ペルソナの法則 |
■自社のターゲット顧客とは? 開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスなど企業の各活動は、自社の製品やサービス (以下「製品」)のターゲットとなる主要顧客層(以下「ターゲット顧客」)のニーズや 特性などに適したものとなるように計画・実行されています。 とはいえ、社長をはじめ自社の従業員はどれほどターゲット顧客について知っているので しょうか。 また、ターゲット顧客に対する認識は、どれほど社内で共有できているのでしょうか。 例えば、自社のターゲット顧客に関する理解度を把握するために、まず、会社や自身が 担当している製品の典型的なターゲット顧客のイメージを書き出してみてください。 書き出す項目は、おおむね次の通りでよいでしょう。 1.氏名・年齢・性別・年収などのプロフィール 2.製品を購入する目的や動機 3.購入する製品を決定する際の評価ポイント 4.製品の利用方法や利用シーン 5.ユーザー歴や製品に対する知識、経験の度合い 6.製品に満足している点、不満な点 次に、同じことを同僚など社内の人たち数人に質問してみてください。 全員が各項目について同じような回答をすれば、ここで紹介するペルソナは必要ないかも しれません。 しかし、実際には回答が一致しないことは珍しくありません。 また、そもそもターゲット顧客に関してそこまで深く検討していない企業もあるでしょう。 こうした会社は問題があると言わざるを得ません。 企業活動の指針となるターゲット顧客を明確にできていない、あるいはターゲット顧客に 関する情報が共有されていないのであれば、会社全体の活動は統一性の欠けたものと なったり、非効率的なものとなったりする恐れがあります。 ペルソナとは、こうした問題を解決するために有効な手法となるものです。 □ペルソナの概要 ペルソナ(Persona)は、ラテン語で仮面や人格、人物などを意味する言葉です。 また、心理学用語としても使われることがありますが、 ここで紹介するペルソナはこれらとは 違います。 ペルソナ&カスタマ・エクスペリエンス学会によると、ペルソナとは「企業が提供する 製品・サービスにとって品も重要で象徴的な顧客モデルのこと」であり 、ターゲット顧客と ほぼ同じ位置付けのものです。 ペルソナに関する説明の前に、まずはそのイメージを理解するために、簡単なペルソナの 事例はネットで御覧ください。 そしてペルソナのテンプレートは次の通りです。 □ペルソナを利用する効果 ペルソナの最大の特徴は、このようなターゲット顧客に関するデータをもとに、ターゲット の顧客モデルをあたかも実在する人物のように生き生きと描写する点にあります。 今ではペルソナに盛り込まれている情報自体を把握している企業は数多くあります。 例えば、大手企業であれば大規模な市場調査などを実施し、ペルソナと同等、あるいは それ以上に詳細な情報を把握しているのが普通です。 ただし、それらは「35 歳の既婚男性。年収 500 万円‥‥・・」などといったように、 “無味乾燥”な内容に整理されていることが少なくありません。 ターゲットの顧客モデルを、あたかも実在する人物のように生き生きと描くペルソナには 次のような効果があります。 1.ターゲット顧客の明確化と共有化の促進 ターゲット顧客に関する定義がやや曖昧である、あるいはターゲット顧客に関する情報が 共有されていないという企業は少なくありません。 ターゲット顧客に関する情報を物語風に記述するペルソナの場合、氏名・年齢・性別と いったプロフィール的な要素だけではなく、ターゲット顧客の価値観、噂好といった より詳細な情報が記述されるため、ターゲット顧客をより明確に表すことができます。 また、社内のターゲット顧客に対する認識のズレを防止することもでき、誰もが容易に 理解し、顧客に対して感情移入しやすくなるという効果があります。 2.一貫性のある組織の実現 マーケテイング活動などにおいては「『経験価値』の向上」が重要なテーマとなります。 経験価値とは、製品そのもののような物質的・金銭的な価値ではなく、製品の購入・ 利用などの一連の経験を通じて得られる満足感といった心理的・感覚的な価値のことです。 製品間の競争が激しさを増す現在では、経験価値の向上が差異化を実現し、顧客 満足度を高めるために重要になっているのです。 経験価値の向上のための基本は、企業全体が一貫性のある活動を行うということです。 例えば、専門的知識を有する顧客向けの製品であるにもかかわらず、サポートセンター に知識の浅い人材を配置するといった一貫性を欠いた活動では、経験価値の向上を図る ことはできません。 また、サポートセンターに集まった顧客からの要望や不満などを製品やマーケテイングに 反映させ、改良するという取り組みも重要です。 しかし、企業の組織体制は、開発・製造・営業企画・販売・アフターサービスという ように機能別に部門が分けられていることが多く、実際の活動段階においては、部門間 または部門内において一貫性が失われていることも珍しくありません。 