〒422-8067 静岡県静岡市駿河区南町2-26-501
・戦略をストーリーとして捉える Ⅱ
・戦略をストーリーとして捉える Ⅰ
・セールストークはストーリーで語る
・商品の物語を作る
・よい商品なのに、なぜ売れない?
■戦略の「流れ」と「動き」
マブチモーターは技術的に成熟した、小型モーターを専門につくっている会社で、一見してあまり
儲かりそうもない業界に身を置いているのですが、高い利益を長期的に維持してきました。
小型モーター事業について、マブチの考えたそもそものストーリーは、最も単純化していえば「大量
生産によるコスト競争力で勝つ」というものです。
「大量生産」という打ち手と「低コスト」をつなげる線は、「規模の経済」という、ごくありふれた
論理です。
これだけならば話は単純なのですが、マブチの戦略ストーリーが面白いのは、大量生産につながる
打ち手として、「モーターの標準化」という意思決定をしたことにあります。
今でこそ「標準化」が当たり前のように聞こえますが、当時のモーター業界では常識に反した
「禁じ手」でした。
玩具やドライヤーなどの家電製品に使われていた小型モーターは、それぞれのセットメーカーからの
特定仕様の注文を受けて、それに合わせて生産されていました。
セットメーカーは自社の競争力を高めるために製品の差異化を行おうとするので、それに内蔵する
モーターも少しずつサイズや特性を変えなければなりませんでした。
受注生産時代のモーターは典型的な多品種少量生産でした。
モーターを特定少数のモデルに標準化すれば、これまでの少量生産のくびきから解放されて大量生産
が可能になるだろう。
マブチの顧客であるセット(モーターを組み込んだ完成品)業界にしても、競争が激しいところ
ばかりで、製品開発のサイクルも速まる一方です。
1円でも安く、1日も早い開発を迫られるユーザーにとって、モーターの標準化は初めのうちは抵抗が
あるでしょう。
しかし、そこを我慢すれば長期的には経済合理性を静められるはずです。
そのうちにユーザーが次々とマブチの標準モーターを買うようになれば、さらに標準モーターに
対する抵抗は薄れ、マブチにとってはますます規模の経済がコストを下げるという好循環が生まれる
でしょう……。
こうしたストーリーが構想されたのです。
標準化の他にも、それを取り巻くように、玩具や生活家電以外の「新しい市場の段階的な開拓」、
中国を中心とする「海外での直接生産」、意図的に自動化の水準を下げた「労働集約的な生産
ライン」、支店や営業所を持たない「一極集中の営業体制」といった手をマブチは打ちました。
そうしたいくつもの打ち手が相互に因果論理でつながり、全体として「標準化→大量生産一規模の
経済→低コスト」という長期利益をたたき出すシュートを可能にしました。
その背後には、さまざまな打ち手がなぜ結びつき連動していくのかについての論理を突き詰めた
独自のストーリーがありました。
マブチの成功は、個別の打ち手が功を奏したというよりも、ストーリーの勝利でした。
□「ビジネスモデル」と「ストーリー」
マブチモーターのように業界標準以上の長期利益をたたき出している企業をじっくり眺めていると、
きちんとした因果論理で綴られた戦略ストーリーが浮かび上がってきます。
それはまさにストーリーであって、法則やテンプレートやベストプラクティスで説明できるものでは
ありません。
パソコンメーカーのデル社の会長・マイケル・デル氏は「ホームランでなく、ヒットをねらう。
ビジネスは野球と同じで、できるだけ高い打率をめざすのがベストだ。
なぜなら、永遠に続く大ヒット製品やテクノロジーなど存在しないからだ」と言っています。
画期的な新製品、まだ誰も参入していない新興市場、自社だけで占有可能な技術、こうした強力な
点の一撃があれば成功できるかもしれません。
この種の要素レベルの差異化は目立ちますし、わかりやすく、華々しい成功をもたらします。
しかし、これだけグローバルに情報が行きわたった時代になると、そうした「必殺技」は探しても
なかなか見つかりません。
すぐに他社も同じようなことを仕掛けてきます。
サッカーでいえば、ずば抜けた能力を持つファンタジスタがいれば、確かに得点は入りやすくなり
ます。
しかし、そうした有力選手という要素に依存した競争優位であれば、その選手が他チームに引き
抜かれてしまえば失われてしまいます。
一方で、ブラジルチームに固有の流れるような攻撃パターンや、イタリアチームのお家芸、「カテ
ナチオ(鍵をかける)」と呼ばれる鉄壁の守備の方法は、チーム全体の攻め方、守り方にかかわる
強みです。
