ダイバーシティマネジメント
 

  ■ダイバーシティマネジメント

   ダイバーシティ(diversity)とは、英語で「多様性」の意味を持つ言葉です。

   企業経営でいうダイバーシティとは、企業が多様な社員を受け入れ、その多様性(性
   別、年齢、国籍、価値観など)を生かすことで、各人の能力を引き出し、個人のやりが
   い、企業の利益、競争力の向上につなげようとする考え方です。

   ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に取り組む企業が増加していますが、
   これも社員それぞれのライフスタイルを尊重して、自身の生活を大切にしつつ能力を
   発揮できる環境を作ろうという、ダイバーシティの一環といえます。

   ダイバーシティというと、一般には「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」などの積
   極的な活用が連想されがちであり、実際にそれはダイバーシティを考える上での重要
   な要素といえます。

   しかし、それはダイバーシティを実現するための方法の一つでしかありません。

   ダイバーシティの本来の意味は、あらゆる人たちが最大限に能力を生かせる環境を
   整え、多様な能力を企業の活力としていこうという考え方にあるといえるでしょう。

   特に欧米では異なった人たちのそれぞれの意見を、経営上の意思決定に生かして
   いこうというのが、ダイバーシティの中心的な取り組みとされています。

   しかし、移民の受け入れや人材の流動が盛んな欧米と日本では、従業員の人種・
   性別の構成やビジネス上の慣習も異なります。

   また、中小企業においては、経営上の意思決定で経営者の判断が最も重要である
   という点も忘れるべきではありません。

   上記のような点を考えると、日本の、特に中小企業においては、日本企業が置かれて
   いる経営環境やそこから派生する経営課題に応じた、日本流のダイバーシティへの
   対応(ダイバーシティマネジメント)が必要になるのではないでしょうか。

   社員のモチベーション向上という視点でも、ダイバーシティマネジメントの効果は期待
   されます。

   内閣府「男女共同参画白書」によると、共働き家庭の数は1990年の823万世帯から
   2010年には1012万世帯まで増加しており、家事や育児と仕事を両立している女性
   は増えています。

   また、今後は高齢化が進展し、加えて個性を尊重する教育を受けた若年者層も労働
   力となる時代です。

   こうした状況の中、社員が仕事に対して持つ価値観や意欲は確実に多様化すること
   になるでしょう。

   多様な価値観を持つ社員たちの従業員満足を向上させてモチベーションを高める
   
ためにも、ダイバーシティマネジメントは有効な手段となり得ます。

   以下では、日本が現在抱える経営上の課題を踏まえた上で、日本企業として取り組む
   べきダイバーシティマネジメントの在り方を考えたいと思います。

  □労働力不足という「課題」

   (独)労働政策研究・研修機構によると、産業別就業者数の推移と見通しは、  
   2020年の就業者数合計は、2009年の6282万人から55万人減少して6227万人に
   なると推計されています。

   さらに長期的に考えると、人口減少や少子高齢化によって労働力人口は減少が続く
   と考えられます。

   人材の確保が困難とされる中小企業にとって、この労働力人口の減少は将来的に
   大きな経営課題となってのしかかることになるでしょう。

   加えて、2008年秋からの世界的な景気後退に象徴されるように、経済情勢は経営者
   の意思にかかわらず刻々と変化します。

   それにともなって、市場も変化が続くことでしょう。

   つまり、これからの企業経営は、労働力人口の減少に対応しつつ、変化する市場環境
   に合わせた戦略を取っていかなければなりません。

  □価値観の多様化への対応

   労働力人口の減少に加えて、従業員に大きな変化を与えているのが個人の価値観の
   多様化です。

   前述した通り、近年ワークライフバランスに取り組む企業が増加していますが、これ
   も生活ができればよいと考える人、高い報酬を求める人、家庭生活と仕事のバランス
   を取りたいという人など、多様化した従業員の価値観に対する企業としての回答の
   一つであるといえます。

