経営体質強化

アメーバ経営

■アメーバ経営

 アメーバ経営をご存知だろうか?

 これは昭和34年に稲盛和夫(現 京セラ名誉会長)が実践した京セラ独自の経営管理手法である。

 これも古い例だが、今も大いに参考になります。

 パナソニックは本社部門の約7千人を大幅に減らした新本社体制を2012年10月1日に敷いいた。

 当時の津賀社長が「内向きの仕事」が増えた反省から、機能を絞り込んだ「小さな本社」を実現し、
 意思決定のスピードを速める。

 「お客さま向けの価値の提供を最優先とし、本社機能の無駄を徹底的に省く」と語った。

 「アメーバ経営」に共通するものがある。  

 大きな発展を遂げた京セラ(グループ)は、「心の経営」を貫く稲盛経営哲学に基づいた、アメーバ
 経営の企業内小集団による部門別採算制度の徹底により支えられてきました。

  <稲森談>

   複雑である会社組織を、どのように切り分けていくのかという問題である。

   組織の分け方というのは、事業の実態をよく把握し、その実態に沿ったものでなければならない。

   そのために、私は三つの条件があると考えている。

   第一の条件は、切り分けるアメーバが独立採算組織として成り立つために、「明確な収入が存在し、
   かつその収入を得るために要した費用を算出できること」である。

   第二の条件は、「最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」
   である。

   第三の条件は、「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」である。

   この三つの条件を満たしたときに、はじめてひとつのアメーバを独立させることができる。 

   「アメーバ組織をどのようにつくっていくのかということは、アメーバ経営の始まりであり、
   終わりである」といっても過言ではない。

   アメーバの組織づくりは、アメーバ経営の要諦である。                                           

                                         -以上-
 ◎アメーバ経営の目的は小さな会社化 

  ・第一の目的
   市場に直結した部門別採算制度の確立。
   会社経営の原理原則は、売上を最大にして、経費を最小にしていくことである。
   この原則を全社にわたって実践していくため、組織を小さなユニット(6~7名)に分けて、    
   市場の動きに即座に対応できるような部門別採算管理をおこなう。 

  ・第二の目的
   経営者意識を持つ人材の育成 
   組織を必要に応じて小さなユニットに分割し、中小企業の連合体として会社を再構成する。
   そのユニットの経営を、アメーバリーダーに任せることによって、経営者意識を持った人材
   を育成していく。 

  ・第三の目的
   全員参加経営の実現。 
   全従業員が、会社の発展のために力を合わせて経営に参加し、生きがいや達成感を持って働く
   ことができる「全員参加経営」を実現する。 
    この小集団の適正人員が6~7名については、効果的な会議開催の適正人員と同じである。

  アメーバ経営は「チームカンパニー制」とも言われ、少数、独立採算チーム性で生産性を向上
  させる。

  チームのリーダーは、「社長」として、他チームの社長達と業績を競わせる。

  単に与えられた仕事をこなすという意識から、いろいろな業務ができ仕事のが面白さ、責任感、
  やりがいも増す。

 時代に即したやり方に変えていく勇気が必要です。

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経営体質強化

記事タイトル一覧

・仕事とは

・社内体制(組織力)の強化なしに会社の存続なし

・問題解決能力の向上方法 Ⅱ

・問題解決能力の向上方法 Ⅰ

・企業と社員の知識を活用

・合併の基礎知識 Ⅱ

・合併の基礎知識 Ⅰ

・ストックオプション制度

・自社の“会社力” Ⅱ

・自社の“会社力” Ⅰ

・自社の価値を高める

・信頼される会社づくり

・小さな会社経営のバロメーター

・顧客はいなくなる

・5%の人を動かす

・役員の仕事

・製造業における幹部の仕事

・会社の栄枯盛衰は社長で決まる

・会社の繁栄

・ポジショニングマップ

・企業成長のための競争力強化

・社長に必要な参謀

・オフィスワークからテレ(リモート)ワークへ

・経営体質の強化

・設備投資のための資金調達

・会社を成長させるための投資の考え方

・サラリーマン法人

・持株会社 ホールディングカンパニー

・自社の健康診断

・人脈の形成

・レベニューマネジメント

・若手社員の定着率向上

・CI コーポレートアイデンティティ

仕事とは

■使命感

 使命感とは、私たちが何のためにこの世に存在し、何をもって世の中に貢献するかを一言で表現
 したものであり、仕事人の心構え(職業観)を示すものです。 

 企業が利益を追求するためだけにあるのではないように、私たちも単にお金のためだけに働くのでは
 ありません。 

 そこにはお金では得られない働く喜びや働き甲斐がなければ、どんな仕事でも一生をかけてやる
 だけの価値はないでしょう。 

 使命感なき企業が、成功・存続し得ないように、使命感なき社員も、一つの仕事を全うし成功を手に
 することはできないのです。 

 あなたがこの仕事を通じて自己の幸せを手に入れようとするなら、自己の使命感を持ち、実践しなけ
 ればなりません。  

 そうすることによって、初めてあなたは成長し、成功することができるのです。

□プロ意識

 人生において仕事の位置付けを示すとするならば、そのことを人生の「目的」とするか「手段」と
 するかでしょう。

 食べるため、生きるため、遊ぶためのみであるならば、それは手段であり、つまりは「アマチュア」の
 域を抜けることはできません。

 「プロとは仕事を人生の目的とする」のであって、私たちは改めて仕事を通じて自己の豊かさづくりを
 目指すことが近道であることを知っていただきたいのです。

 それは自己や家庭を犠牲にすることではありません。

 よい仕事をすることが、お客さまや仲間、自社にとって役立ち、まわりまわってあなたに返ってくる
 のです。 

 仕事を通じてあなた自身の人間的魅力を増し、社会常職を備え、社会人としても成長していけるのです。 

 そのためにも、組織人としての正しい物の見方・考え方を理解することが大切です。

□目標を持つ

 多くの成功した人、成功した企業には共通点があります。

 それは、まず目標を持っているということです。

 それも具体的な目標を持つことが成功の基本なのです。

 私たちの人生は「光陰矢の如し」という言葉にもあるように、実に短いものなのです。   

 人類に平等に与えられたもの、それは唯一「時間」ですが、1日24時間、睡眠時間を引いて残った
 時間をみると、働く多くの人は仕事の場に多くの時間を置いています。  

 人生を創る時間を考える時、仕事に身を置く時間が何と多いことでしょうか。

 納得できる人生、豊かな人生、充実した人生…、誰もが願うことです。

 しかし、仕事に入るきっかけは人さまざまですが、いったん仕事に入ったならば、その仕事を通じて
 目標を持ち、あなたの人生を創造することが課題となります。

 お客様の喜びがあなたの喜びになる、そんな仕事があなたの仕事です。

□三感(感心・感謝・感動)

 どんなにあなたが一生懸命やったつもりでも、残念ながらそれを評価するのは、第三者であるお客様
 です。

 お客様は元来、「わがまま」な存在です。 

 決してあなたの思い通りになるとは限りません。 

 だからといって自分を抑えて、また自社の方針、考えを曲げてでもお客様の言う通り物ごとを
 やったのでは、スタッフとして、会社としても魅力に欠けてしまいます。 

 利用していただいたお客さまを「財産」と考え、お客さまに感謝するということだけではなく、感謝
 される、喜ばれることが肝要です。 

 それは、すでに「感心、感動」をお客さまがされているからこそできることなのです。 

 会社としては、「感謝され、喜ばれる会社」、スタッフとしては「感謝されるスタッフ、喜ばれる
 スタッフ」となることを目指して下さい。

 そして、この基本は大きく2つに分けることができます。

 基本とはやらなければならないことであり、逆にやってはならないことはやらないこと、と理解して
 下さい。 

 私たちの仕事は、やるべきことをやり、やってはいけないことをしないことが重要なポイントになり
 ます。 

 これは当たり前のことですが、非常に難しいことといえましょう。 

 当たり前のことを当たり前にやって、初めてお客さまが認めてくれるのが私たちの仕事です。

 事業を営むあなたにとって、環境は決して芳しいものではありません。

 しかし、この仕事を選んだからにはプロとして勝ち残ることです。

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社内体制(組織力)の強化なしに存続なし

■社内体制の強化

 さまざまな問題を乗り越えて会社を存続させていくためにはどうすればよいのでしょうか。 

 人間同様、会社にも寿命があり、過去には企業30年説と言われていたが、今ではその寿命も短くなり、
 新しく設立された会社の8割は10年以内に倒産するといわれています。

 創業間もない頃に比べると業績は拡大しているかもしれませんが、業績が拡大している分だけ、多数の
 リスクをも抱えているということです。 

 また、経営環境は刻一刻と変化しており、極端な言い方をすれば、明日突然に、「会社の屋台骨を
 揺るがす大問題」が起こる可能性もあります。 

 困難に耐えうるだけの企業体力をつけること、つまり、社内体制を強化することにほかなりません。 

 人間にたとえると、普通の人ならば死に直面するような重い病気にかかっても体力のある人はそれを
 乗り越えることができ、逆に弱っている人は風邪をひいただけで命取りになることさえあるという
 ようなものです。 

 今後も永続的に会社を存続させていこうと思うならば、今日よりも明日、明日よりも明後日という
 ように社内体制を強化し、大きな問題が起こっても立ち直れるだけの企業体力をつけていくしかない
 のです。 

 たとえ、今は何の問題もないようにみえても、それはたんに「運がいいだけ」かもしれません。 

 1週間後、1ヶ月後には、現状の企業体力では到底耐えうることができないほど大きな問題が生じる
 ことも考えられるのです。 

 たとえば、顧客から急に取引を停止されてしまうかもしれませんし、強力なライバル会社が登場する
 かもしれません。 

 また他社が画期的な新商品を開発し、自社商品がまったく売れなくなる可能性もあるのです。 

 経営はこういった不安要素とつねに隣り合わせにあります。

 今すぐにでも社内体制を強化することを真剣に考えましょう。 

 そのためには、まず、自社の経営のあり方を見直すことから始める必要があります。 

 「売上げが上がらない」「人材がいない」「中間管理者がいない」「思ったように従業員が動かない」
 など大企業の悩みとは違った悩みをもっています。

 「家業的経営」とは企業規模の大小だけで量るものではありません。 

 たとえ社員が数名程度の小さな会社でも、会社として登記している以上その会社の経営者に求め
 られるのは「企業経営」です。 

 企業経営と個人事業主などの家業経営を比較する場合に、もっともわかりやすい違いはそれぞれ
 自身の収入に対する考え方です。 

 家業経営は自らが稼いで収入を得る。 

 企業経営は会社が稼いだお金のなかからその成果配分として給料を得る、という考え方の違いです。  

 言い方をかえれば企業経営者は「自分が儲ける」ためではなく、「会社を儲けさせる」ために経営を
 行う必要があるのです。 

 まず、経営者自身がこのような発想にもとづいた経営を行っているかを自問してみましょう。 

 それが自社の経営の体質強化を検討する出発点となります。 

 現在の自社の状況をチェックし、以前は気づかなかった問題点、つまり家業経営でよくみられる
 非効率な仕事の仕方や無気力な職場の雰囲気がみえてくるのではないでしょうか。 

 まずは、自社の家業経営的な部分を一つひとつ改善していきましょう。

 ○家業的経営の特徴チェック 

  ・経営目的があいまいで、公私混同(特に経費において)している 

  ・将来に対する計画性がなく、思いつきで行動している(経営計画) 

  ・経営者と社員の間、あるいは社員間の役割分担が不明確である(業務分担) 

  ・指揮命令系統と報告・連絡・相談系統が機能的に定められていない(基本動作) 

  ・外部環境の変化に無頓着である(情報収集) 

  ・責任の所在が不明確である(権限の委譲) 

  ・社員が無気力で、会社に貢献する意欲・意識が乏しい(モチベーション、コミュニケーション) 

  ・売り上げなど事業にかかわる数値に無頓着 

  ・経営において悪い結果が出ても原因を追究せず、周囲に責任を転嫁している 

  ・改革を恐れ、変化への対応を拒否している 

 このような家業的経営の特徴が自社の経営にあてはまるようであるならば、その原因を見極め、
 確実にそれを解決していく必要があります。

 しかしながら、長年にわたって染みついた家業経営的体質を改善していくのは、そうたやすいこと
 ではありません。

 社長自身が自らの責任を強く認識し、会社をそして社員を変えていかねばならないのです。

 しかしながら、叱咤激励するだけでは社員は動いてくれません。

 企業経営を実践していくためには、家業経営時代よりも一段高い経営能力が要求されます。

 社長には、会社を改革していくと同時に、自らの経営能力を向上させていくことが求められている
 のです。

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経営体質強化

問題解決能力の向上方法 Ⅱ

定性面からの問題設定

 1.複雑に絡む問題を解きほぐし、整理する

  問題を「深さ」と「広さ」から整理してみる。

  なぜ、問題の整理にこだわるか。

  それは問題の設定が、問題解決において大変重要なプロセスになるからです。

  会議では目先の問題や将来的な問題、表面的な問題や本質的な問題が混在して紛糾することが多い。

  この深さや広さの違う混沌とした問題を解きほぐし、整理することから始めないと整然とした問題
  解決は図れない。

  ある医療機器販売会社A社は、会議の名称をそれぞれ「経営戦略会議」「販売戦術会議」「所属
  (戦闘)会議」としています。

  会議とは「対策の決定と実行の場」です。

  したがって、効果的かつ効率的な会議運営のために、討議すべき問題のレベルを区分している。

 2.「みえる問題、さぐる問題、つくる問題」

  「深さ」から見た問題を整理するには3つの段階があります。

  「みえる問題」「さぐる問題」「つくる問題」です。

  ケーススタディーで見てみましょう。

  例えば、「喫茶店Bの売上げが最近落ちている」というテーマを、この3つの問題で整理すると
  次のようになる。

   ◎ケーススタディー:喫茶店「ソリューション」の売上げが、最近落ちている。

    ◇みえる問題(症状)
     ・売上げが落ちている(どれくらい) ⇒ 昨年同月比20%ダウン

    ◇さぐる問題(真因)
     ・単価は落ちていない ⇒ 売上げは単価×客数 ⇒ 客数が減っている
      ⇒ 特に20代の客数が減っている
      ⇒ 軽食メニューが20代のニーズに合っていない
      ⇒ ライバル店に20代の顧客を取られている

   ◎つくる問題(クライシス)
    ・若者の喫茶店離れが進んでおり、将来的に市場は衰退する

  「みえる問題」レベルで解決を図ろうとすると、安易な値下げや宣伝広告の強化くらいしか対策は
  出てきません。

  だが「さぐる問題」レベルで掘り下げると、 20代顧客のニーズ調査やライバル店のメニュー調査、
  またそれに基づく新商品の開発という対策が出てきます。

  「問題は分かっているが、対策が分からない」と言う経営者がいるが、「みえる問題」レベル
  でしか問題を押さえていない場合が多い。

  真の対策は「さぐる問題」を押さえない限り、見えてこないものです。

  実際の現場でも、「さぐる問題」の設定により事なきを得た会社は多い。

  ここ数年、売上げが減少していた鉄鋼関連商社のB社は、1年前に就任した新社長が新規開拓を
  柱に苦境から脱しようと檄を飛ばしていた。

  数字の中身を分析しながら問題を探っていくと、特に落ち込みが大きかったのが、売上げの基盤
  となっている先代からの上得意先でした。

  調査を進めて情報を集めてみると、代替わりをきっかけにライバル会社が攻勢をかけ、B社の
  得意先に入り込んでいることが判明した。

  そこで、すぐさま効果が現れにくい新規開拓から基盤保守に方針を転換。

  新社長自らが先頭に立って古い得意先を回るとともに、インストアシェアの向上を図り、やがて
  業績は回復に転じました。

  「さぐる問題」を設定した効果でした。

 3.「戦略的問題・戦術的問題・戦闘的問題」

  続いて、「広さ 」から問題を整理してみましょう。

  戦略・戦術・戦闘という言葉は日常よく使われますが、その違いがお分かりでしょうか。

  この概要は以下の通りとなります。

   戦略(WHAT):枠組み・大局観
   ・構造的なもの
   ・事業、チャネル、組織など経営活動を大きく左右するもの

   戦術(HOW):方法・マネジメント
   ・管理手法、やり方、機能
   ・優先順位づけ、選択基準

   戦闘(DO):実践・継続
   ・人材力(ヤル気、能力)
   ・モチベーションアップなど

  戦略レベルの問題とは「何か(WHAT)」を明確化することであり、重点が見えてくる。

  戦術レベルの問題とは、戦略を実行するための仕組み・やり方、すなわち「どのように
  (HOW)」の整理であり、戦闘レベルの問題とは「どうする (DO)」の徹底・継続がテーマです。

  航海にたとえれば、戦略とは目的地に到達するための予算・日程・航路などを決めること。

  戦術とは、航海士や機関長はだれで、部下は何人、さらに各組織単位に戦略を細分化した計画を
  作成し、その管理体制を整えることです。

  そして戦闘とは、叱咤激励して計画通りに航海が進むよう、日々のモチベーションアップを図る
  こと。

  「戦略なくして戦闘なし」「戦略のミスは戦術ではカバーできない」とよく言われるが、戦略は
  すべての問題解決の上位に位置するものであり、その決定は経営陣の責務です。

  そして戦術は管理監督者、戦闘は一般社員の役割です。

  戦略から戦闘に至るプロセスとその着眼を参考にしてくださ。

  戦略・戦術・戦闘の各段階に対応した意思決定の仕組みと、その機能を担当するメ ンバーの問題
  設定能力(「深さ」と「広さ」で問題を整理するためのスキル)の向上が、自社の問題解決力を
  高めることになるのです。

□マトリクスを使った課題整理と定量面からの課題設定

 1.課題解決マトリクス

  日常の経営現場において活用しやすいよう、「マトリクス図法」を使った課題整理の手法を解説
  します。

  この図法は、対象領域に要素や要因などを挙げてマトリクス表とすることで、個々の要因や要因
  同士の交点からその関係の状況、度合いなどを確認して問題解決に役立てる手法です。

  マトリクス表にまとめることで、物事を二元的に整理でき、検討項目のモレを減らしたり、 各
  項目について検証することができる。

  問題解決の手法として、ぜひ知っておきたいものの1つです。

  マトリクス表による課題整理の進め方は図の通りです。

  このマトリクス表を使った課題整理を行うと良いでしょう。

  “抽象的思考”に慣れ、そのような観点から分析した経験がない者には、かなりタフな作業となる
  ようだが、ケーススタディーと自社について2回の分析を行うことにより、論理的思考力が形成
  されていきます。

  表は卸売業C社を対象として、課題を「深さ」と「広さ」から整理した事例です。

  表は課題解決マトリクス(例)

  問題解決は、まず正しく問題を設定することから始まります。

  「企業内で発生するさまざまな課題を整理し、解決の糸口を正しく導き出す」能力は、“自ら課題を
  発見し、解決策を構築し、実行していく自立型人材=問題解決(ソリューション)プロ人材”の基盤
  です。

 2.定量面からの課題設定の着眼点

  ビジネスの世界の共通言語は数字です。

  問題解決能力を高めるには、数字に強くなることが不可欠。

  もちろん経理財務に詳しければそれに越したことはないが、それについての解説はほかに譲ること
  として、ここでは“計数感覚”について述べます。

  販売だけ強くても、製造だけ強くても経営は成り立たない。

  人体と同じように、機能のバランス、すなわちヒト・モノ・カネ・ジョウホウのバランスが必要と
  いうことです。

  計数感覚とは経営感覚であり、まさにバランス感覚と言える。

  例えば、計数感覚の鈍い人は図のような失敗を起こす。

  売上げアップもコストダウンも、利益を創出して企業を永続発展させ、そして企業にかかわる
  社員をはじめ関係者を「幸せ」にするための手段です。

  では、どうすれば計数感覚が高まるか。

  そのためには、次の5つの思考と行動を習慣化していただきたい。

  (1)会社の“数字”に慣れる

   数字が“嫌い”という人には、食わず嫌いが多い。

   「計数は難解な数学ではない。

   どこに何県があるのかという日本地図を覚えるようなものです。

   後はそれを加減・乗除するだけ」ということ。

   経理部門以外の人は、簿記の詳細まで知る必要はない。

   財務諸表の構成と用語が分かれば、数字嫌いの大半は克服される。

   あとは利益がどのように創出されるか、利益の源泉は何か、コストは何から成り立っているか、
   何が最も大きいコストか、そして採算とは何か、固定費と変動費、損益分岐点など計数の
   “押さえどころ”を知れば計数感覚は身に付く。

   幹部ともなれば決算書を読み解き、そこから課題と対策を立てられるレベルを目指したいもの
   です。

  (2)数字で物事を考えるクセをつける(社内外を問わない)

   単に売上げが上がった・下がったではなく、何と比較してどれくらい変化があったのかを数字で
   考えるクセをつけてほしい。

   これは“習慣”の問題です。

   部下に対しても報告の仕方を少し指導すれば、すぐに計数感覚は高まる。

   脱「抽象的思考症」です。

  (3)数字を比較分析する

   数字は比較してはじめて、その善し悪しが分かる。

   例えば「3000万円のコスト ダウンを達成した」としましょう。

   そこでコストダウン目標はいくらだったのか、昨年に比べてどうだったのかが知りたいところ。

   数字を見るポイントは2つです。

   1つ目は「比較」。

   予算や過去の実績、モデル企業、ライバル企業、標準値などと比較してはじめて数字のポジ
   ションが見えてくる。

   単なる実績データだけでは、

   事実はつかめても判断はできない。

   2つ目のポイントは、「動向・トレンド」です。

   上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかを時系列で数字を見ることにより、「つくる課題」と
   今後の対策の方向が見えてくる。

  (4)数字を表やグラフに加工して見やすく工夫する

   文字情報を表やグラフにすると、見えなかったものが見えてくる。

   特にグラフはデータ分析の最大のツールであり、課題に合ったグラフの選択、分析・加工の仕方
   を知っているかどうかで、課題設定能力や人に伝えるプレゼンテーション能力においても雲泥の
   差が生じます。

  (5)数字が意味する背景・真因を読む(なぜそんな数字になったか)

   集計した数字で動向はつかめるが、原因・要因はつかめない。

   「みえる課題」から「さぐる課題」につなげる思考プロセスが重要であり、前述した課題解決
   マトリクス表が有効となります。

   数字はあくまで現象である。

   人がつくった会社の問題点の真因は、人が絡む定性的問題が多い。

   やはり、良くも悪くも「企業は人なり」なのです。

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経営体質強化

問題解決能力の向上方法 Ⅰ

■問題とは何か

 1.問題設定能力が業績を変える

  問題解決を行うには、まず“問題”を設定することから始めなければならない。

  では問題とは何か。

  広辞苑によると、「研究・議論して解決すべき事柄、解答を有する問」とあります。

  すなわち、裏側には必ず“対策”が存在する事柄が問題であり、解決のしようがない事柄は問題
  とは言えないことになります。

  これらは特性、前提条件としてとらえるべきものです。

  例えば、猛暑ではビールやアイスクリームがよく売れる。

  一般にアイスクリームは、日中の気温が25度を超えると売れ出すと言われる。

  この「天候や気温で売上げが左右される」という現象は特性であり、これを「解決すべき問題」
  ととらえると、その対策は「神頼み」しかなくなる。

  この特性を踏まえ、いかに天候を予測して日々の先行を行うか。

  また、アイスクリームの売上変動を補うために、いかなる商品対策を構築するかを「問題」として
  とらえれば、さまざまな対策が生まれてくるのです。

  「問題」の設定の仕方によって、業績は大きく左右される。

  ある年の夏はまれに見る冷夏でしたが、9月に入って猛暑がぶり返した。

  季節商品である衣料品は、通常なら7~8月初旬に夏物衣料を処分し、遅くとも盆明けには秋物
  商品に切り替える。

  したがって、この年のように9月に猛暑がぶり返しても、多くの小売店に夏物衣料はなく、グチを
  こぼすか神頼みで終わってしまう。

  しかし、九州の衣料品小売会社A社は違った。

  同社の年商規模は40億円にすぎないが、売上高経常利益率が同業種で全国ベスト5、しかも無借金
  経営という超優良企業です。

  A社は、他社が時ならぬ猛暑に手をこまねいて秋風を懇願している時に、店舗ごとに固定客を
  集めるミニイベントを企画開催したり、夏物をかき集めてゴールデンスペースに陳列するなどの
  手を打ち、悪環境の中でも目標通りの業績を上げた。

  他社とA社の違いは「異常気象そのものを問題」としてとらえたのか、「異常気象にどう対応
  するかが問題」ととらえたかの違いでした。

 2.「問題」の種類

  ビジネスにおける問題は、「メンテナンス型問題」と「クリエーティブ型問題」に大別できます。

  人の健康にたとえるなら、「メンテナンス型問題」とは人間ドックに入り、血圧・総コレステ

  ロール・中性脂肪・血糖など自己の診断結果と基準値を比較して、ギャップのあるものを「問題」
  ととらえるタイプのものです。

  一方、「クリエーティブ型問題」とは、オリンピックで金メダルを取るためにはどのような体力・
  体質にすればよいかを描くことが「問題」です。

  メンテナンス型問題が現状と基準とを比較し現状維持を目的とする、いわば「守り」の問題設定
  であるのに対し、クリエーティブ型問題はあるべき姿を描くことからスタートする「攻め」の問題
  設定です。

  右肩上がりの環境下では、現状を下回らないためにメンテナンス型問題を設定していれば成長
  できたが、低成長の環境下ではメンテナンス型問題だけだと縮小を意味する。

  クリエーティブ問題こそが、今の環境下における真の問題設定と言えます。

 3.メンテナンス型問題

  メンテナンス型問題は、問題設定の基本です。

  日々のビジネスの中で、最も使用頻度が高い。

  比較的、成長路線にある会社ではレールを踏み外さないための羅針盤として、また管理レベルが
  未成熟の会社では信号機代わりに、メンテナンス型問題をまず設定すべきです。

  では、メンテナンス型問題にはどのようなものがあるのか。

  例えば、 製造業などでよく行われる3S(または5S)運動がある。

  整理、整頓、清掃(清潔、躾)です。

  整理とは、必要なものと必要でないものとを区分し、必要でないものを捨てること。

  また整頓とは、必要なものがいつでも取り出せる状態にしておくこと。

  これらはまさにメンテナンス型問題の典型です。

  物理的レベルで目に見える確認ができることは、メンテナンス型問題の基本と言えます。

  与信管理や資金繰り管理、経営そのものの計数管理、品質・在庫の管理、 ISOなどもメンテナンス
  型問題の代表格です。

 4.クリ エーティブ型問題

  クリエーティブ型問題は、メンテナンス型問題の設定では限界が見られた時、また現状は問題
  ないものの、未来に向かって企業存続を意識した時に見えてくる「問題」です。

  コストダウンを例にとると、コストダウンはムダ・ムラ・ムリの撲滅が基本ですが、メンテ
  ナンス型問題の対応ではやがて限界が来る。

  さらにコストダウンを図るには、例えば原材料を変更したり、労務費においてフロー人材の比率
  を高めるなどといった抜本的改革が必要となる。

  これらはもはや現状維持ではなく創造であり、まさにクリエーティブ型問題です。

  クリエーティブ型問題の代表格は、やはり「ビジョンづくり」となるでしょう。

  10年後の自社をどんな会社にしたいのか。

  またそれを売上高・利益額・社員数・生産性などの指標で表すとどうなるか。

  その数値を達成するためには、どのような戦略が必要か。

  そのためには5年後、3年後、そして現在において何を行わねばならないか。

  これがクリエーティブ型問題です。

  さらに今は健全だが、5年後に自社の業績が悪くなるとすれば、その要因は何なのか。

  日本人が苦手と言われている健全な危機意識に基づくリスク管理、クライシス対応もクリエー
  ティブ型問題の1つです。 

  業績の予実績管理は企業によってメンテナンス型問題とクリエーティブ型問題に分かれる。

  貴社はどちらでしょうか。

  目標設定には、

   ①ビジョン、経営計画からくる「やりたい目標」

   ②前年度の延長からつくる「できる目標」

   ③これらの折衷案である「やらなければならない目標」

  ――の3つがあるが、このうち②の「できる目標」は本来の意味からすれば目標ではない。

  「前年並みの目標を達成すれば、前年通りの利益が出るだろう」という発想から出た基準値に
  過ぎず、メンテナンス型問題と言える。

  これは前年と同じやり方を前提とした現状維持型の発想であり、進歩は生まれにくい。

  経営とは「経営者の夢を社員の力を借りて実現するもの」というスタンスに立てば、目標は
  ①の「やりたい目標」しかない。

  つまり真の目標とは「やりたい目標」なのです。

  目標と現状のギャップを問題に設定すると、クリエーティブ型問題となる。

  さらにそのギャップを埋めるための対策・やり方こそが、年度方針にほかならないのです。

□なぜ問題が解決できないか

 1.問題解決ができない理由ワースト5

  問題解決ができない要因はいろいろとあろうが、次の5つが「問題解決ができない理由ワースト5」
  です。

   その1:業績意識の低さからくる「サラリーマン症」

   その2:抽象的思考に慣れ、具体的に考えられない「抽象的思考症」

   その3:環境変化に気付かない「前例主義の石頭症(別名:環境不感症)」

   その4:手段が目的化する「本末転倒症」

   その5:問題解決の定石、方法を知らない「不勉強症」

  それぞれのタイプには、その症状によって名前を付けた。心当たりのある方は、いち早く自己
  治療を行っていただきたいし、そうでない方も「反面教師」として知っておいていただきたい。

 2.「サラリーマン症」

  昔、「♪サラリーマンとは気楽な稼業ときたもんだ」という歌がヒットしたが、今は昔です。

  現代に求められるビジネスマン像は、右肩上がり時代から大きく変わって、“自ら問題を事前に
  発見し、素早い対応をしていく人”となっ た。

  とても「気楽」ではやっていけないのです。

  気楽な“サラリーマン”と、現在の環境下で求められるビジネスマン像との違いは、「業績意識」
  です。

  「サラリーマン症」とは業績意識の欠如からくる、問題意識が低い人のことを言う。

  「どうすれば目標達成が可能だろうか?」「いかにして業績を上げていくか」などの意識が
  乏しいと、問題意識は生まれてこない。

  のどが渇いている時には、つい飲料自販機が目に付く。

  「部下育成」を常に意識していると、新聞を読んでいてもテレビを見ていても、自然とその言葉が
  目や耳に飛び込んでくる。

  「心そこに在らざれば、物あれど見えず、聞こゆれど聞こえず」です。

  できない理由を百探すより、「どうしたらできるのか」という問題意識を持ち続けることが重要。

  四六時中、思考を重ねていくと、不思議と問題解決のヒントは生まれてくる。

  では、どうすれば業績意識は高まるか。

  もちろん、使命感や会社へのロイヤリティーを持つことがベストだが、Y世代(1975年以降に
  生まれた人たち)にはそれ一辺倒では通用しない。

  「好きこそものの上手なれ」と言われる 通り、凡人はまず会社、仕事に興味を持ち、好きになる
  のです。

  なかなか仕事が「好き」に結び付かない人は、例えば「家を買う」「自分の将来」などと自分の
  興味の対象と結び付けてもいい。

  やるべき仕事と自分の夢、興味があるものをリンクさせ、「だから今、この仕事をやる」という
  動機づけを自身に課すことである。 PI(パーソナルアイデンティティー)=WI(ワーク
  アイデンティティー)、またはCI(コーポレートアイデンティティー)です。

  自分自身を動機づけられない者が、他人を動機づけできるわけがない。

 3.「抽象的思考症」

  あなたの周りに、すぐ“なるほど、なるほど”とうなずく人はいないだろうか。

  その人は「抽象的思考症」にかかっている可能性が高い。

  抽象的思考症とは、抽象的思考に慣れてしまって、具体的にものを考えられない症状のことを言う。

  例えば、会議の対策構築の場面で「新規開拓を行う」と決まったとしましょう。

  それで問題解決ができた気になっていたとしたら抽象的思考症です。

  「どのターゲットに」「だれが」「どのように」「いつまでに」を最低限決めないと、物事は
  進まないのです。

  この症状の対策は「すぐに納得しない」ことです。

  例えば、テレビドラマでよく登場する名探偵をイメージすればいい。

  “ボケ役”の刑事が表面的な状況証拠に基づき、すぐに犯人を決めつけてしまうのに対し、名探偵は
  1つひとつの事実を洗い出し、やがて真犯人にたどり着く。

  つまり先入観で当たり前と思い込んでいることを、具体的に掘り下げてみることです。

  この習慣が身に付けば、抽象的思考症から脱出できる。

  論理の掘り下げ方、いわゆる「ロジカルシンキング」の手法を学べば、さらに効果的です。

  もともと日本の文化自体が“あうんの呼吸”に代表されるような「あいまい文化」ですが、
  ビジネスの世界では具現化を習慣化することが必要なのです。

 4.「前例主義の石頭症(別名:環境不感症)」

  日本の病根は「前例主義」「先送り中毒」「危機意識の欠如」「リスク過敏」だそうだが、この
  4つが当てはまる企業は多い。

  「前例主義の石頭症」もその1つです。

  この病気には、2つのタイプの症状がある。

  1つは、既成概念や過去の成功体験にとらわれ、現実が見えない環境不感症型の症状である。

  例えば、高度成長期と現状ではやり方が異なる。

  前者では借金してでも投資することが成功の決め手になったが、後者では借金が致命傷になり
  かねない。

  地方で成功した勢いで、地方での成功ノウハウを武器に関東へ進出して伸びあぐねている会社が
  あります。

  その会社も、地方でのやり方にこだわった前例主義症の1つ。

  時間軸、空間軸を含めて環境が変われば、やり方は変わるのです。

  2つ目は、プライドやメンツにこだわり過ぎたばかりに、真実が見えなくなってしまうタイプです。

  この症状は名門・老舗企業、成功者やプライドが高い個人などに多い。

  「こうあらねばならない」という思いが強いために現実を直視せず、見たとしても自分に不利益な
  ものには蓋をしてしまう。

  最近の企業不祥事は、この極端な事例であろう。

  「オレの若い時は…」「昔は…」を言い出したら、その人は既に引き時かもしれない。

 5.「本末転倒症」

  「本末転倒症」とは、目的を達成するための手段であったはずのものが、いつの間にか目的その
  ものにすり替わっていることです。

  この場合も問題解決を阻害することにつながる。

  例えば、目的を達成するために策定したルールや制度が、環境が変わったことにより、かえって
  目標達成の障害となっている事例を見かける。

  すなわち自分でつくったルールに縛られ、身動きが取れなくなるケースです。

  また目的に対し、新たな手段ができたにもかかわらず、従来の手段を廃棄せずに習慣として引き
  ずっているケースも多い。

  この場合は二重作業となってムダが発生する。

  よく見かけるのは、システムが導入されたにもかかわらず、 アナログ時代の帳票類を並行して
  そのまま使っていたというケースです。

  手段が目的になる「本末転倒症」を改善するには、現在行っている仕事の目的を常に考える
  ことです。

  鳥の目で全体を見る鳥瞰的思考も大事です。

 6.「不勉強症」

  物事には必ず原理原則や基本がある。

  スポーツでも将棋でも、これらを知っているのと知らないのでは雲泥の差があります。

  問題解決にも当然、基本と定石がある。

  書店に足を運べば原理原則や基本に関する書籍が多く並んでいるが、案外この定石について知ら
  ない経営者、幹部は多い。

  ぜひこれらに関する書籍を1、2冊は読んでいただきたい。

  気付いた時こそ、向上するチャンスなのです。
 

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経営体質強化

企業と社員の知識を活用

■社員の知識をフル活用するナレッジマネジメントとは

 1.ナレッジマネジメントの目的

  マネジメント手法の1つにナレッジマネジメント(Knowledge Management)があります。

  ナレッジマネジメントでいう「ナレッジ」とは“知識”を意味します。

  そして、知識を前提とするナレッジマネジメントの基本は、企業や社員が持つ知識を共有し、
  有効に活用することにあります。

  企業経営において重要な資源は「ヒト、モノ、カネ、情報」といわれます。

  ナレッジマネジメントは、これらの資源をつなぎ合わせるために重要なナレッジに着目した
  マネジメント手法なのです。

  少し分かりにくい説明となりましたが、例えば、データベースなどを活用した情報の共有・活用を
  イメージしてみてください。

  データベースが構築されている企業の社員は、データベースから即座に顧客情報や在庫情報などを
  入手することができます。

  その企業において、データベース上の顧客情報や在庫情報は共有された情報となっています。

  ナレッジマネジメントの基本は、日常行われているこのようなデータベース活用と非常によく似て
  いるのですが、“そのもの”ではありません。

  ナレッジマネジメントは通常行われているデータベースの活用を一歩進めたものです。

  そのため、単なる情報の共有に終わることなく、次のようなサイクルを常に循環させていきます。

  このような取り組みを継続することにより、通常は表に出ることのない社員固有の優れた知識が
  計画的に発掘され、全社的に共有することができるようになるのです。

 2.ナレッジマネジメントにおける「ナレッジ」とは

  ここで、もう少し「ナレッジ」に注目してみましょう。

  前述の通り、ナレッジとは知識を意味するのですが、ナレッジマネジメントにおけるナレッジの
  意味はもう少し複雑になります。

  具体的には、

   ナレッジマネジメントでいうナレッジは「データ・情報・知識・知恵」

  を示しています。

  データ・情報・知識・知恵はいずれも類似するものとして考えられがちですが、ナレッジマネジ
  メントでは次のように区別します。

   ナレッジマネジメントのサイクル

  (1)データ
   データはナレッジマネジメントを行うために欠かせない素材であり、ある一瞬の状態を示す
   ものです。

   具体的には、売上高や物価指数などの単体の統計などが該当します。

   データはインターネットなどでも入手できる類のものであるため、それほど価値は高くあり
   ません。

  (2)情報
   データを基に整理加工されたものです。

   例えば、単なる売上高の統計ではなく、ある商品の地域別・季節別の売上高の推移を時系列で
   整理した一覧表やグラフなどが該当します。

   データベース管理が進んだ企業では、こうした情報を整理して社員の活動をサポートしています。

  (3)知識
   情報(一覧表やグラフなど)を分析し、そこに洞察を加えたものです。

   例えば、ある商品の売上状況を分析した調査報告書、物価指数などを基に作成された調査
   リポートなどが該当します。

   知識にまで達すると、それはかなり価値の高いものとなります。

   時には外部業者にリポート作成を依頼するなどして、その内容を共有することもあります。

  (4)知恵
   知識(調査報告書など)を基に、個々の社員が持つ応用力や創造力を加えた「価値を産出する
   ための源泉」となるものです。

   すなわち、調査報告書やビジネスリポートから結論を導き出し、その応用方法を検討し、結果
   として「どのような行動を起していくか」を決定するための「取り組み」です。

   データ・情報・知識は汎用化することで誰でも同じように利用できます。

   しかし、そこからどのような結論を導き出し、どのような行動に移すかは、個々の企業(社員)
   で異なるのです。

   ナレッジマネジメントでいうナレッジ(データ、情報、知識、知恵)には、ここまでの意味が
   込められているのです。

□個人知を組織知とすることが大切

 1.中堅・中小企業で導入しやすいナレッジマネジメント

  企業(企業経営者、社員)は、特に意識していなくとも

   ・企業が持つナレッジ:組織知

   ・社員が持つナレッジ:個人知

  は絶えず利用しながら活動しています。

  組織知とは、その企業に勤めるすべての社員が活用できるように共有されたナレッジです。

  例えば、「営業マニュアル」「特許」などがこれに当たります。

  一方、個人知とは個々の社員が持つ独自の応用力やアイデアであり、通常は働きかけなければ
  全社的に共有できる組織知とはなりません。

  ただし、社員同士の関係が密接で、相談しながらプロジェクトの方向性を決定することが多い
  中小企業では、社内会議の場やちょっとした会話の中で個人知が活用されているケースがあり
  ます。

  例えば、社員10人程度の企業であれば、「誰が、いつ、どのような方法で、いくらの販売金額で、
  新規顧客を獲得したか」などのことが自然と把握できているはずです。

  こうしたナレッジの共有はナレッジマネジメントを導入する際の大切なポイントであり、「どの
  ような方法で」といった知恵を重視していくことになります。

  つまり、すべての社員が組織知を利用しやすい環境を整える一方で、個人知を組織知とする仕組み
  を作り上げることがナレッジマネジメントを導入するうえで不可欠なのです。

  例えば、ある社員が営業先の興味や趣向を考慮して既存の営業マニュアルをリニューアルしたと
  します。

  この場合、社員が営業マニュアルをリニューアルしたアイデア・手法こそが、その社員だけが持つ
  個人知となります。

  この社員はイラスト交えたかもしれませんし、外部の情報提供機関から入手した調査リポートを
  付加したかもしれません。

  社員の持つ個人知は、新しい営業マニュアルとして具現化され、ほかの社員も共有・活用できる
  組織知となりました。

  新しい営業マニュアルを全社員が活用した結果、これまで以上に営業成績が向上したのであれば、
  この企業はナレッジマネジメントの導入に成功した典型例といえるのです。

 2.ナレッジマネジメントと文書管理の違い

  ナレッジマネジメントと文書管理が混同してとらえられることがあります。

  確かに、従来からの文書管理でも、各種報告書やマニュアルが管理されていて、社員はいつでも
  それを利用できる環境にあるからです。

  この点において、ナレッジマネジメントと文書管理には類似する点が多いといえます。

  また、昨今はネットワーク技術やデータベースソフトの性能向上により、個々の社員がデータ共有
  しやすくなってきています。

  それでは、ナレッジマネジメントと従来の文書管理ではどういった点で異なるのでしょうか。

  両者の大きな違いは、

   「管理」と「活用」の違い

  にあります。

  従来の文書管理は過去のデータを管理することを目的としがちで、「企業として行わなければなら
  ない1つの作業」として認識されていました。

  そのため、一度文書が管理された後はあまり利用されず、どの文書が企業や社員にとって有効で
  あるのかも整理されていない状態です。

  一方、ナレッジマネジメントでは「ナレッジの活用」を前提とします。

  また、ナレッジを活用して将来的な企業価値の向上を目指すため、企業と社員にとって有効な
  ナレッジだけが選別・蓄積され、定期的なナレッジの入れ替えも行われます。

□ナレッジマネジメントを実践するための留意点

 ここで、ナレッジマネジメントを実践するうえで重要となるポイントを確認してみましょう。

 1.ナレッジマネジメントを定着させること

  全社的な取り組みとしてナレッジマネジメントを定着させ、個々の社員にナレッジの活用(提供)
  は当たり前のことであると意識させます。

  ただし、社員の中には自らのナレッジを提供したがらない人がいます。

  こうした社員は、ナレッジは“自分の武器であり、価値である”ことを知っているのです。

  こうした社員が持つ「個人知」を吸い上げるためにも、全社的にナレッジマネジメントに取り組む
  姿勢を強調します。

  先の営業マニュアルの例でいうならば、大切なのは営業マニュアルをリニューアルした社員が、
  それをほかの社員にも快く勧めるような風土を醸造することです。

  そのために、企業は

   ・個々の社員のナレッジを定期的に報告させること

   ・優れたナレッジを提供した社員を表彰すること

  などに取り組まなければなりません。

  優れたナレッジを提供した社員に「手当」を支給するなどすれば、より効果的といえるでしょう。

 2.企業と社員がナレッジの活用を絶えず意識すること

  営業を担当する社員は、過去の成功例として蓄積されているナレッジを活用します。

  ある社員がさらに改善を行ったなら、それをナレッジ(個人知から組織知)として企業に提供
  します。

  新しいナレッジの提供を受けた企業は、

   それが企業価値を高めるために有効であるかを判断し、
   有効なものは活用しやすい形で整理

  していきます。

 3.ナレッジマネジメントを行うキーパーソンを育てること

  ナレッジマネジメントを十分に機能させるために、

   ・どんなナレッジが構築されているか

   ・それを活用するにはどんな方法があるか

  などを熟知したキーパーソンを育てることが大切です。

  このような社員をナレッジワーカーと呼びます。

  ナレッジワーカーには、

   ・企業にとって有効な知識を見極める力

   ・知識を分かりやすい形で保管する力

   ・必要な知識を維持し、不必要となった知識を破棄する力

  が求められます。

  ナレッジマネジメント導入の効果は、ナレッジワーカーの働きによって大きく左右されるため、
  企業はナレッジワーカーとなる人材を慎重に選抜することが大切です。

  また、ナレッジマネジメントをテーマとするセミナーが定期的に開催されているので、こうした
  場に参加させることも一策です。

 4.ナレッジマネジメントの効果

  ナレッジマネジメントの導入で期待される第1の効果は、

   放っておいては表に出ることのない社員のナレッジを、
   企業の財産として共有、活用できる点

  です。

  どんな企業にも優れた知識を持つ人材がいるはずです。

  その人材が抜群の営業担当者であるならば、その営業の秘訣を皆で共有して、全社的な営業成績の
  向上につなげることが期待できます。

  第2の効果として、ナレッジマネジメントを通じて、

   「学習する組織」に成長できる点

  です。

  「学習する組織」とは、知識の提供、提供された知識の習得、新しい知識の創造に積極的な組織
  です。

  また、知識の提供などは孤立したものではなく、

   知識の提供、その習得、新しい知識の創造が一連の活動

  として行われていきます。

  そして、この活動が途絶えることはありません。

  以上がナレッジマネジメント導入で期待される代表的な効果です。

  ただし、社員から集める知識がピント外れの場合や組織がナレッジマネジメントに前向きでない
  場合、必ずしも効果が上がらないことがあります。

  こうしたことがないためにも、企業(社員)に有効な知識を分かりやすい形でまとめる、ナレッジ
  ワーカーの働きが重要となってくるのです。

□小回りの効く組織で効果を発揮する

 1.コンパクトな組織で効果を発揮

  現時点で、ナレッジマネジメントを盛んに導入しているのは大企業です。

  しかし、組織がコンパクトな中小企業のほうがナレッジマネジメントになじみやすい面もあります。

  ナレッジマネジメントは、ナレッジマネジメントに理解を示す組織を醸成し、集められた知識の
  中で有効なものを共有・活用することで企業力を高める手法です。

  それを実現するためには、部課の利益にとらわれず、全社員が同じ価値観を持って企業力強化を
  目指す中小企業のほうが適しているといえます。

  また、中小企業の場合は組織がコンパクトで、全社的な意思の疎通が図りやすいという利点が
  あります。

  コミュニケーションが容易なため、いつでも対面で知識の有効性を確認し合うことができます。

  中小企業が持つ小回りの良さは、ナレッジマネジメントの導入に適しているといえるのです。

 2.中小企業がナレッジマネジメントを導入する意義

  資金など経営資源の量が大企業よりも少ない中小企業は、限られた経営資源を最大限に活用しな
  ければなりません。

  その経営資源の中に社員が持つ知識、すなわちナレッジがあります。

  ナレッジマネジメントを導入することで、社員が相互に協力し合い、これまで表に出ることのなか
  った新しい知識が企業の資源として蓄積されていきます。

  一方で、「中小企業にナレッジはない」という人も少なくありません。

  けれども、「今も、企業は活動を続けている」という事実を見逃してはなりません。

  社員は、毎日の積み重ねの中で数え切れないほどのノウハウを確立し、また自らの経験とカンに
  より繰り返し改善を行っています。

  社員1人ひとりが日常業務の中で確立してきた知識こそが中小企業が誇れるナレッジといえるのです。

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経営体質強化

合併の基礎知識 Ⅱ

□合併契約書の作成

 合併の成否は重要な条件すべてを記載する合併契約書の出来が重要な役割を担っています。

 また、契約書には法定記載事項が定められており、作成には細心の注意が必要となります。

 そのため、作成にあたっては弁護士などの専門家に相萩することが望ましいといえます。

 1.絶対必要記載事項

  絶対必要記載事項とは、会社法749、751、753、755条に定められている法定記載事項をいいます。 

  この法定記載事項の記載を欠いたり、記載内容が法に則っていない場合には、合併が無効となる
  恐れがあります。

  ◎吸収合併の場合

   (1)存続会社と消滅会社の商号と住所

   (2)合併対価
    ①株式の場合は、当該株式の数(種類株式発行会社については、株式の種類および

     種類ごとの数)、または算定方法と資本金・資本準備金の額

    ②社債の場合は、社債の種類と種類ごとの金額の合計、またはその算定方法

    ③新株予約権の場合は、新株予約権の内容および数、または算定方法

    ④新株予約権付社債の場合は、上記②、③についての事項

    ⑤上記①から④以外の財産の場合は、財産の内容および数、もしくは額、または算定方法

   (3)消滅会社の株主に対する金銭等の割当てに関する事項

   (4)消滅会社が発行している新株予約権の扱い
    ①消滅会社の新株予約権者に対して存続会社の新株予約権を発行する場合は、新株予約権の
     内容および数、または算定方法

