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■組織のイノベーション( 革新)
企業は、組織規模に応じて打つべき手があります。
しかし、 組織が成長しているのに、経営が 成長していない企業も多い。
「自社は年商○○億円だが 、これからどんな手を打てばいいのか分からない」と言う社長は多い。
まず、第一に会社全体の組織に対するイノベ ーションの着眼、第二に販売や開発(攻め)、第三に
内部 管理(守り)に関する着眼の順でお話しします。
□ワンマン経営からスピード型組織経営に
1.ワンマン経営の弊害
第一は、企業全体に対す るイノベーション、つまりコーポ レートガバナンスです。
一昔前は「 ワンマン経営には功と罪がある」 と言われました。
また、年商 50 億円くらいから徐々に組織経営へと移行する必要があると多くが説いてきました。
しかし不祥事を起こす企業は、おおむね「ワンマン経営」や 「裸の王様経営」です。
その問題の本質は、「内向き経営」にあるとい うことではないでしょうか?
以前、関与先で体験した事例を2つ紹介します。
中堅企業のA社の社長は、カリスマ経営者と言われる人物だった。
部課長クラスの 会議に参加していた時の話。
「先日の社長の発言はこ ういう趣旨であったのではないか ?」と1人の課長が言うと、ある部長は
「いやいやこう いう意味だ」と正反対の解釈を述べた。
それから延々と1時間、社長の思いつき発言の解釈について、堂々巡りの議論を続け ていた。
その社長に後日「裸の王様になっていますよ」 とアドバイスしておいた。
中堅企業B社の社長はワンマン経営者であり、幹部はイエスマ ンが多かった。
幹部陣に面談したところ、ワ ンマン経営に対する不満は出てこなかったが、懇親会になると本音が
出てくるものです。
トップには言えない話がたくさん出てきました。
品質やクレームに関する こと、社員の不平不満、社長の言動に対する不満など、聞いていても
「それはトップにきちんと話した方が良いのではないか?」と思うようなことばかりであった。
その本質は「社長ににらまれたら最後」との思いゆえに、全幹部が保身型だったことです。
このような会社が、隠蔽体質になるのです。
また、保身型の幹部を見て育つ社員は不幸だと思い、トップには「役員会で 10%以下しか発言
しない状態を、6カ 月間続けてください」と要請しました 。
B社の社長はできた人でした。
こちらの言うことを聞き入れ、その通りに実践した。
最初に「時代の変化」と 言ったのは、ワンマン経営に対し てマーケット(市場・顧客・仕入先・
株主)も、働く社員も嫌悪感を持っていると感じられ、うまくいかないケースが増えている点。
先代のワ ンマン経営に苦労した社長や時代感覚の優れたトップは、組織経営に移行している。
ワンマン経営の良さは、
①意思決定のスピード
②実行のスピード
③統一性であった
が、それは組織経営でもできることです。
「スピードが重視されるからワンマン経営で良い」のではなく、「スピードが早い組織運営」 に
していかねばならない。
2.組織経営か否かのチェックポイント
では、どうすれば良いか ?
簡単なチェックポイントを紹介する。
(1)組織図は社長の上に「取締役会」があるか?兼務職は多くないか?
これで取締役会を重視しているかどうかが分かります。
「オレが選任している役員なのだから」と、取締役を下に見るようなトップではな いかを
チェックする。
取締役会の決定事項は社長の決定よりも重いということを認識し、取締役会を開催してほしい。
また兼務担当者が多いのは「人材がいない」「過渡期」ということもあるが、仕事を任せられ
ない体質を持っている企業が多い。
(2)取締役会での社長の発言は 30%以内か?
ワンマン企業では、社長の発言力が 90%である。
そんなトップに限って「自社には人材がいない」「私が話をしなければ、だれ も意見を言わ
ない」と嘆く。
あるいは「だいたい私の意見が一番良い」と自画自賛する。
一度、黙って半年過ごしてみることです。
そうすれば変わってくる 。
また、発言が一定部門の担当役員に偏っているのも問題です。
(3)悪い報告がどのくらい のスピードで社長の耳に入るか?
クレームや大きな品質不良、社員の不満などが、どのくら いのスピードで社長の耳に入るか。
ある企業では、1カ月もかかっていた。
「悪い報告ほど早く」が徹底されているかということです。
(4)総務・人事・経理関連の役員の提案力はあるか、社長の 腰巾着ではないか?
管理担当役員は、トップの近くにいるため「社長がすべて」になりやすい。
また、社内では「稼いでいないのだから」とプロフィット部門より下に置かれるケースが多い。
その結果として、腰巾着になりやすいのかもしれない が、管理部門は全社を掌握して情報を
多く持っている。
その管理担当役員の提案力・企画力が組織経営力を左右します。
(5)権限決裁規定はあるか ? その通りに運用されているか?
中小企業には、権限決裁規定や決裁基準がないところが 多いが、ぜひ策定・運用してください。
最初はとても見ていられないくらいでも、3~5年すれば人が育ち、組織経営になってくる。
□攻めのイノベーション
1.5高顧客への頂上戦略をとれ
中堅企業のマーケティング戦略は「 5高顧客への頂上戦略」です。
5高顧客とは、①高成長顧客、②高リピート顧客、③高単価顧客、④高ポジション顧客、⑤高技術
顧客であり、この層を開拓することが成長の決定的ポイントとなる。
したがって、経営者はこの5高顧客のニ ーズを注視することが 重要。
顧客ニーズを集約して全社で対策を検討する機関を設け、情報をすばや く収集して短期・中期と
対策項目ごとに仕分けし、顧客ニーズに対応していくことが必要です。
さらに、5高顧客との取引実績を核に、営業網を 拡大する対策を打つこと。
2.ニッチでナンバーワンを目指せ
中堅企業になると、ニッチ市場ではいよいよナンバーワンを目指していく規模です。
ナンバーワンになれるか否かは「他社との差別化」がキーポイントとなる。
したがって、社長は常に競合他社を見なければならない。
組織面では、商品・サービスの開発部門の設置かプロジェクト推進が重要なキーポイントとなる。
小売業でもサービス業でも、50 億円の規模になった企業には、開発会議の実施をお勧めします。
さら に、営業と生産、管理のバランスを重視していただきたい。
3つのうち弱いところ でつまずきがちだからです。
3.ブランド化を図れ
中堅企業になると、ブランド化戦略を図り、そのブラン ド力をコアに越境作戦(海外・首都圏・
成長業界)を実行していく必要があります。
その際に社長が見るべきところは、マーケ ットサイズである。
この規模になってある程度のシェアを占めると、マーケットサ イズが伸びるか伸びないかが業績を
左右するからです。
そのため、マーケティングリポート(マーケット状況を自社独自のセグメント方式で区切る検討用
データ)を作成・分析し、打つべき手を考える必要があります。
またこの規模になると 、どうしても品質保証・調達・ IT・人事・管理部門が拡大していく。
これは次のステップに向けて、避けては通れない道です。
このように、規模やマーケットの状況に よって、経営者が見る べきマーケットファクターや、組織
面での打つべき手を変えていくことを提言する。
□守りのイノベーション
次に守りのイノベー ションについてお話します。
1.経営者目線で課題を整理せよ
関与先現場で重要視するのは 、社長と幹部の目線合わせ。
社長・幹部とディスカッションし、「自社の課題は何か」という目線をしっかりと合わせること
です。事例で話そう。
中堅企業において、経営者・人事担当役員・人事課長と 人事面についてディスカッションした 。
そこでの課題認識は、
①経営者 ― 「自社には 40~ 50 代の社員が 200 人いる、しかし部長のポストは 10、課長は30
しかない。若手の登用もしたいが、 10 年後も 40~ 50 代にモチベーションを高く維持して
もらうためにはどうすれば良いだろう」
②人事担当役員 ― 「新卒社員の離職率改善が課題である」
③人事課長 ― 「人事制度に一部不備があるので修正すべきである」
などと、目線が全く違う。
確かにすべてが課題ではあるが「何を解決するか」「どの機会に解決するか」という目線を合わせ
なけ れば、経営パワーが分散してしまうのではないだでしょうか。
この場合、③は人事部内で対応すれば良く、方針に掲載するほ どのことではない。
②は役員会マターです。
①は 社長とディスカッションして中期経営計画に載せ、年数をかけて対応していくべき課題です。
的確に課題を発見するために必要なのは、「情報とツール」です。
社長と幹部では情報の量と質が異なるため、課題認識が違ってくる。
まず重要なことは情報であり、次に適切なディスカッシ ョン、社長からの発信(グルー プウエア
などの活用)です。
2.中期経営計画を策定する
中期経営計画には、コミュニケーションツール・エデュケーションツール・コントロール ツールの
側面があり、その意義は大きい。
なかでも最大の意義は、組織経営にふさわしい経営の心のよりどころになることです。
創業者やカリスマ経営者がいるころは、 経営トップが求心力であり、心のよりどころでした。
しかし今や、 社員はワンマン経営に対して嫌悪感しか抱かないと言っても過言ではない。
社員が 100 名を超えれば十人十色の考えを持っている。
現代の環境に合わせるならば、幹部参加型で中期経営計画を策定して求心力・心のよりどころとし、
経営を進化させていくこ とが重要です。
年商 50 億円までは、基本を徹底して継続的に実施する時期です。
この段階で潰れる企業は、まずこの守りの基本ができていないケースが多い。
逆に言えば、この時期に企業マネジメントの骨格や 文化ができてしまう。
経営理念も徹底できず、利益管理も疎かな企業が 100 億円を超えればどうなるか?
成果配分も人材育成の仕組みもない企業が、社員 200 名を超えるとどうなるか?
将来の組織図を描かず必要人材を調達できない企業の成長度は どうか?
お分かりでしょう。
■管理評価の基準を明確にし効果を発揮
こんなケースがあります。
ある会社で製造・販売・管理の各部門の抜本的な組織改革を断行しました。
ところが、管理職クラスが期待したほど動かず、効果がいま一つ出てきません。
それに、前の組織の方が良かったということです。
◎全体の関連性を理解させる
管理職クラスの悩みは、多くの場合、組織変更の意図を正しくつかんでいないことです。
組織変更の意図というと、業績の向上、攻めの体制づくりなど、大ざっぱなものになりがちですが、
それでは不十分です。
これには2つのポイントを押さえることが重要です。
①全体の関連性を理解させる
例えば、営業担当の場合、営業力を強化することには理解を示すが、それと製造部門、総務部門
との関連がどう変化したかということになると、理解していない場合が多いのです。
なぜかというと、組織変更をする場合、社長、専務といった立場の人は当然、全体の効率を考え
ているのですが、各部門の要となる人にはこうした全体的視点が欠けているためです。
②管理(評価) 基準をはっきりさせる
「君には利益を第一に考えてもらいたい」と言って部門を任せておきながら、実際に売り上げが
落ちてくると、「売上高を何とかしろ」というようなことが見られます。
これでは、何のために部門を任されたのかが理解できなくなります。
売上高、営業利益といったはっきりした基準を設定し、この基準を経営者自らが管理の基準と
して厳守することです。
□命令系統を乱す管理職経験者
このほかに、直接部門の効率を上げるために、営業総務など援助部門を設けるケースが多く見られ
ますが、これがうまく機能していないことが少なくないようです。
中小企業では大企業と違って、援助部門で育ってきた人材が少なく、何をしていいか分からない
ためにこのようなことが起きるのです。
さらに人材には限界があるため、ベテラン社員、あるいは管理職経験者を登用せざるを得ないという
のも一つの原因です。
この人たちは、あくまでも援助に徹すべきなのに、「指示をする」という以前の組織でのクセが抜け
ないため、新組織の命令系統を乱すことになります。
そこで、彼らの面目をつぶす可能性はありますが、社長自らが乗り出し、時間をかけても軌道に乗る
まで指示をこまめに出すことです。
組織を活性化させる場合、インフォーマルな関係(飲食すること) が有効であると思われがちですが、
これはあくまでも手段であって、目的にしてはいけないことです。
社長自らがこのような関係に埋没していくと、組織は必ず崩壊します。
■考え方
1. 生産性とは
「生産性」ということをよく言いますが、生産性について具体的に説明しろといわれると、言葉に
詰まってしまうのではないでしょうか。
漠然と理解しているはずなのですが、きちんと説明はできない、という人が多いはずです。
企業の経営活動の基本は、持っている経営資源を使って、儲けを生み出すことです。
生産性とは、「経営資源を投じた結果、どれだけの成果をあげることができたか」、を示すものです。
つまり、「生産性を上げる」ということは、「より少ない経営資源で、より大きな成果をあげる」
ということになります。
生産性は、投入した経営資源によって大きく2種類に分けられます。
金や 物、つまり資本を投入した結果、どれだけの成果が得られたのかを示すの「資本生産性」です。
また、人、つまり労働力を投じた場合の成果をみるのが「労働生産性」です。
労働生産性を分析することで、「社員がどれだけ効率的な仕事をしているか」をみるものです。
労働生産性は、企業が生み出した新しい価値である「付加価値」を、従業員数で割って出します。
2. 付加価値とは
では、「付加価値」とはなんでしょうか。
あなたはこの言葉の意味はなんとなく理解していると思いますが、その中身を正確に説明できる
人は少ないでしょう。
例えば、ある企業が、100円で仕入れたものを加工して160円で売ったとします。
100円の価値だったものに、加工した結果、60円の「価値」が付加されたわけです。
この60円分の価値が「付加価値」なのです。
付加価値は、それを生み出すために使われた人件費や光熱費などのコストと、会社が得る利益から
成っています。
60円のうちの50円は費用、残りの10円は利益、といった具合です。
付加価値の計算方法には何通りかの方法がありますが、代表的なものに「控除方式(中小企業庁
方式)」と「加算方式(日銀方式)」の2つがあります。
控除方式では、付加価値は売上高から外部購入価値(他から購入した物やサービスの費用)を
のぞいたものになります。
この外部購入価値は、原材料費、外注加工費などです。
加算方式は、付加価値を生み出す項目を加算していく計算方法です。
加算する項目は、経常利益、人件費、賃借料、金融費用、減価償却費、租税公課の6項目です
(減価償却費は含まない場合もあります)。
控除法(中小企業庁方式)
付加価値=売上高-原材料・外注費等
加算方式(日銀方式)
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+金融費用+減 価償却費+租税公課
3. 労働生産性とは
前にも述べたように、労働生産性は、労働力を投入したことで、どれだけの付加価値を生み出し
たかをみる指標です。
労働生産性は、従業員 1 人当たりの付加価値額を示し、付加価値を従業員数で割って求めます。
この場合、従業員数は、期首と期末の平均人数を用います。
労働生産性(円)=付加価値/従業員数
この労働生産性が高ければ高いほど、従業員 1 人当たりの生み出す付加価値が高く、「効率よく
儲けている会社」ということになります。
4. 労働生産性を高めるには
では、労働生産性を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。
労働生産性は、付加価値と従業員数で計算されます。
ですから、計算式の分子となる付加価値を高めるか、分母となる従業員数を減らすか、またはその
両方を行えばよい、ということになります。
①付加価値を増加させる
付加価値を増加させることを考える場合、控除法の考え方を使うと理解しやすいと思います。
控除法では、付加価値を売上高から外部購入価値を引いたものとしてとらえます。
ですから、付加価値を高めるには、売上高を伸ばすか、外部購入費を引き下げればよいことが
わかります。
現在の経済状況では、売上高を増加させるのは簡単ではありません。
そこで、まず外部購入費を引き下げることを考えましょう。
具体的には、外部から調達していた製品・サービスのコストの引き下げをはかってください。
売上高を伸ばすには、単に販売価格の引き上げをしたり、販売数量の増加を狙ったりするだけ
ではむずかしいでしょう。
高付加価値な新製品を開発することなども必要になります。
②従業員数を減らす
これは、日本企業がこれまで最も苦手としてきたことと言えるでしょう。
早期退職制度を導入するなど、積極的な取り組みが必要かもしれません。
