代理店経営に必要不可欠なこと Ⅰ
 

  ■代理店の経営に必要不可欠なこと

   場当たりな経営から、羅針盤経営を着実に根付かせるためには、トップ自らが『事 
   業経営とは』を理解し、根気よく従業員に啓蒙していかなければならない。

   1.経営計画の策定手順
     ビジョンから中期・年度計画までの計画プロセスは、経営管理のサイクル(PD
     CA)の出発点になる基本的事項です。

     個々の箱の中身は、流れの中で相互に整合性をもって検討されなくてはなら
     ないため、実態は、“行きつ戻りつ”で検討されます。

      ①ビジョンをつくって計画に落とし込まれていない
      ②数値計画だけがあって戦略やビジョンの裏付けがない

     現状の延長線上に引き伸ばした計画をよく見受けられるが、いずれにしても、
     いわゆる画に描いた餅であったり、組織メンバーを動機付けるものでないた
     め、実効性に乏しいものとなってしまっている。

     計画作りにあたっては、下に挙げた第一から第三までを上下の隔てなく自由
     に発言する場作りに努める。

       第一段階 どういう代理店にしたいか?

       第二段階 今どんな状態か?
              なにが起こりそうか?
              競争相手はどういうことをしそうか?

       第三段階 ではなにをしなければならないか?

     ●ポイント
      1.なにを存在意義と感じるのか、どんな代理店になりたいのか、
        という理念やビジョンを基に方針・目標を定める

      2.現状分析により成り行きの今後の姿を想定し、目標とのギャップを
        明らかにする

      3.ギャップを埋めるための戦略を構築し、具体化・スケジュール化
        して計画を作る

  □理念・ビジョン・行動指針     
   経営計画作りの最初にくるものが経営理念ビジョン行動指針であり、それぞれ
   の考え方は、上記に示したとおりです。

   これらは、経営活動を推進する原動力であると同時に活動を律する制約要因でも
   あります。

   大組織においては、経営スタッフが中心になって策定し、トップの声明として発表
   されるケースがありますが、組織規模の小さい代理店においては、従業員を巻き
   込んで策定する方が、より効果的に浸透させる効果が期待できます。

   とくに合併のケースにおいては、これまで別の道を歩んできたトップが一緒に事業
   をやっていくことになるので、本音で語り合える雰囲気を作りながら、上記3つの
   枠組みに沿って十分議論することが不可欠です。

   議論される中で、それを実現化するための打ち手がいくつか見えてくる場合が多
   く、これらの情報は後のステップに出てくる戦略案として吸収し、改めて検討して
   いくことになります。

   ●ポイント

    1.全員が共有すべき最も基本的な考え・思い、という点は共通している

    2.なんのために事業を行うのかということを明示するのが経営理念であり、
      あるべき自店の特徴を掲げるのがビジョン

    3.行動指針は価値観や優先順位を規定するもので、判断や行動に迷った
      ときの助けとなる道標ともいえる

  経営方針・目標設定

   1.経営方針の決め方

     今後の経営の方向性を端的に表す経営方針は、経営責任を担うトップマネジ
     メントが定め、メンバー全員に浸透させるのが一般的です。

     しかし代理店の実務においては、トップから一方的に示達するというマネジメ
     ントスタイルが馴染まないこともありますので、コミュニケーションを十分に取っ
     て全員が納得して業務に邁進できる環境作りを心がけてください。

     なお、丁寧なサービスや迅速な対応といったことを行動指針等に掲げる代理
     店であっても、財務上の制約等により、一時的にはコストダウンを優先して利
     益を確保するという方針のもとにサービスレベルの引き下げを余儀なくされる
     ことも現実にはあり得ます。

     このようなケースでは、自店を特徴づけるような核となるサービスについては
     水準を堅持し、周辺の付帯的なサービスを大胆に切り落とすことでコストダウ
     ンを実現する、などといった工夫が求められます。

