クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

クレーム客をファンに変える

■相手のテンションにつられない

 クレームに対応するうえで、まず大事なことは、「クレーム相手のテンションにつられない」こと
 です。

 クレームを発してくるお客様は、商品そのものや、商品やサービスを提供する会社などに対して自分
 自身の勝手な“価値観・勝手な期待”を持っていて、その価値観を基準に“抗議”をしてきます。

 例えば、宿泊したビジネスホテルに歯ブラシやシャンプーが置いていなかったとしましょう。

 そのホテルが歯ブラシやシャンプーを置かない理由は、いろいろ考えられます。

 使い捨てのゴミを減らすことで衆境汚染に貢献する企業姿勢の場合や、少しでも宿泊費を安く抑える
 目的で備品代をカットしている場合など、理にかなった方針である場合もあります。

 ですが、自分の価値観で抗議をしてきたお客様にとっては、こちら例の価値親や考え方は「どうでも
 よいこと」であり、彼らの頭の中にある「ビジネスホテルというのは、“歯ブラシやシャンプーを備え
 付けているもの”」という“勝手な価値観・勝手な期待”で話や気持ちを組み立てます。

 そのため、口調も強く、相手を屈服させるかのような張りつめた調子で話をするものです。

 ですから、クレームを受ける側から見れば、“何言ってるんだこのお客さんは…”“非常識なクレーマー
 だな”おかしいんじゃないか?” と思えてしまうことが往々にしてあります。

 そういう場合、相手の言い分に怒る・議論する・クレーマー(いいがかり的な文句を言いたいだけの
 人)扱いしてきちんとしたクレーム対応をしないまま放ってしまいがちですが、それは解決ではあり
 ません。

 きちんとした解決や結論を出さないことがすでに、「クレーム相手のテンションにつられて」しまっ
 たことになるのです。

 部下を指導する際、自分が怒ってしまったら、部下に過ちを気づかせ、正しい方向で解決させる
 指導ができなくなります。

 クレーム対応もそれと同じことです。

 慌てたり、感情的になったり、必要以上におそれたりしないことが必須です。

 クレームでも、応対のスキル(技術)を身につけることで、そのような感情的なゆれを防ぎ、正しい
 応対ができるようになります。

 では、その「クレーム対応のスキル」とはいったい、どういうものなのでしょうか? 

 一番重要なのは、クレームに対する会社としての方針です。

 対応手順・対策・クレームを解決へ円滑に誘導するための方針と、会話の技術も含んだ個人的なテク
 ニックまでを包括した戦略的なものであるべきです。

 以下、段階を追って解説します。

□クレームに備える「3大心得」

 「個人的なテクニック」の前に、会社としてクレームをどう考えるのかという体制づくりが大事です。

 ここでは「3大心得」とします。

  1.「基本方針」の明確化

  2.クレームが上層部まであがってくるシステム作り

  3.会社の視点で考えず社会の視点で判断

 1.「基本方針」の明確化

  例えば、“クレームが来たら、とにかく会いに行く”“相手からの最初の電話は聞くだけにし、折り
  返しの電話でこちらの対応を示すようにする”

  などといった具合に、迅速に対応するために、誰が対応しても同じ手順で初期対応ができることが
  大切です。

  電話に出た人によって対応が違うのでは、相手が質の悪いクレーマーだった場合、問題を複雑化
  させることになりかねません。

  対応を標準化することで、これを防ぐことができます。

 2.クレームが上層部まであがってくるシステム作り

  部下は「クレームの報告をすると叱られるのでは…」とビクビクしながら報告してきます。

  頭ごなしに叱る風潮では、「この程度なら…」「さっきの電話で納得してくれたから…」と、
  部下はできるだけ報告の回数を減らそうと、無意識に動きがちです。

  クレーム情報を部下が報告してきたときには、貴重な消費者の情報としてほめるくらいの姿勢が
  必要です。

  上層部は、自社に無料で寄せられた「クレームという名の自社情報」を集めて分析し、今は気づ
  いていない自社の弱点や、よりよいサービスの構築に役立つことが必要で、これはとりもなおさず、
  未来のコンプライアンス策であり、業績をアップさせる方策となるのです。

 3.会社の視点で考えず社会の視点で判断

  これは、上記1、2を確立させた後の高度な心得ですが、是非実践してください。

  例えば、クレームに対して「当社ではこういう決まりになっております」と回答したとしましょう。

  「当社の決まり」はこちらの都合であって、お客様の知ったことではないのです。

  我々の考え方が社会一般から見て不当だったり、不誠実だったりしないか、という社会全般から
  見た自社の基準について常に見直しながら「判断の基準」とし、成長しようと心がけてください。

□クレームを解決に導く3つのステップ

 では、実際にクレームがあった場合、解決にまでもっていく流れはどうなるのでしょうか。

 「クレーム対応の流れ」にも以下のような「3つのステップ」があります。

  【ステップ1】 相手の言い分を聞く姿勢

  【ステップ2】クレームニーズの把握

  【ステップ3】 解決への誘導


 【ステップ1】相手の言い分を聞く姿勢

  クレーム相手との人間関係を作ります。

  まずは、クレーム客の心理として、「良い人が応対に出たなあ、この人は話を聞いてくれそうな
  人だ」と、お客様に思ってもらうことです。

  “私が問題解決者になりますよ”という姿勢をお客様にわかってもらいたいという気持ちを「声と
  言葉遣い」で伝えます。

  嫌だなと思う嫌悪感や逃げ腰の姿勢ではなく、いわゆる「聴く姿勢」を表明することです。

  「トーンチェンジ(声の調子を変える)」「正確に把握する」「否定語は使わない」「謝罪で
  怒りをクールダウンする」などのスキルを使いながら、正しく受容し、さらに相手のクレームに
  関するさらなる情報を引き出すようにします。

 【ステップ2】クレームニーズの把握

  次にお客様の抱える問題を明確にしましょう。

  何を怒っているのか、どうして欲しいのか、という問題解決のための事実を正確に把握すると
  ともに、お客様の心情・感情も理解するように努めます。

  相手の怒りを小さくするために感情浄化、つまり「怒りを受容する」「怒りに共感する」ことが
  必要です。

  例えば、「私どもから伺うと申しておきながら時間どおりに伺えず、お怒りはごもっともです。
  貴重な時間を無駄にさせてしまい、お詫びの言葉もございません」などの応対で、お客様が言い
  たい心情を瞬時に受容し、そのままなげかけましょう。

 【ステップ3】解決への誘導

  具体的な解決策をしっかり決め、これを相手に提示します。

  会社側の意図する解決策にお客様に歩み寄っていただくシーンです。

  相手の第1ニーズに応えられなかった以上、やはり「低い姿勢でお願いする」ことになります。

  従って、相手に了承をとりながら解決策を提示する会話のプロセスが大切です。

  (注)

   <トーンチェンジ>
    声の調子を変えること。    
    電話を受ける第一声は明るく、感じよく出る(これは電話応対の基本)が、クレームの
    電話だとわかった段階で声の調子を段々と落としていく。
    相手がクレームを言っているのに、いつまでも明るい調子ではバカにしていると思われるだけ。
    逆に調子を落とすことで、“あなたの話を真剣に附いていますよ”という姿勢を示すことになる。


   <受容相づち>
   
 相手の話に「はい」とはっきり相づちを打つ。
    これも相手に「間違いなくあなたの話を聴いております」というメッセージを
    送ることになる。
    この「はい」と次項の「フィードバック謝罪法」を組み合わせ、怒っている相手の
    気持ちをクールダウンしていく。

   <謝罪>
   
 ただ同じ言葉で何度も謝ると効果は半減します。
    「申し訳ございません」と連発するだけでは心は感じられなくなります。
    その場合、相手の心情にあわせて『申し訳ない気持ち』を伝えましょう。
    また、謝罪には相手の言い分に対し、すべてを薄めて謝る「全面謝罪」と、ある部分に
    ついてだけ謝る「部分謝罪」があります。
    初期対応では「部分謝罪」を使います。
    これは、お客様からのクレーム内容に対して直接謝るのではなく、内容自体ではなく、
    ご迷惑をおかけしたことやお手を煩わせたことを謝罪するものです。 
    例えば、「大変ご迷惑をおかけしております。この件に関して至急お調べいたしますので
    お待ちくださいませ」「お急ぎのところお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
    「説明不足でご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」などです。
    他方、他に波及しないよう、お客様が言ってきたクレーム自体だけに謝罪する「フィード
    バック謝罪法」もありますので、状況によって使い分けましょう。

    クレームは面倒なものです。
    ですが、お客様の生の情報を直接集めることができる貴重な機会でもあります。
    ぞんざいに応対することなく、誠実に対処しましょう。
    また、クレームは「応対スキル」を身につけることで、大きな失敗を無くすことができます。
    「すみません」ばかりの乱用で、他の語彙を使わないケースをよく目にしますが、これも
    いろいろな表現を練習して身につけることが重要です。

    そして、最後には必ず「貴重なご意見ありがとうございます」「ご一報ありがとうござい
    ました。今後の課題として社内で検討させていただきます」などと、感謝の言葉で締め
    くくることを忘れないでください。
 

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

顧客タイプ別クレーム対応 Ⅱ

  <「上を出せ」と言うタイプ>

   ◎タイプの特徴と顧客の欲求
    対応者が謝罪をしても「上司に代わってくれ」「社長じゃないと話にならない」と役職者

    による謝罪を求めるタイプです。

    こうした顧客は、

     自分を大切な客と認めて欲しい、扱って欲しい

    と考える傾向が強いといえます。

   ◎対応する際の心構え
    こうした場合、実際に上司や社長が出て謝罪するケースがあるかもしれません。

    確かに、そうすることで、顧客の自尊心は満たされるかもしれません。

    しかし、クレーム対応で役職者や、まして社長が頻繁に出て謝罪するのは、対応方法としては
    あまり好ましくありません。

    こうした場合には、

     対応者を明確にして最後まで責任を持って対応すること

    が重要です。

    対応者は「私はこの会社でお客様からのお話を受ける責任者であり、あなたのお話は私が責任を
    持ってお聞きします」と顧客に明示することが必要です。

    たとえ役職がなくても、「責任者」が誠実な対応を行えば、顧客の自尊心は満たされ、必ずしも
    上司や社長が出てくる必要はなくなるのです。

 3.理論型

  「理論型」とは、一言でいえば「頭のいいタイプ」といえます。

  感情的な言動ではなく、自分の主張を冷静に話し、もし企業側の話につじつまが合わない部分や
  納得できない部分があれば、追及をします。

  理論型には、理路整然と話をするタイプや、法律などを基に主張するタイプがみられます。

  <理路整然と話すタイプ>

   ◎タイプの特徴と顧客の欲求
    このタイプの顧客は、感情的な表現はせず理論的に話を進めます。対応者の話につじつまが

    合わないところがあれば、指摘したうえで理由を求めます。

    場合によっては、「こういう対応をして欲しい」と企業の対応方法まで指定することもあります。

    こうした顧客は、

     ・自分の話は正しい

    と考えている傾向が強いと考えられます。

    また、

     ・(自分の話が正しいから)企業は自分の意見に従うべきだ

    という気持ちが強いともいえます。

   ◎対応する際の心構え
    こうした顧客に対応する場合、特に注意すべきことは、

     ・顧客と議論をしない

     ・あやふやな態度を取らない

    ということです。

    顧客と議論したり、ましてや顧客を言い負かすことは、決してクレームの解決にはつながり
    ません。

    顧客は「自分の話は正しい」という気持ちで話しているため、対応者が積極的に議論を
    しようとすればするほどお互いの溝を深める結果となる危険があります。

    そのため、対応者はお互いの溝をつくらないように対応しなければなりません。

    具体的には、

     顧客と「協力して」クレームを解決する方法を見いだす

    姿勢で対応する必要があるのです。

    例えば、顧客と意見が食い違ったとしても「私どもではそのようには判断いたしません」
    などと突き放した言い方や、断定的な言い方は避けるべきです。

    この場合は、

    「お客様のおっしゃることはごもっともです。お客様と同様のご意見をいただくことも
    ございます。私どもでは、○○と考えておりますが、いかがでしょうか」

    と顧客の意見を尊重したうえで、協力して解決する姿勢をみせることが必要です。

    「協力してクレームを解決する」という姿勢が顧客に伝われば、お互いの意見を尊重しながら
    話し合いをスムーズに進めることができるはずです。

    また、クレーム対応の基本として、「確か○○だと思います」などのあやふやな発言は避ける
    必要があります。

    理路整然と話すタイプの場合には特に注意を払わなければなりません。

    せっかく顧客が「協力して解決しよう」という気持ちを持っていても、こうしたあやふやな
    対応は顧客の不信感につながります。

    対応者は「すぐに答えられるもの」と「すぐには答えられないもの」を明確にし、「すぐには
    答えられないもの」については、確認したうえで顧客に回答するという姿勢で対応することが
    必要です。

  <法律や制度を背景にクレームを言うタイプ>

   ◎タイプの特徴と顧客の欲求
    「○○に違反していますよ」「○○に訴えます」などと法律や制度を挙げてクレームを言う

    タイプです。

    こうした顧客は、

     ・(○○によれば)私は正しい

     ・(○○によれば)企業が間違っているから私の意見に従うべきだ

    と考える傾向が強いといえます。

   ◎対応する際の心構え
    理路整然と話すタイプと同じように「顧客の話に反論しない」「あやふやな態度は取らない」

    という点に注意を払う必要がありますが、特に「あやふやな態度を取らない」という点で
    注意をする必要があります。

    こうしたタイプの顧客は、企業の対応に不備があれば、法律などに訴えることが十分に考え
    られるため、自社の対応や回答に不明瞭な点があれば、その点をしっかりと確認したうえで
    顧客に伝える必要があります。

 4.消極型

  「消極型」とは、企業と積極的にコンタクトを取ろうとせず、クレームをあまり言わないタイプの
  ことです。

  消極型には、積極的にクレームを言わないものの、明らかに不利益を被った場合にのみクレームを
  言うタイプがみられます。

  <積極的にはクレームを言わないが、場合によってはクレームを言うタイプ>

   ◎タイプの特徴と顧客の欲求
    このタイプは普段はクレームを言いませんが、明らかに不利益を被った場合や、どうしても
    ほかで代替できない場合など、やむを得ない場合にクレームを言うタイプです。

    こうした顧客は、

     ・本当はクレームを言いたくない(が、やむを得ない)

     ・できることなら争いごとは避けたい

    と考える傾向が強いといえます。

   ◎対応する際の心構え
    本当は言いたくないがやむを得ず言うクレームというのは、その顧客にとって相当大きな
    問題と考える必要があります。

    しかし、このタイプは強く主張することがほとんどないため、企業は対応を簡単に考えがち
    です。

    たとえ企業がいいかげんに対応を済ませたとしても、顧客は争いごとは避けたいと考え、
    それ以上謝罪などを要求することは少ないかもしれません。

    しかし、こうした場合、顧客自身の不平や不満は解消されていないため、企業から離れて
    いくことや、「いいかげんな対応をされた」という経験を周囲に話すことは十分考えられます。

    そのため、表面上はクレームが解決されたようにみえても、顧客の気持ちも一緒に解決しな
    ければ、本当の意味でのクレーム解決にはなっていないことを理解する必要があります。

    そこで、まず、

     「顧客に多く話をしてもらう」雰囲気をつくる

    ことが大切といえます。

    顧客があまり話したがらないからといって、対応者が一方的に話すと、ますます顧客は話を
    しなくなります。

    さらに、顧客を誘導したり、誤った解釈で対応すると、たとえ口にしなくても顧客はさらに
    不満を持つことになるでしょう。

    そのため、「顧客の話に同意をしながら聞く」「顧客の話を復唱しながら聞く」などの方法で、
    顧客の話を聞く姿勢を表し、顧客が話しやすい雰囲気をつくることが大切です。

    そのうえで顧客の不満、欲求をくみ取り、丁寧に対応することが必要です。

 5.「不満を抱いていても何も言わないタイプ」が一番多い

  企業に直接クレームを言う人はごく一部です。

  その理由にはさまざまあるようですが、

   クレームは労力を使う

  という点が、最も大きな要因と考えられます。

  クレームを言う場合には、企業に自らコンタクトを取る「労力」、企業に自分の意見を伝える
  「労力」、企業とやり取りをする「労力」、企業と折り合いをつける「労力」など、大きなエネ
  ルギーが必要なのです。

  こうしたクレームにともなう労力を考えて、「面倒だからある程度は我慢しよう」「ほかにも
  製品(サービス)はあるから、そちらに変えよう」と、企業にクレームを言わない顧客は多い
  のです。

  「こうした顧客は把握できない」などの理由で企業は何も対応をしなくていい、というわけでは
  ありません。

  先に述べたように、このタイプは企業から「黙って離れていく」傾向が強いため、知らず知らずの
  うちに顧客を失ってしまうかもしれません。

  そのため、例えば、「ご意見箱」を店頭に設置したり、インターネットを利用して、無記名でも
  企業に意見や質問を言える環境をつくるなど、顧客の声を吸い上げる仕組みを検討することが
  必要といえます。

  ここまでみてきた顧客のタイプ以外にも、さまざまな顧客がいます。

  中には、企業を脅して金品を要求することなどを目的に、明らかに不当なクレームを言ってくる
  人もいます。

  そうした悪質なクレームに対しては、場合によっては、警察や専門機関などに相談して対処する
  ことも検討する必要があるでしょう。

□社内でのクレームに対する意識を考える 

 1.クレームはチャンスと考える

  「クレーム」という言葉を聞くと、どうしてもマイナスのイメージがあります。

  確かにクレームは、「突然発生するうえ、迅速な対応を求められる」「顧客が不満を抱えた状態
  から交渉がスタートする」などの理由から、対応が難しいのも事実です。

  しかし、クレームは、企業にとって必ずしもマイナスに作用するものではありません。

  クレームに適切に対応することができれば、

   顧客の不満を満足に変え、結果として自社のファンをつくり出す

  ことができるといわれています。

  そのため、クレーム対応者は、「クレームはむしろ自社のファンを増やすチャンスである。

  クレームの対応を嫌がるのではなく、お客様の視点で丁寧に対応しよう」という前向きな気持ちを
  持つことが必要です。

  前向きな気持ちで対応すれば、嫌々ながら対応をする場合と比べ、その結果には大きな違いが出る
  といえます。

 2.クレーム情報は社内で共有する

  冒頭で述べたように、クレームに対する企業の姿勢がより一層問われるようになっています。

  また、顧客のニーズが多様化していることと同様にクレームも複雑化しています。

  この「クレームが複雑化している」という点からみても、マニュアルだけで対応することには
  限界があるため、個客対応が求められるといえます。

  従って、マニュアルだけに頼ったクレーム対応ではなく、企業全体で個客対応を心がけるという
  風土が重要なのです。

  そのためには、

   クレームに関する情報を社内で共有化していくこと

  が不可欠です。

  例えば、クレームが発生した場合、その原因や対応方法などをデータベース化することで、次に
  クレームが発生した場合、データベースを参考に、より迅速に、かつ的確にそのクレームに対応
  することができます。

  また、クレーム対応に関するミーティングを積極的に設け、クレーム情報を社内で共有化する
  ことで、従業員のクレーム対応に関する質の平準化が期待できます。

  こうした取り組みを通じて、企業全体のクレーム対応の質を向上させることで、顧客満足度を
  高めていくことができるでしょう。
 

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

顧客タイプ別クレーム対応 Ⅰ

■クレーム対応に必要な視点

 1.重要性を増すクレーム対応

  近年、顧客満足(CS: Customer Satisfaction)の考え方が世間一般に広く浸透しています。

  そのため、企業に対する顧客の期待は大きくなり、企業に対する顧客の目は一層厳しさを増して
  います。

  企業活動をするうえで避けられない「クレーム対応」においても顧客の目は厳しくなっており、
  クレームに対する企業の姿勢はとても重要視されています。

  クレームへの対応が悪いと、顧客はその企業から離れていくだけでなく、「あの企業の対応は悪い」
  などと、悪い評判(口コミ)を広める危険性があります。

  悪い口コミは、好ましい口コミよりも広がりやすいといわれます。

  特に近年では、インターネットの普及により、口コミの伝播範囲は広がっており、その影響は無視
  できません。

  そのため、企業におけるクレーム対応の重要性は日に日に増しているといえます。

  各企業は顧客からのクレームに適切な対応ができるようなマニュアルを策定し、実践していますが、
  それにもかかわらずクレーム対応に関するトラブルは後を絶たないのが実情です。

