コーチングスキルの基本は傾聴、質問、評価(承認)

         

コーチングスキル

   
  ■コーチング

   「コーチング」は、スポーツの分野で用いられてきた言葉で、選手の潜在能力を高める
   ことを目的とした「質問型」の指導方法である。

   近年、人材育成の一環である上司と部下のコミュニケーション方法として「コーチング」
   はすっかり定着した感があります。

   スポーツにおいてもビジネスおいてもメンタルな部分が大切であることから、現在の
   厳しい経営環境のなかで求められている人材は、自ら考え、自ら行動する「自立型」の
   人材です。

   コーチングの効果は部下の人材育成のみならず、セールススキルのアップにも効果的
   です。

   通常はティーチングで指導したほうが、上司も部下も楽ですし、短い時間で成果につな
   げることができます。

   しかし、企業の多くで行われているティーチングによる指導では指示待ち社員を生み、
   上司の一方通行の指示に終始してしまいます。

   あえてコーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって働く習慣が身につ
   きます。

   また、ティーチングですべてに答えをもらっていた頃の「やらされ感」から解放されて、
   よりやる気をもって働けるようになります。

   質問型のコーチングによって、自ら考え実行できる人材を育てることができます。

   コーチングは、当然のことながら、コーチする側と受ける側に分かれます。

   しかし、コーチを受けるべき人材は多くても、適切なコーチングができる人材は少ない
   のが現状です。

   適切なコーチをするためには、コーチングの手法を学び、それを実践していく人材を育成
   することからはじめなければなりません。

   しかしコーチングを含め、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。   


   コーチングとは相手の目標達成をサポートするためのコミュニケーション手法のひとつ
   です。

   今では、コーチングは人材育成におけるモチベーションアップ、セールススキルの向上
   など双方向のコミュニケーション手法として大きな力を発揮します。

   コーチングには技術面をコーチする「スキルコ
   ーチング」と、心や精神面をサポートする「メン
   タルコーチング」の2つに分けることができます。

   ここでは「スキルコーチング」について解説しま
   す。

   コーチングを学ぶべき人材は、経営者、マネー
   ジャー、リーダー、など、後輩や部下を指導す
   る立場にある経営陣・管理職・部門長になりま
   す。

   相手がすでにもっている能力・意欲・経験などを
   引き出して、部下自らが主体的に取り組むよう
   にサポートすることがコーチングのおもな目的です。

   コーチングは部下の目標達成をサポートするための
   コミュニケーション手法のひとつで、社員の自立性や
   モチベーション向上に効果的です。

   コーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって働く習慣が身につくように
   なり、問題点のすべてに答えをもらう「やらされ感」から解放されて、よりやる気をもっ
   て働けるようになります。

  □コーチングの目的
    ・自分でものを考える自立型の人材を育成のため
    ・上司が自分の知識や体験を効果的に部下に伝えるため
    ・上司がそれぞれの部下に合った指導方法をみつけるため
    ・部下から仕事の手順などについて積極的な提案ができるようにするため
    ・さまざまなアイデアや意見を多く集めるため
    ・社内での会話量(コミュニケーション)が増え、その結果、問題発生を未然に防
     ぐため
    ・質問力の強化による営業力強化のため

   コーチングは決して難しく、高度なテクニックを要するものではないと理解すること 
   です。

   正しい「聴く」、「質問する」、「認める」を習得することで部下、お客様とのコミュニ
   ケーションアップに欠かせないスキルとなります。


  ■コーチングスキル

   コーチングでは、相手のことをよく知り上手にコミュニケーションを図る必要があり
   ます。

   事前に、部下面談テンプレート、業務別テンプレート(営業職 内務職)により、性格・
   考え方・長所と短所・得意分野などを把握しておくと、スムーズです。   

   コーチングに必要なスキルのなかで基本となるのは「傾聴」、「質問」、「評価(認
   める)」です。

   話を丁寧に聞いて適切な質問をし、相手をきちんと認めることがコーチングの原則
   です。

  傾聴 
   傾聴とは聞くではなく、徹底的に相手の話を「聴く」ことです。

   コーチングの目的は上司ではなく、部下自身に解決策を考えさせることにあります。

   部下には問題の事実関係だけではなく、それに対して部下自身がどのように感じてい
   るかについても話してもらわなければなりません。

   部下は自分のなかにある情報をいったん外に出すことで、情報のもつ意味を認識でき
   るようになります。

   部下が当初話そうとしていた以上の話をするように仕向けることも必要です。

   タイミングよくうなずいたり、相づちを打つなどして、自分が相手の話をきちんと聞いて
   いることをわかってもらわなければなりません。

   日頃から「部下が話しかけやすい雰囲気」をつくっておくことも大切です。

   部下は威圧的・拒絶的な印象が強い上司にはそもそも相談しようという気になりません。

   つねに笑顔で接し、上司の側からあいさつするなどを心掛けることです。
  
  □詰問ではなく質問
   コーチングにおける質問は「相手が気付いていないことをわかってもらう」目的で、「相
   手のために」行うものです。

   したがって、途中で自分がわかったとしても、相手がわかっていなければ質問を続けな
   ければなりません。

   そして、質問に対する答えにはきちんと傾聴します。

   質問は「なぜ(why)?」ではなく「何(what)?」を使う。

   「なぜ(why)」で始まる疑問文を、「何(what)」を使った疑問文に替えることを試し
   てみましょう。

   日々の部下との業務に関する会話においても、今までの質問の冒頭に「なぜ?」、
   「もっと」「どうして!」といった詰問をしないことです。

   例えば、
    ・何が君にそうさせたのかを教えてほしい。
    ・やらなかった理由には何があるの?

