新商品開発と商品コンセプト

   
  ■新商品の開発

   市場の変化と競争の激化の中、一般消費者向けの商品を開発している会社は、社会構
   造の変化や消費者の趣味・嗜好の変化にともなって、その変化に対応した商品を提供す
   ることが特に必要になります。

   具体的には、環境問題や規制緩和によって商品の仕様変更を余儀なくされ、商品の
   品質のみならず、その製造方法やアフターフォローの方法に至るまで修正するこ
   とがあります。

   さらに自社の市場占有率を高めるためには、新商品の開発なども必要となります。

  □商品のライフサイクル

   商品にはライフサイクル(導入期→成長期→成熟期→衰退期)があります。

   導入期は新商品を市場に投入した時期です。

   販売が開始されたばかりのため競合商品は少なく価格も高めです。

   成長期は競合商品も増え、市場でのシェア獲得のための販売戦略が重要となります。

   そして成熟期に入ると値引きが行われ、価格競争が始まります。

   衰退期では販売量は減少し、商品によっては大幅な値下げや在庫処分が行われます。
 
   ライフサイクルは商品の種類によって異なりますが、自社の商品が成熟期や衰退期にあ
   る場合、将来的に成長を続けることは難しくなります。

   そこで新商品を開発して、新たな主力商品を確保する必要があります。

  □新商品開発のプロセス

   (1)アイディア 

     新商品の開発方法はさまざまですが、新商品のアイディアは、新商品の開発を目
     的に創出されるケースと、偶然のアイディアをもとに新商品を開発するケースがあ
     ります。

     前者の場合、ある一定期間を設けてアイディアをスタッフから募ったり、ブレーンス
     トーミングなどの手法でアイディアを集めるのが一般的です。

     後者の場合は、アイディアを出そうと思って考えたわけでなく、「こんな商品があっ
     たら売れるのでは?」という偶然のアイディアから商品開発するものです。

     しかし、いざアイディアを捻出しようと思ってもなかなか、よいアイディアは浮か
     ばないものです。

     偶然のアイディアを吸収する意味でも、社内で「提案制度」などを設けて定期的に
     アイデアを募集する体制が求められます。
 
     また、アイディアの創出という意味では、顧客からのクレームなどをデータベース化
     しておき、商品開発のアイディアとして利用したり、消費者調査などを通じて、「消
     費者の生の声」を集めるようにするのもよいアイディアを創出する仕組みとして役
     立つでしょう。

   (2)マーケット分析

     新商品のアイディアが出そろい、どのアイディアを採用するのかという段階では、
     それぞれのアイディアのマーケット分析を行います。

     「市場規模」「競合商品」「将来性」などの市場分析を行い、一番よいアイディアを
     選定します。

     その際、「消費者へのアンケート調査」などを実施して好評だったアイディアを選ぶ
     のも一つの方法です。 

     なお、自社に市場分析を行うノウハウがない場合は、外部へのアウトソーシングを
     検討するとよいでしょう。

   (3)企画 

     この段階では、各種スケジュールや予算、製造方法などを企画します。

     具体的には「試作品」「消費者モニター」「販売代理店募集」「製造」「営業」
     「販売日」などのスケジュールとともに、「開発費」「材料費」「人件費」などの
     コスト算出や、「外注先の選定」などの製造方法を検討します。

     同時にそれぞれの項目ごとに、スケジュール、予算、品質などの管理責任者を決
     めます。
 
     また、できれば企画の段階で、「販売数の見込み」とともに、開発費、材料費、人
     件費などを考慮に入れた「利益の見込み」も立てておきたいものです。

     その結果、利益の確保が望めないような企画であれば商品化は見送るようにします。

   (4)開発

     開発の段階では、まず仕様書を作成し、それを基に試作品を完成させます。

     試作品はなるべく完成品に近いものが望ましいのですが、ここで問題となるのは製
     造コストです。

     いくらよいものでも製造コストが多大にかかるのであれば大量生産ができません。

     大量生産を念頭において材料・素材の選定を行い、場合によっては外注を検討し
     ます。

     自社の技術レベルや機材の有無によっては外注の方が結果的に安く上がる
     ことも少なくありません。
 
     いかに製造コストを下げることができるのかという点を踏まえながら開発すること
     が重要です。

   (5)テストマーケティング

     試作品が出来上がったら、その商品が本当に計画通りに売れるのかどうかを検
     証します。

     消費者モニターのほか、限られた地域での市場テストや営業テストなどを行い、予
     想通りの販売が見込めるのかを調べます。

     その際、期待通りまたは期待以上の販売結果が得られれば、すぐにでも商品化し、 
     全国に向けて販売することができます。

     逆に期待通りの結果を得られなかったときは、たとえ企画の段階で売れるという
     結果が出ても「実際は売れない」と割り切り、商品化は見送るべきでしょう。

     ここまでの開発費は無駄になりますが、売れない商品を市場に導入する意味はあ
     りません。

     再度アイデアまたは企画の段階からやり直します。  

   (6)商品化

     テストマーケティングが終了したら、いよいよ商品化となります。

     大量生産を踏 まえた製造方法の確立、パッケージの選定、広告戦略の推進
     などを行い、販売を開始します。

     その際、商品の種類にもよりますが、流通ルートの開拓も重要となります。企
     画の段階で定めていた営業方法のほかに、代理店の選定や特殊なルートで
     の販売方法など、さまざまな拡販方法を推進します。

