卸売業の営業マン育成
 

  ■卸売業の営業マンの要件

   1.卸売業の営業マンの役割

     従来、卸売業の営業マンの仕事は、定期的に得意先の小売店をまわって定番
     商品の在庫を確認し必要に応じて発注を行う、商品の代金を回収する、新し
     い商品の注文をとるといった、いわばルーチン的な仕事が中心でした。

     しかし、小売店のEOS(※)導入が進み定番商品の発注はパートでもできるよ
     うになり、商品代金の銀行振込が一般化するなど、これらの業務を営業マンが
     行う必要がなくなってきました。

     一方、規制緩和などにより競争が激化した結果、小売業各社は生き残りをか
     けてさまざまな売上拡大や経営改善の方策を打ち出すようになり、卸売業者
     に対しても情報握供や経営力強化策の提案など、戦略的な支援を求めるよう
     になってきました。

     このような新しい環境のなかで、卸売業の営業マンに求められる役割は、

      単なる受注・代金回収業発から

      取引先小売業の経営支援(リテールサポート)へと、大きく変化

     しているのです。
      ※EOS(Electronic Ordering System)……POS(バーコードを使用した販売情報管理)
        機能の活用により、受発注をシステム化して、商品の補充を効率化するシステム。


   2.リテールサポートに必要な営業マンの条件

     リテールサポートとは、商品や競合状況などの情報提供に加え、販売促進活
     動の提案、売場の改善や資金繰り方法の改善提案など、小売業の経営をさま
     ざまな角度から支援する活動を指します。

     リテールサポートを行ううえで重要なことは、「自社の取扱商品を増やすため
     にとにかく商品を押し込む」のではなく、あくまで小売店の経営改善を第一義
     に考えるということです。

     リテールサポートは短期的な売上増をめざすものではありません。

     徹底した小売店支援によって強固な信頼関係を構築し、小売店にとって自社
     がなくてはならない存在になることがその目的なのです。

     また今後のリテールサポートは加速する消費者ニーズの変化に対応するため
     に、メーカー、卸、小売の3者がそれぞれの強みをいかして行う「協調型」であ
     ることが一層求められるでしょう。

     そしてその中でリーダーシップを発揮できる卸売業者こそが同業他社に打ち
     勝っていけるのです。

     このように卸売業がリテールサポート力を強化するには、

      商品知識、業界知識など専門分野に関する知識に加え、財務分析や
      マーケテイングなど経営診断に関する知識や問題解決思考技術、
      企画力をもった人材の育成が不可欠になります。

   3.リテールサポートに必要な知識・技術

     (1)業界専門知識

       業界動向、商品、物流、販売技術に関する知識、EOSなどの情報化の知
       識、業界関連法知識など

     (2)経営知識

       財務分析、マーケティング、店舗開発、組織運営、人材育成に関する知識
       など

     (3)その他必要な能力

       問題解決思考技術、企画・提案力、折衝力など

  □営業マンの育成方法

   1.人材育成のおもな方法
      
      (1)OJT

      (2)O ff‐JT

      (3)自己啓発

     の3つがあります。

   2.育成プログラム作成の留意点

     リテールサポートを行うためにはさまざまな知識や技術が必要であり、それら
     をすべて身につけさせるには、長期的な育成プログラムが必要です。

     育成プログラムは、次のような点に留意して作成します。

     (1)十分な動機づけを行う

       いかに優れた育成プログラムを作ったとしても営業マン自身がやる気を
       もって取り組まなければ成長はおぼつきません。

       「業界はどのような状況になっているのか」、「会社としてどのような人材が
       必要か」を十分に説明したうえで、「自分はいつまでにどのような能力を身
       につける必要があるのか」を営業マン自身に考えさせることが必要です。

     (2)必要な知識や技術の基準を決める

       業務経験年数や職位と照らし合わせて、どの時点でどのようなことができ
       なければならないかという業務の基準を定め、これを達成するために必要
       な知識や技術とその修得レベルの測定基準を定めます。

     (3)習得させる知識や技術の教育計画をたてる

       必要な知識や技術とそれを修得させる時期が決まったら、それに合わせて
       計画をたてます。

       そして、修得させる知識や技術ごとに、それらの教育方法を決めます。

     (4)業務での実践状況と教育計画を見直す

       知識や技術を身につけることが目的ではなく、実際にリテールサポートを行
       えることが教育訓練の目的です。

       したがって業務の現場でリテールサポートがどの程度行えるのか、遂行状
       況から教育訓練の成果の評価をしなければなりません。

       効果が出ていないようであれば、その他の要件もふまえながら、教育訓練
       を見直します。

  □営業マンが育つ環境条件

   いくら教育訓練を熱心に行ったとしても、営業マンが育つ環境がなければ教育の
   効果は期待できません。

   次の環境が整備されていることが、営業マンの育つ条件になります。

   (1)評価制度の確立

     短期間で能力を高めたり、的確なリテールサポートで取引先の業績を向上さ
     せても、それらが昇級や給与面で反映されなければ、社員の意欲は減退しま
     す。

     能力や実績を客観的に評価し、それらを処遇に反映させる評価制度の導入が
     不可欠です。

     具体的には等級ごとに必要な能力の要件を定めた「職能資格制度」や、業績
     の一定割合を給与に連動させる「業績給」の導入などが考えられます。

   (2)能力を発揮しやすい労働環境

     取引先の小売業を支援しようという意欲があっても、従来のご用聞き的な業務
     に忙殺されほかに手が回らないという状況であればリテールサポートを行うこ
     とはできません。

     会社としてリテールサポート力を強化するというのであれば、単純業務をパー
     トタイマーに割り振る、効率化のための設備導入を行うなど、営業マンがリ
     テールサポートに集中して取り組める環境整備を行うことが必要です。

   (3)リテールサポートメニューの準備

     教育訓練をしただけで実際のリテールサポートメニューがなければ、リテール
     サポートは営業マン個人の裁量で行われ、質や内容にもばらつきが出てきま
     す。

     また、効果的な棚割やEOSなど、全社的な対応が必要なシステムの導入に関
     しては、個人で対応できる範囲が限られています。

     したがって、会社としてどのようなリテールサポートを行うかを検討し、リテール
     サポートメニューをあらかじめ決めておく必要があります。

     またこのメニューは単に「○○を○○する」といった行動レベルのメニューだけでは
     なく、その結果「小売店にこのようなメリットを与える」という本来の目的が明確
     になっていなければなりません。

     さらに実際のリテールサポートを行うなかで当初予定した以外のメニューが必
     要になることもありますので、順次メニューを追加していきます。

                      お問合せ・ご質問こちら

                      メルマガ登録(無料)はこちらから

 

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月24日
記事:コストダウンの最終目標」更新しました。 
2024年4月23日
記事:保険代理店業の環境整備 Ⅱ」更新しました。
2024年4月22日
記事:「オンリーワンを目指す」 更新しました。
2024年4月19日
記事:「効率的な仕事の進め方 Ⅱ」更新しました。
2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501