建設業

              

建設業
建設業者の生き残り・勝ち残り策

  ■公共工事の減少

   公共工事は1999年度以降、一貫して減少傾向にあり、9年間で半分以下の水準
   にまで減少した。

   2008年度以降は景気刺激先としての予算追加等によりわずかに増加に転じまし
   たが、今後も大幅な回復は見込みにくい状況です。

   一般的に、地方の建設業者は公共工事依存度が高く、公共工事の減少は経営
   基盤を揺るがす大問題です。

   それに加えて、知名度のあるゼネコンとの競合になれば、受注を確保するため価
   格競争になり、ますます経営を悪化させるという悪循環に陥りかねない。

   しかし、社会資本を整備する役割を担う建設業者は、こうした難局を乗り越え、大
   きく成長することが求められます。
 
  □建設業者の生き残り・勝ち残るための視点

   前述したような厳しい環境下で、今後、建設業者が成長していくためには、以下の
   ような視点で経営を再検討することが必要でしょう。

    1.地域に密着した営業展開を強化すること

    2.他社より優れた特殊技術をもつこと

    3.正確な情報の収集で利益管理や営業管理を適切に行うこと

    4.機械設備の導入、労務管理の徹底などで効率経営に努力すること

    5.事業の多角化について、柔軟な考えで対処すること

   以下に、それぞれの視点についてポイントをあげていきます。

   1.地域密着の営業展開を強化

     地元業者では、地域密着型の営業が特に重要です。

       顧客の細かい要望に対し、柔軟な設計変更で応じるなど
       大手ゼネコンやハウスメーカーなどではできないことに丁寧に
       対応する

     ことが大切です。

     また、ちょっとしたクレームや質問に対してすぐ顧客の元に出向き対応すること
     や、施工現場を美しくすること、多様な商品の品揃えをすることなどでも、地元 
     顧客に地域密着のイメージをもってもらうことができます。

     このように、顧客に誠実な体制を整えることが、企業イメージをアップさせ、口
     コミで顧客を広げる有効な手段となるのです。

     地域密着型の営業を実践している建設会社のなかには、徹底した地域密着を
     実現するため、施工エリアを本社所在地から50キロメートル圏内に限定して
     いるところもある。

     その大きな理由として、クレームにスピード対応するためということがあげられ
     ます。

     50キロメートル程度だと、電話を受けてから1〜2時間ほどで駆け付けること
     が可能だからです。

     また、具体的に施工を始めた現場をモデルルーム・ショールームなどの営業
     拠点としているところもあります。

     そうした場合には、現場で目に触れやすい仮囲いやシート、看板は、周囲への
     影響を考えて、統一した美しいデザイン・マークを使用します。

     現場監督や職人にもマナー整理整頓の遵守を厳しく徹底します。

     現場の職人は、近所の住民に丁寧な応対をする、ゴミやたばこの吸い殻を持
     ち帰るなど、工事の騒音などで近所の住民に迷惑をかけて申し訳ないという
     気持ちを行動で示すようにします。

     こうした態度を取ることにより、工事現場の近所の住民からの評判もよくなりま
     す。

     工事現場の様子を見ていた近所の住民から信頼されて、工事を受注するとい
     うケースもあります。

   2.他社より優れた特殊技能をもつ

     技術力が他社と比較して高ければ、

       自社のウリを「技術力」として技能特化型企業となる

     ことが可能でしょう。

     さらに、技能者不足の現状や受注の効率化を考えると、生産性を高めることも
     重要な特殊技術といえる。

     具体的には、マニュアルを作成するなど、合理化手法を開発することで、熟練 
     した職人以外でも高度な製品を作ることが可能になるでしょう。

     こうしたことにより職人不足への対応だけでなく、コストダウンも可能になる。

     また、社員などからユニークなアイデアを募集し、それを思い切って採用する
     などの姿勢も必要です。

   3.正確な情報収集で利益管理や営業管理を適切に行う

     正確な情報を得るためには、現場の営業担当者に、

       報告書の提出を定着させることが必要です。

     特に営業活動においては、こうした報告によって営業担当者と上司が顧客に
     関する情報を共有することが可能なため、上司が営業担当者の悩みや営業
     方法について適切な指示を与えることができます。

     また、工事現場において、使用した資材や人員数、工事の進捗状況などの実
     績を毎日データベースに入力し、情報共有を図ります。

     この各現場の実績に、当初の予算をつねに対比させることで、より緻密な利益
     管理が可能になります。

     さらに、各現場の最終費用実績を参考にすると、別の工事の必要経費が予想
     できるようになり、受注金額を決定する際に役立てることもできます。

   4.機械設備の導入、労務管理の徹底などで効率経営を強化

     効率的な経営を行うためには、職人などの人件費の適切な管理が不可欠で
     す。

       徹底した作業の標準化や資材の集中処理、営業体制の見直しなどで、
       効率的に職人を使うことにより、人件費を削減する

     ことが可能です。

     効率化のためには、まず徹底して部門内の作業を分解することが必要です。

     さらに、コストダウンのために、設計図から施工部材、施工動作、スケジュール
     管理、予算管理、施工道具まで分解し、経費削減の可能性を分析します。

     人件費の削減に当たっては、分解した作業ごとに要した時間を調査し、作業
     者にも納得してもらえる標準作業時間を設定することにより、適正な人件費を
     把握するようにします。

     給排水、電気、内装など、専門の職人による施工が必要な場合もありますが、
     単純で、施工道具も完備され、完全にマニュアル化されている工程は、アルバ
     イトを利用することも可能となる。

     作業時間が減少すると、貸金が減少する恐れがあるとしてマニュアル化に反
     対する職人がいても、標準作業時間を守ることでこれまで以上の数の現場に
     従事することができるなど、逆に貸金が増加するケースもあることなどを説明
     し、理解を求めましょう。

     そのほか、インターネットを活用すれば、FAXや宅配便などよりも安く迅速に、
     設計図面に関しての修正や確認などの情報を送達できます。

     最新である必要はありませんが、情報設備は積極的に導入を検討するように
     します。

   5.事業の多角化について、柔軟な考えで対処

     多角化については、

       自社の技術をいかせる関連部門への多角化が中心になります。

     もっとも多いのは、個人住宅分野への多角化です。

     個人住宅分野も大手ハウスメーカーなどが全国を営業エリアとしています。

     そのため、輸入住宅・省エネルギー住宅といった特徴ある住宅に特化するな
     ど、他社との差別化を図る必要がある。

     そのほか、建設廃棄物のリサイクル、現場ごとの利益管理システム作成など、
     従来、建設業者が課題として捉えている分野に注力し、多角化を図っている事
     例もあります。

     厳しい環境だからこそ、体に汗をかくだけではなく、頭に汗をかき、知恵を絞り
     だすことが重要なのです。

                           お問合せ・ご質問こちら

                           メルマガ登録(無料)はこちらから

 

建設業の安全衛生チェック

              

建設業の安全衛生チェックリスト

 安全で健康な職場づくりのためには、まず職場の安全衛生に関する状況について、把握する
 ことが大切です。
 チェックリストを活用して、職場や個々の労働者の状況をチェックし、安全衛生活動を
 強化しましょう。

   建設業 (出所:青森労働局)

建設業の生産性向上

        

建設業の生産性向上

 ■建設業における生産性向上対策
  (1)適切な工程計画と工程管理の徹底
  (2)現場作業者の計画的確保
  (3)技術者と現場主任の養成
  (4)機械化
  (5)付加価値率の向上
  などがあります。

  □適切な工程計画と工程管理の徹底
   建設業においては、工程計画が適切に設計されていないと工程に狂いが生じ、
   技術者や現場作業者の張付けによるムダ(手待ち) 、仮設資機材の非効率、
   受注計画の狂い、資金繰りへの圧迫などによってコストアップを招き、生産性
   を低下させます。
   しかも、工期を全うできない場合は、違約金などのペナルティを課せられる
   ことがあります。
   したがって、適切な工程計画の設定は、建設業における生産性向上の重要な
   ポイントの一つとなります。 
   また、工程計画は実行予算と密接な関係がありますので、建築施工の各工程
   部分に投入する予算を、部分の工期との関係で調和したものにしなければ
   なりません。
   さらに、工程の進め方としては、「山積み」(労務・機械・電力・材料などの
   投入量をトータルすること) に対し、無理がないように「山均し」(山積みの
   凹凸をできるだけ平均化すること)をすることが大切です。
   特に、労務については、一時に投入できる作業者数に限度があり、工事の
   規模(作業場の広さ) と確保できる作業者数によって人数の上限が決まり
   ます。
   したがって、工程計画どおりに工事を進めるためには、一般に土木より建築
   工事で労務量の「山均し」が一層重要となります。
   工程計画・工程管理の手法としては、棒グラフ工程表(バーチャート、ガント
   チャート) やネットワーク工程表(PERT/Time) などが定着していますが、
   実際にどのように作業が進められているか、より細かく管理するにはネット
   ワーク工程表が適切と思われます。

   工程計画を狂わせる原因には、
    ○工期の設定に無理がある
    ○前工程の遅れのしわ寄せがくる
    ○近隣対策が工期に配慮されていない
    ○資機材調達に狂いが生じる
    ○解体や準備・計画期間が考慮されていない
    ○計画と監理・施工のアンバランス
    ○作業員の能力・技能不足
   などがあります。
   そこで、これらの諸問題への適切な対応を行うとともに、工期の遅延防止
   のために、
    (1)工程管理の改善、徹底
    (2)発注者、設計事務所等との連絡調整の徹底(所要時間の短縮)
    (3)休日以外の日の作業効率の向上
    (4)機械化による合理化、省力化
    (5)新技術、新工法の開発、採用
   などの総合的な対策が必要となります。

  □現場作業者の計画的確保
   建設業は“段取り”型産業ともいわれるように、現場作業者を計画的に確保し、
   段取りをキチッとしておくことは、人的生産性の向上のために欠くことの
   できない要素です。
   現場作業者のなかには、収入の確保のため、「もっと働きたい」 とする者も
   一定数おり、休日に他の現場で働き、月曜日もそのまま居ついてしまって
   元の現場に帰ってこないなどの現象も一部で見られます。
   そこで、現場作業者を確保するためには、日頃から労働条件の改善や福利
   厚生制度の充実など労務管理を改善するとともに、状況によっては、賃金
   形態を日給制から月給制に移行するなど、日給者の賃金を保障することも
   重要です。
   こうして、すぐれた作業者を常時一定数確保しておくことが欠かせません。
   なお、優秀な下請職人の確保のためには、常時仕事を切らさないことを前提
   に、○○会などのような組織化を進め、連帯感を醸成することが大切です。

  □技術者と現場監理者の養成 
   建設業における技術者や現場監督(現場の監督管理者) の生産性に及ぼす
   影響は少なくありません。
   建設業の技術者や現場監理者は、
    ・ネットワーク工程表を駆使できること
    ・VE手法(後述) や新工法についての知識や技術を持っていること
    ・災害防止・安全管理の技法等に習熟していること
   さらに、実行予算に忠実に工事を進め、資材(購買) 管理などについても
   能力を有し、しかも現場作業者への労務管理技法を身につけていることなど、
   建設現場で要求されるすべての業務について高い能力が期待されます。
   したがって、建設業における人的生産性向上のためには、すぐれた技術者
   (指定建設業では国家資格者) や現場監理者の確保・養成に努めなければ
   なりません。

  □機械化
   建設業には様々な工程があり、なかには相当機械化の進んだ専門工事も
   あります。
   しかし、大半の工程や作業は、標準化が進んでおらず、製造業などと比べると
   機械化はかなり遅れています。
   したがって、今後、ロボットの活用やユニット化など、工法の改善と合わせて、
   できる限り省人化、省力化のための新しい動きを採り入れていくことが重要
   です。
   その際、多様な工事現場に対応していくために、工事ごとに必要な機械を
   調達することが重要ですが、必要な機械を円滑に調達するには、リースの
   有効活用がポイントとなります。
   また、設計部門では、 CAD、CAMがかなり広く採り入れられありますが、
   中小企業でもこの分野に対して思い切った投資が必要です。

  □付加価値率の向上
   建設業における付加価値率の向上対策として、
    (1)正確な見積りと実行予算
    (2)資材購買の低減
    (3)現場経費の低減と外注管理の徹底によるコスト削減
   などがあります。

   (1)正確な見積りと実行予算 
     見積りが甘いと付加価値額が減少して利益が圧迫され、また実行予算
     どおりに工事が進まないと工事原価が膨張して利益が削られることに
     なります。
     したがって、建設業において、目標付加価値を確保するためには、見積り
     と実行予算の両方をしっかり統制することが必要です(図@参照) 。

