苦情(クレーム)対応とマニュアルの作成

   
  ■苦情(クレーム) 

   昨今の市場環境の変化やお客様(消費者)の意識の変化に伴い、産業界はもとより、
   国・地方自治体等の行政機関においても消費者保護の機運はますます高まってい
   ます。

   苦情原因の多くは

    ○ 商品知識や業務知識が不十分である

    ○ 適切なお客様対応やCSに対する理解が不足している

    ○ 従業員への教育が不十分である 等

   主な苦情として

    ○ 契約内容の説明が不十分(契約内容がお客様の希望と異なる 等)

    ○ 説明対応が不十分(連絡遅延、説明漏れ 等)

    ○ 事務手続きの遅延、失念 等

   苦情はあなたに大きなデメリットを発生させます

    ○ 契約の解除・取消し、次回の不継続

    ○ お客様の信用失墜、世間の評判低下

    ○ 事務業務の増加、時間のロス

    ○ 損害賠償発生による賠償金の支払い

   苦情の最小化を図るためには適正な業務遂行が欠かせない。

    ○ 苦情の記録(「お客様生の声「苦情受付簿」の備付け)、自社(店)内での
      共有化

    ○ 苦情発生の原因分析(発生させた人の追及であってはならない)

    ○ 苦情の再発防止策の策定と実行


   あなたの対応がお客様の期待レベルに達していない場合、お客様は不満を感じます。

   不満を感じたお客様のうち、苦情を表明する方は一部であり、背後には同様の苦情・
   不満(潜在化コンプレイン)を持った顧客が数多くいると考えてよいでしょう。

   不満が苦情となってしまってからの対応では対策になりません。

   あなたが気付いていない潜在的な不満・苦情を、顕在化する前に対策を講じること
   です。

   そのための方法の1つに「お客様に聞く」です。

   定期的(年1回)にお客(顧客)様からアンケートをとることです。

   そして、素直に聞くことです。

    私(弊社)はまだまだ未完成な会社(店)です。
    至らない点がありましたら教えてください。
    あなた様の素直なお声(不満・苦情・よい点)、ご指摘いただいた
    点は直に改善いたします。
    いい点、悪い点なんでも結構です。

   不満を感じるお客様の多くは、苦情を言わずに他社へ契約を切り替えてしまっている
   のではないでしょうか。

   苦情が発生した場合、誠意をもって解決に当たることはもちろんですが、その苦情が
   発生した原因を分析し、再発防止を図る必要があります。

   苦情の根本原因が何かを見つけて取り除くことにより、同様の苦情を未然に防止する
   ことは、あなたの業務を遂行する上で重要な課題です。

   顧客のクレームや意見に対する考え方や対応が優れている会社は総じて業績がよく、
   クレームや顧客の意見に真剣に耳を貸さず、自社の正当性や意見を否定するような
   会社は、業績が低迷していることが多いといわれています。

   実際にクレームや意見を言われても真剣に聞かず、「当方は間違っていない」「クレー
   ムを言うほうがおかしい」と思っている経営者や責任者はとても多く存在します。

   しかし、顧客のクレームや意見は市場の正直な声であり、会社業績を向上させるため
   の重要な情報なのです。

   それを十分に活かさないことは、あなたの業績向上の可能性をなくしているようなもの
   です。

   あなたも商品を購入したり、サービスを受けたりした時に、不満に思ったときどのよう
   な対応をしているでしょうか。

   そして、クレームや意見を言った場合は、どのような対応を受けると納得していたで
   しょうか。

   是非自分の状況を思い出してみてください。

  □クレームの心理

   自分がある温泉ホテルに宿泊して、そのサービスの状況に不満を持ったとします。

   あなたは下記の1と2のどちらの対応をとりますか?

    1 クレームを直接言う。

    2 クレームを言わずにもう二度と来ないと心の中で決めている。

   あなたはどちらの対応をとりましたか?

