5Sは経営改善の基本
 

  M&Aの神様といわれる日本電産永守社長が語る企業再生の極意。

  日本電産は世界各国で30社以上の積極的なM&A戦略で業績を拡大してきた。

  そのカリスマ経営者、永守社長は世界各国にある人種や考え方の違う企業を再建するための
  ポイントがあると言っている。

  社員のクビをいっさい切らずに全ての会社を再生を果たしている。

  最も重要視されているのが「6S・3Q」である。

  赤字の会社は、社員の士気が落ち、職場が汚れてくるとのこと。

  そして、「6Sのできていないで儲けている会社があれば1億あげる」と言ってきたが、
  どこにもないそうである。

  5Sは製造業・サービス業などの職場環境の維持改善で用いられるスローガンで6Sは
  5S+「作法」のこと。

  作法は、正しい行動ができる社員。

  永守社長は6Sを確実にできることが優秀な社員と位置づけている。

  そして、これらを確実に実践することで、「会社は儲かるようにできている」は至言で
  ある。

  これを実践すると「3Q」、つまり「良い社員(Qualityの高い社員)」、「良い会社
  (Qualityの高い会社)」、「良い製品(Qualityの高い製品)」につながる、という会社再建
  の心得。

  これらのことは決して製造業・サービス業に限った事ではなく、すべての営業会社に
  言えることです。    

 

  ■5S活動とは

   5Sは基本動作(12項目)の一部になります。

   5Sとは、整理(Seiri)・整頓(Seiton)・清掃(Seisou)・清潔(Seiketu)・躾
   (Situke)の頭文字Sをとったものです。

   5S活動とはこれらを全社員が徹底していくことであり、すべての会社にとって有益な
   活動といえるでしょう。

   5S活動の本当の目的はたんなる「職場の美化」ではなく、活動を通じて生産性向上など
   実際の経営改善につなげることにあります。

  □5Sの意味

   まず始めに5つのSの意味について確認してみましょう。

   なお、最初にあげる3つのSは5Sのなかでも基本中の基本として3S(サンエス)と呼ぶ
   こともあります。

    ・整理…事業活動に必要なものと不要なものをはっきりと区別して不要なものは捨
         てる

    ・整頓…誰もが必要なときに必要なものを効率的に取り出せるように配置すること

    ・清掃…汚れやゴミをなくして職場をきれいな状態にすること

    ・清潔…上記の3Sがつねに維持されているようにすること

    ・躾……決められたルールをきちんと守らせること

   このように、5Sのいずれも仕事の中で日ごろ当たり前と考えられていることばかりです。

   しかし、実際に5Sをきちんと行うのは簡単なようで難しいのが実情です。

   例えば、「使用したものは必ず元の位置に戻す」「自分の机は常に綺麗にしておく」
        「あいさつをきちんとする」などは当たり前のことですが、仕事が忙しくなると、
          ついおろそかになりがちです。

  □5Sの目的を明確化

   5S活動によって、職場の見た目がきれいになるだけでも一定の前進といえますが、
   本当の目的はたんなる職場の美化ではなく、5S活動を通じて経営全般の改善を図る
   ことにあります。

