業務改善の考え方と方法


  ■業務改善の成否は部門長(リーダー)次第

   業務改善とは仕事の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくこと。

   多くの会社ではさまざまなテーマで業務改善への取り組みが行われていますが、
   活動が途中で頓挫したり、一時的な効果にとどまっているケースもみられます。

   要因の一つに部門長(リーダー)の改善のためのノウハウやスキルが備わってい
   ないことがあげられます。

   業務改善の成否は部門長(リーダー)にかかっているといっても過言ではない。

   多くが改善の仕組みづくりが目的化し、仕組みを動かすリーダーの教育ができて
   いません。

   どんなに素晴らしい仕組み(ハード)をつくっても、それを動かす人(ソフト)の教育
   ができていなければ、仕組みという箱ものづくりだけで終わってしまう。

   業務改善の仕組みづくりは手段であり、目的は仕事の仕方を現在よりも好ましい
   方法に変えていくことです。

   業務改善に着手する前に、部門長(リーダー)の品質を向上させることが重要とな
   ります。

   1.業務改善の考え方 (成果/労力=生産性)

     会社におけるすべての業務は何らかの目的にしたがって成果を生むために行
     われています。

     その生産性を上げるために行うのが業務改善です。

     上記の式からもわかるように、生産性を上げるためには、「分子の成果を増や
     す」、または「分母の労力を減らす」ことが必要になります。

     もちろん2つを同時に行うことができれば、生産性は飛躍的に上がります。

     業務改善を検討する際には両方向からのアプローチが効果的です。

     このように生産性向上のための基本的な考え方は、「適切な成果」のために
     「適切な労力」を投下していくことです。

   2.適切な成果

     企業活動の原則は顧客にとっての新たな価値を生み出すことにより、自社の
     収益を確保していくことです。

     そのために必要な製造や販売を行うことや、それらの活動を統制していくため
     の管理活動は適切な成果に向けた活動と捉えることができます。

     以上を整理して「適切な成果」とは何かについて考えてみると、それは次の条
     件のいずれかを満たしていることになります。

      ・顧客にとっての新たな価値を生み出していること(直接的成果)
      ・顧客価値創出のための自社組織運営に役立っていること(間接的成果) 

     全社の業務の棚卸しをすると多くの場合、上記の条件に当てはまらない「意味
     不明」の業務が見つかります。

     たとえば、「顧客ニーズの変化に対応できていない商品開発や販売活動」はそ
     の代表例です。

     これらについては、いくら手順を見直しても成果に結びつくことはありませんか
     ら、業務そのものをやめてしまうことを検討します。

   3.適切な労力

     「適切な労力」実現について考えてみると、そのためには、「3ムダラリ(ムダ・
     ムラ・ムリ)」をなくすことが基本となります。

      ムダ:成果に結びつかない余分な労力が使われている状態

      ムラ:ムダとムリが混在して起こっている状態

      ムリ:一部の工程や人間に過度の負担がかかっている状態

     以上のことを冒頭で述べた生産性を示す式の分母と分子に当てはめると、次

     のような改善の方向性が明らかになります。

   4.各階層で業務改善に取り組む     

     また、業務改善は社員一人ひとりの個人レベルから会社全体レベルまでさま
     ざまな階層で考える必要があります。

     社員一人ひとりがいくら努力して生産性を向上しても、個人レベルの積み上げ
     だけでは効果は限定的です。

     逆に全社で掲げた業務改善計画が個人レベルまで適切にブレイクダウンされ
     ていなければ、計画は画餅に帰してしまいます。 

     全社、部門全体、個人がそれぞれのレベルで、互いに整合性のとれた業務改
     善活動を行うことが大切です。

     このように自社の業務改善を検討する際には、

      ・成果の拡大と労力(投入時間)の削減を同時に行うにはどうすればよいか

      ・全社レベルから個人レベルまで一体となった活動を行うにはどうすればよ
       いか

     という視点をつねにもち続けておく必要があります。

   5.社長による動機づけが必要

     業務改善活動は通常の業務にプラスする形で行われますので、特に活動の
     成果がまだ出ていない取り組み当初は社員にとって負担感は大きくなります。

     社員の積極性を促すには、会社としての活動の重要性だけではなく、活動の
     成果が社員一人ひとりに与えるメリット(労働時間短縮・能力向上など)につい
     ても説明して、十分な動機づけを行う必要があります。

