アライアンスの構築

          

アライアンスの構築

 ■アライアンスの構築
  市場環境や技術動向など急速な変化、企業間競争のグローバル化の進展など経営環境の
  変化は激しさを増しています。
  特にコロナ禍の中、中小企業にとって自社だけで事業を続けていくことは困難に
  なっていきます。
  複数の企業が共同で事業を行うケースが多くみられるようになっています(以下
  「アライアンス」)。

  特に、経営資源に限りのある中小企業にとっては、アライアンスを通じて自社に不足
  する経営資源を補完しながら事業を遂行していくことは重要な取り組みとなっています。 
  しかし、その一方でアライアンスに際しては、「この事業は、アライアンスによって
  取り組むべきなのか」といった意思決定や「複数の企業が歩調をあわせて事業を進めて
  いくためには、どのように事業を進めていくのがよいのか」といったマネジメント上の
  問題など困難な課題も少なくありません。 

  ここでは、アライアンスを検討する際のポイントとマネジメント上の留意点を紹介
  します。 
  なお、広義な視点から分類するとアライアンスは「資本関係をともなうアライアンス」
  と「資本関係のともなわないアライアンス」に分類することができます。

  資本関係をともなうアライアンスには、合弁会社などがあり、資本関係のともなわない
  アライアンスには、契約関係に基づく連携(狭義のアライアンス)や契約関係が
  比較的穏やかで多数の企業が参加するネットワーク的な連携などがありますが、
  ここでは、資本関係のともなわないアライアンスを対象しています。

 □アライアンスの判断基準
  1.アライアンスの判断基準 
   アライアンスは、企業が新技術・新製品開発、販売チャネルの開拓などさまざまな
   事業活動を行うための一つの手段にすぎません。
   実際には、人員や資金など自社の経営資源によって一定の制約を受けますが、
   基本的には同じ活動を自社単独で行うことも可能です。 

   従って、アライアンスを検討する際には、事業などを遂行するための方策として
   アライアンスが最適なのかという点について最初に考える必要があります。
   また、アライアンスが最適な方策だとしてもアライアンスにおいて、自社は
   どのような業務を担当し、どのような業務をアライアンス先に依存するかという
   点を検討しなければなりません。
   これを「自社の境界線」とします。

   このように、自社の境界線を明確にする際には、「自社のドメインやコア・コンピタンス
   以外の領域の業務はアライアンス先に依存する」といった考え方が基本となります。
   しかし、ドメインやコア・コンピタンスという視点から検討するだけでは、
   その基準にはややあいまいさが残ります。
   従って、アライアンスを検討する際には、より明確な基準を持って検討する
    ことが必要となります。

  2.アライアンスを検討する際の判断基準 
   アライアンスを検討する際の基本的な判断基準としては、以下の5点があります。

   (1)経営資源による制約 
    アライアンスを行う際には、何らかの経営資源を投入する必要があります。
    例えば、既存の事業を超えた役割を担うのであれば、新規に設備を導入
    したり、従業員を雇用するなど新たな投資が必要となるでしょう。
    また、既存の事業の枠内で役割を担う場合は、大規模な設備投資は不要
    かもしれませんが、その業務を遂行するために人員を割いたり、設備を稼動
    させる必要があり、これらにもさまざまコストが発生します。

    経営資源の制約は、投資額や人員数といった形でその問題を定量化して把握し、
    かつ経営全体に及ぼす影響を予測しやすいことから、アライアンス
    を検討する際には最も基本的な基準となるでしょう。

   (2)「取引コスト」の問題 
    取引コストとは、「期待している業務内容を的確に反映した契約を策定・
    締結し、それを実際に実行させるためにかかる金銭的・非金銭的なコスト」
    のことをいいます。
    例えば、新製品を共同で開発する場合を考えてみましょう。

    本来、効率的なアライアンス関係を構築する際には、プロジェクトの全容を
    明らかにしたうえで、その中で必要となる業務をアライアンス関係にある
    企業間で過不足なく分担することが理想です。
    そして、プロジェクト遂行に際しては、不要なトラブルを避けるため、
    担当する業務内容や必要とされる品質水準などを詳細な契約書として事前に
    明文化しておくことが理想的です。

    しかし、既存の製品と異なり、新製品の開発に際しては「全体としてどのような
    ことをしなければならないのか」ということが非常に不明確であり、プロジェクト
    自体が試行錯誤の中で進められていく場合が少なくありません。
    このようなケースでは、複数の企業間で役割を事前に明確化することは困難
    でしょう。

    ましてや、それらを厳密に明文化することは事実上不可能です。
    仮に、アライアンス関係にある企業間の業務を明文化するのであれば、
    発生が予測されるさまざまな可能性を考慮しなければならず、その内容は
    膨大なものとなり非常に大きなコストが発生します。 
    このため、実際には包括的な契約を締結したうえで、詳細な業務内容は
    アライアンス関係にある企業間で話し合いながら進めていくことになります。 

    しかし、この場合にも問題があります。
    悪意の有無にかかわらず、企業には「自社にとって最小の負担で最大の効果
    を得たい」という利己的な動機が働きます。
    このような傾向は、アライアンスを成功させるためには不可欠な業務にも
    かかわらず、自社の果たすべき役割ではないとして、結果としていずれの
    企業も担当しないという「業務のすき間」を生み出すことがあります。

    また、アライアンス先の企業の業務に対する認識が、こちらの期待と異なって
    いるケースや、要求水準に達していないケースなどがあります。
    このような状況を防止するためには、アライアンス先の企業を監視したり、
    綿密なコミュニケーションを図る必要がありますが、このためには金銭的・
    非金銭的なコストが発生することとなります。 
    このように、取引コストという考え方は、アライアンスの実効性を確保する
    ための「コスト」について検討する際の視点となります。

   (3)相互の依存関係 
    プロジェクト内には、密接に関連している業務などがあります。
    このような相互依存性の強い業務を遂行するためには担当する企業や部門間
    で綿密なコミュニケーションを図る必要があります。
    しかし、異なる企業間では綿密なコミュニケーションを図ることは困難な
    場合が少なくありません。

    従って、一般的には、このような相互依存性の高い業務などは、複数の企業
    で分業するよりも単独の企業内で行うほうが効率的、かつ望ましい結果が
    得られやすいでしょう。 
    例えば、製品開発に際しては、開発部門と製造部門が別個に取り組むよりも、
    製品の設計や開発段階から両部門が協力して取り組むほうが製品開発のスピード
    が速い傾向があります。

    また、顧客からの声を取り入れた新製品開発に取り組む場合は、開発部門と
    販売部門の連携が非常に重要になるでしょう。 
    「相互の依存関係」は、製品特性からも検討する必要があります。
    例えば、モジュール化が進んでいるパソコンのような製品の場合は、個々の
    パーツが標準化されているためアライアンス関係の中でパーツごとに分業
    関係を構築することができます。

    逆に、使用されている個々のパーツ間で精緻な調整が必要な製品、すなわち
    製品特性としてパーツ間相互の依存関係が強い製品の場合は、複数の企業が
    開発・製造することは困難であり、単独の企業内で取り組むことが望ましい
    場合があります。

   (4)知識・情報に関する問題 
    特許などの知的財産に加え、さまざまな活動を通じて得たノウハウなど
    企業が有する知識・情報の重要性は改めて述べる必要はないでしょう。
    アライアンスにおいては、経営において重要な役割を果たす知識・情報
    について2つの視点から検討する必要があります。 

    一つ目は知識・情報の蓄積です。
    知識・情報には学んだりすることによって得ることのできるものもありますが、
    実際に経験しなければ得られないものもあります。
    いわゆる「暗黙知」(経験や勘などに基づく知識で、言葉や文章などで表現
    することが難しい知識)がその代表です。

    このような知識は実際に経験することでしか得ることができないため、
    アライアンス先の企業に業務を依存してしまうと、そこから得られる知識・
    情報を社内に蓄積することができなくなります。 
    もう一つは、知識・情報流出のリスクです。
    アライアンスでは、アライアンス先の企業との間でさまざまな知識・情報の
    やり取りを行う必要があります。

    こうしたケースは、知識・情報が流失していることを認識することができますが、
    これに加えて、何気ない雑談などを通じて、意図しない形で流出する知識・
    情報も少なくありません。
    知識・情報の流出は機密保持契約などである程度は防ぐことはできますが、
    そのすべてを防ぐことはできません。
    従って、アライアンスにおいては、知識・情報の蓄積の機会の喪失と流出の
    リスクにも注目して検討することが必要です。

   (5)事業の拡張性 
    アライアンスで得た技術やノウハウは、アライアンスの枠組みの中でだけ
    使用されるわけではありません。
    例えば、新製品開発に向けたアライアンスの中で、新たなパーツの開発を
    担当するのであれば、その過程で得た技術やノウハウを生かしたパーツや
    新製品を開発したり、場合によってはそのパーツ自体を自社独自に販売するなど
    アライアンスの枠組みを超えた事業の展開を行う場合があります。

    そのような場合は、自社が担当する業務から生まれる製品や技術分野における
    自社の競争力や事業の将来性についても検討する必要があります。
    例えば、競合企業が多い分野や技術開発のスピードが速い分野ではアライアンス
    の枠組みを超えた事業展開は困難かもしれません。

    また、モジュール化されている、あるいは今後モジュール化が進むことが予測
    されるパーツについては、パーツの代替性が高いことから、一般的に競合企業
    が多くなる傾向があります。 
    ここでは、アライアンス実施の妥当性やアライアンス内での自社の担当業務
    を検討する際の基本的なポイントを紹介しました。

    これらのポイントの中には、その影響を明確に把握することが困難なものや、
    ある程度時間が経過しなければ明確に把握しにくいものも含まれています。
    しかし、実際にアライアンスへの取り組みを検討する際には、これらのポイント
    を可能な限り明確に把握し、総合的な視点から検討することが必要となります。