   現在、企業規模や業種を問わず、5Sに取り組んでいる企業は数多くみられます。

   なぜこのように多くの企業が5Sに取り組んでいるのでしょうか。

   それは、5Sに取り組むことで企業にとってプラスとなる多くの効果が期待できるから
   です。

   5Sは、特に製造業になじみの深い言葉です。

   それは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけという5つが工場管理の基本であるからです。

   製造業では5Sを実施することにより、無駄な作業がなくなり生産性が向上するとともに、
   過剰在庫がなくなりコストダウンが図れます。

   また、不要な物を処分することで適切な作業スペースが確保でき、労働災害の減少にも
   つながります。

   製造業以外の企業でも、5Sを正しく取り入れれば作業の無駄がなくなり、従業員の生産性
   が向上することは同様です。

   清潔に保たれた職場で仕事をすることで、自分自身の身だしなみにも気を使ったり、
   職場を汚さないように気をつけながら仕事をするようになります。

   また、お客様が来社された場合に、きちんと片付いている職場と乱雑な職場から受ける
   印象は大きく異なります。

   乱雑な職場はお客様に不快な印象を与えるだけではなく、品質管理面での不安感を
   もたらすでしょう。

   こうした従業員の意識は、取引先など社外の人に対して好印象を与えることに加え、
   社内的にも気持ちよく働ける職場をつくることにつながります。

   5S活動は「短期的」には社員の負担が増すことになります。

   また、「整理・整頓なんてやっても売上が増えるわけではない」など社員からの反発も
   予想されます。

   社長はこのような反発に対して、活動の本当の目的と重要性をはっきりと示す必要が
   あります。

  □推進体制

   5S活動成功のためには全社的な取り組みが不可欠です。

   たとえば、A部門で整理や整頓が徹底されていても、B部門の職場は相変わらず乱雑
   というのでは会社全体の改善は実現しません。

   A部門のメンバーたちもいずれはやる気を失ってしまうでしょう。

   推進のためには社長をトップとする全社横断的な体制を組む必要があります。

  □計画を明確にする

   活動にあたってはいつまでに何をするのかをはっきりとさせます。

   たとえば5Sの第一歩である整理については「全部門が1カ月以内に完了する」といった
   計画を立てます。

   さらに何がどのような状態になったら整理が完了したとするのかなどの判断基準も
   あらかじめ明確にしておく必要があります。

  ■5Sの各項目と実施のポイント

  □「整理」で不要品を捨てる

   5S活動の第一歩は整理を徹底することです。

   整理とは「事業活動に必要なものと不要なものをはっきりと区別して不要なものは捨てる
   こと」です。

   当たり前のことのようですが、会社ではそれがなかなか実行できません。

   職場にあふれる物を、必要な物と不要な物に分け、不要なものについては処分します。

   整理を行うことで、職場から不要な物が減り、仕事がしやすくなります。

   具体的な整理の進め方は、必要・不要の判断基準を設定して「不要」と判断されるもの
   は思い切って処分していきます。

   例えば、職場にある物を「よく使う物(日常的に使う)」「時々使う物(2週間に1回
   未満)」「あまり使わない物(3カ月以上使っていない)」などのように分けて、「よく
   使う物」だけを残し、「時々使う物」は別の保管場所に移動させる、「あまり使わない
   物」は処分します。

   また、複数の部署や人が共同で使うものなど、必要か不要かの判断が難しいもの
   (不明物)については、不明物を集めておく場所を作って全員に確認してもらい、確認の
   結果に基づいて処分を決定します。

   その際、不明物には品名や使用部署、当該物の状態、確認期限などを記したカード(目立つ
   
ように赤いカードを添付することが多いため、「赤札」と呼ばれます)を添付しておくよう
   にし
ます。


   1.対象物と責任者を決める

    整理候補の対象品と、その最終的な処置に誰が責任をもつかを決めることも重要です。

    整理対象候補となるものは、誰にとっても使用頻度が低いのが通常です。

    あらかじめ責任者を決めておかないと、「それは私には判断できない」という理由から、
    結局整理対象の網から漏れてしまうことがあります。

    「対象物の種類(工具、部品など)」、「現在置かれている場所(オフィスの部屋など)」
    に分類して、たとえば、「オフィスのこのコーナーにあるものはすべて○○さんが担当」
    というように対象物と誰がその対象物に対して整理の判断・処置に責任をもつのかを
    はっきりさせることが必要です。