   実際は、不満の程度にもよりますが、2の対応をとる人が多く、クレームを言う人は
   とても少ないそうです。


   クレームや意見を言う人は、大きな勇気がいるものです。

   人間は誰でも人に嫌われたくないという意識があるので、ちょっとしたことではなか
   なか意見を言わないものなのです。

   そのため2の対応を取ることが多いのです。そのような中であえて苦言を呈する人は、
   対応により以下の2 通りに分かれます。この対応が業績に大きく影響するのです。

   クレームの対応が悪いと全ての人は二度と来ないでしょう。

   しかし、クレームの対応が良いと再度来ようという気持ちになるのです。

   市場を知るには顧客の声を聞くことが一番なのです。

   そのためにもクレームだけでなく、顧客の正直な意見を収集することが重要にな
   ります。

   顧客があなたの会社(店)をどう思っているのかを知ることは重要なことです。

   そのためにも「お客様の声」を定期的に集めることをお勧めします。

   優れた会社は、アンケートをもとに会社の問題点を抽出し、その対策会議を行ない、
   スピーディーに改善策を立案・実行しています。

   顧客の声にすばやく対応することにより、顧客満足を高めているのです。

   実施に際しては、顧客に正直に説明することです。

   アンケートの内容は、

   自社(店)のお客様から見て感じたよい点・悪い点、その他どんなことでも結構です
   からあなた様の声をお聞かせください。

   そして、悪い点は改善し、お客様から頼りにされる会社にしてまいりますので、これ
   からも応援よろしくお願い申し上げます。 

   このように簡単な内容でかまいません。

   そして、書いてくださったお客様には粗品を進呈してください。

   よい点・悪い点どんなことでもいいですから書いてもらうことです。

   そうすることで、あなたが今まで気付かなかった自社(店)が見えてきます。
      
   有名な話に、以前ユニクロが全国の新聞一面に「ユニクロの悪口を言って100万円」
   と、キャンペーンを打ちました。

   話題性とお客様の声を聞くという一石二鳥の効果を狙ってのことでしょう。

   企業活動を行う上で、顧客からの意見や苦情は避けられないものです。

   企業は苦情をなくすための努力はしているものの、苦情をゼロにすることはできません。

   例えば、顧客の勘違いや不可避の事態による配送の遅れなどは、企業努力で対処
   できる範囲にも限りがあります。

   クレームの多くはほんの些細なことが原因です。

   クレームが肥大化する要因の一つに初期対応があります。

   苦情が発生した場合は、誠意を持って解決に向けた適切な対応を行うことはもちろん
   ですが、その苦情が発生した原因を分析し、再発防止を図る必要があります。

   苦情の根本的な原因は何かを掘り下げ、それを見つけて取り除くことにより、同じよう
   な苦情の発生を未然に防止することは、適正な業務を遂行する上での重要な課題
   です。

   苦情は避けられないものとして考え、苦情が発生した場合に企業に対するマイナスの
   影響を最小限にとどめるよう、苦情対応規定等を設け、苦情に対する対応方法を発生
   前にある程度定めておく必要があります。
   
  苦情対応規定 

   苦情に対する対応方法を定めたものが苦情対応規定です。

   ただし、苦情対応は実際にそれぞれの従業員が、その重要性や手順を理解して取り組む
   ことが求められます。

   そのため、難解な表現を用いた規定では、従業員はそれを読み、理解しようという意識を
   持ちにくくなります。

   また、苦情対応は企業を取り巻く環境変化に応じて、柔軟にそのあり方を見直す必要がで
   てきます。

   そこで、企業の規則としての苦情対応規定には苦情対応の大枠のみを定め、具体的な苦
   情への対応方法は、別途苦情対応マニュアルで定めます。
   
  □苦情対応マニュアル

   苦情というと、どうしても「悪いもの」「避けたいもの」というイメージがあり、苦情対
   応に対して、消極的な姿勢をとってしまうこともあります。

   しかし、企業による不祥事や製品事故などが相次ぎ、企業に対する顧客の目がます
   ます厳しくなっている現在、苦情に対する会社(店)の姿勢についても顧客は大きな
   関心を寄せています。

