新規事業計画書作成の留意点
 

  ■基本計画書の作成 

   新規事業の構想(方向性)は、市場性の調査・評価、現在保有している経営資源
   の分析を経て、「新規事業計画書」としてまとめ上げます。

   ここでは、新規事業計画書に最低限必要と思われる「基本計画」について、その
   書き方・考え方のポイントを解説していきます。

   新規事業を本格的に展開するには、基本計画であげた項目はすべて明らかにす
   る必要があります。

   基本計画において、明文化できない、焦点がぼやけているようなことがあれば、 
   実行可能な事業として練られているといえません。
   いまだ、思いつき、根拠なき期待の域を脱していないと評価きれてしまいます。

   そこで、各項の解説を参考にしながら、フォーマットに新規事業の内容を記入し、 
   実際に計画書を作成してみましょう。

  □プロフィール

   (1)新規事業名

     どのような事業なのかをイメージできるような事業名を付けます。

     文字数は15文字から30文字程度を目安に、キャッチーかつシンプルで魅力
     的な事業を象徴・演出するようなタイトルを工夫しましょう。

   (2)事業計画書の目的

     計画書が第三者に提示するものであればその目的を明確にします。

     投資家からの「資金支援」、共同開発や販売提携などの「ビジネスパートナー
     募集」といったことを表記します。

   (3)新規事業展開の背景

     すでに事業を行なっている企業であれば、既存事業の概況から新規事業を展
     開しようとする経緯を簡単に記述します。

     起業家による新たな事業の立ち上げであれば、事業化するに至った動機を明
     らかにします。

     インパクトのある動機であれば、第三者へのアピールの度合いが増します。

     さらに、5年後、10年後にこの事業をどうしていきたいのかを表明します。

   (4)会社概要

     会社の基本情報について記入します。

     これから会社を設立する場合などで、記入できない項目についてはブランクと
     します。

  □事業コンセプト

   (1)事業コンセプト3要素

     事業コンセプトは、aターゲット顧客層、b顧客の想定ニーズ、C独自の能力、
     の3要素からなります。

     新規事業を展開するには、事業対象とする顧客層とそのニーズを明確に想定
     したうえで、そこに独自能力によって形作られる製品やサービスの投入が検討
     されていなくてはなりません。

     事業コンセプト3要素が規定しきれていない事業は、顧客に対して自社の特徴
     が十分にアピールできず、集中すべき経常資源の選択方法にも狂いが生じて
     しまいます。

     ◎事業コンセプト3要素のポイント
      a 顧客層:性別、年齢層、地域、所得、職業、趣味・噂好などによる区分

      b 独自能力:特定分野の技術・ノウハウ、販売方法、免許・資格など

      c ニーズ:低価格指向、利便性・即時性追求、機能性・品質追求など

   (2)事業コンセプト

     ここで打ち出す事業コンセプトは、事業計画書すべてのよりどころとなります。

     3要素の内容を盛り込み、事業存在価値、社会的意義を訴えるようなワンセン
     テンスにします。

     ありふれた表現をさけ、かつ自己満足に陥った第三者が理解し難い内容にな
     らないようにします。

   (3)補足説明

     事業コンセプトを、必要に応じて次のような観点から補足的に解説をします。

      ・ターゲット顧客とニーズを想定した背景や根拠は何か

      ・独自能力を裏付ける根拠として、獲得ノウハウや技術となるものは
       あるか(自身の業界経験・実務経験や独自仕入れルートの存在、
       スタッフの優位性などを補足的に明記)

      ・コンセプト3要素のうち、とくに新規性・独創性の高い要素はどれか

      ・新規事業が自社や自分自身にとってどのような意義があるのか

      ・既存事業との相乗効果が見込めるのか

  □事業環境の分析

   (1)産業構造の変化の分析

     社会の大きなトレンドを記述します。

     事業が社会の要請に基づくものであることを、客観的に分析します。

     ◎分析対象例
       ・景気動向の変化

       ・業界内の法律や制度など規制緩和、規制強化の流れ

       ・高齢化社会、女性の社会進出、国際化など社会構造の変化

       ・国や地域の産業新興施策の状況

     ◎チェック
      3要素それぞれが新規事業としての魅力を兼ね備えており、妥当な関連性
      が存在しているかチェックします。

   (2)市場環境の変化の分析

     新規事業の対象となる市場において、どのような変化を予測しているかを明確 
     にします。

     根拠となる予測はできるだけデータをもって裏付けを行ない、その変化が展開
     しようとする事業に対してどのような影響をもたらすかを整理します。

     ◎分析対象例

       ・市場の大きさ、需要量、対象顧客数の変化

       ・価格、品質、趣向など市場ニーズの内容の変化

       ・顧客の購買行動の変化

       ・新しい販売方法や販売チャネルの出現

     ◎分析方法例

       ・家計調査年報、商業統計などの公的な統計情報による分析

       ・民間のシンクタンクや業界団体が調査した業界情報

       ・アンケートやモニター調査による独自分析

     ◎チェック

      マクロ情報以外にも自分の足で稼いだ情報収集・分析を行ないます。
      たとえば、アンケート調査、インターネットを活用したリサーチなど、
      限定的な市場分析があげられます。

