流通・サービス業の生産性向上策
 

  流通・サービス業の生産性向上策について、主に①付加価値率の向上、②人時生
  産性の向上、③店舗リニューアルと設備機械の充実の三つの視点からみてみま
  す。

  付加価値率の向上

    流通業・サービス業における生産性向上対策では、まず何よりも付加価値率を
    向上させることですが、流通業・サービス業の付加価値率の向上対策には、
     ①商品・サービスの高付加価値化または商品回転率の向上
       (在庫の圧縮)による付加価値の増大

     ②仕入原価・仕入れコストの低減

     ③物流コストの低減などがあります。

   (1)商品・サービスの高付加価値化または商品回転率の向上

      商品・サービスの高付加価値化には、商品・サービスそのものが高い付加価 
      値をもつ高付加価値商品を扱う場合と、立地や集客条件に見合ったストアロ
      イヤリティーを確立することによって、ハイグレードな客層を吸引して、高付
      加価値化を図るケースとがあります。

      前者は、有名ブランド商品の取り扱いやオリジナル商品の開発、輸入品の取
      り扱い、ヒット商品・ブランド商品の取り扱いなどによって実現されますし、後
      者は、ストア・アイデンティティーを転換し、店舗を高級化することによって達
      せられます。

      高付加価値化を成功させるためには、商品の高度化と店舗の高級化、接客
      演出の高度化を総合的に計画し、トータルな戦略的展開を行うことが重要。

      また、最近の景気低迷下での付加価値向上策として、ディスカウント化によ
      る商品回転率の向上による商法が注目を浴びていますが、これは、店舗施
      設をはじめ、徹底的な固定費削減によって、商品の廉価化を進め、いわゆる
      薄利多売方式によって必要な付加価値を確保しようとするものです。

      以上の二つの方法のうち、いずれをとるかは、店舗経営のあり方に大きくか
      かわる事柄ですので、店舗コンセプトをしっかり確立したうえで方針化するこ
      とが大切です。

    (2)仕入れ価格の低減

      仕入原価の低減のためには、共同購入や新しいチャネルの開拓が望まれま
      すが、その際、セントラル・バイイング(集中仕入れ)方式や物流チャネルの
      短縮などについても検討すべきです(仕入コスト低減の方策は、図のように
      まとめることができます)。

    (3)物流コストの低減

      物流コストは、ロジスティックスすなわち発注・運搬・在庫(保管)など商品の
      流れに伴って発生します。

      発注の合理化のためには、EOS、VANなどを活用することが有効ですし、ま
      た、輸送コスト低減のためには、ロジスティックス全体を総合的に見直し、必
      要によっては、配送の外注化を進めたり、在庫管理の方法を改善します。

      このほか、ケースサイズ、単品サイズ、配送経路、ハンドリング方法などにつ
      いても検討、改善することが大切です。

      さらに、在庫(保管)コスト低減のために、ピッキング(出庫)の改善が重要。

      特に、卸売業では少量多品種、多頻度の物流に対応するためのオーダー・
      ピッキング・システムを導入し、作業を標準化・単純化することが有効で、こ
      のシステムによって、ピッカー(出庫担当者)をパート化、アルバイト化するこ
      とが可能となり、保管コストを低減することが期待できます。

  □人時生産性の向上対策

   (1)従業員の多能化と作業の標準化

     流通・サービス業、特に店舗展開をしている小売業・サービス業における労働
     時間は、従業員の在店時間としてとらえられます。

     開店している限り「人」がいなければならないので、省人化は非常に困難にみ
     えます。

     しかし、スーパーを例にとりますと、その後方(バックヤード)作業は、100種類
     以上にのぼるといわれるように、流通・サービス業でも、店頭の仕事以外に多
     くの作業があります。

     これらの作業を何人でこなすかは、それぞれの店舗によって異なりますが、作
     業マニュアルをつくったり、教育訓練を強化して多能化を進めることによって、
     相当程度の省人化を図ることができます。

     流通・サービス業での従業員の多能化を進めるには、このように業務運営方
     式を見直したり、作業分析・作業動線分析等を行って、一つひとつの作業を単
     純化・標準化・マニュアル化し、できるだけ多くの作業を誰もができるようにす
     ることがポイントです。

     また、こうして従業員の多能化を進める一方、伝票・帳票の簡素化、作業時間
     帯の変更、会議のスケジュール化・短時間化などを進めることによって、省人
     化、省時間化を一層進めることが大切です。

   (2)ショートタイム従業員の戦力化

     流通・サービス業における人的生産性向上対策で、パートやアルバイトの活
     用・戦力化は不可欠です。

     確かに、専門店やサービス業の店頭接客には商品知識やセンス、接客術など
     の専門性が求められるために、パートやアルバイトの導入がむずかしいとか、
     彼らにレジ締めをやらせるわけにはいかないなどといって、その導入に消極的
     な傾向もあります。

     しかし、専門店を含む小売業やサービス業では、1日のうちの繁閑の差が大き
     く、パートやアルバイトなどのショートタイム従業員の活用の場は非常に広い
     はずです。