    ②消滅会社の新株予約権が新株予約権付社債の場合は、存続会社が社債を承継する旨とその
     承継に関する社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計、または金銭の割当てに
     関する事項

    ③消滅会社の新株予約権者に対して金銭を交付するときは金銭の額、または算定方法

   (5)(4)を規定する場合には、併せて存続会社の新株予約権または金銭の割当てに関する扱い

   (6)合併の効力発生日

  ◎その他法定記載事項~

   (1)定款変更事項

    合併に伴い、商号・役員数・本店所在地など定款変更の手続きが求められる場合には、
    合併契約書に定款変更事項を記載し、それが合併契約承認総会で認められれば、あらためて
    定款変更のために株主総会を開催する必要はありません。

    しかし、株式譲渡制限の定款変更を伴う場合の合併承認総会決意は特別決議では認められず、
    総株主の過半数にして発行済株式総数の3分の2以上による多数決義によらなければなりません。

   (2)各会社が合併期日までに利益配当や中間配当をするときは、その限度額

   (3)合併後の取締役・監査役を定めたときは、その氏名

 2.任意的記載事項

  法定記載事項ではありませんが、契約書に記載することで法的効力が生じる事項を任意的記載事項
  といいます。

  たとえば、善管注意義務(善良なる管理者の注意義務の略で、取締役として当然要求される注意
  義務のこと)に関する事項などがあります。

  ところで、合併手続きが進んでいくなかで、簿外債務(帳簿上、顕在化していない支払手形や借入金
  など)の存在が明らかとなり、合併当事者間でトラブルが生じるケースが多発しています。

  そのため、合併契約書を作成する前に相手会社の決算書や手形控、取締役会議事録などの内部資料を
  入手し、十分な調査を行う必要があります。

  さらに、合併相手が簿外債務の存在を隠匿していた場合には、その債務の支払いについて、自社は
  負担しない(責任がない)旨を合併契約書に記載しておくとよいでしょう。

□簡易組織再編・略式組織再編について

 1.簡易組織再編の要件

  簡易合併制度とは、比較的小規模な組織再編を行う際に、一定の要件を満たすことにより、合併
  会社は合併契約承認総会を省略することができるものです。

  ただし、取締役会決議は必要です。

  なお、新設合併を簡易組織再編の手続きで行うことはできません。

  簡易合併制度を採用するには、存続会社の交付株式あたりの総資産額と、交付した株式以外の財産
  (新株予約権を含む)の純資産割合の合計が、存続会社の純資産額の20%以下であることが必要です。

  なお、定款において20%を下回る割合を別途定めることも可能です。

 2.簡易組織再編における留意点

  手鏡きの際には以下のような点に留意する必要があります。

  (1)存続会社が非公開会社で、交付する対価の全部または一部が譲渡制限株式の場合は、簡易組織
   再編に該当する場合であっても、総会による承認が必要になります。

  (2)消滅会社においては、簡易合併制度は適用されません。
   ただし、略式組織再編あたる場合は、総会の承認は不要になります。

  (3)前述したように、吸収合併に伴う定款変更は絶対必要記載事項です。
   そのため、定款変更を議題とする株主総会については別途開催する必要があります。

  (4)消滅会社が債務超過会社の場合であっても合併することは可能ですが、合併により差損が生じる
   場合は、総会決議が必要になります。

 3.略式組織再編の要件

  ある会社が他の株式会社の総株主の議決権の90%以上を保有している場合、義決権を保有している
  会社を特別支配会社、特別支配会社に支配されている会社を被支配会社といいます。

  その会社間で組織再編を行う場合には、被支配会社での株主総会決議は必要ないものとされ、これを
  略式組織再編と呼んでいます。

  これは、被支配会社において株主総会を開催しても、議決権のほとんどを保有している特別支配
  会社の意思のとおりに決議されることは明確であるため、手続きを簡素化できるという趣旨による
  ものです。

  なお、被支配会社は存続会社と消滅会社のいずれであっても、総会の決議は省略することができ
  ます。

 4.略式組織再編における留意点

  手続きの際には以下のような点に留意する必要があります。

  (1)新設合併の場合には、略式組織再編は適用されません。

  (2)存続会社が非公開会社で、交付する対価の全部または一部が譲渡制限株式の場合は、略式組織
   再編に該当する場合であっても、被支配会社の総会による承認が必要になります。

  (3)略式組再編を行う場合であっても、少数株主の利益を保護するために、略式組織再編行為の
   差止請求や反対株主の株式買取請求、組織再編行為の無効の訴えなど、株主の利益が害される
   のを防ぐ用意がされていますので注意が必要です。

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経営体質強化

合併の基礎知識 Ⅰ

■合併の意義と形態

 新聞では、大企業の国際的なM&Aが話題になっています。

 法律や会計上のさまざまな問題もあり、中小企業にとっては、無縁そうなM&Aですが、中小企業でも
 年々、その数は増加しています。

 とくに、後継者不足から自社で事業を存続できない企業から事業を譲り受ける場合や、事業を拡大する
 ために取引先と事業を競合する場合など、きっかけは、日頃の取引の延長からはじまることも多いよう
 です。

 なかでも合併は、数あるM&A手法のなかでももっとも強い結びつきを得る手法です。

 合併とは、

  法律上、複数の会社が、合併契約に基づいて1つの会社になること

 です。

 清算手続きを経ることなく、消滅会社(合併により消滅する会社)の一切の権利義務を、そのまま
 存続会社に移転することができます。

 子会社等グループ会社の競合による再編や、既存事業(部門)の強化のための買収、新規事業へ参入
 するための買収などにも利用されます。

 1.合併の形態

  合併の形態としては、以下の2つがあります。

  (1)吸収合併

   合併当事会社のうち1社が存続会社となり、他の会社は解散してその財産、従業員、負債など
   事業にかかる権利のすべてを存続会社が引き継ぐ方法です。

  (2)新設合併

   すべての合併当事会社が解散して、同時に新たに1つの会社を設立し、解散した会社の財産、
   従業員、負債など事業にかかる権利のすべてを引き継ぐ方法です。

   ただし、営業許可など許認可については、改めて取得しなければなりません。

   また株券の発行など、新会社としての手続きがすべて必要になるため、手続きに時間と費用が
   かかります。

   そのため、速やかに事業を開始できる吸収合併のほうが広く採用されています。

 2.合併のメリット・デメリット

  M&Aには、さまざまな形態があります。

  合併という手法を活用して、企業買収を行う場合のメリット・デメリットについて説明します。

  (1)メリット
   ・包括的に財産や権利を引き継ぐので、個別の資産・負債の移転のための手続きを原則として
    行う必要がありません。

   ・存続会社は対価として自社の株式を交付するので、買収のための資金を調達する必要があり
    ません。

   ・消滅会社と1つの会社にまとまるため、経営権を統合することができます。

   ・管理業務を一元化でき、煩雑な子会社管理などを必要としません。

  (2)デメリット
   ・会社ごと引き継ぐため、必要な財産や部門だけを引き継ぐことができません。

   ・簿外債務など消滅会社の経営上のリスク事項もすべて引き受けることになりますので、事前の
    調査を慎重に行う必要があります。

   ・社風や組織体系、人事制度などこれまで異なる制度を採用していた会社が一緒になるため、
    実務上も、メンタル上もあつれきを生まないよう注意が必要です。

   ・営業譲渡、株式譲渡と異なり、株主総会の招集、合併公告など、効力発生までに時間が
    かかります(簡易合併制度採用により、若干短縮可能)。

   ・消滅会社の株主が新たに存続会社の株主となります。

 3.合併が認められないケース

  会社は原則として、自由に合併することが可能ですが、次のようなケースでは認められません。

  (1)国内会社と外国会社の間の合併

  (2)株式会社と公益法人の間の合併

  (3)独占禁止法上問題がある場合
    合併の結果、市場が独占状態となり公正な競争が制限される恐れがある場合(独占禁止法違反)、 
    合併は無効となります。

    そのため、その要件に該当する場合は、公正取引委員会に対する事前の届出が必要であり、
    また、届出受理日から30日間は合併ができません。

  (4)合併契約承認総会で否決された場合
    合併の承認を求める株主総会において、特別決議(発行済株式総数の過半数にあたる株式を
    所有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)を得られない場合、
    その合併は無効となります。

  (5)その他関連法規(諸手統き)を遵守しない場合
    なお、これまで債務超過の会社を消滅会社として合併を行うことはできませんでした。
    しかし、会社法では、組織再編行為により「差損が生じる場合」であっても株主総会にて債務
    超過会社を吸収合併等する旨を説明することにより、合併できるようになりました。

□合併のステップ・諸手続き

 合併のステップ、諸手続きはとても複雑なため、ここですべてを紹介することはできません。

 以下に株式会社同士の合併について、その概略を示します。

 1.合併当事者間の折衝

  合併にあたり、当事者間で折衝を重ね、覚書や念書などに記録します。

  また重要事項について、事前に取締役会で承認を得ておきます。

 2.合併契約書の作成

  折衝の結果をふまえて合併契約書を作成します。

  合併契約書には法定の要件も存在するため、その作成には細心の注意が必要になります。

 3.合併契約承認のための取締役会および合併契約の締結

 合併契約書に定められている事項に不備や漏れがないかを確かめ、各事業会社の取締役会の承認を
 得ます。

 その後、合併契約書に各社が調印をすることで合併の手続きが開始されます。

 なお、合併契約書には、株主総会の承認を得ることを条件として書き加えます。

 4.合併契約書などの備置(開示)

  承認総会の2週間前(もしくは、株主または債権者への公告・通知・催告のいずれか早い日)から
  合併効力発生日後6カ月が経過するまでに、本店に合併契約書、貸借対照表、損益計募書、消滅
  会社の株主に対して割当てる株式や金銭などに関する事項について、その理由を記載した書面や、
  消滅会社の新株予約権の取り扱いについて記載した書面などを備置する必要があります。

 5.合併契約承認総会

  合併承認のためには、株主総会の特別決議が必要となります。

  後述する簡易組織再編・略式組織再編の条件に該当する場合には、この合併契約承藩総会を必要と
  しません。

  また、特別支配会社(90%以上出資)で一定の要件を満たしている場合も、株主給会が不要になり
  ます。

  合併により吸収する会社が債務超過であるなど、合併が存続会社の資産に悪影響をおよぼす可能性が
  ある場合は、存続会社の取締役は、株主総会でその旨を説明しなければなりません。

 6.公正取引委員会に対する合併届出

 合併が不当な取引制限、不公正な取引方法に該当しないかどうか、公正取引委員会が審査します。

 この届出がないと、ただちに合併が無効となるわけではありませんが、公取委は合併無効を提訴する
 ことができるとされています。

 また、運送業など特定の免許事業を営む会社は、別途、主務大臣に合併認可申請が必要です。

 7.株主の差止請求

  消滅会社の株主が吸収合併により不利益を受けるおそれがある場合、株主は合併の差し止めを
  会社に求めることができます。

  合併行為が法令や定款に違反していたり、合併の対価の算定や対価の割当の内容が著しく不当な
  条件で定められた場合などが、それに該当します。

 8.債権者異議申立公告・催告

  合併契約承認総会日から2週間以内に、債権者に対する公告を官報で1カ月以上行い、かつ知れたる
  債権者(※)に対して個別に催告を行わなければなりません。
   ※知れたる債権者:会社側が、その債権の原因や性質などを知っている債権者

  官報のほかに、定款に定めている日刊新聞紙へ公告を行う場合は、個別の催告の必要はありません。

  そして債権者が合併に対して異義を申し立てた場合は、弁済または担保の提供など、これに準じた
  措置を講じる必要があります。 

  しかし、以下のように債権者を害する恐れがない場合には、その措置は必要ありません。

   ①債権者の債権に十分な担保が設定されている場合

   ②債権額や合併の相手会社の財産状況からみて、その弁済が脅かされることがないと考えられる
    場合

   ③合併前からの不良債権であって、全額弁済の可能性がない場合

 9.合併期日

  合併契約書に記載する効力発生日のことで、消滅会社の財産および営業その他すべての資産が
  合併会社に引き継がれ、内部的にも両会社が合併する実質的な合併日を意味します。

 10.合併登記申請

  合併期日が実質的な合併日を意味するとしても、法的な効力が発生するのは合併登記がなされた
  ときです。

  つまり、登記が終了するまで外部的には消滅会社は存続しており、それぞれの法人は独立した
  法人格を有していることになります。

  会社が合併をした場合、合併期日の日から本店所在地においては2週間以内、支店の所在地に
  おいては3週間以内に、

   ・存続会社においては変更の登記

   ・消滅会社においては解散の登記

   ・新設会社においては設立の登記

  を行う必要があります。

 11.新株券の交付または合併交付金の支払い

  吸収合併において、新会社法施行前には消滅会社の株主に対して、対価として交付できるものは、
  原則として存続会社の株式であり、株式と併せて金銭を交付することはできても、金銭のみを対価
  とすることはできませんでした。

  新会社法施行によって、この対価の柔軟化が図られ、金銭のみの交付もできるようになりました。

  また金銭だけでなく、たとえば、存続会社の親会社の株式や社債、新株予約権など財産的価値の
  あるものであれば対価として交付できます。

  合併比率の算定には、法律・会計・税務ともに明確な規定もなく、一般的には、両者のそれぞれの
  価値、つまり企業評価の比較で算定されます。

  企業評価は企業の資産価値もしくは将来の収益をもとに行いますが、その評価にあたっては、人的な
  財産やノウハウ、技術なども含まれるため、評価が難しい面もあります。

  通常は、純資産価値、収益還元価値、市場価値のいずれかを基準として評価を行うことになります。

  評価方法により算定後の合併比率も異なるので、第三者間における合併(M&A)においては、
  当事者間の交渉が大きな比重を占めることになります。

  <合併比率の算定例

   ◎条件
    ・発行済株式総数は、それぞれ存続会社10万株、被合併会社5万株

    ・1株あたり税引後利益は、同200円、100円

    ・資産の含み益(時価一薄価)は、同5000万円、2000万円

    ・上記条件より、自己資本税引後利益率は、同20%、10%

   ◎算定式》
    時価純資産価額方式により算出

    ・合併会社 …(1億円+5000万円)÷10万株=1500円

    ・被合併会社…(5000万円+2000万円)÷5万株 =1400円

     1500円:1400円 = 1: 0.933(合併比率)
 

    つまり、消滅会社株式1株につき、存続会社株式0.933株が割り当てられることになります。

    ただし、合併の実務においては株式事務の簡素化などを目的として、たとえば「1:0.9」の
    ように数値を切り下げ(切り上げ)、差額を合併交付金で賄うといった方法が採られている
    ようです。

 12.反対株主の買収請求権

  消滅会社と存続会社の株主は、株主稔会やそれに先立って反対をした場合、保有する株式を公正な
  価格で会社に買い取ってもらうことができます。

  買い取り価格は両者の協議により決定され、会社は効力の発生日から60日以内に買い取り代金を
  支払います。 

  しかし効力発生日から30日以内に協義が婁わない場合は、それから30日以内に裁判所に価格の申し
  立てを行い、裁判所が価格を決定することになります。

  その価格を株主へ支払う際には、効力発生の60日以降から支払日までの期間の利息(年6%)を
  併せて支払います。

 13.合併前に実務上、検討しておきたいこと

  合併後に事業運営と業務手続きを円滑に進められるよう、合併後の体制についてもあらかじめ検討
  しておくことが望ましいでしょう。

  とくに合併で影事のある部署の関係者を集めて事前に協議をしておくことが重要です。

  具体的には、組織体制と勤務条件、人事評価、役員人事、システム統合、規定などの見直し、会計
  方針、取引先の見直しなどがあります。
 

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経営体質強化

ストックオプション制度

■ストックオプション制度構築の目的別ポイント

 ストックオプションは単発的に実施しても、その時に権利を付与された者にメリットがあるだけで、
 付与されなかった者にとっては関係のないことになります。

 付与されなかった者も含め、ストックオプションの意義を理解し、会社の業績を向上させる考えが
 根付かなければ、ストックオプションを実施しても意義は半減してしまいます。

 ストックオプションの効用を有効に発揮させるためには、会社としてストックオプションにどの
 ような役割を期待するか、また目的の達成に向けてどのような制度を作るべきか、について慎重に
 検討を重ねておく必要があります。

 そのうえで、5年程度は同じ目的を目指して制度を運営し、将来的に会社の経営環境が大きく変化する
 場合あるいは自ら経営改革を行う場合などに、必要な制度の見直しを行うべきです。

 ストックオプション制度の構築に際しては、まず、その中の何を重視してストックオプションを実施
 すれば、会社にとって自社の抱える課題を解決する方策として有効であるかを検討してください。

 つまり、会社の経営課題を解消するためのプラン作りを行うわけです。

 ストックオプション制度の構築方法には、大きく分けて「コーポレート・ガバナンス」 を重視した
 制度構築、「人事・報酬制度」としての制度構築、 「営業政策」としての制度構築、といった3つの
 切り口があります。

 以下にそれぞれの課題に応じた制度設計のポイントをまとめます。

□コーポレート・ガバナンスを重視したストックオプション

 1.制度づくりのポイント

  ・株主の利益を重視していることを明確にしたプランを作ります。

  ・ストックオプション付与に伴い、付与者と株主の利益の一致を図ります。

  ・株主価値の希薄化を招かない制度設計を行います。

  ・客観的かつ合理的な付与基準づくりが必要であり、社外の識者を含めた第三者機関により
   ストックオプション付与基準作成を行い、ストックオプションを付与される役員が利益
   相反するような事態が生じないような制度を作ります。

 2.個別の課題解消方法

□人事・報酬制度としてのストックオプション

 1.制度づくりのポイント

  ・報酬体系全体の見直しを行ない、新たな報酬制度として株価連動型報酬を位置付け、
   給与・賞与・退職金を含め、総合的な新報酬体系の検討が必要です。

  ・ストックオプションを一過性の制度とせずに中長期的株価連動型報酬制度と位置付け、
   ストックオプションを定期的に実施する制度づくりを行なうことが必要です。

  ・人事・報酬制度の一部として位置付ける場合、株主価値を高めることが報酬の増大に
   つながることを社内あるいはグループ内に徹底することが必要です。

  ・他の報酬に関しても見直しを行ない、株価連動型報酬を追加することに見合う既存制度の
   至急水準見直しの実施が不可欠です。
   特に役員賞与や退職慰労金は固定費削減の対象として慎重な検討が必要です。

  ・役員報酬の見直し策と連動して行使価格を1円に設定したストックオプションを実施した
   例も数例ありますが、行使価格が発行時の時価を下回るため、優遇税制の対象にならない
   ことに加え、付与時においても課税される可能性や、権利行使時または権利付与時に贈与
   税が課税される可能性も否定できません。
   その場合には会社側も寄付金として取扱うことが必要になる可能性もありますので、行使
   価格を1円にするような発行時の時価を下回る価格設定でストックオプションを実施する
   ことは税務リスクと株主価値を権利付与者に移転する明確な理由説明が行えるように慎重
   な検討が必要になります。

 2.個別の課題解消方法

 3.報酬構成変更の考え方

□営業戦略としてのストックオプション

 1.制度づくりのポイント

  ・ストックオプションの付与対象者の制限が撤廃されたため、外部支援者を含めて営業政策的
   に付与対象の拡大を検討します。

  ・代理店、特約店、加盟店などの販売契約締結先への販売促進策としてストックオプションの
   利用が可能です。

  ・売上や収益向上に寄与することが明確な権利付与・行使条件の設定を行うことが最重要
   ポイントです。

  ・付与は代理店など会社との契約先に限定し、契約先の経営者や担当者など、利益相反の
   問題が生じる対象への付与は回避します。

  ・経費削減策として外部コンサルティングへ付与し、コンサルティングフィーの削減を行なう
   ことも可能です。

 2.個別の課題と解決方法

□ストックオプション実施に際しての制度設計のポイント

 1.中長期的制度運営の検討

  ストックオプションは定期的に実施しなければ社内のモラル低下を招く危険性のある制度であり、
  ダイリューション(※)の問題を考慮すれば、発行済み株式数の10%に達するような権利付与も
  困難です。

   (※)新株を発行する場合に、1株あたりの利益が低下(希薄化)してしまうこと

  そのため、どのようなサイクルで制度を運営し、付与対象をどこまで拡大できるか、会社としての
  中長期的な展望に立った制度作りが必要になります。

 2.付与対象者の選定

  経営効率を重視すれば取締役や上級幹部社員への付与を重点的に行なうべきです。

  しかし、従業員が株価を意識した業務活動を展開できるようにするには、付与対象を拡大する
  必要があります。

  また、連結決算を重視すれば子会社の役職員への付与も戦略的に検討する必要があります。

  この場合、ストックオプションの主旨と中長期的なストックオプション制度運営の方針を確定し、
  それに応じて付与対象者をセレクトする必要がありますが、実行性を考慮すると管理職には
  ストックオプションを付与し、管理職としての業務執行権限の有効活用を図るべきです。

 3.オプション価値の算定

  ストックオプションを価値算定せずに付与することは危険です。 

  ストックオプション自体に経済的価値が存在するものであり、株価連動型報酬として付与する
  以上は報酬水準を算定し、会社および権利付与者の双方が経済的価値を認識してストック
  オプション付与後の業務活動が展開できるようにすべきです。

  また、将来会計基準が変更になりストックオプションの費用計上が義務付けられた場合の費用
  負担を予測し、会計制度変更時の影響を想定するためにもオプション価値の算定は必要です。

 4.収益期待額の考慮

  ストックオプションの付与は過大なものであっても過小なものであっても目的とする効果が得ら
  れない可能性があります。

  例えば、株価変動率を用いてストックオプション収益期待額を算定し、権利行使時の利益が会社の
  与えようと考えているインセンティブ収益に相応な金額かどうか、事前の検討が必要です。

 5.権利付与基準の作成方法

  ①株数をベースとした付与基準の設定

  ②付与金額をベースとした付与基準の設定

  ③オプションバリューを基準とした付与基準の設定

  中長期的に安定した制度運営を行なうには社内ガイドラインを策定し、付与数量を設定することが
  好ましく、経済的価値を均一化するには上記①または②の方法を選ぶとよいでしょう。

  さらに付与基準策定に関しては、社外の識者を中心とした報酬委員会を設置し、基準策定を行なえ
  ば透明性も高まり、対外的な基準の妥当性を高めることができます。

 6.業績貢献度に応じた付与基準の作成方法

  ストックオプションは将来の期待度に応じて付与することが困難な制度です。

  個人別の付与数量を差別化するには、過去の業績貢献度を評価することが一般的です。

  毎年ストックオプションを実施するプランであれば、1年間の貢献度を収益目標達成度・商品開発
  実績・人事考課などの基準を定め、一定水準の条件をクリアした者に基準に応じたストックオプ
  ションを与える方法をお勧めします。

  これを毎年繰り返すことで会社に対する貢献度が高い役職員に多くのインセンティブを与え、収益
  チャンスの拡大を提供できます。

  会社の活性化策として、さらに具体的な方法を会社の業務内容を検討のうえ、設定してみてください。

 7.グループ戦略の検討

  株主利益を重視するのであれば、増配や株式分割の実施、あるいは株価の値上がりが必要になり
  ます。

  現在、株式の評価は連結決算の結果を反映する傾向が強く、グループ全体での評価を高める施策が、
  株価の値上がりにつながる可能性が高いといえます。

  連結対象子会社の役職員にも株式を公開している親会社のストックオプションを与え、連結決算に
  貢献することが株価の値上がり、そして株価連動型報酬を得る手段になります。

  このように株式の評価を高めるといったグループ戦略上でも、ストックオプションによるインセン
  ティブの付与が重要な意味を持ちます。

 8.営業戦略としての付与・行使制限の設定

  フランチャイズ店や代理店・特約店など、販売契約先に売り上げのほとんどを依存する業種の場合、
  販売契約先に売り上げ水準の向上がより多くの利益につながることを意識させ、自発的にストック
  オプションの意義を見出せるよう誘導すれば、販売実績を向上させるインセンティブとしてストック
  オプションを活用することも可能です。

  この際、各社の業務実態を考慮して付与や行使の条件を検討することが必要です。

 9.非居住者への付与の検討

  非居住者は居住国の法律が適用されるため、非居住者にストックオプションを付与する場合、
  付与者の居住国の法律調査を行うことが必要です。

  安易に付与すると、これまでに外資系企業のストックオプション権利行使者が日本で起こした
  ような税務上の問題や証券法に関する各種届出・開示のルールに反するリスクがあります。

  ストックオプションはいまだ発展途上の制度であり、会計基準の見直しが行われている現状では
  今後も毎年のようにストックオプション関連の法律が改正される可能性があるので、海外で付与を
  行なう国の法律に関しては毎年調査を行うことが必要になります。


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経営体質強化

自社の“会社力” Ⅱ

■最小の投資で最大の効果

 いま企業の命運を握っているのはコストの削減です。

 収益を確保するためには、徹底したコスト削減が必要不可欠。

 このことに異論を唱える人はいないでしょう。

 ただ、問題はそのやり方。

 せっかくコストを削減したのに、その影響で売り上げや利益が下がってしまった企業が珍しくない
 のです。

 「接待が一切禁止になり、得意先を失った」、「人件費削減のため社員をリストラしたが、代わりに
 
雇ったアルバイトが使い物にならず、現場が混乱している」、「新しいシステムの導入を見送ったが、
 
いまのシステムは頻繁にダウンして、そのつど業務がストップする」、コスト削減を打ち出した企業
 からは、
こういった声もよく聞かれる。

 いったいなぜこのような本末転倒なコスト削減策になってしまうのか。

 私見だが、それはおそらく、企業活動におけるコストパフォーマンスの意味が誤解されているから
 ではないでしょうか。

 コストパフォーマンスを高めるというと、一般的には、「最小の役資で、最大の利益を得る」という
 意味で受け取られる。

 しかし、企業活動においては、「最大の利益を得るために、必要な投資を最大限行う」が正解です。

 前者では「初めにコスト削減ありき」で、無駄がなくなるかわりに利益も小さくなる。

 しかし、後者は「初めに利益ありき」で、利益を得るために必要な部分に集中して投資する。

 そのため利益は減らず、無駄だけをなくせる。

 利益を生むために何が必要で、何が不必要なのか。

 そこから出発しないコスト削減策は、かえって利益までをも削ってしまう危険性がある。

 この考え方は、ビジネスパーソン個人にも参考になるはず。

 例えば「ルート営業のほかに、新規開拓のため一日に10件の飛び込みをしている営業職員」という
 設定で、コストパ
フォーマンスを考えてみましょう。

 もし「最小の投資で、最大の効果を得る」と考えるなら、新規開拓などせずに、ルート営業だけに
 徹したほうがいい。

 仕事は早く終わるし、無駄な労力や時間を使わずに済む。

 ただし、ルート営業だけで売り上げを伸ばすのは困難であり、楽をするかわりに営業成果が頭打ちに
 なる結果も覚悟しておくべきです。

 では、「最大の利益を得るために、必要な投資を最大限行う」という考えで行動したらどうなるか。

 1件の新規契約が大きな利益をもたらすとしたら、それを取るために何十件の飛び込み営業も厭わず、
 真剣に業務に取り組むでしょう。

 そのかわりルート営業で毎日通っていたところを一日置きにしたり、受注システムをIT化して伝票
 整理の手間を省いたりして、別のところで仕事の効率を高める工
夫をする。

 これがデキるビジネスパーソンのコストパフォーマンスに対する考え方です。

 あなたは「どうせやっても無駄だから」「効率が悪いから」と理由をつけて、本来やるべき仕事を
 省いていないだろうか。

 それはコストパフォーマンスにかこつけて、手抜きをしているだけと思われても仕方がない。

 最大の成果をあげるために、いま自分にできることはいったい何なのか、もう一度見直したほうが
 よさ
そうです。

□上手にコストを削る2つの方法

 利益を落とさずにコストを削る。

 これは企業の収益力を高めるときの鉄則です

 では、具体的にどんな方法でコスト削減をすればいいのだろうか。

 私の場合、製造費についてはr捨豊泉制」、営業・一般管理費については「ゼロべ-ス予算管理」
 という方法でコストを削減した。

 それぞれについて、特徴とメリットを解説していきます。

 ◎「総量規制」

  もし1カ月の食費を節約しなければいけないとき、「今日は牛井、明日は昼飯を抜いて、
  明後日は……」と決められたらどう思うでしょうか。

  おそらく多くの人はストレスを感じ、途中で挫折してしまうに違いない。

  食費を削るには、最初に1カ月の予算を決めて、その枠内でやりくりしながら自分でメニューを
  選んだほ
うがうまくいくでしょう。

  各項目の量(額)は問わないが、最初に定めた総量(総額)を上回ってはいけない。

  このやり方を「総量規制」という。

  企業のコスト削減でいえば、具体的な方法は現場に任せるが、その業務内で○%減らしなさい
  ということになる。

  総量規制のメリットは、現場の意思やアイデアが尊重される点。

  例えば「この経費は利益と直結しているので削らない」、「ランニングコストを削るために新しく
  設備投資しよう」といったことも、現場の判断で工夫できる。

  そのため現場のモチべ-ションも下がりにくいし、現場でないとわからない絶妙なアイデアが出る
  こともある。

  下手に経営陣が介入するより、効率的なコスト削減ができるだろう。

  コスト削減の数値目標は、少なくとも10%以上に設定すべきでしょう。

  じつは5%程度のコストダウンは、仕入先に泣いてもらえば比較的容易にできる。

  しかし、それは「誰かが我慢している」という状態にすぎず、従来の支出の仕組みはそのまま踏襲
  されてしまう。

  誰にも我慢させずにコストダウンするには、構造改革を行い、お金を使う仕組みを根本から変えて
  しまわねばならない。

  そのために従来のやり方の延長線上では達成できない数値目標を設定するのです。

  また、これまでの経験では、小幅のコストダウンならいつでもできるという意識からか、実際に
  コスト削減の数値目標を10%未満に設定すると、かえって達
成が難しかった。

  むしろ10%以上の厳しい数値目標を設定したときのほうが、現場社員は本気になってコスト削減に
  取り組み、実際に目標達成に至るケースも
多かった。

  とはいえ、達成が絶望的な数値目標を設定すると、かえって社員のモチべ-ションが下がる。

  どこに目標を設定するかで、社長の手腕が問われるといえるでしょう

 ◎ゼロベース予算管理

  一般的に予算は、前年の実績をべースにして決められる。

  そのため前年に多く予算を使った部門やプロジェクトには、次の年も同様の予算を割り当てられる
  こ
とが多い。

  しかし、これでは前年に意味のない無駄遣いがあったとしても、チェックされることなく、その
  まま次の年に持ち越されてしまう。

  それを避けるために考え出されたのが、「ゼロべ-ス予算管理」です。

  これは、のちにアメリカ大統領となったジミー・カーター氏がジョージア州知事時代に導入して
  話廣になった予算管理法で、前年の予算をいったん白掛こ戻し、ゼロ
べ-スから予算を各部門、
  各プロジェクトに割り当てていくというものです。

  この方法なら、前年に無駄遣いがあったとしても、もう一度必要な経費を精査してゼロから積み
  上げていくので、無駄遣いが繰り返される心配はない。

  経費を使う側から見ても、来期の予算確保のために無理して予算を使い切ろうとする甘い発想は
  生まれにくく、意図的な無駄遣いも減っていくでしょう。

  また、必要なものにはきちんと予算をつけるので、売り上げに悪影響が出るとも考えにくい。

  無駄な部分だけが削ぎ落とされて、結果的に収益力はアップするはず。

  会社がさまざまなコスト削減策を打ち出したものの、成果がなかなか上がらない。

  そんなときは、管理職の立場として、ぜひこの2つの方法のメリットを提案してみてはどうでしょうか。

                       
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経営体質強化

自社の“会社力” Ⅰ

■赤字体質が根づいた会社

 企業が赤字に陥る理由はひとつではない。

 社長の力、自社を有利にする計画実行力、競争力のある製品・サービスをつくる力、販売を強力に
 行う力といった「会社力」を構成するパワーの低下が複雑に作用しあい、集貨を悪化させていく
 のです。

 そのパターンは会社によって千差万別。

 ただ、どんな赤字企業にも共通して足りないパワーがひとつあります。

 それは利益を生み出し続けて企業体力をつくる力、つまり「収益と財務の管理力」が低下している
 のです。

 例えば製品競争力がなく、強力な新製品を市場導入するメドが立っていない会社があるとします。

 このままいけば確実に売り上げが減り、新製品の市場導入までには赤字に転落してしまうでしょう。

 しかし、売り上げが減った分の支出をカットできれば、黒字の維持は可能。

 業績悪化のきっかけは競争力の低下だが、最終的には収益管理力のなさが原因になっている。

 また、売り上げも順調で表面的には何も問題がないのに、なぜか赤字に陥っている会社があったと
 します。

 この場合も、原因は財務と収益の管理力にあることが多い。

 帳簿上では売り上げは順調なはずなのに、売掛金回収のシステムが整備されていないため現金がなく、
 借入金を増やしてしまう。

 また、現金があるのに借入金の返済に充てずに、新たな設備投資をしてしまう。

 こんな悪循環の繰り返しでは、 いくら売り上げを伸ばしても赤字からの脱却は困難であろう。

 では、収益や財務の管理力が弱い会社にはどんな特徴があるのでしょうか。

 次のチェックリストで調べてみましょう。

 くチェックリスト〉収益や財務の管理力が弱い会社

  □不採算部門が、いまだ手つかずのまま残っている

  □財務諸表が社員に公開されていない

  □社長の多く(とくに管理職)が決算書を読むスキルをもっていない

  □大企業が親会社である

  □給料の心配をしたことがない

  □経費の上限はあっても、問題なく使える(細かな経理上の規定がない)

 財務力や収益力が弱い会社は、まず社長自身が数字に弱く、決算に目を背けてしまう僚向がある。

 実際は決算に関心を示さない社長などいないでしょう。

 決算書は社長にとって通信簿であり、本当は気になって仕方がないはずです。

 しかし、自信のない社長は、悪い成貴を突きつけられるのが怖いのです。

 通信簿を見なければ、どの教科が苦手なのか自覚できないのと同じで、決算を直視しない社長は、
 どの部門の収益が低く、会社の足を引っ張っているのかについて認識が甘い。

 百歩譲って認識があったとしても、現実逃避するかのように何も対策を打たず、時が解決してくれる
 のを待っているだけなのです。

 社長だけではない。

 財務力や収益力が弱い企業では、総じて社員も決算の内容について無関心である。

 自分がかかわっている事業では、いったいいくらの売り上げがあり、コストをどれだけ使っている
 のか。

 赤字企業であればあるほど、正醸に把握している社員は少ないようだ。

 財務諸表の読み方は、それほど難しいものではない。

 それにもかかわらず、「私は営業一筋でやってきた。決算書は管理部門の社員が読めればいい」、
 「長い目で見なければ成果が出ない研究開発部門で、いちいちコストを気にしていたら仕事になら
 ない。財務諸表なんて関係ないよ」と、堂々と言ってのける社員もいる。

 これでは自社が赤字になっても危機感をもてず、社員の側から改善策が提案されることもないでしょう。

 もっとも、これはきちんと社員教育をしてこなかった会社にも問題がある。

 また、上場していない会社のなかには、財務状況を社員にまで隠す会社もあるという。

 これでは社員が危機感をもちたくても、もつことができない。

 会社は社員に財務諸表の読み方を基礎から教えて、財務状況を広く公開する必要がある。

 それにより社員は身をもって危機的状況を把握し、社内に赤字を解消しようという気運も生まれて
 くるのです。

□力強く利益を生み出す仕租み

 長い間、経営環境に恵まれ、お金の心配をする必要がなかった会社も、財務や収益の力が弱っていく
 可能性があります。

 例えば大企業が親会社で、利益がそれほど出ていなくても本社から資金が出ていたケース。

 子会社は親会社から資金援助があるので、他社に比べて経費は使えたほうだった。

 そのため社員の一部は、天からお金が降ってくる感覚で安易に経費を使っていた。

 社員は親会社から待遇を保障されており、どんなに業績が落ちても給与が下がりはしない。

 そのため利益を追求するという目的を忘れて、ただ現状の仕事をこなすだけという社員もいた。

 一人の社員が使う経費は全体から見れば散々たるものだし、一人の社員が手抜き仕事をしても売り
 上げが大きく落ち込みはしない。

 しかし、赤字につながる小さな行動を放っておくと、やがてはそれが習慣化し、赤字に陥るシス
 テムが組織全体に根づいてしまう。

 子会社が赤字になるプロセスは、われわれが生活習慣病になるプロセスとよく似ている。

 一般的に生活習慣病は、運動不足や偏った食生活から起こるといわれている。

 もちろん一日体を動かさなかったからといって突然動脈硬化になるわけではないし、一度の暴飲
 暴食で糖尿病になりもしない。

 ただ、「これくらいなら大丈夫だ」という小さな油断が、運動不足や偏った食生活を習慣化させて、
 やがては体全体を蝕んでいくのです。

 赤字もこれと同じ。「これくらい経費を使っても」「今月は売り上げ目標を達成できなくても」と
 いった甘えが積み重なると、徐々に収益力や財務力は低下し、やがて企業は赤字体質になっていく。

 たとえあなたの会社が現在黒字だったとしても、安心してはいけない。

 もし収益力や財務力低下の兆候が見られたら、それはいずれ習慣化し、赤字企業へと転落してしまう
 だろう。

 では、悪い習慣を断ち切って、健全な企業体力を身につけるにはどうすればよいのだろうか。

 具体策を紹介していきます。

□安易な安売り戦略は破滅を招く

 売り上げが順調に伸びず、なかなか利益が出ない。

 そんなとき、競合他社が値下げに踏み切った。

 いったい管理職のあなたはどんな手を打つべきだろうか。

 製品やサービスに優位牲があるなら、安易な安売りは絶対にしてはいけない。

 安売りや値引きは、赤字企業が手を出してはいけない禁断の果実である。

 たしかに状況によっては、安売りで売り上げが伸びる場合もある。

 しかし、利益率は確実に悪化する。

 よほどシェアを広げないかぎり、安売りで収益が上がることはないでしょう。

 では、シェアを広げるために、さらに値下げしたらどうなるか。

 おそらく競合他社もさらに値下げに踏み切るはずだ。

 価格競争は、崖に向かって車を走らせて、先にブレーキを踏んだ臆病者のほうが負けという度胸
 試しのチキンレースそのもの。

 一度価格競争に踏み込んだが最後、後には引けずに野放しで際限のない安売りが始まり、収益は
 上がるどころかどんどん悪化していくでしょう。

 もし価格競争に巻き込まれそうになったら、企業が取るぺき道はひとつ。

 低利益商品の売上比率を減らして、高利益商品に経営資源をシフトするべきです。

 いち早く価格競争に踏み込んだ会社を分析してみると、勝者なき安売り合戦に見切りをつけ、高利益
 商品にシフトしている会社が日立つ。

 過去には、例えば「ハンバーガー平日半額キャンペーン」といった低価格戦略を次々に打ち出し、
 ファストフード業界の価格競争をリードしてきた業界最大手のM社もそのひとつだった。

 M社は低価格戦略が功を奏して、一時は“一人勝ち”と言われるほど勢いがあった。

 しかし、他社の追随やBSE(牛海綿状脳症)問題で既存店の売り上げが落ち込み、収益率の低下を
 新規出店でカバーできなくなると、業績は急速に悪化してしまった。

 2002年(12月期)当時には、なんと29年ぶりに赤字に転落。

 現在は低価格戦略を軌道修正し、利幅の高い新メニュー投入で業績回復を遂げている。

 M社のようなスケールメリットのある大手でさえ、安売りで収益を上げることは難しく、経営戦略の
 転換を迫られていた。

 高利益商品へのシフトは、この不況下においても、むしろ時代の潮流だといえるでしょう。

 では、高利益商品がない会社はどうすればいいのだろうか。

 原則としては、高利益商品の開発を急ぐべきです。

 しかし、新製品の市場導入までに時間がかかり、それまで既存製品で勝負しなければいけないときは、
 ある程度の値下げもやむをえないかもしれない。

 問題は、チキンレースと化した価格競争のどこでブレーキを踏むか、である。

 通常、価格は次の3つの条件で決まる。

  ①競合他社に負けない価格

  ②最終消費者が値ごろ感をもてる価格

  ③製造コストに利益を乗せた価格

 価格を決定するときは、3つの条件をすべて満たすことが望ましい。

 しかし、他社に合わせて際限なく値引きしたり、低価格に慣れた消費者にインパクトを与えようと
 して無理な安売りに踏み切ったりすると、製造コストに利益を乗せた価格という最後の条件すら
 満たせなくなる可能性が高い。

 最後の条件を満たせない安売りは、絶対にすべきではない。

 たとえ高利益商品の市場導入までの一時しのぎだとしても、一度赤字に陥るシステムを受容して
 しまうと、それが習慣化して会社の根幹を蝕んでいくことはすでに述べたとおり。

 製造コストに利益を乗せられる価格が、価格競争における最終的なブレーキポイントなのです。

 それでは逆に最初の2つの条件を満たせなくなるのではないか、と心配する人もいるでしょう。

 では、3つの条件を同時に満たすにはどうすればいいのか。

 それは製造コストの削減である。

 市場価格を下げても、下げ幅に応じて製造コストを削減できれば利益率は変わらない。

 製造コスト削減に成功すれば、他社に負けず、消費者に受け入れてもらえる価格を実現できるのです。

 あなたの会社は、製造コストに手をつけないまま安売りに走ってはいないだろうか。

 他社や消費者に引きずられただけの安易な安売りは、あなたの会社を崖っぷちに追い込んでいく。

 価格設定の際は、このことをよく肝に銘じておこう。

                       
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経営体質強化

自社の価値を高める

■伝えなければビジネスは始まらない 

 1.売るための説明責任を果たす 

  海外の仕入れ担当者に、「日本の技術は一流だけれども、営業は三流だ」と言われている。

  実際、日本よりも技術力の低い国に競り負けているケースは枚挙にいとまがない。

  つまり、海外に売り負けているのです。

  外国人は、自分の疑問や主張をどんどん前面に出す。

  はっきりと言いたいことを言い、聞きたいことを聞いてくる。

  顧客に対しても、自社の優位性を猛アピールしているのです。

  日本人は、この点が弱い。

  顧客に価値を提供する際にも同じ弱さがある。

  伝える情報に工夫がなく、顧客が判断するために必要な自社の優位性を伝える情報を伝え
  切れず、競合他社に負けているケースが多い。

  ある飲食店の経営者が、次のような実験を行った。

  顧客に同じ料理を提供する。

  その際に、提供の仕方を変えて出したのです。

  一つは、何も言わないでスッと料理を提供したのに対し、もう一つは、「この野菜は北海道の
  ○○産で、バターも北海道の△△を使ってソテーしたものです」など素材や調理方法を説明
  して料理を提供した。

  果たして顧客は、どちらの料理を「おいしい」と判断したのだろうか?

  言うまでも無いが答えは、説明をされて提供された料理のほうです。

  それはなぜか?

  顧客は「説明を受けた料理」が「スッと出された料理」と違うものだと判断したからです。

  では、なぜ顧客は、同じ料理を違うものとして判断したのか?