   2.期限を決める

    整理を進めていくと、「今すぐにはどうしても判断できない」というものも出てくるで
    しょう。

    その場合は前述のような「廃棄予定札」を貼っておき、判断期限を決めておくことが大
    切です。

    「いつか使うかもしれない」と考えて、ずっと保留にしてしまえば整理は進みません。

    また、保留品のなかで動かせるものについては、保留品保管棚を作っておき、期限
    ごとに分類しておくことも効果的です。

    保留期限を過ぎても棚に残っているものは処分します。

   3.整理のポイント

     ・必要、不要の基準と処分の方法やルールを決めます。

      ・必要かどうか分からない物は、一カ所に集めて関係者に確認させます。

      ・確認するものには、「赤札」を付けておきます。

      ・確認の期間を決めておきます。

   4.判断基準を明確にして共有する

     整理が進まない最大の理由は、多くの場合、「捨てるべきものと、とっておくべ
     きものの判断基準があいまいになっていること」にあります。

     プライベートな場面では「不要品はすぐに捨てる」という人でも、会社ではそれ
     が本当に会社にとって不要であるかの判断は難しいものです。

     自分の判断で捨ててしまって、後に「あれはやっぱり必要だった」ということに
     なるのが怖いのです。

     したがって、あらかじめ会社としての「不要品基準」を定め、それをルールとし
     て社員に徹底させることが求められます。

     万一、後日捨てたものが必要になったとしても、捨てた人はあくまで基準
     に従っただけであり、その人個人が責められるべきではありません。

     会社の職種や業務サイクルによっても変わりますが、たとえば、

      ・過去3カ月間1度も使わなかったものは捨てる

      ・今後3カ月間使う予定のないものは捨てる

      ・修理不能な機械や新型モデル導入後の旧型機械は捨てる

     といった明確な基準を定めることが必要です。

     自分ひとりではどうしても判断できないものについては、「廃棄予定札」を貼っ
     ておき、最終的には上司に判断を仰ぐこともできるでしょう。


  □整頓で一目瞭然にする

   「整頓」とは、物の配置を決め、必要な時に必要な物をすぐ取り出せるようにしておく
   ことです。

   整頓を行うことで、「必要な物がどこにあるのか分からない」という状態をなくし、物を
   探す無駄を省くことができます。

   具体的な整頓の進め方は、「どこ」に「何を」置くかを決め、それを誰が見ても分かる
   ように掲示します。

   また、「どれだけ」あるべきかを決めることも大切です。

   工場で大量に使用する部品やオフィスでの消耗品などは在庫が底をつくこと恐れて、
   つい多めに保管しがちです。

   しかし、必要以上の在庫を抱えることはスペースを無駄にすることであり、資金を固定化
   することでもあります。

   さらに、適正な在庫量の基準がないと、発注担当者によって追加注文のタイミングや
   量が変わってしまいます。

   過去の使用量の推移、発注から納品までのタイムラグなども考慮して、「在庫量が
   この水準まで減少したらどれだけ発注する」という基準を決めておくことが大切です。

   「どこに何を置くか」を掲示している例としては、スーパーマーケットの売場を思い浮か
   べてみてください。

   スーパーマーケットの売場では、エリアごとに吊り看板などで品目を表示するとともに、
   棚にはプライスカードで個別の商品が掲示されています。

   プライスカードの目的は本来「客に対して商品の価格を示す」ことですが、プライ
   スカードがあることにより、商品の補充を行う店員にとっても「棚のどこに、どの商
   品を置くか」が分かります。

   このように「どこに何を置くか」が明確に分かる状態をつくり出すことが整頓を行う上で
   重要です。

   1.定位置を決めて看板を表示する

     定位置を決めるとは、そのものが本来置かれているべき場所を決めることで
     あり、看板表示はそれが遠くからでもわかるようにすることです。

     経験の長い人はどこに何が置かれているかは理解しているはずですが、それ
     は「誰の目にも明らか」ではありません。

     経験者が休んだ場合などには、「いったいあの部品はどこにあるのか」といっ
     た混乱が生じます。

     誰でもすぐに必要なものを見つけられるようにするためには、各部品の定位置
     を決めて、それぞれの棚ごとに何が置かれているかの看板表示を行う必要が
     あります。

     その際には次のような点に留意しましょう。

      ・使用頻度の高いものほど作業者の近くに配置する

      ・使用頻度の高い部品は「先入れ先出し」の配置とする(蓑から投入し
       前から取り出すなど)

      ・全体の作業工程を考えた効率的な配置にする(原則として作業順序に
       合わせる)

      ・棚の高さなどは作業者が楽に取り出せるよう工夫する

      ・キャビネットや道具箱など内部が見えない空間はできるだけつくらない。
       やむを得ない場合は特に丁寧な看板表示を行う

      ・机の中などの個人管理はやめて、誰の目にも触れるオープン管理にする

   2.定量を決める

     整頓では「どこ」に「何が」あるかだけではなく、「どれだけ」あるべきかを決める
     ことも大切です。

     工場で大量に使用する部品やオフィスでの消耗品などは在庫が底をつくこと
     恐れて、つい多めに保管しがちです。

     しかし、必要以上の在庫を抱えることはスペースを無駄にすることであり、資
     金を固定化することでもあります。

     また、適正な在庫量の基準がないと、発注担当者によって追加注文のタイミン
     グや量が変わってしまいます。

     過去の使用量の推移、発注から納品までのタイムラグなども考慮して、「在庫
     量がこの水準まで減少したらどれだけ発注する」という基準を決めておくことが
     大切です。

