業務改善の方法と進め方

効率的な業務計画の立て方

 1.業務計画の重要性

  毎日の入出金の管理や、手形の決済日の確認、それにともなう運転資金の手当や当座残高の確認、
  生産計画や在庫確認など、会社の運営にかかわる日常の事務処理は、思いのほか繁雑で手間が
  かかります。

  だからこそ、事務処理は資金状況などを把握したうえで効率良く行いたいものです。

  それにはやはり、

   しっかりとした業務計画をたてて

   計画を確認しながら順次業務を遂行

  していくのが最善といえるでしょう。

  業務計画作成の重要性はまさにここにあります。

  しっかりとした業務計画を立てることは、効率の良い仕事につながります。

  そのうえ、業務計画作成の段階で、今後しなければならない業務をあらかじめ把握することも
  でき、まさに一石二鳥といえます。

  ◎業務計画書へ記入すべきこと
   業務計画書といっても、年度ごとの会社全体の運営方針を決定するいわゆる「事業計画」の
   ように、大がかりで長期的な計画書を作成する必要はありません。

   とりあえず、日常の事務処理を行ううえで把握しておきたいのは、業種にもよりますが、むこう
   2~3カ月の予定なのではないでしょうか。

   しかし、だからといってむこう2~3カ月のすべての仕事をただ闇雲に計画書に書きさえすれば
   良いというわけではありません。

   社長が把握しておくべき内容として業務計画書に特に記入しておくべきこととしては、

    →給与支払の確認

    →売掛金の回収

    →借入金の返済

    →そのほかの支出予定の確認

    →そのほかの入金予定の確認

    →棚卸予定

    →生産予定

    →商品納品日の確認

   など、資金繰りや会社の基幹業務に関連する項目でしょう。

   業務計画は単なる仕事の予定表ではなく、あくまでも把握しておくべき業務の計画書であるわけ
   ですから、あまり些細な事柄を書きすぎては繁雑になりすぎるのです。

 2.業務計画の作成方法

  前ページのサンプル表をご覧ください。用紙に罫線を引いただけの非常に簡単な表ですが、物品
  販売業または製造業を想定して、最低限必要な項目だけの記入欄を用意した業務計画表のサンプル
  です。

  あまりにも簡単な表で拍子抜けするかもしれませんが、資金繰りと納期管理だけが目的の計画表
  ならば、これで十分といえます。

  記入方法は簡単明瞭です。

    「入金」欄には入金予定金額と相手先

    「支出」欄には支出の予定金額と相手先

  手形の決済もこの欄に書いてください。

  「納品」欄には客先に対する商品の納品予定を

    商品名、客先、数量

  まで書きます。

  単価と請求予定金額まで書く欄があればもっと良いかもしれません。

  「搬入」欄には原材料などが納品される予定日を

    「納品」欄と同様

  に書き込みます。

  「事務処理」欄には給与振込の手続きや保険の手続き、請求書の発行日など、

    しなければならないさまざまな事務処理

  を書き込みます。

  一番右の

    「当座予定残高」欄にはその日にあるべきはずの当座預金の残高

  を書き込みます。

  月末の数字が分かっていれば、あとは入金、出金欄の数字を足し引きすれば自動的に算出できる
  はずです。

  当座預金の流れが複雑な場合には、入・出金のプラスマイナスでも構いません。

  さらにサンプルでは、

    上段に予定、下段に実績

  を書き込めるようにしてあります。

  サンプルの表は掲載するためにかなり縮小してありますが、実際には2枚に分けたりもっと大きな
  表を作ったほうが書きやすいと思います。

  これで、向こう1カ月の会社のお金の流れ、商品の流れが一目瞭然になったことになります。

  なお、項目記入の順序は、

    毎月かならずあるルーチンワーク(定期入金など)

    金額の大きな取引

    金額の小さな取引

  の順に書き込んで行けば間違いが少なくなると思います。

 3.計画表を基に経営計画を検討する

  とりあえず、向こう2~3カ月程の計画表を作成して見てください。

  それをじっくり眺めていくと、日によって当座残高の多い日、少ない日が見えてくるのではない
  でしょうか。

  さらに見ていくと、月によっても当座の残高に

    裕がある月とない月

  があることにあらためて気がつかれるのではないかと思います。

  手形の決済期日の都合や入金予定日の関係で、会社の持っている現金残高は常に変動している
  のです。

  そこで今度は、これを逆に利用して今後の計画を練っていきます。

    現金に余裕がない月にはできるだけ支払は持ってこない

  ようにし、銀行からの借り入れで手形を決済するようなことはできるならばしないで、手形の
  サイトを延ばしてもらったり、逆に

    現金がある月は手形のサイトを早める代わりに値引きしてくれるよう交渉する

  など、向こう数カ月の会社の資金状況を把握しておくだけで、資金繰りにもひと工夫加えられる
  わけです。

  販売計画や生産計画も同様に一覧表に整理してじっくりと眺めて見ることによって、

    パートタイム労働者の効果的な導入時期

  や、在庫の出やすい季節、商品などの事実が見えてくるのではないかと思います。

  例に挙げたのは最も簡単な形の業務計画表に基づいた業務計画の立て方なのですが、これを応用
  してさらに長期の資金計画を練ったり、資金繰り以外の分野にこの方法を適用したりといった
  やり方も可能ですので、それぞれの事情にあわせてやり方を検討してみるのも良いでしょう。

  ◎営業分野での上手な業務計画のたて方
   営業職においての業務計画の上手なたて方としては、例えば以下のような方法が考えられます。

   まず、業務計画表を作り

    →月ごとの営業ターゲット先の整理

    →月ごとの売上高の整理

    →営業先の商談進行状況再確認

   などを確認し、それらに基づいた

    →中期目標

    →コスト削減などを目的とした予算目標

    →通常の業務に基づいた定常目標

   といった内容を営業社員別や部課ごとに整理して、それを3カ月に一度程度の割合で各社員ごとに

    →行動計画

   の形で各部署が持ち寄ります。

   それらをすり合わせ、検討することによって

    →類似の計画や業務の統合

    →社内の営業戦略の弱点の洗い出し

    →営業目標の再検討

   などがより分かりやすく整理された形でできるのではないでしょうか。

   また、これらの作業によって社内体制の不備などの問題点も浮かび上がることになるので、
   組織改革の足掛りとしても有効な方法であるといえます。

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業務改善の方法と進め方

5S活動による企業体質改善

 ■整理の進め方:整理は5S成功のカギを握る 迷わず手順通り進めること

 5Sのステップごとの進め方について解説します。

 第1ステップは「整理」の進め方。

 5Sの基本は「整理」「整頓」「清掃」の3Sであり、まずは整理から実施することをお勧めします。

 なぜなら、不要なものがなく なると職場の景色が変わり、変化が目に見えて分かるからです。

 コストがいくら削減できたかよりも、職場の景色が変わる方が社員の改善に対する意識は高まる。

 1.整理基準の作成

  整理とは、必要なモノと不要なモノを分けて、不要なモノを処分すること。

  整理を始める際に重要なのは、必要なモノと不要なモノを分ける基準です。

  この基準がないと、個人の判断基準でモノを捨ててしまう。

  そのため、「部長に怒られる」とか「片付けようとして怒られた」などという理由で処分できない
  ケースや、人が変わると必要なモノも変わるため整理が進まないというような事態が起きます。

  5S活動に何度も取り組んでは失敗している会社は、明確な整理基準を設けていないケ ースが多い。

  その結果、声が大きい人がいると活動が進んだり、人が変わると停滞したり後戻りしたりする。

  真の5S活動のためには、「後戻りしない仕組み」が必要であり、そのための基準づくりが欠か
  せません。

  5Sの中で最後のSである躾(SHITSUKE)は、「規則」や「ルール」を守ることです。

  その規則やルールがないのに、「うちは躾ができていないから、5Sが進まない」というのは
  おかしな話です。

  仕組みをつくりながら、躾をしていくのです。

  整理の基準は、生産現場であれば「不要品基準」「手持ち基準」、事務現場であれば「書類の保管
  や保存基準」「書類を即廃棄する基準(用済みのメモなど明らかに保管が不要なモノを指す)」
  「事務用品管理基準」などが挙げられます。

  不要品基準は、モノの未使用期間で作成されることが多い。

  例えば、3年間未使用であれば「不要」とする基準です。

  ここでいう不要とは「今の職場で不要」という意味で、他の部署で使用したり売却したりす る
  場合もあり得るため、すべて捨てるという意味ではない。

  整理は、今の職場で不要な モノをなくし、必要なモノだけがある職場にすることです。

  不要品基準と対照的な基準が「必要」 という「手持ち基準」である、現場で必要な工具は何本か
  という基準をつくり、それ以外は全部回収する。

  現場には必要以上に工具などがあり、これを探すムダがさらなるムダにつながり、非効率的な
  現場をつくり出しています。

  また、事務現場では「事務用品管理基準」に基づいて、基準以上のモノはすべて回収する。

  これを実施することで、事務用品だけでも 100 万円以上に上っていた会社が、その後1年以上も
  事務用品を発注せずに済んだケースもある。

 2.整理の準備

  整理基準を作成したら、次に実際に整理を行うための準備が必要だ。

  (1)不要品に貼る伝票の用意

  (2)不要品置場の設置

  不要品伝票は、一般的に赤札と言われ るように赤い紙で作成される。

  赤札を貼り、不要品が目立つようにする。

  もう1つ重要となるのが、不要品置き 場の設置です。

  不要品を1カ所に集めると、多くのムダがあったと認識できる。

  集めないと意外に気付かないのです。

  また、移動させないといつまでも整理が行われない ケースもある(大きな機械や設備など動かせ
  ないものもある)。

  8年以上前に整理をした赤札の不要品がまだ残っていた会社もあります。

  整理を確実に実施するために、不要品置き場は必須。

 3.整理の実施

  整理の実施とは、整理基準に基づいて 、不要品伝票を貼り、不要品置き場へ移動させること。

  一般的に「赤札作戦」「不要品の一掃作戦」などと呼び、全社的に取り組む。

  ポイントは、なるべく一度に実施するこ と。

  ぐずぐずしていると、不要品がなくならないため、結局「前の5Sのときと一緒だ 」となり、
  5S活動自体が停滞してしまう。

  また不要品置き場に出したものは、す ぐに処分する。

  捨てられるものを捨てることがポイント。

  社長が会社のものは自分の分身と考えるために、モノを捨てられない会社によく出会う。

  気持ちは分かるが、痛みに負けて捨てきれずにいると、いつまでもモノに埋もれた職場から脱出
  できない。

  モ ノを捨てる痛みを改善へつなげることが重要です。

□整頓の進め方:整頓は5Sの真髄 表示がない所に「モ ノ」が置かれていない 状態にすること

 次のステップである整頓について解説します。

 整頓は5Sの真髄の部分であり、この整頓の成功が5Sの本質です。

 「徹底したムダ の排除と問題点を顕在化して問題解決する」という体質づくりにつながるため、
 非常に重要なステップです。

 1.整頓前の整理が重要

  整頓に当たっては、まず整理ができて いることが大前提。

  整理ができていないと不要なモノまで整頓してしまい、その作業がすべて無意味になる。

  これは整頓しても大きな効果が上がらない会社に多いケースです。

  100 個あるモノを 20 個に減らし、本当に利益が出るモノだけを整頓した方が効率は 良いに決まっ
  ている。

  ところが、整理と整頓を一緒にしてしまうため、ムダなモノにま で表示をしてしまい、5Sの
  実施による効率化が図れていない会社が多いのが現実です。

  整頓実施前の徹底した整理により、必要なもの、本当に利益を生み出すモノだけにすることが
  必要です。

 2.整頓の3要素

  整頓とは、「必要なモノを所定の場所にきちんと表示すること」です。

  整頓の3要素と呼ばれるものに、

  (1)置き場

  (2)置き方

  (3)表示  

  がある。

  これらの要素を決定することが重要となります。

  置き場とは、床や棚・キャビネット、 台車、パレット、机などを置く場所です。

  置き方には、「置く」「姿置き」「掛ける」などがある。

  表示には「現物表示」と「置き場表示」があり、工具などの現物だけに 表示する場合と棚などの
  置き場に表示する場合があり、両方に表示することもあります。

  表示方法には、「ラベル」「かんばん」「絵姿表示」などがあり、表示の工夫によってその徹底
  度が図れる。

  整頓は、この3要素をきちんと基準に落とし込んだ後に実施することが必要。

  3要素を実施しないやり方ではバラバラの整頓になり、人が変わると置き場や置き方、表示が
  変わってしまうため組織として統一感に欠けます。

  整理に不要品基準や手持ち基準という整理基準があるように、整頓にも整頓基準が必要です。

 3.整頓の実施

  整頓基準を作成すれば、次は整頓基準に沿って徹底した整頓を行う。

  徹底した整頓とは、まず表示のないところにモノが置か れていない状態にすること。

  そのためには置き方を工夫し、なるべく姿置きをする。

  モノがなくなったらその形がそのまま残るような置き方や、表示の工夫、置き場表示だ けでなく、
  現物表示の両方に表示するなどの徹底が必要。

  さらに、表示方法はラベルだけでなく 、絵姿表示を行うなど気恥ずかしいぐらい徹底して実行
  するのが、元に戻らない秘訣です。

  加工前や加工後、検査前や検査後、仕掛品置き場など状態別の表示も行い、停滞をなくす整頓や
  品質を高める整頓を実施することで、さまざまな効率化や収益改善につ ながる。

  仕掛品置き場を区画してつくると、生産の遅れが目に見えて分かるようになる 。

  現場が一致団結して改善を行うことで、生産性を 30%上げた企業もあります。

  生産が遅れているという問題点が顕在化されたのです。

  材料や部品、消耗品、事務所の事務用品に関しては、在庫が何個になったら何個発注するという
  発注点管理を行い、在庫のムダをなくすことも必要。

  とにかく整頓を徹底させるのが、5S成功の秘訣です。

  この段階が始まると、「なかなか5Sが進まない」と言うリーダーが出てくる。

  それはリーダーシップが発揮できていなかったり、5Sを徹底させる術が分からないからです。

 4.方針に落とし込む

  第1ステップである整理はキックオフから1~2カ月に実施し、その後に整頓を行う。

  この段階になると、進んでいるチー ムと進んでいないチームが出てきて、「なかなか言うことを
  聞いてくれない」「忙しい」と不満を言うリーダーが現れる。

  そこで、そうならないために5S活動を徹底させるマネジメントの方法について解説します。

  マネジメントの目的は、設定した方針・目標を実現するためにシステムを構築し、それを効果的に
  運用するプロセス管理を実施しながら、方針・目標を達成して成果を上げることです。

  5Sを徹底させるためのマネジメントは、5S活動を方針・目標に盛り込むことがポイント。

  会社の方針となれば、おのずと 実行度は上がるからです。

  また、方針に挙がっているにもかかわらず実行しないリーダー もいるでしょうが、それはそれで
  リーダー自身の方針の理解度が分かる。

  会社経営とは、トップの考えを働く社員の協力を得て達成することです。

  リーダーが「的確な判断基準」を持っているか、また持てるようになるかが、5S活動を通して
  分かるようになる。

  5S活動最大の狙いの1つ として、リーダーシップの向上があると言われるゆえん。

 5.活動板の設置と有効利用

  関与先には活動板を使ったマネ ジメントで5Sの実行度を上げるよう助言している。

  活動板を使うことで、「やりっぱなし」「言いっぱなし」を防止し、5S活動を徹底させることが
  狙いです。

  また次のVM (=Visual Management)活動を見据えてのこと。

  5Sが「物の見える化」だとすれば、VMは「マネジメントの見える化」。

  見えないマネジメントを 見えるようにすることは非常に難しい。

  5S活動のマネジメントを実施しながら、その感覚を養わせるのです。

  活動板を有効に活用するためには、まず設置場所に気を付けなければならない。

  設置場所は、社員が集まりやすいところや常に職場から見える場所にすることが重要。

  このようなボードは、通路やだれも見ないような場所に設置したために次第に見なくなったり、
  工場見学者のための活動板になったりしているケースも少なくない。

  活動板を設置したら、次は内容です。

  方法としては、計画表や図、グラフなどの資料を掲示するか、活動板にフォームをつくって、直接
  書き込むかのいずれかです。

  内容は、まず方針・目標が見えるものにする こと。

  目標が見えれば、5Sの活動計画が見える(Plan)。

  5Sが進んでいないリーダーは、間違いなく計画をきちんと立てていない。

  全体の計画を受けて、自チームの 活動計画をきちんと立てることがポイントです。

  さらに計画ができたら、 実施状況を見えるようにする(Do)。

  さらに重要なのは、計画通りにできない問題点や課題は何かをきちんと見えるようにする
  ことです(Check・Action)。

  企業の業績は、見識のある経営者や管理者が PDCA、特にCとAのレビューを徹底的に行えば
  間違いなく向上する。

  5S活動も同じです。

  このCとAが問題点と対策となる。

  計画や成果が見える企業は多いが、CとAが見える企業は少ない。

  常にリーダーを中心にこの活動板の前で、計画の進行度や問題点・課題、対策としてだれがいつ
  までにやるかを徹底的に話し合えば、5S活動の実行度は間違いなく上がる。

  活動板は掲示板でなく、管理板として使うことが必要です。

□清掃の進め方:清掃は単にきれいにする以上の狙いと効果がある

 次に、整理、整頓後のステップである清掃につ いて解説します。

 整頓後というよりも、整頓を行いながら清掃するケースがほとんどです。

 なぜなら、整頓は常に「改善、改善」で定着までの期間が長いからです。

 1.清掃の狙いと効果

  清掃は、5Sの中の1つ。

  しかし、清掃を5Sそのものと間違えて、掃除をもって5Sを実行していると言う企業が多い。

  まずは、清掃は5Sの中の1つだと認識し、狙いと効果を十分理解することが重要です。

  工場の建物や機械・設備、床は放っておけば 、どんどん汚れる。

  関与先において、汚れるだけならまだしも機械が故障したり、寿命が短くなったり、製品の品質
  不良につながったりと、安全衛生上の問題が出ている企業が多く見られる。

  機械・設備を少し清掃すれば故障は防げるのに、それ をせずに故障するまで放置したため、
  修理に2~3日かかっている現場も少なくない。

  そういう企業に限って「稼働率向上」と叫びながら、肝心な時に機械・設備が動かずに 納期遅れ
  などの問題を起こして、顧客に迷惑を掛けている。

  5Sの清掃は、「故障防止のための清掃」「品質向上のための清掃」「安全衛生上の清掃」などを
  実施することで、故障など不都合を未然に防ぐことができる。

  単にきれいにする以上の狙いと効果がある。

 2.清掃基準・清掃分担表の作成と清掃の実施

  清掃は、一斉に大掃除を行うことから始める 。

  しかし、整理や整頓のステップで掃除をしているケースや、初めから清掃を実施して いる企業が
  多い。

  あまりに汚い場合は掃除をするとしても、まずは整理や整頓と同様に 清掃基準や清掃分担表を作成
  するように指導している。

  (1)清掃基準の作成
   機械・設備などに関しては、清掃基準を 作成する必要がある。

   これはどれくらいの頻度で、どの個所を、どの程度実施すれば故障しないかという基準を決めた
   もの 。

   現場は、これに沿って清掃をすれば良い。

   A社は、基準を作成して清掃を実行し、故障を半減させた。

   それまでは各自が勝手に清掃していたため、清掃内容に差が生じていた。

   ある者はほとんど清掃しなかったり、清掃のポイントが ズレているために故障が発生。

   また、ある者はピカピカに磨きすぎたため時間がかかり、他の機械・設備を清掃できずに
   故障が起きたりした。

   このような状況を変えるため、5Sの清掃の中で基準を作成して点検パトロールとうまく組み
   合わせた結果、故障数の大幅な低減に至った。

   「清掃は点検なり」とも言われ、業績向上に大きく寄与するものです。

  (2)清掃分担表の作成
   機械・設備以外は、清掃分担表を作成するケースが多い。

   清掃分担表には次の項目を載せることが望ましい。

    ① 対象場所(範囲を明確)

    ② 清掃個所(どこを)

    ③ 清掃担当者(だれが)

    ④ 実施時間(いつ、何分間で)

    ⑤ 使用用具(どのように)

   清掃分担表を作成せず、清掃チェック表だけ作成している企業をよく見かけるが、そ れでは
   定着しにくい。

   やる人とやらない人が 出てきたり、人によって清掃のやり方が異なったりするからです。

   清掃分担表を作成すれば全員参加を促すことができ、会社には役割分担があると認識してもら
   えるなどその効果は大きい。

   整理・整頓・清掃の3Sが5Sの基本です。

   この繰り返しが企業体質改善や業績向上に寄与することとなります。
 

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業務改善の方法と進め方

仕事のスピードを上げる

■業務の効率化を行い、仕事量自体を減らせ

 1.スピードは企業価値の1つ

  情報化時代の真っ只中、それに伴ってすべての物事のスピードが日を追うごとに速まっている。

  ビジネス社会においても、「緩肉早食(遅い者を早い者が喰う)の時代」とまで言われています。

  いまやスピードが企業の命運を左右するといっても過言ではない。

  したがって、オフィス用品の通販会社「アスクル」にも代表されるように、スピードそのものを
  コアコンビタンスとして成長している企業が多いのもそのためです。

  このようにスピードは、企業価値の1つとなっています。

  いくらスキルが高くとも、実行スピードが鈍ければ結果は生まれないということです。

  スピードを高めるには「業務の効率化を行い、仕事量自体を少なくする」「業務を早く進め、
  時間を短縮する」という2つの切り口があるが、まずはじめに、前者について述べてみます。

 2.捨てることが早さを生む

  コンサルティングを受ける会社では、まず「社員活動分析」が行われます。

  具体的には、2週間から1カ月くらいの期間内で、対象者の業務活動の内容を分析するものです。

  販売不振に陥っている関与先B社の営業マンの活動分析を行ったが、その内容は意外なものでした。

  B社の社長は、自社の営業マンの商談工数は全業務時間の30~40%を占めていると思い込んで
  いましたが、実態調査の結果を見るとなんと8.2%しかなかった。

  毎日、早朝から夜遅くまで働いているにもかかわらず、実際に付加価値を生む業務は、全体の
  わずか8.2%。

  これで業績など上がるわけがない。

  B社の場合、事務処理時間と移動時間にムダとムラが多かった。

  この2つについて業務削減の指導を行いました。

  また、同一目的の資料(書類)が数種類ある会社も見受けられる。

  二重の業務や時間を費やすというムダに気付いていない。

  このケースでは、次に挙げる二つのパターンが多い。

  1つは優秀な社員が新しくフォームを改良したのに、旧フォームの廃止の徹底不足により、新旧版
  が併用されているというパターン。

  2つ目は、フォームの改廃が通達されたにもかかわらず、あえて慣れている旧フォームを使って
  いるというパターンです。

  企業は生きている。

  日々の業務の中で次々と新しいものが生まれるだけに、並行して不必要なものは捨てていかねば
  ならない。

  いかに「捨てるか」が効率化の最も重要な基本動作である。

 3.今の仕事の2分の1は無駄な仕事と考えるところからスタートする

  図は業務内容の構成を表している。

  ご覧の通り、真に付加価値を生む仕事は業務全体の25%しかなく、あとの25%は付加価値を生む
  仕事の準備業務である。

  営業で言えば、受注を取るための情報収集や資料作成、移動などがこれに当たります。

  そして残りの50%が、いわゆる「ムダ」な仕事と考えるのです。

  このように大胆な発想で業務を見直すと、捨てるべきものが明確になる。

  (1)その仕事の目的は?

   仕事には必ず目的がある。

   ところが、昔からやっているから何となく続けている、または手段が目的化しているという
   ことが必ずある。

   時々、“資料作り魔”とでも命名したいくらいの幹部を拝見する。

   資料作成が好きで、次々に新たなフォームを作成することが管理レベルを上げていくことと
   勘違いし、かえって社内を混乱させている。

   「手段の目的化」の典型です。

  (2)どうしても必要か?

   仕事の目的がはっきりしたならば、次はその仕事が「どうしても必要か」を考える。

   ゼロべ-スで自らの業務を見直していただきたい。

   ITを導入したのに、仕事のやり方は以前のままということはないか。

   不必要な仕事や不必要なチェック、あるいは不必要な書類をはっきりさせ、過去の慣習を断ち
   切り、思い切って「捨てる」ことが大事です。

  (3)捨てるところはないか?

   どうしても必要な場合、全部はムリだが一部でも捨てられるところはないかを考える。

   これだけでも、大きな効率化につながる。

  (4)代わるべきものはないか?

   ほかのもので代替できないかという視点である。

   製造管理で言うVE(バリューエンジニアリング)、VA(バリューアナライシス)です。

   今使っているモノより、早くて安くあがるツールはないか、他の人にもできないか(自分より
   人件費の低い人など)、他にやり方はないかという発想です。

  (5)一気に(一括して)できないか?