  それは、顧客に価値ある情報を与えたからです。

  お客は「どちらがおいしいか」という選択を迫られたとき、「説明された情報」を受け取り、
  「味」ではなく「情報」によって選択を行ったのです。

  差別化は、常に「顧客の頭の中」で行われる。

  売る側には、提供する価値の「説明責任」がある。

  この説明責任を果たさなければ、差別化は行われない。

  価値ある情報を提供するからこそ、「勝ち」につながるのです。

 2.モノの値段は「価値」で決まる 

  「スマイルカーブ」が示すように、価格は川上・川下における付加価値の高さで決まる。

  モノの値段は、価値で決まるのです。

  米アップルのように、「企画・開発・デザイン」「ソリューション」を行っている企業は、
  高付加価値の商品・サービスが提供できます。

  高付加価値を提供できるからこそ、高価格が維持できているのです。

  モノの値段について、考え方をいくつか取り上げてみます。

  (1)モノづくりの値段=製造原価+利益

   基本は、製造原価に利益を乗せたものになる。

   顧客と直接取り引きが可能であるものの、下請け・孫請けなど、顧客との距離が遠くなると
   利益額は低下する。

  (2)企画・開発・デザインの値段=ブランド力

   ブランド力を培うことができれば、高価格を維持できる。

   ルイ・ヴィトンやポルシェなどは付加価値が高く、企業としての利益率も高い。

  (3)販売の値段=需給のバランス

   マーケットの需給バランスが大きく影響する。

   不足マーケットでは価格が上がり、供給過剰マーケットでは下がる。

   ある機械メーカーの商品は、日本では競合メーカーがあり300万円でしか売れなかった。

   しかし、アメリカでは供給するメーカーがなく、900万円で売れたという事例もある。

  (4)ソリューションの値段=問題解決力

   顧客に対する問題解決の大きさで、価格が決まる。 

   顧客が支払う価格が1億円でも、提供する価値が100億円であれば、1億円も高くない。

  (1)~(4)のように、モノの値段は「価値」で決まる。

  自社の商品・サービスの付加価値を高めていくために、自社はどのような戦略をとって価値を
  生み出していくか、スマイルカーブを参考にしっかり考える必要があります。

 3.戦略的に売る仕組みをつくる 

  中小企業A社は、非常に高い技術力を保有していた。

  しかし、持っている技術を売る力が弱い上、国内では競合他社がおり、値段も叩き合いになって
  いました。

  そこで、A社は自社の強み(技術力)を生かせるマーケットを、国内ではなく海外に見いだした。

  そして、A社の技術を提供する代わりに、弱みである営業力を補うために現地企業と提携し、
  不足機能を強化した。

  海外にA社と同様の製品をつくることができる企業が少なく、高付加価値の製品を少量生産し、
  利益を出す仕組みを構築したのです。

 4.「モノ」の視点から「コト」の視点への転換 

  従来の企業の価値提供と言えば、顧客に商品やサービス・技術そのものを提供するだけでした。

  現在もまだまだモノづくりに集中して、それによって顧客を満足させようとする発想から抜け
  出せていないケースが多い。

  しかし、これからの価値提供は、「生産したモノを通じて、どのようなコトができるのかを創造
  すること」が重要視されるようになってきている。

  行動や思考、思い出などのソフト面に価値を求めるように変化しているのです。

  この、「価値をつくり出すための商品提供」という視点が必要です。

  “モノ”を売るのではなく、“コト(価値)”を売ることに視点を転換させなければなりません。

□顧客が求める価値を提供せよ 

 1.顧客を置き去りにした競争からの脱皮

  日本製のテレビは間違いなく高品質・多機能・高性能です。

  しかし、儲かっていないのが実情です。

  これは家電に限ったことではなく、多くの業界で「高性能、多機能だけど低収益」、あるいは
  「高品質なのに低収益」という日本の商品・サービスをよく見かけます。

  つまり、高い性能や品質が「高収益」につながっていないのです。

  ここで言えることは、企業が提供している高性能・多機能・高品質に対して、顧客が価値を感じ
  ていないということです。

  「多くのお客さまの要望に応えよう」「ライバルにあって自社にない機能だから追加しよう」
  などの考えで、開発や機能の追加が行われていると考えられます。

  ここで起こる最悪のシナリオは同質化。

  “違っていること”をしているようで、同じコトを提供してしまうのです。

  顧客が望まない強みは、どれほど付け加えても差別化になり得ない。

  したがって、自社にはなく、ライバルが提供している価値であっても、顧客が望まないものは
  捨てることが大事です。

  やるべきことは、顧客が自社を選んでくれる理由を明確にし、それを磨くことなのです。

 2.顧客は課題をつかんでいない

  自社が顧客に提案を行った際のことを振り返ってみてほしい。

  顧客は「自社に何が必要なのか」、つまり、「自らの課題」に気付いていただろうか?

  顧客は多くの要望を口にするものの、それが本当のニーズかと言えば、そうではない。

  時には、その要望自体が間違っていることもある。

  「要望=ニーズ」ではないのです。

  だから、売る側としては、客観的に顧客を見つめ、「顧客が気付いていない問題にいち早く
  気付くこと」が必要です。

  それが、「差別化」と「高収益」につながってくる。

  このことに気付けない企業は永遠に「低収益」となるのです。

  ただ顧客の要望に応えるだけでは、満足も不満もないゼロの状態です。

  顧客の要望に100パーセント応えるだけでは、差別化にならない。

  「顧客の言う通りにした」、ただそれだけの話である。

  これでは、ライバルと同じ。

  顧客から見ると、どの企業も同じように要望に応えてくれているので、違いが分からず、
  「取引する(付き合う)のはどこでもよい」となる。

  もちろん、顧客の要望にすら応えられない企業に商機はない。

  大事なことは、顧客の要望(期待値)を超えていくこと。

  それによって、初めて差別化が始まるのです。

  期待値を超えるために必要なことは、「顧客の課題をつかむ」ことです。

  しかし、単に「御社(あなた)の課題は何ですか?」と聞いても、的確に課題をつかみ、明確に
  答えてくれる人は非常に少ない。

  また、誰もが顧客の話を聞いて、問題点に気付けるわけでもない。

  問題点に気付くためには、顧客が持っている「判断基準」を知っておかなければならない。

  そうでなければ、問題点を見出すことができないからです。

  さらに、顧客が問題だと思っている“部分”だけではなく、それを取り巻く全体を見る目が必要です。

  そして、要望に応えた後の「全体に及ぼす効果」を見せることがポイント。

  これができれば、顧客は「価格は高いけれど、あなたから買う」と言うでしょう。

  なぜなら、自社の「提供した価値」がライバルの提供価値を上回るからです。

  つまり、目先のメリットより将来のメリットが大きいと示すことが、最も効果的なのです。

  顧客は、現在取引していない企業から自社の課題に気付かされて初めて、現在の取引先よりも
  優れた企業の存在に気付くのです。

  顧客の言いなりにならず、顧客の課題を徹底的に考え抜き、「自社ならではの価値(強み)」
  を提供することは、売る側の責任である。

  また、こうした顧客の問題点に気付くことのできる社員を育成することが、企業体質を強くして
  いくのです。

 3.戦うポジションを価格から価値へ変えよ 

  顧客は、目的ごとに付き合う先を決めている。

  安く買いたいときはあの会社、難易度の高いものはこの会社などと使い分けているのです。

  顧客への価値提供の第一ボタンは、顧客における、自社のポジションをどうつくるかという
  ことになる。

  このポジションづくりが将来、大きな差別化につながるのです。

  もちろんここでは「この企業(人)は、高付加価値を提供してくれる」と認識してもらわなけ
  ればならない。

  つまり、「顧客が望み、競合相手が提供できない、自社が提供できる強み」を示すことです。

  そのためには、ファーストコンタクトで提供する情報が大事です。

  顧客のマインドの中に、自社をどう位置づけるかを考えて、ファーストコンタクトの情報提供に
  工夫を凝らすことが必要となるのです。

  このひと手間が、将来の高収益を生むのです。

  “楽な道”に成果は落ちていない。

□戦略的にメッセージを発信せよ 

 1.強みをメッセージ化せよ 

  リポートの初めに、「伝えなければビジネスは始まらない」と述べたが、顧客に伝えなければ
  ならないメッセージの本質は「自社の強み」です。

  メッセージは顧客に伝わって初めて顧客の行動につながる。

  差別化は、顧客の頭の中で行われている。

  したがって、メッセージで大切なことは「情報が顧客に伝わり、価値が上がること」です。

  発信するメッセージで、集まる顧客が変わる。

  安さを訴求するメッセージを発信すれば、安さを求める顧客が集まってくる。

  そのため付き合いたい顧客を選定し、メッセージを発信しなければ戦略と実行が乖離してしまう。

 2.同質化から脱却せよ

  多くの企業がメッセージを発信しています。

  しかし、現状では同質化が起こっているのです。

  どの企業もライバル企業を研究し、取り組んでいないことがあれば、すぐに取り入れているため。

  こうした「いたちごっこ」により、同質化が加速しているのです。

  例えば量販店では、チラシ合戦が行われ、ライバルよりも安く商品を提供しようと頻繁に値下げ
  を繰り返し、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)、すなわち毎日安いという発信を行って
  います。

  そうすると、ドラッグストアもホームセンターもEDLPをウリにしはじめた。

  差別化を行っているつもりが、同質化を加速させているのです。

  これでは顧客は店や商品の違いが分からず、安ければどこでもよいという状態になってしまう。

  顧客はこのような状態に慣れてしまい、顧客の判断基準が「安さ」になっているのが現状です。

 3.独自性のあるメッセージを出す

  顧客に情報を発信しなければ、情報は伝わらない。

  一方で、顧客は企業が発信する情報をいち早くキャッチし、自分の考えを発信している。

  FacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のクチコミにより、
  情報は放射線状に拡散する。

  1人の顧客が発信する情報の影響力は大きく、見ず知らずの人が発信した情報であっても参考に
  される。

  したがって、企業が顧客に対して提供する情報やベネフィット(顧客の利便性)を間違って発信
  してしまうと、誤った形で拡散する。

  SNSを駆使する顧客は、自社とライバルを比較し、最適な店(企業)はどこかを判断している
  のです。

  EDLPの中で特徴的なメッセージを発信しているのは、西友の『KY TIMES』です。

  同社はこれを「チラシを超えた情報誌」と位置づけており、単なる価格訴求型のチラシではなく、
  新聞のように読み物化している。

  季節に合った話題を取り上げ、特集記事が中心となっている。

  業界では月2~3回発行するところを月1回とし、チラシのコストが45%減となった。

  「KY」とは、以前に流行した「空気が読めない」の略語に引っ掛けたもので、「カカクヤスク」
  以外にも「クラシヤスク」「カッコイイ(を)ヤスク」などを意味している。

  読み物としての情報提供により、顧客の興味を引くことで他社と差別化できており、まさに
  「捨てられないチラシ」と言える。

  こうした事例のように、時代に合った情報提供が必要である。

  「顧客が受け入れるものは何か」「反応率が上がるメッセージは何か」を、ライバルとの同質化
  競争でなく、顧客中心で考えていかねばならないのです。

 4.提供する価値で勝負せよ 

  発信するメッセージで行うべきは非価格競争であり、「提供する価値」で勝負することです。

  中小企業B社は、安さを軸にした情報発信を行っていた。

  しかし年々、反応率が減少し、何千件とFAXを送っても、反応は数件にも満たない状況が
  続いていた。

  すでに記載した通り、顧客が安さに慣れてしまっていたためです。

  そこでB社は、「自社がどのような会社なのか」「商品・サービスに対する思い・考え方」を
  前面に打ち出す方法に転換しました。

  転換のきっかけは、顧客から電話がかかってきたこと。

  B社の営業担当者C氏は、安さのアピールだけでなく、自社の商品・サービスの考え方を独自に
  加えて情報発信していた。

  それを見た、一度も訪問したことのない顧客から、「いつも丁寧なご連絡ありがとうございます。
  担当者が変わりましたので、今後は○○にお願いします。今後ともよろしくお願いします」
  という電話がかかってきたのです。

  安さだけをアピールしていたFAXに対しては、「もうFAXを送らないでください」という
  電話しかかかってこなかった。

  だが、C氏が送ったFAXは、顧客に「ほかの会社とは違う。とても丁寧な会社だ」と好意的に
  評価されたのです。

  その後、この方法を全社で導入すると、顧客からの反応率は10倍以上に増加した。

  想像以上の成果でした。

  顧客は、「企業の顧客に対する姿勢」「商品・サービスに対する考え方」に反応する。

  これは、リーマン・ショックや東日本大震災など、顧客の価値観を変える出来事の影響が大きいと
  考えられる。

 5.メッセージは戦略的に発信せよ 

  企業は、顧客に対するメッセージを戦略的に発信しなければならない。

  世の中の変化や顧客の変化をつかみ、「今、顧客は何を求めているのか」ということを常に考え
  なければならない。

  過去の成功は、未来の成功を保証しません。

  過去の成功を現在の顧客が求めていないのであれば、捨てる決断が必要である。

  また、情報発信がコマーシャルベースであれば、テレビや新聞にも取り上げられない。

  「企業の存在価値」「提供する価値」を発信する必要があるのです。

  マスメディアからの取材は、無料の広告として絶大なパワーを持っている。

  戦略的なメッセージの発信が、企業の明暗を分けると言っても過言ではない。

  今すぐ同質化競争から脱却し、非価格競争を展開するべきです。

  ポイントは次の5点。

  (1)自社の強みを理解してくれる顧客の選定

  (2)顧客に認められた「自社の強み」を軸にする

  (3)非価格を軸にした独自性のあるメッセージ

  (4)企業の存在価値、提供する価値を中心に据える

  (5)雑誌・新聞・テレビが取り上げたくなるメッセージ

  顧客にメッセージを発信しない企業は、顧客から選ばれることはないのだ。

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経営体質強化

信頼される会社づくり

■社長にとって自社の評価は

 社長にとって、金融機関や取引先など社外の人の自社に対する評価はとても気になるものです。

 社外の人が下す自社の評価の高低はビジネスに少なからぬ影響を与えます。

 分かりやすい例の一つは金融機関からの借り入れでしょう。

 借り入れの際は「元本・金利・期間・返済方法」などの条件が決められますが、これらは自社
 (経営者の人柄などを含む)が定量・定性の両面からを総合的に評価された結果です。

 これによって同じ金額を同じ期間借り入れる場合でも、評価の高い企業ほど金利が低くなります。

 企業にとって支払利息(金利)はコストにほかならないため、経営者はできるだけ低い金利で
 借り入れを実現したいものです。

 仮に、金融機関との交渉によってよい条件で借り入れができれば喜ばしいことです。

 この先もそれ以上の条件を勝ち取れるように、さらなる成長を目指しましょう。反対に、借り入れ
 条件が想定よりも悪かった場合は、「業績が悪かったから……」と漠然と結論付けるのではなく、
 「売上・利益・キャッシュの算出根拠が甘かったのではないか?」「プレゼンテーションに失敗して、
 社長の気迫と情熱がきちんと伝わらなかったのではないか?」などを考えてみる必要があります。

 社長は、社外の人が自社のどこに注目し、どのように評価しているのかを知り、評価を高めて
 いかなければなりません。

 金融機関や取引先など、相手の立場によって評価のポイントは異なりますが、ここでは一般的な
 ポイントを紹介していきます。

□経営・収支計画書に具体性はあるか?

 経営・収支計画書(以下「計画書」)は社外の人が大いに注目するものであり、特に数字には
 「具体性」が求められます。

 例えば、今期の売上予測を、

  成長戦略の追い風にのって、対前年度比3 0 %増の見込み

 といった ように曖昧に記述している場合は見直しが求められるでしょう。

 売上が対前年度比3 0 %増になる根拠を「成長戦略」という一言で表現していますが、これでは
 売上増につながる具体的な要因が分からないので、社外の人はその内容を信用してくれません。

 この場合、成長戦略が具体的にどのような追い風になっているのかを示す必要があります。

 数字には必ず根拠があります。

 その根拠を明確に示すことで信頼性が高まります。

 売上が対前年度比3 0 %増になる根拠が単に「新規の受注先の獲得」とだけでは信頼性に繋がり
 ません。

 件数や金額についても必要に応じて記述するようにします。

 なお、予測はあくまでも予測であるため、流動的にならざるを得ません。

 この点については、販売価格下落や原価高騰などマイナス要因が発生する可能性を安易に排除せず、
 「販売価格は低めに、原材料価格は高めに」といったように、保守的に作成することが基本です。

 とはいえ、数字の見せ方には工夫します。

 真実の数字を記述しますが、「絶対額で示すか、比率で示すか」「前年度対比で示すか、計画比で
 示すか」「売上を強調するか、利益を強調するか」などに気を配ると、計画書の迫力が違ってきます。

 最後に、ありがちなパターンとして売上は伸びているのに売上原価や販売費及び一般管理費
 (以下「販管費」)は変化しないといった計画書を見かけますが、これは問題です。

 通常、売上の伸びに応じて売上原価や販管費も相応に増えていくため、この点も明確にしなければ
 なりません。

 ただし、売上高と同様に見せ方を工夫します。

 売上原価や販管費が伸びている理由が、将来への投資なのか、現状維持のためなのか、計画外で
 導入を余儀なくされた設備なのかによって、社外の人に与える印象が大きく違ってくるからです。

□各種指標の数値は良好か?

 社長であれば、キャッシュフローの重要性は理解していることでしょう。

 これは社外の人にとっても同様です。

 計画書などをはじめ、社外の人はさまざまな資料を見て自社を評価していますが、営業キャッシュ
 フローは特に注目される指標です。

 企業の成長ステージや経営者の考え方によって方針(投資するかためるか)は変わるものですが、
 少なくとも「営業キャッシュフロー」はプラスを維持しなければならないでしょう(創業間もない
 企業などの場合は別です)。

 仮に、営業キャッシュフローがマイナスになっている場合は、その理由と今後の状況について
 きちんと説明できなければなりません。

 特に金融機関との関係構築は社長の重要な仕事の一つです。

 難しい専門用語などを使う必要はありませんが、「事実をきちんと説明する責任」が社長にはあり
 ますし、そうした真摯な姿勢は少なからず評価されるでしょう。

 営業キャッシュフローと同様に、正味資産も重要な指標です。

 正味資産とは、総資産から不良債権・在庫、償却不足や仮払金などを控除し、保有資産の時価と
 簿価の差額を加減した数字です。

 つまり、真水でどれだけの資産があるかを示したものであり、これが大きければ、一時的な経営
 悪化は乗り越えられる可能性が高くなります。

 社外の人は自社の簿価ばかり見ているわけではなく、正味資産などから本当の力を探っています。

 社長は自社の正味資産を把握し、その内容についてきちんと説明できるようにしておかなければ
 なりません。

□取引先の状況を管理しているか?

 社外の人の自社に対する評価を高めようとする場合、自社の内部だけではなく、取引先など社外
 にも目を向けてみましょう。

 例えば、取引先は大切なパートナーですが、その経営状況に注意しておかないと、取引先に万一の
 ことが起きた際、自社にも影響が及びます。

 「急に取引先が破綻し、売掛金を回収できなくなった」などのことがないように、日々の活動に
 おいて「取引先チェックシート」(仮称)を用いて取引先の経営状況を把握しておく必要が
 あります。

 そうすることで、取引先の経営状況がある程度把握できることに加え、気付かないうちに反社会的
 勢力と取引してしまうリスクも低減できるでしょう。

 取引先管理では相手の決算情報を把握することが基本です。

 これについてはI R 情報や四季報、各種企業情報データベースはもちろん、同業他社に業況を尋ねる
 などして、取引先の状況に関する情報を把握するとよいでしょう。

 金融機関の経営サポートサービスに調査サービスがある場合は、これを利用するのも一策です。

 また、日々の経営においては「取引金額の推移」に着目しましょう。

 特段の理由がないにもかかわらず取引金額が大きく増減していたり、入金・支払いサイトが変更
 されていたりしないでしょうか。

 もしそうならば、取引先に何か変化があったサインかもしれないので、きちんと確認する必要が
 あります。

 例えば、入金・支払いサイトに変更があったときであれば、取引先で焦げ付きや資金繰り上の
 問題が発生している可能性があるので注意が必要です。

 自社がこのように取引先管理をしていることを、必要に応じて社外の人に説明するようにしま
 しょう。

 社外の人は、自社のみならず関係する取引先なども含めて総合的に自社を評価しているもの
 だからです。

□金融機関と良好な関係を構築・維持しているか?

 取引金融機関と良好な関係を築くためには、「経営が安定しているときも、不安定なときも、
 経営陣や経理担当者が取引金融機関に出向き、業況についてきちんと説明する」ことが基本です。

 また、金融機関の担当者が定期的に訪問してくれるならば、資金繰りや計画書に関する
 アドバイスを求めるようにするとよいでしょう。

 その際、金融機関から明確な答えを得ることよりも、担当者とコミュニケーションを図ると同時に、
 自社の状況を理解してもらうことが大切です。

 このようにコミュニケーションを深めつつ、情報開示を行うことはいざというときに効果を発揮
 します。

 資金繰りが苦しくなる見通しが生じても、それまで適宜伝えた情報を踏まえ、金融機関と対策を
 考えることができるからです。

 なお、取引の規模にもよりますが、社長や従業員による個人名義取引も意外と重要です。

 定期預金や住宅ローン取引などがあれば、企業として借入金利引き下げなどを申し込んだ場合に、
 金融機関側は総合的に採算性を検討することもあるので、こうした点についても意識しておくと
 よいでしょう。

□経営者に求められる役割

 ここまで、計画書の内容や取引先の管理などについて紹介してきましたが、社長自身も評価の
 対象になっていることを忘れてはなりません。

 社外の人から信頼されるために、社長は次のことに注意しましょう。

 1.主要な数字は暗記する

  社長が売上や利益、業界でのシェアなど主要な数字を暗記しているのは当然であり、加えて
  経営幹部にもそうした数字を暗記するように指導しなければなりません。

  社外の人からしてみると、売上や利益などは「知っていて当たり前の数字」です。

  自社の売上高を把握していない社長が信頼されないのは明白ですが、これと同じことが他の
  取締役やある程度の役職の社員にもいえます。

  副社長、専務、常務などの取締役は当然のこと、執行役員、事業本部長、部長、課長クラスの
  社員が売上などを把握していないと、社外の人は「社長がワンマンで情報が開示されていない
  のではないか」「経営状況が悪く、数字を公表できないのではないか」「そもそも、この会社の
  取締役や執行役員は大丈夫か?」と不安になります。

  ある上場企業の経営者は、売上目標を語呂合わせで覚えやすいフレーズにして、合同朝礼で
  全社員に伝えています。

  こうした取り組みを通じて、「○億円」という明確な目標を共有していく努力が経営者には求め
  られます。

 2.金融機関や取引先への業況説明に際しての留意点

  金融機関や取引先へ業況に関する説明をする際に、特に注意が必要なのは、過去2年にわたって
  業績が優れないときです。

  金融機関や取引先は、相手の業績を評価する際には3 年程度の財務諸表を基にするのが一般的です。

  そのため、それ以前の業績が良好であったり(第1 期~第3 期)、次の期が増収計画(第6 期)
  であっても、厳しい評価を受けることがあります。

  社長の重要な仕事は、第6 期のために借り入れの継続や増額を実現することであり、その条件は
  高いに越したことはありません。

  ここで紹介してきた信頼性のある計画書の提出はもちろんのこと、日ごろからの金融機関との
  コミュニケーションの度合いが試さ
れるといえるでしょう。

  なお、業績が悪化している場合は、将来の増収計画だけではなく、業績悪化の原因を正しく分析
  ・把握し、それに対する有効な対策を検討・実施している点も明確に伝える
ことが大切です。

 3.数字と情熱のバランス

  社外の人の評価を高める上で社長がまず実践すべきことは、経営の状況を把握することです。

  社長は常にビジネスの先を読んで決断していかなければなりません。

  どのような未来をイメージするかは、日ごろの情報収集と経営者のセンスによって決まります。

  社長の言動には常に根拠が求められます。

  その根拠は、情報活動から導き出された明快なものであればあるほど好ましいのですが、経営の
  すべてが数字で表せるわけでは
ありません。

  どんなに調べても考えても、不確定な要素はゼロになりません。

  それでも前に進み続けるのは社長に情熱があるからであり、これが組織のエンジンになってい
  のです。

  社外の人は社長のそうした情熱にも注目しています。

  根拠ある数字と経営者の熱い言葉がセットになったとき、自社の信頼性は高まるといえるでしょう。

                         
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経営体質強化

小さな会社経営のバロメーター

■自社独自の経営のバロメーター(モノサシ)をもつ

 小さな会社の最良の経営のモノサシは「1人当たりの労働生産性」です。

 会社の経営をしばらく続けていると、「自分なりの経営のモノサシ」をもっているつもりだった
 のが、いつの間にか曖昧になってしまっているものでです。

 つまり、ついカッコ良く見せようとしてしまって、自分の会社の足場を見失ってしまうのです。

 では、世にいう「カッコイイ」一般的な経営のモノサシとは何か、以下に列挙してみます。

  1.売上高が多い

  2.資本金が多い

  3.社員の人数が多い

  4.社屋や設備が大きい

  5.営業所の数がたくさんある

  6.販売地区が広い

 これらのいずれの数値も、表面的な拡大志向につながるカッコのよい要素を多く含んだものです。

 しかし小さな会社に関しては、このような数値目標を「経営のモノサシ」と考えていては、経営は
 やっていかれなくなる。

 なぜなら、これらの数値は、前年度対比何%増という拡大志向型の「経営のモノサシ」だからです。

 では、小さな会社は、いったい何を「経営のモノサシ」にすればいいのでしょうか。

 会社がおかしくなる場合にはいくつかの要因があるが、そのうち最も大きい要素は、働いている
 人員の生産性が悪化した時です。

 つまり一番問題になるのは、何人の人員で総粗利額を稼いだかということなのです。

 この総粗利額が、会社の総人件費と比較して所定の「労働分配率」より悪化している場合は、経営は
 ジリ貧に悪化して、倒産という図式となるのです。

 さらに、経営の重要な「モノサシ」となるのは、企業に従事している人間が、1人当たり何十万円
 稼いでいるかということなのです。

 これが、「労働生産性というモノサシ」です。

 「労働生産性」は、次の3つの数字がわかれば計算ができます。

  A 自分の会社の月間売上高

  B 会社の業種の平均粗利益率

  C 自分の会社の総社員数
   (正社員とパート、アルバイトを区別する必要がある)

 以上の3つを、(A×B)÷Cの式で算出して、労働生産性の概略基準値に照合すれば、儲かって
 いるかどうかがすぐにわかります。

 これからの経営は、この「労働生産性」を「経営のモノサシ」とせねば、企業の生き残りは困難な
 時代です。

 労働生産性の具体的な出し方は?

   労働生産性粗利益額 (月間)/従業員数

 上記の数値の粗利益額は(売上高-仕入高)と考え、従業員数についてはパート、または
 アルバ イトの場合に限り、2名を1名と計算して下さい。

 この労働生産性の数値の「よし、 わるし」の概略基準値は次の通りです。

  優 ―― 100万円以上 ―― 儲かるライン

  良 ―― 81~99万円以上 ―― 正常ライン

  可 ―― 61~80万円以上 ―― 経営ボーダーライン

  不可 ―― 60万円以下 ―― 問題ライン

 「20人、12億円」と「80人、48億円」

 ここでひとつの例として「労働生産性」をモノサシにして、2つの卸問屋の優劣を比較して
 みましょう。

 A社は、年商12億円、社員数20人の会社です。

 一方のB社は年商48億円、社員数80人、世間一般でいえば中堅企業といわれる会社です。

 あなたはA社とB社、どちらの会社がよい会社か、儲かっている会社だと思いますか?

 おそらく、年商48億円のB社のほうが儲かっていると答える方が多いでしょう。

 しかし内情は、ハッキリいって12億円を売るA社が優良なのです。

 つまり、1カ月に、社員1人当たりどれだけの粗利額を稼いだか?――これが重要なのです。

 次の表は、この2つの会社の労働生産性を比較したもの。

 こうして表をつくって計算してみれば、A社のほうが中身の優れた会社であることは、一目瞭然
 です。

 表の通りの簡単な計算ですぐに結論は出てきます。

 A社の1人当たり労働生産性は85万円、B社は75万円だった。

 多くの人数をつかって、多くの売上高を上げることを考えるより、1人当たりの粗利額を、月間
 80万円以上になる経営をする。

 できれば100万円以上を目標にする。

 小さな会社はこれが、質の高い経営をするためのモノサシであると考えなければならない。

□売上げ志向から、粗利志向の経営へ

 「売上げ志向」には落とし穴があります。

 「労働生産性」という経営のモノサシを使えば、「売上高アップ志向の経営」から脱却でき、
 「粗利額獲得志向」の経営ができるはずです。

 さらによいのは、このモノサシを使えば社員数を「定数化」できることだが、それは後で述べる
 こととします。

 ここで誤解してはいけないのは、もちろん「売上高をアップさせること」が悪いわけではない
 ということ。

 売上高は、当然アップしたほうがよいに決まっている。

 しかし、この場合は「落とし穴」に落ちないという条件が必要です。

 では、「落とし穴」とは何だろうか。

 次の表を見てもらいたい。

 20人で月に1億円の売上げを上げている会社が、従業員を21人に増やし、月商を1億1000万円に
 拡大した場合のシミュレーションです。

 現在の売上高を10%アップさせるために、人員を5%増員して合計21名となった。

 しかし、ムリな販売を行うため、粗利率はそれまでの16%というわけにはいかず、およそ2%
 ダウンの14%ほどになった。

 あくまでも想定の数字だが、小さな会社が売上げ拡大をめざそうとすると、こうした形になって
 しまうケースが非常に多いのです。

 したがってこの場合は、一番重要な労働生産性は80万円であったのに、73万円にダウンしてしまう。

 確かに売上高は10%アップの1億1000万円になったが、人員が増加し、また押込み販売が強化
 されるので粗利率は低下して、社員1名当たりの労働生産性が落ち込んでしまったのです。

 しかも、目標額を達成するために、交通費等の経費もアップしているので、踏んだり蹴ったりと
 いうことになる。

 これでは何のための売上げアップかわからなくなる。

 苦労をするだけで、儲からない。

 こんな状態を続けると、今のこの時代では、生き残りができなくなることは明白です。

 メンツと見栄があるから、売上げにこだわるのです。

 粗利額だけでなく、粗利率も重要です。

 例えば、ある会社の社長が、年商5億円を目標にしようと考えたとする。

 年商5億円なら月間売上目標は約4200万円になり、その場合の粗利率は14%(粗利額は月額583万円)
 だとします。

 しかしここで、その社長は、月間売上目標を3800万円(年商約4億5000万円)の10%ダウンとし、
 粗利額が583万円で同じであれば、粗利率は15.3%に上がることに気づいたとする。

 さて、この場合はどちらを選択すべきなのだろうか?

 答は、間違いなく、月間売上目標を3800万円にすることです。なぜか?

 5億円の年商目標額を10%ダウンさせて4億5000万円にし、粗利益率を14%から15.3%に上げる
 ほうが、人員や経費なども少なくてすむので、会社経営としてはベターなのである(ただし
 この場合は、従来の営業戦略とは違った方法をとらなければならない)。

 ところが不思議なことに、世の中のほとんどの社長は、年商5億円を目標とするほうを選ぶ。

 4億5000万円の売上げを目標にしたほうがいいのに、実行できないのです。

 なぜできないかといえば、銀行や仕入先などへの「メンツ」と「ミエ」にこだわるから。

 「うちも、5億を超えましてね」と、言ってみたいのです。

 「年商5億」のメンツにがんじがらめになって、正しい選択ができないのです。

 経営は、利益を出すことが第一である。

 メンツでは、メシは食えない。

 経営の目的は売上規模を拡大することではなく、利益を出すことなのです。

 この点を、よくよく理解しなければならない。

 だから小さな会社の社長は、まず何よりも見栄とメンツを捨てなければならないのです。

 「労多くして、益少なし」の世界から脱却するのです。

 こんなことにならないためにも、「経営のモノサシ」を変えなくてはダメです。

 つまり、労働生産性が少しでもアップする売上向上戦略ならば大いに結構ですが、売上高が
 上がっても労働生産性が下がるような「策」ならば、やめたほうが得策だということです。

 現在の労働生産性が70万円なら、それを80万円、90万円にアップさせる方法を考えよう。

 売上げをアップさせても労働生産性が下がるようなら、その売上げアップ策は、即刻中止です。

 「労多くして、益少なし」とは、このことなのです。

 会社経営をしていると、表面的な格好のよさを気にしすぎて、本質的なこと――つまり何名の
 人員で、どれだけの粗利額を稼いだかを忘れがちです。

 この点を、初心に戻って、大いに反省しなければならない。

 では、「労働生産性のモノサシ」をもったとして、そのモノサシで経営を成功に導くには、何を
 したらいいかを考えてみましょう。

 まず一番に、「企業は人の『数』ではなく、人の『質』である」ということを、しっかり認識する。

 「人の数」から「人の質」へと発想を転換して、社内の人員を「マルチ人間化」し、何でもできる
 人材(財)に仕立て上げるのです。

 その一方で、ワンパターンの作業などは、「他人の会社の機能」を活用して、他社にやってもらう
 ことを考える。

 例えば、配送業務等はルート化して運送会社にやってもらうとか、保管業務は営業倉庫にまかせる
 など、社外の機能を利用することを考えるのです。

 さらに経理事務などは、パートさんに記帳だけしてもらい、あとはプロの税理士に月1、2回来て
 もらってパソコン処理してもらえば、仮に経理の人が辞めた場合でも事務機能に支障を来す
 ことはない。

 要は、何でもかんでも自社内でやろうとせず、いろいろな工夫をしなければならないということです。

 外注を増やすとコスト高になると思い込んでいるトップがいるが、その考えは間違いであることに
 ついては、次の項で説明する。

 つまり、社内の人員は日常の作業集団でなく、粗利額獲得集団化すべきなのです。

 「労働生産性のモノサシ」をもつことで、こうした生産性向上のための最も有効な方策がいろいろと
 みえてくる。

 このモノサシで社内体制を見直せば、かなりの効果が生じてくるでしょう。

 単なる大きさ、多さとは違った「経営のモノサシ」を使って、企業の生き残り戦略をつくろう。

□売上げが増えても人を増やさない発想を堅持

 社員が増加しないシステムをつくろう。

 「売上げが増えても、人を増やさずにすますことができるなら、儲かるに決まっているではないか」
 ほとんどの社長は、こう言うだろう。

 確かにほとんどの場合、売上げや作業が多くなると、それに合わせて社員数も増えていくもの。

 しかし冷静に考えれば、これもまたトップの性格に起因している現象なのです。

 今の時代の経営の「モノサシ」が、売上高や資本金、そして社員数や営業所の数を多くすることに
 あるため、トップの姿勢がどうしても拡大の方向に向きがちなのです。

 しかも売上げがジリ貧状態にある時ほど、永続性のある売上げかどうか確認もせずに営業員を
 増員して、売上げをアップしようとする傾向が強いのです。

 しかし、当たり前のことだが、「売上げが増えても人員が増加しない」のが、一番いいのです。

 大事な「労働生産性」の数値をアップするには、売上高や粗利益率を増やすより、人員を減少
 させたほうが手っとり早いことからもそれはわかる。

 人を増やさないようにするためには、次の3つの経営哲学をもたなければならない。

 第1に、社長自身は何名の社員を使うか? また自分が「何人の社員を使いこなせるか」を心に
 決めることです。

 つまり、社員を定数に限定するのです。

 第2に、社内の作業が増えて、こなせない状態になった時、どの作業を外部に委託することが
 できるかを考えること。

 社内の作業量がオーバーした場合、すぐに社員を増やすことを考えてはいけない。

 まず現在の社内で消化できるかどうか工夫し、次に外部への委託を考えてから、社員を新しく
 入れることを考えなければならない。

 第3に、トップ自身が「自社の売りモノは何か?」を、いつも必ず箇条書きできるように、
 はっきりさせていなければならないということです。

 以下に、これら3つの基本的な考え方について、細かく説明していきます。

  ◎社員を定数化しよう

   団体スポーツは、プレーをするメンバーの数が決まっている。

   例えば野球は9名だし、サッカーは11名、バレーボールは6名というように、定数で
   試合をするということは誰でも知っている。

   競うのは、その定数の人員の「考動」と技術である。

   「弱いチームだから、相手より多い人数で試合をする」などということはありえない。

   プロ野球の巨人は強いから6名で、こちらは草野球だから20名で行うようなことはないし、
   これではゲームそのものがつまらなくなる。

   もっとも仮説であるが、仮に巨人軍と草野球チームとが6人対20人で試合をしたとしても、
   巨人の6人のチームが勝つ可能性はほぼ100%になるはず。

   これはなぜか?「質」が違うからである。

   これと同じく、われわれの会社も、人の「質」が重要であるとわかってはいるが、なかなか
   その質が向上しないのは、社内の人員を定数化していないからです。

   質を高めようとするなら、定員からオーバーフローした不要な人員は切る、ぐらいの考え方が
   必要なのです。

  ◎他社機能の有効活用

   これは一口でいえば、「社内の繰り返し単純作業を外部委託に切り換えよう」ということです。

   自社内の作業を他社にやってもらう例として、一番典型的なのが経理などの事務作業を
   税理士事務所にまかせることでしょう。

   営業活動でも、サンプル配布なら宅配便を使ってあとは電話で交渉するとか、顧客への
   連絡事項などは定期的な郵便で行うなど、やる気と工夫でいろいろなことができる。

   もちろん他社の機能を使うには、それまで自社がやっていた仕事を廃止したり、作業の
   仕組みをつくりかえたりする必要がある。

   ただ問題は、仕事を外部に委託すれば、その会社には当然20%程度の利益をとられるから、
   高くなる感じがすること。

   これが「割高感」というものである。

   しかしこれがクセもので、この「割高感」が、たいていのトップが社内の作業をなかなか
   外部に依託しようとしない原因となっている。

   しかし小さな会社の場合はとくに、次のように考えれば、スムーズに外部委託への切り換え
   ができるようになるはず。

   他社機能を有効に活用する際には、「割高感」をどう考えるかが問題になるが、ここでよく
   考えてみる必要がある。

   たいていのトップは総合的に考慮せず、単純に、外部委託する作業の原価計算をするから、
   どうしても「割高」に感じてしまうのです。

   仮に自社で人を雇ってそういう作業をすれば、その人たちには仕事がなくても、または少しの
   作業量しかなくても、固定的な経費(主に人件費と償却費)が発生してくる。

   その作業のために、一定の人員を常においておかなければならない不経済な状態が、経営の
   中ではよく発生しているのが現実なのです。

   このように、人を雇った場合に社内に発生する固定経費と、他社にやってもらう場合に
   発生する「割高感」とのバランスが、他社機能の利用を促進できるかどうかの岐路という
   ことになる。

   そして現実には、このバランスが同じくらいか、また他社のものを活用すると多少高く
   感じる程度であれば、できるだけ他社に委託してしまったほうがいい。

   そのほうが会社は身軽になり、儲かる方向に進行するはずである。

   つまり、固定的な人の数が減少するから「1人当たりの労働生産性」はアップして、経営は
   よくなるわけです。

  ◎自社の「売りモノ」は何か、はっきり明言する

   自社の「売りモノ」がハッキリしているなら、その「売りモノ」に全力投球しなければ
   ならない。

   つまり「売りモノ」でない作業に人員を投入したり、時間を使わないことが肝心なのです。

   しかし会社には、自社の「売りモノ」でない作業も当然発生してくる。

   会社というものには、サービスを低下させないために付随した業務活動があって、どうしても
   その業務をやらなければならないことが多いのです。

   ただその場合でも、それが自社で行う作業か、または外部にやってもらうべき作業なのか?
   まず区別して考えなければならない。

   そうしなければ、売上げが増加すればするほど人員が増え、労働生産性が落ちて、儲からない
   会社になってしまうことは明白です。

   これらが、「売上げが増加しても、社員数を増やさない」コツです。

   くどいようだが、小さな会社が社員数を増やさずに儲かる体質をつくるには、次の3点を
   しっかり押さえることが肝心なのです。

   第1に、自社の「売りモノ」は何かを、はっきりさせているか?

   第2に、自社の「売りモノ」に直接かかわりのない繰り返し作業を他社に委託できているか?

   第3に、自社の社員を「マルチ人間化」したうえで、専門的な業務活動の面で同業他社の
       社員より「質的なレベルアップ」をはかる指導をしているか?

   この3項目を実施すれば、社員数の増加は防止できるはずです。

   ただここで肝心なのは、以上の考え方がよいと感じ、実践してみたいと思った場合には、
   即断実行する「実行力」をもつこと。

   当初から「できない理由」を考えては、できることもできなくなってしまうからです。

  ◎人にかかるコスト

   小さな会社の場合は、けっこう人の出入りが多いものです。

   大企業ならば「寄らば大樹の陰」で、いったん入社した社員はたいてい定年まで勤めようと
   するが、小さな会社では、せっかく人を採用しても簡単にやめてしまう。

   ここが問題なのです。

   会社経営において、人のコストが一番高くつく。

   人のコストは「入社させるコスト」、「在職中のコスト」、「退職させるコスト」と3つに分けれ

   ば、よくわかるはずです。

   過去に自社をやめた人の「やめた理由」を一覧表にすることをお勧めします。

   採用時にその一覧表をもとに、会社の状態を説明することで採用時に人材の選別ができます。

  ◎「労働生産性」と「労働分配率」

   小さな会社の経営で、一番重要視すべきは経営の収益基準である「労働生産性」と「労働分配率」
   です。

   たいていの中小企業は、粗利のうち約50%前後を労働分配率が占めており、労働生産性も1名
   当たり60万円前後のレベルにあります。

   これらの労働生産性や労働分配率の数値が、標準より時は大体、売上規模と比較して、人員過多の
   ケースが多い。

   トップを含め、すべての社員が「総粗利の中に占める自分たちの総人件費は約50%」であると
   いうことを、知らしめ、認識させることです。

   小さな会社は、社員1人ひとりが複数の業務を兼務できる「多機能型人材」が欠かせません。

   そのためには、業務分担表の作成に始まり、業務の標準化、マニュアル化が必須です。

  ◎営業開発

   小さな会社は「売りに弱い」ということがいえます。

   ほとんどの会社は「商品開発」については力を入れるが、「営業開発」はやっていないのです。 

   「何を売るか」より「誰にどう売るか」を考えてみましょう。

   どんなにすばらしい知識があっても、行動を起こしチェンジしようとしない限り、何も変わらない
   のです。 

   アインシュタインの言葉を借りるなら「同じ事をやっていて違う結果を求めるのは狂人だけだ」
   です。

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経営体質強化

顧客はいなくなる

■顧客はいなくなる

 1.「顧客減少時代」であることを認識しよう 

  環境の変化は、顧客の需要や要求、要望を変化・減退させる。仮に毎年20%の顧客が減少するとどう
  なるのか?

  計算すると、3年後には約5割しか残らない。

  100×80%(1年目)×80%(2年目)×80%(3年目)=51.2%

  また、日本の企業数は1990年に520万社あったが、2021年には約367万社と20年間で
  153万社の企業が減少しています。

  さらに日本の人口も、04年をピークに減少している。

  つまり、一般消費者も法人も減少傾向にあるのです。

  このような顧客減少時代のなかで、成長するためには「顧客をつくること」が企業の永続性を高める
  ために必要なことです。


 2.顧客をつくれない企業の三つの共通点

  顧客をつくることのできない企業には三つの共通点があります。

  顧客をつくる準備として、自社がその症状に陥っていないかチェックしてほしい。

  
(1)顧客ニーズの多様化に対応していると思い込んでいる

   食品メーカーA社では、バイヤーの言いなりに「欲しい」と言われた商品を数多く開発して
   いました。

   その結果、同社のアイテム数は企業規模から考えるとあまりに多かったのです。

   特定企業に特化したため、ほかの買い手もおらず、販売終了の商品も多数発生していました。

   揚げ句の果てに、希望通りつくった商品を購入してもらえず、バイヤーが同等の商品を他社から購入
   する始末でした。

   製造も販売も報われぬ努力をしていたことになります。

   使用しない資材が大量に発生し、販売不振に陥り、経営状態が悪化しました。

   これは、顧客の言いなりになることが、多様化に対応することだと誤解した例です。

   業績不振の販売会社に行くと「顧客ニーズが多様化しており、このままでは売れない」という言葉を
   よく聞きます。

   もちろんニーズは多様化しているでしょう。

   しかし、顧客はあなたの会社にどれだけの多様化を求めているでしょうか。

  
(2)総合的に対応していると思い込んでいる

   今一度、自社の主要顧客を訪問していただきたい。

   そこで、「自社の主要商品を主力顧客がどれだけ知っているか」を確認してほしいのです。

   自社が思っている以上に、顧客は自社の主要商品を知らないことに気付かされるでしょう。

   メーカーB社は自社の主力顧客のインストアシェアを調べたことがありました。

   営業担当者は、「あの主力顧客には、もう目いっぱい売っている」と言っていました。

   しかし、調査の結果は自社商品のシェアが15%で、残りの85%は他社からの購入でした。

   85%の中にB社で対応できるものが多くあるにもかかわらず、顧客はそのことを知らないため、
   他社から購入していたのです。

   顧客は、理由があって商品を購入しているのです。

   あなたが顧客から求められているのは、問題解決するための「道具」ではなく、問題解決をする
   ための
「道筋」なのです。

   つまり、顧客の課題を取りまとめて解決する能力が求められているのです。

   道具だけでは、顧客はあなたを選びません。

  
(3)営業力のみに「顧客づくり」を求めている

   営業力で顧客をつくることは有効であるため、否定はしません。

   しかし、「営業力“のみ”で顧客をつくる」ことは間違いです。

   全社的な取り組みが必要だからです。

   その間違いは、次の3点から断言できます。

    ①よく話す」ことと「売れる」ことは違う

     「顧客が欲しいものは何か」「なぜそれを求めているのか」を聞くことが必要です

     営業が製品のよさを「話す」から売れるのでなく、顧客からニーズを「聞く」から売れる
     のです。

     饒舌(じょうぜつ)は開拓を生まない。

     顧客の要望(ニーズ)を聞くことは、営業社員以外でもできることです。

    
②営業は短期決戦である

     営業は短期成果を求められるので、「売れる顧客に売る」習性があります。

     しかし、企業の永続性を高めるために必要な顧客は、自社と長く深く付き合ってくれる顧客
     です

     営業社員に、短期的な決戦と中長期的な「顧客づくり」を求めても軸足がぶれ、失敗してしまう
     ことが多いのです。

    ③営業に顧客探しを強要するが、顧客から探してもらう努力をしていない

     企業永続性の条件は、組織経営を実施することにあります。

     営業に「顧客を探すこと」と「売ること」を同時にさせると、どっちつかずになり、業績不振に
     陥ってしまいます。

     解決策は、全社的に顧客に見つけてもらう仕組みをつくること。

     これが、業績の安定につながるのです。

     属人的な「顧客づくり」は安定を生みません。

     組織で顧客をつくる努力が必要です。

     顧客は、売り込まれるから購入するのではありません。

     自身の要求を満たせると判断するから購入するのです。

     全社として「お客さまの要求に応えることができる力」を発信することを怠り、営業部門の
     “努力不足”を責めるばかりでは、「顧客をつくる」ことは
不可能に近いでしょう。

     自社が、顧客づくりのできない三つのパターンに陥っていないかどうかを確認してほしい。

     「顧客をつくる」ということは、顧客に「自社は何ができるのか」を発信することです

     しかし、すべての顧客に対応することは不可能だ。「自社のできること」「自社の強みを理解
     してくれる顧客は誰か」を明確にし、絞らなければならないのです。

     絞るのは、選ばれるためです。

     自社がこだわりをつくり出し、顧客に認知されるから選ばれるのです。

     顧客を選ばなければ、顧客から選ばれることはないのです。

□自社に対する顧客価値をつかめ 

 1.顧客に貢献している事実を掘り下げよ

  顧客を創造するとき、第一に考えなければならないのが、「現在、顧客に貢献している事実」です。

  「誰に何で貢献」しているのかを社員自身が知る必要があります。

  これを見失うことは、自社の「存在価値」を見失っていることと同じです。

  存在価値を見失うということは、「顧客」と「自社の強み」を見失っていることにほかならない。

  言い換えれば、「誰でもよいから自社の商品・サービスを利用してほしい」と考えているという
  ことです。

  このような状態になると、薄利多売になりやすい。

  目先の売上げや利益にしか目が向かなくなると言っても過言ではない。

  事業の存続は、顧客の存在と同義である。そして顧客の存在は、顧客の承認と同義です

  当然、顧客への貢献がなければ、顧客からの承認は得られません。

  顧客の承認なき事業は、存続が危うい。

 
2.顧客価値を見直せ

  現在、取引している顧客の多くは、社員が入社した時から「すでに存在しているもの」です。

  会社は、創業からの積み重ねで現在(今)がある。

  創業から環境変化に対応し、「顧客に提供する価値」を変化させ、または顧客を変えながら存続して
  いるのです。

  では、本当に自社は顧客に価値を提供できているのでしょうか?