     パートやアルバイト活用の視点とその戦力化の対策のポイントは、

      ①パートやアルバイトを単に正社員の補助的労働力と考えたり、
       人件費の軽減だけを目的とするのではなく、より強力に戦力化
       するという視点に立つこと。

      ②特に量販店やチェーン店などでは、パートやアルバイトにも一定
       の権限を委譲し、やる気と責任をもたせるようにすること。

      ③業務をできるだけ単純化・標準化・マニュアル化し、教育訓練を
       徹底すること。
       できれば、教育訓練カリキュラムやマニュアルをつくり、パートや
       アルバイト自体を教育訓練の指導者として育てるくらいに徹底
       すること。

      ④パートやアルバイト向けの職能ランクを設けて、職務内容や
       権限、時給などについても職能ランクによって決めるように
       すること。           
       また、必要に応じて社員登用制度を設けること。

     専門店におけるパートやアルバイトの戦力化も基本的には、このような制度や

     対策が有効ですが、専門性や即戦力という要素を満たそうとするなら、退職社
     員の再雇用やセールスアシスタントなどショートタイムの専門職の導入も効果
     的です。

     さらに、専門職のショートタイム従業員の採用を容易にするには、働く側に勤
     務時間を選択させる選択時間制パートタイム制度が有効といえます。

   (3)客待ち時間と要員の有効活用

     流通・サービス業での人的生産性向上を考える場合、客待ち時間の有効活用
     は非常に重要です。

     例えば、専門店の場合、それまで特定の人にしかできなかった作業を標準化・
     単純化することによって、客待ちのため手空きとなった従業員がそれらを代替
     します。

     量販店では、商品の陳列や補充、ディスプレーの変更などを閉店後でなく客の
     少ない時間帯に変更するなど、人と時間を有効に活用することによって省人
     化、省時間化が図れます。

     また、客待ち時間を教育や会議などに利用したり、品揃えの研究などに利用
     することも重要です。

     人の有効活用では、LSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)などの時間  
     管理技法を活用すると効果的です。

     これは、あらかじめ一つ一つの作業ごとに決められた標準時間に基づいて、1
     日の作業の繁閑に合わせて必要な人員をコンピューター(マニュアルでも可
     能)によって管理し、必要な要員を適切に配置しようとするシステムです。

     その際、ショートタイム従業員の効果的な活用がポイントとなります。

     要するに、LSPは作業工数分析による要員管理の手法の一つですが、これを 
     利用した流通・サービス業での生産性を計る計数技法として、

      “人時生産性”(1人1時間当たりの売上高または粗利。
      「売上高(粗利高)÷総労働時間」で表示)管理

     が有効です。  

     “人時生産性”の向上のためには、従業員1人1時間当たりの作業工数を増や

     し、総労働時間を短縮することが必要ですから、LSPと“人時生産性”管理は
     表裏一体の働きをします。

     また、チェーン展開をしている専門店などの要員管理のポイントには、次のよ
     うなものがあります。

      ①ブロックや物流部門などの店舗のバックアップを行う部門への
       従業員の重点配置を行う。

      ②近接地域(エリア)での店舗間の応援体制の確立や、大型店・
       小型店の組み合わせによる要員配置の効率化を図る。

      ③早番・遅番・土日集中勤務体制など、繁閑に合わせた勤務
       シフト体制や、曜日特定・時間帯特定のパートタイマー制の
       導入によって、客待ち時間そのものを少なくする。

  □店舗のリニューアルと設備機械の更新

   流通・サービス業における設備機械の改善による生産性向上対策には、

    ①店舗のリニューアル

    ②設備機械、什器の改善

    ③POSシステムやEOS、VANの利用

   などがあります。

   「三年たったら部分改装、五年たったら大改装せよ」という店舗管理の格言があり
   ますが、店舗にもライフサイクルがあり、衰退期には客足が鈍り、売上高の停滞・
   低迷という現象が起こってきます。

   したがって、店舗のライフサイクルを把握して、計画的にリニューアルやリフレッ
   シュを行うことが大切です。

   店舗のリニューアルや設備・什器のリフレッシュを行う場合の留意点としては、次
   のような点が考えられます。

    ①店舗のリニューアルに際しては、例えば、ファッション性を打ち出すとか、
     客層を絞って業態型店舗にするというように、コンセプトを明確にする。

    ②客動線(顧客のための通路)、販売員動線(接客動線、作業動線)、商品
     動線(荷さばきや搬入動線)について検討し、店内通路のとり方を工夫する。

    ③業種や業態を変える場合や販売品目を変える場合に、客層やイメージに
     合うように、什器・設備の全面的なリフレッシュを行ったり、視認率を改善
     するために照明を工夫する。

   また、主として小売業・卸売業の生産性向上のツールとしてPOSやEOS、VANの
   活用も重要です。

     EOS:電子発注システム(Electronic Ordering System)

     VAN:付加価値通信網(Value-Added Network)

   中小企業の多くでは、こうしたソフトウェアを十分使いこなすだけの経営管理のレ
   ベルにないといった問題点もありますが、研究する必要があります。

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