ペルソナによってターゲット顧客に対する認識を部門内・部門間で共有することで、 企業活動に一貫性をもたらし、より質の高いサービスを提供できるようになります。 3.顧客の立場に立った製品・ サービスの実現 ターゲット顧客が明確になると、より創造的なアイデアや革新的な取り組みを促す 効果が期待できます。 例えば、友人が自宅に遊びに来る場合を考えてみましょう。 友人から「明日、友人Yを連れて2人で君の家に遊びにいく」という連絡がありました。 その際、一緒に来る友人Yについて、次のAもしくはBのような説明をされたら、あなたは どのような準備をして待つでしょうか。 A:「一緒に行く友人 Y は、 25 歳の独身男性だよ」 B:「一緒に行く友人 Y は、君もよく知っている山田君だよ」 恐らく、 A の場合は「食事はとりあえず無難に出前のお寿司にして、飲み物はビール、 焼酎、ウイスキー、日本酒、それにお酒が飲めない人だと 困るのでお茶やジュースも 準備して‥‥‥」といったように考えるのではないでしょうか。 このように、好みが分からない人には、無難な準備にならざるを得なくなります。 一方、 B の場合は「魚介類が大好物で、刺身を食べながら日本酒を飲むのが好きな 山田君だから、句の魚を買ってきて刺身と焼き魚を準備しよう。 それから日本酒は山田君の出身地である京都の珍しい地酒を用意して驚かせよう」と いうように、好みなどに合っ たものを準備したり、サプライズ的な演出も検討しやすく なります。 ペルソナを通じてターゲット顧客の特徴、価値観、噂好などを明確にすると、顧客の 立場に立った活動ができる上に、「珍しい地酒」のように一歩踏み込んだり、思い 切った発想などが得やすくなるのです。 □ペルソナの作成手順 使用目的によって異なりますが、ペルソナの基本フォーマットは次の通りです。 これはあくまで基本的な要素なので、目的に合わせて項目を追加してもよいでしょう。 ただし、情報過多になるとペルソナに対する印象が曖昧になる(記憶に残りにくい)ため、 情報量は適度にとどめる必要があります。 また、ペルソナは架空とはいえ、人物像なので、全体的に矛盾が生じないように調整する 必要があります。 矛盾する記述がある場合は重要性の低い記述を削除したり、別のペルソナを作成しても よいでしょう。 ペルソナの作成は、おおむね次の手順で進めます。 1.ペルソナの作成目的の確認とチームの編成 ペルソナを作成する目的を明確にします。 同時に、作業を担当するチームの編成もこの段階で行います。 ごく少人数でペルソナを作成することも可能ですが、その場合は一部の担当者の考え方 が強く反映されるなど客観性が失われる可能性があります。 ペルソナの客観性を維持するためには、ある程度の規模でチームを編成することが 大切です。 適切な人数は一概には言えませんが、作成されたペルソナは企業全体もしくは関連する 全ての部門で共有することを考えると、関連部門から最低 1 人ずつはメンバーに入る ことが望ましいでしょう。 2.情報の収集 ペルソナの基礎となる顧客に関する情報を収集します。 特定の情報源からや少数の情報しかない場合は、偏りのあるペルソナとなってしまい、 「象徴的な顧客モデル」とならない可能性があります。 従って、この段階では、幅広い情報源から多くの情報を収集することが望ましいと いえます。 3.スケルトンの作成および優先順位付け 収集した情報に基づいて「スケルトン」を作成します。 スケルトンとは、ペルソナの骨組みとなるもので、ペルソナを特徴付ける要素を箇条 書きにしてまとめたものです。 スケルトンは、収集した多数の情報を統合して作成していきます。 統合する方法は、収集した情報量、利用できる調査スキルなどを勘案して決定しますが、 比較的手軽にできる手法としては KJ 法(親和図法)があります。 KJ 法では、最初に調査結果から得られた顧客特性を付箋紙などに書き出し、それらを 関連するグループ同士にまとめていくことによって、顧客特性を整理します。 また、性別、あるいは初心者・上級者など顧客特性が明らかに異なる場合は、事前に こうしたカテゴリーに分類した上で、おのおの KJ 法によって情報を整理します。 こうして整理した情報をもとにスケルトンを作成しますが、スケルトンは無理に 1 人に まとめる必要はありません。 作成するペルソナは 1 人とは限らないので、例えば、「現在のターゲット顧客」 「今後取り込みたい顧客」といったように、スケルトンが複数あっ ても問題ありません。 また、後の手順でペルソナの絞り込みを行うので、この段階ではスケルトンの絞り込み はしなくても問題ありません。 ただし、スケルトンが多すぎると以降の作業が煩雑になります。 従って、チームの処理能力などを勘案して、必要に応じてスケルトンの数を絞り込み ます。 また、スケルトンが複数ある場合は、メーン・サブといった優先順位をある程度明確に しておくとよいでしょう。 