   人それぞれ、生活していく上での優先順位は異なります。

   そしてそれが、職業選択や働き方の多様化につながっているといえるでしょう。

   終身雇用という過去の日本では当たり前だった制度が崩れつつあることも、従業員
   個人の価値観に影響を与える要因となっています。

   これまでは、多くの従業員が自分の会社や所属する部門という組織に限定して働き方
   の選択をしていました。

   しかし、終身雇用が崩壊しつつある今、彼らは会社や部門の枠を超えて自分自身の
   「キャリア」として仕事を考えるようになりました。

   こうした、組織優先から個人優先という意識の変化に対応し、各個人が自身の力を
   生かす環境を作る必要が生じていることも、ダイバーシティマネジメントが注目される
   理由の一つといえます。

  □変わる「働き方」の形

   働き方の多様性に関連した問題として、非正規従業員の増加もあります。

   総務省「労働力調査」によると、雇用形態別雇用者数の推移は下表の通りです。

   全雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は、1990年代前半には20%前後で
   推移していましたが、その後上昇を続け、2010年平均では34.4%に増加しました。

   2000年以降を見てもパート・アルバイトと契約社員・嘱託の増加が顕著となっており、
   雇用の不安定化が進んでいることが分かります。

   雇用の不安定化の進行は、企業の経営環境の悪化が進む中でやむを得なかった
   という面は否めません。

   また、派遣業法の改正などによる雇用関連の規制緩和も、こうした非正規従業員の
   増加を後押しした感があります。

   一部の企業では、非正規従業員の正規化を推し進める動きも見られます。

   しかし、実際にすべての企業が非正規従業員の正規化に取り組めるわけではあり
   ません。

   現実的な問題として考えれば、非正規従業員の増加が進むという現状の中で、企業
   は正規、非正規従業員という雇用形態の枠を超えた人材の活用を求められている。

  □ダイバーシティがもたらすメリット

   1.日本における「多様性」のあり方とは

     ダイバーシティといってもそのとらえ方はさまざまです。

     最も分かりやすいのはいわゆる性別、年齢、国籍など「目に見える多様性」で
     すが、それ以外にも仕事に対する考え方や職歴、持っているスキル、人柄、生
     活習慣など目に見えない要素もダイバーシティの一つです。

     一方で、それぞれの人が持つ生活環境や事情に応じた「働き方の多様性」に
     対する姿勢も重要な要素です。

     これらの条件はそれぞれが関連し合い、不可分の要素といえます。

     しかし、ダイバーシティの在り方を考える上では、「目に見える多様性」と「働き
     方の多様性」のそれぞれに配慮する必要があります。

     (1)目に見える多様性

       ・男性、女性といった、性別の多様性

       ・高齢者など、年齢の多様性

       ・外国人など、国籍の多様性

       ・障がい者など、身体状況の多様性

     (2)働き方の多様性

       ・働く時間の多様性(短時間勤務、フレックスタイム、育児休業・介護休業の
        取得など)

       ・雇用形態の多様性(正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトな
        ど)

       ・働く場所の多様性(在宅勤務、地域採用社員、転勤のある正社員など)

       欧米でのダイバーシティでは、人種的・宗教的なマイノリティー(社会的少
       数者)の受容という考え方が大きな意味を持っています。

       これは、欧米各国の多くが多民族国家であり、人種問題を解決するための
       一つの手段としてダイバーシティが進展したためです。

       しかし、日本は欧米と異なり、これらの問題は大きな社会問題化するほど
       の影響力を持っていません。

       このように、欧米におけるダイバーシティとは事情こそ異なるものの、ここま
       で述べたような日本企業が抱える人材面での課題を考えると、ダイバーシ
       ティマネジメントへの取り組みは避けて通れないものといってよいのではな
       いでしょうか。

       上記のような事情から、日本における「目に見える多様性」は「女性」「高齢
       者」「外国人」「障がい者」の活用が中心的な考え方となっています。

       そして、これらの人たちに対して「働き方の多様性」を提供することが、労働
       力不足に陥ろうとしている日本企業にとってのダイバーシティマネジメントで
       あり、人材を最大限に活用して組織のパフォーマンスを高めるためのキー
       ポイントといえるでしょう。