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■10のうち、1か2をガラリと変えれば大変革
世の中に変革の必要ない会社は、ほとんどないでしょう。
トップや幹部社員だけでなく 、 20代の若手社員でも、「うちの会社は変わらないと駄目だ」と
思っている会社は非常に多いです。
現状が変えなくてはならないことばかりだと、非常に重たい気持ちになる経営者も少なくありません。
しかし、変革は、これまでのすべてを否定し、何から何まで新しいものに切り替えていくことでは
ありません。
実際、一切合切をまるっきり変えてしまったら、明日から何も仕事ができなくなってしまいます。
おおざっぱですが、10ある要素のうち1か2を、ガラリと変えれば十分大変革になります 。
これは 、 変革すべきポイントを明確に絞り込むほど、変革は成功するということでもあります。
そしてもう一つ大事なことがあります。
それは、変えるべきではないポイントを発見することが、実は変革を成功に導くということです。
あそこも変えろ、ここも変えろ、という前に、むしろ、今以上に磨きあげて堂々と勝負できる
だけの水準にすべき 「我が社の素晴らしいポイント」を見つけ出し、社員全員で共有するという
ことが、変革成功の鍵になるということです。
ですから 、 変革とは、「変えるべき点」と 「変えるべきでない点」 を整理し、「変えるべき点」
のうちもっとも変えるべき点を大胆に変え、「変えるべきでない」素晴らしい点を最大限に活かして
さらに素晴らしいものにしていくことだ、と言ってもいいのです。
□変革のパラドックス
変革にはパラドックスがあります。
人は、自分のなかに「変わらなくてよい素晴らしい部分」があると
気づいたとき、もっとも安心して変化を起こし、変化を受け入れる
すべての過去を否定されることほど、人間にとってつらいことはありません。
それは、しばしば、生きていく意味の喪失にさえつながります。
ですから、ある日突然、変革の必要性を突きつけられると、抵抗する人は必ずいます。
変革というのは、いつでも過大に受け止められるという宿命があります。
しかしもともと、変革はすべてを変えることではありません。
一部が変わればいいのです。
企業にとって、創業時から変わらない大事なことを守り抜き、新しい時代に合わせて磨きをかけ、
生き残るために変革を起こさなくてはいけないことは、実際非常に多いのです。
ですから、「何を変えなくてはいけないか」「何を変えたいのか」と同時に、「何を変えては
いけないのか 」 について整理することは 、 大きな意味があります。
それは、変革の焦点を絞り込み、変革の内容をわかりやすくし、社内はもとよりお客様や取引先
とも、目標を共有しやすくします。
同時に、資源とエネルギーを効率的に集中投下できることに結びつきます。
さらに、社歴の古い社員も、若手社員も、同じ気持ちに立つことができます。
意外に思われるかもしれませんが、創業時からあった自社の優れた点を知って誇りと自信を感じ 、
やる気になるのは 、 むしろ若手社員のほうです。
若手が変革に共感することは、変革を成功させるための、大きな要因になります。
若手が心の中で 「この変革は、いまいち気分が乗らないな」と感じている変革は、早期に尻すぼみ
となります。
それに気づかず、あるいは、その気持ちを無視して強引に進めると、必ず会社を辞めてしまう
社員が出てきます。
しかも、やる気のある社員ほど辞めてしまいます。
それは気分が乗らないだけではなく、そういう会社にいても成長できないと感じるからです。
また、ベテラン社員がこれまでの功績を軽んじられ、彼らのプライドを傷つけるような変革は、
そのベテラン社員によって足を引っ張られます。
もちろん、そんなことをいっていられない、タイムリミットが迫っているという危機感に基づく
決断をトップがすべきときはあり得ます。
しかし 、 これまで組織の変革に関わった中で、「変えなくてもよい、むしろ磨くべき素晴らしき
部分」が見つからなかったケースは一つもありませんでした。
若手もベテランも組織の変革に関わり、彼ら自身も変わっていくことを求めるとき、「組織の
変えなくてもよい部分」を見つけて、あらためて整理したうえで変革をスタートしたほうが、
はるかに早く進みます。
□コアコンセプトの転換
独自の技術をもってプラスティック製の自動車部品をつくる部品メーカーA社の場合を例にとって
考えてみましょう。
もともと、ミクロン単位の精度を要求される部品を製造する技術があったことから自動車メーカー
の信頼を得て規模拡大してきた A 社が 、コストと品質に厳しくなった自動車メーカーのニーズを
満たせず、なかなか優秀な人材も集まらず、利益も出ない体質となってきたとき、どういう変革が
必要でしょうか。
この場合、変革すべきポイントは、次の3つです。
1.利益の出る体質への転換
2.自動車メーカーなど一流企業である顧客と堂々と対等に渡り合える企業への進化
3.学生や転職希望のビジネスマンから魅力ある企業とみられるイメージづくり
あらゆるオーダーに答えて規模拡大することを第一に考えてきたために、もっとも得意な
「精密技術」を活かした、利益率の高い製品の割合が下がってきたというところに焦点を絞って
考えると、 A社では次のような戦略的なコンセプトチェンジがあり得ます。
これまで ・ ・ ・
「自動車メーカーのあらゆるニーズに対応してプラスティック部品の売上を拡大する」
これから ・ ・ ・
「先進的で精密な重要基幹部品をあらゆるメーカーに提供する」
この変革は 、 A社が、「もっとも変えてはいけない 、もっと磨いていくべき素晴らしい部分」を
はっきりさせたことで可能になるといえます。
このコンセプトチェンジで、社員が何を目指せばいいかは非常にわかりやすくなり、誰もが、
自分のすべきことは何か、すっきりと考えていけるはずです。
新しいコアコンセプトは 「自分たちの得意な技術を見直し、誇りを持って値段の高いものを
つくろう。
その分、現在のメイン顧客に対する売上が減っても、新しいお客様を開拓して道を拓こう」という
メッセージになっています。
そして、この変革を成し遂げれば、必然的に利益が生まれ、社会的評価も上がり、人材採用の面
でも有利になるというイメージが湧いてきます。
次は、競合が激しくなって利益が出なくなってきた生活用品を主として扱う通信販売会社B社の
コンセプトチェンジです。
これまで ・ ・ ・
「毎年売上15%以上のアップを実現する」
これから ・ ・ ・
「お客様の30%が3ヶ月以内にリピート購入していただける商品ラインナップとフォロー
システムとサービスを常に創造する」
この変革によって、B社は、通信販売の顧客増加の流れにのって事業拡大する段階から、きめ細かい
サービスとマーケティングで顧客とのコミュニケーションを密にして 「確実な売上」をつくりながら、
さらに、新しい情報を顧客から得られる体勢をつくるという段階に進化しました。
それこそが厳しい競合関係の中で生き残る条件になるという整理ができます。
このように、「悪いところを直す」という発想ではなく、「自分たちが本当に得意で、他に負けない
ものを磨く、創造する」という観点から、会社として目指すものを明確に示せば示すほど、変革は
実現可能性が高まってきます。
その理由は二つあります。
一つは自分に自信と誇りを持つことができ、変革によって元気が湧いてきて、やる気になるという
ことです。
もう一つは、何をすればいいかが非常にわかりやすくなるため、無駄がないということです。
これが、会社としての中心となる考え方、すなわち 「コアコンセプト」のチェンジです。
□社員全員をどうやってやる気にするか
コアコンセプトを見直すことは、組織の仕組みに影響を与えます。
新しい部署や役職が必要になるかもしれません 。
これまで、「うちの会社らしい」とされてきた考え方や行動スタイルがチェンジします。
それにともなって、評価の基準も変わるかもしれません。
新しい人材が必要になったり、新しい教育制度や新しい勤務形態について検討する必要もあるかも
しれません。
これらは、ビジネスのシステムとして必要というだけではありません。
どれもみな、変革を進めていく経営としての意志を、社員はもちろん、お客様や取引先に対しても
アピールする 「変革のシンボル」と しての役目も果たします。
具体的に目に見えるものを通して、人は変革を実感します。
こういうシンボルは、変革を成功させるために成果が生まれてきたというムードを高め、変革に
関わる人たちの間に一体感をつくることに役立ちます。
また、社員のモチベーションを高め、変革を推進するために重要なのが、社員にとっての
「働く意味」を創造していくことです。
仕事をしていて 「これは意味を感じる。だから、やる気になる」という「意味」には、次の4つが
あります。
この4つのどれか、あるいは、どれかとどれかの複合で、「働く意味を感じるな 」というときの
意味をすべて説明することができます。
1.経済的意味
2.社会的意味
3.生理的意味
4.哲学美学的意味
経済的意味は、売上や利益が上がる、給料が上がる、といった生み出されるお金に関する意味です。
「これをやると 、 会社は儲かり 、 給料も上がるな」と感じられれば、働く意味があるわけです。
社会的意味は、社会、お客様、取引先、上司、友人、家族や親戚といった 、 自分とかかわりを
もつ周囲の人々から、認められたり、感謝されたり、賞賛されるというコミュニケーションに
関する意味です。
「これをやったおかげで、お客様から感謝された」「友だちから、おまえはいい仕事をやって
いるんだなと一目置かれた」「会社が社会的に評価され、有名になった」ということは、やはり
働く意味に大きく結びつきます。
生理的意味は、暑い夏はネクタイを締めたくないからカジュアルで出社できればうれしいとか、
オフィス環境や使っている机や仕事の道具が快適でおしゃれで気分がいい、といった心と体の
快適や癒しに結びつく意味です 。
人は誰でも、仕事と職場は快適なものを望みます。
「この変革を実現すれば、仕事環境や通勤環境が快適になる」ということが見えれば、当然、
やる気になります。
最後の哲学美学的意味というのは、自分がこだわっていることが充たされたり、長い間実現
したいと思っていた夢が実現するといった、自分固有の価値観や人生観に関する意味です。
海に強いあこがれを持って育った人が海洋生物学者になったり、ものづくりを極めたい人が高い
技術レベルの職人的集団の一員となれるなら給料は食べていける程度でかまわないと思うのは、
哲学美学的意味があるからです。
変革を推進する際は、この4つの意味が感じられる何かを社員に提供すべきです。
経済的意味に関しては、成果が出れば給料が上がる、ボーナスが上がるという非常にわかりやすい
方法があります。
しかし、人間というのは、収入は苦しくとも (やっていける限りは)誰かのために貢献できる、
友だちから一目置かれる、非常に価値のあることをやっていると信じられる、必ず将来が開けると
思える、などといったことでやる気と元気が湧いてくるところがあり、社会的意味を感じない
仕事は、どこか殺伐としてきます。
そうした側面もあわせて社員全員に 「意味」を提供していくことが、社員のモチベーションに
なり、変革を進める大きなエネルギーになっていくのです。
□ビジョンの力
変革を起こすときに重要なのは、いったいなぜこの変革をやるのかという 「変革の理由」と、
変革を通してどういう未来を目指すのかという 「ビジョン」を示すことです。
それは、リーダーであるトップの役割です。
ビジョンとは、現状から飛躍し、実現を信じることのできる未来像を魅力的に表現したものです。
「世界一のバイクメーカーになる 」というのは、本田技研工業創業当時、本田宗一郎さんが毎日
みかん箱に乗って社員に話していたという有名なビジョンの例です。
従業員が10人か20人しかいない会社の社長がこんなことを言って、果たして社員はみんな
どこまで信じるのかと疑問に思う人もいるでしょう。
確かにその通りです。
しかし、このビジョンを信じることは夢のあることです。
毎日のようにトップが熱く語っていれば、信じてがんばってみてもいいように思えてくる人も出て
きます。
さらに、海外から製品や技術が評価されるようになったり、世界的に知られたレースに参戦して
優勝したりすれば、これは本当になるかもしれないと思う人はぐっと増えます。
そして、ビジョンを信じてがんばることはワクワクドキドキする楽しいことになり、その成果が
出てくるたびに、達成感を感じます。
ビジョンは、変革を起こすときに非常に大きな役割を果たします。
変革してどういう状況をつくりたいのかということが示されており、しかもそれが魅力的なもので
あればあるほど、人はその変革に共感し、自分自身も変革に関わりたいと思うからです。
ビジョンには背景に個人的な事情があることが少なくありません。
会社のためという前に、「自分自身がやりたいと思っている 」、「自分自身がこういう状況を
つくりたい」という個人的なビジョンがあることが多いのです。
しかし、その個人的なビジョンが、ほかの人たちの共感を得て、多くの人に共有されるみんなの
ビジョンになっていくことはめずらしくありません。
それは、ビジョンの特性です。
ビジョンは未来への方向性を示していますが、細かい点まで規定するものではありません 。
ビジョンが魅力的なら、共感したさまざまな人が、「こういうアイディアも 、 このビジョン
実現に役立つはずだ」「Cさんのやってきた営業の方法は、このビジョンの精神にぴったりだ」
などと、ビジョンについて語り合い、行動を起こしながら、ビジョンのイメージをさらに魅力
あるものにしていくということが必ず起きます。
ですから、ある程度魅力のあるビジョンは、どんどんその魅力が増していくのです。
ビジョンと目標の違い
□ワクワクドキドキをつくりながら夢を現実にしていく
変革推進のために大事なことは、変革に関わる人たちが本音でやってやろうと思える状況をつくり
だすことです。
社内で1年間かけて話し合ってまとまった 「変革プラン」でも、それがワクワクしないものならば、
いったん捨てる覚悟を持つことも大事です。
合意はとれているはずなのに、誰もが心の中ではやる気が起きない。
そういう状況では変革は絶対に成功しないからです。
合意をとって始めることを第一に考えすぎると、どうしても 「角の丸くなった、誰も反対は
しないけれど本音ではやりたいとも思わないプラン」ができやすくなります。
そういう「燃えないプラン」はいつもどこかで生まれています。
これは、合意をとって始めるのは当然だと考えている人たちが多いという証拠です。
しかし、合意をとることが最も重要な変革の前提条件だという考え方は、最も成功しない変革を
スタートさせてしまうことにつながると私は考えています。
多くの人たちが集まって、何十時間もかけてミーティングしてプランをまとめてきたにもかかわらず、
変革が尻すぼみとなる例は多くあります。
そこには、時間をかけて意見を集約しているうちに 、反対者が出るたびに、いいアイデアが少し
ずつつぶされて、いつのまにかまったく意味のないプランになっていくというメカニズムが、必ず
あります。
ある程度の反対はあってもスタートし、少しでも早く目に見える成果を出していくことによって
合意をつくっていくという考え方のほうが、変革は成功します。
そういうダイナミックな展開こそ、人の心をときめかせ、よしやってやろう、自分もそこに関わり
たい、というエネルギーになります。
ですから、いざ変革プランがまとまったら、そこに 「トキメキ」がちゃんとあるかどうか、是非
見直していただきたいと思います。
ここまで、変革を起こし、変革を推進していく際に重要な観点についてお話ししてきました。
1.コアコンセプト
2.働く意味(イミ)
3.ビジョン
4.トキメキ
4つの頭をとって、これらを 「コイビト」と呼んでいます。
変革は決してきれい事ではありません。
実現までに、多くの苦労がともなうことも少なくありません。
あつれきが生まれ、血が流れることも、実際あります 。
しかし、よりスムーズに変革を進め、より確実に成果を上げ、より社員が元気になる変革の方法は
あります。
組織を変革しようというとき、どうか、この 「コイビト」を思い出してください。
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組織・人事制度の改革 |