スケルトンの絞り込みや優先順位は、各スケルトンの背景にある市場規模、将来性、 戦略的重要度などを基準に評価することになります。 4.面接調査の実施およ びペルソナの作り込み スケルトンを作成するまでは定量的な情報が中心であり、ペルソナ作成に当たっては さらに定性的な情報を収集する必要があります。 具体的にはペルソナに近い人を対象にした面接調査を実施して情報を収集します。 手順としては、スケルトンをもとに簡易的なペルソナを作成しながら、調査が必要な 項目を明確にした後に面接調査を実施します。 その結果を踏まえて、簡易的なペルソナに情報の追加・修正などをしてペルソナの作り 込みを行います。 面接手法としては、ヒアリング形式の調査が基本になります。 また、調査の際に、調査対象者の実際の行動を観察しながらヒアリングを行うことも 有効です。 例えば、実際に製品を使用してもらいながら、長所・短所などを確認するといった ことです。 また、「師匠と弟子」とよばれる手法も効果的です。 この方法は、調査対象者が師匠、 調査担当者が弟子のようになり、調査対象者には普段 通りに行動してもらい、調査担当者は不明な点などがあれば「なぜ、そうしているのか」 といった質問をし、調査対象者が無意識に行っていることの理由などを明らかにして いくものです。 5. ペルソナの決定・普及 作成したペルソナの中から、実際に活用するペルソナを決定します。 ペルソナを複数にする場合は、数が多すぎると顧客像がプレやすいので、おおむね 2〜3人程度に絞り込むようにします。 また、メーン・サブなど優先順位も決定します。 決定したペルソナは、全従業員あるいは関係部門の従業員など関係者全員に公表する とともに、ペルソナの役割や内容などに関する説明会や、ペルソナのポスターを社内 掲示するなどして共有化を進めます。 関係者がターゲット顧客について話をする際に、「ターゲット顧客は……」では なく、「○○さん(ペルソナの名前)は……」とペルソナの名前が主語となる、すなわち ペルソナが関係者間に定着すると同時に、判断に迷うことがあれば常にペルソナに立ち 返る 雰囲気ができれば、共有化が進んだという一つの目安となります。 6. ペルソナのメンテナンス・ 廃棄 完成したペルソナは絶対的な存在ではありません。 顧客像は常に変化するものですし、 実際に使用してみると何らかの不具合が発生する 場合もあります。 そのため、必要に応じてペルソナのメンテナンスが必要となります。 また、顧客像が大きく変化した場合など、ペルソナがペルソナとしての役割を果たせ なくなったら廃棄しなければなりません。 □中小企業が取り組む際の留意点 ここまで、ペルソナの作成手順の概要を紹介しましたが、中小企業が自社の力だけで ペルソナ導入を図ることば決して容易ではありません。 しかし、本格的にペルソナの導入を進めるに当たり、 負担の少ない方法で簡易的な ペルソナを作成してみるのも一案です。 基本的に前述した手順に準じたものとなりますが、調査に関する負担を減らすために、 公的機関などが行った調査結果などの 2 次データを積極的に活用するとともに、従業員や その家族、取引先などを中心にアンケートや面接調査などを実施します。 こうした人たちの中には顧客に直接対応することを通じて、顧客に関する情報を有して いる人も数多くいます。 また、最終消費財を製造している企業など業種や製造品目などによっては、 従業員や その家族などがユーザーとして製品を使用している場合もあります。 こうした情報源を活用して、ペルソナを作成するのです。 ただし、身近な従業員や取引先などの中には、製品に対する思い入れや顧客に対する 主観的な見方を持っていることも多く、情報源としては客観性に欠けるという問題が あるので注意する必要があります。 このように簡易的な手法で取り組む場合は、本格的に取り組む場合と比較すると、 その内容や質に劣る部分があることは否めません。 ただし、冒頭で紹介したように、個々の従業員が持つターゲット顧客に対するイメージ がバラバラであるような企業であれば、こうした取り組みを通じてターゲット顧客に 対するイメージが統一されていないという事実を皆が認識するとともに、ペルソナ作成 プロセスを通じて、ターゲット顧客に対する認識を共有化できるでしょう。 それだけでも会社の活動に一貫性が生まれ、一定の効果が期待できます。 |
ペルソナの法則
市場調査の基本
市場調査の基本 |