       以下では「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」を活用することによる、組
       織にとってのメリットをまとめてみます。

   2.女性活用のメリット

     女性を活用することによる最大のメリットは、女性ならではの感性や発想を生
     かすことができる点にあります。

     化粧品・生活用品メーカーや服飾メーカーなどでは、既に女性を積極的に活
     用して商品開発などで成果を上げている事例がありますが、たとえ女性を直 
     接のターゲットにした商品を取り扱っていなくても、女性ならではの発想を生か
     すことはできるでしょう。

     そして、それは組織の創造性を向上させる大きな要因になるでしょう。

     また、一般論ではありますが、男性は意見の主張が強いのに対し、女性は他
     者との融和を図るという傾向があります。こうした行動特性は、組織内での対
     立を減らし生産性を向上させる可能性をもたらします。

     一方で、建設業など男性中心の業界で女性が働くことで注目が集まり、企業
     の宣伝につながるというのも副次的なメリットとなります。

     こうした性別の違いを生かし、組織に取り入れることで、組織としての力は向
     上するでしょう。

     参考:雇用均等に関する助成金

          キャリア形成促進助成金 

          中小企業両立支援助成金

          ポジティブ・アクション(能力アップ助成金

   3.高齢者活用のメリット

     高齢者を活用することで、過去の豊富な経験を生かせる、組織の管理能力が
     高まる、さまざまな人的ネットワークを利用できるなどのメリットが得られます。

     また、製造業においては、短時間勤務と組み合わせるなどの方法にり、高齢
     社員の持つ熟練技術を活用しながら、その技術を若手社員に継承することも
     可能です。

     高齢社員には体力の低下や、仕事に対する意欲の低下が見られることも少な 
     くありませが、過去の知識や経験に基づく判断が必要なとき、高齢者の活用
     は組織にプラスの影響を与えるでしょう。

     高齢者の活用に当たって重要なのは、高齢者の豊富な仕事経験による多様
     な考え方や見方を生かすということです。

     単純に高齢者を雇用すれば組織の能力が向上するわけではない点には注意
     すべきです。

     参考:高齢者を雇用した場合の助成金

         高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)

         特定求職者雇用開発助成金

   4.外国人活用のメリット

     外国人を活用することで、日本人とは異なる新しい発想やアイデアを得られる
     ほか、日本人以外の人的ネットワークを活用できるなどのメリットが得られるで
     しょう。

     民族や国籍は、個人の考え方やものの見方と大きく関係します。

     日本人だけではできなかった発想も、外国人の活用によって得られるかもしれ
     ません。

     仮に、先進国以外の発展途上国の人材であっても高い教育を受け、専門性の
     高い人は少なくありませんし、製造業のライン作業などにおいても、高い能力 
     を発揮する外国人は多いでしょう。

     ただし、日本と外国における習慣や文化の差というものは厳然と存在するの
     は事実です。

     それを踏まえて多様性を受け入れることが、外国人活用のメリットを生かすポ
     イントといえるでしょう。

     参考:雇用調整助成金

   5.障がい者活用のメリット

     障がい者活用は、企業として果たすべきCSR(企業の社会的責任)の一つで
     あり、一定規模以上の企業には法的義務が課されています。

     加えて、社会的弱者とされる人の視点が企業経営に生かされるということがメ
     リットといえます。

     2009年4月1日に「改正障害者雇用促進法」が施行されました。

     これによって、障がい者の雇用率が1.8%に満たない企業に対して支払いが
     義務付けられている「障害者雇用納付金」の適用対象が従来の「常用雇用労 
     働者を301人以上雇用する事業主」から拡大されています。

     具体的には、常用雇用労働者201人以上の事業主は2010年7月から、常用
     雇用労働者101人以上の事業主は2015年4月から「障害者雇用納付金」の
     適用対象となり、法定雇用率に満たない企業は不足している障がい者雇用数
     1人当たり5万円(減額特例により制度適用から5年は4万円)を支払わなくて
     はなりません。