  このように、クレーム対応がうまくいかない場合には、

   ・マニュアルがクレーム対応の基本に沿って作られているか

   ・マニュアルに頼りすぎて、画一的な対応になっていないか

  という点を再確認する必要があります。

 2.顧客の視点に立ってマニュアルの内容を再確認する

  クレーム対応の基本は、

   顧客の視点に立つこと

  です。

  そのため、マニュアルの内容も顧客の視点に立ったものでなければなりません。

  一般的には、クレーム対応は、次のような流れで行われます。

  マニュアルの内容は、この流れを踏まえたうえで、「顧客の視点に立つ」というクレーム対応の
  基本が含まれていなければなりません。

  前ページのクレーム対応の流れに沿って「顧客の視点に立った対応」とは何かをみてみましょう。 

   ◎クレーム発生時
    ・迅速に対応しているか    
    ・対応者を理由なく変えたり、顧客をたらい回しにしていないか

   ◎クレーム内容とその原因の把握
    ・クレーム内容を的確に把握するため、顧客の立場で話を聞いているか

   ◎クレーム対応策の検討
    ・顧客の意向をくみ取った対応策を検討しているか

   ◎原因の説明と改善案の提示
    ・混乱や不安を招くようなあいまいな表現や態度はとっていないか
    ・「対応できること」と「対応できないこと」を区別し、その理由を提示しているか

   ◎対応の実施
    ・対応者が最後まで責任を持って対応しているか

   ◎社内へのフィードバック
    ・データベース化など社内にクレーム情報をフィードバックしているか
    ・経営層および従業員間でクレーム情報の共有化が図られているか

  まずは、上記に挙げた視点でマニュアルが作成されているか再確認してみましょう。

 3.マニュアルだけの画一的な対応になっていないか

  次に確認する点としては、「マニュアルに頼りすぎていないか」ということです。

  たとえ、マニュアルがよくできていても、

   「マニュアルだけで対応する」という点がクレーム対応の妨げになっている

  ことがあるのです。

  普段の企業活動を考えてみましょう。

  顧客に対して営業や接客を行う際、マニュアルだけで対応しているでしょうか。

  通常は、マニュアルを踏まえながら、場面や状況に応じた対応を行っているはずです。

  そう考えると、クレーム対応に限ってマニュアルだけで対応するというのは不自然です。

  クレーム対応も、顧客に応じて対応を変える、個客対応が必要なのです。

  顧客のタイプや考え方によって、クレーム対応に求められるものは異なるため、こうした個客
  対応という姿勢がクレーム対応においても欠かせないのです。

  そこで以下では、個客対応という視点から、顧客のタイプ別にそれぞれ求められるクレーム
  対応の考え方についてみていきます。

□顧客タイプ別にみるクレーム対応の考え方 

 1.顧客のタイプ

  企業にクレームをいう顧客には以下のタイプが考えられます。

   (1)感情表現型
     ・怒りを前面に出すタイプ     
     ・「上を出せ」と言うタイプ

   (2)理論型 
     ・筋道を立てて理路整然と話すタイプ
     ・法律や制度を背景にクレームを言うタイプ

   (3)消極型
     ・積極的にはクレームを言わないが、場合によってはクレームを言うタイプ 

  このほか、

   ・不満を抱いていても何も言わないタイプ

  の顧客もみられます。

  それぞれのタイプの特徴と対応する際に対応者が知っておきたい心構えについてみてみましょう。

 2.感情表現型

  「感情表現型」とは、喜怒哀楽の感情を前面に出してクレームを言うタイプです。

  感情表現型には、大声で怒鳴るなど感情を前面に出すタイプや、社長や役職者の謝罪を強く求める
  タイプがみられます。

  <怒りを前面に出すタイプ>

   ◎タイプの特徴と顧客の欲求
    「どうなっているんだ!」「すぐに対応しろ!」などのように、語気が荒く、怒った状態で
    クレームを言うタイプです。

    このタイプの顧客は感情的にクレームを言うため、対応する側は緊張、委縮してしまうことも
    少なくありません。

    しかし、対応者が冷静でなければ、クレームを適切に対応することは難しくなります。

    顧客がなぜ感情的になっているのか、ということに気を配れば、緊張したり委縮したりする
    ことなく落ち着いて対応することができるでしょう。

    こうした顧客は、

     ・自分は不当な扱いを受けた
     ・不満をぶつけたい、分かって欲しい

    という気持ちが強いと考えられます。

    そのため、対応者はこうした顧客の気持ちをくみ取ったうえで、クレーム対応に当たる必要が
    あります。

   ◎対応する際の心構え
    このタイプの顧客のクレーム対応に当たっては、まず、冷静に話ができる雰囲気をつくる
    ことに努めましょう。

    感情的になっている相手にマニュアル通りの対応をすれば、かえって不満を増大させかねず、
    落ち着いて話し合うことは期待できないからです。

    ただし、相手を落ち着かせようと、はじめから「落ち着いて話し合いましょう」などと言葉に
    するのは逆効果でしかありません。

    ここで大切なことは、顧客の気持ちを尊重し、相手の気持ちに共感することです。

    「おっしゃることはよく分かります。お客様のお話を詳しく伺いたいので、聞かせていただけ
    ますか」など相手の気持ちを尊重して話を切り出せば、顧客は「自分の話を正面から聞いて
    くれる」という気持ちになり、落ち着いて話をする気持ちになるでしょう。

    さらには、

     「対応者を替える」「場所を替える」などその場の雰囲気を変える

    ことも、冷静に話し合いができる状態にするには効果的です。

    例えば、上司に取り次ぐ、応接室に移動するなど場の雰囲気を変えることで、顧客の気持ちが
    変化することがあります。

    ただし、何の説明もなく対応者が変わったり場所を移動したりすると、顧客に不信感を抱かせ、
    冷静な話し合いができなくなってしまう可能性があります。

    そのため、「責任者である上司と一緒にお話を伺います」「応接室にご案内いたしますので、
    そちらでゆっくりとお話を伺います」など、対応者や場所を替える理由をきちんと説明しま
    しょう。

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

クレームをチャンスに変える

■クレームは生命とり

 コロナの影響による厳しい経済環境が、今年も依然として続いています。

 そのなかで、各企業は「サバイバル─生き残り戦略」を展開しています。

 とくに 大手中堅企業は人員削減や組織合理化と「リストラクチャリングとコストダウンの最後
 の砦」に着手しています。

 その意味で、今後は「管理職を中心としたホワイトカラーや中高年社員受難の時代」であると
 いえます。

 そのような社内外の環境であるため各企業はクレームに敏感となっており、またその発生時の
 対処は極めて厳しい
ものとなっています。

 たとえば発生させた企業に対しては、取引中止、損害賠償、値引き要求、取引削減、シェアダウン、
 担当者変更要求
──などです。

 クレームについては、「天の声・改善のメッセージ」といわれるごとく、次なる改善の踏み台と
 なる場合もあるが、
不況期においては「クレームは生命とり」となることを認識すべきです。

 そのためには、次のステップでクレーム防止に全力投球すべきです。

□クレームに対する全員の認識

 お得意先から怒鳴り込まれた顕在クレー ムは当然ですが、深く沈潜している潜在クレームも爆発
 すれば企業の命運を断つ
こともあります。

 その意味で全員がクレームに対する認識を徹底すべきです。 

 そのために朝礼では「昨日のクレーム」、終礼では「今日のクレーム」を取り上げ、重大クレーム
 からケアレスミス
(Careless Miss)によるクレームまで報告・発表することを義務づけ、意識
 強化を 図るのがベターでしょう。

 
印刷業A社では、得意先からクレームがあったとき、クレーム発生の当事者が

  ・クレームの状況

  ・発生原因

  ・対策

 を一定フォームの用紙に記入して1件のマニュアルとしています。

 例えば会社案内の中の代表者名を間違ったとします。

 通常の漢字と名前漢字は若干異なります(「博」は氏名に使ったとき、点がない人もいる)場合
 があります。

 そこでマニュアルでは、氏名は必ず名刺で確認、又は前回の会社案内と照合するとなっています。

 この方式を取りはじめて次の様なメリットがありました。

  1.クレームを起こしたという被害者意識はなく、マニュアルをつくるという積極的な行動と
    なった

  2.クレームの減少

  3.マニュアルが増加し、しかも実際に起ったクレームの対策という形でつくるので説得力が
    ある。


□クレーム分析で再確認

 過去に発生したクレームを再度チェックする。

 クレームは一言で言えば、

  顧客要求水準 > 提供する商品・サービス

 であり、要は顧客の期待に反することです。

 その要求内容は 、基本的には次の通りです。

  (品質面)設計品質、材料品質、部品品質、加工品質、技術品質、研究開発力、

  その他安全性信頼性

  (価格面)コスト採算性、バランス、リベ ート、値引き対応、支払い条件、
       その他経済性

  (サービス面)アフターメンテ、保証期間、有効期間、返品交換、アフターサービス

  (納期面)出荷日、物流関係、納入日、在庫即納体制

  (システム面)販売システム、受注システム

  (法規関係)法律・行政関係についての理解不足

  (人に関する面)営業マン、技術マン、業務マン、その他従業員の能力、態度、
          基本動作(あいさつ、電話応対、受注態度など)


 ──など、多岐にわたり、また担当者に よっても異なるケース があります。

 これらについて過去の資料に基づき、重要度(クレームレベル)、発生頻度に分類します。

 次にその発生時の「対処、処置如何」に ついて洗い直し、その評価をもう一度客観的に行う
 ことです。

 顧客の要求するものが、「真の品質」であるという認識が大切です。

 過去には日本のトラックメーカーが中国にトラッ クを輸出したところ、ドライブシャフトが
 破損するクレームが相次いだそうでした。

 多くの販売実績を持っているが、そんな事故は起こったことがない、早速、技術担当者が現地へ
 調査に行ってみると、
とても道路とは言えない悪路を荷物を満載して全速で走っている。

 これではドライブ シャフトが折れても不思議ではない。

 道路整備が殆ど進んでいなかった中国の人にしてみれば、トラックが粗悪なのです。

 考えてみれば80年近く前に米軍が日本に進駐して来たとき日本の道路をみて「これは道路ではない。
 道路予定地だ」と言ったのは皮肉でも何でもない、素直な感想であったのです。

 この場合、クレームを素直に受け止め、 中国仕様のトラックを作るべきです。

 そうすれば、“性能の良い日本車”として、この巨大市場を制覇できるのではないでしょうか。

□クレーム再発防止

 クレームレベルと発生頻度の分析から今後の「クレーム発生確率」を予想することができます。

 それに対して重点的な事前対応を図ることが肝要です。

 機械輸入商社A社では、主要機種のパー ツ故障が断続的に発生。技術部は対症療法的に処置して
 いたが、長期的な観点で
技術者をメーカー(所在地は英国)に長期派遣することを決定。
 抜本的なクレーム処置を検討している。

 食品メーカーB社では、「衛生面でのトラブルは倒産に直結」と全員が認識しているが(したが
 って極めて厳しい品質
チェックを実施)、それ以外の配送面や人的対応面で顧客の満足を充た
 していない(潜在クレーム)として、
職場リーダーが過去のクレームを分析し、対応策を検討中。

 クレームは対因療法で抜本的に無くすることが大切です。

 膨大なデータをとり分析するのは長時間を要する仕事ですが、以後のクレームが 無くなれば、
 最短工数解決法です。

 まさに急がば回れです。

 トヨタの言う“ポカヨケ”はこの考え方に基づいているのです。

 オペレーターも人間であるから何千回に1回位は、ついうっかり材料を裏面逆に投入してしまう
 こともあります。

 そこで、万一材料の鉄板を裏向きにプレスに投入した場合は、入らない様にしておけばこの種の
 間違いはゼロにする
ことが出来る。

 事務処理の分野ではダブルチェックが基本となっています。

 ところが、実際にはチェッカーが事務的に判を押したり、真剣に見なかったりするのでミスが
 起こるのです。

 間違いが起った場合、チェッカーの方が罰せられるシステムにしておけば間違いはかなり防げます。

□リスク分析、対応も忘れるな

 いずれにしても、クレームに対する認識と再発防止について、全員が取り組むことです。

 加えて「企業の命運を断つ」ものはクレ ームだけでなく、その他多くのリスクを内在している
 企業においては、

  「わが社が潰れるとすれば、何で潰れるか」

 というリスクマネジメントも強化しておくことです。

 そして、クレーム処理に追われる「コストとエネルギー」を前向きな攻めの行動に転じることです。

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

クレームを生かす

 ■正しいクレーム対応があなたのファンをつくる

 顧客のクレームや意見に対する考え方や対応が優れている会社は総じて業績がよく、
 クレームや顧客の意見に真剣に耳を貸さず、自社の正当性や意見を否定するような会社は、
 業績が低迷していることが多いと感じます。
 実際にクレームや意見を言われても真剣に聞かず、「当方は間違っていない」「クレームを
 言うほうがおかしい」と思っている社長や現場責任者はとても多く存在します。
 しかし、顧客のクレームや意見は市場の正直な声であり、会社業績を向上させるための重要な
 情報なのです。
 それを十分に活かさないことは、自ら業績向上の可能性をなくしているようなものです。
 あなたも商品を購入したり、サービスを受けたりした時に、不満に思ったときどのような
 対応をしているでしょうか。
 そして、クレームや意見を言った場合は、どのような対応を受けると納得していたでしょうか。
 是非自分の状況を思い出してみてください。
 ここでは、クレームや意見を活かすことが会社の業績に大きく寄与することを示し、どの
 ように意見を集め、対応することが良いのかを提案します。

 1.クレームの心理
  ここでは、クレームや意見をする心理状況を検証します。
  (1)自らの振り返り
   あなたがある温泉ホテルに宿泊して、そのサービスの状況に不満を持ったとします。
   あなたは下記の①と②のどちらの対応をとりますか?
   また、多くの人はどちらの対応をとると思いますか?

    ①クレームを直接言う。 
    ②クレームを言わずにもう二度と来ないと心の中で決めている。

   あなたはどちらの対応をとりましたか?
   実際は、不満の程度にもよりますが、②の対応をとる人が多く、クレームを言う人は
   とても少ないのです。

  (2)クレームの心理
   クレームや意見を言う人は、大きな勇気がいるものです。
   人間は誰でも人に嫌われたくないという意識があるので、ちょっとしたことでは
   なかなか意見を言わないものなのです。
   そのため②の対応を取ることが多いのです。
   そのような中であえて苦言を呈する人は、対応により以下の2 通りに分かれます。
   この対応が業績に大きく影響するのです。
   クレームの対応が悪いと全ての人は二度と来ないでしょう。
   しかし、クレームの対応が良いと再度来ようという気持ちになるのです。

 2.顧客の声の収集
  市場を知るには顧客の声を聞くことが一番なのです。
  そのためにもクレームだけでなく、顧客の正直な意見を収集することが重要になります。

  (1)家族や友人の声
   まず、身近なところとして、家族や友人の正直な声を聞くことです。
   従業員や取引先などは、変に気を使って正直な感想を言ってくれないのが実態です。
   厳しい本当の意見はなかなか出てきません。
   ところが家族や友人(できれば仕事関係でない人)は、自由な意見を言ってくれます。
   家族は利害関係が一致しているため、本当に顧客がリピーターになってくれるためには、
   何が欠けているのかを真剣に考え、意見してくれます。
   また、友人は仕事上の関係がないために忌憚のない意見を言ってくれるのです。
   本当の友人は耳の痛いことも言ってくれます。
   本音で意見交換ができる友人を持っていることは心強いことです。
   仕事関係者は、なかなか本音での対話はしにくいのですが、仕事上の関係者でも厳しい
   ことや現状に対する素直な意見を言ってくれる人との交流を持っておくべきです。
   なぜなら仕事上の関係者は業界状況や地域の状況に精通しており、経営に直結する
   重要で的確な情報を与えてくれるからです。

  (2)アンケートの実施
   顧客に対してアンケートを実施することも、一つの方法です。
   近年は飲食店やスーパーマーケットなどでアンケートを行なっているところが多く
   なっています。
   優れた会社は、アンケートをもとに会社の問題点を抽出し、その対策会議を行ない、
   スピーディーに改善策を立案・実行しているのです。
   顧客の声にすばやく対応することにより、顧客満足を高めているのです。

  (3)外部評価の活用
   外部の評価機関を活用するのも、一つの手段として有効です。
   費用はかかりますが、詳細な部分まで評価してくれることと、同業他社との比較を
   してくれる点に特徴があります。
   外部評価ですと経営者も比較的素直に意見を聞く傾向があります。

 3.事例:保険代理店業
  ある保険代理店では、アンケート調査を実施しています。
  アンケートをもとに会議を実行して、すばやい回答を心掛けています。
  これにより、顧客満足の向上による利益率の向上を目指しています。

  (1)アンケート実施に向けて
   アンケート実施に向けて、当初関与先ではあまり積極的ではありませんでした。
   確かにアンケートをすることは、責任者としては自分の非や至らない点を指摘される
   ことになるので嫌がることは多いのです。 
   アンケートの目的をしっかり説明し、アンケートでの指摘されたことをそのまま
   担当の非とはせず、会議で決定した改善・修正策の実行を怠った場合は厳しく対処
   することとしました。
   そのことにより、責任者やメンバーも納得してアンケート実施に協力してもらえた
   のです。
   トップからアンケートを押し付けて実施させることは簡単です。
   しかし、現場の責任者や担当者が納得して実施しないと、アンケートの回収や報告に
   虚偽のものが出てくることもあるのです。
   アンケートの結果だけでむやみに怒られるのでは、ネガティブな情報は経営層に
   伝わらなくなり、ムダな対策を取ってしまいかねません。
   そのようなことを犯してはなりません。

  (2)アンケートの実施
   アンケートの内容・項目については、社員で検討して作成してもらいました。
   その作成により社員が討議・検討することにより、お互いを理解し合うことができたと
   感じました。
   議論が分かれた点は、アンケート記入者に対してお礼をするかどうかでした。

   <お礼をすることのメリットとデメリット>
    メリット:御礼をすることにより、住所や氏名をしっかりと記入してもらう
    ことが可能となる。
    デメリット:お礼を貰うのであれば耳の痛い意見は記入しづ心ではない褒める
    回答が多くなる。

   社内でいろいろと討議したうえで、当面は顧客データ蓄積を優先しアンケート
   回答者に対しては抽選で粗品の進呈をすることとしました。
   当初は、アンケートの記入は少なかったのですが、目につくところに置き直すと
   徐々に回答が増えてきました。
   また、回答内容は当初心配していたお礼をすることによるデメリットは少なく、
   厳しい意見や指摘が多くありました。

  (3)アンケートの活用
   アンケート結果は、週単位で集計され、ミーティングでその対応策を議論しています。
   回答には従業員のサービス(態度・事故対応)だけでなく、(迅速な)事務手続きに
   対する意見も多く見られました。
   当然、トップを交えた討議を重ねました。
   そして、お客様の意見や指摘に対する返答を早くロビーに張り出すようにしました。
   また、従業員の意識向上のために顧客からの「お褒めの言葉」なども一緒に張り出す
   ようにしました。

