ迅速に対応していくことが求められる

   のです。

   そして、このような環境変化に素早く対応する手段としてM&Aは非常に有効であ
   ると考えられます。

   以下に、企業(買収サイド)がM&Aを活用して新規事業分野へ進出する際のメ
   リットおよびデメリットを紹介します。

   1.メリット

    (1)時間の節約

      現在のように、先端技術や売れ筋製品の移り変わりが激しく、製品サイクル
      が短くなっている時代にあっては、企業は目的とする事業分野でできるだけ
      早く優位な地位を築き上げ、変化に対応できる体制を作ることが重要です。

      たとえば、現在操業している会社を買収することによって、工場建設、人員の
      採用・訓練、新規顧客の開拓、生産ラインの確立といった設立時において必
      要不可欠なプロセスを省略することが可能です。

      そのため、「当初目的としていた市場が他社の製品に席巻されてしまう」「導
      入を決めた技術が見込みよりも早く現れた他社の新たな技術のために陳腐
      化してしまう」といったリスクを軽減することができます。

    (2)移転・開発が困難な無形資産の獲得

      企業の活動には、契約関係による移転や自力による開発が困難な無形の
      資産が存在し、競争をする上でしばしば重要な意味を持っています。

      無形の財産としては次のようなものがあげられます。

       ①製造や研究・開発(R&D)分野の無形財産

         ・業界に通じた従業員

         ・優秀な技師

         ・明文化できない製法のノウハウ

       ②販売面での無形財産

         ・業界での名声

         ・顧客リスト

        「生きている」会社を買収することで、こうした目に見えない財産も同時に
        獲得することが可能になります。

    (3)シナジー効果の実現

      合併・買収は、別々の経営権の支配下にあった複数の企業体が単一の支配
      権下に置かれる状況をもたらします。

      したがって、複数の事業等の経営資源を統合し、まとめて事業を運営するこ
      とによって、今まで得られなかった成果を相互に実現できる可能性があります。

      こうしたシナジー(相乗)効果とは、1プラス1が2を超える結果をもたらすよう
      な現象であるとよくいわれます。

      独自技術を持ち寄っての共同開発といった純粋なプラスの効果の他に、統
      合による管理費、販売費の削減に代表されるコスト削減効果も広義のシナ
      ジー効果に含めることがあります。

      シナジー効果を得られる分野として、次のようなものがあげられます。

       ①製造シナジー

         ・生産設備の相互利用による操業度の極大化

         ・生産技術の共有等による原価の低減

       ②研究開発シナジー

         ・技術の統合による共同開発

         ・得意分野に特化する分業体制の構築

         ・重複するプロジェクトの削減による人材の有効活用

       ③営業シナジー

         ・統一ブランド利用によるイメージ改善

         ・販売網の相互利用による販路拡大

         ・統合によるコスト削減

       ④財務シナジー

         ・資金コストや通貨の違いを利用した資金調達

         ・資産運用の効率化

    (4)参入摩擦の回避

      既存の市場に新規参入するにあたっては、

       ・既存の同業他社による防衛的な価格の引き下げ

       ・広告・販売競争といった競争上の風当たり

      を覚悟する必要があります。

      しかし、M&Aを行った場合は、当初より取引先を獲得することができる上、
      業界に通じた従業員を確保することもできるので、こうしたマイナス面を回避
      することができます。

   (5)投資コストの節約

     全く新たに事業を始める場合、土地を購入し、工場を建設し、人員を確保する
     だけでなく、市場への新規参入に対する投資コストも見込まねばならないため
     全体のコストが相当大きくなります。

     これと比較して、買収の場合、既に立ち上がっている事業を譲り受けるので新
     規に起こすよりも安くなる場合が多いようです。

     特に、買収する相手先企業が自社の売却を強く希望している場合は、買収価
     格を安く設定できるので新親に会社を設立して事業を始めるより投資コストを
     抑えられます。

     また、経営権の取得のみを目的として買収するのであればさらに安く抑えるこ
     とができます。

     つまり、経営権を取得するには過半数の株を買えばいいので投資コストが軽
     減できるわけです。

     その他、新規に会社を設立する場合に起こしやすい、採算ベースの読み間違
     い等のリスクを回避することもできます。

   2.デメリット

    (1)割高な価格で買ってしまう危険性

      買収した資産が、思っていたより価値がなかった場合、「高い買い物」になっ
      てしまうという危険性があります。

      たとえば、

       ・技術力が予想外に低く、商品開発が予定していたペースで進まない

       ・業界の成長が突然止まってしまった

       ・大口の顧客や優秀な従業員が抜けてしまった

       ・特許権やライセンスにクレームがつき、それら権利が無効になって
        しまった

      という場合です。

      過大な費用が発生する買収は財務体質の悪化を招き、経営の足かせとなる
      可能性も十分に考えられます。

      したがって、買収・合併の実行に際しては、そうした買収後の自社の財務体
      質の健全性を十分に検討することが必要です。

    (2)簿外債務・偶発債務の可能性

      M&Aを行う前には思いもよらなかった債務を背負わされることがあります。

      たとえば

       ・粉飾決算による簿外債務

       ・不良製品の損害賠償

       ・従業員、少数株主や下請け業者が起こした事故の損害賠償

      といったものが考えられます。

      このような債務は、財務諸表その他の文書には表れてこないので、事前に
      把握することは難しいです。

      したがって、リスクを最小限に抑えるには十分な事前調査を行い、考えられ
      るリスクについては、買収金額の一部を偶発債務の支払いに備える等、買
      収時に債務を売り手側に負担させるような特約を結んでおくことが必要でしょう。

  □被買収サイド(売り手)にとってのM&A(事業承継問題への対応)