     ●ポイント

      1.理念やビジョンを実現するために自店が進むべき方向を指し示すのが
        経営方針

      2.通常は、社長が方針を定め、取締役会の承認を経て全社に伝えられ、
        共有される

      3.積極的な成長路線を歩むのか、堅実に利益確保に努めるのか、
        といったレベルで語られることもある

   2.目標設定の際に留意すべき点

     代理店に限らず、「売上10%アップ」、「新規開拓300件」など、結果として目
     指すべき数値目標だけを掲げるケースがよく見受けられます。

     このような目標は掛け声としては威勢良く響きますが、単なるスローガンに留
     まってしまうことも少なくないようです。

     結果としての数値目標を示すだけでは、振り返る段になって、「110%達成、よ
     くやった!」とか「達成率95%、次はもっと頑張ろう!」といった精神論めいた
     評価・総括を招きがちで、組織力の強化にはなかなかつながりません。

     ゴールに向かって着実に歩みを進め、組織全体の業務遂行力を持続的に高
     めていくためには、「どうやって」に相当する手段を、「なにを、どうする」に相当
     する目的と合わせて考えることが効果的です。

     上記の例では、売上を6千万円から9千万円に50%増加させるという目的に
     向けて、

      ①お客様の増加

      ②お客様一人あたりの契約増

      ③契約あたりの手数料単価アップ

     といった手段を組み合わせるという形で目標を設定しています。

     また「手数料単価を高める」と言ってもそこに留まるのではなく、より具体的に
     「特約付帯率を高める」、さらには「付帯率アップのための専用リーフレットを作
     る」というように実際の行動をイメージできるように目標を展開しています。

     手段をサブゴールに読み替えることで具体的な施策レベルまで目標を展開す
     ることが容易になり、実現性・達成可能性を高めることができるのです。

  □経営環境分析

   1.自店の強みや弱みを把握

     「比較優位性」を例えば1〜5段階にレベル分けし、「重要性」をA、B、Cの3段
     階にします。

     極端な例で説明すると、比較優位性が一番低い「1」で、かつ重要性が一番高
     い「A」であるテーマは「弱み」と考えられます。

     一方で、比較優位性が「5」で、かつ重要度が「A」であれば、そのテーマは代
     理店にとって「強み」となります。

     このように、競合他社との比較による相対評価と自店における絶対評価をうま
     く組み合わせる方法は、特定のテーマに対する強みや弱みを整理する上で有
     効です。

     ●ポイント

      1.自店の商品知識、周辺知識、社内体制など、強みや弱みについて
        重要なテーマを決める

      2.各テーマについて競合先に対する自店の優位性や自店が優先して
        強化しようと考えるレベルについて整理する

      3.各テーマについて比較優位性や重要性を把握しながら強みや弱みを
        整理して、今後の強化策や改善策を検討する

   2.ビジネスチャンス

     自店のビジネスを取り巻く外部環境分析を行うことで、機会と脅威を見出すこ
     とができます。

     多くの場合、自店にとっての機会や脅威は競合相手にとっても同様に機会・脅
     威となり得るので、戦略を検討する段階では、ただ単にビジネスチャンスがあ
     るからといって飛びついたり、リスクが大きいからといって撤退を決めるのでは
     なく、自店の強みや弱みと考え合わせることが大事になります。

     また、ある外部環境条件が変化するときには、それにつれて他の条件にも影
     響が及ぶことがあるので注意が必要です。

     たとえば、ある地域への人口流入が増えれば新規参入を促進し、景気低迷が
     長引けば消費者は価格に敏感になる、といった関係です。

     貴重なビジネスチャンスを逃さずモノにしていくためには、情報収集のアンテナ
     を張り巡らすとともに、外部環境の変化が自店のビジネスにどのような影響を
     もたらすのかということを考える習慣が重要でしょう。

     マクロ環境の把握について言えば、新聞や雑誌、インターネットなど日常的に
     接するメディアの情報に気を配ることが基本になります。

     地域の情報については、商工会やロータリーなど地域のさまざまな集まりに積
     極的に参加することで、活きた情報に手早く接することができます。

     業界情報や商品情報などについては、商工名鑑や法人会名簿、組合名簿をう
     まく使うなどして効率的に情報収集を行ってください。

     ●ポイント

      1.自店のビジネスに影響を及ぼす外部環境の変化を把握・整理する。

      2.ビジネスチャンス(機会)だけに着目するのではなく、留意点(脅威)に
        ついても、同時に確認すべき日常的に接する情報を自店のビジネスに
        関連付けて考える習慣が大事。