   3.きちんと戻すことを徹底させる

     使ったものはすぐに元の場所に戻さなければなりません。

     しかし、ものを探すときは必要に迫られて必死に探しても、使い終わった後にそれを
     元に「戻す」ことにはそれほど重要性を感じずに、「使いっぱなし」、「出しっぱなし」
     にしてしまうのはよくあることです。

     せっかく整頓のためのさまざまなルールを決めても、それが維持できない大きな原因
     のひとつはここにあります。

     きちんと戻させるためには、各人の整頓への意識を高めるとともに、終業時のチェック
     事項として「戻し確認」を取り入れることなどが考えられます。

     また、「工具類は置き場所に工具の形をした線を引く」など、戻す際の負担を少しでも
     軽くするための工夫をすることも大切です。

     整頓を徹底するためには、「楽に探させる」以上に「楽に戻させる」ことが重要とも
     いえるのです。

     整頓のポイント

      ・基本的に目で見て分かる整頓を行います。

      ・使用場所や使用頻度、移動の容易性などで保管場所を決めます。

      ・保管場所の定位置を決め、分かりやすく表示します。

      ・保管場所や保管量をルール化して明文化します。

  □清掃

   「清掃」とは、職場のゴミをなくし、汚れのない状態にすることです。

   特に製造業の場合、工場内のゴミや汚れは異物混入などにつながり、製品の品質を左右す
   る場合があります。

   清掃を徹底することでそうした事態を防ぎ、製品の品質を保つことができます。

   具体的な清掃の進め方は、「1つ作業が終わ る度に作業場所の周辺を清掃する」「毎週月
   曜日は作業前に30分間清掃を行う」など、清掃に関するルールを定めます。

   そしてルールに従って全員で清掃に取り組みます。

   ここでは、「作業が終わる度に作業場所の周辺を清掃する」をルールの例として挙げましたが、             清掃を徹底するには、できるだけこまめに清掃を行うことが有効です。

   こまめに清掃を行うことで1回当たりの清掃時間を短縮することができ、忙しくても清掃
   が実践できます。

   なお、こまめに清掃を行うためには、清掃用具を使いやすいように整えておくことも重要
   です。

   清掃用具は、取りやすいように職場内で何カ所かに分散させて置いておくとよいで
   しょう。

   わずかのゴミを片付けるために職場の端まで清掃用具を取りに行かなければならない
   とすると、「清掃用具を取りに行くのが面倒だし、このくらいのゴミなら放っておいても
   大丈夫だろう」と、つい清掃を怠ってしまうことがあるからです。

   清掃とは「汚れやゴミをなくして職場をきれいな状態にすること」です。

   気付いた人が気付いたときに清掃するというやり方ではなく、きちんとルール化して会社
   全体で取り組むことが大切です。

   また、清掃時のチェックポイントを工夫することで日常的な点検につなげることもでき
   ます。

   チェック表を用意するなどして誰もが同じ視点で清掃点検ができるようにしましょう。

   1.場所・担当者・頻度のルールを決める

     ほとんどの人は自分のデスクや作業場の周辺に目につくゴミが落ちていれば
     それを片付けます。

     しかし、通路などの共用部分については、積極的にゴミを探して片付けようと
     いう人は少ないでしょう。

     また、目につきにくい部分にたまった挨などは長期間放置されることもある。

     清掃においては自分の周辺だけではなく、共用部分(OA機器の周辺、会議
     室、通路、玄関、トイレ、柱、壁など)についても、場所ごとに清掃担当者を決
     めておくことが大切です。

     共用部分の担当者は月ごとにローテーションさせるのもよいでしょう。

     また、清掃の方法(掃く、拭くなど)や頻度(毎日、週1回など)についてもルー
     ル化します。

     そして、清掃は重要な業務の一部として明確に位置づけます。

     ルールどおりにきちんと運用していけば、自分の担当以外の場所でもゴミが落
     ちていないかチェックし、落ちていればすぐに拾うということが習慣化されてい
     くものです。

