〒422-8067 静岡県静岡市駿河区南町2-26-501
・アライアンスの構築
・アライアンス 〜業務提携
・M&Aのためのデューデリジェンス
・ベンチマーキング
・ベンチマーキングとはより効果的に成功企業の経営手法を取り入れること
・成果を生むアライアンス
アライアンスの構築 |
■アライアンスの構築 市場環境や技術動向など急速な変化、企業間競争のグローバル化の進展など経営環境の 変化は激しさを増しています。 特にコロナ禍の中、中小企業にとって自社だけで事業を続けていくことは困難に なっていきます。 複数の企業が共同で事業を行うケースが多くみられるようになっています(以下 「アライアンス」)。 特に、経営資源に限りのある中小企業にとっては、アライアンスを通じて自社に不足 する経営資源を補完しながら事業を遂行していくことは重要な取り組みとなっています。 しかし、その一方でアライアンスに際しては、「この事業は、アライアンスによって 取り組むべきなのか」といった意思決定や「複数の企業が歩調をあわせて事業を進めて いくためには、どのように事業を進めていくのがよいのか」といったマネジメント上の 問題など困難な課題も少なくありません。 ここでは、アライアンスを検討する際のポイントとマネジメント上の留意点を紹介 します。 なお、広義な視点から分類するとアライアンスは「資本関係をともなうアライアンス」 と「資本関係のともなわないアライアンス」に分類することができます。 資本関係をともなうアライアンスには、合弁会社などがあり、資本関係のともなわない アライアンスには、契約関係に基づく連携(狭義のアライアンス)や契約関係が 比較的穏やかで多数の企業が参加するネットワーク的な連携などがありますが、 ここでは、資本関係のともなわないアライアンスを対象しています。 □アライアンスの判断基準 1.アライアンスの判断基準 アライアンスは、企業が新技術・新製品開発、販売チャネルの開拓などさまざまな 事業活動を行うための一つの手段にすぎません。 実際には、人員や資金など自社の経営資源によって一定の制約を受けますが、 基本的には同じ活動を自社単独で行うことも可能です。 従って、アライアンスを検討する際には、事業などを遂行するための方策として アライアンスが最適なのかという点について最初に考える必要があります。 また、アライアンスが最適な方策だとしてもアライアンスにおいて、自社は どのような業務を担当し、どのような業務をアライアンス先に依存するかという 点を検討しなければなりません。 これを「自社の境界線」とします。 このように、自社の境界線を明確にする際には、「自社のドメインやコア・コンピタンス 以外の領域の業務はアライアンス先に依存する」といった考え方が基本となります。 しかし、ドメインやコア・コンピタンスという視点から検討するだけでは、 その基準にはややあいまいさが残ります。 従って、アライアンスを検討する際には、より明確な基準を持って検討する ことが必要となります。 2.アライアンスを検討する際の判断基準 アライアンスを検討する際の基本的な判断基準としては、以下の5点があります。 (1)経営資源による制約 アライアンスを行う際には、何らかの経営資源を投入する必要があります。 例えば、既存の事業を超えた役割を担うのであれば、新規に設備を導入 したり、従業員を雇用するなど新たな投資が必要となるでしょう。 また、既存の事業の枠内で役割を担う場合は、大規模な設備投資は不要 かもしれませんが、その業務を遂行するために人員を割いたり、設備を稼動 させる必要があり、これらにもさまざまコストが発生します。 経営資源の制約は、投資額や人員数といった形でその問題を定量化して把握し、 かつ経営全体に及ぼす影響を予測しやすいことから、アライアンス を検討する際には最も基本的な基準となるでしょう。 (2)「取引コスト」の問題 取引コストとは、「期待している業務内容を的確に反映した契約を策定・ 締結し、それを実際に実行させるためにかかる金銭的・非金銭的なコスト」 のことをいいます。 例えば、新製品を共同で開発する場合を考えてみましょう。 本来、効率的なアライアンス関係を構築する際には、プロジェクトの全容を 明らかにしたうえで、その中で必要となる業務をアライアンス関係にある 企業間で過不足なく分担することが理想です。 そして、プロジェクト遂行に際しては、不要なトラブルを避けるため、 担当する業務内容や必要とされる品質水準などを詳細な契約書として事前に 明文化しておくことが理想的です。 しかし、既存の製品と異なり、新製品の開発に際しては「全体としてどのような ことをしなければならないのか」ということが非常に不明確であり、プロジェクト 自体が試行錯誤の中で進められていく場合が少なくありません。 このようなケースでは、複数の企業間で役割を事前に明確化することは困難 でしょう。 ましてや、それらを厳密に明文化することは事実上不可能です。 仮に、アライアンス関係にある企業間の業務を明文化するのであれば、 発生が予測されるさまざまな可能性を考慮しなければならず、その内容は 膨大なものとなり非常に大きなコストが発生します。 このため、実際には包括的な契約を締結したうえで、詳細な業務内容は アライアンス関係にある企業間で話し合いながら進めていくことになります。 しかし、この場合にも問題があります。 悪意の有無にかかわらず、企業には「自社にとって最小の負担で最大の効果 を得たい」という利己的な動機が働きます。 このような傾向は、アライアンスを成功させるためには不可欠な業務にも かかわらず、自社の果たすべき役割ではないとして、結果としていずれの 企業も担当しないという「業務のすき間」を生み出すことがあります。 また、アライアンス先の企業の業務に対する認識が、こちらの期待と異なって いるケースや、要求水準に達していないケースなどがあります。 このような状況を防止するためには、アライアンス先の企業を監視したり、 綿密なコミュニケーションを図る必要がありますが、このためには金銭的・ 非金銭的なコストが発生することとなります。 このように、取引コストという考え方は、アライアンスの実効性を確保する ための「コスト」について検討する際の視点となります。 (3)相互の依存関係 プロジェクト内には、密接に関連している業務などがあります。 このような相互依存性の強い業務を遂行するためには担当する企業や部門間 で綿密なコミュニケーションを図る必要があります。 しかし、異なる企業間では綿密なコミュニケーションを図ることは困難な 場合が少なくありません。 従って、一般的には、このような相互依存性の高い業務などは、複数の企業 で分業するよりも単独の企業内で行うほうが効率的、かつ望ましい結果が 得られやすいでしょう。 例えば、製品開発に際しては、開発部門と製造部門が別個に取り組むよりも、 製品の設計や開発段階から両部門が協力して取り組むほうが製品開発のスピード が速い傾向があります。 また、顧客からの声を取り入れた新製品開発に取り組む場合は、開発部門と 販売部門の連携が非常に重要になるでしょう。 「相互の依存関係」は、製品特性からも検討する必要があります。 例えば、モジュール化が進んでいるパソコンのような製品の場合は、個々の パーツが標準化されているためアライアンス関係の中でパーツごとに分業 関係を構築することができます。 逆に、使用されている個々のパーツ間で精緻な調整が必要な製品、すなわち 製品特性としてパーツ間相互の依存関係が強い製品の場合は、複数の企業が 開発・製造することは困難であり、単独の企業内で取り組むことが望ましい 場合があります。 (4)知識・情報に関する問題 特許などの知的財産に加え、さまざまな活動を通じて得たノウハウなど 企業が有する知識・情報の重要性は改めて述べる必要はないでしょう。 アライアンスにおいては、経営において重要な役割を果たす知識・情報 について2つの視点から検討する必要があります。 一つ目は知識・情報の蓄積です。 知識・情報には学んだりすることによって得ることのできるものもありますが、 実際に経験しなければ得られないものもあります。 いわゆる「暗黙知」(経験や勘などに基づく知識で、言葉や文章などで表現 することが難しい知識)がその代表です。 このような知識は実際に経験することでしか得ることができないため、 アライアンス先の企業に業務を依存してしまうと、そこから得られる知識・ 情報を社内に蓄積することができなくなります。 もう一つは、知識・情報流出のリスクです。 アライアンスでは、アライアンス先の企業との間でさまざまな知識・情報の やり取りを行う必要があります。 こうしたケースは、知識・情報が流失していることを認識することができますが、 これに加えて、何気ない雑談などを通じて、意図しない形で流出する知識・ 情報も少なくありません。 