治療休暇制度
 

  ■治療休暇制度とは

   会社員が長期の治療を要する病気にかかってしまった場合、通院しながら仕事を
   継続するのは容易なことではありません。

   治療に伴う身体的・精神的・経済的負掛まもちろんですが、職場の理解や協力が
   十分に得られなければ、仕事と治療の両立が難しくなり、厳しい状況へと追い込
   まれてしまいます。

   たとえば、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人がかかる可能性があるとい
   われている「がん」では、化学療法やホルモン療法を行なう場合、長期にわたって
   定期的に通院する必要があります。

   また、夫婦の10組に1組が悩んでいるともいわれる不妊の治療についても同様
   です。

   これらの治療に対して会社のサポートがなければ、従業員は年次有給休暇を利
   用したり欠勤をしたりして通院せざるを得ません。

   そこで、仕事と治療の両立を支援する制度、つまり、従業員が安心して通院治療
   を受けられる制度づくりが会社に求められています。

   ここでは、治療休暇制度について紹介します。

   1.治療休暇制度とは 

     治療休暇制度とは、長期的かつ定期的に治療しなければならない疾患をもっ
     た従業員が、通院のために休暇を取得することができる制度です。

     多くの会社では就業規則に休職制度を定めていますが、休職制度は、連続し
     た一定期間の欠勤を想定しているため、通院などの断続的な欠勤については
     原則認めていません。

     そのため、通院には年次有給休暇を利用するのが一般的ですが、通院の頻
     度によっては有給休暇をすべて消化してしまい、欠勤が生じてしまうことも起こ
     り得ます。

     そうした不利益を解消し、通院治療が必要な従業員のニーズに合った柔軟な
     対処法が治療休暇制度です。

   2.安全配慮義務とプライバシー保護

     治療休暇制度を導入するに当たっては、適用対象となる疾患を具体的に特定
     することが望ましいといえますが、長期にわたって定期的に通院しなければな
     らない疾患となると、がんを始め、人工透析が必要な腎臓病や心臓病といった
     循環器系の病気など、おのずと高度な治療を要する病気が中心となります。

     また、不妊治療に取り組む従業員も想定する必要があるかもしれません。

     これらの治療を受ける従業員の立場になってみると、まず「上司や同僚に病気
     のことを知られたくない」と考えるのではないでしょうか。

     非常にプライベートかつデリケートな間潜であるため、十分な配慮がなされぬ
     まま必要以上に知れわたってしまうと、噂になったり誤解や偏見を招いてしま
     い、従業員のプライバシーを侵害してしまう恐れがあります。

     また、会社には、従業員が健康を害することなく安全に働けるよう配慮する義
     務(安全配慮義務)があります。

     そのため、会社は、従業員の健康に関する情報を把握しておく必要があり、従
     業員は、会社から求められたら健康に関する情報を提供する義務があります。

     会社は、その情報を基に仕事と治療の両立をサポートするわけですが、第一
     に優先すべきは、従業員のプライバシー保護に重点をおいた情報管理の徹底
     です。

   3.社内規定に盛り込むポイント

     治療休暇制度の具体的な内容については、後からトラブルにならないよう、就
     業規則内もしくは別規定に明文化しておくことが重要です(次項に規定例を紹介)。

     規定に盛り込むおもな項目は次のとおりです。

      ・適用対象者(勤続年数などの要件)

      ・適用対象となる疾患(がん、精神疾患、難病、不妊症など)

      ・適用となる治療の内容(通院治療、検査、短期入院、経過観察など)

      ・取得できる休暇の単位(1日単位、半日単位、時間単位など)

      ・年間の取得日数の上限と繰越の可否

      ・休暇取得中の給与の有無

      ・休暇を取得する際の届出方法、提出書類の有無・種類(診断書、届出書など)

      ・休暇取得者に対する配慮(個人情報の管理、業務量の調整など)

   4.運用のポイント

     運用のポイントは大きく分けて3つあります。

     (1)従業員に対する十分な説明

       仕事と治療の両立について、一番悩んでいるのは従業員自身です。

       「職場に迷惑をかけたくない」、「悪いことをしているわけではないが、後ろ
       めたさを感じてしまう」といった不安を解消すべく、治療休暇制度について
       の説明を十分に行い、利用に向けてサポートすることが重要です。

     (2)人事担当者および上司との情報の共有

       仕事と治療を両立させるために、人事担当者および上司が中心となり、従
       業員から疾患に関する情報(今後の治療計画や配慮事項など)を収集します。

       場合によっては、主治医や産業医からも意見を聞くなど、疾患についての
       正しい知識をもち、理解することが重要です。

       病状や考えられる副作用について、出来ること・出来ないこと、業務中や業
       務内容における注意点など、安全配慮義務の観点からも情報を共有します。

       正確で具体的な情報が多いほど、今後予想されることに対して会社側も対
       応しやすくなります。

       場合によっては、業務の軽減や配置転換、短時間勤務への切り替え、残業
       のセーブなど、本人および医師の意見なども十分に聞いたうえで、柔軟に
       対応することも検討します。

     (3)職場内の調整

       通院や体調管理のために働き方が変わることに対して周囲の理解と支援
       を得るためには、ある程度の情報を伝える必要が生じるでしょう。

       個人情報保護法では、第三者への個人情報の提供には本人の同意がなく
       てはなりません。

       社内の誰に対してどこまで伝えるのか、本人とも十分に相談したうえで職
       場内の調整を図ることが大切です。

       その際、誤解や偏見をなくすことを目的とした教育の実施なども効果的で
       しょう。

       そのうえで、上司はほかの従業員への配慮(業務量の調整、情報の共有な
       ど)とともに、治療中の従業員への声かけなどによって、相談しやすい体制
       づくりを心掛けるようにします。

       これらの点に留意して、通院治療を必要とする従業員が柔軟に働ける職場
       環境づくりに取り組んでいきましょう。

  治療休暇制度規定例(別紙)

 

        お問合せ・ご質問こちら


        メルマガ登録(無料)はこちらから

 

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年3月28日
記事:「メルマガ705号」 更新しました。
2024年3月27日
記事:「新規事業開発成功のポイント」更新しました。
2024年3月25日
記事:「タイムマネジメント Ⅰ」 更新しました。
2024年3月22日
記事:保険代理店 業務の標準化」更新しました。 
2024年3月21日
記事:メルマガ704号」更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501