新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業開発成功のポイント

■新規事業の開発

 企業をとりまく経営環境は、技術革新による競争の激化や、消費者ニーズの多様化による商品寿命の
 短期化など、今までにないスピードで変化を続けています。

 このようななかで、「現在の事業のみではいずれ経営が行き詰まってしまう」との危機感をもつ
 社長も少なくありません。

 会社が生き残っていくためには、自社商品を進化させ続けなくてはなりません。

 それは多くの場合、旧来品よりも優れた、あるいは別の機能をもった「新商品」投入という形で実現
 されます。

 もちろん、この活動は重要ですが、そこにはあくまで「これまでの流れ」という制約条件がつき
 まといます。

 大きな環境変化が起これば、まったく新しい事業、つまり新規事業を打ち出す必要も出てきます。

□新規事業進出の留意点

 新規事業で成功するのは容易なことではありません。

 「儲かりそうな業種だから」「自分にもできそうな業種だから」との理由だけで新規事業に進出する
 ことは大変危険です。

 誰にでもできそうで儲かりそうな事業ほど新規参入も多く、激しい競争に陥る可能性が大きいとも
 考えられます。

 ですから、自社の企業理念や将来の自社像を実現させるために必要な事業を行うという心構えで
 慎重に事業を選ぶことが望まれます。

新商品開発と新規事業開発

 新商品開発は、その言葉通り新しい商品を考えることです。

 メーカーであればニーズの変化や競合企業の状況なども踏まえて、新商品を開発し、市場に投入します。

 技術革新の激しい分野では、半年ごとに新商品が投入されることも珍しくはありません。

 開発された商品は、基本的にはこれまでと同じ流通経路を使って、同じような方法で販売されます。

 価格付けなども旧来品の価格を参考に行うことができます。

 つまり新商品開発では新しい商品ができさえすれば、すでに売るための仕組みが整っていることに
 なります。

 新規事業開発はすべてをゼロベースで考える必要があります。

 例えば、同じメーカーが競争激化などで苦戦が続き、新規事業として、外食事業を立ち上げるとします。

 当然ながらこれまでの製造ノウハウはもちろん、販売のための既存の流通経路も使えません。

 顧客ニーズも、最初はまったくわからないでしょう。

 つまり新規事業開発では、仕入れ、製造、販売といったすべての仕組みをゼロべースで構築していか
 なければなりません。

 これは、はじめて会社を立ち上げて市場に参入するのとほとんど変わらない状況です。

 ここに新商品開発と新規事業開発の決定的な違いがあります。

 このように、新商品開発に比べて新規事業開発の難易度は高く、成功までの道のりも長いものに
 なります。

新規事業開発(実現)までの3つのステップ

 新規事業実現のためには、

  1.「コンセプトの組み立て

  2.「事業モデルの構築」

  3.「事業計画作成」

 のプロセスから成り立ちます。

 1.コンセプトの組み立て

  どのような新規事業を行うのか、その骨格を組み立てていくステップです。

  (1)アイデアの創出 

   できるだけ自由な発想でスタートすることが必要です。

   いきなり「どのような新規事業にするか」を考えるのではなく、たとえばディスカッションの
   なかで、「最近自分が購入した商品のなかで特に満足度の高かったもの」をあげ、なぜその
   ように感じたのかを発表し合います。

   最近とくにヒットしている商品をいくつかとりあげ、なぜそれがヒットしているのかの仮説を
   議論してみるのもよいでしょう。

   多くの新規事業は、このような自由な議論のなかから誕生しています。

   また、職場ではなく、合宿形式など、普段の常識にとらわれにくい環境で議論するのも効果的です。

   日常的な仕事から頭を切り換えることで、まったく新しいアイデアが生まれる確率も高まる
   でしょう。

   そしてこのような議論のなかから、自社の現状の強みをいかせる新規事業案を絞り込んでいきます。

  (2)事業化の可能

   創出されたアイデアが事業として基本的に成立するかどうかを社内外の環境に照らし合わせて
   評価します。

   同時に、誰に対してどのような商品を提供するのかといった事業ドメイン(領域)も検討します。

   ここでは、下記のような「SWOT分析」といわれる手法を使うことによってポイントが整理
   できます。

   具体的な内部環境、外部環境の例としては以下のようなものがあげられます。

    ○内部環境

     ヒト  経営者の人望、経営能力、経営者の年齢、従業員のスキルなど

     モノ  商品力、原材料、生産設備、店舗、機械など

     カネ  資金力、資金調達力、過去からの利益の蓄積など

     情報  システム導入状況、顧客情報、競合・市場状況把握、ノウハウ共有など

    ○外部環境

     人口動向  人口減少・増加、男女比率、年齢など

     経済    景気、金利、為替など

     政治    政府、法律、自治体など

     自然    天候、環境、天然資源など

     文化    流行、価値観、ライフスタイルなど

     技術    先端技術など

     お客さま  購買に影響するもの、購買決定者など

     供給者   仕入業者、原材料購入業者など

     競合企業  現在および将来の競合企業など

     利害関係者 抹主、金融機関、債権者など

    これらの要因が現在どうなっているか、将来的にどのように変化していくかを分析することで
    自社のどの強みをどのようにいかして新規事業に取り組むのかを判断していきます。

  (3)コンセプト 

   検討したコンセプトを最終的にまとめていきます。

   コンセプトには次のような顧客の視点から見た「5W2H」の内容が盛り込まれている必要が
   あります。

    ●コンセプトに盛り込むべき5W2H(顧客が自社商品を購入するシミュレーション)

     ・When      いつ、どんなときに

     ・Why       なぜ、どのような理由で

     ・Who       誰が、どんな人が

     ・Where      どこで、どのような場所で

     ・What       具体的に何を

     ・How        どのように

     ・How much   どのくらいの価格で

    ●新規事業分野の候補をリストアップ

     事業展開の方向が定まったところで、さらに次の3つの視点を加えて新規事業分野の候補を
     検討する必要があります。

     (1)本業との相乗効果が得られる分野への進出

      新分野への進出が従来の商品・サービスにプラスの効果を与え、相乗的な売り上げの
      拡大が見込まれるため、一般的にはリスクも小さくなります。

      また、まったくの新分野への進出であっても、現業にそのノウハウが役立つ場合もあり
      ますので、そのような視点からの検討も必要となります。

     (2)異なる事業分野にまたがる領域への進出
      業界と業界との垣根、すなわち業界のすき間への進出です。

      たとえば、割烹、レストランと宅配業との関連事業として、ケータリングサービスを
      新規に手がけるケースなど。

     (3)成長業種への進出

      たとえば、

       ・IT関連産業

       ・教育産業

       ・介護、健康関連産業 など

    ●新規事業決定の留意点

     以上の(1)〜(3)の視点でさまざまな事業をリストアップし、進出する分野を決めていきます。

     しかし、どの事業に取り組んでもよいわけではなく、新規事業分野の候補案を評価し、
     その結果を比較して進出事業を決定することが必要となります。

 2.事業モデルの構築

  コンセプトを実際の事業モデルに展開していくプロセスです。

  冒頭で述べたように新商品開発と違い、新規事業開発では既存の社内リソースはほとんど使えません。

  事業化のために、必要な機能を一つひとつ構築していく必要があります。

  次のようなマトリクスを使い、必要な機能をもれなく抽出し、現時点でない機能についてはどの
  ように獲得していくか、あるいは外部を活用するかなどを検討していきます。

  その際、自社の強みに直結する機能についてはアウトソースせずに必ず社内で対応することが
  必要です。

 3.事業計画立案 

  ステップ2で策定した事業モデルをいかに構築していくか、また事業モデルを使って実際にどの
  ような事業展開を行っていくかを検討します。

  事業開始直後だけではなく、最終的な目標に向けたマイルストーン(事業の進捗を管理するために
  途中で設ける節目)も作成します。

  たとえば外食事業に取り組む場合は、多店舗展開するのか、そうであればどの程度の店舗数をどの
  時点でめざすのかといったシナリオ作りも行います。

  (1)スケジュールとマイルストーン

   事業開始から数年後までの節目となるマイルストーン(期日)とその時点での実現目標に落とし
   込むことでシナリオ化していきます。

   図表で示すことによりイメージしやすくなります。

  (2)基本計画の策定

   当面の目標および事業開始から数年後までの事業計画をまとめていきます。

   売上、利益といった 数値計画だけではなく、前述の「事業モデル構築マトリクス」で抽出した
   必要機能をどのように獲得・強化していくのかも時系列で計画します。

   その際には以下の点について明らかにしておくことが必要です。

    ●基本計画に盛り込むべき内容

     「誰が」………………実行者、責任者は誰かを明確にする

     「何を」………………具体的にどのような機能を高めるかを明確にする

     「どのレベルまで」…できるだけ数値目標化する      

     「いつまでに」………それぞれの納期を明確にする

     収支のシミュレーションは数パターン行い、最悪のシナリオとして撤退する場合の基準と
     なる目安も決めておきます。

  (3)資金計画の策定 

   投資金額、必要な資金調達額、資金調達方法、償却方法、返済方法などをまとめた資金計画を
   作成します。

   また単年度黒字化年度、累損一層年度など節目の時期をシミュレーションによって明らかにします。

  (4)ビジネスプランの完成

   新規事業を開始するにあたって必要なその他の個別プランを詳細に策定します。

   具体的には生産販売、物流、採用などの計画が必要になります。

   なおここでも基本計画と同様に「誰が」、「いつまでに」といった責任と納期などを明確にして
   おくことが必要です。
  
□新規事業開発の体制

 新規事業開発は、これまで説明してきたとおり大変困難な業務です。

 また、経営の屋台骨に影響を及ぼす重要な業務でもあります。

 このため、新規事業開発に社長自らが陣頭指揮を執るケースが多々みられますが、それはあまり
 好ましいことではありません。

 理由は、社長自身が新規事業開発に没頭してしまうと、既存事業に支障が出るおそれがあり、
 新規事業に思い入れが強すぎると撤退時期を見過ごすなど、経営判断を誤るおそれがあるからです。

 そのため、新規事業開発の推進者・責任者には実力のある幹部クラス社員を社長直轄で抜擢し、
 社長は随時進捗状況の報告を受け、指導を行うと同時に冷静な目で経営判断を下していくことが
 大切です。

 また新規事業開発には多種多様な技術・知識・ノウハウが必要であり、実際に推進していくためには
 強力なパワーも求められます。

 そのため、幹部クラス社員をリーダーにして社内の複数部門の精鋭を集めたプロジェクトチームを
 結成するのが一般的です。

 その際にはプロジェクトメンバーは通常業務と兼務ではなく、できるだけ新規事業開発に専任させる
 ほうがよいでしょう。
   
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新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業成功の決め手

 千に三つ 新規事業を立ち上げ、軌道に乗せる難しさは時にそう例えられる。

 リスクを減らし、成功確率を高めるためにも、本業周辺分野への進出を検討することが半ば王道
 でした。

 しかし、この常識には、意外な落とし穴があるのではないでしょうか。

 実際、新規事業で急成長を遂げる企業は、全く別の勝利の方程式で動いています。

 その成功への新方程式を明らかにします。

■なぜ新規事業は成功しないのか

 新規事業はなかなか成功しない。

 だからリスクを減らす有効な処方箋は、本業に関連した事業をやることだとされています。

 しかし、失敗する本当の理由は全く別のところにありました。

 新規事業は難しい。

 有望な商売は簡単に見つからないから、本業に関連した周辺ビジネスへの進出が、リスクを減らし、
 成功率を高める定石とされてきました。

 しかし、本当にそうでしょうか? 

 メーカーなら「中国製品の流入」 、流通・サービスなら「大手チェーンの攻勢」 など産業構造の
 転換が進んでいる。

 成熟・斜陽産業を本業とする場合、そこにこだわって新規事業を探すのは、逆に危険ではないで
 しょうか。

 実際、以下に紹介する3社の事例で、社長者達はジリ貧の本業への危機感から、異業種に参入し
 成功を収めている。

 アパレル関連会社は、あえて飲食業という激戦区に参入。

 若者・ファミリー層から好評を得て快進撃を続けている。

 二つ目の事例、ある繊維機械商社 は、本業とは無縁のペットビジネスに参入、成功を収めた。

 三つ目の事例、ある造園業者は、ダチョウの飼育という日本では珍しい事業を手掛け、業界トップと
 なっています。

 畑違いの分野で何故成功したのか、と思われるかもしれない。

 しかし、3社の成功事例は、新規事業は本業の周辺分野にこだわらなくても成功することを示して
 います。

 では、新規事業が失敗する本当の理由は何でしょうか。

 そもそも新規事業とは、全く未知の分野のビジネスを始めること。

 ところが現実には、ビジネスモデルは既存のものを持ち込み、判断の基準となる知識やノウハウは、
 自社で過去に蓄積した本業のものを応用しがちという。

 確かにこれでは成功はおぼつきません。

 大江建氏が提唱するのは、「仮説のマネジメント」という手法。

 「事業として必要な要素を仮説としていくつも取り出し、それを市場で試したうえで検証する
 というサイクルを繰り返すことで、仮説の精度を上げていく。

 特に製品やサービスのライフサイクルが早い現代は、この方法論が有効」 と言う。

 簡単に言えば、一つのモデルにこだわらず、軌道修正を繰り返しながら、儲かる仕組みを作り
 出すということです。

 実際、大江氏が「絵を売る」という単純なビジネスを様々な分野の人に実際にやってもらう
 という実例研究を行った結果によると、「価格は1500円が適当」など事前に作っておいた30
 ほどの仮説の内、正しかったと言えたのは、10年間の実務経験がある人でも3割、事業の経験の
 ない大学生ではわずか1割にしか満たなかった。

 ところが、仮説を見直し、一つひとつ軌道修正をしていくと、「利益」は比例して伸びたという。

 最初の思い込みだけで事業を続けても成功の確率は決して高くなく、軌道修正を続けてこそ、
 事業は軌道に乗るという証明です。

 とすれば、新規事業に関して言われている定石のいくつかは「ウソ」 であることが分かってくる。

 「思い切った投資」は、投資回収へのプレッシャーになるから軌道修正を繰り返す妨げになるし、
 「他にないユニークな製品」でなくても儲かる仕組みを作ることができればいいはずです。