知識・情報の流出は機密保持契約などである程度は防ぐことはできますが、 そのすべてを防ぐことはできません。 従って、アライアンスにおいては、知識・情報の蓄積の機会の喪失と流出の リスクにも注目して検討することが必要です。 (5)事業の拡張性 アライアンスで得た技術やノウハウは、アライアンスの枠組みの中でだけ 使用されるわけではありません。 例えば、新製品開発に向けたアライアンスの中で、新たなパーツの開発を 担当するのであれば、その過程で得た技術やノウハウを生かしたパーツや 新製品を開発したり、場合によってはそのパーツ自体を自社独自に販売するなど アライアンスの枠組みを超えた事業の展開を行う場合があります。 そのような場合は、自社が担当する業務から生まれる製品や技術分野における 自社の競争力や事業の将来性についても検討する必要があります。 例えば、競合企業が多い分野や技術開発のスピードが速い分野ではアライアンス の枠組みを超えた事業展開は困難かもしれません。 また、モジュール化されている、あるいは今後モジュール化が進むことが予測 されるパーツについては、パーツの代替性が高いことから、一般的に競合企業 が多くなる傾向があります。 ここでは、アライアンス実施の妥当性やアライアンス内での自社の担当業務 を検討する際の基本的なポイントを紹介しました。 これらのポイントの中には、その影響を明確に把握することが困難なものや、 ある程度時間が経過しなければ明確に把握しにくいものも含まれています。 しかし、実際にアライアンスへの取り組みを検討する際には、これらのポイント を可能な限り明確に把握し、総合的な視点から検討することが必要となります。 3.アライアンスの形態を決定する 前述した基準などに基づいてアライアンスの実施を決定した後は、「どのような 形でアライアンスを組むか」というアライアンスの形態を決定する必要があります。 冒頭で紹介したように、「資本関係のともなわないアライアンス」には、 契約関係に基づく連携(狭義のアライアンス)や比較的穏やかで多数の企業が 参加するネットワーク的な連携があります。 「新商品開発」「共同研究」などアライアンスに対する目的や求める成果が 明確な場合などは、契約関係に基づく連携によってアライアンス関係を構築する ことが一般的です。 一方、ネットワーク的な連携は、このようなケースで利用されることはそれほど 多くはありませんでした。 これは、参加企業数が多いことからアライアンス全体のマネジメントが非常に 難しいというデメリットがあるためです。 また、多数の参加企業がいることによる責任感の希薄さといった要因もあり、 企業の参加・離脱が頻繁に発生することから、明確な成果を求めるアライアンス には適していないとされていました。 しかし、最近では、ネットワーク的な連携の中でも、一定の成果を上げるものが 表れてきていることから、このような形態の活用についても検討してみると よいでしょう(詳細は後述)。 □アライアンスマネジャーに求められる能力 1.アライアンスと単独事業との相違点に留意する アライアンスを成功させるためには、自社単独で行う事業とは異なる点に注意 しながらその取り組みを進めていくことが必要となります。 以下では、アライアンスを統括するマネジャーに求められる能力という視点から 留意点を紹介します。 2.調整力 アライアンスを成功させるため必要となる調整力には「外部に対する調整力」と 「内部に対する調整力」があります。 「外部に対する調整力」とは、アライアンスに参加している企業間の分業・協力 を円滑に進めるための能力です。 アライアンスに参加している企業は「アライアンス内で取り組む業務を成功させたい」 という目標を共有しています。 しかし、異なる組織である以上、企業間には、企業文化、価値観といったことから、 社内の意思決定の仕組み、業務の進め方などさまざまな違いがあります。 アライアンスを成功させるためには、これらの違いを認識したうえで、プロジェクト を計画・実行する必要があります。 そのための第一歩として、アライアンスに携わるマネジャーは、アライアンス先の 企業のマネジャーなどとの綿密なコミュニケーションを図り、互いの企業について 理解を深める努力が必要となります。 そしてそのうえで、事業全体が順調に進むようにアライアンス先の企業との間で 業務などの調整に当たる必要があります。 また、「内部調整力」とは、自社内の部門間などの調整を行うための能力です。 相手企業と円滑に業務を進めていく前提として、部門間などの調整を行い自社を 一つにまとめあげたり、相手先企業との協議結果を自社内の活動に反映させる といったように自社内を調整することが求められます。 3.評価能力 「評価能力」とは、技術力や生産能力をはじめとして、アライアンス先の企業の 持つさまざまな能力を評価する能力です。 アライアンスを効果的なものとするためには、自社が求めている役割を、 自社が求めている水準で行うことができるアライアンス先の企業を選ぶ必要が あります。 また、アライアンス関係を構築した後は、アライアンス先の企業が、当初の 想定通りの能力を発揮し、業務を遂行しているかをチェックし、問題がある場合 には相手先企業に対する指導やアドバイスなどを行う必要があります。 これらを的確に行っていくためには、アライアンス先の企業の持つ能力やその分野 に関する十分な知識を持つ必要があります。 4.学習能力 「学習能力」とは、アライアンスを通じて得た経験や、アライアンスを組んだ 相手先企業の持つノウハウなどアライアンスの取り組みから多くのことを学び取り、 それを自社で展開していく能力です。 自社にとってアライアンスを、より有効な取り組みとするためには、アライアンス 自体を成功させることはもちろんですが、そこから得たさまざまな経験や知識を、 他の場面にも生かしながら、自社の能力向上に結びつけていきたいものです。 そのためには、相手先企業や取り組みの中での経験などから真摯に多くのことを 学び、その結果を的確に自社内にフィードバックすることができる能力が求め られます。 ここでは、アライアンスを成功させるためのポイントとして、マネジャーに 求められる3つの能力を紹介しました。 これらの能力は、必ずしも一人のマネジャーに要求されるものではありません。 これらの能力を発揮することのできる複数の人材を配置することで対応することも できるでしょう。 重要なことは、アライアンスに際しては、企業としてこれらの能力を発揮できる 体制を整えるということにあります。 □ネットワーク的な連携における成功のポイント 近年、中小企業に加え、大企業、大学などの研究機関、NPOなど多様な主体が 数団体から数十団体参加して新製品開発や新分野の開拓などに取り組むネットワーク 的な連携が注目されています。 このような連携としては、以前より異業種交流会などがありましたが、近年の これらの動きの特徴は、新製品の開発や新分野への進出などの明確な目標を設定し、 その実現に向けて具体的な行動を起こし、そして一定の成果を上げている点に あります。 国が、このようなネットワーク的な連携を「新連携」と位置付けて2005年に施行 された中小企業新事業促進法など多様な支援策を講じてきたこともあり、ネット ワーク的な連携への取り組みは今後、一層活発になってくることは確かです。 しかし、前述した通り、ネットワーク的な連携を通じて、実際に成果を上げていく ことは容易ではありません。 ネットワーク的な連携を成功させるためには、「マネジャーに求められる能力」 として紹介した一般的なアライアンス成功のポイントに加えて別の視点からも検討 する必要があります。 中小企業基盤整備機構による「中小企業の新たな連携についての事例調査では、 ネットワーク的な連携を成功させるためのポイントとして・指導力・信頼感のある 「キーマン・キーカンパニーの存在」・「メンバー相互の信頼関係」・売り上げ 増加など、アライアンスへの「参加メリット」の3点を挙げています。 ネットワーク的なアライアンスでは、参加企業が多いこともあり「自分でなくても、 誰かがやってくれるだろう」と他者依存的な意識が働くことが、活動自体の停滞を もたらし、結果として成果を上げることができないといったケースが少なくありません。 リーダーシップを発揮して取り組みを先導するキーマン・キーカンパニーは、このような 問題を解決するためには欠かすことのできない存在となります。 また、ネットワーク的な連携では、他者依存的な意識が働きやすいこともあり、 問題が発生した場合でも、「自らが努力して改善しよう」というよりも「ほかの企業が 問題を解決してくれるだろう」と問題を認識しながらも静観したり、「脱退しよう」 という意識が強く働きます。 このような状況を打破するためには、キーマン・キーカンパニーによる力強いリーダー シップに加えて、参加企業のアライアンスに対する愛着心や貢献意欲を高めることが 必要です。 