   2.点検にもつなげる

     自分の手で清掃するということは、対象物を入念にチェックすることでもありま
     す。

     たとえば、普段は機械で洗車を済ませている人が、たまに自分自身の手で入
     念に洗車を行うと、それまで気付かなかったへこみや傷を発見することがあり
     ます。

     また、思ったよりもタイヤの摩耗が進んでいるといった安全面に直結すること
     に気付くかもしれません。

     職場における清掃においてもたんに汚れを落とすだけではなく、清掃中に「機
     械の異変」や「補充が必要な消耗品」などに気付くこともあるでしょう。

     もちろん清掃だけですべての点検を済ませることはできませんが、毎日の清
     掃を「清掃点検」にすることによって、トラブルにいち早く対処できる可能性が
     高まります。

     チェック表を用意するなどして誰もが同じ視点で清掃点検ができるようにしま
     す。

     清掃のポイント

      ・まずは職場をきれいに掃除します(床、壁、窓、設備、机など)。

      ・清掃のタイミングなどをルール化して、全員で清掃に取り組みます。

      ・製造機械などの設備は、設備ごとに清掃マニュアルを作成します。

      ・清掃用具は使いやすい状態にしておきます。

  □清潔

   5Sでいう「清潔」とは3S(整理、整頓、清掃)がつねに維持されているようにすること
   です。

   ◎清潔とは3Sを維持・向上させること

    3Sはそれぞれにルールを決めてそれを実行することでいったんは実現します。

    しかし、その状態を維持していくことは簡単ではありません。

    たとえば、活動導入当初は積極的だった人も忙しさを理由に手を抜き始めること
    があります。

    また、日々会社の状況は変わっていきますから、3Sのルールをマイナーチェン
    ジしていく必要もでてくるでしょう。

    このような事態に的確・迅速に対応していくことが「清潔」ということになります。

    さらに清潔には3Sレベルを向上させていくという意味合いもあります。

    たとえば、「整理」で不要品が一掃されるのはよいことですが、その前段階として
    「不要なものは買わない」、「適量しか買わない」ということが徹底されていれば、
    不要品を見分けて捨てるという手間自体が大幅に削減されるはずです。

    同様に工具や部品の種類を減らすことができれば整頓に必要な手間は減りま
    すし、床を汚れにくい素材に変えることで、清掃の手間も減らすことができます。

    このように清潔とは3Sを一時的な状態に終わらせずに、長期にわたって維持・
    向上させていくことなのです。

    整理・整頓・清掃の仕組みを維持し、職場を常にきれいな状態に保っておくこと
    を指します。

    具体的な進め方は、チェック表を作成し、整理・整頓・清掃の状況を定期的に確認する
    ようにします。

    そして、確認の結果不十分な点があれば、その場で指摘して改善を指導します。

    確認→改善→確認→改善という流れを繰り返すことで、清潔が保たれるようになるのです。

    なお、確認は、経営者や工場長など、職責が上の人間が行うようにします。

    これにより確認時の甘えや馴れ合いをなくし、清潔の維持を徹底することができます。

    また、チェック表を作成する際には、

     ・チェック項目は実際に現場を見てできるだけ具体的に記述する

     ・項目ごとの評価は5段階や10段階などで評価し、前回の確認時から
      改善されたか否かが分かるようにする

    などに注意すると、効果的なチェック表が作成できるでしょう。

    清潔のポイント

     ・定期的に職場を巡回し、清潔の維持状況を確認する。

     ・確認は上席者が行うようにする。

     ・定期確認用のチェック表を使用し、明文化された基準に従って確認を行う。

     ・チェック表にない指摘点があった場合には、現状を写真に撮っておき、
      次回確認時に改善状況を確認します。

  □しつけ

   「しつけ」とは、ルールを順守を習慣化させることです。

   従業員に対し、当たり前のことが当たり前にできるように指導・教育していくことが
   しつけです。

   具体的な進め方は、就業規則や職場のルールを従業員に対してしっかりと通知します。

   そして、「就業規則に定められたことは守ること」「職場で働きやすくするために、皆で
   決めたルールを守ること」「職場の礼儀やマナーに気を配ること」などを、機会がある
   ごとに繰り返し説明します。