■改革 近年、経営環境の変化などにより、経営戦略を見直したり、新たなマネジメント手法を 導入するなど自社の改革に取り組む企業が増加しています。 しかし、このような取り組みが期待通りの成果を生み出さなかったり、「気が付いた ときには取り組み前の自社の元の姿に逆戻りしていた」といった企業の改革(以下「改革」) に失敗するケースも少なくないようです。 改革が失敗する原因はさまざまですが、新たな取り組みがもたらすであろう「成果」ばかりに 目が奪われて、組織内の人々を変革するという視点が欠けていることも主要な要因の一つ になっています。 企業を動かしている内部の人々が、これらの新たな取り組みを受け入れ、真剣に取り 組まなければ、いくら素晴らしい戦略を立案したり、新たなマネジメント手法を導入しても 十分な成果は期待できません。 ここに組織を変革することの重要性があります。 □改革に適した組織構造 組織の改革を考える際に検討すべきポイントは、 1.改革の基本戦略に適した組織構造かどうか 2.改革の実行に必要な経営資源が配分されているか 3.改革推進上の責任と権限などのルールが明確にされているかどうか といった3つになります。 改革は改善とは異なります。 改善が現状の組織構造、業務手順をいかに効率的にムダなく運営していくかを主題とする のに対し、改革は既存の事業遂行方法、あるいは既存事業そのものを根本から見直し、 企業を新たな姿にすることが強く求められます。 描くべきなのは改革の基本戦略に基づいた企業の将来の理想像であり、実施するのはそれに 向けての計画的かつ一貫した活動です。 現状の組織構造は、これまでの企業の歴史の中で自然発生的に積み上げられてきたものです。 このような組織構造はこれまでの事業を推進していくのには適していても、企業が考える 理想像を実現していくには適していないケースが多くあります。 そのため、改革を実現するためにはどのような経営機能の構成が最適かを検討する必要が あります。 経営機能とは、営業部・製造部というような部門のことではありません。 一連の企業活動を構成している、企業が保有している「事業上の機能・能力」を示し ます。 企業が顧客に価値を提供するうえで、保有すべき経営機能のつながりをまとめたものが、 一般的にバリューチェーンと呼ばれます。 3年後(あるいは5年後)を目標とした企業改革を達成するためには、経営機能それぞれの 基本方針を策定していかなければなりません。 そのうえで、改革計画を実現させるためには各機能において、どれぐらいの能力や水準を 保持する必要があるかを定量的に検討し、現状とのギャップを把握していきます。 なお、すべての機能を自社で持つ必要はありません。 業務提携やアウトソーシングなどによって外部から機能を調達することも検討して みましょう。 例えば、自社の改革の基本方針が「市場開拓」である場合、3年後にはどのような技術 (研究開発機能)に基づいて、どのような商品(商品開発)を、どれぐらいの目標売上高 と顧客数で達成するか(仕入・調達、生産、マーケティング、物流)を検討します。 その際、目標を達成するために成果主義のような新たな人事制度の導入を検討し、顧客 情報を有効活用しながら、いかに借入金を減らしながら実施していくかについても考えます。 さらに、進ちょく状況を把握するにはどのような「連絡−報告体制」で行っていくか (全体マネジメント)という点も考慮します。 改革目標を達成するために獲得していなければならない機能の水準が明確になった場合、 それが現状の経営資源、特に設備と人員で実現可能かどうかを考えます。 そして、足りない資源は何か、それはいつまでに手に入れておかなければならないかを 明確化し、その実現可能性を検討していきます。 必要な機能の水準とその実現のために不可欠な経営資源を検討していくと、現状での 組織構造では対応が難しいなどといった組織上の問題点が浮かび上がってきます。 例えば、現状では地域ごとの支社制を取っているが、今後は事業分野ごとの事業部制に する必要がありそうだとか、職務階層が多くなっているが、機動的に意思決定するため には階層を減らしてフラット(水平)なものにするべきだなど、改革の戦略に基づいた 新たな組織構造のイメージがわいてきます。 繰り返しになりますが、重要なのは、必ず達成すべき目標とそれに必要な機能を基に、 組織の在り方を考えることなのです。 □組織運営のためのルール作り 新たな組織の姿がみえてきた場合、その組織を運営するためのルールを考えなければ なりません。 具体的には、 →どの経営機能を、どのような部門に対応させるか →各部門のそれぞれの職務階層が持つべき職務上の責任をどこまでにするか などを決定していきます。 さらに、企業の改革という新しい試みを行う場合は、その進ちょく状況や発生している 問題などは部門間で共有していく必要があります。 共通認識を持つための場として、これまで以上に会議の持つ意義が重要となります。 多くの企業で、経営会議、部門長会議、各部門の会議や課単位での会議など、幾つもの 会議が開催されています。 これらの会議を有効に機能させるために、それぞれの会議の目的と頻度、決定すべき 事項などを明確にしなければなりません。 組織運営のルール作りにおいて見落としがちなのが組織風土の側面です。 職務権限や会議の在り方は経営側で検討していくことができます。 しかし、実際にこれを運営するのは従業員です。 職務上の指示命令は企業の公式のルールに基づいて経営側から発信することができますが、 実際に職務を遂行する際に従業員が従うのは、企業文化や組織風土などに集大成される 「職場なりの業務の進め方」です。 つまり、改革の方向性とこの企業風土が合致していれば問題はありませんが、そうで ない場合には、改革したはずの組織が停滞を引き起こしてしまう危険性があるのです。 このため、組織風土の改革が必要な場合は、社長自らが改革の方向性とそれによって 実現される将来像を従業員に対して発信し続けながら、一方では思い切った登用や報奨 (場合によっては降格や減俸)などにより「目に見える形」で意図的に変化を意識づけ、 組織風土の革新に取り組む必要があるでしょう。 □中小企業の最大の資産はヒトである 自社の成長と発展を実現するうえで、本当の基盤となるものは何なのでしょうか? 自社が保有する工場や土地建物のような有形資産でしょうか。 それとも自社が築き上げてきたブランドや特許、ノウハウに代表されるような無形資産 でしょうか。 確かにこれらの資産はそれぞれ重要です。 しかし、これらを地道に着々と築き上げてきた主体が何であるかを考えると、中小企業 にとって最も重要な経営資源はヒト(従業員)であることが分かります。 従来のような大企業を頂点としたピラミッド型の下請構造が崩壊し、中小企業といえども それぞれの独自性を発揮しなければ生き残れない時代において、企業はヒトという経営 資源が産み出す価値に改めて注目する必要があります。 □改革に適した人事制度 それでは中小企業で人材を改革しようとする場合には、どのような注意点が必要になる のでしょうか。 日本の企業に広く採用されている人事評価制度は「職能資格制度」といわれるものです。 これは、従業員が保有していると思われる職務遂行能力(つまり、特定のレベルの仕事を 遂行可能な職務能力)を「職能要件表」と呼ばれる、多数の従業員に適用できるような 客観的かつ抽象的な基準としてまとめ、これに基づく評価で人事面での処遇を決定して いくというものです。 この職能資格制度で評価の対象となる能力は「〜することができる(はずである)」 という「保有能力」です。 例えば、○○大学を卒業しているのだから、1年目でこれぐらいの仕事はできるだろう、 あるいは当社で10年以上の経験があるのだから課長の仕事ができるだろうというような 会社側の期待と、実際に業務遂行した成果との差を評価しているのです。 長期的に人材を育成していく場合にはこのような制度でよいかもしれません。 しかし、このような保有能力への期待は必ずしも業績向上には直接結びつきません。 その理由は、 成果は保有能力ではなく、あくまでも行動の発揮 保有能力がいかに高くとも、行動がともなわなければ成果には至らない。 保有能力が少々低くとも、行動が最適であれば一定の成果は達成される。 自社の業績向上に直結するのは仕事の成果です。 よくいわれる「目標管理制度型人事」とはこの点に焦点を当て、個々の従業員が計画した 目標に対してどの程度の成果を実現したかに基づいて評価するものです。 ただし、あまりに成果のみを追求した場合、次のような弊害も発生しています。 1.自社が今求めている人材(=すぐ業績を上げる人材)ばかりに目がいき、「将来 業績を上げてくれる人材の育成」という中長期的な競争力強化の方向で考える ことができなくなってしまいがちである。 2.個々の従業員が計画する目標が会社全体の戦略とは整合性が取れていない。 あるいは、容易に達成できる低い目標を意図的に設定する従業員が増加し、結果と して個人の目標は達成されても企業としての目標が達成されないケー スが頻発 する。 3.結果のみを求めるあまり、従業員が個人主義になってしまい、職場でのチーム プレーや情報の共有、部下あるいは後輩の指導など個人の成果に反映しない業務が おろそかになってしまう。 目標管理制度あるいは成果主義そのものは、企業の業績向上を追求するという観点では 正しい考え方といえるでしょう。 しかし一方で、前述したような弊害が発生するのは、最終的な成果のみを追い求めるあまり、 途中のプロセス(つまりどのように仕事を行ったか)が軽視されてしまうのです。 この業績向上という短期的な目標と、企業体質の強化あるいは人材の強化という中長期的な 目標の橋渡しを人事制度面で行うのが「コンピテンシー」という評価軸です。 コンピテンシーとは、高い業績を上げる人材に特有の行動特性を指します。 成果とは能力を「発揮」し「行動」することで生まれてきます。 つまり、「〜している」「〜する」という行動、つまりコンピテンシーを評価の対象に 加えることによって、結果として成果のみならず、そこに到達するまでのプロセスも評価 することが可能となります。 これにより、成果主義が陥りがちな結果至上主義からの脱却を図ると同時に、高業績者 が業績を上げるときに取っている行動をモデルとすることで、効果的な人材育成を行う ことが可能となります。 □コンピテンシーを取り入れた人事制度の構築 コンピテンシーは目標管理制度と車の両輪の関係にあります。 目標管理制度は企業の事業戦略に基づく業績目標を、各部門・各社員に十分理解させた うえで、個々の従業員から自身の目標を提示させ、その成果との対比によって評価していく 制度です。 この制度は、業績への責任を個々の従業員に持たせるという点で、まさに革新を目指す 企業に適しているといえます。 しかし、対象となる評価指標が業績という最終的な成果であるため、途中の業務プロセス が軽視されてしまいます。 また、新たな事業への取り組みなど、業績成果がすぐには現れてこない場合には モチベーションの低下を引き起こしかねません。 この問題点をコンピテンシーという業務遂行の際の行動を評価対象とすることで補完して いくことが大切です。 目標管理制度に関しては、企業がその経営ビジョンや事業戦略から今年度目標とする 業績を各部門並びに各担当者に分配することで業績目標として設定できます。 一方のコンピテンシーモデルでは目指すべき高業績者という人材像の明確化と、育成・評価 の対象とする行動=コンピテンシー自体をまず規定する必要があります。 では、コンピテンシーはどのように設定していけばよいのでしょうか。 設定方法は2種類あります。 ◎観察・分析型(厳密型) 社内で高業績を上げている従業員への面接、行動観察などを通じて、できる限り 広く詳細に情報収集して行動特性(=コンピテンシー)を抽出していく方法です。 この場合、成果に直結している行動特性が確実に抽出されるというメリットと なります。 一方、「今、業績を上げている従業員」が必ずしも「将来必要とする従業員」とは 限らない点や、面接や分析に費用と労力がかかる点、そもそもモデルとなる高業績者 がいなければ規定できない点などがデメリットとなります。 ◎経営主導型(簡易型) 経営ビジョン並びに革新戦略から「自社が今後必要とする人材像」を各職種・各部門 ・各階層ごとに明確にしていきます。 そして、そのような人材が使命を果たすときに取るべき行動を想定し、それを コンピテンシーとして従業員の行動評価基準にします。 この方法を採用する場合のメリットは、 ・企業の将来進むべき方向性に適した行動基準が設定可能となるという点 ・高業績者の行動観察や分析が不要であるため、比較的低コストで設定可能な 点などとなります。 一方、規定したコンピテンシーが実際の成果に直結するか否かは運営して みなければ検証できないというデメリットも存在します。 中小企業の場合、「そもそも高業績者が社内に存在しない」という問題が あるかもしれません。 そのため、中小企業が導入しやすいのは「経営主導型」といえるでしょう。 以下では、「経営主導型」の導入手順を簡潔にまとめて紹介します。 □「経営主導型」の導入手順 1.経営ビジョンに基づく各職種・職能ごとの役割モデルを明確にする 企業改革を進めるために従業員(ヒト)を改革したいと考える場合、最初に取り組む べきことは、自社がどのような方向に進もうとしているのかを「経営ビジョン」として 明確に従業員に示すことです。 そして、その経営ビジョンを実現するために、各職種・職能で求められる役割は何で あるのかを、経営陣は従業員に具体的に示さなければなりません。 2.各役割モデルに求められる具体的な行動を示す 次に、各役割に求められる具体的な行動基準を示す必要があります。 ヒトを改革するとは、短期間で従業員の業務遂行能力を計画的に向上させることです。 そのためには、どのような業務をいつまでに、具体的にどう変えるのかを示す必要が あります。 これを怠れば、従業員にとって自分は何をどう改革すればよいのか分からなくなって しまいます。 ヒトの改革とは必ず企業の改革と連動して実施されるものであり、社長は企業改革を 実現するために必要な業務と行動とは何かということを、従業員に対して具体的に示す 必要があります。 3.評価項目と評価結果は公正かつオープンに行う ヒトの改革とは従業員の行動、あるいはその行動に到った考え方そのものを変えていく ことです。 そのためには、それぞれの従業員が自身の役割に応じた行動(会社から求められて いる役割)をどのように考え、どのように実行しているかということを公正に評価 しなければなりません。 また、どのような行動を、どのように評価するかを従業員に公表し、実際の評価結果 をフィードバックする必要があります。 このような業務遂行のプロセスに関する評価を公正かつオープンに行うことは、 「命令されて業務を行う」状態から「自分で考えて業務を行う」状態に従業員を成長 させ、自律的な人材への改革を促進するという効果があります。 4.キャリア・パスではなくスペシャリティー・パス 中小企業において従業員の長期の育成を考える際には、大企業のようなキャリア・パス (どのようなキャリアを積んで出世していくか)の考え方ではうまくいきません。 むしろ、どのような専門性をどのような順序で習得していきたいか、職場において どのような将来像を描こうとしているのかを、従業員に自ら考えさせ、表明させる べきといえます。 そしてその実行を会社が制度としてサポートしていくことが、優秀でロイヤルティー を持った人材を確保・育成していく早道です。 自社の改革においては、従来の仕事の進め方などを根本から見直すことが必要なことも あります。 従業員にとっては、できればやりたくないというのが本音でしょう。 粘り強く経営陣側から改革の必要性をあらゆる機会を見つけて説明し続けることで、 従業員は初めて理解し、動き、変わっていきます。 一度や二度の説明や命令では改革に向けての活動は生まれないのです。 メルマガ登録(無料)はこちら お問合せ・ご質問はこちら |
職場の環境整備 |
