ワークライフバランス(WLB)


  ■ワークライフバランス(WLB)型経営

   ワーク・ライフ・バランスとは、一般的には従業員それぞれの希望に応じて、「仕事」
   と、子育てや親の介護、地域活動などの「仕事以外の生活」の調和が図れる状態で
   あるといわれています。

   このため、ワーク・ライフ・バランスというと「時短」や「介護休暇」などの「従業員
   にとっての都合優先」というイメージが強く、社長のなかには「この不況期にそんな
   ゆとりはない」と感じてしまう方も少なくないと思います。

   しかし、上手に導入すれば、会社業績向上に貢献し、長期的な経営体質強化にもつな
   がります。

   日本でWLBが大きく注目されるようになったのは2000年以降のことで、当時は少子
   化対策としての印象が強かった。

   しかし、その後は「名ばかり管理者」などの問題を背景に、適正な労働条件の確保の
   面からもWLBが重視されるようになっています。

  □業績向上と満足度向上の好循環を目指す

   ワーク・ライフ・バランスの導入は従業員にいきいきと働ける環境をもたらします。

   社長であれば誰でもそれを望むところでしょう。

   しかし、逆に「ワークライフバランス経営は業績を圧迫し、結果として社員を不幸に
   する」という思いから導入をためらっている社長も多いでしょう。

   たしかに現状の業務はまったくそのままで、「一律に就業時間を1時間削減する」と
   いったやり方をすればその危険性は高くなります。

   従業員は一時的には時間的な自由度を増しますが、それが長期的な生活向上には
   つながりにくいでしょう。

   ワークライフバランス経営を考える際にまず重要なのは、「社員のワークライフバラ
   ンス」と「会社業績」を二者択一的な関係で捉えるのではなく、「両者をいかに同時に
   実現していくか」という発想に切り替えることにあります。

   ワーク・ライフ・バランス型経営においては、社員は、「仕事に集中できる時期」、「子
   育てに専念したい時期」、「介護と両立させたい時期」など自分のライフステージに
   応じた働き方ができます。

   また、長時間残業がなくなることで、健康増進や自己啓発などの時間を確保できる
   というメリットもあります。

   一方で会社は安定した労働力確保や従業員活用の多様化が図れるとともに、業務
   効率を見直すことで生産性向上につなげることができます。

   また、ワークライフバランス経営導入企業として、ブランドイメージ向上も期待できる
   でしょう。

   そして、このような両者のメリットを兼ね備えた企業にはさらに優秀な人材が集まり、
   生産性や業績をあげていくという好循環が生まれます。

   このようにワークライフバランス型経営の本質は、

    従業員満足度と会社業績が高まりあう好循環のなかで、
    より高い次元での経営を実現していくことにあるのです。

   最終的には、WLBは1人1人が就業環境や家庭環境に応じて決めていくべきものと
   いえるが、少なくとも、「慢性的な長時間労働がない」「パワーハラスメントや社内いじ
   めがない」など、心身ともに健康で働くことができる職場環境が求められていることは
   間違いないでしょう。

  □中小企業だからこそ導入しやすい

   ワークライフバランス型経営は余裕のある大企業だからこそ可能であると考えられ
   がちです。

   しかし、実際には企業規模は関係なく、むしろ導入にあたってのハードルは中小企業
   のほうが低いと考えられます。

   大企業では多くの従業員が抱えるさまざまな事情に対応するために、制度導入は
   どうしても「大掛かり」になってしまいます。

   また、役職や給与体系なども細かく設定されているため、複雑な制度設計も求められ
   ます。

   中小企業では従業員数も限られており、一般に組織もフラットであることが多いため、
   個々の従業員の状況に応じたきめ細かくかつシンプルな制度設計が行いやすくなり
   ます。

   また、大企業に比べて経営者と従業員の距離、従業員同士の距離が「精神的」にも
   「物理的」にも近いため、より一体感・スピード感のある取り組みが可能であるという
   メリットもあります。

  □導入の進め方

   1.推進体制の検討

     ワーク・ライフ・バランス型経営導入にあたっては、制度構築・運用のための推
     進体制を固める必要があります。

     通常は「人事総務部が兼務で主導」、「プロジェクトチームを発足して主導」な
     どの進め方が考えられます。

     また、部署ごとに「推進委員」を設置し、日々の進捗状況を管理していくことも
     必要でしょう。

     企業規模や人事総務部のキャパシティー、事業所の地理的な分散状況などに
     応じて最適な推進体制を構築します。

     なお、いずれの体制を構築するにしても、経営者自身がワークライフバランス
     経営導入の重要性を示し、自らのリーダーシップのもとに進めていくことが必
     要です。