■企業のマーケティング活動と市場調査 市場調査は、企業が市場のニーズを把握するために実施するものですが、現状 市場調査は、企業がさまざまな意思決定を行うときに、重要な情報を与えてくれる ここでは、企業のマーケティング活動と市場調査との関係について考察していきます。 マーケティングとは、もっとも広い概念でとらえれば、「企業から市場への働き つまりマーケティングとは、 企業が消費者のニーズを充足させるために実施するあらゆる ということができます。 そして、このようなマーケティング活動を効果的に進めるうえで、市場調査は重 現在の消費者は、物理的にはかなりの水準まで満たされています。 必要なモノはいつでもどこでも、誰もが購入できるような環境が整備されています。 このような環境にあって、多くの企業は消費者のさまざまなニーズを探ること その理由は、 ・ありきたりの商品やサービスでは消費者が関心を示さず、 ・既存の顧客も他社のより魅力的な商品・サービスに流出して からです。 そのような事態を回避するために、十分な市場調査を実施し、自社経営の方 市場調査と一言でいっても、その方法は多種多様です。 もっとも広く行われている方法は、質問紙調査と面接調査です。 ここでは具体例により、企業のマーケティング活動において、市場調査の結果 たとえば、自動車メーカーが新製品モデルの開発を行うケースを考えてみま まず、社内・社外の情報を基にマクロ的な分析を行った結果、スポーツカー市 そこで、製品コンセプトを決めるために、市場調査を実施し、調査の結果から、 これを製品ポジショニングといいます。 図中のA〜Gまでは既存ブランドであり、消費者のニーズがZであったとします。 この場合、比較的コンパクトで馬力がある車を消費者が欲している、ということ これは単純化されたひとつの例ですが、 このように、 市場調査を行うことでマーケットの構造と消費者のニーズが明らかになり、 のです。 次に、市場調査のステップについてみていきます。 市場調査は、事実の発見、理由の明確化、企業の行動指針の提供、という3つの 市場調査の第一段階は、事実を発見することです。 市場調査のもっとも基本的な目的は、現状はどうであるのか、 先に取り上げたスポーツカー市場の現状分析では、既存のブランドをすべてコ 事実の発見は、マーケティング・リサーチの初期段階でありながらも、多くの情 市場調査の第二段階は、第一段階で判明した事実の理由を明確化するものです。 つまり、 消費者はなぜそのように行動するのか、 です。 すべての消費者の行動には何らかの理由があり、それを多面的に分析して明 この第二段階までは、過去の情報を基に分析している点で共通しています。 市場調査の第三段階は、企業の行動指針を明らかにするというものです。 この段階では、市場調査は現状分析にとどまらず、 企業は今後いかに行動すべきであるのか、 ことになります。 市場調査をより有益なものにするためには、この「今後どうすべきか」という視 新しい商品やサービスを提供するにあたり、現状を分析したり、あるいは消費 しかし、それだけで十分なマーケティングが可能となるものではありません。 消費者のニーズが多様化かつ高度化している現状にあっては、消費者のニー ウォンツとは、まだ顕在化していないニーズ、消費者自身が明確に認識してい このような消費者の欲求を把握し、また、ウォンツまでを市場調査の実施に 市場調査の3つの段階をあらためて図に示します。 ここでは、市場調査の計画を立てるときに留意すべき点について検討していきます。 市場調査を行うにあたりその出発点となるのは、 当然のように感じられるかもしれませんが、調査を実施すること自体が目的に そのような形式的な調査では、市場に関する有力な情報を入手するのは困難です。 したがって、「何のために調査を実施するのか」という点について十分に検討 自社がとるべき経営活動を多面的に分析していき、本当に調査が必要になっ 調査目的が明らかになれば、系統的な調査計画の立案を行います。 つまり、市場調査の実施においては、調査の目的を達成するために何をすべ 一般的な市場調査は、仮説検証型の調査と呼ばれることがあります。 仮説検証とは、 あらかじめ正しいと判断される仮説を立て、 ことです。 ところで、仮説検証型の調査では、最初に設定される仮説そのものが、きわめ そして、その常識的な仮説の正しさを立証するために、調査の結果を使用する このような仮説検証も重要です。 直感的に正しい仮説であると判断しても、その裏付けをとるのは意義のあるこ しかし、仮説の検証がすべてではありません。 市場調査によって、予想もしなかった真実を発見する場合もあるものです。 このような仮説に基づかない調査を「ゼロベース型調査」といいます。 ゼロベース型調査ではとりあえずの方向性を見いだすために、世の中の環境 そうするなかで新たな仮説めいたものが見えてきたら、改めて仮説検証型の 特に前述の消費者のウォンツを探るためには、さまざまな視点からのゼロ 調査計画に盛り込むべき主要な事項は、以下のとおりです。 ◎調査計画に盛り込むべき事項 ・調査目的 ・調査方法 ・調査対象 ・調査実施地域 ・調査対象者の選び方 ・調査対象者数 ・調査項目 ・分析計画 ・作業日程 ・調査費用 市場調査は比較的小規模のものであっても、かなりの時間・費用が必要となります。 その点を再確認したうえで、調査計画を作成します。 次項では調査方法について紹介します。 市場調査の方法は大きく、1.質問紙調査法、2.面接調査法、3.