   戦後の混乱期に事業を起こし、高度経済成長期を乗り越えてきた中小企業の社
   長も今では高齢に達し、次期世代への交代を余儀なくされています。

   多くの経営者は息子を後継者にして経営を任せたいと考えるようですが、実際には、

    ・息子がいない

    ・息子がいても経営能力がない

    ・息子に後継の意思がない

   等の理由で後継者問題に悩んでいます。

   あるいは、その他の方法として

    ・夫人に継いでもらう

    ・社内から適切な後継者を選ぶ

   といったことを考えたものの、やはり能力的に無理がある等の理由により、「一代
   限りで廃業する」といったケースが増えているようです。

   このように創業者が何十年にもわたり苦労して築き上げた企業であっても、経営
   者の高齢化に伴って、いつ廃業へと追い込まれるか分からないのです。

   そのような中、M&Aを導入して、後継者問題を解決する方法が注目されています。

    M&Aを活用することにより、
    会社の存続と従業員の生活が保証される上、社長の利益が確保される

   ことになり、社長も安心して事業から退くことができるのです。

   一方、「創業者の利益の確保」といった観点からも、M&Aは非常に有効です。

   株式を売却した場合と会社を清算した場合ではどちらが有利になるか、実際に試
   算してみましょう。

   事例のA社では、オーナー社長が株式を100%所有しています。

   この計算では考慮していませんが、黒字企業の場合や新親取得が困難な許認可
   を所有している企業の場合には、営業権(のれん代)が評価されるため、一般的
   に上記金額よりも株式譲渡価格が高くなり、手取額も増加することになります。

   清算の場合、清算時点で清算所得に法人税等が課され(f)、さらに、残った残余
   財産を株主に分配する際に個人に対する配当所得税が課される(g)ことになって
   います。

   そのため、実質的に清算所得には68%近くの課税が行われることになります。

   なお、ここでは考慮していませんが、清算の場合、製品・機械設備等の資産を簿
   価で売却することはほとんど不可能です。

   また、社員に対する退職金も会社都合になるため引当金が不足することが多く、
   実質的には上記で計算した額よりも手取額は減少すると考えた方がよいでしょう。

   以上の試算例から、株式売却による手取額は、清算した場合の手取額に比べて
   2倍以上にも及び、非常に有利であることがわかります。

   従来、M&Aは大企業が多角化を実現するための手段として活用するケースが
   ほとんどでした。

   しかし、前述したような企業を取り巻く経営環境の変化により、特に中小企業では
   後継者不足に対応するかたちでM&Aを採用するケースが増えているのです。

   一方、後継者問題以外でも、大企業の傘下に入ることで事業の安定化を図る、現
   在の事業を手離し、新規事業を立ち上げる等、様々な形でM&Aを取り入れる中
   小企業が増えています。

   以上、事業承継の観点から被買収サイドにおけるM&Aの活用法を紹介しました
   が、「企業間の経営資源の効率的な再配分を促進する」といったポジティブな姿
   勢で、自社の非採算部門を売却する、いわば「リストラクチャリング」の観点からM
   &Aを活用することも非常に有効であると考えられます。

  □M&A手法の比較

   どのようなM&A手法を取り入れるかによって、規制を受ける内容は異なってきます。

   したがって、M&Aを検討する際には、関連法制の規制事項についても比較、検

    討する必要があります。

   各手法の特徴を簡単にまとめておきます。



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中小企業の経営改革

オーナー社長は裸の王様

オーナー社長は裸の王様!?

   
  ■語ることからはじめる

   もし一人だけでできる仕事であるならば、組織はいらない。

   本来組織とは、一人ではできない仕事を多くの人達が協力してやろうという考えの下
   に生まれたものです。

   さらに組織は一人ひとりの力を協働させ、一人プラス一人を二人として考えるのでは
   なく、これを3にも4にもするというシナジー効果を期待するのが組織づくりの目的なの
   です。

   しかし現実では、組織とは名ばかりの集団(個人の集まり)と化している会社が少なく
   ありません。

   どのオーナー企業の社長も程度の差こそあれ、裸の王様になってしまうものです。

   それは、現場のリーダーが悪いからです。

   社内の腐食は現場から始まり、最終的に会社全体を蝕んでいきます。

   企業が腐る責任は、もちろん社長にあるのですが、腐るプロセスは、現場を軽視した
   社長ではわからないのです。

   職責が上に行けば行くほど現場から離れてしまいます。

   すべては現場に赴き、すべては現場で解決することです。

   社長は現場を認識しないまま、大きな判断をしなければならなくなってしまいます。

   社長は現場からの問題意識とヒントを常につかんでおく必要がある。

   そのためにも現場のリーダーと情報を共有し、信頼関係を構築して現場の認識不足に
   ある社長を支援してもらうことが大切です。

   腐食したリンゴ1個は、隣のリンゴにも伝わり、現場から音も立てずに崩れていくの
   です。

   そして、あるとき突然、会社全体(リンゴ箱)が一気に腐敗し、砕け散ってしまいます。

   腐ったリンゴの発生は、現場のリーダーから始まり、腐りかけたリンゴが復活するのも、
   すべて現場のリーダーであるということです。

   たった一人の勇気あるリンゴが、会社を救うことも多いのです。

   腐りかけたリンゴは、その状況を客観的な視野をもってトップに相談すべき責務が
   ある。

   自分が腐りはじめているとき、実は、隣のナシやミカンも腐りかけているのです。

   そのことを正面からトップに相談しやすい関係をつくることです。

   まず、現場のリーダーや社員と信頼関係を築か
   なければなりません。

   そのためにも「語ることからはじめる」ことです。

   オーナー社長の中には、企業としての夢や目標は
   必要ないと考え、それらは大企業が掲げるものだ
   と思っている社長も多いことは確かです。

   ところが小さな会社ほど夢や目標が大切なので
   す。

   組織の信頼関係は、社長がもつ夢や考えから生
   まれてくるものだからです。

   社員にとって、夢を真剣に語れないリーダーは魅力
   がないのです。

   経営環境は厳しく、苦しいハングリーな状況だからこそ、
   社員に夢・ビジョンを語ることが重要です。

   ビジョンがなければ、時代的進化も価値観の進化もない。

   夢・ビジョンが今ひとつ明確でないなら、現場のリーダー達と一緒になって夢・ビジョン
   をつくることです。

   夢を考え、夢を描き、夢を語り、夢をビジョンにする、ビジョンを実現するための仕組を
   つくることが求められているのです。

   組織に、今を考え未来を見つめる習慣がなくなったら進化はありえません。 

   夢・ビジョンによって社員一人ひとりの考え方が変わり、行動が変わり、そして成果も
   変わる
ことは、成長企業の創業の歴史が物語っています。

   リーダーシップというのは、時代とともにその求められる要素が異なってきます。

   産業が未成熟な時代から成熟化され、閉塞感が漂う今の時代を迎え、新たな時代
   価値・事業価値を構築できるビジョン力をもった価値創造型リーダーの登場を期待
   するようになります。