  3.アライアンスの形態を決定する 
   前述した基準などに基づいてアライアンスの実施を決定した後は、「どのような
   形でアライアンスを組むか」というアライアンスの形態を決定する必要があります。
   冒頭で紹介したように、「資本関係のともなわないアライアンス」には、
    契約関係に基づく連携(狭義のアライアンス)や比較的穏やかで多数の企業が
    参加するネットワーク的な連携があります。

    「新商品開発」「共同研究」などアライアンスに対する目的や求める成果が
    明確な場合などは、契約関係に基づく連携によってアライアンス関係を構築する
    ことが一般的です。 
    一方、ネットワーク的な連携は、このようなケースで利用されることはそれほど
    多くはありませんでした。

    これは、参加企業数が多いことからアライアンス全体のマネジメントが非常に
    難しいというデメリットがあるためです。
    また、多数の参加企業がいることによる責任感の希薄さといった要因もあり、
    企業の参加・離脱が頻繁に発生することから、明確な成果を求めるアライアンス
    には適していないとされていました。 

    しかし、最近では、ネットワーク的な連携の中でも、一定の成果を上げるものが
    表れてきていることから、このような形態の活用についても検討してみると
    よいでしょう(詳細は後述)。

 □アライアンスマネジャーに求められる能力
  1.アライアンスと単独事業との相違点に留意する 
   アライアンスを成功させるためには、自社単独で行う事業とは異なる点に注意
   しながらその取り組みを進めていくことが必要となります。
   以下では、アライアンスを統括するマネジャーに求められる能力という視点から
   留意点を紹介します。

  2.調整力 
   アライアンスを成功させるため必要となる調整力には「外部に対する調整力」と
   「内部に対する調整力」があります。 
   「外部に対する調整力」とは、アライアンスに参加している企業間の分業・協力
   を円滑に進めるための能力です。

   アライアンスに参加している企業は「アライアンス内で取り組む業務を成功させたい」
   という目標を共有しています。
   しかし、異なる組織である以上、企業間には、企業文化、価値観といったことから、
   社内の意思決定の仕組み、業務の進め方などさまざまな違いがあります。

   アライアンスを成功させるためには、これらの違いを認識したうえで、プロジェクト
   を計画・実行する必要があります。 
   そのための第一歩として、アライアンスに携わるマネジャーは、アライアンス先の
   企業のマネジャーなどとの綿密なコミュニケーションを図り、互いの企業について
   理解を深める努力が必要となります。

   そしてそのうえで、事業全体が順調に進むようにアライアンス先の企業との間で
   業務などの調整に当たる必要があります。 
   また、「内部調整力」とは、自社内の部門間などの調整を行うための能力です。
   相手企業と円滑に業務を進めていく前提として、部門間などの調整を行い自社を
   一つにまとめあげたり、相手先企業との協議結果を自社内の活動に反映させる
   といったように自社内を調整することが求められます。

  3.評価能力 
   「評価能力」とは、技術力や生産能力をはじめとして、アライアンス先の企業の
   持つさまざまな能力を評価する能力です。
   アライアンスを効果的なものとするためには、自社が求めている役割を、
   自社が求めている水準で行うことができるアライアンス先の企業を選ぶ必要が
   あります。

   また、アライアンス関係を構築した後は、アライアンス先の企業が、当初の
   想定通りの能力を発揮し、業務を遂行しているかをチェックし、問題がある場合
   には相手先企業に対する指導やアドバイスなどを行う必要があります。 
   これらを的確に行っていくためには、アライアンス先の企業の持つ能力やその分野
   に関する十分な知識を持つ必要があります。

  4.学習能力 
   「学習能力」とは、アライアンスを通じて得た経験や、アライアンスを組んだ
   相手先企業の持つノウハウなどアライアンスの取り組みから多くのことを学び取り、
   それを自社で展開していく能力です。 
   自社にとってアライアンスを、より有効な取り組みとするためには、アライアンス
   自体を成功させることはもちろんですが、そこから得たさまざまな経験や知識を、
   他の場面にも生かしながら、自社の能力向上に結びつけていきたいものです。

   そのためには、相手先企業や取り組みの中での経験などから真摯に多くのことを
   学び、その結果を的確に自社内にフィードバックすることができる能力が求め
   られます。 
   ここでは、アライアンスを成功させるためのポイントとして、マネジャーに
   求められる3つの能力を紹介しました。

   これらの能力は、必ずしも一人のマネジャーに要求されるものではありません。
   これらの能力を発揮することのできる複数の人材を配置することで対応することも
   できるでしょう。
   重要なことは、アライアンスに際しては、企業としてこれらの能力を発揮できる
   体制を整えるということにあります。

 □ネットワーク的な連携における成功のポイント 
  近年、中小企業に加え、大企業、大学などの研究機関、NPOなど多様な主体が
  数団体から数十団体参加して新製品開発や新分野の開拓などに取り組むネットワーク
  的な連携が注目されています。

  このような連携としては、以前より異業種交流会などがありましたが、近年の
  これらの動きの特徴は、新製品の開発や新分野への進出などの明確な目標を設定し、
   その実現に向けて具体的な行動を起こし、そして一定の成果を上げている点に
  あります。 

  国が、このようなネットワーク的な連携を「新連携」と位置付けて2005年に施行
  された中小企業新事業促進法など多様な支援策を講じてきたこともあり、ネット
  ワーク的な連携への取り組みは今後、一層活発になってくることは確かです。 
  しかし、前述した通り、ネットワーク的な連携を通じて、実際に成果を上げていく
  ことは容易ではありません。

  ネットワーク的な連携を成功させるためには、「マネジャーに求められる能力」
  として紹介した一般的なアライアンス成功のポイントに加えて別の視点からも検討
  する必要があります。

  中小企業基盤整備機構による「中小企業の新たな連携についての事例調査では、
  ネットワーク的な連携を成功させるためのポイントとして・指導力・信頼感のある
  「キーマン・キーカンパニーの存在」・「メンバー相互の信頼関係」・売り上げ
  増加など、アライアンスへの「参加メリット」の3点を挙げています。

  ネットワーク的なアライアンスでは、参加企業が多いこともあり「自分でなくても、
  誰かがやってくれるだろう」と他者依存的な意識が働くことが、活動自体の停滞を
  もたらし、結果として成果を上げることができないといったケースが少なくありません。
  リーダーシップを発揮して取り組みを先導するキーマン・キーカンパニーは、このような
  問題を解決するためには欠かすことのできない存在となります。 

  また、ネットワーク的な連携では、他者依存的な意識が働きやすいこともあり、
  問題が発生した場合でも、「自らが努力して改善しよう」というよりも「ほかの企業が
  問題を解決してくれるだろう」と問題を認識しながらも静観したり、「脱退しよう」
  という意識が強く働きます。 

  このような状況を打破するためには、キーマン・キーカンパニーによる力強いリーダー
  シップに加えて、参加企業のアライアンスに対する愛着心や貢献意欲を高めることが
  必要です。
  メンバー間の信頼関係の醸成はこの際に重要な役割を果たします。

  また、「この組織に所属しているといいことがある」という参加者にとってのメリット
  もまた、帰属意識や貢献意欲を高めるうえでは重要な役割を果たします。 
  多数の企業などが参加するネットワーク的な連携を図る際には、「企業対企業」という
  関係におけるマネジメントに加えて、ここで紹介したような連携スキームの全体の
  マネジメントという視点も重要といえるでしょう。

  近年、アライアンスに取り組む企業は、非常に多くなっています。
  しかし、それらの取り組みの中には失敗に終わるケースもあります。
  また、「失敗とまではいえないものの、思うような成果を得ることができなかった」
  というケースも多いようです。

  そのため、アライアンスに取り組む際には「対象事業の成功」のみを追い求めがち
  です。
  もちろん、アライアンスの第一の目的は対象事業の成功にある以上、そうした視点も
  重要です。 
  しかし、アライアンスはさまざまな企業活動の一部にしかすぎません。

  従って、アライアンスを、より効果的に企業活動に生かしていくためには、アライアンス
  を自社の活動の中にどのように位置付けるか、アライアンスから得たさまざまな成果を
  企業活動全体に生かすためにはどのようにすればよいかといった視点からも、あわせて
  検討することが必要でしょう。

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アライアンス 〜業務提携

          

アライアンス 業務提携

  ■アライアンス(業務提携)の概要 
   提携とは、経営戦略の一手段として他企業と協力関係を結ぶことをいい、
   その提携の一形態である業務提携(アライアンス)とは、お互いの経営の自立性
   は維持しながら、生産や販売、技術といった部分もしくは業務全般において
   他企業と協力関係を結ぶ契約をいいます。 
   この業務提携が、企業戦略においてどのように位置付けられ、活用されているか
   などを、公正取引委員会が2019年2月に発表した「業務提携と企業間競争に
   関する実態調査報告書(以下、「実態調査報告書」公正取引委員会)」のデータ
   を参考に以下で紹介していきます。 
   なお、業務提携の際に、第三者割当増資などを通じて、株式を一方的に取得
   したりする場合がありますが、これはある程度大きな資本の拠出をともなう
   提携であり、一般には広い意味での資本提携に分類されます。
   これに対し、狭義の業務提携(いわゆる業務提携を補完する意味でのきわめて
   小さい規模の株式相互保有を含む)は、大規模な資本の拠出のともなわない
   提携を指すものであり、また、大規模な資本拠出がともなわない点からM&Aの
   分類には入りません。
   実態調査報告書においても「合併・買収が必要であれば最初からそうする
   のであって、業務提携と合併・買収とは性格が異なる経営戦略の選択肢である」
   との回答が多かったことから、ここでは大規模な資本拠出をともなわない
   業務提携を考えます。

   ◎業務提携の類型 
    業務提携の類型は、表のように分類されます。

  □業務提携の状況
   1.業務提携の実施状況 
    実態調査報告書によると、業務提携を実施している企業は、回答企業の80.0%
    にも上っています。
    特に、医薬品では回答企業のすべて、化学(90.4%)および輸送用機器(89.7%)
    では回答企業の約90%が実施しています。
    実施企業の割合が最も少ない小売業でも56.3%の企業が業務提携を実施
    しており、このことから、業務提携を実施している企業は極めて多いという
    ことが分かります。
    【業務提携の実施状況】