     また、顧客へのアフターフォローの仕方や、クレーム処理の対処方法などもこ
     の段階で明確にしておきます。

   (7)販売後のフォロー

     販売を開始した後は、ただ売ればよいというわけではありません。顧客からの
     クレームや意見を集め、商品の仕様やパッケージの見直しを図ります。

  □マーケティング分析と販路の確保

   新商品の開発に当たっては、ただ開発し販売するだけでは、売れるものも売れません。

   正確なマーケット分析とともに、販路の確保が重要となります。

   通常、新商品というと、

    1.今までにない全く新しい商品

      今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、その市場規模は未知
      数となります。

      商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「噂好」のほか、「デザイン」「販
      路」「年間販売室」「将来性」などを考慮し、確実に売れることが見込めた段
      階で参入することが求められます。

      これらのノウハウを自社が持っている場合は問題ありませんが、そうでない
      場合は自社のノウハウだけに頼らず、次のような業種と協力することによっ
      て商品を企画していくことが近道といえます。

       ・商品企画会社(売れる商品の企画)

       ・リサーチ会社(消費者へのアンケート調査やマーケット分析)

      これらの中で最も頼りにすべきは、商品企画会社(企画デザインプロダクショ
      ン)です。

      リサーチ会社の場合、それぞれの商品に対して調査や分析を行うのが仕事
      であり、売れるかどうかの見込みはあくまで予想となります。

      参考とはなるものの、実際の販路の開拓は期待できません。

      一方、商品企画会社の中には強力な販路を持ち、その販路で販売すること
      が期待できる商品を企画している会社もあります。

      そのような商品企画会社と提携し、将来的には自社で企画開発ができるよう
      にノウハウを吸収することが大切です。

      なお、優れた商品企画会社を見つけるためには、今までの実績のほか、「具
      体的な販路を提示できるか」が重要なポイントとなります。

      商品企画が決定した後は、販路を探すこととなります。

      販路はできれば企画の段階で見込みを立てておくことが望ましく、「このよう
      な商品があったら取り扱ってくれますか」といった問い合わせをするとともに、 
      「○○円以下であれば△△個発注してもよい」というレベルの販路をいくつか 
      開拓し、確実に採算が合うと判断できた段階で商品化することが求められます。

      なお、今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、当初は、価格 
      競争に巻き込まれることはなく、価格も強気に設定できます。

      しかし、競合商品が現れたときにはさらなる高付加価値化や生産コストの見
      直しによる低価格化が必要となります。

      競合商品の動向を見据え、常に売れる商品開発を行うことが大切です。

    2.他では販売しているが自社では初めて生産する商品

      他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品の場合、既存
      市場への参入となるため、市場の把握はもとより、消費者へのアンケート調
      査が重要となります。  

      「他社商品と比べてどう思うか」「いくらなら購入するのか」などという商品そ
      のもののアンケートのほか、「パッケージのデザイン」「購買意欲をそそる
      キャッチコピー」など、十分な調査を重ねた上で商品化することとなります。

      できれば消費者アンケートの専門企業(リサーチ会社など)に依頼し、正確で
      客観的な情報を入手するとよいでしょう。

      既存市場への新規参入は、通常「既存品よりも安くていいもの」、「既存品よ
      りも高いが付加価値が付いているもの」のいずれかを販売することになります。

      前者の場合は、商品1個当たりの利益は少なくなるので、大量に販売しなけ
      れば利益の確保が難しくなります。

      後者の場合は逆に高付加価値を前面に押し出し、なるべく商品1個当たりの
      利益が大きくなるようにすることが求められます。

      販路に関しては、大手の販売店や問屋への営業のほか、通信販売やイン
      ターネット上での販売など、独自の販売ルートも検討したいものです。

      営業先の選定は、それぞれの業態や商品のカテゴリごとに業界団体を調
      べ、その業界団体から名簿を入手するのが早道となります。

      名簿を公表していない業界団体に関しては、大手企業を数社紹介してもらう
      など、効率的な営業を心がけます。

    3.既存商品に何らかの改良を加えた商品

      既存商品に何らかの改良を加えたものを新商品として販売する場合は、従 
      来のデザインやパッケージをそのまま踏襲するのではなく、何らかのリ
      ニューアルを加えたほうがよいでしょう。

      もっとも、現在の売れ行き状況や、競合の度合いによってデザインやパッ
      ケージのリニューアル方法は異なってきます。

      例えば、「市場でのシェアはナンバーワンだが、競合商品によって販売数が
      減少している」という商品の場合、何らかの改良を加えて商品の高付加価値
      化を図ることは非常に有効です。