     つまり、常時101人以上を雇用する企業にとって、障がい者雇用はメリット以
     前に法的義務となっており、活用を義務付けられた人材といえます。

     参考:障害者を雇い入れた場合などの助成

          障害者初回雇用奨励金

          障害者トライアル雇用奨励金
  
  ダイバーシティマネジメントを効果的に機能させる

   1.ダイバーシティ実現を妨げる問題点

     「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」の活用は、決して目新しい考えではあり
     ません。

     これまでも、多くの企業がこうした人材の活用を考えたでしょう。

     しかし、実際にはその試みは中途半端な形で止まってしまったり、失敗に終
     わっているケースも少なくないのが事実です。

     それは、「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」それぞれを活用するに当たっ
     ては、考慮しなければならない問題点があるからにほかなりません。

     以下に、それぞれの問題点を列記します。

     (1)女性活用の問題点

       ・結婚や出産を機に早期に退職してしまう

       ・家事や子育てを優先するため、時間外労働や休日出勤を依頼しにくい

       ・出産休暇や育児休業取得による代替要員の確保が難しい

       ・力仕事など任せられない業務がある

       ・昇進や昇格への意欲が薄い傾向にある

       ・男性上位の職場風土が根強い

     (2)高齢者活用の問題点

       ・若手社員との関係がうまくいかない

       ・仕事に対する意欲を失っているケースがある

       ・過去の経験やプライドが、新しい業務への順応を妨げる

       ・高齢者が持つノウハウ、技術、技能の円滑な継承が難しい

       ・新しい技術への対応に不安がある

     (3)外国人活用の問題点

       ・言葉の問題があり意思の疎通が図りにくい

       ・考え方や生活習慣が大きく異なる

       ・企業への帰属意識が低い傾向にある

       ・職場への定着率が低い

     (4)障がい者活用の問題点

       ・健常者に比べて生産性が低下しがちである

       ・身体的な理由で長時間の勤務に耐えられない

       ・障がいの状況により、従事できる業務が限定される

     ダイバーシティマネジメントは、上記の問題点を解決し、それぞれの持つ能力
     を生かすための仕組みづくりにほかなりません。

     これらの問題をすべて解決するのは、理想論にすぎるきらいがありますが、こ
     れらの問題を少しでも減らすための環境・制度づくりは、ダイバーシティを実現
     させる上で避けられない取り組みとなります。

   2.問題解決は多様な「働き方」のための組織づくりから

     前述の障害者雇用促進法の改正に加え、近年は男女間の雇用環境に対する 
     差別的な取り扱いをなくすことを目的とした男女雇用機会均等法や、定年の引
     き上げを軸に高齢者の安定した雇用を確保することを目的とした高年齢者雇
     用安定法、子育てを支援するための企業の義務などを定めた育児・介護休業
     法などの改正・整備が進み、少なくとも法的な面では女性・高齢者の活用を促
     進する制度は整えられています。

     また、外国人についても、2007年10月に外国人雇用状況の届け出が義務化
     されるとともに、外国人従業員の雇用管理の改善および再就職支援について
     努力義務を課した「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適
     切に対処するための指針」が制定され、法的な面での雇用環境は改善しつつ
     あります。

     こうした法的な制度が整いつつある中で、ダイバーシティを機能させ企業を活
     性化させるためには、上記の法制度に加えて、社員の多様な「働き方」を尊重
     するための環境づくりや、社内制度の整備が必要でしょう。

     前項で例として挙げた問題を解消し、従業員がそれぞれの立場で働きやすく、  
     また自身の意見が言いやすい環境をつくることが、効果的なダイバーシティマ
     ネジメントとなり得ます。

     従業員それぞれが自身の生活スタイルや家族の事情に合わせて働くことがで
     き、それでいて自身の持ち味を生かせるような社内制度づくりがダイバーシ
     ティマネジメントを成功させるための重要なポイントとなります。