  また「現在の顧客で自社は成長・発展できるのか」を考えなければなりません。

  自社の価値を理解し、取引している顧客がどれだけ存在しているのかを、感覚ではなく数値でとらえる
  ことが必要です

  「最も価値ある顧客」を維持できている理由には、自社の存在価値が含まれています。

  この数が少ない場合、自社の顧客政策の見直しが必要となります。

  さらに自社が存続・成長していくために、どのような状態が一番よいのかを考えていかなければならな
  いのです。


  現在、自社はどのような比率になっているのか、自社の強みを理解して取引をしてくれている顧客が

  どのくらいあるのかをつかむことで、今後の戦略も変わってきます。

  製造業C社は、この10年で経常利益が10分の1になった。

  10年前と現在の顧客の変化を分析すると、「最も価値ある顧客」が大幅に減少し、「自社との取引に
  おい
て判断が必要な顧客」と「価値を認めてもらうのに工夫・努力が必要な顧客」が90%を占める
  状況となりました。

  特に、粗利益率と売上高の基準に満たない顧客比率が大きくなっていたのです。

  環境が変化し、利益を削って対応しているものの、このままでは会社の存続が危うい状態でした。

  要因は自社の顧客価値をつかんでおらず、気付けば儲からない顧客ばかりになっていたことです。

  また、顧客の成長性・将来性にも目を向けなければなりません。

  カギになるのは、「自社から見た顧客価値」です。

  ここで言う顧客価値とは、将来にわたって自社と取引を行い、利益をもたらす顧客のことを指します。

  自社の成長性を高めるためには、将来性のある顧客と取引していかなければならないのです。

  何度も述べていますが、「誰と付き合うかで将来が変わる」のです。

  今の顧客の将来性を自社のモノサシで測ることが必要です。

  ここで持たなければならない視点は、「今、自社を支えている顧客が生み出す価値で、将来も自社を

  支え続けることができるのか」ということです。

  メーカーD社は、主要取引先100社の将来性をマトリクスで分析してみました。

  その結果、「将来性が最も高い顧客」10社、「将来性が低い顧客」30社、「将来性が高い顧客」
  10社、「将来性がない顧客」50社となった。

  しかも、多くは安価さで購入を決める顧客です。

  そこでD社は、自社が成長・存続していくためにどのような顧客と取引をすべきか、取引したい顧客像

  を明確にしました。

  これにより自社の進むべき方向性が明らかになり、再設定した顧客を開拓するための行動に重点を置く
  ことができたのです。

 
3.顧客の期待に自社の強みで応え、利益に変える力

  自社の強みは、三つの基盤で支えられています。

  一つは、「顧客が明らかである」こと。

  これは、「顧客の使用場面が手に取るように分かる」ことです。

  これが分かるからこそ、自社の強みが提供できるのです。

  二つ目は、「強みを基盤にしていること」。

  強みとは「自社ができること」です。  

  た
だし、「できること」と「したいこと」は違う。

  これを混同しないことです。

  「できること」を考えるときには、「こだわり」が必要です。

  そして、「捨てる」と「こだわり」はセットで考える必要があります。

  捨てるからこそ、こだわりに集中できるのです。

  こだわりとは、何でナンバーワンになるかということ。

  つまり、「何で勝つかを決める」ことです。

  強いから勝つわけではない。

  勝つから強くなるのです。

  だから「勝つことを決めること」が大切なのです。

  それを一番になるまで磨き上げるからこそ、ナンバーワンになれるのです。

  三つ目は、「顧客への貢献」です。

  自社の強みは、顧客が評価して初めて強みとなります

  「自社は何で貢献していますか」と、謙虚に顧客に問い続ける姿勢が、自社の強みをさらに強くする
  のです。

顧客づくりを体質化する 

 1.先入観が機会をつぶす

  企業経営の現場では、客数や客単価のダウンといった顧客環境の変化により、新規顧客開拓が急務と
  なることがあります。

  しかし、現場は顧客づくりを進めなければならないことは理解していても、「忙しい」ことを理由に
  顧客開拓に取り組まないことがあります。

  このような状態は、なぜ起こるのか?

  一つには自分たちが忙しいという思い込み、つまり先入観が顧客づくりの機会をつぶしている場合が
  少なくありません。

  これを打破するためには、

  (1)時間という機会をつくる

  (2)機会の質を高める

  (3)機会の確率を高める

  が必要です。

  順に説明すると、

 
2.時間という機会をつくる

  顧客創造とは「機会創造」です。

  そして機会創造とは「時間創造」。

  時間創造のために必要なことは、顧客を格付けし、時間をつくることです。

  メーカーE社は近年、売上げの3割を占める重点顧客への販売が不振となり、業績が悪化し、顧客創造
  が急務でした。

  トップは重点方針として、新規顧客開拓を挙げていたが、営業社員は「時間がつくれない」「忙しい」
  ことを理由に取り組んでいませんでした。

  そこで、「貢献度」と「可能性」という視点で「顧客格付け」を行い、本当に顧客開拓の時間がない
  のか、実態を調査しました。

  まず、既存顧客の自社への貢献度基準を作成し、売上高と粗利益率で点数化しました。

  可能性基準は、得意先の将来性と納入余力により点数化しました)。 

  E社の上位100社の適正訪問回数は、

   (絶対死守先25社×月6回)+(死守先5社×3回)+(成り行き先55社×月1回)+
   (攻め先15社×6回)=310回

  となりまし
た。

  また、上位100社の過去3カ月での月平均訪問回数は、423回と適正訪問回数を上回った。

  分析結果を見ると、「死守先(行きやすい顧客)」と「成り行き先(あまり行かなくてもよい顧客)」
  に訪問が集中していた。

  それらの顧客への訪問を適正回数に抑え、行かねばならない顧客への不足分を埋め合わせても140
  回分(27回+166回-53回)の時間の捻出が可能であり、回数の
足りない絶対死守先や新規開拓
  にも割り当てる時間が残ることが分かりました。

  要するに、時間がないのではなく、「忙しいから新規開拓ができない」と思い込み、時間をつくる工夫
  をしていなかったのです。

  このような思考の硬直は、開拓の機会までも奪ってしまう。

  先入観が機会をつぶす典型例です。

 3.機会の質を高める

  機会の質を高めるためには、「キーパーソン」への接触回数を高めることが必要です。

  顧客をつくる上で、キーパーソンとの接触を外してはならないことは周知の事実です。

  しかし、多くの企業が、このキーパーソンとの接触をマネジメントしていません。

  機会の質を高めるためには、キーパーソンへの接触にこだわることが重要です。

  キーパーソンは、4タイプいます。

  「窓口キーパーソン」「助言キーパーソン」「情報キーパーソン」「決定キーパーソン」であり、
  この人脈を探ることが重要となります。

  窓口キーパーソンからニーズの発掘、受注までのプロセス、決定キーパーソンが誰かをつかむ。

  次に助言キーパーソンから、自社の弱み、ライバル他社の強み・弱み、決定キーパーソンの特徴などを
  明確にする。

  情報キーパーソンからは、ライバルの誰が・どのタイミングで来ているのか、顧客の社風・購入動機・
  意思決定のポイントを探る。


  そして、決定キーパーソンから予算・タイミングを引き出し、提案するステップが必要となります。

  この当たり前の活動なしに、ひたすら顧客開拓に汗を流す企業が多い。

  キーパーソンマネジメントを行い、受注機会の質を高めなければならない。

 
4.機会の確率を高める 

  よく、「三層営業を実施せよ」と言います。

  三層営業とは「トップ」「役員・部門長」「担当者」と三層で営業を行うこと。

  理由は、肩書きが会う人の質を変えるためです。

  この三層開拓スタイルで、ターゲット先のトップに営業を行い、受注確率を高める必要があります。

  しかし、実行している企業は少ない。

  さらに、機会の確率を高めるために実行していただきたいのが、「三能開拓」です。

  三能とは三つの機能です。

  例えば「営業」「企画・開発」「製造」という三つの機能で顧客をつくる活動を行うという意味で

  あり、「営業以外の部門を顧客に近づける」ことです。

  横のつながりによる全社営業(オールセールス)を行うのです。

  三層営業の縦の階層と三能開拓の横幅を駆使し、自社の価値提供を行ってほしい。

  一つの機会を最大限に生かすため、顧客づくりを体質化しなければならないのです。

                        
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経営体質強化

5%の人を動かす

5%の人を動かす

■人を動かす
 企業のように組織で仕事を遂行していく場合、リー ダーが優秀かどうかによって、その
 成果は大きく違ってきます 。
 部下のやる気を引き出し、組織を“燃える集団”に変えていけるリーダ ーがいれば、その
 組織は期待以上の成果を上げることができます。

 そうした優れたリーダーには、共通して人を動かす力が備わっています。
 その力の多くは先天的なものでなく、リー ダーの主体的な努力で身につけた後天的なもの
 なのです。

□自ら動きたくなるような環境
 人の心を動かすために欠かせないものとは、いったい何でしょうか。
 この間いに対して、「情熱や誠意があれば、どんな人でも動いてくれる」と答える
 ビジネスパーソンは、残念ながら、100点満点中、50点しかあげられません。

 通常の人間関係ならば、情熱や誠意だけで相手を動かすことは十分に可能でしょう。
 しかし、ビジネスの世界は、それだけですべてが解決するほど甘くはありません。 
 情熱や誠意はコミュニケーションの大前提であり、本当に人を動かしたければ、プラス
 アルファの工夫が必要です。 

 業績が低迷している、会社の社員はやる気を失い、赤字体質が染みついて、毎日ダラダラ
 と仕事をこなしている。
 その社員に対して、「会社の未来は君たちにかかっている。ぜひ頑張ってくれ!」と
 熱っぽく語りかけても、返ってくるのは次のような返事ばかりです。 

 「やるだけやってみますが、たぶん無理です」「前例がないからできません」「いままでの
 やり方でいいじやないですか」
 なぜ相手は自分の思いに応えてくれないのか。

 それは、ただストレートに情熱をぶつけるだけでは、相手の心を無視して、自分の気持ち
 ばかりを押しつけることになってしまうからです。
 人に動いてもらいたければ、同じ情熱をぶつけるにしても、相手の心理状態をよく理解
 して、相手が自ら動きたくなるような伝え方や仕組みづくりをすることが大切なのです。 

 そのために、“再生仕事人としての腕を買われて経営を任された私が最初にやることは、
 すべての社員ではなく、全体の5%の社員の心に火をつけることでした。
 5%の社員の心をやる気にさせ、その心に火をつけることができれば、その火はすぐに
 全体に広がり、組織はガラリと変わり始めます。

 それまで定時になれば逃げるようにして帰っていた社員たちですら、自ら進んで責任感を
 もって働くようになり、頭の固かった幹部たちも、非効率な仕事のやり方を捨てて新しい
 仕事にどんどんチャレンジするようになりました。

 その結果、赤字体質からの脱出。
 営業利益の黒字転換を達成。
 さらに、最終利益も黒字転換。

 ついには無借金経営というⅤ字回復を成し遂げることができました。 
 では、どうしてわずか5%の社員を変えただけで、働く意欲を失っていた社員たちは戦う
 ビジネスパーソンの集団へと変貌していったのでしょうか。

 実はほそれには、次のような人間の心理が働いています。 
 昨日まで自分と似たような仕事ぶりだった同僚が、メキメキと力をつけて結果を残していく。
 その姿を間近に見ていれば、「置いていかれたくない」という焦りと、「自分にもできる
 かもしれない」という可能性を信じる気持ちが湧いてきます。

 その心理を刺激すれば、人は自ら心の火を燃やして働くようになります。
 このような心理法則を知っていれば、大きな組織を動かすことも決して難しくないのです。

□人を動かせる人が出世していく 
 上手に人を動かせる人は、かなりの確率で出世の階段を駆け上がっていきます。 
 まわりを動かすと、仕事の効率が高まって結果を残せるようになるということも理由の
 ひとつですが、じつはもっとシンプルな理由があります。

 人を動かすカは、管理職にもっとも求められる能力のひとつだからです。
 あなたもご存知の通り、昇進して組織の上層のポジションになればなるほど、プレーヤー
 としての能力よりも、マネジメント能力が求められるようになります。

 ひとくちにマネジメント能力といっても、人を管理する力、お金を管理する力、物の流れを
 管理する力、プロジェクトの進行を管理する力というように、さまざまな能力があります。
 どれも管理職には必要とされる能力ですが、このなかでも、とくに重視すべきなのが人を
 管理する能力ではないでしょうか。

 もちろんお金もプロジェクトも、マネジメントするのは簡単ではありません。 
 ただ、人のマネジメントに求められるレベルは、お金や物、プロジェクトの比ではあり
 ません。

 こちらは本当に血の通った生身の人間が相手です。
 本人のやる気や人間関係、環境によって、その人の持つ能力が日々変化します。
 長いスパンで見たとしても、急に成長する人がいるかと思えば、戦力として計算に入れて
 いた人が突然、辞めてしまうことだってあります。

 人の動きを正確に予測するのは、お金や物、プロジェクトの動きを予測するよりはるかに
 難しいもの。
 その前提に立って組織やチームの働きを最大化しなくてはいけないのですから、人を
 マネジメントする力は、さまざまなマネジメント能力のなかでも、もっとも高い次元に
 位置しているといっていいでしょう。

 お金や物、プロジェクトを動かせるビジネスパーソンはそれなりにいても、人を動かせる
 ビジネスパーソンは希少です。
 それゆえ人をマネジメントできる社員は、会社としても手放したくない人材になります。
 人を動かせる人が出世していくのも必然なのです。

■自分の能力以上の仕事を動かす 
 仕事の能力が高くて、難しいことにも意欲的に挑戦するビジネスパーソンと、能力は
 それなりにあるが、自分の限界を知り、一人では決して無理をしないビジネスパーソン。
 成果をあげられるのは、いったいどちらのタイプだと思いますか。

 意欲的に挑戦する人のほうが結果を残すと考える人が多いかもしれませんが、実際は
 違います。
 赤字会社の再建の現場で数々のビジネスパーソンを見てきた経験からいえば、むしろ
 自分の能力の限界をよく把握している人のほうが大きな結果を残します。

 意欲的に挑戦する人のほうが結果を残せないのは、いったいどうしてか。
 それは、能力が中途半端に高いせいか、仕事を一人で抱え込んで自滅してしまうからです。 
 たとえば普通の人なら二日がかりで片づける仕事を、上司から「何とか今日中にやって
 くれ」と頼まれたとします。

 責任感が強く、頑張って一人で片づけようと考える人は、その仕事を徹夜してでも処理
 するでしょう。  
 ところがその能力の高さとやる気が、かえって仇になる危険性があるのです。 

 上司は生産性を高めるために、優秀な人材にできるだけ多くの仕事を集めます。 
 二日分の仕事を一日で片づけてしまった人には、さらに多くの仕事が割り当てられる
 ようになるでしょう。

 ただ、どんなに頑張っても一日は24時間。
 残業の時間をさらに1時間、2時間と延ばしていくことはできても、寝ずに働き続ける
 ことは不可能です。

 また、大量の仕事をこなすことで仕事の処理能力が伸びるかもしれませんが、それにも
 限界があります。
 たとえやる気があっても、仕事が際限なく増え続ければ、いずれは努力では解決できない
 世界に突入して、壁にぶち当たることになります。

 一方、自分の能力の限界を知っている人は、自分一人では大きな成果はあげられない
 こともよく理解しています。
 そのためキャパシティを超える仕事を割り当てられたら、一人で仕事を抱え込まずに、
 まわりの人の協力を得て解決しようとします。

 坂本龍馬のように、大事を成すためには自分一人で頑張るのではなく、まずは信頼と
 信用を集め、多くの人から協力を得ることで、自分の能力以上の仕事を動かしていく
 ことも可能です。

□自分の‘‘分身’’を作る 
 人を動かして任事を進めるというと、「まわりの人間を自分の使い走りのように扱えば
 いいのか」と勘違いする人がいます。 
 部下を自分の手足のように見なす人は、能力が足りない部下に対して、「使えないやつだ」
 といって切り捨ててしまう傾向があります。

 それでは、いつまでたっても人を上手に動かせるようにはなりません。
 人を動かして大きな成果をあげるには、部下を育てるという視点も必要なのです。 
 そこで重要になるのが、相手に自分の手足だけではなく、自分の分身になってもらう
 という発想です。 

 たとえば報告書の作成を頼むときは、ただ依頼するだけではなく、自分ならどうやって
 作るのかというノウハウを一緒に伝えます。
 ノウハウはあなたの頭脳の一部ですから、相手もあなたの思考に沿って報告書が作成
 できます。

 また、部下に営業の案件を任せたいときは、ノルマを課すだけでなく、一緒について
 いって自分の交渉術を見せて覚えさせます。
 交渉術をマスターすれば、部下はもうあなたの分身です。

 そこまでやってしまったら、自分ですべてをやるのと労力が変わらないという意見もある
 のでしょう。
 たしかに最初はそうです。

 むしろ相手の理解力や吸収力の度合いによっては、自分でやるより労力がかかってしまう
 場合があるかもしれません。 
 しかし、違いがでるのは、分身を作った後です。

 もし自分と同じノウハウや知識を持った人がいれば、能力のギャップから生じる遅延や
 ミスも発生しづらくなり、その尻拭いに悩む必要もなくなります。
 長い目で見れば、自分にかかる負担はグッと減るはずです。

□以心伝心の状態を作り出す 
 自分の分身を作って活躍してもらうためには、相手にノウハウや知識を伝えるだけでは
 不十分です。
 相手の能力を引き上げると同時に、ビジョンを共有するというステップが必要になります。

 ただ、いくら自分と同じノウハクや知蘇を持っ人が増えたとしても、彼らに引き続き
 指示を出さなくてはいけないのであれば、自分にかかる負担はそれほど変わりません。
 指示を出すためには、情報収集して状況を把握し、正しい判断を下す作業が必要になり
 ますが、それを自分がすべて続けていたら、きっといつかパンクしていたでしょう。 

 では、いったいどうすれば指示を出さなくても、現場で判断して動いてもらえるように
 なるのか。
 そこで欠かせないのがビジョンの共有です。

 たとえばIT企業の営業職員が、ある取引先から短期で大きな利益があがる案件を持ちかけ
 られたとします。
 ただ、それを受注すると、定期的に発注してくれていた別の取引先の案件を後回しに
 しなくてはいけなくなります。

 もし長期的な視点に立つなら、目の前の大きな案件を断ってでも、安定して発注してくれる
 取引先を優先したほうがいいのかもしれません。
 どちらを選んでもメリット・デメリットがあり、非常に悩ましいところ。

 おそらく、ほとんどの営業職員は、上司に判断を仰ぐでしょう。 
 ただ、会社でビジョンを共有できているなら、指示を仰ぐ必要はなくなります。
 もし「今期は赤字解消が最優先」というビジョンがあるなら短期の案件を選べばいいし、
 逆に「5年後に上場できる体制を作る」というビジョンならば安定した受注を優先すべき。

 上司に判断を仰いだところで、同じ答えが返ってくるはずです。 
 このように以心伝心の状態を作り出せば、経営陣は現場のことをすべて現場に任せられ
 ます。

 もちろんまったくの放任というわけにはいきませんが、少なくとも「それくらいは現場で
 判断してくれ」という問題に煩わされるケースはなくなります。 
 ビジョンというと大げさに感じるかもしれませんが、これは個人レベルでも同じです。

 上司と部下、同僚同士でも、お互いに共通のビジョンを持っていれば、こちらが何も
 言わなくても同じ方向に向かって歩いていってくれます。 
 ノウハウだけでなく、目指すべきところも共有する。

 そうすれば、まさにあなたの分身が自律的に、かつ積極的に物事を判断して動いてくれる
 ようになります。
 それでこそ人を動かすメリットを得られるのです。

□従業員100人の会社なら5人の意識を変える 
 赤字が続いている企業は、わざわざ財務諸表を読まなくてもすぐわかります。 
 社内の空気が緩んでいて、緊張感がみじんも感じられないのです。  
 赤字企業の社員は、自分の会社の業寮がよくないことを肌でわかっています。 

 決算書を読まないような社員でも、普通に業務をこなしていれば、会社の売上がいいのか
 悪いのかくらい想像はつくものです。  
 ならば社員がかなり深刻な表情をしているのかというと、決してそうではありません。

 同僚同士で楽しく談笑もするし、どちらかといえば牧歌的な雰囲気さえ漂っています。 
 会社が償いているのに、どうして呑気にしていられるのか。
 その根底には、「経営を考えるのは役員の仕事、自分たちは目の前の仕事を適当に片づけて
 いればいい」という他人任せの考え方があるようです。

 たしかに役員と現場の社員では担っている役割が違います。
 しかし、会社として利益をあげて、自分たちを豊かにするという目標は共有している
 はずです。

 目標を実現するために任せられている職務が違うからといって、共通の目標に対して無責任
 でいていいことにはなりません。 
 企業の再生には、トップの意識改革が絶対必要条件です。

 ただ、それだけでは不十分。
 末端の社員一人ひとりが危機感を持って仕事に取り組まなければ、黒字転換はあり得ません。 
 では、緩みきってしまった社内の空気を変えて、社員に意欲を持って仕事に取り組んで
 もらうためには、どうすればいいのか。

 これには2つの方法があります。
 システムで全員に意識改革を促す方法と、一部の社員の意識を変えて全体を引っ張って
 もらう方法です。 

 システムで全体を変えていく方法はいくつかあります。
 たとえば財務諸表をすべてオープンにして危機感を持ってもらったり、業漬に連動した
 給与体系でモチベーションを高めたりする方法は、マネジメントを学ばれたあなたなら
 よくご存知でしょう。

 ただ、システムで全体を変える手法は、やり方を一歩間違えると機能不全を起こすリスク
 があります。
 すでにやる気を失っている社員の中には、システムの変更を上からの一方的な押しつけ
 だと受けとめてしまう人もいます。

 トップダウンで変革を促す仕組みは大切ですが、それと同時に、社員の中から自発的に
 危機を乗り越える気運を高める施策を実施しないと、システム改革が空振りに終わって
 しまう可能性があるのです。

 そこで重要になってくるのが、一部の社員の意識改革を行い、全体引っ張ってもらう方法
 です。
 みかん箱に腐ったみかん1個を入れると全体が腐ってしまいますが、人間の場合はその
 逆が可能です。

 無気力な人ばかりの集団でも、そのうちの数名の意欲を高めたり、そこに意欲の高い人を
 投入したりすることで、やる気を全体に波及させることができるのです。
 一部の社員が変われば、無気力社員には次の二つの心理が働きます。

 まず社員間の格差が広がることによる焦りが生じてきます。
 実際に昇格・昇進で差がつき始めると、その思いはますます強くなり、自ら変わることを
 選ぶでしょう。 

 これはネガティプな要因を打ち消そうとする心理ですが、じつは同時にポジティブな心理
 も働きます。
 無気力に陥っている社員は、「どうせ自分一人が頑張っても何も変わらない」と思い
 込んでいます。

 ところが、昨日まで自分と同じような能力だった社員が結果を残していく姿を目の当たり
 にすると、「自分もやればできるかもしれない」という意識が芽生えて、前向きな気持ち
 で仕事に取り組むようになります。 

 自分だけ置いてきぼりにされたくないという心理と、自分の可能性に気づき、それに
 賭けてみたいと思う心理。
 一部の社員を変えることで、意欲のなかった社員にこの二つの心理が働き、全体に意識
 改革を促すことができるのです。

 全体の5%の社員が変われば、雪崩が起きるかのように全体が一気に変わっていきます。
 従業員100人の会社なら5人の意識を変えるだけで、ほぼ全社員の意識が変わっていく
 でしょう。 

 トップダウンでシステムを変えることだけが組織を生き返らせる方法ではありません。
 内部から火をつけて、社員自らが変革を求める状況が生まれてこそ、組織はドラスティック
 に変わっていくのです。

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経営体質強化

役員の仕事

役員の仕事

■目標の設定が先決
 重役の仕事は、8つあります。
 この8つの仕事のうち、どれか1つ欠けても事業経営は破綻をきたすものですから、
 この図に照らして、自分の日常活動をご検討いただきたい。

 重役の8つの仕事は、
  1.方針の確立であり、その徹底である。
   経営方針が経営のすべての出発点であり、企業のどこを切っても同じ血が流れる
   ように方針を浸透させることによって、はじめて「働く人の意欲を盛り上げる」
   ことができるし、企業はすぐれた総合力を発揮することができるのです。

   だから、まず目標を決めること。
   (3年以内に現在の規模の倍にする)とか、(食品部門を今年から企業化する)
   とか、(1人当たりの年商が1000万円になるまでは人を採用しない)とか、
   (これから2年間で輸出部門の売上高を総売上高の50%にまでもっていく)など
   など。

   指針となるべき経営方針があって、はじめて目標を達成するための「計画」も
   たてられます。
   また、レールがあれば、脱線すればすぐわかる。
   軌道修正することができる。

   無軌道を走る自動車は事故が多いが、列車事故が少ないのは軌道を走るからです。
   だから「計画」が絶対必要です。
   「計画」があるから、実施後「計画」どおりにいったかどうか、「業績を測定する」
   ことができるのです。

□計画実現のための組織づくり
 「方針→計画」が準備できれば、その具体化のための「組織」が考えられます。
 つまり、どんな能力をもった人間を、どこに何人配置するかが決められるのです。
 さらに組織を運用するのは人であるから、人物をいかに評価するかということが、重役の
 重要な仕事になってきます。

 組織を円滑に運用し、総合力を発揮させるには、各部門、各人の「意見を調整」しなければ
 ならない。
 人は、それぞれ自分の立場、自分の専門分野に固執して、「木を見て森を見ず」の落と
 し穴に陥りやすい。

 たとえば、営業は営業の立場からだけの意見を主張し、工場は工場の立場に固執して、
 ときには感情的な対立すら起こす。
 だから、それぞれの意見を1つの企業目標に一致させるように「調整」することが、
 重役の重要な仕事となってきます。

 よほど大企業でない限り重役もいずれかの部門の長を兼ねています。
 部門長として自部門の業績責任があるのは当然のことだが、重役としての立場も忘れては
 ならない。

 重役として次のことが要求されます。
  1.全社的視野でものごとを判断する
  2.目先のことよりも3〜5年先のことを考え手を打つ
  3.改革すべきテーマに取り組む

 部長や本部長の延長が役員であってはならない。
 社員とはひとまわりスケールの大きな仕事に取り組まねばならない。

□人の教育
 また、事業は永続すべきものであるという理念から、将来の発展の土台となる人物を
 教育訓練することも、当然、重役に課された大事な仕事の1つです。
 重役の8つの仕事が経営方針をたてることから出発することに注目すれば、経営方針が
 いかに重要か、ご理解いただけるでしょう。

 経営方針こそ重役の事業信念であり、 経営意思なのです。
 「重役とは少なくとも執務時間の50%を“方針の決定”と“計画を人に理解してもらう
 こと”と“他の人の意見を調整すること”に費やす人だといわれています。

 この3つの仕事がまさに重役の本来の仕事である」と、いわれています。
 このことの意味をよく味わっていただきたい。
 「金を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」と昔から言われるが、金(=業績)は
 1年限り、翌年赤字を出せばふっ飛んでしまう。

 仕事は人次第、結局は人材さえ育てておけば人が仕事をつくり、業績をあげてくれるのです。
 ある社長は本業と全くかけ離れた新事業をはじめるに当ってあえて経験者を選ばず、
 ずぶの素人に担当させました。

 理由は、経験者は既成概念で仕事をするから大きな成功は望めない。
 素人でも本当の仕事のやり方を知っている者は、一生懸命勉強してかかるから成功する
 ということでした。

 1.教育のすすめ方
  社員の教育は大別するとOJTとoff-JT(集合教育)の2つに分けられます。   
  それぞれ目的、やり方は違ってくるが、ともに必要なことです。
  集合教育には基本があるので社内に経験者が居ない場合には、外部の教育専門機関に
  委託するのも1つの方法であるが、その場合に注意すべきことは絶対に丸投げせず、
  社内の担当者が企画立案して、ある部分を外部の専門家に委託する形をとることです。

  幹部教育の場合は最初のスタートから最終までトップが参加していることが必要条件
  となります。
  誰が最初から最後まで居るかで、社員は会社の教育に対する重要性を感じ取り、教育
  効果が大きく違ってくるからです。

 2.OJTのポイント
  OJTはこうすべきだという論もあるが、それ以前に第一線監督者に人にものを教える
  という概念があるかどうかが問題です。
  まだまだ日本の会社の場合には「見て覚えろ」「技術は盗みとるものだ」式の考え方
  が根強いようです。

  アメリカナイズされた文化の中で育った若者には古い職人型のやり方は通用しない。
  その点TWI(training within industry)の仕事の教え方は1つのモデルです。

  <TWIによる仕事の教え方の基本的なステップ>
   ①正しく作業員に教えることの重要性を強調する
     ― “教え方が悪いと 、新方法は失敗したと同じです。”   
     ― “新方法を正しくやらせるため 、‘仕事の教え方’を用いて注意深く教えなさい。”

   ②受講者に仕事の教え方の4つの用意事項を言わせる 
    1 ― 訓練予定表を作る 
    2 ― 作業を分解する。 ― ― 主なステップを列記する。急所を取り出す 
    3 ― すべてのものを用意する 
    4 ― 作業場を整備する

   ③受講者に仕事の教え方の4段階を言わせる(訓練員は簡単に各段階中の項目を
    説明する)       
     ― 第1段 階 ― ― 習う準備をさせる       
     ― 第2段 階 ― ― 作業を説明する       
     ― 第3段 階 ― ― やらせてみる       
     ― 第4段 階 ― ― 教えたあとをみる       
     ― 相手が覚えていないのは自分が教えなかったのだ

   ―“作業員に新方法を教えるときには 、いつでもこの仕事の教え方を用いなさい。”

□業績の評価
 次に役員の仕事の中で大事なのが、業績の評価です。
 業績評価に不満があれば部下はヤル気をなくす。
 ある特殊鋼ネジメーカーでは、ボルト製造部門とナット製造部門と2部門があった。

 ボルトとナットは必ずセットで出荷されるから同数つくるのであるが、巨額の設備投資を
 必要としたナット部門は常に赤字でした。
 部門に従事する幹部は被害者意識と不満に満ちていた。

 製法の全く異なるボルトとナットを同じモノサシで評価したために起こる弊害です。
 評価の仕方は沢山ある。
 状況に合わせて何が一番公平であるか、考えるのが役員の任務です。

  ・目標達成率
  ・昨年実績対比
  ・プロセス重視
  ・利益額
  ・人件費対比(人件費の何倍の利益を上げたか)

 その他いろいろの評価法が考えられます。
 セールスで言えば都市部と郡部、知名度の高い発祥の地と全く知名度の低い地域。
 万人に100%満足の得られるものはないのです。

 中国の社会主義国家建設を果した毛沢東は「比べて学んで追い越せ」をモットーに掲げまし。
 いろいろ言い分はあろうけれども、自分より成績の良いものと比べて良い点を学び、
 追い越せとわかり易い表現をしたのでした。

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経営体質強化

製造業における幹部の仕事

製造業における幹部の仕事

■改善の仕方
 1.改善こそ企業の生き残る道
  改善には作業改善、機械の改善、製品の改善、管理方法の改善……等々、さまざまな
  分野での改善があり、企業の維持発展には欠かせないものです。
  企業環境は日々めまぐるしく変化し、かつライバルとの戦いは一段と激しさを増して
  きました。
  品質に、コストに、また納期について顧客の要望も厳しい。
  過去のあり方の延長線上に、企業の存在はないといっても過言ではありません。
  より良く、より安く、より早く、より確実に、より楽に・・・を求めての改善努力こそが、
  企業の生き残る道を知ることです。

 2.改善の仕方の原則
  TWI(Training Within Industry)の手引きにも示されているように、改善とは
  現存の労力、機械、材料を最も有効に使うことにより、短期間に、良い品質のものを
  多量に生産するのに役立つ実際方法と定義づけられている。その原則(手順)として、
   第1段階 − 作業の選択と分解   
   第2段階 − 現在方法の検討
          (作業細目の検討)   
   第3段階 − 新方法の案出   
   第4段階 − 新方法の実施

 3.作業の選択・分解
  (1)作業分解シートにより、現在方法をそのままに作業の全細目を記録する
     なぜ徹底的に分解するかといえば、現在方法は、作業員の熟練した技能と
     習慣による惰性で行われていて、不便を感じていないことが多く、改善の
     必要なしとの盲点に陥ってしまうからです。    
     しかし、1つひとつの作業を徹底的に分解して表にすると、それぞれの動作を
     容易にチェックでき、数多くのムダな動作を発見することも可能となります。
     また動作を結合したり組み替えることにより、作業を簡単にすることもできる
     のです。

  (2)作業の細目とは
    ①操作(記号○) 
     作業員が手足、工具機械等により原料・資材に働きかけている状態
    ②運搬(記号●)
     作業員が原料・資材を移動している状態
    ③検査(記号□)
     作業員が五感のうち、いくつかを使って調べること
    ④停滞(記号△)
     作業員が手持ちするとか、何もしないこと

 4.現在方法の検討
  (1)7つの言葉で作業の細目について検討する
    ①なぜそれは必要か(Why)、また何の目的のためにこのような動作をして
     いるのか(What)。
     摘出された作業の各項目について「なぜ」「なに」の2つの自問により作業の
   必要性をチェックし、不要なら改善の着想欄にその旨を記入する。

    ②第1チェックにより必要と認められる動作なら、次の自問によりさらに掘り
     下げを行う。

     a.どこでやるのが最も良いか<Where>
       もっと広い場所で、もっと便利なところで、他の工程で……等々。
       場所、工程を変えることでさらにやりやすくできないか。
     b.いつするのが1番良いか<When>
       順序を変えることでもっと良くならないか
     c.誰にやってもらうのが良いか<Who>
       男子を女子に変えたら、社員からパートに変えられないか、他の工程に
       任せた方が良いか、外注にした方が安くつかないか……等々
     d.どんな方法が最も良いか<How>
     もっと簡単な方法はないか、機械・工具は使えないか……等々
     e.この作業を実施する場合の費用や量は妥当か<How much>

   以上のチェックにより、現在の作業方法に問題のある場合には、作業員の力を借りて
   良い考え方があれば着想欄に記入する。

  (2)作業の各細目をチェックすると同時に、材料・機械・設備・工具等についても
     全般的な検討を加える。

     ①材料
      a.もっと良い、安い、得やすい材料は使えないか
      b.この作業で生ずる廃品は他に活用できないか
      c.廃品、不良品を最小限に減少できないか
     ②機械
      a.この機械でなくてはならないか、遊んでいる機械ではできないか
      b.この機械をこのように改良すればもっと効率が上がる
      c.機械は正しく使われているか、保全に問題はないか
     ③設備
      この設備は必要か、場所は良いか
     ④工具
      a.2つの道具を1つにまとめた道具はないか、もっと軽く小さくできないか
      b.置き場所は良いか
     ⑤設計
      設計や仕様の変更により、品質、コスト、作業時間の節約はできないか
     ⑥配置
      機械や設備の配置変更により、効率良く安全にできないか
     ⑦動作
      身体を曲げたり伸ばす動作が多すぎないか、動作を省略するための道具、
      設備は導入できないか
     ⑧安全
      人身の安全と同時に、製品の安全も考える
     ⑨整理整頓
      作業場をもっと広く、便利に使えるよう整理整頓はできているか

     等々、気づいた点を着想欄に記入する。

□改善の新方法
 1.新方法の案出
  (1)新方法案出のための処置
    作業の各細目チェックを終えたなら、次の手順に従って新方法案出のための
    処置をとる。

    ①不要な細目を取り去る。
     「なぜ」「なに」の自問により、不要と決まった細目(作業)は、着想欄に
     その旨を記入する。
    ②細目を結合する。
     別々にやっている作業を1つにまとめることが可能なら、作業ナンバーを
     付記して「結合」と着想欄に明記する。
    ③細目を良い順序に組み替える。
     細目の順序を1つ前に持ってきた方が良いとか、または最後にした方が良い
     とかの場合には、作業ナンバー何番と何番を「組み替え」と記入する。
    ④必要な細目を簡単にする。
     必要な細目の中で、2度やっているが1度で十分なことがあれば「ここは
     研磨不要」とか、「ここは塗装不要」と明記する。
     また作業が一層簡単にできるなら、その方法を注記しておく。
    ⑤新方法の細目を記録する。
     以上、すべての処置を終えたら、新しい作業分解シートに新方法の細目を
     記録する。

  (2)動作についての改善ヒント
    作業をより楽に、安全にするためのヒントとして「動作経済の原則」がある。
    いくつかの要点を述べます。

    ①できるだけ身体を動かさない。
    ②材料、道具及び設備を、適当な動作範囲の最も良い位置に置く(身体の動きを
     できるだけ小さくする)。
    ③動作の数をできるだけ少なくする(ムダのない、楽な仕事は動作が少ない
     仕事である)。
    ④両手を有効に用いること(片手といえども遊ばせない)。
    ⑤足を有効に使う。
    ⑥手で支える代わりに、治具や取り付け具を用いる。
    ⑦細かな調節を必要とする動作は、道具を考えて簡単な動作とする。
    ⑧工具や機械の“にぎり”は、握りやすい形にする。
    ⑨重い加工品や道具の取り扱いは、重力利用の補給装置や落下送り出し装置を
     用いる(運搬方法の工夫)。
    ⑩目をできるだけ動かさない(使用する工具やハンマー等、見やすい色に塗って
     おけば探す・見つけるの動作が省ける)。
    ⑪作業のやりやすい照明とする。
    ⑫不自然な姿勢を避け、できるだけ楽な姿勢で仕事をする。
    ⑬単調な繰り返し動作を機械に置き換える。
    ⑭安全であること、整理整頓されていること、良い服装、良い環境であること。
    ⑮不安定作業(作業の戸惑い、手待ち)があったらその原因を調べる。

    等々である。

 2.新方法の実施
  いくら良い改善方法を案出しても、これが実施されなければ、何ら成果にはつながら
  ない。

  実行に移していくには、
   ①新方法を上司に納得させる。
   ②新方法を部下に納得させる。
   ③安全、品質、生産、原価、その他関係者に最後の承認を得る。
   ④新方法を仕事に移す。
  の手順を踏むことです。
  改善を円滑に進めていくための留意点を以下に述べてみます。

  (1)数字による説得
   上司が改善に深い理解を示さない場合は、往々にして「前に自分も考えたことが
   あったが駄目だった」「今のままで不便はない!!」等と言って拒否したり、
   あるときは「みんながどう言うかね」「恐らく駄目と思うがね」とためらったり
   します。

   そして、挙句の果ては「よく考えてみよう」と逃げてしまうことがあります。
   部下の場合でも、現在の方法に慣れきっているだけに、新しい方法にはたとえ頭で
   良いと分かっていても、まず抵抗を示すことが多い。
   これを打破していくには「数字化」して説得することが最も効果的です。

   単に「作業方法の改善で時間短縮が10%できる」というだけでなく、「1日100個、
   月間2,500個、年間30,000個の増産が可能。粗利で(1個当たり500円と
   すると)1,500万円増える」というように、可能な限り具体的に説明していく
   と分かりやすいし、納得も得られやすい。

  (2)オープン主義の土壌づくり
   もう一つの重要点は、社内の雰囲気が何でも言い合える、垣根のないオープン主義
   であることです。
   お互いの情報や知恵が共有されてこそ、チームワークも高まり業績も向上していく
   のです。
   そのポイントは、
    ①上司としての自分自身が、まずオープンになりきること。
     自分の成果、ノウハウはすべて他人に公開する。
     また、部下に影響ある情報は遅滞なく伝える等々、日頃から心得ておくこと
     です。
    ②部下からの改善提案を快く受け入れる。
     決して「駄目だ」「難しい」等の否定語を使わない。
    ③他人の功績は素直に認める。
     認め合うほどに意見が出てきます。
    ④他人の協力を積極的に得る。
     殊に現場の人たちの力を借りることで、実用的な新方法の展開ができることが
     多い。

□問題解決能力の涵養(かんよう)
 「経営は人なり」の言葉どおり、企業の業績は人のレベルで決まります。
 すなわち人々が仕事に意欲を持ち、より困難な問題をいかに解決していくか、その
 能力いかんが業績を決定づけるということです。
 すでに問題解決について、その基本である問題意識の持ち方、問題発見とその掘り下げ方
 ・解決の技法等を述べてきました。
 ここでは、特に問題解決の能力アップについて、心構えと具体的方法を述べてみます。

 1.問題解決の主人公となるために
  いかなる問題でも、これを解決していくにはまず自分自身が問題解決の主人公となる
  ことです。
  そのうち誰かがやってくれるだろうとか、そのうち何とかなるだろうと他人任せ、
  時任せでは駄目です。

  殊に幹部の意識と姿勢に、他力本願がミエミエになると、自分自身の能力開発の障害に
  なることはもちろんのこと、チーム全体を依存体質に向けてしまうものです。
  人は、はじめは小さな問題しか解決できないかも知れません。

  あるいはまた、大きな問題のほんの一部しか担当できないかも知れません。
  しかし、その場にあたって常に自らが主人公として問題に挑戦し、解決に情熱を示す
  なら確実に能力が広がり、やがてはより大きい問題を解決することができる。
  そしてこの経験を通して、部下の主人公意識の高揚を指導することもできるのです。

 2.実際を通じて自信を育てる
  次に大切なことは自信を得ることです。
  裏付のない理屈だけのカラいばりではメッキがはげる。
  体験を通じて自信をつけていくことが肝心です。

  具体的実践方法として、
  (1)得意なこと、好きなことをやることで成功体験を得て自信をつける。

  (2)簡単なことから始める。
   自分の得意なことを発揮する余地がないときには、ごく簡単なことから始めると
   良い。
   セミナーや教育研修に参加しても、ちっとも変わらない人がいます。
   これはごく簡単なことから実践して、成功体験を得ようという意欲を欠いている
   からです。
   知識先行型の陥る盲点なのです。

  (3)1つのことを徹底する。
   バカの1つ覚えということがある。
   同じことを繰り返し、継続することで能力の幅が広がり、自信を持つことができる
   のです。

  (4)部下の得意を知って動かす。
   人それぞれに何かの特技があるもの。
   その点をつかみ、うまくキッカケを与えることで部下を動かし、チームとしての
   問題解決能力を高めていく。

  (5)成功事例を反省する
   このことで、勝ちぐせをつけ自信をつける。
   失敗したことを反省することも大切だが、それ以上にうまくいった仕事の成功要因
   を明確にし、勝ちのコツを整理して形に残すことです。
   これがまた次の仕事にも大きいヒントになり、意欲の原動力ともなる。

 3.能力の積極的涵養
  企業を取り巻く環境が大きく変化し、仕事で要求される能力レベルが一段と高くなって
  きています。
  それだけに、人の能力アップが図られないと問題が山積し、業績低下の要因ともなる。

  この場合、問題解決のやり方として2つの方法が考えられます
  (1)能力レベルの高い人を連れてきて問題解決を行う。
  (2)効率は少し悪くなるが、現在の能力レベルでは解決できるかどうか分からない
   問題に取り組ませ、解決させる。

   最も効率が良いのは前者の方法であるが、無いないづくしの中から最大の成果を
   上げるのがまた経営でもあるのです。
   後者の選択で地道な努力をすることも肝心です。
   困難な問題に挑戦するから能力が高くなり、能力が高くなるからより高度な問題
   解決ができるような善循環が生じてくるはずです。

  (1)能力のカベを打ち破る
   「自分の能力に限界がある」と自ら絶望する必要はない。
   カベを打ち破ることで自己の能力はいくらでも広げられるものです。
   その方法として
    ①教えてくれる人があるうちは、そのレベルまで指導してもらう。
    ②レベルが上がって教えてくれる人がいなくなったときは、自ら物の見方・考え方
     を変え、行動に変革を起こしてカベを打ち破る
   の2点がある。

   前者は通常「勉強」といわれることであり、後者は自らの「変革」そのものです。
   環境そのものが大きく変化しそれに対応していくには、何事にもとらわれない
   素直な心で物を見て、考えられるようにしなければならない。
   先入観を持って物を見る癖のある人は、その癖を直さない限り問題を正しく認識し、
   適切な解決をする能力も身につけられないのです。

  (2)具体的な能力拡大の方法
   ①頭と身体をつなげる勉強
    a.知識を吸収する。広い分野の人の意見を聞き本を読む。これがまずスタート。
    b.得た知識を実際に繰り返して身体で覚える。
     やってみれば、本で読むように簡単でないことが分かる。
     しかし訓練を重ねることで種々の技法が確実に身につく。

   ②新しい仕事に挑戦する
    自分の今までの仕事だけにとどまることなく、積極的に仕事の範囲を広げる
    努力をする。
    責任者の立場に立ったり、他の分野の仕事をしてみれば、その立場の苦労も
    よく理解でき視野を広げることにもなる。

   ③自分の限界を広げる訓練をする
    一度自分の体力・能力のギリギリの限界に挑んでみる。
    そしてその限界を知っておく。
    自分は何日徹夜ができるかの限界を体験してみれば、自信にもつながる。

   ④マイナス発想を決してしない
    困難な問題に直面しても決して弱音を吐かない。
    「必ず解決できる」「絶対にうまくいく」のプラス意識に置き替えて対処する
    ことです。
    人事を尽くして天命を待つ。
    必勝の信念をベースに、プラスの人生観を築くことです。

   ⑤まず一歩を踏み出す情熱を持つ
    自らが問題解決の主人公となるには、たとえ小さくてもまず一歩足を踏み出す
    ことです。
    多くの知識・技法を身につけても、実行が伴わなければ成果は生まれない。 
    最後の決め手は、全情熱を燃焼させての「実行」そのものと知ることです。

□問題解決
 1.小集団による問題解決
  元来、人間は環境の影響を受けることが大きい。
  行動の愚鈍な集団に入ると、いつの間にか行動が鈍くなり、逆に反応の速いチームに
  身をおくと、素早い行動ができるようになるものです。 

  したがって「長」たる幹部は、常にチームを活力ある状態にしておかなくてはならない。
  ひとたびマンネリ化し、環境が悪くなると、誰かがそれに気づいて直そうとしても、
  それを改革していくには大きいエネルギーが必要となる。

  少々のエネルギーでは駄目です。
  結局は押しつぶされてしまうのがオチ。
  それゆえにわれわれは、このような強い力を持つ環境の良い方を利用することが肝心です。
  この一つの利用の仕方が「小集団」による問題解決です。

  今は大抵の企業でTQC活動が推進されているが、活性化され活動の成果が大きい
  ところと、形だけを追いマンネリ症状から脱皮できないところといろいろある。
  小集団活動が問題解決の場として有効に活用され、チームの活力アップにつなげる
  には、従来のクセ(体質)をいかに変えるかが最大のポイントとなる。

  逃避のクセ、責任転嫁のクセ、本音を語らないクセ、要領のクセ…等々、チームとして
  さまざまなクセを持っている。
  それだけに「長」として粘り強さと徹底さと工夫をこらすことが肝心となる。

  時として、変更のきわめて困難なクセに直面した場合には、合宿をする等の徹底さと
  工夫が必要なこともある。

 2.活気ある小集団活動を目指す
  (1)本音の出る土壌づくり
   ①上司やリーダーの姿勢・態度
    よくあることだが、問題未解決や目標未達を環境や他人のせいにして、自己を
    正当化し、責任の転嫁をする例がある。
    身を守ろうとするのは人間の本能だから仕方ない、と諦めてしまってはチームの
    前進はない。

