コーチングスキルの基本は傾聴、質問、評価(承認)

         

コーチングスキル

   
  ■コーチング

   「コーチング」は、スポーツの分野で用いられてきた言葉で、選手の潜在能力を高める
   ことを目的とした「質問型」の指導方法である。

   近年、人材育成の一環である上司と部下のコミュニケーション方法として「コーチング」
   はすっかり定着した感があります。

   スポーツにおいてもビジネスおいてもメンタルな部分が大切であることから、現在の
   厳しい経営環境のなかで求められている人材は、自ら考え、自ら行動する「自立型」の
   人材です。

   コーチングの効果は部下の人材育成のみならず、セールススキルのアップにも効果的
   です。

   通常はティーチングで指導したほうが、上司も部下も楽ですし、短い時間で成果につな
   げることができます。

   しかし、企業の多くで行われているティーチングによる指導では指示待ち社員を生み、
   上司の一方通行の指示に終始してしまいます。

   あえてコーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって働く習慣が身につ
   きます。

   また、ティーチングですべてに答えをもらっていた頃の「やらされ感」から解放されて、
   よりやる気をもって働けるようになります。

   質問型のコーチングによって、自ら考え実行できる人材を育てることができます。

   コーチングは、当然のことながら、コーチする側と受ける側に分かれます。

   しかし、コーチを受けるべき人材は多くても、適切なコーチングができる人材は少ない
   のが現状です。

   適切なコーチをするためには、コーチングの手法を学び、それを実践していく人材を育成
   することからはじめなければなりません。

   しかしコーチングを含め、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。   


   コーチングとは相手の目標達成をサポートするためのコミュニケーション手法のひとつ
   です。

   今では、コーチングは人材育成におけるモチベーションアップ、セールススキルの向上
   など双方向のコミュニケーション手法として大きな力を発揮します。

   コーチングには技術面をコーチする「スキルコ
   ーチング」と、心や精神面をサポートする「メン
   タルコーチング」の2つに分けることができます。

   ここでは「スキルコーチング」について解説しま
   す。

   コーチングを学ぶべき人材は、経営者、マネー
   ジャー、リーダー、など、後輩や部下を指導す
   る立場にある経営陣・管理職・部門長になりま
   す。

   相手がすでにもっている能力・意欲・経験などを
   引き出して、部下自らが主体的に取り組むよう
   にサポートすることがコーチングのおもな目的です。

   コーチングは部下の目標達成をサポートするための
   コミュニケーション手法のひとつで、社員の自立性や
   モチベーション向上に効果的です。

   コーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって働く習慣が身につくように
   なり、問題点のすべてに答えをもらう「やらされ感」から解放されて、よりやる気をもっ
   て働けるようになります。

  □コーチングの目的
    ・自分でものを考える自立型の人材を育成のため
    ・上司が自分の知識や体験を効果的に部下に伝えるため
    ・上司がそれぞれの部下に合った指導方法をみつけるため
    ・部下から仕事の手順などについて積極的な提案ができるようにするため
    ・さまざまなアイデアや意見を多く集めるため
    ・社内での会話量(コミュニケーション)が増え、その結果、問題発生を未然に防
     ぐため
    ・質問力の強化による営業力強化のため