  □業務提携の実施状況

   2.業務提携の実施件数 
    また、業務提携の1社平均での実施件数をみると、全業種平均で15.4件、
    製造業では17.0件、卸・小売業では5.5件となっています。製造業の中でも
    特に、化学(24.8件)および電気機器(22.0件)において実施件数が多い
    ことが分かります。
    【1社平均業務提携件数】
    これらの業務提携件数を類型別にみると、研究開発提携が過半数(54.5%)
    を占め、技術提携(13.6%)と合わせると約70%にも上ります。
    これは研究開発に多額の資金が必要であったり、単独での投資は大きなリスク
    となる場合が多い研究開発などは、業務提携によって、リスク分散やコスト
    軽減を図ることが重要であるためと考えられます。

  □業務提携の目的とメリット・デメリット
   1.業務提携の目的 
    業務提携は、自社の経営戦略に挙がった経営課題を改善するために行うもの
    であるため、その目的を明確にして提携を決定する必要があります。 
    そこで、「業務提携の目的」として実態調査報告書で挙げられた項目を
    以下に紹介します。【業務提携の目的】
    上記グラフから、企業提携の目的としては、
     自社に不足する知識・技術などの補完
    とする回答がもっとも多く、次に、
     コスト削減、新規事業の時間短縮、投資リスクの軽減
    などが挙げられています。 
    これらの回答から、自社の経営資源の不足を補い、事業展開のスピード向上や
    リスクの低減などを図るために、業務提携が活用されているということが
    うかがえます。 なお、類型別の目的に対する回答では、
     ・生産提携、購入および物流提携では→「コスト削減」
     ・販売提携では→「相乗効果」「規模の拡大」
     ・研究開発提携および技術提携では→「知識・技術などの補完」 
    「新規事業の時間短縮」が主な目的として挙げられています。

   2.業務提携のメリット 
    そもそも業務提携は、前述した目的を達成するために行われるものですから、
    その目的が達せられる場合には、業務提携の効果がすなわちメリットという
    ことになります。
    そのため、業務提携の目的と重複する部分がありますが、以下に業務提携の
    メリットといわれるものを挙げます。

    ◎リスク軽減とコスト削減が可能 
     前述した通り、企業の研究開発には多額の資金が必要であり、単独
     での投資にはリスクがともないます。
     こうした際に、研究開発提携や技術提携を行えば、企業の投資リスクを
     分散させることができると同時に、その運用コストなども削減することが
     可能になります。
     多額の設備投資が必要で、技術の進歩がめざましい業種であるIT関連の
     製造業や化学・医薬品業などでよくみられる業務提携といえるでしょう。

    ◎新規事業を素早く低コストで立ち上げ可能 
     新規事業に自社単独で参入しようとする場合、ヒト・モノ・カネを一から
     構築する必要があります。
     また、ノウハウも少ないことから、その市場でシェアを獲得するまでには
     かなりの時間がかかるでしょう。 
     その点、当該事業を既に行っている企業と業務提携を結べば、こうした
     時間を短縮し、単独で行うよりも低コストでの参入が可能となります。
     また、必要な部分だけ提携を結ぶことが可能なこともメリットといえます。

    ◎事業からの撤退が容易 
     買収や合併は、自社の資本を拠出しての取り組みであるため、撤退が
     容易ではありません。単独で一から事業を立ち上げた場合も同様でしょう。
     しかし、業務提携であれば、契約を解消することで上の二つのやり方に
     比べてはるかに撤退しやすいといえます。 
     業務提携では、その事業結果が明らかになると同時に経営判断が下せる
     ため、事業への参入と撤退が容易なのです。その意味で経営戦略における
     自由度が高いともいえるでしょう。


     参考として、実態調査報告書で挙がった業務提携の主なメリットを紹介
     します。
     上記のメリットと以下に挙げられたものが、業務提携のメリットといえる
     でしょう。
     【業務提携のメリット】

   3.業務提携のデメリット 
    業務提携は、企業の経営戦略の自由度や柔軟性を維持しつつ競争力を高める
    選択肢と位置付けられていることから、実態調査報告書でも「デメリットは
    特にない」とした企業が45.6%にも上っています。 
    しかし、中長期的な視点で考えると、業務提携においてデメリットとなりうる
    要素が全くないわけではありません。
    そこで、以下では、業務提携のデメリットとなりうる要素について考えます。

    ◎事業活動への制約 
     例えば、物品や資材の購入提携を結んだ場合、より有利な購入条件の
     機会を得たとしても提携期間中は、購入提携にしばられるためその機会を
     逃してしまう危険性があります。
     また、提携先企業以外との提携が契約により制限されてしまうおそれも
     考えられます。

    ◎ノウハウの提供および取得の弊害 
     業務提携において、自社ノウハウを提供する場合、提携先企業はその
     ノウハウを取得し提携期間終了後に新たな競合企業となる可能性があります。 
     また、自社に不足しているノウハウを取得できることは短期的にみて
     メリットですが、一方で、自社で構築する機会や人材育成の場が奪われる
     面もあるため、デメリットとなります。 
     例えば、販売網を提携先に依存した場合、提携終了後に自社で販売網を
     構築しておいたほうが長期的にはプラスとなるといったことがありえます。
     提携の際に、長期的な展望が欠けていた場合、こうした面はデメリットと
     なるでしょう。 
     参考として、実態調査報告書で挙がった業務提携のデメリットを紹介
     します。
     (出所:公正取引委員会【業務提携のデメリット】
     以上のようなデメリットから、業務提携には、企業の独立した意思決定
     への制約や、競争政策上の問題を内包する場合があることに留意しておく
     必要があります。

  □業務提携の実務における留意点 
   基本的に契約をベースとする業務提携が、提携企業間で円滑に運営される
   ためには、適切な契約を締結するということがもっとも重要なことといえます。 
   以下では、業務提携関係の構築に当たっての留意点を簡単にまとめます。

    ◎機密保持契約に関する留意点 
     主に研究開発提携、技術提携、生産提携といったものにおいては、相手
     先企業と研究成果や生産技術、そのほかノウハウといった機密情報を提供
     することとなります。
     こうした機密情報の流失の危険性は、企業にとって大きなリスクであり、
     あらかじめ機密保持契約によって取り除いておく必要があります。
     また、通常の販売提携であったとしても、提携に関する事項は両社の機密
     事項とする場合があります。 
     従って、業務提携を結ぶ際は、契約書に機密保持契約を入れるか、別途
     機密保持契約書を交わすことが必要といえるでしょう。

    ◎提携契約を明確にする 
     提携内容に不明確な部分があると、その後の提携実務に大きな影響を
     及ぼします。
     提携の内容は、契約書の中に詳細かつ明確に記載しておくことが大切と
     なります。 
     例えば、販売提携においてあらかじめ定めておくことは、「販売目標や
     販売努力義務」「費用分担や成果の帰属」など、想定されうるものすべて
     と考えておくべきでしょう。

    ◎契約の期限と解約条項 
     業務提携の期限をどのくらいにするか、ということをしっかりと検討する
     必要があります。
     この期限は、各企業の態様や提携内容にもよりますが、提携関係をどの
     程度構築すべきかは、あらかじめ定めておきたい事項です。
     あまりに長期の提携となると、相乗効果の減少や提携関係に長く拘束
     されるおそれが出てくるからです。 
     実態調査報告書では、研究開発提携では2年間以内との回答が40.2%
     と多く、技術提携では5年間超との回答が44.2%と多くなっています。 
     また、一定の事由が生じた場合や、自社の戦略上の理由などで、提携を
     解消する場合に備えて、契約を解除できる条項を設けることが必要です。
     合意解除の約定を盛り込んでおけば、将来の環境の変化に柔軟に対応
     できることになるからです。

    ◎そのほか 
     そのほかには、法令の順守も留意点といえます。例えば、生産提携の場合、
     形態によっては下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用が考えられ、
     販売提携であれば、販売にかかる法令を順守する必要があります。
     提携した業務の法律上の留意点に関しては、あらかじめ相手先企業と
     協力し適切に対応することが大切です。 
     業務提携を締結するに当たっては、経営戦略の目的がしっかりと達成
     できるよう、契約条項を整備することが何よりも大切です。
     弁護士や公認会計士、提携を扱うコンサルティング会社などに随時確認
     ・相談するなどして、自社のリスクをできるだけ回避できるものにして
     おきましょう。

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M&Aのためのデューデリジェンス

             

M&Aのためのデューデリジェンス

  ■デューデリジェンスの進め方

  □出資やM&Aのメリット

   中小企業にとっては人材の高齢化や人材不足といった厳しい経営環境が続いて
   います。

   このままでは、中小企業の存続が危ういものになりかねません。

   そのようななか、中小企業が連携して体質強化し、共に成長していくために「出
   資」や「M&A」といった資本提携が増しています。

   社長のなかには、これらの手法の有効性は理解していながらも、「難しそう」という
   イメージから十分に検討されていない方も多いようです。

   ここでは、出資やM&Aを行うときに必要になるデューデリジェンス(Due Diligence)
   という手法について、解説します。

   1.資金調達としての出資受け入れ

     資金調達の方法として外部からの出資を募る企業が増加しています。

     これまでは資金調達といえば、銀行からの借入による間接金融が中心でした。

     そのおもな理由は、オーナーが100%出資にこだわるケースが多かったためです。

     しかし経営のスピードアップのためにも、また財務体質強化のためにも、外部
     からの出資受け入れは有効な手法です。

     取引先など事業上の関係の深い先であれば、その企業の将来性についても
     日頃の取引から、深く理解できていることが多いでしょう。

     パートナーから出資をしてもらう、あるいは自分が出資するという関係によって
     財務体質が強化され、双方の成長が加速することが期待できます。

   2.究極の出資「M&A」

     また、たんなる出資だけでなく、企業間の本格的な資本提携、買収、合併など
     M&Aもさかんに行われています。

     人口減による国内需要の縮小などによる企業間の競争が激化するなかで、多
     くの企業が競争力をつけるために、事業再編に取り組んでいます。

     その方法は、スケールメリットをいかした経営のための同業他社との事業統合
     や、流通経路を短縮化して、スピーディーに市場へ商品を供給するための川
     上事業と川中事業の統合などさまざまです。