  (4)アンケートの実施に対する従業員の反応
   当初は、アンケートのクレームや意見に対して、「そんなことはできないよ」
   「人員に限りがあるからなあ」「お客のわがままだよ」という意見が多く出ました。
   しかし、毎週アンケートの内容を見ていると「確かになあ」「良く見ているなあ」
   というものが多くあることにみんなが気づき始めたのです。
   その後、アンケートの意見に対しては先入観を捨てて対応するようになりました。
   お客様は保険に対しては素人であるが、それが市場の声と言うことを理解した対応
   ができるようになりました。
   また、トップを含めた会議は白熱したものとなり、意思決定と実行にスピード感が
   表われたと実感しています。
   お褒めの言葉を張り出すことにより、明るく楽しい雰囲気が生まれ、従業員のやりがい
   にもつながってきました。

 4.アンケートの対応を通じて
  アンケートを実施するにあたり、注意点として2点を挙げます。
  ①素早い対応の徹底
   アンケートには、様々な意見が書かれます。当然すべての意見やクレームに対応
   することはできません。
   素早い対応が重要な鍵となります。
   対応できないものは、できない理由を知らせるのです。
   できないことを理由もなく放っておくとアンケートの回答者は無視されたと感じて
   しまいます。

  ②中途半端にせずやり切る
   アンケートをやりっぱなしにしないで、顧客の声をもとにPDCA (Plan/Do
   /Check/Action)のサイクルを回すのです。
   アンケート実施当初はしっかりと対策を打つのですが、だんだんとマンネリ化してきて、
   対策を打たなくなる傾向があります。
   そのようなことのないように気をつけて、決してアンケートをムダにしないように
   してください。
   何のためにアンケートを実施したのか、目的をしっかりと共有して、目的達成のために
   やり切ることが重要なのです。

 5.クレーム対応が顧客を惹きつける
  クレーム対応を素早く、的確にすることによりクレーム客をリピーターに変えることが
  できます。
  クレームや意見を言う顧客は、「ここを改善してくれればとてもいいのですよ」と思って
  いたり、まだ見込みがあるからあえて苦言を言ったりするのです。
  本当にあきれていたら何も言わずに帰っていくだけなのです。
  弊社の関与先でもアンケートで「迅速な事務対応」を指摘したものがありました。
  その意見に対してはその日の内に対応し、業務改善の推進を優先課題にしました。
  3週間後、意見をした顧客からお褒めの言葉を貰ったのです。
  「素早く対応してもらい大変感激しました。これからもがんばってください」という
  意見が書かれていたのです。
  また、「従業員の態度が馴れ馴れしい」という意見もありました。
  「こんな態度の悪い代理店とは今後付き合わない」と書いてありました。
  討議し定期のロープレをすぐに開始しました。
  数週間後、今後付き合わないと書いたお客さまから、「意見を取り入れてもらい、
  すぐに改善してくれたことをうれしく思いました」というお礼が記入されてありました。
  これには社員みんなが感動しました。
  意見への素早い対応の重要性を肌で感じた瞬間でした。

 6.まとめ
  クレームというとマイナスのイメージがついてまわります。
  どうしても無理難題を言ってきて、利用されるのではないかという感じを持つ人が多い
  と思います。
  しかし、クレームは宝の山なのです。
  クレームを解決することによってクレームを言った人をリピーターに変えることができる
  のです。
  また、同じような不満をもっていてクレームも言わずに逃げていく顧客を繋ぎとめる
  ことにつながるのです。
  良い評判というものは広まりにくく、悪い評判というものはとても早く広まります。
  そのためにも素早い対応が重要なのです。
  市場の流行は常に変化しています。
  つい最近までのはやりもあっと言う間に廃れていることが多くあります。
  過去の成功体験や社長の考えが市場と大きく乖離してしまうことも多いのです。
  そういうことを修正するためにも市場の声をしっかりと聞くことがすべてのことに役立ち
  ます。

 今回のポイント
 1.クレームの心理

  ・クレームを言う人と言わない人
  ・クレームを言う人は、まだファンである
  ・クレームを言わないで、去っていく人はとても多い

 2.顧客の声を収集しよう
  ・まずは家族や友人の意見を
  ・顧客アンケートの実施
  ・外部機関も活用しよう

 3.クレーム対応の重要性
  ・良い評判はなかなか広まらないが、悪い評判はすぐに広まる
  ・クレームは市場の声
  ・顧客は対応状況を良く見ている
  ・クレームはチャンス
  ・クレームを恐れるな
  ・クレーム対応はスピードが鍵
  ・クレーム対応がリピーターをつくる


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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

苦情対応マネジメントシステム

苦情対応マネジメントシステム

  ■苦情に対する迅速な対応
   1.苦情の発生原因 
    企業にはさまざまな苦情が寄せられます。
    「期待通りの品質・性能ではなかった」「表示が分かりにくい」「注文時の
    約束を守ってくれない」「アフターサービスがよくない」など苦情の内容は
    さまざまですが、苦情を一言で表現するならば「製品や付帯サービスに関連
    した消費者の不満足の表明」といえます。苦情は以下のように分類されます。
    <苦情発生の具体例(流通業)> 
     1.品質・性能・価格  
      「期待通りの品質・性能ではなかった」  
      「品質・性能と比べ、妥当な価格とはいえない」 

     2.表示  
      「分かりにくい」「商品が取扱説明書の表示通りではない」 

     3.購入時のサービス  
      「注文時の約束を守ってくれない」「応接、接客態度がよくない」 

     4.アフターサービス  
      「アフターサービスがよくない」「修理代がかかりすぎる」  
      「修理できない(修理してもらえない)」そもそも、なぜ苦情が発生
      するのでしょうか。
      製品やサービスに問題があった場合は苦情を申し入れられるのは当然
      です。 
      消費者は代金を支払って製品を購入したりサービスを受けるため、
      購入したものに対して価格に見合う性能などを期待しています。
      その期待と実際の機能や使い心地のバランスが取れていれば消費者は
      満足します。
      逆に、バランスが悪く期待以下の機能であったりすると不満を感じ、
      製品の再購入を見送ったり、苦情につながることになります。

   2.苦情対応マネジメントシステム 
    97年に施行された「PL(製造物責任)法」、98年に施行された「改正
    民事訴訟法」、2001年に施行された「消費者契約法」、99年に一部改正
    された「訪問販売法・割賦販売法」などによって消費者保護の法制は強化
    されています。 
    これらの法律により、企業は今まで以上に消費者からの苦情に迅速に対応
    することが求められています。 
    苦情の内容は実にさまざまであり、その都度適切な対応が必要となります。
    そのため、苦情対応については企業全体でシステム化し、関係するすべての
    従業員が適切に苦情対応できるよう体制を整える必要があります。その際に
    参考になる仕組みが「苦情対応マネジメントシステム」です。 
    日本工業規格(JIS)では、2000年2月に「JIS Z 9920:2000 苦情対応
    マネジメントシステムの指針(以下「指針」)」をまとめています。
    これは指針であるため「必ず守らなければならない」ものではなく、あくまで
    任意のルールです。
    しかし、苦情対応を強化するうえで指針は非常に参考になります。
    顧客満足を高める意味でも、指針を参考に苦情対応の仕組みを構築することは
    非常に重要でしょう。 
    以下では、日本工業規格の指針を基に苦情対応マネジメントシステムの構築に
    ついてまとめます。

  □基本方針と関連事項の文書化
   1.基本方針 
    苦情対応マネジメントシステムの構築に当たっては、全体的な取り組みの
    方向性を示す「基本方針」の作成が重要であり、その基本方針に従って
    細部を定めるという考え方が求められます。
    基本方針の内容は、個々の企業事情によって異なりますが、一般的には
    次のようなものが挙げられます。

   2.文書化すべき事項 
    指針では、苦情対応マネジメントシステムの文書化に当たり盛り込むべき
    必要事項を、「文書化すべき事項」「定めもしくは明確化する事項」
    「考慮または配慮する事項」の3つに分けています。 
    これらすべてを文書化する必要はありませんが、「文書化すべき事項」
    は必須とし、そのほかの事項は個々の事情を考慮して文書化を検討すべき
    でしょう。 
    指針に示されている文書化すべき事項は以下の通りです。

    1.基本方針書 
     ・苦情対応責任者の任命   
     ・苦情対応責任者の責任と権限の範囲 
     ・組織として対応できる範囲 
     ・苦情対応を無料でできる範囲

    2.基本体系書(組織図またはフローチャート) 
     ・組織内部全般にわたる苦情対応職務手順 
     ・苦情対応者に対する支援の手順と組織内との関連

    3.苦情原因の除去、是正、予防処置に関する方針書

    4.苦情対応手順書 
     ・苦情対応責任者の責任と権限の範囲 
     ・苦情対応者の裁量の範囲 
     ・組織として対応できる範囲 
     ・苦情対応を無料でできる範囲

    5.苦情対応記録管理基準書

    6.苦情対応記録手順書

    7.苦情対応記録開示の対応基準書

  □フローチャートによる苦情対応の流れ 
   指針に準拠したマニュアルおよび作業書のガイドに沿ったフローチャートと対応
   要領をまとめました。 
   フローチャートは、消費者の申し出から始まる対応について、消費者部門から
   社内関係部門までの流れを示しています。
   ポイントは指針の序文に示されている「苦情対応は消費者の基本的権利を尊重
   しながら、苦情を組織全体の責任として真に受け止め、問題解決に努める」
   ことです。 
   苦情対応の基本的な手順は次のようになります。
   <苦情対応の手順> 
    1.苦情の内容および問題点を明確にし、その原因を調査し、経緯・
      結果を記憶する。 
    2.所定の手順に基づいて、解決策を提案し交渉する。 
    3.合意した解決策を実施する。 
    4.問題発生の直接原因および間接原因に対しての防止対策並びに改
      善策の効果について検証する。 
    5.苦情対策に関連する活動結果を組織の最高責任者に報告する。

   1.相談・苦情の受理 
    消費者・流通・ディーラー・行政・マスコミ・消費者団体・病院などからの
    相談や、苦情を電話や文書などで受理した場合、消費者対応窓口は「苦情
    受付票」を作成します。

   2.一次対応 
    相談や苦情の内容を十分に聴き、現状の確認を行います。
    特に身体被害がある場合は、「今どのような状況か、治療を受けたかどうか」
    などを確認し、治療を受けていない場合は受診を勧めます。

   3.対応終了・申出者への回答 
    申し出内容が一次対応または二次対応で解決すれば対応を終了し、申出者へ
    回答します。

   4.苦情通結果の発行 
    申出者を訪問する場合は、一次対応者は必要事項を苦情連絡票に記入し、
    訪問対応者に伝えます。

   5.訪問対応 
    苦情対応のマニュアルに従って、真撃に対応します。
    しかし事業者として、申し出に対応できる範囲で回答します。
    特に、製造物責任による事故の場合は、申出者の心情を考慮して対応します。

   6.苦情連絡票の記入・返送 
    訪問対応の終了後、苦情連絡票に訪問時の状況、苦情品の状況、訪問により
    解決したか解決しなかったか、今後も訪問を続ける必要があるかないか、
    苦情品の調査を実施する必要があるかなどを記入し、消費者対応窓口に返送
    します。

   7.二次対応 
    消費者部門は、訪問対応部門による苦情連絡票の回答や、調査部門による
    調査依頼書の回答の記載内容を参考に、二次対応の判断を行います。 
    判断は次のように行ないます。

     a.適切な対応が行われ、終了した場合は対応を終了し、申出者へ回
      答します。
     b.訪問が再度必要である場合は、再度訪問して対応し、苦情内容の
      理解を深めます。
      この場合、「苦情連絡票」は前回の票に重ね書きをします。
     c.調査部門からの調査結果が不満足な場合は再調査します。
      この場合も前回発行した「調査依頼書」に、調査不十分の点を記
      入し、再度依頼します。
     d.訪問対応や調査結果から、当該苦情が重大苦情になりうると判断
      した場合は、「重大苦情判断」と同様に扱い、対応を行います。

   8.調査依頼書の発行 
    一次対応において、解決のためには苦情品の調査が必要となる、あるいは
    消費者が調査を希望している場合は調査依頼書を発行し、原因の調査を
    行います。
    その後、二次対応に進みます。

   9.コンピューター入力やカード入力 
    対応が終了した時点で、最終的な結果をコンピューターに入力、あるいは
    カードに記入します。
    これは、データの蓄積とその解析により、製品の開発や不具合の改善に生かす
    ためです。
    単なる記録に留まらず、できる限り消費者の申し出を正確に記入することが
    重要となります。

  □事例(流通業) 
   以下では流通業を例に取り、苦情対応マネジメントシステムの具体例を紹介
   します。

   1.苦情対策の目的 
    (1)迅速、かつ適切な苦情対応を行うことによって、顧客の満足と信頼を
     得ること。 
    (2)苦情情報を有効に活用することで、重大な苦情や多発する可能性のある
     苦情に早急に対応して、苦情の拡散と消費者に及ぼす被害・損害を可能な
     限り防ぐこと。

   2.苦情対応の原則 
    (1)商品苦情は迅速な対応をするため、受付から調査、回答まで一貫して
     対応することを基本とする。 
    (2)苦情情報は、即時コンピューターに入力して、苦情情報を日次で営業
     本部経由で品質管理部にデータ送信する。
     苦情情報を一元的に集約・管理して、重大な苦情や多発する可能性のある
     苦情を早期発見・対処するため、すべての苦情情報は即時コン  
     ピューターに入力して、1日1回以上、営業本部にデータ送信する。営業
     本部は、毎日夜間にすべての苦情情報を品質管理部に送信し、品質管理部
     にすべての苦情情報を日次で集約する。 

    (3)「重大事故」「重要改善苦情」並びに苦情の内容から多発する可能性の
     高い苦情については、発生の都度、品質管理部にFAXなどで連絡する
     (支所の受付苦情は、営業本部経由で品質管理部に連絡する)。
    (4)苦情回答は、受付から7日以内に回答することを原則とする。
     ただし微生物検査や外部機関での調査などで時間を要する場合には
     「中間回答書」などでその旨を連絡する。 
    (5)現品をともなう商品苦情については、受付対応部署において確実に
     代品などの補償処理を行う。
     現品がない場合には、苦情内容により判断し、必要な場合には補償処理
     を行う。 
    (6)すべての苦情情報は、電子媒体などで少なくとも3年間は保存管理して、
     いつでも過去の苦情情報を検索して参照できるようにする。

   3.対応上の緊急性の識別 
    1件1件の苦情・意見はそれぞれ大切なものですが、その中でも「緊急性」の
    あるものと、そうでないものがあります。
    緊急性のあるものを見落とさないようにし、受け付けたときに対応上緊急性
    のあるものを「重大事故」、それに準じるものを「重要改善商品」のように
    区別して対応します。
    これは、受付時の対応のための定義であって、調査結果の判定の定義とは
    無関係です。

   4.重大事故 
    (1)食品による健康被害・有症苦情および損害事故 
    (2)家庭用品による危害・人体被害(有症苦情)・損害事故 
    (3)繊維製品での人体被害 
    (4)消費者の所有財物を損なった場合

   5.重要改善商品 
    商品が、原因で重大な事故には至っていないが、早急に改善を要する商品
    をいう。 
    (1)法令(都道府県などの条例を含む)に違反する商品 
    (2)自主基準(微生物合格判定基準、繊維製品品質管理基準など)に
     適合しない商品 
    (3)存症苦情・人体被害・危害の可能性の大きい商品 
    (4)消費者の所有財物を損なうおそれが大きい苦情 
    (5)著しい不快異物の混入や動物類(昆虫は除く)および衛生害虫の
     混入した商品 
    (6)商品仕様が勝手に変更された商品 
    (7)製造ロット苦情(製造ロット全体に同様のトラブルが発生する広
     がりの大きい苦情)

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

苦情(クレーム)対応とマニュアルの作成

   
  ■苦情(クレーム) 

   昨今の市場環境の変化やお客様(消費者)の意識の変化に伴い、産業界はもとより、
   国・地方自治体等の行政機関においても消費者保護の機運はますます高まってい
   ます。

   苦情原因の多くは

    ○ 商品知識や業務知識が不十分である

    ○ 適切なお客様対応やCSに対する理解が不足している

    ○ 従業員への教育が不十分である 等

   主な苦情として

    ○ 契約内容の説明が不十分(契約内容がお客様の希望と異なる 等)

    ○ 説明対応が不十分(連絡遅延、説明漏れ 等)

    ○ 事務手続きの遅延、失念 等

   苦情はあなたに大きなデメリットを発生させます

    ○ 契約の解除・取消し、次回の不継続

    ○ お客様の信用失墜、世間の評判低下

    ○ 事務業務の増加、時間のロス

    ○ 損害賠償発生による賠償金の支払い

   苦情の最小化を図るためには適正な業務遂行が欠かせない。

    ○ 苦情の記録(「お客様生の声「苦情受付簿」の備付け)、自社(店)内での
      共有化

    ○ 苦情発生の原因分析(発生させた人の追及であってはならない)

    ○ 苦情の再発防止策の策定と実行


   あなたの対応がお客様の期待レベルに達していない場合、お客様は不満を感じます。

   不満を感じたお客様のうち、苦情を表明する方は一部であり、背後には同様の苦情・
   不満(潜在化コンプレイン)を持った顧客が数多くいると考えてよいでしょう。

   不満が苦情となってしまってからの対応では対策になりません。

   あなたが気付いていない潜在的な不満・苦情を、顕在化する前に対策を講じること
   です。

   そのための方法の1つに「お客様に聞く」です。

   定期的(年1回)にお客(顧客)様からアンケートをとることです。

   そして、素直に聞くことです。

    私(弊社)はまだまだ未完成な会社(店)です。
    至らない点がありましたら教えてください。
    あなた様の素直なお声(不満・苦情・よい点)、ご指摘いただいた
    点は直に改善いたします。
    いい点、悪い点なんでも結構です。

   不満を感じるお客様の多くは、苦情を言わずに他社へ契約を切り替えてしまっている
   のではないでしょうか。

   苦情が発生した場合、誠意をもって解決に当たることはもちろんですが、その苦情が
   発生した原因を分析し、再発防止を図る必要があります。

   苦情の根本原因が何かを見つけて取り除くことにより、同様の苦情を未然に防止する
   ことは、あなたの業務を遂行する上で重要な課題です。

   顧客のクレームや意見に対する考え方や対応が優れている会社は総じて業績がよく、
   クレームや顧客の意見に真剣に耳を貸さず、自社の正当性や意見を否定するような
   会社は、業績が低迷していることが多いといわれています。

   実際にクレームや意見を言われても真剣に聞かず、「当方は間違っていない」「クレー
   ムを言うほうがおかしい」と思っている経営者や責任者はとても多く存在します。

   しかし、顧客のクレームや意見は市場の正直な声であり、会社業績を向上させるため
   の重要な情報なのです。

   それを十分に活かさないことは、あなたの業績向上の可能性をなくしているようなもの
   です。

   あなたも商品を購入したり、サービスを受けたりした時に、不満に思ったときどのよう
   な対応をしているでしょうか。

   そして、クレームや意見を言った場合は、どのような対応を受けると納得していたで
   しょうか。

   是非自分の状況を思い出してみてください。

  □クレームの心理

   自分がある温泉ホテルに宿泊して、そのサービスの状況に不満を持ったとします。

   あなたは下記の1と2のどちらの対応をとりますか?

    1 クレームを直接言う。

    2 クレームを言わずにもう二度と来ないと心の中で決めている。

   あなたはどちらの対応をとりましたか?