  □全社レベルでの改善

   1.組織構造の改善

     全社レベルでのもっとも重要な「成果」とは、全社経営計画の実現に他なりま
     せん。

     自社の経営計画実現のために必要な事業プロセスを明確にし、そのプロセス
     に応じた最適な組織構造に変えていくことが必要です。

     業種業態によって違いはあるが、たとえば、製造業の標準的な事業プロセス
     は次の図のように整理することができます。

     これらのプロセスを踏まえて自社の組織に過不足がないかを確認します。

     たとえば、製造業のなかには、上記図の①〜③の上流工程実現のための組
     織は充実しているが、④⑤の下流工程や⑥の管理工程実現のための組織が
     適正に配置されていないことが多くあります。

     その結果、高品質の製品を作ることができても、「顧客の購買促進や満足度向
     上につながらない」、「全社の事業プロセスが円滑にコントロールできない」と
     いった事態を招いているケースもみられます。

     次のような視点で全社の組織構造について確認してみましょう。

     <組織構造改善のポイント>

      ・事業プロセスに必要な組織が抜けていないか

      ・事業プロセスには関係のない組織が存在していないか

      ・同じプロセスを実現するための組織が重複していないか

      ・特定部門の肥大などバランスを欠いた組織編成になっていないか

      ・全般を管理する組織(総務、経理、人事、経営企画など)はあるか

      ・事業戦略面で特に重要な組織は十分に機能しているか

      ・それぞれの部門長には適切な権限と責任が与えられているか

   2.労働時間の短縮

     業務改善の大きな狙いのひとつは、生産性を上げて労働時間を短縮すること
     です。

     しかし、全社的に「長時間労働が当たり前」、「長時間労働した者が評価され
     る」という雰囲気があれば、改善は進みません。

     社長は自社の労働時間の実態や残業に対する社員の意識などを把握して、
     短縮に向けた仕組みづくりや雰囲気づくりを進める必要があります。

     また、業務改善によって残業代が大幅に削減できた場合は、その山部を原資
     として社員に賞与のなかで還元するなどの施策も求められるでしょう。

     <労働時間短縮のポイント>

       ・社長自身が長時間労働を推奨するような発言をしていないか

       ・長時間労働が評価される組織風土はないか

       ・全社の総労働時間、残業時間、所定労働時間の水準は適正か

       ・部門ごとの総労働時間に大きなバラツキはないか

       ・総人件費に占める残業代の割合が高すぎないか

       ・変形労働時間制やみなし労働時間制などの導入によるメリットは
        ないか    

       ・サービス残業(賃金の不払い残業)は発生していないか

  部門レベルでの改善

   同じ部門内のすべての社員について、誰がどのような仕事を担当し、どのくらい
   の時間を投入しているのかを把握します。

   これによって業務の重複によるムダや特定社員への業務の偏りなどの発生状況
   を確認し、改善します。

   また、各部門で行われている業務は、原則としてその部門が果たすべき役割に
   沿ったものであるべきです。

   たとえば、製造部門の社員が顧客との属人的なつながりから例外的に営業フォ
   ローに回ることはあるかもしれません。

   しかし、それを日常的に行うことは組織としての役割に合致しません。

   直接部門である製造部門の社員としての役割を十分に果たせないばかりか、営
   業部門の社員の活動と整合性がとれなくなる可能性もあります。

   さらに各部門で行われている業務を詳しくみると、本来の目的が見失われ従来か
   らの慣例だけで行われていることもあります。

   たとえば、各種の報告書は、報告書作成自体が目的ではありません。

   その報告によって上司から適切なアドバイスがあるなど何らかの問題解決につな
   がることで初めて意味をもちます。

   ほとんど上司に読まれることなく放置されるだけの報告書作成にかける時間は明
   らかにムダということになります。

   部門レベルでの改善はリーダー(部門長)が中心になって、部下の業務内容を十