■経営理念、ビジョン、戦略を明確にする 自社にふさわしい組織文化を構築するためには、まずは文化の根源ともいえる「経営理念」や 「ビジョン」について、社員にはっきりと示すことが必要です。 経営理念とは「自分たちはこうありたい」という会社の存在意義を示したものであり、 ビジョンとは「このような姿になりたい」という将来像を描いたものです。 たとえば、「自社商品でお客さまの心を豊かにする」というのが経営理念であり、その理念を 貫くことで「5年後には地域一番企業になる」というのがビジョンということになります。 まずは社長自身が経営理念やビジョンを明確にすることが必要です。 □どんな企業にも2種類の職場が存在する (1)部下たちが自発的に動いてくれて、高い業績を残せる職場 (2)部下たちと意思の疎通ができず、思うように機能しない職場 あなたは、もちろん前者を望んでいるはずです。でも、なかなかうまくいかず苦しんで もっとチーム一丸となって仕事に取り組めて、業績を伸ばしていくことができたら じつは、そのような「職場づくり」は、決して難しいことではありません。 それは、部下たちの「やる気」だけに頼ろうとしていたからです。 「もっと頑張ってくれよ」などと言っていたからです。 発破をかけるだけで部下を動かすのは無理です。 報酬が必要です。 ここで言う報酬とは、金銭のことではありません。 あなたが部下たちに用意すべきは「非金銭的報酬」です。 「非金銭的報酬」とは、たとえば達成感や自己肯定感、成長できている実感、あるいは 総合的な報酬(トータル・リワード/Total Reward)とは、金銭的報酬(お金)と非金銭的 あなたが部下の査定をよく書いたところで、それが部下の昇給につながるとは限りません。 あなたが部下に報いることができるのは、もっと総合的なことです。 したいと思っています。 あなたは、それを実現してあげることができ、その結果、部下たちは、想像を超えた 非金銭的報酬ならば、すべての人たちに公平に報いることができます。 課長たちは、マネージャーであると同時に、プレイヤーとしての働きも求められています。 いわゆるプレイングマネージャーでいなければならないのです。 彼らは、プレイヤーでいることには慣れています。 もともとプレイヤーとして有能だったからこそ、課長という立場になれたのですから。 としての働きもせざるを得ない」ということなのです。 なぜ、優秀な課長たちでもマネジメントが難しいのでしょうか? それは、いまの若者たちを育てる方法など、誰も教えてはくれないからです。 あった時代に上司から受けたやり方(接し方)はまったく通用しません。 伝えたはずのことが伝わっていないなどということはしょっちゆうで、ちょっと注意した 隠せずにいます。 仕事の教え方だけではなく、コミュニケーションの方法も、「どうすればよいか、さっぱり やらねばならない。 だから、苦しいのです。 では、どうすればよいのでしょうか? それは間違いのない事実です。 価値観の隔たったあなたと部下たちの、たった1つの、しかし、非常に重要な共通点。 あなたは、金銭のみが目的で働いていますか? そんなことはないはずです。 構築したいと考えるのも、金銭とは関係のないところに大きな価値を見出しているから それは部下も同じです。 部下は、あなたが与えてくれる非金銭的報酬を待っています。 「理想の職場」をつくろうなどと思う必要はありません。 「当り前の職場」で十分なのです。 当り前の職場とはどういうものかといえば、ズバリ、業績を伸ばすことを目指す職場です。 あなたは、「自分のチームの業績を伸ばすにはどうしたらよいのだろう」と考えれば 部下1人ひとりが、その人なりによい成績を収めてくれることが必須です。 部下1人ひとりに、自発的に動いてもらうために、上司はなにをしなければならない 「自発的に動け」と言うだけなら誰でもできます。 あなたがすべきは、「部下が自発的に動けるような職場(仕組み)」をつくることです。 部下の自発性を引き出す仕組みさえつくれば、部下は勝手に育っていくものなのです。 いい職場になって最も得をするのは、部下ではなく、その職場をまかされているあなた 自身なのです。 トータル・リワードこそがあなたと部下の絆を強くし、部下が自発的に動く職場をつくる いまの日本企業に必要なのは、「部下たちが自発的に動けて、頑張りが報われる職場づくり」 あなたは、具体的に何をすればよいのでしょうか? 「自発的行動」とは、部下が自分勝手に動くことではありません。 あなたは部下に、成果につながる行動を率先してとってほしいと願っているはずです。 ことが大事になってきます。 ここで忘れないでほしいのが、部下もチームに貢献できる行動を取りたいと望んでいる ただ、それがどういうものかよくわからないのです。 逆に、なんの基準もなく「とにかく頑張れ」などと言われることは、部下にとってまったく 行動科学マネジメントでは、一連の仕事を徹底的に行動分解し、誰でも同じように動ける このとき、とくに、成果につながりやすい重要な行動を「ピンポイント行動」として 同時に、それを繰り返して定着化できるようにしなければなりません。 いま、ビジネスの現場で最もよく聞かれるのが、「最初は頑張ってやったけど、それが定着 ないか」などと考えないでください。 部下がいい行動を定着化できないのは、その人の意志の問題ではなく、人間ならではの 「A」=Antecedent(先行条件) 「B」=Behavior(行動) 「C」=Consequence(結果) それが先行条件です。 たとえば、「お菓子をすすめられた」という先行条件があって「お菓子を食べる」という 大きいのです。 「すすめられたお菓子がとてもおいしかった」のであれば「もう1つ食べる」という 得られたからこそかけ続けているわけです。 人は先行条件によっても行動しますが、その行動を何度も繰り返すには結果の力こそが 必要があります。 こうした職場づくりを積極的に行って、部下の頑張りに報いていきましょう。 部下が自発的に動く職場をつくるには、非金銭的報酬を積極的に提供して、部下の頑張りに 頑張りに報いる際の基準は「チームの業績につながるいい行動」によって決めていきます。 A(Acknowledgement)=承認「部下に接するときの態度」 B(Balance)=均衡「ワーク・ライフ・バランスへの対応」 C(Culture)=文化「連帯感を強める仕組み」 D(Development)=成長「成長欲求に応える工夫」 E(Environment)=環境「居心地のいい職場づくり」 F(Frame)=骨組み「仕事の正しい教え方」 ということがおわかりいただけると思います。 地位も性別も年齢も関係なく、どのような働き方をしている部下にとっても、これらの 自らが見本になる行動を見せ、相手が理解できる言葉で明確な指示を出し、正しい行動が 人はみな、誰かの役に立ちたい生き物であり、周囲から感謝されてうれしく思わない あなたが部下を褒める目的は、お世辞を言って喜ばせる、こびることではありません。 つまり、繰り返してほしい行動を褒めるべきであり、極論すれば、人間性など横に置いて 普段から部下を観察し、褒められるところを探しましょう。 ・資料を届けてくれたら「ありがとう、助かるよ」。 ・書類の提出期限を守ったら「偉いじやないか、これからも頼むよ」。 ・顧客訪問件数が増えたら「頑張っているね、その調子だよ」。 ・元気にあいさつしてきたら「いっも気持ちがいいね」。 行動科学マネジメントには、「60秒ルール」というものがあります。 部下がいい行動をとったら、60秒以内に褒めるようにすると効果が高いというものです。 「ポジティブ」、「すぐ」、「確か」が重要です。 悪い行動をとった「人」を叱るのではなく、悪い行動そのものを叱るのです。 取引先との打ち合わせに遅れた部下に、「おまえはだらしがない」とか「何を考えて 部下はそれを人格否定と感じるだけです。 「準備は出かける直前ではなく、前日に終えておくようにして」 など、同じ失敗を繰り返さないために、どのように行動を変えていけばよいのかを示して 悪い結果が出たのなら、その原因となった行動が繰り返されているはずです。 その原因行動について、一緒に考え、指摘しましょう。 また、叱るときはあなたの感情が落ち着いてからにしましょう。 怒りなどのマイナス感情は、30秒やり過ごせば収まっていくことがわかっています。 あなたは、部下たちがどんな理由でいまの職場を選んでいるか知っています か? 非金銭的報酬で部下に報いようとするなら、部下1人ひとりの動機づけ条件 「なぜ、その人はその行動(仕事など)をするのか」に無関心ではいられません。 でも、子どもとの時間を最優先にしたい部下にとっては、定時で帰れるようにしてあげた ほうが喜ばれます。 「なんで?」と思う必要はありません。 上司であるあなたにとって大事なのは、1人ひとりがその人なりにいい行動をとって くれて、チームの業績がアップしていくことです。 条件が満たされていることです。 自分と価値観が違う部下に対する先入観は捨て、その人の価値観に合った非金銭的報酬を 与えていきましょう。 にまでどかどか入り込むことではありません。 「困ったことがあったら、いつでも話してくれよ」 あなたの対話のドアはいつでも開いているのだということを伝えたら、それで十分なのです。 課長に求められている能力とは、優秀なプレイングマネージャーであることです。 しかし、本来プレイヤーとマネージャーはまったく別の仕事。 それを両立するためには、大きな矛盾も抱え込むことになります。 しかも、市場の変化が激しい時代にそれをやり遂げなくてはならないのです。 そもそも、プレイングマネージャーという立場自体、部下たちから憧れられる存在に しかし、そんな大変な状況を理解したうえで、私はあなたにそれを成し遂げてほしいと これまで、あなたは1人のプレイヤーとして成績を残せば評価されました。 評価されてきたからこそ課長になりました。 しかし、課長になったらマネジメントができなければ生き残れません。 それが課長の使命だからです。 どこへいっても通用します。 そういう課長に、部下は心底憧れるのではないでしょうか。 どうか気負わずに、今日からいい職場づくりに取り組んでください。 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |
組織活性化のポイント |
■組織風土から組織文化へ 1.組織風土は変えられる 組織風土とは、「組織がもつ共通の価値観」と定義することができます。 社員は規則に明記されていなくても、無意識にその価値観に従って考え行動します。 たとえば、「残業する人は偉い」という価値観が定着している会社では、社員は仕事が終わっても しかし、この会社の社長が長時間残業を問題視して、定時帰宅の大号令を発した場合、 それが繰り返されるうちに定時帰宅が当たり前となり、これまでとは逆に「残業する人は このように組織風土とはそれぞれの職場の従来の「常識」や「雰囲気」を基に形成される 社長が「常識」や「雰囲気」を意図的に変えることによって、組織風土も変えることができる 組織風土とともに、よく取り上げられるのが「組織文化」というキーワードです。 通常、この2つの言葉はあまり区別されることなく使用されていますが、本質的な意味は この違いを理解することが重要です。 簡単にいえば、組織風土とは、何もしない状態で勝手にできあがるものであり、組織文化とは、 英語で表記すれば風土(climate)には「天候」という受動的な意味しかありませんが、 特別なことを何もせずに最適な風土が定着すれば一番よいのですが、実際にはそれは 活力ある組織づくりのためには、成り行きまかせの「風土」に頼るのではなく、自らの意志によって 前述の社長は定時帰宅の大号令を発することによって、「残業する人は偉い」という組織風土 ◎組織風土から組織文化へ 自社の組織風土について考えてみると、そこには社長自身の価値観が色濃く反映されて 会社にとって社長は絶対的な存在であり、多かれ少なかれ社員たちは「社長の顔色」を 社長の日々の言動とまったく懸け離れた組織風土が醸成されることはまずありません。 現在の組織風土は社長の写し鏡であり、もし組織風土に問題があると感じたのであれば、 創業期にはプラスに作用した組織風土が会社の成長や時代の変化によって、今はマイナス面を そして、自らの意志で新たな組織文化をつくっていくためには、相応の決意とパワーが必要で 組織文化はさまざまな視点から考えていかなければなりません。 その時々の会社の状況や社長の考え方によって、重視すべきポイントは異なりますが、 上記についてはそれぞれのバランス・優先順位についても考慮する必要があります。 たとえば、会社への忠誠心がゆがんだ形で突出すれば、違法行為を「指摘できない」、 このような経緯でいわゆる「不祥事」を起こしている会社も少なくありません。 好ましい組織文化は一朝一夕に実現するものではありません。 また、組織文化は直接的にはコントロール不可能であり、次のような取り組みを通じて、 次項以降では、 ・会社の基本的な考え方である「経営理念」、「ピジョン」、「戦略」を明確にし、共感させる ・会社全体のフレームである組織体制を見直す ・人材の育成・活用・評価のルールである人事制度を改革する の3つの基本的な取り組みについて説明します。 1.経営理念、ビジョン、戦略を明確にする 自社にふさわしい組織文化を構築するためには、まずは文化の根源ともいえる「経営理念」や 経営理念とは「自分たちはこうありたい」という会社の存在意義を示したものであり、 たとえば、「自社商品でお客さまの心を豊かにする」というのが経営理念であり、その理念を まずは社長自身が経営理念やビジョンを明確にすることが必要です。 また、ビジョン実現のためには「戦略」が必要です。戦略とはビジョン実現のために、自分たちが 5年後には地域一番企業になる」というビジョンがあったとしても、そのためのシナリオが 従来と同じ方法で日々の業務をコツコツと積み重ねていくだけではビジョンは実現しません。 社長は自社の強みや弱み、市場動向、社会動向、競合動向などを総合的に分析し、ときには これらの基本的な考え方については、全社員にとっていつでも「見える」ことだけではなく、 基本的な考え方が組織文化として定着していない会社では、「理解できる」の段階で止まっている この段階では、社員は「情報」としては基本的な考え方を理解していますが、それらはあくまで ◎経営理念、ビジョン、戦略、組織文化 (1)会社の目標と社員の目標を一致させる 社員から共感を得るためには、経営理念、ビジョン、戦略に従って行動することで、 社員は「自分の能力を高めたい」、「給料を上げたい」、「より重要な仕事を任されたい」、 そして、これらの要望は会社が成長することで十分に実現可能であることを伝えます。 つまり会社と社員の目標は一致しており、その実現に向けてともに努力することの大切さを そのためには社員自身に自らの仕事や人生について深く考えさせることも必要です。 「こうなったらいいな」という漠然としたものではなく、5年後、10年後の自分の目標を そして、その目標を会社成長のプロセスのなかでどのように実現していくかについて、 好ましい組織文化にふさわしい行動を、社長や幹部陣自らが積極的に体現することも たとえば、「自由闊達」、「変革」、「チャレンジ精神」といった組織文化を標榜していても、 むしろ「この会社は有言不実行である」との印象を与え、社員の活力はますます削がれて 自社の組織文化にもっとも大きな影響を与えるのは、ほかならぬトップ陣であることを 1.目標を実現するための組織体制 そもそもなぜ会社に組織が必要かを改めて考えてみると、各自がバラバラで働くよりも 組織編成はそれ自体が目的ではなく、会社の目標を達成するための「手段」に過ぎません。 そうであればその目標にもっとも到達しやすい組織編成を行うことが当然の選択となります。 そして会社の目標は変化していくので、それに合わせて組織体制も最適化していく必要が たとえば、自社が本格的に新規事業を模索している場合には、新規事業の開発部門、実行部門 逆に撤退を予定している事業があれば、当該部門は縮小・廃止していかなければなりません。 また、現業部門だけではなく、経理・人事といった間接部門のあり方にも配慮する必要が 自社の現状や将来を見据えて、目標実現のための最適な組織体制を構築することが大切です。 会社にはその成熟度合いに応じたふさわしい組織体制があります。 たとえば、創業間もない頃に必要な組織体制と、十分に成熟した後に必要な組織体制は これを4つの段階に分けて考えると次のようになります。 創業社長が立ち上げたばかりの段階であり、会社のすべてについて社長がコントロール ここで必要なのは社長の意思決定がダイレクトに伝わるシンプルな組織体制です。 また、次の段階を見据えて、信頼できるマネージャー育成にも着手しなければなりません。 会社組織が機能し始める段階です。 社長が直接関与する範囲は重要業務に限定され、日常業務は部門長を通じて遂行 この段階では社長の方針が組織全体に行き渡る仕組みづくり、責任と権限の委譲を 会社組織が本格的に機能している段階です。 組織は機能ごとに細分化され、階層も増えていきます。 この段階ではできるだけ合理的に組織設計を行うこと、組織間のコミュニケーションを 組織体制やルールをマイナーチェンジすることで、より洗練した組織運営をめざす この段階では組織は一応の完成形となる半面、組織の枠組みやルールに縛られるあまり、 場合によっては組織を大規模に再構築する必要もあります。 たとえば、自社がようやく組織運営を始めた(2)共同化段階にあるにもかかわらず、 自社の成熟度合いに応じた適切な組織体制を検討することが大切です。 1.人事制度の目的 人事制度の目的は、会社が社員に対して、「どのような人材を求めているのか」、どのように 当然ながら人事制度のあり方は組織文化に大きな影響を与えます。 合理性や公平性を欠いた人事制度のままでは、好ましい組織文化は定着しません。 また、人事制度を改革することは、社員に対して、会社が本気で変わろうとしていることを さらに人事制度改革を進めるプロセスのなかでは、多くの場合、社長自身がまだ気づいて 問題点に真撃に向き合うことで、めざすべき組織文化や問題解決に必要な施策もみえて 人事制度改革では「目的の明確化」、「わかりやすさ」、「公平・公平さ」、「社員の納得」 これらを実現するためには次のような手順が必要となります。 ……経営理念・ビジョン・戦略を基に、自社に必要な人材像や人事制度の基 ……アンケートや面談などによって、社員のモチベーションや能力、現状の人 ……上記1)、2)を比較し、現状とあるべき姿のギャップ、ギャップ解消のため ……課題解決策を盛り込んだ新人事制度の概要を設計する。 ……新人事制度を社員に説明し、合意を形成する。必要に応じて修正を加える。 ……人事評価制度(能力評価、業績評価、態度評価)、賃金制度、昇進昇格 わかりやすく、制度ごとの整合性が取れていることが大切。 ……実際に制度を導入し、社員のモチベーション向上、人材育成のスピード 必要に応じて制度を修正する。
