変化に対応した事業計画書の作り方とフォーマット

          

変化に対応した事業計画書の作り方


  ■事業計画のつくり方

   企業は、通常事業計画を作成する前に、事業戦略を起点として事業目標を定めます。

   そして、事業計画はその目標に基づいて作成します。

   最初は事業戦略が先行するかたちとなり、その次の段階で商品戦略やマーケティング戦略
   などの事業個別戦略を立案することになります。

  □事業計画作成に必要な要素
   今日、社会における情報化の進展に伴って、企業価値の評価は、従来の企業が保有
   する土地や建物、設備などの固定的資産といった物的要素から、企業の中で働く人材の
   スキルや問題及び情報処理能力の高さ、また、事業に有益な情報を収集し、社内で
   組織的に活用する業務や仕組みなど、無形の資産、言わば、知的要素に対するウェ
   イトがますます高まっています。

   そうした状況の中で、事業計画作りに必要な要素としては、ITをベースにし、社内外で
   集積したデータや情報、知識などをいかに有用かつ効率的に活用できるかといった点が
   挙げられます。

  □事業計画にかかわる4つの検討事項と失敗事例
   事業計画の作成には、

    (1)有効性
      戦略や計画に関する市場での有効性。

      @計画遂行後の成果が明確でなく、定量的な数値が示されていない。
      A当該市場の特徴や競合他社の分析の把握が不十分である。
      B戦略や計画の内容自体が曖昧である。
      C戦略や計画がありきたりで独自性がないため、簡単に競合他社にビジネ
        スモデルを奪われてしまう。

    (2)実現性
      計画の実行にあたって、十分な経営資源や時間などがあるかといった実現性。

      @計画達成に必要な資源が明確でない。
      A必要な資源をどのように具体的に調達するかが明確でない。
      B計画を個々の階層、分野に落とし込みがなされてなく、それぞれの具体的な達
        成レベルが不明確である。

    (3)評価フィードバック 
      計画達成に対する関係者へのフィードバックや、業績評価とのリンクがなされて
      いるか。

      @誰がどこまで計画を達成するのか、役割分担と個々の目標値が不明確。
      A計画達成度が不明確。
      B計画達成に対するインセンティブがないため、社員のモチベーションが高
        まらない。

    (4)情報共有化
      組織のトップから現場の実行者に至るまで、戦略や計画に関する情報が共有さ
      れているか。

      @定性的(質・感覚など抽象的表現)な目標やビジョンしかなく、個々の担当
        者への定量的(数値を取り入れた具体的表現)な目標となっておらず、具
        体的行動になりにくい。

      A一部の関係者しか計画を理解していないため、全体への浸透が図れてい
        ない。

     などの点を検討し、留意する必要があります。

    ●事業戦略と事業計画
     事業戦略とは、売上高、利益を上げる「仕組み」を構想することです。

     そして、そこから事業戦略を反映した事業 
     目標を作成し、その実現のための事業
     計画作成へと進みます。

  ■事業計画作成までのステップ
   事業計画を作成するには、その組織の大小
   の差はありますが、どんな組織であっても、
   組織・関係スタッフの協力をはじめ、さまざま
   な分析手法や計画作成手法が必要となる複
   雑な作業となります。

   したがって、まずは作成の基本ステップを理
   解して、その順序通りに進めることが肝要です。

   事業計画作成ステップには、詳細なアクションプランの作成まで含めると、大きく3段階
   あります。

  □第1段階 事業環境の分析把握
   ここでは事業計画の前提を明確化し、事業の戦略仮説を立て、そのうえで必要な
   内外の事業環境の分析を進めます。

   それら事業環境の分析から、新たな事業機会の発見や事業成功の要因KFS
   (Key Factors for Success)を見つけ出します。

   ●事業計画の前提条件を明確化
      事業計画の前提条件の明確化とは、
     (1)事業計画の目的の明確化
     (2)時間的・人員的な制約条件の明確化

    があります。

    (1)事業計画の目的の明確化
      事業計画の目的の明確化には、大きく分けて3つのケースがあります。

      それは、
      @これから起業しようとしている、もしくは、新たな事業進出を図るために事
        業計画を策定する場合

      A事業環境の変化などによって、事業計画を変更・革新する必要性が生じて
        きた場合

      B2〜3年に一度の経営計画見直しの際の一環として、事業計画を見直す
        場合などがあります。

      @の場合のポイントとしては、事業領域 (ドメイン)を決定し、そこでどんな商
        品、サービス(コンセプト)で勝負していくのかを決めることです。

      どのような事業を選定し、どんな商品やサービス(コンセプト)を行っていくの
      かは、起業者、事業経営者のこれまでの経験や人脈、そして自らが持つスキル
      に基づくものとなります。

