リコールは迅速かつ的確に


  ■製品事故の発生を完全になくすことは難しい

   2014年末に、自動車用エアバッグや即席麺など、製品のリコールが大きく報じられた
   ことなどを受け、自社の製品安全管理について、社内外からの情報に迅速かつ的確
   に対応できる組織体制の整備や継続的な改善の必要性を改めて認識した企業も少な
   くないでしょう。

   消費者に安全な製品を供給することは企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくすことは
   難しいと言わざるを得ません。

   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備
   をし、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施しなければなりません。

  □消費者全体の立場で考える必要性の高まり

   即席麺のケースでは、メーカーは、製品に異物(虫)が混入していたという消費者から
   の苦情に対し、外部機関へ分析を依頼し、その報告を基に検証を行った結果、製造
   過程での異物混入の可能性が否定できないため、当面の間、全工場での生産を自粛
   するとともに全ての製品の販売を休止し、自主回収を行っていました。

   なお当時、本事案に関連する健康被害については2014年12月11日時点で確認されて
   いないとのことでした。

   健康被害拡大の恐れがない限り、個別対応で済ますこともできたかもしれませんが、
   消費者がTwitterで苦情を発信し、その情報が拡散した点がこの事案の特徴といえ
   ます。

   SNSなどを通じて情報が拡散するのが当然のこととなった現在、企業には、製品事故
   による社会的信用の失墜・ブランドイメージの低下を最小限に抑えるための対応が
   必要となります。

   それには、苦情の当事者の被害回復のみならず、消費者全体の立場で考えた上で、
   リコール実施の判断を下すことが求められるといえるでしょう。

   リコールへの備え

   PL 法を使って製造業者の責任追及ができるかというと、製品を市場に出してから
   10年を経過した時は、損害賠償請求権は時効で消滅するという規定(PL 法5条)が
   あり、被害救済には役立ちません。

   人的危害を生じる製品を製品使用者に供給することは、製造物責任法上の責任を
   問われるだけでなく、刑事上の業務上過失致死罪等の法的な責任が問われる場合
   があります。

   加えて、製品使用者への人的危害が拡大する可能性がある場合、拡大防止のための
   迅速かつ的確なリコール等の対応を実施しないと、行政処分の対象となるだけ

   でなく、損害賠償責任や、刑事責任を問われる場合があります。

   事業者が日頃から製品安全管理の徹底に努め、事故等の発生ゼロを目指すことは
   極めて重要であるが、実際に事故等が発生した場合に、迅速かつ的確なリコールを
   実施することが、適切な製品安全管理と同様に極めて重要です。

   さらに、事業者が迅速かつ的確なリコールを実施し、製品使用者へ、より安全な
   製品を提供することこそが、リコールについての消費者、行政機関等の正しい理解

   および報道機関の適正かつ公正な評価・報道につながるのです。

   事業者にとって、製品使用者に安全な製品を提供することは基本的な責務です。

   しかしながら、 現実には周到な製品安全管理を行ったとしても、あるいは近年の
   技術進歩をもってしても、製品に起因する事故等の発生を完全にゼロにすることは
   極めて困難であります。

   このため、事業者は事故の発生または事故の発生を予見させる欠陥等の兆候を発見
   した段階で、事故の発生や拡大の可能性を最小限にする対応を取る必要があるのです。

   例えば事業者が自主的に迅速かつ的確なリコールを実施することは、製品使用者の
   安全確保の観点および事業者のコンプライアンス(法令遵守)経営の観点から

   当然の責務と考えられます。

   国民の生命・身体に関わる重大な製品事放の回避に向けて、必要な情報を消費者に
   対して適宜提供するため、消費生活用製品安全法(以下「消安法」)では、

   消費生活用製品(主として一般消費者の生活の用に供される製品をいい、
   市場で一般消費者に販売されている製品のほとんどが該当します)に係る製品事故
   などについて、製造事業者・輸入車業者だけに限らず、販売事業者や修理・設置工事
   事業者に対しても「情報の収集及び提供の責務」「重大製品事故の報告等」
   「危害の発生及び拡大を防止するための措置」に関する規定を設けています。

   なお、消安法で除外されている食品・食品添加物・洗浄剤、医薬品・医薬部外品・
   化粧品・医療機器、道路運送車両、船舶などについては、食品衛生法、薬事法、

   道路運送車両法、船舶安全法など個別の法律によって、安全に関する規制が図られて
   います。

   消費者に安全な製品を供給することば企業の責務です。

   しかし、周到な製品安全管理を行っていても、製品事故の発生を完全になくす
   ことは難しいと言わざるを得ません。


   そのため、企業は日ごろから製品事故の発生を想定してリコール対応のための準備をし、
   製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施しなければなりません。
 

   「消費生活用製品のリコールハンドブック 2019  ( 出典:経済産業省)によると、
   リコールの開始およびその後のモニタリングの流れのイメージは次の通り(P27)です。


   リコール対応のための準備を怠ると、対応に長い時間がかかる上、結果的に消費者から
   「製品事故の発生を隠そうとした」と受けとめられかねません。

   また、消費者への人的危害が発生・拡大する可能性があることに気付きながら
   リコールなどの対応を行わず、そのために死亡事放や火災など重大な被害を
   引き起こしてしまった場合、行政処分の対象となるばかりか、損害賠償責任や
   刑事責任を問われることとなる 。

   一方、製品事故の発生またはその兆候を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを
   自主的に実施すれば、「消費者や取引先からの不信感の増大」「社会的な信用の
   失墜による業績の悪化」「従業員などの士気の低下」といったリスクを最小限に
   とどめることができるでしょう。

   リコールに備えるためには、あらかじめルール(リコール対応に関する規程を定め、
   「消費者の安全確保」を重視する企業としての姿勢を従業員などが全員で共有する
   ことが不可欠です。
 


   以下は、経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック 2019」からの
   
事故情報報告・リコール報告フォーム」です。 

   なお、死亡や火災などにつながる重大製品事故の発生を知った製造・輸入車業者は、
   消安法に基づき消費者庁消費者安全課へ事故の情報を報告することが義務付けられて
   います。


   重大製品事故以外の製品事故については、製品評価技術基盤機構(NITE)への
   報告が求められます。

   製品評価技術基盤機構は、消費生活用製品などに関する事故情報の収集を行い、
   その事故原因を調査・究明し、さらにその結果を公表することによって、事故の
   未然・再発防止を図っています。
 

    消費者庁:消費者安全課

    製品評価技術基盤機構:製品安全分野 

   また、リコール実施に際し、社告を作成する場合、 JIS S OlO4「消費生活用製品の
   リコール社告の記載項目及び作成方法」(
2008 6 20 日制定)を参考とする
   ことができます。

   JIS 規格については次のウェブサイトで検索・閲覧することができます。

    日本工業標準調査会「JIS 検索」
 
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