   「まとめられないか」という着眼である。

   関連のある仕事を別々の人が行うよりも、1人に任せてしまった方が効率は上がる。

   また1人の人でも、一つの仕事を途中で切り上げ、別の仕事をし、また前の仕事に戻るという
   やり方をするよりも、一気に集中してやった方が作業効率は上がる。

   さらに拠点展開している企業では、事務処理などの業務は一個所にまとめた方が効率的です。

   ITの発達した現在、間接部門のコストリダクションとしては、ぜひ見直すべきポイントです。

 4.仕事のリストラ(再構築)の進め方

  仕事を重要度と緊急度とで区分すると図の通りになります。

  最も優先度の高い仕事は当然、重要度・緊急度ともに大きな仕事である。

  次に優先すべき仕事はどれか。

  仕事の経験から言えば、業績の悪い会社の職務分析を行うと、明らかに「重要度:小、緊急度:大」
  の仕事の比率が高い。

  この手の会社は大変忙しそうにドタバタと走り回ってはいるが、その中身は成果につながらない
  ムダな仕事やクレーム・ミスの処理といった、本来ならやらなくても良い仕事が多い。

  先行で業務の管理がなされていないため、つい後追いで追いこまれてやるような仕事である。

  これらの仕事は、精神的にも肉体的にも非常に疲れる。

  では、この「重要度:小、緊急度:大」をなくすには、いかにすれば良いか。

  それは「重要度:大、緊急度:小」の仕事を行うことです。

  すなわちこの仕事とは、仕組みづくりやシステムづくりです。

  日々のドタバタ仕事に振り回されていると、なかなか仕組みづくりに着手できないが、思い切って
  仕組みづくりを行わない限り、ドタバタ仕事は永遠になくならない。

  それには「重要度:小、緊急度:小」の仕事を見つけ出し、捨てることです。

  前述した着眼点における仕事の見直しである。  

  そして空いた時間で仕組みづくりを行う。

  結果として「重要度;小、緊急度:大」のドタバタ仕事は減り、「重要度:大、緊急度:大」
  「重要度:大、緊急度:小」の仕事が日々の中心となる。

  「仕事の2分の1はムダな仕事」と述べたが、これを実現すれば可能となる。

  忙しいとは「心を亡くす」と書くが、仕事に追われていては質の高い仕事はできない。

  仕事の棚卸しと組み替えを行い、先行で“仕事を追う”ガスタンスを身に付けていただきたい。

□仕事を早く進め、時間を短縮する

 1.仕事を早く進めるポイント

  前項では、「業務の効率化を行い、仕事量自体を少なくする」との着眼から述べました。

  ここでは「業務を早く進め、時間を短縮する」という切り口から述べます。

  20年前に、『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(ケリー・グリーソン著、PHP研究所)
  という本が流行しました。

  同書のポイントは、「すぐに考える」「すぐに判断する」「すぐに行動する」「すぐに見直す」
  ―など、“すぐに”というキーワードが非常に大事ということです。

  確かに、仕事の段取りが悪い人、ドタバタ仕事になりがちな人、期限を守れない人などは、いず
  れもこの“すぐに”が弱い。

  いわゆる「後憂先楽」型人間である。

  「業務を早く進め、時間を短縮」し、スピードを生むには「先憂後楽」型人間への転換が必要。

 2.仕事の重要度・緊急度のモノサシを持つ

  要領の良い人は、仕事が発生すると、まず次の判断をする。

  その仕事の重要度・緊急度はどうか。

  現在取り組んでいる仕事を後回しにしてでも、やらねばならない仕事かどうかの判断である。

  会社の信用に関するクレーム処理などは、何をおいても最優先でしょう。

  その仕事の重要度・緊急度に基づく優先順位づけである。

  こうした判断能力を高めるツールとして、「インバスケットゲーム」というものがある。

  インバスケットゲームとは、1952年にアメリカのプリンストン大学が、空軍の人事・教育研究所
  から依頼を受けて開発したものです。

  ゲームの名称「インバスケット」とは“未決箱”(未決裁箱)のこと。

  ゲームを通じて複数の課題(未処理事項)に対する意思決定・アクションを考えさせ、それを
  通じて受講者の価値判断能力(判断の正しさとスピード)の向上を図るものです。

  一般的に、企業において何らかの価値判断を行うとき、そのモノサシとなるのは、

   ①企業の経営哲学、経営理念、方針

   ②業績

   ③一般常識、社会通念、良識

   ④経験、過去のやり方・考え方

   ⑤その人の信念,思想

  ―などが挙げられる。

  これらを総合的に勘案した上で判断が行われるはずだが、人によって何を重視すべきかは違って
  きます。

  しかし、これらを統一することが、企業としてのレベルを上げ、仕事のスピードを上げることに
  つながります。

  一時期「クレド(credo)」に基づく経営が注目されました。

  企業哲学や信条に基づく経営のことです。

  国内では以前から言われていることですが、リッツ・カールトンやディズニーの成功で逆輸入
  された形となっていました。

  環境が目まぐるしく変わる現在、すべてにおいて「スピード」が求められる。

  意思決定のスピードを上げるには「こんな時はどうする」という、クレドのような規範を確立
  していただきたい。

 3.その仕事の完了までの難易度、時間工数の判断

  続いて、その仕事の完了までの難易度や、時間工数についての判断です。

  時間工数の判断では、仕事を三つに分類する。

  一つは15分以内でできる仕事、二つ目は1時間程度でできる仕事、三つ目はそれ以上かかる仕事。

  (1)15分以内でできる仕事~組織に関する仕事は先にする~

   15分以内でできる仕事とは、組織に所属することによって発生する仕事が多い。

   例えば、稟議事項の決裁、簡単な報告書作成、回覧版の閲覧などコミュニケーションを図る
   ための仕事や、世間で言うところの雑務的(「雑務Jという仕事はないと思うが)な仕事である。

   この仕事をすぐに片付けるか否かで、大きく効率は変わる。5分でできる仕事でも、10個も
   たまれば所要時間は50分である。

   50分というまとまった時間は、多忙な人にはなかなか捻出が難しい。

   そこで、緊急度・重要度ともに低い仕事だからと後回しにする。

   これが繰り返されることで、後は雪だるま式になる。

   また、1人の仕事が遅れたために組織の意思決定が遅れたり、集計を担当している人の仕事を
   止めたりと、組織全体の生産性を落とすことにもつながるのがこの種の仕事です。

  (2)1時間程度でできる仕事~付加価値を生む仕事の工数を最大限取る~

   担当する業種・職種にもよるが、一つの仕事のスパンは1時間程度というものが多く、付加価値
   を生む仕事とその仕事の準備業務という性格のものが多い。

   限られた持ち時間の中で、どれだけこの付加価値を生む仕事を入れられるかどうかで生産性は
   大きく変わる。

   時間は有限です。

   引き算方式で付加価値を生む仕事に最大限の時間を取り、残りでそれ以外の仕事をする組み
   立てが重要となる。

  (3)1時間以上かかる仕事~1カ月単位で先行計画・先行管理する~

   三つめは1時間以上かかる仕事。

   経営コンサルタント業では、企業の経営診断の原稿作成などがこれに当たります。

   まとまった時間は忙しい人ほど取れない。

   したがって、それらの仕事は1カ月や2週間というスパンで先行計画、先行管理しておくことが
   コツとなる。

 4.仕事のパターン化と整理整頓

  (1)仕事のパターン化~やり方・手順を決める~

   要領の悪い人の仕事を見ていると、いつも同じ仕事を一からやっている。

   共通化・標準化すべき仕事は、どんな職種にもある。

   そこをパターン化することです。

   しかし、標準化するのにわざわざ時間を取るのは非効率です。

   目前の仕事を片付けながら、標準化していく。

   “一石二鳥精神”と“健全な手抜き精神”が効率化の母です。

   弊社の場合、コンサルティングの仕事において、何か新たなメソッドを一つ開発することを
   目標としている。

   「ここが重点」と定めたものに工数をかけて、新しい「ニューメソッド」を一つ構築する。

   あとは以前パターン化したノウハウを活用するので効率的となる。

   商品構成でも1/3は「新規」、1/3は「改善」、1/3は「既存」が理想と言われるが、仕事の
   やり方にも通用する。

   一つの仕事で一つのニューメソッドを開発すれば、1年で10の仕事をすれば10のニューメソッド
   を構築することができる。

  (2)整理・整頓

   整理とは、必要なものと捨てるものとを分類することで、整頓とはいっでも必要なものを取り
   出せる状態にしておくことです。

   事務所、工場、倉庫、机、引き出し、パソコン、手帳、頭の中など、すべてにおいてです。

   せっかくのノウハウも、どこにあるのか分からず、取り出すのに時間がかかっていては本末転倒。

   整理のノウハウについては、書店にさまざまな書籍が並んでいる。

   自分に合うやり方を一つ決め、実行していただきたい。

 5.集中力を高め、「正確に」「早く」「丁寧に」

  仕事は人間がやる以上、最後は意識の問題が出てくる。

  一流の人ほど集中力が高いと言われるが、われわれ凡人も常に集中する習慣を持ちたいもの。

  集中するには、「同じ仕事は一度で済ませよう」と思うことです。 

  弊社の場合、電車による移動が多い。

  事前に乗車時間を把握し、スキマ時間に適した仕事の資料を持って仕事に出ている(もちろん
  クライアントの秘密事項にふれるような資料ではないが)。

  電車の中で仕事をするのは、強い意志と慣れが必要だが、スキマ時間の活用も大きく生産性に
  影響する。

  また「早く」を意識するがために「正確さ」をないがしろにするのも本末転倒。

  結局は二度手間となり、同じ仕事を複数回することになる。

  「正確に」「早く」「丁寧に」を常に意識し、あとは集中すること。

  常に改善を意識しておくことも大切です。

  例えば会議の議事録を作成するのに、手書きで作成した後でパソコン入力をするやり方をたまに
  見かける。

  同じ仕事をするのに、2倍の工数がかかっている。

  「今の仕事のやり方でよい」と思った段階で、改善は止まる。

  現状を否定し、「さらに良いやり方はないか」を常々考える姿勢が「作業」を「仕事」に変え、
  そのプロセスが仕事の質と自分自身のスキルを高めることにつながるのです。

   こちらの記事も参考にしてみてください。
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業務改善の方法と進め方

仕事の優先順位とスケジュール

■毎日同じ人が残業を……

 「毎日、同じ人が残業をしている……」と悩む社長や上司も少なくないでしょう。

 もちろん、従業員にはそれぞれ通常のペースでこなせる仕事の量には限りがあり、常にそれを
 上回る量の仕事をしなければならない状況であれば、時間が足りなくなるのは当然です。

 しかし、中には仕事の進め方に問題がある人がいるのも事実です。

 手当たり次第に目の前の仕事を片付けようとし、力の入れ具合を間違えると、本来は定時で終わる
 仕事も残業せざるを得なくなってしまいます。

 こうした状態を脱するために最初に着手すべきは、やらなければならない仕事の内容を把握し、
 優先順位付けて取り組むことです。

 基本的な考え方を確認していきましょう。

□仕事の優先順位を判断するための4つのポイント

 1.緊急性と重要性

  仕事に優先順位を付ける際は、処理しなければならない仕事を「緊急性」と「重要性」の2軸で
  分類してみましょう。

  緊急性と重要性という考え方は、仕事に優先順位を付けるための最も基本的な判断要素です。

  まずは、納期の迫っている緊急性の高い仕事に着目します。

  その中でも重要性の高い仕事を優先して処理することが優先腑位を考える際の基本となります。

  ただし、ここでいう優先順位とは、あくまで仕事を処理する順序についてであり、企業にとっての
  重要性という点では、優先度3の「緊急性:低、重要性:高」のほうが、優先度2の「緊急性:高、
  重要性:低」よりも高いということには注意が必要です。

 2.連携の有無

  緊急性と重要性に加えて考えるべきことは、その仕事を1人で行っているか、チームで行って
  いるかという「連携の有無」です。

  1人で行っている仕事は、自身の時間のやりくりで対応できるため、優先すべきはチームで
  進める仕事になります。

  チームで進める仕事では、自分自身が担っている仕事が業務のどの部分にあるかが重要に
  なります。

  例えば、自分が仕事を遅滞させると後工程の仕事が滞留してしまうような場合、自分がその
  仕事の優先順位を上げて、素早く対処することで、全体の流れをスムーズにすることができます。

  逆に、他のメンバーが前工程の仕事を滞留させていることで全体の仕事の流れが滞っている
  なら、最初にすべき仕事は、前工程を担当しているメンバーに対して優先的に仕事を処理する
  よう指示し、そのサポートをすることになります。

  また、1人で行っている仕事であっても、それが本当に自分が行わなければならない仕事なのかを
  考える必要があります。

  もし、中堅社員以上の社員であれば、部下に回すことができる仕事は、極力回すようにしましょう。

  初めは、教育に時間がかかるかもしれませんが、将来的には、自分の仕事の時間短籍につながる
  ことになります。

 3.時間の変更の可否

  次に考えなければならないことは、「時間の変更の可否」です。

  仕事には、時間を変更できないものが多くあります。

  例えば、顧客とのアポイントメントや納期は、よほどの事情がない限り変更することができません。

  「連携の有無」に関連して、社内でチームを組んで進めている仕事に関連するミーティング
  などの時間も、

  1人の仕事の都合で変更するべきではありません。

  一方、1人で行う仕事については、進捗状況やボリューム、重要性などに応じてある程度柔軟に
  時間をやりくりすることができます。

  このように、仕事に関する時間には、自分の判断で「変えることができる時間」と、自分の
  判断だけでは「変えることができない時間」があり、それを区別して管理する必要があります。

  時間管理を上手に行うためには、「変えることができる時間」をどのように処理するかが
  重要になります。

 4.ボリューム

  最後の判断ポイントは、仕事にかかる時間はどの程度かという「ボリューム」です。

  複数の仕事を並行して処理するためには、ボリュームが小さい仕事を先に済ませてまとまった
  時間を確保し、ボリュームの大きい仕事にじっくり取り組むなどのやりくりが必要です。

  ボリュームの大きい仕事は、集中的に処理してしまったほうが効率が上がります。

  時間的に分散して処理を行うと集中して仕事ができず、効率は下がると考えたほうがよいでしょう。

  ただし、全てのケースにおいて、ボリュームの小さい仕事を先に済ませて、その後にボリューム
  の大きい仕事に取り組めばよいわけではありません。

  ボリュームの小さい仕事を常に康先していると、ボリュームの大きい仕事がどんどん後ろに追い
  やられ、最終的には時間が足りなくなるという事態を招きかねません。

優先順位を基にして仕事のスケジュールを作成する

 1.作成手順

  (1)仕事のリストアップ

   仕事のスケジュールを作成するときには、まず、処理しなければならない仕事をリストアップ
   することから始めます。

   リストアップを行う際に重要なのは、「着手日時」ではなく「終了日時」に基づいてリスト
   アップすることです。

   仮に、処理の終了日時が決まっていない仕事があれば、自分で終了日時を設定します。

   全ての仕事に対して「締め切り」を設定します。

  (2)優先順位を基に仕事をスケジュールに組み入れる

   仕事をスケジュールに組み入れる際は、「変えられない時間」に当たる仕事を自動的に
   スケジュールの中に組み入れます。

   次に、優先順位付けの要素である仕事の緊急性と重要性を考えます。

   緊急性の高い仕事は何はともあれ優先して行わなければなりません。

   さらに、仕事の連携のある場合、例えば、チームで進めている仕事の担当部分に遅れが生じると、
   関連業務の流れに滞留が発生して全体に悪影事を及ぼしかねない仕事を組み入れます。

   これらを整理すると、次の順序でスケジュールに組み入れればよいことになります。

    ①まずは「変えられない時間」をスケジュールに組み入れる

    ②仕事の緊急性が高いものを優先的に処理する

    ③全体業務を遅滞させないよう、チームで進めている仕事は早めに処理する

    ④長い空き時間があれば、ボリュームの大きな仕事を集中して処理する

    ⑤重要性の高い仕事への着手時期を調整する

 2.作成の際の留意事項

  (1)「変えられない時間」をコントロールする工夫

   スケジュール作成で優先するのは「変えられない時間」ですが、必ずしも「変えられない
   時間」の仕事の優先順位が高いというわけではありません。

   また、この「変えられない時間」とは、実は工夫次第ではコントロールできる時間でも
   あります。

   「変えられない時間」をコントロールする方法とは、スケジュールを決める初期の段階で、
   時間的に比較的ゆとりのある時期に組み入れるよう調整するということです。

   例えば、月末などの忙しい時期に顧客との重要なアポイントメントを入れたら、厳しい
   スケジュールになることがある程度予想できます。

   それなら、初めからそのような時期には重要なアポイントメントを入れず、少し仕事に
   ゆとりのある時期に重要なアポイントメントを入れるように事前調整をすればよいわけです。

   チームで連携して進めなければならない仕事についても同様です。

   繁忙期や前工程に対する待ち時間の発生が予想される時期にはスケジュールに軋み込まず、
   スムーズに仕事が進められる時期にスケジュールを入れるようにすれば、他の仕事が
   スムーズに処理できます。

  (2)緊急性の高い仕事ばかりを優先するのは考えもの

   仕事のスケジュールを作成するに当たっては、どうしても緊急性の高い仕事や、仕事に遅れが
   出ることで全体のスケジュールに影響が出てしまう性質の仕事を優先して処理するように
   なりがちです。

   これは、緊急性は時間の経過に左右されるものの、重要性は基本的には時間の経過に左右
   されない特性があるからです。

   こうした特性のため、多くの場合、日々の仕事に追われて「重要性の高い」仕事への対応が
   遅れがちになります。

   その結果として、重要性が高いものの緊急性の低い仕事は、納期が迫るなど緊急性が高まる
   まで手を着けないでいることが少なくありません。

  (3)重要な「バッファー」の取り方

   ある時点では緊急性が低いものの、重要性の高い仕事を処理するために必要なのが、
   スケジュールを作成する際に「バッファー」となる時間を設けることです。

   バッファーとは、英語で「緩衝物」の意味です。

   仕事のスケジュールを考える上でのバッファーとは、実際に仕事が終わるまでの見込み時間に
   対する「予備の時間」を指します。

   このバッファーの組み入れ方を工夫することで、緊急性は低いものの重要性の高い仕事に着手
   する余地が生まれます。

   バッファーの取り入れ方を工夫することとは、具体的にはスケジュールを立てる際に余裕時間
   を細切れにせず、関連する仕事をまとめた上で予備の時間を設定するということです。

   ここでは、単純化して1日のスケジュールの例を挙げてみます。

   例えば、3社の顧客へ提出する3種類の報告書の作成に各2時間軽度かかると見積もり、
   それぞれに1時間のバッファーを考慮して合計9時間とします。

   この場合、考えられるスケジュールは人によって異なりますが、より時間を有効に使える
   のは次の考え方でしょう。

   「今日は顧客への報告書を仕上げるJと決めたら、「報告書1社分当たり3時間でまとめる」と
   考えるのではなく、「3社分の報告書を6時間でまとめ、3時間を余裕として見込む」という
   予定の立て方をすれば、バッファーとして「バラバラの3時間(1時間×3回)」ではなく、
   「まとまった3時間」が取れることになるためです。

   また、予定通り仕事が進まなかったり、突発的な業務が舞い込んできたときなどは、バッファー
   として想定した時間を使えばよいでしょう。

   もし、早めに仕事を処理できて、3時間という空き時間が生まれたら、その時間を「緊急性が
   低いものの重要性の高い仕事」に振り向けるようにします。

   バッファーは細切れにせず、まとめて組み入れるという考え方は、1日単位という時間だけ
   ではなく、1週間単位、1カ月単位といった仕事の処理においても同様です。

   例えば、1つのプロジェクトを達成するためには「現状調査」「サービス設定」「提案書作成」
   「見積もり」「顧客訪問」などの仕事を処理する必要があり、それらにそれぞれ数日かかる
   なら、仕事の各工程ごとに半日間のバッファーを設けるのではなく、プロジェクト全体に
   3日間の余裕を見込んでバッファーを設定するという考え方です。

   重要性は高いものの緊急性が低い仕事はなかなかスケジュールに組み入れにくく、スケジュール
   組み入れなければならない時点では「緊急性の高い仕事」になっている場合が少なくありません。

   「まとまった空き時間が取れない」からといって、重要性は高いものの繋急性が低い仕事を
   ずるずると後回しにしないためには、「結果的にまとまった空き時間をつくりやすい」ように
   スケジュールを作成する必要があります。

  (4)やらなくてもよい仕事はやらない

   ここまで紹介してきた手順で仕事のスケジュールを作成した場合、スケジュールに組み入れ
   られない仕事があります。

   それは、「緊急性が低い」「重要性が低い」「他の人と連携せず1人で進める」仕事です。

   もしも、リストアップした仕事にそのような仕事があった場合には、もう一度、その仕事に
   ついて考えてみる必要があるでしょう。

   仕事の妥当性を検討してみると、「緊急性が低い」「重要性が低い」「他の人と連携せず1人で
   進める」の要素が全てそろった仕事は、実は必要のない仕事であることも少なくありません。

   仮に、しなければならない仕事であっても、.自分で処理する必要がない場合も多いのです。

   自分でする必要がない仕事や人に任せても問題のない仕事については、いつまでも自分の仕事の
   リストに残さずに、「思い切って切り捨てる」「人に任せる」などの決断も必要です。

   そうすることで、余裕をもって仕事をすることができ、ひいては新たに着手しなければならない
   重要な仕事を発見することもできます。

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業務改善の方法と進め方

生産性向上への改革

■本当のマニュアル

 あなたの会社(仕事)に、マニュアルはありますか。

 業種(業務)によると思いますが、大体の方は「ある」と答えると思います。

 では、そのマニュアルを使って仕事に取り組んでいるでしょうか。

 そのマニュアルは、過去数年の間に更新されているでしょうか。

 マニュアルがあっても、実際は社内や部署内で統一されていなかったり、代々引き継がれている「個人
 メモ」程度のものであっ たり、体裁よくまとめられていても内容が古く、
手引きと実務が乖離していたり
 するケースも多く見られます。

 “マニュアル化”というと、手引きに従うだけで「何も考えない」社員が増えてしまうといった消極的な
 意見が多いように感じるが、必ずしもそうではありません。

 例えば、徹底した業務のマニュアル化で生産性を向上し、ローコストオペレーションを実現したのが
 「ファ
ッションセンターしまむら」で有名な、しまむらグループです。

 しまむらでのマニュアルの位置付けは次の通りです。

  
≪ マニュアルの考え方≫

   しまむらはローコストオペレーショ ンを徹底し、効率的な運営を行っており、それを支えているのが
   マニュアル。

   日本では個人の技術を重視する風潮に加え、マニュアルに対する誤解と軽視も見られます。

   同社では最も優れたベテラン社員のやり方をマニュアルと考え、新入社員でも一定レベルの
   業務ができるように、全ての部署でこれを重視。標準化と合理性を追求している。

  
≪ 改善提案≫

   「生きたマニュアル」を保つために欠かせない仕組みが改善提案制度です。

   業務の最適化を実現するには、マニュアルをブラッシュアップし続けることが最も大切だと
   考えて
います。

   同社では、全社員から毎年5万件以上の改善提案が寄せられ、これを一つひとつ検討・実験し、
   その結果は毎月マニュアル更新時に反映されています。


□生産性を上げるマニュアル化のステップ

 しまむらでは、テーブルマナーなど社会人としての基本的なマナーから、商品仕入れ、店舗運営、シス
 テム開発など、何から何までマニュアル化されています。

 各マニュアルは数千ページあり、巻数は十数巻と膨大な分量です。

 このようなマニュアル化を行うことで、社員は日常的な業務において考える時間を減らし、新たなアイ
 デアを生み出すためのより付加価値の高い業務に時間を費やすことができ
るのです。

 この考えのもと、マニュアル化推進プロジェクトを支援したA社の事例から、生産性を上げるマニュアル
 化のステップを紹介します。

 
【事前準備】フォーマット、記載ルールの設定

  まずは、統一フォーマットを作成。

  フォントやナンバリングのルール、タイトルの付け方などを定める。

  全体の統一感をそろえるためであるが、あまりにも制約が多すぎると、マニュアルの作成自体が
  困難になるため、ある程度の自由度を持たせる必要が
あります。

  【 Step1】マニュアル化する業務の範囲の決定

   マニュアルの作成に当たっては、部署ごとで内容を整理することが多い。

   部署のメンバー全員(主要なメンバー)が集まって、マニュアル化する業務を決める。

   日次、月次、年次の基本的なルーティン業務は全て網羅する必要があります。

   その他の非定型業務であっても、頻度や重要度を基にマニュアル化の対象となる業務
   とする。

   全員が集まることによって、業務の重複や、業務分担における改善点が発見できることも
   あ
る。

  
【 Step2】作成担当者の決定

   その業務をよく知っているベテランメンバーが作成担当者になると、知り過ぎているがゆえに、
   詳細を省いたマニュアルになってしまいがちです。

   そのため、最近業務を引き継いだメンバーが作成してベテランがチェックを行うことで、
   マニュアル作成自体
が、社員教育の一環として成立します。

   指導を受ける側は業務に対する理解が深まり、指導をする側は、より効率的に業務を行う
   方法を考える機会(「自分だけ分かっていればよい」ということではなくなるため)
となる。

  
【 Step3】マニュアルの作成

   実際のマニュアル作成の際のポイントは次の3 点です。

   (1)冒頭に「この業務を行う目的(求められる事項)」を記載する

    これは、スタッフ部門の業務に多く見られる傾向ですが、担当業務の目的を理解
    
しないまま行っていることが多い。

    「昔から、こうやっているから」というだけで、「何のために」がスッポリ抜け落ちて
    しまっているのです。

    どんな業務においても、必ず目的が存在します。

    逆に言えば、目的が明確でない業務は、やらなくてよいことかもしれません。

    目的が明確になって初めて、効率的な業務の進め方が検討できるようになるのです。

   
(2)業務全体の流れが分かるようにフロー図を作成する

    業務のスタートとゴール、ゴールまでの道筋がはっきり分かった上で、詳細なマニュアルを
    読み進めていく方が理解しやすいです。

    また、業務をフロー図に落とし込むことで、その業務を進める上でネックになる部分を
    明示しやすくなります。

    今までフロー図にはなかった業務を落とし込むことで、業務のムダが顕在化されるという
    副次的効果もあります。

    フロー図については、日本工業規格(JIS)で定められているフローチャート記号を参考に
    するとよいでしょう。

    フロー図にした時、「判断」の項目に該当する箇所で、ネックやムダが発見されることが多い。

  (3)図や実際のフォーマットを多く記載し、視覚的に分かりやすくする

   文章ばかり のマニュアルは理解しづらく、文字で説明できる範囲にも限りがあります。

   先述したしまむらのマニュアルでも、イラストや写真が多用されています。

   例えば、パソコンの操作画面を画像として取り込み(キャプチャー)、①、②、③……と
   操作順に番号を付けるだけで、マニュアルとしては十分です。

   店舗のレイアウトなどは写真を載せることで、文章での説明はなるべく少なくする。

  
【 Step4】マニュアルのチェック

   担当者が作成したマニュアルを、チェック担当者が照合する。

   この際のポイントは、「マニュアル通りに業務を行い、正しく目的を達成することができるか」
   です。

   チェック担当者がマニュアル通りに行って、疑問に思ったことや正しく業務を行えなかった
   
箇所があれば、それはマニュアルとして不十分だということです。

   チェック担当者は、より分かりやすくするためにどうすればよいか、作成担当者に前向きな
   アドバイスをすることで完成度を上げていきます。

  
【 Step5】マニュアルの統合と定期更新

   担当者のチェック済みのマニュアルを集約し、1冊のマニュアルとして統合していく。

   データだけで管理するのではなく、部署ごとに1冊、紙の冊子として置いておくのが望ましい。

   全体の統一感を確認していったん完成となるが、先述したしまむらの事例の通り、マニュアル
   には“完成”の概念がありません。

   完成したら、該当業務を行う際はマニュアルをチェックし、業務のやり方が変われば、マニュアル
   も都度更新する必要があります。

   また、定期的(年1回または半期1回程度)に部署メンバーが集まり、マニュアル更新時間を
   設けるのが効果的です。

  以上が、生産性向上に向けたマニュアル化の進め方の大まかなステップです。

  真に有効なマニュアルは、完成のない、永遠の「たたき台」であることを理解してください。

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業務改善の方法と進め方

「ECRSの原則」を利用した業務の見直し

■業務改善はルーチンワークから

 業務の効率化やコストダウンを実現することのできる業務改善は、会社が常に 取り組んでいかなければ
 ならない課題の一つです。

 しかし、業務改善といっても、どこから手をつけていいのか迷うこともあるでしょう。

 業務改善は、定期的なルーチンワークを対象に行うと効果的です。 

 新しく始める業務や突発的な業務であれば、無駄のないよう、事前にしっかりと手順を考えます。

 しかし、ずっと続けているルーチンワークは、「こういうものだ」と思って、業務の進め方を改めて
 見直す機会もないままに繰り返している場合が多いものです。

 その結果、先輩などから教わった方法で業務を進め、それをまた後輩に教え、といったように、長い間
 見直されないままその業務が続けられている可能性があります。

 また、「これまでずっとやっていたから」というだけの理由で、本人にも意味の分からない業務を 行って
 いる場合もあります。

 状況が変われば、業務の進め方も変わって当然です。

 それを旧来のままの方法で進めていては、非効率になっていることもあります。

 こうした業務を見つけることが業務改善の第一歩です。 

 ただし、業務改善は思いつきで行ってもうまくはいきません。

 「目についた無駄からとりあえず削減していく」のも一つの方法とはいえますが、それでは抜け・漏れが
 多く発生してしまいます。

 細かな部分にばかり目がいって、大きな無駄を見逃してしまう可能性もあります。

 業務改善に取り組む際には、体系立って行うことが必要です。 

 業務改善に取り組む際の方法にはいくつかありますが、以降では、「ECRSの原則」を利用した改善方法
 を 紹介していきます。

□ECRSの原則を活用した業務改善の進め方

 1.ECRSの原則とは 

  ECRSの原則とは、もともと生産管理の手法で、製造工程(ライン)の見直しを行う際の基本的な考え
  方です。

  ECRSは、見直しに当たって考えるべき事項の頭文字をつなげたもので、それぞれ具体的には以下の
  通りです。

   Eliminate:なくせないか?