   現場でのちょっとした非常識を大切にしてこそ、新たな常識を見つけることができるの
   です。

   常識とは自分の中にあるものだ。非常識とは、自分の中にないものです。

   だからこそ、常識×非常識は、自分だけではつくりにくく、どうしても自分自身は、どん
   どん常識的な発想、常識的な思考に陥ってしまうのです。

   「自分の中にある常識×他人の中にある非常識=革新」という公式を無理やりにでも
   自分の価値基準にはめ込まなければならないのです。

   組織を自由闊達な成長集団に変えるための一番の近道は、社長自身が変わること
   なのです。

   社長の成長は会社の成長であり、社長の考えは会社の理念でもあり、それだけに
   社長の影響力は大きいのです。

   会社は社長の器以上には大きくならないことを肝に銘じることです。

   まずは、日頃の発言から変えてみましょう。

   人を理解するためにはコミュニケーションが欠かせません。

   最近では、社員がトップの話を聴く機会が減っているようです。

   会社(店)がすぐに変わることは困難でしょうが、日々トップが社員に語りかけること
   で、最初はさざ波でも、しだいに大きなうねりとなって全員に共鳴していきます。

   これらのことは最終的にお客様にも伝わるものです。

   変化が激しく、過去の経験が役に立たない今日こそ社長は素直に社員の言葉に耳を
   傾け、自分の考えを伝えるべきです。

   それをすることによって衆知を集め、社員の心を掌握し、変革への第一歩を踏み出す
   ことができるのです。
   
  ■社長の思いを伝える

   自社の職場で、部下や周りの人と質の高い対話が実現できたら、どのようなことが
   期待できるでしょうか。

   まず、組織が一つにまとまり、一体感が出てきます。

   みんなが一体になって仕事に取り組めば、仕事は楽しくなります。

   苦しい状況を乗り越えることもできます。

   ですから、リーダーといわれる人たちは、組織の一体感をつくりあげるために、いろ
   いろな工夫や努力をしているはずです。

   対話は情報の共有を促進します。

   ITを使ったグループウエアで情報を提供することはできますが、これは一体感を生み
   出すまでには至らないものです。

   やはり、相手との直接の対話を通じて情報を共有すると同時に、情報の裏にある、
   奥深いところの思いを共有化しなければ、本当の意味での一体感は生まれません。

   多くの中小企業の従業員からは、

    ・「上が何を考えているかわからない」

    ・「組織が何を考えているかわからない」

    ・「隣の部署のボスが何を考えているかわからない」

    ・「現場にどんな問題が起こっているかわからない」

    ・「うちの課題は情報が共有化されていないことです」

   などの声が聞こえてきます。

  □対話の場を設ける

   組織では、「隣の人が何をやっているのかまったくわからない」ということがよくあり
   ます。

   そして、お互いに根深い不信感を抱いていることもあるようです。

   対話の場が設けられなければ、お互いが推測と憶測と疑念に凝り固まり、不信感が
   さらに大きくなるでしょう。

   ですから、なおのこと対話が大事なのです。

   お互いがわかり合えば協力し合えるのです。

   しかし、不信感のかたまりでは、何か問題が起こったときに責任のなすりあいになっ
   てしまうかもしれません。

   質の高い対話でお互いがわかり合い、苦しさや厳しさが理解できたときに、人は支援
   の手を差し伸べることができるのです。

   そうなると、組織力は飛躍的に向上します。
 
   協力しないで足のひっぱり合いをしていると、組織力は小さなものになってしまいます。

   組織全体の力を最高かつ最大限にするには、その組織のメンバー一人ひとりがどれ
   だけ協力し合えるかにかかっているのです。

   チームワークの促進は、どこの企業でも大きな問題となっています。

   組織横断的に質の高い対話が実践できれば、協力し合える文化ができてきます。

   たとえば、営業部門と製造部門がお互いに本音で話し合えば、営業はいいかげんな
   発注はできなくなります。  

   逆に、製造部門でも、営業部門がいかに苦労しながら注文をとっているかがわかれば、
   注文に対して納期を間に合わせるように努力するという協力の姿勢が生まれます。


  □話を「聞く」ことで人材育成が促進される 

   上司が部下の話を聞くようになると、部下自身、ものごとをより深く考えなければなら
   なくなります。

   また、上司と話をすることによって、なんらかの「気づき」を得ることもできます。

   その対話が質の高いものであれば、そのまま人材育成につながるのです。

   人材を育成するうえで、いちばん大事なことは、経験のある先輩や上司と対話して
   いくことです。

   これが本当のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)であるといえます。

   しかし、OJTを含め社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。   

   この問題を解決しなければ、教育制度の内製化は不可能です。
   
  ■ムダ

   「社員を定数化する」「儲かっても人が増えない体質をつくる」ということは、「簡単に
   人を入社させないこと」です。

   福利厚生面が完備していない小さな会社の場合は、けっこう人の出入りが多いもの
   です。

   大企業ならば「寄らば大樹の陰」で、いったん入社した社員はたいてい定年まで勤め
   ようとするが、小さな会社では、せっかく人を採用しても簡単にやめてしまいます。

   ここが問題なのです。

   新人が入社して3日、1ヵ月、半年在社してから退社した場合のロスを計算したことが
   ありますか。

   採用した人がやめた場合の損を計算してみると、

   月給25万円の人が3日で退社すれば、およそ5万円はドブへ捨てたことになるのです。

   ましてや1ヵ月ならばおよそ40万円、半年ならば240万円近くがムダな経費として
   使われたことになります。

   これでは新人が入社したために儲からなくなってしまうことになります。

   どうせやめることがわかっているならば、入社させないほうがよいのです。

   会社経営では、人のコストが一番高くことはご存じのはずです。