メンバー間の信頼関係の醸成はこの際に重要な役割を果たします。 また、「この組織に所属しているといいことがある」という参加者にとってのメリット もまた、帰属意識や貢献意欲を高めるうえでは重要な役割を果たします。 多数の企業などが参加するネットワーク的な連携を図る際には、「企業対企業」という 関係におけるマネジメントに加えて、ここで紹介したような連携スキームの全体の マネジメントという視点も重要といえるでしょう。 近年、アライアンスに取り組む企業は、非常に多くなっています。 しかし、それらの取り組みの中には失敗に終わるケースもあります。 また、「失敗とまではいえないものの、思うような成果を得ることができなかった」 というケースも多いようです。 そのため、アライアンスに取り組む際には「対象事業の成功」のみを追い求めがち です。 もちろん、アライアンスの第一の目的は対象事業の成功にある以上、そうした視点も 重要です。 しかし、アライアンスはさまざまな企業活動の一部にしかすぎません。 従って、アライアンスを、より効果的に企業活動に生かしていくためには、アライアンス を自社の活動の中にどのように位置付けるか、アライアンスから得たさまざまな成果を 企業活動全体に生かすためにはどのようにすればよいかといった視点からも、あわせて 検討することが必要でしょう。 協業のご案内 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |
アライアンス 業務提携 |
■アライアンス(業務提携)の概要 提携とは、経営戦略の一手段として他企業と協力関係を結ぶことをいい、 その提携の一形態である業務提携(アライアンス)とは、お互いの経営の自立性 は維持しながら、生産や販売、技術といった部分もしくは業務全般において 他企業と協力関係を結ぶ契約をいいます。 この業務提携が、企業戦略においてどのように位置付けられ、活用されているか などを、公正取引委員会が2019年2月に発表した「業務提携と企業間競争に 関する実態調査報告書(以下、「実態調査報告書」公正取引委員会)」のデータ を参考に以下で紹介していきます。 なお、業務提携の際に、第三者割当増資などを通じて、株式を一方的に取得 したりする場合がありますが、これはある程度大きな資本の拠出をともなう 提携であり、一般には広い意味での資本提携に分類されます。 これに対し、狭義の業務提携(いわゆる業務提携を補完する意味でのきわめて 小さい規模の株式相互保有を含む)は、大規模な資本の拠出のともなわない 提携を指すものであり、また、大規模な資本拠出がともなわない点からM&Aの 分類には入りません。 実態調査報告書においても「合併・買収が必要であれば最初からそうする のであって、業務提携と合併・買収とは性格が異なる経営戦略の選択肢である」 との回答が多かったことから、ここでは大規模な資本拠出をともなわない 業務提携を考えます。 ◎業務提携の類型 業務提携の類型は、表のように分類されます。 □業務提携の状況 1.業務提携の実施状況 実態調査報告書によると、業務提携を実施している企業は、回答企業の80.0% にも上っています。 特に、医薬品では回答企業のすべて、化学(90.4%)および輸送用機器(89.7%) では回答企業の約90%が実施しています。 実施企業の割合が最も少ない小売業でも56.3%の企業が業務提携を実施 しており、このことから、業務提携を実施している企業は極めて多いという ことが分かります。 【業務提携の実施状況】 □業務提携の実施状況 2.業務提携の実施件数 また、業務提携の1社平均での実施件数をみると、全業種平均で15.4件、 製造業では17.0件、卸・小売業では5.5件となっています。製造業の中でも 特に、化学(24.8件)および電気機器(22.0件)において実施件数が多い ことが分かります。 【1社平均業務提携件数】 これらの業務提携件数を類型別にみると、研究開発提携が過半数(54.5%) を占め、技術提携(13.6%)と合わせると約70%にも上ります。 これは研究開発に多額の資金が必要であったり、単独での投資は大きなリスク となる場合が多い研究開発などは、業務提携によって、リスク分散やコスト 軽減を図ることが重要であるためと考えられます。 □業務提携の目的とメリット・デメリット 1.業務提携の目的 業務提携は、自社の経営戦略に挙がった経営課題を改善するために行うもの であるため、その目的を明確にして提携を決定する必要があります。 そこで、「業務提携の目的」として実態調査報告書で挙げられた項目を 以下に紹介します。【業務提携の目的】 上記グラフから、企業提携の目的としては、 自社に不足する知識・技術などの補完 とする回答がもっとも多く、次に、 コスト削減、新規事業の時間短縮、投資リスクの軽減 などが挙げられています。 これらの回答から、自社の経営資源の不足を補い、事業展開のスピード向上や リスクの低減などを図るために、業務提携が活用されているということが うかがえます。 なお、類型別の目的に対する回答では、 ・生産提携、購入および物流提携では→「コスト削減」 ・販売提携では→「相乗効果」「規模の拡大」 ・研究開発提携および技術提携では→「知識・技術などの補完」 「新規事業の時間短縮」が主な目的として挙げられています。 2.業務提携のメリット そもそも業務提携は、前述した目的を達成するために行われるものですから、 その目的が達せられる場合には、業務提携の効果がすなわちメリットという ことになります。 そのため、業務提携の目的と重複する部分がありますが、以下に業務提携の メリットといわれるものを挙げます。 ◎リスク軽減とコスト削減が可能 前述した通り、企業の研究開発には多額の資金が必要であり、単独 での投資にはリスクがともないます。 こうした際に、研究開発提携や技術提携を行えば、企業の投資リスクを 分散させることができると同時に、その運用コストなども削減することが 可能になります。 多額の設備投資が必要で、技術の進歩がめざましい業種であるIT関連の 製造業や化学・医薬品業などでよくみられる業務提携といえるでしょう。 ◎新規事業を素早く低コストで立ち上げ可能 新規事業に自社単独で参入しようとする場合、ヒト・モノ・カネを一から 構築する必要があります。 また、ノウハウも少ないことから、その市場でシェアを獲得するまでには かなりの時間がかかるでしょう。 その点、当該事業を既に行っている企業と業務提携を結べば、こうした 時間を短縮し、単独で行うよりも低コストでの参入が可能となります。 また、必要な部分だけ提携を結ぶことが可能なこともメリットといえます。 ◎事業からの撤退が容易 買収や合併は、自社の資本を拠出しての取り組みであるため、撤退が 容易ではありません。単独で一から事業を立ち上げた場合も同様でしょう。 しかし、業務提携であれば、契約を解消することで上の二つのやり方に 比べてはるかに撤退しやすいといえます。 業務提携では、その事業結果が明らかになると同時に経営判断が下せる ため、事業への参入と撤退が容易なのです。その意味で経営戦略における 自由度が高いともいえるでしょう。 参考として、実態調査報告書で挙がった業務提携の主なメリットを紹介 します。 上記のメリットと以下に挙げられたものが、業務提携のメリットといえる でしょう。 【業務提携のメリット】 3.業務提携のデメリット 業務提携は、企業の経営戦略の自由度や柔軟性を維持しつつ競争力を高める 選択肢と位置付けられていることから、実態調査報告書でも「デメリットは 特にない」とした企業が45.6%にも上っています。 しかし、中長期的な視点で考えると、業務提携においてデメリットとなりうる 要素が全くないわけではありません。 そこで、以下では、業務提携のデメリットとなりうる要素について考えます。 ◎事業活動への制約 例えば、物品や資材の購入提携を結んだ場合、より有利な購入条件の 機会を得たとしても提携期間中は、購入提携にしばられるためその機会を 逃してしまう危険性があります。 また、提携先企業以外との提携が契約により制限されてしまうおそれも 考えられます。 ◎ノウハウの提供および取得の弊害 業務提携において、自社ノウハウを提供する場合、提携先企業はその ノウハウを取得し提携期間終了後に新たな競合企業となる可能性があります。 また、自社に不足しているノウハウを取得できることは短期的にみて メリットですが、一方で、自社で構築する機会や人材育成の場が奪われる 面もあるため、デメリットとなります。 例えば、販売網を提携先に依存した場合、提携終了後に自社で販売網を 構築しておいたほうが長期的にはプラスとなるといったことがありえます。 提携の際に、長期的な展望が欠けていた場合、こうした面はデメリットと なるでしょう。 