自社のコンセプトを確立
 

  ■自社のコンセプト

   会社経営においてコンセプトを確立することは非常に重要です。

   コンセプトが不明確であると、経営における様々な場面でブレが生じる要因となり、
   営業においても、見込み客、新規顧客の心をつかむことが困難となり、リピート客へも
   不満や不安を与えることになります。

   企業コンセプトの構築に重要なことは、自社の経営理念の本質を理解することです。

   そしてコンセプトの確立は自社ブランドの構築において重要となります。

    1.コンセプトの重要性

      コンセプトとは自社の特徴を簡潔な言葉で表現したものです。

      「自社は○○業です」というだけでは、たんに自社の業種・業態を「名刺」のよう
      に示したに過ぎません。

      コンセプトとは、その事業を通して「自社は何をやろうとしているのか」が、お
      客様に対しても十分に伝わるものでなくてはなりません。

      また、コンセプトを明確化するということは、競合他社との違いを理解してもらう
      ことでもあります。

      「その他大勢」に埋没することなく、お客様に関心をもってもらうためには、コ
      ンセプトによって「自社ならでは」の特徴を鮮明にする必要があります。

      関連性のある言葉として、「USP」、「売り」、「付加価値」「ポジショニング
      などがあります。
      
    2.自社コンセプトに必要な3要素

      たとえば、ある飲食店が「豊かな食生活でお客さまを幸せにする」という方針を掲
      げていたとしても、それ自体ではコンセプトに
      は成り得ません。

      コンセプトは具体的でわかりやすく、お客様に
      とって魅力的でなければならないのです。

      そのためには、
      「誰に対して」、「何を」、「どうやって」提供す
      るかという3つの要素(事業コンセプト)を備
      えておく必要があります。

       ・誰に対して(ターゲット

        自社はどのような特性をもった顧客層(ター
        ゲット)に向けて事業を行いたいのか、どの
        ようなニーズをもっている人をターゲットにし
        たいのか。

        市場を同質のニーズを持ついくつかの集団に細分化し、個々の市場にあっ
        た売り方が必要になってきたことで、企業は、売り込む先を自社の製品・サ
        ービスを最も欲するであろう特定の顧客に絞り込むことができます。
 
        つまり、「標的市場(ターゲット市場)」が選定できるのです。

        これにより、企業は自社のヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を使って
        集中的に標的(ターゲット)とする顧客に売り込むことで、効率的により大き
        な成果が挙げられるようになります。

       ・何を(ベネフィット)

        ターゲットのニーズを自社の商品のもつどのようなべネフィット(便益)で
        満たすのか、商品にどのような価値を感じてもらうのか。

        自社の事業全体に関する「事業コンセプト」とともに、自社で扱っている
        個々の商品についての「商品コンセプト」も必要です。

        商品コンセプトとは、「この商品はどのようなものか」、「今までの商品とど
        こが違うのか」、「誰がいつどこでどう使うのか」、「メリットは何か」等を
        ひとことで言い表したものです。

        「A」、「B」、「C」の3つの商品があれば、それぞれの商品を通じて顧客に
        届けたいベネフィットは異なるはずです。

        コンセプトがまったく同じならば、そのようなラインナップにする必要はあり
        ません。

        似通ったコンセプトの新商品を投入すると、カニバリゼーション(自社の商
        品・サービスが自社の他の商品・サービスとシェア争いをする「共食い」現
        象のこと)を起こす可能性が高くなります。

       ・どうやって(根拠)

        ベネフィットを可能にする自社独自の技術・ノウハウは何か、競合他社に比べ
        てどの部分に優位性があるのか。

    上記の3つの要素を踏まえて、前述の「豊かな食生活でお客さまを幸せにする」という
    方針を具体化すると、

    たとえば、

     ・食の安全に関心が高いファミリー顧客に対して(ターゲット)

     ・厳選素材を使ったオリジナル料理でおいしさとヘルシーさを(ベネフィット)

     ・自社独自の調理ノウハウ、オリジナルソース、高い接客技術で(根拠)