   人のコストを「入社させるコスト」、「在職中のコスト」そして「退職させるコスト」と
   3つに区分してみれば、よくわかるはずです。

   とにかく「人」については、カッコウのよさにとらわれず、今までと違う発想をする必要
   があります。

  □「なぜやめたか」を一覧表に

   「初めからやめることがわかっていれば、誰だって入社させないヨ。わからないから
   困っているのだ」と言うトップも多いでしょう。

   確かに、入社した人がある程度の期間在職し、効率的に働いてもらうことができれ
   ば、会社は十分にペイできたことになります。

   だから「人を増やさない」ことを念頭においたうえで、どうしても人を採用しなければ
   ならない場合には、何とかしてすぐにやめてしまわない工夫が必要になる。

   ここで、なぜ入社した人がすぐにやめるかを考えてみましょう。

   やめるにはやめるなりの理由があるはずで、その理由がわかれば1ヵ月後退職、半年
   後退職をくいとめることができます。

   そこで、過去に自社をやめた人の「やめた理由」を洗いざらい一覧表にすることをお勧
   めします。

   採用面談時に入社してもらいたい人に、その一覧表をもとにして会社の状態を説明を
   します。

   そうしておけば、入社してから、「なんだ、こんなこと聞いていなかった」とか「こんな
   雰囲気の会社だったのか」といってやめてしまうことも少なくなるはずです。

   せっかく入社させた新人社員が1ヵ月や半年でやめたのでは、大変なムダになります。

   これを防止するためにも、入社の面接の時に、自社の過去の社員が退社した理由を
   説明することをおすすめする。

   しかし、「せっかく募集しても、誰も入社してくれないのではないか」と心配する声も聞
   こえてきそうですが、せっかく入社しても、数ヵ月後に退社して、より多くのムダな経費
   が使われるよりは、まだそのほうがましです。

   規模が小さくなるほど、会社のトップの仕事は、単に社員の頭の数をそろえて配置
   することではないのです。

  □社員の効果・効率的活用

   中小企業の経営において一番重要視しなければならないのが、経営の「尺度」として
   の「労働生産性」と「労働分配率」

   それらが、自社でどれくらいの数値であるかを、まず最初に確認しなければなりません。

   ここで問題になるのは、これらの労働生産性や労働分配率の数値が、標準より悪い時
   で、売上規模と比較して、人員過多のケースが多い。

   たいていの中小企業は、粗利のうち約50%前後を労働分配率が占めており、労働生
   産性も1名当たり60万円前後でしょう。

   こうした会社では、社員を多機能型の人材にしなければ、経営が成り立たない時代
   なのです。

   しかし、余剰人員がいるように感じても、なかなか人員をカットできないのが現実だ。

   それならば、自社に在籍している社員をフル活用するしかないのです。

   大企業であれば、リストラと称して人員カットの戦術をとることもできるでしょうが、規
   模の小さな会社は、社員1人ひとりに、現業務との兼務で他の業務もやってもらう必要
   があります。

   その場合、特に、直接営業に関与していないルーチンワーク的な業務活動をしている
   社員に「他の業務」をやってもらう場合、営業に関する仕事に従事させるべきです。

   営業関連の業務をやらせることで、多機能型の人材化がいっそう早く進むからです。
 
   ただこの場合でも、彼らが現状を理解できるようしっかりと説明して、心から協力する
   気持ちをもたせなければなりません。

   あなたの会社の社員は何人前の人が多いだろうか。

   たいていの会社では「1人前の人」が多いだろうが、「半人前の人」が会社の中にたく
   さんいるとしたら、それは大変な問題です。

   何といっても、粗利の約50%は人件費なのだ。

   人件費はもちろん一定の枠があるので、「半人前の人」の頭数だけ多くいるような会社
   は、1人当たりの給与が低くなることは当然なのです。

   だからこそ、1人ひとりが1.5人前以上の人間になって初めて配分されるパイ(給与)
   も大きくなる。

   これが動かしようのない現実であることを、朝礼やミーティングでしつこく社員に教える
   ことです。

   社員の質のアップは、彼らの心からの理解がないとできません。

   
  ■会社の老化

   人が老いるのと同じように、すべての会社に老化は忍び寄る。

   旧態依然とした年功序列や硬直的な人事、社内のコミュニケーション不足。

   こうした事柄を放置すれば、気付かないうちに会社は、過去の成功体験にこだわり、
   現実の変化に無関心になっていってしまいます。 

   そのまま手をこまねいていると、会社は最悪の場合、倒産という「死」を迎える。

   それを避けるには、会社の老化を経営者が自覚し、その対策を打たなければならない
   のです。

   その打開策は組織のモチベーションアップであり、コミュニケーション力の強化です。

   これらを強化するには、社員一人ひとりが組織人としてやらなければならない行動で
   ある基本動作の習得です。

  □老化の兆候

   長引く不況、社会環境・産業構造の激変といった厳しい事業環境はどこも同じはず
   だが、企業の明暗は大きく分かれている。

   それは、経営者を含めた全社にまん延する「過去の成功体験への執着」と「無関心」
   です。

   1.過去の成功体験への執着

    過去へ執着することの怖さは、自分達ではそのことがなかなか分からないところ
    にあります。

    自覚症状が無いことが最大の特徴です。

    成功体験に固執して、自ら視野を狭めてしまうことです。

    過去にヒット商品を生み出した経験が忘れられず、二匹目のドジョウばかりを追
    うのです。

    過去の経営判断や既に動き出した計画、従来の仕事のやり方にこだわるあま
    り、軌道修正や撤退が遅れてしまいます。

    「手段」が、いつの間にか「目的」になってしまう。

    過去の成功体験に無意識にこだわり、それが邪魔になって問題点に気付かな
    い会社は少なくありません。

   2.会社を蝕む無関心

    倒産企業の多くは、経営環境や社内体制の問題点を正しく把握する能力が
    著しく低下し、顧客ニーズに鈍感になる。

    社内の風通しが悪く、他部門との情報交換ができず、自己中心的な社員が増
    え、給料さえ貰えればあとは知らないといった、ぶらさがり意識も強くなっていき
    ます。