   といった質問の投げかけ方をしたほうが、やわらかい感じがするため、部下は精神的に
   安定するのです。

    ・なぜ、受注に失敗した? ⇒ 失敗した理由はなんだと思う
    ・できない理由は何だ? ⇒ おもな障害はなんだと思う
    ・どうしてもっと早く報告しないんだ ⇒ どうすればすぐに報告できると思う

   このようなスタンスで質問を続けることは、まどろっこしく、面倒に感じます。

   しかし、考える主体はあくまで部下であり、上司は答えをもっていたとしても先回りして
   それを示してはなりません。

   部下が正しい答えにたどり着くようにサポート役に徹する必要があるのです。

   質問した後には、相手が十分に考えられるよう、時間をおくことが大切です。

   その時間を惜しんで立て続けに問いかけると、質問ではなく「詰問」になってしまい
   ます。

    <質問の留意点>
    ・意見を論理的に聞く
     一般的に、人間は頭の中で思考を組み立て、その筋道に沿って相手に分かりや
     すいように意見を伝えようとします。

     しかし、会話を通じて相手の意見や態度に即応して自身の意見が変化していき、
     その結果、意見の整合性が崩れてしまう場合も多々あります。

     このような場合、意見を聞く側も相手につられて自分の意見を流されてしまいがち
     です。

     互いがそのような状況に陥ると論理的な質問はできなくなってしまいます。

     このため、論理的な質問をするためには、相手の意見を論理的に聞き、自分の意
     見と対比させながら「何を質問するのか」を常に明確にしておくことが必要となり
     ます。

     また、相手が発言をしている途中で質問を差しはさむと、その質問に答えるために
     相手の思考がいったん中断することとなります。

     このようなことが度々重なると、相手の思考がこま切れとなり、意見のポイントと
     なる部分にズレが生じてしまう可能性があります。

     従って、即時に確認をしなくてはならない問題などを除いては、相手が意見を発言
     している最中に質問することは基本的には避けたほうがよいでしょう。 

    ・マナーを守る
     質問の条件として、「論理的かつ具体的でなくてはならない」ということを説明して
     きましたが、それに加えて質問をする際には守るべきマナーがあります。

     例えば、「なぜそのように考えるのですか?」「何が原因ですか?」「ほかにはどの
     ような要因が挙げられますか?」などと矢継ぎ早に質問を繰り返すと、その質問が
     論理的であればあるほど相手は問い詰められているような気持ちになり、心のガ
     ードが堅くなってしまいます。

     そうすると、それ以上相手から情報を引き出すことが困難になり、正確なコミュニ
     ケーションがとれなくなってしまいます。

     このため、質問をする際には、相手の答えを論理的かつ真摯に受け止めて、相手
     に自分の論理を押し付けることのないよう配慮しなくてはなりません。

     また、いくら論理的かつ具体的であっても、顧客に対して、

       「〜という考え方は改めるべきではありませんか?」

     といった質問をすると、顧客との間に感情的な対立を起こしてしまうことになり
     ます。

     このような場合は、

       「〜というような考え方もできるのではないでしょうか?」

     といった肯定的な提案の形式をとった質問が有効です。

     質問とは相手の意見を正確に理解し、正確なコミュニケーションをとるための基本
     的な手段です。

     従って、質問は論理的かつ感情を排して行われなくてはなりません。

     しかし、コミュニケーションの基本は、人間と人間との「相互対話」です。

     これは、会話のうえでは言葉のキャッチボールであり、このキャッチボールをうま
     く行うためには、自分が相手のボールを正確に受け止めると同時に、相手が受け
     取りやすいボールを投げてあげなくてはなりません。

     質問は相手の意見の本質に迫るものであるため、時として相手にとってはデッド
     ボールとなる危険性を持ち合わせています。

     このため、質問をする際には、正確であることに加えて、「相手に自分の論理を押
     し付ける」といったことのないよう、マナーを守って円滑なコミュニケーションをと
     ることが重要であることを常に念頭に置く必要があります。

    □評価(承認)
    業務を任せた後は、評価する段階です。
    この段階では、相手自身にとって次(今後、
    あるいは、ほかの業務)につながるように
    評価することがポイントとなります。

    そのため、評価する際には、

    (1)相手が納得できるよう客観的な事実を
      挙げて評価する

    (2)課題を挙げて評価する

    ことを心がけます。

    (1)は、相手が業務を遂行したときには、ま
    ず「よくやった」とほめ、認めることが大切
    です。

    それによって相手のモチベーションは高まる
    でしょう。

    ただし、ほめる場合でも、「何がよかったのか」
    が分かるような客観的な事実を挙げて評価するようにします。

    例えば、
    「今日行ったプレゼンテーションの中で、○○について述べたとき、お客様は大きく
    うなずいて△△について質問をしてきたね。君の案がお客様のニーズに即してい
    たんだと思うよ」というような言い方で、ビジネスコーチ自身が思ったことだけでは
    なく、ほかの人からの評価を伝えるようにすると相手は納得することができます。

