社内文書の保存・保管管理

社内文書の書き方

■ビジネス文書とは

 新入社員が会社で業務を行っていく上で必ず知っておかなければならないことの一つが
 「ビジネス文書の作成方法」です。

 「ビジネス文書」は、情報の婁理・伝達、案件の依頼、業務の報告など、社内外の人と
 コミュニケーションを取り、業務を進めていく上で欠かせないものです。

 ビジネス文書には社内文書と社外文書があり、例えば次のような種類があります。

  社内文暮:報告書、議事録、稟議書、企画書、始末書、欠勤届、休暇願など

  社外文書:契約書、請求書、提案書、依頼状、通知状、照会状、わび状など

 社内外問わず、ビジネス文書は、口頭による伝達とは異なり、保存することができ、記録として
 残ります。

 また、文書として作成したものは、口頭による伝達などよりも「正式なもの」あるいは「公的な
 もの」と認識されます。

 そのため、ビジネス文書においてミスや間違いはできる限り避けなければなりません。

 また、ビジネス文書は記録が残る「正式なもの」であり、社内外の業務上の大切な情報が記載
 されているものです。

 従って、作成したビジネス文書の内容を業務と関係のない他人に漏らしたりすることがあっては
 なりません。

 このようなことから、ビジネス文書を作成する際に重要となるのは、ビジネス文書に対する
 正しい知識と責任感です。

 正しい知識を土台とし、責任感を持ち細心の注意を払って作成することによって、ビジネス文書
 にあってはならないミスを防止することができるのです。

□積極的に社内文書を覚えよう

 社会人として恥ずかしくないビジネス文書を作成するために、まずビジネス文書にはどのような
 ものがあるのかを知りましょう。

 社内におけるビジネス文書にはさまざまな種類がありますが、大きく次の3種類に分けられます。

  ・会社から従業員に対するビジネス文書
   →「通達文」「通知書」「案内状」など

  ・会社における業務上必要なビジネス文書
   →「報告書」「連絡書」「稟議書」など

  ・業務の一環ではなく、従業員の勤務生活に関する届け出などのビジネス文書
   →「欠勤届」「育児・介護休暇届」「経費精算書」など

 社内文書は文字通り、自分の会社の中で使用する文書で、会社によって作成ルールや書式が定め
 られています。

 担当する業務によって発生する文書の種類は異なりますが、より早く社内文書の作成方法を身に
 付けるためにも、会社で定められた作成ルールや書式を覚えるようにしましょう。

 会社で用いられる文事はすべてビジネス文事です。

 報告書や通達などは、いかにもビジネス文書という感じがして、新入社員でも、それと認識
 しやすいでしょう。

 しかし、そのほかにも、例えば「休暇を取るとき」「早退するとき」「営業活動で発生した
 交通費を清算するとき」など、ビジネス文書は会社生活におけるあらゆるシーンで必要となる
 のです。

 主な社内文書の例は次の通りです。社内文書の名称と内容を把握し、会社で「◯◯を作成して」
 と指示された際に、どのような文書なのかが分かるようにしておきましょう。

  <主な社内文書の例>

   報告書:業務報告書、出張報告書など、業務を実行した結果などを文書にまとめたもの

   連絡書:部署ごと、あるいは全社的な連絡事項などを文暮にまとめたもの

   稟議書:案件について上司や組織上層部に決裁、承認を求めるための文書

   企画書:業務に関する企画を文暮にまとめたもの

   議事録:会議の内容を文暮にまとめたもの

   始末書:業務に関して何らかの不始末などを起こしてしまった場合の報告と、二度と
   不始末を起こさないという旨を文書にまとめたもの

 待っているだけでは社内文書の作成方法は身に付きませんし、上達しません。

 文書を作成する姿勢、文書作成をより早くマスターしたい意欲などをアピールするように心掛ける
 ことが大切です。

 業務上よく用いられる社内文書は、これまでに作成されたものが一番参考になります。

 分からない語句や疑問点は先輩社員に質問して一つ一つ解決していきましょう。

□社内文書の作成例

 1.営業報告書

  営業報告書は、どのくらいの成果があり、今後どのようにしていく方針なのかなどを報告する
  もので、会社にとって売り上げや今後の方向性などの検討に直結する大切な報告書です。