     そして、いずれの場合も事業の選択と集中、経営のスピード化が成功の鍵に
     なっているようです。

     企業間の競争に勝ち残るためには、将来の優良事業に経営資源を集中させ、
     短期間に強化していくことが重要です。

     そして、事業の選択と集中を行っていく方法として、主力部門以外の事業を切
     り離すための部門や子会社の売却が行われています。

     また主力部門を強化するための企業買収も経営スピードを高めるために効果
     があるのです。

   3.中小企業にとってのM&A

     資本提携や合併といった手法は、難しい手段であり、大企業の専売特許のよ
     うに思えますが、中小企業にとっても大変有効です。

     いくつかの企業を統合することによって、これまでの管理コストを削減したり、
     バイイングパワーを高めたり、または、原価の削減を行うことができます。

     大手企業との競争に勝って生き残るために、今後、中小企業間でもますます
     M&Aに対する関心は高まっていくでしょう。

     また、後継者難である企業にとっては、事業承継の方法のひとつとして、日頃
     親しくお付き合いをしている取引先に、事業を買い取ってもらうことも考えられ
     ます。

     オーナー自身の引退後の資産形成と従業員の職の確保のために、会社の買
     収を考える経営者も増えています。

   4.出資のリスク

     企業が出資を検討するきっかけとして、ひとつには、取引先や知り合いから、
     出資の提案を受けることがあげられます。

     もうひとつの方法は、M&Aの仲介会社や金融機関などからよい会社があると
     提案を受けるケースです。

     社長は、常日頃から経営基盤の強化と事業の拡大に関心をもっていますか
     ら、いずれの話であっても、前向きに検討を始めることが多いでしょう。

     特に自社の経営が順調で資金余力もあり、ちょうど事業の拡大を考えている
     企業であれば、なおさらです。

     しかし、いくら魅力的な事業であっても、その企業に何の不安もないなら、出資
     やM&Aの話がくる訳はなく、多くの場合は、何らかの問題を秘めているものです。

     たとえば、業績は順調にみえても過去の事業の失敗や、関連企業が取り組む
     事業での赤字などにより、多くの負債を抱える企業である場合や、大口の取引
     先が倒産して、資金繰りが急激に悪化した企業であることも考えられます。

     なかには、経営者が会社から多額の借入をしている、もしくは競合他社や顧客
     から多額の訴訟を提起されている可能性もあります。

     出資やM&Aは、魅力的な事業戦略である反面、多くのリスクを含んでいるも
     のです。

     これらのリスクは、相手先の経営者や紹介してくれた仲介者から話を聞くだけ
     では、実態をつかむことはできません。

     成功する出資やM&Aを行うためには、これまでの取引で得た情報や相手先
     経営者の人柄などだけで判断することは回避しなければならないのです。

     次項以降では、中小企業の経営者が出資やM&Aを検討する際に必要な基
     礎知識を紹介します。

  □デューデリジェンスとは

   1.デューデリジェンス

     デューデリジェンス(Due Diligence)とは、出資やM&Aなどを行う前の検討
     する段階で、対象となる企業の財務状態や過去の取引に関する契約内容の
     法的リスクなどを精査し、企業価値を調査することです。

     同様の調査に「信用調査」がありますが、デューデリジェンスではそれよりも広
     く、深い調査を行います。

     出資対象となる企業の過去から現在まで、さらには将来にわたって、事業の
     状況や財務、法務、人事、組織、市場環境など多岐にわたる範囲について、
     調査を行います。

     しかし、中小企業が行うデューデリジェンスについては、社内に専門知識を有
     する担当者がいない場合や、出資金額が少額でリスクが比較的小さい場合も
     多いので、デューデリジェンスを行う際の手順や範囲については、都度、どの
     範囲まで行うかを検討することになります。

     また、先方から提出された資料だけでは信頼性が低いと感じる場合は、実際
     に相手先企業の現場に訪問して各帳票類を確認したり、現場の複数の担当
     者から状況を確認するなど、臨機応変な対応が求められます。

   2.デューデリジェンスの目的

     デューデリジェンスの目的はおもに3つの内容に分けることができます。

     (1)企業価値を正しく評価する

       出資を行う際には、出資総額はもとより、1株あたりの株価についても決定
       することになります。

       株価の算定については、現在の時価純資産から株価を求める方法もあれ
       ば、将来価値を反映してDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を活用
       する場合もあるので、まずは相手先企業の株価算定の方法とその根拠に
       ついて確認をしたうえで、その算出根拠が妥当かどうかを判断します。

        ※企業評価方法のひとつで、将来生み出すと予想されるキャッシュフローを
           現在価 値の合計をもとに企業の評価額を算出する方法。

       未上場企業の場合、貸借対照表上の資産について、減価償却が不十分で
       あったり、不動産の評価額が時価よりかなり高い価格であったりすることも
       多いので注意が必要です。

       またDCFによって将来価値を算出している場合、大抵5年から6年先まで
       の事業計画とキャッシュフローを作成するのですが、思い入れが強いせい
       か、現実からかけ離れた収益見込をもとに算出しているケースが多いの
       で、実現可能性については、詳細に分析・検討する必要があります。

     (2)事業上のシナジー(相乗効果)を確認する

       出資による事業上のシナジーは、シェア拡大、ノウハウの高度化、従業員
       の能力向上などさまざまです。

       したがって、まずは出資の目的を整理し、そのうえでどの程度の効果が得
       られそうかを評価するとよいでしょう。

       またシナジーについて評価を行う場合には、金額で算定することで効果を
       客観的に判断することができます。

       つまり出資を行わずに自社の努力で目的を達成した場合と、出資をして目
       的を達成した場合の価格にどれだけ差があるのかを確認することで、出資
       の経済効果を把握することができます。

       ◎出資目的の分類例

        @自社が将来、参入を狙う市場や事業について研究開発の一環
         として、先進的な取り組みをしている企業へ出資を行う

        A自社の事業分野のシェア拡大もしくは商品の構成を増やすことを
         目的に、同業者へ出資を行う

        B事業範囲を拡大することを目的に、自社の関連事業分野へ出資を
         行う

        C既存の事業部門の機能・能力が不足している、もしくは将来不足
         することが見込まれる分野を補完することを目的に出資を行う

        D現在取引のある企業との関係強化を目的に、一部出資を行う

     (3)事業を統合する際の注意点・問題点

       たんなる出資の枠を越えて、M&Aにより事業を統合する場合は、企業間
       の相性が合わなかったり、実際の事業方針や設備・システムの統合が困
       難だったら、シナジーは生まれません。

       企業間の主導権争いに発展し、白紙撤回せざるを得なくなることや、統合
       したものの相手先の従業員が次々に退職し、当初見込んでいた事業統合
       のメリットが得られないことも考えられます。

       M&Aを検討する際には、事前に、

        ・どのような問題点が想定されるか

        ・それを回避するには、事前に条件として提示すべきことはないか

        ・想定される課題を回避するための対応策はあるか

       といったことについても十分に分析することが必要です。

   3.調査項目と必要な知識

     大企業がデューデリジェンスを実施する場合には、経営企画、財務・経理、営
     業、製造・商品開発、購買、人事、法務などの各部署から担当者を集め、また
     外部の専門家も招へいしてプロジェクトチームを組成して取り組みます。

     これは、デューデリジェンスが短期間にさまざまな分野からリスクや事業上の
     シナジーを判断しなければならないため、それぞれの専門家に適切な判断を
     求める必要があるからです。

     しかし、中小企業において、それだけの大規模な取り組みはなかなか難しい
     のが実情です。

     したがって、デューデリジェンスを実施する際には、この案件がどのような分野
     にリスクがありそうか、またどのような機能やノウハウを正しく評価すべきかを
     すばやく判断し、必要に応じて専門家の力を借りながら進めていくことが現実
     的でしょう。

     (1)ビジネス分野

       デューデリジェンスにおいてもっとも重要であり、また最初に確認すべき事
       項です。

       ビジネスモデルの構造や事業優位性、競合他社の状況、事業の将来性な
       どをこれまでの取引内容や業績、技術力や顧客情報などから分析し評価し
       ます。

       現時点では、とても業績がよく、業界の評判も高いとしても、将来的に市場
       が縮小する可能性が高い事業分野である場合や、営業構造が取引先に依
       存していて、将来の収益基盤に不安があることも考えられます。

       そのような場合は出資を見送ったほうが無難です。

       ◎デューデリジュンスで確認するおもな項目

        ・会社案内

        ・商品パンフレット
        ・事業内容について説明された資料(業務フローや原価率、支払・
         入金サイトなど)

        ・過去のパブリシティ

        ・市場や競合企業の状況についてわかる資料

        ・顧客、取引先、仕入先などの特徴についてわかる資料

     (2)財務分野

       資産やキャッシュに関する財務分野のほか、会計や税務に関する分野も
       含まれます。

       大手企業の決算は、監査法人による監査が行われ、一定基準の会計処理
       が行われています。

       そのため、厳格な会計基準をもとに決算書が作成されており、内容を確認
       すれば、財務状況については、ある程度判断がつきます。

       しかし、未上場企業の場合は、会計基準が企業によって大きく異なるため、
       決算書をみただけでは、財務の状況を判断するのが難しい場合がほとん
       どです。

       十分な調査をせずに出資を行って、後から多額の損失を計上することに
       なったという話は少なくありません。

       高額な出資を考える場合には、必要な出費と割り切って、専門家に相談を
       するのが望ましいでしょう。

       また、上場をめざしている企業へ出資を行う際には、相手先企業は、監査
       法人もしくは公認会計士による短期監査(ショートレビュー)を受けており、
       上場企業と同水準の会計処理を行う場合の課題についてまとめていること
       が多いので、ショートレビューの報告書を要求するのもよいでしょう。

