流通業
卸売業の経営力強化
 

  ■営業活動の効率化

   1.これまでの営業活動の効率化だけでは限界

     今まで生産者はモノを作るだけ、問屋(卸売業者)はモノを集めて流すだ
     け、小売店は流れてきたモノを店頭に並べるだけでよかった。

     「販売なくして事業なし」とはいいますが、生産者も問屋も、そして小売店も、
     販売はやっていなかったのです。

     作る、流す、並べるという役割分担を担っていただけにすぎません。

     販売とは、コト(意味のある体験を提案する)を実現させるためで、気づいてい
     ないニ−ズを気づかせることです。

     そんなことは誰もやっていません。

     やる必要がなかったのです、今までは。

     生産者は売れ筋をいかに効率よく作るか、問屋は売れ筋をいかに効率よく流
     すか、小売店は売れ筋をいかに効率よく並べるか、それだけを考えていれば
     経営を間違うことはなかったのです。

     これが今までの売り方でした。

     従来、卸売業の営業活動は定期的に得意先の小売店をまわって定番商品の
     在庫を確認し必要に応じて発注し、その際、商品の代金を回収したり、新しい
     商品の注文をとったりする仕事が中心でした。

     つまりルーチンワークをいかに効率的に行うかということが営業活動の大きな
     テーマだったわけです。

     しかしEOSの普及などにより、このような「ご用聞き営業」の比重は小さくなり
     ました。

     一方、規制緩和などにより競争が激化した結果、小売業各社は生き残りをか
     けてさまざまな売上拡大や経営改善の方策を打ち出すようになり、卸売業者
     に対しても情報提供や経営力強化策の提案など、戦略的な支援を求めるよう
     になってきた。

     したがって卸売業の営業活動の効率化を考えるときには、卸売業の新しい営
     業のあり方を考えたうえで、新しい活動に積極的に取り組むために、従来の業
     務をいかに効率化するかという視点が必要になります。

   2.リテールサポート力が営業力を決める
     前述のように小売店は生き残りをかけてさまざまな経営努力を行っています。

     注文した商品を届けてくれるだけの卸売業者には魅力を感じなくなってきてい
     ます。

     小売店は自分達と一緒になって自社の経営力向上に努力してくれる卸売業者
     を求めています。

     小売店の視点からは発見しにくい改善課題などを指摘し、その解決に向けて
     支援を惜しまない卸売業者を探しているのです。

     このように、たんに売れ筋商品を確実に提供するといった狭い範囲ではなく、
     小売店の経営全般を支援する活動(リテールサポート)が重要となります。

     リテールサポートを行ううえで重要なことは、「自社の取扱商品を増やすため
     にとにかく商品を押し込む」のではなく、あくまで小売店の経営改善を第一義
     に考えるということ。

     リテールサポートは短期的な売上増をめざすものではありません。

     徹底した小売店支援によって強固な信頼関係を構築し、小売店にとってなくて
     はならない存在になることがその目的なのです。

     また今後のリテールサポートは加速する消費者ニーズの変化に対応するため
     に、メーカー、卸、仲卸、小売がそれぞれの強みをいかして行う「協調型」であ
     ることが一層求められるでしょう。

     そしてその中でリーダーシップを発揮できる卸売業者こそが同業他社に打ち
     勝っていけるものと思われます。

  □従来の業務のあり方を見直す

   営業活動を効率化していくためには、従来の業務のあり方を見直し、営業マンが
   リテールサポートに注力できる環境を整えていかなければなりません。

   自社の業務のあり方に次のような問題点がないか確認してみましょう。

   1.無駄な時間や雑務が多い

     中小の卸売業では、商品の配送も営業マンが行っている例が多数みられる。

     また取引先のEOS導入が進んでも、実際の発注作業は卸売業の営業マンが
     行っているというケースもあります。 

     これらの社外業務に加えて、伝票作成からミーティングなどまで、こなさなけれ
     ばならない社内業務も多く、その結果、肝心の新規取引先の開拓やリテール
     サポート活動に十分な時間が費やせないという状況に陥ってしまいがちです。

     従来営業マンが行っていたこれらのルーチン業務は、マニュアル化すること
     で、その多くはパートやアルバイトに任せることが可能になるはずです。

     担当の社員はその確認のみ行うことによって、ルーチン業務以外に時間を振
     り分けることができます。

     言い方を変えると、営業マンからこれらのルーチン業務を「取り上げる」こ 
     とによって、営業マンはリテールサポートという新しい仕事、頭を使う仕事
     に取り組まざるを得なくなります。

