ターゲットマーケティング

ターゲット顧客を“見える化”する

■自社のターゲット顧客とは?

 開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスなど企業の各活動は、自社の製品やサービス(以下
 「製品」)のターゲットとなる主要顧客層(以下「ターゲット顧客」)
のニーズや特性などに適した
 ものとなるように計画・実行されています。

 しかし、社長をはじめ自社の従業員はどれほどターゲット顧客について知っているでしょうか。

 また、ターゲット顧客に対する認識は、どれほど社内で共有できているのでしょうか。

 例えば、自社のターゲット顧客に関する理解度を把握するために、まず、会社や自身が担当している製品
 の典型的なターゲット顧客のイメージを書き出してみてください。

 書き出す項目は、おおむね次の通りでよいでしょう。

  1.氏名・年齢・性別・年収などのプロフィール

  2.製品を購入する目的や動機

  3.購入する製品を決定する際の評価ポイント

  4.製品の利用方法や利用シーン

  5.ユーザー歴や製品に対する知識、経験の度合い

  6.製品に満足している点、不満な点

 次に、同じことを同僚など社内の人たち数人に質問してみてください。

 全員が各項目について同じような回答をすれば、ここで紹介するペルソナは必要ないかもしれません。

 しかし、実際には回答が一致しないことは珍しくありません。

 また、ターゲット顧客に関してそこまで深く検討していない会社も少なくありません。

 こうした会社は問題があると言わざるを得ないでしょう。

 企業活動の指針となるターゲット顧客を明確にできていない、あるいはターゲット顧客に関する情報が
 共有されていないのであれば、会社全体の活動は統一性の
欠けたものとなったり、非効率的なものと
 なったりする恐れがあります。

 ペルソナとは、こうした問題を解決するために有効な手法となるものです。

□ペルソナの概要

 ペルソナ(Persona)は、ラテン語で仮面や人格、人物などを意味する言葉ですが、マーケテイングの
 意味では、「企業が提供する製品・サービスにとって品も重
要で象徴的な顧客モデルのこと」であり、
 
ターゲット顧客とほぼ同じ位置付けのものです。 

 ペルソナは、綿密な調査などから得られたターゲット顧客に関する情報をもとに、平均的な特徴などを
 抽出し、一人の人物像として象徴的なターゲット顧客のイメージを貝体的に表現したものです。

□ペルソナを利用する効果

 ペルソナの最大の特徴は、このようなターゲット顧客に関するデータをもとに、ターゲット顧客モデル
 
あたかも実在する人物のように生き生きと描写する点にあります。

 ペルソナに盛り込まれている情報自体を把握している企業は数多くあります。

 例えば、大手企業であれば大規模な市場調査などを実施し、ペルソナと同等、あるいはそれ以上に詳細な
 情報を把握しているのが普通です。

 ただし、それらは「35歳の既婚男性。年収500万円‥‥・・」などといったように、“無味乾燥”な内容に
 整理されていることが少なくありません。

 ターゲットの顧客モデルを、あたかも実在する人物のように生き生きと描くペルソナには次のような効果
 があります。

 1.ターゲット顧客の明確化と共有化の促進

  ターゲット顧客に関する定義がやや曖昧である、あるいはターゲット顧客に関する情報が共有されて
  いないという企業は少なくありません。

  ターゲット顧客に関する情報を物語風に記述するペルソナの場合、氏名・年齢・性別といったプロフィ
  ール的な要素だけではなく、ターゲット顧客の価値
観、噂好といったより詳細な情報が記述されるた 
  め、ターゲット顧客をより明確
に表すことができます。

  また、社内のターゲット顧客に対する認識のズレを防止することもでき、誰もが容易に理解し、顧客に
  対して感情移入しやすくなるという効果があります。


 2.一貫性のある組織の実現

  マーケテイング活動などにおいては「『経験価値』の向上」が重要なテーマとなります。

  経験価値とは、製品そのもののような物質的・金銭的な価値ではなく、製品の購入・利用などの一連の
  体験(経験)を通じて得られる満足感といった心理的・
感覚的な価値のことです。

  製品間の競争が激しさを増す現在では、経験価値の向上が差異化を実現し、顧客満足度を高めるために
  重要になっているのです。

  経験価値の向上のための基本は、会社全体が一貫性のある活動を行うということです。

  例えば、専門的知識を有する顧客向けの製品であるにもかかわらず、サポートセンターに知識の浅い
  人材を配置するといった一貫性を欠いた活動では、経
験価値の向上を図ることはできません。

  また、サポートセンターに集まった顧客からの要望や不満などを製品やマーケティングに反映させ、
  改良するという取り組みも重要です。

  しかし、企業の組織体制は、開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスというように機能別に
  部門が分けられていることが多く、実際の活動段階におい
ては、部門間または部門内において一貫性が
  失われていることも珍しくない。

  ペルソナによってターゲット顧客に対する認識を部門内・部門間で共有することで、企業活動に一貫性
  をもたらし、より質の高いサービスを提供できるように
なります。

 3.顧客の立場に立った製品・サービスの実現

  ターゲット顧客が明確になると、より創造的なアイデアや革新的な取り組みを促す効果が期待できま
  す。

  例えば、友人が自宅に遊びに来る場合を考えてみましょう。

  友人から「明日、友人Yを連れて2人で君の家に遊びにいく」という連絡がありました。

  その際、一緒に来る友人Yについて、次のAもしくはBのような説明をされたら、あなたはどのような
  準備をして待つでしょうか。

   A:「一緒に行く友人Yは、25歳の独身男性だよ」

   B:「一緒に行く友人Yは、君もよく知っている山田君だよ」

  恐らく、Aの場合は「食事はとりあえず無難に出前のお寿司にして、飲み物はビール、焼酎、ウイス
  キー、日本酒、それにお酒が飲めない人だと困るのでお
茶やジュースも準備して…」といったように
  考えるのではないでしょうか。

  このように、好みが分からない人には、無難な準備にならざるを得なくなる。

  一方、Bの場合は「魚介類が大好物で、刺身を食べながら日本酒を飲むのが好きな山田君だから、句の魚
  を買ってきて刺身と焼き魚を準備しよう。

  それから日本酒は山田君の出身地である京都の珍しい地酒を用意して驚かせよう」というように、好み
  などに合ったものを準備したり、サプライズ的な演出
も検討しやすくなります。

  ペルソナを通じてターゲット顧客の特徴、価値観、噂好などを明確にすると、顧客の立場に立った活動
  ができる上に、「珍しい地酒」のように一歩踏み込んだ
り、思い切った発想などが得やすくなるので
  す。


□ペルソナの作成手順の概要

 使用目的によって異なるが、ペルソナの基本フォーマットです。

 これはあくまで基本的な要素なので、目的に合わせて項目を追加してもよいでしょう。

 ただし、情報過多になるとペルソナに対する印象が曖昧になる(記憶に残りにくい)ため、情報量は適度
 にとどめる必要があります。

 また、ペルソナは架空とはいえ、人物像なので、全体的に矛盾が生じないように調整する必要がありま
 す。

 矛盾する記述がある場合は重要性の低い記述を削除したり、別のペルソナを作成してもよいでしょう。

 ペルソナの作成は、おおむね次の手順で進めます。

 1.ペルソナの作成目的の確認とチームの編成

  ペルソナを作成する目的を明確にします。

  同時に、作業を担当するチームの編成もこの段階で行います。

  ごく少人数でペルソナを作成することも可能ですが、その場合は一部の担当者の考え方が強く反映され
  るなど客観性が失われる可能性があります。

  ペルソナの客観性を維持するためには、ある程度の規模でチームを編成することが大切です。

  適切な人数は一概には言えないが、作成されたペルソナは企業全体もしくは関連する全ての部門で
  共有することを考えると、関連部門から最低1人ずつは
メンバーに入ることが望ましい。

 2.情報の収集

  ペルソナの基礎となる顧客に関する情報を収集します。

  特定の情報源からや少数の情報しかない場合は、偏りのあるペルソナとなってしまい、「象徴的な顧客
  モデル」とならない可能性があります。

  従って、この段階では、幅広い情報源から多くの情報を収集することが望ましいでしょう。

   1次データ(ペルソナ作成のために独自に実施した調査データ)と2次データ(既存のデータ)に
   区分する。

   主な情報源は、

    1次データ

     ・顧客を対象とした調査

     ・従業員を対象とした調査

     ・取引先を対象とした調査

    2次データ

     ・既存顧客データ

     ・過去に実施した調査結果

     ・公共団体、調査会社、専門誌などによる調査結果

   なお、この段階で1次データ収集のために実施される調査に際しては、多くの人に実施しやすい
   アンケート調査が行われることが一般的です。

 

 3.スケルトン(骨組み)の作成および優先順位付け

  収集した情報に基づいて「スケルトン」を作成します。

  スケルトンとは、ペルソナの骨組みとなるもので、ペルソナを特徴付ける要素を箇条書きにして
  まとめたものです。

  スケルトンは、収集した多数の情報を統合して作成していきます。

  統合する方法は、収集した情報量、利用できる調査スキルなどを勘案して決定しますが、比較的手軽に
  できる手法としてはRJ法(親和図法)があります。

  RJ法では、最初に調査結果から得られた顧客特性を付箋紙などに書き出し、それらを関連するグループ
  同士にまとめていくことによって、顧客特性を整理
します。

  また、性別、あるいは初心者・上級者など顧客特性が明らかに異なる場合は、事前にこうしたカテゴリ
  ーに分類した上で、おのおのKJ法によって情報を整理
します。

  主な情報源こうして整理した情報をもとにスケルトンを作成しますが、スケルトンは無理に1人に
  まとめる必要はありません。

  作成するペルソナは1人とは限らないので、例えば、「現在のターゲット顧客」「今後取り込みたい
  顧客」といったように、スケルトンが複数あっても問題あり
ません。

  また、後の手順でペルソナの絞り込みを行うので、この段階ではスケルトンの絞り込みはしなくても
  問題ありません。

  ただし、スケルトンが多すぎると以降の作業が煩雑になります。

  従って、チームの処理能力などを勘案して、必要に応じてスケルトンの数を絞り込みます。

  また、スケルトンが複数ある場合は、メーン・サブといった優先順位をある程度明確にしておくと
  よいでしょう。

  スケルトンの絞り込みや優先順位は、各スケルトンの背景にある市場規模、将来性、戦略的重要度
  などを基準に評価することになります。


 4.面接調査の実施およびペルソナの作り込み

  スケルトンを作成するまでは定量的な情報が中心であり、ペルソナ作成に当たってはさらに定性的な
  情報を収集する必要があります。

  具体的にはペルソナに近い人を対象にした面接調査を実施して愕報を収集します。

  手順としては、スケルトンをもとに簡易的なべルソナを作成しながら、調査が必要な項目を明確にした
  後に面接調査を実施します。

  その結果を踏まえて、簡易的なべルソナに情報の追加・修正などをしてペルソナの作り込みを行いま
  す。

  面接手法としては、ヒアリング形式の調査が基本になります。

  また、調査の際に、調査対象者の実際の行動を観察しながらヒアリングを行うことも有効です。

  例えば、実際に製品を使用してもらいながら、長所・短所などを確認するといったことです。

  また、「師匠と弟子」とよばれる手法も効果的です。

  この方法は、調査対象者が師匠、調査担当者が弟子のようになり、調査対象者には普段通りに行動して
  もらい、調査担当者は不明な点などがあれば「な
ぜ、そうしているのか」といった質問をし、調査対象
  者が無意識に行っているこ
との理由などを明らかにしていくものです。