   (2)資材購買の低減 
     建設業、特に建築工事業では、多種多様の材料を使用しますので、建設
     資材の管理は、付加価値率向上のための重要な課題です
     そこで、他社価格との比較や相見積りの徹底、長期価格契約による単価
     引下げなど発注時の対策や、納品時の検収の励行、受払い時、保管時の
     記帳など、管理システムの確立、業者在庫方式の導入や棚卸しの励行
     などの方法による現品管理上の対策を講じます。
     なお、木造建築では、プレカット資材や輸入資材の活用が進んでいます
     が、これらを適切に活用することによって資材コストの低減を進める
     ことができます。

   (3)現場経費の低減と外注管理の徹底 
     現場経費のうち、労務費・外注費の低減を図るためには、省力機械化が
     考えられますが、現場作業の一部を工場に移してユニット化し、躯体
     部分を現場で組み立てる方式も採り入れられています。
     また、製造業ではVE(注) やIE技法は主として材料の代替や材料取り
     製造方法改善のために用いられますが、建設業では、在来工法の改善
     のためにVEの技法を活用することが多いようです。
     VE技法の活用によって、現場コストの低減を図ることが重要です。 
     外注管理の改善の具体策としては、管理コストと利益をまかなえる
     ような外注単価の設定、外注協力者(専門工事業者) の能力の定期的
     見直しによる外注業者の再選定、詳細な見積りの要求による見積り段階
     でのコストダウン、作業内容や工期・金額などの契約書の整備などが
     あります。
     (注) VEとは、Value Engineering の略で、 “必要な機能を、よ
      り安価なコストで実現するために改善策(アイデア) を考案す
      る”手法のことです。なお、VEの創始者L. D. マイルズによる“10
      の教え”を掲載しておきます(図A参照) 。
      図A “マイルズの10の教え” 
     また、建設現場では、災害防止・安全活動を強化することも重要です。
     いったん災害が起こると、作業者の不幸を招くばかりでなく、工事を
     休止しなければならなくなり、工期にも影響が出て生産性を押し下げる
     ことがあるからです。
     そこで、 図Bのような「週間安全施工サイクル」 や「月間安全施工
     スケジュール」 などを立てて防災に努めることが重要といえます。


                   お問合せ・ご質問こちら

                   メルマガ登録(無料)はこちらから



建設業のコストダウン

                  

建設業のコストダウン


  ■コストダウンのためのポイント

   1.下請け業者への発注価格の低減

    下請け業者への発注の際、作業範囲や内容が不明確なまま業者に依頼したり、作業
    所長の古い慣習に従ったあいまいな処理をしたりして、無駄なコストがかかっている
    ケースがあります。

    このようなことを防ぐには、確固とした施工方針を打ち出すことや、従来どおりの方法に
    依存するという譲歩を避けることが重要です。

    発注の際にポイントになる項目として、

     ・詳細な契約内容の提示(仕様、品質程度、運搬方法、施工段取り、工程、
      貸与機械の使用条件、安全施設の費用負担、竣工時までの養生・保守・
      清拭責任および費用・単価など)

     ・安価な資材の購入(使い回し、中古品の利用、代替品の利用)

    などが挙げられます。

   2.仮設費・経費の合理的な節約

    仮設段取りの良否が本工事の作業性に大きな影響を与えることから、節約をして甘い
    段取りをし、労力が増えてしまうという状況に陥ることは避けなくてはなりません。

    全体工事のコストダウンの効果が見込める場合は、機械施設が予算をオーバーする
    ことも可とするという覚悟が必要となります。

    仮設段取り段階における考察ポイントとしては、

     ・工期短縮による仮設費、経費のコストダウン

     ・仮設材の使い回し、中古材の活用

     ・材料置き場などの借用期間を圧縮する

    といったことが挙げられます。

   3.躯体・仕上げ・設備の工法改善

    躯体の材料は、ほとんどが市場価格に支配されており、大量買い付け、支払い条件に
    よって若干の差が出てくる程度に限られ、また人件費においても大きくコストダウンする
    ことは困難な状況にあります。

    このような状況において、工法によるコストダウンが効果的であるといわれています。

    工法によるコストダウンのポイントとしては、

     ・全体工区の適切な分割

     ・仮設、段取りの改善

     ・作業方法の改善

     ・新工法、新建築材料の活用

     ・建築資材を工場で組み立ててパーツ化する現場作業工数の削減

    が挙げられます。

    発注者が要望する価格を満足させるためには、建築内容の修正、すなわち設計変更を
    求めざるを得ない環境にあり、建築の目的、機能を損なわずに、合理的手法により
    原価縮小を見いだすということが必要です。

    通常、設計変更のポイントとして、

     ・高額な工事の変更の検討

     ・全体を見きわめたトータルコストダウンを前提とした変更

     ・設計変更案の迅速な決定と文書による確認

    が挙げられます。

   4.合理的な設計変更の推進

    工程管理によるコストダウン方法のポイントとしては以下の点が挙げられます。

     ・運搬作業の削減(運搬時間・運搬回数・運搬距離の短縮・削減、安い運搬具
      の利用)

     ・設計および計画段階でのムダの削除(設計・計画変更の低減、作業の簡素
      化、ムダな作業の削減、手作業の機械化)

     ・現場作業のムダの排除

     ・作業指示、作業実績管理

     ・資材ロスの排除

    以上、コストダウン方法を考える際のポイントについて見てきましたが、コストダウン活動
    において、成果をあげるかどうかを左右するのは作業所長の姿勢であるといえます。

    作業現場において、作業所長が自らの能力に加え、企業内部の人材ノウハウの活用
    および下請け業者からの改善提案および協力を得て工事を進めることで、現場内に
    緊縮ムードをつくり、作業員の協力・努力を引き出すことにつながります。

  □作業改善がコストダウンにつながる

   建設業においては、本来、業務改善の手法である「QC(QUALITY CONTROL)手法」や
   「VE(VALUE ENGINEERIG)手法」が、コストダウンにも効果があるという理由から、
   コストダウンの方策を考える際にしばしば用いられています。

   「QC手法」とは、全社的に多くの人の率直な意見を集めて現状を把握し、問題点を指摘
   して、その因果関係を引き出すための手法のことをいいます。

   「VE手法」とは、業務における問題点に関してその工事に関係する発注者や設計者、
   施工者などが各々の知恵やノウハウを出し合って、より効果的な作業で、より価値の高い
   工事を行なうための改善案を考える手法のことをいいます。

   例えば、階段足場について考えてみましょう。

   今、現場で使用している階段足場が「仮設パイプ枠を組み立てて、そのパイプに足場と
   階段状の板を取り付ける」といったものだと仮定します。

   しかし、この階段足場には以下のような問題点がありました。

    ・階段足場を支えているパイプが通行や荷物の運搬の邪魔になる

    ・敷地の狭いところでは仮設パイプの組み立てが困難

   「QC手法」でこれらの問題点を抽出した建設工事会社が、「VE手法」でその改善案を
   考えてみたとしましょう。

   「VE手法」では、まず「問題の対象となるモノの本来の目的(機能)」から考え始めます。

   この場合、仮設パイプの目的(機能)は、工事用の足場と階段を固定するということに
   なります。

   この「機能」だけに注目して、その建設工事会社は「では、ほかにこの機能を果たす代替策
   はないものか?」と考えました。

   そして、階段足場を上からチェーンで吊るして壁に固定するという改善案を発見したわけ
   です。

   従来の「仮設パイプを組み立てて階段足場を組み立てる」という方法に比べて、「階段足場
   をチェーンで吊るして壁面に固定する」という方法は、当初の問題を解決したばかりではなく、
   思わぬ副産物を生んだのでした。

   それが「コストダウン」です。

   従来は「何本もある長くて重いパイプにかかる費用、そして、その運送費用、仮設費用」と
   いった具合に、工事用の足場と階段を固定するだけの作業に膨大なコストと労力を必要と
   していました。

   しかし、改善後はコストも労力も従来の半分近くに激減したといいます。

  □建設業におけるコストダウンの手順

   建設業においては、以下のような作業改善の手法がコストダウンの施策としてしばしば
   用いられます。

    (a)問題点の抽出

     各部署で、そして各部署の代表者同士でブレーンストーミングをし、日常業務を細かく
     見直し、日頃から「ムリ、ムダ、二度手間である」と思われることを指摘し尽くします。

    (b)テーマの選定と明確化

     指摘された問題点を整理し、そのなかからとくに改善したい事項を選び出し、
     今回のコストダウンのテーマとします。

     そして、コストダウンの目標を全員が明確に意識できるようにし、グループ
     全員の意識統一を図ります。

    (c)現状の把握と原因の追求

     現状や従来の作業方法を観察、調査し、問題点や不都合な点などを客観的に把握
     したうえで問題点について「なぜ」を繰り返し、問題の根本的な原因を追求します
     (以上の(a)〜(c)はQC手法による)。

    (d)具体的対策の立案

     問題の原因を除去すべく、具体的な改善案を立てます(VE手法による)。

    (e)改善案の実行

     具体的な改善案を実行すると同時に、その経過の様子やデータを収集します。

    (f)効果の確認

     従来の方法による成果と、改善案実行後の成果を比較して、品質、コスト、工程、
     安全性などについて改善後の効果を確認します。

    (g)マニュアルの作成と作業の標準化

     効果の確認後、成果のあがった改善案についてマニュアルを作成し、全社、全事業所
     で当該作業の標準化を図ります。

   本来(a)〜(d)の手法で使われる「QC手法」「VE手法」では「ムリ」「ムダ」「テマ」を
   排除して作業効率を高めることを目標としています。

   そのため、品質を落とさずに「より楽に」「より低コストで」「より早く」作業ができることを
   目標とするわけですが、建設業の場合はさらに「より安全に」という基準をもっていなくては
   なりません。

   こうした基準を基に、(a)〜(d)での手法で改善案を出し、そうして出された改善案を
   基に、(e)〜(g)の手順にそって行動し、成果を出し、その改善された方法をマニュア 
   ル化し、全社的に標準化する、という手順を踏むことになります。

   コストダウンの成否は、いかによい改善案が出されるかにかかっているといっても過言では
   ありません。

  □QC手法の手順

   QC手法の手順は、次のように進められます。

   1.職場で発生する問題、改善点をブレーンストーミングする

    まず、現場に従事する人や管理の立場にある人および各部署からの代表者を集めて、
    日常「ムリ、ムダ、二度手間である」と思われていることを発表し尽くしてもらいます。

    このブレーンストーミングをうまく進めていくには、

     ・他人の意見に対して批判はしない

     ・自由奔放な意見を歓迎する

     ・意見の数は多いほどよい

     ・他人の意見をヒントにして、さらに意見を出す

    といったルールを守ることが大切です。

    またこのとき、問題点だけでなく、その原因や改善方法などについての意見があれば
    発表してもらうようにします。

   2.多数の問題点、改善点を性質の似たものに分けて、グループにする

    ブレーンストーミングで意見を出していくと、出された問題がとりとめもなく多くなって
    しまいます。

    そこで、「その山ほどの問題点のなかでどれから手をつけると効率よくコストダウンが
    はかれるか」ということを考えなければなりません。

    このときの方法としては「パレート図」を使います。

    「パレート図」とは、出てきた問題点それぞれについて、発生頻度や影響の大きさ
    (損失額など)を明らかにし、より優先的に処理すべきものから順に並べた図のことで、
    「数々の問題点のうち何が重点項目なのか」を見つけだすときに使います。

    問題項目を明確にすることで、コストダウンの目標を全員が明確に意識できるようになり、
    グループ全員の意識統一が図られるようになります。

    以下に「パレート図」の作成方法を説明します。

    (a)データを集め、項目別に集計する

    (b)各項目を大きさの順に並べ、累積和、累積比率を求めて計算表を作る

    (c)棒グラフを作図する

    (d)累積曲線を記入する

    (e)(d)で出された累積曲線から、上位70%程度を占める問題項目を割り出し改善案
    立案の対象とする

   3.改善対象の問題点と原因の因果関係を求め、問題解決を図る

    ひとつの問題を対象にしてその原因をふたたびブレーンストーミングで追求していきます。

    すると、さまざまな要因が浮かび上がってきます。

    そこで、この網の目のような因果関係を図にして理解しやすくした「特性要因図」を
    作ります。

    この「特性要因図」の作成方法を説明します。

     (a)重要な問題を特性(結果)とする

     (b)特性(結果)を1枚の紙の右端に書き出し、それに矢印(背骨)を書く

     (c)ブレーンストーミングで出た原因(要因)を整理し、グループに分類して
       大骨を引き、グループの見出し(タイトル)を書き入れる

     (d)大骨の要因ごとに、細分化して中骨、小骨などとして書き入れる

     (e)要因の記入漏れがないかチェックする

     (f)特性(結果)に大きな影響を与えていると思われる要因をマークする

  □VE適用の手順

   VE(Value Engineering:価値工学)を適用するための手順は、以下のようになり
   ます。

   1.テーマの選定

   2.活動計画の立案

   3.活動の実施

   4.改善案の提案と実施

   5.活動成果の確認と評価

   1.テーマの選定

    まずは、VE活動を行なっていくテーマを選定します。

    コスト低減の余地が大きいテーマを選定しないとあまり効果を得ることができません。

    受注した工事の設計書をもとに、個々の工種(仮設工事、基礎工事、内装工事など)を
    対象テーマの候補として列挙し、施工上の問題点(性能、安全性、コスト、施工の複雑さ
    など)、工法変更の可能性、施工の汎用性といった観点から評価を行ない、優先度の
    高いテーマに対してVE活動を行ないます。