観察調査法、 以下に、それぞれの内容をみていきます。 調査の実施にあたっては、調査目的にもっとも合った形式を選びます。 質問紙調査法は、質問事項を用紙に取りまとめ、それを調査対象者に回答し これはさらに、(1)留め置き法(2)郵送法(3)訪問面接法(4)その他の方法 (1)留め置き法 留め置き法は、調査員が被調査者を訪ねて調査票の記入を依頼し、一定 留め置き法の長所は、調査の目的を直接口頭で説明できるため、被調査 さらに、回答者は調査書への記入を始める前に疑問点などを調査員に聞く 短所は、調査員を確保するためのコストが大きいことと、被調査者宅を訪 郵送法では、質問用紙を調査対象者に郵送し、回答後に返送してもらいます。 質問事項が少ない場合には、はがきを使用します。 郵送法の長所は、調査コストが比較的安く、広い地域を対象に一斉に調査 一方、短所は回収率が低いことです。 調査票を送付しても、それを見た人が必要事項を記入して返送してくれる また、回収に時間がかかる点も短所といえます。 この方法は従来よく行われていた方法で、調査員がすでに構成された調査 多くの場合、回答の選択肢が用意されています。 訪問面接法の長所は、被調査者に直接に調査依頼ができる点や、質問に しかし、多くの時間とコストがかかること、訪問されることを拒絶する人も多 インターネットによる調査も広く実施されています。 この方法の長所は、質問票を発送するための実質的なコストがほとんどか 回答者の負担も少なく、回収期間も非常に短くて済みます。 最近ではさまざまなインターネット専業の調査会杜がありますので、自社で 調査は原則として、調査会社にあらかじめ登録している人を対象に行われ このため、自社がターゲットとしている層と、登録している人の層が一致し また、調査会杜に登録している人はアンケートに答えることでポイントなど 実際に利用するにあたっては、これらの点について調査会社に事前に確 なお、インターネット調査会社は「アンケート結果の提供のみ」から「結果を 自社にアンケート結果を分析するノウハウが不足している場合は、分析も 面接調査法(インタビュー)は、調査員と被調査者との面談形式で行われ、調 多くは質問紙調査による訪問面接法のように、あらかじめしっかりと構成され むしろ自由な面談のなかで明らかになった新たなヒントを掘り下げていくことに 面接調査法の代表的なものは、(1)グループインタビュー、(2)デプスインタ (1)グループインタビュー グループインタビューは、数人の被調査者を集めて座談会形式で行われます。 司会役である調査員がいくつかの質問をし、それをもとにグループで自由 グループインタビューの長所は、各メンバーの反応を観察することができ、 しかし、グループの構成メンバーを慎重に検討しなければ、集団内の効果 価値観の異なる人を含めるなど議論が活発化するような工夫が必要です。 デプスインタビューとは、ごく少人数(面談者と1対1の場合もある)を対象 デプスインタビューの長所は、非常に踏み込んだ情報を被調査者から引き 短所は、調査コストが大きくなることに加え、調査員に高度な専門知識や、 観察調査法は、質問紙調査法や面接調査法とはやや異なる視点から実施さ この調査の目的は、現実の事象を観察して実態を正確に把握することです。 ここでは、(1)街頭観察調査と(2)店頭・店内観察調査を取り上げます。 街頭観察調査(タウンウオッチング)は、街に出て大勢の人たちを観察し、 たとえば、若者が身につけているものを調査したり、深夜の人間行動を観 街頭観察調査は、特別な費用を必要としないため手軽に行うことができま これが街頭親察調査の長所・短所です。 店頭・店内観察調査は、調査員が小売店の店頭に立って消費者の行動を たとえば、消費者が注目した商品・手に取った商品・実際に購入した商品と そして、この調査から得られた情報を店舗運営に役立てていくのです。 店頭・店内観察調査の長所は、消費者の行動をダイレクトに観察できるこ しかし、調査結果から得られた多様な情報を集約するのに手間がかかると この方法は、因果関係を明確にするために、条件を統制することによって調査 具体的には、複数のグループに対し異なる扱いをし、影響を与えうる変数をコ たとえば、Aグループには事前に商品の説明をしたうえで使ってもらい、Bグ 調査設計は複雑になりますが、新商品開発などにおいて有力な情報を手に入 最後に、調査結果の集計、分析と活用について記載します。 市場調査の実施後、集計の段階に入ります。 調査結果は、数字で把握できるデータとそれ以外のデータがあり、前者を定量 質問紙調査法においては、各質問事項に対して数字で回答する形式が多用 量的な取り扱いができるようにしておくと集計作業が簡単になるからです。 こうした集計は、パソコンの表計算ソフトなどを使って行うことができます。 面接調査の結果は定性データであるため、一定の分類基準にしたがって集計 手間がかかりますが、集計結果の有効活用のためにも慎重な作業が望まれ 集計が終わると、調査結果の分析段階に入ります。 定量データであれば、質問項目ごとに平均値を出したり、分布を確認したりします。 また、年齢や性別などの属性項目と、各質問事項との関連を明らかにすること さらに必要に応じて統計解析のソフトを使用し、専門的な分析をすることも可 定量・定性データの分析では、 調査の実施段階では予想もしなかったような事実を発見できる場合も 調査結果を正確に読みとり、実際の経営にいかしていくことは簡単ではありま その技量を高めることによって、中小企業が大企業よりもマーケティングで優 「中小企業こそマーケティングが大切である」という認識をもち、積極的に取り
