差別化

顧客の心をつかむ差別化策

■顧客の心理を考える

 1.なぜ顧客は自社を選ぶのかを考える

  顧客はなぜ自社と取引をしてくれているのか?

  昔からよく知っているからなのか、顧客の利益につながっているからなのか。

  今一度、考えてほしい。

  「昔からよく知っている」ということは、長く継続して取引があるという面では良いことです。

  半面、長くお付き合いをしていることによって、自社が以前とは違う商品・サービスを取り扱って
  いても、顧客の頭の中に昔のイメージが残っており、「あの会社ができる範囲はここまでだ」
  「あの会社が提供できる商品・サービスはこれだけだ」と決め付けられている場合があります。

  顧客は自社が思っているよりも自社について知らないことが多い。

  顧客が自社のできることを知らなければ、顧客の頭の中にイメージさ れた「自社のできること」
  以上に仕事は膨らまない。

  顧客は、自分の頭の中にある TPO(Time :時間、 Place :場所、 Occasion :場合)によって、
  付き合う先を選別しているのです。

  その結果によって、顧客内における自社のインストアシェアが決まってくるのです。

  要は、今以上に自社を選ぶ理由が、顧客の中にあるかどうかです。

  その理由がなければ、今以上に自社の業績が上がらないのは当たり前です。

  よく「既存顧客の売上げが減ってきた」「新規開拓が進まない」という声を耳にする。

  これは顧客側から見れば、自社を選ぶ理由がないのです。

  選ばれる理由を顧客に与えることが必要になる。

  では、売る側は何をしなければならないか?

  まずは、顧客から選ばれるために必要なことは何かを考えることから始めましょう。

 2. 顧客が選ぶ理由をつかむ4ステップ

  (1)顧客が過去、どのような理由で取引先を選んできたのかをつかむ

   理由を考える際は、顧客が今まで付き合ってきた先と自社を必ず比較します。

   要は「過去」と比べるのです。

   顧客が取引先を選ぶ物差しを把握することが第一ボタンです。

  (2)ライバルが顧客に提供している利益をつかむ

   顧客が今まで取引している先、自社よりもインストアシェアが高い先は、「どのような利益を
   提供しているのか」について考えていただきたい。

   「彼を知り己を知れば百戦殆(あや) うからず」(『孫子・謀攻篇』)です。

   これをつかまなければ、差別化するためにどのような情報が必要なのかが分からない。

  (3)顧客が自社と取引をしたときの利益を考える

   商品・サービスを売る側が陥るワナは、自社の利益を中心に考えてしまうことです。

   「これをあの顧客に売れば目標達成できる」などと、身勝手なそろばんをはじき過ぎるとミスを
   します。

   顧客が望んでいないもの、買いたくないものを勧めても、利用したい気持ちや買いたい気分には
   ならない。

  (4)顧客の利益を最大化するために必要なことをつかむ

   「顧客の利益とは何か」を考える。

   その次に、「どうすれば自社が顧客の利益を最大化できるのか」を考える。

   この順番を間違うと、顧客に提供すべき情報を間違えてしまう。

   顧客は、入ってくる情報で判断するのです。

   それがテレビCMなのか、ウェブ検索なのか、SNS なのか、店頭POP なのか、クチコミ
   なのか、調査資料なのか、見積もりなのか。

   情報を届けるツールは、さまざまある。

   多くの企業から見積もりを取れば取るほど、購入の際の選択肢が増えれば増えるほど、選択肢の
   個々の特徴や利点、利益は顧客の頭に残らない。

   残るのは、往々にして価格だけです。

   顧客の頭の中に価格の情報しか入っていなければ、顧客は価格でしか選ばない。

   つまり、顧客は頭の中に入ってくる「情報」により、どこと付き合うのか、何を買うのかを決め
   ているのです。

   したがって、「自社が提供する利益 > ライバルが提供している利益」となるよう顧客に伝え、
   納得させることが必要となる。

   自社の提供する価値が、ライバルを上回るために何が必要かを考えることです。

   その際のポイントは、「顧客が聞きたいことは何か」を常に考えること。

   商品説明や機能説明だけでは、顧客は動かない。

   利益を感じたときに動く。

   行動する理由が見つかれば、顧客は行動する。

   顧客に理由が伝われば、選ばれるのです。

   それ故、顧客に選ばれる理由は、売り手が用意し、伝えていかなければならない。

 3. 見せる商品・売りたい商品・売れる商品で選ぶ理由をつくる

  以前、ある小売チェーンの社長が、「“売れ筋”ばかりを集めても売れない」と言っていました。

  一見、売れないモノは無駄のように思えるが、売れ筋の横に売れない商品(見せる商品)を置くと、
  よく売れるのだそうです。

  顧客の中で比較が行われ、売れ筋商品を購入する理由が明確になるためです。

  売りたい商品を売るときも、この「見せる商品」が必要となる。

  売りたい商品のフェイス(買い物客から見える商品陳列)を取るだけでは売れない。

  その横に見せる商品を置き、売りたい商品を顧客が選ぶように仕向けるのです。

  引き立て役の役割は大きい。

 4. あなたの会社のウリ(選ばれる理由)は何か

  自社の「ウリ」は何か? ウリとは、自社の強みである。

  自社の強みとは、自社ができることです。

  自社ができることで顧客から選ばれる理由を、自社が顧客に伝えなければならない。

  自社の強みが伝わらなければ、顧客には価格しか見えない。

  自社のウリ(強み)を伝え、顧客の利益を最大化することで、自社が選ばれるのです。

  顧客は安く買いたいのではない。

  自身の利益を最大化したいのです。

  売る側も売上げを上げたいのではない。利益を上げたいのです。

  売上げは、利益を得るための手段。

  利益を出し、企業の永続性を高めていくためには、顧客から選ばれ続けなければならない。

  顧客にとって「自社の利益を最大化してくれる重要なパートナー」としての位置付けを構築して
  いただきたい。

□ライバルが言えないことを発信せよ

 1. 戦略を理解しているか?

  最近、「情報発信を行っているのに売れない」との声を耳にする。

  情報発信の方法を間違えているのか、メッセージの内容に問題があるのかなど、現場では脳に汗を
  かくような苦労をしながら、売るための試行錯誤を行っている。

  ここで、よく考えてほしい。

  メッセージとは、自社を選んでくれる=自社の良さを理解してくれる=自社を必要としている企業
  (個人)に、自社を選んでもらうための理由を発信するものです。

  つまり、発信しているのは自社の強みであり、それがライバルでなく自社を選ぶ理由であるため、
  「売れる」ことにつながるはずです。

  なのに売れないのであれば、発信しているメッセージが間違っていることになる。

  その原因は、メッセージが自社の戦略と合致していないことにある。

  戦略とメッセージに一貫性がない――つまり、戦略をうまく現場に落とし込めていないのです。

  営業社員、マーケティング部に問いたい。

  戦略を理解していますか? 惰性で行動していないか?

  惰性での行動は「作業」であり、戦略の成果は出てこない。

  考えない行動は無価値です。

 2. 今のやり方で顧客から選ばれるのか?

  「全ては顧客から始まる」。

  顧客を見据え、戦略を構築し、自社が勝てる場と勝てる条件(自社が顧客から選ばれる理由)を
  整備し、現場に落とし込みを行う。

  これが正しい方法です。

  しかし、戦略から現場へ落とし込む段階で、一貫性が崩れることは多い。

  自身の行動に再度、目を向けてほしい。

   ①今、行っていることで、顧客から選ばれるのか?

   ②今のやり方、考え方、行動で、利益は出るのか(儲かるのか)?

   ③今のやり方、考え方、行動で、顧客の要望以上のことができるのか(勝てるのか)?

   ④今のやり方、考え方、行動に、信念を持っているのか?

  ①~④のうち一つでも崩れると、戦略は機能しなくなる。

  担当者自身が「こんなことをやっていても、顧客から選ばれないのに…」と思って行動する限り、
  顧客から選ばれないのは当然です。

  顧客ごとに、自社の強み=自社のできること=顧客が望むことを伝えていく必要がある。

  現場こそが、それをメッセージとして伝えていかねばならないのです。

 3. 突き刺さるメッセージで差別化を図れ

  「この商品はとても使いやすくなっております」「ご使用になっていただければ、ご理解いただけ
  ると思います」などと、通り一遍で独自性のないメッセージは、顧客の頭には刺さらない。

  誰にでも言えることは、自社の強みではない。誰にでも言えることは、顧客が自社を選ぶ理由に
  ならないのです。

  あなたは、「ライバルが言えないこと」を顧客に伝えなければならない。

  もちろん、自社ができることです。

  “空箱”を売ってはいけない。

  それは詐欺であり、犯罪です。

  あるシステムを販売しているA社の社員が、顧客に突き刺さるメッセージを伝えていました。

  そのメッセージとは、「自社のシステムを活用すれば、売上げは1割落ちますが、経費は半分、
  利益は約2倍になります」です。

  もちろん空箱ではなく、自社ができることであり、顧客から高く評価されているシステムである。

  顧客は、真剣なまなざしで耳を傾けていた。

  独自性のあるメッセージで独自のノウハウを伝え、顧客の利益になれば勝てるのです。

 4 . 信念を持って行動せよ

  顧客から自社を選んでもらうための行動を、信念を持って行っているだろうか。

  何も考えず、「やれ」と言われたからやっているだけの、全く気持ちが入っていない提案シーンを
  よく目にします。

  そうした提案になってしまうのは、戦略の納得性が不足していることと、行動に対する迷い、
  勝てるかどうかの不安に起因する。

  しかし、信念のない行動では、顧客は何を言っても振り向かない。

  ここで、経営者に考えていただきたい。

  「信念を持てないのは、理念が事業化できていないからではないか」と。

  これは、理念先行型の経営者に多いことです。

  顧客や社会のお役に立ちたいという思いは理解できます。

  しかし、行動や商品・サービスが、売上げと利益につながっているのかを、再度検証していただ
  きたい。

  社長の思いが事業化できていないと、社員は不安になる。

  社長の言う通りにやっても売上げや利益に結び付かないから、「やる意味があるのか」と不安に
  なるのです。

  社長は思いを事業にしていかなければならない。

  さらに、付き合うべき顧客や売るべき商品、価格は、社長が決めなければ、社員が勝手に決める
  ことになります。

  付き合うべき顧客を定めなれば、担当者は行きやすい顧客だけを訪問する。

  売るべき商品も分からない。

  また、値決めは経営である。

  その価格で利益を出し、自社の経営や資金繰りにどのように影響するかも考えなければならない。

  値決めを営業に任せているようでは、勝てる場をつくり出せていない可能性が高い。

  「戦略的である」ということは、「計画的である」ということ。

  営業の活動は有限、時間も有限、お金も有限。

  これらを何に集中させ、いかに効率的に回収するのかを、社長も現場も考えなければならない
  のです。


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差別化

サービス力で勝つには Ⅱ

□サービスを展開する際のポイント

 1.「定型サービス」と「非定型サービス」

  「定型サービス」と「非定型サービス」の違いは、チェーン展開しているファストフード店
  (ハンバーガーショップ)を例に考えてみると分かりやすいでしょう。

  飲食店における接客サービスは、本来、個々の従業員の経験や個性などによってその質は異なる
  ものですが、チェーン展開しているファストフード店では、「来店から注文を受け、商品を提供
  するまでの接客プロセス」をはじめとした基本的な接客方法については、その手順などを定型化し、
  マニュアルを作成しています。