   しつけは、職場において最も基本的なことのようですが、実際には、忙しいなどの理由で
   おろそかになっていることも多いものです。

   また、「今さら言わなくても分かっているだろう」と考え、そうした教育を怠ってしま
   うこともあります。

   私たちは子ども時代から親や年長者による躾を受けてきました。

   やってよいことといけないことについて徹底した指導を受けたおかげで、日常生活では
   大抵のことは善し悪しの判断ができます。

   社会人になってからも多くの人は過去に受けた躾を応用して正しく振る舞うことができま
   すが、そんな人でも、身近に指導してくれる人がいない状態が長く続くと、「このくらい
   なら」と自分を律しきれないこともあるでしょう。

   さらに会社で守るべきルールのなかにはすべての社会人が守るべきルールだけではなく、
   その会社固有のルールもあります。

   たとえば、食品工場で働く人には通常のオフィス勤務の人とは比べものにならないレベル
   での衛生基準があります。

   また、建設現場など危険を伴う職場では安全基準が細かく決められているでしょう。

   自社の社員に対して、自社のルールを詳細に説明して、それを確実に守らせていくことが
   会社における躾です。

   ルールブックを渡して「このとおりにやれ」と指示するだけではなく、ルールを決め
   た理由や目的なども説明して、社員が習慣として当たり前のように実行していくレ
   ベルまで(「頭」ではではなく自然と「体」が反応するレベルまで)、粘り強く指導す
   る必要があります。

   また、躾は月に1度まとめて行うというものではなく、毎日少しずつ積み重ねていく
   ものです。

   ルール違反に対してはできるだけその場で改善点を指摘することが大切です。

   社長は常日頃から経営幹部などへの躾を行うとともに、彼らが部下に対して適切な躾を
   行っているかどうかの確認も行う必要があります。

   さらに社長自身についても、自分が部下を躾けるにふさわしい行動ができているか
   どうかを自問することが求められます。

   しつけのポイント

    ・職場のルールは全員に確実に通知します。

    ・ルールを守ることの重要性を繰り返し説明します。

  □5Sの実施により得られる7つの効果

   1.職場安全の確保や向上につながる。

   2.職場がきれいになり、仕事がしやすくなる。

   3.仕事が楽しくできるようになる。

   4.無駄な在庫がなくなり、在庫の量や場所がすぐ分かるようになる。

   5.時間の無駄がなくなり、コストダウンにつながる。

   6.結果的に生産性が向上して利益率が上がる。

   7.全員で取り組むことにより、職場に一体感が生まれる。
      
  □導入に当たっての留意点

   1.従業員の意識付けが重要

    5Sの導入に当たっては、専門的な知識などは必要ありません。

    心がけ1つで誰でもすぐにでも実施できます。

    その一方で、誰でもできることだからこそ、5Sに対する従業員の意識がその効果に
    大きく影響してきます。

    そこで、ここでは従業員の意識を高め、活発な取り組みを維持するという観点から、
    5Sの導入に当たっての留意点を説明していきます。

   2.5Sの意義を念入りに説明

    5Sの導入に当たって、経営者(工場や支店などの組織単位で5Sに取り組む
    場合には組織のトップ)はまず、従業員に対して「5Sの意義」をしっかりと
    説明しておく必要があります。

    なぜ5Sが必要なのか、5Sを導入することで「どういった効果が期待できるのか」
    といったことを、しつこいくらいに説くのです。


    従業員がその意義を理解しないまま5Sを導入しても、従業員は「やらされている」

    という意識で5Sに取り組むことになります。

    それでは5Sは表面的な活動にしかならず、大きな効果は見込めないでしょう。

    そうではなく、5Sを実践することによって自分の仕事がやりやすくなるなど、
    5Sの取り組みは従業員自身のためになるのだということを理解させることで、
    従業員の取り組み姿勢が変わってきます。


    ここで、整頓を例に考えてみましょう。

    「上司からの命令で仕方なく」行うのでは、「一見きれいに整頓されている
    ものの、実はただ並べてあるだけで、どこに何があるのか把握できていない」
    といった状況が起こります。