 5.ペルソナの決定・普及

  作成したペルソナの中から、実際に活用するペルソナを決定します。

  ペルソナを複数にする場合は、数が多すぎると顧客像がプレやすいので、おおむね2~3人程度に絞り
  込むようにします。

  また、メイン・サブなど優先順位も決定します。

  決定したペルソナは、全従業員あるいは関係部門の従業員など関係者全員に公表するとともに、ペルソ
  ナの役割や内容などに関する説明会や、ペルソナ
のポスターを社内掲示するなどして共有化を進めま
  す。

  関係者がターゲット顧客について話をする際に、「ターゲット顧客は‥‥‥」ではなく、「○○さん
  (ペルソナの名前)は……」とペルソナの名前が主語となる、す
なわちペルソナが関係者間に定着する
  と同時に、判断に迷うことがあれば常
にペルソナに立ち返る雰囲気ができれば、共有化が進んだという
  一つの目安
となります。

 6.ペルソナのメンテナンス・廃棄

  完成したペルソナは絶対的な存在ではありません。

  顧客像は常に変化するものですし、実際に使用してみると何らかの不具合が発生する場合もあります。

  そのため、必要に応じてペルソナのメンテナンスが必要となります。

  また、顧客像が大きく変化した場合など、ペルソナがペルソナとしての役割を果たせなくなったら廃棄
  しなければなりません。


□中小企業が取り組む際の留意点

 ここまで、ペルソナの作成手順の概要を紹介しましたが、中小企業が自社の力だけでペルソナ導入を図る
 ことは決して容易ではありません。

 しかし、本格的にペルソナの導入を進めるに当たり、コンサルタント会社などの専門家の力を借りる前
 に、負担の少ない方法で簡易的なべルソナを作成してみる
のも一案です。

 基本的に前述した手順に準じたものとなりますが、調査に関する負担を減らすために、公的機関などが
 行った調査結果などの2次データを積極的に活用するとと
もに、従業員やその家族、取引先などを中心に
 アンケートや面接調査などを実施
します。

 こうした人たちの中には顧客に直接対応することを通じて、顧客に関する情報を有している人も数多く
 います。

 また、最終消費財を製造している企業など業種や製造品目などによっては、従業員やその家族などがユー
 ザーとして製品を使用している場合もあります。

 こうした情報源を活用して、ペルソナを作成するのです。

 ただし、身近な従業員や取引先などの中には、製品に対する思い入れや顧客に対する主観的な見方を持っ
 ていることも多く、情報源としては客観性に欠けるとい
う問題があるので注意する必要があります。

 このように簡易的な手法で取り組む場合は、本格的に取り組む場合と比較すると、その内容や質に劣る
 部分があることは否めません。

 ただし、冒頭で紹介したように、個々の従業員が持つターゲット顧客に対するイメージがバラバラである
 ような企業であれば、こうした取り組みを通じてターゲット
顧客に対するイメージが統一されていないと
 いう事実を皆が認識するとともに、ペ
ルソナ作成プロセスを通じて、ターゲット顧客に対する認識を共有
 化できるでしょう。

 それだけでも会社の活動に一貫性が生まれ、一定の効果が期待できます。

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ターゲットマーケティング

セグメントマーケティング 環境分析Ⅱ

セグメントマーケティング 環境分析Ⅱ

■見える情報と見えない情報 
 マーケティングリサーチを実施し、数値データを揃えたとしましょう。
 しかしそれだけでは、自社のあるべき姿、歩むべき道は見えてきません。 
 実は、我々が数値として手に入れることができるデータは、言わば“見える情報”であり、
 これは一般的に経営資源と言われる「ヒト、モノ、カネ」 にまつわる情報です。 

 社員数であったり、取引先であったり、営業拠点や設備力など。
 また、カネの場合は、開発投資する額であったり、営業的にかかるコストであったりする。
 このような情報は誰でも調べることができ、その背後に隠れている“見えない情報”は分かり
 ません。 

 そこで、意識して見えない情報を獲得する必要があるのです。
 これが、マーケティング資源と言われるもの。 
 例えば会社の価値は、株価で計ることができるが、その株価にはどんな意味があるので
 しょうか。

 ソニー(SONY) には確かに優れた技術力、開発力があるが、実はソニーの株価の高さは、
 SONYという「のれん」 の価値かもしれない。
 いわばブランド力なのです。

 だから、マーケティング分析をする場合には、数値を中心にした見える情報以外に、開発力
 であるコンセプト構築力や、市場に早く普及させることができるプロモーション力、また、
 高いブランド力を維持できるブランド管理ノウハウなど、数字には見えない資源情報を
 つかんでいく必要があります。 

 この見えない資源情報を分析することで、自社の強みを発見するキーポイントがわかる
 でしょう。

□SWOT分析 
 マーケティングにおいて、ポピュラーな分析方法があります。
 それがSWOT分析です。
 SWOT分析とは、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、そして市場の機会
 (Opportunity)、市場の脅威(Threat) を組み合わせた分析手法です。 
 次にそれぞれの要因を調べるネタ元を示します。

 ○自社の強み(Strength) 
  ・経営資源や事業内容、経営指標などから(営業力、開発力、販促力、人材力など) 
  ・顧客へのヒアリングから(USP)
  ・事業の儲けの仕組みから 
  ・ミッションとビジョン(強い動機) から

 ○自社の弱み(Weakness) 
  ・経営資源や撤退した事業などから 
  ・競合とのコンペに負けた要因などから 
  ・顧客の抱える問題、課題などから 
  ・クレームの要因などから

 ○市場の機会(Opportunity) 
  ・業界のデータベースなどから 
  ・競合情報から ・販売動向、消費者動向から 
  ・今後のトレンドから○市場の脅威(Threat) 
  ・業界データベースから 
  ・人口動態などから 
  ・販売動向、消費者動向から 
  ・今後のトレンドから 
  ・法律、規制、国会の動きなどから 
 以上のような元ネタを調べていくことで、SWOT分析をしてみます。

□分析には、4つの要素の組み合わせが大切 
 さて、材料が揃ったところで、どのように分析していくかを説明します。
 簡単な方法なので、すぐにできるでしょう。 
 データや会社の事実関係から判断して、箇条書きでよいので、図のように、それぞれの
 区分に記入していきます。

 「強み」 「弱み」 「機会」 「脅威」 に分類できたでしょうか。
 そして、今度は、それを4つの分類だけではなく、表に基づいてクロスさせると、今後の
 方向性をみることができる。これをクロス分析といいます。

 ◎クロス分析パターン(4つの区分から下記の方向へ導く) 
  パターン1 機会を活かし、自社の強みをもっと活かすには? 
  パターン2 自社の強みを、脅威から機会に変えることができるか? 
  パターン3 自社の弱みから、機会を逃すことを避けるためには? 
  パターン4 脅威と弱みから、致命傷を受けないようにするには?

  この分析で一番大事な点は、パターン1です。
  戦略の中で一番効果的なのは、自社の強みを活かすということ。
  強い企業は、事業をフォーカスするように動いている。
  強みをさらに強くして、ほかの企業を寄せ付けないようにしているのです。 

  繁栄している企業の傾向をみると、ゼネラリスト的な企業よりも、スペシャリスト的な
  企業の方が、環境にうまく順応していることがわかる。
  だから、まず第一に自社の強みを活かすことを検討してほしいです。 
  また、どんなに強そうに見える企業でも、必ず弱みがあるものです。

  だから、徹底的に調べて相手の弱みを知り、そこに自社の強みをもって勝負を仕掛ける
  のが良い戦略なのです。
  これは当然なことだが、競合企業の強い部分にはなかなか太刀打ちできない場合でも、
  逆に相手の弱みを利用して、自分を競争上優位に立たせるのです。 

  だから、パターン3と4の弱みを検討する分析は、弱みを強みに変えられないかどうかを
  検討していただきたい。

  逆に、そのことをもし怠ったならどうなるか。
  1つのほころびを放っておくことで、競合企業との関係でそれがあなたの会社の致命傷に
  なりかねないということなのです。

□自社の位置づけを把握するポジショニングマップ 
 あなたは、自社の強みをいくつ言えますか。
 あなたの会社の強みは、顧客からのヒアリングで独自性が明確になり、さらにSWOT分析で、
 企業の方向性が見えてきているはずです。 

 しかし、いくら私はこれが得意ですと独りよがりな結論を導き出しても意味がない。 
 そこで、次にしなければならないのが、客観的な視点で顧客が自社に対して持つ心の中の
 位置づけを把握・確認することです。 

 そのことを知る方法として、ポジショニングマップを作成してみる方法があります。
 顧客(消費者)の心の中における位置づけ、企業の相対的な位置づけをマップで表したものが
 ポジショニングマップです。

 ポジショニングマップを作成する意義として、例えば、あなたがとんかつを食べるために
 ソースが必要になった。
 ちょうど切れていたので、近所のコンビニに買いに行くとしよう。

 店頭で選択するソースとしてあなたは、どんなソースを選ぶだろうか。 
 定番のブルドックソース? それとも広島では人気のあるオタフクソース?
 あるいは、
 新たな味のソース? 