  こうしたサービスは定型サービスに該当します。

  ただし、ファストフード店において全ての接客サービスを定型化できるわけではありません。

  話の真偽は分かりませんが、ファストフード店で、1人の顧客が「ハンバーガー10個とコーラを5つ、
  それと……」といったように、明らかに友人などの分も含めた買い出しと思われる注文をしたときに、
  従業員は「店内でお召し上がりですか、それともお持ち帰りですか」と尋ねたという笑い話があり
  ます(注)。

  これは、「マニュアルという定型化されたサービスには提供できる内容に限界がある」ことを示し
  ています。

  こうした例外的なケースについても定型化することが可能な場合もありますが、経験豊富な従業員
  が、自身の知識や経験などを基に、個々のケースに最適な方法を自身で判断して接客に当たらなけ
  ればならないことも少なくありません。

  こうしたサービスは、非定型サービスに該当します。

  ここでは、サービスを定型サービスと非定型サービスの2種類に大別しましたが、実際に企業が提供
  しているサービスを見ると、どちらか一方のみというケースはまれで、ファストフード店同様に
  2種類のサービスを同時に提供しているのが一般的です。

  (注)ファストフード店の接客では「店内飲食かテークアウトか」という問いかけを、注文前に行うように
   “定型化”することで、前記のような的外れな問いかけをしないようにしているところが多いようです。


 2.2つのサービスの特徴を理解する

  サービスを2種類に分類する理由は、定型サービスと非定型サービスとでは強化する際の方向性が
  全く異なるためです。

  ここでは、それぞれのサービスの特徴について考えてみます。

  定型サービスと非定型サービスの主な特徴は次の通りです。

  自社のサービスの強化を検討する際には、こうした点に留意が必要です。 

   ①サービスの質の維持・向上において重視すべきポイント
    定型サービスの質は、マニュアルなどの形で定型化されているサービスの内容によって
    決まります。
    そのため、定型サービスの質を高めるためには、サービス内容を改善し、質の向上を図る
    ということがポイントとなります。

    一方、非定型サービスの質は、顧客とのコミュニケーションの中で顧客ごとに異なる
    ニーズを把握し、それに応じたサービスを個々の従業員が判断して提供することが求め
    られます。
    従って、質の高いサービスを提供するためには、サービスを提供する従業員の知識や経験
    といった能力の向上を図ることがポイントとなります。

   ②教育・指導の方向性
    サービスの大部分は、従業員によって提供されるため、サービスの質を維持・向上させる
    ためには、従業員に対する教育・指導が重要です。
    定型サービスの場合、賃の高いサービスを実現するためには、従業員に定型化された
    サービスの内容をしっかりと覚えさせ、それを実践させることが重要です。
    従って、教育・指導の方向性は「教育」というよりも、むしろ「指導」が中心です。

    一方、非定型サービスの場合は、顧客のニーズをしっかりと把握して、的確に応える
    ことが重要となります。
    こうした能力を高めるために必要なのは「指導」ではなく、じっくりと時間をかけて
    育てるような「教育」が中心です。

   ③人材育成
    定型サービスは、定型化されたサービス内容を“覚えて”もらい、それを忠実に実践して
    もらうことが中心となるため、人材育成は比較的容易といえます。

    一方、さまざまな状況を的確に判断して最適なサービスを顧客に提供するという非定型
    サービスの場合は、“覚えて”もらうというよりも、「考える力」や「的確な状況判断力」
    などを“身に付けて”もらうことが中心になるため、人材育成は難しくなります。

   ④模倣性
    他社との差異化を実現するサービスとするためには、優れたサービスを提供するだけでは
    なく、「他社が簡単に模倣できないようなサービス」であることも大切です(他社に模倣
    されてしまえば「差異化」を実現することはできません)。

    こうした模倣性という観点から見ると、マニュアルなどの形で明文化することのできる定型
    サービスは、そのマニュアルを入手すれば、比較的容易に模倣することが可能です。
    また、定型サービスは常に決まった方法で提供されるため、顧客としてそのサービスを体験
    したり、じっくりと見学するだけでも、定型サービスの概要を把握することはそれほど困難
    ではありません。
    そのため、一般的に定型サービスは他社から模倣される可能性が高くなります。

    一方、非定型サービスには、明文化することが困難な個々の従業員の能力やノウハウといった
    要因が多く含まれているため、簡単に模倣することはできません。

   ⑤親和性の高い戦略
    定型サービスの場合、高い技術や能力がない場合でも、マニュアルの徹底により一定の質の
    サービスを提供することができるため、相対的に人件費を低く抑えられます。
    また、サービスの提供方法の定型化を図ることができれば、製造業のように、そのプロセスの
    効率化を促進するといった取り組みも容易になります。
    定型サービスの場合、こうした特性を生かして、コスト削減を通じた価格競争力の強化に取り
    組みやすいため、コストリーダーシップ戦略と親和性が高くなります。

    一方、非定型サービスの場合、質の高いサービスを提供できるか否かは、個々の従業員に
    よって決まります。
    従って、相対的に教育のための費用などを含めた人件費は高くなる傾向があり、コスト構造的
    に低価格化になじみにくいという特徴があります。
    しかし、従業員個人の能力に依存しているため、模倣性が低く、独自性の高いサービスを提供
    することができる可能性が高いことから、差異化戦略と親和性が高くなります。

□競争力強化のポイント

 1.定型サービス強化のポイント

  定型サービスを強化する際の基本的な方向性は「定型化されたサービスの質を維持・向上させな
  がら、効率的に提供する」ことにあります。

  その際のポイントは、定型化したサービスについて改善を続けることです。

  定型サービスの貿は、基本的には定型化されているサービスの質以上のものを実現することはでき
  ません。

  従って、時代とともに変化する顧客のニーズに的確に応え続けるためには、定型化されたサービス
  を定期的に見直すなど、常に質の維持・向上に努めていく必要があります。

  また、効率化を目指すという点では、定型化したサービスの機械化も検討する必要があるでしょう。

  例えば、低価格を強みに全国展開を図っているビジネスホテルチェーンのスーパーホテルなどでは、
  チェックイン・チェックアウトサービスをシステムの導入により機械化しています。

  一般的に、サービスの機械化は、システムなどの設備導入に関する初期投資に多額の費用が発生
  するというデメリットがありますが、システムなどの設備は、人件費などに比べると相対的に
  ランニングコストが安くなるケースが多いため、中長期的に見ると企業にとっても大きなメリット
  があります。

  従って、機械化も定型サービスの強化策の一つとして検討するとよいでしょう。

 2.非定型サービス強化のポイント

  非定型サービスを強化する際の基本的な方向性は、「顧客の個々のニーズに応える柔軟なサービス
  提供を行うことができるよう、従業員の能力を向上させる」ことにあります。

  その際のポイントは、従業員に「なぜこうしたサービスが必要か」を理解させ、それぞれの従業員
  が自分で必要なサービスについて考えるように意識改革を行うことです。

  その上で、優れた教育を行い、個々の従業員の能力向上を図ることが重要になります。

  さらに、優れたサービスを提供するためには、組織内のノウハウの共有化が特に重要です。

  能力の高い人材を育てるためには、「教育」だけでは限界があります。

  個々の従業員がサービスの提供を通じて得たさまざまな経験を組織内で共有化することも、従業員
  の能力向上には不可欠です。

  また、人材の能力がサービスの質に決定的な影響を与える以上、社内にサービスを提供できるだけの
  能力を持つ従業員がいない、また従業員を育てるだけの余裕がないといった場合には、新たな人材を
  雇用したり、外部人材を活用したりする必要があるでしょう。

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差別化

サービス力で勝つには Ⅰ

サービスの重要性

 1.貴社の強みは何ですか

  製造業など、サービスの提供以外をコア事業としている中小企業(以下「サービス業以外の企業」)
  の社長は、サービスは「自社にとって関係ない」あるいは「自社の事業に少し関連するが、それ
  ほど重要ではない」と考えているかもしれません。

  しかし、サービス業以外の企業にとっても、サービスが重要な役割を担っているケースは少なく
  ありません。

  例えば、「他社とは異なる貴社の強みは何ですか?」と尋ねられたとき、どのように答えますか。

  製造業であれば「自社の独自技術を活用した製品」など、製品自体の優位性やそれを可能にする
  独自技術について言及する企業が多いかもしれません。

  一方で「製品を購入してくれた顧客に対するきめ細かなアフターサービス」や「顧客の問題を
  把握し、それを解決するために最適な製品を提案・製造する能力」というように、サービスに
  関連の深い分野を自社の強みとして挙げる企業も少なくありません。

  こうした状況を考えると、サービス業以外の企業においても、サービスについて、もう一歩踏み
  込んで検討してみることが重要といえるでしょう。

 2.サービスが重要になる理由

  競合製品が多数存在する成熟した市場で厳しい競争に勝ち抜いていくためには、他社製品との
  差異化を図り、多くの製品の中から自社製品を選択(購入)してもらう必要があります。

  製造業であれば、製品の機能などで差異化を図るのが理想的でしょう。

  しかし、実際には、他社製品とは明確に異なるような画期的な新製品を開発し、市場に投入し続け
  ることは困難です。

  こうした中で、製品の差異化策として重要となっているのが、製品に関するサービスです。

  仮に製品自体に顕著な優位性がなくとも、他社よりも優れたサービスを提供することができれば、
  他社製品との差異化を図れます。

  例えば、機能や価格などが同等の製品が2つあり、一方には「故障時には無料で修理します」と
  いった充実したサービスがあって、他方にはない場合、誰もが無料で修理を受けられる製品を選択
  するでしょう。

  これは単純化した例ですが、サービス業以外の企業にとっては、こうしたサービスが差異化を図る
  ための重要な手段の一つとなります。

  また、サービス業以外の企業において製品自体とサービスを分離して考えることが事実上困難で
  あるケースも少なくありません。

  例えば、パソコンメーカーの場合、パソコン本体の製造・販売のみを自社の事業とすることはあり
  ません。

  そのほかにも、顧客の質問や苦情などを受け付けるコールセンターや、万一枚降した場合の対応を
  するサポートセンターの設置など、さまざまなサービスを提供しています。

□サービス強化策の検討前に確認する「サービスの特徴」

 1.無形性

  サービスの最大の特徴は、無形である点です。

  そのため、顧客はサービスについて、見たり、触れたりすることはできません。

  パンフレットなどからサービスの内容に関する情報は得られるものの、実際にサービスを利用する
  まで特徴を把握することが難しい場合もあります。

 2.同時性

  サービスは、企業側のサービス提供者である従業員などが、目の前にいる顧客に対して、その場で
  提供するのが基本です。

  サービスの場合は、「生産」と「消費」が同時に発生することになります。

 3.変動制

  サービスは、サービスを提供する個々の従業員の持つ能力などによって、その質が大きく異なります。

  また、同じ従業員であっても「気分が乗る・乗らない」といった心理的な要因などによって、提供
  するサービスの質が異なる場合があります。

  従って、同じサービスであっても、その質や内容は常に変動することとなります。

 4.サービスを検討する際の基本方針とは

  顧客が製品・サービスを消費して満足を感じる条件は、一般的に「消費前の期待感 < 消費による
  体験」という状況になった場合といわれています。

  例えば、入れてから3時間経過したコーヒーを「1本120円の『缶コーヒー』として飲んだ場合」と、
  レンガ造りのおしゃれな喫茶店で飲んだ場合」で考えてみてください。