   実際は、不満の程度にもよりますが、2の対応をとる人が多く、クレームを言う人は
   とても少ないそうです。


   クレームや意見を言う人は、大きな勇気がいるものです。

   人間は誰でも人に嫌われたくないという意識があるので、ちょっとしたことではなか
   なか意見を言わないものなのです。

   そのため2の対応を取ることが多いのです。そのような中であえて苦言を呈する人は、
   対応により以下の2 通りに分かれます。この対応が業績に大きく影響するのです。

   クレームの対応が悪いと全ての人は二度と来ないでしょう。

   しかし、クレームの対応が良いと再度来ようという気持ちになるのです。

   市場を知るには顧客の声を聞くことが一番なのです。

   そのためにもクレームだけでなく、顧客の正直な意見を収集することが重要にな
   ります。

   顧客があなたの会社(店)をどう思っているのかを知ることは重要なことです。

   そのためにも「お客様の声」を定期的に集めることをお勧めします。

   優れた会社は、アンケートをもとに会社の問題点を抽出し、その対策会議を行ない、
   スピーディーに改善策を立案・実行しています。

   顧客の声にすばやく対応することにより、顧客満足を高めているのです。

   実施に際しては、顧客に正直に説明することです。

   アンケートの内容は、

   自社(店)のお客様から見て感じたよい点・悪い点、その他どんなことでも結構です
   からあなた様の声をお聞かせください。

   そして、悪い点は改善し、お客様から頼りにされる会社にしてまいりますので、これ
   からも応援よろしくお願い申し上げます。 

   このように簡単な内容でかまいません。

   そして、書いてくださったお客様には粗品を進呈してください。

   よい点・悪い点どんなことでもいいですから書いてもらうことです。

   そうすることで、あなたが今まで気付かなかった自社(店)が見えてきます。
      
   有名な話に、以前ユニクロが全国の新聞一面に「ユニクロの悪口を言って100万円」
   と、キャンペーンを打ちました。

   話題性とお客様の声を聞くという一石二鳥の効果を狙ってのことでしょう。

   企業活動を行う上で、顧客からの意見や苦情は避けられないものです。

   企業は苦情をなくすための努力はしているものの、苦情をゼロにすることはできません。

   例えば、顧客の勘違いや不可避の事態による配送の遅れなどは、企業努力で対処
   できる範囲にも限りがあります。

   クレームの多くはほんの些細なことが原因です。

   クレームが肥大化する要因の一つに初期対応があります。

   苦情が発生した場合は、誠意を持って解決に向けた適切な対応を行うことはもちろん
   ですが、その苦情が発生した原因を分析し、再発防止を図る必要があります。

   苦情の根本的な原因は何かを掘り下げ、それを見つけて取り除くことにより、同じよう
   な苦情の発生を未然に防止することは、適正な業務を遂行する上での重要な課題
   です。

   苦情は避けられないものとして考え、苦情が発生した場合に企業に対するマイナスの
   影響を最小限にとどめるよう、苦情対応規定等を設け、苦情に対する対応方法を発生
   前にある程度定めておく必要があります。
   
  苦情対応規定 

   苦情に対する対応方法を定めたものが苦情対応規定です。

   ただし、苦情対応は実際にそれぞれの従業員が、その重要性や手順を理解して取り組む
   ことが求められます。

   そのため、難解な表現を用いた規定では、従業員はそれを読み、理解しようという意識を
   持ちにくくなります。

   また、苦情対応は企業を取り巻く環境変化に応じて、柔軟にそのあり方を見直す必要がで
   てきます。

   そこで、企業の規則としての苦情対応規定には苦情対応の大枠のみを定め、具体的な苦
   情への対応方法は、別途苦情対応マニュアルで定めます。
   
  □苦情対応マニュアル

   苦情というと、どうしても「悪いもの」「避けたいもの」というイメージがあり、苦情対
   応に対して、消極的な姿勢をとってしまうこともあります。

   しかし、企業による不祥事や製品事故などが相次ぎ、企業に対する顧客の目がます
   ます厳しくなっている現在、苦情に対する会社(店)の姿勢についても顧客は大きな
   関心を寄せています。

   そのため、苦情対応をおろそかにすると、会社(店)のイメージ低下、顧客喪失など
   会社経営に大きな影響を及ぼす事態になりかねません。

   また、苦情の背景には、会社(店)経営を脅かすような重大な問題が潜んでいることも
   あります。

   こうした苦情を、初期の段階で察知・分析することなく見過ごしてしまうと、会社(店)
   として取り返しのつかない事態に陥るケースもあります。

   このように考えると、苦情対応は企業にとって重要な経営課題であり、組織全体で
   取り組むべきものと認識し、適切に対応していくことが大切となります。

   基本的なマニュアルを作成することは、苦情において以下のような対応効果を高める
   ためです。

    ・質の平準化

     誰でも一定の水準の苦情対応ができる

    ・迅速な対応

     あらかじめ定められた手順に沿って行うことで、迅速に対応することができる

  □情報の共有

   苦情内容を従業員全員が共有できる仕組みを作っておくことで、次回以降の苦情に
   応用することができる。

   ただし、マニュアルを作成する際には、

    ・マニュアルを作成することそのものを目的としない

    ・マニュアルに頼りすぎた苦情対応をしない
 
   マニュアルを作成すること自体が適切な苦情対応に結びつくのではありません。

   マニュアルを従業員全員に周知させ、必要に応じて内容を見直しながら運用していく
   という一連の流れが自社(店)の苦情対応力を高めていくのです。

   こうした点も考慮しながら、中小企業におけるマニュアルの基本的な作成手順とその
   留意点について考えてみましょう。
   
  ■苦情対応マニュアルの作成手順

   マニュアルの作成・運用は以下の手順が基本になります。

    1.苦情対応責任者の明確化

       苦情対応の責任者は誰かということを明確にします。

      責任者を明確にし、苦情が発生した場合には情報がすべて苦情対応責任者の
      下へ集まるようにしておくことで、苦情対応の効率的な管理が行えるようになり
      ます。

      苦情対応責任者は、社長あるいはそれに近い階層の者が就くほうが望ましい。

      苦情対応への取り組みは、自社(店)イメージを大きく左右することがあります。

      社長自らが苦情対応責任者として率先して苦情対応に取り組むことで、苦情対
      応を「企業活動における重要な取り組みの一つ」ととらえ、高い意識を持って苦
      情対応に取り組む姿勢を内外に示すことができます。

      社長自ら苦情対応責任者となり、苦情への対応方針を決定・指示することで迅
      速な対応が可能となります。

    2.苦情対応責任部門の設置

      苦情対応責任部門の主な役割はマニュアルの作成や運用、修正や見直しなど、
      苦情対応に関するプロセス全体の統括を行うことです。

      マニュアル作成に関しては、実際に苦情対応を行っている現場の従業員の意見
      をマニュアルに取り入れることで、現実に即した「生きたマニュアル」が作成でき
      ます。

      苦情対応責任部門には、顧客からの苦情を受けることが多い従業員(営業、お
      客様センターなど)をメンバーとして組み入れるとよいでしょう。

    3.マニュアルの作成

      苦情対応責任者および苦情対応責任部門が中心となってマニュアルの作成を
      進めます。

      マニュアルに盛り込む項目は業種によって多少の違いはありますが、基本的に

      は次のような項目を盛り込みます。

       (1)マニュアルの目的

         苦情に対する組織の考え方を記載します。

         冒頭にこうした考え方を盛り込むことで、従業員全体の苦情対応に対する
         意識の統一を図ります。

         ここでの記載内容としては、

         例えば、「苦情を受領した際には、お客様第一の立場で迅速かつ丁寧な対
         応を心がける」「お客様からの苦情には誠意を持って対応し、当社の商品・
         サービスをより適切にご利用いただけることを目指す」などとします。
 
         この項目は単文でもかまいませんし、複数行に分けてもかまいません。

         ただし、苦情対応に対する組織の考え方を示すものとなるため、できるだけ
         分かりやすく、従業員全員が共有できる内容にすることが大切です。

       (2)苦情対応の具体的な手順

         苦情が発生した場合の対応手順について記載します。

         この項目はマニュアルの中でも核となる部分なので、慎重に検討します。

         具体的な項目としては「受領」「内容の調査」「対応の検討」「苦情対応の
         実施」などがあります。

         手順については、

          ・苦情の受領から終了まで時系列に並べる

          ・実際の苦情対応例を併せて記載しておく

          ・「お客様への対応」と「社内の対応」に分けて手順を記載する

         など、従業員が苦情対応の流れを理解しやすくなるような工夫が必要
         です。 

       (3)苦情対応報告書の作成手順

         苦情対応報告書は、苦情対応に関する情報を管理するために必要となる
         重要な書類です。

         ただし、担当者によって報告書の記載内容・項目に大きな差があるようで
         は、情報を適切に管理することはできません。

         あらかじめ「苦情発生状況」「苦情内容」「苦情原因」「お客様のご要望」
         「対応」「対応結果」「備考」などを盛り込んだ苦情対応報告書フォーマッ
         トを作成しておき、苦情が発生したら、直接苦情対応に当たった担当者
         に記載・報告をさせるようにします。

       (4)苦情のデータベース化の手順

         データベース化の目的は、苦情内容やその対応方法を全社で共有し、苦
         情の再発防止に役立てることが挙げられます。

         そこで、苦情対応者から提出された苦情対応報告書を基に苦情内容と対
         応方法などを蓄積します。

         なお、データベース化された苦情情報には、従業員が誰でもアクセスできる
         ようにしておくことが必要です。

         そうすることで、従業員は以前の苦情対応情報を参考に、よりスムーズな
         苦情対応を行うことが期待できます。 

    4.マニュアルの周知・実施

      マニュアルを作成したら、苦情対応の勉強会などを開催し、従業員全員にマニ
      ュアルの浸透を図ります。  

      従業員の苦情対応のレベルアップを図るためには、こうした勉強会を定期的に
      開くことが理想的ですが、まとまった時間をとることが難しいという場合もあるで
      しょう。

      そうした場合には、朝礼などの時間を利用して通知するだけでも効果が期待で
      きます。

      1回当たりの時間は少しずつでも、継続して取り組むことが重要です。

    5.マニュアルの見直し

      マニュアルを実際に運用した上で、項目の見直しや修正を行います。

      あらかじめ「3カ月ごと」「半年ごと」など、一定の期間ごとに見直しを行うことを
      マニュアルに記載しておきましょう。
    
  □マニュアル作成・運用上の留意点

   1.マニュアル作成は完璧を目指さない

     マニュアル作成に当たっては、精密に作りすぎないということに注意する必要
     があります。 

     マニュアルというと、精密なものを作りたくなりますが、マニュアルで多くを規定
     しようとすると、マニュアル作成に時間や手間がかかる上、従業員が覚えにく
     く、浸透しづらいなどの問題点が出る恐れがあります。 

     しかも、精密なマニュアルがあると、従業員はすべてマニュアルに従って苦情
     対応を行うことになります。

     マニュアル通りの対応は、顧客に「機械的な対応」という印象を与えかねません。

     企業に対して苦情を申し出る顧客は、「自分の話を聞いてほしい」「自分が怒
     っている理由を理解してほしい」と考えています。

     そうした顧客に対して「機械的な対応」をしてしまうと、「本当に悪いと思ってい
     るのか」と、余計に顧客を興奮させてしまう可能性もあります。 

     また、従業員がマニュアル通りの対応に慣れてしまうと、マニュアルにない(想
     定していない)苦情に対して、対応できなくなる恐れもあります。 

     こうした問題を防ぐために、マニュアルには、例えば、・苦情に対する基本的な
     考え方・苦情が発生したときにどういう手順で対応するのか・苦情対応を終了
     した後の社内処理はどうするのかなどの基本的な事項についてのみ記載して
     おき、実際の苦情対応に際しては、従業員にある程度の裁量を与え、柔軟な
     対応をさせるようにします。 

     もし、運用していて不足などがあれば、その都度見直していけばいいのです。

     もともと簡潔に作ってあるマニュアルであれば、見直しも簡単に行えます。

   2.マニュアルは定期的に見直しをする 

     マニュアルは一度作成したら終わりというものではなく、苦情対応を常に質の
     高いものとするためにも定期的に見直しを行うことが重要です。

     現代は変化の時代といわれ、企業を取り巻く環境は、刻一刻と変化しています。

     作成時点では非の打ち所のないマニュアルだったとしても、環境が変化すれ
     ば、不都合が出てくる可能性があります。

     作成したマニュアルを、見直すことなく使い続けていては、顧客の要求に応え
     切れなくなる可能性があります。 

     そのため、データベース化された苦情対応の情報や、実際に苦情を受ける従
     業員の意見を定期的に集約して内容を見直すなど、常に鮮度の高いマニュア
     ルにすることが大切です。

     また、「同業他社の苦情対応事例」などの身近な事例は、適切な苦情対応を
     するために大変参考となりまが、入手は困難でしょう。

     それより異業種のマニュアルのほうが入手しやすいでしょう。

     日ごろから苦情対応に対するアンテナを張っておきましょう。

  □従業員を評価する仕組み 

   どんなにすばらしいマニュアルを作ったとしても、実際の現場で顧客に対応する従業
   員が、高い意識を持っていなければ意味がありません。

   経営トップは、朝礼や研修などあらゆる機会を使って、従業員に苦情対応の重要性や
   苦情対応に当たっての心構えなどを伝えていくことが大切です。 また、苦情対応に
   対する従業員の高い意識を保つためには、苦情対応を行った従業員をしっかりと
   評価することも忘れてはなりません。

   苦情対応は、対応する従業員にとって大きな負担となるものですが、苦情対応を行っ
   た従業員を評価する仕組みが整っている会社は多くはありません。 

   確かに、苦情対応は利益に直結するものではないため、評価の対象となりにくい面は
   ありますが、これでは、従業員に「苦情対応は割に合わない」という意識が生まれ
   ても仕方ありません。

   従業員がそうした意識を持つと、苦情対応に対する意識が低下してしまう恐れがあり
   ます。 

   こうした事態を防ぐために、苦情対応を行った従業員を評価する仕組みづくりが必要
   です。

   こうした仕組みとしては、例えば、・半年間の苦情対応件数が最も多かった従業員を
   表彰する・データベースに蓄積された苦情対応情報から、「参考となる対応」を従業員
   に 選択させ、最も選択された数が多かった従業員に特別手当を支給するなどが
   考えられます。

  □JIS規格も参考にする

   苦情対応については、JIS規格「JIS Q 10002:2005 品質マネジメント−顧客
   満足−組織における苦情対応のための指針」が制定されています。

   この規格は、組織内部における製品やサービスに関する苦情対応プロセスの指針に
   ついて標準化を行い、生産および使用の合理化、品質の向上を図ることを目的と
   して制定されたものです。 

   同規格には、苦情対応の「基本原則」「計画および設計」「苦情対応プロセスの実施」
   「維持および改善」などの規定事項のほかに、苦情対応プロセスの構築や維持に
   大きく経営資源を投資することが難しい小規模企業のための指針、苦情の受け付け
   および苦情のフォローアップをする際のフォーマットなども添付されています。

   マニュアルの作成に当たっては、こうした規格を参考にするのもよいでしょう。 

   同規格は経済産業省に設置されている審議会「日本工業標準調査会」のサイトで
   閲覧することができます。

  □マニュアル項目例

   (1)マニュアルの目的

     株式会社○○(以下「当社」)が提供する商品・サービスなどへの苦情に対し、
     適切に対応し、円滑かつ円満に解決するための対応手順並びに留意点につ
     いて定めるものとする。

   (2)苦情対応の手順

     苦情申出者と接する従業員(以下「対応者」)、苦情対応責任者(以下「責任
     者」)が行う職務は以下の通りとする。

     ①苦情の受領

       ・苦情受領時、対応者は苦情申出者の話を十分に聞き、苦情内容とお客
        様の希望の把握に努める。

       ・対応者は苦情の内容を責任者に報告する。

       ・苦情が電子メールや手紙など、直接対話を伴わない手段で行われた場
        合には、責任者は受領した旨を苦情申出者に通知する。

     ②苦情内容の調査

       ・責任者は対応者などに事情聴取を行い、苦情の内容、原因および苦情
        申出者の状況などの客観的事 実の調査を行う。

     ③苦情対応方法の検討

       ・責任者は対応者などを交え、適切な苦情対応方法の検討を行う。

       ・当社のみで対応することができない場合(不当な要求など)には、関係機
        関へ苦情内容を報告し、協力を仰ぐこととする。

     ④苦情対応の実施

       ・対応者は検討された苦情対応を基に苦情申出者に回答する。
        場合によっては、責任者など第三者を 交えて苦情申出者に対応する。

       ・すぐに回答できないものについては確認後に連絡する旨を伝える。
        その際には連絡期日を設定しておく。

       ・苦情申出者への回答は文書を用いるものとする。

   (3)苦情対応報告書の作成

     ・対応者は苦情の内容、対応結果などを苦情対応報告書にまとめ、責任者に
      提出する。

     ・責任者は苦情対応報告書を受領し、保管する。

   (4)苦情のデータベース化

     ・責任者は苦情対応の結果を受領し、当該苦情の記録を行い、当社の商品・
      サービスなどに反映し、再発防止に努めることとする。

   (5)マニュアルの見直し

     ・本マニュアルは、実際の苦情情報を反映させ、6 カ月ごとに見直しを行うも
      のとする。 


   クレーム(苦情)対応に限らず、会社という組織を動かしていくにはマニュアルの整備
   は欠かせない。

   組織における仕組みづくりは、場当たりな行動をなくしていくことで、経営リスクを
   軽減し、継続した収益をだすために必要なのです。

   「クレーム」というと、できれば避けてとおりたいと思いがちです。

   できればクレームは無いほうがよいですし、万が一クレームを受けてしまった時は
   なるべく上手にお客様をなだめて機嫌を直してもらい、それで一安心と思っている
   人も多いでしょう。

   しかしよく考えてみれば、クレームはお客様からの不満の意志表示であり、言い換え
   れば「こうして欲しい」というお客様からの忠告・ニーズの表現なのではないでしょ
   うか。

   クレームに対する姿勢を今までのようなマイナス思考からプラス思考に変えることに
   よって、貴重なお客様からの忠告の言葉を財産にしていくことができるのです。

   そのためにも、その場限りの解決を図ろうとせず、クレーム(苦情)に対応するための
   苦情(クレーム)対応マニュアルの作成が欠かせません。

   『クレーム対応』は組織人としての正しい対応(姿勢)を身につけなければならない
   基本動作12項目の一つです。

  ■クレームの予防

   クレームの予防対策として『顧客との接点の強化』があります。

   もちろん、『顧客との接点の強化』はクレームの予防策としてだけでなく、営業力の強化CS 
   にも効果的です。

  ■クレームの原因

   ・商品知識や業務知識が不十分である

   ・適切なお客様対応やCSに対する理解が不足している

   ・従業員の教育が不十分である  

   ものごとに正しく対応するためには、そうなった原因をつかむことが先決です。

   どうしてこのクレームが発生したのか、その根拠をしっかりつかんで、対応のしかたを
   誤らないようにしなければなりません。

   初期の段階で失敗すると解決が長びき、たいへんな労力と時間を要します。

   それでは問題を悪化させるだけです。

  ■クレームをもちこむ顧客心理

   様々なことが考えられますが、それが正しい
   かどうかはともかく、クレームを言われるには
   それなりの原因があります。

    ・以前にも同じようなことがあって我慢でき
     なくなった

    ・事務的な対応に対して不満をもっている

    ・その会社自体に対する悪い先入観がある

    ・過剰な客意識からくる怒りをぶつける

    ・損失の大きさ(経済的、精神的)に対する
     怒りを我慢できない

   不満が高じてクレーム苦情に発展していきます。

   しかし、不満を感じた人のすべてがそれを意志
   表示する訳ではありません。

   以下の事例ではクレームを苦情と言い換えてみます。

   一般的に不満が苦情となって表れるには

    潜在的な不満
      疑問を持つ(あなたは気づかない)

    顕在化された不満
      言葉は柔らかいが、顧客が態度や言葉に表す

    潜在的な苦情
      担当者に直接言わず、別の人間や上司に不満をぶつける

    顕在化された苦情
     担当者に直接(or 電話で)日ごろの不満をぶつける

   上記のように苦情を持ち込むまでにはプロセスがあります。


  ■クレーム(苦情)はお客様を増やすチャンスでもある

   お客様は不満を感じていてもそれを表明してくれる人は約半数しかいません。

   米国のある消費者データでは、不満を感じた人の96%がその不満を口に出して言わ
   ないそうである。((米国の調査では、口に出して言うのはわずか4%)