      その際、商品が成長期にあるときは、機能強化や容量の増加、新材料の採
      用など、高付加価値化をアピールするにとどめ、大幅なリニューアルはしな
      いほうが得策です。

      せっかく構築した認知度を下げてしまうことを避けるためです。

      一方、商品が成熟期にあり、「買い換え需要を狙う」という状況の場合は、デ
      ザインやパッケージの大幅なリニューアルが効果的でしょう。

      商品の種類にもよりますが、新商品としての販売は、競合商品よりも新鮮な
      商品として販売することができるからです。

    など、上記のように分類できます。
 
   それぞれの分類ごとにマーケット分析や販路の確保の手法は異なってきます。

   また、商品のライフサイクルによっても商品の仕様やコンセプトを変更する必要が
   あります。 

   ただし、自社(店)の今ある商品の売り上げが落ちてきたからといって、安易に上記1
   の新商品開発に飛びつかないいことです。

   1の「今までにない全く新しい商品」は売れると思いがちですが、今までにない全く新し
   い商品を開発し販売する場合、その市場規模は未知数となります。

   商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「嗜好(しこう)」のほか、「デザイン」
   「販路」「年間販売量」「将来性」など、多くのデータ(情報)が必要となります。

   それよりも、今ある自社商品を分析し、まず上記3「既存商品に何らかの改良を加え
   た商品」を推進することです。  

  ■新商品コンセプト

   商品のアイデア、イベントや広告のアイデア、新規事業のアイデアなど、どれだけ新しい
   アイデアを発想することができるかが、いい企画を立てられるかどうかを決めるといって
   も過言ではありません。

   しかし、当然のことですが、アイデアを出すだけでは何も実現しません。

   そこで、アイデアを具体的な企画に落とし込んでいくプロセスが重要になります。

   つまり、企画力は、アイデアを発想する力、それを実行可能な計画に変える力が必要
   となります。

   そう考えると、ビジネスパーソンは、新しいアイデアを生み出す発想力を鍛えるだけ
   でなく、アイデアを実現可能な形に変える力も同時に鍛えなければならないのです。 

   アイデアを具体的な企画に落とし込むために、一定のフォーマットを使って、企画立案
   のために必要な要素を整理する方法があります。

   新商品のアイデアを整理し、具体的な商品コンセプトをつくりあげていくためのツール
   に「新商品コンセプトテンプレート」があります。

   商品の形はどんなものか? ネーミングはどうするか? 仕様はどうするか? といった
   要素を、テンプレートに書き込むことで具体化していくことができます。

   企画と一口にいっても、事業計画、プロジェクト企画、販売促進企画、広告企画などいろ
   いろなものがあります。

   その中でも、アイデアが最も重要な意味を持つもののひとつが商品企画です。

  新商品コンセプトシートの作り方と使い方

   1.ネーミング

     新商品のネーミングを考えます。

     アイデア段階だからと、いい加減に考えるのではなく、「ここでいいネーミングが浮
     かばなかったら、このアイデアは実現しない」と考えて、お客の購買意欲をそそる
     ようなネーミングを考えてください。

     それだけ商品にとってネーミングは重要な意味を持っています。

   2.商品イメージ

     商品のイメージを絵にしてみましょう。

     絵にすることで、漠然としていたイメージがはっきりとした形になるはずです。

     また、絵にすることで発想が刺激されて、新しいアイデアが連鎖的に生まれてくる
     効果も期待できます。

   3.体裁・スペック

     ここでは商品の仕様をまとめます。

     色、大きさ、素材などをできるだけ具体的にまとめていきます。

   4.商品コンセプト

     何のための、何を実現する、どんな商品なのか、具体的にまとめていきます。

     きれいな文章にまとめようとすると、かえって混乱してしまう場合が多いので、箇条
     書きで書いていくのもひとつの方法です。

   5.ターゲット 

     誰に向けた商品なのか、ターゲットを明確にします。

     例えばビジネスマン向けの商品であれば、単純に「ビジネスマン」と書くのでは 
     なく、年代や職種、どんなニーズを持っているのか、といったことまで明確にし
     ておくとよいでしょう。

     そうすることで、商品のコンセプトがよりはっきりと固まるはずです。

   6.売りのポイント

     これまでにないまったく新しい商品であれば、商品そのものが「売り」になりま
     すが、なかなかそういった商品はありません。

     そこで、他の競合となるであろう商品とどこが違うのか、セールスポイントを考
     えます。

     ここで行き詰まってしまうと、競争力の強い商品を生み出すことはできません。

   7.自社内での位置づけ

     自社の持つ商品ラインナップの中で、どういった位置付に置くべき商品なのか考え
     ましょう。

     価格だけでなく、流通戦略、販売促進戦略なども併せて考えておきましょう。

   8.市場性・将来性

     当然のことですが、市場性・将来性がないものを商品化する企業はありません。

     そういう意味では商品企画の基本中の基本です。

     しっかりと情報を集め、分析し、市場性・将来性を見極めましょう。

   多くのアイデアから付加価値の高い新商品を生み出すために新商品コンセプト
   シートを作成し活用してください。

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