  同じ品質のコーヒーであっても前者の味に満足できても、後者の味には不満を感じる場合が多い
  のではないでしょうか。

  この違いは「消費前の期待感」の違いによるものです。

  多くの消費者はこうした缶コーヒーの価格や味などの特徴を認識しているため、缶コーヒーに
  対する「消費前の期待感」はそれほど高くならず、入れてから3時間経過したコーヒーでも満足
  できるのかもしれません。

  一方、喫茶店でコーヒーを飲む場合は、入れたてならではの風味の良いコーヒーを期待する人が
  多くなります。

  すなわち、缶コーヒーと比べると、喫茶店の場合は「消費前の期待感」が高くなっているのです。

  そうした心理状態のときに、入れてから3時間も経過して、風味があまり良くないコーヒーが出て
  くると、「消費前の期待感 > 消費による体験」となり、不満を感じることになります。

  このように、同じコーヒーを飲んで「消費による体験」が同じでも、「消費前の期待感」の違いに
  よって、製品・サービスに対する顧客の満足度は変わるのです。

  この視点から考えると、サービスについて検討する際に特に注意が必要なのは、顧客の「消費前の
  期待感」がどのように形成されており、どのような期待感を抱いているかを知ることにあります。

 5.製品とアフターサービスの関係

  製造業における製品とアフターサービスの関係を例に考えてみましょう。

  製品と異なり、サービスは事前にその質などを評価することが困難な点は「無形性」のところで
  紹介しました。

  従って、実際にアフターサービスを経験していない顧客は、アフターサービスだけに注目して
  「消費前の期待感」を形成することはできません。

  そのため、そうした顧客はアフターサービスに対する「消費前の期待感」を、製品のイメージ
  などを基に形成することになります。

  例えば、グレードの高い素材を使用し、高い機能性を備えた高級な製品を購入した顧客は、
  アフターサービスも充実していると考えます。

  こうした点を企業側がしっかりと認識せず、「アフターサービスは、あくまで付加的なサービス
  だから、取りあえず受付窓口だけでも設けておこう」といった中途半端な取り組みを行ってしま
  うと、問題が発生することになるでしょう。

  故障発生時に顧客が修理を依頼してみると、「随分時間がかかった」「窓口担当者が製品について
  よく知らなかった」などの不手際があれば、「消費前の期待感」が高いだけに顧客は大きな不満を
  感じてしまうでしょう。

  すなわち、製品自体は素晴らしくても、アフターサービスへの取り組みが不十分だという理由で、
  顧客に不満感を与えてしまうことになります。

  従って、顧客満足の向上に寄与するサービスを提供するための第一歩は、製品・価格・店舗など
  自社のコア事業に対して顧客が抱いているイメージを把握し、そのイメージよりも良いサービスを
  提供する(少なくとも、イメージを阻害するような質の低いサービスを提供しない)ことにあります。

  これが、サービスの強化策を検討する際の基本方針となります。

□コトラーから学ぶサービス強化の7つの要素

 1.注文の容易さ

  注文の容易さとは、顧客が注文しやすい方法を提供することです。

  家電小売店では、店頭で販売するのに加えて、インターネット通販用のウェブサイトを開設し、
  顧客は自宅などに居ながらにして製品を購入できるようにしています。

 2.配達

  配達とは、顧客が希望する場所・時間などに正確に製品やサービスを届けることです。

  家電小売店では、大型家電製品などを中心に、顧客が購入した製品を、顧客が希望する日時に配達
  するサービスを行っています。

 3.取り付け

  取り付けとは、顧客が製品やサービスを利用したいと考えている場所で、その製品を正常に機能
  させることです。

  家電小売店では、希望する顧客に対して、顧客の自宅などに赴き、パソコンやエアコンなどの取り
  付けを行っています。

 4.顧客トレーニング

  顧客トレーニングとは、顧客が購入した製品などを、正しく、かつ効率的・効果的に使用できる
  ように顧客を訓練したり、必要となる情報などを提供することです。

  最近は少なくなりましたが、パソコンの普及期には、家電小売店がパソコンを購入した顧客の
  希望者を対象に、初心者向けのパソコン教室を開催して電子メールの使い方などを教えている
  ケースがありました。

 5.顧客コンサルティング

  顧客コンサルティングとは、顧客に対して提供するデータ、情報を手軽に収集できるシステム、
  各種のアドバイスなどを提供することです。

  家電小売店では、さまざまな製品の中で、どれが自身のニーズに適した製品であるかを判断しか
  ねている顧客に対して、顧客のニーズを確認しつつ、さまざまな製品情報を提供したり、アド
  バイスを行うなどして顧客の意思決定を助けています。

 6. メンテナンスと修理

  メンテナンスと修理とは、顧客が購入した製品を良好な作動状態に保つためのサービスのことです。

  家電製品の高機能化に伴い、家電小売店が修理の受付窓口を設けて顧客との対応を担当し、修理
  などの作業自体をメーカーが行うケースが多いようです。

 7.多様なサービス

  企業が提供しているサービスには、ここまで紹介した6種類以外にもさまざまなものがあります。

  家電小売店の場合であれば、「購入後1年程度のメーカー保証期間とは別に、『5年保証』などの
  独自の長期保証制度を設ける」などがあります。

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差別化

消費者の感性に働きかける Ⅱ

■消費者の感性に働きかける上でのポイント

 1.事業や商品のコンセプトを決定する

  企業が消費者の感性に働きかけるために行うべきことは、自社の事業あるいは商品のコンセプト
  (以下「コンセプト」)を決定することです。

  通常、企業がある事業を行い、新商品を開発する際には、コンセプトを検討・決定します。

  コンセプトといってもその内容はさまざまですが、例えば「誰に、何を、どのように提供する」
  という点についてはどの企業でも検討し、それに基づいて具体的な活動を行っているでしょう。

  もし、商品を提供するに当たってコンセプトがはっきりとしていないのならば、まずは、しっかり
  とコンセプトを考えることから始めましょう。

  コンセプトを決定した後は、消費者がコンセプトを認識できるように伝える、すなわち「可視化」
  することが必要になります。

  具体的には、

   ・消費者の五感に訴えかけて消費者に伝える

   ・言葉にして消費者に伝える

  ことです。

 2.消費者の五感に訴えかけて消費者に伝える

  事業を開始し、新商品を開発・販売する際には、事業を進めるために必要となる店舗を造ったり、
  商品を製造したりするわけですから、何らかの形で消費者の五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚
  ・味覚)に訴えかけていることでしょう。

  例えば、商品のデザイン(色や形状など)や、その商品を販売している店舗のレイアウト、店内
  に流れるBGMなどを通じて、消費者の五感に訴えかけることになります。

  消費者の感性に働きかけるために大切な点は、

   コンセプトに沿った一貫牲のあるメッセージを五感を通じて訴えかけることが
   できているか                                                                        

  です。

  一貫性を欠いているようであれば、企業が発信したいコンセプトは消費者に正確には伝わり
  ません。

  例えば、コーヒーカップなどの高級陶磁器を扱っており、「商品だけではなく、店舗で商品を
  選ぶプロセスから日常ではなかなか味わうことのできない高級感を楽しんでもらいたい」と
  考えている店舗があるとします。

  その店舗の造りが落ち着きのある非常に高級感漂う雰囲気であったとしても、BGMにロック調
  の激しい音楽が流れていたら、店舗のコンセプトは消費者に伝わりません。

  ましてや、消費者の感性に働きかけ、感動や共感を得ることはできないでしょう。

  従って、消費者が五感を通じて感じるものについて、一貫性を持たせるという点に注意をする
  ことが必要です。

 3.言葉にして消費者に伝える

  企業がコンセプトを実現するために行っている取り組みのすべてについて、消費者が五感で感じる
  ことができるわけではありません。

  例えば、製造過程での取り組みは、どれほど時間と手間をかけてこだわりを持っていたとしても、
  これを消費者が五感だけで感じ取ることはできません。

  しかし、消費者が五感で感じることのできないものでも、消費者の感性に働きかけ、感動や共感
  を得ることのできるものもあります。

  経済産業省「感性価草創造イニシアティブ―第四の価値軸の提案 感性☆(きらり)21報告書」
  では、具体的な例として、

   ・製造過程での「秘伝のたれ」や「ものづくりの仕租み(システム)」

   ・環境配慮などの「ものづくりに込めた思い」や「思いやり」

  などを挙げています。

  こうしたものをうまく説明するなどして、消費者の理解を得ることができれば、消費者の感性に
  働きかけることができます。

  前述したコーヒーカップの例では「職人の○○氏が、手作りで製作しています」という顔写真
  入りのPOPを例として紹介しました。

  本来、これは商品を製造する際のプロセスであって消費者には分からないことです。

  しかし、その商品を誰が、どのようなプロセスで作っているかといったことを消費者に伝える
  ことで、消費者の共感・感動を呼び起こすことができます。

  また、実際は五感で感じることができるのですが、多くの消費者はそれに気がつかないという
  ものもあります。

  例えば、人間工学的な観点から座り心地のよいいすを作ったとすれば、その座り心地を
  「クッションが軟らかそうだ」「背筋が伸びて座っていて快適だ」など、五感のさまざまな
  部分で感じることができるものです。

  しかし、ほとんどの消費者は「座り心地のよいいすだな」といった軽度の感想しか持たない
  でしょう。

  このように、コンセプトに合致した取り組みであっても、消費者が気がつきにくいようなものは、
  文章や図などの説明を加えて消費者に伝えるようにしたほうがよいでしょう。

 4.消費者とのコミュニケーション

  消費者の感性は一定なわけではなく、常に変化していきます。

  例えば、コーヒーカップであれば、最初は単にコーヒーカップの色に価値を見いだして購入した
  消費者は、それに慣れてしまうと、同じ商品に心が動かされることは少なくなっていきます。

  そして、色は当然ですが、「自分の手になじむような材質や持ち手のサイズでなければ心に
  響かない」というように変化していきます。

  企業の視点からみると、このように変化する消費者の感性に応えるような商品を作り続ける
  ことが重要となります。

  その際に必要となるのが、企業と消費者の間のコミュニケーションです。

  消費者の感性に働きかけ、感動や共感を得るためには、「消費者がどのようなものを求めて
  いるのか」といった消費者のニーズを知ることが不可欠です。

  そして、その消費者の厳しい感性に応えようとする企業の取り組みの中から、消費者に新たな
  感動や共感を与える新商品が生まれてきます。

  いわば、コミュニケーションを通じて、企業・消費者共に成長を続けることができるのです。

  企業と消費者とのコミュニケーションというと、大手企業が行っているような消費者に対する
  アンケート調査など、大規模な取り組みを想像してしまうかもしれません。

  しかし、中小企業でもすぐにできるような取り組みもあります。

  例えば、取引先の担当者や、店舗を訪れてくれた消費者に感想を聞くといったことでも、十分に
  コミュニケーションを図ることができます。

  また、街の酒屋が「友の会」などをつくって「試飲会」などのイベントを行っているケースが
  ありますが、こうした取り組みも消費者とのコミュニケーションという観点では効果的といえる
  でしょう。

