■機械の安全対策 労働災害の発生件数は長期的には減少傾向にあるものの、平成24年における 休業4日以上の死傷者数は11万人を超えており、依然として多くの労働災害が 発生している。 そのうち、機械による労働災害の発生割合が約4分の1を占めており、その災害 防止対策が重要な課題となっています。 機械による災害の特徴は、“はさまれ・巻き込まれ”などによって、手足あるいは 全身が押しつぶされ大きな後遺症を残す、最悪の場合、死亡に至るような重篤な 災害となる場合が多いということである。 厚生労働省から公表された「第12次労働災害防止計画」(12次防:平成25年度 〜29年度)では、機械による労働災害を防止するために、製造段階、使用段階そ れぞれの対策を進めているものの、依然として機械による災害が多発しているこ とから、さらなる取り組みの促進が必要であるとしている。 ここでは、機械による災害防止の基本原則、機械の安全化の必要性、平成19年 に改正された「機械の包括的な安全基準に関する指針」の内容などを中心に“機 械の安全対策”について紹介します。 □機械による災害防止の基本原則 機械による災害は、機械とそれを操作している作業者等が関連して発生する。 機械の可動範囲と作業者の動作範囲が重なりあった部分が危険領域であり、両 者が接触した場合に災害という形で顕在化する。 したがって、機械による災害を防止するためには、このような状況が成立しないよ うにする必要があり、そのためには次の2つの基本原則(隔離の原則、停止の原 則)に従うことが重要である。 □機械の安全化の必要性 労働災害原因要素分析(平成22年厚生労働省)によれば、製造業全体における 休業4日以上の死傷災害の9割以上は人間の不安全な行動が関係して発生して いる。 つまり、人間側の行動に問題や誤りがあり、ほとんどの労働災害が発生している ことになる。 したがって、人間はミスをする、勘違いをする、忘れるという前提に立ち、万一そ のような行動を人間が取った場合においても、事故や災害に至らないような機能 を機械設備に持たせることが望ましい。 機械設備に関する労働災害を防止するためには、機械そのものの安全を確保す ることを第一に考える必要がある。 そのためには、設計段階でまず本質安全化を図ることが求められる 機械の本質安全化の方法としては、3点が挙げられる。 □機械の包括的な安全基準に関する指針 機械そのものを安全にすることの重要性を前項で示したが、そのためにまずは製 造者側で危険源の除去や安全機能を組み込んだ設計や製造等をする必要があ り、使用者側は設計段階で本質安全化が図られた機械を採用していくことが重要 となる。 上記の取り組みを進めるために、厚生労働省は平成13年6月にすべての機械に 適用できる「機械の包括的な安全基準に関する指針」を公表した。 当該指針は、その後、 ①労働安全衛生法が改正され、危険性又は有害性等の調査およびその 結果に基づく措置の実施(リスクアセスメント*)が努力義務化されたこと ②機械類の安全性に関する国際規格等が制定されたことなどを踏まえ、 平成19年7月に改正され、機械の設計、製造、改造、輸入等(以下、 製造等)の実施事項、機械を労働者に使用させる事業者の実施事項が 新たに定められた。 *リスクアセスメント 事業場のあらゆる危険性、有害性を特定し、それらに起因するリスクの 大きさについて、発生可能性と重篤度の度合いから見積る。 明らかとなったリスクに対して、リスクを低減させるための措置を検討・ 実施することにより事業場の安全衛生水準を向上させていく先取りの 安全管理手法。(リスクアセスメントの基本手順) □機械の安全化の実施事項および手順 「機械の包括的な安全基準に関する指針」に示されている “機械の製造等を行う者の実施事項”および“機械を労働者に使用させる事業者の実施事項” は図のとおりであり、当該指針に基づく機械の安全化の手順を示しておきます。 □まとめ 「機械の包括的な安全基準に関する指針」は、新規に機械を導入する場合などを 想定しているが、機械設備に関係する労働災害を防止していくためには、既に設 置されている機械についても、使用者側で計画的にリスクアセスメントを実施し、 その結果に基づく適切なリスク低減対策を実施することが重要である。 また、当該指針においては、機械の設計・製造、機械の使用などに際して実施す べき具体的な保護方策を例示しているが、保護方策はそれらに限定されるもので はなく、機械の製造等を行う者や機械を労働者に使用させる事業者は、個々の機 械における危険有害要因や各事業場の状況等に応じて、有効と考えられる保護 方策を実施していくことが望まれる。 お問合せ・ご質問はこちら メルマガ登録(無料)はこちらから |