 新たにノウハウを積み上げるのであれば、「本業とのシナジー効果」も二の次になる。

 必要なのは、「いくらまで使うかという予算枠」(中小企業診断士のネットワーク「アスコム」の
 古森創代表)くらいだ。

 それでは、新規事業の有望分野はどうやって探せばいいのだろうか。

 結局のところ、一度、決めたら自らどれだけ打ち込めるか。

 その差が成否を決めるのかもしれない。

 本業に余裕がある時しか、新規事業に挑戦することは難しい。

 そういう意味では、景気に薄日が差してきた現在は、新規事業をスタートする絶好のチャンスと
 言えるかも知れない。

□新規事業をモノにする3つの決め手

 1.カネをかけるな

  新規事業の成功に不可欠なものがある。

  それは、軌道修正を柔軟に行えるようにすること、競争相手の力を的確に把握して優れた相手
  からは謙虚に学ぶこと、そして強い信念を持つことです。

  3人の経営者からその秘訣を探ります。

  店内に巨大な釣り船を置き、その周囲に作った生け簀からお客が魚を釣り上げ、店員が調理
  する、というユニークなサービスで知られる居酒屋チェーン「釣船茶屋ざうお」 。

  このチェーンを展開するハーバーハウスの「本業」 は、ノベルティグッズやユニフォームの
  企画・製作です。

  畑違いの分野で全く新しい業態を開発し、なぜ成功したか。

  その秘密はローコスト経営を徹底したことで、消費者の反応を伺いながら、いつでも新しい
  試みができるようにしたことにある。

  同社が飲食業に参入したきっかけは、98年に有力な取引先が倒産したこと。

  「現金商売がやりたい……」 。

  高橋社長は、夫人がたまたま飲食店を経営していたことから、「土地勘」のある飲食業に進出
  することにしました。

  ただし、資金に余裕はない。

  そこで福岡市の郊外の倉庫を低家賃で借り上げることにした。140坪でも賃料は月額わずか25万円。

  しかも、経費削減のため、高橋社長自らすべての内装工事をすることにした。

  「大工になった同級生より手先が器用だったから、できると思った」(高橋社長) 。

  問題はコスト削減と集客をどう両立するか。

  高橋社長は「地味な外観でも、店内に入ってびっくりするような演出があれば必ず受けるはず」
  と考えた。

  まず最初に浮かんだのが、店内に水を張って、真ん中に巨大な水車を置くというアイデアだった。

  ところが、倉庫の設計上、水車を作ることができない。

  そこで思い付いたのが、巨大な船を真ん中に置くことだった。

  船を自力で造り、さらにその周囲に魚を泳がせることにした。

  その魚を客が釣れるようにしたのは、ちょっとした思い付きに過ぎない。

  当初はそれほど受けるとは思っていなかったという。

  ところが、この試みが大好評で、店の最大の売りになった。

  以後、この勝ちパターンで10数店舗を展開するまでになった。

  出店時の工事は、高橋社長自らと社長直轄の工事部のメンバーが行う。

  パワーショベルなどの建設機械を中小の建設会社並みに所有していることが、高橋社長の自慢。

  大工仕事だけでなく、空調機器の取り付けも従業員と共に行う。

  本職に比べれば店の造りに粗い部分も出るかもしれない。それも“味”だとポジティブに割り
  切った。

  机やイスは潰れた飲食店から譲ってもらうという徹底ぶり。

  その結果、店舗への投資額は通常の数分の一程度に抑えることができる。

  「ざうお」 というユニークな新業態はある意味、思い付きによる軌道修正の連続の中で、偶然、
  誕生したとも言えるでしょう。

  それを可能にしたのは、何と言っても高橋社長自ら内装工事を手掛けたことにある。

  だから、思い付きで、気軽にいろいろなことに挑戦できた。

  もし外注だったら、船の建築代金や追加工事は、一千万円単位の莫大な費用になっていたはず。

  簡単には何事も決められず、 「ざうお」 が世の中に生まれたかどうかは疑わしい。

  こうした「ざうお」 での経験は、次の新規事業にも応用されている。

  それはラーメン、うどん、焼き肉店を屋台で営業するというビジネス。

  屋台は福岡名物でイメージも良く、私有地に置けば、普通の飲食店となんら変わらずに営業
  できる。

  その上、一台当たりの製造コストは200万円以下と格安だ。

  立地に問題があれば、移動もできる。

  さらに、内装もシンプルだから、ラーメン店からうどん店へといった業態の転換も簡単にできる。

  ある意味、究極のローコスト・低リスクビジネスかもしれない。

  ハーバーハウスは04年当時に売上高45億円を見込む。

  「ざうお」を始める前の98年9月期の売上高が9億円程度だったから、新規事業で5倍に伸びる
  ことになる。

  高橋社長のように自前で何でもやってしまうことは、飲食業という分野だからできたことかも
  しれない。

  しかし、最初にカネを掛けないでやると決め、そこから逆算して、戦略を決めるという発想は、
  新規事業を考える経営者にとって学ぶべき点が多いはず。

 2.真似をおそれるな

  繊維機械商社、千代田センキ㈱の大聖寺谷社長がペットビジネスに参入したのは99年のこと。

  それから5年後の現在、犬の美容室、ペットホテル、子犬の繁殖事業、ペットビジネスの専門
  学校までを展開。

  専門学校に美容室やペットと食事ができるカフェなどを併設した、北陸最大の複合型施設も
  完成した。

  同社の戦略の特徴は、首都圏などで始まった最先端のペットビジネスに、独自のアレンジを加え、
  ライバルがいない北陸地域で展開していること。

  関東や関西での競争が激化する間に、ペットビジネスの「北陸の雄」 としての地歩を固めた。

  では、なぜペットビジネスに参入したのか。

  きっかけは単純で、大聖寺谷社長が犬を、本物の「孫」のように可愛がる愛犬家だったから。

  そんな社長にとって、地元のペット関連サービスの水準は満足できるものではなかった。

  数人の友人・知人に訪ねても答えは同じ。

  ライバルは昔ながらのペットショップで個人商店ばかりだから、異分野への新規参入でも十分
  勝算はあると考えた。

  雑誌などで話題のペット関連施設を訪ねて回り、その内の一社の経営者と懇意になった。

  「元々、営業畑だから、人に会って話しをするのが苦にならない」(社長) 。

  そこで1週間働かせてもらい、ペットビジネスへの参入は十分可能だと判断した。

  最初に始めたのは、ペットを一時的に預かる「ペットホテル」 。

  そこに併設するペットの美容室で働いてもらうトリマー(ペットの美容師)を集めることに苦労
  したことから、トリマーを養成する学校を作った。

  さらに、ペット美容室単体での出店を開始。

  事業も子犬の繁殖などへと広げていった。

  学校の卒業生が美容室に勤め、その美容室が副業に子犬を販売する、といった川上から川下まで
  押さえた事業展開が同社の強みだ。

  千代田センキ本体の売上高は5億円。

  最盛期から3分の1にまで落ち込んでいた。

  一方で、グループ会社で展開するペット事業は4億円まで拡大。

  「今期は本業を上回るのが確実」(社長) 。

  さらに沖縄のペット専門学校から業務提携の提案を受けるなど、運営ノウハウも高く評価される
  ようになった。

  大聖寺谷社長がペットビジネスに参入して成功した理由は、何も愛犬家だったからだけではない。

  冷静に競争相手の力を分析して、勝てると踏んだからだ。

  その上で、謙虚に先進事例から学んだことも大きい。

  千代田センキグループの事例は、競争相手が乱立しているように見える市場にも、よく見ると、
  参入できる「空白地」があることを示している。

 3.本業とのシナジーは二の次

  茨城県石岡市にある観光牧場「ダチョウ王国」。

  10haの敷地に、全国で最も多い1300羽のダチョウを飼育している。この施設を運営するのは、
  造園業者の常南グリーンシステム。

  97年にダチョウの飼育事業に参入した。

  同社の売上高は最盛期8億円に達していたが、バブル崩壊後の92年頃から売り上げの減少が
  始まった。

  主力事業は送電塔を建てた土地を緑化するニッチビジネス。

  仕事の9割は東京電力からの発注だった。

  当時矢口社長は新規事業への進出が必要だとは感じていたが、具体的に動くことはなかった。

  「自分にできそうなものは競争相手が多過ぎると感じていた」(矢口社長)。

  そんな矢口社長がダチョウの飼育事業に参入したきっかけは、96年の暮れに、あるテレビ番組で
  ダチョウの肉が紹介されていたことだった。

  日本ではあまり知られていなかったが、欧米では低カロリー・高タンパクでヘルシーなことから
  人気も高い。

  その上、飼育に手間が掛からないという。

  牛や豚が入るような小屋も不要で、フェンスで囲むだけだ。

  矢口社長は直感的にダチョウの飼育を始めることを決めた。

  しかし、最初から順調だった訳ではない。

  国内のあるダチョウの飼育業者からヒナを譲ってもらおうとしたが、業者は「一羽200万円」を
  提示。

  交渉は決裂した。

  困った矢口社長は、米国在住の友人に相談。

  97年春、友人の協力で米国の業者から、一羽4万円で470羽のヒナを購入した。

  しかし、無事に育ったのは350羽。

  いきなり500万円の損失である。

  さらに見込み違いで、精肉化のために工場をつくらなければならないなど苦労は続いた。

  それでも、国内では珍しい大規模なダチョウの牧場は有名になり、レストランなどがダチョウ肉
  を買い付けにくるようになった。

  BSE(牛海綿状脳症) 騒動も追い風になり、ダチョウ関連事業の売り上げは1億円に達しそうだ。

  ダチョウの飼育ビジネスには、常南グリーンシステムの成功もあって、不況に悩む建設関連業者の
  参入が相次いでいる。

  しかし、同じ条件下にありながら、常南グリーンシステムほど成功した例は他にない。

  矢口社長は「野生の動物が好きでダチョウに興味を持てた。それに、友人からダチョウなら
  日本一になれると言われ、この事業に夢を持った。好きなことだから頑張れるし、辛い時にも
  踏ん張ることができた」と話す。

  新規事業の明暗は結局、経営者がどこまで熱くなれるかにかかっているのかもしれない。

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新規事業開発のプロセスと留意点

BOPビジネス

BOPビジネス

■BOPビジネスとは
 1.BOPとは 
  BOPとは、「Base of the Pyramid」もしくは「Bottom of the Pyramid」の略で、
  所得階層の下位にある途上国の低所得者層を指します。

  BOPビジネスとは、それら低所得者層を対象としたビジネスのことであり、これまでは
  支援の対象としてとらえられていた層を、ビジネスにおける顧客としてとらえ、商品や
  サービス(以下「商品」)を提供していこうというものです。 

  BOP層一人ひとりの所得は少ないものの、40億人という膨大な数があることから、
  BOP層全体でみた場合には巨大市場となります。

  経済産業省「日本政府によるBOPビジネスへの政策的支援と具体的取組」によると、
  BOP層の総所得は5兆ドルに達し、日本の実質GDPに相当するとされます(注)。
  これまで所得が少ないBOP層は、ビジネスにおけるターゲットにはならないと考え
  られていましたが、そこに5兆ドルもの巨大市場が存在しているのです。

  (注)2011年の日本の実質GDPは約507兆5000億円であり、5兆ドルを大きく上回る
  こととなります。
  <世界の所得ピラミッド>出典:経済産業省

  BOPビジネスは、市場としてのボリュームが期待されると同時に、BOPビジネスの展開
  によって、現地における様々な社会的課題の解決が期待されています。

  例えば、「清浄で安全な飲料水を確保できない地域で、手軽に使用できる安価な浄水器
  を販売する」という場合、企業にとっては浄水器の売り上げが期待できます。
  同時に、現地住民にとっては、清浄で安全な飲料水が確保できることで、細菌などに
  汚染された水を飲用することによる病気などを防止することが期待できます。

 2.BOP市場のこれまでと発展 
  BOP層は、これまで富裕層向けよりも高額な商品価格や過大な金利といった、低所得
  であるが故の不利益(「BOPペナルティ」)を強いられてきました。
  これには、BOP層の信用不足、市場の過小競争、インフラの不整備などの理由があり
  ます。

  BOPビジネスは、こうした不利益を解消するものでなくてはなりません。
  例えば、BOPビジネスの先がけといわれるバングラデシュのグラミン銀行は、BOP層向け
  (主に女性向け)に比較的低利・無担保で少額の融資(マイクロクレジット)を行って
  います。

  従来、BOP層は信用の低さから、一般的な銀行で融資を受けることはできませんでした。
  そのため、BOP層がお金を借りる場合には、年利100%とも200%ともいわれる高利で
  借りるしかなく、BOP層の生活が改善しない要因の一つになっていると指摘されて
  いました。

  こうした中、グラミン銀行では年利20%程度の金利でBOP層に融資を行っています。
  グラミン銀行から低利で融資を受けた人々は、その資金を基に事業を始めたり拡大
 したりするなどして収入を増やし、その増収分から銀行に返済します。

 3.BOP市場の特徴 
  これまで、BOP市場は、先進国の市場とは根本的に異なるものとしてとらえられて
  いました。

  例えば、BOP層向けの商品は、低価格であることが最も重要で、先進国向けのような
  高い機能や品質は求められていないと考えられていました。
  こうした考えから、「単価が低い」「結局価格競争にしかならない」などと、BOP市場は
  これまでマーケットとして魅力が乏しいとされてきました。

  そのため、BOP層向けの商品は、CSR(企業の社会的責任)の一環など、「BOP層に
  対する支援」としての意味合いで提供されるものが少なくありませんでした。 

  しかし、実際には、BOP層であっても機能や品質に対する要求は高く、先進国の企業が
  考えるBOP層のニーズと、実際の市場ニーズとの間には乖離(かいり)がありました。 
  BOP市場で求められるのは、先進国向け商品の低品質版ではありません。

  かといって、先進国と同じものをそのままBOP市場に投入すれば売れるかというと、
  そうではありません。
  BOP層は、機能や品質に対する要求水準は先進国の消費者と大きな差はありませんが、
  商品に出せる金額には大きな差があります。

  機能性が高いからといって先進国と同じ価格で販売したのでは、BOP層では当該商品を
  購入することはできません。
  BOP市場で成功するためには、先進国向け商品と遜色(そんしょく)ないレベルの商品を、
  先進国とは比べ物にならないくらい安価で提供する必要があります。

