オーナー社長の後継者問題


  オーナー社長にとって後継者問題は会社経営における最大の課題であり、リスクでもあ
  ります。

  事業を維持し発展させる中で「相続対策(納税資金・自社株・不動産・もめない対策)」な
  ども含め、後継者問題が最大のテーマではないでしょうか。

  「事業の再編成、後継者教育、財産の移転・評価引下げ」などの事業承継対策は早期に、
  また、長期間にわたって計画的に対策を講じることで効果が発揮されます。

  ある調査によると、「後継者に事業承継したい」と回答した企業のうち、50%強の企業が
  「後継者を決定していない」と回答しており、後継者の選任あるいは育成から着手しなけれ
  ばならない企業も数多く存在します。 

  参考に事業承継ガイドライン(事業承継協議会)を掲載しておきます。

  ここでは後継者問題に焦点を当ててみます。

  ■後継者育成のための環境整備

   1. 社内体制の整備

   2. 段階的な権限の委譲

   3. 現経営者による経営者としての心構えを
     レクチャー

   4. 自社内で広範囲な業務経験

   5. 業界団体の会合・経営者向けセミナー
     への参加

   6. 自社株のを取得

   7. 金融機関や取引先への根回し 

   8. 取引先や同業他社での修行

   9.人材育成の基本となる基本動作の習得

  ■「後継者」のための組織づくりのポイント

   「後継者」は、現社長の「人」「モノ」「金」「情報」という経営資源を引き継ぐのでは
   なく、それらの経営資源を使って新しい企業を始めると考えるべきです。

   まずは、後継経営者に求められる「資質」について考えなければなりません。

   そして、後継者が働きやすい環境を作るために組織再編や人材整理を敢行するという
   具体的支援も必要になります。

   既に成功した先駆者と同じ土俵にあがったのでは、後継者が高く評価されることはなく、
   後継者が高く評価されなければ、優秀な人はついていかないからです。

   後継者が、活躍して強力な組織づくりを行うためには、決して「残してはいけない」人材
   がいます。

  ■「残してはいけない」人材

   (1)後継者より優秀な人材

     これからの組織にトップの「目の上のたんこぶ」を作るのは、禍根を残す結果になる
     ケースが多いでしょう。

   (2)ご意見番タイプの長老

     新しい組織を作る際には、このタイプの人材が最もネックになると考えて差しつかえ
     ありません。

   (3)「太鼓もち」的タイプの人材

     社長の権威を利用して仕事をしていた人材は、新体制に入れるべきではありません。

   現経営者は、言葉ではなく、後継者が働きやすい人材や組織を残す心構えが必要です。

   後継者問題に関しては、相続対策を除けば、後継者の「資質養成」と人材整理も含めた
   「環境整備」が重要です。

   後継者の「資質」に関して考えてみると、「実務力」「提案力」「人気」などが必要と
   いえます。

  ■後継者選定の条件

   (1)経営に対する情熱やおう盛な事業欲があること

   (2)内外のストレスに耐えられるだけの体力や精神力があること

   (3)年上の幹部や部下など周囲とうまく調和がとれること

   (4)自社の行く先を見通す先見力があること
   
  ■後継者育成
   自分が社長として会社を成長させていく部分を経営人生の前半部分とすれば、経営人生
   の後半部分とは、安心して企業経営を任せることができる優秀な後継者を育成すること
   です。

   後継経営者の育成は経営課題と同様に、できるだけ早い時期から緻密かつ適切な計画
   性をもって成し遂げなければならない重要な責務である、という強い認識をもつことが大
   切です。

   しかし、社内の教育体制は今問題を抱えています。

   それは中小企業の多くが場当たりで無計画な教育が横行していることです。

   その原因に教育担当者の人数と能力の不足が挙げられます。

   この問題を解決しなければ、社内教育制度の体制整備は不可能です。

  □後継経営者育成は早いほどよい

   後継者育成にあたっては、可能な限り早いうちに後継者を決定し、育成を始めることが
   大切です。

   早いうちに後継者を決めておくと、

    ・後継者として指名された人物に自覚が生まれ、行動の変革をもたらすこと
      ができる

    ・従業員に、後継者に対する統一した見解をもたせることができる

    ・実際の後継者教育を早くから始めることができる

    ・相続対策を早くから始めることができる

   などのメリットが生じます。

   一方、後継者を決めるのが退陣直前になった場合、後継者に経営者としての十分な心
   構えができていない、経営に必要とされる知識が身についていない、古参社員からの賛
   同を得られない、という状況が生じかねません。