    一工種を請け負っているような専門工事業者の場合には、工事の各工程を対象テーマ
    の候補とすることが考えられます。

    そして、対象テーマについて、機能面、コスト面、工期面、安全面などからVE活動の
    改善目標を掲げます。

   2.活動計画の立案

    活動計画は、VEを行なえるだけの必要な経験や知識をもったメンバーを選定し、メンバー
    の担当業務や日程計画をまとめたものです。

    メンバーはあまり多くても話し合いがまとまらないため、3名から7名程度が最適と
    いわれています。

    また、メンバーのなかからVEに関する専門知識や管理、統制を行なえる人材をリーダー
    として選定しておきます。

   3.活動の実施

    活動計画に沿ってVE活動を実施します。

    VE活動は以下の3段階から成ります。

    (1)機能を定義する

     VE活動において大切なことは、対象物をモノとしてではなく機能として捉えることです。

     「階段足場の仮設パイプ」の例をとれば、仮設パイプの問題点に対する改善策を検討
     する場合、その問題となる対象を、

      「仮設パイプ」というモノとして捉えるのではなく、
      「工事用の足場と階段を固定する機能」として捉える

     ようにするわけです。

     あるモノを改善するときに、そのモノがすでに目の前にあると、どうしてもその形に
     とらわれてしまって、形にとらわれた部分的な改善に終わってしまいます。

     それは何のためにあるのか、それに要求されている働きとは何かという「目的」と「機能」
     を考えることが必要なのです。

    (2)機能を評価する

     次の「改善案を作成する」というステップにつなげるために、ここで問題となる対象の
     コストを計算しておきます。

     ここで大切なことは、そのコストを、

      モノにかかるコストとして捉えるのではなく、機能にかかるコストとして捉える

     ことです。

     あくまでも対象は、「仮設パイプ」ではなく機能そのものなのです。

    (3)改善案を作成する

     VE活動のメンバーがブレーンストーミングを行ない、改善案を発表し合います。

     ブレーンストーミングに関する注意事項は「QC手法」のときと同じです。

     そして、

      ここで出された改善案のそれぞれについて、その機能とコストを検討し、
      最善の改善策を決めていきます。

   4.改善案の提案と実施

    VE活動によって得られた改善案を施主に提案し、了承を得たうえで、実際に改善案を  
    実施します。

    提案する際には、価値が向上した点を施主にわかりやすく提案し、改善案による効果を
    明確に説明しましょう。

   5.活動成果の確認と評価

    改善案の実施後、機能、コスト、工期、安全などの改善目標に対する成果を評価します。

    一定以上の成果を得られた場合には、社内に告知をし、適用すべき工事範囲を広げます。

    建設業界では、発注者からの建設工事に関するコストダウン要請が強くなってきており、
    建設業者でも積極的にVE活動を取り入れています。

    VE活動を効率よく進めるためには、専門知識をもったリーダーが必要です。

    そうした人材を育成することを目的とした資格としては、

    (社)日本VE協会が認定する「VEリーダー」というものがあります。

    この資格は、同協会が規定するカリキュラムを受講した後、認定試験に合格すると
    得られる資格称号(民間資格)です。

    こうした資格取得も事前に推進しておくとよいでしょう。

                           お問合せ・ご質問こちら

                           メルマガ登録(無料)はこちらから 

 

中小工務店の勝ち残り策

                 

中小工務店をとりまく環境

  ■工務店をとりまく環境

   1.住宅着工数の推移

    平成9年度の住宅着工数は、平成8年度に見られた消費税率引き上げ前の駆
    け込み需要の反動、大企業倒産などによる将来の雇用、所得に関する不安な
    どから約134万戸(前年度比17.7%減)となっています。

    平成10年度の住宅着工数は、低金利が継続されたものの、景気の低迷および
    雇用や収入の先行き不安などにより、117万9536戸と前年度比12.1%のマイ
    ナスとなり、平成9年度とあわせて2年間で30%近くの大幅減少となりました。

    こうしたなか景気回復を図るため、住宅着工数を増加させようと住宅ローン減税
    制度が創設されました。

    住宅金融公庫の低金利政策とも相まって、平成11年に入ってから消費者の住
    宅建築・購入意欲は高まってきました。

    その結果、平成11年度は122万6207戸(前年度比4.0%増)と3年ぶりに増
    加しました。

    平成15年度の新設住宅着工戸数は117万3649戸で、前年度比では 2.5%
    増となり、4年ぶりの増加となりました。

    2019年度の住宅着工戸数が前年度比2.9%減の92万3400戸となる推計を
    発表した(建設経済研究所)。

    しかし、今後の住宅業界を中長期的(5〜10年)な視野で捉えると、その前途は
    決して明るい状況とはいえません。

    最近建てられた住宅は、「耐久性」が非常に重視されており、質が大幅に向上し
    ているため、今後は建て替え需要が減って、住宅着工数も減ることが予想され
    ています。

    さらに、少子化により住宅購入者が減少したり、高齢化によって同居する人が
    増えることなど、日本の人口構造の変化も住宅着工数の減少に拍車をかけるで
    しょう。

    高度成長期以降、日本の住宅供給の中心となってきたように見えるハウスメー
    カーですが、実は大手ハウスメーカー8社の国内シェアは21%程度にとどまっ
    ています。

    つまり日本全体で見ると、ハウスメーカーよりも特定の地域を中心に建築棟数
    を伸ばしているビルダーや、小規模ながらも地場に根付いている工務店が担っ
    ている割合の方が大きいのです。

   2.性能表示制度の導入

    性能表示制度とは、新築住宅の性能を統一的かつ客観的に示し、第三者が確
    認することで購入者が安心して住宅の取得ができるよう、平成12年4月から施
    行された住宅品質確保促進法に盛り込まれている制度です。

    この制度は、発注者などから申請があった住宅だけに適用されます。

    性能表示項目としては、構造性能、火災安全性能、耐久性能、維持管理容易
    性、温熱環境(省エネ)性能、空気環境性能、光損壊境性能、音環境性能、高齢
    者配慮(バリアフリー)性能の9項目になります。

    性能評価は、評価機関が図面段階、中間検査時、完了検査時の3段階で実施
    します。

    性能評価機関が図面段階で評価した性能を、施工で実現させるという性能契約
    を発注者と施工者が結び、中間検査時と完了検査時の評価で、施工者が図面
    通りに施工して契約通りの性能を実現したかどうか性能評価機関がチェックす
    るという流れになります。

    実際の性能表示の方法は、具体的な数値表示ではなく、基本的にランク表示と 
    なっています(数値表示されている性能表示項目もあります)。

    性能表示制度に関連して性能評価機関のほかに、性能表示制度が適用された
    住宅を巡るすべての紛争を処理する「住宅紛争審査会」が設置されました。

  □工務店が抱える問題

   工務店とは、地域密着の大工・職人集団で、年間数棟〜数十棟の規模で活動し
   ています。

   形態は規模によって様々ですが「商品」という概念を持たず、施主との対話によっ
   て一棟一棟オーダーメイドの家づくりをしている会社が多いようです。

   木造在来工法を中心とした伝統的な家づくりが得意である反面、土地探しやロー
   ンなど、建築以外の業務にはあまり積極的でないため、施主自らが不動産会社
   や金融機関に出向いたり、交渉したりする場合もあります。

   対策を考えていく前に、まず問題点を整理して考えてみましょう。

   1.人材の育成

    (財)建設業振興基金の調査によれば、労働生産性が低下している理由として、
    「技能者の高齢化が進行し、以前よりも仕事量をこなせなくなっているため」をあ
    げる企業が60%以上にものぼっており、若年技能者の育成が業界の大きな課
    題となっています。

    工務店に必要な技術者の育成には、短くても4〜5年、長ければ10年以上かか
    るともいわれていますので、現場を任せられるような人材の育成に、早急に取り 
    組むことが必要です。

   2.経営基盤

    中小の工務店が苦戦するなか、大手住宅メーカーのシェアは年々増加しています。

    大手住宅メーカーが伸びている要因としては、次の3つがあげられます。

     (1)低価格住宅の実現

     (2)商品力の向上

     (3)PR力と営業力

    (1)低価格住宅の実現

      大手住宅メーカーは、

       ・住宅の規格化

       ・大量生産

       ・独自工法の開発

       ・合理的な工法による工期短縮

      などにより、高い生産性と価格の低廉化を実現しています。

    (2)商品力の向上

      消費者のニーズは、価格やデザインなどに対してだけでなく、

       ・高齢者に対応したバリアフリー、アレルギーなどの心配のない健康住宅

       ・高断熱、高気密、太陽エネルギーを利用した省エネルギー住宅

       ・耐震構造、高耐久性住宅

      など住宅の質にいたるまで、多様化してきています。

      こうした消費者のニーズに対応するため、大手住宅メーカーでは積極的な商
      品研究・商品開発を進めています。

      そのため、最近では半年〜1年ごとに新機能や性能を向上させた新商品を
      販売している住宅メーカーも見られます。

    (3)PR力と営業力

      大手住宅メーカーでは営業においても、ニーズ調査を行なったり、自社独自
      の規格化住宅を生みだし、莫大な広告費をかけ宣伝を大々的に行ない、展
      示用の住宅を建設し、常駐の営業担当者を配置するなど「攻め」の営業を行
      なっています。

      大手住宅メーカーは以上のような経営で、着実に知名度をアップさせ、消費
      者に安心を与え、信頼を得ています。

      一方、中小の工務店は、

       ・従来の慣習や工法を続けているため、生産性の向上やコストダウンが
        難しい

       ・商品開発を行なえる人材や費用に制限がある

       ・受注は口コミに頼る「待ち」の営業がほとんどである

      というのが実情で、厳しい経営環境のなか、受注が伸び悩んでいるのが現
      状といえます。

  □工務店の生き残り策

   生き残れる工務店としての大前提は、消費者に何十年も満足してもらえる設計・
   間取りを提案し、そうした住宅を建てられることです。

   その上で地域の工務店が生き残るためには、地域に深く根を下ろした、

    地域密着型の経営をすること

   が必要だと考えられます。

   ここでは、こうした経営を実践するために、中小規模の工務店が取り組むべき対
   策を考えてみます。

   1.自社の存在をアピール

    住宅展示場や専門の営業担当者を配置できない工務店では、他の方法で自社
    の存在を周辺地域の消費者にアピールする必要があります。

     そのひとつとして、周辺地域に配布するチラシを工夫することが考えられます。

    消費者が住宅に関して知りたい情報は、価格と性能のバランスです。

    こうしたことから、チラシには、

     ・設備の内容やその効果を詳しく説明し、割安感をもたせる

     ・高級感のある設備、付加価値の高い設備(太陽光発電など)といった
      自社の住宅の特徴を表す機能を前面に打ち出す(取り扱っている商品
      が複数ある場合には複数種のチラシを作成する)

    などの工夫をして、消費者に分かりやすくアピールする必要があるでしょう。

    こうすることで、チラシを見てすぐ価格と性能のバランスが分かるため、チラシの
    効果が上がると思われます。

    また、チラシ以外にも自社の存在をアピールする方法はあります。

    施工現場周辺の住民に対して、

     ・着工時には心を込めた挨拶文とともにタオルを配布する

     ・完成時には騒音や粉塵などで迷惑をかけたお詫びに大工が包丁
      研ぎ・まな板削りサービスを行なう

     ・工事完了後には、ゴミを出した責任を果たすため現場周辺の掃除と
      ドブ掃除を行なうといった活動を展開している工務店があります。

     ・現場工事期間中、向こう三軒両隣と言う言葉もあるように、1日の
      現場が終了したら掃除をして帰る

     ・現場の後片付け、使用中の木材にはビニールシートをかけておく

     ・タバコは近隣の目につかないきまった場所で吸う

    こうしたことで周辺住民に自社の存在をアピールできます。

    さらに、こうした活動を見て、良いイメージをもった周辺の住民から受注できるこ
    ともあります。

   2.現場見学会の実施

    地域の人々から信頼を得るためには、自社の施工技術・施工能力を実際に見
    せることも必要でしょう。

     自社が手がけている建築中の物件の現場で、現場見学会を開催し、
     消費者に公開することにより、建材や工法を実際に見てもらえます。

    とくに上棟時に現場見学会を開催することで、普段はなかなか見ることができな
    い木造住宅の構造などを見てもらいます。

    このときに、自社住宅の構造の特徴・安全性・性能などを分かりやすい資料にま
    とめて来場者に配布するとともに、設計や構造に詳しい担当者に説明させること
    で一層効果が高まります。