仮にイタリアから数人の有力選手を引き抜いてきても、カテナチオは再現できないでしょう。
どうしたらそういうことができるのか、因果関係が複雑でわかりにくいので、まねされにくく、
優位が持続しやすいのです。
ストーリーとしての競争戦略の重要性は今に始まった話ではありません。
マブチの戦略にしても歴史的な事例です。
戦略論の世界でも、「ビジネスモデル」とか「戦略モデル」「アーキテクチャ」「ビジネス
システム」、さらにはそれを発展させた「ビジネス・エコシステム」という概念を使って、構成
要素のつながりに注目する研究が蓄積されています。
□日本企業こそストーリーを
外資系の会社では人間関係がドライだといわれます。
自分は報酬をもらって、自分の信条とは関係なくその仕事をしている。
あるいは、会社そのものへのロイヤリティーではなく、自分の専門職種へのこだわりがあって、
いろんな外資系の会社を転々とする中で自己実現のためにたまたまその会社にいる、ということも
あるでしょう。
日本の会社の場合には、会社に対してロイヤリティーを感じながら、自分の生活の中に仕事があって
自己と会社が切っても切り離せない状態の人が多い。
欧米の会社が機能分化の論理で割り切れる組織であるのに対して、もし日本の会社が、傾向として
機能のインプットよりも価値のアウトプットに人々のアイデンティティがあるような組織になって
いるとしたら、戦略をつくる立場にあるリーダーのみならず、組織の人々で広く戦略ストーリーを
共有することの必要性や効果が、日本の会社ではずっと大きくなるはずです。
ストーリーとしての競争戦略が大切だという話は、組織の編成原理がどうあろうと変わりません。
欧米でも日本でも、戦略はストーリーであるべきです。
ただし、会社が機能分化という組織編成の原理に立脚していれば、ハリウッドの映画づくりのように、
監督であるスティーブン・スピルバーグ氏の頭の中にあればよいわけです。
極論すれば、スピルバーグ氏の頭の中だけにあればよいのです。
リーダーの頭の中に戦略ストーリーがあれば、機能分化の論理で、それが機能のパーツに分解
されます。
それぞれのパーツを担当する機能専門家は、ストーリー全体のありようや他のパーツを担当する
人々との関係にかかわらなくても、機能ではっきりと定義された自分の仕事を遂行できます。
その仕事に対する評価は、機能ごとに発達した労働市場での自分の価格に反映されます。
ところが、1人ひとりの仕事の定義が機能分化では割り切れず、会社が顧客に提供するアウト
プットの価値に人々の存在理由が求められているとしたらどうなるでしょうか。
全体の目標が、機能分化の論理に従って自分の担当する部門にブレイクダウンされ、そこで示された
ターゲットの数字を達成し、その機能のスペシャリストとして評価されたとしても、いまひとつ
ピンとこないのです。
自分の仕事がストーリー全体の中でどこを担当しており(それは「マーケティング」のような文脈
から独立して定義できるものではない)、他の人々の仕事とどのようにかみ合って、ストーリーの
動きとどのようにつながり、そのストーリーの文脈でどのように自分の仕事が最終的なアウト
プットに貢献しているのか。
人々がアウトプットの価値にコミットメントを感じている組織では、その種の「全体についての
実感」がなければ、モチベーションも湧きあがってこないでしょう。
トップがストーリーを構想するだけでなく、そのストーリーが組織の人々で丸ごと共有されている
ことが重要な意味を持ってきます。
「数字よりも筋」「ストーリーで戦略の実行にかかわる人々を鼓舞する」という話は、日本企業に
より当てはまると思います。
日本の会社こそ、戦略ストーリーを必要としていると考えるゆえんです。
□戦略づくりの面白さ
ストーリーという視点が大切になる最後の理由は、いたって単純な話です。
何よりも、ストーリーという視点は、戦略をつくる仕事を面白くします。
戦略をストーリーとして考え、組み立てるということは、そもそも創造的で、楽しい仕事です。
難しい目標設定を与えられ、眉間にしわを寄せた渋い顔で戦略を考え(させられ)ている人が
多過ぎるように思います。
単純に要因を列挙したり、テンプレートにしたがってひたすら分析したり、他社のベストプラク
ティスをベンチマークしたり、自分でも半信半疑の前提に従ったシミュレーションを繰り返す。
戦略づくりがこうした仕事であれば、自然に面白がって取り組める人は、よっぽどのマニア以外、
ほとんどいないと思います。
しょせんビジネスなのです。
戦争でもあるまいし、戦略は「嫌々考える」ものではありません。