 考えてみると、ソースのブランドとしてはブルドックソースが有名です。
 といっても、どの消費者の心の中にもブルドックソース以外に選択の余地がなければ、
 ほかのソースメーカーは生き残ってはいないでしょう。

 しかし、現実はそうではない。
 ブルドックソースとは違った味や風味を出して、多くの消費者を顧客に持つソースメーカー
 は多く存在するのです。 
 ソースはほんの一例です。

 どんな業界でも、すでに先行して収益を上げている企業がある。
 そうした状況の中で、同じような商品で競争を仕掛け、消費者を自社に振り向かせるには
 一般的に資本力が不可欠な要素となるでしょう。

 しかし、資本力がそれほど無くても、ポジショニングマップなどの手法を用いることで、
 その先行企業には無い点、言わば、顧客が獲得できる「空いているすき間」を探すことが
 できるのです。 

 いずれにせよ、ポジショニングマップの作成もすぐに出来るので、ぜひ作ってもらいたい。 
 ポジショニングマップは縦軸と横軸の2次元でできている。
 縦軸と横軸の意味づけは、自由に考えてもらいたい。 

 ただしポイントは、顧客の心の中を表すことのできる基軸でなければなりません。
 また、縦、横の意味づけをしても、グラフが正比例で決まってしまうようなパターンはNG。
 例えば価格が高くなるにつれて、それなりに機能が高い製品群が並んでしまうような例です。 

 ポジショニングマップを作ることで、競合各社の位置づけを知ることができる。
 そこで、あなたの会社は、このマップの中で、独自の位置を占める方法を探さなければ
 ならない。 

 そうしなければ、すでに先行しているほかの企業が顧客・消費者の心の位置を占めている
 ため、どんなに宣伝しても、結局はその競合他社の宣伝をしていることになってしまうかも
 知れないからです。

 例えば、アサヒビールの「スーパードライ」 が売れたとき、ほかのビール会社が同じ
 ドライビールの商品の宣伝をしたところ、結局消費者の注文は、アサヒに流れてしまう
 という現象が起きた。

 このことは、競合他社が、消費者の心の中を知らずして最初から失敗する計画を立てて
 しまったことを示す事例と言えます。

□あなたの会社の特徴、いくつ言えましたか? 
 自社を知り、競合を知り、顧客を知ることは、最終的には自社に有利なマーケティング戦略
 をつくるきっかけとなります。
 今日のマーケティングでは、競争相手との戦いはより情報戦の様相を呈しており、優れた
 手法はすぐに相手に真似をされてしまいます。 

 しかし例え真似をされるようなことがあったとしても、自社の製品・サービスにオリジナ
 リティーがあり、それが高ければ高いほど、優位に立てる可能性が高まるのです。 
 さらに、忘れてはならないことは、消費者の琴線に触れる製品やサービスが提供できるか
 どうかです。

 そうした点も踏まえて、競合他社との競争に勝つためには、オリジナリティーを高めていく
 ことが必要なのです。


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ターゲットマーケティング

セグメントマーケティング 環境分析Ⅰ

セグメントマーケティング 環境分析 Ⅰ

マーケット(市場)の細分化 
 市場の成熟化により、顧客の購買行動は多様化し、企業の商品販売方法も大きく変わって
 います。
 過去には、「作れば売れる」時代には、企業は大量生産された商品を市場全体(マス・マーケット)
 の顧客に向けて販売してきました。

 しかし、消費者ニーズが多様化し、個人が自分自身のライフスタイルを追求するように
 なると、画一的な商品を市場全体に売り込む従来型の販売方法は通用しにくくなりました。
 市場には、様々な競合各社が存在します。

 あなたの会社だけが商品やサービスを提供しているわけではありません。
 あなたよりももっとうまくお客さまを見つけ、大量に販売している強者もいるでしょう。

 また、わずかなニーズを満たす商品をつくり、少量で販売するような、すきま市場に活路を
 見出している会社もあるに違いない。 
 それでは、あなたの会社にとって一番、理想的なのはどのようなパターンでしょうか。 

 競合もなく、オンリーワンの状態で、引き合いも多く、値付けも自由に設定できる商売が
 あれば文句はないでしょう。
 そんな環境であれば、何もせずに黙っていても売れていくはずです。

 しかし、世の中にはそんな都合の良い商売はない。 
 だから、理想的な商売に近いパターンとしては、現状の市場の中で、自社が得意とする
 分野で、かつ顧客のニーズを満たしており、さらに競合がまだ提供していないか、または
 販売力が弱い商品やサービスを提供できる商売というものが考えられます。

 実際に、そういう商売を探していくためには以下のような3つのCを押さえることが重要に
 なってきます。 
 ここでは、3つのCを押さえて、自社の立ち位置(ポジショニング) を知るための方法を
 解説します。

□3つのCを押さえることで分かるもの 
 3つのCとは、自社(Company) 、競合(Competition) 、顧客(Customer)の
 頭文字をとって表したものです。
 この3Cを押さえることで、自社の立ち位置が明らかになってくる。
 まず、自社(Company) を知ることで、次の点が明らかになってくる。

  ○自社の強みと弱み(SWOT分析)  
  ○自社の得意とすること(USP)  
  ○自社のミッションやビジョン 

 次に競合(Competition) を調べてみることで、次の点が明らかになる。

  ○市場のシェア  
  ○競合の強み、弱み  
  ○市場環境と成長性 

 そして、最後に顧客(Customer) を知ることで、以下のことが分かるでしょう。  

  ○市場のニーズ  
  ○ターゲット(狙う客)  
  ○市場環境  
  ○購買行動や今後のトレンド 
 以下では、これをさらに詳しくみていきましょう。

□自社(Company)を知る 
 自社を知るうえで、一番簡単な方法を紹介します。
 それは、「USP」を知るということ。
 USPとは、「Unique Sales Proposition」の頭文字をとった略語で、会社の独自性のことを
 表します。

 あなたの会社は何かしらの強み、利点、特徴があるから顧客に選ばれるのです。
 その長所、利点を自ら確認することで、自分の会社は何が得意で、何が不得意かが分かって
 きます。 

 USPを知るための方法として最も簡単なのはヒアリング調査です。
 どの会社にも営業部や支店、店舗などの顧客と接する最前線の部署があるでしょう。
 この部署を活かして、自社の商品やサービスを購入した顧客から回答をもらう方法のこと
 です。 

 どの会社にも、その会社が存続する限り、その商品やサービスを購入している顧客が存在
 します。

 その顧客があなたの会社を選んだ理由の中には、あなたの会社の強いところ、得意な
 ところが必ず含まれている。
 それを顧客の声からつかむのです。

 <ヒアリング調査の質問項目の注意点>
  1.顧客の属性を明らかにする 
   年齢、性別、仕事の内容などで分ける。 
   限られたサンプル数で似た属性の顧客からの回答が重複するのを避けるため、初めて
   購入した顧客や固定客などを混ぜ込み、誰にヒアリングするべきかを検討します。

  2.仮説を立てておく 
   自分の会社の良い点についてあらかじめ2、3の仮説を立てておき、その仮説を検証
  できるように質問していく。 
  例えば、 「○○が良いと思っていたが、使用してみると○○の方が気に入った」といった
  回答を引き出す。 
  あらかじめ回答のサンプルを用意しておき、自分の会社の良い点だけを聞き出せる
  ようにする。

  3.質問方法に注意する
   「ほかの会社があるのになぜ、あなたは当社を選ばれたのですか?」のように、
   具体的な答えが聞き出せるように質問していく。 
   漠然とした回答からは自分の会社の特徴がつかめないため、良い回答のサンプルを
   用意しておき、それから外れないように質問項目を設定します。

   以上のように、顧客の声のサンプルを集めてUSPを知るための検討材料として使って
   いただきたい。

   ヒアリング調査を実施すれば、自社の強みを知ることはそれほど難しいことではない。 
   また、人は自分の弱いところはたいていよく知っている。
   だから自分の会社の弱いところ、欠点、不満に思っていることは、社内会議の中から
   いくらでも抽出できるのです。

□競合(Competition) を知る 
 自社には、必ずその前に立ちはだかる競合他社がある。
 例えば、上記のような調査で自社の強みである特徴が分かっても、同じ特徴について競合
 他社の方がより強い場合、自社にとって強みのはずの特徴が、即座に弱みになってしまう。 

 例えば、営業人員を全国に100人配置していることが強みと言っても、競合他社が500人
 配置しているなら自社の5倍に相当するわけだから、同じ方法で戦っても相対的に勝つ
 のは難しくなる。 

 つまり、自社を知ると同時に、必ず他社を知らなければならないのです。
 さて、競合他社の情報を知ることは非常に有益であるが、実際に収集することは難しい。
 なぜなら、強い企業ほど情報統制が強く、自社にとって有益な情報はなかなか出て来ない
 からです。

 ではそのような場合、情報を収集するために、どのような方法が考えられるでしょうか。
 以下のような方法で収集することが有効だと考えられるので試していただきたい。

 ○マーケット情報 
  ・業界の専門紙、年間統計データや製品ガイドから情報を知る。 
  ・展示会などでカタログを収集する。 
  ・イベントやセミナーなどを利用し、営業担当者に聞いてみる。 
  ・業界誌の広告出稿回数やネット広告などは量的に把握する。 
  ・市場調査会社のデータを活用する。 
  ・新聞やネットを活用し、定量情報を分析する。

 ○キーパーソンをマークする 
  ・業界誌の記者と交流を深め、競合他社の情報を教えてもらう。 
  ・業界団体などの交流会などで、情報交換する(協会への出向者などを利用)。 
  ・ベンチャー企業や個人コンサルタントに教えてもらう(競合他社のOBや関係者で
   ある場合がある)。 
  ・顧客から聞く(顧客は様々な会社から商品・サービスを購入しているので、意外に
   多くのことが分かる場合がある)。 

 以上のように、競合他社を知る機会はたくさんあるが、通常は収集に時間がかかり、
 分析にも手間がかかる。
 そうした状況を考えると、一番早い方法は、やはりキーパーソンとの交流にあるかも
 知れない。
 人から直接聞く情報は、真実である場合が多いからです。

□顧客(Customer)を知る 
 自社の商品、サービスがいくらすばらしくても、購入される機会がなければ商売にならない。
 そこで、最終的には、顧客になるであろう見込み客の心の中を事前に調査する方法も
 重要になる。

 これには、定量調査と定性調査の2つがあります。
 数値から把握していこうという方法が定量調査です。
 しかし、数値だけでは人間の感情や意思決定のプロセスなどは分からない。

 このため、言葉として表現された内容を調べていく定性調査も重要です。
 本格的な調査はコストも時間もかかるため、比較的簡単にできるインターネットを活用した
 調査方法をここでは紹介します。

◎インターネットを活用した調査手法
 <詳細に調査する方法> 
  1) 仮説をたてる 
  2) 調査ターゲットを絞る(特定の層に対して調査する) 
  3) 仮説を検証するための調査項目を設計する 
  4) 自由に記入できる意見欄を活用すれば、簡易な定性調査も可能になる 

 なお、インターネット調査では、比較的簡単に何回かに分けての再調査や特定層を深く追跡
 することも可能です。

 <簡易な調査方法> 
  自社のサイトやブログを通じて、顧客から商品・サービスについて意見をもらう 
  簡易に調査したい場合には、自社のホームページ上でプレゼントキャンペーンなどを
  実施すれば簡単なアンケートができるでしょう。

  しかし、自社の限られたサイトの場合、答える意思のある人と深く対話ができるわけでは
  ないため、 “仮説の発見”程度に活用するのが良いかも知れない。
  また、こうした簡易な調査方法はサンプル数が多くとれない場合も多いことに注意が
  必要です。