    見た目だけは整っていても、実際にはどこに何があるのか把握できていないと

    すると、何か必要な物があるときにはやはりその物を探す時間が必要となり、
    結局、整頓前と作業効率は変わりません。

    整頓にかけた時間が無駄になっただけです。

    これでは、今後積極的に整頓に取り組んでいこうという気になるはずもありません。

    一方、「自分のために」整頓を行うと、従業員は「最も効率がよくなる置き方」
    を考えながら整頓することになります。


    考えながら整頓しているので、どこに何があるのかきちんと把握でき、物を

    探す時間が不要となって作業効率の向上につながることになるのです。

    作業効率の向上という効果を従業員が実感できれば、整頓に対するやる気は
    さらに向上し、取り組みは活発化していくでしょう。

    従業員に対して5Sの意義をしっかりと説明し、「自分のため」という自主的な取り組み
    への意識を持たせることが、5Sの取り組みを定着させるための重要なポイントです。

   3.全員で取り組むことが重要

    これまで5Sに取り組んでいなかった企業が新たに5Sに取り組む場合、5Sの取り組みは
    従業員にとって負担となります。

    負担を求める以上、部署や役職などにかかわらず、全員平等に負担してもらわなければ
    なりません。

    5Sは業務改善に有効であるので、企業にとっては「本業」といえます。

    しかし、5Sは一見すると企業の本業ではないように感じます。

    このように、本業ではないと思ってしまうと、そこに時間を使うことを嫌がる従業員も
    いるでしょう。

    しかし、だからといって「手が空いている人」だけで5Sを進めることはよくありません。

    こうした進め方をしてしまうと、取り組みに参加しない人が出てきます。

    特定の人だけが5Sに取り組んでいる状況では、「忙しい中時間を工面して5Sに取り組ん
    でいるのに、あの人は全然やっていない。

    これでは不公平だ」という、従業員の不満につながります。

    場合によっては、取り組みに参加していない従業員からも「自分はこんなに忙しいのに、
    あの人はのん気に掃除なんてやっている。

    業務量に差がありすぎるのではないか」などと不満が出てくるかもしれません。

    もちろん、職場に暇を持て余している人などいないはずなので、これは正当な主張とは
    いえません。

    しかし、一部の人だけで取り組みを行うと、こうした不満が出てくる可能性もあるのです。

    業務を効率化し、仕事の質を向上させるための5S導入のはずが、かえって職場の不和を
    招いたとなっては、目も当てられません。

    5Sの実施に当たっては、全員で取り組むことが重要です。

   4.社長が率先して取り組む

    全員で取り組むことが重要というのは、社長や役職者といった経営幹部であっても例外     
    ではありません。

    役職者の中には「5Sは部下がやることであって、自分の仕事ではない」と考える人もいる    
    かもしれません。

    社長が自ら率先して5Sに取り組むことで、

    「社長が取り組んでいるのだから、自分もやらなければ」と、こうした役職者にとって    
    刺激となります。

    そして、役職者が取り組むようになると、それを見た部下達も取り組むようになります。

    逆に、社長が指示だけ出して自分では5Sに取り組まないようでは、従業員はついてこな    
    いでしょう。

    こうして考えると、社長自らが率先して取り組むことで、5Sが全社的な取り組みとして    
    広がっていくのです。

   5.ルールを定めて明文化する

    ここまでは従業員の意識付けという観点から5S導入の留意点をみてきました。

    5Sを導入し、徹底していくためには、それを実践する従業員が高い意識を持って取り組む    
    ことが何より重要だからです。

    しかし、従業員に対して5Sの重要性を説き、5Sを徹底するようにと号令を掛けていれば     
    それで5Sが徹底できるかというと、そうではありません。

    5Sを徹底するためには、社内で5Sのルールを定めておかなければなりません。

    ただ単に「きれいにしなさい」と言われても、従業員はどの程度までやればよいのかが    
    分からないからです。

    こうした状態では、従業員は自分が求められている取り組みのレベル、特に、「最低限    
    この程度にはしておかなければ」という取り組みの最低ラインが分かりません。

    そのため、最初はしっかりと5Sに取り組んでいても、周囲の取り組みのレベルや確認者     
    の様子を見ながら、「もう少し手を抜いても大丈夫そうだ」と、段々と取り組みのレベル    
    が低下してくるものです。