    →その工程をなくすことはできないかを考える。

   Combine:一緒にできないか? 

    →複数工程をまとめて処理することができないかを考える。

   Rearrange:順序の変更はできないか? 

    →工程の順序を入れ替えることで効率化できないかを考える。

   Simplify:単純化できないか? 

    →その工程をもっと単純なやり方に置き換えることはできないかを考える。

  なお、ECRSは単に頭文字をつなげただけではなく、その順番にも意味があります。

  つまり、「E」が最も効果が高く、「S」に向けて効果が低くなっていくという順に並んでおり、
  実施に当たっては、「E」「C」「R」「S」の順に考えることが重要なのです。 

     ここで一つ例をみてみましょう。

  例えば、A、B、Cという3人がそれぞれX、Y、Zという3種類の書類を作成しているとします。

  このX、Y、Zの書類は、内容はほとんど同じですが、提出先が違うということで、3人の担当者がそれ
  ぞれ個別に作成しています。

  同じような書類を3種類も作成するのは、明らかに無駄であり、改善したいところです。 

  この業務をECRSの原則に従って改善するとどうなるか、順にみていきます。

  なお、この書類は毎月1回作成するものであり、作成にはそれぞれ2時間かかるものとします。

  (1)E:なくせないか? 

    まずは、無駄な工程を省くことを考えます。

    これは、ECRSの原則では、最も効果が高い方法です。 

    例の場合であれば、内容がほぼ同じ書類が3種類あるなら、Xだけ作成し、残りの2種類の作成を
    そもそもなくしてしまうというのが、この「E」です。

    書類を作成するのにそれぞれ2時間かかるため、Y、Zの作成をなくすことで4時間の削減が
    できます。

  (2)C:一緒にできないか? 

    なくすことができない場合、複数の作業をまとめることで時間の短縮を図ります。

    1人の作業だけでなく、複数人が同じような作業を行っている場合に、作業を1人にまとめる
    なども有効です。 

    例の場合であれば、3人が個別に作成していた書類を、誰か1人がまとめて作成すればほかの
    2人は書類作成から解放されます。

    内容はほぼ同じ書類であるため、体裁の変更など軽微な修正で対応できるでしょう。

    修正にそれぞれ30分かかるとしても、全体の作業時間は2時間+30分×2種類で3時間となり、
    3時間の削減ができます。 

    実際に書類を作成する人は作業時間が1時間長くなりますが、A、B、Cの3人で作成を持ち回りと
    すれば、年間で各人が書類を作成する回数は4回ずつ、かかる時間は3時間×4回で12時間となり
    ます。

    各人が個別に作成していた場合、年間で2時間×12回の24時間かかっていたため、各人の作業時間
    は半減します。

  (3)R:順序の変更はできないか? 

    なくすことも一緒にすることもできない場合、順序を変更することで効率化が図れないかを
    考えます。

    複数人が関係するような業務で、手待ちの発生を最小限にする場合などに役立ちます。 

    例の場合であれば、3人が個別に作成していた書類を誰か1人が作成し、そのデータを基にほかの
    2人が作成するようにすれば、ほかの2人の作業時間は短縮できます。

    もらったデータを基に各人が自分用の書類を作成するのにかかる時間が1時間とすると、全体の
    作業時間は2時間+1時間×2人で4時間となり、2時間の削減ができます。

  (4)S:単純化できないか? 

    ここまでみてきたいずれも適用することができない場合、それぞれの作業を単純化して時間を
    短縮することを考えます。

    ここまでは作業工程全体という大きな流れでとらえてきましたが、「S」については個別の作業に
    ついて詳細に分析して単純化を図ります。 

    例の場合であれば、X、Y、Zの書類の内容を簡略化してより短時間で作成が可能なx、y、zと
    すれば、各人の作業時間を短縮できます。

    仮に書類作成の時間が30分短縮すれば、全体の作業時間は1時間30分×3人で4時間30分となり、
    1時間30分の削減ができます。 

 2.実施手順 

  ECRSの原則を利用した業務改善の手順は以下の通りです。

  (1)改善チームの編成 

   業務改善に取り組むための準備として、業務改善を担当する改善チームを編成します。

   業務改善の取り組みを各人に任せてしまうと、日常業務を優先して業務改善が後回しになりがち
   です。

   担当を定めて責任と権限を明確化することで、実効性のある取り組みとなることが期待できます。 

   改善チームの規模やチームに組み入れるべき人材は、企業規模や業務改善に取り組む範囲などに
   応じて決定します。

   ただし、チームには、業務改善に取り組む部署・グループの長など、全体を俯瞰(ふかん)できる
   人材(以下「部門長」)が不可欠です。

   これは、業務改善には全体最適の視点が必要であることに加え、そうした人材を組み入れることで
   チームに強い権限を持たせることができるからです。

   また、部門長が率先して業務改善に取り組むことで、個々の従業員に対して、本気で業務改善に
   取り組む姿勢を示すこともできます。

  (2)業務の棚卸し 

   改善チームを立ち上げたら、実際の業務改善に入ります。

   まずは、社内で定期的に行われている業務を洗い出すために、現在の業務の棚卸しを行います。 

   業務の棚卸しでは、各人が1カ月単位や1週間単位などで業務スケジュール(業務棚卸表)を作成
   します。

   棚卸表を作成する期間は、自社や業務改善を行う部署の業務内容、業務周期に合わせて決定すると
   よいでしょう。

   記載する内容は、実施する業務、所要時間、関係者(共同で作業する者、データ・書類の受け渡しが
   ある者など)などです。

   業務棚卸表には、個人で行う業務だけでなく、複数人で行うような業務であっても記載します。 

   なお、記載業務が多くなりすぎると分かりにくくなるため、毎日や毎週など多頻度で発生する業務は
   別に記載する、所要時間が短いものは記載しないこととするなどとします。

  (3)対象業務の選定 

   各人による棚卸表が完成したら、それらを基に改善すべき業務を選定します。

   その際に大切になるのは、個人単位ではなく、部署・グループなどの単位で改善すべき業務を検討
   するということです。 

   もちろん、個人単位での業務改善も必要です。

   しかし、1担当者の作業だけで完結する業務というのはわずかであり、業務の多くは複数の担当者が
   かかわることによって当該業務が完結します。

   そのため、部署・グループなどの単位で、業務の流れを俯瞰しながら

   取り組みを進めた方が、より効果的な業務改善を行うことができるのです。 

   なお、対象業務の選定は、改善チームの中でも特に、部門長が中心となって行うことが望ましい
   でしょう。

   これは、部門長であれば各人の業務内容やその業務の意義を把握しているため、業務棚卸表をみる
   だけで業務の重要性や他者とのかかわりなどをおおよそ判断でき、業務改善の対象とすべき業務を
   的確に選定できるからです。 

   また、この選定業務の中で、各人の業務を見比べて抜け・漏れなどに気付いた際には、再び棚卸しに
   戻って抜け・漏れなどを補完します。

  (4)業務フローの作成    

   対象業務を選定したら、当該業務の進め方を詳しく調べ、業務フローを作成します。 

   その際は、当該業務を行う従業員(以下「従業員」)任せにせず、改善チームのメンバーが従業員
   からヒアリングを通じて業務の進め方を確かめていくようにします。

   従業員本人以外が作成に加わることで、業務の進め方を詳細に調べることができます。

  (5)ECRSの原則に従って業務フローの見直し 

   作成した業務フローについて、ECRSの原則に従って見直しを行います。

   つまり、まずは「なくせる工程はないか」を考え、次いで「一緒にできる工程はないか」「順番を
   入れ替えたらもっと効率的にできないか」、と工程の再編を行います。

   それらが終わったら、最後に各工程について「この工程はもっと単純にできないか」を考えます。 

   また、ECRSは、どれか一つを適用すれば終わりというものではありません。

   例えば、「E」を適用して工程数が減少した後、さらに「R」を適用して並べ替えればより効率的に
   なるということもあるでしょう。

   また、「S」を適用して工程を単純化したら、それまで適用できなかった「C」が適用できるように
   なったということもあり得ます。

   なお、検討の際には、業務フローを工程ごとに分析し、小さなカードやふせんに記載しておくと、
   容易に工程を取り除いたり(E)、並べ替えたり(R)できるため便利です。 

  (6)新しい業務フローで業務実施 

   見直した業務フローに従って業務を実施します。

   この際、新しい業務フローを適用して終わりではなく、実際にどの程度の効率化が図れたのか、効果
   を検証することも忘れてはなりません。

□実践に当たって押さえておきたいポイント

 1.対象業務の選定は慎重に
 

  ECRSの原則は業務改善において有効なものではありますが、改善チームを編成したりヒアリングを
  行ったりと、その実施には時間もコストもかかります。

  改善に取り組む際には、費用対効果を意識して対象業務を選定しなければなりません。 

  改善を検討すべき業務となるのは、作業時間が長い業務です。

  1回にかかる時間が長い業務、1回にかかる時間はそれほどでもないが、頻度が高いために多くの時間を
  とられる業務といったものから改善に取り組むとよいでしょう。 

  また、かかわる人が多い業務も同様です。

  その業務にかける各人の時間は長くはないとしても、かかわる人が多ければ多いほど、全員の時間を
  合わせれば、多くの時間をかけていることになります。

  特に、内容が同じような業務を複数人が行っているような場合には、当該業務の在り方を見直すことで
  大幅な改善が見込めるでしょう。

   ◎ポイント1:改善に取り組むべき業務とは? 

    ・1回にかかる時間が長い業務 

    ・発生する頻度が高い業務 

    ・関係する人数が多い業務 

    ⇒こうした業務は総作業時間が長いため、業務改善が高い効果を発揮することが期待できます。

 2.正確な業務フローの作成が成否を分ける

  前述の通り、ECRSの原則は、もともと製造工程の改善に用いられるものです。

  製造工程の場合には、製造工程を詳細に定めた工程図があるため、改善にも比較的取り組みやすいと
  いえます。 

  一方、オフィスワークは、製造工程と比べて、業務の内容・手順がみえにくい傾向があります。

  業務によってはマニュアルが定められているものもありますが、実際にはマニュアルがあってもそれが
  守られているとは限りません。

  各人が自分のやりやすいように変更している可能性があるからです。 ECRSの原則を利用した業務改善
  は、業務フローをみながらその中の無駄をみつけていくという取り組みであり、業務フローに抜け・漏
  れがあっては十分な効果を発揮できません。

  そこで、オフィスワークにECRSの原則を適用するためには、業務フローの作成が重要な意味を持ち
  ます。

  どれだけ正確に業務フローを作成できるかが業務改善の成否を分けるといっても過言ではありません。

  そして、業務フローの作成において重要な役割を果たすのが、従業員へのヒアリングです。 

  ヒアリングの際には、従業員から詳細に情報を得ることはもちろんですが、従業員本人も気付いて
  いない(意識していない)工程がある場合もあり得るので、ヒアリングを行うメンバーは注意が必要
  です。

  場合によっては、従業員が実際に業務を進めている様子を観察したり、ヒアリングをしながら、メンバ
  ーが実際に当該業務の流れを体験してみたりするのもよいでしょう。

  そうすることで、ヒアリング内容に何か抜け・漏れがあれば発見することができます。

   ◎ポイント2:業務フローを正確に作成するには? 

    ・従業員自身が意識していない点があることを覚えておく 

    ・ヒアリングだけでなく、実際の業務の様子を観察したり、体験したりすることでより正確を期す 

    ⇒これによって工程の抜け・漏れを防止することができます。

 3.新しい業務フローが守られるとは限らない 

  業務フローの見直しを行うと、最初は新しい業務フローに慣れずに、計画よりも時間がかかってしまう
  こともあり得ます。

  このとき、新しい業務フローが改善チームによって独断で作成されたものである場合、従業員が新しい
  業務フローを嫌がって、勝手に従前の業務フローで業務を進めようとするかもしれません。 

  こうした事態を防ぐため、業務フローの見直しは、改善チームが独断で行うのではなく、実際に業務を
  遂行する従業員の意見を聞きながら行うようにします。

  そうすれば、従業員も新しい業務フローに納得できるため、新しい業務フローが守られやすくなりま
  す。

  また、業務フローの見直し後にも、従業員に声をかけて業務フロー変更の感想を聞くなど、改善チーム
  と従業員とのコミュニケーションも業務改善を円滑に進めるためには必要となります。

   ◎ポイント3:新しい業務フローを定着させるには? 

    ・業務フローの見直しは、従業員の意見を聞きながら行う 

    ・業務フローの見直し後にも従業員に声をかける 

    ⇒従業員が新しい業務フローに納得しやすくなり、従前の業務フローで業務を行うことを防止
     できます。


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業務改善の方法と進め方

業務のライフサイクル

業務のライフサイクル

 ご存知のように、ライフサイクルとは生物の一生の過程を、誕生から成長、そして衰退
 へと描く周期のことをいいます。

 ここでは生物を業務に置き換えて解説していきます。

■自分で考え、行動する 
 ある程度の経験を積んだ中堅社員は、徐々に自分で考えて行動することを上司から求め
 られるようになります。 
 例えば、営業を担当する中堅社員の場合、自主的に販売目標とそれを達成するための戦略を
 考え、上司に報告・相談することが求められます。

 最終的には上司の承認が必要ですが、それまでの「上司から指示を受けて遂行する」といった
 やり方から、「自分で考え、上司の承認を受けて遂行する」といった業務の進め方に
 変わることは大きな変化です。

□品質と時間(スピード)のジレンマ
 中堅社員は、複数の業務を組み立てて形にしていかなければなりません。
 その際、非常に重要となるのが「品質」と「スピード」のバランスです。
 品質とスピードのどちらを重視しますか?」と質問されたときに、「高品質こそが重要
 である!」とか、「素早い対応こそが重要である!」といったように、二者択一のイメージで
 考えてはいけません。

 確かに品質とスピードは二律背反の関係にあることが多く、品質を高めると時間がかかり、
 時間を短縮すれば品質が低くなりがちです。 
 しかし、片方を重視するからといって、もう片方をないがしろにしてよいというわけでは
 ありません。

 ビジネスでは品質も速度も非常に重要です。 
 中堅社員は、「その時点で求められる品質のレベルを把握し、時間内に業務を仕上げる」と
 いったバランス感覚を養っていかなければなりません。

□「製品ライフサイクル」の考え方 
 中堅社員が業務の品質とスピードのバランスを検討する際、マーケティング分野でよく
 用いられる「製品ライフサイクル」のフレームワークが参考になります。 
 これは、時間の流れによる製品の売上高(市場規模)の変化を「導入期」「成長期」
 「成熟期」「衰退期」の4つの段階に分けたもので、各段階における企業のマーケティング
 戦略の立案をサポートするものとして重用されています。

 一般的には、製品ライフサイクルが導入期にあるときに企業が最も重視すべきは「速度」
 だと言われます。
 まだ競合が少ないうちに市場に参入し、先行者の有利を生かしてシェアを拡大することが
 重要であると考えられているからです。

 一方、製品ライフサイクルが成長後期から成熟期まで進むと、既に市場には類似する製品が
 行きわたっているため、他社と同じことをしても勝ち残れません。
 そのため、ここでは、ある程度の時間をかけて品質を見直すなどして、他社との差別化を
 図ることが一つの戦略となります。

 このように、「製品ライフサイクルの段階によって品質とスピードのバランスが変化して
 いくことが分かります。

□「業務ライフサイクル」に落とし込む 
 先の製品ライフサイクルの考え方は、中堅社員が業務の品質と速度のバランスを考える
 ときにも応用することができます。 
 具体的には、製品ライフサイクルを「業務ライフサイクル」に落とし込んで考えてみる
 のです。

 「業務ライフサイクル」のイメージ上の「業務ライフサイクル」を営業活動に落とし
 込んで一例を紹介します。

  1.導入期:速度を重視 
   導入期は、新製品のテストマーケティング、新しい見込み客の選定など、営業の
   初期段階です。
   ここでは、速度を重視し、アイデアをどんどん形にして、実際の行動に移すことが
   重要です。

  2.成長期:効率を重視 
   成長期は、積極的に営業活動を展開し、顧客を増やしていく段階です。
   ここでは、取りこぼしが出ないように、品質と速度のバランスを取って効率的に
   活動することが重要です。

  3.成熟期:品質を重複 
   成熟期は、新規獲得が一段落し、既存の顧客との関係維持を重視する段階です。
   例えば、アフターサービスの品質を高めるなどします。
   品質を確保するために、多少速度を落としても問題ありません。

  4.衰退期:省力を重視 
   衰退期は、一連の活動が定時定形的な業務に落とし込まれた段階です。
   当面、大きな動きは発生しにくいので、できるだけ少ない資源で、安定的かつ
   継続的な活動の実現が重視されます。

□70%の仕事術 
 「業務ライフサイクル」を意識し、個々の業務がどの段階にあるのかを考えることで、
 品質と速度の目安を得ることができます。 
 加えて、もう一つ中堅社員が心掛けたいのが「70%の仕事術」です。

 中堅社員には自分で考え、行動することが求められるとはいえ、最終的には上司の承認
 が必要であり、通常はその段階で何らかの修正が入ります。
 この点を考慮し、品質が70%に達した段階で上司に相談し、必要に応じて軌道修正する
 というのが「70%の仕事術」です。

 何事も100%の完成形に近づくほど修正が困難になりますが、70%の完成度なら、まだ
 修正は容易です。
 また、品質が70%の段階で一区切りつけている分、時間的な余裕もあり、上司の修正指示
 にもきちんと対応することができます。

 なお、70%は感覚的な数値ですが、例えば「自分なりの考えはまとまっており、上司に
 確認したい事項が2〜3個、残っている状態(70%の仕事の目安)といえるでしょう。

  【ワンポイント】
   ・業務ライフサイクルによって、品質と速度のバランスが決まる
   ・効率的に業務を進めるために、品質70%で上司に相談する


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業務改善の方法と進め方

在庫管理と在庫削減

在庫管理と在庫削減

■在庫管理の基本
 1.在庫とは 
  企業にとって、在庫をどのように管理するかは経営上の重要な課題です。
  在庫を必要以上に多く持ちすぎると、収益を生み出すことのできる商品を倉庫で長期間
  眠らせてしまうことで商品価値の低下を引き起こすだけでなく、管理費(人件費、
  倉庫使用料など)も発生します。

  しかしながら、在庫があまりにも少なすぎると品切れを招き、販売機会を失いかね
  ません。 
  過剰在庫はしばしば企業の経営悪化の原因として挙げられます。

  しかし、迅速かつ的確に取引先あるいは顧客に商品を納入あるいは販売するためには、
  企業はその時々に応じた適正量の在庫を持っておかなければなりません。
  このように考えると、問題なのは在庫の存在自体ではなく、在庫を適切に管理しない
  ことであることが分かります。 

  在庫管理をしっかり行うことの最大のメリットは、キャッシュフロー(資金の流れ)の
  改善です。
  これまで倉庫に積み上がっていた在庫が売り上げとして計上されその後現金化されれば、
  企業の財務状況は改善します。

  しかし、実際には在庫を適切に管理することはなかなか難しく、多くの企業が頭を
  悩ませています。
  そこでここでは、在庫管理の基本的な方法をみて、在庫を適正化するためのポイントを
  考察します。

 2.在庫の種類 
  在庫と一口にいっても、業態によってさまざまな種類があります。

  ◎材料在庫 
   製造業は在庫を材料として持ちます。
   例えば、衣料品の生地を製造する業者にとっては製織するための糸が材料在庫に
   なります。
   在庫がなければ、受注後に原料を仕入れて製造することになるので、その間二次
   加工業者などの取引先を待たせることになります。 
   したがって、製造業では予測しながら在庫管理をする必要があります。

  ◎仕掛在庫 
   製造業は材料や部品を加工した製造途中の製品を仕掛在庫として持ちます。
   例えば、衣料品製造業では生地を裁断、縫製などの加工をしたもののまだ完成品に
   至らないものが仕掛在庫です。
   仕掛在庫を管理するには、納入先の卸売業者あるいは小売業者からの発注動向を
   みながら、材料あるいは部品の発注量を調節する必要があります。

  ◎製品在庫 
   卸売業者あるいは小売業者は製造業者から納入された製品を、それが販売される
   まで文字通り製品在庫として持つことになります。
   例えば、衣料品店においては店頭に展示している製品と倉庫に保管している製品が
   製品在庫となります。
   卸売業者あるいは小売業者は製品の販売動向をみながら、製造業者に発注する必要が
   あります。

□在庫の把握と分析の基本
 1.在庫把握の基本となる棚卸し 
  以下、説明を簡潔なものとするため、小売業者(以下「小売店」)の商品在庫を念頭に
  説明します。 
  在庫管理のためにはまず、在庫の量と金額を把握することから始めなくてはなりません。

  これは自社が持っている在庫を把握する作業で、一般に棚卸しといいます。 
  棚卸しとは、倉庫や陳列棚にある商品の数を正確に数え、商品の単価と数量を掛けて
  資産価値を計算することです。

  棚卸しは在庫の現況を台帳と照合し、棚卸資産の金額を確定するために行われます。
  棚卸しを行うことにより、在庫台帳に記載されている在庫状況と実際の在庫状況の差異
  についてチェックします。

  在庫の現況が正確に把握できていないと、会計上の資産が正しく計上されず、また
  入出庫に無理や無駄が生じます。
  棚卸しは年2回(中間決算期と期末決算期)行われるのが一般的ですが、入出庫の
  頻度が高い商品については1カ月に1回など短い期間で行われることもあります。 

  また、在庫管理を効率化するために、棚卸しの際には大きさや重さといった商品の
  物理的特性や、入出庫の頻度や季節性といった商品の需要特性、また商品ごとの
  リードタイム(発注から入庫までの日数)を確認するようにします。

 2.ABC分析の活用による在庫分析 
  近年、消費者ニーズの多様化にともない、企業が扱う商品も多種にわたっています。
  これらの商品の在庫すべてを一律に管理していたのでは、管理が煩雑化して管理費用の
  上昇を招くことになり、効率的な在庫管理とはいえません。 

  効率の良い在庫管理とは、
   重要度の高い商品ほどきめ細かな管理を行うこと
  といえます。

  一般的に、少数の商品による売上高が企業の売上高全体のなかで大きなウェートを
  占めるといわれています。
  そこで注目されているのが、商品の売り上げに対する貢献度によって在庫管理を使い
  分ける手法です。

  上記のような考え方に基づいて多種にわたる商品を効率的に管理する手法として
  用いられるのが「ABC分析」です。
  具体的には、それぞれの商品の売上高を調べ、売上高の高い順に商品をA、B、Cの
  3つのグループに分けて管理を行います。

  例えば、区分は売上高合計の全体に占める割合の上位から80%の商品をAグループ、
  上位から95%のうちAグループを除く商品をBグループ、全商品のうちAグループと
  Bグループを除くものをCグループとするのが一般的ですが、何%ごとに分けるかは
  商品の特性に合わせて調整を行うとよいでしょう。  

  売れ筋商品、あるいは商品のライフサイクルにおいて成長期にある商品は売上高への
  貢献度が高く入出庫の頻度が高いので、重点的にきめ細かく管理する必要があります。
  一方で、死に筋商品あるいは衰退期にある商品は売上高への貢献度が低く、入出庫の
  頻度も低くなるので、在庫管理を行う間隔を比較的長めにとってもよいでしょう。 

  また、詳しくは後述しますが、このABC分析によって商品の発注方式を使い分ける
  ことができます。

 3.在庫の滞留状況を示す商品回転率と商品回転期間 
  商品が長期間売れずに在庫として残っていることは、すなわち企業の資金が眠って
  いることを意味します。
  在庫の滞留状況を判断するときに、よく使われるのが「商品回転率」による管理手法
  です。 

  商品回転率は商品の入出庫するスピードを表しており、年間売上高を商品在庫高
  (販売価額ベース)で割ることにより求めることができます。      
   商品回転率(回数)=年間売上高÷商品在庫高
   ・商品在庫高は、一般的に期首の在庫高と期末の在庫高の平均値を使用します。

  例えば、ある商品の年間売上高が2億円、在庫高が5000万円ならば、商品回転率は
  4回となります。これは1年間に4回在庫が入れ替わったことを意味しています。
  商品回転率をそれぞれの商品ごとに求めると、その企業の「売れ筋商品」や「死に筋商品」
  を見つけることができます。

  商品回転率が大きいほど、在庫が倉庫などにある期間が短いわけで、その商品は
  「売れ筋商品」ということができます。 
  また、商品回転期間を同業他社と比較することにより、自社の商品回転の良しあしを
  判断することができます。

  商品回転期間は、商品回転期間は在庫が売り上げとなって回収される期間を表して
  おり、期首棚卸資産と期末棚卸資産の平均を月商で割ることによる求めることができます。
   商品回転期間(月)=【(期首棚卸資産+期末棚卸資産)÷2】÷月商
  製造業、卸売業、小売業と流通の川下に行くほど商品回転期間が長くなっています。

  業種別の商品回転期間をみると、衣料品関連がほかの業種に比べて長く、飲食料品
  関連は短いことが分かります。
  また、一般的には黒字かつ自己資本プラス企業は商品回転期間が短いとされていますが、
  業種ごとに差異があります。 
  商品回転期間が業種平均よりも長い企業は、対応策を講じる必要があります。

 4.収益性に着目した交差比率による在庫分析 
  交差比率は「商品1個当たりの利益」にも注目して在庫を管理する手法です。
  例えば、食料品や日用品は数多く売れますが、商品1個当たりの利益はそれほど大きく
  ありません。

  一方、宝石などの貴金属の販売個数はあまり多くありませんが、商品1個当たりの
  利益は大きい商品です。
  そこで、どのような商品が企業の収益に貢献しているか、「粗利益率」
  (注)も考慮に入れて在庫を管理するために活用されているのが「交差比率」です。

  交差比率は、商品回転率に粗利益率を掛けることにより計算することができます。
   交差比率=商品回転率×粗利益率
  (注)粗利益は、売上高からその仕入にかかった費用(変動費)を差し引いたものです。
    粗利益率とは、売上高の内、粗利益がどれだけ占めるかを表した数字です。

  交差比率は、在庫が少なく粗利益が多ければ高くなり、在庫が多く粗利益が少なければ
  低くなります。
  当然のことながら、
   交差比率が高いほど収益性の高い商品
  ということができます。