□まずは、現状を把握することが大切 
 このように現状のマーケットを知る手段としては、様々な方法でリサーチに頼ることに
 なるが、その取得した情報をうまく活かしていくことができるかどうかは、マーケッターや
 企画担当の腕次第であることは言うまでもない。
 ともあれ、まずは自社、顧客、競合を知ること無くして、前に駒を進めることはできない
 ことをよく認識してほしい。

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ターゲットマーケティング

ペルソナの法則

ペルソナの法則

■自社のターゲット顧客とは?
 開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスなど企業の各活動は、自社の製品やサービス
 (以下「製品」)のターゲットとなる主要顧客層(以下「ターゲット顧客」)のニーズや
 特性などに適したものとなるように計画・実行されています。

 とはいえ、社長をはじめ自社の従業員はどれほどターゲット顧客について知っているので
 しょうか。
 また、ターゲット顧客に対する認識は、どれほど社内で共有できているのでしょうか。

 例えば、自社のターゲット顧客に関する理解度を把握するために、まず、会社や自身が
 担当している製品の典型的なターゲット顧客のイメージを書き出してみてください。
 書き出す項目は、おおむね次の通りでよいでしょう。

  1.氏名・年齢・性別・年収などのプロフィール
  2.製品を購入する目的や動機
  3.購入する製品を決定する際の評価ポイント
  4.製品の利用方法や利用シーン
  5.ユーザー歴や製品に対する知識、経験の度合い
  6.製品に満足している点、不満な点

 次に、同じことを同僚など社内の人たち数人に質問してみてください。
 全員が各項目について同じような回答をすれば、ここで紹介するペルソナは必要ないかも
 しれません。

 しかし、実際には回答が一致しないことは珍しくありません。
 また、そもそもターゲット顧客に関してそこまで深く検討していない企業もあるでしょう。
 こうした会社は問題があると言わざるを得ません。

 企業活動の指針となるターゲット顧客を明確にできていない、あるいはターゲット顧客に
 関する情報が共有されていないのであれば、会社全体の活動は統一性の欠けたものと
 なったり、非効率的なものとなったりする恐れがあります。
 ペルソナとは、こうした問題を解決するために有効な手法となるものです。

□ペルソナの概要
 ペルソナ(Persona)は、ラテン語で仮面や人格、人物などを意味する言葉です。
 また、心理学用語としても使われることがありますが、 ここで紹介するペルソナはこれらとは
 違います。

 ペルソナ&カスタマ・エクスペリエンス学会によると、ペルソナとは「企業が提供する
 製品・サービスにとって品も重要で象徴的な顧客モデルのこと」であり 、ターゲット顧客と
 ほぼ同じ位置付けのものです。

 ペルソナに関する説明の前に、まずはそのイメージを理解するために、簡単なペルソナの 
 事例はネットで御覧ください。
 そしてペルソナのテンプレートは次の通りです。

□ペルソナを利用する効果
 ペルソナの最大の特徴は、このようなターゲット顧客に関するデータをもとに、ターゲット
 の顧客モデルをあたかも実在する人物のように生き生きと描写する点にあります。
 今ではペルソナに盛り込まれている情報自体を把握している企業は数多くあります。

 例えば、大手企業であれば大規模な市場調査などを実施し、ペルソナと同等、あるいは
 それ以上に詳細な情報を把握しているのが普通です。

 ただし、それらは「35 歳の既婚男性。年収 500 万円‥‥・・」などといったように、
 “無味乾燥”な内容に整理されていることが少なくありません。
 ターゲットの顧客モデルを、あたかも実在する人物のように生き生きと描くペルソナには
 次のような効果があります。

 1.ターゲット顧客の明確化と共有化の促進
  ターゲット顧客に関する定義がやや曖昧である、あるいはターゲット顧客に関する情報が
  共有されていないという企業は少なくありません。

  ターゲット顧客に関する情報を物語風に記述するペルソナの場合、氏名・年齢・性別と
  いったプロフィール的な要素だけではなく、ターゲット顧客の価値観、噂好といった
  より詳細な情報が記述されるため、ターゲット顧客をより明確に表すことができます。

  また、社内のターゲット顧客に対する認識のズレを防止することもでき、誰もが容易に
  理解し、顧客に対して感情移入しやすくなるという効果があります。

 2.一貫性のある組織の実現
  マーケテイング活動などにおいては「『経験価値』の向上」が重要なテーマとなります。
  経験価値とは、製品そのもののような物質的・金銭的な価値ではなく、製品の購入・
  利用などの一連の経験を通じて得られる満足感といった心理的・感覚的な価値のことです。

  製品間の競争が激しさを増す現在では、経験価値の向上が差異化を実現し、顧客
  満足度を高めるために重要になっているのです。
  経験価値の向上のための基本は、企業全体が一貫性のある活動を行うということです。

  例えば、専門的知識を有する顧客向けの製品であるにもかかわらず、サポートセンター
  に知識の浅い人材を配置するといった一貫性を欠いた活動では、経験価値の向上を図る
  ことはできません。

  また、サポートセンターに集まった顧客からの要望や不満などを製品やマーケテイングに
  反映させ、改良するという取り組みも重要です。

  しかし、企業の組織体制は、開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスという
  ように機能別に部門が分けられていることが多く、実際の活動段階においては、部門間
  または部門内において一貫性が失われていることも珍しくありません。

  ペルソナによってターゲット顧客に対する認識を部門内・部門間で共有することで、
  企業活動に一貫性をもたらし、より質の高いサービスを提供できるようになります。

 3.顧客の立場に立った製品・ サービスの実現
  ターゲット顧客が明確になると、より創造的なアイデアや革新的な取り組みを促す
  効果が期待できます。
  例えば、友人が自宅に遊びに来る場合を考えてみましょう。

  友人から「明日、友人Yを連れて2人で君の家に遊びにいく」という連絡がありました。
  その際、一緒に来る友人Yについて、次のAもしくはBのような説明をされたら、あなたは
  どのような準備をして待つでしょうか。

   A:「一緒に行く友人 Y は、 25 歳の独身男性だよ」
   B:「一緒に行く友人 Y は、君もよく知っている山田君だよ」

  恐らく、 A の場合は「食事はとりあえず無難に出前のお寿司にして、飲み物はビール、
  焼酎、ウイスキー、日本酒、それにお酒が飲めない人だと 困るのでお茶やジュースも
  準備して‥‥‥」といったように考えるのではないでしょうか。

  このように、好みが分からない人には、無難な準備にならざるを得なくなります。
  一方、 B の場合は「魚介類が大好物で、刺身を食べながら日本酒を飲むのが好きな
  山田君だから、句の魚を買ってきて刺身と焼き魚を準備しよう。

  それから日本酒は山田君の出身地である京都の珍しい地酒を用意して驚かせよう」と
  いうように、好みなどに合っ たものを準備したり、サプライズ的な演出も検討しやすく
  なります。

  ペルソナを通じてターゲット顧客の特徴、価値観、噂好などを明確にすると、顧客の
  立場に立った活動ができる上に、「珍しい地酒」のように一歩踏み込んだり、思い
  切った発想などが得やすくなるのです。

□ペルソナの作成手順
 使用目的によって異なりますが、ペルソナの基本フォーマットは次の通りです。
 これはあくまで基本的な要素なので、目的に合わせて項目を追加してもよいでしょう。

 ただし、情報過多になるとペルソナに対する印象が曖昧になる(記憶に残りにくい)ため、
 情報量は適度にとどめる必要があります。

 また、ペルソナは架空とはいえ、人物像なので、全体的に矛盾が生じないように調整する
 必要があります。

 矛盾する記述がある場合は重要性の低い記述を削除したり、別のペルソナを作成しても
 よいでしょう。
 ペルソナの作成は、おおむね次の手順で進めます。

 1.ペルソナの作成目的の確認とチームの編成
  ペルソナを作成する目的を明確にします。
  同時に、作業を担当するチームの編成もこの段階で行います。
  ごく少人数でペルソナを作成することも可能ですが、その場合は一部の担当者の考え方
  が強く反映されるなど客観性が失われる可能性があります。

  ペルソナの客観性を維持するためには、ある程度の規模でチームを編成することが
  大切です。
  適切な人数は一概には言えませんが、作成されたペルソナは企業全体もしくは関連する
  全ての部門で共有することを考えると、関連部門から最低 1 人ずつはメンバーに入る
  ことが望ましいでしょう。

 2.情報の収集
  ペルソナの基礎となる顧客に関する情報を収集します。
  特定の情報源からや少数の情報しかない場合は、偏りのあるペルソナとなってしまい、
  「象徴的な顧客モデル」とならない可能性があります。
  従って、この段階では、幅広い情報源から多くの情報を収集することが望ましいと
  いえます。

 3.スケルトンの作成および優先順位付け
  収集した情報に基づいて「スケルトン」を作成します。
  スケルトンとは、ペルソナの骨組みとなるもので、ペルソナを特徴付ける要素を箇条
  書きにしてまとめたものです。

  スケルトンは、収集した多数の情報を統合して作成していきます。
  統合する方法は、収集した情報量、利用できる調査スキルなどを勘案して決定しますが、
  比較的手軽にできる手法としては KJ 法(親和図法)があります。

  KJ 法では、最初に調査結果から得られた顧客特性を付箋紙などに書き出し、それらを
  関連するグループ同士にまとめていくことによって、顧客特性を整理します。
  また、性別、あるいは初心者・上級者など顧客特性が明らかに異なる場合は、事前に
  こうしたカテゴリーに分類した上で、おのおの KJ 法によって情報を整理します。

  こうして整理した情報をもとにスケルトンを作成しますが、スケルトンは無理に 1 人に
  まとめる必要はありません。
  作成するペルソナは 1 人とは限らないので、例えば、「現在のターゲット顧客」
  「今後取り込みたい顧客」といったように、スケルトンが複数あっ ても問題ありません。

  また、後の手順でペルソナの絞り込みを行うので、この段階ではスケルトンの絞り込み
  はしなくても問題ありません。
  ただし、スケルトンが多すぎると以降の作業が煩雑になります。

  従って、チームの処理能力などを勘案して、必要に応じてスケルトンの数を絞り込み
  ます。
  また、スケルトンが複数ある場合は、メーン・サブといった優先順位をある程度明確に
  しておくとよいでしょう。

  スケルトンの絞り込みや優先順位は、各スケルトンの背景にある市場規模、将来性、
  戦略的重要度などを基準に評価することになります。

 4.面接調査の実施およ びペルソナの作り込み
  スケルトンを作成するまでは定量的な情報が中心であり、ペルソナ作成に当たっては
  さらに定性的な情報を収集する必要があります。
  具体的にはペルソナに近い人を対象にした面接調査を実施して情報を収集します。

