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小売業のマーケティング |
■カスタマー・シェアの拡大と顧客差別化の重要性 これまで小売業では、定期的に特売品の広告を打ち、価格志向の顧客を引きつ しかし、小売業において経験的に知られ指摘されていることに、 価格志向の顧客のうち、優良顧客となるのは一握りであり、 ということがあります。 こうした実状を踏まえると、顧客を選別してセグメント化したうえで顧客の貢献度 そのためには、 データにもとづき、売上高に貢献している顧客を見極めて、 になります。 これは「ワン・トウ・ワン・マーケティング」と呼ばれているものの実践であり、個別 小売業のマーケティングでは商品管理が中心に据えられています。 POSによる単品管理により売れ筋と死に筋が把握できるようになり、売れ筋に集 しかし、 「カスタマー・シェア」拡大のためには、単に個々の商品の数字を追うだけ になります。 こうした顧客の差別化は決して特別なことではありません。 実際に、顧客の差別化は、航空会社、ホテルのマイレージ・サービスなどにみら また、こうした施策を講じるには、大規模なチェーンである必要はありません。 実際に小売業の顧客の差別化が進んでいる米国小売業界においては、1店舗だ 顧客差別化の必要性は、次のような考え方から明らかになります。 顧客の購買行動はさまざまで、一人ひとりが異なる利益(あるいは損失)を店 2割の顧客で8割の売上高を占めているという経験則(パレートの法則)は、長 実際に、顧客データの分析は予想外の(上位顧客に売上が集中した)実態を たとえば、期間を長くとるほど、継続的に買っている顧客と1回だけの顧客との 顧客ごとの、来店期間全体における貢献度(生涯価値=ライフ・タイム・バリュー) また、売上高に限らず、 1回の購入金額が高いほど、単位当たりの固定費負担は少なくなり、 します。 次表は、こうした例について、一例として考えたものです。 こうしてみると、不特定多数への販売促進活動がきわめて非効率なことがわ 一方で、 これまで特売にかけてきたコストを再配分し、上位蕪客への還元を多く のです。 POSをはじめとする情報システムが普及したことにより、現在では個々の顧客 商品別に構築してきた情報システムを顧客別に適用することで、多く購入して 顧客データベースにもとづいて一人ひとりの顧客に異なった販売条件を になっています。 また、顧客差別化マーケティングの競争上の優位を考えると、すべての顧客 たとえば、 顧客情報にもとづいて、優良顧客を対象に特売セールを実施したり、 と考えられるからです。 広告費を大幅に増やせば、売上高を拡大することは比較的容易かもしれませ しかし、顧客を差別化することで、売上高と利益をともに拡大することが期待で これは、先にも述べたように、1回の購入金額が高いほど単位当たりの固定費 また、 1回当たりの購入金額が高くなるほど、特売品ではない定番の購入が のです。 実際に、米国小売業界において顧客差別化を実施している小売業では、 ・利益に貢献しない顧客には低マージンの商品を販売しない ・商品別の価格設定より、購入総額に応じた価格設定を重視する ことにより、多くの企業が利益改善に成果をあげていると報告されています。 低収益(あるいは損失)しかもたらさない顧客に効果的にコストを転嫁でき、さ (1)特典プログラムを決定する まず、顧客の情報を集めることが必要です。 顧客カードを導入して、カード会員に特典をつけることで会員組織を拡大 その場合に検討しなければならないことは、メンバー全員に提供する 次に、効果的な告知方法が検討事項になります。 売上高の70%以上、購入件数の半数以上を顧客番号付きにしなければ、 そのためには、 効果的な還元プログラム、会長勧誘キャンペーンによるPRなど、 になるでしょう。 ほとんどの顧客がカードを所持するようになれば、一斉割引と大差がなく まずは顧客情報の収集が目的 です。 顧客情報の収集にもとづいて効果的に顧客差別化を進めるほど、広告と 顧客情報の収集方法(顧客カードの運用が一般的)、店舗に保管するデー まず、顧客差別化マーケティングの導入にあたって必要になる設備などを ここでは、顧客カード、POSシステム、顧客データ分析システムについてポ ここでいうのはカードの方式の検討です。 普及している顧客カードには、磁気カード方式、ICカード方式などがあり、 展開を考えているプログラム内容、顧客データベースシステムの ことになります。 通常、小売店における商品管理のシステムにはPOSが使われています。 顧客差別化マーケティングを実現するには、POSを拡張して、 になります。 POSに顧客カード読み取り装置を連動させ、POSデータを蓄積するストア 顧客データ分析システムにもたせるべき基本機能を検討します。 主要な分析項目をあげると次のとおりです。 顧客データ分析用のコンピューターを店舗ごとに設置するか、本部に集中す 運営プログラムの内容、告知方法などにもとづき、店頭看板、店内ポス 会員募集の開始までに、従業員にプログラムを十分に理解させておくこと 従業員の理解促進とプログラム運用のテストの両面から、従業員に会員購 また、パイロット店でのモニター顧客を対象にした運用、あるいはメーカーと 実際の運用において具体的に考えなければならないのが、得意顧客に順次 商品管理ではABC分析などによって管理の方法を変えますが、同様に、累計 顧客の購買行動が見返りに左右されるとすれば、単純に考えて、顧客に望む 顧客のどのような行動に対して見返りを与えたいのか、顧客の立場から (1)有意義な顧客のグループ分けを考える (2)顧客グループ別の対応(特典)を考える 必要があります。 まず、おもに購買実績に応じた単純な分類の例を考えると、たとえば次の 実際の運用では、さらに、細かい特徴で一人ひとりの顧客を分類できるよ たとえば、流行商品や特売商品ではなく、得意顧客が愛用している商品 こうした顧客分類を進めながら、価格の差別化、特典の差別化を行います。 具体的には、顧客がどの程度利益を与えてくれているかによって特典を 一般的に利用されている方法をあげると次のとおりです。 その他、ソフト面で、より上位の顧客に特別な権利を提供する(サロンの いずれにおいても、 きめ細かい価格設定や特典設定によって、 です。 その際、たとえば差別化プログラムを設ける場合には、上限を設けて効 特典に上限を設けることは、優良顧客を、同様のプログラムを実施してい そうなれば、収益性の高い優良顧客の代わりに、大きなコストをかけて新 一定の運用を行ったら、そこで得られた顧客の購買データを分析し、特典、プ 購買データの分析にあたっては、購買層、購買時期の分析だけではなく、個々 「A商品を頻繁に購入しているのは誰か」「頻繁に来店しているのは誰か」など 具体的には、 顧客に焦点を当てて、 ことが考えられます。 頻繁に購入する顧客に焦点をあわせて売場の戦略を考え、上位顧客により 顧客の特性が把握できれば、顧客の購買行動を変える(購買心理を刺激す
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