  消費者とのコミュニケーションにおいて大切なことは、消費者とコミュニケーションを取る
  ことのできる仕組みづくりを行っておくことです。

 5.感性を理解する人材の活用と育成

  消費者の感性に働きかけるノウハウが自社に乏しい場合、外部のデザイナーやコンサルタント
  など、社外の人材を活用するのも一つの方法です。

  ただし、外部のデザイナーやコンサルタントを活用する場合は、商品の企画・開発などの早い
  段階から一定の時間をかけて、関係者間で商品のコンセプトを意識した価値観の共有化や擦り
  合わせなどを行っておく必要があります。

  価値観の共有化などの作業を経ずに外部のデザイナーがデザインした商品を販売するだけでは、
  消費者の感性に働きかけることは難しいでしょう。

  また、価値親の共有化などの作業を経ずに消費者の感性に働きかけることに成功したとしても、
  社内に感性を創造し、理解できる人材を育てることをしなければ、社内にノウハウが蓄積されず、
  継続的に消費者の感性に働きかけることは難しいでしょう。

  一貫した自社の商品のイメージを消費者に与え、継続的に消費者の感性に働きかけるためには、
  外部のデザイナーやコンサルタントなどの社外人材の活用とともに、社内の人材育成も欠かす
  ことはできません。

□感性を重視した取り租みの例

 1.バルミューダ「Green Fan2」

  バルミューダが製造・販売する扇風機「Green Fan(グリーンフアン)2」は、定価が3万4800円と
  一般的な扇風機に比べて価格が高いにもかかわらず、2011年の発売以来、人気を集めています。

  「Green Fan2」は消費電力が小さく、音が静かであるなどの特徴を持った商品です。

  東日本大震災以降は、節電のためにエアコンの使用を控えて扇風機を使用する機会が多くなった
  ことも、ヒットを後押ししたようです。

  また、シンプルなデザインがインテリアにこだわりのある消費者などからも支持を集めており、
  家電量販店だけでなくインテリアショップなどでも販売されています。

  バルミューダは、商品開発に当たって、マーケティングリサーチなどには取り組んでいないと
  いいます。

  それにもかかわらず、ヒットにつながったのは、徹底して消費者の視点に立ち、これまでにない
  商品を生み出すために妥協のない商品開発に取り組んでいる点が挙げられます。

  バルミューダの取り組みは、既成概念にとらわれない、まっさらな視点で製品開発に取り組む
  勇気を持つことの重要性を示しているといえるでしょう。

 2.Apple「iPod」

  Appleが製造・販売する携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」は、2001年の発売以来、
  世界中で購入されており、携帯音楽プレーヤーの代名詞となっています。

  また、AppleではiPodと同様に、「iPhone(アイフォーン)」「iPad(アイパッド)」など
  操作性やデザイン性の高さをセールスポイントとした商品を発売し、携帯電話やパソコンの
  新たな利用方法を提案しており、これらの商品も高い人気を集めています。

  iPodが消費者からの支持を集めている理由は、「音楽を持ち運ぶ楽しさ」というコンセプトで
  消費者にアプローチしたことが挙げられます。

  iPodが携帯音楽プレーヤー市場に参入したのは、それほど早い時期ではありませんでした。

  しかし、指先一つで簡単に換作できることや高いデザイン性といった点が消費者に受け入れられ、
  多くの支持を集めました。

  デジタル家電は日ごと新しい技術が開発され、多くのメーカーが競い合って新製品を市場に投入
  してきました。

  しかし、消費者は最先端の技術が投入された高携能の商品に惹かれる人ばかりではありません。

  iPodは機能ではなく、操作性やデザイン性の高さをアピールすることで消費者の感性を刺激し、
  成功したケースといえるでしょう。  

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差別化

消費者の感性に働きかける Ⅰ

■差異化を図る                                                        

 「類似した商品が溢れている競争の激しい市場の中で勝ち残っていくためには、他社の商品や
 サービスとの『差異化』を図ることが重要である」といわれます。

 社長であれば、こうしたセリフはさまざまな場面で見聞きしていることでしょう。

 あるいは、社長自身が製品開発部門など、自社の従業員などに繰り返し述べているセリフかも
 しれません。

 しかし、こうしたセリフが自身の身近にある一方で、「『差異化』と口でいうのは簡単だが、
 実際にそうした商品を生み出すことは非常に難しい」と感じている人も少なくないはずです。

 実際、中小企業が、大企業をはじめとした競合他社に先んじて特徴的な製品やサービスを生み
 出し続けることは容易ではありません。

 また、苦労してやっと他社の商品やサービスと差異化を図れたとしても、すぐに競合する製品や
 サービスが現れてしまうということも珍しいことではありません。

 こうした社長の悩みに対して、一つの方向性を示すのが以降で紹介する「感性」という視点です。

 近年では、国(経済産業省)においても、感性という視点を重視した取り組みである「感性価値
 創造 イニシアティブ」を2007年5月に策定し、2011年度までに感性価値創造の実現に向けた
 さまざまな施策を実施するなど、消費者の感性に訴えるマーケテイング活動が注目されていました。

 家電製品を例に取って考えてみましょう。

 家電製品は、かつては日本のお家芸といわれたものの、現在ではコモディティ化が進み、販売が
 苦戦する製品も少なくありません。

 そうした中、パルミューダの扇風機、Dysonのサイクロン掃除機、iRobotのロボット掃除機
 (ルンバ)などは消費者から高い支持を得ています。

 また、人気の浮き沈みが激しく、厳しい競争が集り広げられているデジタル家電製品においても、
 Appleの「iPod」「iPhone」などのシリーズは発売後現在に至るまで人気を誇っています。

 これら製品の価格は決して競合する製品と比べて安くないものの、熱心なフアンを獲得しています。

 こうした要因には、さまざまな理由が挙げられますが、一つには消費者の感性に訴える特徴がある
 からだといえるでしょう。

 企業は製品やサービスの開発などのさまざまな取り組みを通じて、消費者の感性に働きかけ、
 消費者の感動や共感を得ることによって、他社製品やサービスとの差異化を図ることができる
 可能性があります。

 ここでは、企業活動、特にマーケティング活動について、感性という視点から取り組みを行う際の
 ポイントなどを紹介します。

 なお、以後は「製品やサービス」を便宜上、「商品」と表記することとします。

□消費者の感性に働きかけることの重要性を確認する

 ここでは、「よい製品・よいサービス」(以下「よい商品」)が売れない理由について考える
 ため、前提となる「よい商品」の条件を確認してみます。

 「よい商品」といわれると、いろいろな条件が思い浮かぶはずです。

 「手ごろな価格(価格)」「高い性能(機能)」「高い品質(品質)」などは、多くの人が
 「よい商品」の条件として挙げるものでしょう。

 しかし、「よい商品」の条件はこれだけではありません。

 少し視点を変えて消費者の立場から「よい商品」について考えてみると分かりやすいかもしれません。

 少し漠然とした例ですが、次のようなケースについて、消費者の立場になって考えてみてください。

 1.沢山の商品からたった1つの商品を選ぶ基準

  今、あなたはコーヒーカップを購入したいと考えています。

  そのコーヒーカップは、週末のひとときに読書を楽しみながら、コーヒーを飲むときに使いたいと
  思っています。

  そこで、コーヒーカップを購入するためにお店に足を運んだあなたの目の前には、さまざまな
  種類のコーヒーカップが並んでいます。

  しかし、今回購入する商品は1セットだけで十分です。

  あなたはたくさんある商品の中から、どのような基準で購入する商品を選ぶでしょうか。

  先に挙げた「価格」「機能」「品質」は多くの人にとって、購入する商品を選ぶ際の重要な基準
  となるでしょう。

  しかし、それだけではないはずです。

  例えば、「このシックなデザインは、落ち着いて過ごしたい週末の時間にはピッタリだ」といった
  理由で購入を決定する場合もあるでしょう。

  また、「職人の○○氏が、手作りで製作しています」という文章とともに、少し頑固そうな顔で
  ぎこちなく微笑む職人の写真が入ったPOPがあれば、それに心を動かされて購入を決定する人も
  いるでしょう。

  一般的に、消費者が商品の価値を認め、購入を決定する要因には「合理的な基準」と「非合理
  的な基準」があるといわれています。

  合理的な基準とは先に紹介した「価格」「機能」「品質」など、数値化された情報などに基づ
  いて理論的に判断できる基準です。

  一方、非合理的な基準とは理論的なものではなく、「好き・嫌い」といったような、より直感的
  な基準です。

  そして、非合理的な基準の背景にあるのが感性です。

  ソニーで社長・最高経営責任者を務めた大賀典堆氏はラジオやテープレコーダーなどにいち早く
  デザイン性を持たせ、企業ロゴの策定に関わるなどして、ソニーのブランドイメージを築いた
  ことで知られています。

  ソニーのウェブサイトによると、大賀氏は社長就任時から、「買ってよかった、使ってよかった、
  捨てる時も満足、次もソニーの商品を買おう、とお客さまに思ってもらえるモノづくりをしよう」
  「心の琴線に触れるモノづくりをしよう」と社員に呼びかけたといいます。

  大賀氏は消費者の感性に訴える商品を提供することが、消費者に選ばれ、企業の価値を高める
  ことに直結することを知っていたからこそ、このような言葉を残したのでしょう。

 2.よい商品を考える際の視点

  以上の視点を踏まえて考えると、「よい商品」に対する考え方が少し変わってくるのではないで
  しょうか。

  例えば、「感性価値創造イニシアティブ―第四の価値軸の提案 感性☆(きらり)21報告書」
  では、「よい商品(報告書では「いい商品・いいサービス」と表記しています)」の条件を
  次のように示しています。

   (1)素材など見えないところまでに及ぶ「こだわり」、ものに込めた「趣向」、「遊び」、    
    美意識」、新しい使い方やライフスタイルを提案する「コンセプト」、場合によっては 
    「企業の価値観そのもの」が、

   (2)技術、デザイン、信頼、機能、コスト等によって裏打ちされ、

   (3)ストーリーやメッセージを持ったものとして可視化され(もの語り)、

   (4)これが、生活者に、驚き、わくわく感、どきどき感、爽快感、充足感、信頼感、
    納得感、安らぎ、癒しなど「感動」や「共感」をもって受け止められる

  (出所:経済産業省
    「感性価値創造」イニシアティブ―第四の価値熟の提案 感性★(きらり)21報告書」)

  上記の「よい商品」の条件で重要なことは、従来、消費者が商品の購入を決定する際に重要な
  基準と考えられてきた「価格」「機能」「品質」などといった合理的な基準が、含まれていない
  点にあります。

  消費者の感動や共感を得ることこそが重要であり、「価格」「機能」「品質」などは重要な
  要素ではあるものの、それだけではよい商品としては不十分であるということです。

  こうした視点を踏まえながら、改めてよい商品が売れなかった理由を検討してみると、その商品は、
  他社の商品ほど効果的に消費者の感性に働きかけることができていない可能性があります。

  企業側は、「よい商品を作っているのだから売れるはずだ」と考えて、「よい商品の価値を伝える
  努力を怠っている」可能性があります。

  消費者の合理的な基準に働きかける「価格」「機能」「品質」などの要因については、他社
  商品と同等、あるいはそれ以上の価値があるものであったとしても、消費者の感性に対して
  働きかけ、感動や共感を提供する力が弱かったという可能性を検討してみると、売れなかった
  理由を探るきっかけとなるかもしれません。

 3.「感性」の重要性が増してきた理由

  ここまでの話を聞いて「当たり前のことではないか」と感じた人がいるかもしれません。

  確かに消費者の視点から考えると、これまでの話はそれほど新しいものではないのかもしれません。

  しかし、企業の立場からみると、広告や販売促進など一部分の取り組みにとどまるなど、企画・
  製造・開発など企業全体の取り組みとして、消費者の感性に配慮してきたとは言い難いのが実情
  でしょう。

  近年ではマーケティングなどの企業活動を中心に、感性という視点から考えることの重要性が
  高まっています。

  これにはさまざまな理由がありますが、最も大きな理由は市場の成熟化という点にあります。

  市場が成熟化して多くの競合他社の商品がひしめく中では、「価格」「機能」「品質」といった
  合理的な基準を巡る競争は厳しさを増しています。

  そうした中で、各社とも既に「価格」「機能」「品質」などの面で他社との差異化を図る余地が
  あまり残されていません。

  一方、消費者の感性に働きかけるということは、企業のアイデア次第でその取り組みは無限に
  広がっていきます。

  従って、差異化を図ることのできる余地という点では、かなり多くの可能性を秘めています。

  また、人は感動や共感を覚えた商品に対して愛着がわいてくるものです。

  そして、購入した商品を、実際に使い鏡けることによってさらに愛着が深まっていき、「長く
  使いたい」あるいは「次に購入する際も同じ商品にする」といったように思うものです。

  すなわち、感性に働きかけ、消費者に感動や共感を覚えてもらえるような商品を生み出すことが
  できれば、自社の固定客となってくれる可能性も高まります。

  こうした理由から、感性という視点の重要性が高まっています。

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差別化

顧客を差別化する
 

  ■お客様は「平等」か?