   3.「強み・弱み」と「機会・脅威」の分析をいかに活かすか

     自店が今後いかにビジネスを展開していくかという成長戦略を考えるための材
     料として、自店の「強み・弱み」と市場の「機会・脅威」に関する分析を役立てま
     す。

     市場に魅力的なビジネスチャンスがあって、そこで自店の強みを発揮できそう
     な場合、その機会を捉えた積極策によってビジネスを飛躍的に伸ばせる可能
     性があります。

     チャンスがあったとしても、それを活かす資源や能力の面で競争相手より劣っ
     ている場合、他店に決定的な差をつけられてしまわぬように弱みを克服する
     取組が必要とされるかもしれません。

     市場全体が縮小するなど一般的には脅威だと考えられる環境下にあっても、
     競争を勝ち抜いていけるだけの強みを持った代理店にとっては、他店との違
     いを訴求してシェア向上を図ることが可能になります。

     市場に厳しい脅威があり、それが自店の競争上の弱みと結びついてしまうとき
     は厳しい意思決定を迫られます。

     その脅威が一過性のものであったり、弱みを短期的に克服できるとすれば、コ
     ストダウン等で逆境をしのぐという選択になるでしょう。

     地域産業の衰退など脅威が長期的なもので、当該産業向けの営業ノウハウ
     が他店より劣ってしまうといった場合などは、勝ち目のある領域に経営資源を
     振り向ける必要があるので、その事業領域から撤退することが得策ということ
     もあり得ます。

     ●ポイント

      1.自店の強みを活かした成長戦略を描くために役立てる機会を逃さぬ
        ように補強すべきポイントを明確化する。

      2.事業領域の選択と経営資源の集中を実現するための検討材料とする。

  経営戦略

   1.経営戦略について

     経営学の用語には軍事用語と共通するもの、そこから出典したものが少なくあ
     りません。

      (例:リクルート=新兵募集、ロジスティクス(物流)=兵站、など)

     それらの中で、もっとも広く使われるのが「戦略」という言葉かもしれません。

     堅苦しい表現で文字面も穏やかなものではないので、つい敬遠したくなってし
     まうような言葉ですが、ビジネス上も有用な概念なので広く用いられているの
     でしょう。

     目的を定め、それをいかに実現するかというシナリオを考えることが、戦略的
     思考の特徴だと言えるかもしれません。

     目的が定まらなければ、それを実現しようなどという発想は生まれず、現状延
     長線上の成り行きに身を委ねることになってしまいます。

     ゴールに向かう道筋を常に考えることが、戦略的思考を身に付けるための近
     道と言えるかもしれない。

     経営戦略を立てるには、どこで戦うのか(成長戦略)、いかに戦うのか(競争戦
     略)、機能間・階層間の戦略をいかにうまく結びつけて具体化するか(戦略の
     連鎖)、といった3つのステップで考えることが効果的です。

     またさらに言えば、理屈を重んじる、事実から目を背けない、過去の成功に安
     住しない、物事を柔軟に考える、といった態度が、戦略立案者に求められま
     す。

     ●ポイント

      1.ビジネスの拡大を図るにあたり、「なにを、だれに」提供するかという
        点に着目して成長の軸足を定める。

      2.自店ならではの魅力をいかにお客様に訴求するかという点に着目
        して「勝ちパターン」を固める。

      3.全体の成長戦略・競争戦略を踏まえて、より具体的なレベルに
        ブレークダウンする

   2.今後注力する市場の決め方

     成長戦略の立案に際して「あれも、これも」と総花的に列挙して、多くのテーマ
     の中に重要課題が埋没して結局どれもうまく進まない、というケースが保険代
     理業に限らず多くの企業で見られます。

     新規開拓するマーケットに新しい商品・サービスを提供しようとした場合、成功
     確率が低くなってしまうので一般的には勧められません。

     確固としたお客様の基盤を持っている代理店であれば、損保だけの取引だっ
     たお客様に生保や年金、投信などのクロスセリングを試みるなどの事業展開
     が無理のない成長戦略だと想定されます。