      この事業領域を決定する段階でまず大切なのは、アイディアレベルの段階から、
      具体的に商品やサービスの絞り込みを経て、事業コンセプトをまとめることです。

      そのためには、コア・コンピタンス(事業の核となる強み)に焦点を当て、
      「5W1H」による情報の整理法を用いて、事業コンセプトをまとめます。

   ○「5W1H」による情報の整理
    Who : 誰が(どのような人材が)事業を推進するのか?
    What : 何(どのような商品・サービス)を提供するのか?
    When : 事業実施のタイミングとして、いつ行うのか?
    Where&Whom : どのような市場で、誰(客層)に対して提供するのか?
    Why : なぜその事業を実施するのか?(事業に対するニーズや将来性
         はあるのか?)
    How to : どのようなビジネスの仕組みで展開するのか?


    (2)時間的・人員的な制約条件の明確化
      事業計画策定にあたって、予め、投人できる人員や時間などの資源の制約条件
      を明確化しておく必要があります。

      つまり、仮説段階では、時間やボリュームのレベルを決め、範囲を限定すること
      が効果的です。

    ●事業戦略の仮説を立てる
     事業の戦略仮説を立てる方法として、徹底した調査に基づいて仮説を立てること
     ができれば良いのですが、それでは時間も手間もかかってしまい、現実的には難
     しいものとなってしまいます。

     まずは現時点で把握している情報に基づいて、仮説を立ててみることをお勧めする。

     仮説を立てることによって、その後実施する本格的な調査の作業範囲を絞り込む
     ことが可能になるからです。

     このことは、戦略や計画の精度を上げることにもつながります。

     この段階では、事業戦略仮説テンプレートへの記入は作業を効率的に進めるう
     えで重要となます。


  □第2段階 事業戦略の企画
   ここでは事業環境分析をもとにした、基本戦略の策定を行います。

   それと同時に商品企画や製造、営業など機能別重点課題などの個別戦略の企画、
   そしてそれら戦略を時系列に大まかに展開していく事業展開シナリオの作成を行って
   いきます。

  □第3段階 事業計画(アクションプラン)を策定
   各部門別や各チーム、プロジェクトごとにアクションプランまで落とし込み、さらに具体
   的に定量的な目標とその時系列的展開を明確
   にした各部門ごとの詳細計画に落とし込みます。

   それらの詳細な事業計画は、事業計画実
   行後の進行管理の重要なべースとなります。

  ■事業の基本戦略の立て方

  □事業計画(アクションプラン)と戦略体系
   事業計画を立てる際に必要なこととして、ま
   ずは事業の大きな方向性、すなわち、事業
   戦略決めることが必要であること、事業戦略
   を考える際に必要となるのが、企業経営全体
   の戦略となる経営戦略を決めることです。

    経営戦略とは、ビジョンとそれを具体化した経営計画
   を実現するための方策、段取り、手立てのことです。

   事業の成長・発展をサポートしながら、全体を最適化して企業全体の持つ価値を高め
   ていくことの方向を指し示すのが、その役割と言えます。

   事業戦略(事業基本戦略)は、そうした経営戦略に基づいて、その示された方向をより
   具体的に実現する手段となる戦略で、商品・サービス戦略や顧客戦略、個別の機能別
   戦略(営業戦略、製造戦略、商品企画戦略など)から成ります。

   ちなみに、営業戦略とは、市場のニーズに対し、顧客、販売拠点、どのような商品や
   サービスを提供するべきかを考えることです。

   また、製造戦略とは、どのような質の製品を製造していくかを考えることです。

   商品企画戦略とは、市場に受け入れられる商品の企画・開発の際に、どのような商品
   の設計をしていくかを考えることです。

  □事業基本戦略作成前に明確にすべき要素 
   事業戦略を作成するうえで、明確にしなければならないことがあります。

   それは、
   (1)市場での自社と競合他社との相対的な位置づけを明らかにする「ポジショニング」
     の明確化

   (2)そのポジショニングを市場で獲得するための具体的な方策(=基本戦略)の策定

     この策定には、事業成功の要因(KFS:Key Factors For Success)を押さえた
     うえでの戦略アイデアの発想が必要となります。

     そして、複数出された戦略アイデアの中から取捨選択して方策(基本戦略)を選び
     ます。

   (3)事業目標の設定
     この目標の設定には、定量的な目標値を設定します。

     その基本的な指標としては、売上高や利益、ROA(総資産経常利益率)やROE
     (自己資本純利益率)などの財務指標、業界におけるシェアなどが指標として目標
     値とされます。