   (3)技術革新の変化の分析

     扱おうとする製品・サービスにかかわる技術分野の変化を予想します。

     ◎分析対象例
       ・基礎技術、要素技術に関する進展度合い(例:DVD技術、クローン技術)

       ・新製品、新技術の出現予想

       ・コスト削減や品質向上に影響する生産技術の革新予想

       ・現有製品と次世代製品の切り替わりのタイミング

       ・販売技術の革新予想(例:インターネット活用の通信販売)

   (4)競合環境の変化の分析

     競合となる企業、店舗、製品、サービスについて、「優位性」「弱点」を整理。

     ◎分析対象例

       ・競合となる企業とその製品、サービス

       ・店舗の場合は、商圏内の競合店の品揃え、営業状況

       ・類似する製品、関連する製品

       ・新規参入者、撤退者の予測

       ・関連する技術分野の特許調査

     ◎チェック

      まったく新しい製品を開発したとしても、すでに類似製品があったり、
      追随者が早期に出現することが往々にしてあります。
      緻密な競合調査によって、展開しようとする事業の優位性を検証します。

  □マーケテイング計画

   (1)製品・サービスの概要

     製品やサービスの特徴を次のような観点から明確にします。

      ・製品の形状、材質、サイズ、色、ライン、パッケージ

      ・製品やサービスの機能、役割、ブランド

      ・製品であればおもな製法や仕入れ方法、サービスであれば提供方法

      ・その他特筆すべき性質、特徴

      ・事業コンセプトの独自能力との関連

     ◎チェック

      どのような製品・サービスかをイメージできるように表現を工夫します。
      必要に応じて、図で示したり、製品の写真を添付します。

   (2)製品・サービスのベネフィット(便益)

     製品・サービスの販売ターゲットについて、誰が(ターゲット顧客)、いつ、どこ
     で、どのように利用するのかという視点からまとめます。

     そして、顧客がこの製品・サービスを利用することで、どのようなメリットが享受
     できるのかも明らかにしていきます。

     活用シーンを提示するなど、顧客の視点からアピールきれているか確認。
        
   (3)価格設定

     顧客への標準販売価格を記入します。

     また、価格設定の方針についても次のような考え方に基づき明らかにします。

     ◎価格政策例

       ・低価格政策…低価格を打ち出し一挙にシェアを獲得する。
        また薄利多売によって利益を獲得する

       ・高価格政策…高価格により製品サービスの付加価値を重視し、
        早期の資金回収を図る

     ◎価格決定方法例 

       ・コスト価格決定…かかる費用に必要な利益を乗せて価格を設定する

       ・市場価格決定…顧客が購入するであろう価格を設定する

       ・競争価格決定…競合する製品・サービスに対し価格競争力を考慮
        して設定する

     ◎チェック

      「売れて、儲かる」価格の考えが練られているか確認しましょう。

   (4)販売形態(販路、店舗)

     まず、想定する商圏を明らかにします。

     そのうえで、製造業や卸売業であれば、製品を流通させる販路を図示します。

     複数の販路を想定している場合、シェア構成などを記入します。

     また、小売業であれば、店舗の立地や広さなどの特徴を記入します。

     ◎チャネル政策の考え方例

       ・開放的チャネル…取引を望む相手すべてと取引

       ・選択的チャネル…一定の条件をあらかじめ設定しその条件に
        合った相手と取引

       ・専売的チャネル…代理店方式、会員制、フランチャイズ方式など
        特定の相手のみと取引

     ◎店舗の考え方例

       (1)商圏設定による店舗の考え方

         ①近隣型店舗…最寄り性が高く、多くの地元住民が多頻度に
           利用する店舗

         ②地域型店舗…最寄り性・買い回り性が強く、週1回程度来店が
           見込める店舗

         ③広域型店舗…専門性・噂好性が高く、広域商圏において店の
           認知度が高められる店舗

       (2)店舗規模による店舗の考え方

         ①小規模店舗…専門的な品揃え・サービスで初期投資を抑えた店舗

         ②大型店舗…広い品揃えで大きな集客を見込む店舗

     ◎チェック

      製品特性に合わせた販売方法が構築きれているか確認しましょう。
      販売先、仕入れ先のパートナーを求めるのであれば、しっかりした
      政策が明記されていることが必要。

   (5)プロモーション方法

     プロモーションとは潜在顧客の掘り起こしのための具体的な告知方法のこと。

     製品・サービスをどのように認知してもらい、アプローチしていくかを具体的に
     記入します。

     プロモーション方法には次のような方法があります。

     ◎プロモーションの方法

       ・広告活動…チラシや雑誌、新聞、CMなどの広告掲載。広告料として
        費用がかかる

       ・パブリシティー…雑誌、新聞の記事としての掲載。話題性、新規性の
        あるものであれば取り上げられる可能性は大きい

       ・人的販売…営業マンや店舗販売員による告知、営業活動

       ・イベント・・展示会、見本市、新製品発表会などによる告知活動

       ・その他…会員制、インターネット利用、DM、口コミなど

     ◎チェック

      大規模なプロモーションには大きな費用と手間がかかります。
      少ない費用で大きな効果を狙ったプロモーションがとられているか
      確認しましょう。

   (6)知的財産権等の所有状況

     特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権の所有状況(申請中も含む)を
     記載します。

     また、事業に必要な免許、資格等も取得状況を明示します。
 

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