   コーチングは決して難しく、高度なテクニックを要するものではないと理解すること 
   です。

   正しい「聴く」、「質問する」、「認める」を習得することで部下、お客様とのコミュニ
   ケーションアップに欠かせないスキルとなります。


  ■コーチングスキル

   コーチングでは、相手のことをよく知り上手にコミュニケーションを図る必要があり
   ます。

   事前に、部下面談テンプレート、業務別テンプレート(営業職 内務職)により、性格・
   考え方・長所と短所・得意分野などを把握しておくと、スムーズです。   

   コーチングに必要なスキルのなかで基本となるのは「傾聴」、「質問」、「評価(認
   める)」です。

   話を丁寧に聞いて適切な質問をし、相手をきちんと認めることがコーチングの原則
   です。

  傾聴 
   傾聴とは聞くではなく、徹底的に相手の話を「聴く」ことです。

   コーチングの目的は上司ではなく、部下自身に解決策を考えさせることにあります。

   部下には問題の事実関係だけではなく、それに対して部下自身がどのように感じてい
   るかについても話してもらわなければなりません。

   部下は自分のなかにある情報をいったん外に出すことで、情報のもつ意味を認識でき
   るようになります。

   部下が当初話そうとしていた以上の話をするように仕向けることも必要です。

   タイミングよくうなずいたり、相づちを打つなどして、自分が相手の話をきちんと聞いて
   いることをわかってもらわなければなりません。

   日頃から「部下が話しかけやすい雰囲気」をつくっておくことも大切です。

   部下は威圧的・拒絶的な印象が強い上司にはそもそも相談しようという気になりません。

   つねに笑顔で接し、上司の側からあいさつするなどを心掛けることです。
  
  □詰問ではなく質問
   コーチングにおける質問は「相手が気付いていないことをわかってもらう」目的で、「相
   手のために」行うものです。

   したがって、途中で自分がわかったとしても、相手がわかっていなければ質問を続けな
   ければなりません。

   そして、質問に対する答えにはきちんと傾聴します。

   質問は「なぜ(why)?」ではなく「何(what)?」を使う。

   「なぜ(why)」で始まる疑問文を、「何(what)」を使った疑問文に替えることを試し
   てみましょう。

   日々の部下との業務に関する会話においても、今までの質問の冒頭に「なぜ?」、
   「もっと」「どうして!」といった詰問をしないことです。

   例えば、
    ・何が君にそうさせたのかを教えてほしい。
    ・やらなかった理由には何があるの?

   といった質問の投げかけ方をしたほうが、やわらかい感じがするため、部下は精神的に
   安定するのです。

    ・なぜ、受注に失敗した? ⇒ 失敗した理由はなんだと思う
    ・できない理由は何だ? ⇒ おもな障害はなんだと思う
    ・どうしてもっと早く報告しないんだ ⇒ どうすればすぐに報告できると思う

   このようなスタンスで質問を続けることは、まどろっこしく、面倒に感じます。

   しかし、考える主体はあくまで部下であり、上司は答えをもっていたとしても先回りして
   それを示してはなりません。

   部下が正しい答えにたどり着くようにサポート役に徹する必要があるのです。

   質問した後には、相手が十分に考えられるよう、時間をおくことが大切です。

   その時間を惜しんで立て続けに問いかけると、質問ではなく「詰問」になってしまい
   ます。

    <質問の留意点>
    ・意見を論理的に聞く
     一般的に、人間は頭の中で思考を組み立て、その筋道に沿って相手に分かりや
     すいように意見を伝えようとします。

     しかし、会話を通じて相手の意見や態度に即応して自身の意見が変化していき、
     その結果、意見の整合性が崩れてしまう場合も多々あります。

     このような場合、意見を聞く側も相手につられて自分の意見を流されてしまいがち
     です。

     互いがそのような状況に陥ると論理的な質問はできなくなってしまいます。

     このため、論理的な質問をするためには、相手の意見を論理的に聞き、自分の意
     見と対比させながら「何を質問するのか」を常に明確にしておくことが必要となり
     ます。

     また、相手が発言をしている途中で質問を差しはさむと、その質問に答えるために
     相手の思考がいったん中断することとなります。

     このようなことが度々重なると、相手の思考がこま切れとなり、意見のポイントと
     なる部分にズレが生じてしまう可能性があります。

     従って、即時に確認をしなくてはならない問題などを除いては、相手が意見を発言
     している最中に質問することは基本的には避けたほうがよいでしょう。 

    ・マナーを守る
     質問の条件として、「論理的かつ具体的でなくてはならない」ということを説明して
     きましたが、それに加えて質問をする際には守るべきマナーがあります。