参考として、実態調査報告書で挙がった業務提携のデメリットを紹介 します。 (出所:公正取引委員会【業務提携のデメリット】 以上のようなデメリットから、業務提携には、企業の独立した意思決定 への制約や、競争政策上の問題を内包する場合があることに留意しておく 必要があります。 □業務提携の実務における留意点 基本的に契約をベースとする業務提携が、提携企業間で円滑に運営される ためには、適切な契約を締結するということがもっとも重要なことといえます。 以下では、業務提携関係の構築に当たっての留意点を簡単にまとめます。 ◎機密保持契約に関する留意点 主に研究開発提携、技術提携、生産提携といったものにおいては、相手 先企業と研究成果や生産技術、そのほかノウハウといった機密情報を提供 することとなります。 こうした機密情報の流失の危険性は、企業にとって大きなリスクであり、 あらかじめ機密保持契約によって取り除いておく必要があります。 また、通常の販売提携であったとしても、提携に関する事項は両社の機密 事項とする場合があります。 従って、業務提携を結ぶ際は、契約書に機密保持契約を入れるか、別途 機密保持契約書を交わすことが必要といえるでしょう。 ◎提携契約を明確にする 提携内容に不明確な部分があると、その後の提携実務に大きな影響を 及ぼします。 提携の内容は、契約書の中に詳細かつ明確に記載しておくことが大切と なります。 例えば、販売提携においてあらかじめ定めておくことは、「販売目標や 販売努力義務」「費用分担や成果の帰属」など、想定されうるものすべて と考えておくべきでしょう。 ◎契約の期限と解約条項 業務提携の期限をどのくらいにするか、ということをしっかりと検討する 必要があります。 この期限は、各企業の態様や提携内容にもよりますが、提携関係をどの 程度構築すべきかは、あらかじめ定めておきたい事項です。 あまりに長期の提携となると、相乗効果の減少や提携関係に長く拘束 されるおそれが出てくるからです。 実態調査報告書では、研究開発提携では2年間以内との回答が40.2% と多く、技術提携では5年間超との回答が44.2%と多くなっています。 また、一定の事由が生じた場合や、自社の戦略上の理由などで、提携を 解消する場合に備えて、契約を解除できる条項を設けることが必要です。 合意解除の約定を盛り込んでおけば、将来の環境の変化に柔軟に対応 できることになるからです。 ◎そのほか そのほかには、法令の順守も留意点といえます。例えば、生産提携の場合、 形態によっては下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用が考えられ、 販売提携であれば、販売にかかる法令を順守する必要があります。 提携した業務の法律上の留意点に関しては、あらかじめ相手先企業と 協力し適切に対応することが大切です。 業務提携を締結するに当たっては、経営戦略の目的がしっかりと達成 できるよう、契約条項を整備することが何よりも大切です。 弁護士や公認会計士、提携を扱うコンサルティング会社などに随時確認 ・相談するなどして、自社のリスクをできるだけ回避できるものにして おきましょう。 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |
M&Aのためのデューデリジェンス |
■デューデリジェンスの進め方 □出資やM&Aのメリット 中小企業にとっては人材の高齢化や人材不足といった厳しい経営環境が続いて このままでは、中小企業の存続が危ういものになりかねません。 そのようななか、中小企業が連携して体質強化し、共に成長していくために「出 社長のなかには、これらの手法の有効性は理解していながらも、「難しそう」という ここでは、出資やM&Aを行うときに必要になるデューデリジェンス(Due Diligence) 資金調達の方法として外部からの出資を募る企業が増加しています。 これまでは資金調達といえば、銀行からの借入による間接金融が中心でした。 そのおもな理由は、オーナーが100%出資にこだわるケースが多かったためです。 しかし経営のスピードアップのためにも、また財務体質強化のためにも、外部 取引先など事業上の関係の深い先であれば、その企業の将来性についても パートナーから出資をしてもらう、あるいは自分が出資するという関係によって また、たんなる出資だけでなく、企業間の本格的な資本提携、買収、合併など 人口減による国内需要の縮小などによる企業間の競争が激化するなかで、多 その方法は、スケールメリットをいかした経営のための同業他社との事業統合 そして、いずれの場合も事業の選択と集中、経営のスピード化が成功の鍵に 企業間の競争に勝ち残るためには、将来の優良事業に経営資源を集中させ、 そして、事業の選択と集中を行っていく方法として、主力部門以外の事業を切 また主力部門を強化するための企業買収も経営スピードを高めるために効果 資本提携や合併といった手法は、難しい手段であり、大企業の専売特許のよ いくつかの企業を統合することによって、これまでの管理コストを削減したり、 大手企業との競争に勝って生き残るために、今後、中小企業間でもますます また、後継者難である企業にとっては、事業承継の方法のひとつとして、日頃 オーナー自身の引退後の資産形成と従業員の職の確保のために、会社の買 企業が出資を検討するきっかけとして、ひとつには、取引先や知り合いから、 もうひとつの方法は、M&Aの仲介会社や金融機関などからよい会社があると 社長は、常日頃から経営基盤の強化と事業の拡大に関心をもっていますか 特に自社の経営が順調で資金余力もあり、ちょうど事業の拡大を考えている しかし、いくら魅力的な事業であっても、その企業に何の不安もないなら、出資 たとえば、業績は順調にみえても過去の事業の失敗や、関連企業が取り組む なかには、経営者が会社から多額の借入をしている、もしくは競合他社や顧客 出資やM&Aは、魅力的な事業戦略である反面、多くのリスクを含んでいるも これらのリスクは、相手先の経営者や紹介してくれた仲介者から話を聞くだけ 成功する出資やM&Aを行うためには、これまでの取引で得た情報や相手先 次項以降では、中小企業の経営者が出資やM&Aを検討する際に必要な基 1.デューデリジェンス デューデリジェンス(Due Diligence)とは、出資やM&Aなどを行う前の検討 同様の調査に「信用調査」がありますが、デューデリジェンスではそれよりも広 出資対象となる企業の過去から現在まで、さらには将来にわたって、事業の しかし、中小企業が行うデューデリジェンスについては、社内に専門知識を有 また、先方から提出された資料だけでは信頼性が低いと感じる場合は、実際 デューデリジェンスの目的はおもに3つの内容に分けることができます。 (1)企業価値を正しく評価する 出資を行う際には、出資総額はもとより、1株あたりの株価についても決定 株価の算定については、現在の時価純資産から株価を求める方法もあれ ※企業評価方法のひとつで、将来生み出すと予想されるキャッシュフローを 未上場企業の場合、貸借対照表上の資産について、減価償却が不十分で またDCFによって将来価値を算出している場合、大抵5年から6年先まで 出資による事業上のシナジーは、シェア拡大、ノウハウの高度化、従業員 したがって、まずは出資の目的を整理し、そのうえでどの程度の効果が得 またシナジーについて評価を行う場合には、金額で算定することで効果を つまり出資を行わずに自社の努力で目的を達成した場合と、出資をして目 ①自社が将来、参入を狙う市場や事業について研究開発の一環 ②自社の事業分野のシェア拡大もしくは商品の構成を増やすことを ③事業範囲を拡大することを目的に、自社の関連事業分野へ出資を ④既存の事業部門の機能・能力が不足している、もしくは将来不足 ⑤現在取引のある企業との関係強化を目的に、一部出資を行う たんなる出資の枠を越えて、M&Aにより事業を統合する場合は、企業間 企業間の主導権争いに発展し、白紙撤回せざるを得なくなることや、統合 M&Aを検討する際には、事前に、 ・どのような問題点が想定されるか ・それを回避するには、事前に条件として提示すべきことはないか ・想定される課題を回避するための対応策はあるか といったことについても十分に分析することが必要です。 大企業がデューデリジェンスを実施する場合には、経営企画、財務・経理、営 これは、デューデリジェンスが短期間にさまざまな分野からリスクや事業上の しかし、中小企業において、それだけの大規模な取り組みはなかなか難しい したがって、デューデリジェンスを実施する際には、この案件がどのような分野 デューデリジェンスにおいてもっとも重要であり、また最初に確認すべき事 ビジネスモデルの構造や事業優位性、競合他社の状況、事業の将来性な 現時点では、とても業績がよく、業界の評判も高いとしても、将来的に市場 そのような場合は出資を見送ったほうが無難です。 ・会社案内 ・商品パンフレット ・過去のパブリシティ ・市場や競合企業の状況についてわかる資料 ・顧客、取引先、仕入先などの特徴についてわかる資料 資産やキャッシュに関する財務分野のほか、会計や税務に関する分野も 大手企業の決算は、監査法人による監査が行われ、一定基準の会計処理 そのため、厳格な会計基準をもとに決算書が作成されており、内容を確認 しかし、未上場企業の場合は、会計基準が企業によって大きく異なるため、 十分な調査をせずに出資を行って、後から多額の損失を計上することに 高額な出資を考える場合には、必要な出費と割り切って、専門家に相談を また、上場をめざしている企業へ出資を行う際には、相手先企業は、監査 ・税務申告書、決算書および付属明細書(2期分以上) ・直近の試算表 ・固定資産台帳 ・今後の事業計画(3〜5期分) ・資金繰り実績表、資金繰り予定表(各1期分) ・借入先一覧およびリース一覧 ・株価算定根拠資料 ・資本政策(上場をめざす企業の場合) 意外とチェックが抜けやすいのがこの分野です。 重要な契約書や取締役会、株主総会議事録などをもとに決算書に表れな 現在は業績が好調であっても大口取引先との取引期限が定められていた また、高収益が望める商品開発を行っているものの、収益の大半を成功報 したがって、取引内容や契約書の内容が複雑であったり、大きな問題を抱 ・定款 ・登記簿謄本 ・株主名簿 ・重要な契約書 ・取引で使用している帳票類 ・事業に必要な特許、商標権、資格、免許など ・係争の有無など 会社を統合する場合はもちろんですが、資本提携後に事業提携を検討して 社員にとって不本意な統合を行った結果、幹部社員が部門ごと独立して また統合によって給与水準が下がるなど待遇面のマイナスがあると、多く 相手先の企業の組織風土やキーマンの確認、社員のモチベーション、待遇 ・経営理念 ・役員略歴 ・組織図および人員表 ・社員の待遇についてわかるもの(就業規則や給与一覧など) デューデリジェンスの一般的な手順は以下のようになっています。 ①案件概要の把握 始めに出資の依頼を受けるときには、企業名や目的など、情報量は少ない 相手は自社以外の複数の会社へ同時に提案をしている可能性もあります。 スピーディーに判断しないと、相手の気持ちが変わる場合もありますから、 より詳しい情報を得るために、守秘義務契約を締結します。 相手先企業はM&Aについて自社の経営幹部にも話さずに進めている 同様に出資をする側も社内で情報をオープンにすることなく、限られたメン これまでに確認した情報などから、デューデリジェンスを行うために、最適な 場合によっては、会計士、税理士、弁護士、M&Aアドバイザーなど外部の デューデリジェンスを続けるために必要な資料をリストアップし、相手先の 相手先企業の希望を確認しながら、どのようなスケジュールで進めるか、 特に外部の専門家に調査の委託を行う場合には、事前にどの程度のレベル 必要に応じて、専門家に相談します。 デューデリジエンスを進めるなかで、さらに確認したいことを質問状にまと 必要に応じて、実際に工場や店舗を見学します。 また本社に訪問し、経理関係の帳票類や契約書、議事録などを確認します。 従業員や経営幹部へヒアリングを行うこともあります。 企業理念や今後の事業のビジョンを聞きながら、同時に経営者の人柄、 面談は必要に応じて、何度でも行い、会社への思いが共感できるまで、 各担当者から、シナジーのほか、相手先企業の問題点や将来のリスク そして相手先企業から提示されている条件の妥当性、自社としての要望 株価について希望価額(営業権評価を含む)を提示するほか、その支払 現経営者に顧問として残ってもらうのか、その場合の報酬はどうするかと またM&Aでなく、一部出資を行う場合には、出資総額や役員の派遣の 出資やM&Aについておおむね合意が得られた場合は、基本合意契約を 相手先企業が複数の会社とM&Aの交渉を行っている場合は、この時点で 監査法人もしくは公認会計士へ買収監査を依頼します。 費用は折半で支払うことが多いようですが、事前に話し合いで取り決めます。 通常1週間から10日程度で報告書ができあがります。 また会計内容とは別に、弁護士へ法務の監査を依頼することもあります。 監査内容をもとに、最後に株式の価額、時期、現経営陣や社員の処遇、 現経営者の自宅や車が社宅や社用車となっている場合など、今後、会社 最終的な契約の調印のために、株主総会、取締役会を開催するなど事前
|
ベンチマーキング |
■ベンチマーキングとは 自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりもスピ しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、 近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。 多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の しかし今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。 良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が経営革新の 自社の課題解決のために、競合他社、異業種企業の優れた経営手法(「ベストプラクテ ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」に留まらず、なぜそれらができて また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、 ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベンチマ これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。 一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。 ここでは、ベンチマーキングの基本的導入方法・事例として、「業務改善」を 1.適用範囲の選定 まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。 例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を まずは自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、 改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。 この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。 新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、 自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要なのか」 調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を選 対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているところ この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要な 対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方 (1)社内をベンチマーク 社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。 同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対 他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。 直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、 他業種のため、比較的容易に情報 環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピー ベンチマーキングは自社の経営課題解決の 社長は従業員に対して「ベンチマーキングは 社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に ベンチマーキングは通常のPDCAサイクルを応用した、SPDLIサイクルに沿って PDCAサイクルはすでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点がおかれて また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズ(側面)が入っていることも特徴で 1.