  手順としては、スケルトンをもとに簡易的なペルソナを作成しながら、調査が必要な
  項目を明確にした後に面接調査を実施します。
  その結果を踏まえて、簡易的なペルソナに情報の追加・修正などをしてペルソナの作り
  込みを行います。

  面接手法としては、ヒアリング形式の調査が基本になります。
  また、調査の際に、調査対象者の実際の行動を観察しながらヒアリングを行うことも
  有効です。

  例えば、実際に製品を使用してもらいながら、長所・短所などを確認するといった
  ことです。
  また、「師匠と弟子」とよばれる手法も効果的です。

  この方法は、調査対象者が師匠、 調査担当者が弟子のようになり、調査対象者には普段
  通りに行動してもらい、調査担当者は不明な点などがあれば「なぜ、そうしているのか」
  といった質問をし、調査対象者が無意識に行っていることの理由などを明らかにして
  いくものです。

 5. ペルソナの決定・普及
  作成したペルソナの中から、実際に活用するペルソナを決定します。
  ペルソナを複数にする場合は、数が多すぎると顧客像がプレやすいので、おおむね
  2〜3人程度に絞り込むようにします。

  また、メーン・サブなど優先順位も決定します。
  決定したペルソナは、全従業員あるいは関係部門の従業員など関係者全員に公表する
  とともに、ペルソナの役割や内容などに関する説明会や、ペルソナのポスターを社内
  掲示するなどして共有化を進めます。

  関係者がターゲット顧客について話をする際に、「ターゲット顧客は……」では
  なく、「○○さん(ペルソナの名前)は……」とペルソナの名前が主語となる、すなわち
  ペルソナが関係者間に定着すると同時に、判断に迷うことがあれば常にペルソナに立ち
  返る 雰囲気ができれば、共有化が進んだという一つの目安となります。

 6. ペルソナのメンテナンス・ 廃棄
  完成したペルソナは絶対的な存在ではありません。
  顧客像は常に変化するものですし、 実際に使用してみると何らかの不具合が発生する
  場合もあります。

  そのため、必要に応じてペルソナのメンテナンスが必要となります。
  また、顧客像が大きく変化した場合など、ペルソナがペルソナとしての役割を果たせ
  なくなったら廃棄しなければなりません。

□中小企業が取り組む際の留意点
 ここまで、ペルソナの作成手順の概要を紹介しましたが、中小企業が自社の力だけで
  ペルソナ導入を図ることば決して容易ではありません。
  しかし、本格的にペルソナの導入を進めるに当たり、 負担の少ない方法で簡易的な
  ペルソナを作成してみるのも一案です。

  基本的に前述した手順に準じたものとなりますが、調査に関する負担を減らすために、
  公的機関などが行った調査結果などの 2 次データを積極的に活用するとともに、従業員や
  その家族、取引先などを中心にアンケートや面接調査などを実施します。

  こうした人たちの中には顧客に直接対応することを通じて、顧客に関する情報を有して
  いる人も数多くいます。
  また、最終消費財を製造している企業など業種や製造品目などによっては、 従業員や
  その家族などがユーザーとして製品を使用している場合もあります。

  こうした情報源を活用して、ペルソナを作成するのです。
  ただし、身近な従業員や取引先などの中には、製品に対する思い入れや顧客に対する
  主観的な見方を持っていることも多く、情報源としては客観性に欠けるという問題が
  あるので注意する必要があります。

  このように簡易的な手法で取り組む場合は、本格的に取り組む場合と比較すると、
  その内容や質に劣る部分があることは否めません。

  ただし、冒頭で紹介したように、個々の従業員が持つターゲット顧客に対するイメージ
  がバラバラであるような企業であれば、こうした取り組みを通じてターゲット顧客に
  対するイメージが統一されていないという事実を皆が認識するとともに、ペルソナ作成
  プロセスを通じて、ターゲット顧客に対する認識を共有化できるでしょう。
  それだけでも会社の活動に一貫性が生まれ、一定の効果が期待できます。

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ターゲットマーケティング

市場調査の基本
 

  ■企業のマーケティング活動と市場調査

   市場調査は、企業が市場のニーズを把握するために実施するものですが、現状
   のニーズを分析することだけがその目的ではありません。

   市場調査は、企業がさまざまな意思決定を行うときに、重要な情報を与えてくれる
   ものです。

   ここでは、企業のマーケティング活動と市場調査との関係について考察していきます。

   1.企業のマーケティング活動と市場調査

     マーケティングとは、もっとも広い概念でとらえれば、「企業から市場への働き
     かけ」全体を指すといえます。

     つまりマーケティングとは、

      企業が消費者のニーズを充足させるために実施するあらゆる
      創造的活動である

     ということができます。

     そして、このようなマーケティング活動を効果的に進めるうえで、市場調査は重
     要な手段になります。

     現在の消費者は、物理的にはかなりの水準まで満たされています。

     必要なモノはいつでもどこでも、誰もが購入できるような環境が整備されています。

     このような環境にあって、多くの企業は消費者のさまざまなニーズを探ること
     に力を入れています。

     その理由は、

      ・ありきたりの商品やサービスでは消費者が関心を示さず、
       新たな顧客を獲得することが困難である

      ・既存の顧客も他社のより魅力的な商品・サービスに流出して
       しまう可能性が高い

     からです。

     そのような事態を回避するために、十分な市場調査を実施し、自社経営の方
     向付けを行っていく必要があります。

   2.市場調査から入手可能な情報

     市場調査と一言でいっても、その方法は多種多様です。

     もっとも広く行われている方法は、質問紙調査と面接調査です。

     ここでは具体例により、企業のマーケティング活動において、市場調査の結果
     がどのような形で使われるのかを示します。

     たとえば、自動車メーカーが新製品モデルの開発を行うケースを考えてみま
     しょう。

     まず、社内・社外の情報を基にマクロ的な分析を行った結果、スポーツカー市
     場の潜在的な需要を見出したとします。

     そこで、製品コンセプトを決めるために、市場調査を実施し、調査の結果から、
     既存商品と消費者ニーズを分析したとします。

     これを製品ポジショニングといいます。

     図中のA〜Gまでは既存ブランドであり、消費者のニーズがZであったとします。

     この場合、比較的コンパクトで馬力がある車を消費者が欲している、ということ
     であり、「新製品のコンセプトはZに置け」という情報が市場調査から明らかに
     されたことになります。

     これは単純化されたひとつの例ですが、

     このように、

      市場調査を行うことでマーケットの構造と消費者のニーズが明らかになり、
      自社の戦略の方向性を決定することが可能となる

     のです。

  □市場調査のステップ

   次に、市場調査のステップについてみていきます。

   市場調査は、事実の発見、理由の明確化、企業の行動指針の提供、という3つの
   段階があります。

   1.事実を発見

     市場調査の第一段階は、事実を発見することです。

      市場調査のもっとも基本的な目的は、現状はどうであるのか、
      できるだけ正捷に把握することにあります。

     先に取り上げたスポーツカー市場の現状分析では、既存のブランドをすべてコ
     ンセプトマップ上に位置づけることで、市場の構造そのものを明らかにしています。

     事実の発見は、マーケティング・リサーチの初期段階でありながらも、多くの情
     報をもたらしてくれるという重要な役割を担っています。

   2.理由の明確化

     市場調査の第二段階は、第一段階で判明した事実の理由を明確化するものです。

     つまり、

      消費者はなぜそのように行動するのか、
      その行動の背景にある理由を発見しようとする段階

     です。

     すべての消費者の行動には何らかの理由があり、それを多面的に分析して明
     らかにします。

     この第二段階までは、過去の情報を基に分析している点で共通しています。

   3.企業の行動指針の提供

     市場調査の第三段階は、企業の行動指針を明らかにするというものです。

     この段階では、市場調査は現状分析にとどまらず、

      企業は今後いかに行動すべきであるのか、
      という重要な意思決定を行うときの判断材料提供する

     ことになります。

     市場調査をより有益なものにするためには、この「今後どうすべきか」という視
     点がとても重要です。

     新しい商品やサービスを提供するにあたり、現状を分析したり、あるいは消費
     者行動の要因を把握したりすることは必要不可欠な事項です。

     しかし、それだけで十分なマーケティングが可能となるものではありません。

     消費者のニーズが多様化かつ高度化している現状にあっては、消費者のニー
     ズに加えて「ウォンツ」という概念が登場しています。

     ウォンツとは、まだ顕在化していないニーズ、消費者自身が明確に認識してい
     ないニーズを指します。

     このような消費者の欲求を把握し、また、ウォンツまでを市場調査の実施に
     よって掘り起こすというのが、これからの企業にとっての大きな課題となります。

     市場調査の3つの段階をあらためて図に示します。

  □調査計画の立案

   ここでは、市場調査の計画を立てるときに留意すべき点について検討していきます。

   1.調査目的の明確化と系統的な計画の立案

      市場調査を行うにあたりその出発点となるのは、
      調査の目的を明確にすることです。

     当然のように感じられるかもしれませんが、調査を実施すること自体が目的に
     なっている例が少なからず存在します。

     そのような形式的な調査では、市場に関する有力な情報を入手するのは困難です。

     したがって、「何のために調査を実施するのか」という点について十分に検討
     する必要があります。

     自社がとるべき経営活動を多面的に分析していき、本当に調査が必要になっ
     た段階でその実施を考えます。

     調査目的が明らかになれば、系統的な調査計画の立案を行います。

     つまり、市場調査の実施においては、調査の目的を達成するために何をすべ
     きか、というように目的からさかのぼって調査計画を立てていく、というステップ
     を踏まなければなりません。