  例えば、同じ種類の商品が2つあり、商品Aは商品回転率が4回、粗利益率が35.5%、
  一方の商品Bは商品回転率が10回、粗利益率15.8%であるとします。
  商品 Aは商品回転率が商品Bより低いですが、粗利益率が高くなっています。

  一方の商品Bは、商品Aと比較して粗利益率が低いですが、商品回転率が高くなって
  います。
  それぞれの交差比率をみると、
   商品Aの交差比率=4×35.5%=142%
   商品Bの交差比率=10×15.8%=158%
  となり、商品Bのほうがより収益性の高い商品であるといえます。

  交差比率を上手に活用することにより、商品回転率の高い薄利多売型の商品か、
  それとも粗利益率の高い厚利少売型の商品かを判断し、ベストの商品構成による販売
  戦略を構築することができます。

□適正な在庫水準を把握する
 1.適正在庫量 
  冒頭にも述べたように、在庫が多すぎると商品の劣化や管理費用の上昇を招き、逆に
  少なすぎると欠品につながります。
  そのような事態に陥らないように、適正な在庫量を確保しておかなければなりません。

  ◎最小在庫量 
   最小在庫量とは商品が欠品にならないように最低限持っておくべき在庫量であり、
   安全在庫量とも呼ばれます。
   最小在庫量は日ごとの出庫量の変動が大きいか小さいかによって使い分けます。
   最小在庫量は以下のように計算されます。

   <出庫量の変動が小さい場合>
    最小在庫量=1日の平均出庫量×(リードタイム−1日)  
    仮にリードタイムが7日であれば、6日分の出庫量に対応できる在庫が最小
    在庫量となります。

   <出庫量の変動が大きい場合>
    
   1日の最大出庫量と平均出庫量の差が大きいほど、最小在庫量が多くなります。
   出庫量の変動が大きい場合には、大量の出庫に備えて最小在庫量を多めに見積もる
   必要があります。

  ◎最大在庫量 
   過剰な在庫を持たないために、在庫量の上限となる最大在庫量を定めておく必要が
   あります。

   最大在庫量を求めるには、まず期首と期末の在庫量の実績により平均在庫量を以下の
   ように計算します。
    平均在庫量=(期首在庫量+期末在庫量)÷2  
   期首在庫量と期末在庫量の平均が平均在庫量となります。

   この平均在庫量と上記の最小在庫量を用いて最大在庫量は以下のように計算されます。
    最大在庫量=(平均在庫量×2)−最小在庫量 
   在庫が最小在庫量と最大在庫量の間に収まる適正在庫量になるように、発注量を
   調整しなければなりません。

 2.出庫の変動が極端に大きな商品には注意 
  前記の適正在庫量はあくまでも一般的なモデルであり、実際にはこれに当てはまらない
  商品もあります。
  例えば、季節商品、流行商品、新発売商品は短期間に大量の出庫がある一方で、
  季節外れ、需要の衰退などの要因で極度に出庫が少なくなることがあります。
  出庫が極端に大きく変動する商品の在庫管理は、商品の特性や発注先の状況などを
  見極めて、発注量を決定しなければなりません。

□発注業務の基本
 1.各種の発注方式 
  在庫管理を考えるうえで重要なのが発注方法です。
  発注方法には基本的に以下の5種類の方式があります。
  ◎定期定量方式 
   発注時期、発注量ともあらかじめ決められている発注方式です。
   時期によって出庫量の変動が小さい商品に適しています。

  ◎不定期定量方式 
   発注時期は決まっていませんが、発注量は常に一定になっている発注方式です。
   時期によって出庫量の変動が大きい商品に適しています。
   在庫量がある一定の量を下回った時点(発注点)で発注します。
   不定期定量方式の場合、発注点をどこに設定するかが重要になります。

  ◎定期不定量方式 
   発注時期は決まっていますが、発注量はその都度変動する発注方式です。
   時期によって出庫量の変動が大きく、かつ出庫量予測がしやすい商品に適して
   います。
   定期不定量方式の場合、発注量の決め方が重要になります。

  ◎定量基準維持方式 
   定期不定量方式の一種として定量基準維持方式があります。
   これは自動車のガソリンを満タンにするように、在庫量の上限をあらかじめ定めて
   おき、定期的に上限まで補充する発注方式です。
   発注量は当期における出庫量に応じて決まります。

  ◎不定期不定量方式 
   発注時期、発注量ともあらかじめ決まっていない発注方式です。流行商品や限定
   商品など、出庫量の変動が非常に大きく、中長期にわたって出庫を見込むことが
   できない商品に適しています。

 2.発注点の設定方法 
  不定期定量方式による発注の場合に重要になるのが発注点の設定です。
  発注点は以下のように計算されます。
   発注点在庫量=最小在庫量+(1日の平均出庫量×リードタイム)
  例えば、最小在庫量が30個、1日の平均出庫量が5個、リードタイムが3日の商品で
  あれば、在庫量が45個になった時点が発注点となります。

 3.経済的発注量 
  定期不定量方式による発注の場合に重要になるのが発注量の設定です。
  発注と納入の頻度を多くして1回当たりのロットを小さくすると在庫量は少なくて
  済みますが、輸送費などの発注・受入費用がかさむことになります。

  逆に、発注と納入の頻度を少なくして1回当たりのロットを大きくすると発注・受入
  費用が少なくて済みますが、大量の在庫を抱えることになり在庫管理費用がかさみ
  ます。

  そこで、在庫管理費用と発注・受入費用のバランスをとるために、
   発注量を在庫管理費用と発注・受入費用の合計が最小となる
   量になるように調整する
  とよいでしょう。
  この発注量を経済的発注量といいます。

□在庫削減のための対策
 1.商品によって発注方法を使い分ける 
  企業が取り扱う商品は多種にわたり、商品によって売り上げへの貢献度や入出庫の
  頻度が異なります。
  前述の通り、商品の特性によって適した発注方法があるので、すべての商品について
  同じ発注方式で発注すると、売れ筋の商品は欠品を招き、そうでない商品については
  過剰在庫となるでしょう。

  売り上げへの貢献度や入出庫の頻度によって層別管理をするABC分析によって発注
  方式を使い分けることは在庫削減につながります。
  ABC分析による発注方法の使い分けは例えば以下の通りです。

  ◎Aグループ:定期不定量方式 
   売れ筋商品のAグループは欠品を防ぎ販売機会を逃さないことが重要です。
   出庫の状況をしっかりと把握したうえで今後の出庫予測を立て、発注機会ごとに
   その都度発注量を調整します。

  ◎Bグループ:定量基準維持方式 
   Bグループの商品については、欠品を防ぐことを念頭に置きつつ、必要以上の
   在庫を持たないようにします。
   定期的に在庫量を把握し、あらかじめ定められた上限と発注点との差の量を発注
   する定量基準維持方式が適しています。

  ◎Cグループ:不定期定量発注方式 
   出庫頻度が低いCグループの商品については、過剰在庫を防ぐことが重要です。
   「減ってきたら補充する」という考え方に基づき、在庫量が発注点に達した時点で
   あらかじめ定められた量だけを発注する不定期定量発注方式が適しています。

 2.小ロット化の検討 
  在庫管理費が大きくなっている場合には、1回の発注当たりのロットを小さくする
  ことは在庫削減に大いに役立ちます。
  しかし、小ロット化により発注頻度が高くなると輸送費などの発注費用がかさむため、
  前述の経済的発注量を意識する必要があります。

  また、発注の小ロット化は発注先がそれに対応可能かどうか十分に検討しなければ
  なりません。 
  BグループやCグループの商品のロットが出庫量に対して大きく、かつ発注先の理解を
  得ることができるのであれば、小ロット化に向けての交渉を行うとよいでしょう。

 3.安値発注は慎重に行う 
  市況によって価格が変動する商品については、なるべく価格が安い時に発注する
  ことは企業にとって合理的な行動です。
  しかし、在庫管理を考える際には、安価だからといって必要以上の量を発注する
  ことには注意が必要です。

  その理由は、商品が劣化すると在庫の資産価値が目減りしたり、在庫管理費用が
  かさんだりするためです。
  安価な商品の発注の際には出庫予測を慎重に立てることが求められます。

 4.在庫の集約化による効率化 
  複数の場所に在庫を分散して保管しておくと、1カ所で在庫を管理するのに比べて
  多くの在庫が必要となります。
  在庫を分散して保管する場合、倉庫1カ所当たりの在庫量が少ないため、在庫量に
  対する出庫量の変動幅が大きくなります。

  そこで、欠品に備えてそれぞれの倉庫が余分に在庫を持たなければならず、在庫量の
  合計は1カ所で集約管理した場合に比べて多くなります。
  従って、在庫の集約化は在庫削減のための一つの方策となります。

  また、在庫を集約化すれば少ない人数で在庫を管理することが可能になり、在庫管理
  費用の削減にもつながります。

  一方で、在庫の集約化には、取引先から遠くなることによりリードタイムが長くなる、
  輸送コストが増大するなどのデメリットが発生する場合もあります。
  在庫の集約化には、自社における費用対効果の見極めに加え、取引先との相談が必要
  です。

 5.棚卸し期間の短期化によるきめ細かな管理 
  前述の通り、棚卸しは3カ月、半年に1回の頻度で行われていることが多いようです。
  中には、数カ月間にわたって在庫のチェックを全く行っていない企業も少なくありません。
  そうした企業では、在庫台帳に記載されている在庫状況と実際の在庫状況に差異が
  生じたり、またその間に出庫量が変動したことにより在庫が過剰となっていることに
  気付かないこともあります。

  従って、在庫量を削減するために、棚卸し期間を短期化することが一つの施策と
  なります。 
  しかし、すべての商品について短い期間での棚卸しを行うと膨大な手間がかかり、
  かえって管理費用が増加することにつながりかねません。

  そこで、棚卸しについてもABC分析を適用し、例えば、Aグループは1カ月、Bグループ
  は3カ月、Cグループは6カ月と、グループごとに棚卸し期間を分けるとよいでしょう。

 6.在庫管理のためのITツール導入 
  過剰在庫の原因の一つに人為的なミスがあります。
  台帳の転記漏れや発注量の打ち込み間違いなどの人為的なミスを削減し、在庫管理に
  かかる業務を簡素化するためにITを使って企業間ネットワークを構築することは有効です。

  在庫管理に関するITシステムにEDI(Electronic Data Interchange)があります。
  EDIは、あらかじめ企業間で標準化(統一化)されている電子データにより見積依頼、
  発注、配送手配、請求・支払など業務上のさまざまな場面で利用することができます。

  また、EDIの履歴データを分析することで、商品の売れ筋・死に筋の把握や需要予測
  などができることもメリットとして挙げられます。
  ただし、EDIのメリットを享受するためには取引先もEDIを導入していなければ
  なりません。

  大企業においてはEDIの導入が進んでいますが、中小企業においてはまだ発展途上の
  段階にあるようです。
  EDIについての詳細は以下のURLにて参照できます。
  <EDI推進協議会> 
   自社において比較的簡単にできる取り組みとして、現段階で手書き台帳による
   在庫管理を行っている場合、在庫管理ソフトを導入するのも一案です。


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業務改善の方法と進め方

業務の品質管理手法

業務の品質管理手法

■シックスシグマの概要
 シックスシグマとは日本に定着している「カイゼン」(TQC)を基礎にして、米国
 モトローラ社で開発された品質改善手法です。
 ポイントは、通常、平均値で把握されることが多い製品やサービスの質を、平均値だけで
 なく、ばらつきについても意識する点にあります。

 統計データに基づいた目標設定、実行策がマニュアル化されているのが特徴です。
 最終的には、シックスシグマに基づいた小規模な活動の積み重ねによって、全社的な
 経営改革を実現するものです。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)で導入され大きな成果を上げたことが有名です。
 シグマは統計学上の用語で、標準偏差と呼ばれ分布のばらつきを示すものです。
 そして、シックスシグマは100万分の3.4を表します。

 シックスシグマによる改善手法は、
設定したテーマにおいて100万回のうち3.4回程度のミス
 しかしないという高い目標を設置し、その達成のために、目標に影響を与える要因を特定し、
 要因に関するデータを収集して数値化し、その事実に基づいて論理的に改善を進めていく
 という科学的分析方法を取り入れた全社的な業務革新活動
をいいます。

 数式で表すと、目標をY、目標に影響を与える要因をXとすると、Y=F(X)という形に
 なります。
 シックスシグマでは、このように目標と要因を数値化して改善活動を進めるため、曖昧さ
 が許されません。


シックスシグマの手順
 1.シックスシグマ取り組みのために
  シックスシグマのプロジェクトは社内で専門のチームを組織して推進します。
  シックスシグマにおけるチームスタッフは以下のような呼称で呼ばれています。


  <チャンピオン>
   事業とシックスシグマプロジェクトの責任者です。
  <ブラックベルト>
   シックスシグマプロジェクトチームのリーダーです。
   プロジェクト専任の立場で改善活動に携わります。

  <グリーンベルト>
   自分の業務との兼任でプロジェクトに参加するプロジェクト推進リーダー、で
   ブラックベルトのサポート役です。

  <マスターブラックベルト>
   ブラックベルトの技術的指導者です。

  シックスシグマプロジェクトを進めるにはプロジェクトリーダーであるブラックベルトを
   育てることから始めます。
   シックスシグマを導入している企業も、コンサルティング会社からブラックベルトの
   教育を受け、シックスシグマを導入しています。


 2.シックスシグマにおける「MAIC」
  シックスシグマでは主に「MAIC」と呼ばれるプロセスに従って業務革新を行います。
  Mは(MeasureもしくはMeasurement:測定)、Aは(AnalyzeもしくはAnalysis:
  分析)、Iは(ImproveもしくはImprovement:改善)、CはControl:管理)を
  意味します。  


  (1)測定
   ここでは、品質評価上最も重視される点(シックスシグマではCTQ: Critical To Quality
   といいます)に影響を与える重要な社内プロセスを見つけ、CTQと対比させながら
   発生した欠陥を測定します。

   実際に測定を行う前には、品質評価上最も重視される点からシックスシグマで改善
   すべきテーマを決め、「どのような尺度(指標)でテーマのレベルを判断するか」
   「目標の数値はどれくらいに設定するか」「尺度となる指標は収集できるかどうか」
   「収集方法や収集時期」などをあらかじめ検討します。

   この段階を経て初めて情報の収集を行うことになります。そして、情報の数値化を
   行いますが、数値化に当たっては統計学の手法を用いることになります。
   なお、シックスシグマで改善すべきテーマについては、顧客満足の視点を重要視して
   決めます。


  (2)分析
   この段階では、なぜ欠陥が発生するのかを見極めます。
   まず、問題のあるプロセスの分析において、それぞれの要因の因果関係や関連性を
   整理・集約して問題を単純化させることが必要です。

   次に集約した要因の因果関係を明確にします。
   そして、自社の強みは何であるかを評価し、同時に自社の弱みを数量化します。
   その結果、最後に取り組むべき課題を設定します。
   この課題は優先順位の高さと自社の弱みによって設定することになります。


  (3)改善
   ここでは目標達成に影響を与える主要な要因を特定し、それらが目標に与える影響を
   数量化します。
   そしてこれら主要要因の最大許容範囲を特定し、その範囲内に数値のばらつきが
   収まるようにプロセスに変更を加え実行します。
   こうした改善作業を行ううえでは、改革の組織化が前提となります。


   ブラックベルトは全社的視点を持ち、個別のシックスシグマによる改善を推進して
   いきますが、改善が有効に機能するためには社内が組織化されていないと、ブラック
   ベルトの示すコンセプトや改革の方向が伝わりにくくなってしまうためです。


  (4)管理
   ここでは、プロセスが変更されてから、改善の段階で特定した主要要因が最大許容
   範囲内に収まっているかどうかを把握し、収まらない場合は問題点を見つけ排除します。
   そして、適正水準に保つようコントロールします。さらに、この段階は定着のために
   継続して管理を行います。



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業務改善の方法と進め方

提案制度の導入

提案制度の導入

 一般に従業員数が少ない中小企業は、規模が小さいため、人事異動の機会があまり多く
 ありません。
 そのため、いつの間にかマンネリズムや経験主義に侵されていることがあります。
 また、社員が高齢化するにつれてなんとなくムードが沈滞してくるケースも見られます。
 このような場合には、従業員と組織の活性化を図り、マンネリや沈滞ムードを打破して
 いくことが大切です。 
 従業員や組織の活性化にはいくつかの手法が考えられますが、ここでは、  「提案制度」
 による社内活性化施策について、その一般的な導入手順を解説します。

 □提案制度とその導入プロセス
  1.提案制度とは 
   提案制度とは、業務に関する改善提案や新しい企画などを社内に広く求め、新商品、
   新製品の開発や作業効率、生産性向上などに役立てるための方策の一つとして広く
   行われています。
   また、このような直接的な効果だけではなく、従業員からさまざまなアイデア等を
   募ることによって、経営への参画意識を高めるとともに、ボトムアップの経営を
   実現し、企業の組織活性化を図ることができるという効果も期待できます。
   こうした効果への期待から、最近では提案制度を導入する企業が増えています。

  2.導入までのプロセス 
   提案制度を導入する際は、実施日までのスケジュールを組み、一つひとつ段階を
   踏みながら準備を進めていくことが大切です。
   下は、提案制度を導入するまでの一般的なプロセスを示したものです。

    ①担当者の決定
    ②スケジュールおよび制度概要の検討
    ③詳細事項の決定
    ④実施準備
    ⑤従業員へのアナウンス

 □提案制度導入までのプロセス
  1.担当者の決定 
   最初にやるべきことは担当者(事務局)の決定です。
   そして、この担当者に、企画から準備・実施にいたる一連の作業に対して一定の権限
   と責任を付与することが大切です。
   担当者には、総務部門の部課長(場合によっては社長自身)などを選任したり、
   各部門の責任者から複数名選任しプロジェクトチームを編成してもよいでしょう。

  2.スケジュールおよび制度概要の検討
   選任された担当者は、準備しなければならない事項を整理し、実施予定日までの
   スケジュールを立てます。 
   次に、制度の概要を策定しますが、ここで大切なことは、提案制度の導入目的を
   改めて明らかにすることです。
   「何のために、何を主たる狙いとして導入するのか」を明らかにし、当初の目的に
   沿って設計することが大切なのです。 
   次いで、改善提案の実施期間や提出方法、また優秀提案者の表彰などについての案を
   検討します。
   例えば、提案の提出方法一つを取ってもいろいろなやり方があります。
   最も一般的(古典的)なのは、各職場に「提案箱」(目安箱)を設置する方法ですが、
   Faxによる方法も簡単で便利です。
   一方、パソコンネットワーク(イントラネット) など社内情報インフラが整備
   されている場合には、電子メールを活用した「提案」方法も考えられます。

  3.詳細事項の決定 
   制度概要についての検討が進んだら、具体的な詳細事項について決めます。
   例えば、「提案箱」方式を採用する場合には、「提案箱」の個数やデザイン、設置場所、
   回収の時期、回収担当者などについて決定しなければなりませんし、優秀提案者に
   表彰を行う場合には、賞品(賞金)の内容、表彰方法などについても決めて
   おかなければなりません。

  4.実施準備 
   制度内容が決定したら、いよいよ実施の準備です。
   まず、従業員から幅広い業務改善提案や新しい企画を受けるための「提案用紙」を
   作成しなければなりませんが、提案用紙には提案テーマおよび提案のポイント、
   提案の具体的内容などを記入する欄を設けます。
   フォーマットをあえて定めず、メモでもレポート用紙でも何でもよしとする方法も
   考えられますが、実施後の整理、集計、分析作業等を考慮すると、やはり、一定の
   用紙を準備しておく方がよいでしょう。 
   また、提出方法を提案箱方式とする場合には、必要個数の「提案箱」 も準備
   しなければなりません。

  5.従業員へのアナウンス 
   以上の準備が整ったら、提案制度の実施について従業員にアナウンスします。
   中小企業では、朝礼で発表するのが一番手っ取り早いでしょう。
   その他、各部門の責任者経由でアナウンスする方法や、社内電子メール(電子掲示板)
   を用いてアナウンスする方法も考えられます。
   このとき、質問窓口を設けて従業員からの質問に対応したり、表彰を行う場合には
   表彰内容を明示して従業員の制度への意識を高めるなど、質の高い改善提案が
   出されるように心がけたいものです。

 □提案制度の実施 
  提案制度は、従業員から自主的に提案が提出されてこそ意味があり、そのとき初めて
  組織活性化をはじめとする提案制度の目的も実現されます。
  したがって、従業員をいかに積極的に取り組ませるかが、最大のポイントとなりますが、
  以下の3点については特に注意して下さい。 

   (1)実施期間中、担当者(事務局) からの定期的な啓発を行うこと
    例えば、2週間ごとに提出状況をまとめ、優れた提案を発表するなど、
    事務局がまめに提案をチェックしている(制度がしっかりと運営されている)
    ことを従業員にわかるようにします。 
   (2)成功のバロメーターは“数”(提案件数)であることを徹底すること  
    提案制度では、初めからすばらしい提案ばかりが出るとは限りません。
    苦情や不満、要求などが含まれることもありますし、一般論や低レベルの提案が
    多いこともあります。
    しかし、提案制度で大切なことは“数” (提案件数)を競うことで、出された
    提案を評価するのは後のことです。
    「ゴミの山」の中に、いくつかの「宝」 が含まれているかもしれないといった
    視点が、成功の鍵となることに留意して下さい。 
   (3)優れた提案には(期間中でも)会社としてすぐに対応すること
    優れた提案に対しては、素早くレスポンス(対応)することが大切です。
    提出された改善提案をできる限り早く実行に移そうとする姿勢が、提案する
    従業員の意欲をアップさせます。

 表 彰(褒賞)
  提案制度で表彰(褒賞)は不可欠です。
  表彰に当たっては、提案件数と提案内容の両方について行います。
  その際、個人表彰と組織表彰の二本立てとするとよいでしょう。
  組織表彰を設けることによって、部や課をあげての参加が期待できるからです。 
  提案制度を社内運動化するためには、このうち、組織ごとの提案件数を重視する
  必要があります。
  一般に、組織(部とか課あるいはチームなど)の大きさは様々ですので、組織表彰の
  際には、組織ごとに「1人あたり件数」を算出します。
  個人表彰は提案件数と提案内容の両方を勘案します。 
  表彰の方法には、
   ①朝礼の際や掲示板等で表彰者の氏名や組織名を発表して顕彰する
   ②褒賞金を支給する
  などがあります。
  年間を通した最優秀提案などについては、経営方針発表会などフォーマルなイベント時
  に大々的に行うなどとしてもよいでしょう。
  いずれにしても、表彰者を社内報や掲示板に取り上げるなど、他の従業員が次回の
  改善提案の提出に意欲を燃やすような制度にすることが大切です。

 □継続的な取り組みにより組織活性化へつなげる 
  本当の意味で組織の活性化を図るには、提案制度を一回で終わらせるのではなく、
  継続的に実施することが大切です。
  そのためには、第1回目にどれだけイベント性を持たせて全社運動化し、盛り上げる
  ことができるかが重要となります。
  例えば、社内報や掲示板に、制度について大々的に取り上げたり、ポスターやチラシ
  を作成・配布したり、社長自らが折にふれて直接呼びかけるなど、制度を盛り上げる
  ようにすることが大切です。 
  また、回数を重ねていくうちにマンネリ化してしまわないよう、一回ごとにテーマを
  変えるなどの工夫も必要です。 
  そして、「ゴミの山」 の中にキラリと光る「宝」が少しでもあれば、生産性向上に
  大いにプラスとなることでしょう。

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業務改善の方法と進め方

テレワークの概要と導入

テレワークの概要と導入

  ■テレワークの概要
   1.SOHOとは 
    SOHO(ソーホー:Small Office Home Officeの略称)という言葉を耳に
    したことのある人は多いでしょう。
    SOHOは、コンピューターの普及などを背景に米国で生まれた就業形態です。
    インターネットや電子メールなどの通信インフラが整備されたことで、
    自宅やオフィスに居ながらにして商談し、納品することも可能となったために
    発展しました。
    SOHOの例として、
     ・自宅において請け負いの仕事をしているWebデザイナー
     ・自宅兼オフィスで業務を営む士業(中小企業診断士、社会保険
      労務士など)
    などを挙げることができます。
    近年は、日本でもSOHOが普及しており、一つのワークスタイルとして確立
    されています。 
    SOHOで働く人にとって問題となるのは、いかに安定した受注を獲得するか
    にあります。
    正式なオフィスを構えていないSOHOは、社会的信用を得ることが難しい
    からです。
    多くのSOHOでは、その補完策として一般企業よりも受注金額を低く設定
    しています。 
    発注額を抑えたい企業は、廉価なSOHOを積極的に利用したいと考えます。
    しかし、自社ニーズを満たすSOHOを見つけ出すのは大変ですし、どこまで
    信用してよいかも分かりません。
    そこで登場したのが、発注側の企業とSOHOの橋渡しとなるコーディネーター
    企業です。
    コーディネーター企業は複数のSOHOをネットワークしています。
    発注側の企業から依頼を受けると、依頼内容に適したSOHOを紹介することで
    ビジネスとしています。 
    通信インフラなどSOHOの絶対的条件が整い、さらにSOHOが安定して受注を
    受ける仕組みが整いつつある現在、SOHOはさらに増加していくといわれて
    います。

   2.テレワーク誕生 
    SOHOが注目されて久しい現在、企業もSOHOを導入するようになってきて
    います。 
    ただし、企業が導入するSOHOはこれまで説明したような「個人が自宅で
    仕事を請け負うスタイル」とは少し異なります。 
    企業が導入するSOHOは、社員を毎日のように本社に出社させずに、
     サテライトオフィス(分散型オフィス)や在宅で勤務をさせる就業の形態
    です。
    導入効果としては、
     ・社員の通勤時間の短縮、企業の交通費負担の圧縮
     ・顧客が密集する地域にサテライトオフィスを構えることによる
      効率的な営業活動
    などが期待されています。 
    大企業を中心に積極的にSOHOが導入されようになってからは、企業が導入
    するSOHOを特にテレワークと呼ぶようになりました。 
    テレワークとは、テレ「Tele:遠い」とワーク「Work:働く、仕事」とを
    組み合わせた造語です。
    日本テレワーク協会では、テレワークを
     情報通信手段を活用して、場所と時間とを自由に使った柔軟な働き方
    と定義しています。

   3.SOHOとテレワークの比較
    SOHOとテレワークについて説明しましたが、両者は明確な定義によって
    使い分けられているものではありません。
    2つの言葉はほぼ同義語と解釈されており、書籍や雑誌によって用語が違う
    程度なのが現状です。 
    最近では、テレワークという言葉の意味が広がってきており、
     テレワークという概念の中にSOHOを位置づける
    ようにもなってきています。 
    SOHOとテレワークでは異なる部分が多くあります。
    ここでは、SOHOとテレワークを使い分けるために「個人が導入するものを
    SOHO」、
    「企業が導入するものをテレワーク」とします。 
    以下では、企業が導入するテレワークについて紹介します。