       ◎デューデリジェンスで確認するおもな資料

        ・税務申告書、決算書および付属明細書(2期分以上)

        ・直近の試算表

        ・固定資産台帳

        ・今後の事業計画(3〜5期分)

        ・資金繰り実績表、資金繰り予定表(各1期分)

        ・借入先一覧およびリース一覧

        ・株価算定根拠資料

        ・資本政策(上場をめざす企業の場合)

     (3)法務分野

       意外とチェックが抜けやすいのがこの分野です。

       重要な契約書や取締役会、株主総会議事録などをもとに決算書に表れな
       い負債や将来のリスクを判断します。

       現在は業績が好調であっても大口取引先との取引期限が定められていた
       り、特許技術を違法に利用していることもあります。

       また、高収益が望める商品開発を行っているものの、収益の大半を成功報
       酬として他社に支払わなければならない契約を締結していることなども考
       えられます。

       したがって、取引内容や契約書の内容が複雑であったり、大きな問題を抱
       えている可能性が高い企業へ出資を検討する場合は、財務分野と同じよう
       に、基本合意契約締結後に弁護士や弁理士に会社へ訪問してもらい、調
       査を実施することが必要です。

       ◎デューデリジェンスで確認するおもな資料

        ・定款

        ・登記簿謄本

        ・株主名簿

        ・重要な契約書

        ・取引で使用している帳票類

        ・事業に必要な特許、商標権、資格、免許など

        ・係争の有無など

     (4)人事分野

       会社を統合する場合はもちろんですが、資本提携後に事業提携を検討して
       いる場合においても人の間題は大切な要素です。

       社員にとって不本意な統合を行った結果、幹部社員が部門ごと独立して
       去っていくことも考えられます。

       また統合によって給与水準が下がるなど待遇面のマイナスがあると、多く
       の社員が退職して競合企業へ転職することもあり得ます。

       相手先の企業の組織風土やキーマンの確認、社員のモチベーション、待遇
       などをデューデリジェンスの段階で確認し、あらかじめ対処方法を考えてお
       くことが必要です。

       ◎デューデリジェンスで確認するおもな資料

        ・経営理念

        ・役員略歴

        ・組織図および人員表

        ・社員の待遇についてわかるもの(就業規則や給与一覧など)

  □デューデリジェンスの手順

   デューデリジェンスの一般的な手順は以下のようになっています。

   @案件概要の把握

    始めに出資の依頼を受けるときには、企業名や目的など、情報量は少ない
    はずです。

    相手は自社以外の複数の会社へ同時に提案をしている可能性もあります。

    スピーディーに判断しないと、相手の気持ちが変わる場合もありますから、
    与えられた情報から、自社にとってメリットがあるかどうかをすばやく見極め、
    対応することが重要です。

   A守秘義務契約の締結

    より詳しい情報を得るために、守秘義務契約を締結します。

    相手先企業はM&Aについて自社の経営幹部にも話さずに進めている
    可能性もあるので、指定された先方社員以外からのヒアリングなどは控える。

    同様に出資をする側も社内で情報をオープンにすることなく、限られたメン
    バーだけで進めることが必要です。

   B担当者の決定

    これまでに確認した情報などから、デューデリジェンスを行うために、最適な
    メンバーを選出します。

    場合によっては、会計士、税理士、弁護士、M&Aアドバイザーなど外部の
    専門家にも参加してもらいましょう。

   C詳細資料の検討

    デューデリジェンスを続けるために必要な資料をリストアップし、相手先の
    企業へ請求します。

   Dデューデリジェンス計画の決定

    相手先企業の希望を確認しながら、どのようなスケジュールで進めるか、
    計画を立てます。

    特に外部の専門家に調査の委託を行う場合には、事前にどの程度のレベル
    で調査をしてもらうのかを話し合います。

   E専門家との契約締結

    必要に応じて、専門家に相談します。

   F要求資料のまとめと依頼

    デューデリジエンスを進めるなかで、さらに確認したいことを質問状にまと
    めたり、追加で必要と思われる資料をリストアップし、相手先の企業へ請求
    します。

   G訪問による現場調査の実施

    必要に応じて、実際に工場や店舗を見学します。

    また本社に訪問し、経理関係の帳票類や契約書、議事録などを確認します。

    従業員や経営幹部へヒアリングを行うこともあります。

   Hトップ面談による詳細調整

    企業理念や今後の事業のビジョンを聞きながら、同時に経営者の人柄、
    社風を確認します。

    面談は必要に応じて、何度でも行い、会社への思いが共感できるまで、
    コミュニケーションを深めていくことが、今後の交渉をスムーズに運ぶことに
    つながります。

   Iデューデリジェンスのまとめ

    各担当者から、シナジーのほか、相手先企業の問題点や将来のリスク
    要因について報告をうけ、今回のデューデリジェンスの結果をまとめます。

    そして相手先企業から提示されている条件の妥当性、自社としての要望
    事項をまとめます。

   J条件交渉

    株価について希望価額(営業権評価を含む)を提示するほか、その支払
    方法、時期、会社の引き継ぎ方(合併、子会社化など)、経営陣と社員の
    処遇などを話し合います。

    現経営者に顧問として残ってもらうのか、その場合の報酬はどうするかと
    いうこともこの時点である程度、話を決めておきます。

    またM&Aでなく、一部出資を行う場合には、出資総額や役員の派遣の
    有無、業務提携の内容などを話し合い、出資実行の可否について最終
    決定をします。

   K基本合意契約の締結

    出資やM&Aについておおむね合意が得られた場合は、基本合意契約を
    締結し、これまで話し合った内容をまとめ、また今後の交渉の期限を決めます。

    相手先企業が複数の会社とM&Aの交渉を行っている場合は、この時点で
    1社に絞り込んでもらい、独占的に交渉を進めます。

   L買収監査の実施

    監査法人もしくは公認会計士へ買収監査を依頼します。

    費用は折半で支払うことが多いようですが、事前に話し合いで取り決めます。

    通常1週間から10日程度で報告書ができあがります。

    また会計内容とは別に、弁護士へ法務の監査を依頼することもあります。

   M最終条件の決定

    監査内容をもとに、最後に株式の価額、時期、現経営陣や社員の処遇、
    発表時期など詳細条件について決定します。

    現経営者の自宅や車が社宅や社用車となっている場合など、今後、会社
    で保有するのが難しい資産がある場合や、退職金を支払う場合などは、
    この時点で、今後の取り扱いを決めておきます。

    最終的な契約の調印のために、株主総会、取締役会を開催するなど事前
    準備も忘れずに行いましょう。

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ベンチマーキング

        

ベンチマーキング
 

  ■ベンチマーキングとは 

   自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と
   考えている社長は多いでしょう。

   すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりもスピ
   ーディーに成果につなげることも可能です。

   しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、
   自社に役立つ成功事例に出会う確率は低いでしょう。

   より効果的に成功企業の経営手法を取り入れるための、ベンチマーキングの手法に
   ついて考えてみましょう。

   近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。

   多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の
   向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。

   しかし今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。

   今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切に
   なります。

   良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が経営革新の
   近道になるとして注目されているのです。

   自社の課題解決のために、競合他社、異業種企業の優れた経営手法(「ベストプラクテ
   ィス」)を持つ企業を見つけだし、自社をその企業に近づけさせる手法のことをいい
   ます。

   簡単にいえば、成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むという
   ことです。

   ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」に留まらず、なぜそれらができて
   いるのかという、理由やプロセスも含めて分析・研究しようというものです。

   また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、
   新規事業を行う際の重要な情報とすることができます。

  □ベンチマーキングの方法とプロセス

   ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラ
   クティス」を発見し、取り入れ、そのベンチマ 
   ーク(指標)を計測し、目標値を設定し、そし
   て目標に達するよう実行します。

   これを継続的に実施することにより、具体的
   なシステム改善の状況、効果を把握します。

   一般的なベンチマーキングのプロセスをまと

   めると、次のようになります。

   ここでは、ベンチマーキングの基本的導入方
   法・事例として、「業務改善」をテーマに進め
   ていきます。

    1.適用範囲の選定

     まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。

     例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を
     減らすための手法」「アウトソーシングによるコスト削減」「営業方法のマニュ
     アル化
」「発注方法の短縮化」など、ありとあらゆる企業活動がその対象となり
     ます。

     まずは自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、
     その中から特に早急に改善すべき項目を絞り込んでいくのが取り組みやすいでし
     ょう。

     できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチャ
     レンジするようにします。

     改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。

     この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。

     新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、
     調査報告書など、比較的簡単に手に入る情報を入手します。

     自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要なのか」
     「最終的に何を目指すのか」など、自社の課題と目標をある程度整理しておき
     ます。

    2.ベンチマーキング対象企業の選定

     調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を選
     定します。

     対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているところ
     を比較対象とすることもできます。

     この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要な
     作業となります。

     対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方
     をまとめると次のように分類できます。

      (1)社内をベンチマーク

        社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。

      (2)競合企業をベンチマーク

        同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対
        象となります。
        同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、
        その分さまざまな媒体において成功の秘訣や業務構造が紹介されているこ
        とがあるので、概要をつかむことはできるはずです。

      (3)業務部門をベンチマーク

        他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。

        直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、
        間接部門においては共通した部分が多いはずです。

        他業種のため、比較的容易に情報
        を公開してもらえます。

  □「学び」に対する意識改革

   環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピー
   ドが加速する今日においては、学びのスピー
   ドが会社の命運を左右するといっても過言で
   はありません。

   ベンチマーキングは自社の経営課題解決の
   ための最適な解答を、すでに成功している会
   社の事例から学ぶことであり、よりスピーディ
   ーな学習効果が期待できます。

   社長は従業員に対して「ベンチマーキングは
   成長の早道である」ことを説明し、従業員が
   それぞれの立場からベンチマーキングに
   積極的に参加するように意識づけを行う必要があります。

   社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に
   詳細に説明することなども有効です。

  SPDLIサイクル設計と実践

   ベンチマーキングは通常のPDCAサイクルを応用した、SPDLIサイクルに沿って
   進めていくのが一般的です。

   PDCAサイクルはすでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点がおかれて
   いますが、SPDLIサイクルでは、「何を学び、何を革新すべきか」という戦略段階
   から始める。