   2.現状把握

     自社でワークライフバランス経営を推進する際のポイントを整理するために現
     状を把握します。

     その際には経営者の認識だけではなく、アンケートなどによって従業員全員の
     考えも吸い上げて、そのギャップも把握するようにします。

     たとえば、経営者が「必要以上の残業を行わない全社的風土がある」と考えて
     いても、従業員全員がそのように感じているとは限りません。

     経営者の「考え」と現場での「感じ方」のギャップを埋めていくことも必要です。

     現状把握に必要な視点は会社によっても異なりますが、ここでは網羅的な視
     点として、「中小企業ワーク・ライフ・バランス対応経営マニュアル
     (中小企業)のなかから、経営者、従業員それぞれの立場からの評価の視点を
     紹介します。

     それぞれについて「重要性」と「改善の必要性」を評価します。

     双方のポイントが高い項目が優先して取り組むべき項目になります。

   3.優先順位付け(マニュアル頁7〜17)

     現状認識での「重要性」と「改善の必要性」の評価をもとに優先して取り組むべ
     き項目を決定します。

     原則としては活用可能な経営資源なども考慮しながら双方のポイントが高い
     項目を優先することになります。

     ただし、「業務の効率化」については、ワークライフバランス経営導入の前提条
     件ともいえるものですので、特に入念にチェックし、優先度をあげる必要がある
     ので、ここに項目ごとの具体的な対応策を記載します。

     また社長と従業員の認識のギャップが大きい事項についても留意します。     

   4.計画策定(Plan)

     優先順位づけができたら、項目ごとに具体的な計画策定を行います。

     ワークライフバランス経営導入による効果は、多くの場合、発揮するまでにあ
     る程度の時間がかかります。

     また、売上や利益などの数値計画と比べると達成度合いが把握しにくいという
     側面もあります。

     そのため、「導入は決意したが取り組みがいつのまにか消滅した」、「取り組ん
     ではいるがうまくいっているのかどうかわからない」といった事態を招きやすい
     のです。

     そのため、計画策定にあたっては

      ・計画達成なしには会社の安定成長はないという危機意識を、社長・従業員
       の双方がもつこと

      ・進捗管理可能なできるだけ具体的な数値目標を設定すること

     などが重要になります。

   5.実践(Do)

     計画の実践にあたっては経営者がリーダーシップを発揮し、前述の推進体制
     を使って組織的に行っていきます。

     また、ワークライフバランス経営ではさまざまな制度を導入することになります
     が、その制度が実際に利用できる環境・雰囲気作りを行うことが重要です。

     たとえば、「長期休暇取得促進制度」という制度を作ったとしても、部門によっ
     ては業務対応上実際には不可能であり、かつ「そのようなことを言い出せる雰
     囲気ではない」ということであれば、意味がありません。

     このように実践のためには「制度策定」、「環境整備」、「雰囲気作り」の3つの柱
     必要になります。

      ○制度策定

       ・長期休暇取得促進制度

      ○環境整備

       ・業務の生産性向上

       ・人員配置の見直し 等

      ○雰囲気作り

       ・上司が率先して取得

       ・期首に全員が取得時期を申請 など


   6.進捗評価(Check)・見直し(Control)

     取り組みを開始したら、その進捗状況を定期的にチェックします。

     制度を導入したかどうかだけではなく、「それが実際に利用されているか」、
     「従業員の満足度は上がっているのか」についても確認することが大切です。

     部門ごとに設置した推進委員、推進事務局、経営者が定期的な会合を開くな
     どして、進捗状況を共有しましょう。

     そして、未達成の場合はどこに問題があるのかを特定し、改善策を講じること
     が大切です。

     この際、個々の現場レベルで改善可能であるのか、全社的な取り組み方針変
     更の必要があるのかなどについても確認する必要があります。

     また、ワークライフバランス経営の本質である「従業員満足度と会社業績が高
     まりあう好循環」が創出されているかについても確認し、より効果的な次期計
     画策定につなげていくことも大切です。
  
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