    (2)は、ほめるだけではなく、課題を挙げて評価することも大切です。

    例えば、

    「今回は綿密な計画を立案し、それに沿ってよくがんばったと思う。ただし、この部
    分については、もう少し工夫が必要ではないかと感じけど、君はどう思う?」という
    ような言い方であえて課題を挙げることで、相手は次につなげることができます。

    <評価(承認)スキル>
     評価(承認)とは相手の存在そのものを認める「存在承認」、さらに、相手の変化や
     結果に気付いてそれを言葉としてきちんと伝える「変化承認」、「成果承認」の3つ
     の要素で考えることができます。

     (1)存在評価(承認)
       相手の存在を認めるとは当たり前のことのようですが、実はできていない場合
       も多いのです。

       たとえば、あいさつやちょっとした声がけは相手を承認するための大切な行為
       です。

       「あいさつしても上司が返してくれない」、「業務指示以外は−切声をかけてく
       れない」という状況では、部下は自分の存在を認めてもらっているとは感じま
       せん。

       そんな上司には相談事をしたくない、むしろ相談したら怒られるとさえ思うかも
       しれません。

       日頃からあらゆる機会を捉えて、相手のことを大切に思っていることを伝えて
       おかなければなりません。

     (2)変化への評価(承認)
       いっもとは違う変化を認めることです。

       変化には「遅刻がなくなった」、「ミスが減った」などのプラスの変化もあれ
       ば、「最近元気がない」、「言葉遣いが乱れてきた」などのマイナスの変化も
       あります。

       いずれの変化も日頃から相手に関心をもっていなければ、気付くことができま
       せん。

       また、気付いたとしても言葉に出さなければ相手にはわかりません。

       プラスでもマイナスでもそれをきちんと伝えることで、相手は「つねに自分のこ
       とを気にかけてくれている」という安心感を得ることができます。

     (3)成果の評価(承認)
       「成果の評価(承認」)とは相手が成果を上げたときに、それをしっかりと認
       めることです。

       これは単純に成果を賞賛することとは少しニュアンスが違います。

       このように成果承認で大切なのは、「成果そのものだけではなく、成果を上
       げるために努力した点も十分に理解していること」を言葉で伝えることで
       す。

       そのためには「○○の能力がアップした結果だね」、「業務設計が優れていた
       ね」といったプロセスも含めて成果承認することが必要です。

       また、相手によっては、「あなたは頑張ったね」という、あなたを主語にした
       言い方(あなたメッセージ)だけではなく、その結果「私はこう思った」という
       「私メッセージ」による評価(承認)も効果的です。

       たとえば、「君の頑張りは私も心強いよ」という承認の仕方です。

       あなたメッセージだけでは、それを相手が素直に受け取らない可能性が
       あっても、私メッセージでは「私自身」の気持ちを素直に表現しているため、
       相手に伝わりやすいのです。

  ■コーチングの基本ステップ

   以下のステップで上記記載の「傾聴」、「質問」、「評価(承認)」のスキルを活用し
   ます。
   
   1.目標の明確化
     目標の明確化において大切なのは、達成したときの自分の姿をイメージさせるこ
     とです。

     たとえば、営業マンの受注目標額を設定する際には、たんに「受注目標300万円」
     で終わらせずに、それを達成したら「営業マン自身がどのような能力を獲得
     しているか」、「その先にどんな道が開けるか」なども意識させます。

     また、目標を部下に考えさせることで、与えられたノルマではなく、自分自身で決め
     た目標と認識することができます。

   2.現状と問題の把握
     現状把握は「客観的事実そのもの」と「客観的事実をどのように認識しているのか」
     の2つの視点から行います。

     たとえば、営業マンの受注額が過去3ヶ月間連続して200万円だった場合、その
     受注額は客観的な事実です。  

     問題はこの金額を営業マンがどのように認識しているかです。

     「十分実力を発揮した結果」と満足している人もいるでしょう。

     逆に不満だと思っている人のなかには「まだまだ努力不足」と自責と捉えている人
     もいれば、「顧客に恵まれていない」と言い訳している人もいるはずです。

     これらについて十分に話を聞いて、質問を重ねるなかで事実誤認やたんなる思い
     込みを修正していきます。

     そして、目標達成のためにどのような能力アップや業務姿勢改善が必要かを気付
     かせます。

   3.行動計画 
     「目標の明確化」と「現状と問題の把握」を踏まえて、目標達成のために実際に何
     をやるのかを明確にしていくステップです。

     ここでも何をやるのかについて相手自身に気付かせます。

     まずは相手にできるだけ多くの選択肢を考えさせます。

     過去の自分の成功体験・失敗体験、周囲の優秀な営業マンの事例、営業関連の
     書籍から仕入れた知識など考える材料はたくさんあります。

     また、それらを組み合わせてオリジナルの方法を考えることもできます。

     ある程度明確になってきたら、それを実際の行動レベルに落とし込んでいきます。

     たとえば、「見込み客数を倍にする」ということになったら、「そのために明日から
     どのような行動が必要だと思う?」といった質問で、より具体的にしていきます。