   そのため、苦情対応をおろそかにすると、会社(店)のイメージ低下、顧客喪失など
   会社経営に大きな影響を及ぼす事態になりかねません。

   また、苦情の背景には、会社(店)経営を脅かすような重大な問題が潜んでいることも
   あります。

   こうした苦情を、初期の段階で察知・分析することなく見過ごしてしまうと、会社(店)
   として取り返しのつかない事態に陥るケースもあります。

   このように考えると、苦情対応は企業にとって重要な経営課題であり、組織全体で
   取り組むべきものと認識し、適切に対応していくことが大切となります。

   基本的なマニュアルを作成することは、苦情において以下のような対応効果を高める
   ためです。

    ・質の平準化

     誰でも一定の水準の苦情対応ができる

    ・迅速な対応

     あらかじめ定められた手順に沿って行うことで、迅速に対応することができる

  □情報の共有

   苦情内容を従業員全員が共有できる仕組みを作っておくことで、次回以降の苦情に
   応用することができる。

   ただし、マニュアルを作成する際には、

    ・マニュアルを作成することそのものを目的としない

    ・マニュアルに頼りすぎた苦情対応をしない
 
   マニュアルを作成すること自体が適切な苦情対応に結びつくのではありません。

   マニュアルを従業員全員に周知させ、必要に応じて内容を見直しながら運用していく
   という一連の流れが自社(店)の苦情対応力を高めていくのです。

   こうした点も考慮しながら、中小企業におけるマニュアルの基本的な作成手順とその
   留意点について考えてみましょう。
   
  ■苦情対応マニュアルの作成手順

   マニュアルの作成・運用は以下の手順が基本になります。

    1.苦情対応責任者の明確化

       苦情対応の責任者は誰かということを明確にします。

      責任者を明確にし、苦情が発生した場合には情報がすべて苦情対応責任者の
      下へ集まるようにしておくことで、苦情対応の効率的な管理が行えるようになり
      ます。

      苦情対応責任者は、社長あるいはそれに近い階層の者が就くほうが望ましい。

      苦情対応への取り組みは、自社(店)イメージを大きく左右することがあります。

      社長自らが苦情対応責任者として率先して苦情対応に取り組むことで、苦情対
      応を「企業活動における重要な取り組みの一つ」ととらえ、高い意識を持って苦
      情対応に取り組む姿勢を内外に示すことができます。

      社長自ら苦情対応責任者となり、苦情への対応方針を決定・指示することで迅
      速な対応が可能となります。

    2.苦情対応責任部門の設置

      苦情対応責任部門の主な役割はマニュアルの作成や運用、修正や見直しなど、
      苦情対応に関するプロセス全体の統括を行うことです。

      マニュアル作成に関しては、実際に苦情対応を行っている現場の従業員の意見
      をマニュアルに取り入れることで、現実に即した「生きたマニュアル」が作成でき
      ます。

      苦情対応責任部門には、顧客からの苦情を受けることが多い従業員(営業、お
      客様センターなど)をメンバーとして組み入れるとよいでしょう。

    3.マニュアルの作成

      苦情対応責任者および苦情対応責任部門が中心となってマニュアルの作成を
      進めます。

      マニュアルに盛り込む項目は業種によって多少の違いはありますが、基本的に

      は次のような項目を盛り込みます。

       (1)マニュアルの目的

         苦情に対する組織の考え方を記載します。

         冒頭にこうした考え方を盛り込むことで、従業員全体の苦情対応に対する
         意識の統一を図ります。

         ここでの記載内容としては、

         例えば、「苦情を受領した際には、お客様第一の立場で迅速かつ丁寧な対
         応を心がける」「お客様からの苦情には誠意を持って対応し、当社の商品・
         サービスをより適切にご利用いただけることを目指す」などとします。
 
         この項目は単文でもかまいませんし、複数行に分けてもかまいません。

         ただし、苦情対応に対する組織の考え方を示すものとなるため、できるだけ
         分かりやすく、従業員全員が共有できる内容にすることが大切です。

       (2)苦情対応の具体的な手順

         苦情が発生した場合の対応手順について記載します。

         この項目はマニュアルの中でも核となる部分なので、慎重に検討します。

         具体的な項目としては「受領」「内容の調査」「対応の検討」「苦情対応の
         実施」などがあります。

         手順については、

          ・苦情の受領から終了まで時系列に並べる

          ・実際の苦情対応例を併せて記載しておく

          ・「お客様への対応」と「社内の対応」に分けて手順を記載する

         など、従業員が苦情対応の流れを理解しやすくなるような工夫が必要
         です。 

       (3)苦情対応報告書の作成手順

         苦情対応報告書は、苦情対応に関する情報を管理するために必要となる
         重要な書類です。

         ただし、担当者によって報告書の記載内容・項目に大きな差があるようで
         は、情報を適切に管理することはできません。

         あらかじめ「苦情発生状況」「苦情内容」「苦情原因」「お客様のご要望」
         「対応」「対応結果」「備考」などを盛り込んだ苦情対応報告書フォーマッ
         トを作成しておき、苦情が発生したら、直接苦情対応に当たった担当者
         に記載・報告をさせるようにします。