まずは自分で心底面白いと思える。
思わず周囲の人々に話したくなる。
戦略とは本来そういうものであるべきです。
自分で面白いと思っていないのであれば、自分以外のさまざまな人々がかかわる組織で実現できる
わけがありません。
ましてや会社の外にいる顧客が喜ぶわけがありません。
面白いことでなければ、人はなかなか努力できません。
ついつい先送りになります。
無理やり取り組もうとしても、面白くなければ長続きしませんし、結局のところ、たいした成果も
期待できません。
逆にいえば、面白いと思えることであれば、自然体で向き合えますし、取り組みも長続きします。
戦略思考を習得するにはどうすればよいのか、ということをしばしば質問されるのですが、そういう
人に限って、日常の思考の自然な延長には出てこない、堅苦しい思考様式が戦略だと思い込んでいる
ものです。
戦略ストーリーは文字どおり「お話」です。
お話を聞いたり、読んだり、話したり、つくったりすることの面白さは、人間にとって本源的な
ものです。
お話の面白さ、楽しさであれば子どもでもわかります。
放っておいてもお話を聞きたがりますし、話したくなるものです。
優れた戦略思考を身につけるために最も大切なこと、それは戦略をつくる仕事を面白いと思えるか
どうかです。
戦略づくりを面白いと思えれば、その時点で問題の半分は解決したも同然です。
まずは面白さを知る。
結局のところ、それが戦略思考を習得するための、最も効果的で効率的なアプローチです。
ストーリーという視点は、戦略をつくるという仕事が本来的に持っている面白さを取り戻そうとする
ものなのです。
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■戦略とは
「戦略」というのは実に使い勝手がいい言葉です。
あなたもさまざまなビジネスの局面で戦略という言葉を見たり聞いたり使ったりしていると思います。
戦略という言葉のイメージや定義は人によってさまざまでしょう。
「日常の業務を超えた大局的な何か」として戦略を捉えている人もいるでしょうし、「短期的な
目先の対応ではなくて、長期的な指針」と時間軸で戦略を考える人もいるでしょう。
教科書的な定義では、「組織がその目的を達成する方法を示すような、資源展開と環境との相互
作用の基本的なパターン」とか書いてあるのですが、これではちょっとわかりにくい。
「戦略が良くない」とか「もっと戦略的にやりましょう」というときに、何が良くないといって
いるのか、どうしようといっているのか、自分の定義を思い浮かべてみてください。
たとえば、初対面の人に、「ところでおうかがいしますが、あなたの会社の戦略は何ですか?」と
聞かれたら、どのように答えますか。
ここでお聞きしたいのは、業界の事情通でない、一般の人に、自社の戦略をどのように説明するか、
ということです。
その答えに、あなたの戦略についての暗黙の定義があるはずです。
「あなたの会社はどういう会社ですか?」という質問であれば、答えは簡単です。
こういう製品を扱っていて、誰が得意先で、売上はどれぐらいで、従業員は何人ぐらいで、どこに
オフィスがあって……、というようにいくつも答えが出てくるでしょう。
ところが、「あなたの会社の戦略は?」となると、答えにまごついてしまう人も多いのではないで
しょうか。
「違いをつくって、つなげる」、一言でいうとこれが戦略の本質です。
この定義の前半部分は、競合他社との違いを意味しています。
競争の中で業界平均水準以上の利益をあげることができるとしたら、それは競争他社との何らかの
「違い」があるからです。
他社との違いがなければ、経済学の想定する「完全競争」となり、余剰利潤はゼロになります。
だから違いをつくる。
これが戦略の第1の本質です。
ここで強調したいのは定義の後半部分の本質、つまり「つながり」です。
つながりとは、2つ以上の構成要素の間の因果論理を意味しています。
因果論理とは、ⅩがYをもたらす(可能にする、促進する、強化する)理由を鋭明するものです。
個別の違いをバラバラに打ち出すだけでは戦略になりません。
それらがつながり、組み合わさり、相互に作用する中で長期利益が実現されます。
次のような3点の興味深い指摘をしています。
いずれも戦略の「つながり」という本質にかかわる重要なポイントです。
第1に、経営の問題の多くは、大きな事象を構成要素に分解し、そのうえで1つひとつの要素を別個に
吟味しようとするアナリシス(分析)の発想に基づいている。
だから企業の組織デザインにしても、マーケテイング、アカウンティング、ファイナンスといった