   ●ポジショニングの明確化
    ポジショニングを明確化するには、顧客価値をべースにおいてポジショニングマップ
    を作成し、市場での自社と競合他社との相対的な位置づけの比較を明らかにする
    ことが必要です。

   ●ポジショニングを獲得する具体的な方策(基本戦略)
    ポジショニングを達成するための具体的な方策には、ヒト・モノ・カネといった経営資
    源の投入方法を変えることや、業務プロセスなどの改善や改革による方法があり
    ます。

  □事業基本戦略作成のステップ
   ここで、事業基本戦略作成のステップを整理してみましょう。

   事業基本戦略のステップは、あくまでも基本的なフローとなります。

  事業の基本戦略の立て方 
   ●内外の事業環境情報の分類
    前述した実際の事業の戦略仮説の策定作業においては、現時点で保有している情
    報を分類する作業が重要となります。 

    その際の分類方法としては、事業の外部環境として大まかに、顧客や競合の状況、
    業界構造はどうかといったことなどがあり、内部環境としては、自社の財務状況や、
    主な部門別もしくはプロセス課題、さらに顧客の立場から視た自社の商品・サービ
    スの問題点や課題などに関する情報整理があげられます。

    いずれにせよ、この段階では、細かい情報の分析は控え、おおまかなレビュー程度
    にとどめて、重要な点のみを把握する程度で十分と考えます。  

   ●新たな事業機会の発見や事業成功の要因(K・F・S)を見つけ出す
    次の段階というのが、事業成功の要因(K・F・S)を見つけ出すという段階です。

    大まかに事業環境分析ができたら、そこからK・F・S(事業成功の要因)をいくつかあ
    げます。

    事業のKFS(Key Factor for Success:標達成のために重要となる要因)を抽出
    するには、主に既存の事業をベースにその事業特性から、あるいは、いくつかの事
    業特性の組み合わせから導き出すことができます。

    例えば、携帯電話向けコンテンツ業界では、「特に若年齢層での利用の拡大」とい
    う顧客特性と「機能の高度化」という技術特性とを組み合わせたKFSの一例として
    「高い質の画像や音声を用いた本格的なゲームサービスの開発」が考えられます。

    そして、次に、それを達成するための方策や戦略課題を検討します。

  □事業基本戦略作成のポイント
   簡単に戦略仮説を立てた後の作業を述べて
   きましたが、まとめとして事業基本戦略策定の
   ポイントを述べます。

   事業の基本戦略はどのようなことを明確化す
   ることかと言えば、
    @事業の方向性や市場での位置づけを明
      確にすること。
    A内外事業環境を分析して得た事業成功
      の要因(K・F・S)から導き出すこと。
    B自らの事業の目指すべきところを定量的
      に表した「事業目標」を決めること。

   といったことになります。

   補足となりますが、特に@では、顧客からの視点に立って、市場での自社と競合他社
   との相対的位置づけの比較をポジショニングマップ上に表せるようにすることが肝要
   です。

  ■事業目標の立て方 

  □事業目標の設定に必要な3つの要素
   事業目標の設定は、「経営ビジョン」「事業ミッション」「事業ドメイン」の3つの要素
   から成り立っています。

   ●経営ビジョン 
    経営ビジョンとは、「その企業の目指すべき姿」のことを言います。

    どのような企業になりたいのか? どのような価値を世の中に提供したいのか? 
    世の中でどういう存在でありたいのかを明確にすることです。

   ●事業ミッション
    事業ミッションとは、その事業が果たすべき使命、役割のことを言います。

    ミッションを明確にすることは、その事業を何のために始めるのかを明確にするこ
    とです。

   事業ドメイン 
    事業ドメインとは、事業の生存領域のことで、他社との競争環境にある市場の中で、
    その事業がどのような商品・サービス・方法で、それらとの競争に対応しうる地位を
    築けるか、ということを明確化することを言います。

