成果を生むアライアンス


  アライアンス(alliance)の本来の意味は同盟、連合です。

  企業経営上で用いるアライアンスとは、 複数の企業が経済的なメリットを享受するために、
  提携や協力体制を構築することです。

  アライアンスを締結することで、経営資源、スキル、知識などを結びつけることによって、
  シナジー効果を実現し、自社の経営資源以上のビジネスを展開できます。

  ■成果を生むアライアンスの構築

   近年、市場環境や技術動向など急速な変化、企業間競争のグローバル化の進展など
   経営環境の変化は激しさを増しています。

   このような中で、複数の企業が共同で事業を行うケースが多くみられるようになってい
   ます。

   特に、経営資源に限りのある中小企業にとっては、アライアンスを通じて自社に不足
   する経営資源を補完しながら事業を遂行していくことは重要な取り組みとなっています。

   そして、アライアンスをより効果的にするためにもプレスリリースは経営戦略として欠
   かせません。

   しかし、その一方でアライアンスに際しては、「この事業は、アライアンスによって取り
   組むべきなのか」といった意思決定や「複数の企業が歩調をあわせて事業を進めて
   いくためには、どのように事業を進めていく
   のがよいのか」といったマネジメント上の問題
   など困難な課題も少なくありません。

   そこで、アライアンスを検討する際のポイント
   を紹介します。

   なお、広義な視点から分類するとアライアン
   スは「資本関係をともなうアライアンス」と「資
   本関係のともなわないアライアンス」に分類す
   ることができます。

   資本関係をともなうアライアンスには、合弁会社
   などがあり、資本関係のともなわないアライアン
   スには、契約関係に基づく連携(狭義のアライア
   ンス)や契約関係が比較的穏やかで多数の企業
   が参加するネットワーク的な連携などがありますが、
   ここでは、資本関係のともなわないアライアンスを
   対象とします。

  □アライアンスのための判断基準

   1.アライアンスの判断基準は?

    アライアンスは、企業が新技術・新製品開発、販売チャネルの開拓などさまざまな事
    業活動を行うための一つの手段にすぎません。

    実際には、人員や資金など自社の経営資源によって一定の制約を受けますが、
    基本的には同じ活動を自社単独で行うことも可能です。

    従って、アライアンスを検討する際には、事業などを遂行するための方策としてアライ
    アンスが最適なのかという点について最初に考える必要があります。

    また、アライアンスが最適な方策だとしてもアライアンスにおいて、自社はどのような
    業務を担当し、どのような業務をアライアンス先に依存するかという点を検討しなけ
    ればなりません。

    このように、自社の判断基準を明確にする際には、「自社のドメインやコア・コンピタ
    ンス以外の領域の業務はアライアンス先に依存する」といった考え方が基本となり
    ます。

    しかし、ドメインコア・コンピタンスという視点から検討するだけでは、その基準
    にはややあいまいさが残ります。

    従って、アライアンスを検討する際には、より明確な基準を持って検討することが
    必要となります。

   2.アライアンスを検討する際の判断基準

    アライアンスを検討する際の基本的な判断基準としては、以下の5点があります。

    (1)経営資源による制約

      アライアンスを行う際には、何らかの経営資源を投入する必要があります。

      例えば、既存の事業を超えた役割を担うのであれば、新規に設備を導入したり、
      従業員を雇用するなど新たな投資が必要となるでしょう。

      また、既存の事業の枠内で役割を担う場合は、大規模な設備投資は不要かも
      しれませんが、その業務を遂行するために人員を割いたり、設備を稼動させる
      必要があり、これらにもさまざまコストが発生します。

      経営資源の制約は、投資額や人員数といった形でその問題を定量化して把握し、
      かつ経営全体に及ぼす影響を予測しやすいことから、アライアンスを検討する
      際には最も基本的な基準となるでしょう。
 
    (2)「取引コスト」の問題

      取引コストとは、「期待している業務内容を的確に反映した契約を策定・締結し、
      それを実際に実行させるためにかかる金銭的・非金銭的なコスト」のことをいい
      ます。