  <営業報告書例:自社販売の商品やサービスに関する営業報告書>

  <
営業報告書作成のポイント>

   ・今後の販売活動計画など会社の戦略的部分に関わる報告書のため、必ず数値やデータなどの
    客観的な情報を記載する。また、データなどの出所を明らかにする。

   ・今後の見通しや所感についても、単なる感想や推測を避け、客観的なデータなどの事実に
    基づいて筋道の通った内容になるよう心掛ける。

   ・詳細なデータや、報告に基づく販売企画などの別添資料がある場合は、必ず添付資料の
    有無、何通あるのかなどを記載しておく。

   ・文章は完結に分かりやすくまとめるよう心掛ける。

 2.出張報告書

  出張報告書は、出張先での業務報告を文書にまとめたものです。

  単に期日や行き先だけでなく、出張の目的、出張の結果を踏まえ今後どうするのか、などを
  簡潔にまとめる必要があります。

  <出張報告書(例):自社商品やサービス販売に際しての事前調査移管する出張報告>

  <出張報告書作成のポイント>

   ・出張先、出張の期日、目的など、報告すべき項目に漏れがないよう確認しながら作成する。

   ・内容はできるだけ簡潔に分かりやすい文章でまとめるよう心掛ける。

   ・詳細な資料やデータなどを必要とする場合は別添資料としてまとめ、その旨を明記しておく。

   ・出張報告書では「何のためにその出張業務が実施されたか」という「目的」がポイントと
    なるため、目的を明確に記載する。

   ・商談のための出張の場合は、どこでどの企業の誰と会い、どのような商談を行ったか、
    商談の結果、結果を踏まえた今後の対策などを漏れなく記載する。

 3.稟議書

  稟議書は、案件について上司や組織上層部の決裁・承認を求めるための文書です。

  主に何かの経費が発生する場合に用いられるケースが多いようです。

  <稟議書(例):支店改装について>

  <稟議書作成のポイント>

   ・どのような事項が稟議書となる対象なのかは各会社ごとに定められているため、稟議書の
    対象となる案件について会社ごとの「稟議規定」や「業務分掌規定」などであらかじめ 
    確認する。

   ・件名と要旨(理由)、必要経費の額は明確に分かりやすく記載する。

   ・承認が下りるまでに時間がかかる可能性があるため、稟議書はなるべく早く作成して提出
    するよう心掛ける。

   ・案件の趣旨、意義を明確に伝えることが要求されるため、できる限り具体的かつ簡潔に
    まとめるよう心掛ける。

 4.議事録

  議事録は、会議の記録を残しておく大切な文書です。

  社内で持ち回りで作成するケースもあります。

  <議事録(例):新商品宣伝に関する会議の議事録>

  <議事録作成のポイント>

   ・何についての会議なのか分かるよう、議事録名は「◯◯会議議事録」と明記する。

   ・後に問い合わせを受ける可能性があるため、作成者を必ず明記する。

   ・会議の出席者は、「◯◯商品開発部長」などのように、肩書まで明記する。

   ・出席者の列挙順は、役職の高いほうから列挙する。同列の役職の場合は社内の組織図を
    参考にしたり、上司などに質問しながら部門間における上下関係を踏襲する。

   ・議事録は分かりやすいことが基本であるため、議事や経過について箇条書きで簡潔に
    まとめる。

   ・決定事項、あるいは懸案事項は箇条書きで必ず記載する。

  議事録は、あくまでも会議の記録であり、分かりやすく簡潔にまとめられていなければなりません。

  会議に出席していない人が読んだ場合でも(多くの場合は会議に出席していない人が読む)、
  何についての会議で、誰が出席し、誰が何を説明し、何が決定され、次回以降の懸案事項は
  何なのか、などが分かりやすくまとめられている必要があります。

□社内文書の作成に当たって

 これまで、いくつかの社内文書を例に挙げながら、その作成方法やポイントなどをみてきました。

 どんな文書を作成するにも、まず、「読み手は誰なのか」を意識するとともに、必ず「5W2H」
 をベースにまとめるようにしましょう。

 5W2Hは次の通りです。

  ・When:いつ(期日、時間)

  ・Who:杜が(報告者、作成者)

  ・Where:どこで(場所)

  ・What:何を(業務の内容)

  ・Why:なぜ(目的、理由)

  ・How:どのように(方法、プロセス)

  ・How much:いくらで(費用、価格)