構成要素に分解される。
第2に、戦略の神髄はシンセシス(総合)にあり、アナリシスの発想と相いれない。
だから、戦略に対応する部署は企業の中に見つからない。
第3に、戦略は部署でなくて人が担う。
サイエンスの本質が「人によらない」ことにあるとすれば、戦略はサイエンスよりもアートに近い。
戦略は因果論理のシンセシスであり、それは「特定の文脈に埋め込まれた特殊解」という本質を
持っています。
優れた戦略立案の「普遍の法則」がありえないのは、戦略がどこまでいっても特定の文脈に依存した
シンセシスだからです。
ですから、多くの人々が優れた経営者に「戦略論」の知見を求めるのは自然な成り行きです。
優れた「アーティスト」が経験の中で練り上げた知見はとても有用です。
日本の経営者に限定しても、ヤマト運輸(現・ヤマトホールディングス)元社長の故・小倉昌男氏の
『経営学』や、複数の企業再生に成功したのちにミスミグループ代表取締役会長・CEOとなった
三枝匡氏の一連の著作はその代表例です。
「論」のスタンスをとらない「自叙伝」「歳言集」的な書物からも、多くの有用な戦略についての
知見を引き出すことができます。
日本電産代表取締役社長の永守重信氏や伊藤忠商事代表取締役会長から中国の特命全権大使に就任
した丹羽宇一氏、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏、こうした優れた
経営者の著作はその好例です。
こうした優れた経営者による戦略論は迫力があります。
第1に、当人の特殊な文脈の中で練り上げられた知見であるので、戦略の文脈依存性が確保されて
います。
第2に、実際に丸ごと作動したシンセシスであるので、因果論理が骨太です。
第3に、最も重要なこととして、その経営者は現実に成功(もしくは失敗)しているので、成果との
因果関係が(少なくとも結果においては)強力に確保されています。
この種の迫力には学者の戦略論が遠く及ばないものです。
たとえば、永守氏の主要なメッセージは「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」ですし、丹羽氏の
それは「汗出せ、知恵出せ、もっと働け!」です。
柳井氏が2007年に全社に向けて打ち出した方針は、「儲ける」の一言でした。
本質を短い言葉にしてしまえばそういうことなのですが、実行と経験に裏打ちされた主張を通して
読めば、きわめて骨太な「論理」が浮かび上がってきます。
自分でやったこともなければ、成果も示すことができない私が、実務家に向かってこの種の主張を
文字どおり口にしたとすれば、黙殺されるか、冷笑されるでしょう。
□「ストーリー」とは何か
実体験の迫力を出そうとしても出せない経営学者としては、特定の文脈に埋め込まれたシンセシス
として戦略を扱いながらも、経営者とは違ったアプローチで、しかし実務家にとって有用な戦略論を
語る必要があります。
そこで私がたどり着いたのが、「ストーリーとしての競争戦略」という視点なのです。
ストーリーの戦略論は、因果論理のシンセシスという戦略の本質を正面から捉える視点です。
ストーリーとしての競争戦略は、「違い」と「つながり」という2つの戦略の本質のうち、後者に
軸足を置いています。
競争戦略は、「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかについての企業のさまざまな「打ち手」
で構成されています。
戦略は競合他社との違いをつくることです。
さまざまな打ち手は他社との違いをつくるものでなくてはなりません。
しかし、個別の違いをバラバラに打ち出すだけでは戦略になりません。
それらがつながり、組み合わさり、相互作用する中で、初めて長期利益が実現されます。
ストーリーとしての競争戦略は、さまざまな打ち手を互いに結びつけ、顧客へのユニークな価値提供
とその結果として生まれる利益に向かって駆動していく論理に注目します。
つまり、個別の要素について意思決定しアクションをとるだけでなく、そうした要素の間にどの
ような因果関係や相互作用があるのかを重視する視点です。
戦略をストーリーとして語るということは、「個別の要素がなぜ齟齬なく連動し、全体としてなぜ
事業を駆動するのか」を説明するということです。
それはまた、「なぜその事業が競争の中で他社が達成できない価値を生み出すのか」「なぜ利益を
もたらすのか」の説明でもあります。
個々の打ち手は「静止画」にすぎません。
個別の違いが因果論理で縦横につながったとき、戦略は「動画」になります。