    こうした組織では、トップに正しい情報が集まらず、結局、意思決定を誤ってしま
    う。

    「無関心」の怖さは、増殖を始めると止まらなくなることです。

    社員の中には、不満やアイデアがあっても、「どうせ言ってもムダ」という心境に
    陥っている人達がいることです。

    放っておけば、その社員達は、自分で考えることをしなくなってしうことです。

    こうした環境が次第に広がり、経営者は“裸の王様”になってしまう。

    社員がモノを考えなくなる原因には、

     ・社長が、腰巾着のようなイエスマンや同族で会社幹部層を固めている弊害。

     ・不振企業は収益管理など基本的な体制が整っていない場合が多い。

     ・会社の情報が公開されないため、従業員達はそもそも何が問題なのかが分
      からない。

     ・従業員は、自分の会社という意識が持てないから、モチベーションが上がら
      ない。

  □老化の防止と若返り策

   まず社長が、社員と5〜6人ずつディスカッションして、会社を変えたいと考えている
   キーマンを探すことです。

   人間の世界と同様に、会社の老化も、手をこまぬいていると猛スピードで進むことを
   経営者が自覚し、自浄する仕組みを社内に持つことでしか、企業の活力を維持でき
   ない。

   そのためには、経営者は何をすべきか。

   従業員のためにどんな仕組みが必要なのか。   

   1.自分の提案で会社が変わる

     その実感が社員の参加意識を生み、会社の老化を防ぐ。

     従業員の改善提案は現場の叫びであり、まず聞いてあげることです。

     提案を採用すれば、自分が会社に貢献したと実感し、励みにしてくれる。

     そうやって会社に知恵を蓄積していきます。
    
   2.少数、独立採算のチームカンパニー制

     「チームカンパニー制」のチームリーダーは、「社長」として、他チームの社長達
     と業績を競わせ、生産性を大幅アップを可能にする。

     単に与えられた仕事をこなすという意識から、いろいろな業務ができることで、
     仕事が面白い、責任感、やりがいも増す。

   3.肩書き廃止

     縦割り組織へのこだわりを解消することで、自由な発想と鋭い感性が身につ
     く。
      (1)他の部署と密接に協力できる柔軟性ができる。

      (2)社員同士が知恵を出し合って、協力して働く体制ができる。
        ユニークな商品は、決してワンマンプレーからは生まれません。

      (3)業績で評価されるから、減点や失敗を恐れるようになる。
          他部署への協力や、縁の下の力持ち的な業務で頑張った社員を評価す
        るためには、上司だけでなく、同僚などからの評点も参考にする360度評
        価を採り入れることも必要でしょう。

     役職があると、人間はどうしても「俺の縄張りだ」として自分の担当部署に固
     執してしまい、縦割り意識が生じます。

     それが、組織の老化を招く。

     役職を廃止する代わりに、各部署には「責任者」を置く。

     これは恒久的な肩書きではなく、他部署に異動すれば外れるものです。


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中小企業の経営改革

コアコンピタンス経営
 

  ■コア・コンピタンス経営の基本

   1.中核的な能力を高める

     コア・コンピタンス経営とは、企業が中核的な能力を徹底的に磨き上げること
     で新しい市場を創造し、安定的な成長企業の実現につなげる戦略のあり方を
     指します。

     既存の競争ルールにしたがいながら成長を目指すのも、企業のとるべき戦略
     の一方策です。

     しかし挑戦者にとってそうした方法に基づいた経営を継続しながら、業界内の
     リーダー的競合他社に追いつき追い越すのは大変な労力を必要とします。

     そこで挑戦者はやや視点を変え、リーダー企業とは異なった方法で市場に接
     近し、新しい顧客を獲得することを考える必要があります。

     企業の置かれる外部経営環境の厳しさが増している現状にあって、それぞれ
     の企業には緻密な戦略の立案や事業の再構築が重要な経営課題となってい
     ます。

     コア・コンピタンス経営の概念にしたがい、外部環境に左右されない企業力を
     つける努力を続けるのは、大企業のみならず中小企業にとっても重要な経営
     課題であるといえます。

     ここではコア・コンピタンス経営の実践を、大きく3つのステップに分けて考えま
     す。

     ステップ1 

      :企業が追求すべき顧客の便益(benefit)を明らかにする

       顧客ニーズが多様化・高度化するなかで、それらに対応するためのマーケ
       ティング戦略を実践しない企業は、市場からの撤退を余儀なくされる。

       多くの企業は、顧客ニーズへの対応は当然のこととして認識しているかもし
       れないが、顧客ニーズを細分化したうえで、自社の提供すべき便益を明確
       にして迅速な市場対応を実践している企業はかならずしも多くは存在しま
       せん。

       したがって、コア・コンピタンス経営の最初の段階では、まず顧客のプロ 
       フィールを精査していかなければなりません。

       その際には、既存の顧客便益を明らかにすることにとどまらず、便益の芽
       を見出す必要があります。

       そうした努力が、将来の大きな市場を創出するからです。

     ステップ2

      :顧客便益を提供するのに必要な自社の技術・能力を徹底的に高める。

       自社の保有する経営資源には限りがあります。

       豊かな経営資源を確保する企業であっても、広範囲にわたる技術や能力
       を高めるために経営資源を分散して投入するのは得策であるとはいえませ
       ん。

       つまり、「選択と集中」の観点から経営資源の活用を進め、事業領域を焦
       点化していく必要があります。

       自社のコア・コンピタンスをどこに設定するか、そして事業領域をいかにし
       て絞り込んでいくかという戦略的な意思決定を行なうのは、社長のもっとも
       重要な責務です。