   2.仮説の検証がすべてではない

     一般的な市場調査は、仮説検証型の調査と呼ばれることがあります。

     仮説検証とは、

      あらかじめ正しいと判断される仮説を立て、
      それを検証するためのデータを市場調査から収集し、その結果を確認する

     ことです。

     ところで、仮説検証型の調査では、最初に設定される仮説そのものが、きわめ
     て常識的である場合が少なくありません。

     そして、その常識的な仮説の正しさを立証するために、調査の結果を使用する
     ことがあります。

     このような仮説検証も重要です。

     直感的に正しい仮説であると判断しても、その裏付けをとるのは意義のあるこ
     とです。

     しかし、仮説の検証がすべてではありません。

     市場調査によって、予想もしなかった真実を発見する場合もあるものです。

     このような仮説に基づかない調査を「ゼロベース型調査」といいます。

     ゼロベース型調査ではとりあえずの方向性を見いだすために、世の中の環境
     変化、消費者ニーズの変化など幅広い情報を集めます。

     そうするなかで新たな仮説めいたものが見えてきたら、改めて仮説検証型の
     調査に移るということになります。

     特に前述の消費者のウォンツを探るためには、さまざまな視点からのゼロ 
     ベース型調査が有効になります。

   3.調査計画に盛り込むべき事項

     調査計画に盛り込むべき主要な事項は、以下のとおりです。

     ◎調査計画に盛り込むべき事項

      ・調査目的

      ・調査方法

      ・調査対象

      ・調査実施地域

      ・調査対象者の選び方

      ・調査対象者数

      ・調査項目

      ・分析計画

      ・作業日程

      ・調査費用

     調査の目的が最重要視されますが、それ以外では調査全体に要する時間と
     費用が重要です。

     市場調査は比較的小規模のものであっても、かなりの時間・費用が必要となります。

     その点を再確認したうえで、調査計画を作成します。

     次項では調査方法について紹介します。

  □市場調査の実施

   市場調査の方法は大きく、1.質問紙調査法、2.面接調査法、3.観察調査法、
   4,実験法という4つに分類することができます。

   以下に、それぞれの内容をみていきます。

   調査の実施にあたっては、調査目的にもっとも合った形式を選びます。

   1.質問紙調査法

     質問紙調査法は、質問事項を用紙に取りまとめ、それを調査対象者に回答し
     てもらうというスタイルをとるものです。

     これはさらに、(1)留め置き法(2)郵送法(3)訪問面接法(4)その他の方法
     (インターネット調査など)に分かれます。

     (1)留め置き法

       留め置き法は、調査員が被調査者を訪ねて調査票の記入を依頼し、一定
       の期間後にふたたび訪問して調査票の回収を行うものです。

       留め置き法の長所は、調査の目的を直接口頭で説明できるため、被調査
       者の協力を得やすいという点です。

       さらに、回答者は調査書への記入を始める前に疑問点などを調査員に聞く
       ことができます。

       短所は、調査員を確保するためのコストが大きいことと、被調査者宅を訪
       問する手間がかかるということです。

     (2)郵送法

       郵送法では、質問用紙を調査対象者に郵送し、回答後に返送してもらいます。

       質問事項が少ない場合には、はがきを使用します。

       郵送法の長所は、調査コストが比較的安く、広い地域を対象に一斉に調査
       を実施できるところにあります。

       一方、短所は回収率が低いことです。

       調査票を送付しても、それを見た人が必要事項を記入して返送してくれる
       率はどうしても低くなってしまいます。

       また、回収に時間がかかる点も短所といえます。

     (3)訪問面接法

       この方法は従来よく行われていた方法で、調査員がすでに構成された調査
       書をもって、あらかじめサンプリング(抽出)された調査対象者を訪問し、質
       問文を読んで相手の回答をとるものです。

       多くの場合、回答の選択肢が用意されています。

       訪問面接法の長所は、被調査者に直接に調査依頼ができる点や、質問に
       対する回答を確実に記録できる点です。

       しかし、多くの時間とコストがかかること、訪問されることを拒絶する人も多
       いこと、在宅率の低い若い人たちの回収率が低下してしまうことなどの欠
       点があります。

     (4)インターネット調査

       インターネットによる調査も広く実施されています。

       この方法の長所は、質問票を発送するための実質的なコストがほとんどか
       からない点にあります。

       回答者の負担も少なく、回収期間も非常に短くて済みます。

       最近ではさまざまなインターネット専業の調査会杜がありますので、自社で
       アンケートの仕組みを整えなくても、調査会社に依頼することで安価に調査
       することが可能です。

       調査は原則として、調査会社にあらかじめ登録している人を対象に行われ
       ます。

       このため、自社がターゲットとしている層と、登録している人の層が一致し
       ていることを確認する必要があります。

       また、調査会杜に登録している人はアンケートに答えることでポイントなど
       のメリットを得ており、ポイント獲得のために自分の関心がまったくない分野
       のアンケートにも参加する傾向もみられます。

       実際に利用するにあたっては、これらの点について調査会社に事前に確
       認するほうがよいでしょう。

       なお、インターネット調査会社は「アンケート結果の提供のみ」から「結果を
       踏まえた分析」なども含めて、さまざまなレベルのサービスを提供しています。

       自社にアンケート結果を分析するノウハウが不足している場合は、分析も
       含めた依頼をすることができます。

   2.面接調査法

     面接調査法(インタビュー)は、調査員と被調査者との面談形式で行われ、調
     査員は面談で入手した情報を記録していきます。

     多くは質問紙調査による訪問面接法のように、あらかじめしっかりと構成され
     た調査票を用いることはしません。

     むしろ自由な面談のなかで明らかになった新たなヒントを掘り下げていくことに
     重きが置かれます。

     面接調査法の代表的なものは、(1)グループインタビュー、(2)デプスインタ
     ビューです。

     (1)グループインタビュー

       グループインタビューは、数人の被調査者を集めて座談会形式で行われます。

       司会役である調査員がいくつかの質問をし、それをもとにグループで自由
       に意見を出してもらいます。

       グループインタビューの長所は、各メンバーの反応を観察することができ、
       グループ全体の議論から派生的に生じる新たな事実を発見できることです。

       しかし、グループの構成メンバーを慎重に検討しなければ、集団内の効果
       的な相互作用は生じにくくなってしまいます。

       価値観の異なる人を含めるなど議論が活発化するような工夫が必要です。

     (2)デプスインタビュー

       デプスインタビューとは、ごく少人数(面談者と1対1の場合もある)を対象
       にして、深層心理にまで踏み込んでいく方法です。

       デプスインタビューの長所は、非常に踏み込んだ情報を被調査者から引き
       出せることです。

       短所は、調査コストが大きくなることに加え、調査員に高度な専門知識や、
       かなりの熟練が要求される点です。

   3.観察調査法

     観察調査法は、質問紙調査法や面接調査法とはやや異なる視点から実施さ
     れます。

     この調査の目的は、現実の事象を観察して実態を正確に把握することです。

     ここでは、(1)街頭観察調査と(2)店頭・店内観察調査を取り上げます。

     (1)街頭観察調査

       街頭観察調査(タウンウオッチング)は、街に出て大勢の人たちを観察し、
       目的とする情報を収集するものです。

       たとえば、若者が身につけているものを調査したり、深夜の人間行動を観
       察したり、と目的によってさまざまな調査が実施されます。

       街頭観察調査は、特別な費用を必要としないため手軽に行うことができま
       すが、明確な目的意識をもって実施しないと有効な情報を得られません。

       これが街頭親察調査の長所・短所です。

     (2)店頭・店内観察調査

       店頭・店内観察調査は、調査員が小売店の店頭に立って消費者の行動を
       観察するものです。

       たとえば、消費者が注目した商品・手に取った商品・実際に購入した商品と
       いう具合に分類してカウントしたり、消費者の店内での動きを観察したりし
       ます。

       そして、この調査から得られた情報を店舗運営に役立てていくのです。

       店頭・店内観察調査の長所は、消費者の行動をダイレクトに観察できるこ
       とです。

       しかし、調査結果から得られた多様な情報を集約するのに手間がかかると
       いう短所もあります。

   4.実験法

     この方法は、因果関係を明確にするために、条件を統制することによって調査
     対象者に働きかけてその反応をみるものです。

     具体的には、複数のグループに対し異なる扱いをし、影響を与えうる変数をコ
     ントロールしたうえで、扱いに対する結果を調査します。

     たとえば、Aグループには事前に商品の説明をしたうえで使ってもらい、Bグ
     ループには説明なしで使ってもらって、AとBの満足度の違いを比較することな
     どがあげられます。

     調査設計は複雑になりますが、新商品開発などにおいて有力な情報を手に入
     れることができます。

  □調査結果の集計、分析と活用

   最後に、調査結果の集計、分析と活用について記載します。

   1.調査結果の集計

     市場調査の実施後、集計の段階に入ります。

     調査結果は、数字で把握できるデータとそれ以外のデータがあり、前者を定量
     データ、後者を定性データといいます。

     質問紙調査法においては、各質問事項に対して数字で回答する形式が多用
     されます。

     量的な取り扱いができるようにしておくと集計作業が簡単になるからです。

     こうした集計は、パソコンの表計算ソフトなどを使って行うことができます。

     面接調査の結果は定性データであるため、一定の分類基準にしたがって集計
     します。

     手間がかかりますが、集計結果の有効活用のためにも慎重な作業が望まれ
     るところです。

   2.調査結果の分析と活用

     集計が終わると、調査結果の分析段階に入ります。

     定量データであれば、質問項目ごとに平均値を出したり、分布を確認したりします。

     また、年齢や性別などの属性項目と、各質問事項との関連を明らかにすること
     もできます(これをクロス集計といいます)。

     さらに必要に応じて統計解析のソフトを使用し、専門的な分析をすることも可
     能です。

     定量・定性データの分析では、

      調査の実施段階では予想もしなかったような事実を発見できる場合も
      あります。

     調査結果を正確に読みとり、実際の経営にいかしていくことは簡単ではありま
     せんが、そのためのノウハウを少しずつでも社内に蓄積していくことが大切です。

     その技量を高めることによって、中小企業が大企業よりもマーケティングで優
     位に立てる可能性もあるからです。

     「中小企業こそマーケティングが大切である」という認識をもち、積極的に取り
     組んでいきましょう。

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ターゲットマーケティング

エリアマーケティング


  ■エリアマーケティング 

   市場調査は、小売業、飲食業であれば、その立地に出店した場合にどの程度の
   売り上げを見込めるのか、また、その売上高で収支が合うのかを事前に検証する
   ために行うものです。

   例えば、小売店の新規開業を計画しているが、100メートル先に同じ業態の既存
   店があるとします。

   その場合、開業後に果たして十分な収益を上げることができるか疑問が残る。

   一般に、交通量調査やライバル店調査、地域住民のアンケート調査などをフル
   コースで実施すると数百万円程度に費用がかかります。

   市場調査はあくまで推測であり、100%その通りになるという保証はありません。

   「どれだけの精度があるのかわからないものにそれだけの料金を払うわけにはい
   かない」という見方もできます。

   市場調査の費用対効果は未知数なのです。

   しかし、自分で市場調査をしようとしても、いったい何をどう調べたらいいのかとい
   う問題になります。

   ここでは、自分で簡単に市場調査を行う方法、その考え方についてをまとめまし
   た。

   特に立地調査にポイントを絞っています。

  □立地と商圏の考え方

   まずは、市場規模(マーケットサイズ)に着目します。

   市場規模の大小を知るだけでも新規参入のメリットがあるかどうかが分かります。

   また、市場規模大小のほかに参入企業(事業所)の数を知ることで、需給関係を
   把握することができ、それにより参入メリットの有無の判断材料にもなります。

   売上高予測は、

     商圏内市場規模×シェア

   で求めることができます。

   同じ商圏に競合店があれば、その競合店とはシェアを分け合うことになります。

   また、各店の規模や販売力が同様の場合、2店舗間競争ではシェアは50%、3店
   舗間競争ではシェア33%となります。

   実際には、店舗規模や品ぞろえが集客力に影響を与えますので単純に1/2、1
   /3にはなりませんが、確実に地域シェアを獲得するためには競合店以上の店舗
   規模、品ぞろえにする必要があります。