    このことをしっかりとおさえておくことが大切です。

    事業を展開する領域をどう定義づけるかによって、将来における事業の展開方法が
    大きく変わってくるからです。

  ■事業計画書作成の準備
  外部事業環境分析 
   事業戦略や計画の実践にあたっては、その事業を取り巻く大きな社会の流れや市場
   動向をとらえていくことが重要となります。

   それが外部事業環境分析の目的となります。

   外部事業環境分析での最も大切な視点は、事業を取り巻く環境要因の変化を見定め
   ることです。

   言わば、自社を含めた事業環境要因全体に対して影響を与える要因の分析が必要と
   なります。

   そうした事業環境の変化が当該事業にどのような影響を与えるかを考えなければ
   なりません。

   また、そうした変化を予測するうえで、もっとも重要な手掛かりを与えてくれるのが、
   「業界」や「顧客」、「競合他社」、そしてさらに、「販売チャネル」や自社に原材料を
   提供してくれる「サプライヤー」などの動向です。

   これらの動向が、事業の将来を決める大きな要素となります。

   このような外部事業環境分析は、その分析の後に行うべき事業の成功要因(K・F・S)
   分析、自社の強み、弱み・機会、脅威(SWOT)分析、さらに事業戦略やアクショ
   ンプラ
作成の重要なべースとなります。  
    
   競合他社分析 
    競合他社分析のポイントは、現時点での競合他社の戦略を分析し、そうした企業が
    将来とりうる戦略展開を予測し、それに準備・対応することにあります。

    分析を実施する対象企業は4つに分類できます。

   ○競合他社の4分類
     @戦略グループ競合(同じ戦略グループに属する企業や組織間での競合)

     A産業内競合(同じ業界に属する企業や組織間での競合)

     B新規参入競合(同業界内に新規参入する企業や組織間での競合)

     C代替製品競合(代替製品として競合となり得る企業や組織間での競合)

    特に、BとCは現実的に最も市場に影響を与えるにもかかわらず、対応が遅れが
    ちになるために注意が必要です。

    競合他社の分析に必要となる基本要素は以下の4つです。

   ○競合他社の分析に必要な4つの要素
     @競合の事業目標
     A競合の将来への事業戦略
     B競合の現在の競争方法・方策
     C競合が持つ強み・弱み(戦略能力)

    競合他社の分析は、各企業・組織のこれらの要因を分析し、競争相手に対する自
    社の競争優位をつくっていくことが重要です。

    情報源としては、公的機関が公表している調査データや、公開されている企業デー
    タ、新聞・雑誌などの各媒体からのデータに加え、営業や開発、生産、物流など各部
    門で蓄積され保有しているデータ、市場関係者からの競合他社に関する商品・サ
    ービス情報などがあります。
    
   ●顧客分析
    外部事業環境分析の中で、最も重要なものがこの顧客分析です。

    顧客は事業を支える収益の源であり、事業存続の要であるからです。

    したがって、顧客満足や顧客創造に関する分析は常に行っていく必要があります。

    また、顧客分析の目的には、顧客は収益源であると同時に情報源でもあること
    から、
     @顧客の変化を捉え、新たな顧客満足を創造する

     A顧客の視点から自社の商品・サービスを客観的に見て、
       企業側が考える商品価値とのギャップを認識する、

    などがあります。

    顧客分析の具体的な方法には、同じ性質をも
    つグループ(セグメント)に切り分ける「顧客セ
    グメンテーション
」という作業とセグメント別の
    顧客調査によって行われる。

    その際に行われる顧客セグメントの基準と
    しては、
     @自社が参入しやすい(自社の強みをべ
       ースに選択した)市場を抽出する

     A購買心理の変化など、顧客変化の要因を基準にする

     B競合相手のセグメント方法をべースにする

    といった方法があります。

    なお、顧客分析の結果によって得られたデータは、既存の顧客層をさらに特化させ
    て絞り込んだり、優先して新規の顧客拡大を図ったり、絞り込みを行いながら新規顧
    客の拡大を図ったりする際の裏付け資料として活用されます。