     例えば、「なぜそのように考えるのですか?」「何が原因ですか?」「ほかにはどの
     ような要因が挙げられますか?」などと矢継ぎ早に質問を繰り返すと、その質問が
     論理的であればあるほど相手は問い詰められているような気持ちになり、心のガ
     ードが堅くなってしまいます。

     そうすると、それ以上相手から情報を引き出すことが困難になり、正確なコミュニ
     ケーションがとれなくなってしまいます。

     このため、質問をする際には、相手の答えを論理的かつ真摯に受け止めて、相手
     に自分の論理を押し付けることのないよう配慮しなくてはなりません。

     また、いくら論理的かつ具体的であっても、顧客に対して、

       「〜という考え方は改めるべきではありませんか?」

     といった質問をすると、顧客との間に感情的な対立を起こしてしまうことになり
     ます。

     このような場合は、

       「〜というような考え方もできるのではないでしょうか?」

     といった肯定的な提案の形式をとった質問が有効です。

     質問とは相手の意見を正確に理解し、正確なコミュニケーションをとるための基本
     的な手段です。

     従って、質問は論理的かつ感情を排して行われなくてはなりません。

     しかし、コミュニケーションの基本は、人間と人間との「相互対話」です。

     これは、会話のうえでは言葉のキャッチボールであり、このキャッチボールをうま
     く行うためには、自分が相手のボールを正確に受け止めると同時に、相手が受け
     取りやすいボールを投げてあげなくてはなりません。

     質問は相手の意見の本質に迫るものであるため、時として相手にとってはデッド
     ボールとなる危険性を持ち合わせています。

     このため、質問をする際には、正確であることに加えて、「相手に自分の論理を押
     し付ける」といったことのないよう、マナーを守って円滑なコミュニケーションをと
     ることが重要であることを常に念頭に置く必要があります。

    □評価(承認)
    業務を任せた後は、評価する段階です。
    この段階では、相手自身にとって次(今後、
    あるいは、ほかの業務)につながるように
    評価することがポイントとなります。

    そのため、評価する際には、

    (1)相手が納得できるよう客観的な事実を
      挙げて評価する

    (2)課題を挙げて評価する

    ことを心がけます。

    (1)は、相手が業務を遂行したときには、ま
    ず「よくやった」とほめ、認めることが大切
    です。

    それによって相手のモチベーションは高まる
    でしょう。

    ただし、ほめる場合でも、「何がよかったのか」
    が分かるような客観的な事実を挙げて評価するようにします。

    例えば、
    「今日行ったプレゼンテーションの中で、○○について述べたとき、お客様は大きく
    うなずいて△△について質問をしてきたね。君の案がお客様のニーズに即してい
    たんだと思うよ」というような言い方で、ビジネスコーチ自身が思ったことだけでは
    なく、ほかの人からの評価を伝えるようにすると相手は納得することができます。

    (2)は、ほめるだけではなく、課題を挙げて評価することも大切です。

    例えば、

    「今回は綿密な計画を立案し、それに沿ってよくがんばったと思う。ただし、この部
    分については、もう少し工夫が必要ではないかと感じけど、君はどう思う?」という
    ような言い方であえて課題を挙げることで、相手は次につなげることができます。

    <評価(承認)スキル>
     評価(承認)とは相手の存在そのものを認める「存在承認」、さらに、相手の変化や
     結果に気付いてそれを言葉としてきちんと伝える「変化承認」、「成果承認」の3つ
     の要素で考えることができます。

     (1)存在評価(承認)
       相手の存在を認めるとは当たり前のことのようですが、実はできていない場合
       も多いのです。

       たとえば、あいさつやちょっとした声がけは相手を承認するための大切な行為
       です。

       「あいさつしても上司が返してくれない」、「業務指示以外は−切声をかけてく
       れない」という状況では、部下は自分の存在を認めてもらっているとは感じま
       せん。