 上記の項目が分からなければビジネス文書としての意味をなさないケースもあります。

 初めのうちは、社内文書を作成する際、箇条書きで「5W2H」を記載し、社内文書に書かなければ
 ならないことを自分の中で明確にしておくとよいかもしれません。

 慣れてくると、自然と「5W2H」が頭の中で組み立てられるようになるはずです。

 最後に、これまで紹介してきた社内文書の作成練習用フォーマットを紹介します。

 社内文書の作成方法をマスターするための練習用として活用してみてください。

□社内文書の作成練習用フォーマット

  営業報告書フォーマット

  出張報告書フォーマット  

  稟議書フォーマット  

  議事録フォーマット



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社内文書の保存・保管管理

文書の危機管理と文書管理規程

■危機管理の基本はバックアップ

 多くの日本企業は経営効率を高めるために経営機能を極力集中させてきました。

 集中化は効率的である半面、機能が集中した地域が被災すれば、打撃も大きいという弱点を持って
 います。

 そのため、被害を最小限に抑えるためには、機能分散化という観点が必要になってきます。

 中小企業の場合、大企業に比べて機能分散による危機回避策はとりにくい面がありますが、被災
 すれば
企業存続の危機に瀕する可能性が高いともいえます。

 企業における危機はさまざまありますが、ここでは契約書などの重要文書や、コンピューターシステムに
 おける
データやプログラムをどのように災害から守っていくかについて考えます。

 1.重要書類の保管

  経理や総務には、会計関係の帳簿や手形、現金、社員台帳、人事調書など重要な書類が集中している
  ため、
それら重要書類の保管と緊急時持ち出しには明確なルールを作っておく必要があります。

  重要書類については、

   →特定の場所に整理・保管し、

   →緊急時持ち出し責任者が指揮をとって、

   →担当者が持ち出す

  ようにします。

  そして、緊急時の持ち出し書類については、責任者や担当者だけでなく、他の社員も保管場所や持ち
  出し方法に
ついての知識を持っておくようにします。

  また、机上にだらしなく文書などを放り出しておくのは、危険であるばかりでなく、分類やタイトル
  づけが適正でないと、いざという時に重要度の判定ができないことになります。

  もちろん、書類に限らず、フィルムやディスクについても同様です。

 

  <チェックポイント>

   (1)会計帳簿や契約書、社員台帳などの重要書類は整理、保管されているか

   (2)現金、小切手、手形、債券、株券は耐火金庫に保管されているか

   (3)重要書類などの緊急持ち出しはルール化されているか

 
2.コンピューター・システムの防災

  コンピューター・システムの防災には費用がかかるので、特別な対策をとっていない企業が多いよ
  うです。

  しかし、近年のコンピューター利用範囲の拡大ぶりを考えれば、コンピューターがストップする事態に
  陥った
場合のダメージは計りしれません。

  手作業で業務を処理しなければならなくなって業務効率が大幅にダウンしたり、在庫が把握できない
  ために
受注・出荷がスムーズに行かないなどの弊害が予想されます。

  被災のどのレベルにも有効で、悔いを残さない方法はたったひとつしかありません。

  それは、非常時持ち出し的な重要文書に関して、一元管理はやめて、コピー(バックアップ用のメディ
  ア)または、
原本(オリジナル)のどちらかを遠隔地に置き、二元管理体制を敷いておく方法です。

  これは、同一災害が同時に2カ所を襲わないという仮定に基づく考え方によります。

  そして、分散するコピーの保護は、できるだけ離れた地点で行われるべきでしょう。

  企業の所在地によっては、早期に「第二本社的機能」の確立と、その移転を視野に入れる
  必要があります。

  現在、会社法、金融商品取引法、法人税法などの各種法令への対応をはじめ、ISO認証取得に関わる各種
  文書の保存義務、契約関係書類や社内通達など、企業が保存しなければならない文書は増加するばかり
  です。

  こうしたことから、社内で文書の保存、管理に必要な基準を定め、効率的な運営を図る必要があり
  ます。

  その根拠となるのが、文書管理規程です。

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社内文書の保存・保管管理

契約書作成の基本
 

  ■契約書に関する基本的な約束ごと

   1.契約と契約書の関係

     契約というのは、「双方の合意」に基づくものであり、口頭であってもお互いに
     納得のうえで約束すれば、それだけで原則として契約は成立したことになります。

     したがって、契約書に調印しなければ契約は有効に成立しないとか、契約書を
     作らなければ契約は無効であるというように考えることは間違いであり、法律
     上も特別の様式が要求される契約以外にはそのように規定されてはいません。

     これは、

      契約を結ぶ形式は各人の自由であり、
      契約当事者の意思の合致が認められれば、その方式は
      どのようなものでもよい

     という「契約自由の原則」の内容である「契約方式の自由という原則」があるた
     めです。

   2.契約書が必要な理由

     「契約方式自由の原則」によれば、あえて契約書を作る必要はないのですが、
     もし相手が「契約の存在を無視する」、「契約通り約束を実行しない」といった
     場合には、何らかの証拠に基づいて、相手の責任を追及しなければなりません。