   そして、96%のうちの94%が再購入しない、というものです。

   マイナスの口コミ効果は、女性に顕著に表れ、中でも主婦においては非常に大勢の
   人に伝わるというデータが出ているとのことです。

   不満を感じた人が一年間にその不満について20人に伝えると、その話を聞いた20人
   の一人ひとりが別の20人の人に伝え、それを聞いたさらに一人ひとりの人がまた新た
   に20人に伝える。

   この行動を5回繰り返すと、なんと320万人に伝わることになります。

   逆に満足情報の口コミは1年間に5〜6人にしか伝わらないそうです。

   もちろん計算どおりにはならないにしても、悪い話は驚くほどのスピードで広範囲に
   伝わることは確かです。

   特にIT環境下にある今では、話半分どころではないはずです。 

   ましてやわざわざ電話をしてきたり、どなりこんできたりするお客様はもっと少なく、
   大半は不満を持ちつつ黙って離れていってしまったり、あなた(会社)にではなく、自分
   の周囲の人にマイナスのロコミを流したりします。

   このようなお客様に対しては、その不満や不信感をぬぐうチャンスもなかなか与えられ
   ません。

   しかし、わざわざ苦情の連絡をしてくださるお客様はそれだけ関心があるお客様であり、
   迅速・適切に対応することによって逆にファンになっていただくことも可能です。

   一つ一つのクレームを真しに受け止め、同じ様なクレームの再発を防ぐとともに、クレ
   ームをいってこられたお客様には必ず満足していただけるように適切な対応を行なう
   ことが必要です。

   クレームは「発生したこと」よりも「いかに対処したか」が問題です。

   クレームは「誰が起こしたか」ということよりも「何故起こったか」を追求して再発防止
   に努めるとともに、「適切に対応できたか」が重要となるのです。

   起きてしまったクレームはもみ消したり、その場かぎりの解決を図ろうとしたりせずに、
   会社との連携を図り、迅速・適切に対応していきましょう。


  ■苦情対応の基本

   苦情対応の基本は、「迅速で確かな対応」と「誠意ある
   対応」が最重要であることをよく認識しましょう。

   具体的には次の諸点に留意して迅速かつ誠意をもっ
   て対応するようにします。

    イ.相手が誰であれ、丁寧な言葉使いを忘れずに。

    口.相手から問われなくとも、みずから名乗ること。

    ハ.相手を確認すること。(氏名・住所・電話番号な
       どの連格先)

    ニ.相手に極力話をさせ、聞き取ること。

    ホ.相手の主張の内容をよく確認すること。(5WIH)

    へ.余計なことは言わないこと。

    卜.誤解を招く言葉や、様々な意味にとられかねない言葉は使わないこと

    チ.できるだけ平易な言葉を使うように心がけ、専門用語や仲間うちの言葉は
       使わないこと。

   苦情は「発生したこと」よりも「いかに対処したか」が問題であり、「誰が起こしたか」
   ということよりも「何故起こったか」の原因を追求して再発防止を努めるとともに、 
   「適切に対応できたか」が重要となるのです。

   起きてしまった苦情を場当たり的な解決やもみ消しせずに、会社との連携を図り、迅速
   ・適切に対応します。

  □訴訟大国

   訴訟大国の米国では苦情が苦情にとどまらず、訴訟へと発展するケースが多数あり
   ます。

   これは米国の弁護士がambulance chaser(蔑称で救急車を追いかける人)と呼ば
   れ、事故現場に駆けつけ被害者に訴訟を持ちかける悪徳弁護士が多数いることも
   要因となっている。

   わが国では「言いがかり」としか思われないようなことで訴えます。

   過去の事例では、

    ・猫を電子レンジに入れて乾かそうとした

     「説明書に”電子レンジで猫を乾かしてはいけない”と書いていなかった」という
     主張が認められて、電子レンジのメーカーは賠償金を支払った。

     通称「猫チン事件」は、日本でも驚くべき実話としてさまざまな論説で紹介さ
     れ、PL訴訟などに対する備えを説く上で大きな影響を与えてきましたが、実際
     にはこの事件に該当する判例は存在せず、今では、この話が一種の「都市伝
     説」または「寓話」であることが知られているそうである。

    ・ドライブスルーでコーヒーをテイクアウトして、運転しながら飲んでいたら、こぼ
     して軽い火傷をした。

     彼女(老女)はマックを訴え、勝訴しました。

    ・プールに水を張っていなくて泥棒が落ちて怪我をした。

     泥棒が、学校に泥棒に入ろうとして何故か体育館の屋根を歩き、屋根が弱っ
     ていたためそこから体育館の中に落ちて大怪我した。
     その泥棒は、学校側の管理不行き届きを訴えて、結果勝訴しました。

    ・お化け屋敷が怖すぎると訴えた女

     フロリダ州の女性が、ユニバーサル・スタジオを相手に裁判を起こした。
     同テーマパークのお化け屋敷アトラクション「ハロウィン・ホラー・ナイト」が怖す
     ぎたため、精神的苦痛を負ったという言い分。
     裁判の結果、彼女は1万5000ドルの慰謝料を勝ち取りました。

   わが国でもこの流れはすでに始まっており、債務整理や過払い請求のCMなどが似て
   いないだろうか?

   顧客からのクレームをしっかり受け止めるためのクレーム対応報告書は欠かせません。

  ■苦情(クレーム)はチャンス

   「禍(わざわい)転じて福となす」ということわざがあります。

   クレーム対応は、一歩間違えば顧客の信頼を失い、取引停止という事態にまで発展する
   こともあります。

   しかし、しっかりとした対応ができれば、このことわざ通り、逆に顧客との信頼関係を
   いっそう堅固なものにすることができます。

  ■苦情(クレーム)はどんな時に発生するのか

   それは、顧客が製品やサービスに不満を感じたり、「期待を裏切られた」と感じたりした
   時です。

   つまりクレームとは、「顧客から直接、自社の商品やサービスの不備を教えてもらえる
   重要な機会」といえます。

   そう考えると、会社にとって最も恐ろしいのは「何も言わずに去っていく顧客」です。 

   不満を抱いている顧客が、その不満には一切触れず、曖昧な理由をつけて取引を中止
   してしまったら、会社はどこをどう改善したらいいのかわかりません。 

   クレームを言ってくれる顧客は「先生」であると考え、真摯に対応しましょう。

   1)クレームはすべてトップに報告すること

    クレームを最初に受けた人間が、上司に報告するか、しないか。これを自己判断
    で決めることは非常に危険です。

    ちょっとしたボタンのかけちがいが、後で大きなトラブルに発展することも十分に
    考えられます。

    どんな些細なクレームでも、リアルタイムでトップに伝わる仕組をつくっておき
    ましょう。 

    2)クイックレスポンスが重要

     クレームを受けたら、すぐになんらかのアクションを起こすべきです。

     顧客はクレームを放っておかれたと感じると、二度とこちらの話を聞いてくれよ
     うとはしません。

     すぐに担当者とその上司が顧客を訪ね、じっくりと話を聞くことが大切です。 

     ある会社のトップの名刺には、会社の電話番号の他に自宅の電話番号と「24時間
     受け付け」という言葉が書かれています。

     そして顧客に名刺を渡すときには必ず、「何かお困りのことがあればいつでもご
     連絡ください」と一言添えているそうです。

    3)言い訳、反論をしない

     「顧客はすべて正しい」という言葉をモットー
     に、高い顧客満足度を実現している会社も
     あります。

     顧客はこちらの言い訳や反論に耳を貸そう
     とはしません。

     たとえこちらが正しくとも、顧客は信頼を裏
     切られたと感じます。

       まずは顧客の不満を解消することを第一に
     考えることです。 

    4)人ではなく原因を追及すること 

     クレームがあった時に、「誰が悪いのか」を
     追及しても意味はありません。

     その人間は同じ失敗を繰り返さないでしょうが、他の誰かがするかもしれません。

     「誰が悪いのか」ではなく、そのクレームが「なぜ発生したのか」という原因を追
     求することが重要です。

     経理担当者が請求金額を間違えてクレームが生じたとします。

     その時、ミスをした経理担当者を責めるのではなく、そうしたミスが起きにくい
     仕組みがあるかを確認し、なければ早急に対策を講じましょう。

     例えば、「請求書発送の前に常に営業担当者に金額の確認を行うこと」といった
     ルールがあるかなどを確認することです。

     クレームは本来、あってはならないものです。ですが、クレームをゼロにするこ
     とは、まず不可能です。

     だとしたら、クレームから逃げるのではなく、しっかりと対応し、自社の商品、サ
     ービス改善につなげましょう。と同時に、クレームの原因を追及して再発防止す
     るための仕組みをつくることが必要です。

     そのためには、まず顧客からのクレームをしっかり受け止めるためのツールが
     必要です。

     クレームは企業として気づかなかった改善点を指摘してくれる材料にもなります。

     クレームというとマイナスのイメージがついてまわります。

     どうしても無理難題を言ってきて、利用されるのではないかという感じを持つ人が
     多いと思います。

     しかし、クレームは宝の山でもあるのです。

     クレームを解決することによってクレームを言った人をリピーターに変えることが
     できるのです。

     また、同じような不満をもっていてクレームも言わずに逃げていく顧客を繋ぎとめる
     ことにつながるのです。

     良い評判というものは広まりにくく、悪い評判というものはとても早く広まります。

     そのためにも素早い対応が重要なのです。

     過去の成功体験や経営者の考えが市場と大きく乖離してしまうことも多く、そう
     いうことを修正するためにも、市場の声をしっかりと聞くことがすべてのことに役立
     ちます。 

     自社に合った苦情対応マニュアル・シートを作成し、クレーム対応に、前向きに取り
     組んでください。

   

 

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

食品業界における苦情対応


  ■食を取り巻く環境

   近年、食品による食中毒や、BSE(牛海綿状脳症)の問題、食肉の産地偽装事
   件、残留農薬の検出など、食に関する多種多様な出来事が続き、消費者の食に
   対する信頼が低下している傾向があります。

   また、最近の例では、大手製菓メーカーで期限切れの食材が使用されていたこと
   が発覚し、品質管理体制のずさんさが露呈するなど、食の品質管理が社会問題
   となっています。

   食品関連業者は、規模の大小にかかわらず、食に関する規格の認証を受けるな
   どさまざまな方法で品質・衛生管理を徹底しなくてはならないことはいうまでもあり
   ません。

   しかし、認証の取得だけで、品質が守られているとはいえません。

   実際に、不祥事を起こした大手製菓メーカーでは、複数の管理規格の認証を取
   得していたといわれています。

   認証を取得しても、その後の製造過程で管理基準が遵守されていなければ、品
   質維持はできません。

   また、厳重に注意を払っているなかでも、万が一クレームが発生してしまった際に
   は、適切な対応をとれる体制を整えておくことも求められています。

  □クレーム発生時の適切な対応

   つねに品質管理を徹底しているとしても、販売している食品について顧客から問
   い合わせがくることがあります。

   それが、食品に対するクレームであった場合、どのように対応することが望ましい
   でしょうか。

   食品のクレームは、図のように分けて考えることができます。

   次に、ケース別にとくに注意したい対応のポイントをみていきます。

    <ケーススタディ①:食中毒に関するクレーム>

     顧客から、「購入したレトルト食品を食べたら、下痢になった、食中毒かもしれ
     ない」と連絡を受けた。

     対応のポイント

     a.顧客の体調を第一に考える

       「下痢をした」というだけでは、食中毒かどうか、症状の重度などはわかりま
       せん。
       場合によっては、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌などの可能性もないとはいえ
       ません。
       顧客の体を気遣い、医師の診察を受けてもらうことを優先します。

     b.第三者の分析機関を利用する

       菌の混入の可能性があるケースについては、その分析を自社、または第
       三者の分析機関で行います。
       菌の分析などは、機器の精度が大変重要になりますが、それらの機器を中
       小企業で所持・メンテナンスをすることは難しいため、第三者の分析機関に
       依頼して報告書を出してもらうのが一般的です。

     c.情報の開示

       分析の結果、食中毒の原因となる菌が存在することがわかった場合、トラ
       ブルに関するすべての情報を把握したうえで、社告を出すよう手配します。
       内容は、事実関係や回収方法、その費用の負担、送り先などについてで、
       媒体には新聞を活用するのが一般的です。
       新聞を活用する際には、自社商品のエンドユーザーがどこであるかを考
       え、それが消費者であれば、購読者数が多い全国紙に掲載することになり
       ます。
       一方、業者間取引が多い場合には、全国紙とあわせて専門紙などへの掲
       載も検討しましょう。
       なお、取引先には、新聞などの社告だけでなく、実際に連絡し、謝罪すると
       ともに今後の対応などを伝えます。
       顧客、取引先のどちらに対しても、誠意ある行動を迅速にとることが大切で
       す。
       新聞以外には、ホームページなども利用して、いち早く問題解決に努める
       ようにします。

    <ケーススタディ②:異物の混入に関するクレーム>

     顧客から、「購入した菓子パンに髪の毛が入っていた」と電話で連絡を受け
     た。

     対応のポイント

     a.顧客の体調を第一に考える

       クレームを真摯に受け止め、顧客の状況を把握します。
       言い訳をせずに、不快感を与えてしまったことに対して詫び、顧客の体調を
       気遣い、症状を詳しく開きます。その際、電話代などを考慮して折り返し電
       話するなどの配慮も大切です。

     b.原因を分析する

       今回のトラブルの原因を分析するために現物を回収したい旨を顧客に説明
       し、了承を得て回収します。
       その際には、説明できる範囲で、分析を自社で行うか、または第三者の分
       析機関で行うかなどの詳細を正直に伝えます。

     c.対策を説明する

       顧客へ報告する際は、製造工場でのトラブルなどの結果のほか、謝罪、今
       後の対策を企業の責任者が行います(企業の規模にもよりますが、事の大
       きさを考慮して、できる限り顧客へ誠意が伝わる人選をします)。
       なお、対策として、検品を2回から3回へ強化するなど、すぐ行えるものや、
       施設の大がかりな清掃をする回数を増やすなどの中期的なもの、さらに新
       しい機械の導入など、比較的長期的なスパンで検討するものなどがある。
       いずれも、顧客の問い合わせから、安全管理を見直す機会ができたことに
       感謝する気持ちが大切です。

    <ケーススタディ③:アレルギーに関するクレーム>

     顧客から、「お弁当の中にある肉のようなものを食べたらアレルギー反応がで
     てしまった。
     食品表示には、自分がアレルギー反応を起こす大豆について表示されていな
     かった」とのクレームを店頭で受けた。

     対応のポイント

     a.顧客の体調を第一に考える

       代理の方が来店した場合でも、被害を受けてしまった方の症状を確認。
       場合によっては、その場で救急車を呼ぶ必要性もあるかもしれません。
       まず医師にみてもらうようすすめます。
       その際には、顧客が購入した現物のほか、その食品に使用している食材な
       どの情報を用意しておき、医師に伝えます。アレルギーは、場合によっては
       生死にかかわる問題ですから、判断を誤らないためにも医師の力をかりま
       しょう。

     b.厳重な情報表示

       食品に含まれる食材や調味料など、食品衛生法で定められているアレル
       ギーの原因となる品目はもちろんのこと、そのほかに注意が必要と思われ
       る食材についてもできる限り表示するよう心がけます。

     c.従業員へのアレルギーに関する教育

       食品衛生法では、加工食品について、アレルギーの原因となる特定原材
       料5品目(卵・乳・小麦・そば・落花生)の表示が義務づけられています。
       ほかにも可能な限り表示することを勧められている特定原材料に準じる20
       品目(あわび・いくら・いか・えび・オレンジ・かに・キウイフルーツ・牛肉・
       くるみ・さけ・さば・大豆・鶏肉・豚肉・まつたけ・もも・山芋・りんご・
       バナナ・ゼラチン)についても表示を行うようになっています。

       このような知識を従業員はじめ、関係者へも伝え、啓蒙することで、再発を
       防止していきます。

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

顧客満足度の向上につなげるクレーム対応の話法
 

  最近、特に小売業・サービス業において、「クレーム」は「顧客からの情報収集の宝庫」
  として注目が高まっています。

  また、クレームは、対応方法によっては「あの企業はこのような素晴らしい対応をして
  くれる」といったように、顧客の満足度が高まったり、企業に対するイメージを向上させる
  こともあります。

  しかし、実際のクレーム対応の現場では、「顧客からのクレーム」は「怖い物」「嫌な物」
  「面倒な物」などと認識されてしまい、どのように対処したらよいか分からないといった
  悩みを抱える人が多いようです。

  対処方法が分からず不安なままに対応してしまうことで、顧客の怒りを増幅させてしま
  うケースもあります。

  顧客からのクレームは誰しも「怖い」「辛い」と感じるものです。

  だからこそ、日ごろから自分なりのクレームへの対応話法などを整理し、身に付ける
  ことによって少しでも不安を取り除いた状態でクレームに対応することが必要となります。

  そこで、一般的に多いとされる電話によるクレームを例に、顧客の不満足を解消して、
  逆に顧客満足度の向上につながるようなクレーム対応の話法や心構えなどを考えて
  みます。

  ■クレーム発生からゴールまでの流れ

   1.クレーム発生からゴールまでの流れ

     クレーム発生時点では、顧客の不満足度はとても高まっています。

     こうした状況であってもクレームの締めくくり時点では、クレームを言ってきた
     顧客に「ありがとう」と思わせるようにするのが理想的です。

   2.クレームが発生する顧客の3大欲求

     顧客の不満足を解消するためには、顧客の心に寄り添って心を込めて謝罪す
     ることが基本となります。

     「クレームは怖い、面倒」といった認識から、「とにかくお客様が何を言っても謝
     ればいい」と考えてしまいがちです。

     クレーム対応担当者の「謝ればいい」というおざなりな対応は必ず顧客に伝わ
     るため、事態を悪化させてしまうことがあります。

     クレーム対応担当者は、「このお客様は、本当にこのような困った状況に置か 
     れていて、それに対して本当に申し訳ない」と心を込めて謝罪しなければなら
     ないのです。

     ここでまず第一番目に、顧客はどのような心理状態でクレームを言っているの
     かを考えてみましょう。

     クレームを訴える顧客の心理は大別すると主に以下の3通りが考えられます。

     (1)謝罪して欲しい(謝罪欲求)

      前提として、どんなクレームであっても顧客側にとっては何らかの不具合が
      生じており、顧客が自社の商品やサービスに対して「不満足」を感じている
      ことは間違いありません。

      度合いの高い低いは別として謝罪欲求は必ず発生しています。

     (2)困った状況を聞いて欲しい(傾聴・共感・理解欲求)

      例えば「商品が届かない」というクレームで考えた場合、「商品が届かない
      ためにあなたの会社は私に対して迷惑をかけている」という困った状況を
      訴え、それを聞いて欲しい、あるいは困った状況に置かれた心情を理解し
      共感して欲しいという、傾聴・共感・理解欲求が働いています。

     (3)状況を改善して欲しい(改善欲求)

      「私が迷惑しているし、商品が届かないという困った状況をどうにかして欲
      しい」という改善欲求が発生しています。

     大概のクレームにおいては、上記の3通りのすべての心理が働いています。

     これらの欲求に応えることによって不満足を解消し、満足へと変換させていく 
     のが理想的なクレーム対応です。

     3通りの顧客の心理への対応話法のポイントを表にまとめてみます。

  □謝罪欲求に応えるポイント

   1.謝罪欲求に応える3つのポイント

     ・顧客の心情と状況を想像して心から謝罪する

     ・同じ謝罪の言葉を繰り返すのではなく、謝罪の言葉を変化させる

     ・言い訳めいた言い回しは避ける

   2.心からの謝罪

     前述したように、どんなクレームの場合でも「謝罪欲求」が働いています。

     そこで、クレーム対応の第一声は必ず「謝罪の言葉」にするよう心がけます。

     本来であれば「謝罪しなければならない」のではなく、「お客様はこんな困った
     状況にあり、本当に申し訳ない」と思えば、自然と「誠に申し訳ございませんで
     した」という言葉が心から出るはずです。