     「雑務で忙しいから」という言い訳ができない状況を作ってしまうことが大切な
     のです。

   2.取引先の状況に応じた労力の配分ができていない

     「営業活動の強化=訪問回数の増加」という単純な目標設定により、ただやみ
     くもに得意先を訪問する営業マンもいますが、これは効率的な営業活動とはい
     えない。

     得意先のなかには取引規模の大きなところと小さなところ、将来の成長が見
     込めるところとあまり見込めないところなど、状況に違いがあるはずです。

     にもかかわらず、どの取引先に対しても均等な時間を割くのは得策とはいえま
     せん。

     自社との取引状況や、先方の成長力などに応じて「最優先顧客」、「優先顧
     客」、「一般顧客」といった具合に顧客の重要度に応じてランク分けを行い、ラ
     ンクに応じた時間の使い方を工夫するようにします。

   3.営業担当の分類基準が不適切

     通常、営業担当の分類基準は、取引先の業種別や地域別になっています。

     業種別で決められている場合、取引先の業種に精通できるため、顧客のニー
     ズにきめ細かく対応できるというメリットがありますが、その一方で、取引先の
     所在地が分散してしまうため、効率的な訪問活動ができないといったデメリット
     もあります。

     地域別で決められている場合は、メリット・デメリットが反対になります。

     いずれの基準で営業担当を分類してもメリット・デメリットはあるため、双方を
     考え、より効率的に営業活動が行える分類基準を選ぶ必要があります。

     たとえば、大型の総合卸売業の地方進出に対して地方の中小卸売業がこれら
     大企業に対抗するためには、地域に特化したきめ細かな対応が求められてい
     ます。

     こうした環境もふまえて、より自社の強みを発揮できるように、現在の営業担
     当の分類基準を見直す必要があります。

   4.勤務体制の硬直化

     いったん出社してから取引先へ向かうのでは、通勤や取引先への移動に無駄
     な時間がかかります。

     直行直帰の勤務体制を導入することにより、移動に費やす時間を減少させ、
     その分、営業活動に時間を振り分けられるようになります。

     かつては直行直帰では情報交換がしにくい、業務を管理できない、といった問
     題もありましたが、最近は携帯端末などの情報機器の導入でこういった問題も
     解決されています。

     また、日報などで報告を義務づけることにより、毎日出社しなくても営業マンの
     営業活動を把握することはできます。

  □リテールサポート力強化のための環境整備

   従来の業務のあり方を見直したうえで、営業マンが有効なリテールサポートを行
   えるように新たな施策を打つ必要があります。

   1.リテールサポートメニューを整備する

     リテールサポートにはさまざまなメニューが考えられます。

     店舗業務を手伝うという日常的なものから、商品ごとの売上情報を提供する、
     販促企画を支援する、経営相談に応じるなどさまざまです。

     また顧客の状況によっても提供すべきリテールサポートメニューは違ってきま
     す。

     たとえば前述の顧客ランクによって、リテールサポートをどこまで手厚く行うべ
     きかも違ってくるでしょう。

     顧客の状況に応じてどこまでのリテールサポートを行うか、あらかじめ検討し、
     営業マン全員が共通認識をもっておくことが大切です。

   2.営業マンに新しい知識を吸収させる

     「ご用聞き営業」から脱皮し、本当に顧客に喜ばれるリテールサポートを行って
     いくためには営業マンはさまざまな知識を身につけなければなりません。

     リテールサポートとは顧客の経営全般の支援活動ですので、見つけるべき知
     識は商品知識、業界知識のみならず、消費者ニーズを収集し分析するための
     知識、企業経営に関する知識など多岐にわたります。

     自社で教育プログラムを作る方法もありますが、専門機関が提供している教
     育訓練を利用すれば比較的容易に教育プログラムが作れます。

   3.リテールサポートに使える情報やツールを整備

     営業マン各人が取引先の役に立ちたいと考えていても、売れ筋情報や効果的
     な棚割りなど有効な情報が社内に整備されていなければ、効果的なリテール
     サポートは行えません。

     このため携帯端末を導入する企業も増えている。

     企業によっては、小型パソコンのような携帯端末を全営業マンに配布し、取引
     先へのタイムリーな情報提供だけでなく、日報管理に利用しているところもあり
     ます。

     このように、情報機器など営業支援ツールを効果的に使うことで、情報提供力
     を高めたり、営業活動を効率化したりすることができるのです。

     機器類と同様に、情報などのソフト面の充実も不可欠です。

     棚割りソフトや売れ筋・死に筋商品情報など、リテールサポートに必要なソフト
     ウエアや各種情報を取り揃えることでリテールサポート力強化につなげること
     ができます。 

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