アウトソーシングの進め方
 

  ■アウトソーシングの進め方

   アウトソーシングは単純な業務の外注化とは異なり、企業の戦略的観点から展開
   されなくてはなりません。

   一般的には次のフローで示す各ステップにしたがって進められていきます。

    ステップ1:長期ビジョンの策定と各部門の戦略的な「使命」の確立
      ↓
    ステップ2:各部門業務の整理とアウトソーシング可能業務の整理
      ↓
    ステップ3:アウトソーシング方法のリストアップと最適な方法の選択
      ↓
    ステップ4:アウトソーシング導入による業務プロセスの改善

   以下、それぞれのステップごとにその内容について紹介します。

   1.長期ビジョンの策定と各部門の戦略的な使命の確立

     アウトソーシングを行う最大の目的は、自社のもつ経営資源の有効活用を図
     る点にあります。

     それにはまず、自社が10年後どのような企業をめざすのかという長期ビジョン
     を明確にする必要があります。

     長期ビジョンとは、自社は何をもって社会に員献するかという将来のあるべき
     姿を示したものです。

     これが明確でない場合、アウトソーシングしてもよい業務か否かの判断が曖昧
     になり、自社の本来業務を見失いかねません。

     通常、自社の長期ビジョンをもとに長期・中期経営計画を策定します。

     策定された経営計画により各部門の戦略的な「使命(ミッション)」が明らかに
     なり、これを前提として業務のアウトソーシングが進められていきます。

   2.各部門業務の整理とアウトソーシング可能業務の整理

     各部門の業務分掌規定や業務マニュアルおよび各担当者へのヒアリングを通
     じて、各部門の業務機能を洗い出します。

     そして部門の「使命」に基づき、洗い出した業務を分類・整理します。

     この作業は、図のようなマトリックスを作成し、各機能をこの図の各領域上に
     位置づけるものとなります。

     そしてここでは、それぞれの業務領域を次のように定義します。

     (1)中核業務

       戦略的に重要度が高く、かつ自社で判断する必要性が高いと認め
       られる業務。
       または、自社の存立基盤を支える機能を果たす業務

     (2)サポート業務

       中核業務を遂行するための補完的業務

     (3)定型業務

       ルール化され一定の量と内容で繰り返し行われる業務

     (4)裁量業務

       専門的な判断の必要性はあるが短期的には自社の利益に直結
       しない業務。
       しかし、中長 期的には必要と認められているもの

     このように、業務を大きく4つに分類し、このうち(1)の中核業務は自社の本業
     的業務であることからアウトソーシング可能業務から除きます。

     また、(4)の裁量業務は、会社の施策的な諸条件が絡むことが少なくないの
     で、アウトソーシングには原則として不適切です。

     一方、(3)の定型業務に属するものは基本的にアウトソーシング可能業務とし
     ます。

     (2)のサポート業務についても業務機能の特徴などを考慮してアウトソーシン
     グが可能な部分を抽出します。

   3.ウトソーシング方法のリストアップと最適な方法の選択

     抽出したアウトソーシング可能業務に対して、適切なアウトソーシング方法をリ
     ストアップします。

     実際のアウトソーシングの方法は、一般的に次の5つのカテゴリーに分類でき
     ます。

     (1)社内アウトソーシング

       人材派遣サービスや請負サービスを利用したり、他部門へ業務を
       移管したりすること

     (2)社外アウトソーシング

       アウトソーシング・サービス会社へ業務を移管すること

     (3)業務提携

       特定事業などにおいて、他企業と経営資源を対等に相互補完しながら業
       務にあたること

     (4)関連会社の活用

       既存の関連会社に業務を移管すること

     (5)アウトソーシング・サービス会社の設立

       アウトソーシング・サービス会社を設立し、そこに業務を移管すること

     アウトソーシング可能業務に対し、どのアウトソーシング方法を選択するか
     は、一定の基準をもって行います。

     この基準としては、

      ・必要なコスト(初期費用、ランニング費用など)

      ・アウトプットの品質、納期、安定性

      ・その他(例:関連会社を活用したほうがグループ全体として効果が高い)