    言うまでもなく、それらの結果は、事業戦略、事業計画を立案することすべてのべー
    スになります。

   ●販売チャネル分析
    販売チャネル分析の大きな目的は、既存の企業においては、卸や小売店などを経
    由して行われる自社の商品・サービスが、セグメントした対象顧客までしっかりと届
    けられているか、あるいは、新たな事業を始める際には、セグメントした対象顧客ま
    でその自社の商品・サービスを届けるには、どういうチャネルが最も有効かを、こ
    の分析(調査)によって見極めることです。

    販売チャネル分析は、さらに個々の具体的な目的(例えば、営業戦略や営業計画 
    策定を目的とする「マーケティングチャネル管理(戦略策定、実施、管理統制)」や、
    「競合製品に関するマーケティング情報の収集」など)によって、その作業にか
    ける労力や時間などが違ってきます。

    その中で、「事業戦略や事業計画の策定」を目的とする販売チャネル分析のポイン
    トは、既存の販売チャネルの棚卸しや、可能性があると思われる新規販売チャネル
    のリストアップから始めるのが基本です。

    そして、それらの調査と分析では、戦略的に有効と思われる基準をもって新たにセ
    グメンテーションして行うことです。

    また、分析にあたっては、自社の利益創出のためのビジネスモデルの再考はもと
    より、販売チャネルとなっている企業の利益創出のメカニズムについてもしっかりと
    把握し、自社の商品・サービスがそうした企業にどの程度の利益を与えているのか、
    あるいは利益が向上しているのかなども検討します。

    このことで、今後有効な支援策を考えることができるようになるからです。

    自社と販売チャネルがお互いにパートナーシップに基づいてWIN-WINの関係が維
    持できるようにすることも、この分析のポイントと言えます。

  □内部事業環境分析の基本
   内部事業環境分析に必要不可欠な主な要素として、
    @商品・サービス

    A財務

    B業務プロセス

    C人員

   などがあります。

   内部事業環境分析では、これらの主な4つの分析から導かれた強み・弱み、可能性など
   を
   明確に把握し、事業の現在と将来について検討します。

   自社の「強み」が把握できれば、自社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる
   能力)を認識する際に役立ち、さらに事業戦略の立案や事業計画の作成にも役立つ情報
   となります。

   一方、自社の「弱み」の根源が把握できれば、当面の課題としてその解決策を見出し
   て克服する努力をしていくことで、その過程でほかの派生的な弱みも自動的に克服さ
   れていくことになるでしょう。

   なお、強み・弱みの分析には、それに機会(どのように機会を利用するか)と脅威(どの
   ように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか)も合わせて分析する「SWOT
   分析」を用いることが一般的です。

   さらに、「可能性」とは、現時点での改善点や今後の事業の可能性を指しており、内
   部事業環境分析によってそうした要因を見出すことによって、事業展開をより発展さ
   せていくなど、可能性をのばすための最重要ポイントを把握することができるのです。

   以上の内部事業環境分析から得られる事柄をまとめると、
    1.自社の強み、コアコンピタンスの把握

    2.弱みを克服する機会

    3.可能性をのばすための最重要ポイントの把握

   そして、これらがK・F・S(事業成功の要因)につながっていきます。

   自社商品・サービスの現状分析 
    自社商品・サービスの現状分析の目的は、ターゲットとしている顧客層がどのよ
    うに感じているのか、あるいは満足しているのか不満があるのかを調べること
    で、より顧客層のニーズにマッチした商品・サービスが提供できるようにすること
    にあります。

    あるいは、新商品・サービスを今後展開していくのであれば、仮説で設定した商品・
    サービスのどこをどのように具体的に改善すれば、ターゲット顧客層のニーズに応
    えられるのかを明確にすることです。

    そのためには、調査結果として単に「中年男性に受け入れられやすい」などの漠然
    としたレベルではなく、以下のような評価項目別に分析する必要があります。

   ○自社商品・サービスの現状分析での主要項目
     @品質商品・サービスの機能の充足度
     A機能商品・サービスが持つ働き、役目
     B価格:コスト要求機能に対しての価格、コストの妥当性
     C納期:デリバリー商品やサービスが提供されるまでの時間と供給の安定度
     Dオリジナリティ市場における商品・サービスの独自性
     Eブランドイメージ商品・サービスの評価やイメージ

    なお、商品・サービスの分析はどうしても主観的になりがちなため、ポイントはできる
    だけ評価を定量化することにあります。

    定量的な評価のしにくい嗜好などに関する評価も、どの程度なのかを具体的にイメ
    ージできる表現で記載ができれば、プロジェクトメンバー間の意思疎通に支障を来
    たすこともなく、貴重な検討資料(商品の情報分析フォーマット)となります。