   ちょっと財布を開いてみてください。

   あなたの財布の中には何枚のカードが入っているでしょうか。

   カード社会といわれる昨今、クレジットカードの枚数も多いことでしょうが、いわゆ
   る「ポイントカード」と呼ばれるカードも増えているはずです。

   百貨店のポイントカード、家電量販店のポイントカード、スーパーのポイントカー
   ド、さらに航空会社のマイレージカードなどがその代表です。

   ポイントがたまると、キャッシュバックや無料航空サービスなど、さまざまな特典が
   受けられます。

   一方、各企業がポイントカードを発行するメリットはどこにあるのでしょうか。

   じつは、ポイントカードを使用して消費者はポイントをためていますが、発行企業
   は情報をためています。

   そして、この蓄積した情報を利用してお客様の差別化を図っているのです。

   来店してくれたお客様を平等に扱い、同じようなサービスを提供するのが、今まで
   の一般消費者向け対応の基本でした。

   実際、百貨店は「エブリワン」を顧客としすべてのお客さまに等しいサービスを提
   供すべきだとする考え方がありましたが、今日では顧客を絞り込み、選ばれたお
   客様に選ばれたサービスを提供するという考え方に変わってきています。

   マーケティングでいうところの「市場細分化」が進み、

    細分化された市場にいるお客様を自分のお客様と捉える考え方が
    広がってきているのです。

   これにともない、特定のお客様、それも自社にとって「優良」な客様に標的を絞り
   込んでいくことが必要になってきました。

   まさに「差別化するのは顧客だ」という時代にあります。

   「顧客差別などけしからん」という概念は、皆が成長でき、お客様を増やせば自動
   的に売上が伸びた時代の感覚なのです。

   現代では、お客様を差別化するツールが求められています。

   それを可能にしたツールがポイントカードに代表される顧客データベースであり、
   その目的はお客様の情報を収集することにあります。

   週に3回来店され1回に1万円以上の買い物をしていただけるお客さまと、月に1
   回来店され1回に千円程度の買い物をされるお客さまを「平等」に扱う必要がある
   でしょうか?

   月商が1億円の販売店と月商1千万円の販売店に同じように営業マンを訪問させ
   るなど「平等」に扱っていませんか?

   とにかくお客様を増やせば儲かる、訪問回数を増やせば売上が上がるという「高
   度成長時代」の方法をまだ盲信して続けていませんか?

    お客様の情報を活用できる時代のマーケテイングは、「選択と集中」です。      
    お客様は決して「平等」ではないのです。

   多くの企業が、ポイントカードなどの手段で集められた情報でお客様の差別化を
   行なっています。

   米国の例ですが、お客様を「サスペクト=疑似客」「プロスペクト=見込み客」
   「リード=有力客」「カスタマー=顧客」「リピーター=継続客」と5つの区分に分け
   る手法があります。

   もちろん、継続客を「優良顧客」として差別化していきます。

   つまり、固定客、リピーターを大切にしようという発想にもつながります。

   新しい顧客開拓が難しい環境下、新規客よりも既存顧客を重視することが求めら
   れているのです。

   新車を買うお客様でも、まったくの新規客より既存のお客様のほうが販売に結び
   つきやすいことはわかりやすい例です。

   また、コストの面からも既存顧客の重要性が指摘されています。

   たとえば、新親客を開拓するマーケティングコストは、既存の顧客維持コストの5
   倍程度かかるとされています。

   今では、

    お客様を「平等」に扱うのではなく、

    お客様の自社に対する「ロイヤルティー」に応じた対応を考えるべきです。

    このように戦略的に顧客を差別化することが不可欠となる。

  パレート(80:20)の法則

   1.アメリカン航空の例

     お客様を「差別化」して捉える考え方の例を見てみましょう。

     有名な例は航空会社の事例です。

     1970年代初頭の話です。

     米国のアメリカン航空は今後のマーケティング戦略策定のためにお客様の調
     査を行ない、予想外の結果を手に入れました。

     なんと自社の収益の約65%が3.2%のお客様からもたらされていたのです。

     すなわち、年間搭乗顧客数2500万人のうちの3.2%、80万人のお客様、年
     間平均搭乗回数13回の「最良顧客」が利益の源泉だったことを知りました。

     この結果に基づいて、アメリカン航空はお客様に接するスタイルを従来のもの
     から変更していきました。

     テレビや雑誌の広告を通じて「アメリカン航空は最高のサービスを提供します。

     すばらしいシートの座り心地をお試しください」とすべてのお客様に訴える見込
     み客へのアピールを目的とした広告は、いったいどれくらいの利益をもたらし
     ているでしょうか。

     必要なのは「いつもご利用ありがとうございます。ご利用いただいているお礼
     の意味をこめてあなたさまだけに特別の待遇をさせていただきます」と特定の
     お客様、年に平均13回利用してくださる優良顧客により一層のご愛顧を促す
     方法でした。

     こうした発想が「差別化するのは顧客」であるという考え方の基本にあります。

     企業の収益の7割弱をもたらしてくれるお客様を大切にし、ほかのお客様は、
     極端な言い方をすれば、切り捨ててもよいとする発想です。

     不特定多数の「見込み客」に向かって膨大な広告宣伝費をかけるよりも、利益 
     の65%をもたらしてくれる3.2%の「リピーター」を特別待遇してさらにアメリカ
     ン航空を利用してもらうアプローチが、この調査から導かれたマーケティング
     手法でした。

     顧客すべてを平等に扱うというのは聞こえがいい言葉ですが、お客様と企業
     の対話という点から見ると問題があります。

     企業はすべてのお客様を同一に扱うことで、じつはお様まとの対話を拒否して
     いたのです。

     すべてのお客様一人ひとりと対話することはできませんが、自社の製品・サー
     ビスを使用してくださるロイヤルティーの高い差別された「優良顧客」との会話
     は可能です。

     お客様のなかから自社にとって利益に大きく貢献してくれる「優良顧客」を見つ
     け、お客様を差別化し、手厚くサービスしていくことで、お客様を「パートナー」
     として扱うことができ、そのお客様と対話をすることができます。

     多くの一般客の嗜好はつかむことができませんが、自社の製品・サービスへ
     のロイヤルティーが高い特定のお客様の嗜好はつかむことが可能なのです。

     できるだけ多くのお客様にたくさんの商品・サービスを買ってもらうことを目指
     すのでなく、自社の製品・サービスを利用してくれる特定のお客様に1回でも多
     く自社の製品・サービスを利用してもらうことが利益増大につながる道だった
     のです。

     それを知った企業はさまざまな仕組みを考えて顧客の差別化を行ないだしま
     した。

     あるガソリンスタンドでは、来店する車のナンバーを登録して月ごとの来店回
     数ランキングを集計し、ランキングのトップ50位に入る顧客に対して特別な
     サービスを提供しています。

     米国のある小売店は、自店にとっての「優良顧客」を分析するシステムを導入
     して、「優良顧客」にはクリスマスに七面鳥のサービスをするなどお客様の差
     別化を徹底して行なっています。

     また、ナショナル・オーストリア銀行では個人顧客の口座を分析し、その利益
     金によって順位付けを行なってサービスの差別化を図ることで、順位付けの高 
     いグループの構成比率を2割から3割まで引き上げることに成功しました。

     日本でも、航空会社のマイレージサービスなど、自社のサービスを利用するお
     客様を優遇していく流れが明確になっています。

     銀行でも残高の金額によってATMの利用料を無料にするなど、お客様への
     サービスを差別化する時代です。

      “利益をもたらす「優良顧客」を大切にする”
      “重要でないお客様は無視してもかまわない”

     これがアメリカン航空の調査から得られたマーケティング手法であり、「高度成
     長時代」の無差別攻撃と異なる、現代のピンポイント攻撃によるマーケティン
     グであるといえます。

   2.80:20の法則

     「80:20の法則」という考え方があります。

     投入と算出、原因と結果などの間には不均衡があり、その比率は80対20で
     あるという法則です。

     たとえば、

      ・売上の80%を占めているのは製品の20%である
       (在庫管理のAB C分析はこの考え方の応用例です)

      ・売上の80%は20%の優良顧客からもたらされる
       (だからこそ、その20%の優良顧客を知る情報を集め、
       そのお客様のロイヤルティーを高める必要があります)

      ・離婚件数の80%は20%の人で占める

      ・カーペットの擦り切れや汚れの80%は20%の部分で発生する
       (その部分だけ変えればよいという発想がタイルカーペットの発見です)

      ・試験問題の80%はその科目に関する知識の20%の知識で答えられる
       (効率よく試験に合格する秘密がここにあります)

     といった具合です。

     たとえば、100人の人が1カ月に飲むビールの本数を多い俄に並べていった
     ら、上位20%の人で全体の本数の80%を占めているということになったとします。

     ビール会社が効率的に販促活動を行なっていこうとすれば、上位20%の人に
     焦点を絞ればよいということになります。

     数値を入れてもう少し具体的に見ていきましょう。

     ここでは例として、顧客の売上高比率と利益比率の関係を見てみます。

       顧客タイプ別の売上高と利益

     顧客A、B、Cで売上の累計は20%程度ですが、利益では半分以上を稼がせ
     てくれています。

     顧客タイプ別に利益に責献している「優良顧客」を見つけることが大切です。

     このような表を貴社のお客様を対象に作成してみてください。

     「80対20」の法則をうまく利用すること、「80対20」の不均衡を利用してお客
     様を差別化していくことが、マーケティングで成功するコツです。

     「自社の製品やサービスを頻繁に利用しくれるロイヤルティーの高いお客様」
     「毎日利用してくれるお客様、気前のいい常連客」がマーケティングのターゲッ
     トとなります。