   小売業は立地産業とまでいわれています。

   商圏内各地域からの集客、さらには、競合店との関係を考えると、どこに出店す
   るかは最重要課題となります。

   街は変化しているので、現状だけでなく、将来展望も考慮に入れなければなりま
   せん。

   特に、大規模店が同地域に出店してきたりすると、人の動きに大きな変化が生じ
   ます。

   望ましい立地条件としては、

    ・人口増加地域であり、将来発展が見込める場所であること

    ・交通事情がよく、分かりやすい場所であること

    ・競合店舗が集中していない地域であること

    ・店舗開設に支障がなく、比較的安価に出店できること

   などが挙げられます。

   また、立地は大きく3つのタイプに分けられます。

    ・ダウンタウン(繁華街)

    ・アーバン(都市部の住宅密集地域)

    ・サバーバン(郊外の新興住宅地域)

   「ダウンタウン」は繁華街という意味ですが、人は昔から自然に港などの低地に集
   まり自然発生的に市が立ち、繁華街へと発展してきました。

   日本ではダウンタウンもアーバン地区も非常に地価が高いのが実情です。

   よほど坪効率のよい売場・商品構成にしないことには採算が合いません。

   そこで地価の安い出店立地を求めて行くと必然的にサバーバンとなります。

  □立地と商圏の変化

   先に述べたように小売業は、立地産業といえます。

   通信販売、訪問販売は別として、店舗販売の場合、来客があって初めて販売に
   結び付きます。

   例えば、量販店やその他チェーンストアでは、スクラップ&ビルド(不採算店の閉
   鎖と新規店の開店)は当たり前になっています。

   出店当初は、好立地としてスタートしても、時節の移り変わりで環境が変化し、閉
   店ということが往々にしてあります。

   直接の原因としては、他店との競争、他地域との競争が考えられますが、要は当
   初見込めた商圏が侵食された結果といえます。

   商圏が大きく様変わりするのは、大規模小売店の進出だけではなく、交通網の発
   達や住民の行動様式の変化などによる消費行動の変化も大きな要因です。

   商圏は、大きく

    1.近隣商圏(食品など、最寄り品の商圏)

    2.地域商圏(洋服など、買い回り品の商圏)

    3.広域商圏(百貨店や各地域の中核都市の繁華街の商圏)

   に分類できますが、特に地域商圏、広域商圏で成り立っていた商店街が、ほかの
   商業集積地やショッピングセンター、量販店に商圏を侵食された場合、その影響
   は大きくなります。

   地域商圏、広域商圏で成り立っている商店街は、遠いけれども、そこに行かない
   と購入できないので、そこまで出かけているのです。

   わざわざ、遠くから訪れていた買い物客の足が遠のくと、それだけ客数が減少し
   ます。

   来店客として見込めるのは「近くて便利だから」という近隣商圏の消費者に限られ
   てしまいます。

   また、従来、商圏人口3万人を見込めていた商店街が、交通事情の変化やショッ
   ピングセンターなどの進出により商圏人口が1万人以下に減少した場合、その商
   圏でも採算の合う最寄り品を扱う店舗は生き残れるでしょうが、より広い商圏を必
   要とする買回り品を扱う店舗では採算割れになるでしょう。

   この場合、業態転換、閉店を余儀なくされます。

  □エリアマーケティングの手法

   ショッピングセンターや商店街に出店する場合は、関係者に聞けば商圏の範囲が
   分かりますが、以下では、自分でできる市場調査の手法について、簡単にまとめ
   てみます。

   近隣商圏の場合には、食料品、日用品、実用衣料品などは、最寄り品です。

   消費者が最寄り品を購入する場合、より近く、より品ぞろえが良く、手頃な価格で
   販売している店舗で購入するというのが一般的です。

   商圏は半径500メートル〜1キロメートル程度です。

   最寄り品の店舗を出店するのであれば、この半径500メートル〜1キロメートルが
   目安になります。

   もし、その範囲内に、鉄道や高速道路などの広い道路が走っていたり、川が流れ
   ているようでしたら、そこが商圏の境界線になります。

   地域商圏・広域商圏の場合には、大規模店舗でもない限り、単独の店舗で地域
   商圏、広域商圏を獲得することは困難です。

   ただし、ショッピングセンター内、あるいは地域で最も大きな商店街に出店すれ
   ば、それも可能になります。

  □社内データ蓄積の重要性

   大手チェーン店の場合、パソコンに出店立地の住所を入力すれば売上高予測が
   できるシステムが確立しているところがあります。

   これはデータの蓄積があるからできることなのです。

   ところで、このデータは大きく、外部データと内部データとに分けることができる。

   外部データとは、地域人口、性別人口、年齢別人口、所得格差、消費性向、事業
   所数などの公的データです。

   一方、内部データとは、性別売上高、年齢別売上高、通行量対入店率などの企
   業内部で蓄積されるデータです。

   1号店を出し、成功したらその成功事例(データ)を基に2号店の出店場所を検討
   することができます。

   成功例が増えると、実験的な出店も可能になります。

   繁華街への出店がメーンであったチェーン店が初めて郊外ロードサイドに出店す
   るなどは、実験的出店の1例です。

   最初は手探り状態であっても、成功例と失敗例の積み重ねが社内データとして蓄  
   積され、それが将来の店舗展開に生かされるのです。

   ◎通行量調査の例

    通行量調査をするにあたっての社内データの重要性について説明します。

    (A立地並びにB立地の前の通行量)は人通りの数を表しています。

    ある時間帯のA立地(左枠内)の人数は17人、B立地(右枠内)の人数が11人
    であったとします。

    通行量では明らかにA立地のほうが多いのですが、店のメーンターゲットである
    20代前半の女性の数を数えると、A立地(左枠内)の人数は4人、B立地(右枠
    内)の人数が6人であった場合、出店立地としてはA立地よりもB立地のほうが
    適していることになります。

    来店客の性別・年齢が重要な場合、通行量調査は、単に通行人の数をカウント
    しただけでは有用な情報とはなりません。

    メーンターゲットとなる性別・年齢に合致した通行人の数をカウントする必要が
    あります。

    また、自動車の通行量を調査する場合、ファミリーをターゲットにするならば、ト
    ラック、商用車、スポーツカーの数ではなく、ミニバンやセダンの数をカウントす
    る必要があります。

    各立地の通行量を調査する場合、内部データの蓄積がなければ、せっかくの調
    査データも活かされません。

    1号店を出店する場合は内部データは存在しませんが、例えば、○○のような店
    というように手本となる店があれば、その店と同様の立地を探して出店するとい
    うことができます。

    同様の立地とは、同じような来店客が望める立地という意味です。

    しかし、他に競合業態がない店の場合、そうはいきません。

    試行錯誤による予測は可能でしょうが、その精度は低いものにならざるをえませ
    ん。

    外部の専門調査会社に調査を依頼した場合も同様で、費用対効果は低いもの
    となるでしょう。

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ターゲットマーケティング

マスマーケティングからセグメントマーケティング


  ■マーケット(市場)の細分化
   市場の成熟化により、顧客の購買行動は多様化し、企業の商品販売方法も大きく
   変わっています。

   過去には、「作れば売れる」時代には、企業は大量生産された商品を市場全体(マス・
   マーケット)の顧客に向けて販売してきました。

   しかし、消費者ニーズが多様化し、個人が自分自身のライフスタイルを追求するようにな
   ると、画一的な商品を市場全体に売り込む従来型の販売方法は通用しにくくなりました。

   そこで、市場を同質のニーズを持ついくつかの集団に細分化し、個々の市場にあった
   売り方が必要になってきました。

   そのため、「売る相手を知る」ことが重要になってきたのです。

   この市場を同質のニーズを持ついくつかの集団に細分化することを、「市場細分化
   (マーケット・セグメンテーション)」といいます。

   市場の細分化によって、企業は、売り込む先を自社の製品・サービスを最も欲するであろ
   う特定の顧客に絞り込むことができます。

   つまり、「標的市場(ターゲット市場)」が選定できるのです。

   これにより、企業は自社のヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を使って集中的に
   標的(ターゲット)とする顧客に売り込むことで、効率的により大きな成果が挙げられる
   ようになります。

  □市場細分化がなぜ必要か

   市場細分化は、企業がターゲットとする顧客の絞り込みを行うことといえます。

   1.経営資源の有効活用

     市場細分化を行うことで、中小企業のように限られた経営資源を有効に活用し、
     より効果的なマーケティングを行うため。

   2.顧客満足の向上

     市場細分化を行うことによって、顧客の満足をより的確に満たし、顧客ニーズに応
     えるため。

   3.競争上の優位性の確保

     市場細分化を行うことによって、競合他社と異なった市場、参入してこない市場を
     いち早く発見し、有利なマーケテイングを展開することによって、多くの利益を得る
     ため。

     さらに、市場を細分化することで、特定の顧客(ファン)の集約や自社独自の差
     別化により、マスコミから記事として取り上げられるプレスリリースの可能性が
     大きくなります。

  ■セグメントマーケティングとは

   大量生産された商品を市場全体(マス)の顧客に向けて販売する手法は、「マス・マー
   ケティング」といいます。

   一方、市場を細分化して絞り込み市場を選定する手法を「セグメントマーケティング」と
   いいます。

   マス・マーケティングが一つの商品(製品)を大量生産・大量流通・大量販売してあら
   ゆる買い手に販売しようとする方法であるのに対し、セグメントマーケティングは市場
   をいくつかに分け、そのうちの一つもしくは複数のターゲットに狙いを定め、集中的に
   経営資源を投入していきます。