     以下では、ダイバーシティマネジメントを成功させるために企業としてまず押さ
     えておきたいポイントを挙げてみます。

     (1)経営トップからのメッセージ

       トップ自身がダイバーシティを積極的に受け入れ、活用していくというメッ
       セージを社内外に発信しましょう。

       大企業などではダイバーシティの専門部署を立ち上げて社内外に取り組み
       を宣言している企業も増えてきていますが、中小企業でも同じように、取り
       組みを宣言することで、社内外にそれを強く印象付けることがポイントで
       す。

     (2)コミュニケーションの仕組みづくり

       ダイバーシティとは多様性を受け入れることから始まります。

       お互いの違いを知り、理解し、意見を言うことができるコミュニケーションの
       場を整えることで、相互理解は深まるでしょう。

       これは同時に、少数派や弱者の意見が無視や排除されることのない意思
       決定の仕組みづくりにもつながります。

       具体的には、ダイバーシティを推進するための部署をつくり、そこでさまざ
       まな立場の従業員を参加させることが望ましいのでしょうが、それが難しい
       場合は、職場単位で定期的に意見交換の場を設けることで、相互の理解と
       意見交換を進めるとよいのではないでしょうか。

     (3)将来のキャリアを明確にする

       近年は、パート・アルバイトを店長に登用する企業が増加しています。

       一方で、転勤や異動のある通常の正社員のほかに、勤務地を限定した「地
       域採用社員」制度を取り入れている企業もあります。

       短時間勤務や在宅勤務制度を導入している企業も少なくありません。

       重要なのは、これらの制度を導入するに際してさまざまな立場の人たちが
       能力を発揮できるための明確なキャリアパスを提示することにあります。

       雇用形態によって待遇に差がつくのは当然のことでしょう。

       しかし、それはどのような差であって、将来的にはどのような立場で仕事に
       従事するのかを明確にしなくては、従業員は安心して働くことはできませ
       ん。

       逆に、将来のビジョンが見えていれば、従業員は安心して仕事に取り組む
       ことができるでしょう。

       これは、従業員が安定した気持ちで仕事を進める上で、大きな意味を持つ
       ことです。

     (4)管理者の重要性

       従業員の多様性を見極めるためには、個々人の性格や、置かれた状況を
       常に意識し、それを理解できる人材が不可欠です。

       そして、それができるのは現場で常に従業員と接する管理者しかいないと
       いってもいいでしょう。

       まずは管理者にダイバーシティの重要性を理解してもらうことが、ダイバー
       シティを円滑に運用するためには重要なポイントとなります。

       また、多様性を受け入れるということは、そこにある程度の衝突が起きる可
       能性も避けては通れません。

       そうした衝突が起きた際にも、まず前面に立って対応しなければならない
       のは管理者の職務です。

       そうした事態に的確に対応するために、管理者に対してコーチング、カウン
       セリングなどのスキルを育成するための教育を行うことも、ダイバーシティ
       の実践においては欠かせません。

       しかし、すべてを管理者任せにしていては、管理者の負担が増える一方で
       す。

       前述した意見交換の場なども活用し、多様性を容認できる組織風土を醸成
       していく取り組みも欠かせません。

  □対象者別ダイバーシティマネジメントのポイント

   「女性」「高齢者」「外国人」「障がい者」の活用に向けて、企業として取り組んでお
   きたいダイバーシティマネジメントのポイントをまとめます。

   1.女性活用のためのポイント

     (1)結婚・出産・育児がしやすい職場環境の整備
       出産・育児への支援は法的にも定められた制度として最も基本的なもので
       すが、そのほかにも例えばトイレや談話室の整備など、女性が働きやすい
       環境をつくることも重要です。

       また、結婚などを機に退職した女性社員に対する復職制度なども、既にス
       キルを持つ女性の有効活用策として効果的でしょう。

       結婚・出産・育児によってキャリアが断絶しないような制度をつくることで、 
       女性社員の定着率は向上することでしょう。

     (2)女性ならではの視点が生かせる機会の提供

       女性ならではの仕事を、女性に担当させることも重要です。

       例えば、体力をあまり必要としないなど、男性と比較して女性が不利になら
       ない業務を積極的に女性に担当させることで、女性の持ち味を生かすこと
       ができるでしょう。