     そのためには「顧客の心情と状況を想像する」ことが大切です。

     「このお客様は、数ある商品の中から心を躍らせるようにして自社の商品を選
     択し、家から一歩も出ずに到着するのを楽しみに待っていた」と想像すれば、
     「ああ本当に申し訳ないことをした」との気持ちから、「誠に申し訳ございません
     でした」と心から謝罪できるでしょう。

   3.謝罪の言葉の変化

     顧客が何を言っても単純に「誠に申し訳ございませんでした」を繰り返せばい
     いというものではありません。

     繰り返してばかりいると「申し訳ございませんでした、ばかり言っているけど本
     当に悪いと思ってるの?」などということになりかねません。

     そこで、顧客の話、発した言葉などに反応する形で謝罪の言葉を変化させて
     いくとよいでしょう。

     顧客の発した言葉に反応する形で謝罪することによって、、「お客様の困った
     状況は十分理解できます。

     そのような困った状況に陥る要因をつくってしまって本当に申し訳ありません」
     という気持ちが伝わります。

     これは、「困った状況を聞いて欲しい(傾聴・共感・理解欲求)」に応えることに
     もつながります。なお、このような謝罪は、クレーム対応をしている間、繰り返し
     行うとより効果的です。

   4.言い訳無用

     「特別料金を払って時間を指定したのに、商品が時間通りに届かない」というク
     レームに対して、クレーム対応担当者は、つい「いつもは時間通りに到着して
     いるのですが・・・」「出発は時間に間に合うように出たのですが、渋滞に巻き込
     まれまして・・・」などのように言い訳めいた言い回しを使用しがちです。

     これは無意識下にある「クレームに対する逃げの姿勢」から発生しているので
     す。

     そこで「渋滞に遭ったという事実は企業側の言い分であり、顧客には関係のな
     いことである」としっかりと認識することが大切です。

     これは、顧客の視点に立って考えてみれば分かるはずです。

     顧客は現在「この時間に届いて欲しいから特別料金を払って時間を指定した
     のに届かない」という、約束されていた希望がかなえられていない困った状況
     にあるのです。

     「時間に間に合うように出たのですが・・・」などと言い訳をされても、顧客側か
     らみれば困った状況は全く改善されません。

     それどころか、「言い訳するうえに、“だから仕方がない”とでも言いたいの!」
     などと怒りを増幅させてしまいかねません。

     もし仮に時間に間に合うように出たという事実を伝えたいのであれば、「特別
     料金をお支払い頂いているにもかかわらず、時間通りに到着していないことを
     深くお詫び申し上げます。

     そのうえ貴重なお時間を頂戴してしまい大変恐縮ですが、状況のご報告をさ
     せて頂ければ幸いです。

     商品が時間通りに発送されたことは確認しております。

     しかし、未だ○○様のお手元に商品が到着していないということは、途中で道路
     渋滞などに遭っている恐れがございます。

     至急、現在の配達状況を確認した上で折り返しご連絡させて頂きたいのです
     がよろしいでしょうか?」といった言い方を心がけるとよいでしょう。

  □傾聴・共感・理解欲求に応えるポイント

   1.傾聴・共感・理解欲求に応える3つのポイント

      ・顧客の置かれている状況を想像しながら聞き、あいづちを打つ

      ・あいづちに表情を持たせる

      ・脱線しがちな話を本線に戻すよう努める

   2.あいづちは重要

     クレームを訴えてくる顧客の心の中では、困った状況を聞いて欲しい、訴えた
     いという心理が働いています。

     しかし、クレーム対応担当者が「できるだけ早く終わらせたい」といった気持ち
     から、顧客の話をよく聞かずに、あるいは顧客の話をさえぎって「誠に申し訳ご
     ざいませんでした。

     料金はお返ししますので」などと対応してしまい、「なんだその態度は!」と、顧
     客を逆上させてしまうケースがあります。

     これでは顧客の不満足を解消するどころか、顧客不満足度を倍増させてしま
     います。

     前述した通り、クレーム対応の基本は謝罪と傾聴です。

     そこで、前述の謝罪要求への対応の際と同様に、顧客の置かれている困った
     状況を想像しながら顧客の話を聞くように心がけます。

     顧客の話を聞くうえでは、あいづちが非常に重要となります。

     無言になってしまうのはもってのほかで(テクニックの一つとして沈黙を使用す
     るケースもありますが、逆に顧客の怒りを招いてしまう危険性があります)、的
     確なあいづちを打つことによって「お客様の困った状況を聞いています、理解
     しようと努めています、対処方法を考えます」などの気持ちを伝えることができ
     ます。

     あいづちを打つ方法としては、よく「相手の言葉を繰り返す(オウム返し)」など
     が活用されますが、場合によっては「だから、さっきから言ってるじゃないの!」
     といったような顧客の怒りを招くことがあります。

     そこで、前述の謝罪の変化の例のように「相手の言葉を繰り返しつつ謝罪す
     る」という方法が効果的かもしれません。

   3.あいづちに表情を持たせる

     あいづちを打って話を聞く際には、ただ一本調子で「はい」「ええ」「申し訳あり
     ません」「おっしゃる通りです」などを繰り返すのではなく、あいづちに表情を付
     けることが重要です。

     特に電話によるクレームの場合は、顧客に対して担当者の顔が見えません。

     心からの謝罪と、顧客をおもんぱかる気持ちを“声の表情”で伝えなければな
     らないのです。 

     例えば、同じ肯定・うなずきのあいづちでも、声の調子、トーンによって次のよ
     うに使い分けることができます。

   4.脱線の軌道修正

     中には、困った状況について自分の置かれた状況をすべて訴えようと、話の
     内容が本題とは関係のない方向へ脱線してしまう顧客がいます。

     このような場合、枝葉にわたるすべての話を聞いていると余計に話がこじれる
     危険性もあるため、顧客に対して失礼のないよう細心の注意を払いつつ、話を
     本題に戻す軌道修正が必要です。

     また、電話に出た瞬間に「いったいお宅の会社はどうなってるんだ!」などのよ
     うに顧客が激怒しており、クレームの内容の把握すら難しい場合もあります。

     謝罪すると同時に、一刻も早く話の本線を引き出してクレームの内容と顧客の
     状況を把握しなければなりません。

     こういった場合には、例えば、次のような質問方式を活用し、うまく顧客を誘導
     していく方法などがあります。

      ◎オープン質問とクローズ質問
       → オープン質問:一言で返答する質問ではなく、顧客が自分の言葉で
         述べる質問

       →クローズ質問:顧客が「はい」か「いいえ」の一言で返答できる質問

     一般的に、クレーム対応の前半部分では顧客の話を聞く姿勢を示してクレー
     ムの内容を正確に聞き出すために「オープン質問」を活用し、後半部分や脱線
     しつつある状況では「クローズ質問」を活用します。

  □改善欲求に応えるポイント

   1.改善欲求に応える3つのポイント

     ・原因と改善点を明確にする

     ・安請け合いをしない

     ・謝罪と感謝の言葉で締めくくる

   2.原因と改善点

     顧客がクレームを訴えてくる際、「なんでこんなことになったのか原因を教えて
     欲しい」「どのように改善してくれるのかをはっきりさせて欲しい」といったよう
     に、原因の追求や改善策の提示を望むことが多くみられます。

     顧客側の視点に立って考えれば、自分が困った状況に陥った原因を知り、どう
     改善してくれるのか知りたいと思うのは当然のことと理解できます。

     ただし、すぐに原因や最適な改善点が判明しないケースもあるでしょう。

     そのような場合でも「今すぐには分かりかねます」「申し訳ございませんが分か
     りません」などの対応をしていたら、火に油を注ぐ結果となってしまいます。

     同じ「今すぐには分からない状況にある」ことを伝えるにしても、以下のような
     言い方をすることで、顧客に不快感を抱かせないようにすることができます。

     「お客様に不愉快な思いをさせたうえ、お時間をいただいてしまって誠に申し
     訳ございません。

     原因を早急に究明し、本日○時までに改めてご連絡させて頂きたいのですが
     宜しいでしょうか?」

     原因を究明して改善策を講じ、後に折り返す場合は大至急が原則ですが、当
     日中にはどうしても無理な場合には、時間がかかってしまう理由として、「どの
     ような原因究明の方法を実施するか」「どのような改善策を検討するか」などを
     明確にしておくとよいでしょう。 

     この場合、

      顧客の分かる言葉で説明する

     ことに注意しましょう。

     専門用語や業界用語などを多用して顧客を混乱させたり、「専門用語を使って
     煙に巻こうとしている」といった印象を与えてしまってはなりません。

   3.安請け合いは二次的クレームを生む

     「お客様の言うことは絶対」とばかりに、お客様の改善欲求に対して「かしこま
     りました」「すぐそのように対応させて頂きます」などのような対応は、一見正し
     いように感じられますが、一歩間違えれば二次的なクレームを生んでしまいま
     す。

     安易に顧客の改善要求を了承してしまい、「やっぱりできません」などというこ
     とになればさらに問題が深刻化してしまうためです。

     「全額を今すぐ返金して欲しい」などの改善欲求のように、クレーム対応担当
     者の判断だけでは、即答できない場合には、そのことを顧客に理解してもらう
     必要があります。

     ただし、注意しなければならないのは、クレーム対応担当者が即答できないの
     は、「企業側の都合であること」です。

     そのため、顧客への説明の仕方には注意が必要です。

      「○○の件について多大なご迷惑をお掛けしてしまい、お客様のお怒りはご 
      もっともでございます。誠に申し訳ございません。さらに、お時間を頂戴してし
      まい誠に恐縮ですが、もしよろしければ当方の責任者から改めてお詫びさせ
      て頂きたいのですが、3分後に再度ご連絡させて頂いてもよろしいでしょう
      か?」

     のような言い方で、「事態を重く受け止め、責任者が折り返す」という点を顧客
     に伝えます。

     また、返金などの状況の改善策について意思決定権のある者が直接連絡す
     ることで、その場で改善策を詰めることができます。

   4.忘れてはならない謝罪と感謝

     「クレーム時に発生している不満足を解消して顧客満足度を高める」ために忘
     れてはならないことは、謝罪と感謝の言葉で締めくくることです。

     多くの場合、顧客は好きでクレームを訴えてくるわけではありません。

     クレームが発生している時点で「不満足」「不愉快」な気分になっており、さらに
     「クレームを訴える」という自身の行為に対して、無意識のうちに自己嫌悪に
     なっている場合が多いのです。

     そこで、顧客の不満足、不愉快さを少しでも解消し、むしろ「クレームを訴えた 
     がさわやかな気持ちになった」と思ってもらえるような「締めの言葉」が大切で
     す。

      「この度は○○の件で、お客様にご迷惑をお掛けしたばかりか不愉快な思いを
      させてしまい、誠に申し訳ございませんでした。また、私どもの至らない点を
      ご指摘頂いて誠にありがとうございました。今後の販売活動に、お客様から
      のご意見を是非反映させて頂きたいと思います。ありがとうございました」

     この場合、基本的な心構えとして「顧客は貴重な時間を使って自社の問題点
     を指摘してくれた」という認識を持つと、自然と感謝の気持ちが言葉となって表
     れるでしょう。

     これまで、クレームへの対応話法や心構えなどをみてきました。ただし、顧客
     の不満足を解消して顧客満足度の向上へつなげるクレーム対応を継続的に
     実現させていくためには、クレーム対応担当者の対応話法を磨くことだけが重
     要なのではありません。

     個々のクレーム対応担当者が実践しているクレーム対応話法を全社的にナ
     レッジとして蓄積し周知徹底すること、そしてそのクレーム対応方法を定期的
     に見直し改善していくことを忘れてはならないのです。

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

実践に生かす苦情対応のロールプレイング(ロープレ)
 

  ■クレームに対する本音

   「クレームを自社にとって顧客の生の声を聞くチャンスととらえよう」「クレーム
   は自社のファンづくりの第一歩である」「クレームを改善・解消することで自社
   の商品・サービスが向上する」など、これらは、クレームに関してよく言われる
   ことです。

   確かに、わざわざ労力を使ってクレームを言ってくる人は自社の商品・サービス
   (以下「商品」)に関心を持っている顧客であるといえ、彼らのクレームを解消す
   ることができれば、彼らが自社のファンとなる可能性は高いでしょう。

   また、クレームによって、社内にいると慣れて見えなくなった自社商品の改善点
   を知ることができます。

   それを商品に反映することによって、商品の質が向上することもあるでしょう。

   とはいえ、実際にクレームに遭遇したときには、やはり「クレームは怖い、嫌だ、
   避けたい」という思いを抱くことが多いはずです。

   「実際にクレームに対応するときには嫌な思いをする。

   クレームを前向きにとらえることは難しい」「感情的にクレームを言ってくる顧客
   に対して『ご指摘くださってありがとうございます』という感謝の気持ちは、なか
   なか抱くことができない」というのが、クレームに対する本音かもしれません。

  □クレーム対応ができるようになるには

   「怖い、嫌だ、避けたい」というクレームですが、逃げていてはいつまでたっても
   怖いままです。

   このような状態でクレームを受けると、対応方法が分からずに右往左往し、顧
   客に不信感を抱かせてしまうかもしれません。

   場合によっては、さらに大きなトラブルに発展することもあります。

   これを避けるためには、当たり前のことですが、クレーム対応を身に付け、クレ
   ームに正面から取り組むしかありません。

   書籍や研修などでは、クレーム対応について「顧客の立場に立つこと」「顧客の
   話を最後まで聞くこと」といったさまざまな心構えや基本となる姿勢などが紹介
   されています。

   しかし、心構えをどれだけ暗記していても、それだけで実際にクレーム対応がで
   きるようになるわけではありません。

   最も早くクレーム対応ができるようになるには、クレームの現場で場数を踏むこと
   が必要です。

   さまざまなクレームを体験し、その対応を行うことで、自分の中でクレーム対応の
   経験値が増えていきます。

   その結果、自分なりのクレーム対応スタイルができあがり、それが自信となって 
   「怖い、嫌だ、避けたい」という気持ちを克服することができるようになります。

   クレームの現場で場数を踏み、経験値を増やすには、

    ・率先してクレーム対応に取り組む

    ・先輩や同僚からクレーム対応の体験談を積極的に聞く

   といった方法が考えられますが、それだけではなく、日ごろから実践に生かせる訓
   練を行うことが大切です。

   テキストに記載されているノウハウをそのまま暗記するだけではクレーム対応は
   なかなか身に付きません。

   訓練に参加した従業員(以下「参加者」)が自分の頭で考え実際に行動するような
   訓練を行えば、参加者はクレーム対応を体で覚えることができます。

  □ロールプレイング(以下ロープレ)

   図のようにロープレは3人1チームで行い、「クレームを言う顧客」「クレーム対
   応者」「審査員」の役を演じます。

   クレームの対象となる商品、クレームを受ける方法(電話あるいは来社・店など)
   ・社内的に原則として決まっているクレーム対応の落としどころ(原則として必ず
   責任者が顧客を訪問する、など)といった基本的な設定だけ決めておき、クレー
   ムの内容などは顧客役のアドリブに任せます。 

   顧客役は、できるだけ顧客の気持ちになって、これまで実際に受けたことのある
   クレーム内容を踏まえたアドリブを心がけます。

   また、審査員役はやり取りの一部始終を観察しながらクレーム対応役の対応などを
   評価します。             


   3人1チームのロープレは、3回行います。

   1回目のロープレの後、日を改めるか、時間を改め、役割を変更して2回目・3回目
   のロープレを実施します。

   例えば、顧客役(従業員A)・クレーム対応役(従業員B)・審査員(従業員C)
   だった場合は、次に顧客役(従業員C)・クレーム対応役(従業員A)・審査員(従
   業員B)などのように、全員の役を変更します。

  □ロープレにおける登場人物の役割・準備・効果  

   このロープレでは登場人物である3人がそれぞれの役割を演じるため必要な準備
   をし、役割をこなすことによって効果を得ることができます。 

   ●顧客役の役割・準備・効果

    1.顧客役の役割

     (1)できるだけ顧客の視点を持ち、顧客になりきる

      (2)これまでのクレームの実例を反映する

     これが、顧客役が果たす役割です。

     ロープレは、生きたクレーム対応を訓練する場です。

     そのため、顧客役は、顧客になりきってできるだけ実際に受けそうなクレーム
     を言うようにします。

     特に「これまで自分が実際に顧客から受けて困ったクレーム」「自分が言わ
     れたら対応に困ると思うクレーム」を言うとよいでしょう。

     また、顧客になりきって、クレーム対応役の態度や言い回しがよくない場合
     は、怒りを表現してもよいかもしれません。

     意図的にクレーム対応役が対応しやすいようなクレームを言ったり、「同じ
     仕事をしているからクレーム対応役の言い分も分かる」と途中でクレームを
     取り下げたり、自ら雰囲気を和らげるような言動を取るのはやめましょう。

     それではクレーム対応役にとって訓練になりません。

     不満を感じている顧客になりきって、緊張感を演出しながらロールプレイング
     に取り組むことが大切です。

    2.顧客役の準備

     (1)自社商品(自社)の強み・弱みを分析する

     (2)クレームの実例と対応方法を把握する

     これが、役割を果たすために顧客役に求められる準備です。

     自社商品の機能・特徴を理解し、自社の強み・弱みをしっかりと分析しておく
     ことで、「このことについてクレームを言われたら困るだろう」と感じる点、
     あるいは「この点についてクレームを言われたらどのように対応するのだろ
     う?」と疑問に思う点が見えてくるはずです。

     さらに、より実践に生かせる訓練にするためには、これまで自社が受けたク
     レームの実例と対応方法を把握しておき、対応が困難だったクレームや大き
     なトラブルに発展してしまったクレーム、比較的高頻度で受けるクレームな
     どを、ロープレに使うようにしましょう。

    3.顧客役の効果

     これまで紹介してきた役割と準備を行うことで、顧客役はこれまで以上に自社
     商品や自社についての理解を深めることができます。

     同時に、強みや弱みの分析は、今後の商品開発や営業活動に役立つはずで
     す。

     また、クレームの実例と対応方法から、さまざまな顧客の視点を明らかにする
     ことができます。

     自社商品や自社に対する顧客の視点を知ることで、クレームを受けてから対 
     応するのではなく、クレームが発生しないよう顧客の立場に立って商品開発や
     営業活動を見直すことができるでしょう。

   ●クレーム対応役の役割・準備・効果

    1.クレーム対応役の役割

     (1)緊張感を持ったクレーム対応を心がける

     (2)できるだけ自分の言葉での対応を心がける

     これが、クレーム対応役が果たす役割です。

     実際のクレーム対応を想定して行うロープレであるため、緊張感が不可欠で
     す。

     毎日顔を合わせている同僚が顧客役だからといって、気を抜いてはなりませ
     ん。

     「今の間違えた、もう一回やり直し」などは、実際のクレーム対応の現場では
     あり得ません。

     実際の場面では細心の注意を払って対応に臨むはずです。

     そこで、ロープレが一度スタートしたら、緊張感を保って最後までやり遂げる
     よう、自分で自分に言い聞かせましょう。

     ただし一方で、ロールプレイングは、実際のクレーム対応とは違って「自分の
     クレーム対応力を試すチャンスでもある」のです。

     もちろん、クレーム対応マニュアルを把握することは不可欠です。

     しかし、マニュアル通りに対応するだけではなく、顧客役のアドリブに対して
     できるだけ自分で考え、自分の言葉で対応するよう心がけてみましょう。

     これによって、とっさに出てしまう自分のよくない口ぐせや、話しやすい言い
     回しなどが、自分で認識できるはずです。

    2.クレーム対応役の準備

     (1)クリアしたい目標を設定する

     (2)自分が行ってきたクレーム対応を復習する

     これが、役割を果たすために顧客役に求められる準備です。

     社内の従業員同士で行うロールプレイングでは、緊張感を持って臨むのが難
     しい場合があるはずです。

     どうしても実践と全く同じ気持ちにはなれないかもしれません。

     そこで、緊張感を保ち集中してロールプレイングに取り組むために、これまで
     の自分のクレーム対応を振り返り、クリアしたい目標を設定しておきます。

     例えば、どうしても謝罪や説明が回りくどくなり、顧客に「結局何が言いたい
     の?」と言われた経験がある場合は、「顧客が理解しやすい明確な説明で安 
     心感を与えること」を目標にしてみるとよいでしょう。

