卸売業の経営力強化

                 

流通業
卸売業の経営力強化

  ■営業活動の効率化

   1.これまでの営業活動の効率化だけでは限界

     今まで生産者はモノを作るだけ、問屋(卸売業者)はモノを集めて流すだ
     け、小売店は流れてきたモノを店頭に並べるだけでよかった。

     「販売なくして事業なし」とはいいますが、生産者も問屋も、そして小売店も、
     販売はやっていなかったのです。

     作る、流す、並べるという役割分担を担っていただけにすぎません。

     販売とは、コト(意味のある体験を提案する)を実現させるためで、気づいてい
     ないニ−ズを気づかせることです。

     そんなことは誰もやっていません。

     やる必要がなかったのです、今までは。

     生産者は売れ筋をいかに効率よく作るか、問屋は売れ筋をいかに効率よく流
     すか、小売店は売れ筋をいかに効率よく並べるか、それだけを考えていれば
     経営を間違うことはなかったのです。

     これが今までの売り方でした。

     従来、卸売業の営業活動は定期的に得意先の小売店をまわって定番商品の
     在庫を確認し必要に応じて発注し、その際、商品の代金を回収したり、新しい
     商品の注文をとったりする仕事が中心でした。

     つまりルーチンワークをいかに効率的に行うかということが営業活動の大きな
     テーマだったわけです。

     しかしEOSの普及などにより、このような「ご用聞き営業」の比重は小さくなり
     ました。

     一方、規制緩和などにより競争が激化した結果、小売業各社は生き残りをか
     けてさまざまな売上拡大や経営改善の方策を打ち出すようになり、卸売業者
     に対しても情報提供や経営力強化策の提案など、戦略的な支援を求めるよう
     になってきた。

     したがって卸売業の営業活動の効率化を考えるときには、卸売業の新しい営
     業のあり方を考えたうえで、新しい活動に積極的に取り組むために、従来の業
     務をいかに効率化するかという視点が必要になります。

   2.リテールサポート力が営業力を決める
     前述のように小売店は生き残りをかけてさまざまな経営努力を行っています。

     注文した商品を届けてくれるだけの卸売業者には魅力を感じなくなってきてい
     ます。

     小売店は自分達と一緒になって自社の経営力向上に努力してくれる卸売業者
     を求めています。

     小売店の視点からは発見しにくい改善課題などを指摘し、その解決に向けて
     支援を惜しまない卸売業者を探しているのです。

     このように、たんに売れ筋商品を確実に提供するといった狭い範囲ではなく、
     小売店の経営全般を支援する活動(リテールサポート)が重要となります。

     リテールサポートを行ううえで重要なことは、「自社の取扱商品を増やすため
     にとにかく商品を押し込む」のではなく、あくまで小売店の経営改善を第一義
     に考えるということ。

     リテールサポートは短期的な売上増をめざすものではありません。

     徹底した小売店支援によって強固な信頼関係を構築し、小売店にとってなくて
     はならない存在になることがその目的なのです。

     また今後のリテールサポートは加速する消費者ニーズの変化に対応するため
     に、メーカー、卸、仲卸、小売がそれぞれの強みをいかして行う「協調型」であ
     ることが一層求められるでしょう。

     そしてその中でリーダーシップを発揮できる卸売業者こそが同業他社に打ち
     勝っていけるものと思われます。

  □従来の業務のあり方を見直す

   営業活動を効率化していくためには、従来の業務のあり方を見直し、営業マンが
   リテールサポートに注力できる環境を整えていかなければなりません。

   自社の業務のあり方に次のような問題点がないか確認してみましょう。

   1.無駄な時間や雑務が多い

     中小の卸売業では、商品の配送も営業マンが行っている例が多数みられる。

     また取引先のEOS導入が進んでも、実際の発注作業は卸売業の営業マンが
     行っているというケースもあります。 

     これらの社外業務に加えて、伝票作成からミーティングなどまで、こなさなけれ
     ばならない社内業務も多く、その結果、肝心の新規取引先の開拓やリテール
     サポート活動に十分な時間が費やせないという状況に陥ってしまいがちです。

     従来営業マンが行っていたこれらのルーチン業務は、マニュアル化すること
     で、その多くはパートやアルバイトに任せることが可能になるはずです。

     担当の社員はその確認のみ行うことによって、ルーチン業務以外に時間を振
     り分けることができます。

     言い方を変えると、営業マンからこれらのルーチン業務を「取り上げる」こ 
     とによって、営業マンはリテールサポートという新しい仕事、頭を使う仕事
     に取り組まざるを得なくなります。

     「雑務で忙しいから」という言い訳ができない状況を作ってしまうことが大切な
     のです。

   2.取引先の状況に応じた労力の配分ができていない

     「営業活動の強化=訪問回数の増加」という単純な目標設定により、ただやみ
     くもに得意先を訪問する営業マンもいますが、これは効率的な営業活動とはい
     えない。

     得意先のなかには取引規模の大きなところと小さなところ、将来の成長が見
     込めるところとあまり見込めないところなど、状況に違いがあるはずです。

     にもかかわらず、どの取引先に対しても均等な時間を割くのは得策とはいえま
     せん。

     自社との取引状況や、先方の成長力などに応じて「最優先顧客」、「優先顧
     客」、「一般顧客」といった具合に顧客の重要度に応じてランク分けを行い、ラ
     ンクに応じた時間の使い方を工夫するようにします。

   3.営業担当の分類基準が不適切

     通常、営業担当の分類基準は、取引先の業種別や地域別になっています。

     業種別で決められている場合、取引先の業種に精通できるため、顧客のニー
     ズにきめ細かく対応できるというメリットがありますが、その一方で、取引先の
     所在地が分散してしまうため、効率的な訪問活動ができないといったデメリット
     もあります。

     地域別で決められている場合は、メリット・デメリットが反対になります。

     いずれの基準で営業担当を分類してもメリット・デメリットはあるため、双方を
     考え、より効率的に営業活動が行える分類基準を選ぶ必要があります。

     たとえば、大型の総合卸売業の地方進出に対して地方の中小卸売業がこれら
     大企業に対抗するためには、地域に特化したきめ細かな対応が求められてい
     ます。

     こうした環境もふまえて、より自社の強みを発揮できるように、現在の営業担
     当の分類基準を見直す必要があります。

   4.勤務体制の硬直化

     いったん出社してから取引先へ向かうのでは、通勤や取引先への移動に無駄
     な時間がかかります。

     直行直帰の勤務体制を導入することにより、移動に費やす時間を減少させ、
     その分、営業活動に時間を振り分けられるようになります。

     かつては直行直帰では情報交換がしにくい、業務を管理できない、といった問
     題もありましたが、最近は携帯端末などの情報機器の導入でこういった問題も
     解決されています。

     また、日報などで報告を義務づけることにより、毎日出社しなくても営業マンの
     営業活動を把握することはできます。

  □リテールサポート力強化のための環境整備

   従来の業務のあり方を見直したうえで、営業マンが有効なリテールサポートを行
   えるように新たな施策を打つ必要があります。

   1.リテールサポートメニューを整備する

     リテールサポートにはさまざまなメニューが考えられます。

     店舗業務を手伝うという日常的なものから、商品ごとの売上情報を提供する、
     販促企画を支援する、経営相談に応じるなどさまざまです。

     また顧客の状況によっても提供すべきリテールサポートメニューは違ってきま
     す。

     たとえば前述の顧客ランクによって、リテールサポートをどこまで手厚く行うべ
     きかも違ってくるでしょう。

     顧客の状況に応じてどこまでのリテールサポートを行うか、あらかじめ検討し、
     営業マン全員が共通認識をもっておくことが大切です。

   2.営業マンに新しい知識を吸収させる

     「ご用聞き営業」から脱皮し、本当に顧客に喜ばれるリテールサポートを行って
     いくためには営業マンはさまざまな知識を身につけなければなりません。

     リテールサポートとは顧客の経営全般の支援活動ですので、見つけるべき知
     識は商品知識、業界知識のみならず、消費者ニーズを収集し分析するための
     知識、企業経営に関する知識など多岐にわたります。

     自社で教育プログラムを作る方法もありますが、専門機関が提供している教
     育訓練を利用すれば比較的容易に教育プログラムが作れます。

   3.リテールサポートに使える情報やツールを整備

     営業マン各人が取引先の役に立ちたいと考えていても、売れ筋情報や効果的
     な棚割りなど有効な情報が社内に整備されていなければ、効果的なリテール
     サポートは行えません。

     このため携帯端末を導入する企業も増えている。

     企業によっては、小型パソコンのような携帯端末を全営業マンに配布し、取引
     先へのタイムリーな情報提供だけでなく、日報管理に利用しているところもあり
     ます。

     このように、情報機器など営業支援ツールを効果的に使うことで、情報提供力
     を高めたり、営業活動を効率化したりすることができるのです。

     機器類と同様に、情報などのソフト面の充実も不可欠です。

     棚割りソフトや売れ筋・死に筋商品情報など、リテールサポートに必要なソフト
     ウエアや各種情報を取り揃えることでリテールサポート力強化につなげること
     ができます。 

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激変する卸売業の姿

          

激変する卸売業の姿

  ■卸売業をめぐる環境

   経済産業省の「商業統計表」によれば、2002年の小売店数は約130万店と、前
   回調査(1999年)から10万店以上も減少しました。

   規模別に見ると、就業者数50人以上の大規模事業所が増加している一方、中小
   規模の事業所は減少を続けており、とくに就業者数4人以下の小規模事業所は9
   万店以上も減少しています。

   また、年間販売額についても、小規模事業所の大幅な減少が目立ちます。

   1.川下からの淘汰

    小売業の就業者規模別事業所数および年間販売額の推移

    こうした中小小売店の減少は、卸売業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

    2016年の卸売業者数は全国で約36万事業所となっていますが、そのうち従業
    員100人以上の企業はわずか3397事業所にすぎません。

    つまり、卸売業者のほとんどが中小規模の企業だといえます。

    これらの中小卸売業者が顧客としているのは、おもに中小規模の小売店です 
    が、その中小小売店がわずか数年で10万店以上という驚くべきペースで減少し
    ているのです。

    同様に、中小規模の飲食店やサービス業も、競争が激化するなかで倒産や廃
    業が急増しています。

    すなわち、

     中小の小売店・飲食店・サービス業を主要取引先とする卸売業にとって、
     現在は、自らの経営努力だけでは既存取引先数の減少を止められない
     という「非常事態」

    にあるのです。

    また、倒産や廃業に追い込まれなかった中小規模店も、この不況下で売上を減
    少させていることから、一取引先あたりの取引額(顧客単価)も減少が続いています。

    さらに、取引先からの値下げ要請が厳しくなっているため、粗利益率も低下して
    います。

    とくに大手取引先については、他社との競合が激しく、まったく利益の出ない状
    態になっているケースも少なくありません。

    一方、取引先が減り、売上・粗利益が減少するなかで、大手取引先を中心として
    無理な要望が増えてきており、販売コストは増加しています。

    たとえば、小口高頻度配送を要求する取引先が増えていることから物流費が高
    騰しているほか、協賛金や売り場支援の要請なども強くなってきています。

    さらに、配送センター使用料などの販売管理費もかさんでおり、卸売業の多くが
    利益率の低下に苦しんでいます。

    そのほか、取引先の小売店や飲食店などが顧客ニーズに合った業態へと転業
    や業態転換を行なうといった動きもあり、それに伴って取引する卸売業者を限
    定、変更するケースも目立ちます。

    たとえばアメリカでは小売店の50%がFC(フランチャイズチェーン)店であるとい
    います。

    日本でもすでにその傾向が進み、酒小売店を中心にF C加盟によるコンビニエ
    ンスストアへの業態転換は、すでにご存じのとおりです。

    これに伴い、従来の取引先であった卸売業者からフランチャイズ本部が指定す
    る卸売業者へとすでに取引先を変更する店も出ています。

    このように、流通の川下である小売業などの変化は、その上流に位置する卸売
    業者(とくに中小規模の卸売業者)に多大な影響を与えているといえるでしょう。

   2.川上からの淘汰

    一方、流通の川上に目を向けると、メーカーの取引制度の見直しやそれに伴う
    リベートの廃止が進んでいます。

    価格を維持し商品の供給ルートを閉鎖的に支配するメーカーの流通政策は、こ
    れまで日本の流通機構の特徴のひとつと指摘されてきました。

    具体的には建値制度を中心に特約店制度を敷き、リベートを保証することで流
    通全体を囲い込み、価格をコントロールしてきたのです。

    そして、こうしたメーカーの主導により形成された互恵的な流通システムに参加
    することで、卸売業者は自らの存続を安定させてきました。

    しかし最近では、

     メーカー自身が建値制度を崩壊きせるような動き

    をしています。

    この背景には、モノ余りの時代になり価格決定権が消費者に移ったことに加え、
    再販価格の見直しなどに見られるように独禁法の運用が強化されていること、
    大店法の運用緩和・廃止などにより小売店間の競争が激しくなったことなどがあ
    ります。