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エリアマーケティング
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市場調査は、小売業、飲食業であれば、その立地に出店した場合にどの程度の 例えば、小売店の新規開業を計画しているが、100メートル先に同じ業態の既存 その場合、開業後に果たして十分な収益を上げることができるか疑問が残る。 一般に、交通量調査やライバル店調査、地域住民のアンケート調査などをフル 市場調査はあくまで推測であり、100%その通りになるという保証はありません。 「どれだけの精度があるのかわからないものにそれだけの料金を払うわけにはい 市場調査の費用対効果は未知数なのです。 しかし、自分で市場調査をしようとしても、いったい何をどう調べたらいいのかとい ここでは、自分で簡単に市場調査を行う方法、その考え方についてをまとめまし 特に立地調査にポイントを絞っています。 まずは、市場規模(マーケットサイズ)に着目します。 市場規模の大小を知るだけでも新規参入のメリットがあるかどうかが分かります。 また、市場規模大小のほかに参入企業(事業所)の数を知ることで、需給関係を 売上高予測は、 商圏内市場規模×シェア で求めることができます。 同じ商圏に競合店があれば、その競合店とはシェアを分け合うことになります。 また、各店の規模や販売力が同様の場合、2店舗間競争ではシェアは50%、3店 実際には、店舗規模や品ぞろえが集客力に影響を与えますので単純に1/2、1 小売業は立地産業とまでいわれています。 商圏内各地域からの集客、さらには、競合店との関係を考えると、どこに出店す 街は変化しているので、現状だけでなく、将来展望も考慮に入れなければなりま 特に、大規模店が同地域に出店してきたりすると、人の動きに大きな変化が生じ 望ましい立地条件としては、 ・人口増加地域であり、将来発展が見込める場所であること ・交通事情がよく、分かりやすい場所であること ・競合店舗が集中していない地域であること ・店舗開設に支障がなく、比較的安価に出店できること などが挙げられます。 ・ダウンタウン(繁華街) ・アーバン(都市部の住宅密集地域) ・サバーバン(郊外の新興住宅地域) 「ダウンタウン」は繁華街という意味ですが、人は昔から自然に港などの低地に集 日本ではダウンタウンもアーバン地区も非常に地価が高いのが実情です。 よほど坪効率のよい売場・商品構成にしないことには採算が合いません。 そこで地価の安い出店立地を求めて行くと必然的にサバーバンとなります。 先に述べたように小売業は、立地産業といえます。 通信販売、訪問販売は別として、店舗販売の場合、来客があって初めて販売に 例えば、量販店やその他チェーンストアでは、スクラップ&ビルド(不採算店の閉 出店当初は、好立地としてスタートしても、時節の移り変わりで環境が変化し、閉 直接の原因としては、他店との競争、他地域との競争が考えられますが、要は当 商圏が大きく様変わりするのは、大規模小売店の進出だけではなく、交通網の発 1.近隣商圏(食品など、最寄り品の商圏) 2.地域商圏(洋服など、買い回り品の商圏) 3.広域商圏(百貨店や各地域の中核都市の繁華街の商圏) に分類できますが、特に地域商圏、広域商圏で成り立っていた商店街が、ほかの 地域商圏、広域商圏で成り立っている商店街は、遠いけれども、そこに行かない わざわざ、遠くから訪れていた買い物客の足が遠のくと、それだけ客数が減少し 来店客として見込めるのは「近くて便利だから」という近隣商圏の消費者に限られ また、従来、商圏人口3万人を見込めていた商店街が、交通事情の変化やショッ この場合、業態転換、閉店を余儀なくされます。 ショッピングセンターや商店街に出店する場合は、関係者に聞けば商圏の範囲が 近隣商圏の場合には、食料品、日用品、実用衣料品などは、最寄り品です。 消費者が最寄り品を購入する場合、より近く、より品ぞろえが良く、手頃な価格で 商圏は半径500メートル〜1キロメートル程度です。 