自社の危機管理

  危機管理体制確立のために

   企業を取り巻く環境にはさまざまなリスクがあり、発生する可能性も変化し続けて
   います。

   さらに、リスクは予期せぬときに突然危機に発展する可能性があり、予期せぬ
   危機は企業に大きなダメージを与えます。

   危機が発生する時期をあらかじめ予期することは非常に困難ですが、起こりうる
   可能性のあるリスクをあらかじめ予測し、それらの事態に即座に対応できる体制
   を整えることは可能です。


  危機に直面しての問題点 

    実際に危機に直面して困ったことについて、 圧倒的に多いのが「事実をつかむまで
   時間がかかった」という答えで、規模を問わず多くの企業がこう回答しています。

   危機管理において、未然の防止と並んで重要なのは起こってしまった危機に対する
   迅速で的確な対応ですが、正確な事実を把握することはそのための第一歩です。

   それにもかかわらず、事実の把握はなかなかスムーズに進んでいないのが現状のよう
   です。

   一方で、「特に困ったことはなかった」とする企業は3分の1以下にとどまっています。

   危機に直面した際には何らかの問題が生ずる覚悟をしておく必要があるでしょう。 

  □社内リスク

   一般的に社内で発生したリスクとしては、「労災」が最も高く、次に「盗難」や「社員の

   不正」が多く発生しています。

   また、今後多発する可能性が高いリスクをみると、「労災」や「盗難」が大きく低下する
   一方で、「社員の不正」は依然として高く、さらに「ネットワークの障害」、「雇用問
   題」が大きく上昇しています。

   こうした背景には、近年のインターネット環境における攻撃の多様化、景気回復に
   ともなう残業の増加や社員の帰属意識の低下などがあると考えられます。

  □危機管理体制の確立

   1.危機管理の基本
     冒頭で紹介したように、企業を取り巻く環境にはさまざまなリスクがあり、発生
     する可能性も変化し続けています。

     さらに、リスクは予期せぬときに突然危機に発展する可能性があり、予期せぬ
     危機は企業に大きなダメージを与えます。

     危機が発生する時期をあらかじめ予期することは非常に困難ですが、起こりう
     る可能性のあるリスクをあらかじめ予測し、それらの事態に即座に対応できる
     体制を整えることは可能です。

     こうした、危機を生み出すリスクの予測と対応体制の確立は危機管理の基本
     といえます。

     以下に企業を取り巻くさまざまなリスクと危機管理体制づくりのポイントをまと
     めてみます。

  2.企業を取り巻くリスク
    1.経済的リスク
       ・金利 ・為替相場 ・株式相場 

      近年の日本銀行の利上げが続けば、企業の資金調達コストは増加します。

      また、近年の円安は輸入原材料の価格を上昇させています。

    2.法的リスク
       ・知的財産権訴訟 ・環境保護関連法制度の強化 ・独占禁止法の強化

      米国では、特許をめぐる権利侵害訴訟が多発しています。

      日本でも、味の素や日亜化学工業が、元社員から発明の特許権と報酬をめ
      ぐる訴訟を受け、高額の和解金が支払われました。

      また、環境・リサイクル関連の法制度は、今後さらなる強化が見込まれ、対
      策費用の増加などのリスクが予想されます。

    3.人的損失リスク
       ・経営者や社員の死傷、重度疾病 ・ヘッドハンティング

      経営者の死去は、経営者の影響力が強い中小企業では特に、経営を揺る
      がす大事態に発展しかねません。

      また、近年は、社員の精神的な疾病による休職や突然の出社不能も大きな
      問題になっています。

    4.業界リスク
       ・競合企業の変化 ・業界全体の衰退

      日本でも盛んに行われだしたM&Aは、業界の勢力図を変え、過当競争を招
      くリスクを生みます。

      また、中国などからの安価な製品に押され、国内の業界全体が衰退していく
      リスクもあります。

    5.自然環境リスク
       ・大地震や風水害 ・長雨、冷夏などの天候不順 ・流行病の蔓延

      2004年の新潟中越地震、やスマトラの巨大津波、2011年の東日本大震災
      を例に引くまでもなく、自然災害はあがらうことのできない大きなリスクと
      なります。