   また、後継者不在のままで、経営者に不測の事態が発生した場合には、重要な意思決
   定が滞り、会社存続の危機に直面する可能性もあります。

  □後継経営者に必要な資質

   経営者の役割は、「会社の将来的なビジョンを描き、適切な戦略を策定し、戦略実行の
   ために組織を効率的に動かすこと」にあります。

   そのために備えていなければならない能力として

   1.洞察力・先見性

     洞察力・先見性は、自社の現状や経済動
     向、市場動向などを正確に把握し、自社が
     将来に向かって成長・存続していくための
     ビジョンや戦略を導き出す能力を指します。

     洞察力や先見性を身につけるためには、
     「経営全般に関する広範な知識」と「豊富な
     実務経験」が必要になります。

   2.統率力

     自社の将来ビジョンを実現するには、社長の
     努力だけでは困難です。

     そのため社長は、将来ビジョン実現に向け従業員の力を結集し、経営の方向
     性を示し、統率していく能力が必要になります。

     従業員が社長と心をひとつにして、将来ビジョン実現のためにモチべ−ション
     を高めるためには、給料アップや労働条件の改善などの物理的な条件だけで
     は不十分です。

     従業員との一体感を築くための「ビジョン実現への情熱」が必要になります。

     後継者がその役割を果たすための「洞察力・先見性」、「統率力」を高めていく
     ためには、

      ・経営全般に関する広範な知識

      ・豊富な実務経験

      ・ビジョン実現への情熱

     の3つの要素の習得が必要不可欠になるのです。

  □後継者育成のポイント

   1.経営全般に関する広範な知識を習得させる

     熱意と努力だけで会社経営を成功に導くことはできません。

     経営者として経営全般に関する広範な知識が必要になってきます。

     特に顧客ニーズが細分化し、かつ変化のスピードが増す現在では、マーケティング
     関する知識を習得することは不可欠となっています。

     また、経営全般に関する知識に加え、自社の属する業界に関する知識(市場
     動向、業界の仕組み、取引慣行、業界全体が抱えている問題点など)も必要
     になります。

     業界紙や専門書籍を読ませるなど後継者に勉強を促すほか、経営者が自分
     の感覚も含めて丁寧に説明することが求められるでしょう。

     上記のような経営知識、経営理論を体系立てて身につけようとする場合には、
     社内でのOJTなどの育成方法だけでは十分でないことがあります。

     その際に効率的に学ばせる手段として、外部機関の研修や勉強会を利用する
     ことが考えられます。

     外部研修では、経営についての体系的な知識を身につけることができます。

     但し研修の受講期間中、定期的に社長や直属の上司を交えて、

       学んだ知識を自社ではどういかせるのかを考えさせる場を設ける

     といった工夫が必要です。

     つまり、今どのようなことを学び、その知識は経営の現場でどのように応用で
     きるのかを後継者に報告させるのです。   

     そうすることで、現在の経営陣は後継者に実践的なアドバイスを行うきっかけ
     が得られます。

     また、後継者も、理論を実践にいかす方法について真剣に考えるようになり、
     その結果として生きた知識を習得することができます。

     さらに、外部研修のメリットとして、同じような立場の人と知り合えることもあげ
     られます。

     特に、「後継経営者養成講座」などの研修会では、受講者同士が切磋琢磨し
     あう雰囲気がつくられるので、強力な人脈を築くことができるでしょう。

   2.豊富な実務経験を積ませる

     後継者に実務経験を積ませるためには、自社で採用して行う方法と、一定期
     間他社に勤めさせる方法があります。

     (1)自社で経験を積ませる

       後継者を自社で育てる場合のおもな狙いは、

        ・早くから自社の経営全般にかかわらせ、その勘所を学ばせる

        ・従業員に次期経営者として認知させる

       点にあります。

       なかには我が子が中学生、高校生の頃から、アルバイトなどの形で自社の事業に
       触れさせ、徐々に後継者としての自覚をもたせたり、従業員の間に馴染ませよう
       としたりする経営者もいるようです。  