       また、女性ならではの繊細さや視点を生かせる業務に積極的に就かせる
       のも、女性活用の基本といえます。

     (3)モチベーション向上のための取り組み

       いわゆる「性差別」は男女雇用機会均等法で原則として禁止されています
       が、実際には男女の区別は多くの企業で行われています。

       生産現場など、一般的には男性が担当する職場であっても女性を積極的
       に登用し、そうした職場でも適性があれば女性の活用を進めるなど、性別
       の先入観にとらわれない女性活用を心がけるとよいでしょう。

       女性のやる気と希望を尊重することが重要です。

   2.高齢者活用のためのポイント

     (1)ベテランの経験・技能の活用

       高齢者の最大の持ち味は、蓄積したノウハウや経験にあります。

       特に製造業などでは、ベテラン技術者が持つ経験やノウハウをマニュアル
       化することで、企業としての技術の蓄積や技能継承につながります。

       また、高齢者の望む職務内容と担当させる業務をうまくマッチングさせるこ
       とで、高齢者自身のモチベーション向上にもつながります。

     (2)若手社員とのコミュニケーションの円滑化

       高齢者と若手社員の「世代間格差」を可能な限り減らし、円滑なコミュニ
       ケーションを取るための雰囲気づくりも重要です。

       さまざまな世代の従業員が意見を交換しながら働ける環境は、ダイバーシ
       ティの理想的な姿です。

     (3)再雇用時などにおける待遇の確認

       定年後の再雇用などの場合、その後もフルタイムで働きたい人もいれば、
       ある程度仕事をセーブして生活を重視したいという人もいるでしょう。

       こうした希望を可能な限り受け入れるためにも、面談などを通じて今後の働
       き方やライフプランについて確認し、より働きやすい環境づくりを進めるとよ
       いでしょう。

   3.外国人活用のためのポイント

     (1)日本人と変わらない公平な待遇

       外国人と日本人で雇用形態や業務などを区別せずに公平な待遇をするの
       が理想的なあり方でしょう。

       外国人という理由で日本人よりも低い賃金で雇用されるケースもあります
       が、これは企業にとっては多様化の機会を損失していると考えるべきです。

       また、外国人の宗教や習慣に応じた柔軟な勤務体制を取ることも、外国人
       活用の一つのポイントとなります。

       なお、不法入国者を雇用しないなど、法令の順守は、外国人活用の基本中
       の基本となります。

     (2)教育訓練・人材育成の充実

       教育訓練制度については、言葉でのコミュニケーションが不自由な外国人
       については、特に入念に行うとよいでしょう。

       意思の疎通ができれば、ほかの従業員との相互理解も深まります。

       日本人従業員が教育係となり、マンツーマンで指導に当たっている企業な
       ども実際にあるようです。

       しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

       それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育の横行です。

       その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

       この問題を解決しなければ、社内教育制度の内製化は不可能です。

       
   4.障がい者活用のためのポイント

     (1)障がいの程度に応じた適切な業務配分

       一言で障がい者といっても、身体障がい者も知的障がい者もあります。

       また、障がいの程度も人によってさまざまです。

       一般的には、手足の障がいを持つ人は移動の少ない事務系の仕事を、視
       覚障がいを持つ人には電話応対の仕事などが向いているとされますが、そ  
       れぞれの障がいの状況に加え、スキルや本人の希望・意欲などから総合し
       て業務を配分するとよいでしょう。

       また、障がいの程度に応じた短時間勤務などの導入も考慮する必要があり
       ます。

     (2)職場環境の整備

       車いすで通れる通路の整備や手すりの設置、点字や音声を利用した社内
       表示など、社内のバリアフリー化は障がい者雇用において重要なポイント
       です。

       障がい者が働きやすい施設・設備の整備や安全措置の実施は欠かさず行
       う必要があります。

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静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

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 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

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