     その際には「アポを何件取る」といった成果ではなく、「アポ取りの電話を何件
     する」といった、やる意思があれば必ず達成可能な行動を重視します。

   4.フォローと振り返り 
     実際に行動を起こしているかどうかを確認します。

     もしまだであれば、その障害となっている要因を再度考えさせます。

     また、行動している場合には、その結果としてどのようなことが起こったか、どのよ
     うに感じたかについて話を聞きます。

     行動がうまく成果につながっていない場合の失敗要因だけではなく、成果につなが
     った場合の成功要因についても考えさせます。

     場合によっては行動計画の一部見直しも必要になるかもしれません。

     フォローと振り返りは、相手の行動そのものを確認・修正するだけではなく、相手に
     対して「変化承認」、「成果承認」を与えるためにも重要なステップです。

     必ず実施しましょう。



  コーチは、コーチングが相手だけではなくコーチ自身のため、ひいては職場全体のために
  必要な取り組みであり、そしてそれを実践するコーチ自身は、相手のため、職場全体の
  ために不可欠な存在であることを忘れてはなりません。

 

 

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コーチングによる人材活用

            

コーチングによる人材活用


  ■コーチングの概要

   1.コーチとコーチング

     コーチ(Coach)という言葉が登場したのは1500年代で、馬車という意味があ
     りました。

     その馬車という言葉から、「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」と
     いう意味が派生します。

     さらに、1840年代には英国オックスフォード大学で、学生の受験指導をする
     個人教師のことをコーチと呼ぶようになりました。

     われわれになじみの深いスポーツの分野で使われるようになったのは1880
     年代のことで、ボート競技の指導者がコーチと呼ばれていたようです。

     こうした背景をもつコーチという概念から、1980年代のアメリカにおいて、クラ
     イアント(相手)の潜在的な能力を最大限に引き出し、自発的な行動を促進す
     るためのコミュニケーション技術としてのコーチングが生まれました。

     コーチングの基本になるのは、相手の可能性や能力を信頼することです。

     多くの場合、ゴールを達成したり、障害を打開するための答えや能力は相手
     自身がもっています。

     それらの能力を引き出し、相手の自発的な行動を促進することがコーチングで
     あり、そのコーチングを行う人をコーチと呼びます。

     つまり、コーチは相手とコーチング・カンバセーション(普通の会話とは異なる 
     コーチングのための会話)と呼ばれるコミュニケーションを交わすことによって
     相手が実現したいゴールを明確にし、短時間で達成できるようにサポートする
     人のことなのです。

   2.コーチングのポイント

     コーチングの目的が「相手の潜在的な能力を引き出し、自発的な行動を促進
     すること」にあるということは前述しました。

     それでは、そうした相手の行動を促すコーチングのポイントとはどういうものな
     のでしょうか。

     コーチの育成や企業へのコーチング研修で実績のある企業によると、コーチン
     グには100種類ものスキルがあるそうです。

     そして、これらの多くのスキルのべースは、

      ・聞くこと

      ・質問すること

     です。

     つまり、コーチは相手の話を聞き、適切な質問を繰り返すというコーチング・カ
     ンバセーションによって、

      ・相手に新しい視点を与える

      ・相手のなかから答えを引きだす

      ・相手に安心感と自信を与える

      ・相手に未来への夢を抱かせる

      ・相手に自発的な行動を促す

     ことを実現するのです。

     もちろん、相手に場当たり的な質問をしてもこうした効果は望めません。

     相手に気づきや前向きな変化をもたらすような効果的な質問を行うことがコー
     チングの最大のポイントになるのです。

  □ビジネスへの活用

   コーチングの考え方は、コミュニケーションの存在する場、職場や学校、家庭、各
   種サークルなどあらゆる場面で導入されています。

   とりわけ、最近は職場において自分のビジネスにいかしている方が増えているよ
   うです。

   コンサルタント、医師、弁護士、税理士といった専門職の方から、教師、企業経営
   者、管理職など幅広い分野の方がコーチングを活用しています。

   ここでは、とくにコーチングがビジネスの場で活用されるようになった背景や、コー
   チングを導入している企業事例を紹介しましょう。

   1.指示・命令型マネジメントの限界

     これまでの日本の企業でみられたマメネジメントスタイルは、どちらかといえば
     上司による指示・命令型が中心でした。

     このマネジメントスタイルは、上司が正解をもっている場合、つまり過去の成功
     体験がいかせる場合には、ある程度有効に機能しました。

     しかし、1990年代以降の「低成長でありながら変化のスピードが速い」時代に
     は、指示・命令型のマネジメントの有効性に陰りがでてきました。

     なぜなら、必ずしも上司の判断が正解とは限らなくなってしまったからです。

     逆に、過去の成功体験に縛られる上司の判断が間違っているケースが多く
     なったのかもしれません。

     さらに、この指示・命令型マネジメントには、「やらされる」「しなければならな
     い」といった感覚がついて回り、部下の創造的なアイデアや自発的な行動を阻
     害してきた面があります。

     こうした状況のもと、一部の企業経営者や経営幹部が「指示・命令型マネジメ
     ントの限界」に気づき、部下のやる気や能力、アイデアを引き出すスタイルの
     マネジメントを模索するようになりました。

     そこで、多くの企業で導入されるようになったのがコーチングの考え方を取り
     入れた双方向の質問型マネジメントだったのです。

     アメリカでコーチングがビジネス界に積極的に取り入れられるようになったの
     は、同国が不況にあえぎ、過去のマネジメントスタイルが疑問視されるように        
     なった1980年代後半でした。