       (4)苦情のデータベース化の手順

         データベース化の目的は、苦情内容やその対応方法を全社で共有し、苦
         情の再発防止に役立てることが挙げられます。

         そこで、苦情対応者から提出された苦情対応報告書を基に苦情内容と対
         応方法などを蓄積します。

         なお、データベース化された苦情情報には、従業員が誰でもアクセスできる
         ようにしておくことが必要です。

         そうすることで、従業員は以前の苦情対応情報を参考に、よりスムーズな
         苦情対応を行うことが期待できます。 

    4.マニュアルの周知・実施

      マニュアルを作成したら、苦情対応の勉強会などを開催し、従業員全員にマニ
      ュアルの浸透を図ります。  

      従業員の苦情対応のレベルアップを図るためには、こうした勉強会を定期的に
      開くことが理想的ですが、まとまった時間をとることが難しいという場合もあるで
      しょう。

      そうした場合には、朝礼などの時間を利用して通知するだけでも効果が期待で
      きます。

      1回当たりの時間は少しずつでも、継続して取り組むことが重要です。

    5.マニュアルの見直し

      マニュアルを実際に運用した上で、項目の見直しや修正を行います。

      あらかじめ「3カ月ごと」「半年ごと」など、一定の期間ごとに見直しを行うことを
      マニュアルに記載しておきましょう。
    
  □マニュアル作成・運用上の留意点

   1.マニュアル作成は完璧を目指さない

     マニュアル作成に当たっては、精密に作りすぎないということに注意する必要
     があります。 

     マニュアルというと、精密なものを作りたくなりますが、マニュアルで多くを規定
     しようとすると、マニュアル作成に時間や手間がかかる上、従業員が覚えにく
     く、浸透しづらいなどの問題点が出る恐れがあります。 

     しかも、精密なマニュアルがあると、従業員はすべてマニュアルに従って苦情
     対応を行うことになります。

     マニュアル通りの対応は、顧客に「機械的な対応」という印象を与えかねません。

     企業に対して苦情を申し出る顧客は、「自分の話を聞いてほしい」「自分が怒
     っている理由を理解してほしい」と考えています。

     そうした顧客に対して「機械的な対応」をしてしまうと、「本当に悪いと思ってい
     るのか」と、余計に顧客を興奮させてしまう可能性もあります。 

     また、従業員がマニュアル通りの対応に慣れてしまうと、マニュアルにない(想
     定していない)苦情に対して、対応できなくなる恐れもあります。 

     こうした問題を防ぐために、マニュアルには、例えば、・苦情に対する基本的な
     考え方・苦情が発生したときにどういう手順で対応するのか・苦情対応を終了
     した後の社内処理はどうするのかなどの基本的な事項についてのみ記載して
     おき、実際の苦情対応に際しては、従業員にある程度の裁量を与え、柔軟な
     対応をさせるようにします。 

     もし、運用していて不足などがあれば、その都度見直していけばいいのです。

     もともと簡潔に作ってあるマニュアルであれば、見直しも簡単に行えます。

   2.マニュアルは定期的に見直しをする 

     マニュアルは一度作成したら終わりというものではなく、苦情対応を常に質の
     高いものとするためにも定期的に見直しを行うことが重要です。

     現代は変化の時代といわれ、企業を取り巻く環境は、刻一刻と変化しています。

     作成時点では非の打ち所のないマニュアルだったとしても、環境が変化すれ
     ば、不都合が出てくる可能性があります。

     作成したマニュアルを、見直すことなく使い続けていては、顧客の要求に応え
     切れなくなる可能性があります。 

     そのため、データベース化された苦情対応の情報や、実際に苦情を受ける従
     業員の意見を定期的に集約して内容を見直すなど、常に鮮度の高いマニュア
     ルにすることが大切です。

     また、「同業他社の苦情対応事例」などの身近な事例は、適切な苦情対応を
     するために大変参考となりまが、入手は困難でしょう。

     それより異業種のマニュアルのほうが入手しやすいでしょう。

     日ごろから苦情対応に対するアンテナを張っておきましょう。

  □従業員を評価する仕組み 

   どんなにすばらしいマニュアルを作ったとしても、実際の現場で顧客に対応する従業
   員が、高い意識を持っていなければ意味がありません。

   経営トップは、朝礼や研修などあらゆる機会を使って、従業員に苦情対応の重要性や
   苦情対応に当たっての心構えなどを伝えていくことが大切です。 また、苦情対応に
   対する従業員の高い意識を保つためには、苦情対応を行った従業員をしっかりと
   評価することも忘れてはなりません。