       この一連の意思決定をするにあたっては、社内外のスタッフを最大限に活
       用して、可能な限り客観的な判断材料を集めるのがよいでしょう。

       そうした科学的な要素を追求するとともに、社長の価億観や経験などの要 
       素を適宜加えて意思決定を行ないます。

   2.顧客との接点を重視する

     顧客の便益を明らかにし、自社独自の能力に磨きをかけていくと企業の総合
     力は飛躍的に高まります。

     しかし、企業がより高い成長を実現するには、もうひとつ別の取り組みが求め
     られます。

     ステップ3

      :企業と顧客との接点を重視する。

       自社のもつシーズ(技術)は製品化され、顧客ニーズと向き合います。

       十分な市場調査をもとに開発された製品は、消費者の支持を受ける可能
       性が高まります。

       しかし時間の経過とともに、シーズとニーズとの整合性が徐々に失われる
       可能性も否定できません。

       多様な企業との激しい競争環境から生まれる製品に触れる顧客は、より高
       い便益を手にすることを望むようになります。

       そこで、企業はつねに市場との接点を大切にしなければなりません。

       顧客の声を拾い上げデータベース化し、それらを全社員で共有して市場動
       向の微妙な変化を察知するよう努めます。

       具体的にはグループウエアを導入し、社員がいつでも必要とする顧客情報
       を入手できるようにするなどの取り組みが要求されます。

       こうして顧客とのコラボレーション(協業)を図り、企業の成長や競争優位の
       獲得を実現していきます。

   3.差別化戦略の実践につながる

     これまでみてきたように、コア・コンピタンス経営の考え方は非常に簡潔です。

     松下幸之助氏は生前、「力強い経常は、当たり前と思われる事項を確実に実
     践していくところから生まれる」と再三にわたり強調していました。

     松下氏の経営に対する見方はコア・コンピタンス経営と本質的な部分で重なっ
     ているのではないでしょうか。

     また、コア・コンピタンス経営の実践を図のように整理しました。

     コア・コンピタンス経営は市場発見・創出につながる未来の戦略であり、価格
     競争を重視したこれまでの経営とは一線を画するものです。

     さらに考えると、企業が新しい市場を発見し育てていくのは、差別化戦略の実
     践にもつながります。

     中小企業にとって差別化戦略によってすき闇市場を確保するのは、ひとつの
     重要な行動規範であるといえます。

     長期的な成長を考慮した戦略の立案と実行とが、企業には求められてくる。

     経営環境の厳しいなかにあるからこそ、そのような長い目でみた成長をもとに
     企業経営の方向性を探っていく必要があります。

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中小企業の経営改革

経営は戦略的思考で
 

  ■戦略的思考を利用する

   1.戦略的思考

     会社の社長や経営幹部の仕事は何でしょうか。

     おそらく「会社を経営すること」という答えが返ってくることでしょう。

     では、「経営する」こととはどのようなことでしょうか。

     社長業の本来の中身はどのような業務なのでしょうか。

     自分は営業が得意だからと営業活動に専念している社長や、管理することが
     得意だからと社員の細かい経費管理まで行なうことに時間を費やす社長など
     も見受けられます。

     しかし、本来の社長業は、会社の理念経営方針を決定して、それを全社員
     で実行していく体制を作り上げること、会社の事業展開を検討して、将来に向
     けてどのような会社を作り上げるかを考える業務であるはずです。

     会社の経営上の目的を効率的に達成するために役立つのが、戦略的思考で
     す。

     「考えるヒント」という感覚で戦略的思考を積極的に利用していくことが、社長
     業の遂行に役立ちます。

     戦略的思考とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

     たとえば、次の質問について考えてみてください。

     「現在おかれている会社の環境について考え、その状況を箇条書きで示してく
     ださい」

     この質問にどのように取り組まれるでしょうか。

     周囲の人に意見を聞くという方法もありますし、思いつくままに数えあげるとい
     う方法もあるでしょう。

     もちろん、そのような方法が役に立たないということではありません。

     いろいろな人に意見を聞くことで思わぬ発見があることもあります。

     他人の客観的な分析が、自分では気づかなかった環境について指摘を与えて
     くれることもあるでしょう。

     思いついたままに数えあげることで、無意識に感じていたことが意識に表われ
     てくることもあります。

     しかし、こうした方法は整理された方法ではなく、行き当たりばったりの方法に
     なってしまいがちで、整理された分析は行なわれにくくなります。

     経営環境の分析を行なう場合の戦略的思考のひとつに、自社を取り巻く環境
     を会社の内部環境(人、モノ、カネ、情報など)と外部環境(競合状況、社会状
     況、法律、政治、文化、流行など)に分けて、内部環境の強みと弱み、自社に
     とって有利な外部環境、不利な外部環境を分析する方法が挙げられます。

     この方法を知っているだけでも、先ほどの質問に対して答えを整理することが
     できるでしょう。

     他の例を挙げてみます。

     「お客さまに提供する新しい価値をもった事業を考えてください」という場合、ど
     のように考えるでしょうか。

     これにも戦略的思考方法があります。

     いくつかの方法が提示されていますが、たとえば、「価値を創造する3つの思
     考方法」とでもいうべき方法があります。

     ひとつは、現在ある製品でお客さまが満足していない点に注目する方法です
     (既存の事業をベースに不満足に注目する視点)。

     たとえばソニーの「VAIO」は、パソコンにもデザイン性がほしいという消貴著の
     意見に注目して、デザイン性に重点をおいたパソコンとして開発されました。

     2つ目の視点は、これまで実現できなかった価値を従来の方法と違う手法で実
     現する視点です(新たなビジネスモデルの構築)。

     たとえばパソコンメーカーのデルは、いらないものはほしくない、自分の望むス
     ペックのパソコンがほしいという消費者に、インターネットを通じて顧客の求め
     るスペックのパソコンを直販するという新しいビジネスモデルを構築し、急成長
     を遂げました。

     3つ目の視点は、まったく新しい、価値を創造する方法です(新たな価値蝕造)。

     たとえば宅急便は、国鉄時代には利用者が駅まで荷物を運んでいた荷物輸
     送に、翌日配送で、しかも近くの集配拠点に持ち込めば配達するというまった
     く新しいシステムを作り上げ、新しい価値を創造しました。

     以上の3つの視点が、新しい事業を考える場合の戦略的思考の手段・ヒントと
     なります。

     こうした戦略的思考方法は、今ではさまざまな経営関連の書籍などで紹介さ
     れています。

     自らの解決すべき問題意識を明確にして、それを解決する戦略的思考の方法
     を見つけ出し、それを活用していきます。

   2.戦略的思考を経営戦略に活用

     戦略的思考は、経営戦略のさまざまなステップで活用することができ、社長の
     強い味方となってくれるはずです。

     会社の経営戦略は、環境分析から始まって、自社が力を入れるべき事業を決
     定する成長戦略、成長させる事業に対してどのように限りある経営資源を配
     分していくかを明確にする経営資源配分に関する戦略、各事業で競合他社と
     どのように戦っていくのかを考える競争戦略などの段階があり、それぞれの戦
     略レベルに応じた戦略的思考があります。