       後継者は否が応にも社内の注目を集めます。

       そこで、

        次期経営者としての能力を社内に認めさせるために、
        後継者が実力を発揮し、実績を上げられるようなポストに就ける
        思慮も必要

       となります。

       特に、実子が後継者である場合、現社長との間に親子の甘えを生じさせな
        いようにすることが大切です。

       多少の失敗には目をつぶる覚悟で、あえて困難な職務を与えたり、子会社
       の社長や独立採算部門の長などに就けるなど、ひとつの独立した組織を
       任せたりすることも有効でしょう。

       自分で全責任を負って判断しなければならない、という立場を経験させ、社
       長としての能力を磨かせるのです。

       本人にとって貴重な経験になるだけではなく、実際の業績を積み上げるこ
       とで、周囲からの信頼向上にもつながります。

       ◎社内で経験させるべき業務例

         ・子会社の社長業務

         ・現業部門の部門長業務(複数部門を経験させる)

         ・経理部門の部門長業務、決算書作成などの陣頭指揮

         ・新規事業の立ち上げと推進(不幸にして失敗した場合は撤退処理
          までやらせる)

         ・外部からのクレーム対応 

         ・従業員からの相談対応

         ・各種経営計画策定の陣頭指揮

         ・社内会議体系の整備と運営

         ・主要取引先との交渉

     (2)他社に勤務させる

       特に社会人経験のない実子を将来的に後継者として指名する場合には、現経営
       者の威光がまったく利かない他社で一定期間修行を積ませることで、精神的な
       タフさを鍛えることも有効でしょう。

       最初から自社に入社させて教育する場合に比べて、目が届きにくいというデ
       メリットもありますが、社会人のスタート段階であえて「他人の飯を食わせる」
       ことは本人にとって貴重な経験になるはずです。

       また、他社に一定期間勤務することで、

        ・自社ではつくれないような外部の人脈がつくれる

        ・異なった分野の体験を通じて見識が広まる

       といったメリットもあります。

       他社に勤務させる場合の留意点は、後継者がそこで何を学び、どのような
       人間になりたいのかをはっきりと認識させることです。

       他社で勤務する以上、その会社の業績に貢献することは絶対条件です。

       そのうえで、他社での経験を通じて自分が後継者としてふさわしい人間に
       成長しているかどうかをつ叫こ自問し、不足点があれば自分から苦労を
       買って出るという姿勢が求められるでしょう。

  □ビジョン実現への情熱を喚起する

   (1)経営にかける情熱を現経営者自身が語る(伝える)

     後継者に現在の事業に対する使命感を身につけさせるためには、現経営者自身が、
     その事業にかける思い入れや使命感、あるいは将来の夢を直接語りかける方法がも
     っとも効果的です。

     その際、伝えるべき内容としては、

      ・自社を将来どのような企業に成長させたいかという明確なビジョン

      ・後継者に対する信頼感

      ・事業の面白さや自社を大切にしてほしいという思い入れ

     などがあげられます。

     従業員や得意先、株主に対して、ひいては社会全体に対して、確固たる使命
     感や情熱をもって経営に取り組める人物で
     なければ、トップとして自社を存続・発展させる
     重責に耐えることはできません。

   (2)経営理念を十分に理解させる

     後継者には自社の経営理念を確実に理
     解させる必要があります。

     経営理念は「自分たちはこうありたい」、
     「社会に対してこのような貢献をしたい」と
     いった会社の存続意義を示すものであ
     り、この認識に現経営者と後継者の間に
     少しでもズレがあると、事業承継後に会社
     が現経営者の意図しない方向に進んでし
     まう可能性が高くなります。

     経営理念にはそれを策定した現社長の信条、
     人生観などが色濃く反映されている。

     特に「創業の経緯、当時の時代背景」、「事業や従業員に対する社長の思い」、
     「これまで直面した危機とそれを乗り越えられた理由」、「理念実現のために自分が
     日頃から気をつけていたこと」などについては詳しく説明すべきでしょう。