    さらに、完成後の物件の室内を公開することによって、実際の住宅をイメージし
    やすくなります。

    こうした見学会は、自社の物件に対する信頼感をアップさせるとともに、消費者
    の住宅購入の意識を高めることができるため、営業にはきわめて有効な手段と
    なります。

   3.人材の育成

    工務店が生き残っていくためには、会社を支える人材が重要です。

    そのため、

     質の高い住宅を建てられる人材を育成することも生き残りの鍵といえます。

    とくに、大手住宅メーカーのような規格化された住宅ではなく、技能者(職人)の
    技術を前面に出すような住宅を販売している工務店では、職人の育成は積極的
    に行なう必要があります。

    ある工務店では、

     ・新卒者を6〜7名採用し、現場中心に徹底的に技能の教育を実施する

     ・仕事の成果に応じて正当な報酬を与える

     ・現場に職人個人の顔写真・名前入り看板を立てて、責任とプライドをもたせる

    などの手法で、若年層の技能者育成を図っています。

    また、自社以外で育成する方法も考えられます。

    その場合は外部機関を活用することになります。

    各都道府県の工務店関係の組織で研修を実施していることもありますが、
    財)国際技能振興財団でも、1週間程度の期間で、大工、左官工の人材育成
    を目指した合宿研修を開催しています。

    左官や大工技術の講義と実習が中心の研修で、参加料は宿泊費、食費、実習
    費込みで1人5万円程度です。

   4.アフターフォローを徹底する

    大手住宅メーカーではなかなか手を出しにくい修繕などを丁寧に行なうことで、
    信頼を得ることができるでしょう。

    具体的な手法として考えられるのは徹底したアフターフォローです。

    定期的なアフターフォローは確実な受注につながります。

    たとえば、建築後2年目以降、半年ごとに無料点検・診断を行なうことや、パート
    を雇ってアフターフォローの電話をかけるだけでも効果はあります。

    また、地域の工務店であれば、ちょっとしたクレームや質問に対してもすぐ顧客
    のもとに出向き対応することも可能でしょう。

    こうした顧客に親切な体制を整えることが、企業イメージをアップさせ、口コミで
    顧客を広げる有効な手段となるのです。

   5.FC加盟

    新しい工法を採用したり、省エネルギー住宅や健康住宅などの住宅を開発する
    ことは、工務店にとってはなかなか難しいものです。

    しかし、FCでは特徴的な工法や住宅を開発していることが多いため、

     FCへ加盟すれば、

     効率的に新しい技術やコストダウンのノウハウを取り入れることができます。

    加盟には、加盟金やロイヤルティーが必要になりますが、

     ・商品充実(特徴的な住宅・工法を採用することができる)

     ・営業力強化(本部のもつ販売ノウハウを吸収できるとともに、直接、
      販売の協力を得られることもある)

     ・施工合理化(FCの規格化住宅はプレカット、工場組立が基本であり、
      熟練した施工技術が求められないことが多いため、工期の短縮と職人
      の確保が容易になる)

     ・資材購入費のコストダウン(本部の大量仕入れにより、資材が低価格で
      手に入り、住宅の低価格化に対応できる)

    などのメリットがあります。

   6.性能表示制度への取り組み

    大手住宅メーカーとの性能の差を明らかにするため、前述の工務店をとりまく環
    境にある性能表示制度に積極的に取り組むことも考えられます。

    性能表示制度が適用された住宅は、性能評価書というお墨付きと、紛争処理の
    アフターサービスが付きますので、公的な保証が付いた商品だといえます。

    法律では、住宅性能表示は発注者などから申請があった住宅だけに適用され
    るものですが、

     大手住宅メーカーとの品質の違いをわかりやすく消安着に説明できるうえに、
     法的に品質が認められ他のエ務店と差別化できるといったメリットもあるので、
     積極的に取り組むことを検討したほうが良い

    でしょう。

   7.ボランティア活動

    ボランティア活動を通じて地域に密着することで、地域にある住宅需要の掘り起
    こしのきっかけとなり、自社の受注につなげることが可能になります。

     住宅需要を掘り起こす方法として考えられるのは、
     長期間にわたって行なう周辺地域住民を対象としたボランティア活動です。

    こうした活動で、知名度が上昇し、地域からの信頼を得られ、住宅の増改築・建
    て替え・新築に関する情報を得られるようになるでしょう。

    工務店で簡単にできるのが、子供の夏休み期間を利用して行なう「親子木工教
    室」です。

    これは、小中学生の夏休みの工作の宿題に、親と一緒に協力しようというもの
    です。

    こうした活動で、15年以上経ってから、当時中学生だった子供から受注を請け
    負った工務店もあります。

    実際に行なう場合、小中学校の校門や近隣でチラシを配ったり、暑中お見舞い
    と合わせて紹介することで集客を図ることが考えられます。

    また、ボランティアの一環として、一人暮らしの老人宅に小規模な修理を行なう
    ために大工を1日無料で派遣している工務店もあります。

   8.ウェブ集客

    インターネットでの集客は地元密着の中小企業にこそチャンスがあります。

    住宅市場は、景気の上向きトレンドに加え、翌2019年の消費増税を控えている
    こともあり、久々に活発化することが期待されます。

    ここ数年は商談の長期化・商談の先送り傾向が見られた一次取得層が動き始
    めることも考えられ、これまで以上に集客・営業の仕掛けが求められる1年にな
    るでしょう。

    住まいづくりの検討をスタートし、情報収集を行っている段階の一次取得層を捉
    えるためには、ネットでの自社PRは避けて通れない問題です。

    ビルダー・工務店のネット集客は、他業界に比べて大きく遅れをとっている時代
    が長かったのですが、ここ1〜2年ほどでようやく、本腰を入れて取り組む会社
    が増えてきました。

    しかし一方で、いまだネット活用に消極的な会社が少なくないことも事実です。

    特に、地域密着型の中小ビルダー・工務店では、今でも「うちの会社は小さいか
    ら」「うちの会社は限られた地域でやっているから」という理由で、ネット集客に力
    を入れないケースが、まだまだ多いようです。

    しかし、ネット集客は、実は地域密着型の中小企業にこそチャンスがあります。

    多額の広告費用を投じなくても、適切な投資と工夫によって、大きな集客効果を
    得るチャンスがあるからです。  

  □企業事例

   以下に、自社独自の戦略で差別化を図っている企業を紹介します。

   <事例1試住可能なモデルハウスをオープン>

    群馬県のAホームでは、

    実際に宿泊体験できるユニークなモデルハウスを開設しています。

    家の天井や壁、床下など内部に空気を循環させることで断熱性、放熱性を高め
    るという特徴をもつ住宅について、宿泊体験を通じて理解してもらうのが狙いです。

    家具やシーツ類、照明器具のほか、1泊分の食料や浴室の用意など生活に必
    要な設備を用意し、家を建てようとする顧客向けに無料サービスとしています。

    運営の担当者は、

     ・運営は順調で、宿泊客の契約率は5割を軽く超える

     ・特徴ある住宅であれば、体験型のモデルハウスは効果的だろう

    と話をしています。

   <事例2 囲い込みと深耕戦略の営業で顧客満足度ナンバーワンを目指す>

    岡山県のB社では

    4つの倶楽部を設立して、最客の囲い込みと深耕を図ろうとしています。

    この倶楽部は、継続的・定期的に人と情報交換できる場として位置づけられて
    います。

     1つ目の倶楽部は、地元の不動産業者20社以上を組織化しているものです。

     不動産業着からお客様を紹介してもらうことを狙っています。

     2つ目は、弁護士や税理士、公認会計士、行政書士、司法書士などの専門家
     10名を組織化しているものです。

     専門家の知識を活用して地主などに対するコンサルティングを行なうことで、
     他社と差別化を図っています。

     3つ目は、地域の地主の方に、税務相談、健康問題など日常的な問題を気軽
     に相談できる場を提供するものです。

     親身になって相談に応じることで、建て替え時などに特命で発注してもらうこと
     を目指しています。

     長い時間をかけることで、財産管理を任せてくれるようになった地主の方もい
     ます。

     4つ目は、健康をキーワードにさまざまな情報を提供することで、周辺地域の
     人々を組織化しています。

     無料セミナーを開催するなどして、定期的に地域の人々と交流の場をもち、知
     名度を上げるとともに、ファンづくりをすることが狙いです。

     B社では、こうした取り組みで、顧客満足度ナンバーワン企業を目指すことに
     より、他社との差別化を図り、受注を拡大を目指しています。

   <事例3 1km圏内を営業エリアとする>

    東京のC工務店では、

    半径500m〜1km市内を営業エリアとし、地域に密着した活動を行なっています。

    建てる住宅も高気密高断熱の住宅を供給できるFCに加盟して、その住宅一本
    に絞っています。

    地域に密着するために、具体的には以下のような施策を講じています。

     ・工事着工時に、周辺住民に迷惑をかけることをお詫びするとともに
      お詫びの品をもって挨拶する

     ・構造見学会(上棟時)、完成見学会(完成時)を行ない、住宅の特徴と
      設計意図を簡単な冊子にまとめて来場者に配布する

     ・現場の近隣住民に1日無料工事券(材料費などの実費だけで簡単な
      工事などを大工が無料で行なう)を配布する

     ・住まいのトラブルを防ぐチェックポイント、ユニークな住まい方、趣味の
      教室のお知らせなどを紹介した地域のミニコミ誌を月1回発行している

     ・顧客から連絡があった場合には、直ちに社長が電話を入れる

    こうした活動を何年も続けてきたことで、顧客や近隣居住者の信頼を得ており、
    受注は増加しています。

   <事例4 木と職人にこだわり、地域にも密着>

    岩手県のD工務店では、

     こだわりをもった住宅を販売するとともに、地域にも積極的に貢献しています。

    D工務店の住宅では、地元で育った木を住宅に使用しています。

    地元の木は地域の気候風土にあっており、その土地で使うとたいへん長持ちす
    るからです。

    工期についても、木材などを乾燥させることを大事にしているため、最低でも4カ
    月を確保しています。

    また、25人の大工職人を雇用し、さらに自社で大工を育てています。

    自社大工でなければ、自社の経営理念を理解し、丁寧できめ細かい仕事をする
    ことは難しいと考えているからです。

    新卒を採用した場合には、地元の職業訓練校で基本的な知識を学ばせ、その
    後自社で先輩大工によって現場で本格的な教育を行なうことで、人材を育成し
    ています。

    さらに、小学校の改修などには積極的に大工を派遣するなど、地元へのボラン
    ティア活動にも積極的です。

    子供たちに大工仕事を経験してもらうことも狙っており、小学校の改修工事で
    は、簡単な工事の場合は子供たちにクギの打ち方やペンキの塗り方を教えています。

    その他、自社で施工した住宅を掲載したカレンダーを作成して顧客に配布して
    います。

    D工務店では、このようなこだわりをもった住宅と、地域住民や顧客とのつなが
    りで安定した受注を確保しているのです。

   ご覧頂いたように、うちは製造業だからとか特殊な業界だからといった考えを捨て
   ることです。

   全ての業界はサービス業と心得るべきです。

   そして、異業種にこそあなたの会社に有益な多くのヒントがあることを忘れないで
   ください。

                         お問合せ・ご質問こちら

                         メルマガ登録(無料)はこちらから

 

 

住宅商品のブランドと管理

           