     また、たんなる約束ではなく、法的な効果の発生する「契約」であったと後に主
     張するためにも、契約書を作ることは非常に大事になってきます。

     証拠として考えた場合、契約に立ち会った立会人の証言等も有力ですが、何
     より確実で決定的な証拠は「契約書」という客観的な存在です。

     したがって、口頭契約で済ませてしまうよりも、書面による契約をするほうがよ
     り確実だといえます。

     このように

      契約書は、「契約の成立」、「契約内容」を立証する
      最有力の証拠文書(切り札)として作成するもの

     であり、つねにこの目的を念頭において契約書を作ることが重要なポイントと
     なります。

     ただし、贈与契約に関しては、書面を取り交わしていなければ各当事者が契
     約を取り消すことができますが、書面を取り交わしてしまうと契約を取り消すこ
     とができないとされています。

     よって、贈与契約における契約書は、たんなる 「証拠」以上の特別な効力が
     あることになります(民法550条)。

     <契約書を作成する際のポイント>

      ・契約の成立時期・有効期間を明記する

      ・契約の当事者を確定する

      ・契約の趣旨・目的を明らかにする

      ・契約の対象・目的物を正確に表示する

      ・定義・用語を正確に使用する

      ・双方の権利・義務の内容を明確にする

   3.契約書にどこまで記載すべきか

     もっとも簡単に、そして内容に不足がないように契約書を作成するならば、最
     低限、

      ・約束の事項が法律に規定されていない点

      ・法律の規定と違った取り決め(特約)をしたい点

     について記載するようにします。

     契約の内容が不明確であったり、決めていない事項があった場合には、その
     契約と同一または類似の場合を規定した法律が適用され、契約書の内容の
     不足が補われます。

     つまり、わざわざ契約書に記入していなくても、問題が生じた際には法律の条
     項に基づいて判断されるため、極端にいえば、

      法律で規定されているような事項は省略しても構わない

     ということになります。

     ただし、上記の2点に関しては、法律が代わりに守ってくれるということはない
     ため、必ず契約書にその条項を記載する必要があります。

     また、法律の規定と違った取り決め(特約)を定めた場合であっても、法律が強
     行規定である場合には、その特約については効力を有さないため注意が必要
     です(民法91条参照)。
 
   4.文書の作成が必要な場合

     契約を結ぶ方式はあくまで各人の自由で、口頭の契約でも書面による契約で
     も、契約としての法律上の効力は同じです。

     しかし例外として、たとえば次のような場合には法律で契約書を作るように特
     別の規定がおかれ、契約の書面化が必要となります。

      A.保証契約(民法446条2項)

      B.農地または採草放牧地の賃貸借契約(いわゆる小作契約)(農地法21条)

      C.借地借家法に基づく次の契約書

        a.存続期間を50年以上とする定期借地権設定契約(借地借家法22条)
        b.事業用定期借地権設定契約(同法23条3項)
        c.定期建物賃貸借契約(同法38条)
        d.取壊予定の建物の賃貸借契約(同法39条2項)

      D.労働組合との労働協約(労働組合法14条)

   このように契約の要件として契約書の作成が規定されている場合、これに反して
   契約書を作らなかった場合は契約自体の成立が認められません。

   また、それ以外にも建設業法第25条等の業法により、契約自体は認められるも
   のの、違反に対する罰則が適用されて科料や罰金等の制裁が科せられることが
   あります。

  □署名と記名

   1.押印の意味

     法律上意味をもつ文書を作成するときには、署名と押印をするのが−般的です。

     法律上は署名が原則であって印は必要がないことになっています(例として手
     形法1条8号、13条)が、念のため、署名の下にさらに印を押しておくのがもっ
     とも安全な方法といえるでしょう。

     ただし、裁判では署名が有効か無効かという形式的な判断だけでは十分でな
     く、その文書が果たして

      ・本人の真意により作られたものか

      ・最終的な意思表示として手渡されたものか

      ・契約の合意の成立を十分に立証できる証拠書類といえるか

     という点を実質的に判断・審理されますので、氏名の記載が法律上の形式的
     要件を満たしていても、それだけで安心するわけにはいかないようです。

   2.署名や記名の仕方

     署名でも記名でも、それが個人である場合には「その姓名を正確に(フルネー
     ムで)表記すること」が原則です。

     要するに

      ・それが誰であるのか  

      ・その権利、義務の主体が誰であるのか

     を明確にすることが大切であり、その必要性を満たすことが署名・記名のポイ
     ントとなるのです。

     この署名・記名に関して問題になりやすいのが法人(会社)を相手にする場合
     ですが、トラブルを避けるためには次にあげるポイントに注意しましょう。

     (1)会社を法律上の当事者とし、会社が法律的責任を負い
       またはその責任を負わせるつもりで署名・記名させる場合

         ○○○株式会社
          代表取締役  ○ ○ ○ ○ 印

       上記のように、「会社名」「代表資格」、「代表者の氏別」(在任中の代表権
       をもつ者であること(肩書))の3つが記載されてはじめて正式な「会社の文
       書」として考えられます。