    それにより低価格化が進行し、これに対応できるよう小売業者が流通ルートを
    集約化しはじめたことを受け、メーカーも流通政策の転換を余儀なくされたとい
    えるでしょう。

    また、低価格化が進むなかで、自らの利益を確保するために

     小売店とメーカーが直結する動き

    も出てきています。

    このように、川下である小売業者の影響を受ける形で川上のメーカーも従来の
    販売政策を見直しはじめたことにより、流通全体の構造が大きく様変わりしてき
    ました。

    めまぐるしい変化のなか、卸売業者も真剣にそのあり方を見直さなければなら
    ない状況になっているのです。

    今までのようにメーカーの流通政策に頼ったままでは厳しい環境に適応していく
    のは困難です。

  □求められる卸売業とは

   1.消費者寄りの卸売業になる

    これからの卸売業者にまず必要なのは、

     これまでのようなメーカー寄りの姿勢を改め、消費者寄りの視点をもつこと

    です。

    いうまでもなく、卸売業の基幹機能のひとつはメーカーから商品を仕入れ小売
    店へ卸す機能です。

    しかし、これまでの卸売業はメーカーの流通政策に従うばかりで、ともすれば、 
    取引先や消費者のニーズを汲み取る努力を忘れがちになっていました。

    これでは顧客満足度を高めることはできません。

    現在は、モノ余りの時代であり、価格の決定権はメーカーから消費者に移ってい
    ます。

    メーカーの価格政策に従っているのではなく、流通の川下に目を向け、積極的
    に消費者のニーズをつかむことが卸売業者にも必要となっているのです。

   2.卸売業の位置付けと機能の見直し

    消費者寄りに視点を移し、新しい時代に対応できる卸売業者になるためには、
    もう一度卸売業の位置づけと機能を見直す必要があります。

    流通を段階的に見てみると、メーカーで開発・生産された商品は卸売業者によっ
    て小売店に卸され、そこで消費者に販売されます。

    これからの卸売業者は、この流通の各段階の機能のいずれかを従来の機能に
    付加し、その機能を強化することが重要となります。

    こうした、今後の卸売業者に求められる機能としては、以下のものがあげられます。

    <卸売業者に今後求められる機能>

     ・メーカー機能

     ・本来の卸売業の機能(強化)

     ・小売機能

    以下では、これらの方向性について事例を交えながら具体的にご説明します。

    (1)メーカー機能の付加、強化

      メーカーの機能といえば商品の開発・生産を指しますが、卸売業者がこの機
      能を強化する方法のひとつとして、プライベートブランド(PB)商品の開発が
      挙げられます。

      どこの卸でも扱うナショナルブランド(NB)商品を卸すだけでは取引先との関
      係強化は困難です。

      商品開発力を磨き、他社にはない魅力ある商品を提供することができれば、
      取引先にとってなくてはならない卸売業になれるのではないでしょうか。

      そこで、自社独自のP B商品の開発を進める卸売業も目立ちます。

      大手のNBと同一の分野に自社で開発した低価格商品をもって参入している
      卸売業者もありますが、今後はNBが比較的浸透していない分野に的を絞っ
      たPB商品の開発が妥当と考えられます。

      これは、大手NBが参入している分野では大手小売業者のPBも含めた激し
      い競争が展開されているからです。

     ◎自社ブランド商品開発を積極的に進める「ワタナベ」  

       ワタナベは1975年に、カメラマンだった渡部社長が助手2人を伴って開業
       した化粧品卸売業です。

       同社は、海外の有名ブランドのフレグランス(香水類)の卸売業からスター
       トし、業務用のヘアケア商品を一般の小売店に卸す事業で大きな成功を納
       めました。

       卸売事業が好調であったにもかかわらず、仕入れた商品を小売店に販売
       するだけの卸売業には限界があると危機感を持っていた渡部社長は、自
       社のオリジナル商品の開発に進出しました。

       卸売業者が商品開発をする際にネックになるのが技術力ですが、ワタナベ
       はOEM契約で商品を開発することでこの課題をクリアしています。

       同社は、化粧品メーカーで自然化粧品開発を担当していた技術者が独立
       して興した会社とOEM契約し、自社ブランド商品「パーソナルゲート」を開
       発しました。

       技術力はあるものの流通ルートを持たない新興メーカーと契約することで、
       オリジナル商品を開発することができたのです。

    (2)本来の卸売業の機能の強化

      先にも述べたように、卸売業の基幹機能のひとつは、メーカーから商品を仕
      入れ小売店へ卸す機能です。

      とくにメーカーの数、商品の種類が多い分野では、メーカーと小売業者が直
      接取引をするのは非効率になるため両者を結ぶ卸売業者の役割は重要に
      なります。

      ただし、低価格志向が定着した現在は流通コストをできる限り抑える必要が
      あり、卸売業にも効率性が求められます。

      その方法のひとつとして、キャッシュアンドキャリーの展開を進める卸売業も
      増えています。

     ◎キャッシュアンドキャリー業態で成長した「トーホー」

      業務用食品卸の株式会社トーホーは、1987年から業務用スーパー「A−プ
      ライス」を手掛けています。

      業務用スーパーとは、中小の飲食店や小売業者などの事業者向けに卸し売
      りを行なっている商品持ち帰りの現金問屋です。

      支払い方法が現金(キャッシュ)で、顧客が自分で持ち帰るため(キャリー)、
      「キャッシュアンドキャリーとも呼ばれます。

      同店では和・洋・中あらゆるジャンルの業務用食材を店舗形態で現金卸販売
      しており、おもに注文単位が小さく配送コストがかかる食堂や居酒屋など小
      規模業者のニーズを取り込み、さらに珍しい食材や低価格を売りに一般客
      の需要も取り込んでいます。
 
    (3)小売機能の付加、強化

      これまで卸売業者の小売業への進出は、取引先である小売業者との摩擦を
      考慮し、あまり行なわれていませんでした。

      しかし、製販同盟などにより卸売業者もその存続が危ぶまれている時代にお
      いては、これまでの方針を見直し、通常の小売店より低い原価率を生かし 
      て」小売業への進出も考える必要が出てきているといえるでしょう。

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卸売業の営業マン育成

          

卸売業の営業マン育成

  ■卸売業の営業マンの要件

   1.卸売業の営業マンの役割

     従来、卸売業の営業マンの仕事は、定期的に得意先の小売店をまわって定番
     商品の在庫を確認し必要に応じて発注を行う、商品の代金を回収する、新し
     い商品の注文をとるといった、いわばルーチン的な仕事が中心でした。

     しかし、小売店のEOS(※)導入が進み定番商品の発注はパートでもできるよ
     うになり、商品代金の銀行振込が一般化するなど、これらの業務を営業マンが
     行う必要がなくなってきました。

     一方、規制緩和などにより競争が激化した結果、小売業各社は生き残りをか
     けてさまざまな売上拡大や経営改善の方策を打ち出すようになり、卸売業者
     に対しても情報握供や経営力強化策の提案など、戦略的な支援を求めるよう
     になってきました。

     このような新しい環境のなかで、卸売業の営業マンに求められる役割は、

      単なる受注・代金回収業発から

      取引先小売業の経営支援(リテールサポート)へと、大きく変化

     しているのです。
      ※EOS(Electronic Ordering System)……POS(バーコードを使用した販売情報管理)
        機能の活用により、受発注をシステム化して、商品の補充を効率化するシステム。


   2.リテールサポートに必要な営業マンの条件

     リテールサポートとは、商品や競合状況などの情報提供に加え、販売促進活
     動の提案、売場の改善や資金繰り方法の改善提案など、小売業の経営をさま
     ざまな角度から支援する活動を指します。

     リテールサポートを行ううえで重要なことは、「自社の取扱商品を増やすため
     にとにかく商品を押し込む」のではなく、あくまで小売店の経営改善を第一義
     に考えるということです。

     リテールサポートは短期的な売上増をめざすものではありません。

     徹底した小売店支援によって強固な信頼関係を構築し、小売店にとって自社
     がなくてはならない存在になることがその目的なのです。

     また今後のリテールサポートは加速する消費者ニーズの変化に対応するため
     に、メーカー、卸、小売の3者がそれぞれの強みをいかして行う「協調型」であ
     ることが一層求められるでしょう。

     そしてその中でリーダーシップを発揮できる卸売業者こそが同業他社に打ち
     勝っていけるのです。

     このように卸売業がリテールサポート力を強化するには、

      商品知識、業界知識など専門分野に関する知識に加え、財務分析や
      マーケテイングなど経営診断に関する知識や問題解決思考技術、
      企画力をもった人材の育成が不可欠になります。

   3.リテールサポートに必要な知識・技術

     (1)業界専門知識

       業界動向、商品、物流、販売技術に関する知識、EOSなどの情報化の知
       識、業界関連法知識など

     (2)経営知識

       財務分析、マーケティング、店舗開発、組織運営、人材育成に関する知識
       など

     (3)その他必要な能力

       問題解決思考技術、企画・提案力、折衝力など

  □営業マンの育成方法

   1.人材育成のおもな方法
      
      (1)OJT

      (2)O ff‐JT

      (3)自己啓発

     の3つがあります。

   2.育成プログラム作成の留意点

     リテールサポートを行うためにはさまざまな知識や技術が必要であり、それら
     をすべて身につけさせるには、長期的な育成プログラムが必要です。

     育成プログラムは、次のような点に留意して作成します。

     (1)十分な動機づけを行う

       いかに優れた育成プログラムを作ったとしても営業マン自身がやる気を
       もって取り組まなければ成長はおぼつきません。

       「業界はどのような状況になっているのか」、「会社としてどのような人材が
       必要か」を十分に説明したうえで、「自分はいつまでにどのような能力を身
       につける必要があるのか」を営業マン自身に考えさせることが必要です。

     (2)必要な知識や技術の基準を決める

       業務経験年数や職位と照らし合わせて、どの時点でどのようなことができ
       なければならないかという業務の基準を定め、これを達成するために必要
       な知識や技術とその修得レベルの測定基準を定めます。

     (3)習得させる知識や技術の教育計画をたてる

       必要な知識や技術とそれを修得させる時期が決まったら、それに合わせて
       計画をたてます。

       そして、修得させる知識や技術ごとに、それらの教育方法を決めます。

     (4)業務での実践状況と教育計画を見直す

       知識や技術を身につけることが目的ではなく、実際にリテールサポートを行
       えることが教育訓練の目的です。

       したがって業務の現場でリテールサポートがどの程度行えるのか、遂行状
       況から教育訓練の成果の評価をしなければなりません。

       効果が出ていないようであれば、その他の要件もふまえながら、教育訓練
       を見直します。

  □営業マンが育つ環境条件

   いくら教育訓練を熱心に行ったとしても、営業マンが育つ環境がなければ教育の
   効果は期待できません。

   次の環境が整備されていることが、営業マンの育つ条件になります。

   (1)評価制度の確立

     短期間で能力を高めたり、的確なリテールサポートで取引先の業績を向上さ
     せても、それらが昇級や給与面で反映されなければ、社員の意欲は減退しま
     す。

     能力や実績を客観的に評価し、それらを処遇に反映させる評価制度の導入が
     不可欠です。

     具体的には等級ごとに必要な能力の要件を定めた「職能資格制度」や、業績
     の一定割合を給与に連動させる「業績給」の導入などが考えられます。

   (2)能力を発揮しやすい労働環境

     取引先の小売業を支援しようという意欲があっても、従来のご用聞き的な業務
     に忙殺されほかに手が回らないという状況であればリテールサポートを行うこ
     とはできません。

     会社としてリテールサポート力を強化するというのであれば、単純業務をパー
     トタイマーに割り振る、効率化のための設備導入を行うなど、営業マンがリ
     テールサポートに集中して取り組める環境整備を行うことが必要です。

   (3)リテールサポートメニューの準備

     教育訓練をしただけで実際のリテールサポートメニューがなければ、リテール
     サポートは営業マン個人の裁量で行われ、質や内容にもばらつきが出てきま
     す。

     また、効果的な棚割やEOSなど、全社的な対応が必要なシステムの導入に関
     しては、個人で対応できる範囲が限られています。

     したがって、会社としてどのようなリテールサポートを行うかを検討し、リテール
     サポートメニューをあらかじめ決めておく必要があります。

     またこのメニューは単に「○○を○○する」といった行動レベルのメニューだけでは
     なく、その結果「小売店にこのようなメリットを与える」という本来の目的が明確
     になっていなければなりません。

     さらに実際のリテールサポートを行うなかで当初予定した以外のメニューが必
     要になることもありますので、順次メニューを追加していきます。

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在庫費用削減のポイント

                

小売業の在庫費用削減

  ■こんなにある在庫費用

   多くの小売店経営者は売上の拡大には非常に熱心ですが、在庫管理というと後回しに
   してしまいがちです。

   品切れによる販売機会のロスを恐れて、ついつい過剰な在庫を抱えている小売店が多い
   ようです。

   ここでは、そうした小売店経営者に在庫費用削減のための視点をもっていただくため、
   在庫費用の種類をご紹介します。

   <在庫費用の種類>

    ・仕入代金

     いわゆる在庫投資と呼ばれるものです。
     売れないまま倉庫や店にある商品は、資金を固定化させ、資金繰りを
     悪化させてしまいます。

    ・保管費用

     倉庫などに保管する場合は、商品を置いておくスペースが必要になります。
     倉庫を建てるコスト、倉庫の減価償却費が保管コストの代表です。
     また、店舗での在庫スペースは売り場面積を奪っているともいえます。