   また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズ(側面)が入っていることも特徴で
   す。

    1.戦略策定(Strategy)

      戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。

      多くの企業ではすでに中期経営計画などで戦略を策定していると思います
      が、ベンチマーキングの本格導入を機に戦略を改めて確認してみましょう。

      自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱
      み」を明らかにして、そのために自社が何を学ぶべきかを抽出します。

      ここからは「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明
      します。

    2.計画(Plan)

      実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。

      ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのためのプロ
      ジェクトチームの組成、役割分担、スケジューリングなどを行います。

      プロジェクトチームのリーダーは当該戦略テーマについての責任を担ってい
      る役員クラスを任命し、その下に各部門のリーダークラスを配置します。

      ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析するこ
      とが特に重要になります。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどのよう
        に吸い上げているか、実際の満足度評価の結果、リピート率、クレーム率
        などについて明らかにします。

        これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との詳細
        な比較が可能になります。

        次のようなベンチマーキング設計シートをあらかじめ準備しておきます。
 
    3.情報収集(Do)

      計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。

      情報収集には新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資
      料、インターネットの専門サイト・企業サイト、テレビのビジネス番組などや、 
      上場企業の場合は有価証券報告書などが活用できます。

      また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、「視
      察ツアー」などからも有益な情報が得られるでしょう。

      さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。

      競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング
      先の非競合企業からの協力は意外と得やすいものです。

      「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。

      なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが必
      要です。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        前述のベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満足度
        評価などの各種指標と、ベンチマーキング先のそれを比較できるようにヒ
        アリングします。

    4.学習・分析(Learning)

      複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから
      特に優れており、かつ自社でも対応可能と思われる手法を抽出します。

      そして、自社の業務プロセスと比較してそのギャップを明らかにし、ギャップ

      を埋めるためには何をすればよいかを分析します。

      分析結果はシートにまとめ、プロジェクトメンバー全員が認識を共有します。

      そしてすべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、どの水
      準を達成するか」という具体的な実行計画を策定します。

      計画は実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要が
      あります。

      また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいてい
        る場合などは、自社でそれをすぐに実現することは難しいかもしれない。

        その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違
        いなどから、自社が当面めざすべき体制を考えます。

    5.革新(Innovation)

      「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。

      それぞれの活動についてプロジェクトリーダーはつねに進捗状況を確認し、
      必要に応じて問題点の改善や計画の見直しを行います。

      そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な
      経営革新につながっているかどうかを評価します。

      不十分な場合はベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLIサ
      イクルの「計画(Plan)」の段階に戻ります。

      このサイクルを粘り強く回し続けることがより高いレベルでの戦略実現につな
      がります。

  □留意点

   1.本質をしっかりと学ぶ

     ベンチマーキングは、たんなる「ものまね」ではありません。

     優れた会社の手法を学ぶためには手法そのものだけではなく、「なぜその手法が
     採用できているのか」という点にまで踏み込んで考える必要があります。

     ここで取り上げた「顧客満足度」についても、なぜベンチマーキング先企業は
     高い顧客満足を提供できているのかについて、その本質を学ぶことが大切で
     す。

     ベンチマーク項目を検討する際にはその点を十分に留意する必要がある。

     また、ベンチマーク先企業は長年の取り組みの結果、成功手法を身につけて
     います。

     自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければ
     なりません。

   2.ヒントはどこにでもある

     ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることであって、
     うちではできない」、「うちの会社は事情が特殊だから」と早々に諦めてしまうケー
     スもあります。

     しかし、ベンチマーキングとはそもそも、自社内のこれまでのやり方だけでは解決
     が困難なことを、他社の知恵を借りて実現することです。

     最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。

     しかし、ライバル企業がまだ気づいていない「お宝」が得られる可能性もあります。

     自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っていること
     も多いことを忘れないでください。

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ベンチマーキングとはより効果的に成功企業の経営手法を取り入れること

        

ベンチマーキング


 ■ベンチマーキング

  自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と
  考えている社長は多いでしょう。

  すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりも
  スピーディーに成果につなげることも可能です。

  しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、
  自社に役立つ成功事例に出会う確率は低いでしょう。

  より効果的に成功企業の経営手法を取り入れるための、ベンチマーキングの手法に
   ついて考えてみましょう。

  1.ベンチマーキングとは

   ベンチマーキングとは、競合他社、異業種企業の優れた経営手法を研究し、自社と
   比較検討することで、業務の問題点と改善の方向を明確にし、自社経営の革新に
   つなげていくものです。

   簡単にいえば、成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むという
   ことです。

   比較的大きな会社であれば、社内の他部門から学べることもあるでしょう。

   たとえば、飲食店の社長であれば、近所に繁盛店ができれば必ず視察に出かける

   でしょう。

   客として入店し、料理の味、接客、価格、調度品などを確認します。

   自店よりも優れていて、かつ導入可能なものについては自店に取り込もうとする
   はずです。

   これらの一般的な視察だけでも、有力な情報が得られることはあります。

   しかし、ここで確認できるのは最終的な味や接客であり、「なぜこの値段で

   このような味が出せるのか」、「なぜこんなに心地よい接客が提供できるのか」
   といった、より本質的な部分まではわかりません。

   ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」を超えて、なぜそれらが
   できているのかという、理由やプロセスも含めて分析・研究しようというものです。

   また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、
   新規事業を行う際の重要な情報とすることができます。

   たとえば、飲食店が新たにデリバリーサービスを開始する際には、すでに宅配ビジネス
   を行っている企業を調べることで、ビジネスモデルの基本を理解することができます。

   近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。

   多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の

   向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。

   しかし今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。

   今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切に
   なります。

   良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が経営革新の

   近道になるとして注目されているのです。

  2.ベンチマーキングの対象

   ベンチマーキングの対象は次のように分類できます。

   (1)内部ベンチマーキング

     内部ベンチマーキングとは、組織内、自社内、グループ内など、似通った
     業務を行っている内部の成功事例から学ぶことです。

     たとえば、長時間残業が続くスタッフ部門のなかで、経理部だけはほぼ定時
     帰宅ができているとすれば、緻密なスケジュール管理や集中できる環境づくり
     といった独自の取り組みが奏功している可能性があります。

     同様に営業一課と営業二課の比較、第一工場と第二工場の比較などから、
     優れている点を抽出することもできるでしょう。

     社内部ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な
     分析が可能であるというメリットがあります。

     一方で、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較になる
     ため、革新的な改善にはつながりにくいというデメリットがあります。

   (2)競合ベンチマーキング

     競合ベンチマーキングとは、自社と競合する業種の企業から学ぶことです。

     自社が飲食店であれば、競合する繁盛店の秘訣を学ぶということになります。

     究極のベンチマーキングでは、自社の課題解決のために、すべての成功企業
     におけるもっとも効果的・効率的な実践方法(これを「ベストプラクティス」
     といいます)を学ぼうとしますが、実際には世界中の繁盛店をすべて訪問する
     ことは不可能です。

     しかし、それでもできるだけ多くの繁盛店を参考にするほうが、より自社に
     フィットした解決策のヒントを得られる確率は高くなります。

     したがって、物理的に訪問が容易な地域を中心に数多くの繁盛店の事例を比較
     ・分析することが大切です。

     また、ときには自店が存在する地域と食文化や生活習慣が全く異なる地域
     (海外含む)の店を訪問することで、斬新なアイデアが得られる可能性も
     あります。

   (3)機能ベンチマーキング

     ベンチマーキングの対象は競合他社にとどまりません。

     機能ベンチマーキングとは、比較対象となる機能を有する自社業界以外の
     企業をベンチマーキングすることです。

     大手企業の機能ベンチマーキングの例としては、ゼロックスが全くの異業種
     であるLLピーンの倉庫内業務からベストプラクティスを探求したことが有名
     です。

     たとえば、飲食店の「接客」については、多くの小売業やサービス業の接客を
     ベンチマーキングの対象とすることができます。

     異業種であるため、業界内の慣習や常識の範囲では解決できない問題に
     ついての新たな突破口が開けることもあるでしょう。

 □効果的な進め方

  ベンチマーキングをより効果的に行うためには、次のような手順で進めます。

  なお、ここでは「競合ベンチマーキング」と「機能ベンチマーキング」を想定して
  解説します。

  1.「学び」に対する意識改革

   企業成長のためには、「社会動向」、「顧客動向」、「新技術」など、あらゆる
   ことをつねに学び続ける必要があります。

   環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピードが加速する今日においては、学びの
   スピードが企業の命運を左右するといってもよいでしょう。

   ベンチマーキングは自社の経営課題解決のための最適解を、すでに成功している
   企業の事例から学ぶことであり、よりスピーディーな学習効果が期待できます。

   社長は従業員に対して「ベンチマーキングは成長の早道である」ことを説明し、
   従業員がそれぞれの立場からベンチマーキングに積極的に参加するように意識
   づけを行う必要があります。

   社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に詳細に説明することなども
   有効でしょう。

  2SPDLIサイクルの設計と実践

   ベンチマーキングは通常のPDCA(「計画」、「実施」、「評価」、「改善」)

サイクルを応用した、SPDLIサイクルに沿って進めて行くのが一般的です。
   PDCAサイクルはすでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点が
   おかれていますが、SPDLIサイクルでは、「何を学び、何を革新すべきか」という
   戦略段階から始めます。
   また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズが入っていることも特徴です。

   (1)戦略策定(Strategy

    戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。

    多くの企業ではすでに中期経営計画などで戦略を策定していると思いますが、
    ベンチマーキングの本格導入を機に戦略を改めて確認してみましょう。

    自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱み」
    を明らかにして、そのために自社が何を学ぶべきかを抽出します。

    ここからは「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明
    します。

   (2)計画(Plan

    実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。

    ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのための
    プロジェクトチームの組成、役割分担、スケジューリングなどを行います。