       そんな上司には相談事をしたくない、むしろ相談したら怒られるとさえ思うかも
       しれません。

       日頃からあらゆる機会を捉えて、相手のことを大切に思っていることを伝えて
       おかなければなりません。

     (2)変化への評価(承認)
       いっもとは違う変化を認めることです。

       変化には「遅刻がなくなった」、「ミスが減った」などのプラスの変化もあれ
       ば、「最近元気がない」、「言葉遣いが乱れてきた」などのマイナスの変化も
       あります。

       いずれの変化も日頃から相手に関心をもっていなければ、気付くことができま
       せん。

       また、気付いたとしても言葉に出さなければ相手にはわかりません。

       プラスでもマイナスでもそれをきちんと伝えることで、相手は「つねに自分のこ
       とを気にかけてくれている」という安心感を得ることができます。

     (3)成果の評価(承認)
       「成果の評価(承認」)とは相手が成果を上げたときに、それをしっかりと認
       めることです。

       これは単純に成果を賞賛することとは少しニュアンスが違います。

       このように成果承認で大切なのは、「成果そのものだけではなく、成果を上
       げるために努力した点も十分に理解していること」を言葉で伝えることで
       す。

       そのためには「○○の能力がアップした結果だね」、「業務設計が優れていた
       ね」といったプロセスも含めて成果承認することが必要です。

       また、相手によっては、「あなたは頑張ったね」という、あなたを主語にした
       言い方(あなたメッセージ)だけではなく、その結果「私はこう思った」という
       「私メッセージ」による評価(承認)も効果的です。

       たとえば、「君の頑張りは私も心強いよ」という承認の仕方です。

       あなたメッセージだけでは、それを相手が素直に受け取らない可能性が
       あっても、私メッセージでは「私自身」の気持ちを素直に表現しているため、
       相手に伝わりやすいのです。

  ■コーチングの基本ステップ

   以下のステップで上記記載の「傾聴」、「質問」、「評価(承認)」のスキルを活用し
   ます。
   
   1.目標の明確化
     目標の明確化において大切なのは、達成したときの自分の姿をイメージさせるこ
     とです。

     たとえば、営業マンの受注目標額を設定する際には、たんに「受注目標300万円」
     で終わらせずに、それを達成したら「営業マン自身がどのような能力を獲得
     しているか」、「その先にどんな道が開けるか」なども意識させます。

     また、目標を部下に考えさせることで、与えられたノルマではなく、自分自身で決め
     た目標と認識することができます。

   2.現状と問題の把握
     現状把握は「客観的事実そのもの」と「客観的事実をどのように認識しているのか」
     の2つの視点から行います。

     たとえば、営業マンの受注額が過去3ヶ月間連続して200万円だった場合、その
     受注額は客観的な事実です。  

     問題はこの金額を営業マンがどのように認識しているかです。

     「十分実力を発揮した結果」と満足している人もいるでしょう。

     逆に不満だと思っている人のなかには「まだまだ努力不足」と自責と捉えている人
     もいれば、「顧客に恵まれていない」と言い訳している人もいるはずです。

     これらについて十分に話を聞いて、質問を重ねるなかで事実誤認やたんなる思い
     込みを修正していきます。

     そして、目標達成のためにどのような能力アップや業務姿勢改善が必要かを気付
     かせます。

   3.行動計画 
     「目標の明確化」と「現状と問題の把握」を踏まえて、目標達成のために実際に何
     をやるのかを明確にしていくステップです。

     ここでも何をやるのかについて相手自身に気付かせます。

     まずは相手にできるだけ多くの選択肢を考えさせます。

     過去の自分の成功体験・失敗体験、周囲の優秀な営業マンの事例、営業関連の
     書籍から仕入れた知識など考える材料はたくさんあります。

     また、それらを組み合わせてオリジナルの方法を考えることもできます。

     ある程度明確になってきたら、それを実際の行動レベルに落とし込んでいきます。

     たとえば、「見込み客数を倍にする」ということになったら、「そのために明日から
     どのような行動が必要だと思う?」といった質問で、より具体的にしていきます。