  ただし、先進国と遜色(そんしょく)ないレベルとは、商品の内容が先進国とそっくり
  同じということではありません。
  BOP市場向けの商品では、先進国とは商品に求められる機能が異なっていることも多く、
  具体的な商品設計などは先進国向けのものとは変える必要があります。

  例えば、乳幼児用の紙おむつの場合でみると、先進国では排せつのたびに取り換える
  ことができますが、BOP層では経済的な理由からそれは困難です。
  そのため、BOP層向けの商品の場合、先進国で販売しているものよりも高い吸水性など
  が求められます。 

  このように、BOP市場は今後の拡大が期待される魅力的なマーケットではあるものの、
  安易にビジネスを展開することはできません。
  現地のニーズを調査し、それに合わせて改めて商品開発やコスト構造の見直しなどを
  行う必要も出てくるでしょう。

□BOPビジネスが注目される背景 
 BOPビジネスが、現在のように注目を集めているのは、
  1.今後市場の拡大が期待される
  2.これから発展していく市場であり、現時点では競合が少ない
  3.従来のビジネスも発展させる可能性がある
  4.政策的な支援が充実しつつある
 などの理由があります。

  1.今後市場の拡大が期待される 
   市場については前述の通りで、BOPビジネスは5兆ドルもの潜在的な市場がある
   ものの、これまではそのニーズを適切につかめていなかったとされています。
   これまで逃していたニーズを適切にとらえることができれば、今後市場の大幅な
   拡大が期待されます。

  2.これから発展していく市場であり、現時点では競合が少ない 
   1.と関連することですが、BOP市場は今後拡大が期待される市場であり、現時点
   では参入企業は多くはありません。
   商品によっては、参入企業ゼロというものもあるでしょう。

   もちろん、その場合何もないところから市場を開拓していかなければならない
   という大きな苦労はありますが、市場開拓に成功すれば独占的な地位を築くことも
   可能になります。

  3.従来のビジネスも発展させる可能性がある 
   BOPビジネスでは、先進国向けの商品をそのまま販売することはできません。
   BOP市場に合わせて、商品設計やコスト構造の見直しを行う必要があります。
   企業にとっては大きな課題となりますが、こうした取り組みは、BOP市場でだけで
   有効なものではありません。

   コストが削減できれば、従来の商品の利益率が改善されます。前述した吸水性の
   高いおむつのように、商品機能を向上することができれば、その技術を先進国向け
   商品にも活用できます。

   このように、BOP市場には特有のニーズがあり、それらが商品開発などのきっかけと
   なることがあります。
   そこで得たノウハウを先進国向けにも展開していくことで、企業にとっては商品価値
   の向上などが期待できます。

  4.政策的な支援が充実しつつある 
   BOPビジネスは、単に市場として魅力があるだけではありません。
   ビジネスを通じて、インフラの未整備や病気のまん延、貧困といった、途上国に
   おける社会的課題を解決するものでもあります。

   つまり、国際貢献としての意味合いも大きいといえます。 
   このため、政府では企業によるBOPビジネス進出を支援しています。
   具体的には後述しますが、こうした政府による後押しもBOPビジネスが注目される
   背景となっています。

□BOPビジネスのポイント
 1.市場に対する先入観を捨てる 
  これまでBOP市場に対しては、低価格であることのみが価値であるかのように考え
  られてきました。
  そのため、BOP市場には最低限の機能・品質で安価な商品が投入されていたのです。 

  実際にはBOP層でも機能・品質への要求は高く、従来の商品戦略では、顧客のニーズと
  大きなミスマッチが生じてしまいます。

  しかし、「BOP市場では低価格こそが求められる価値である」という先入観にとらわれて、
  その構造を見直すこともないまま、「安かろう悪かろう」の商品を販売していたのです。 
  BOP市場に対する先入観にとらわれてしまうと、戦略を大きく誤る可能性が高いと
  いえます。

  企業は顧客ニーズと乖離(かいり)した商品を市場に投入し続け、顧客は企業に失望
  してニーズを伝えなくなり、ますます企業は顧客ニーズをつかめなくなるという悪循環
  に陥ってしまうかもしれません。 

  BOPビジネスを成功させるためには、企業は市場に対する先入観にとらわれることなく、
  顧客のニーズをくみ取ることができるような仕組みを構築していく必要があります。

 2.従来とは異なる発想を持つ 
  BOP市場において拡大しているのが、小容量での販売です。
  シャンプー、調味料、薬剤など、先進国では通常大容量で販売されているような商品が、
  BOP市場では、1回分など小分けにされて販売されています。

  これにより、BOP層は必要なものを必要なだけ安価に手に入れることができます。 
  先進国の常識でいうと、大容量のほうが単位当たりの価格が安く、小分けにされた
  ものは割高であるため、日常的に使用するものであれば大容量の商品が好まれると
  考えます。

  しかし、BOP市場においては、日当で生活する人も多く、その日の日当でその日必要な
  ものを購入するという購買行動が珍しくありません。
  1週間分、1カ月分をまとめて購入することが経済的にそもそも難しいのです。 

  つまり、単位当たりの価格でみれば割高であったとしても、そもそも大量に購入する
  ことができないBOP層にとっては、小分け販売は非常に合理的な販売方法だといえます。

 3.現地スタッフを活用する 
  BOPビジネスを展開する場合、現地の人々を雇用し、スタッフとして活用することが
  重要です。
  これにより、以下のような効果が期待できます。

   (1)現地のニーズをとらえることができる
   (2)現地の人々に受け入れられる
   (3)人件費を抑制できる

  (1)現地のニーズをとらえることができる 
   BOP市場において、先進国の思い込みや決めつけで商品を投入すると、顧客のニーズを
   つかむことができずに誤った戦略をとってしまう可能性が高いといえます。 
   BOPビジネスにおいて重要なのは、現地に合わせることです。

   同じBOP層でも、国や地域が違えば、商品に対するニーズが異なります。
   先進国では比較的ニーズが均質化しやすいのに比べ、BOP市場では、国や地域に
   よるニーズの差が大きいという特徴があります。

   これは、電気や通信インフラの有無、気候、生活様式の違いなどによって異なる
   社会的課題が発生し、それを解決するためにはそれぞれの課題に合わせたアプローチ
   が必要になるからです。 

   こうした国・地域ごとに異なる課題を正確に把握しているのは、実際にその国・地域で
   暮らす人々です。

   これらの人々をスタッフとして雇い入れ、スタッフの意見を聞きながらビジネスを
   展開することで、顧客ニーズから乖離(かいり)した商品を市場に投入してしまう
   リスクを低減することができます。

  (2)現地の人々に受け入れられる 
   現地の人々を雇用することで、これらの人々の所得向上にも役立ちます。
   そして、雇用の場を提供する企業は、現地になくてはならないものとして受け入れ
   られ、定着することが期待できます。

   海外企業が商品もスタッフも海外から持ち込んで商品を販売するだけでは、現地の
   人々から受け入れられず、継続的にビジネスを行うことはできません。
   ビジネスにおいて継続性が求められることは当然ですが、単価が低く短期的に売り
   上げを上げることが難しいBOPビジネスにおいては、継続することの重要性がより
   高まります。 

   また、国が変われば当然生活習慣や商習慣も異なります。
   現地の習慣に関する知識の不足は、現地の人々との摩擦の原因ともなり得ます。
   どんなに優れた商品を提供しても、現地の人々との摩擦から企業自体のイメージが
   低下してしまっては、好調な販売は期待できません。

   現地スタッフを活用することで、このような生活習慣・商習慣の違いから現地の
   人々と摩擦を起こすリスクを低下させることができます。
   このことも、企業が現地で活動し続けるために重要な点です。

  (3)人件費を抑制できる 
   BOPビジネスにおいては、高い機能や品質を維持しながら価格は安価に抑えなけ
   ればなりません。
   そのためには、削減できるコストは可能な限り削減する必要があります。

   人件費の高い先進国からスタッフを派遣したのでは、コストがかさみ、BOP市場で
   活動を続けていくことは難しいでしょう。
   現地スタッフを活用することで、先進国からスタッフを派遣する場合と比べ、人件費
   を抑制することができます。

   このように、BOPビジネスにおいては、現地スタッフを活用することが重要な意味
   を持ちます。

   ただし、現地スタッフと日本人とでは、習慣や常識に違いがあるため、現地スタッフ
   とのコミュニケーション、スタッフの教育・管理などには、日本での事業展開以上に
   注意が必要です。

   また、BOP層では十分な教育を受けていない人も少なくないため、こうした人たちを
   雇用する場合、説明は図を用いたり実演したりして分かりやすくするなどの工夫が
   必要です。 

   こうした問題に対応するためには、現地のマネジャーを採用して権限を委譲し、
   実質的な管理は当該マネジャーに委任するなどの方法も有効です。
   また、現地のNGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)に相談してみるのもよい
   でしょう。

□BOPビジネスに対する政府の支援 
 BOPビジネスは、日本企業の海外展開の手段としてだけでなく、
  ・途上国における課題解決
  ・途上国の所得向上にも貢献するものとして注目されています。

 しかし、これまでとは異なる市場に対するアプローチとなることから、BOPビジネスの
 展開に当たっては解決すべき課題が数多くあるのも事実です。BOPビジネスを展開する
 際の課題としては、以下のようなものが挙げられます。

  ・現地ニーズや市場環境などの正確な把握が困難
  ・現地のキーマンや事業パートナーの特定が困難
  ・事業パートナーの確保、事業パートナーとの事業目的の共有が困難
  ・事業化段階のコスト負担(研究開発、現地実証事業など)が過大
  ・途上国の政策や制度面での課題(高額な関税など)への対応が困難
  ・他企業による模倣リスクの存在 

 こうした課題の中には、民間企業が単独で解決することは困難なものもあります。
 そのため、これらの課題へ対応し、日本全体として経済協力や国際貢献を進めるといった
 立場から、政府ではBOPビジネスを支援する動きを進めています。 

 例えば、経済産業省では2009年に「BOPビジネス政策研究会」を立ち上げ、BOP
 ビジネスの現状や政府として支援すべき分野などについて検討した報告書を公表しています。

□BOPビジネス参入における方向性 
 BOPビジネスと一口にいっても、その対象となる地域・分野は多岐にわたります。
 地域が異なれば、ニーズの高い分野も異なり、漠然と「『BOPビジネス』に参入しよう」
 という考えでは方向性が定まりません。

 まずは、参入すべき地域や分野をある程度明確にしておく必要があります。 
 ここで、経済産業省が立ち上げた「BOPビジネス政策研究会」の報告書から、日本企業
 が進出しやすい地域・分野を考えてみます。

 まず、地域については、BOPビジネス政策研究会報告書によると、外国機関(国連開発計画、
 米国国際開発庁)が支援するBOPビジネスのプロジェクトは、アフリカ地域で実施される
 ものが多いとされています。

 一方、現在のBOP層の分布をみると、世界で約40億人といわれるBOP層のうち、約30億人は
 アジア地域に存在しているとされており、アジア地域の潜在的な市場規模は巨大である
 といえます。

 海外企業の進出が少ないこと、潜在的な巨大市場が期待できることから、今後BOPビジネス
 への進出を検討するのであれば、まずはアジア地域に目を向けてみるのもよいでしょう。 

 また、分野に関しては、BOPビジネス政策研究会の報告書において、政府として支援
 すべき重点分野を設定しています。
 BOPビジネス政策研究会報告書によると、日本企業によるBOPビジネス参入を支援すべき
 重点分野は以下の通りです。

日本企業によるBOPビジネス参入を支援すべき重点分野】出典:経産省
 上記に掲げられたような分野は、社会的ニーズが高いこと、日本企業の持つ強みを生か
 せること、政府による支援が期待できることから、有望な分野であるといえます。
 まずはこれらの分野で、自社が参入できる分野があるか検討してみるとよいでしょう。

□企業事例
 1.日本ポリグル(株) 
  ガイアの夜明けでも紹介された汚水処理などを行う日本ポリグル(株)では、水中に
  含まれる汚濁物質を凝集させる薬剤(浄水剤)を製造・販売しています。
  浄水剤を水に投入してかき混ぜ、しばらく置いておくと、汚濁物質が凝集して沈殿
  するので、この沈殿物を除去することで、清浄な水を得ることができます。 

  現在、日本ポリグル(株)はバングラデシュにおいて浄水剤を販売したり、水質
  浄化装置を設置したりしています。

  同社の凝集剤は、もともとは災害時における水の確保を目的として製造されたものであり、
  バングラデシュでの販売のきっかけも、2007年にハリケーン被害にみまわれた同国に
  支援物資として浄水剤を提供したことでした。

  災害用として提供した浄水剤でしたが、バングラデシュの農村部では、水道設備などが
  整っておらず、災害時でなくとも清浄な水を確保することは困難でした。
  こうした状況の中、日本ポリグル(株)では、同国の人々が清浄な水を確保できるように、
  同国内に事務所を開設し、浄水剤を恒常的に販売するようになりました。

  日本ポリグル(株)では、現地での浄水剤の販売の大部分を、現地スタッフに任せて
  います。

  具体的には、農村部の女性を、浄水剤を販売する「ポリグルレディ」として採用し、
  周辺の地域に販売してもらいます。
  バングラデシュでは女性が就職することは容易ではなく、同社の活動は同国における
  女性の雇用創出にも貢献しています。
                         日本ポリグル(株)

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新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業を成功させる

新規事業を成功させる
 

新規事業進出の意義

 企業をとりまく経営環境は、技術革新による競争の激化や、消費者ニーズの多様化による
 商品寿命の短期化など、今までにないスピードで変化を続けています。

 このようななかで、「現在の事業のみではいずれ経営が行き詰まってしまう」との危機感
 をもつ経営者も少なくないでしょう。 

 経営危機の打開策として将来性の見込める新しい事業分野へ進出する企業、もしくは
 新規事業進出を検討する企業が増えています。

 新規事業で成功するのは容易なことではありません。

 「儲かりそうな業種だから」「自分にもできそうな業種だから」との理由だけで新規
 事業に進出することは大変危険です。

 誰にでもできそうで儲かりそうな事業ほど新規参入も多く、激しい競争に陥る可能性が
 大きいとも考えられます。

 ですから、自社の企業理念や将来の自社像を実現させるために必要な事業を行うという
 心構えで慎重に事業を選ぶことが望まれます。


□正しい手順を踏んだ新規事業開発

新規事業の開発は、「第二の創業」 といわれるほど難しい。
 成功させるには、勝算を実感できる事業シナリオを描くこと、そして成功要件を客観的に
 検証しながら、勝算を確信に高めていくことが大切です。
 ここでは新規事業開発の手順とステップごとのポイントを解説します。