   苦情対応は、対応する従業員にとって大きな負担となるものですが、苦情対応を行っ
   た従業員を評価する仕組みが整っている会社は多くはありません。 

   確かに、苦情対応は利益に直結するものではないため、評価の対象となりにくい面は
   ありますが、これでは、従業員に「苦情対応は割に合わない」という意識が生まれ
   ても仕方ありません。

   従業員がそうした意識を持つと、苦情対応に対する意識が低下してしまう恐れがあり
   ます。 

   こうした事態を防ぐために、苦情対応を行った従業員を評価する仕組みづくりが必要
   です。

   こうした仕組みとしては、例えば、・半年間の苦情対応件数が最も多かった従業員を
   表彰する・データベースに蓄積された苦情対応情報から、「参考となる対応」を従業員
   に 選択させ、最も選択された数が多かった従業員に特別手当を支給するなどが
   考えられます。

  □JIS規格も参考にする

   苦情対応については、JIS規格「JIS Q 10002:2005 品質マネジメント−顧客
   満足−組織における苦情対応のための指針」が制定されています。

   この規格は、組織内部における製品やサービスに関する苦情対応プロセスの指針に
   ついて標準化を行い、生産および使用の合理化、品質の向上を図ることを目的と
   して制定されたものです。 

   同規格には、苦情対応の「基本原則」「計画および設計」「苦情対応プロセスの実施」
   「維持および改善」などの規定事項のほかに、苦情対応プロセスの構築や維持に
   大きく経営資源を投資することが難しい小規模企業のための指針、苦情の受け付け
   および苦情のフォローアップをする際のフォーマットなども添付されています。

   マニュアルの作成に当たっては、こうした規格を参考にするのもよいでしょう。 

   同規格は経済産業省に設置されている審議会「日本工業標準調査会」のサイトで
   閲覧することができます。

  □マニュアル項目例

   (1)マニュアルの目的

     株式会社○○(以下「当社」)が提供する商品・サービスなどへの苦情に対し、
     適切に対応し、円滑かつ円満に解決するための対応手順並びに留意点につ
     いて定めるものとする。

   (2)苦情対応の手順

     苦情申出者と接する従業員(以下「対応者」)、苦情対応責任者(以下「責任
     者」)が行う職務は以下の通りとする。

     ①苦情の受領

       ・苦情受領時、対応者は苦情申出者の話を十分に聞き、苦情内容とお客
        様の希望の把握に努める。

       ・対応者は苦情の内容を責任者に報告する。

       ・苦情が電子メールや手紙など、直接対話を伴わない手段で行われた場
        合には、責任者は受領した旨を苦情申出者に通知する。

     ②苦情内容の調査

       ・責任者は対応者などに事情聴取を行い、苦情の内容、原因および苦情
        申出者の状況などの客観的事 実の調査を行う。

     ③苦情対応方法の検討

       ・責任者は対応者などを交え、適切な苦情対応方法の検討を行う。

       ・当社のみで対応することができない場合(不当な要求など)には、関係機
        関へ苦情内容を報告し、協力を仰ぐこととする。

     ④苦情対応の実施

       ・対応者は検討された苦情対応を基に苦情申出者に回答する。
        場合によっては、責任者など第三者を 交えて苦情申出者に対応する。

       ・すぐに回答できないものについては確認後に連絡する旨を伝える。
        その際には連絡期日を設定しておく。

       ・苦情申出者への回答は文書を用いるものとする。

   (3)苦情対応報告書の作成

     ・対応者は苦情の内容、対応結果などを苦情対応報告書にまとめ、責任者に
      提出する。

     ・責任者は苦情対応報告書を受領し、保管する。

   (4)苦情のデータベース化

     ・責任者は苦情対応の結果を受領し、当該苦情の記録を行い、当社の商品・
      サービスなどに反映し、再発防止に努めることとする。

   (5)マニュアルの見直し

     ・本マニュアルは、実際の苦情情報を反映させ、6 カ月ごとに見直しを行うも
      のとする。 


   クレーム(苦情)対応に限らず、会社という組織を動かしていくにはマニュアルの整備
   は欠かせない。

   組織における仕組みづくりは、場当たりな行動をなくしていくことで、経営リスクを
   軽減し、継続した収益をだすために必要なのです。

   「クレーム」というと、できれば避けてとおりたいと思いがちです。

   できればクレームは無いほうがよいですし、万が一クレームを受けてしまった時は
   なるべく上手にお客様をなだめて機嫌を直してもらい、それで一安心と思っている
   人も多いでしょう。