ストーリーとしての競争戦略は、動画のレベルで他社との違いをつくろうという戦略思考です。
サッカーにたとえるとわかりやすいでしょう。
相手チームに勝つために、どこのポジションにどういう選手を配置するかという問題は戦略を構成
する「点」です。
しかしそこで選ばれ、配置された選手たちが繰り出すパスがどのようにつながり、ゴールへと向か
っていくのかは、点を結びつける「線」の問題です。
サッカーの戦略は、要するにそのチームに固有の「攻め方」なり「守り方」を意味しているわけ
ですが、攻め方なり守り方はいくつもの線で構成された「流れ」や「動き」として理解できます。
戦略の実体は、個別の選手の配置や能力や1つひとつのパスそのものではなくて、個別の打ち手を
連動させる「流れ」、その結果浮かび上がってくる「動き」にあるのです。
ストーリーとしての競争戦略とは、「勝負を決定的に左右するのは戦略の流れと動きである」と
いう思考様式です。
将棋や囲碁にしても同じ話で、普通私たちが戦略というときは、意織しているか無意識かは別に
しても、個々の打ち手ではなく、打ち手をつなぐ流れ、勝利に向けたストーリーをイメージして
いるはずです。
戦略をストーリーとして捉える思考は、何も新しい話ではなく、素朴なレベルではごく自然な理解
です。
個別の要素についての意思決定(たとえば、ある製品の生産を社内でやるか、それとも外部企業に
任せるか)は、基本的にwhatやwho(whom)やhowやwhereやwhenを確定するということです。
こうした個別の打ち手に対して、戦略ストーリーが問題にするのはwhyです。
「線」とか「流れ」といっているのは、なぜある点がもう一つの点につながるのか、ある打ち手を
可能にするのか、という因果論理に注目しています。
戦略を一連の流れを持ったストーリーとして考えなくてはならないゆえんです。
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人はストーリー(物語)に感動する |
ストーリーとは物語です。 このストーリーをセールストークやプレゼンに活用することをストーリーテリングと言い 伝えたいことやコンセプトを想像させるために、印象的な体験談やエピソードなどの 聴きなれない言葉かもしれませんが、国内でも企業の広告に多く使われ始めてきました。 「これが僕のストーリー」というメッシの語りで始まるCMです。 このCMでは、メッシ選手の少年時代に起きた成長ホルモンの分泌による病気を克服して しかし、ほとんどの人はそんな風に感じません。 人は理屈ではなく、感情でものを買うのです。 他にも、リッツカールトンホテル、ディズニーランド、ロールスロイス、アフラック、ボ ストーリーテリングを活用するとしたら、アプローチ(セールス)ブックや会社案内、 アプローチ(セールス)ブックは紙芝居と言い換えてもいいでしょう。 ジョブズ氏のプレゼンがなぜ人々の心を感動させるのか、その理由はさまざまですが、 「納得感のあるストーリー」とは、相手にとって「なぜ、自分はこの商品を購入したほう 悪徳業者に騙される事件はどの時代にあっても後を立ちません。 不適切な例かもしれませんが、わかり易く説明するために悪徳業者や結婚詐欺師の手口 彼らは決して商品やサービスそのものの特徴や良さは話しません。(なぜなら粗悪なもの 購入後のお客様のバラ色の環境を想像させることに長けているそうです。 単に「綺麗だね」ではなく、「君の瞳は澄んだ湖みたいだね」とか・・・。 歯が浮くようなセリフに聞こえるかもしれませんが、言い続けることで相手はそう思っ 殺し文句や手口はターゲットを絞込み(被害者は40代が中心)、知り合った女性に どちらの例も商品やサービスの良さを売るのではなく、相手にとってのメリットとなる この例からもわかるように「人の心理」を突いているということを言いたかったのです。 ですから、いつの時代でも単純で同じ手口が通用するのでしょう。 商品の良さ、品揃えだけではモノは売れません。 「分かりやすく、選びやすく、迷わせない工夫をする」。 お客様との接点における商品のアピールや情報発信で大切なのはそこです。 その組み立てを何通りも考え、試してみることが大切なのです。 あなたの売りものは扱う商品・サービスそのものではなく、お客様の満足を獲得するため そうでなければ、いつもの売り込み営業に走ってしまいます。 そこで、ストーリーを組み立てる際に肝となるのが、相手にとっての『価値』を考え この「価値」とは、「商品を購入することで相手にとってどんな良いことがあるか」を