     逆に、お客様の数は少ないけれども特定の商品・サービスに関してとくに詳し
     いノウハウを持っているという代理店であれば、その強みを活かしてお客様の
     裾野を広げるのが当面の課題となります。

     そして、もっとも基本的なもので、まず第一に検討されるべきものは、現有市場
     深耕戦略だといえます。

     自店の主力マーケットに従来からの得意な商品を浸透させるものであり、市場
     が飽和状態にある場合などを除けば、低リスクで事業拡大を狙えます。

     隣の芝生は青く見えるので、営業エリアを広げたり、新しい商品に目を奪われ
     てしまうこともよくありますが、着実に足場固めをした上で次の展開を考えるの
     が正攻法だと言える。

     ●ポイント

      1.既存商品・サービス or 新規商品・サービス、既存市場 or 新規市場、
        の二つの軸で成長戦略を考える

      2.既存市場が成熟している場合、損保だけのお客様に生保や年金、
        投信等のクロスセリングを試る展開が現実的

      3.特定の商品・サービスに関して特に詳しいノウハウを持っている
        場合は、お客様の裾野を広げる展開が望ましい

   3.今後注力する市場での戦い方

     数多ある代理店の中からお客様に自店を選んでいただくためには、他店とは
     違う自店の魅力を訴求し、納得していただかなければならない。

     さもなければ、たまたま取れた契約は不安定なものとなり、些細なことで失い
     かねない。

     一般に競争優位のポイントは、

      ①コスト競争力

      ②商品・サービスの差異化

     の二つだと言われます。

     保険業界では代理店のコスト競争力をそのまま商品価格に反映させることは
     できないので、価格に敏感なお客様に対しては、保証内容を必要最小限のも
     のに絞った提案をするなどといった企画力が重要になります。

     このように考えると、代理店が厳しい競争を勝ち抜いていくためには、商品企
     画力・設計力を含めたサービス提供力について独自の価値を構築しなければ
     ならないことがご理解いただけるでしょう。

     どのようなサービスに高い満足を感じるかということは個々のお客様によって
     異なり、すべての潜在的なお客様に最大限のサービスを提供することはコスト
     制約上きわめて困難です。

     ターゲットを絞って自店の特長を打ち出すことが有効な差異化につながる。

     手厚い補償を重視する人、低額の保険料を重視する人、万一のときの親身な
     対応を重視する人、日頃から気軽に相談できる関係を重視する人といった具
     合に、お客様にはさまざまな価値観があります。

     自店の経営理念や行動指針に合致したサービス提供力を備え、適切なお客
     様の層にその魅力を伝えられれば、持続的に高い支持を得られるはずです。

     ●ポイント

      1.お客様に自店を選んでいただくには、自店ならではのサービスによる
        差異化が重要

      2.サービス内容で他代理店に差をつけるためにはなにをすべきかという
        観点で考える

      3.ターゲットとするお客様の層により求めるサービス内容が異なることに
        留意すべき

   4.具体的な戦略の決め方

     代理店の事業特性上、営業ノウハウやお客様や競合などのマーケティング情
     報を基にどのように営業のやり方を考えるか、といった営業戦略が最大の関
     心事となるでしょう。

     営業戦略を上位に置き、人事、情報、財務等に関する戦略を、営業戦略を支
     えるインフラ整備を担うものとして捉えると考えやすいでしょう。

     人的、物的、金銭的経営資源をどのように調達し、いかに配置し、有効に活用
     するための仕組みをどのようにつくるか、が基本的考え方です。

     成果主義を強めて処遇にメリハリをつける、などの施策は、「カネ」という資源
     を優秀な「ヒト」という資源に配分し、その結果、モチベーション向上による売上
     拡大が図れれば、インフラとしての財務と人事の戦略が営業戦略と相互にうま
     く結び付いている例と言えます。

     ●ポイント

      1.最も重要な戦略は営業戦略だと言える

      2.営業戦略を実現させるために、「人事」、「情報」、「財務」などの
        インフラに関わる戦略も必要

      3.具体的な戦略は個別に考えるのではなく、相互をうまく結びつけて
        具体化することが重要

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