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組織体制とビジョンの見直し |
■組織体制 経営環境の変化などにより、経営戦略を見直したり、新たなマネジメント手法を導入 するなど自社の改革に取り組む会社が増加しています。 しかし、このような取り組みが期待通りの成果を生み出さなかったり、「気が付いた ときには取り組み前の企業の元の姿に逆戻りしていた」といった企業の改革に失敗する ケースも少なくないようです。 改革が失敗する原因はさまざまですが、新たな取り組みがもたらすであろう「成果」 ばかりに目が奪われて、組織内の人々を変革するという視点が欠けていることも主要な 要因の一つになっています。 企業を動かしている内部の人々が、これらの新たな取り組みを受け入れ、真剣に取 り組まなければ、いくら素晴らしい戦略・ビジョンを立案したり、新たなマネジメント 手法を導入しても十分な成果は期待できません。 ここに組織を変革することの重要性があります。 □戦略リーダーに求められる組織体制の見直し どのような戦略を立てるかによって、その運営機能としての組織は変化する。 とはいえ、戦略以前に、企業の最大の経営資源である“ヒト”の適正配置がうまく 次代の経営幹部となる戦略リーダーは、組織体制の見直しや新たな組織づくりの 次に3つのポイントを示す。 1.意思決定構造を見直す 例えば、収益性を改善する目的で、今まで訪問していた顧客の絞り込みを行 基本的には、自社に付加価値をもたらす取引先や顧客に割く時間を増や もちろん、いきなり訪問中止・取引停止はできないため、徐々に減らすことに またターゲット顧客が変わるため、「提供商品・サービス」の重点も変わる。 「何でも売る、どこにでも提供する」のではなく、自社のお勧め商品や提案商 ることになるのです。 当然ながら、こうした「見極め」は現場それぞれの意思決定に任せるわけに 戦略リーダーが自らの判断基準でジャッジし、現場の行動レベルに落とし 限や到達目標の数値を示す。 その上で、部署長が部署の数値目標や達成基準を実現するために必要な 承認されれば、その取り組みに関する実行責任と人員を使って実現するた るようにし、部門長から部署長に直接指示を出す形から、会議による意思決 また、稟議書などのツールにより、生産性の高い意思決定へとステップアッ まず、社内で公開されている数値について、どの階層にどこまでの数値を 数値を開示することで、責任感を持たせることが狙いである。 また、「誰に」「何を」「どのように」「いくらまで」の判断を任せるか。 権限」「決定する権限」「報告を受ける権限」などがある。 いきなり何でもかんでも決裁させようとすると、必ず無理が生じる。 物理的に判断が遅れたり、判断がブレたりすることもある。 したがって、権限の範囲を決める必要がある。 こと。 組織の進化は、分権化と切り離すことはできません。 中小・零細企業の場合、トップが集中して権限を持つことでスピーディーな判 そこで、次のような権限委譲の仕組みを整える。 ②判断に必要な事実を意思決定者に集約する報告制度の整備 ③決裁事項を判断するための仕組み(検討会議の発足や決裁書、 ④決定事項を現場に伝えるコミュニケーションツールの整備を図り、 ださい。 例えば、業績をコントロールするための管理会計に基づいた予算制度や原 れば、基準づくりが必要。 営業部門で接待交際費の年間予算を立てれば、その予算内に収まっている 収まっていなければ、原因を把握して妥当性を確認します。 付ける。 このように正常以外は“異常”とし、その異常の程度と原因をつかめるように また、生み出した利益を配分するための人事処遇制度。 し、2年ごとに検証を行う。 内容は、「月収」と「賞与を含めた年収」について、業界平均の賃金相場と 年代別や勤続年数別にみることによって、自社の現状を把握できる。 評価制度については、昨今は全社方針を受けた部門・部署方針の実行度 図りつつ、定着させることが必要になる。 「仕組み3割、運用7割」と心得ることです。 最後に教育制度。 要件と、現状とのギャップを把握し、計画的な人材育成を図る。 会社の戦略に関わる人材の育成については、通常の教育予算と別に、「戦 だからこそ早く取り組む必要があるのです。 商品開発だけでなく、人材開発についても、戦略リーダーが旗振り役となっ ビジョンづくりは本来、企業トップが行うべき経営マターの一つだが、経営幹部候 それでは、戦略リーダーがビジョンづくりに取り組むメリットは何んでしょうか? 大別して5つのノウハウが習得できること。 そのノウハウのポイントについて紹介したい。 1.時流・ニーズ変化を読む力が身に付く これは昨今、よく話題に上るテーマで、中でも次の5点について「読む」ことが ②少子高齢化に伴う人手不足が経営に与えるインパクト予想 ③これから伸びる業態、衰退する業態の把握 ④既存およびターゲット顧客におけるニーズの変化予測 ⑤他業界・他業態からの越境ライバルを含めた競合先動向の分析 現実に対し、いかに立ち向かうかを経営者目線で検討します。 この経験を通じて、将来の時流を読む力・ニーズ変化を読む力を養うことが (1)事業ポジショニング分析 まず現状のポジショニングを認識。 ポジショニングの現状が分かれば、現状の経営資源の配分実態を確認 これは今後の事業展開次第で、経営資源の配分の仕方も異なってくるか まず、ヒト・モノ・カネ・情報のうち、何がどこまで行きわたっているのか。 その際の異常事項は何か。 責任が発生しているのに、現状の数字情報を知らされず、抽象的な取り 事業ポジションの現状から、これから3年、5年、10年後に向かって事業 その戦略の方向性をさまざまな案を通じて検討し、最終的にはいくつかの 既存事業であれば、どの事業をどのポジションに持っていくか。 その際は、売上規模や収益性をどの程度みるかなどを予測し、意志を この時に新規事業を考えるなら、既存事業との相乗効果はどうか、戦略 この「競争優位戦略」を組み立てる力を身に付けることができます。 何をもって成長するのか、自社の強みや持ち味の中で何に磨きをかけるの 「今、何が大事か」の価値判断を、「戦略リーダー会議」などを通じたディス 取り組むターゲット顧客や取扱商品・サービスの重点が変われば、配分する 役割分担が変わり、組織として変更点が出てくることは当然だ。 もちろん、現有人材に不足があれば調達しなければならない。 ただし戦略リーダーに期待されるのは、場当たり的な採用や人事異動の発 例えば、同じ部署内だけでなく、他部署も経験することを通じて、将来の部門 組織として環境対応できる人材育成を戦略的に進め、「役員は複数部門を ポイントは固定費を賄う限界利益を生み出す事業は何か、どうするかの収益 次に、中期経営計画策定時における生産性基準としての必須項目である、 企業トップのヒトに対する考え方を“労働分配率”という数字で表した基準と 最終的には将来に向けた投資判断についても、これまでの習慣を見える形 この経験を通じて数字の分かる経営幹部を目指す、戦略リーダーとして財務 自社の未来を支える戦略リーダーへの期待は大きい。 「自社の職場を将来こうしたい!」と、自分の言葉で、目指す理想を語れる戦 |
組織が抱える問題 |
■組織が抱える問題 会社の中には、部・課・チームなどさまざまな組織がありますが、会社経営において 社長は、組織を企業の単位で俯瞰(ふかん)することが主な役割です。 社長の中には、組織の構成や規模にかかわらず、組織というものについてさまざまな また、組織が内包する問題を解決するためにさまざまな具体的施策を講じている しかし、その一方で、組織上の問題というと、「従業員のモチベーションの問題」あ もちろん、こうした要素も組織上の問題に関連する重要な要因ですが、より効果 そこで、以下では、組織上の問題を検討する上で参考となる経営組織論の視点 1.集団における意思決定の落とし穴 経営の最終的な意思決定は経営者(および経営層)によってなされるものです 各部門の長が出席する会議、部や課で行われる販売会議や営業会議、チー 一見、組織という一定の集団での意思決定は、意見交換を通じて個人で行う しかし、実のところ組織という集団における意思決定で、常に正しい判断や質 組織内で行われる集団での意思決定においては、個人であればおそらく行わ 経営者が組織についての問題を考えその対策を検討する際は、組織に内在 以下では、組織が起こす誤った意思決定の構造的要因とそれに対する考え方 個人の場合における意思決定と組織における意思決定が大きく異なる要因の 集団圧力とは、「意見を統一しなければならない」という圧力のことです。 例えば、正しい選択肢Aと、誤っている選択肢Bがある場合、個人が意思決定 この集団圧力が組織内にみられる場合、たとえ正しい意見であったとしても もう一つ、集団での意思決定において注意しなければならない要因として、集 集団思考とは、集団での意思決定を行う場合、集団としての合意を優先する 集団思考が発生する要因はさまざまですが、意思決定を行う集団の結びつき こうした集団内では、意見の多様性が失われてしまうとともに、絶対的なリー その上、情報の収集ができない(行わない)ために、意見の妥当性を慎重に検 これが結果として不適切な意思決定を生んでしまうのです。 こうした集団の持つ特性から生じる誤った意思決定の問題を克服するための ・誰かが集団とは異なる意見を述べる ・意思決定の場に参加する出席者を変化させる などの対策が挙げられます。 以下でこの2つのポイントについて簡単に紹介します。 (1)誰かが集団とは異なる意見を述べる 集団圧力の発生は心理的観点からみると、「ほかの出席者と違う意見を述 この集団圧力を緩和するには、集団とは異なる意見を述べることのできる 集団と異なる意見を述べる出者が集団内にいれば、ほかの出席者も「自分 実際、集団圧力についての実験では、ほかの人全員が誤った答えを選択 従って、現在の自社の組織において集団圧力の兆候がみられる場合は、 ・会議の議題に関して反対意見を持つ人を出席させる ・議題について反対意見(問題点)を述べる人を作為的に作る などして、経営者自身が集団の特性を意識した上で集団とは異なる意見が いつも同じ集団で意思決定を行っていると、集団の凝集性が高まり、集団 組織における集団思考を回避するためには、意思決定を行う集団を変える しかし、集団の全員を毎回変えることはできません。 そこで社長の目からみて、意思決定やアイデアが硬直化しているなど集団 ・経験にとらわれず若手社員なども出席させる ・他部署の者も出席させるなど、部署横断的組織とする といったように、経営者が集団のメンバーにアクセントをつけることで、意思 ここまで、組織が起こす誤った意思決定の構造的要因についてみてきました。 ここで、近年頻発する不祥事について「組織と人(従業員)」という観点から少し 不祥事を起こした企業の中には、強力なリーダーシップを発揮しながら企業の 報道などをみると、こうした企業の多くはオーナー経営者の発言力が強く、従 人は組織に対して不満や問題を感じたときにはさまざまな行動をとりますが、 ・「その組織を変えよう」として意見を述べるなど、何らかの行動を起こす ・その組織を変えることをあきらめて、やめてしまう という二つの行動に大きく分類することができます。 それぞれの行動は、一般的に前者は「発言」、後者は「退出」と呼ばれます。 当然、このほかにも「何もしない」、すなわち発言も退出もしないという選択肢も 退出せずに発言をするか否かということは、その組織に対する忠誠心・愛着度 しかし、発言しやすい環境づくりという視点からみた場合「発言したところで何 また、仮に発言した意見が組織活動に反映されなくとも、少なくとも、その意見 日ごろから経営者が従業員の声を拾い上げる工夫をしていれば、昨今の不祥 1.多様化する従業員 「以前はそのようなことはなかったのに、最近は『以前と同様の方法では、業 こうした背景には、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規社員の増加、あ こうした従業員の多様化に対応しながら、組織運営をスムーズに行っていくた ここでは「組織のライフサイクル」という考え方を基に、多様化する従業員に対 組織に対するひとつの見方として、組織には人と同様に「誕生・成長・衰退」と ライフサイクルの段階区分はさまざまですが、以下では「1.起業段階→2.共同 なお、各段階ごとに、戦略・マネジメントスタイル・リーダーシップのあり方など、 (1)起業段階(導入期) 組織が誕生したばかりであり、規模が小さいことから、組織の柔軟性は高 また、創業時の理念や夢(あるいはそれを形にした企業理念など)に対す 組織の規模が大きくなってくるため、次第に社長の個人的な資質や魅力 また、人材も多様化してくるため、創業時の理念や夢を自然と共有するこ そのため、経営者に求められる能力としては、組織を運営していく上で不 さらに組織規模が拡大していくとともに組織内での活動が幅広くなり、社 そのため、組織内において社長からの権限委譲が進みます。 また、それに伴って組織は部門ごとに分割されるなどして組織区分の明 また、社長の役割は、マネジメント業務から戦略の策定など、組織活動の 官僚的組織が定着してくるに従って、セクショナリズムや責任回避といっ こうした問題を解決するためには、プロジェクトチームやタスクフォースな 以上は組織をライフサイクルという視点からその特徴を一般化したもので しかし、ライフサイクルという考え方は組織を考える際に非常に参考とな 組織のライフサイクルは、本章の冒頭で紹介した従業員の多様化という問題 本来、組織のライフサイクルは、組織の成長の基準を従業員数の増加におい しかし、これは単に従業員数の増加という視点だけではなく、従業員数が増加 例えば、規模は決して大きくない中小企業においても、従業員の多様化などを 組織のライフサイクルに準じて考えると、中小企業が特に注意しなければなら 中小企業の中には規模が小さいということから、会社運営の大部分を社長の しかし、起業段階にみられる未成熟な組織が成り立つのは、従業員の多くが 創業当時から苦楽をともにしている従業員の間には親密なコミュニケーション そのため、例えば「自身の担当業務ではなくとも、ほかの従業員が困っていた 創業者の理念や夢を共有できているからこそ従業員は「それを実現したい」と 規模自体はそれほど大きくなくとも、従業員の多様化が進めばその中で創業 従って、組織運営をスムーズに行っていくためには、何らかの施策を講じる必 とり得る施策はさまざまなものがあります。 例えば、「創業時の理念や夢を共有できるように、従業員に熱意を持って説き その一方で、自社の状況を勘案しながら共同化段階など組織のライフサイク 1.組織が変わることの必要性 「組織を変える」(以下「組織変革」)ことは、企業が永続していくためには常に 前述した組織のライフサイクルをみても分かるように、企業を取り巻く外部環境の変化や しかし、その一方で既存事業を行うために完成された組織を変えることは非常 そこでここでは、組織にとって常に付きまとう課題ともいえる組織変革について 組織変革が難しい理由は、「組織には変わることを拒むという性質がある」た 組織変革について考える際には、まずこの性質について理解する必要があり ここでは、変わることを拒む性質を生み出す問題を「組織全体のレベル」と「個 (1)組織全体のレベルでの問題 組織変革ということを強く意識せずに、特段の取り組みを行わない場合、組 これは組織内の個々の活動をみると分かりやすいかもしれません。 例えば、ある事業について考えれば、設備投資は、その事業をより効率的 人事面をみると、その事業に対する高い能力を有する人材を採用したり、 また、指揮・命令系統や部課などの組織構造も既存の事業などに最適な さらに、従業員の行動様式に影響を与える組織文化も事業遂行に適したよ このような「現在の組織構造を強化する」という流れは、現在の組織構造を 組織全体のレベルとは別に実際に組織を動かす従業員などの中にも変わ これは、組織にいる従業員の特徴というよりは、むしろ人が本質的に持つ 人が変化を好まない理由はさまざまですが、その大きな原因は「先が分か 例えば「変革に伴って業務内容が変わるが、私にできるのだろうか?」「今 その結果「先の分からない『変化』よりも、現状のままがいい」という気持ち 組織変革の難しさは、組織全体のレベルでの変革と個人レベルでの変革 しかし、実際の組織変革への取り組みをみると、制度面の変更など比較的 そこで、以下では個人レベルでの変革を行う際の基本的な考え方を紹介し 個人レベルでの変革を行う際の基本的なポイントは (1)組織変革の必要性(現状のままでいることは許されない理由など)を (2)組織変革を通じて実現する新たな組織像や、そのためにどのように (3)組織変革の成果を実感させる (4)(1)〜(3)の取り組みを継続する という4点にあります。 (1)で「現状のままがいい」という甘えを絶ち、真剣に組織変革に取り組まなけ (2)で「先がどうなるか分からない」という不安感を払拭(ふっしょく)すると (3)で具体的な成果を通じて組織変革の正しさなどを実感させ、組織変革に そして、(4)で従業員の心の中に時折頭をもたげてくる「以前の状況に戻りた 個人レベルでの変革において中小企業が注意しなければならないのは「分 個人レベルでの変革に限ったことではありませんが、規模が小さな中小企業 しかし、個人レベルでの変革に際しては、こうした姿勢では不十分です。 人が変革を拒む姿勢は、組織変革によって自身が悪影響を受けることが明ら 従って、個人レベルでの変革を行う場合には「分かっている『はずだ』」という思 実際に組織が直面する問題は非常に多岐にわたり、その状況も複雑です。 そのため、問題の表面的な部分だけをとらえて施策を講じても、十分な効果を 従って、問題を解決するための施策を検討・実施する際には、まず最初にこう