「現状(問題点)→ 問題点を改善するための方法(ニーズ)→ 問題点を改善した ストーリーの活用は、セールストーク、ニュースレター、会社案内などのトークにも ソフトバンクの白戸家のCMなどが代表例です。 このようにストーリーを交えたトークは聴く人や見る人の心に強い印象として残ります。 お客様の感情に訴える(お客様の利益・メリット)のが上手です。 しかし、多くがトップセールスマンのような能力を持ち合わせていません。 ですから、物語が必要なのです。 ストーリーはさまざまな場面で使われています。 通販では特にセールスレターの良し悪しで売上げが決まってきます。 このセールスレターの内容のほとんどが物語風に書かれています。 商品そのものを売るのではなく「○○のある毎日の生活シーン(場面)」 例えば、 「峠の釜飯」で有名な弁当屋さんは横川駅(信越線)という閑散とした駅で1日に6 そして、一人が平均2〜3個、多い人だと5個以上も買うとのことです。 弁当そのものを売っていれば、空腹を満たすためということになり、1個で十分なはずで お客さんはモノとしての弁当を買っているのではなく、「旅情」という味わいを体験 これらの事例からも分かると思いますが、人は体験(experience)というストーリー 先程も述べたように、ストーリーはプレスリリース、セールスレター、セールストーク、 例えば、会社案内では会社の物語が必要です。 起業から草創期、苦難期、成長期、変化期、再出発‥‥‥企業の物語は実に多 こうした会社の成長の足跡をストーリー化し、企業文化の充実、企業ブランドの向 知識を伝え、「共感」や「感動」という価値をもたらすのは、ストーリーです。 情報やデータは、つねにある文脈の中に置かれて人の内面に定着する力を持ちます。 情報やデータを豊かな文脈の流れにのせて生活者の心の中に定着させ、共感や これがストーリーテリングです。 人は、情報やデータに心を打たれ、笑い、涙を流すことはありません。 ストーリーにこそ自分自身を重ね合わせ、深い心の体験を共有するのです。 断片ではなく、部分でもなく、あくまで全体を統合的に提示することによって、他の 起業から草創期、苦難期、成長期、変化期、再出発といった流れでストーリーを作っ 1.語り手の情熱 ストーリーを語る前に、自分がどうしてその なぜこの商品を提案するかのストーリー、 内容のすべてがサクセスストーリーとい ヒーロー物の映画はとんでもない悪役がいる 貧困から這い上がった、コンプレックスを乗り 誰も運良く成功した人の話は聞きたいとは思いません。 苦難の中で解決策を求めながら、何かしらの気付きを得た瞬間がストーリーの ガイアの夜明けをご覧になったことがある方ならば、苦難の連続から抜け出す中 ストーリーの結果はハッピーエンド(幸せや成功がもたらされているもの)で そうしないと、商品を購入してもらうという本来の目的を逸してしまうからです。
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商品の物語をつくる |
■商品について ・「なぜ」その商品を作ろうと思ったのか? ・開発には「どんな」苦労があったのか? ・「苦労を乗り越えてでも世に出したい」と思ったパッションは何か? ・「軌道に乗った」のは、何がキッカケだったのか? ・この商品を通して、あなたが世に伝えたいことは何か? ・この商品を使うことによって、幸せになった「お客様の声」は何か? 上記の質問に答えるだけでも、簡単な物語が作れます。 物語が出来たら、あなたのウェブサイトに掲載してみよう。 ウェブサイトで売れるセールスページにしたいなら、以下の5つの基本構造をおさ 2.なぜ、この話を今この瞬間に読まねばならないのか、理由の正当化。 3.商品・サービスによって、顧客の生活がどう変わるかの具体的説明 4.明確な購入方法の伝達。どうしたら買えるのか、わかりやすく説明する。 5.背中を押す一言(購入依頼)。 1.殆どの企業は、新規顧客を獲得する為なら大金をつぎ込むが、既存顧客のリ 2.一度満足した顧客は、「もう一度購入する」、「購入数を増やす」、 3.新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に再購入を働きかけるほうがコストが少 4.顧客が移り気である理由は、あなたよりも他社のほうが自分に注意を払って 1 新製品や新サービスを紹介する。 2 値上げを事前に知らせ、その理由を説明する。 3 特別価格または特典を知らせる。 4 役に立つ情報を提供する。 5 得意顧客への感謝の意を伝える。 6 セールの開催を告知する。 顧客はすでに知っているという思い込みは捨てなくてはなりません。 既存顧客だからといって早回りしてはいけません。 同じ話を何度も繰り返したら退屈だろうと思う必要もありません。 品質、サービス、保証、価格、その他の利点があるなら、マーケティングを行う 企業はもっと顧客を大事にしなくてはならない。 顧客についての正確な情報なしに、正確な判断を下すことはできません。 新しい見込み客のリストを作成するときや、新商品・新サービスを販売するとき そして、顧客の関心に焦点を合わせたダイレクトメールを作成しましょう。