  □企業がテレワークに注目する背景
   1.迫られるワークスタイル変化への対応
    社員の高齢化、人件費の肥大化など労働環境が激変する中、企業は徹底した
    効率化によるムダのない経営を目指しています。
    その一環として就業体系の見直しも進められています。 
    従来の就業形態は、「すべての社員が同じ職場で、同じ就業時間を労働する」
    というもので、全体のチームワークが取れやすいといった利点がありました。
    しかし、個人の抱える仕事が複雑化・多様化している現在、
     一律的な就業場所、就業時間では実情にそぐわないケース
    も出てきています。
    また、チームワークを重んじるあまり周囲の人間関係によるストレスで
    生産性が低下してしまうのも問題です。 
    こうした中、時間と場所にとらわれない自由な就業の形態としてテレワーク
    が注目されるようになりました。

   2.テレワークの導入で期待できる効果 
    テレワークを導入することで、企業、社員、社会に以下のようなメリットが
    生じます。

    ◎企業 
     サテライトオフィスや在宅勤務の枠を広げることは、社員の能力発揮、
     集中力向上をうながす効果があるとされています。
     これは、社員が長い通勤時間や対人関係ストレスから解放されるため
     です。
     少数精鋭の時代にあって各社員の生産性向上は企業にとって大きなプラス
     であり、通勤コストや移動コストの削減の面からも有効です。

    ◎社員 
     社員は長い通勤時間や人間関係によるストレスから解放されるため、
     長くて自由な時間を得ることができます。
     自宅と会社が遠い場合、朝早く出かけて夜遅く帰ることになります。
     これでは家族とのコミュニケーションを十分にとることができませんが、
     自宅に近い場所などを職場にすれば、この問題は解決できます。

    ◎社会 
     サテライトオフィスや在宅勤務の普及は朝夕の通勤ラッシュの緩和に
     寄与します。
     また、地方にサテライトオフィスを設置する場合、地域活性化にも効果
     があります。 

     現在、多くの企業がテレワークを実施しています。
     日本テレワーク協会の調べでは、2014年では企業に所属しながら週に
     8時間以上在宅勤務する「雇用型テレワーカー」は480万人に上ると
     されています。 
     テレワークを導入することで多くのメリットが期待できます。
     そのため、今後も多くの企業がテレワークの導入を検討するでしょう。
     しかし、テレワークの導入には多くの課題があることも事実です。
     以下では、
      ・サテライトオフィスの形態
      ・企業のテレワークの導入状況
      ・導入時の留意点
     について考えます。

  □サテライトオフィスの形態 
   テレワークの基盤となるのはサテライトオフィスです。(社)日本テレワーク
   協会では、サテライトオフィスの形態を次のように分類しています。
   テレワークを導入する企業は、その目的や対象業種・社員によってサテライト
   オフィスの形態を選択しています。

   ◎個人分散型オフィス 
    分散の主体は「社員個人」であり、サテライトオフィスとホームオフィス
    (在宅勤務)があります。
    個人分散型オフィスは最も一般的なテレワークの形態です。

   ◎自然共生型オフィス 
    分散の主体は「グループやチームまたは個人」となります。
    都会から離れ、豊かな自然の中で心身のリラックスを図り、創造性を高める
    ことを狙ったサテライトオフィスの形態です。
    リゾートオフィスとも呼ばれます。

   ◎機能分散型オフィス 
    分散の主体を「機能」とするものです。
    本社機能を都心郊外または地方に分散させ、効率良く業務を行うと同時に、
    震災やテロなどのリスクを回避します。
    また、オフィス設置地域とのより良い関係づくりも目指します。

  □テレワークの導入状況
   1.テレワークの導入状況 
    (社)日本テレワーク協会の資料から、企業のテレワーク導入状況を紹介
    します。
    調査では、テレワークを導入している企業、テレワークで勤務する社員を
    対象に行われたものです。 
    テレワークについて、「会社のルールとして認めている」「ルールはないが、
    裁量で実施」と回答した企業は全体で10.3%となっています。 
    企業規模別では中小企業が8.7%、大企業が13.8%、上場企業が14.0%と、
    企業規模の大きさに比例して実施率が高まる傾向があります。

   2.テレワークの実施部門 
    テレワークを導入している企業の約70.3%が一部部門についてだけテレワーク
    を認めています。
    職種によってはテレワークに適さないものもあることを考慮しているためです。 
    具体的なテレワークの導入部門としては
     技術の33.6%
    が最も高くなっています。
    次いで、営業の31.5%が高くなっています。 
    テレワークには、定型的な就業時間にとらわれず、ある程度自己完結が可能な
    業務が適しています。
    専門・技術職が実施部門の第1位となったのは、テレワークの導入による
    効率化の成果が測りやすいためでしょう。
     テレワーク実践活用テキストブック(総務省令和元年)
    また、テレワークの実施人数としては、
     ・中小企業では5人以下が41.4%
     ・大企業では50人以下が54.1%
    と最も高くなっています。
    企業はテレワークに適した職種を担当する社員の中から、自己管理がしっかり
    できるなどテレワークに適した社員を選んで適用しているようです。
     テレワーク人口実態調査 (国土交通省2018年)

   3.テレワークを実施する目的と効果(厚生労働省)
    テレワーク導入の目的としては、
     定型的業務の効率性(生産性)の向上56.1%
    となっています。
    勤務者の移動時間の短縮も48.5%と大きくなっています。 
    先に紹介した「テレワークの実施部門」では、第1位に営業・販売が挙げられ
    ています。
    テレワークの導入により、外回りの営業マンの移動時間を短縮し、営業の効率化
    を図ろうとする企業が多いことを示した結果といえるでしょう。 
    しかし、導入効果は企業の予定通りではないようです。
    テレワークの導入によって非常に高い効果を得られたのは
     「勤務者にゆとりと健康的な生活を与える」の52.0%
    となっています。

   4.テレワークのメリット 
    テレワーク導入によるメリットとしては、一般的には以下のようなものが
    挙げられます。

    (1)企業におけるメリット
     ◎生産性の向上 
      電話などで仕事が中断されることを回避できるようになります。
      これによって集中力向上が促され、より高い能力の発揮が期待で
      きます。
      また、モバイルワークによって移動中であっても顧客に対して適
      切な対応をすることが可能になるなど、総合的な生産性の向上が
      見込めます。

     ◎コストの低減 
      オフィス機能の縮小と最適配置による効率化が可能になります。
      在宅勤務やサテライトオフィスなどの設置によるテレワークは、
      都市部にオフィスを集中的に立地する場合と比較して、オフィス
      維持コスト、通勤コスト、営業先などへの移動コストを削減する
      ことができ、コスト面での効率化を実現します。

     ◎リスクマネジメントの強化 
      これまでひとつのオフィスに集中していた重要書類や人的資源を
      分散できます。
      これによって、災害時などに対するリスクマネジメントが結果的
      に強化されることになります。

     ◎人材の確保・人材の有効活用 
      子育て中の主婦など、仕事をする意志はありながら通勤できない
      という理由で就業を断念している人材を雇用することができます。
      こうした人たちに十分な能力があるならば、テレワークによる雇
      用は新たな戦力確保の手段となります。

    (2)従業員のメリット
     ◎自分を律する人材の育成 
      テレワークの導入が従業員にもたらす最大のメリットは、自分を
      律することのできるプロフェッショナルの養成効果が見込めると
      いう点にあります。
      テレワークではオフィスから物理的に離れて仕事をするため、会
      社による監視が行き届かなくなります。
      仕事のスケジュールや業務手順を自分で考えなくてはならない環
      境は、自己管理能力の向上を促進するでしょう。
      逆に、自己管理能力の欠如した従業員はそれがそのまま仕事の結
      果となって表われることとなります。

     ◎余暇の増大 
      テレワークで通勤時間が削減されることによって、相対的に「時
      間的ゆとり」が増加します。
      この自由時間を家族との団らんや趣味の充実、自己啓発などの時
      間にあてることができるようになります。
      また、睡眠時間の増加などは、結果として従業員の健康維持につ
      ながります。

     ◎雇用機会の増加 
      企業側のメリットと同様、テレワークは何らかの事情で通勤がで
      きない人にとって新たな雇用機会へとつながります。      

   5.テレワークのデメリット 
    テレワークのデメリットとしては、人間関係に関するものが多く挙げられる
    結果となっています。
    基本的には一人で仕事をするテレワークでは、人間関係の希薄さをどのように
    して埋め合わせるかも導入の際の課題といえます。
     ・上司・同僚などとのコミュニケーションが不足する
     ・孤独感や孤立感を感じる
     ・仕事の評価に不満がある
     ・家族に迷惑がかかる
     ・仕事の生産性が低くなる

  □テレワーク導入における課題
   1.ハードの整備 
    テレワークでは、サテライトオフォスや在宅勤務が基本となります。
    この体制を整備するためには少なからず初期投資が必要で、特にサテライト
    オフィスの場合はオフィス建築費や機材導入費などコストがかさみます。 
    サテライトオフィスの使用頻度や対象社員数によって、必要な面積や機材の
    量・質は異なりますが、テレワーク導入企業は早期に予算を確保しなければ
    なりません。 
    また、テレワークの大きな目的は社員の生産性向上にあるため、設置する機材も
    社員の意見を反映したものが望ましいといえます。

   2.ソフトの整備 
    テレワーク導入で最も問題となるのはソフト面の整備です。
    一口にソフト面といってもその内容は多岐にわたり、例えば、「テレワーク
    導入に関する明確な規則を作成し、実践者以外にも周知徹底する」などの
    取り組みが重要となります。
    つまり、
     →テレワークの対象を明確にすること
     →テレワークで働く社員の評価基準を明確にすること
    などの基本的な事項から、「なぜ、その社員がテレワークの対象になるかを
    周知し、実践者以外の社員からも理解を得る」までのフォローが必要という
    ことです。 
    また、実際にテレワークで働く社員の中には、
     ・成果に対する不安を感じてオーバーワークになりがち
     ・孤独感を感じている
    などの傾向がみられます。
    こうした社員に安心感を与え、テレワークの最大のメリットたる労働生産性や
    業務効率の向上を実現するためのメンタルケアを行うことが大切です。

   3.新しい雇用関係を目指して 
    フレックスタイム制裁量労働制などにみられるように近年の就業体系の
    多様化は加速しています。
    これらは、
     →個々の社員の能力に期待し、生産性の向上を図るとともにコスト
      を圧縮する
     →自己の裁量で仕事量や時間を調節し、能力を最大限に引き出す
    といった点で共通しており、テレワークはそのさいたる例です。 
    こうした就業体制の多様化は、これまでの日本企業の慣習であった同一処遇
    の体制を抜本的に見直すものであり、業績アップに苦戦する企業が労働生産性
    や業務効率の向上を追求していることの現れです。 
    今後、能力・成果主義の流れも手伝ってテレワークを導入する企業は増加して
    いくでしょう。
    テレワーク導入に関する課題が解決されたとき、個人と会社との新しい雇用
    関係が成立していくことでしょう。

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業務改善の方法と進め方

ビジネスプロセス・リエンジニアリング 〜BPR

ビジネスプロセス・リエンジニアリング 〜 BPR
 

  ■ビジネスプロセス・リエンジニアリング(リエンジニアリング)

   リエンジニアリングは、米国の経営学者マイケル・ハマーの提唱で生まれた

    利益向上のための、業務プロセスの抜本的改革の考え方

   です。

   当時、リエンジニアリングの考え方は、抜本的な経営改善を望んでいた企業マインド
   に合致したこともあり、多くの企業で実施されました。

   しかし、リエンジニアリングの浸透とは裏腹に、リエンジニアリングを「人員の整理
   を行って、企業をスリム化することである」などと間違って解釈をする人が多い
   ことも事実です。 

   一般的にいわれているリエンジニアリングの概念は、

    経営改善や競争力強化のための、従来型の業務プロセスの再構築であり、
    米国企業の多くが実行し、成功を収めた改革例の共通項を理論化

   したものです。

   M.ハマーは、リエンジニアリングを

    コスト、品質、サービスなどの重大な企業経営の基準を効果的に改善するため
    に、根本的に業務(ビジネス)プロセスを考え直し、抜本的にデザインし直すことと

    定義付けています。

   ここでいう業務プロセスとは、例えばメーカーであれば、

    受注から代金徴収までの一連の活動

   を意味します。

   以下では、リエンジニアリングに対する理解を高め、効果的なリエンジニアリングを
   実践するための

    ・基本的な考え方

    ・導入方法

   などについて説明していきます。

  □リエンジニアリングの考え方

   1.顧客満足度の向上

    リエンジニアリングでは、

     顧客満足度の向上

    を重要視します。

    例えば、

     →顧客はなぜ自社の商品を買ってくれているのか

     →なぜ自社のサービスに対価を支払ってくれるのか

    を徹底的に追求し、考えられる問題点を解決していきます。

    こうすることによって、

     安定した経営を保つことができる

    と考えられるからです。

   2.コストの削減

    リエンジニアリングでは、顧客満足度の向上と並んで

     コストの削減

    も重要なテーマとなります。

    コストを削減するためには、必要であれば業務プロセスの抜本的な改革を行うことも
    求められます。

    注意すべき点は、コスト削減の副作用として、

     →品質の低下

     →顧客サービスの低下

    があってはならないことです。

    つまり、

     「顧客ニーズを満たすこと」と「コスト削減」は常に並行して行われる必要がある

    ということです。

   3.従来型業務プロセスの改革

    これまで行われてきた経営向上戦略の多くは、開発・生産・物流などの各部署を
    一つの単位としてきました。

    しかし、部署単位で行われる経営向上戦略は、

     企業にとって着手しやすい半面、必要以上の時間、人員、コストを求められる

    ことになります。

    リエンジニアリングでは、このような問題を解決するために、

     部署単位ではなく、企業全体の利益

    を常に優先し、従来の取り決めに縛られない柔軟な仕組みを目指します。

    慣習に縛られたままでは、

     大胆な発想も生まれず、コストダウンも不可能

    という立場から、企業全体の利益向上のために最適な業務プロセスを考えてい
    きます。

   4.業務時間の短縮

    リエンジニアリングにおける時間削減の考え方は、

     仕組みそのものを大胆な発想で作り替えること

    にあります。

    リエンジニアリングが「業務プロセスの抜本的改革」といわれる由縁がここに
    あります。

    例えば、「顧客からの注文書が関係部課をたらい回しにされ、発送した商品が注文
    商品と違っており、営業担当者がクレーム処理に走り回っているような企業」は数多く
    存在します。

    こうした体制は早急に見直す必要がありますが、部分的な改革では無駄が多く、
    業務全体の時間短縮には直結しないのです。

   5.リエンジニアリングの概念

    重要なのは、

     基本理念として、顧客満足度の向上がリエンジニアリング全体を貫いていること

    です。

    また、「基本的な考え方」と「期待される効果」は複合的な関係にあります。

    例えば、

     コストの削減が社員の業務拡大に直結するのではなく、すべての取り組みの結果
     として一つ一つの効果が期待

    されています。

    さらに、効果が表れた後にも継続して基本的な考え方を復習し、リエンジニアリング
    が永続的に企業に根付くことが理想です。継続的なリエンジニアリングへの取り組み
    は、時には企業の負担になることも考えられますが、企業経営者は強固な意思で推進
    していくことが大切です。

  □リエンジニアリング成功の決め手

   1.強固な改革意識

    リエンジニアリングを成功させるための重要なポイントとして、

     改革を推進する強固な意思

    が挙げられます。

    例えば、従来のシステム開発理論は、

     事務処理能力の限界を高性能コンピューターで解決する

    というものでした。

    しかし、この発想では順次高性能コンピューターを購入することが必要となり、コスト
    削減に大きな効果はないといえます。

    リエンジニアリングでは、このような従来型業務プロセスを抜本的に改革し、永続的
    に企業全体の利益向上を目指します。

    多少、初期投資額が膨らんでも、推進する価値はあるでしょう。

    以下に、業務プロセスの改革によって納期短縮に成功した企業事例を紹介します。

    ◎従来型の仕組みの改革事例

     A社の生産業務は、

      1.顧客からの注文に応じて開発部門が設計をする

      2.生産部門は開発部門からの要請に従って生産計画を立てる

      3.開発部門は下請け企業に部品の発注をする

     の3つのプロセスから成り立っています。

     顧客への製品提供サイクルは90日程度です。

     A社の製品はオーダーメイドのため、

      顧客から設計段階で頻繁な仕様変更の依頼

     があります、

     また、コスト削減のため、

      生産部門から仕様変更の依頼

     もあります。

     こうした顧客や生産部門からの仕様変更要請は、下請け企業への発注を遅らせる
     原因になります。

     最終的には、コスト面を重視し生産側の仕様で顧客と折り合いをつけて作業に
     取りかかるのですが、各部門間の調整に大きな無駄を感じます。

     そこで、A社が行った具体的な改革は、

      開発部門を中心に生産部門と下請け企業をオンラインで結ぶこと

     です。

     この改革により、生産部門は開発の途中段階から的確なチェックが可能となり、
     開発部門と生産部門の無駄なやりとりの削減を実現しました。

     また、

     下請け企業も同じ情報を入手できるため、次に自社が引き受ける仕事を
     把握し、十分な準備をすること

    ができます。

    結果としてA社は、製品提供サイクルを20日に短縮することができました。

   2.組織の簡素化

    強固な改革意識とならぶ重要なポイントに

     組織の簡素化

    があります。

    企業経営者は、

     組織を複雑にすることは、業務の重複を招く恐れがあり、
     無駄なコストが発生する危険性がある

    という事実を認識しなければなりません。

    そして、生産性向上のためには不必要に細分化された業務プロセスを大胆に
    見直していくことが大切です。

    リエンジニアリングでは、業務を必要最低限に抑えるために

     →組織の簡素化による業務の迅速化

     →個人の業務領域や裁量権の拡大

    を行います。

    組織の簡素化により少ない人員での業務が可能になるため、ここに

     リストラの必要性

    が生じます。

    リストラ推進による余剰人員の解雇には悪いイメージが付きまとい、企業
    がリエンジニアリングに踏み切ることを躊躇させます。

    しかし、企業側は強固な意思を持って取り組む姿勢が求められます。

   3.権限委譲

    リエンジニアリングを成功させるためには、

     思い切った権限委譲

    も必要になります。

    権限委譲により、各社員の業務が多様化するため、

     さまざまな面から人材を育成すること

    が可能になるでしょう。

    柔軟な思考を備えた社員は企業の大きな財産になります。

    同時に、自主裁量権が拡大するため各社員は業務に対する責任感を向上させます。

    権限委譲を進めるためのポイントは

     1.トップの経営方針を十分に浸透させ、価値観の統一を図る

     2.情報の開示範囲を拡大する

     3.情報利用のトレーニングを実施する

    などです。

    このポイントの中で最も重要なのは、

     企業経営者の意思の徹底周知

    です。

    企業経営者の意思が周知徹底されていない状態での権限委譲は、単なる放任主義
    に過ぎないともいえます。

    また、企業経営者の意思が隅々まで行き届いていないと、企業の末端で何らかの
    不祥事が起こる危険性も高まります。

  □リエンジニアリング導入の手引き

   1.顧客を第一に考える

    リエンジニアリングを導入するための統一的なルールはあるません。

    守らなければならないのは、

     顧客満足度の向上

    という企業意思がリエンジニアリング全体を貫いているということです。

    M.ハマーは、リエンジニアリングを導入する際の着眼点として

     1.どのプロセスが最も深刻な機能障害を抱えているか

     2.どのプロセスが最も顧客への影響が強いか

     3.どのプロセスが最もリエンジニアリングに成功しそうか

    を挙げています。

    どのポイントを最重要視すべきなのかは個々の企業で異なります。

    自社の状況を改めて確認し、リエンジニアリングの導入を行うことが大切です。

   2.リエンジニアリング導入時の分析ツール

    リエンジニアリングを推進する方法は、個々の企業のアイデアによって自由に行われる
    べきでしょう。

    以下に、主な方法を紹介します。

    ◎ベンチマーキング

     ベンチマーキングとは、先進企業が「どんなプロセスで」「どんな成果を上げて 
     いるか」を研究し、参考にしていこうというものです。

     比較対象にする企業は、必ずしも同業他社である必要はなく、異業種の優れた
     パフォーマンスも積極的に参考にします。

    ◎業務フローチャート

     業務フローチャートとは、業務のプロセスをチャートで示し、コストなどを具体的
     に測定するものです。職務調査表などを利用して、改革前と改革後の違いを
     定量的に測定します。

     実際にリエンジニアリングを導入する際の手順は、企業の風土や外部のコン
     サルタントへの依頼の有無で若干異なります。

     基本的には

      1.基本的方向性の決定

      2.現状分析

      3.改善案の決定・実行

      4.継続的改善作業への移行

     といった手順となります。

  □リエンジニアリングの効果を持続するために

   リエンジニアリングに成功した企業は、余分な組織が削除されると同時に階層や役職
   (肩書き)も少なくなるため、

    非常にフラットな組織

   を実現することができます。

   フラットな組織では、各社員の意識がほぼ横一線の状況にあるため、

    各社員の競争意識を促すこと

   が可能です。

   また、業務範囲の拡大によって各社員の

    仕事に対する責任感を強めること

   もできます。

   リエンジニアリングの導入に成功した企業では、顧客満足度の向上やコストの削減
   ばかりでなく、社員のモチベーションを高めることも実現してます。

   企業は社員に現われるプラス効果を継続するために、従来の年功序列の人事体制を
   見直し、能力主義、成果主義に移行するなどして、社員のモチベーションを高い位置で
   維持させるように取り組むことが重要です。

   また、リエンジニアリングを推進してきた過程をデータベースにまとめ、

    いつでもアクセスできる体制を構築

   していくことも大切です。

   一時リエンジニアリングの導入に成功したとしても、そのままの状態では刻々と変化
   する経営環境に柔軟に対応しきれなくなっていきます。

   これまで蓄積してきたノウハウを利用して、定期的なメンテナンスを行うことが必要と
   なってくるのです。

   こうした企業の変貌は、M.ハマーの

    リエンジニアリングとは「最初からやり直すこと」

   という言葉にも表れているます。

   また、M.ハマーは

    リエンジニアリングは「常に継続して行わなければならない」

   ともしています。

   リエンジニアリングが一時的なカンフル剤として終わらないよう、

    毎日の業務の中に浸透させる努力

   も必要だといえるのです。

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業務改善の方法と進め方

業務の改革改善


  改善とは短期の対策、改革とは長期の対策。

  ここでは改善について解説します。
   
  ■業務遂行のための優先順位の考え方

   業務改善や業務マニュアル作成において見落としがちなのが、この業務遂行の優先
   順位付けです。

   業務の優先順位付けは、日々多くの仕事をこなしていかなければならない社会人にとっ
   ては必須の能力です。

   優先順位付けの基本的な考え方を頭の中で“理解”しているだけではなく、日々、
   “実践”していかなければなりません。

   業務の優先順位付けで、往々にしてみられるのは、「自分のやりたい業務や、取り
   組みやい業務から進る」といったようなケースです。

   業務は会社のために遂行するものであり、会社がやってほしいと考えている業務と、
   自分がやりたい業務や取り組みやすい業務は必ずしも一致するわけではありません。

   従って、“自分本意の基準”ではなく、会社の視点に立って、業務の優先順位付けを
   行うようにしなければなりません。

   業務の優先付けを行う際の最も基本的な考え方は、業務の「緊急度」と「重要度」という
   2つの基準(業務の優先順位付け)に基づいて業務を整理するということです。

  □緊急度と重要度

   業務の優先順位付けマトリクスの中で、最も優先順位が高いのは「緊急度:高い、
   重要度:高い」の第1象限に該当する仕事です。

   次は、「緊急度:低い、重要度:高い」の第2象限、「緊急度:高い、重要度:低い」の
   第3象限と続き、最も優先順位が低い「緊急性:低い、重要性:低い」の第4象限に該当
   する業務となります。

   業務の優先順位付けを行う際に注意が必要なのは、「緊急度:高い、重要度:低い」と
   「緊急度:底い、重要度:高い」の業務の考え方です。

   業務に取り掛かる際には、緊急度の高い「緊急度:高い、重要度:低い」の業務から
   行わなければなりません。

   しかし、業務自体は「緊急度:低い、重要度:高い」のほうが重要なのです。

   多忙なときは、ともすると「緊急度:低い、重要度:高い」の業務は、長期にわたって
   後回しにしがちですが、重要性の高い業務ですので、しっかりとこなせるように注意して
   スケジュール管理を行わなければなりません。

   繁忙期などには、業務が立て込んで、忙しくなることもありますが、そうしたときに大切
   になるのが、「今、やらない業務を早めに決める」ということです。

   忙しいときには気持ちに余裕がなくなり、ミスを誘発する原因になってしまいます。

   また、責任感の強い人であれば、「なんとしても業務をこなさなければ」という意識か
   ら、無理をしてしまい、結果として心身の調子を崩してしまうことにもなりかねません。

   やらない業務を早めに決めることは、こうした事態に陥らないようにするために大切
   なのです。

   今やらない業務の判断基準は一概にはいえませんが、「緊急性:低い、重要性:低い」
   の業務は、少なくとも繁忙期が過ぎるまでは、やらない業務としたほうがよいでしょう。

   また、自分以外の人でもできる業務であれば、後に回すのではなく、ほかの人にお
   願いすることも検討しましょう。

   例えば、ルーチンワークなどは、ほかの人にお願いすることを検討すべきでしょう。

   なお、今、やらない業務を決める際には、自分勝手に決めるのではなく、必ず上司や
   当該業務に関係する人たちに報告・相談をするようにします。

  □担当する業務

   多忙なときでもミスなく業務をこなすために、今、やらない業務を決めることは大切に
   なります。

   その一方で、忘れてならないのは、自身の業務は、無意味に割り振られているわけ
   ではないということです。

   「この人なら、安心して業務を任せることができる」といった業務に対する信頼性、
   あるいは「これくらいの業務量はこなせるようになってほしい」「この業務を経験して、
   一回り成長してほしい」といった育成の観点など、各人が担当する業務には、単に
   仕事をこなすということ以上の意味合いが含まれています。

   ほかの人に業務をお願いするなどの対応をする際には、こうした点を十分に考慮する
   ことも忘れないようにしましょう。

  社内の環境整備

   業務改善の中でもバックオフィス(事務部門)を収益に直結した部門にするためにも、早急に
   着手すべき重要課題です。

   そのためには、個人の裁量に任され「内務事務を勘と経験」でこなすやり方から業務を
   標準化したやり方に変えていく必要があります。

   自社(店)の事務部門の問題点を洗い出すことから始めましょう。

   収益を上げるには、

    ・組織のコミュニケーションを図る

    ・ムダ・ムラ・ムリを排除

    ・業務改善の基本となる5Sへの取り組みを実践

   そのためにも業務改善の方法と進め方を標準化し、特定の人だけでなく、全員でノウ
   ハウを共有できるようにします。

   営業部門はもとより、バックオフィス(事務部門)を収益に直結した部門にするため
   にも、社内環境の整備は早急に着手すべき重要課題です。

   収益を上げるための組織を改革するにはムリ・ムダ・ムラの排除にあります。

   改善する社内の業務は標準化(手順書)し、特定の人だけでなく、全員でノウハウを
   共有できるようにします。

   営業部門であれば、営業は大変だ、難しいと敬遠されがちだが、果たしてそうでしょ
   うか。

   そうではなく、社員全員が営業に関わる仕組みをつくり、組織を効率的・効果的に活か
   して利益をあげる仕組みをつくることです。

   一人の営業マンが川上から川下まで一顧客の面倒を全部見るプロセスをやめること
   です。

   事務部門であれば、役割を分担し誰に代わってもできる体制づくりが必要となります。

   プロセスを分割して分業化させたほうがトレーニングや仕事への慣れの観点から見て
   も効率が上がります。

   当然、一人が全てではなく一部だけを担当しているので、その人が欠けたときの影響
   も少なくなります。

   組織を強化するには「人に仕事を付ける」のではなく「仕事に人を付ける」ことで役割を
   分担し、業務を特定の人にだけ負担のかかるやり方から誰に代わってもできる
   『仕組み』の構築が必要となります。