   しかしよく考えてみれば、クレームはお客様からの不満の意志表示であり、言い換え
   れば「こうして欲しい」というお客様からの忠告・ニーズの表現なのではないでしょ
   うか。

   クレームに対する姿勢を今までのようなマイナス思考からプラス思考に変えることに
   よって、貴重なお客様からの忠告の言葉を財産にしていくことができるのです。

   そのためにも、その場限りの解決を図ろうとせず、クレーム(苦情)に対応するための
   苦情(クレーム)対応マニュアルの作成が欠かせません。

   『クレーム対応』は組織人としての正しい対応(姿勢)を身につけなければならない
   基本動作12項目の一つです。

  ■クレームの予防

   クレームの予防対策として『顧客との接点の強化』があります。

   もちろん、『顧客との接点の強化』はクレームの予防策としてだけでなく、営業力の強化CS 
   にも効果的です。

  ■クレームの原因

   ・商品知識や業務知識が不十分である

   ・適切なお客様対応やCSに対する理解が不足している

   ・従業員の教育が不十分である  

   ものごとに正しく対応するためには、そうなった原因をつかむことが先決です。

   どうしてこのクレームが発生したのか、その根拠をしっかりつかんで、対応のしかたを
   誤らないようにしなければなりません。

   初期の段階で失敗すると解決が長びき、たいへんな労力と時間を要します。

   それでは問題を悪化させるだけです。

  ■クレームをもちこむ顧客心理

   様々なことが考えられますが、それが正しい
   かどうかはともかく、クレームを言われるには
   それなりの原因があります。

    ・以前にも同じようなことがあって我慢でき
     なくなった

    ・事務的な対応に対して不満をもっている

    ・その会社自体に対する悪い先入観がある

    ・過剰な客意識からくる怒りをぶつける

    ・損失の大きさ(経済的、精神的)に対する
     怒りを我慢できない

   不満が高じてクレーム苦情に発展していきます。

   しかし、不満を感じた人のすべてがそれを意志
   表示する訳ではありません。

   以下の事例ではクレームを苦情と言い換えてみます。

   一般的に不満が苦情となって表れるには

    潜在的な不満
      疑問を持つ(あなたは気づかない)

    顕在化された不満
      言葉は柔らかいが、顧客が態度や言葉に表す

    潜在的な苦情
      担当者に直接言わず、別の人間や上司に不満をぶつける

    顕在化された苦情
     担当者に直接(or 電話で)日ごろの不満をぶつける

   上記のように苦情を持ち込むまでにはプロセスがあります。


  ■クレーム(苦情)はお客様を増やすチャンスでもある

   お客様は不満を感じていてもそれを表明してくれる人は約半数しかいません。

   米国のある消費者データでは、不満を感じた人の96%がその不満を口に出して言わ
   ないそうである。((米国の調査では、口に出して言うのはわずか4%)

   そして、96%のうちの94%が再購入しない、というものです。

   マイナスの口コミ効果は、女性に顕著に表れ、中でも主婦においては非常に大勢の
   人に伝わるというデータが出ているとのことです。

   不満を感じた人が一年間にその不満について20人に伝えると、その話を聞いた20人
   の一人ひとりが別の20人の人に伝え、それを聞いたさらに一人ひとりの人がまた新た
   に20人に伝える。

   この行動を5回繰り返すと、なんと320万人に伝わることになります。

   逆に満足情報の口コミは1年間に5〜6人にしか伝わらないそうです。

   もちろん計算どおりにはならないにしても、悪い話は驚くほどのスピードで広範囲に
   伝わることは確かです。

   特にIT環境下にある今では、話半分どころではないはずです。 

   ましてやわざわざ電話をしてきたり、どなりこんできたりするお客様はもっと少なく、
   大半は不満を持ちつつ黙って離れていってしまったり、あなた(会社)にではなく、自分
   の周囲の人にマイナスのロコミを流したりします。