 どんな事業にもライフサイクルがあります。
 企業が中長期的に存続し、かつ成長するためには、新規事業へのチャレンジが必要と
 なります。
 しかし、新規事業の開発は、第二の創業といわれるほど難しく、成功する企業は一握り
 なのが現実です。

 とはいえ、その成功の秘訣は、数少ない成功事例から知ることができます。
 新規事業の開発に成功している企業に共通して言えるのは、正しい手順を踏んで事業化を
 進めていることです。
 新規事業開発の多くは、漠然としたアイデアからスタートします。

 アイデアによっては、直感的に成否が見通せるような場合もあるでしょう。
 しかし、一見簡単に成功しそうな事業ほど、参入障壁の低い過当競争に陥る危険性が
 高いものです。
 逆に 、「とても無理」と思われるものこそ、慎重かつ周到な準備によって競争力の高い
 事業として実現できる可能性を秘めています。
 正しい手順を踏むことで、直面する課題やリスクへの適切な対策を、より早く講じる
 ことができるので、「急がば回れ」は新規事業開発の鉄則です。


  1.まず目的を明確にする 
   新規事業開発のコンサルティングに際して、「そもそも何のために新規事業に取り組む
  のですか」と聞くと、「社長命令ですから」とか「業界他社が積極的なため」といった
  曖昧な答えが返ってくるケースがあります。
  既存事業のライフサイクルや人材に代表される経営資源の有効活用などの観点から、
  新規事業開発の目的を明確に示し、社内のコンセンサスを形成することが重要です。
  挫折する事例は、「目的に切実感がない」場合が多いものです。


  2.構想段階では勝算の実感を求める 
   事業探索のステップが、アイデア出しにとどまり、その先に進まないことに悩んで
   いる企業が多いようです。
   しかし、アイデア段階で良し悪しを論じてもなんら意味はありません。
   自社の持つ既存の経営資源の中から、競争優位性のある要素を見つけ出し、それを
   最大限に発揮できる市場に対して、商品や販路、生産形態などの事業展開シナリオを
   「勝算の実感」できるレベルまで引き上げ、準備すること。
   それが、事業化に向けての気運を高めます。
   いつまで検討しても実感の湧かない事業は、単なる夢にとどまる実現可能性の低い
   ものです。
   もう一度冷静に、市場と優位性を見極めることが必要です。


  3.事業評価は客観的事実に基づいて
   事業化の可否を正しく判断するには、「勝算の実感」の源にある事業の「成功要件」を
   客観的に検証し、事実を基に事業の実現可能性を示すことが必要です。
   特に「市場の魅力度」(規模、成長性、リスク)と「自社の優位性」(競争環境、
   競争力)に関して事前に詳細な調査を行い、成功要件を固めるとともに、精度の高い
   採算性計算を行うことが大切です。

   客観性を担保するのは、足で稼いだ情報です。
   競争相手や競合商品などを徹底的に分析し、勝算を「確信」にまで高めていくことが、
   思い入れによる偏った評価やつじつま合わせに陥らないための要件です。
   一般に事業評価は市場や競争力の定性的な評価と、採算性に関する定量的な評価で
   行われます。

   このうち、定量的な評価は、例えば「IRR(内部収益率)10%」 、「投下資金回収7年」
   などと具体的な達成目標が数字で示されます。
   ここで注意したいのは、こうした数字は定性的評価に基づく仮定の中に構築されて
   いるということです。

   前提条件となる仮定が事実に基づいたものなのか否かを吟味しないと判断を誤り
   かねません。
   もちろん、すべてを事実だけで構築することは不可能です。
   しかし、要となる「成功要件」に関しては、事実をトコトン追求すべきです。


  4.事業の成否を握る人材
   新規事業の成功要件を突き詰めると、「何をやるか(事業の選択)」と「誰がやるか
   (担当する人)」に収斂(しゅうれん)するといわれています。
   従って人材の選択は、手順を踏んで事業を評価・選択することと同等の重要性を
   持ちます。
   しかし、とりわけ経営資源に乏しい中小企業の場合、新規事業の推進を任せられる
   人材は決して多くはありません。
   そこで、「人材の資質を見極めながら育てていく」という発想が必要となります。
   経営者自らが、「困難が人を育てる」との信念の下、新規事業開発にかける熱い
   思いを社員に語り続けるのです。
   これは、辛抱強く新規事業の開発に挑戦する人づくりの第一歩です。
   新規事業は、成功するまで「お金の無駄づかい」 などと社内の批判にさらされ
   がちです。
   もし失敗すればなおさらでしょう。
   そのような環境の下、創業の難しさを知る経営者が、厳しくも暖かい応援をする
   ことなしでは、主体的に事業開発に取り組む人材は育ちません。


  5.事業管理のポイントは「型」の完成度
   新規事業のほとんどは、事業化から数年間にわたって赤字を余儀なくされます。
   場合によっては、業務不振を理由に撤退の判断を下さざるを得ないケースもある
   でしょう。
   不振事業をズルズルと継続しないためには、事業化の計画を策定する段階から
   事業再評価のタイミングと項目を決めておく必要があります。

   初期段階で重要なのは、事業の成功要件を具現化した「型」(ビジネスモデル)の
   完成度です。
   再評価項目として、ビジネスモデルの完成度にかかわる重要事項をあらかじめ用意
   することは、事業の再評価に役立つだけでなく、日頃から担当者の意識をそこに
   向けさせる効果にもつながります。

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新規事業開発のプロセスと留意点

新事業の開発

新規事業の開発

経済変化の影響
 企業が存続・成長するためには、企業を取り巻くさまざまな環境と適合関係を図って、
 変化に対応していかなければなりません。
 かつての経済変化は、人口の増減・売上高の季節的変動・景気の循環などの量的変化や
 時系列的に発生する変化が中心で、比較的予測しやすかったともいえます。

 しかし、現在では、新技術の開発が早く、消費者ニーズも多様化し、そのスピードも速い上、
 経済そのものがグローバル化するなど、環境は変化しています。
 企業はこうしたことの影響を避けることはできません。


 「既存事業の閉塞感からの脱却」や「経営環境の変化への対応」を目的に、新事業への
 進出を検討する中小企業は少なくありません。
 しかし、大企業に比べて経営資源に限りのある中小企業がやみくもに新事業を展開しても、
 それが成功する可能性は低いと言わざるを得ません。 
 以降では、中堅・中小企業が新事業で成功する上での必須条件である「自社の強み」を
 どのようにして発見し活用するかについて考えていきます。


□新事業開発の3つのパターン
 1.パターン1: 新製品・サービスの開発を軸とした新事業の立ち上げ
  自社で新たな製品・サービスを創り出し、これを軸に新事業を実現していくことは、
 中小企業が新事業開発を考える際の最も一般的なパターンといえます。
 新製品・サービスの開発を行う際には、特許などの知的所有権を確保することによって、
 模倣品などに対する法的防衛策を加え、より優位性・継続性のある事業を創出することが
 可能です。
 また、自社に技術・ノウハウ面での優位性がなくとも、他社の技術や製品・サービスなどの
 ライセンス供与を受けることで、外部から技術・商材を導入し、それを自社が保有する
 生産技術力や店舗オペレーション能力によって展開していくこともできます。


 2.パターン2: 独自市場の創造による新事業の立ち上げ
  ニッチ市場など、今まで注目されてこなかった新しい市場を発見・創造し、先発の
 優位性を生かして市場を席巻するパターンです。
 このパターンの場合、その市場でのノウハウの蓄積、顧客の囲い込み、サプライヤーの
 独占による参入障壁の構築などにより安定的な地位を獲得しやすくなります。
 また、多くの場合は市場のニッチ性ゆえに市場規模並びに成長性に限界があるため、
 大企業の参入対象とはなりにくい傾向があります。
 中堅・中小企業に適した事業開発手法といえるでしょう。


 3.パターン3: 新ビジネスモデル・ビジネスシステムを軸とした新事業の立ち上げ
  独創的なマーケティング手法の開発や他社の追随を許さない生産管理技術など、企業の
  経営機能の高度化によって新たなビジネスモデルあるいはビジネスシステムを構築し、
  これによって新事業開発を実現していくパターンです。
  このパターンの留意点は、新製品や新サービスの開発、あるいはニッチ市場の開発に
  よるパターンと比較して競合他社に類似の製品・サービスを企画される危険性がある
  という点です。
  また、実践する上で経営者のビジネス感性や強いリーダーシップが要求されることにも
  留意が必要です。
  ただし、いったん強力なビジネスモデルやビジネスシステムを構築すれば、製品・
  サービスを基軸とする場合などよりも優位性を長く継続できる可能性が高くなります。


□自社の「強み」を発見するためのCVCC分析
 1.CVCC分析の基本的な考え方
  ここまで紹介してきた新事業開発パターンは、企業が持つ「顧客」「製品・サービス」
  「独自能力」といった3つの要素に関連します。
  そのため、企業が新事業開発を検討する際の切り口として、自社が持つ3つの要素
  (「顧客」「製品・サービス」「独自能力」)の分析・把握を行い、その可能性を
  探っていくことが重要となります。

  自社が「顧客」「製品・サービス」「独自能力」の3つの要素でどのような強みを保有
  しているかを検討するための分析手法を「CVCC分析」と呼びます。

  この分析手法は以下の3つの切り口で行います。これにより、自社の本質的な競争能力
  の源泉を発見し、それを基に新たな事業領域(事業ドメイン)の構築を進めていきます。


   ○顧客構造(Customer)分析
    →自社の得意とする顧客セグメントを発見する
   ○提供価値(Value)分析
    →自社が市場(顧客)から評価されているポイントを理解する
   ○独自能力(Core Competence)分析
    →競合他社との事業オペレーション面での独自能力や優位性を発見する


 2.顧客構造(Customer)分析
  法人向けの生産財を取り扱う企業は「パレート分析」を利用します。
  パレート分析とは、例えば「企業の利益の80%は優良な20%の顧客によって
  もたらされている」といったことを基本とする考え方です。
  パレート分析を行うことで、自社の売上高や利益におけるシェアホルダーが明確に
  なります。
  なお、パレート分析を行う際は、必ず事業単位ごとに実施しなければ役立つ分析結果
  が得られません。
  これは事業分野あるいは取扱製品・サービスにより、顧客単位別の売上高の多寡、
  利益率の高低が必ず存在するため、全社での単純な「上位客何社」であるとか「優良
  顧客何名」というような分析を行うと、事業ごとの実態を十分に把握することが
  できないからです。
  パレート分析のイメージは下図の通りです。


  上図の中で、構成比65%までを占める範囲をAクラス、65%から95%の範囲をBクラス、
  95%から100%までをCクラスとして規定します。この分析によって明確になった
  Aクラス顧客層を自社の中心的かつ代表的顧客として設定し、以降で紹介するような
  切り口でプロファイル(顧客像)を検討していきます。


  ◎業種・業態
   →垂直的な業界構造を持つ場合には、顧客がどこに属しているのかを把握する
    ことが重要
  ◎事業規模
   →売上高、利益率、従業員数、年間出荷量などの全社的な数値、工場・営業所
    などの事業所数、工程ライン数など個別の条件的数値も検討することが重要
  ◎用途分野
   →どのような事業工程を持つ企業で、どのような工程部分で採用されているのか、
    またどのような使われ方をしているのかを把握することが重要
  ◎地域特性
   →自社の営業拠点と必ずしも一致しない場合が多いことに留意が必要


  ここまで、法人向けの生産財を取り扱う企業のケースを紹介してきました。
  これに対して、一般消費者向けの消費財を取り扱う企業の場合は、顧客カードやポイント
  カードの申込書に記載されている顧客情報データやPOSデータから得られる購買履歴
  などを基に分析していきます。
  自社に顧客データが集積されていない場合には、店頭での目視による顧客タイプ調査を
  実施することで代替することができます。
  顧客タイプの分類は、以下の4つの切り口でグルーピングし、自社に特有の顧客タイプ
  を発見するという方法です。

    1.人口統計学的基準(年齢、性別、家族構成、所得水準など)
    2.心理的基準(ライフスタイル、パーソナリティー)
    3.購買行動基準(使用率、特定ブランドへのロイヤルティーなど)
    4.地理的基準(地域、気候風土、人口密度など)


  なお、この顧客構造分析の際に注意しなければならないのが、分析を行う企業側の予見を
  できるだけ排除しなければならないという点です。
  営業担当者などの日ごろ顧客と直接接触している人物が分析を担当すると、
実際のデータと
  営業担当者自身の予見とのギャップが大きい場合に、予見に基づきデータを意図的に
  間違った方向でグルーピングする
といった事態が発生します。
  これは生産財・消費財ともに発生しやすい現象です。
  また、分析担当者が事前に営業担当者に対するヒアリングなどにより予見を植え付け
  られている場合にも、このような現象は起こりやすくなります。
  分析着手段階で必要以上に仮説を構築することは、実態を見誤る原因となりかねません。


 3.提供価値(Value)分析
  顧客が自社の製品・サービスを採用することで実現できる価値の本質を見極めます。
  これは、顧客からすればメリットであり、企業からすれば製品・サービスを提供する
  価値(提供価値)ということができます。
  提供価値を検討する際には必ず顧客側の視点に立ち、

   なぜ自社製品・サービスは採用されているのか
  を分析しなければなりません。

  この分析がなければ、顧客の購買決定要因と企業が考えるそれに関する理解の相違
  (あるいは企業側の思い込み)を払しょくすることができないからです。
  自社の提供価値に関しては、顧客満足度調査などのアンケートあるいはヒアリングを
  定期的に行うことで、データを収集します。
  自社の製品・サービスの採用理由に関し、複数のキーワードを基に選択してもらい、
  その回答を整理して分析します。