   「弱者の戦略」の項にもあるように、その業界でNO1の企業以外(弱者)は、

    ・地域を限定してNO.1(オンリーワン)をつくる

    ・特化(○○限定、○○専用・専門)する

    ・戦線(商圏)を拡大しない

    ・品ぞろえを増やさない

    ・差別化という武器をつくる

   これらのことを肝に銘じておく必要があります。

   しかし、やってしまうのです。

   専門特化すべきなのにデパート化し、品揃えを豊富に、なんでも売ってしまうのです。

   その挙句に、価格競争に陥るといったパターンです。

   中小企業が大企業の真似をすれば結果は目に見えています。

   セグメントマーケティングには、「集中型マーケティング」「分化型マーケティング」の
   二つに分類することができます。

   1.セグメントマーケティング

     細分化された市場の中から一つまたは少数のセグメントに狙いを定めて、そこに
     集中的に経営資源を投入していくマーケティング手法です。

     これはニッチ企業がよく採用する戦略といえます。

   2.分化型マーケテイング

     細分化された市場のそれぞれのセグメントに対して、それぞれ異なる経営資源を
     投入していくマーケティング手法です。

     言葉からもわかるように、複数の商品があっても同じ市場で売らないことです。

     細分化するための基準例として、

     ・市場を年齢、性別、家族構成、ライフステージ、職業、所得、学歴などに基づいて
      区分する方法。

     ・市場を居住地域、就業従業地域、人口密度、気候などの異なる地理的単位で区
      分する方法。

     ・価値観、ライフスタイル、パーソナリティ(性格・個性)によって市場などによっ
      て区分する方法。

     ・購買頻度、使用目的、ロイヤルティー、特売反応などによって市場を区分する方法

    などがあります。
   
  □売上げ上昇を続ける理由

   この住宅メーカーは徹底してメインターゲットを絞っている。

   ○マーケット調査(お客様を知るための情報収集)

    進出する地域を決めるにあたっては、徹底した現地調査を行う。

    自転車のサイズ、アパートのベランダの洗濯物、公園で遊ぶ子ども達と見守る母親
    の年齢などをチェック。

   ○なぜ32歳なのか?(マーケットの絞込み)

    入社後10年経って、年収も安定してきて、子どももできて、という家族構成。

    マーケットは絞り込むほどあなたの顧客になる見込み度が高くなる。

   ○なぜ他社より高くても売れるのか(差別化)

    17棟すべて同じ間取りがない個性的な特徴を持っている(平均して2700万円、他社
    より500万円から1000万円ほど高いが、抽選までやるほどの大人気で、1時間で
    完売してしまった。

    32歳に絞って、彼らが好まれるような間取りとかセンスが生かされている。

    30分で400万円を売り上げるラジオショッピングの女王は、

     ・必ず買ってくれるお客様を大切に。不況は感じない。(One to one マーケティ
      ング)

     ・ラジオの現場では実際に商品を焼いて、食べる。(臨場感、シズル)

     ・大切にしているお客さんは、一人暮らしの高齢者など。(マーケットの絞込み)

     ・7割以上がリピーターだという。(顧客のアップセル、クロスセル)

     ・彼女は受注の電話がかかってきても、すぐには注文を受け付けない。(売込みを
      しない)

    まず、商品への意見、暮らしのスタイル、一人暮らし?等を聞くことで、次の商品
    づくりにつながるとのこと。(情報収集)
  
    こうしたアンケートの結果が、次の商品を作るのにつながるとのこと。

    
   この番組(ガイアの夜明け)から、「これは自分のビジネスではどのように使えるだろう
   か?」を、考えながら視聴することで、多数のヒントが得られるはずである。

  □マーケット志向

   市場細分化によるセグメントマーケティングは、販売先を特定の顧客層に絞り込むと
   いう意味で、マス・マーケティングと比べ、より「売る相手を知る」ことが求められる
   マーケティング手法といえます。

   さらに最近では、「一人ひとりの顧客を知る」「一人ひとりの顧客に焦点をあてる」マー
   ケティング手法である「ワン・トウ・ワン・マーケティング」が主流になってきていま
   す。

   ワン・トウ・ワン・マーケティングでは、企業と顧客との一対一の関係づくりが重視さ
   れ、各顧客のニーズに合った商品やサービスを提供し、顧客との長期的な関係づくり
   を目指します。

   ワン・トウ・ワン・マーケティングは、「カスタマー・リレーションシップ・マーケティ
   ング(CRM)」といわれたり、また、ロイヤルティーの高い優良顧客を重視すること
   から「ロイヤルティー・マーケティング」ともいわれたりします。

   マーケットは絞れば絞る(細分化)ほど、あなたが扱う商品を欲するお客様が見えてき
   ます。

   絞ることで見込み客が少なくなると考えがちですがそれは違います。

   あなたは万人に売ることを考えてはいけません。

   多くの営業会社が「商品ありき」からスタートしがちですが、「マーケットありき」から
   スタートすることを忘れないでください。
   
  □カスタマー・リレーション(顧客関係)のクオリティ

   あなたのビジネスで最も価値のある資産が何であるかが分かっていますか?

   商品ですか?
   スタッフですか?
   自前の事務所や設備ですか?
   
   最も価値のある資産が抜け落ちています。

      そう、「顧客」です。

   顧客に価値を置いている数少ない業界の1つにメールオーダー業界(通販業界)があ
   ります。

   おそらく他業種の企業よりもずっと顧客に気を遣っています。

   なぜならメールオーダー企業は一人の顧客を獲得するためにかかる総コストを厳密に把
   握しており、顧客を資産として扱っているからです。

   したがって顧客を失うことは、バランスシートも損益計算書も消滅することを意味しま
   す。

   ある通販会社のトップは、「私の会社から設備が盗まれても、スタッフが引き抜かれて
   も構いませんが、顧客は残しておいてもらわないと困ります。」

   「顧客がいれば、取られたものすべてを半年で奪い返すことができます。」

   顧客の獲得には多額の費用がかかっています。

   顧客の獲得にかかる総コストと、最初の取引で得られた利益とを比べれば、初回取引では
   ほとんどの企業が損しています。

   こう考えてみてください。

   あなたの会社は一人ひとりの顧客に投資しているのだと。

   その投資から最大のリターンを得られるだけ長く顧客を維持するには、「The Top of the
   Consciousness Principle (一番に意識されるための法則)」と呼ばれるマーケティン
   グコンセプトが鍵となります。

   これをあなたの会社の強みにできるかどうかは、ダイレクトマーケティングにかかって
   います。

   ダイレクトマーケティング(DM)とは、

   アメリカのDM協会の定義では、「一種類又はそれ以上の広告媒体を使用して、レス
   ポンスや取引きをもたらす双方向性のあるマーケティング・システムです。

   レスポンスや取引きは発生する場所を問わず、計測可能でデータベースに蓄積される
   ものとする」となっている。

   我々を含め、業種業態に関わらず、収益を上げていくには、

    1)見込み客を集め、新規顧客として獲得し客数を増やす

    2)既存客への他種目販売を増やす

    3)既存客の顧客単価を増やす

   以上の3点を継続実行していかなければならない。 

   この中でもいちばんコストのかかるのが1)の客数を増やすことである。

   しかし、2)、3)だけに力を入れただけでは限界があります。

   これらのマーケティング活動のコストを最小に抑え、効果を上げていかなければなら
   ない。

   ダイレクトマーケティング(DM)を継続して実践していくうえでの手法が、電話、
   ファックス、DM(ダイレクトメール:封書、ハガキ)、ニュースレター、Eメールと
   いったパーソナルコミュニケーション媒体を使い、コミュニケーション内容も相手に 
   合わせ変化させる。

   そして、各手法を単独で活用するだけではなく、ファックス・マーケティング+テレマー
   ケティング、ダイレクトメール+テレマーケティングといったようにミックスすること
   で、より効果が増します。

   「一番に意識される」は重要なことです。

   特に中小企業にとっては。

   「金ない、人ない、モノない」の三重苦の中で売上アップを図るには、他と同じこと、
   過去の延長線上でやっていてはいつまでたっても儲けることはできず、赤字の垂れ流
   し状態を続けるだけです。

   「知恵を働かせる」ことが中小企業の強みです。

   小さな会社であっても強み(USP)はあるはずです。

   なければつくることです。

   「選択と集中」といわれるように、その強みをあなたを必要としているニッチマー 
   ケットに集中させることです。

   また、自社だけではなく異業とアライアンスを組むことで、あなたの強みを倍加させる
   ことも可能です。

   ここで大切なのは商品というモノを売る発想をしないことです。

   モノではなく、コト発想

   あなたの「売り(強み)」は何か?

   それをストーリーにすること。

   このストーリーこそがあなたの商品です。

   そして、大企業のように大金をかけて広告宣伝できない弱点はHP、メルマガ、マスコミに
   無料で宣伝してもらうプレスリリースを試みましょう。   

   とにかく、小予算でできることを実践することが重要なのです。

   今までどおりのやり方で事業が好転するならいいでしょう。

   しかし、そうはいかないことはあなた自身が一番分かっているはずです。

   それでは、いつから行動を起こします?

   商品のクオリティ、サービスのクオリティ、業務におけるクオリティなどといった言葉
   が、頻繁に、熱意を持って語られています。

   しかし、最も重要なのは、カスタマー・リレーション(顧客関係)のクオリティです。

   あなたのビジネスが自社の扱う商品やサービスで、できているものと思っていないで
   しょうか?

   大多数の会社が自身のビジネスが、顧客や顧客サービスであることを忘れているのです。

   ある雑誌の調査では、平均的な満足している顧客は、満足したという経験を、たった3人
   の人にしか話さないが、不満を持った顧客は、平均で11人に、そのことを伝えるといい
   ます。

   悪いニュース、否定的な情報は、良いニュースより早く、遠くまで広まるのです。

   「不満を抱いた顧客の98%は、購入した商品やサービスのクオリティに不満を持った
   わけでは無い」ということです。

   98%の人々の不満は、あなたの彼ら(お客様)に対する対応を、彼らがどのように受け取
   ったかに関わっていたのです。

   お客様は、「自分がどう扱われたのか」ではなく、彼らに対する「扱いを彼らがどの
   ように受け取ったか」に関わっているということに注意して下さい。

   このことは、極めて重要です。

   つまり、顧客が不満を感じたほとんどのケースで、従業員はその顧客に対して、きちん
   とした対応をしていたと思われるのです。

   従業員は、できる限りのことをしていたのです。

   しかし、従業員の対応がどうだったかは問題では無いのです。

   顧客がどう受け取ったかが問題なのです。


   あなたが顧客を失う最大の原因は、あなた(会社)の従業員の対応が、無礼あるいは不当
   なものであったと、顧客が受け取ったことによるものです。

   顧客が電話をかけてきた時、来店した時、あるいは、取引をした時には、常に顧客がその
   対応に満足するよう、あなたは、できる限りのことをしなければならないのです。

   あなたの顧客へのアクションは、感謝を与えることにフォーカスする必要があります。

   迅速なお礼状、もしくは、お礼の電話は、最低限のことです。

   即座にしておくべきでしょう。

   エクセレント・カンパニー:トム・ピーターズ(著)は、顧客関係の重要性について
   書かれており、あなたのビジネスに役立つ内容だと思います。

  「ターゲットマーケティングについてはこちらの記事で詳しく解説されています。
 あわせてご確認ください。

  販売戦略を考える際に欠かせないターゲットマーケティングとは? | アクシグ



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