   ●財務分析
    財務分析の目的は、自社の商品・サービスが金銭的価値に変換され簡潔な数値と
    して表わされた「財務諸表」や「損益計算書」を分析することで、自社は顧客にどの
    ような評価を受けてきたのか、どのような仕事の進め方をしていたのか、その仕事
    の進め方は妥当であったのかといった点を客観的に判断することです。

    事業内部環境分析の一環として財務分析を行う場合は、一般的に次のような視点
    で行います。

   ○財務分析の主な項目
     @収益性企業が利益を生み出す構造になっているか
     A安全性健全な財務構造なのか
     B効率性無駄なく業務が遂行できているか
     C成長性社内活力の表れとして自社の発展度合いはどうか
     D生産性有限な資源をいかに有効に活用し、金銭的価値に転換できているか
     Eキャッシュフロー自由に活用できる手元資金がどのくらいあるか

    内部環境分析を効率的に行うポイントは、まずは財務分析により自社の状況をおお
    まかにつかんだうえで、問題点を絞り込んでからほかの分析に入ると良いでしょう。

   ●社内業務プロセスの現状分析
    業務プロセスとは、顧客に自社の商品やサービスを提供する過程の一連の活動で
    あり、当然ながらその善し悪しは、顧客満足の程度や財務業績に大きく影響するも
    のです。

    そのような点から、業務プロセス分析にお
    いては、ターゲット顧客層の満足度の向
    上やリピート率向上に結びつく品質
    (Qua1ity)、コスト(Cost)、適正な納期・
    時間(Delivery)が自社の業務プロセスで
    実現できているか、あるいは事業を実施し
    た際に実現できるかを把握します。

    具体的な手順としては、まずは当該事業に
    関わる自社の業務をプロセスに分解します。

    各プロセスに対しては、品質、納期・時間の、それぞれの観点から定量的な評価指
    標を設定して、測定します。

    たとえば、品質なら不良率やミス発生率、納期・時間ならリードタイムなどです。

    業界標準などの基準値が設定しやすい指標を選ぶことにより、自社のレベルが把握
    しやすくなるでしょう。

   ●人員分析
    人員分析とは、従業員の経験・スキル・知識などの「能力」や採用・業績評価・報
    償などの人員管理に関する「仕組み」を分析することにあります。

    従業員の能力や管理するための仕組みは、言うまでもなく、顧客を満足させる商品
    やサービスの提供、効率的な業務プロセスの遂行、その結果としての売り上げや
    利益率の向上など、会社経営のすべての土台となるものです。

  ■仕入・販売・在庫計画の作成

  □仕入計画書の作成
   ●仕入計画作成のステップ

    仕入計画の策定にあたっては、まず最初に売り上げ状況に注目する必要があります。

    商品の仕入れは、言うまでもなく、売れる商品を把握することが基本だからです。

    しかし、商品間の競争は激しく、常に売れ筋商品は変化しています。

    したがって、現時点での主力商品がいつまでもその地位を保っているとは限りません。

    そうしたことから、次の売れ筋商品は何かを常に把握すると共に、在庫の回転を考
    えながら適切な仕入数量を検討することや、外部要因(万引きなど)や内部要因
    (社内不正、伝票ロスなど)が原因となる商品ロス率をなるべく少なくするための方策
    なども考えておく必要があります。

             仕入計画策定のステップ

     現時点での売上状況の把握・次の売れ筋商品の把握
                  
            適切な仕入数量の検討
                  
           ロス率最少化のための方策  

   ●販売活動との連動
    現在、リアルタイムに近い受発注が消費者から求められています。

    それだけに、仕入計画の精度の良し悪しは経営全体に響く大きな問題となります。

    仕入をスムーズに、しかも在庫リスクを回避しながら行う体制の構築には、当然なが
    ら、自社だけでなく、流通に関係する企業同士の連携が欠かせません。

    また、社内的には、リアルタイムを実現するためにITを利用したシステムの構築も
    必要です。

   ●仕入計画作成のポイント

    仕入計画は、需要−販売−仕入と有機的に連結させて具現化していきます。

    また、仕入計画策定の際には、「売上高予算→在庫高予算→仕入高予算」という流
    れで、売上高を基準にして、仕入と在庫の内容が決まるため、販売計画(予算)の
    修正が生じた場合には、仕入計画(予算)と在庫計画(予算)も修正する必要がある
    ことに留意しましょう。
   