戦略策定(Strategy) 戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。 多くの企業ではすでに中期経営計画などで戦略を策定していると思います 自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱 ここからは「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明 実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。 ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのためのプロ プロジェクトチームのリーダーは当該戦略テーマについての責任を担ってい ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析するこ 自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどのよう これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との詳細 次のようなベンチマーキング設計シートをあらかじめ準備しておきます。 計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。 情報収集には新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資 また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、「視 さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。 競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング 「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。 なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが必 ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例 前述のベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満足度 複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから そして、自社の業務プロセスと比較してそのギャップを明らかにし、ギャップ を埋めるためには何をすればよいかを分析します。 分析結果はシートにまとめ、プロジェクトメンバー全員が認識を共有します。 そしてすべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、どの水 計画は実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要が また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。 ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例 たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいてい その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違 「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。 それぞれの活動についてプロジェクトリーダーはつねに進捗状況を確認し、 そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な 不十分な場合はベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLIサ このサイクルを粘り強く回し続けることがより高いレベルでの戦略実現につな 1.本質をしっかりと学ぶ ベンチマーキングは、たんなる「ものまね」ではありません。 優れた会社の手法を学ぶためには手法そのものだけではなく、「なぜその手法が ここで取り上げた「顧客満足度」についても、なぜベンチマーキング先企業は ベンチマーク項目を検討する際にはその点を十分に留意する必要がある。 また、ベンチマーク先企業は長年の取り組みの結果、成功手法を身につけて 自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければ ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることであって、 しかし、ベンチマーキングとはそもそも、自社内のこれまでのやり方だけでは解決 最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。 しかし、ライバル企業がまだ気づいていない「お宝」が得られる可能性もあります。 自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っていること
|
ベンチマーキング |
自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりも しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、 より効果的に成功企業の経営手法を取り入れるための、ベンチマーキングの手法に 1.ベンチマーキングとは ベンチマーキングとは、競合他社、異業種企業の優れた経営手法を研究し、自社と 簡単にいえば、成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むという 比較的大きな会社であれば、社内の他部門から学べることもあるでしょう。 でしょう。 客として入店し、料理の味、接客、価格、調度品などを確認します。 自店よりも優れていて、かつ導入可能なものについては自店に取り込もうとする これらの一般的な視察だけでも、有力な情報が得られることはあります。 このような味が出せるのか」、「なぜこんなに心地よい接客が提供できるのか」 ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」を超えて、なぜそれらが たとえば、飲食店が新たにデリバリーサービスを開始する際には、すでに宅配ビジネス 近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。 向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。 しかし今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。 今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切に 近道になるとして注目されているのです。 2.ベンチマーキングの対象 ベンチマーキングの対象は次のように分類できます。 内部ベンチマーキングとは、組織内、自社内、グループ内など、似通った たとえば、長時間残業が続くスタッフ部門のなかで、経理部だけはほぼ定時 同様に営業一課と営業二課の比較、第一工場と第二工場の比較などから、 社内部ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な 一方で、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較になる 競合ベンチマーキングとは、自社と競合する業種の企業から学ぶことです。 自社が飲食店であれば、競合する繁盛店の秘訣を学ぶということになります。 究極のベンチマーキングでは、自社の課題解決のために、すべての成功企業 しかし、それでもできるだけ多くの繁盛店を参考にするほうが、より自社に したがって、物理的に訪問が容易な地域を中心に数多くの繁盛店の事例を比較 また、ときには自店が存在する地域と食文化や生活習慣が全く異なる地域 ベンチマーキングの対象は競合他社にとどまりません。 