     その際には「アポを何件取る」といった成果ではなく、「アポ取りの電話を何件
     する」といった、やる意思があれば必ず達成可能な行動を重視します。

   4.フォローと振り返り 
     実際に行動を起こしているかどうかを確認します。

     もしまだであれば、その障害となっている要因を再度考えさせます。

     また、行動している場合には、その結果としてどのようなことが起こったか、どのよ
     うに感じたかについて話を聞きます。

     行動がうまく成果につながっていない場合の失敗要因だけではなく、成果につなが
     った場合の成功要因についても考えさせます。

     場合によっては行動計画の一部見直しも必要になるかもしれません。

     フォローと振り返りは、相手の行動そのものを確認・修正するだけではなく、相手に
     対して「変化承認」、「成果承認」を与えるためにも重要なステップです。

     必ず実施しましょう。



  コーチは、コーチングが相手だけではなくコーチ自身のため、ひいては職場全体のために
  必要な取り組みであり、そしてそれを実践するコーチ自身は、相手のため、職場全体の
  ために不可欠な存在であることを忘れてはなりません。

 

 

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社長に必要なコーチングスキル

       

社長に必要なコーチングスキル


  ■コーチングとは

   ビジネスの分野で「コーチング」の重要性について取り上げられることが増えてき
   ました。

   社長自らが専門家からコーチングを受けたり、社内全体に手法を導入しようという
   動きも盛んです。

   導入した会社の多くでは社員の自立性やモチベ−ション向上などの成果を上げ
   ています。

   ここでは、社長自身が身につけておきたいコーチングスキルについて解説しま
   す。

    1.答えはつねに相手のなかにある
     コーチングとは、相手の目標達成をサポートするためのコミュニケーション手
     法のひとつです。

     プロ野球には投手コーチや打撃コーチなどがいますが、彼らの本来の仕事は
     すでにプロ選手としての一定の実力をもっている選手たちが、それぞれの特徴
     をいかして最大の成果を出せるようにガイドしていくことにあります。

     特にベテラン選手に対しては細かい技術指導などは行わず、選手自身に問題
     点を気付かせて、答えを見つけるように指導します。

     このようにコーチングにおいては、目標達成に向けた答えは相手のなかにあ
     ると考えます。

     相手がすでにもっている能力・意欲・経験などを引き出して、相手自らが主体
     的に取り組むようにサポートすることがコーチングのおもな目的です。

    2.コーチングとティーチング
     (1)両者の違い
       コーチングと対比される言葉にティーチングがあります。
       ティーチングとはティーチャーが自分の知識や技術などを生徒に教えること
       です。

       コーチングは双方向のコミュニケーションによって成立しますが、ティーチン
       グではティーチャーから生徒への一方的なコミュニケーションとなります。

       また、コーチングでは答えはつねに相手のなかにあると考えますが、ティー
       チングでは答えはつねにティーチャーの側にあります。

       つまり、コーチとティーチャーは役割や立場がまったく違う。

       部下に対しての指導は状況に応じてコーチングとティーチングを使い分け
       る必要があります。

     (2)主体性を育てるコーチング
       たとえば、お客さまとすぐに仲良くなれるのに、最終的な契約の一歩手前で
       いつも止まってしまう営業マンがいる場合、ティーチングであれば上司は
       「もっと商品のメリットが伝わる資料を作成して説明しなさい」といった指示
       (答え)を与えます。

       一方、コーチングでは「契約に向けてほかに何か必要な資料はないか
       な?」という具合に質問を繰り返し、部下自身から答えを引き出します。

       通常はティーチングで指導したほうが、上司も部下も楽ですし、短い時間で
       成果につなげることができます。

       しかし、あえてコーチングを行うことで、部下は自分で考え主体性をもって
       働く習慣が身につきます。

       また、ティーチングですべてに答えをもらっていた頃の「やらされ感」から解
       放されて、よりやる気をもって働けるようになります。

     (3)上司のわからないことにも対応できる
       また、コーチングでは上司が答えをもっていない場合でも、部下に答えを見
       つけさせることが可能になります。