住宅商品のブランドと管理

  ■商品ブランドの開発および磨き方

   「ブランド」と言うと大きな会社の高級商品を思い浮かべるかもしれません。

   しかし、ブランド力というのは小さな会社にも存在しますし、小さな会社でも
   ブランド力を持つことは可能です。

   そして、そういったブランド会社は、他のブランド力を持たない会社よりも圧倒的
  に経営がうまく いっています。

  ここでは、住まいの商品開発ステップのポイントと、ブランドの磨き方について解
   説します。

    1.コンセプトのない開発は無価値
      商品ブランドをつくる際によく見受けられるのが、「コンセプト」があいまいな
      開発です。

      「他社がつくったから」「高級志向のお客さまが増えたから」「今の商品の売れ

      行きが芳しくないから」といった他人任せの開発では、顧客への訴求はおろ
      か、営業パーソンの「売る気」すら触発できない。

      商品を顧客に受け入れてもらうためには、まず販売エリアにおける市場規模

      (概数)と自社・ライバルのポジショニングを整頓する必要があります。

      ライバルがやっていないからといって、ニーズがない分野を開拓しようとする
      ケースが少なからず見受けられます。

      しかし、市場開発にはコスト(人・販促費・時間)がかかる。

      自社のポジションを見極めて、「スキマ」を攻めるか「同じ土俵」で戦うかを十
      分に吟味しなければならない。

      ポジショニングの例では、狙うべきポジションを「西欧風

      (European)」で「伝統的(Traditional)」かつ「安価
      (Low Price)」なものと設定している。

      狙うべきポジションを決めたら、次にコンセプトの設計である。

      「コンセプト」とは、特徴のことではない。開発の「目的」と併せて、「誰に」
      「どんな」価値を提供するかを“具体的に”決めることです。

      例えば、「東京23区内に住む30代をターゲットに、健康志向の住宅を坪単

      価50万円で企画する」と決めたとしても、まだ具体的ではない。

      なぜなら、ここにはまだ無数の“未知数”が存在するからです。

      所得水準や家族構成は当然のこと、勤める業種や家族のライフサイクルに

      よっても「住まい方・暮らし方」は変わってきます。

      また、旅行が趣味である人と、バイクが趣味の人では、住まいに求めるもの

      が全く違うでしょう。

      マーケットを切り分けるについては、「地理的未知数」「人口動態未知数」「心

      理的未知数」「行動未知数」の四つが一般的です。

      それぞれ、セグメンテーションに当たっての未知数をまとめました。

      地理的未知数であれば、単純に「東京23区」といった地域のほかに、対象と

      する都市の人口規模や経済発展度、平均気温や降雨日数といった気候な
      ど、それぞれの未知数で多くの切り口が挙げられます。

      例えばA社では、本来のターゲットである30〜40代の顧客が激減し、20代

      の見込み情報が増加している背景から、「ファストハウス」をキーワードに、
      「地元で働く20代で、自らの中学校区で自分の城を持ちたい主人」に向け
      た、短納期(Fast)・ローコスト・最初(First)に持つ家をテーマと
      した開発で成功を収めました。

      中学校区に絞った理由は、その範囲が地元を最もアピールできる範囲であ

      るからです。

      「どんな」という価値は、「住まい方・暮らし方」であり、スペックではない。

   2.ニーズとシーズの融合
     また、顧客ニーズを具体化したコンセプトが出来上がっても、自社が差別化で
     きる「ライバルと比較した時の強み」と合致していなければ、成功する確率は
     低い。

     あらためて自社の強み(シーズ:自社が有する事業化、製品化の可能性のあ

     る技術やノウハウなどをさし、シーズの状態は“種”の状態)を技術的角度、歴
     史的角度、人材的角度から抽出しなければならない。

     その上で、自社が操業するエリアで「何が強みとして生かせるのか」という棚卸

     しを行い、強みであるシーズが、コンセプトに合致しているかどうかの検証を行
     う必要があります。

     自社の強みは、すでに営業パーソンも認識しているケースが多く、この部分と

     コンセプトがはっきりつながってくると、販売の推進力にも拍車が掛かってきます。

     シーズとは文字通り“種”です。

     育て方によっては、大輪の花を咲かせる可能性も秘めているのです。

   3.提案方法まで決める
     また、商品開発の際には「提案の仕方」を出口に、開発計画を進める。

     商品開発をした後の営業会議で、商品の特徴を説明している場面に遭遇しま
     す。

     しかし、開発した商品のスペックを説明したところで、営業パーソンが興味を持
     つのは「金額」と「武器(その商品の強み)」のみです。

     営業会議でコンセプトに沿った売り方や提案の仕方まで説明しなければ、開発

     趣旨は伝わらない。

     したがって、最初から「売り方・提案方法」まで決める方針で開発に臨み、必要

     であれば全社員の前で、その商品のコンセプトを踏まえた営業のロープレを行
     うくらいがよいでしょう。

   4.重点を絞る
     開発プロジェクトは、創造型のミーティングであるため、ユニークなアイデアや
     仕組みが多く会議のテーブルに上がってくる。

     しかし気を付けなければ、せっかくの商品のコンセプトが多くなりすぎ、逆に何
     の特徴も見えなくなってしまいます。

     またB社では「女性」にターゲットを絞り、ローコストながら、「女性が自らコー

     ディネートできる楽しみ」に特化した一戸建て住宅を開発した。

     「安さ」や「安全面」にも配慮した商品であったものの、訴求ポイントを絞り込ん
     だのです。

     それにより、これまで機能価値中心であったB社の商品ラインアップに“女性と

     して輝く楽しみ”という新たな価値を付加することができました。

     自社の商品に本当に必要な価値は何だろうか。

     「安心」「安全」「お得」「快適」「喜び」と、顧客が求めるものは多い。

     しかし、価値は一つに絞ったほうがポイントがブレず、訴求力は強くなる。

   5.開発後のPDCA
     中小企業において、住宅の商品開発はプロジェクト組織で行われることが多
     いようです。

     したがって、開発した後にプロジェクトメンバーが集う機会が少なく、どうしても
     PDCAが弱くなりやすい。

     せっかくコンセプトを打ち出して開発したのに、いつの間にか単なる安売り商

     品になっては、開発側の士気も下がってしまいます。

     そこでお勧めしたいのが、「開発メンバーの集い」です。

     開発メンバー集いでは、「開発の趣旨・コンセプトに沿った商品提案ができてい

     るか」「計画通りの販売はできているか」「販促の見直し余地はないか」といっ
     たテーマについて話し合う。

     顧客ニーズの変化や、法律や各種助成金制度の改定があれば、マイナーチェ

     ンジの検討をしてもよいでしょう。

     内容にもよるが、開発後3〜6カ月のスパンで継続的に行っていただきたい。

     これは開発に限った話ではなく、人事制度やマニュアル策定、5S、クレーム撲
     滅対策、組織改革など社内の少数精鋭で遂行したプロジェクトなら、どれでも
     同じことです。

     PDCAは弱くなっていないだろうか。

     そもそもプロジェクトの目的は、何らかの財産を社内に残すことである。

     したがって、その運用状況を監査する意義は大きいのです。

  ブランディングを成功に導くための営業管理と販売促進

   1.「苦痛な会議」の主人公になるな
     前項では、住まいの商品開発のポイントについて解説した。

     サービスブランドの磨き方を型決めし、コンセプトを持った商品(武器)を手に
     入れた後、求められる成果に向けて、管理者がタクトを振る必要があることは
     言うまでもありません。

     しかし、毎月、月初の会議で、「今月の見込み客(ターゲット)」が各営業担当

     からコミットメントされ、当月の実績のために各部門が協力しながら必死になっ
     て数字をつくる。

     ターゲットがいない営業パーソンは下を向き、「チラシまき」や「長期管理顧客」

     回りに時間を割くことが要求される。

     管理者が「先」を見るようにしなければ、この1カ月サイクルの「苦痛な会議」は
     なくならない。

     これでは一部の優秀な営業パーソン以外、「管理職になりたい」とは思わない

     はず。

     目先の業績ばかりに目が向いてしまってはいないでしょうか。

     苦痛な会議を主導しているのは、あなたかもしれない。

   2.営業管理の要諦は「工期」管理にあり
     住宅営業(あるいは建設業)に関して言えば、先行管理指標は「数字」と「工
     期」です。

     受注しても工程が先、あるいは長期に渡るものは、売上げ計上や回収が遅く
     なるため、その重要度がおろそかになる傾向にある。

     そのため、受注・売上げ・利益といった、これまで管理していた指標と、見込み 

     案件も含めた工期をまとめた業績先行管理フォームを作成する。

     タテ軸に管理指標と案件を、横軸に時系列を並べることで、「営業以外の部門
     が着目したくなるフォーム」に進化する。

     フォームは全体で3部構成となっており、最上段が「業績」、中段が「受注物件

     の工期」、下段が「見込み物件の工期」を先行管理できるようになっている。

     「業績」については各社管理すべき指標が異なるが、着目すべきは「受注残を
     除いた今期受注額」。

     過年度にため込んだ受注残物件にあぐらをかいて、当期の受注が少ないケー

     スが少なくない。

     あくまで今期、どれだけ期中完工物件を獲得できたかが重要である。

     「受注物件の工期」については、施工担当や設計担当から契約工期と現在の

     進捗について発表させる。

     営業パーソンは、工事請負契約が完了すると、次の受注に注力せざるを得ない。

     したがって受注後のプロセスから意識が離れる中で、トラブルの原因が生じる

     ケースも多いのです。

     そこで、営業会議などの営業管理の場で「異常に気付ける仕組み」として、現
     状を明確にする必要がある。

     「受注物件の工期」は、見える化することで「施工能力のスキマ」が見える。

     職人不足の昨今では、職人自体の高齢化や新設住宅着工戸数の減少が将
     来に想定される中で、このスキマをいかに埋められるかが生命線である。

     また、薄利物件でスキマを無理やり埋めても、固定費をカバーするだけの急場

     しのぎであり、現場の意識薄弱による事故でも誘発したら取り返しが付かない。

     こうした場合の最も正しい選択肢は、「計画的な受注(付加価値の高い物件)
     で、先行して工期を埋めること」なのです。

     これを実現するための手段が「見込み物件の工期」の見える化である。

     一見ムダな作業に思われるが、表にまとめることで、「持ち物件でカバーでき
     ないスキマ」を埋められる物件が浮かび上がってくる。

     また、上段に記載された受注・売上予測を埋めることが可能な案件が浮かび

     上がってくる。

     ここを3カ月先行で営業パーソンが重点攻略するわけです。

     当然ながら「見込み物件」にはランクが付けられ、重点先のランクが低ければ

     同行営業の対象となるし、あらかじめ高いランクと分かっていれば、早い段階
     で見込み客への工期交渉が可能になる。

     さらには、開発した商品の販売目標に応じて、商品戦略・エリア戦略と組み合

     わせた建設的な営業ストーリーも組むことが可能になります。

     月末・期末が近い時のみアタフタする管理者が多いが、求められているのは

     期末時点での“利益”であり、“顧客満足”である。「○月が決算月なので安くな
     ります」といったクロージングトークは「住まい方の提案」を望む顧客にとっては
     全く響かないばかりかマイナスの効果をもたらします。

     プロの発する言葉ではない。

     優先順位をよく考えていただきたい。

   3.販促カレンダーによる販促先行管理
     全社で取り組むべき販売促進にも先行管理は必要だ。

     相手が消費者である以上、むやみやたらな販促はムダになりかねない。

     季節ごとのポイント(年回り、帰省時期、進学・卒業・退職、地域の祭りなど)や

     六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)も大きな影響を与える。

     そこで、年間カレンダーの形であらかじめ販促の全体スケジュールをつくること

     をお勧めする。

     土地や建物、現場見学会のチラシだけでなく、入居者イベントやモデルハウス
     でのミニイベントに至るまで表にまとめる。

     限られた予算だからこそ、計画が大事であり、全体感を網羅しているからこ

     そ、期中の重点が発生した場合に、優先順位を考えた“手”が打てるのです。

     ある会社では、先述の業績先行管理と販促カレンダーを一元管理し、部門全
     体でメンテナンスしながら運用をし、好業績を上げている。

   4.部門にキーパーソンを1人つくる
     仕組みをつくっても成功のカギは結局、“人”の中にしかないということだ。

     残念ながら、「住まい方」と言ってもそれを伝えるべき幹部や管理職層には、長
     く培われてきた自社の風土(DNA)に染まり、行動を変え切れない人が多い。

     お勧めなのが、「現場の空気を変えられるキーパーソン(キーマン)を“あなた

     が”徹底して教育すること」です。

     例えば、タブレット端末は広く普及したが、周りの(自社の考えに凝り固まった)
     ベテランでタブレットを使いこなしている人は少ないでしょう。

     だからと言って、その有用性がないということにはならない。

     つまり、どれほど行動を変え切れないベテランがいても、その「当たり前」を切
     り崩す必要がある。

     そのためには二つの条件が必要です。

     第1の条件は「部門にキーパーソンを1人つくる」こと。

     これは、新たな仕組みを回すために必要なことである。

     「住まい方」についての理解が得られれば、この役割を部門内の事務スタッフ

     にお願いすることをお勧めする。

     会社のために空気を変えようとするスタッフを、ないがしろにする上司はいな
     いはずです。

     成功のカギは“人”の中にある。

     また、第2の条件は、彼・彼女らに「求められる役割」を理解させることだ。

     この役割は、社長にあります。

     部門長任せではDNAは変わらない。

     組織上の役割は維持しつつも、個人に任せたミッションのプロセスを部門長か
     ら随時聞き取り、それを補強する必要があります。

     第二創業の気概を持って、徹底的にブランディングに注力していただき、自社

     に新たな価値をつくり出しましょう。

 