     さらに経営理念はひとつの考え方として理解してもらうだけではなく、後継者にそれ
     を事業運営における唯一無二の価値基準として実践してもらう必要があります。

     育成期間中には後継者に経営理念に基づく判断をさせる機会を多く設けるこ
     とが重要です。

     後継者が経営理念を十分に理解し、現経営者の使命感や情熱を共有するよう
     になると、後継者のものの見方は大きく変わってきます。

     具体的には、それまで管理者の視点で捉えていた事象を、経営者と同じ視点
     で捉えることができるようになります。

     そして、経営者の価値観や理念を繰り返し後継者に伝えることで、後継者が
     育っていくでしょう。

   後継者の経営能力の向上や幹部の刷新には、中期(5年)的な年数がかかる   
   といっていいでしょう。

   現経営者は、自身の健康、気力の良好なうちに、後継者の育成と体制づくりに着
   手すべきです。

   そして、現経営者は後継者の育成にめどが立ったら、後継者と事業承継の時期をいち
   早く社内に告知しましょう。

   告知後、退職する幹部社員が出てくる可能性なども考慮し、告知の時期は事業承継の
   2年ほど前に行ったほうがよいと考えられます。

   その後、現経営者は引き続き社内体制の整備を行うとともに、基本的に後継者に任せる
   姿勢で、後継者の経営者としての自覚を十分に養いましょう。

   そして、可能な限り業績が順調な時期に事業承継を行うことです。
      
  □遺言書を書く

   相続が「争続」と言われるように、昨今の相続にトラブルの多発があり、それは今後も一
   層増加が予想されます。

   法律も社会の実情を考慮して手直しされ、例えば生命保険の受取人を遺言書で変更
   することが出来るようになったりもしています。

   遺言は必ずしも資産家だけの問題ではありません。

     しかし、「自分が死んだときの話なんて縁起でもない!」という人はまだまだ多いよう
   です。

   遺言書の内容は原則、民法で定められた法定相続よりも優先されるのです。

   法定相続分と異なる相続を行いたい場合、その旨を記した遺言書を残しておく必要が
   あります。

   ただし、遺留分(法律上、相続人に保証されている最低限度の持ち分)への配慮は
   欠かさないよう、遺留分を念頭に作成するのが基本となります。

   遺言書は、自分で書いてどこかへしまっておくというのでもかまいません。

   ただし、すべて自筆で書いてあること(ワープロ、パソコン、代筆は不可)、日付と署
   名・捺印があること、などの条件を満たさないと、法律上有効な遺言にはなりません。

   また、法的に有効でも、誰かが隠したり、改ざんしたりする可能性は残ります。

   遺言の作成方法には、

    ・自筆証書遺言

    ・秘密証書遺言

    ・公正証書遺言

   の、3種類があります。

   自筆証書遺言は作成が簡単で、作成そのものを秘密にできますが 紛失・改ざんの恐れ
   があります。

   秘密証書遺言は遺言の内容秘密にでき、改ざんの恐れはありませんが、家裁の検認が
   必要で無効になる恐れがあります。

   公正証書遺言は紛失・改ざんの恐れがなく、家裁の検認が不要、遺言内容を争われ
   たり無効とされたりすることが少ないですが、費用がかかり、手続きが面倒で、内容を
   秘密にできません。

   それぞれ、メリット、デメリットがありますが、中でも公正証書遺言にするのがおすすめ
   です。
 
   公正証書遺言は法律的に効力があり、これを作成するには証人2人とともに公証役場へ
   行って、公証人の前で遺言の内容を口述し、それを書き取ってもらいます。

   遺言の原本は公証役場に保管され、本人はその控えを受け取ります。

   3〜5万円の手数料がかかりますが、作成した公正証書遺言はあとで取り消したり、
   内容を変更することも可能です。

   個人に限らず、国内の9割以上を占める中小企業のオーナー経営者にとって、相続問
   題だけではなく、事業承継問題も発生してきます。

   これら数々の問題が起因し、「相続」が「争続」にならないようにするためにも、元気
   (会社が健全)なときに対策を講じるべきです。

   人生で逃れられないことに「死」と「税金」があるといわれていますが、逃れられない
   死が訪れてからでは相続対策は講じられません。

   しかし、「人はコトが起きないと行動しない」ことも事実のようです。

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