    で、提供するというコンセプトとして定義することができます。

    コンセプトを明確化することによって、顧客はこの飲食店が自分に対して何をしてく
    れるのかを鮮明にイメージすることができるのです。

  ポジショニング 

   コンセプトを明確にする際には、その商品・サービスを、どのような相手に、どのように
   販売するか、を設定することです。

   自社の考え方を相手に伝える際にもよりわかりやすく表現することができます。

   顧客ニーズが多様化・複雑化している現在、販売の土俵を決めて戦力を集中しなければ
   なりません。

   万人を対象に、あなたの扱う商品・サービスを販売すべきではありません。

   市場のどこで勝負をかけるか、「販売する土俵」(他社と違う土俵)を設定することが
   ポジショニングです。

  SWOT分析と事業領域(ドメイン)の決定

   自社の外部環境分析と内部資源分析を行い、強みと弱みを把握します。

   そして自社の事業領域(戦うべき市場)を設定するためには「どのような顧客集団
   (who)の」「どのようなニーズ(what)に対して」「どのような方法・技術(how to)
   で」が必要不可欠です。

   中小企業の基本戦略のひとつは専門化です。

   品揃え豊富なデパートを目指すのではなく、専門店を目指します。

   この実現のためにも顧客に提供する製品やサービスの独自性を強めることです。

   ニッチ市場でオンリーワンの地位を築けば、必然的に競争は回避され他企業に対し優位
   性を確保できます。

   限られた現有資産の中で確実に収益をあげるためにも、場当たりな自己流を断ち切るこ
   とが急務です。

   さらに、自社の強みを活かしてた営業展開も重要です。

   送り先であるマスコミに向け、自社の新製品・新サービスについての情報や記事を無料で
   メディアに取り上げてもらうプレスリリースの活用です。

   メディアに取り上げられることで、商品・サービスだけでなく、自社のイメージや信用力
   を向上させることも期待できます。


  □コンセプトを明確にするポジショニングマップ

   コンセプトを明確にする際には「ポジショニングマップ」を活用することで、視覚的・直
   感的に捉えやすくなります。

   また、自社の考え方を相手に伝える際にもよりわかりやすく表現することができます。

   ポジショニングマップとは自社のコンセプトを顧客にどのように理解してほしいのかを
   示したものです。

   ポジショニングマップを作成することで、自社の「立ち位置(ポジション)」や競合企
   業の状況も明らかになります。
    
  □ポジショニングマップの作成手順

   1.Key Buying Factor(購買決定要因:KBF)を設定する

     KBFとは、顧客が数ある選択肢のなかから「この店で買う」、「この商品を買う」
     と最終的に判断する購買決定要因のことです。

     自社にとっての複数のKBFを明確にし、そのなかから重要な2つの要因を縦
     軸・横軸にとってポジショニングマップを作成することが基本になります。

     KBFにはさまざまな種類がありますが、もっともわかりやすいのは「他店に比
     べて安い」、「類似商品に比べて安い」という「価格」でしょう。

     価格に敏感な顧客は多少遠くても安い店に足を運びます。

     自分が必要とするニーズを満たしそうであれば、ほとんど吟味することなくもっ
     とも安い商品を選ぶという顧客も数多くいます。

     また、「品質」も重要なKBFであることはいうまでもありません。

     日頃は価格に敏感な顧客であっても、自分のこだわりがある分野については、
     多少高くても品質重視で店や商品を選びます。

     自分のニーズをよりハイレベルで満たすために割高の支出を容認するのです。

   2.競合状況を探る 

     次に自社だけではなく、競合他社がどのようなポジションにあるのかを書き出して
     いきます。

     「敵を知り、己を知る」ために、それぞれの立ち位置を可視化します。

     その際、事業の捉え方によって、競合とみなすべき相手の幅は変わります。

     たとえば、飲食業の場合、事業を広く捉えれば、同業者のほかに、コンビニ、持ち
     帰り弁当店、宅配専門店、デパ地下やスーパーの総菜売り場なども競合相手にな
     ります。

     しかし、自社が得意ジャンルの専門料理にこだわっているのであれば、同じ飲食業
     であってもまったく違うジャンルの専門店は競合から除外して考えることもできま
     す。

     ここでは「価格×品質」のポジショニングマップが次のようになったとします。

     それぞれの円の大きさは事業規模を表しています。

     この場合、自社は「高価格・高品質」の領域で勝負していますが、同じ領域には数
     多くのライバル企業が存在し、競合状況は非常に厳しくなっていることがわかりま
     す。