       上司は基本的に自分の過去の経験から答えを見つけますが、部下が抱え
       ている顧客のなかには、上司が接したことがないまったく新しいニーズを
       もっている顧客もいるでしょう。

       すべての答を上司が見つけるのは困難であり、その顧客のことを一番知っ
       ている部下自らが導き出した答えが正しいことも多いのです。

       さらに、専門知識が必要な分野で上司にそれがない場合でも、専門知識の
       ある部下に自ら考えさせることで、答えを引き出すこともできます。

    3.社長にとってのコーチング
     社長のなかには外部の専門家のコーチングを受けて、自分自身の気付きや
     意思決定に役立てている人が多くいます。

     自分がコーチングを受けることで、手法そのものについて学ぶこともできます。

     さらに、一定の経験を積めば、自分自身に対する「セルフコーチング」も可能に
     なります。

     また、社長は経営幹部たちに対してコーチングを行う立場でもあります。

     従来型の業務指示やティーチングによる指導に加えて、コーチングによって彼
     ら自身が答えを見つける習慣を身につけさせることで成長が加速します。

     受け身的な幹部を自発的な幹部へと脱皮させることも可能です。 

     コーチング手法を体系的にきちんと理解するためには、相応の勉強時間が必
     要ですが、「コーチング的な発想」を身につけて、日頃の幹部たちへの対応に
     いかすだけでも、大きな効果が期待できるでしょう。

  □基本となるスキル
   コーチングに必要なスキルのなかでベースとなるのは「傾聴スキル」、「質問スキ
   ル」、「承認スキル」です。話を丁寧に聞いて適切な質問をし、相手をきちんと認め
   ることがコーチングの原則です。

    1.傾聴スキル
     (1)事実だけではなく相手の認識を聞き出す
       
傾聴とは、徹底的に相手の話を聞くことです。

       たとえば、普通は部下が仕事上の問題を相談してきた場合に、上司は起
       こっている問題の事実関係を詳細に聞き出し、自らの判断で早急に手を打
       とうとするでしょう。

       短時間での問題解決を優先する場合には仕方ないが、これは傾聴ではあ
       りません。

       コーチングの目的は上司ではなく、部下自身に解決策を考えさせることに
       あります。

       部下には問題の事実関係だけではなく、それに対して部下自身がどのよう
       に感じているかについても話してもらわなければなりません。

       部下は自分のなかにある情報をいったん外に出すことで、情報のもつ意味
       を認識できるようになります。

     (2)自分がきちんと聞いていることをわかってもらう
       また、最後まで黙って耳を傾けるだけでは十分ではない。

       部下が当初話そうとしていた以上の話をするように仕向けることも必要で
       す。

       タイミングよくうなずいたり、相づちを打つなどして、自分が相手の話をきち
       んと聞いていることをわかってもらわなければならない。

       さらに、話の内容だけではなく、声のトーン、表情、しぐさなどから相手の感
       情を読み取ることも重要です。

     (3)日頃からの言動に注意する
       そして、コーチングを行うときだけではなく、日頃から「部下が話しかけやす
       い雰囲気」をつくっておくことも大切です。

       部下は威圧的・拒絶的な印象が強い上司にはそもそも相談しようという気
       になりません。

       つねに笑顔で接し、上司の側からあいさっするなどを心掛けましょう。

    2.質問スキル
     (1)コーチングにおける質問とは
       通常、質問とは「自分が知らないことをわかる」目的で「自分のために」行う
       ものです。
       したがって、自分がわかってしまえば質問はそこで終了になります。

       しかし、コーチングにおける質問はその逆であり、「相手が気付いていない
       ことをわかってもらう」目的で、「相手のために」行うものです。

       したがって、途中で自分がわかったとしても、相手がわかっていなければ質
       問を続けなければなりません。

       そして、質問に対する答えにはきちんと傾聴します。

       <通常の質問>
         ・なぜ、受注に失敗した?
         ・できない理由は何だ?
         ・どうしてもっと早く報告しないんだ?

