後継社長の心構えとやるべきこと
 

  ■先代社長の経営理念を重視

   就任直後の後継社長がもつべき心構えとして、第一にあげられるのは、

    先代社長の経営理念を重視する

   必要があるということです。

   経営理念は経営の現場から生み出された英知であり、そこには経営におけるエッ
   センスが凝縮されています。

   それは、先代社長が長い年月をかけて育て上げてきたものであり、企業を特徴づ

   けるきわめて重要な要素です。

   したかって、後継社長は、先代社長が作り上げた経営理念を踏襲することを基本
   として社内の体制を整え、自社の進むべき方向性、つまり経営戦略を打ち出して
   いかなければなりません。

   多くの後継社長は、先代社長の経営理念を継承しつつ日々の経営活動を実践

   し、成功をおさめています。

   しかしその一方で、先代社長の経営理念をあまり考慮しない経営を行い、その結
   果衰退していく企業もあります。

   経営理念を継承するというのは、先代社長の経営に対する考え方をすべてその

   まま実践する、というものではありません。

   仮にその経営理念のみにとらわれた経営を進めていくのであれば、大きな成功に
   つなげることは難しいかもしれません。

   とくに、現在は企業を取り巻く環境変化のスピードが非常に速い時代です。

   旧態依然たる経営を続けていては、業界における優位な地位を確保することは

   困難です。

   そのようなことを考慮すると、

    先代社長の経営理念を踏襲しながら、
    独自の経営に関する見方を加え、
    より次元の高い経営理念を作り上げていく

   必要があるといえます。

  □堅実経営に撤する

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第二に、

    堅実な経営の実践が企業の確かな成長につながることを
    十分に認証しておかなければならない

   ことがあげられます。

   前項では、先代社長の経営理念を引き継ぐことの重要性を指摘しましたが、堅実

   な経営の実践は、その経営理念が形となって表れたものです。

   ここでいう堅実な経営とは、

    先代社長の考え方を守りながらも独自の戦略を打ち出し、
    本業部分を大切にしつつ、
    さらなる成長を目指して事業経営を進めていく

   ことです。

   後継社長に経営権が委譲されたばかりの頃は、経営が不安定な場合もあるよう

   です。

   そのようなときに、新しい経営指針を社内および社外に示し、新規事業分野に
   次々に参入したり、あるいは、急速に事業を拡大したりするケースも見受けられま
   す。

   しかし、こうした戦略が失敗に終わることも少なくありません。

   多くの企業倒産の事例を掘り下げてみていくと、その倒産要因のひとつに、堅実
   な経営に徹しきれなかった点があげられます。

   このように、堅実経営の実践は大切です。

   しかし、的確な事業拡大や多角化戦略は、会社の成長にとって必要不可欠なも
   のです。

   ですから、基本的な経営戦略を守りながら、それを土台に新たな取り組みを考え

   る姿勢が重要となります。

   それが有効な事業拡大、あるいは多角化戦略になることでしょう。

   「とにかく実力以上のことはせずに、確実に経営をしていくことが肝要である。
   それがわからずに失敗した」。

   これは、ある倒産企業の元社長の言葉ですが、堅実経営の重要性を再認識でき

   ます。

  □人脈の構築とその有効活用を心がける

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第三に、

    人脈の構築とその有効活用を心がける

   ということがあげられます。

   そのためにはまず、先代社長が長年にわたって築き上げてきた人脈ネットワーク
   を、可能な限り積極的に活用することが大切です。

   またそれと同時に、

    積極的に新たな人脈を発掘し、より強固な人脈ネットワークを構築
    するように普段から努力する必要があります。

   社長が日々取り組むべき業務は、かなりの量になります。

   さまざまな問題が発生し、すべてにひとりで対応できるものではありません。

   社内においては部下に仕事を任せ、それと同時に社外の人脈ネットワークも活用

   すれば、的確な意思決定を行ったり、仕事を依頼したりすることも可能となります。

   人脈を広げて有効に活用することは、自社の経営改善に大いに役立つでしょう。

   その具休的な方策のひとつに、異業種交流会への参加があります。

   たとえば、

    東京大田区や墨田区ではいくつもの異業種交流会が組織されており、
    実際にユニークな新商品が開発されるなど大きな成果が報告されています。

   また、中小企業白書でも、異業種交流会や共同受注の重要性を例年指摘してい
   ます。

   長期的な企業の成長を考える際に、人脈ネットワークの構築は必要不可欠な視
   点です。

  □長期展望を持つ

   就任直後の後継経営者がもつべき心構えの第四に、

    長期展望をもって企業経営を推進することの重要性を認識する

   ということがあげられます。

   短期的な業績向上の検討も非常に重要ですが、社長は、より長期的な視点から
   自社の経営を考えなければなりません。

   つまり、明確な長期ビジョンを設定したうえで、短期的な計画を立てて実行してい

   く必要があります。

   そこで、事業を引き継いだ段階で現状分析を進め、自社の強みと弱みを十分に把
   握します。

   この段階では自社の内部・外部両面の分析を行い、最適な方向に自社を導いて

   いくための長期的な経営戦略を立案します。

   このような長期的視点に立った経営戦略を検討することは、後継社長の非常に大

   きな役割です。

   しかし、就任直後では経験上の問題もあり、的確な判断を行うのが困難な場合も
   発生します。

   そのようなときには、先代社長のアドバイスを積極的に受けるのがよいでしょう。

  □後継社長が引き継ぐもの

   まず最初に、後継社長が引き継ぐものは何か、という点を考えていきます。

   1.後継社長が引き継ぐもの

     社長の職務をまっとうするには、後継社長は、まず自分が何を継ごうとしてい
     るのかを正確に認識しておく必要があります。

      後継経営者が継ぐものとは、社長という絶対権限、すなわち、
      組織を活用し、自らの裁量で事業を行う権限

     にほかなりません。

     その権限を活用して新たな事業に取り組むことも、従来の経営方針をさらに効
     果的に推し進めていくことも、後継者の意思決定に任されます。

   2.あらゆる可能性を検討する

     表面的に「事業=会社を継ぐ」というとらえ方をしていたのでは、前社長以上の
     ものを築き、育てていくことはできません。

     現在の事業分野や組織の機能にとらわれすぎると、成長のチャンスが訪れた
     ときに、素早くかつ柔軟に対応することができず、事業機会を逃してしまう可能
     性があります。