    だからといって、これをあまり厳しく打ち出し過ぎると、本音を言わなくなる。
    ウソがまかり通ったり、うわべのみを飾るようになれば、これまた形式の活動に
    終わってしまう。

    要は、言い訳や責任転嫁は認めないけれど「本音を出し合って真の問題解決を
    しよう。
    皆でより良い職場をつくり出そうよ」という姿勢・態度をはっきり打ち出す
    ことです。

    予定どおりコトが運ばなかった場合でも、ありのままの報告をすること。
    しかし、それは人を責めるためにすることではなく、現状を正確に認識し、
    どうすべきかの衆知を集めるためにするのだと、繰り返し知らしめることです。

    活動に参加した上司が、悪い発表を聞いて怒鳴ったため、二度と本音の出なく
    なった事例もある。
    「本当の話をして、悪い発表しても決して怒らない。ウソをついて悪さを隠し
    たり、やるべきことを怠けたり、手抜きしたときこそ厳しく指導する」ことを
    幹部心得としたいものだ。

   ②意識の垣根を取り払う努力
    一般的に日常の仕事の中で発生する問題は、どこに原因があり、またどうすれば
    解決できるかは、当事者には大体の見当がついていることが多い。
    しかし本当のことを言わないという身内意識、仲間意識が働くのです。

    日本人の特性かも知れぬが、身内と外部の者との間に意識の一線を引き、内部の
    事情を外部に漏らさないよう結束する習性があるのです。
    この集団心理がプラスに働けば大きい力が発揮できるが、逆にマイナスに作用
    すると問題解決をこの上なく困難なものにしてしまう。

    往々にして上司は、部下からシャットアウトされ部外者として扱われやすい
    ものです。
    それだけに、メンバーの中に溶け込む努力が必要となる。

    しかし当人がどんなに努力をかけても、立場上おのずから限界はある。
    また溶けこむといっても、完全に仲間レベルにまで成り下がってしまえばリーダ
    ーシップの発揮は不可能となる。

    要は、現場の空気を肌で感じ取れる努力を続けることです。
    現地・現場・現品主義を実践することで、「事実を知っている。事実を知ろう
    としている」姿勢・態度が通じ、当事者の意識の垣根を取り払うことに大きい
    助けとなるはずです。

  (2)推進力の強化(実行の仕組みづくり)
   問題のとらえ方も良い、原因も明確だ、そしてどのように解決したら良いかも
   分かっている。
   しかし、なかなか思いどおりに実行できない、実行したが続かないという例が多い。

   人間はもともと実行力薄弱者なのです。
   良いと頭では分かっていても、つい楽をしたい気持ちになったり、目先の忙しさを
   理由に逃避しがちなものです。

   したがって実行の仕組みをつくることで、一方では怠け心に歯止めをかけ、他方
   では意欲を喚起する刺激を与えることです。

   ①やらざるを得ない実行の仕組み
    a.有言実行の環境づくり実行項目の宣言、また実行度のチェック。
     殊に実行項目を「約束手形」として各人別に一覧表とし、会議の中で全員が、
     ○(良い)、×(悪い)、△(普通)の相互チェック・評価を行う。
     評価を素直に受け、明るい雰囲気で行うことがコツ。

    b.個人の実行について自分の弱い心との闘いだけに、その点を補充していく
     には、
     ・誰かとペアを組んで相互にフォローし合う。
     ・誰かにチェックを依頼し厳しい指摘を受ける。
     等の方法を工夫してみること。

   ②やる気喚起の仕組みづくり
    問題解決をチーム力で軌道に乗せ前進させるためには、「取り組みやすく」
    「自分にとってプラスになる」「自らやってみよう」という気持ちを抱かせる
    ことです。
    そのためにはゲームの要素を取り入れ、多少の演出も必要です。
    ある会社の実例であるが、提案制度活性化を目指して提案コンテストを行った際、
    目標設定〜スローガン募集(商品つき)〜ポスター・予実績グラフの職場内
    掲示〜朝礼での実績発表〜表彰等やり方の工夫で、提案件数が大幅に上がった
    例もあります。

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経営体質強化

会社の栄枯盛衰は社長で決まる

会社の栄枯盛衰は社長で決まる

■業績はトップの判断と行動で決まる
 企業の業績は、トップの釆配の振り方で決まる。
 何が大事かの判断を誤ると、いくら社員が懸命の努力を払って働いていても、効果は
 あがりません。

 何が大切かといっても、現代のように情報が多い時代では、その価値判断に迷ってしまう。
 どれが大事で、どれが良いかの判断がつかない。
 それも、地に足のつかないやり方で、情報を他に追い求めているから、なおさらです。

 一番身近な情報とは、外部から来る郵便物と、内部から出す書類である。
 これらを中心として、業務活動をしているのであるから、郵便物は全部トップが閲覧して
 価値判断をし、必要な指示をしていかねばならない。

 これを視野の狭い若手社員やミドル層にやらせるところに問題があるのです。
 社員に対しても、何が良いのか、悪いのか、行動の基準と勉強すべき事柄を指示して
 やらなければ、これまた情報過多の中で自分のペースで、自分の能力と、自分の判断を
 中心とした行動にのみ頼っているだけに、自信をなくしてしまいます。

 トップは率先して足で歩き、自分の目でも のを見、価値ある判断と行動について、高い
 視野から社員を指導しなければなりません。
 農業と同じように、自分の目で見、足で歩いて細かい点を注意していくことです。

 理論や計画だけでは業績は上がらない。
 常にやり方を見ていくのです。
 報告だけに頼っていては、全て間違ってくる。

 トップは先頭に立つ気迫が大切です。
 「できなければ、俺がやってやる。俺について来い!」という気負いと自信が、やはり
 第一であるといえるでしょう。

□中小企業の活力
 中小企業とは、いつでも誰でも、ところを問わず事業を始められる。
 そこには企業がひしめいています。
 設備投資も少なく、創業者に信用力と販売力と技術の何かがあれば簡単に取り組めます。

 最近では特に大きな技術革新によって、新事業を興す機会は増えています。
 その反面、アウトになる危険も増大したといえる。
 技術革新によって種々の新しい材料が生まれました。

 複雑な経済機構から要求される特殊なサービスを考え出せば、いくらでも事業は創造
 できる時代になりました。
 しかし創業すれば必ずうまくいくとは限りません。

 生まれるのが簡単なだけに潰れるのも早く、生き残る確率は少ない。
 同業者のどこよりも、頭と身体を使っていく必要があるのです。
 目的意識に徹した行動をとります。

 つねにその目的は何かを考えて、それに合うように行動することにより、一番合理的な
 やり方がそこから生まれてくる。
 “転んでもただでは起きない”。

 経営活動のすべては、どうすればもっと会社にプラスになるかと考えることから始まります。
 すなわち、すべてに利益の裏付けが必要なのです。
 業績を上げるにはと考え、それに結びつけて行動する。
 考える。

 漫然と無目的に、何の考えもなしに無意議に行動をしていれば、いくら経験を積みあげ
 ても進歩にはなりません。
 経営するというのは、ヒト・モノ・カネ・ジョウホウという要素を使って、販売・生産・
 経理・労務・その他の機能をうまく管理することではないのです。

 投下した要素で最大の効果をあげるのが経営なのです。
 企業の善し悪しは、資本金や売上げや従業員数の大小ではない。
 ある いは高い学歴の人数や、目先の利益そのものでもない。

 大きく強いものが小さく弱いものに敗れた実例を、人類の歴史は数多く教えてくれています。
 要は、一つの目的に向かって、全員の力がいかに結束し集約されているかが判定の基本
 なのです。
 力が結束しているから、どのような経済や産業構造の変化にも速やかに対処できるのです。

 つまり小回りがきくから、好況の波にも先手をとってうまく乗りやすい。
 また全員がアンテナになって時代が求める商品やサービスについての情報活動を行って
 いるから、新分野への進出や新製品開発についても、手の打ちどころが早く、撤収も
 時機をのがさない。

 既成の基準でものを考えるから、ヒト・モノ・カネ・時間・空間の能力と機能に限界を
 感じるのです。
 この枠をはずして考える。
 こうと決めてしまったところからは進歩はない。

 無限の可能性を信じて行動に移す。
 希望と目標の焔(ほのお)を点じて、全社員の力を結集するのです。
 大会社は人間洪水の中にあって、真に会社を憂い考える人材に飢えている。

 かつて日本資本主義を代表した石炭・紡績企業は、歴史の必然性からその産業はどうなるか
 について多くの社員が知っていながら、転換に踏み切れなかった。
 知っているだけではダメなのです。

 真の人材とは会社の業績を考え、永遠の発展を希求して行動する人たちです。
 中小企業は人材が足りないのではない。
 みんなの気持ちを一致させるには、少人数の中小企業こそ一番条件に恵まれているのです。

 マンモス企業や役所には優れた中小企業のように、一致団結して目標に挑戦しようという
 姿はありません。
 それ故に秀才を集めた大企業が斜陽産業となって没落していくのです。

 洪水の中に飲み水はなく、権力機構に頼る組織の中には実行のための権威はなく、何も
 できません。
 権限とは、結果において示された能力に対して与えられるものです。

 組織とは、その人の能力に応じて決められるべきものだからです。
 中小企業の本質を知れば一番やりやすい、一番儲けやすい企業が中小企業なのです。
 そしてそれも、一番理想的な姿は創業の当初に立ち返って考えてみれば、そこに答えは
 あるはずです。

 中小企業の本質を知ろう。
 そしてそれを伸ばしていくのです。

□社長の課題
 不透明な環境下にあって、経営の打つべき手は複雑で難しい。
 これに対処するやり方として、ちょっと古いがピーター・F・ドラッカーの発想法を
 活用してみましょう

 1.第一になすべきこと
  現在の資源と人員を用いて、できる限り最高の経営成果を上げること。
  ないものねだりをしていても、解決にはならない。
  まず行動。
  それも現状において最大限の努力をせよというわけです。

 2.必要なもの
  (1)この時にあたり経営者の職務とは何かを、もう一度考えてみること。
  (2)そのうちでも何が一番大切かを調べる。
  (3)直面する問題を見極め、分析する原理はないかを研究する。

 3.知るべき事柄
  (1)企業の持つ資源(ヒト・モノ・カネ・時間・環境)と努力を、経済的に意味の
   ある成果を生み出す機会をつくる方向に向けさせる。
  (2)能率性ではなく、効力度、価値領域を見極める方法で考え、それに向いての
   努力を、集中するやり方は何かを見定める。
  (3)企業は自然現象でなく、社会現象であることを認識する。
   社会現象では、事柄が正規分布を示さない。
   つまり異変があるものである。

 4.企業のあるべき姿
  (1)適正な収益を確保しているか。
  (2)労使関係は安定しているといえるか。
   社員が結束して、どのような困難な問題にも立ち向かう活力に満ちているか。
  (3)新製品開発や研究開発の力は十分か。
   エネルギーや材料が不足するなら、これからの時代が要求するものを、提供できる
   ように努める。
  (4)会社の成長力、競争力に自信があるか。
  (5)組織の力と企業内のパイオニア精神に不足はないか。

 改めて自社をとりまく内外の環境変化を見定め、問題とすべきものは何か考えてみましょう。

□倫理と経営
 かつてロバート・ケネディが凶弾に倒れて、ケネディ家の悲劇についていろいろ言われた。
 若者だけでなく数多くの学者・財界人の支持を得ることができなかった理由の一つに、
 ケネディ家の富を築く手段がひんしゅくを買っていたことが挙げられています。

 わが国でも“義理かく” “恥かく” “人情かく”の三カク主義で巨富を築きあげた安田財閥の
、安田善次郎が刺殺されているが、ビジネスに徹し、商売に私情を入れることを拒んだ彼の
 考え方は、現在では理解されるとしても、当時では受け入れることが難しかったのでしょう。

 人の性格・人生行路・日常生活そのものを決定するのは、当人の考え方です。
 どのような人生観・仕事観・職業観・事業観を持つかによって、その人の一生も、事業も、
 決定されるといってよいでしょう。

 経営に携わる者が知っていなければならない基本が2つあります。
 1つは経営の仕方、すなわち、手段であり術である。
 もう1つは経営のルールであり、教えであり、意図する目的である。
 これを道という。

 目的のためには手段を選ばぬというが、これでは長続きしない。
 試合といい勝負という闘いには、みな公平のルールがある。
 卑怯なやり方をせず、フェア・プレーで力を争うのです。

 商人には商人道があり、経営者には、経営者として同業者・仕入先・得意先・銀行・
 従業員・公共社会に対して責任と義務があるのです。
 己一人の立場を考えての行動は許されない。

 商売というテクニックには、かけひきやいろいろな技術がある。
 しかしそれより先に、事業を経営する者として、商いに打ち込むための行動の基本となる
 理念がなければならないのです。

 約束をたがえぬということが、武士道の基本であったのと同じく、経営者にとっても、
 それは信用の基礎でもあるのです。
 つくる人も、売る人も、使う人もみながみな利益を得るように持っていかなければ、
 恒久的な繁栄はあり得ない。

 術とは人間性や道徳を超越したものですが、道には、人間性があり哲学があるのです。
 事業経営は、企業の永遠の発展を期するためのものでなければならない。
 そのためにも、正しい利益の追求をしなければならないのです。

 罪悪意識のあるやり方では真の発展は遂げられません。
 それらはたとえ巨富を築くとも、虚業家といわれ、蜃気楼的な繁栄にしかすぎないのです。
 事業活動について正しい基礎がないからです。
 経営道を知らないからです。

 人の値打ちは、金と時間のつかい方で決まるといわれます。
 経済力だけがすべてではない。
 また経済力が優れていれば何をやってもよいというものもない。
 経営者には、社会に対して責任と義務があるのです。

□経営者の能力
 企業は人なり、とは古くから言い伝えられた言葉です。
 たしかに、業績は従業員の職場活動の結果ではあるが、突きつめていけば、経営者の
 経営能力です。

 個々人の能力がいかに優れていても、それを一つの方向に集約させねば、業績につな
 がりません。
 また、集団のチームワークがうまくとれていないと、3割打者は出てもチームは勝て
 ないし、能力はあってもやる気のない者は、戦力にはならないのです。

 経営の人的能力を考える時は、個々人の能力を、どう組織づけ、それを集団の力として
 どう発揮させるかです。
 個人能力は、まず、体力と健康です。
 そして、知識と技量と経験がなければならない。

 それは本人が持っている知識、技能修得への意欲と性格を見て、企業が意識して行う
 教育と、職場経験を通して身につけさせる。
 そして、その個人能力をより拡大させるような環境条件を、経営者としてはつくりあげる
 ようにする責任があるのです。

 職場の人間関係、協調性が生み出せるような人的配置、快適な職場環境づくりなど、
 人的関係を考えていくことをチームワーク、すなわち集団値ともいいます。
 そして、各人の能力を一杯に発揮できるような仕組みを備えることです。

 これが組織づけ、あるいは広い意味での動機づけといわれるもので、各人がやる気を
 起こす誘因となる諸制度と、その運用のやり方をいいます。
 基本的には経営理念、経営方針など、社員としてあるべき徳育の問題であり、直接的
 には処遇・昇進評価のやり方など、努力すれば本人が得になる刺激のやり方です。

 また、その企業内における社員の行動のあり方についても、何をもって善となし、何を
 もって悪とするかの基準が正しくなければ、いびつな考え方や行動が横行することになる。
 その関係を算式に表すと、経営の人的能力(作業能率)は、個人能力(知識・技能・経験)
 に組織づけ(労働意欲)と集団値(状況と態度)とを掛けたものです。

 企業は人なりというが、その人を活かせるようにするのもしないのも、経営者の能力に
 かかっているといえるでしょう。

□苦節が人を鍛える
 順調に、まっすぐに伸びている樹木よりは、風雪に耐え、成長を抑えられた木々のほうが
 強い。
 竹には節があるから、急速成長にかかわらず粘りがある。

 苦労人というのは、苦労という節にぶつかって、悩み、苦しみ、それを通り越すことに
 より、人間の機微がわかり、ひと回り大きく成長していくのです。
 企業もまた然りで、幾多の苦節を切り抜けることが、企業体質を頑健なものにしていく。

 不渡手形を掴まされた経験のない者は、営業幹部にしないという会社があるが、それは、
 その経験を持つものでないと、セールスの怖さを知らない、つまりセールスとしての節が
 必要だということからです。

 人の扱い方も、能力の限界に挑ませて節をつけさせることです。
 しかし、あまり苦労の連続であると、自信をなくし、いじけ、つぶれ、あるいは退職
 という形で逃げてしまう。

 過保護であってはいけないとしても、どう節をつけさせるかが、部下を持つ人の能力だと
 いえるでしょう。
 将来、企業を背負う幹部には、あえて難しい経験をさせていくことです。

 短い期間に苦節を与えるには、シーズニングとかエッジングのやり方を応用することです。
 つまり、変節の機会を数多く与えるようにしてやるのです。
 「企業にとって、乱世の経済状態ほど幹部を鍛え、商人としての考え方、行動法を教える
 に適した時はないと思う」幹部も変われば、企業体質も変わる。

 質的な転換をする節が、今なのです。
 この変化の激しく、困難な情勢を反面教師として、質的成長を勝ち取るために、社長は
 陣頭指揮の態勢をもって、きめ細かい指導、つまり小節を利かせたやり方を
 していかねば
 ならないのです。

 「天の時、地の利、人の和:(孟子)」を勝ち取る時です。
  幹部が平社員と同じように休日や余暇を楽しむ時ではない。

□安易な妥協は禁物
 その道で大成する人は、その道一筋に人生をかけ、知恵を働かせ、努力してきた人です。
 人間の一生は、自分自身の持つものの考え方と判断によって方向が決まる。
 繁栄も衰退も運ではなく、現代をいかに捉え、どのように未来を予想し、そして、どれだけ
 真剣に生きようとしているかによって決まるのです。

 要は、どのような考え方を持ち、その考え方を一生追い続けるか、生活態度、心掛けの
 あり方が運命を決めるといえるでしょう。
 経営者にあっては、正しい考え方、正しい製品、正しい市場、そして正しい事業家的な
 夢と企業家的な勇気を持って、筋を通していくことです。

 一時の機に投じ、目前の利に走り、功を焦り、偽りの行動をとる。
 このようなことはいつまでも通せるものではない。
 また、他人から誤解や反感を受けるのを嫌い、現状に妥協していく人は、結局は、何も
 しないで役に立たぬ人間になっていくだけだ。

 己をかえりみて「やましからずんば、千万人といえどもわれゆかん(孟子)」の気概が
 なければならない。
 右往左往するのではなく、あらゆる困難に全力をあげ、ぶつかっていくところに、
 道おのずから通ずるようになるものです。

 “運は曲がらぬ道にあり”とは、古今東西、老若男女、経営者、管理者、一般社員を問わず、
 通じる格言といるでしょう。

□最もよく奉仕するものが最も多くの利益を受ける
 多くの人たちに親しまれている、このロータリーの有名な言葉は、確かに人の世の真理を
 ついていると、事あるごとにそう思う。
 自我を主張しうるところには、奉仕という考え方はない。

 夫婦の間でも、親子の仲でも、それは愛情という言葉で表しているが、愛とは、相手に
 善かれと惜しみなく与える、つまり奉仕をすることをいうのだと思います。
 奉仕とは、英語ではサービスという。

 サービスとはなかなか難しい言葉ですが、お客様にもっと喜んでいただけるように、
 お客様あってのわが社という感謝の念を込めて、物的な面、あるいは労働力など、隅々まで
 有形無形の心配りをすればするほど、自社の固定ファンができ、それが商売繁盛につながる
 のだと思います。

 会社勤めでも、会社のためにより多く努力し貢献する者が、より報われるのは当然です。
 結果にはすべて原因がある。
 より良い結果を期待するためには、それらを実らせるような種子まきが必要なのです。

 さりとて、サービスをしたからすぐその代償が期待できるというものではない。
 奉仕とは、あくまで代償を求めない、純粋な発想から出たものでなければならない。
 世のため、人のために奉仕する。

 そこには、 自らの心の安らぎと満足感がある。
 「徳、孤ならず」ともいう。
 無私、無欲な奉仕は、必ずやどのような人の心を打つに違いない。

 必ず、いつの日にか、それに対する評価が生まれてくるはずです。
 われわれは商人として、そして人間として「最もよく奉仕するものが、最も多くの利益を
 受ける」という、この言葉を熟読し、かみしめるべきでしょう。

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経営体質強化

会社の繁栄

会社の繁栄

■自社の成長と繁栄
 会社の成長は、限られた経営資源を活用して、限られた時間内で効果的・効率的に競争力 
 強化を図ることです。
 自社の強みを伸ばし、「突出した優れた能力」にまで高め続けることです。
 「突出した優れた能力」というと抽象的ですが、簡単にいうと「どの企業にも負けない
 自社の得意分野」あるいは「『○○といえば、この会社』といわれるような強み」をつくる
 ということです。
 この成長し続けることが、自社繁栄の基本となります。

□会社繁栄の原則
 企業繁栄の原則は、いろいろな人がいろいろな見解を示しています。
 企業は、例えば社長と社員三人といったようなごく小さな零細企業から、上は社員が何万人
 もというビッグビジネスまであります。
 これらの企業に共通する企業繁栄の原則はと問われると、なかなか難しいといえます。
 人によっていろいろな考え方や捉え方がありますが、次の三つが原則といっていいでしょう。

  1.社内の結束を堅くすること
  2.変化に敏感で迅速な対応をすること 
  3.コンプライアンス(法令遵守)経営を推進すること 

 以上、3点です。
 この3点を具体的な施策に転換して会社の中で実践すれば、会社は継続的に繁栄すると
 断言できます。 

 1.社内の結束を堅くすること
  社内の結束を堅くするということは、全社員が一体となって力を合わせることです。
  一体感の強い会社ほど攻めにも守りにも強さを発揮します。
  どんな困難がふりかかってきても全社員が一枚岩となって当たれば、耐え忍んで逆に
  跳ね返すことも可能です。 

 2.変化に敏感で迅速な対応をするこ
  変化に敏感で迅速な対応をするということは、会社は環境の変化に適応することが
  生き残る道だということです。
  進化論で有名なダーウィンが、 「強いものが生き残るとは限らない知恵のあるものが
  生き残るとは限らない変化するものだけが生き残る」との名言を残していますが、
  これは企業の存続にも当てはまる大原則といえます。

 3.コンプライアンス(法令遵守)経営を推進すること
  コンプライアンス経営の推進とは、今の時代、法令を守らない会社は、社会から厳しい
  糾弾を受け、下手をすると倒産に追い込まれかねません。
  名門の繊維会社が破綻し、公認会計士が粉飾決算に手を貸していたケースは、正に
  コンプライアンス経営をないがしろにしたケースです。 
  したがって、以上述べた三つの原則は、企業繁栄の基本原則です。 

□企業繁栄のための背骨づくり
 前述の三原則を大前提として、より具体的に企業繁栄の施策を考えてみましょう。 
 好業績を上げている会社は傍目でも活気が伺えます。
 会社を繁栄させるためには、骨組みが必要になります。
 この骨組みをきちんと築き上げないと、どんな施策も活きません。

 企業繁栄の骨組みとは、以下の5点です。
  1.未来のビジョンの明示 
  2.待遇改善目標の打出し 
  3.社長と幹部のリーダーシップ力の向上 
  4.社内コミュニケーションの徹底 
  5.改善・改革運動の推進 

 この基本的な骨組みが企業風土の中に組み込まれることによって、いろいろな施策が
 活きてきます。
 逆にこの基本的骨組みがほとんど根付いていない会社では、何をやっても付け焼刃的な
 ものに終わってしまいます。
 以下、この5点についてそのポイントを簡単に述べてみましょう。

 1.未来のビジョンの明示
  心ある社員は、 自分が働いている会社の将来に強い関心を持っています。
  将来的な夢を持てない会社だと、若い社員は転職を考え、中高年社員はあきらめムードで
  活力が出ません。

  会社は将来こういう方向に進んでこうなるんだというビジョンがあれば、 それなりの
  動機づけになります。
  しかし、それだけではダメで、大切なのはビジョンの実現に向かって会社が動いている
  という実感を社員が肌で感じることです。 

  中小企業の場合、ビジョンがなくても儲かっている会社はいくらでもあります。
  社長に商才があれば、社長一人の働きで儲けることができますが、残念ながら一代で
  繁栄は終わりということになりがちです。

  次の社長に商才があれば別ですが、そうでないとアッという間に衰退してしまいます。
  ビジョンを明示して、みんなでその実現に努力し、業績を上げるほうが、長い目で
  見れば競争力は強いといえます。 

 2.待遇改善目標の打出し
  社員の待遇をどうするかは、経営の根幹に関わる問題です。
  コストの中で金額が一番張るのは人件費です。
  一方、社員にとっても待遇問題は一番の関心事です。

  家族を養い豊かで潤いのある生活を築くには何といっても先立つものが必要です。
  会社としては、総人件費は低く、一人当たりの人件費は高くという二律背反の命題に
  挑戦してこれを克服しないとコストを下げ、社員のモチベーションを上げることは
  できません。

  待遇改善は、業務の改善や合理化なしでは実現できません。
  一人当たりの人件費を高くということは、当然のことながら一人当たりの生産性を高める
  ことでもあります。

  ムダを徹底的に省くことでもあるのです。
  このように業務の標準化を徹底的に進めなければ待遇改善は難しいという課題が見えて
  きます。

  また、業務の徹底した標準化があってこそ、何がムダで、何がムラで、何がムリか
  ということが見えてきます。
  この“ダラリの帯”を断ち切ることがスタートです。

  ですから待遇改善は、徹底した業務の標準化を推進することに繋がるのです。
  正直いって、会社は利益を上げなければ何もできません。
  利益がでれば、給与を上げることも、賞与を多く出すことも可能です。
  まずは標準化を進め、ムダを徹底的に除くことが利益を生み出すポイントです。

 3.社長と幹部のリーダーシップ力の向上
  社長や幹部が自らのリーダーシップ力向上のため努力していれば、自然とそれが社員に
  伝わるものです。
  リーダーシップ力とは、複数の人からなる集団を一定の方向に引っ張っていく力です。

  リーダーシップ力向上によって全社員のベクトルを合わせ、トータルパワーを最大に
  限りなく近づけることが可能となります。
  リーダーシップ力の中身は何かを考えてみると、社長と幹部のリーダーシップ力に強く
  求められる点は、次の7点です。

   ① 意思決定のスピードアップ 
   ② 強い信念を持って仕事に取組む 
   ③ 部下の働きに対する公平な評価 
   ④ 明確な指示や方向性を伝える 
   ⑤ 面倒見がよいこと 
   ⑥ 部下の意見を聞く耳を持っている
   ⑦ 率先垂範を自ら実践する 

  この7ポイントの実践に努力すれば、リーダーシップ力は必ず向上します。
  リーダーシップ力は、上司と部下の信頼関係が堅いほど発揮しやすくなるからです。

 4.社内コミュニケーションの徹底
  風通しのいい組織、すなわちコミュニケーションが行き届いている会社ほど一体感が
  強く、意思決定も迅速に行われます。
  そういう企業風土を創り上げることが重要です。 

  そのためには次の5点に留意して企業風土を改善していくという強い意思が必要に
  なります。

   ① 本音で話し合える雰囲気づくり 
   ② 会社の現況を社員にこまめに伝える 
   ③ アフター5の活動を活発化する 
   ④ 懇談会、研修会の計画的開催 
   ⑤ 管理職の意識改革 

  本音で自由に話し合えるというのが、コミュニケーションを徹底する一番のポイントです。
  トップは自らがそういう雰囲気づくりに努力しないと難しいでしょう。 
  会社の現況もこまめにオープンにすることが大切です。

  それによって社員は自分達が働いている会社の情報を共有できる訳です。 
  アフター5のコミュニケーションも大変重要です。
  IT技術の進歩とパソコンの普及により、メールでのコミュニケーションが増えて
  います。

  人と人との関係が無機質になっていますからフェイス・トゥー・フェイスのコミュニ
  ケーションがますます重要になっています。
  一杯飲んでの触れ合いがコミュニケーションをより深くします。

  職場懇談会や研修会を計画的に開催することもコミュニケーションを深めるために
  必要です。
  同じ職場の人や他の職場の人の考え・意見に触れて、啓発される機会が増え、参加者の
  成長を促進します。 

  社内コミュニケーションの徹底に最も必要なのは、管理職がその気になって気配りを
  することです。
  コミュニケーションの悪いのは自分達の責任という意識を持つことが必要です。

 5.改善・改革運動の推進
  人は共通の体験をすることにより、強い連帯感を持ちます。
  共通の体験には遊びや趣味やスポーツ等々いろいろなケースがありますが、仕事に
  関する共通体験が連帯感を強める一番のポイントのようです。

  苦労して一緒に仕事を成功に導いたという喜びが、誇りにも強い連帯感にもなります。
  その一番効果的な手法が、全社員を巻き込んでの改善・改革運動の推進です。
  この運動の流れは、図の通りです。

  以下、この図にしたがって説明します。 
  まず、全社員にこの運動の目的や狙いを徹底する必要があります。
  なぜこんな運動を展開するのか、改善や改革によりコストを下げて効率を上げることが
  目的であり、狙いであるということです。  

  次に統一テーマを決め、全社員を5〜7人ぐらいの小グループに分け、グループリーダー
  を決めます。
  そして、事務局を任命し、その役割をきちんと定めることです。

  運動の期間と予算を検討し、各グループに計画を立案させ、発表会を開催します。
  ここまでが実践前の手続きで、これが終了したら実践に入ります。 
  通常一年くらいの期間で一つのテーマを追求するケースが多いと思います。

  準備と計画立案に1、2ヵ月はかかるでしょうから、実践の期間は 10ヵ月強くらいに
  なります。
  期間が終了したら成果の検証と表彰をして一サイクルとなります。  

  要は全社員を巻き込んで小さな発見、小さな改善の積み上げをするということです。 
  これにより、メンバー間の連帯感を強め、改善努力という成果体験を共有し、さらに
  一体感を高め、業績向上に繋げるというシナリオです。 

  動機づけとは常に何らかの刺激を与えることです。
  この運動を通じ全社員に活を入れることができれば成功ということになります。 


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経営体質強化

ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

■自社のコンセプト
 会社経営においてコンセプトを確立することは非常に重要です。 
 コンセプトが不明確であると、経営における様々な場面でブレが生じる要因となり、
 営業においても、見込み客、新規顧客の心をつかむことが困難となり、リピート客へも
 不満や不安を与えることになります。   

 コンセプトを明確にする際には、その商品・サービスを、どのような相手に、どのように
 販売するか、を設定することです。  
 自社の考え方を相手に伝える際にもよりわかりやすく表現することができます。  
 顧客ニーズが多様化・複雑化している現在、販売の土俵を決めて戦力を集中しなければ
 なりません。  

 万人を対象に、あなたの扱う商品・サービスを販売すべきではありません。
 市場のどこで勝負をかけるか、「販売する土俵」(他社と違う土俵)を設定することが
 ポジショニングです。

□ポジショニングマップの使われ方
 自社の商品の特徴や企業特徴を、競合商品、競合他社との比較で明確にしておくことは、
 他社と競争していくうえで大切な分析です。
 競合他社に比べて自社の特徴はどこにあるのか、消費者は自社の商品・事業のどこに
 他社との違いを認識しているのかを知ることが差別化につながっていくのです。

 競争している市場において、自社の商品がどのようにお客さまから認識きれているのか、
 消費者の心のなかに、他社の商品と比較して自社の商品がどのような位置を占めるのか、
 こうしたことを知るために使われるのがポジショニングマップです。
 また、ポジショニングマップは、多数ある商品の特徴をわかりやすく示す場合にも使われて
 います。

 いくつかのわかりやすい事例を見ていきましょう。
 たとえば、噂好品である飲料では、商品の特徴を嘉すために他商品との違いをわかりやすく
 示したポジショニングマップが使われます。
 よく目にするポジショニングマップのひとつにビール会社のものがあります。

 たとえば、
  ・縦軸に「ソフトで軽い味」⇔「豊かでコクのある味わい」
  ・横軸に「シャープな喉越し」⇔「穏やかな口あたり」
 と軸をとって、4 つのマスに自社や他社の商品を位置づけて、自社商品独自の特徴が
 どこにあるのかを示すものです。

 日本酒でも、香りと味の 2 つの軸を利用して日本酒のタイプをポジショニングできます。
 たとえば、
  ・縦軸に「香りが高い」⇔「香りが低い」
  ・横軸に「味が濃醇」⇔「味が若々しい」
 と軸をとり、4 つのマスを利用してその日本酒の特徴を示していきます。

 香りが高いグループのうち、味が濃醇なタイプは「熟成タイプ」、味が若々しいタイプは
 「香り高いタイプ」に分類されます。
 一方、香りが低いグループのうち、味が濃醇なタイプは「コクのあるタイプ」、味が
 若々しいタイプは「さっぱり軽快タイプ」です。
  ◎日本酒のポジショニングマップ例

 もうひとつ、コーヒー豆のポジショニングを考えてみましょう。

 コーヒー豆の販売店が、 自店でブレンドした4つの豆の特徴を明確にしたいとします。

 4種類の豆はブルーマウンテンブレンド、ストロンダブレンド、フレンチブレンド、

 モカブレンドの4種です。

 どのようなポジショニングが考えられるでしょうか。 

 もっとも大切であり、かつ、もっとも難しいのは、軸の選定です。
 どのような軸を選定するかでポジショニングの出来不出来が決まってしまいます。 

 コーヒー豆の場合は苦味と酸味を軸にポジショニングすることが一般的な方法です。

  ・縦軸に「苦味が強い」⇔「苦味が弱い」

  ・横軸に「酸味が強い」⇔「酸味が弱い」

 と軸をとります。

 これにより4つのブレンドの特徴がポジショニングされます。 

  ◎コーヒー豆のポジショニングマップ例

□中小企業のポジショニングマップ例

 前項では、商品の特徴を示す例を挙げましたが、ポジショニングマップは自社の事業や
 店舗が「お客さま」「消費者」「顧客」からどのように認知されているのかを客観的に
 分析し、今後どのような方向性で事業を展開していけばよいのかを考察する手段にも
 利用されています。

 事業や店舗のポジショニングマップを、中小企業の事例を紹介しましょう。

 1.酒販店のポジショニングマップの例

  規制緩和の影響やディスカウントストアの登場で、厳しい経済環境に置かれている
  のが、商店街の一角などにある一般酒販店です。

  お客さまは「安さ」にひかれてビールなどをディスカウントストアで購入することが
  多く、一般酒販店は何か特徴がないとお客さまにとっての魅力が少なくなっています。


  そこで、ポジショニングを明確にすることで自店の特徴をつくり出した例を紹介します。

  東京・足立区に数店舗展開している一般酒販店であるS社は、自社のポジションを
  つかむための分析を行いました。

  まずは競合の分析です。

  酒を販売している競合店には、酒のディスカウントストア、総合スーパー(GMS)や

  百貨店の酒売り場、コンビニエンスストア(CVS)、一般酒販店、食品スーパーなどが
  あります。

  これらの競合をポジショニングしていくにはどのような軸が使えるでしょうか。

  S社は、価格と品揃えを中心にした軸を考えました。

  縦軸には「高価格」⇔「低価格」をとり、横軸には「専門的な品揃え」できめの細かい
  サービス⇔「総合的な品揃え」で利便性重視のサービスをとり、この2つの軸からなる
  4つのマスにそれぞれの競合店を位置づけていきました。

  たとえば、GMSは低価格で総合的な品揃えであり、CVSはどちらかというと高価格で

  総合的な位置づけです。

  このようにして下記のようなポジショニングマップを作成していきました。

  ◎酒販店のポジショニングマップ例

   一般酒販店は中心に近い位置づけで、特徴なく差別化されていないポジションに
   あります。

   このポジショニングマップを見ていると、S社が向かうべき方向が空白の部分、つまり、
   専門的な品揃えで高価格・高級志向な店であることがわかります。


   すなわち、

    日本酒やワインなど、
    販売に際して専門知識による説明を必要とする商品に特化していく

   というポジションが見えてきます。

   実際にS社は、このポジショニングを意識して商品の品揃えを日本酒に絞り、

   各銘柄にその日本酒の説明を付けて販売していく方法をとりました。

   日本酒の説明には、前項で例示したような香りと味のポジションを示した説明書を
   付け、お客さまが楽しみながら日本酒を選べる工夫をしました。

   ほかにも意欲的な酒販店仲間とプライベートブランドの開発を行ったり、店内で

   日本酒を楽しむ会を開催したりするなど、日本酒の専門店として自社のポジションを
   築くことに成功しています。


 2.レストランのポジショニングマップの例
  レストランも自店のポジションを知ることで他店との差別化を行うことができます。
  食品ですので、一般に縦軸には味に関連した軸を、横軸には時間を意識した軸を
  使用します。
  つまり、縦軸には「味を重視」⇔「ボリュームを重視」、横軸にはお客さまの時間に
  対する意識を視点に「早く食べたい」⇔「ゆっくりと時間を楽しんで食事したい」の
  軸項目を設定してみます。

  そして、自店の競合であるファストフード、ホテルのレストラン、定食屋、居酒屋、
  立ち食いそばや、高級割烹などをポジショニングしていきます。
  ファストフードはボリューム重視で、早いポジションに、ホテルのレストランは
  味重視で食事を楽しむポジションに位置づけられます。

  お客さまのニーズがあり、競合店がそれを満たしていないポジションに自店を位置づける
  ことができれば、お客さまから認められる差別化されたレストランとなることが可能に
  なるでしょう。


 3.薬局のポジショニングマップの例
  少し変わったポジショニングマップの例として、東京・北品川にある薬局「薬日本堂」の
  例を見てみます。
  この薬局は、薬といっても漢方薬に特化した薬局です。
  ポジショニングとして、縦軸には品揃えを、横軸にはお客さまのニーズをとって検討
  してみましょう。

  薬を扱うお店には、薬剤師がいる一般調剤薬局、安い価格で勝負のドラッグストア、
  GMS 店舗内の薬コーナーなどがあり、さらに一部の薬は CVS でも販売しています。
  漢方薬は専門店が昔からの古い店構えで販売している場合が多いでしょう。
  さらに、クリニックなどで専門に販売されている薬もあります。
  品揃えの軸で見ると、一般調剤薬局、ドラッグストアなどは幅広い総合的な品揃えを
  しているポジションです。

  専門的な品揃えのポジションとしては、特殊なクリニックや漢方薬専門店などが存在
  します。
  横軸にとった「お客さまのニーズ」については、
  「重症の病気を治したい」ニーズ⇔「軽症・健康維持」ニーズという軸項目で分けて
  みます。

  専門性の強い漢方薬やクリニックでは重症の病気を治したいというニーズのお客さま
  主体のスタイルです。
  ところが、薬日本堂では、重症でない「軽症・健康維持」ニーズのお客さまを対象に
  しています。
  従来の専門性の高い漢方薬居では存在しなかったポジションです。

  新たなポジションですので、店舗はガラス張りで明るく、漢方薬が中心ですがジャムや
  薬酒なども置くなど、漢方薬専門店という重苦しく古くさいイメージの店舗とは
  まったく異なった店舗で、健康志向の若い女性をひきつけています。
  お客さまの分析をして自社のポジショニングを行った事例です。


   ◎薬局のポジショニングマップ例

 4.素材メーカーのポジショニングマップの例
  最後に、製造業、それも素材メーカーのポジショニングマップの例を挙げておきます。
  素材メーカーの場合、世界的な総合メーカーといった巨大メーカーから、国内だけで
  製造している加工メーカーに近い存在まであります。
  軸として、素材の製品力を縦軸にし、技術内容を横軸にとっていきます。

  縦軸は「特殊製品」⇔「汎用製品」を軸項目とし、横軸は「素材に関連する
  技術」⇔「(その素材の)加工に関連する技術」を軸項目とします。
  一般に、新素材は特殊製品として登場しますので、製品が発売された時点ではその
  素材自体を取り扱う技術が重要となります。

  このポジションが「主用途市場」です。
  新たな製品を開発し続ける企業はこの位置にポジショニングされます。
  製品が大量に使われだすと製品は特殊製品から汎用製品となり、市場も「成長市場」
  として全世界に広がるとともに、世界的な規模でコストダウンが求められます。

  このポジションは世界的な大企業でないと維持できないポジションです。
  一方、世界規模の戦略が展開できない企業は素材技術ではなく加工技術に力を入れ、
  加工のノウハウによる「新規市場開発」を行うポジションをとるか、新たな特殊製品を
  開発する「先端技術市場」のポジションをとることが望まれます。

  この例からは、
  自社の経営資源、技術力に従ってポジションを変えていくことが、
  大企業でも必要なことがわかります。

  素材メーカーのポジショニングマップの例

□自社をポジショニングする方法
 自社のポジショニングをどのようなやり方で行うかについては、いくつかの方法が
 あります。


 1.縦軸、横軸をどのようにとるか
  すでに述べたように、ポジショニングでもっとも難しいのは軸のとり方です。
  本来はお客さまの意識にある軸を探り出して分析することが重要なのですが、よほどの
  大企業やそれをやるだけの価値がある事業でないとできません(ビール会社などは、
  消貴者のビールに対する知覚が最重要ですので、膨大なコストと時間をかけて分析を
  行っています。

  アサヒビールは 5000 人の消費者調査から「喉越しのよい、軽快ですっきりとした
  味わいのビール」の知覚を見つけ出し、ビールの噂好に変化を起こしました)。
  そこで一般的に使われる基準を参考にして軸を決めていきます。

   (1)商品特性によるポジショニング軸
    自社と他社の商品が一番訴えている特徴は何であるかに注目します(例:自動車の
    場合、スズキアルトは低価格を、ボルボは安全性を訴求)。

   (2)お客さまに提供するメリット、便益によるポジショニング軸
    商品がお客さまに提供するものは何かに注目します(例:同じ歯磨きでも、
    虫歯予防か歯を白くするのか)。

   (3)使用される状況によるポジショニング軸
    同じ商品であっても、使用される状況が異なる場合があります。
    たとえば、夏場の水分補給としてのスポーツドリンクは、場合によっては医療
    での水分摂取のために使われます。

   (4)使用者のグループによるポジショニング軸
    どのような人が使用するかによる区分です。
    男女、年齢などで区分できます。
    ベビーシャンプーを洗髪回数の多い人向けにポジショニングし直して、ヒット
    商品になった例もあります。

   (5)価格によるポジショニング軸
    高価格で提供するのか、低価格を特徴にするのかといった、価格を軸にポジショニング
    します。
    以上が軸を考えるヒントですが、 一般には、 前項の酒販店の例のように 「価格」と
    「品揃え」、あるいは「価格」と「サービス」といった軸が、中小企業の
    分析には便利です。


 2.自社のポジションをどこに置くか
  自社の特徴が自分でわかっている場合には、ポジショニングもしやすいはずですが、
  普通は自社のポジションがわからないからこそポジショニングをしていくという
  場合が多いと思われます。
  その場合、自社のポジションをどのように考えたらよいのでしょうか。

  自社のポジションがわからない=特徴のない会社になっている、という場合は、
  2つ軸の交点、つまり中心に自社のポジションをとります。
  中心から4つあるマスのどちらに進むかを検討していくのです。
  これが自社を差別化させる方向です。
  経営資源に限りのある中小企業の場合は、進むべき方向は決まってきます。

  たとえば、軸として「価格」と「品揃え」の2軸でポジショニングを行った場合、
  狙うべきは「品揃えを専門化きせて高価格で勝負する」方向です。
  前述の酒販店の例をみても、 経営資源に限りがあるため低価格での競争は負けが
  見えています。
  専門的な知識やサービスに集中して自社を差別化させるポジションを探してください。


    ポジショニングマップの作成手順


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経営体質強化

企業成長のための競争力強化

企業成長のための競争力強化 

名ばかりの組織  
 これだけIT環境が整備された時代であっても、10、20年前と経営における悩みの多くは
 変わっていせん。

 中小企業では今日に至るまで『資金繰り』、『売上』、『人』といった問題が常に上位を
 占めてきました。

 それではなぜ数十年たっても変わらないのだろう。

 それは、会社として継続した経営改善として捉えておらず、場当たり的で短期的なテーマ
 としてしか扱っていないことが原因ではないでしょうか。

 過去の延長線上で変化を求めても何も変わりません。

 起業当時を振り返ってみてください。


□企業の競争力
 「企業の競争力」とは、市場において他社との競争を優位にするための能力のことを
 いいます。
 技術力や販売力など、企業の有する特定の能力だけを示すものではありません。
 技術力、販売力、人材開発力などの企業が持つ内部能力や業界内での自社のポジショニング
 などさまざまな要素が複合的に作用することで「企業の競争力」は決定されます。

 「企業の『競争力』を強化する」など、「競争力」という言葉は企業の「強さ」を表す
 キーワードとして頻繁に使われています。
 しかし、「自社の競争力の源泉とは何か」「自社の競争力を強化するためにはどのような
 取り組みを行うべきか」といったことを冷静に検討し、取り組んでいる企業は少ない
 ようです。
 ここでは企業が成長を図るための取り組みを「競争力」という視点からとらえて、競争力を
 強化するための基本的な考え方を紹介します。


□競争力を考える

 1.理想の競争力とは
  競争力強化のための基本的な方法を考える前に、目指すべき「理想的な競争力」について
  整理してみます。
  企業活動の大きな目的は「長期・継続的に収益を上げていくこと」にあります。

  このため、理想的な競争力の姿とは「競合他社に打ち勝ち、より多くの顧客を引き付けて、
  企業が長期・継続的に収益を上げることを確実にする能力」すなわち、
競合他社に対して
  持続的な競争優位性をもたらす能力
こそが企業が目指すべき理想的な競争力といえる
  でしょう。

  では、持続的な競争優位性をもたらす競争力と、そうでない競争力との違いはどこに
  あるのでしょうか。
  持続的な競争優位性をもたらす能力にはさまざまな要因がありますが、それらの中でも、

  他社が容易に模倣できない(模倣困難性)ということが重要となります。

  容易に模倣できるものであれば、他社はすぐに自社と同じ能力を身に付けてしまい、
  持続的な競争優位性をもたらす競争力とはならないのです。
  例えば、「コンピューターなどのIT機器は、それ自体は企業の競争力を強化するもの
  ではない」といわれています。

  これは、IT機器自体は資金さえあれば、どの企業でも購入することができる、すなわち
  「容易に模倣できる」ものだからです。
  ですから、IT機器を導入しただけでは、持続的な競争優位性をもたらす要因とはならない
  のです。
  仮に、IT機器の導入を企業の競争力強化につなげるのであれば「導入したIT機器を
  どのように使用するか」という点に企業独自の取り組みがみられる場合です。

  例えば、コンビニエンスストア業界におけるセブン-イレブン・ジャパンのPOSシステムの
  活用はこのケースに該当するでしょう。
  POSシステム自体は、現在ではセブン-イレブン・ジャパンだけではなく、ほとんど
  すべてのコンビニエンスストアチェーンが利用しています。