   このようなお客様に対しては、その不満や不信感をぬぐうチャンスもなかなか与えられ
   ません。

   しかし、わざわざ苦情の連絡をしてくださるお客様はそれだけ関心があるお客様であり、
   迅速・適切に対応することによって逆にファンになっていただくことも可能です。

   一つ一つのクレームを真しに受け止め、同じ様なクレームの再発を防ぐとともに、クレ
   ームをいってこられたお客様には必ず満足していただけるように適切な対応を行なう
   ことが必要です。

   クレームは「発生したこと」よりも「いかに対処したか」が問題です。

   クレームは「誰が起こしたか」ということよりも「何故起こったか」を追求して再発防止
   に努めるとともに、「適切に対応できたか」が重要となるのです。

   起きてしまったクレームはもみ消したり、その場かぎりの解決を図ろうとしたりせずに、
   会社との連携を図り、迅速・適切に対応していきましょう。


  ■苦情対応の基本

   苦情対応の基本は、「迅速で確かな対応」と「誠意ある
   対応」が最重要であることをよく認識しましょう。

   具体的には次の諸点に留意して迅速かつ誠意をもっ
   て対応するようにします。

    イ.相手が誰であれ、丁寧な言葉使いを忘れずに。

    口.相手から問われなくとも、みずから名乗ること。

    ハ.相手を確認すること。(氏名・住所・電話番号な
       どの連格先)

    ニ.相手に極力話をさせ、聞き取ること。

    ホ.相手の主張の内容をよく確認すること。(5WIH)

    へ.余計なことは言わないこと。

    卜.誤解を招く言葉や、様々な意味にとられかねない言葉は使わないこと

    チ.できるだけ平易な言葉を使うように心がけ、専門用語や仲間うちの言葉は
       使わないこと。

   苦情は「発生したこと」よりも「いかに対処したか」が問題であり、「誰が起こしたか」
   ということよりも「何故起こったか」の原因を追求して再発防止を努めるとともに、 
   「適切に対応できたか」が重要となるのです。

   起きてしまった苦情を場当たり的な解決やもみ消しせずに、会社との連携を図り、迅速
   ・適切に対応します。

  □訴訟大国

   訴訟大国の米国では苦情が苦情にとどまらず、訴訟へと発展するケースが多数あり
   ます。

   これは米国の弁護士がambulance chaser(蔑称で救急車を追いかける人)と呼ば
   れ、事故現場に駆けつけ被害者に訴訟を持ちかける悪徳弁護士が多数いることも
   要因となっている。

   わが国では「言いがかり」としか思われないようなことで訴えます。

   過去の事例では、

    ・猫を電子レンジに入れて乾かそうとした

     「説明書に”電子レンジで猫を乾かしてはいけない”と書いていなかった」という
     主張が認められて、電子レンジのメーカーは賠償金を支払った。

     通称「猫チン事件」は、日本でも驚くべき実話としてさまざまな論説で紹介さ
     れ、PL訴訟などに対する備えを説く上で大きな影響を与えてきましたが、実際
     にはこの事件に該当する判例は存在せず、今では、この話が一種の「都市伝
     説」または「寓話」であることが知られているそうである。

    ・ドライブスルーでコーヒーをテイクアウトして、運転しながら飲んでいたら、こぼ
     して軽い火傷をした。

     彼女(老女)はマックを訴え、勝訴しました。

    ・プールに水を張っていなくて泥棒が落ちて怪我をした。

     泥棒が、学校に泥棒に入ろうとして何故か体育館の屋根を歩き、屋根が弱っ
     ていたためそこから体育館の中に落ちて大怪我した。
     その泥棒は、学校側の管理不行き届きを訴えて、結果勝訴しました。

    ・お化け屋敷が怖すぎると訴えた女

     フロリダ州の女性が、ユニバーサル・スタジオを相手に裁判を起こした。
     同テーマパークのお化け屋敷アトラクション「ハロウィン・ホラー・ナイト」が怖す
     ぎたため、精神的苦痛を負ったという言い分。
     裁判の結果、彼女は1万5000ドルの慰謝料を勝ち取りました。

   わが国でもこの流れはすでに始まっており、債務整理や過払い請求のCMなどが似て
   いないだろうか?