   分に把握したうえで進める必要があります。

   <改善のポイント>

     ・業務の重複によるムダは生じていないか

     ・特定社員への業務の偏りが大きすぎないか

     ・社員の経験や能力に応じた業務分担になっているか

     ・業務手順は標準化・マニュアル化されているか

     ・その部門で行うのが適切な業務か、当該部門の役割に合敦しているか

     ・それぞれの業務の目的と求められる成果は明確になっているか

     ・無意味な報告書作成や会議などが行われていないか

     ・繁忙期・閑散期などの季節変動を吸収する取り組みは行われているか

     ・各社員のスキル向上に向けた教育や訓練が組織的に行われているか

     ・上司の思いつきによる計画性のない指示が頻発していないか

     ・ボトルネック(もっとも時間がかかる工程)改善のための取り組みは行われて
      いるか

     ・リードタイム(業務着手から完了までの時間)の適切な管理は行われている
      か

     ・上司は部下全員の労働時間について把握しているか

     ・恒常的に長時間労働を続けている社員はいないか

     ・上司は長時間労働している社員を「頑張っている」と単純に評価していない
      か

     ・メンタルヘルス面への配慮は十分に行われているか

  □個人レベルでの改善

   個人レベルの改善では、まず、個人ごとに自分が担当している業務についてすべ
   て列挙させたうえで、それぞれの業務の目的や求められる成果を確認することか
   ら始めます。

   その際に単純に「上司からの指示に従うこと」を目的とせず、その業務がもつ本来
   的な価値について考えさせます。

   そして、一つひとつの業務について「手順は適切か」、「各工程への投入時間は適
   切か」、「スケジューリングはきちんと行っているか」など正しい仕事の仕方につい
   て上司が指導していきます。

   また、自分が月単位、週単位でどの業務にどの程度の時間を使っているかという
   時間の有効活用度合いについても考えさせます。

   たとえば、業務は「顧客訪問」など価値に直接つながる業務(主体業務)と「訪問
   準備」などの主体業務実施のための準備業務(付帯業務)に分けることができま
   す。

   これらを区別し、主体業務比率を上げていくことも大切です。 

   さらに、業務の生産性は個人のスキルに大きく左右されます。各人に自分の伸ば
   すべきスキルを意識させ、向上に努めさせることが必要です。

   <改善のポイント>

     ・自分に正しい仕事の仕方が身についているかどうかをつねに意識している
      か

     ・現在自分が抱えている業務について納期や期待される成果水準を把握して
      いるか

     ・今後1カ月間のスケジューリングがきちんとできているか

     ・毎月、毎週、毎日の時間の使い方について振り返りを行い、改善につなげて
      いるか

     ・自分の担当業務のすべてについて目的と求められる成果は明確になってい
      るか

     ・自分が伸ばすべきスキルを意識しており、実際に向上に努めているか

     ・業務改善の意義を理解して積極的に取り組む意志をもっているか

     ・上司の指示事項をそのまま遂行することのみに没頭していないか

     ・部門全体の役割を理解し、そのなかで自分の担当業務の価値について意識
      しているか

     ・残業代を得るために自ら残業時間を増やそうとしていないか

     ・生産性が低いとわかっていながら従来のやり方に固執していないか

     ・緊急度や重要度によって業務に優先順位をつけているか

     ・自分の能力・工数で対応できない業務について早めに上司に相談している
      か

     ・自分が業務で使っている時間が会社の経営資源であることを意識し、大切に
      しているか

   初めに書いたように「業務改善は今までの業務のムダ・ムラ・ムリを排除し、仕事

   の仕方を現在よりも好ましい方法に変えていくこと」といいました。

   しかし残念なことは、

    ・改善を実践指導するリーダーのスキル不足

    ・目的と手段

   などによって、とん挫してしまうことを多数見聞きします。

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