   内務(事務)部門を収益に貢献する体制にするためには業務の標準化が欠かせま
   せん。

   業務の分業化により、社員一人ひとりが与えられたポジションで役割を担い、結果、
   組織力(チームパワー)により、ムリ・ムラ・ムダを排除することができるからです。

   うちの社員は能力がないと嘆いているトップもいるが、これは社員に能力がないの
   ではなく、社員に環境を与えていないことが原因なのです。

   社長自らがトップセールスマンとして毎日飛び回り、従業員には精神論を振りかざして
   いては、いつまでたっても人材は育たず、社内に仕組みもできません。
   
  □社内環境

   激変する経営環境の中で、トップ自らが過去の延長線上でのやり方・考え方をチェ
   ンジすることが、早急に着手すべき最重要課題ではないでしょうか。

   マンパワーに依存し、せっかくある組織がチーム力として生かされていないことで
   多くの弊害を生む結果となっています。

    営業:結果重視のマンパワー(精神論)営業により、営業社員のモチベーショ
        ン低下。

    社内環境:業務の多くを人力に任せることで、多くのムリ・ムダ・ムラが発生。

    経営リスク:日々の業務に追われ、気づいたときは最悪の事態。

   中小企業では、限られた現有資産を最大限に生かし、大企業以上に効率経営を
   実践していかなけれなりません。

   社内におけるさまざまな問題発生も、最小限に抑える対策を日常から講じておか
   なければ、最悪の事態を招きかねません。

   そのための第一歩が、

   「機械にできることは機械で、人にしか担えないことは人が担う」仕組みをつくること。

   しかし、現実はどうでしょう。

   機械にできることも人力に任せていることが、社内における問題発生の原因なの
   です。

   あなたの会社で起きるすべての問題は必然なのです。

   決して「運が悪かった」のではありません。

   これらの問題の多くは社内における教育(訓練)に原因があります。

   目先の売り上げにだけ目を向けず、中長期的に社員の品質アップを図ることが欠かせ
   ないのだが、教育制度の実態はさびしい限りである。

   中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の構築は不可能です。

                         組織力強化マニュアルについてはこちら

  □標準化(マニュアル)する業務例 

     ・業務(役割)分担

     ・業務マニュアル(ベーシックトーク、苦情対応CS

     ・チェックシート(与信管理、人事労務、基本動作、報連相、電話応対、苦情対応)

     ・教育訓練(ロープレの実施)

     ・データベースの構築

     ・ハガキの活用

     ・基本動作マニュアル

   限られた現有資産を有効活用することが求められています。

   優秀な人材の確保が困難な環境の中で、「誰が手がけても一定の品質」が保てる仕組み
   をつくらなくては、いつまでたっても収益を上げることはできません。

   □マニュアルとは 

    ・ 仕事の手順書

    ・ マニュアル ⇒ 指示書 ⇒ フローチャート

    ・ 人の数だけ決まり事がある

    ・ 業務遂行におけるマニュアルとは、業務をスムーズに指導させる「手順書」

    ・ 自社(店)の向かうべき共通の方向性

   組織として、トップから現場スタッフまで共通認識として目指すゴールを視野に入れ
   なくてはならない。

   □マニュアルの利点

    ・新人をプロフェショナルにする

    ・マニュアルは基礎を知り学ぶもの

    ・「言葉で伝える」から「文書で伝える」

   □マニュアルがないと

    ・業務も人事も基準がなくなる

    ・業務を教えるのに先輩社員が係わり、時間・労力・コストが発生

    ・教える側の考えが優先し、教えられる側にスキルのばらつきが生じる

    ・教える側の思い込みが大きく反映され、業務の範囲が把握できなくなる

    ・社員のスキルをはかる基準ができず、社員の評価が主観的になる

    ・会社の統一感、一体感が生まれず、特定の社員に負担のかかるマンパワーに依
     存してしまう

   □マニュアルの作成のポイント

    ・利用目的を明確にする

    ・評価基準がはっきりしている

    ・誰が読んでも理解できる

    ・手順が具体的で体系的

    ・見直す

   マニュアルの整備は業務の改革・改善であり会社のノウハウです。
   
  ■業務改善の実施

   業務改善を実施している会社は多数あります。

   しかし、業務改善を進めることが困難になり、頓挫したりするケースが多数あります。

   業務改善は全社・部門一丸となって推進していかなくては継続は難しいでしょう。

   そして入念な準備が必要です。

    1.調査の計画

      本調査に入る前に、業務改善の『目的・目標』の設定、ヒアリングや関連資料の
      収集、現場サイドとのスケジュール調整などの十分な事前準備を行う。

      (1)改善の目的・目標確定

        業務改善を始めるに当たり先ず、改善の『目的・目標』を決める必要があり
        ます。

        『何を・どこまでの範囲で・どのような方法で・誰が・いつまでに・コスト
        は』などを明確にする。

        特にプロジェクトを組んで複数の人員で行う場合、各人の漠然としたイメージ
        だけでは思い思いに考え出し、進むにつれその差が拡大し、結果達成する前
        に空中分解してしまう可能性がある。

        そうならないためにも、業務改善の『目的・目標』を文字や図などにより明確
        にし、共通化させる。

        また、書き表すことで整理や理解度も増す。
     
      (2)事前準備

          業務改善には、現状調査のため現地での調査が不可欠だが、いきなり調査
        を始めてしまうと思いもよらない事態になり、時間や労力をムダにしてしまう
        場合がある。

        ◇事前準備項目

          ・経営層・調査対象部門長等とのヒアリング等による聞き取り

          ・資料収集(関連規程・組織図・人員構成・帳票等)

          ・必要に応じフローチャートの作成

          ・課題点や改善方法の想定(改善目標や改善範囲の設定)

          ・調査シュケジュールの作成(調整・通達)
       
    2.現状分析  

      現状業務がどのように行われているかを的確に把握し、調査の事前準備におい
      て想定した課題点や改善方法の検証、同業社の基準値などとの比較検討を行う。

      (1)現状分析とは

        現状分析とは、現状業務がどのように行われているかを的確に把握し、調
        査の事前準備において想定した課題点や改善方法の検証、同業他社の基準
        値などとの比較検討を行うこと。

        現状分析が効果的に行えるか否かは、前項(2)の『事前準備』の出来如何だ
        といえる。

        準備もせず、闇雲に現状分析を行ったとしても、課題点はなかなか発見でき
        ない。

        『現状分析をすれば何かあるだろう』というものではなく、十分な事前準備を
        してからの実施が必要です。

      (2)現場情報の選別

        現地でのヒアリング等により、対象業務の担当者から課題点やニーズの情報
        を得ることは、務改善において大変有効的な手段と言えます。

        なぜなら、その業務の課題点や改善方法は、日々その業務を行っている人

        が一番詳しいからです。
 
        ただし、これらの全てが有効な情報ではなく、中には個人的な不満や要望だ
        ったり、改善目標と関係のないものもあるので、全て鵜呑みにするのではな
        く、自身の目や耳で確認するなどの情報の選別が必要です。


    3.問題点の洗出し

      調査担当者、実際に業務を行っている担当者、現場責任者など、あらゆる角度
      から、現状業務における問題点や課題点を洗い出す。

      (1)問題点の具体化

        問題点は、具体的なものにしなければ解決はできない。

        例えば、『○○が多いまたは少ない』『△△が遅い』『□□が弱い』では、問
        題意識のレベルであり、問題の解決にはもっと掘り下げ、問題をより具体
        化しなければなかなか改善へと発展して行きません。

        例えば、『帳票書類の提出が遅い』では何を改善すべきなのか分らないので、
        『仮払精算書が特に遅い(What)』『A部門に遅れる人が多い(Who)』
        『Bさんが課長になった半年前から増えた(When)』『課長が居らず決裁が貰
        えない(Why)』『出張が連続し会社に戻れない(Why)』など、5W1Hを問い
        かけながら、問題を具体化する。

        このように問題を具体化すれば、原因がはっきり見えてくるようになり、改
        善策も立て易くなります。

        例えば『B課長が出張の時は、C課長代理が決裁者とする』など。
 
        問題点が抽象的であると、その改善策も『早くするように努力する』『早期
        提出の徹底』など抽象的になり、根本的な解決には近づけない。


      (2)問題点や改善策を見つける

        業務改善を行なおうと、業務の問題点や改善策のアイデアを考えても直ぐに
        は出てこないこともあるし、普段あまり関与していない部署の業務改善となる
        と、なお更良いアイデアなどは、なかなか浮かんでこない。

        逆に、多種多様な問題点や改善アイデアが有り過ぎても、解決すべき問題点
        があやふやになってしまうことがあるし、また多方面からさまざまな趣旨によ
        り出された改善策は、その取りまとめが大変困難になる。

        これらの課題を解決する手法には、さまざまなものがあるが、代表的なもの
        としては、ブレーンストーミング(BS法)やKJ(川喜田二郎)法があげられ
        る。

        これらは、現在でも多くの企業研修や勉強会で採用されている手法です。

        業務改善項目や改善策は、改善担当者が机の上の業務フローチャートや帳
        票を眺めているだけでは、なかなか見つからないし、聞き取り調査でも真の問
        題点が出てこない場合もあるので、必要に応じこれらの手法を使い改善対象
        部署の人達と共に、改善箇所や改善アイデアを考えるようにします。
      
    4.改善計画書の作成

      (1)改善策の立案

        業務の問題点やその原因が判明できたならば、当初設定した改善目的や目
        標の達成度、経営全体からのバランスなども考慮し、いくつかの改善案から
        最良なものを選択し、改善案を作成します。

        改善案の内容には、数人で行う小規模なものから、会社全体で行う大規模な
        もの、導入化の難易度が低いものや高いものなど、さまざまな案があります
        が、自分一人で行う改善案でない限り、改善にかかわる人に、その内容を理
        解してもらい協力してもらうことが不可欠となります。

        そのためにも改善案は、具体的にわかりやすくまとめる必要があります。

     (2)改善案の優先順位

        ①廃止・排除

         無駄なもの・必要のないもの・いらないものは、廃止または排除する。

        ②簡素化・標準化

         全体を廃止する訳にはいかないが、部分的に見直し簡略または集約する。

        ③変換・取替

         今までのやり方から、全部若しくは部分的にやり方を替える。
     
        業務改善のため、多くのルールーや規程を新たに決め、それを運用する人
        に大きな負担を強いるのでは良い改善策とはいえません。

        一番良い改善策は、改善目的を達成し、なおかつ運用者の負担を軽減する
        方法です。 


      (3)改善計画書の作成ポイント

        改善案が決まったならば、更にスケジュールやコストなどを決め、より具体化
        させ『改善計画書』にまとめる。

         ・数値化できるものは数値化し、後に評価・確認ができるようにする

         ・誰でも理解し易いものにする(表や図なども必要に応じ用いる)

         ・改善による期待効果を示す

         ・改善作業が長期に渡る場合は、期間を区切り(月毎など)進捗度を明
          記する

      (4)実施推進担当の選出

        改善案の実施には、ただ案を実施部署に渡しただけでは、なかなか進みま
        せんので、それを引っ張ってゆく推進担当(部門)が必要となります。

        推進担当は、調査分析担当者がそのまま担当する場合が多いですが、調
        査分析には『業務知識や分析能力』が求められるのに対し、推進担当には改
        善案を実施部署に説明し実施への協力を得るという『プレゼン能力や交渉力』
        が求められます。

        更に難しい局面では、技術や能力よりも日頃の人間関係がものをいうケース
        も多々あるので、場合によっては、再編成若しくは人材の追加が必要となる
        かもしれません。

        また、推進担当があまり前面に出すぎると、『指示する側』と『やらされる
        側』という意識が生まれてしまい、失敗原因と成りえるので注意が必要です。

    5.改善案実施

      計画書に則って、実施対象部署と実施推進担当者とが協力し、業務改善を実施
      する。

      (1)試行期間

        いくら考え尽くされた改善案であっても、実際に導入してみると、予想もし
        なかった事態が起きる事は多々あります。

        導入後の修正は、修正情報や新旧帳票が複雑に入り組んでいることにより、
        導入した部署の人達を混乱させてしまう可能性があります。

        新たな制度を導入する場合は、いきなり広範囲(全社)で行ったり、多額のコ
        ストをかけてしまうのではなく、本格的採用の前に2〜3ヶ月程度の試行期間
        を設け、その期間に不具合が見つかったならば修正を行うようにします。

        このように、本格導入後には極力修正を少なくすることが、推進担当や実施
        部署の無駄な労力削減、改善意欲の向上につながり、次回の改善提案の際
        での、積極的な受け入れや改善協力を得るための下地となります。

        逆に、試行期間を設けず導入後に不具合が多発するようでは、推進担当は
        現場からの信頼性を失い、次回の改善提案では、過度な抵抗にあうように
        なるかもしれません。

      (2)大きな前進より確実な一歩

        改善案は実施されなければ意味がありません。

        どんなに素晴らしいアイデアでも実施されてこそで、実施されなければ『絵に
        描いた餅』です。

        しかしながら、現実的にはなかなか実施または進まないことも多々あります。

        実施されないアイデアで多いのが、『範囲が広い・コストが高い・多くの人員
        を要す』などの、大掛かりなものが多くあります。

        これらが確実に実施されれば、効果は大きく問題要因の根本的な解決へと
        つながりますが、実施されなければ問題解決は全く進まず、何もしていないの
        と同じ状態です。

        改善案がなかなか実施されない、若しくは進まない場合は、先ず出来るとこ
        ろから取り掛かることを考えましょう。

        改善は、必ずしも根本的な解決を求めるものではありません。むしろ確実に

        一歩一歩進み、小さな成果を積み重ねて行くことが改善で、大きな成果を出
        すことは『改革・革新』の領域です。

    改善では、『大きな前進より確実な一歩』という考えが重要です。

  ■業務改善は業務の可視(見える)化から

   業務改善の方法と進め方は業務の手順を標準(マニュアル)化し、特定の人だけでなく、
   全員でノウハウを共有できるようにします。

   業務改善は大きなコスト削減につながり、収益改善につながります。

   売り上げが増えたから人を採用する、売り上げが落ちたから人件費を削る、といった
   安直な対処法を繰り返していると、人は育たず、会社に仕組みができません。

   業務改善の手順を参考に自社での業務改善を早急に試みてください。

   業務改善を実施するときに考えなくてはならないことがあります。

   何のために改善するのかという目的を明確にすることです。

    ・CS向上のため

    ・労働時間を短縮して生産性を上げるため 

   以下に業務改善の手法(ポイント)について列記しておきます。

   各部門で行われている業務を詳しくみると、本来の目的が見失われ従来からの慣例だ
   けで行われていることが多数あり、部門レベルでの改善は部門責任者が中心になっ て、
   部下の業務内容を十分に把握したうえで進める必要があります。
   
  □業務改善はルーチンワークから

   業務の効率化やコストダウンを実現することのできる業務改善は、企業が常に取り組んで
   いかなければならない課題の一つです。

   しかし、業務改善といっても、どこから手をつけていいのか迷うこともあるでしょう。

   業務改善は、定期的なルーチンワークを対象に行うと効果的です。

   ルーチンワークとは、きまりきった日常の仕事、日常業務を指します。

   新しく始める業務や突発的な業務であれば、無駄のないよう、事前にしっかりと手順を考
   えます。

   しかし、ずっと続けているルーチンワークは、「こういうものだ」と思って、業務の進め
   方を改めて見直す機会もないままに繰り返している場合が多いものです。

   その結果、先輩などから教わった方法で業務を進め、それをまた後輩に教え、といった
   ように、長い間見直されないままその業務が続けられている可能性があります。

   また、「これまでずっとやっていたから」というだけの理由で、本人にも意味の分から
   ない業務を行っている場合もあります。

   状況が変われば、業務の進め方も変わって当然です。

   それを旧来のままの方法で進めていては、非効率になっていることもあります。

   こうした業務を見つけることが業務改善の第一歩です。

   ただし、業務改善は思いつきで行ってもうまくはいきません。

   「目についた無駄からとりあえず削減していく」のも一つの方法とはいえますが、それで
   は抜け・漏れが多く発生してしまいます。

   細かな部分にばかり目がいって、大きな無駄を見逃してしまう可能性もあります。

   業務改善に取り組む際には、体系立って行うことが必要です。

    ・なくせないか?

    ・一緒にできないか?

    ・順序の変更はできないか?

    ・単純化できないか?

   ○実施手順

     (1)改善チームの編成
         ↓
     (2)業務の棚卸し
         ↓
     (3)対象業務の選定
         ↓
     (4)業務フローの作成
         ↓
     (5)業務フローの見直し
         ↓
     (6)新しいフローで業務実施


   ○改善に取り組むべき業務のポイント

     ・ 1回にかかる時間が長い業務

     ・ 発生する頻度が高い業務

     ・ 関係する人数が多い業務

    こうした業務は総作業時間が長いため、業務改善が高い効果を発揮することが期
    待できます。

   ○業務フローを正確に作成するポイント

    ・ 従業員自身が意識していない点があることを覚えておく

    ・ ヒアリングだけでなく、実際の業務の様子を観察したり、
      体験したりすることでより正確を期す

    これは工程の抜け・漏れを防止するため。


   ○新しい業務フローを定着させるポイント

     ・ 業務フローの見直しは、従業員の意見を聞きながら行う

     ・ 業務フローの見直し後にも従業員に声をかける

    従業員が新しい業務フローに納得しやすくなり、従前の業務フローで業務を行うこ
    とを防止するためです。


    業務を複雑にすることは簡単だが、シンプルにすることは難しい。

    しかし、業務の複雑化はさまざまな問題発生を起こす要因となります。
   
  部門ごとの改善ポイント

   同じ部門内のすべての社員について、誰がどのような仕事を担当し、どのくらいの時間を
   投入しているのかを把握します。

   これによって業務の重複によるムダや特定社員への業務の偏りなどの発生状況を確認し、
   改善します。

   また、各部門で行われている業務は、原則としてその部門が果たすべき役割に沿ったも
   のであるべきです。

   たとえば、製造部門の社員が顧客との属人的なつながりから例外的に営業フォローに回
   ることはあるかもしれません。

   しかし、それを日常的に行うことは組織としての役割に合致しません。

   本業である製造部門の社員としての役割を十分に果たせないばかりか、営業部門の社員
   の活動と整合性がとれなくなる可能性もあります。

   さらに各部門で行われている業務を詳しくみると、本来の目的が見失われ、従来からの慣
   例だけで行われていることもあります。

   たとえば、各種の報告書は、報告書作成自体が目的ではありません。

   その報告によって上司から適切なアドバイスがあるなど何らかの問題解決につながるこ
   とで初めて意味をもちます。

   ほとんど上司に読まれることなく放置されるだけの報告書(日報等)作成にかける時間は
   明らかにムダということになります。

   部門レベルでの改善は部門長が中心になって、部下の業務内容を十分に把握したうえ
   で進める必要があります。

    業務の重複によるムダは生じていないか

    特定社員への業務の偏りが大きすぎないか

    業務(役割)分担は明確になっているか

    業務手順は標準化・マニュアル化されているか

    その部門で行うのが適切な業務か、当該部門の役割に合致しているか

    それぞれの業務の目的と求められる成果は明確になっているか

    無意味な報告書(日報)作成や会議などが行われていないか

    繁忙期・閑散期などの季節変動を吸収する取り組みは行われているか

    各社員のスキル向上に向けた教育や訓練が組織的に行われているか

    上司の思いつきによる計画性のない指示・命令が頻発していないか

    ボトルネック(もっとも時間がかかる工程)改善のための取り組みは行われているか

    リードタイム(業務着手から完了までの時間)の適切な管理は行われているか

    上司は部下全員の労働時間について把握しているか

    恒常的に長時間労働を続けている社員はいないか

    上司は長時間労働している社員を「頑張っている」と単純に評価していないか

    メンタルヘルス面への配慮は十分に行われているか 

   個人レベルでの改善については、一つひとつの業務について「手順は適切か」、「各
   工程への投入時間は適切か」、「スケジューリングはきちんと行っているか」など正
   しい仕事の仕方について上司が指導していきます。

   上司によるこれらの指導は自社独自の業務マニュアルに沿って行うことがより効果的
   になります。

   また、自分が月単位、週単位でどの業務にどの程度の時間を使っているかという時間
   の有効活用度合い
についても考えさせます。

   たとえば、業務は「顧客訪問」など価値に直接つながる業務(主体業務)と「訪問準
   備」などの主体業務実施のための準備業務(付帯業務)に分けることができます。

   これらを区別し、主体業務比率を上げていくことも大切です。

   業務の生産性は個人のスキルに大きく左右されます。

   このことからも個人の能力に頼ったやり方から凡人でも能力のある人と同レベルに
   近い能力を発揮できる仕組みが必要となります。

   上司は各業務におけるマニュアルを基に各人に自分の伸ばすべきスキルを意識
   させ、向上に努めさせることが必要です。


  □個人レベルでの業務改善ポイント

    自分に正しい仕事の仕方が身についているかどうかをつねに意識しているか

    現在自分が抱えている業務について納期や
     期待される成果水準を把握しているか

    今後1カ月間のスケジューリングがきちん
     とできているか

    毎月、毎週、毎日の時間の使い方につ
     いて振り返りを行い、改善につなげているか

    自分の担当業務のすべてについて目的と
     求められる成果は明確になっているか

    自分が伸ばすべきスキルを意識しており、
     実際に向上に努めているか

    業務改善の方法と進め方の意義を理解して
     積極的に取り組む意志をもっているか

    上司の指示事項をそのまま遂行することのみに没頭していないか

    部門全体の役割を理解し、そのなかで自分の担当業務の価値について
     意識しているか

    残業代を得るために自ら残業時間を増やそうとしていないか

    生産性が低いとわかっていながら従来のやり方に固執していないか

    緊急度や重要度によって業務に優先順位をつけているか

    自分の能力、時間で対応できない業務について早めに上司に相談し
     ているか

    自分が業務で使っている時間が会社の経営資源であることを意識し、
     大切にしているか 

   これらを認識させるためにも人材育成、標準化の仕組みが欠かせません。
   
  ■業務の効率化

   「ムダ・ムラ・ムリ(三ムダラリ)の排除」「効率化」を考える場合、整理整頓や施設内
   のレイアウトなど、まず目に見えるモノに意識が向かいがちですが、仕事が「スムー
   ズに動いていない」と感じられたのなら、組織においてのムダがないかを再確認して
   みる必要があります。

   その原因に「組織構造」「役割分担」「コミュニケーション」の三つが挙げられます。

   1.組織構造上の問題

     会社の成長に伴って、抜本的に組織のあり方を見直すことなく、さまざまな部門を
     後づけで増やすといったツギハギだらけの会社が少なくありません。

     組織の改革・改善をおざなりにていると最悪の事態を招きかねません。

      ・業務の重複

      ・マンパワーに依存した体制

      ・業務が標準化されていない

      ・人材育成ができていない

      ・コンプライアンス、リスクマネジメント体制が構築できていない

      ・指揮命令系統と報告・連絡・相談系統が機能不全

      ・経営計画は画餅で、行動計画もなく、思いつきで行動

   2.役割分担が不明確

     同じ仕事に複数の人が関わったり、中堅社員が新入社員の指導ににかかりっき
     りになったり、誰にでもできる仕事に正社員が関わったりしています。

     役割分担は業務自体をルーチンワーク化し、誰に代わってもできることを目指し
     ます。

     言い換えれば、業務をシンプルにし、ルーチンワーク化することで組織を収益に直
     結した業務に集中させることを目的とします。

     組織における役割分担とは「人に仕事を付ける」から『仕事に人を付ける』ことで、
     業務の標準化を可能にするものです。

   3.コミュニケーションの悪さ

     経営におけるコミュニケーション不足に起因して発生する問題は多数あります。

     「社長の言いたいことが伝わらない」、「上司の指示が伝わらない」、「部門リーダ
     ーが部門全体を把握できていない」などさまざまです。

     コミュニケーションは自然に改善できるものではありません。

     原因を究明し、改善しない限り今後も問題が発生することは確実です。

     各社員はコミュニケーションを通じて自分の行動を決定したり、部下に指示を与え
     たりしています。

     全社員が結束して共通の目的に向かっていくためには、コミュニケーションの活性
     化(組織力強化)は経営上の生命線ともいえます。

  □改善の定着

   上記3点の改善のために日々の経営活動の中で、さまざまな改善を実施している企業は
   多いはずです。

   しかし、実態は毎日、いろいろな問題が発生し、その対処に追われているといった繰り返
   しです。

   「どこまでやってもキリがない…」「毎日、同じことの繰り返し」と感じている人も多い
   のではないでしょうか。

   改善とは、「悪いところを良い方向に改めること」である。すなわち、昨日までの仕事の
   やり方を変えることです。

   だが、改善を決心していったんやり方を変えたものの、「継続しない」「定着しない」
   という悩みを抱える会社は多いように感じます。

   「なぜ、改善が定着しないのだろうか?」

   それは、実施される改善の多くが、目先の問題解決のみに視点が置かれているからです。

   改善策が長期にわたって実施され、それが習慣となり、職場に定着するように考えられて
   いないため、定着しないのです。

   業務管理について再点検することをお勧めします。

  □習慣化のために欠かせない標準化

   改善したことを「習慣」として定着させるためには、だれもがすぐに理解して実行できる
   ようなものでなければならない。

   考えた人や作った人だけが理解しているような複雑で難解な改善案では、職場全体で
   実行できないし、すぐに形骸化してしまいます。
 
   このように「だれもが」「分かりやすく」「簡単に実行できる」形にするのが「標準化」
   である。

   その具体的な手法が、「5S」であり、「見える化」だ。

   標準化と言うと、型にはめられて融通が利かなくなるような印象を持つ人がいるようだ
   が、その反対である。

   標準化とは、変化に柔軟に対応するために行い、改善によってどんどん変化する業務を
   迅速に職場に定着させるために行うものです。

   よい方向に変化させた業務を素早くパターン化、ルール化して、職場全体の習慣として落
   とし込むことが、標準化の本質なのです。


  □標準化の手法「5S」

   「モノの置き場所や置き方を変える」「レイアウトを変える」「使用する道具を変える」
   などの改善に対しては、5Sによるアプローチが有効です。

   5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」のことであり、職場の効率化を行うためのマネジ
   メント手法。

   5Sの手法により、すべてのモノの存在意義、置き場所、置き方を明確にすることが、
   すなわち標準化。

   それによって、モノ自体やモノをどう使うのかといった先が見えるようなる。

   このように、すべてを5Sの考え方に沿って標準化していければ、簡単に職場全体にその
   改善を定着化させることができます。

   5S活動のよいところは、だれでも簡単に取り組める活動でありながら、効果が絶大な
   ところです。

   5S活動を単なる掃除のようにとらえている人もいるが、目に見えるモノの整理や整頓
   を超えて、取り組む人の意識を大きく変えていく力がある活動なのです。
 
   「社員の意識を変えたい」「気づき力を高めたい」という悩みを抱える経営者には効果
   的です。

  □標準化の手法「見える化」

   5Sによる標準化は、「目に見えるモノ」「実際に触れられるモノ」を対象とする。

   一方、「見える化」による標準化は、「目に見えないコト」を対象とします。

   見える化とは、「相手の意思にかかわらず、目に飛び込んでくる状態にすること」で
   あり、何を見えるようにするかは、企業の考え方次第である。

   改善を形骸化させずに定着化を図るには、変更した仕事を標準化する必要があります。

   その標準化の具体的手法として、5Sや見える化が有効なのです。

   ムダを省いて効率化を図り、これまで取りこぼしていた利益をしっかり回収したいという
   企業は、ぜひこうした取り組みを実施してください。 


                  小さな会社11の経営革新

   ・初めから大きなコストをかけず、小さな予算で始める(商売はバクチにあらず)

   ・収益の柱を複数持つ(卵を一つの皿に盛るな)

   ・「真似る」ことから始め、自社オリジナルの『仕組み』をつくる

   ・限られた人材を『人財』にするには基本動作習得を徹底する

   ・事業運営に「魔法の杖」はないと心得る

   ・「知っている」けど「やっていない」は知らないのと同じ

   ・成功や大きな報酬を手にするのは、実践者だけ(但し、実践は  “Just Do It!”)