  販売計画書の作成
   ●販売計画作成のステップ
    販売計画を策定するには、まず販売予測を行わねばなりません。

    そして、その予測に基づいて、一定期間における販売の量と金額を決定します。

    期間は一般的に、5年、3年、1年の期間で設定されることが多く、その中で3年、
    5年という中期・長期計画は、主に将来の経営戦略としての方向付けの一環として
    作成しますが、1年といった短期計画は、それを必達することが前提で策定されます。

    つまり、業務執行命令としての性格が強い計画となります。

    計画作成にあたっては、次のステップで進めます。

      販売需要予測 ⇒ 販売予測 ⇒ 販売目標 ⇒ 販売計画作成

   ●販売活動との連動
    販売計画は、販売活動と連動させるため、製品別、販路・得意先別、営業所別、地
    域別などに細分化して、その運営と管理を行うことが大切です。

    精度の高い販売計画策定のコツの1つとして、個別計画の策定から入る(全体計画
    を策定する前)のも良いでしょう。

   ●販売計画の作成方法
    具体的な作成方法としては、一般的には、商品や製品などの売上数量と単価を
    個々に見積もり、それを積み上げて、売上高を計算する方法がなされていますが、
    その他には売上高の算定方法には以下のような方法もあります。
     @顧客一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

     A稼働時間の単位時間当たりの売上高を算定して、一定期間の売上高を予測
       する。

     B営業スタッフ一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測
       する。

     C店舗面積の単位面積当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を
       予測する。

    いずれにせよ、販売計画の精度を高めることができるように、業種・業態の事情に
    合わせて適切な基準単位を決定することが肝要です。

   ●販売単価の検討と売上高・粗利益の構成
    売上高予測のための適切な基準単位が決まったら、商品の仕入原価やその事業に
    かかるさまざまなコストを考慮して販売単価を決定します。

    販売の見込み数量の設定については、単なる思い込みの数量ではなく、その商品
    ・サービスにどのくらいのニーズがあるのか、成長性はどうかなどを慎重に検討して
    数量を見積もります。

    その際に重要なポイントは、売上高や原価、粗利益高の構成が全体的に整合性の
    とれた無理のない計画であるかどうかを検討することです。

    そして、再考の必要があれば、数量、単価、原価を修正したうえでシミュレーション
    を繰り返します。  

 

事業計画書の作成とフォーマット

 

事業計画書の作成とフォーマット


  ■事業計画書とは

   事業計画とは、企業が既存事業および新規事業において、「どのような成長シナリオ」
   を想定し、「いつまでに、どのくらいの売り上げ(収益)規模」にまで育てていくのか、
   また「その実現に必要とされる経営資源は何か」などを具体的に説明するものです。

   主に資金調達や業務提携、あるいは社内の意思統一を図るときに用いられますが、
   事業計画の策定にあたっては、あらかじめ「なぜ作るのか(必要なのか)―その目的」
   と「どのように利用されるのか―その役割」を明らかにしておく必要があります。

   また、事業計画が社外の利害関係者によって厳しく点検・評価されるものであることにも
   留意しなければなりません。

  □事業計画の目的
   事業計画を策定する目的は、それが「一体誰のために作られるのか」によって、以下の
   ように分類することができます。

   (1)経営者のため
      自社の経営戦略に従って事業構想を行ない、その事業をどのような成長シナリ
      オの下で育て、投資に見合う収益を得られるのかを点検・評価するために作成。

   (2)社内の事業推進者(社員など)のため
      どのような創意工夫と努力をすれば、事業が成功するのかを社員などに理解さ
      せるために作成。

      これは、一人ひとりが新規事業の提案を行う際のモデルともなります。

   (3)提携先や協力業者のため
      事業を立ち上げるにも自社だけでは無理です。最も高い専門能力をもつ提携先
      や優れた技術・アイデアをもつ協力業者に、事業目的に即した協力を得る手段
      となります。