  提供価値の分析に関しては、収集されるデータはどうしても定性的なものになって
  しまいます。
  このため分析担当者の予見などが入りやすくなるため、アンケート項目は慎重に設定
  しなければなりません。
  アンケート調査の項目は、まず「自社もしくは自社ブランドを認知しているかどうか」
  といった設問から始めるとよいでしょう。

  これによって、心理的に調査に協力する方向に誘導することができます。
  仮に「購買」という設問グループであれば、次に購買経験の有無、購買した製品・サービス
  の種類、購買時期と次第に詳細に入っていき、購買決定要因として調査する企業側が
  想定している仮説を列挙し選択してもらうようにします。
  この際、回答の選択肢の配置には注意を要します。

  似通った仮説や対立する仮説(例えば価格と品質)を併記することは避けましょう。
  その理由は、顧客に、
どちらかを選ばなければならないという先入観を与えることで、
  顧客が本来思っていなかったものまで選択させてしまう可能性が高いためです。
  また、設問の最後には、必ずフリーコメント欄をやや広めに置き、定性的かつ自社が想定
  しなかったような回答を得るように工夫しなければなりません。

  次の例(生産財メーカー)では、あえて
「改めるべきポイント」というネガティブな
  設問をフリーコメント用に設定
することで、企業側の仮説以外の定性的データを回収
  できるように設計しています。

  提供価値分析で注意したいのは以下のポイントです。

  (1)顧客からの視点で価値を探る
   企業側が提供したい、あるいは提供していると認識している価値と、顧客が購買
   決定の前提としている価値とは必ずしも一致していません。
   アンケートやヒアリングの際の質問設定を企業側の予見に基づいた二者択一あるいは
   三者択一などに単純化したり、定量的な判断を行いやすくするためにYES−NO
   タイプの設問にしたりすることは避けましょう。


  (2)生産財の場合は用途分析と導入効果を明確化する
   生産財の場合、提供価値は必ず顧客の業務工程上で発生し、導入効果として定量化
   されているはずです。
   自社の生産財が、顧客自身の価値創造活動(生産性向上、品質向上、安全性や
   安定性など)においてどのような期待を受け、また、それをどのように実現して
   いるのかを検証していきます。


  (3)消費財の場合は購買決定要因から分析を行う
   消費財の場合、消費者が自社の提供する製品・サービスを採用することによって、
   何を実現しようとしているのかを主軸に分析を行います。
   そのためには、調査時に特に消費者の購買決定要因を分析する必要があります。


  (4)調査は定期的に実施する
   顧客の自社に対する評価の変化を追尾する必要があるため、調査・分析は定期的に
   実施していくことが求められます。
   通常、生産財での顧客満足度調査は年に1回、消費財の場合は季節的要因が購買
   行動に影響を与えるケースが多いので年に4回以上実施することが理想です。


 4.独自能力(Core Competence)分析
  自社が競合他社と比較して優位性を有しているのはどのような能力であるかを検討します。
  独自能力に関しては、どうしても恣意的・主観的になりがちなため、これを避けるために
  次のような切り口で可能な限り定量的に判断することを心がけます。


  (1)特許などの知的所有権に代表される技術的独自性・優位性
   技術的側面で独自能力を検討する際には、自社の特許申請・出願件数の推移を把握
   した上で、その特許などの技術的な優位性が業界でどのように評価されているか、
   競合他社やベンチマーク対象企業と比較してどのような地位にあるかを検討します。
   実務上は特許などにより防衛されている権利範囲の比較が必要です。
   また、研究開発予算や研究設備・人員の推移などについては、競合他社との比較も行い、
   可能な限り客観的な評価を心がけます。


  (2)店舗運営などにおけるマニュアルなどに整備された独自ノウハウ
   店舗運営などでの独自ノウハウであれば出店数の推移、1店舗当たりの売上高や
   収益率の推移を競合他社と比較して、市場での評価や業界内での地位を定量的に
   把握するように努めます。
   そのほかの指標としては、従業員数の伸び率なども重要となります。


  (3)生産設備の生産性、独自性
   生産設備面に関し、生産性については従業員1人当たりの利益や労働生産性などに
   ついて、業界平均並びにベンチマーク対象企業との比較を行います。
   設備の独自性に関しては、その設備によって生産される製品の市場シェア推移などを
   参考にすると客観的判断を行うことが可能です。


  (4)資材仕入などに発揮されるサプライチェーンの運営能力
   サプライチェーンの運営能力については、原価率の業界平均との比較などを基に
   仕入能力の差異を検証していきます。


  (5)営業拠点数や営業担当者1人当たりの生産性に反映されるマーケティング能力
   マーケティング能力については、自社の営業拠点数の推移、売上高推移、営業
   担当者1人当たりの売上高並びに営業利益額の推移などを、業界平均や競合他社と
   比較し判断します。


  (6)価格決定の際などに発揮されるブランド力
   顧客満足度調査や顧客へのヒアリング調査などによって、ブランドイメージ、顧客
   ロイヤルティーの源泉の把握を行います。


 5.まとめ
  新たな事業展開を図るために活用できる独自能力を発見する際には、客観性が求められ
  ます。
  例えば、「自社は技術力が高い」「自社に対する顧客ロイヤルティーは群 を抜いている」
  など、
社内であたかも当然の事実として語られているようなコメントをそのまま信じる
  ことは危険
です。
  社内での自己評価と、市場あるいは顧客・競合他社からの評価とは往々にして差異が
  あるものです。
  特に過去に多くの成功体験を持っている老舗企業の場合、その成功体験に基づく
  自己イメージが強すぎるため、自社での認識と自社の独自能力として顧客や市場から
  認識されているものとが乖離しているケースが多く見受けられます。


□アンゾフの成長マトリクスに活用した方向性検討
 1.アンゾフの成長マトリクスとは
  新事業開発を計画する際は、自社の「独自能力」や「提供価値」が「顧客」に対して
  特徴的に働いているのかを検討し、その上で成長戦略を立案していくことになります。
  この際に参考となりものに、アンゾフという有名な学者によって考えられた「アンゾフの
  成長マトリクス」があります。
  アンゾフの事業拡大マトリクスは図の通りです。


  縦軸に事業・製品、横軸に市場・顧客層をとり、「新製品開発」「市場浸透」「多角化」
  「市場開発」という基本戦略の4つの方向性を示しています。


 2.新製品開発戦略
  既存の顧客層に対して、新たな製品・サービスを提供していくことで成長を図ろうとする
  戦略です。
  この場合、製品開発・技術開発面での能力やノウハウよりも、いかに既存の顧客を
  知り抜いているかという顧客管理・分析能力のほうが重視されます。
  なぜなら、既存の顧客の考え方や業務プロセス、ニーズや購買能力などを十分理解して
  いなければ新製品の提供はうまくいかないからです。
  これは、CVCC分析において特定の顧客セグメントに対して優位性が発見できた企業に
  適した戦略といえます。
  また、製品・サービス自体は自社で開発しなくとも、外部からライセンス供与などにより
  導入することも可能です。


 3.市場浸透戦略
  既存の顧客に対する既存製品・サービスを、今よりも徹底して行っていくことで展開を
  図ろうとする戦略です。
  この戦略の場合、顧客と製品・サービスは変えずに、いかに効率よく事業を展開して
  いくかということがポイントです。
  それは、現状の事業運営の方法を徹底的に見直していくことで、売上と利益を確保・
  拡大していこうとする戦略、つまりビジネスモデル・ビジネスシステムを変革していく
  タイプの戦略になります。
  見直す対象は製造・販売・仕入・物流など事業の各段階における運営手法や組織形態
  などです。
  これは、CVCC分析において業務オペレーションなどの面で独自能力が発見された
  企業に適した戦略ということができるでしょう。


 4.多角化戦略
  新たな顧客に新たな製品・サービスを提供していく、つまり全くの新規分野の事業への
  進出を図ろうとする戦略です。
  この戦略はこれまで自社に存在しなかった事業分野への進出となるわけですから、
  経営環境分析を徹底して行った上で、新たな事業モデルを構築して参入する必要が
  あります。
  また、既存事業から得たノウハウや能力面を何らかの形で有効に機能させる必要が
  あります。
  基本的には非常にリスクの高い戦略なので、経営資源に限りのある中小企業の場合、
  実行に移す前に十分な検討を重ねる必要があるでしょう。


 5.市場開発戦略
  既存の製品・サービスを使って新たな顧客層を開拓していく戦略です。
  この戦略の場合に重要な要素は、自社製品・サービスの「提供価値」です。
  自社の製品・サービスが既存の顧客に対して、どのような価値を提供していることが
  要因で採用されているのかを徹底して分析する必要があります。
  つまり自社が提供している製品・サービスのメリットを分析し、そのメリットを認めて
  もらえるような新たな顧客層を探索することが成功の鍵になります。
  そして、そのような新たな顧客層(見込み客層)を開拓していくための営業戦略の
  構築と実施がポイントとなります。


□経営資源を活用する9つの視点
 1.経営資源の活用の検討
  新事業開発の方向性が定まった後は、それを実践するための方法を検討します。
  実践方法の検討とは、自社の限られた「ヒト」「モノ」「カネ」並びにノウハウや情報
  などの「ナレッジ(知的資源)」という4つの経営資源をいかに活用していくかを具体化
  するということです。
  以降では、新たな経営資源活用方法を検討する際に有用な、オズボーンの発想法を
  紹介します。


 2.オズボーンの発想法による経営資源活用方法の検討
  オズボーンの発想法では、以下の9つの視点から経営資源活用方法の検討をしていきます。
  オズボーンのチェックリストは以下の通りです。


   (1)転用(Other use)
    今ある資源をほかの使い方に転用していくという考え方です。過剰設備の転用や
    遊休不動産の有効活用、人事異動、ノウハウの新製品への活用などがこれに該当
    します。


   (2)借用(Adapt)
    他社の特許のライセンス利用や公設試験研究機関の設備利用、あるいは競合する
    製品の模倣やリバースエンジニアリングなどを少ないコストで自社に導入していく
    という考え方です。
    海外やほかの地域などで成功している事業モデルを研究して自社のものとする
    方法もこれに該当します。


   (3)改良(Modify)
    既存製品の改良やマーケティング手法の改良、生産手法の改良など、大規模な
    経営資源の追加投入を行わないで、より高度なものにしていく手法です。


   (4)拡大(Magnify)
    販売チャネルや対象顧客層の拡大、製品ラインナップなど既存のものをベースに
    周辺部分を大きくしていく考え方です。


   (5)縮小(Minify)
    既存の資源で有効活用されていないものを縮小させることで効率化を図る
    手法です。
    コストダウンや生産設備の縮小などのほかに、販売チャネルや顧客の絞り込み、
    製品ラインナップの特化などもこれに該当します。


   (6)代用・代替(Substitute)
    正社員からパート・アルバイトへの変更、原材料・部品などの代替品への転換、
    事務作業などのアウトソーシングなどで効率化していく手法です。


   (7)組替(Rearrange)
    人事異動などによる組織構成面での経営資源の組み替えや、営業活動地域の変更、
    生産拠点の配置の修正、原材料仕入の地域別構成の変更など組織的・物理的・
    地理的な組み替えにより資源活用を効率化していく考え方です。


   (8)逆転(Reverse)
    賃金制度における「年功給」比率と「成果給」比率の逆転や、拠点型の自社営業
    から代理店型のチャネル営業への転換、競合他社との共同物流などの方針面での
    逆転などにより、新たな効果を生み出そうとする考え方です。


   (9)統合(Combine)
    事業の統廃合や他社との戦略的アライアンス(提携)など組織面での統合による
    経営資源効率化と、販売チャネルの一本化や代理店制度の見直しなど拡散して
    いる資源を集約化することで効果を上げようとする考え方です。


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新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業計画書の作成

新規事業計画書の作成

 ■新規事業計画書作成の意義
  1.企業の行動指針としての計画   
   企業が事業を継続していくためには、その指針としての計画が必要です。
   貴社でも「来年度の売り上げは1億円」「今期の利益は2億円」などの数値を掲げて
   いるでしょう。
   しかしながら、この数値は計画ではなく数値目標であり、経営を進める際の明確な
   指針にはなり得ません。
   目標を達成するための手順、すなわち緻密な計画があってこそ、目標は現実的で
   意味のあるものになるのです。
   新規事業計画書とは新しい事業を立ち上げ、本格的に展開していくために、後に
   示すような一定の書式で事業化の手順を書き示したものです。

  2.計画書作成で社員・関係者の理解を得る   
   前述のように計画とは目標達成のための手順であり、それを計画書として目に
   見える形にしておくことは、社長自身日々の活動計画を確認するうえで有効である
   といえるでしょう。
   また計画書を策定していく過程のなかで、より深い戦略的な思考がなされ、
   計画自体の論理性、妥当性が増すという効果も期待できます。   
   また社員にとっては新規事業計画書を読むことによって、会社の新たな方向性を
   理解することができ、そのなかで自分自身が果たすべき役割を確認し、自分の
   業務計画を作成していくことが可能になります。   
   さらに取引金融機関や株主などの利害関係者に対しても、必要に応じて計画書を
   公開することにより、会社の方向性に対する理解を求めることができるでしょう。

 □計画作成の手順 
  新規事業計画は、自社の将来を模索するための経営戦略の一部を担います。
  それは、自社を取り巻く環境と将来の状況を予測し、自社の成長する方向を検討する
  ための手段になるものです。
  したがって、新規事業計画の立案は、自社のビジョンと事業領域とを把握することから
  始まり、中期経営計画の一部として既存事業拡大計画、そして事業多角化計画と
  ともに立てられます。
  その後、具体的な新規事業計画の立案・管理を行ないます。 
  具体的な手順は以下のとおりです。

  (1)新規事業開発方向の検討自社の経営資源を十分に把握し、どの分野にいかなる
    事業展開を行なうのかという方向性を検討する
  (2)事業シーズの分析事業開発に活用できる自社の資源・能力・特性をどれほど
    保有しているかを分析
  (3)新規事業の選定・評価新規事業の開発候補となった事業の成長性、優位性、
    リスク対応性、公共性、投資可能性、重要度などを評価し、価値付けを行なう
  (4)新規事業の計画化実際に計画内容を計画書としてまとめ上げる
  (5)実行
  (6)業務進捗管理