    プロジェクトチームのリーダーは当該戦略テーマについての責任を担っている
    役員クラスを任命し、その下に各部門のリーダークラスを配置します。

    ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析する
    ことが特に重要になります。

    ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

     自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどの
     ように吸い上げているか、実際の満足度評価の結果、リピート率、
     クレーム率などについて明らかにします。

     これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との
     詳細な比較が可能になります。

     次のようなベンチマーキング設計シートをあらかじめ準備しておき
     ましょう。

   (3)情報収集(Do

    計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。

    情報収集には新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資料、
    インターネットの専門サイト・企業サイト、テレビのビジネス番組などや、
    上場企業の場合は有価証券報告書などが活用できます。

    また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、
    「視察ツアー」などからも有益な情報が得られるでしょう。

    さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。

    競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング先
    の非競合企業からの協力は意外と得やすいものです。

    「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。

    なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが
    必要です。

    ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

     前述のベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満
     足度評価などの各種指標と、ベンチマーキング先のそれを比較でき
     るようにヒアリングします。

 

   (4)学習・分析(Learning

複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから
    特に優れており、かつ自社でも対応可能と思われる手法を抽出します。
    そして、自社の業務プロセスと比較してそのギャップを明らかにし、ギャップ
    を埋めるためには何をすればよいかを分析します。
    分析結果はベンチマーキング分析シートにまとめ、プロジェクトメンバー
    全員が認識を共有します。
    そしてすべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、
    どの水準を達成するか」という具体的な実行計画を策定します。
    計画は実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要が
    あります。
    また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。

    ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例
     たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいている
     場合などは、自社でそれをすぐに実現することは難しいかもしれません。
     その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違い
     などから、自社が当面めざすべき体制を考えます。

   (5)革新(lnnovation

    「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。

    それぞれの活動についてプロジェクトリーダーはつねに進捗状況を確認し、
    必要に応じて問題点の改善や計画の見直しを行います。

    そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な
    経営革新につながっているかどうかを評価します。

    不十分な場合はベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLI
    サイクルの「計画(Plan)」の段階に戻ります。

    このサイクルを粘り強く回し続けることがより高いレベルでの戦略実現に
    つながります。

 

  3.留意点

   (1)本質をしっかりと学ぶ

    ベンチマーキングは、たんなる「ものまね」ではありません。

    優れた企業の手法を学ぶためには手法そのものだけではなく、「なぜその
    手法が採用できているのか」という点にまで踏み込んで考える必要があります。

    冒頭であげた飲食店の例では「なぜこの値段でこのような味が出せるのか」
    まで考えることが必要であるとしました。

    同様に本項で取り上げた「顧客満足度」についても、なぜベンチマーキング
    先企業は高い顧客満足を提供できているのかについて、その本質を学ぶことが
    大切です。

    ベンチマーク項目を検討する際にはその点を十分に留意する必要があります。

    また、ベンチマーク先企業は長年の取り組みの結果、成功手法を身につけて
    います。

    自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければ
    なりません。

 

   (2)ヒントはどこにでもある

    ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることで
    あって、うちではできない」、「うちの会社は事情が特殊だから」と早々に
    諦めてしまうケースもあります。

    しかし、ベンチマーキングとはそもそも、自社内のこれまでのやり方だけでは
    解決が困難なことを、他社の知恵を借りて実現することです。

    最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。

    特に異業種から学ぶ「機能ベンチマーキング」ではライバル企業がまだ
    気づいていない「お宝」が得られる可能性もあります。

    自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っている
    ことも多いのです。


  □ベンチマーキングのプロセス

   ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベ
   ンチマーク(指標)を計測し、目標値を設定し、そして目標に達するよう実行します。

   これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。

   一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。

   ここでは、ベンチマーキングの基本的導入事例として、「業務改善」をテーマに進めて
   いきます。

    1.適用範囲の選定

      まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。

      例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を
      減らすための手法」「アウトソーシングによるコスト削減」「営業方法のマニュ
      アル化」「発注方法の短縮化」など、ありとあらゆる企業活動がその対象となり
      ます。

      まずは自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、
      その中から特に早急に改善すべき項目を絞り込んでいくのが取り組みやすいで
      しょう。

      できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチ
      ャレンジするようにします。

      改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。

      この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。

      新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、
      調査報告書など、比較的簡単に手に入る情報を入手します。

      自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要な
      のか」「最終的に何を目指すのか」など、自社の課題と目標をある程度整理して
      おきます。

    2.ベンチマーキング対象企業の選定

      調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を
      選定します。

      対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているとこ
      ろを比較対象とすることもできます。

      この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要
      な作業となります。

      対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方
      をまとめると次のように分類できます。

      (1)社内ベンチマーキング

        社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。

        社内ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な分
        析が可能であるというメリットがあります。

        一方で、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較にな
        るため、革新的な改善にはつながりにくいというデメリットもあります。

      (2)競合企業ベンチマーキング

        同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対
        象となります。

        同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、
        その分さまざまな媒体において成功の秘訣や業務構造が紹介されているこ
        とがあるので、概要をつかむことはできるはずです。

      (3)業務部門ベンチマーキング

        他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。

        直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、
        間接部門においては共通した部分が多いはずです。

        他業種のため、比較的容易に情報を公開してもらえます。

      (4)包括的ベンチマーキング

        業界、業務に限らず、広く比較対象を選定するベンチマーキングです。

        例えば、「検品について」なら検査を行う作業はすべてベンチマーキングの対
        象となりえます。

        契約書の内容、領収証の発行の仕方、労務時間管理など、細かい業務工程
        の比較であれば、参考となる企業の範囲は大きく広がります。

    3.分析

      比較対象の選定が終わったら、「処理フロー」「保管方法」「スケジュール」「使
      用している機器の種類」「各作業の処理時間」「作業者数」「コスト」など、さま
      ざまな観点からデータを収集、数値化します。

      そして「付加価値性」「利益性」「効率性」「迅速性」などのベンチマーク項目
      を設け、これと自社データを比較することにより自社の劣っている個所を明
      確にします。

    4.ベストプラクティスの作成

      ベストプラクティスには、「どれだけの業績、生産性を上げることがが可能か」 と
      いう結果を目標とする側面と、「どのようにして業績、生産性を上げることが可能
      か」というプロセスを目標とする側面があります。

      自社の粗利益率は60%だが同業他社は75%の場合、この結果を目標として
      もよいのですが、より重要なのは粗利益率75%に至ったプロセスを目標とする
      ことです。

      例えば、同業他社が自動機械導入による省力化、臨時雇用による人件費削減、
      ペーパーレス化による業務短縮によって粗利益率は75%を実現しているのであ
      れば、このプロセスこそ学ぶべきベストプラクティスといえます。

    5.目標設定

      作成したベストプラクティスをベースに、目標に到達するまでの期間や費用、労
      力などを考慮しながら具体的な目標を設定します。

      例えば「納期短縮」をベンチマーキングの対象とした場合を考えてみます。

      従来の自社の納期が6日でベストプラクティスが2日だった場合、いきなり2日に
      するのは困難かもしれません。

      目標では従来の半分である3日に設定するなど、実現の範囲内で定めます。

      これに限らず、現状が数値で把握され、ベストプラクティスにより近づけることが
      可能であればどんな目標でも設定できます。

    6.改善計画の作成

      目標を実現するための具体的な導入計画を作成するのが、次の手順となります。

      この段階ではあくまで実現させることが目的となり、詳細な計画を作成します。

    7.実行と評価 

      計画を実行に移すのが最終段階ですが、ベンチマーキングの手法では、計画を
      実行して終わりではありません。

      実際に「目標を達成できたのか」「効果はどの程度なのか」という評価を行うこと
      も重要となります。

      達成のレベルを把握するためには、ベンチマークの把握を継続的に行い、常
      に効果を把握していくことが大切です。

      常に効果を把握していれば、さらにベストプラクティスに近づけるよう、再度目標
      を設定することも可能となります。 

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成果を生むアライアンス

         

成果を生むアライアンス


  アライアンス(alliance)の本来の意味は同盟、連合です。

  企業経営上で用いるアライアンスとは、 複数の企業が経済的なメリットを享受するために、
  提携や協力体制を構築することです。

  アライアンスを締結することで、経営資源、スキル、知識などを結びつけることによって、
  シナジー効果を実現し、自社の経営資源以上のビジネスを展開できます。

  ■成果を生むアライアンスの構築

   近年、市場環境や技術動向など急速な変化、企業間競争のグローバル化の進展など
   経営環境の変化は激しさを増しています。

   このような中で、複数の企業が共同で事業を行うケースが多くみられるようになってい
   ます。

   特に、経営資源に限りのある中小企業にとっては、アライアンスを通じて自社に不足
   する経営資源を補完しながら事業を遂行していくことは重要な取り組みとなっています。

   そして、アライアンスをより効果的にするためにもプレスリリースは経営戦略として欠
   かせません。

   しかし、その一方でアライアンスに際しては、「この事業は、アライアンスによって取り
   組むべきなのか」といった意思決定や「複数の企業が歩調をあわせて事業を進めて
   いくためには、どのように事業を進めていく
   のがよいのか」といったマネジメント上の問題
   など困難な課題も少なくありません。

   そこで、アライアンスを検討する際のポイント
   を紹介します。

   なお、広義な視点から分類するとアライアン
   スは「資本関係をともなうアライアンス」と「資
   本関係のともなわないアライアンス」に分類す
   ることができます。

   資本関係をともなうアライアンスには、合弁会社
   などがあり、資本関係のともなわないアライアン
   スには、契約関係に基づく連携(狭義のアライア
   ンス)や契約関係が比較的穏やかで多数の企業
   が参加するネットワーク的な連携などがありますが、
   ここでは、資本関係のともなわないアライアンスを
   対象とします。

  □アライアンスのための判断基準

   1.アライアンスの判断基準は?