     こうしてみると、現在の日本でコーチングが注目される理由が分かります。

   2.ビジネスの現場への導入

     コーチングの考え方を用いた質問型のマネジメントは、経営者や部下をもつ管
     理職であれば、誰にでも必要なものです。

     最近では、多くの企業のさまざまな部門でコーチングの手法が導入されるよう
     になっています。

     ここでは、比較的導入されることの多い営業部門においてコーチング手法を用
     いて業績・組織風土の改善に成功した事例を紹介します。

     (1)導入経緯

       建築業のA社では、売上高の低下に苦しんでいました。

       景気の影響もさることながら、営業マンの伸び悩みが売上高低下の大きな
       要因と考えた社長が、コーチの資格をもつコンサルタントに相談したこと
       が、コーチング導入のきっかけとなりました。

     (2)導入の流れ

       A社におけるコーチング手法導入の流れは、以下のようなものでした。

        @コンサルタントが営業マネージャーに対してコーチングを実施

        A2カ月目からコンサルタントが営業マネージャーに対しコーチング
          スキルを指導

        B3カ月目から営業マネージャーが部下に対し、コーチング手法を
          用いたミーティング開始

         ※営業マネージャーと部下とのミーティングにはコンサルタントが同席し、後で
            その内容をテーマとしてコーチングを実施

        C7カ月目からはコンサルタントの手を離れ、営業マネージャーによる
          質問型のマネジメントが定着

        D10カ月目から他部門での導入開始

     (3)コーチングによる改善の概要

       コーチング導入前のA社における営業マネージャーのマネジメントは、各営
       業マンに対して毎月目標を割り振り、数値の進捗状況をチェックしながら
       日々アプローチ方法やセールストークを指導するというものでした。

       「このA社の営業マネージャーは、少なくとも数値だけしか詰めない古いタイ
       プではなかった。しかし、プレイングマネージャーであるため、すべての営
       業マンに同行する時間がなく、異なる顧客に対してもアドバイス内容が画 
       一的になっていた。営業マンは熱心に顧客訪問を行い、アドバイス通り行
       動しているため、成果につながらなくても仕方ないという空気が強くなって
       いた」のです。

       専門家のコーチングにより、営業マネージャーは自分自身でマネジメントス
       タイルを変えることにしました。

       変更のポイントは次のようなものです。

        @目標を営業マン自身に決定させる

         →営業マン個々の収入や将来像を想い描かせることでモチベー
          ションが高まり、全員の目標合計はそれまでの全社目標を上回った。
          なお、営業成績によるインセンティプ制度は以前から存在した
          ものを維持し、とくに変更はしなかった。

        A数値の進捗確認を営業チームで共有する

         →営業マンのアイデアをいかしてボードに進捗数値と活動内容を
          掲示し、お互いの業績や行動状況を共有化した。

        B営業活動の方法を営業マン自身で考えさせ、決定させる

         →これまでの「こうやってみなさい」という指導から、どうするのかを
          営業マンそれぞれに考えさせるようにした。
          アドバイスするときも、あくまで提案のひとつというスタンスを貫いた。

        C上記を徹底するためにコーチング手法を取り入れ、営業マンとの
          コミュニケーションを密にする

         →とにかく、営業マネージャーは個々の営業マンの力を信じ、営業
          マンの能力やアイデアを引き出せるようなサポートに徹した。

       このような営業マネージャーのマネジメントスタイルの変化により、営業マン
       も変わっていきました。

       営業マンの言葉を拾ってみると「任されている、信じてもらっているという実
       感がある」「仕事に自信がついた」「やる気が出てきた」「自分のアイデアを
       取り入れてもらえるので頑張ろうと思った」という前向きなものがほとんどで
       した。

     (4)質問事例

       なお、こうした変化を生みだした営業マネージャーが意識して行ったという
       質問の事例をいくつか紹介します。

       @目標設定のコーチング時

         「C君にとって自分自身の理想の姿って、どういうものだろう」
         「C君が持てる力をすべて出し切ったら、どの程度できるかね」
         「C君にとって達成したときに心から満足できる目標ってどの
         程度だろうね」
         「3年後のC君の○○○という目標を達成するために、今どうするのが
         よいだろう」
         「この目標をやり遂げたときに、C君はどんな状態になっているかな」

       A営業マンとの個別営業のコーチング時

         「明日の訪問の後、何が実現していれば成功といえるだろうね」
         「このお客さんの状況は、ゴールに対し、あと何%まできている
         んだろうね」
         「この提案をしたとき、お客様はどんなことを考えるだろうね」
         「お客様に確認しておくことは何だろうね」
         「次の営業ステップに進むためには何が必要だろうね」
         「何か必要な資料・ツールはあるかな」
         「お客様が悩んでいることは何だろうね」
         「N君がお客さんだったらどうして欲しい」
         「もしも明日クロージングするとすれば、何が必要だろう」
         「私に何かサポートして欲しいことはあるかい」
         「メンバーに協力を依頼することはないかい」
         「N君の強みをいかすにはどういうアプローチがよいだろうか」
         「今日(今週・今月)のN君の活動は何点だったかな」
         「今日の活動でよかったこと(悪かったこと)は何かな」
         「来週の今頃はどういう状況になっているかな」
         「私と立場が変わったら、N君は私にどういうアドバイスをすると思う」
         「N君ほかにアプローチする方法(準備すること)はないかい」
         「ライバルB社の営業マンは何を考えているだろうね」
         「この提案を実行するときにお客様の障害になるのは何かね」
         「あと、何%頑張れる」