  しかし、ある仮説を立てて店舗で実験し、POSシステムなどから得られた情報をもとに、
  その仮説を検証して新たな戦略に生かしていく、というPOSシステムを活用した
  「仮説検証型」のマネジメントにおいてはコンビニエンスストアチェーン各社の中でも
  セブン-イレブン・ジャパンに一日の長があり、これが同社の競争力の一因となっています。

  また、模倣困難な競争力の例としてはトヨタ自動車の「トヨタ生産方式」を挙げることが
  できます。
  日本を代表する企業であるトヨタ自動車の競争力の源泉の一つが「トヨタ生産方式」に
  あることは以前より広く知られています。

  そのため、国内外を問わず非常に多くの企業がその手法の導入を試みていますが、
  トヨタ自動車のように高い成果を上げることができないという例をよく耳にします。
  その原因の一つは、トヨタ自動車において「トヨタ生産方式」が高い成果を上げている
  のは、「トヨタ生産方式」という生産方式自体だけではなく、「トヨタ生産方式」をより
  良いものとするための「カイゼン」に積極的に取り組む企業風土といった内部要因や、
  サプライヤーとの密接な関係などの外部要因などが複雑に絡みあっているためです。

  ほかの企業にとっては、「トヨタ生産方式」という手法の導入はできても、そのほかの
  要因をトヨタ自動車と同じように自社に移植することができないのです。
  すなわち、トヨタ生産方式は容易に模倣することができないのです。
  企業が理想とする持続的な競争優位性をもたらす競争力は、トヨタ自動車のように
  「模倣困難な競争力」といえるのです。


 2.模倣困難な競争力を生み出す要因
  理想の競争力である「模倣困難な競争力」を生み出す要因について考えてみます。
  他社が容易に模倣できない要因を構築し、競争力強化を目指す際のキーワードは

   ・独自性
   ・複雑性

  にあります。

  「独自性」とは、自社独自の技術やノウハウなどを取り入れた競争力のことです。
  競合他社の知らない技術やノウハウに裏打ちされた強みは、容易に模倣されることは
  ありません。
  「複雑性」とは、多様な要素から構成されている競争力のことです。

  たとえ、一つひとつはどの企業でも簡単に模倣できるような小さな要素でも、それらが
  多様に積み重なれば、競合企業は、それらすべてを模倣することはできないのです。
  また、たとえ競争力を構成する多様な要素の中から中心的なものだけを模倣したと
  しても、同じ効果を得ることは非常に困難です。

  前述した「トヨタ生産方式」がこのケースに該当します。
  従って、企業が自社の競争力強化を図る際には、「独自性」「複雑性」といった視点
  からその方策を検討することが重要となります。


競争力強化に取り組む際の基本方針
 限られた経営資源を活用して、限られた時間内で効果的・効率的に競争力強化を図るための
  基本的方針は
自社の強みを伸ばし、「突出した優れた能力」にまで高めることにあります。
  「突出した優れた能力」というと抽象的ですが、簡単にいうと「どの企業にも
  負けない自社の得意分野」あるいは「『○○といえば、この企業』といわれるような
  強み」をつくるということです。

  自社の強みを伸ばし、突出した優れた能力を生み出すことには企業の競争力を図るうえで
  3つのメリットがあります。

  一つ目は、現在「強み」を発揮している分野は能力向上に取り組みやすいということ
  です。
  強みは自然と形成されるわけではありません。
  企業では、その強みを伸ばすために今までさまざまな取り組みを行ってきたはずです。
  また、その過程では多くの実績を上げていることでしょう。

  そのため、全く新しい分野での取り組みをスタートさせるよりも、組織構造面や従業員の
  心理的面などすべての側面において企業にとって取り組みやすいというメリットが
  あります。

  2つ目は、「突出した優れた能力」は、企業全体の能力向上を促す効果があることです。
  突出した優れた能力があれば、その能力を十分に生かそうと多様な取り組みが行われます。
  その結果、企業全体の能力が向上するのです。

  例えば、新たな技術を次々と開発するような技術開発に優れた能力を有する製造業者
  であれば、「その技術を活用した新製品を開発する」「開発した新製品を効率的に
  製造する」「新製品の販売チャネルを開拓する」といった努力を行うはずです。
  このような努力は企業全体の能力を高める効果があります。

  すなわち、「突出した優れた能力」が企業全体の能力を連鎖的に向上させる効果がある
  のです。
  3つ目は、「突出した優れた能力」は、関連するさまざまな情報の蓄積を促す効果が
  あることです。

  「突出した優れた能力」を有していると、商談・共同事業・共同研究の依頼や、講演会・
  講師の依頼・経営に関する相談など、その能力を求めるさまざまな企業や団体など
  からのアプローチが増加します。
  それにともなって、同業他社の動向、最新の技術情報、川上(サプライヤ)・
  川下(顧客)に関連する情報など、自社の能力を高めるために有益な情報がその
  企業に集まるようになります。

  その企業は、これらの情報を新技術・新商品開発、新市場開拓などさまざまな場面で
  利用しながら、自社の競争力をより高めることができます。
  すなわち、多様な情報を得た企業はより一層自らの能力を向上させることができる、
  という競争力向上における好循環を生み出すことができるのです。

  なお、この基本方針は「企業活動の一部分だけ積極的な能力向上策を実施すればよい」
  ということではありません。
  もちろん、すべての企業活動に対して能力向上を図る必要があります。
  しかし、経営資源に限りがある以上、すべての企業活動に対して十分な力を注ぐことは
  事実上困難でしょう。

  従って、自社の強みの育成にウェイトを置いた施策を立案・実行するほうが、競争力
  強化を図るうえでは実践的かつ効果の高い方策といえるのです。


競争力強化に取り組む際の基本的なポイント

 1.自社の強みを分析する
  企業の持つ強みは企業によってさまざまです。
  また、たとえ同じ分野に強みを有している企業同士でも、実際の業務フローや業務に
  携わっている従業員の特性などさまざまな要因が異なっています。
  このため、競争力を強化するための方法もまた、各企業によって異なります。
  従って、ここでは競争力を強化する際の基本的なポイントについて紹介します。
  競争力強化を図るための第一歩は自社の強みを知ることです。
  自社の強みを分析する方法はさまざまですが、ここでは代表的なフレームワークを
  3つ紹介します。


   ◎SWOT分析
    SWOT分析とは、自社の外部環境と内部資源を分析するためのフレームワークです。
    外部環境分析では、企業を取り巻く顧客、競合企業、経済、法規制などの外部
    環境を把握し、自社にとっての機会(Opportunities)と脅威(Threats)を
    分析します。
    一方、内部資源分析では、ヒト、モノ、カネ、情報に代表される企業が内部に
    もつ経営資源を分析し、自社の強み(Strength)と弱み(weekness)を
    把握します。
    これらの中で自社の強みと弱みを分析する際の視点には以下のような点が
    あります。

    ここで、自社の「強み」として挙げられた要因が、企業が伸ばしていくべき
    強みとなります。
    SWOT分析は、自社の強みを分析するための最も基本的なフレームワークと
    いえるでしょう。


   ◎バリューチェーン分析
    バリューチェーンとは、企業が製品やサービスを顧客に提供するまでの一連の
    プロセスのことをいいます。
    企業は、この一連のプロセスにおいて製品に対する付加価値を生み出しています。
    バリューチェーン分析とは一連のプロセス内のどの部分において多くの付加価値が
    生み出されているかを分析する方法です。

    すなわち、付加価値を基準として自社の強みを検討する分析方法といえます。
    バリューチェーンは業種や業務内容などによって個々の企業によって異なり
    ますが、製造業をベースとした一般的なモデルは下図の通りとなります。


    企業の一連の活動は「購買物流」「製造(オペレーション)」「出荷物流」
    「販売とマーケティング」「サービス」の5つの主活動と、この主活動を支える
    支援活動として「調達活動」「技術開発」「人的資源管理」「全般的管理(インフラ
    ストラクチャー)」の5つに分類されます。
    バリューチェーン分析は、自社のどの活動に強みがあるかということを知る
    うえで有益なフレームワークです。


   ◎コア・コンピタンス
    コア・コンピタンスとは「他社には提供できないような利益を顧客にもたらす
    ことができる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体」のことで、
    簡単にいうと、「他社にはまねのできない自社の中核的な能力」のことをいいます。
    コア・コンピタンスの対象となるのは、「優れた製品・サービス」といったもの
    ではなく、「その優れた製品・サービスを提供することを可能にしている能力」
    などです。

    例えば、コア・コンピタンスという考え方を広めたG.ハメルとC.Kプラハードは、
    コア・コンピタンスの例として、シャープの薄型ディスプレイ技術、ソニーの
    小型化技術、ホンダのエンジンに関する技術などを挙げています。
    コア・コンピタンスは、「SWOT分析」や「バリューチェーン分析」などの
    フレームワークで検討した自社の強みを、より深く知るために有効な考え方と
    なります。


 2.競争力強化策を検討する際のポイント
  競争力強化策を立案する際には、以下の4つの点を考慮に入れながら検討を進めると
  よいでしょう。


   ◎自社独自の技術・ノウハウを得るために「実験」を取り入れる
    「独自性」を高めるためには、自社固有の技術やノウハウなどを蓄積するための
    取り組みが必要です。
    その際に有効な方法は、
「実験」を行うことです。
    「実験」というと研究開発を思い浮かべがちですが、ここでは研究開発だけ
    ではなく「新商品のテストマーケティング」「新たな生産方式の試験導入」など
    市場や製造現場などにおける「実験」も重要となります。

    「実験」の目的は、さまざまなことを実際に試してみて、そこから得られた
    経験や結果などを基にして自社固有の技術・ノウハウなどを蓄積することです。
    実際の経験は、書籍・思考・他人(他社)の経験などからは得ることのできない
    貴重な技術・ノウハウなどを企業にもたらしてくれます。

    このため、自社独自の技術・ノウハウの蓄積を図るためには、さまざまな実験を
    行うことが重要となるのです。
    実験を行う場合のポイントは「小さく、繰り返し行う」ことにあります。
    実験には予算上の制約や失敗した場合のリスクがともないます。

    このようなリスクを回避するためには、事前に十分な検討を行うことはもちろん
    ですが、可能な限り小規模・短期間で「小さく」取り組むことが重要となります。
    そして、そこから得られた成果を基に、新たな「小さな」実験を行うのです。
    このように小さな実験を繰り返し行っていくことによって、経営上のリスクを
    回避しながら自社独自の技術・ノウハウを蓄積することができます。


   ◎小さな工夫や改善を大切にする
    小さな工夫や改善といった取り組みも競争力を強化するうえで効果があります。
    模倣困難性という視点からみると、特別な技術など特定の能力に基づく競争力
    よりも、むしろ企業独自の小さな工夫や改善を重ねて構築された競争力のほうが
    「複雑性」が高く、模倣が困難な場合が少なくありません。

    例えば、特定の技術のみに基づいた競争力は、それ以上に優れた新技術が開発
    されてしまえば、その競争力は失われてしまいます。
    しかし、小さな工夫や改善の積み重ねから形成された競争力は、容易に模倣
    することができないのです。

    先に挙げた「トヨタ生産方式」が最も顕著な例です。
    小さな工夫や改善を競争力強化に役立てる際のポイントは、「継続的に取り組む」
    ということです。
    これは、ほかの企業でも容易に考え出せたり、導入することができるような
    小さな工夫や改善だけでは、競争力の強化にはつながらないためです。

    小さな工夫や改善を競争力強化につなげるためにはその取り組みを重層的に
    積み重ねていく必要があります。
    このため、企業としては継続的にこれらの取り組みを進めていくことが重要と
    なるのです。

    小さな工夫や改善への取り組みを継続的なものとしていくためには、「カイゼン運動」
    のように、長期・継続的に取り組みを企業全体で進めていくことができる組織
    づくりが必要となります。


   ◎異なる分野や他企業の技術・ノウハウなどを積極的に取り入れる
    模倣困難な競争力を構築するうえでは、異なる分野や他企業の技術・ノウハウ
    などを積極的に取り入れることも効果的です。
    前述した「実験」などを通じて独自技術・ノウハウなどを蓄積するにしても、
    1社単独の取り組みで得ることのできる技術・ノウハウなどには限界があります。

    また、異分野の企業をはじめとして、他企業は自社にはないさまざまな技術・
    ノウハウなどを有しています。
    これらの技術・ノウハウなどを、自社の持っている技術・ノウハウなどと融合
    できれば、自社単独では得ることが困難な新たな技術・ノウハウを蓄積できる
    可能性があります。

    異なる分野や他企業の技術・ノウハウなどを取り入れるためには、他企業や団体
    などと交流を図る機会を積極的に設けるとよいでしょう。
    例えば、異業種交流会など他企業や団体などの人たちと積極的に交流を図る、
    あるいは産学連携や他企業との共同事業などを通じて自社以外の技術やノウハウ
    などを吸収するためのよい機会となります。
    また、コンサルタントなど外部の専門家などを利用することも有効でしょう。


   ◎「過大な」目標を設定してみる
    ここまで紹介したポイントは、どちらかというと既存の業務プロセスなどを
    ベースにして、一歩一歩着実に努力を積み重ねて競争力を高めていくうえで
    高い効果が期待できるものでした。

    しかし、逆の見方をすると、これらのポイントを取り入れた競争力向上策から
    得られる成果は革新的に競争力を向上させるのではなく、既存の強みをブラッシュ
    アップし、よりよい物としていくという「競争力の“改善”」にとどまってしまう
    傾向が強いといえます。

    革新的な技術・新商品の開発・新たな生産方法を創出するなどして、革新的に
    競争力を向上させることは容易ではありませんが、過大な目標を設定することは
    有効な方法の一つとなります。

    「発注から店頭に商品が並ぶまでの日数を従来の3分の1にする」などの一見すると
    実現できないような数値目標や、「従来にはない高品質の商品を低価格で製造・
    販売する」などの現在の常識では相容れないコンセプトといった過大な目標は
    革新的な技術や新商品などを生み出すきっかけになっています。

    従来と同じ方法や同じ技術だけでは達成できないような過大な目標は、
    「既存のシステムの改善」といった従来の延長線上の取り組みでは実現する
    ことができないため、既存のシステムにとらわれることなくゼロベースでの
    検討を促す効果があるのです。

    そしてその結果、革新的な技術・商品の開発・新たな生産方法が創出されるのです。
    過大な目標を通じて革新的に競争力を向上させる際のポイントは「いかに設定
    した目標に『現実味』を持たせるか」ということにあります。
    単に「過大な目標」を設定するだけでは、従業員などには「そんなことは実現
    できるわけがない」として「現実みのない絵空事」のように受け取られてしまい
    ます。

    このため、過大な目標を達成するためには、過大な目標を「現実的な目標」
    として従業員を実際に動かす必要があります。

    過大な目標を「現実みのある目標」とするために最初に行うことは、「期限」を
    設けた計画を立案することです。

    過大な目標を達成するには従来とは異なった取り組みが求められるため、通常の
    経営計画などのように具体的かつ詳細な計画を立案することは困難であるため、
    計画はラフなものでもよいでしょう。
    しかし、その際に必ず盛り込まなければならないのは「期限」です。

    明確な時間軸を与えるだけでも、過大な目標が現実みを持ったものとなってきます。
    また、経営者層の強い熱意も欠かせない要因です。
    経営者が過大な目標を「実現すべき目標」として熱意を持って真剣に語れば、
    従業員もまたその目標を「実現すべき目標」と考えるようになります。

    過大な目標を設定する方法は、前述した3つの方法と比較すると、その実現性
    は決して高くはありません。
    しかし、競争力の強化策を検討する際にはこうした方法も念頭においておく
    必要があります。

    ここでは、競争力という視点から企業強化策について紹介しました。
    冒頭でも紹介したように「企業の『競争力』強化」など、「競争力」という
    言葉は頻繁に使用されているものの、「自社の競争力とは何か」「自社の競争力
    を強化するためにはどのように取り組むべきか」といったことを冷静に検討し、
    取り組んでいる企業は少ないようです。

    これらを参考に「自社の競争力の源泉とは」「自社の強みを伸ばし、競争力強化
    を実現するための施策とは」といった点についてあらためて検討してみるとよい
    でしょう。

                        
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経営体質強化

社長に必要な参謀

社長に必要な「参謀」

 ■社長に必要な「参謀」
  昔から、名をあげ事を成した人の傍らには名補佐役ともいうべき人物がいました。
  古くは「三国志」の諸葛孔明、現代の経営者では、本田技研工業の本田宗一郎氏
  にとっての藤沢武夫氏が有名です。 
  本田氏は、物をつくるのが好きだが金勘定は苦手といって、商売は藤沢氏にすべて
  まかせていました。

  本田氏が「生涯一技術者」を貫き通せたのも、藤沢氏が技術者としての本田氏に
  絶対の信頼をおき、また、本田氏も経営を藤沢氏に安心してまかせられたからであり、
  これが本田技研工業の大きな成長要因のひとつといえます。 
  企業経営の場合、社長が気づかずに経営の方向を誤ってしまうこともあり得ます。
  また、企業における最終意思決定者は社長のみであり、施策の有効性に自信が持てない
  場合もあります。

  こういったときに、つねに経営の方向を誤らせぬように最良の方向に導いてフォロー
  することは、参謀の重要な役割のひとつです。 
  このように、優秀な参謀をもつ経営者は、経営の方向性を軌道修正するための提言を
  参謀に求めることもできますし、参謀に一定の権限を委譲することができれば、
  経営者として本来集中すべき業務により打ち込むこともできるといえます。 

  経営者は、企業を支えていくうえで多くの悩みを抱えていますが、ひとりであれこれ
  悩んでいてもあまりよい結果が得られるものではありません。
  もちろん、誰にでもその悩みを相談するわけにはいきませんが、信頼できる参謀
  となる人物がいれば、孤独になりがちな経営者の悩みを聞いてくれたり、矛盾点を
  指摘してくれたり、アイデアを冷静に評価してくれたりと、社長が次なる戦略を
  生み出すためのよき相談相手になります。

  自分の話を理解し、客観的に受けとめてくれる参謀がいることで、互いにアイデアを
  繰り返しめぐらせていくことも可能となります。
  そのようななかにこそ、よいアイデアが生まれ、ひとりで考えているよりは明らかに
  高度な思考を短時間でめぐらせることができるといえるのではないでしょうか。 
  しかしながら、優秀な参謀を確保するのはたやすいことではありません。

  優秀な経営幹部のなかにすら、参謀として経営者の片腕となり経営者があらゆる
  悩みをうち明けることができ、ともに悩み解決策を見いだしてくれるような人材は
  見あたらないかもしれません。
  ある分野で、またはある現場で、優秀な経営幹部や管理職であっても、必ずしも
  社長が頼りとする参謀に適しているとはいえません。

  参謀には、経営者と同じく、会社の将来を見通して行動をおこしていくといった
  広い視野にたった経営感覚が必要といえます。
  このような場合は、参謀となる人材を自ら育てていかなければなりません。 
  はじめは、思いつきを話した際に、それについてそれなりの感想を述べてくれる役割
  くらいしか果たせないかもしれませんが、徐々にその話し相手が次なる企業戦略を
  考えるのを助けてくれるようになり、さらに、本人自ら重要な役割を強く認識する
  ようになれば、頼りになる相談相手に成長するでしょう。

  また、必要な情報の収集から整理まで社長の意向通りの働きを期待できるようにも
  なるはずです。 
  また、根回し上手な人物なら、経営者の意向をうまい具合に幹部や然るべき人物に
  伝え、社内の調整係もやってのけることでしょう。
  そうなれば、社長は参謀を通じて社内の動きに関しても絶えず新しい情報を耳にする
  ことができます。

  こうしたところにも、参謀を育てることのもうひとつの意義があるといえます。 
  片腕となる「参謀」が育つまでには、長い時間がかかることと思いますが、
  その人材がうまく育ってくれれば、絶大な信頼を寄せることができる心強いパートナー
  となることは間違いありません。

 □「参謀」に向いている人材 
  それでは、「参謀」としてふさわしいのはどのような人物でしょうか。
  もし身近に、経営幹部など社歴も長く、社長の考えをよく理解し、会社の方向性を
  幅広い視野から提言できるような人材がいれば、問題はありません。 
  しかしながら、そういった人材が思い浮かばない経営者も多いでしょう。
  そのような場合は、社長自ら「参謀」を育てていかなければなりません。

  まずは、社内に参謀として育成できるような人材がいるかどうかを探してみましょう。
  企業経営に関心があり、何事にも前向きで明るく、固定観念のあまりない人は、
  育成するのに適した人材といえます。
  また、経営幹部をも含めた多くの人をマネジメントする必要がでてきますので、
  あたりまえのことですが人の心の痛みを理解できるような、人望の厚い人材が
  望ましいといえます。 
  さらに、人材を選ぶ際のポイントとしては、以下の点を考慮するとよいでしょう。

  1.社長の話をじっくり聞ける人 
   まず、社長の話をじっくり聞けるかどうかが、基本条件となります。
   はじめからあれこれと自分のアイデアを出してくる人材では、逆に社長の思考が
   乱されてしまう可能性があります。
   まず自分の話を最後まできちんと聞き、理解してくれる人材を求める必要が
   あります。
   またこうした人材のほうが、後々社長の意向を察しながら自然に動くことができる
   ように成長する可能性が大きいといえるでしょう。

  2.矛盾点などをきちんと指摘できる人 
   次に備えていてほしい条件がこれです。
   社長は参謀に自分のアイデアをまず話し、その感想を聞きたいと考えています。
   ときには、きちんと考えがまとまる前に話をすることもあるでしょう。
   参謀はその話を冷静に聞いて、矛盾点や抜け落ちている点がないかをチェックする
   という役割を果たすことが必要になります。

   そこで、いうべきことをきちんと社長にフィードバックすることができるかどうか
   という点が重要となります。 
   また、社長としてはこうした参謀の指摘をきちんと受けとめる姿勢が大切です。
   もしも参謀がこの大事な役割を果たしてくれたときに、権威を振りかざすような
   態度で無理に黙らせたりすると、参謀は社長の顔色をうかがい、貴重な指摘を
   しなくなることもあるので注意が必要です。

  3.会社が直面した問題にどう対処すべきかを提案できる人 
   参謀を一から育てる場合、第2の条件までをきちんと満たしていれば、まずは
   それで十分であるというとらえ方もできます。
   しかしながら、徐々に経営に関する能力も高めてもらう必要がありますので、
   企業が新しい経営戦略を考えるときなどに、必要に応じて調査を行なわせ、
   その結果をもってどう対処すべきかを提案させるといったことを行なう必要が
   あります。
   つまり、経営幹部と同等の「調査」や「分析」能力をその人材に求めていくのです。

 □「参謀」の育て方
  次に参謀の育て方について考えてみたいと思います。
  どのように育てるか、その究極の目標は、参謀に社長の「物の見方」「考え方」を
  共有させるということになります。 
  その手順として、「これは」と思う人材を思いきって直属の配下につけることを
  検討しましょう。

  人材の選考にあたっては、まだ役職に就いていないような若い(経営者の思うように
  どのようにでも教育できる)人材の登用を検討してみるのもよいかもしれません。
  そして、つねにその人材が、社長の仕事を身近に見ることのできるようにしておく
  ことが大切です。
  そうすることにより、その人材は、社長が今何をしているか、何を考えているか
  について関心をもたざるを得ない状況になります。

  また、社長のほうもつねにその人材のことが目に入りますから、逐一きめ細かく
  指導をすることができます。
  このような指導なしに参謀を育てることは困難ですから、参謀となる人材の配置が
  重要なポイントであるといえます。 
  直属の配下につけた人材には、はじめにテーマを与えながら、調査や分析を行なわせ、
  経営に必要となる知識を修得させるとよいでしょう。 

  なお、参謀の育成の過程では以下の点を考慮しつつ、段階に応じて社長自身の
  生き様をみせたり、経営のプロとして必要となる能力開発に取り組ませる必要が
  あります。

  1.経営者の分身として思考させる 
   会社の存続・発展を考え、日常的に高度な経営判断と意思決定を行なわなければ
   ならない社長を補佐するためには、社長の経営に対する考え方や社長の感情を
   十分理解したうえで社長の立場から物事を理解させることが必要です。

  2.経営者に感情移入させる 
   まず、社長に対して徹底的に感情移入させることです。
   たとえば、社長が無理な指示を出した場合、なぜ社長がそのような無理な指示を
   出さざるを得なかったのかその背景を理解させる必要があります。
   必ずしも共感してもらえるとはかぎりませんが、社長の心情を理解させることが
   大切です。
   そのためには、社長の平素のものの考え方や価値観を理解させる必要があります
   ので、社長がこれまでどのような人生を歩んできたかなどの話をする機会も
   もちたいものです。

  3.経営のプロとしての知識を習得させる 
   経営者とともに企業経営に携わっていく者は、経営のプロとしての知識と見識を
   もつことが望まれます。
   これには、「財務管理」「販売管理」「人事・労務管理」「マーケティング」
   といった経営の基本をマスターさせると同時に、高度な見識と経営に対する
   確固たる信念を保有させる必要があります。

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経営体質強化

オフィスワークからテレ(リモート)ワークへ

オフィスワークからテレ(リモート)ワークへ

 ■景色が変わる
  弊社は中小企業が生き残り勝ち残るための解決策を提案してきました。
  ヒト・モノ・カネ・ジョウホウに限りがある社内環境で、事業を運営していくためには
  如何に属人的な言動を排除するかです。
  テレ(リモート)ワークが主流となったとき、今までのオフィスワークのムダ・ムラ・ムリ
  なやり方・考えを変えていかなくてはならない。

  弊社が今まで伝え続けてきたのは、改善の3SであるStandardization(単純化)
  Simplification(標準化)・Specialization(専門化)です。
  弊社のHPをご覧いただいてわかるように、中小企業がいかにお金をかけずに業務
  改善を実践していくためのヒントが掲載してあります。
  今までの業務形態からリモートに変化した場合には「何から初めていいのか」
  大きな戸惑いを感じるはずです。

  まず、業務を3Sに基づき改善することです。
  基本はすべての業務をシンプルにすることから始めましょう。
  こうすることで、オフィスワークに戻った場合にも大きな効果が現れるはずです。
  このような状況に至ったことをピンチと捉えず、改善のチャンスと捉えることです。
  ただ手段が替わっただけで経営の目的は変わらないことを意識しましょう。

 □基本は変わらない
  コロナ禍において規模の大小に関わらず事業運営は前途多難な状況にあります。
  しかし頭を抱えているだけでは問題・課題の解決にはなりません。
  まず理解すべきは平時であってもコロナ禍においても基本は変わらないことです。
  変わるのは手段であって目的は変わらないのです。
  その手段にはじめからお金をかけすぎることだけは避けましょう。
  例えば、「テレワーク、リモートワークだ」とネット、マスコミが声高にアナウンス
  することに飛びつかないことです。
  特に中小企業の置かれた現状では、限られた現有資産の中で戦っていかなければ
  ならないことです。
  資金調達、「IT化だ」といって無計画で闇雲に行動に移さないことです。
  お金をかけずにできることから始めましょう。まずやるべきは組織の再構築です。

 □経営形態の変化
  企業のあり方が変わることで、
   ・各社員の心の機微が掴みづらくなる
   ・社員の評価方法が変わる
   ・組織力(チームワーク)、コミュニケーションの形骸化
   ・モチベーションの低下 など
  上記のような状況が考えられます。

  そのためにも、テレ(リモート)ワークに対応した改善が重要となります。
  どのような環境であっても、経営の基本は変わりません。
  但し、今まで以上に強化しなくてはならない事柄があります。

   ◎計画の策定と実行
    経営計画はもとより、業務の推進・行動・会議・人材育成 等々
    すべての行動の前に計画を策定することが不可欠。
    「計画なくして行動なし」です。

   ◎コミュニケーションの強化
    実態経営における意思疎通と異なり、テレワークやリモートワークにおいては
    考えや思いが伝わりづらくなります。
    とにかく日々の接点を今まで以上に拡大していくことです。 
    管理者はコミュニケーション能力を身につけることです。
    まず、上司は部下をどの程度理解しているかを知ることです。
    部下との信頼関係づくりのためには、まず「聞く」ことから始めましょう。

   サービス力の強化
    自社のもっている価値やサービスを伝え続ける
     ・競合他社と差別化できる強みは?
     ・その価値やサービスは、「誰が、どのような手順でお客様に
      提供していくのか」の手順を作成しましょう。     

   情報の共有化
    情報共有はオフィスワーク時以上に強化しなくてはならない。
    情報の収集から管理までも明確にし、情報は組織の

   組織力の強化
    今までの考え方のまま業務を続けていては組織の体をなさないでしょう。
    オフィスワークからテレワークに移行するにあたり、多種多様なツールが
    目につくでしょうが、体制を整えた上で自社に最適なツールを選択することです。
    最初からお金をかけることだけは避けましょう。
    
   セールスからマーケティング 
    営業のやり方が大きく変わります。
    売り手側の視点ではなく、買い手の視点に立った考えが必要となります。
    今までのようなセールススキル(売り込む方法を追求)のレベルアップから、
    顧客に充分に理解されて、納得されて、顧客から声がかかってくるような
    販売方法(マーケティング)に営業を改革していかなければなりません。
    売り込むのではなく「売れる仕組み」を作り上げることがマーケティングです。
    欲しいと思われる商品・サービスを企画し開発する。
    それを消費者に認知してもらうように広告や販売促進を行なう。
    消費者の気持ちを考慮しながら売れるように組み立てることです。

   顧客との接点を拡大
    確実に新規見込み客の減少は起きてきます。
    そのため、既存顧客の深堀り、固定化が重要となります。

   ◎業務の定型化
    仕事の75%は定型化できます。
    この75%の仕事を標準化することで業務の生産性は飛躍的に向上できるのです。
    そしてできた時間を収益に直結した付加価値業務に当てることができます。

   ◎チェックシートの活用
    オフィスワークと異なり、意思疎通が希薄となる中、業務におけるチェックシート
    の活用は重要性を増します。    
    チェックシートは業務を改善する上で、欠かせないツールです。

   ◎リスクマネジメント
    規模の大小を問わず、多くの企業が売り上げを上げることだけに躍起となり、
    足元のリスクに対しては無頓着な傾向にあります。
    すべての企業はどんなに業績が順調に推移しているとしても、常に事業縮小や
    最悪の場合、倒産というリスクにさらされているのです。
    そして事業リスクにおける90%がヒトに関わるものであることも確かです。
    社内の規定を整備することは対策の最低必要条件であり、事が起きてしまって
    から行動を起こしても、それは対策ではないのです。
    「転ばぬ先の杖」としての対策を講じることは必要不可能です。
    「企業は人なり」といいますが、「リスクも人なり」ということを肝に銘じて
    おきましょう。

   コロナ後の経営の多角化

    企業活動を将来にわたって発展、存続させていくための手段として、経営の
    多角化があげられます。

    特にコロナ後の経営環境の変化は大規模、かつ急速に進展していくでしょう。



  人は差し迫らないと行動に移さない習性がありまが、中には差し迫った事態においても 
  行動しない社長もいます。
  行動しないことがリスク回避と思っている社長も少なからずいるでしょう。
  これでは「茹でガエル」と同じ状況です。
  テレ(リモート)ワークを実施していくにはメリット・デメリットそれぞれありますが、
  新しいことに挑戦するというポジティブな気持ちを持って実践していきましょう。
  経営は仮説 (Plan) を立て、実行 (Do) 、その結果を検証 (Check) 、次の行動 (Action)
  につなげる。
  何もしないことがリスク回避ではありません。
  テレワーク・リモートワークはすでに始まっています。
 

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経営体質強化

経営体質の強化


  ■経営とは会社の体質(営業力を強化)すること

   □会社は10年で8割が倒産する

    人間同様、企業にも寿命があり、過去には企業30年説と言われていたが、今では
    その寿命も短くなり、新しく設立された会社の8割は10年以内に倒産するといわれ
    ています。

    景気の波や取引先とのアクシデントなどさまざまな問題をクリアして10年間会社を維
    持させることは、それ程大変なことなのです。

    これは現時点で存在する会社においても、まったく同様です。

    創業間もない頃に比べると業績は拡大しているかもしれませんが、業績が拡大して
    いる分だけ、多数のリスクを抱えているということもできます。

    また、経営環境は刻一刻と変化しており、極端な言い方をすれば、明日突然に、
    「会社の屋台骨を揺るがす大問題」が起こる可能性もあります。

    たとえば、顧客から急に取引を停止されてしまうかもしれませんし、強力なライバル
    会社が登場するかもしれません。

    また他社が画期的な新商品を開発し、自社商品がまったく売れなくなる可能性もあ
    るのです。

    経営はこういった不安要素とつねに隣り合わせにあります。

        成果を生み出すために「既存」の知識をいかに有効に適用
        するかを知るための知識こそが、「マネジメント」である。
                                    (P.F.ドラッカー)

   
   □小さな会社の社長は自分の「性格」に合った経営を行おう

    会社を経営していると、トップの人間性そのものが表面に出るものです。

    とくに小規模な会社の社長の場合は、その人の性格がストレートに経営のやり方や
    会社の雰囲気にあらわれてくるものです。

    もちろん、性格が悪いからといって、経営が悪くなり、儲からなくなるものでもありま
    せん。

    問題は、自分の短所を短所として理解し、それをどう処理していくかが重要なのです。

    長所と短所は表裏一体の関係にあるから、トップは、自分と正反対の性格をもった
    片腕をおいたほうがうまくいくケースが多い。

    その場合の条件は、絶対に人前で口論しないことです。

    性格が正反対だとやり方も違うから、意見の食い違いがしょっちゅう生じるだろうが、
    社員や取引先の前でそれをストレートに出してはいけない。
 
    なぜなら、お互いに立場があるから、引っ込みがつかず、どちらかが止めざるを得
    ないハメになってしまう。

    そうした場合は、会社のナンバー1とナンバー2の意見が食い違った時は、二人だ
    けで、それも「ゆったりとした時間」をもてる時に、じっくりと話し合うことです。

    二人とも、「儲けよう」「会社を成長させよう」という大前提となる目標は同じであ
    り、ただやり方が違うだけなのだから、話せば必ず理解し合えるはずです。

    基本的には企業経営は、一本調子では運営はできないもので、お互いに違う性格
    の者が、両輪のごとく、同じ目的に向かって会社経営をすることによって、儲かる方
    向へと進んでいくのです。

    小さな規模の会社の経営は、「労多くして、益少なし」で、
    思ったより儲からないものです。 

    儲かるどころか、四苦八苦で、もち出しが多
    く、毎年、毎期赤字の会社が多い。

    「経験は最良の教師である」という格言が 
    あるが、自分で経験していては、スピードも 
    遅いし、カネや時間がかかりすぎます。

    「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
    という言葉にもあるように、「愚者は自分の
    経験から学び、賢者は他人の経験から学ぶ
    という格言です。

    オーナー社長の中には、自己主張が強く他人の
    意見を聞かないといった人も多い。

    部下がせっかくいい意見をもっていても、あるいは他人からの良い意見があっても、
    聞き流してしまうことが多く、人の意見に耳を貸すことができないものです。

    これが大きな「時間とカネ」のムダ遣いとなり、儲からないパターンとなり、あげくの
    果ては最悪の事態に陥ってしまうのです。

    こういう意味からも、他人が経験してきた経営上の諸問題を謙虚に学んで、会社の
    経営に活かす(行動する)ベンチマーキングを強くお勧めします。

    他企業が経験したことがらから経営のやり方を学び、自分にマッチした独自の「経
    営の手法」をつくり出すことです。

    しかし、得た情報がよいと感じた場合でも、「後ろ向き」の考えが出てくるため、ほと
    んどの人が結局実行できないままになってしまうケースも多いのです。
   
  □学ぶ姿勢

   経営者の多くが、調べたり聞いたりした情報がよいと感じた場合でも、「後ろ向き」の
   考えが出てくるため、ほとんどの人は結局実行できないままになってしまうケースが
   多いのが実態です。

   そのためにも、以下の後ろ向きの考えを、頭から追い払わなければならなりません。

    1.「環境」が違うからムリだ。

    2.そんな「時間」がない。

    3.実行する「ヒト」がいない。

   この三つの後ろ向きの心をクリアしないかぎり、いくらよいことを聞いても、書籍を読ん
   でも「馬の耳に念仏」、何の役にも立たないことを知ってほしいのです。


   自分が「経営力」をどうつけるかは、経営をしているトップまたは、それに関係する人に
   とっては永遠のテーマとなります。

   トップ自身がこれからどんな会社にしたいか、そのためにどんな戦略を立てるかは
   重要だが、その机上の戦略は、およそ半年位で「尻切れトンボ」になるケースが多い
   のも確かです。

   なぜなら、理由は立案した考え方が、実行する本人の性格にマッチしていないから
   です。

   また、経営戦略は他人の受け売りだったり、また、他人が成功した例をソックリ真似た
   だけのものだからです。

   これを防止するには、戦略を立案する段階でトップの、または実行者の性格を、よく知っ
   ておかなければならず、自分の性格を見抜いたうえで戦略と計画を立てなければなら
   ないのです。

   戦略とトップの性格のミスマッチのために失敗することが多いのです。
 
   立案した戦略とトップの性格とがマッチしてはじめて、経営は継続的に稼働でき、成果が
   出るということを認識しなければならない。

   会社を経営するには、「戦略」が必要です。   

   戦略がまずければ、営業マンを何人投入してもなかなか売上げは上がりません。

   数字が上がらない時、営業マンの人数不足や質の悪さを嘆いて盛んにグチをこぼす
   小さな会社の社長がいるがその前に、トップの営業戦略が悪いのではないかと考える
   べきでしょう。

  □顧客層

   小さな会社の場合は、戦略とトップの性格のミスマッチのために失敗することが多い。

   立案した戦略とトップの性格とがマッチしてはじめて、経営は継続的に稼働でき、成果が
   出るということを認識しなければならない。

   自社のメインとなる客層を明確にしましょう。

    (1)大口顧客層を主要顧客とするのか、小口顧客層なのか?

    (2)薄利多売方法か、またはその逆の方法か?

    (3)直売方法か卸売方法か?

    (4)規模拡大戦略か、または内容充実戦略か?

    (5)メーカー側(つくり手)になるのか、または販社側(売り手)になるのか?

   
   トップ自身が、「自分の性格が会社の存亡を左右する」ということを強く認識すること
   です。

  □組織の進歩を阻害する三つの要因

    (出典:安岡正篤語録「経営者の心得と組織を動かすポイント」より)

    ①良いことだと知りながら、それを実行することを怠ること。

    ②絶好のチャンスであると知りながら、それを疑って決断がつかずに、いたずらに
     好機を見逃してしまうこと。

    ③明らかに間違いであることを知りながら、それを改めることなく、現状を守り続け
     ること。

    この3点は、ともすれば現状を守るために眼をふさごうとするものです。

    これが中小企業の組織体質になっていて、改革を阻害する元凶になっているのです。

    しかし、この3点を逆にすれば、組織は飛躍することになります。

    それは良いことを率先して行なうこと、チャンスを的確にとらえること、間違いはすぐ
    に改めることです。

     ①良いことを率先して行なうこと

     ②チャンスを的確にとらえること

     ③間違いはすぐに改めること

    これを的確に実行できるかどうかが、経営者に問われているのです。

    厳しい環境下で生き残るためには「スピード」「変化への対応」がキーワードとなり
    ます。

    大組織と比較し、中小企業の強みはフットワークのよさのはずです。

    しかし、残念ながらこれらは生かされていません。

    組織改革は業務改革であり、営業力の強化を図るためです。

    限られた資産を最大限に生かすためにも仕組みづくりは欠かせません。

    
   □組織力の強化なしに会社の存続なし

    では、さまざまな問題を乗り越えて会社を存続させていくためにはどうすればよいの
    でしょうか。

    困難に耐えうるだけの企業体力をつけること、つまり、組織(経営)力を強化すること
    にほかなりません。

    人間にたとえると、普通の人ならば死に直面するような重い病気にかかっても体力
    のある人はそれを乗り越えることができ、逆に弱っている人は風邪をひいただけで
    命取りになることさえあるというようなものです。

    今後も永続的に会社を存続させていこうと思うならば、今日よりも明日、明日より
    も明後日というように経営力を強化し、大きな問題が起こっても立ち直れるだけの企
    業体力をつけていくしかないのです。

    たとえ、今は何の問題もないようにみえても、それはたんに「運がいいだけ」かもしれ
    ません。

    1週間後、1ヶ月後には、現状の企業体力では到底耐えうることができないほど大き
    な問題が生じることも考えられるのです。

    今すぐにでも経営力を強化することを真剣に考えましょう。

    そのためには、まず、自社の経営のあり方を見直すことから始める必要があります。

    経営力強化の中で、人材育成は規模の小さい段階から最優先にやらなければなら
    ない。

    「ジンザイ」を「人罪」にするも「人財」にするも教育次第です。

    
    「売上げが上がらない」「人材がいない」「中間管理者がいない」「思ったように従業
    員が動かない」など大企業の悩みとは違った悩みをもっています。

    その悩みの原因は、小さな会社には、以下のような
    社員がかなりいるからだ。

     ①忙しくてそんなことはできない。

     ②自分はそんな仕事をするために、この会社に入ったのではない。

     ③その仕事は自分の性格に合わないからいやだ。 

     ④急に変われといわれても、変われるわけがない。

     ⑤それはわたしの担当ではない。

     ⑥その営業はコース外だからいやだ。

     ⑦自分は雑用係ではない。

    すべて否定的で、できない理由をいくらでもみつけるのです。

    こういう人がいると、指示がスムーズに実行されないのは当然で、会社が少数精鋭
    化するどころか、お荷物的人間ばかりになり、儲かる会社になるわけがないのです。

    それこそ「人罪」の集まりと化してしまいます。

    一般的にいって、その従業員がその会社で「禄を食んでいる」限り、仕事に全力を
    つくすのは当然なのだ。

    最終責任はトップが負い、社員は目の前にある仕事に懸命に取り組むべきなのです。

    それがイヤなら、降りるべきなのである。

    ところがそういう人の場合、全力をつくすどころか、何をやるにも不満げな表情をみ
    せる。

    それはなぜか?

    本人の性格が悪いのか?  彼なり彼女なりは、これまでの人生、ずっとイヤ、イヤで
    きたのか?

    そんなことはない。
 
    要するに彼、あるいは彼女は会社と、もっといえば社長との相性が悪いのである。

    いったん入った人間をそう簡単にやめさせることはできないし、本人もよほどのことが
    なければやめるとはいわない。

    だから規模の小さいうちは社長はよくよく心して、自分と相性のいい人間を採用しな
    ければならないのです。 

    そして、
    相性の悪い社員は、社長の意欲をもそいでしまいます。

    規模の小さな会社の社長は、限られた人数の従業員との相性が悪ければ、楽しい
    日常業務などできるわけがないのです。

    毎日それこそイヤな、神経を逆なでされるような気持ちで仕事をしなければならなく
    なってしまいます。

    小さな規模の状況では、社長の「やる気」と「意欲」で多くのことが改善されていくの
    です。 

    その社長の意欲をそぐような相性の悪い社員を採用すること自体、社長の大きな
    失敗なのです。

    もともと社長は、相性が合わない人間を使って気苦労するために会社を始めたわけ
    ではないはずです。

    そして、相性と能力の点からみて、一番ふさわしい人間を片腕にすることです。

    片腕となった人間は、トップを一生懸命に補佐してくれるでしょうし、そのための
              リーダー(管理者)教育も欠かせません。

    小さな会社の社長は、人の面でも、自分の性格に合った経営をしなければならない
    からです。

    限られたメンバーで事業を運営していかなければならない小さな会社では、相性が
    合わない上記の①〜⑦に当てはまる社員にはやめてもらったほうがいい。

    独善的かもしれないが、そういう勇気も必要なのです。

    社長は、相性が合わない人間を使って気苦労するために会社を始めたわけではない
    はずです。

    そして、相性と能力の点からみて、一番ふさわしい人間を片腕にする。

    相性が合うか、性格が合うかを見分けるポイントは、

     ①返事がよいかどうか?

     ②明るい性格かどうか?

     ③素直に指示通り動くか? 逆に、指示すると必ず一言多いかどうか? 