    ・減耗費用

     商品を在庫としてもっている間には、破損や減耗が生じます。
     在庫が多くなれば多くなるほど減耗費用は増大する傾向があります。

    ・金利

     仕入代金や倉庫の建設費用のために借りた資金の金利も在庫費用の
     一種になります。

    ・保検料

     在庫商品そのものや倉庫にかける保険料も在庫費用です。

    ・運搬費用

     商品をトラックから降ろす、倉庫内で移動させるなど、人手が必要な運搬
     作業では、人件費という形で在庫費用が発生します。

    ・返品費用

     売れなかった商品を返品する場合には、人件費や運送費が発生します。

  □在庫コントロールの基本

   1.適正な在庫量を知る

    在庫を減らすためには、まず、

     商品ごとに適正な在庫量を知ることが必要

    です。

    在庫がないと顧客の注文に的確に応えることができませんが、在庫をもつと資金がそれだけ
    固定化されることは先に述べました。

    適正在庫とは、受注チャンスと在庫費用の均衡するポイントで決まります。

    年間を通じて維持すべき適正在庫量については、基本的に次の式で求められると
    いわれています。

     年限平均適正在庫=年間販売高予想÷年間予定商品回転率

    ここでの年間平均適正在庫は、あくまでも平均値であって、在庫管理上のひとつの目安
    となるものにすぎません。

    当然、商品ごとに季節や時間的な要因、安全在庫といった点を考慮して決定する必要が
    あります。

     ※安全在庫とは、出庫予測ミス・作業ミス・発注ミス・保管ミスなどにより
       在庫が過少になった時でも品切れを起こさないで済む在庫量のことです。
       一般的に、発注日から納品日までのリードタイム内で、出庫スピードが
       早くなった場合を想定して数量を決定します。

   2.在庫削減対象の商品を検討する

    各在庫対象品目ごとに適正在庫を決定したら、基準を超えている在庫対象商品を探し出し、
    在庫削減対象商品の候補とします。

    在庫削減対象を考える際には、

     ・適正在庫量の設定がきついと削減すべき在庫が増えすぎて処理が
      大変になる  

     ・適正在庫量の設定があまいと滞留在庫が増えて在庫削減の効果が
      薄れる

    ことを覚えておかなくてはなりません。

    なお、最終的に削減対象商品を決定する際には、次項でご紹介する商品全体のバランスを
    考えた過剰在庫検討の方法を併用することになります。

   3.入庫を調整して在庫を減らす

    在庫とは入庫と出庫の差です。

    在庫を削減するには、入庫のスピードと出庫のスピードをなるべく同じにすればよいことに
    なります。   

    出庫のスピードは、顧客の購買行動によって左右されるため、店舗側での調整は困難に
    なります。

    ですから、

     商品の仕入(入庫)のスピードを出庫のスピードに合わせることで、
     適正在庫を維持し在庫を減らす

    ことが必要になります。

    出庫スピードは、過去の販売データを分析して算出します。

   4.発注方式を工夫して在庫を減らす

    前節3で述べた仕入のスピードを調整するということは、発注を調整することにほか
    なりません。

    そこで、

     発注方法を対象商品ごとに検討することで在庫削減を実現する

    ことができます。

    次に3つの発注方式の内容と特徴を示します。

    <発注方式>

     ・定量発注方式

      この方式は決まった量だけ不定期に発注する方式です。
      たとえば、毎日在庫量をチェックし、ある在庫量(発注在庫量)を
      下回った時に定量発注をかけます。
      在庫チェックを頻繁に行なわなくてはならないことから、売れ筋商品
      などの出入りの激しい商品に向く方式です。

     ・定期発注方式

      この方式は定まらない量を定期的に発注するやり方です。
      たとえば、補充的に毎週月曜日あるいは毎月25日など、一定間隔で
      発注するところに特徴があります。
      在庫管理上あまり手間がかからないことから、在庫コストが小さかったり、
      量のあまり出ない買い回り商品に向いています。

     ・都度発注方式

      この方式は必要な都度、必要な量を発注するやり方です。
      売れ行きの読みにくい高額商品など、在庫をもちたくない商品に
      向いています。

   5.発注量を減らして在庫を削減する

    在庫を削減する方法として、発注量を少なくする方法があります。

    つまり、

     多頻度少量発注をすれば、在庫は当然少なくなる

    ということです。

    多頻度少量発注の基本的な考え方にJIT(Just In Time)の思想があります。

    これは必要な時に必要なものだけをつくるという生産管理の考え方で、在庫ゼロを
    理想としたものです。

    ただし、この方式は納入業者の納入コストアップにつながりますので、仕入代金に跳ね返って
    くることがあります。

    最初の項で紹介した在庫費用間のバランスを検討したうえで用いる必要があります。

  □過剰在庫商品の決定と対応

   1.過剰在庫の決定

    在庫コントロールの基本で検討した商品ごとの「適正在庫」という基準に加え、商品全体の
    バランスも検討したうえで過剰在庫かどうかを判断することが必要です。

    商品全体のバランスは売上高と在庫高の整合性を見たうえで判断します。

    ここでは、ABC分析を用いて考えます。

    ABC分析は、売上構成比の高いものから、商品をABCなどのランクに分けて分析する
    方法です。

    商品を適切にランク分けしたうえでランクの高い商品を重点的に管理することで、合理的な
    在庫管理を行なうことができます。

    まず、売上高と在庫高においでABCの各ランク付けを行ないます。

    そして、売上高のランクよりも在庫高のランクが高くなっている商品を過剰在庫商品の
    候補として考えます。

    『在庫コントロールの基本』の項の個別商品の分析で在庫高が適正在庫を上回っており、
    かつ、売上高と在庫高の関係からも過剰在庫の候補となった場合には、処分対象商品と
    考えることができます。

     ※ただし、今後の流行予測などから政策的に大量在庫としている場合は除きます。

   2.過剰在庫商品の処分

    過剰在庫品といっても、今後販売が見込めるものから、売れる見込みのないデッドストック化
    している商品まで、さまざまです。

    ここで処分すべき商品は、デッドストックや、それに近い不良在庫です。

    この不良在庫の判断基準としては、売上高がCランクでありながら在庫高がAランクや
    Bランクとなっている商品や、売上がないのに在庫が存在する商品ということになります。

    具体的には、

     ・季節はずれ商品

     ・旧タイプ商品

     ・競合商品に敗れた商品

    などがあげられます。

     不良在庫は早急にバーゲン品として処分していくことが必要

    です。

    バーゲン販売では粗利が取れなくても、

     ・集客の材料にできる

     ・固定化した資金を少しでも回収できる

     ・今後の在庫費用を削減できる

    からです。

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小売業のマーケティング

           

小売業のマーケティング

  ■カスタマー・シェアの拡大と顧客差別化の重要性

   これまで小売業では、定期的に特売品の広告を打ち、価格志向の顧客を引きつ
   ければ、いずれその顧客が固定客になり利益をもたらす、と考えられてきた傾向
   があります。

   しかし、小売業において経験的に知られ指摘されていることに、

    価格志向の顧客のうち、優良顧客となるのは一握りであり、
    大多数の顧客は、その後、短期間のうちに来店しなくなっている

   ということがあります。

   こうした実状を踏まえると、顧客を選別してセグメントしたうえで顧客の貢献度
   に応じて販売施策を請じること、つまり、個々の顧客の自店における購入額=「カ
   スタマー・シェア」の拡大を図ることが重要と考えられます。

   そのためには、

    データにもとづき、売上高に貢献している顧客を見極めて、
    的確なプロモーションを実施していくことが必要

   になります。

   これは「ワン・トウ・ワン・マーケティング」と呼ばれているものの実践であり、個別
   の手法としては「フリークエント・ショッパーズ・プログラム(=FSP)」と呼ばれてい
   るものです。

   小売業のマーケティングでは商品管理が中心に据えられています。

   POSによる単品管理により売れ筋と死に筋が把握できるようになり、売れ筋に集
   中した商品管理により販売効率を高めることが販売戦略の最大の要になったた
   めです。

   しかし、

    「カスタマー・シェア」拡大のためには、単に個々の商品の数字を追うだけ
    ではなく、個々の顧客の購買行動を把握して、個々の対応を打ち出して
    いくことが必要

   になります。

   こうした顧客の差別化は決して特別なことではありません。

   実際に、顧客の差別化は、航空会社、ホテルのマイレージ・サービスなどにみら
   れるように、消費者にも受け入れられているのです。

   また、こうした施策を講じるには、大規模なチェーンである必要はありません。

   実際に小売業の顧客の差別化が進んでいる米国小売業界においては、1店舗だ
   けの独立店であっても、こうした施策を成功させている事例をみることができます。

  顧客を差別化する際の考え方

   1.顧客を差別化する必要性

     顧客差別化の必要性は、次のような考え方から明らかになります。

     顧客の購買行動はさまざまで、一人ひとりが異なる利益(あるいは損失)を店
     にもたらしています。

     2割の顧客で8割の売上高を占めているという経験則(パレートの法則)は、長
     期的にみれば小売業についても当てはまり、顧客を差別化する合理性がはっ
     きりするのです。

     実際に、顧客データの分析は予想外の(上位顧客に売上が集中した)実態を
     示すことがあるといわれています。

     たとえば、期間を長くとるほど、継続的に買っている顧客と1回だけの顧客との
     店への貢献度の差が拡大することは明らかです。

     顧客ごとの、来店期間全体における貢献度(生涯価値=ライフ・タイム・バリュー)
     をみた場合、顧客を差別化して対応することの妥当性は明白になるでしょう。

     また、売上高に限らず、

      1回の購入金額が高いほど、単位当たりの固定費負担は少なくなり、
      顧客ごとの粗利益率は向上

     します。

     次表は、こうした例について、一例として考えたものです。

     こうしてみると、不特定多数への販売促進活動がきわめて非効率なことがわ
     かります。

     一方で、

      これまで特売にかけてきたコストを再配分し、上位蕪客への還元を多く
      すれば、公平で効果的なプロモーションが実施できる

     のです。

   2.顧客を差別化することで得られる優位性

     POSをはじめとする情報システムが普及したことにより、現在では個々の顧客
     に対応した販売を実現することはそれほど困難ではありません。

     商品別に構築してきた情報システムを顧客別に適用することで、多く購入して
     いる顧客に、さらに多く購入してもらえるように、

      顧客データベースにもとづいて一人ひとりの顧客に異なった販売条件を
      適用し、その結果の顧客行動の分析を通じて、さらに顧客別の対応を
      改善していくことが可能

     になっています。

     また、顧客差別化マーケティングの競争上の優位を考えると、すべての顧客
     層に同一価格で対応するのは、経済的に不利であるばかりか、店舗の競争力
     を弱めかねません。

     たとえば、

      顧客情報にもとづいて、優良顧客を対象に特売セールを実施したり、
      価格以外の面でもさまざまな特典を提供することで、顧客情報を
      もたない店から優良顧客を奪うのはこれまでよりも容易になる

     と考えられるからです。

   3.顧客を差別化することによる販売の効率化

     広告費を大幅に増やせば、売上高を拡大することは比較的容易かもしれませ
     んが、当然利益率は低下します。

     しかし、顧客を差別化することで、売上高と利益をともに拡大することが期待で
     きるのです。

     これは、先にも述べたように、1回の購入金額が高いほど単位当たりの固定費
     負担は少なくなるため、優良顧客ほど店舗にとって経済性が高いからです。

     また、

      1回当たりの購入金額が高くなるほど、特売品ではない定番の購入が
      増えるために粗利益率の向上が期待できる

     のです。

     実際に、米国小売業界において顧客差別化を実施している小売業では、

      ・利益に貢献しない顧客には低マージンの商品を販売しない
       (1回の購入額に最低限度を設けたり、広告に掲載する特売品を大幅に
       減らす)

      ・商品別の価格設定より、購入総額に応じた価格設定を重視する
       (一斉特売を減らし、顧客の購買実績に応じた特売価格を設定する)

     ことにより、多くの企業が利益改善に成果をあげていると報告されています。

     低収益(あるいは損失)しかもたらさない顧客に効果的にコストを転嫁でき、さ
     らに、高収益の顧客に効果的に利益を還元できるのです。

  □顧客差別化マーケティングの導入

   1.準備

     (1)特典プログラムを決定する

       まず、顧客の情報を集めることが必要です。

       顧客カードを導入して、カード会員に特典をつけることで会員組織を拡大
       し、顧客情報を集めるという手法が一般的です。

       その場合に検討しなければならないことは、メンバー全員に提供する特典    
       プログラムの内容、費用対効果です。

       次に、効果的な告知方法が検討事項になります。

       売上高の70%以上、購入件数の半数以上を顧客番号付きにしなければ、
       顧客の全体像を把握することはできないと考えられています。

       そのためには、

        効果的な還元プログラム、会長勧誘キャンペーンによるPRなど、
        顧客にとってプログラムが魅力的になる工夫が必要

       になるでしょう。

       ほとんどの顧客がカードを所持するようになれば、一斉割引と大差がなく
       なってしまいますが、

        まずは顧客情報の収集が目的

       です。

       顧客情報の収集にもとづいて効果的に顧客差別化を進めるほど、広告と
       特売の主要なコストが顧客の収益性に応じて配分されるようになり、増収
       増益が期待できるようになるのです。