      近年は、地球規模で天候の変化が激しくなっており、こうした自然環境リスク
      は増大しています。

    6.インフラ事故リスク
       ・電力や通信施設の事故 ・航空機、自動車事故の発生 

      2005年に起きたJR福知山線の脱線事故は、史上まれにみる大惨事となり
      ました。

      また、米国同時多発テロは特殊なケースですが、テロが起きた周辺地区に
      壊滅的な被害を与えました。

    7.社内的リスク
       ・工場、事務所の火災や事故 ・設備機械の故障 ・取引先企業の倒産
       ・機密漏洩 ・社員犯罪 ・商品製造工程の不備 ・個人情報の漏洩

      2005年の個人情報保護法の施行以降も、個人情報の漏洩・紛失が後を絶
      ちません。

      また、2007年1月に報道された不二家の期限切れ原料使用問題は、約2カ
      月間にわたる不二家洋菓子店舗の休業に発展し、2014年のまるか食品の
      ペヤングソースやきそばのゴキブリ混入問題では半年間の生産・販売を休
      止しました。

      危機につながる要因となるさまざまなリスクをいくつか挙げてみましたが、こ
      れだけの項目でも、それに該当するさまざまな事件や事故が発生しています。

      もちろん、今後新たなリスク要因も発生してくるでしょう。

      企業を取り巻く危機はありとあらゆるところに潜んでいると考えられます。

      企業には、いち早い危機管理体制の確立が求められているといえます。

  □危機管理体制づくりのポイント

   1.不測の事態を予測して行動計画をまとめる
     危機管理とは、自社の実態に即して考えうる限りの不測の事態を予測するこ
     とから始まります。

     そして、発生した場合に被害の大きいもの、発生する確率が高そうなものから
     対策を練ります。

     例えば、「もし重要なデータが入力されているコンピューターが壊れてしまった
     ら」と考えた場合、復旧のためには多大な費用や時間、労力がかかります。

     それを防ぐには、データのバックアップをとることや、複数のコンピューターに
     同じデータを保存させておくことが対策として考えられるでしょう。

     このように、まず予測される事態をピックアップし、その後にそれぞれの事態に
     対しての行動計画をまとめ、全社的に徹底していくことが大切です。

     なお、自然災害など、事業の存続が危ぶまれるようなリスク(BCP)に対する 
     行動計画のまとめ方についてはBCP(事業継続計画)の策定運用指針(中小
     企業庁)が公開が参考になります。

   2.保険の導入を検討
     危機の到来を想定した損害保険への加入も検討の対象になります。

     必要以上に保険を利用することは負担の増加につながりますが、発生した場
     合、重大な危機となるものに対しては、保険をかけることで万が一の事態に備
     えることができます。

   3.相談先を確保する
     法律的な問題や税務の問題など、社内では解決しにくい事態を想定しておくこ
     とも必要です。

     弁護士・税理士・司法書士など、訴訟などの事態が起こった場合にすぐに相談
     できる機関や団体を社外に確保しておくことが重要といえます。

   4.トップに直結した情報伝達経路をつくる
     不測の事態が発生してしまった場合、まずは情報を集めることが最重要事項
     です。

     正確な情報が入らないまま行動を起こすことは、その後の体制に悪影響を及
     ぼす恐れがあります。

     加えて、仮に危機管理専任の部署があったとしても、不測の事態が発生したと
     きに即座に判断を下せるのはやはり経営者です。

     トップに直結した情報伝達経路は素早い危機対応には欠かせないものとなり
     ます。

   5.導入にはトップダウンが有効
     特に中小企業の場合、人的な問題から専任の危機管理担当者をつくることは
     難しい面もあります。

     その場合は社内の既存部署などが危機管理担当を兼務することになります
     が、そうした際の社員への意味付けや全社的な危機管理意識の浸透のため
     には、経営者自身が意識を高めて自ら行動することが最も効果的な手法とな
     ります。