機能ベンチマーキングとは、比較対象となる機能を有する自社業界以外の 大手企業の機能ベンチマーキングの例としては、ゼロックスが全くの異業種 たとえば、飲食店の「接客」については、多くの小売業やサービス業の接客を 異業種であるため、業界内の慣習や常識の範囲では解決できない問題に ベンチマーキングをより効果的に行うためには、次のような手順で進めます。 なお、ここでは「競合ベンチマーキング」と「機能ベンチマーキング」を想定して 企業成長のためには、「社会動向」、「顧客動向」、「新技術」など、あらゆる 環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピードが加速する今日においては、学びの ベンチマーキングは自社の経営課題解決のための最適解を、すでに成功している 社長は従業員に対して「ベンチマーキングは成長の早道である」ことを説明し、 社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に詳細に説明することなども ベンチマーキングは通常のPDCA(「計画」、「実施」、「評価」、「改善」) サイクルを応用した、SPDLIサイクルに沿って進めて行くのが一般的です。PDCAサイクルはすでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点が おかれていますが、SPDLIサイクルでは、「何を学び、何を革新すべきか」という 戦略段階から始めます。 また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズが入っていることも特徴です。 (1)戦略策定(Strategy) 戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。 多くの企業ではすでに中期経営計画などで戦略を策定していると思いますが、 自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱み」 ここからは「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明 実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。 ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのための プロジェクトチームのリーダーは当該戦略テーマについての責任を担っている ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析する 自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどの これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との 次のようなベンチマーキング設計シートをあらかじめ準備しておき 計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。 情報収集には新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資料、 また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、 さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。 競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング先 「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。 なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが 前述のベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満
(4)学習・分析(Learning) 複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから特に優れており、かつ自社でも対応可能と思われる手法を抽出します。 そして、自社の業務プロセスと比較してそのギャップを明らかにし、ギャップ を埋めるためには何をすればよいかを分析します。 分析結果はベンチマーキング分析シートにまとめ、プロジェクトメンバー 全員が認識を共有します。 そしてすべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、 どの水準を達成するか」という具体的な実行計画を策定します。 計画は実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要が あります。 また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。 ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例 たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいている 場合などは、自社でそれをすぐに実現することは難しいかもしれません。 その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違い などから、自社が当面めざすべき体制を考えます。 (5)革新(lnnovation) 「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。 それぞれの活動についてプロジェクトリーダーはつねに進捗状況を確認し、 そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な 不十分な場合はベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLI このサイクルを粘り強く回し続けることがより高いレベルでの戦略実現に
3.留意点 (1)本質をしっかりと学ぶ ベンチマーキングは、たんなる「ものまね」ではありません。 優れた企業の手法を学ぶためには手法そのものだけではなく、「なぜその 冒頭であげた飲食店の例では「なぜこの値段でこのような味が出せるのか」 同様に本項で取り上げた「顧客満足度」についても、なぜベンチマーキング ベンチマーク項目を検討する際にはその点を十分に留意する必要があります。 また、ベンチマーク先企業は長年の取り組みの結果、成功手法を身につけて 自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければ
(2)ヒントはどこにでもある ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることで しかし、ベンチマーキングとはそもそも、自社内のこれまでのやり方だけでは 最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。 特に異業種から学ぶ「機能ベンチマーキング」ではライバル企業がまだ 自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っている □ベンチマーキングのプロセス ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベ これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。 一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。 ここでは、ベンチマーキングの基本的導入事例として、「業務改善」をテーマに進めて まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。 例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を まずは自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、 できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチ 改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。 この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。 