     (2)必要となる設備などを検討する

       顧客情報の収集方法(顧客カードの運用が一般的)、店舗に保管するデー
       タの種類、本部に保管するデータの種類と分析項目、また、ダイレクトメー
       ルとの連動方法など、さらにPOSを中心とするシステム要求と具体的な構
       築方法(社内構築、外部委託)などを検討します。

       まず、顧客差別化マーケティングの導入にあたって必要になる設備などを
       あげると、次表のとおりです。

       ここでは、顧客カード、POSシステム、顧客データ分析システムについてポ
       イントを以下にあげます。

       @顧客カード

        ここでいうのはカードの方式の検討です。

        普及している顧客カードには、磁気カード方式、ICカード方式などがあり、

         展開を考えているプログラム内容、顧客データベースシステムの
         仕様、想定される発行枚数、見込まれる経済効果などと導入コスト
         を比較検討して、カード方式を選択する

        ことになります。

       APOSシステム

        通常、小売店における商品管理のシステムにはPOSが使われています。

         顧客差別化マーケティングを実現するには、POSを拡張して、
         顧客データを一元管理するためのシステムを構築することが必要

        になります。

        POSに顧客カード読み取り装置を連動させ、POSデータを蓄積するストア
        コントローラー(店舗コンピューター)のデータ内容に、顧客データが追加
        されるようにシステムを組むことが必要になります。

       B顧客データ分析システム

        顧客データ分析システムにもたせるべき基本機能を検討します。

        主要な分析項目をあげると次のとおりです。

      顧客データ分析用のコンピューターを店舗ごとに設置するか、本部に集中す
      るかは、プログラムの運営方法や、店舗の規模、業態によって検討します。

     (3)ツールを作成する

       運営プログラムの内容、告知方法などにもとづき、店頭看板、店内ポス
       ター、サインボード、POP、会員申込書、などのツール類を作成します。

     (4)従業員教育、テスト導入を実施する

       会員募集の開始までに、従業員にプログラムを十分に理解させておくこと
       が必要です。

       従業員の理解促進とプログラム運用のテストの両面から、従業員に会員購
       入のモニターとして3カ月程度の運用を行うことなどが考えられます。

       また、パイロット店でのモニター顧客を対象にした運用、あるいはメーカーと
       の協同企画などもあわせて実施し、問題点、利点を洗い出すことも考えら
       れます。

   2.運用

     実際の運用において具体的に考えなければならないのが、得意顧客に順次
     還元する特典の内容をどのようなものにするのかということです。

     商品管理ではABC分析などによって管理の方法を変えますが、同様に、累計
     購入額の大きさによって顧客への対応を変えていくのです。

     顧客の購買行動が見返りに左右されるとすれば、単純に考えて、顧客に望む
     行動をしてもらい、それに対して見返りを与えるようにすればよいといえます。

      顧客のどのような行動に対して見返りを与えたいのか、顧客の立場から
      仮説を立てて、

       (1)有意義な顧客のグループ分けを考える

       (2)顧客グループ別の対応(特典)を考える

      必要があります。

      (1)有意義な顧客のグループ分けを考える

        まず、おもに購買実績に応じた単純な分類の例を考えると、たとえば次の  
        ようなものがあげられます。

        実際の運用では、さらに、細かい特徴で一人ひとりの顧客を分類できるよ
        うにすることも可能であり、効果的であると考えられます。

        たとえば、流行商品や特売商品ではなく、得意顧客が愛用している商品
        を知ることができれば、より細かく効果的な顧客別の対応が可能になるで
        しょう。

      (2)顧客グループ別の対応(特典)を考える

        こうした顧客分類を進めながら、価格の差別化、特典の差別化を行います。

        具体的には、顧客がどの程度利益を与えてくれているかによって特典を
        比例配分します。

        一般的に利用されている方法をあげると次のとおりです。

        その他、ソフト面で、より上位の顧客に特別な権利を提供する(サロンの
        利用、アドバイザーによる相談、特別会員用チェックアウト、など個別対   
        応を行う)プログラムを実施するなどの差別化策があげられます。

        いずれにおいても、

         きめ細かい価格設定や特典設定によって、
         上位顧客への魅力あるプロモーションを展開することが必要

        です。

        その際、たとえば差別化プログラムを設ける場合には、上限を設けて効
        果をなくしてしまわないように注意が必要です。

        特典に上限を設けることは、優良顧客を、同様のプログラムを実施してい
        る競合店に追いやってしまいかねないからです。

        そうなれば、収益性の高い優良顧客の代わりに、大きなコストをかけて新
        しい顧客を増やきなければならなくなるでしょう。

   3.分析と評価

     一定の運用を行ったら、そこで得られた顧客の購買データを分析し、特典、プ
     ロモーションの見直しなどに生かしていきます。

     購買データの分析にあたっては、購買層、購買時期の分析だけではなく、個々
     の顧客の動向がつかめるデータ分析を行うことが必要です。

     「A商品を頻繁に購入しているのは誰か」「頻繁に来店しているのは誰か」など
     を分析したうえで、優良顧客の維持と販売効率の向上を目指します。

     具体的には、

      顧客に焦点を当てて、
      「いつ」「どこに」「どの商品を」陳列すれば販売効率が上がるか、
      顧客グループ別にどのような商品を購入する傾向が強いかなどを分析する

     ことが考えられます。

     頻繁に購入する顧客に焦点をあわせて売場の戦略を考え、上位顧客により
     ターゲットを絞って品揃え、商品構成を見直していきます。

     顧客の特性が把握できれば、顧客の購買行動を変える(購買心理を刺激す
     る)ようにプロモーションをきめ細かく展開したり、推奨したい商品についてター
     ゲット別にDMをうつといった施策も可能になるでしょう。

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小売店経営の戦略

            

小売店経営の戦略

  ■戦略検討の流れ

   経常環境の変化が激しい今日、明確な戦略をもたずに小売店を経営することは
   難しいといえるでしょう。

   小売店が戦略・戦術を検討する際の一般的な流れは次のようになります。

   経営理念とは、「自分たちはこうありたい」、「社会に対してこのような貢献をした
   い」といった自店が存在する意義を明文化したものです。

   この経営理念を基に、外部環境と内部環境を分析して自店の経営戦略を決め、
   それに従って具体的な運営方法である戦術を決定します。

  □SWOT分析を行う

   外部環境と内部環境を分析する方法に、「SWOT分析」というものがあります。

   これは、「Strength(強み)」、「Weakness(弱み)」、「Opportunity(機会)」、
   「Threat(脅威)」という4つの分析視点の頭文字から取った名前で、経営環境を
   判断するために内部的な「強み」「弱み」と外部的な「機会」「脅威」を分析し、その
   結果を検討したうえでこれから自社が進んでいく方向を定めようとする手法です。

   1.SWOT分析の例

     ミニスーパーを例にあげると、次のようなことが考えられます。

   2.SWOT分析を行う際の留意点

     外部環境と内部環境を考えるうえで重要な視点としては、次のような項目があ
     ります。

     (1)外部環境を考える視点

       ・法制度など(規制緩和・強化の動き、税制改正など)

       ・景気動向

       ・社会情勢の変化

       ・市場(ターゲットとする顧客層の人口変化など)

       ・競争(競合他社、他業界からの参入など)

       ・仕入先(メーカーの動向など)

       ・流通環境(物流業者の動向、運送費の相場変動など)

       ・関連先(金融機関の動向、官公庁の施策、業界団体の動向など)

     (2)内部環境を考える視点

       ・経営者自身(経営能力、健康状態など)

       ・従業員(能力、やる気、忠誠度など)

       ・営業力(個々の営業マンの資質・能力、組織的な営業力など)

       ・商品力(品ぞろえの広さ、品ぞろえの深さ、鮮度、品質など)

       ・資金力(調達力、運用力)

       ・情報収集力

       ・保有ノウハウ

       ・保有イメージ(ブランドカ)

       ・保有顧客

   3.分析と結果活用の留意点

     分析を行う際には、経営幹部や従業員にも意見を求めるとよいでしょう。

     また、仕入先や販売先、金融機関担当者などにもヒアリングを行うと、より客観
     的な判断が可能になります。

     そのうえで、「弱み」や「脅威」に対しては、それらによって経営が行き詰まらな
     いよう事前対策を講じ、「強み」を伸ばし、「機会」を十分にいかす経営方針を
     立てるようにします。

     また、経営県境の変化を見過ごさないよう、定期的に分析を行うことも大切です。

  □主要顧客層とニーズを考える

   外部環境と内部環境の分析を受けて、「誰のどのようなニーズを何によって満た
   すのか」という事業範囲の設定を行います。

   小売店が生き残っていくためには、主要顧客層を決定し、ニーズに合った店づくり
   を行う必要があります。

   1.顧客層とニーズ分析の例

     婦人服店を例にあげると、次のようなケースが考えられます。

     このケースでは、「40歳代以上の女性」を主要顧客層とし、さらにそうした女性
     の「お出かけ用の服」というニーズを満たす品ぞろえを中心にすることが考えら
     れます。

   2.分析を行う際の留意点

     (1)顧客分類

       前出の例では、女性客を対象として、年齢を基準に分類しましたが、ほか
       にも「小中学生」、「高校生」、「大学生」、「社会人(若年層)」、「社会人(中
       高年)」、「高齢者」、あるいは商圏内の住居地区別、ライフスタイル別、職
       業別、所得者別など、さまざまな分類方法が考えられます。

       ターゲットとして把握しやすい基準を設定しましょう。

     (2)調査項目

       前出の例では商圏人口と1週間の購入客数を調査項目にしたが、ほかに
       も「店前道路通行客数」や「入店客数」などが考えられます。

       消費者特性については客単価と購入目的を重点的に把握しておきます。

     (3)商圏人口など

       商圏人口などは、市区町村役場の統計資料(住民台帳)などから把握できます。

       また、実地調査の必要なものについてはアルバイトや調査会社を活用する
       のもひとつの方法です。

     (4)主要顧客層の決定

       分析を基に主要顧客層を決定します。

       その際、対象数は十分か、購買力はあるか、現在の自店のノウハウ(強
       み)がいかしやすいか、競合店の状況はどうか、なども併せて考慮すること
       がポイントです。

     (5)店舗運営形態の設定

       主要顧客層のニーズをアンケートなどで再確認するとともに、自店の対応
       力を考慮しながら店舗コンセプトの設定につなげます。

  □店舗の運営形態を考える

   主要顧客層とそのニーズを明確にしたうえで、具体的に店舗の運営形態を検討
   することが、図の「戦略・戦術の検討」にあたります。

   1.運用形態の例

     鮮魚店を例にあげ、主要顧客層として、

      ・経済的に余裕のある層

      ・本物志向が強い層

     のケースをみてくと、次のようなことが考えられます。

   2.店舗運営形態を検討するための留意点

     (1)どのような商品を売るのか

       @商品の特徴

        ・高品質な商品(新鮮な商品、手作りの商品、ブランド品など)

        ・珍しい商品(輸入品、産地直送品、稀少品など)

        ・顧客の特定ニーズに対応する商品(体によい商品、環境に優しい
         商品など)

       A品揃えの方針

        ・○○に関する常連商品をどこよりも幅広くそろえる

        ・○○に関する商品を深く振り下げてそろえる

     (2)いつ売るのか

       ・早朝営業、深夜営業

       ・24時間営業 など

     (3)どのような売り場にするのか

       ・ハード面での特徴(造作、広さ、什器、照明、ディスプレーなど)

       ・ソフト面での特徴(レイアウト、POP、陳列、BGM、クリンリネスなど)

     (4)どのような価格で売るのか

       ・低価格での販売(日替わり低価格、エブリデーロープライスなど)

       ・市場相場価格での販売

       ・高価格での販売(同種の一般的な商品よりも高い理由を明確にする)

     (5)どのように売るのか

       @販売方法

        ・セルフ販売

        ・対面コンサルティング販売

        ・通信販売

       Aサービスによる差別化

        ・購入・金額に応じたポイントサービス

        ・アフターサービスの充実(修理、会員化による情報提供など)

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小売店開業の準備

             