     危機管理は、実際に不測の事態が起こらない限り「事前対策が適切だったの
     かどうか」を判断しにくいものです。

     そうした結果のみえにくい業務は、負担の増加だけが目立って社内の理解も
     得られにくいため、経営者が率先して取り組む必要があります。

   6.とにかく始める
     危機管理とは、システムではなく意識の在りかたにこそ、その本質があります。

     つまり、完璧なマニュアルを作ることが危機管理なのではなく、完璧なマニュア
     ルで危機に対応しようという意識の高まりを行動に移すことこそが危機管理な
     のです。

     危機管理には、最初に始めなくてはいけないというものはなく、必ずやらなけ
     ればならないものがあるわけでもありません。

     まずは、自社にとって重要だと思われることのうち、できることから一つずつ始
     めていくことが大切といえるでしょう。

     小さなことからでもとにかく取り組みを始め、日常の業務としての危機管理を
     定着させることが、危機管理体制確立への第一歩なのです。
    
  □「予防」・「防護」とリスクコスト 
   日米間の「安全」へのアプローチの違いを例に考えてみよう。

   「日本の安全は予防(Prevention)で支えられている」といわれ、「米国の安全は防護
   (Protection)で支えられている」といわれる。

   「予防」とは、事故や災害を未然に防ぐ活動全般を指し、従業員の教育や事前の点検
   、整備など日常の活動が中心に据えられる。

   一方、米国式の「防護」とは、事故や災害が発生した場合の悪影響の拡大を防ぐ手段
   と定義できる。

   例えば、スプリンクラーや消火器、消防隊の消火訓練などには、火災の発生を抑える
   効果は全くない。

   全て火災が発生した後に活躍するもの。

   火災を例に取ると、火災報知設備、防火区画、建物の非常階段、消防署が設置され
   ていることも、消防車が近づけるように建物の周囲に道路が確保されていることも
   「防護」に当たる。

   比較してみると、日本では平常時は、これらの目的は安全から離れ、「企業活動を
   円滑に」とか「操業を止めないために」などという言葉に置き換えられ、理解されて
   います。

   言い換えれば、これらにかかるコストは、リスクコストと認識されていない(目に見え
   ない)ということになる。

   米国の「防護」のほとんどが物理的な設備の充実を前提としており、即、コストに反映
   される対策であることもわかる。

   日本のリスクコストが相対的に低いわけではなく、目に見えにくいということがいえる。

  □企業リスクマネジメントの対象リスク
   事故・災害リスク:火災・爆発・洪水・地震・落雷・交通事故・航空機事故・労働災
               害・通信途絶・コンピュータダウンなど

   法務(訴訟)リスク:製造物責任訴訟・知的財産権訴訟・環境汚染責任の発生・そ
               の他利益侵害による訴訟提起および規制違反等による罰則
               の適用など

   財務リスク:投機失敗・不良債権の発生およびその処理・企業買収・株価の急変・
           資産の陳腐化など

   経済リスク:金利変動・為替変動・税制改正・金融不安全般など経済関連の外部
           要因など

   労務リスク:雇用差別問題の発生・セクハラ・役職員の不正・スキャンダルの発
           生・求人難・リストラ・労働争議など

   政治リスク:戦争・革命・動乱・制度改正・貿易制限・非関税障壁・外圧など

   社会リスク:企業脅迫・誘拐・テロ・機密漏洩など

  □リスク対策
   対策は大きく「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」に分けられる。

   リスクコントロールは、損害予防または拡大防止などの技術操作であり、リスクファ
   イナンシングは損害発生を予想した、損害発生後の資金操作をいいます。

   リスク対策は、第一に「予防」、次に「防護(防御)」、最後に「保険などへの移転」と
   進むが、それでも企業には「保有損失=リスクコスト」が残る。

   リスクマネジメントでは、この「保有損失」を最小化することを目標とします。

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