     それぞれの段階でどのような戦略的思考が利用できるのかを整理してみま
     しょう。

     最初の段階は、環境分析の段階です。

     この段階の戦略的思考の手段としては、前述した自社を取り巻く環境を内部
     環境と外部環境に分けて分析する方法のほか、顧客、自社、競合の3つの視
     点で分析を行なう「3C分析」(Customer、Company、Competitor分析)な
     どの方法が代表的です。

     環境分析を経て、自社が成長していくために取り組む事業や製品を考える成
     長戦略の段階では、製品と市場の2つを軸にしたマトリクスで分析を行なう「製
     品・市場マトリクス」が代表的な戦略的思考の方法です。

     自社の成長事業・製品が決定された後は、自社のもつ経常資源をいかに有効
     に利用していくかを考える戦略が必要になります。

     これに関しては、大企業が多角化を進めるうえで、自社の経常資源をどのよう
     に投資するかを考えるために、いくつかのフレームワークが提示されている。

     有名なものは、市場成長率と自社の相対的市場占有率という2つの軸を利用
     して、どのポジションにある事業に力を入れるべきか、どの事業を中止するべ
     きかなどを検討するプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の手法があ
     ります。

     そして、選択した事業・製品で、

      いかに競合他社と競争していくかを考える競争戦略においても、
      いくつかの戦略的思考があります。

     次項では、競争戦略における戦略的思考について解説します。

  □中小企業にとっての競争戦略

   競争戦略に関する戦略的思考には古くからいくつかの方法がありますが、よく利
   用される戦略的思考として、「ポーターの3つの競争戦略」や「市場地位別の競争
   戦略」が挙げられます。

   1.ポーターの3つの競争戦略
     競合他社と比べで自社がどのような強みと弱みをもつかを分析し、コスト面と
     差別化面の2点に注目し、どのような特徴を打ち出していくべきかを考えてい
     きます。

     競合他社に対して、競争優位のタイプ(コスト優位を重視するのか、製品や
     サービスの差別化を重視するのか)、競争戦略のターゲットの広さ(競争優位
     を実現するために、広い業界全体をターゲットにするのか、狭い特定分野を
     ターゲットにするのか)という2つの軸で競争戦略を考えます。

     その結果、

      競争戦略は、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中化戦略」
      の3パターン(基本戦略)に整理することができます。

     集中化戦略については、さらに「コスト集中」と「差別化集中」に区分することが
     できます。

     大企業の場合、コスト・リーダーシップ戦略(たとえばマクドナルド)か、差別化
     戦略(たとえばソニー)をとることができますが、これらはいずれも経営資源の
     限られた中小企業のとるべき戦略ではありません。

     中小企業のとるべき戦略は、ターゲットを絞った集中化戦略です。

     競合他社と比べて、いかにターゲットを絞るかを戦略の基本に据えるべきで
     す。

     たとえば、本物志向のシャツ作りにこだわり注目を集めているメーカーズシャ
     ツ鎌倉(「天然物」の生地にこだわり、極細糸の80番以上の双糸を使った密度
     の高いステッチで縫製され、天然の高瀬貝使用のボタンなど、特徴あるシャツ
     を提供している)や、天然素材の手作りハンドバッグにこだわり、1998年に日
     本経営品質賞(中小部門)を受賞したイピザ(旧・吉田オリジナル)などの事例
     が参考になります。

   2.市場地位別の競争戦略

     これはF.コトラーの競争戦略で、自社の市場における地位や、競合他社との
     関係に注目した競争戦略です。

     この考え方では、

      企業はその市場地位によって、
      リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つに類型化きれます。
      その類型に応じて、それぞれのとるべき競争戦略を決定していきます。

      (1)リーダー

        リーダーの競争戦略にはいくつかのパターンがありますが、
        第一には、市場シェアの維持と周辺需要の拡大が挙げられます。

        市場内で最大のシェアをもっているという立場がリーダーの強みですか
        ら、この立場を維持しながら市場全体を拡大することを戦略の目標とす
        る。

        周辺市場の拡大によるパイの広がりは、シェアの大きいリーダーにとって
        は優位な展開をもたらします。

        たとえば、市場が日本だけである製品で中国市場への進出も可能になれ
        ば、周辺市場の拡大という視点から、リーダーにとっても中国市場への進
        出は魅力ある戦略になります。

        また、

         非価格競争もリーダーにとって重要です。

        リーダーが価格競争を行なってしまうと市場全体の価格低下につながる
        ため、リーダーにとって価格競争は避けなければなりません。

        したがって、リーダーは新製品の開発やブランドの確立、積極的な広告宣
        伝など、非価格競争で競合企業と戦っていきます。

        第二に、リーダーのとる戦略に、同質化競争という考え方があります。

        リーダー以外の企業が新たな製品を市場に投入したときに、これを模倣
        して同じような製品を市場に投入します。

        こうなると、差別化された製品が同質化され、市場のリーダーにとって有
        利な状況となります。

        たとえば、コーヒー会社が自動販売機向けの缶コーヒーを発売したのに
        対して、飲料メーカーが同じような缶コーヒーを発売し、自動販売機の数
        や従来の販売ルートの強みを活かして、結局は缶コーヒーのシェアをおさ
        えてしまった例や、発泡酒の発売で後発であったビール市場のリーダー
        が、同質の製品を発売してシェアを拡大した例などが挙げられます。

     (2)チャレンジャー

        チャレンジャーは、市場でリーダーと競争できる力をもっている2位、3位
        の企業であり、トップ企業であるリーダーに戦いを挑んでいる挑戦者。

        チャレンジャーの目的も市場シェアの拡大です。

        リーダーの弱みをついたり、自社よりシェアの小さいフォロワーのシェアを
        奪い取ったりする戦略をとります。

        チャレンジャーの基本戦時は、リーダーが真似できない戦略の構築です。

        たとえば、販売チャネルでリーダーとの差別化に成功した例として挙げら
        れるのが、インターネットを利用した直接取引の充実です。

        一般的に、リーダーである企業は販売店契約や販売会社の設立などで
        確固とした販売チャネルを確立していますが、これらのチャネルを大切に
        維持するためには、インターネット取引のような、従来のチャネル構成員
        から批判を招きかねない方法はとりにくくなります。