       したがって、この3つの条件のうち1つでも欠けた文書は、たとえ会社の角
       印が押されていても、後で法的には無効の文書と判断されることになる可
       能性があります。

       そして、特に重要な文書では、会社の角印だけでなく登録印も使用してもら
       うことを忘れないでください。

     (2)相手が個人の場合

         ○○県○○市○○区○○町○番○号
           ○  ○  ○  ○           印

       上記のように個人の氏名(できるだけ個人の住所も併せて)を記入し、肩書
       きはつけないようにすることがポイントです。

       もし、会社名や代表資格を記入してしまえば、契約の相手は個人ではなく
       法人である会社であると判断されることもあるからです。

       印鑑も、個人のものを使用してもらってください。

  □印鑑

   1.実印と認印の違い

     印鑑には実印と認印がありますが、その効果には差がありません。

     実印と認印の違いは印材の価格や印影の立派さ等ではなく、役所(個人の場
     合は市町村役場、会社の場合は法務局)に印鑑登録をしてあるかどうかという
     ことです。

     実印は印影を役所に登録しているため、確かに本人の印鑑であることを証明
     する能力(実印の証拠能力)があります。

     しかし、印鑑である以上は実印も認印も、印鑑としての機能・効力は同じであ
     り、認印といえども軽々しく扱うことはできません。
 
   2.実印と印鑑登録証明書

     実印の登録は原則として1人1個です。

     だからこそ、「実印を押す」ということは、間違いなく本人が責任をもって作成し
     た書類であることを証明することになるのです。

     そして、実印であることを証明するために用いられるのが「印鑑登録証明書
     (印鑑証明)」です。

     印鑑登録証明書には、

      ・実印の印影

      ・印鑑登録した本人(実印の持ち主)の住所氏名

     が記されていますので、それが本人の実印であることが確認できるわけです。

     実印はきちんと登録されたものであり、本人の意思に基づき押印された印であ
     るという証拠になるため、責任を逃れることは原則としてできません。

     重要な契約をするときに実印を用いる意味はここにあります。

     さらに、実印に印鑑証明書を添付すればいっそう証拠能力が高くなります。

   3.実印が必要な場合

     「実印を要する」という要求がない限りは認印でもかまいませんが、

      ・土地や建物の登記

      ・公正証書の作成

     等の場合には、実印の使用および印鑑登録証明書の提出が義務づけられて
     いることがあります。

     また、重要な契約を交わす必要があるときにはやはり実印を用い、相手にも
     実印の使用および印鑑証明の添付を要求するほうが安全でしょう。

     前述のとおり、実印と認印の差は印鑑登録の有無のみであり、実印を認印同
     様に使っても、特に不都合はありません。

  □書類作成

   契約書の作成にあたっては、特にこのように書かなければいけないといった規定
   はありません。

   表題に関しても、「○○契約書」と書いても「○○証書」と書いてもかまいません。

   そのほか、誓約書、念書、協定書、覚書等自由に選ぶことができます。

   契約書の前文には、通常、次の内容を書きますが、これも法的根拠はありません。

    ・契約当事者の名称

    ・甲、乙の略称を用いることの記載

    ・契約の目的・要旨
 
   契約内容を記載するうえでの留意点は契約内容により異なりますが、上記以外
   にも最低限必要と思われる記載事項は次のとおりです。

   なお、民法に規定されている典型契約については、条文上契約の成立要件が明
   らかとなっていることがほとんどです。

   (1)売買契約の場合(民法555条)

     A.対象となる財産の特定

       何を売買するのか、その形状、数量といった性質と権利の種類

     B.代金の額と支払いの時期

       正確な金額のほか、「時価」といった金額を表す表現でもよい
       (ただし、後日金額が明確にできないとトラブルが起きる)。

       支払時期は明確に記述する

     C.引き渡しの方法と時期

       割賦販売のような特別な場合を除き一般的には残金と同時に引き渡す

     D.売り主と買い主の名前

   (2)賃貸借契約の場合((民法601条)