小売店開業の準備

  ■出店地を決める

   1.よい出店地とは

     小売業は一般的に立地産業といわれます。

     立地の良し悪しが売れ行きに大きな影響を及ぼすという意味です。

     それでは、小売店にとってよい立地とはどんなところなのでしょうか。

     簡単にいえば、商圏内の人口が多く人が集まりやすいところがよい立地といえ
     ます。

     以下に具体的なよい立地の例をあげてみます。

     <よい出店地の例>

       a.商圏内の人口が多く、将来も人口の増加が見込める地域

       b.自店がターゲットと考える消費者が商圏内に多いこと

       c.商圏内に購買力の高い人々が多いこと

       d.近くに大きな駅やバスターミナル、車の通りの多い道路などが
         あり、人が集まりやすい場所であること

       e.出店地の前の道路の人通りが多いこと

       f.集客が見込める施設が付近にあること

       g.競合となる店が少ないこと

      bについては、その業種の特性によるところが大きいといえます。

      たとえばスーパーマーケットであれば、学生や独身者が多い土地より、ファミ
      リーが多い地域のほうが適しています。

      gに関しては、同業他社だけがライバルになるわけではありません。

      CDショップの場合、CDを置いている大型家電店や本屋などもライバルにな
      るのです。

   2.商圏調査を行う

     商売を始めるのに適した立地は人気があり、一般的に賃借料や土地代も高い
     ものです。

     いくらよい立地でも、出店コストが大き過ぎてしまうようであれば、安定した経
     営は難しいでしょう。

     自己の資金計画の範囲で無理のない経営ができる場所を探すために、自分
     自身で商圏調査を行ってみることが大切です。

     商圏調査を行う際には以下の点に注意します。

      (1)時間や天気、曜日などを変えて複数回実施する

        異なる条件で調査することで、時間・曜日・天気などによる人の動きの変
        化がつかめます。

        人の動きを正確に把握することにより、出店の可否が判断できるだけで
        なく、曜日や時間帯により店員数を変える、営業時間を工夫するなど、営
        業方針に柔軟性をもたせることが可能になります。

      (2)通行人を観察する

        通行人の職業や年齢だけでなく服装なども細かくチェックします。

        また、歩く速さや、どこに一番人が集まっているかといった点もみておきます。

      (3)立地予定地前の道路及びそこへのアクセス状況をみる

        車で来店する客を対象にする場合、車の通行量だけでなく道路からス
        ムーズに入店できるか、周辺道路からその道路へ入るのに一方通行や
        歩行者天国などの障害がなくアクセスできるかといった点にも留意する必
        要があります。

      (4)将来も含めた地域開発の動向を把握する

        出店する場所が将来も含めて発展していくかを見極める必要があります。

        現在はにぎわっていても、近隣に大型ショッピングセンターが出店したり、
        新しい商店街ができたりすることで、客がそちらに移っていく可能性も出
        てきます。

        また、逆に近隣に駅や役所などの集客が見込める施設ができることで、
        客数が増えることも考えられます。

      (5)公的な資料を活用する

        商圏内の人口構成や世帯数、消費水準など商圏内の消費者の特性や、
        将来の地域の開発計画などについての情報は区役所、市役所などの資
        料で把握できます。

  □店舗を取得する

   1.店舗を借りる際の留意点

     自前で店舗が準備できなければ、貸店舗を利用することになります。

     愛顧客(優良顧客)を作るには同じ場所で長く営業できることが大切です。

     そのためにも適切な物件を探し、きちんとした賃貸借契約を結ばなければなり
     ません。

      (1)建物の状況を把握する

        立地条件だけでなく建物の造りについても現状を把摸しておきます。

        そのうえで、看板をつけたり、内装を変えたり、商品棚を設置したりなど、
        開業するに当たっで建物にどの程度手を加えなければならないかを検討
        します。

        借家に手を加えることは紛争の原因になりやすいため、賃借契約時には
        この点について明確にしておきます。

        また、貸しビルの場合は、共用部分と専用部分の区別もはっきりさせてお
        かなければなりません。

      (2)建物の権利関係を確認

        建物の所有者と貸主が別の場合、貸主に貸す権利があるかどうかを確
        認しておきます。

        この点が不明確なまま契約すると、紛争の種になりかねません。

        建物に抵当権などの登記がついていないかどうかということも確認する
        必要があります。

      (3)契約書記載事項を確認

        貸借契約のおもな要素は、当事者・目的物・賃料・期間ですが、このほか
        にもさまざまな要素があります。

        とくに留意すべき点は、建物の使用目的と改装です。

        貸店舗の場合、業種を限定されることがありますが、将来の商売替えの
        可能性も考慮して、使用目的は弾力的に規定してもらうことが望ましいと
        いえます。

        また、改装については内装を変える程度であれば問題はありませんが、
        改築したり増築したりすることは原則として許されません。

        開業に必要な造作が後の紛争原因とならないよう、事前にどの程度の改
        装が必要かを検討し、その内容を契約書に盛り込む必要があります。

   2.店舗契約時に必要な資金と金額の妥当性

     店舗を借りるにあたっては、家賃・共益費といった費用に加え、契約時に、権
     利金(礼金)・敷金・保証金・不動産業者などの仲介業者への手数料などが必
     要となります。

     これら契約時に借り主が貸主に支払う費用を次に列挙します。

     なお、地域的な慣習によりこれらの費用がそのまま適用されない場合もあります。

     (1)権利金

       権利金は礼金ともいわれ、借り主が貸主に払う賃料・敷金以外のお金です。

       これは、貸主のものになり、契約が終了しても戻ってきません。

       借り主はこれを権利金の効果がおよぶ期間にわたって経費として償却でき
       ます。

     (2)敷金

       賃料、そのほかの債務を担保する目的で借り主が貸主に支払うー時金です。

       契約が終了した際には、未払い分などを差し引いた額を返却してもらえます。

       保証金は敷金と権利金の中間の意味をもち、借り主に返却されない部分
       は「保証金の償却率」という言葉で表されます。

       契約時には、支払額が予定の売り上げからみて妥当か否かを検討する必
       要があります。

       妥当性は実質賃料から判断します。

       実質賃料とは毎月支払う家賃に、1カ月分に換算した敷金・保証金・権利
       金の運用益および返却されない額の償却額を加えたもので表わされます。

       算出方法の事例です。

  □開店の準備

   1.店の位置付けを決める

     出店場所が決まり、店舗を確保できたら開業の準備を始めます。

     最初に決めることはどんな店にするのかということです。たとえば、衣料品店
     でも若者向けの店と年輩者向けの店では、店舗デザイン・品揃え・店員などあ
     らゆる面で違った準備が必要になります。

     このように、店の位置付けは経営の基本になるものですから、最初に明確にし
     ておかなければなりません。

     具体的には、次の点について店の基本方針を固めておくことです。

     <店の基本方針として留意すべき点>

       a.対象とする顧客のイメージ

       b.店のイメージ(何を売りにしている店なのか)

       c.品揃えのコンセプト

       d.価格ゾーン

       e.接客の工夫

   2.店舗を作る

     (1)設計・施行

       a.設計・施工業者を選ぶ

         よい店か否かは店舗の作りに大きく影響されます。
         したがってこちらの意図する店のコンセプトを確実に表現できる、信用・
         実績のある業者を選ぶことが大切です。
         事前にその業者が担当した物件をみたり、その物件の施主の話を聞く
         などしておくと業者の様子がつかめます。

       b.工期を守る

         工期の変更はその後の開業のスケジュールにも影饗してきますので、
         無理のない計画を立てるとともに、工事完了引き渡しの期日を厳守して
         もらうことも大切です。
         また、工程表を作ってもらい、自らも工事の進捗を把握します。

     (2)売り場づくり

       お客が隅々まで歩け、商品がみやすく、選びやすい売り場がよい売り場と
       いえます。

       そのためには、店舗のレイアウト・商品陳列方法・照明に工夫が必要です。

       a.店舗レイアウト

         対象客、店の広さにより理想的なレイアウトは異なります。
         一般的には、購入頻度が高く、購入の意思決定が早い商品を争う店に
         は、間口が広い開放型の店舗が向いています。
         一方、購買決定に時間がかかる商品を取り扱う店や間口の狭い店に
         は、出入りはしにくいものの、いったん店内に入るとゆっくりと中をみて
         歩ける閉鎖型の店舗が向いているといわれます。
         通路の取り方のポイントは、お客の買い方に合わせること、お客の勤務
         づくりを考えること、商品特性に対応したものであることです。
         目的買いが中心の店は通路幅を広くし、ゆっくりとみてから決めるタイプ
         の店は逆に通路は狭くてもよいとされています。

       b.商品の陳列

         商品は業種・業態・サイズ・価格などによってまちまちで一概に決めるこ
         とはできませんが、基本的には商品部門ごとの売上高、粗利益の構成
         比と商品の陳列スペースは同じ割合にします。
         商品の陳列は、みやすく手に取りやすい陳列を心がけることが基本です。
         また、陳列場所の特性により変化をもたせます。
         ウィンドーには店の姿勢やコンセプトを表現できるような商品を演出して
         展示します。
         奥正面の壁面は店内へ回遊するきっかけを作るもので、ウィンドーに次
         いで重要になるため、お客の注意を引くように展示を工夫します。

       c.照明

         照明の基本は商品の特徴を演出できることです。
         たとえば、生鮮食料品売り場は商品の新鮮さを演出するタイプの照明
         が必要です。
         また、衣料品店では、外着売り場は下着売り場と異なり、微妙な色合い
         が識別できる照明を使います。
         これと同時に、明るさを調節できる機器の採用など、省エネの観点から
         も適切な照明を選ぶことが大切です。

   3.商品を揃える

     (1)商品政策を決める

       a.品揃えを決める

         店が対象とする顧客をイメージして商品を揃えます。
         定期的にお客が読みそうな雑誌に目を通したり近隣の競合店調査を行
         うなどして市場の売れ筋商品の情報をつかみ、その商品の充実を心が
         けることも必要です。

       b.価格帯を絞る

         品揃えの豊富さが売り上げを左右しますが、何でも揃えればよいので
         はなく、店の位置付けに沿って取り扱う商品の価格帯も絞らなければな
         りません。
         絞った価格帯のなかで品揃えに変化をつけ、政策的に売れ筋商品を作
         るのです。

     (2)商品を仕入れる

       a.仕入れ先を選ぶ

         仕入れ先は慎重に選定し、できるだけよい仕入れ先を選ばなければな
         りません。
         仕入れ先選定の条件は、仕入れ条件や商品力に優れていることはもち
         ろんのこと、物流機能・情報提供力などに優れていることも重要になります。
         仕入れ先は、商工会議所などの経営相談所に相談する、商品のメー 
         カー・問屋組合に問い合わせる、問屋街や卸売りセンターへ直接出か
         けるなどの方法で探します。

       b.取引上の注意

         仕入れ先は複数にするのが一般的です。
         一社だけだと力の弱い小資本の開業者側が不利な取引を強いられる
         可能性があることや、仕入れ先に万一の事態が起こったときに商品を
         まったく仕入れることができなるからです。
         最初の仕入れには現金決済を求められることが多々あります。
         また、取引保証金などを要求される場合もありますが、いずれも新規開
         業のリスクを見越しての対応と考えればやむを得ない面もあります。

     (3)在庫管理の仕組みを作る

       売れ筋商品が在庫切れになり販売機会を失ったり、反対に不良在庫を抱
       えてしまったりしないために、あらかじめ在庫管理の方法を決めておきます。

       最初に仕入れ計画を立て、それにしたがって商品ごとの在庫高を算出します。

       在庫を調べる周期は、週・月次・年次のほか季節ごとに調べることもあります。

   4.事業計画を立てる

     (1)利益計画を立てる

       a.必要売上高を求める

         開業するに当たっては、採算がとれるために売上高がどのくらい必要か
         つかんでおく必要があります。
         次に損益分岐点方式による算出方法をご紹介します。
         この方法は費用を変動費と固定費に区分して計算する方法です。
         なお、変動費を売上原価、固定費を販売費および一般管理費として考
         える簡便法により説明します。
         必要売上高のほか、潜在購買力から推定した自店の可能売上高、業界
         平均売上高(1坪当たり)などを総合的に勘案したうえで損益計画表を
         作ります。
         損益計画表は少なくとも3年から5年を予想し作成しておきます。

       b.目標利益を決める

         目標利益の決め方はおもに次の3つの方法があります。

     (2)月別販売計画を立てる

       a.計画表を作る

         必要売上高が決まれば、これをもとに月別の販売計画を立てます。
         計画は行事や消費者の月別の購買動向を考慮に入れながら立てます。
         消費者の購買動向は総務省統計局が発表している「家計調査」などが
         参考になります。

          「家計調査」(総務省統計局) 

         販売計画を一覧表にすると目標を社員全員が共有でき、目標達成状況
         が分かります。
         表には売り上げ目標、商品別の売上高と合計額などのほか、販促計画
         やその月のメーンイベントなどの項目も入れるとよいでしょう。

       b.販促活動を行う

         月別の販売計画が決まれば、それに向けてさまざまな販促活動を行い
         ます。
         販促活動には月ごとの行事向けの活動のほか、新規顧客の開拓・固定
         客化・客単価アップなどテーマ別の活動もあります。
         具体的な方法としては、セールなどイベントの開催、購入金額ごとに点
         数がもらえるポイントカードの発行、複数商品を一緒にして売るセット販
         売などがありますが、販促活動の目的によりもっとも適した方法を採用
         します。