        チャレンジャーのインターネット・チャネルの構築は、リーダーが真似しに
        くい革新的な方法となりえたのです。

      (3)フォロワー

        フォロワーは、リーダーと争う経営資源のない立場の企業であり、基本的
        な戦略はリーダーやチャレンジャーの模倣です。

        自らは製品や市場の開発に取り組まず、

         リーダーの開発した製品を模倣し、
         経済性を重視しながら後発ならではのメリットを活用し、
         低コストを武器に生存利益の確保を日額に行動します。

        いわば「コバンザメ戦法」ですが、自社の経常資源の制約から、合理的な
        選択の戦略になり得ます。

      (4)ニッチャー

        ニッチャーは、リーダーやチャレンジャーと競合しない特別な領域で、独
        自の地位を築こうとしている企業です。

        細分化した特定の部分市場(セグメント)に特化し、

         その分野の専門企業として、特定顧客をターゲットに、
         一般よりは高価格を維持しながら利益を確保していく戦略です。
         ニッチャーの競争戦略は、中小企業にとって最も適した戦略といえる。

        たとえば、市場に数%程度しかない国産大豆のみ使用した豆菓子のメー
        カー、各地の日本酒に特化した日本酒専門店、アイルランド産のセーター
        であるアランセーターを中心とした品揃えの洋品店、花別の蜂蜜とその紹
        介パンフレットを作成して健康志向で人気の蜂蜜店など、元気のある中
        小企業のとっている戦略です。

        「ポーターの3つの競争戦略」と「市場地位別の競争戦略」を比べてみる
        と、リーダーの戦略はコスト・リーダーシップ戦略に、チャレンジャーの戦
        略は差別化戦略に、そしてニッチャーの戦略は集中化戦略に近いことが
        わかる。

        いずれの戦略をとるにしても、

         自社の競争する領域を明確に定めて集中化できるかどうかが、
         中小企業にとっては重要といえるでしょう。
         競争戦略の決め手は、
         いかに集中できるか、いかに必要でないものを切り捨てられるか、
         にあるのです。

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中小企業の経営改革

外部専門家の有効活用
 

  ■専門家の採用はコストか投資か

   税理士をたんなる自社の経理(記帳代行)としてしか活用していない。
   社労士は法令改正時や給与計算時のみに利用。

   中小企業にとって外部専門家、出入りの業者、を自社のビジネスにどのように活
   用できるかを考える必要がある。

   業種・業態のボーダーレス化によりビジネスの垣根が取り払われ、異業種による
   参入が盛んになっている。

   ここで、経営者であるあなたは外部専門家の採用をコストと捉えるか投資と捉え
   るかによって大きく違ってくる。

   彼ら専門家や出入りの異業種業者を自社のビジネスとどのように関連付け、マッ
   チングさせるかを考えることが今まで以上に重要となる。

   あなたの扱い商品やサービスに付加価値を付けることで、たんなるモノとしての
   商品やサービスをどのように競合他社と差別化させるか。

   いかにパッケージ(ブランド)化させるかが重要となります。

   モノがあふれ、単なるコモディティー商品として販売していては、最終的には価格
   競争に陥ってしまう。

   考え・やり方を変えることで同じマーケットであっても違うマーケットとして捉えるこ
   とができます。

   そのためには、単なる「モノ売り」をやめ、「コトを売る」に変えることです。

   「コトを売る」発想は自社のブランド構築に欠かせないキーワードとなります。

   過去の延長線上のやり方でやっていては、頑張れば頑張るほど、ムダなエネル
   ギーを使ってしまいます。

   そして、利益が少なくなって、歯止めのない赤字体質が定着してしまうのです。

   ただ単にモノを売ろうとするだけでは同業他社と同じ。

   製造業であろうと建設業であろうと全てはサービス業なのです。

  □『モノづくり』から『コトづくり』

   我が国はものづくりでは世界NO1と言われています。

   しかし、現実ではそのNO1のものづくりが瀕死の状態です。

   いいものを作れば売れると信じてきました。

   その結果は家電製品を見てみても明白です。

   国内のトップメーカーは韓国に後塵を拝している。

   日本製品はガラパゴス化と言われ、マニアックな製品に力を注いでいるように感
   じる。

   マーケットを絞り込んでの製品づくりであればいいのですが…。

   今日に至るまで、つくったものをそのまま売るという行為を繰り返してきました。

   時代の変化に対応した売り方やお客様の買い方も考えずにです。

   そして、売れない理由を景気や価格のせいにする。

   あなたも自社の商品やサービスが永遠に売れるとは思っていないはずです。

   特にIT化の急激な発展により商品の寿命がどんどん短くなってきていることはい
   まさら言うことでもありません。

   会社にとって重要なことは売上や利益を上げることではありません。

   会社を存続させ、成長させることです。

   そして、会社が存在し続けるためには儲けなければならないのです。

   大企業と違い資金や人材に限りがある中小企業が売上を上げるには、自社だけ
   で戦うことはますます困難になってきます。

   これらの問題を解決するためには、社外の専門家や異業種の協力が必要になっ
   てきます。

   しかし、提携や協業が単にモノとしての商品を増やすためだけの目的であっては
   ならない。

   大切なことは、異業種間の協業目的は付加価値である「コト」を創造するため。

   売れている商品やサービスにはストーリーがあります。

   そのストーリーが、まだ購入していない時点で「よさそうだ」「これを買えば今抱え
   る問題を解決できそうだ」「これを購入すれば私の望んでいる体験ができそうだ」
   といった感情を抱き、購入の引き金を引くのです。

   多くのビジネスマッチングに関するサイトや異業種交流会などが脚光を浴びてい
   ます。

   マスコミ報道では、『モノづくり大国』といった言葉が多数使われているが、モノづく
   りではなく『コトづくり企業』を目指すことです。

   日々の糧を得るために体に汗を流すことも大切ですが、脳ミソに汗を流すことが
   より重要であり、それがトップとしての経営における優先課題の一つなのです。

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静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
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