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自社組織の俯瞰と分析 |
どのオーナー企業の社長も程度の差こそあれ、裸の王様になってしまうものです。 それは、現場のリーダーが悪いからです。 社内の腐食は現場から始まり、最終的に会社全体を蝕んでいきます。 企業が腐る責任は、もちろん社長にあるのですが、腐るプロセスは、現場を軽視した 職責が上に行けば行くほど現場から離れてしまいます。 すべては現場に赴き、すべては現場で解決することです。 社長は現場を認識しないまま、大きな判断をしなければならなくなってしまいます。 社長は現場からの問題意識とヒントを常につかんでおく必要がある。 そのためにも現場のリーダーと情報を共有し、信頼関係を構築して現場の認識不足に 腐食したリンゴ1個は、隣のリンゴにも伝わり、現場から音も立てずに崩れていく そして、あるとき突然、会社全体(リンゴ箱)が一気に腐敗し、砕け散ってしまい 腐ったリンゴの発生は、現場のリーダーから始まり、腐りかけたリンゴが復活するのも、 たった一人の勇気あるリンゴが、会社を救うことも多いのです。 腐りかけたリンゴは、その状況を客観的な視野をもってトップに相談すべき責務が 自分が腐りはじめているとき、実は、隣のナシやミカンも腐りかけているのです。 そのことを正面からトップに相談しやすい関係をつくることです。 まず、現場のリーダーや社員と信頼関係を築かなければなりません。 企業を取り巻く環境変化に、いかに対応するか。 これは組織リーダーにとっての必須課題である。 あなたは今の自社・自部門の組織の実力を、果たしてどの程度把握している 自社・自部門の組織を把握するためには、以下の着眼点が必要だ。 1.権限委譲の実態把握 例えば比較的、人員規模が大きい会社であっても、創業当時はトップで その時点の役割分担は、極めて明確でした。 営業が得意な社長、仕入れが得意な兄弟、数字に詳しい社長夫人といっ しかし、年数を経て規模が大きくなってくると、役割分担が追いつかなくな こうした状況下で、自分が何をどこまで任されているのか、今、自分の立 特に、末端になればなるほど、その傾向は顕著になるケースが多くなりま そこで、まずは「自分の立場で決めること(決裁責任)、やるべきこと(実 この「誰」に「何」を「どの程度」任せるかという権限委譲の度合いで、組織 権限委譲の現場において、事実を正しくつかむ現状認識が出発点とな リーダーには、部下の手は離しても目は離さない関心力と、いつでも相談 主な4点挙げるので、確認していただきたい。 (1)組織階層 階層であれば3〜5階層、構成員は5、6名以内が一般的に適正と 3階層とは役員(兼務部長)、部門長(部長または課長)、一般社員。 5階層なら役員、部門長(部長・次長・課長など)、部署長(課長・係 構成人数の多さは、組織におけるコミュニケーションスピードの遅さ 上司から部下への指示命令・気付き・アドバイスの質と量。 また、部下から上司への報告・相談・確認の質と量に気を付け、パン (2)役職数と役職者数 年功序列的な発想の組織であれば、長年所属することで何らかの 「昇給の代わりに、役職付与は体裁上やむなし」と考え、やみくもに 部門を預かる管理職の適正人員規模は、「総正社員の15%以内」 (3)直間比率 直接人員は「ライン」と呼ばれ、営業や生産など現場で付加価値を生むた 間接人員は「スタッフ」と呼ばれ、総務・経理など間接的な業務に携 一般的に適正値とされるのは、正社員における直接人員と間接人 ただし、ここで大事なのは、単に人数の多い少ないを判定するので 事業戦略上の方針転換の際に、一時的に間接人員の割合が高まる また、業務上の流れが悪いために、仕事量の割に人員数が多い場 直間比率の実態把握に関しては、特に原因分析が必要となります。 (4)組織年齢 平均年齢だけでなく、10代から60代以上まで、年齢層ごとの人員 また、生産や営業の現場の技術を支えるのが、正社員ではなく嘱 現場の技術の伝承(形式知化)が計画的に行われているだろうか。 目先の業績ばかりに関心が向き、時間のかかる人材育成の分野ほ 1.組織の大きな四つの成長段階 自社の事業戦略を正しく運営するための組織改革のステップでは、自社の ここでは、組織改革のための「組織の成長段階」と「組織生産性の現状分 会社組織には、大きく四つの成長段階がある。 ただし、自社が取り組む事業の内容・規模・歴史によって成長段階は異な あくまで、自社の事業戦略に合った段階の組織形態が必要という点を認識 ステップごとに、その内容を確認する。 (1)ライン&スタッフ型組織 この段階は人員規模もさほど多くなく、トップが末端まで十分に状況を それぞれのポジションの役割も明確かつシンプルであり、組織維持に (2)機能別組織 この機能別組織こそ、どの業界においても多く見受けられる形態です。 この組織形態は、各機能の責任体制が明確で、目標設定からコントロ 組織単位では効率的な半面、会社全体での取り組みに関しては部門・ (3)事業部別組織 取扱製品・サービス単位で分ける場合と、エリア単位で分ける場合の いずれも、各事業部のトップに一定の権限が与えられ、その中で経営 (4)分社グループ型組織(ホールディングス制・カンパニー制) 事実上、独立した法人として運営するスタイルであり、戦略実行面では 会社の資産運用や管理、中長期計画策定・実行に伴う人材の採用や ただし、ある一定レベルのマネジメント能力やルール順守の風土がな 組織生産性の実態を把握し、改善するには「ゴール」を設定する必要がある。 ここでは、組織生産性の現状分析と改善の取り組みについて、必要な数値基 組織の生産性を改善するために把握すべき主な数値基準は、経営効率の視 以下にそのポイントと活用法について紹介します。 1.経営効率視点の2指標 (1)人件費率 計算式は、 人件費率=人件費÷売上高 (2)労働分配率 人件費率と同じく低いほどよいとされる。 言い換えれば、組織が上げた付加価値と、その付加価値に占める人件費 業種平均との比較や過去実績との比較を行うことにより、自社の現在のレ 労働分配率=人件費÷付加価値(粗利益) これらの指標は、その組織全体の人件費を軸にした効率を表した指標 しかし、いかに人件費を下げるかという議論だけで、改善は図れない。 また率が改善(低下)しても、それが人件費の減少によるものか、人員 さらに、人件費のコントロール以上に、付加価値向上の要素も常に検 どのような人員配置で役割分担すれば、パフォーマンスが高まるかに 現場の効率を把握し、改善するために、現場の作業時間を軸にした考 このために把握しておくべき指標として、「どれだけの人数がかかったのか」と この作業時間を「人時(にんじ)」と呼びます。 現場効率視点について、代表的な2指標を案内するので確認してください。 (1)人時売上高 人時売上高=売上高÷総人時 (2)人時生産性 人時生産性=付加価値(粗利益)÷総人時 生産性の改善を図る上で、何をどのようにコントロールするかを考える。 付加価値高(粗利益高)を高めるためには、「付加価値=人時生産性×総人時」 ただし、総人時が増やせない(人員や作業時間を増やせない)となれば、いかに 現場での現状数値を把握しておかなければ、立てた目標がやる前から達成不可能 矛盾が起きないように、目標設定の前提となる現場での生産性の現状と、目
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組織経営 |
創業来続けてきた経営スタイルを変えることはむずかしいことですが、規模の拡大に 組織経営の本質は、トップが“部下を通じて業績をあげる”ことにあります。 スタートから製造、販売、資金繰りと一人でやって来た社長にとって自分がやって来た 1.組織は経営目的を達成する手段 さまざまな解釈があると思いますが、ここでは、「組織」を「経営目的(トップの 「物事には、すべてに基本がある」と言われるように、一見、複雑に思われる会社経営 (1)トップの理念、ビジョンを提示し、浸透させること(企業目的の確立) お問合せ・ご質問はこちら |
組織改革の基本プロセス |
■組織改革 近年、経営環境の変化などにより、経営戦略を見直したり、新たなマネジメント手法を しかし、このような取り組みが期待通りの成果を生み出さなかったり、「気が付いた 改革が失敗する原因はさまざまですが、新たな取り組みがもたらすであろう「成果」 会社を動かしている内部の人々が、これらの新たな取り組みを受け入れ、真剣に取り ここに組織を変革することの重要性があります。 ここでは経営戦略の変更や新たなマネジメント手法の導入などの改革を成功させ、 組織変革の取り組みに際して、大きな問題となるのが「改革に対する心理的拒否感」 経営者・従業員など社内の立場にかかわらず、人は先の見えない不安定な状況を この本能的ともいえる改革を拒む心理的要因は、改革によって自らが悪影響を受 改革に対する強い心理的拒否感は、一般的に以下のような要因に起因していると ・改革が自分たちに悪影響を及ぼすと考えている ・改革によって自分たちが慣れ親しんだ習慣(仕事の進め方など)を変更 ・改革の必要性(現状の問題点)を認識していない ・改革によるメリットなど、改革後の姿を理解していない ・改革の必要性を他人事のように考えて、自分たちの問題として認識して 1.組織変革の基本プロセス 組織変革のプロセスやマネジメント手法は多種多様ですが、一般的なプロセ 以下では、この表に沿って説明を進めていきます。 最初に、組織変革を推進していくうえで中心となるチームを形成します。 このチームは、基本的に改革全般を推進していくチームと同一になります。 しかし、組織変革という視点からみた場合、一般的に「改革推進チーム」のメン 特に、比較的規模の大きい企業にとっては、多くの人材の中から適切な人材 人選に際しては、以下の要件を充足する人材にチームに参加してもらうことが ・社内に影響を与えることのできる地位の高い人材 ・課題に取り組むための高い専門知識をもつ人材 ・リーダーシップを発揮できる人材 ・地位にかかわらず、社内で大きな信頼を集め、多くの従業員に 上記をみると分かるように、推進チームのメンバーとしての適性は、昇進・昇 従って、推進チームに必要となる要件を十分に理解している経営者などが直 なお、社内で評価の高い人材が必ずしも、チームのメンバーにふさわしいとは 改革とは既存の社内システムの一部を壊すプロセスです。 一方、「仕事ができる」といった評価は、しばしば既存の社内システムと密接に このため、改革が自分の「優秀さ」の基礎となる既存システムの変更をともなう 例えば、コンピュータへのデータ入力の速さで高い評価を得ている人材が、 これはあくまでも例ですが、改革に際してはこのようなケースはしばしばみられ 従って、人材を選ぶ際には改革を進んで受け入れるとともに、ほかの従業員 現状の分析や将来に対する予測などを通じて、既存の取り組みの問題点を明 この際に注意すべき点は以下の通りです。 問題点のなどの分析は、組織変革推進チームを中心とした社内人材を積 これは、社内人材が分析を行うことによって、さまざまな分析や検討を通じ しかし、その際には注意しなければならない点もあります。 無計画に社内人材のみに任せてしまうと、現状分析では悪い要因は過小 また、このような業務に不慣れな人材のみで行ってしまうと、質の高い分析 従って、分析プロセスでは、客観的な目を持ってこのプロセスを進めていく このような人材が社内にいない場合は、社内人材をうまくコントロールでき ただし、社外人材はあくまで分析のサポート的な役割にとどめ、社内人材 問題点や課題の分析だけではなく、変革を実施しなかった場合、その問題 この結果は、従業員の間に危機感を創出し、改革へのモチベーション向上 例えば、変革を行わなかった場合の「最悪のシナリオ」を示すのであれば、 自社全体の問題として示すよりも、部門別、あるいは個人別のレベルまで 例えば、売上高に関することであれば、「全社売上高○%の減少」よりも「△ 自社の将来あるべき姿を示すビジョンと、問題を克服しビジョンを実現するた 改革においてビジョンとは以下のような重要な役割を果たします。 ・すべての社内人材の行動をまとめあげる際の指針となる ・苦しい改革を乗り越えていくうえでの目標を示す この役割を果たすような優れたビジョンを策定する際には、下記の点に注意し ・将来の企業像がはっきりイメージしやすいものである ・企業内外の人々にとって魅力的で、実現することが強く望まれるものである ・企業を改革することによって実現可能である ・誰もが簡単に理解できるものである 優れたビジョンはこれらの要件を満たしているといわれますが、優れたビジョン ビジョンを生み出すための簡単な方法はありません。 幾度ものミーティングや見直しのための作業などの試行錯誤を繰り返しなが このため、限られた時間の中で進める必要がある改革に際しては、あらかじめ ビジョンを作成した後は、そのビジョンを実現するための具体的な戦略を立案 導入を進めるさまざまなマネジメント手法や新たな経営戦略などの改革案はこ これらのステップを通じて企業の目標とするビジョンとそこに到達するための ここでは、前のステップで検討した問題点や課題とそれらを放置した場合(改 「最悪のシナリオ」は、従業員に対して「もう、現状のままではいられない」「変 そして、改革に向けたシナリオを示すことによって「最悪のシナリオ」を避ける このステップで注意すべき点は、危機意識や改革に向けたシナリオを全従業 『3.問題点の分析の(3)シナリオを可能な限り細分化する』ことは、個々の従 また、経営者や組織変革推進チームのメンバーなどが、中心となってさまざま 例えば、 ・スピーチ、社内報などさまざまな機会で伝えていく ・ミーティングなど直接的なコミュニケーションを通じて理解を促進する ・頻繁に、繰り返し伝える などの取り組みは不可欠です。 計画した戦略などを実行に移していきます。 注意すべき点は、長い実行段階において、改革に対するモチベーションを持 このためには以下のような取り組みが求められます。 (1)改革の必要性やビジョンや戦略を繰り返し伝える 繰り返しになりますが、社内で共有化の進んだ危機意識や、ビジョンや戦 前述したように、人は本質的に先の見えない不安定な状況を嫌う傾向があ このため従業員は、ビジョンや戦略を十分に理解しても、思うような結果が このため、小さくても短期的な成果を実現していくことが必要となってきま 短期的な成果を生み出し、「私たちの取り組みは正しい」ということを実感さ また、成功は改革に対して反対している者や疑問を感じている者に対する 短期的な成果を生み出すためには、前項の戦略の立案の際に、短期的な 改革を成し遂げるプロセスは、短期的な成果を積み重ねていくプロセスに このため、昇進などの人事評価制度などを必要に応じて改正して、成功を また、たとえ小さな成果であっても全社を挙げて喜び、成果を生み出すうえ 改革に功績のあった人材を適正に評価することは、従業員の改革に対す 1.常に「揺り戻し」を意識する 人間の心理的抵抗感は根深いものがあります。 このため、改革が成功しているようにみえる状況においても、従業員の心の中 こうした「揺り戻し」を見落とし、その対処を怠ると、次第に従業員間に「揺り戻 こうした揺り戻しに流されないようにするため、改革に対するモチベーションと 危機意識や改革のシナリオを常に訴え続けることや、実行段階において早い 改革の必要性についてどれほど熱心かつ具体的な説明を行っても、改革に同 しかし、一口に反対者といっても ・表立って明確な反対行動はとらないが、改革に協力もしない ・反対の立場を明確にしたうえで、改革に協力しない ・ほかの従業員に悪影響を与えるなど、改革に対してマイナスの影響を といったように反対の度合いにも「温度差」があります。 これらの従業員すべてに対して、厳しい対応が必要なわけではありません。 反対者の意見に真摯に耳を傾けて、改革の取り組みをより多くの従業員が納 しかし、その一方で、改革はその成否に企業の命運がかかっているケースも 従って、改革を成功に導くためには、時には毅然とした態度を示すことも必要 特に、ほかの従業員に悪影響を与えるなど、改革に対して明らかにマイナス 社長自らがすべての改革プロセスに主体的にかかわる必要はありませんが、 また、社長は社内の人々全員から注目される存在です。 このため、以下のような役割を積極的に果たすことが求められています。 ・自らが率先して改革に対して積極的な姿勢を示す ・改革に対する「語り部」として現在の経営上の問題点や 確かに、社長のリーダーシップは改革には重要な要因です。 しかし、社長がどれほど強力なリーダーシップを発揮したとしても、従業員が改 繰り返しになりますが、改革の成否は従業員の改革に対するモチベーションを 改革に取り組む際には、この点を忘れずに「組織変革」という視点からの取り組