     また、たとえ結果的に前社長の経営方針を踏襲することになっても、何も考え

     ずに前社長のやり方を続けていく場合と、あらゆる可能性を検討したうえで前
     社長と同じであることを選択した場合とでは、その本質はまったく異なります。

      企業の将来はトップが受け継いだ資産を有効にいかせるか否かで変わる

     ものですから、前社長の経営スタイルのみに固執することなく、さまざまな可能
     性を追求しながら経営を行っていきたいものです。

  □事業承継時の取り組み

   前項の認識に基づき、社長としてまず何に取り組むべきかを考えてみましょう。

   1.社長の仕事

      社長の職務を端的にいえば、引き継いだ裁量権を存分にいかして、
      戦略の策定と人心の掌握を確実に遂行していくことです。

     中小企業においては、社長がさまざまな業務を担当しなければならない場合
     が多いといえますが、ほかの誰にも代わることのできない社長自身の職務と
     は、本来この2つに限られるといっても過言ではありません。

     後継者として事業を承継した後、社長として第一に取り組むべきこともこの2つ 

     であり、

     なかでも、

      正確な現状認識に基づく、的確な経営戦略の策定が最重要課題である

     といえます。

     自社の存続・成長のためには、経営上の問題をあらゆる角度から分析するこ

     とで解決すべき課題を抽出し、その課題解決の方策を検討する必要があります。

   2.戦略的中期経営計画を策定する

     就任直後は多忙のためにデスクワークの時間がなかなかとれない、ということ
     も起こりうるため、できれば事業承継前から前社長らの協力を得て、中・長期
     的な経営戦略の草案を作成しておくとよいでしょう。

     就任後はそれをたたき台に、経営幹部全員が意思決定に関与する形で戦略
     的な経営計画を策定していきます。

     こうすると効率的であるばかりでなく、

      ・各人の知恵と知識がいかされた、より効果的な戦略が立てられる

      ・幹部陣も、自ら策定に参加した戦略であるため、その正しさを認識しやすい

      ・自社の経営理念、経営方針や新社長の考え方を全長が明確に理解する
       ので、組織一丸となった動きが期待できる

     などの効果を得ることができます。

     将来への夢を描き、それを確実に達成できる戦略を打ち立てられれば、おの
     ずと人心を掌握することができるでしょう。

  □社長としての生活指針

   戦略に基づいた施策を社員の一人ひとりに確実に遂行してもらうためには、社員
   が「この新社長となら一緒に努力したい」と考えるような魅力や器が新社長に求め
   られます。

   そして、こうしたものは、カリスマ性というよりは、以下にあげるように、日々の生
   活指針によってつくられていく場合が多いといわれています。

   1.社長自身のレベルアップ

     社長が自らのレベルアップをはかる第一歩は、自分の人生を「自分のため」と
     いうより、「自分とともに生きる人達のため」と位置づけて考えてみることです。

     社員に生きる場を提供することは、会社の重要な役割のひとつです。

     社長の姿勢のなかに、社員を大切に思い、社員のことを考えた経営をしてい
     る、というものが感じられなければ、社員のモラールは停滞してしまいます。

     社員にとって本当に魅力的な職場環境をつくり出すことができてはじめて、社
     員は自らの夢を実現するために、さらには、社長の夢を実現するために努力し
     てくれるのではないでしょうか。

   2.社員の成長の手助け

     社長は、自分自身が研鑽を積むだけでなく、社員の成長にも力を貸せる存在
     でなければなりません。

     仕事を通して、あるいは社長とのコミュニケーションを通して、

      ・よりレベルの高い考え方ができるようになる

      ・よりレベルの高い職務遂行能力を身につけることができる

     という実感を彼らに与えなければなりません。

     そうすれば、社員は社長に尊敬と親しみを覚え、さらに向上したいという意欲  
     をもち続けるでしょうし、そうした人材が増えることで好ましい組織風土が社内
     に醸成されていきます。

     また、それが社員の周囲にいる人たち、家族や友人などにもよい影響を与え
     ます。

   3.社会に対していかなる価値を生み出していくか

     企業は、顧客・株主・取引先・隣人といった社会の存在があってこそのものです。

     したがって、従業員のためにという側面とは別に、社会全体のためにいかなる
     価値を生み出し貢献していくか、ということを考える視点が必要となります。

     つね日頃から、こうしたことを追求していくことが事業のあり方に反映され、そ
     の結果として、社会的に価値ある仕事をしたいと考える認識レベルの高い人
     材が集まります。

   4.継続的な自己革新

     会社は、社長の考え方や人格がレベルアップするにつれて、優秀な人材が集
     まるようになっていきます。

     社長はその地位をおりるまで、つねに自らの社会的役割を見つめ直し、また
     経営手腕を磨いて、魅力あるマネジメントを実行するための努力を継続してい
     かなければなりません。

     そのためには、強固な意志と健康な体が必要です。

     そして、それらを維持していけるような健康的な生活を送っていくことが重要です。
 

 

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