   5.業務管理方針を決める

     販促活動を効果的に行い売り上げ目標を達成し、利益を上げる一方で企業活
     動を低コストで無駄なく行うために、しっかりしたヒト・モノ・カネの管理が必要です。

     (1)お金の管理

       a.資金繰り

         仕入れ、販売の循環をスムーズに保つために、十分な資金を確保でき
         ることが大切です。
         資金繰りは資金繰り表を用いて行います。
         その月に出・入金する予定の金額とその内訳を−覧表にし、過不足が
         前もって分かるようにします。年間の計画表を作って管理します。

       b.日常の取引の管理

         経営状況を正しく把握するために、日々のお金の流れをきちんと記録し
         ておきます。
         その際には帳簿を利用します。
         帳簿の記録に基づいて、税金の申告をしたり、経営状況を把握したりす
         るので、正確な記録が必要です。

     (2)従業員の管理

       a.販売員教育

         販売員の気持ちのよい応対は店のファンを増やし、固定客化につなが
         ります。
         販売員教育では、言葉遣い・身だしなみ・商品知識などの基本的な事項
         に加え、お客の要望に応じたサービスを心がけることも強調します。

       b.店の価値観を共有する

         同じ教育をしても、すぐに実行されている店とまったく効果のない店があ
         ります。
         販売員の行動や態度は教育だけでなく、その店のもつカラー(社風)に
         も影響されます。
         ですから、日々の業務のなかで社長が社員に対しどんな店にしたいの
         か、どういった行動が望ましいかを説き、社長のもつ価値観を従業員に
         共有させ、自店のカラーをつくり上げることが大切です。

  □届け出をする

   1.許認可を得る

     開業に法令上の許認可が必要となる業種があります。

     一般的に、物販店はこの規制の対象になることは少ないのですが、食品関係
     を扱う業種の多くは許認可が必要になります。

     必要な許認可および届け出先は業種により異なります。

     許認可取得の手続きを行う窓口は、大きく分けて、都道府県庁および他官庁・
     保健所・警察署があります。

     自店が許認可の対象になるかどうかは、地域の商工会議所に確認するとよい
     でしょう。

   2.開業届を出す

     (1)税務関連

       個人で開業する場合は事業開始後一定期間内に「開業届」「青色申告承
       認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務署へ提出
       しなければなりません。

       法人で開業する場合は設立後一定期間内に、「法人設立届出書」、「青色
       申告承認申請書」、「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務
       署へ提出します。

       提出期限は事業開始の時期によっても若干異なります。

       詳細については、所轄の税務署にお問い合わせください。

     (2)社会保険関連

       社会保険のうち、健康保険・厚生年金保険については、法人企業では業種
       にかかわらず常時1人以上を雇用する事業所、個人企業の商業・工業着で
       は、常時5人以上雇用する事業所は加入が強制されています。

       個人企業の商業・工業着で5人未満の事業所および個人企業の飲食・娯
       楽・サービス業などは加入が任意ですが、雇用の安定という観点からは積
       極的に加入されることをお勧めします。

       これらは社会保険事務所に届け出ます。

       なお提出期限は、いつまでといった明確な期限は定められてはいません
       が、事業を開始したら、すみやかに手続きを済ませておきましょう。

       一方、労災保険・雇用保険は常時1人以上を雇用する場合は加入が必要
       です。

       労災保険は労働基準監督署に、雇用保険は職業安定所にいずれも事業
       開始の翌日から10日以内にそれぞれ届け出ます。

       詳細は、近くの社会保険事務所、労働基準監督署にお問い合わせください。

  □開業のための相談先

   各地域の商工会議所は、地域の商工業者の動向を把握するとともに、経営相談
   窓口を設け経営者の相談に応じています。

   開業に関しても多くの知識や事例などの情報をもっています。

   開業前に一度ご相談することをお勧めします。

   経験のない業種で新たに開業する場合は、多くのリスクがつきまといます。

   このリスクを軽減するためには、運営ノウハウをもち、仕入れ力があり、マーケテ
   イングや経営指導までしてくれるフランチャイズに加盟することも有効です。

   フランチャイズ本部を選択する際には、開業のための費用が妥当なものか、本部
   からどんなサービスが受けられるかといった点を、実際に本部を訪問したり、すで
   にフランチャイズ加盟している店主に聞くなどして確認し、加盟するに値する本部
   かどうかを判断します。

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物流子会社の設立

          

物流子会社の設立と経営

  ■物流子会社設立のメリット

   メーカーや小売業などが、自社(荷主)で物流子会社を設立するケースはもはや
   珍しくありません。

   中には、日立物流、川鉄物流、キリン物流、東芝物流など、売上高数百億円を超
   える大手企業もあります。

   また、NTTの物流子会社であるNTTロジスコや、三菱商事の物流子会社である
   エム・シー・トランス インターナショナルなど、メーカー以外の商社や情報サービ
   ス会社などが物流子会社を設立するケースもみられます。

   大手企業を中心に物流子会社が設立されている背景には、次のような目的があ
   るものと考えられます。

   (1)物流コストの削減
     物流部門を切り離すことによって、親会社の物流コストの削減を図ることが期
     待できます。

     物流の領域を明確にすることが可能になり、責任を明確にすることもできる。

     そして、物流コストの算定、その変化が容易に分かり、物流管理がしやすくな
     ることが期待できます。

   (2)物流サービスの向上

     分社化によって物流子会社にはコスト意識が芽生え、物流サービスが向上す
     ることが期待されます。

     また、親会社の業務・製品・流通内容を熟知していることから、親会社向けの
     物流サービスについては、どの物流会社よりも良いサービスを提供できる会
     社になる可能性があります。

   (3)親会社の余剰人員の活用

     親会社のスリム化によって生じた余剰人員の受け皿として、また、定年退職
     者、高齢の管理者の受け皿として子会社を位置付けることもできます。

     物流作業は企業内の他部門の作業とは異なるため、別会社にして異なった待
     遇で採用すれば人件費を抑制することもできます。

  □物流子会社の抱える問題点

   メリットが大きい物流子会社ですが、物流子会社、親会社には問題点も存在しま
   す。

   1.物流子会社にとっての問題点

     一般に、物流子会社の経営上の問題点として次のような点が挙げられます。

     (1)コスト面

       ・親会社の料金引き下げ要求により売り上げ、利益が減少する可能性が
        ある

       ・物流子会社自身で戦略的なコスト削減を進めることは難しい

     (2)サービス面

       ・親会社優先の物流サービスとなり、一般荷主の開拓が難しい懸念がある

     (3)労務面

       ・トップの任期が短期間で思い切った改革が進まない

       ・出向者とプロパー社員との確執が発生する可能性がある

       ・出向者が多いと従業員のモラルが下がる可能性がある

       ・物流業に不向きな人材の押し付け人事に発展する可能性がある

       ・パート社員の募集が親企業ほど容易ではない

       ・親方日の丸的な体質になる可能性がある

       ・親企業志向が強く、自発性が欠如する可能性がある

   2.親会社にとっての問題点

     また、親会社側にとっても物流子会社の設立には次のような問題点がある。

     (1)コスト面

       ・物流コスト削減が思ったほど図れない

     (2)サービス面

       ・かえって物流サービスのレベルが低下した

       ・顧客の声が親会社に届きにくくなる

       ・物流協力会社との関係が悪化する可能性がある

     (3)労務面

       ・親会社からの出向者が多く、ビジネスライクな関係がなかなか築けない


   3.親会社と物流子会社が抱える矛盾

     物流子会社と親会社双方の抱える問題点は互いに密接な関係にあります。

     例えば、親会社が物流コストの削減を図るために、物流子会社に対して運送
     料金などの引き下げを要求し、物流子会社がこの要求を受け入れれば、物流
     子会社自身の収益性を悪化させることにつながります。

     つまり、物流子会社は親企業の物流コスト削減に貢献しようとするほど、自ら
     の首を絞めるというジレンマに陥ってしまうのです。

     また、中高年対策として親会社の余剰人員を物流子会社に大量に移籍させた
     場合、親会社にとっては「自社の人件費の圧縮ができる」「ポスト不足を解消
     することができる」というメリットがあります。

     しかし、物流子会社にとっては、人件費負担が大きくなったり、プロパー社員の  
     士気を低下させるなどのデメリットにつながります。

     ほかにも、親会社がほかの会社と合併などをした場合、親会社にとっては有
     益な統合であったとしても、双方(親会社と合併先の会社)が物流子会社を
     持っていた場合には、物流子会社がグループ内に複数存在することになって
     しまいます。

     このように、親会社のメリットが物流子会社のデメリットになるといった矛盾を
     はらんでいるのです。

  □設立における留意点

   ここでは、物流子会社を設立する際の留意点を挙げてみます。

   1.物流子会社設立の目的

     前述したように、親企業が物流子会社に期待するのは「物流コストの削減」「物
     流サービスの向上」「親会社の余剰人員の活用」などです。

     しかし、物流会社を設立する際に、単純にこうした期待イコール設立目的とし
     てしまうと、さまざまな問題が生じることになります。

     そのため、経営多角化の一環として物流子会社を考えることや、物流子会社
     の設立を通じて「関連事業を含めた一元管理をする」「同業会との水平的な共
     同化を図る」「流通段階(卸・小売など)との垂直的な共同化を図る」といった共
     同化を図ることなどを目的の中心に据えることが重要でしょう。

   2.重要なグループ全社の支援

     物流子会社の設立当初は、業務のほぼ100%を親企業およびそのグループ 
     会社から受注に頼ることになります。

     そのため物流子会社の設立に当たっては、親企業を中心としたグループ会社
     全体からの支援を得なければなりません。

     設立目的や取引条件など、後でさまざまなトラブルを起こす原因となるような
     内容については、事前にグループ会社の関係者に周知徹底を図っておく必要
     があります。

   3.事業戦略を立てているか

     設立を目指す物流子会社が将来どのような方向に進むのが望ましいのか、事
     前に事業戦略を立て、「どのような市場を将来狙うのか」「どのような内容の物
     流サービスを行うのか」といった市場や商品について明らかにしていくことが重
     要です。

     例えば市場については、将来「企業グループ物流業務のみ行うのか」「小売・
     卸のどの流通段階まで物流業務を行うのか」「同業他社の物流業務を行うの
     か」「親企業とは異業種企業の物流業務も行うのか」といったことを事前に決
     定しておくべきです。

     また商品については、「将来目指すのは輸送、保管、包装、梱包業務、荷役、
     在庫管理、情報処理、集金回収までも含めた総合物流サービスであるが、設
     立当初は輸送、保管業務を中心とした物流サービスを行う」といったように、将
     来の目指す方向性とその実現段階などを明らかにすべきです。

   4.事業計画の策定

     事業戦略が決定したら、具体的にどのようにその戦略を遂行していくのかとい
     う事業計画を策定しなければなりません。

     まずは、5〜10年間程度の長期計画を策定する必要があるでしょう。

     その長期計画の中では、「自社がどのように物流サービスの総合化を図って
     いくのか」「どのように親企業、グループ会社以外の外部取引先を開拓していく
     のか」「プロパー社員をどの程度に増やしていくのか」といった内容を盛り込む
     べきです。

     この際に留意すべきは、理想は高く掲げながらも、実現可能な計画を中心に
     長期計画を策定していくことです。

  □経営における留意点

   物流子会社の経営に際して物流子会社、親会社双方が留意しなければならない
   点を挙げてみます。

   (1)長期的なビジョンの作成

     ・経営トップを親会社の都合によって頻繁に変えない

     ・社長が変わっても経営ビジョンを変えないようにする

   (2)人材活用策

     ・押し付け人事を排除する

     ・親会社からは出向社員より転籍社員を受け入れる

     ・プロパー社員の登用を図る

     ・物流専門家の育成を図る

   (3)設備計画

     ・物流計画を親会社と子会社双方で立てる

   (4)財務戦略

     ・基本的に物流子会社の経営は独立採算制とする

     ・親会社と物流子会社との取引において料金は世間並みを基本とする

     ・物流子会社から親会社への利益の吸い上げや、親会社からの損失
      補填などをなくす

     ・物流子会社の業績評価、成果配分のルールを明確にする

   (5)コミュニケーション

     ・親企業、グループ企業との太いパイプを持った人材をトップに置く
     ・親会社、子会社間のコミュニケーションの強化を図る

     ・顧客情報を物流会社を通して迅速にキャッチできる体制を整える

   物流子会社設立が単なる余剰人員の活用が主目的であっては決して成果は見
   込めません。

   上記で述べたように、綿密な事業戦略、事業計画を立てることが必要不可欠とな
   ります。

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物流コストの削減

            

物流コストの削減

  ■物流コストの削減で利益向上

   企業が利益を確保するための手段として、物流の効率化とコスト削減が盛んに叫
   ばれるようになっています。

   たんに売上の増加を追求したり、原価や人件費を削減するという方法以外に、物
   流の効率化による利潤の追求が求められる時代になってきたのです。

   物流とは、梱包・包装・荷役運搬・物流加工・入出荷・輪配送・保管・物流管理・物
   流情報システム運用など、「一商取引の結果生じる、モノの流れに関する一連の
   活動」を指しますが、企業によってその定義が若干異なることもあります。