     A.賃貸借の目的物

     B.目的物の用法

       どのような使い方をするのか

     C.賃貸料

       支払時期、支払方法

     D.賃貸借期間

   (3)贈与契約の場合(民法549条)

     A.贈与と受諾の意思表示

       贈与することと、それを受諾することの両方の関係を明確にする

     B.対象となる財産の特定

     C.所有権移転の時期

   (4)委託契約の場合(民法643条)

      A.委託と承諾の意思表示

       委託することと受託することの両方の関係を明確にする

     B.委託する行為の内容

     C.報酬の有無

       有償契約、無償契約のどちらに属するのか。
       有償の場合は、報酬の定めを明確にする(民法648条1項)。

  □公正証書

   公正証書とは、公証人が作成した法律行為や権利に関する証書のことで、一般
   の人が作成した私製証書とは異なり、その証書自体が特別な効力をもつものです。

   もっとも多く利用されるのは、賃貸借契約、債務弁済契約等の金銭取り立てに関
   する契約です。

   金銭の支払いを約束した条項については、これらの契約を交わす際に強制執行 
   認諾文言(当事者が公正証書に違反したら相手方から強制執行されても異議が
   ありません、という趣旨の条項)付の公正証書を作成することにより(これを実務
   的に「執行証書」といいます)、不払いが生じた際でも訴訟を起こさず強制執行す
   ることができます。

   このほか、金銭に替わる代替物や有価証券についても同様の効果があります。

   ただし、借地契約や借家契約における賃貸物件の返還、物の引渡契約等金銭の
   支払義務以外の内容における強制執行が必要な場合は、公正証書を作っても別
   途裁判を行う必要があります。

   公正証書を作成するためには、公証役場に出向き、内容、条項、特記事項を説明
   し、作成を依頼します。

   この場合、自分が契約当事者の本人(あるいは代理人)であることを証明するた
   めに、実印と印鑑証明書などの本人証明書(代理人自身の本人証明書)を持参
   する必要があります。