    そこで、5Sの導入に当たっては、まずは従業員が守るべきルールを設定します。

    その際、ルールは必ず明文化するようにします。

    そして明文化したルールは、全従業員に通知し、徹底させます。

    ルールを通知するためには、職場に貼り出したり、朝礼時に唱和したりするのもよいで
    しょう。

    ルールの設定は、5Sの導入に当たってまず頭を悩ませるところです。しかし、5Sの
    ルールは、一度設定したらずっとそれに従わなければならないというものではありません。

    まずは標準的なルールを設定し、運用しながら自社に合った形に変えていけばよいでしょう。

    標準的なルールとしては、例えば、机上の整理に関しては

     ・勤務中は作業上必要なものは机上に置いてよい。作業が終われば速やかに片付ける
      ものとする。

     ・休憩などで離席する場合は、資料や文房具など机上の物をきちんと整える

     ・終業後や外出時は、机上に物を置かない。ただし、電話、パソコンなど移動が困難な
      ものは除く。

    などとなります。

    これを、運用していく中で自社に合わせた形で追加・修正を加えていけば、自社に合った
    ルールができるはずです。

    なお、最初に設定するルールは、少し厳しく感じるくらいでよいでしょう。

    例えば、「机上には物を置かない」というルールがあると、従業員は机上の物を何とか
    整理しようという意識になります。

    しかし、これを「机上には必要な物以外は置かない」とすると、「必要な物だから置い
    ている」という言い訳を従業員に与えてしまい、整理しようとする意識が弱まることに
    なります。

   6.その他

    ◎まずはできることから

     先述の通り、5Sは仕事をする上では「当たり前」のことです。

     例えば整理・整頓をとってみると、整理・整頓が重要なことは誰でも分かっています。

     それにもかかわらずできていないということは、日常の業務が忙しく整理・整頓を      
     しっかりと行う時間がないなど、できない理由があるはずです。

     そのことを考慮せずに、「今日から5Sを徹底します」といっても、やはり無理があり     
     ます。

     何事も、高すぎる目標は到達意欲をそいでしまうため、目標は段階的に設定するのが
     よいとされます。

     これはもちろん5Sにおいても同様です。

     5Sを導入する際には、最初から完全を目指すのではなく、まずはできることから始めて、      
     時間をかけて徐々に取り組みを進めていくという気持ちで取り組むことが重要です。

     その場合、一般に、整理・整頓・清掃という「3S」から始めて、それらができたら     
     清潔・しつけに取り組むと導入がスムーズであるとされます。

     まずは月に一度でも日を決めて全員で3Sに取り組み、それを繰り返しながら3Sが常態化     
     するようにしていくとよいでしょう。    

    ◎各人の責任を明確に

     5Sの取り組みを維持していくためには、5Sの取り組みにおける各人の責任を明確にする     
     ことが重要です。

     各人の責任があいまいな状況では、従業員に「誰かがやるだろう」という意識が生じ、     
     取り組みが失速してしまう可能性があります。

     また、「多くの人は自分の机を片付けるだけで、共用部分の清掃はいつも決まった人が      
     行っている」など、意識が高い従業員とそうでない従業員の間で取り組みに差が生じ、     
     不公平感が生じる可能性もあります。

     そこで、

      各従業員に5Sの担当エリアを設定する

     ことで、各人の責任を明確にするとともに取り組みの差をなくして、5Sの取り組みを
     維持することができます。

     担当エリアを決めたら、職場をエリア分けして担当者の名前を書き込んだ「5Sマップ」     
     を作成し、社内に掲示しておくと責任がより明確となります。

     なお、この場合もやはり社長や経営幹部にも担当エリアを設定し、全社的な取り組み     
     であることを強調します。

     社長にも担当エリアを設定して取り組みを行うのであれば、社長は5Sの社内ルールを     
     確実に実践するだけでは不足です。

     従業員への刺激とするためにも、社長は社内ルールで定めたよりも厳しい基準で5Sに     
     取り組み、「これが自社の目指す5Sのレベルです」と、自らの担当エリアを5S推進の モデ
     ルエリアにできるように心掛けましょう。


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