   したがって、まずは自社の物流業務の範囲はどこまでかを明確にしたうえで、そ
   れぞれの業務に関するコストデータを収集する必要があります。

   自社の物流コストの概要とそれぞれの業務のコスト比率を明らかにすることで、
   物流コスト削減の対象業務を把握することができます。

   物流コストを削減すべき業務に応じて、何通りかの改善計画を作成したうえで、そ
   れぞれの費用対効果を比較検討し、具体的なコスト削減方法を決定しましょう。

  □物流部門が抱える問題点

   物流コストの削減を検討するうえで、まずは自社の物流部門のどこに問題がある
   かを把握しなくてはなりません。

   そこで、問題を把握する際のいくつかの視点を紹介します。

   1.人材の問題

     物流部門に優秀な社員を配属していないために、全社的な視点で物流をとら
     えることができるような管理者、および社員が育っていない企業があります。

     また、社長の実行力に依存してきた企業では、トップダウンの意思決定の弊害
     からか、物流現場の管理者の意識が低く、担当者の意欲も乏しいといった問
     題が生じています。

     このような場合には、
      各地の営業所や物流拠点をとりまとめ、他部門との調整を行ない、
      業務改革の提案も行なえるような、意識の高い優秀な人材を物流
      部門に投入する必要があります。

   2.物流組織および物流拠点の問題

     物流拠点が分散しており「物流機能の連携がうまくとれない」、あるいは物流
     拠点が手狭で「受発注から配送などの業務を分散した場所で行なっている」な
     ど、物流拠点に問題を抱えているケースがあります。

     このような場合でも、部門間の連携が円滑であれば、これらのデメリットを補う
     ことができますが、実際には、物流が部署ごとに独立しているため、同一企業
     に一日に何度も別部門から配送されるというような非効率的な事態が生じて
     いることもあります。

     物流部門の位置付けや権限を明確にし、積極的な改善提案ができるような環
     境をつくるとともに、物流拠点のあり方についても再度検討してみることが望ま
     れます。

   3.業務処理の問題

     営業や経理部門などの強化は図ったものの、物流部門は旧態依然とした業務
     処理を行なっていることがあります。

     具体的な業務処理の問題点は、

      ・業容の拡大に伴いシステムを手直ししてきたが、現在の物流の業務
       処理に合わなくなってきた。

      ・現状の業務処理のままでは、システムを根本的に見直すことができない。

      ・ピークに合わせた人員配置となっており、閑散時の従業員の活用が
       十分できていない。

      ・勘と経験に頼った作業方法であるため、ベテランが休暇をとると作業
       能率が極端に低下する。

      ・貸切便に関する運行状況や配達件数、あるいは積み合わせ便における
       1件あたりの配送個数・重さといった配送効率が把握できていない。

      ・現物と帳簿在庫が合わない。伝票なしの出荷や、仮伝票の際の出荷
       後の伝票処理に落ち度がある。

      ・営業部員が物流業務を兼務するケースがある。
       物流面でも非効率であり、営業にも注力できないなど、デメリットが多い。

   4.情報の問題

     受注見込みなど物流部門に入る情報の精度が低いことに加え、これらの情報
     が発注業務に十分活かしきれていないケースがあります。

     かといって、中途半端な状態でのシステムの活用は、過剰在庫や欠品の原因
     ともなりかねない。

     物流部門において受発注に関する正確な情報が把握できることが望ましく、そ
     のためには、営業・経理など他部門とのコミュニケーションを強化する必要が
     あります。

  □物流コスト削減の視点

   次に、物流コスト削減のための6つの視点を紹介します。

   1.標準化

     【受注】

     得意先の受注を曜日別に指定する(得意先の協力が必要)。
     →受注件数の曜日の波が少なくなり、受注部門の作業条件が改善される。

     【入荷】

     仕入先へ計画的に発注し、入荷部門と連携して業務を進めます(調達部門の
     充実および仕入先の受け入れ体制づくりが必要)。
     →入荷検品、棚入れ保管をスムーズに行なうことができる。

     なお、事情により業務の波を平準化できない場合には、波に応じて曜日別・時
     間帯別にパートなどを採用するという方法がある。

   2.簡素化

     【受注】

     受注情報の流れを簡素化できないか検討してみることが必要です。
     たとえば、「得意先 → 営業所 → 受注処理セクション → 倉庫」と受注
     情報が流れているのであれば、「得意先 → 受注処理セクション → 倉庫」
     のように単純にできないか検討します。
     情報の流れを簡素化することで、物流関連の人件費を削減できますし、
     物流サービスも向上します。

     【配送】

     営業所が在庫を保有して物流拠点の機能も兼ねている場合、福岡営業
     所から大阪方面、大阪営業所から九州方面というように、担当エリア外
     に交錯して配送すると余分なコストが発生します。
     このような無駄な配送は極力排除し、できるだけエリア内の配送に受注
     をまとめるように見直しする必要があります。
     ただし、このような場合、物流情報システムの見直しを同時に要求される
     ことがあります。

   3.円滑化

     【保管】

     物流コストは、人が介在するほど増加します。
     保管の場合も、段ボール箱を、床に段積みで保管するのではなく、はじめ
     から台車に載せて保管しておくと、商品を取り出して台車に載せる手間と
     時間が省けます。
     棚保管の場合も、ケース出荷する商品は台車に載せて棚の一番下に保管
     しておくと、運ぶのに人手を多く必要としません。

     【流通加エ】

     ピッキングした後の値札付けなどの流通加工段階で、商品が滞留する
     ケースがあります。
     このような場合には、「流通加工場のレイアウト・スペースに改善点は
     ないか」「流通加工の自動化・省力化ができないか」「ピッキング担当者と
     流通加工担当者の業務バランスがとれているか」などの点を見直して
     みる必要があります。

   4.直送化

     【配送】

     「配送センター → 営業所 → 得意先」の二段階で配送するよりも、「配送
     センター → 得意先」と直送化することで配送コストを削減することが
     できます。
     また、この場合、営業所で配送に要した作業が配送センターに集約され
     ることになりますから、作業人員・作業時間も少なくすることができます。
     ただし、指定納品書の作成、指定ラベルの貼付方法など得意先ごとの
     納入条件をマニュアル化しないと、配送センターの定型的な業務になじま
     ないため、納品マニュアルの作成、配送センターの業務処理システムの
     変更など、事前の準備作業を粘り強く行なう必要があります。

   5.標準化

     【帳票】

     注文書や伝票などの帳票形式を全社的に統一することが改善の前提です。

     【コード】

     商品コードや得意先コードが合理的であることが改善の前提となります。
     あまりに複雑なコード体系は、在庫管理を難しくしてしまうため、各部門
     での調整が必要です。

   6.集約化

     【配送】

     拠点間輸送の場合、一度に送る量をまとめることでコストを削減できます。
     たとえば、特別積み合わせで輸送する場合の運賃が2tで3万円、10t車の
     貸切運賃が12万円とすると、貨物を10t単位にまとめれば3万円の運賃を
     削減できます。
     得意先配送に貸切便を使用している場合は、運賃が定額の場合は積載率
     などの効率を上げること、つまり納品をまとめることや一便の配送先を増や
     すことによって1個あたりの運賃を低減させることができます。
     なお、配送の集約化を検討する場合には、現状の物流体制でどうして輸配
     送がまとめられないのかその理由を分析し、それらの制約条件を取り除く
     ことが前提となります。

     以下に、制約条件の例を紹介します。

     ○拠点間輸送

      ・施設スペースが狭い(10t車が接車できないなど)

      ・人員の面で対応できない

      ・受注のバラツキが多い

     ○得意先配送

      ・施設スペースが狭い

      ・同一得意先からの受注をまとめられない

      ・貸切便の運行実態を把握していない

     【保管】

     営業所などに分散している在庫を配送センターに集約することによって、
     保管コストを削減できます。

   以上のような6つの視点から、物流コスト削減の糸口を見いだすことが可能です。

   ただし、実際に問題点を解決する段階では、物流システムの構築・メンテナンスが
   要求される場合があります。

  □物流現場におけるコスト削減策

   以下に、倉庫・流通センターなどの物流現場において行なうことのできるコスト削
   減のポイントを紹介します。

   1.倉庫・流通センター全体のポイント

     (1)マテリアル・フローの把握

        マテリアル・フローとは、「倉庫内の作業工程ごとの商品の流れ」をいう。

       具体的には、「どのような荷姿をした何種類の商品を何時にどれだけ入
       れ、倉庫の中に何日間どれだけ保管して、どのように荷姿を変えて何時に
       どれだけ出していくか」ということを把握します。

       マテリアル・フローが把握できれば、どこに問題があり、どの部分にどのよ
       うな機器を設備し、どのくらいの人員を配置すればよいかがつかめてくる。

       また、フォークリフトなどや作業員が実際動いた物流動線を図に示せば、ど
       こが混雑するのか、無駄な動きがあるのかということを発見できます。

     (2)在庫高晶のABC管理

       ABC管理とは、売上の高い商品を重点的に管理する方法です。

       自社の取扱商品を売上額の大きい順に並べ、品目数の上位10%を占め
       る商品群をA品目、中位20%程度をB品目、それ以外をC品目とします。

       すると、自社の売上高のおよそ70%がA品目だけで占められていることが
       わかるかもしれません。

       その場合、A品目を重点的に管理し、残る90%の商品には大きなコストを
       かけないようにするのです。

       残りの90%の商品を在庫していたとしても、所詮は売上高の3割にしか過
       ぎないからです。

       このようにABCによる在庫管理を行なうことで、欠品を最少にとどめながら
       管理費用のコストダウンを図ることができるのです。

        A品目:よく動く商品のため、入念に管理する。
             定期的な発注や納入までの工数短縮を検討する。
             すぐに出荷しやすいように、フローラック(流動棚)で保管する。
             バラ出荷にも応じる。

        B品目:中程度に管理し、一定の残数になったら定量発注する。
             ケース出荷を原則とする。

        C品目:ほとんど動きのない商品のため、発注方法・保管場所・保管
             方法を含め簡易な管理を行なう。
             発注は残り少なくなった時点で行なう。

     (3)ロケーション管理

       物流業務のなかで、在庫管理は
        ・デッドストックを防止する

        ・販売量に見合った在庫量を適正に保有する

        ・先入れ・先出しを完全に行なう

       という意味で非常に重要な意味をもちます。

       このなかで「先入れ・先出し」を完全に行なうためには、倉庫の中に番地(ロ
       ケーション・コード)を付けて商品の所在をはっきりさせて、商品コードでは
       なくロケーション・コードで商品を出し入れする必要があります。

       このロケーション管理ができれば入出荷の日付管理が可能になり、古いも
       のから出荷するよう指示できます。

       なお、ロケーション管理を行なうことで、ピッキングの効率を高めることもで
       きます。

   2.ピッキング・出荷のポイント

     (1)ピッキング方式

       商品のピッキングの方式には、「つみ取り方式」と「種まき方式」がある。

       いずれの方法を採用するかは、「アイテム数」「取扱量」「ピッカー数」「セン
       ターの広さ」などの要素を考慮したうえで、どちらがピッキング効率が高い
       かで判断します。

       なお、ピッキングの合理化ポイントは次のとおりです。

        ・保管している商品は平置きラックによるつみ取り方式とする

        ・後戻り作業が発生しないように、ロケーション・コード順にピッキング
         リストを打ち出す

        ・ピッキング頻度の高い商品は取り出しやすいように、ラックの中段
         (ゴールデン・ゾーン)に置く

        ・受注量の多い得意先は、得意先別にピッキングラインを設ける

        ・ピッキングした商品はコンベヤー・台車を活用して次工程に送る

        ・ピッキング中の品切れは、電話や表示灯などですぐ連絡できる
         ようにする

        ・バラ出荷商品は折り畳みコンテナを利用して包装費を減らす

        ・フローラックを活用し、商品補充は朝か夕方にまとめて行なう

        ・商品の空き箱はコンベヤーで収集し、再利用する

     (2)省力化・自動化

       ピッキングと仕分けの時間・ミスを最小にするシステムを導入することで、ミ
       スを限りなくゼロに近づけることができます。

       これらの例としては、「デジタル・ピッキング」や「POS検品」などがある。

     (3)作業の効率化

       倉庫・流通センター内の作業の効率化は、次のような視点で検討します。

       ○待たせない

        作業上のロスをなくす。
        待ち時間が発生するのはなぜなのか、工程管理能力と負荷、
        段取りの悪さについて検討する。
        ピッキング・リストの様式や発行方法・時間なども重要な検討
        項目となる。

       ○持たせない

        荷役作業の回数が増えると荷傷みが発生しやすくなるので、
        できるだけ荷役回数は減らす。
        トラックからおろした商品をチェック後、いったん仮置きしてから
        所定の棚に移すような無駄な作業は減らす。