     また、「低価格・基本品質」の領域では、F社とG社がしのぎを削っています。

     一方、「低価格・高品質」、「高価格・基本品質」の領域には競合企業が少なく、
     大きな空白ゾーンがあります。

     ポジショニングマップによる分析で、自社の強みをいかせる有望な空白ゾーンを見
     つけることができれば、競争を避けた効率的な事業展開が可能になります。

     つまり、競争が激しくない新たな「種目」にエントリーし、独自の技を磨き差別化し
     ていくことができるのです。

     一般にポジショニングマップ上に空白ゾーンがある場合、
     その理由は次の3つに分けられます。

      (1)そのゾーンにはニーズがまったくないことが明白で
        ある

      (2)そのゾーンのニーズが高いことはわかっている
        が、収益性の低さや技術的な困難さなどの理由で
        未開拓なままになっている

      (3)潜在的なニーズの可能性はあるが、誰も気づか
        ずに手をつけていない

    上記のポジショニングマップで「高価格・基本品質」が空白
    なのは、(1)の理由であることは明らかです。

    品質に比べて価格が高すぎる商品は誰も買いません。

    「低価格・高品質」ゾーンではE社が健闘していますが、まだ
    大きな空白ゾーンが残されています。

    これはおもに(2)の理由によるものでしょう。

    また、極端な「高価格・高品質」ゾーン、極端な「低価格・基本品質」ゾーンについて
    は、ニーズがないのではなく、(3)の理由によって空白ゾーンが放置されていると考
    えることもできます。

    つまり、「より高い品質が得られるならばもっと高価格であっても構わない」、あるい
    は「さらに基本品質を絞り込むことで、もっと低価格にしてほしい」という潜在ニー
    ズが眠っている可能性もあるのです。

    このように分析していくと、自社の今後の戦略として、

     ・未開拓有望ゾーン進出に向けて、コストダウンや技術開発を強化していく

     ・潜在ニーズの可能性を探り、そのニーズに応えられる要件を研究していく

     ・現在のポジションが厳しい競合にあることは承知のうえで、「同じ土俵」でライバ
    ル企業に打ち勝っていくための方策を強化する

    といった選択肢を検討することができます。

   3.さまざまなKBFでポジションを確認する

     ここまでは「価格×品質」をKBFとしたポジショニングマップをみてきましたが、
     これ以外にも「品揃え」、「利便性」、「機能」、「操作性」など多くの業種・業態
     に共通したKBFがあります。

     これらを軸にしたさまざまなポジショニングマップを分析することで競合他社との差
     別化を探ることが可能となります。

     それぞれのマップのどこにポジションを置くかは、業種・業態によって異なります。

     たとえば、高級な専門ブランドショップのような業態に求められるポジションと、
     手軽なアクセサリーショップに求められるポジションは大きく違ってくるでしょう。

     自社のコンセプトに応じて適切なポジションをとること、さらには自社がそのような
     ポジションで事業を行っていると顧客から認識されているかどうかを確認すること
     が大切です。

     また、業種・業態独自のKBFもあります。

     製造業であれば、「技術力」、「開発力」、「設計力」、「製造力」、「納期」な
     ど、サービス業であれば、「居心地のよさ」、「接客技術」、「待ち時間」、「予約
     の取りやすさ」などが重要なKBFとなるでしょう。

     自社のコンセプトを確立することはブランド構築に共通します。

     どんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それを提案する従業員の品質
     レベルが低ければ採用されません。

     それが組織人として、ブランド構築に欠かせない基本動作12項目です。
    
  □商品のポジショニングマップ

   1.事業コンセプトと商品コンセプト

     事業コンセプトとは、自社が「誰に」、「何を」、「どのように」提供するかを決定
     することです。

     事業コンセプトは、いかに先行する競合他社と差別化できるコンセプトを発案し、
     事業規模を拡大していけるのかというシナリオ(筋書き)を明確にします。

     事業コンセプトは、「顧客ニーズの変化方向」と「事業のイノベーション方向を具体
     的に予測することで抽出できます。

     (1)顧客ニーズの変化方向

       現在、3年後、5年後の顧客ニーズの水準がどうなっていくのかを予測します。

       プロジェクトメンバーを中心に徹底的に議論します。

     (2)事業のイノベーション方向

       顧客ニーズの変化方向を予測すると同時に、業界上位の動向から、事業特性
       ・技術革新・取り組むべきノウハウなどが、どのように変化していくのかを予測
        します。