     (5)コーチング導入の効果

       A社の社長によると「まず、営業マネージャーが明るくなり、続いて営業部
       門全体に活気が出てきた。

       そして、半年経った頃から景気は悪化しているにもかかわらず、営業成績
       が上向いてきた。

       何より営業部門の社員の発言が前向きになったことが大きな変化だ」とい
       うことです。

     (6)自社にコーチングを導入する

       ここでは、コーチングという手法の存在を紹介したものにすぎません。

       もう一歩進んで、よりコーチングという考え方について学んでみたいという
       方は、書籍をおすすめします。

       コーチングに関する書籍は現在多数出版されているので、これらの書籍を 
       読んだうえで具体的な導入方法について検討するというステップがよいで
       しょう。

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社長に必要なコーチングスキル

       

社長に必要なコーチングスキル


  ■コーチングとは

   ビジネスの分野で「コーチング」の重要性について取り上げられることが増えてき
   ました。

   社長自らが専門家からコーチングを受けたり、社内全体に手法を導入しようという
   動きも盛んです。

   導入した会社の多くでは社員の自立性やモチベ−ション向上などの成果を上げ
   ています。

   ここでは、社長自身が身につけておきたいコーチングスキルについて解説しま
   す。

    1.答えはつねに相手のなかにある
     コーチングとは、相手の目標達成をサポートするためのコミュニケーション手
     法のひとつです。

     プロ野球には投手コーチや打撃コーチなどがいますが、彼らの本来の仕事は
     すでにプロ選手としての一定の実力をもっている選手たちが、それぞれの特徴
     をいかして最大の成果を出せるようにガイドしていくことにあります。

     特にベテラン選手に対しては細かい技術指導などは行わず、選手自身に問題
     点を気付かせて、答えを見つけるように指導します。

     このようにコーチングにおいては、目標達成に向けた答えは相手のなかにあ
     ると考えます。

     相手がすでにもっている能力・意欲・経験などを引き出して、相手自らが主体
     的に取り組むようにサポートすることがコーチングのおもな目的です。

    2.コーチングとティーチング
     (1)両者の違い
       コーチングと対比される言葉にティーチングがあります。
       ティーチングとはティーチャーが自分の知識や技術などを生徒に教えること
       です。

       コーチングは双方向のコミュニケーションによって成立しますが、ティーチン
       グではティーチャーから生徒への一方的なコミュニケーションとなります。

       また、コーチングでは答えはつねに相手のなかにあると考えますが、ティー
       チングでは答えはつねにティーチャーの側にあります。

       つまり、コーチとティーチャーは役割や立場がまったく違う。

       部下に対しての指導は状況に応じてコーチングとティーチングを使い分け
       る必要があります。

     (2)主体性を育てるコーチング
       たとえば、お客さまとすぐに仲良くなれるのに、最終的な契約の一歩手前で
       いつも止まってしまう営業マンがいる場合、ティーチングであれば上司は
       「もっと商品のメリットが伝わる資料を作成して説明しなさい」といった指示
       (答え)を与えます。

       一方、コーチングでは「契約に向けてほかに何か必要な資料はないか
       な?」という具合に質問を繰り返し、部下自身から答えを引き出します。

       通常はティーチングで指導したほうが、上司も部下も楽ですし、短い時間で
       成果につなげることができます。

       しかし、あえてコーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって
       働く習慣が身につきます。

       また、ティーチングですべてに答えをもらっていた頃の「やらされ感」から解
       放されて、よりやる気をもって働けるようになります。

     (3)上司のわからないことにも対応できる
       また、コーチングでは上司が答えをもっていない場合でも、部下に答えを見
       つけさせることが可能になります。

       上司は基本的に自分の過去の経験から答えを見つけますが、部下が抱え
       ている顧客のなかには、上司が接したことがないまったく新しいニーズを
       もっている顧客もいるでしょう。

       すべての答を上司が見つけるのは困難であり、その顧客のことを一番知っ
       ている部下自らが導き出した答えが正しいことも多いのです。

       さらに、専門知識が必要な分野で上司にそれがない場合でも、専門知識の
       ある部下に自ら考えさせることで、答えを引き出すこともできます。

    3.社長にとってのコーチング
     社長のなかには外部の専門家のコーチングを受けて、自分自身の気付きや
     意思決定に役立てている人が多くいます。

     自分がコーチングを受けることで、手法そのものについて学ぶこともできます。

     さらに、一定の経験を積めば、自分自身に対する「セルフコーチング」も可能に
     なります。

     また、社長は経営幹部たちに対してコーチングを行う立場でもあります。

     従来型の業務指示やティーチングによる指導に加えて、コーチングによって彼
     ら自身が答えを見つける習慣を身につけさせることで成長が加速します。

     受け身的な幹部を自発的な幹部へと脱皮させることも可能です。 

     コーチング手法を体系的にきちんと理解するためには、相応の勉強時間が必
     要ですが、「コーチング的な発想」を身につけて、日頃の幹部たちへの対応に
     いかすだけでも、大きな効果が期待できるでしょう。