       ○歩かせない

        無駄な動線を描かないよう商品のロケーションを工夫する。
        ピッキング通路は一方通行の形でレイアウトする。

       ○探させない

        ロケーション管理を徹底し、パートでも作業マニュアルや教育
        用ビデオを見るだけで商品を迷わずに取り出すことができる
        ようにする。

       ○考えさせない

        ラックによるロケーション管理を行なうことで、頭を使うことなく
        作業がスムーズに運ぶようにする。

       ○書かせない

        受注情報を紙に打ち出さず、そのままデジタル・ピッキングや
        POS検品に活用できることが望ましい。
        ペーパーレス化は、転記ミスを防ぐだけでなく、時間や紙資源の
        節約にもなる。

   3.配送のポイント

     (1)トラックの「多停車少走行」の見直し

       トラックは一日の半分は、積み込み待ちや荷受け待ち、荷卸しのために停
       車していることが多いようです。

       この停車時間をいかに少なくし、走行時間を多くさせるかがポイントです。

       具体的には、次のような視点からコスト削減を図ります。

       ○仕分け・出荷の合理化を図る

        出荷前の仕分けにより配送効率を高める。得意先別の積み合わせ、
        逆配送順の配列、パレットのままの配送、コンベヤーの活用など。

       ○積載効率・配送効率を高める

        1台ごとの積載量を把握し、少しでも積載効率を高めるようにする。
        配送量や商品特性に合ったトラックを使い分ける。
        早朝・夜間配送(無人荷受け)を検討する。

       ○自家用トラックと営業用トラックを使い分ける

        自家用トラックは、店内への搬入や緊急対応など、顧客サービス
        という点で長所は多い。
        しかし一方で、配送業務の繁閑差が大きい場合の遊休車両の発生、
        人手の確保などの問題が生じる。
        したがって、多頻度小口配送などの場合には、営業用トラックの積み
        合わせ便などをうまく組み合わせて活用することで、コストの削減を図る。

     (2)運転日報

       運転日報(誌)から配送ルート・配送量、得意先での作業状況などを読み取
       ることで、積載効率・配送効率の向上に役立てます。

   4.労務管理のポイント

     (1)パート・アルバイトの活用

       物流業務の人件費を下げるには、作業を標準化・単純化・専門化して、社
       員からパート・アルバイトに切り替えることを検討します。

       社員が判断業務や業務改善に従事できるよう、一層の効率化を図ります。

     (2)環境を整える

       劣悪な環境では従業員のモラールが下がり、事故やミスが起きるなど、労
       働生産性も低下しがちです。

       トラブルを極力避けるためにも、職場環境を整えることが必要です。

       具体的には、食堂・休憩室・送迎バスなどの福利厚生設備の充実や、倉庫
       内の色・照明などの改善、安全性の向上、省力化・自動化・快適性の実現
       などが考えられます。

   コストダウンを検討するとき、費目ごと、部門ごとに直接焦点をあてて改善策を
   練っていきますが、これも全社的な調整のなかで進めなくてはなりません。

   部門同士が敵対関係になると、たとえば、「売れればよいということでどんどん値
   下げする販売部門があるから、我々製造部門のコストダウンも水の泡になってし
   まう」という状況になりかねません。

   自部門の利益が他部門の損失にならないようにするためにも、全社的なトータル
   コストダウンの仕組みが必要になります。

   トータルコストダウンの仕組みづくりには、強力なトップマネジメントに基づくプロ
   ジェクトチームを結成し、実行していくことが有効になります。

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流通・サービス業の生産性向上策

          

流通・サービス業の生産性向上策

  流通・サービス業の生産性向上策について、主に@付加価値率の向上、A人時生
  産性の向上、B店舗リニューアルと設備機械の充実の三つの視点からみてみま
  す。

  付加価値率の向上

    流通業・サービス業における生産性向上対策では、まず何よりも付加価値率を
    向上させることですが、流通業・サービス業の付加価値率の向上対策には、
     @商品・サービスの高付加価値化または商品回転率の向上
       (在庫の圧縮)による付加価値の増大

     A仕入原価・仕入れコストの低減

     B物流コストの低減などがあります。

   (1)商品・サービスの高付加価値化または商品回転率の向上

      商品・サービスの高付加価値化には、商品・サービスそのものが高い付加価 
      値をもつ高付加価値商品を扱う場合と、立地や集客条件に見合ったストアロ
      イヤリティーを確立することによって、ハイグレードな客層を吸引して、高付
      加価値化を図るケースとがあります。

      前者は、有名ブランド商品の取り扱いやオリジナル商品の開発、輸入品の取
      り扱い、ヒット商品・ブランド商品の取り扱いなどによって実現されますし、後
      者は、ストア・アイデンティティーを転換し、店舗を高級化することによって達
      せられます。

      高付加価値化を成功させるためには、商品の高度化と店舗の高級化、接客
      演出の高度化を総合的に計画し、トータルな戦略的展開を行うことが重要。

      また、最近の景気低迷下での付加価値向上策として、ディスカウント化によ
      る商品回転率の向上による商法が注目を浴びていますが、これは、店舗施
      設をはじめ、徹底的な固定費削減によって、商品の廉価化を進め、いわゆる
      薄利多売方式によって必要な付加価値を確保しようとするものです。

      以上の二つの方法のうち、いずれをとるかは、店舗経営のあり方に大きくか
      かわる事柄ですので、店舗コンセプトをしっかり確立したうえで方針化するこ
      とが大切です。

    (2)仕入れ価格の低減

      仕入原価の低減のためには、共同購入や新しいチャネルの開拓が望まれま
      すが、その際、セントラル・バイイング(集中仕入れ)方式や物流チャネルの
      短縮などについても検討すべきです(仕入コスト低減の方策は、図のように
      まとめることができます)。

    (3)物流コストの低減

      物流コストは、ロジスティックスすなわち発注・運搬・在庫(保管)など商品の
      流れに伴って発生します。

      発注の合理化のためには、EOS、VANなどを活用することが有効ですし、ま
      た、輸送コスト低減のためには、ロジスティックス全体を総合的に見直し、必
      要によっては、配送の外注化を進めたり、在庫管理の方法を改善します。

      このほか、ケースサイズ、単品サイズ、配送経路、ハンドリング方法などにつ
      いても検討、改善することが大切です。

      さらに、在庫(保管)コスト低減のために、ピッキング(出庫)の改善が重要。

      特に、卸売業では少量多品種、多頻度の物流に対応するためのオーダー・
      ピッキング・システムを導入し、作業を標準化・単純化することが有効で、こ
      のシステムによって、ピッカー(出庫担当者)をパート化、アルバイト化するこ
      とが可能となり、保管コストを低減することが期待できます。

  □人時生産性の向上対策

   (1)従業員の多能化と作業の標準化

     流通・サービス業、特に店舗展開をしている小売業・サービス業における労働
     時間は、従業員の在店時間としてとらえられます。

     開店している限り「人」がいなければならないので、省人化は非常に困難にみ
     えます。

     しかし、スーパーを例にとりますと、その後方(バックヤード)作業は、100種類
     以上にのぼるといわれるように、流通・サービス業でも、店頭の仕事以外に多
     くの作業があります。

     これらの作業を何人でこなすかは、それぞれの店舗によって異なりますが、作
     業マニュアルをつくったり、教育訓練を強化して多能化を進めることによって、
     相当程度の省人化を図ることができます。

     流通・サービス業での従業員の多能化を進めるには、このように業務運営方
     式を見直したり、作業分析・作業動線分析等を行って、一つひとつの作業を単
     純化・標準化・マニュアル化し、できるだけ多くの作業を誰もができるようにす
     ることがポイントです。

     また、こうして従業員の多能化を進める一方、伝票・帳票の簡素化、作業時間
     帯の変更、会議のスケジュール化・短時間化などを進めることによって、省人
     化、省時間化を一層進めることが大切です。

   (2)ショートタイム従業員の戦力化

     流通・サービス業における人的生産性向上対策で、パートやアルバイトの活
     用・戦力化は不可欠です。

     確かに、専門店やサービス業の店頭接客には商品知識やセンス、接客術など
     の専門性が求められるために、パートやアルバイトの導入がむずかしいとか、
     彼らにレジ締めをやらせるわけにはいかないなどといって、その導入に消極的
     な傾向もあります。

     しかし、専門店を含む小売業やサービス業では、1日のうちの繁閑の差が大き
     く、パートやアルバイトなどのショートタイム従業員の活用の場は非常に広い
     はずです。

     パートやアルバイト活用の視点とその戦力化の対策のポイントは、

      @パートやアルバイトを単に正社員の補助的労働力と考えたり、
       人件費の軽減だけを目的とするのではなく、より強力に戦力化
       するという視点に立つこと。

      A特に量販店やチェーン店などでは、パートやアルバイトにも一定
       の権限を委譲し、やる気と責任をもたせるようにすること。

      B業務をできるだけ単純化・標準化・マニュアル化し、教育訓練を
       徹底すること。
       できれば、教育訓練カリキュラムやマニュアルをつくり、パートや
       アルバイト自体を教育訓練の指導者として育てるくらいに徹底
       すること。

      Cパートやアルバイト向けの職能ランクを設けて、職務内容や
       権限、時給などについても職能ランクによって決めるように
       すること。           
       また、必要に応じて社員登用制度を設けること。

     専門店におけるパートやアルバイトの戦力化も基本的には、このような制度や

     対策が有効ですが、専門性や即戦力という要素を満たそうとするなら、退職社
     員の再雇用やセールスアシスタントなどショートタイムの専門職の導入も効果
     的です。

     さらに、専門職のショートタイム従業員の採用を容易にするには、働く側に勤
     務時間を選択させる選択時間制パートタイム制度が有効といえます。

   (3)客待ち時間と要員の有効活用

     流通・サービス業での人的生産性向上を考える場合、客待ち時間の有効活用
     は非常に重要です。

     例えば、専門店の場合、それまで特定の人にしかできなかった作業を標準化・
     単純化することによって、客待ちのため手空きとなった従業員がそれらを代替
     します。

     量販店では、商品の陳列や補充、ディスプレーの変更などを閉店後でなく客の
     少ない時間帯に変更するなど、人と時間を有効に活用することによって省人
     化、省時間化が図れます。

     また、客待ち時間を教育や会議などに利用したり、品揃えの研究などに利用
     することも重要です。

     人の有効活用では、LSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)などの時間  
     管理技法を活用すると効果的です。

     これは、あらかじめ一つ一つの作業ごとに決められた標準時間に基づいて、1
     日の作業の繁閑に合わせて必要な人員をコンピューター(マニュアルでも可
     能)によって管理し、必要な要員を適切に配置しようとするシステムです。

     その際、ショートタイム従業員の効果的な活用がポイントとなります。

     要するに、LSPは作業工数分析による要員管理の手法の一つですが、これを 
     利用した流通・サービス業での生産性を計る計数技法として、

      “人時生産性”(1人1時間当たりの売上高または粗利。
      「売上高(粗利高)÷総労働時間」で表示)管理

     が有効です。  

     “人時生産性”の向上のためには、従業員1人1時間当たりの作業工数を増や

     し、総労働時間を短縮することが必要ですから、LSPと“人時生産性”管理は
     表裏一体の働きをします。

     また、チェーン展開をしている専門店などの要員管理のポイントには、次のよ
     うなものがあります。

      @ブロックや物流部門などの店舗のバックアップを行う部門への
       従業員の重点配置を行う。

      A近接地域(エリア)での店舗間の応援体制の確立や、大型店・
       小型店の組み合わせによる要員配置の効率化を図る。

      B早番・遅番・土日集中勤務体制など、繁閑に合わせた勤務
       シフト体制や、曜日特定・時間帯特定のパートタイマー制の
       導入によって、客待ち時間そのものを少なくする。

  □店舗のリニューアルと設備機械の更新

   流通・サービス業における設備機械の改善による生産性向上対策には、

    @店舗のリニューアル

    A設備機械、什器の改善

    BPOSシステムやEOS、VANの利用

   などがあります。

   「三年たったら部分改装、五年たったら大改装せよ」という店舗管理の格言があり
   ますが、店舗にもライフサイクルがあり、衰退期には客足が鈍り、売上高の停滞・
   低迷という現象が起こってきます。

   したがって、店舗のライフサイクルを把握して、計画的にリニューアルやリフレッ
   シュを行うことが大切です。

   店舗のリニューアルや設備・什器のリフレッシュを行う場合の留意点としては、次
   のような点が考えられます。

    @店舗のリニューアルに際しては、例えば、ファッション性を打ち出すとか、
     客層を絞って業態型店舗にするというように、コンセプトを明確にする。

    A客動線(顧客のための通路)、販売員動線(接客動線、作業動線)、商品
     動線(荷さばきや搬入動線)について検討し、店内通路のとり方を工夫する。

    B業種や業態を変える場合や販売品目を変える場合に、客層やイメージに
     合うように、什器・設備の全面的なリフレッシュを行ったり、視認率を改善
     するために照明を工夫する。

   また、主として小売業・卸売業の生産性向上のツールとしてPOSやEOS、VANの
   活用も重要です。

     EOS:電子発注システム(Electronic Ordering System)

     VAN:付加価値通信網(Value-Added Network)

   中小企業の多くでは、こうしたソフトウェアを十分使いこなすだけの経営管理のレ
   ベルにないといった問題点もありますが、研究する必要があります。

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