建設業

           

住宅業界における差別化

 住宅メーカーは少子高齢化の進展や景気悪化を受けて、住宅市場は低迷が続いており、
 省エネ住宅で活路を見出そうとしています。

 しかし、国内の景気低迷を背景に、消費者は住宅取得に慎重である。

 景気刺激策として、政府は長期間住める優良な「200年住宅」や省エネ性能の高い住宅の
 補助制度を導入している。

  ■住宅業における営業の差別化

   1.サービスブランドの確立はワンツーワンマーケティング
     中小ビルダーの差別化のポイントは、「自社の業界ポジションの明確化」と「そ
     のポジションにおけるブランディング」にあります。

     住宅関連市場を工法別で見ると、在来木造、RC造、鉄骨造、2×4(ツーバイ
     フォー)造、プレハブ工法に至るまで多種多様です。

     また直接工事を請け負う工務店やビルダーに資材を供給する建材卸売業、住
     宅設備メーカー、資材・原材料メーカーまで加えると、市場の裾野は広い。

     こうした多様な業界において、何で差別化を図るかと言えば、「サービスブラン
     ドの質」である。

     なぜサービスブランドなのか。

     それは住宅関連市場が、ワンツーワン(顧客と1対1で対峙すること)の色合い
     が極めて強く、その質の向上が消費者にとっての価値を高めることにつながる
     からです。

     ここでブランドについて整理すると、

     ブランドは大きく分けて「企業ブランド」「サービスブランド」「商品(製品)ブラ
     ンド」に分けられます。

     消費者が専門品(めったに消費しない商品)を購入する際、判断のポイントは
     次の5つである。

      @企業の信用 : 企業ブランド(コーポレートブランド)
      A商品の提案内容(提案の方法) : サービスブランド
      B営業の対応やサービス : サービスブランド
      C商品の価格(価格感応度は低い) : 商品(製品)ブランド
      D商品のスペック(機能、価値) : 商品(製品)ブランド

     住宅建設(ビルダー)各社は、他社との“差別化”と言えば、商品ブランドを
     思
い浮かべがちです。

     顧客が住宅展示場でどのビルダーの話を聞いても、商品スペックや価格の話
     ばかり聞かされるのはそのためです。

     その一方、顧客は本当に“商品”の比較ができているかと言えば、答えは
     「NO」である。

     消費者は設備の建材の機能でなく、購入後の便益(=すまい方)の視点から
     価格やスペックを比較しているのです。

     したがって、自社が提供できる「本当の価値=サービスブランド」という入り口
     の確立なくして、またワンツーワンの関係を抜きにして競争に打ち勝つことは
     困難である。

     すなわち、競合他社との差別化によって勝敗が決まるのです。

   2.サービスブランドの構築方法
     サービスブランドを磨くためには、まずエリア別に競争環境を見極める必要が
     ある。

     なぜなら競争環境によって、差別化すべき項目が変わるためです。

     ここで押さえておきたいのは、大手ハウスメーカーが必ずしもリーダー企業で
     はないこと。

     地域を人口50万人単位で見れば、マーケットの上位を地域ビルダーが占める
     場合が多いのです。

     さらに価格帯別で見れば、中小ビルダーが付け入る隙間(=ニッチ)がある。

     次に、それらを四つのケース別に分け、差別化項目を述べていきます。

      (1)地域独占型企業が存在
        地域に完全密着した会社(住宅建設)が存在する場合、知名度や歴史、
        実績などの企業ブランド、地域に根ざした商品開発による商品ブランドで
        勝負をかけても、それを模倣する同質化政策を展開するため、中小住宅
        建設会社は勝ち目が薄くなります。

        それでは、多くのハウスメーカーの弱点は何か。

        それはサービスブランドの「スピード」です。

        したがってサプライチェーンとしての垂直統合度を高め、企業連合体とし
        てのスピード価値を最大限に高める必要がある。

      (2)価格帯で二分された市場
        地方都市で大手資本の子会社が乱立する地域や、個人所得は低いが世
        帯人数が多く、世帯収入ベースは潤沢な郊外都市などにおいては、住ま
        いに対する消費者の嗜好によって高価格と低価格に二分するケースが
        多い。

        こういったケースでは、サービスブランドの「住まい方」の提案が受注を左
        右します。

        地元で歴史のある会社や、理念経営を進める会社企業においては取り
        組みやすく、自社のこだわりを消費者の嗜好に合わせて重点化し、前面
        に出せる環境整備が必要となる。

      (3)大手が参入していない地方都市
        大手が比較的少ない地方都市は、地の利を生かした中小会社に有利な
        マーケットであるケースが多い。   

        ここで意識したい戦略が、サービスブランドの幅の充実です。

        要は大手の模倣戦略だ。

        例えば、国・市町村や公共団体が行う各種助成金制度や融資制度の手 
        続き代行、契約前後・工事中・入居後とそれぞれで顧客満足を高める仕
        組みの充実(サービスの厚み)により、他社との差別化を図ります。

      (4)中小企業が群雄割拠
        狭小エリアで業界内の競争環境が熾烈を極めるのは、主に都市部です。

        ここでのサービスブランドは、顧客とのコミュニケーションの大きさ(=接
        触頻度・密度)に尽きる。

        限られた範囲内で自社のブランド価値を顧客に伝えるためには、ライフス
        タイルに合わせた価値提供が求められる。

        例えば、国土交通省と厚生労働省が高齢者の住宅問題対策として整備
        を進める「サービス付き高齢者向け住宅」の運営に携わるN社は、地域
        密着に工夫を凝らしている。

        弁当宅配や掃除サービス、新聞読書サービス、地域の祭り運営代行など
        の事業を通じ、エリアの消費者と接点を拡大し、施設入所者を確保してい
        る。

        こうした接点づくりのための投資は優先したいものです。

  □営業段階(顧客との契約前)のサービスブランド
   住宅関連市場では顧客(消費者)へのサービスブランドの価値が勝敗を決めると
   述べました。

   それでは、サービスブランドをどのようにとらえ、何を磨くべきか。

   ここでは、自社が磨くべき「営業段階(顧客との契約前)」のサービスブランドにつ
   いて、元請である住宅メーカー、工務店の立場から解説します。

    1.住宅営業をめぐる時代の移り変わり
      十数年前まで、住宅メーカーの営業は新人でも売れた時代でした。

      理由は大きく二つある。

      一つは、「顧客との情報格差が大きい」ことです。

      当然ながら、新人は広く深い業界知識を持ち合わせていない。

      しかし、住宅を建築(リフォーム)するために必要な知識は幅が広いため、顧
      客も構造・税制・住宅ローン・資金計画・各種建築法令などについて、知識を
      持っていない。

      そのため顧客が住宅メーカーに、“任せざるを得ない状況”になりやすかった
      のです。

      また、ほとんどの顧客にとって住宅は、「生涯で直接購入する物品の中で、
      最も高価なもの」です。

      したがって、「信頼できる人に任せたい」という気持ちが働く。

      もう一つの理由が、新人であろうと、知識面で勝る(と顧客が思っている)人
      にお願いしたいと考えることです。

      しかし、2000年代に入り、インターネットが普及し、消費者の購買モデル
      は、従来のAIDMAからインターネットで情報を収集するAISASさらに
      AISCEASへと大きく変化した。

      住宅メーカーの一般的な善循環システムAISCEAS(アイシーズ)はAISAS
      (アイサス)の法則より、さらに深く・細かく購買心理プロセスを分けた
      モデルです。

      消費者があるもの購入しようとネットで情報収集する場合、「Attention」 
      「Interest」「Search」「Comparison」「Examination」「Action」「Share」
      といった行動をとります。

       1.Attention(注目・注意)
       2.Interest(興味・関心)
       3.Search(検索)
       4.Comparison(比較)
       5.Examination(検討)
       6.Action(購買)
       7.Share(情報共有)

      今では消費者は本屋に行かなくても、インターネットで住宅取得に関する必
      要知識を収集できる環境にあります。

      また、売り手から得る情報よりも、パソコンやタブレット端末からいつでも手に
      入れられる情報を信用するようになった。

      つまり、情報提供なき営業アプローチは、顧客にとって“ムダな時間のお付き
      合い”になるリスクが高まったのです。

      インターネットの普及とともに、人間関係で売れていた営業パーソンが突然
      売れなくなったり、人のよさを売りにしていた若手営業が長いスランプに陥っ
      たりするケースが増えている。

      今までの「一生懸命にお客さまと向き合えば、必ず成果につながる」とい
      う“当たり前”が通用しなくなったのだ。

    2.二つの仕組み化
      では、サービスブランドを磨くポイントは何だろうか。

      (1)「情報収集手段の仕組み化
        多くの住宅メーカーは、いわゆる“見込み顧客(住宅建築を予定している
        消費者)”の情報収集を、「紹介」「展示場」「資料請求」で行っている。

        これを顧客側から見ると、それぞれ「安心」「興味」「比較」のキーワードに
        置き換えることができる。

        結論を言うと、自社の強みが、この安心、興味、比較のいずれに最も合致
        するかを見極め、販促を集中展開することです。

        安心を期待する顧客には、自社の施工中・入居後のサービス内容(サー 
        ビスブランド)がツール化されていれば、紹介者にとっても勧めやすい。

        また、興味については、他社にないキャッチコピーや奇抜なデザイン、ご
        当地初の試みを具体化するとよいでしょう。

        マスコミの活用(パブリシティ)も、相乗効果につながりやすい。

        比較の場合は、イメージ戦略よりも数値比較できる材料を雑誌やホーム
        ページに掲載する手段が効果的だ。

        つまり大事なのは、「顧客の立場で顧客価値に沿った仕組みづくりをする
        こと」なのである。


      (2)セカンドアプローチに向けた仕組み化  
        売れない営業パーソンは、持っているツールや商品を顧客に全部出して
        しまう。

        運よく顧客がツールに興味を持てば次につながるが、この手の営業パー
        ソンが持っている資料は一般的なものであることが多い。

        これでは、むしろ顧客にパソコンでの情報収集を促してしまう。

        ここで目線を顧客に移すと、「営業パーソンに会わなければならない理由
        は、どこにあるのか」が最重要項目です。

        その可能性は、「すでに住宅に興味があって建築したい」「提案が面白そ
        うだから、直接聞いてみたい」のいずれかではないだろうか。

        前者は、クレームさえ起こさなければ、受注にこぎ着けることができる。

        しかし後者の場合、顧客の期待値を上回るパフォーマンスをしなければ、
        すぐに離れてしまうでしょう。

        ここで重要なのは、「『直接聞いてみたい』と思わせるものを残すこと」で
        す。

        自社に専門性の高いスタッフや技術がある場合は、それを見せるタイミン
        グ、あるいは、受注率が高い上司との同行のタイミングを見極める必要が
        ある。

        分かりやすい例を示すと、高級旅館に赴いて、最上級の接待を受けた上
        で、「明日はさらに満足できるサービスをお約束します」と言われたらどう
        でしょうか。

        期待はいやが上にも盛り上がるだろう。

        これを商談に当てはめると、期待値を高める終わり方をすることだ。

        したがって、「営業ストーリーの型決め」がセカンドアプローチに向けた仕
        組み化のポイントとなる。

        短期決戦用と中長期用にストーリーを分け、顧客ニーズ別に「ヒアリング
        すること」「伝達すること」を営業パーソン全員で決める。

        サービスが密室で行われることが多い住宅の営業だからこそ、「暗黙知
        の形式知化
ナレッジマネジメント」が有効に機能するのです。


  契約〜施行段階のサービスブランド
   ここでは、住宅業界において差別化を図るための「契約〜施行段階」でのサービ
   スブランドの磨き方について解説します。

   善循環システムでの契約〜施工段階の範囲

    1.施主とのコミュニケーションによる満足度の向上
      円滑に受注できても、施主の満足度はその先のフォローによって決まる。

      契約後の主なステップには、
       @間取り・仕様の確定および資金計画の確定
       A実行予算および本図面の作成(各種申請含む)
       B施工(着工、上棟、竣工)
       C引き渡し

      の四つがあります。

      大事なのは、施主とのコミュニケーションです。

      組織的なコミュニケーションで、契約までに膨らんだ「施主の期待値」を下回
      らないサービスを提供し、満足度の向上を追求しなければならない。

      それぞれのステップについて、順に解説を行う。

    2.間取り・仕様の確定および資金計画の確定 ― 現実を理解させる
      施工前の段階で施主に与える価値は、「誠実さ」です。

      施主は夢のマイホーム実現に、期待が膨らむ時期であり、同時に大きな不
      安も抱えている。

      したがって、「施主が抱える不安をすべて“その場”で解決し、視界をクリア」
      にするプロとしてのスキルが求められる。

      しかし、モノにはコストがかかる以上、「あれもこれも」と施主の要望をすべて
      許容しては、コストばかりふくらみ、完成工事総利益(完工粗利)など取れま
      せん。