  □基本となるスキル
   コーチングに必要なスキルのなかでベースとなるのは「傾聴スキル」、「質問スキ
   ル」、「承認スキル」です。話を丁寧に聞いて適切な質問をし、相手をきちんと認め
   ることがコーチングの原則です。

    1.傾聴スキル
     (1)事実だけではなく相手の認識を聞き出す
       
傾聴とは、徹底的に相手の話を聞くことです。

       たとえば、普通は部下が仕事上の問題を相談してきた場合に、上司は起
       こっている問題の事実関係を詳細に聞き出し、自らの判断で早急に手を打
       とうとするでしょう。

       短時間での問題解決を優先する場合には仕方ないが、これは傾聴ではあ
       りません。

       コーチングの目的は上司ではなく、部下自身に解決策を考えさせることに
       あります。

       部下には問題の事実関係だけではなく、それに対して部下自身がどのよう
       に感じているかについても話してもらわなければなりません。

       部下は自分のなかにある情報をいったん外に出すことで、情報のもつ意味
       を認識できるようになります。

     (2)自分がきちんと聞いていることをわかってもらう
       また、最後まで黙って耳を傾けるだけでは十分ではない。

       部下が当初話そうとしていた以上の話をするように仕向けることも必要で
       す。

       タイミングよくうなずいたり、相づちを打つなどして、自分が相手の話をきち
       んと聞いていることをわかってもらわなければならない。

       さらに、話の内容だけではなく、声のトーン、表情、しぐさなどから相手の感
       情を読み取ることも重要です。

     (3)日頃からの言動に注意する
       そして、コーチングを行うときだけではなく、日頃から「部下が話しかけやす
       い雰囲気」をつくっておくことも大切です。

       部下は威圧的・拒絶的な印象が強い上司にはそもそも相談しようという気
       になりません。

       つねに笑顔で接し、上司の側からあいさっするなどを心掛けましょう。

    2.質問スキル
     (1)コーチングにおける質問とは
       通常、質問とは「自分が知らないことをわかる」目的で「自分のために」行う
       ものです。
       したがって、自分がわかってしまえば質問はそこで終了になります。

       しかし、コーチングにおける質問はその逆であり、「相手が気付いていない
       ことをわかってもらう」目的で、「相手のために」行うものです。

       したがって、途中で自分がわかったとしても、相手がわかっていなければ質
       問を続けなければなりません。

       そして、質問に対する答えにはきちんと傾聴します。

       <通常の質問>
         ・なぜ、受注に失敗した?
         ・できない理由は何だ?
         ・どうしてもっと早く報告しないんだ?

       <コーチングにおける質問の例>
         ・失敗した理由は何だと思う?
         ・おもな障害は何だと思う?
         ・どうすればすぐに報告できると思う?

       このようなスタンスで質問を続けることは、まどろっこしく、面倒に感じます。

       しかし、考える主体はあくまで部下であり、上司は答えをもっていたとしても
       先回りしてそれを示してはならない。

       部下が正しい答えにたどり着くようにサポート役に徹する必要があるので
       す。

       また、質問した後には、相手が十分に考えられるよう、時間をおくことが大
       切です。

       その時間を惜しんで立て続けに問いかけると、質問ではなく「詰問」になっ
       てしまいます。

     (2)オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
       質問にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2種類がある。

       オープンクエスチョンとは「この仕事のポイントは何だと思う?」といった自
       由に答えられる質問であり、クローズドクエスチョンとは「関係者との調整が
       一番重要だと思うんだね?」といったイエスかノーの答えを求める質問。

       オープンクエスチョンで相手から考えや気持ちを幅広く聞き、クローズドクエ
       スチョンで重要点を確認するというのが通常の流れです。

       オープンクエスチョンでは、いわゆる「5WIH」(Who:誰、Wha t:何、
       Whe n:いつ、Whe r e:どこ、Why:なぜ、How:どうやって)の疑問詞を
       活用しながら質問を組み立てます。

       これにクローズドクエスチョンを組み合わせた例として、次のような
       質問の流れが考えられます。

    3.承認スキル 
      承認とは相手の存在そのものを認める「存在承認」、さらに、相手の変化や
      結果に気付いてそれを言葉としてきちんと伝える「変化承認」、「成果承認」
      の3つの要素で考えることができます。

     (1)存在承認
       相手の存在を認めるとは当たり前のことのようですが、実はできていない
       場合も多いのです。

       たとえば、挨拶やちょっとした声がけは相手を承認するための大切な行為
       です。

       「あいさつしても上司が返してくれない」、「業務指示以外は一切声をかけて
       くれない」という状況では、部下は自分の存在を認めてもらっているとは感
       じません。

       そんな上司には相談事をしたくない、むしろ相談したら怒られるとさえ思う
       かもしれません。

       日頃からあらゆる機会を捉えて、相手のことを大切に思っていることを伝え
       ておかなければなりません。

     (2)変化承認
       「変化承認」とはいっもとは違う変化を認めることです。

       変化には「遅刻がなくなった」、「ミスが減った」などのプラスの変化もあれ
       ば、「最近元気がない」、「言葉遣いが乱れてきた」などのマイナスの変化も
       あります。