   (4)銀行などの金融機関のため
      事業に融資しても融資額と金利を約定通りに返済してもらえる確実性を点検し
      ます。

   (5)ベンチャーキャピタルなどの投資家のため
      事業に出資しても期待以上の利回りで回収できる確実性を点検します。

  □事業計画の役割
   事業計画が「どのように利用されているのか」を把握することで、その「役割」を明
   らかにします。

   (1)経営者による事業判断
      経営者は、以下のような点検手順を通じて、事業計画を的確な事業判断に利用
      します。
       @経営戦略を具体的に事業戦略に落し込む(ブレイクダウン)
       A投資に値する事業であるのかを判断する(事業化判断)
       B事業ごとの経営資源を最適にする。
       C事業の存続か撤退かを判断する(継続可否判断)

   (2)事業推進者などの社員による遂行基準
      事業推進者は、承認された事業計画の範囲内で、その実現に向けて努力します。

      また、この基準により、他の社員は、どのような協力をすれば良いのかを確認す
      ることができる。
       @推進組織をどうすれば良いか(推進組織構成基準)
       Aどこまで予算として承認されるか
       B事業の目標はどのような水準であるのか(業績評価基準)
       C他部門としてどのように協力すれば良いのか
       Dどのような数値になれば事業を打ち切れるか(継続可否判断)

   (3)提携先や協力業者の契約・取引判断基準
      提携先は、事業計画を策定した会社と契約を結ぶ際に、それが本当に契約すべ
      き事業内容であるのかどうかを点検します。

      同様に協力業者は、取引すべきかどうか、取引するとすればどのような取引条件
      が可能かを判断する参考にします。
       @提携先が契約すべきか否かを決める(契約承認基準)
       A協力業者は取引すべきか否かを決める(取引基準)

   (4)銀行など金融機関の融資判断
      銀行を中心とする金融機関は、事業計画の内容を精査したうえ、そこに記載さ
      れている金額を融資するかどうかを決定します。

      この際、会社の信用度も合わせて判断します。
       @事業計画が求めている設備投資に対して、融資すべきかどうかを決める
        (融資判断)
       A事業計画が求めている運転資金に対して、融資すべきかどうかを決める
        (融資判断)

   (5)ベンチャーキャピタルなど投資家の出資判断
      ベンチャーキャピタルを中心とする投資家は、事業計画の内容を精査したうえ、
      必要な資金を出資すべきかどうかを決定します。
       @事業計画に必要な資金を出資すべきかどうかを決める(出資判断)
       A事業内容により非常勤取締役の派遣や専門家の紹介などの経営支援を決
        める
       B出資金を回収する方法を決める参考とする
       C出資契約の条項を具体的にする参考とする

  □事業計画の社外評価
   事業計画の収支計画および実績(達成度)は、社外の利害関係者によって厳しく点検・
   評価されます。

   その評価は、事業計画を策定した会社の資金調達や事業活動に大きな影響を与えます。

   従って、事業計画の策定にあたっては、このことを十分に認識したうえ、社外の利害関係
   者への配慮をしておく必要があります。

  □事業計画の全体像
   事業計画は、以下の6項目から構成されます。

   (1)事業戦略
      自社にとって事業を展開する意味と役割を明確にします。この際、単なる思いつ
      きではなく、経営理念と既存の市場・技術との関連づけを明示し、最もふさわし
      い推進組織と責任者を示します。

   (2)事業コンセプト 
      先行する競合企業群との差別化ができるコンセプトを案出し、実現性のある事
      業規模拡大のシナリオ(筋書き)を明確にします。

   (3)事業環境認識
      業界全体の仕組みと事業特性を具体的に解明し、市場規模とその構造的変化
      を踏まえた需要予測を行います。

      併せて、主要な競合他社の戦略と強み・弱みも分析します。

   (4)事業化のプラン
      独創的な事業の仕組み(ビジネスモデル)とその効果的展開方法を明示します。

      事業計画どおりに推進するために必要な成功要件を抽出し、事業展開にともな
      うリスクの種類とその対応策も明確にします。

   (5)事業採算性
      投資・売上・経費を算定した根拠となるもの(前提条件)を明示します。この先
      5〜7年間分の事業収支と資金計画を立案し、金融機関やベンチャーキャピタ
      ルなどの精査を受けても十分に説明できる数値とします。

   (6)その他
      企業の90%強は、事業継続の可否を決める時期とその基準を示していないと
      みられます。

      不採算事業の場合、これが損切りのタイミングを遅らせ、結果として累積赤字の
      増大を招いています。

      こうした不採算事業については、撤退する基準を明示し、既存の経営資源(人・
      資産・ノウハウなど)を今後どれだけ有効活用できるかも明確にします。