最寄り品の店舗を出店するのであれば、この半径500メートル〜1キロメートルが もし、その範囲内に、鉄道や高速道路などの広い道路が走っていたり、川が流れ 地域商圏・広域商圏の場合には、大規模店舗でもない限り、単独の店舗で地域 ただし、ショッピングセンター内、あるいは地域で最も大きな商店街に出店すれ 大手チェーン店の場合、パソコンに出店立地の住所を入力すれば売上高予測が これはデータの蓄積があるからできることなのです。 ところで、このデータは大きく、外部データと内部データとに分けることができる。 外部データとは、地域人口、性別人口、年齢別人口、所得格差、消費性向、事業 一方、内部データとは、性別売上高、年齢別売上高、通行量対入店率などの企 1号店を出し、成功したらその成功事例(データ)を基に2号店の出店場所を検討 成功例が増えると、実験的な出店も可能になります。 繁華街への出店がメーンであったチェーン店が初めて郊外ロードサイドに出店す 最初は手探り状態であっても、成功例と失敗例の積み重ねが社内データとして蓄 通行量調査をするにあたっての社内データの重要性について説明します。 図(A立地並びにB立地の前の通行量)は人通りの数を表しています。 ある時間帯のA立地(左枠内)の人数は17人、B立地(右枠内)の人数が11人 通行量では明らかにA立地のほうが多いのですが、店のメーンターゲットである 来店客の性別・年齢が重要な場合、通行量調査は、単に通行人の数をカウント メーンターゲットとなる性別・年齢に合致した通行人の数をカウントする必要が また、自動車の通行量を調査する場合、ファミリーをターゲットにするならば、ト 各立地の通行量を調査する場合、内部データの蓄積がなければ、せっかくの調 1号店を出店する場合は内部データは存在しませんが、例えば、○○のような店 同様の立地とは、同じような来店客が望める立地という意味です。 しかし、他に競合業態がない店の場合、そうはいきません。 試行錯誤による予測は可能でしょうが、その精度は低いものにならざるをえませ 外部の専門調査会社に調査を依頼した場合も同様で、費用対効果は低いもの
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「万人に売る」から「市場を絞った特定層に売る」
マスマーケティングからセグメントマーケティング |
過去には、「作れば売れる」時代には、企業は大量生産された商品を市場全体(マス・ しかし、消費者ニーズが多様化し、個人が自分自身のライフスタイルを追求するようにな そのため、「売る相手を知る」ことが重要になってきたのです。 この市場を同質のニーズを持ついくつかの集団に細分化することを、「市場細分化 つまり、「標的市場(ターゲット市場)」が選定できるのです。 これにより、企業は自社のヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を使って集中的に 市場細分化は、企業がターゲットとする顧 市場細分化を行うことで、中小企業のように限られた経営資源を有効に活用し、 市場細分化を行うことによって、顧客の満足をより的確に満たし、顧客ニーズに応 市場細分化を行うことによって、競合他社と異なった市場、参入してこない市場を さらに、市場を細分化することで、特定の顧客(ファン)の集約や自社独自の差 大量生産された商品を市場全体(マス)の顧客に向けて販売する手法は、「マス・マー 一方、市場を細分化して絞り込み市場を選定する手法を「セグメントマーケティング」と マス・マーケティングが一つの商品(製品)を大量生産・大量流通・大量販売してあら ・地域を限定してNO.1(オンリーワン)をつくる ・特化(○○限定、○○専用・専門)する ・戦線(商圏)を拡大しない ・品ぞろえを増やさない ・差別化という武器をつくる これらのことを肝に銘じておく必要がありま しかし、やってしまうのです。 専門特化すべきなのにデパート化し、品揃え その挙句に、価格競争に陥るといったパターンです。 中小企業が大企業の真似をすれば結果は目に見えています。 1.セグメントマーケティング 細分化された市場の中から一つまたは少数のセグメントに狙いを定めて、そこに これはニッチ企業がよく採用する戦略といえます。 細分化された市場のそれぞれのセグメントに対して、それぞれ異なる経営資源を 言葉からもわかるように、複数の商品があっても同じ市場で売らないことです。 細分化するための基準例として、 ・市場を年齢、性別、家族構成、ライフステージ、職業、所得、学歴などに基づいて ・市場を居住地域、就業従業地域、人口密度、気候などの異なる地理的単位で区 ・価値観、ライフスタイル、パーソナリティ(性格・個性)によって市場などによっ ・購買頻度、使用目的、ロイヤルティー、特売反応などによって市場を区分する方 この住宅メーカーは徹底してメインターゲットを絞っている。 進出する地域を決めるにあたっては、徹底した現地調査を行う。 自転車のサイズ、アパートのベランダの洗濯物、公園で遊ぶ子ども達と見守る母親 入社後10年経って、年収も安定してきて、子どももできて、という家族構成。 