 □盛り込むべき内容 
  新規事業計画書は目標達成のための手引書であり、同時に社員や関係者に新規事業
  を正しく理解させるための伝達ツールにもなるものです。 
  したがって、新規事業計画書には以下のような内容を盛り込む必要があります。

   a.テーマ、目的、意図、ねらい
   b.現状
   c.問題点
   d.改善・改良点
   e.行なおうとする施策
   f.実施時期、スケジュール
   g.所要経費、支出額
   h.期待される効果、利益
   i.将来的な価値

  新規事業の種類によって必要な項目は若干異なります。 
  また計画書作成の目的が、社員へ新規事業の概略を理解させることだけであれば、
  新規事業の内容と進め方のアウトラインを示す程度で十分ですが、実際に各部門や
  各自がそれぞれの計画に展開していくためには、その指針として、 

   a.見積もり損益計算書  
   b.投資計画  
   c.要員計画

  といった関連する諸計画も盛り込まれた、より詳細な計画書を作成する必要があります。 
  以下に新規事業計画書の一般的な構成例をご紹介します。

  1.概略編 
  (1)事業の基本コンセプト  
    ・ターゲットとする顧客に対し、どのようなニーズを想定し、どのよ
     うな商品を提供するか  
    ・そのことが自社にとっていかなる意義があるのか  
    ・本業との相乗効果は期待できるのかなど
  (2)市場分析  
    ・市場全体の動向  
    ・自社の商圏内の市場動向  
    ・ターゲットとなる顧客層の分析など
  (3)事業内容  
    ・提供する商品・サービスの内容  
    ・料金体系  
    ・営業や販売チャネルのスタイルなど 
  (4)投資内容  
    ・投資金額の内訳  
    ・資金調達方法の概略  
    ・償却計画など
  (5)収支シミュレーション概略  
    ・単年度黒字化年度 
    ・累損一掃年度  
    ・借入金完済年度など

  2.個別戦略編 
  (1)損益計画  
    ・長期の損益計画の概略 
    ・短期の損益計画の詳細など
  (2)資金計画  
    ・資金調達計画(借り入れ方法、金額、金利など)
    ・資金運用計画(設備購入、借入金返済など)
  (3)人員(組織編成)計画
    ・新規採用、社内からの選定
    ・組織体制、指示命令系統、業務分担など
  (4)仕入れ、在庫計画
    ・仕入れ先、仕入れ個数、仕入れ時期、仕入れ価格、支払い条件
    ・保管方法、在庫回転数、適正在庫量など
  (5)生産計画
    ・作業工程全般
    ・生産量
    ・品質基準など
  (6)物流計画
    ・入庫までの物流
    ・生産工程にかかわる物流
    ・出庫から販売先までの物流
  (7)販売計画
    ・販売先、販売個数、販売時期、販売価格、代金受け取り条件、販売
     促進の方法など
   
 □作成上の留意点
  1.計画は目的を明確にし、かつ論理的に展開する  
   計画の実行にあたっては全社的な計画から部門計画、個人の業務計画へと次々と
   展開していきます。
   たとえば、全社的に新規事業で3億円受注するという目標があれば、それは部門
   としてどう取り組むかという部門計画に展開され、さらに部門計画遂行のための
   個人業務計画へと展開されます。  
   ここでたとえば、
   a課の計画がA事業部の計画を遂行するために論理的かつ目的に沿ったものになって
   いないと、その課に所属する○○さん、△△さんの計画は全社目標にそぐわないもの
   になってしまいます。  
   このような緻密な計画を策定していくためには、それぞれの段階において計画を
   策定する際にその論理性を十分にチェックするとともに、全社計画との整合性を
   つねに確認しておく必要があります。

  2.具体的かつ定量的な記述にする  
   事業計画書が目標達成のための手引書である以上、その記述は具体的な数値で
   示されなければなりません。
   たとえば、
    営業パーソン何人がどのような方法で、どのような顧客層を
    対象に、いつまでに、どれだけの受注を取る
   というような内容でなければ、その計画を受けた個々の営業パーソンが自分の
   業務計画を展開していくことはできません。  
   また、計画は策定後その進捗状況をつねにチェックしていかねばなりませんが、
   その際に計画と実績が定量的に比較できないと、正確な状況把握ができません。 
   たとえば受注計画未達成の部門が要因分析を行なうとき、その要因が「営業マンの
   人手不足にあるのか、個々人の努力不足にあるのか、あるいはひとりあたりの
   目標設定の誤りにあるのか」という分析を行なうためには、営業パーソンの要員
   計画・実績、ひとりあたり受注額の計画・実績などの定量的なデータが必要に
   なります。  
   このように計画書作成には、   
    すべての計画の段階(全社計画〜個人計画)において、   
    具体的かつ定量的な記述がなされていなければならない
   点に留意する必要があります。

  3.客観的なデータを盛り込む  
   新規事業計画書は「新しい事業をこのような方法で展開していきたい」という
   社長の意思の表われともいえますが、熱意を伝えるだけではなく第三者にその妥当性
   や実現可能性を認めさせなければなりません。  
   たとえば、市場分析において、経営者自身の市場の読みだけではなく、客観的な
   データを盛り込むことにより、その説得力は大きく高まります。  
   客観的なデータとしては、   
    ・公的機関などの統計データ   
    ・調査会社の市場分析データ
   などがありますが、地域を限定した新規事業展開をする場合には、全国規模の
   市場データよりも、その地域の特性を踏まえた市場データを活用するほうがよい
   でしょう。

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新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業計画書作成の留意点
 

  ■基本計画書の作成 

   新規事業の構想(方向性)は、市場性の調査・評価、現在保有している経営資源
   の分析を経て、「新規事業計画書」としてまとめ上げます。

   ここでは、新規事業計画書に最低限必要と思われる「基本計画」について、その
   書き方・考え方のポイントを解説していきます。

   新規事業を本格的に展開するには、基本計画であげた項目はすべて明らかにす
   る必要があります。

   基本計画において、明文化できない、焦点がぼやけているようなことがあれば、 
   実行可能な事業として練られているといえません。
   いまだ、思いつき、根拠なき期待の域を脱していないと評価きれてしまいます。

   そこで、各項の解説を参考にしながら、フォーマットに新規事業の内容を記入し、 
   実際に計画書を作成してみましょう。

  □プロフィール

   (1)新規事業名

     どのような事業なのかをイメージできるような事業名を付けます。

     文字数は15文字から30文字程度を目安に、キャッチーかつシンプルで魅力
     的な事業を象徴・演出するようなタイトルを工夫しましょう。

   (2)事業計画書の目的

     計画書が第三者に提示するものであればその目的を明確にします。

     投資家からの「資金支援」、共同開発や販売提携などの「ビジネスパートナー
     募集」といったことを表記します。

   (3)新規事業展開の背景

     すでに事業を行なっている企業であれば、既存事業の概況から新規事業を展
     開しようとする経緯を簡単に記述します。

     起業家による新たな事業の立ち上げであれば、事業化するに至った動機を明
     らかにします。

     インパクトのある動機であれば、第三者へのアピールの度合いが増します。

     さらに、5年後、10年後にこの事業をどうしていきたいのかを表明します。

   (4)会社概要

     会社の基本情報について記入します。

     これから会社を設立する場合などで、記入できない項目についてはブランクと
     します。

  □事業コンセプト

   (1)事業コンセプト3要素

     事業コンセプトは、aターゲット顧客層、b顧客の想定ニーズ、C独自の能力、
     の3要素からなります。

     新規事業を展開するには、事業対象とする顧客層とそのニーズを明確に想定
     したうえで、そこに独自能力によって形作られる製品やサービスの投入が検討
     されていなくてはなりません。

     事業コンセプト3要素が規定しきれていない事業は、顧客に対して自社の特徴
     が十分にアピールできず、集中すべき経常資源の選択方法にも狂いが生じて
     しまいます。

     ◎事業コンセプト3要素のポイント
      a 顧客層:性別、年齢層、地域、所得、職業、趣味・噂好などによる区分

      b 独自能力:特定分野の技術・ノウハウ、販売方法、免許・資格など

      c ニーズ:低価格指向、利便性・即時性追求、機能性・品質追求など

   (2)事業コンセプト

     ここで打ち出す事業コンセプトは、事業計画書すべてのよりどころとなります。

     3要素の内容を盛り込み、事業存在価値、社会的意義を訴えるようなワンセン
     テンスにします。

     ありふれた表現をさけ、かつ自己満足に陥った第三者が理解し難い内容にな
     らないようにします。

   (3)補足説明

     事業コンセプトを、必要に応じて次のような観点から補足的に解説をします。

      ・ターゲット顧客とニーズを想定した背景や根拠は何か

      ・独自能力を裏付ける根拠として、獲得ノウハウや技術となるものは
       あるか(自身の業界経験・実務経験や独自仕入れルートの存在、
       スタッフの優位性などを補足的に明記)

      ・コンセプト3要素のうち、とくに新規性・独創性の高い要素はどれか

      ・新規事業が自社や自分自身にとってどのような意義があるのか

      ・既存事業との相乗効果が見込めるのか

  □事業環境の分析

   (1)産業構造の変化の分析

     社会の大きなトレンドを記述します。

     事業が社会の要請に基づくものであることを、客観的に分析します。

     ◎分析対象例
       ・景気動向の変化

       ・業界内の法律や制度など規制緩和、規制強化の流れ

       ・高齢化社会、女性の社会進出、国際化など社会構造の変化

       ・国や地域の産業新興施策の状況

     ◎チェック
      3要素それぞれが新規事業としての魅力を兼ね備えており、妥当な関連性
      が存在しているかチェックします。

   (2)市場環境の変化の分析

     新規事業の対象となる市場において、どのような変化を予測しているかを明確 
     にします。

     根拠となる予測はできるだけデータをもって裏付けを行ない、その変化が展開
     しようとする事業に対してどのような影響をもたらすかを整理します。

     ◎分析対象例

       ・市場の大きさ、需要量、対象顧客数の変化

       ・価格、品質、趣向など市場ニーズの内容の変化

       ・顧客の購買行動の変化

       ・新しい販売方法や販売チャネルの出現

     ◎分析方法例

       ・家計調査年報、商業統計などの公的な統計情報による分析

       ・民間のシンクタンクや業界団体が調査した業界情報

       ・アンケートやモニター調査による独自分析

     ◎チェック

      マクロ情報以外にも自分の足で稼いだ情報収集・分析を行ないます。
      たとえば、アンケート調査、インターネットを活用したリサーチなど、
      限定的な市場分析があげられます。

   (3)技術革新の変化の分析

     扱おうとする製品・サービスにかかわる技術分野の変化を予想します。

     ◎分析対象例
       ・基礎技術、要素技術に関する進展度合い(例:DVD技術、クローン技術)

       ・新製品、新技術の出現予想

       ・コスト削減や品質向上に影響する生産技術の革新予想

       ・現有製品と次世代製品の切り替わりのタイミング

       ・販売技術の革新予想(例:インターネット活用の通信販売)

   (4)競合環境の変化の分析

     競合となる企業、店舗、製品、サービスについて、「優位性」「弱点」を整理。

     ◎分析対象例

       ・競合となる企業とその製品、サービス

       ・店舗の場合は、商圏内の競合店の品揃え、営業状況

       ・類似する製品、関連する製品

       ・新規参入者、撤退者の予測

       ・関連する技術分野の特許調査

     ◎チェック

      まったく新しい製品を開発したとしても、すでに類似製品があったり、
      追随者が早期に出現することが往々にしてあります。
      緻密な競合調査によって、展開しようとする事業の優位性を検証します。

  □マーケテイング計画

   (1)製品・サービスの概要

     製品やサービスの特徴を次のような観点から明確にします。

      ・製品の形状、材質、サイズ、色、ライン、パッケージ

      ・製品やサービスの機能、役割、ブランド

      ・製品であればおもな製法や仕入れ方法、サービスであれば提供方法

      ・その他特筆すべき性質、特徴

      ・事業コンセプトの独自能力との関連

     ◎チェック

      どのような製品・サービスかをイメージできるように表現を工夫します。
      必要に応じて、図で示したり、製品の写真を添付します。

   (2)製品・サービスのベネフィット(便益)

     製品・サービスの販売ターゲットについて、誰が(ターゲット顧客)、いつ、どこ
     で、どのように利用するのかという視点からまとめます。

     そして、顧客がこの製品・サービスを利用することで、どのようなメリットが享受
     できるのかも明らかにしていきます。

     活用シーンを提示するなど、顧客の視点からアピールきれているか確認。
        
   (3)価格設定

     顧客への標準販売価格を記入します。

     また、価格設定の方針についても次のような考え方に基づき明らかにします。

     ◎価格政策例

       ・低価格政策…低価格を打ち出し一挙にシェアを獲得する。
        また薄利多売によって利益を獲得する

       ・高価格政策…高価格により製品サービスの付加価値を重視し、
        早期の資金回収を図る

     ◎価格決定方法例 

       ・コスト価格決定…かかる費用に必要な利益を乗せて価格を設定する

       ・市場価格決定…顧客が購入するであろう価格を設定する

       ・競争価格決定…競合する製品・サービスに対し価格競争力を考慮
        して設定する

     ◎チェック

      「売れて、儲かる」価格の考えが練られているか確認しましょう。

   (4)販売形態(販路、店舗)

     まず、想定する商圏を明らかにします。

     そのうえで、製造業や卸売業であれば、製品を流通させる販路を図示します。

     複数の販路を想定している場合、シェア構成などを記入します。

     また、小売業であれば、店舗の立地や広さなどの特徴を記入します。

     ◎チャネル政策の考え方例

       ・開放的チャネル…取引を望む相手すべてと取引

       ・選択的チャネル…一定の条件をあらかじめ設定しその条件に
        合った相手と取引

       ・専売的チャネル…代理店方式、会員制、フランチャイズ方式など
        特定の相手のみと取引

     ◎店舗の考え方例

       (1)商圏設定による店舗の考え方

         ①近隣型店舗…最寄り性が高く、多くの地元住民が多頻度に
           利用する店舗

         ②地域型店舗…最寄り性・買い回り性が強く、週1回程度来店が
           見込める店舗

         ③広域型店舗…専門性・噂好性が高く、広域商圏において店の
           認知度が高められる店舗

       (2)店舗規模による店舗の考え方

         ①小規模店舗…専門的な品揃え・サービスで初期投資を抑えた店舗

         ②大型店舗…広い品揃えで大きな集客を見込む店舗

     ◎チェック

      製品特性に合わせた販売方法が構築きれているか確認しましょう。
      販売先、仕入れ先のパートナーを求めるのであれば、しっかりした
      政策が明記されていることが必要。