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ダイバーシティマネジメント |
■ダイバーシティマネジメント ダイバーシティ(diversity)とは、英語で「多様性」の意味を持つ言葉です。 企業経営でいうダイバーシティとは、企業が多様な社員を受け入れ、その多様性(性 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に取り組む企業が増加していますが、 しかし、それはダイバーシティを実現するための方法の一つでしかありません。 ダイバーシティの本来の意味は、あらゆる人たちが最大限に能力を生かせる環境を しかし、移民の受け入れや人材の流動が盛んな欧米と日本では、従業員の人種・ また、中小企業においては、経営上の意思決定で経営者の判断が最も重要である 社員のモチベーション向上という視点でも、ダイバーシティマネジメントの効果は期待 内閣府「男女共同参画白書」によると、共働き家庭の数は1990年の823万世帯から こうした状況の中、社員が仕事に対して持つ価値観や意欲は確実に多様化すること 多様な価値観を持つ社員たちの従業員満足を向上させてモチベーションを高める 以下では、日本が現在抱える経営上の課題を踏まえた上で、日本企業として取り組む (独)労働政策研究・研修機構によると、産業別就業者数の推移と見通しは、 さらに長期的に考えると、人口減少や少子高齢化によって労働力人口は減少が続く 人材の確保が困難とされる中小企業にとって、この労働力人口の減少は将来的に 加えて、2008年秋からの世界的な景気後退に象徴されるように、経済情勢は経営者 それにともなって、市場も変化が続くことでしょう。 つまり、これからの企業経営は、労働力人口の減少に対応しつつ、変化する市場環境 労働力人口の減少に加えて、従業員に大きな変化を与えているのが個人の価値観の 前述した通り、近年ワークライフバランスに取り組む企業が増加していますが、これ 人それぞれ、生活していく上での優先順位は異なります。 そしてそれが、職業選択や働き方の多様化につながっているといえるでしょう。 これまでは、多くの従業員が自分の会社や所属する部門という組織に限定して働き方 しかし、終身雇用が崩壊しつつある今、彼らは会社や部門の枠を超えて自分自身の こうした、組織優先から個人優先という意識の変化に対応し、各個人が自身の力を 働き方の多様性に関連した問題として、非正規従業員の増加もあります。 総務省「労働力調査」によると、雇用形態別雇用者数の推移は下表の通りです。 全雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は、1990年代前半には20%前後で 2000年以降を見てもパート・アルバイトと契約社員・嘱託の増加が顕著となっており、 雇用の不安定化の進行は、企業の経営環境の悪化が進む中でやむを得なかった また、派遣業法の改正などによる雇用関連の規制緩和も、こうした非正規従業員の 一部の企業では、非正規従業員の正規化を推し進める動きも見られます。 しかし、実際にすべての企業が非正規従業員の正規化に取り組めるわけではあり 現実的な問題として考えれば、非正規従業員の増加が進むという現状の中で、企業 1.日本における「多様性」のあり方とは ダイバーシティといってもそのとらえ方はさまざまです。 最も分かりやすいのはいわゆる性別、年齢、国籍など「目に見える多様性」で 一方で、それぞれの人が持つ生活環境や事情に応じた「働き方の多様性」に これらの条件はそれぞれが関連し合い、不可分の要素といえます。 しかし、ダイバーシティの在り方を考える上では、「目に見える多様性」と「働き (1)目に見える多様性 ・男性、女性といった、性別の多様性 ・高齢者など、年齢の多様性 ・外国人など、国籍の多様性 ・障がい者など、身体状況の多様性 ・働く時間の多様性(短時間勤務、フレックスタイム、育児休業・介護休業の ・雇用形態の多様性(正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトな ・働く場所の多様性(在宅勤務、地域採用社員、転勤のある正社員など) これは、欧米各国の多くが多民族国家であり、人種問題を解決するための しかし、日本は欧米と異なり、これらの問題は大きな社会問題化するほど このように、欧米におけるダイバーシティとは事情こそ異なるものの、ここま 上記のような事情から、日本における「目に見える多様性」は「女性」「高齢 そして、これらの人たちに対して「働き方の多様性」を提供することが、労働 以下では「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」を活用することによる、組 女性を活用することによる最大のメリットは、女性ならではの感性や発想を生 化粧品・生活用品メーカーや服飾メーカーなどでは、既に女性を積極的に活 そして、それは組織の創造性を向上させる大きな要因になるでしょう。 また、一般論ではありますが、男性は意見の主張が強いのに対し、女性は他 一方で、建設業など男性中心の業界で女性が働くことで注目が集まり、企業 こうした性別の違いを生かし、組織に取り入れることで、組織としての力は向 参考:雇用均等に関する助成金 ポジティブ・アクション(能力アップ助成金) 高齢者を活用することで、過去の豊富な経験を生かせる、組織の管理能力が また、製造業においては、短時間勤務と組み合わせるなどの方法にり、高齢 高齢社員には体力の低下や、仕事に対する意欲の低下が見られることも少な 高齢者の活用に当たって重要なのは、高齢者の豊富な仕事経験による多様 単純に高齢者を雇用すれば組織の能力が向上するわけではない点には注意 参考:高齢者を雇用した場合の助成金 特定求職者雇用開発助成金 外国人を活用することで、日本人とは異なる新しい発想やアイデアを得られる 民族や国籍は、個人の考え方やものの見方と大きく関係します。 日本人だけではできなかった発想も、外国人の活用によって得られるかもしれ 仮に、先進国以外の発展途上国の人材であっても高い教育を受け、専門性の ただし、日本と外国における習慣や文化の差というものは厳然と存在するの それを踏まえて多様性を受け入れることが、外国人活用のメリットを生かすポ 参考:雇用調整助成金 障がい者活用は、企業として果たすべきCSR(企業の社会的責任)の一つで 加えて、社会的弱者とされる人の視点が企業経営に生かされるということがメ 2009年4月1日に「改正障害者雇用促進法」が施行されました。 これによって、障がい者の雇用率が1.8%に満たない企業に対して支払いが 具体的には、常用雇用労働者201人以上の事業主は2010年7月から、常用 つまり、常時101人以上を雇用する企業にとって、障がい者雇用はメリット以 障害者トライアル雇用奨励金 1.ダイバーシティ実現を妨げる問題点 「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」の活用は、決して目新しい考えではあり これまでも、多くの企業がこうした人材の活用を考えたでしょう。 しかし、実際にはその試みは中途半端な形で止まってしまったり、失敗に終 それは、「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」それぞれを活用するに当たっ 以下に、それぞれの問題点を列記します。 (1)女性活用の問題点 ・結婚や出産を機に早期に退職してしまう ・家事や子育てを優先するため、時間外労働や休日出勤を依頼しにくい ・出産休暇や育児休業取得による代替要員の確保が難しい ・力仕事など任せられない業務がある ・昇進や昇格への意欲が薄い傾向にある ・男性上位の職場風土が根強い ・若手社員との関係がうまくいかない ・仕事に対する意欲を失っているケースがある ・過去の経験やプライドが、新しい業務への順応を妨げる ・高齢者が持つノウハウ、技術、技能の円滑な継承が難しい ・新しい技術への対応に不安がある ・言葉の問題があり意思の疎通が図りにくい ・考え方や生活習慣が大きく異なる ・企業への帰属意識が低い傾向にある ・職場への定着率が低い ・健常者に比べて生産性が低下しがちである ・身体的な理由で長時間の勤務に耐えられない ・障がいの状況により、従事できる業務が限定される これらの問題をすべて解決するのは、理想論にすぎるきらいがありますが、こ 前述の障害者雇用促進法の改正に加え、近年は男女間の雇用環境に対する また、外国人についても、2007年10月に外国人雇用状況の届け出が義務化 こうした法的な制度が整いつつある中で、ダイバーシティを機能させ企業を活 前項で例として挙げた問題を解消し、従業員がそれぞれの立場で働きやすく、 従業員それぞれが自身の生活スタイルや家族の事情に合わせて働くことがで 以下では、ダイバーシティマネジメントを成功させるために企業としてまず押さ トップ自身がダイバーシティを積極的に受け入れ、活用していくというメッ 大企業などではダイバーシティの専門部署を立ち上げて社内外に取り組み ダイバーシティとは多様性を受け入れることから始まります。 お互いの違いを知り、理解し、意見を言うことができるコミュニケーションの これは同時に、少数派や弱者の意見が無視や排除されることのない意思 具体的には、ダイバーシティを推進するための部署をつくり、そこでさまざ 近年は、パート・アルバイトを店長に登用する企業が増加しています。 一方で、転勤や異動のある通常の正社員のほかに、勤務地を限定した「地 短時間勤務や在宅勤務制度を導入している企業も少なくありません。 重要なのは、これらの制度を導入するに際してさまざまな立場の人たちが 雇用形態によって待遇に差がつくのは当然のことでしょう。 しかし、それはどのような差であって、将来的にはどのような立場で仕事に 逆に、将来のビジョンが見えていれば、従業員は安心して仕事に取り組む これは、従業員が安定した気持ちで仕事を進める上で、大きな意味を持つ 従業員の多様性を見極めるためには、個々人の性格や、置かれた状況を そして、それができるのは現場で常に従業員と接する管理者しかいないと まずは管理者にダイバーシティの重要性を理解してもらうことが、ダイバー また、多様性を受け入れるということは、そこにある程度の衝突が起きる可 そうした衝突が起きた際にも、まず前面に立って対応しなければならない そうした事態に的確に対応するために、管理者に対してコーチング、カウン しかし、すべてを管理者任せにしていては、管理者の負担が増える一方で 前述した意見交換の場なども活用し、多様性を容認できる組織風土を醸成 「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」の活用に向けて、企業として取り組んでお 1.女性活用のためのポイント (1)結婚・出産・育児がしやすい職場環境の整備 また、結婚などを機に退職した女性社員に対する復職制度なども、既にス 結婚・出産・育児によってキャリアが断絶しないような制度をつくることで、 女性ならではの仕事を、女性に担当させることも重要です。 例えば、体力をあまり必要としないなど、男性と比較して女性が不利になら また、女性ならではの繊細さや視点を生かせる業務に積極的に就かせる いわゆる「性差別」は男女雇用機会均等法で原則として禁止されています 生産現場など、一般的には男性が担当する職場であっても女性を積極的 女性のやる気と希望を尊重することが重要です。 (1)ベテランの経験・技能の活用 高齢者の最大の持ち味は、蓄積したノウハウや経験にあります。 特に製造業などでは、ベテラン技術者が持つ経験やノウハウをマニュアル また、高齢者の望む職務内容と担当させる業務をうまくマッチングさせるこ 高齢者と若手社員の「世代間格差」を可能な限り減らし、円滑なコミュニ さまざまな世代の従業員が意見を交換しながら働ける環境は、ダイバーシ 定年後の再雇用などの場合、その後もフルタイムで働きたい人もいれば、 こうした希望を可能な限り受け入れるためにも、面談などを通じて今後の働 (1)日本人と変わらない公平な待遇 外国人と日本人で雇用形態や業務などを区別せずに公平な待遇をするの 外国人という理由で日本人よりも低い賃金で雇用されるケースもあります また、外国人の宗教や習慣に応じた柔軟な勤務体制を取ることも、外国人 なお、不法入国者を雇用しないなど、法令の順守は、外国人活用の基本中 教育訓練制度については、言葉でのコミュニケーションが不自由な外国人 意思の疎通ができれば、ほかの従業員との相互理解も深まります。 日本人従業員が教育係となり、マンツーマンで指導に当たっている企業な しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。 それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育の横行です。 その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。 この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。 (1)障がいの程度に応じた適切な業務配分 一言で障がい者といっても、身体障がい者も知的障がい者もあります。 また、障がいの程度も人によってさまざまです。 一般的には、手足の障がいを持つ人は移動の少ない事務系の仕事を、視 また、障がいの程度に応じた短時間勤務などの導入も考慮する必要があり 車いすで通れる通路の整備や手すりの設置、点字や音声を利用した社内 障がい者が働きやすい施設・設備の整備や安全措置の実施は欠かさず行
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ポジティブアクション |