マーケットは絞り込むほどあなたの顧客になる見込み度が高くなる。 17棟すべて同じ間取りがない個性的な特徴を持っている(平均して2700万円、他社 32歳に絞って、彼らが好まれるような間取りとかセンスが生かされている。 ・必ず買ってくれるお客様を大切に。不況は感じない。(One to one マーケティ ・ラジオの現場では実際に商品を焼いて、食べる。(臨場感、シズル) ・大切にしているお客さんは、一人暮らしの高齢者など。(マーケットの絞込み) ・7割以上がリピーターだという。(顧客のアップセル、クロスセル) ・彼女は受注の電話がかかってきても、すぐには注文を受け付けない。(売込みを まず、商品への意見、暮らしのスタイル、一人暮らし?等を聞くことで、次の商品 市場細分化によるセグメントマーケティングは、販売先を特定の顧客層に絞り込むと さらに最近では、「一人ひとりの顧客を知る」「一人ひとりの顧客に焦点をあてる」マー ワン・トウ・ワン・マーケティングでは、企業と顧客との一対一の関係づくりが重視さ マーケットは絞れば絞る(細分化)ほど、あなたが扱う商品を欲するお客様が見えてき 絞ることで見込み客が少なくなると考えがちですがそれは違います。 あなたは万人に売ることを考えてはいけません。 多くの営業会社が「商品ありき」からスタートしがちですが、「マーケットありき」から あなたのビジネスで最も価値のある資産が何であるかが分かっていますか? 商品ですか? そう、「顧客」です。 顧客に価値を置いている数少ない業界の1つにメールオーダー業界(通販業界)があ おそらく他業種の企業よりもずっと顧客に気を遣っています。 なぜならメールオーダー企業は一人の顧客を獲得するためにかかる総コストを厳密に把 ある通販会社のトップは、「私の会社から設備が盗まれても、スタッフが引き抜かれて 「顧客がいれば、取られたものすべてを半年で奪い返すことができます。」 顧客の獲得には多額の費用がかかっています。 顧客の獲得にかかる総コストと、最初の取引で得られた利益とを比べれば、初回取引では あなたの会社は一人ひとりの顧客に投資しているのだと。 その投資から最大のリターンを得られるだけ長く顧客を維持するには、「The Top of the これをあなたの会社の強みにできるかどうかは、ダイレクトマーケティングにかかって アメリカのDM協会の定義では、「一種類又はそれ以上の広告媒体を使用して、レス レスポンスや取引きは発生する場所を問わず、計測可能でデータベースに蓄積される 1)見込み客を集め、新規顧客として獲得し客数を増やす 2)既存客への他種目販売を増やす 3)既存客の顧客単価を増やす 以上の3点を継続実行していかなければならない。 しかし、2)、3)だけに力を入れただけでは限界があります。 これらのマーケティング活動のコストを最小に抑え、効果を上げていかなければなら ダイレクトマーケティング(DM)を継続して実践していくうえでの手法が、電話、 特に中小企業にとっては。 「金ない、人ない、モノない」の三重苦の中で売上アップを図るには、他と同じこと、 「知恵を働かせる」ことが中小企業の強みです。 なければつくることです。 「選択と集中」といわれるように、その強みをあなたを必要としているニッチマー また、自社だけではなく異業とアライアンスを組むことで、あなたの強みを倍加させる あなたの「売り(強み)」は何か? それをストーリーにすること。 このストーリーこそがあなたの商品です。 とにかく、小予算でできることを実践することが重要なのです。 今までどおりのやり方で事業が好転するならいいでしょう。 しかし、そうはいかないことはあなた自身が一番分かっているはずです。 それでは、いつから行動を起こします? しかし、最も重要なのは、カスタマー・リレーション(顧客関係)のクオリティです。 あなたのビジネスが自社の扱う商品やサービスで、できているものと思っていないで ある雑誌の調査では、平均的な満足している顧客は、満足したという経験を、たった3人 悪いニュース、否定的な情報は、良いニュースより早く、遠くまで広まるのです。 98%の人々の不満は、あなたの彼ら(お客様)に対する対応を、彼らがどのように受け取 お客様は、「自分がどう扱われたのか」ではなく、彼らに対する「扱いを彼らがどの つまり、顧客が不満を感じたほとんどのケースで、従業員はその顧客に対して、きちん 従業員は、できる限りのことをしていたのです。 しかし、従業員の対応がどうだったかは問題では無いのです。 顧客がどう受け取ったかが問題なのです。
顧客が電話をかけてきた時、来店した時、あるいは、取引をした時には、常に顧客がその あなたの顧客へのアクションは、感謝を与えることにフォーカスする必要があります。 即座にしておくべきでしょう。 エクセレント・カンパニー:トム・ピーターズ(著)は、顧客関係の重要性について お問合せ・ご質問はこちら
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