      ここで固めるべきは、「間取り」「仕様」「資金計画(金額)」「工期」である。

      できる限り、営業担当だけでなく、設計担当や施工担当が同席して、その場
      で決めていく(確定させる)ことが肝要。

      また、施主の満足度を上げる意味においては、社長や担当役員がお礼をす
      べきだろう。

      さらに、ここで大切なのは、必ず「追加・変更承認」を得ることです。

      後になって「言った、言わない」の状況をつくってしまい、「予実績がマイナス」 
      「完工粗利が取れない」と漏らし、現場で利益を吸収する話が後を絶たない
      からです。

      これは施工前のこの時点で、施主からの承認を得られていないことが原因で
      ある場合が多いのです。

      施主の視界をクリアにし、説明責任を果たすことで「誠実さ」を示します。

    3.実行予算および本図面の作成 ― 総合力を見せる
      このステップでは、追加承認と並行して「実行予算の策定」「施工図面の作
      成」「建築確認申請」といった業務が発生する。

      サービスブランドを見せるポイントと言えるでしょう。

      ここで訴求する価値は、「安心」。

      施主との約束事を、「自社の総合力を見せるチャンス」ととらえるのです。

      これらの工程は、必ず社内連携を要する。

      A社では、施工図面に手書きで施主の細かい要望を記入し、大工に手渡して
      いる。

      営業や設計が聞いた、施主の「住まい方の希望」を施工者に渡すことで、イ
      メージ通りの仕上げが期待できる。

      これが、施主の安心につながるのです。

      その上、見込み客を現場に案内する際にも、顧客の要望を施工に反映して
      いると安心感をアピールする「営業ツール」としての価値を発揮するのです。

    4.施工 ― 将来の施主に“魅せる”
      施工段階における価値は、「ステータス」。

      主役である施主を、現場で徹底的に盛り立てる。

      また、地鎮祭や供養祭、上棟式などは工事や家族の安全を祈念するイベン
      トである。

      言い換えればこのタイミングは、施主の親族や近所の方、クルマで通りか
      かった人、つまり「将来の施主」が一堂に会する“営業のチャンス”と言える。

      そこで、あらかじめ社内のイベント参加者(人数は多いほうがよい)は、数日
      前から当日の動き方を決めておく。

      住宅会社のB社は、上棟式の前日までに、「半径100メートル圏内」にある
      住宅やマンションを訪問して、お祝いイベントを告知しています。

      また、当日に行う餅まきに、全社員が参加することをルール化している。

      地域と一体となったその盛況ぶりに、「ステータス」を感じた施主は驚きと喜
      びを隠さない。

      当然ながら、準備が成否を分けるのです。

      こうした、将来の施主に向けた仕掛けを怠らないことが、施主満足と見込み
      発掘の“二兎を得る”条件となる。

    5.引き渡し ― 「任せて安心」と言わせる
      半年から1年かけて構想し、待ち望んだ「住まい」の鍵が、施主の手に渡るタ
      イミングが引き渡しである。

      ここでの価値は、「“不安”の解消」にあります。

      まず、引き渡しに先立って必ず行うべきことが「代金の回収」。

      一般的には、手付金・上棟金・残金の回収率が各会社ごとに決まっている。

      しかし、この回収作業が遅れるというケースをよく耳にします。

      単価が大きい業種だからこそ、資金繰りは生命線であり、引き渡し前の完全
      回収は絶対条件と言える。

      最終残金の回収後に鍵を渡しすことで、両社にとって、“不安”のない、気持
      ちのよい引き渡しができるのです。

      この引き渡しも、イベント化するとよいでしょう。

      例えばある住宅会社では、「引き渡し式」を型決めし、施主満足度を高めて
      いる。

      まず、引き渡し前の家の中で施主とこの会社が施工のチェックなどを行う。

      次に、末永く生活する住まいに関する取扱説明書を、施工担当者が丁寧に
      説明します。

      それから、あらかじめ運び込んでおいたテレビとDVDデッキにより、着工から
      完成に至るシーンを放映し、この映像をプレゼントするのです。

      この間に、施工側は家の外で引き渡し式の準備をする。

      施主が鍵を受け取るために引き渡し前の家の外に出ると、そこには営業・設
      計・工務・大工・トップが赤じゅうたんの両サイドに並び、施主を祝福する
      (いったん家の外に出るのは、工事用の鍵を閉めてから施主用の鍵で開け
      ることにより、工事用の鍵を使えなくするため)。

      ここで鍵を受け取り、新しい住まいの鍵を開ける。

      施主の家族の中には、初めて足を踏み入れるマイホームに、涙をこぼす人も
      いるとのこと。

      「任せて安心」が、確信に変わる瞬間である。

      この、施工前から引き渡しまでの流れを、自社流にアレンジし、同じ価値を常
      に施主に提供することが、中長期的な紹介受注の第一歩となるのです。

  □「入居後」のサービスブランド
   前項では、契約〜施行段階でのサービスブランドの磨き方次第で、中長期的な紹介
   受注の結果が変わってくることを解説しました。

   ここでは、「入居者」となった施主のフォローのあり方と、有力情報の「いけす」と
   しての自社ファンを増やすための要諦について解説する。

    1.入居後の施主との接点
      引き渡しが終わった後の施主(入居者)と元請業者との接点は、通常であれ
      ば工事担当者やアフターサービス担当者による定期点検が中心となる。

      あらかじめ決められた日程に、瑕疵(かし)担保責任に基づいた点検項目の
      チェックや、住まいの不具合補修を行うことが目的。

      ただ、この入居後のサービスブランドの提供の仕方こそが、自社の顧客価値
      を最大化するポイントなのである。

      CD(Customer Delight=顧客感動)という言葉が使われて久
      しいが、決められたサービスを提供する限りは、CS(Customer
      Satisfaction=顧客満足)を上回る評価は難しい。

      つまり、“積極的に紹介したい”と思わせる状況に入居者が身を置かない限
      り、「ファン化した」とは言えないのである。

    2.プラスワン訪問とクイックフォロー
      住宅購入者である入居者は、入居後、新たな住まいでの快適な暮らしを得る
      代わりに、住宅ローンの返済や近所付き合い、子供の通学や親世帯とのコ
      ミュニケーションなど、新たな課題にさいなまれることが多い。

      ここでポイントになるのが「プラスワン訪問」と「クイックフォロー」である。

      K社では、営業活動の日報欄に「プラスワン入居者訪問」という欄を設け、徹
      底的に自社の入居者を訪問する活動に注力している。

      創業から30年もたつと、当時の入居者の営業担当者が在籍していること自
      体が少ない。

      したがって、過去の入居者リストを営業部門の管理者が一元的に管理し、1
      件でも多くの入居者に営業担当者が定期的に顔を出す仕組みを構築・運用
      することで、入居者からの絶え間ない紹介を生み出している。

      またF社では、「クレームこそ顧客からのメッセージ」との標語を掲げ
      クレーム対応後、30分以内に入居者宅を訪問するルールを徹底している。

      応急処置でなく、まずは入居者の不満を軽減することで、営業の誰もが「ク
      イックフォロー」を自社の強みとしてPRしている。

      なお、この場合アフターサービス部門を厚く配置する分、固定費が多くかかっ
      てしまうが、ここを地元採用のパート従業員(入居者の奥様など)で固めるこ
      とで、クチコミの紹介受注につなげている。

    3.オーナー会と家族向けメモリアルメール
      感動を得るためには、「想定外」なサービスの型決めが必要です。

      H社では、過去10年間の入居者を対象とした「オーナー会」を主催。

      当日は営業色を消し、モデルハウスに多くの入居者を招待し、子供向けの遊
      びを中心に、ネイル、似顔絵、節税講習会などを企画・開催している。

      このオーナー会により、入居後の認知的不協和(矛盾する認知を同時に抱
      えた状態から生まれるストレスを、軽減させようとする心理過程を指す用語)
      の解消効果も期待できる。

      つまり、「高いお金を出して購入したものの、本当によいものなのだろうか」と
      いう不安や、「高いお金を出したのだから、よいものを買ったのだ」と自分を
       納得させようとする心理を、実際によいものだと納得している、あるいは不安
      が解消されている状態に持っていくことができる。

      このほか、入居者向けに「貸切状態」をつくることで、クローズドな扱いにス
      テータスを感じる顧客からは、「ありがとう」の声が絶えないとのこと。

      またM社では、家族のメモリアルデーをあらかじめ情報収集(ヒアリング)して
      おき、誕生日や結婚記念日前のハッピーメールを専任者によって配信してい
      る。

      文面に自社の新商品情報や、新たなイベント情報のアドレスを加えることで、
      タブレット端末経由で当該メールを見た入居者は、屋外でも自社のサービス
      を体験でき、話題に上る可能性も高まります。

    4.CSアンケートの有効活用と紹介システム
      CSアンケートを取っている会社は、意外に少ない。

      元請にとって顧客の評価は、自社の存続に関わる重要な指標おなります。

      したがって、これまで活用しなかった会社には、ぜひCSアンケートの実施を
      お勧めします。

      S社では、入居者に向け、入居直後と1年経過した後に、CSアンケートを依
      頼している。

      1年後に実施するのは、入居時点から1年後までの自社の対応も評価しても
      らうことで、アフターサービスの品質を高めるためです。

      このCSアンケートが平均点以下(60%未満)の場合は、社長自らが入居者
      宅を訪問することとしており、社内で行う会議において皆でその原因を探り出
      している。

      紹介案件は大きく、@入居者経由、A協力業者経由、B不動産業者経由、
      Cそのほか(金融機関など)経由 ― に分けられる。

      紹介ルールはあらかじめ明確にしておいたほうがよいでしょう。

      理由は、紹介促進に向けた意識が向上することと、紹介予備軍の背中を押
      す効果が期待できるため。

      事前に紹介ソースごとに目標紹介件数を定め、必要な接触頻度を決めた上
      で紹介促進を図る。

      紹介システムを運用することで、特に紹介予備軍については、“影武者的”に
      営業活動をしてくれる期待値も高まり、結果としての紹介件数が伸びる。

      ここで紹介した入居後のサービスブランドは、ほんの一部です。

      しかし、紹介受注が安定している企業の共通点は、こうした仕組みが整って
      いることと、その運用ができている。

      入居者を自社のファンにするためには、相応の時間と労力が掛かる。

      しかし、そのコストなくして、安定紹介は得られない。

      場当たり的に情報を収集するよりも、「宝の山」である入居者ソースを活用し
      たほうが、はるかに効率がよいのです。

      歴史のある会社、また情報数に課題がある会社は、今一度、紹介システム
      のあり方について再考されることをお勧めします。

 

建設業の安全管理

              

建設業の安全管理


  ■建設業と安全管理

   建設業はほかの産業と比べて、以下のような特殊要因を抱えているといえます。

    ・自然条件の影響を受けやすい屋外での作業が多い

    ・高所作業や擬削作業などの危険な作業が多く、墜落・転落などが起きる
     確率が高い

    ・工事ごとに作業内容が異なる

    ・複数の下請企業・協力企業に属する作業者による混在作業となることが
     多い

   このため、災害の発生する割合が高くなっているといわれています。

   特に、実際に現場で作業をしている作業者を多く抱えている中小建設業者では、
   労働災害が多くなっています。

   これは、中小建設業者では人材・資金・技術などが不足し、安全管理体制が十分
   でない企業が多いためです。

   しかし、事故を起こしてからでは取り返しはつきません。

   中小建設業者といっても、工事現場における安全管理を自主的に行う必要性は
   高くなっています。

  □安全管理の考え方

   安全管理は、作業者個人個人の自主的な行動がなければ効果がありません。

   しかし、それと同時に、監督者(経営者)がつねに安全に気を配る必要があります。

   そのためには、大きな視野をもって全体の安全管理の状況を見渡し、一人ひとり
   が安全確保のために努力しているかどうかをきちんと把握していなければならない。

   まずは、基本的な安全管理ができているかどうかの全体的なチェックポイントを紹
   介するので、自社(社長自身)の安全管理の浸透度合いを把握してください。

   次項に具体的な安全管理のための取り組み、施策を紹介します。

  □現場における安全管理

   安全管理においてもっとも重要なのは、

    基本的なことを、いかに忠実に手を抜くことなく遂行するか

   ということです。

   チェックシートを作成して、定期的なチェックを行うことをお勧めします。

  □危険予知(KY)活動

   危険予知(KY)活動は昭和49年に日本で独自にはじまり、以来国内の労働災害
   減少に大きく貢献してきました。

   社員が集まって世間話をするような気軽さで実践でき、しかも自分の知らなかっ
   た危険を明確にできる安全教育であるといえます。

   具体的には、

    その日の作業を始める前に、作業するグループ全体でミーティングを行う

   ことにより進めます。

   ミーティングで話し合う内容は、

    (1)その日の作美から予沸される危険

    (2)予沸される危険に対する対策

    (3)対策に基づいた安全な作業方法

   といったものです。

   KY活動のなかでのミーティングが通常のミーティングと違うところは、雑談の延長
   のような感覚で行われるところにあります。

   つまり、形式ばった通常のミーティングにおいては、つい「まあいいか」と思ってし
   まいがちな些細なことについても、KY活動のミーティングでは気軽に話し合うこと
   ができるのです。