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よい商品なのに、なぜ売れない? |
■よそと違う「売り」を作る 商売を成功させるための最大の秘訣は、よそにはない「売り」があること、よそとは 商品でもサービスでも、よそにはないものを提供しなくてはならない。 ほとんどの営業会社はただ漫然と、よそと同じようなものを、特に顧客からは同じ よそとの違いがなければ市場でダイコンを売っているのと変わらない。 大きな利益をあげようと思うなら、何とかして、よそと違う「売り」を作ることです。 どこにでもある、すぐ手に入るようなものではだめ。 ありふれたものを作っていては、よそとの違いは出せないからです。 会社を立ち上げ、運営し、維持発展させる、そのあらゆる段階で、よそにない「売り」 製品やサービスの開発・生産から販売・納品まで、あらゆる段階で、よそとは違う しかも単に違うというだけでなく、その違いを理解し評価してくれる大きなマーケット 「類似した商品が溢れている競争の激しい市場の中で勝ち残っていくためには、他社 社長であれば、こうしたセリフはさまざまな場面で見聞きしていることでしょう。 あるいは、社長自身が製品開発部門など、自社の従業員などに繰り返し言っている 実際、中小企業が、大企業をはじめとした競合他社に先んじて特徴的な製品やサー こうした社長の悩みに対して、一つの方向性を示すのが以下で紹介する「感性」という 経済産業省も感性という視点を重視した「感性価値創造イニシアティブ」を2007年 例えば、バルミューダの扇風機、Dysonのサイクロン掃除機、iRobotのロボット掃除 また、人気の浮き沈みが激しく、厳しい競争が繰り広げられているデジタル家電製品 企業は製品やサービスの開発などのさまざまな取り組みを通じて、消費者の感性に 以降では、企業活動、特にマーケティング活動について、感性という視点から取り なお、以後は「製品やサービス」を「商品」と表記します。 「いい商品」といわれると、いろいろな条件が思い浮かぶはずです。 「手ごろな価格(価格)」「高い性能(機能)」「高い品質(品質)」などは、 少し視点を変えて消費者の立場から「いい商品」について考えてみると分かり 下記のようなケースについて、消費者の立場になって考えてみてください。 (1)沢山の商品からたった1つの商品を選ぶ基準 そのコーヒーカップは、週末のひとときに読書を楽しみながら、コーヒーを そこで、コーヒーカップを購入するためにお店に足を運んだあなたの目の前 しかし、今回購入する商品は1セットだけで十分です。 先に挙げた「価格」「機能」「品質」は多くの人にとって、購入する商品を しかし、それだけではないはずです。 例えば、「このシックなデザインは、落ち着いて過ごしたい週末の時間には 一般的に、消費者が商品の価値を認め、購入を決定する要因には「合理 合理的な基準とは先に紹介した「価格」「機能」「品質」など、数値化された そして、非合理的な基準の背景にあるのが感性(コト)です。 ソニーで社長・最高経営責任者を務めた大賀典雄氏はラジオやテープレ ソニーのウェブサイトによると、大賀氏は社長就任時から、「買ってよかった、 大賀氏は消費者の感性に訴える商品を提供することが、消費者に選ばれ、 以上の視点を踏まえて考えると、「いい商品」に対する考え方が少し変わって 例えば、「感性価値創造イニシアティブ―第四の価値軸の提案 感性☆21 ①素材など見えないところまでに及ぶ「こだわり」、ものに込めた「趣向」 ②技術、デザイン、信頼、機能、コスト等によって裏打ちされ、 ③ストーリーやメッセージを持ったものとして可視化され(物語り)、 ④これが、生活者に、驚き、わくわく感、どきどき感、爽快感、充足感、 決定する際に重要な基準と考えられてきた「価格」「機能」「品質」などといっ 消費者の感動や共感を得ることこそが重要であり、「価格」「機能」「品質」 こうした視点を踏まえながら、改めていい商品が売れなかった理由を検討 