   そのほか、法人組織の場合は、代表者の資格証明書か法人の登記簿も必要です。

   なお、印鑑証明書の有効期間は作成後3カ月以内のものに限ります。

   参考までに、法律行為に係る一般の場合における公証人の証書作成手数料を紹
   介します。

   ただし、この証書作成費用は、証書の種類・法律行為の目的の価額等によって異
   なるため、詳しくは最寄りの公証役場にご確認ください。
 

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社内文書の保存・保管管理

値上げ通知書の作成

  ■値上げ通知書作成のポイント

   1.作成のポイント

     商品価格の値上げなどビジネスにおける値上げ通知は、自社の意見を打ち出
     し、かつ相手を理解した表現の工夫が必要となります。

     以下の点に注意します。

      ・どの製品をいつ、いくら値上げするかについて、明確に表示する。

      ・値上げの理由について簡潔にまとめる。

     曖昧な表現を避け、簡潔な文事にするのがポイントです。

     しかし、相手の心証を害さないよう言葉を選び、礼儀、丁寧さには十分に配慮
     します。

     また、通知書の発送の時期によって相手が受ける印象が左右されるので、効
     果的なタイミングを見計らうことも重要です。

   2.挨拶状の構成

     手紙形式の文書は、「拝啓」や「謹啓」などの言葉(起首)ではじまり、その後に
     時候の挨拶、本文(主文)が続きます。

     最後は「敬具」や「敬白」などの言葉(結語)で締めくくります。

   3.時候の挨拶

     時候の挨拶には、月々に応じて決まった表現があります。

     一般的な例を以下にご紹介します。

     〔1月〕 ・厳寒の候  ・酷寒のみぎり  ・極寒の候  ・厳冬の折柄  

          ・寒気殊のほか厳しい折柄

     〔2月〕  ・余寒のみぎり  ・残寒の節  ・春寒の候  ・晩冬の折柄

          ・春寒料崎(りょうしょう)の候

     〔3月〕 ・早春のみぎり  ・浅春の候  ・軽暖の候  ・春暖の候
          ・浅暖の候

     〔4月〕 ・春陽のみぎり   ・桜花の節  ・春暖の候  ・仲春のみぎり

          ・桜花爛漫の侯  ・暮春の候  ・晩春の候

     〔5月〕 ・新緑の折柄  ・初夏の侯  ・青葉の候

     〔6月〕 ・向暑のみぎり  ・立夏のみぎり  ・向夏の節  ・梅雨の侯

          ・薄暑のみぎり

     〔7月〕 ・酷暑の候  ・盛夏の候  ・大暑の侯  ・厳暑のみぎり

          ・三伏の節  ・極暑の時

     〔8月〕 ・晩夏のみぎり  ・秋暑の候  ・残暑告烈のみぎり

     〔9月〕 ・新秋のみぎり  ・初秋の候  ・早秋の候  ・新涼の侯

          ・秋気清爽の折柄  ・白露の侯

     〔10月〕 ・秋冷の候 ・清秋のみぎり ・仲秋の候 ・秋涼の折柄

           ・錦秋の候  ・秋長の侯  ・秋気爽涼のみぎり

     〔11月〕 ・晩秋のみぎり  ・向寒のみぎり  ・霜寒の節  ・暮秋の候

           ・深冷の候・初霜の折柄

     〔12月〕 ・初冬のみぎり  ・厳寒の節  ・歳末の候  ・寒冷のみぎり

           ・歳暮の候  ・歳末ご多忙の折柄

  □値上げ通知書文例

   1.価格改定通知

     (1)例1

     (2)例2

     (3)例3

   2.地代値上げ通知

     (1)例1

     (2)例2

     (3)例3

 

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社内文書の保存・保管管理

社内文書の保存・保管管理


  企業活動を行っていくうえではさまざまな文書が発生し、これらを保存・保管していく
  必要があります。

  これまでは紙の書類としてそのままファイリングを行い、キャビネット、書架、書庫などを
  利用して保存・保管ができていました。

  しかし、ISOの取得により各種の文書を保存する義務が生じているほか、PL法への対応のための
  文書、CS(顧客満足度)向上のためのデータ保管など、文書の保存や保管のニーズは非常に高く
  なっています。

  「保存」と「保管」は同じような意味で使われますが、一般には次のような違いがあります。

  文書についていえば、ダンボール箱などに入れて倉庫に放り込んでおくのは「保存」であり、
  特定の文書を探そうとすると、ホコリにまみれながら肉体労働をする羽目になります。

  これに対して利用することを前提に、文書棚などに整理して保存しておくのが「保管」で、必要に 
  応じて簡単に文書が取り出せるように配慮されています。

  なお、「電子帳簿保存法」(正式名称:「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存 
  方法等の特例に関する法律」)が98年に制定され、これにより所得税法、法人税法で7年間保存する 
  ように義務付けられている帳簿書類の電子保存が認められています。

  国税庁の査察で、帳簿などを提出するように指示されなければ通常は使用する必要は
  なく、まさに「保存」することだけが必要です。

  文書の保存期間 

   文書の保存期間をどうするかは、個々の企業の考え方や事情によっても異なります。

   保存期間が法律で定められている文書については、法律の規定に従えば問題ありま
   せん。

   文書の保存を義務付ける主な法律は以下の通りです。

    <税務関係>

     法人税法、消費税法など

    <人事・労務関係>

     労働基準法、労働安全衛生法、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法、雇用
     保険徴収法、労働者災害補償保険法など

    <総務・庶務関係>

     商法、商法特例法、証券取引法、産業廃棄物処理法など

   保存文書は一般に「永久」「10年」「7年」「3年」などの保存期間で保存されている
   ものが多いようです。

   現在、会社法、金融商品取引法、法人税法などの各種法令への対応をはじめ、ISO
   認証取得に関わる各種文書の保存義務、契約関係書類や社内通達など、企業が
   保存しなければならない文書は増加するばかりです。

   こうしたことから、社内で文書の保存、管理に必要な基準を定め、効率的な運営を
   図る必要があります。 


  □効率的な文書管理

   文書の保存年限を決めることは、文書管理の一つの方法でしかありません。

   より効率的な文書管理を行うためには、さらに文書の整理・保管方法を含めた全体的な
   仕組みを作って、これを運用していくことが必要になります。

    1)文書管理のルールを明確にする

     社内における文書管理の統一的なルールを取り決めます。

     文書をどのように分類し、どのような形で保管するのかなど、文書管理の全体的な
     仕組みを作ります。

     そして、これを「文書管理規程」として明文化しておくようにします。

    2)文書管理の責任者を決める

     「文書管理規程」を決めた後、実際に運用する体制を作るのですが、ルールの監
     視役としての責任者を明確にすることが大切です。

     一般的には、文書管理は総務部門の担当業務になっているので、総務部長が適
     任でしょう。
 
    3)文書整理の際の分類基準を決める

     整理とは、一定の基準のもとに分類し、必要なときにすぐに取り出せる状況にして
     おくことをいいます。

     いかに分かりやすく文書を整理しておくかが重要なポイントです。

     普通は文書の内容によって契約関係文書、会議関係文書などと区分けしておき
     ますが、さらに細かく分類するときは、契約の種類ごと、会議の種類ごとに分類し
     ます。