      例えば、新製品を共同で開発する場合を考えてみましょう。

      本来、効率的なアライアンス関係を構築する際には、プロジェクトの全容を明ら
      かにしたうえで、その中で必要となる業務をアライアンス関係にある企業間で過
      不足なく分担することが理想です。

      そして、プロジェクト遂行に際しては、不要なトラブルを避けるため、担当する業
      務内容や必要とされる品質水準などを詳細な契約書として事前に明文化してお
      くことが理想的です。

      しかし、既存の製品と異なり、新製品の開発に際しては「全体としてどのようなこ
      とをしなければならないのか」ということが非常に不明確であり、プロジェクト自
      体が試行錯誤の中で進められていく場合が少なくありません。

      このようなケースでは、複数の企業間で役割
      を事前に明確化することは困難でしょう。

      ましてや、それらを厳密に明文化するこ
      とは事実上不可能です。

      仮に、アライアンス関係にある企業間の
      業務を明文化するのであれば、発生が
      予測されるさまざまな可能性を考慮
      しなければならず、その内容は膨大
      なものとなり非常に大きなコストが
      発生します。

      このため、実際には包括的な契約を締結
      したうえで、詳細な業務内容はアライアン
      ス関係にある企業間で話し合いながら進
      めていくことになります。

      しかし、この場合にも問題があります。

      悪意の有無にかかわらず、企業には「自社にとって最小の負担で最大の効果を
      得たい」という利己的な動機が働きます。

      このような傾向は、アライアンスを成功させるためには不可欠な業務にもかかわ
      らず、自社の果たすべき役割ではないとして、結果としていずれの企業も担当し
      ないという「業務のすき間」を生み出すことがあります。

      また、アライアンス先の企業の業務に対する認識が、こちらの期待と異なってい
      るケースや、要求水準に達していないケースなどがあります。

      このような状況を防止するためには、アライアンス先の企業を監視したり、綿
      密なコミュニケーションを図る必要がありますが、このためには金銭的・非金銭的
      なコストが発生することとなります。

      このように、取引コストという考え方は、アライアンスの実効性を確保するための
      「コスト」について検討する際の視点となります。

    (3)相互の依存関係

      プロジェクト内には、密接に関連している業務などがあります。

      このような相互依存性の強い業務を遂行するためには担当する企業や部門間
      で綿密なコミュニケーションを図る必要があります。

      しかし、異なる企業間では綿密なコミュニケーションを図ることは困難な場合が少
      なくありません。

      従って、一般的には、このような相互依存性の高い業務などは、複数の企業で
      分業するよりも単独の企業内で行うほうが効率的、かつ望ましい結果が得られ
      やすいでしょう。

      例えば、製品開発に際しては、開発部門と製造部門が別個に取り組むよりも、
      製品の設計や開発段階から両部門が協力して取り組むほうが製品開発のスピー
      ドが速い傾向があります。

      また、顧客からの声を取り入れた新製品開発に取り組む場合は、開発部門と販
      売部門の連携が非常に重要になるでしょう。

      「相互の依存関係」は、製品特性からも検討する必要があります。

      例えば、モジュール化(1つの複雑なシステムを交換可能な独立した機能を持つ
      部品同士で構成すること)が進んでいるパソコンのような製品の場合は、個々
      のパーツが標準化されているためアライアンス関係の中でパーツごとに分業関係
      を構築することができます。

     (4)知識・情報に関する問題

      特許などの知的財産に加え、さまざまな活動を通じて得たノウハウなど企業が有
      する知識・情報の重要性は改めて述べる必要はないでしょう。

      アライアンスにおいては、経営において重要な役割を果たす知識・情報について
      2つの視点から検討する必要があります。 

      一つ目は知識・情報の蓄積です。

      知識・情報には学んだりすることによって得ることのできるものもありますが、
      実際に経験しなければ得られないものもあります。

      いわゆる「暗黙知」(経験や勘などに基づく
      知識で、言葉や文章などで表現することが
      難しい知識)がその代表です。

      このような知識は実際に経験することで  
      しか得ることができないため、アライアン
      ス先の企業に業務を依存してしまうと、
      そこから得られる知識・情報を社内に蓄
      積することができなくなります。  