   また、KY活動のミーティングのなかで話題になったことは、その都度シートに記入
   していくことが望ましい。

   このようにしてKY活動を行うことにより、必要なことを漏らすことなく、また、堅苦し
   くない感覚で危険予知を行うことができます。

   また、KY活動の前に「安全ミーティング」と呼ばれるミーティングを行う会社もあり
   ます。

   安全ミーティングでは、その日の作業を行う前に関係作業者全員が集まって、当
   日の作業内容、作業方法・手順、人員配置などの指示・調整を行います。

   作業者の意誠・責任感を高めるためにも、ミーティングの際に、作業員が具体的
   に体験した危険を、その場の状況などとあわせて報告させることが必要でしょう。

   このことで、KY活動の効果をより高めることができるでしょう。

  □健康管理

   どんなに工事現場の安全管理を厳重に行っても、作業者の体調がすぐれなけれ
   ば事故を起こしやすいものです。

   作業者の健康管理も安全確保の大きな要素といえます。

   (1)基本的な生活態度のチェック項目

     ○作業者は進んで健康診断を受けているか

     ○手洗い、うがいを励行しているか

     ○ 飲み過ぎ、食べ過ぎをしていないか

     □夜更かしばかりしていないか

   (2)健康保持増進機関

     健康保持増進のための具体的指導は、事業場内に専門スタッフを確保するよ
     うなことが困難な場合には、一定の基準を満たして認定を受けた、以下のよう
     な外部の機関を利用して推進することができます。

      ◎労働者健康保持増進サービス機関

      ◎労働者健康保持増進指導機関

       上記機関の詳細については「中央労働災害防止協会」のホームページで
       ご確認ください。

        中央労働災害防止協会 

   (3)企業で行いたい健康保持増進活動

     ◎健康測定……生活状況調査、医学的検査、運動機能検査からなる

     ◎運動指導……運動によって健康的な生活習慣を確立するために行う

     ◎メンタルヘルスケア
            ……健康測定の結果、メンタルヘルスケアを受けることが望ましい 
               場合や、本人からの希望があった場合に、援助や指導を行う

     ◎栄養指導……食生活の偏りからくる問題の解決のための指導を行う

     ◎保健指導……健康上の問題を予防、コントロールする方法の指導を行う

                        お問合せ・ご質問こちら

                       メルマガ登録(無料)はこちらから

 

建設現場の安全管理

           

建設現場の安全管理

  ■安全管理の徹底に足並みが揃いにくい建設現場

   建設業は労働災害が多く発生する業種です。

   重たい資材を運搬したり、高所や地中での作業が多かったりと建設現場で行われる
   作業の多くは危険を伴うものです。

   建設事業者は安全管理を徹底し、労働災害を未然に防止しなければなりません。

   しかし、建設現場の作業内容は作業の進行とともに短期間のうちに変わっていきます。

   また、建設現場には、元請け・下請けなどといった異なる階層の事業者、土木
   工事・建築工事などといった異なる業種の事業者が集まって作業をしています。

   このような事情から、建設現場の安全管理は足並みがそろいにくいのが現状です。

   多くの企業は労働災害の防止に取り組んでいます。

   特に、建設業など労働災害が多く発生する業種の場合、企業は安全管理を徹底し、

   労働災害の未然防止に努めなければなりません。

   一方、建設業の仕事現場は、特殊な環境にあります。

   建設現場の作業内容は作業の進行とともに変わっていきます。

   また、元請け・下請けなどの異なる階層の事業者、土木工事・建築工事などの異なる

   工事業者が集まって作業をしています。

   こうした事情から、建設現場の安全管理は足並みがそろいにくいのが現状です。

   ここでは、建設業における労働災害の発生状況に関するデータを紹介するとともに、

   法令に基づく安全衛生管理体制の整備の内容、建設現場で実施される安全管理の
   内容などについて紹介していきます。

  □建設業における労働災害の発生状況 

   1.労働災害の発生状況

     厚生労働省「労働災害発生状況」による建設業の死傷災害発生状況
     (死亡災害および休業4日以上の死傷災害)

   2.墜落・転落の事例

     労働災害は、設備の点検不足やちょっとした気の緩みから発生することがあり
     ます。

     厚生労働省「職場のあんぜんサイト」公表資料(建設業における墜落・転落の
     事例)

     日ごろから作業場内で危険な場所が無いかを点検する担当者を決めていた
     り、余裕のある工期を確保すれば、こうした事例は防げたかもしれません。

     このような基本的な安全管理の体制については、労働安全衛生法(以下「安
     衛法」)とその関係法令で定められています。

     建設事業者が労働災害を防止するための第一歩は、安衛法などに定められ
     た安全衛生管理体制を構築することだといえるでしょう。

  □建設現場の安全衛生管理体制

   1.建設現場における安全衛生管理体制
     安衛法の目的は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立や責任体
     制の明確化など総合的計画的な対策を推進することにより、職場における労
     働者の安全と健康を確保するとともに快適な職場環境の形成を促進すること
     です。

     建設事業者は安衛法に基づく安全衛生管理体制を構築しなければなりません
     が、それは建設事業者のオフィス(本社など)と建設現場で異なります。

     ここでは、一定規模以上の建設現場の安全衛生管理体制を紹介します。

     以降で紹介する建設現場の安全衛生管理体制においては、元請けは「特定
     元方事業者」または「元方事業者」と表記します。

     特定元方事業者とは、元方事業者のうち、特定事業(建設業および造船業)を
     行う事業者です。

     また、下請けは「関係請負人」と表記する。

     建設現場における安全衛生管理体制は次の通りです。

     なお、常時従事する作業員の規模などによって異なるが、ここでは労働安全
     衛生法施行令第7条第2項で定める次の場合について紹介します。

     (1)ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等
       により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生
       労働省令で定める場所において行われるものに限る)または圧気工法
       による作業を行う仕事:常時30人

     (2)上記1.の仕事以外の仕事:常時50人

       図は、一定規模以上の建設現場の安全衛生管理体制を簡単にまとめたもの
       です。

       詳細については所轄の労働基準監督署もしくは建設業労働災害防止協会  
       (通
称「建災防」)に問い合わせることをお勧めします。

       なお、特定元方事業者は、統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者の選
       任などの他、特定元方事業者および全ての関係請負人が参加する協議組織
       を設置・運営するなど、労働災害の防止に必要な措置を講じなければならな
     い。

   2.建設業の総合的労働災害防止対策についての通達

     建設現場において元方事業者や関係請負人が実施する安全衛生管理の詳
     細は、「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」で示され
     ているため、一度、確認することをお勧めします。

     また、建設業における労働災害の多くは墜落・転落によるものです。

     これらの労働災害の防止を図るため、2009年6月1日より労働安全衛生規則
     が改正され、墜落防止措置の強化が図られました。

     これにより、建設現場では足場の種類によって墜落防止措置を講じることや作
     業開始前に足場に関わる墜落防止設備の取り外しの有無等の点検をするこ
     となどが義務付けられました。

      厚生労働省「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について

      厚生労働省「労働安全衛生規則(足場等関係)が改正されました

  □建設現場の安全管理

   1.安全管理の手法

     労働災害を未然に防止するためには、建設事業者は安衛法などに基づく措置
     を確実に講じつつ、個々の現場の実情に応じた安全管理を行うことが重要で
     す。

     以降では、建設現場において、労働災害を未然に防止するための手法とし
     て、「5S」「KY」「TBM」を紹介します。

   2.整理整頓:5S

     建設作業ではさまざまな設備・機械・工具を使います。

     また、建設現場では多くの作業員が仕事をしています。

     建設現場を散らかったままにしておくと、工具を探すのに時間がかかって作業
     効率が低下します。

     また、設備・機械・工具などが散らかっているために作業場の床の大きな穴や
     段差が見えなければ、転落や転倒といった労働災害につながりかねません。

     建設現場では、日ごろから整理整頓をしておくことが重要であり、そのための
     手法に「5S」があります。

     5Sの定義は次の通りです。

     5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」という5つの項目の頭文字を
     とったもので、整理からしつけまでを組織的・継続的に実施していくという手法
     です。

     主に製造業で用いられる整理整頓の手法ですが、建設現場でも応用すること
     ができます。

     「整理・整頓・清掃・清潔」を徹底し、建設現場を「4S」の状態にしておくことを
     習慣付けるように、作業員全員に「しつけ」を行います。

     4Sの状態にしておくことを建設現場のルールとしても、ただルールを決めて壁
     に張り出しておくだけでは、建設現場が常に4Sの状態になることはありませ
     ん。

     作業員一人ひとりにとって4Sの状態が当たり前になるまで、作業前と作業後
     に必ず整理・整頓するように指導を徹底します。

   3.危険予知:KY

     建設現場では、日ごろから、作業の中に潜んでいる危険をいち早く予知し、回
     避・改善に努めることが大切です。

     この「危険予知」の頭文字をとったものを「KY」と呼びます。

      また、危険を予知するには、そのための訓練が必要で、それを危険予知訓練
     (危険予知トレーニング=KYT)と呼びます。

     危険予知訓練は、作業状況のイラストや実際の作業を見せたりしながら、そこ
     に潜む危険とそれによって起こり得る事故などについて話し合うことです。

     例えば、建設現場で仕事をする作業員が、自分が高所で作業する際にどのよ
     うな安全対策を行っているかを他の作業員に説明するなどして、その作業の
     危険な点などを話し合います。

     こうした危険予知訓練を実施して、建設現場で仕事をする作業員一人一人が
     日ごろの仕事の中に潜む危険を予知する能力を高めることで、労働災害につ
     ながるヒューマンエラー(人的過誤)の防止になります。

     その他、作業員に対して中央労働災害防止協会(通称「中災防」)などが行っ
     ているKY関連のセミナーや勉強会に参加させ、そこで行われた訓練をその作
     業員が他の作業員に教えるといった方法で危険予知訓練を行ってもよいで
     しょう。

   4.意識継続

     建設現場で作業開始前に作業内容や安全目標を確認するために行うミーティ
     ングは、工具箱(ツールボックス)に腰をかけて行うことも多いため、「ツール
     ボックスミーティング(TBM)」と呼ばれています。

     5SやKY(危険予知)を行っていても、日々作業を進めるうちに、安全への意識
     は薄れていってしまいます。

     そこで、毎日、仕事を開始する前にTBMを行って、その日の「作業内容」「安全
     のために特に気をつけなければならない作業の内容」「安全目標」などを作業
     員全員で確認し、その日1日、安全への高い意識を持って仕事に取り組むこと
     ができるようにします。

     TBMは、作業員の安全への意識を継続させるというだけではありません。

     毎日、仕事の前に互いに顔を見せ言葉を交わすことで、コミュニケーションを
     図り連帯感を高めることにつながります。

     作業員同士が互いに困った点を相談し、改善すべき点を指摘し合うことで、労
     働災害を未然に防止する効果が期待できます。

   5.労働災害発生時の備えとしての法定補償(政府労災)と法定外補償(労災)

     労働災害を完全に防止することはできません。

     そこで、建設事業者は万一の備えとして、いわゆる「法定の労災保険」に加入
     することが不可欠です。

     これは労働者災害補償保険法で定められている政府管掌の労働保険で、1人
     でも作業員を雇用している建設事業者は必ず加入しなければなりません。

     また、一人親方であっても特別加入することができます。

     この他、民間の保険会社が行っている、いわゆる「法定外補償」に加入する建
     設事業者もあります。

  □建設現場の安全衛生管理状況チェックリスト

   これまで紹介してきた建設現場の安全衛生管理体制や、労働災害を未然に防止する
   ための手法などを踏まえた、建設現場における安全衛生管理状況チェックリスト
   紹介します。

   こうしたチェックリストを日々活用することによって建設現場の安全管理が徹底され、
   労働災害を未然に防ぐことができるでしょう。

                         お問合せ・ご質問こちら 

                         メルマガ登録(無料)はこちらから