   顧客からのクレームをしっかり受け止めるためのクレーム対応報告書は欠かせません。

  ■苦情(クレーム)はチャンス

   「禍(わざわい)転じて福となす」ということわざがあります。

   クレーム対応は、一歩間違えば顧客の信頼を失い、取引停止という事態にまで発展する
   こともあります。

   しかし、しっかりとした対応ができれば、このことわざ通り、逆に顧客との信頼関係を
   いっそう堅固なものにすることができます。

  ■苦情(クレーム)はどんな時に発生するのか

   それは、顧客が製品やサービスに不満を感じたり、「期待を裏切られた」と感じたりした
   時です。

   つまりクレームとは、「顧客から直接、自社の商品やサービスの不備を教えてもらえる
   重要な機会」といえます。

   そう考えると、会社にとって最も恐ろしいのは「何も言わずに去っていく顧客」です。 

   不満を抱いている顧客が、その不満には一切触れず、曖昧な理由をつけて取引を中止
   してしまったら、会社はどこをどう改善したらいいのかわかりません。 

   クレームを言ってくれる顧客は「先生」であると考え、真摯に対応しましょう。

   1)クレームはすべてトップに報告すること

    クレームを最初に受けた人間が、上司に報告するか、しないか。これを自己判断
    で決めることは非常に危険です。

    ちょっとしたボタンのかけちがいが、後で大きなトラブルに発展することも十分に
    考えられます。

    どんな些細なクレームでも、リアルタイムでトップに伝わる仕組をつくっておき
    ましょう。 

    2)クイックレスポンスが重要

     クレームを受けたら、すぐになんらかのアクションを起こすべきです。

     顧客はクレームを放っておかれたと感じると、二度とこちらの話を聞いてくれよ
     うとはしません。

     すぐに担当者とその上司が顧客を訪ね、じっくりと話を聞くことが大切です。 

     ある会社のトップの名刺には、会社の電話番号の他に自宅の電話番号と「24時間
     受け付け」という言葉が書かれています。

     そして顧客に名刺を渡すときには必ず、「何かお困りのことがあればいつでもご
     連絡ください」と一言添えているそうです。

    3)言い訳、反論をしない

     「顧客はすべて正しい」という言葉をモットー
     に、高い顧客満足度を実現している会社も
     あります。

     顧客はこちらの言い訳や反論に耳を貸そう
     とはしません。

     たとえこちらが正しくとも、顧客は信頼を裏
     切られたと感じます。

       まずは顧客の不満を解消することを第一に
     考えることです。 

    4)人ではなく原因を追及すること 

     クレームがあった時に、「誰が悪いのか」を
     追及しても意味はありません。

     その人間は同じ失敗を繰り返さないでしょうが、他の誰かがするかもしれません。

     「誰が悪いのか」ではなく、そのクレームが「なぜ発生したのか」という原因を追
     求することが重要です。

     経理担当者が請求金額を間違えてクレームが生じたとします。

     その時、ミスをした経理担当者を責めるのではなく、そうしたミスが起きにくい
     仕組みがあるかを確認し、なければ早急に対策を講じましょう。

     例えば、「請求書発送の前に常に営業担当者に金額の確認を行うこと」といった
     ルールがあるかなどを確認することです。

     クレームは本来、あってはならないものです。ですが、クレームをゼロにするこ
     とは、まず不可能です。

     だとしたら、クレームから逃げるのではなく、しっかりと対応し、自社の商品、サ
     ービス改善につなげましょう。と同時に、クレームの原因を追及して再発防止す
     るための仕組みをつくることが必要です。

     そのためには、まず顧客からのクレームをしっかり受け止めるためのツールが
     必要です。

     クレームは企業として気づかなかった改善点を指摘してくれる材料にもなります。

     クレームというとマイナスのイメージがついてまわります。

     どうしても無理難題を言ってきて、利用されるのではないかという感じを持つ人が
     多いと思います。

     しかし、クレームは宝の山でもあるのです。

     クレームを解決することによってクレームを言った人をリピーターに変えることが
     できるのです。

     また、同じような不満をもっていてクレームも言わずに逃げていく顧客を繋ぎとめる
     ことにつながるのです。

     良い評判というものは広まりにくく、悪い評判というものはとても早く広まります。

     そのためにも素早い対応が重要なのです。

     過去の成功体験や経営者の考えが市場と大きく乖離してしまうことも多く、そう
     いうことを修正するためにも、市場の声をしっかりと聞くことがすべてのことに役立
     ちます。 

     自社に合った苦情対応マニュアル・シートを作成し、クレーム対応に、前向きに取り
     組んでください。

   

 

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