    「返事がよいか」「明るい性格か」などといったことは第一印象が大切なので、採用
    時にはこれらの点に注意して面接することを提案します。

    よきにつけ悪しきにつけ、トップの考え方や性格で運営されるのです。

    だからトップは、結果にすべての責任を負うことになる。

    トップの方針や指示がよくても、従業員の理解の仕方ややり方が悪ければ、それも
    またトップの責任です。

    だから社長は、自分の方針をよく理解して動く人を集めない限り、チームとしての
    組織はスムーズに稼働しなくなり、結局は儲からない会社になってしまいます。

                      組織力強化マニュアルについてはこちら

   □「ええかっこしい」をせず、足場を見失わない

    つい、「ええかっこしい(カッコ良く見せようとする)」としてしまって、自分の会社
    の足場を見失ってしまうのです。

     1.売上高が多い

     2.資本金が多い

     3.社員の人数が多い

     4.社屋や設備が大きい

     5.販売地区が広く、営業所の数がたくさんある

    そして、社長がやってはならない「アイウエオ」では、

     ア:焦るな

     イ:イライラするな

     ウ:倦むな(あきらめるな)

     エ:エエカッコするな

     オ:恐れるな

    肝に銘じてください。 

    
   □1人当たりの労働生産性

    小さな会社は、いったい何を「経営の基準」にすればいいのでしょう。

    会社がおかしくなる場合にはいくつかの要因がありますが、そのうち最も大きい要
    素は、働いている人員の生産性が悪化した時です。

    つまり一番問題になるのは、何人の人員で総粗利額を稼いだかということなのです。

    この総粗利額が、会社の総人件費と比較して所定の「労働分配率」より悪化してい
    る場合は、経営はジリ貧に悪化して、倒産という図式となってしまうのです。

    さらに、経営の重要な「基準」となるのは、企業に従事している人間が、1人当た
    り月間何十万円稼いでいるかということなのです。

    これが「労働生産性という基準」です。

     R:1名当たりの月間労働生産性

     A: 自社の月間粗利益額

     B: 自社の総社員数
       *パート、アルバイトは正社員と区別し、2名を1名と計算

           R=A÷B

        <参考>

         ○労働生産性(月間)の評価基準ランク

          優:100万円以上(儲かる)  良:81万円〜99万円(正常)

          可:61万円〜80万円(経営のボーダーライン)

          不可:60万円以下(問題あり)

         ○労働生産性分析シート

    多くの人数を使って、多くの売上高を上げることを考えるより1名当たりの粗利益
    が、月間80万円以上になる経営を心がけることです。

    たいていの中小企業は、粗利のうち約50%前後を労働分配率が占めており、労
    働生産性も1名当たり月額60万円前後のレベルであることです。

    こうした小さな会社では、社員を多面化し、有効活用しなければ、経営が成り立たな
    い時代なのです。


    労働生産性という経営指標は、売上や利益、売上高利益率、キャッシュフローに比
    べると、意識している企業が少ないという結果があるということです。

    一方で労働生産性を意識している企業は、意識していない企業に比べて売上高経
    常利益率が顕著に高い傾向が見られ、労働生産性の水準が相対的に高い企業で
    は、過去5年間の企業業績が好調だということです。   

    中小企業庁『労働生産性』    


   □売上げが増えても人を増やさない 

    「売上げが増えても、人を増やさずに経営できるなら、儲かるに決まっている」と、
    ほとんどの経営者は言うでしょう。

    確かにほとんどの場合、売上げや作業が多くなると、それに合わせて社員数も増え
    ていくものです。

    しかし、今の時代の経営の基準が、売上高や資本金、そして社員数や営業所の数を
    多くすることにあるため、トップの姿勢がどうしても拡大の方向に向きがちなのです。

    しかも売上げがジリ貧状態にある時ほど、継続性のある売上げかどうか確認もせず
    に営業社員を増やし、売上げをアップしようとする傾向が強い。

    「労働生産性」の数値をアップするには、売上高や粗利益率を増やすより、人員を
    減少・増員しないことです。

    労働生産性が少しでもアップする売上向上策ならば大いに結構だが、売上高が上
    がっても労働生産性が下がるような「策」ならば、やめたほうが得策だということ
    です。

    要は、何名の人員で、どれだけの粗利額を稼いだかです。

    この点を、初心に戻って、大いに反省しなければならない。

    「労働生産性」で経営を成功に導くには、まず「企業は人の『数』ではなく、人の
    『質』である」ということを、しっかり認識することです。

    「従業員の数」から「従業員の質」へと発想を転換するためには、社内業務の標準化、
    人材育成により、誰に代わってもできる人材(財)に仕立て上げるのです。


   □増員させないようにするためには

    「労働生産性」をアップするには、売上高や粗利益率を増やすより、人員を減少させ
    たほうが手っとり早いことです。

    人を増やさないようにするためには、業務の全てを自社内でやろうとせず、作業部分
    は外注(アウトソーシング)することです。

    そして、社内の人員は日常業務をこなす作業集団でなく、粗利額を獲得する集団に
    改革すべきなのです。

    そのためにも、社員を定数化します。

    組織をチームと考え、野球やバレーボール、サッカーのように決められた人員を業務
    分担し、有効活用していくことが欠かせません。

    1.社長自身は何名の社員を使うのか? また自分が「何人の社員を使いこなせ
      るか」
を決める。
      (社員を定数に限定する)

    2.社内の作業量が増え、こなせない状態になった時、どの作業を外部に委託す
      ることができるかを考える。
      (社内の作業量がオーバーした場合、すぐに社員を増やすことを考えず、まず
      現在の社内で消化できるかどうかを工夫したうえで、次に外部への委託を考
      えて、最後に社員を新しく入れることを考える。)

    3.トップ自身が「自社の売りモノは何か?」を、常に箇条書きできるように、明確に
      させておく。
      (人の「質」が思うように向上しないのは、社内の人員を定数化していないか
      ら。)

    組織作りは規模の小さいうちにやることです。

    仕組みをつくっておくことで、規模の拡大に対処できるからです。


   □「売上げ志向」から、「粗利志向」の経営へ 

    「労多くして、益少なし」の世界から脱却するには、 「企業は人の『数』ではなく、
    の『質』
である」ということを、しっかり認識すべきです。

    「人の数」から「人の質」へと発想を転換して、社内の人員を「多面化」し、何でもで
    きる人材(財)に仕立て上げるのです。

    そのために欠かせないのが役割(業務)分担である。

    「人に仕事を付ける」から「仕事に人を付ける」ことで業務の標準化を図ることで可
    能となります。 

    その一方で、ワンパターンの作業(ルーチンワーク)などは、「他人の会社の機能」
    を活用して、他社にやってもらう(アウトソーシング)ことを考えます。

    例えば、配送業務等はルート化して運送会社にやってもらい、数が多いDMや郵送
    物の封筒詰めから発送まではDM会社、保管業務は営業倉庫会社にまかせるなど、
    社外の機能を利用することを考えましょう。

    さらに経理事務などは、パートさんに記帳だけしてもらい、あとは税理士に月1、2
    回来てもらってパソコン処理してもらえば、仮に経理の人が辞めた場合でも事務機
    能に支障を来たすことはないはずです。

    要は、何でもかんでも自社内でやろうとせず、いろいろな工夫をしなければならない
    ということ。  

    社内の人員は日常の作業をこなす集団でなく、利益を創出する集団にすべきなの
    です。

    何でもかんでも抱え込む企業は、当然、スピードが遅くなる。内部調整に縛られてい
    ては、原価率は全然下がりません。

    それどころか、内部調達、内製化のエネルギーが増えれば増えるほど、人件費の
    上昇からくる高コストの悪循環にはまってしまいます。

    身軽な企業、小さなフットワークのある企業に変身するために、ウトソーシングは
    不可欠
であるが、では、アウトソーシングをいかに戦略的に展開すればいいのでし
    ょう。

    アウトソーシングすることで、自社に得られることは、

     ①変化に対応できる

     ②変化を創造できる

     ③生産性を飛躍的に上げる

     ④ビジネスの質を高度化する

     ⑤既存市場への深耕を図る

     ⑥新規市場の開拓をする 

     ⑦自分で考え、自立できる人材を輩出する

     ⑧組織自体が目的志向の考える組織にする

     ⑨「独創する企業」になる

    アウトソーシングは、その規模の大きさは別にして、将来の企業をとりまく環境を考
    えれば不可欠です。

    特に小さな企業であれば外部に業務を委託することで、内部の組織の高度化が実
    現されなければならないのです。

    小さな本社、小さな組織の集合体、プロの外部活用、リスクの分散・・・・・・。

    小さな会社、身軽な組織の企業が、新しい価値を創出するのです。 

 

  ■家業的経営から企業経営

   「家業」とは企業規模の大小だけで量るものではありません。

   たとえ社員が数名程度の小さな会社でも、会社として登記している以上その会社の経
   営者に求められるのは「企業経営」です。

   企業経営と個人事業主などの家業経営を比較する場合に、もっともわかりやすい違い
   はそれぞれ自身の収入に対する考え方です。 

    家業経営は自らが稼いで収入を得る

    企業経営は会社が稼いだお金のなかからその成果配分として給料を得る

   という考え方の違いです。

   言い方をかえれば企業経営者は「自分が儲ける」た
   めではなく、「会社を儲けさせる」ために経営を行う必
   要があるのです。


  まず、経営者自身がこのような発想にもとづいた経営を
  行っているかを自問してみましょう。

  それが自社の経営の体質強化を検討する出発点となります。

  現在の自社の状況をチェックし、以前は気づかなかった問題点、
  つまり家業経営でよくみられる非効率な仕事の仕方や無気力な
  職場の雰囲気がみえてくるのではないでしょうか。

  まずは、自社の家業経営的な部分を一つひとつ改善していきましょう。

   <家業的経営の特徴チェック>

    □経営目的があいまいで、公私混同(特に経費において)している

    □将来に対する計画性がなく、思いつきで行動している経営計画

    □経営者と社員の間、あるいは社員間の役割分担が不明確である業務分担

    □指揮命令系統と報告・連絡・相談系統が機能的に定められていない基本動作

    □外部環境の変化に無頓着である情報収集

    □責任の所在が不明確である権限の委譲

    □社員が無気力で、会社に貢献する意欲・意識が乏しい
               (モチベーションコミュニケーション

    □売り上げなど事業にかかわる数値に無頓着

    □経営において悪い結果が出ても原因を追究せず、周囲に責任を転嫁している

    □改革を恐れ、変化への対応を拒否している

   このような家業的経営の特徴が自社の経営にあてはまるようであるならば、その原因
   を見極め、確実にそれを解決していく必要があります。

   しかしながら、長年にわたって染みついた家業経営的体質を改善していくのは、そうた
   やすいことではありません。

   経営者自身が自らの責任を強く認識し、会社をそして社員を変えていかねばならない
   のです。

   しかしながら、叱咤激励するだけでは社員は動いてくれません。

   企業経営を実践していくためには、家業経営時代よりも一段高い経営能力が要求され
   ます。

   経営者には、会社(店)を改革していくと同時に、自らの経営能力を向上させていく
   ことが求められているのです。

   経済環境が上向きなときにはアマチュア経営者でも儲けることができました。

   しかし、現在の厳しい経済環境から自社を守り、存続させるには本物(プロ)の経営者
   が必要です。

   現状に留まらず、変化に対応する経営力が求められています。

  ■成長段階によって変わる社長の役割

   たとえば、社員数人程度の会社の経営者に尊敬する「大企業の経営者」がいて、その
   人から経営の手法を学んだとしても、その手法をそのまま自社にあてはめて実践する
   ことは不可能な場合が多いでしょう。

   企業は、それぞれ規模も成長度合いも異なるため、経営者に求められる役割もそ
   れぞれの段階で異なります。

   社員数人で経営している会社には、その規模にあった経営者の役割があり、その会社
   が成長し、社員数が増えればまた異なる経営者の役割が求められるようになるのです。

   □会社の成長度合いに応じた経営者の役割の変化

    1.創業間もない時期

     経営者がすべての業務の中心となり、意思決定を行います。自らが先頭に立って
     走り回り営業活動を行わなければなりません。

     したがって、この段階で求められる経営者の役割は実務的な知識と営業力が中心
     になります。

     トップは、外に出て営業活動や情報収集をする機会が多く、留守がちになります。

     だから本気で協力しようとしない、トップがいない時には手を抜くような社員がいる
     場合は、いくらよい戦略をたてても、「絵に描いたモチ」になってしまいます。

     彼らを本気にさせるために、社長はしばしばイヤなことも言わなければならないが、
     それが小さな会社の社長の仕事なのです。

     この規模と従業員30人以下の会社の社長は、営業を、営業マンだけに頼って
     てはダメです。

     社長業の半分は外回りだと考えましょう。

     トップが外回りをすることで、次の5つのメリットを得ることができるのです。

      1.担当者の営業活動の評判を聞くことができる。

      2.自社に対する苦情や注文を聞くことができる。

      3.同業・他社の情報を聞くことができる。

      4.商品開発のタネが情報収集できる。

      5.顧客との人間関係ができるため担当者が突然退社しても困らない。

     この中でも、「担当者から突然の退社があっても困らない」の5番目のメリットの
     意味は大きい。

     トップの外回りは、リスク管理の面からも大変重要な活動なのです。

     「備えあれば憂いなし」

     社長は、時間をつくって、大いに外回りをしよう。

     小さな会社の社長は、時間をかけてでも顧客のネットワークづくに、全力をつ
     くすべきなのです。

     短期間で、しかも手っとり早くできるヒット商品開発に力を入れることも重要だが、
     後々まで継続して生き続ける販売のシステムづくりを、時間をかけてでも構築し
     たほうが会社にとっては得策であることを、よく理解していただきたい。

     規模の小さな会社は「弱点を直そう」と考えるより「長所を伸ばす」方向に徹底す
     ることです。

     この段階では、会社に対する将来の夢と実現するための強い情熱があれば、社
     内的な制度が十分に整っていなくとも仕方のないことかもしれません。 

    2.社員数が10人程度の段階

     会社の規模が拡大していくにつれ、次第に会社全体のすべての状況を把握する
     ことが困難になってきます。

     今まではすべて自分で行っていた意思決定も、ある程度は部下に任せる必要が生
     じ、そのためには経営者の権限の一部を委譲できる管理職クラスの人間を育成
     しなければなりません。

     また、社員の数が増えるにつれて、社内体制も従来の仲間同士という意識では統
     制がとれなくなるため、組織としての機能を強化することが必要になります。

     経営者は、営業の第一線で活躍することだけでなく、管理職の育成や組織の活性
     化といった内部体制の整備にも力を注がなくてはなりません。

    3.社員数が数十人程度の段階

     社員数が数十人以上になってくると、経営者のなすべき業務は加速度的に増加し、
     社員一人ひとりの状況を把握することが大変困難になってきます。

     このような段階に入ったら、経営者は求心力を維持するために、組織体制の構築
     をより一層強化しなければなりません。

     また、創業当時は社員数も少なく十分に意思の疎通が図られていたのに対し、
     この段階では自分の考えを全社員に正確に理解させることが大変難しくなります。

     そのため、自社の経営ビジョンをわかりやすくかつ何度も社員に訴えていく必要
     
があります。

     さらに異なる価値観をもつたくさんの社員の仕事の仕方や意識を会社としてひと
     つにまとめていくために、行動方針の明文化を行うとともに、自社にとって好ましい
     企業文化を構築していくことが重要になってくるのです。

     経営体質の強化には業務の改革・改善が不可欠です。

     創業から今日に至るまで、事業運営を我流でおこなってきて積もった垢を、今
     こそ洗い流すことを考えてみてはどうですか。

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経営体質強化

設備投資のための資金調達

設備投資のための資金調達


  ■さまざまな資金調達方法

   適切な設備投資は、企業の成長と安定のために欠かせないものです。

   しかし、設備投資には多額の資金が必要となり、資金回収には長期間を要するため、
   計画通りに資金回収が進まなかった場合には、会社の存亡を左右しかねません。

   設備投資を行うかどうかを判断するには、その必要性と採算性のバランスを十分に
   考慮して選択する必要があります。

   設備投資資金の調達方法としては、おもに、

    ・民間金融機関等からの借り入れ

    ・リース契約

    ・増資・私募債

   などがあります。

   これらの特徴を把握して最適な方法を選択しなければなりません。

   ここではそれぞれの特徴についてみていきます。

  □民間金融機関等からの借り入れ

   1.金融機関の選択

    借り入れを検討する際には、まずどの金融機関に依頼するかを決めなければな 
    りません。

    金融機関を選定する際のおもな判断基準としては、次の項目が考えられます。 

     ・調達の融通性・継続性:契約の諸条件や担保に対する評価

     ・情報提供能力:経営相談・業界情報・取引情報などの総合金融サービス
      能力が高いか否か

     ・その他便宜性:担当者の熱意、支店網の充実度、担当支店へのアクセス、
      インターネット取引の可否・操作性

    金融機関からの借り入れによって資金を調達する場合、借入先や調達方法に
    ついて複数の選択肢があるのが一般的です。

    設備投資資金として調達をする場合、調達金額は、目先の不足見込額ではなく、
    長期にわたる投資回収額をもとに返済期間と返済額、支払利息を検討し決定する
    ことが肝要です。

    なお、経常利益の数倍もの特別損失による資金流出が生じた場合などは、借り入れ
    に頼るのではなく、資産売却などの内部資金の調達や、自己資本の充実(増資)を
    ベースに資金を手当てしなければなりません。

    会社は利益以上の資金を生み出すことができないのですから、たとえ金融機関からの
    借り入れが可能であったとしても、その能力以上の借金は金利と元金返済とで会社を
    追いつめることになります。

    一方、借り入れにより購入した設備が担保価値を有する場合は、資産を担保として
    金利を軽減することも検討できます。

    また、返済を行っている途中であっても、よりよい条件で借り換えができる金融機関
    が見つかった場合には、肩代わり融資を利用することで金利負担を軽減することも
    可能です。

    借入金で固定資産を購入すると、後に紹介するリース契約に比べて、固定資産税の
    納付や減価償却の手続きなど、維持・保守にかかわる煩雑な事務が生じてしまいます。

    これらのコストも念頭において選択するようにします。

    以上のようなメリット・デメリットとほかの資金調達方法を比較したうえで、借り入れ
    を選択するかどうかを決めることになります。

    ただし、金融機関の借り入れに伴う審査は厳格であり、根拠のある収入見込みや
    返済計画がないと借り入れはできません。

    まず設備投資計画、借入額、返済計画などについて、金融機関の担当者と相談を
    することが必要です。

   2.公的資金の活用

    借り入れによる資金調達を検討する際に忘れてはならないのが、国や地方公共団体
    による中小企業向け公的融資制度です。

    この公的融資制度は、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、中小企業基盤整備
    機構、商工会議所、都道府県(市区町村)などが取り扱っており、多種多様なものが
    あります。

    また、制度によって、一定の金額内であれば身近な金融機関を通じて申し込むことが
    できる「代理貸付」が利用できます。

    代理貸付は、ほとんどの民間金融機関が代理店となっていますので、まずは取引の
    ある金融機関にご相談ください。

  □リース契約

   リース契約とは、機械設備を導入しようとする際に、リース会社が代わりにそれを購入
   したものを、比較的長期間、リース会社から借り受ける方法です。

   機械設備を金融機関からの借り入れによって購入する場合、それだけ借入枠を使う
   ことになります。

   しかしながらリースを利用することによって、金融機関からの借入枠は温存されることに
   なり、資金調達力に余裕が生まれます。

   また、技術革新の目覚しい今日、機械設備のサイクルは短くなる一方です。

   リースなら将来の陳腐化を考慮して、経済的な耐用年数に見合ったリース期間を設定
   することで、つねに最新の器機を利用することが可能になります。

   事務手続きについても機械設備を購入した場合、固定資産税や金利の支払い、減価
   償却費などを個別に管理しなくてはならないため、コスト計算が煩雑になりますが、
   リースの場合は、月々所定のリース料を支払うのみですので、これらの事務負担が
   なくなり、管理部門の合理化を図ることができます。

   なお、リース料は各社の経営方針に沿って設定されており、通常は、戦略上の理由や
   取引先の信用度によって1件ごとに金利を調整しています。

   たとえば、財務内容が良好で今後も継続して引き合いが見込める企業の場合は、
   金利を低くしてリース料を下げることが多くなっています。

   反対にリース期間中の収益が安定して見込めない企業などは、貸し倒れリスクを考慮
   して金利を高く設定します。

   このように同じ物件であっても契約先の財務内容や、リース会社の与信の考え方に
   よってリース料が変わるため、リースに定価はないといわれています。

  □増資・私募債

   1.増資による資金調達

    株式非公開である中小企業の場合、通常、既存株主に対する額面価額による株主
    割当増資によって資金調達をすることになります。

    また、企業規模がある程度大きくなると、時価による第三者割当増資を実行する
    場合も見受けられます。

    会社が急激に成長している場合や、慢性的に資金不足が生じている場合、その資金
    不足を解消するためには増資による資金調達が望ましいとされます。

    増資によって発行した株式にも配当金というコストはかかりますが、配当金は利息
    のように会社の損益状態に関係なく支払わなくてはならないものではありません。

    さらに、増資による調達資金は借入金のように元金返済の必要もないので、借り入れ
    や社債発行などに比べ安定的な資金調達法であるといえます。

    なお、第三者割当増資をする場合、引受先は出資比率に応じた経営への発言権を
    もつことになるため、引受先の選定には十分な注意が必要です。

   2.社債による資金調達

    社債とは、株式会社が大量の資金を必要とする場合に、投資家から比較的長期
    にわたって資金を調達するために発行する債券です。

    社債は広く一般投資家を対象に販売する公募社債と、特定の投資家に対して販売
    する私募債に分類できます。

    非公開会社が発行する社債は通常、私募債になります。

    なかでも「少人数私募債」と呼ばれる私募債は、親族や得意先など身近な少数の
    人から直接、事業資金を募るために発行するもので、中小企業でも利用しやすく
    なっています。

    少人数私募債であれば、社債発行に伴う官庁への届出や報告の義務などがなく、
    社債管理会社への委託も必要ありません。

    社債の返済は期日一括償還であり、それまでは毎年、利息のみを支払います。

    少人数私募債の条件

     ・株式会社、有限会社、合資会社、合名会社等が発行する社債であること

     ・社債の総額が1億円未満であること

     ・社債一口の額は総額の50分の1より大きいこと

     ・募集は50人未満の縁故者に直接行うものであり、社債の引受者に金融
      機関が含まれないこと

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経営体質強化

会社を成長させるための投資の考え方

会社を成長させるための投資の考え方
 

  ■投資が経営体質を強くする

   業績好調な中小企業の多くの社長は「我が社はここ数年きちんと利益を出し続けている」と
   胸を張って語ります。

   確かに連続して利益を上げていることは素晴らしいことです。

   しかしながら、この社長が「毎年少しでも利益を上げ続けること」のみを目標に経営していた
   としたら、話は違ってきます。

   毎年の利益の積み重ねだけでは会社は本当には強くなりません。

   それだけでは長期的な会社の存続は約束されないのです。

   そこで、ここでは会社の成長のための投資の考え方について解説します。

   1.投資することで会社は成長する

    企業経営では会社の成長のための投資が欠かせません。

    投資のための原資は資本金や借入金、そして毎年稼いだ利益などです。

    多くの社長は利益を出すために必死の努力をしていますが、稼いだ利益をどのように投資
    していくかということについて、明確な考えをもっている人は少ないようです。

    また、必死になって稼いだ利益を失敗するかもしれない投資に回すことに消極的な社長も
    います。

    しかし、これでは会社を成長させることはできません。

    資本金1000万円で会社を始めるということは、1000万円を元手に投資をしていくことに
    ほかなりません。

    最初は投資できる金額は小さいですが、利益が積み重なっていけば、投資可能金額も大きく
    なっていきます。

    また、信用が高まれば借金もできるようになります。

    逆にいうと会社成長のための投資額を大きくするために利益を稼いでいるととらえることも
    できます。

    そして、その投資を上手に行える会社、つまり稼いだお金を上手に使える会社が、さらなる
    利益を生み、投資可能金額も膨らむという好循環のなかで成長していくのです。

   2.目先の黒字のみを目標にしない

    たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。

    最近退職者が何人かでて営業マンが不足しています。

    このままいけば決算は何とか黒字になりそうな見込みが立っていますが、新規に採用すれば
    人件費分だけ赤字になることがわかっています。

    黒字決算を優先して採用を控えるべきか、あるいは今後の投資として赤字になっても人を
    採用すべきでしょうか。

    別のケースもみてみましょう。

    業績は順調で今期は黒字決算を見込んでいます。

    来期以降のことを考えると早めに設備投資をしておきたいと思う一方で、今、設備投資を
    行うと赤字になってしまいます。

    設備投資は行うべきでしょうか。

    ここで改めて確認したいのは、会社を成長させていくということと、毎年利益を出し続ける
    ということは全く別物であるということです。

    会社を成長させていくプロセスのなかで、結果として毎年利益が出続けるのは大変好ましい
    ことですが、そのことを第一優先にして、将来のための投資を行わないのは、長期的な視野
    から考えれば非常に危険なことです。

    もちろん、毎年赤字が続けば経営そのものに行き詰まることになりますが、少なくとも資金的
    に安定していて、根拠のある投資をする場合は、その期が赤字になってしまっても全く問題
    ありません。

   3.毎年黒字の落とし穴、たんにラッキーの連続だったら

    会社を成長させていくということは、多少のアクシデントが発生しても会社倒産の危機に
    追い込まれないように、適切な投資によって経営体質を鍛えていくことでもあります。

    たとえば、非常に幸運な状況に恵まれて、ほとんど新たな努力なしに何年か黒字が続く
    こともあります。

    このような状況が続くと、社長は経営体質がまったく強化されていないのに、数字だけを
    みて「我が社は順風満帆」だと勘違いしてしまうこともあります。

    そしてある日突然、強力なライバルの出現や顧客ニーズの急変などのアクシデントが発生し、
    自社の脆弱な経営体質では到底対応できないような事態に陥ってしまうことも考えられます。

    毎年の数字だけで会社の力を判断するのは非常に危険なのです。

    会社の力はあくまで経営体質がどれだけ強化されているかで判断しなければなりません。

    幸運が重なり利益だけ出続けて経営体質が強化されていないのは、じつは非常に危険な
    状態なのです。

   4.投資の決断をするのは社長の役割

    そうはいっても、赤字覚悟で大きな投資をするのはたしかに勇気が必要です。

    周囲からの反対もあるでしょうし、「もし失敗したら会社が潰れるのではないか」という
    不安もつきまとうでしょう。

    幹部陣と入念に相談するなど慎重な検討が必要なのはいうまでもありませんが、あらゆる
    角度から検討して、それが自社の経営体質の強化につながると判断される場合は、社長自身
    が最終的に決断するしかありません。

    そのような困難な意思決定ができるのは社長だけだからです。

    先のケースでいえば、営業マンの新規採用については、残ってくれている営業マンに負担を
    かけ続けることはさらなる退職増加につながり、会社の営業機能が維持できなくなる可能性が
    あります。

    また、優秀な営業マンを育てるためには一定の期間がかかることを考えると、早めに新規
    採用に踏み切るべきでしょう。

    また、設備投資についても、商品の販売増のめどが立っており、現設備では対応しきれない
    場合や、現在の商品が陳腐化の兆しをみせており、新商品の開発が不可欠と判断される
    場合は導入を決定すべきです。

    単年度の黒字にこだわるあまり、必要な先行投資を控えた会社は、その後大きく成長する
    ことはありません。

    会社成長のためには、自社の経営体質が確実に強化されているかをつねに把握し、必要な
    投資は確実に行っていくことが大切なのです。

  □直接投資と間接投資

   1.投資には2つの種類がある

    投資には工場などでの設備投資のようなすぐに収益につながる可能性がある「直接投資」と、
    社員教育や研究開発のようなすぐには収益に直結しない「間接投資」があります。

    例えるなら、前者はワールドカップの日本代表が目前の大会で勝つための強化費用、
    後者は日本のサッカー全体のレベルを上げていくために、アマチュアクラブ制度を全国的に
    普及させるための費用のようなものといえます。

    このように考えるとどちらの投資も重要であることがわかります。

    間接投資で次代を担うような技術や人材を育て、それを具体的な成果に結びつけるために
    直接投資を行うという2種類の投資が必要なのです。

         

   2.間接投資を軽視しない

    社長のなかには、工場の設備投資(直接投資)には積極的でも、社員教育や研究開発
    (間接投資)に対しては消極的な人もいます。

    日々の業務のなかでも社員は徐々に仕事を覚えていきますが、それはあくまで現状ベース
    の仕事を覚えていくだけです。

    社員に投資して新たな知識や能力を吸収させない限り、会社は次のステージに上がれません。

    毎年少しずつでも社員に投資をしている会社と全くそれをしない会社とでは、5年後には
    大きな差がつくことは明らかでしょう。

    社長は「直接投資」だけではなく、「間接投資」の積み重ねでいかに人材力を高めていく
    べきかにも知恵を絞る必要があります。

    「直接投資」で得られる効果は、たとえば、設備投資であればその設備の稼働能力以上に
    高まることはありません。

    しかし、「間接投資」がうまくいけば、投資金額の10倍、100倍に匹敵する効果、つまり
    会社の収益構造を一変させる効果を生む可能性もあるのです。

  □投資の具体的な考え方

   1.現状の延長線で考えてみる

    実際の投資を検討する際にはいくつかの考え方があり、そのうちもっとも基本となるのは、
    現状からの延長線で検討することです。

    具体的には、次のような手順で考えます。

    a.現業の強化

     現在の市場(顧客)に現在の商品をさらに浸透させるための投資です。
     現商品のための増産体制整備、シェア拡大のための販促費用などが該当します。

    b.新商品の展開

     現在の市場(顧客)に対して新たな商品を提供するための投資です。
     既存商品が将来低迷することに備え改良商品を開発したり、既存商品
     とは全く異なる商品を開発して新たな需要を獲得するための開発費
     などが該当します。

    c.新市場への展開

     現在の商品をこれまでと異なる市場(顧客)に販売していくための投資
     です。  
     小売店を通じて販売していた商品をインターネットで直販するための
     システムの開発費用などが該当します。
     また、商圏を広げて新たな地域で販売を開始する際の出店費用なども
     これに該当します。

    d.新市場・新商品の展開

     新しい商品を新しい市場(顧客)に販売していくための投資です。
     これまでの商品や市場(顧客)に頼らずに全くの未知の分野を開拓して
     いくやり方です。
     有望分野に参入することによって収益構造が劇的に向上することも期待
     できますが、ゼロからのスタートですので失敗する確率も高まります。

   2.現業が好調なときこそ新規投資の検討を

    投資のタイミングとしては「困ってから行うのではなく、現業が好調なときにあらかじめ
    投資しておく」ことが非常に重要です。

    たとえば、前述の投資の類型のなかの「b.新商品の展開」であれば、既存商品が売れなく
    なってからではなく、将来的には必ず売れなくなることを見越して、あらかじめ新商品開発
    のための計画的な投資をしておくことが大切です。

    現業の低迷が続き、窮余の策として一発逆転を狙って投資するケースと、前もって
    計画的に投資しておくケースを比較するとどちらのほうが成功確率が高いかはいうまでも
    ないでしょう。

   3.失敗することを恐れない

    いくら緻密な検討を行ったとしても、それが「投資」である以上、失敗をする可能性は当然
    あります。

    設備投資を行い新製品を製造したけれども全く売れない、あるいはずっと目をかけて投資
    し続けた社員が他社に引き抜かれた、こういったリスクは避けては通れません。

    しかし、会社を成長させるためにはそれでも投資を続けなければなりません。

    一度の失敗にひるんで投資を止め、利益を現金として貯め込んでいるだけでは、その時点
    で会社の成長は止まってしまいます。

    投資で失敗しても、失敗した原因をきちんと分析していけば、勝算と得られる効果は次第に
    上がっていくものです。

    会社として一定の利益を出すことは、仕組みさえできてしまえば、幹部社員に任せることが
    できますが、稼いだお金をいかに使うか、将来のためにどのように投資していくかの判断は
    社長が行う以外ありません。

    失敗を恐れず、また、失敗してもそれを糧として投資のセンスを磨いていくことは、会社を
    成長させるための社長の重要な役割なのです。

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直接投資と間接投資の例.bmp

経営体質強化

サラリーマン法人

サラリーマン法人
 

  ■サラリーマンが会社になる

   会社は人件費を抑えるために、これまで契約社員や派適社員、パート、アルバイ
   トなど、様々な雇用形態を利用し、会社の発展に努めています。

   しかしながら、「100年に一度の不況」ともいわれるように、景気の低迷が続く中
   で、多くの会社が利益を確保することが困難な状況が続いています。

   そこで、やる気のある社員にとってもメリットのある企業内起業支援として、社員
   のサラリーマン法人化を検討してみるのも一つの手です。

  □「サラリーマン法人」とは

   「サラリーマン法人」とは、簡単にいうと、会社員が法人成りして自営業者に変わ
   ることをいいます。

   つまり、社員は会社との雇用契約をいったん白紙に戻し、サラリーマン法人化し
   た「元」社員が「元」勤務先の会社と改めて業務委託契約を結び、社員時代の仕
   事をこれまでと同じまま、会社と契約だけ変えて勤務することをいいます。

   会社は、雇用契約した社員である個人に給料を払うのではなく、業務委託した社
   員、すなわち法人に業務委託費を払うといった形態になり、会社や社員に様々な
   メリットが生まれます。

   ◎雇用形態

    社員の雇用形態が変わるだけですので、対外的には従来と何ら変わりはありません。

    では、一般的に会社や社員にとってどういったメリットがあるか、デメリットがある
    としたら何かを具体的にみてみましょう。

  □会社のメリット・デメリット

   ◎メリット

    1.サラリーマン法人化による、優秀な人材の流出の防止

      雇用契約だと優秀な社員は、いつでも退職する可能性があります。

      委託契約は雇用契約と異なり、契約期間を3〜5年に定めることも可能です
      ので、優秀な人材のつなぎ止めの方策となります。

    2.社会保険料等の会社負担の軽減

      社員を一人雇用すれば、社会保険料、給与、法定福利費、教育訓練費、事
      務費、備品費など様々な経費がかかってきます。

      それを雇用契約から業務委託契約に変えることで、いわゆる人件費などのコ
      スト削減はもちろん、事務負担の軽減にもつながります。

    3.消費税の軽減

      業務委託契約により、支払い費用は従来の給与である人件費から業務委託
      費に経理処理上変わりますので、いわゆる「課税仕入れ」となり消費税額の
      軽減となります。

    4.より優秀な人材の確保

      人件費などコスト削減分を委託費に加算して支払うことで社員にインセンティ
      ブが働き、より優秀な人材をコストアップ無しで確保できるようになります。

    5.生産性の向上

      年収アップにともない、社員のコスト意識やプロ意思が高まり、生産性の向
      上が期待できます。

   ◎デメリット

    1.会社イメージのダウン

      人件費カットなどといった会社側のリストラ策として、外部および社員に受け
      取られる場合があります。

      リストラ策として受け取られないように、サラリーマン法人化を全社的に一斉
      に始めるのではなく、有能な管理者や優秀な技術者など業務実績が把握し
      やすい社員・職種から始めるようにするのがいいでしょう。

    2.会社への忠誠心の希薄化

      社員は形式的にも独立した会社の社長となるため、元社員であった会社より
      も自分の会社に目が向くようになり、元の会社に対する忠誠心が希薄になります。

      この希薄化にともなうトラブルの発生などを抑えるため、契約事項・内容等の
      諸規定や業務運営上のケアなどに留意する必要があります。

  □社員のメリット・デメリット

   ◎メリット

    1.収入がアップする

      「元」勤務先が負担していた社会保険料や退職金の掛金を上乗せしてサラリ
      ーマン法人に払ってもらい、生活コストの一部を法人の経費に移転させたう
      えで、本人が受け取る役員報酬を課税最低限あたりまで減額すれば、所得
      税や住民税・国民健康保険料もぐっと安くなります。

    2.必要な経費(交際責、交通兼、家賃)の計上ができるようになる

      サラリーマン法人では、自宅を会社にすれば家賃の一部を会社の経費とし
      て控除できます。

      車もリース契約にすれば、使用割合に応じて経費で処理することができ、通  
      信費や携帯代、資料費・パソコンなどの購入費も経費にできます。

      また、得意先との飲食やゴルフも接待交際費として会社経費に含めることが
      可能です。

   ◎デメリット

    1.終身雇用ではなくなる

      雇用契約ではない点が一番のデメリットになります。

      雇用契約であれば、勤務先が従業員を解雇する場合には解雇予告(1カ月
      前の解雇通知、あるいは通知が1カ月に満たない場合には満たない日数の
      賃金支払)を行う必要があるなど、比較的リスクの小さい立場にいると言えま
      すが 、サラリーマン法人ではそのようにはいきません。

      経営がうまくいかなければ、そのまま職を失う危険性も否定できません。

    2.銀行借り入れが不利になる

      住宅ローンをこれから組む場合、借り入れ審査などがサラリーマン時代と比
      べて不利になることがあります。

    3.将来の年金の支給額が減る可能性がある

    4.納税手続きを自ら行うことになる

      納税手続きは、従来は会社が全て行っていましたが、サラリーマン法人化後
      は自らサラリーマン法人の会計処理と決算申告を税務署に毎年提出しなけ
      ればならなくなります。

      また、税金面以外でも、お金の使い道を誤れば会社側の偽装請負ということ
      にもなりかねないのでお金の使い方に細心の注意が必要となります。

    5.業務運営以外のコストが掛かる

      サラリーマン法人を設立するコスト、将来サラリーマン法人をやめる(解散)
      するコストを想定しておかなければならなくなります。

  □事例:ある中堅メーカーの場合

   中堅メーカーで営業企画部に所属するSさんの年収は約800万円です。

   厚生年金と健康保険の合計で、年収の約2割にあたる160万円ほどが天引きさ
   れています。

   Sさんは、今度の販売促進プロジェクトが終了したら、次のプロジェタトからは「サ
   ラリーマン法人」として担当させてもらえるよう上司に相談をし、承諾を得ました。

   仕事の内容も労働条件も同じ、販売促進計画の企画からプロジェクトの進行、実
   際の販売促進活動までを行い、これまでどおりに会社に出社して年収800万円を
   得ます。

   唯一変わったのが、会社との契約を業務委託契約に変えてもらったことです。

   Sさんは自分ひとりだけが社員の「株式会社S」を設立し代表取締役となり、元社
   員であった会社とは業務委託契約で結ばれることになりました。

   様々な書類提出など会社設立のために1カ月ほどかかりましたが、これだけのこ
   とでAさんの家計はぐっと楽になりました。

   なぜなら、手取りの収入が増えたからです。

   年収800万円のサラリーマンから、同じく年収8百万円の自営業者となり、国民年
   金の保険料を年間32万円、国民健康保険は約20万円を自ら負担しなければな
   りませんが、サラリーマンだったときは年金と保険で160万円も払っていたので、
   差し引き100万円以上もトクをする結果となりました。

   一方、Sさんがサラリーマン法人に変わったことでSさんが元社員であった会社も
   大きなメリットを得ました。

   通常会社は社員を厚生年金や健康保険に加入させる義務を負い、社員と折半で 
   保険料を支払います。

   そのために会社は実際にはSさんに年収の約1.5倍の1200万円ほどの給与を
   支払っていました。

   しかし、今回Sさんが法人化してSさんの厚生年金や健康保険の負担がなくなった
   ので、会社全体としての保険料負担が大きく減り、人件費に余裕が生まれました。

   このケースにあるように、サラリーマン法人化というのは社員にも会社にも利点が
   あるアイデアだといえます。

   しかしながら、今のところほとんど普及していません。

   会社と「正社員」の雇用関係にあるサラリーマンなどはこの不況下、それを業務委
   託契約に変えるほどの勇気がないのかもしれません。

  □サラリーマン法人化に向けて

   会社には業種や機能に応じて営業や企画、総務など様々な部署があり、そこで 
   働く社員も正社員や派遣社員、契約社員など、雇用形態・契約形態も様々だと思
   います。

   なかには、サラリーマン法人にはなじまない担当業務・形態の方もあるでしょう。

   全社一斉にサラリーマン法人制度を導入することが難しいようでしたら、業務実績
   が把握しやすい経営サイドの部長職級や、プロジェクト化しやすい企画部門、専
   門性の高い技術職などから始めるのがおすすめです。

   いずれにせよ、サラリーマン法人化は経営者側と社員側とで双方に誤解が生じな
   いよう、十分に分話し合いがなされてはじめて進めることができる制度です。

   社員からすれば、正社員が正社員でなくなることについて、その後の人生への不
   安を大きく駆り立てる事件でもあります。

   やる気のある社員、業績のよい社員をいかに活用し会社発展の糧とできるか。

   真に経営者の腕が試される課題でもあります。

   ◎サラリーマン法人設立手順

    まず、社内の社員独立奨励制度、つまり人事制度を見直すことから始めます。

    そして次のステップとして、どういう条件のもとで独立できるのか、業務委託に関
    する契約内容、法令等遵守(コンプライアンス)の徹底など、会社と社員との明
    確なルール作りが必要不可欠となります。

    一般的には、次のような手順で進められます。

     1.社内で意識調査アンケートの実施
              ↓
     2.アンケート結果の公開
              ↓
     3.社内研究タスクフォースの設置(勉強会)

       メンバー:各部署の管理者クラス、または人事経理部署
              ↓
     4.一般社員向け説明会(毎月1回など定期的に開催)

       現在から将来の社会保険制度、税制の解説も必要。
              ↓
     5.「サラリーマン法人」参加希望者向け説明会(税理士、社会保険
       労務士等専門家も参加) 

              ↓
     6.「サラリーマン法人」対象者決定
              ↓
     7.「サラリーマン法人」実施者向け説明会(税理士、社会保険労務士等
       専門家も参加)

       具体的な手続きの勧め方など。
       新会社法施行により有限会社が廃止された今、新たに合同会社
       という会社形態が加わり、株式会社、合同会社、合資会社、合名
       会社の4つの会社組織がある。
        ↓
     8.「サラリーマン法人」設立

       設立後に経理実務(帳簿作成など)に関する研修会も実施。

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経営体質強化

持株会社 ホールディングカンパニー
 

  ■持株会社経営の流れ

   1.持株会社とは

     持株会社とは、ほかの会社の株式を所有することによって、事業活動を管理
     し、実質的に支配することを目的とする会社のことであり、ホールディングカン
     パニーとも呼ばれています。

     持株会社はその形態によって、「事業持株会社」と「純粋持株会社」の2つの種
     類に分かれます。

     「事業持株会社」は、自ら事業活動を行いながら、他社の株式を保有して事業
     活動を管理・運営している会社です。

     「純粋持株会社」は、自社は事業活動をせず、純粋に他社の株式を保有し、管 
     理・運営することだけを事業の目的とする会社です。

     そのほか、銀行、証券会社、保険会社などの金融機関を傘下にしている持株
     会社のことを特に「金融持株会社」といいます。

   2.法改正による事業再編・体制の整備

     今では一般的となった純粋持株会社ですが、1997年12月の独占禁止法に
     よって純粋持株会社が解禁され、以降、ダイエー、NTT、大和証券、ソニーな
     ど多くの企業でグループ企業を持株会杜制に移行しました。

     戦前、日本の財閥は純粋持株会杜の形態で事業を拡大していましたが、事業
     支配力が過度に高まることを制限するために、独占禁止法により、純粋持株
     会社方式を採用することが禁止されていました。

     しかし、海外の多くの優良企業では、グループ企業を効率的に管理・運営する
     方法として純粋持株会社方式が採用されています。

     そこで、日本においても国際競争力を高め、効率的にグループ企業の経営戦
     略を図れるよう、1997年純粋持株会社を解禁することとなりました。

     またその後も、経営改革のための事業再編への取り組みを促進するために、
     合併法制の合理化、株式交換・移転の制度化、会社分割の制度化など、次々
     と法整備が行われてきました。

     今日では多くの大企業が純粋持株会社制に移行しており、またその流れは中
     小企業にも及んでいます。

     以降、ここでは、この純粋持株会社を持株会社と称して説明します。

  □持株会社制のメリット・デメリット

   1.持株会社制のメリット

     (1)グループ戦略の最適化

       持株会社制へ移行し、各事業活動と距離をおくことで、一部の事業分野に
       肩入れせず、グループ全体の戦略を策定することに専念できます。

       これが持株会社制のもっとも重要な機能といえるでしょう。

       グローバル化の進む現在の経営環境においては、たとえ高収益事業で
       あっても事業の将来性が不安定である場合や、グループ戦略からはずれ
       る事業であれば、全体最適の視点から事業を切り離し、優先事業へ資源を
       集中させなければならないこともあります。

       持株会社は、客観的な立場から、各事業の業績や事業方針、将来性を大
       局的に把握し、グループ全体の経営資渡の最適配分を行い、収益の最大
       化を追求することができるのです。

     (2)経営判断の迅速化

       事業環境が急速に変化する昨今においては、経営判断のスピードが事業
       の成否をわけます。

       組織の規模が大きくなるほど、決裁の階層は多層化され、経営判断のス
       ピードは遅くなるものです。

       各事業会社の事業にかかわる意思決定を、それぞれの子会社の経営陣に
       権限委譲することにより、スピードを要する戦略においてもタイムリーに対
       応することができるようになり、また各事業における経営責任の所在を明
       確にすることができるようになります。

       特にオーナー社長が事業の第一線で活躍している企業の場合、事業規模
       が拡大していっても、すべての決裁権限がオーナーに集中しており、各事
       業分野の環境変化や事業の詳細を把握しないままに経営判断がなされ、
       事業担当役員の権限と責任が不明確になってしまうケースがみられます。

       そのような場合、持株会社経営に切り替えることが、職務分掌や経営責任
       を改めて見直す機会になることもあります。

     (3)事業買収のスピードアップ

       合併の形態で事業買収を行う場合、経営統合する企業間の力関係が表面
       化し、双方のプライドを損なわないよう条件交渉をしなければならず、調整
       に時間がかかります。

       しかし、持株会社を連結器として活用することで、統合する企業同士を同等
       に扱い、双方の立場を配慮した競合が可能になります。

       また、社内ルールや情報システム、労働条件、貸金体系などの社内規程
       等について、いかに統一させるかも大きな課題となります。

       持株会社制度を採用すれば、別会社としてグループに組み入れ、段階的
       に競合していくことで、企業間の混乱や摩擦を緩和させることができます。

     (4)正当な業績評価

       各事業を個々の独立した会社へと分社化することによって、各事業の採算
       が明確になり、各社の経営成績を正しく評価できる環境が整います。

       また成長性のある事業と不採算の事業の区別が明確になります。

       事業再編にあたっては、新たな事業に進出するか、あるいは撤退するかの
       経営判断を早期にすることができます。

       さらに、同一企業では、異なった人事制度や労働条件を採用することは困
       難ですが、持株会社制を採用し、それぞれの事業を別の会社として扱え
       ば、各企業の環境に合わせて、異なった人事制度や労働条件を採用する
       こともできるため、各事業戦略を機動的に立案することが可能になります。

   2.持株会社制のデメリット

     (1)管理業務の負担増

       各社がそれぞれ管理・間接部門等を有し、持株会社へ業績など事業にか
       かわる詳細を報告すると、間接部門が肥大化し、経費が増加する可能性
       があります。

       また、逆に間接部門の負担を軽減するために、報告業務などを簡素化する
       と、経営管理のルールが統一されず、グループ全体で管理業務の効率化
       や情報把握を行うことが難しくなります。

       各社の事業の詳細を把握することができなくなり、グループとしての収益の
       最大化を追求しにくい環境になることもあります。

     (2)コミュニケーションの減少

       各社がそれぞれの社内で取締役会、幹部会などの経営会議を行い、各会
       社間でコミュニケーションを図る機会がなくなると、各社の事業の内容につ
       いてリアルタイムで情報を把握するのが困難になり、事業間のシナジーを
       図ることが少なくなります。

       グループ会社間の情報共有を目的とした経営会議や交流会、情報誌など
       の仕組も必要です。

       また、企業グループを束ねる理念、経営ビジョンを掲げるなど、グループと
       しての経営哲学を確立しないと、グループとしての求心力も低下しかねま
       せん。

     (3)人材の交流が困難

       各社が異なった人事制度や処遇などの労働条件を決定することにより、グ
       ループ間の人材交流を行うことが困難になります。

       各事業の領域を超えたゼネラリストの育成を行うために、別途グループ共
       通の人材交流の制度を整備するなどの工夫が必要です。

     (4)短期的な収益追求

       各社独立採算により事業を運営することを求められるため、各会社とも決
       算期ごとに業績を比較され、評価をされることになります。

       客観的に業績を評価されることにより、各社の実力が正しく評価される反
       面、つねに子会社間で業績を競うため、一時的に収益が悪化するような中
       長期的な投資が行いにくくなります。
   
   3.カンパニー制との違い

     持株会社にせずに、1つの会社内の事業部門に対して権限と責任を強化し、
     各事業の業績を明瞭にして、その結果を経営上の判断資料や指針とする方
     法に、「事業部制」や「カンパニー制」があります。

     いずれも内部組織における制度のため、法的な制限や制約はありません。

     事業部制は、1つの会社にいくつかの事業部を設け、事業部単位で利益が算
     出され、管理会計により、各事業部の損益を明らかにします。

     また、カンパニー制は事業部制を進展・補正させたものですが、最大の違い
     は、バランスシートまで踏み込んで各事業の収益を把握することにあります。

     内部組織ではありますが、社内的に独立法人とみなされ、各カンパニーの資
     本金を設定し、それ以外の必要資金は本社からの借入として、カンパニーごと
     のバランスシートに計上されます。

     設備投資、人事上の決定権限も各カンパニーに与えられ、配当目標も設定し
     ます。

     そのため、持株会社制にかなり近い仕組ですが、実際の独立法人とは異な
     り、会社が倒産するリスクや株主から直接代表訴訟で訴えられるリスクなどが
     あるわけではなく、企業を取り巻くリスクに直接身をおくことにはなりません。