       <コーチングにおける質問の例>
         ・失敗した理由は何だと思う?
         ・おもな障害は何だと思う?
         ・どうすればすぐに報告できると思う?

       このようなスタンスで質問を続けることは、まどろっこしく、面倒に感じます。

       しかし、考える主体はあくまで部下であり、上司は答えをもっていたとしても
       先回りしてそれを示してはならない。

       部下が正しい答えにたどり着くようにサポート役に徹する必要があるので
       す。

       また、質問した後には、相手が十分に考えられるよう、時間をおくことが大
       切です。

       その時間を惜しんで立て続けに問いかけると、質問ではなく「詰問」になっ
       てしまいます。

     (2)オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
       質問にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2種類がある。

       オープンクエスチョンとは「この仕事のポイントは何だと思う?」といった自
       由に答えられる質問であり、クローズドクエスチョンとは「関係者との調整が
       一番重要だと思うんだね?」といったイエスかノーの答えを求める質問。

       オープンクエスチョンで相手から考えや気持ちを幅広く聞き、クローズドクエ
       スチョンで重要点を確認するというのが通常の流れです。

       オープンクエスチョンでは、いわゆる「5WIH」(Who:誰、Wha t:何、
       Whe n:いつ、Whe r e:どこ、Why:なぜ、How:どうやって)の疑問詞を
       活用しながら質問を組み立てます。

       これにクローズドクエスチョンを組み合わせた例として、次のような
       質問の流れが考えられます。

    3.承認スキル 
      承認とは相手の存在そのものを認める「存在承認」、さらに、相手の変化や
      結果に気付いてそれを言葉としてきちんと伝える「変化承認」、「成果承認」
      の3つの要素で考えることができます。

     (1)存在承認
       相手の存在を認めるとは当たり前のことのようですが、実はできていない
       場合も多いのです。

       たとえば、挨拶やちょっとした声がけは相手を承認するための大切な行為
       です。

       「あいさつしても上司が返してくれない」、「業務指示以外は一切声をかけて
       くれない」という状況では、部下は自分の存在を認めてもらっているとは感
       じません。

       そんな上司には相談事をしたくない、むしろ相談したら怒られるとさえ思う
       かもしれません。

       日頃からあらゆる機会を捉えて、相手のことを大切に思っていることを伝え
       ておかなければなりません。

     (2)変化承認
       「変化承認」とはいっもとは違う変化を認めることです。

       変化には「遅刻がなくなった」、「ミスが減った」などのプラスの変化もあれ
       ば、「最近元気がない」、「言葉遣いが乱れてきた」などのマイナスの変化も
       あります。

       いずれの変化も日頃から相手に関心をもっていないと気付くことができま
       せん。

       また、気付いたとしても言葉に出さなければ相手にはわかりません。

       プラスでもマイナスでもそれをきちんと伝えることで、相手は「つねに自分の
       ことを気にかけてくれている」という安心感を得ることができます。

     (3)成果承認
       「成果承認」とは相手が成果を上げたときに、それをしっかりと認めることで
       す。

       これは単純に成果を賞賛することとは少しニュアンスが違う。

       たとえば、私たちはなでしこジャパンが2011年ワールドカップで優勝したと
       きにその偉業に対して、賞賛を惜しみませんでした。

       世界最高の場での金メダル獲得について「とにかくすごい」と感じたからで
       す。

       その賞賛が彼女たちの励みになったことは間違いない。

       しかしながら、なでしこジャパンの厳しいトレーニングや節制ぶりを近くで見
       守ってきた監督や関係者たちは、金メダルそのものよりも、むしろそこに至
       るまでの彼女たちの努力に対して、心から「よく頑張った」と感じたことでしょ
       う。