   ・PC、TEL、FAXを営業の道具として活用する

   ・個人に頼ったマンパワーからチーム(組織)パワー

   ・穴の開いたバケツに水を入れない(経営において100万円の利益を出すことと、
     100万円の損失を未然に防ぐことは同じ価値を持っている)

   ・過去の延長線上でやっている限り、決して成果は得られない

   業務改善は経営の要。中小規模企業の多くが、掲載の課題を未解決のまま抱えて
   います。

   業務改善の方法と進め方については我流に頼ることなく、組織(チーム)全員の品質向

   上を図る上でも以下のコーナーをご活用ください。

    役割分担(業務の分業化・専門化)  社内会議のやり方   助成金活用 

    経営計画の策定  モチベーション(基本動作)アップ   コスト削減


   貴社の組織体制は健全に機能していますか?

 

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業務改善の方法と進め方

業務改善は最優先課題

業務改善は最優先課題
 

  ■業務改善における認識不足

   弊社HPにも業務改善について記事掲載しているが、多くの中小企業ではこの
   テーマについてあまり重要視していないように感じる。

   中小企業だからこそ今の業務のやり方を改善し、限られた人材で収益アップを図っ
   ていかなければならない。

   今までのやり方・考えを変えていかなければ、いずれ衰退の一途をたどるしかない。

   それをトップや幹部は十分認識しなくてはならない。

   待ったなしの最優先課題なのです。

   「そのうちやる」「今までこのやり方でやってきてウマくいっている」「なんとかなる」…。

   このような考えをお持ちの経営陣が多いのではないでしょうか。

   会社経営は儲けることも大事だが、一番重要なのは潰さないことなのです。

   綱渡りのような経営をいつまで続けるつもりですか?

   業務改善のプロセスは決して難しいものではありません。

   難しいのは継続することです。

   しかし、やらなくてはならないのです。

   現有資産を有効活用していくには、今までの個人に依存したやり方では限界があります。

   会社は組織でありチームであることから、仕事も当然チームでおこなうはずです。

   しかし、現実には多くの中小企業がマンパワー依存から脱却できず、その結果が
   「ブラック企業化」へと向かってしまうのです。

   当時イトーヨーカドーの取締役であった鈴木敏文名誉顧問は、イトーヨーカ堂出店
   を進めて行くために地元の商店街などに「共存共栄」を説明して回ったそうだ。

   「当時、中小小売店の不振の原因は、生産性の問題であり、大型店との競争の結
   果ではないと考えて、規模の大小にかかわらず生産性を上げて人手を確保し、き
   め細かくニーズに対応していけば必ず成長の道が拓かれ、大型店と中小小売店の
   共存共栄は可能だと説得し続けていました。

   しかし、いくら言葉で言っても生産性の上がる中小小売店経営の実例がどこにもな
   いので、商店街の方々の納得を得るのは困難でした」(「セブン-イレブンの歴史」より)

    出典:現代ビジネス

   この問題がセブンイレブン設立において、加盟店への業務の標準(マニュアル)化
   を徹底したのだろう。

   今でもマニュアル化を否定する人もいるが、少子化や社会環境の変化に対応して
   いくためにも業務の標準(マニュアル)化は最優先課題です。

   セブンイレブンはドミナント出店によるブランド強化と合理性を追求した物流システ
   ムを構築こうした成果を上げることができたのも、いち早くマニュアル化を進めて
   加盟店を徹底的に管理してきたからだ。

   「最初の3カ月は本部の人間が入り、徹底的に指導する」(コンビニ関係者)

   セブンイレブンの例にもあるように、どの時代にあっても業務のマニュアル化が必
   須であることは確かです。  

   しかしどんなに素晴らしいビジネスモデルであっても、時間の経過とともに陳腐化し
   てくるという事例が、今のコンビニ業界で起きているといえます。

   マニュアルも定期的に環境の変化ににあわせて変えていくことを怠れば、今回のよ
   うに加盟店と本部におけるような問題が発生するのです。
 

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業務改善の方法と進め方

改善ではなく改革
 

  ■改善と改革

   業務改革は、

    業務の根本的な問題点を深く考えて、抜本的に対策するアプローチ手法

    業務改善は、企業の業績を良くするためのアプローチ手法

   業務の改革・改善を一言集約すると、

    改善は短期の対策

    改革は長期の対策

  □業務の改革改善がなぜ必要か

   中小企業において業務の改革改善が最優先課題であることはいうまでもありま
   せん。

   業務改善の目的の一つは、『いかに労働時間を短縮して生産性を上げるか』です。

   そのための手段として業務を改革改善(標準化)してマニュアル化します。

  □組織の改革・改善は形から入る

   組織においては人の数だけ決まり事がある。

   多くの会社が組織の改革改善に取り組んでいるでしょうが、日常業務をこなすこと
   ばかり集中しすぎると、業務本来の意味がわからなくなってしまう。

   すると、「完成図」がわからなくなり、「自分は何のために働いているのだろう?」と
   考えるようになり、モチベーションの低下につながります。

  業務の標準化

   最初に行う標準化は、

   ルーティンワークの洗い出し → 行動する時間の設定 → 同じ時間に行動する →

   意識しなくなるまで行動を継続する → 習慣化し、自動化(マニュアル化)する

   業務遂行におけるマニュアルとは、業務をスムーズに指導させる「手順書」である。

   ここで重要なことは改革改善するための型決めをすることです。

   その型に改革・改善すべきことがらを入れていくことです。

   そのほうが標準化のための決めごとが簡素化され、作成がスピーディーに進む
   からです。

   多くの組織で改革改善がおこなわれているが、作成自体が目的化されてしまい、
   習慣化するまでに至らず、とん挫したり、導入はしたけれど運用されないといった
   ことが起きてしまうのです。

   原因を集約すると、

    ・改革改善を実践指導するリーダーのスキル不足

    ・目的と手段の履き違え

    ・改革や改善のための議論だけが目的化されてしまっている

    ・標準化されたフォーム(型決め)ができていない

    ・改革や改善のためのマニュアルが文章だけに偏りチェックシート、
     フローチャート図、など目に見える形で構成されていない

    ・改革改善のためのプロセス(手順)が明確でない

    ・役割(業務)分担が不明確

  マニュアルの作成

   標準化ができあがったらマニュアル作成に進みます。

   マニュアルがないと、

    ・業務も人事も基準がなくなる

    ・業務を教えるのに先輩社員が係わり、時間・労力・コストが発生

    ・教える側の考えが優先し、教えられる側にスキルのばらつきが生じる

    ・教える側の思い込みが大きく反映され、業務の範囲が把握できなくなる

    ・社員のスキルをはかる基準ができず、社員の評価が主観的になる

    ・会社の統一感・一体感が生まれず、特定の社員に負担のかかる
     マンパワーに依存してしまう

  □業務フローをマニュアル化する必要性

    (1)利用目的が明確 → 「誰のために」「何のために」

    (2)評価基準が明確 → ゴールをきちんと提示

    (3)誰が読んでも理解できる → 普遍的であること

    (4)一つひとつの手順が具体的で、体系的にまとまっている → マニュアル
          作成の核

    (5)見直してみる

   業務改善のために業務を標準化し、それをマニュアルとして整備している会社の
   マニュアルを拝見すると、それらのほとんどが「マニュアルらしきもの」であって、
   マニュアルとはいえないものを多数見受けます。

   理由は、

    ・言葉で説明しなければわからない

    ・内容が抽象的

    ・担当者にしか分からない

   といったことが挙げられます。

  □改革の必要がない会社は、ほとんどない

   「組織を変える」(以下「組織変革」)ことは、企業が永続していくためには常に直
   面する問題です。

   企業を取り巻く外部環境の変化や企業自身の内部経営資源の変化といった要
   因、あるいは新規事業進出・既存事業撤退などさまざまな要因が、企業に常に新
   しい組織像を求めてきます。

   しかし、その一方で既存事業を行うために完成された組織を変えることは非常に
   困難を伴う取り組みです。

   組織改革が難しい理由は、「組織には変わることを拒むという性質がある」ためです。

    (1)組織改革の必要性(現状のままでいることは許されない理由など)を
      理解させる

    (2)組織改革を通じて実現する新たな組織像や、そのためにどのように
      変わる必要があるかという具体的な方向性を示す

    (3)組織改革の成果を実感させる

  □組織を十二分に生かすために

   人が改革を拒む姿勢は、組織改革によって自身が悪影響を受けることが明らか
   な場合やどのような影響を被るのか不透明な場合だけではなく、しばしば自身に
   とってメリットの大きい結果が予想される場合においてさえみられる強力なものです。

   従って、個人レベルでの改革を行う場合には「分かっている『はずだ』」という思い
   込みは捨てて、「常に、組織改革の必要性や、新たな組織像を熱意を持って語り
   続ける」といったような姿勢が必要となるのです。

   実際に組織が直面する問題は非常に多岐にわたり、その状況も複雑です。

   そのため、問題の表面的な部分だけをとらえて施策を講じても、十分な効果を得
   ることが難しい場合が少なくありません。

   従って、問題を解決するための施策を検討・実施する際には、まず最初にこうした
   組織上の問題の特徴をしっかりと念頭に置いた上で、慎重に問題の原因を整理・
   分析するように心がけることが重要といえるでしょう。

   組織を十二分に生かしきれている会社は多くありません。

   会社経営における組織の重要性については言うまでもなく、ほとんどの社長は
   「限られた人員のなかで組織力を最大限に高めたい」と感じているはずです。

   組織力とは、「日々の活動のなかで確実に成果を作り出し、組織自身を成長させ
   る力」といっていいでしょう。

   組織とは単なる個人の集合体ではなく、メンバー全員のベクトルが一致し、トッ
   プ、部門リーダー、社員それぞれが自己の役割を明確にし、率先垂範していく集
   合体といえます。 

  □改善ではなく改革 

   物事をよくしていくためには「改善」と「改革」の2つのアプローチがあります。

   改善とは、基本的にはこれまでのルールを踏襲し、よい部分はより強化し、悪い
   部分は改めていくことです。

   多くの会社でも「職場ごとの業務改善活動」などは日常的に行われています。

   たとえば、「利益率を5%上げるために経費を見直す」といったレベルの活動がこ
   れにあたります。

   一方、改革とはこれまでのルールをいったん無視して、めざすべき目標達成のた
   めのルールを新たに構築していく方法です。

   当然、「職場ごと」という単位ではなく、全社的に取り組んでいくことになります。 

   たとえば「利益を3年間で10倍にする」という目標達成のためには改善レベルの
   活動の積み重ねでは対処できません。

   営業体制、商品構成、人事制度などあらゆる面から手を打っていかなければなり
   ません。

   まさに「劇的な変化」が求められます。

   本当の意味で会社を変えていくためには、このように「改善レベル」ではなく、「改
   革レベル」の決意と実践が必要です。

   しかし、「会社を変えたい」と願っている社長のなかには、従来のルールからなか
   なか抜け出せない人もいます。

   まずは社長自身が「絶対に改革をやり遂げる」という強い決意をもつことが大切です。
 

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業務改善の方法と進め方

業務改善の考え方と方法


  ■業務改善の成否は部門長(リーダー)次第

   業務改善とは仕事の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくこと。

   多くの会社ではさまざまなテーマで業務改善への取り組みが行われていますが、
   活動が途中で頓挫したり、一時的な効果にとどまっているケースもみられます。

   要因の一つに部門長(リーダー)の改善のためのノウハウやスキルが備わってい
   ないことがあげられます。

   業務改善の成否は部門長(リーダー)にかかっているといっても過言ではない。

   多くが改善の仕組みづくりが目的化し、仕組みを動かすリーダーの教育ができて
   いません。

   どんなに素晴らしい仕組み(ハード)をつくっても、それを動かす人(ソフト)の教育
   ができていなければ、仕組みという箱ものづくりだけで終わってしまう。

   業務改善の仕組みづくりは手段であり、目的は仕事の仕方を現在よりも好ましい
   方法に変えていくことです。

   業務改善に着手する前に、部門長(リーダー)の品質を向上させることが重要とな
   ります。

   1.業務改善の考え方 (成果/労力=生産性)

     会社におけるすべての業務は何らかの目的にしたがって成果を生むために行
     われています。

     その生産性を上げるために行うのが業務改善です。

     上記の式からもわかるように、生産性を上げるためには、「分子の成果を増や
     す」、または「分母の労力を減らす」ことが必要になります。

     もちろん2つを同時に行うことができれば、生産性は飛躍的に上がります。

     業務改善を検討する際には両方向からのアプローチが効果的です。

     このように生産性向上のための基本的な考え方は、「適切な成果」のために
     「適切な労力」を投下していくことです。

   2.適切な成果

     企業活動の原則は顧客にとっての新たな価値を生み出すことにより、自社の
     収益を確保していくことです。

     そのために必要な製造や販売を行うことや、それらの活動を統制していくため
     の管理活動は適切な成果に向けた活動と捉えることができます。

     以上を整理して「適切な成果」とは何かについて考えてみると、それは次の条
     件のいずれかを満たしていることになります。

      ・顧客にとっての新たな価値を生み出していること(直接的成果)
      ・顧客価値創出のための自社組織運営に役立っていること(間接的成果) 

     全社の業務の棚卸しをすると多くの場合、上記の条件に当てはまらない「意味
     不明」の業務が見つかります。

     たとえば、「顧客ニーズの変化に対応できていない商品開発や販売活動」はそ
     の代表例です。

     これらについては、いくら手順を見直しても成果に結びつくことはありませんか
     ら、業務そのものをやめてしまうことを検討します。

   3.適切な労力

     「適切な労力」実現について考えてみると、そのためには、「3ムダラリ(ムダ・
     ムラ・ムリ)」をなくすことが基本となります。

      ムダ:成果に結びつかない余分な労力が使われている状態

      ムラ:ムダとムリが混在して起こっている状態

      ムリ:一部の工程や人間に過度の負担がかかっている状態

     以上のことを冒頭で述べた生産性を示す式の分母と分子に当てはめると、次

     のような改善の方向性が明らかになります。

   4.各階層で業務改善に取り組む     

     また、業務改善は社員一人ひとりの個人レベルから会社全体レベルまでさま
     ざまな階層で考える必要があります。

     社員一人ひとりがいくら努力して生産性を向上しても、個人レベルの積み上げ
     だけでは効果は限定的です。

     逆に全社で掲げた業務改善計画が個人レベルまで適切にブレイクダウンされ
     ていなければ、計画は画餅に帰してしまいます。 

     全社、部門全体、個人がそれぞれのレベルで、互いに整合性のとれた業務改
     善活動を行うことが大切です。

     このように自社の業務改善を検討する際には、

      ・成果の拡大と労力(投入時間)の削減を同時に行うにはどうすればよいか

      ・全社レベルから個人レベルまで一体となった活動を行うにはどうすればよ
       いか

     という視点をつねにもち続けておく必要があります。

   5.社長による動機づけが必要

     業務改善活動は通常の業務にプラスする形で行われますので、特に活動の
     成果がまだ出ていない取り組み当初は社員にとって負担感は大きくなります。

     社員の積極性を促すには、会社としての活動の重要性だけではなく、活動の
     成果が社員一人ひとりに与えるメリット(労働時間短縮・能力向上など)につい
     ても説明して、十分な動機づけを行う必要があります。

  □全社レベルでの改善

   1.組織構造の改善

     全社レベルでのもっとも重要な「成果」とは、全社経営計画の実現に他なりま
     せん。

     自社の経営計画実現のために必要な事業プロセスを明確にし、そのプロセス
     に応じた最適な組織構造に変えていくことが必要です。

     業種業態によって違いはあるが、たとえば、製造業の標準的な事業プロセス
     は次の図のように整理することができます。

     これらのプロセスを踏まえて自社の組織に過不足がないかを確認します。

     たとえば、製造業のなかには、上記図の①〜③の上流工程実現のための組
     織は充実しているが、④⑤の下流工程や⑥の管理工程実現のための組織が
     適正に配置されていないことが多くあります。

     その結果、高品質の製品を作ることができても、「顧客の購買促進や満足度向
     上につながらない」、「全社の事業プロセスが円滑にコントロールできない」と
     いった事態を招いているケースもみられます。

     次のような視点で全社の組織構造について確認してみましょう。

     <組織構造改善のポイント>

      ・事業プロセスに必要な組織が抜けていないか

      ・事業プロセスには関係のない組織が存在していないか

      ・同じプロセスを実現するための組織が重複していないか

      ・特定部門の肥大などバランスを欠いた組織編成になっていないか

      ・全般を管理する組織(総務、経理、人事、経営企画など)はあるか

      ・事業戦略面で特に重要な組織は十分に機能しているか

      ・それぞれの部門長には適切な権限と責任が与えられているか

   2.労働時間の短縮

     業務改善の大きな狙いのひとつは、生産性を上げて労働時間を短縮すること
     です。

     しかし、全社的に「長時間労働が当たり前」、「長時間労働した者が評価され
     る」という雰囲気があれば、改善は進みません。

     社長は自社の労働時間の実態や残業に対する社員の意識などを把握して、
     短縮に向けた仕組みづくりや雰囲気づくりを進める必要があります。

     また、業務改善によって残業代が大幅に削減できた場合は、その山部を原資
     として社員に賞与のなかで還元するなどの施策も求められるでしょう。

     <労働時間短縮のポイント>

       ・社長自身が長時間労働を推奨するような発言をしていないか

       ・長時間労働が評価される組織風土はないか

       ・全社の総労働時間、残業時間、所定労働時間の水準は適正か

       ・部門ごとの総労働時間に大きなバラツキはないか

       ・総人件費に占める残業代の割合が高すぎないか

       ・変形労働時間制やみなし労働時間制などの導入によるメリットは
        ないか    

       ・サービス残業(賃金の不払い残業)は発生していないか

  部門レベルでの改善

   同じ部門内のすべての社員について、誰がどのような仕事を担当し、どのくらい
   の時間を投入しているのかを把握します。

   これによって業務の重複によるムダや特定社員への業務の偏りなどの発生状況
   を確認し、改善します。

   また、各部門で行われている業務は、原則としてその部門が果たすべき役割に
   沿ったものであるべきです。

   たとえば、製造部門の社員が顧客との属人的なつながりから例外的に営業フォ
   ローに回ることはあるかもしれません。

   しかし、それを日常的に行うことは組織としての役割に合致しません。

   直接部門である製造部門の社員としての役割を十分に果たせないばかりか、営
   業部門の社員の活動と整合性がとれなくなる可能性もあります。

   さらに各部門で行われている業務を詳しくみると、本来の目的が見失われ従来か
   らの慣例だけで行われていることもあります。

   たとえば、各種の報告書は、報告書作成自体が目的ではありません。

   その報告によって上司から適切なアドバイスがあるなど何らかの問題解決につな
   がることで初めて意味をもちます。

   ほとんど上司に読まれることなく放置されるだけの報告書作成にかける時間は明
   らかにムダということになります。

   部門レベルでの改善はリーダー(部門長)が中心になって、部下の業務内容を十
   分に把握したうえで進める必要があります。

   <改善のポイント>

     ・業務の重複によるムダは生じていないか

     ・特定社員への業務の偏りが大きすぎないか

     ・社員の経験や能力に応じた業務分担になっているか

     ・業務手順は標準化・マニュアル化されているか

     ・その部門で行うのが適切な業務か、当該部門の役割に合敦しているか

     ・それぞれの業務の目的と求められる成果は明確になっているか

     ・無意味な報告書作成や会議などが行われていないか

     ・繁忙期・閑散期などの季節変動を吸収する取り組みは行われているか

     ・各社員のスキル向上に向けた教育や訓練が組織的に行われているか

     ・上司の思いつきによる計画性のない指示が頻発していないか

     ・ボトルネック(もっとも時間がかかる工程)改善のための取り組みは行われて
      いるか

     ・リードタイム(業務着手から完了までの時間)の適切な管理は行われている
      か

     ・上司は部下全員の労働時間について把握しているか

     ・恒常的に長時間労働を続けている社員はいないか

     ・上司は長時間労働している社員を「頑張っている」と単純に評価していない
      か

     ・メンタルヘルス面への配慮は十分に行われているか

  □個人レベルでの改善

   個人レベルの改善では、まず、個人ごとに自分が担当している業務についてすべ
   て列挙させたうえで、それぞれの業務の目的や求められる成果を確認することか
   ら始めます。

   その際に単純に「上司からの指示に従うこと」を目的とせず、その業務がもつ本来
   的な価値について考えさせます。

   そして、一つひとつの業務について「手順は適切か」、「各工程への投入時間は適
   切か」、「スケジューリングはきちんと行っているか」など正しい仕事の仕方につい
   て上司が指導していきます。

   また、自分が月単位、週単位でどの業務にどの程度の時間を使っているかという
   時間の有効活用度合いについても考えさせます。

   たとえば、業務は「顧客訪問」など価値に直接つながる業務(主体業務)と「訪問
   準備」などの主体業務実施のための準備業務(付帯業務)に分けることができま
   す。

   これらを区別し、主体業務比率を上げていくことも大切です。 

   さらに、業務の生産性は個人のスキルに大きく左右されます。各人に自分の伸ば
   すべきスキルを意識させ、向上に努めさせることが必要です。

   <改善のポイント>

     ・自分に正しい仕事の仕方が身についているかどうかをつねに意識している
      か

     ・現在自分が抱えている業務について納期や期待される成果水準を把握して
      いるか

     ・今後1カ月間のスケジューリングがきちんとできているか

     ・毎月、毎週、毎日の時間の使い方について振り返りを行い、改善につなげて
      いるか

     ・自分の担当業務のすべてについて目的と求められる成果は明確になってい
      るか

     ・自分が伸ばすべきスキルを意識しており、実際に向上に努めているか

     ・業務改善の意義を理解して積極的に取り組む意志をもっているか

     ・上司の指示事項をそのまま遂行することのみに没頭していないか

     ・部門全体の役割を理解し、そのなかで自分の担当業務の価値について意識
      しているか

     ・残業代を得るために自ら残業時間を増やそうとしていないか

     ・生産性が低いとわかっていながら従来のやり方に固執していないか

     ・緊急度や重要度によって業務に優先順位をつけているか

     ・自分の能力・工数で対応できない業務について早めに上司に相談している
      か

     ・自分が業務で使っている時間が会社の経営資源であることを意識し、大切に
      しているか

   初めに書いたように「業務改善は今までの業務のムダ・ムラ・ムリを排除し、仕事

   の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくこと」といいました。

   しかし残念なことは、

    ・改善を実践指導するリーダーのスキル不足

    ・目的と手段

   などによって、とん挫してしまうことを多数見聞きします。

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業務改善の方法と進め方

ECRSの原則で日常業務を見直す

ECRSで業務改善
 

  ■カイゼンの基本「ECRSの原則」で日常業務を見直す

   1.ルーチンワークを見直す

     業務の効率化やコストダウンを実現することのできる業務改善は、企業が常
     に取り組んでいかなければならない課題の一つです。

     しかし、業務改善といっても、どこから手をつけていいのか迷うこともあるでしょ
     う。

     業務改善は、定期的なルーチンワークを対象に行うと効果的です。

     新しく始める業務や突発的な業務であれば、無駄のないよう、事前にしっかり
     と手順を考えます。

     しかし、ずっと続けているルーチンワークは、「こういうものだ」と思って、業務
     の進め方を改めて見直す機会もないままに繰り返している場合が多いもので
     す。

     その結果、先輩などから教わった方法で業務を進め、それをまた後輩に教え、
     といったように、長い間見直されないままその業務が続けられている可能性が
     あります。

     また、「これまでずっとやっていたから」というだけの理由で、本人にも意味の
     分からない業務を行っている場合もあります。

     状況が変われば、業務の進め方も変わって当然です。

     それを旧来のままの方法で進めていては、非効率になっていることもありま 
     す。

     こうした業務を見つけることが業務改善の第一歩です。

     ただし、業務改善は思いつきで行ってもうまくはいきません。

     「目についた無駄からとりあえず削減していく」のも一つの方法とはいえます
     が、それでは抜け・漏れが多く発生してしまいます。

     細かな部分にばかり目がいって、大きな無駄を見逃してしまう可能性もある。

     業務改善に取り組む際には、体系立って行うことが必要です。

     業務改善に取り組む際の方法にはいくつかありますが、以降では、「ECRSの
     原則」を利用した改善方法を紹介していきます。

   2.ECRSの原則を利用した業務改善の進め方

     (1)ECRSの原則とは
       ECRSの原則とは、もともと生産管理の手法で、製造工程(ライン)の見直し
       を行う際の基本的な考え方です。

       ECRSは、見直しに当たって考えるべき事項の頭文字をつなげたもので、 
       それぞれ具体的には以下の通りです。

       ◎ECRSの原則
        なお、ECRSは単に頭文字をつなげただけではなく、その順番にも意味が
        あります。

        「E」が最も効果が高く、「S」に向けて効果が低くなっていくという順に並ん
        でおり、実施に当たっては、「E」「C」「R」「S」の順に考えることが重要
        なのです。

         (E)Eliminate:なくせないか?
           →その工程をなくすことはできないかを考える。
         (C)Combine:一緒にできないか?
           →複数工程をまとめて処理することができないかを考える。
         (R)Rearrange:順序の変更はできないか?
           →工程の順序を入れ替えることで効率化できないかを考える。
         (S)Simplify:単純化できないか?
           →その工程をもっと単純なやり方に置き換えることはできないかを考
             える。

           ここで一つ例をみてみる。

           例えば、A、B、Cという3人がそれぞれX、Y、Zという3種類の書類を
           作成しているとします。

           このX、Y、Zの書類は、内容はほとんど同じですが、提出先が違うと
           いうことで、3人の担当者がそれぞれ個別に作成しています。

           同じような書類を3種類も作成するのは、明らかに無駄であり、改善
           したいところです。

           この業務をECRSの原則に従って改善するとどうなるか、順にみてい
           きます。

           なお、この書類は毎月1回作成するものであり、作成にはそれぞれ2
           時間かかるものとする。

           ①E:なくせないか?