『働く女性の実情』について厚生労働省から公表されました。 その中から「結婚・出産・育児」を中心に概要をご案内します。 平成25 年の女性の労働力人口は2,804 万人と前年に比べ38 万人増加し 女性の労働力率を年齢階級別にみると、左右のピークがそれぞれ「25〜29 これは結婚・出産・子育てなどによって就業を中断し、子育てが一段落したら その要因として、非婚、晩婚化による影響が考えられ、結婚・出産した女性が 少子高齢化が進行する中で、減少する生産年齢人口を補うという観点だけで しかし、前述のとおり年齢階級別でみますと30 代に労働力率が低くなるM字 このため、厚生労働省では、介護離職の問題とも合わせて、子育てや介護を (1)仕事と育児・介護の両立のための制度の定着促進として、短時間勤務制 また平成26 年4 月からは育児休業給付の充実を図り、男女ともに育児休 なお、労働力不足が騒がれている昨今、人材戦略として女性が継続就業 そのような場合に受給できる厚生労働省の助成金もありますので、併せて 男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法などによって、性別で区別される 特に、男女雇用機会均等法は、2007年4月に改正され、「性差別禁止の範囲の拡大」 しかし実際は、従来からある固定観念や役割分担意識などによって、特に女性が職場 そこで、こうした男女間の差を是正し、人材を最大限に活用するための取り組みで 厚生労働省「女性の活躍推進協議会」が2002年4月に発表した「ポジティブ・アクション 企業がポジティブ・アクションに取り組むメリットは、 1.生産性の向上と競争力の強化 男性が優位な企業風土の場合、そうした風土を見直し、能力や成果に基づく また、女性の活躍が周りの男性によい刺激を与え、結果として企業の生産性 市場が多様化する中、企業は市場のニーズに合った商品やサービスを提供 性別にこだわらずさまざまな個性を持つ人材を確保・登用することは、今まで 性別にこだわらず優秀な人材を登用している企業は、「人材を公正に評価す ポジティブ・アクションは、男女間にある「差」を是正し、従業員の能力の発揮 1.ポジティブアクションの実施手順 厚生労働省では、ポジティブ・アクションに関する情報提供を行う「ポジティブ・ 「ポジティブ・アクション応援サイト」によると、ポジティブ・アクションの具体的 ●ステップ1(現状の分析と問題点の発見) まずは、自社における女性従業員の状況を分析します。 ポジティブ・アクションの目標設定と目標を達成するための具体的な取り組 (1)目標の設定・具体的取組策の策定 (2)期間の設定 (3)労働者、とりわけ女性労働者の意見・要望の聴取 作成した取り組み計画を実行します。 目標の達成状況を確認します。 (1)経営者が率先してポジティブアクションに取り組む ポジティブ・アクションは、組織の一部が行うのではなく、全社的に取り組む ポジティブ・アクションは一度目標を達成したらそれで終わり、というもので 継続的に取り組みを行わなければ、本当の意味でのポジティブ・アクション そのため、ポジティブ・アクションを継続して進めるための仕組みを社内に 例えば、社内でプロジェクトチームを設置し、ポジティブ・アクションの実施 「女性の活躍推進協議会」による定義にもあるように、ポジティブ・アクショ ポジティブ・アクションは、性別を区別することなく、企業が持つ人材を最大 人材は会社にとって大切な経営資産です。 そのため、「人材を最大限に活用する」という点から、ポジティブ・アクション ポジティブ・アクションに積極的に取り組み、男女の区別なく従業員の能力 男女の区別に関して、外見上は性中立的な規定や基準、慣行などが、実 間接差別とは、 ①性別以外の事由を要件とする措置であって、 ②ほかの性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の ③合理的な理由がない時に実施すること をいいます。 具体的には、「身長や体重、体力などを採用の条件に加える」ことなどが当 2007年4月に改正施行された男女雇用機会均等法では、間接差別の禁 この法改正により、性別で差別することなく、男女がともにその能力をより 男女間の差を解消するための社会的な仕組みが整いつつある中で、今 1.本助成金の目的 働き続けることを希望する女性労働者が就業意欲を失うことなく、その能力を (1) 女性の職域拡大または女性の管理職登用等に関し、ポジティブ・アクショ ※1 以下の①または②の女性労働者に係る目標です。 ②女性の管理職登用等に関する目標 ・ 社内の規定等に基づいて、男性労働者と比較して女性労働者が ※2 「相当程度少ない」とは、女性労働者の割合が4割を下回っていること 3.受給額 大企業:15万円 |
組織の活性化に欠かせないフォロワーシップ |
快適さとは何でしょうか? 人間関係が良いこと。 給料が高いこと。 人を使い捨てにしないこと。 環境が良いこと。 機会をくれること。 チャレンジングな職場であること。 自分の能力を役立たせるために会社がいろいろな手立てを講じてくれること など。 何を選ぶかは、個人によって異なるはずです。 しかし、あえて言いうならば、快適さを生み出す一番根本の要因は「会社の持つ価値観 組織が活性化している現場には一つの共通点があります。 それは現場がイキイキしているということです。 店長や現場リーダーがやりたいことをどんどん率先して行なっていることです。 このイキイキしている雰囲気はどのように作られてくるのでしょうか。 経営陣側の想いと現場側の想いのすり合わせが、できていない会社が少なくあ 経営者側は「全然、期待通りに動いてくれない」「ほんと駄目だよ」と現場に対する 一方、現場では経営陣への不平不満が多く出てくるのです。 現場の不平不満の内容というのも「社長は来ても挨拶がない!」「もっと関心を持 ある小売店では、現場スタッフの間で次のような行動指針があります。 ・いかにお客さまに快くお買い物をしていただくか ・いかにスタッフ仲間と働きやすい環境を作るか 例えば、接客中に内線がかかってきたり、 そんな時、自分で全てを処理しようとせず 裏の作業を一時停止してでも、お客様対 さらにその際、声をかけあうので、フロア 会社(店)によっては、裏の作業を黙々と チームとしていかに成果を上げるかという 基本動作の徹底は現場がイキイキするためのキーワードです。 リーダーシップは上から下の視点、リーダーが部下を引っ張っていくという視点です。 リーダーの力で、組織の仕事の効率を上げようとする考え方といえます。 フォロワーシップはその逆。 下から上の視点、部下がリーダーに協力する力で、組織の仕事の効率を上げようとする フォロワーを簡単に定義すれば、「従って行動する人」のこと。 リーダーが理念や計画を決め、フォロワーがその理念や計画に従って行動するという関 では、フォロワーはただ単にリーダーのいうことをしっかりやっていれば良いのでしょ フォロワーもリーダーに対して影響力を持ち、全体の成果に大きく関わってきます。 リーダーシップとフォロワーシップというのは、表裏一体のものなのです。 どちらか一方が欠けてしまうと機能しません。 これをやれば成果が見込めるという活動が以前よりも減ってきているため、現場社員 リーダーは方策を決めかねてばかりいると、フォロワーからの信頼が落ちてしまい 実際、フォロワーのリーダーへの不信というのは、こういったケースが多いのです。 あなたは人の“やる気”を見たことがありますか? 普通、やる気というのは目に見えません。 経営者側は「現場が全然やる気がなくて」「こちらの期待以下だよ」と、嘆く前に、次 それぞれに対して、具体的に取り組んでいることをスラスラ挙げられるかチェックして 以下の3つはやる気が生まれる要素を説明しています。 自分自身が成功したと思えることがポイントです。 成功は一人の力で成し遂げた場合だけではなく、他人との協働によるものでも良 また、成功の大きい、小さいも関係ありません。 むしろ小さい成功体験を積ませることで、より大きい成功へと導いていくパターン 仕事を任せられるというのが一番“存在を認められた”と感じるものです。 最初は些細なものからでも意気に感じて、成果を出していくものです。 さらに率先して創意工夫するようになると、褒められることにより自分の存在感を 逆に人間が嫌がること、やる気を失うこと ②押さえつけられる ③強制される ④意思を無視される ⑤正しく理解されない の5つであるといいます(マズロー『自己実 コミュニケーションとは伝わったことが全てです。 経営陣、及び現場リーダーはこまめにコミュニ 一対一の対話、普段の声掛けを通じて行っていく必要があるようです。 成功している組織や人というのは常に前向きな言葉を放つものです。 常に、肯定的な言葉を使うように心掛けていきたいものです。 基本的なスタンスとしては当たり前のことを当たり前にやり続けるということです。 決して、特別なことをするわけではありません。 現場が元来持っている力を引き出していくというプロセスを踏むだけです。 繰り返しになりますが、やはり基本の徹底から始めることです。 ①挨拶、②返事、③マナー、④時間、⑤整理整頓、⑥報連相、⑦納期、⑧メモを取 これらの基本ができていなくては、前に進めません。 案外、できていないという会社(店)が多いのではないでしょうか。 リーダーだけで会社が動かないのと同様、フォロワーだけでも会社は動かないという 理想的なフォロワーシップを発揮するフォロワーがそろっていたとしても、その意見や つまり、フォロワーを育てていこうとするリーダーには、フォロワーの批判的思考による
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組織改革 | ||||||||||
従業員一人ひとりがそれぞれもっている力の総和以上の力を創りだし、一つの目的を 組織の風土は社長自身がつくってきたものです。 組織風土とは、「組織がもつ共通の価値観」と定義することができます。 社員は規則に明記されていなくても、無意識にその価値観に従って考え行動します。 たとえば、「残業する人は偉い」という価値観が定着している会社では、社員は仕事が しかし、この会社の社長が長時間残業を問題視して、定時帰宅の大号令を発した場合、 それが繰り返されるうちに定時帰宅が当たり前となり、これまでとは逆に「残業する人 このように組織風土とはそれぞれの職場の従来の「常識」や「雰囲気」を基に形成される 社長が「常識」や「雰囲気」を意図的に変えることによって、組織風土も変えることがで そこには社長自身の価値観が色濃く反映されているはずです。 創業期にはプラスに作用した組織風土が会 しかしそれには相応の決意とパワーが必要
組織文化はさまざまな視点から考えていかな その時々の会社の状況や社長の考え方によって、 また、組織文化は直接的にはコントロール不可能であり、以下の点の取り組みを
1.経営理念、ビジョン、戦略を明確にすることで共感を起こす 会社の基本的な考え方である「経営理念」「ピジョン」「戦略」を明確にし、 自社にふさわしい組織文化を構築するためには、まずは文化の根源とも 経営理念とは「自分たちはこうありたい」という会社の存在意義を示した まずは社長自身が経営理念やビジョンを明確にすることが必要です。 また、ビジョン実現のためには「戦略」が必要です。 戦略とはビジョン実現のために、自分たちがどのような事業分野で、どのよう な価値を生み出していくかというシナリオです。 従来と同じ方法で日々の業務をコツコツと積み重ねていくだけではビジョン 社長は自社の強みや弱み、市場動向、社会動向、競合動向などを総合的に 基本的な考え方が組織文化として定着していない会社では、「理解できる」の ①会社の目標と社員の目標を一致さ 社員から共感を得るためには、経営 社員は「自分の能力を高めたい」、「給料を上げたい」、 そして、これらの要望は会社が成長することで十分に実現可能であることを つまり会社と社員の目標は一致しており、その実現に向けてともに努力する そのためには社員自身に自らの仕事や人生について深く考えさせることも必 「こうなったらいいな」という漠然としたものではなく、5年後、10年後の そして、その目標を会社成長のプロセスのなかでどのように実現していくか あるべき組織文化にふさわしい行動を、社長や幹部陣自らが積極的に体現 たとえば、「顧客第一主義」、「変革」、「チャレンジ精神」といった組織 逆に「この会社は有言不実行である」との印象を与え、社員の活力はますま 自社の組織文化にもっとも大きな影響を与えるのは、ほかならぬ経営陣であ なぜ会社に組織が必要かを考えてみると、各自がバラバラで働くよりも組織を使 組織編成はそれ自体が目的ではなく、会社の目標を達成するための「手段」に そうであれば、その目標にもっとも到達しやすい組織編成を行うことが当然の選 たとえば、自社が本格的に新規事業を模索している場合には、新規事業の開発 逆に撤退を予定している事業があれば、当該部門は縮小・廃止していかなけれ る必要があります。 自社の現状や将来を見据えて、目標実現のための最適な組織体制を構築する 人事制度の目的は、会社が社員に対して、「どのような人材を求めているのか」、 当然ながら人事制度のあり方は組織文 合理性や公平性を欠いた人事制度のま また、人事制度を改革することは、社員 さらに人事制度改革を進めるプロセスのなかでは、 問題点に真撃に向き合うことで、めざすべき組織文化や問題解決に必要な施策 人事制度改革では「目的の明確化」、「わかりやすさ」、「公平・公平さ」、 これらを実現するためには (1)基本事項の確認と設計 経営理念・ビジョン・戦略を基に、自社に必要な人材像や人事制度 アンケートや面談などによって、社員のモチベーションや能力、現状 上記1、2を比較し、現状とあるべき姿のギャップ、ギャップ解消のた 課題解決策を盛り込んだ新人事制度の概要を設計する。 新人事制度を社員に説明し、合意を形成する。必要に応じて修正を 人事評価制度(能力評価、業績評価、態度評価)、賃金制度、昇進 わかりやすく、制度ごとの整合性が取れていることが大切です。 (7)制度の導入と検証 実際に制度を導入し、社員のモチベーション向上、人材育成のスピ 必要に応じて制度を修正する。 業務改善や新商品開発プロジェクトなど、企業ではさまざまなシーンでチーム活動 チームの活動目的、活動期間、チームを構成するメンバーの業務上の関係性など 一方で、チーム活動が失敗した場合の時間やコストのロスも個人活動より大きく 従って、一度に多くの経営資源を投入するチーム活動をいかにして成功に導くか 特に中小企業の場合、ほとんどのチーム活動をマネージャーが指揮する組織体制 一般的に、チーム活動を成功に導くためのポイントとしてリーダーとメンバーの信頼関係 中小企業のマネージャーの実情を考えると、マネージャーがチーム改革に費やすことが マネージャーが限られた時間の中で、早期にチームを機能させる方法を検討しなければ 信頼関係に基づくチームづくりは定石ですが、これには時間がかかるため、中小企業の そこで、情報共有を基礎としたチームづくりを実践してみましょう。 これまで1500社以上の会社を見てきて感じることは、会社の規模には「壁」があり、 自分の事業が果たしてどれぐらいの規模になるのか、経営者であればこれは必ず熟考 会社の将来像(ビジョン)を考えずに事業をすることは大きなリスクです。 自分のビジネスが家族経営で適正規模なのか、5〜6人規模なのか、20人から30人 経営をする時点で、自分の事業の規模についてどこまで拡大を目指していくのかを明確 組織を強化するということは人材を強化することです。 組織とは名ばかりの単なる個人の集合体から、一人ひとりの役割が明確な組織 人材育成の強化(コンサルティング・セミナー・研修・講演)のご案内 多くの会社は、アルバイトやパートを含めても、8〜10人程までの規模には成長します。 しかし、10人程になると組織が崩壊して退職者などが出て、また5〜6人程度まで戻 逆に、「10人の壁」を突彼した会社は、一気に30人規模程度まで大きくなっていきます。 会社の成長を見ると、この「10人の壁」を超え 約7、8割の会社が突破できない「10人の壁」。 これを決めている要因は「集団」から「組織」 社長の下に単に社員がぶらさがるのではなく、 しかも、その中間管理職が名ばかりの管理職 これができれば、「組織化」をクリアすることが 営業と管理、もしくは現場と管理、といったように、 そのためにも「組織営業(マーケティング)」、「業務改革・改善」、「労務管 むしろ人数がこれよりも少なければ、社長は組織内に十分に目が届いていなくてはなり この規模の段階で本格的な人材育成に着手していかなければなりません。 しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。 その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。 この問題を解決しなければ、教育制度の内製化は不可能です。 そして間違えてはならないのは、その中間管理職に仕事を決して丸投げしないという この規模の大きさで、社長が自分の仕事を中間管理職に丸投げしては、そのうち社員 この規模で中間管理職を設置する意義は、あくまでも社長だけでは社員一人ひとりに 自分が目指す組織が「10人の壁」を超えるものなのかどうかを考えなくてはならない 自分の商売が「10人の壁」を超えてよいものなのかどうか、見極めることが経営者の もちろん、自分の力量も考慮しなければなりません。 夢を追うばかりが経営ではありません。 経営管理には、生産管理、販売管理、財務管理、労務管理、危機管理(リスク 経営とは事業の種類を問わず、以下のステップの繰返しを意味するものです。 ①大きな長期の目標を設定する ②目標をより身近なものとするために、その目標を細分化する ③各目標達成のための活動計画をスケジュールと共に作成する ④活動計画を実施し、目標への進捗状況をチェックする ⑤獲得したお客様の信頼、満足を得るための活動を継続する 目標の達成度合いは活動計画の進捗状況によって大きく変るものであり、常に活動が また一方、営業はお客様あっての生き物であり必ずしも計画通りに推移するものでも 活動計画やスケジュールは、ビジネスの進捗や推移、環境や情勢の変化に合わせて 計画の無いところに目標はなく、また目標やその目標達成のための計画がないとこ また、管理は継続して始めて機能するものであり、一時的なものとならない様に努力す 経営戦略の実行部隊である「組織と人材」の再点検をおすすめします。 地に足が着いた経営を心がけ、このサイトにある経営の基本を自社に取り入れてみて メルマガ登録(無料)はこちらから
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静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
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経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
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