     なお、書庫などで一括して保管する場合は、文書の内容だけでなく、保存年限別に
     分類しておいてもよいでしょう。

    4)電子媒体による保存

     文書というと、通常は紙の状態を連想しますが、最近ではCDやMOなどの電子媒
     体で保存するケースが多くなっています。

     紙に比べて問題にならないくらい保存スペースが少なくてすむからです。

     官庁への届出書類など法定文書でも、電子媒体での保存が認められる方向にな
     ってきており、文書保存についてはできる限り電子媒体の活用を考えるべきでし
     ょう。

     しかし、電子媒体での保存には問題もあります。

     電子情報として保存しているので、文書内容を見たり実際に使用する場合には、
     ディスプレイに表示したり、プリントアウトしなければなりません。

     また、保存状態が悪かったり、操作ミスなどによってデータが消えてしまう可能性も
     あります。

     さらに注意を要するのは、内容の改ざんが簡単にできてしまうことです。

     従って、電子媒体を利用する際には、保存状態や保安面での管理を徹底するこ
     とが何よりも大切です。

  □重要書類の保管

   経理や総務には、会計関係の帳簿や手形、現金、社員台帳、人事調書など重要な書類が集中して
   いるため、それら重要書類の保管と緊急時持ち出しには明確なルールを作っておく必要がありま
   す。

   重要書類については、

    ・特定の場所に整理・保管

    ・緊急時持ち出し責任者が指揮をとる

    ・担当者が持ち出す

   そして、緊急時の持ち出し書類については、責任者や担当者だけでなく、他の社員も保管場所や 
   持ち出し方法についての知識を持っておくようにします。

   また、机上にだらしなく文書などを放り出しておくのは、危険であるばかりでなく、分類やタイ
   トルづけが適正でないと、いざという時に重要度の判定ができないことになります。

   書類に限らず、フィルムやディスクについても同様です。

   <チェックポイント>

    (1)会計帳簿や契約書、社員台帳などの重要書類は整理、保管されているか

    (2)現金、小切手、手形、債券、株券は耐火金庫に保管されているか

    (3)重要書類などの緊急持ち出しはルール化されているか


  □コンピューター・システムの防災

   コンピューター・システムの防災には費用がかかるので、特別な対策をとっていない企業
   が多いようです。

   しかし、近年のコンピューター利用範囲の拡大ぶりを考えれば、コンピューターがスト
   ップする事態に陥った場合のダメージは計りしれません。

   手作業で業務を処理しなければならなくなって業務効率が大幅にダウンしたり、在庫が
   把握できないために受注・出荷がスムーズに行かないなどの弊害が予想されます。

   被災のどのレベルにも有効で、悔いを残さない方法はたったひとつしかありません。

   それは、非常時持ち出し的な重要文書に関して、一元管理はやめて、コピー(バック
   アップ用のメディア)または、原本(オリジナル)のどちらかを遠隔地に置き、二元管理
   体制を敷いておく方法です。

   これは、同一災害が同時に2カ所を襲わないという仮定に基づく考え方によります。

   そして、分散するコピーの保護は、できるだけ離れた地点で行われるべきでしょう。

   <チェックポイント>

    (1)データのコピーを取っているか

    (2)ソフトウェアのコピーを取っているか

    (3)コンピューター処理の分散化が図られているか

    (4)故障・損傷に対するコンピューター・メーカーの支援体制はできているか

    (5)コンピューター・ルームの耐震性・防水性・防火性は確保されているか

   中小企業では大企業に比べて機能分散による危機回避策はとりにくい面があります
   が、被災すれば企業存続の危機に瀕する可能性が高いともいえます。

   企業における危機はさまざまありますが、契約書などの重要文書や、コンピュータ
   システムにおけるデータやプログラムをどのように災害から守っていくかです。

   これからの災害対策は経営トップが情報システムとその保護の重要性を認識し、投資を
   認めるかどうかにかかっており、ささいな対策でも、経営トップが危機管理意識を持って
   実行することが重要で、災害を避けるために、また、もし被災したとしても早急に復旧
   できるような体制を企業内に作り上げることが経営トップの責任になります。

   被災時に復旧させるシステムの優先度を決めるにもトップの強力なイニシアチブは
   必要です。 

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