       いずれの変化も日頃から相手に関心をもっていないと気付くことができま
       せん。

       また、気付いたとしても言葉に出さなければ相手にはわかりません。

       プラスでもマイナスでもそれをきちんと伝えることで、相手は「つねに自分の
       ことを気にかけてくれている」という安心感を得ることができます。

     (3)成果承認
       「成果承認」とは相手が成果を上げたときに、それをしっかりと認めることで
       す。

       これは単純に成果を賞賛することとは少しニュアンスが違う。

       たとえば、私たちはなでしこジャパンが2011年ワールドカップで優勝したと
       きにその偉業に対して、賞賛を惜しみませんでした。

       世界最高の場での金メダル獲得について「とにかくすごい」と感じたからで
       す。

       その賞賛が彼女たちの励みになったことは間違いない。

       しかしながら、なでしこジャパンの厳しいトレーニングや節制ぶりを近くで見
       守ってきた監督や関係者たちは、金メダルそのものよりも、むしろそこに至
       るまでの彼女たちの努力に対して、心から「よく頑張った」と感じたことでしょ
       う。

       相手のことを深く理解しているからこそ、たんなる賞賛ではない成果承認が
       できるのです。

       そして、彼女たちの心により響いたのは、賞賛よりも成果承認でしょう。

       このように成果承認で大切なのは、「成果そのものだけではなく、成果を上
       げるために努力した点も十分に理解していること」を言葉で伝えること。

       そのためには「○○の能力がアップした結果だね」、「業務設計が優れていた
       ね」といったプロセスも含めて成果承認することが必要です。

       また、相手によっては、「あなた(YOU)は頑張ったね」という、あなたを主語
       にした言い方(YOUメッセージ)だけではなく、その結果「私(T)はこう思っ
       た」という「Tメッセージ」による承認も効果的です。

       たとえば、「君の頑張りは私も心強いよ」という承認の仕方。

       YOUメッセージだけでは、それを相手が素直に受け取らない可能性があっ
       ても、Tメッセージでは「私自身」の気持ちを素直に表現しているため、相
       手に伝わりやすいのです。

  □ステップ
   コーチングは基本的に次のようなステップで行います。
    1.目標の明確化
    2.現状と問題の把握
    3.行動計画
    4.フォローと振り返り

   それぞれのステップで「傾聴」、「質問」、「承認」のスキルを活用します。

   ここでは、ある営業マンに対するコーチングを例にして話を進めてみます。

    1.目標の明確化
      目標の明確化において大切なのは、達成したときの自分の姿をイメージさせ
      ることです。

      たとえば、営業マンの受注目標額を設定する際には、たんに「受注目標300
      万円」で終わらせずに、それを達成したら「営業マン自身がどのような能力を
      獲得しているか」、「その先にどんな道が開けるか」なども意識させます。

      また、目標を部下に考えさせることで、与えられたノルマではなく、自分自身
      で決めた目標と認識することができます。

    2.現状と問題の把握
      現状把握は「客観的事実そのもの」と「客観的事実をどのように認識している
      のか」の2つの視点から行います。

      たとえば、営業マンの受注額が過去3カ月間連続して200万円だった場合、
      その受注額は客観的な事実です。

      問題はこの金額を営業マンがどのように認識しているかです。

      「十分実力を発揮した結果」と満足している人もいるでしょう。

      逆に不満だと思っている人のなかには「まだまだ努力不足」と自責と捉えて
      いる人もいれば、「顧客に恵まれていない」と他責にしている人もいるはずで
      す。

      これらについて十分に話を聞いて、質問を重ねるなかで事実誤認やたんなる
      思い込みを修正していきます。

      そして、目標達成のためにどのような能力アップや業務姿勢改善が必要かを
      気付かせます。

    3.行動計画
      「目標の明確化」と「現状と問題の把握」を踏まえて、目標達成のために実際
      に何をやるのかを明確にしていくステップです。

      ここでも何をやるのかについて相手自身に気付かせます。

      まずは相手にできるだけ多くの選択肢を考えさせます。

      過去の自分の成功体験・失敗体験、周囲の優秀な営業マンの事例、営業関
      連の書籍から仕入れた知識など考える材料はたくさんある。

      また、それらを組み合わせてオリジナルの方法を考えることもできます。

      ある程度明確になってきたら、それを実際の行動レベルに落とし込んでいき
      ます。

      たとえば、「見込み客数を倍にする」ということになったら、「そのために明日
      からどのような行動が必要だと思う?」といった質問で、より具体的にしてい
      きます。

      その際には「アポを何件取る」といった成果ではなく、「アポ取りの電話を何
      件する」といった、やる意思があれば必ず達成可能な行動を重視します。

    4.フォローと振り返り
      実際に行動を起こしているかどうかを確認します。

      もしまだであれば、その障害となっている要因を再度考えさる。

      また、行動している場合には、その結果としてどのようなことが起こったか、
      どのように感じたかについて話を聞きます。

      行動がうまく成果につながっていない場合の失敗要因だけではなく、成果に
      つながった場合の成功要因についても考えさせます。

      場合によっては行動計画の一部見直しも必要になるかもしれない。 

      フォローと振り返りは、相手の行動そのものを確認・修正するだけではなく、
      相手に対して「変化承認」、「成果承認」を与えるためにも重要なステップで
      す。

      必ず実施しましょう。

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