     たまにしか買ってくれないお客様を無視する「選択と集中」が必要です。

     重要なのは一部のお客様なのです。

     その一部の重要なお客様を差別化して見つけることがポイントになってきてい
     ます。

     「80対20」の法則を利用した考え方を、『80対20の法則』の著者リチャード・
     コッチの書籍からいくつかご紹介します。

      ・化粧品の20%の商品が80%の利益を生んでいます。
       小売店にとって重要なのは店のイメージを傷つけることなく残りの
       80%の商品をどこまで削れるかが重要です。

      ・80%の収益を占める20%の顧客を絶対に放してはいけません。
       毎週、日曜日の夜にはその20%に相当する顧客のファイルに目を
       通し、ご無沙汰している顧客があったら、手紙を書くか電話をかけます。

      ・売上の80%、利益の80%を生み出す20%の顧客に販売努力を集中
       すべきです。
       販売員には最良の20%の顧客に時間の80%を使うように指導します。
       そのために、重要でない顧客は無視してもかまわないと教えます。

      ・重要なのは一部の顧客であり大半の顧客ではありません。

  □顧客情報を使って差別化を図る方法

   「選択と集中」「特定の優良顧客を大切にすること」が重要なことは理解していた
   だけたと思います。

   では、どのようにしてお客様を差別化すればよいのでしょうか。

   いくつかの方法を見ていきましょう。

   1.売上と伸び率によるマトリクス分析

     まず、お客様ごとの売上高と売上伸び率を利用して、以下のようなマトリクスを
     作成します。

     このマトリクスから自社にとっての「優良顧客」を選別していきます。

     この事例で見ていくと、右上のマトリクスにあるお客様であるA社、B社が現状
     の「優良顧客」と捉えることができます。

     営業担当者を頻繁に訪問させるなど手厚いサービスを提供すべきお客様です。

     C社は今後どのように取り扱うか、将来性のあるお客様なのかを慎重に検討
     すべきお客様となります。

     E社は売上高こそ低いのですが成長率の高いお客様です。

     今後戦略的に開拓していくことが必要となるお客様という位置づけが考えられ
     るので、お客様の動向をつかみながら今後の対応を会社として戦略的に検討
     していく必要があります。

     営業担当者にもお客様の今後の成長動向を聞きだすスタイルが望まれます。

     最後のD社、F社にはなるべく手をかけない、お金をかけない対応が求められ
     ます。

     営業担当を訪問させるのではなく電話で対応するなどの差別化した対応が必
     要になります。

     このように、すべてのお客様を同じように定期的に訪問する、あるいは訪問回
     数を増やせば売上増につながるという短絡的な考え方でなく、お客さまを差別
     化して、

      自社にとって重要なお客様は毎日訪問するなど万全のサービスを
      提供する一方、重要でないお客様にはコストをかけない対応を考えます。

     ことによると、そのお客様はよそのお客様になってもらったほうが、自社に利益
     をもたらすかもしれません。

     自社にとって重要でない顧客を見極めて、利益をもたらさないお客様と上手に
     別れていくことも、必要な経営判断になってきます。
       
   2.RFM分析

     小売業など多数のお客様を相手にする業態では、これから説明するRFM分析
     が役に立つはずです。

     横文字でわかりにくそうですが、難しい考え方ではありません。

     これまで説明してきた「差別化するのは顧客」であるという考え方と「80対20」
     の法則を実践的に説明しているものと理解してください。

     日本でもコストコの出店(1999年)、そしてウォールマートの進出(2002年)
     と、外資小売の参入が盛んになり、「EDLP」(エブリデイ・ロウ・プライス)という
     売り文句が一般的に使われるようになりました。

     最近ではネット販売においても、アマゾンのビジネスマーケットへの躍進が際
     立っておりスタート時は書籍販売に特化していたが、今ではアスクルの牙城を
     切り崩す勢いでいます。

     こうした企業では、一時的な「特売」ではなく「毎日、低価格で商品を提供する
     仕組み」、たとえば大量仕入れによるコストダウン、店舗建設費用を抑える工
     夫、人件費を抑える工夫などがなされています。

     しかし、「EDLP」は「優良顧客」にもそうでない顧客にも同じサービスを提供す
     るわけですから、「優良顧客」の「自分は利用金額が高いのだから特別な扱い
     を受けてもいいはずだ」という欲求には対応できません。

     また、店舗としても、低コストの商品をあまり自店で利用しないお客様にも提供
     することは顧客の差別化ができていないことになり、優良顧客から得た利益を
     そうでない顧客につぎ込むことになってしまいます。

     そこで、「よく来店してくれるお客様」「高額のお金を使ってくれるお客様」「最近 
     よく買い物をしてくれるお客様」を「優良顧客」として差別化して優遇する手法
     が「EDLP」の反省から生まれてきました。

     米国で理論化されたFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム=高頻度来
     客優遇策)という手法があります。

     日本語の名前のとおり、高頻度=よく来店してくれるお客様を優遇していく作
     戦です。

     「80対20の法則」で紹介したように、来店客別の売上高とその構成比を調査
     していくと、購買金額が多いお客様の上位3割で売上の7割から8割を占める
     という事実が示されています。

     この3割程度のお客様を「優良顧客」としてもっとも大切にすることが戦略の要
     です。

     このお客様に対して、ほかのお客様と差別化した「優遇策」をとり、自社、自店
     舗へのロイヤルティーを高めてもらう戦略です。

     ちなみに、購買金額の下位から5割のお客様の合計購買金額が全体の売上
     に対してどの程度の比率になると思われますか?

     ある調査ではなんと10%に満たないという結論がでたというデータがあります。

     この5割のお客様にかけるコストをいかに削減するかということも、FSPにおけ
     る、もうひとつの重要な視点です。

     ぜひ、自社のお客様をFSPのための顧客分析表のマトリクスを利用して分析
     してみてください。

     自社のお客様の分布が「80対20」の法則にあてはまることが理解できるとと
     もに、「優良顧客」とそうでないお客様がみえてきます。理論だけでなく実践が
     重要です。

     仮に、500人のお客様をもっている場合、10%ごと=50人ごとに構成比を区
     分して分析していきます。

     FSPを支える「差別化するのは顧客だ」という考え方をより具体的に分析する
     手法が、RFM分析です。

     RFMの3つの軸を見ていきましょう。

      RはRecency=直近の来店日、購買日を基準とした軸

      FはFrequency=購買頻度を基準とした軸

      MはMonetary=購買金額を基準とした軸

     この3つの軸を重視して分析するのは、以下の理由からです。

     R(リーセンシー)は最近来店してくれているお客様は今後の販促活動や店内
     企画に対して反応しやすく、逆に足が遠のいたお客様は当店から離れたお客
     様であると判断することができ、主として販促や企画に対する反応を分析する
     視点に利用できます。

     F(フリークエンシー)は来店頻度ですので、店舗に対するロイヤルティーを示
     しています。
     顧客の満足度を示す指標でもあります。

     M(マネタリー)は売上金額ですので売上に重点をおいた販促の企画に活かす
     ことができます。

     RFM分析はこの3つの軸を利用して自社にとっての「優良顧客」を選別しようと
     いう方法です。

     具体的には、たとえば以下のようにポイント付けを行ないます。

                              RFM評価ポイントの例

     さらに、R、F、Mごとに自店の戦略にあわせてウェートづけを行ないます。

     店舗ロイヤルティーを最優先し、次に売上金額、最後に直近来店期間とする
     のであれば、R:F:M=2:5:3といったようにウエートをつけて評価します。

     この基準によって「顧客」の差別化を行ない「優良顧客」を見つけ、優遇的な
     サービスを提供していくのです。

     海外の例では、上位の顧客にはクーポン券の提供や、先に書いたように七面
     鳥のプレゼントなどの優遇策を提供しています。

     貴社でも顧客を差別化していく手段を身につける必要があります。

     2割の「優良顧客」が利益の8割を提供してくれているのです。

     最後に、『80対20の法則』の著者であるリチャード・コッチのアドバイスを紹介
     します。

     コツチは、核になる優良顧客を離さない4つの秘訣として、

      (1)核になるお客様が誰かを突き詰めること

      (2)核になるお客様には特別なサービス、場合によっては「常軌を逸した」
       サービスを提供すること
      (3)製品・サービスの開発時には核となる20%のお客様を念頭に置き、
        その20%のニーズを満たすことだけを開発の目標とすること

      (4)核となるお客様からは絶対に目を離さないこと

     を挙げています。

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差別化

差別化を図るには顧客の心理をつかむ
 

  ■顧客の心理

   1.なぜ顧客は自社を選ぶのか
     顧客はなぜ自社と取引をしてくれているのか?

     昔からよく知っているからか、顧客の利益(メリット)につながっているからか。

     「昔からよく知っている」ということは、長く継続して取引があるという面では良
     いことです。

     逆に、長くお付き合いをしていることによって、自社が以前とは違う商品・サー
     ビスを取り扱っていても、顧客の頭の中には昔のイメージが残っており、「あの
     会社ができる範囲はここまでだ」「あの会社が提供できる商品・サービスはこれ 
     だけだ」と決め付けられている場合が多々あります。

     顧客はあなた(自社)が思っているよりも自社について知らないことが多い。

     顧客が自社のできることを知らなければ、顧客の頭の中にイメージされた「自
     社のできること」以上に仕事は膨らまないでしょう。

     顧客は、自分の頭の中にあるTPO(Time:時間、Place:場所、
     occasion:場合)によって、付き合う先を選別している。

     その結果によって、顧客内における自社のインストアシェアが決まってくるので
     す。

     要は、今以上に自社を選ぶ理由が、顧客の中にあるかどうかです。

     その理由がなければ、今以上に自社の業績が上がらないのは当たり前。

     よく「既存顧客の売上げが減ってきた」「新規開拓が進まない」という声を耳に
     するが、これは顧客側から見れば、あなた(自社)を選ぶ理由がないのです。

     選ばれる理由を顧客に伝えることが必要になる。

     では、売る側は何をしなければならないか?