            まずは、無駄な工程を省くことを考えます。

            これは、ECRSの原則では、最も効果が高い方法です。

            この例であれば、内容がほぼ同じ書類が3種類あるなら、Xだけ作
            成し、残りの2種類の作成をそもそもなくしてしまうというのが、この
            「E」です。

            書類を作成するのにそれぞれ2時間かかるため、Y、Zの作成をな
            くすことで4時間の削減ができます。

           ②C:一緒にできないか?

            なくすことができない場合、複数の作業をまとめることで時間の短
            縮を図ります。

            1人の作業だけでなく、複数人が同じような作業を行っている場合
            に、作業を1人にまとめるなども有効です。

            この例であれば、3人が個別に作成していた書類を、誰か1人がま
            とめて作成すればほかの2人は書類作成から解放されます。

            内容はほぼ同じ書類であるため、体裁の変更など軽微な修正で対
            応できるでしょう。

            修正にそれぞれ30分かかるとしても、全体の作業時間は2時間+
            30分×2種類で3時間となり、3時間の削減ができます。

            実際に書類を作成する人は作業時間が1時間長くなりますが、A、 
            B、Cの3人で作成を持ち回りとすれば、年間で各人が書類を作成
            する回数は4回ずつ、かかる時間は3時間×4回で12時間となりま
            す。

            各人が個別に作成していた場合、年間で2時間×12回の24時間
            かかっていたため、各人の作業時間は半減します。

           ③R:順序の変更はできないか?

            なくすことも一緒にすることもできない場合、順序を変更することで
            効率化が図れないかを考えます。

            複数人が関係するような業務で、手待ちの発生を最小限にする場
            合などに役立ちます。

            この例であれば、3人が個別に作成していた書類を誰か1人が作 
            成し、そのデータを基にほかの2人が作成するようにすれば、ほか
            の2人の作業時間は短縮できます。

            もらったデータを基に各人が自分用の書類を作成するのにかかる
            時間が1時間とすると、全体の作業時間は2時間+1時間×2人で
            4時間となり、2時間の削減ができます。

           ④S:単純化できないか?

            ここまでみてきたいずれも適用することができない場合、それぞれ
            の作業を単純化して時間を短縮することを考えます。

            ここまでは作業工程全体という大きな流れでとらえてきましたが、
            「S」については個別の作業について詳細に分析して単純化を図り
            ます。

            この例であれば、X、Y、Zの書類の内容を簡略化してより短時間で
            作成が可能なx、y、zとすれば、各人の作業時間を短縮できます。

            仮に書類作成の時間が30分短縮すれば、全体の作業時間は1時
            間30分×3人で4時間30分となり、1時間30分の削減ができます。

             
     (2)実施手順

       ECRSの原則を利用した業務改善の手順は以下の通りです。

       ①改善チームの編成

        業務改善に取り組むための準備として、業務改善を担当する改善チーム
        を編成します。
        業務改善の取り組みを各人に任せてしまうと、日常業務を優先して業務
        改善が後回しになりがちです。
        担当を定めて責任と権限を明確化することで、実効性のある取り組みと
        なることが期待できます。
        改善チームの規模やチームに組み入れるべき人材は、企業規模や業務
        改善に取り組む範囲などに応じて決定します。
        ただし、チームには、業務改善に取り組む部署・グループの長など、全体 
        を俯瞰(ふかん)できる人材(以下「部門長」)が不可欠です。
        これは、業務改善には全体最適の視点が必要であることに加え、そうした 
        人材を組み入れることでチームに強い権限を持たせることができるからで
        す。
        また、部門長が率先して業務改善に取り組むことで、個々の従業員に対
        して、本気で業務改善に取り組む姿勢を示すこともできます。

       業務の棚卸し

        改善チームを立ち上げたら、実際の業務改善に入ります。
        まずは、社内で定期的に行われている業務を洗い出すために、現在の業
        務の棚卸しを行います。
        業務の棚卸しでは、各人が1カ月単位や1週間単位などで業務スケ
        ジュール(業務棚卸表)を作成します。
        棚卸表を作成する期間は、自社や業務改善を行う部署の業務内容、業
        務周期に合わせて決定するとよいでしょう。
        記載する内容は、実施する業務、所要時間、関係者(共同で作業する
        者、データ・書類の受け渡しがある者など)などです。
        業務棚卸表には、個人で行う業務だけでなく、複数人で行うような業務で
        あっても記載します。
        なお、記載業務が多くなりすぎると分かりにくくなるため、毎日や毎週
        など多頻度で発生する業務は別に記載する、所要時間が短いものは
        記載しないこととするなどとします。

       ③対象業務の選定

        各人による棚卸表が完成したら、それらを基に改善すべき業務を選定し
        ます。
        その際に大切になるのは、個人単位ではなく、部署・グループなどの単位
        で改善すべき業務を検討するということです。
        もちろん、個人単位での業務改善も必要です。
        しかし、1担当者の作業だけで完結する業務というのはわずかであり、業
        務の多くは複数の担当者がかかわることによって当該業務が完結しま
        す。
        そのため、部署・グループなどの単位で、業務の流れを俯瞰しながら取り
        組みを進めた方が、より効果的な業務改善を行うことができるのです。
        なお、対象業務の選定は、改善チームの中でも特に、部門長が中心と
        なって行うことが望ましいでしょう。
        これは、部門長であれば各人の業務内容やその業務の意義を把握して
        いるため、業務棚卸表をみるだけで業務の重要性や他者とのかかわりな
        どをおおよそ判断でき、業務改善の対象とすべき業務を的確に選定でき
        るからです。
        また、この選定業務の中で、各人の業務を見比べて抜け・漏れなどに気
        付いた際には、再び棚卸しに戻って抜け・漏れなどを補完します。

       ④業務フローの作成   

        対象業務を選定したら、当該業務の進め方を詳しく調べ、業務フローを作
        成します。
        その際は、当該業務を行う従業員(以下「従業員」)任せにせず、改善 
        チームのメンバーが従業員からヒアリングを通じて業務の進め方を確か
        めていくようにします。
        従業員本人以外が作成に加わることで、業務の進め方を詳細に調べるこ
        とができます。

       ⑤ECRSの原則に従って業務フローの見直し

        作成した業務フローについて、ECRSの原則に従って見直しを行います。
        まずは「なくせる工程はないか」を考え、次いで「一緒にできる工程はない
        か」「順番を入れ替えたらもっと効率的にできないか」、と工程の再編を行
        います。
        それらが終わったら、最後に各工程について「この工程はもっと単純にで
        きないか」を考えます。
        また、ECRSは、どれか一つを適用すれば終わりというものではない。
        例えば、「E」を適用して工程数が減少した後、さらに「R」を適用して並べ 
        替えればより効率的になるということもある。
        また、「S」を適用して工程を単純化したら、それまで適用できなかった「C」
        が適用できるようになったということもあり得ます。
        なお、検討の際には、業務フローを工程ごとに分析し、小さなカードやふ
        せんに記載しておくと、容易に工程を取り除いたり(E)、並べ替えたり(R)
        できるため便利です。

       ⑥新しい業務フローで業務実施

        見直した業務フローに従って業務を実施します。
        この際、新しい業務フローを適用して終わりではなく、実際にどの程度の
        効率化が図れたのか、効果を検証することも忘れないこと。

   3.実践に当たって押さえておきたいポイント

     (1)対象業務の選定は慎重に

       ECRSの原則は業務改善において有効なものではありますが、改善チーム
       を編成したりヒアリングを行ったりと、その実施には時間もコストもかかる。

       業務改善に取り組む際には、費用対効果を意識して対象業務を選定しな
       ければなりません。

       改善を検討すべき業務となるのは、作業時間が長い業務です。

       1回にかかる時間が長い業務、1回にかかる時間はそれほどでもないが、
       頻度が高いために多くの時間をとられる業務といったものから改善に取り
       組むことです。

       また、かかわる人が多い業務も同様です。

       その業務にかける各人の時間は長くはないとしても、かかわる人が多けれ
       ば多いほど、全員の時間を合わせれば、多くの時間をかけていることにな
       ります。

       特に、内容が同じような業務を複数人が行っているような場合には、当該
       業務の在り方を見直すことで大幅な改善が見込めます。

       ポイント:改善に取り組むべき業務は?
        ・1回にかかる時間が長い業務
        ・発生する頻度が高い業務
        ・関係する人数が多い業務

        ⇒こうした業務は総作業時間が長いため、業務改善が高い効果を
         発揮することが期待できる。

     (2)正確な業務フローの作成が成否を分ける

       ECRSの原則は、もともと製造工程の改善に用いられるものです。

       製造工程の場合には、製造工程を詳細に定めた工程図があるため、改善
       にも比較的取り組みやすいといえます。

       一方、オフィスワークは、製造工程と比べて、業務の内容・手順がみえにく
       い傾向があります。

       業務によってはマニュアルが定められているものもありますが、実際には 
       マニュアルがあってもそれが守られているとは限りません。

       各人が自分のやりやすいように変更している可能性があるからです。

       ECRSの原則を利用した業務改善は、業務フローをみながらその中の無駄   
       をみつけていくという取り組みであり、業務フローに抜け・漏れがあっては
       十分な効果を発揮できません。

       そこで、オフィスワークにECRSの原則を適用するためには、業務フローの
       作成が重要な意味を持ちます。

       どれだけ正確に業務フローを作成できるかが業務改善の成否を分けると
       いっても過言ではありません。

       そして、業務フローの作成において重要な役割を果たすのが、従業員への
       ヒアリングです。

       ヒアリングの際には、従業員から詳細に情報を得ることはもちろんですが、
       従業員本人も気付いていない(意識していない)工程がある場合もあり得る
       ので、ヒアリングを行うメンバーは注意が必要です。

       場合によっては、従業員が実際に業務を進めている様子を観察したり、ヒ
       アリングをしながら、メンバーが実際に当該業務の流れを体験してみたりす
       るのもよいでしょう。

       そうすることで、ヒアリング内容に何か抜け・漏れがあれば発見することが
       できます。

       ポイント:業務フローを正確に作成するには?
        ・従業員自身が意識していない点があることを覚えておく
        ・ヒアリングだけでなく、実際の業務の様子を観察したり、体験
         したりすることでより正確を期す

               ⇒これによって工程の抜け・漏れを防止することができます。

     (3)新しい業務フローが守られるとは限らない

       業務フローの見直しを行うと、最初は新しい業務フローに慣れずに、計画よ
       りも時間がかかってしまうこともあり得るでしょう。

       このとき、新しい業務フローが改善チームによって独断で作成されたもので
       ある場合、従業員が新しい業務フローを嫌がって、勝手に以前の業務フ 
       ローで業務を進めようとするかもしれません。

       こうした事態を防ぐため、業務フローの見直しは、改善チームが独断で行う
       のではなく、実際に業務を遂行する従業員の意見を聞きながら行うようにし
       ます。

       そうすれば、従業員も新しい業務フローに納得できるため、新しい業務フ
       ローが守られやすくなります。

       また、業務フローの見直し後にも、従業員に声をかけて業務フロー変更の 
       感想を聞くなど、改善チームと従業員とのコミュニケーションも業務改善を
       円滑に進めるためには必要となります。

       ポイント:新しい業務フローを定着させるには?
        ・業務フローの見直しは、従業員の意見を聞きながら行う
        ・業務フローの見直し後にも従業員に声をかける

        ⇒従業員が新しい業務フローに納得しやすくなり、従前の業務フローで
          業務を行うことを防止できる。

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業務改善の方法と進め方

業務の進め方

業務の進め方


  ■業務改善は永遠のテーマ 

   業務改善とは仕事の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくことです。

   会社におけるすべての業務は何らかの目的にしたがって成果を生むために行われて
   います。

   その生産性を上げるために行うのが業務改善です。

   新入社員の仕事は、“上司の指示通り”に業務を進めることです。

   これが中堅社員になると、“上司の指示通り”に業務を進められるのは当たり前のこと
   となり、さらに「改善」が求められるようになってきます。

   決められた手順に漫然と従っているのではなく、「本当にこのやり方でよいの
   か?」という問題意識を常に持ち、必要に応じて、具体的な改善策を立案・実行す
   ることで企業に員献することが中堅社員の仕事の1つなのです。

  □改善点を見つけるポイント
   さまざまな業務の中から、改善すべきポイントを見つける際は、以下の考え方が
   ヒントになります。

   1.「なくす」「減らす」「変える」
     業務や作業の手順を、「なくす」「減らす」「変える」という視点から評価してみま
     す。

     例えば、毎週作成している○○報告の資料が恒常的に遅延するケースであれ
     ば、「資料を作らない(なくす)」、「資料の作成サイクルを週1回から、月1回に
     する(減らす)」「資料のフォーマットを簡易なものにする(変える)」といった
     ようになります。

     この考え方は、主に製造現場でムダ・ムラ・ムリを解消する際に用いられるも
     のですが、サービス業など他業種でも有効だといえます。

     なお、「なくす」「減らす」「変える」は効果が高い順番なので、この順番で検討
     するようにしましょう。

   2.「人」に注目する
     業務ではなく、それを遂行する「人」に着目することでも改善点が見つかりま
     す。

     基本は、業務に関わる人数や人手(工程)を減らす努力をして、時間とコストを
     削減することです。

     一方、中には必要以上の「人」が割り振られている業務もあります。

     「人」の数に合わせて業務を細分化し過ぎると、かえって非効率で、ミスも生じ
     やすくなります。

     このような場合は、思い切って「人」を減らしてみるとよいかもしれません。

  □業務改善時の留意点
   実際に業務改善に取り組む際に重要となる留意点を紹介します。

   1.全体最適の視点を持つ
     業務改善は、「全体最適」を実現できるように進めなければなりません。

     例えば、自分の担当業務の時間短縮に成功しても、次工程で業務がつまり、
     結果として従前と同じ時間がかかっているのであれば、次工程の業務改善に
     も着手しなければなりません。

     高い視点で業務を確認してみると、さまざまな部署や人が関わっていることが
     分かります。

     業務改善に取り組む際は、必要に応じて関係者と相談しながら進めることが
     大切です。

   2.根本的な問題点を見つけて解消する
     業務改善に取り組む際は、対象業務の「根本的な問題点」を把握し、改善する
     よう心掛ける必要があります。

     例えば、他部署から報告される紙のデータをパソコンに入力し、報告書の形式
     にまとめ直す業務において、データ入力のミスをなくすための改善策を考えて
     みる。

     この場合の打ち手として、「入力したデータを別の人がチェックする方法」が考
     えられますが、これは対症療法に過ぎないかもしれません。

     なぜなら、入力ミスは、データ入力の際に生じるわけですから、入力ミスを根本
     的になくすためには、データ入力という業務そのものを見直す必要があるわけ
     です。

     従って、この場合は「他部署から、紙ではなくエクセルなどの形式でデータをも
     らう」といった方法が好ましい改善策となります。

   3.バランス感覚を保つ
     業務改善がうまくいかない原因を探ってみると、バランス感覚を失っている 
     ケースが少なくないようです。

     例えば、「業務改善を通じて、1時間の時間短縮を実現する」という目標を掲げ
     たとします。

     こうした目標が掲げられる背景には、「1時間程度の時間短縮は可能」とのもく
     ろみがあるわけですが、あくまでももくろみであり、実現できるかどうかは分か
     りません。

     「当初のもくろみに反して改善は難しい」という判断になれば、潔く撤退すれば
     よいのですが、目標達成にこだわり過ぎると、「本来必要な作業時間まで削減
     してしまい、逆にミスが続発するようになった」という、“業務改悪”につながるこ
     ともあります。

  □業務改善に取り組む基準
   問題意識を持って、注意深く業務を見ていくと、改善すべき点が数多く浮かび上
   がってくるでしょう。

   業務改善によって大きな効果(コスト削減、時間短縮など)が期待できるなら、是非、
   取り組むべきです。

   逆に、ほんの小さな効果しか期待できないのであれば、それは看過してもよい課題
   かもしれません。

   その業務が今の状態で落ち着いているのには理由があります。ちょっとした改善が
   可能でも、効果と改善のリスクを考え、あえて看過されているケースもあるのです。

   もちろん、改善点を一つ一つ漬していくのは重要です。

   しかし、一気に進めれば混乱を招きます。「どこから改善に着手していくのか?」の
   基準は、「効果の大きさ」にあることを忘れてはなりません。

   最後に、

    ・業務改善の必要性を常に意識して業務に当たる
    ・まずは身近な業務から見直しを始めてみる


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業務改善の方法と進め方

業務の商品化
 

  ■業務を商品化する

   日常行われている業務は日々進化していますか?

   昨日より今日、業務の改善は収益に直結しています。

   勘と経験を頼りにした業務進行からは何も生まれません。

   毎日必ずやらなければならない仕事なら、「どうしたらもっと楽(シンプル)にできない
   だろうか」、「どう行動したら顧客が喜んでくれるだろうか」、「どうしたら従業員の
   負担を減らせるだろうか」など日々疑問を持って仕事に取り組まなくては進化は
   ありません。

   忙しい中身を精査し、体に汗をかくだけでなく、脳みそに汗をかくことも欠かせません。

   
   ㈱武蔵野はダスキンの代理店業務をメインにする中小企業です。

   全国各地の中小企業経営者がセミナーや勉強会(実践塾)に参加し、経営者からは
   カリスマ社長と呼ばれている。

   その㈱武蔵野が今では仕組みづくりのコンサルティングが商品となっています。

   自社の業務改善を徹底したことで、各業界の社長が教えを請う、そのことが商品と
   なり、小山社長は著書『「儲かる仕組み」をつくりなさい』で、「わが社のセミナー
   に参加した社長は、大きく二つのタイプに分かれます」と言っています。

   ほとんど自社を変えられなかった社長と、どんどん良くすることのできた社長とです。

   前者の社長はこんなふうに考えます。

   「武蔵野だからこそできたのだ」「小山社長だから実現した」と。

   これは大きな誤解です。

   田舎の中小企業であるわが社には、入社したときから優秀だった社員など、私を含め
   て誰ひとりいません。

   ひたすら自社を改善する仕組みをつくり、改善し続けたからこそ増収・増益を達成でき
   たのです。(小山社長談)

   この書籍は中小企業の業務改善に大いに参考になると思います。

   自社の業務で「面倒で大変だ」と思ったことを、「もっとシンプルで楽にできるよう
   にしたい」ことが業務改善に繋がったのです。

   社内業務において電話対応基本動作会議朝礼クレーム対応業務手順書
   セールス・スクリプトアプローチブックなどによって業務全体を改善することで、顧客
   や紹介によって顧客から依頼されるのです。

   このことが結果として本業に繋がります。

   武蔵野においても、自社の業務を改善しようと始めたことが結果的に商品となった
   のです。

   しかし、商品化するといっても必ずしも有料である必要はありません。
  
   あなたの本来の商品を売るための武器・ツールにすることでもいいのです。

   あなたも自社(店)で競合他社がまねのできない強みを1つでいいですから持ってくだ
   さい。

   その武器(強み)がいかに効果的かが分かるはずです。

   その分野で成功した人で最初から何の問題もなかった人などいません。

   参考にするものもなく、チャンスもなく、自分たち以外に競う相手もいない状況を乗り
   越えてきているのです。

   上手くいかないで、失敗する人たちには主に2つの理由があります。

    1.必要な情報を、手に入れる、探す、求める、買うということをしようとしていな
      い。

    2.せっかく良いアイデアを手に入れても、実行に移さない。

   成功を収めている人たちは、情報の価値を知っていて、常に情報に興味を持ち、情報
   を得ようとしています。

   アンテナを広げ、価値ある情報を入手したら実行に移しましょう。今すぐ!

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業務改善の方法と進め方

業務改善の手順


  業務改善は業務の可視(見える)化を可能にし、社内のムリ、ムダ、ムラを排除し、
  収益アップに貢献します。ただ闇雲な業務改善ではなく、手順に沿った改善が必要
  となります。

  業務改善に着手する前にやっておくことがあります。

  業務棚卸表(業務の洗い出し)です。

  各業務担当者それぞれが日常行っているすべての仕事を書き出します。

  担当業務棚卸表による業務棚卸に当たって、メンバー全員が仕事の効率化
  ・省力による営業余力の創出と意識改革ついて認識する必要があります。


  ■業務改善手順書づくり 

   1.特定の人に依存しない仕組みをつくる

    (1)仕事の洗い出し

      ①出社〜退社までのすべての仕事(カギの開閉まで)

      ②自身の仕事がなにか、その仕事の意味を考慮し、誰でもできる部分は
       どこか、特定の人でなければ対応できない部分はどこなのかを分析

      ③特定の人の仕事をそぎ落とし、特定の人に頼る部分を小さくしていく

       ・高度な仕事とそうでない仕事を分け、低いスキルで仕事を遂行できる
        ようになるためには、何が必要か・どんなスキルをつめばよいかを検討

    (2)仕事の優先順位を考える

      ①トップ・部門責任者でなければできない仕事 (第1位)

      ②トップ・部門責任者がやっている・求められる仕事 (第2位)

      ③部下に任せられるがトップ・部門責任者がやっている仕事 (第3位)

      ④トップ・部門責任者でなくても部下に任せられる仕事 (第4位)

   2.組織(チーム)力

    各業務には手順があります。

    業務改善の目的はムダ・ムラ・ムリを排除し、業務全体をシンプルにすることで、
    誰に代わっても一定の品質が保てることを目指すものです。

    そのためには、「言葉で伝える」から「文書で伝える」手順書 (マニュアル)が
    必要となります。

    優秀な社員の業務を手順書に落とし込むことで、業務の推進を勘と経験に頼る
    ことなく、全員が同品質のレベルを保つことができます。

    組織力は「人に仕事を担わせる」のではなく「仕事に人を担わせる」が基本とな
    ります。(これが業務の役割分担の考えとなります)

    手順書は新人でも経験豊富な社員と同レベルの知識を共有するための基礎
    となるものです。 
    
   3.業務手順(フロー)書の作成

    ●間違ったマニュアル

     マニュアルとは、作業命令の完全な表現であり、やるべき職務について、具
     体的に内容を示したものです。

     それは同時に、本人の職務遂行能力、技術的な段階(あるいは水準)を示す
     バロメーターでもあるのです。

     マニュアルが作業命令の完全な表現であるということは、言い換えるなら、
     作業の手順を指示する文書ということなのです。

     多くのマニュアルの内容は道徳的・抽象的表現が多すぎます。

      ○「ねばならない」ではなく「する」と表現されます。

      ○「・・・してはならい」、「・・・に注意する」、「・・・に配慮する」、
       「・・・に気をくばる」、「・・・をチェックする」などは抽象的で
       どうすればいいのか本人には理解できません。

       よって、気くばりであるとか、気遣いを交える言葉は、マニュアルとしては
       正しくありません。

       マニュアルは決して漠然と確認ることでも注意することでもないからです。

      ○道徳的表現
       たとえば「早く」、「きちんと」、「ていねいに」、「きれいに」、「でき
       るだけ」といった表現。

    ●正しいマニュアルの条件

     (1)だれにでもわかること

       それには手順を示すこと、さらに事例をあげること。

       特に大事なことは反対のまずい事例もあげることです。

     (2)他の表現(解釈)ができないこと

       文章で表現するよりも数字で、数字よりも図で示すことです。

       そうすれば、他の方法がなくなってしまうからです。

     (3)他にやりようのない決め方

       文書はつねに「する」と表現する。

       抽象的であいまいな表現は使わない。

     (4)数字は少なくすること

       数字がたくさん書いてあると、わかりにくくなる。

       標準や、目安や、最大や、最小や、目標の数字は記入します。

     (5)文書フォームの統一

       マニュアルを書いた文書の形(文体)、活字の大きさ、色、厚さ、材質は統
       一する。

     (6)綴込み式であること

       マニュアルの内容は修正されていくものだから、1ページごとに交換可能で
       あること。

       修正した場合は1ページごとに取り換え、内容が変更されるときには、変更
       したページが綴じ込まれるのと引換えに、変更前のページを回収する。

     (7)現場でテストずみであること

       マニュアルは実際に現場でテストされたあとでなければ、流してはいけない。
       テストせずにマニュアル化される不完全なものになってしまう。

      (8)すべての作業について作ること

       作成するためにも、業務(役割)分担表を作成することで作成が作りやすく
       なる。

      (9)保管方法と周期的修正義務が明示されていること

       だれがどのように保管するのか、だれがいつどのように修正提案をするの
       かは、制度として成文化されていなければならない。

    (10)チェック・リストでフォローされること

       これはマニュアルが実行に移された段階において、はたしてマニュアルど  
       おりに実行されているのか、実行されていないとすればマニュアルのどこに 
       欠陥があるのか、さらにマニュアルどおりにやることによって、プラスの効
       果ばかりが出ているのか、もしもマイナスの効果も合わせて出てきたり、も 
       ともとマイナス効果しか出ないマニュアルであったとするならば、そのどこを
       どのように修正すればよいのかを調べあげるためです。

       したがって、このチェック・リストを作ること、そのチェック・リストでチェ
       ックすることは、担当者の本来の職務として、あらかじめ規定されなければ
       ならないのです。

  □業務手順書が無ければ 

   ・業務を教えるのに先輩社員が係わり、時間・労力・コストが発生

   ・教える側の考えが優先し、教わる側にスキルのばらつきが生じる

   ・教える側の主観が大きく反映され、業務の範囲が把握できなくなる

   ・社員のスキルを計る基準ができず、社員の評価が客観性を失う

   ・会社の統一感・一体感が生まれず、特定の社員に負担のかかるマン
    パワーに依存してしまう

  □手順書における表現の原則 

   ・誰にでもわかる(特別な経験がなくても)

   ・他にやりようがない決め方である 

   ・数字は少なくする 

   ・内容は修正されていくので用紙は綴り込み(バインダー)式にする

   ・文書(用語)、フォームは統一されている 

   ・内容は必ずテスト済みである

   ・各部門すべての業務について作成する

   ・保管方法、定期的な修正(誰が、いつ)義務を明示する 

   ・手順書どおりに実行されているかの有無をチェック・リストでフォローする

  □社内作成物(規程)との連動 

   ・就業規則、人事評価と連動していること 

   ・経営計画と連動していること

   業務のマニュアル化は、限られた現有資産を最大限に活用していくためにも欠かせない
   課題です。

   マニュアル作成は自社にとってのノウハウとなります。

   すでにマニュアルが整備されている企業のマニュアルを拝見させていただくと、それら
   のほとんどが「マニュアルらしきもの」であって、マニュアルではありません。

   理由は、

    ○言葉で説明しなければわからない

    ○内容が抽象的

    ○担当者にしか分からない

   といったことが挙げられます。

   マニュアルは苦労して作成し、修正し、つくりあげるしか方法はありません。 

 

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静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
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