     また、クレーム対応では、まず第一に顧客の状況把握が重要です。

     そこで、「どんなに怒っている顧客からでも焦らず正確に状況を聞きだすこ
     と」を目標にするなども考えられます。

    3.クレーム対応役の効果

     クレーム対応役が得られる効果は、第一に生きたクレーム対応を学ぶことが
     できることです。

     実際に自分の頭と言葉を使って行う訓練は、頭で理解するだけではなく体で
     覚えることができます。

     また、ロールプレイングの中で自分で設定した目標をクリアすれば、自信にも
     つながります。

     こうして自分のクレーム対応スタイルが構築されていきます。

   ●審査員の役割・準備・効果

    1.審査員の役割

     (1)クレーム対応役の対応を評価する

     (2)ロールプレイング全体を評価する

     これが、審査員が果たす役割です。

     審査員はロールプレイングに参加してやり取りをするのではなく、ロールプレ
     イングを見て評価するという立場です。

     顧客役は顧客の気持ちになって、クレーム対応役の対応や印象について判断
     することができますが、客観的にクレーム対応役の対応を評価するのが難し
     い場合があります。

     そこで、審査員がクレーム対応役の対応を客観的に評価します。

     同時に、審査員は、ロープレ全体を評価します。

     例えば、クレーム対応が一段落するまでの時間を計ったり、やり取りを聞いて
     いてよいと思った点・よくないと思った点などをチェックし、ロールプレイン
     グ後に顧客役・クレーム対応役にフィードバックします。

    2.審査員の準備

     (1)クレーム対応のチェックポイントを挙げる

     (2)クレーム対応の成功例・失敗例を整理する

     これが、役割を果たすために審査員に求められる準備です。

     審査員は、これまでのクレーム対応の成功例・失敗例を学び、「クレーム対応
     の中ではこれが重要だ」と思う点を自分の中で決めておきます。

     なお、初めのうちは、どれがクレーム対応の成功例で、どれが失敗例かを判
     断するのが難しいかもしれません。

     その場合、顧客の反応を重視し、

      クレーム対応の成功例:顧客が謝罪と改善策の提案を受け入れてくれた

      クレーム対応の失敗例:顧客が不快感を増し、謝罪や改善策の提案を
      拒否した

     などのように定義付けておくとよいかもしれません。

     「クレーム対応の中ではこれが重要だ」と決めた点に基づいて、ロープレにお
     けるクレーム対応のチェックポイントを事前に挙げておきましょう。

     例えば、「まず、顧客の話をよく聞いてより早く状況把握するのが重要だ」と
     決めたとすれば、クレーム対応のチェックポイントとしては、「顧客の話の腰
     を折っていないか」「状況把握にどれくらい時間がかかっているか」「顧客の
     話の内容を正確に理解しているか」などの点が考えられます。

    3.審査員の効果

     審査員は、ロールプレイングを通して「クレーム対応の重要なポイントは何
     か」を考えるようになります。

     また、「クレーム対応役の○○という発言に対して顧客役は少し態度が険しく
     なった。

     本当は△△のように言えばよかったのではないか」「今のロールプレイングで
     は出てこなかったが、ほかに●●のような内容の改善策を提案すればよいので
     はないか」などのように、さらによい内容のクレーム対応を考えることができ
     ます。

     こうした審査員の意見が反映されれば、全体的にクレーム対応のレベルが上
     がっていくでしょう。

  □ロールプレイングを終えて

   実践に生かせるロールプレイングによるクレーム対応の訓練が終わったら、顧
   客役・クレーム対応役・審査員全員が参加してミーティングを行います。 

   このとき、ロールプレイングの感想のほか、それぞれの登場人物が次の点について
   発表するようにします。

    1.顧客役(クレームの選定理由)

      今回のロールプレイングでそのクレームを言った理由を発表します。

      顧客役は、自社商品(自社)について分析を行い、これまでのクレームの実
      例と対応方法を把握した上で、顧客役として言うクレームを決めています。

      クレームを選んだ理由を発表すると、顧客役が準備した「自社商品(自社)
      への分析」「これまでのクレームの実例と対応方法の中で注目すべき点」
      を、ほかの参加者が知ることができます。

    2.クレーム対応役(設定した目標と達成度合い)

      今回のロールプレイングでクリアしたいと設定していた目標を発表します。

      クレーム対応役は、これまでの自分のクレーム対応を振り返った上で目標を
      設定しています。

      この目標はクレーム対応の実体験に基づいているため、ほかの参加者が参
      考にすることができます。

      また、達成度合いを発表すると、クレーム対応役にとってロープレがどの程
      度役に立ったかが分かります。

      今後、ロールプレイングを見直す際に参考にすることができます。

    3.審査員(チェックポイントとその選定理由)

      今回のロールプレイングで挙げていたチェックポイントと、それを選んだ理
      由を発表します。

      審査員は、これまでのクレーム対応の成功例・失敗例を学び、自分の中で 
      「クレーム対応の中ではこれが重要だ」という点を決めた上で、チェック
      ポイントを挙げています。

      チェックポイントを選んだ理由を発表すると、ほかの参加者は、審査員によ
      る成功例・失敗例の分析とクレーム対応の重要なポイントを知ることができ
      ます。

      こうしたミーティングを通じて、顧客役・クレーム対応役・審査員が互いの
      クレーム対応についての考え方・学んできたこと・姿勢などを共有する
      ことができます。

      ほかの参加者の考え方などを知り、それに対して再び自分の考えを整理
      することで、新しいクレーム対応の方法が見えてくるかもしれません。

      また、ロールプレイングによるクレーム対応の訓練は、参加者全員が何らか
      の役割を持ち、自分の頭を使って考え、参加するものです。

      そのため、誰も傍観者になることなく、全員でクレーム対応について考える
      ことになります。

      この「参加者全員がクレーム対応に真剣に取り組む」ことが、ロールプレイ
      ングによるクレーム対応の訓練で得られる最も大きな効果といえるでしょ
      う。

 

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クレーム.jpg

クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

電話による苦情(クレーム)への対応
 

  苦情(クレーム)はさまざまな形で寄せられますが、電話によるものが少なくありません。

  苦情(クレーム)処理は初動が重要なので、苦情(クレーム)を受けた電話担当者は、
  相手の怒りを静めながら、正確に状況を把握することが大切です。

  苦情(クレーム)の電話を受けたら、まずは誠意をもって謝罪します。

  時には、相手の発言が紳士的でないこともありますが、そのような時でも感情的になら
  ず、誠意を持って謝罪します。

  こちらがどんな気持ちで謝罪しているのかは、不思議と相手に伝わるものです。

  マニュアルを棒読みしたような感情のこもっていない謝罪は、相手に不快感を与えるこ
  ともあるので注意が必要です。

  相手の話が長引いても途中で相手の話をさえぎってはいけません。人は誰かに話すこ
  とでストレスを発散するので、長く話せばそれだけ怒りも静まってきます。

  また、話を最後まで聞かなければ、相手が何に対して不満を持っているのかが分かり
  ません。

  こうしたことがないように、相手の話を最後まで聞くことを徹底しましょう。 

  相手の話を聞き終えた後、今度は電話担当者のほうから質問をします。

  これは正確に状況を把握するための質問なので、事実関係を聞き出してメモにまとめ
  ます。

  その際、電話担当者は感情のある人間なので、相手に嫌悪感を抱いたり、逆に強く
  共感することもあるでしょう。

  しかし、電話担当者はそうした感情から私見を
  述べてはなりません。

  例えば、電話担当者が相手に共感し「全くその通
  りです。私見ですが、弊社の姿勢に問題があると
  思います」などと発言してしまったら大きな問題で
  す。

  電話担当者はあくまで私見を述べたつもりでも、
  相手は企業の総意として認識します。

  また、相手が悪質な場合、電話担当者の私見が
  インターネットなどを通じて世間に公開されるなど、
  企業イメージを損ないかねません。
   
  □事前準備と最低限のマナー

   多くの場合は電話受け付けがクレーム処理の始まりとなります。

   そのため、企業は電話担当者に電話応対の基本マナーを徹底的に教育しなけれ
   ばなりません。

   ○電話応対の基本は、相手に不快感を与えないこと

    クレーム処理の電話応対で求められる基本マナーは

     ・社名と氏名を名乗ること

     ・常にハキハキと話すこと

     ・「はっ?」「えっ?」といった聞き返し方はしないこと

    などです。

    つまり、相手に不快感を与えるような電話応対はしてはならないということです。

    クレーム処理に真摯に取り組んでいる企業は、既に担当者に教育済みのこと
    と思いますが、再度、チェックしてみるとよいでしょう。


   ○聞き取りにくい携帯電話からのクレームの応対

    携帯電話でクレームを寄せてくる人も増えてきています。

    電波の状態によっては、声が小さく内容が聞き取りにくいことがあります。

    しかし、電話担当者のほうから「公衆電話でかけ直してください」とはいえません。

    また、相手が出先であれば担当者から別の電話に折り返し連絡することもでき
    ません。

    こうした場合、多くの電話担当者は自分の話を確実に伝えるために大きな声で
    話します。

    これはこれで、正しい対応ですが、逆の考え方もあります。

    具体的には、

    電話担当者が故意に声を小さくして、相手方にも話が聞き取りにくい状況を体感
    してもらうのです。

    相手が携帯電話の電波が良好でないことを知り、公衆電話などからかけ直して
    くれれば成功です。

    ポイントは、相手が主体的に別の電話でかけ直す行動に出るように誘導すること
    なのです。

   ○電話だからといって、油断はできない

    電話担当者が電話口で「タバコを吸う」「お茶を飲む」などの行動をしてしまうこと
    があります。

    電話では相手の表情や仕草を目で確認できません。

    そのため、電話担当者が油断してタバコを吸ってしまうことがあるのです。

    しかし、相手は、電話担当者がタバコを吸っていることをライターで火を付ける
    音、普段とは異なる息遣いから察していることが少なくありません。

    これは大変失礼なことなので、このようなことがないようにしなければなりません。

  ■ 対策

  □処理案を提示する 

   正確に状況を把握した後は、相手に具体的なクレーム処理案を提示します。

   初回の電話で処理案を提示することはスピーディーなクレーム処理として好ましい
   といえます。

   ただし、苦情(クレーム)はすぐに処理できる簡単なものばかりではありません。

   また、電話担当者によって対応が異なることも問題です。

   そのため、電話担当者の裁量で処理案を提示できるクレームは、あらかじめマニ
   ュアルで定めておき、それ以外のものについては必ず電話を切った後に、改めて
   処理案を提示するようにしましょう。

   難しいクレームを処理するために必要な時間をかけることは相手に対して失礼では
   ありません。

   また、一度電話を切る際のポイントは以下の3つです。

     1.相手にとって最善の対策を検討するために時間をもらう旨を伝える

     2.次に電話をする明確な時期を伝える

     3.必ず、こちらから連絡する旨を伝える

   具体的には、

    「かしこまりました。お客様のお話は◇◇の件ですね。本件につきましては、最
    善の対応を検討し、○○日までに弊社のほうからご連絡させていただきます」など
    と伝えます。

   相手から「クレーム処理の担当者なのに、そんなことも判断できないのか。

   私が話をした意味がないじゃないか」といわれるかもしれませんが、それでも必ず
   電話を切ります。 

  □処理案を実行すること 

   相手に提示した処理案を確実に実行します。1分でも遅れてはいけません。

   苦情(クレーム)の内容にもよるものの、処理案が実行されるころには、「処理 案を
   確実に実行してくれるのであれば、今回のことは大目に見よう」と考える人が少なく
   ありません。

   ここでさらにミスをしてしまうと事態は相当に悪化します。

   度重なる失態には次はありません。

  □社内体制の再チェック 

   苦情(クレーム)は、社内体制に何らかの問題があることをあなたに教えてくれます。

   各段階での担当者および責任者、業務の流れについてもう一度チェックし直し、
   問題があれば早急に改善します。

   苦情(クレーム)後のチェックをせずに、いつまでも同じ失敗を繰り返している  あな
   たは、今すぐにその姿勢を改めるべきです。

 

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電話で苦情1.jpg

クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

苦情対応のスキルを向上

苦情対応のスキルを向上


  ■苦情対応力を高めることの重要性

   苦情というと、どうしても「悪いもの」「避けたいもの」というイメージがあり、
   苦
情対応に対して、消極的な姿勢をとってしまうこともあります。

   しかし、企業による不祥事や製品事故などが相次ぎ、企業に対する顧客の目がますます
   厳しくなっている現在、
苦情に対する企業の姿勢についても顧客は大きな関心を
   寄せています。


   そのため、苦情対応をおろそかにすると、企業イメージの低下、顧客喪失など企業経営に

   大きな影響を及ぼす事態になりかねません。

   また、苦情の背景には、企業経営を脅かすような重大な問題が潜んでいることも
   あります。


   こうした類の苦情を、初期の段階で察知・分析することなく見過ごしてしまうと、

   企業として取り返しのつかない事態に陥るケースもあります。
   このように考えると、
苦情対応は企業にとって重要な経営課題であり、組織全体で
    取り組むべきもの
と認識し、適切に対応していくことが大切となります。

  □増加する苦情(クレーム)

   苦情を受けた、それはチャンスでもあるが、苦情に対応する慣れがあるのとないの
   では、受けるものの心理が表情や言葉となって表面に現れます。

   すると、同じ会話をしても、怒られるときと許されるときがあるのです。

   さて、そういった場面で、自分がどんな表情をしているのか、また、声のトーンでどんな
   印象を与えているのか、その状況は自分では見えません。

   プロの歌手は事前に十分に発声練習をして舞台にあがります。

   同様に、苦情であれ、説明であれ、報告であれ、自分の表情作りをして臨むだけで
   大きな差が生じるのです。

   あなたは、最近怒る人が多くなった、自分の職場へ文句を言われることが増え
   た……という実感はありませんか? 

   誰もがストレスを抱えているこの時代、ちょっとしたことでイライラしたり、怒ったり 
   する人が、急速に増えています。

   その結果、思い違いや言葉の行き違いから、トラブルになったり、さらには苦情に発展
   したりするケースも目立ってきています。

   「そんなことが!?」といった、以前なら問題にもならなかったささいなことが、今では
   もめごとの原因になっているのです。

  □お客様対応で大切な言葉の選び方
   もとからのクレーマーなどいない。

   はじめからクレーマーとしてやってくる人はただの1人もいません。

   もっといえば、彼らは不平や不満を申し立てる「正当な理由」を持っているのです。

   ところが、対応する人間がそれを理解できず、誤った対応や身構えてしまうのです。

   最初から相手をクレーマーとして見てしまえば、どんな対応になるかは想像がつくで
   しょう。

   表面上はなんとかとりつくろっても、心理的には防御意識が先に立ちます。

   そこで、たとえば、相手の言っていることを疑ってかかる、といった姿勢が伝わって
   しまうのです。

   また、心理は言葉にも現れますから、相手の気に障るような受け応えをしてしまう、
   ということにもなるわけです。

   そうなったら、相手の感情も上がってしまいます。

   正当な理由もどこかにいってしまい、感情を一気にこちらにぶつけてくる、という流れ
   になります。

   これがクレーマーの実情です。

   では、クレーマーとなるきっかけはどこにあるのでしょう。

   対応の仕方で何より大事なのは言葉です。

   なにげなく言ってしまったひと言が、相手をクレーマーにするのです。

   苦情になるかならないか、クレーマーをつくるかつくらないかば、言葉の選び方次第、
   使い方次第なのです。

  □「クレーマー」にさせない話し方のポイント
   どんなに怒ったり、感情をむき出しにしたりするような相手でも、こちらの受け応え次第
   でガラリと変わります。

   たとえば、販売した商品に関して、相手が「不具合がある」と言ってきたケースです。

   売り手としては、まず、「新品なんだから、そんなことあるはずないじゃないか。使い方
   が間違っているんじゃないの?」と思うのがふつうでしょう。

   そこで、「お客様、そんなことはないはずですが‥‥‥」と対応します。

   気持ちをそのまま言葉にした率直な対応ですが、その“率直”がいけません。

   相手は何も理由もなく、文句を言いにきているわけではないのです。

   実際、使ってみて不具合を感じたから、そのことを訴えているだけです。

   そこで、いきなり“否定”の言葉が返ってきたら、誰だって頭に血がのぼります。

   「そんなはずはない? 実際、そんなはずがあるから、ここにきてるんだ! こっち
   は客だぞ。その言い方はなんだ!」ということになってもなんの不思議もありませ
   ん。

   対応する側がクレーマーをつくっている、典型的なケースといってよいでしょう。

   一方、こんな受け応えはどうでしょうか。

   「それはお困りですね。ご足労をおかけして申し訳ございません。それでは使い方を、
   一度、ご説明させていただいてもよろしいでしょうか」

   相手の言うことを受け入れ、“肯定”しています。

   しかも、「お困りですね」と相手の思いに共感する言葉から始めています。

   これなら、相手は説明をじっくり聞いて納得し、「そうか!やっぱり、一から説明
   してもらってよかった。よくわかったよ。ありがとう」と、感謝の気持ちが強くなり、
   クレーマーにはならないでしょう。

   お客様への対応には、最初の言葉、一言がきわめて重要です。

   “肯定”と“共感”が最大のポイントです。

   「おっしゃることはよくわかります。それではお話をちゃんと伺わせていただきま
   す」という姿勢が伝われば、血相を変えてまくし立てている相手も、一瞬にして、ガ
   ラリと変わるはずです。

  □言葉のウラに隠れている真意を汲み取る
   もうひとつ、対応で心がけなければいけないことがあります。

   それは、言葉のウラにある相手の心理あるいは真意を読みとることです。

   しかし、これはなかなか難しいのです。

   相手から激しい言葉を浴びせかけられると、気後れしたり、萎縮したり、あるいは、
   売り手側も感情的になったり、ということになりがちです。

   それで冷静さを失い、言葉を表面的にしか受けとれなくなってしまうのです。

   その結果、相手のペースに引き込まれ、言葉の応酬といういちばんまずい展開になる
   わけです。

   「そうはおっしゃいますけど…」、「お言葉を返すようですが…」

   相手に“カチン”ときたときに、こういった言葉が、つい口からでてしまう、言葉の代表格
   でしょうか。

   しかし、これは禁句です。

   相手の怒りの火に油を注ぐようなもので、問題はこじれるばかりとなるでしょう。

   言葉のウラに隠れている真意、本音をくみ取らなければなりません。

  □相手の話をじっくり聞いて、本音を読み取る
   このケースのように、対応している相手が、必ず、本音を言葉にしてくれているとは
   限りません。

   言葉で語られない本音を見抜くには、やはり、かなりの経験を積むことが必要だと思い
   ますが、ヒントはあります。

   ひとつは、相手が訴えていることが、「なぜ、こんなことで文句を…」というような、
   ささいな問題だというケース。

   これはそのウラに何か隠れていると思ったほうがよいでしょう。

   たとえば、「注文した料理がまだこない。いつまで待たせるんだ!」といった場合。

   それほど時間がかかっているわけではないのに、そんなクレームがあったときなど
   は、自分より後に入店した人の料理が先に運ばれてきたことに怒っている、といった
   ことも考えられます。

   もちろん、料理によって調理時間が違いますから、しかたがないことなのですが、ここ
   はその意を察した一言があると、相手の気持ちはスッと収まるものです。

   「申し訳ございません。調理時間が違いますので、あちらのお客様に先にお出し
   いたしました。お客様のご注文の品はもう3分ほどでお出しできます」

   いかがですか? 「すみません。もう少しで出まーす」という対応との違いは明らか
   だと思いませんか?