      もう一つは、知識・情報流出のリスクです。

      アライアンスでは、アライアンス先の企業
      との間でさまざまな知識・情報のやり取り
      を行う必要があります。 

      こうしたケースは、知識・情報が流失して
      いることを認識することができますが、
      これに加えて、何気ない雑談などを通じて、
      意図しない形で流出する知識・情報も少なくありません。

      知識・情報の流出は機密保持契約などである程度は防ぐことはできますが、そ
      のすべてを防ぐことはできません。

      従って、アライアンスにおいては、知識・情報の蓄積の機会の喪失と流出のリス
      クにも注目して検討することが必要です。

     (5)事業の拡張性

      アライアンスで得た技術やノウハウは、アライアンスの枠組みの中でだけ使用さ
      れるわけではありません。

      例えば、新製品開発に向けたアライアンスの中で、新たなパーツの開発を担当
      するのであれば、その過程で得た技術やノウハウを生かしたパーツや新製品を
      開発したり、場合によってはそのパーツ自体を自社独自に販売するなどアライ
      アンスの枠組みを超えた事業の展開を行う場合があります。

      そのような場合は、自社が担当する業務から生まれる製品や技術分野における
      自社の競争力や事業の将来性についても検討する必要があります。

      例えば、競合企業が多い分野や技術開発のスピードが速い分野ではアライアン
      スの枠組みを超えた事業展開は困難かもしれません。

      また、モジュール化されている、あるいは今後モジュール化が進むことが予測さ
      れるパーツについては、パーツの代替性が高いことから、一般的に競合企業が
      多くなる傾向があります。

      ここでは、アライアンス実施の妥当性やアライアンス内での自社の担当業務を検
      討する際の基本的なポイントを紹介しました。

      これらのポイントの中には、その影響を明確に把握することが困難なものや、
      ある程度時間が経過しなければ明確に把握しにくいものも含まれています。

      しかし、実際にアライアンスへの取り組みを検討する際には、これらのポイントを
      可能な限り明確に把握し、総合的な視点から検討することが必要となります。

   3.アライアンスの形態を決定する

    前述した基準などに基づいてアライアンスの実施を決定した後は、「どのような形で
    アライアンスを組むか」というアライアンスの形態を決定する必要があります。

    冒頭で紹介したように、「資本関係のともなわないアライアンス」には、契約関係に基
    づく連携(狭義のアライアンス)や比較的穏やかで多数の企業が参加するネットワー
    ク的な連携があります。

    「新商品開発」「共同研究」などアライアンスに対する目的や求める成果が明確な
    場合などは、契約関係に基づく連携によってアライアンス関係を構築することが一般
    的です。

    一方、ネットワーク的な連携は、このようなケース
    で利用されることはそれほど多くはありませんで
    した。

    これは、参加企業数が多いことからアライ
    アンス全体のマネジメントが非常に難しいと
    いうデメリットがあるためです。

    また、多数の参加企業がいることによる責
    任感の希薄さといった要因もあり、企業の
    参加・離脱が頻繁に発生することから、明
    確な成果を求めるアライアンスには適して
    いないとされていました。

    しかし、最近では、ネットワーク的な連携の
    中でも、一定の成果を上げるものが表れて
    きていることから、このような形態の活用に
    ついても検討してみるとよいでしょう。

    近年、アライアンスに取り組む企業は、非常に多くなっています。

    しかし、それらの取り組みの中には失敗に終わるケースもあります。

    また、「失敗とまではいえないものの、思うような成果を得ることができなかった」
    というケースも多いようです。

    そのため、アライアンスに取り組む際には「対象事業の成功」のみを追い求めがち
    です。

    もちろん、アライアンスの第一の目的は対象事業の成功にある以上、そうした視点も
    重要です。

    しかし、アライアンスはさまざまな企業活動の一部にしかすぎません。

    従って、アライアンスを、より効果的に企業活動に生かしていくためには、アライアン
    スを自社の活動の中にどのように位置付けるか、アライアンスから得たさまざまな成
    果を企業活動全体に生かすためにはどのようにすればよいかといった視点からも、
    あわせて検討することが必要でしょう。

 

 

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