   (5)プロモーション方法

     プロモーションとは潜在顧客の掘り起こしのための具体的な告知方法のこと。

     製品・サービスをどのように認知してもらい、アプローチしていくかを具体的に
     記入します。

     プロモーション方法には次のような方法があります。

     ◎プロモーションの方法

       ・広告活動…チラシや雑誌、新聞、CMなどの広告掲載。広告料として
        費用がかかる

       ・パブリシティー…雑誌、新聞の記事としての掲載。話題性、新規性の
        あるものであれば取り上げられる可能性は大きい

       ・人的販売…営業マンや店舗販売員による告知、営業活動

       ・イベント・・展示会、見本市、新製品発表会などによる告知活動

       ・その他…会員制、インターネット利用、DM、口コミなど

     ◎チェック

      大規模なプロモーションには大きな費用と手間がかかります。
      少ない費用で大きな効果を狙ったプロモーションがとられているか
      確認しましょう。

   (6)知的財産権等の所有状況

     特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権の所有状況(申請中も含む)を
     記載します。

     また、事業に必要な免許、資格等も取得状況を明示します。
 

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新規事業開発のプロセスと留意点

ビジネスチャンスを逃さない
 

  ビジネスチャンスの重要性

   近年、ビジネスのスピードは増す一方です。

   多くの企業が消費者のさまざまなニーズを掘り起こし、多様な商品を次々と世に送り
   出す半面、商品寿命はどんどん短くなっています。

   (社)中小企業研究所「製造業販売活動実態調査」の調査をみても、2000年代に
   入りヒット商品のライフサイクルが急速に短くなっている現状がよく分かります。

   商品の短命化が進む中、主力事業や商品を転換する企業が相当数あります。

   中小企業金融公庫の調査では、過去10年の間に約半数の中小企業がこうした転換
   を一度以上経験しています。(2018年版中小企業白書

   主力事業や商品の転換には相応の経営資源の投入が必要であり、大きなリスクを
   ともないます。

   しかし、商品の短命化が進行している現状をみると、既存の事業や商品に安住し続け
   ることも、大きなリスクといえるでしょう。

   このような時代に、企業が経営を安定させ、さらに発展していくためには、ビジネス
   チャンスをいち早くつかむことが重要となります。

   ビジネスチャンスをとらえる際の基本的な考え方と、ビジネスチャンスを発見するため
   の具体的な視点について紹介していきます。

  □ビジネスチャンスを理解

   1.ビジネスチャンス

     ビジネスチャンスについて考えてみましょう。

     そもそも、見いだすべきビジネスチャンスとはどのようなものなのでしょうか。

     この点を理解するには、「商品」とそれを購入する「消費者のニーズ(以下「消
     費者ニーズ」)」の関係からビジネスチャンスを考えると分かりやすいかもしれ
     ません(注)。

     消費者が商品を購入するのは、自身の持つさまざまなニーズを充足するため
     です。

     従って、商品が消費者の持つニーズを完全に充足している姿が理想的な関係
     となります。

     しかし、商品と消費者ニーズの現実の関係をみると、特定の商品が消費者
     ニーズを完全に充足しているケースはわずかです。

     むしろ、消費者は「若干の不満はあるものの、自身のニーズに一番近い商品
     なので購入する」といったケースが一般的です。

     例えば、「『購入した商品をすぐに使いたいのに、手元に届くのは3日後にな
     る』『価格が高い』といったように『時間』や『価格』については不満があるが、ほ
     かの商品よりはよいので、これを購入しよう」というように購入を決定している
     消費者が多いのです。

     近年の消費者ニーズは、非常に多様化・複雑化しています。

     このため、商品の持つ機能や特性などは複雑化・高度化する消費者ニーズに
     追いつかず、商品と消費者ニーズの間に多くのギャップが存在しているのが
     実情といえるでしょう。

     しかし、この商品と消費者ニーズの間にあるギャップにこそビジネスチャンスが
     あるのです。

     すなわち、このギャップを発見し、ギャップを解消する(消費者ニーズをより充
     足させる)ような商品を提供することができれば、消費者からの支持を集める
     ことが可能です(商品を販売し、売り上げを上げることができます)。

     例えば、
     「のどが渇いたので、今すぐ冷えたオレンジジュースをコップ1杯飲みたい」と
     考えている消費者に対して、その場でコップ1杯の冷えたオレンジジュースを
     販売している企業が存在していれば、商品と消費者ニーズの間にギャップは
     ありません。

     しかし、アップルジュースを販売している企業しか存在しなければ、商品と消費
     者ニーズの間にギャップ(ビジネスチャンス)が生じます。

     そこで、自社がオレンジジュースという商品を販売することで、消費者ニーズと
     の間のギャップを解消することができます。

     また、ほかの企業がオレンジジュースを販売していても、1リットルのボトルサ
     イズで販売している企業しか存在しなければ、コップ1 杯分のオレンジジュー
     スを販売することで、自社商品を購入してもらうことができます。

     これは、ビジネスチャンスを単純化して考えた例です。

     実際には、「自社が収益を獲得することができるだけの市場性があるのか(ビ
     ジネスとして成立し得るのか)」「競合他社の動向はどうであるのか」など、さま
     ざまな側面から発見したビジネスチャンスについて検討することが必要です。

     しかし、商品と消費者ニーズの間にあるギャップこそがビジネスチャンスであ
     り、そのギャップを埋めるような商品を消費者に販売することで売り上げを上
     げていくという視点が、企業のビジネスチャンスを生かす取り組みの基本とな
     るのです。

   2.ビジネスチャンスの発生要因

     次に、ビジネスチャンスである商品と消費者ニーズの間にギャップが発生する
     理由を考えてみましょう。

     その理由はさまざまですが、大きく分類すると「消費者ニーズの把握の困難
     性」と「商品に関する制約要因の存在」に分けることができます。

     (1)消費者ニーズの把握の困難性

       消費者ニーズを的確に把握することができず、結果として消費者ニーズを
       充足するような商品を開発・販売できないケースがあります。

       消費者ニーズは常に変化し続けています。

       こうした状況では、消費者ニーズに関する情報収集を十分に行っていない
       場合はもちろん、独自の市場調査を実施している企業でさえ、消費者ニー
       ズを的確に把握することは非常に困難です。

       例えば、マーケティングの専門部署を設け積極的に情報を収集している大
       企業でさえ、「消費者ニーズの読み違え」といった理由から事業に失敗する
       ケースがあることを考えれば、消費者ニーズを把握することの困難性は容
       易に理解できるでしょう。 

       当然のことながら、消費者ニーズを的確に把握できなければ、消費者ニー
       ズを完全に充足するような理想的な商品を開発・販売することはできない。

       つまり、消費者ニーズの把握の困難性という要因が、商品と消費者ニーズ
       の間にギャップを発生させているのです。

     (2)商品に関する制約要因の存在

       消費者ニーズには気づいていても、そのニーズを充足するような商品を何
       らかの理由によって開発・販売できないケースがあります。

       そうした場合も商品と消費者ニーズの間にギャップが生じることになりま
       す。

       制約要因にはさまざまなものがありますが、代表的なものとしては、技術面
       の制約要因があります。

       例えば新規開発された機器などに多くみられる例ですが、その機器に必要
       となる技術を確立し、実際に商品(プロトタイプなど)の開発には成功してい
       るものの、その商品を量産する技術が確立されていないため、商品として
       販売できないケースもあります。

       また、コスト面の制約要因がある場合もあります。

       商品として販売することは可能であるものの、それには膨大なコストがかか
       り、商品の販売価格が高くなるため、仮に商品として販売したとしても、ほと
       んどの消費者がそれを購入しないようなケースです。

       これらのケースにおいては、企業が商品と消費者ニーズの間にギャップが
       あることに気が付いていても、商品などが持つ制約要因の存在が、ビジネ
       スチャンスをものにすることを妨げているのです。

  □事例に学ぶビジネスチャンスの見つけ方

   1.商品と消費者ニーズのギャップを知る

     ビジネスチャンスを発見するためには、市場調査などを通じて得た消費者や競
     合他社などの外部環境に関する情報や、自社の商品や商品の製造プロセス
     など内部要因に関する情報などを総合的に勘案しながら、商品と消費者ニー
     ズの間に潜むギャップを発見することが必要となります。

     しかし、こうしたプロセスを経てもなお、ビジネスチャンスを発見するのは容易
     ではありません。

     従って以下では、事例を交えながら、商品と消費者ニーズの間に潜むギャップ
     (ビジネスチャンス)を発見する際に参考となる視点について紹介します。
 
   2.「ビジネスチャンスの発生要因」に注目する

     ビジネスチャンスを発見する基本は、前述した「ビジネスチャンスの発生要因」
     で挙げた「消費者ニーズの把握」と「商品の制約要因」の2点に注目することに
     あります。

     以下では、それら2つの視点からビジネスチャンスを検討する際のポイントを
     紹介します。

     (1)消費者ニーズの影響要因に注目する

       消費者ニーズに変化をもたらす影響要因が分かれば、消費者ニーズの動
       向を的確に把握できる可能性が高まります。

       しかし、実際には、消費者ニーズに影響を与える要因はさまざまであり、そ
       れらすべてを明確にすることは困難です。

       また、仮に把握できたとしても、影響要因は複雑に絡み合っていることか 
       ら、個々の要因が消費者ニーズをどのように変化させるのかといった因果
       関係を明らかにすることはほぼ不可能です。

       しかし、中には影響要因やそれが及ぼす影響を、比較的容易にとらえるこ
       とができるものもあります。

       代表的なものは、法律の改正といったさまざまな制度変更などです。

       制度変更には強制力をともなう法改正や、業界団体などが策定する「ガイ
       ドライン」などのように法的拘束力はないものの、対象となる企業や個人の
       行動を事実上規定してしまうものもあります。

       こうした制度変更があれば、関連する企業や個人は変更された制度に従
       わなければならないわけですから、消費者ニーズの動向を容易に予測でき
       る場合があるのです。

       例えば、2003年に施行された「指定管理者制度による公的施設の管理業
       務の民間委託」は、公的施設の管理業務という新たな市場(ニーズ)を生み
       出しました。

       また、2006年6月から施行された改正道路交通法による違法駐車取り締
       まりの民間委託は、「違法駐車の取り締まり業務」という新たな市場(ニー
       ズ)を生み出した。

       また、違法駐車取り締まり強化は、駐車場に対するニーズの拡大という変
       化をもたらしています。

       消費者ニーズの動向を容易に予測できるこうした動きを早期にとらえること
       で、ビジネスチャンスとすることができます。

     (2)商品に関する制約要因の動向に注目する

       商品に関する制約要因を把握する際のキーワードは、ボトルネックにあり
       ます。

       ボトルネックとは、生産現場や、コンピューター業界などではよく使われる
       概念で、生産プロセスなどにおいて、全体の円滑な進行・発展の妨げとな
       るような制約要因のことをいいます。       

       ボトルネックは大きな問題ですが、逆の見方をすると、ボトルネックさえ
        解消することができれば、生産性を劇的に改善することができます。

       ボトルネックという考え方は商品の開発などにおいても同様です。

       技術の進展などによりボトルネックが解消されることで、商品の質や性能な
       どが飛躍的に向上し、従来の商品では充足できなかった消費者ニーズを
       充足できるようになる可能性があるのです。

       従って、ビジネスチャンスを検討する際には、「ボトルネック」というキーワー
       ドを常に念頭に置くことが必要といえるでしょう。

   3.「時間・場所・量」に注目する

     企業の「消費者ニーズをとらえた商品づくり」といった取り組みをみると、商品
     の持つ機能や特性といった「商品面」や、消費動向に大きな影響を与える「価
     格面」にのみ注力しているケースが散見されます。

     その結果、商品面や価格面以外のさまざまな消費者ニーズが見落とされてい
     る場合が少なくありません。

     例えば「『必要なときに、必要な場所で、必要な量』の商品が欲しい」といった
     消費者ニーズです。

     一見、当たり前の要素とも考えられがちですが、「時間・場所・量」といった要因
     に注目することで、ビジネスチャンスを発見できるケースも少なくありません。

     「時間」でいえば、宅配便業者が行っている荷物の配送時間帯を指定できる
     「時間指定配送」というサービスが代表的な例です。

     また、「量」という観点でいえば、近年増加している単身者や夫婦2人暮らしの
     高齢者層の需要に対応した小分けの総菜や、1食分ごとにパッキングした豆
     腐などがあります。

     このように、「時間・場所・量」に注目することで、新たなビジネスチャンスを発
     見できる可能性があります。

   4.「業界の常識」に注目する

     「業界の常識を打破しろ」とは、新たなビジネスチャンスをつかんだ企業の経営
     者などがよく口にする言葉です。

     確かに、業界内だけで通用するような商慣行や暗黙のルールといった「業界
     の常識」を打ち破ることでビジネスチャンスが広がる場合があります。

     例えば、近年、葬祭業界では料金体系とそこに含まれるサービスを事前に明
     確にした「葬儀パック」などを提供して人気を集めている企業がみられます。

     「消費者に対して料金を明確に伝える」ことは、普通に考えれば「商売のいろ
     はの『い』」に相当する基本的な条件です。

     しかし、葬儀には、棺・祭壇・霊柩車や送迎用のバスなどさまざまな費用が
     別々になっている上、それぞれにグレードがあり、そのグレードに応じて料金
     が異なるなど、料金体系が非常に複雑になっています。

     こうした料金体系は長い間「業界の常識」とされてきました。

     一方、消費者(利用者)側からみると、葬儀会社を利用する機会はめったにな
     いため、料金体系や費用相場に詳しくないこと、突然の出来事の中でゆっくり
     と費用などを確認している時間がないことなどの理由から、「料金が分かりにく
     い」「当初の説明よりも費用が多くかかっている気がする」というように料金面
     に不満を持つ消費者は少なくなかったのです。