       相手のことを深く理解しているからこそ、たんなる賞賛ではない成果承認が
       できるのです。

       そして、彼女たちの心により響いたのは、賞賛よりも成果承認でしょう。

       このように成果承認で大切なのは、「成果そのものだけではなく、成果を上
       げるために努力した点も十分に理解していること」を言葉で伝えること。

       そのためには「○○の能力がアップした結果だね」、「業務設計が優れていた
       ね」といったプロセスも含めて成果承認することが必要です。

       また、相手によっては、「あなた(YOU)は頑張ったね」という、あなたを主語
       にした言い方(YOUメッセージ)だけではなく、その結果「私(T)はこう思っ
       た」という「Tメッセージ」による承認も効果的です。

       たとえば、「君の頑張りは私も心強いよ」という承認の仕方。

       YOUメッセージだけでは、それを相手が素直に受け取らない可能性があっ
       ても、Tメッセージでは「私自身」の気持ちを素直に表現しているため、相
       手に伝わりやすいのです。

  □ステップ
   コーチングは基本的に次のようなステップで行います。
    1.目標の明確化
    2.現状と問題の把握
    3.行動計画
    4.フォローと振り返り

   それぞれのステップで「傾聴」、「質問」、「承認」のスキルを活用します。

   ここでは、ある営業マンに対するコーチングを例にして話を進めてみます。

    1.目標の明確化
      目標の明確化において大切なのは、達成したときの自分の姿をイメージさせ
      ることです。

      たとえば、営業マンの受注目標額を設定する際には、たんに「受注目標300
      万円」で終わらせずに、それを達成したら「営業マン自身がどのような能力を
      獲得しているか」、「その先にどんな道が開けるか」なども意識させます。

      また、目標を部下に考えさせることで、与えられたノルマではなく、自分自身
      で決めた目標と認識することができます。

    2.現状と問題の把握
      現状把握は「客観的事実そのもの」と「客観的事実をどのように認識している
      のか」の2つの視点から行います。

      たとえば、営業マンの受注額が過去3カ月間連続して200万円だった場合、
      その受注額は客観的な事実です。

      問題はこの金額を営業マンがどのように認識しているかです。

      「十分実力を発揮した結果」と満足している人もいるでしょう。

      逆に不満だと思っている人のなかには「まだまだ努力不足」と自責と捉えて
      いる人もいれば、「顧客に恵まれていない」と他責にしている人もいるはずで
      す。

      これらについて十分に話を聞いて、質問を重ねるなかで事実誤認やたんなる
      思い込みを修正していきます。

      そして、目標達成のためにどのような能力アップや業務姿勢改善が必要かを
      気付かせます。

    3.行動計画
      「目標の明確化」と「現状と問題の把握」を踏まえて、目標達成のために実際
      に何をやるのかを明確にしていくステップです。

      ここでも何をやるのかについて相手自身に気付かせます。

      まずは相手にできるだけ多くの選択肢を考えさせます。

      過去の自分の成功体験・失敗体験、周囲の優秀な営業マンの事例、営業関
      連の書籍から仕入れた知識など考える材料はたくさんある。

      また、それらを組み合わせてオリジナルの方法を考えることもできます。

      ある程度明確になってきたら、それを実際の行動レベルに落とし込んでいき
      ます。

      たとえば、「見込み客数を倍にする」ということになったら、「そのために明日
      からどのような行動が必要だと思う?」といった質問で、より具体的にしてい
      きます。

      その際には「アポを何件取る」といった成果ではなく、「アポ取りの電話を何
      件する」といった、やる意思があれば必ず達成可能な行動を重視します。

    4.フォローと振り返り
      実際に行動を起こしているかどうかを確認します。

      もしまだであれば、その障害となっている要因を再度考えさる。

      また、行動している場合には、その結果としてどのようなことが起こったか、
      どのように感じたかについて話を聞きます。

      行動がうまく成果につながっていない場合の失敗要因だけではなく、成果に
      つながった場合の成功要因についても考えさせます。

      場合によっては行動計画の一部見直しも必要になるかもしれない。 

      フォローと振り返りは、相手の行動そのものを確認・修正するだけではなく、
      相手に対して「変化承認」、「成果承認」を与えるためにも重要なステップで
      す。

      必ず実施しましょう。