     などが考えられます。

     このように、諸条件の比較・検討を行い適切なアウトソーシング手法を選択し
     ます。

   4.アウトソーシング導入による業務プロセスの改善

     アウトソーシングの導入方法が確定した業務については、そのプロセスについ
     ても見直しを行う必要があります。

     アウトソーシング先との連絡方法やアウトソーシング先のコントロール方法、必
     要帳票類の変更などを検討し、業務の流れを再設計します。

     また、場合によっては、組織の再編成なども視野に入れた抜本的な業務プロ
     セスの変革(BPR:ビジネスプロセスリエンジニアリング)を行うことも検討します。

     こうした部分は一般的に軽視されがちですが、アウトソーシングが失敗する大
     きな要因のひとつでもあるため、十分な配慮が必要です。

   5.アウトソーシング実行のチェックポイント

     以上のようなステップでアウトソーシングを進めることを前提に、実行の際に
     チェックすべきポイントを次にまとめました。

      ○自社の長期ビジョンは明確になっているか

      ○アウトソーシングすることにより存立基盤を失う危険性はないか

      ○何に経営資源を重点配分するかが明確になっているか

      ○アウトソーシングをした場合の効果は試算されているか

      ○全社的なアウトソーシングを検討・推進するための組織体制が
       整備されているか

      ○適切なアウトソーシング方法およびアウトソーシング先は検討されているか

      ○アウトソーシングを実施するにあたって社内の啓蒙・周知活動をしているか

  □各種アウトソーシング・サービス

   中小企業がアウトソーシングを進めるには、社外アウトソーシングである外部
   サービスの活用がもっとも多くなると思われます。

   そこで、ここではどのようなアウトソーシング・サービスがあるのか、それを利用す
   る際の留意点は何かをまとめていきます。

   1.各種アウトソーシング・サービス

     (1)人事

       人事関連の業務は、もっともアウトソーシングが進んでいる領域のひとつ。
       その理由として、定型化された業務が比較的多い、給与情報などの人事
       情報は社内に置きたくないなどの理由が考えられます。

       【アウトソーシングされる人事関連業務例】
        ・勤怠管理、月次の給与計算、賞与計算

        ・雇用保険、社会保険、労災の手続き業務

        ・就業規則の作成、改訂、届出業務
        ・人材の教育、研修

       大手企業のなかには自社の人事部門自体を分社化し、人事の全業務を請
       け負うアウトソーシング・サービス会社を設立するなどの動きがあります。

     (2)営業

       営業とひとくちにいっても業界や業種によって内容は異なります。
       また営業は会社の利益を直接得る部門であることから、多くの企業で
       聖域とされ、アウトソーシングしにくい分野とされていました。
       しかし、次のような営業にかかわる業務を代行する会社が数多く現れ、
       業務の一部あるいは全部をアウトソーシングする会社も多くなってきた。

       【アウトソーシングされる営業関連業務例】
        ・電話などによる受注業務

        ・電話取次代行、支店や営業所代行

        ・ダイレクトメールの作成を含む販促物作成業務

        ・相手先への実際の訪問による営業活動

        ・顧客名簿の作成や管理

        ・電話での営業や販売促進

     (3)経理・財務

       経理業務は簿記の知識が必要になり、仕訳や記帳作業など多くの
       手間が発生する業務です。
       こうした業務を代行する業者も現在では多数あります。

       おもなサービスの内容としては、

        ・仕訳、記帳サービス

        ・財務諸表作成サービス

        ・財務諸表の見方の指導や財務分析

        ・税金対策や財務戦略に関する指導

       などがあり、経営指導まで行う高度なサービスもあります。

     (4)購買・仕入業務

       購買業務を専門に行う業者も存在します。
       これらの業者には、同業偲社で組織化した共同仕入を専門に行う
       会社なども含まれます。

       メリットとしては、

        ・高品質な製品や部品を大量に安定的に購入できる

        ・購買業者は多くの製品類を扱うことから、安く購入することができる

        ・最新の製品情報などを入手しやすくなる

        ・共同配送を行っているところは物流費も削減できる

       などがあります。

     (5)その他

       上記以外にも、次のようなサービスがあります。

        ・情報システムの構築支援や運用サービス

        ・重要書類やデータを保管、管理するファイリングサービス

        ・郵便物の管理を一括して行うメールルームサービス

        ・インターネットのホームページ作成や企業情報の発信から収集まで
         代行するサービス

   2.アウトソーシング・サービスの活用ポイント

     こうしたアウトソーシング・サービスを選定、活用する際には、とくに次のことに
     配慮をします。

      ・委託したい業務とそれぞれの代行会社の特性(強い分野)を照らし
       合わせる

      ・代行できる業務範囲、納期、依頼側の行う作業を確認する

      ・代行会社の規模や体力を考慮する
       (一定の業務量以上は受付不可となることがあり得る)

      ・依頼することによって軽減される作業コストと委託費との比較を行う

      ・他の業務も併せて依頼できないかを検討する
 

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