     こうした中、業界の常識 を打ち破り、料金を明確にしている企業が消費者か
     らの人気を集めているのです。

     こうした視点からビジネスチャンスを発見する際に問題となるのが、業界の常
     識に気づきにくい場合が多いことです。

     一つの業界内に長く属していればいるほど、業界の常識に慣れてしまい、それ
     を当たり前のことと考え、見落としてしまうのです。

     そんなときに有効なのが、ほかの業界と自らの業界を比較してみることです。

     そうすることによって、「業界の常識」が持つ盲点に気づくきっかけとなることが
     あります。

     葬祭業界の例も、ほかの業界と比較してみると、不明確な料金体系という「業
     界の常識」に容易に気づくことができるでしょう。

   5.トレンドの「深掘り」を行ってみる

     消費者は、ある商品によって自身の持つニーズが満たされるといったんはそ
     れで満足します。

     しかし、そうした商品を使用するなどして「経験」してしまうと、消費者ニーズは
     より高度なものへとシフトする傾向があります。

     先に紹介したオレンジジュースの例でいえば、最初は、「オレンジ味のする飲  
     み物が欲しい」と考え、果汁10%のオレンジジュースで満足していたものが、
     今度は「より健康的なものがよい」と考え、果汁100%のオレンジジュースへと
     ニーズがシフトする。

     最終的には「果物本来の持つ、新鮮さが味わえるものがよい」と考え、絞りた
     てのフレッシュジュースへとニーズが変化するようなケースです。

     また、消費者ニーズは、高度化する過程で多様化が進むことも少なくありませ
     ん。

     例えば、フレッシュジュースへのニーズが高まる一方で、「コップ1杯じゃ物足り
     ないので、もう少し量の多いジュースが欲しい」というニーズや「○○産のオレン
     ジを使ったジュースが欲しい」といったニーズが出てくることが考えられます。

     こうした高度化・多様化する消費者ニーズをとらえ、ビジネスチャンスにつなげ
     ていくためには、消費者ニーズのトレンドを「深掘り」した商品を販売することが
     有効です。

     例えば、コピー機の分野においては、近年、従来の商品と比較して「コピーの
     スピードが速い」「カラーコピーがきれい」「コピーにかかるコストが安い」といっ
     たさまざまな特徴を「深掘り」した商品が、多様化する消費者ニーズをとらえて
     います。
      
   6.「逆バリ」を行ってみる

     先の例とは逆に、市場で主流とみられる消費者ニーズに逆らうような商品を開
     発することによって、ビジネスチャンスを見いだすケースもあります。

     「逆バリ」で成功を収めたケースとしては、NTTドコモが1999年10月に発売を
     開始した携帯電話端末「らくらくホン」シリーズがあります。

     当時、NTTドコモは「iモード」を99年2月にスタートさせるなど、サービスの多
     様化を急速に進めていた時期であり、それにともなって携帯電話端末も多機
     能化が急速に進んでいました。

     こうした中で、NTTドコモは、iモード機能を付けないなど機能の単純化を進め
     た「逆バリ」の携帯電話端末「らくらくホン」シリーズを販売しました。

     この「らくらくホン」シリーズは、機器類の操作が苦手な高齢者層を中心に人気
     を集め、2007年4月には累計販売台数1000万台を突破するほどのヒット商
     品となっています。

     また、発泡酒やエンドウ豆などを使用した第3のビールが登場するなど、価格
     の低下が著しいビール業界において、最近では通常のビールに付加価値を付
     けた高額なプレミアムビールが人気を集めているのもこうした例の一つといえ
     るでしょう。

     「逆バリ」商品が人気を集める背景には、消費者ニーズの多様化があります。

     一つのカテゴリーの商品群の中で、質の高い商品を好んで購入する消費者も
     いれば、安価な商品を好む消費者もいます。

     また、同じ消費者でもその商品を購入・利用する状況によって選択する商品は
     異なります。

     例えば、前述したビール系飲料でみると、平日は安価な発泡酒で済ませる
     が、週末はゆっくりと食事を楽しみながらプレミアムビールを飲む人がいます。

     「逆バリ」の商品は当該市場におけるメーン商品となることは少ないものの、一
     定の市場を確実にキャッチすることができるのです。

     紹介したものは、商品と消費者ニーズの間に潜むギャップを発見する際に参
     考となる視点であり、こうした視点から検討をするだけで、簡単にビジネスチャ
     ンスを発見できるわけではありません。

     あくまで、前章で紹介した「基本」に沿って、消費者ニーズや市場動向などの
     情報を収集した上で、こうした視点を参考にしながら新たなビジネスチャンスに
     ついて検討してみるとよいでしょう。

  □ビジネスチャンスを逸しないための経営

   ここでは、ビジネスチャンスの発見方法についていくつかの視点を紹介してきました。

   しかし、実際には、自社の経営資源に見合った実現可能なビジネスチャンスの獲得
   というものは、そうそう都合よくつかめるものではありません。

   ビジネスチャンスをつかむ上でまず重要なことは、ビジネスチャンスをビジネス
   チャンスとして認識できずにビジネスチャンスを見落としてしまわないように、

    ・社長が前述のような方法で積極的かつ敏感にビジネスチャンスを
     模索し続ける

    ・社長の下に自社や業界の情報が集まってくる体制をつくりあげる

   ことです。

   また、そうして見いだしたビジネスチャンスを事業化したとしても、収益を生むビジネス
   に育て上げることは決して容易ではありません。

   従って、ビジネスチャンスを見いだしたときにいち早く事業化できるよう、また、失敗
   しても経営が傾くことのないよう、本業で安定した収益を確保しておくことが求めら
   れます。

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新規事業開発のプロセスと留意点

新規事業計画策定の意義
 

  ■新規事業計画策定の意義

   1.なぜ新規事業の策定か

     新規事業は大きな成果が期待される一方で、撤退や失敗の頻度の高いビジ
     ネスであるといえます。

     ここでは、

      新規事業とは「既存の事業とは違い、企業として未知な部分が多い事業」
      と定義します。

      未知な事業には、市場、技術、製品、サービスなどにおいて、企業にとって未
      経験であり、新たに分析やノウハウの獲得が求められる事業領域が当ては
      まります。

      大きな労力やコスト、ときには失敗をも視野に入れた事業展開が求められて
      きます。

      それではなぜ、企業や起業家たちはリスクが大きく未開の分野である新規事
      業に進出するのでしょうか。

      新規事業を指向する理由として、次のような場面があげられます。

       (1)会社の既存事業が成熟・衰退すると、近い将来大きな収益が
         見込めなくなる。
         そこで将来の収益の柱を築くために新規事業を展開する。

       (2)個人やグループが自分たちの夢やビジョンを実現するために、
         起業家精神を発揮し新たに事業を立ち上げる。

      しかし、新規事業は未知の事業分野への挑戦であることから不確実性や大
      きなリスクが伴い、失敗の可能性も必然的に高いものです。

      そこで、新規事業を成功に導く条件として、不確実性やリスクを分析したうえ
      で、事業の展開方法を構想する「新規事業計画」の策定が必要になる。

      そして、この計画によりさまざまな関係者に理解や協力を得ることが可能に
      なり、成功をさらに確実なものにしていきます。

      新規事業計画とは、技術・製品・サービスに関するアイデアを、新しいビジネ
      スに挑戦するための方法、手段、手順を確定し、明文化したものです。

      計画書には、事業コンセプト、事業環境の分析、マーケティング方法、事業
      収支計画など、新規事業を推進していくために必要なことを明確にします。

      新規事業計画を策定するということは、未知な部分を既知なものへ変換して
      いくことであり、成功の可能性を高める有効な手段であるといえます。

   2.新規事業計画書作成の効果と目的

     新規事業計画書は使い手・読み手によって、活用する目的のウェイトが異なっ
     てきます。

     たとえば、計画書を作成する経営者や起業家であれば、計画を策定する過程
     でより深い思考がなされ、計画自体の論理性、妥当性が増すといった効果を
     期待できます。

     また、計画書として文書化しておくことで、事業の進捗状況を確認し、必要に応
     じて的確な軌道修正をすることも容易になります。

     さらに、社員やスタッフは新規事業計画書を読むことによって、会社の新たな
     方向性を理解することができ、そのなかで自分自身が果たすべき役割を確認
     し、自分の業務計画に落とし込んでいくことが可能になります。

     一方、金融機関や提携先など外部関係者に対しては、計画書を提示すること
     により、会社の方向性に理解を求めることができます。

     これにより、新たな資金援助やパートナーシップの構築が実現します。

     このように、計画書の作成にはさまざまな目的が存在し、見せる相手によって
     アピールする内容も変わってきます。

     そこで、新規事業計画策定の目的を、企業の内部向けと外部向けに分類して
     みました。

     自社において、計画書作成の目的はどこにあるのか、どのような効果を期待
     するのか整理してみましょう。

  □新規事業計画策定の手順

   新規事業計画とは、事業のアイデアを具体的な事業像として目標化し、それを実
   現するための実行方法のことです。

   素晴らしいアイデアであっても思うにまかせて実行していては、事業の成功に期
   待はもてません。

   新規事業計画書は策定手順に沿って計画書として明文化される。

   新規事業計画は、アイデアから「新規事業の方向性」を見出すことからスタートし
   ます。

   市場調査などによる「事業環境の分析」、自社におけるヒト・モノ・カネの「経営資
   源の把握」を行なうなかで、「事業コンセプト」を明確にしていきます。

   そして、事業コンセプトを中核に据え、事業を展開するのに必要な「経営課題」を
   抽出します。

   この経営課題を克服するために、「実行計画」としての全社計画、採算計画、個別
   計画を練り上げていくことになります。

   なお、ここで紹介した策定プロセスは、問題解決手法に沿って計画を進めていくこ
   とに特徴があります。

   つまり、

    仮説化 → 現状分析 → 課題の抽出 → 解決策の確定 → 実行

   のプロセスを経て新規事業計画を実行可能なレベルまで引き上げていくのです。

   したがって、実際に作成される計画書自体の「構成順序」は、新規事業計画の「策
   定手順」と完全には一致しません。

   これは、計画書は第三者が見て確認するためのものであり、計画書としてのわか
   りやすさが求められるからです。

   そこで、次項以降では、比較体系図を参考にしながら、計画書中に盛り込
   むべき各計画項目の具体的な考え方、書き方を解説していきます。

  □計画書作成上の留意点

   1.計画書には論理性・整合性があるか

     事業計画は関係者に理解され、実行されてはじめて意義のあるものとなりま
     す。

     そのため、計画書は論理的な記述で展開され、各計画項目間に整合性が保
     たれていることが必要になります。

     論理的な展開とは、

      ・全体計画から説明がはじまり、それを具現化するための部分計画が
       トップダウン的に明らかにされている

      ・基本構想を掲げ、現状分析、問題点や課題点、解決策、実行方法など
       問題解決プロセスで示されている

      ・実行するための手順や優先順位を示し、事業展開のシナリオが描かれ
       ている

     といった合理的な構成が計画書に表現されていることです。

     また、計画書に整合性をもたせるということは、各計画項目間に矛盾がないこ
     とです。

     これは、

      事業コンセプトを中核に首尾一貫した事業施策が練られ、
      事業環境の各分析がそれを裏付けているか

     ということです。

     たとえば、不整合な計画書には「低価格志向の顧客をターゲットとしながら、価
     格政策において思い切った戦略が明確にされていない」といった矛盾があげら
     れます。

   2.計画は「仮説−検討」が繰り返されているか

     ひらめいた事業アイデアを、即、完壁な新規事業計画書としてまとめ上げるの
     はたいていの場合困難なものです。

     試行錯誤を繰り返すなかで、実行可能な事業として洗練されていくのです。

     たとえば、まず
     (1)事業アイデアとしての仮説を立てる

     (2)市場性を分析

     (3)自社能力からみた実現性を分析する

     など仮説の妥当性を検証していきます。

     そして、

     (4)障害となる問題点が生じたら、さらにそのハードルを
       クリアする仮説を構築していく。

     このように、事業アイデアを成長させ計画をふくらませていくのです。

     したがって、計画書を作成する際は、1回で轍密な計画を完成させるのではな
     く、計画の成熟レベルにあわせて段階を追って作り込んでいきます。

   3.理想と現実がうまくミックスされているか

     新規事業計画書は「新しい事業をこのような方法で展開していきたい」という社
     長の意志や熱意の表われともいえます。

     ビジネスパートナーには事業の魅力をアピールし、社員に対しては士気の高
     揚をもたらす役割を担います。

     したがって、

      新規事業計画書は経営者の理想やビジョンを訴えるものでなくてはならない。

     その一方で、

      計画書によって熱意を伝えるだけではなく、
      第三者にその「妥当性」や「現実性」を認めさせなければならない。

     たとえば、市場分析において、社長自身の市場の読みだけではなく、客観的な
     データを盛り込むことにより、その説得力が大きく高まるのです。

   4.具体的かつ定量的な記述にする

     計画書が新規事業展開のための手引書である以上、具体的な目標が掲げら
     れていなくてはなりません。

     たとえば、計画書では「部門一丸となって取り組む」といった抽象的な表現は   
     適当ではありません。

     このような曖昧な表現はさけ、販売活動であれば「何人の営業マンが、どのよ
     うな方法で、どのような顧客層を対象に、いつまでに、どれだけ受注する」と
     いった具体的な行動や目標値が読みとれるものでなくてはなりません。

     つまり、

      計画書全体を通じて、

      だれが(Who)、何を(What)、誰に(Whom)、いつまで(When)、
      どこで(Where)、どれくらい(How)が

      具体的、定量的に理解できることが必要です。

     計画書にこうした記述がされていないと、各部門や各社員が作成する行動計
     画が焦点のぼやけた内容になり、責任と使命感を植え付けることができなくな
     ります。

     また、計画は策定後、その進捗状況をチェックしていくことになりますが、その
     ときに計画と実績が数値により定量的に比較できないと、正確な進捗状況が
     把握できなくなるのです。

   5.リスクをおさえる工夫がされているか

     新規事業には大きなリスクが伴います。

     したがって、事業計画の策定において、リスクをおさえる工夫が求められてき
     ます。

     たとえば、

      ・当初は控えめな目標を立て早期に資金を回収し、実績や成功体験を
       築きながら事業を拡張していく

      ・パートナーシップやアウトソーシングを取り入れ、事業投資のリスクを
       分散する

      ・試作品やアンテナショップによるテスト販売を行なう

     などを計画書中に盛り込んでいきます。

 

 

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