     (3)事業コンセプトの抽出

       顧客ニーズの変化方向と事業のイノベーション方向の両方向から総合的に事
       業の中核的考え方(事業コンセプト)を導き出します。

       原則として、3年後または5年後の中核的考え方を選びます。

       どちらを選ぶかは自社の実現可能性によります。

     自社の事業全体に関する「事業コンセプト」とともに、自社で扱っている個々の商品
     についての「商品コンセプト」も必要です。

     商品コンセプトとは、「この商品はどのようなものか」、「今までの商品とどこが
     違うのか」、「誰がいつどこでどう使うのか」、「メリットは何か」等をひとことで
     言い表したものです。

     「A」、「B」、「C」の3つの商品があれば、それぞれの商品を通じて顧客に届けたい
     ベネフィットは異なるはずです。

     コンセプトがまったく同じならば、そのようなラインアップにする必要はありませ
     ん。

     似通ったコンセプトの新商品を投入すると、カニバリゼーション(自社の商品・サ
     ービスが自社の他の商品・サービスといったシェア争いをする「共食い」現象のこ
     と。)を起こす可能性が高くなります。

     カニバリゼーションは食品などの価格差がなく、重複商品が多い業界で発生率が
     高いといわれています。

     それぞれの商品コンセプトはその共通の土台となる事業コンセプトに合致したも
     のでなければなりません。

     つまり、それぞれの商品コンセプトには「違い」が必要ですが、「矛盾」してはなら
     ない。

     まずは自社の事業全体のコンセプトを確立し、それを踏まえたうえでベネフィットの
     異なる個々の商品コンセプトを固めることが大切です。

  商品のポジショニングマップを作成

   たとえば、ある家電メーカーの商品について、縦軸に
   「機能」、横軸に「操作性」とした商品ポジショニングマップ
   が次のようになったとします。

   この場合、商品A〜Cについては、独自のポジションにな
   っていますが、商品D〜Fのポジションは非常に類似して
   います。

   商品D〜Fについて、それぞれの微妙な違いが顧客の選  
   択肢を広げ、購買行動を促進していればこのようなライン
   アップも有効です。

   しかし、微妙な違いが顧客にとって意味のないものであれ
   ば、顧客はたまたま商品D〜Fのどれかを選んでいるだけ
   かもしれません。

   この場合、商品E、Fの製造を中止し、商品Dに一本化した
   ほうが、製造効率は高まり、顧客に余計な迷いを与えずに
   済みます。

   また、「多彩な機能・簡単操作」、「単機能・マニュアル操作」のゾーンには品揃えが
   ありません。

   前述のようにポジショニングマップ上で空白ゾーンがある場合の理由は、(1)ニーズが
   ない、(2)有望だが未開拓、(3)潜在ニーズに気づいていない、の3種類です。

   (2)、(3)の理由による場合は、ライバル企業がすでに販売している商品もポジショ
   ニングマップに加えて分析してみましょう。

   そして、競合が少ない、あるいは自社商品のほうが優位に立てるという判断ができれば、
   新商品を投入することで、新規顧客層を開拓できる可能性があります。

   企業活動の中心は顧客を創造し維持することだと考え、マーケティングを企業活動の中心
   的な機能に位置付けるマーケティングコンセプトの考え方が重要となります。

 

 

                          お問合せ・ご質問はこちら 

                          メルマガ登録(無料)はこちら 

 

コンセプトa.jpg
コンセプトb.jpg
コンセプトc.jpg

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月26日
記事:「保険代理店のプレゼンスキルアップ Ⅰ」 更新しました。
2024年4月25日
記事:「メルマガ709号更新しました。
2024年4月25日
記事:「社内体制の強化なしに会社の存続なし」 更新しました。
2024年4月24日
記事:コストダウンの最終目標」更新しました。 
2024年4月23日
記事:保険代理店業の環境整備 Ⅱ」更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501