     まずは、顧客から選ばれるために必要なことは何かを考えることから始めよ
     う。

   2.顧客が選ぶ理由をつかむ4ステップ

     (1)顧客が過去、どのような理由で取引先を選んできたのか
       自社を取引先に選んだ理由を考える際は、顧客が今まで付き合ってきた先
       と自社を必ず比較するはずです。

       要は「過去」と比べるのである。

       顧客が取引先を選ぶ物差しを把握することが第一ポイントである。

     (2)ライバルが顧客に提供している利益をつかむ
       顧客が今まで取引している先、自社よりもインストアシェアが高い先は、「ど
       のような利益を提供しているのか」について考えてほしい。

       「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」である。

       これをつかまなければ、差別化するためにどのような情報が必要なのかが
       分からないからです。

     (3)顧客が自社と取引をしたときの利益を考える
       商品・サービスを売る側が陥るワナは、自社の利益を中心に考えてしまうこ
       とです。

       「これをあの顧客に売れば目標達成できる」などと、身勝手なそろばん勘定
       をはじき過ぎるとミスをする。

       顧客が望んでいないもの、買いたくないものを勧めても、利用したい気持ち
       や買いたい気分にはならない。

     (4)顧客の利益を最大化するために必要なことをつかむ
       「顧客の利益(メリット)とは何か」を考える。

       次に、「どうすれば自社が顧客の利益を最大化できるのか」を考える。

       この順番を間違うと、顧客に提供すべき情報を間違えてしまう。

       顧客は、入ってくる情報で判断します。

       それがテレビCMなのか、ウェブ検索なのか、SNSなのか、店頭POPなの
       か、クチコミなのか、調査資料なのか、見積もりなのか。

       情報を届けるツールは、さまざまあります。

       多くの会社(店)から見積もりを取れば取るほど、購入の際の選択肢が増え
       れば増えるほど、個々の特徴や利点、利益は顧客の頭に残らない。

       そして残るのは、往々にして価格だけである。

       顧客の頭の中に価格の情報しか入っていなければ、顧客は価格でしか選
       ばない。

       つまり、顧客は頭の中に入ってくる「情報」により、どこと付き合うのか、何を
       買うのかを決めているのです。    

       したがって、「自社が提供する利益 > ライバルが提供している利益」となる
       よう顧客に伝え、納得させることが必要となる。

       自社の提供する価値が、ライバルを上回るために何が必要かを考える。

       その際のポイントは、「顧客が聞きたいことは何か」を常に考えることです。

       商品説明や機能説明だけでは、顧客は動かない。

       利益(メリット)を感じたときに動く。

       行動する理由が見つかれば、顧客は行動する。

       顧客に理由が伝われば、選ばれるのである。

       それ故、顧客に選ばれる理由は、売り手側が用意し、伝えていかなければ
       ならない。

   3.「見せる」・「売りたい」・「売れる」商品で選ぶ理由をつくる
     ある小売店の社長が、「“売れ筋”ばかりを集めても売れない」と言っていた。

     一見、売れないモノは無駄のように思えるが、売れ筋の横に売れない商品(見
     せる商品)を置くことで、よく売れるのだそうだ。

     顧客の頭の中で比較が行われ、売れ筋商品を購入する理由が明確になるた
     めです。

     売りたい商品を売るときも、この「見せる商品」が必要となる。

     売りたい商品のフェイス(買い物客から見える商品陳列)を取るだけでは売れ
     ない。

     その横に見せる商品を置き、売りたい商品を顧客が選ぶように仕向けるので
     ある。

     引き立て役の役割は大きいのです。

   4.あなたの会社のウリ(選ばれる理由)は何か
     自社の「ウリ(強み)」は何か?

     ウリとは、自社の強みです。

     自社の強みとは、自社ができることである。

     自社ができることで顧客から選ばれる理由を、自社が顧客に伝えなければな
     らない。

     自社の強みが伝わらなければ、顧客には価格しか見えない。

     自社のウリ(強み)を伝え、顧客の利益を最大化することで、自社が選ばれる
     のです。

     顧客は安く買いたいのではなく、自身の利益を最大化したいのです。

     売る側も売上げを上げたいのではなく、利益を上げたいのです。

     売上げは、利益を得るための手段なのです。

     利益を出し、会社の永続性を高めていくためには、顧客から選ばれ続けなけ
     ればならない。

     「自社の利益を最大化してくれる重要なパートナー」である顧客としての位置
     付けを構築していただきたい。

  □ライバルが言えないことを発信する差別化戦略
   1.戦略を理解しているか?
     最近、「情報発信を行っているのに売れない」との声を耳にする。

     情報発信の方法を間違えているのか、メッセージの内容に問題があるのかな
     ど、現場では脳に汗をかくような苦労をしながら、売るための試行錯誤を行っ
     ている。

     メッセージとは、自社を選んでくれる=自社の良さを理解してくれる=自社を必
     要としている企業(個人)に、自社を選んでもらうための理由を発信するもので
     す。

     つまり、発信しているのは自社の強みであり、それがライバルでなく自社を選
     ぶ理由であるため、「売れる」ことにつながるはずである。

     なのに売れないのであれば、発信しているメッセージが間違っていることにな
     る。

     その原因は、メッセージが自社の戦略と合致していないことにある。

     戦略とメッセージに一貫性がない。

     つまり、戦略をうまく現場に落とし込めていないのです。

     営業社員、マーケティング担当に問いたい。

      ・戦略を理解しているか?
      ・惰性で行動していないか?

     惰性での行動は「作業」であり、戦略の成果は出てこない。

     考えない行動は無価値である。

   2.今のやり方で顧客から選ばれるのか?
     「全ては顧客から始まる」のです。

     顧客を見据え、戦略を構築し、自社が勝てる場と勝てる条件(自社が顧客から
     選ばれる理由)を整備し、現場に落とし込みを行う。

     これが正しい方法。

     しかし、戦略から現場へ落とし込む戦術の段階で、一貫性が崩れることは多
     い。

     自身の行動に再度、目を向けてほしい。
      ①今、行っていることで、顧客から選ばれるのか?
      ②今のやり方、考え方、行動で、利益は出るのか(儲かるのか)?
      ③今のやり方、考え方、行動で、顧客の要望以上のことができるのか(勝て
        るのか)?
      ④今のやり方、考え方、行動に、信念を持っているのか?

     ①〜④のうち一つでも崩れると、戦略は機能しなくなる。

     担当者自身が「こんなことをやっていても、顧客から選ばれないのに…」と思っ
     て行動する限り、顧客から選ばれないのは当然である。

     顧客ごとに、自社の強み=自社のできること=顧客が望むこと

     を伝えていく必要がある。

     現場こそが、それをメッセージとして伝えていかねばならないのです。

   3.琴線に触れるメッセージで差別化を図る
     「この商品はとても使いやすくなっております」「ご使用になっていただければ、
     ご理解いただけると思います」など、通り一遍な独自性のないメッセージは、顧
     客の琴線に触れることはできない。

     これは誰にでも言えることで、
      ・自社の強みではない。
      ・顧客が自社を選ぶ理由にならない

     のです。

     あなたは、「ライバルが言えないこと」を顧客に伝えなければならない。

     もちろん、「自社ができることを」である。

     “空箱(粗悪品)”を売ってはいけない。

     それは詐欺であり、犯罪だ。

     あるシステム会社の社員が、顧客の琴線に触れるメッセージを伝えていた。

     そのメッセージとは、「自社のシステムを活用すれば、売上げは1割落ちます
     が、経費は半分、利益は約2倍になります」のトーク。

     もちろん粗悪品ではなく、自社ができることであり、顧客から高く評価されてい
     るシステムである。

     顧客は、真剣なまなざしで耳を傾けていたのは言うまでもない。

     独自性のあるメッセージで独自のノウハウを伝え、顧客の利益になれば“鬼に
     金棒”である。

   4.信念を持って行動する
     顧客から自社を選んでもらうための行動を、信念を持って行っているだろうか。

     何も考えず、「やれ」と言われたからやっているだけの、全く気持ちが入ってい
     ない提案シーンをよく目にする。

     そうした提案になってしまうのは、戦略の納得性が不足していることと、行動に
     対する迷い、勝てるかどうかの不安に起因する。

     しかし、信念のない行動では、顧客は何を言っても振り向かない。

     ここで、社長に考えていただきたい。

     「信念を持てないのは、理念が事業化できていないからではないか」と。

     これは、理念先行型の経営者に多いことである。

     顧客や社会のお役に立ちたいという思いは理解できる。

     しかし、行動や商品・サービスが、売上げと利益につながっているのかを、再
     度検証していただきたいのです。

     社長の思いが事業化できていないと、社員は不安になります。

     社長の言う通りにやっても売上げや利益に結び付かないから、「やる意味があ
     るのか」と不安になるのです。

     社長は思いを事業にしていかなければならない。

     さらに、付き合うべき顧客や売るべき商品、価格は、社長が決めなければ、社
     員が勝手に決めることになる。

     付き合うべき顧客を定めなれば、担当者は行きやすい顧客だけを訪問する。

     売るべき商品も分からない。

     また、値決めは経営である。

     その価格で利益を出し、自社の経営や資金繰りにどのように影響するかも考
     えなければならない。

     値決めを営業に任せているようでは、勝てる場をつくり出せていない可能性が
     高い。

     「戦略的である」ということは、「計画的である」ということです。

     営業活動は有限、時間も有限、お金も有限。

     これらを何に集中させ、いかに効率的に回収するのかを、社長も現場も考えな
     ければならないのです。

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差別化

お客様が何を望んでいるかを理解する


  ■ちょっとした心遣いがすべて

   あなたはお客さんが何を望んでいるかを理解できているだろうか?

   あなたの仕事がお客様の抱える問題・課題を解決する「問題解決業」であることを理解
   していないことが、多くの営業会社が増収できない最大の理由ではないだろうか。

   自分たちのニーズや望みを満たしてくれて、不満や不安や心配を取り除いてもらえ
   るなら、お客様はいつでも喜んでお金を払うのです。

   そのためには、それを欲しいと思わせるだけの理由を、感情と理論の両面から
   提示しいく。

   それを買った方がいいと思わせるだけの理由、同じ買うならよそよりこちらの方が
   いいと思ってもらえるだけの理由を。

   その商品やサービスが何らかの感情的心理的なニーズを満たすからお客さんは
   買うのだ。

   あなたの商品、サービスを買おうというお客さんの感情の高まりを作り出すことは
   大切だが、それと同時に、契約して良かったと顧客に思わせるだけの、筋の通った
   理由が必要です。

   そうでなければ継続した増収は望めない。

   お客さんとの直接面談は、大事な情報収集の場である。

   顧客の声に耳を傾け、それを一歩進めることだ。

   あなたのことを好意的に見てもらえるようにするには、よそと違うことをしなくては
   いけない。

   常識にとらわれずに考えよう。

   誕生日のお祝いカード・花、会社設立お祝い、ハガキの活用、子供の七五三、等
   ほとんどコストのかからないちょっとしたことでも相手にはしっかり気持ちの伝わる
   ことをすることです。

   「このちょっとしたことがすべてなのだ」。

   なぜならほとんどの営業会社がやってないからです。

  □差別化戦略とはよそにない「売り」をつくる

   商売を成功させるための最大の秘訣は、よそにはない「売り」があること、よそとは
   違っていることです。

   商品でもサービスでも、よそにはないものを提供しなくてはならない。

   ほとんどの中小企業はただ漫然と、よそと同じようなものを、特に顧客からは同じとし
   か見えないモノを売っている。

   よそとの違いがなければ、単に店頭に並べたダイコンを売っているのとなんら変わ
   らない。

   よそにない売り(サービス)をつくるとは、「仕組みづくり」です。

   すぐに真似されるようなものであっては、お客さんが「なぜあなたから買わなけれ
   ばならないか」という問いかけに対し、強烈なインパクトを与えることができないから
   です。

   新規開拓において、見込み客があなたの商品(サービス)と、現在取引している競合
   他社の商品との間には、どんな違いがあるだろうか。

   多くは何も変わらないはずである。

   多少の違いといえるのは価格ぐらいだろう。

   これではお客さんが、あえてあなたに取引変更をする理由はないはず。

   あなたに「売り」がないから、いつもの得意の「熱意と根性」営業に走り出す。

   あなたは自分で思っている以上にありふれているということだ。

   自分に問い掛けてみるべきだ。

   お客さんが“あなたでなければ”と言ってくれるには?

   大きく増収している営業会社に共通していえることは、他との違いである「売り」がある
   から。

   これこそ事業を成功させる最大の秘訣である。

   他との違いを開発するには、自分には何ができるのか? 

   自分だけでできなければ誰とどのように協業(コラボ)すればいいのか? 