  純粋持株会社の設立形態

   純粋持株会社の設立のための手続きと手備について以下に説明します。

   1.事業再編による分社型持株会社

     特定の事業部門を分社化し、分離・独立させて子会社を作る方法です。

     子会社の設立の方法としては、事業譲渡と会社分割の2つの方法があり、会
     社分割の場合は、さらに既存法人に承継する吸収分割と、法人を新たに設立
     する新設分割の方法があります。

     具体的には、会社の事業部門を各々の事業を担う事業子会社として分社する
     わけですが、分権化を進める事業部制やカンパニー制をすでに導入している
     会社であれば、業務の権限や責任、収益構造についても各事業部の切り分け
     がすでにできているので、純粋持株会社への移行も比較的スムーズにできます。

     しかし、そうでない場合は、まず事業部ごとの収益とコストを明確にし、責任と
     権限についてもルールを定めるなど、段階的に導入を検討したほうが混乱せ
     ずに移行できます。

     また、持株会社本体としては、どの程度本社機能として権限を残すか、どのよ
     うに子会社評価を行うかなどのほか、本社機能のコストをまかなうための資金
     を吸い上げるための仕組みとして、指導料やロイヤルティ、配当などの制度を
     設計します。

     また、資産・負債・資本の分割についても実施します。

   2.合併による統合型持株会社

     合併などによる事業統合として、持株会社を採用する方法です。

     株式会社の移行方法としては、株式交換・株式移転や、会社分割の方法を採
     用するのが一般的です。

     合併までのスケジュールと各社株主に対する持株会社株式の割当比率などを
     決定した後、持株会社の機能・組織や持株会社の人事や権限について話し合
     います。

     情報システムや業務プロセス、人事制度など各社によって制度の異なる内容
     については、どの機能を採用するかについても事前に決定しなければなりま
     せん。

     また、統合により、清算する事業や処分する資産などがある場合は、これも事
     前に方針を決定します。

  □事業承継におけるポイント

   中小企業においても、節税や事業運営のしやすさなど、さまざまな理由からすで
   に多くの会社を運営しているケースがあります。

   しかし、多くの会社を運営しているのと、純粋持株会社を設立してグループ経営を
   行うのとでは経営戦略上大きな違いがあります。

   ここでは、中小企業が持株会社を設立する場合のポイントについて説明します。

   1.株価対策

     多くの会社を運営している場合、各社ごとに株式譲渡のための準備をしなけ
     ればならないので、株価算定や譲渡手続きなどが煩雑になります。

     株価が高くなる企業が含まれている場合には、相続税のための資金調達など
     も考えなければなりません。

     しかし、オーナー社長が持株会社を作り、所有する会社の株式をその持株会
     社を通じて保有するように変更すれば、業績の悪い企業の株価と業績の良い
     企業の株価が相殺されることになります。

     結果として株式の評価額を引き下げることができ、持株会社の株式だけを後
     継者に譲ればよいので手続きが簡単になります。

   2.グループ経営

     すでに多くの会社を経営しているオーナーが後継者へ事業を引き継ぐ場合、
     各社の事業の状況や経営成績、人事評価の方法などを個別に把握するのは
     困難です。

     そこで後継者が運営しやすいようグループ経営の体制を構築し、後継者が各
     社を管理しやすい体制をつくります。

   3.後継者の育成

     オーナーが第一線で活躍しているうちに、後継者育成を行う目的で、子会社の
     運営を後継者に任せるケースもあります。

     実際に社長として会社の経営に携わることによって、社長としての経験を蓄積
     します。

   4.複数の相続人への譲渡

     将来 複数の相続人に会社を任せようとする場合 相続人同士で会社の運営
     方針について意見の衝突が生じるケースもあります。

     そこで将来、それぞれの相続人が独立して会社運営できるよう、相続の準備
     を行う目的で会社を分割しておくこともできます。

   5.機動的な社内ルールの適用

     少人数ながら多くの事業を運営している会社の場合、その業界や職種の特徴
     により、給与の相場や勤務時間などの労務の条件や、業務のプロセスは異
     なってくるものです。

     これまでの事業の経線を知っているオーナーがいる間は、社員が不満を言っ
     ても理解を得ることができますが、若い後継者に対しては 公正・公平な制度
     を構築して、社員の間で不公平感が生しることのないよう労働条件や業務手
     続きなども統一しておくほうが運営がしやすくなります。

     そこで、各部門によって異なる年齢構成や給与体系、勤務時間、休日のとり方
     や事務手続きなど、社内のルールを見直し、また機動的に変更をしたほうかよ
     い事業がある場合は、持株会社化することで統括しやすい体制を整備するこ
     とかできます。
 

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経営体質強化

自社の健康診断

自社の健康診断
 

  ■自社を定期的に診断(健康診断)

   あなたは、年に1〜2回、健康診断を行なっていると思います。

   社員の健康診断も法律で義務付けられています。

   また、自動車は法的に車検を受けて合格しないと運転できませんし、コピー機な
   どの機械は業者が定期的に点検をしているでしょう。

   いわば会社を構成する重要な部分は定期的に「健康診断」を行なっています。

   では、自分の健康診断を行なうのと同様に、「会社」に関しても健康診断を行なっ
   ているでしょうか。

   たとえば、医師の診断を受けるように、毎年外部の目から会社の健康診断を受け
   る、あるいは自主的に会社の状況を診断しているでしょうか。

   大企業であれば監査役や会計士によるチェックがなされていますが、中小企業の
   場合、外部の視点から診断を受けているケースは少ないといえるのではないで
   しょうか。

   また、監査役や会計士による監査も、会計監査に重点が置かれているため、業
   務全体にかかわる経営力全般のチェックは意外に行なわれていない場合もあります。

    会社の健康状態をつかむのは、社長や経営陣の重要な業務

   「毎年決算書を作ってもらっているから『会社の健康診断』は行なっている」という
   方もいるかもしれません。

   しかし、会社の健康診断は「決算書=財務面」だけでは済みません。

   決算書や税務申告書はあくまでも過去の数字です。

   現在の健康状態を知るためには、別の視点からの健康診断が必要です。

   人間の健康診断が内科だけでなく眼科や耳鼻科、ときには神経科の診断を行な
   うように、会社の健康診断も財務分析だけでなく総合診断が必要

   たとえば、次のような視点から会社の健康診断を行なってみてはいかがだろう。

   (1)経営力

     社長の仕事は「会社の経営」です。

     自分は営業が強いから、人と会うのが好きだからといって営業だけをやってい
     るようなことがないでしょうか。

     広い交際も必要ですが、営業だけの社長では経営者とはいえないでしょう。

     同じように、自分は人と会うよりデスクワークが向いているからと管理のみの
     社長になっていないでしょうか。

     社長の本来の仕事は、「会社の経営」がきちんとなされているかを診断する視
     点をもった経営です。

     経営理念や会社の目標が明確になっているか、中期計画が作成されている 
     かなど、会社の経営力をチェックしてみましょう。

   (2)商品・サービス力

     自社の商品・サービスの力を冷静に分析してみたことがあるでしょうか。

     自社の商品・サービスの他社にない特徴をつかみ、他社と継続的に差別化す
     る仕組みがあるでしょうか。

     また、従来の商品・サービスだけに依存することなく、新たな商品・サービスを
     開拓していく仕組みができているでしょうか。

     商品だけでなく、たとえば梱包の状況、ネーミング、さらにはアフターサービス
     やメンテナンス、サービスであれば電話の応対や受付の印象も大切な要素です。

     商品・サービス力、付加価値を生む仕組み、新商品開発の仕組み、対応のマ
     ナーなどがポイントとなります。

     広い視野から自社の商品・サービス力を診断することが必要です。

   (3)販売力

     従来の売り方を引き継いでいるだけではなく、自社の商品・サービスをどのよ
     うに販売していくかを戦略的に検討しているでしょうか。

     社員の気持ちを入れた目標を設定して、やる気を引き出しながら営業活動を
     展開できているでしょうか。

     また、市場や外部環境を理解し、顧客のニーズを把握する方法を検討してい
     るでしょうか。

     ただ売上高のみで評価するのではなく、売れる仕組みが整っているかを診断
     する視点が販売力を考えるポイントになります。

   (4)経営管理力

     経営とは、最終的に経営管理(=計画する、組織化する、人材を活用する、統
     制する)をいかに行なっていくかが重要です。

     そのためには、それなりの知識や工夫が必要です。

     人材管理・原価管理・経費管理・財務管理の各管理事項について、会社として
     どのようなエ夫を行なって管理しているか、管理する仕組みがあるかを診断し
     てみましょう。

     以上の4つの視点から、どのような経営を行なっているのかを、たとえば毎年1
     回(株主総会や会社の設立記念日などに)チェックすることで、定期的に会社
     の健康診断を行なうことができます。

     財務分析による健康診断とともに、会社の経営力を診断していく機会を定期
     的にもつことば重要なことです。

     ◎会社の健康診断項目

      1年に1回、会社の健康診断を行なうことを習慣にするということは、自社の
      目標を明確にすることにつながり、強い会社への変身へとつながるでしょう。

  □経営力のチェックポイント

   前項で挙げた4つの視点について、具体的にどのような項目に注目していけば良
   いのか、社長の仕事として一番大切な「経営力」の評価について見ていきましょう。

   1.経営理念・目的の明確化

    経営力の評価の第一は、経営理念や会社の目的が明確になっているかどうか
    のチェックです。

    具体的には以下の項目について、社長として、会社として実施しているかを評
    価します。

    (1)経営理念を成文化しているか

      経営理念は、社長の頭の中にあるだけでは、会社としての経営理念になって
      いません。

      成文化して皆に示すことが経営力向上につながります。

    (2)経営理念について経営幹部との意思統一ができているか

      社長が考えている会社の方向性と、幹部が考えている会社の方向性が、一
      致しているでしょうか。

      たとえば、社長が自社の社会的使命をIT(情報技術)による個人事業者への
      サポートととらえているのに、幹部は大企業の外注部隊と自社を定義してい
      るなどの意思の違いがあるようなことがないでしょうか。

      社長と幹部のベクトルをそろえることが必要です。

    (3)経営理念・経営方針を社鼻とともに作成しているか

      経営幹部だけでなく、全社員に経営理念を知ってもらい浸透させるために
      は、社員の目的意識を経営理念に取り込むことが重要です。

      そのためには、社員と−緒になって経営理念を作成することが有効な手段です。

   2.経営戦略の設定

    経営理念を具体化させるための経営戦略をどのように策定しているかも、経営
    力を見るためのひとつのポイントです。

    (1)中期経営計画を策定しているか

      経営理念を具体的に実行する計画が中期経営計画です。

      数字面の目標を設定する根拠になるのも中期経営計画です。

    (2)3年後の望ましい姿と現状とのギャップをつかんでいるか

      課題解決のステップの第一歩は、自社の望ましい姿を明確にして現状との
      ギャップをつかむことです。

      望ましい姿を明確に描くことが社長の仕事です。

    (3)事業のドメイン(領域)を明確にしているか

      時代の変化とともに自社の事業のドメインは変化していきます。

      自社の事業のお客さまは誰であるか、どのような商品・サービスをそのお客
      さまに提供するのか、競合他社との差別化の内容はどのようなものである
      か、以上の3つの視点から事業をとらえていくことが事業ドメインの策定につ
      ながります。

      事業ドメインを明確にすることで自社の目指す方向が明確になります。

    (4)新市場・新事業の開拓に積極的であるか

      商品・サービスには寿命があります。

      現在成長期にある商品・サービスが永遠に成長することは考えられません。

      将来成長する商品・サービスを会社として見つける仕組みづくりを行なってい
      るか、そのための努力を行なっているかをチェックすることも、経営力を診断
      するポイントとなります。

   3.環境予想・情報収集の実施

    (1)自社に影響を与える要因や先行指数を知っているか

      経営の基本は自社の置かれた環境分析にあります。

      自社の売上高に影響を与える要因や経済指標を知っておくことは、今後の
      環境を分析するために重要です。

      たとえば、建材問屋の売上高は新規住宅着工件数の推移との関連性がある
      といえます。

      したがって、新規住宅着工件数が100万戸を切るといわれる環境変化に対
      応した経営革新が求められます。

      どのような環境変化が自社に強い影響を与えるかを知っておくことが、先の
      経営を読むヒントとなります。

    (2)異業種の経営者との交流があり、相談できる経営者がいるか

      自分の関連している業界だけの世界では見えないヒントや気づかない危機
      を、異業種の経営者との交流で知ることができます。

      たとえば、自社のベテラン技術者の頑固さに頭を痛めていた経営者が、異業
      種の経営者から「他社に負けないベテラン従業員の長い経験から蓄積され
      たノウハウをおもちですね」といわれ、ベテラン技術者を活かした新規事業を
      思いついたという事例もあります。

      また、同じ経営者として悩みを相談しながら解決策を探ることも大切です。

      孤独な経営者にとって、相談できる経営者や専門家がいることは重要です。

      精神的な支えとなる人を「メンター」と呼びますが、自分のメンターを見つけて
      おくことも経営力の一部です。

    (3)パソコン、インターネット、電子メールを活用しているか

      現在のビジネスでは、パソコン、電子メールなどは必須になってきています。

      社長自身が行なわなくとも、若手社員を活用していくなどの工夫によって、自
      社の情報化を進める意気込みが重要です。

   4.経営計画の策定

    (1)年度計画を作成しているか

      経営の基本は、マネジメントサイクルである「PLAN−DO−CHECK−
      ACTION」を回していくことです。

      その基本は「P LAN」=計画です。

      年度計画を策定することがマネジメントサイクルを回していくための第一歩と
      なりますので、年度計画が作成されているかどうかは会社の経営力をみる
      大きな診断要素です。

    (2)計画の立案に全社員が参画しているか

      計画は、目標として共有化することが大切です。

      上から与えられた目標では人は動きません。

      自分の目標とする必要があります。

      そのためには、計画を作成する段階から社員を参画させ、「自分たちで作成
      した自分たちの計画である」という意識をもってもらうことが一番効果のある
      方法です。

      社員の参加によって計画を作成することは、社員と目標を共有する経営の
      実現につながります。

    (3)経営分析により自社の改善課題を明確に把握しているか

      財務的な数値分析による経営分析は、ただ数値を並べるだけではあまり意
      味がありません。

      戦略的な視点から重視する数値目標を明確にして、現状との差を把握し、改
      善課題を明確にしていくことが、経営分析を有意義に活用することであり、
      「経営力」の強化につながります。

    (4)自社で月次決算を行なっているか

      会社の利益がわかるのは年1回の決算の時だけ、それも税理士に決算書を
      作成してもらっている、というのでは、会社を経営しているとはいえません。

      環境の変化、売上高の増減、費用の推移を見ながら経営していくためには、
      月次決算を行ない、月々の変化に対応し、目標達成の工夫をしていくことが
      必要です。

      月次決算を行ない、会社の状況をスピーディーに把握することができている
      かどうかも、会社の経営力をみるひとつの項目です。

    (5)予算・実績の差異を把適して対策をとっているか

      月次決算を行なう必要があるのは、予算と実績の差異をとらえ、必要な対策
      がとれるような会社組織をつくるためです。

      予算を作成して実績との比較を行なうことが、会社の「あるべき姿」「望むべ
      き姿」を明確にして、それを達成するための課題を形成していくことにつなが
      ります。

      課題が形成されていないと解決策は出てきません。

      予算・実績の差異をとらえることが改善の第一歩です。

      ◎経営力を評価するための項目

  □注意すべきチェックポイント

   経営力以外の診断項目について、以下のような項目に注意しましょう。

   ◎会社を診断するために注意すべきチェックポイント
 

 

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経営体質強化

人脈の形成
 

  ■人脈とは

   1.人脈とは育てるもの

     会社経営における人脈の重要性は、ほとんどの方が感じていると思います。

     長く会社を続けていれば「あの人がいたからこそ今の自分や会社がある」とい
     う恩人がいる人も多いでしょう。

     一口に「人脈」といっても、そのとらえ方は人それぞれです。

     しかし、少なくともビジネスの世界で活用するためには、相互に相手のことを理
     解し、信頼していることが必要となります。

     自分の恩師ともいえるような人はもちろん大切な人脈ですが、「名刺交換」した
     だけの人は本当の人脈とはいえません。

     つまり、人脈とはある日偶然手に入るものではなく、自分自身の努力で育てて
     いくものなのです。

     たんなる知り合いと人脈の大きな違いは、ここにあります。

   2.バランスのとれた人脈が必要

     人脈というと実際の取引に直接つながる人との関係を考えがちですが、人脈
     の有効性はそれだけにとどまりません。

     中国の古い格言に「二師三兄五友五弟」があります。

     これは人生では、自分の生き方の指針となる「師」と仰げる人を2人、自分を
     日々直接的に導いてくれる「兄」のような存在を3人、自分と志をひとつにする
     「友」を5人、そして自分の意志をついでくれる「弟」のような後輩・後継者を5人
     作りなさい、ということです。

     このような人たちとの関係性のなかで自分を磨いていくことによって、豊かな
     人生が送れるということなのです。

     この格言から学べることは、自分と対等の立場にある「友」はもちろんのこと、
     上の立場にある「師・兄」や、下の立場にある「弟」の必要性を指摘しているこ
     とにあると思います。 

     上の立場にある人からは謙虚に学び、学んだことは下の立場にある人にも伝
     えていくことで、自分自身の人生の豊かさはもちろん、社会全体への貢献も可
     能になります。

     自分の人脈について考えるときには、特定の相手との「一対一」の関係だけで
     はなく、人脈全体が、このようにバランスのとれたものになっているかどうかも
     同時に考えてみたいものです。

   3.相互の関係性が成立していることが必要

     人脈とは一方通行ではなく、相互の閑係性によって成立するものです。

     自分としては「Aさんは自分に有意義な情報をくれる貴重な人脈だ」と考えてい
     たとしても、Aさんが自分のことを同じように考えてくれていなければ、人脈は
     深まりません。

     特に自分自身が困ったときだけアプローチするようなスタンスでは、やがてAさ
     んは去っていくでしょう。

     「助けてもらう前にまずは自分が助ける」、お互いがこれくらいの考えをもって
     接するなかで、人脈は深まります。

     そして信頼を得られたAさんから、さらにBさんを紹介してもらうことによって、
     人脈は広がっていくのです。

  □さまざまな人脈の種類

   1.既存の人脈を棚卸ししてみる

     人脈は「相手は誰か」、「相互にどのようなメリットを生んでいるか」といった視
     点から分類することができます。

     下記はおもに「相手は誰か」に着目した分類例ですが、たとえば取引上のメ
     リットのみに着目していた現在の取引先が、実は自分に足りない専門知織を
     豊富にもっているといったことはよくあります。

     すでに築いている人脈についても、相手の顔を思い浮かべながら棚卸しして、
     今後の関係性をどのように深めていくかを考えてみましょう。

     (1)取引先関連の人脈

       ・現在の取引先

       ・過去の取引先

       ・新規の取引先候補

       ・新規の取引先を紹介してくれる人

     (2)経営者・専門家などの人脈

       ・同業社長

       ・異業種社長

       ・弁護士、会計士、中小企業診断士などの専門家

       ・金融機関などの資金調達先

       ・商工会議所など経営関連団体

       ・異業種交流会、展示会

     (3)自分とは違う感性や知識をもった人脈

       ・異世代の経営者、ビジネスマン

       ・異性の経営者、ビジネスマン

       ・異なる国、異なる地域出身の経営者、ビジネスマン

       ・リタイヤした先輩社長

       ・地域活動でリーダーシップを発揮している人

       ・NPOなど公共福祉目的で活動している人

       ・マスコミなどのメディア関係者

       ・学者、研究者

     (4)やる気を与えてくれる人脈

       ・よきライバルと思える友人

       ・古くからの恩師、気のおけない友人

       ・同じ勉強会などに参加している仲間

       ・趣味などプライベートの仲間

       ・自分を慕ってくれている後輩

   2.会社全体の人脈を活用する

     社長自身が人脈を広げていくことはもちろん大切ですが、社員に対しても人脈
     形成を勧めることも重要です。

     これは社員個人にとってプラスになるだけではなく、会社全体としてもプラスに
     なります。

     若手であれば若手にしか作りにくい人脈というのもあるものです。

     たとえば自分は取引先の社長本人とはあまり深い関係になれないと感じてい
     る場合でも、自社に出入りしている先方の営業マンは気に入っていて、何かと
     力になってやりたいと考えることなどはあると思います。

     この場合、相手先企業からみれば、社長同士の人脈はそれほどないが、営業
     マンを通じて社長(自分)との人脈が深まっていることを意味します。

     この図のなかでB社とC社の関係を考えると、B社からみれば自社の幹部クラ
     スとC社の社長との人脈を活用することを、C社からみればB社社長に可愛が
     られている自社の若手クラスの人脈を突破口とすることも考えられるのです。

     社長同士はどうしてもウマが合わないということはよくあります。

     しかし、このように先方社長から気に入られている自社の社員の人脈を活用し
     て、会社同士の関係を深めていくことができるのです。

     社長自身だけではなく、部下たちがどのような人脈を築いているのかも把握
     し、部下たちの人脈を広げていくように指導すること、そして部下たちの人脈を
     会社経営にどのようにいかしていくかを検討することも大切です。

  □人脈を深め、広げていくために

   1.自分が最も欲しい人脈を明らかにする

     これまで自分が作ってきた人脈は、仕事やプライベートを通じて「自然とできあ
     がってきた」と感じている方も多いかもしれません。

     しかし、もっとスピーディーに人脈を広げ、深めていきたいと考えるときには、
     自分がどのような人脈を得たいかをあらかじめ明確にしておく必要があります。

     たとえば、最初の項の『人脈とは』で取り上げた「二師三兄五友五弟」のうちの
     「師」や「兄」として仰ぐような人が欲しいと考えるのであれば、そのような人た
     ちとの接触の場を自ら求めていく必要があります。

     たとえば著名経営者のなかには書籍を執筆している人もたくさんいますし、定
     期的に講演会などを行っている人もいます。

     そのなかには自分の悩んでいることに答えを示してくれる人もいるでしょう。

     また、共同して新規事業を行えるような人脈が欲しいのであれば、商工会主催
     の勉強会に参加することなどで必要な人脈を得られる確率は高まります。

     つまり、時間とともに自然と人脈が広がっていくという「待ち」の姿勢ではなく、
     どのような人脈が欲しいのかを明らかにしたうえで、その人脈獲得のために適
     切な行動を開始することが大切なのです。

   2.自分を表現できる準備をしておく

     どんな人との人脈を広げたいのかが明らかになったら、逆に自分自身が相手
     にとってどのような人脈となり得るのかも考えておかねばなりません。

     自分の専門知識、これまでの経験、既存の人脈などを使って相手に何をして
     あげられるかを準備しておくということです。

     ここで重要なのは、そのことが相手にきちんと伝わるようにするということです。

     自分の専門知識を相手のために提供したいと考えていたとしても、そのことを
     初対面の場で短時間に伝えることは通常は不可能です。

     そこで、たとえば短い時間でも自分のことをアピールできるようなフレーズをあ
     らかじめ考えておくこと、名刺の裏に自社のこれまでのおもな実績や「ウリ」な
     どを載せておくことで、相手への印象を深めることができます。

     相手に悩み事が生じたときに「そういえばこんな人がいたなあ」と自分の名刺
     を見返してもらえるような工夫が必要なのです。

     また、事前に会う相手がわかっている場合には、「先方がどのようなことで悩
     んでいるか」、「そのために自分は具体的に何が提供できるのか」といったこと
     を熟慮し、相手に感情移入しておくことが大切です。

   3.人脈構築を「仕事」と考える

     人脈を構築しておくことは自社の経営スピードを大幅にあげたり、経営戦略を
     構築する際などに大いに役立ちます。

     「先方の意思決定権をもつ人物に会うまでに膨大な時間がかかる」、「どうして
     も経営上の悩みに答えが出ない」といったケースでも、人脈があればそれを活
     用して短時間のうちに解決できることもあります。

     つまり人脈構築は、それ自体が重要な仕事といえるのです。

     そして仕事として位置づける以上は、「いつまでに、どんな人脈を構築する」と
     いう計画と進捗管理が必要です。

     定期的に自分と会社全体の人脈がどうなっているかをチェックするようにしま
     しょう。

   4.面倒な取りまとめ役を買って出る

     たとえば人脈構築の有効な手段のひとつとして、さまざまな企業が集まる「会
     合への参加」があります。

     もちろん参加するだけでも効果は期待できますが、可能であれば、自らが事務
     局などのとりまとめ役を買って出ることで、人脈構築効果は一層高まります。

     事務局としての作業を通じて、参加者の状況がより明確に理解できますし、参
     加者からも「面倒な事務局業務を自らやってくれている」と評価され、一定の信
     頼感を得ることもできるでしょう。

     また、会合が講師を招いて行う「勉強会」などの場合には、事務局の「役得」と
     して、打ち合わせなどで講師と緊密に連絡がとれるというメリットもあります。

   5.ブログを作成する

     最近では自社のホームページのなかで「社長ブログ(日記)」を掲載している会
     社も増えています。

     ブログを読む人はそれによって社長の考え方や興味の分野などを知ることが
     できます。

     不特定多数の人が目を通すようなホームページを作ることは難しいですが、た
     とえば名刺交換の際に名刺に会社のホームページのアドレスを書いておき、
     「ご興味がありましたら私のブログをご覧ください」という流れを作ることはそん
     なに難しくはないはずです。

     ブログに共感してくれた人から再度じっくりと話をしたいという申し出があるか
     もしれません。

     特に普段から短時間で多数の人と接する機会が多い人にとっては、ブログは
     人脈構築のステップとして有効といえるでしょう。

     これらのことすべてが経営体質強化に繋がるのです。

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経営体質強化

レベニューマネジメント
 

  ■レベニューマネジメント

   1.最大の売り上げを生む価格設定

     商品の価格設定と販売量は、基本的には「価格を下げると販売量が上がり、
     逆に価格を上げると販売量が下がる」という関係にあります。

     当たり前ですが、「高ければ売れず、安ければ売れる」ということになります。

     たとえば、図のような販売量と価格の関係がある商品の場合、価格a、b、cで
     のそれぞれの販売量と売上高は以下のようになります。

       (価格a) 100円×900個= 90,000円

       (価格b) 500円×500個=250,000円

       (価格c) 800円X200個=160,000円

     この場合、価格bの500円の値付けをした場合にもっとも大きな売上が得られ
     ることがわかります。

     しかし、500円でこの商品を買った人のなかには「500円だから買った」という
     人だけではなく、「700円までなら買った」という人もいます。

     この場合は200円分の不要な値引きをしたことになります。

     また、買わなかった人のなかには「400円以下だったら買った」という人がたく
     さんいる可能性もあります。

     この場合は大量の機会損失が発生したとみることもできます。

   2.レベニューマネジメントとは

     レベニューマネジメントとは、顧客を同一の集団として扱うのではなく、

       顧客をセグメントして、
       セグメントごとに適切な価格設定をして総売上の最大化を図ろう

     という収益管理の手法です。

     レベニューマネジメントがもっとも活用されている業界として、航空業界と宿泊
     業界があげられます。

     これらの業界では基本的に早期予約者にはその度合いに応じた割引料金を
     適用し、早い時期に一定量の顧客確保を図ります。

     一方で、ビジネスユースなどの顧客のなかには直前ではないと予定が決まら
     ない人もいますので、このような層を対象にして、早期予約割引対象外の直前
     受付枠(通常料金)を確保しておくのも通例です。

     さらに混雑するハイシーズンには、「高くてもその日に利用したい」という顧客
     に対して、割増料金を設定することもあります。

     つまり同一の商品であっても複数の価格帯を準備し幅広い顧客層を取り込
     うとしているのです。

     これを先ほどの表を使って説明すると図のようになります。

     たとえば、価格bを前提とした顧客だけを対象にしていたものを、それよりも低
     い価格aや高い価格cを前提とした顧客も同時に取り込んで売上を最大にしよ
     うとするのがレベニューマネジメントの狙いです。

   3.その他のレベニューマネジメント

     航空業界や宿泊業界に限らず、レベニューマネジメントの手法はさまざまな分
     野で採用されています。

      ・スーパーで閉店直前に、生鮮品に「半額」のシールを貼っての特売

      ・タクシーの深夜割増料金

      ・電話料金の時間帯ごとの価格設定

      ・レンタルDVDの新作は値段が高く利用も短期間だが旧作は安価で
        長期間レンタル

      ・映画館などの平日割引サービス

      ・コインパーキングの深夜割引料金

     このように自社商品やサービスについても、

      ・一定の条件をつければ、もっと高くても買ってくれる顧客層はないか

      ・価格をわずかに下げることで購入に結びつく顧客予備軍はいないか

     といった祝卓で考えてみることも有益でしょう。

  □レベニューマネジメントの実践

   ここでは実際に自社でレベニューマネジメントに取り組む際の流れについて紹介
   します。

   1.レベニューマネジメントの流れ

     (1)第一の現状分析の段階

       過去の販売実績や顧客情報などを分析し、データベース化を行います。

       購入価格や購入時期、購入動機など顧客の消費行動を理解するよう努
       め、同じようなニーズをもった顧客をグループ化していきます。

       さらにこれまでの顧客層以外の潜在的な需要を見出し、その予測を行います。

     (2)第二の仮説構築の段階

       上記で設定したグループごとに商品・サービスの仕様を決め、適切な価格
       設定を行います。

       その際には、

        それぞれの価格によってどの種皮の需要が見込まれるものであるのか、
        シミュレーションモデルを作成する必要があります。

       これら一連の作業をするなかで、最適な商品仕様と価格の組み合わせが
       見出されます。

       もちろん、シミュレーションによって個人の購買行動のすべてを説明するこ
       とは困難ですが、少しでも科学的かつ合理的な意思決定に近づける努力
       をします。

     (3)第三の検証プロセスの段階

       仮説はあくまでも「このような形で売れるであろう」とするストーリーであり、
       つねに消費者の実際の行動との整合性を確認しなければなりません。

        消費パターンの詳細な分析を行い、需要予測と価格設定の見直しを行う

       作業が必要となってきます。

       そして、検証の分析結果は、第1の段階へ再入力されることになります。

       この一連の作業を繰り返すことで、レベニューマネジメントは精緻(せいち)化
       されます。

       なお、最適な価格設定とシミュレーションモデルの作成を実行するには、専
       門的なソフトウエアを利用する、社外のコンサルタントを活用する、などの
       方法が考えられます。

   2.仮説と検証の繰り返しが重要

     レベニューマネジメントは科学的な経営を実践するための手法であり、

      仮説と検証の作業を繰り返すことが何よりも重要である

     といえます。

     レベニューマネジメントを導入して一定の成果を収めるには、経営トップ陣が
     深く関与しながら長期的な取組を進めていくことが必要でしょう。

     こうした取組により、経営を科学の日で見ながらそこに直感を加えていく、いわ
     ば科学と感性とが融合する領域からの収益拡大が期待できます。

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経営体質強化

若手社員の定着率向上
 

  ■若手社員の就業意識
   高齢化の進展が著しい現代社会において、若手社員は貴重な戦力です。

   しかし、若者の転職志向はますます高まっており、せっかく育ってきた頃に会社を
   辞めてしまう人材に頭を悩ます企業は少なくありません。

   若者の就業意識は変化しており、20歳代から30歳代前半のビジネスマンはキャ
   リアアップのための転職に抵抗を感じていないようです。

   また、会社に左右されず、スペシャリストとして通用する能力を身につけたいと考
   えている人も増加しています。

   一般的に、転職を考えるときの理由は、

    ・現在の仕事の内容、職場環境、給与や待遇などに不満があるため

    ・自分のキャリアプラン、ライフプランに沿ってステップアップを図るため

   という2つのどちらかだといえます。

   自分の将来像を模索中であり、自分の未知の可能性に賭けるだけの時間も意欲
   もある若者に、転職傾向がみられるのは当然のことです。

   そうした人材を引きつけ、留まらせ、戦力化していこうと考えるならば、仕事の内
   容、職場環境、評価、将来性など、さまざまな点で会社に魅力を感じさせるような
   取り組みが必要となります。

   そこで、若手社長の定着化を実現するためには、

    ・魅力的な人事制度づくりなど、若手社員を引きつける施策の具体化

    ・若手社員を指導する管理者に対する教育

   についての検討が必要となります。

  □若手社員を引きつけるための会社の施策

   定着率を向上させるための会社としての方策には、大きく分けて、

    ・会社への帰属意識の向上

    ・賃金、福利厚生といった処遇の改善

   があると考えられます。

   これらを実践する方策としては次のような事項が考えられます。

   ただし、こうした施策は、どれかを行えばよいというものではなく、すべてを複合的
   に行うことが大切です。

   1.経営ビジョンの明確化

     経営者が自社の成長と高収益化に向けた明確なビジョンと戦略を保有
     しているか

     経営ビジョンの具体的な表現方法としては、「戦略的な経営計画」を提示する
     とよいでしょう。

     できれば、「将来上場を考えている」といった具体的な項目なども盛り込みたい
     ところです。

     それができなくても、中長期の会社の経営目標を、

      ・取扱商品の構成

      ・進出事業分野

      ・販売先の構成

      ・社内管理の充実

     といった視点で明示することは、各個人の目標設定も容易になるため、大変意
     義があるといえます。

   2.会社と社員の成長をオーバーラップさせる

     会社の発展と社長の成長をオーバーラップさせ、
     若手社員の将来の夢を実現させることのできる企業であること

     社員にとって会社の成長は、その会社に魅力を感じる大きな要素です。

     しかし、たんに成長しているだけでは十分ではありません。

     会社の成長にしたがって自分も成長し、重要なポジションを得ることが具体的
     にイメージできなければ、社員は高い意欲をもつことはできません。

     中小企業に人材が定着しない理由のひとつに、「自分の将来像が描けない」と
     いうことがあげられる。

     この会社に自分がいた場合、「自分は将来どういった役職に就き、給料はどれ
     くらいで、会社にとって自分はどういった存在になっているのか」というものが
     みえてこないのです。

     これでは社員のモラール(士気)は低下してしまいます。

     そこで、先の経営計画の作成時に留意する点として、将来(5年後や10年後)
     の「事業ビジョン」を明示し、自社では将来、

      ・どのような能力が必要となるのか

      ・どのような人材が必要となるのか

      ・どのような仕事ができるのか

     といったことが考えられるようにし、個々人のキャリアプランやライフプランとの
     すり合わせができるようにしておくことが必要です。

   3.経営者とのコミュニケーション機会の確保
     経営者とのコミュニケーションが比較的容易で、
     役員室にも気軽に相談に行けるような風土が定着していること

     もうひとつ重要な視点として、「社員に経営者の考えや理念を理解させる機会
     をつくる」ということがあります。

     社員の多くは、「自分にとって意義のある仕事に取り組みたい」という考えを
     もっています。

     そこで、入社した社員が若いうちから意欲的に仕事に取り組み、定着してくれ
     るようにするためにも、「経営者や経営幹部自ら、社員に対しての動機づけを
     行う」ことが大切になる。

     経営者や幹部社員が、折に触れて自社で働く意義について話す機会を設ける
     ことによって、次のような効果が期待できます。

      (1)経営者側

        ・経営理念を社員に浸透させる場となる

        ・社員が抱いている不満を知ることができる

        ・実際の職場の現状を知ることができる

      (2)社員側

        ・会社の現状や方向性について、経営者自らの話が聞ける

        ・経営者の人間性を理解し、親しみをもつことができる

        ・自分をアピールできる場があることによって、会社での
         存在意義を感じることができる

   4.自社に合った人材の採用

     自社に必要な人材像が具体化しており、それに合わせた採用活動を
     行っていること

     人材の定着率が低い原因のひとつとして考えられるのが、採用時のミスマッチ
     です。

     人材を採用するにあたっては、自社でどのような能力、技術、経験をもった人
     材が必要であるか、また、その人材に社内でどのように働いてほしいのかとい
     うことまで具体化することが大切です。

     「能力があって、仕事ができて、バリバリと働いてくれる人」「我が社の将来を
     担ってくれるような、一流大卒の若い人材」といった人物像を描いても、それで
     は必要な人材を明確にしたことにはならない。

     確たる採用計画をもってこそ、それが実現できるのだということを十分に理解
     しなくてはなりません。

   5.教育・育成プログラムの完備

     人材育成プログラムが完備されており、それによって十分な
     教育・育成が受けられること

     いくら経営計画に夢のある話が盛り込まれ、将来自分が就けるかもしれない
     「ポジション」が明確になっていたとしても、そこへ到達するための能力向上の
     方法が明確になっていなければ、単に「絵に描いた餅」です。

     「勝手に成長してくれ」というのではなく、会社がめざす方向へ、会社が求める
     能力を身につけてもらうためには、教育システムの充実、教育マニュアルの作
     成など、各人が成長する環境を整備することが必要不可欠です。

     一般的に行われている教育施策としては、

      ・OJT(職場内での教育体制)の整備

      ・能力開発の自己申告制度や外部教育機関利用時の支援制度の整備

      ・上司によるカウンセリングの場の設定

     などがあります。

     自社に合った方法を検討してみましょう。

   6.やる気を出させ、理解を得られる人事制度の整備

     若手社員に対しても「仕事」と「責任」に見合う「地位」や「給与」が
     与えられるという、「やる気」を出させ「理解」を得られる人事制度
     設定されていること

     日本の大企業において普及している人事制度に「職能資格制度」があります。

     この制度は、ある程度の年功的な要素を残しつつも能力主義を取り入れてい
     ることから、「緩やかな能力主義制度」として、日本の企業風土とマッチし、多く
     の大企業で定着してきました。

     職能資格制度は、基本的に「仕事をする能力に応じて賃金が支払われる」とい
     うスタンスをもっているため、若手社員でも能力が高ければ、ある程度、相応
     の処遇を受けることができるように設計されています。

     こうした制度は、仕事の習得が早く、やる気のある若手社員へのインセンティ
     ブとして有効に働くことでしょう。

     このほかにも、業績の差によって給与に差をつけて、社員のやる気を高め理
     解を得るための「業績給」や「歩合給」といった賃金制度の検討も必要です。

  □若手社員を指導する管理者の育成

   前述した、社員が転職を考える理由にあげられる「現在の仕事の内容、職場環
   境、給与や待遇などに不満があるため」のなかで、給与に関することを除くと、管
   理者の仕事の与え方、職場管理の仕方、管理者自身の活性化度(管理職に値す
   る仕事ぶりであるか)や魅力度(将来目標としたいか)が与える影響が大きいとい
   えます。

   すなわち、若手社員は、

    ・やりがいが感じられるような仕事を望んでいる

    ・業務を信頼して任されたいと望んでいる

   ため、この2つを充足させてくれる管理者のもとでなければ、仕事そのものに充実
   感を得ることができないのです。

   そのため、管理者クラスの能力の強化は若手社員の定着化に大きなウエートを
   占めています。

   そこで、若手社員の定着化を図るためには、とくに管理者の、

    ・業務設計力の強化

    ・職場管理力の強化

    ・リーダーシップの強化

   に重点を置いた教育を実施する必要があります。

   さらに、優れた管理者のもとで充実した毎日を送っていると、若手社員も「この人
   の能力を少しでも吸収しよう」という気持ちになってきます。

   若手社員が優秀であればあるほど、彼らは勤めている会社が「自分にキャリアを
   つけさせてくれるところかどうか」という観点で評価します。

   したがって、管理者が一見厳しく部下を扱っているようにみえる組織ほど定着率
   がよいというのはよくあることなのです。

   このほか、管理者が若手社員に接する際に注意すべき点として、以下の項目が
   あげられます。

    ・会社のマイナス面だけでなくプラス面も見出すことができるように、
     本人の「ものの考え方」を変えること

    ・若手社員との「コミュニケーション」の機会を増やすこと

    ・若手社員でも仕事の場を「コントロール」し、自分で仕事をしている、
     という感覚をもてるようにすること

    ・若手社員に対し、仕事面、生活面において「指導」すること

    ・若手社員がスムーズに仕事に向かえるように、「メンタルケア」、
     「モチべート」を行うこと

   これらを達成するためには、各個人の意識や能力の向上に期待するばかりでは
   なく、それを支援し、さらに発展させていくための会社側の姿勢が明確であること
   が必要不可欠だといえるでしょう。

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経営体質強化

CI  コーポレートアイデンティティ 
 

  ■第一印象はイメージで決まる

   企業を訪れた際に、受付の応対が親切であったり、立派なオフィスを構えている場合、
   相手企業のことを十分に知らなくても良い印象をもつことがあります。

   このように、人はつい第一印象(見た目)で物事を判断してしまうものです。

   言い換えれば、判断すべき材料がない場合は、目に見える部分で判断するしかない
   わけです。

   つまり、よほど知名度の高い会社であれば別ですが、そうでない会社が相手に好印象
   をもってもらうためには、第一印象をよくすることが重要なポイントとなってくるので 
   す。

   社名は実際の事業内容とは関係のないところでも影響を与えるものです。

   このように企業イメージとは、その企業に関わる人々にさまざまな影響を与える重要な
   ものなのです。

  □CIとは

   CI(コーポレートアイデンティティ)とは、一般的には、

    企業の進むべき方向を再確認し、これに向けて企業体質や社員の意識、
    また社外における認識を革新・統一していこうとする活動

   と定義できます。

   CIの考え方は

    自社がどのような会社なのかを表現し、かつ、
    その表現したものが好印象として相手に受け入れられること

   であり、そのために行なう活動をCI活動といいます。

   CI活動は、経営理念戦略の策定から新しい社章のデザイン、対外的な広報活動など、
   広範囲にわたります。

  □CI導入の目的

   CIを導入する理由は、

    ・事業の多角化によって、現在の社名を変更する必然性がでてきた

    ・社長交代をきっかけに、新しいやり方を社内外にアピールする必要があった

    ・社員が安定志向で組織に活力がなく、大きく組織風土や経営体質を変えなけ
     ればならなかった

   など、その企業によってさまざまです。

   いずれにしても、気をつけなければならないのは、CIそのものが目的ではなく、「CIは
   手段に過ぎない」ということを、きちんと認識することです。

   コンサルタントに費用を支払い、CIという経営手法を導入したというだけで、「わが社は
   何を実現したいのか」というCIの目的を鮮明に認識していなければ、どんなに時間と
   お金をかけても、CIは失敗に終わってしまいます。

  □CI活動のプロセス

   一般的には、社名を変更するだけでも「CI」という言葉を使いますが、ここではCI活動
   の流れに沿って説明します。

    S T E P1:「企業環境」「会社の歴史や創業の精神」「経営者の意図」から企業
           理念を構築する

    S T E P2:打ち出したい企業理念に基づいた経営戦略や確立したい企業文化
           の方向性SI(ストラテジー・アイデンティティ)を策定する

    S T E P3:S T E P2で策定されたSIをもとに社名、ロゴマークといった象徴と
           なるものVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)やSIを言葉で表現した
           MI(マインド・アイデンティティ)を決定する

    S T E P4:「象徴」や「スローガン」を掲げて企業理念の内外への浸透活動BI 
           (ビヘイビア・アイデンティティ)を実施する

    S T E P5:社内への浸透活動の一環として、戦略を実現するための組織の改
           革、制度の見直しなどを行なう

   ●CI活動で使われる基本的な用語の定義

   ○SI(ストラテジー・アイデンティティ)の確立
    企業理念、社是、社訓などから、経営戦略や企業文化などの企業精神面の方
    向性を確立すること。CI活動のもっとも根幹になるもの。

   ○VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)の確立
    確立されたSIをシンボルマーク、コーポレートカラー、社名のロゴタイプ、店舗、
    商品パッケージ、印刷物などの視覚化されたもので表現すること。

   ○MI(マインド・アイデンティティ)の確立
    確立されたSIを、社内外に向けたスローガンとして、言語的に表現したもの。

   ○BI(ビへイビア・アイデンティティ)の確立
    企業理念や企業戦略を社内外に浸透させるべくさまざまな活動を行なうこと。あ
    るいは、企業活動のすべてを理念や戦略に沿った形で実施すること。

  □どのような準備が必要か

   CIの準備活動としては、

   (1)CI準備委員会の設置

     将来的にはCI委員会となってプロジェクトの最高意思決定機関となります。
     通常、委員長には社長がなります。

     準備委員会のメンバーは、常務会と同じ顔ぶれになることが多いようです。
     準備委員会が中心になって、以下の準備活動を行ないます。

   (2)打ち出したい経営ビジョンや戦略の検討、フレームワーク作り

     実際のCI活動に入ってからは、現状の調査や分析をしたうえで、新しい経営理念や
     スローガンを打ち出していくわけですが、その根本になる「これからどういうビジョン              
     をもって会社を運営していきたいか」ということを検討し、CIの目的を明らかにします。

     そのうえで、これから取り組んでいくCI活動のフレームワーク(大枠)を決定します。

   (3)計画策定

     スケジュールと予算を決定します。

   (4)CI実行委員会およびCI事務局の組織化

     CIを実際に推進していく「CI実行委員会」と、CI活動全体を管理・運営していく  
     「CI事務局」を組織化し、社内体制作りを行ないます。

   (5)社内外への啓蒙活動

     「今日からCIを始めます」とCI宣言をしてもすぐスタートできるものではありません。
     コミュニケーションツールとしての社内報や、お客様向け小冊子の発行を始めたり、
     QCサークルにみられるようなグループ活動を習慣化したり、といった準備をしておく
     ことはCIの導入をスムーズにします。

  □費用と期間について

   CIを導入するに当たって、どのくらいの費用と期間を要するかについては、その企業が
   CIによって何を成し遂げたいのか、その目的や取り組み方によって大きな差が出ます。

   たとえば、企業イメージを刷新するために「社屋を立て直そう」ということになれば何十
   億とかかりますし、ある企業では「社員による手作りのCI」ということで、マークも社内
   公募したものをもとに、仕上げだけデザイナーに頼むといった方法で100万円しかかから
   なかった、という例もあります。

   大規模なCIの場合は、マーケットリサーチや社名・ロゴマークの制作といった開発費だけで
   3〜5億円、実際に広告宣伝したり、看板などをすべて取り替えたりといった運用となると
   さらに費用がかかります。

   企画会社や広告代理店、デザイン会社のなかには、「3〜6カ月で調査・分析から社名や
   マークの制作、CIマニュアルの作成までを行なう」といった、300万〜500万円のCIの
   パッケージ商品を作っているところもあります。

   こうした専門会社の商品をうまく使うのも、ひとつの有効な方法です。

   ただし、専門会社にまかせっきりでは失敗します。

   あくまで社内の人間が主体的に行なうべきです。

   計画の段階から専門会社をどこまで使うか明確にしておくほうがよいでしょう。

   期間にしても調査に1年、新しい理念や社名やマーク作成に1年、社内外への定着活動に
   3年ぐらいかける企業もあれば、1年間ですべてやってしまう企業もあります。

   そして、短期間で実施できるかどうかは、経営幹部層がCIにどれだけ時間をさくこと
   ができるかということにかかってきます。

   いずれにしてもCIは、理念構築やデザイン開発、対外発表などで終わる一過性のものでは
   ありません。

   構築した理念が社員全員の意識に浸透し、日常の態度や行動に結び付くまで、また、
   対外的にも新しいイメージが認識され、定着するまで、息の長い活動が必要なのです。

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