新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、 自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要な 調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を 対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているとこ この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要 対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方 (1)社内ベンチマーキング 社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。 社内ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な分 一方で、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較にな 同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対 同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、 他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。 直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、 他業種のため、比較的容易に情報を公開してもらえます。 業界、業務に限らず、広く比較対象を選定するベンチマーキングです。 例えば、「検品について」なら検査を行う作業はすべてベンチマーキングの対 契約書の内容、領収証の発行の仕方、労務時間管理など、細かい業務工程 比較対象の選定が終わったら、「処理フロー」「保管方法」「スケジュール」「使 そして「付加価値性」「利益性」「効率性」「迅速性」などのベンチマーク項目 ベストプラクティスには、「どれだけの業績、生産性を上げることがが可能か」 と 自社の粗利益率は60%だが同業他社は75%の場合、この結果を目標として 例えば、同業他社が自動機械導入による省力化、臨時雇用による人件費削減、 作成したベストプラクティスをベースに、目標に到達するまでの期間や費用、労 例えば「納期短縮」をベンチマーキングの対象とした場合を考えてみます。 従来の自社の納期が6日でベストプラクティスが2日だった場合、いきなり2日に 目標では従来の半分である3日に設定するなど、実現の範囲内で定めます。 これに限らず、現状が数値で把握され、ベストプラクティスにより近づけることが 目標を実現するための具体的な導入計画を作成するのが、次の手順となります。 この段階ではあくまで実現させることが目的となり、詳細な計画を作成します。 計画を実行に移すのが最終段階ですが、ベンチマーキングの手法では、計画を 実際に「目標を達成できたのか」「効果はどの程度なのか」という評価を行うこと 達成のレベルを把握するためには、ベンチマークの把握を継続的に行い、常 常に効果を把握していれば、さらにベストプラクティスに近づけるよう、再度目標 |
成果を生むアライアンス |
企業経営上で用いるアライアンスとは、 複数の企業が経済的なメリットを享受するために、 アライアンスを締結することで、経営資源、スキル、知識などを結びつけることによって、 近年、市場環境や技術動向など急速な変化、企業間競争のグローバル化の進展など このような中で、複数の企業が共同で事業を行うケースが多くみられるようになってい 特に、経営資源に限りのある中小企業にとっては、アライアンスを通じて自社に不足 そして、アライアンスをより効果的にするためにもプレスリリースは経営戦略として欠 なお、広義な視点から分類するとアライアンスは「資本関係をともなうアライアンス」と 1.アライアンスの判断基準は? アライアンスは、企業が新技術・新製品開発、販売チャネルの開拓などさまざまな事 実際には、人員や資金など自社の経営資源によって一定の制約を受けますが、 従って、アライアンスを検討する際には、事業などを遂行するための方策としてアライ このように、自社の判断基準を明確にする際には、「自社のドメインやコア・コンピタ しかし、ドメインやコア・コンピタンスという視点から検討するだけでは、その基準 従って、アライアンスを検討する際には、より明確な基準を持って検討することが アライアンスを検討する際の基本的な判断基準としては、以下の5点があります。 (1)経営資源による制約 アライアンスを行う際には、何らかの経営資源を投入する必要があります。 例えば、既存の事業を超えた役割を担うのであれば、新規に設備を導入したり、 また、既存の事業の枠内で役割を担う場合は、大規模な設備投資は不要かも 取引コストとは、「期待している業務内容を的確に反映した契約を策定・締結し、 例えば、新製品を共同で開発する場合を考えてみましょう。 本来、効率的なアライアンス関係を構築する際には、プロジェクトの全容を明ら しかし、既存の製品と異なり、新製品の開発に際しては「全体としてどのようなこ このようなケースでは、複数の企業間で役割を事前に明確化することは困難でしょう。 ましてや、それらを厳密に明文化することは事実上不可能です。 このため、実際には包括的な契約を締結したうえで、詳細な業務内容はアライアンス しかし、この場合にも問題があります。 悪意の有無にかかわらず、企業には「自社にとって最小の負担で最大の効果を また、アライアンス先の企業の業務に対する認識が、こちらの期待と異なってい このような状況を防止するためには、アライアンス先の企業を監視したり、綿 このように、取引コストという考え方は、アライアンスの実効性を確保するための プロジェクト内には、密接に関連している業務などがあります。 このような相互依存性の強い業務を遂行するためには担当する企業や部門間 しかし、異なる企業間では綿密なコミュニケーションを図ることは困難な場合が少 従って、一般的には、このような相互依存性の高い業務などは、複数の企業で また、顧客からの声を取り入れた新製品開発に取り組む場合は、開発部門と販 「相互の依存関係」は、製品特性からも検討する必要があります。 例えば、モジュール化(1つの複雑なシステムを交換可能な独立した機能を持つ 特許などの知的財産に加え、さまざまな活動を通じて得たノウハウなど企業が有 アライアンスにおいては、経営において重要な役割を果たす知識・情報について 一つ目は知識・情報の蓄積です。 知識・情報には学んだりすることによって得ることのできるものもありますが、 このような知識は実際に経験することでしか得ることができないため、アライアンス もう一つは、知識・情報流出のリスクです。 アライアンスでは、アライアンス先の企業との間でさまざまな知識・情報のやり取り 知識・情報の流出は機密保持契約などである程度は防ぐことはできますが、その 従って、アライアンスにおいては、知識・情報の蓄積の機会の喪失と流出のリス アライアンスで得た技術やノウハウは、アライアンスの枠組みの中でだけ使用さ 例えば、新製品開発に向けたアライアンスの中で、新たなパーツの開発を担当 例えば、競合企業が多い分野や技術開発のスピードが速い分野ではアライアン また、モジュール化されている、あるいは今後モジュール化が進むことが予測さ これらのポイントの中には、その影響を明確に把握することが困難なものや、 しかし、実際にアライアンスへの取り組みを検討する際には、これらのポイントを 前述した基準などに基づいてアライアンスの実施を決定した後は、「どのような形で 冒頭で紹介したように、「資本関係のともなわないアライアンス」には、契約関係に基 「新商品開発」「共同研究」などアライアンスに対する目的や求める成果が明確な これは、参加企業数が多いことからアライアンス全体のマネジメントが非常に難しいと また、多数の参加企業がいることによる責任感の希薄さといった要因もあり、企業の 近年、アライアンスに取り組む企業は、非常に多くなっています。 しかし、それらの取り組みの中には失敗に終わるケースもあります。 また、「失敗とまではいえないものの、思うような成果を得ることができなかった」 そのため、アライアンスに取り組む際には「対象事業の成功」のみを追い求めがち もちろん、アライアンスの第一の目的は対象事業の成功にある以上、そうした視点も 従って、アライアンスを、より効果的に企業活動に生かしていくためには、アライアン お問合せ・ご質問はこちら
|
対応エリア | 静岡・愛知県内、東京周辺 |
---|