   あなたがビジネスドクター(法人向け)であり、ホームドクター(個人向け)なら
   既存客・見込み客を往診(訪問)し、これらの答えをお客さんから聞くことです。
   
  ■カスタマー・インティマシー(顧客との親密さ)を築く

   顧客との親密さを築くには、事前に顧客に関する知識を蓄えておかないと、誰が
   本当の顧客なのかがわからなくなってしまいます。

   お客様が何を望んでいるかを理解できていないことが、大半の中小企業が利益を
   あげられない最大の理由です。

   お客様は自分たちのニーズや望みを満たしてくれて、不満や不安や心配を取り除いて
   もらえるなら、いつでも喜んでお金を払ってくれるのです。

   “人がものを買うのは理屈ではなく、感情だ”と言われています。

   大半の人は理屈でものを買ったりはしない。

   その商品なりサービスなりが何らかの感情的心理的なニーズを満たすから買う
   のです。

   マーケティングで、よく引用されるのが「ステーキを売るな。焼いている音(シズル)を
   売れ」という言葉です。

   これは、視覚と聴覚の両方を同時に使ってアピールできるので、よりお客様を納得
   させられる。
   (人間の五感は視覚と聴覚で93%を占め、言葉だけでは、7%しか相手には伝わら
   ない)

   ふつうの顧客はまず買ってみて、それから、「あれで良かったのだ」と後から理屈
   づけして納得するのです。

   何を売るにしても、あなたの商品なりサービスなりを買おうという感情の高まりを
   作り出すことは大切ですが、それと同時に、買って良かったと顧客に思わせるだけ
   の、筋の通った理由が必要なのです。

   そうでなければ増収は期待できません。

   顧客の声に耳を傾け、それを一歩進めることです。

   こちらから出向いていって直接顧客と顔を合わせることです。

   あなたの会社のことを好意的に見てもらえるようになるはず。

   顧客や見込み客、さらに、一度はあなたを拒否した人たちも、喜んで何らかの意見
   を返してくれるでしょう。

   それらの意見が、これからどうやって顧客側の抵抗感や障害を克服したらよいか
   を教えてくれるでしょう。

   プロセスはシンプルです。

   丁寧に、以下のような質問をして、後は注意深く耳を傾ければいいのです。

    ・今回、なぜ買ってもらえなかった理由は何か。

    ・次回からはどう改善すればいいか。

    ・気に入ってもらえたところがあるとすれば、どのような点か。

    ・同業他社(店)から取り入れるべきところは、どのような点か。

   そして、あなたとの取引を相手の記憶に残すことです。

   ポジティヴな印象がいつまでも顧客の記憶に残り、「またあなたに頼みたい」という
   気持ちになります。

   利益を得るためには、この行動を最も重要な一部として営業に組み込むことです。

   そうすれば、いつでも、どの顧客に対してもこの行動を起こせるようになりまする。

   しかも、一人ひとりの顧客にとっては特別な同業他社に無い体験に思えるはずです。

   営業の仕組みをつくりだすには、よそと違うことをしなくてはいけない。

   常識にとらわれずに考え、ルールは、「よそがしていることは絶対にしない」ことです。

   顧客に、心を込めて、「ありがとうございました」のハガキを出すことから始めてみ
   よう。

   ちょっとした言葉やカードや花、あるいは贈り物を届けたり、後で電話して、加入
   してもらった感謝の気持ちを伝えるのもいいでしょう。

   バースディカードや、顧客企業の設立日にお祝いのファックスやハガキをだすと
   いう手もあります。

   ほとんどコストのかからないちょっとしたこと、でも相手にはしっかり気持ちの伝わる
   ことをすることです。

   こんなことで? といった「このちょっとしたことが大きい のではなく、これがすべ
   て」なのです。

   自分に提供できるものの枠を広げ、細部に気を使うこと。

   仕事に楽しさを持ち込んで、顧客と一緒に楽しみ、喜びを分かち合うこと。

   まず一歩踏み出してみよう。
   
  ■差別化戦略

   過去には、どの商品もサービス価格も横並びの時代もありました。

   モノ発想でいけば、時計は時計屋さんで、本は本屋さんで、酒は酒屋さんで、という
   チャネル(販売拠点)で売られてきました。

   そして、タテ割りの業界別に、生産者問屋小売店とうい流通ルートが確固として
   できています。

   なぜそうなったかというと、「業界の都合」と「会社の都合」に合っていたからです。

   生産者はモノを作るだけ、問屋(卸売業者)はモノを集めて流すだけ、小売店は流れて
   きたモノを店頭に並べるだけでよかった。

   誰も販売なんかしていません。

   「販売なくして事業なし」とはいいますが、生産者も問屋も、そして小売店も、販売は
   やっていないのです。

   作る、流す、並べるという役割分担を担っていただけにすぎません。

   販売とは、意味のある体験を提案することで、気づいていないニ−ズを気づかせる
   ことです。

   そんなことは誰もやっていません。

   やる必要がなかったのです、今までは。

   生産者は売れ筋をいかに効率よく作るか、問屋は売れ筋をいかに効率よく流すか、
   小売店は売れ筋をいかに効率よく並べるか、それだけを考えていれば経営を間違う
   ことはなかったのです。

   社会生活にモノがなかった時代、モノが不足していた時代はそれでよかったし、それが
   お客さんの都合にも合っていたのです。

   足らないモノ、不足するモノを買いたいお客にとって、どこで買えばいいかがわから
   ないでは困ります。

   花が欲しければ花屋さんで売ってるよと、明確に示しているからです。

   しかし、今や時代はモノ不足ではありません。

   むしろモノを手に入れてしまって、モノ余りの時代です。

   モノがなかった時代は、モノを手に入れることが目的でしたが、手に入れてしまえば、
   モノを買うことは目的ではありません。

   今やモノそれ自体は手段にすぎません。

   何の手段かというと、コトを実現するための手段です。

   意味のある体験をするための手段です。

   手段であるモノが主役ではありません。

   主役はコトです。

   意味のある体験です。

   お客は意味のある体験を手に入れるために、手段としてのモノを買うのです。

   逆に言えば、それしか他社に勝つ方法がなかったのです。

   しかし、規制緩和、自由化の波を受けた今はどうでしょう?

   今、あらゆる業界が「成熟化市場」や「少子高齢化」といわれ、それでモノが売れない
   ことの原因ように言われていますが、はたしてそうでしょうか?

   ただ言えるのことは営業マンだけが頼りであった時代は終わり、商品・サービスに関
   する情報量は、お客様の方が多いと認識すべきでしょう。

   様々な負の要因があるでしょうが、すべての顧客が買い控えているわけではありま
   せん。

   欲しいお客さんはいるのです。

   ただし、今までの経済が右肩上がりの時代のように、体に汗を流すだけでは売れない
   時代になったことだけは確かです。

   シーズンごとに向こうからやってくるチャンスに、顧客と直接面談しなくても接触
   (顧客との関係を深める)は数多くあるのです。

   お客様(見込み客)・顧客の購買タイミングに向けて販売促進していくマーケティングを
   抜きに増収は望めません。

   競合他社(店)との差別化は営業会社にとっての緊急課題です。

   勝ち残るためのキーワードはまさしく「差別化」しかありません。
   
   しかし、「差別化」という言葉だけが踊るだけで、どのような対策を講じているのか、
   はなはだ疑問ではあります。

   大多数が業務の改革・改善はできておらず、今までのやり方を継続しているだけでは
   ないでしょうか?

   確かに業界のシステム化は急速に進歩してきていますが、それは取引相手を主体と
   した保全管理に限定され、顧客管理までには至っていません。

   営業会社にとって優先課題であるデータベースマーケティングが欠けているのです。

   簡単に言えば、業務のやり方(社内業務の標準化、営業を狩猟型から農耕型)へ変え
   ることです。

   狩猟型営業は成約すると次から次へと狩場を変えていく、刈り取り型ともいえます。

   一方、農耕型営業は畑に種(見込み客開拓)を蒔き、水・肥料(ニーズ喚起)を与え
   果実(新規顧客)に育てていくやり方です。

   農耕型営業を実践していくには、商品の特徴を主体とした売り方から、お客様が成約
   後に得られる利益(メリット)を中心にした売り方に変えていくことです。

   「特徴」は、商品自体の優位性(その商品が持っている特長で、他の商品には無い
   際立った性能や機能)をいいます。
   
   「利益」は、お客様が最終的に手にする満足感やメリットをいいます。

   あなたは自分が何を売っているか、明確に理解することです。

   決して扱い商品を売っていると考えないことです。

   あなたの扱う商品は、あくまでも手段であって、お客様が最終的に得られる利益を   
   どれだけ分かりやすく伝え、売ることができるかが重要なポイントということです。
    
  □専門化と付加価値

   多くの営業会社が、自社を○○業と思い込んでいる。

   だから、同業他社と同様のサービスしか思いつかない。

   これでは、周囲に埋没しこそすれ差別化どころではない。

   お客様は基本的な疑問を抱いている。

   あなたと取引すべき理由は何か? 

   あなたがよそと何が違うのか? 

   「口ではああいっているけど、あなたに取引を切り替えることで、前の会社より対応が
   悪くならないだろうか」、「そんなリスクを考えるなら、今までのところでそのまま続けた
   方が気が楽だ」。

   お客さんは頭の中で、こんな値踏みをしている。

   結果的に、「どこも同じだろう」と頭の中で考える。

   お客さんの言ってることが正しい。

   感心も感動もさせられない会社なんて、どこも同じである。

   差別化をするのにお金は掛からない。

   要は、他社(店)がやらないことをやればいいのです。

    ・名刺(電話番号は大きく、裏面も活用)

    ・会社案内(売り手視点から顧客視点に立った内容)

    ・NL(ニュースレターの発行)

    ・ハガキ(礼状、四季のあいさつ、クレームに対し)

    ・顧客にとっての有益情報(業界情報、新聞の記事切り抜き)

    ・創立記念お祝い、社長のバースデー

    ・異業とのアライアンスにより、顧客の問題解決へのサポート

   これらのなかで、1つでも継続実行していることがあるだろうか?

   同業他社(店)と徹底的に差別化していくには商品ありきの提案していくには困難極
   まりない。

   必然的に切り口(ニーズ喚起)商品が必要となる。

   切り口商品で提案することで、商品に付加価値が付き、売り手側主導で値決めが
   できるのです。

   あなたが同業他社(店)と競合しないためには、どこにもまねのできない得意分野を
   持つことです。

   同業他社(店)が真似できない商品企画を専門家とアライアンスを組むことで、顧客
   から専門家と認められる。

   このことは重要です。

   あなたの得意分野で専門化し、お客様にメッセージとして伝えることで、存在価値を
   認知してもらい、専門化したものを商品として提供し、お客さんからの感謝と感動を
   得ることです。

  □差別化のためのポイント

   ・あなたの商品は同業他社(店)と何が違うのか

   ・あなたのマーケット(市場)はどこか

   ・あなたの商品が同業他社(店)より売れ続けるためにはどうしたらいいか

   ・あなたの強み(同業他社(店)がまねできない)はなにか

   ・あなたはマーケット(市場)のどの客層を対象にするのか

   ・形のない商品を知覚化(記憶に残る)させるためにはどうしたらいいか

   ・あなたの商品の効用はなにか(商品の特徴ではなく、あなたと契約すると
    どんなメリットがあるか)

   ・商品を知覚化させるために商品を具現化させる(記憶に残る商品名)

   ・あなた(商品)を提案するためにどうするか

   ・販売コストを抑えるためにどうするか(常に費用対効果を計算する)

   ・あなた(自社)のブランドを構築するにはどうしたらいいか


  以上を参考に、あなた独自のマーケティング計画を立ててみて欲しい。

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