    アライアンスは、企業が新技術・新製品開発、販売チャネルの開拓などさまざまな事
    業活動を行うための一つの手段にすぎません。

    実際には、人員や資金など自社の経営資源によって一定の制約を受けますが、
    基本的には同じ活動を自社単独で行うことも可能です。

    従って、アライアンスを検討する際には、事業などを遂行するための方策としてアライ
    アンスが最適なのかという点について最初に考える必要があります。

    また、アライアンスが最適な方策だとしてもアライアンスにおいて、自社はどのような
    業務を担当し、どのような業務をアライアンス先に依存するかという点を検討しなけ
    ればなりません。

    このように、自社の判断基準を明確にする際には、「自社のドメインやコア・コンピタ
    ンス以外の領域の業務はアライアンス先に依存する」といった考え方が基本となり
    ます。

    しかし、ドメインコア・コンピタンスという視点から検討するだけでは、その基準
    にはややあいまいさが残ります。

    従って、アライアンスを検討する際には、より明確な基準を持って検討することが
    必要となります。

   2.アライアンスを検討する際の判断基準

    アライアンスを検討する際の基本的な判断基準としては、以下の5点があります。

    (1)経営資源による制約

      アライアンスを行う際には、何らかの経営資源を投入する必要があります。

      例えば、既存の事業を超えた役割を担うのであれば、新規に設備を導入したり、
      従業員を雇用するなど新たな投資が必要となるでしょう。

      また、既存の事業の枠内で役割を担う場合は、大規模な設備投資は不要かも
      しれませんが、その業務を遂行するために人員を割いたり、設備を稼動させる
      必要があり、これらにもさまざまコストが発生します。

      経営資源の制約は、投資額や人員数といった形でその問題を定量化して把握し、
      かつ経営全体に及ぼす影響を予測しやすいことから、アライアンスを検討する
      際には最も基本的な基準となるでしょう。
 
    (2)「取引コスト」の問題

      取引コストとは、「期待している業務内容を的確に反映した契約を策定・締結し、
      それを実際に実行させるためにかかる金銭的・非金銭的なコスト」のことをいい
      ます。

      例えば、新製品を共同で開発する場合を考えてみましょう。

      本来、効率的なアライアンス関係を構築する際には、プロジェクトの全容を明ら
      かにしたうえで、その中で必要となる業務をアライアンス関係にある企業間で過
      不足なく分担することが理想です。

      そして、プロジェクト遂行に際しては、不要なトラブルを避けるため、担当する業
      務内容や必要とされる品質水準などを詳細な契約書として事前に明文化してお
      くことが理想的です。

      しかし、既存の製品と異なり、新製品の開発に際しては「全体としてどのようなこ
      とをしなければならないのか」ということが非常に不明確であり、プロジェクト自
      体が試行錯誤の中で進められていく場合が少なくありません。

      このようなケースでは、複数の企業間で役割
      を事前に明確化することは困難でしょう。

      ましてや、それらを厳密に明文化するこ
      とは事実上不可能です。

      仮に、アライアンス関係にある企業間の
      業務を明文化するのであれば、発生が
      予測されるさまざまな可能性を考慮
      しなければならず、その内容は膨大
      なものとなり非常に大きなコストが
      発生します。

      このため、実際には包括的な契約を締結
      したうえで、詳細な業務内容はアライアン
      ス関係にある企業間で話し合いながら進
      めていくことになります。

      しかし、この場合にも問題があります。

      悪意の有無にかかわらず、企業には「自社にとって最小の負担で最大の効果を
      得たい」という利己的な動機が働きます。

      このような傾向は、アライアンスを成功させるためには不可欠な業務にもかかわ
      らず、自社の果たすべき役割ではないとして、結果としていずれの企業も担当し
      ないという「業務のすき間」を生み出すことがあります。

      また、アライアンス先の企業の業務に対する認識が、こちらの期待と異なってい
      るケースや、要求水準に達していないケースなどがあります。

      このような状況を防止するためには、アライアンス先の企業を監視したり、綿
      密なコミュニケーションを図る必要がありますが、このためには金銭的・非金銭的
      なコストが発生することとなります。

      このように、取引コストという考え方は、アライアンスの実効性を確保するための
      「コスト」について検討する際の視点となります。

    (3)相互の依存関係

      プロジェクト内には、密接に関連している業務などがあります。

      このような相互依存性の強い業務を遂行するためには担当する企業や部門間
      で綿密なコミュニケーションを図る必要があります。

      しかし、異なる企業間では綿密なコミュニケーションを図ることは困難な場合が少
      なくありません。

      従って、一般的には、このような相互依存性の高い業務などは、複数の企業で
      分業するよりも単独の企業内で行うほうが効率的、かつ望ましい結果が得られ
      やすいでしょう。

      例えば、製品開発に際しては、開発部門と製造部門が別個に取り組むよりも、
      製品の設計や開発段階から両部門が協力して取り組むほうが製品開発のスピー
      ドが速い傾向があります。

      また、顧客からの声を取り入れた新製品開発に取り組む場合は、開発部門と販
      売部門の連携が非常に重要になるでしょう。

      「相互の依存関係」は、製品特性からも検討する必要があります。

      例えば、モジュール化(1つの複雑なシステムを交換可能な独立した機能を持つ
      部品同士で構成すること)が進んでいるパソコンのような製品の場合は、個々
      のパーツが標準化されているためアライアンス関係の中でパーツごとに分業関係
      を構築することができます。

     (4)知識・情報に関する問題

      特許などの知的財産に加え、さまざまな活動を通じて得たノウハウなど企業が有
      する知識・情報の重要性は改めて述べる必要はないでしょう。

      アライアンスにおいては、経営において重要な役割を果たす知識・情報について
      2つの視点から検討する必要があります。 

      一つ目は知識・情報の蓄積です。

      知識・情報には学んだりすることによって得ることのできるものもありますが、
      実際に経験しなければ得られないものもあります。

      いわゆる「暗黙知」(経験や勘などに基づく
      知識で、言葉や文章などで表現することが
      難しい知識)がその代表です。

      このような知識は実際に経験することで  
      しか得ることができないため、アライアン
      ス先の企業に業務を依存してしまうと、
      そこから得られる知識・情報を社内に蓄
      積することができなくなります。  

      もう一つは、知識・情報流出のリスクです。

      アライアンスでは、アライアンス先の企業
      との間でさまざまな知識・情報のやり取り
      を行う必要があります。 

      こうしたケースは、知識・情報が流失して
      いることを認識することができますが、
      これに加えて、何気ない雑談などを通じて、
      意図しない形で流出する知識・情報も少なくありません。

      知識・情報の流出は機密保持契約などである程度は防ぐことはできますが、そ
      のすべてを防ぐことはできません。

      従って、アライアンスにおいては、知識・情報の蓄積の機会の喪失と流出のリス
      クにも注目して検討することが必要です。

     (5)事業の拡張性

      アライアンスで得た技術やノウハウは、アライアンスの枠組みの中でだけ使用さ
      れるわけではありません。

      例えば、新製品開発に向けたアライアンスの中で、新たなパーツの開発を担当
      するのであれば、その過程で得た技術やノウハウを生かしたパーツや新製品を
      開発したり、場合によってはそのパーツ自体を自社独自に販売するなどアライ
      アンスの枠組みを超えた事業の展開を行う場合があります。

      そのような場合は、自社が担当する業務から生まれる製品や技術分野における
      自社の競争力や事業の将来性についても検討する必要があります。

      例えば、競合企業が多い分野や技術開発のスピードが速い分野ではアライアン
      スの枠組みを超えた事業展開は困難かもしれません。

      また、モジュール化されている、あるいは今後モジュール化が進むことが予測さ
      れるパーツについては、パーツの代替性が高いことから、一般的に競合企業が
      多くなる傾向があります。

      ここでは、アライアンス実施の妥当性やアライアンス内での自社の担当業務を検
      討する際の基本的なポイントを紹介しました。

      これらのポイントの中には、その影響を明確に把握することが困難なものや、
      ある程度時間が経過しなければ明確に把握しにくいものも含まれています。

      しかし、実際にアライアンスへの取り組みを検討する際には、これらのポイントを
      可能な限り明確に把握し、総合的な視点から検討することが必要となります。

   3.アライアンスの形態を決定する

    前述した基準などに基づいてアライアンスの実施を決定した後は、「どのような形で
    アライアンスを組むか」というアライアンスの形態を決定する必要があります。

    冒頭で紹介したように、「資本関係のともなわないアライアンス」には、契約関係に基
    づく連携(狭義のアライアンス)や比較的穏やかで多数の企業が参加するネットワー
    ク的な連携があります。

    「新商品開発」「共同研究」などアライアンスに対する目的や求める成果が明確な
    場合などは、契約関係に基づく連携によってアライアンス関係を構築することが一般
    的です。

    一方、ネットワーク的な連携は、このようなケース
    で利用されることはそれほど多くはありませんで
    した。

    これは、参加企業数が多いことからアライ
    アンス全体のマネジメントが非常に難しいと
    いうデメリットがあるためです。

    また、多数の参加企業がいることによる責
    任感の希薄さといった要因もあり、企業の
    参加・離脱が頻繁に発生することから、明
    確な成果を求めるアライアンスには適して
    いないとされていました。

    しかし、最近では、ネットワーク的な連携の
    中でも、一定の成果を上げるものが表れて
    きていることから、このような形態の活用に
    ついても検討してみるとよいでしょう。

    近年、アライアンスに取り組む企業は、非常に多くなっています。

    しかし、それらの取り組みの中には失敗に終わるケースもあります。

    また、「失敗とまではいえないものの、思うような成果を得ることができなかった」
    というケースも多いようです。

    そのため、アライアンスに取り組む際には「対象事業の成功」のみを追い求めがち
    です。

    もちろん、アライアンスの第一の目的は対象事業の成功にある以上、そうした視点も
    重要です。

    しかし、アライアンスはさまざまな企業活動の一部にしかすぎません。

    従って、アライアンスを、より効果的に企業活動に生かしていくためには、アライアン
    スを自社の活動の中にどのように位置付けるか、アライアンスから得たさまざまな成
    果を企業活動全体に生かすためにはどのようにすればよいかといった視点からも、
    あわせて検討することが必要でしょう。

 

 

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