   次のヒントは、声のトーンや大きさです。

   声はときによって、言葉そのものより、その人の心のうちを明確にあらわすことがあり
   ます。

   トーンが変わったり、声が大きくなったりしたときは、「あっ、ここが一番に言いたい
   ことかもしれない」という感性のアンテナを働かせましょう。

   何度も繰り返して相手がふれるポイントも本音を知るヒントになります。

   「こんなこと言いたいわけじゃないんだけど……」、 「そこまで言うつもりはないけ
   ど…」

   こんな前ふりで同じことを繰り返すようだったら、ほぼ間違いなく、その“言いたいわけ
   じゃないこと”“言うつもりはないこと”こそが本音です。

   本音がわかったら、お互いが納得できる着地点を見出しやすくなります。

   ただし、あせってはいけません。

   相手の話は最後までじっくり聞く。

   この姿勢を崩さないことです。

   「よし、本音が見えた!」と意気込みすぎ、先を急いで、それに沿った提案をしたら、
   相手には、まだ言いたいことがあった、というケースも少なくないからです。

   「その件はそれでよいけど、もうひとつ言いたいことがあって……。

   これについてはどう考えるのかな」 相手からこんな言葉がでるようでは、対話を
   まとめようとしたことが、完全な勇み足になります。

   話を聞きながら、こちらが受け取った本音が正しいのかどうかを確認してください。

   「これで十分お気持ちをお話しいただけましたか? 何かほかにございましたら、
   どうぞ、おっしゃってください」

   そんな一言で、相手が思いのたけをすべて語り尽くしたか、確認するのもよいのでは
   ないでしょうか。

   こちらの提案なり、回答なり、を示すのはそのあとです。

   本音を読み取ったあとなら、できるかぎり相手の意向を汲む形での対応ができるはず
   です。

   それで、相手も「この人は私の気持ちをわかってくれた」と感じて、気持ちも一気に
   ほぐれます。

   お互いに打ち解けて信頼感が生まれる、といってもよいでしょう。

   最後には、「本当にご迷惑をおかけしました。今後はこのようなことがないように
   心がけてまいります。今日は貴重なご意見をありがとうございました」と感謝で締
   めくくれば、万全の対応となります。

   ある調査では、2割の人がつねにいらだちを抱えている、という結果が出ています。

   だからこそ、「相手の感情を上手に受け止める技術」「相手の心理を読みながら対話を
   進める技術」が求められるのです。

   この技術は対顧客だけでなく、あらゆるビジネスシーンで生かせます。

   なぜなら、もっとも厳しい対応のシチュエーション、怒りを買いそうな対話の局面は、
   ほかならぬ苦情に対応するときだからです。

   苦情に対応する技術を身に付けたら、どんな状況も“恐るるに足らず”なのです。

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クレーム(苦情)対応とマニュアル作成

顧客タイプ別クレーム対応
 

  ■クレーム対応に必要な視点

   1.重要性を増すクレーム対応

     すでに、顧客満足(CS)の考え方は世間一般に広く浸透しています。

     そのため、企業に対する顧客の期待は大きくなり、企業に対する顧客の目は
     一層厳しさを増しています。

     企業活動をするうえで避けられない「クレーム対応」においても顧客の目は厳
     しくなっており、クレームに対する企業の姿勢はとても重要視されています。

     クレームへの対応が悪いと、顧客はその企業から離れていくだけでなく、「あ 
     の企業の対応は悪い」などと、悪い評判(口コミ)を広める危険性があります。

     悪い口コミは、好ましい口コミよりも広がりやすいことはすでにご承知のことで
     しょう。

     特に近年では、インターネットの普及により、口コミの伝播範囲は広がってお
     り、その影響は無視できません。

     そのため、企業におけるクレーム対応の重要性は日に日に増しているといえ
     ます。

     各企業は顧客からのクレームに適切な対応ができるようなマニュアルを策定
     し、実践しているところもありますが、それにもかかわらずクレーム対応に関す
     るトラブルは後を絶たないのが実情です。

     このように、クレーム対応がうまくいかない場合には、

      ・マニュアルがクレーム対応の基本に沿って作られているか

      ・マニュアルに頼りすぎて、画一的な対応になっていないか

     という点を再確認する必要があります。

   2.顧客の視点に立ってマニュアルの内容を再確認する

     クレーム対応の基本は、顧客の視点に立つことです。

     そのため、マニュアルの内容も顧客の視点に立ったものでなければなりません。

     一般的には、クレーム対応は、次のような流れで行われます。

     マニュアルの内容は、この流れを踏まえたうえで、「顧客の視点に立つ」という
     クレーム対応の基本が含まれていなければなりません。

     クレーム発生 ⇒ クレーム内容とその原因の把握 ⇒ クレーム対応策の検討
     ⇒ 原因の説明と改善案の提示 ⇒ 対応の実施⇒社内へのフィードバック

     ●「顧客の視点に立った対応」とは

      ○クレーム発生時

       ・迅速に対応しているか

       ・対応者を理由なく変えたり、顧客をたらい回しにしていないか

      ○クレーム内容とその原因の把握

       ・クレーム内容を的確に把握するため、顧客の立場で話を聞いているか

      ○クレーム対応策の検討

       ・顧客の意向をくみ取った対応策を検討しているか

      ○原因の説明と改善案の提示

       ・混乱や不安を招くようなあいまいな表現や態度はとっていないか

       ・「対応できること」と「対応できないこと」を区別し、その理由を提示して
        いるか

      ○対応の実施

       ・対応者が最後まで責任を持って対応しているか

      ○社内へのフィードバック

       ・データベース化など社内にクレーム情報をフィードバックしているか

       ・経営層および従業員間でクレーム情報の共有化が図られているか

    すでにマニュアルが整備されている場合は、上記視点でマニュアルが作成され
    ているか再確認してみます。

   3.マニュアルだけの画一的な対応になっていないか

     次に確認する点としては、「マニュアルに頼りすぎていないか」ということです。

     たとえ、マニュアルがよくできていても、「マニュアルだけで対応する」という点
     がクレーム対応の妨げになっていることがあるのです。

     普段の企業活動を考えてみましょう。

     顧客に対して営業や接客を行う際、マニュアルだけで対応しているでしょうか。

     通常は、マニュアルを踏まえながら、場面や状況に応じた対応を行っているは
     ずです。

     そう考えると、クレーム対応に限ってマニュアルだけで対応するというのは不
     自然です。

     クレーム対応も、顧客に応じて対応を変える、個客対応が必要なのです。

     顧客のタイプや考え方によって、クレーム対応に求められるものは異なるた 
     め、こうした個客対応という姿勢がクレーム対応においても欠かせないのです。

     そこで以下では、個客対応という視点から、顧客のタイプ別にそれぞれ求めら
     れるクレーム対応の考え方についてみてみましょう。

  □顧客タイプ別にみるクレーム対応

   1.顧客のタイプ

     企業にクレームをいう顧客のタイプには、

     (1)感情表現型

       「感情表現型」とは、喜怒哀楽の感情を前面に出してクレームを言うタイプ
       です。

       感情表現型には、大声で怒鳴るなど感情を前面に出すタイプや、社長や役
       職者の謝罪を強く求めるタイプがみられます。

       ①怒りを前面に出すタイプ

        ○タイプの特徴と顧客の欲求

         「どうなっているんだ!」「すぐに対応しろ!」などのように、語気が
         荒く、怒った状態でクレームを言うタイプです。

         このタイプの顧客は感情的にクレームを言うため、対応する側は緊張、
         委縮してしまうことも少なくありません。

         しかし、対応者が冷静でなければ、クレームを適切に対応することは難
         しくなります。

         顧客がなぜ感情的になっているのか、ということに気を配れば、緊張し
         たり委縮したりすることなく落ち着いて対応することができるでしょう。

         こうした顧客は、

          ・自分は不当な扱いを受けた

          ・不満をぶつけたい、分かって欲しい

         という気持ちが強いと考えられます。

         そのため、対応者はこうした顧客の気持ちをくみ取ったうえで、クレーム
         対応に当たる必要があります。

        ○対応する際の心構え

         このタイプの顧客のクレーム対応に当たっては、まず、冷静に話ができ
         る雰囲気をつくることに努めましょう。

         感情的になっている相手にマニュアル通りの対応をすれば、かえって不 
         満を増大させかねず、落ち着いて話し合うことは期待できないからです。

         ただし、相手を落ち着かせようと、はじめから「落ち着いて話し合いま
         しょう」などと言葉にするのは逆効果でしかありません。

         ここで大切なことは、顧客の気持ちを尊重し、相手の気持ちに共感する
         ことです。

         「おっしゃることはよく分かります。お客様のお話を詳しく伺いたいので、
         聞かせていただけますか」など相手の気持ちを尊重して話を切り出せ
         ば、顧客は「自分の話を正面から聞いてくれる」という気持ちになり、落
         ち着いて話をする気持ちになるでしょう。

         さらには、「対応者を替える」「場所を替える」などその場の雰囲気を変
         えることも、冷静に話し合いができる状態にするには効果的です。

         例えば、上司に取り次ぐ、応接室に移動するなど場の雰囲気を変えるこ
         とで、顧客の気持ちが変化することがあります。

         ただし、何の説明もなく対応者が変わったり場所を移動したりすると、顧
         客に不信感を抱かせ、冷静な話し合いができなくなってしまう可能性が
         あります。

         そのため、「責任者である上司と一緒にお話を伺います」「応接室にご案 
         内いたしますので、そちらでゆっくりとお話を伺います」など、対応者や 
         場所を替える理由をきちんと説明しましょう。

       ②「上を出せ」と言うタイプ 

        ○タイプの特徴と顧客の欲求

         対応者が謝罪をしても「上司に代わってくれ」「社長じゃないと話になら
         ない」と役職者による謝罪を求めるタイプです。

         こうした顧客は、自分を大切な客と認めて欲しい、扱って欲しいと考える
         傾向が強いといえます。

        ○対応する際の心構え

         こうした場合、実際に上司や社長が出て謝罪するケースがあるかもしれ
         ません。

         確かに、そうすることで、顧客の自尊心は満たされるかもしれません。

         しかし、クレーム対応で役職者や、まして社長が頻繁に出て謝罪するの
         は、対応方法としてはあまり好ましくありません。

         こうした場合には、対応者を明確にして最後まで責任を持って対応する
         ことが重要です。

         対応者は「私はこの会社でお客様からのお話を受ける責任者であり、あ
         なたのお話は私が責任を持ってお聞きします」と顧客に明示することが
         必要です。

         たとえ役職がなくても、「責任者」が誠実な対応を行えば、顧客の自尊心
         は満たされ、必ずしも上司や社長が出てくる必要はなくなるのです。

     (2)理論型 

       「理論型」とは、一言でいえば「頭のいいタイプ」といえるでしょう。

       感情的な言動ではなく、自分の主張を冷静に話し、もし企業側の話につじ 
       つまが合わない部分や納得できない部分があれば、追及をします。

       理論型には、理路整然と話をするタイプや、法律などを基に主張するタイプ 
       がみられます。

       ①筋道を立てて理路整然と話すタイプ

        ○タイプの特徴と顧客の欲求

         このタイプの顧客は、感情的な表現はせず理論的に話を進めます。

         対応者の話につじつまが合わないところがあれば、指摘したうえで理由
         を求めます。

         場合によっては、「こういう対応をして欲しい」と企業の対応方法まで指
         定することもあります。

         こうした顧客は、

          ・自分の話は正しい

         と考えている傾向が強いと考えられます。

         また、

          ・(自分の話が正しいから)企業は自分の意見に従うべきだ

         という気持ちが強いともいえます。

        ○対応する際の心構え

         こうした顧客に対応する場合、特に注意すべきことは、

          ・顧客と議論をしない

          ・あやふやな態度を取らない

         ということです。

         顧客と議論したり、ましてや顧客を言い負かすことは、決してクレームの 
         解決にはつながりません。

         顧客は「自分の話は正しい」という気持ちで話しているため、対応者が
         積極的に議論をしようとすればするほどお互いの溝を深める結果となる
         危険があります。

         そのため、対応者はお互いの溝をつくらないように対応しなければなり
         ません。

         具体的には、

         顧客と「協力して」クレームを解決する方法を見いだす姿勢で対応する
         必要があります。

         例えば、顧客と意見が食い違ったとしても「私どもではそのようには判断
         いたしません」などと突き放した言い方や、断定的な言い方は避けるべ
         きです。

         この場合は、

          「お客様のおっしゃることはごもっともです。
          お客様と同様のご意見をいただくこともございます。
          私どもでは、○○と考えておりますが、いかがでしょうか」

         と顧客の意見を尊重したうえで、協力して解決する姿勢をみせることが
         必要です。

         「協力してクレームを解決する」という姿勢が顧客に伝われば、お互い
         の意見を尊重しながら話し合いをスムーズに進めることができるはずです。

         また、クレーム対応の基本として、「確か○○だと思います」などのあやふ
         やな発言は避ける必要があります。

         理路整然と話すタイプの場合には特に注意を払わなければなりません。

         せっかく顧客が「協力して解決しよう」という気持ちを持っていても、こう
         したあやふやな対応は顧客の不信感につながります。

         対応者は「すぐに答えられるもの」と「すぐには答えられないもの」を明確
         にし、「すぐには答えられないもの」については、確認したうえで顧客に
         回答するという姿勢で対応することが必要です。

       ②法律や制度を背景にクレームを言うタイプ

        ○タイプの特徴と顧客の欲求

         「○○に違反していますよ」「○○に訴えます」などと法律や制度を挙げて
         クレームを言うタイプです。

         こうした顧客は、

          ・(○○によれば)私は正しい

          ・(○○によれば)企業が間違っているから私の意見に従うべきだ

         と考える傾向が強いといえます。

        ○対応する際の心構え

         理路整然と話すタイプと同じように「顧客の話に反論しない」「あやふや
         な態度は取らない」という点に注意を払う必要がありますが、特に「あや
         ふやな態度を取らない」という点で注意をする必要があります。

         こうしたタイプの顧客は、企業の対応に不備があれば、法律などに訴え
         ることが十分に考えられるため、自社の対応や回答に不明瞭な点があ
         れば、その点をしっかりと確認したうえで顧客に伝える必要があります。

     (3)消極型

       「消極型」とは、企業と積極的にコンタクトを取ろうとせず、クレームをあまり
       言わないタイプのことです。

       消極型には、積極的にクレームを言わないものの、明らかに不利益を被っ
       た場合にのみクレームを言うタイプがみられます。

       ①積極的にはクレームを言わないが、場合によってはクレームを言うタイプ

        ○タイプの特徴と顧客の欲求

         このタイプは普段はクレームを言いませんが、明らかに不利益を被った
         場合や、どうしてもほかで代替できない場合など、やむを得ない場合に
         クレームを言うタイプです。

         こうした顧客は、

          ・本当はクレームを言いたくない(が、やむを得ない)

          ・できることなら争いごとは避けたい

         と考える傾向が強いといえます。

        ○対応する際の心構え

         本当は言いたくないがやむを得ず言うクレームというのは、その顧客に
         とって相当大きな問題と考える必要があります。

         しかし、このタイプは強く主張することがほとんどないため、企業は対応
         を簡単に考えがちです。

         たとえ企業がいいかげんに対応を済ませたとしても、顧客は争いごとは
         避けたいと考え、それ以上謝罪などを要求することは少ないかもしれま
         せん。

         しかし、こうした場合、顧客自身の不平や不満は解消されていないた
         め、企業から離れていくことや、「いいかげんな対応をされた」という経験
         を周囲に話すことは十分考えられます。

         そのため、表面上はクレームが解決されたようにみえても、顧客の気持
         ちも一緒に解決しなければ、本当の意味でのクレーム解決にはなって
         いないことを理解する必要があります。

         そこで、まず、

          「顧客に多く話をしてもらう」雰囲気をつくる

         ことが大切といえます。  

         顧客があまり話したがらないからといって、対応者が一方的に話すと、
         ますます顧客は話をしなくなります。

         さらに、顧客を誘導したり、誤った解釈で対応すると、たとえ口にしなくて
         も顧客はさらに不満を持つことになるでしょう。

         そのため、
          「顧客の話に同意をしながら聞く」「顧客の話を復唱しながら聞く」

         などの方法で、顧客の話を聞く姿勢を表し、顧客が話しやすい雰囲気を
         つくることが大切です。

         そのうえで顧客の不満、欲求をくみ取り、丁寧に対応することが必要です。

     (4)不満を抱いていても何も言わないタイプ(一番多い)

       会社や店に直接クレームを言う人はごく一部です。

       その理由にはさまざまあるようですが、クレームは労力を使うという点が、
       最も大きな要因と考えられます。

       クレームを言う場合には、会社(店)に自らコンタクトを取る「労力」、会社
       (店)に自分の意見を伝える「労力」、会社(店)とやり取りをする「労力」、
       会社(店)と折り合いをつける「労力」など、大きなエネルギーが必要なので
       す。

       こうしたクレームにともなう労力を考えて、「面倒だからある程度は我慢しよ
       う」「ほかにも製品(サービス)はあるから、そちらに変えよう」と、会社
       (店)にクレームを言わない顧客は多いのです。

       「こうした顧客は把握できない」などの理由で会社(店)は何も対応をしなく
       ていい、というわけではありません。

       先に述べたように、このタイプは会社(店)から「黙って離れていく」傾向が
       強いため、知らず知らずのうちに顧客を失ってしまうかもしれません。

       そのため、例えば、「ご意見箱」を店頭に設置したり、インターネットを利用
       して、無記名でも会社(店)に意見や質問を言える環境をつくるなど、顧客
       の声を吸い上げる仕組みを検討することが必要といえます。

       ここまでみてきた顧客のタイプ以外にも、さまざまな顧客がいます。

       中には、会社(店)を脅して金品を要求することなどを目的に、明らかに不
       当なクレームを言ってくる人もいます。

       そうした悪質なクレームに対しては、場合によっては、警察や専門機関など
       に相談して対処することも検討する必要があるでしょう。

  □社内のクレームに対する意識

   1.クレームはチャンスと考える

     「クレーム」という言葉を聞くと、どうしてもマイナスのイメージがあります。

     確かにクレームは、「突然発生するうえ、迅速な対応を求められる」「顧客が不
     満を抱えた状態から交渉がスタートする」などの理由から、対応が難しいのも
     事実です。

     しかし、クレームは、企業にとって必ずしもマイナスに作用するものではありま
     せん。

     クレームに適切に対応することができれば、顧客の不満を満足に変え、結果と
     して自社のファンをつくり出すことができるといわれています。

     そのため、クレーム対応者は、「クレームはむしろ自社のファンを増やすチャン
     スである。

     クレームの対応を嫌がるのではなく、お客様の視点で丁寧に対応しよう」という
     前向きな気持ちを持つことが必要です。

     前向きな気持ちで対応すれば、嫌々ながら対応をする場合と比べ、その結果
     には大きな違いが出るといえます。

   2.クレーム情報は社内で共有する

     近年、クレームに対する企業の姿勢がより一層問われるようになっています。

     また、顧客のニーズが多様化していることと同様にクレームも複雑化しています。

     この「クレームが複雑化している」という点からみても、マニュアルだけで対応
     することには限界があるため、個客対応が求められるといえます。

     従って、マニュアルだけに頼ったクレーム対応ではなく、企業全体で個客対応
     を心がけるという風土が重要なのです。

     そのためには、
      クレームに関する情報を社内で共有化していくこと

     が不可欠です。

     例えば、クレームが発生した場合、その原因や対応方法などをデータベース
     化することで、次にクレームが発生した場合、データベースを参考に、より迅速
     に、かつ的確にそのクレームに対応することができます。

     また、クレーム対応に関するミーティングを積極的に設け、クレーム情報を社
     内で共有化することで、従業員のクレーム対応に関する質の平準化が期待で
     きます。

     こうした取り組みを通じて、会社全体のクレーム対応の質を向上させることで、
     顧客満足度を向上させていくことができるのです。

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