企業側は、「いい商品を作っているのだから売れるはずだ」と考えて、「いい 消費者の合理的な基準に働きかける「価格」「機能」「品質」などの要因に 確かに消費者の視点から考えると、これまでの話はそれほど新しいものでは しかし、企業の立場からみると、広告や販売促進など一部分の取り組みにとど しかし、近年ではマーケティングなどの企業活動を中心に、感性という視点か これにはさまざまな理由がありますが、最も大きな理由は市場の成熟(商品の 市場が成熟化して多くの競合他社の商品がひしめく中では、「価格」「機能」 そうした中で、各社とも既に「価格」「機能」「品質」などの面で他社との差異化 一方、消費者の感性に働きかけるということは、企業のアイディア次第でその 従って、差異化を図ることのできる余地という点では、かなり多くの可能性を秘 また、人は感動や共感を覚えた商品に対して愛着がわいてくるものです。 そして、購入した商品を、実際に使い続けることによってさらに愛着が深まって すなわち、感性に働きかけ、消費者に感動や共感を覚えてもらえるような商品 こうした理由から、感性という視点の重要性が高まっています。 1.事業や商品のコンセプトを決定する 通常、企業がある事業を行ったり、新商品を開発する際には、コンセプトを検 コンセプトといってもその内容はさまざまですが、例えば「誰に、何を、どのよう もし、商品を提供するに当たってコンセプトがはっきりとしていないのならば、ま 具体的には、 例えば、商品のデザイン(色や形状など)や、その商品を販売している店舗 消費者の感性に働きかけるために大切な点は、 です。 一貫性を欠いているようであれば、企業が発信したいコンセプトは消費者 例えば、コーヒーカップなどの高級陶磁器を扱っており、「商品だけではな その店舗の造りが落ち着きのある非常に高級感漂う雰囲気であったとして ましてや、消費者の感性に働きかけ、感動や共感を得ることはできないで 従って、消費者が五感を通じて感じるものについて、一貫性をもたせるとい 例えば、製造過程での取り組みは、どれほど時間と手間をかけてこだわり しかし、消費者が五感で感じることのできないものでも、消費者の感性に働 上記経済産業省の「感性価値創造イニシアティブ―第四の価値軸の提案 ・製造過程での「秘伝のたれ」や「ものづくりの仕組み(システム)」 ・環境配慮などの「ものづくりに込めた思い」や「思いやり」 などを挙げています。 こうしたものをうまく説明するなどして、消費者の理解を得ることができれ 前述したコーヒーカップの例では「職人の○○氏が、手作りで製作していま 本来、これは商品を製造する際のプロセスであって消費者には分からない しかし、その商品を誰が、どのようなプロセスで作っているかといったことを また、実際は五感で感じることができるのですが、多くの消費者はそれに気 例えば、人間工学的な観点から座り心地のよいいすを作ったとすれば、そ しかし、ほとんどの消費者は「座り心地のよいいすだな」といった程度の感 このように、コンセプトに合致した取り組みであっても、消費者が気がつき 例えば、コーヒーカップであれば、最初は単にコーヒーカップの色に価値を見 そして、色は当然ですが、「自分の手になじむような材質や持ち手のサイズで 企業の視点からみると、このように変化する消費者の感性に応えるような商品 その際に必要となるのが、企業と消費者の間のコミュニケーションです。 消費者の感性に働きかけ、感動や共感を得るためには、「消費者がどのような そして、その消費者の厳しい感性に応えようとする企業の取り組みの中から、 いわば、コミュニケーションを通じて、企業・消費者共に成長を続けることがで 企業と消費者とのコミュニケーションというと、大手企業が行っているような消 しかし、中小企業でもすぐにできるような取り組みもあります。 例えば、取引先の担当者や、店舗を訪れてくれた消費者に感想を聞くといった また、街の酒屋が「友の会」などをつくって「試飲会」などのイベントを行ってい 消費者とのコミュニケーションにおいて大切なことは、消費者とコミュニケーショ ただし、外部のデザイナーやコンサルタントを活用する場合は、関係者間で商 価値観の共有化などの作業を経ずに外部のデザイナーがデザインした商品を また、価値観の共有化などの作業を経ずに消費者の感性に働きかけることに 一貫した自社の商品のイメージを消費者に与え、継続的に消費者の感性に働 |
対応エリア | 静岡・愛知県内、東京周辺 |
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